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22001.

絵画編【ムンクはなぜ叫んでいるの?】

今回のキーワード統合失調症過敏性侵入性妄想性創造性合理性産業革命人工知能みなさんは、ムンクの「叫び」を見たことはありますか? その絵を見ているだけでゾクゾクしませんでしたか? 以前に、オークションで100億円近い値が付いたことでも話題になりました。やはりそれくらいの価値があるほど、私たちの心を揺さぶる何かがあるのでしょうか?今回は、有名な絵画のムンクの「叫び」を取り上げます。いつもとは違い、シネマではなく、絵画から学ぶメンタルヘルスをお送りします。テーマは、ずばり統合失調症です。実は、ムンクは統合失調症を発症していたという説が有力で、この絵はそのムンクの自画像です(編注:絵の解釈には諸説あります)。実際に、この絵には統合失調症にまつわる3つの特徴が垣間見られます。その特徴を脳科学的そして進化精神医学的に掘り下げ、統合失調症の本質に迫っていきましょう。際立ち-過敏性ムンクの日記によると、「日が沈んだ時、突然空が血のように赤く染まり」「フィヨルドと町並みが青黒く彩られた」とあります。実際の絵の色使いは、赤、青、黒を主として、その取り合わせがとても際立っていて、まぶしいです。1つ目の特徴は、周りの世界が際立っていると感じる、つまり過敏性です。これを統合失調症の症状として見ると、見えるもの全てを鋭敏に見てしまい、感覚が研ぎ澄まされている状態です(気付き亢進)。そこから、不安感や緊迫感が煽られています(緊迫困惑気分)。さらに、何かとんでもないことが起きそうな不気味な雰囲気を醸し出していきます(妄想気分)。それでは、なぜ際立つのでしょうか? ここから脳科学的に考えてみましょう。際立つとは覚醒度が上がることです。この覚醒度が上がるのは、いつもと違う状況(新奇場面)が刺激となり、脳内ではドパミンという神経伝達物質が分泌される時です。さらに、その覚醒度を保つために、同じく神経伝達物質であるグルタミン酸が分泌されます。その後に、覚醒が度を超えないようにするために、視床という脳領域で入力情報の感度を下げるフィードバックが働きます(視床フィルター)。つまり、覚醒度を燃え上がる火に例えると、脳が暖炉、新奇場面が薪、ドパミンは点火装置、グルタミン酸は給油装置、そして視床は薪の入る数を調節する暖炉の扉と言えます。ここで、これらの点火装置や給油装置が過剰に作動したり、扉が閉まらなくなったらどうなるでしょう? 勝手に燃え上がってしまいます。いつもと同じ状況なのにいつもと違う状況に様変わりしてしまい、際立っていると感じてしまいます。これが、統合失調症の原因と考えられています。過剰作動を起こす原因としては、もともとの遺伝負因、胎児期や乳児期の感染症(神経発達障害仮説)、思春期以降の心理社会的ストレスなどによる相互作用が考えられています。ちなみに、ドパミンが急性的に過剰分泌された場合、興奮状態になった神経細胞は、損傷を避けるために、一時的に神経伝達を遮断するメカニズムがあります(脱感作)。例えるなら、暖炉が壊れないように点火装置のブレーカーが一時的に落ちてしまうことです。これは、統合失調症で興奮状態から突如動かなくって、刺激に反応しなくなる症状です(緊張病)。一方、ドパミンが慢性的に過剰分泌された場合は、興奮状態になった神経細胞は、損傷を避けられず、変性していき、脳が萎縮していきます(残遺症状)。例えるなら、暖炉が燃やし過ぎで消耗してしまうことです。これは、統合失調症で、感情的に鈍くなり(感情鈍麻)、特に何をすることもなく(無為)、ひきこもって暮らす(自閉)など、本来あるべき能力が失われていく一連の症状です(陰性症状)。そもそもなぜ際立ちは「ある」のでしょうか? さらに進化精神医学的に考えてみましょう。10数億年前に太古の原始生物が誕生してから、エサが近くにあることが臭いや見た目で分かったら、ドパミンによって覚醒度を上げて、必死に近付くように進化しました。5億年前に魚類が誕生してから、天敵の気配などいつもと違う状況で、ドパミンによって覚醒度を上げて、早くに離れるように進化しました。境目のなさ-侵入性ムンクの日記によると、「血のような炎を吐く舌のような空が青黒いフィヨルドと町並みに覆い被さるようであった」とあります。実際の絵の構成は、輪郭が重なり合い大きくうねるような筆遣いで、中心に置かれる本人は周りに飲み込まれて溶けてしまいそうです。2つ目の特徴は、自分と周りの世界の境目がなくなると感じる、つまり侵入性です。これを統合失調症の症状として見ると、自分と他人の境目(自我境界)がはっきりしなくなり、自分は自分であるという実感がなくなることです(自我障害)。体がスケスケなのと同じように、心もスケスケに感じてしまい、自分の考えが漏れていると思うようになります(自我漏洩体験)。周りの人の視線が自分に迫ってくるようにもなります(被注察感)。さらには、何か得体の知れない誰かに自分が操られている感覚に陥ります(作為体験)。それでは、なぜ境目がなくなるのでしょうか? ここから脳科学的に考えてみましょう。境目とは自分と周り(他人)を区別することで、前頭葉(前部傍帯状皮質)が司っています。これは、周りを認知している自分を認知する、つまり認知していることを認知することでもあります(メタ認知)。ここで、先ほどの過敏性によって境目はどうなるでしょうか? 周りの世界を認知する感度が上がり過ぎてしまい、自分の想像(内的体験)への認知も周りの現実(外的体験)への認知と誤認知(偽陽性)してしまい、自分への認知と周りへの認知を区別する精度が落ちてしまいます。つまり、周りの世界を過剰に認識してしまうと、逆に正確には認識できなくなってしまい、境目がはっきりなくなってしまうということです。これは、検査の検出の感度と分類の精度(特異度)の相関関係です。例えるなら、教科書でテストに出そうな箇所に赤線を引く時、全てが出そうに思えて、全てに赤線を引いてしまうことです。すると、本当に出そうな箇所とそうでない箇所の区別ができなくなってしまいます。境目がなくなることで、想像も現実の体験の一部として認識してしまいます。そこから、自分が世界に侵入されてしまう感覚に陥ります。例えば、自分の考えたことが声になって聞こえます(考想化声)。やがてそれは他人の声として聞こえてしまいます(幻聴)。そう考えると、先ほどの誰かに見られているという感覚(被注察感)や、誰かに操られているという感覚(作為体験)のその誰かとは、実は他でもない自分自身であるということが理解できるでしょう。そもそも、なぜ境目は「ある」のでしょうか? さらに進化精神医学的に考えてみましょう。人類は、約700万年前にアフリカの森に誕生し、約300~400万年前に草原(サバンナ)に出てから、助け合い(協力)と競い合い(競争)の狭間で、相手の心を読む、つまり相手の視点に立つ心理を進化させてきました(心の理論)。この心理から、自分自身を離れて自分自身を見る視点を持つようになり、自分と周りの世界を区別できるようになりました。さらに、この視点を手に入れたことで、周りの世界をより良く知りたいという好奇心の心理(新奇希求性)も進化したと考えられます。だからこそ、私たちは、新しかったり珍しかったりする状況(新奇場面)でも過敏になるのでしょう。つまり、境目という心の理論、さらには好奇心という新奇希求性は、人間の生存に必要だから「ある」のでしょう。逆に言えば、人間以外のほとんどの動物は、境目が最初からないわけなので、自分と周りはもともと一体であり、境目がなくなる危うさをそもそも感じることはないと言えるでしょう。意味付け-妄想性ムンクの日記によると、「2人の友人と歩道を歩いている時、やむことのない自然をつんざくような叫びを聞いた」とあります。実際の絵の状況は、実はムンクは叫んでいるわけではなく、叫びに恐れおののき、耳を塞いで、かろうじて突っ立っているだけなのでした。3つ目は、周りの誰かまたは世界が叫んでいると意味付ける、つまり妄想性です。これを統合失調症の症状として見ると、自分の心の中(内的世界)の「叫び」を、現実世界の誰か(外的体験)の「叫び」として聞いたとしています(幻聴)。さらに、何となく不気味な気分(妄想気分)や、自分が自分ではなくなり自分の存在が危うく感じる体験(自我障害)から、世界が終わってしまうと感じてしまいます(世界没落体験)。もはや2人の友人も、黒服で得体の知れない存在に見えてしまい、監視しているか、尾行しているかとも思ってしまいます(被害妄想)。それでは、なぜ意味付けるのでしょうか? ここから脳科学的に考えてみましょう。意味付けとは、それぞれの体験について、ある程度抽象的で大まかな言葉に置き換えること、つまり概念化です。これは、言葉を聞き取る能力を司る感覚性言語中枢(ウェルニッケ野)と言葉を話す能力を司る運動性言語中枢(ブローカー野)が司っています。そうすることで、過去の体験と関連付けをして、記憶に残しやすくなります。ここで、先ほどの過敏性よって意味付けはどうなるでしょうか? 意味付けがされ過ぎてしまいます。例えば、テーブルに携帯電話が置いてあったとしましょう。たまたま置いてあっただけなのに、「なぜあるの?」とその意味を考えるようになります。そして、意味が分からないことに違和感を覚えるようになり、何気ないことを何気なく思えなくなり、当たり前のことを当たり前に思えなくなります(自明性の喪失)。つまり、意味付けは、され過ぎると、逆に失われてしまうということです。全ての出来事に意味を求めてしまい、クタクタになってしまいます。その刺激を避けるために、統合失調症の人は、早い段階でひきこもりになることがよくあります。また、間違った意味を見いだしてしまうと、論理の飛躍が起こります。それが先ほどの世界没落体験や被害妄想です。さらに、意味付けが極端になり自覚がなくなれば、意味のつながりが失われて、話すことにまとまりがなくなります(滅裂思考)。また、侵入性に意味付けをするとどうなるでしょうか? 侵入する対象として言語化します。それが、統合失調症の人がよく言う「得体の知れない巨大なもの」です。さらに、この表現は時代や文化によって変わります。例えば、日本なら、現代は「悪の秘密結社」「ヤクザ・暴力団」が多いですが、昔は「狐憑き」などが多かったでしょう。欧米なら、現代は「テロ集団」、昔なら「悪魔」が多いでしょう。そもそも、なぜ意味付けは「ある」のでしょうか? さらに進化精神医学的に考えてみましょう。人類は、約10~20万年前に、喉の構造を進化させて、複雑な発声ができるようになり、言葉を話すようになりました。そして、人だけでなく、自然環境や様々な自然現象を名付けることによって、世界を区切り、関係付け、説明しようとしました。こうして、シンボルを使って抽象的思考をする概念化の心理が進化したと考えられます。概念化によって、道具、建築、美術、音楽、文学、宗教、政治などの文化が爆発的に発展していきました(文化のビッグバン)。これが、創造性です。こうして、人は、その文化を、神話や言い伝え、民謡などの様々な方法で子孫に伝えることができるようになりました。人は、約5000年前に文字を発明して、ようやく原因と結果をつなぐ論理的思考(システム化脳)の体系が可能になりました。それが、科学であり、合理性です。ということは、そもそも創造性には合理性があるわけではないと言えるでしょう。もっと言えば、創造性と妄想は、同じ概念化の心理として合理性がない点では、コインの表と裏ということです。まさに、ムンクの絵もその1つです。つまり、意味付けという概念化は、人間の生存、さらには文化の継承に必要だから「ある」のでしょう。統合失調症はいつ生まれたの? -産業革命これまでの際立ち(過敏性)、境目のなさ(侵入性)、意味付け(妄想性)という3つの特徴から、統合失調症は人類の心の進化の歴史と密接にかかわりがあることがわかります。そして、統合失調症が世界中のどの国や地域でもほぼ一定の割合で発症することから、統合失調症の心理には普遍性がありそうです。それでは、統合失調症という病はいつ生まれたのでしょうか? 正確には言えば、病として目立つようになったのはいつでしょうか?その答えは、18世紀の産業革命であると考えられています。それまで、幻聴は「神のお告げ」または「悪魔の囁き」であり、妄想は「神の思し召し」または「悪魔の仕業」であり、自我障害は「神との一体化」または「悪魔の憑依」と解釈されていました。そして、実際にこのような症状を持つ人は、シャーマン(巫女)や信心深い信者として社会的に一定のステータスがあり、文化の一部として、社会に溶け込んでいたでしょう。ところが、産業革命によって、生産性や効率性などの合理主義や、貨幣経済や民主政治によってはっきり個人を区別する個人主義が広く世の中に広がっていきました。社会構造の変化です。すると、根拠のない不合理な言動を繰り返す幻覚妄想や、自分らしさ(アイデンティティ)が危うくなる自我障害はネガティブで困ったもの、つまり病として認識されるようになったのでした。実際に、現代でも、農村地域よりも工業化や都市化が進む地域ほど、そして発展途上国よりも先進国ほど、統合失調症は回復しにくいことが統計的に分かっています。つまり、発症率は変わらなくても、社会構造の違いによって、回復率は変わるということです。統合失調症はどこに行くの? -人口知能創造性・妄想を生み出す概念化の心理が進化したのが10~20万年前に対して、産業革命により合理性に重きを置くように社会構造が変化したのはたかだか200年前です。つまり、創造性・妄想の心理の進化の歴史の方が、合理性の心理よりも圧倒的に長いと言えます。つまり、私たちは合理的であろうとしていますが、人類の心の進化の歴史から考えると、そこまで合理的ではないということです。さらに、これからはAI(人工知能)の時代です。近い将来には、合理的なことはほとんどAI化されるというさらに新しい社会構造への変化が予想されます。そうなると、私たちは、もはや合理的であることを追求する必要がなくなってしまいます。むしろ逆です。そもそも私たちに不合理な心理もあることを生かして、これからはその不合理さを楽しむ創造性が求められるでしょう。そう考えると、私たちは、ムンクの「叫び」から統合失調症の世界観を疑似体験する危うさと魅力を知るだけでなく、そこから私たちの創造性をくすぐりかき立てる何かがあり、そこに大きな価値があることをよく理解することができます。そして、AI化された将来の社会構造で統合失調症の創造性に再び目が向けられる時、もはや統合失調症は病ではなく、個性や多様性の1つになっているのではないでしょうか?1)井村裕夫:進化医学、羊土社、20132)臨床精神医学、心の進化と精神医学、アークメディア、2011年6月号3)岡田尊司:統合失調症、PHP新書、2010

