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英国の新型コロナワクチン、第I/II相試験で有望な結果/Lancet

 英国で開発中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイク蛋白を発現する、チンパンジー・アデノウイルスベクター型ワクチン(ChAdOx1 nCoV-19)の第I/II相臨床試験の結果が発表された。安全性プロファイルは許容可能で、ブースター投与後の抗体反応の増加も確認されたという。英国・オックスフォード大学のPedro M. Folegatti氏らによる検討で、著者は「今回の試験結果は液性免疫と細胞性免疫の両者の誘導を示すもので、この候補ワクチンの第III相試験における大規模評価の進行を支持するものであった」と述べている。Lancet誌オンライン版2020年7月20日号掲載の報告。被験者のうち10例に2回投与 研究グループは英国5ヵ所のセンターにて、検査でSARS-CoV-2感染歴がなく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)様症状がみられない健康な18~55歳を対象に単盲検無作為化比較試験を行い、ChAdOx1 nCoV-19の安全性と有効性を検証した。 被験者を無作為に1対1の割合で2群に分け、一方にはChAdOx1 nCoV-19(5×1010ウイルス粒子)を、もう一方には髄膜炎菌結合型ワクチン(MenACWY)を、それぞれ単回筋肉内投与した。 なお、5ヵ所のセンターのうち2ヵ所についてはプロトコールを修正し、予防的パラセタモールの事前投与を認めた。また、被験者の10例は、非無作為化非盲検下で割り付け、ChAdOx1 nCoV-19を初回投与28日後にブースター投与を行う2回投与群とした。 ベースラインと28日後の時点で、液性免疫応答について、標準総IgG酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)(三量体・SARS-CoV-2スパイク蛋白を測定)、マルチプレックスアッセイ、3つのSARS-CoV-2中和アッセイ(50%プラーク減少中和力価[PRNT50]、マイクロ中和力価[MNA50、MNA80、MNA90]、Marburg VN)、偽ウイルス中和アッセイを用いて評価した。また、細胞性免疫応答については、体外Enzyme-Linked ImmunoSpot(ELISpot)アッセイで測定した。 主要アウトカムは有効性と安全性の2つで、有効性はウイルス学的に確認された症候性COVID-19の症例数で評価し、安全性は重篤な有害イベントの発生数で評価した。安全性は、ワクチン投与後28日間にわたって評価した。中和抗体反応、2回投与後全員に 2020年4月23日~5月21日の間に、1,077例が登録され、ChAdOx1 nCoV-19群に543例、MenACWY群に534例が割り付けられた。このうち10例がブースター投与群に登録された。 ChAdOx1 nCoV-19に関連した重篤有害事象の発生はなかった。一方、疼痛、発熱感、悪寒、筋肉痛、頭痛、倦怠感といった局所・全身性反応は、ChAdOx1 nCoV-19群でより多く発生した(すべてのp<0.05)。また、それらの多くはパラセタモールの使用によって低下することが確認された。 ChAdOx1 nCoV-19群では、14日目にスパイク特異的T細胞反応がピークに達した(中央値:スポット形成細胞数856個/末梢血単核球100万個、IQR:493~1,802、43例)。抗スパイクIgG応答は28日目まで上昇し(中央値:157ELISA単位[EU]、96~317、127例)、その値はブースター投与後に上昇した(639EU、360~792、10例)。 SARS-CoV-2に対する中和抗体反応は、単回投与後にMNA80測定で32/35例(91%)、PRNT50測定では35例全員(100%)で検出された。ブースター投与後、全員に中和活性が認められた(42日目:MNA80測定で9/9例、56日目:Marburg VN測定で10/10例)。中和抗体反応は、ELISAで測定した抗体価と強い相関があることが確認された(Marburg VN測定でR2=0.67、p<0.001)。

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COVID-19流行下における緩和ケア、各施設の苦闘と工夫

