サイト内検索|page:81

検索結果 合計:2864件 表示位置:1601 - 1620

1601.

第75回【特集・第6波を防げ!】行動制限緩和の前に、あのナンセンスな制限だけは先行して撤廃を

こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。さて、この週末は、オリンピック、パラリンピックでしばらく放送されていなかったNHK BSのMLB中継で、ロサンゼルス・エンジェルスの試合を観戦して過ごしました。大谷 翔平選手は残念ながら10勝目はなりませんでしたが、44号ホームランを見ることができました。残り20試合余り、アメリカン・リーグの本塁打王争いが楽しみです。それにしても、久しぶりに観たMLBの試合、球場(アストロズの本拠地で南部テキサス州ヒューストン)でマスクをしている人は皆無でした。MLBのニュースを見ても、マスクをしている観客がいるのは西海岸、たとえばドジャー・スタジアム(ロサンゼルス)やT-モバイル・パーク(シアトル)だけのようです(しかもちらほら)。連邦制の米国では、ワクチン接種やマスク着用など、公衆衛生に関する規制権限のほとんどを州や地方自治体が有しています。西海岸の州以外は、マスク着用に関して相当寛容になっているのかもしれません。ということで今週は「特集・第6波を防げ!」として、一般人の視点から行動制限緩和の可否判断について図のようなマトリクスを提案したいと思います。図・行動制限緩和の可否判断のためのマトリクス(by萬田 桃)政府が緩和に向けた基本方針提示9月13日から、東京や大阪など19都道府県で緊急事態宣言が再び延長されました。期限は9月末です。この宣言延長の決定とあわせ、9月9日、政府は新型コロナウイルス感染症の流行地域で実施中の個人の行動や経済活動の制限を段階的に緩和する基本方針、「ワクチン接種が進む中における日常生活回復に向けた考え方(案)」を公表しました。「延長(ムチ)」だけではあんまりだから、「緩和(アメ)」も見せておこうということなのでしょう。この「考え方」では、ほとんどの希望者にワクチンが行き渡る頃から、(1)飲食、(2)イベント、(3)人の移動、(4)学校、において、ワクチン・検査パッケージ(ワクチン接種歴及びPCR等の検査結果を基に、個人が他者に2次感染させるリスクが低いことを示す仕組み)や飲食店の認証制度を活用した行動制限の緩和が提言されました。緊急事態宣言下でも、認証を受けた飲食店に対しては酒類提供や営業時間短縮の要請を見送り、ワクチン・検査パッケージを利用すれば大人数での会食も認めるとしました。また、イベントの人数制限の緩和や撤廃を検討し、ワクチン・検査パッケージによって県境をまたぐ移動や学校での部活動も可能とする、としています。一方、「新たな変異株の出現などにより、感染が急速に拡大し、医療提供体制のひっ迫が見込まれ、例えば、緊急事態措置による更なる行動制限が必要となる場合」には、これらの緩和を見直し、強い行動制限を求めることも明記されています。今後行う実証実験の結果や感染状況を踏まえて本格実施の可否を判断する、とのことです。緩和より先に「一人飲み」解禁を行動制限緩和は喜ばしいことですが、もっと先に確実に緩和できることがあるのではないか、と私は思います。今の行動制限、エビデンスが非常に薄弱にもかかわらず、不当に国民に強いている部分が多々あるからです。その最たるものが「一人飲み」です。居酒屋で一人ちびちび飲む「一人飲み」は、感染リスクが極めて低いといえます。また、サラリーマンが1人で夕食をファミレスで食べる時などに、ビールを1本頼んで喉を潤す場合も感染リスクはほとんどありません。コロナ禍となって、テレビ東京系のドラマ『孤独のグルメ』の先見性が評価されているようですが、少なくとも「一人飯」でのアルコール飲酒は、即日解禁できることだと思います(原作者の久住 昌之氏が、最近の同番組のお店紹介コーナーでいつもの“麦ジュース”を頼まなかったのは残念でした)。町中のカフェやファミレスなどでは、昼間、主に女性たちが、長時間おしゃべりをしている場面によく出くわします。「一人飲み」「一人飯」と比べてどちらのほうがマイクロ飛沫が多く、感染リスクが高いかは、実証実験をするまでもないでしょう。「大勢で騒ぐ」ことが最大のリスク緊急事態宣言の中、私自身、ヤクルトスワローズの試合、ナンバーガールのライブ、小劇場の芝居、大劇場のロック・オペラ、映画、奥多摩の登山とあちこち出かけてきましたが、幸いなことに感染はしていません。これらの場所で共通するのは、登山は除いて、どこもマスク着用で飲酒は禁止、私語(おしゃべりや応援)も極力制限されていたことです。大勢の集団であっても、それなりの空調施設(もしくは屋外)において、大声で騒いだりおしゃべりを延々と続けたりしなければ、感染リスクは相当低いだろうと考えられます。愛知県の中部空港島(愛知県常滑市)で8月28日と29日に開かれた、野外音楽フェスティバル「NAMIMONOGATARI(波物語)2021」は、飲酒しながらマスクなしで声を張り上げる観客の動画が世間のひんしゅくを買いました。観客同士の距離確保ができておらず、酒類も提供していたことが明らかとなり、経済産業省の補助金の支給も中止されました。このフェス、9月13日の朝日新聞の報道では、クラスターでの感染者は26人。他の都府県で確認された感染者は18人で、フェス関連の感染者は合計44人とのことです。また、県と名古屋市による無料PCR検査では、最終的に計1,154件の申し込みがあり、8人の陽性者が確認されているとのことです。8,000人規模で酒を飲んで騒いで関連の感染者が44人、というのは思ったよりも少ない数字だと思うのですが、どうでしょう?空調が“完璧”な野外フェスや、神宮や甲子園のような屋外球場での野球観戦はかなり安全性が高いといえるのではないでしょうか(もちろん、飛沫が飛びまくるジェット風船はNGです)。MLBの観戦でマスク着用が強制されていないのは、そうしたデータがあるからかもしれません。ちなみに8月20日〜22日にかけて新潟県越後湯沢市で開かれた国内最大のフェス「フジロックフェスティバル’21」に参加した友人に話を聞くと、「会場で飲酒している人はまったく見かけなかった。そもそもビン・カンが持ち込み禁止で、手荷物検査もあった。モッシュは一切なく、観客は歓声を抑え、拍手だけでアーティストを讃えていた。会場に潜入した記者が飲酒の写真とともに記事を書いていたが、少なくとも私はあのような人は見なかった」と話していました。今年のフジロックの観客は3万5,000人(例年の約3分の1)だったと報道されていますが、今のところクラスターが発生した、というニュースは出ていません。私の友人ももちろん感染しておらず、今も毎週のようにあちこちのライブに出かけています。「大勢で騒ぐかどうか」が問題こう見てくると、ことは非常にシンプルです。問題は「酒を飲むかどうか」ではなく、「大勢で騒ぐかどうか」なのです。旅行についても、「(県をまたいでの)移動」ではなく、「移動先で大勢で騒ぐ」ことが問題なのです。若者や仕事の憂さ晴らしをしたいサラリーマンや公務員は、ついつい大勢で騒いでしまい、それがクラスターの原因となっています。ですから、「大勢で騒ぐかどうか」どうかだけを、飲食店やイベント会場、旅館・ホテルでチェックすればいいのです。例えば、冒頭で示した図のような単純なマトリクスが考えられます。要素は人数、騒ぐかどうか、空調の3つ。飲酒の有無や時間は関係ありません。これを当てはめれば、大抵の活動は「大勢で騒がない」限り、OKになります。「騒ぎ方がそれぞれ違うだろう!」と言われる方もいるでしょう。でも、それは各関連団体や店舗が自主基準をつくればいいだけです。旅行で言えば、恋人同士の温泉旅行はOK、会社の部署の忘年会旅行はNG。山登りで言えば、テント山行はOK、大勢のパーティでの小屋泊まり山行はNGといったことです。ちなみに、パチンコ店もコロナが流行し始めた昨年、その営業可否を巡って話題となりましたが、これまでクラスターが発生したという例は聞きません。台はアクリル板で仕切られ、客のタバコの煙を吸い込むために空調も強力ですし、台に集中するあまり話している客は誰もいない(店内は台の音でうるさいですが)ことが奏功していると考えられます。ワクチン・検査パッケージの導入も意味があることだと思いますが、もっと単純に「大勢で騒ぐかどうか」に着目した行動制限緩和も必要だと思います。飛沫感染、接触感染、空気感染…、何が一番危ないのか?この「マトリクス」にせよ、ワクチン・検査パッケージにせよ、行動制限緩和に向けて一点、明確にしてもらいたいことがあります。それは、「感染経路ごとのリスクの大きさ」です。これまで飛沫感染と接触感染が中心と言われてきましたが、最近では、会話のときに出てくるマイクロ飛沫による空気感染が近くの人の感染を引き起こすとも言われています。8月末には、感染症や科学技術社会論などの研究者らが、「空気感染が主な感染経路」という前提でさらなる対策を求める声明を出し、話題となりました。ただ、飛沫感染、接触感染、空気感染(マイクロ飛沫感染)がそれぞれどの程度で起こっているのか、その詳細なデータは示されていません。仮にマイクロ飛沫による空気感染が主体だとしたら、飲食店の店舗に設けられたアクリル板の壁は無意味となり、マスク着用と会話制限、空調にこそ力を入れるべきだ、ということになります。新型コロナウイルスの感染拡大が始まって1年半近くが経ちますが、そういった感染経路の基本的なことも明確に示さないまま、今でも闇雲に行動制限や営業自粛を課すのはどうかと思います。横浜スタジアムの近くで焼肉屋を経営している私の友人が先日電話をかけてきて、「うちはアルコール消毒もしている。アクリル板も設置した。もちろん酒は出していない。今度はマイクロ飛沫だと言うのだが、一体何をやればいいんだ。もう対策がないよ」とぼやいていました。「煙を強力に吸う無煙ロースターなら飛沫も吸うので、焼肉屋はパチンコ店並に安全では」と慰めたところ、「なるほど」と納得していました。近々、横浜スタジアムと焼肉屋の安全性を確認しに、現地に出向こうかと考えています。

1602.