22002.

統合失調症に対するスタチン併用療法のメタ解析

 統合失調症の陰性症状に対するスタチン併用療法のベネフィットに関しては、相反する結果が報告されている。中国・南京医科大学のHong Shen氏らは、統合失調症の精神症状改善のために、スタチン併用療法が有用であるかについて検討を行った。Psychiatry research誌オンライン版2018年2月5日号の報告。 CENTRAL、PubMed、Embase、MEDLINEよりデータを検索した。検索に使用したキーワードは、スタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、lovastatin、mevastatin、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、cerivastatinおよび統合失調症、統合失調感情障害、精神病とした。包括基準は、統合失調症成人患者を対象とし、PANSSまたはSANSスコアにて評価を行った抗精神病薬とスタチンまたはプラセボのランダム化比較試験(RCT)とした。データの無い報告、同一研究による複数の報告は、除外対象とした。スタチン併用療法の有無にかかわらず、統合失調症患者の精神症状を比較するため、メタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・6件のRCTより、339例(治療群:169例、プラセボ群:170例)が抽出された。・全体的な効果については、スタチン併用療法を実施した患者において、PANSSの陽性および陰性症状スコアの有意な低下が認められた。 著者らは「本メタ解析により、スタチン併用療法は、精神症状(陰性症状または陽性症状)を改善可能であることが初めて明らかにされた」としている。■関連記事慢性期統合失調症、陰性症状に有効な補助療法統合失調症への補助療法、その影響は:昭和大認知症にスタチンは有用か

22003.

