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チョコレートは心血管リスクを減らすか~メタ分析

 イタリア・ペルージャ大学のVincenza Gianfredi氏らが、一般集団でのチョコレート摂取と心血管リスクの関連について、系統的レビューおよびメタ分析で評価。その結果、とくに女性における心血管リスクや、男女における急性心筋梗塞に対して、チョコレートの適度な摂取による潜在的な保護効果が示された。Nutrition誌2018年2月号に掲載。 著者らは、PubMedで所定のキーワードでの構造化検索を2016年9月26日まで実施し、チョコレート摂取率の違いによる心血管疾患(脳卒中・急性心筋梗塞・心不全・冠動脈疾患、以下CVD)のリスクを評価した。メタ分析はソフトウェアProMeta 3を使用した。 主な結果は以下のとおり。・系統的レビューにより適格研究が16件同定された。・大部分の研究で、チョコレートを摂取しない人と比較したチョコレート摂取の保護効果を示していた。・チョコレート摂取の最も少ないカテゴリーに対する最も多いカテゴリーのCVD全体のリスク比(効果量[ES])は0.77(95%信頼区間[CI]:0.71~0.84、p=0.000)であった。異質性はmoderateであった。・CVDのサブグループに関連するリスクを分析したところ、急性心筋梗塞のESは0.78(95%CI:0.64~0.94、p=0.009)であった。統計学的な異質性はなかった(I2=46.56%、p=0.13)・性別ごとの分析によると、女性におけるESが0.85(95%CI:0.77~0.95、p=0.003)であった。異質性はvery lowであった(I2=62.21%、p=0.005)。

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てんかんと献血に関する世界の方針

 てんかんは、発作を特徴とする神経障害である。てんかん患者は多くの場合、献血対象者から一時的または永久に除外される。ベルギー赤十字のA. Kellens氏らは、現在適用されている献血方針をより把握するために、世界の血液事業について調査を行った。Vox sanguinis誌オンライン版2018年1月4日号の報告。 世界各国の血液事業担当者46名を対象に、オンラインQuestbackツールを使用したWebベースのアンケートを行った。アンケートは、9つの質問で構成されていた。 主な結果は以下のとおり。・5大陸26ヵ国から27名の担当者が、この調査に参加した。・現在の献血方針は、「一時的な除外を永久に受け入れる」から「永久に除外」の範囲であった。・これらの異なる方針の合理性は、多様であった。・血液事業の大多数(59.3%)は、その方針として一時的な除外を適用しており、献血を行う際には、てんかん患者が投薬を受けていないまたは発作を起こしていないようにする必要があるが、その期間に関しては言及されていない。・献血中のてんかん患者の有害事象に関するデータは、収集できなかった。 著者らは「この調査結果より、世界中で適用されている献血方針には、大きな差異があることを示している。その理由の1つとして、科学的根拠の不足が考えられる。そのため、てんかん患者の献血に関するドナーとレシピエントの潜在的なリスクについて、さらに研究することが最も重要である。これが、エビデンスベースの方針決定の基礎となり、より安全で効果的な輸血プログラムにつながる」としている。■関連記事てんかん重積状態に対するアプローチはてんかん再発リスクと初回発作後消失期間医学の進歩はてんかん発症を予防できるようになったのか

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長期宇宙滞在で、視神経乳頭に異常

 長期間の宇宙滞在により、視神経乳頭および周囲組織に形態学的な変化がみられることが報告された。米国・ヒューストン大学のNimesh Patel氏らは、国際宇宙ステーションに約6ヵ月間滞在した宇宙飛行士の、飛行前後の光干渉断層撮影(OCT)のデータを後ろ向きに解析し、長期間の無重力状態曝露により視神経乳頭および周囲組織の乳頭浮腫状変化が生じていることを明らかにした。著者は、「今回検討した定量化法は、宇宙飛行による長期的な視神経乳頭の変化と宇宙飛行士のための対策、および地球上での乳頭浮腫の原因の評価に役立つだろう」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2018年1月11日号掲載の報告。 研究グループは、視神経乳頭および周囲組織の変化を定量化する方法を開発することを目的に、飛行前後の視神経乳頭領域のOCTデータを後ろ向きに解析した。解析は、飛行前と対照群との比較と、飛行前と飛行後との比較の2回に分けて行った。 参加者は、過去に約6ヵ月間、国際宇宙ステーションに滞在し、飛行前後のOCTデータがある宇宙飛行士15例(飛行前の平均[±SD]年齢48.7±4.0歳)。すべての宇宙飛行士のデータは、NASA Lifetime Surveillance of Astronaut Healthより得た。対照群は、眼症状の既往歴ならびに無重力状態に曝露された経験のない43例で、対照群のデータはすべてヒューストン大学にて測定した。アルゴリズムの開発とデータ解析は、2012~15年に行われた。 OCTデータの分析には、カスタムMATLABプログラム(MathWorks)を用い、手動で描出したBruch membrane opening(BMO)をすべての形態学的な測定の基準とした。網膜色素上皮の位置はBMOの中央から2mmとし、BMO高を算出。全体および象限の全網膜厚と網膜神経線維層(RNFL)厚は、BMOに対応した楕円環状領域に対して算出し、標準的な乳頭周辺の円形スキャンを用いRNFL厚と脈絡膜厚を定量化した。 主な結果は以下のとおり。・BMOは、健常対照者と比較し飛行前の宇宙飛行士群において陥凹が認められ、長期間の無重力状態曝露後にさらに深くなった(変化量中央値:-9.9μm、差の95%信頼区間[CI]:-16.3~3.7、p=0.03)。・長期間滞在後、全網膜厚は1,000μmまで、RNFLは500μmまで増し(BMOを基準)、RNFL厚は中央値で2.9μm増したが(差の95%CI:1.1~4.4、p<0.01)、脈絡膜厚には変化がなかった(変化の中央値:9.3μm、差の95%CI:-12.1~19.6、p=0.66)。

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片頭痛は脳出血や心房細動とも関連/BMJ

 片頭痛は、虚血性脳卒中や心筋梗塞との関連が知られている。デンマーク・オーフス大学病院のKasper Adelborg氏らは、一般集団ベースのコホート研究を行い、片頭痛は出血性脳卒中や静脈血栓塞栓症、心房細動/粗動とも関連することを示した。BMJ誌2018年1月31日号掲載の報告。片頭痛患者と一般集団で心血管疾患リスクを比較 研究グループは、片頭痛患者と一般集団において、7つの心血管疾患のリスクを比較する全国的な一般集団ベースのコホート研究を実施した(オーフス大学などの助成による)。 1995~2013年に、デンマーク全国患者登録(DNPR)に記録された片頭痛患者5万1,032例と、年齢、性別、暦年をマッチさせた一般集団51万320例が解析の対象となった。主要評価項目は、Cox回帰分析に基づく、併存疾患としての心血管アウトカムの補正後ハザード比(HR)とした。 片頭痛群の診断時の年齢中央値は35歳(IQR:22~47)であり、全体の71%が女性であった。片頭痛群は、わずかに心血管疾患リスク因子や併存疾患が多かった。 解析の結果、ほとんどのアウトカムの絶対リスクは、フォローアップ期間を通じて、片頭痛群が一般集団に比べて高かった。脳卒中は片頭痛診断後早期のリスクが高い フォローアップ期間19年時における心筋梗塞の累積発生件数(1,000人当たり)は、片頭痛群が25件、一般集団は17件であり、虚血性脳卒中はそれぞれ45件、25件、出血性脳卒中は11件、6件、末梢動脈疾患は13件、11件、静脈血栓塞栓症は27件、18件、心房細動/粗動は47件、34件、心不全は19件、18件であった。 これらの発生率に対応して、片頭痛群は一般集団に比べ、心筋梗塞(補正後HR:1.49、95%信頼区間[CI]:1.36~1.64)、虚血性脳卒中(2.26、2.11~2.41)のリスクが有意に高く、さらに出血性脳卒中(1.94、1.68~2.23)、静脈血栓塞栓症(1.59、1.45~1.74)、心房細動/粗動(1.25、1.16~1.36)とも有意な関連を示した。一方、末梢動脈疾患(補正後HR:1.12、95%CI:0.96~1.30)と心不全(1.04、0.93~1.16)には、片頭痛との意味のある関連を認めなかった。 心不全を除く6つの心血管疾患は、いずれも片頭痛診断後1年以内の補正後HRが高い傾向がみられ、とくに脳卒中は、診断後1年以内の補正後HRが、全フォローアップ期間(0~19年)に比べて高く(虚血性脳卒中の補正後HR:8.37 vs.2.26、出血性脳卒中の補正後HR:7.89 vs.1.94)、診断後早期の発症に注意を要することが示唆された。 静脈血栓塞栓症と心不全を除く5つの心血管疾患については、前兆のある片頭痛群は前兆のない群に比べ補正後HRが高かった。また、前兆のある片頭痛群は、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、静脈血栓塞栓症の長期リスクとの関連が認められた。 片頭痛と心血管疾患の関連は、女性が男性よりもやや強かったが、男女とも長期に持続しており、全般に加齢に伴って減弱した。また、予想どおり、若年層ではすべての心血管疾患の絶対リスクが低かった。さらに、喫煙とBMIを加えて補正しても、片頭痛と心血管疾患の関連は保持されていた。 著者は、「これらの知見は、男女ともに、片頭痛はほとんどの心血管疾患の強力かつ持続的なリスク因子であることを示唆する」と結論している。

