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ACE2遺伝子発現の年齢依存的な増加はCOVID-19重症化と関連?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、小児では比較的重症化しにくいとされている。その要因の1つとして、小児の鼻上皮におけるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)発現が成人より少ないことがあるかもしれない。米国・Icahn School of Medicine at Mount SinaiのSupinda Bunyavanich氏らの調査で、鼻上皮におけるACE2遺伝子発現が年齢とともに増加することが示された。JAMA誌オンライン版2020年5月20日号リサーチレターでの報告。ACE2遺伝子発現は10歳未満で最も低く、年齢とともに増加 本研究は、2015~18年にMount Sinai Health System(ニューヨーク市)を受診した4~60歳の患者の鼻上皮を後ろ向きに調査した。サンプルは、喘息におけるバイオマーカー研究のため、喘息の有無にかかわらず収集されたもの。線形回帰モデルは、統計処理ソフトウェアR version 3.6.0(R Foundation)を使用して、ACE2遺伝子発現を100万当たりのlog2カウントで従属変数として、年齢層を独立変数として作成した。年齢層は、10歳未満(45例)、10〜17歳(185例)、18〜24歳(46例)、25歳以上(29例)の4群に分類した。 4~60歳のCOVID-19患者のACE2遺伝子発現を調査した主な結果は以下のとおり。・305例のコホートが収集され、そのうち48.9%が男性、49.8%が喘息だった。・鼻上皮に年齢依存的なACE2遺伝子発現が見られた。ACE2遺伝子発現は、10歳未満で最も低く2.40(95%信頼区間:2.07~2.72)で、年齢とともに増加し、10〜17歳では2.77(同:2.64~2.90)、18〜24歳では3.02(同:2.78~3.26)、25歳以上では3.09(同:2.83~3.35)だった。・従属変数としてのACE2遺伝子発現および独立変数としての年齢層を使用した線形回帰は、年少児と比較して、ACE2遺伝子発現が年長児(p=0.01)、若年成人(p<0.001)、および成人(p=0.001)で有意に高かったことを示した。・性別と喘息について調整された線形回帰モデルでも、ACE2遺伝子発現と年齢層間に有意な関連(両側検定、有意な閾値:p≦0.05)が示され、この関連が性別と喘息に依存しないことを示した。 著者らは「この研究結果は、SARS-CoV-2と人体の最初の接触点である鼻上皮におけるACE2発現が年齢依存的であることを示している。成人に比べて子供のACE2発現が低いことが、COVID-19が子供に少ない理由を説明するのに役立つかもしれない。なお、本研究の限界として60歳以上の検体が含まれていないということがある」と述べている。

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認知症患者におけるCOVID-19の影響

 認知症患者において、COVID-19による死亡リスクへの影響は不明である。イタリア・Istituto Clinico S.Anna HospitalのAngelo Bianchetti氏らは、COVID-19で入院した患者における認知症の有病率、臨床症状、その後のアウトカムについて評価を行った。The Journal of Nutrition, Health & Aging誌オンライン版2020年5月15日号の報告。 北イタリア・ブレシア県にある急性期病院のCOVID-19病棟にCOVID-19肺炎で入院した627例を対象に、認知症の診断、COVID-19の発症様式、病院での症状やアウトカムなどの診療記録をレトロスペクティブに分析した。 主な結果は以下のとおり。・認知症患者は、82例(13.1%)であった。・認知症の有無別の死亡率は、非認知症患者で26.2%(545例中143例)、認知症患者で62.2%(82例中51例)であった(カイ二乗検定:p<0.001)。・ロジスティック回帰年齢モデルでは、認知症の診断は死亡率の高さと独立した関連が認められ、認知症患者のORは1.84(95%CI:1.09~3.13、p<0.05)であった。・認知症患者の中で最も頻繁に認められた症状は、せん妄(とくに活動性の低下タイプ)、機能状態の悪化であった。 著者らは「認知症は、COVID-19による死亡率上昇の重要なリスク因子であり、とくに認知症が進行した患者では注意が必要である。認知症患者のCOVID-19による臨床症状は非定型的であり、早期の症状把握や入院を困難にさせるため、せん妄や機能状態の悪化などの徴候に注意する必要がある」としている。

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周術期のCOVID-19、術後肺合併症や死亡への影響は/Lancet

 手術を受けた重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染患者では、2割以上が30日以内に死亡し、約半数が術後肺合併症を発症しており、全死亡例の約8割に肺合併症が認められたとの調査結果が、英国・バーミンガム大学のDmitri Nepogodiev氏らCOVIDSurg Collaborativeによって報告された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年5月29日号に掲載された。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行以前には、質の高い国際的な観察研究により、術後の肺合併症(最大10%)および死亡(最大3%)の割合は確立されていた。研究グループは、COVID-19が世界的に流行している現在および収束後に、外科医と患者がエビデンスに基づく意思決定を行えるようにするには、術後の肺合併症と死亡に及ぼすSARS-CoV-2の影響を明らかにする必要があるとして本研究を行った。235施設が参加した国際的なコホート研究 本研究は、24ヵ国235施設が参加した国際的なコホート研究であり、2020年1月1日~3月31日の期間に実施された(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成による)。 対象は、手術の7日前~30日後の期間にSARS-CoV-2感染と診断された患者であった。良性疾患、がん、外傷、産科などを含むあらゆる適応症で手術を受けた患者が対象となった。年齢制限は各参加施設の規定に基づき、小児も含まれた。 主要アウトカムは、術後30日以内の死亡とした。主な副次アウトカムは、肺合併症(肺炎、急性呼吸急迫症候群[ARDS]、術後の予期せぬ換気[術後抜管後の侵襲的・非侵襲的換気、体外式膜型人工肺のエピソード、または患者が術後に計画どおりに抜管できなかった場合])であった。流行期はとくに70歳以上の男性で手術の閾値を高くすべき 2020年5月2日の解析の時点で、30日間のフォローアップが完了した1,128例が解析に含まれた。605例(53.6%)が男性で、214例(19.0%)が50歳未満、353例(31.3%)が50~69歳、558例(49.5%)が70歳以上であった。 術前にSARS-CoV-2感染が確定していたのは294例(26.1%)で、術後の確定例は806例(71.5%)だった。835例(74.0%)が緊急手術、280例(24.8%)は待機的手術を受けた。手術の内訳は、良性疾患が54.5%、がんが24.6%、外傷が20.1%であり、小手術が22.3%、大手術は74.6%であった。 30日死亡率は23.8%(268/1,128例)だった。補正後解析では、以下の6つが30日死亡の有意な予測因子であった。 男性(女性と比較したオッズ比[OR]:1.75、95%信頼区間[CI]:1.28~2.40、p<0.0001)、年齢70歳以上(70歳未満と比較したOR:2.30、1.65~3.22、p<0.0001)、米国麻酔学会(ASA)の術前状態分類のGrade3~5(Grade1/2と比較したOR:2.35、1.57~3.53、p<0.0001)、がんの診断(良性疾患/産科の診断と比較したOR:1.55、1.01~2.39、p=0.046)、緊急手術(待機的手術と比較したOR:1.67、1.06~2.63、p=0.026)、大手術(小手術と比較したOR:1.52、1.01~2.31、p=0.047)。 肺合併症は577例(51.2%)で発生した。このうち、456例(40.4%)が肺炎、240例(21.3%)が予期せぬ換気、162例(14.4%)はARDSであった。肺合併症例の30日死亡率は38.0%(219/577例)であり、非肺合併症例の8.7%(46/526例)に比べて高かった(p<0.0001)。また、肺合併症は、全死亡例の81.7%(219/268例)に認められた。補正後解析では、男性(OR:1.45、95%CI:1.07~1.96、p=0.016)およびASA Grade3~5(2.74、1.89~3.99、p<0.0001)は、肺合併症の独立の予測因子であった。 著者は、「COVID-19の世界的流行の期間中は、とくに70歳以上の男性において、通常の診療時よりも手術の閾値を高くすべきである。また、緊急性のない手術の延期を検討し、手術の遅延や必要性の回避を目的とする非手術的治療の積極的導入を考慮する必要がある」と指摘している。