エーザイ株式会社とMerck、レンビマでがん領域戦略的提携

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役 CEO:内藤晴夫)とMerck & Co., Inc.Kenilworth, N.J., U.S.A.(Chairman and CEO:Kenneth C. Frazier)は2018年3月8日、エーザイ創製の経口チロシンキナーゼ阻害薬レンバチニブ(商品名:レンビマ)を全世界で共同開発・共同販促する戦略的提携について合意したと発表。本契約に基づき、両社は、レンバチニブの単剤療法、ならびにMerck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.の抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)との併用療法における、共同開発と共同販促を行う。 レンバチニブとペムブロリズマブの併用療法については、2017年12月に米国食品医薬品局(FDA)より、進行性または転移性腎細胞がんの適応でブレーク・スルーセラピーの指定を受けている。また、両社共同で実施中の複数の固形がんを対象とした臨床第Ib/II相試験(111試験/KEYNOTE-146試験)における、子宮内膜がんと腎細胞がんの中間結果では、治療歴やPD-L1発現の有無など患者様背景に関わらず、奏効率における顕著な相乗効果が示唆されている。 本提携により、エーザイと Merck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.は、レンバチニブとペムブロリズマブとの併用療法に関して、6がん種(子宮内膜がん、非小細胞肺がん、肝細胞がん、頭頸部がん、膀胱がん、メラノーマ)における治療歴に応じた11の適応取得を目的とした臨床試験に加え、複数のがん種に対するバスケット型試験を共同して速やかに開始するとしている。

22004.

認知症と自動車運転~高齢ドライバー5万人の診断にどう対処するか

 2017年3月の道路交通法改正により、75歳以上の高齢者ドライバーが運転免許証を更新する際、「認知症のおそれがある」と判断された場合、すべて専門医または主治医の診断(臨時適性検査)を受け、診断書を提出しなければならなくなった。高齢者による交通事故防止のため、認知症対策がより強化されたこの新制度により、医師による臨時適性検査および診断書作成の対象者は、5万人にまで膨れ上がっている。 法改正から1年。本稿は、先日開かれた日本精神神経学会のプレスセミナーで、池田 学氏(大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室)が、医療現場の現状と今後の見通しについて述べた内容をまとめたものである。かかりつけ医にも求められる認知症診断 2017年3月12日に施行された改正道路交通法により、新たな制度がスタートした。すべての75歳以上のドライバーを対象に、3年に1度の免許証更新時に認知機能検査を実施し、第1~3分類に分ける。このうち、第1分類(認知症のおそれがある者)に該当する人は5万人程度。旧制度では、診断書を求められるのが一定期間内での違反者や事故を起こした人に限定されていたため、年間おおむね1,200~1,500人程度だったが、新制度では認知機能検査で第1分類に該当した時点で、違反や事故の履歴に関係なく、運転をやめるか、医師の診断書を提出するか、どちらかを選択しなければならない。つまり、全員が運転継続を望むとすれば、第1分類に該当する5万人が診断書作成の対象となる。現在、認知症関連学会員(認知症診療の専門医)の数は約2,000人である。当然のことながら、専門医のみで対応できる人数ではないため、かかりつけ医にも診断を求めざるを得ないのが現状である。運転継続か返納かを決める難しい判断と曖昧な境界 現場の医師が最も迷うのが、軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)か、初期段階の認知症かの見極めである。軽度認知障害であれば運転は続行できるが、認知症と診断された場合には、原則として運転免許証を返納しなければならない。したがって、両者いずれかの判断が重要となってくるが、きわめて流動的で、専門医であっても線引きは非常に難しいところである。 例えば「健忘型MCI」の場合、物忘れに関しては同年齢と比べても明らかで、本人も自覚しており、周囲の家族も気付いているケースが多い。しかし、それ以外の認知機能は正常範囲で、日常生活動作(ADL)は必ずしも障害されていないというのがポイントである。ただ、MCIが認知症に移行するリスクは確実に高く、1年で10~15%がアルツハイマー型認知症に移行することもこれまでの研究でわかっている。 老年期のうつ病との鑑別も重要である。壮年期のそれとは異なり、抑うつや悲哀などの訴えは主ではなく、心気的、身体的な訴え(肩こりや頑固な便秘、全身倦怠、睡眠障害など)が多いのが特徴で、悪化するとほぼ必発で認知機能の障害を伴う。しかしこれはあくまでも仮性認知症であり、免許更新時の診断には、こうした人を慎重に除外しなければ重大なミスにつながりかねないので注意が必要である。半数以上が「6ヵ月後の診断書」判断に 公安委員会に提出する診断書では、(1)アルツハイマー型認知症、(2)レビー小体型認知症、(3)血管性認知症、(4)前頭側頭型認知症、(5)その他の認知症(慢性硬膜下血腫など治療可能な疾患。6ヵ月後に要再検査)、(6)軽度認知障害、(7)認知症ではない、のいずれに該当するかを判断する。その際、ミニメンタルステート検査(MMSE)または改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)による認知機能検査を必ず実施し、検査が実施できなかった場合にはその理由を明記しなければならない。さらに、可能な限り画像検査を実施し、所見を記入することも求められている。つまり、限りなく専門医の診断書に近い様式となっており、専門外の医師にとってはかなりの負担であろう。 警察庁が取りまとめた改正法施行から半年時点でのデータによると、認知機能検査で第1分類に該当し、医師の診断を受けて免許取り消しや停止になった人は全体の9.3%、条件なしで免許証の所持を継続できた人が22.2%、そして6ヵ月後の診断書提出となった人は56.6%にも上った。この結果から、いかに多くの医師が診断に迷っているかがわかる。この中には治療可能な疾患の人もいるが、MCIか初期の認知症かの判断に迷うため、6ヵ月後に再検査となったケースが相当数あるとみられる。こうした「判断の先送り」が経年的に累積していけば、今後の大きな問題になる懸念があり、次善策を講ずる必要がある。 高齢者ドライバーの中には、免許更新の検査で初めて認知症疑いが指摘されるケースも少なくない。これを前向きに捉え、早期発見・治療の機会と考えられれば良いが、一方で患者は診断名を告げられる心の準備ができていない状況であるため、非常にセンシティブな問題をはらんでいる。かかりつけ医の場合には、これまで経験していない対応を迫られる機会が今後増えることも予測される。このため、日本医師会がかなり詳細な対応マニュアル(かかりつけ医向け認知症高齢者の運転免許更新に関する診断書作成の手引き)を作成しており、診断の際の参考にしてほしい。9割近くが新制度認識するも、ほとんどが臨時適性検査は未経験 ケアネットでは、昨年の道路交通法改正について、会員医師にアンケート調査を行った(内科医および精神科/心療内科医を対象に、2017年3月8~9日、インターネット上で実施。有効回答数500)。 このうち、「75歳以上の高齢者ドライバーが運転免許証を更新する際、認知機能検査において『認知症のおそれがある』と判断された場合、過去の違反・事故歴の有無を問わず、すべて専門医または主治医の診断(臨時適性検査)を受けなければならない」という新たな制度については、86%(430人)が認識していた。 また、「昨年3月の法改正以降、75歳以上のドライバーの免許更新に伴う臨時適性検査を実施した患者数」については、「0人」(76.8%)が最も多く、以下、「1~5人」(14.8%)、「6~10人」(3.2%)、「11~20人」(2.4%)、「31人以上」(1.6%)、「21~30人」(1.2%)となった。今回の調査では、大半の医師が臨時適性検査について未経験だった一方、この1年間で検査を実施した患者数が、すでに200人を超えているという人もわずかながらいた。

22005.

