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循環器内科 米国臨床留学記 第22回

第22回 借金まみれのフェローたち米国における6月は卒業のシーズンであり、われわれのフェローシッププログラムからもフェローが卒業していきます。この夏から一般循環器内科医として働き始める友人は、悩んだ末に、少し郊外の給料が高い病院を選びました。35万ドル(3,800万円)と高額な給料をもらえるようですが、借金の額が多過ぎて喜んではいられないと言っています。どういうことかというと、彼には現在、借金が30万ドル(3,300万円)以上あり、これから約10年間、借金を減らすために、月に4,000ドル(44万円)ずつ返していかなければいけないとのことでした。決して、彼が特段高い借金を抱えているわけではありません。 Medscapeの報告によると、40%以上の研修医が20万ドル(2,200万円)の借金を抱えています。一般的に親が学費を払う日本と違い、多くの医学生はローンを組んで、自分で学費を払っています。ですから、卒業時にはUndergraduate(医学部の前の一般大学)とMedical school(医学部)の学費や、その間の生活費を借金として抱えることになります。Association of American Medical Collegesのデータによると、平均的な4年間の医学部のコストは、公立で23万2,838ドル(2,500万円)、私立で30万6,171ドル(3,400万円)と計算されています。研修医やフェローの間は給料が5~7万ドルと安いため、独身であれば辛うじて利子だけ返すことも可能ですが、家族がいると、その期間も借金が増えていきます。仮に、循環器内科医になろうとすると、高校卒業後、大学4年間、医学部4年間、内科のレジデント3年間に循環器の3年間が加わり、合計14年間はかかることになります。この間、ずっと借金が増えるわけです。飛び級などを除けば、最も早くて32歳です。また、循環器などの競争が激しい科では、1~2年余計に費やすこともありますから、フェローを修了時に34~35歳ということもよくあり、配偶者や子供などがいることが多いです。35歳で家族はいるが、家もなく、借金が2,000~3,000万円近くあるというのが、平均的なフェローの状態なのです。この長いトレーニング期間と借金は問題と考えられています。せめて医学部が4年から3年に短縮できれば、それに伴うトレーニング期間、借金ともに減るはずです。実際、それが可能かを検証すべく、実験的に3年制の医学部を試行している大学があります。しかし、問題もいくつかあるようです。3年生の初めにはどの科を目指すかを決めなければなりませんので、座学だけを修了した段階で、専門の科を決めることになります。日本は研修医の間に決めれば良いわけですから、医学部6年間の後、研修医2年目、つまり医学部入学後8年目でも間に合います。また、専門とする科の変更は日本では容易ですが、アメリカでは科を変わるということはマッチングからやり直しですから容易ではありません。まだ、結論は出ていませんが、3年制の大学が主流となる日も近いかもしれません。

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認知症予防の新たな標的、グルコースピーク

 平均血糖値の指標であるヘモグロビンA1c(HbA1c)は、認知症および認知障害のリスクと関連している。しかし、この関連における血糖変動やグルコース変動の役割は不明である。米国・ジョンズホプキンス大学公衆衛生学大学院のAndreea M. Rawlings氏らは、1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)レベルの測定により、中年期におけるグルコースピークと認知症および20年の認知機能低下リスクとの関連を調査した。Diabetes care誌7月号の報告。 コミュニティにおけるアテローム性動脈硬化症リスク(ARIC)研究の約1万3,000例を対象に調査を行った。認知症は、動向調査、神経心理学的テスト、対象者またはその代理人との電話、認知症による死亡より確認した。認知機能は、3回の神経心理学的テストを20年間にわたり3回実施し、zスコアで示した。Coxモデル、線形混合効果モデルを使用した。1,5-AGレベルの10μg/mLで二分し、HbA1cの臨床的カテゴリ内で調査した。 主な結果は以下のとおり。・21年間の中央期間において、認知症は1,105例で発症した。・糖尿病患者では、1,5-AGの5μg/mL減少ごとに、推定認知症リスクが16%増加した(ハザード比:1.16、p=0.032)。・糖尿病およびHbA1c7%(53mmol/mol)未満の対象者の認知機能低下については、グルコースピークを有する患者は、ピークのない患者と比較し、20年間で0.19のzスコア上昇を示した(p=0.162)。・糖尿病およびHbA1c7%(53mmol/mol)以上の対象者の中で、グルコースピークを有する患者は、ピークのない患者と比較し、0.38のzスコア上昇を示した(p<0.001)。・糖尿病のない患者では、有意な関連が認められなかった。 著者らは「糖尿病患者では、グルコースピークが認知機能低下や認知症の危険因子となることが示唆された。平均血糖に加え、グルコースピークを標的とすることは、予防のための重要な手段となりうる」としている。■関連記事1日1時間のウオーキングで認知症リスク低下:東北大認知症予防に柑橘類は効果的か:東北大認知症の糖尿病合併、どのような影響があるか

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インスリン デグルデク vs.グラルギン、心血管転帰は?/NEJM

 2つの基礎インスリン製剤デグルデク(商品名:トレシーバ)とグラルギン(同:ランタスほか)について、心血管イベントリスクが高い2型糖尿病患者を対象に有効性および安全性を比較検討した結果、デグルデクはグラルギンに対して、主要な心血管イベントの発生に関して非劣性であることが示された。米国・リサーチメディカルセンターのSteven P. Marso氏らが行った「DEVOTE」試験の結果で、NEJM誌オンライン版2017年6月12日号で発表された。デグルデクは1日1回投与の持効型インスリンで、小児~成人への使用が承認されている。先行研究では非盲検試験において、デグルデクはグラルギンよりも血糖降下の日内・日差変動が小さく低血糖の発生頻度も低いことが示されていたが、心血管安全性についてはデータが示されていなかった。20ヵ国438施設で7,637例について二重盲検無作為化試験 DEVOTE試験は20ヵ国438施設で、二重盲検無作為化、treat-to-target、心血管アウトカムevent-driven法にて行われた。対象は、心血管リスクが高い2型糖尿病の成人患者で、1日1回夕食~就寝の間に、インスリン デグルデクまたはインスリン グラルギン U100を投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、主要な心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)の初発の複合で、評価はtime-to-event解析にて行われた。事前に規定された非劣性マージンは1.3であった。また、副次評価項目として重大な低血糖(米国糖尿病学会の定義で判定)、その夜間発生の頻度、イベント発現頻度などについて評価した。 2013年11月~2014年11月の間に、7,637例の患者が無作為化を受けた(デグルデク群3,818例、グラルギン群3,819例)。このうち6,509例(85.2%)が、心血管疾患または慢性腎臓病(CKD)と診断されていた。被験者のベースライン時の平均年齢は65.0歳、糖尿病の平均罹病期間は16.4年、平均糖化ヘモグロビン値は8.4±SD 1.7%。また、83.9%(6,409例)がベースラインでインスリン投与を受けていた。主要心血管イベントの発生、デグルデクはグラルギンに対し非劣性 主要アウトカムの発生は、デグルデク群325例(8.5%)、グラルギン群356例(9.3%)であった(ハザード比:0.91、95%信頼区間[CI]:0.78~1.06、非劣性のp<0.001)。 24ヵ月時点で、平均糖化ヘモグロビン値は、各群で7.5±1.2%で有意差はなかった(事後解析において推定治療差0.01%、95%CI:-0.05~0.07、p=0.78)。一方で、平均空腹時血糖値は、デグルデク群がグラルギン群よりも有意に低下した(128±56 vs. 136±57mg/dL、p<0.001)。 事前規定の重症低血糖の発生頻度は、デグルデク群187例(4.9%)、グラルギン群252例(6.6%)、絶対差は1.7%であった(率比:0.60、優越性のp<0.001、オッズ比:0.73、優越性のp<0.001)。 有害事象の発生について、両群で差はなかった。

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進行期大腸がん、1次治療での最適な分子標的薬とは/JAMA

