サイト内検索|page:78

検索結果 合計:2864件 表示位置:1541 - 1560

1541.

コロナ治療でイベルメクチン適応外使用に注意喚起/MSD

 MSDは10月12日、医療関係者向けの情報サイトで「COVID-19に対するイベルメクチンの処方について」と題した文書を掲載。腸管糞線虫症または疥癬の経口治療薬として国内承認されているイベルメクチン(商品名:ストロメクトール)は、COVID-19の治療薬としては承認されていないため適応外使用となることを注意喚起した。イベルメクチンはコロナ治療薬として承認されていない イベルメクチンを巡っては、同剤を開発した米・メルク社が9月、COVID-19治療薬としての有効性と安全性のエビデンスについて分析した結果をステートメントとして発表。▽前臨床試験では新型コロナウイルス感染症に対する治療効果を示す科学的な根拠は示されていない▽新型コロナウイルス感染症患者に対する臨床上の活性または臨床上の有効性について意義のあるエビデンスは存在しない▽大半の臨床試験において安全性に関するデータが不足している―とし、「規制当局によって承認された添付文書に記載されている用法・用量や適応症以外におけるイベルメクチンの安全性と有効性を支持するデータは、現時点では存在しない」との見解を示した。 さらに世界保健機関(WHO)は、COVID-19に対する治療薬としてイベルメクチンを使用することは、臨床試験以外では推奨されないとする声明を発表している。 日本国内におけるイベルメクチンの製造販売元であるMSDは今回の文書で、「本剤は COVID-19の治療薬として承認されていない」と改めて強調し、COVID-19に対して適応外使用された際の安全性情報の監視を継続するとしている。イベルメクチンの添付文書が改訂、重大な副作用に「意識障害」追記 PMDAは、10月12日付でイベルメクチンの添付文書を一部改訂。重大な副作用として「意識障害」の項を追加し、「昏睡、意識レベルの低下、意識変容状態等の意識障害が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行う」こと、および「意識障害があらわれることがあるので、自動車の運転等、危険を伴う機械の操作に従事する際には注意するよう患者に十分に説明する」旨の記載が加えられた。

1542.

第79回 新型コロナ巡る多大な犠牲者の陰に見え隠れするカネとポストの争い

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染者数は急減しているとはいえ、死者は現在約1万8,000人に及ぶ。コロナ対策の原則は早期発見、早期隔離、早期治療だが、対策を講じてもなお、これほどの人が亡くなったことに疑問を抱かざるを得ない。PCR検査を幅広く行い、陽性者を隔離し、重症化すれば専門施設で集中治療する―。本来ならPCR検査数を増やすことは最優先課題のはずだったが、厚生労働省は当初から抑制し続けてきた。そこには、いくつかの理由があるようだ。首相の検査拡大指示も無視した医務技監昨年8月まで、医系技官のトップの医務技監だった鈴木 康裕氏(現・国際医療福祉大学副学長・教授)は、安倍 晋三首相(当時)の指示にもかかわらず、PCR検査の拡大を行わなかった。鈴木氏は偽陽性の頻度を理由に「陽性と結果が出たからといって、本当に感染しているかを意味しない」とメディアのインタビューに応えている。また、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会委員の岡部 信彦氏(川崎市健康安全研究所所長)も、PCR検査の精度管理を理由に検査拡大に反対した。検査抑制の理由は何か。上 昌広氏(NPO法人医療ガバナンス研究所理事長)らは、保健所を守るためだと指摘する。感染症法により、保健所長が感染の疑いがあると判断した場合、検査は不可避で、陽性の場合は入院させる。人権にかかわる措置であるため、手順は法令で細かく規定されている。こうした事情により、実質的にPCR検査は保健所の独占状態となった。しかし保健所は、PCR検査だけでなく、積極的疫学調査や入院調整なども担っていたため、業務過剰に陥った。幾度かの感染者急増の波もあり、PCR検査への対応が追い付かない上に、自宅療養者に対する入院判断ミスや情報管理の不備なども度重なり、感染者が死亡するケースが相次いだのは、さまざまなメディアが報じた通りだ。「独占」体制で生じる利権の構造コロナに関する保健所の業務独占体制は変える必要がある。しかし、そこが一筋縄ではいかないのは、関係者の利権の喪失にかかわるからだという。例えば、保健所が積極的疫学調査として集めたデータは、国立感染症研究所(感染研)に送られ、“感染症ムラ”が独占する。現在の体制下では、保健所長は医系技官、地方衛生研究所(地衛研)所長は感染研幹部経験者の“専用ポスト”なっているという。検査の独占はカネとポストにつながるため、COVID-19を1・2類感染症から5類感染症にダウングレードする議論にもおのずと関連してくる。COVID-19を巡っては、ウイルスそのものの脅威により、多大な社会的損失と生命の犠牲を余儀なくされた。これは紛れもない事実だが、医療政策をつかさどる人や組織の在り方によって被った人為的影響も計り知れないのではないだろうか。

1543.

ワクチンパスポート賛成は過半数を超える/アイスタット

 国民のワクチン対象成人の約6割超が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種を終え、これからCOVID-19との新しい日常が送られようとしている。ワクチン接種先進国では、接種を終えた人々にさまざまな証明書を発行することで、日常行動の制限解除にむけた動きも散見される。こうした「ワクチン接種証明書」について、社会はどのように考えているのだろう。 「ワクチンパスポート」をテーマに、株式会社アイスタットは10月4日にアンケートを行った。アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員20~79 歳の300人が対象。調査概要 形式:WEBアンケート方式 期日:2021年10月4日 対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(20~79歳の会員)アンケート結果の概要・ワクチンパスポートの申請・発行に賛成の割合は54%で半数を超える・ワクチンパスポート所有・提示による規制緩和・特典に賛成の割合は51.3%・ワクチンパスポートの申請意向がある割合は46.3%で半数を下回る・ワクチンパスポート提示による特典の第1位は「旅行・移動」の45.3%・ワクチンパスポート活用により生じる問題の第1位は「ワクチン接種有無による差別問題」・ワクチンパスポートが経済活動再開につながると思う割合は54.3%・コロナワクチンを2回接種した割合は66.7%。接種予定を含めると約8割が接種意向ありワクチンパスポートは賛成だけど活用法は限定的 質問1として「ワクチンパスポート(新型コロナワクチン接種証明書)の申請・発行について、どう思うか」(単一回答)を聞いたところ、「やや賛成」が31.7%で最も多く、「どちらともいえない」が28.7%、「非常に賛成」が22.3%の順であった。大きく2つに分類したところ「賛成」は54%、「それ以外」は46%で、賛成が半数を超える結果だった。 質問2で「ワクチンパスポートの所有・提示による規制緩和・特典について、どう思うか」(単一回答)聞いたところ、「やや賛成」が31.7%、「どちらともいえない」が30.7%、「非常に賛成」が19.7%の順で多かった。大きく2つに分類したところ「賛成」は51.3%、「それ以外」は48.7%で質問1と同様の傾向が見受けられた。 質問3で「ワクチンパスポートを申請するか」(単一回答)を聞いたところ、「申請する予定」が43.0%、「現時点では、まだ決めていない」が31.3%、「ワクチン接種をしないので、申請できない」が11.7%の順で多かった。大きく2つに分類したところ「申請」は46.3%、「それ以外」は53.7%で、活用法の情報が少ない中で申請意欲が少ない結果だった。 質問4で「どのような場面でワクチンパスポート提示による入場規制緩和・特典があった方が良い」(複数回答)を聞いたところ、「旅行・移動」が45.3%、「宿泊施設」が41.3%、「飲食店」が40.3%の順で多かった。また、「特になし」の回答も28.3%あるなど、今後の活用法の拡大が望まれることが示唆された。 質問5で「ワクチンパスポートが導入・活用されることによって、どのような問題が生じるか」(複数回答)を聞いたところ、「ワクチン接種有無による差別問題」が55.3%、「ワクチン接種後のブレークスルー感染の増加」が27.7%、「無症状・軽症感染者による他人への感染リスク」が26.7%の順で多かった。 質問6で「ワクチンパスポートは経済活動再開につながるか」(単一回答)を聞いたところ、「どちらかといえば、つながると思う」が38.7%、「かわらないと思う」が27.3%、「非常につながると思う」が15.7%の順で多かった。 質問7で「政府や自治体がお願いしているコロナ禍対策『外出・旅行・帰省・外食・酒禁止・時短営業の規制・制限』についてどう思うか」(単一回答)を聞いたところ、「どちらでもない」が22.7%、「かなり限界」が22.0%、「やや限界」が14.7%の順で多かった。回答を大きく2つに分類すると「限界」が49%、「それ以外」は51%で約半分の人が「限界」を感じていた。 質問8で「コロナワクチン接種状況」(単一回答)について聞いたところ、「2回目接種完了」が66.7%、「意図的に接種しない」が11.3%、「これから1回目を接種する」が9.7%の順で多かった。大別すると「接種あり・予定」が82%、「接種しない」が18%という結果だった。今後のさらなる接種率の向上という課題がうかがえる結果となった。

1544.

ファイザー製ワクチン、デルタ株への有効率の経時変化/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンBNT162b2(トジナメラン、Pfizer-BioNTech製)の、SARS-CoV-2デルタ変異株感染の入院に対する有効性は高く、完全投与後6ヵ月までの全年齢の有効性は93%だった。また、SARS-CoV-2感染への有効性については、時間とともに低下することが示され、デルタ変異株に対しては完全接種後1ヵ月は93%だったが、4ヵ月後は53%に低下していた。米国・カイザーパーマネンテ南カリフォルニアのSara Y. Tartof氏らが、343万例超を対象に行った後ろ向きコホート試験の結果で、感染への有効性が時間とともに低下することについて著者は、「デルタ変異株がワクチン保護効果を逃れるというよりは、おそらく時間とともに免疫力が低下したことが主な要因だろう」と述べている。Lancet誌オンライン版2021年10月4日号掲載の報告。12歳以上を対象に接種後6ヵ月までの予防効果を検証 研究グループは、カイザーパーマネンテ南カリフォルニアに、加入後1年以上経過した12歳以上の加入者を対象に試験を行い、BNT162b2のSARS-CoV-2感染や、COVID-19関連の入院に対する接種後6ヵ月までの予防効果を検証した。 アウトカムは、PCR検査結果によるSARS-CoV-2陽性とCOVID-19関連の入院で、ワクチン有効性は補正後Coxモデルによるハザード比に基づき算出した。感染予防効果は時間とともに低下、デルタ株感染予防効果は4ヵ月後には53%に 2020年12月14日~2021年8月8日に、適格性を評価した加入者492万549例のうち、343万6,957例を対象に試験を行った。被験者の年齢中央値は45歳(IQR:29~61)、女性の割合が52.4%だった。 BNT162b2ワクチン完全接種者の、SARS-CoV-2感染に対するワクチン有効性は73%(95%信頼区間[CI]:72~74)、COVID-19関連の入院に対する有効性は90%(同:89~92)だった。 一方で、SARS-CoV-2感染に対するワクチン有効性は、完全接種後1ヵ月は88%(95%CI:86~89)と高かったが、同5ヵ月後には47%(43~51)に低下した。SARS-CoV-2デルタ変異株への感染予防効果についても、完全接種後1ヵ月は93%(85~97)と高かったものの、4ヵ月後は53%(同:39~65)に低下した。 SARS-CoV-2非デルタ変異株に対する感染予防効果についても、完全接種後1ヵ月は97%(95%CI:95~99)と高かったのに対し、4~5ヵ月後には67%(45~80)に低下した。 BNT162b2ワクチン完全投与後6ヵ月までの、デルタ変異株によるCOVID-19関連の入院に対する予防効果は、全年齢で93%(95%CI:84~96)と高率だった。

1545.