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acalabrutinib、新型コロナ重症例のサイトカインストーム改善/アストラゼネカ

 多施設無作為化非盲検国際共同試験のCALAVI試験において、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤acalabrutinib(国内未承認)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者の炎症マーカーを低下させ、臨床転帰を改善したと示された。これを受け、アストラゼネカは2020年6月5日に本試験結果を発表。Science Immunology誌2020年6月5日号にも同時掲載された。 現在、ウイルス誘発性の過剰免疫反応(高サイトカイン血症、サイトカインストーム)がCOVID-19患者の呼吸器疾患の主な発症機序であると仮説が立てられている。そこで、本試験ではCOVID-19入院患者を対象とし、既存のベストサポーティブケアにacalabrutinibを追加した併用療法による効果について検証された。主要評価項目は治療後の生存患者数および呼吸不全を回避できた患者数。本試験は世界中で実施されており、米国、欧州、そして日本も参加している。 本試験結果によると、acalabrutinibをCOVID-19重症患者19例(酸素補充:11例、人工呼吸器管理:8例)に投与。10〜14日間の治療コースにおいて、acalabrutinib投与により大部分の患者の酸素化を改善した。また、CRPとIL-6、リンパ球の減少と相関して酸素化が改善した。acalabrutinib投与終了後、酸素補充を要した11例中8例(72.7%)と人工呼吸器管理を要した8例中2例(25%)は室内気で退院。人工呼吸器管理を要した8例中4例(50%)は抜管に成功した。 次世代の選択的BTK阻害薬のacalabrutinibは、B細胞の増殖・輸送・遊走化、および接着に必要な情報伝達系の活性化を引き起こすBTKに結合し、阻害作用を発揮する。現在、日本国内では未承認であるが、成人の慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ性リンパ腫(SLL)、成人マントル細胞リンパ腫(MCL)の治療薬として米国、オーストラリア、アラブ首長国連邦、インドなどで承認されている。ただし、現時点でSARS-CoV-2関連疾患の治療薬としては承認されていない。

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第10回 救える未来があるならば高額薬でもいいじゃない-ゾルゲンスマは少子化対策の切り札だ

新型コロナウイルス感染症パンデミックに伴い、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づく緊急事態宣言が行われたインパクトは絶大で、その間起きていた現象やニュースはやや吹き飛ばされた感がある。その一つが5月13日の中央社会保険医療協議会(中医協)で薬価収載が了承された脊髄性筋萎縮症治療薬・ゾルゲンスマ(一般名:オナセムノゲン アベパルボベク)の件である。1患者当たりの薬価は1億6,707万7,222円と薬価収載品としては初の億超えを記録。従来の最高薬価はCAR-T細胞療法・キムリアの投与1回当たり3,349万3,407円であり、その5倍超の薬剤が登場したことになる。もっともこの件は、既に2019年5月に米・FDAの承認が先行し、そこで日本円にして2億3,300万円の薬価がついていたために、「ああ、やっぱり」という程度の反応だった医療関係者も少なくないだろう。この薬価収載了承時の新聞各紙の見出しを並べると、次のようになる。ゾルゲンスマ、1回1.7億円 難病治療薬、保険対象に 厚労省(朝日新聞)超高額薬「ゾルゲンスマ」保険適用を了承 国内最高の1億6707万円(毎日新聞)難病治療薬「ゾルゲンスマ」薬価1億6700万円で保険適用(読売新聞)乳幼児難病薬1.6億円 最高額、保険適用へ 脊髄性筋萎縮症(産経新聞)医療保険ゆさぶる高額薬 1億6707万円、20日保険適用(日本経済新聞)メディアの側にいる身として、こういう見出しにならざるを得ないことは重々承知している。そして記事の中身については、医療保険財政への影響に関する言及の仕方で3つに分けられる。影響を懸念:産経新聞、日本経済新聞影響はなし:読売新聞言及はせず:朝日新聞、毎日新聞もっともこれらの記事中にもあるように、ゾルゲンスマの投与対象となる患者は年25人程度で、年間売上高は42億円の見込みであるため、前述の分類で厳格に採点するならば、後二者が○になる。脊髄性筋萎縮症、そしてゾルゲンスマとは?そもそも脊髄性筋萎縮症(SMA:spinal muscular atrophy)は、ざっくり言えば、運動神経細胞生存(SMN:survival motor neuron)遺伝子の欠失あるいは変異により筋力低下、筋萎縮、深部腱反射の減弱・消失を起こす遺伝性疾患だ。小児期に発症するI型(重症型、別名:ウェルドニッヒ・ホフマン病)、II型(中間型、別名:デュボビッツ病)、III型(軽症型、別名:クーゲルベルグ・ウェランダー病)、成人期に発症するIV型に分類される。発症時期が早期であればあるほど重症で、生後6ヵ月ごろまでに発症するⅠ型の場合、ミルクを飲むことすら困難で、支えなしに座ることすらできない。人工呼吸器を用いなければ、ほとんどの患者が1歳半までに死亡するという厳しい予後である。ゾルゲンスマは、アデノ随伴ウイルス(AAV:Adeno Associated Virus)にSMAの原因となるSMN遺伝子を組み込んだもの。これを1回注射することで正常な遺伝子を長期的に補い、症状を改善する。I型SMA患者15例を対象に行われた海外の第Ⅰ相試験・CL-101試験では、投与後24ヵ月のフォローアップ完了時点で全員が人工呼吸器なしで生存。支えなしで座るなど、運動機能も大幅に改善されたことがわかっている。まだまだ長期評価は必要だが、ある種の治癒に近い状態が得られる可能性も指摘されている。高額新薬への財政懸念と命を天秤に掛ける?こうした薬剤が世に出るようになった背景には、製薬業界の変化と技術革新がある。従来、製薬企業各社は生活習慣病領域など、メガマーケットを軸に創薬を行ってきたが、これらの領域では近年、創薬ターゲットが枯渇しつつある。その結果、1ヵ国での患者数は少ないものの、世界的に見れば一定の患者数があり、なおかつ高薬価になる難病・希少疾患に対する創薬が活発化してきた。これを「カネ亡者」と評する向きもあることは承知しているが、結果として患者への恩恵が増えていることからすれば、私個人はどうでもいいことと思っている。むしろそれ以上に、こうした高薬価の希少疾病治療薬が登場する度にむしずが走るのが「知ったかぶりの保険財政懸念派」である。世界最速の少子高齢化が進行する日本では、将来的に医療保険財政の逼迫は確実である。しかし、その陰で飲み忘れや自己中断による残薬の額が年間推定約500億円にものぼるとの試算を代表に、数々の無駄が指摘されている。国民皆保険を維持しながら持続的な社会保障制度を維持していくとするならば、少子高齢化のうち、「高齢化」については、医療とは無縁ではいられない高齢者での医療費適正化・低減化に取り組むのは当然と言えば当然で、そのために国や現場の医療従事者が必死に取り組んでいるのは百も承知している。しかし、少子高齢化のうち「少子化」については、どうにも決定打に欠ける政策ばかりだと常に感じている。今年5月29日に閣議決定された第4次の「少子化社会対策大綱」を見ても溜息が出る。要は働き方改革・IT化による「産めよ増やせよ」でしかない。だが妊娠・出産、さらにその後の育児は男女のパートナーシップの中での価値観に左右されるもので、単に労働時間や子育て関連給付の変更で何とかなるものではないことは明らかである。少子化対策の発想転換を一方、視点を変えて厚生労働省が発表する人口動態統計2018年版を見てみよう。年齢・死因別でみると、今回のSMAに代表されるような「先天奇形、変形及び染色体異常」により亡くなる未成年は758人いる。同じく、がんで380人、心疾患で139人の未成年が命を落とす。周産期にかかわる障害などで500人弱の0歳児の命が失われている。これらは統計上、各年齢で死因トップ10に挙げられているものを集計しただけで、そのほかにも医療の進化・充実次第で失われなくて済む若年者がいる。たぶんその数は10代までで数千人はいるだろうし、これを20代まで拡大するなら万単位になるだろう。「そんな数はたかだか知れている」という御仁もいるかもしれない。しかし、考えてみて欲しい。厚生労働省が2019年12月に発表した人口動態統計の年間推計によると、同年の日本人の国内出生数は86万4,000人である。今後この数は確実に減少していく。ならば、新規出生数の1%程度の若年者数千人の命を医療で救うことができるならばそれも十分意味のあることではないだろうか?そしてもし前述のような若年者が医療のおかげで一定レベルの日常生活を取り戻せるならば、彼らが将来働くことで経済を潤すかもしれないし、直接的にお金には換算できなくとも新たな価値を生む可能性だってある。またその介護などに時間を割かれていた家族も働くことができるようになるかもしれない。さらにはこうした若年者が家庭を持って子供を持つかもしれない。その意味で「少子高齢化」対策として、若年者を死なせない医療・創薬という視点があってもいいのではないかと常に思っている。どうにも大人の世界は引き算ばかりの夢のない世界になりがちだ。実は私は過去のテレビCMで今でも時々思い出すものがある。いつの時期だったか忘れたがNTTドコモのCMだ。CMでは手塚治虫原作のSF漫画「鉄腕アトム」の白黒テレビアニメ時代の映像が登場し、その手には携帯のようなものが握られている。鉄腕アトムのテーマソングをバックに流れたキャッチフレーズは次のようなものだった。「僕たちが夢見た未来がやってきた」これまで、難病で失われていった若年者にも生きていた時に夢見た未来があったはず。それを大人の銭感情だけで汚して良いものかと、ゾルゲンスマの薬価収載に際して思うのだ。今回のSMAについては患者家族による「脊髄性筋萎縮症家族の会」がある。このホームページの背景にはSMA患者の子供たちの写真がモザイクのように配され、その多くが人工呼吸器を装着している。ゾルゲンスマは適応が2歳未満となっているため、世界各地で承認を待ちわびながらも間に合わず、やむなく気管切開して人工呼吸器を装着したSMA患者も少なくないと聞く。私はこのホームページの背景が人工呼吸器なしで笑う子供たちで埋め尽くされ、したり顔で経済性を語っていた大人が黙りこくる未来がやってくることを今期待している。