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イスラム圏の健康状態、国家間格差の要因は?/Lancet

 乳幼児と妊産婦の健康改善を目標とした、ミレニアム開発目標(MDG)の項目4および5の推進は、世界的には大きな成果をもたらした。しかし、南アジア・中東・アフリカの多くのイスラム国家では、遅れをとっていることも明らかになっている。カナダ・トロント小児病院のNadia Akseer氏らは、イスラム国家間における、生殖や妊産婦・新生児・小児・青少年の健康状態および、その進展状況を評価する検討を行った。その結果、国家間の格差が認められ、そうした格差に関して、地域性や慣習の影響は認められなかったという。Lancet誌オンライン版2018年1月30日号掲載の報告。47のイスラム国家について調査 検討でとくに目的としたのは、イスラム国家における生殖や妊産婦・新生児・小児・青少年の健康状態および、それらの進展の現状と、開発が進んでいる先進イスラム国家における小児生存の決定因子を明らかにすることであった。そのために、イスラム国家と非イスラム国家の健康におけるアウトカムの差とキー決定因子を探るとともに、MDG4/5の達成程度(最良/不良/中程度)が異なるイスラム国家間の公的医療サービスのカバー率および決定因子を調べた。 具体的には、1990~2015年の複数の公表データ・レポジトリを基に、47のイスラム国家について調査した。そのうち26ヵ国が、Countdown to 2015 countriesと呼ばれるMDG4/5介入の最優先対象国(計75ヵ国)であった。これら26ヵ国について、非イスラムのCountdown国家48ヵ国と比較した。また、MDG4を達成するなど、小児生存率が大きく改善した、最も達成度が高かった8ヵ国の特徴も調べた。 青少年、妊産婦、5歳未満児、新生児の死亡率、死産率、死因別死亡、基本的な医療サービスのカバー率、決定因子の推算は、標準的手法を用いて行われた。 また、低所得および中所得のイスラム国家における、5歳未満児の死亡率と新生児の死亡率の決定因子について、階層的多変量解析も行った。貧しい国でも健康アウトカムの進展がみられる 1990~2015年の死亡率は、世界的には顕著な減少がみられたにもかかわらず、イスラム国家では全世界の推計値と比較して高く、Countdown国家間(イスラム国家と非イスラム国家)の比較においても高かった。基本的な公共医療サービスのカバー率も平均以下で、とくにリプロダクティブ・ヘルス、妊婦管理、出産・分娩、小児ワクチンの指標が低かった。 イスラム国家間において、死亡率および、生殖、妊産婦、新生児、小児、青少年に関する多数の健康アウトカム指標で、かなりのばらつきがあることが認められた。Countdown国家間の比較においては、構造的因子およびコンテキスト因子のうち、とくにガバナンス、コンフリクト、女性・少女のエンパワメント指標が、非イスラム国家と比較してイスラム国家では有意に不良であった。また、それらと小児・新生児の死亡率には、低所得および中所得のイスラム国家では強い関連性が認められた。 調整後の階層的モデルにおいて、その他の因子に関しても有意な関連性が認められている。イスラム国家における5歳未満児の死亡率は、難民の発生状況が高い国では上昇しているが(β=23.67、p=0.0116)、政情が安定しテロのない国(β=-0.99、p=0.0285)、政治力が強く政府が機能している国(β=-1.17、p<0.0001)、1人当たりの国民総所得が改善している国(β=-4.44、p<0.0001)、成人のリテラシーが高い国(β=-1.69、p<0.0001)、成人女性のリテラシーが高い国(β=-0.97、p<0.0001)、中等教育への進学者が男子よりも女子が多い国(β=-16.1、p<0.0001)においては低かった。 最良のパフォーマンスを示したイスラム国家は、アゼルバイジャン、バングラデシュ、エジプト、インドネシア、キルギス、モロッコ、ニジェール、セネガルで、パフォーマンスが中程度または不良のイスラム国家と比べて、家族計画介入や新生児あるいは小児のワクチン接種のカバー率が高く、またコンテキスト因子の大半で優れていた。 結果について著者は、「ニジェールやバングラデシュのように、貧困国でも進展がみられた」と指摘し、「今回の検討から得られたキー所見を政策やプログラムに適用し、統治者や政策立案者、開発パートナー、資金提供者、イスラム協力機構(Organization of the Islamic Cooperation)が優先的な割り当てを行うことで、2015年以降のイスラム国家の健康アウトカムのスケールアップおよび改善が可能になるだろう」とまとめている。

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ARREST試験:黄色ブドウ球菌菌血症に対するリファンピシン併用療法(解説:小金丸博氏)-811

 黄色ブドウ球菌菌血症は、市中でも院内でもみられるありふれた疾患である。他臓器への転移病巣形成や深部臓器感染の原因となり、死亡率は約20%と高率である。頻度や重症度が高い疾患であるにもかかわらず、いまだに最適な治療方法は定まっていない。 黄色ブドウ球菌感染症に対する併用薬の候補の1つにリファンピシンが挙げられる。リファンピシンは消化管からの吸収率が高く、細胞、組織、バイオフィルムによく浸透するため、βラクタム薬やグリコペプチド系薬と併用することで黄色ブドウ球菌感染症の予後を改善する可能性があると考えられてきた。主に感染性心内膜炎や人工物感染に対して世界中でリファンピシン併用が行われているが、高いエビデンスのある研究は存在しなかった。 本研究は、黄色ブドウ球菌菌血症に対するリファンピシン併用投与の効果を検証した多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対象比較試験である。標準的な抗菌薬治療開始から96時間以内の成人(18歳以上)を対象に、リファンピシン併用投与群とプラセボ併用投与群に分けて評価した。プライマリアウトカムは細菌学的治療失敗、再発、あらゆる原因による死亡までの時間とした。その結果、試験開始から12週までに、これらいずれかのアウトカムを経験した患者割合は、リファンピシン投与群17%、プラセボ投与群18%であり、両群間で有意差は認めなかった(絶対リスク差:-1.4%、95%信頼区間:-7.0~4.3、ハザード比:0.96、p=0.81)。アウトカムを個別にみてみると、リファンピシンを併用しても死亡率は減少しなかったものの、再発率は有意に減少した。細菌学的再発を1例防止するのに必要な治療数(number needed to treat:NNT)は29だった。 本試験では、黄色ブドウ球菌菌血症に対してリファンピシンを併用しても全体的なベネフィットは変わらないことが確認された。本試験は過去の試験よりサンプルサイズが大きいことが特徴の1つである。本試験の結果から、黄色ブドウ球菌菌血症と診断した全例に対してリファンピシンを併用する根拠は乏しいといえる。 黄色ブドウ球菌は、薬剤感受性パターンからMSSAとMRSAに分類される。本試験に組み込まれた患者の原因菌のうちMRSAは全体の6%しか占めておらず、MRSA菌血症に対するリファンピシンの併用効果を評価することは困難と考える。また、人工弁あるいは人工関節を有する患者は2%と少なく、本試験の結果のみでは人工物感染に対する併用効果を評価することも難しい。 MSSA感染症に対する世界標準薬は抗黄色ブドウ球菌用ペニシリンである。英国、オーストラリアではFlucloxacillin、米国ではNafcillinやクロキサシリンが好んで利用され、本試験では82%でFlucloxacillinが選択されている。ところが、日本では純粋な抗黄色ブドウ球菌用ペニシリンは認可されておらず、MSSA感染症に対しては第一世代セフェム系抗生物質であるセファゾリンが選択されることが多いため、本試験の結果を日常臨床にそのまま当てはめることはできない。本邦でも、世界標準薬が利用できる日がくることを希望する。

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わかる統計教室 第4回 ギモンを解決!一問一答 質問25