 未治療の進行期または転移のある大腸がんでKRAS野生型遺伝子を有する患者において、化学療法と組み合わせる分子標的治療として、セツキシマブ(商品名:アービタックス)とベバシズマブ(同:アバスチン)を比較検討する無作為化試験が、米国・カリフォルニア大学のAlan P. Venook氏らにより行われた。結果、全生存期間(OS)について有意な差は認められなかった。分子標的治療の上乗せは、進行期または転移のある大腸がんの患者に臨床的有益性をもたらすが、いずれの分子標的薬が未治療患者への至適な選択であるかは不明であった。JAMA誌2017年6月20日号掲載の報告。セツキシマブ上乗せ vs.ベバシズマブ上乗せの無作為化試験 研究グループは、KRAS野生型遺伝子を有する進行期または転移性大腸がんの初回治療として、mFOLFOX6レジメン(ロイコボリン+フルオロウラシル+オキサリプラチン)またはFOLFIRIレジメン(ロイコボリン+フルオロウラシル+イリノテカン)に、セツキシマブとベバシズマブのどちらを上乗せすることが優れるかを検討した。 2005年11月~2012年3月に、米国およびカナダのNational Clinical Trials Networkを通じて、地域および大学のセンターで18歳以上の患者1,137例を登録し、無作為にセツキシマブ上乗せ群(578例)またはベバシズマブ上乗せ群(559例)に割り付けた。担当医と患者の選択によるmFOLFOX6レジメンまたはFOLFIRIレジメンに、それぞれの試験薬を併用して投与し追跡した。 主要評価項目はOSであった。また、副次評価項目は、無増悪生存(PFS)、全奏効率、各部位の完全もしくは不完全奏効または部分奏効などであった。OSはセツキシマブ群30.0ヵ月、ベバシズマブ群29.0ヵ月で有意差なし 被験者1,137例は、年齢中央値59歳、女性が440例(39%)。このうち1,074例(94%)が適格基準を満たした。 最終追跡日の2015年12月15日時点で、生存患者(263例)の追跡期間中央値は47.4ヵ月(範囲:0~110.7ヵ月)であった。また、82%(938/1,137例)の患者で疾患進行が認められた。 OS中央値は、セツキシマブ群30.0ヵ月、ベバシズマブ群29.0ヵ月で、層別化ハザード比(HR)は0.88(95%信頼区間[CI]:0.77~1.01、p=0.08)であった。 PFS中央値はセツキシマブ群10.5ヵ月、ベバシズマブ群10.6ヵ月で、層別化HRは0.95(95%CI:0.84~1.08、p=0.45)であった。奏効率も有意差はみられず、セツキシマブ群59.6%、ベバシズマブ群55.2%であった(差:4.4%、95%CI:1.0~9.0、p=0.13)。

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蜂窩織炎の初期治療にMRSAカバーは必要か?(解説:小金丸 博 氏)-691

 蜂窩織炎の原因微生物を特定することは一般的に困難であるが、膿瘍形成のない蜂窩織炎の原因菌で最も多いのはA群溶連菌などのβ溶血性レンサ球菌と考えられている。そのため米国感染症学会(IDSA)のガイドラインでは、貫通性の外傷や注射薬物使用者などでない場合、レンサ球菌をターゲットに初期抗菌薬を選択することを推奨している。しかしながら、近年、市中感染型MRSAの増加が問題となっており、蜂窩織炎の初期治療でMRSAをカバーできる抗菌薬を使用すべきか議論になっていた。 本研究は、12歳以上を対象に、単純性蜂窩織炎に対するST合剤併用の有効性を検討した二重盲検ランダム化比較試験である。第一世代セフェム系抗菌薬であるセファレキシンに抗MRSA活性を有するST合剤を併用した群と、セファレキシンにプラセボを併用した群に分け、臨床的治癒率を比較した。すべての被験者で軟部組織エコーを実施し、膿瘍形成がある患者は除外された。Per-protocol集団における14~21日時点での臨床的治癒率は、セファレキシン+ST合剤投与群で83.5%、セファレキシン+プラセボ投与群で85.5%であり、両群間で有意差は認めなかった(群間差:-2.0%、95%信頼区間:-9.7~5.7、p=0.50)。 本研究では、治療開始時に38度以上の発熱を呈していた患者の割合は1%程度と低率であり、経口抗菌薬で外来加療できるレベルの軽症患者が対象となっている。全身状態がそれほど悪くなく、明らかな膿瘍形成がなさそうであれば、蜂窩織炎の初期治療における抗MRSA活性を有する抗菌薬の有用性は高くないと考える。これは、現在の本邦における実臨床の感覚とも一致するものである。 治療失敗例をみてみると、どちらの抗菌薬投与群でも経過中に膿瘍形成した例を多数認めており、抗MRSA活性を有する薬を選択したかどうかは大きな問題ではなさそうである。蜂窩織炎の治療経過が思わしくない場合は膿瘍合併を疑い、ドレナージなど適切な処置を施すことが重要である。 本研究は2009~12年にかけて米国の施設で実施されたものである。市中感染型MRSAの検出率が今後も増加するのであれば、抗菌薬の選択に影響を与えるのは間違いない。本邦の発生動向についても注視していく必要がある。

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ネガティブスタディだが効果予測指標はPD-L1ではない!?(解説:倉原 優 氏)-696

 CheckMate026試験は、腫瘍細胞の1%以上がPD-L1を発現している、未治療のIV期非小細胞肺がん患者に対して、初回治療としてのニボルマブ(商品名:オプジーボ)単剤治療とプラチナ併用療法を比較するランダム化比較試験である。ニボルマブは現時点では2次治療で一定の地位を確立している。それにしても、CheckMateと名の付く臨床試験が多いため、一臨床医にはなかなか覚えにくい。 CheckMate026試験では、無増悪生存期間および全生存期間のいずれにおいても、両群に有意差は観察されなかった。いわゆる、ネガティブスタディだった。なんだニボルマブは初回治療には使えないのか、という声が出てきそうだが、実はそう簡単な帰結にはならないと考えている。この論文の最後には、探索的研究の興味深い結果がコメントされている。 多くの医師はご存じかもしれないが、PD-L1ではなくTumor Mutation Burden(TMB)※1が効果を推定する規定因子として注目を集めている1)。事実、このCheckMate026試験の後解析2)が米国がん研究会議(AACR 2017)で発表されており、TMBが高い場合※2、ニボルマブ群で無増悪生存期間が延長し(ハザード比:0.62、95%信頼区間:0.38~1.00)、奏効率も良好だった(ニボルマブ群46.8% vs.プラチナ併用療法群28.3%)と報告されている。全生存期間は後治療のクロスオーバーの影響もあって、有意差はついていない。※1 腫瘍組織中の遺伝子変異量を示す指標のこと。※2 TMBレベルを低TMB(0~99)、中TMB(100~242)、高TMB(243以上)に分けて解析。 当然ながら、副作用が患者に与える影響は免疫チェックポイント阻害薬のほうが軽度である(注意しなければならない副作用は特殊なものが多いが)。たとえ後解析でTMB高低によって差があったとしても、腫瘍細胞にPD-L1の発現が多ければ、今後はプラチナ併用療法を優先的に使う機会は少なくなるのではないだろうか。■参考1)Rizvi NA, et al. Science. 2015;348:124-128.2)AACR 2017 abstract

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ノバルティス、乳がんケアでIBMワトソン・ヘルスと協力

 スイス ノバルティスは2017年6月5日、がん治療を最適化し、患者のアウトカムの改善を目指す構想において、IBMワトソン・ヘルス(IBM Watson Health)と、この分野で初となる協力を発表した。乳がん治療の各選択肢について予測される結果の洞察を深めるため、2社が協力して開発を推進していく。 ノバルティスが持つ乳がんの専門知識と、IBMワトソン・ヘルスのデータ解析・機械学習技術を結びつけることで、患者に最善のアウトカムをもたらすと予測される組み合わせと順番を決定していく。ここでは、おもに患者のリアルワールドデータを利用する予定。 「ワトソン」は、新たなコンピューティングの時代を象徴するコグニティブ・コンピューティングを初めて商用化したもの。クラウドを基盤に提供されるこのシステムは、大規模なデータを分析し、自然言語で投げかけられた複雑な質問を解釈し、エビデンスに基づいた回答を提案する。「ワトソン」は過去のやり取りから継続的に学習し、時間とともに価値と知識を獲得していく。■参考ノバルティス株式会社のプレスリリース

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多形紅斑

【皮膚疾患】多形紅斑◆病状輪っかのような赤い発疹が手、前腕、肘、膝などを中心に、また場合により全身にできる疾患です。若い女性から中年女性に多い疾患です。重症化すると水疱、粘膜の症状、発熱や関節痛などの全身症状がみられます。◆原因単純疱疹、溶連菌、マイコプラズマ肺炎などの感染症に伴って出現することがありますが、原因不明なものもあります。◆治療と予防・ステロイドが基本で、軽症では外用薬、重症では内服や点滴をします。病因が特定できればその治療を行います。・病因解明こそが予防となります。●一言アドバイス薬疹の一型として多形紅斑型を呈することがあり、常に原因として考える必要があります。監修:浅井皮膚科クリニック 院長Copyright © 2017 CareNet,Inc. All rights reserved.浅井 俊弥氏

