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ICUにおける予防的なPPI投与はH2RAと比べて死亡抑制効果があるのか?(解説:上村直実氏)-1204

 ICUに入院して人工呼吸器を装着される患者の多くに対して、致死的な出血性ストレス潰瘍の発症を予防する目的でプロトンポンプ阻害薬(PPI)またはヒスタミン2受容体拮抗薬(H2RA)が使用されている。従来、上部消化管出血予防に対する有用性はH2RAに比べてPPIのほうが優ることが報告されている。しかし、PPIによる予防戦略が院内死亡率の低下についてもH2RAに比べて有用性が高いかどうかは明確になっていない。今回、オーストラリア、カナダ、英国、アイルランド、ニュージーランドの5ヵ国50施設のICUが参加したRCTの結果、上部消化管出血の予防には従来通りH2RAよりPPIが有効であるが、院内死亡率に関しては両者に差がないことがJAMA誌オンライン版に報告されている。 本研究で使用された研究デザインは「非盲検クラスター・クロスオーバー無作為化試験」であり、日本ではなじみの薄いものである。すなわち、本試験では、地域別ないしは施設ごとに使用する薬剤であるPPIとH2RAの使用する順番をランダムに決定し、さらにはその両薬剤をスイッチする時期に関して担当医師の裁量を加味するという複雑なデザインである。 研究結果として、地域ごとの治療反応に統計学的に有意な不均一性が存在することが明らかとなり、PPIとH2RA両薬剤の上部消化管出血予防に対する有用性がそれぞれの地域や施設において異なる結果となっていることは、本研究結果の解釈を難しいものとしている。さらには参加した国々における人種や医療に対する姿勢などの違いによるバイアスの存在が示唆されるなど、本研究自体の信頼性に疑問を呈する臨床論文になったように思われた。日本国内や国際臨床試験に参加する場合には、得られる結果を見越して研究デザインを十分に練ることが重要であることを学んだ論文である。

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出血ハイリスクの重症患者に対する予防的なPPI・H2RAは有用か?(解説:上村直実氏)-1177

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬(H2RA)など酸分泌抑制薬は胃食道逆流症に対する有用性により世界中で頻用されている一方、長期投与による肺炎や骨折のリスク、腸内細菌叢の変化に伴うClostridium difficile(CD)感染症のリスク増加などを危惧する報告が散見されている。このように酸分泌抑制薬の有用性と安全性のバランスは臨床現場で最も注目されている課題の1つである。 重症患者が主体のICUにおいて消化管出血の予防処置としてPPIやH2RAが当然のように投与されているが、薬剤のリスクを考慮した有用性に関する確実なコンセンサスが得られていないのが現状である。今回、この予防投与の有用性を検証するために、研究デザインの質やバイアスリスクを詳細に吟味したシステマティックレビュー/ネットワークメタ解析の結果がBMJ誌に掲載された。選択された72研究1万2,660例について検討した結果、消化管出血のハイリスク患者ではPPIやH2RAの予防投与は臨床的に消化管出血を減少する成績が示された一方、リスクの低い患者においては出血予防の有用性は統計学的には少ないものとされている。 ICUでは抗菌薬の使用が多く、PPI併用によるCD感染症の増加が危惧されるが、本研究の結果からCD感染症は予想より少ないと思われた。一方、酸分泌抑制薬により肺炎を惹起するリスクが増加することは確かなようであり、医療現場ではさらなる注意が必要である。 最も高いレベルの『エビデンス』とされるメタ解析やシステマティックレビューの評価には、選択された研究論文の質はもとより結果の解釈が大切であり、さらに選択論文のアウトカムのみでなく各研究の調査因子の違いにも注意が必要であること、調査因子が多くなると研究結果が不均一になる傾向にあること等、本研究論文から得られる教訓は多かった。EBM全盛時代となっているが、エビデンスレベルを研究デザインにより設定することが適切であるのか、また実際の診療現場では『エビデンス』を参考資料として個々の患者に対する最善の対処を行っているのか考えさせられた次第である。

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機械的換気によるICU患者の死亡率、胃薬で抑制される?/JAMA

 侵襲的機械換気を要するICU患者におけるストレス潰瘍の予防戦略としてのプロトンポンプ阻害薬(PPI)とヒスタミン2受容体拮抗薬(H2RA)には、院内死亡率に関して大きな差はないことが、ニュージーランド医学研究所のPaul J. Young氏らが行った無作為化試験「PEPTIC試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2020年1月17日号に掲載された。ICUでは、ストレス潰瘍の予防法としてPPIやH2RAが使用されるが、これらの薬剤が死亡率に及ぼす影響は知られていないという。90日院内死亡率を評価するクラスター無作為化試験 本研究は、5ヵ国(オーストラリア、カナダ、英国、アイルランド、ニュージーランド)の50のICUが参加した非盲検クラスター・クロスオーバー無作為化試験であり、2016年8月~2019年1月の期間に患者登録が行われた(ニュージーランド保健研究会議などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、ICU入室から24時間以内で、侵襲的な機械換気を要し、院内で最長90日間のフォローアップを受けた患者であった。 ストレス潰瘍の予防法として、PPIを優先的に使用した後H2RAを投与する戦略と、H2RAを優先的に使用した後PPIを投与する戦略を比較した。個々のICUが、2つの戦略を行う群に無作為に割り付けられた。25のICUは通常治療としてPPIを投与し、その後H2RAを投与する群(PPI群)に、残りの25のICUは通常治療としてH2RAを投与し、その後PPIを投与する群(H2RA群)に割り付けられた。2つの薬剤の投与期間は6ヵ月とし、クロスオーバー時にウォッシュアウト期間は設けなかった。 主要アウトカムは、初回入院中における90日以内の全死因死亡とした。副次アウトカムは、臨床的に重要な上部消化管出血、Clostridioides difficile感染、ICU入室および入院の期間(生存退院までの日数)であった。上部消化管出血はPPI群で良好 2万6,828例(平均年齢58[SD 17.0]歳、9,691例[36.1%]が女性、PPI群1万3,436例、H2RA群1万3,392例)が登録され、2万6,771例(99.2%、PPI群1万3,415例、H2RA群1万3,356例)が死亡率の解析に含まれた。 PPI群のICU患者のうち実際にH2RAの投与を受けたのは4.1%、H2RA群のICU患者のうちPPIの投与を受けたのは20.1%であった。 90日院内死亡率は、PPI群が18.3%(2,459/1万3,415例)、H2RA群は17.5%(2,333/1万3,356例)であり、両群間に有意な差は認められなかった(リスク比[RR]:1.05、95%信頼区間[CI]:1.00~1.10、絶対リスク差:0.93%ポイント、95%CI:-0.01~1.88、p=0.054)。 臨床的に重要な上部消化管出血の発生率は、PPI群が1.3%と、H2RA群の1.8%に比べ有意に低かった(RR:0.73、95%CI:0.57~0.92、絶対リスク差:-0.51%ポイント、95%CI:-0.90~-0.12、p=0.009)。 Clostridioides difficile感染の発生率(PPI群0.30% vs.H2RA群0.43%、RR:0.74、95%CI:0.51~1.09、絶対リスク差:-0.11%ポイント、95%CI:-0.25~0.03、p=0.13)およびICU入室期間中央値(3.6日vs.3.3日、退院[または抜管]までの期間中央値の比[ROM]:1.00、95%CI:0.97~1.03、p=0.85)/入院期間中央値(12.2日vs.12.0日、ROM:1.01、95%CI:0.98~1.03、p=0.66)には、両群間に有意差はみられなかった。 有害事象は、PPI群の1例でアレルギー反応が認められ、別のPPIに変更された。 著者は、「割り付け薬剤のクロスオーバーを行っているため、研究結果の解釈は限定的なものとなる可能性がある」としている。

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高出血リスク重症例への予防的PPI・H2RAは有用か/BMJ