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COVID-19、抗がん剤治療は死亡率に影響せず/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患したがん患者の死亡率は、主に年齢、性別、基礎疾患により上昇することが示された。また、細胞障害性抗がん剤または他の抗がん剤治療中のがん患者が、こうした積極的治療を受けていない患者と比べて、COVID-19による死亡リスクが高いというエビデンスを確認できなかったという。英国・Institute of Cancer and Genomic SciencesのLennard Y. W. Lee氏らが、UK Coronavirus Cancer Monitoring Project(UKCCMP)による前向きコホート研究の結果を報告した。がん患者、とくに全身薬物療法を受けている患者は、COVID-19による死亡リスクが高いと考えられていたが、この推測を支持する大規模な多施設共同研究のデータは乏しかった。Lancet誌オンライン版2020年5月28日号掲載の報告。UKCCMPに登録された最初の新型コロナ感染症のがん患者800例を解析 UKCCMPは、COVID-19のがん患者における臨床的および人口統計学的特徴とCOVID-19の転帰を検討し、がんの存在およびがん治療がCOVID-19に及ぼす影響を評価する目的で、2020年3月18日に発足した、最初のCOVID-19臨床レジストリである。ほぼリアルタイムでデータの収集、分析およびレポートを可能にし、迅速な臨床的意思決定をサポートしている。 研究グループは、英国がんネットワークのがんセンターを受診しているすべてのがん患者のうち、鼻咽頭拭い液のRT-PCR検査でSARS-CoV-2陽性と判定された患者を登録した(画像診断または臨床的にCOVID-19と診断されてもRT-PCR検査が陰性の患者は除外)。 今回は、2020年3月18日~4月26日の期間に、英国内のがんセンター55施設で登録された症候性COVID-19を有するがん患者800例について解析した。主要評価項目は、患者が入院中にその施設で評価された全死亡または退院である。抗がん剤はがん患者の新型コロナ感染症による死亡に有意な影響を及ぼさない 解析対象800例のうち、412例(52%)は軽症COVID-19で、226例(28%)が死亡した。死亡リスクは、年齢の上昇(オッズ比[OR]:9.42、95%信頼区間[CI]:6.56~10.02、p<0.0001)、男性(OR:1.67、95%CI:1.19~2.34、p=0.003)、高血圧(OR:1.95、95%CI:1.36~2.80、p<0.001)および心血管疾患(OR:2.32、95%CI:1.47~3.64、p=0.0003)などの基礎疾患の存在と有意な関連が認められた。 281例(35%)が、RT-PCR検査で陽性と判定される前4週以内に細胞障害性抗がん剤による治療を受けていた。年齢、性別、基礎疾患で補正すると、新型コロナウイルス感染症による死亡率は、過去4週間に抗がん剤治療を受けた患者と受けていない患者とで有意差はなかった(OR:1.18、95%CI:0.81~1.72、p=0.380)。また、過去4週以内に免疫療法、ホルモン療法、分子標的療法、放射線療法を受けた患者においても、死亡率に有意な影響は認められなかった。

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第10回 将来的な健康をも脅かすコロナ禍の受診自粛

医師や歯科医師で構成する全国保険医団体連合会(保団連)が6月4日に公表した「新型コロナウイルス感染拡大の影響に関する緊急アンケート」(第1次集計)によると、医療機関の逼迫した状況だけでなく、子どもの将来的な健康に関する懸念も明らかになった。集計数は6,881件(医科5,157件、歯科1,724件)。昨年4月比で、9割近くの医療機関で外来患者数、保険診療収入共に減少した。保険診療収入が30%以上減少している医療機関は、医科では27.3%、歯科では23.1%という結果が出た。医療機関は、ほかの業界に比べて原価率が高く、固定費が保険料収入の5割を超えているところが多い。医科の場合、利益率が3割いかない医療機関が多い中での保険診療収入の減少である。それでも医科の診療報酬では、さまざまな名目で指導管理料が設けられているが、歯科の場合、診療報酬の多くが処置に関する点数である上、医科の指導管理料に相当する診療報酬の点数が低く抑えられているため、外来患者数減少下における利益率は15%程度と予測されている。診療科別では、耳鼻咽喉科と小児科が大きな影響を受け、外来患者数は9割以上減少した。また、歯科ではネットで拡散された誤情報などによる風評被害も影響しているようだ。コロナ禍による経営環境の悪化が今後も続けば、小児科や耳鼻咽喉科、歯科の医療機関の中には、半年後に倒産するケースが相次ぐかもしれない。一方、受診控えによる患者の心身への影響も懸念される。保団連の理事は「3ヵ月健診、6ヵ月健診などがあるのは、重要な病気を見逃したり、将来に渡って治すチャンスが奪われてしまう病気があったりするのを未然に防ぐため。“不要不急”と思ってその時期を逃すと、大変なことになる可能性がある」と警鐘を鳴らす。実際、乳幼児健診や学校健診で、先天的な心疾患や側弯症などが見つかることもある。しかし、一斉休校による学校健診の中止や受診控えにより、これらの疾患が発見されないまま経過しているケースもあることだろう。高齢者については、外出自粛による下肢の衰えや、高血圧、うつ症状の進行が懸念される。新型コロナによる間接的な影響は、今後さまざまな疾患となって発現してくることだろう。こういった疾患をフォローする態勢も今後は必要だ。子どもに関しては、一斉休校よる外出規制で、自宅での甘味摂取量の増加や生活習慣の乱れなどから、虫歯が増えている状況も見過ごせない。また、妊婦においても歯科検診の受診控えの影響で、女性ホルモンの増加に伴う歯周病菌の増加などが見逃され、低体重児や早産のリスクが高くなることが懸念される。このような状況下、口腔ケアの重要性が増しているのは言うまでもない。災い転じて、歯科は「新型コロナ対策の最前線」になれるだろうか。

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Withコロナの夏に5つの提言/日本感染症学会・日本救急医学会・日本臨床救急医学会・日本呼吸器学会

