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ワルファリン使用者、がん罹患率が2割低い

 ノルウェーの50歳以上の大規模コホート研究において、ワルファリンを服用している人はがん罹患率が低いことが報告された。ワルファリンはがんモデルにおいて、AXL受容体チロシンキナーゼによる腫瘍形成を阻害し、抗凝固レベルに達しない用量で抗腫瘍免疫応答を増強するが、本研究で臨床でも抗がん作用を有する可能性が示唆された。著者のノルウェー・ベルゲン大学のGry S. Haaland氏らは「この結果は、抗凝固が必要な患者の薬剤選択に重要な意味を持つだろう」と述べている。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2017年11月6日号に掲載。 この集団ベースのコホート研究は、ノルウェー全国レジストリとノルウェー処方データベース、ノルウェーがんレジストリを組み合わせて行われた。コホートは、2006年1月1日~2012年12月31日にノルウェーに居住していた、1924年1月1日~1954年12月31日に生まれたすべての人々(125万6,725人)から成る。このコホートをワルファリンの使用者と非使用者に分け、ワルファリン使用とがん罹患率の関連を検討した。また、心房細動または心房粗動に対してワルファリンを使用しているサブグループにおいても解析した。データは2004年1月1日~2012年12月31日に収集、2016年10月15日~2017年1月31日に解析した。ワルファリン使用は処方が6ヵ月以上、処方の開始からがんの診断までが2年以上の場合とした。主要アウトカムは、7年の観察期間(2006年1月1日~2012年12月31日)におけるすべてのがんの診断とした。 主な結果は以下のとおり。・125万6,725人のうち、男性が60万7,350人(48.3%)、女性が64万9,375人(51.7%)、がん患者が13万2,687人(10.6%)、ワルファリン使用者が9万2,942人(7.4%)、非使用者が116万3,783(92.6%)であった。・ワルファリン使用者は、平均年齢(SD)が70.2(8.2)歳で非使用者の63.9(8.6)歳より高く、また非使用者では女性が多い(61万3,803 [52.7%])のに比べて、使用者は男性が多かった(5万7,370人 [61.7%])。・ワルファリン使用者では非使用者と比較して、年齢・性別で調整された罹患率比(IRR)が、がん全体(0.84、95%CI:0.82~0.86)および頻度の高いがん種(肺がん:0.80[95%CI:0.75~0.86]、前立腺がん:0.69 [同:0.65~0.72]、乳がん:0.90 [同:0.82~1.00])で有意に低かった。結腸がんでは有意な効果は認められなかった(0.99、95%CI:0.93~1.06)。・心房細動または心房粗動患者のサブグループ解析では、がん全体(0.62、95%CI:0.59~0.65)および高頻度にみられるがん(肺がん:0.39 [95%CI:0.33~0.46、乳がん:0.72 [95%CI:0.59~0.87]、結腸がん:0.71 [95%CI:0.63~0.81]で、調整IRRが有意に低かった。

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機械弁vs.生体弁、弁置換後の長期生存率/NEJM

 僧帽弁置換術においては、70歳未満の患者は機械弁使用群が生体弁使用群に比べ死亡率が低く、一方、大動脈弁置換術では、55歳までは機械弁の有益性が確認できることが、米国・スタンフォード大学のAndrew B. Goldstone氏らによる約2万5,000例対象の後ろ向きコホート研究の結果、示された。大動脈弁/僧帽弁置換術には、機械弁または生体弁のいずれかが使用される。生体弁使用を支持するエビデンスは限られているにもかかわらず、生体弁の使用が増加していた。NEJM誌2017年11月9日号掲載の報告。機械弁と生体弁を大動脈弁置換術約9,900例、僧帽弁置換術約1万5,000例で比較 研究グループは、1996年1月1日~2013年12月31日に、カリフォルニア州の非連邦病院142施設において、機械弁または生体弁を用いた初回大動脈弁/僧帽弁置換術を受けた患者のデータを、逆確率重み付け推定法を用いて解析した。 主要エンドポイントは長期死亡率、副次エンドポイントは脳卒中、出血または再手術の累積発生率などで、年齢により患者を層別化し評価した(大動脈弁置換術:45~54歳および55~64歳、僧帽弁置換術:40~49歳、50~69歳、70~79歳)。解析対象は、大動脈弁置換術を受けた患者が9,942例、僧帽弁置換術が1万5,503例であった。機械弁と生体弁の長期死亡率への影響は大動脈弁置換と僧帽弁置換で異なる 生体弁の使用は、大動脈弁置換術で1996年の11.5%から2013年には51.6%に、僧帽弁置換術では16.8%から53.7%に、どちらも有意に増加していた(いずれもp<0.001)。 大動脈弁置換術の場合、45~54歳の患者では生体弁使用者が機械弁使用者に比べ15年死亡率が有意に高かったが(30.6% vs.26.4%、ハザード比[HR]:1.23、95%信頼区間[CI]:1.02~1.48、p=0.03)、55~64歳の患者では有意な差は確認されなかった(36.1% vs.32.1%、HR:1.04、95%CI:0.91~1.18、p=0.60)。 一方、僧帽弁置換術の場合、15年死亡率は、40~49歳(44.1% vs.27.1%、HR:1.88、95%CI:1.35~2.63、p<0.001)、50~69歳(50.0% vs.45.3%、HR:1.16、95%CI:1.04~1.30、p=0.01)の両年齢層の患者で、生体弁使用者が機械弁使用者よりも有意に高率であった。70~79歳では有意差はなかった(78.3% vs.77.3%、HR:1.00、95%CI:0.93~1.08、p=0.97)。 再手術率は、生体弁使用者が機械弁使用者よりも有意に高率であった。機械弁使用者では生体弁使用者と比較し、累積出血発生率が50~69歳および70~79歳で、累積脳卒中発生率が50~69歳で有意に上昇した。

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悪性黒色腫の術後補助療法、ダブラフェニブ+トラメチニブの第III相試験/NEJM

 BRAF V600E/K遺伝子変異陽性StageIII悪性黒色腫に対する、BRAF阻害薬ダブラフェニブ+MEK阻害薬トラメチニブの併用術後補助療法は、プラセボと比較して再発リスクが有意に低く、新たな毒性もみられなかった。オーストラリア・シドニー大学のGeorgina V. Long氏らが、二重盲検プラセボ対照第III相試験「COMBI-AD試験」の結果を報告した。これまで、COMBI-d試験およびCOMBI-v試験において、ダブラフェニブ+トラメチニブの併用療法は、ダブラフェニブ単剤療法またはベムラフェニブ単剤療法と比較し、BRAF V600E/K遺伝子変異陽性の進行性または転移性悪性黒色腫患者の生存期間を延長することが示されていた。NEJM誌2017年11月9日号掲載の報告。870例で、1年間投与し無再発生存を評価 COMBI-AD試験は、2013年1月~2014年12月に、26ヵ国の169施設において実施された。対象は、外科的完全切除後のBRAF V600E/K遺伝子変異陽性StageIII悪性黒色腫患者870例で、ダブラフェニブ(150mg、1日2回)+トラメチニブ(2mg、1日1回)の併用療法群(438例)と、それぞれのプラセボを投与するプラセボ群(432例)に無作為に割り付けられ、12ヵ月間の投与が行われた。 主要エンドポイントは無再発生存、副次エンドポイントは全生存、無遠隔転移生存、無再発、安全性などであった。有効性は割り付けされた全例(intention-to-treat解析)、安全性は治験薬の投与を1回以上受けた患者を解析対象集団とした。併用療法により悪性黒色腫再発または死亡リスクは53%減少 追跡期間中央値2.8年時点で、3年無再発生存率は併用療法群が58%であったのに対し、プラセボ群は39%であった(再発または死亡のハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.39~0.58、p<0.001)。 3年全生存率は、併用療法群86%、プラセボ群77%であったが(死亡HR:0.57、95%CI:0.42~0.79、p=0.0006)、この差は事前に規定された中間解析における有意差の閾値p=0.000019を超えなかった。無遠隔転移生存率および無再発率も、プラセボ群より併用療法群が高値であった。 ダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法の安全性プロファイルは、転移性悪性黒色腫患者における併用療法で観察されたプロファイルと一致していた。