第79回 茨城・偽造医師免許事件で思い出した、鶴瓶主演の医療映画の佳作

老健施設の施設長になるため偽造医師免許を使用こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は用事があって、江東区・森下と世田谷区・三軒茶屋に出かけました。東京の東と西、どちらも飲み屋が多い街です。のぞいてみると、先週末と同じく、どちらの街の飲み屋も夕方から満員です。緊急事態宣言下、人々に胸の奥に溜まっていた“飲み”への渇望が、爆発したような感じです。この勢いで皆飲み狂い、仮に第6波が来ないとしたら、それはそれでコロナ収束の原因を再考しなければならないな、と思いました(まあ、来るとは思いますが)。ということで、今回はコロナからちょっと離れて、夏から気になっていたある事件を取り上げます。9月に入ってその背景が詳しく報道されたこの事件は、ある医療映画の佳作を思い出させるものでした。今年6月28日、愛知県警は、茨城県水戸市に住む70歳の女性を偽造有印公文書行使の疑いで逮捕しましました。中日新聞などの報道によれば、逮捕された女性は、茨城県笠間市の老人保健施設「オリーブ友部館」で施設長として働くため、管理者の条件である医師免許を保持していないにもかかわらず、偽造された医師免許の写しを同県の長寿福祉推進課に郵送で提出して使用したとのことです。さらに翌29日、愛知県警はこの女性が使った医師免許を偽造した疑いで、中国籍で大阪市中央区在住の30代男性を再逮捕しています。同県警は今年2月、大阪市中央区道頓堀にあった在留カードなどの「偽造工場」とみられる雑居ビルを家宅捜索、中国籍の男性はこの捜索をきっかけに逮捕されています。運転免許証や健康保険証などの偽造を依頼した顧客データの中にこの女性も含まれていたことから、今回の医師免許偽造が発覚したとのことです。なお、女性は医師免許を取得したことはなく、医学部入学の経験もないとのことです。ワクチン接種の際の医療行為で再逮捕この老健施設を経営者する医療法人 鳳香会側は、この女性が偽造医師免許を使用していたとは知らなかったとみられます。女性は老健施設の施設長、すなわち医師として働いていたわけですから、当然、簡単な医療行為も行っていたに違いありません。案の定、7月26日、愛知県警はこの女性を、医師免許がないのに新型コロナウイルスのワクチン接種の問診などを行ったとして、医師法違反の疑いで再逮捕しました。中日新聞等の報道によれば、再逮捕容疑では、5月26日~6月23日までの間、老健施設の施設長として、高齢の入所者83人に対して計108回にわたり、新型コロナウイルスのワクチン接種前の問診や接種の可否判断などをしていたとされます。女性は問診後、施設の看護師に接種を指示していたそうです。入所者83人が接種を受けましたが、健康被害は確認されていません。この女性が施設長として勤めていた間の老健施設での医療行為については、医師法違反の罪は問われていません。何も医療行為を行わなかったのか、あるいは軽微な医療行為のため罪は問わなかったのかは不明ですが、ニセ医者が施設長をしていた間、入所者の健康状態は大丈夫だったのか、心配になります。なお、元介護施設長の女性はその後、有印公文書偽造・同行使罪で起訴されています。精巧なつくりが評判となり日本人も上客になかなか興味深く、謎が多い事件です。9月に入ると続報が出て、事件の背景がわかってきました。9月18日、日本経済新聞(東京版)の夕刊に、「大阪で摘発『偽造工場』、精巧さ売り医師免許も」というタイトルの記事が掲載されました。今回のニセ医者事件で表沙汰になった大阪の偽造工場の実態に迫った記事です。記事によれば、逮捕された中国人の偽造工場は、「偽の在留カードを求める不法滞在の外国人が主な対象だったが、精巧なつくりが売りとなり、日本人も上客に」なっていたとのことです。笠間市の老人保健施設は新しい施設長を探しており、「医師免許を持ちながら、フリーの立場で働いている」と聞いていた女性に就任を依頼。この時、医師免許を持っていないこの女性が頼ったのが、大阪市内で偽造工場を営んでいた中国籍の男性だったとのことです。茨城在住の女性がどういうルートで大阪の偽造工場を知ったのかは不明です。記事には、愛知県警は「ベトナム人が手にしていた偽の在留カードの入手経路を捜査する中で、この拠点を突き止めた」と書かれています。この時の摘発で、「医師免許や約20ヵ国の外国人の在留カードに加え、英語検定試験TOEICの成績証明書の偽造品やその元データも押収」しています。依頼は「ブローカーを通じて受注し、専用の印刷機で作製」しており、偽造品はどれも目視では偽物だと分からないレベルだったそうです。どうやら、この業者には多くの外国人、日本人がさまざまな文書の偽造を依頼していたようです。世間的にインパクトが大きい医師免許の偽造が明るみに出たため、愛知県警はこのケースをとくにフィーチャーするかたちで、中国人男性と水戸の女性の逮捕に踏み切ったとみられます。愛知県警には偽造工場摘発のプロチーム茨城県に提出された偽造医師免許は様式や書体は本物とほぼ同じでしたが、取得時期が1970年代にもかかわらず、発行者が「厚生大臣」ではなく、今の「厚生労働大臣」となっていたそうです。ただ、このミスに茨城県の担当者は気づきませんでした。この事件を受け、茨城県は医籍番号を厚生労働省のデータで照会し、偽造が疑われる場合は電話で問い合わせるという運用を始めたそうです。なお、愛知県警は来日外国人犯罪の温床となっている不法滞在の取り締りとその支援組織の摘発に15年近く前から積極的で、これまでも外国人登録証明書や旅券、運転免許証等の偽造工場を摘発してきた実績があります。調べてみると、2005年度の『警察白書』の「警察活動の最前線」の項にも同県警による偽造工場摘発の事例が紹介されています。どうやら愛知県警には、この分野を得意とするプロチームが組織されているようです。ニセ医者と言えば『ディア・ドクター』ところで、70歳の女性は、なぜ老人保健施設の施設長になりたいと思ったのでしょうか。施設長の高報酬に目がくらんだのでしょうか。施設長は医師でなければならないので、当然医療行為をしなければなりません。看護師にバレる可能性はとても高いでしょう。ネット上では、「東大医学部卒」と偽っていたとの情報もありました。そのあたりの事件の背景も知りたかったのですが、新聞等では、女性の動機などについては詳しく報道されていません。勝手に想像を巡らす中、私が思い出したのは、2009 年に公開された日本映画『ディア・ドクター』です。西川 美和監督が原作、脚本も手掛けたこの映画は、笑福亭 鶴瓶演じる僻地の診療所院長がニセ医者であることから起こるドタバタを描いています。全編ユーモラスな雰囲気を漂わせながらも、僻地医療、医師不足、終末期医療など、現代のさまざまな医療問題を丁寧に描いています。映画の後半、永山 瑛太演じる若手研修医が鶴瓶のニセ医者に心酔し、「研修が終わったら、診療所に戻ってきたい」と語るシーンは、黒澤 明監督の名作映画『赤ひげ』で青年医師(加山 雄三)が赤ひげ(三船 敏郎)に「小石川療養所に骨を埋める」と決意を述べるシーンへのオマージュとも受け取れます。しかし、『ディア・ドクター』の主人公はニセ医者です。なかなか皮肉が効いていて、医師というプロフェッションのありようについても考えさせられます。もし観ていない方がおられましたら、秋の夜長、2009年のキネマ旬報ベスト・テンで日本映画1位を獲得した『ディア・ドクター』を鑑賞されることをお薦めします。テレビで放映されている昨今の医療ドラマよりも、観る価値はあると思います。ところで、『ディア・ドクター』の脚本の取材で得た材料を基に、西川監督が書き下ろした短編集『きのうの神さま』(ポブラ文庫)も出版されています。ここでは、映画の登場人物たちの過去が語られています。外科医の父にあこがれ、医学部を目指そうとしたニセ医者の屈折した人生を描いた短編『ディア・ドクター』が出色の出来で、こちらもお薦めです。

1546.

コロナ治療薬「ロナプリーブ」、発症予防と無症状感染者治療に適応拡大申請/中外

 中外製薬は10月11日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬「ロナプリーブ」について、濃厚接触者の発症予防および無症状感染者への治療薬として適応拡大を申請したと発表した。本剤は点滴静注で承認されているが、今回、皮下注射を可能とする用法追加も併せて申請。より汎用性が高まることが期待される。 ロナプリーブは、SARS-CoV-2に対する2種類のウイルス中和抗体(カシリビマブ+イムデビマブ)を組み合わせ、COVID-19に対する治療および予防を目的として、米・リジェネロン社などが開発。軽度~中等度COVID-19外来患者への治療薬として、7月に厚生労働省が特例承認した。 今回の申請は、▽COVID-19 の予防および無症状の感染者を対象とした海外第III相臨床試験(REGN-COV 2069)の成績▽投与量・投与方法の検討を目的とした海外第II相臨床試験(REGN-COV 20145)の成績▽日本人における安全性と忍容性、薬物動態を評価する国内第I相臨床試験(JV43180)の成績に基づくもの。 このうちREGN-COV 2069試験では、COVID-19の家庭内濃厚接触者を対象に予防コホートを実施。ロナプリーブ投与により、試験開始時に感染していなかった人の症候性感染の発症リスクが81%減少することを示した。一方、新規感染が確認された無症候性患者を対象に実施した治療コホートでは、ロナプリーブ投与により、症候性COVID-19に進行するリスクが31%減少することを示した。有害事象は、ロナプリーブ群の20%(265/1,311例)、プラセボ群の29%に発現し、重篤例はロナプリーブ群の1%(10例)、プラセボ群の1%(15例)で認められた。 中外製薬は、迅速な審査を求め、このたびの申請も特例承認の適用を希望している。

1547.