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昼顔【不倫はなぜ「ある」の?どうすれば?】Part 1

今回のキーワードモラルハザード愛着形成承認欲求信頼関係モラル脳生殖戦略精子競争社会構造みなさんは、誰かの不倫が気になりますか?最近、芸能人や政治家たちへの報道によって、不倫はますます注目されています。なぜ不倫をするのでしょうか?逆に、なぜ不倫をしないのでしょうか?そもそもなぜ不倫は「ある」のでしょうか? だとしたら不倫はして良いのでしょうか?けっきょく、どうすれば良いでしょうか?これらの疑問に答えるため、今回は2014年のドラマ「昼顔」を取り上げます。このドラマの続編は2017年夏に映画として公開されています。不倫とは?主人公の紗和は、夫と平凡に暮らす結婚5年目の主婦。夫とはセックスレスで子どもはいません。一方、最近、紗和の近所に引っ越してきた利佳子は、裕福な夫と2人の娘と何不自由なく暮らしながら、遊び感覚で不倫を楽しむ人妻です。紗和は、利佳子に仕向けられたこともあって、たまたま知り合った近所の高校教師の裕一朗と惹かれ合いながら、やがて本気の恋愛に発展していきます。裕一朗も結婚2年目で子どもはおらず、いわゆる「ダブル不倫」の関係です。紗和、利佳子、裕一朗のように、不倫とは、婚姻関係にあるパートナー以外の人とセックスをすることです。ちなみに、浮気とは、婚姻関係だけでなく恋人関係にあるパートナー以外の人とセックスをすることであり、より広い意味合いになります。また、紗和と裕一朗のように恋愛の要素が強い場合は「婚外恋愛」と呼ばれ、利佳子のようにセックスの要素が強い場合は「婚外セックス」と呼ばれることはありますが、セックスをしているという点では、同じく不倫です。なぜ不倫をするの?なぜ不倫をするのでしょうか? 彼らを通して、その危険因子を環境因子と個体因子に分けて、整理してみましょう。(1)不倫の環境因子不倫の環境因子として、夫婦の片方または両方が離れていることが考えられます。その距離を3つに分けてみましょう。1)物理的に離れている紗和の夫は、残業や出張を理由に、平日の夜や休日に紗和といっしょにいる時間をあまりつくろうとはしていません。裕一朗の妻は、大学の准教授になるほど仕事熱心で、家事は裕一朗に任せて、裕一朗との時間は二の次になっています。また、紗和がパートの仕事をしているのに対して、利佳子は完全な専業主婦で、平日午後3時から5時の間の時間を持て余しており、自由に使えるお金がある程度あります。不倫の環境因子の1つ目は、夫婦の物理的な距離です。言い換えれば、夫婦でいっしょにいる時間をつくるのが難しくなっていたり、怠っている状況です。夫の単身赴任、妻の妊娠中の里帰りなどもそうです。2)心理的に離れている紗和の夫は、紗和よりもペットのハムスターのことばかり気に掛けています。裕一朗の妻は、子作りのタイミングなど自分の考えや気持ちを一方的に伝えるだけで、裕一朗の考えや気持ちを聞こうとはしていません。また、利佳子が紗和に言ったのが「3年も経てば、夫は妻を冷蔵庫同然にしかみなくなる。ドアを開けたらいつでも食べ物が入っていると思っている。壊れたら不便だけど、メンテナンスもしたことがない」というあきらめのセリフです。利佳子と彼女の夫の間にあるのは、信頼関係ではなく、力関係であることが分かります。不倫の環境因子の2つ目は、夫婦の心理的な距離です。言い換えれば、夫婦がお互いを大事にするのを怠っている状況です。結婚という制度は、簡単には離れられないという安心感が得られる一方、それに甘んじて、結婚生活での相手の不満への歩み寄りを怠ってしまうという倫理的な危うさがあります(モラルハザード)。一方的な経済支援をする利佳子の夫はとても傲慢になり、家事を独占する利佳子はとても堕落しています。3)性的に離れている紗和の夫は、子どもがいないにもかかわらず、紗和が望んでいないにもかかわらず、紗和を「ママ」と呼び、自分を「パパ」と呼ばせています。また、紗和は姑から急かされたこともあり、子作りをしようと夫を誘いますが、夫は避けています。夫は、「家族になったんだよ」「愛情がないわけではない」ということを強調して、セックスをしない理由付けをしています。毎晩、夫が紗和と手をつないで寝る儀式からほのめかされるのは、紗和は夫の母親代わりの「ママ」として見られていても、もはや女性としては見られていないようです。不倫の環境因子の3つ目は、夫婦の性的な距離です。言い換えれば、体の温もりや喜びを通して夫婦がお互いを大事にする行為を怠っている状況です。セックスは、単にお互いの性欲を満たすだけでなく、愛情や信頼関係を確かめるための重要なコミュニケーションです。(2)不倫の個体因子不倫の個体因子として、夫婦の片方または両方に満たされないものがあることが考えられます。その不足を3つに分けてみましょう。1)性欲が満たされない利佳子は、出会い系サイトを利用して、不特定多数の男性とセックスを繰り返しています。夫は利佳子に「おれの言うとおりにしてたら間違いない」「おまえはおれの稼ぎで生きている」と言うなど傲慢であり、たとえセックスをしたとしても、利佳子が満たされるセックスにはならなさそうです。不倫の個体因子の1つ目は、性処理の不足です。言い換えれば、夫婦の性欲に極端な差があることです。例えば、夫婦の力関係などによって、夫のセックスが一方的で妻の性欲が満たされない状況です。または、妻がセックスに淡泊で、夫の性欲が満たされない状況です。特に男性は性欲が満たされない場合、風俗店を利用する風俗不倫が多いです。なお、性欲が強すぎる極端な状態で、社会生活に差し障りがある場合は、セックス依存症と呼ばれます。2)愛情欲求が満たされない紗和の夫が紗和と夫婦の距離を縮めようとしないのは、そもそも彼の生い立ちに原因があることがほのめかされています。彼の父親もまたかつて不倫をしていて、彼は、母親が嫉妬で嘆き悲しみ、あきらめているのを見てきたのでした。彼には、夫婦としてお互いを大事にするというモデルがそもそもないのです。どうして良いかわからず、結果的に、夫婦関係を深めることを避けてきたのです(愛着回避)。また、彼は、積極的な女性部下に押されて、紗和と同じく不倫に近い関係に至っています。その女性部下は、「既婚者専門」と言い、言い寄っていくのです。なぜ彼女は「既婚者専門」なのでしょうか? ストーリーの中では明かされていませんが、最初から不倫を望む人の根っこの心理には、他人への不信感と自尊心の低さがあります。つまり、本当は選ばれたいけれど、選ばれないという結果が怖くて(見捨てられ不安)、それを避けるため、最初から選ばれないことを前提にした関係を望んでしまうのです。