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白内障の高齢女性、手術施行で死亡リスク低下

 白内障の高齢女性において、白内障手術は全死因死亡および原因別死亡のリスク低下と関連があることが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のVictoria L. Tseng氏らによるWomen's Health Initiative(WHI)の参加者を対象とした検討で明らかにされた。ただし著者は、「この関連が白内障手術によって説明されるかどうかは不明確である」としたうえで、「白内障手術、全身疾患および疾患関連死の相互作用についてのさらなる研究が、患者ケアの改善に役立つだろう」とまとめている。白内障手術はこれまでの研究で、健康状態および機能的な自立の改善を通し、全死因死亡リスクの減少に関与することが示唆されている。しかし、白内障手術と原因別死亡率との関連は十分に解明されていなかった。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年10月26日号掲載の報告。 研究グループは、白内障の高齢女性における白内障手術と原因別死亡率との関連を調べる目的で、メディケア請求データベースと結び付けられたWHIの臨床試験および観察研究(1993年1月1日~2015年12月31日)から得た、65歳以上の白内障女性患者7万4,044例のデータを、2014年7月1日~2017年9月1日に解析した。 白内障手術の有無はメディケア請求コードにより判定した。評価項目は、全死因死亡および、血管疾患、がん、神経疾患、肺疾患、感染症および不測の原因による死亡とした。log-rank検定、ならびに患者背景、全身と眼の合併症、喫煙、飲酒、BMIおよび身体活動で調整したCox比例ハザードモデルを用い、白内障手術あり群となし群で死亡率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象7万4,044例中、白内障手術を受けたのは4万1,735例であった。・7万4,044例の背景は、平均(±SD)年齢70.5±4.6歳で、白人が最も多く(6万4,430例、87.0%)、次いで黒人(5,293例、7.1%)、ヒスパニック(1,723例、2.3%)の順であった。・死亡率は、両群で100人年当たり2.56であった。・共変量補正後のCox比例ハザードモデルにおいて、白内障手術は全死因死亡リスクの低下と関連していた(補正後ハザード比[AHR]:0.40、95%信頼区間[CI]:0.39~0.42)。・同様に、原因別死亡リスクの低下とも関連していた。血管疾患死(AHR:0.42、95%CI:0.39~0.46)、がん死(0.31、0.29~0.34)、不慮の死(0.44、0.33~0.58)、神経疾患死(0.43、0.36~0.53)、肺疾患死(0.63、0.52~0.78)、感染症による死亡(0.44、0.36~0.54)。

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喘息のモノクローナル抗体治療に新星あらわる(解説:倉原優 氏)-764

 tezepelumabという名前を聞いてもピンとこない読者も多いだろうが、これは上皮細胞由来のサイトカインである胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)に特異的なモノクローナル抗体である。TSLPなんてほとんど耳にしたこともなかったので、何を隠そう私もピンとこなかった。 TSLPはアレルギー疾患患者の組織で高頻度に発現することがわかっている1)。もともとインターロイキン-2ファミリーに属するサイトカインで、インターロイキン-7に相同性が高いとされている。その名のとおり胸腺が産生するが、気管の上皮細胞からも産生されている。TSLPはアレルギーに限らず、外的因子、たとえば喫煙やディーゼルエンジンなどの刺激によっても誘導されることがわかっており、好酸球性炎症以外の喘息の治療ターゲットになる可能性が示されてきた2,3)。 喘息に対して保険適用があるモノクローナル抗体には、現在オマリズマブ(商品名:ゾレア)とメポリズマブ(商品名:ヌーカラ)の2つがある。それぞれ、IgE、インターロイキン-5をターゲットにしている。いずれも好酸球性炎症のカスケードを抑制するため、喘息に有効とされている。 臨床試験上の規定がそのまま製品化時に反映されたため、オマリズマブとメポリズマブは、それぞれIgE値、好酸球数に応じて使用される。たいがいの喘息患者はIgEも好酸球数もそれなりに上昇しているので、両剤とも適応になることが多いのだが、やはりバイオマーカーが上昇していないと効果が期待しにくいというイメージがあると、処方の閾値が上がるのも事実である。 tezepelumabはこれまでのモノクローナル抗体と同様に、難治性の喘息に対して使用されることを想定しているが、今回の試験において患者の登録時の血中好酸球数を問わず同様の結果が得られたという点は特筆すべきであろう。 さて、実臨床でtezepelumabを使うようになるだろうか。2つの懸念がある。1つは、妥当なhead to head試験がないため、各モノクローナル抗体の比較が難しい点である。各製剤とも有効性の証明にしのぎを削っているものの、ステップ4の難治性喘息に対してプラセボより有効だったという知見の蓄積だけでは力不足かもしれない。そしてもう1つの懸念は、ご存じのとおり、薬価である。これは抗体医薬品の宿命であろう。高額療養費制度を使ってまで喘息治療をよりよくしたいと思う人が、国内にどれほど眠っているだろうか。また、公衆衛生的に費用対効果がどれほどあるだろうか。医療のアンメットニーズがマーケットニーズとマッチするかどうかはまだわからない。

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愚痴をこぼす前に【Dr. 中島の 新・徒然草】(196)

百九十六の段 愚痴をこぼす前に遠い昔の医学生時代。遅れて入った教室では麻酔科の授業が行われていました。ふと黒板を見ると、英語が4行。knows everything, does nothingknows nothing, does everythingknows nothing, does nothingknows everything, does everything意味は順に、「何でも知っているが、何もしない」「何にも知らないが、何でもやる」「何にも知らないし、何もしない」そして「何でも知っているし、何でもやる」ということになります。よく見ると、その横に「精神科医、内科医、麻酔科医、外科医」という言葉も書いてありました。つまり、4つの特徴と4つの診療科を結びつけよ、というクイズのようです。さて、授業の内容は産科麻酔に関するもので、講師の話は非常にシャープでした。学生たちはノートをとるのに精一杯です。テンポの良い授業を終えるとともに講師は言いました。講師「では解答を申し上げます。"knows everything, does nothing" は内科医です。何でも知ってるけど、何もしてくれません」学生一同「な~るほど」講師「次に "knows nothing, does everything" は外科医。何でもやっちゃうんだよな、あの人達は」学生一同「あっはっは!」講師「そして "knows nothing, does nothing" は精神科医」学生一同「あらま」講師「最後に "knows everything, does everything" は麻酔科医です。医師としての知識と技術を身につけたい方は、ぜひ麻酔科に来てください」学生一同「おおーっ!」歯切れの良い講義の後の鮮やかなクロージング。「麻酔科に行くしかない!」と思った私は本当に卒後1年目に麻酔科に行き、実りある研修をさせていただきました。さて、何で急にこんなことを思い出したのか? 当院では初期研修医を採用するときのマッチング試験は、医学問題、英語、面接、小論文と、いささか重装備です。公明正大にやろうと思うと、どうしても色々増えてしまいます。ところが、外科系の先生方にはずいぶん不評なのです。そのせいだと思いますが、マッチング試験責任者の先生が「この前、外科の〇〇先生に愚痴をこぼされました。私が担当していることを知らないみたいで」と仰っていました。以下、そのやりとりです。外科医「なんでウチは医学問題とか英語とかやっているんでしょうかね」責任者「マッチング試験のことでしょうか?」外科医「ええ、そんなことしたら外科志望の連中は皆落ちてしまって、内科志望者ばかり上位に来てしまいますよ」責任者「そんな事ないでしょう」外科医「本当ですよ! もっとね、頭を使わなくても受かる試験にしてもらわないと外科志望者が誰も来なくなってしまいます。先生もそう思いませんか?」責任者「はあ・・・(どう返事していいのやら)」いやいやいや、外科医もちゃんと頭を使っていますよ。でも、相手の立場を確かめる用心深さというのは人によってさまざまなんでしょうね。最後に1句愚痴こぼす 前に相手を まず確認

