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30)リレンザ【手順編】【吸入薬使い方ガイド】

※上の画像をクリックすると別のウィンドウにて「環境再生保全機構」の動画ページが開きます。■今回の内容今回は、リレンザの吸入手順を説明します。手順としては、カバーを外し、白いトレーを引き出す→トレーを取り外し、穴に合わせてディスクを乗せる→トレーを本体に押し込む→★本体を平らに持ち、フタを垂直に立て、ブリスターに穴を開ける→フタを閉じる→呼吸を整え、ゆっくり十分に息を吐く→吸入口をしっかりくわえる→下を向かず、背筋を伸ばし、勢いよく深く吸う(そのとき舌を下げて喉の奥を広げる)→吸入器をはずし、口を閉じ3~5秒間息を止め、薬剤を定着させる→鼻からゆっくり息を吐く→2回目の吸入は、もう一度トレイを引き出し、そのまま再びカチッと音がするまで押し込む→★から繰り返す→うがいをする(口中3回、喉の奥3回)→使い終わった薬をトレーから外し、捨てる→トレーを戻し、カバーを閉める

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1日1回1錠で他の抗HIV薬を併用する必要がない「オデフシィ配合錠」【下平博士のDIノート】第15回

1日1回1錠で他の抗HIV薬を併用する必要がない「オデフシィ配合錠」今回は、「リルピビリン塩酸塩/テノホビル アラフェナミドフマル酸塩/エムトリシタビン配合錠(商品名:オデフシィ配合錠)」を紹介します。本剤は、3剤の抗ウイルス薬を配合した1日1回服用のヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)感染症治療薬であり、服薬率が治療の成否に関わるHIV治療において良好なアドヒアランスを維持することが期待されています。<効能・効果>本剤はHIV-1感染症の適応で、2018年8月21日に承認され、2018年9月20日より販売されています。HIV-1の逆転写酵素活性を阻害することで、ウイルスの増殖を抑制します。<用法・用量>通常、成人および小児(12歳以上かつ体重35kg以上)には、1回1錠を1日1回食事中または食直後に経口投与します。本剤は、空腹時に服用すると、リルピビリンの血中濃度が低下する恐れがあるなどの理由により、「食事中または食直後」となっているので、監査・投薬時には注意が必要です。<副作用>他剤によってウイルス学的に抑制されているHIV-1患者を対象として本剤に切り替えた海外第III相試験では、6.3~12.8%に臨床検査値異常を含む副作用が認められ、主な副作用は下痢、悪心、頭痛、鼓腸、不眠症、異常な夢でした(承認時)。<患者さんへの指導例>1.3種類の抗ウイルス薬でHIVの増殖を抑え、AIDS(後天性免疫不全症候群)の発症・進行を防ぐ薬です。2.飲み合わせに注意すべき薬や食品が多くあるため、現在服用している薬やサプリメントがある場合は、医師・薬剤師にお伝えください。また、新たに薬を飲み始める場合は、あらかじめ相談してください。3.抗HIV薬は、飲み忘れが繰り返されると、HIVが耐性を獲得して治療に失敗する可能性が高くなりますので、医師の指示どおりに毎日きちんと服用してください。4.抗HIV薬はHIV感染症を根本的に治す薬ではなく、ほぼ生涯にわたって治療を継続する必要があります。5.本剤服用後に、むくみ、尿量減少、全身倦怠感、過呼吸、手足の震え、意識障害などが現れた場合は、ただちに受診してください。6.母乳中に移行することが報告されているため、本剤を服用中の授乳は避けてください。<Shimo's eyes>HIV感染症は抗ウイルス薬を3~4種類併用する抗レトロウイルス療法(ART)が標準治療となっており、強力にHIVを抑制する「キードラッグ」1剤と、キードラッグを補足してウイルス抑制効果を高める「バックボーン」2剤を組み合わせるのが一般的です。本剤は、キードラッグとしてリルピビリン、バックボーンとしてテノホビル アラフェナミドフマル酸(TAF)とエムトリシタビンの3剤が含有されており、1日1回1錠の服用で他の抗HIV薬を併用する必要はありません。本剤は、既存のリルピビリン塩酸塩/テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩/エムトリシタビン配合錠(商品名:コムプレラ配合錠)に含まれるテノホビル ジソプロキシルフマル酸(TDF)をTAFに置換した製剤です。TDFとTAFは、どちらもテノホビルのプロドラッグですが、TDFが血漿中で活性体であるテノホビルに変換されるのに対し、TAFは細胞内で変換されるため、テノホビルを効率的に感染細胞内へ送達できます。そのため、TAFは低用量でTDFと同等の抗HIV効果を示すことができると考えられています。TDFを含む抗HIV治療薬では、腎機能障害や骨密度低下について安全性の懸念がありますが、TDFをTAFに置き換えた本剤では、体内への暴露量が減ることなどにより、これらの副作用の軽減が期待されています。相互作用に気を付けるべき薬は複数あり、とくに注意が必要なのはプロトンポンプ阻害薬(PPI)です。PPIの胃酸分泌抑制作用によって胃内pHが上昇すると、リルピビリンの血中濃度が低下する恐れがあるため、併用禁忌となっています。同様の理由から、H2ブロッカーや制酸剤も時間をずらして投与する必要があり、他科からの処方薬やOTC薬にも念入りなチェックが必要です。近年HIV感染症の薬物療法は格段に進化し、適切な治療さえ行っていれば、もはや死の病とは言えなくなりました。しかし、アドヒアランスが非常に重要で、飲み忘れなく続けることが治療の成否に関わることを患者さんに十分に理解してもらうことが大切です。ガイドラインでもアドヒアランスの観点から、新規に治療を開始する患者さんでは1日1回投与の薬剤を積極的に選択するように記載されています。1日1回投与で他の抗HIV薬を併用する必要がない配合剤はすでに4剤発売されていますが、本剤はそれらよりも小さい薬剤であり、患者さんの負担の少ない選択肢が増えたことはHIV感染症の患者さんにとって大きな意義があるでしょう。

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日本人の血圧は意外とコントロールできていない

 生活習慣病のなかで最も罹患率の高い高血圧。これを治療するための有用な薬剤が普及し、世界的に治療率は改善している。ところが、日本人の高血圧のコントロール率はアジア諸国と比較してもまだまだ低く、高血圧パラドックスに陥っている。 2018年11月14日に日本心臓財団が主催する「高血圧パラドックスの解消に向けて‐脳卒中や認知症、心不全パンデミックを防ぐために必要なこととは?‐」が開催され、楽木 宏実氏(大阪大学大学院 医学系研究科老年・総合内科学 教授)が登壇した。日本の現状とAHA130/80のなぜ 命に直結するがん治療は常に注目の的である。しかし、高血圧もまた、高齢化に伴う心不全での死亡者が増加傾向にあり注目に値する。 「血圧値にはカットオフポイントが存在しない」と語る同氏は、EPOCH-JAPAN試験の血圧レベル別の心血管病死亡ハザード比と集団寄与危険割合(PAF)を示し、高血圧患者の心不全などによる死亡リスクの上昇について解説。このデータからも、どこからが血圧異常であるのかを区別することができず、治療対象の観点から「恣意的に高血圧の定義をしている」現状を指摘した。 日本と世界の血圧値の基準は、心血管病のリスクと治療介入の成績などを基に定義し、140/90と決められている。ところが、米国心臓病協会は昨年、基準変更を実施。世界基準から各値を10mmHgも下げ、“130/80mmHg以上を高血圧”と定義を改めた。これには、まだ分類を変えるほどの根拠の所在がそれほど明確ではないため、世界に衝撃を与えた。同氏は、「米国では降圧目標を原則130/80mmHg未満に改変した。一般にもわかりやすいように定義変更をしたと理解している」とコメント。「130~139/80~89mmHgの血圧カテゴリーを明確に“高血圧ステージ1”という表現にし、従来の高血圧基準である140/90mmHg以上は“高血圧ステージ2”という名称になった」ことも付け加えた。高血圧パラドックスへの対策 高血圧であることは、種々の疾患原因となり死亡リスクに結びつく。“日本での2007年の非感染性疾患および外因による死亡数への各種リスク因子の寄与(男女計)”のデータによると、喫煙に次いで高血圧の寄与は非常に高く、その数は11万人にも上るなど、心血管病への関連は圧倒的であった。また、心血管病が増加するとそれに伴い、脳血管疾患、認知症、骨折転倒など介護が必要となりうる状況に陥る。つまり、血圧管理を怠り続けると自覚症状がなかった状況から要介護状態へ転じてしまうのである。 そこで、高血圧抑制のために取り組むべき課題として、国民全体での血圧レベルの低下などが求められる。その成功事例には、食品表示においてNaから食塩相当量へ変更されたことがある。今ではお弁当などを購入してもひと目で塩分量がわかるようになったが、これは減塩委員会が企業に動きかけた結果である。食塩摂取量の低下もあって日本の高血圧有病率は女性では低下傾向を示し、男女ともに収縮期血圧の平均値が低下している。  今年9月には、伊藤 裕氏(慶應義塾大学腎臓・内分泌・代謝内科教授)を主導とする“高血圧学会みらい医療計画~JSH Future Plan~”が発表され、今後10年間で高血圧患者を500万人減らし、健康寿命を延伸させることが目標として示された。その実現に向け、医療システム、学術研究、社会啓発を3本の柱とし、活動が展開される予定だ。海外と日本では国民への啓発に差 米国では、国や米国心臓協会が主導となり国民向けの啓発ツールを多数排出している。これは、医療機関への受診とは別に、自身の血圧値やリスクを意識してチェックできる仕組みになっている。 日本の場合、意識付けができるのは医療機関受診者のみである。受診者には血圧手帳に血圧を記録することが勧められているが、同氏は、「一部には成績表の一種と勘違いして、良い血圧値だけを記録しているような場合もある」と述べ、「これを防ぐためにデジタル記録計の普及を目指す」とコメントした。 高齢化が進行する中、高齢者の高血圧に関する統合的レビュー論文が最近になって3編発表された。現在、同氏は高齢者の認知機能低下に配慮した最適な降圧療法の解明に取り組んでおり、「この分野に関する研究が不足するなか、リスクベネフィットに加えてコストベネフィットにも言及できる研究成果を期待したい」と締めくくった。■参考日本心臓財団■関連記事減塩したい患者さん向け、単身者でもできる作り置きレシピ発表

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脳卒中後の機能回復にfluoxetineは有効か/Lancet