プライマリケアからのPSA検査の紹介は有益か/JAMA

 プライマリケア施設における前立腺特異抗原(PSA)検査の紹介は、前立腺がんの検出率を改善するが、前立腺がん特異的な10年死亡には影響を及ぼさないことが、英国・ブリストル大学のRichard M Martin氏らが行ったCAP試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年3月6日号に掲載された。PSAスクリーニングは、過剰検出と過剰治療による弊害が、死亡リスクの低減またはQOLのベネフィットを上回る可能性があるため、議論が続いている。573施設、40万例以上のクラスター無作為化試験  CAPは、PSA検査を用いたスクリーニングによる単回介入が、前立腺がんの検出および前立腺がん特異的死亡に及ぼす効果を評価するプライマリケア・ベースのクラスター無作為化試験(Cancer Research UKなどの助成による)。 2001~09年の期間に、イングランドとウェールズの99地域のプライマリケア施設が、年齢50~69歳の男性患者について、PSA検査を受けるために検査施設を紹介する群(介入群)または標準的な診療のみを行う群(対照群)に無作為に割り付けられた。介入群のうち、検査結果がPSA値≧3ng/mLの患者には前立腺生検を行うこととした。 主要アウトカムは、フォローアップ期間中央値10年時の前立腺がん特異的死亡であった。副次アウトカムは、同定された前立腺がんのStageおよびGleason分類(2~10点、スコアが高いほど予後が不良)、全死因死亡、操作変数分析によるPSA検査施設の受診と前立腺がん死の因果関係などであった。フォローアップは2016年3月31日に終了した。 911施設が無作為化の対象となり、573施設(73%、介入群:271施設、対照群:302施設)が解析に含まれた。無作為化の対象となった41万5,357例の男性のうち、40万8,825例(98%、介入群:18万9,386例、対照群:21万9,439例)について解析を行った。住民ベース・スクリーニングに単回PSA検査は支持されない  ベースラインの年齢中央値は、介入群が58.5歳(IQR:54.3~63.5)、対照群は58.6歳(54.3~63.5)であり、都市部の居住者の割合は両群とも86%であった。 介入群のうち、実際にPSA検査施設を受診したのは7万5,707例(40%)で、PSA検査を受けたのは6万7,313例(36%)であり、適切な検査結果が得られたのは6万4,436例であった。このうち6,857例(11%)がPSA値3~19.9ng/mLであり、前立腺生検を受けたのは5,850例(85%)だった。 フォローアップ期間中央値10年時に、介入群の549例(0.30/1,000人年)、対照群の647例(0.31/1,000人年)が前立腺がんで死亡し、両群の前立腺がん特異的死亡率に、有意な差は認めなかった(死亡率の差:-0.013/1,000人年、95%信頼区間[CI]:-0.047~0.022、死亡率比[RR]:0.96、95%CI:0.85~1.08、p=0.50)。 一方、前立腺がんと診断された患者の割合は、介入群が4.3%(8,054例)と、対照群の3.6%(7,853例)に比べ有意に高かった(RR:1.19、95%CI:1.14~1.25、p<0.001)。また、Gleasonスコア≦6の低リスク前立腺がんの同定の割合は、介入群が1.7%(3,263/18万9,386例)と、対照群の1.1%(2,440/21万9,439例)に比べ有意に高かった(1,000例当たりの差:6.11、95%CI:5.38~6.84、p<0.001)。 全死因死亡数は、介入群が2万5,459例、対照群は2万8,306例であり、両群間に有意な差は認めなかった(RR:0.99、95%CI:0.94~1.03、p=0.49)。また、操作変数分析では、アドヒアランスで補正した因果関係のRRは0.93(95%CI:0.67~1.29、p=0.66)であり、PSA検査施設への受診が前立腺がん死を抑制するとのエビデンスは得られなかった。 著者は、「より長期のフォローアップを進めているが、これらの知見は住民ベースのスクリーニングにおける単回PSA検査を支持しない」としている。

22006.

NASHの肝脂質を迅速かつ有意に減少した新薬/Lancet

 NGM282が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)において、容認できる安全性プロファイルで肝脂質を迅速かつ有意に減少したことが報告された。英国・オックスフォード大学のStephen A. Harrison氏らによる第II相試験の結果で、Lancet誌オンライン版2018年3月5日号で発表された。NGM282は、胆汁酸合成とブドウ糖恒常性を調節する内分泌消化管ホルモンFGF19の、非腫瘍形成性異型として開発された組み換えタンパク質である。NASHには現状、米国FDA承認の治療は存在しないが、今回の結果を踏まえて著者は、「NGM282のNASH治療の安全性と有効性についてさらなる探索を支持するものであった」としている。第II相試験で肝脂肪分の絶対変化について検討 試験は2015年7月14日~2016年8月30日に多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照にて、オーストラリアと米国の、病院および消化器/肝クリニック18ヵ所で、生検によりNASHと確認された18~75歳の患者を集めて行われた。NASHの定義は、臨床研究ネットワークの組織学的評価法に準拠。主な適格基準は、疾患活動度がスコア4以上、線維化ステージ1~3、肝脂肪分8%以上であった。 被験者は、ウェブベースシステムを介して1対1対1の割合で無作為に、3mgまたは6mgのNGM282皮下投与を受ける群とプラセボ群に割り付けられた。糖尿病の状態による層別化も行われた。 主要エンドポイントは、ベースラインから12週時点までの、肝脂肪分の絶対変化。奏効者の定義は、MRI-PDFF(proton density fat fraction)測定で、肝脂肪分の5%以上の減少を達成したことが認められた患者とし、intention to treat法にて有効性を解析した。3mg、6mg投与群ともにプラセボと比較し、12週で5%以上の減少を有意に達成  166例がスクリーニングを受け、82例が無作為化を受けた(3mg群27例、6mg群28例、プラセボ群27例)。 12週時点で、3mg群20例(74%)、6mg群22例(76%)が、奏効者の定義を満たした。プラセボ群は2例(7%)で、相対リスク(RR)は、3mg群 vs.プラセボ群が10.0(95%信頼区間[CI]:2.6~38.7)、6mg群 vs.プラセボ群は11.4(同:3.0~43.8)であった(両比較ともp<0.0001)。 全体で、76/82例(93%)が少なくとも1つの有害事象を経験したが、Grade1の有害事象が最も多く(55例[67%])、Grade3以上はわずか5例(6%)であった。最も多かった有害事象は、注射部位反応(28例[34%])、下痢(27例[33%])、腹痛(15例[18%])、悪心(14例[17%])。また発生頻度は、プラセボ群よりもNGM282投与群で高かった。

22008.

侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第55回

第55回:重篤な患者とのコミュニケーションで役立つ3つの「W」キーワード肺がんメラノーマ動画書き起こしはこちらダートマス大学 腫瘍内科の白井敬祐です。今回お話ししたいと思うのは、前に少し触れた、“Serious Illness Conversation”ガイドラインです。重篤な病気になったときに、どういう話をすれば良いのか、ということを『Compication』とか『Checklist』とか『Being Mortal』という本で有名な、ハーバード大学の外科医であるAtul Gawande氏が主催する財団の1つの取り組みなのですが、重篤な病気になった時(心不全だったり、心筋梗塞だったり、COPDの末期だったり、必ずしもがんである必要はないんですけれども)、どのようにしたら、もっと良い準備をしてもらえるかといいうことで、オペ室で外科医あるいは看護師さんがチェックリストを使うのと同じように、そういった会話にもガイドラインがあれば、医療者側も患者さんも家族もストレスを減らしながら、かつ大事な要点を網羅しながら、話ができるんじゃないか、ということで進められているプロジェクトです。腫瘍内科は、Stage 4、根治が望めない患者さんに話をすることも多いので、そういう話を上手く持っていこうということです。それをいかにフェローに教えるか、インストラクターのためのワークショップが、先月ありました。病院から離れたところで、1日こもって、ポケベルは残念ながら鳴るんですけれども、そういうところに離れて、みっちりとワークショップをしたので、そのことについてお話しをしたいと思います。リーダーは2人の緩和医療ドクターです。夫婦2人とも“緩和医療 命”みたいな感じの仲の良い夫婦なんですけれども、その2人がコーチになって、肺がん専門の医者2人、消化器の専門の医者1人、頭頸部がんの専門家1人の計4人が選ばれて、本当のムースのはく製が飾ってあるような、山小屋に閉じ込められて、1日話をしました。たとえば「もし上手くいかなかったらどういうふうにしたいですか」とか「(バケットストとアメリカではよく言うんですけども)あなたの残された夢は何かありますか」「家族に言いたいことあれば、どんなことですか」とか。医療者側が、その話をするはタイミングが難しいんですね。治療が上手くいっていると、その話には触れにくいし、治療が上手くいってないと、逆にその話がメインになってしまって、準備をするというところまで行かないことも多いです。そういったタイミングを探さなくても、こういうマニュアルや、このリストに沿って話をしましょうと(いうことです)。面白いところは、このリストは、患者さんに見せても良いということになっています。たとえば、患者さんや家族の強みであったり、心配されてることとか、そういうトピックを選びながら「今日はこの話をしましょう」と話すことで、お互いにある程度心の準備ができるので、比較的ストレスが減るのではないかと(いうことです)。もしストレスが減れば、100%にはならないにしても、現在言われてよりは多くの人が、そういった会話に入れるのではないか、という趣旨で始められた企画です。ここで覚えてもらいたいのは、2つの“W、W、W”(です)。(まず)患者さんに話すとき、上手くいかなかった時の“Wish、Worry、Wonder”です。“I wish”ステートメントは、上手くいって欲しかったんだけど、残念がら上手くいかない、そうしたら「I worried、私はあなたのことを心配しています」、「あなたのことを考えてますよ」というメッセージを出して、「I wonder」と進めるんですね。たとえば、患者さんが、もっとアグレッシブなことを望んでおられるときに、医療者から見て、むしろ症状の緩和のほうに力を入れたほうが良いと思ったときには、「I wonder」から始めて、話を進める。“Wish、Worry、Wonder”というステートメントは、迷ったときに非常に便利だと思います。このガイドのミソは、詰まった時に助け船になってくれる(ことです)。患者さんもその逆にそのリスト見ながら、「今、こういうところに会話はあるんだな」と確認できるというメリットがあります。もう一つの“W、W、W”。これはSerious Illness Conversation”ガイドを、フェローや学生に教える時に(使います)。患者さんの気持ちに、ちょっと寄り添えていなかったり…あるいは僕たちがよく説明する時に言うんですけれども…インスリンの量も血糖値が変わると変わりますよね、それと同じように、われわれのコミュニケーションの仕方も、患者さんの反応の仕方によって調節する必要があると。ともすると、「いや、ここはこうしたほうが良かった」「僕ならこうするよ」っていうアドバイスから入りがちなんですけど、どんなフィードバックでも“W、W、W”で始めなさいということを徹底されました。今日も外来で研修を受けた同僚に「How was your WWW? 」とか冗談を言っているのですけれども、それは何かというと“What went well? ”です。「どうしたら良かったのか」とか「もっと上手くできなかったか」とネガティブなことを聞くのではなく、「どこが上手くいったと思う? 」と問いかけることで、教えられる側も改善点がないか考えるきっかけになる。上手くいったというところから始めることで、上手くいかなかったところにも気が付いてもらいやすい(ということです)。“What went well? ”ステートメント、よろしければ明日からの、研究医やスタッフとの会話に冗談で使ってみても良いかも知れません。 (ところで、)ダートマス大学はビジネススクールが有名で、Ron Adnerという教授がいるんですけれども、彼は(日本語訳にもなっている)『Wide Lens』という本を出しています。会社というのは良い製品ができると「これは絶対に市場に受け入れられるはずだ」と、そこばかりを追求して、結局上手くいかないことがあると(言っています)。それはなぜかというと、商品は良くて、それを手にする消費者が喜んでも、流通や小売店など、すべての場所でメリットがないと上手くいかないと(いうことです)。視野を広く持たないと、死角ができて失敗する。Wide Lensを持つことで、できるかぎり失敗を減らせるのではないか、ということを書いたビジネス書なのです。なぜスチーブ・ジョブス(のiPod)は成功して、ほかのMP3プレーヤーが失敗したのかとか、(医療カルテは米国ではEpicという会社が独占しているのですが)GoogleやIBMやOracleオラクルといった大会社も電子カルテにか関わっていたのに上手くいかず、なぜ小さなEpicがのし上がったのか、ということも解説しているので、興味があったら読んでみてください。(前出の)Atul Gawandeが、その『Wide Lens』を読んで共感したようで(広く見ることで、死が運命付けられたような病気にかかったときに、そういう会話を上手くできるということですね)、Ron Adnerにコンタクトを取ってきて、今度話をするみたいです。ちょっとその話を教えてもらいたいと思います。なぜRon Adnerなのかというと、娘が高校の水泳部に入っていて、車で送り迎えをするのですが、その時の待ち友達の1人が、Ron Adnerです。Atul Gawande著 ComplicationAtul Gawande著 The Checklist Manifesto: How To Get Things RightAtul Gawande著 Being MortalThe Conversation ProjectRon Adner著 The Wide Lens

22009.

4年間の記憶喪失はウソだった1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第111回

4年間の記憶喪失はウソだった1例 いらすとやより使用 2回続けて精神医学の論文を紹介しますが、とくに他意はありません。今回紹介するのは、詐病の1例です。「詐病って病気じゃないじゃん」と言われるとそれまでなんですが、ミュンヒハウゼン症候群とは異なり、扱いにくいですよね…。 上島 国利.全生活史健忘を装った詐病の1例精神医学. 1975;17:455-461.これは今から40年以上前の論文です。私なんてまだ生まれていませんよ。さて、“全生活史健忘”というのは、自分の名前、生い立ち、自分に関する何もかも、すべての記憶を失うことを指しています。皆さんは、ピアノマンって覚えていますか? 以下、Wikipediaからの引用です。「2005年4月8日、イングランドのケント州シアネスの浜辺で、びしょ濡れの黒いスーツとネクタイ姿の20代から30代男性が発見された。病院に収容されたが、記憶喪失だったのか、いくつかの言語で話しかけても一言も話さなかった。また、衣服からラベルが取られており、身元を証明する物が何一つなく、個人情報が一切不明であった。病院の関係者が男性に鉛筆と紙を渡したところ、精緻なグランドピアノの絵を描いた。そこで男性にピアノを弾かせてみると、上手に演奏した。ピアノ演奏が上手かったことから、[ピアノマン]と呼ばれるようになった。」「ピアノマン」(2017年9月17日(日)12:37 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』。これって紛れもなく全生活史健忘なんですよね。ですが、その後、本当に全生活史健忘だったかどうか怪しいという意見が出ており、いまだに真実は謎のままです。全生活史健忘のすべてが詐病だとは思いませんが、そういった詐病例が存在するのも事実です。通常、全生活史健忘は比較的短期間で記憶を取り戻すことが多いとされています。早ければ数日以内、長くても1ヵ月くらいでしょうか。ただ、全生活史健忘と詐病の鑑別はきわめて困難です。この精神医学の症例は、当時の精神衛生法により強制入院となった男性が、4年にわたって何ら記憶を呼び起こすことができないというものです。しかし、彼はとんでもないことを口にしました。「ええっと…、実は最初から全部ウソでした。住所氏名、生活史のすべてを最初から知っていました…」と。ええええええ! ウソやったんかーい!関わった人たちは何とも言えないため息をつくしかありませんが、こういう詐病例も紛れているので、全生活史健忘を診る場合には注意が必要かもしれませんね。まぁ、私のような内科医が診ることはないでしょうが。それにしても、彼にとってこの4年間は一体何だったのか…。

22010.