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日本人の飲酒量とインスリン分泌不全/抵抗性の発症率が相関

 日本人において、飲酒量がインスリン分泌不全およびインスリン抵抗性の発症率と相関することが、佐久研究における帝京大学の辰巳友佳子氏らの検討により示された。Diabetes research and clinical practiceオンライン版2017年10月27日号に掲載。 本研究は5年間のコホート研究で、佐久中央病院で2008年4月~2009年3月に75gOGTTを含む健康診断を受けた、2型糖尿病またはインスリン分泌不全またはインスリン抵抗性ではない30~74歳の日本人2,100人が参加した。参加者を週当たりの飲酒量によって、非飲酒者(0g)、軽度飲酒者(男性:1~139g、女性:1~69g)、中程度飲酒者(男性:140~274g、女性:70~139g)、多量飲酒者(男性:275g以上、女性:140g以上)に分けた。2014年3月末までのフォローアップ健康診断時にOGTTにより見つかったインスリン分泌不全(insulinogenic index:51.7以下)およびインスリン抵抗性(HOMA-IR:2.5以下)の発症率について、非飲酒者に対する軽度~多量飲酒者でのハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を多変量調整Cox比例ハザードモデルで推計した。 *アルコール量20gの目安:ビール(5%)500mL、ワイン(14%)180mL 主な結果は以下のとおり。・インスリン分泌不全は708例、インスリン抵抗性は191例であった。・インスリン分泌不全のHR(95%CI)は、軽度、中程度、多量飲酒者の順に、1.16(0.96~1.40)、1.35(1.07~1.70)、1.64(1.24~2.16)であった(傾向のp<0.001のP)。・インスリン抵抗性のHR(95%CI)は、順に1.22(0.84~1.76)、1.42(0.91~2.22)、1.59(0.96~2.65)であった(傾向のp=0.044)。

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進行ROS1肺がんの脳転移に対するクリゾチニブの有効性/WCLC2017

 非小細胞肺がん(NSCLC)の1%にみられるROS1融合遺伝子陽性肺がんではとくに、脳転移が多くみられる。ROS1肺がんではクリゾチニブが治療適応となるが、脳転移への効果は明らかになっていない。ROS1肺がんにおける脳転移の状況と共に、ROS1肺がん脳転移に対するクリゾチニブの効果を評価した後ろ向き試験について、中国・Shanghai Lung Cancer CenterのShun Lu氏が発表した。 2014年4月~2016年10月の53例のROS1患者のうち13例(24.5%)がクリゾチニブ投与前に脳転移があった。27例がPDとなったが、そのうち12例(44.4%)に脳転移が発症した。 脳転移のある患者の無増悪生存期間(PFS)は11.0ヵ月、脳転移のない患者では20.4ヵ月であった(p=0.03)。全生存期間(OS)は、脳転移のある患者では16.5ヵ月、脳転移のない患者では未達成であった(p=0.27)。 ベースライン時に脳転移のあった患者全体の脳内ORRは84.6%、脳転移の前治療を行った患者では100%、行わなかった患者では71.4%であった。脳内PFSは、脳転移の前治療を行った患者では12.5ヵ月、行わなかった患者では11.0ヵ月で、脳転移の前治療の有無とは関連がなかった。 クリゾチニブ投与前の脳転移の有無は、クリゾチニブ治療後のPFSおよびOSに大きな影響を与えた。ROS1肺がんの脳転移に対しクリゾチニブは臨床ベネフィットを与えた。

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アレクチニブ耐性の日本人進行NSCLCへのセリチニブの有効性は(ASCEND-9)/日本肺学会

 ALK遺伝子転座陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する一次治療として、アレクチニブが本邦で推奨されているが、多くの患者で耐性獲得とともに、再び進行する。第58回日本肺学会学術集会で、国立がん研究センター中央病院の堀之内 秀仁氏が、アレクチニブ治療歴のあるALK陽性NSCLC患者における第2世代ALK-TKIセリチニブの第II相非盲検単群試験、ASCEND-9の結果について発表した。 対象は、アレクチニブ治療歴(±クリゾチニブおよび/または1レジメンの化学療法歴)があり、全身状態が良好(WHO PS 0~1)なALK陽性の局所進行・転移性NSCLC患者で、日本国内の9施設から20例が組み入れられた。28日間を1サイクルとして、セリチニブ(750mg/日)が、増悪または許容できない有害事象が発現するまで投与された。主要評価項目は、RECIST v1.1による奏効率(ORR)で、副次評価項目は、疾患制御率(DCR)、奏効までの期間(TTR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性などであった。 患者背景については、被験者の多くがStageIV (19例) で、StageIIIBが1例であった。12例で脳転移がみられた。前治療歴については、4例がクリゾチニブによる治療を受けており、14例が2レジメン以上の治療を受けていた。また、アレクチニブで完全奏効(CR)が得られていたのが3例、部分奏効(PR)が得られていたのが14例であった。 試験の結果、5例の患者で奏功が確認され(CRが1例、PRが4例)、ORRは25%(95%信頼区間[CI]:8.7~49.1)であった。DCRは70%(95%CI:45.7~88.1)、DORおよびTTRの中央値はそれぞれ6.3ヵ月(95%CI:3.5~9.2)、1.8ヵ月(1.8~2.0)。PFS中央値は、3.7ヵ月(95%CI:1.9~5.3)だった。 有害事象(AE)については、すべての患者でGrade1以上のAEが発現した。重篤な有害事象(SAE)は10例(50%)で発現した。AE発現のために投薬を中止したのが3例(15%;貧血、急性腎障害、および胸水)で、投薬中断が必要となったのは18例(90%;ALT増加、下痢、血中クレアチニン上昇など)であった。多くみられたAEは下痢(17 例[85%])、悪心(16例 [80%])および嘔吐(13 例[65%])であった。■参考NCT 02450903(Clinical Trials.gov)■関連記事セリチニブ、ALK陽性肺がん1次治療に国内適応拡大ALK阻害剤のコンパニオン診断薬発売/ロシュ・ダイアグノスティックス

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ADHDドライバー、トレーニングで危機感知能を改善できるか

