サイト内検索|page:21

検索結果 合計:422件 表示位置:401 - 420

401.

ACE阻害薬、利尿薬とよりもCa拮抗薬との併用のほうが優れる:ACCOMPLISH試験

 米国の現行の高血圧治療ガイドライン(JNC 7)では、ハイリスクの高血圧患者に対してサイアザイド系利尿剤を含んだ併用療法を用いることを推奨しているが、最適な併用治療は十分に検討されていなかった。国際的な多施設共同試験ACCOMPLISHは、ACE阻害薬「ベナゼプリル」+ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬「アムロジピン」と、「ベナゼプリル」+サイアザイド系利尿薬「ヒドロクロロチアジド」とを比較したもので、ACE阻害薬+Ca拮抗薬併用療法のほうが、心血管イベントの減少効果が優れていることを報告した。NEJM誌2008年12月4日号より。アメリカ、北欧の計5ヵ国548施設から1万強が参加 ACCOMPLISH(Avoiding Cardiovascular Events through Combination Therapy in Patients Living with Systolic Hypertension)試験は多施設共同無作為化二重盲検試験で、アメリカ、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランドの5ヵ国548施設から参加した、心血管イベントリスクが高い高血圧患者1万1,506例(2003年10月登録開始)を、ベナゼプリル+アムロジピン併用療法群(Ca拮抗薬併用群)とベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド併用療法群(利尿薬併用群)に割り付け行われた。 両群の患者基線値は同等。試験は、追跡平均36ヵ月時点で、事前規定の試験有効性の中止基準を上回ったため早期に終了された。Ca拮抗薬併用群のイベント発生は利尿薬併用群の2割減 平均血圧は、Ca拮抗薬併用群で131.6/73.3 mmHg、利尿薬併用群で132.5/74.4 mmHgで、目標血圧(140/90 mmHg以下)は前者75.4%、後者72.4%の達成率だった。 主要なアウトカムイベント(心血管系を原因とする死亡、心筋梗塞、脳卒中、狭心症による入院、突然の心停止後に蘇生、冠動脈血行再建)は、Ca拮抗薬併用群では552件(9.6%)だったが、利尿薬併用群では679件(11.8%)発生し、Ca拮抗薬併用群のイベント発生は利尿薬併用群の0.80倍(95%信頼区間:0.72~0.90、P

402.

イルベサルタン、左室駆出率45%以上心不全患者のアウトカム改善せず

心不全患者の約半数では左室駆出率が少なくとも45%あるが、これら患者の予後を改善する治療法は示されていない。サンフランシスコ退役軍人メディカルセンターのBarry M. Massie氏らのI-PRESERVE研究グループは、これら心不全患者へのイルベサルタン(商品名:イルベタン、アバプロ)の治療効果について検証した。NEJM誌2008年12月4日号(オンライン版2008年11月11日号)より。心不全患者4,128例をイルベサルタン投与群とプラセボ群に無作為割り付けI-PRESERVE(Irbesartan in Heart Failure with Preserved Ejection Fraction Study)には、ニューヨーク心臓協会(NYHA)が定めた心不全の重症度分類によるクラスII、III、IVの60歳以上の心不全患者で、左室駆出率45%以上が確保されている患者4,128例が参加し、イルベサルタン300mg/日投与群、またはプラセボ投与群に無作為に割り付け追跡された。主要評価項目は、全死因死亡および心血管疾患(心血管系を原因とする心不全、心筋梗塞、不安定狭心症、不整脈または脳卒中)による入院とし、副次評価項目は心不全による死亡、または心不全による入院、全死因死亡または心血管を原因とする死亡、そして生活の質とした。主要転帰、副次転帰いずれも有意差は認められず平均追跡期間は49.5ヵ月間で、742例のイルベサルタン群患者と763例のプラセボ群患者で主要複合転帰のイベントが起きた。イベント発生率は、イルベサルタン群が100.4/千人年、プラセボ群が105.4/千人年で、ハザード比0.95(95%信頼区間:0.86~1.05、P=0.35)で有意差は認められなかった。全死因死亡率はそれぞれ52.6/千人年、52.3/千人年でハザード比は1.00(0.88~1.14、P=0.98)で、これも同様だった。主要転帰をもたらした心血管系の原因による入院率についても、それぞれ70.6/千人年、74.3/千人年で、ハザード比は0.95(0.85~1.08、P=0.44)だった。他の事前に特定したアウトカムについても有意差は認められなかった。このため研究グループは、イルベサルタンは左室駆出率が一定以上に保たれた心不全患者のアウトカムを改善しないと結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

403.

心電図検査の予後評価は病歴聴取の域を出ない

狭心症疑いの外来患者への心電図検査(ECG)の予後評価は、病歴聴取で得られる情報に基づく予後評価の域を出ず、将来的に虚血性心疾患を発症するか否かにECGは、ほとんど役に立たない、Newham University Hospital(イギリス)のNeha Sekhri氏らがコホート調査の結果として報告した。ECGはイギリスの胸痛クリニックでは59%の実施率、最近のEuro heart surveyでは76%と臨床現場では慣例化している。BMJ誌2008年11月29日号(オンライン版2008年11月13日号)掲載より。8,176例を登録し追跡調査はイギリスの6つの胸痛クリニックに狭心症疑いで紹介されてきた、心疾患の既往のない外来患者8,176例を登録し追跡した。全例に安静時ECGと、年齢、性別、症状の継続期間、喫煙有無、高血圧歴、服用薬など通常の臨床評価を行い記録。また運動負荷ECGも行った患者(4,873例)については、そのうち4,848例で結果(虚血性:陽性、陰性、不明)の「サマリー」を記録、1,422例では結果の「詳細」を記録し、追跡期間中央値2.46年の間の、虚血性心疾患による死亡、非致死性の急性冠動脈症候群発症との複合を評価した。もっと効果的な適用患者の層別化を検討すべきROC曲線解析によるC統計量での評価で、臨床評価のみのモデルと安静時ECGの結果を有するモデルとはほとんど違いが見られなかった。運動負荷ECGのC統計量については、「サマリー」記録群は0.74(同群で臨床評価のみの場合0.70)、「詳細」記録群は0.78(同0.74)であった。しかし、「臨床評価のみ」「臨床評価+安静時ECG」「臨床評価+安静時/運動負荷ECG」のいずれにおいても、1年時点、6年時点の主要エンドポイントのリスク層別化の累積確率はほとんど相違が示されなかった。Sekhri氏は「安静時ECGと運動負荷ECGの予後評価は、基本的な臨床評価の域を出ない」と結論。「ECG検査は広く一般的に行われているが、もっと有意義となるよう適用患者の層別化を検討するべきだ」と提言している。