 日本がんサポーティブケア学会、日本サイコオンコロジー学会、日本緩和医療学会は8月9~10日にオンライン形式で合同学術集会を予定している。これに先立って、7月上旬に特別企画として「COVID19と緩和ケア・支持療法・心のケア」と題するオンラインセミナーが行われた。3学会から立場の異なるメンバーが集まり、COVID-19が緩和ケアに与える影響とその対処法について、それぞれの経験を語り合った。COVID-19が緩和ケアにどのような影響を与えたかアンケートを分析【司会】・里見 絵理子氏(国立がん研究センター中央病院 緩和医療科科長)・林 ゑり子氏(藤沢湘南台病院 がん看護専門看護師)【登壇者】・廣橋 猛氏(永寿総合病院 がん診療支援・緩和ケアセンター長)・柏木 秀行氏(飯塚病院 連携医療・緩和ケア科部長)・秋月 伸哉氏(がん・感染症センター駒込病院 精神腫瘍科科長)・渡邊 清高氏(帝京大学医学部内科学 腫瘍内科准教授) 冒頭に、日本緩和医療学会COVID-19関連特別ワーキンググループらが5月上旬に行った「新型コロナウイルス感染症に対する対応に関するアンケート」の結果1)が共有された。これはCOVID-19が、全国の専門緩和ケアサービスにどのような影響を与えたかを調べる目的で実施されたもので、654件の回答のうち重複を除く598件を分析対象とした。 専門的緩和ケアの提供形態別に「A:ホスピス・緩和ケア病棟(PCU)のみ/109施設」「B:緩和ケアチーム(PCT)のみ/303施設」「C:PCUとPCTの両方/186施設」に分類したうえで、「A+C:緩和ケア病棟群/295施設」「B+C:緩和ケアチーム群/489施設」に分けて分析が行われた。これは全国の緩和ケア病棟の約70%、緩和ケアチームの約50%を占めるという。 緩和ケア病棟群では、「新型コロナウイルス感染症の流行後、緩和ケア病棟の患者受け入れ方針に変化があった」と回答した施設が55%(161施設)あり、うち22施設では緩和ケア病棟がCOVID-19患者用の専門病棟に変更されていた。 続いて、「新型コロナウイルス感染症の流行後、緩和ケア病棟での面会制限はあるか」という質問に対して、緩和ケア病棟群の98%にあたる289施設が「ある」と回答。ここでは、予測される患者の予後によって段階的な対応をする施設が多く、末期近いことが予測される患者には面会制限を緩めるケースが多かった。 面会制限を行っているあいだ、面会以外でのコミュニケーション支援をはかる医療機関もあり、「テレビ電話などでのコミュニケーション支援」が55%と最も多く、「Wi-Fi使用可」が15%、「院内にPC・タブレットを用意」が6%と続いた(複数回答可)。ただ、「とくに何もしていない」という回答が87%と大きな割合を占めており、支援にあたって設備や人員確保の難しさも見える結果となっている。COVID-19感染対策下の面会のため緩和ケア病棟にタブレット 続けて、アンケートの結果も踏まえつつ、登壇者が自施設でのこれまでの対策と現況について情報をシェアした。―COVID-19に対する自施設の対応は? 渡邊氏「流行が懸念される早めの時期から、院内・診療科・部門ごとに感染対策を立て、実行した。通常診療に対しても感染予防策を取り、がん患者さんに対しては個別にリスクの評価を行った上で、治療継続、手術予定の延期、経口の抗がん剤やホルモン薬の使用等の検討を行っている。感染流行の長期化を踏まえ、息の長い対策にしていくことが肝要だ」 秋月氏「患者と同時にスタッフのケアが必要だと考えた。COVID-19感染症病棟のスタッフが孤立しないようリエゾンチームとして感染症病棟を巡回するだけでなく、緩和ケアチームなどを含む院内組織を立ち上げ、院内向けの情報発信にも力を入れた」 廣橋氏「3月に院内でのCOVID-19感染が発生し、これまでに200名以上の感染者を出してしまった。緩和ケア病棟も閉鎖を余儀なくされていたが、5月下旬から診療を再開した。緩和ケアのカギとなる多職種チームの活動も制限せざるを得ず忸怩たる思いだが、現状では感染防止を最優先せざるを得ない状況が続いている」―緩和ケアで重要となる、在宅医療など他施設との連携はどうしていたか? 柏木氏「これまで、電話とFAXと対面で行っていた医療連携だが、対面が使えなくなり、手間がかかるようになったことは事実だ」 廣橋氏「確かに大変にはなったが、以前から『顔の見える連携』をしてきたことが生きている。緩和ケア病棟の事前面談をオンラインで行う試みも開始した」 林氏「対面の機会が限られ、退院前のカンファレンスや家族への介護指導ができないことは痛い。その患者様の安楽な移動方法や介助方法、人工肛門やいろいろな装具を直接見て頂く機会が少ないため、電話で時間をかけてイメージできるまで説明したり、訪問看護に助けて頂いたりするなど、できることを工夫しながら行っている」―患者・スタッフの心のケアをどう行っていたか? 秋月氏「強い呼吸困難を経験した感染患者は、症状が収まってからも強い恐怖感を訴えるケースがある。また、家族や同僚を感染させてしまった、という自責の念に捉われる方もいた。また、異なる視点として、高齢者施設内のクラスターにおいては認知症患者がいる。そうした方はゾーニングを理解できず歩き回ったり、家族と会えずにパニックになったりなど、異なるケアが必要となった」 柏木氏「軽症でホテルに隔離されている患者に対応したが、特殊な環境下で不安を抱える方が多かった。入院されていればすぐに対応できるのだが、やりとりは電話に限られており、診療には限界があった」 秋月氏「スタッフに関しては、感染患者に直接対応しているか、そうでないかで置かれた状況が大きく異なる。直接対応するスタッフは自分や家族への感染リスクに不安を持っており、急ごしらえの対応チームでコミュニケーションミスも起きやすい。直接対応していないスタッフは、対応チームに人員を割かれており、情報のシェアがないと不満がたまりやすい。ストレスチェックやアンケートだけでは現場の実態が把握できないため、『対応策をヒアリングする』と言って個別面接を行った。『声を上げれば、何らかのフィードバックがある』とスタッフに感じてもらえる仕組みづくりが大切だ」―家族へのケア、面会制限はどのように行ったか? 廣橋氏「COVID-19感染対策下におけるご家族との関わりにおいては、日本緩和医療学会の普及啓発ワーキンググループで作成した『感染症対策下における入院患者さんのご家族向けリーフレット』を役立ててもらいたい。面会制限中は、家族に写真やメッセージを持ってきてもらったり、スマートフォンやタブレットのビデオ通話を使った面会を支援したりなど、少しでもコミュニケーションがとれるように工夫している。私を中心に行ったクラウドファンディングでは多くの支援が集まり、今後は希望する緩和ケア病棟にタブレット配置などの環境整備をしていくことができそうだ」 各施設でスタッフ間や患者と家族のコミュニケーション支援においてIT機器やオンラインを使った各種の試みが行われていることが共有され、「今後に活かしていきたい」という声が上がっていた。本セミナーの動画は、合同学術集会の開催時に、参加者に対して公開される予定となっている。