 ADHDを有する若者のドライバーは、同世代の人よりも交通事故傷害リスクが高い。このリスク増加は、危機感知能が低いことと相関する。これまで、ADHDを有する若者のドライバーを対象に、コンピュータ技術を用いた危険感知訓練について調査した研究はほとんどなかった。オーストラリア・School of Allied HealthのC.R. Bruce氏らは、ドライブスマートトレーニングを受けたADHDを有する若者のドライバーの、危機感知能における群間および対象者内の変化の有無や重要性を確認し、訓練により改善した危機感知能の変化が、時間が経過しても維持されるかを調査した。Accident; analysis and prevention誌オンライン版2017年10月14日号の報告。 本研究は、実行可能性調査として実施されたオーストラリアの無作為化比較試験である。コントロール群として、遅延治療群が含まれた。ADHDと診断されたドライバー25例を対象に、即時介入群またはコントロール群に無作為化した。即時介入群は、ドライブスマートというコンピュータアプリケーションを用いて、トレーニングを行った。コントロール群は、ドキュメンタリービデオを視聴し(コントロール状態)、その後ドライブスマートトレーニングを実施した。対象者の危機感知能は、Hazard Perception Test(HPT)を用いて測定した。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインスコアを調整したのち、介入後のHPT変化スコアは、群間で有意な差が認められ、即時介入群が支持された。・効果の重要性は、大きかった。・コントロール群内の介入効果は有意ではなかった。・即時介入群における6週間のフォローアップにおいて、有意な維持効果が認められた。 著者らは「ADHDドライバーに対するドライブスマートトレーニングは、危機感知能を大幅に改善し、一定期間持続する。トレーニングに対する多様的なアプローチは、維持を容易にすることが示された。本研究より、本格的な試験が実施可能である」としている。■関連記事ADHD発症しやすい家庭の傾向認知症ドライバーの運転停止を促すためにはてんかんドライバーの事故率は本当に高いのか

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ER陽性乳がん、5年内分泌療法後の再発のリスクは?/NEJM

 エストロゲン受容体(ER)陽性で5年間の内分泌療法を実施後に無病状態にあった女性患者の、5~20年の乳がん再発は、期間を通して一定の割合の発生であったことが明らかにされた。また、遠隔再発リスクは、当初の腫瘍径とリンパ節転移の状態(TN分類)と強く関連しており、10~41%の範囲にわたっていた。英国・オックスフォード大学のHongchao Pan氏らが、88試験(被験者総数6万人超)のデータに基づき行ったメタ解析の結果で、NEJM誌2017年11月9日号で発表した。これまでの検討で、ER陽性早期乳がん女性患者は5年間の内分泌療法によって、治療中および治療後の再発率が大きく低下することが示されていた。治療期間を5年以上延長すると、再発率はさらに低下するが副作用の発現も増大する。研究グループは、5年間で中断した場合のその後の遠隔再発の絶対リスクのデータを入手することは、治療を延長すべきかどうかの判断に寄与する可能性があるとして検討を行った。TN分類、腫瘍悪性度などと5~20年アウトカムの関連を分析 研究グループは、ER陽性の乳がん患者で、予定した5年間の内分泌療法を実施後、無病状態にあった6万2,923例を被験者とする88試験の結果を基にメタ解析を行った。 試験と治療による層別化を行い、Kaplan-Meier法とCox回帰分析を用いて、TN分類、腫瘍悪性度、その他の因子と、5~20年のアウトカムについての関連を分析した。腫瘍悪性度とKi-67値も中等度の予測因子として有用か 追跡した5~20年間を通して、乳がん再発は一定の割合で発生し、遠隔再発リスクは当初のTN分類と強い関連が認められた。 具体的には、T1の患者で、リンパ節転移がないT1N0の患者では、遠隔再発リスクは13%、リンパ節転移が1~3のT1N1~3の同リスクは20%、リンパ節転移が4~9のT1N4~9では34%だった。同様にT2の患者でも、T2N0患者の同リスクは19%、T2N1~3で26%、T2N4~9で41%だった。 乳がん死亡リスクも、TN分類に依存していたが、対側乳がんリスクとは関連がみられなかった。 同じTN分類では、互いに強い関連のある腫瘍悪性度(4万3,590例で確認)とKi-67値(7,962例で確認)が、遠隔再発リスクに関する中等度の独立予測因子だった。一方で、プロゲステロン受容体(5万4,115例で確認)とヒト上皮成長因子受容体2(HER2)(トラスツズマブ非使用試験の1万5,418例で確認)は、いずれも予測因子とは認められなかった。 遠隔再発絶対リスクについて乳がんの重症度別にみてみると、T1N0乳がん患者の5~20年の遠隔再発リスクは、低悪性度乳がんで10%、中悪性度乳がんは13%、高悪性度乳がんでは17%だった。また、全再発または対側乳がんの絶対リスクはそれぞれ17%、22%、26%だった。 なお研究グループは、「今回の試験の主な目的として、遠隔再発リスクが低く、5年超の内分泌療法の有益性が低いと考えられるサブグループを特定することがあった。しかしながら、T1N0乳がんの患者でも遠隔再発リスクが13%であった。確かなエビデンスは得られていないが、そのような低リスクの患者についても5年超の内分泌療法により遠隔再発リスクは数%低下する可能性が考えられた」と考察している。

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PCIで運動時間が改善するか?プラセボとのDBT/Lancet

 至適薬物治療を行った重度一枝狭窄の安定狭心症患者に対し、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を実施しても、運動時間の改善は認められないことが、無作為化プラセボ対照二重盲検試験で初めて明らかになった。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのRasha Al-Lamee氏らが、患者200例を対象に行った「ORBITA」試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年11月2日号で発表した。重度一枝狭窄の患者に6週間の至適薬物治療 研究グループは、70%以上の重度一枝狭窄が認められる安定狭心症で、虚血症状のある患者を対象に試験を行った。まず全登録被験者(230例)に対し、6週間の至適薬物治療を行った(2014年1月6日~2017年8月11日)。その後、心肺運動負荷試験、症状に関する質問票による評価、ドブタミン負荷心エコー法を実施し、無作為に被験者200例を2群に分け、一方にはPCIを(105例)、もう一方にはプラセボ手術を行った(95例)。 術後6週間後に、無作為化前に行った方法で再度評価を行った。主要エンドポイントは、運動時間増加量の群間差で、無作為化を受けた全被験者について解析を行った。PCI群で運動時間に改善みられず 被験者200例の、狭窄部位の平均狭窄率は84.4%(SD 10.2)、平均冠血流予備量比(FFR)は0.69(同0.16)、平均瞬時血流予備量比は0.76(同0.22)だった。 術後6週間の運動時間増加量について、両群で有意差は認められなかった(PCI群-プラセボ手術群:16.6秒、95%信頼区間:-8.9~42.0、p=0.200)。 試験期間中に死亡した被験者はいなかった。また、重篤な有害イベントとして、PCIを要したプレッシャワイヤ関連合併症(プラセボ手術群で4件)、大量出血5件(PCI群2件、プラセボ手術群3件)の発生が報告された。 なお今回の試験について著者は、「薬物療法でスタンダードになっているように、侵襲手技の有効性についてもプラセボ対照の評価は可能である」と述べている。

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アリピプラゾール増強が有効な治療抵抗性うつ病患者の3つの特徴