 本格的な夏の到来を控え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防でのマスク着用により、例年以上の熱中症被害が危惧されている。 そこで、日本救急医学会の呼びかけにより、日本感染症学会・日本救急医学会・日本臨床救急医学会・日本呼吸器学会の4学会で構成するワーキンググループが組織され、「『新型コロナウイルス 感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言』について」が発表された。 同提言では、感染対策としての換気やマスク着用の重要性、熱中症対策としてのエアコン使用やマスクを外す必要性との両立など、夏季を迎えて注意するポイントをまとめている。「適宜マスクを外して休憩も大切」と5つの提言 提言では、大きく5項目を示し、細かい解説を加えている。提言の内容は次の通り。(1)屋内においては、室内換気に十分な配慮をしつつ、こまめにエアコン温度を調節し室内温度を確認しましょう。(2)マスク着用により、身体に負担がかかりますので、適宜マスクをはずして休憩することも大切です。ただし感染対策上重要ですので、はずす際はフィジカルディスタンシングに配慮し、周囲環境等に十分に注意を払って下さい 。また口渇感に依らず頻回に水分も摂取しましょう。(3)体が暑さに慣れていない時期が危険です。フィジカルディスタンシングに注意しつつ、室内・室外での適度な運動で少しずつ暑さに体を慣れさせましょう。(4)熱中症弱者(独居高齢者、日常生活動作に支障がある方など)の方には特に注意し、社会的孤立を防ぐべく、頻繁に連絡を取り合いましょう。(5)日頃の体調管理を行い、観察記録をつけておきましょう。おかしいなと思ったら、地域の「帰国者・接触者相談センター」や最寄りの医療機関に連絡・相談をしましょう。 同提言では、最後に「COVID-19と気温・湿度についての関連性についても 十分なエビデンスに基づくデータはなく、コロナ禍における熱中症の予防や治療に関しても、依然、学術的にも情報が限られている。ゆえに、今回の提言はアップデートされる可能性がある」と今後の修正なども示唆している。

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距離1m以上で感染リスク8割以上減少、マスクでも/Lancet

 ウイルス伝播の予防に、人との物理的距離(physical distance、フィジカルディスタンス)1m以上の確保、フェイスマスクおよび保護眼鏡の着用が有効であることが、カナダ・マックマスター大学のDerek K. Chu氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果、示された。解析は、6大陸・16ヵ国で行われた172件の観察研究など患者総数2万5,697例を含むデータを包含して行われ、フィジカルディスタンスが1m以上の場合、感染リスクは約82%減少、フェイスマスクの着用は約85%減少することが示されたという。COVID-19を引き起こす新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、人から人への感染が濃厚接触により拡大している。研究グループは医療機関および非医療機関(コミュニティなど)におけるウイルス伝播について、フィジカルディスタンス、フェイスマスク、保護眼鏡の影響を明らかにするため本検討を行った。Lancet誌オンライン版2020年6月1日号掲載の報告。フィジカルディスタンスなどの影響をシステマティック・レビューとメタ解析で検証 システマティック・レビューとメタ解析は、フィジカルディスタンス、フェイスマスク、保護眼鏡の影響を明らかにするために、PubMedやEmbaseなど世界保健機関(WHO)が特定する21の標準的データベースと、COVID-19の特異的データベースを基に、重症急性呼吸器症候群を引き起こすSARS-CoV-2とβコロナウイルス、および中東呼吸器症候群(MERS)に関するデータを集めて行われた。 2020年5月3日時点でシステマティック・レビューを実施。言語は問わなかったが、比較試験であることを適格条件とし、また、試験の容認度や柔軟性、資源活用性、公平性の文脈的要因を確認した。そのうえで試験結果をスクリーニングしデータを抽出、バイアス・リスクについては2度評価した。 頻度論的統計、ベイズ・メタ解析、ランダム効果メタ回帰解析を行った。エビデンスの確実性については、Cochrane法とGRADEアプローチで評価した。フィジカルディスタンス1m以上で0.18倍、マスクで0.15倍、保護眼鏡で0.22倍に 検索により、6大陸にわたる16ヵ国からの観察研究172件を特定した。無作為化試験はなかった。 医療現場・非医療現場で行われた比較試験であるとの適格条件を満たした44件(患者総数2万5,697例)を対象にメタ解析を行った。 感染リスクは、フィジカルディスタンスが1m未満の場合に比べ1m以上の場合は、大幅に低下した(被験者総数1万736例、統合補正後オッズ比[OR]:0.18[95%信頼区間[CI]:0.09~0.38]、群間リスク差[RD]:-10.2%[95%CI:-11.5~-7.5]、中等度の確実性)。物理的間隔が広がるほど、ウイルスの感染防御は増大した(1m増の相対リスク[RR]変化:2.02、交互作用のp=0.041、中等度の確実性)。 フェイスマスクの着用も、感染リスクの大幅な減少につながった(被験者総数2,647例、統合補正後OR:0.15[95%CI:0.07~0.34]、RD:-14.3%[95%CI:-15.9~-10.7]、低度の確実性)。とくに、N95マスクや類似の防毒マスクは、使い捨てサージカルマスクや類似のマスク(再利用できる12~16層の綿マスクなど)と比べ、感染予防効果との関連性が強かった(交互作用p=0.090、事後確率95%超、低度の確実性)。 保護眼鏡の使用も感染リスクの低減につながった(被験者総数3,713例、統合補正後OR:0.22[95%CI:0.12~0.39]、RD:-10.6%[95%CI:-12.5~-7.7]、低度の確実性)。 未補正試験やサブグループ解析、感度解析でも、同様の結果が得られた。 著者は、「システマティック・レビューとメタ解析の結果は、1m以上のフィジカルディスタンスを支持するもので、政府が取り組むべきモデルおよび接触者追跡の定量的推定値が明らかになった。解析結果に基づき、公共の場および医療機関でのフェイスマスク、防毒マスク、保護眼鏡の適切な使用を広報しなければならない」と述べるとともに、「今回の介入のエビデンスをより明らかにするために、頑健な無作為化試験を行う必要があるが、解析結果は現時点で得られる最善のエビデンスであり、中間的なガイダンスとして利用可能と思われる」とまとめている。

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COVID-19、アンケートから見えた医療者のメンタル状況と対策を識者が解説