インデックスページへ戻る第4回 ギモンを解決!一問一答質問25 F検定とは?前回は、カイ2乗分布による検定、カイ2乗検定についてご説明してきました。今回は、相関比「F検定」についてご説明いたします。■相関比(F検定)質問10(その2)で相関比について学びました。F検定は、母集団における相関比が無相関であるかないかを調べる検定方法です。その方法を説明します。2つの母集団があり、両者の相関比は0(無相関)とします。この母集団にサンプルサイズnの標本調査を行い、次に示す検定統計量Tを求めます。上の数式のVA、VE の求め方は後ほどご説明します。現実的にはありえませんが、無相関である母集団について標本調査を無限回繰り返し行い、無限個のT値を得たとします。T値の度数分布を作成し、度数分布に近似曲線を当てはめます。近似曲線は、統計学が定めた理論的分布(F分布)になることが、理論的にも実験的にもわかっています。F分布は、カイ2乗分布同様に左に偏った形状の分布です。どちらも、サンプルサイズが大きくなるほど、左右対称の分布に近づきます。T値がF分布になることを実験によって確認できます。F分布を適用する検定を「F検定」といいます。では、一般的な事例で説明していきます。■検定統計量T検定統計量T値の求め方を説明します。医学的なデータだと難しくなりがちですので、なじみやすい一般的なデータでご説明していきます。表1は、「血液型とホームラン数」のデータとカテゴリー別平均です。表1 「血液型とホームラン数」のデータとカテゴリー別平均血液型とホームラン数は関連性があるかを調べてみましょう。次の方法によって、表2に全体変動、群間変動、誤差変動、それぞれの偏差平方和を求めます。表2 全体変動の元データ画像を拡大する全体変動の偏差平方和:ST=1,167群間変動の偏差平方和:SA= 807誤差変動の偏差平方和:SE= 360自由度を求めます。全体変動の自由度:fT=n-1=12-1=11群間変動の自由度:fA=血液型カテゴリー数-1=4-1=3誤差変動の自由度:fE=n-血液型カテゴリー数=12-4=8留意点:必ず、ST=SA+SE、fT=fA+fE となります。不偏分散を求めます。全体変動の不偏分散:VT=ST/fT=1,167÷11=106.1群間変動の不偏分散:VA=SA/fA=807÷3=269.0誤差変動の不偏分散:VE=SE/fE=360÷8=45.0分散分析表計算された結果を表3のようにまとめた表を分散分析表といいます。分散比を求めます。分散比が検定統計量T値です。F分布の有意水準5%の棄却限界値を求めます。Excel関数 =FINV(有意水準,fA,fE)=FINV(0.05,3,8)→ Enterキー → 4.07F分布のT値=5.98となるp値を求めます。Excel関数 =FDIST(T値,fA,fE)=FDIST(5.98,3,8) → Enterキー → 0.019表3 分散分析表相関比は次によって求められます。●公式【相関比無相関の検定】F検定帰無仮説:母集団の相関比は0である対立仮説:母集団の相関比は0でない留意点 この解析は一元配置法とも呼ばれ、下記の仮説にも適用できる帰無仮説:母集団のカテゴリー平均はすべて等しい対立仮説:母集団のカテゴリー平均は異なる1)T値による検定T値=分散比>棄却限界値帰無仮説を棄却でき、対立仮説を採択できる2)p値による検定p値<有意水準帰無仮説を棄却でき、対立仮説を採択できる今回のポイント1)F検定は、母集団における相関比が無相関であるかないかを調べる検定方法!2)関連性判定1)T値による方法T値=分散比>棄却限界値のとき、帰無仮説を棄却して対立仮説を採択し、母集団の相関比は0ではないといえる!3)関連性判定2)p値による方法p値<有意水準のとき、帰無仮説を棄却して対立仮説を採択し、母集団の相関比は0ではないといえる!インデックスページへ戻る

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私が出合ったマジヤバイ胸部画像読本【Dr.倉原の“俺の本棚”】第2回

【第2回】私が出合ったマジヤバイ胸部画像読本書評のタイトルに「マジヤバイ」なんて死語を書いた医師がこれまでいたでしょうか、いやいない。最近は「マジヤバイ」じゃなくて、「マジ卍(マンジ)」って言うらしいですよ。もうオジサンついていけませんよ。『誰も教えてくれなかった胸部画像の見かた・考えかた』小林 弘明/著. 医学書院. 2017さて、世の中には、腐るほど胸部画像の本があります。あ、腐るなんて書いたら怒られる。すいません。いや、でも大手本屋さんに行ってごらんなさいよ、胸部レントゲンの本だけで10冊…いや20冊はありますよ。ここからどうやって選べばいいんですか。Amazonのレビューで一番★が多い本を買うんですか? いやいや、あんなのアテになりませんぜ、旦那(←Amazonで低評価を受けたことがある著者の恨み節)。そんな悩みを吹き飛ばす1冊が出ました。その名も、『誰も教えてくれなかった胸部画像の見かた・考えかた』。これといったヒネリは入っていない、正統派なタイトルです。超大手の医学書院から出版されています。266ページ、5,000円(税別)。うん、よくある値段だ。高過ぎず、安過ぎず。著者に目を向けてみましょう。小林 弘明先生。なんと呼吸器外科部長です。これはちょっと驚きました。胸部レントゲンの本って、ほとんどが放射線科医、残りは呼吸器内科医が書いていることが多いんですよね。呼吸器外科医というのはなかなか珍しいと思います。さて、何百冊と胸部レントゲン本を読んできた呼吸器内科医として言っておきたいことがあります。現時点で、胸部レントゲンの教科書は本書が最高です。福本先生風に書くなら、「悪魔的ッ…!」「圧倒的ッ…!」です(わからない人スイマセン)。この本、読んでて驚きました。胸部レントゲン写真の本って、右傍気管線、右傍食道線、みたいなナントカ線ってのがいっぱい書いてあるじゃないですか。この本のすごいところは、フルカラーで見やすいだけでなく、ナントカ線についてちゃんと説明してくれている点です。初心者用に、レントゲン読影用シートまで中に入ってる。さらに、レントゲンで同定された異常が、胸腔鏡や3DCTでは実際にどう見えるか、外科的な観点のフィードバックまでついています。そう、これまでは読者に立体構造をイメージしてもらわなければならなかったところを、小林先生はちゃんと胸腔鏡や3DCTの画像を使って補完されているんですよ。だから、ページをめくるたびに「なるほど!」「すげぇ!」を連発してしまいます。私は、医学書院の回し者でも、小林先生の弟子でもありません。このコラムは、利益相反ゼロです。ただ1つ言えるのは、本書を上回る胸部レントゲンの本なんて、誰にも出せないでしょう、ということです。間違いなく、殿堂入りの1冊です。『誰も教えてくれなかった胸部画像の見かた・考えかた』小林 弘明/著出版社名医学書院定価本体5,000円+税頁数 縦266P 26cm刊行年月2017年10月

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境界性パーソナリティ障害治療におけるω3脂肪酸とバルプロ酸併用

 境界性パーソナリティ障害(BPD)患者に対するオメガ3(ω3)脂肪酸の有効性について、いくつかのエビデンスが報告されている。以前行われたBPD患者43例を対象とした12週間のランダム化比較試験において、バルプロ酸単独療法と比較し、イコサペント酸エチル(EPA)およびドコサヘキサエン酸エチル(DHA)とバルプロ酸の併用療法の有効性が評価されている。併用療法は、バルプロ酸単独療法(対照群)との比較で、衝動性行動制御、怒りの噴出、自傷行為など、いくつかのBPD症状に対し、より有効であった。イタリア・トリノ大学のPaola Bozzatello氏らは、ω3脂肪酸の投与中止後、両群間の有効性の差が維持されているかを評価するため、24週間のフォローアップ試験を行った。Clinical drug investigation誌オンライン版2018年1月5日号の報告。 12週間のランダム化比較試験を完了した34例に対し、フォローアップを行った。12週間の試験後に両群間で有意な差を認めた評価尺度を用い、フォローアップ期間の開始時および終了時に評価を行った。評価尺度には、境界性パーソナリティ障害重症度指数(Borderline Personality Disorder Severity Index:BPDSI)の「衝動性(impulsivity)」および「怒りの噴出(outbursts of anger)」の項目、バラット衝動性尺度(Barratt Impulsiveness Scale-Version 11:BIS-11)、自傷行為インベントリ(Self Harm Inventory:SHI)が含まれた。統計分析には、反復測定による分散分析(ANOVA)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間終了時、併用療法群内では、評価を行った4つの尺度すべてにおいて有意な差が維持されていたが、群間比較では、怒りの噴出のみで有意な差が維持されていた。・フォローアップ期間中の忍容性に関しては、臨床的に有意な副作用は認められなかった。 著者らは「BPD患者に対するバルプロ酸とω3脂肪酸の併用療法は、怒りのコントロールに関して、併用中止後も継続的な効果を示した」としている。■「DHA効果と脳」関連記事EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか

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再発性B細胞性ALL、CAR-T療法での長期転帰/NEJM