 高齢者の治療抵抗性うつ病に対するアリピプラゾール増強療法によって寛解が得られる特定の抑うつ症状を明らかにするため、米国・ピッツバーグ大学のMarie Anne Gebara氏らが検討を行った。International journal of geriatric psychiatry誌オンライン版2017年10月3日号の報告。 本研究は、高齢者の治療抵抗性うつ病に対するアリピプラゾール増強療法の安全性および有効性を評価した試験のデータに基づいた二次解析である。60歳以上の高齢者を対象に、アリピプラゾール増強療法群(91例)またはプラセボ群(90例)に無作為に割り付けた。主要アウトカムは、うつ病の寛解とした。臨床予測因子は、症候性(スコア2超)または非症候性(スコア2以下)に分類される各MADRS項目のスコアとした。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾール増強療法によるうつ病寛解を予測したMADRS項目は、睡眠障害の症候性スコアおよび外見に表出される悲しみ(apparent sadness)、感情を持てないこと(inability to feel)の非症候性スコアの3つであった。・これらMADRS項目の2wayおよび3wayの相互の影響は、寛解の重要な予測因子ではなかった。従って、モデルの寛解を予測する能力は、有意なMADRS項目を組み合わせることにより改善されなかった。 著者らは「臨床的に評価可能な特定の抑うつ症状を確認することは、治療決定するうえで利用可能である。睡眠障害、外見に表出される悲しみや感情を持てないことの欠如を有する治療抵抗性うつ病高齢者には、アリピプラゾール増強療法を考慮すべきである」としている。■関連記事治療抵抗性うつ病、抗うつ薬併用vs.抗精神病薬増強SSRI治療抵抗性うつ病への効果的な増強療法たった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能

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20歳からの体重減少、認知症リスク高い?~日本人コホート

 わが国で認知症発症に影響を及ぼしうる因子を特定するための研究は、これまでほとんど行われていない。そこで、新潟大学の北村香織氏らが、日本人の中高年期の体格や生活習慣が認知機能障害と関連するかどうかを検討した。PLoS One誌2017年10月12日号に掲載。 本研究では、2011年から新潟県の県北地区で実施されている村上コホート研究の参加者のうち、2013年までに実施されたベースライン調査に参加した44~79歳の地域住民1,814例を対象に、認知機能を評価した。評価には、Mini-Mental State Examination(MMSE)を使用し、アウトカムの尺度は認知機能障害で、MMSEスコア24未満と定義した。予測変数は、BMI、20歳からの長期的な体重変化および調査時のアンケートで得られた喫煙、飲酒、身体活動レベルなどの生活習慣因子で、共変量は、性別、年齢、教育レベル、脳卒中歴、糖尿病歴とした。多重ロジスティック回帰分析により、調整オッズ比(OR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・全体における認知症有病率は6.2%であった。・参加者を体重増減の度合いにより五分位で分けて検討したところ、最も減少した第1五分位(4kgを超える減少、OR:2.70、95%信頼区間[CI]:1.18~6.20)と第2五分位(-4~0kg、OR:2.37、95%CI:1.04~5.37)は、基準とした第4五分位(+4~+7kg)と比べ、認知機能障害の調整オッズ比が有意に高かった。・第5五分位(8kg以上の増加)の調整オッズ比は、2.24であった(95%CI:0.99~5.04)。・現在のBMIは、認知機能障害と関連していなかった。 本研究で、長期的な体重減少が中高年期の認知機能障害と関連していることがわかった。ただし、本研究は後ろ向きであるため、関連をさらに調べるために前向き研究も実施されるべきと筆者らは述べている。

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「血友病周産期管理指針」の意義と狙い

 2017年11月2日、バイオベラティブ・ジャパン株式会社は、希少血液疾患の啓発事業の一環として、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、血友病に関連する周産期管理について、その背景と指針作成の目的などが語られた。血友病保因者妊婦の出産は、母体と新生児にリスク セミナーでは、講師に瀧 正志氏(聖マリアンナ医科大学 小児科学 特任教授)を迎え、「血友病周産期管理の重要性~血友病保因者妊婦・血友病新生児の出血回避に向けての取り組み~」をテーマにレクチャーが行われた。 一般的に新生児の頭蓋内出血は0.05%、血友病の頭部出血(頭蓋内外)は3.5~5.5%とされ、血友病および同保因者の母親からの出産では、リスクが高いことが知られている。 実際、瀧氏が自院で早期新生児の出血に関する検討を行ったところ、93例の血友病患者のうち13例で分娩に関連した出血があったという。その特徴として、全例が経腟分娩で、7例に吸引・鉗子分娩がなされていた。また、9例で赤血球輸血を行い、2例で重篤な神経学的後遺症を認め、1例で緊急硬膜下血種除去を行ったという1)。別の研究で血友病保因者である母体の状況をみてみると、凝固因子活性が非保因者(1.02 IU/mL)と比較して0.60 IU/mLと低く、手術後の相対危険度は保因者では高いとされる2)。 こうした状況を踏まえ、母体であるホモ接合体血友病の妊婦および保因者妊婦と、血友病新生児および保因者新生児の出血をできるだけ回避し、出血症状を伴う場合は早期に適切な治療を図る目的で、「ホモ接合体血友病妊婦および保因者妊婦の管理指針」と「血友病新生児および保因者新生児の管理指針」の2つからなる『エキスパートの意見に基づく血友病周産期管理指針 2017年版』が作成された。血友病患者、保因者の周産期における注意点を網羅 「ホモ接合体血友病妊婦および保因者妊婦の管理指針」では、主にヘテロ接合体保因者に関して記述され(ホモ接合体血友病は女性にまれ)、妊娠管理では産科、本症に詳しい内科医、小児科医、麻酔科医が連携し、集学的医療チームとしてケアに当たるべきであるとしている。また、妊娠中の予防的補充療法では、血友病Aは定期的な活性値測定のほか、必要により第VIII因子製剤の補充療法を行うこと、血友病Bでは第IX因子活性値の有意な上昇がみられない一部の保因者には第IX因子製剤の補充療法が必要だとされている。そのほか、妊娠中の血中モニタリング、分娩計画の立案(必要により紹介・移送)が必要とされ、分娩方法では経腟分娩の場合はできる限り自然分娩としながらも、胎児に血友病または保因者である可能性が排除できない場合は、吸引、鉗子、遷延分娩は避けることが望ましいとしている。帝王切開分娩への切り替えは、早期に判断する。とくに瀧氏は、私見としながら「予定帝王切開分娩」について言及し、「麻酔、出血量など母体への負担は増加するものの、血友病児の頭蓋内出血リスクの減少、止血管理の容易性、分娩スタッフのスケジュール対応の面からも考慮すべきだ」と示唆した。 分娩・産褥期の至適血中レベルについては、経腟分娩で血中第VIII因子、第IX因子活性値ともに50%以上維持(帝王切開では80%以上)が示され、この値を下回る場合は予防的補充療法の施行が記述されている。妊娠中のデスモプレシンの使用では、妊娠高血圧症候群合併例への使用は避けるべきとし、使用する場合は水分や電解質管理を慎重に行う必要があるとしている。血友病および保因者新生児のフォローを網羅 「血友病新生児および保因者新生児の管理指針」では、出生前の一般的な取り扱いとして、母体および新生児に出血リスクが増すような手技を最小限にするよう呼び掛けている。 新生児の血友病診断では、出生後に臍帯血を用い速やかに診断を行うとともに、第VIII因子、第IX因子の活性値を測定する。また、孤発例の見逃しを避けるために、疑いのある新生児のAPTTの測定、延長時には第VIII因子、第IX因子の活性値の測定も行うとしている。 血友病新生児の止血管理では、製剤投与中の凝固因子活性のモニタリングとインヒビター出現の有無の確認および、確定診断後に欠損または欠乏している凝固因子の製剤投与への切り替えが示されている。そして、出生後に脳内出血を臨床的に強く疑う場合は凝固因子製剤をただちに投与し、確定診断のために頭部超音波検査、脳MRIやCT検査を行う。 凝固因子製剤の予防投与は、自然分娩や帝王切開分娩では一般的に行わない。しかし、分娩外傷、吸引、鉗子分娩などのリスクの高い分娩では、診断後に短期間の予防投与を考慮し、早産児にも状況に応じて行うとしている。 血友病患児への予防接種については、原則として筋肉注射は避けるべきとし、ルーチンの予防接種の皮下注射は禁忌事項がない限り行うことが望ましいとしている。 最後に瀧氏は、本指針の目的を「血友病、血友病保因者の妊婦・新生児の出血をできる限り回避し、出血症状を伴う場合には早期に適切な止血治療を図ることにある」と繰り返すとともに、「血友病保因者は『ハイリスク妊婦である』という認識を医療従事者は共有し、周産期管理を行ってもらいたい」と期待を述べ、レクチャーを終えた。■参考1)長江千愛 ほか. 日産婦新生児血液. 2017;26:61-69.2)Plug I, et al. Blood. 2006;108:52-56.■関連記事希少疾病ライブラリ 血友病