 急性脳卒中患者へのfluoxetineの6ヵ月毎日投与により、うつ病の発症は低下するものの骨折が増加し、機能的アウトカムの改善は得られない可能性が、英国・エディンバラ大学のMartin Dennis氏らが行ったFOCUS試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年12月5日号に掲載された。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)fluoxetineによる脳卒中後の機能的アウトカムの改善効果を示唆する小規模なプラセボ対照試験の結果が報告されており、コクランレビューでは、SSRIは脳卒中後の機能障害を抑制する可能性が示唆されている。しかし、これらのデータだけでは、治療ガイドラインの改訂には十分でなく、便益と有害反応が相殺される懸念も軽減されないという。6ヵ月後の身体機能をプラセボと比較 本研究は、英国の103施設が参加したプラグマティックな二重盲検プラセボ対照無作為化試験であり、2012年9月~2017年3月の期間に患者登録が行われた(英国脳卒中協会と国立健康研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、臨床的に急性脳卒中と診断され、発症後2~15日の期間に無作為割り付けが行われ、割り付け時に神経脱落症状がみられた患者であった。 被験者は、fluoxetine 20mgまたはプラセボを毎日経口投与する群に割り付けられ、6ヵ月の治療が行われた。主要評価項目は、修正Rankinスケール(mRS、0[無症状]~6[死亡])で評価された6ヵ月時の身体機能とした。 3,127例が登録され、fluoxetine群に1,564例(平均年齢71.2[SD 12.4]歳、女性38%)、プラセボ群には1,563例(71.5[12.1]歳、39%)が割り付けられた。うつ病、気分障害も12ヵ月後には有意差が消失 6ヵ月時のmRS分類の分布は両群でほぼ同等であった(0:fluoxetine群7%、プラセボ群8%、1:19%、20%、2:10%、10%、3:33%、33%、4:8%、8%、5:14%、13%、6:8%、8%)。最小化変数で補正した共通オッズ比(OR)は0.951(95%信頼区間[CI]:0.839~1.079、p=0.439)だった。 Stroke Impact Scale(SIS)の9項目(筋力、手の機能、移動、日常生活動作、記憶、コミュニケーション、感情、参加、回復)は、いずれも両群間に差はみられなかった。また、疲労(SF36の「活力」で評価、p=0.6726)および健康関連QOL(EQ5D-5Lで評価、p=0.5866)にも差はなかった。気分障害(Mental Health Inventory[MHI-5]で評価)は、6ヵ月時にはfluoxetine群で良好であった(p=0.0100)が、12ヵ月時には差はなくなった。 6ヵ月時に新たにうつ病と診断された患者の割合は、fluoxetine群が13.43%(210例)と、プラセボ群の17.21%(269例)に比べ有意に低かった(p=0.0033)が、12ヵ月時には群間差は消失した。一方、6ヵ月時の骨折の発生率は、fluoxetine群が2.88%(45例)と、プラセボ群の1.47%(23例)に比し有意に高かった(p=0.0070)。生存を含め、12ヵ月時の他の副次評価項目にも両群間に有意な差は認めなかった。 著者は、「これらの結果は、脳卒中後のうつ病の予防や機能回復の促進を目的としたfluoxetineのルーチンの使用を支持しない」としている。

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第2世代抗精神病薬と代謝変化に対する腸内微生物の役割

 第2世代抗精神病薬(SGA)の中で、代謝機能不全を誘発する薬剤がいくつか知られている。このような副作用の発現には、さまざまな要因が影響している。ポーランド・Pomeranian Medical UniversityのKarolina Skonieczna-Zydecka氏らは、SGAがディスバイオーシス(バランス失調)を引き起こすかの調査、腸内細菌叢の変化が体重や代謝に及ぼす影響の評価、動物やヒトを対象とした研究におけるSGA治療誘発性代謝異常のメカニズムについての検討を行った。Psychopharmacology誌オンライン版2018年11月20日号の報告。 2018年7月3日までにSGAで治療された患者の微生物および体重変化について報告した研究を、データベース(PubMed、Medline、Embase、ClinicalTrials.gov、PsychInfo)よりシステマティックに文献検索した。 主な結果は以下のとおり。・マウス(8試験)およびラット(3試験)において報告された研究、7文献が抽出された。・オランザピンが5試験、リスペリドンが6試験に使用されていた。・ヒトにおいて報告された研究の3文献(4試験)のみが、リスペリドンおよび混合SGAの使用基準に適合していた。・バクテロイデス門と比較し、フィルミクテス門の増加が微生物の変化に直接的(げっ歯類5試験、ヒト4試験)または間接的(げっ歯類4試験)に影響を及ぼすことが確認された。これは、げっ歯類(8試験)およびヒト(4試験)における体重増加と同様であった。・オランザピンでは、げっ歯類における肥満、脂質生成、血漿遊離脂肪酸、酢酸塩レベルの上昇といった代謝変化(3試験)および炎症(2試験)の両方を誘発することが確認された。一方、リスペリドンでは、げっ歯類における安静時代謝率の抑制(5試験)、ヒトにおける空腹時血糖、TG、LDL、hs-CRP、antioxidant SOD、HOMA-IRの上昇が認められた(1試験)。・げっ歯類の研究において、体重に対するディスバイオーシスの性別依存的な影響が認められた(1試験)。 著者らは「抗精神病薬治療に関連する腸内微生物の変化は、体重増加や代謝異常に潜在的な影響を及ぼす。炎症や安静時代謝率の抑制は、代謝異常の発生に重要な役割を果たすと考えられる」としている。■関連記事オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学統合失調症治療に用いられる抗精神病薬12種における代謝系副作用の分析抗精神病薬の代謝への影響に関するランダム化比較試験

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麻疹ウイルスをベクターとしたチクングニアウイルスワクチンの免疫原性・安全性・忍容性(解説:吉田敦氏)-975

 チクングニア熱は、蚊媒介感染症として、いまや世界の大多数の地域に広まりつつある感染症である。以前にも増して大規模流行を来すようになっているが、これにはウイルスのエンベロープタンパク質が変異して媒介蚊であるネッタイシマカ(Aedes aegypti)により適応できるようになったことと、地球温暖化によってヒトスジシマカ(Aedes albopictus)の生息域が拡大したことが関与している。 チクングニア熱は急性熱性疾患であるが、治療法がなく、関節痛やうつ状態が後遺症として続く。一方、旅行者感染症としてウイルスを持ち帰り、帰国後に温帯地域の蚊に刺咬されることで、温帯地域の蚊がウイルスを保有することが大きな懸念となっている。実際に米国・欧州では媒介蚊が効率よくウイルスを増殖させる能力があることが判明しており、渡航者が増加している現在、その脅威も大きくなっている。このため自国内で伝播した例がないか厳重な監視が続いており1)、ワクチン開発は急務であるといえる。 今回検討されたワクチンは、チクングニアウイルスの臨床分離株の遺伝子を麻疹ウイルスベクターに導入したリコンビナント・弱毒生ワクチンである。フェーズ1で免疫原性、安全性が評価され、今回さらにボランティアを対象としたフェーズ2のランダム化二重盲検プラセボ対照試験が行われ、投与回数・スケジュールと含有ウイルス量の異なる複数のレジメンを比較し、プライマリーエンドポイントとして中和抗体の産生能が評価された。高用量で回数を増やすほど抗体獲得率は上昇したが、この抗体産生は麻疹ウイルスベクターには依存しないものであった。また副作用は軽微なもので、コントロールに比べ増加もなかった。 したがってフェーズ3の研究につながり、今後実際に臨床現場で、さまざまなウイルス株に対する有効性と、予防効果の持続期間が検討されることになろう。臨床応用に一歩近づき、有力な予防手段の候補が出現したといえるかもしれない。蚊媒介感染症のコントロール・制圧の難しさは年々増している。今後の速やかな研究の進展と評価・臨床応用に期待したい。■参考1)CDC. Chikungunya Virus. 2018 provisional data for the United States.

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MitraClipは低左心機能(HFrEF)に伴う二次性MR症例に有効(COAPT試験)(解説:許俊鋭 氏)-977

 MitraClip僧帽弁形成術の臨床的有効性に関する先行のEVEREST II試験は、僧帽弁逆流(MR)3~4度の症例を対象としたMitraClip僧帽弁形成術と外科的僧帽弁形成術との無作為比較試験(RCT)である。EVEREST II試験の1年後までの経過観察ではMitraClip群のMR軽減効果は低く、MitraClip群では残存MRに対して外科的再修復をより高率に必要とした。しかし、その後の1~5年の経過では両群ともに外科的再修復を必要とした頻度は同程度に低く、死亡率にも有意差はなかったものの、MitraClipの外科手術に対する著明な有効性は示せなかった。 本試験(COAPT試験)は、より予後不良な二次性MRを伴うHFrEF症例を対象とした、MitraClip僧帽弁形成術群と単独内科治療群のRCTである。対象は米国とカナダの78施設でガイドラインに沿った最大限の内科治療が行われているにもかかわらず、中等度〜重度または重度の二次性MRが持続した心不全患者である。患者は無作為に、MitraClip僧帽弁形成術+内科治療(デバイス群)または単独内科治療(対照群)に割り付けられた。主な効果エンドポイントは、追跡調査24ヵ月以内の心不全入院。主要な安全性のエンドポイントは、12ヵ月間のデバイス関連の合併症回避率(事前に設定されたデバイス関連の合併症回避率達成目標は88.0%である)。対象とした614人のうち、302人がデバイス群、312人が対照群に割り付けられた。24ヵ月以内の心不全入院は患者1人年当たり、デバイス群では35.8%、対照群で67.9%であった(p<0.001)。12ヵ月後のデバイス関連の合併症回避率は96.6%であり、安全達成目標は達成された(p<0.001)。24ヵ月以内の全死因死亡率は、デバイス群で29.1%、対照群で46.1%(p<0.001)であった。症候性の中等度〜重度または重度の二次性MRを合併した心不全に対して、MitraClip僧帽弁形成術は単独内科治療に対して24ヵ月以内の心不全入院率と全死因死亡率を低下させた。12ヵ月後のデバイス関連の合併症回避率は、事前に設定された安全達成目標を上回った。 COAPT試験では、デバイス群は対照群に対して2年間の死亡率を17%削減していて、これまでHFrEFに起因したMR症例に対するこれほど有効な治療法はACE阻害薬以外報告されていない。しかしながら、2018年8月にObadiaにより報告されたMITRA-FR試験(ESC Congress Munich 2018)では、重度の二次性MRを伴った心不全患者において、単独内科治療とMitraClip僧帽弁形成術+内科治療を比較したが、1年の死亡率および心不全による予定外の入院率を低下させなかった。このように二次性MRを伴うHFrEF症例を対象としたRCTであるCOAPT試験とMITRA-FR試験では異なった結果が出ているが、この差異については慎重な検討が必要である。経過観察期間に1年と2年の差があり、MITRA-FR試験でも1年以降の経過観察でMitraClip僧帽弁形成術の効果が顕著に表れ、1年以降にMitraClipの有効性が示される可能性はある。一方、HFrEFに伴う二次性MR症例に対するMitraClip僧帽弁形成術と外科的僧帽弁形成術の長期成績に関するRCTによる検討も待たれるところである。

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神様からひと言【なぜクレームするの?どう応じれば良いの?(断るスキル)】