 出血リスクの高い成人重症患者において、プロトンポンプ阻害薬(PPI)およびH2受容体拮抗薬(H2RA)の予防的投与は非投与群と比較して、消化管出血について臨床的に意味のある減少をもたらす可能性が示された。中国・首都医科大学のYing Wang氏らがシステマティックレビューとメタ解析を行い明らかにしたもので、リスクの低い患者ではPPIおよびH2RAの予防的投与による出血の減少は意味のないものであり、また、これらの予防的投与は、死亡率や集中治療室(ICU)滞在期間、入院日数などのアウトカムとの関連は認められなかった一方、肺炎を増加する可能性が示されたという。消化管出血リスクの高い患者の大半が、ICU入室中は胃酸抑制薬を投与されるが、消化管出血予防処置(多くの場合ストレス性潰瘍の予防とされる)については議論の的となっている。BMJ誌2020年1月6日号掲載の報告。システマティックレビューとメタ解析、GRADEシステムでエビデンスの質も評価 研究グループは、重症患者に対するPPI、H2RA、スクラルファートの投与、または消化管出血予防(あるいはストレス潰瘍予防)未実施のアウトカムへの相対的影響を患者にとって重要であるか否かの観点から明らかにするため、Medline、PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、試験レジスタおよび灰色文献を2019年3月時点で検索し、システマティックレビューとメタ解析を行った。 成人重症患者に対し、PPI、H2RA、スクラルファートあるいはプラセボまたは予防的投与未実施による消化管出血予防について比較検討した無作為化試験を適格とした。2人のレビュアーがそれぞれ適格性について試験をスクリーニングし、データの抽出とバイアスリスクの評価を行った。また、パラレルガイドライン委員会(BMJ Rapid Recommendation)がシステマティックレビューの監視を行い、患者にとって重要なアウトカムを同定するなどした。 ランダム効果ペアワイズ/ネットワークメタ解析を行い、GRADEシステムを用いて、各アウトカムに関するエビデンスの質を評価。バイアスリスクが低い試験と高い試験の間で結果が異なった場合は、前者を最善の推定であるとした。高出血リスク群では、患者に恩恵をもたらす? 72試験、被験者合計1万2,660例が適格として解析に組み込まれた。 出血リスクが最高リスク(8%超)の患者と高リスク(4~8%)の患者については、PPIおよびH2RAの予防的投与は、プラセボまたは非予防的投与に比べて、臨床的に意味のある消化管出血を減少する可能性が示された。PPIのオッズ比(OR)は0.61(95%信頼区間[CI]:0.42~0.89)で、最高リスク患者では同リスクは3.3%減少、高リスク患者では2.3%減少した(確実性・中)。また、H2RAのORは0.46(0.27~0.79)で、最高リスク患者では4.6%減少、高リスク患者では3.1%減少した(確実性・中)。 一方でPPI、H2RA投与はいずれも、非予防的投与と比べて肺炎リスクを増加する可能性が示された(PPIのOR:1.39[95%CI:0.98~2.10]、5.0%増加)(H2RAのOR:1.26[0.89~1.85]、3.4%増加)(いずれも確実性・低)。また、死亡率との関連は認められないと考えられた(PPIのOR:1.06[0.90~1.28]、1.3%増加)(H2RAのOR:0.96[0.79~1.19]、0.9%減少)(いずれも確実性・中)。 そのほか予防的投与による、死亡率、クロストリジウム・ディフィシル感染症、ICU滞在期間、入院日数、人工呼吸器装着期間への影響を支持する結果は、エビデンスがばらついており示されなかった。

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中止されたPPIを胃潰瘍リスクで評価して復活【うまくいく!処方提案プラクティス】第10回

 今回は、既往歴や患者情報からプロトンポンプ阻害薬(PPI)が「処方されていない」ことに疑問を持ったところから始まった処方提案です。ポリファーマシーの問題や副作用などから中止対象となることが多いPPIですが、服用継続すべき場合もあります。今回は、PPIが必要な状態について整理し、追加提案に至るまでのポイントの整理と実際の提案方法について紹介します。患者情報84歳、男性(施設入居中)、元住職基礎疾患:慢性心不全、陳旧性心筋梗塞既 往 歴:出血性胃潰瘍(81歳時)、心筋梗塞のため薬剤溶出性ステント(DES)留置(82歳時)、完全房室ブロックのためペースメーカー挿入(年齢不明)往  診:月2回処方内容1.トルバプタン錠7.5mg 1錠 分1 朝食後2.フロセミド錠40mg 2錠 分1 朝食後3.アスピリン腸溶錠100mg 1錠 分1 朝食後4.ピコスルファートナトリウム錠2.5mg 1錠 分1 夕食後5.ピコスルファートナトリウム内用液0.75% 便秘時頓用 適宜調節本症例のポイントこの患者さんは陳旧性心筋梗塞の基礎疾患があり、動脈硬化性疾患の2次予防のために低用量アスピリンが処方されています。アスピリンを長期的に服用すると、消化性出血や潰瘍のリスクがあるため、PPIやH2受容体遮断薬が予防投与されることがあります。とくに、この患者さんのように出血性胃潰瘍の既往がある場合では、PPIの予防投与が国内外のガイドラインで推奨されています。しかし、上記の処方内容のとおり、胃潰瘍の既往があり、アスピリンが処方されているにもかかわらず、PPIの投与がありませんでした。お薬手帳などを確認したところ、以前はPPIが処方されていましたが、施設入居前の処方整理でPPIが中止されたようです。<陳旧性心筋梗塞とアスピリンと潰瘍>陳旧性心筋梗塞(DES留置後)では、禁忌がない場合は低用量アスピリンを2次予防として永続投与することが推奨されている。しかし、アスピリンは低用量であっても長期服用することで、粘膜への影響により胃などに潰瘍を起こすリスクが懸念されている。とくに、出血既往歴がある患者では消化管合併症の発症率が高まることが報告されているため、PPIの併用が推奨されている。PPIが併用されておらず、出血性胃潰瘍を再発し出血性ショックをきたした一例報告もある1)。PPIを服用することのリスクとして、骨折、慢性腎臓病、クロストリジウムディフィシル感染症(CDI)、肺炎など多くの深刻な副作用がありますが、その絶対リスクは患者1人当たり年間約0.1〜0.5%増加させる程度と報告されています2)。以上の点から、出血性胃潰瘍の既往があるこの患者さんにおいてはアスピリンによる胃潰瘍再燃のリスクのほうが重要であり、今後も安全にアスピリンを服用継続するためにPPIの復活を提案することにしました。処方提案とその後の経過回診前のカンファレンスと往診同行時に、出血性胃潰瘍の既往があるのにPPIが併用されておらず、アスピリン服用に伴う出血性胃潰瘍再燃のリスクがあることを医師に相談しました。また、今回の提案の際に参考とした文献も提示し、PPI追加の妥当性について医師と検討しました。施設入居前に薬剤整理が行われたため、医師もPPIが中止になった経緯を把握していませんでしたが、既往歴と現疾患を整理すると、潰瘍リスクを捨て置くわけにはいかないという結論に至りました。そこで、往診翌日からアスピリンと併用してランソプラゾール口腔内崩壊錠30mgを朝食後に追加することになりました。患者さんは、今もアスピリンおよびランソプラゾールを併用していますが、胃部不快感や食道逆流症状、上腹部痛、嘔気などの徴候はなく経過してます。1)Platt KD, et al. JAMA intern Med.2019;179:1276-1227. 2)Vaezi MF, et al. Gastroenterology.2017;153:35-48.

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ピロリ除菌療法は慢性蕁麻疹患者に有益?

 ヘリコバクター・ピロリ菌(H. pylori:HP)が慢性特発性蕁麻疹(CSU)の発生および症状の持続と関連する可能性を示唆する知見が、韓国・高麗大学校医科大学のHyun Jung Kim氏らによるメタ解析の結果、示された。CSU症状を抑制するうえでHP除菌療法の影響が重要な意味を持つ一方、CSU寛解は除菌の成功とは関連しないことなどが明らかになったという。結果を踏まえて著者は「HPとCSUの関連メカニズムを評価するためには、さらなる研究が推奨される」とまとめている。これまでHP感染症がCSUの病因に関与していると考えられてはいたが、CSU症状改善に関するHP除菌療法の効果は明らかにされていなかった。Helicobacter誌オンライン版2019年9月15日号掲載の報告。 研究グループは、HP感染症とCSUの関連を明らかにし、HP除菌療法がCSU患者に有益であるかどうかを評価するため、メタ解析を行った。 2018年10月に、MEDLINE、EMBASE、Cochrane Library、SCOPUS、Web of Scienceを検索し、CSU患者に対するHP除菌療法の効果を検討した研究を特定した。ランダム効果モデルを用い、プール解析でリスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を求めた。 主な結果は以下のとおり。・22試験がメタ解析に包含された。CSU患者は計1,385例であった。・HP陽性患者とHP陰性患者の比較において、蕁麻疹様症状の自然寛解はHP陰性患者で有意に高率であった(RR:0.39、95%CI:0.19~0.81)。・HP陽性CSU患者において、HP除菌療法成功群は別として、HP除菌療法を受けた患者群では受けなかった患者群より、CSUの寛解が多い傾向があった(RR:2.10、95%CI:1.20~3.68)。・しかしながら、CSUの寛解に、抗菌薬によるHP除菌療法が成功したか否かにおいての有意な差はみられなかった(RR:1.00、95%CI:0.65~1.54)。