コロナワクチンの異物混入・併用接種・3回接種に見解/日本ワクチン学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の切り札として、全国でワクチン接種が行われているが、コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(モデルナ社製)に異物混入が報告され、その健康への被害などにつき不安の声が上がっている。 日本ワクチン学会(理事長:岡田 賢司氏)は、こうした声を受け9月7日に同学会のホームページ上で「新型コロナウイルスに対するワクチンに関連した日本ワクチン学会の見解」を公開し、異物混入の影響、異なる種類のワクチンによる併用接種、3回目の接種の3つの課題に対して学会の見解を発表した。現時点の異物混入ワクチンの評価と今後の対応 ワクチンへの異物混入について、モデルナ社製のワクチン接種後に2件の死亡事例が把握され、製造企業による調査結果を基に、「混入した異物が全身的な症状を起こす可能性は低いこと」「アナフィラキシーの原因となる可能性が低いこと」を示した。 そして、「こうした事態はあってはならない残念な事案」とし、事案発生後の即時使用中止と情報公開が速やかに行われたことを評価すると共に、「今後の再発防止に向けて、製造から接種まですべての過程における安全性確保の徹底のために、本学会として学会員ならびに関係各方面への協力を要請する」と学会の姿勢を示した。 また、「ワクチン接種後の死亡事例に関しては、剖検の結果なども含めて、厚生労働省から因果関係の検討に関する詳細の早期公開を要望する」と記すと共に、「今後類似の事象が起こった場合には、製造・販売企業、厚生労働省などの公的機関による調査結果、およびこれまで積み重ねられてきた知見を基に、科学的・医学的に議論することが重要」と提案している。ワクチンの併用接種については慎重に 英国における臨床研究で、「異なる種類のワクチンを接種することにより、同一のワクチンを接種する場合よりも高い抗体価が獲得される可能性が示された」ことを踏まえ、わが国で異なる種類のワクチンの併用接種の導入が今後検討されていると示した。 その上で、現在、ワクチンの需要が供給を上回ること、異物混入による予定変更で希望者全員に接種されていない場合があることを考慮し、「今後、ワクチンの供給不足により接種の遅滞が生じた場合には、現状の新型コロナウイルス感染症流行が災害級の非常事態であるとの見地から、異なる種類のワクチンの併用接種も選択肢に入れることを提案する」と提言している。 また、「『接種できるワクチンを、種類を選ばず2回接種していく』ことのベネフィット、すなわち接種が停滞することによって生じる個人における感染のリスクと社会全体としての感染拡大のリスクを低減することが、何らかの副反応の生じるリスクを大きく上回る」と示唆している。 そして、異なる種類のワクチンの併用接種につき、日本脳炎ワクチンやポリオワクチンなどを例に、これらは科学的な根拠に基づいてその有効性や安全性が確認された後に、それらの併用接種が認められてきたという経緯を踏まえ、現在わが国で認められている3種のmRNAワクチンは、「ワクチンでは定められた用法・用量にしたがって、同一のワクチンを用いて接種するもので、前述の併用接種に相当する接種方法は、わが国では検証されていない」と注意を喚起している。 今後の課題として「仮にわが国においてこの併用接種を行うのであれば、希望者に接種が行き届くまでの一時的な措置と位置付けると共に、並行してわが国における臨床研究として、たとえ少数例であってもその有効性と安全性の検証を行うことが不可欠」と提言している。※一部で用いられている「交差接種」という用語は、正式な医学用語ではないので注意されたい3回目の接種の前に希望者全員への2回接種を 一般論として、「ワクチン接種後に獲得された抗体価は時間経過と共に減衰していくものであり、低下したそのレベルで効果がもたらされるかどうか、すなわち感染防御や重症化防止の評価・検証が重要となる」と評価・検証の重要性を示した上で、わが国では3回目の検証が行われていないと指摘する。 また、「免疫力をより強く長く維持することを目的とする優れた接種方法の検討は、今後進められていくべき」とことわったうえで、「国民に広く接種が行き渡っていない現状においては、まずは同一のワクチンを用いて2回の接種を対象となる希望者全員に対して可及的速やかに実施することが第一義と考える」と希望者全員への接種を優先すべきと示した。 そして、3回接種を行っている諸外国と異なり、ワクチンの供給を輸入に頼るわが国の独自性について触れ、「国内向けだけではなく世界においてわが国が果たす公衆衛生の観点に立ち、接種可能なワクチンを世界のすべての人々に2回接種する努力を継続することこそ、今回のパンデミックを収束/終息させるために最も有効で、かつ最優先させるべきこと」と考えを示した。 最後に学会では、「ワクチンの基礎臨床研究の推進、および適正な情報の公開・共有と、メディアとの連携を進めていく」と展望を語っている。

1603.

第77回【特集・第6波を防げ!】相マスクが濃厚接触者の感染を予防/有観客試合で感染は広まらず

大学でのマスク着用が濃厚接触者の感染を予防デルタ変異株をまだ見ず、ワクチン接種がこれからという今年1~5月の米国の大学で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者との濃厚接触者を一律に隔離するのではなくマスク着用の状況に応じてそうするかしないかを決める取り組みが検証され、マスクをお互いに着用することでどうやら感染の連鎖がほぼ完全に断ち切れていました1,2)。米国のセントルイス大学では感染者と濃厚接触(24時間に2人が約2m以内で15分以上接触)しても感染者と濃厚接触者のどちらもマスクを着用していればそれら濃厚接触者の隔離は不要という対応が今年1月から実行され、その対応の成果を判定すべく同大学の学生およそ1万2,000人のその後5ヵ月間の感染状況が調べられました。その5ヵ月間に265人が感染し、それら感染者の申告で濃厚接触者378人が同定されました。感染者と濃厚接触者がどちらもマスクをしていた場合(相マスク)の濃厚接触者は毎日健診を受けて症状があればすぐに申告するよう指示され、ワクチン非接種で非相マスクの濃厚接触者のみ隔離されました。相マスクでの濃厚接触者は26人で、そのうち感染に陥ったのは僅か2人(7.7%)のみでした。一方、残りの多数(352人)の非相マスク濃厚接触者は3人に1人(32.4%)が感染に至っており、相マスク濃厚接触者の感染率はそうでない場合の5分の1ほどで済んでいました。相マスクにもかかわらず感染した濃厚接触者2人は感染判明後すぐに隔離され、それら2人から別の人への感染は9人との濃厚接触があってそれら濃厚接触者を隔離しなかったにもかかわらず一切認められませんでした。ワクチンはごく少数にしか接種されていませんでしたがその効果も伺え、接種済みの濃厚接触者18人は全員感染を免れました。一方、ワクチン接種一部完了(Partially vaccinated)の濃厚接触者24人は5人(20.8%)、ワクチン非接種の濃厚接触者336人は111人(33%)が感染に至っています。ワクチン接種が普及した現在において、直接会う授業がある大学はワクチン接種がまだ済んでいない濃厚接触者を隔離と検査観察のどちらに振り分けるかの判断材料にマスク着用状況を含めうると著者は言っています1)。アメフト有観客試合の開催地でCOVID-19増加はみられずマスク着用を含む感染対策が一箇所に大勢が集うイベントからの感染の広がりを防ぎうることが米国のアメリカンフットボール(アメフト)の有観客試合のデータ解析試験で示されました3,4)。試験では去年2020年8月末(29日)からその年末(12月28日)までに観客有りのアメフトの試合が実施された郡とそれらと同様の日程で観客なしの試合が開催された郡が検討されました。その結果、有観客試合が実施された郡での住民10万人当たりの1日のSARS-CoV-2感染数の一貫した増加は認められず、少なめな観客数でのアメフトの試合の開催はその開催地のCOVID-19増加を生じやすくはしないと示唆されました。マスク着用、少なめな観客数、野外開催がどうやらCOVID-19の広がりを防いだようであり、観客同士の距離を十分に保てば有観客試合は安全に実行できそうです。今はワクチンが出回っていますが、それだけに頼ることはできません。そもそも全員がワクチン接種済みとは限りませんし、ワクチンで感染を100%防げるわけではありません。より伝播しやすいデルタ株のような変異株の心配もあり、アメフトの試合のような大規模な集いでのCOVID-19伝播はマスクを着用しなければ依然として発生する恐れがあります。ワクチン接種が可能になったとはいえ今後もしばらくは行動の制限が続きそうですが、アメフトの試合ではマスク着用の観客を十分に離した席に招じ入れてよさそうだと試験の著者は結論しています4)。参考1)Rebmann T,et al.MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021 Sep 10;70:1245-1248.2)CDC Report Finds Masks Curb Spread of COVID-19 on Campus / Inside Higher Ed3)No indication of COVID-19 spread from pro football events with limited attendance / Eurekalert4)Toumi A, et al. JAMA Netw Open. 2021 Aug 2;4:e2119621.

1604.

コロナワクチンは高齢者の死亡をどの程度防いだか/厚労省アドバイザリーボード

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策として定期的に厚生労働省で開催されている「新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」の第51回(9月8日開催)において、「新型コロナウイルス感染症に対するワクチン等の効果の推定」が報告された。 資料では、65歳以上の高齢者についてワクチンをしなかった場合の推定から実数を比べ、ワクチンの効果を示したもの。COVID-19ワクチンで8,000人以上の高齢者の死亡を抑制した可能性 65歳以上の高齢者の9割近くが2回のワクチン接種を終えた環境下で、ワクチンの効果として、高齢者を中心に感染者数、死亡者数の増加抑制が期待されている。今回、HER-SYSデータを用いてワクチン接種などがなかった場合の推定モデルを作成し、COVID-19陽性者数、死亡者数が、同推定モデルと比較してどの程度抑制されたかを試算した。[試算方法] 2021年1月1日~8月31日までのHER-SYSデータを使用して試算した。(1)4月~8月までの感染陽性者数と年齢区分別の月毎の増加率を算出(2)1月~7月までの高齢者の新型コロナウイルス感染陽性者、死亡者数、致死率を検討(3)(1)で算出した増加率、(2)で算出した致死率を利用し、感染陽性者数と死亡者数の抑制を試算(なおHER-SYSにおける死亡数の入力率は66%程度と試算される点にも留意が必要)【COVID-19感染抑制の推定】 7月と8月で、推定10万人以上の高齢者の感染を抑制した可能性がある。7月:推定モデル感染者数2万7,052、実数5,953、推定との差2万1,0998月:推定モデル感染者数11万778、実数2万4,110、推定との差8万6,668【COVID-19感染死亡数抑制の推定】 7月と8月で、推定8,000人以上の高齢者の死亡を抑制した可能性がある。7月:推定死者数1,768、死亡者実数145、推定との差1,6238月:推定死者数7,544、死亡者実数725、推定との差6,819 なお、参考資料として「2021年1月~7月の新型コロナウイルス感染陽性者の致死率」も示され、2021年1月と7月を比較すると、1月の致死率が90歳以上で15.56%だったものが、7月では同数値が5.64%まで低下していることが示されている。

1605.