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医師の2020年夏季ボーナス支給、新型コロナの影響は?

 6~7月と言えば、業務に追われるもボーナス支給日を心待ちに日々励んでいる人が多い時期。ところが今年は新型コロナウイルスの影響で状況は一変。外来患者減などが医療施設の経営に大打撃を与え、医療者の給与や将来設計もが脅かされる事態に発展している。 この状況を受け、ケアネットでは7月9日(木)~15日(水)、会員医師1,014名に「夏季ボーナスの支給状況などに関するアンケート」を実施。その結果、全回答者のうち14.6%は本来支給されるはずの夏季ボーナスが不支給または未定であり、支給された方でも25%は例年より減額されていたことが明らかになった。 本アンケートでは30代以上の医師(勤務医、開業医問わず)を対象とし、新型コロナ対応への危険手当の支給有無や夏季ボーナス支給状況を調査。集計結果を年代や病床数、診療科で比較した。ボーナス減の影響を強く受けていた診療科は主に、内科、循環器内科、整形外科、呼吸器内科で、支給状況を病床別でみると、支給されなかった・未定の割合は0床(16%)、1~19床(6%)、20~99床(20%)、100~199床(18%)、200床以上(13%)だった。 今回、ボーナスが支給された医師の中でも「冬季は不支給になりそう」などの懸念を抱いており、不支給だった医師には「ボーナス以前に月給が大幅に減った」 というコメントも。このほか、「異動予定が消滅」「賞与、昇給の取り消し」など自身のキャリアプランに影響した例もあった。 アンケート結果はこちら

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新型コロナウイルス診療の手引きをアップデート/厚生労働省

 7月17日、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は、全国の関係機関ならびに医療機関に向けに作成する「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」を改訂し、2.2版として発表した。  3月17日に第1版が発行されたこの手引きは、5月18日に第2版が発行され、その後も毎月1回のペースで改訂されている。今回の改訂における主なポイントは以下のとおり。・国内データ:直近まで更新・診断:遺伝子増幅検査(LAMP法・PCR法)の解説を追加・診断:抗原定量検査の解説を追加・届出:新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(MIS-G)の解説を追加・重症度分類:重症化マーカーとしてKL-6上昇を追加・薬物療法:承認された薬物療法としてデキサメタゾンを追加・薬物療法:ファビピラビル(商品名:アビガン)に関する臨床試験の経過を追加・環境整備:次亜塩素酸水を使用する場合の注意点を追加・退院基準:抗原定量検査の項目を追加