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腎機能を考慮したファモチジンの変更提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第1回

 千葉県柏市にある在宅医療特化型薬局「つなぐ薬局」の鈴木です。私は現在、施設往診同行や在宅訪問などで積極的に医師とコミュニケーションを取り、処方提案を行っています。これまの学びを処方提案という形でアウトプットすることで、薬剤師の立場と視点による薬物治療の適正化を推進し、患者さんがより良い状態になっていくことを実感しています。このコラムでは、薬学的管理の質を向上させる処方提案の重要性とともに、薬局薬剤師の視点での提案のコツをお伝えしたいと思います。処方提案する際には、ご家族からの訴えが重要な手掛かりとなることがあります。認知症様の症状が生じていると聞き取り、検査値や処方薬を見直したところ、高齢者では注意が必要な薬剤がありました。今回は腎機能を起点に処方提案した症例についてご紹介します。患者情報75歳、女性、身長:140cm、体重:45kg現病歴:脳梗塞、認知症同居の家族から、最近話が通じにくいことが多いと訴えあり。処方内容アスピリン腸溶錠100mg 1錠 分1 朝食後マニジピン錠10mg 1錠 分1 朝食後プラバスタチン錠10mg 1錠 分1 朝食後ファモチジン錠20mg 2錠 分2 朝夕食後酸化マグネシウム錠330mg 2錠 分2 朝夕食後メマンチン錠20mg 1錠 分1 夕食後前月の検査値(L/D)Scr:1.02mg/dL、eGFR:40.63mL/min/1.73m2、Mg:2.0mg/dLHDL:45mg/dL、LDL:118mg/dL本症例の着眼点この患者さんは、脳梗塞の2次予防のために低用量アスピリンを服用継続していて、その消化性潰瘍予防のためファモチジンを服用していました。処方箋の受付時に家族から聴取した「会話のつじつまが合わないことが多い」という訴えは、認知症に伴う周辺症状の可能性もありますが、ファモチジンによるせん妄や意識障害の可能性も示唆されます。腎機能が低下している場合、腎排泄型のH2受容体拮抗薬であるファモチジンの血中濃度が持続して過量投与となることがあります。『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』において、「すべてのH2受容体拮抗薬は可能な限り投与を控える。とくに入院患者や腎機能低下患者では、必要最小限の使用にとどめる」ということが記載されています。腎機能を正しく評価して薬剤投与設計を行うために、下記の評価を行いました。腎機能の評価Cockcroft-Gaultの式を用いて推算CCrを算出することができます。計算するために必要なパラメータはScr(血清クレアチニン)、年齢、体重、性別で、女性は筋肉量が少ないため、係数の0.85を乗じます。<Cockcroft-Gaultの式>男性:CCr(mL/min)=(140-年齢)×体重(kg)/(72×Scr)女性:CCr(mL/min)=(140-年齢)×体重(kg)/(72×Scr)×0.85通常は上記の簡易式が用いられるが、身長が考慮されていないので、肥満患者では腎機能を過大評価してしまう可能性がある。そのため、実体重ではなく標準体重や理想体重を用いて計算することもある。<標準体重(男女共通)>身長(m)×身長(m)×22(係数)<理想体重>男性=50+{2.3×(身長-152.4)}/2.54女性=45+{2.3×(身長-152.4)}/2.54今回の患者さんの場合、CCr(Cockcroft-Gaultの式にて推算):33.9mL/min、体重未補正eGFR:30.5mL/minであり、60mL/min>CCr>30mL/minの場合のファモチジンの推奨投与量は、20mg 1日1回あるいは10mg 1日2回となります。本症例において、ファモチジンは過量投与です。なお、腎機能が低下している場合、マグネシウムの蓄積に伴う高Mg血症を評価することも重要ですが、検査結果は基準値内であり、自覚症状の面からも高Mg血症は否定的です。処方提案と経過腎機能を評価したところ、ファモチジンが過量投与となっており、減量が望ましいと判断しました。また、せん妄のような症状も現れており、H2受容体拮抗薬が影響していることも考えられます。そこで、処方医に電話で、ファモチジンを1日1回に減量あるいは肝代謝型のPPI(プロトンポンプ阻害薬)に変更してみるのはどうか提案しました。その結果、ファモチジンは中止となり、ランソプラゾールOD錠15mgが開始となりました。後日家族に確認したところ、会話のつじつまが合わないということは減ったと聴取しました。本症例のポイント・定期的に血液検査の結果と身長・体重を聴取する。・薬物投与設計のための腎機能評価を正しく理解する。・H2受容体拮抗薬は腎排泄型薬剤が主であり、高齢者においてはせん妄や意識障害のリスク因子となる。「透析患者に対する投薬ガイドライン」, 白鷺病院,(参照:2019年6月24日)日本老年医学会ほか 編. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015. メジカルレビュー社;2015.

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ピロリ除菌、親が失敗なら子の失敗リスク高い

 クラリスロマイシン(CAM)耐性Helicobacter pylori(H. pylori)とCYP2C19多型は、何世代にもわたって受け継がれる可能性があり、H. pylori除菌失敗の危険因子として知られている。しかし、親がCAM3剤併用療法による除菌失敗歴を有する患者における失敗リスクを評価した研究はなかった。今回、出口 尚人氏(京都大学/武田薬品工業)らの横断研究により、CAM3剤併用療法での親の除菌失敗歴が子孫の除菌失敗の危険因子であることが示された。Journal of Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2019年7月1日号に掲載。 本研究は、被保険者310万人の大規模な診療報酬請求データベースを使用。2005年1月~2018年2月に、1次除菌のCAM3剤併用療法の記録と親の記録の両方を有する404例を同定した。父親または母親のCAM3剤併用療法の失敗を、親のCAM3剤併用療法の失敗歴とした。オッズ比は、年齢・性別・真性糖尿病・消化性潰瘍で調整したロジスティック回帰モデルを用いて推定した。 その結果、CAM3剤併用療法の除菌失敗率は22.5%(91/404)であった。単変量解析では、オッズ比が1.90(95%信頼区間:1.10~3.29)、多変量解析ではオッズ比1.93(同:1.10~3.39)であり、親のCAM3剤併用療法の失敗歴は子孫のCAM3剤併用療法の失敗に関連していた。

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抗精神病薬使用と胃がんリスクとの関係

 台湾・桃園長庚紀念病院のYi-Hsuan Hsieh氏らは、抗精神病薬使用と胃がんの発症率との関連を明らかにするため、検討を行った。これまで、抗精神病薬の使用と胃がんリスクとの関連は、明らかとなっていなかった。Cancer Medicine誌オンライン版2019年6月10日号の報告。 ネステッド・ケース・コントロール研究を用いて、1997~2013年の台湾全民健康保険研究データベースより、胃がん患者3万4,470例および非胃がん患者16万3,430例を抽出した。交絡因子の可能性を調整するため、条件付きロジスティック回帰モデルを用いてデータ分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬の使用は、潜在的な交絡因子(収入、都市部、薬剤、身体疾患、アスピリン使用、NSAIDs使用、3剤併用療法)で調整した後、胃がんリスクと独立した逆相関が認められた。・さらに、胃がんリスクに対する各種抗精神病薬(thioridazine、ハロペリドール、スルピリド、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、amisulpride、リスペリドン)の用量依存的傾向も示された。・感度分析では、消化性潰瘍疾患の有無にかかわらず、胃がんリスク減少に対し、第2世代抗精神病薬の有意な用量依存的作用が認められた。 著者らは「抗精神病薬の使用は、胃がんリスクと逆相関が認められた。また、いくつかの抗精神病薬において、胃がんリスクに対する用量依存的作用が認められた」としている。■「スルピリド」関連記事スルピリドをいま一度評価する

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間質性膀胱炎(ハンナ型)〔IC:interstitial cystitis with Hunner lesions〕