肺動脈圧遠隔モニタリングによる心不全管理、COVID-19影響分析の結果/Lancet

 肺動脈圧遠隔モニタリングによる血行動態ガイド下の心不全管理は、通常治療のみと比較して、試験全体では全死因死亡と心不全イベントの複合エンドポイントを改善しないものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を考慮した感度分析の結果に基づくpre-COVID-19影響分析では統計学的に有意に良好との研究結果が、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのJoAnn Lindenfeld氏らが実施したGUIDE-HF試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2021年8月27日号に掲載された。北米118施設の単盲検無作為化対照比較試験 本研究は、症状の重症度が広範囲にわたる心不全患者において、肺動脈圧遠隔モニタリングによる血行動態ガイド下の心不全管理は、心不全イベントや死亡を低減するかの評価を目的とする単盲検無作為化対照比較試験であり、2018年3月~2019年12月の期間に、米国の114施設とカナダの4施設で患者登録が行われた(米国・Abbottの助成による)。 対象は、NYHA心機能分類クラスII~IVの心不全患者で、左室駆出率の値は問われなかった。また、試験前にナトリウム利尿ペプチドの上昇がみられるが、心不全による入院歴のない患者なども含まれた。 被験者は、ガイドラインで推奨された薬物療法による通常治療を受ける群(対照群)、または通常治療に加え肺動脈圧遠隔モニタリングによる血行動態ガイド下の心不全管理を受ける群(治療群)に1対1の割合で無作為に割り付けられた。治療群に割り付けられた患者は割り付け情報がマスクされた。担当医はマスクされなかったが、対照群の肺動脈圧データは知らされなかった。 主要エンドポイントは、12ヵ月時の全死因死亡と心不全イベント(心不全による入院、心不全専門病院への緊急受診)の複合とした。アウトカムに関するpre-COVID-19影響分析が、事前に規定された。デバイス/システム関連合併症は99%で発現せず 本研究には1,022例が登録され、このうち1,000例が肺動脈圧遠隔モニタリングデバイス(CardioMEMS、米国・Abbott製)の装着に成功した。治療群に497例(年齢中央値71歳、女性38%)、対照群には503例(70歳、37%)が割り付けられた。 主要エンドポイントのイベントは、治療群497例で253件(0.563/人年)、対照群503例で289件(0.640/人年)発生し、両群間に差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.74~1.05、p=0.16)。心不全による入院にも差はみられなかった(0.83、0.68~1.01、p=0.064)。 一方、COVID-19の感度分析で、試験期間中のCOVID-19の世界的大流行期に主要エンドポイントのイベント発生に変化がみられたことから、pre-COVID-19影響分析を行ったところ、主要エンドポイントのイベント発生は治療群が177件(0.553/人年)、対照群は224件(0.682/人年)であり、治療群で有意に良好であった(HR:0.81、95%CI:0.66~1.00、p=0.049)。この治療群の有効性は、主に心不全による入院(0.72、0.57~0.92、p=0.007)が優れたことによるものだった。 この主要エンドポイントのイベント発生の差は、COVID-19の大流行期間中にほぼ消失し、対照群(0.536/人年)でCOVID-19前に比べ21%の低下がみられたのに対し、治療群(0.597/人年)では実質的にほぼ変化がなく、両群間に差はみられなかった(HR:1.11、95%CI:0.80~1.55、p=0.53)。 試験全体の解析では、治療群は心不全イベントの累積発生率が低下しなかった(HR:0.85、95%CI:0.70~1.03、p=0.096)が、pre-COVID-19影響分析では発生率が有意に減少した(0.76、0.61~0.95、p=0.014)。 安全性のエンドポイントであるデバイスまたはシステム関連の合併症は、99%(1,014/1,022例)には認められなかった。重篤な有害事象は、治療群57%(282/497例)、対照群53%(268/503例)で発現した。 著者は、「これらのデータは、慢性心不全患者における血行動態ガイド下の管理の有益性に関するエビデンスベースの支持を肯定し拡張するものであり、軽度~中等度の心不全や、ナトリウム利尿ペプチドの上昇がみられるが心不全による入院歴のない患者など、より幅広い患者への適用の可能性を示唆する」とまとめ、「COVID-19の世界的大流行中の臨床試験では、COVID-19の影響に関する感度分析を加える必要がある」と指摘している。

1606.

第70回【特集・第6波を防げ!】制限緩和に医療者は?/GSK製コロナ薬が月内にも特別承認へ

オリンピック開催前より、大都市圏を中心とした21都道府県で緊急事態宣言が発令されているが、19都道府県において今月30日まで延長となった。政府はこれと並行して、宣言解除に向けて、合理的かつ効果的で国民が納得できる感染対策を目指す議論を重ねている。3日、尾身 茂分科会長が示した「ワクチン接種が進む中で日常生活はどのように変わり得るのか?」では、ウィズコロナ時代の行動制限解除は、コロナ関連医療と一般医療の2つの側面から負荷を考え、各地域の自治体や専門家の意向も考慮が必要と指摘されている。アメリカやイギリスのように、大幅な行動制限緩和を行った国では、「デルタ株」の感染拡大やワクチン未接種者の存在により、再びコロナ患者の急増で病床が逼迫したという報道もあり、わが国においては、第6波を見据え、救急医療の逼迫を防ぐセーフティーネットをしっかり備えた上で、制限緩和へと踏み出すことになる。今後希望者のほとんどにワクチンが行き渡る11月頃までに、ワクチン接種歴およびPCR等の検査結果を軸に、他者に二次感染させるリスクが低いことを示す「ワクチン・検査パッケージ」の運用が開始される見込みだ。これを実現するために、今月発足したデジタル庁が主導して、10月からマイナンバーカードを健康保険証として利用するだけでなく、ワクチン接種証明のスマートフォン搭載なども目指す。今、従来では考えられなかったようなスピードでさまざまな物事が進んでいる。しかし、われわれ医療従事者はこれからも、コロナ対応に多くのリソースを割くことになるだろう。十分な体制が整うまでもうしばらくは、目の前でできることを確実にやり遂げていくしかない。(参考)ワクチン接種が進む中で日常生活はどのように変わり得るのか?(新型コロナウイルス感染症対策分科会)緊急事態措置解除の考え方(同)今後のデジタル改革の進め方について(内閣府デジタル庁)<先週の動き>1.GSK製の軽~中等症コロナ治療薬が月内にも特別承認へ2.制限緩和にワクチン・検査パッケージ導入へ、全国知事会が懸念3.総裁選に向け各候補者がアピール、厚労省分割案は河野氏4.看護必要度やリハビリ目的での急性期入院の見直しを/中医協1.GSK製の軽~中等症コロナ治療薬が月内にも特別承認へグラクソ・スミスクラインは、6日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬として、単回投与のモノクローナル抗体ソトロビマブ(sotrovimab)の製造販売承認申請をしたと発表。ソトロビマブは点滴静注薬であり、投与対象は「酸素療法を必要としない軽症・中等症かつ重症化リスクが高いと考えられる患者」とされる。今回の承認申請については、先行する中外製薬の抗体カクテル療法(商品名:ロナプリーブ)と同様の医薬品医療機器等法第14条の3に基づく適用を希望している。(参考)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬としてモノクローナル抗体ソトロビマブの製造販売承認を申請(GSK)GSK 新型コロナ治療薬・ソトロビマブを承認申請(ミクスonline)コロナ新治療薬、月内にも承認へ 厚労省 英グラクソ製 軽・中等症向けの点滴薬「ソトロビマブ」(日経新聞)2.制限緩和にワクチン・検査パッケージ導入へ、全国知事会が懸念西村 康稔経済財政・再生相は、12日にNHKの番組に出演し、新型コロナウイルス感染拡大による行動制限を、ワクチン接種などを条件に緩和する方針について議論の結果を示した。ワクチン接種が一定レベルを超えた時点で、他者に二次感染させるリスクが低いことを示す「ワクチン・検査パッケージ」の導入を進める方針を明らかにした。一方、全国知事会は緊急事態宣言の延長を受け、11日にオンライン会議を開催し、政府への緊急提言をまとめた。行動制限緩和については国民を楽観させる恐れがあると懸念を表し、宣言解除の指標等の見直しや、行動制限を緩和する地域・時期については、地域の感染状況や実情に応じた対応を求めている。また、出口戦略として、「ワクチン・検査パッケージ」を適切に運用するには、まず行動制限を緩和するために必要なワクチン接種率の目安を示す必要があると指摘した。(参考)西村担当相、制限緩和へ「国民的議論」 新型コロナ(時事ドットコム)制限緩和、「楽観」懸念 適用地域・時期の精査を―全国知事会(同)新型コロナ 行動制限緩和へ、接種率提示要請 全国知事会(毎日新聞)3.総裁選に向け各候補者がアピール、厚労省分割案は河野氏今月17日に告示、29日に投開票となる自民党総裁選に向け、出馬を表明した河野 太郎規制改革相、岸田 文雄前政調会長、高市 早苗前総務相ら各候補は、先週から報道番組などに出演して、具体的な政策について国民にアピールを行っている。岸田氏は12日、YouTubeのライブ配信で、自身に対する質問や意見に回答し、ウイグル問題を通して中国に対する強硬姿勢をアピールしている。また、河野氏は総裁選への出馬後、業務が広範にわたる厚労大臣の国会対応を通して、厚労省の分割案を提案している。高市氏は、海上保安庁法改正の必要性を強調。首相就任後の靖国神社参拝についても意欲を示している。(参考)河野氏、厚労省分割「一つの考え方」 高市氏は海保法改正に意欲(時事通)河野氏「厚労省、厚生省と労働省を分けることも」 大臣の負担軽減で(朝日新聞)岸田氏、ウイグル問題で中国非難決議「成立させるべき」(同)4.看護必要度やリハビリ目的での急性期入院の見直しを/中医協8日に開催された「入院医療等の調査・評価分科会」は、来年度の診療報酬改定に向けた検討結果として中間取りまとめを公表した。これは次の中医協の診療報酬基本問題小委員会に報告され、さらに検討される見込み。急性期入院医療の評価指標について、従来から用いられている「重症度、医療・看護必要度」の見直しと、別に新しい指標の検討を行うことになった。また、救急医療管理加算の審査基準が都道府県ごとで違うことを問題視する意見が出され、全国で統一する方向で検討することとなった。さらに、DPC対象病院に係る検討の進め方についても検討され、医療資源投入量や在院日数が平均から外れた病院も、ヒアリングの結果から「リハビリ目的」での入院など、必ずしも急性期の病態とは言えない患者がDPC対象病棟に入院している事例が明らかとなった。(参考)入院医療等の調査・評価分科会におけるこれまでの検討状況について検討結果(中間とりまとめ)(案)(厚労省)看護必要度見直し、急性期入院の新評価指標、救急医療管理加算の基準定量化など2022改定で検討せよ―入院医療分科会(Gem Med)救急管理加算、審査基準の統一化求める意見 中医協・入院医療分科会(CBnewsマネジメント)

1607.