今回のキーワードクレームの心理クレーム対応断るスキル親身受け身捨て身みなさんは、クレームにどう応じて良いか困ったことはありませんか? 病院、学校、役所などの公的機関の現場では特に、「自分だけ待たさないで」と過剰に公平扱いを求めたり、逆に「そこを何とかお願いできませんか?」と気軽に特別扱いを求める患者、保護者、利用者の方が目立つようです。彼らには、どんな思いがあるのでしょうか? どう応じるのが正解でしょうか?これらの答えを探るために、今回は、映画「神様からひと言」を取り上げます。この映画を通して、クレームの心理とその対応を整理して、断るスキルをいっしょに考えてみましょう。なぜクレームするの?―クレームの心理主人公の佐倉は、中堅食品会社に転職して早々にお客様相談室に異動させられます。そこで次々とかかってくるクレーム電話に奮闘します。その中の3つのケースを通して、まず、クレームの心理を3つに整理しましょう。(1)謝ってほしいだけ1ケース目は、「お宅のラーメン買ったんだけど、焼き豚が入ってない」「写真にはちゃんと入っているのに」とのクレームです。佐倉は、「パッケージの写真はあくまで調理例です」「通常はみなさん、分かって購入されてますけど」ととっさに答えてしまいます。すると、客は「通常?」「つまりおれは通常じゃないってことか?」「バカって言いたいの?」と怒り出したのでした。1つ目は、「ひと言、言いたいだけ」「謝ってほしいだけ」という理解や謝罪を求める心理です。そこには、確かに勘違いをしてしまったのは自分だけど、そもそも客に勘違いをさせる会社も悪いという思いがあります。特に、すぐにひどい目に遭ったと思い込みやすい人(妄想性パーソナリティ)や、トラブルの因果関係や責任関係の理屈がよく分からない人(知的障害または認知症)に多いです。(2)話がしたいだけ2ケース目は、「新しいラーメンの味がおかしい」「これね、絶対に変」「私の舌がおかしいってこと?」「私はまだボケてなんかいませんよ」「あなたご自分で食べてみた、このラーメン?」「あなたお名前は?」との高齢の女性らしき人からのクレームです。2つ目は、「話がしたいだけ」「良かれと思って言ってるだけ」という暇つぶしやお節介をしたがる心理です。そこには、「正論を言いたい」「お説教をしたい」「世直しをしたい」という思いもあります。よって、その特徴は、「態度が悪い」「説明が分かりにくい」などにも及び、内容が抽象的であることです。特に、最近目立つのは、高齢者のクレームです。クレームを付けること自体が目的化してしまい、解決することが目的にはなっていないことがあります。そして、しつこくて時間がかかります。その理由として、彼らが、定年退職の後や、子どもが成人して家を出た後に、ほかにすることがなく、話し相手がいなくて、エネルギーや時間を持て余していることが考えられます。(3)得したいだけ3ケース目は、「おまえんとこのらっきょうに虫が入ってやがったんだよ」「どうすんだ!え!」「責任とれ!」との怒気を帯びたクレームです。そして、訪問謝罪の上、謝罪金を要求してきます。3つ目は、「得したい」「コントロールしたい」という優遇やうさ晴らしを求める心理です。この特徴は、金品の要求から、役所で「特例として認めてください」との特別扱い、さらには病院で「あの研修医をクビにしてください」、学校で「いじめ加害者にもっとペナルティを課してください」との無理難題まであります。2つ目の「話がしたいだけ」の心理とは対照的に、言葉尻を捉えて圧をかけてくるなど目的のために手段を選ばず、短期戦を望む傾向があります。どう応じれば良いの?―クレーム対応佐倉は、毎回クレームに戸惑いながらも、先輩の篠崎からその対応を教わっていきます。その極意を3つのステップに整理してみましょう。(1)寄り添うー親身1ケース目の焼き豚が入っていないと勘違いするクレームに対して、篠崎は佐倉から引き継いで、すぐさま「誠に申し訳ございません」「鋭いご高察、感服致しました」「私もどうかと思っておりました」「単身赴任?」「私も妻と別居中」「一人暮らしは骨身に染みております」「お互い、逆境にめげずにがんばりましょう」と丁寧に答えます。1つ目のステップは、相手の気持ちに寄り添う、つまり親身になることです。これには、さらにa~cの3つのポイントがあります。a. 謝る1つ目は、まず謝ることです。ただし、平謝りするのではないです。それをやってしまうと、完全に責任をとることを認めることになります。そうではなくて、「お手間」「ご不便」「ご不快」に限定して謝ることです。そうすると、責任を問われても、「お手間をとらせたことについては申し訳ない気持ちでいっぱいです」「ご要望の点についてはこれから詳しくお聞きします」と返せます。それでも、「責任とれ!」「誠意を見せろ!」と言い続ける相手は、悪質であることが分かります。つまり、まずこちらが先に謝って相手の出方をうかがうことで、悪質かどうかが分かります。そして、今後のこちらの出方の参考になります。b. 共感する2つ目は、共感することです。例えば、「ごもっとも」「お察しします」「なるほど」「そうだったのですね」「おつらいですね」「ご心配になりますよね」などの気持ちを汲んだ言葉かけをすることです。脳科学的な男女差で言うと、女性の方がより共感的な傾向があるので、相手が女性の場合は、よりこの共感に重きを置き、話をよく聞いて時間をかけると良いでしょう。c. 理解を示す3つ目は、理解を示すことです。例えば、「○○というご負担(ご心配)があったのですね」と具体的にどういうダメージが物理的にも心理的にもあったのかに触れて、相手のことを良く理解していることを伝えることです。脳科学的な男女差で言うと、男性の方がより理屈っぽい傾向にあるので、相手が男性の場合は理解を示すことにより重きを置くと良いでしょう。d. 謝って済む問題にするこのように、謝る、共感する、理解を示すという3つのポイントを押さえた親身のステップをまず踏むと、「ひと言、言いたいだけ」「謝ってほしいだけ」と思っている人は、納得して引き下がります。つまり、謝って済む問題に持ち込むことです。逆にこれを最初にしていないと、こじれてしまい、事が大きくなり、後々には謝って済む問題ではなくなります。書面の対応を求められるなど、腹いせや嫌がらせに発展するリスクが高まります。また、親身のステップで言ってはいけないことは、一般論です。一般論は相手を突き放し、謝ったことにはならないからです。e. 病院へのクレームで応用するとこの対応を病院でよくあるクレームに応用してみましょう。それは、予約制の外来で患者を待たせた場合です。従来は、患者から「いつまで待たせるの?」と言われたら、医療関係者は「順番でお呼びしていますから」「緊急の患者様が優先になりますから」といきなり一般論を言って、素っ気なく答えていました。そうではなく、患者から言ってこなくても、まずこちらから挨拶代わりに「お待たせしてすいません」と適宜伝えることです。そして、10分以上待たせると「○分以上お待たせして」を添え、「具合が悪くなりませんでしたか?」と聞くとより好ましいでしょう。30分以上待たせた場合は、声を潜めて、泣きそうな顔をして、申し訳なさを示すのも好ましいです(レッドフェイス効果)。この対応は、診察する医師がするとより良いです。すると、患者は、「しょうがないですよね」「先生も大変ですよね」と理解を示してくれます。f. 親身のステップの時間は?ただし、クレーム対応の場合の親身の時間は、最初の15~30分以内とします。なぜなら、ほとんどのクレームは、15分~30分以内でだいたいのことが把握できて親身に対応できるからです。ポイントは、この時間内で事態を収拾できるかどうかです。1~2時間以上だらだらとやらないことです。よって、15~30分過ぎても相手が納得しない場合は、「すいません。今ここではこれ以上の対応が難しいです」「このアンケート用紙にご要望をお書きください」「とても込み入ったお話に思われますので」「大事なお話なので」「のちに文書でお返事するか、もう一度お話を伺う日程の調整を行います」「どちらが良いですか?」と言い、切り上げます。そして、以下のようなアンケート用紙に記入してもらい、次のステップに進みます。アンケートは、提案書というタイトルで、内容と解決案を具体的に書くようにします。要望書とはしないです。要望ではなく、あくまで提案という認識を持ってもらうためです。また、書いてもらうことで、相手に客観視を促す狙いもあります。ちなみに、電話対応の場合も基本的に窓口対応と同じです。15~30分過ぎても相手が納得しない場合は、「誠に申し訳ございません。電話ではこちらからうまくご説明するのが難しいようです」「アンケート用紙をファックスか郵送でお送りします」と伝えて、後日の文書のお返事か、話し合いの日程調整を行います。(2)動じないー受け身2ケース目の新商品のラーメンの味がおかしいとのクレームに対して、実直な佐倉は素直に「実は(ラーメンは)まだ(食べていない)です」「申し訳ございません」「(名前は)佐倉です」と答えます。そして、親身になって話を聞き続けます。その対応を受けて、高齢の女性は、「正直な方ね」「久しぶりに誠実そうな方と話せて、何だかほっとした」と感心するのでした。2つ目のステップは、揺さぶられても動じない、つまり受け身です。親身になると、クレームがエスカレートするリスクに触れました。だから、ここでは、それでも柔道の受け身のように動じない。あたふたしないことです。あたふたすると、「頼りない」「弱そう」とつけ込まれます。ただし、多くのケースでは、親身のステップを最初に経ていると、相手が友好的になり受け身がしやすくなります。これには、さらにa~cの3つのポイントがあります。a. 時間をかける1つ目は、時間をかけることです。例えば、「何とかなりませんか?」と食い下がっている場合、一般論を盾に「規則です」「期限は守ってください」とすぐに突っぱねないことです。つまり、まだ一般論は封印します。代わりに、「うーん、どうでしょうかねえ」「難しいかもしれないですねえ」と、のらりくらりと否定的であることを匂わせ、相手の出方をうかがいます。それでも食い下がってくるなら、「私一人では判断が難しいご相談です」「今ここでお答えすることができないご相談です」「持ち帰って、全体の会議で検討します」と伝えて一旦終了とします。そして、次の面談でやんわりだめだったと伝えます。そうすると、「時間と人数をかけた」「それでも難しかった」というメッセージが伝わり、より相手に受け入れやすくなります。もちろん、実際に「全体の会議で検討する」必要はないです。会議をしたというメッセージが相手に伝われば十分です。b. 受け流す2つ目は、受け流すことです。例えば、「今ここで決めていただくことができないのですか?」「先生じゃ頼りないです」と挑発的に迫られた場合、「だめなものはだめです」と言って、熱くならないことです。むしろ、「困りました」「情けないです」「苦しいです」と受け流します。たとえ「時間通りに患者を診れないんですか?」「それでも医者ですか?」と怒鳴られたとしても、熱くならず、「はい…面目ない…」としんみり答えます。1ケース目の焼き豚が入っていないと勘違いするクレームで、佐倉は「おい、責任者出せよ」と迫られ、すぐに篠崎に代わるシーンがあります。あとで篠崎は、「責任者と代われと言われて、そう簡単に代わらない」「あくまでも自分が責任者だという態度で対応する」「ただし自分で責任をとるって絶対に言っちゃいかん」「責任を持って伝えます」「ここ最重要ポイント」と佐倉に指導します。責任者をすぐに出さない理由は、もちろん動じないことを示すためです。そして、そもそも責任者は当事者ではないので、状況がよく分からず、逆に混乱を招くリスクもあるからです。c. 受け止める3つ目は、受け止めることです。例えば、「研修医の態度が悪い」「説明が分かりにくい」と抽象的な正論を振りかざす場合、「そんなことはないです」と反論しないことです。逆に、「おっしゃる通りです」「ご指摘は大変に勉強になりました。ありがとうございます」と受け止めます。「その研修医にはしっかり言い聞かせ、今後に生かすよう、十分に指導して参ります」とも言えます。抽象的なことを話し合っても、結論は出ないです。話し合いに乗るのは、具体的な要望に限定します。具体性のないクレームは、実は適当にあしらうことができるのです。もちろん、その研修医に確認をとって態度に問題がなければ、「しっかりと言い聞かせる」必要はないです。厳重注意したというメッセージが患者に伝われば十分です。d. 