404.

ロスバスタチン、健康そうな人にも有益:JUPITER

高脂血症治療薬ロスバスタチン(商品名:クレストール)について、高脂血症ではない(LDL-C値が正常か低値)が高感度CRP(C反応性蛋白)が上昇している健康そうな人も、投与によって利益が得られることが報告された。高感度CRPは炎症バイオマーカーで、心血管イベントを予測できる。スタチンがコレステロールだけでなくCRPも低下することから検証されたJUPITER試験の結果で、NEJM誌2008年11月20日号(オンライン版2008年11月9日号)にて掲載された。LDL正常か低値で、高感度CRP高値の男女17,802例を1.9年追跡JUPITER(Justification for the Use of statins in Primary prevention: an Intervention Trial Evaluating Rosuvastatin)試験は、2003年2月~2006年12月の間に26ヵ国1,315地点から参加者が集められた大規模な無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験。心血管イベントの既往がなく、LDL-Cが130mg/dL(3.4mmol/L)未満、高感度CRPが2.0mg/L以上の一見健康な男女17,802例が参加した。参加者は、ロスバスタチン20mg/日投与群とプラセボ群に無作為に割り付けられ、心筋梗塞、脳卒中、動脈血行再建または不安定狭心症による入院、心血管系起因の死亡を1次複合エンドポイントとし、中央値1.9年(最長5.0年)追跡調査された。主要心血管イベントの発生率が有意に低下無作為化後12ヵ月時点の比較で、ロスバスタチン群はプラセボ群に比べ、LDL-C値の中央値は50%、高感度CRPの中央値は37%低かった。1次エンドポイントの発生率は、ロスバスタチン群(0.77/追跡100人年)がプラセボ群(1.36/追跡100人年)に比べ0.56倍(95%信頼区間:0.46~0.69、P

405.

クレストールが心血管イベント発症リスクを大幅に減少する ~JUPITER試験結果より~

塩野義製薬とアストラゼネカは11月10日、アメリカ・ニューオーリンズで開催されている2008年米国心臓協会(American Heart Association)学術集会でJUPITER(ジュピター)試験が9日、Late Breaking Clinical Trials Sessionにて発表されたことを伝えた。JUPITER試験は、LDL-Cは正常か低値であるものの炎症マーカーとして知られている高感度CRPが高値の、心血管疾患リスクを有する男女を対象にクレストール(ロスバスタチン)の1次予防効果を検討したもの。クレストール20mg/日投与群ではプラセボ投与群に比べて、わずか1.9年(中央値)という短い試験期間で、一次エンドポイントの心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、血行再建術施行、入院を要する不安定狭心症および心血管死の複合リスク)の発症が44%(p

406.

ivabradineによる心拍低下療法の心予後改善は?:BEAUTIFUL試験

 If電流阻害薬ivabradineは、安定型冠動脈疾患および左室収縮機能障害患者の心臓の予後を改善しないが、心拍数が≧70拍/分の患者では冠動脈疾患の発症を低下させることが、大規模な無作為化試験(BEAUTIFUL試験)で明らかとなった。安定型冠動脈疾患、左室収縮機能障害はいずれもイベント発生率が高く、安静時の高心拍数は冠動脈リスク因子に影響を及ぼす可能性がある。ivabradineは洞房結節のIf電流を阻害することで心拍を低下させるが、他の心機能には影響を及ぼさないという。イギリス・王立Brompton病院のKim Fox氏が、Lancet誌2008年9月6日号(オンライン版2008年8月29日号)で報告した。33ヵ国781施設が参加した国際的な無作為化試験 BEAUTIFUL(morBidity-mortality EvAlUaTion of the If inhibitor ivabradine in patients with coronary disease and left-ventricULar dysfunction)試験の研究グループは、ivabradineによる心拍低下療法が安定型冠動脈疾患および左室収縮機能障害患者の心血管疾患による死亡率および罹患率を改善するか検討を行った。本試験は、33ヵ国781施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化試験であり、2004年12月~2006年12月に1万2,473例をスクリーニングし、冠動脈疾患を有し左室駆出率<40%の1万917例を登録した。 ivabradine群(5mg×2回/日、2週間後に心拍数≧60拍/分の場合は7.5mg×2回/日に増量、<50拍/分となった時点で5mg×2回/日に減量)に5,479例が、プラセボ群には5,438例が無作為に割り付けられた。主要評価項目は、心血管死、急性心筋梗塞による入院、心不全の新たな発症あるいは増悪による入院の複合エンドポイントとした。複合エンドポイントに変化なし ベースラインにおける平均心拍数は71.6(SD 9.9)拍/分、フォローアップ期間中央値は19ヵ月であった。プラセボ群で補正した12ヵ月後のivabradine群の心拍数は6(SD 0.2)拍/分低下した。患者の87%がβ遮断薬を併用していたが、安全性にかかわる事象は認めなかった。 ivabradineは複合エンドポイントに影響を及ぼさなかった(ハザード比:1.00、95%信頼区間:0.91~1.1、p=0.94)。重篤な有害事象はivabradine群の22.5%(1,233例)、プラセボ群の22.8%(1,239例)に認められた(p=0.70)。事前に規定された心拍数≧70拍/分の患者においても、ivabradine治療は複合エンドポイントに影響しなかった(ハザード比:0.91、95%信頼区間:0.81~1.04、p=0.17)が、副次評価項目である致死的あるいは非致死的な心筋梗塞による入院(ハザード比:0.64、95%信頼区間:0.49~0.84、p=0.001)および冠動脈血行再建術の施行(ハザード比:0.70、95%信頼区間:0.52~0.93、p=0.016)を有意に低下させた。 著者は、「ivabradineによる心拍低下療法は安定型冠動脈疾患および左室収縮機能障害患者の心予後を改善しなかったが、心拍数≧70拍/分の患者では冠動脈疾患の発症を低下させる可能性がある」と結論し、複合エンドポイントに変化がみられなかった原因について「基礎疾患ごとに必要とされる心拍数の低下の程度が異なる可能性がある。心拍数は、心筋梗塞や狭心症などそれが直接的に影響する疾患よりも、心不全など生理的反応に影響を及ぼす疾患でより低下する可能性がある」と考察している。