第81回 安上がりなHEPAフィルターが病棟の空気中の新型コロナウイルスを除去

安価で持ち運び自由な空気洗浄機・HEPA(high-efficiency particulate air)フィルターで新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)やその他の病原性微生物を病院の空気中から除去しうることが実際のSARS-CoV-2感染患者病棟での試験で示されました1,2)。HEPAフィルターは目の細かいメッシュに空気を通して微粒子を捕捉します。試験では病棟に設置されたHEPAフィルターのスイッチを入れず稼働させなかった1週目とスイッチを入れて稼働させた2週目以降の空気が調べられました1)。一般病棟でのHEPAフィルターの効果は明確で、その稼働時にはSARS-CoV-2は検出されず、稼働していない時には認められました。一方、集中治療室(ICU)病棟では不思議なことにSARS-CoV-2の検出は稀で、HEPAフィルターが稼働していなくてもそれは同じでした。より進行した段階のCOVID-19患者におけるウイルス複製はよりゆっくりであることがICUの空気中からの検出が稀である理由かもしれません。空気中からSARS-CoV-2を取り除く取り組みはICUより一般病棟でより意味をなすようですが、ICU病棟でHEPAフィルターはまったく役に立たないかといえばそうではなさそうです。SARS-CoV-2以外の黄色ブドウ球菌、大腸菌、化膿連鎖球菌などの病原性微生物がHEPAフィルター非稼働時には一般病棟とICU病棟の両方の空気中から検出され、HEPAフィルターを稼働したところ概ね除去されました。それらの病原体の感染は空気を介しては広まらないというのがこれまでの通説でした1)。しかし今回の試験ではHEPAフィルター非稼働時の空気中に検出可能な量が存在しており、エアロゾルによっても広まりうるのかもしれません。一般病棟やICU病棟に浮遊するSARS-CoV-2を含む病原体の面々を除去しうるHEPAフィルターは安上がりで容易に導入可能なエアロゾル感染予防対策となりうることを今回の結果は示唆しています。参考1)Real-world data show that filters clean COVID-causing virus from air / Nature2)The removal of airborne SARS-CoV-2 and other microbial bioaerosols by air filtration on COVID-19 surge units. medRxiv. September 22, 2021.

1548.

ファイザー製ワクチン、リアルワールドでの効果持続は/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染または新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン効果の減衰が懸念されている。今回、PCR検査が大規模に実施されているカタールにおいて、Weill Cornell Medicine-QatarのHiam Chemaitelly氏らがBNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer/BioNTech製)の効果の持続性について検討した。その結果、感染に対する効果は2回目投与後のピークの後に急速な減衰がみられたが、入院や死亡抑制効果については、2回目投与後6ヵ月間は効果が持続していることが示唆された。NEJM誌オンライン版2021年10月6日号に掲載。 本研究は、ファイザー製ワクチンの初回および2回接種後のSARS-CoV-2感染およびCovid-19関連の入院と死亡に対するリアルワールドでの効果を評価した症例対照研究。2021年1月1日~9月5日にカタール居住者の全国的なデータベース(PCR検査、ワクチン接種、COVID-19関連の入院、流行開始以降の基本的な人口統計の情報などが含まれる)を用いて、症例(PCR陽性者)と対照(PCR陰性者)を性別、年齢層、国籍、PCR検査の理由、PCR検査実施暦週について、1対1でマッチさせた。ファイザー製ワクチンのSARS-CoV-2感染に対する効果と、COVID-19の重症(急性期入院)、重篤(集中治療室入院)、死亡の抑制効果を推定した。なお、カタールでは、2021年9月7日時点で12歳以上の9割以上が1回以上ワクチン接種を受け、8割以上が2回接種を受けていた。 主な結果は以下のとおり。・感染に対する効果は、初回投与後2週間は非常に低かったが、初回投与後3週間で36.8%(95%信頼区間[CI]:33.2〜40.2)に増加し、2回目投与後の最初の月に77.5%(95%CI:76.4〜78.6)とピークに達した。その後は徐々に低下し、4ヵ月後に急減し、2回目投与後5〜7ヵ月は約20%であった。・症候性感染および無症候性感染に対する効果の変化パターンは同様だったが、症候性感染のほうが無症候性感染より一貫して高かった。症候性感染に対する効果のピークは81.5%(95%CI:79.9〜83.0)、無症候性感染に対する効果のピークは73.1%(95%CI:70.3〜75.5)だった。・変異株別、年齢層別にみても、効果の変化パターンは同様だった。・COVID-19の重症、重篤、死亡の抑制効果は、初回投与後2週間は非常に低かったが、初回投与後3週間で66.1%(95%CI:56.8~73.5)に急激に上昇し、2回目投与後2ヵ月後には96%以上に達した。感染に対する効果とは異なり、ほぼ6ヵ月間持続した。

1549.

新型コロナでのECMO治療開始後の死亡率、流行初期より増加/Lancet

 体外式膜型人工肺(ECMO)治療の初期導入施設では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者におけるECMO治療開始後の死亡率が2020年に約15%上昇し、治療期間が約6日延長したことが、米国・ミシガン大学のRyan P. Barbaro氏らExtracorporeal Life Support Organization(ELSO)が世界41ヵ国で実施した調査で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年10月2日号に掲載された。レジストリデータで3群を後ろ向きに比較解析 研究グループは、2020年5月1日以前にECMOによる治療を受けた患者と、これ以降にECMO治療を受けた患者で、ベースラインの患者特性やECMO治療を行った施設の特性、患者アウトカムなどを比較する目的で、ELSOレジストリのデータを後ろ向きに解析した(研究助成は受けていない)。 対象は、年齢16歳以上、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)陽性と診断され、2020年1月1日~12月31日の期間にECMO治療を受けた患者であった。 患者は、ECMO治療を開始した時期と施設で次の3つの群に分けられた。(1)初期導入施設(2020年1月1日~12月31日にECMO導入)で2020年1月1日~5月1日の期間にECMO治療を開始した患者(A1群)、(2)初期導入施設で2020年5月2日~12月31日の期間にECMO治療を開始した患者(A2群)、(3)後期導入施設(2020年5月2日~12月31日にECMO導入)でECMO治療を開始した患者(B群)。 主要アウトカムは、ECMO治療開始から90日後に生存時間(time-to-event)解析で評価した院内死亡率とされた。Cox比例ハザードモデルを用いて、3群間の補正後の相対的死亡リスクを患者および施設レベルで比較した。同じ5月2日以降でも、後期導入施設は死亡リスクが高い 2020年に、日本を含む41ヵ国349施設(初期導入236施設、後期導入113施設)でECMO治療を受けたCOVID-19患者4,812例が解析に含まれた。A1群が1,182例(年齢中央値50歳、男性74%)、A2群が2,824例(51歳、73%)、B群は806例(49歳、74%)であった。 ECMO治療開始後90日時の院内死亡の累積発生率は、A1群の36.9%(95%信頼区間[CI]:34.1~39.7)から、A2群では51.9%(50.0~53.8)へと15%増加した。また、B群の90日累積院内死亡率は58.9%(55.4~62.3)であり、同じ5月2日以降のECMO開始であったA2群よりも約7%高率だった。これらの差は、患者および施設レベルの背景因子で補正後にも認められた。 A1群はA2群に比べ、90日院内死亡の補正後相対リスクが低かった(ハザード比:0.82、95%CI:0.70~0.96)。一方、B群はA2群よりも、90日院内死亡の補正後相対リスクが高かった(1.42、1.17~1.73)。また、ECMO治療開始前の年齢(高齢になるほど高リスク)、がん・心停止の既往歴、および開始時の急性腎障害の存在は、死亡の相対リスクの上昇と関連していた。 A1群はA2群に比べ、自宅退院や急性期リハビリテーション施設への転院(32% vs.22%)および他院への転院(18% vs.11%)の割合が高かった(並べ替え検定のp=0.01)。また、ECMO治療期間中央値は、A1群では14.1日(IQR:7.9~24.1)であったが、A2群では20.0日(9.7~35.1)へと、約6日延長していた(p<0.001)。ECMO治療開始後の入院期間中央値は、A1群の27.1日(15.8~44.2)から、A2群では30.7日(17.6~50.7)へと延長した。 著者は、「COVID-19の世界的大流行の進行中にECMO治療を開始した患者の死亡率は悪化していることから、今後もECMOの転帰の継続的な監視が求められる。ECMOは限られた資源であり、COVID-19患者の25%が5週間以上のECMO治療を受けていることを考慮すると、各施設は資源が限定的な場合のECMOの倫理的な配分に関する自施設の指針の策定を検討する必要がある」と指摘している。

1550.

第73回 薬局で承認済の抗原検査キット販売/オンライン初診は当面継続

<先週の動き>1.薬局で承認済の抗原検査キット販売、厚労省「未承認は使わないで」2.オンライン初診は当面継続、恒久化に医師会は慎重な姿勢/厚労省3.コロナワクチン3回目接種に向けファイザーと追加契約/厚労省4.感染症有事の医療体制強化に向けた法改正を/自民党5..病院建て替えをめぐり日大理事と病院経営者が逮捕/東京地検1.薬局で承認済の抗原検査キット販売、厚労省「未承認は使わないで」9月末、政府が新型コロナウイルス抗原定性検査キットの薬局販売を承認したことを受け、すでに調剤薬局などで販売が始まっている。PCR検査に比べると感度が低いといわれるが、検査は30分程で結果がわかる。対象となる検査キットは、厚労省が承認した「医療用」の中から15種類。政府が11月からの導入を目指す「ワクチン・検査パッケージ」において、ワクチン未接種者の陰性証明に活用することも検討されている。一方、横浜市で未承認の検査キットを用いて陰性が3回出たため、自己判断で受診しないままの30代男性が自宅で死亡しており、警察による検死で死後に陽性が判明したと報道された。未承認の検査キットについては性能等が十分に確認されていないため、厚労省は「消費者が新型コロナウイルス感染症の罹患の有無を調べる目的で使用すべきでない」としている。(参考)新型コロナ 抗原検査キット 薬局で販売始まる(NHK)コロナ検査キット、異例の薬局販売 政府肝いり 無症状でも使える?(朝日新聞)新型コロナウイルス感染症流行下における薬局での医療用抗原検査キットの取扱いについて(令和3年9月27日事務連絡)2.オンライン初診は当面継続、恒久化に医師会は慎重な姿勢/厚労省厚労省は7日に「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」を開催し、特例的に初診からオンライン診療の実施可となっている現状について、当面の間は継続する方針を確認した。閣議決定において、初回からオンライン診療の実施を認める特例措置を恒久化する方針により、厚労省側から「初診からのオンライン診療の取扱いについて」が提示されたが、かかりつけ医による初診を原則とする医師会側は、慎重に議論する姿勢を崩していない。また、オンライン診療で必要な費用負担に関する議論も出ており、今後、運用方法について検討が行われる見込み。(参考)完全初診患者へのオンライン診療、どういった仕組みで安全性など担保し、費用負担はどうすべきか―オンライン診療指針見直し検討会(Gem Med)オンライン初診特例を継続、厚労省 検討会で普及妨げ要因の検証求める声(CBnewsマネジメント)初診からのオンライン診療の取扱いについて(厚労省)第17回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会(同)3.コロナワクチン3回目接種に向けファイザーと追加契約/厚労省後藤 茂之厚生労働相は8日の閣議後の記者会見で、新型コロナウイルスワクチン「コミナティ(ファイザー・ビオンテック)」の追加接種分として、新たに1億2,000万回分を追加契約したことを発表した。2022年1月以降、日本に供給される予定。なお、ファイザーは7日に、新型コロナウイルスワクチンの3回目追加接種(ブースター接種)の臨床試験のデータを厚労省に提出し、承認申請を行なったことを明らかにしている。(参考)来年の新型コロナウイルスワクチンの供給に係るファイザー株式会社との契約締結について(厚労省)ファイザーとBioNTech、COVID-19ワクチン『コミナティ筋注』日本への2022年追加供給に関する最終合意書を締結(ファイザー株式会社)ファイザーのワクチン 来年1億2000万回分供給で追加契約(NHK)ファイザー日本法人、3回目接種へ治験データ提出(日経新聞)4.感染症有事の医療体制強化に向けた法改正を/自民党8日、自民党の総務会が開催され、次期衆議院議員総選挙における自民党の重点政策が了承された。今回、8つの分野が柱で、巻頭の最重要課題は「感染症から命と暮らしを守る」。希望者全員へのワクチン接種を一刻も早く完了させ、有事における病床・医療人材の確保、保健所・検査体制などの対応力の強化などを含み、医療機関などに対して「より強い権限を持てるための法改正を行う」と明記した。このほか、「新しい資本主義」では分厚い中間層の再構築や経済安全保障の強化などが含まれており、自民党はこれを総選挙の公約として国民の支持を求める方向。(参考)次期衆院選における自民党の重点政策が決定(自民党)感染対策で国の権限強化 「早期の改憲実現」…自民公約案(読売新聞)医療体制強化へ法改正 自民、衆院選に向け公約原案(日経新聞)5.病院建て替えをめぐり日大理事と病院経営者が逮捕/東京地検東京地検特捜部は7日、日本大学医学部付属板橋病院の建て替え工事の設計契約をめぐって、日本大学に2億2,000万円の損害を与えたとする背任の容疑で、日本大学理事と大阪の民間病院経営者を逮捕した。その後の取り調べで、設計を請け負う会社に対して上限金額を伝えるなどして水増し請求を行わせ、2億2,000万円の資金流出を計画、その一部は大学理事が着服して病院経営者側に提供などを行ったと見られる。東京地検特捜部は、国内最大規模の大学における資金流出のスキームや理事の関与など詳しい事情を捜査している。大学側は同日、理事が逮捕されたことについて「本学理事の逮捕は、誠に遺憾であります。本件につきましては、本学としても現在進められている東京地方検察庁の捜査に引き続き全面的に協力してまいります」とコメントを発表した。(参考)本学理事の逮捕について(日本大学)日大理事と医療法人前理事長を背任容疑で逮捕 東京地検特捜部(NHK)日大理事らを逮捕 病院建て替えめぐる背任容疑 東京地検特捜部(朝日新聞)