けれども、やはり選ばれたいという欲求が強くなってしまえば、結果的に相手にのめり込んでしまい、不安定になります(愛着不安定)。不倫の個体因子の2つ目は、安定した愛着形成の不足です。言い換えれば、特別に相手を選び、特別に自分が選ばれることによって、相手を大事にすると同時に自分が大事にされるという信頼関係を深めることがうまくできず、愛情欲求が満たされない状況です。さらに、最近の研究では、愛着形成のしやすさは、生育環境だけでなく、遺伝的傾向もあることが分かってきています(バソプレシン受容体)。性欲と同じように、愛着形成にも個人差があると言えるでしょう。なお、愛着回避型と愛着不安定型が極端な状態で、社会生活に差し障りがある場合は、それぞれ回避型パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害(情緒不安定性パーソナリティ障害)と呼ばれます。3)承認欲求が満たされない利佳子は、「夫が自分を愛していないことを知ってるの」「私のことを見てくれる人がいなきゃ生きてる意味ない」と言っています。彼女は、好き勝手で奔放に見えますが、自分が夫から生身の女性として扱われていないことに寂しさや空しさを感じています。不倫の個体因子の3つ目は、承認の不足です。言い換えれば、夫が女性としての妻に無関心となり、妻は自分の女性としての価値が認められていない、承認欲求が満たされていない状況です。不倫をすることで、その欲求を満たそうとしたり、紛らわそうとしています。なお、この承認欲求が強すぎる極端な状態で、社会生活に差し障りがある場合は、自己愛性パーソナリティ障害と呼ばれます。なぜ不倫をしないの?紗和も裕一朗も、不倫の関係になっていることに葛藤し、強い罪悪感にさいなまれています。利佳子も、夫に対しては必死に不倫を隠し通そうとしています。彼らのように、なぜ不倫をしないようにしようとするのでしょうか? そして、不倫をしてしまったら、なぜ隠すのでしょうか?これまでは、なぜ不倫をするのかという問いへの答えが分かってきました。それでは、逆に、なぜ不倫をしないのでしょうか? そして、なぜ不倫をする人をよく思わないのでしょうか? まとめると、なぜ私たちは一夫一妻制を好むのでしょうか? その答えを、進化生物学的に考えてみましょう。私たちヒトは、近縁の種であるチンパンジーやゴリラとの共通の祖先から数百万年以上前に分かれて、進化しました。チンパンジーは不特定のオスと不特定のメスが生殖を行う乱婚型(多夫多妻型)に、ゴリラは特定の1頭のオスと特定の複数のメスが生殖を行うハーレム型(一夫多妻型)になりました。その違いの起源は生活環境です。チンパンジーはエサが豊富で密集していたのでオスとメスが出会いやすいのに対して、ゴリラはエサが少なく散在していたので出会いにくいことが考えられています。そして、ヒトは、特定のオス(男性)と特定のメス(女性)が生殖(セックス)を行う一夫一妻型になりました。その起源は性別分業です。ヒトは、二足歩行をするようになったことで、手が自由になり、食料を余分に運ぶことができるようになりました。そして、男性が食料を調達し、女性がその見返りにセックスを受け入れ、その男性との子どもを育てるという性別で役割を分業するようになりました。これが家族の始まりです。やがて、家族が血縁によっていくつも集まって100人から150人の大家族の村(生活共同体)をつくるようになりました。これが、社会の始まりです。ここから、家族や社会をつくったヒトの心(脳)の進化の歴史を踏まえて、なぜ不倫をしないのかの問いへの答えを、3つに整理してみましょう。1)夫婦の信頼関係を壊す紗和の不倫騒動で、夫は、けっきょく「何で一番そばにいる人の気持ちが分からないんだろうな」とつぶやき、離婚を決意します。夫は紗和を信頼できなくなっていたのでした。不倫をしない理由の1つ目は、夫婦の信頼関係を壊すからです。言い換えれば、夫婦関係を維持するためには、夫婦がお互いとだけセックスするとお互いに信じている必要があるからです。そうしなければ、例えば夫が不倫して別の女性に食料を渡した分、妻の食料の取り分が減り、妻の生存が危うくなります。一方、妻が不倫して別の男性からのセックスを受け入れた分、夫の子どもができる可能性が減り、夫の生殖が危うくなります。2)子どもとの信頼関係を壊す利佳子が家を出て行ったあと、代わりに家政婦さんが子どもたちのお世話をしています。訪ねてきた紗和に長女は「不倫した人がつくったご飯よりも家政婦さんのご飯の方が100倍おいしい」と叫んでいます。裕一朗の教え子は、ある事件を起こしたきっかけとして「おれ、(不倫の末にいなくなった)母親のことがあるから、大人が薄汚く見えるんだよね」「(捨てられると)生まれちゃった方はいい迷惑なんだよ」と言っています。彼の自尊心は傷付いていました。不倫をしない2つ目の理由は、子どもとの信頼関係を壊すからです。言い換えれば、子育てに責任を持つためには、父親と母親がはっきりしている必要があるからです。そうしなければ、父親が不倫して別の女性に食料を渡した分、子どもの取り分が減り、子どもの生存が危うくなります。また、母親が不倫して別の男性からのセックスを受け入れた分、父親がはっきりしなくなり、食料が確保できる可能性が減り、子どもの生存が危うくなります。結果的に、紗和の夫や夫の同僚女性のように、その子どもが成長して大人になった時に親と同じように他人と安定した信頼関係を築きにくくなる危うさもあります。3)社会との信頼関係を壊す裕一朗の上司である校長は「(不倫は)相手の家族に迷惑がかかる」と心配しています。不倫を知った裕一朗の妻が紗和のパート先に不倫の事実をバラしたことで、紗和は職場に居づらくなり、退職を迫られます。不倫をしない3つ目の理由は、社会との信頼関係を壊すからです。言い換えれば、村の秩序を維持するためには、男性と女性がお互いにセックスする相手を特定している必要があるからです。また、そうするように私たちの心(脳)は進化してきました(モラル脳)。例えば、結婚式という儀式によって、村人たちの前で、夫婦は「永遠の愛」を誓います。自分ではなくても、村の誰かが不倫をしているということを知ったら、とても気になり、好ましくは思いません。そうしなければ、不倫をされた妻の生存が危うくなったり、不倫をされた夫の生殖が危うくなることで、安定した社会の維持が危うくなります。ただし、例外があります。それは、身内やとても親しい友人が不倫をしている場合です。この時、私たちは、逆に、味方になり応援をすることもあります。そのわけは、身内であれば、自分たちの血縁(遺伝子)がより生き残るように動機付けられるからです。また、親しい友人であれば、不倫への懲罰欲(モラル脳)よりも、友情の心理(これもモラル脳の1つ)が上回るからであると言えるでしょう。次のページへ >>