1 疾患概要■ 概念・定義間質性膀胱炎(interstitial cystitis:IC)という名称は、1887年に膀胱壁に炎症と潰瘍を有する膀胱疾患を報告したSkeneによって最初に用いられた。そして1915年、Hunnerが、その膀胱鏡所見と組織所見の詳細を報告したことから、ハンナ潰瘍(Hunner's ulcer)と呼ばれるようになった。しかし、ハンナ潰瘍と呼ばれた病変は、胃潰瘍などで想像する潰瘍とは異なるため(詳細は「2 診断-検査」の項参照)、潰瘍という先入観で膀胱鏡を行うと見逃すことも少なくなく、現在はハンナ病変(Hunner's lesion)と呼ぶことになった。以前は米国・国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases:NIDDK)による診断基準(1999年)が用いられたが、これは臨床研究のための診断基準で厳し過ぎた。『間質性膀胱炎診療ガイドライン 第2版』では、「膀胱の疼痛、不快感、圧迫感と他の下部尿路症状を伴い、混同しうる疾患がない状態」の総称を間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(interstitial cystitis/bladder pain syndrome:IC/BPS)とし、このうち膀胱内にハンナ病変のあるものを、「IC/BPS ハンナ病変あり(IC/BPS with Hunner lesion)」、それ以外を「IC/BPS ハンナ病変なし(IC/BPS without Hunner lesion)」とすることとした。これまでは、ハンナ病変はないが点状出血を認めるIC/BPSを非ハンナ型ICとしていたが、これもIC/BPSハンナ病変なしに含まれることになる。要は、ハンナ病変が確認されたIC/BPSのみが「間質性膀胱炎」であり、ハンナ病変がなければ、点状出血はあってもなくても「膀胱痛症候群」となる。本症の名称については、前述の経緯も含め変遷があるが、本稿では「間質性膀胱炎(ハンナ型)」の疾患名で説明をしていく。■ 疫学過去のICに関する疫学調査の対象はIC/BPS全体であり、0.01~2.3%の範囲である。疾患に対する認知度が低いために、疫学調査の結果が低くなっている可能性がある。2014年に行ったわが国での疫学調査では、治療中のIC患者数は約4,500人(0.004%:全人口の10万人当たり4.5人)であった。性差は、女性が男性の約5倍とされる。■ 病因尿路上皮機能不全として、グリコサミノグリカン層(glycosaminoglycan:GAG layer)異常が考えられている。GAG層の障害は、尿路上皮の防御因子の破綻となり、尿が膀胱壁へ浸潤して粘膜下の神経線維がカリウムなどの尿中物質からの影響を受けやすくなり、疼痛や頻尿を引き起こすと考えられる。しかし、GAG層が障害される原因は解明されていない。このほか、細胞間接着異常、上皮代謝障害、尿路上皮に対する自己免疫が推測されている。また、肥満細胞の活性化によりサイトカインなどの炎症性メディエータが放出され、疼痛、頻尿、浮腫、線維化、粘膜固有層内の血管新生などが引き起こされるとされる。これら以外にも免疫性炎症、神経原性炎症、侵害刺激系の機能亢進、尿中毒性物質、微生物感染など、複数の因子が関与していると考えられている。■ 症状IC/BPSの主な症状には、頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、尿意亢進、膀胱不快感、膀胱痛などがある。尿道、膣、外陰部痛、性交痛などを訴えることもある。不快感や疼痛は膀胱が充満するに従い増強し、そのためにトイレにいかなければならず、排尿後には軽減・消失する場合が多い。■ 分類膀胱鏡にてハンナ病変が確認されたIC/BPSに限り「IC/BPS ハンナ病変あり」とし、ハンナ病変がないIC/BPSは「IC/BPS ハンナ病変なし」と分類する。「IC/BPS ハンナ病変あり」は、間質性膀胱炎(ハンナ型)として2015年1月1日に難病指定された。■ 予後良性疾患であるので生命への影響はない。1回の経尿道的ハンナ病変切除・焼灼術で症状改善が生涯持続することもあるが、繰り返しの手術を必要とし、疼痛コントロールがつかなかったり、自然経過あるいは手術の影響によって膀胱が萎縮したりして、膀胱摘出術が必要となることもまれにある。症例によって経過はさまざまである。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断のフローは、『間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療ガイドライン』(2019/6発刊)に詳しく紹介されているので参照いただきたい。本稿では、エッセンスだけにとどめる。■ 検査1)症状IC/BPSを疑う症状があることが、最も重要である(「1 疾患概要-症状」の項参照)。2)排尿記録排尿時刻と1回排尿量を24時間連続して記録する。蓄尿時膀胱・尿道部痛または不快感により頻尿となるため、1回排尿量が低下し、排尿回数が増加している症例が多い。多くの場合、夜間も日中同様に頻尿である。3)尿検査多くの場合、尿所見は異常を認めない。赤血球や白血球を認める場合は感染や尿路上皮がんとの鑑別を行う必要がある。4)膀胱鏡ハンナ病変(図)を認める。ハンナ病変とは、膀胱粘膜の欠損とその周囲が毛細血管の増生によりピンク色に見えるビロード状の隆起で、しばしば瘢痕形成を伴う。表面にフィブリンや組織片の付着が認められることがある。膀胱拡張に伴い病変が亀裂を起こし、裂け、そこから五月雨状あるいは滝状に出血するため、拡張前に観察する必要がある。図 IC/BPSハンナ病変ありの膀胱鏡所見画像を拡大する■ 鑑別診断過活動膀胱、細菌性膀胱炎、慢性前立腺炎、心因性頻尿との鑑別を要するが、子宮内膜症との鑑別はともに慢性骨盤痛症候群であるから非常に難しい。しかし、最も注意すべきは膀胱がん、とくに上皮内がんである。膀胱鏡所見も、瘢痕を伴わないハンナ病変は、膀胱上皮内がんとよく似ており鑑別を要する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)病因が確定されていないため根治的な治療はなく、対症療法のみである。また、IC/BPS ハンナ病変あり/なしを区別した論文は少ない。なお、わが国で保険収載されている治療は「膀胱水圧拡張術」だけである。■ 保存的治療患者の多くが食事療法を実行しており、米国の患者会である“Interstitial Cystitis Association”によればコーヒー、紅茶、チョコレート、アルコール、トマト、柑橘類、香辛料、ビタミンCが、多くのIC/BPS患者にとって症状を増悪させる飲食物とされている。症状を悪化させる食品は、個人によっても異なる。膀胱訓練は決まった方法はないものの有効との報告がある。■ 内服薬治療三環系抗うつ薬であるアミトリプチリン(商品名:トリプタノール)は、セロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを抑制して中枢神経の痛み刺激の伝達を抑えるほか、ヒスタミンH1受容体をブロックして肥満細胞の活動を抑制するなどの作用機序があると考えられ、有効性の証拠がある。トラマドール(同:トラマール)、抗けいれん薬であるガバペンチン(同:ガバペン)も神経因性疼痛に対するある程度の有効性があるとされる。また、肥満細胞の活性化抑制を目的として、スプラタスト(同:アイピーディ)、ロイコトリエン受容体拮抗薬のモンテルカスト(同:キプレス、シングレア)がある程度有効である。免疫抑制薬のシクロスポリンA、タクロリムス、プレドニゾロンはある程度の有効性はあるが、長期使用による副作用に十分注意が必要であり、安易な使用はしない。このほかNSAIDs、選択的COX-2阻害薬、尿のアルカリ化のためのクエン酸もある程度の有効性がある。■ 膀胱内注入療法ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide:DMSO)は炎症抑制、筋弛緩、鎮痛、コラーゲンの分解、肥満細胞の脱顆粒などの作用があるとされ、IC/BPSに有効性のエビデンスがある。ハンナ病変ありのIC/BPSには効果があるとの報告もある。わが国では、現在臨床試験中である。ヘパリン、ヒアルロン酸はGAG層の欠損を補うことにより症状を緩和すると考えられ、IC/BPSに対してある程度の有効性のエビデンスがある。リドカインは短時間で疼痛の軽減が得られるが、その効果は短期間である。ボツリヌス毒素の膀胱壁内(粘膜下)注入、ステロイドのハンナ病変および辺縁部膀胱壁内注入も、ある程度の有効性のエビデンスがある。■ 手術療法膀胱水圧拡張術が、古くからIC/BPSの診断および治療の目的で行われてきた。有効性のエビデンスは低く、奏効率は約50%、奏効期間は6ヵ月未満との報告が多い。IC/BPSハンナ病変ありには、経尿道的ハンナ病変切除・焼灼術が推奨される。反復治療を要することが多いが、症状緩和には有効である。膀胱全摘出術や膀胱部分切除術+膀胱拡大術は、他の治療がすべて失敗した場合にのみ施行されるべきである。ただし、膀胱全摘出術後も疼痛が残存することがある。4 今後の展望これまではIC/BPS ハンナ病変あり/なしを区別、同定して行われた研究は少ない。世界的に「IC/BPSハンナ病変あり」は1つの疾患として、他のIC/BPSとは分けて考えるという方向になった。以前の非ハンナ型ICを含む「IC/BPSハンナ病変なし」は、heterogeneousな疾患の集合であり、これから「IC/BPSハンナ病変あり」(ハンナ型IC)を分けることによって、薬の開発も行われやすく、薬の効果評価も明確なものになると期待される。5 主たる診療科泌尿器科膀胱水圧拡張術を保険診療として行うためには、施設基準が必要である。間質性膀胱炎(ハンナ型)(「IC/BPSハンナ病変あり」のこと)は、難病指定医により申請が可能である。日本間質性膀胱炎研究会ホームページに掲載されている「診療に応じる医師」が参考になるが、このリストは医師からの自己申告に基づくものであり、診療内容は個々の医師により異なる。日本排尿機能学会認定医のような、排尿障害に関する専門医が望ましい。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本間質性膀胱炎研究会(Society of Interstitial Cystitis of Japan:SICJ)(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 間質性膀胱炎(ハンナ型)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)日本間質性膀胱炎研究会 ガイドライン作成委員会 編集. 間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療ガイドライン. リッチヒルメディカル;2019. 2)Hanno PM,et al. J Urol. 1999;161:553-557.3)Yamada Y,et al. Transl Androl Urol. 2015;4:486-490.4)Tomoe H. Transl Androl Urol. 2015;4:600-604.5)Tomoe H, et al. Arab Journal of Urol. 2019;17:77-81.6)Whitmore KE, et al. Int J Urol. 2019;26:26-34.公開履歴初回2019年7月9日