話を聞くだけで済む問題にするこのように、時間をかける、受け流す、受け止めるという3つのポイントを押さえた受け身のステップをまず踏むと、「話がしたいだけ」「良かれと思って言ってるだけ」と思っている人は、納得して引き下がります。つまり、話を聞くだけで済む問題に持ち込むことです。逆にこれを十分にしていないと、こじれてしまい、事が大きくなり、後々には話を聞くだけで済む問題ではなくなります。たびたび押しかけてきたり、具体的な対応策などを書面で求められるなど執拗なクレームに発展するリスクが高まります。また、受け身のステップでも言ってはいけないことは、一般論です。一般論は相手を突き放し、話を聞いたことにはならなくなるからです。e. 病院へのクレームに応用するとこの対応を、先ほどの予約制の病院の外来で待たせた患者のクレームに応用してみましょう。先ほどの親身のステップを経ても、納得されない場合です。「予約システムがそもそもおかしい」「医者の数を増やすべきだ」「急患も順番を待つべきだ」とその患者から言われたら、どうしましょう?従来は、つい「予算的に無理です」「人道的にだめです」といきなり一般論で反論していたでしょう。そうではなく、「『医者を増やす』『急患も順番を待つ』という貴重なご意見をありがとうございます」「今後に上層部に進言してみたいと思います」と伝えることです。患者は、自分の意見が上層部まで取り上げられると思い、まんざらでもないと思うでしょう。f. 受け身のステップの時間は?ただし、受け身の時間は、1時間以内で3回までを目安とします。ポイントは、延々と話し合いをしない、つまりある一定期間には終わらせることです。よって、一定期間を過ぎても、相手が納得しない場合は、最終ステップに進みます。(3)突き放すー捨て身らっきょうの瓶に虫が入ってたという3つ目のクレームに対して、佐倉は、お客様相談室の室長から「訪問謝罪の場合は、手みやげのほかに一律2万円お渡しする決まりです」と言われ、「それってたかってくれって言ってるようなもんじゃないですか!?」とびっくりして言います。実際に、佐倉と篠崎は、訪問謝罪に伺った時、客から「きっちり詫び入れるまで、帰さねえから覚悟しとけよ」と恫喝されます。確かに、営利のビジネスの現場なら、客の過剰なクレームでも、返品交換、クーポン券、サービス券、優待券、航空機のシートのアップグレード、そして和解金を渡すなどできる限りの特別扱いして、顧客満足度を上げるのも1つのやり方でしょう。逆に、特別扱いをしてもしなくても、客が納得しないなら、取引中止や出入禁止にするなどして、それ以上相手にしないのも1つのやり方でしょう。しかし、医療、学校、役所などの公的機関は違います。なぜなら、公的機関は、公平性と公共性があるからです。公平性の観点から、優遇するなど特別扱いはできないです。また、公共性の観点から、広く開かれて誰でも利用できることが前提で、相手にしないわけにはいかないです。では、どうしましょうか?3つ目のステップは、先ほどまで築いてきた関係は損なわれるとしても突き放す、つまり捨て身です。ようやくこのタイミングで、要望に応えることが難しいと伝えます。これには、さらにa~cの3つのポイントがあります。a. 限界を示す1つ目は、限界を示すことです。例えば、役所で「特例として認めてください」、病院で「あの研修医をクビにしてください」と無理難題を吹っかけてくる場合、「私どもにもできることとできないことがあります」「役所(または病院)の方針として」「社会通念上」「役所(または病院)の最終決定として」「総合的な判断によって」「対応が難しいです」「お気持ちはごもっともですが」「こちらとしても残念ですが」「私たちも決まりに従わなければなりません」「何とぞご理解いただけますようよろしくお願いします」などと伝えます。なお、限界を示すメッセージのポイントは3つあります。1つ目は、組織として公正・公平の原則に則った社会規範に従っており、相手も自分もルールを守るという意味では、同じ立場にあることです。つまり、ここでようやく、これまで封印していた一般論を解禁できます。2つ目は、組織として十分に検討した結果であることです。つまり、決定の根拠には組織のほかのメンバーの賛同があるということです。3つ目は、組織としての最終決定であることです。つまり、話し合いは終わりであるということです。b. 取り合わない2つ目は、取り合わないことです。例えば、「この事実をSNSで拡散させますよ」と悪評をほのめかしたり、「人権委員会に訴えます」「警察に通報します」と脅し文句で迫ってくる場合、「それは残念です」「ご納得いただけないのはとても残念です」「ただ、私どもがとやかく言える立場ではありませんので、致し方ないです」などと伝えます。逆に、事を荒立てたくない余りに、「それだけは止めてください」と言うと、どうなるでしょうか? 言うことを聞くと言う流れになってしまいます。すでに、こちらとしては、社会通念上のベストを尽くしたわけですので、怯えることはないです。ここは「暖簾に腕押し」「糠に釘」の、のらりくらりのスタンスで行きましょう。c. お引き取り願う3つ目はお引き取り願うことです。例えば、「分かりましたというまで、帰りません」と居座る場合、「お引き取りください」「これ以上は業務の支障になり、困ります」と伝えます。たとえ「私のことより、業務が大事なんですか?」と言い返されたとしてもです。それでも居座る場合、「これ以上のお話ですと、しかるべき対応をとらざるを得ないと考えております。ただ、本意ではございませんので、何とぞご理解をいただけると助かります」などと警察への通報をほのめかして警告します。こう言われて帰らない人は普通じゃないです。もし帰らないなら、本当に警察へ通報するべきです。ちなみに、3回言っても、従わない場合は、刑法の不退去罪が成立します。よって、居座りに付き合う必要は全くないです。なお、居座りを事前に回避する策としては、話し合いの終了の時間を、先ほどの提案書で事前に決めて、記載しておくことです。ただし、トラブルの因果関係や責任関係の理屈がよく分からない人(知的障害または認知症)の場合、「どなたかほかのご家族といっしょに再度お越しいただけますでしょうか?」と伝え、話の分かる人を介することもできます。それが難しい場合、もちろん警察保護という流れになります。また、ケースとしてはまれですが、「あなたバカなんですか?」「土下座してください」「死んだら!」と暴言を吐いたり、大人数で押しかけてくるなど恫喝をしてくる場合、「とても怖いです」と伝えます。そして、できるだけ多くのスタッフを集めて、立ち会ってもらいます。暴力のリスクもあるため、数で圧倒して、安全を確保する必要があります。ちなみに、暴言を繰り返す場合は刑法の脅迫罪、土下座の強要は強要罪が成立します。逆に、何とかその場を収めようとして、「まあまあまあ」となだめたり、言われるままに土下座をすると、どうなるでしょうか? 言うことを聞くという流れになります。絶対に、恫喝の手に乗らない冷静さも必要です。なお、暴言や大人数での押しかけによる恫喝を事前に回避する策として、2つあります。1つは、複数体制です。3人が理想です。1人目は直接の対応、2人目は記録係、3人目は控えで、いざという時に人を呼ぶ係です。もう1つは、相手の参加人数の制限を、先ほどの提案書で事前に決めておくことです。例えば、「部屋の大きさの都合上、参加人数は3人までです」と記載します。最後に、いきなり怒鳴り込んできた場合はどうしましょうか? まず、人を呼び、速やかに場所を変えることです。決してその場で話を始めない、つまり一人で丸腰で臨むことは避けます。これは、恫喝への対応と同じ理屈です。そして、やるべきことは、同僚たちで本人を取り囲んで、面会室や応接室までの移動の数分間に、歩きながら「お忙しい中わざわざすいませんねえ」「こんなお天気が悪い日に良くない日にわざわざ」などと無関係な雑談をすることです。このように、興奮してる人には本題をそらして親身のステップをまず滑り込ませます。こうして、場所と話題を変える場面転換によって、クールダウンを図ります。そうするのは、一時的に興奮してしまっただけの場合もあるからです。ただし、それでも興奮が治まらない場合や最初から酔っ払っている場合、「今日のところはお引き取りください」「日を改めましょう。次回にこのアンケートに記入の上、ご持参ください」と伝えます。時間を変える場面転換もします。それでも、帰らない場合は、先ほどの警察へ通報の流れになります。なお、大声を上げる、机を叩く、ドアを蹴る場合は、刑法の威力業務妨害罪が成立します。ちなみに、電話対応の場合も窓口対応と基本的に同じです。「これ以上の対応が難しいので、一旦電話は切らせていただきます。それでは失礼致します」と伝えて電話を切ります。なお、電話対応のメリットは、録音機能を付けることができる点です。「サービス向上のため」という理由付けをして、多くの企業では採用されています。録音されているという状況は客観性を生むので、こちら側も言葉を慎重に選び、お互いが冷静に話し合いをすることができるでしょう。何より、「言った、言わない」の水掛け論はなくなります。録音アナウンスの存在を知らせるだけで、クレーム電話が減ったとの報告もあります。d. 手詰まり感に持ち込むこのように、限界を示す、取り合わない、お引き取り願うという3つのポイントを押さえた捨て身のステップを最後に踏むと、「得したい」「コントロールしたい」と思っている人も、完全に納得に至らないにしても、「どうしようもない」とあきらめて引き下がります。つまり、手詰まり感に持ち込むことです。これが、落としどころです。また、親身と受け身のステップで言ってはいけないとした一般論は、捨て身のステップでは、十分に言うべきことに変わります。e. 病院へのクレームに応用するとこの対応を、先ほどの予約制の病院の外来で待たせた患者のクレームに応用してみましょう。先ほどの親身と受け身のステップを経ても、納得されない場合です。「待たされて具合が悪くなった。慰謝料払ってください」とその患者からしつこく言われたら、どうしましょう? 先ほどの限界を示す決まり文句を言いましょう。ちなみに、慰謝料や迷惑料の要求をする場合は、刑法の恐喝罪が成立します。f. 捨て身のステップの時間はただし、捨て身の時間は、1時間以内で最後で1回のみとします。ポイントは、最終的な結果を伝えるだけですので、もはや話し合いの余地はないことです。断るスキルとは?ところで、みなさんの中には、最初から毅然とした態度で接していないと、クレームがエスカレートしてしまうという懸念を持たれている方はいませんか? 確かに、毅然とした態度は、国際空港の税関なら良いでしょう。取り締まるだけのところだからです。しかし、病院、学校、役所は、取り締まるだけのところではないです。サービスを始めコミュニケーションを続けるところでもあります。進化心理学的に言えば、人間が、ほかの動物と決定的に違うことは、相手のクレームを受け入れたり断ったりしながら、協力関係を築くこと、つまり社会脳を進化させたことです。その社会脳によって、高度な社会を築き、文明を発展させました。そして、昨今のコミュニケーションに重きを置かれる社会では、クレーム対応に、コミュニケーション能力の集大成が求められるとも言えるでしょう。もっと言えば、クレーム対応をはじめとする断るスキルで重要なことは、まずこちらが相手の気持ちに寄り添いつつ、揺さぶられても動じない、時として最終的にはその協力関係は損なわれるとしても突き放すという押し引きのバランス感覚であると言えるでしょう。まさにこれが、親身、受け身、捨て身のステップです。「神様からひと言」とは?重役会議のシーンでは、毎回「お客様の声は神様のひと言」との社訓を一斉に唱えています。ラストシーンの重役会議では、佐倉は、名店とされるラーメン店の味をそのままカップ麺にしようとする安易な会社の方針に疑問を持っていました。そんな佐倉は、重役たちに「本店に行って参りました」「(出されたラーメンが)恐ろしくまずい」「今のは、私の率直な感想です」「純粋に金を払った客としての正直な気持ち」「いわば『神様からのひと言』です」と言い放ちます。「神様からひと言」とは、まさに「神様」の視点で自分自身を俯瞰して見ることとも言えるでしょう。その時に導かれる「ひと言」をよく理解した時、私たちは、より良いクレーム対応、そしてより良いコミュニケーションができるのではないでしょうか?1)神様からひと言:萩原浩、光文社文庫、20052)クレーム対応「完全撃退」マニュアル:援川聡、ダイヤモンド社、20183)小心者でもサラリとかわせる「断る」心理テクニック:内藤誼人、ゴマブックス、2006