407.

冠動脈疾患患者の2次予防にビタミンBは無効

総ホモシステイン濃度と心血管疾患とのリスクの関連性は観察研究によって報告されている。血漿総ホモシステイン濃度は、葉酸+ビタミンB12の内服によって低下させることができるが、Haukeland大学病院心臓疾患部門(ノルウェー)のMarta Ebbing氏らは、冠状動脈疾患もしくは大動脈弁狭窄症患者の2次予防として、葉酸+ビタミンB12の服用効果と、葉酸+ビタミンB6の服薬効果を、無作為化試験で比較評価した。JAMA誌2008年8月20日号より。冠動脈造影を受けた3,096例を群無作為化二重盲検対照試験1999~2006年に、ノルウェー西部の2つの大学病院で行われた無作為化二重盲検対照試験で、参加者は冠動脈造影を受けた計3,096例の成人(女性20.5%、平均年齢61.7歳)。基線で、59.3%が2種または3種の血管疾患があった。83.7%は安定性狭心症があり、14.9%が急性冠動脈症候群を有していた。22通りの要因を有する参加者は、「葉酸(0.8mg)+ビタミンB12(0.4mg)+ビタミンB6(40mg)」(n=772)、「葉酸+ビタミンB12」(n=772)、「ビタミンB6単独投与」(n=772)、「プラセボ投与」(n=780)の4つの経口投与群のうちの1つにランダムに割り当てられた。主要エンドポイントは、全死因、非致死性の急性心筋梗塞、不安定狭心症による緊急入院、非致死性の脳梗塞の複合とした。葉酸効果は認められるがビタミンB効果は確認できなかった「葉酸+ビタミンB12」を受けていた群では、服用1年後の血漿総ホモシステイン濃度の平均値は30%減少していた。本試験は、同時期に行われたNorwegian trialで介入による有害事象の報告がされたため早期に終了され、追跡調査は38ヵ月間だった。その間に主要エンドポイントが確認された参加者は計442例(13.7%)。このうち219例(14.2%)が「葉酸+ビタミンB12」の投与を受けており、203例(13.1%)がそれらの投与を受けていなかった。ハザード比は1.09(95%信頼区間:0.90~1.32、P=0.36)。また「ビタミンB6」の投与を受けていたのは200例(13.0%)、受けていなかったのは222例(14.3%)。ハザード比は0.90(0.74~1.09、P=0.28)だった。これら結果からEbbing氏は、「本試験では、葉酸+ビタミンB12あるいは+ビタミンB6の総死亡率、心血管イベントへの治療効果の違いを見いだすことはできなかった。我々の調査結果では、冠動脈疾患患者の2次予防にビタミンBを用いることを支持しない」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

408.

女性の心血管イベント予防には片頭痛情報とFraminghamリスクスコアを

ジグザクラインや光の点滅を見たりする前兆を伴う片頭痛は、心筋梗塞を含む虚血性の脳卒中や狭心症など血管性イベントのリスク増加と関連しているとされるが、生物学的メカニズムは明らかではない。その関連について、Framinghamリスクスコアに基づく血管リスクの状態による変化(女性対象)を調べていたブリガム&ウィメンズ病院(米国・ボストン)予防医学部門のTobias Kurth氏らは、「血管リスクの状態によって関連は異なる。片頭痛と血管リスクの情報は、心血管イベントの将来予測に寄与するようだ」と報告した。BMJ誌2008年8月7日号掲載より。2万7,519例の女性を対象に前向きコホート研究米国Women's health studyと題する前向きコホート研究は、基線で心血管疾患ではなく、Framinghamリスクスコアと片頭痛状態に関する情報が入手可能だった2万7,519例の女性が参加して行われた。参加者は、Framinghamリスクスコアに基づき冠動脈性心疾患の10年リスクについて、「≦1%」「2~4%」「5~9%」「≧10%」の各グループに階層化された。主要アウトカムは、「主な心血管疾患イベント(非致死的心筋梗塞、非致死性の虚血性脳卒中、虚血性心血管疾患による死亡)」、「心筋梗塞」、「虚血性脳卒中」の各発症までの時間。基線で片頭痛を報告した女性は、3,577例(13.0%)で、そのうち1,418例(39.6%)が前兆を伴う片頭痛であったことを報告した。Framinghamリスクスコアの血管リスク指標は有効!?11.9年の追跡調査の間、心血管疾患イベントは697例だった。片頭痛のない女性と比較して、前兆を伴う片頭痛がある女性のハザード比(年齢補正済)は、「主な心血管疾患イベント」1.93(95%信頼区間:1.45~2.56)、「虚血性脳卒中」1.80(1.16~2.79)、「心筋梗塞」1.94(1.27~2.95)であった。Framinghamリスクスコアによって階層化した場合は、前兆を伴う片頭痛と「主要な心血管疾患イベント」との間の関連は、「≦1%」グループで最も強かった。片頭痛のない女性と比較して、「≦1%」グループで前兆を伴う片頭痛を報告した女性のハザード比(年齢補正済)は、「虚血性脳卒中」3.88(1.87~8.08)、「心筋梗塞」1.29(0.40~4.21)だった。「≧10%」グループで前兆を伴う片頭痛をもつ女性のハザード比は、「虚血性脳卒中」1.00(0.24~4.14)、「心筋梗塞」3.34(1.50~7.46)だった。前兆のない片頭痛をもつ女性については、Framinghamリスクスコアの各グループごとに見ても、虚血性脳卒中、心筋梗塞ともリスクは高くなかった。Kurth氏は、「前兆を伴う片頭痛と心血管疾患との間の関連は、血管リスクの状態によって異なる。片頭痛と血管リスク状態の病歴情報は、女性において特異的に、将来の心血管疾患イベントの高いリスクを知る手がかりとなるといえそうだ」と結論している。