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PPI服用、心血管疾患・CKD・上部消化管がんの過剰死亡と関連か/BMJ

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)の服用は、心血管疾患・CKD・上部消化管がんに起因する過剰死亡と少なからず関連することが明らかにされた。米国・セントルイス退役軍人ヘルスケアシステムのYan Xie氏らによる長期観察コホート研究の結果で、BMJ誌2019年5月29日号で発表した。著者は「結果はPPI服用への警戒感を高めることを支持するものだった」とまとめている。これまでに、PPI服用は重篤な有害事象と関連しており、全死因死亡リスクを増大することが報告されていた。PPI服用と全死因死亡および死因別死亡との関連を評価 研究グループは、米国退役軍人省のデータベースを用いた長期観察コホート研究で、PPI服用と全死因死亡および死因別死亡との関連(PPI服用1,000患者当たりの報告された起因性死亡数)を推算し評価した。 被験者は、PPI(15万7,625例)またはH2ブロッカーの新規服用者(5万6,842例)であった。PPI服用1,000患者当たりの全死因過剰死亡は45.20例 PPI服用1,000患者当たりの過剰死亡は45.20例(95%信頼区間[CI]:28.20~61.40)であった。死因別にみると、循環器系疾患が17.47例(95%CI:5.47~28.80)、新生物12.94例(1.24~24.28)、感染症および寄生虫症4.20例(1.57~7.02)、泌尿生殖器系疾患6.25例(3.22~9.24)であった。 PPI曝露の累積期間と、全死因死亡および循環器系疾患・新生物・泌尿生殖器系疾患による死亡には、段階的関連性が認められた。 サブ死因別解析では、PPI服用と、心血管疾患(15.48、5.02~25.19)およびCKD(4.19、1.56~6.58)による過剰死亡との関連が示唆された。 酸分泌抑制薬に関わる消化器系の記録のない患者(11万6,377例)を対象とした解析では、PPI服用は心血管疾患(22.91、11.89~33.57)、CKD(4.74、1.53~8.05)、上部消化管がん(3.12、0.91~5.44)による過剰死亡と関連することが示唆された。形式交互作用解析により、これらサブ要因による死亡リスクは、心血管疾患、CKD、上部消化管がんの既往によって変化しないことが示された。 PPI服用は、腸管機能関連死や消化性潰瘍性疾患死(ネガティブ対照アウトカム)の過剰な負荷とは関連していなかった。

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第11回 循環の異常がある時2 ショックの徴候?直ちに医師・看護師に連絡【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は脈拍と血圧の異常について考えてみます。脈拍と血圧の異常からは循環の異常を察知します。バイタルサインに加え、患者さんを観察することにより循環の異常に気付くことがあるでしょう。循環の異常がある時、患者さんにはどのような変化が起こるのでしょうか。症例を通して考えたいと思います。患者さんBの場合経過──4「特に具合が悪くなったのは、今朝からでしたね」ショックと判断したあなたは、バイタルサインを記したメモを片手に、直ちに医師に連絡しました。連絡し終わった後、CRTを測定してみると、約3秒にまで延長していました。到着した訪問医師・看護師は、家族から今回の病歴を聴取し、バイタルサインを測定し、短時間で診察を終えた後、家族に説明し同意を得て救急車を要請しました。「循環」の3要素 プラス 「心臓外」の1要素ところで、循環に影響する要素は3つあります。それは「心臓」と「血液」と「血管」です。これらの3つは循環の3要素といわれていますが、さらにもう1つ「心臓外」の要素を加えると、ショックを4つに分類することができます。これら4つのいずれかまたは複数に異常を来すとショックとなるわけです。心臓:心原性ショック心臓のポンプ機能に何らかの異常があれば、循環動態は悪くなります。例:急性心筋梗塞血液:循環血液量減少性ショック心臓から送られる血液量が高度に減少すれば、いくら心臓のポンプ機能がよくても重要臓器には血液が行き渡りません。例:外傷による出血、消化管出血、熱中症による脱水血管:血液分布異常性ショック何らかの原因で血管が病的に拡張すると血圧は低下します。また、血管透過性が亢進して血管内にある水分が血管外に出てしまえば循環血液量が減少して循環不全となります。例:敗血症、アナフィラキシー心臓外:心外閉塞・拘束性ショック(閉塞性ショックともいわれます)心タンポナーデ※1など心臓の外から心臓の拡張が障害されたり、緊張性気胸※2など肺の異常により静脈灌流が障害されたりすると、循環動態が悪くなります。※1 心タンポナーデ心膜炎や急性心筋梗塞後の心破裂、外傷などにより心臓と心臓を覆う心外膜の間に体液・血液が貯留して心臓を圧迫し、血液を送り出す心機能が損なわれる状態。血圧低下、心拍動微弱、呼吸困難などの症状が現れる。※2 緊張性気胸肺胞の一部が破れて呼気が胸腔に漏れ出し、反対側の肺や心臓を圧迫している状態。呼吸しても息が吸えない。血圧低下、閉塞性ショックなどの重篤な状態に陥る。私たち(医師ら)は、一見して重症そうな患者さんを前にした時、バイタルサインのチェックとともにショックの徴候がないかをまず確認します。そして目の前の患者さんがショックであると察知した時、循環の3要素プラス心臓外の1要素(すなわちショックの分類です)を考えながらショックの原因を探り、ショックの状態から脱するように直ちに治療を開始します。経過──51週間後、訪問診療の医師と話をする機会がありました。「出血性胃潰瘍による、出血性ショック(循環血液量減少性ショック)でしたよ」あの日、救急車内で吐血したそうです。救急病院への搬送後、緊急内視鏡検査で大きな胃潰瘍から多量の出血が認められ、内視鏡を用いた止血術が行われました。いったんは集中治療室に入室しましたが、現在は一般病棟で落ち着いているそうです。みぞおちのあたりの痛みは胃潰瘍によるものだったのでしょう。黒色便は消化管出血の時にみられる所見です。抗血小板薬を内服中だったので、自然には出血が止まりにくかったと考えられました。エピローグ2週間後、退院の知らせを聞いてあなたが訪問すると、顔色の良くなった患者さんが笑顔で迎えてくれました。嬉しいひとときでした。ショックの徴候かも?と思ったら直ちに医師・看護師に連絡しましょう。とにかく、一人で判断しないこと、待たないことです。