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第9回 QRS電気軸で遊ぼう~トントン法の魅力~【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第9回:QRS電気軸で遊ぼう~トントン法の魅力~QRS電気軸が「正常軸」か「◯軸偏位」かについては、I誘導とaVF(またはII)誘導のQRS波の「向き」だけを見れば説明可能でしたね。今回の問題となる「角度は何度か」については、そこから少し工夫するだけで求めることができるため、ちょっとした“ゲーム感覚”で楽しいですよ。電気軸の本質に近づく、そんなレクチャーをDr.ヒロが提供します。症例提示47歳、女性。不定期の胸痛を主訴に来院。安静時心電図を以下に示す(図1)。(図1)受診時心電図画像を拡大する【問題】心電図のQRS電気軸は何度か?解答はこちら+30°(または自動診断の+35゚)解説はこちらQRS電気軸に関する定性的な議論であれば、I誘導とaVF(II)誘導のQRS波の「向き」に着目すればカンタンです。右軸・左軸偏位の頭の整理法も含めて前回述べました(第8回)。図1も、I、II、aVF誘導のQRS波がいずれも上向きなので、「正常軸」となりますね。でも、今回の問題では“何度か?”と尋ねられています。そんな時はまず、心電計にお伺いを立てましょう。上の自動診断の欄を見ると「軸:35度」となっているので、これを丸々写しても正解とします。今回は、心拍数のオリジナル計算法(検脈法:第3回)と同様に、定規もコンパスも計算機もなーんにも使わなくとも、己の頭だけで電気軸のおおまかな数値が言えるよ、というやり方を伝授しましょう。今回、ボクが紹介する方法を“トントン法”と名付けています。『またふざけたネーミング…(怒)』なんて言わないで。この手法を使えば、キチンと数値でQRS電気軸が言えるようになります。もともと難しいと敬遠されがちな電気軸の話なので、あまり考え込まずに“ゲーム感覚”で捉えましょう。何でもそうですが、心電図も各所で楽しむことが長く続けるコツだと思います。まず、次の図で説明します(図2)。図中のカメラ片手の宇宙人を自分の目線と考えてください。この宇宙人、ボクの大のお気に入りで今後も各所で登場します(笑)。(図2)心電図波形描写の基本事項画像を拡大する杉山 裕章. 心電図のみかた、考えかた[基礎編]. 中外医学社;2013.p.54.を改変心臓は、電気の流れ(刺激)を収縮(興奮)が後追いします。ボクが常々大切だと思っていることの一つに、「誘導は視点と言い換えよ」というものがあります。そして、心電図の基本ルールでは視点(誘導)に興奮が向かってくる時に、その誘導(視点)は上向き(陽性)の波として描かれます(図2、A点)。逆に、電気を見送る(離れていく)側なら、完全に下向き(陰性)の波となります(図2、B点)。これが「単極誘導」の考え方になります。では、電気興奮の流れと垂直方向かつ中点であるC点での波形はどうなるか、考えてみてください。最初の半分は興奮が近づいてきて、残り半分は遠ざかっていきますでしょ?…すると、時間経過も加味して前半が「上向き」、後半が「下向き」の波形となりますが、A点とB点のちょうど真ん中がC点ならば、両者の波の高さ・深さが同じになるはず。つまり“トントン”なんです。実は、これがトントン法のミソ、というか、逆転の発想をしようということなんです。実際のやり方は、今回の問題の心電図(図1)を使って解説します。電気軸ですから、方向性に強い肢誘導に注目するのは変わりません。上からザーッと見て“トントン”になっているQRS波を探すのです。すると…ありますでしょ。この症例ではIII誘導が該当します(図3)。基線に対して上向き(R波),下向き(S波)とも4mmちょっとの波となっています。(図3)症例のIII誘導を抜粋画像を拡大するこの部分を“トントン・ポイント(略してTP)”と、ボクは言っています。これに出くわすと、嬉しくなるのはボクだけ?これを“肢誘導の世界”で考えてみましょう。円座標で表現される心臓の前額断、だいぶ見慣れましたか?I誘導が±0゜で、II、III誘導はおのおの60°、120°と時計方向に回った場所でした(第8回)。この場合のTPはIII誘導ですから、「+120°」となるわけです(図3)。TPさえわかったら、もうひと頑張り。“ゴール”は近いですよ。(図4)“トントン法”によるQRS電気軸の求め方画像を拡大する先述の基本事項(図2)を意識して下さい。心室興奮が向かう方向(QRS電気軸)は、TPであるIII誘導(+120°)に垂直な矢印A(+30°)ないし、その正反対の矢印B(-150°)となります。さあ、正解は一つ。さて、どちらでしょう?それはI誘導が教えてくれますよ。これはイチエルゴロク(I、aVL、V5、V6)チームの一員で、心臓を真左から観察する誘導でした。心電図(図1)では、I誘導のQRS波はバッチリ上向き(陽性)です。つまり、全体的な心室興奮はI誘導に近づいて来ているはずで、矢印Aか矢印Bで選ぶなら左向きな前者の「+30°」が“真の方向”となります。これでQRS電気軸の方向が求まりました。最後にトントン法の概略をまとめておきます。■トントン法によるQRS電気軸の求め方■1)“方向性”に強い肢誘導のQRS波に着目する2)“トントン”(上向き波≒下向き波)となっている誘導(TP:トントンポイント)を探す。3)TPに直交する2方向のいずれかが真の電気軸で、I誘導などのQRS波の向きがうまく説明できるほうを選択する。さて、どうでしたか? トントン法って、なんだかゲームみたいでしょ? 細かいことがわからなくても、なんだかビシッと当たると嬉しくないですか? もしも、上下トントンの誘導が見当たらない場合、上向きと下向きの差が一番小さい誘導を“仮TP”として同じ議論をしてください。補足ですが、第8回で「正常軸」と判定した心電図の電気軸もこの考え方を使えば、TPであるaVL誘導(-30゚)を見て「+60°」と求めることができますよ(自動計測は“57度”となっています)。このように、肢誘導の世界は各誘導が“30°刻み”であり、おおむね電気軸も30°単位で求めることができるので、皆さんもぜひ試してみてください。かつて、ボクがP波も何もわからなかった時期、一章まるまる電気軸の求め方に割いた英書の日本語訳本を持っていました。残念ながら、卒業・転居そのほかに紛れて、その本は現在、ボクの手元にはありません(現在は絶版となっている様子)。ただ、この本での基本が頭に鮮明に残っていて、“トントン法”という愛称をつけて、皆さんにわかりやすく紹介することにしました(日本でもよく読まれているMarriottの心電図テキスト*でも、簡潔な既述ながら同様の方法が紹介されています)。でも、オリジナルの方法に何か少ーし物足りなかったDr.ヒロは、トントン法を改良し、もう少し細かい議論ができる“トントン法Neo”を完成させました。第11回で紹介しますので、乞うご期待!(*Wagner GS, et al. Marriott Practical Electrocardiography 12th ed. Philadelphia:Lippincott Williams & Wilkins;2013.p.54-57.)Take-home Message1)“トントン法”を活用すればQRS電気軸(角度)は自分でも求めることができる。2)“遊び心”が心電図の勉強を楽しくする!【古都のこと~善峯寺~】西国三十三所の第二十番、善峯寺(山号:西山)は、平安中期の長元2年(1029年)開山で、言わずと知れた紅葉の名所です。この素敵な紅葉に出会うには、広大な敷地を足で稼がねばなりません。周遊途上で遭遇する遊龍の松や幸福地蔵、桂昌院(徳川綱吉公の生母)ゆかりの品々…紹介に値するものが多く、1枚の写真では到底表現できません。さらに、京都市街の眺望が圧巻だったこと! 市内の観光スポットとはまた異なる秋の趣が、筋肉痛とともに心身に刻まれました。