1551.

COVID-19外来患者へのロナプリーブ、第III相試験結果/NEJM

 重症化リスクを有する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の外来患者の治療において、REGEN-COV(モノクローナル抗体カシリビマブとイムデビマブの混合静注薬、商品名:ロナプリーブ)はプラセボと比較して、COVID-19による入院/全死因死亡のリスクを低減するとともに、症状消退までの期間を短縮し、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のウイルス量を迅速に低下させることが、米国・Regeneron PharmaceuticalsのDavid M. Weinreich氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年9月29日号に掲載された。外来患者4,000例の無作為化プラセボ対照第III相試験 本研究は、COVID-19外来患者におけるREGEN-COVの有用性の評価を目的とする適応的デザインを用いた第I~III相の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、今回は、第III相試験の初期結果が報告された(米国・Regeneron Pharmaceuticalsなどの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、SARS-CoV-2陽性と診断され、COVID-19の重症化のリスク因子を1つ以上有する非入院患者であった。被験者は、いくつかの用量のREGEN-COVまたはプラセボを単回静脈内投与する群に無作為に割り付けられ、29日間のフォローアップが行われた。 事前に規定された階層的解析法を用いて、エンドポイントであるCOVID-19による入院または全死因死亡、症状消退までの期間、安全性の評価が行われた。 解析には、2020年9月24日~2021年1月17日の期間に米国とメキシコの施設で登録された4,057例(修正最大解析対象集団[mFAS])が含まれた。全体の年齢中央値は50歳(IQR:38~59)、14%が65歳以上で、49%が男性、35%がヒスパニック系であり、最も頻度の高い重症化のリスク因子は肥満(BMI≧30、58%)、年齢50歳以上(52%)、心血管疾患(36%)であった。重篤な有害事象の発現はプラセボより少ない 投与後29日の時点でのCOVID-19による入院または全死因死亡は、REGEN-COV 2,400mg(カシリビマブ1,200mg+イムデビマブ1,200mg)群では1,355例中18例(1.3%)で発生し、プラセボ群の1,341例中62例(4.6%)に比べ有意に低かった(相対リスク減少率[1から相対リスクを引いた値]:71.3%、p<0.001)。 また、REGEN-COV 1,200mg(同600mg+600mg)群では736例中7例(1.0%)でCOVID-19による入院または全死因死亡が発生し、プラセボ群の748例中24例(3.2%)に比し有意に良好だった(相対リスク減少率:70.4%、p=0.002)。 同様に、ベースラインの血清SARS-CoV-2抗体陽性例を含む全サブグループで、REGEN-COV群はプラセボ群に比べ、COVID-19による入院または全死因死亡の低下が認められた。 一方、症状消退までの期間中央値は、REGEN-COV群の2つの用量(1,200mg、2,400mg)ともプラセボ群よりも短縮され、4日早く消退した(2つの用量群とも10日vs.プラセボ群14日、いずれもp<0.001)。 また、ウイルス量は、2つの用量のREGEN-COV群とも、プラセボ群に比べ迅速に減少した。すなわち、ウイルス量のベースラインから7日までの最小二乗平均値のプラセボ群との差は、1,200mg群が-0.71 log10コピー/mL(95%信頼区間[CI]:-0.90~-0.53)、2,400mg群は-0.86 log10コピー/mL(-1.00~-0.72)であった。 重篤な有害事象の頻度は、プラセボ群が4.0%と、REGEN-COV 1,200mg群の1.1%、2,400mg群の1.3%に比べて高かった(Grade2以上の注入に伴う反応の発生率は3群とも0.3%未満)。死亡の原因となった有害事象の頻度は、プラセボ群が0.3%であり、1,200mg群の0.1%、2,400mg群の<0.1%に比し高率だった。REGEN-COV群の2つ用量の安全性プロファイルはほぼ同様で、安全性のイベントに目立った不均衡はなかった。 REGEN-COVの2,400mg投与は、2020年11月、軽症~中等症の高リスクCOVID-19外来患者の治療において、米国食品医薬品局の緊急使用許可(EUA)を取得しており、本試験で1,200mgでも2,400mgと同程度の入院/死亡リスクの低減とウイルス学的有効性が示されたことから、2021年6月、2,400mgに代わり1,200mgでEUAを受けた。また、REGEN-COVは、高リスクCOVID-19外来患者の治療法として、米国国立衛生研究所(NIH)の診療ガイドラインにも含まれている。 著者は、「軽症例などではさまざまな程度で回復までの期間が長引くとのエビデンスが増えているため、今回のREGEN-COVはCOVID-19からの回復を早めるとの知見は、患者にとって新たな利点になると考えられる」としている。

1552.

第78回 与野党の政策を党別分析、ツッコミどころ満載なその政策とは?(前編)