ブレークスルー感染におけるリスク因子は?

 COVID-19ワクチンの2回接種を終了していても、その後感染するいわゆる「ブレークスルー感染」におけるリスク因子を調査した研究結果がThe Lancet Infectious diseases誌オンライン版9月1日号に掲載された。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMichela Antonelli氏らは、ワクチン接種後の感染におけるリスク因子を調査するために、英国のCOVID追跡アプリの利用者である成人から得られた自己申告データを用いた大規模なケースコントロール研究を行った。 2020年12月8日~2021年7月4日の間にCOVID-19ワクチンの1回目または2回目の接種を受け、接種前の検査で陰性だった者を対象として、以下の群に分けた。・1回目接種後14日以上経過し、COVID-19検査が陽性(症例群1)・2回目の接種後7日以上経過し、検査が陽性(症例群2)・1回目接種後14日以上経過し、2回目の接種前の検査が陰性(対照群1)・2回目の接種後7日以上経過し、検査が陰性(対照群2) 対照群1・2をワクチン接種後の検査日、医療従事者か、性別で症例群1・2に1対1でマッチさせた。疾患プロファイル分析では、症例群1・2の中から、陽性判定後、少なくとも14日間連続してアプリを使用した参加者(症例群3・4)をサブセレクトした。陽性を報告したワクチン未接種者で、検査後連続14日以上アプリを使用した参加者を対照群3・4とし、それぞれ症例群3・4と陽性検査日、医療従事者かどうか、BMI、年齢によって1:1でマッチさせた。単変量ロジスティック回帰モデルを用いて、危険因子とワクチン接種後の感染との関連、および個々の症状、全体の罹患期間、疾患の重症度とワクチン接種の有無との関連を分析した。 主な結果は以下のとおり。・期間内に124万9例が1回目のワクチン接種を報告し、そのうち6,030例(0.5%)がその後に陽性反応を示した(症例群1)。また、97万1,504例が2回目のワクチン接種を報告し、そのうち2,370例(0.2%)が陽性反応を示した(症例群2)。・1回目接種のワクチンの種類の内訳はファイザー製:44万2,752例、アストラゼネカ製:75万137例、モデルナ製:1万7,958例だった。・危険因子分析では、フレイルは高齢者(60歳以上)における1回目接種後の感染と関連し(オッズ比[OR]1.93、95%CI:1.50~2.48、p

1608.

血小板減少症/血栓症リスク、コロナワクチン接種後vs. 感染後/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のChAdOx1 nCoV-19ワクチン(Oxford-AstraZeneca製)の初回接種後には血小板減少症や静脈血栓塞栓症、まれな動脈血栓症のリスクが上昇し、BNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer-BioNTech製)初回接種後には動脈血栓塞栓症や虚血性脳卒中のリスクの増加が認められるが、これらのイベントのリスクは、ワクチン接種後と比較して同一集団における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染後のほうがはるかに高く、長期に及ぶことが、英国・オックスフォード大学のJulia Hippisley-Cox氏らの調査で明らかとなった。研究の成果はBMJ誌2021年8月26日号で報告された。イングランドの自己対照ケースシリーズ研究 本研究は、イングランドにおけるCOVID-19ワクチンと血液学的/血管系イベントとの関連の評価を目的とする自己対照ケースシリーズ研究であり、2020年12月1日~2021年4月24日の期間に実施された(英国研究技術革新機構[UKRI]の助成による)。 研究グループは、期間中にイングランドでワクチン接種を受けた個々の接種者レベルのデータを入手した。接種者の電子健康記録が、国家統計局(ONS)の死亡データ、SARS-CoV-2検査データ、英国の国民保健サービス(NHS)の入院データと関連付けられた。 2,912万1,633人がワクチンの初回接種を受け(ChAdOx1 nCoV-19ワクチン:1,960万8,008人[平均年齢55.5歳、女性50.1%]、BNT162b2 mRNAワクチン:951万3,625人[61.5歳、57.2%])、175万8,095人(51.7歳、56.7%)がSARS-CoV-2検査陽性であった。初回ワクチン接種を受け、アウトカムのデータが得られた16歳以上の集団が解析に含まれた。mRNA-1273ワクチン(Moderna製)は接種者数がきわめて少なかったため除外された。 主要アウトカムは、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種、BNT162b2 mRNAワクチン接種、SARS-CoV-2検査陽性という3つの曝露から28日以内における、血小板減少症、静脈血栓塞栓症、動脈血栓塞栓症に伴う入院または死亡とされた。主要アウトカムの構成要素である脳静脈洞血栓症(CVST)、虚血性脳卒中、心筋梗塞、その他のまれな動脈塞栓症の評価も行われた。CVSTのみ2つのワクチンともリスク増加 血小板減少症のリスク上昇は、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日の罹患率比[IRR]:1.33[95%信頼区間[CI]:1.19~1.47])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日14.04[12.08~16.31]、8~14日5.27[4.34~6.40]、15~21日1.91[1.44~2.54]、22~28日1.50[1.10~2.05])に認められた。 また、静脈血栓塞栓症のリスク増加は、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日のIRR:1.10[95%CI:1.02~1.18])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日13.78[12.66~14.99]、8~14日13.86[12.76~15.05]、15~21日7.88[7.18~8.64]、22~28日3.38[3.00~3.81])に、動脈血栓塞栓症のリスク増加は、BNT162b2 mRNAワクチン接種後(15~21日1.06[1.01~1.10])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日6.55[6.12~7.02]、8~14日4.52[4.19~4.88]、15~21日2.02[1.82~2.24]、22~28日1.26[1.11~1.43])にみられた。 さらに、CVSTのリスクは、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日のIRR:4.01[95%CI:2.08~7.71])と、BNT162b2 mRNAワクチン接種後(15~21日3.58[1.39~9.27])、およびSARS-CoV-2検査陽性後(1~7日12.90[1.86~89.64]、8~14日13.43[1.99~90.59])に上昇し、虚血性脳卒中のリスクは、BNT162b2 mRNAワクチン接種後(15~21日1.12[1.04~1.20])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日3.94[3.46~4.47]、8~14日3.25[2.83~3.72]、15~21日2.00[1.70~2.35]、22~28日1.26[1.04~1.53])に増加した。 一方、心筋梗塞のリスクは、2つのワクチンとの関連はなかったが、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日のIRR:7.95[95%CI:7.32~8.63]、8~14日4.94[4.50~5.43]、15~21日1.95[1.71~2.22])に上昇し、まれな動脈塞栓症のリスクは、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日1.21[1.02~1.43])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日5.35[3.90~7.32]、8~14日5.61[4.13~7.61]、15~21日2.97[2.03~4.36]、22~28日2.66[1.79~3.94])に増加した。 著者は、「2つのワクチンの初回接種後にCVSTのリスクが上昇しており、これは潜在的な前兆の可能性があるが、数が少ないためさらなる確認が必要である。重要な点は、ワクチン接種後のこれらのアウトカムのリスクは、同一集団のSARS-CoV-2感染後に比べはるかに低いことである」と指摘している。

1609.

第74回 ワクチン1回目でアナフィラキシー、日本で「交差接種」はなぜ考慮されない?

先進国内では遅れを取ったと言われる日本の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のワクチン接種。9月8日時点の対象人口での接種率は1回目接種完了が60.9%、2回目接種完了が49.0%となり、現在、2回目接種完了者が人口の約53%であるアメリカの背を捉えつつある。そうした中で5月に承認されながら副反応に対する警戒感から公的接種での使用が控えられていたアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチン「バキスゼブリア筋注」が8月から40歳以上に限定して公的接種に組み入れられたことは、ここ最近の接種率向上に一役買っているとみられる。ご存じのようにバキスゼブリアについては約10~25万回に1回の頻度で血小板減少症を伴う血栓症が確認され、発症者の5~6人に1人が死亡している。また、50歳未満の若年者の発生頻度は、50歳以上の2倍ほど高い。もっともこの頻度はワクチンの副反応としてはかなり低いもので、私個人は当初公的接種から外したことはナイーブすぎた判断と考えている。さてこのワクチンに関して東京都でちょっとした騒動が勃発している。「都の大規模ワクチン会場、独断で「交差接種」 健康状態に問題なし」(朝日新聞)もう既にほとんどの方がご存じかとは思うが、3月にファイザー製ワクチンの優先接種を受け、アナフィラキシーを起こした医療従事者がかかりつけ医に相談し、2回目接種にバキスゼブリアを選択するようアドバイスを受け、都の接種会場でこのことを申し出た後、そのまま交差接種を受けたという案件である。予診担当の医師も接種担当の看護師も交差接種であることをわかったうえで接種を実施。これに対し都側で不適切だったと申し開きをしたという内容だ。正直、なんともすっきりしない話である。確かに制度上は適切とは言えない。ただ、アナフィラキシーという本人の不可抗力によりワクチン接種完了が叶わなかったこの方は、今のデルタ株流行という環境下で医療従事者として働くことに相当不安を抱いていたはずだ。だからこそ、かかりつけ医に相談してまで、この接種会場に赴いたのだろうと推察する。そう考えるとこの方はもちろんかかりつけ医も現場で判断した予診担当の医師も接種を行った看護師も私は責めることができない。いったいこうした人はどれくらいいるのだろうか?mRNAワクチンの接種によりアナフィラキシーを起こしたと厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会で判定を受けているケースは、8月8日までにファイザー製が405件、モデルナ製が9件ある。もちろん接種のすそ野が広がってくる今後、こうした人は増えてくるだろう。その人たちをこのまま放置して良いのだろうか?ちなみにいわゆる1回目と2回目の接種を違うワクチンで行う交差接種に関しては、最近Lancet誌にオックスフォード大学のグループによる単盲検試験の結果が報告されている。この試験は28日間隔でファイザーワクチン2回接種、アストラゼネカワクチン2回接種、アストラゼネカ1回目/ファイザー2回目、ファイザー1回目/アストラゼネカ2回目の接種を行った4群で新型コロナウイルスの抗スパイクタンパクIgGの幾何平均濃度を比較したもの。結論から言えば幾何平均濃度は高い順からファイザー2回接種、アストラゼネカ1回目/ファイザー2回目、ファイザー1回目/アストラゼネカ2回目、アストラゼネカ2回接種となった。まだプリミティブな結果ではあるものの、この結果からは今回の接種そのものが医学的に問題あるものではないこともほぼ明らかだ。そもそも体内に入ったmRNAの分解されやすさや2回接種完了者での抗体価減少の研究報告なども併せてみれば、この方のようなケースは初回のmRNAワクチンの影響もほぼウォッシュアウトされているかもしれない。その意味ではやや乱暴な言い方かもしれないがバキスゼブリアを2回接種しても良いのではないかとすら思えてくる。いずれにせよ本人に接種の意思がありながら、mRNAワクチンでのアナフィラキシーゆえに接種完了が叶わなかった人たちに、本人の同意取得を前提に補償的措置として臨床研究を兼ねてウイルスベクターワクチンの再接種を検討すべきではないかと考えている。

1610.