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思春期1型糖尿病に、ACE阻害薬やスタチンは有用か/NEJM

 ACE阻害薬およびスタチンは、思春期1型糖尿病患者のアルブミン/クレアチニン比(ACR)の経時的な変化に影響を及ぼさないことが、英国・ケンブリッジ大学のM Loredana Marcovecchio氏らが行ったAdDIT試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年11月2日号に掲載された。青少年期の1型糖尿病患者では、腎疾患や心血管疾患の長期的なリスク因子である微量アルブミン尿や顕性アルブミン尿の発現に先立って、思春期のアルブミン排泄量の急速な増加がみられる。成人1型糖尿病患者では、ACE阻害薬およびスタチンが頻用されているが、思春期患者での評価は十分でないという。ACR上位3分の1の患者を2×2要因デザイン試験で評価 研究グループは、アルブミン排泄量の多い思春期1型糖尿病患者は、ACE阻害薬およびスタチンによりベネフィットが得られるとの仮説を立て、これを検証するために2×2要因デザインによる二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った(国際若年性糖尿病研究財団[JDRF]などの助成による)。 10~16歳の思春期1型糖尿病患者4,407例をスクリーニングの対象とし、ACRが上位3分の1の1,287例を同定した。このうち443例が、4つのレジメン(ACE阻害薬+プラセボ[111例]、スタチン+プラセボ[112例]、ACE阻害薬+スタチン[111例]、プラセボ+プラセボ[109例])の1つに無作為に割り付けられ、年齢、性別、糖尿病罹病期間などのベースラインの患者背景の差が最小となるよう調整が行われた。 2つの介入の主要評価項目はアルブミン排泄量の変化とし、2~4年間、6ヵ月ごとの受診時に早朝尿検体を3回採取してACRを算出し、曲線下面積(AUC)で表した。 主な副次評価項目は、微量アルブミン尿の発現、網膜症の進行、糸球体濾過量の変化、脂質値、心血管リスクの指標(頸動脈内膜中膜厚、高感度C反応性蛋白値、非対称性ジメチルアルギニン値)などであった。主要評価項目を達成できず 2009年5月~2013年8月の期間に、3ヵ国(英国、カナダ、オーストラリア)の32施設で患者登録が行われた。フォローアップ期間中央値は2.6年だった。 ACRのAUCに及ぼすACE阻害薬(効果:-0.01、95%信頼区間[CI]:-0.05~0.03)およびスタチン(効果:0.01、95%CI:-0.02~0.05)の効果は有意ではなかった。2剤の併用にも有意な効果を認めなかった。 ACE阻害薬は、プラセボと比較して微量アルブミン尿の発症率が低かった(p=0.046)が、主要評価項目に関する結果が陰性であったことと、統計解析の計画にも有意差はなかったことから、この発症率の低さは有意ではないと判定した(補正ハザード比[HR]:0.57、95%CI:0.35~0.94、p=0.03[有意水準:p<0.01])。 スタチンの使用により、総コレステロール値、LDLコレステロール値、非HDLコレステロール値、トリグリセライド値、アポリポ蛋白B/A1比が有意に低下した。一方、ACE阻害薬、スタチンともに、頸動脈内膜中膜厚、その他の心血管マーカー、糸球体濾過量、網膜症の進行には有意な影響を及ぼさなかった。 服薬レジメンへのアドヒアランスは全体で75%であった。重篤な有害事象の頻度は全群でほぼ同様で、予想外のものは報告されなかった。 著者は、「ACE阻害薬とスタチンによる早期介入のベネフィットの可能性を評価するには、これらのコホートのフォローアップを今後も行う必要があるだろう」としている。

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すべての1型糖尿病妊婦にはReal-Time CGMを実施すべきか?(解説:住谷哲氏)-763

 妊娠糖尿病および糖尿病合併妊娠では厳格な血糖管理が要求される。とくに1型糖尿病合併妊娠では血糖コントロールに難渋することが多い。現在は各食前、食後、眠前、1日計7回の自己血糖測定(SMBG)と、頻回インスリン投与(Multiple daily injection:MDI)またはインスリンポンプによる強化インスリン療法が主流である。これまで持続血糖モニタリング(CGM)の有用性は示唆されてきたが、糖尿病合併妊婦におけるCGMのSMBGに対する優越性を検討した最新のメタ解析ではCGMの優越性は証明されていない1)。 Real-Time CGM(RT-CGM)により患者は間質液グルコース濃度(厳密には血糖値ではないがほぼ血糖値と考えてよい)をreal-timeで知ることができる。またその推移パターンから、起こりうる低血糖および高血糖に対するアラームが装備されているのも利点となっている。さらにRT-CGMとインスリンポンプを組み合わせたSAP(sensor-augmented pump)では、低血糖のリスクがきわめて高くなると自動的に基礎インスリン投与を中断するLow Glucose Suspend(LGS)の機能を備えている機種(MiniMed Paradigm Veo:本試験では用いられているが日本ではまだ使用できない)もあり、低血糖の軽減につながっている。 本試験はMDIまたはインスリンポンプ使用中の1型糖尿病妊婦におけるRT-CGMの使用が、妊娠中の血糖コントロール、妊婦および新生児の臨床的アウトカムに及ぼす影響を検討したものである。その結果は、主要評価項目であるCGM群とSMBG群とのHbA1cの差は0.19%(p=0.0207)でCGM群において低値であった。また新生児臨床アウトカムに最も関連すると考えられる高血糖期間も有意に短縮していた(27% vs.32%、p=0.0279)。さらに新生児臨床アウトカムではLGA(large for gestational age)、24時間超NICU滞在患者および新生児低血糖はほぼ半減しており、NNTはそれぞれ6人、6人、8人であった。これらの結果は、MDI群とインスリンポンプ群で差はなかった。 NNTが1桁であることから、本研究で明らかにされた1型糖尿病妊婦に対するRT-CGMの使用は有効な介入であると考えてよい。しかし結果のgeneralizabilityについては、費用も含めた十分な検討が必要だろう。また、本文中にも記載されているように、CGMが血糖コントロール指標などのsurrogate outcomeではなく、LGAのような臨床アウトカムを改善したことは重要な点である。CGMの有用性に関する報告は多数あるが、これまではすべて血糖コントロール指標などのsurrogate outcomeについてのみであり、臨床アウトカムの改善につながったのは本研究が初である。今後は他の領域におけるCGMの有用性が明らかにされることが期待される。