409.

安定冠動脈疾患患者へのPCI追加によるQOL改善効力は3年

慢性冠動脈疾患の治療法に関する臨床試験「COURAGE」では、最適薬物療法に経皮的冠動脈介入(PCI)を加えても、死亡率や心筋梗塞発生率の改善につながらなかった。しかし、最適薬物療法+PCIがQOLを改善できるかどうかを検証していた、同試験メンバーのWilliam S. Weintraub氏(米国・Christiana Care Health System)らは、「PCI追加によって、治療初期にはよりQOLが改善されるが、3年後には差がなくなる」と報告した。NEJM誌2008年8月14日号より。2,287例を薬物単独群とPCI追加群に割り付け慢性冠動脈疾患患者2,287例を無作為に、PCI+最適薬物療法群(PCI群)と最適薬物療法単独群(薬物療法群)に割り付けた。狭心症に特有の健康状態の評価は「Seattle Angina Questionnaire」(SAQ;0~100のスコアが高いほど良好な健康状態を示す)を用いて、また全般的な身体・精神機能は「RAND-36=36項目健康調査」によって評価した。24ヵ月までなら重症者ほどPCIの利点が大きいベースラインで狭心症の認められなかった患者は22%だが、3ヵ月後にはPCI群で53%、薬物療法群で42%となった(P

410.

ネガティブ感情は心疾患イベントに関連:Whitehall IIスタディ

心疾患イベントのリスク増加に心理的因子(不安、敵意/怒り、うつ)が関わっていることを示す研究がいくつかあるが、ポジティブな感情、ネガティブな感情それぞれを独立因子とし、二次的な冠動脈性心疾患イベントとの関連(影響およびリスク)を検討する研究が報告された。イギリスでのWhitehall IIスタディからの報告。同スタディは1985年にセットされ追跡調査されている、健康と疾患の社会経済的傾向を探るための経時的研究である。BMJ誌2008年6月30日号掲載より。1万308人を12年以上追跡調査追跡期間12年以上の前向きコホート研究としてデザインされた試験には、ロンドンに本部事務所を置く20の行政機関に属する1万308人(1985年登録時35~55歳)が参加した。主要転帰項目は、致死性冠動脈性心疾患、非致死性心筋梗塞、狭心症(n=619、追跡期間12.5年)。年齢、性、民族性、社会経済的位置づけで調整したコックス回帰分析の結果、ポジティブ感情と、バランスがとれた感情(バランス・スコアに着目した指標で評価した感情)は、冠動脈性心疾患との関連は見出せなかった。ハザード比はそれぞれ1.01(95%信頼区間:0.82~1.24)、0.89(0.73~1.09)。ポジティブ感情、バランスのとれた感情との関連は見られなかったがさらに行動のリスク因子(喫煙、飲酒、1日の果物と野菜摂取量、運動、BMI)、生物学的リスク因子(高血圧、血中コレステロール、糖尿病)、仕事による精神的ストレスの因子で補正をしても、結果は変わらなかった。しかし、ネガティブ感情を有する区分に分類された参加者には、冠動脈性心疾患イベント増が見られた(ハザード比:1.32、95%信頼区間:1.09~1.60)。この相関は、複数の交絡因子の調整後も変わらなかった。この結果を踏まえ、「ポジティブ感情と、バランスのとれた感情は、男女ともスタディ加入時に冠動脈性心疾患と診断されなかった場合、将来的な発症を予測する因子とはならないようだ。ネガティブ感情には弱い相関が見られる。さらなるスタディで確認する必要があるだろう」と結論している。

411.