アレルギー高リスク者、コロナワクチンによるアレルギー発症率は?

 新型コロナワクチンを接種したいもののアレルギー持ちだと、どうしても躊躇してしまう。とくに副反応が強く出やすい2回目となればなおさらである。今回、イスラエル・Sheba Medical CenterのRonen Shavit氏らは、アレルギーに対し高いリスクを有する患者について、ファイザー製の新型コロナワクチン(BNT162b2)のアレルギー反応/アナフィラキシーの影響について調査を行った。その結果、アレルギー性疾患の病歴を持つほとんどの患者は、医療施設で実装できるさまざまなアルゴリズムを使用すれば安全に接種できることが示唆された。JAMA Network Open誌2021年8月31日号のOriginal Investigationとして掲載。 研究者らは2020年12月27日~2021年2月22日の期間、シェバ医療センターのCOVID-19ワクチンセンターに申請されたアレルギー患者8,102例を対象に前向きコホート研究として、詳細なアンケートを含むアルゴリズムを使用したリスク評価を実施。アレルギーに対し高いリスクを有する患者を「アレルギー性が高い」とし、医学的管理下で接種が行われた。 主な結果は以下のとおり。・アレルギー性が高い患者と定義付けされたのは429例で、そのうち304例(70.9%)は女性、平均年齢±SDは52±16歳だった。・BNT162b2ワクチンの初回投与後、420例(97.9%)に即時型アレルギー反応はなく、6例(1.4%)には軽度のアレルギー反応が、3例(0.7%)にはアナフィラキシーが出現した。・調査期間中、アレルギー性が高い患者218例(50.8%)が2回目のBNT162b2ワクチン接種を受けたところ、214例(98.2%)にはアレルギー反応がなく、4例(1.8%)で軽度のアレルギー反応がみられた。・ほかの即時型および遅延型アレルギーの発現状況について、アレルギー性が高い患者群を一般集団と比較しても同等だった(遅延性のかゆみや発疹の発症は除外)。

1611.

「ワクチンを打つのが不安」と言われたら…【非専門医のための緩和ケアTips】第11回

第11回 「ワクチンを打つのが不安」と言われたら…COVID-19のパンデミックで大変な思いをされている医療者の方が多いと思います。今回はパンデミック下における緩和ケアについての話題を紹介します。今日の質問かかりつけの患者さんから、「私はワクチンを打ってもいいですか?」と質問されることが多いです。話を聞くと「副反応などの話を聞くので怖い」と感じているようです。どのようにアドバイスするとよいのでしょう?これは、多くの方がすでに経験している状況ではないでしょうか。「新しいワクチンの効果と安全性をどのように考えるか」という視点だけでなく、マスコミの報道の在り方やリスクコミュニケーションなど、さまざまな論点が複雑に絡み合った難しい問題です。一挙に解決する魔法のような策はないのですが、ここでも、緩和ケアのスキルが役立ちます。まず、患者さんやご家族は「ワクチンを受けるかどうか」について、どういった媒体の情報を得て決めたのでしょうか。厚生労働省のような公的機関や新聞やテレビのニュースの情報が十分届いているかというと、少し疑問です。米国の調査1)では、調査対象となった患者と家族の約80%がワクチン接種に関する相談先に「医師や看護師などの医療専門職」と回答しました。これは米国疾病予防管理センター(CDC)の60%や家族や友人の58%よりもはるかに高い数字です。いかがでしょう。こうした結果を見ると、私たち医療者の責任は重大です。このCenter to Advance Palliative Careのサイトには、医療者がワクチン接種に不安を感じる患者と対話するときのポイントも紹介されています。1)Start with Open-Ended Questions開かれた質問から対話を始める2)Acknowledge Patient Concerns without Judging判断をせずに、患者の気掛かりを認める3)Avoid Criticizing the Patient’s Information Sources患者の情報源を批判しない4)Show Awareness of Your Status as a Messenger必要なワクチンを必要な人に提供するという、自分の立場を明確にする5)Link Vaccine Acceptance to the Patient’s Hopes and Goals患者の希望や目標と、ワクチン接種の受け入れを関連付ける私の意訳を含んでいるので、少しニュアンスが異なるかもしれません。興味を持った方は、原文を読んでみてください。ちなみに、この原文には次のような力強い言葉が書いてあります。「緩和ケア医は多くの場合、すでに患者から信頼されている」さまざまな診療を通じて構築してきた、医師と患者の関係を基盤として、ワクチンに対する不安について「対話」をすることが重要なのです。ともすれば、患者さんの情報源を批判する態度を取ったり、医療者としての意見を一方的に伝えたりしがちではないでしょうか。「患者さんの真意を聞き、不安な気持ちを受け止める」という緩和ケアのアプローチは、ワクチン接種にも活用できるのです。今回のTips今回のTips緩和ケアにおける意思決定の支援法は、ワクチン接種にも活かせる!1)Center to Advance Palliative Care(capc). How to Address Vaccine Hesitancy for Patients Living with Serious Illness(2021年3月11日)

1612.

第74回 尾身茂氏のインスタ開始や行動制限緩和策、医療界隈は冷ややか「おいおい尾身さん」

政府の新型コロナ対策分科会会長の尾身 茂氏(72歳)がInstagramアカウントを開設した。初投稿では、「#ねえねえ尾身さん」がプリントされたTシャツを着て笑顔の写真で登場。「若者の意見を吸い上げて政治に活かす」のだという。尾身氏は後日、ワクチンの2回目接種者や検査の陰性者を対象に行動制限の緩和を進める「ワクチン・検査パッケージ」案を提言した。いずれも若者にはおおむね好評だが、この時期の緩和案公表の背景に、政府与党から総選挙対策のための好材料の提案を要望されたのでは、と見る向きもある。また、自らが理事長を務める地域医療機能推進機構(JCHO)傘下の5つの公的病院で、183床ある新型コロナウイルス患者用の病床が30~50%も使われていないことが報道された。医療界からは「おいおい尾身さん」と批判の声が上がっている。インスタ開設で「若者の意見を政府に届ける」インスタで尾身氏は「コロナ対策は『科学だけでは決めきれないこと』がたくさんあります。たとえばコロナとの戦いが長期戦になる中で『どんな社会で生きていきたいか?』ということなどです。一緒に話し合って皆さんの声を政府に届けたいです」と述べ、若者に期待を持たせた。また、マスクをした尾身氏の似顔絵イラストをアイコンに使用。「ねえねえ尾身さん」という親しみやすいキャッチをTシャツにプリント。「インスタ一生懸命勉強しています」「楽しみにしています」というコメントも載せ、10〜20代の女性からは「可愛い」と好評だ。ツイッターでトレンド入りするなど話題を呼び、“イメージ戦略”の出足はすこぶる順調のようだ。そんな尾身氏が提言したのが「ワクチン・検査パッケージ」案である。ワクチンの2回目接種者、PCR検査などの陰性者は感染リスクが低いとみなし、行動制限の緩和を進めるというものだ。例えば、大人数での会食や宴会、県境を越える出張や旅行、大規模なイベントの参加、大学での対面授業・部活動などが可能。ただ、時短要請の続く飲食店や大規模商業施設に対してワクチン・検査パッケージを適用するかは要検討だという。実施する場合、緊急事態宣言が解除されていることが前提で、接種希望者にワクチンが行き渡る11月頃を想定している。提言を踏まえ、政府が改めてロードマップを公表する予定だ。行動制限緩和案、総選挙前提言の疑念実施に当たって尾身氏は、想定されるワクチン接種率について3つのシナリオを想定している。▽シナリオA(理想的な接種率)は、60代以上の90%、40~50代の80%、20~30代の75%▽シナリオB(努力により到達し得る接種率)は、60代以上の85%、40~50代の70%、20~30代の60%▽シナリオC(避けたい接種率)は、60代以上の80%、40~50代の60%、20~30代の45%、というものだ。Aの条件が満たされれば、行動制限を40%程度下げることによって、マスクをすることなどを前提に元の生活に戻れるというが、「これはハードルが高い」と都内の病院に勤める感染症専門医は言う。首都圏では新規感染者数は減少傾向にあるものの、自宅療養者数や重症者数は高止まり、医療は逼迫しており、政府は緊急事態宣言を延長する方針だ。これまでの経験から、宣言解除後のリバウンドは容易に予想され、2回接種してもブレークスルー感染する人が増えている状況でもある。「緊急事態宣言が守れない人がいる中、緩和案を言うことで誤解が生じ、さらにたがが緩んでしまうことが心配だ」と前述の医師は述べる。この時期に緩和案が出たことに対し、政界の事情通は「政府が総選挙を前に選挙対策のための好材料を出してくれと、尾身氏に要望した可能性がある」と推測する。感染症対策が選挙対策に利用されることは許されない。理事長務めるJCHO病院でコロナ病床未利用問題一方で、尾身氏が理事長を務める(JCHO)傘下の都内の5つの公的病院で、183床ある新型コロナウイルス患者用の病床が30~50%も使われていないことが、オンラインメディア「AERAdot.」(朝日新聞出版)で報じられた。自宅療養者が増え、医療が逼迫する中で、コロナ患者の受け入れに消極的なJCHOの姿勢に対し、医師などからは批判の声があがっている。厚労省関係者も「尾身氏は『もう少し強い対策を打たないと、病床のひっ迫が大変なことになる』などと声高に主張しているが、JCHO傘下病院でコロナ専用ベッドを用意しておきながら、患者をあまり受け入れていない。尾身氏の言動不一致が理解できない」と指摘する。JCHOは全国に57病院あり、稼働病床数は約1万4千床。そのうち6.1%にあたる870床をコロナ専用の病床にしたという。AERAdot.によると、2020年12月から3月だけでもJCHO全57病院で132億円もの新型コロナ関連の補助金が支払われたという。「コロナ病床を空けたままでも補助金だけ連日、チャリチャリと入ってくる。“濡れ手で粟”状態でコロナ予算を食い物にしている。受け入れが難しいのであれば、補助金を返還すべきでは」(厚労省関係者)。厚労省OBの尾身氏には、後輩の指摘に耳を傾けてほしいものだが、“変幻自在の政治家”などと呼ばれるようになった人物に、筋を通すことを求めるのは無理な要求か。

1613.

