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健康や福祉を維持、向上させるためにはお金がかかる。当然経済の発展とともに、健康・福祉関連の予算も増え、世界の健康・福祉は改善されてきた。Sustainable Development Goal(SDG)とは、国連に加盟するすべての国が賛同し、2015年から2030年までに、貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会など、17項目の持続可能な開発の目指すべき達成目標を掲げたものである。その中で健康・福祉はSGD-3に掲げられている。 この論文は、SDGが掲げられる前の1995年から2015年までの世界188ヵ国の健康・福祉のために使われた予算の推移をまとめたものである。また、その中から世界共通の問題であるHIV/AIDSに投入された各国の予算の推移も集計している。研究論文というより、膨大な資料を盛り込んだ国連の報告書という感じである。この報告書では、それぞれの国の収入により、high-、upper-middle-、low-middle-、low-income国に分けて解析を行っている。 2015年における世界全体での1人当たり医療費は1,332 USドルであったが、high-income国の平均が5,551 USドルであったのに対し、日本は4,286 USドルと米国(9,839 USドル)の約半分であった。これに対し、日本のHIV/AIDS対策費を患者1人当たりに割り直した費用は、17,479.9 USドルと米国の2,969.3 USドルの6倍にも上る。この費用の中には、検査費用なども含まれるため、純粋な治療費ではないが、有効な予算の使い方を考える必要もあろう。 この論文の強調している点は、医療・福祉に投下された予算は、2005年頃をピークに低下傾向にあり、2030年のゴールに向けた取り組みが、HIV/AIDS対策も含め、達成困難になってきているのではないかと警鐘を鳴らしていることにある。分量といい、内容といい、重厚な論文である。