新たな抗酸化薬succinobucolは急性冠症候群の転帰を改善しない

 抗酸化薬succinobucol(AGI-1067)は、標準治療を受けている急性冠症候群(ACS)患者に併用投与しても心血管疾患の転帰を改善する効果はないことが、カナダMontreal大学Montreal心臓研究所のJean-Claude Tardif氏らが実施したプラセボ対照比較試験で明らかとなった。酸化ストレスおよび炎症は動脈硬化の病態生理に関与している。succinobucolは抗酸化薬プロブコールのモノコハク酸エステルであり、代謝が安定的でin vitroではプロブコールよりも細胞内の抗酸化作用が優れるという。Lancet誌2008年5月24日号掲載の報告。標準治療+succinobucolの効果を検討する無作為化プラセボ対照比較試験 研究グループは、従来の治療法で管理されている急性冠症候群(ACS)の心血管の転帰に及ぼすsuccinobucolの効果を評価するために、二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験を実施した。 対象は登録前14~365日にACSを発症した6,144例であり、標準治療との併用でsuccinobucol(3,078例)あるいはプラセボ(3,066例)を投与する群に無作為に割り付けた。登録は2003年7月に開始され、主要エンドポイントのイベント発生が規定数に達した2006年8月に終了した。 主要複合エンドポイントは、心血管死の初回発生までの期間、心停止からの蘇生、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症、冠動脈血行再建術とした。主要複合エンドポイントのイベント発生に対する抑制効果は認めず 有効性の解析には無作為割り付けの対象となったすべての症例が含まれた。主要複合エンドポイントのイベント発生数はsuccinobucol群が530件、プラセボ群が529件であり、succinobucolの効果は認められなかった(ハザード比:1.00、95%信頼区間:0.89~1.13、p=0.96)。 副次複合エンドポイントである心血管死、心停止、心筋梗塞、脳卒中の発生数は、プラセボ群の252件に比べsuccinobucol群は207件と有意に少なかった(0.81、0.68~0.98、p=0.029)。3次エンドポイントである糖尿病の新規発症は、ベースライン時に糖尿病が見られなかったプラセボ群では1,950例中82例で発現したのに対し、succinobucol群では1,923例中30例と有意に少なかった(0.37、0.24~0.56、p<0.0001)。 心房細動はプラセボ群の2,787例中55例に見られ、succinobucol群では2,818例中107例に認められた(1.87、1.67~2.09、p=0.0002)。治療に関連した緊急の有害事象を報告した症例数は両群間で同等であったが、重篤な有害事象として出血(32例 vs 18例)および貧血(37例 vs 10例)を報告した症例は、プラセボ群よりもsuccinobucol群で多かった。 プラセボ群に比べ、succinobucol群ではLDLコレステロール、収縮期血圧が上昇し、HDLコレステロール、糖化ヘモグロビンが有意に低下した(p<0.0001)。 Tardif氏は、「succinobucolは主要エンドポイントに対する効果を認めなかったが、succinobucolを動脈硬化の患者あるいは抗糖尿病薬として使用する前に、効果および有害事象に関する他の臨床転帰の発生率の変化について、さらに評価を行う必要がある」と結論している。

412.

適切な冠動脈造影を受けていない狭心症疑い例は冠動脈イベントリスクが高い

英国では狭心症が疑われる早期例のうち高齢者、女性、南アジア系、貧困地区住民には冠動脈造影が十分に実施されておらず、適切な冠動脈造影を受けていない症例は冠動脈イベントのリスクが高いことが、Barts and the London NHS Trust心臓病部門のNeha Sekhri氏らによる調査で明らかとなった。心血管疾患の管理における不平等が予後に影響を及ぼす可能性がある。これまでの心臓病検査へのアクセスの不平等に関する研究の多くは検査の適切性を考慮していないという。BMJ誌2008年5月10日号(オンライン版2008年4月24日号)掲載の報告。冠動脈造影の実施状況と冠動脈イベントの発生を評価するコホート研究本試験は、安定狭心症が疑われる症例に対する冠動脈造影が公平に行われているか否かを評価し、実施状況が不十分な場合はそれが冠動脈イベント発生率を上昇させているかを検討するための多施設共同コホート研究である。対象は、2003年1~12月の間に英国の6つの外来診療施設を受診し、Rand consensus法で冠動脈造影の施行が適切とされた1,375例。主要評価項目は冠動脈造影の受療状況、冠動脈死、急性冠症候群のイベント発生とし、5年間のフォローアップが行われた。冠動脈造影へのアクセスの不平等、未受療例の予後不良が明らかに冠動脈造影の施行が適切とされた症例のうち、実際に受療していたのは420例(31%)であり、69%が受療していなかった。多変量解析では、冠動脈造影の施行率は50歳以下よりも64歳以上の症例で有意に低かった(ハザード比:0.60、95%信頼区間:0.38~0.96)。また、男性よりも女性(0.42、0.35~0.50)、白人よりも南アジア系(0.48、0.34~0.67)、Townsend indexによる貧富の5段階のうちの上位4段階よりも最貧困層(0.66、0.40~1.08)で有意に低かった。冠動脈イベントは230例に見られた。冠動脈造影の施行が適切とされたが受療しなかった症例は、受療した症例に比べ冠動脈イベントの発生率が有意に高かった(1.71、1.24~2.34)。Sekhri氏は、「狭心症が疑われる早期例のうち高齢者、女性、南アジア系、最貧困層には冠動脈造影が十分に実施されておらず、適切な冠動脈造影を受けていない症例は冠動脈イベントのリスクが高かった」と結論し、「個々の症例の管理法の決定を支援する臨床ガイダンスに基づく介入を行えば、必要な検査へのアクセスおよびアウトカムが改善される可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

413.