乳がんの手術方法とうつ病発症に関するメタ解析

 術後の平均期間1年以上の乳がん女性において、異なる術式により、うつ病の発症率に違いがあるかについて、中国・上海交通大学医学院のChengjiao Zhang氏らが、文献のシステマティックレビューとメタ解析を実施した。World journal of surgery誌オンライン版2018年2月9日号の報告。 PubMed、Web of Science、EMBASE、OvidSP、EBSCO、PsycARTICLESより、システマティックに文献検索を行った。異なる術式群におけるうつ病発症率を比較し、経験的な所見を確認した観察的臨床研究を行った。 主な結果は以下のとおり。・乳がん患者のうつ病に関する研究は、乳房全摘術と乳房温存術の比較研究5件、乳房全摘術と乳房再建術の比較研究4件、乳房温存術と乳房再建術の比較研究2件、すべての術式の比較研究5件の合計16件であった。・乳がん女性のうつ病に関して多変量解析を実施した5件中、うつ病発症に対する術式の有意な影響が認められた研究は1件のみであった。・本メタ解析の結果では、いずれの術式においても、うつ病発症に有意な影響は認められなかった。 ◆乳房温存術 vs.乳房全摘術(相対リスク:0.89、95%CI:0.78~1.01、p=0.06) ◆乳房再建術 vs.乳房全摘術(相対リスク:0.87、95%CI:0.71~1.06、p=0.16) ◆乳房温存術 vs.乳房再建術(相対リスク:1.10、95%CI:0.89~1.35、p=0.37) 著者らは「術後の平均期間1年以上の乳がん患者において、うつ病の発症に、3つの術式(乳房全摘術、乳房温存術、乳房再建術)による統計学的に有意な差は認められなかった」としている。■関連記事がん患者のうつ病を簡単にスクリーニングするには抗うつ薬治療は乳がんリスクに影響しているのか抑うつ症状は、がん罹患有無に関係なく高齢者の死亡に関連

22011.

脳卒中再発予防に望ましいLDL-C値は? J-STARS事後解析

 脳卒中の再発を予防するために望ましいLDLコレステロール値を調べるために、J-STARS研究(Japan Statin Treatment Against Recurrent Stroke、脳血管疾患の再発に対するスタチンの予防効果に関する研究、多施設共同無作為化非盲検並行群間比較試験)の事後解析が実施された。その結果、スタチン使用について調整後、無作為化後のLDLコレステロールが80~100mg/dLの群で、脳卒中および一過性虚血発作の複合リスクが低いことが示された。Stroke誌オンライン版2018年3月6日号に掲載。 本解析では、被験者(n=1,578)を無作為化後最終観察までのLDLコレステロールの平均値で20mg/dLごとにグループ分けした。ベースライン時LDLコレステロール、ベースライン時BMI、高血圧、糖尿病、スタチン使用について調整し、調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を各グループについて分析した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化後最終観察までのLDLコレステロールは、プラバスタチン群で104.1±19.3 mg/dL、対照群で126.1±20.6mg/dLであった。・脳卒中および一過性脳虚血発作、全血管イベントの調整HRは、無作為化後LDLコレステロールが80~100mg/dLのグループで低かった(傾向のpはそれぞれ0.23、0.25)。・アテローム血栓性梗塞に対する調整HRは、ベースライン時LDLコレステロール値を調整後、スタチン使用により有意に減少した(HR:0.39、95%CI:0.19~0.83)。・アテローム血栓性梗塞、頭蓋内出血の調整HRは、無作為化後LDL-コレステロール値によるサブグループ間で類似していた(傾向のpはそれぞれ0.50、0.37)。・ラクナ梗塞の調整HRは、無作為化後LDLコレステロールが100~120mg/dLのグループで低かった(HR:0.45、95%CI:0.20~0.99、傾向のp=0.41)。

22012.

小児喘息の悪化初期に吸入ステロイド5倍量、その結果は?/NEJM

 小児の軽・中等症持続型喘息患者において、吸入ステロイドによる維持療法中に喘息コントロール悪化の初期徴候を認めた場合、吸入ステロイドを5倍量としても重症喘息増悪の発生率は低下せず、その他の喘息に関する評価項目の改善も確認されなかった。米国・ウィスコンシン大学のDaniel J. Jackson氏らが、STICS(Step Up Yellow Zone Inhaled Corticosteroids to Prevent Exacerbations)試験の結果を報告した。吸入ステロイドなどの喘息管理薬を定期的に使用していても、しばしば喘息増悪が起こり、臨床医は、喘息コントロール悪化の初期徴候を認めると吸入ステロイドを増量することが一般的である。しかし、この戦略の小児に対する安全性/有効性は明らかになっていなかった。NEJM誌2018年3月8日号掲載の報告。小児喘息患者約250例で、低用量と5倍量の投与を比較 STICS試験は、過去1年間に全身性ステロイド薬による治療を要した喘息増悪歴が1回以上ある、5~11歳の軽・中等症持続型喘息患者254例を対象とした。 試験は4週間の導入期と48週間の治療期からなり、導入期には全員に非盲検下でフルチカゾンプロピオン酸エステルの低用量(44μg/吸入)を投与。治療期は非盲検維持期として低用量を全員に投与しつつ、“7日間のイエローゾーン(喘息コントロール悪化の初期徴候を認める期間)”を認めた場合に、低用量投与を継続する群と5倍量(220μg/吸入)を投与する群(高用量群)に、盲検下で無作為に被験者を割り付けた。投与はいずれも1回2吸入、1日2回を投与した。 喘息コントロール悪化の初期徴候は、アルブテロール(サルブタモール)のレスキュー投与を6時間に2回(4吸入)、24時間に3回(6吸入)、またはアルブテロールのレスキュー投与を要した喘息による夜間覚醒、のいずれかの発生とした。 主要評価項目は、全身性ステロイド薬による治療を要した重症喘息発作発生率であった。高用量群と低用量群で重症喘息発作発生率に有意差なし 主要評価項目の重症喘息発作発生率は、高用量群0.48回/年、低用量群0.37回/年であり、両群間で有意差は確認されなかった(相対比:1.3、95%CI:0.8~2.1、p=0.30)。 初回増悪までの期間、治療失敗率、症状スコア、およびイエローゾーンでのアルブテロール使用についても、両群間に有意差はなかった。ステロイド総曝露量は、低用量群より高用量群で16%高値であった。 高用量群と低用量群で、身長の伸びの差が-0.23cm/年(p=0.06)認められた。 著者は研究の限界として、予想よりもイエローゾーンや全身性ステロイド薬による治療を受けた喘息発作発生率が少なかったことなどを挙げている。

22013.

NCCNガイドラインの適応外推奨はエビデンスが弱い/BMJ

 National Comprehensive Cancer Network(NCCN)は新薬/ブランド薬について、米国食品医薬品局(FDA)未承認の適応をしばしば推奨しているが、このような適応外使用を推奨する根拠のエビデンスレベルは低いことが明らかにされた。米国・オレゴン健康科学大学のJeffrey Wagner氏らが、抗がん剤についてNCCNガイドラインでの推奨とFDA承認との差異を、また適応外使用の推奨を正当化するためにNCCNが採用したエビデンスについて、後ろ向きに調査し報告した。NCCNによる適応外使用推奨のパターンや、こうした推奨がその後、FDA承認に至っているのかを検証した解析はこれまでなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「弱いエビデンスに基づいた高価で有害ながん治療薬の保険償還を、NCCNが正当化していることに懸念を禁じ得ない」とまとめている。BMJ誌2018年3月7日号掲載の報告。FDAで承認された新薬47種の適応症とNCCNの推奨を比較 NCCNが公表しているがん診療ガイドラインは、米国のメディケア・メディケイドサービスセンターが保険償還を決定するために使用する5つの医薬品集(compendiums)のうちの1つで、民間保険会社でも使用されている。 研究グループは、2011~15年の期間にFDAが承認した新規抗がん剤47種について、2016年3月25日時点で、FDAが承認したすべての適応症(新規および追加)とNCCNの推奨を比較した。FDA承認外でNCCNが推奨していた場合、その推奨を分類し、採用されたエビデンスについて調査した。適応外推奨は約4割、その後の追加承認はわずか 47種の抗がん剤について、FDA承認の適応症は69個に対し、NCCNでは113個の適応症が推奨されていた。113個のうち69個(62%)はFDA承認の適応症と重複していたが、44個(39%)は承認適応外で追加推奨されていた。適応外推奨数の平均値は0.92であった。 追加推奨のうち無作為化試験のエビデンスに基づくものは10個(23%)で、第III相試験のエビデンスに基づくものは7個(16%)であった。 21ヵ月の追跡期間中、FDAが適応症追加を承認したのは44個のうちわずか6個(14%)であった。

22014.