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バベシア症に気を付けろッ! その2【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。さて、前回は誰も興味がないと思われる超マニアックなバベシア症について語りました。しかしッ! 日本の医療従事者もバベシア症について知っておかなければならない時代が来ているのですッ!突然ですが、症例提示をしてよろしいでしょうか?原因不明の溶血の正体は何?症例:40歳日本人男性主訴:発熱、溶血現病歴:X年1月31日39℃台の発熱が出現2月2日ヘモグロビン尿が出現2月6日溶血性貧血の診断でA病院にてヒドロコルチゾン900mg/日の点滴と赤血球輸血を施行3月20日退院3月29日再びヘモグロビン尿が出現4月3日再入院しヒドロコルチゾン900mg/日を再開。溶血は改善したが原因精査のためB病院転院既往歴:出血性胃潰瘍でX-1年12月28日(A病院入院約1ヵ月前)に入院。赤血球10単位、FFP3単位の輸血を施行節足動物曝露:なし身体所見:体温 36.8℃、脈拍90/分、血圧152/84mmHg眼球結膜に黄疸あり、眼瞼結膜に貧血あり、表在リンパ節を触知せず、心肺異常なし、腹部圧痛なし、肝脾を触知せず、下肢に軽度の浮腫を認める血液検査:WBC 14,100/µL、RBC 1.87×106/µL、Hb 6.5g/dL、Ht 19.8%、Plt 25×104/µL、BUN 20mg/dL、Cre 0.68mg/dL、TP 5.7g/dL、Alb 2.9g/dL、T-BiL 1.6mg/dL、GOT 89IU/L、GPT 51IU/L、LDH 4,266IU/L、CRP 1.37mg/dL、Na 139mEq/L、K 4.1mEq/L、CL 106mEq/L尿検査:尿蛋白(+)、尿潜血(4+)、尿糖(-)症例患者の感染ルートはどこださて、この原因不明の溶血(再生不良性貧血として治療したが再燃)と、2ヵ月の経過で続く発熱、体重減少の症例…診断は何だと思いますでしょうか? まあ、ここまで来といてバベシア症じゃなかったら怒られると思うんですが、そうです、バベシア症なんです!日本人ですよ? 海外渡航歴なしですよ? 本症例は日本国内発の初のバベシア症症例です1)。末梢血ギムザ染色を行い、図のような赤血球内に寄生するバベシア原虫の所見が得られ確定診断に至っています。画像を拡大するこの患者さんはマダニからの感染ではなく、出血性胃潰瘍のため輸血をした際にバベシア症に感染したと考えられています。この供血者についても判明しており、海外渡航歴のない方による供血だったそうです。つまり、日本国内でもバベシア症に感染する可能性があるのですッ!国内に潜むバベシア症このわが国初のバベシア症が報告された兵庫県2)だけでなく、北海道、千葉県、島根県、徳島県などでもこのB.microti様原虫(Babesia microti-like parasites)を持つ野生動物が見つかっており、ヤマトマダニからも分離されています3)。あー、ちゃばい。つまり、すでに日本のマダニだの野生動物だのは、バベシア原虫を持っているということです。いつ感染してもおかしくないって話です。でも、すでにマダニや動物が持っているなら、1例だけじゃなくもっとたくさんの症例が報告されていても、おかしくないはずですよね。そうなんです。もっと患者がいてもいいのに(よかないけど)、報告されていないんです。しかし、興味深い論文がありますのでご紹介します。千葉県の房総半島で1,335人のボランティアの方から採血をしたところ、その1.3%でバベシア原虫に対する抗体が陽性だったというのですッ4)! そう、われわれは気付かないうちにバベシアに感染しているのかもしれないのですッ!というわけで、必ずしも日本では診ることがないとも言い切れないバベシア症についてお話いたしました。国内第2例目を診断するのは、あなたかもしれないッ!次回は「先進国イタリアでまさかのマラリア流行かッ!?」というお話をいたします。1)松井利充ほか. 臨床血液. 2000;41:628-634.2)Saito-Ito A, et al. J Clin Microbiol. 2004;42:2268-2270.3)Tsuji M, et al. J Clin Microbiol. 2001;39:4316-4322.4)Arai S, et al. J Vet Med Sci. 2003;65:335-340.

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第5回 再診料CT検査での査定/セルベックス処方での査定/カデュエット配合錠処方での査定/強力ネオミノファ-ゲンシ-増量処方での査定【レセプト査定の回避術 】

事例17 再診料CT検査での査定再診料で、他院の撮影したフィルムについて診断を行い、コンピュ-タ-断層診断料を請求した。●査定点コンピュ-タ-断層診断料が査定された。解説を見る●解説「点数表の解釈」のコンピュ-タ-断層診断に、「当該保険医療機関以外の医療機関で撮影したフィルムについて診断を行った場合には、区分番号「A000」に掲げる初診料(注5のただし書に規定する2つ目の診療料に係る初診料を含む)を算定した日に限り、コンピュ-タ-断層診断料を算定できる」と記載されています。再診料での請求は認められていないのです。事例18 セルベックス処方での査定慢性胃炎の急性増悪でテプレノン(商品名:セルベックス)50mg 3カプセルを先月まで処方していたが、今月の請求から「急性増悪」を外して請求した。●査定点セルベックス50mg 3カプセルが査定された。解説を見る●解説添付文書の「効能・効果」に「下記疾患の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善」として「急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期」と「胃潰瘍」が対象になっています。慢性胃炎から急性増悪期を外すと査定となります。このケ-スでは、「胃潰瘍」の病名に変更可能か検討することが必要です。事例19 カデュエット配合錠処方での査定他院から紹介され、狭心症でアムロジピン・アトルバスタチン配合剤(商品名:カデュエット配合錠)1番を処方した。●査定点カデュエット配合錠1番が査定された。解説を見る●解説添付文書の「効能・効果」に「本剤(アムロジピン・アトルバスタチン配合剤)は、アムロジピンおよびアトルバスタチンによる治療が適切である以下の患者に使用する。高血圧症または狭心症と、高コレステロ-ル血症または家族性高コレステロ-ル血症を併発している患者。なお、アムロジピンとアトルバスタチンの効能・効果は以下のとおりである」と示し、●アムロジピン・高血圧症・狭心症●アトルバスタチン・高コレステロ-ル血症・家族性高コレステロ-ル血症となっています。カデュエット配合錠を処方するときは、「高血圧症または狭心症」+「高コレステロ-ル血症または家族性高コレステロ-ル血症」の病名が求められています。事例20 強力ネオミノファ-ゲンシ-増量処方での査定C型肝炎でグリチルリチン・グリシン・システイン配合剤(商品名:強力ネオミノファ-ゲンシ-)20mL 3Aの請求をしていたが、今月から強力ネオミノファ-ゲンシ-20mL 5Aで請求した。●査定点強力ネオミノファ-ゲンシ-20mL 2Aが査定された。解説を見る●解説添付文書の「用法・用量」に「通常、成人には1日1回5~20mLを静脈内に注射する。なお、年齢、症状により適宜増減する。慢性肝疾患に対しては1日1回40~60mLを静脈内に注射または点滴静注する。年齢、症状により適宜増減する。なお、増量する場合は1日100mLを限度とする」となっています。このケ-スのように60mL以上で請求するには、増量した理由の「症状詳記」が求められます。

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ICUにおける消化管出血のリスクに対するpantoprazoleの有用性は?(解説:上村直実氏)-954

 ICU患者3,298例を対象として、ICUにおけるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の有用性を検証する目的で、pantoprazole群(n=1,645)とプラセボ群(n=1,653)に分けた欧州6ヵ国の多施設共同無作為比較試験の結果がNEJM誌に報告された。主要評価項目である90日までの死亡者数はPPI群510例(31%)、プラセボ群499例(30%)で両群に差はなく、また、副次評価である臨床的に重要なイベント(肺炎、クロストリジウム・ディフィシル感染、心筋虚血の複合)の発生率にも差を認めなかった。さらに、臨床的に重篤な消化管出血は、PPI群(2.5%)に比べてプラセボ群(4.2%)が多かったが、症例数が少なく統計学的に有意な差といえなかった。 本論文は注意深い吟味が必要と思われた。論文の考察でも述べられているが、研究開始時にリクルートされた10,000例のうち胃酸分泌抑制薬内服者4,197例と消化性潰瘍患者207例を含む6,650例(66.5%)がエントリーから除外されている点は重要である。明らかな消化性潰瘍がなく胃酸分泌抑制薬の内服がない患者、すなわち出血性消化性潰瘍のリスクが低い集団を対象として、ICU在院中の死亡率低下に対するPPIの有用性を検討した研究として捉える必要がある。 以上の条件内でPPIの持続静注はICUにおける死亡率低下に対する有用性が乏しいことが示唆されたわけである。一方、臨床的に重篤な消化管出血はPPI群(2.5%)がプラセボ群(4.2%)に対して少ないことが示されているが、出血の原因が特定されていないため、本研究からPPIの胃酸分泌抑制作用による出血性潰瘍リスクに対する影響については不明である。さらに、考察で述べられているが、逆に消化性潰瘍患者や胃酸分泌抑制薬の内服者を対象とした試験を行っていれば、異なった結果が得られた可能性もある。 ICU入院に際して、胃酸分泌抑制薬の常用者でなく、明らかな消化性潰瘍を認めない患者において、消化管出血のリスク低下を目的とするPPI投与の有用性は乏しいことが立証された点が非常に重要な研究結果といえる。

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肩腰膝の痛みをとる Dr.究のあなたもできるトリガーポイント注射