インドの急性冠症候群はSTEMIが多く、貧困層の30日死亡率が高い

インドの急性冠症候群(ACS)患者は先進国に比べST上昇心筋梗塞(STEMI)の割合が高く、貧困層はエビデンスに基づく治療を受けにくいために30日死亡率が高いことが、インドSt John's医科大学のDenis Xavier氏が実施したCREATE registryにより明らかとなった。2001年には世界で710万人が虚血性心疾患で死亡したが、そのうち570万人(80%)が低所得国の症例であった。インドは世界でACSによる負担がもっとも大きい国であるが、その治療およびアウトカムの実態はほとんど知られていない。Lancet誌2008年4月26日号掲載の報告。心筋梗塞疑い例を対象としたレジストリー研究CREATE registryは、インドの50都市89施設で実施されたプロスペクティブなレジストリー研究である。対象は、明確な心電図上の変化(STEMI、非STEMI、不安定狭心症)が見られ急性心筋梗塞(MI)が疑われる症例、あるいは心電図上の変化は見られないが虚血性心疾患の既往を有しMIが疑われる症例とした。臨床的アウトカムおよび30日全原因死亡率の評価を行った。70%以上が貧困層~中間所得下位層2002~2005年の間に2万937例が登録され、明確な心電図上の変化により診断がなされた2万468例のうち1万2,405例(60.6%)がSTEMIであった。全体の平均年齢は57.5歳であり、非STEMI例/不安定狭心症(59.3歳)よりもSTEMI例(56.3歳)のほうが若年であった。1万737例(52.5%)が中間所得層の下位層であり、3,999例(19.6%)が貧困層であった。症状発現から来院までの所要時間中央値は360分、来院から血栓溶解療法開始までの時間は50分。糖尿病が6,226例(30.4%)、高血圧が7,720例(37.7%)、喫煙者は8,242例(40.2%)であった。30日死亡率はSTEMI例および貧困層で有意に高いSTEMI例は非STEMI例よりも血栓溶解薬(96.3%がストレプトキナーゼ)(58.5% vs 3.4%)、抗血小板薬(98.2% vs 97.4%)、ACE阻害薬/アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)(60.5% vs 51.2%)、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)(8.0% vs 6.7%)の施行率が有意に高かった(いずれもp<0.0001)。逆に、STEMI例は非STEMI例/不安定狭心症に比べβ遮断薬(57.5% vs 61.9%)、脂質低下薬(50.8% vs 53.9%)、冠動脈バイパス移植術(CABG)(1.9% vs 4.4%)の施行率が有意に低かった(いずれもp<0.0001)。STEMI例の30日アウトカムが死亡8.6%、再梗塞2.3%、心停止3.4%、脳卒中0.7%であったのに対し、非STEMI例/不安定狭心症ではそれぞれ3.7%、1.2%、1.2%、0.3%と有意に良好であった(いずれもp<0.0001)。富裕層は貧困層に比べ血栓溶解療法(60.6% vs 52.3%)、β遮断薬(58.8% vs 49.6%)、脂質低下薬(61.2% vs 36.0%)、ACE阻害薬/ARB(63.2% vs 54.1%)、PCI(15.3% vs 2.0%)、CABG(7.5% vs 0.7%)の施行率が有意に高かった(いずれもp<0.0001)。貧困層の30日死亡率は富裕層よりも有意に高かった(8.2% vs 5.5%、p<0.0001)。治療法で補正するとこの差は消失したが、リスク因子およびベースライン時の患者背景で補正した場合は維持された。Xavier氏は、「インドのACSは先進国に比べSTEMI例が多かった。これらの患者の多くは貧困層であり、それゆえにエビデンスに基づく治療を受けにくく、30日死亡率が高かった」と結論し、「貧困層における病院へのアクセスの遅れを解消し、高額すぎない治療法を提供できれば、罹患率および死亡率が低減する可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

414.

DUAAL試験、慢性安定狭心症においてリピトールが予想以上に狭心症発作を抑制

米ファイザーは、慢性安定狭心症(胸痛)患者において、リピトール(アトルバスタチンカルシウム)80mgが心筋虚血(心臓への血液供給と酸素が不十分な状態)に対する想定以上に強力な減少効果を示した、と発表した。それによると、リピトールは試験開始より第18週目までの虚血性の心臓発作数を平均70%近く減らし、心臓発作の総持続時間を60%以上減らした。また第26週まで維持した。リピトール治療群に割付けられた患者の60%は、すべての虚血性の心臓発作が試験終了まで全くなかった。その結果、狭心症の発作が実質的に減少し、ニトログリセリン治療の必要性も大きく減少した。詳細はプレスリリースへhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2008/2008_04_07.html

415.

急性冠症候群後のクロピドグレル投与中止は短期リスクを増大

不安定狭心症のイベント再発防止に使われる抗血小板薬クロピドグレルの投与中止が患者の短期リスクを増大させるかどうかはわかっていない。アメリカ・デンバー退役軍人病院P. Michael Ho氏らのグループは、全米の急性冠症候群(ACS)患者を対象に、クロピドグレル投与中止後の有害事象発生率の評価を行った。JAMA誌2008年2月6日号より。投与中止後90日以内に有害事象が有意に多発本研究は、2003年10月1日から2005年3月31日の間に127の退役軍人省病院を退院し、退院後にクロピドグレル治療を受けたACS患者3,137例を対象とした後ろ向きコホート研究。主要評価項目はクロピドグレル中止後の全原因死亡率または急性心筋梗塞(AMI)発生率とした。クロピドグレル投与の内科的治療のみを受けた患者(n=1,568)の投与中止後の平均フォローアップ期間は196(SD 152)日。一方、経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けた患者(n=1,569)の平均フォローアップ期間は203(SD 148)日だった。内科的治療を受けた患者の平均継続投与期間は302(SD 151)日で、死亡またはAMIは患者の17.1%(n=268)に出現した。クロピドグレル投与中止後、イベントが出現した期間および比率の内訳は、0~90日が60.8%(n=163)、91~180日が21.3%(n=57)、181~270日が9.7%(n=26)。投与継続期間因子補正後の多変量解析では、クロピドグレル投与中止後最初の90日間が、有害事象の高リスクと有意に相関していた(91~180日と比べた発生率リスク比1.98、95%信頼区間:1.46~2.69)。一方、PCIを受けたACS患者のクロピドグレルの平均継続投与期間は278(SD 169)日で、死亡またはAMIは患者の7.9%(n=124)に出現した。投与中止後、イベントが出現した期間と比率の内訳は、0~90日が58.9%(n=73)、91~180日が23.4%(n=29)、181~270日が6.5%(n=8)だった。投与継続期間因子補正後の多変量解析の結果、内科的治療群と同様、クロピドグレル投与中止後の最初の90日間が有害事象の高リスクと有意に相関していた(1.82、1.17~2.83)。クロピドグレル投与中止とイベント頻発との因果関係解明が急務研究グループは、内科的治療かPCI治療かにかかわらず、ACS患者がクロピドグレル投与中止後の最初の90日間に有害事象が集中して認められたことから、リバウンド・エフェクトの可能性が裏づけられたと述べている。今後はクロピドグレル投与中止後の有害事象の集中を確かめるためにさらなる研究が必要と述べている。さらに、心血管系に起因する死亡率とクロピドグレル中止の理由との関係、この現象のメカニズムを判定し、頻発するクロピドグレル投与中止後のイベントを減少させるための治療戦略を早期に確立することが必要だとまとめた。(朝田哲明:医療ライター)

416.