 新たな細胞免疫治療であるCD19特異的キメラ抗原受容体(CAR)発現T細胞療法は、再発性B細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)の小児および成人患者で、70~90%という良好な完全寛解率が示されている。しかし、これらの試験の多くはフォローアップ期間が相対的に短く、長期的な寛解の予測因子と考えられる背景因子の解析は行われていない。そこで、米国・メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(MSKCC)のJae H. Park氏らは、CD19 CAR T療法を受けたALL成人患者の第I相試験の長期フォローアップを行い、その結果をNEJM誌2018年2月1日号で報告した。単施設での再発性B細胞性ALLの第I相試験 研究グループは、MSKCCにおいて、再発性B細胞性ALLの成人患者を対象に、19-28z CAR発現自己T細胞注入の第I相試験を行った(Commonwealth Foundation for Cancer Researchなどの助成による)。 安全性および長期転帰の評価を行い、これらと人口統計学的特性、臨床的特性、疾患特性との関連を評価した。2010年2月~2016年6月に再発・難治性B細胞性ALLの成人登録患者53例が、MSKCCで作製された19-28z CAR T細胞の注入を受けた。 ベースラインの年齢中央値は44歳(範囲:23~74)で、18~30歳が14例(26%)、31~60歳が31例(58%)、60歳超は8例(15%)であった。前治療数は2が21例(40%)、3が13例(25%)、4以上は19例(36%)であった。同種造血幹細胞移植歴のある患者は19例(36%)、フィラデルフィア染色体陽性は16例(30%)だった。疾患負荷が小さい患者は、安全性と有効性が良好 完全寛解は44例(83%、95%信頼区間[CI]:70~92)で得られた。微小残存病変(MRD)の評価が可能であった48例のうち、MRD陰性の完全寛解例は32例(67%、95%CI:52~80)であった。移植の有無、前治療数、移植前化学療法のレジメン、年齢、CAR T細胞の用量の違いによる、完全寛解率の有意な差はなかった。 サイトカイン放出症候群は45例(85%)で発現し、そのうち重度(Grade≧3)は14例(26%)で、多臓器不全を併発した1例が死亡した。神経毒性は、Grade2が1例(2%)、Grade3が19例(36%)、Grade4が3例(6%)に認められたが、Grade5や脳浮腫はみられなかった。 疾患負荷が大きい(骨髄芽球≧5%または髄外病変を有する)患者は、小さい(骨髄芽球<5%)患者に比べ、重度のサイトカイン放出症候群(p=0.004)および神経毒性イベント(p=0.002)のリスクが高かった。 フォローアップ期間中央値29ヵ月(範囲:1~65)の時点で、無イベント生存期間中央値は6.1ヵ月(95%CI:5.0~11.5)、全生存期間中央値は12.9ヵ月(95%CI:8.7~23.4)であった。MRD陰性完全寛解例はMRD陽性完全寛解例/非奏効例に比べ、無イベント生存期間中央値(p<0.001)および全生存期間中央値(p<0.001)が有意に優れた。 治療前の疾患負荷が小さい患者では、大きい患者に比べ、無イベント生存期間中央値(10.6ヵ月[95%CI:5.9~未到達]vs.5.3ヵ月[95%CI:3.0~9.0]、p=0.01)および全生存期間中央値(20.1ヵ月[95%CI:8.7~未到達]vs.12.4ヵ月[95%CI:5.9~20.7]、p=0.02)が有意に延長した。 著者は、「コホート全体の全生存期間中央値は12.9ヵ月で、疾患負荷が小さい患者では20.1ヵ月であった。また、疾患負荷が小さい患者では、サイトカイン放出症候群と神経毒性イベントの発現率が著明に低かった」とまとめている。

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左脚ブロックを伴う心筋症患者は左室機能が回復しにくい

 左脚ブロックの患者は、心臓再同期療法(CRT)によって左室駆出率(LVEF)が改善することがある。ところが、左脚ブロックを伴うLVEF低下患者に対し最初に行われる治療は、ガイドラインに準じた薬物療法であり、CRTではない。一方で、LVEFの低下および左脚ブロックが、ガイドラインに準じた薬物療法にどの程度影響するかについてのデータは少ない。現在、CRT植込みの前に、少なくとも3ヵ月のガイドラインに準じた薬物療法が勧められており、これは薬物療法のみでもLVEF改善が期待されているからと考えられる。米国・Duke大学のEdward Sze氏らのグループによる本研究は、心筋症患者について、左脚ブロックの患者とその他のQRS波形を呈する患者におけるLVEFの改善率を評価した。Journal of American College of Cardiology誌2018年1月号に掲載。左脚ブロック、その他のwide QRSとnarrow QRSでLVEFの変化を比較 本研究では、Duke大学のエコーラボのデータベースを用いてベースラインの心電図が記録され、LVEFが35%以下で、3~6ヵ月後にLVEFがフォローアップされている患者を特定した。なお、重症な弁膜症患者と、心臓デバイス、左室補助デバイスもしくは心移植患者を除外した。QRS波形は(1)左脚ブロック、(2)QRS 120ms未満、(3)QRS 120ms以上で左脚ブロックではない、という3つのカテゴリーに分類し、3群間におけるLVEFの平均変化を、重要な併存疾患とガイドラインに準じた薬物療法で調整して分散分析を行った。ガイドラインに準じた薬物療法の有無でLVEFの改善度は変わらず 659例が試験の基準に適合した。このうち左脚ブロックは111例(17%)、wide QRS(≧120ms)で左脚ブロックではない患者は59例(9%)、そしてnarrow QRS(<120ms)は489例(74%)であった。3~6ヵ月におけるLVEFの増加は、それぞれ2.03%、5.28%、8.00%であった(p<0.0001)。その間における再灌流療法、心筋梗塞の有無で調整した結果も同様であった。左脚ブロック患者では、ガイドラインに準じた薬物療法実施の有無にかかわらず、LVEFの改善は同程度であった(3.50%vs. 3.44%)。心不全による入院と死亡率は、左脚ブロックで最も高かった。 左脚ブロックは、その他のQRS波形と比べて、ガイドラインに準じた薬物療法を行っていてもLVEF改善の程度が少なかった。左脚ブロック患者の一部は、現在のガイドラインが推奨するよりも早くCRTの恩恵を受けられる可能性がある。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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がん5年生存率、世界3,700万例調査/Lancet

 2015年、CONCORD-2プログラムは、世界のがんコントロール対策への情報提供に向け、医療システムの有効性の評価基準としての「がん生存率」に関して、世界的なサーベイランスを行うことを定めた。これを受けて、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のClaudia Allemani氏らCONCORDワーキンググループは、2014年までのがん生存率に関する最新データであるCONCORD-3の解析を行い、その結果をLancet誌オンライン版2018年1月30日号で報告した。世界322件のがん登録の約3,750万例の5年生存率を推算 CONCORD-3には、2000~14年の15年間にがんと診断された3,751万3,025例の記録が含まれる。データは、71の国と地域の322件の地域住民ベースのがん登録から提供され、そのうち47件は全住民を網羅している。この研究は、米国がん協会(ACS)、米国疾病管理予防センター(CDC)などの助成によって実施された。 対象は、18のがんまたは腫瘍群であった(成人の食道、胃、結腸、直腸、肝、膵、肺、乳房[女性]、子宮頸部、卵巣、前立腺、皮膚悪性黒色腫、および成人と小児の脳腫瘍、白血病、リンパ腫)。これらのがんは、世界で毎年診断されているすべてのがんの75%に相当する。 解析は、標準化された品質管理手順に従って進められた。5年生存率を推算し、推定値はInternational Cancer Survival Standard(ICSS)weightsで年齢調整を行った。東アジアは消化器がんの生存率が高い ほとんどのがんの5年生存率は、依然として米国/カナダ、オーストラリア/ニュージーランド、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンで最も高かった。またデンマークは、多くのがんに関して、他の北欧諸国との差が縮まりつつあった。 生存率は、比較的致死性の高いがんの一部を含め、全般に上昇傾向にあり、肝、膵、肺のがんの生存率が最大5%上昇した国もあった。2010~14年に診断を受けた乳がん女性の5年生存率は、オーストラリアが89.5%、米国は90.2%と高い値を示したが、インドでは66.1%と低い値を示し、依然として国によって大きな差が認められた。 2010~14年の消化器がんの年齢調整5年生存率は、東アジア諸国が最も優れていた。胃がんは韓国が68.9%(日本は60.3%)、結腸がんも韓国が71.8%(日本は67.8%)、直腸がんも韓国が71.1%(日本は64.8%)で最も高く、食道がんは日本が36.0%(韓国は31.3%)、肝がんは台湾が27.9%(日本は30.1%だがデータの信頼性が低かった)であり、最も良好な結果であった。 これに対し、東アジアの国は皮膚悪性黒色腫(韓国:59.9%、台湾:52.1%、中国:49.6%)、リンパ性悪性腫瘍(52.5%、50.5%、38.3%)、骨髄性悪性腫瘍(45.9%、33.4%、24.8%)の5年生存率が、他の地域に比べて低かった。 2010~14年に診断を受けた小児では、急性リンパ芽球性白血病の5年生存率が、エクアドルの49.8%からフィンランドの95.2%まで大きな差があることが認められた。また、小児の脳腫瘍の5年生存率は、成人よりも高かったが、ブラジルの28.9%からスウェーデン/デンマークのほぼ80%まで、国によって大きな差がみられた。 2017年以降、経済協力開発機構(OECD)は、世界48ヵ国の保健医療の質の指標のうち、がん生存率に関する公式の評価基準として、CONCORDプログラムの知見を使用している。「政府は、地域住民ベースのがん登録を、がんと診断されたすべての患者における、がん予防戦略の効果と医療システムの有効性の双方の評価に使用できる、重要な施策立案ツールとして認識すべきである」と、著者は指摘している。

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極寒の影響で今シーズンの花粉飛散開始時期はどうなる?