第1回 トリガーポイントとは何か? 第2回 トリガーポイントを見つける 診察の基本 第3回 肩痛で触るべき筋肉 第4回 腰痛は、ヘルニアを探すよりも筋肉を触る 第5回 膝痛では大腿から下腿まで触る 第6回 頭痛のトリガーポイント 第7回 胸痛・腹痛のトリガーポイント 慢性的な痛みを訴える患者さんに出会うのは日常茶飯事。根本的な解決にはならないけれど、唯一の選択肢として鎮痛薬や貼付剤を処方していませんか?整形外科領域の疾患やレッドフラッグを除外しても続く痛みの原因の多くは実は筋肉にあります。 トリガーポイント注射は、これにアプローチする、新しい治療方法です。 なぜ筋肉が原因で身体のあちこちに痛みが生じるのか?そのメカニズムは、実にシンプル。筋肉に痛い箇所がひとつあれば、それを代償するように体を使い、さらに痛みが連続していくのです。遭遇頻度の高い肩痛、腰痛、膝痛、そして、ときに筋肉が原因となっている腹痛や頭痛について、それぞれ診察、触診、注射のポイントを伝授します。第1回 トリガーポイントとは何か? 腰や膝の痛みを訴える患者さんに、鎮痛薬や貼付剤を処方するだけ?これからはトリガーポイント注射も選択肢に入れてください!”筋肉”が原因で慢性的な疼痛が生じるのはしばしばあること。トリガーポイント注射は、筋肉が原因の痛みにアプローチする、新しい治療方法です。 普段、筋骨格系の診察をしない先生でも、明日から実践できるよう、筋肉の位置や名称は3DCGでわかりやすく提示。トリガーポイント注射を第一線で実践する斉藤先生が、診察と注射のノウハウを実技で伝授します。第2回 トリガーポイントを見つける 診察の基本 痛みの原因になっている筋肉はどこなのか。注目すべきは、「痛みがある箇所よりも、つっぱりを感じるところ」。筋肉が短縮しているところにトリガーポイントがあります。今回は、視診、動作、触診とトリガーポイントを特定するための診察ノウハウを伝授。もちろん、見つけたトリガーポイントにどうやって安全に注射をしていくか、そのコツをお伝えします。第3回 肩痛で触るべき筋肉 肩痛で見るべきは、筋肉は3つ。どの筋肉にTPがあるかで、痛みの場所が違います。原因になる筋肉を特定する診察の方法、トリガーポイントを探す触診まで実技でわかりやすく解説します。第4回 腰痛は、ヘルニアを探すよりも筋肉を触る 腰痛の原因は椎間板ヘルニア?もちろんそういう場合は多いですが、神経所見をとると痛みやしびれの原因がヘルニアでないことはよくあります。ヘルニアがあってもなくても、一度トリガーポイントを探索してみましょう。今回は、腰痛を訴える場合に触るべき脊柱起立筋群、殿筋群の診察ノウハウを解説します。さらに、意外な部位にある腰痛の原因も紹介します。第5回 膝痛では大腿から下腿まで触る 膝関節だけに注目しても、痛みが取れない原因は、膝痛には大腿から下腿までの筋肉がかかわっているから。大腿から下腿まで、確認すべき筋肉を、CG、触診、超音波を駆使して立体的に解説します。膝の前面か後面か、痛む部位に応じたトリガーポイントを見つけるコツを詰め込みました。第6回 頭痛のトリガーポイント 緊張性頭痛や片頭痛といった頭痛には肩、首、顔、頭の筋肉が関与している可能性があります。レッドフラッグを除外しても、鎮痛薬を処方しても、継続する頭痛に、トリガーポイントを取り入れることで苦痛を和らげられる可能性が大きく広がります。触るべき筋肉の位置とトリガーポイント、触診のコツを押さえましょう。第7回 胸痛・腹痛のトリガーポイント 筋肉があれば、そこにはトリガーポイントが形成される可能性があります。人間は全身筋肉に覆われているので、どの部位であってもトリガーポイントによる痛みが生じるとも言えます。胸部のトリガーポイントでは狭心症と見まがう痛みを生じることがあります。腹部では逆流性食道炎や過敏性腸症候群、胃潰瘍など消化器疾患と似た症状がでることも。いずれも触るべき筋肉の解剖と触診、超音波像で診察のポイントを解説します。

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第4回 DICへのアンスロビンP500の査定/セロクエル錠処方に伴うHbA1c検査の査定/腫瘍マーカー検査の査定/C型慢性肝炎検査の査定【レセプト査定の回避術 】

事例13 DICへのアンスロビンP500処方の査定アンチトロンビンIII低下を伴うDICで乾燥濃縮人アンチトロンビンIII(商品名:アンスロビンP)500注射用3瓶を点滴静注した。●査定点アンスロビンP500注射用3瓶が査定された。解説を見る●解説アンスロビンP500注射用の添付文書に「アンチトロンビンIII低下を伴う汎発性血管内凝固症候群(DIC)→アンチトロンビンIIIが正常の70%以下に低下した場合は、通常成人に対し、ヘパリンの持続点滴静注のもとに、本剤1日1,500単位(又は30単位/kg)を投与する」と記載があります。アンチトロンビンIII検査が先月末に行われ、アンスロビンP500注射用投与時の月にはアンチトロンビンIII検査が施行されていませんでした。このケースでは、アンスロビンP500注射用投与時の月に症状詳記に「〇月〇日+検査数値」を記載することが必要でした。事例14 セロクエル錠処方に伴うHbA1c検査の査定統合失調症で、クエチアピン(商品名:セロクエル錠)を25mg 2T投与し、HbA1cの検査を請求した。●査定点HbA1c検査が査定された。解説を見る●解説セロクエル錠の添付文書の副作用に「著しい血糖値の上昇から、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の重大な副作用が発現し、死亡に至る場合があるので、本剤投与中は、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと」と警告されているため、HbA1c検査を施行しました。しかし、その場合でも、「糖尿病の疑い」の病名がないと査定されます。ここでは処方のつど、病名を追記するよりも、症状詳記での記載が求められます。事例15 腫瘍マーカー検査の査定初診月の病名で胃潰瘍、胃がんの疑いでCEA、CA19-9の検査を請求した。●査定点CEA、CA19-9が査定された。解説を見る●解説「点数表の解釈」の腫瘍マーカーに、「診療及び腫瘍マーカー以外の検査の結果から悪性腫瘍の患者であることが強く疑われる者に対して、腫瘍マーカーの検査を行った場合に、1回に限り算定する」となっています。他の検査が施行されていない場合でCEA、CA19-9だけを請求すると査定の対象になります。また、他院からの紹介の場合では、「〇〇医療機関から〇月〇日に紹介された」と記載することが求められています。事例16 C型慢性肝炎検査の査定C型慢性肝炎でHCV核酸検出とHCV核酸定量の検査を請求した。●査定点HCV核酸定量が査定された。解説を見る●解説「点数表の解釈」の微生物核酸同定・定量検査に、「HCV核酸検出とHCV核酸定量を併せて実施した場合には、いずれか一方に限り算定する」と通知があるため、両検査の請求は認められません。

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バナナの皮に気をつけろ【Dr. 中島の 新・徒然草】(242)

二百四十二の段 バナナの皮に気をつけろ中島家に伝わる格言に「謙虚にふるまえないものは、必ずバナナの皮を踏む」というものがあります。つまり「他人様に対して偉そうにモノを言った人間は足元がおろそかになり、ひっくり返って恥をかくから注意せよ」という意味です。先日も、車検を済ませたばかりの女房の自動車のエンジンが掛からなくなったので、ディーラーを呼びつけて散々文句を言ったことがあったのですが、結局はハザードの消し忘れでバッテリーがあがっていたということがありました。完全にこちらの不注意であったにもかかわらず、ディーラーの担当者は爽やかに対応してくれ、あまりにも申し訳ないので菓子折りを持って謝りにいく羽目になりました。私自身の失敗談としては、大昔に出くわした症例を思い出します。内科の先生が失神の患者さんを診て「胃潰瘍だ」とつぶやいたのを「なーにが胃潰瘍や。あの先生、大丈夫か? まずは頭部CTを撮らんとアカンやろ」と、陰で脳外科医たちが馬鹿にしたことがあったのです。失神の有力な原因の1つが消化管出血であり、逆に頭蓋内疾患はほとんどないということを知った今となっては、過去に戻って自分の頭をハリセンで叩いてやりたくなるようなエピソードです。もちろん、最近でも似たような事は時々ありました。他科の先生に偉そうに説教したときなんかに限って、後で自分の間違いが発覚し、大恥をかいてしまうのです。実例を挙げるとすごく分かり易いのですが、そこはちょっとご勘弁願います。この中島家の格言のミソは「謙虚にふるまえ」と言っていることで、決して「謙虚になれ」とは言っていないところです。人間、謙虚になることなんぞ簡単にできるわけありません。ですから「謙虚になれ」などと期待するのは無駄です。でも、いくら心の中で威張っていても、表面的に謙虚にふるまうことは誰にでも可能です。なので、私もバナナの皮を踏まないよう、なるべく謙虚にふるまうよう心掛けています。もし「そういや自分も思い当たるぞ!」という読者がおられましたら、ぜひとも注意しましょう。最後に1句謙虚たれ バナナの皮を 踏まぬようもう1句ちょっと待て その説教で 恥をかく