薬剤溶出性ステント、パクリタキセル vs シロリムス、有意差なし:SORT OUT II

薬剤溶出性ステントの承認は比較的小規模の治験結果に基づいているが、実際の診療においては幅広い患者を対象に使われる。本研究は、Gentofte大学病院(デンマーク)Anders M. Galloe氏らによって、先頭を走るシロリムス(免疫抑制剤)溶出性ステントとパクリタキセル(抗癌剤)溶出性ステントの2つの入手可能な薬剤溶出性ステントを用いて行われたSORT OUT IIの結果報告。診療実態に沿って、主要な症状の予防効果に重点が置かれた。JAMA誌2008年1月30日号より。PCI患者2098例をシロリムス群とパクリタキセル群に割り付け試験は2004年8月から2006年1月にかけてデンマークの5つの大学病院で、無作為盲検方式にて実施された。対象は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた男女合わせて2,098例(平均63.6 歳[標準偏差10.8])で、シロリムス溶出性ステント群(n=1,065)と、パクリタキセル溶出性ステント群(n=1,033)にランダムに割り付けられた。PCIの適応にはST上昇心筋梗塞(STEMI)、非STEMIまたは不安定狭心症、安定狭心症が含まれた。主要評価項目は重大な心イベントの複合エンドポイント(心臓死、急性心筋梗塞、対象病変の血行再建術、血管再形成術によると定義)。二次評価項目には、全原因死亡率とステント血栓症も含まれた。両剤に転帰上の有意差は見いだせず結果、両剤ステント群間には、重大な有害心イベントについても(98例[9.3%]対114例[11.2%]、ハザード比0.83[95%信頼区間0.63-1.08]、P=0.16)においても、あるいはどの二次的エンドポイントの結果にも有意差は確認できなかった。ステント血栓症発生率はそれぞれ、シロリムス群27例(2.5%)、パクリタキセル群30例(2.9%)で、ハザード比0.87[95%信頼区間、0.52-1.46]、P=0.60)。この結果から研究グループは、シロリムスあるいはパクリタキセル溶出性ステントによる治療を受けた患者間で、臨床転帰上の有意差は見いだせなかったと結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

417.

torcetrapibの臨床試験ILLUMINATEの結果

本報告は、コレステロールエステル転送蛋白(CETP)の抑制が血漿リポ蛋白レベルに重要な影響を及ぼすことが示され開発が進められていた、CETP阻害薬torcetrapib(2006年12月開発中止)の臨床試験ILLUMINATEの結果。NEJM誌オンライン版11月5日付け、本誌11月22日号で掲載された。強力なCETP阻害薬torcetrapibが重大な心血管イベントを減少させるかどうかについて調査された本治験は、結果として投与を受けた患者の死亡リスクと心イベントが増加したため早期に中止された。HDL-Cの増加とLDL-Cの減少は有意も血圧上昇を伴うILLUMINATEは、心血管リスクの高い15,067例の患者を対象とする無作為化二重盲検試験。患者はtorcetrapib+アトロバスタチンの併用、またはアトロバスタチン単独のいずれかに割り付けられた。主要評価項目は最初の重大な心血管イベントまでの期間とした。重大な心血管イベントとは、虚血性心疾患による死亡、非致死的心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院と定義された。12ヵ月時点で、torcetrapibを投与された患者はベースラインと比較して、高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)が72.1%上昇、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)は24.9%低下(P

418.

仕事の負担は繰り返す冠動脈心疾患のリスク増加と関連する

仕事の負担によって冠動脈心疾患(CHD)イベントのリスクが増すことは明らかとなっているが、初回心筋梗塞(MI)後の繰り返すCHDイベントの危険度と仕事の負担との関連については不明のままである。 そこで仕事の負担がCHDイベントの危険度を増すかどうか、前向きコホート研究がカナダ・ケベック州にあるUniversite LavalのCorine Aboa-Eboule氏らによって行われた。JAMA誌10月10日号掲載の報告より。仕事の負担度を4区分設定し調査対象は、1996年2月10日~2005年6月22日の間に、初回MIを発症後職場復帰を果たした35~59歳までの男女972例。職場復帰までの期間は平均6週間。調査は面談形式で、復帰後2年後時点と6年後時点の仕事の負担について聞き取りが行われた。仕事の負担は、「負担が大きい(high strain)」:要求が高度で自由裁量の幅もない、「積極的であることが求められる(active)」:要求は高度だが自由裁量の幅がある、「受動的である(passive)要求は低度だが自由裁量の幅がない)、「負担は小さい(low strain)」:要求が低度で自由裁量の幅がある、の4区分が設定された。仕事の負担が慢性的なものかどうかは、2回のインタビューに基づき、1回のインタビューで高負担に曝されていると判定できたものと、2回のインタビューで高負担に曝されていると判定できたものとに分けられた。生存率分析は、2.2年以前と2.2年以降の2区分に分け行われた。職場復帰後2.2年以降でハザード比2.20主要アウトカム指標とされたのは、致命的なCHD、非致死性のMI、不安定狭心症の複合で、結果として206例の患者で実証され、慢性的な仕事の負担は2.2年以降の区分で、繰り返すCHDと関連していることが明らかとなった(ハザード比2.20、95%信頼区間:1.32-3.66)。慢性的な仕事の負担に曝されている患者のCHDイベント発生率は6.18/100人年、曝されていない患者は2.81/100人年だった。多変量モデル解析後も、また結果を混乱させている可能性のある26のCHDリスク因子について補正後も、ハザード比は2.00(95%信頼区間:1.08-3.72)で、「慢性的な仕事の負担」は繰り返すCHDイベントの独立予測因子であることが示された。この結果を踏まえEboule氏らは、「初回MI後の慢性的な仕事の負担は、繰り返すCHDのリスク増加と関連していた」と結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

419.