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COVID-19流行、 ACSの入院数減に影響か/Lancet

 イングランドでは、急性冠症候群(ACS)による入院患者数が、2019年と比較して2020年3月末には大幅に減少(40%)し、5月末には部分的に増加に転じたものの、この期間の入院数の低下は、心筋梗塞による院外死亡や長期合併症の増加をもたらし、冠動脈性心疾患患者に2次予防治療を提供する機会を逸した可能性があることが、英国・オックスフォード大学のMarion M. Mafham氏らの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年7月14日号に掲載された。COVID-19の世界的流行期に、オーストリアやイタリア、スペイン、米国などでは、ACSによる入院数の低下や、急性心筋梗塞への直接的経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の施行数の減少が報告されているが、入院率の変化の時間的な経過やACSのタイプ別の影響、入院患者への治療などの情報はほとんど得られていないという。ACSのタイプ別に、入院と手技の数、減少率を評価 研究グループは、イングランドにおける種々のタイプのACS入院患者数の変化の規模、性質、期間を把握し、COVID-19の世界的流行の結果としての、患者の院内管理への影響を評価する目的で検討を行った(英国医学研究評議会[MRC]などの助成による)。 解析には、Secondary Uses Service Admitted Patient Careデータベースに記録されたイングランドにおける2019年1月1日~2020年5月24日の、ACSのタイプ別の入院データを用いた。 入院患者は、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)、非STEMI(NSTEMI)、タイプ不明の心筋梗塞、その他のACS(不安定狭心症を含む)に分類された。また、入院期間中に受けた血行再建術(PCIを行わない冠動脈造影、PCI、冠動脈バイパス術[CABG])が同定された。 入院と手技の数を週単位で算出し、入院とACSタイプ別の減少率および95%信頼区間(IC)が算定された。5月最終週の減少率は16%、入院日数も短縮 ACSによる入院は、2020年2月中旬から減少しはじめ、2019年のベースラインの3,017件/週から、2020年3月末には1,813件/週へと40%(95%CI:37~43)低下した。この減少傾向は、2020年4月~5月には部分的に増加に転じて、5月最終週には2,522件/週へと上昇し、ベースラインからの減少率は16%(13~20)となった。 入院数の減少期間中は、ACSのすべてのタイプで入院数が低下したが、STEMIとNSTEMIでは、NSTEMIで減少率が高く、2019年の1,267件/週から2020年3月末の733件/週へと42%(95%CI:38~46)低下した。 並行して、PCI施行数も減少し、STEMIでは2019年の438件/週から2020年3月末には346件へと21%(95%CI:12~29)低下し、NSTEMIでは383件/週から240件/週へと37%(29~45)減少した。 また、ACS患者の入院期間中央値は、2019年は4日(IQR:2~9)であったが、2020年3月末には3日(1~5)へと短くなった。STEMIは3日から2日へ、NSTEMIは5日から3日へ短縮した。 著者は、「ACSの患者管理へのCOVID-19の影響の全容は、これらの解析を更新することで、引き続き評価されるだろう」とし、「COVID-19の次なる流行時に、不必要な死亡や障害を回避するためにも、ACSなどの緊急性の高い疾患の患者が救急診療部を受診しない理由を解明し、速やかに対処すべきである」と指摘している。

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新型コロナ重症例、デキサメタゾンで28日死亡率が低下/NEJM