10月4日、岸田 文雄自民党総裁が第100代内閣総理大臣に選出され、岸田内閣がスタートした。そしてこの日の夜、首相としての初の記者会見では、衆議院を14日に解散し19日公示、31日投開票の日程で衆議院選挙を行うと方針を明らかにした。見た目は温和な岸田首相の電光石火な行動ぶりにはさすがに驚いた。首相就任から最初の解散までの期間は戦後最短である。新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の流行が沈静化している中で、いわゆる新内閣発足のご祝儀相場と呼ばれる高めの支持率や野党側の候補者調整のもたつきを踏まえた判断とみられる。もっとも報道各社が行った世論調査での岸田内閣の支持率は高いものでも60%に達しない。その意味では電撃解散決定が支持率の足かせになったかもしれない。さてということで、国政最大の山場である衆議院選が間近となった。自民党の衆議院選に向けた政策はまさに前回紹介した岸田首相の政策がかなり反映されるとみられるが、それ以外の各党はどんな政策を掲げるのか? 政治話続きで申し訳ないが、この際各党が今回の選挙で掲げている社会保障・医療関連分野の政策・公約について「私見」を交えて見ていきたい。まずは与党の公明党はっきりいって私個人は国内の全政党の中でこの政党ほどある部分では政策が明確で、一方である部分は不明確な政党もないと思っている。「何言っているんだ?」と思われるかもしれない。端的に言うと、この政党の柱となる政策は従来から「お金を配る」か「無償化」の2つしかない。それ以外は言っちゃ悪いが、多少の流行に合わせて言葉を並べただけである。それでは見ていこう。まず「2021年衆院選・重点政策 『日本再生へ新たな挑戦』 I.子育て・教育を国家戦略に」。ここでは子供の成長に合わせて『結婚』『妊娠』『出産』『幼児教育・保育』『小中学校』『高校等』『大学等』のステージを設定し、各時期の政策が列記してある。少子化対策の一つとも言える「妊娠」「出産」関連では、「不妊治療の保険適用」とあるが、これは菅内閣で道筋が付きつつあり目新しさはない。さらに「不妊治療と仕事の両立支援」「カウンセリング体制の充実」とあるが、具体策の記述はない。また、「出産」に関しては、「出産育児一時金(現行42万円)の50万円への増額をめざす」とあり、十八番のお金配りが登場する。この件、現在では広く知られているように、一時金が上昇するたびに都市部の民間病院ではベーシックな出産費用も上昇するイタチごっこになり、出産予定者への支援として実効性が疑問視されている。「0~2歳児の産後ケアや家事・育児サービスを拡充」との記述もあるが、これは前述の「妊娠」項目での後者2つの政策同様、聞こえの良いメッセージを並べた程度にしか解釈できない。極めつけは「高校3年生まで無償化をめざし子どもの医療費助成を拡大」。過去の老人医療費無償化や現在各自治体で行われている小児医療費無償化を見ても、安易な受診というモラルハザードを招く側面が多いことが知られている。財源云々を抜きにして、手垢がつき過ぎたポピュリズム政策で、あまり感心できない。なお、最近よく報じられる健康状態が悪い家族のケアに時間を取られる子供、いわゆる「ヤングケアラー」問題については「ヤングケアラー等の家事・育児支援」を掲げている。流行りに乗ったとも言えるかもしれないが、むしろ単純なお金配りよりも、こうした点でより具体的な提案をしたほうが良いと思うのだが。一方、新型コロナ対策についても「2021年衆院選・重点政策 『日本再生へ新たな挑戦』 III.感染症に強い日本へ」で言及している。ここでの訴えを要約すると、▽国産ワクチン・治療薬の開発支援とその確保の強化▽非常時の病床確保▽PCR検査などの検査能力拡大となる。ちなみにこの中で「ワクチンの3回目ブースター接種の無料化」との記述もあるが、行政が重視する施策の連続性などを考慮すれば無料化は既定路線であって、わざわざ政策として記述する必要を感じない。言ってしまえば、十八番の無償化路線に沿って並べたに過ぎないとしか思えない。また、これは公明党に限らず各党が言いがちな国産ワクチン・治療薬の実現だが、言うほど簡単なことではなく、むしろ創薬を甘く見過ぎである。具体例として現在、経口治療薬で先行するメルクで解説しよう。メルクは今回の新型コロナパンデミック当初にワクチン、治療薬開発のために買収と業務提携を各1件、治療薬での業務提携1件を行っている。後者の成果として注目されているのが上市間近と言われる、経口薬のmolnupiravirである。これらの提携や買収の費用はすべて公表されているわけではないが、買収では日本円で400億円程度を要している。そのためこれらの提携に支払った総額は1,000億円程度と推定されている。しかし、このうち買収先でのワクチン開発はすでに中止を決定している。言ってしまえば1,000億円の身銭を切って、400億円はドブに捨てたようなもの。つまりそれだけ大胆なアライアンスを実行しなければならない。日本の製薬企業にこれだけの余裕があるはずもなく、国の支援だけでどうにかなる話ではない。危機に際してだけ数億円程度をつぎ込んでもなんともならないことを日本の政治家は知るべきである。一方、病床確保や検査関連では「後遺症の予防策や治療方法の開発促進のために、実態把握と原因究明の調査・研究に取り組む。また、地域で後遺症の相談ができる体制を整備」という点がほかの政党の公約にはない政策である。もっとも前述したように「お金配り」と「無償化」以外はほぼ実績のない政党であるため、どれだけ本気で取り組むかは未知数である。次いで最大野党の立憲民主党同党の前身である民主党は無償化政策など、やはり耳に聞こえの良い政策を盛り込んだ「マニフェスト」と呼ばれる政策集を掲げて2009年に政権を獲得したものの、それら政策の財政的裏付けが脆弱だったことが白日の下にさらされ、政権から滑り落ちたのは周知のこと。もっとも従来から前身の民主党、その後の立憲民主党は野党第一党ということもあってか、公明党よりは政策の記述内容は充実していることが多い。同党は「#政権取ってこれをやる」とのハッシュタグで9月7日以降、10月5日現在Vol.8まで政策を発表している。そのVol.1「政権発足後、初閣議で直ちに決定する事項」では、官邸に総理直轄で官房長官をトップとする新型コロナウイルス感染症対策の新たな指令塔「新型コロナウイルス対応調整室(仮称)」を設け、その下で権利と役割を整理するとともに、専門家チームを見直して強化するとしている。これについては記者会見で同党の枝野 幸男代表が次のような趣旨の説明をしている。「私自身の経験(東日本大震災時の官房長官)では、危機管理は日常業務を担っている各省庁がフル回転しないと担えない。医療に関連しては厚生労働省がフル回転をするわけで、その外側に大臣をつくっても結局屋上屋を重ねることに過ぎないことは、この1年間ワクチン対策などで明確にも結果が出ていると思っている。危機管理は省庁をまたがり、具体的実務は各地方自治体にお願いをしていることが多く、(新型コロナ対策では)厚生労働省と総務省との間で明確な調整が必要になる。この調整役割があるのは内閣官房であり、各省庁横並びではなく、調整機能を官邸に置くことが一番効果的であり効率的である」一見して筋は通っている。もっとも各省庁のセクショナリズムを過度に排しようとして、なんでも政治が主導を握ろうとし、事実上省庁を機能不全にしたのは旧民主党政権の「罪」の一つ。過去その渦中にいた枝野代表が「教訓」をベースに、どこまで踏み込めるかは興味のあるところだが。また、Vol.8「子ども・子育て政策への予算配分を強化」では、公明党と似たような「出産育児一時金を引き上げ、出産に関する費用を無償化」を掲げている。出産育児一時金増額の弊害は前述したとおり。「出産に関する費用の無償化」は妊婦検診部分のことだろうが、そもそも出産は医療行為が必要にもかかわらず「疾患ではないから公的医療保険の対象外」という従来の硬直した考え方こそ見直しが必要だと個人的には考えている。そうでなければ前述の一時金を巡るイタチごっこは永遠に解消されないだろう。この点、与野党通じて建設的な議論がないのが不思議なくらいである。現時点で衆院選公約として立憲民主党が公表しているのはこれくらいだが、同党が公表している最新の基本政策の社会保障関連を見ると、「介護職員の待遇改善」や「介護離職ゼロ」など介護関連の訴えが目立つ。待遇改善は岸田新首相が訴える「『成長』と『分配』の好循環」でも掲げられていること。これまたすべての政党に共通したことだが、介護については介護保険創設から20年が経過した中で、この間の人口構成の変化や新たな地域包括ケアの提唱などを踏まえた抜本的な見直しの検討について政治の側からの声が少ないのが気になるところだ。旧・民主党からのもう一方の枝分かれ政党国民民主党は「政策5本柱」を公表している。この中を見ると、コロナ禍収束まで「個人、事業者の社会保険料の猶予・減免措置を延長・拡充」や「中小企業の新規正規雇用の増加にかかる社会保険料事業主負担の半分相当の助成による正規雇用を促進」を提案している。ではその分の財政補填はどうなるのか? 明確な記述はないが、財政面で積極的な国債活用をさりげなく訴えていることからすると、国債発行で切り抜ける意向が透けて見える。こうした政策を実行した際の中長期的コストパフォーマンス推計でも示してくれれば、もう少し評価できるのだが。新型コロナ対策では「政策各論 4. 国民と国土を『危機から守る』」でさらりと触れているが、同党の政策パンフレットで「コロナ三策」としてより詳しい記述がある。このうち具体的に医療にかかわるのは「第一策 検査の拡充」と「第二策 感染拡大の防止」である。第一策では(1)「無料自宅検査」によるセルフケアで家庭内感染を抑制、(2)陰性証明を持ち歩ける 「デジタル健康証明書(仮称)」の活用、(3)国による検査精度管理で陰性に「お墨付き」、の3つを掲げている。(1)はたぶん迅速抗原検査を意味していると思われるが、家庭内から感染者が発生した時のことなのか、平時のことなのか不明である。後者ならばはっきり言って財源をどこから確保するかだけでなく、それをどの頻度で行うのかも問題である。そもそも感染の事前確率がまちまちな国民に一斉定期検査を行うなど不効率極まりない。この時期にまだこんなことを言っているのかとやや呆れてしまう。(3)は精度100%の検査がない以上、お墨付きを与えるのは科学的に間違いであり、もはや滑稽な提案と言わざるを得ない。第二策は10項目あるが、各方面でほぼ言い尽くされてきたことで目新しさはなく、どちらかというと「掛け声」程度のものが多い。その中で(3)の「国立病院・JCHOの患者受入れ拡大と民間病院の受入指示法制化」については、労災病院や日赤病院を入れずに、わざわざ「JCHO(独立行政法人地域医療機能推進機)」を入れたあたりにやや恣意的というか当てこすりを感じてしまう。ご存じのようにJCHOの理事長は、政府新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身 茂会長である。また昨今、JCHOについてはコロナ対応病床を設置して補助金を獲得しながら、患者受け入れが不十分との指摘が一部メディアで報じられている。そんなこんなを受けて、わざわざJCHOに言及したのではないかとの見方は穿ち過ぎだろうか?一方、(7)の「ワクチンを地域・年代に着目して 戦略的に重点配分」は一考の余地ありと考える。これまでの流行を見ても、概ね東京都をはじめとする首都圏や地域ブロックの首都的な位置づけの大都市圏で感染者が増加し、その周辺に波及するという経過をたどる。その意味ではワクチン接種で大都市部を優先したほうが感染制御には効率的だと考えられる。国がそうしないのは「地方軽視」との批判を回避したいからだろう。その意味では、これまでは多数の接種希望者を集められそうな「職域接種」が大都市部へのワクチン供給を厚くする調整弁になっていたとも言える。ただ、今後の3回目接種や将来的な新興感染症対策も見据えたうえで、地域的な優先順位は真剣に議論して良いと思う。取り敢えずかなり長くなってしまったので、今回はここまでにしてほかの政党の政策については次回に譲りたい。

1553.

COVID-19に有効な治療は?抗体薬4剤を含むメタ解析/BMJ

 非重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、カシリビマブ/イムデビマブはほぼ確実に入院を減少させ、bamlanivimab/etesevimab、bamlanivimab、ソトロビマブは入院を減少させる可能性があるが、回復期血漿、IVIg、他の抗体および細胞治療は、いかなる意味のあるベネフィットをも与えない可能性がある。カナダ・マックマスター大学のReed Ac Siemieniuk氏らが、COVID-19の試験に関するデータベースを基にリビング・システマティック・レビューとネットワークメタ解析を行い明らかにした。BMJ誌2021年9月23日号掲載の報告。2021年7月21日時点でRCTを対象にネットワークメタ解析 研究グループは、2021年7月21日時点のWHOのCOVID-19データベースと中国のデータベース6件を用い、COVID-19の疑いや可能性が高い患者または確定診断を受けた患者を対象に、抗ウイルス抗体治療、血液製剤、標準治療またはプラセボを比較した無作為化臨床試験を抽出した。 2人のレビュアーが独立して試験の適格性を判断し、重複データを削除後、ベイズ変量効果モデルを用いたネットワークメタ解析を行った。改訂版コクランバイアスリスクツールv.2.0を用いて各試験のバイアスリスクを評価し、GRADEシステムを用いてエビデンスの確実性(質)を評価した。なお、メタ解析は、無作為化された患者数が100例以上、または治療群当たりのイベント数が20以上の介入を対象とした。カシリビマブ/イムデビマブ、非重症COVID-19患者の入院リスクを低下 2021年7月21日時点で、抗ウイルス抗体治療または細胞治療を評価した無作為化試験47件が特定された。内訳は、回復期血漿21件、免疫グロブリン(IVIg)5件、臍帯間葉系幹細胞治療5件、bamlanivimab 4件、カシリビマブ/イムデビマブ4件、bamlanivimab-etesevimab 2件、control plasma 2件、末梢血非造血濃縮幹細胞治療2件、ソトロビマブ1件、抗SARS-CoV-2 IVIg 1件、血漿交換療法1件、XAV-19ポリクローナル抗体1件、CT-P59モノクローナル抗体1件、INM005ポリクローナル抗体1件。 抗ウイルス抗体治療に割り付けられた非重症患者は、プラセボ群と比較して入院リスクが低下した。オッズ比(OR)ならびにリスク差(RD)は、カシリビマブ/イムデビマブが0.29(95%信頼区間[CI]:0.17~0.47)および-4.2%(エビデンスの質:中)、bamlanivimabが0.24(0.06~0.86)および-4.1%(エビデンスの質:低)、bamlanivimab/etesevimabが0.31(0.11~0.81)および-3.8%(エビデンスの質:低)、ソトロビマブが0.17(0.04~0.57)および-4.8%(エビデンスの質:低)であった。 他のアウトカムに関しては重要な影響はなかった。また、モノクローナル抗体薬の間に顕著な差は確認されなかった。他の介入は、非重症のCOVID-19患者においてすべてのアウトカムについて意味のある影響が認められなかった。 抗ウイルス抗体薬を含め、重症または重篤なCOVID-19患者の転帰に重要な影響を及ぼす介入はなかったが、カシリビマブ/イムデビマブは血清陰性患者の死亡率を低下させる可能性が示唆された。

1554.