高リスク糖尿病患者に対する積極的降圧療法の有用性が示される:ADVANCE試験

心血管系高リスクあるいは既往を認める糖尿病患者では、血圧に関わりなくACE阻害薬+利尿薬を用いた降圧により血管系イベントが減少することが、 Lancet誌9月8日号に掲載されたADVANCE試験の結果より明らかになった。本研究は論文掲載に先立ち、欧州心臓病学会(ESC)において報告されている。高リスク糖尿病を対象、血圧は不問本試験の対象は55歳以上の2型糖尿病患者11,140例だが、心血管系イベント既往あるいは心血管系リスクを有する「心血管系高リスク」患者だった。心血管系リスクとされたのは「細小血管症」、「糖尿病性眼症」、「喫煙」、「脂質異常症」、「微量アルブミン尿」、「糖尿病歴10年以上」か「65歳以上」 ──である。試験参加に関し、血圧値は問われなかった。これら11,140例はACE阻害薬ペリンドプリルと利尿薬インダパミドの合剤を服用する「降圧薬群」(5,569例)と「プラセボ群」(5,571群)に無作為割り付けされ、二重盲検法で追跡された。試験開始時の背景因子は、平均年齢66歳、2型糖尿病発症平均年齢が58歳、32%に心血管系イベント既往を認めた。また降圧治療を受けていたのは69%、血圧平均値は145/81mmHgだった。1次評価項目は9%有意に減少4.3年間の平均追跡期間の血圧平均値は、「降圧薬群」で5.6/2.2mmHg有意に低かった。特に収縮期血圧は「降圧薬群」では試験開始6ヵ月後以降135mmHg前後が保たれていたのに対し、プラセボ群では常に140mmHg前後だった。その結果、1次評価項目である「大血管症(心血管系イベント)+細小血管症」の発生率は「プラセボ群」16.8%に対し「降圧薬群」では15.5%で、相対的に9%の有意な減少となった(95%信頼区間:0-17%、p=0.041)。年齢、試験開始時高血圧の有無や血管症既往の有無などで分けて検討しても、「降圧薬群」で1次評価項目が増加傾向を示すサブグループはなかった。また1次評価項目を大血管症と細小血管症に分けて比較すると「降圧薬群」における減少は有意差ではなくなるが、「主要冠動脈イベント」と「その他の冠動脈イベント(血行再建術施行や無症候性心筋虚血、不安定狭心症による入院)」を併せた「全冠動脈イベント」のリスクは相対的に14%、「降圧薬群」で有意に低下していた。同様に、「微量アルブミン尿出現」も「降圧薬群」において相対的に21%、有意にリスクが低下していた。これらより報告者らは、「ペリンドプリルとインダパミド合剤は、血圧の高低にかかわらず2型糖尿病患者の大血管症+細小血管症を減少させるだろう」と結論している。なお同号に掲載された「論評」ではUniversity of Texas(米国)のNorman M. Kaplan氏が、プラセボ群の83%が何らかの降圧薬(55%はペリンドプリル)を服用していたにもかかわらず5.6/2.2mmHgの血圧差があった点など、いくつか考慮すべきポイントを指摘している。(宇津貴史:医学レポーター)

420.

うつ病は健康状態を悪化する一番の要因:WHO報告

うつ病は世界中で重要な公衆衛生問題であり主要な病因の1つとなっている。また他の慢性疾患との共存で健康状態を悪化させることは、少数ではあるが先行研究として伝えられてきた。 Lancet誌9月8日号に掲載された本報告は、世界保健機構(WHO)のSaba Moussavi氏らによる世界健康調査(World Health Survey:WHS)からの、うつ病の健康状態への影響を分析した結果。うつ病単独の有病率は3.2%WHSは18歳以上成人の健康状態および健康に関するデータ収集を目的とした調査で、世界60ヵ国、245,404例の参加者データから、うつ病と、ICD-10に基づく4つの慢性疾患(狭心症、関節炎、喘息、糖尿病)に関する有病率および健康スコアの分析が行われた。単独疾患の1年有病率は糖尿病が最も低く2.0%(95%信頼区間1.8-2.2)、次いで低かったのがうつ病で3.2%(同3.0-3.5)、その他は喘息3.3%(同2.9-3.6)、関節炎4.1%(同3.8-4.3)、狭心症4.5%(同4.3-4.8)だった。有病率9.3%~23.0%のうつ病+慢性疾患の状態が最も健康を悪化一方で、うつ病+4つの慢性疾患のうちのどれか1つ以上の有病率は、平均9.3%~23.0%までにわたっており(うつ病+糖尿病:9.3%、うつ病+狭心症:10.7%など)、前述のうつ病単独有病率よりも有意に高い(p<0.0001)。また社会経済的要因と健康状態を調整した後の健康スコアの比較からは、国や各人口統計学的特性を問わず、うつ病が健康スコアのマイナス要因として最も大きく影響していることが明らかとなった。Saba 氏らは、「うつ病が慢性疾患よりも健康状態を大きく減退させることが明らかとなった。特にうつ病+慢性疾患が共存する疾病状態は、うつ病単独よりも、慢性疾患単独よりも、また複数の慢性疾患共存状態よりも健康を悪化させる。うつ病対策に最優先で取り組なければならない」とまとめている。

検索結果 合計:422件 表示位置:401 - 420