本物よりも本物らしい【Dr. 中島の 新・徒然草】(212)

二百十二の段 本物よりも本物らしい先日、某製薬会社の説明会がありました。皆が集合する前に映像が流されていたのですが、これがなかなか素晴らしい。担当のMRさんによると、チーム医療を推進している、ということで「ある看護師の一日」とか「ある薬剤師の一日」とか、いろいろな職種が4分ほどのムービーで紹介されていました。バックで流れる槇原敬之氏の歌とあいまって「なんて素晴らしいんだ、医療の世界は!」と思わされるものでした。ここで当然の如く出てくる疑問。中島「この看護師さんとか薬剤師さんたちは本物ですか、それとも俳優さん?」MR「役者さんですね」中島「うまく演じていますねえ。それじゃあ、患者さんの方は?」MR「患者さんの方も役者さんだと聞いています」中島「本物よりも本物らしいじゃないですか!」MR「恐れ入ります」実際、看護師役や薬剤師役の人たちの立ち居振る舞いは、私の目から見ても違和感がありません。まったくそのとおり、と思わされるものばかりでした。ムービーの中の看護師や薬剤師、そして医師たちも、皆、患者さんのために一生懸命です。その動作、表情からも誠実さが伝わってきます。現実の病院の中もこんな人達ばかりだったらいいのに!微かな違和感があるとしたら・・・出てくる人たちがちょっとばかり美人、ちょっとばかりイケメンすぎることでしょうか。現実の医療現場の人達は、もっと普通の姉ちゃん兄ちゃんばかりですね。読者の皆様にお勧めしたいのは、日々の仕事の中で「ちっくしょう、やってられねえよ!」と思ったときに、YouTubeでこのムービーを見ることです。とことん美化された医療現場の映像を見て、きっと「もう1回、頑張るか」とヤル気が出てくることでしょう。最後に1句映像で あるべき姿 教えられ

22015.

統合失調症におけるパリペリドンパルミチン酸とリスペリドンの持効性注射剤の比較

 統合失調症患者の初回入院期間、再入院リスク、治療期間に関して、パリペリドンパルミチン酸(PP)またはリスペリドン持効性注射剤(RLAI)による治療の影響を、フランス・Corentin-Celton HospitalのFrederic Limosin氏らが、比較検討を行った。Journal of clinical psychopharmacology誌2018年2月号の報告。 初回入院時にPPまたはRLAI治療を開始した統合失調症患者を対象に、フランスの43施設で観察的レトロスペクティブコホート研究を実施した。フォローアップは、RLAI群では2012年9月より開始し(フォローアップ期間中央値:233日間)、PP群では2013年6月より開始した(フォローアップ期間中央値:259日間)。統計分析は、患者の特性を考慮して傾向スコア加重を用い、Cox回帰モデルに基づいて実施された。 主な結果は以下のとおり。・分析には、347例(PP群197例、RLAI群150例)が含まれた。・PP群は、RLAI群と比較し、精神疾患以外の合併症の併発、過去に抗精神病薬での治療歴、前年に精神科治療のための入院歴を有する傾向が有意に強かった。・初回入院時の在院期間は、両群間に統計学的な有意差は認められなかった(ハザード比:1.13、95%CI:0.97~1.31)。・PP群の1回目の再入院までの期間は、RLAI群と比較し同様であった(ハザード比:0.92、95%CI:0.65~1.30)。 著者らは「潜在的な統計力の欠如のため、PP群とRLAI群の間に、初回入院期間および再入院までの期間に関する有意な差は認められなかった。治療中止までの期間に関しては、PP群において良い傾向が認められたものの、この結果は、RLAIからPPへの切り替えが行われた患者において低下した」としている。■関連記事統合失調症の再入院に対する抗精神病薬の比較2つの抗精神病薬持効性注射剤、その違いを分析パリペリドン持効性注射剤、国内市販後の死亡例分析結果

22016.

血漿中遊離アミノ酸の変化で大腸がんリスクを予測

 大腸がん(CRC)の術後再発は依然として重要な問題である。CRCの症状は明らかなものはなく、早期では自覚症状はない。 一方、最近の液体クロマトグラフィー/質量分析といった分析技術やメタボロミクスの進歩が、がんなどのさまざまな疾患で報告されている。その結果、血漿中遊離アミノ酸(PFAA)プロファイルは、健康人と、がんなどの罹患者で異なっていることが報告されている。そのような中、血液サンプル中の6種のPFAAを定量することで、がんの早期発見を可能にした、アミノインデックスがんスクリーニング(AminoIndex Cancer Screening、以下AICS)システムが開発された。神奈川県立がんセンター片山 佳代子氏らによるこの研究では、AICSを用いて、CRC患者における手術前と手術後のPFAAを比較した。BMC Surgery誌2018年2月21日号に報告された。 この研究は、神奈川県立がんセンターでCRCの治癒切除を受けた62例の患者コホートから成る。切除1週間前および切除後0.5~6.5年に絶食状態で血液サンプルを採取し、PFAAレベルを液体クロマトグラフィー/質量分析によって測定し、AICS値を算出した(高値ほどがんの確率が高い)。AICS値から計算されたリスクは、AICSランクとしてA、B、Cに分けられた(ランクCが最高リスク)。 主な結果は以下のとおり。・すべての患者はAICSランクB(25例)かC(37例)であった。・AICS値は62例中57例(92%)で、AICSランクは62例中49例(79%)で、術前に比べ術後で有意に低下した(p<0.001)。・AICSランクCに限ってみると、AICS値は37例中35例(95%)で、AICSランクは37例中29例(78%)で、術前に比べ術後で有意に低下した(p<0.001)・StageI~IIIのすべての患者でAICS値が術前に比べ術後に低下した。・右側腫瘍のすべての患者でAICS値が術前に比べ術後に低下した。・AICS値の低下は、左側腫瘍に比べ、右側腫瘍で大きかった(右側8.0→2.3、左側8.2→4.7、p<0.001)。・腫瘍マーカー(CA19-9およびCEA)レベルが基準範囲内にあった患者は、手術前は70~80%であったが、手術後では80~90%となった。 この研究から、PFAAプロファイルは担がん状態では、変化していることが示唆される。少量の血液で測定可能なAICSは、腫瘍切除後のCRC患者の予後予測および再発のモニタリングに使用できる可能性がある、と述べている。

22017.