 英国・RECOVERY試験共同研究グループのPeter Horby氏らは 、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した患者のうち、侵襲的人工呼吸器または酸素吸入を使用した患者に対するデキサメタゾンの投与が28日死亡率を低下させることを明らかにした。NEJM誌オンライン版2020年7月17日号に掲載報告。なお、この論文は、7月17日に改訂された厚生労働省が発刊する「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第2.2版」の“日本国内で承認されている医薬品”のデキサメタゾン投与の参考文献である。 この研究では、2020年3月19日~6月8日の期間にCOVID-19入院患者へのデキサメタゾン投与における有用性を把握するため、非盲検試験が行われた。対象者をデキサメタゾン投与群と通常ケア群にランダムに割り当て28日死亡率を評価し、人工呼吸器管理や酸素吸入の有無によるデキサメタゾン投与の有用性を検証した。デキサメタゾン群には1日1回6 mgを最大10日間、経口または点滴静注で投与した。通常ケア群には、日常臨床でデキサメタゾンを使用している患者が8%含まれていた。薬物療法として、アジスロマイシンは両群で使用(デキサメタゾン群:24% vs.通常ケア群:25%)、そのほか通常ケア群ではヒドロキシクロロキン、ロピナビル・リトナビル、IL-6アンタゴニストなどが投与された。また、レムデシビルは2020年5月26日より使用可能となり一部の症例で投与された。 主な結果は以下のとおり。・全参加者11,303例のうち、他の治療を受けるなどの理由で4,878例が除外された。残り6,425例をデキサメタゾン投与群2,104例(平均年齢±SD:66.9±15.4歳)と通常ケア群4,321例(平均年齢±SD:65.8±15.8歳)に割り付けた。・6,425例の呼吸器補助別の割り付けは、侵襲的人工呼吸器管理が1,007例、酸素吸入が3,883例、呼吸器補助なしは1,535例だった。・28日死亡率は、デキサメタゾン群が482例(22.9%)、通常ケア群は1,110例(25.7%)で、デキサメタゾン群で有意に低下した(Rate Ratio[率比]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.75〜0.93、p<0.001)。・呼吸器補助レベルを考慮した場合、侵襲的人工呼吸器管理の患者において絶対的・相対的ベネフィットが示される傾向で、デキサメタゾン群は通常ケア群より死亡発生率が低く(29.3% vs.41.4%、率比:0.64、95%CI:0.51~0.81)、酸素吸入群においても同様だった(23.3% vs.26.2%、率比:0.82、95%CI:0.72~0.94)。しかし、呼吸器補助を受けていない患者において、デキサメタゾンの効果は明らかではなかった(17.8% vs.14.%、率比:1.19、95%CI:0.91~1.55)。・副次評価項目として、デキサメタゾン群は通常ケア群より入院期間が短く(平均入院日数:12日 vs.13日)、28日以内の退院の可能性が高かった(率比:1.10、95%CI:1.03~1.17)。この最大因子は侵襲的人工呼吸器管理だった。・呼吸器補助を受けていない患者において、副次評価項目である侵襲的人工呼吸器管理や死亡の複合は通常ケア群よりデキサメタゾン群で低かった(率比:0.92、95%CI:0.84~1.01)。

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再来年から?電子処方箋の導入で薬局業務はどう変わるか【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第51回