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第18回 POSからGOSに切り替えよう【週刊・川添ラヂオ】

動画解説患者さんが持つ医療上の問題に焦点を合わせ、一つひとつ問題の解決を行っていく問題志向システムPOS(Problem Oriented System)。かかりつけ薬剤師として患者さんの問題点を知ることはとても重要なことです。しかし、そればかりが前面に出てしまうと「揚げ足ばかりとる口うるさい薬剤師」と思われてしまうかもしれません。そこで川添先生が提唱するGOSとは?

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退職後も働く日本人、脳卒中・糖尿病の発症が遅い

 60歳以上の日本人男性の追跡調査の結果、現在の退職年齢を過ぎて働くことが健康にプラスの影響を与えることが示唆された。慶應義塾大学の岡本 翔平氏らが報告した。Bulletin of the World Health Organization誌2018年12月号に掲載。 著者らは、わが国の全国高齢者調査の公開されたデータから、60歳以上の男性1,288人を抽出し、死亡・認知機能低下・脳卒中・糖尿病の4つの健康アウトカムの発症について最大15年間追跡調査した。傾向スコア法を用いて、経済的、社会的および健康のデータを独立変数の形で組み込み、健康労働者効果を調整した。就労している人としていない人の健康アウトカムの時間差を計算し、退職年齢を過ぎて働くことによる健康について平均処置効果(ATE)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・就労している人はしていない人と比べて、寿命が1.91年(95%信頼区間:0.70~3.11)長かった。さらに、認知機能低下までの期間が2.22年(同:0.27~4.17)、糖尿病発症までの期間が6.05年(同:4.44~7.65)、脳卒中発症までの期間が3.35年(同:1.42~5.28)長かった。・自営業者と従業員の比較では、寿命は自営業者のほうが長かった。糖尿病や脳卒中の発症年齢については、従業員でのみ有意なベネフィットが認められたが、自営業者ではみられなかった。

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骨粗鬆症検診、受診率が最も低い県は?

 骨粗鬆症患者は約1,280万人と推計されているが、自覚症状がないことが多いため気づかれにくい。骨折などでQOLが急激に低下することを防ぐためには早期に診断し、治療に取り組むことが重要となっている。12月7日、骨粗鬆症財団は厚生労働省の公表データをもとに都道府県別に骨粗鬆症検診受診率を調べた結果を発表した。検診受診率が最も高い栃木県と最も低い島根県では47倍もの開きがあり、相関解析の結果、検診受診率が低い地域ほど大腿骨骨折の発生率が高く、介護が必要になる人が多くなる傾向が明らかになった。検診受診率は最も高い県で14%、最も低い県では0.3% 現在国が行っている公的な骨粗鬆症検診としては、40、50、55、60、65、70歳の女性を対象にした節目検診があり、骨粗鬆症財団では男性でも70代以降は2年おきを目安とした受診を推奨している。 2015年度の骨粗鬆症検診の受診率は全国平均で5.0%と低く、高い方から栃木県(14.0%)、山梨県(13.1%)、福島県(13.1%)、群馬県(13.1%)、宮城県(12.1%)であった。低い方からみていくと島根県(0.3%)、和歌山県(0.9%)、神奈川県(0.9%)、京都府(1.1%)、北海道(1.2%)の順で、地域によって大きな差があることが明らかとなった1)。検診受診率が高いほど大腿骨骨折が少なく、要介護率が低い傾向 骨粗鬆症は大腿骨骨折の大きなリスク因子であり、本調査では、大腿骨骨折により人工骨頭挿入術を受けた患者の割合と、検診受診率および要介護率との間の関連が調べられた。 その結果、大腿骨骨折により人工骨頭挿入術を受けた患者の割合と要介護率との間には正の相関(n=47、r=0.47、p<0.01)、人工骨頭挿入術を受けた患者の割合と検診受診率との間には負の相関(n=46、r=-0.49、p<0.01)がみられた。さらに、要介護率と検診受診率との間には負の相関関係が認められている(n=46、r=-0.46、p<0.01)。これらのことから、検診受診率の低い地域ほど大腿骨骨折の発生率が高く、介護が必要になる人が多い傾向が示唆された。 なお、各種の健康診査およびがん検診(健康診査、血圧、脂質検査、糖尿病検査、貧血検査、肝疾患検査、腎疾患検査、胃がん健診、肺がん検診、大腸がん検診、子宮頸がん検診、乳がん検診)の検診受診率と要介護率の間には相関関係は認められなかった。 骨粗鬆症検診の受診者数は「平成27年度地域保健・健康増進事業報告(健康増進法)」、要支援及び要介護者数は「平成26年度介護保険事業状況報告」、人工骨頭挿入術(股)数は「第 2 回レセプト情報・特定健診等情報データベース」、人口は「平成 27 年国勢調査人口等基本集計」を用いている。この結果は、日本骨粗鬆症学会雑誌2)に報告された。 骨粗鬆症財団ホームページ内の「検診のQ&A」ページでは医療従事者向けのQ&Aが掲載されているほか、骨量測定結果の見方について患者配布用の資材もダウンロード可能となっている。■参考1)公益財団法人骨粗鬆症財団 プレスリリース2)山内広世ほか. 日本骨粗鬆症学会雑誌. 2018;4:513.〔12月17日 記事の一部を修正いたしました〕

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術前治療で浸潤病変残存の早期乳がん、術後T-DM1が有望/NEJM

 術前補助療法終了後に浸潤性病変が残存するHER2陽性早期乳がん患者の術後補助療法において、T-DM1(トラスツズマブ・エムタンシン)はトラスツズマブに比べ、浸潤性乳がんの再発および死亡のリスクを半減させることが、ドイツ・German Breast GroupのGunter von Minckwitz氏らが行ったKATHERINE試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年12月5日号に掲載された。術前補助化学療法+HER2標的治療を受けたのちに残存する浸潤性乳がんを有する患者は、残存がんのない患者に比べ予後不良とされる。T-DM1は、モノクローナル抗体であるトラスツズマブと、メイタンシン誘導体で微小管阻害薬であるエムタンシン(DM1)を結合させた抗体薬物複合体で、化学療法+HER2標的治療を受けた転移を有する乳がん患者に便益をもたらすことが知られている。残存がん例で術後補助療法の無浸潤病変生存を検討 KATHERINEは、HER2陽性早期乳がんで、タキサン系薬剤±アントラサイクリン系薬剤による術前補助化学療法とHER2標的治療を終了後の手術時に、乳房または腋窩リンパ節に浸潤性の残存病変が認められた患者を対象に、T-DM1とトラスツズマブの有用性を比較する非盲検無作為化第III相試験である(F. Hoffmann-La RocheとGenentechの助成による)。 被験者は、術後補助療法としてT-DM1(3.6mg/kg)またはトラスツズマブ(6mg/kg)を3週ごと(1サイクル)に静脈内投与する群に無作為に割り付けられ、14サイクルの治療が行われた。 主要エンドポイントは、無浸潤病変生存(同側乳房の浸潤性乳がん再発、同側乳房局所領域の浸潤性乳がん再発、対側乳房の浸潤性乳がん、遠隔再発、全死因死亡のいずれかが発現するまでの期間)であった。 2013年4月~2015年12月の期間に、28ヵ国273施設で1,486例が登録され、T-DM1群に743例、トラスツズマブ群にも743例が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は、T-DM1群が41.4ヵ月、トラスツズマブ群は40.9ヵ月だった。遠隔再発は有意に少ない、全生存はさらなる追跡を ベースラインの年齢中央値は49歳で、72.3%がホルモン受容体陽性例であった。76.9%がアントラサイクリン系薬剤を含む術前化学療法を受けており、19.5%がトラスツズマブと他のHER2標的薬(ペルツズマブなど)を投与されていた。 今回の中間解析時に、浸潤性病変または死亡は、T-DM1群が91例(12.2%)、トラスツズマブ群は165例(22.2%)に認められた。3年無浸潤病変生存率はそれぞれ88.3%、77.0%であった。無浸潤病変生存は、T-DM1群がトラスツズマブ群に比べ有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.50、95%信頼区間[CI]:0.39~0.64、p<0.001)。 無浸潤病変生存のサブグループ解析では、ホルモン受容体陽性/陰性、術前補助療法後の病理学的リンパ節転移陽性/陰性、1cm以下の浸潤性原発巣の有無にかかわらず、T-DM1群が有意に良好であった。 初回浸潤病変イベントとしての遠隔再発は、T-DM1群が78例(10.5%)と、トラスツズマブ群の118例(15.9%)に比べ有意に少なかった(HR:0.60、95%CI:0.45~0.79)。全生存期間には差を認めなかった(HR:0.70、95%CI:0.47~1.05)。 安全性のデータは、T-DM1の既知の安全性プロファイルと一致しており、有害事象の頻度はT-DM1群のほうが高かった。Grade3以上の有害事象は、T-DM1群が25.7%、トラスツズマブ群は15.4%に発現し、重篤な有害事象はそれぞれ12.7%、8.1%、投与中止の原因となった有害事象は18.0%、2.1%に認められた。 著者は、「術後T-DM1治療の全生存への効果を決定するために、さらなるフォローアップを行う必要がある」としている。

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認知症やパーキンソン病における幻視のマネジメント

 幻視は、認知症やパーキンソン病において発現する共通の症状であり、大幅な認知機能低下や機能低下と関連しているといわれているが、その最適なマネジメント戦略はよくわかっていない。英国・Papworth Hospital NHS Foundation TrustのPeter Swann氏らは、認知症やパーキンソン病における幻視の頻度や発現機序を再調査し、それらのマネジメントについてエビデンスベースで検討を行った。International Psychogeriatrics誌オンライン版2018年11月6日号の報告。 1980年1月~2017年7月までにPubMedに掲載された研究を対象とし、システマティックレビューを行った。検索キーワードは、「幻視(visual hallucinations)」「レビュー(review)」「認知症またはパーキンソン病(dementia OR parkinson*)」とした。 主な結果は以下のとおり。・645件の研究の関連性についてスクリーニングし、最終的に89件の研究を抽出した。内訳は、メタ解析11件、ランダム化比較試験34件、その他の試験6件、関連レビュー多数であった。・他の精神症状と区別し、幻視を評価していた研究は、6件のみであった。・非定型抗精神病薬に関する研究は頻繁に行われていたが、パーキンソン病認知症におけるクロザピンを除き、その結果は不明瞭であった。・アセチルコリンエステラーゼ阻害薬が、幻視の治療に役立つ可能性があるとのエビデンスが、いくつか報告されていた。・全体として、ほとんどの治療に対するエフェクトサイズは小さく、長期フォローアップ研究はほとんど認められなかった。・治療においては、注意深くリスクを評価し、頻繁に見直しを行う必要がある。また、多くの患者は、治療することなく改善が認められた。・精神症状のグループ分けに一般的に使用される評価尺度を用いた幻視に関する研究データが不十分であった。 著者らは「幻視に関する特定の評価尺度や分析可能な他の評価尺度が欠如しており、現在の有効性や短期フォローアップによる小規模な研究に限定されていることから、将来における本分野の研究は重要である」としている。■関連記事認知症発症と関連する5つの精神症状認知症患者の精神症状に対し、抗不安薬の使用は有用か境界性パーソナリティ障害でみられる幻覚の正体は