吸入ステロイド4倍量を許容する自己管理で、喘息増悪リスク2割減/NEJM

 吸入ステロイド使用にもかかわらず過去1年以内に増悪を発症した成人および思春期の喘息患者について、吸入ステロイドを4倍量までの増量を含む自己管理計画(患者自身が喘息を管理する計画)を導入することで、増量を行わない計画と比べて重度増悪リスクは約2割減少することが示された。英国・National Institute for Health Research Biomedical Research CentreのTricia McKeever氏らが、1,922例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2018年3月8日号で発表した。1年以内の重度喘息増悪イベントまでの期間を比較 研究グループは2013年5月~2016年1月にかけて、吸入ステロイドの投与を受けている、過去12ヵ月間に1回以上の増悪を呈した成人・思春期の患者1,922例を対象に、プラグマティックな非盲検無作為化試験を開始した。被験者の、他の治療の有無については問わなかった。 被検者を無作為に2群に分け、一方には4倍量までの吸入ステロイド増量を含む自己管理計画を、もう一方には増量を行わない自己管理計画を12ヵ月間実施し、アウトカムを比較した。 主要評価項目は、初回の重度喘息増悪までの期間とし、その定義は全身性ステロイドによる治療または喘息による予定外の受診とした。重度増悪リスクはステロイド4倍量群で0.81倍 無作為化を行った被検者のうち、主要解析には1,871例を包含した。被検者の平均年齢は57歳(標準偏差:15)、うち女性は68%だった。 無作為化後1年以内に重度喘息増悪を発症したのは、ステロイド4倍量群は420例(45%)、対照群は484例(52%)だった。初回重度喘息増悪に関する4倍量群のハザード比は、0.81(95%信頼区間:0.71~0.92、p=0.002)だった。 主に吸入ステロイドの局所作用による有害事象発生率が、4倍量群で対照群より有意に高かった。

22018.

グリソンスコア9/10の前立腺がん、最も有効な療法は?/JAMA

 グリソンスコア9~10の前立腺がん患者に対し、外照射療法+小線源治療による強化療法(EBRT+BT)+アンドロゲン除去療法(ADT)は、根治的前立腺全摘除(RP)やEBRT+ADTを行った場合に比べ、前立腺がん死亡リスクを有意に抑制することが示された。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のAmar U. Kishan氏らが、1,809例を対象とした後ろ向きコホート試験を行い明らかにした。グリソンスコア9~10前立腺がんの至適治療は明らかになっておらず、研究グループは、同患者の最終的な治療後の臨床的アウトカムを検討した。JAMA誌2018年3月6日号掲載の報告。全摘、EBRT+ADT、EBRT+BT+ADTの臨床的アウトカムを後ろ向きに比較 研究グループは、米国11ヵ所、ノルウェー1ヵ所の3次医療センターで、2000~13年に治療を受けたグリソンスコア9~10の前立腺がん患者1,809例を対象に、後ろ向きコホート試験を行った。 RP、EBRT+ADT、EBRT+BT+ADTについて、臨床アウトカムを比較した。主要評価項目は、前立腺がん死亡率で、副次的評価項目は無遠隔転移生存率と全生存率だった。前立腺がん死亡リスクはEBRT+BT群で有意に低下 被験者のうちRP群は639例、EBRT群は734例、EBRT+BT群は436例だった。被験者の年齢中央値はそれぞれ、61.0歳、67.7歳、67.5歳で、追跡期間中央値はそれぞれ4.2年、5.1年、6.3年だった。追跡10年時点で、それぞれ91例、186例、90例の死亡が報告された。 補正後5年前立腺がん死亡率は、RP群12%(95%信頼区間[CI]:8~17)、EBRT群13%(同:8~19)、EBRT+BT群3%(同:1~5)だった。EBRT+BT群の同死亡に関するハザード比(HR)は、対RP群で0.38(95%CI:0.21~0.68)、対EBRT群で0.41(同:0.24~0.71)だった。 補正後5年遠隔転移発生率は、RP群24%(95%CI:19~30)、EBRT群24%(同:20~28)に対し、EBRT+BT群は8%(同:5~11)と有意に低率だった。EBRT+BT群の同発生に関する傾向スコア補正後ハザード比は、対RP群0.27(95%CI:0.17~0.43)、対EBRT群0.30(同:0.19~0.47)だった。 補正後7.5年全死因死亡率は、RP群17%(95%CI:11~23)、EBRT群18%(同:14~24)に対し、EBRT+BT群は10%(同:7~13)と有意に低率だった。追跡調査7.5年までの期間については、EBRT+BT群の全死因死亡率は有意に低かった。死因別HRは、対RP群0.66(95%CI:0.46~0.96)、対EBRT群0.61(同:0.45~0.84)だった。7.5年より後の同関連は、対RP群1.16(95%CI:0.70~1.92)、対EBRT群0.87(同:0.57~1.32)だった。 なお、EBRT群とRP群で、前立腺がん死亡率(死因別HR:0.92[95%CI:0.67~1.26]、p=0.60)、遠隔転移率(同:0.90[0.70~1.14]、p=0.38)、全死因死亡率(7.5年以内:同1.07[0.80~1.44]、p=0.64/7.5年超:1.34[0.85~2.11]、p=0.21)のいずれについても有意差はみられなかった。

22019.

心房細動と認知症リスク~1万3千人を20年追跡

 これまでに心房細動(AF)と認知機能低下および認知症との関連が報告されている。しかし、これらの研究は追跡期間が限られ、ほとんどが白人や選択された集団に基づいており、また認知機能の減衰を考慮していなかった。今回、ミネソタ大学のLin Y. Chen氏らは、ARIC(Atherosclerosis Risk in Communities)研究において、認知機能の20年間の変化(減衰を考慮)および認知症発症との関連を評価した。その結果、虚血性脳卒中と関係なく、AFが認知機能のより大きな低下や認知症リスクの増加と関連することが示された。Journal of the American Heart Association誌2018年3月7日号に掲載。 本研究(ARIC-NCS:ARIC Neurocognitive Study)は、1万2,515人の参加者(1990~92年における平均年齢:56.9歳[SD:5.7歳]、女性56%、黒人24%)の1990~92年から2011~13年までのデータを分析。AF発症は心電図検査と退院コードで確認した。認知テストは、1990~92年、1996~98年、2011~13年に実施し、認知症発症は臨床医の判断とした。AFと認知テストにおけるZ scoreの変化および認知症発症との時間依存性の関連について、一般化推定方程式(GEE)とCox比例ハザードモデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・20年間に2,106人がAFを発症し、1,157人が認知症を発症した。・虚血性脳卒中などの心血管リスク因子を調整後、global cognitive Z scoreの20年にわたる低下の平均は、AFがない参加者よりAFのある参加者のほうが大きく、0.115 (95%CI:0.014~0.215)であった。MICE(連鎖方程式による多変量補定)により減弱を調整すると、関連はさらに強くなった。・さらに、虚血性脳卒中を含む心血管リスク因子について調整すると、AF発症は認知症リスクの増加と関連していた(ハザード比:1.23、95%CI:1.04~1.45)。 著者らは、「認知機能低下は認知症の前段階であるため、この結果から、AF患者の認知機能低下を遅らせ、認知症を予防するAFの治療法を調べるために、さらなる調査が推進される」としている。

22020.

新規抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」発売

 塩野義製薬株式会社は3月14日、抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ錠10mg・20mg」(一般名:バロキサビル マルボキシル)を新たに発売した。同日付で薬価収載され、薬価は、10mg1錠が1,507.50円、20mg1錠が2,394.50円。 ゾフルーザは、塩野義製薬が創製したキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬で、既存の薬剤とは異なる新しい作用機序でインフルエンザウイルスの増殖を抑制する。1回の錠剤服用で完結し、利便性が高く、良好なアドヒアランスが期待できる。 成人および12歳以上の小児には、20mg錠2錠を、体重80kg以上の患者には20mg錠4錠を単回経口投与する。12歳未満の小児の場合、体重40kg以上には20mg錠2錠を、20kg以上40kg未満には20mg錠1錠を、10kg以上20kg未満には10mg錠1錠を、いずれも単回経口投与する。 ゾフルーザは、2015年10月に厚生労働省の先駆け審査指定制度の対象品目に指定され、18年2月23日に製造販売承認を取得していた。■参考塩野義製薬株式会社ニュースリリース■関連記事新規抗インフルエンザ薬ゾフルーザ、承認取得

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