日本人のがん患者の新型コロナウイルス抗体レベルは低いのか/JAMA Oncol

 がん患者における新型コロナ抗体レベルは健康成人と比べて低いのか。わが国のがん患者と、非がん罹患者としての医療者のあいだで、血清SARS-CoV-2抗体の状態を比較した国立がんセンター中央病院 矢崎 秀氏らの前向き研究が発表された。 対象は2020年8月3日~10月30日に、東京周辺の2つのがんセンターから、16歳以上のがん患者と医療者で前向きに登録された。 評価項目は、がん患者と医療者の血清有病率と抗体レベル。血清陽性の定義は、ヌクレオカプシドIgG(N-IgG)および/またはスパイクIgG(S-IgG)の陽性であった。がん患者は、薬物療法、外科手術、放射線療法などのがん治療を受けている。 主な結果は以下のとおり。・がん患者500例(年齢中央値62.5歳、男性55.4%)と医療者1,190例(年齢中央値40歳、男性25.4%)が登録された。・がん患者の97.8%は固形腫瘍で、1ヵ月以内に抗がん治療を受けていた患者は71.0%であった。・血清有病率は、がん患者1.0%、医療者0.67%と同等であった(p=0.48)。・抗体レベルは2種とも、医療者に比べがん患者で有意に低かった(N-IgG抗体:p<0.001、S-IgG抗体:p<0.0001)。[がん患者における薬物療法と躯体レベルの関係]・化学療法を受けた患者のN-IgGレベルは、化学療法を受けなかった患者より有意に低かった(p=0.04)。・免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与を受けた患者の抗体レベルは2種ともICI投与を受けなかった患者より有意に高かった(N-IgGレベル:p=0.02、 S-IgGレベル:p=0.02)。 この前向き研究では、SARS-CoV-2の血清有病率はがん患者と医療者で差はなかったが、抗体レベルはがん患者で有意に低かった。また、がん患者においては治療薬剤によって抗体レベルに差があった。 筆者は、がんの合併は、SARS-CoV-2への免疫応答に影響を与える可能性があることを示唆している、と述べている。

1614.

AZ製ワクチン、2回目の遅延接種は3回接種と同等の高抗体価/Lancet

 新型コロナワクチンChAdOx1 nCoV-19(AZD1222)の2回接種は、1回目との接種間隔が44~45週と長い遅延接種のほうが、8~12週や15~25週の短い場合に比べ、接種後28日のIgG抗体価が高いことが示された。また、同ワクチン3回接種では、遅延2回接種後と同レベルの高い抗体価が得られること、およびT細胞反応を促進することが認められた。英国・オックスフォード大学のAmy Flaxman氏らが、進行中の2つのChAdOx1 nCoV-19無作為化試験について行った下位試験の結果で、Lancet誌オンライン版2021年9月1日号で発表した。COVID-19ワクチンをめぐっては、供給不足から1回目と2回目の接種間隔が長くなることに対して、一部の国から免疫低下の懸念が示されている。研究グループは、ChAdOx1 nCoV-19の単回投与後の免疫原性の持続性、2回目接種までの期間が延長した場合(44~45週)の免疫、2回目投与から28~38週後にブースター接種を行った3回接種の反応を評価した。18~55歳に、1~2回目接種間隔、3回目接種の反応原性・免疫原性を調査 下位試験は、英国で行われている新型コロナワクチンChAdOx1 nCoV-19の第I/II相単盲検無作為化対照試験(COV001)の被験者で、同ワクチン(1回当たり5×1010ウイルス粒子量)の1~2回接種を受けた18~55歳のボランティアを対象とした。2回目遅延接種(初回接種の44~45週後)、または3回目接種(2回接種の28~38週後)を受けた被験者について、反応原性と免疫原性を調べた。 対照として、同I/II相試験(COV001)またはII/III相試験(COV002)で、ChAdOx1 nCoV-19の1~2回接種(1回当たり5×1010ウイルス粒子量)を受けた被験者のデータを比較した。接種後28日抗体価、接種間隔8~12週923EU、44~45週3,738EU 2021年3月11日~21日に、90例が同ワクチン3回目ブースター接種の下位試験に登録された。うち80例について反応原性を、75例について抗体価を、15例についてT細胞反応を調べた。 また、同ワクチン2回接種者321例のうち、1回目接種との間隔8~12週が83%、15~25週が7%、44~45週が9%で、全員について反応原性を調べた。免疫原性については261例について調べ、2回目接種までの間隔の内訳は、8~12週が44%、15~25週が44%、44~45週が11%だった。 ワクチン単回接種の480例については、接種後44~45週までの免疫原性を調べた。1回接種後の約320日に測定した抗体価は、ベースラインに比べ高いレベルを維持していた(ELISA単位(EUs)によるGMTは66.00 EUs[95%信頼区間[CI]:47.83~91.08]vs.1.75 EUs[1.60~1.93])。 1回接種後44~45週で2回目接種を受けたのは32例で、うち30例が免疫原性と反応原性の解析に包含された。2回目接種28日後の抗体価は、1~2回の接種間隔が長い群が、短い群に比べ高かった(総IgG抗体価中央値:接種間隔8~12週が923 EUs[IQR:525~1,764]、15~25週が1,860 EUs[917~4,934]、44~45週が3,738 EUs[1,824~6,625])。 3回接種群について(評価対象はサンプル入手できた73例[81%])は、接種完了28日後の抗体価(総IgG中央値)は3,746 EUs(IQR:2,047~6,420)と、2回接種群の同1,792 EUs(899~4,634)に比べ有意に高値だった(Wilcoxon符号順位検定のp=0.0043)。またT細胞反応についても、3回接種直前から直後にかけて、反応性中央値は200 SFU/100万PBMC(IQR:127~389)から399 SFU/100万PBMC(314~662)に増加した(Wilcoxon符号順位検定のp=0.012)。 反応原性は、遅延2回接種群と3回接種群で、いずれも初回接種後に比べ低かった。

1615.