第78回 第6波前に、都は「重症度と病床のミスマッチ」の反省生かした体制再構築を

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病床が逼迫する中、東京都が都下すべての医療機関に感染症法に基づく病床確保を求めたところ、目標の7,000床に届かなかったが、そもそも4割は実際に使われていなかったことも報道で指摘された。これに対し、都の入院調整に当たった山口 芳裕氏(杏林大学教授)はテレビ番組で「入院が必要な患者の症状と、用意された病床にミスマッチがあった」と指摘。「6,000床であっても、軽症しか入れない病床や看護師の手立てができない病床では意味がない。一方、4,000床しかなかったとしても、酸素の提供が可能な病床が必要時に使えたならば、第5波で病床不足が起きなかったかもしれない」と述べた。今後、第6波の可能性もある中、この反省が生かされないままでは、再び病床逼迫を招きかねない。圧倒的に不足していたのは、酸素投与が必要な中等症IIおよび重症患者を受け入れる病床で、軽症患者に対する病床は余っていたという。そのため、症状が悪化して酸素投与が必要な患者でも入院できない事態に陥った。東京都では一時(8月16〜22日)、救急要請したコロナ患者の6割が病院に搬送されなかった。このところ、新規感染者数は目に見えて減少している。とはいえ、医療現場では依然として自宅療養者への対応に追われている。第5波の東京都では、病院で適切な医療を受けられないまま自宅などで亡くなった感染者は8月だけで112人に上った(警察庁調べ)。酸素ステーションの実効性に疑問東京都は、8月に酸素ステーション(都民の城)の運用を開始。しかし蓋を開けてみれば、利用率は8月の第5波ピーク時でも3割程度だった。新規感染者が減少している中、最近では受け入れがゼロの日もあるという。この酸素ステーションで受け入れるのは、軽症~中等症Iの患者で、中等症II以上は受け入れていない。さまざまな施設の協力を得て医療者をかき集めた、あくまで一時しのぎであるため、中等症II以上への対応が難しいと見られる。ここにも「ミスマッチ」が起きている。都は第6波に備え、こうした酸素ステーションを都内各所に開設、「酸素・医療提供ステーション」に改称した。軽症者らを対象に抗体カクテル療法などの治療を行うためだが、先の山口氏は「入院が必要なのに、自宅にいて医療に十分アクセスできていない人にこそ手を差し伸べるべきだった」と振り返る。また、「限界まで患者を受け入れている病院と、余力のある病院の差が大きい」とも指摘した。公的病院のコロナ患者受け入れ姿勢に批判の声これに関連して、医療人の間から、公的病院のコロナ患者受け入れ対応に不満の声が聞こえる。都内には、国立病院(独立行政法人を含む)が4病院、地域医療機能推進機構(JCHO)が運営する5病院、労働者健康安全機構が運営する東京労災病院があり、総病床数は約4,400病床に上る。これらの組織は、公衆衛生危機に対応することが設置根拠法で義務付けられており、さまざまな優遇措置を受けている。しかし、政府の新型コロナ対策分科会会長を務める尾身 茂氏が理事長を務めるJCHOでは、新規感染者数のピーク時に近い8月6日時点で、総病床数が約1,530床であるのに対し、コロナ専用病床は158床(10.3%)で、受け入れ人数は111人だった。これは、コロナ病床の70%、総病床数の4.5%に過ぎない。仮に、JCHOの全病床数から2割程度(306床相当)をコロナ専用に転換すれば、都が新たに設置する「酸素・医療提供ステーション」246床は必要なくなる計算だ。もちろん、ほかの病院への一般患者の転院はそう簡単ではないかもしれないが、現状では公的病院のコロナ対応への必死さが今一つ感じられないのが率直なところである。新規感染者数が減少している今こそ、見直すべきは見直し、仮に第6波が到来しても受け止められる強固な医療体制を再構築するチャンスなのではないかと思う。

1555.

高齢者がCOVID-19に感染する場所と感染対策/感染研

 国立感染症研究所実地疫学研究センターは、9月29日に同研究所のウェブサイト上で「高齢者の会合等、人が集う場面での新型コロナウイルス感染症に関する感染事例の所見と公民館や体育館等を利用する際の感染対策についての提案」を発表した。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第5波はピークアウトし、全国的に緊急事態宣言も解除され、今後秋祭りなどの行事がCOVID-19に警戒しながら行われていくことが予想されている。「とくに多くの高齢者は、新型コロナワクチンの接種も進んでいるが、高齢者が集った場合に発生したCOVID-19のクラスター事例を再度振り返り、これまでに得られた知見や必要な対策について考えてみたい」と同研究所は提案の目的を示している。<これまでに得られた主な所見>・高齢者が日常生活で集合して楽しむ場での感染としては、昼カラオケ、フィットネスクラブ、サークル・クラブ活動など、が知られていた。・主に高齢者を対象とした催事場(ショッピングモールでの対面販売など)での数週間程度の比較的長期間のイベントにおいて、アルファ株流行下より、複数のクラスター事例の発生を認めた。・イベントでは、物品の無料体験会、説明会などの場面で、地域の高齢者が連日、時に繰り返し訪れている様子が観察された。・上記のようなイベントでは、地域の高齢者が集まり、参加者(利用者)同士での談笑、飲食を通した憩いの場になっていた。そのプラス面を考慮する必要がある一方で、調査により、感染した高齢者が、他の感染機会を認めなかった場合も多く、対策上の重要性が認められた・利用者のマスクについては、一般に着用が推奨されていたが、とくに飲食時やそれ以外のマスク着用の状況は詳細な情報が得られていない。・説明会などにおける講師や他の大会関係者のマスク着用に関する情報は乏しかった。・とくに扱う対象が食品の場合、試飲や試食などマスクを外す機会があった。・一部密な状態(狭い空間に多数の者がいた状態)があったことが観察され、換気についても不十分であった可能性が見受けられた(CO2センサーなどでの測定情報無し)。・感染者の店舗利用日が共通していない事例があり、利用者間ではなく、感染した従業員が感染伝播に寄与した事例があった可能性が考えられた。<これまでの所見に基づく主な提案:公民館ガイドラインを踏まえて> 高齢者を含む地域住民が集う場としての公民館における新型コロナウイルスへの対応に関しては、公益社団法人全国公民館連合会により作成された、「公民館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」(2020年10月2日)が同会ホームページ上で公開されている。本ガイドラインは、「感染防止のための基本的な考え方」の中で、いわゆる3つの密(密閉、密集、密接)を徹底して避けることの重要性について触れ、リスク評価の項では、接触感染・飛まつ感染それぞれの対策、集客施設としてのリスク評価、地域における感染状況のリスク評価の重要性について言及している。具体的には、イベント・講座などの実施で講じるべき具体的対策、公民館における公演などの開催に際して、公演主催者が講じるべき具体的対策(対人距離を最低1m(出来れば2m)確保する、入館時に検温する、直接手で触れることができる展示物などは展示しない、トイレの管理などの注意点が分かりやすく列挙されている。 以上を踏まえ、同研究所は、「利用者自身が注意すべき事項」「従業員の感染予防が重要であることに関する注意事項」「施設の換気に関する注意点」の3つに大別して注意事項を説明している。◯利用者に対して・屋内で複数の者が集まる機会では密集・密接になる場面を避けることを徹底する。具体的には、良好な換気への対策が十分に行われているイベントに参加することを心がける。マスク着用は必須である。イベント終了後の談笑や長時間の利用を避けることが必要。また、対人距離は最低1m(できるだけ2m)を確保する。座席の配置についても同様。高齢者では耳が聞こえにくい、見にくいなどで距離を保てない状況からどうしても近い距離の接触となりがちではあるが、適切なマスク着用をさらに徹底し、参加は短時間に留めるなどの工夫を行う。・試飲や試食を伴う屋内のイベントへは、できる限り参加を控える。参加する場合、マスクを外す時間を短時間に留め、その間は会話しない。適切なアルコール消毒剤を用いた手指衛生を適切に行う。◯運営者(開催されているイベントがある場合の主催者を含む)・従業員に対して・従業員は施設内感染拡大の要因となり得ることから感染予防ができるように指導を徹底する。・具体的には従来通りの基本として、適切なマスク着用、手指衛生、換気を徹底する。・説明会や講演会の開催にあたっては、運営者・主催者は、屋内で、長時間に渡り、参加者が集まってしまうことを避け、屋外での開催やオンラインを組み入れたイベントとなるように工夫する。換気が十分に実施できる環境の整備を行う。◯換気を十分に実施する具体的方法(林 基哉氏[北海道大学]による補足)・機械換気設備がある場合には、施設使用時には常時運転する。・寒さや暑さに配慮しながら、窓とドアをなるべく常時開放して、部屋の空気がこもらないようにする(暖冷房の利用や着衣に配慮しながら、より換気を確保する)。・扇風機、サーキュレーターなどで、屋内の空気を動かして空気の淀みを少なくする。・とくに換気が十分ではない場合、滞在時間を最小限にすることが望ましい。・二酸化炭素濃度の測定機器(CO2センサー)を利用して、換気の確認を行うことができる。杜撰な感染対策下では再度感染する恐れも 本提案では、最後に2021年9月末現在、新型コロナワクチンの接種が進む中での医療機関や高齢者施設における、いわゆる「ブレークスルー感染事例」やワクチンの有効性について触れ、「『適切なマスクの着用をしない、手指衛生を怠る、換気をきちんと行わない』などの杜撰な感染対策下においては、デルタ株はたやすく人々に感染し、大きな脅威をもたらす」と警鐘を鳴らすとともに、「高齢者を中心とする年齢層の方が集う場をどのように安全に運営するか、は運営者のみならず、利用者である市民も一体となって取り組むべき課題」と問題を提起している。 また、「屋外においても3つのうち1つの密でも発生すると、感染リスクが増大することが観察されている。付設する広場などにおいても、常に警戒を怠らず、十分な間隔をおきながら交流を楽しむことが求められる」とさらなる注意を促している。

1556.

AZ製ワクチン第III相試験主要解析結果/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンAZD1222(ChAdOx1 nCoV-19、AstraZeneca製)は、高齢者を含む多様な集団においてCOVID-19の発症・重症化を安全・有効に予防することが示された。米国・ロチェスター大学のAnn R. Falsey氏らが、米国、チリ、ペルーにおいて現在進行中の、高齢者を含む3万例超を対象とした第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験「AZD1222試験」の結果を報告した。同3ヵ国では、AZD1222の安全性および有効性が明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2021年9月29日号掲載の報告。米国、チリ、ペルーで3万2,451例を対象に試験 試験は、米国、チリ、ペルーで高齢者を含む成人集団を対象に、AZD1222の2回投与の安全性、有効性、免疫原性をプラセボと比較し、AZD1222の2回目投与後15日以降のCOVID-19発症および重症化の予防効果を調べた。 研究グループは被験者3万2,451例を2対1の2群に分け、一方にはAZD1222を(2万1,635例)、もう一方にはプラセボを(1万816例)投与した。完全接種者約1万8,000人中重症者はなし AZD1222群は重篤・医師の診察を要する有害事象や、特定の有害事象の発生率は低く、安全であることが確認された。事象はプラセボ群で観察されたものと類似しており、非自発的な局所および全身性反応は、両群において概して軽度または中等度だった。 ワクチンの推定有効率は、全体で74.0%(95%信頼区間[CI]:65.3~80.5、p<0.001)、65歳以上では83.5%(54.2~94.1)だった。ワクチンの高い有効性は、年齢や職業などの人口統計学的サブグループにおいても一貫して認められた。 完全接種者(AZD1222またはプラセボ2回接種後15日以降)を対象に行ったサブグループ解析では、重症または命に関わるCOVID-19の発症例は、AZD1222群1万7,662例では認められなかった。一方、プラセボ群8,550例では8例(<0.1%)報告された。 SARS-CoV-2感染予防(ヌクレオカプシド抗体セロコンバージョン)の推定有効率は64.3%(95%CI:56.1~71.0、p<0.001)だった。SARS-CoV-2スパイクタンパク質結合と中和抗体は初回投与後に増加し、2回目投与後28日の測定ではさらに増加が認められた。

1557.