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RAS阻害薬、TAVR予後を改善するか/JAMA

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)を受けた患者では、退院時のRAS阻害薬(ACE阻害薬またはARB)の処方により、死亡および心不全による再入院のリスクが低減することが、米国・デューク大学医療センターのTaku Inohara氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年12月4日号に掲載された。TAVR施行後のRAS阻害薬処方の有効性に関するデータはないが、RAS阻害薬は左室の逆リモデリングをもたらし、心機能を改善する可能性が示唆されている。RAS阻害薬処方の有無別のアウトカムを後ろ向きに検討 本研究は、RAS阻害薬の処方とTAVR施行後のアウトカムの関連を検討する後ろ向きコホート研究である(ACC財団の全国心血管データレジストリーなどの助成による)。 米国胸部外科学会(STS)/米国心臓病学会(ACC)の経カテーテル大動脈弁治療レジストリー(STS/ACC TVT Registry)のデータを用い、2014年7月~2016年1月の期間にTAVRを施行された65歳以上のメディケア受給者を解析に含めた。最終フォローアップ日は2017年3月31日だった。 退院時のRAS阻害薬の処方の有無による治療バイアスの可能性を調整するために、人口統計学データ、心電図所見、入院中の合併症の差を考慮し、1対1の割合で傾向スコアマッチングを行った。 主要アウトカムは、退院後1年以内の全死因死亡および心不全による再入院とした。副次アウトカムは、1年時のカンザスシティー心筋症質問票(KCCQ)で評価した健康状態であった。KCCQ(0~100点)は、点数が高いほど症状による負担が少なく、QOLが良好であることを示し、点数の増分が5点以上で小さな改善、10点以上で中等度改善、20点以上で大きな改善と判定した。KCCQスコアは有意に改善したが、臨床的な意義はない 米国の417施設でTAVRを施行された患者2万1,312例のうち、退院時に8,468例(39.7%)がRAS阻害薬の処方を受けていた。傾向スコアマッチングにより、1万5,896例(平均年齢82.4歳[SD 6.8]、女性48.1%、平均左室駆出率[LVEF]51.9%[SD 11.5])を解析に含めた(両群7,948例ずつ)。 RAS阻害薬処方群は、非処方群に比べ1年時の死亡率が有意に低く(12.5% vs.14.9%、絶対リスク差[ARD]:-2.4%[95%信頼区間[CI]:-3.5~-1.4]、ハザード比[HR]:0.82[95%CI:0.76~0.90])、心不全による再入院率も有意に良好であった(12.0% vs.13.8%、ARD:-1.8%[-2.8~-0.7]、HR:0.86[0.79~0.95])。 LVEFで層別化すると、LVEF保持例(LVEF>40%)では、RAS阻害薬処方群が非処方群に比し、1年死亡率が有意に低かった(11.1% vs.13.9%、ARD:-2.81%[95%CI:-3.95~-1.67]、HR:0.78[95%CI:0.71~0.86])のに対し、LVEF低下例(LVEF≦40%)では有意差を認めなかった(18.8% vs.19.5%、ARD:-0.68%[-3.52~2.20]、HR:0.95[0.81~1.12])(交互作用:p=0.04)。 KCCQスコア解析には4,837例(30.4%)が含まれ、1年時の改善効果はRAS阻害薬処方群(2,416例)が非処方群(2,421例)よりも有意に優れた(KCCQスコアの補正後の変化の中央値:33.3点[IQR:14.2~51.0]vs.31.3点[IQR:13.5~51.1]、改善の差:2.10点、95%CI:0.10~4.06、p<0.001)が、効果量は臨床的に意義のある最小変化である5点に及ばなかった。 著者は、「選択バイアスの可能性があるため、これらの知見に関しては、無作為化試験でさらなる検討を要する」としている。

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Dr.須藤のやり直し酸塩基平衡

第1回 基本的な生理学的知識 第2回 酸塩基平衡異常の基本第3回 血液ガスの読み方とケーススタディ01&02第4回 ケーススタディ03&04 第5回 K代謝の生理学とケーススタディ05 第6回 ケーススタディ06 第7回 ケーススタディ07 第8回 ケーススタディ08 第9回 ケーススタディ09 そして低K血症の鑑別診断の手順 第10回 尿中電解質の使い方 酸塩基平衡に苦手意識を持っていませんか?酸塩基平衡は、最低限の生理学的な基本を理解したうえで、個々の患者さんに応用できるようになると、これほど面白い分野はないといっても過言ではありません。このシリーズでは、達人Dr.須藤が酸塩基平衡の基本ルールをしっかりとレクチャー。シリーズ後半には、症例を基に、実用的な応用について、解説します。これで、あなたも酸塩基平衡が好きになる!第1回 基本的な生理学的知識 まずは、酸塩基平衡の生理学的な基本知識から解説します。酸の生成や負荷に対する生体の反応そして、基本用語の整理など、これまでぼんやりと知っていたことが、すっきりと整理され、理解できます。また、覚えづらいHenderson-Hasserbalch 式など、Dr.須藤ならではの覚えるコツもお教えします。第2回 酸塩基平衡異常の基本 酸塩基平衡異常は何らかの病的プロセス(代謝性・呼吸性)、(アシドーシス・アルカローシス)が複数参加した綱引きです。正常な状態であれば、綱は地面に置かれており、中央はpH7.40であるが、何らかの異常があると綱引き開始!綱引き勝負の行方は?Dr.須藤ならではの綱引きの図を使って、詳しく解説します。まずは、代謝性アシドーシスと代謝性アルカロ―シスの機序についてしっかりと理解してください。第3回 血液ガスの読み方とケーススタディ01&02 今回は基本的な血液ガスの読み方をレクチャー。血ガスは基本的な6つのステップをきちんと踏んでいくことで、患者さんの状態を読み解いていくことができます。また、今回から症例の解析に入ります。Dr.須藤が厳選した症例で、基本ルールのマスターと臨床の応用について学んでいきましょう。第4回 ケーススタディ03&04 今回は、2症例を基に混合性の酸塩基平衡異常を解説します。“Medical Mystery”と名付けられた症例03。pHは一見正常、でも患者の状態は非常にsick。さあ、患者にいったい何が起こっているのでしょう。そして、酸塩基平衡や電解質の異常をたくさん持っているアルコール依存症の患者の症例を取り上げるのは症例04。それらをどう解読していくのか、Dr.須藤の裏ワザも交えて解説します。第5回 K代謝の生理学とケーススタディ05 カリウム代謝異常(とくに低Kを血症)合併することが多い酸塩基平衡異常。今回は、カリウム代謝に関する基本的な腎生理学から学んでいきましょう。まずは、重要な尿細管細胞について。NHE3?NKCC2?ROMK?ENAC?・・・が何だか!!!心配いりません。Dr.須藤がこのような難しいことを一切省いて、臨床に必要なところに絞って、シンプルに解説します。第6回 ケーススタディ06 ケース06は「原因不明の腎機能障害を認めたの48歳の小柄な男性」。多彩な電解質異常、酸塩基平衡異常を来した今回の症例。Dr.須藤が“浅はか”だったと当時の苦い経験を基に解説します。ピットフォールはなんだったのか?また、AG正常代謝性アシドーシスの鑑別診断に、重要な意味を持つ尿のAnion GAPについても確認しておきましょう。第7回 ケーススタディ07 「クローン病治療にて多数の腸切除と人工肛門増設がある41歳男性の腎機能障害」の症例を取り上げます。さまざまな病態、酸塩基異常、電解質異常などを呈するこの患者をどう診断し、どこからどのように治療していくのか。臨床経過-血液ガスの数値と治療(輸液)の経過-を示しながら、診断と治療について詳しく解説します。第8回 ケーススタディ08 今回の症例は「腎機能障害と原因不明の低K血症で紹介された48歳女性」検査所見は、低K血症とAG正常代謝性アシドーシス、そして、尿のAGはマイナス!そう、この組み合わせで一番に考えられるのは「下剤濫用」。しかしながら、導き出される鑑別と、患者から得られる病歴が一致しない。時間稼ぎにクエン酸NaとスローKで外来で経過をみながら考えることを選択。だが、完全に補正されない・・・。思考停止に陥ったDr.須藤。その原因と診断は?第9回 ケーススタディ09 そして低K血症の鑑別診断の手順 「著明な低カリウム血症の35歳女性」を取り上げます。Dr.須藤の初診から1週間後、診察室に訪れた患者。なんと30分間も罵倒され続けることに!!一体患者に、、Dr.須藤に何が起こったのか!そして、いくつかのケーススタディでみてきた低カリウム血症の鑑別診断を、手順に沿って、シンプルにわかりやすく解説します。これまで何度も出てきた“KISS”と“尿血血”というキーワード。ついにその全貌が明らかに!第10回 尿中電解質の使い方 「クローン病治療にて多数の腸切除と人工肛門増設がある41歳男性の腎機能障害」の症例を取り上げます。さまざまな病態、酸塩基異常、電解質異常などを呈するこの患者をどう診断し、どこからどのように治療していくのか。臨床経過-血液ガスの数値と治療(輸液)の経過-を示しながら、診断と治療について詳しく解説します。

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免疫再構築症候群(IRIS)による結核発症・悪化の予防にprednisoneが有効(解説:吉田敦氏)-973

 HIV感染者において、抗ウイルス療法(ART)開始後に併存している感染症が悪化することを経験するが、これはARTによって免疫再構築が生じることによるとされ、免疫再構築症候群(IRIS)と総称されている。ニューモシスチス肺炎やサイトメガロウイルス感染症、結核、クリプトコッカス髄膜炎が代表的であり、これらの感染症を発症した後にARTを開始する際には、IRISによる悪化ないし発症を少なくするために、感染症治療からある程度の時間をおいてからARTを開始するのがよいとされてきた。 しかしながら、ART開始が遅れると免疫低下の強い期間がそれだけ長くなるために、全身状態の改善が遅れたり、他の日和見感染症の発症を招き、ひいては死亡につながる。このためART開始時期については、たとえばニューモシスチス肺炎では治療開始後2週間以内、クリプトコッカス髄膜炎では抗真菌薬開始後5週間以降が目安とされている。ただし結核については開始時期のみならず、IRIS発症予防ないし発症時に用いられるステロイド投与についても議論があった※。またその際、ステロイド投与を避けるべきとされるカポジ肉腫(KS)の合併や悪化にも懸念があった。 今回の試験では、結核治療開始後1ヵ月以内にARTを開始した、CD4陽性リンパ球数100個/μL以下の患者において、ARTと同時にprednisoneを開始し、28日間続け、結核によるIRIS発生率をプライマリーエンドポイントとして評価した。結果としてIRIS発生率はprednisone投与群で有意に低く、さらに合併した場合でもその程度は軽度であった。さらにKS合併率も増加しなかった。 prednisoneの初期投与量は40mg/日であったが、同時に投与されていたリファンピシンとの相互作用を鑑みると、実際の体内濃度はこの半分程度であろう。低用量であるといえ、この量でも効果がみられたことは興味深い。さらにCD4陽性リンパ球数が中央値49個/μLとかなり低下し、ARTをできる限り早く開始すべきである一方、ステロイド投与によるさらなる免疫低下と他の感染症の合併を容易に来しやすい患者群でありながら、日和見感染症を含む他の感染症もKSも増加せず、さらに抗結核薬の副作用の出現も少なかったことは、ステロイドによるIRIS抑制・アレルギー抑制というポジティブな効果が高く発揮された結果といえよう。 本検討の限界として筆者らは、今回の対象者が歩行可能な患者であったことと、死亡率の比較まで行えるほど集団が大きくなかったことを挙げている。入院患者では結核もさらに進行しているのが通常であり、より重症な患者でのIRISによる結核の悪化に対しては、ステロイドの効果は異なる可能性がある。また従来のコンセンサス※は生存率まで含んだものであったので、この点も今後の知見が待たれるところである。なお他論文ではART開始前のIL-6が結核のIRIS発症と相関することが報告されており1)、これをマーカーとしたIRISのハイリスク患者の区別と、ステロイド投与法の工夫も今後検討される課題であろう。※従来では、CD4リンパ球数<50ならば、結核治療開始後2週間以内にARTを開始すると生存率が改善、CD4>50ならば早期のART開始による生存率改善は認められず、中等症~重症結核では結核治療開始後2~4週、重症結核では8~12週でART開始、とされてきた。