 日本気象協会は2018年2月8日、2018年春の花粉飛散予測を発表。記録的な寒波により、これまで極端な低温が続き、都心の1月1日からの積算気温は、飛散時期の目安となる数字(およそ400度)に達しておらず、飛散開始時期が遅れる可能性がある。 一方、これまでは強い寒気が長く居座り、厳しい寒さの日が長く続いたが、この先は寒気が流れ込んでも一時的で、気温の上がる日がでてきそうだ。関東でも、すでにわずかながら花粉が飛んでいる所があり、風の強まる日があれば、本格的な花粉シーズンへと突入するかもしれないとのこと。■参考tenki.jp

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NOACで頭蓋内出血は少なくなる?(解説:後藤信哉氏)-810

 各種NOACの第III相ランダム化比較試験にて、INR 2-3を標的としたワルファリン群に比較してNOAC群にて頭蓋内出血が少ないとされても、筆者の心には響かなかった。INR 1.9であればワルファリンを増量し、INR 2.9であってもワルファリンを減量しないような治療は、自らの日常診療と大きく乖離していたためである。また、NOAC登場前の観察研究にて、日本も世界もワルファリン使用時の頭蓋内出血発現率は0.2%程度とされていたので、その3倍も頭蓋内出血が起こることを示した第III相試験のメッセージは「INR 2-3を標的としたワルファリン治療は頭蓋内出血を増やす」のみであった。 米国には各種registryがある。本研究はAHAが主導するGet With The Guidelines-Strokeのデータベースを用いた。第一著者はDuke大学に留学している日本人である。データベースはしっかり構築されており、Duke大学の解析チームのデータ解析は信頼できる。後ろ向きの解析であるためN Engl J Med, Circulationには届かない。JAMAではデータベースの大きさと質、トピックの重要性が重視されたと考える。 頭蓋内出血にて入院した141,311例の対象症例のうち、15%弱は抗凝固薬使用中の症例であった。抗凝固薬使用中の症例のほうが高齢で、心房細動の合併も多かった。しかし、これらのリスク因子を補正しても、院内死亡率は抗凝固療法使用歴のある患者で高かった。ワルファリン使用歴の長い私はINR 2-3を標的としたワルファリン治療をしたことがない。多くの症例はINR 1.7前後で2を超える症例も少ない。ワルファリン群に比較してNOAC群のほうが、院内死亡率が低いとしているが、私のように低いINRにコントロールしている場合はNOACと差がない。 4つのNOACの開発試験に強く寄与して、また実臨床においてNOACが広く使用されていく現状を観察して、一貫して自らの中で変化しなかったNOACの評価は「NOACは頭蓋内出血を増加させる」「INR 2-3を標的としたワルファリン治療では容認できない重篤な出血リスクをもたらす」の2つであった。抗凝固療法は、重篤な出血リスクを増やす怖い介入である。禁煙して運動習慣をつけ、各種リスク因子を補正して総合的に脳卒中、血栓塞栓イベントを減らす努力を継続すべきである。

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初期アルツハイマー病におけるエアロビクスエクササイズの影響

 アルツハイマー病患者は、自立した日常生活動作が妨げられる。アルツハイマー病患者の自立を支えるための介入を特定し、介護の経済的および心理的な負担を軽減することは不可欠である。米国・カンザス大学のEric D. Vidoni氏らは、初期アルツハイマー病患者の機能障害および介護の時間について調査を行った。Journal of geriatric physical therapy誌オンライン版2017年12月28日号の報告。 本調査は、アルツハイマー病患者に対する26週間の有酸素運動(AEx群)とストレッチやトーニング(toning)(ST群)の効果を比較したランダム化比較試験の二次解析である。機能依存性、非公式な介護の時間、認知機能の評価にはそれぞれ、認知症のための障害評価表(Disability Assessment for Dementia:DAD)、認知症に対するリソース使用率(Resources Utilization in Dementia Lite:RUD Lite)、認知機能評価バッテリー(standard cognitive battery)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・ST群の有意な機能低下(4%、F=4.2、p=0.04)と比較し、AEx群では機能が安定していた。・これは、とくに手段的日常生活動作においてより複雑であり、26週以上でST群が8%減少(F=8.3、p=0.006)したのに対し、AEx群では1%の上昇が認められた。・記憶の変化は、手段的日常生活動作のパフォーマンス低下を有意に予測する因子であった(r=0.28、95%CI:0.08~∞、p=0.01)。・非公式な介護の時間は、両群間で差は認められなかった。 著者らは「この分析では、初期アルツハイマー病患者の手段的日常生活動作の具体的な利点を明らかにすることにより、最近の研究結果を補完し、認知障害を有する患者に対する運動介入の価値を裏付けている」としている。■関連記事日本人高齢者、運動でアルツハイマー病リスク軽減:九州大学認知症への運動療法、効果はあるのかアルツハイマー介護負担、日本と台湾での比較:熊本大学

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国内のインフルエンザ増加続く。推計受診者数1,400万人に/本年第5週

定点当たり報告数は引き続き増加 2018年第5週(平成30年1月29日~2月4日)の定点当たりのインフルエンザ報告数は54.33(患者報告数268,811)となり、第4週(平成30年1月22~28日)の定点当たり報告数52.35よりも増加した。都道府県別では大分県(77.09)、福岡県(69.96)、埼玉県(68.29)、神奈川県(66.31)、高知県(66.19)、鹿児島県(64.61)、千葉県(63.98)、愛知県(62.52)、山口県(62.28)、佐賀県(59.51)、三重県(58.28)、福島県(57.43)、岩手県(56.98)、宮崎県(56.02)、新潟県(55.74)、熊本県(55.06)の順となっている。増加は31、減少は16都道府県 31道府県で第4週の報告数よりも増加がみられ、16都県で前週の報告数よりも減少がみられた。全国の保健所地域で警報レベルを超えている保健所地域は511ヵ所(全47都道府県)、注意報レベルを超えている保健所地域は40ヵ所(1都1道2府18県)となった。今シーズンの推計受診者数は約1,393万人、直近5週ではB型 定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数を推計すると約282万人(95%CI:262~302万人)となり、第4週の推計値(約274万人)よりも増加した。年齢別では、0~4歳が約29万人、5~9歳が約62万人、10~14 歳が約43万人、15~19歳が約19万人、20代が約16 万人、30代が約 22万人、40代が約29万人、50代が約22万人、60代が約19万人、70歳以上が約22万人となっている。また、2017年第36週以降これまでの累積の推計受診者数は約1,393万人となった。 基幹定点からのインフルエンザ患者の入院報告数は2,018例であり、第4週(2,088例)から減少した。国内のウイルス検出状況をみると、直近の5週間(2018年第1~第5週)ではB型が最も多く、次いでAH3型、AH1pdm09型の順であった。 ■参考厚生労働省2018年2月9日インフルエンザの発生状況について

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第3世代ALK阻害薬lorlatnib、ALK陽性肺がんに国内申請

 ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:原田明久)は2018年1月30日、「ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺」の効能・効果で、lorlatnibの国内における製造販売承認を申請した。 lorlatnibは、ALK阻害薬の耐性変異を解明することにより創製した第3世代のALK阻害薬であり、耐性変異がみられる変異型ALKにも効果が期待される。 米国においてlorlatnibは、2017年4月に、1剤以上のALK阻害薬による前治療歴を有するALK陽性転移性NSCLC治療におけるブレークスルー・セラピー指定を受けている。■関連記事ALK/ROS1肺がんにおけるlorlatinibの国際第I相試験の結果/Lancet Oncol次世代ALK/ROS1阻害剤lorlatinib、ALK肺がんでFDAのブレークスルー・セラピー指定第3世代ALK阻害薬lorlatinibの成績発表/ASCO2017