2020年6月に内閣府で2020年第9回経済財政諮問会議が開催され、「データヘルスの集中改革プラン」が報告されました。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた“新たな日常”に対応するもので、今後の数年で医療情報のデジタル化、一元化が加速しそうです。厚生労働省は7月9日、社会保障審議会医療保険部会に、マイナンバーカードを利用した「電子処方箋の仕組みの実現に向けた今後の進め方」を示した。現在、紙で発行している処方箋を電子化し、医療機関が登録した処方情報を薬局が取得するというもの。22年夏ごろまでに仕組みを構築する。(2020年7月10日付 RISFAX)この発表は、2023年度に電子処方箋のシステムの運用を開始する予定だったものを、1年ほど前倒しして運用を行うとしたものです。2022年の夏って、あと2年しかありません。しかし、電子処方箋ってなに? 患者さんが来たらどうしたいいの? と困惑されている方も少なくないのではないかと思います。おおまかな電子処方箋対応のフローは下記のとおりです。1.医師は処方箋管理システムにアクセスして処方データを登録する。処方データへのアクセスコード(QRコード)を印字した紙または電子データを患者に渡す。2.患者は薬局でアクセスコードを提示する。3.薬剤師は、本人確認を行ったうえで薬局システムから処方データを参照し、必要に応じて処方内容の照会などを実施したうえで調剤を行う。調剤後は調剤データを登録する。2018年から2019年にかけて電子処方箋運用の実証事業が行われ、その結果である「電子処方箋の本格運用に向けた実証事業一式」最終成果報告が発表されています。この実証事業に参加した医療機関と薬局へのヒアリング結果として、以下のような感想が挙げられています(抜粋、一部改変)。電子処方箋だけでは診療の質には意味をなさないが、PHR(生涯型健康医療情報電子記録)が診療の質を上げると考えている。電子処方箋はその足掛かり。(医療機関)比較的近い薬局が対応してもらえないと実際には発行しづらい。あえて対面で診た患者さんに電子処方箋を出す理由はなさそうと感じた。(医療機関)在宅ではメリットがあるかもしれない。現在はFAXでもらっておいて、患者宅まで薬を届け、その際に処方箋の原本を回収している。(薬局)今回の実証事業の症例では、疑義照会の事例がなく比較的簡単な操作だったが、疑義照会などが起こった際の操作に関しては不安が残る。(薬局)導入にはさまざまな課題がありますが、紙の処方箋の内容をレセプトシステムに入力する手間が省けたり、病名などの患者情報と紐付けやすくなったりするなどのメリットはあるように思います。とくに、在宅やオンライン診療との相性が良さそうです。マイナンバーカードが医療情報の一元化のカギに電子処方箋の導入だけでなく、全国の医療機関などで医療情報を確認できる仕組みの拡大や、患者自身が保健医療情報を活用できる仕組みの拡大も同様に協議されており、同時期に始まる予定です。これらの医療情報の一元管理によるメリットとして、以下のようなものが挙げられています。かかりつけの医療機関が被災した際であっても、別の医療機関が患者の情報を確認し、必要な治療を継続することができる。意識障害のある患者の薬剤情報などを確認することで、より適切で迅速な検査、診断、治療などを実施することができる。複数医療機関を受診する患者の情報を集約して把握することができる。重複投薬などを削減できる。すごい!という感嘆の言葉しか出ません。医療情報の一元管理は国レベルでの調整が必要で、電子処方箋よりもはるかにハードルが高いため、わずか2年後に運用できるとは思い難いですが、夢のような世界ですね。これらのベースとなるのが、マイナンバーカードの活用で、マイナンバーカードを2021年3月から保険証として利用するということを総務省や内閣府が中心となって推進しています。また、生活保護の医療扶助で用いる医療券や調剤券をマイナンバーカードへ置き換える検討に着手し、2023年度からの本格運用が予定されています。しかし、マイナンバーカードの普及率は10%台を推移していて、普及しているとは言えない状況です。マイナポイントのキャンペーンでどのくらいマイナンバーカードの普及率が上がるのか、今後もマイナンバーカードの普及と電子処方箋導入の動きを見守っていきたいと思います。

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第18回 待望のプラセボ対照無作為化試験でCOVID-19にインターフェロンが有効