COVID-19の拡大を受け、医療現場では長期に渡って対応を迫られる状況が続いている。20床以上の医療機関に勤務するケアネット会員医師に、経営・組織・心理面での影響、とくに個人と組織のメンタル面での影響についてアンケートで聞いた(アンケート結果についてはこちら)。アンケート結果を踏まえつつ、今後の医療者が取るべき対策について、国際医療福祉大学大学院教授の中尾 睦宏氏に聞いた(聞き手・構成:ケアネット 杉崎 真名)。今回のCOVID-19感染流行とこれまでの大規模災害時と比べ、医療者に求められている対応は何が大きく異なるでしょうか?一番は「医療機関・地域内で対応を完結させなければならない」点でしょう。これまでの大規模災害では、被災地以外や海外からの派遣・応援が望めましたが、今回は全国・地球規模の問題であり、人の移動にも制限があって各地域内で対応せざるを得ません。日常診療に加えてCOVID-19対応をしなくてはならず、病床数を含めてキャパオーバーになっても応援を頼めない、というプレッシャーは大きい。時間的なロードマップが描けない苦しさもあります。災害であれば発生後から復興に向けた計画を立てられますが、今回はいつ収束するかの見通しが立ちにくく、収まったとしても第2波、第3波が来るかもしれない。そうした緊張感に常にさらされています。アンケート回答者が勤務する20床以上の医療機関は、発熱外来などCOVID-19対応をしている総合病院が多いでしょうが、どうしても呼吸器・感染症・耳鼻咽喉科などに負荷が偏りがち。一方で外来患者が減った科もあるので、診療科の垣根を超えた院内連携が今まで以上に求められています。また、できる範囲での地域を超えた連携も必要です。それぞれの立場や利害が異なる場合が多いため、ここでは、行政や専門家団体などによる、ある程度強権的な舵取りも必要になってくるでしょう。アンケートにおける「医師の日常診療の影響」の回答結果をどう分析され、どのような課題が浮き彫りになったとお考えですか?中尾 睦宏氏。取材はオンラインで行った回答では「院内感染防止のための特別な対応が必要になった」(63.4%)が最も多く、それに伴って「感染リスクに自身・スタッフがさらされることに不安を覚える」(57.4%)や「衛生資材の確保が難しくなった」(53.9%)も高い回答率となっています。入室前に体温測定をしたり、診察室の患者-医師の距離を取ったり、診療が終わるたびに消毒したりなど、通常より手間暇がかかり、診療効率は落ちます。さらに今後はCOVID-19に関連したさまざまな疾患も増えてくることが予測されます。たとえば、4月以降にCOVID-19感染者が「たこつぼ型心筋症」を発症した、という症例報告がありました。収縮期の心臓の動きが局所的に悪くなる疾患ですが、強いストレスや激しい情動を契機に引き起こされることが多いとされ、大震災後に発症者数が増加しています。このように、今後はCOVID-19そのものだけでなく、その周囲の疾患も併せて診療することが求められます。「来院者が減り、経営面の不安が出るようになった」(37.3%)との回答も目立ちます。実際、定期昇給なしやボーナス減額を通告された勤務医もいるようです。ただでさえハイリスクの中で仕事をしている最中、「努力-報酬バランス」(仕事の遂行のために行われる努力に対して得られる報酬が少ないと感じられた場合により大きなストレス反応が発生するというモデル)が崩れ、きつい思いをしている勤務医も多いことでしょう。医師は責任感があり、我慢強い人が多いので、不安や恐怖心を公にしにくい面もあると思います。こうした「見通しが立たない状況が続くことに疲れやいらだちを感じる」(35.5%)点も問題で、中長期的な医療体制の大きなロードマップを国や専門団体が示し、現場の医師を少しでも安心させる配慮が求められます。定期的なアンケートやストレスチェックにより、随時こうした状況を捕捉することも重要でしょう。医師には、専門技能の習得や研鑽も欠かせませんが、「学会や勉強会などの直接的なコミュニケーションの機会が失われた」(55.6%)という点は医学全体のレベル維持に支障を来しかねません。現在の医学教育や臨床体制は平時を基準としていますが、今後は現在のような非常時が続くことを想定した“プランB”も用意する必要があるでしょう。一方、「医療者に対する差別や偏見にさらされ、つらい思いをしている」(9.4%)や「COVID-19に関する情報が足りず、診療に不安を覚える」(12.6%)はそこまで高い割合にはなっていません。現状は落ち着いて情報を取捨選択し、周囲の支援を受け働き続けている医療者が大半だと思われます。世界を見渡したとき、医療者の働き方やメンタルケアへの取り組みで参考になる動きはありますか?今回のCOVID-19対応をしている医療従事者のメンタルヘルス問題を集計した論文がいくつか発表されています1)。現在は中国・武漢のものが中心で、その内容からは「うつ、不安、不眠、ストレスの自覚」などの有訴率が高まっており、心理的なサポート不足を感じる人が多いことが伺えます。アンケートの記述コメントでは、スタッフのメンタルサポートのために「臨床心理士を配置した」「専門の相談窓口をつくった」といった内容が寄せられており、こうした素早い動きは評価すべきでしょう。とはいえ、私自身も長年医療者のストレス問題をみてきましたが、医師は弱音を吐くことが苦手な人が多く、窓口を設置してもなかなか活用されない面があることも事実です。アンケートの回答には、オンラインミーティングや勉強会など、制約のなかでもコミュニケーションをとる工夫をしている声が多くありました。こうした日々の取り組みやちょっとした遊び心が、長期的なメンタルヘルス対策につながります。東日本大震災のとき、遺体回収などの過酷な任務に就いた自衛隊は、任務後に不安やつらさをメンバー同士で吐き出し合う時間を設け、「自分だけがつらいのではない」と確認するメンタルケアを行っていたそうです。こうした例を参考に、マネジメント層の方はメンバーが本音を言い合える場をつくることを意識するとよいでしょう。米国では医療従事者のメンタルヘルス面における情報提供も進んでおり、トラウマティック・ストレス研究センター (Center for the Study of Traumatic Stress)では 医療従事者向けのCOVID-19対応マニュアルを作成しており 、その日本語版も用意されています。日本赤十字社がまとめた「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に 対応する職員のためのサポートガイド」の内容も非常に充実しています。国立精神・神経医療研究センターも医療者のためのケアの方法をまとめました。自分に合ったリラックス方法を見つけたり、自施設の取り組みを検討、確認したりするうえで参考になるでしょう。今後、長期に渡るであろうCOVID-19対応において、医療者が心身の健康を保つためのポイントは?各種論文や調査からは、各医師が全力で困難に立ち向かっている最中であることが伺えますが、長期戦になればその忍耐にも限界が来ます。自らの精神的健康を守るために、ストレス対応の基本を確認しておくとよいでしょう。「ストレスモデル」(図1)は仕事のストレス要因に個人的な要因、仕事以外の要因、緩衝要因が作用し合い、心理・身体・行動面のストレス反応を生み、その持続がメンタル疾患につながる、というモデルです。図1画像を拡大する国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health: NIOSH)の職業性ストレスモデルを参考に編集部作成また、「高ストレス状態のモデル図」(図2)ではイライラ→身体不調→不安→うつが相関していることが確認できます。身体疾患のうしろにメンタル疾患が潜んでいることも多くあります。単に「最近疲れやすい」「調子が出ない」とやり過ごさず、適宜自分の状況を当てはめてみるようにしましょう。図2画像を拡大する中尾氏の資料より自分の思考のクセを知り、気持ちや行動をコントロールする「認知行動療法」の基本も誰もが知っておくべきです。今後は、AIやビッグデータを利用したメンタルケアのサービスが登場し、使いやすくなることに期待しています。組織面からは、今回導入が進んだ遠隔診療のさらなる充実と普及をはかり、不要な感染リスクを高めない工夫が求められるでしょう。同時に、長期的な課題になりますが、医療者教育に「危機管理学」や「組織論」を組み込むことも重要だと感じます。COVID-19は突如出現した厄災ではありますが、医師の偏在や医療者個人に無理を強いる働き方など、医療現場が長らく抱える問題をあらわにしました。医療に注目が集まる今、医療者はみずからと周囲の人の心身を守るため、必要なケアと発信をしていくべきでしょう。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。新型コロナに関する日常診療への影響、ストレスや悩みを教えてください

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第10回 95万円の診療報酬架空請求で逮捕!うがった見方をしてみれば