Data Driven Scienceの時代(解説:後藤信哉氏)

 医学の世界では、ランダム化比較試験による仮説検証はエビデンスレベルが高いとされた。世界からランダムに対象症例が抽出され、バイアスなく無作為に各治療に割り付けることができれば、仮説検証ランダム化比較試験の結果には科学的価値が高いといえる。しかし、現実的には世界の症例の一部がランダム化比較試験の対象例として選択され、世界から完全に無作為に抽出されているとは言い難い。 電子カルテの使用が一般的になり、医療データのデジタル化は進んでいる。クラウド上にて電子カルテの情報を共有できれば、現在のランダム化比較試験のように特定の症例を抽出するプロセスを排除できる。世界のすべての症例のデータが利用可能な世界では、真の意味でのdata driven scienceの世界ができると思う。英国は医療データベース化の進んだ国の一つである。本研究を見ると、database化が進んだ世界では、大規模データを用いて臨床的仮説を精度高く提案できることがわかる。 COVID-19の最初のワクチン接種を受けた2,912万1,633例(1,960万8,008例がいわゆるアストラゼネカのウイルスベクターワクチンで951万3,625例がいわゆるファイザーのmRNAワクチン)と、175万8,095のCOVID-19陽性症例が対象である。これらの症例の、ワクチン接種・COVID-19陽性以外の時期のイベントを対照としている。すなわち、本研究は大規模の自らを対象としたcase control studyである。さて、case control studyのエビデンスレベルはランダム化比較試験より一般に低いとされる。しかし、ランダム化比較試験では2万例、3万例などの症例の抽出にはバイアスがある。英国のデータベースのサイズは1,000倍あり、サンプリングにバイアスがない。大規模臨床データが利用できる時代になっても、ランダム化比較試験の価値は下がらないだろうか? ワクチンの副反応の議論はあり、実際英国のデータでも、ウイルスベクターワクチンでは血小板減少症のリスクは1.33(95%CI:1.19~1.47)倍に増えていた。しかし、COVID-19陽性の症例の血小板減少症のリスクは5.27(95%CI:4.34~6.40)であった。ワクチンの副反応は心配かもしれないが、疾病を発症した場合のほうがよほど怖い。ウイルスベクターワクチンでは静脈血栓症も1.10(95%CI:1.02~1.18)で、心配かもしれないがCOVID-19陽性者では13.86(95%CI:12.76~15.05)倍である。 ランダム化比較試験ではバイアスを排除して仮説の検証ができる。しかし、症例の登録には費用がかかり、バイアスも大きい。電子カルテの情報をクラウドに蓄積して、全症例における観察結果を数字として共有する世界の魅力が筆者には大きく思える。クラウド共有可能かつセキュリティの担保された電子カルテのプラットフォームを開発すれば、本当の意味でのdatabase drivenの医療ができる。Google、Appleなどと競合して日本企業に頑張ってほしいところである。

1558.

第78回 新百合ヶ丘総合病院の訴えで浮き彫り、地域医療構想調整会議の壁と限界

「第6波は必ず来る」と全国知事会こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。自民党の総裁選、白鵬引退、小室 圭さん帰国、緊急事態宣言の解除、日ハム・斎藤 佑樹投手の引退、大谷 翔平選手の本塁打王逃し、新しい総理大臣の就任…と、この1週間は各方面実にいろいろなことがありました。斎藤投手は早稲田実業高校時代の西東京大会から観ていたので、現役引退はなかなか感慨深いものがあります。NPBの記録を見てみると、11年間のプロ生活でなんと15勝しかしておらず、防御率は4.34。それでもその引退が白鵬並に大きく報じられるのは、やはり“持っている”からなのでしょうか。日ハムファンの私の娘は、「引退後は本社でシャウエッセンの営業かな」と言っていましたが、どうなることか。挫折を経験しているので指導者に向いているという声もあるようです。“持っている”男の今後がとても気になります。さて、政府が19都道府県に出していた緊急事態宣言と8県に適用していたまん延防止等重点措置が9月30日にやっと解除となったことは、個人的には歓迎すべきニュースでした。10月1日から都内の飲食店で夜8時まで、酒類の提供が可能となったからです。その1日金曜日、台風の強風が吹く中、とある焼鳥屋に友人と出かけました。17時に入店したのですが、お店は既にほぼ満員。皆、仕事を休んで来たのか、常連さんたちが既にいい感じで酔っ払っていました。飲み屋の賑わい自体が懐かしかったのですが、こんな具合で皆が飲み始めると、11月頃に第6波が来るのは必至でしょう。厚生労働省は1日、第6波に備え、医療提供体制を整備するよう都道府県に通知を出しました。10月中を目処に整備方針を作り、11月末までの体制づくりを求めるとのことです。一方、全国知事会は翌2日、第6波が必ず到来するとしたうえで、第5波の経過検証や感染拡大防止策の充実を政府に求める緊急提言をまとめています。第6波が来たとしても、国も都道府県も今度はバタバタしないよう、しっかりと準備を進めておいてほしいものです。今回は少し前の9月10日、政府の規制改革推進会議「医療・介護ワーキング・グループ(WG)」で突然議題に取り上げられた「地域医療構想調整会議のガバナンス向上」について書いてみたいと思います。「地域医療構想調整会議の透明性の向上を徹底せよ」とWG委員「ガバナンス」と聞いてもピンとこないでしょうが、要は、医師会中心にクローズドで行われている各地の地域医療構想調整会議について、議事の公開など、透明性の向上を徹底していくことが必要ではないか、という趣旨の問題提起がWG委員からなされたのです。この日、WGのオンライン会議のヒアリングには、神奈川県川崎市麻生区にある新百合ヶ丘総合病院の笹沼 仁一院長氏が招かれていました。同病院は3次救急指定に向け、 2016年から県と打ち合わせを開始し、20年度から計3回の調整会議で議論したもののコンセンサスが得られていない、というのです。 さらに3回の調整会議のうち2回は非公開だったそうです。新百合ヶ丘総合病院の訴えに対し、厚生労働省の担当者は、3次救急として認めるか否かはあくまで県の判断であること、指定の可否について調整会議の議論を国が求めているわけではないことなどを説明しましたが、委員の1人からは「地域医療の将来像について議論をするのは大事だが、他の病院からの反対で、指定が円滑に進まない状況を踏まえると、議事の公開など、透明性の向上を徹底していくことが必要ではないか」という意見が出たとのことです。新百合ヶ丘総合のケースはNHKニュースでも詳報このWGでの議論と新百合ヶ丘総合病院の訴えは9月13日のNHKのニュースウオッチ9でも「重症病床・“増やしたくても増やせない”」というタイトルで、コロナ関連のニュースとして大きく取り上げられました。このニュースでは、全国でコロナの重症病床が十分に増えていない、と前置きした上で、「新百合ヶ丘総合病院ではこの4月に、重症者も受け入れることのできる救命救急センターの開設を目指していたが、5ヵ月たった今も重症者の受け入れはできていない。導入したECMOも使われない状態が続いている」と報じ、その原因として地域医療構想調整会議を挙げたのです。さらに、「神奈川県は、救命救急センターを稼働させるにあたり、調整会議に諮問し合意が必要としている」と指摘し、実際の会議中の神奈川県医師会理事の「一番の問題はベッドではなく人の問題。取り合いが起こったり結果として(医療機関が)共倒れになってしまう」という生々しい発言も紹介。最後には調整会議に参加する川崎市の医務監の「非常に焦りを感じている。利害関係者にある者を議論させることがそもそも難しいのではないか」というコメントも伝えています。このニュースには慈恵会医科大学外科学講座の大木 隆生教授も反応しており、Twitterに「新百合ヶ丘総合病院は慈恵から外科医を8名派遣している関連病院で、半年前からコロナ重症者を受け入れる準備をしていましたが主に医師会(地域医療構想調整会議)の反対でまだ稼働できていません。この夏、神奈川県では東京以上に医療が逼迫していたと言うのに…」と記しています。日医もすぐに反応、WGの懸念は「無用」と中川会長事が大きくなりそうになったためか、あるいは規制改革会議のWGながら一見”規制”には見えない地域医療構想調整会議が取り上げられたためか、日本医師会もすぐに動きました。9月15日、中川 俊男会長は記者会見でこの問題に関してコメントしました。メディファクス等の報道によれば、中川会長は、「地域医療構想策定ガイドラインでは、協議の内容・結果は原則として周知・広報するとされている」と説明、その上で、「地域医療構想は自主的な収れんを理念としているため、地域医療構想調整会議で関係者が地域の実情を踏まえた議論を行う過程で、地域の医療関係者と共有すべき課題を地域住民にも理解してもらう必要があることから、適切な情報公開は既に行われている」と述べ、規制改革推進会議のWGの懸念は「無用という気もする」と述べたとのことです。東北地方有数のチェーン病院への私怨?コロナ禍の中、地域で必要とされている3次救急の指定が滞っている現状があるにも関わらず、懸念は「無用」とは、相変わらずのん気で問題に正対しないコメントです。地域医療構想や地域医療構想調整会議は、基本的に「規制」とは無関係で、「医療・介護ワーキング・グループ」の議題に相応しくない、との見方もあったようです。しかし、もしそこでの議論(地元医師会の意向など)が3次救急への新規参入を妨害する要因だとしたら、それは立派な規制と言えるでしょう。新百合ヶ丘総合病院もそこを突くために詳細な資料提出をしたのだと思われます。新百合ヶ丘総合病院は、2011年開院の急性期病院です。経営する医療法人社団三成会は、福島県郡山市に本拠を置く、南東北病院グループの一法人。2006年3月末に川崎市多摩区の稲田登戸病院が廃止となって北部地域の病床数が不足となり、川崎市が事業者を公募して三成会が選出された、という経緯があります。ここからはあくまで想像ですが、東北地方有数のチェーン病院の川崎市進出に、地元の医師会などはあまり良い印象を持っていなかったのではないでしょうか。患者だけではなく、看護師などの医療スタッフの争奪戦も繰り広げられたでしょう。地域医療構想調整会議の場では、そこで生まれた私怨が住民の医療ニーズよりも優先されたのかもしれません。「自主的な収れん」に任せる仕組みにもメスを中川会長の言葉でもう一つ気になったのは、「自主的な収れん」という言葉です。確かに地域医療構想は、行政が一方的に押し付けるのではなく、医療機関の自主的取り組みと協議を通じて地域のあるべき医療提供体制を実現するための制度です。中川会長の言う「自主的な収れんが理念」というのは、確かにその通りです。しかし、各地域で協議の場である地域医療構想調整会議が、利害ばかりを主張する場所となり、一向に調整が進まないのも事実です。コロナ禍において病床の調整がうまくいかなかったのは、「自主的な収れん」に任せるあまり、地域の医療機関の棲み分けがほとんど進んでいなかったことも大きな原因の一つです。医療法改正で2022年度からは、高度な医療機器など医療資源を重点的に活用する外来等について報告を求める「外来機能報告制度」が創設されます。報告を基に、地域医療構想と同様不足する外来医療機能の棲み分けや確保について「地域の協議の場」などで話し合い、調整することになります。この「地域の協議の場」をどうするかについて、現在議論が行われている最中ですが、9月15日に開催された「外来機能報告等に関するワーキング・グループ」(「第8次医療計画等に関する検討会」の下部組織)では、「地域の協議の場」に住民代表が参画することが重要、との指摘が多数あったとのことです。よくよく考えてみれば、外来機能では住民が必要で、入院機能は住民不要というのも変な話です。冒頭で紹介した、新百合ヶ丘総合病院の3次救急の議論にしても、地域医療構想会議のメンバーに住民代表が入り、議論が公開されていれば、3次救急指定もスムーズに進み、規制改革会議のWGの議題にもならなかったはずです。ポストコロナの医療提供体制構築に向けては、地域構想をどう実効性のあるものにしていくかがカギだと言われています。地元医師会の意向だけを反映した、住民無視の医療提供体制にしないために、地域医療構想調整会議での「自主的な収れん」に任せる仕組みにも、厳しいメスを入れるべきときではないでしょうか。

1559.