中国武漢での非無作為化試験1)や香港での無作為化試験2)等で示唆されていたインターフェロン1型(1型IFN)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療効果が小規模ながら待望のプラセボ対照無作為化試験で裏付けられました3,4)。先週月曜日(20日)の速報によると、英国のバイオテクノロジー企業Synairgen社の1型IFN(インターフェロンβ)吸入薬SNG001を使用したCOVID-19入院患者が重体になる割合はプラセボに比べて79%低く、回復した患者の割合はプラセボを2倍以上上回りました。わずか100人ほどの試験は小規模過ぎて決定的な結果とはいい難いと用心する向きもありますが、SNG001は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)食い止めに大いに貢献する吸入薬となりうると試験を率いた英国・サウサンプトン大学の呼吸器科医Tom Wilkinson教授は言っています5)。Synairgen社を率いるCEO・Richard Marsden氏にとっても試験結果は朗報であり、COVID-19入院患者が酸素投与から人工呼吸へと悪化するのをSNG001が大幅に減らしたことを喜びました。投資家も試験結果を歓迎し、Synairgen社の株価は試験発表前には36ポンドだったのが一時は236ポンドへと実に6倍以上上昇しました。この記事を書いている時点でも200ポンド近くを保っています。Synairgen社は入院以外でのSNG001使用も視野に入れており、COVID-19発症から3日までの患者に自宅でSNG001を吸入してもらう初期治療の試験をサウサンプトン大学と協力してすでに英国で始めています6)。米国では1型IFNではなく3型IFN(Peginterferon Lambda-1a)を感染初期の患者に皮下注射する試験がスタンフォード大学によって実施されています7)。インターフェロンは感染の初期治療のみならず予防効果もあるかもしれません。中国・湖北省の病院での試験の結果、インターフェロンを毎日4回点鼻投与した医療従事者2,415人全員がその投与の間(28日間)COVID-19を発症せずに済みました8)。インターフェロンはウイルスの細胞侵入に対してすぐさま強烈な攻撃を仕掛ける引き金の役割を担います。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はどうやらインターフェロンを抑制して複製し、組織を傷める炎症をはびこらせます4,9)。ただしSARS-CoV-2がインターフェロン活性を促すという報告10)や1型IFN反応が重度COVID-19の炎症悪化の首謀因子らしいとする報告11)もあり、インターフェロンは場合によっては逆にCOVID-19に加担する恐れがあります。米国立衛生研究所(NIH)のガイドライン12)では、重度や瀕死のCOVID-19患者へのインターフェロンは臨床試験以外では使うべきでないとされています。2003年に流行したSARS-CoV-2近縁種SARS-CoVや中東で依然として蔓延するMERS-CoVに感染したマウスへのインターフェロン早期投与の効果も確認されており13,14)、どの抗ウイルス薬も感染初期か場合によっては感染前に投与すべきと考えるのが普通だとNIHの研究者Ludmila Prokunina-Olsson氏は言っています15)。参考1)Zhou Q, et al. Front Immunol. 2020 May 15;11:1061.2)Hung IF, et al. Lancet. 2020 May 30;395:1695-1704.3)Synairgen announces positive results from trial of SNG001 in hospitalised COVID-19 patients / GlobeNewswire 4)Can boosting interferons, the body’s frontline virus fighters, beat COVID-19? / Science 5)Inhaled drug prevents COVID-19 patients getting worse in Southampton trial 6)People with early COVID-19 symptoms sought for at home treatment trial 7)OVID-Lambda試験(Clinical Trials.gov)8)An experimental trial of recombinant human interferon alpha nasal drops to prevent coronavirus disease 2019 in medical staff in an epidemic area. medRxiv. May 07, 2020 9)Hadjadj J, et al. Science. 2020 Jul 13:eabc6027.10)Zhuo Zhou, et al. Version 2. Cell Host Microbe. 2020 Jun 10;27(6):883-890.11)Lee JS, et al. Sci Immunol. 2020 Jul 10;5:eabd1554.12)Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Treatment Guidelines,NIH 13)Channappanavar R, et al. Version 2. Cell Host Microbe. 2016 Feb 10;19:181-93. 14)Channappanavar R, et al. J Clin Invest. 2019 Jul 29;129:3625-3639.15)Seeking an Early COVID-19 Drug, Researchers Look to Interferons / TheScientist

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マスク着用で医療者のCOVID-19抑制効果が明らかに/JAMA

 マサチューセッツ州最大の医療システムで12の病院と75,000人超の従業員を抱えるMass General Brigham(MGB)は、2020年3月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において、医療従事者(HCW:health care workers )のCOVID-19の前兆に対する体系的な検査やサージカルマスクを着用した全HCWと患者に対してユニバーサルマスキングを含む多面的な感染対策の研究を実施した。その結果、MGBでのHCWのマスク着用習慣がHCW間の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性率の有意な低下に関連していたと示唆された。また、患者-HCWおよびHCW同士の感染率低下に寄与する可能性も明らかになった。JAMA誌2020年7月14日号リサーチレターでの報告。 研究者らはマスク着用の病院方針とHCW間の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染率との関連性を評価するため、2020年3月1日~4月30日の期間にPCR検査を受けた患者に対して直接的または間接的ケアを行ったHCWを特定した。 1)HCWのユニバーサルマスキング実施前期間(2020年3月1〜24日)2)患者のユニバーサルマスキング実施移行期間(2020年3月25日〜4月5日)と症状発現が認められた際の追加期間(2020年4月6〜10日)3)ユニバーサルマスキング介入期間(2020年4月11〜30日) 陽性率は全HCWの最初の検査結果での陽性を分子とし、検査2回目以降での陽性は除外した。分母には検査を一度も行っていないHCWとその日に検査を行ったHCWが含まれた。解析には重み付き非線形回帰分析を使用した。 主な結果は以下のとおり。・HCW:9,850人のうち、1,271人(12.9%)がSARS-CoV-2陽性だった。・陽性者の年齢中央値は39歳、73%は女性だった。また、陽性者の職種内訳は、医師・研修医(7.4%)、看護師・医師助手(26.5%)、医療技術者・看護助手(17.8%)、その他(48.3%)だった。・介入前のSARS-CoV-2陽性率は、0%から21.32%と指数関数的に増加し、加重平均は1日あたり1.16%増加、倍加時間( Doubling Time) は3.6日だった(95%信頼区間[CI]:3.0~4.5)。 ・介入期間中の陽性率は14.65%から11.46%に直線的に減少し、加重平均は1日あたり0.49%減少した。また、 slope の傾きは1.65%変化し(95%CI:1.13~2.15%、p<0.001 )、介入前と比較して、1日あたり大きく減少した。