実母に在宅診療をしたとして架空請求こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。さて、緊急事態宣言が解除されましたが、その後のロードマップ「ステップ1」「東京アラート」「ニューノーマル」…、次から次へと出てくる新造語や基準があるようでよくわからないレギュレーションに、東京都民をはじめ首都圏に住む多くの人たちが戸惑っています。「もう戸惑うのは御免」とばかりに完全に自粛を解除してしまう人もいるようで、いわゆる”夜の街”(この言葉もなんか変ですね)では、「接待を伴う」わけではない普通の居酒屋にも、それなりに客足が戻っているようです。新型コロナウイルスが撃退されたわけでもないのに、この緩みっぷり…。人間とは面白い生き物です。さて、今回気になったのは、東京都羽村市の在宅クリニックで起きた診療報酬の架空請求事件です。この事件は新聞、テレビはじめ多くのメディアが報じました。毎日新聞やNHKなどの報道によれば、事件のあらましは次のようなものでした。5月27日、診療報酬を架空請求したとして、警視庁捜査2課は、東京都羽村市で在宅専門クリニックを開業する医療法人甲神会・理事長の医師(49)と、同法人の事務長(53)を逮捕しました。逮捕容疑は詐欺と私電磁的記録不正作出・同供用容疑です。逮捕容疑は、1月上旬~2月下旬ころにこの医師と同居する70代の実母に在宅診療をしたとする虚偽の電子カルテを作成、事務職員に虚偽の電子レセプトを作らせ、東京都後期高齢者医療広域連合に診療報酬計約95万円を架空請求し振り込ませた、というものです。母親は別の医療機関に通院していましたが、息子のクリニックからの在宅診療は受けていませんでした。報道では、この医師は「弁解の余地もありません」と容疑を認めているとのことでした。当局が医療関係者に発したアラート?この事件の報道、よくよく読むと不思議なことがいくつかあります。3点ほど挙げてみます。1)実母のレセプトにも関わらず、なぜバレたのか。2)億単位の不正請求が発覚しても逮捕されないケースもあるのに、わずか95万円でなぜ逮捕されたのか。3)このコロナ禍でどこの医療機関も大変な時期なのに、わざわざ逮捕する必要があったか。1)と2)ですが、多くの診療報酬不正請求事件は、地方厚生局などへの通報(患者や内部の従業員などからのいわゆる”たれこみ”)で発覚し、指導、監査へと進むことが大半です。今回の場合、母親が“たれこむ”わけがないので、この母親のレセプトを広域連合がチェックする段階で、「通院と在宅が混じっている、おかしいぞ」ということになった、と予想できます。ただ、95万円は「母親に在宅診療したと見せかけた架空請求」という1事例に過ぎず、不正請求の事例(余罪)はほかにもあるのかもしれません。95万円というのはさすがに少額過ぎるからです。3)が一番の謎です。東京の外れの1在宅クリニックの95万円の詐欺事件を、わざわざ全国に知らしめる必要があるのか、ということです。うがった見方かもしれませんが、この逮捕は「医療機関の皆さん、コロナで患者数が減って大変でしょうが、くれぐれも不正請求をしないように!100万以下でも逮捕しますよ!」という当局のアラートであった、とは考えられないでしょうか。最近、知人からこんな話を聞きました。「友人が子供を連れて行っていたかかりつけの小児科でコロナ疑いが出て、患者数が激減した。少し経ってから子供を連れていったところ、今までやらなかった余計ではないかと思われる検査をされたそうだ」。もちろんこのケースは不正請求ではありませんが、コロナ禍による患者・収入減の反動で過剰診療が増えているとすれば、不正請求に走る医療機関も、ひょっとしたら増えているのかもしれません。診療報酬の不正請求は詐欺罪にあたり、最長で懲役10年です。加えて、保険医取り消し、保険医療機関取り消し、医師免許停止・取り消し、医業停止といったさまざまな行政処分の対象にもなります。実は今年の3月から、不正請求をした医師や医療機関の取り扱いも厳しくなっています。詳細は各地方厚生局のホームページを見ていただきたいのですが、例えば関東信越厚生局のサイトには3月19日付けで、「行政処分が行われる前に、保険医療機関等や保険医等が自ら保険医療機関等の指定の辞退や保険医等の登録の抹消を申し出て、自ら保険医療機関等や保険医等から外れることによって、行政処分から免れるケースがあり、このようなケースについては公表を行っておりませんでしたが、保険診療を受けた患者(被保険者)の皆様の権利を守ることが目的であることに鑑み、すでに指定を辞退した保険医療機関等や登録抹消した保険医等についても、取消に相当する場合には、地方社会保険医療協議会の審議を経て、名称、氏名、不正理由、不正請求金額などを公表することといたしました」と告知されています。どう逃げようが、名前や医療機関名、不正請求の詳細は公にされてしまうわけです。わざわざこの時期に表沙汰となったこの事件、当局が医療関係者に発した“東京アラート”かもしれないということを、皆さんも頭の片隅に置いておいてください。

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第22回 今すぐ作ろう!オンライン診療対応チラシ【噂の狭研ラヂオ】

動画解説新型コロナウイルス感染症による時限的・特例的な処方箋の取り扱い、いわゆる0410事務連絡。患者さんが生活圏内で薬局を探しだす今こそ、処方箋をいただくチャンスです。狭間先生の薬局ではFAXでの処方箋受け取りをアピールするある秘策を行っているそう。一つひとつの薬局の特色を生かしたその方法とは?

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COVID-19による静脈血栓症、入院前に発症か/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者では、Dダイマーと凝固系での凝固促進変化、この感染症に関連する静脈および動脈血栓症の上昇率が報告されている。現時点でのさまざまな論文報告によると、ICUに入室したCOVID-19患者の死亡率は50%と高い。とくに動脈・静脈での血栓イベント発症の報告は多く、末梢静脈血栓塞栓症は27~69%、肺塞栓症は最大23%も発生している。 フランス・CCN(centre cardiologique du nord saint denis)のJulien Nahum氏らが観察研究を行った結果、深部静脈血栓症の発症割合は79%と高く、早期発見と抗凝固療法を迅速に開始することで予後を改善する可能性が示唆された。また、抗凝固薬を予防投与したにもかかわらず、ICU入室後わずか2日で患者の15%が深部静脈血栓症を発症したことから、COVID-19のICU患者すべてにおいて系統的に抗凝固療法を評価する必要があるとしている。JAMA Network Open 2020年5月29日号のリサーチレターに報告した。 研究者らは、2020年3月中旬~4月初旬、フランス・パリ郊外にある病院の集中治療室(ICU)に入室したCOVID-19重症患者(急性呼吸窮迫症候群を起こし、人工呼吸を要した)を対象に深部静脈血栓症の系統的な評価を行う目的で観察研究を実施した。 研究者らは、ICU入室時、過去に炎症マーカー値の上昇を示したデータや入院時の静脈血栓症の発症率が高いことを考慮し、COVID-19患者全症例に対して下肢静脈エコーを実施。入院時の検査値が正常でも48時間後に下肢静脈エコーを行い、COVID-19の全入院患者に抗凝固療薬の予防投与を推奨した。統計分析はグラフパッドプリズム(ver.5.0)とExcel 365(Microsoft Corp)を用い、両側検定を有意水準5%として行った。 主な結果は以下のとおり。・計34例が組み込まれ、平均年齢±SDは62.2±8.6歳で、25例(78%)が男性だった。・COVID-19患者のうち26例(76%)がPCR法で診断された。 ・8例(24%)はPCR法で陰性だったが、CT画像でCOVID-19肺炎の典型的なパターンを示した。・主な併存疾患は、糖尿病(15例[44%])、高血圧症(13例[38%])、肥満(平均BMI±SD:31.4±9.0)で、深部静脈血栓症を最も発症していたのは、糖尿病(12例/15例)、次いで高血圧(9例/13例)だった。・ 26例(76%)は入院時にノルアドレナリンを、16例(47%)は腹臥位管理を、4例(12%)は体外式膜型人工肺(ECMO)を必要とした。・入院前に抗凝固療法を受けていた患者はわずか1例(3%)だった。・深部静脈血栓症は、入院時に22例(65%)、ICU入室48時間後に下肢静脈エコーを行った際5例(15%)で見られ、入院から48時間経過時点で計27例(79%)に認められた。 ・血栓症の発症部位は、両側性が18例(53%)、遠位が23例(68%)で、近位が9例(26%)だった。 ・過去に報告されたデータと比較して、今回の集団ではDダイマー(平均±SD:5.1±5.4μg/mL)、フィブリノーゲン(同:760±170mg/dL)およびCRP(同:22.8±12.9mg/dL)の値が高かった。一方、プロトロンビン活性(同:85±11.4%)と血小板数(同:256×103±107×103/μL)は正常だった。

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新型コロナで8割の診療所が患者&収入減!診療科別の違いも浮き彫りに-会員医師アンケート