COVID-19の積極的疫学調査の最終報告/感染研

 国立感染症研究所は、9月27日に同研究所のホームページにおいて、「新型コロナウイルス感染症における積極的疫学調査の結果について(最終報告)」を公開した。 この報告は、感染症法(第15条第1項)に基づいた積極的疫学調査で集約された、各自治体・医療機関から寄せられた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の退院患者の情報に関する最終報告である。 なお、「本情報は統一的に収集されたものではなく、各医療機関の退院サマリーの様式によるため解釈には注意が必要」と解析の読み方に注意を喚起している。調査は一定の情報が得られたことにより5月25日をもって停止している。【集計データ概要】・COVID-19患者数:770例・入院開始日:2020年1月25日~2021年5月6日・入院期間の中央値:12.0日・性別:男性440例(57%)/女性330例(43%)・年齢:中央値51.0歳(四分位範囲30.0-68.5歳)・基礎疾患の有無:有した症例は270例(35%)【発症時の症状】 多い順に発熱404例(52%)、呼吸器症状224例(29%)、倦怠感108例(14%)、頭痛63例(8%)、消化器症状45例(6%)、鼻汁31例(4%)、味覚異常26例(3%)、嗅覚異常24例(3%)、関節痛24例(3%)、筋肉痛11例(1%)の順だった。 入院時の症状は、発熱288例(37%)、呼吸器症状199例(26%)、倦怠感83例(11%)、消化器症状58例(8%)、味覚異常45例(6%)、頭痛46例(6%)、嗅覚異常43例(6%)、鼻汁28例(4%)、関節痛19例(2%)、筋肉痛6例(<1%)、意識障害1例(<1%)の順だった。 そのほか入院中、29例(4%)において合併症の記載があり、その内訳(重複を含む)は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)14例(2%)、急性腎障害7例(<1%)、人工呼吸器関連肺炎4例(<1%)、播種性血管内凝固症候群(DIC)3例(<1%)、多臓器不全2例(<1%)、誤嚥性肺炎2例(<1%)、カテーテル関連血流感染2例(<1%)、細菌性肺炎1例(<1%)であり、このうち19例が死亡した。【画像所見】(※サイト本文では所見画像もリンクされている) 所見画像は、2名の放射線科医師によって、2020年9月時点で集められた396例の読影が行われた。 入院時(入院日の前後3日を含む期間)に胸部単純X線写真が撮像された168症例のうち、異常所見の認められた79症例(47%)について主な所見を示す。 網状粒状影、心拡大、浸潤影は60歳以上に多く認められた。異常所見は両側(81%)、末梢肺野(75%)、下肺野優位(92%)に分布した。一方、入院時にCT画像が撮像された269例のうち、異常所見の認められた182例(68%)について、異常所見が5肺葉に及んだものが67例(37%)、陰影のサイズは3cmから肺葉の50%未満を占める場合が94例(52%)と最も多かった。また、異常陰影は、両側肺野145例(80%)、末梢性178例(98%)に認められ、とくに右下葉152例(84%)、左下葉149例(82%)と下葉優位であるものの、上葉にも分布していた。陰影所見として、すりガラス陰影182例(100%)、気管支透亮像(air bronchogram)98例(54%)、気管支拡張90例(49%)、胸膜下線状影80例(44%)が多く認められた。また、入院時に胸部単純X線写真およびCT画像ともに撮像されていた161例において、CT画像で異常陰影を認めた症例で、胸部単純X線写真で異常陰影を認めた症例の割合は、両側陰影58/90(64%)、右肺野陰影69/98(70%)、左肺野陰影61/98(62%)であった。CT画像で異常陰影が末梢にあった症例のうち、胸部単純X線写真でも末梢に異常陰影を認めた症例は56/102(55%)であった。また、CT画像で異常所見が確認されなかった症例のうち、胸部単純X線写真で異常所見ありと診断された症例はごくわずかであった。死亡例11例に限ると、両側陰影10/11(91%)、右肺野陰影10/11(91%)、左肺野陰影11/11(100%)、末梢肺野陰影8/11(73%)であった。また、入院時に胸部単純X線写真を撮像し、その後死亡した15例のうち10例(67%)に心拡大が認められた。 これらの結果から、入院時の胸部単純X線写真で認められた両側・末梢優位の異常陰影はCT所見とおおむね同様であった。退院時死亡した重症例に限定すると、胸部単純X線写真で認められた異常陰影は、CT所見とより一致する傾向が認められ、さらに死亡例の多くが胸部単純X線写真で心拡大を呈していた。【治療など】 全770例のうち、対症療法ではなくCOVID-19への直接的な効果を期待して231例(30%)で抗ウイルス薬投与などの治療介入が行われていた。うち、新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第5版)に記載され、日本国内で承認されている医薬品としてレムデシビルは24例、ステロイドは20例が投与されていた。酸素投与は107例(14%)に実施され、その投与方法は、マスク55例、カニューラ12例、リザーバーマスク13例、非侵襲的陽圧換気(NPPV)2例、人工呼吸器22例、体外式膜型人工肺(ECMO)3例であった。

1560.

ブレークスルー感染、死亡・入院リスクが高い因子/BMJ

 英国・オックスフォード大学のJulia Hippisley-Cox氏らは、英国政府の委託で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行の第2波のデータを基に作成した、ワクチン接種後の死亡・入院のリスクを予測するアルゴリズム(QCovid3モデル)の有用性の検証を行った。その結果、ワクチンを接種しても、COVID-19関連の重症の転帰をもたらすいくつかの臨床的なリスク因子が同定され、このアルゴリズムは、接種後の死亡や入院のリスクが最も高い集団を、高度な判別能で特定することが示された。研究の成果は、BMJ誌2021年9月17日号に掲載された。アルゴリズムの妥当性を検証する英国の前向きコホート研究 本研究は、COVID-19ワクチンを1回または2回接種後のCOVID-19関連の死亡・入院のリスクを推定するリスク予測アルゴリズムの妥当性の検証を目的とする、英国の全国的な人口ベースの前向きコホート研究である(英国国立健康研究所[NIHR]の助成を受けた)。 解析にはQResearchデータベースが用いられた。このデータベースには、約1,200万例の臨床研究および薬剤の安全性研究に基づく個々の患者の臨床・薬剤に関するデータが含まれ、COVID-19ワクチン接種、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の検査結果、入院、全身性抗がん薬治療、放射線治療、全国的な死亡・がんのレジストリデータと関連付けられた。 2020年12月8日~2021年6月15日の期間に、COVID-19ワクチンを1回または2回接種した年齢19~100歳の集団(解析コホート)が対象となった。 主要アウトカムはCOVID-19関連死、副次アウトカムはCOVID-19関連入院とされ、ワクチンの初回および2回目の接種後14日から評価が行われた。また、解析コホートとは別の一般診療の検証コホートで、妥当性の評価が実施された。 ワクチンを接種した解析コホート695万2,440人(平均年齢[SD]52.46[17.73]歳、女性52.23%)のうち、515万310人(74.1%)が2回の接種を完了した。COVID-19関連死は2,031人、COVID-19関連入院は1,929人(最終的に446人[23.1%]が死亡)で認められ、2回目の接種後14日以降の発生はそれぞれ81人(4.0%)および71人(3.7%)だった。 最終的なCOVID-19関連死のリスク予測アルゴリズムには、年齢、性別、民族的出自、貧困状態(Townsend剥奪スコア[点数が高いほど貧困度が高い])、BMI、合併症の種類、SARS-CoV-2感染率が含まれた。早期介入の優先患者の選択に有用な可能性 COVID-19関連死の発生率は、年齢および貧困度が上がるに従って上昇し、男性、インド系とパキスタン系住民で高かった。COVID-19関連死のハザード比が最も高い原因別の因子として、ダウン症(12.7倍)、腎移植(慢性腎臓病[CKD]ステージ5、8.1倍)、鎌状赤血球症(7.7倍)、介護施設入居(4.1倍)、化学療法(4.3倍)、HIV/AIDS(3.3倍)、肝硬変(3.0倍)、神経疾患(2.6倍)、直近の骨髄移植または固形臓器移植の既往(2.5倍)、認知症(2.2倍)、パーキンソン病(2.2倍)が挙げられた。 また、これら以外の高リスクの病態(ハザード比で1.2~2.0倍)として、CKD、血液がん、てんかん、慢性閉塞性肺疾患、冠動脈性心疾患、脳卒中、心房細動、心不全、血栓塞栓症、末梢血管疾患、2型糖尿病が認められた。 一方、イベント数が少な過ぎて解析できなかった疾患を除き、COVID-19関連入院にも死亡と類似のパターンの関連性がみられた。 初回と2回目の接種後で、死亡・入院との関連性が異なるとのエビデンスは得られなかったが、2回目以降のほうが絶対リスクは低かった(初回接種のみと比較した2回目接種の死亡ハザード比[HR]:0.17[95%信頼区間[CI]:0.13~0.22]、入院HR:0.21[0.16~0.27])。 検証コホートでは、QCovid3アルゴリズムにより、COVID-19関連死までの期間の変動の74.1%(95%CI:71.1~77.0)が説明可能であった。D統計量は3.46(95%CI:3.19~3.73)、C統計量は92.5と、判別能も良好だった。このモデルの性能は、ワクチンの初回と2回目の接種後も同程度であった。また、COVID-19関連死のリスクが高い上位5%の集団では、70日以内のCOVID-19関連死を同定する感度は78.7%だった。 著者は、「このリスク層別化の方法は、公衆衛生上の施策の推進に役立ち、早期介入の対象となる患者の優先的な選択に有用となる可能性がある」としている。

検索結果 合計:2864件 表示位置:1541 - 1560