第74回 膵がん治療に欠かせないアブラキサン10月供給停止へ、学会、患者会が他工場製品の緊急承認要望

“末期”となり抗体カクテルも効かなかった菅首相こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。菅 義偉首相が昨年の安倍 晋三前首相に続き、またまた投げ出し退陣をすることになりました。コロナ対策も総じて後手後手でしたが、自身の政権延命策も後手後手の印象で、最後は自分で自分を“詰んで”しまいました。新聞やテレビは、退陣に追い込まれるに至ったいくつかの潮目について解説していましたが、個人的にはコロナ対策で8月2日に政府が打ち出した「新型コロナウイルスの感染者は重症患者を除き自宅療養を基本」とした方針が大きかったと思っています(「第70回 真夏のホラー、コロナ患者「重症者以外自宅療養」方針めぐるドタバタで考えた“野戦病院”の必要性」参照)。この方針は「棄民政策」とまで批判され、その後変更を余儀なくされましたが、「国民の安全、安心」と言いながら、コロナ患者の現状をまったく見ていなかったことが、この一件で明らかになりました。前回に書いた抗体カクテル療法は、発症早期の投与が求められる治療法ですが、“末期”だった自身の政権に効く“特効薬”はもはやなかったようです。今週はコロナを離れ、がん治療の現場を騒がせている抗がん剤のニュースを取り上げます。膵がん患者にとっては死活問題大鵬薬品工業のがん治療薬「アブラキサン点滴静注用100mg」(パクリタキセル アルブミン懸濁型)の供給が2021年10月以降、停滞することが明らかになり、がん治療の現場やがんの患者会では大騒ぎとなっています。この問題、夏の初めころから腫瘍内科医の間では話題となっていたようですが、表沙汰にはなっていませんでした。8月18日、大鵬薬品は「アブラキサン点滴静注用100mg供給に関するお詫び」と題した文書を医療機関向けに出し、「10月以降安定供給に一時的な支障を来す」と公表しました。2日後の8月20日には、全国のがん患者会でつくる「全国がん患者団体連合会」が厚生労働省や大鵬薬品などに対し「出庫調整並びに供給停止に関する要望書」を提出したことで、一般メディアも知るところとなりました。この要望書では、アブラキサンは膵がん、乳がん、胃がん、肺がんの治療のために重要であり、特に膵がんの治療には不可欠で、死活問題になりかねない状況だとして、供給停止に至った理由や対応策、今後の見通しなどについて速やかに情報公開を行うこと、医療機関での在庫を把握して、特に必要とする患者に対して適切に配分されるようにすることなどを求めました。アブラキサンについては、乳がん、胃がん、肺がん(非小細胞肺がん)に関してはパクリタキセルで代用できますが、膵がんでは代用品がありません。国内では年間4万人が使用しており、全アブラキサンの約65%が膵がんに使用されているとのことです。アリゾナ州フェニックスの工場の不具合なぜアブラキサンが供給停止になるのか…。はじめにこのニュースを聞いたときにはコロナの影響かとも思ったのですが、どうもそうではないようです。専門誌の報道やすい臓がんの患者会サイト(PanCAN)などによれば、大鵬薬品の海外生産拠点である米国のAbraxis BioScience社(米Bristol-Myers Squibb社の子会社)のアブラキサンの製造工場(アリゾナ州フェニックス)で製造上での不具合が見つかり、生産が中断したことから海外の供給先の1つである日本への供給が停止した、とのことです。なお、北米(米国、カナダ)とヨーロッパ(英国など)ではアブラキサンの供給停止は起こっておらず、日本への供給ストップは海外供給を担当しているアリゾナ工場の不具合が原因とのことです。日本以外ではオーストラリアでも供給停止となっています。大鵬薬品は供給停止の理由について「米国のメーカーから『製造工程に関する定期的な検証にて再評価が必要となる旨の連絡』があった」と説明していますが、詳しい内容は明らかにしていません。がん関連の6学会が合同声明、胃がん、乳がん、肺がん患者には切り替えを勧めるアブラキサン供給停止問題を受け、がん関連の6学会(日本臨床腫瘍学会、日本癌治療学会、日本膵臓学会、日本胃癌学会、日本乳癌学会、日本肺癌学会)は8月26日、医療関係者に対して合同声明を出しました。現在の状況が続くとアブラキサンの国内の在庫が10月中旬でなくなることが予想され、現時点では供給の目処が立っていないことから、声明では以下の3点を医療関係者に求めました。1.現在アブラキサンによる治療を継続中の患者さんについては、アブラキサンによる治療に効果があり継続中の患者さんを最優先してください。胃癌・乳癌・肺癌患者さんにおきましてはアブラキサンをパクリタキセルに切り替えるなど代替治療を積極的にご検討ください。2.新規に治療を開始する患者さんについては、代替治療への切り替えが困難な膵がん患者さんやアルコール不耐(パクリタキセルへの代替困難)の患者さんの治療を優先ください。胃癌・乳癌・肺癌患者さんにおきましてはアブラキサンをパクリタキセルに切り替える(肺癌、胃癌)か、他の治療法に切り替える(乳癌)など代替治療を積極的にご検討ください。3.アブラキサンはもとより、パクリタキセルなどの代替薬の必要以上の購入はお控えください。膵臓学会は他製造工場の製品の緊急承認求める9月1日には、膵がん治療の専門医の集まりである日本膵臓学会が、厚生労働省と医薬品医療機器総合機構(PMDA)に対してアブラキサンの供給一時停止という事態の打開を訴える要望書を提出しました。要望書では、「アブラキサンはゲムシタビンとの併用で進行膵がんの1次化学療法薬として延命効果が証明され、最も多く用いられている極めて重要な薬剤です。アブラキサンは膵がんにおいて代替薬が無く、供給に支障を来した状況では進行膵がん患者の生命予後に直結する極めて重大な事態となります」と供給停止の深刻さを指摘、その上で、次の2点を要望しました。1.アブラキサン製造所に関する一部変更の緊急承認(今回問題が生じている日本向けアブラキサン製造所以外で製造されたアブラキサンの緊急承認)。2.アブラキサンの海外ジェネリック製品の緊急承認Abraxis BioScience社のアブラキサンの製造拠点は米国イリノイ州メルローズ・パークとアリゾナ州フェニックスの2ヵ所にあります。日本向け製品はフェニックスで製造されており、こちらだけが製造が止まっています。そこでメルローズ・パークで製造されたものを緊急承認してもらうとともに、欧州で流通しているジェネリックも使えるようにしてくれ、という要望です。なお、全国がん患者団体連合会も同様の要望を準備しているとのことです。ファイザーのパクリタキセルも出荷調整へ今回の事態の影響はアブラキサンだけではなく、パクリタキセルにも及んでいます。パクリタキセルを供給するファイザーは8月26日、医療関係者向けに「パクリタキセル点滴静注液の出荷調整のご案内」を出しました。それによると、ファイザーはパクリタキセルを「他社同種同効薬の出荷調整の影響から平常時を大幅に超える需要が想定されるため、既存のお得意様への供給を継続すべく関係卸様への出荷調整を実施」し、「しばらくの間は新規ご採用を辞退する」としています。大鵬薬品お詫び2報でも原因わからず当の大鵬薬品ですが、9月2日にお詫びの第2報を出しました。しかし、ここでも「当該製造拠点にて原因調査およびこれまでに製造した製品への影響度評価を進めております」と、原因は説明されていません。そして、「現在弊社が保有している在庫から鑑み、本製品のメーカー在庫消尽は10 月中旬頃となる可能性が出てまいりました」として、「出庫調整の後、在庫がなくなり次第、供給を一時停止」としています。供給の再開時期については、「グローバル在庫を調整の上、日本市場向け製品の輸入を現在交渉しているところ」とのことです。医薬品供給体制の脆弱さが浮き彫りにそれにしても、米国の1工場の不具合で、がん患者が窮地に追い込まれるとは、日本の医薬品供給体制の脆弱さが改めて浮き彫りになった格好です。日本国内で使用されている薬剤のうち、がん治療に用いられる分子標的治療薬や抗体医薬はその多くが海外から輸入されています。しかも今回のように、1ヵ所の製造所に依存しているケースもあります。アブラキサンについては、フェニックスの工場が停止した場合の対応策についてまったく考えていなかった大鵬薬品の責任は重いと言えるでしょう。他製造工場でつくられたアブラキサンやヨーロッパで流通しているジェネリックの確保が果たして可能なのか、そしてPMDAは緊急承認するのか、今後の展開が気になります。医薬品供給を巡っては、ジェネリックの自主回収(「第53回 まだまだ続く日医工自主回収、ジェネリックが再び「ゾロ」と呼ばれる日」参照)が問題になったばかりですが、海外の製造工場に依存するがん治療薬などについても、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)を策定しておくなど、製薬会社にはしっかりとしたリスクマネジメントを期待したいところです。

1616.

Novavax社コロナワクチンの供給契約、追加接種への使用も視野に/厚労省

 厚生労働省は9月7日、米国・Novavax社から技術移管を受け、武田薬品工業が国内の生産および流通を行う新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンに関し、日本における薬事承認などを前提に、早ければ2022年初頭から、おおむね1年間で1億5,000万回分の供給を受けることについて、武田薬品工業と契約を締結したと発表した。 武田薬品工業は、Novavax社との提携の一環として、国内自社工場においてCOVID-19ワクチン候補「TAK-019」(海外における開発コード:NVX-CoV2373)の生産能力の整備を進めており、22年初頭の供給開始を目指している。同社は国内臨床試験を実施し、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)への製造販売承認申請を行い、厚労省の承認取得後、国内供給を開始する予定。 「TAK-019」は、Novavax社の遺伝子組換えたんぱく質ナノ粒子技術により開発されたワクチンであり、これはこれまでにもB型肝炎ワクチンなどで用いられている従来型の種類。 武田薬品工業およびNovavax社では、追加接種への使用も視野にワクチンの開発を行っており、変異株への対応も含まれている。今回の契約締結により、開発が成功すれば当該ワクチンの供給を受けることも可能となる。

1617.

第76回 イスラエルから2報:COVID-19患者の嗅覚回復後ににおいの異常が増加/3回目接種有効

新型コロナウイルス感染(COVID-19)の始まりから嗅覚喪失や味覚喪失があったイスラエルの1,468人を追跡したところ嗅覚はおよそ回復していましたが、これまでとにおいが違う・不快・薬品のようだという愁訴に代表される嗅覚錯誤(parosmia)は逆に増えており、始まりには約10%にしか認められなかったのに約半年(中央値200日)後にはおよそ半数(47%)に認められるようになっていました1,2)。周りの誰もそうし得ないのに焦げたにおいがする(Sometimes I can smell burning but no one else around me can)などの嗅覚の幻覚(phantosmia:幻嗅)も増えており、始まりには嗅覚錯誤と同様に約10%にしか認められなかったのが約半年後には4人に1人(25%)が呈していました。また、半年後に嗅覚はおおむね回復していたとはいえ女性の6割と男性の約半数(48%)の嗅覚水準はCOVID-19前の80%未満にとどまっていました。味覚はたいてい嗅覚より早く回復し、嗅覚が回復して味覚喪失は続いているということはほとんどありませんでした。先立つ幾つかの試験で嗅覚喪失を呈するCOVID-19は軽症で済むらしいと示唆されています。しかし今回の結果によると嗅覚喪失は楽観視できるものではなさそうであり、長引く嗅覚不調は症状が多いことと関連しました。嗅覚喪失はどうやらCOVID-19後遺症の主な目印のようです。少なく見積もっても世界の1,500万人ほどがCOVID-19後の長引く嗅覚不調を被っており、嗅覚錯誤は数百万人にも達しそうです。嗅覚錯誤はどうやら主なCOVID-19後遺症の1つであり、その研究や新たな治療法の開発が必要です。においの異常は身体や精神、はては食生活にも影響するものであり、COVID-19が肉体や精神に及ぼす二次的影響の手当てを世界のどの地域も準備する必要があるでしょう2)。3回目接種がイスラエルで効果ありイスラエル全土でのCOVID-19ワクチン3回目接種が成果を上げているようです3)。同国の保健省(Israel Ministry of Health)のデータを調べたところ、60歳以上高齢者へのPfizerのCOVID-19ワクチンBNT162b2の3回目接種から2週間以上のSARS-CoV-2感染リスクが11分の1以下に下がりました4)。重病リスクも10分の1以下になりました。免疫の低下とデルタ変異株のせいで6ヵ月超前に接種したワクチンの効果が半減し、3回目接種で感染リスクが今回の解析とほぼ同じく10分の1に低下したと仮定するなら、3回目を接種した人の感染の確率は非接種の人の僅か5%です4)。その計算に基づくと今回の解析での3回目接種の予防効果は2回目接種後すぐに匹敵する95%ほどに回復していたようです。先月8月29日にイスラエルは3回目接種の対象を2回目接種から5ヵ月が過ぎた全員に拡大する方針を示しています3,5)。3回目接種の予防効果がどれぐらい続くかは不明であり、これから調べていく必要があります3)。参考1)Loss of smell may be followed by smell distortions / Reuters2)Increasing incidence of parosmia and phantosmia in patients recovering from COVID-19 smell loss. medRxiv. August 31, 20213)Israel’s COVID-19 boosters are preventing infections, new studies suggest / Science4)BNT162b2 vaccine booster dose protection: A nationwide study from Israel / gov.il(August 31, 2021)5)The Vaccination Policy and the New Green Pass that will Take Effect Soon / Israel Ministry of Health

1618.