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第3回 痛みの伝導系と抑制系【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第3回 痛みの伝導系と抑制系今回は、痛み刺激がどのようにして痛みとして認識されるかを中心にお話ししたいと思います。痛みの伝導系臨床的に神経末端の痛み受容器に一定量(閾値)以上の痛み刺激が加わることによって、痛みインパルスが発生します。そのインパルスは、侵害刺激伝達神経線維(AδとC線維)を経由して脊髄後角から脊髄内に入力します。そして、脊髄を横断して反対側に交叉後、脊髄白質の前・外側索を上行します。この伝導路の中でより外側あるいはより背側に存在する束は、Aδ線維を含む1次ニューロンが受け取ったインパルスが上行する伝導路とされており、主路は直接視床に終止します。白質前・外側索のより内側あるいは腹側にある束はC線維を含む1次ニューロンが受け取ったインパルスが上行する伝導路とされています。主路はやはり視床に終止します。双方の伝導路とも視床核で次のニューロンとシナプス結合します。この経路は脊髄視床路と呼ばれており、前者は発生学的に新しい「新脊髄視床路」、後者は古い「古脊髄視床路」です。したがって、前者はAδ線維に由来する鋭い、刺すような速い痛みの発現に関連深いとされており、判別性の感覚伝導をつかさどるものと考えられております。後者はC線維に由来する鈍い、うずく感じの遅い痛みの発現に関与するといわれており、原始性の感覚伝導をつかさどるものと考えられております。このC線維由来のインパルスは情動をつかさどる大脳辺縁系を経由して、大脳皮質に到達します(図1)。このために表にあるような情動因子によって痛みは変調されます。このことは、鎮痛薬の開発試験ではプラシーボ効果が高く、およそ30%以上にも及ぶことからも推察されます。たとえば、偽薬でもよく効く鎮痛薬と思って服用すると、それなりの鎮痛効果がみられますし、心地よい音楽を聴けば痛みは和らぎます。これは、痛みから逃避したいとする人類の防御機構かもしれません。後述の図2にAδとC線維のインパルス伝導の状況を示しております。図1 痛み刺激インパルスの上行系痛みの抑制系1)門調節説痛み刺激は人体に好ましくない感覚なので、それに対する防御機構が備わっています。その1つが、脊髄レベルにみられるゲートコントロール説に由来する機構です(図2)。Aδ線維、C線維に由来する痛みインパルスが脊髄の2次ニューロンに伝達されますが、触・圧覚インパルスを伝導するAβ線維も同様に伝達されます。脊髄には介在ニューロンが存在しており、シナプス前抑制作用を有します。Aδ線維、C線維からの側枝は抑制性伝達物質を、Aβ線維からは興奮性伝達物質をそれぞれ分泌します。このことは、痛い部位を擦ったり、圧迫すればシナプス前抑制が強まり、痛みが楽になってくることからも理解できます。図2 痛みの抑制系門調節説2)下行性痛覚抑制機構痛み刺激インパルスが上行する過程において、中脳水道やその周囲灰白質に側枝を出しております。痛み刺激インパルスが当該部位に入力することによって、大縫線核などから下行性感覚抑制系が活性化され、脊髄レベルで、痛み刺激インパルスの上行を抑制する機構が存在しております(図3)。この機構にはノルアドレナリン作動性、セロトニン作動性が考えられており、関連する核からそれぞれ作動しております。図3 下行性痛覚抑制機構このように痛み刺激インパルスは変調されることで、痛みを感じないように、また痛みの強度を下げるように、自己防御機構が活発に働いております。痛みの治療も、この感覚抑制系機構を活発化させることを考慮しながら進めていくものと考えます。次回は「痛みの測定法」についてお話しします。1)花岡一雄ほか. わかりやすい 神経系の話“痛みの伝導系”を探る 第2版. メディカルトリビューン;1988.2)十時忠秀ほか 編集. ペインクリニック療法の実際―痛みを持つ患者への集学的アプローチ. 南江堂;1996.p.3-14.

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オシメルチニブの耐性機序【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第3回

第3回 オシメルチニブの耐性機序1)Piotrowska Z, Isozaki H, Lunnerz JK, et al. Landscape of Acquired Resistance to Osimertinib in EGFR-Mutant NSCLC and Clinical Validation of Combined EGFR and RET Inhibition with Osimertinib and BLU-667 for Acquired RET Fusion. Cancer Discov. 2018 Sep 26. [Epub ahead of print]2)Oxnard GR,et al. Assessment of Resistance Mechanisms and Clinical Implications in Patients With EGFR T790M-Positive Lung Cancer and Acquired Resistance to Osimertinib.JAMA Oncol.2018;4:1527-1534.3)Papadimitrakopoulou,et al. Analysis of resistance mechanisms to osimertinib in patients with EGFR T790M advanced NSCLC from the AURA3 study. ESMO2018LBA51EGFR遺伝子変異陽性例に対する最善の治療として脚光を浴びるオシメルチニブ。徐々にではあるが、耐性機序についても報告が増えてきている。今回、MGH(マサチューセッツ総合病院)のグループからCancer Discovery誌に新規の報告が出ていたので、紹介する。MGHで治療されたオシメルチニブ耐性41例における腫瘍組織・cfDNAの解析を報告したもの。ほぼ全例が2次・3次治療、つまりT790M変異陽性例に対してオシメルチニブを用いた後の耐性。組織検体35例の解析において、2例で小細胞がん、1例で扁平上皮がんへの転化が確認されている。変異解析では、19%でEGFR C797S変異が認められたが、いずれもcis配置であった。その他の変異として、22%にMET増幅が確認されている。複数箇所の生検が得られた患者において、異なる変異(C797S変異と野生型、MET増幅あり・なし)などが認められた。少数ではあるが、3例でRET融合遺伝子異常が確認された。融合遺伝子異常は過去のMGHのパネルでは検索されていなかったため、さかのぼって検討したところ、RETやBRAF融合遺伝子異常が1例ずつ確認された。前臨床研究では、RET陽性細胞株に対してRET阻害剤単独では効果不十分であり、オシメルチニブとRET阻害剤の併用が有効であった。こうした結果を基に、上記のオシメルチニブ耐性のRET陽性例に対してRET阻害剤+オシメルチニブ併用が行われ、著明な腫瘍の縮小が認められた。オシメルチニブの耐性機序については、2015年に報告された、C797Sが有名である(Thress KS, et al. Nature Med. 2015;21:560-562.)。ただしこれは15例中6例と非常に少数例の解析であった。その後にOxnardらが140例程度の解析においてC797Sの頻度は22%と報告している(Oxnard GR, et al. JAMA Oncol. 2018;4:1527-1534.)。さらに今年のESMOではAURA3試験の耐性機序が報告され、C797S変異(14%)・MET増幅(19%)・細胞周期に関する遺伝子異常(12%)・HER2増幅(5%)・PIK3CA異常(5%)など、とされている(Papadimitrakopoulou, ESMO2018)。当初提唱されていた「C797S陽性例に第1・2世代EGFR-TKIが有効かもしれない」という仮説については、これまでの実臨床における報告の大多数がcis配置とのことであり、期待感が少し下がりつつある一方で、昨今言われているようにオシメルチニブの耐性機序が非常に多彩であることがクローズアップされている。このOxnard論文でも、今読み返すと、RETやBRAF融合遺伝子が認められているし、SCLCへの転化も複数例報告されている。今後、実臨床では、FLAURA試験の結果を受けてオシメルチニブの初回治療へとシフトしていくと思われる。その場合の耐性機序がT790M変異陽性例とどの程度異なるのかは、気になる点である(Ramalingham, JCO2018などに少数ながら耐性機序の報告あり)。また、このように耐性機序が細分化していくと大規模な臨床試験で有効性を確認してはじめて承認される、というこれまでの流れを考え直す必要が出てくるかもしれない(本試験でも個人向けのoff labelプロトコールを施設で通した、との記載あり)。遺伝子変異陽性例の臨床研究には新たなルールの確立が急務であるように思われる。

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自閉スペクトラム症における非感情性精神病性障害や双極性障害のリスク

 自閉スペクトラム症(ASD)を有する患者では、非感情性精神病性障害(NAPD)および双極性障害(BD)のリスクが高いといわれている。しかし、ASDとNAPDまたはBDの併発を検討したこれまでの研究では、診断バイアスや選択バイアスは考慮されていなかった。オランダ・マーストリヒト大学のR. Schalbroeck氏らは、オランダの精神医学的症例レジストリからの縦断データを用いて、ASD患者のNAPDまたはBDリスクを評価し、これまでのオランダ人集団における研究結果との比較を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2018年11月21日号の報告。 ASD患者1万7,234例を対象に、16~35歳までフォローアップ調査を行った。NAPDまたはBDリスクは、カプランマイヤー法を用いて算出した。バイアスを減少させるために、16歳までにASDと診断された患者8,337例の分析を含めた個別分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ASD患者のうち、35歳までにNAPDと診断された患者は23.50%(95%信頼区間[CI]:21.87~25.22)、BDと診断された患者は3.79%(95%CI:3.06~4.69)であった。・一般集団における診断率は、NAPDで0.91%(95%CI:0.63~1.28)、BDで0.13%(0.08~0.20)であった。・リスク推定値は、おおむね低値だったが、一般集団と比べると高値だった。16歳までにASDと診断された患者に限定すると、25歳までに1.87%(95%CI:1.33~2.61)がNAPDと診断され、0.57%(95%CI:0.21~1.53)がBDと診断された。・一般集団における上記の診断率は、NAPDで0.63%(95%CI:0.44~0.86)、BDで0.08%(95%CI:0.05~0.12)であった。 著者らは「ASD患者のNAPDまたはBD発症リスクは高かった。この結果には、診断バイアスや選択バイアスは影響していないと考えられる」としている。■関連記事日本人自閉スペクトラム症に対するアリピプラゾールの長期効果は自閉スペクトラム症におけるうつ病や自殺念慮のリスクと保護因子自閉症とADHD症状併発患者に対する非定型抗精神病薬の比較

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