 新型コロナウイルス感染症の流行拡大は、診療所・病院の経営に大きな影響を与えている。今回、ケアネットでは診療所で働く会員医師に対し、2020年4月の外来患者数・経営状態についてアンケート調査を行った。アンケートは2020年5月21(木)~25日(月)に実施し、1,000名から回答を得た。 調査は、全国のケアネット会員のうち診療所(病床数0床)で勤務する30代以上の医師を対象にインターネット上で実施。回答者の年代は50代が36.7%と最も多く、60代が32.2%、40代が17.0%、70代以上が8.1%、30代が6%だった。診療科は内科が47.5%と半数近くを占め、続いて小児科が6.9%。整形外科・皮膚科が各4.7%、循環器内科・精神科が各4.6%、などとなっている。新型コロナの影響による患者減は内科と比べて小児科が大きく皮膚科が小さい 「4月平日の外来患者数」を前年同月比で尋ねた設問では、「5~25%減った」という回答が41.2%と最多となり、「25~50%減った」が28.4%、「50%以上減った」が9.7%だった。「減った」という回答を合計すると8割に達し、新型コロナウイルス感染流行が診療所に与えた影響の大きさを確認できる。一方、新型コロナの影響による患者の減少幅には診療科ごとの違いもあり、内科と比較した場合、小児科・耳鼻咽喉科では減少幅が大きい一方で、整形外科・皮膚科・精神科は減少幅が小さい傾向が見られた。 「現時点での経営上の一番の問題」について自由回答で尋ねた設問では、「フェイスシールドなど注文していますが、1ヵ月以上たっても届かない(東京都・内科)」といった依然として続く新型コロナの影響による資材不足や「患者の受診控えによる症状の悪化が心配(京都府・消化器内科)」「隔離場所が確保できない(東京都・糖尿病・代謝・内分泌内科)」といった診療面の不安を訴える声が上がった。自由回答でも最多だったのは「外来患者数が元に戻らない(神奈川県・整形外科)」「外来患者数減少、処方日数の長期化を戻せない(広島県・内科)」といった新型コロナの影響による患者減に関する回答だ。中には「資金ショートの恐れあり、閉院検討(東京都・内科)」という深刻な内容もあった。 アンケートでは、保険診療収入の増減状況や給付金・助成金制度の利用状況についても聞いている。 アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。新型コロナ影響で8割の診療所が患者&収入減!対策どうする?-会員医師アンケート

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COVID-19治療薬、ヒドロキシクロロキンに乾癬発症のリスク?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として期待された抗マラリア薬ヒドロキシクロロキン(HCQ)について、乾癬の発症・増悪・再発を誘発する可能性があることを、カナダ・トロント大学のMuskaan Sachdeva氏らが示した。乾癬に関連したHCQ治療の重大な影響を調べた試験報告を統合したシステマティックレビューの結果に基づくもので、著者は、「COVID-19患者へのHCQ治療においては、その重大な影響をモニタリングする必要がある。また、安全性プロファイルを明らかにする臨床試験の実施が不可欠だ」と述べている。HCQはCOVID-19患者のウイルス量を低減する可能性が示された一方で、治療の影響と思われる重大な皮膚有害事象の症例報告が複数寄せられていた。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年5月19日号掲載の報告。 研究グループは、HCQ治療後の乾癬発症、増悪もしくは再発の症例報告をシステマティックレビューした。乾癬へのHCQ治療の重大な影響を検討していたオリジナル研究をEMBASE、MEDLINEで統合的に検索し、被験者の人口統計学的特性、HCQ治療の詳細、乾癬の診断について抽出した。 主な結果は以下のとおり。・15論文から該当する乾癬発症患者18例のデータを抽出した。・乾癬発症例を性別で分析すると、女性が有意に多かった(女性14例[77.8%]vs.男性2例[11.1%]vs.性別不明2例[11.1%])。・発症例の50%(9例)は、HCQ服用前に乾癬の既往はなかった。・18例のうち、50%(9例)がde novo乾癬で、27.8%(5例)は乾癬性症状の増悪例で、22.2%(4例)はHCQ治療後の乾癬再発例であった。

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ダパグリフロジンはHFrEF治療薬で決定だが、いまだメカニズムはわからない(解説:絹川弘一郎氏)-1241

 DAPA-HF1)の衝撃はすでに10ヵ月も前の話で、ただ昨年8月の時点ではまだデータ不足と仰っていた先生方も11月のAHAのころにはBraunwald先生の総説2)が出て、あっさりSGLT2阻害薬をHFrEFのファーストラインドラッグとして容認しはじめた。そして、2020年にはどんどんSGLT2阻害薬のデータが心不全領域で出てくるかと期待に満ちあふれていた矢先、新型コロナの蔓延で本家本元の感染パンデミックのさなかには、心不全パンデミックという用語も軽々とは使用し難い雰囲気である。また、学会やイベントが中止になるだけで研究がここまで減速するのかと感慨深い。このJAMA誌の論文は本年3月に発表されたものでそもそも旧聞に属する時期外れの感想文であるが、なにぶん4〜5月は私の地方でもそこそこコロナで騒然としていて、毎日対策会議なるものを開いていたため、今になってご紹介することをお許しいただきたい。 この論文はDAPA-HFのサブ解析をしただけで、その本旨はすでに元論文で示されている、糖尿病非合併HFrEF患者でも糖尿病合併HFrEFとほぼ同等の予後改善効果をダパグリフロジンが有する、ということに尽きる。背景は糖尿病患者でやや肥満であることと少しだけ腎機能が低下していることくらいで、BNPやLVEF的に言えば糖尿病患者も非糖尿病患者も同等の心不全である。しかし、古くから知られていることはここでも厳然として残っており、糖尿病患者のイベント発生率は非糖尿病患者よりざっくり言って1.5倍くらいである。ダパグリフロジンはそれをいずれも低下させているが、カプランマイヤーの曲線はDM-placebo→DM-dapa→nonDM-placebo→nonDM-dapaの順であり、ダパグリフロジンで低減させてもなお非投与の非糖尿病患者よりイベントが多いわけで、糖尿病の業の深さが知れる。これ以上どうすればいいのか、そもそも糖尿病にならないことしか長生きの方法はないようにも感じられる。 ところで、SGLT2阻害薬の有効性のメカニズムについて多くの仮説が出現したが、たとえばケトン体仮説についてはややトーンダウンなのかと思われる。非糖尿病患者でのケトン体産生はおそらくきわめて低く、実際ケトアシドーシスは発症ゼロである。尿糖増加にしても非糖尿病患者では10分の1くらいであり、浸透圧利尿として尿量増加は少ない。血液濃縮ではないと思われるヘマトクリットの増加が現在一番注目されている心不全予防メカニズムであり、この試験結果でも糖尿病の有無で差はなく増加している。ヘマトクリットの増加を近位尿細管細胞の保護効果によるエリスロポエチン産生亢進と結び付けるのが一般的であるが、そこで若干解釈に困ることが出てきている。これまでのSGLT2阻害薬の大規模臨床試験では一貫して腎保護効果が認められていたが、それはこの薬剤が糖尿病性腎症の進展を抑制する、そしてそのメカニズムとして近位尿細管におけるATP消費抑制や緻密斑におけるtubuloglomerular feedbackが想定されているゆえんであった。とくにtubuloglomerular feedbackによるhyperfiltrationの抑制がSGLT2阻害薬の腎保護効果の成因だという説明が一番しっくりする気がしていたが、この試験では糖尿病患者ですら腎保護効果が認められていない。観察期間が短いことをその理由としているようであるが、通常SGLT2阻害薬投与直後に低下したeGFRが1年後に非投与群と交差するというのが今までの結果であり、なぜDAPA-HFではそれが違うのか、そして非糖尿病心不全患者でもやはり腎保護効果が認められないのはどうしてなのか、今後心不全治療薬として考えていくうえでとても重要なことであろう。これまでの糖尿病患者に対する心血管イベントを見た大規模臨床試験では心不全患者はせいぜい10%程度しか含まれていなかったので、もしかすると心不全であるということが腎保護効果を幾分打ち消してしまうのかもしれない。また、ベースラインのeGFRが60程度であり、元々hyperfiltrationではない患者では目に見えて腎保護効果はないのかもしれないとも思ったが、CREDENCE試験3)はそうではなく、やはり心不全患者のCKDは別物か? DAPA-HFの結果自体は明白であり、今後ほかのSGLT2阻害薬でHFrEFに対する効果が示されれば完全にファーストラインドラッグになるであろうが、いまいちメカニズムがはっきりしないままエビデンスが出てしまうところは、いつもの心不全業界の慣らしということであろうか。

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新型コロナ影響で8割の診療所が患者&収入減!対策どうする?