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昼顔【不倫はなぜ「ある」の?どうすれば?】Part 2

なぜ不倫は「ある」の?これまで、なぜ不倫をしないのかという問いへの答えが分かってきました。それは、単に夫婦の信頼関係を壊すだけでなく、子どもとの信頼関係も壊し、社会との信頼関係も壊すからです。それなのに、そもそもなぜ不倫は「ある」のでしょうか? そもそもなぜヒトの生殖は完全な一夫一妻型ではないのでしょうか?その答えは、進化心理学的に考えれば、原始の時代、隠れて不倫をする種の方が、真面目に不倫をしない種よりも、遺伝子をより多く残せるからです。自分の不倫をいかに隠して、相手の不倫をいかに暴くかという目的のために、男性と女性はお互いの気持ちを必死に探り、推し量ったでしょう(メタ認知)。その子孫が、現在の私たちです。矛盾しているようにも思えますが、一夫一妻による生殖と同じくらい、実は不倫による生殖も普遍的であるということです。そして、このような生殖行動は、男性同士が協力して狩りをしたり女性同士が仲良くして子育てをする生存行動と同じくらい、ヒトの心(脳)の進化に大きな影響を与えたでしょう。さらに、自分の遺伝子をなるべく残すための生殖戦略は、男性と女性でそれぞれ違います。その違いとは、男性(精子)はなるべく多くの女性(卵子)を求める一方、女性(卵子)はなるべく優れた男性(精子)を求めることです。なぜなら、精子は小さくコストがかからないのでたくさんつくれるのに対して、卵子は大きくコストがかかるので限られているからです。それでは、この「一夫一妻型+不倫」という生殖戦略の根拠を、男性と女性のそれぞれの体の特徴(形質)や行動特性などから明らかにしてみましょう。(1)男性の生殖戦略1)長くて太くてキノコ状になったペニスでセックスに時間をかける1つ目の根拠は、ヒトの男性は長くて太くてキノコ状になったペニスでセックスに時間をかけることです。これは、メスの膣の中にすでに出された別のオスの精子を掻き出すためです。より確実に掻き出すには、掻き出しの形が長く、太く、キノコ状で、掻き出しに時間をかける必要があります。一方、ハーレム型のゴリラや乱婚型のチンパンジーは、ヒトよりもペニスは短く細く棒状で、交尾に時間をかけません。そのわけは、ゴリラの交尾は相手が完全に特定されているので、そもそも掻き出す必要がないからです。逆に、チンパンジーの交尾は相手が不特定多数で1日に何十回もあるため、掻き出す意味がなくなってしまうからです。つまり、ヒトの精子の寿命が数日であることを考え合わせると、掻き出しが効果的であるためには、1日以上数日以内に1回程度の不倫をしていることが推定できます。もしもヒトが不倫をしないのであれば、ヒトは、ゴリラと同じくらい小さく棒状のペニスを持ち、ゴリラと同じくらいセックスの時間が短いはずです。つまり、ヒトのペニスの形やセックス行動が進化したのは、不倫をしていたためであると考えられます。2)体と睾丸がやや大きい2つ目の根拠は、ゴリラやチンパンジーと比べてヒトの男性の体は女性よりもやや大きく、睾丸もやや大きいことです。ハーレム型のゴリラは、ヒトよりもオスメスの体格差がかなり大きく、睾丸は小さいです。一方、乱婚型のチンパンジーは、ヒトよりも体格差は小さく、睾丸はかなり大きいです。つまり、ゴリラの生殖戦略は体格の大きさであるのに対して(個体競争)、チンパンジーは精子の多さであるということです(精子競争)。そして、ヒトは、ゴリラとチンパンジーの中間であることから、ヒトの生殖が、ゴリラほど相手を特定しているわけではなく、チンパンジーほど相手を特定していないわけでもないということが分かります。もしもヒトが不倫をしないのであれば、つまり完全な一夫一妻であるなら、睾丸の大きさはゴリラと同じくらい小さいはずです。逆に、ヒトが不倫をしすぎているなら、つまり乱婚であるなら、睾丸の大きさはチンパンジーと同じくらい大きいはずです。つまり、ヒトの男性の体格や睾丸の大きさがほどほどに進化したのは、不倫をしていたためであると考えられます。3)久々であるほどより激しく求めてより多く射精する3つ目の根拠は、ヒトの男性は、いつも会うよりも久々に会う女性にほど、よりセックスに時間をかけて、より多く射精することです。そうすることで、自分が不在であった時間に射精された他の男性の精子を、膣からより多く掻き出し、さらに精子の数で上回ります。また、精子には種類があることが分かっています。多くは、他の男性の精子の侵入を邪魔します(ブロッカー精子)。中には、他の男性の精子を尻尾で絡み合わせて動けなくします(キラー精子)。残りのほんの少しが、卵子に向かって膣から子宮を突き進みます(エッグゲッター)。まさに、膣の中では精子たちが1つの卵子にたどり着くための戦争をしていると言えます(精子競争)。さらに、射精した後の精子は膣の中で少し固まってとどまります。これは、より受精がされやすくなる役割があるのと同時に、その後に別の男性の精子を入れにくくしようとする蓋の役割もあることが考えられています(交尾栓)。もしもヒトが不倫をしないのであれば、久々だからと言ってより多くの精子を出す必要はないはずですし、キラー精子やブロッカー精子も存在しないはずです。つまり、ヒトの男性の精子の特徴や精子の数の調整ができるように進化したのは、不倫をしていたためであると考えられます。(2)女性の生殖戦略1)排卵期で男性の好みが変わる1つ目の根拠は、ヒトの女性は、通常は中性的な男性を好むのに、排卵期ではより男性的な男性を好むことです。より男性的な男性とは、テストステロン(男性ホルモン)が多い男性です。ちょうど利佳子が熱を入れた産業画家のように、見た目としては、鋭い目つきで表情は険しく、ひげ面でがっしりとして、野性味が溢れた風貌をしています。中身としては、好戦的で、合理的思考に秀でて、集中力が高く、勝負師として何かすごいことをやり遂げそうな自信に満ちた風格があります。そして、何より精力絶倫であることです。これは、原始の時代に狩猟能力の高い男性のスペックです。一方、中性的な男性とは、テストステロン(男性ホルモン)が少ない男性です。ちょうど紗和の夫のように、優しい眼差しで表情は穏やかで、清潔でしなやかとして、洗練された容貌をしています。中身としては、協調的で、共感性が高く、子どもの面倒見が良い品格があります。決して精力絶倫ではありません。これは、原始の時代に育児能力の高い男性のスペックです。つまり、この好みの変化によって、中性的なマイホームパパとの安定した生活を送って生存の確率を高めつつ、より男性的な不倫相手の子どもを生んで、優秀で多様な遺伝子を残して生殖の確率を高めることができます。もしもヒトが不倫をしないのであれば、排卵期で好みが変わる必要はないはずです。つまり、ヒトの女性の好みが排卵期で変わるように進化したのは、不倫をしていたためであると考えられます。2)30歳代から性欲が高まる2つ目の根拠は、ヒトの女性は、10歳代から20歳代は性欲が抑えられているのに、30歳代から40歳代にかけて性欲が高まることです。そうすることで、若い時には性欲に惑わされずに、より優秀な夫を慎重に選ぶことができます。そして、子どもを2、3人生んだあとの30歳以降、夫の性欲(テストステロン)が徐々に落ちていくのと反比例して妻の性欲(テストステロン)が高まることで、「活きの良い(テストステロンが多い)」若い不倫相手との子どもを生んで、優秀で多様な遺伝子を残して生殖の確率を高めます。なお、夫との子どもがすでに2人以上生まれている場合、夫にとって自分の遺伝子が50%×2人=100%以上残せたことになるので、夫は不倫に寛容になるという考え方があります。また、そもそも子どもがいればいるほど、離婚せずに不倫相手の子どもを引き取る傾向があります。なぜなら、離婚して妻と不倫相手の子どもを追い出して、残された子どもを夫だけで育てることは困難だからです。利佳子は、不倫がばれて一度は家を追い出されますが、夫は2人の娘のために、利佳子に戻るように後に懇願します。この状況を女性は見越しているわけではないですが、結果的に妻の生存の確率も生殖の確率も下げにくくなります。ただし、遺伝子の違う不倫相手の子どもへの夫の虐待のリスクはとても高まるという別の問題はあります。ちなみに、相手の不倫に寛容になる条件として、男性側は子どもが多いことであるのに対して、女性側は年齢が上がることです。裕一朗の妻のように、若さという生殖資源をすでに使ってしまっている状況では、別の男性と今後に再婚するのは難しく、彼女は簡単には裕一朗を手放さないでしょう。もしもヒトが不倫をしないのであれば、女性が30歳以降で性欲が高まる必要はないはずです。つまり、ヒトの女性の性欲が30歳以降に高まるように進化したのは、不倫をしていたためであると考えられます。3)卵管が長い3つ目の根拠は、ヒトの女性の卵管が長いことです。卵管とは、精子と卵子が出会う場所です。卵子は、排卵期に卵巣から出されて、奥側の一方の卵管に入ります。一方、精子は、膣から子宮を通ったあと、手前側のもう一方の卵管に入ります。通常は、そのすぐ先(卵管峡部)で通行止めになりますが、排卵期の時だけこの「関所」が開き、精子は、その先の長い卵管を泳ぎ続け、卵子にたどり着きます。この卵管の「関所」によって、排卵期までの数日間で、夫を含む複数の男性とセックスをしても、その精子たちがいっしょに「関所」の前で待つことになり、卵子までのスタートラインを同じにすることができます。そして、長い「コース」を最も速く進んだ精子が卵子を勝ち取ることができます。つまり、より優れた精子(遺伝子)を得るために、女性生殖器では、よりフェアな条件のもと、精子競争を行わせています。まさに、長い卵管は、優れた精子を選りすぐるための「競技場」であると言えます。もしもヒトが不倫をしないのであれば、卵管が長くなる必要がないという考え方があります(生殖管淘汰)。実際に、メスが複数のオスと交尾する動物では、卵管が長い傾向にあるという報告があります。つまり、ヒトの卵管が長くなるように進化したのは、不倫をしていいたためであるという可能性が考えられます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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昼顔【不倫はなぜ「ある」の?どうすれば?】Part 3