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抗PS抗体bavituximabは免疫チェックポイント阻害薬の活性を増強するか:SUNRISE試験サブグループの結果/WCLC2017

 phosphatidylserin(PS)は、がん微小環境にある細胞の表面に広範に発現し、腫瘍特異的T細胞の誘導を抑制し、高い免疫抑制作用を発現する。bavituximabは、PSを標的とするキメラIgG1モノクローナル抗体であり、腫瘍特異的細胞傷害性T細胞を活性化し、免疫寛容を抑制して、抗腫瘍効果を発揮することが期待されている SUNRISE試験は、既治療の進行非扁平上皮肺がんの治療において、ドセタキセル・bavituximab併用(D+B群)とドセタキセル単独(D+P群)を比較した第III相試験である。最近発表された主要評価項目のITT解析による全生存期間(OS)では、D+B群、D+P群とも差がみられなかった(HR:1.06)。ほとんどのサブグループ解析で同等であったが、唯一免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の後治療を受けたグループのみ差がついていた。そこでこの集団のデータを収集し、分析した結果を、横浜で開催された第18回世界肺学会(WCLC)において、オーストラリア・Sydney Cancer CenterのMichael Boyer氏が発表した。 SUNRISE試験597例の無作為化患者のうち93例(16%)がICIの後治療を受けていた。ベースライン特性は、治療群間でバランスが取れ、ITT集団と一致した。無作為化からのOSは、D+B群(n=47)では未到達(15.2~NA)、D+P群(n=46)では12.6ヵ月(10.4~17.8)であった(HR:0.46、95%CI:0.26~0.81、p=0.006)。ICI投与開始時からのOSは、D+B群では未到達(10.2~NA)、D+P群では6.2ヵ月(3.9~8.7)であり(HR:0.42、95%CI:0.23~0.74、p=0.002)、いずれもD+B群で有意に優れていた。 限られたサブグループ分析であるが、ドセタキセル・bavituximab併用療法後にICIで治療された患者ではOSの改善が観察された。bavituximabは免疫関連の毒性と関連しないことから、ICIとの有益な併用薬となる可能性があると、Boyer氏は述べた。■参考SUNRISE試験(Clinical Trials.gov)

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アトピー性脊髄炎〔AM:atopic myelitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義中枢神経系が自己免疫機序により障害されることは、よく知られている。中でも最も頻度の高い多発性硬化症は、中枢神経髄鞘抗原を標的とした代表的な自己免疫疾患と考えられている。一方、外界に対して固く閉ざされている中枢神経系が、アレルギー機転により障害されるとは従来考えられていなかった。しかし、1997年にアトピー性皮膚炎と高IgE血症を持つ成人で、四肢の異常感覚(じんじん感)を主徴とする頸髄炎症例がアトピー性脊髄炎(atopic myelitis:AM)として報告され1)、アトピー性疾患と脊髄炎との関連性が初めて指摘された。2000年に第1回全国臨床疫学調査2)、2006年には第2回3)が行われ、国内に本疾患が広く存在することが明らかとなった。その後、海外からも症例が報告されている。2012年には磯部ら4)が感度・特異度の高い診断基準を公表し(表)、わが国では2015年7月1日より「難病の患者に対する医療等に関する法律」に基づき「指定難病」に選定されている。画像を拡大する■ 疫学平均発症年齢は34~36歳で、男女比1:0.65~0.76と男性にやや多い。先行するアトピー性疾患は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息の順で多く、アトピー性疾患の増悪後に発症する傾向にあった。発症様式は急性、亜急性、慢性のものが約3割ずつみられ、症状の経過は、単相性のものも3~4割でみられるものの、多くは、動揺性、緩徐に進行し、長い経過をとる。■ 病因図1のようにAMの病理組織学的検討では、脊髄病巣は、その他のアトピー性疾患と同様に好酸球性炎症であり、アレルギー性の機序が主体であると考えられる。さまざまな程度の好酸球浸潤を伴う、小静脈、毛細血管周囲、脊髄実質の炎症性病巣を呈する(図1A)5)。髄鞘の脱落、軸索の破壊があり、一部にspheroidを認める(図1B)5)。好酸球浸潤が目立たない症例においても、eosinophil cationic protein(ECP)の沈着を認める(図1C)6)。浸潤細胞の免疫染色では、病変部では主にCD8陽性T細胞が浸潤していたが(図1D)6)、血管周囲ではCD4陽性T細胞やB細胞の浸潤もみられる。さらに、脊髄後角を中心にミクログリアならびにアストログリアの活性化が認められ(図1E、F)7)、アストログリアではエンドセリンB受容体(endothelin receptor type B:EDNRB)の発現亢進を確認している(図1G、H)7)。図1 アトピー性脊髄炎の病理組織所見画像を拡大する■ 臨床症状初発症状は、約7割が四肢遠位部の異常感覚(じんじん感)、約2割が筋力低下である。経過中に8割以上でアロディニアや神経障害性疼痛を認める。そのほか、8割で腱反射の亢進、2~3割で病的反射を生じ、排尿障害も約2割に生じる。何らかの筋力低下を来した症例は6割であったが、その約半数は軽度の筋力低下にとどまった。最重症時のKurtzkeのExpanded Disability Status Scale(EDSS)スコアは平均3.4点であった。■ 予後第2回の全国臨床疫学調査では、最重症時のEDSSスコアが高いといずれかの免疫治療が行われ、治療を行わなかった群と同等まで臨床症状は改善し、平均6.6年間の経過観察では、症例全体で平均EDSS 2.3点の障害が残存していた。全体的には大きな障害を残しにくいものの、異常感覚が長く持続し、患者のQOLを低下させることが特徴といえる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査所見末梢血所見としては、高IgE血症が8~9割にあり、ヤケヒョウヒダニやコナヒョウヒダニに対する抗原特異的IgEを85%以上の症例で有し、約6割で末梢血好酸球数が増加していた。前述のAMの病理組織において発現が亢進していたEDNRBのリガンドであるエンドセリン1(endothelin 1:ET1)は、AM患者の血清で健常者と比較し有意に上昇していた7)。髄液一般検査では、軽度(50個/μL以下)の細胞増加を約1/4の症例で認め、髄液における好酸球の出現は10%未満とされる。蛋白は軽度(100mg/dL以下)の増加を約2~3割の症例で認める程度で、大きな異常所見はみられないことが多い。髄液特殊検査では、IL-9とCCL11(eotaxin-1)は有意に増加していた。末梢神経伝導検査において、九州大学病院症例では約4割で潜在的な末梢神経病変が合併し、第2回の全国調査では、検査実施症例の25%で下肢感覚神経を主体に異常を認めていた3)。また、体性感覚誘発電位を用いた検討では、上肢で33.3%、下肢では18.5%で末梢神経障害の合併を認めている8)。図2のように脊髄のMRI所見では、60%で病変を認め、その3/4が頸髄で、とくに後索寄りに多い(図2A)。また、Gd増強効果も半数以上でみられる。この病巣は、ほぼ同じ大きさで長く続くことが特徴である(図2B)。画像を拡大する■ 診断・鑑別診断脊髄炎であること、既知の基礎疾患がないこと、アレルギー素因があることを、それぞれを証明することが必要である。先に磯部ら6)による診断基準を表で示した。この基準を脊髄初発多発性硬化症との鑑別に適用した場合、感度93.3%、特異度93.3%、陽性的中率は82.4%、陰性的中率は97.7%であった。鑑別として、寄生虫性脊髄炎、多発性硬化症、膠原病、HTLV1関連脊髄症、サルコイドーシス、視神経脊髄炎、頸椎症性脊髄症、脊髄腫瘍、脊髄血管奇形を除外することが必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)第2回の全国臨床疫学調査の結果では、全体の約60%でステロイド治療が行われ、約80%で有効性を認めている。血漿交換療法が選択されたのは全体の約25%で、約80%で有効であった。AMの治療においてほとんどの症例はパルス療法を含む、ステロイド治療により効果がみられるが、ステロイド治療が無効の場合には、血漿交換が有効な治療の選択肢となりうる。再発、再燃の予防については、アトピー性疾患が先行して発症、再燃することが多いことから、基礎となるアトピー性疾患の沈静化の持続が重要と推測される。4 今後の展望当教室ではAMの病態解明を目的とし、アトピー性疾患モデルマウスにおける神経学的徴候の評価と中枢神経の病理学的な解析を行い、その成果は2016年に北米神経科学学会の学会誌“The Journal of Neuroscience”に掲載された7)。モデル動物により明らかとなった知見として、(1)アトピー性疾患モデルマウスでは足底触刺激に対しアロディニアを認める、(2)脊髄後角ではミクログリア、アストログリア、神経細胞が活性化している、(3)ミクログリアとアストログリアではEDNRBの発現が亢進し、EDNRB拮抗薬の前投与により脊髄グリア炎症を抑制すると、神経細胞の活性化が抑えられ、アロディニアが有意に減少したというもので、AMに伴う神経障害性疼痛に脊髄グリア炎症ならびにET1/EDNRB経路が大きく関わっていることを見出している。5 主たる診療科神経内科6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター アトピー性脊髄炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報アトピー性脊髄炎患者会 StepS(AM患者と家族向けの情報)1)Kira J, et al. J Neurol Sci. 1997;148:199-203.2)Osoegawa M, et al. J Neurol Sci. 2003;209:5-11.3)Isobe N, et al. Neurology. 2009;73:790-797.4)Isobe N, et al. J Neurol Sci. 2012;316:30-35.5)Kikuchi H, et al. J Neurol Sci. 2001;183:73-78.6)Osoegawa M, et al. Acta Neuropathol. 2003;105:289-295.7)Yamasaki R, et al. J Neurosci. 2016;36:11929-11945.8)Kanamori Y, et al. Clin Exp Neuroimmunol. 2013;4:29-35.公開履歴初回2017年11月14日