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ちょっと今から仕事やめてくる【過労自殺を防ぐには?】

今回のキーワード働き方改革産業精神保健ストレスチェック要求度-コントロール-社会的支援モデルストレス脆弱性モデル「ワーカホリック」「時短ハラスメント」AI(人口知能)2017年に、政府は働き方改革実行計画を策定しました。その中では、「長時間労働の是正」を初めとして数か条の検討事項を挙げています。みなさんは、自分の働き方が「改革」される必要があると思いますか?特に、医師は働き過ぎていると言われています。なぜ働き過ぎるのでしょうか? 一方で、なぜ働かせ過ぎるのでしょうか? そして、なぜ働き過ぎは良くないのでしょうか? そもそも私たちはなぜ働くのでしょうか? それでは、どう働かせるのが良いでしょうか? 最終的に、私たちはどう働くのが良いのでしょうか? そして、どう生きるのが良いのでしょうか?これらの疑問を解き明かすために、今回は、2017年の映画「ちょっと今から仕事やめてくる」を取り上げます。この映画を通して、働くことを生理学的に、社会学的に、そして進化心理学的に掘り下げ、産業精神保健の理解を深めましょう。ブラック企業とは?主人公の青山は、入社して半年、営業部に勤務しています。達成不可能なノルマを課され、3か月連続で残業は150時間を超えています。しかし、残業代は出ていません。毎朝、勤務開始時間には、「有休なんていらない」などとの社訓の音読を社員全員でさせられます。急ぎの命令でタクシーを利用したのに、経費は支払われません。ミスによる減損分は給料から差し引かれます。彼の上司は、彼を「このタコ!」「おまえはクズだ」と人前で怒鳴り付け、ミスが起きると、書類ではたき、足蹴りし、鞄で叩きます。それでも気持ちが治まらない時は、「ここにいる全員に謝れ」と命令して、土下座を延々とさせて、見せしめます。このように、過剰なノルマ、長時間の時間外労働、時間外労働分の不払い、必要経費の不払い、損失分の給料からの差し引き、パワーハラスメントなど違法な労働条件が常態化している場合は、ブラック企業と呼ばれます。ちなみに、研修医や医師にとって長時間労働が常態化しているという点では、医療機関もブラック企業になりえます。仕事のストレスとは?-グラフ1青山は、過剰なノルマにより、仕事量はとても多いです(仕事の要求度)。顧客の都合や気分に合わせなければならない営業という職種柄や上司の理不尽な命令や急な呼び出しにより、裁量権や技量の活用はとても少ないです(仕事のコントロール)。さらに同僚とは競争関係にあり、仕事の横取りや足の引っ張り合いが起きています。上司や同僚のサポートはとても少ないと言えます(職場の社会的支援)。そんな極限状況の中、青山はメンタル不調に陥ります。このように、仕事の要求度、仕事のコントロール、職場の社会的支援という3つの軸による3次元モデルによって、仕事のストレス要因とうつ病との関連が指摘されています(要求度-コントロール-社会的支援モデル)。この3つのポイントは、2015年から義務化されているストレスチェックにも反映されています。今回は、グラフ1のように分かりやすく2次元でご紹介します。ちなみに、医師は、専門職として裁量権や技量があり、仕事のコントロールは良い方に思われます。しかし、実際には、治療マニュアルに従っている点、急患や急変に即座に対応しなければならない点、詳しい説明などの医療サービスが患者からますます求められている点、医療ミスへの訴訟リスクがある点で、長時間労働と相まって、仕事のストレスはかなり高いと言えるでしょう。うつ病の予兆は?-表1青山は、夜眠れなくなります(不眠)。実家には1年半以上帰っておらず、電話口で心配する母親にきつく当たります(精神運動焦燥)。このように、職場のストレスによって、行動面、体調面、メンタル面で何かしらいつもの自分にはない症状が出てきた場合、それはうつ病の予兆と言えます。どの症状が出やすいかは、人によって違い、表1のようにあらゆる症状が出てきます。うつ病の診断基準は?-表2青山は、休日はぐったりして、恋人や友人と遊びに行く元気もありません(興味・喜びの減退)。彼は、ある日の仕事の帰り道、「人は何のために働くんだろう?」「もし生きるために働くんだとしたら、おれは生きているって言えるんだろうか?」(抑うつ気分)、「体が鉛のように重い。休みたい。眠りたい。もう疲れた」(疲労感)、「明日なんて来なくていい」と思います(希死念慮)。そして、駅のホームからやって来る電車にふらっと飛び込むのです(自殺企図)。青山は、ついにうつ病を発症したのでした。うつ病は、表2のように、濃いグレーの欄が1つ以上、濃いグレーと薄いグレー両方で5つ以上の項目が同じ2週間の間で当てはまっていれば診断されます。この表は、もともと精神科医師が使用するうつ病の診断基準(DSM-5)を、一般の医療関係者にも分かりやすいように簡便な表記にしています。診断の注意点は、希死念慮以外の症状が2週間の間で持続一貫していることです。逆に、時間や場所などの状況によって症状が改善していたり、そもそも基準の項目を満たしていない場合は、適応障害と診断されます。ただし、適応障害とうつ病は厳密に区別が付けられないことも多々あります。その理由は、症状の根拠が本人からの問診に大きく頼っていて客観性が乏しいこと、症状の程度が数値化されないので診断する医師の経験や裁量などの主観が入り込んでしまうこと、症状が時間経過によって変化することもあり固定していないことなどがあげられます。よって、初回の診断では、適応障害とうつ病を合わせて、「うつ状態」とする場合もあります。なぜ急に自殺するの?ちなみに、青山がメンタル不調になり、自殺をするまで病状が悪化するスピードはかなり早いです。なぜ病状の悪化は、徐々にではなく急速になのでしょうか?言い換えれば、なぜ急に自殺するのでしょうか? その答えは、もともと私たちの脳は、ある程度のストレスへの抵抗力(脆弱性)によって恒常性を維持していますが、そのしわ寄せとしてある程度以上のストレスがたまるとその恒常性が破綻してしまい、一気に症状が出てしまうからです(ストレス脆弱性モデル)。例えるなら、骨折です。骨は、ある程度までの力には耐えられますが、ある程度以上の力で折れてしまいます。うつ病は、「心の風邪」と例えられますが、むしろ「心の骨折」です。ある時、急に心が折れてしまうということです。そして、治るのにも時間がかかるということです。過労自殺とは?青山は、過労(長時間労働)を主とする職場のストレスによって自殺をしようとしました。このような自殺は、過労自殺と社会的に定義されています。現在、労働災害における労働と過労死・過労自殺の因果関係を認める過労死ラインは、時間外労働が半年間で月80時間以上、1か月で100時間以上です。この根拠の1つとして、時間外労働が増えれば、連動して必然的に睡眠時間が減ることです。そして、睡眠不足とメンタル不調には密接な関係があることです。NHKの「国民生活時間調査」によると、時間外労働が月80時間(1日4時間)に増えると睡眠時間が6時間に減り、月100時間(1日5時間)に増えると睡眠時間が5時間に減るということが分かっています。ちなみに、2017年に報道されたある研修医の過労自殺の場合は、1か月に160時間を超えていました。なぜ働き過ぎるの?-過労の心理-表3自殺しかけた青山を間一髪で助けたのは、幼なじみのヤマモトと名乗る男でした。青山は、その男を覚えていなかったのですが、ヤマモトの強引なペースに乗せられて、その後も一緒に時間を過ごすようになります。そして、青山は、冷静になり、自身の過労を自覚するようになります。そもそも彼はなぜ働き過ぎるのでしょうか? 言い換えれば、なぜ青山は過労自殺を避けられなかったのでしょうか?本来、人間を含む動物は、働いて(動いて)、疲れが出てきたら休みます。疲れとは、痛みや発熱と同じく、生物が生命を守るために体の状態や働きを一定にする保とうとするために進化した生体アラームの1つです(ホメオスタシス)。ところが、人間は、疲れても働き続けること(動き続けること)ができるようになりました。この人間特有の過労の心理を、主に3つ挙げてみましょう。(1)恐怖感青山は、上司に怒鳴られるのが怖くて、必死になって無理して残業をしています。そんな青山にヤマモトは「仕事辞めることと死ぬことはどっちの方が簡単なん?」「仕事、変えた方がえんちゃうか?」とアドバイスしますが、青山は「とにかく仕事辞めるのってそんな簡単なことじゃないんだって」と言い張ります。青山は、職場以外の人間関係がなく、視野が狭くなっており、「迷惑をかける」「居場所がなくなる」と怯えていました。1つ目は、恐怖感による過労です。他の動物と違って、人間は、パワーハラスメント(権力)や居場所(社会)を生み出す文明を進歩させました。このパワーハラスメントや孤立への恐怖に延々とさらされることによって、脳内ではノルアドレナリンが分泌され、恐怖感が得られます。そして、自律神経の交感神経が刺激されて、疲れを奮い立たせて、働き続けることが可能になりました。ただし、恐怖心は、被害的そして罪業的な感情を高めます。「嫌なら(怖いなら)辞めれば良い」と言う人がいますが、実際はそういうふうに割り切れないほどに理性が麻痺してしまうのです。