不倫はして良いの?これまで、なぜ不倫は「ある」のかという問いへの答えが分かってきました。それでは、不倫はして良いのでしょうか? バレなければ良いのでしょうか?その答えは、不倫は、価値観や生き方の違いであるため否定はしないですが、そのリスクやダメージを考えると推奨もしない、つまり、しない方が良いということです。ここで誤解がないようにしたいのは、一夫一妻の心理と同じように不倫の心理も進化の産物だからといって、不倫が肯定されるわけでは全くないです。例えば、私たちが甘いものをつい口にしてしまうのは原始の時代に生存のために進化した嗜好です。だからと言って、飽食の現代に甘いものを食べ過ぎて糖尿病になることを私たちは決して良しとはしないでしょう。同じように、原始の時代と違い、現代の社会構造が大きく違うため、不倫は適応的とはならないということです。その社会構造の違いを主に3つあげてみましょう。1)少子化1つ目は、少子化です。合計特殊出生率は、戦後しばらくまで4後半であったのが、2016年には1前半にまで下がり続けています。つまり、かつては子どもが4、5人いるのが当たり前だったのに、現代は1、2人でしかも一人っ子の方が多いという状況です。先ほどにも触れましたが、子どもが数人いる状況で不倫をして1人くらい婚外子がいても、許される傾向にありますが、子どもが少ない状況で不倫をすると、許されない傾向にあり、離婚のリスクが高まります。実際に、2人の子どもがいる利佳子の夫は離婚を回避しましたが、子どもがいない紗和の夫はけっきょく離婚を選択しています。よって、現代は、少子化によって、不倫による離婚リスクがますます上がるため、不倫は適応的とはならないことが分かります。2)情報化2つ目は、情報化です。1990年代以降の情報革命により、お互いの行動が、良くも悪くも、透明化されるようになりました。かつては不倫してバレそうになってもうやむやで済んでいたのに、現代はSNSをチェックしたり、携帯電話の履歴を確認したり、GPSを駆使すれば、証拠が揃い、ほとんどバレてしまいます。実際に、利佳子の夫は、GPSを使って利佳子の不倫の現場を押さえています。さらに、子どもができた場合は、DNA鑑定により、夫の子なのか不倫相手の子なのかはっきりさせることもできます。よって、現代は、情報化によって、不倫の露見リスクがますます上がるため、不倫は適応的とはならないことが分かります。3)パトロール化3つ目は、パトロール化です。不倫は、少子化や情報化によりバレやすく許されにくい状況から、個人だけでなく、社会の厳しい目にさらされるようになりました。有名人の不倫や隠し子(婚外子)にしても、かつては噂や週刊誌の報道があっても個人の問題として緩く扱われていたのに、現代は詳細な証拠がネット上に上がり、個々人のツイッターなどで意見が発信されることで社会の問題として議論され、厳しく取り締まられ、パトロールされるようになりました。実際に、紗和の不倫を知ったパート先の同僚たちは、紗和に冷たい態度を取ります。ちなみに、この世間のパトロール化は、不倫に限らず、いじめ、体罰、パワハラ、DV、虐待など様々なモラルの問題にも広がっています。よって、現代は、パトロール化によって、不倫への排斥リスクがますます上がるため、不倫は適応的とはならないことが分かります。不倫をしないためにどうすれば良いの?先ほどの不倫はして良いのかという問いへの答えは、しない方が良いでした。さらに強調したいのは、原始の社会から環境が大きく変わってしまった現代の文明社会において、甘いものへの嗜好を知ることで糖尿病にならないようにするのと同じように、不倫の心理をよく知ることで不倫に陥らないようにすることができるのではないかということです。利佳子は、まだ不倫をしていない紗和との初対面の時、何となく万引きしてしまった紗和を見抜いて、「ご主人と温かい家庭を築いてらっしゃる?」と皮肉を言い、紗和の満たされない気持ちを言い当てています。つまり、不倫をするには、先ほど整理した不倫の危険因子が潜んでいる可能性があるということです。逆に言えば、不倫の危険因子をよく知り、その対策を練ることで、予防することができるのではないかということです。ここから、不倫をしないためにどうすれば良いかの問いへの答えを、3つにまとめてみましょう。1)ルールの共有1つ目は、ルールを夫婦で共有することです。利佳子は、夫が一方的に決めたルールに完全服従をしていたため、不満がたまっていました。紗和は、夫と表面的なかかわりしか持たず、満たされていません。このように結婚生活での相手への不満を、感情的にネガティブに押さえ込むのではなく、改善点としてポジティブに理性的に言い合い、夫婦のルール作りをすることです。また、家事や育児などで協力や連携をあえてすることです。これは、お互いの仕事にほとんど干渉しない完全分業制ではなく、仕事を時間で分担するシフト制にすることでもあります。もちろん、分担の比率は、共稼ぎであれば半々であったり、夫が正社員で妻がパートの場合は3対7になるなど夫婦の働き方の状況によっても様々でしょう。ポイントは、0対10にしないようにすることです。そうすることで、お互いのやっていることを評価し合うことができます。さらに、ルールを達成したことによるご褒美やルールに反したことによるペナルティを事前に相談して決めることです。ご褒美としては、趣味、スポーツ、旅行などいっしょに楽しむ時間を設けるのも良いでしょう。ペナルティとしては、肩もみなどの奉仕も良いでしょう。そうすることで、物理的であれ心理的であれ、その夫婦の距離を縮めることができます。2)セックスの共有2つ目は、セックスを夫婦で共有することです。セックスが一方的であったり、紗和の夫のようにセックスレスのままであるのではなく、どんなセックスを望むか夫婦でオープンにしていることです。その前段階として、普段からスキンシップやキスなどの愛情表現をまめにしていることも重要です。そして、お互いがセックスで満足するため、そのバリエーションやシチュエーションを変えるのも良いでしょう。場合によっては、妻の排卵期で、夫はより野性味を演出する必要があるかもしれません。そうすることで、夫婦の性的な距離を縮め、お互いの性処理の不足を満たすことができます。3)心の共有3つ目は、心を夫婦で共有することです。利佳子が「3年で冷蔵庫扱い」と表していたように、「愛は4年で終わる」と唱える学者もいます。これは、子どもが4歳になり身体的自立ができる年数であり、進化心理学的には、愛が4年続きさえすれば生殖の適応度を保てたのでしょう。しかし、現代の夫婦関係は、原始の時代のように性欲という「愛」だけでつながっているわけではありません。お互いがお互いを特別な相手として大事にし合い必要とし合う連帯意識でもつながっています。そのわけは、社会が高度に複雑化した現代だからこそ、子どもが心理的自立をする10代まで引き続き子育てを協力してできるように、家族機能を維持する必要があるからです。例えば、それは、いっしょに苦労をして、その苦労をねぎらい、相手の幸せを願うことです。つまり、夫婦関係は、愛情だけでなく「情」でもつながっているということです。そして、大事なことは、夫婦関係とは、性欲による単純なものではなく、「情」が愛情を強化し維持するという複合的なものであるということを理解することです。そうすることで、夫婦の愛情欲求と承認欲求を満たすことができます。「倫(みち)」とは?不倫に陥った紗和、利佳子、裕一朗のそれぞれの夫婦が、もしも先ほどのルールの共有、性の共有、心の共有を行っていたら?おそらく不倫に陥ることはなく、このドラマは成り立たないことになってしまうでしょう。彼らから私たちが学ぶことは、夫婦のより良い信頼関係を築くことです。さらには、親子の、家族の、地域の、そして社会のより良い信頼関係を築くことでもあります。そのためには、相手のことだけでなく、相手の家族、友人、ご近所、職場などより多くの見えない人たちにも思いを馳せることです。その大切さを理解した時、私たちは、決して「不倫」ではなく、より良い「倫(みち)」を、相手といっしょに突き進んでいくことができるのではないでしょうか?<< 前のページへ1)亀山早苗:人はなぜ不倫をするのか、SB新書、20162)ジャレド・ダイアモンド:人間の性はなぜ奇妙に進化したのか、草思社文庫、20133)榎本知郎:性器の進化論、化学同人、2010

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第37回

第37回:潜在性甲状腺機能亢進症はどのような時に治療すべきか?監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム TSH、Free T4を臨床の場や人間ドックで測定することはよくありますが、FreeT4が正常、TSHが基準値より低値を示す場合があり、稀に潜在性甲状腺機能亢進の状態を認める患者と遭遇することがあるかと思います。こういった場合にどのようなリスクを考え、どのような患者に対して治療や専門家への相談を行うべきでしょうか。今回の記事では、潜在性甲状腺機能亢進症に対する米国甲状腺学会の治療方針について紹介したいと思います。 以下、American Family Physician 2017年6月1日号より1) より<潜在性甲状腺機能亢進症とは>潜在性甲状腺機能亢進症はFreeT4とT3値が正常であるが、TSHが低値または検出されない状態と定義される。潜在性甲状腺機能亢進症はTSH値で2つのカテゴリーに分類される。1)TSH値が低値だが検出される(たいていは0.1~0.4mlU/L)2)TSH値が0.1mlU/L以下である潜在性甲状腺機能亢進症は、内因性に過剰に甲状腺ホルモンが作られたり、甲状腺がんを抑制するために甲状腺ホルモンの内服を行っていたり、甲状腺機能低下症の患者に対し過剰に甲状腺ホルモン補充療法を行った結果生じる。内因性の潜在性機能亢進症の最も頻度の高い原因としては、Graves(Basedow)病、中毒性甲状腺結節、中毒性多結節性甲状腺腫(プランマー病)が挙げられる。一時的な甲状腺TSHの抑制の原因としては、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎、産後甲状腺炎が挙げられる。潜在性甲状腺機能亢進症の最も多い原因は、甲状腺ホルモン補充療法によるものである。低TSHが、潜在性甲状腺機能亢進症によるものか、その他の甲状腺の機能亢進と関係しない原因によるものかを病歴などから鑑別する必要があり、その他の原因としては、ドパミンやグルココルチコイドの使用、Sick Euthyroid Syndrome(低T3症候群)、TSH産生下垂体腺腫などが挙げられる。<どのような影響があるのか?>これまでの研究では、潜在性甲状腺機能亢進症と心血管系イベントや骨折のリスクについての関係性が示唆されている。最新の研究では、TSH値が0.1以下の潜在性甲状腺機能亢進症の患者で、とくに高齢者における心血管系イベントや骨折のリスクに対してのエビデンスが明らかとなってきている。<心血管系への影響>平均心拍数の増加、心房細動と心不全のリスク、心左室の腫瘤形成、拡張不全、心拍数の変動性を減少させる。とくに65歳以上の患者において、Euthyroidの患者と比較すると、潜在性甲状腺機能亢進症の患者は心血管系のイベントが多くなる。<骨・ミネラルの代謝への影響>すべての甲状腺機能亢進を来す病態において、骨代謝回転の増加や、骨密度(とくに皮質骨)の減少を認め、骨折のリスクとなることが明らかとなっている。<いつ治療を考慮するべきか?>米国甲状腺学会では、以下のような推奨を出している。治療を行うべき場合TSH値が持続的に0.1mlU/L未満の患者の中で、1)年齢が65歳以上の場合2)65歳未満においては、心疾患・骨粗鬆症の既往や、甲状腺機能亢進による症状を有する場合3)65歳未満、閉経後でエストロゲンやビスホスホネートの内服がない場合治療を考慮すべき場合TSH値が持続的に0.1mlU/L未満の患者の中で、1)TSH値が0.1~0.4mlU/Lである65歳以上の患者2)TSH値が0.1mlU/L未満で無症状の65歳未満の患者3)TSH値が0.1~0.4mlU/Lで無症状だが心疾患の既往がある、または甲状腺機能亢進による症状が存在する65歳未満の患者4)TSH値が0.1~0.4mlU/Lで無症状の閉経後女性で、エストロゲンやビスホスホネートの内服のない65歳未満の患者※本内容にはプライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、 詳細に関しては原著に当たることを推奨いたします。 1) DONANGELO I,et al. Am Fam Physician. 2017;95:710-716