新型コロナウイルス感染症の流行拡大は、診療所・病院の経営に大きな影響を与えています。ケアネットでは、病床を有していない診療所で働く会員医師に対して、2020年4月の外来患者数・経営状態についてアンケート調査を行いました。アンケートは2020年5月21~25日に実施し、回答数は1,000名でした。Q1 先生が勤務・経営する診療所の外来患者数は、昨年同月比で増減がありましたか?(2020年4月・平日1日当たりの平均患者数を想定してお答えください)画像を拡大する回答者1,000人4月平日の外来患者数について聞いた設問では、前年同月比で「5~25%減った」という回答が41.2%と最多となり、「25~50%減った」が28.4%、「50%以上減った」が9.7%でした。「減った」という回答を合計すると8割に達し、新型コロナウイルス感染流行が診療所に与えた影響の大きさを確認できます。一方で、診療科ごとによる違いも浮き彫りになりました。

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コロナ対策のために共用物を減らそう 千葉県薬剤師会マニュアルが公開【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第48回

新型コロナウイルスとの戦いは共存のフェーズに入ってきたように思いますが、第2波、第3波が訪れることも否定できませんので、不特定多数の人が訪れる薬局ではこれからも相応の対処が必要です。皆さんの薬局でも、患者さんとの間に仕切りフィルムを設置したり、フェイスシールドを着用したりするなど、試行錯誤されていると思います。とはいえ、コロナ対応を薬局単位で調べて判断するのはなかなか難しいところもあると思います。そのような場合には、千葉県薬剤師会薬事情報センターが2020年5月に作成した『薬局薬剤師のための新型コロナウイルス感染制御マニュアル』がとても参考になります。第1章は、主に米国疾病管理予防センター(CDC)の情報に基づき、ウイルスの特徴や感染経路、それに応じた一般的な対処が書かれています。第2章は、薬局の構造や業務にフォーカスし、カウンターでの患者さんとのやり取りやOTC薬販売、在宅医療などでの具体的な感染対策を示した内容になっています。大変勉強になりますので一読をお勧めしますが、私がこのマニュアルを読んで、とくに「そういえばそうだな」と思ったのは「共用物を減らす」という点です。接触感染を防ぐためにカウンターなどを消毒することはすでに取り組まれていると思いますが、はさみやペン、スパーテルなどの調剤室内での物品をできるだけ共用せず、個別の物の使用を促すことで接触感染を防ぐことができる、というのは「なるほど」と思いました。以前、薬局の運用やマネジメントの本を執筆した際には、個人の嗜好や作業レベルに差が出ないように、またコスト削減にもなるため、できるだけ薬局で使用する物品は共用として使用するほうがよいと書いたことがあります。しかしながら、感染予防の観点からは、物品を個人用として薬局から支給して、共用しないようにするのが望ましいのだと思います。また、薬局の待合室には、電子血圧計や雑誌などが常備されていることがよくありますが、これについても同様に設置および使用を中止すべきと書かれています。「新しい生活様式を」と行政がアナウンスしていますが、自身の生活だけでなく、薬局運営にも新しい運営様式が求められているのだと痛感しました。政治の世界においても、政府よりも東京や大阪などの地方自治体が状況に応じて先手を打つことは珍しいことではなくなりました。今回のこのバタバタの中で、千葉県薬剤師会が先陣を切って薬局のためのマニュアルを公開したことは賞賛すべきことだと思います。薬の配達費補助の受付業務を各都道府県薬剤師会で行うことになりましたが、受付代行に人手を取られて忙殺されている…という声が聞こえてきます。誰でもできるような受付業務を代行するのではなく、薬剤師の特性を活かして現場に役立つ情報を発信するなど、本来の薬剤師会の役割に集中できるようにしてほしいと思います。

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事例003 再診料他の査定(他院DPC入院中)【斬らレセプト シーズン2】

解説新型コロナウイルス感染症の診療に身を削って対応くださっている医療機関関係者の皆様に、深く感謝を申し上げます。査定とは別に、医療機関などから請求されたレセプトについて、点検・審査などの結果、内容確認のため、医療機関などへお返しする「返戻」という制度があります。今回は、請求したレセプトにはなんらの問題がないにもかかわらず返戻となった事例をお伝えします。返戻事由を確認してみると「他院入院中」とあります。診療録を確認しましたが、入院中であることは確認できませんでした。患者に確認すると、いつもの薬が無くなりかけたことを理由に、入院中の病院に告げずに当院を受診されていたことがわかりました。入院料には、「入院中の患者に、自院で対応できない疾病があり、他の医療機関での診療の必要が生じた場合は、転医又は対診を求めることを原則とする」との規定があります。言い換えると、入院中の医療機関で対応できる疾患の場合は、入院中の医療機関以外の医療機関に診療を委ねることはできないのです。事例の患者には、説明して全額自費を請求しました。再発防止と患者への啓発に「他院入院中で当院を受診される方は、必ず窓口にお申し出ください。お申し出が無い場合、後日に診療費全額をご請求申し上げる場合があることを予めご了承ください。院長」と大きく掲示して防止策としています。問診表にも入院中である場合には、入院中に丸を付けてもらうようにしました。患者から相談・申出があった場合には、入院中の医療機関に確認して、診療情報提供書を送っていただき、合議の上で相応の報酬を頂くことにしています。了解が得られない場合は、緊急の場合を除き、診療を行わずに入院中の医療機関にお戻りいただき相談するようお伝えしています。

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新型コロナは日常診療にどう影響?勤務医1,000人に聞いたストレス・悩みの理由

 2020年初頭から続いたCOVID-19の感染拡大は、ようやく鈍化傾向を見せ始めた。各地で出されていた緊急事態宣言が先月までに相次いで解除となり、社会が“これまでの日常”に戻るべく動き出しているが、医療現場では依然、緊張した対応を迫られる状況が続いている。ケアネットでは、医師会員を対象に、コロナ対応を巡る経営・組織・心理面での影響についてアンケート調査を実施し、1,000人から回答を得た。 調査は、2020年5月16~22日、ケアネット会員のうち勤務医を対象にインターネット上で実施した。回答者の内訳は、年代別では30代が最も多く(32%)、40代(31%)、50代(23%)、60代以上(14%)だった。勤務先における立場は、「一般スタッフ」が最も多く(578人、58%)、次いで「部下6人以上のマネジメント層」(241人、24%)、「部下5人以下のマネジメント層」(181人、18%)だった。病床数別では、200床以上が77%で最も多く、100~199床(15%)、20~99床(8%)という順だった。なお今回のアンケート結果は、COVID-19感染者数が多かった地域のうち、9都府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡)で勤務する医師にご協力いただいたものである。 COVID-19感染拡大による影響として最も多かったのは、「院内感染防止のために特別な対応が必要になった」で、634人が回答に挙げていた(アンケートは選択形式、複数回答可)。続いて多かったのは、「COVID-19感染リスクに自身・スタッフがさらされることに不安を覚える」(574人)、「学会や勉強会などの直接的なコミュニケーションの機会が失われた」(556人)、「衛生資材の確保が難しくなった」(539人)で、いずれも半数以上の医師が回答に挙げていた。このほか、「来院者が減り、経営面の不安が出るようになった」、「見通しが立たない状況が続くことに疲れやいらだちを感じる」なども多くの医師が回答に挙げていた。 各選択肢のうち、一般スタッフの割合が最も高かったのは、「院内感染防止のために特別な対応が必要になった」(58.5%)で、以下、「COVID-19感染リスクに自身・スタッフがさらされることに不安を覚える」(55.2%)「学会や勉強会などの直接的なコミュニケーションの機会が失われた」(51.7%)などが続いた。 マネジメント層においても、上記3項目を選択した人は多かった。これに加え、とくに部下6人以上のマネジメント層では「衛生資材の確保が難しくなった」(67.2%)を挙げる人の割合が高く、スタッフの身を守る立場の医師たちが感染防止対策に苦慮していることがうかがえる。同様に、「来院者が減り、経営面が不安」を半数以上が挙げているのも、部下6人以上のマネジメント層の回答の特徴だ。 アンケートでは、現況に対しストレスや悩みを解消するための工夫や取り組みについて記述式で聞いたところ、多くのコメントが寄せられた。今回の調査の詳細と、具体的な記述コメントの内容はCareNet.comに掲載中。

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