妊婦のケアを厚く追記した改訂COVID-19診療の手引き/厚生労働省

 8月31日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第5.3版」を公開した。 今回の改訂では、主に以下の5点が追記・修正された。【2 臨床像の「5.小児例の特徴」の重症度、家族内感染率などについて一部追記】 最新(2021年8月時点)の陽性患児の特徴などが追加された。【4 重症度分類とマネジメントの「5.妊産婦の管理」の項を追加】 追加項目では、自宅療養中の妊婦の訪問時の確認事項、妊婦への指導事項のほか、妊婦搬送の判断の注意点、産科的管理以外のバイタルの留意事項、COVID-19患者の妊婦から産まれた新生児への検査が追加された。【同「自宅療養者に対して行う診療プロトコール」「経口ステロイド薬投与における留意点」などについて追記】 自宅療養・宿泊療養を行っている患者で酸素投与の適応となる場合の経口ステロイド薬投与における留意点」として、ステロイド投与を行う際の病状評価および治療適応の判断では、原則として自宅に赴いた往診医や宿泊施設内における担当医師などによる対面診療のもと、処方することを推奨(処方例:デキサメタゾン 6mg 分1 10日間または症状軽快まで)している。また、緊急時対応のために事前処方や内服の目安(例:咳嗽などの呼吸器症状があり、SpO2 93%以下)などが記されている。その際、電話、オンラインなどで医師が指示したり、フォローアップすることが望ましいと詳しい項目が記載されている。【5 薬物療法の各種薬剤の項目(レムデシビル、バリシチニブなど)に一部追記】 レムデシビルの保険適用(2021年8月4日)や「腎機能障害のある患者への投与」が追加され、重度の腎機能障害がある患者には投与は推奨されないが、治療の有益性が上回ると判断される場合のみに投与とされた。また、「バリシチニブ」について、入院患者1,525人を対象とした二重盲検試験(COV-BARRIER)の結果、主要評価項目の人工呼吸管理/死亡に至った割合に差は認められなかったが、治療開始28日以内の死亡はバリシチニブ群で有意に低かった試験結果が追加された。【6の院内感染対策の「表6-1」「1.個人防護具」「5.患者寝具類の洗濯」「8.職員の健康管理」などについて一部追記】 「表6-1 感染防止策」の確定例の感染防止策を実施する期間が大きく改訂され、発症者と人工呼吸器など要した患者に場合分けされ記載された。 「1.個人防護具」では、エアロゾルが発生しやすい状況として、歯科口腔処置、非侵襲的換気、ネーザルハイフロー、生理食塩水を用いた喀痰誘発、下気道検体採取、吸引を伴う上部消化管内視鏡などが追加された。 「5.患者寝具類の洗濯」では、患者が使用したリネン類の洗濯について、具体的かつ詳細な洗濯法が追加された。 「8.職員の健康管理」では、参考として「医療従事者が濃厚接触者となった場合の外出自粛の考え方」が新たに追加された。 なお、本手引きは5月以降、毎月追加改訂がなされているので、下記のリンクなどより確認をいただきたい。

1619.

軽~中等症の新型コロナ治療薬sotrovimabを国内申請/GSK

 グラクソ・スミスクラインは9月6日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として、sotrovimabについて同日付で国内における製造販売の承認申請を行ったと発表した。酸素療法を必要としない軽症・中等症かつ重症化リスクが高いCOVID-19患者を対象とし、点滴静注で用いる。海外第II/III相臨床試験(COMET-ICE試験)では、重症化リスクの高い軽症~中等症のCOVID-19成人患者において、入院または死亡リスクが有意に低下することが示されており、厚生労働省に特例承認の適用を求めた。sotrovimabはCOMET-ICE試験で入院または死亡を79%低減 sotrovimabは、GSKとVir Biotechnology社が研究開発を行うSARS-CoV-2モノクローナル抗体。COMET-ICE試験に参加した1,057例全例の有効性に関する主要解析において、投与29日目までに24時間を超える入院または死亡がプラセボと比べ79%低減し(補正相対リスク減少)(p<0.001)、主要評価項目を達成したことが報告されている。 sotrovimabは、スパイクタンパク質の保存性の高い領域に結合することにより、薬剤耐性への高いバリア機能を備える。in vitro試験のデータでは、デルタ株やラムダ株などの懸念される変異株・注目すべき変異株に対して活性を維持することが示されているが、臨床に及ぼす影響はまだわかっておらず、データ収集と解析が続いている。 sotrovimabを巡っては、米国で緊急使用許可(EUA)が発行されているほか、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品評価委員会からはRegulation 726/2004のArticle 5(3)に基づき、肯定的な科学的見解を得ている。このほか、カナダ、イタリア、アラブ首長国連邦、シンガポールなどでは一時的承認を、オーストラリアでは承認を取得している。

1620.

第69回 最新版手引き(第5.3版)に妊産婦の管理追加/厚労省

<先週の動き>1.最新版手引き(第5.3版)に妊産婦の管理追加/厚労省2.COVID-19受け入れ病床増加に向け、新たな協力要請/東京都3.ワクチンが行き渡る11月に向け、規制緩和策を提言/内閣府4.税負担が重い医療機関への軽減策を国に要望/日医5.社会保障給付費、123兆円と過去最高に/厚労省6.宿直頻度が週1回を超えている病院は新規許可得られず/日医1.最新版手引き(第5.3版)に妊産婦の管理追加/厚労省厚生労働省は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第5.3版」を新たに発出した。これまでの知見に加えて、「妊産婦の管理」の項を追加し、無症状・軽症で自宅療養・宿泊療養中の妊婦の診療・看護する医療者は、「呼吸状態、心拍数や呼吸数とその変化などの急速な症状の進行を疑う症状」「産科的異常を示唆する症状」の確認が必要とされた。また、自宅療養者に対して行う診療プロトコール、経口ステロイド薬投与における留意点なども追加されている。<主な改訂部分>20-21ページ:「5.小児例の特徴」の重症度、家族内感染率等について一部追記42ページ:「5.妊産婦の管理」の項を追加44ページ:自宅療養者に対して行う診療プロトコール、経口ステロイド薬投与における留意点等について追記48-59ページ:各種薬剤の項目(レムデシビル、バリシチニブ等)に一部追記60-67ページ:「表6-1」「1.個人防護具」「5.患者寝具類の洗濯」「8.職員の健康管理」等について一部追記(参考)コロナ診療の手引きに「妊産婦の管理」の項を追加 厚労省が第5.3版を事務連絡(CBnewsマネジメント)2.COVID-19受け入れ病床増加に向け、新たな協力要請/東京都東京都は2日に開かれた東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議において、都内の医療機関に対するCOVID-19患者の受け入れ病床確保要請の結果、1日の時点で150床増の6,117床となったことを報告した。このうち重症者向け病床は465床で、73床増加している。今回、改正感染症法に基づいて東京都と厚労省が共同してさらなる協力要請が行われたが、目標の7,000床に向けて、要請を受けた医療機関側の人員不足など厳しい現状が浮かんだ。重症患者のさらなる増加に備えた重症病床の確保や、回復期支援病床の増床により、転院支援などを推進することで都内病床の活用促進などを求めている。3日に開催された経済諮問会議では、民間議員から、臨時の医療施設の設置や宿泊療養施設における医療提供体制の強化などがただちに取り組むべき課題とされたほか、約70万人の潜在看護師の活用など、対応への参画を促すことも提案された。(参考)感染症法第16条の2に基づく協力要請(東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議)東京の確保病床6117床に 国と都が初要請、目安の7000床には届かず(東京新聞)3.ワクチンが行き渡る11月に向け、規制緩和策を提言/内閣府内閣府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が3日に開催され、11月を目途にワクチンが行き渡った後について、「ワクチン接種が進む中で日常生活はどのように変わり得るのか?」と題した提言が尾身 茂会長から示された。これによると、ワクチンの効果と限界や、諸外国の知見を踏まえ、国内ですべての希望者がワクチン接種を終えたとしても、集団免疫の獲得は困難という見解だ。努力によって到達し得るワクチン接種率が60代以上は85%、40~50代は70%、20~30代は60%になったとしても、引き続き、人々の生活や社会経済活動の制限が一定程度は必要であるとし、“ワクチン・検査パッケージ”として、接種証明書やPCR検査・抗原定量検査の陰性証明書を活用し、経済社会活動の制限を緩和する仕組みを提案した。さらに今後の感染状況も含め、議論していくことを求めた。また、同日に開かれた経済財政諮問会議でも、民間議員からは感染拡大・重症化の防止と経済社会活動を両立する「新しい国民生活の姿」の実現に向けて、ロードマップを早急にとりまとめるべきだと提言があった。(参考)ワクチン接種が進む中で日常生活はどのように変わり得るのか?(新型コロナウイルス感染症対策分科会)ワクチン・検査パッケージを提言 分科会、旅行や入院面会で活用(東京新聞)ワクチン・検査活用で制限緩和=旅行、大規模イベント容認―分科会提言・新型コロナ(時事ドットコム)4.税負担が重い医療機関への軽減策を国に要望/日医日本医師会は、1日に18項目からなる「2022年度医療に関する税制要望項目」を発表し、本要望を8月25日に厚労省に提出したことを報告した。消費税負担の大きな医療機関は、「軽減税率による課税取引に改める」ことを含めた見直しを、診療所など小規模な医療機関はこれまで通り非課税として、診療報酬での補填の継続を求めた。このほか、医師少数区域等に所在する医療機関の固定資産税・不動産取得税の税制措置の創設なども要望に入れられた。(参考)令和4年度医療に関する税制要望について(日医online)日本医師会の税制改正要望 消費税負担の大きな医療機関「軽減税率による課税取引」に見直し検討を(ミクスonline)5.社会保障給付費、123兆円と過去最高に/厚労省厚労省の国立社会保障・人口問題研究所は3日に2019年度の「社会保障費用統計」を公表した。これによると、2019年度の社会保障給付費総額は123兆9,241億円で、対前年度増加額は2兆5,254億円と、伸び率は2.1%増となった。1人当たりの社会保障給付費は98万2,200円となる。社会保障給付費を部門別に見ると、「医療」は40兆7,226億円(32.9%)、「年金」は55兆4,520億円(44.7%)、「福祉その他」は27兆7,494億円で同22.4%となった。高齢化の進行で、右肩上がりの状況が続いており、今後負担の分担をめぐって議論になると思われる。(参考)令和元(2019)年度「社会保障費用統計」の概況取りまとめを公表します~社会保障給付費、過去最高を更新~(国立社会保障・人口問題研究所)年金 医療 介護などの社会保障給付費 123兆円余りで過去最高(NHK)6.宿直頻度が週1回を超えている病院は新規許可得られず/日医日本医師会は1日に、日本医師会が実施した「医師における宿直許可の取組に関する調査」の結果を報告した。医師の働き方改革で2024年4月より医師の時間外労働の上限規制が適用されるところ見据え、2019年7月以降に医師の宿直許可について申請・相談を行った医療機関の事例を収集した調査が行われた。2021年4〜5月にかけて、全国8,221病院と6,418有床診療所を対象とした本結果によると、約6割弱の医療機関が労働基準監督署の宿直許可を得たと回答した。また、許可を得られたあるいは許可を得らえる見込みと回答した医療機関では医師一人当たりの宿直頻度が「週1回以下」の医療機関が93.3%だった。一方、不許可となった医療機関では、医師一人当たりの宿直頻度が週1回を超えているなど、宿直許可基準が厳しく適用されているとの見解を示した。日本医師会では、産婦人科領域において、全国の分娩件数の約半数が大学病院などから宿日直医師の派遣を受けて産科診療所が取り扱っているため、大学病院等からの医師の派遣が制限されてしまえば、産科診療所での分娩が成り立たなくなるとして、危機感を示した。(参考)医師における宿直許可の取組に関する調査結果について(日医online)

検索結果 合計:2864件 表示位置:1601 - 1620