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レゴラフェニブ、肝細胞がん2次治療の適応承認:バイエル薬品

 バイエル薬品株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:ハイケ・プリンツ)は2017年6月26日、抗悪性腫瘍剤レゴラフェニブ(商品名:スチバーガ)が、厚生労働省より「がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞」に対する効能・効果の承認を取得した旨を発表した。本邦において、切除不能な肝細胞がん(HCC)の全身療法として承認を得ている治療選択肢は、ソラフェニブ(商品名:ネクサバール)しかなく、同剤による治療後に病勢進行した場合の2次治療薬は8年もの間、アンメット・メディカル・ニーズとなっていた。 レゴラフェニブのHCCに対する本承認は、ソラフェニブ治療後に病勢進行が認められた切除不能なHCC患者を対象とする国際共同多施設プラセボ対照第Ⅲ相臨床試験RESORCE試験から得られたデータを根拠資料としている。同試験における全生存期間(OS)は、レゴラフェニブ群の10.6ヵ月に対してプラセボ群は7.8ヵ月と、レゴラフェニブ群で統計的に有意に延長したことが示された(HR:0.63、95%CI:0.50~0.79、p<0.0001)。また、安全性と忍容性はレゴラフェニブの既知プロファイルとおおむね一貫しており、被験者において多く見られたGrade3/4の副作用は、高血圧(レゴラフェニブ群15%、プラセボ群5%)、手足症候群(同13%、同1%)、疲労(同9%、同5%)、下痢(同3%、同0%)であった。 バイエル薬品は、2016年10月にHCCに対するレゴラフェニブの製造販売承認事項一部変更承認申請を厚生労働省に行い、2017年1月に同省より優先審査に指定されていた。本邦におけるレゴラフェニブの効能・効果は、「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸」「がん化学療法後に増悪した消化管間質腫瘍(GIST)」に続き、今回のHCCで3つ目のとなる。■参考バイエル薬品株式会社プレスリリース

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双極性障害の入院、5~7月はとくに注意

 イタリア・トリノ大学のAndrea Aguglia氏らは、双極性障害患者における光周期の影響について検討を行った。Revista brasileira de psiquiatria誌オンライン版2017年6月12日号の報告。 イタリアの入院患者に焦点を当て、双極性障害患者を24ヵ月間にわたり追跡調査した。2013年9月~2015年8月までにイタリア・トリノ(オルバッサーノ)のSan Luigi Gonzaga Hospitalの精神科に入院したすべての患者より抽出した。患者背景および臨床データを収集した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は730例であった。・双極性障害患者の入院率に季節的なパターンは認められなかったが、最大日光曝露であった5、6、7月は有意に高かった。・躁病エピソードを有する患者は、うつ病エピソードを有する患者と比較し、春および光周期(の昼の長さ)が長い時に入院が多かった。 著者らは「光周期は、双極性障害の重要な要素であり、環境因子としてだけでなく治療中に考慮すべき臨床パラメータである」としている。■関連記事双極性障害、再入院リスクの低い治療はどれか双極性障害の診断遅延は避けられないのか出生地が双極性障害発症時期に影響

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ADTにアビラテロンの併用で、ホルモン療法未治療の前立腺がんの生存延長/NEJM

 新たに診断されたホルモン療法未治療の転移のある前立腺がん患者において、アンドロゲン除去療法(androgen-deprivation therapy:ADT)に、アンドロゲン合成酵素(CYP17)の選択的阻害薬であるアビラテロン酢酸エステル(アビラテロン[商品名:ザイティガ])とprednisoneを併用することにより、全生存期間(OS)と画像評価による無増悪生存期間(rPFS)が有意に延長することが示された。フランス・パリ第11大学のKarim Fizazi氏らが、34ヵ国235施設で実施された第III相国際共同無作為化二重盲検比較試験「LATITUDE」の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2017年6月4日号掲載の報告。前立腺がん患者をADT+アビラテロン+prednisone群とADT+プラセボ群に割り付け LATITUDE試験の対象は、無作為化前の3ヵ月以内に新たに診断された転移のある前立腺がん患者で、18歳以上、EOCG PS 0~2、ハイリスク(Gleasonスコア8以上、骨病変3つ以上、測定可能な内臓転移のこれら3つのリスク因子のうち2つ以上を有する)の患者1,199例。被験者は、アンドロゲン除去療法+アビラテロン(1,000mg/日[250mg×4錠]、1日1回)+prednisone(5mg/日、1日1回)投与群(アビラテロン群)と、アンドロゲン除去療法+プラセボ投与群(プラセボ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目はOSおよびrPFSの2つで、Cox比例ハザードモデルを用いて解析された。ADT+アビラテロン+prednisone群で前立腺がん患者の死亡リスク38%低下 予定された1回目の中間解析(406例が死亡した後)は、追跡期間中央値30.4ヵ月で行われた。 OS中央値はADT+アビラテロン+prednisone群未達、ADT+プラセボ群34.7ヵ月で、ADT+アビラテロン+prednisone群において有意な延長を認めた(死亡のハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.51~0.76、p<0.001)。rPFS中央値も、ADT+アビラテロン+prednisone群33.0ヵ月、ADT+プラセボ群14.8ヵ月で、ADT+アビラテロン+prednisone群で有意に延長した(病勢進行または死亡のHR:0.47、95%CI:0.39~0.55、p<0.001)。また、疼痛増悪までの期間、次治療開始までの期間、化学療法開始までの期間、前立腺特異抗原(PSA)増悪までの期間(いずれもp<0.001)、症候性骨関連事象までの期間(p=0.009)のすべての副次評価項目についても、ADT+アビラテロン+prednisone群の結果が有意に良好であった。これらの結果から、独立データおよび安全性モニタリング委員会は、試験を非盲検化し、プラセボ群の患者にアビラテロンをクロスオーバー投与することを全会一致で推奨した。 安全性については、Grade 3の高血圧および低カリウム血症の有害事象の発現が、ADT+アビラテロン+prednisone群で多かった。 今回のアンドロゲン除去療法へのアビラテロン併用結果について著者は、「ホルモン療法未治療の転移のある前立腺がんに対する初回全身療法において、アンドロゲン受容体シグナル伝達のより効果的な阻害が、予後の改善につながるという仮説を支持するものであった」と述べている。

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出血か、血栓か:それが問題だ!(解説:後藤 信哉 氏)-690

 アスピリンは抗血小板薬として、心血管イベント後の2次予防に広く用いられている。安全性の高いアスピリンといえども、抗血小板薬なので重篤な出血イベントを惹起する。2次予防の症例であればアスピリンが惹起する出血よりも、アスピリンにより予防される血栓イベントの数が多いとの過去のランダム化比較試験が、2次予防の症例にアスピリンを使用する根拠であった。ランダム化比較試験に参加する症例は若い。世界は高齢化している。ランダム化比較試験ではメリットのほうが多いとされた2次予防の症例であってもアスピリンを長期服用すれば、ランダム化比較試験ではイベントの確認されていない「高齢者」になる。 英国には長期観察臨床データベースが多い。本研究も、一過性脳虚血発作、虚血性脳卒中、急性心筋梗塞後にアスピリンを開始した症例を長期観察している。開始時には、いずれの症例もアスピリンの適応であった。30日、6ヵ月、1年、5年、10年と観察するとイベントが起こる。英国では看護師の機能分化が進んで、臨床研究を主務とする看護師もいる。イベントの観察は医師または看護師によりなされた。 長期に観察すると患者は老いる。年間約3%が出血イベントを起こし、1.5%が重篤な出血イベントを起こした。75歳以上、85歳以上の症例では医療を要する出血、入院を要する出血ともに75歳以下の症例より増加した。高齢者の出血イベントとして消化管出血が多かったので、PPIにより予防できるかもしれない。日本ではアスピリン、PPIともに処方薬であるが、米国ではOTCとしてスーパーで売っている。一過性脳虚血発作、虚血性脳卒中、心筋梗塞などを発症したら、数年はアスピリンの服用に意味がある。服用開始5年、10年後にメリットを得ているのか、副作用のほうが多いのかは、正直わからない。多くのランダム化比較試験は2年程度の観察の結果に過ぎない。患者の高齢化、長期服用中の老化による条件の変化がリスク・ベネフィットに与える影響の定量評価が必要である。 比較的安全なアスピリンにて、開始時には血栓イベントリスクの高い症例であっても長期服用では出血が無視できないことを本研究は示した。アスピリン・クロピドグレルの抗血小板併用療法、抗凝固療法による出血イベントリスクはさらに大きい。抗血栓薬処方時には、その時の患者にとって「出血か、血栓か:それが問題だ!」との意識をもって診療に当たることが必須である。