(2)達成感青山は、上司から無理難題の業務を押し付けられた後に、「がんばれよ」と肩を叩かれて、目を輝かせています。そして、残業に励むのです。2つ目は、達成感による過労です。他の動物と違って、人間は、励ましや期待、感謝などの社会的報酬を交換する社会脳を進化させました。これらの報酬を定期的に受け取ることによって、脳内ではドパミンが分泌され、達成感や満足感が得られます。そして、疲れを感じにくくなり、働き続けることが可能になりました。「疲れが吹っ飛んだ」という表現がこれを端的に表しています。疲れが起こるのは自律神経の中枢(視床下部と前帯状回)であるのに対して、疲れを感じるのは前頭葉(眼窩前頭野)であり、一体ではないです。疲れは、「吹っ飛んだ」のではなく、一時的に感じにくくなっているだけで、蓄積し続けていきます。ちなみに、特に医師は、患者を救うというやりがいや感謝されるという喜びによって、この達成感による過労の心理が高まっていく危うさがあります。(3)快感青山の上司は、部下たちを怒鳴り散らしながら、ばりばり仕事をしています。どうやら仕事好きのようです。部下たちに過剰なノルマを課すのは正しいと信じています。3つ目は、快感による過労です。人間を含む動物は、天敵による手負いの極限状況で、その状況を切り抜けて生き残るために、一時的にその痛みや疲れを緩和させる防御反応を進化させました。過労もその極限状況の1つです。過労による苦痛を感じ続けることによって、脳内ではエンドルフィンやカンナビノイドなどのいわゆる「脳内麻薬」が分泌され、快感が得られます。そして、極限状態の疲れは緩和されるばかりか逆に快感になり、働き続けることが可能になりました。「疲れが心地良い」という表現がこれを端的に表しています。厳密には、これは、「心地良い」のではなく、心地良く感じることで最後の力を振り絞らせようとしている危うい精神状態であるということです。同じ現象は、私たちの様々な精神活動にもみられます。例えば、長距離ランナーが限界を超えた時に感じる「ランナーズハイ」、ダイエット中の人や摂食障害の人が飢餓状態で感じる「ダイエットハイ」「拒食ハイ」、境界性パーソナリティ障害の患者がリストカットした後に空虚感(心の痛み)が一時的になくなることなどです。ちなみに、快感による過労は、「ワーカホリック」「仕事中毒」とも呼ばれています。「ワーカホリック」は「アルコホリック(アルコール依存症)」が語源です。快感を得るために、その摂取や行為をするという点では、アルコール、ドラッグ、ギャンブルなどの依存症や摂食障害と同じメカニズムであると言えます。さらに、もっと言えば、労働から、スポーツ、勉強、ゲーム、セックスまで、私たちのあらゆる精神活動は、コントロールができなくなれば、依存症になりうると言えます。なお、現在、「ワーカホリック」は、DSM-5に掲載されていませんが、日本で過労自殺が続くなら、今後の改訂版で正式に依存症の一種として掲載されるかもしれません。なぜ働かせ過ぎるの?-過労をさせる心理ここまで働く側の心理を主に3つ考えてきました。ここからは働かせる側の心理も考えてみましょう。なぜ働かせ過ぎるのでしょうか? その過労をさせる心理を主に3つ挙げてみましょう。(1)がんばることは良いことだから青山の上司は、最多契約賞として一番優秀な部下を全員の前で表彰し、金一封を手渡します。そして、次のノルマをつり上げます(ストレッチゴール)。1つ目は、がんばることは良いことだからです。これは、江戸時代の封建社会から洗練されてきた日本独特の文化で、「気合い」「精神力」にも通じます。自分ががんばって我慢して世間(集団)の役に立つことを良しとする集団主義の文化です。よって、「長く働く人は偉い」、逆に言えば「残業をやらない人はやる気がない」という雰囲気になりやすいです。また、顧客の都合で突発的に「呼ばれたらすっ飛んで行く」という対応の方が、好ましく思われ、顧客満足度は高いでしょう。こうして、働かせる側は、残業や突発的な仕事があることを前提にして仕事のスケジュールを組み、働かせ過ぎることができます。そして、残業を無制限にさせられるように、従来からの日本の企業は、労働法の例外事項を拡大解釈しています(サブロク協定)。ちなみに、医師は、「病気という顧客の都合」により、「呼ばれたらすっ飛んで行く」ことが義務付けられている点で(医師の応召義務)、やはり働かせられ過ぎます。(2)首切りが難しく新しい人を雇いにくいから退職を申し出る青山に対して、上司は、「懲戒解雇しかねえからな!」などと脅しています。本当でしょうか?2つ目は、首切りが難しく新しい人を雇いにくいからです。日本の労働法は、労働者に保護的であり、使用者が解雇するハードルが極めて高いです。これは、「簡単に見捨てない」という集団主義の文化が根付いているとも言えます。だからこそ、繁忙期だからと言って人を増やさずに、残業を増やします。そして、閑散期に残業を減らします。一方、欧米は、繁忙期に人を増やし、閑散期に人を減らしています。言い換えれば、欧米では首切りがしやすいということです。こうして、働かせる側は、残業を繁閑の調整弁にすることで、働かせ過ぎることができます。裏を返せば、欧米に比べて、日本の残業制度は、労働者の雇用を安定させるという役割があります。ちなみに、医師は、医師不足によって新しく雇いにくいという点で、やはり働かせられ過ぎます。(3)仕事の範囲を広げられるから青山の部署は営業部ですが、他の部署への異動も可能です。3つ目は、仕事の範囲を広げられるからです。日本の労働文化は、働かせる側の命令の権限が大きく、仕事の範囲がどこまでも広がってしまうということです。例えば、仕事の内容や求められるスキルが違っていても、部署異動があります。能力の高い人や断らない人はより多くの仕事を任せられます。仕事が終わらない同僚や部署を手伝わせることもあります。これは、「会社も家族同様」という集団主義の文化の名残とも言えます。言うなれば、日本は「人に仕事をつける」ということです(メンバーシップ型)。一方、欧米は「仕事に人をつける」、つまり、仕事の範囲が最初から詳細な労働契約で決まっていて広げられないということです(ジョブ型)。このように、仕事の範囲に融通を効かせる点でも、首切りは、日本ではしにくく、欧米ではしやすいと言えるでしょう。こうして、働かせる側は、会社のメンバーの一員であることを口実に仕事の範囲を広げていき、働かせ過ぎることができます。だからこそ、企業の人事が採用する新人に一番求めるのは、もともとのスキルや経験よりも、「コミュニケーション能力」です。言い換えれば、求めているのは、無理な残業でも断らない「企業戦士」ということです。さらに、これを悪用しているのが、昨今話題になる新手のブラック企業です。急成長する会社の知名度を利用して、新人を大量に雇用して、従順で能力のある人だけを選別します。そして、残りの人を巧妙なパワーハラスメントによって自主退職に追い込みます。いわば実質的な大量解雇です。ちなみに、日本の医師は、欧米と違い、専門外の診療行為に制限が少ないため、診る患者の範囲を広げられる点で、働かせられ過ぎます。なぜ働き過ぎは良くないの?-過労のマイナス面青山は、ヤマモトに「ちょっと今から仕事やめてくる」と宣言して、怖い上司に自分のまっすぐな気持ちをひるまずに伝えます。そして「できれば部長も少し休んでください」と言う言葉を残して、職場を後にします。その帰り道、鞄をぶんぶん振り回してスキップしながら戻ってきます。彼の開放感が、軽やかに描かれています。彼は、働き過ぎないことを選んだのでした。一方、青山の上司なら「好きで働いてなぜ悪い」と言うでしょう。それも1つの価値観です。ただし、それを周りに強要する時代ではなくなってきているということです。なぜ働き過ぎは良くないのでしょうか? その過労のマイナス面を主に3つに挙げてみましょう。(1)メンタルヘルスの危うさ1つ目は、メンタルヘルスが危うくなることです。青山が過労自殺をしそうになったように、これは、過労死とともに最低限守るべき労働安全衛生であることは明らかです。これが、現在の情報化社会によって、うやむやにはできない状況になっています。(2)ワークライフバランスの危うさ2つ目は、ワークライフバランスが危うくなることです。時代の変化によって、仕事(ワーク)よりもプライベート(ライフ)に重きを置くバランスが求められているからです。例えば、男女共働きで家事育児の分担、少子高齢化で介護の負担、趣味や資格取得のための個人の時間などです。(3)雇用の活性化の危うさ3つ目は、雇用の活性化が危うくなることです。価値観の変化により、より多くの女性や高齢者も労働に参加することが望まれています。労働者市場は一定であると考えれば、従来の労働者が働き過ぎないことで、その不足分を新規に女性や高齢者が補う形で参入できるようになるはずです。なぜ働くの?-労働の心理ある日、青山がヤマモトについて調べると、何と3年前に自殺していたことが分かります。そのヤマモトに、青山は「人生は誰のためにあると思う?」と尋ねられます。「自分のため」「他にあるのか?」と答える青山に、ヤマモトは「おまえを大切に思っている人のためや」「おまえが死んで何もかんも終わりにできると思ってるかもしれんけど、そんなんたまらんわ。残された方はほんまにたまらんわ」と語ります。ヤマモトは一体何者なのでしょうか? その答えは、この映画を見て納得していただきたいと思います。