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ペストに気を付けろッ! その1【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。今回はペストについてご紹介したいと思います。えっ? 前回は「次はバベシア症だ」と言ってたじゃないかですって? いやいや、今はバベシア症についてお話している場合じゃないんです! そもそもバベシア症の話なんて、誰が聞きたいんですかッ!?(じゃあそもそも予定すんなよって話ですが)人類とペストの歴史今、ペストがチャバイことになっています。アフリカ大陸の右下にあるマダガスカルでペストが、アウトブレイクしているのですッ! 我々は早急にペストに備えなければなりませんッ! こんなに原稿が遅れている場合ではないッ!さて、皆さんはペストについて、どれくらいご存知でしょうか。まず、ペストは別名「黒死病」ってご存知ですか? ヤバくないですか、「黒」・「死」・「病」ですよ。何か「邪王炎殺黒龍波」みたいな厨二病っぽい響きがありますね。というか、ペストは実際に超ヤバイ感染症なのですッ!人類とペストの歴史は古く、ヨーロッパでは西暦542~543年にかけて東ローマ帝国で流行したそうです。さらにさかのぼれば、2,800~5,000年前のアジアとヨーロッパのヒトの歯の化石から、ペストのDNAが検出されたという報告もあります1)。人間とペストとの戦いは少なくとも5,000年以上は続いているのですッ! 最大の流行は14世紀で、アジアから始まった流行はヨーロッパまで波及し、何とこのとき世界の人口の3割がペストで亡くなったと言われています。世界人口の3割…ペスト、恐るべしです。フランスのルーブル美術館にある『ジャファのペスト患者を訪れるナポレオン、1799年3月11日』は、その名の通り1799年にペスト患者を見舞うナポレオンの様子を描いた絵ですが、中央の患者は腺ペストの患者で、腋窩リンパ節が腫れているのが分かります。ナポレオンは、じかに触ろうとしていますね。腺ペストは、ノミに刺されることによって感染します。また、腺ペストの患者の体液に曝露すると、ヒト-ヒト感染が成立しますし、肺ペストの感染者やげっ歯類から飛沫感染によっても感染します。実際にこの時代、17世紀の医師はペスト患者を診察するときは図1のような衣装を着ていたそうです。いわゆる当時の個人用防護具(personal protective equipment:PPE)ですね。画像を拡大するそんなわけで、有史以来人類はペストと戦ってきたわけですが、日本も例外ではありません。1896年以降、ペスト患者が日本でも報告されています。『明治の避病院-駒込病院医局日誌抄』(磯貝元 編)という本には、当時の駒込病院の医師であった横田 利三郎氏が、「ペスト患者のリンパ節を切開し、血液が顔にかかったことで自身もペストに罹患し、亡くなった」と書かれています。このように日本でもペストはかつて被害をもたらした感染症なのです。と、ペストと人類の歴史を語ってきましたが、何だかこんな風に説明するとペストは過去の感染症のように思われるかもしれませんが、そうではありませんッ!ペストは今も局所的に流行しているのですッ!現在進行形のペストの流行図2は、世界保健機関が発表したペストの流行地域(2016年3月時点)を示した世界地図です。今でもペストに感染するリスクがある地域の存在が、お分かりいただけるかと思います。何とあのアメリカ合衆国でも、いまだにペスト患者が報告されているのです。とくにニューメキシコ州北部、アリゾナ州北部、コロラド州南部で症例が多く報告されています。アジアやアフリカでも流行していますね。画像を拡大するそして、この世界地図でも赤く塗られているように、マダガスカルでもペストは流行地域に指定されているのですが、今年はとくに大規模なアウトブレイクが起こっています(図3)。すでに1,800例以上のヒト感染例が報告されており、さらにチャバイことに、症例の大半が「肺ペスト」なのですッ!(図4)2)画像を拡大する画像を拡大する通常ペストは、ノミの刺咬によって起こる「腺ペスト」の病型が一般的であり、肺ペストの病型はまれだと言われています。しかし、今回のマダガスカルのアウトブレイクでは、肺ペストの症例が7割以上を占めているのです。この意味するところは、患者からのエアロゾル吸入による「ヒト-ヒト感染」が持続的に起こっているということなのですッ! マダガスカルでの死者は、すでに120例を超えているようです(致死率7%)。日本に住む我々も決して他人事ではない状況になってきています。というわけで、今回はペストの歴史と疫学について学びましたが、次回はペストに備えるために、ペストの感染経路、臨床像、そして治療について学びたいと思いますッ!1)Rasmussen S, et al. Cell.2015;163:571-582.2)Madagascar Plague Outbreak:External Situation Report #7: 31 October 2017.

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