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不遇上等!【Dr. 中島の 新・徒然草】(176)

百七十六の段 不遇上等!とあるパリの展覧会。展示された絵はセザンヌ、ドガ、モネ、ピサロ、ルノワール、シスレーなど、錚々たるメンバーによるもの。値段をつけるなら、その総額は1000億円をくだらないという大変なものでした。それは1874年の第1回印象派展です。当時、ヨーロッパで最も権威ある展覧会「サロン・ド・パリ」に相手にされなかった若者たちが、「ちっくしょう、それなら自分達で好きに絵を描いて展覧会をしてやるわい!」と作品を持ち寄っておこなったものでした。美術に疎い私でも名前を知っている超一流の画家たちが、その昔は世の中に認められず、貧乏のどん底の中でパリのカフェ・ゲルボアに入り浸ってはくだを巻いていた、というのは面白い話です。彼らの絵もたまに「サロン」に当選するものの、その他大勢扱いもいいところでした。なんとルノワールの作品ですら、ごみために展示されていたそうな。嗚呼!その若者たちが審査も報酬もない自由な展覧会をやろうと思うに至ったのは当然のことで、入場料はたったの1フランだったそうです。しかし、パリのキャプシーヌ大通りの狭い部屋で行われた第1回印象派展は評論家たちに酷評されてしまいました。というのは、彼らの画法は伝統的なそれを全く無視したものだったからです。激しい批判にさらされながらも1886年に至るまで合計8回の展覧会を開催した印象派の、その後の快進撃は誰もが知るところ。そのような歴史や人間模様を知った上で、あらためて印象派の絵を眺めると味わい深いものがあります。たとえ権威に理解されなくても、自分の思う通りの絵を描き続けた若者たちの心意気が伝わってくるからでしょう。それだけでなく、彼らの作品は現代日本のアニメーションにも影響しているような気がします。クロード・モネの「日傘をさす女」を見ると、私が連想するのは最近の映画「君の名は。」の数々のシーンです。また、宮崎駿の「風立ちぬ」にも似た構図をみつけることができます。もし私が150年前のカフェ・ゲルボアに現れて、「モネくん、君の作品は50億円で売れるばかりか、形をかえて未来の異国にも登場するぞ! ルノワールくんの方は160億円だ。ごみために展示した馬鹿を許してやってくれ」と教えてあげたら、さぞかし面白いでしょうね。我々も、置かれた状況は人それぞれではありますが、印象派の若者たちを見習い、自らの信ずる道を突き進みましょう。最後に1句君の名は。 印象派だよ、と モネが言う※ 本文中の第1回印象派展の記述については主に「逆転! 強敵や逆境に勝てる秘密」マルコム・グラッドウェル(講談社)の電子書籍版を参考にしています。

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ペムブロリズマブ、尿路上皮がんの優先審査対象に指定:MSD

 MSD株式会社(本社:東京都千代田区、社長:ヤニー・ウェストハイゼン、以下MSD)は、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の局所進行性または転移性の尿路上皮がんに対する効能・効果について、2017年6月22日に厚生労働省より優先審査に指定されたことを発表。 ペムブロリズマブは、2017年4月28日に局所進行性または転移性の尿路上皮がんに対する効能・効果の製造販売承認事項一部変更承認申請を行っていた。 尿路上皮がんは、尿路上皮から生じる腫瘍の総称であり、膀胱がん、腎盂がん、尿管がんおよび尿道がんを含む。また、尿路上皮がんのうち膀胱がんが大部分を占めている。本邦での膀胱がんの推定総患者数(有病者数)は約6万6,000人、2015年の推定新規患者数(罹患者数)は約2万1,000人であり、罹患率は増加している。■参考MSD株式会社ニュースリリース

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リスペリドンと低力価抗精神病薬の併用、相互作用を検証

 ドイツ・アーヘン工科大学のMichael Paulzen氏らは、リスペリドン(RIS)の代謝に対する低力価抗精神病薬の影響をin vivoで調査した。Progress in neuro-psychopharmacology & biological psychiatry誌2017年6月2日号の報告。 1,584例を対象に、RISおよび代謝産物9-OH-RISの血中濃度を含む、治療薬モニタリングデータベースを分析した。RIS群(842例)およびchlorprothixene併用群(67例)、レボメプロマジン併用群(32例)、melperone併用群(46例)、ピパンペロン併用群(63例)、prothipendyl併用群(24例)を比較した。RIS、9-OH-RIS、活性物(RIS+9-OH-RIS:AM)の血中濃度、用量調節血中濃度(C/D)ならびに代謝比(9-OH-RIS/RIS:MR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・AMとRISにおいて、血中濃度の差異が認められた。・ペアワイズ比較では、RISの血中濃度は単独療法群よりも併用療法群で有意に高かった。・chlorprothixene併用群およびprothipendyl併用群では、ほかと差がないことが確認された。・レボメプロマジン併用群およびmelperone併用群では、AMとRISの血中濃度およびC/Dは高かったが、MRは低かった。・ピパンペロン併用群では、RISのC/D値が高く、MRが低かった。 著者らは「RISの代謝変化は、レボメプロマジンおよびmelperoneの薬物相互作用を示唆している。ピパンペロン併用群では、MRが低く、RISの血中濃度およびC/Dレベルが高いほど潜在的な相互作用が示唆される」としている。■関連記事抗精神病薬の併用療法、有害事象を解析抗精神病薬の副作用、医師にどれだけ伝えられているか:藤田保健衛生大抗精神病薬多剤併用大量療法と関連するペントシジン:順天堂大

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アミロイドβ蛋白が高いと認知機能低下リスクが高い/JAMA

 認知機能が正常でも、アミロイドβ蛋白値が高い人は正常値の人に比べ、認知機能低下リスクが高いことが示された。中央値3.1年の追跡調査の結果、アミロイドβ蛋白値が高い群で、ミニメンタルステート検査(MMSE)など3つの認知機能のスコアについて有意な低下が認められたという。米国・南カリフォルニア大学のMichael C. Donohue氏らが、認知機能の正常な445例を対象に、探索的データ解析を行い明らかにしたもので、JAMA誌2017年6月13日号で発表した。アミロイドβ蛋白値に応じて正常群とアミロイド上昇群に分けて分析 研究グループは2005年8月23日~2016年6月7日にかけて、国際プロジェクト「アルツハイマー病神経画像戦略(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative:ADNI)」に参加する米国およびカナダの83施設で、認知機能が正常な445例についてアミロイドPET検査またはヒト脳脊髄液分析でアミロイドβ蛋白値を測定し、追跡調査を行った。 被験者をベースラインのアミロイドβ蛋白値に応じて、正常群(243例)とアミロイド上昇群(202例)に分け、認知機能低下リスクとの関連を分析した。 主要評価項目は、複合的な認知機能尺度のPreclinical Alzheimer Cognitive Composite(PACC:ベースライン時標準化zスコア計は4、認知機能低下とともにスコアも低下)、ミニメンタルステート検査(MMSE:最低点0~最高点30)、臨床的認知症重症度判定尺度(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes[CDR-SB]:最高0点~最低18点)、ロジカルメモリの遅延再生検査(Logical Memory Delayed Recall[LMDR]:story unit数が最低0~最高25)のスコアだった。 被験者の平均年齢は74.0歳、平均教育年数は16.4年、女性は52%だった。アミロイドβ蛋白値の上昇群でいずれの認知機能スコアも有意に悪化 追跡期間中央値は3.1年(四分位範囲:2.0~4.2年、最長10.3年)。ベースラインの平均PACCスコアは0.00、平均MMSEスコアは29.0、CDR-SBは0.04、LMDRは13.1だった。 アミロイド上昇群は正常群に比べ、4年後の認知能力スコアは低かった。具体的に、アミロイド上昇群と正常群の平均スコア差は、PACCが1.51点(95%信頼区間[CI]:0.94~2.10、p<0.001)、MMSEが0.56点(95%CI:0.32~0.80、p<0.001)、CDR-SBが0.23点(95%CI:0.08~0.38、p=0.002)だった。LMDRスコアについては、両群で有意差はなく、平均スコア差は0.73(95%CI:-0.02~1.48、p=0.056)だった。 結果について著者は、「所見の臨床的重要性が不明である」として、各評価尺度で示された差の臨床的重要性に関する評価と、より長期にわたる関連性を調べる必要があるとまとめている。

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