そもそも私たちはなぜ働くのでしょうか? 確かに、自分のため、生活のため、生きるためです。もっと分かりやすく言えば、お金のためです。それにしても、果たしてそうでしょうか? その答えを進化心理学的に掘り下げてみましょう。原始の時代、私たちヒトは、体と同じく心(脳)も進化させました。それが先ほどにもご紹介した社会脳です。社会脳とは、家族を中心にして村(生活共同体)の中でうまくやって行くための能力です。そのシンボルとして、当時、頼られている者が周りの者から貝の首飾りの贈り物をもらいました。感謝の印です。つまり、貝の首飾りが多ければ多いほど、みんなとうまくやっているという信頼の証が得られたのでした。これが、お金(貨幣)の起源と言われています。つまり、本来のお金とは、信頼の象徴だったのです。しかし、現在、お金は富の象徴にすり替わって、一人歩きしています。よって、「なぜ働くの?」という労働の心理への究極的な答えは、「お金のため」「自分のため」を超えて、家族のためであり、自分と信頼関係を築きたい人のためであると言えます。これは、ヤマモトの答えにもつながります。どう働かせる?-表4これまで、過労の心理、過労をさせる心理、過労のマイナス面、そしてそもそもの労働の心理を詳しく見てきました。これらを踏まえて、今後、青山の会社や上司などの働かせる側はどうすれば良いでしょうか?  その対策を主に3つ挙げてみましょう。(1)ルールに基づいて働かせる1つ目は、ルールに基づいて働かせることです。ドイツやフランスでは、時間外労働に対してペナルティを課しています。日本も、ようやく働き方改革で、罰則付きで労働時間に制限を設ける方針を打ち出しています。こうして、仕事の要求度を減らし、職場のストレスを減らすことができます。ただし、医師は、医師法に基づく応召義務などの特殊性を理由に、現時点で適用除外対象になっており、今後も議論の余地があるでしょう。(2)風通し良く働かせる2つ目は、風通し良く働かせるです。まず組織のトップが、「過労は良くない」というメッセージを自ら発信し続けることです。そして、お互いに積極的に意見が言い合える関係作りをすることです(フラット型のコミュニケーション)。まさに、青山の上司とは真逆です。トップの発言や態度が、集団の規範となり、コミュニケーションのスタイルとなり、組織文化となります。「周りが仕事をしているのに帰りづらい」という横並びの負の同調圧力を減らすことができます。そして、時短勤務や在宅勤務などの多様な働き方をより受け入れることができます。こうして、仕事のコントロール感を増やし、職場のストレスを減らすことができます。(3)見極めて働かせる3つ目は、見極めて働かせることです。これは、労働量と労働時間の関係の「見える化」です。確かに、マニュアル通りではない仕事(非定型業務)は、状況や個人によって差があり、労働量と労働時間の相関関係を決めづらい面はあります。そうだとしても、この仕事に対してこのくらいの能力の人にはこのくらいの時間がかかるという労働力や労働時間の適正な相場をあえて見極め、示すことです。そうしないとどうなるでしょうか? 働かせる側は「時短だ」「定時に帰れ」と言って表向きには労働時間を減らしておきながら、納期やノルマなどの労働量はそのままにして、時間内に仕事が終わらないのは「能力がない」という理屈を押し付けることができます。すると、働く側は、「能力がない」と思われたくないために、タイムカード通りに帰宅せずに職場に居残る「サービス残業」をしたり、職場近くのカフェに移動して仕事を続ける「持ち出し残業」をしたり、自宅に持ち帰る「持ち帰り残業」をしたりするなど、隠れて残業をさせられるはめになります。これは、「時短ハラスメント」とも呼ばれています。「プレミアムフライデー」が広がらない理由はここにあります。また、仕事のやり方と時間配分を本人の裁量に任せる労働(裁量労働制)も危ういです。なぜなら、そもそも最初から過剰な労働量が設定されてしまえば、労働時間が不透明なだけに、より働かせ過ぎることができるからです。これは、逆に、労働の「見えない化」です。この「見える化」をあえてしない組織は、つまり働き方改革を逆手に取って悪用することで、残業代を支払わなくて良くなりコストカットしたことになるので、短期的には業績(生産性)を上げるでしょう。しかし、現代の高度な情報化社会の中で、これが明るみになるのに時間はそれほどかからないでしょう。つまり、長期的にはその組織は社会的信用を失い、人が集まらなくなり、業績は下がっていくでしょう。先ほどの原始の時代の社会脳の進化でも触れましたが、信用される、信頼されることこそが働くことの原点です。それは組織においても同じだからです。働かせる側は、「見える化」によって働く側の様子を理解していることが重要です。こうして、職場の社会的支援を増やし、職場のストレスを減らすことができます。どう働く?-表4それでは、働く側はどう働ければ良いでしょうか? ヤマモトの心がけを主に3つ挙げてみましょう。(1)余裕を持って働く給料や正社員であることに固執して自分を追い詰めている青山とは対照的に、ヤマモトは、「ニートやで」「いちおうアルバイト的なことはしてるで」「就職なんかせんでも、意外と生きていけるからな」と軽く言います。1つ目は、余裕を持って働くことです。時間や体力の余裕は、心の余裕を保ちます。その余裕の中で、どれくらい働いて、どれくらい余暇や家族との時間を過ごして、そしてどれくらい稼ぐのか、つまりどんな生き方(ライフスタイル)をしたいのかということに向き合うことです。そして、そのバランスを取るために、仕事を休む、辞めるという選択肢は常にあると考えることです。これは、働く側の「見える化」とも言えます。逆に言えば、余裕がない中、やみくもに働く時代ではなくなっています。こうして、仕事の要求度を減らし、職場のストレスを減らすことができます。(2)積極性を持って働く叱られまいと萎縮して受け身になって働く青山とは対照的に、ヤマモトは、明るいネクタイを勧め、笑顔でゆっくり話すこと、営業相手に寄り添い、懐に入ることを説きます。2つ目は、積極性です。これは、自分から積極的に先回りして動くことです。こうして、仕事のコントロール感を増やし、職場のストレスを減らすことができます。(3)やりがいを持って働くヤマモトは、青山を過労自殺から救い、彼の人生を大きく変えました。そして、青山に心の底から感謝されます。ヤマモトはお金では計り知れない大きな仕事をしたとも言えます。実は、ヤマモトは、すでにある場所でやりがいを見いだし、生き生きと働いていました。3つ目は、やりがいを持って働くことです。先ほどの原始の時代の社会脳の進化でも触れましたが、感謝されるやりがいこそが働くことの原点です。そして、仕事にやりがいを見いだすことで、信頼関係が生まれ、自分の居場所が見いだせます。こうして、職場の社会的支援を増やし、職場のストレスを減らすことができます。どう生きる?ラストシーンで、ヤマモトの居場所が、なんとバヌアツという外国の小学校であることが判明します。そこを尋ねた青山は、ヤマモトに「ここで、今度はおれがおまえを助けることができないかな?」と申し出ます。すると、ヤマモトは「最初はボランティアからやで」と微笑むのです。かつての狭く息苦しい青山の職場とは対照的に、抜けるような青空、海、そして子どもたちの絶えない笑顔があるバヌアツはまさに楽園です。青山は、ヤマモトのおかげで、働き方だけでなく、生き方も変えたのでした。ボランティアとは、ラテン語の「ボランタス(自由意志)」を語源としています。まさに働くことの原点です。確かに、ボランティアだけでは、生きて行くことは難しいでしょう。組織も個人も、お金(収入)は大事です。働き方改革のマイナス面として、個人も組織も収入を減らしてしまうおそれがあります。政府の成長戦略に連動しないおそれもあるでしょう。これは、個人、組織、政府のそれぞれにとって、あまりはっきりさせたくない不都合な真実でしょう。一方で、これからはAI(人工知能)の時代です。現在、機械化によって力仕事をする必要がなくなってしまったために、逆にお金を払ってスポーツジムで運動をする人がいます。同じように、近い将来には、AI化によって仕事自体をする必要がなくなってしまうために、逆に、お金を払って働く人が現れるかもしれません。これは、究極のボランティア精神と言えるでしょう。なぜなら、社会構造の変化(環境変化)に、私たちの心(脳)の進化が追いつくには、少なくとも何万年かは必要だからです。働き方を変えて収入を減らしたとしても、働かなくても良いAIの時代になったとしても、やはり働くことは自由意志であり周りとの信頼関係を強めることであるという原点に立ち返れば、私たちは、どう働くかを超えて、どう生きるかという問いへの答えも見いだすことができるのではないでしょうか?1)北川恵海:ちょっと今から仕事やめてくる、メディアワークス文庫、20152)日本産業精神保健学会編:職場のメンタルヘルス、南山堂、20113)大室正志:産業医が見る過労自殺企業の内側、集英社新書、20174)梶本修身:すべての疲労は脳が原因、集英社新書、20165)常見陽平:なぜ、残業はなくならないのか?、祥伝社新書、2017

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