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第3回 カリメート処方が査定/ヘリコバクター・ピロリ感染症での査定/心筋梗塞でのH-FABP検査の査定/自己免疫疾患の臨床検査での査定【レセプト査定の回避術 】

事例9 カリメート処方が査定高カリウム血症で、ポリスチレンスルホン酸カルシウム(商品名:カリメート散)15gを処方した。●査定点カリメート散15gが査定された。解説を見る●解説添付文書の「効能・効果」で「急性および慢性腎不全に伴う高カリウム血症」と記載されているにもかかわらず、「急性および慢性腎不全」の病名が漏れていました。※とくに、高カリウム血症で他から紹介された患者の場合などで「急性および慢性腎不全」の病名が漏れやすいので注意が必要です。事例10 ヘリコバクター・ピロリ感染症での査定ヘリコバクター・ピロリ感染症で、ランソプラゾール、アモキシシリン水和物、クラリスロマイシン(商品名:ランサップ800)を7シート処方した。●査定点ランサップ800の7シートが査定された。解説を見る●解説ランサップ800は、ランソプラゾール、アモキシシリン水和物、クラリスロマイシンの3種類の経口剤が1つのシートにまとめられています。ランソプラゾールの「効能・効果」では、「胃潰瘍、十二指腸潰瘍」の病名が求められていますので、ヘリコバクター・ピロリ感染症と胃潰瘍または十二指腸潰瘍の病名が必要になります。事例11 心筋梗塞でのH-FABP検査の査定急性心筋梗塞(3ヵ月前の診療開始日)で、心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)定量検査を請求した。●査定点心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)定量検査が査定された。解説を見る●解説心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)定量検査は、「急性心筋梗塞の診断を目的に用いた場合」のみ算定できるとされています。検査結果についても、心筋細胞が障害を受けると、速やかに約1時間から上昇をしはじめ、5~10時間後でピークになります。そのため3ヵ月前の診療開始日では査定の対象になります。事例12 自己免疫疾患の臨床検査での査定全身性エリテマトーデス、急速進行性糸球体腎炎で、抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)、ループスアンチコアグラント定量検査を請求した。●査定点ループスアンチコアグラント定量検査が査定された。解説を見る●解説抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)は「急速進行性糸球体腎炎の診断又は経過観察のために測定した場合」のみ算定でき、ループスアンチコアグラント定量検査は「抗リン脂質抗体症候群の診断を目的として行った場合」に限り算定することになっています。両病名が記載されていないと査定の対象となります。

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成長に関わる小児の胃酸関連疾患の治療

 2018年7月13日アストラゼネカ株式会社は、第一三共株式会社と共同販売するプロトンポンプ阻害薬(PPI)エソメプラゾール(商品名:ネキシウム)が、1歳以上の小児への追加承認を本年1月に受け、4月に同薬の懸濁用顆粒分包が新発売されたことを期し、「進化する酸関連疾患治療~子どもの酸関連疾患の治療課題とPPIがもたらす変革を考える~」をテーマとするメディアセミナーを開催した。セミナーでは、小児の胃食道逆流症(以下「GERD」と略す)など酸関連疾患の診療と今後の展望などが解説された(写真は、左:中山 佳子氏、右上:木下 芳一氏、右下:清水 俊明氏)。小児向け治療薬の臨床試験数が少ない日本の現状 はじめに中山 佳子氏(信州大学医学部小児医学教室 講師)を講師に迎え、「小児酸関連疾患の実情とアンメットニーズ」をテーマに講演が行われた。 冒頭、エソメプラゾールが、ほかの国から10年近く遅れて小児適応が承認されたことに触れ、わが国の小児医薬品の開発状況を概説した。今回の小児適応拡大は、2006年に日本小児栄養消化器肝臓学会から出された要望が、ようやく実ったもの。現在でも成人治療薬の約20%程度しか小児適応がないという。とくに小児領域では、対象年齢層(新生児~思春期)が広いこと、対象患者数・投与量の少なさによる採算性からメーカの躊躇などの理由があると、世界的にみても治験数が少ないわが国の問題点を指摘した。 つぎに小児の酸関連疾患の特徴としてGERDと胃潰瘍、十二指腸潰瘍について説明を行った。子供が訴える「お腹のモヤモヤ」は十二指腸潰瘍の可能性 小児のGERDは、10歳未満の患児3.2%にあると推測され、14歳まででは約3.7万の患児がいると推計されている。こうした患児の主訴は「嘔吐・嘔気」「腹痛」であり、胸やけや呑酸の訴えがない、またはできないために、見逃されやすいという。そのため、咳嗽や喘鳴、体重減少・成長不良、胸痛など消化管外症状について、医療者が医療面接で気付き、本症を想定できるかが重要だと語る。 小児のGERD診療では、診断として上部消化管造影検査、食道pHモニタリング、上部消化管内視鏡検査などが実施される。また、鑑別診断では、好酸球性食道炎、消化性潰瘍、代謝性アシドーシスなどとの鑑別が必要となる。治療では、家族への説明、生活指導から始まり、授乳方法の改善(少量頻回、増粘ミルク、アレルギー疾患用ミルクなど)、そして、PPIなどの薬物療法へと移行する。実際、エソメプラゾールで治療する場合、1日10~20mgを約2週間投与し、症状の改善を確認。有効ならば、4~8週間の治療継続を行うことになるが、無効・再燃例では、小児専門医に紹介が必要となる。 小児の胃潰瘍、十二指腸潰瘍では、十二指腸潰瘍の頻度が高く、主症状は年齢により異なるという。新生児~乳児期では反復性の嘔吐、消化管出血、幼児期では臍周囲痛など非特異的な痛み、学童期では上腹部圧痛を伴う心窩部痛が多くなる。とくに患児が主訴で「お腹がモヤモヤする」と訴えた場合、十二指腸潰瘍を疑い、必要な検査などの施行が望まれる。また、危険兆候として、夜間睡眠中の腹痛による覚醒、嘔吐や貧血、ヘリコバクターピロリ感染の家族歴も参考になる。診断では、臨床所見のほか、検査で腹部エコーや上部消化管内視鏡検査で潰瘍の診断を確実にすることが必要とされる。治療では、PPIが著効するため、1歳以上の本症確定例の小児ではエソメプラゾール10~20mgを第1選択薬として、早期の症状消失、潰瘍治癒を促すとしている。 最後に中山氏は、「小児の酸関連疾患では、腹痛や嘔吐などを繰り返すため、患児は活動制約、成長障害などの合併症を来しうるとともに その保護者もケアの負担や成長への不安など日常で苦労が重積する。こうした疾患に早期診断、早期治療介入をすることで、患児と保護者のQOLの改善につなげていく必要がある。また、PPIのアンメットニーズとして、長期投与、1歳未満の乳児への使用、ヘリコバクター・ピロリ除菌への補助などまだ解決されるべきことも多い」と課題を呈し、講演を終了した。「胸やけ」を子供が言える言葉に変換する作業も大事 セミナー後半では、木下 芳一氏(島根大学医学部内科学講座第二 教授)を座長に、清水 俊明氏(順天堂大学大学院医学研究科 小児思春期発達・病態学講座 主任教授)と中山氏をパネリストに「幼児・小児の酸関連疾患の早期発見、早期診断・治療につなげるには」をテーマにパネルディスカッションが行われた。 ディスカッションでは、「酸関連疾患、早期発見のコツ」について木下氏が尋ねたところ、清水氏が「不規則な位置や時間に腹痛があれば酸関連疾患を疑う。家族歴の聴取も大事だ」と回答し、中山氏が「患児向けに『胸やけ』などの言葉の言いかえをあらかじめ示しておく。保護者に患児の表情や気になる点を細かく聴取するべき」と回答し、臨床に役立つポイントが語られた。また、今後の展望について、清水氏は「今回のエソメプラゾールの保険適用が、別の小児に使用できない治療薬の保険承認への呼び水になればよいと思う」と述べ、中山氏は「安全に患児に使える治療薬の拡大を望みたい」と語り、ディスカッションを終えた。■参考アストラゼネカ ニュースリリースプロトンポンプ阻害剤「ネキシウム」の小児用法・用量の追加を目指し、新たに臨床試験を開始

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