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ACE阻害薬とARB、COVID-19死亡・感染リスクと関連せず/JAMA

 ACE阻害薬/ARBの使用と、高血圧症患者における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断率、またはCOVID-19と診断された患者における死亡率や重症化との間に、有意な関連は認められなかった。デンマーク・コペンハーゲン大学病院のEmil L. Fosbol氏らが、デンマークの全国登録を用いた後ろ向きコホート研究の結果を報告した。ACE阻害薬/ARBは、新型コロナウイルスに対する感受性を高め、ウイルスの機能的受容体であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の発現が亢進することによりCOVID-19の予後が悪化するという仮説があったが、今回の結果から著者は「COVID-19のパンデミック下で臨床的に示唆されているACE阻害薬/ARBの投与中止は、支持されない」とまとめている。JAMA誌2020年7月14日号掲載の報告。COVID-19患者の後ろ向きコホート研究と高血圧患者のコホート内症例対照研究で 研究グループは、COVID-19患者の予後を調査する目的で、2020年2月1日以降にCOVID-19と診断された患者(ICD-10の診断コードで確認)を特定し、診断日から2020年5月4日まで追跡した(後ろ向きコホート研究)。主要評価項目は死亡、副次評価項目は死亡または重症COVID-19の複合アウトカムで、ACE阻害薬/ARB使用群と非使用群を比較した。使用群は、診断日前6ヵ月間にACE阻害薬/ARBが1回以上処方された患者と定義した。 また、COVID-19の感受性を調査する目的で、デンマークのすべての高血圧症患者を2020年2月1日~5月4日まで追跡し、コホート内症例対照研究を行った。主要評価項目はCOVID-19の診断で、Cox回帰モデルによりCOVID-19との関連性のACE阻害薬/ARBと他の降圧薬で比較した。使用歴の有無で有意差なし 後ろ向きコホート研究には、COVID-19患者4,480例が組み込まれた(年齢中央値54.7歳、四分位範囲:40.9~72.0歳、男性47.9%)。1例目の診断日は2020年2月22日、最後の症例は2020年5月4日、ACE阻害薬/ARB使用群は895例(20.0%)、非使用群は3,585例(80.0%)であった。 30日死亡率は、ACE阻害薬/ARB群18.1%、非使用群7.3%であり、ACE阻害薬/ARB群で高かったものの有意な関連は認められなかった(年齢、性別、病歴で補正したハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.67~1.03)。死亡または重症COVID-19の30日発生率は、ACE阻害薬/ARB群31.9%、非使用群14.2%であった(補正後HR:1.04、95%CI:0.89~1.23)。 コホート内症例対照研究では、高血圧症の既往があるCOVID-19患者571例(年齢中央値73.9歳、男性54.3%)(COVID-19患者群)と、年齢と性別をマッチさせたCOVID-19を有していない高血圧症患者5,710例(対照群)を比較した。ACE阻害薬/ARBの使用率はCOVID-19患者群で86.5%、対照群は85.4%であった。 ACE阻害薬/ARBの使用は他の降圧薬使用と比較し、COVID-19罹患率との有意な関連は認められなかった(補正後HR:1.05、95%CI:0.80~1.36)。

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第17回 ALS患者の嘱託殺人で医師逮捕、日本緩和医療学会が見解を表明

<先週の動き>1.ALS患者の嘱託殺人で医師逮捕、日本緩和医療学会が見解を表明2.コロナ余波による医業収入の落ち込み、回復の兆し見えず3.不正入試問題の東京医大、元理事長に1億円の申告漏れが発覚4.新型コロナワクチン、入手や流通は国が一元対応する方針5.今年度の薬価調査、規模縮小の上で実施へ1.ALS患者の嘱託殺人で医師逮捕、日本緩和医療学会が見解を表明23日、指定難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者から依頼を受け、薬物を投与し殺害したとして、2人の医師が嘱託殺人の疑いで逮捕された。報道によると、昨年11月30日、京都市中京区の患者宅に知人を装って訪問し、急性薬物中毒で死亡させた疑い。患者の遺体からは、鎮静作用のあるバルビツール酸系の薬物が検出されており、京都府警は、胃瘻チューブから薬物を投与したとみている。なお、医師らは偽名を使うことで身元が発覚しないよう警戒し、計画的に準備していた模様。逮捕された医師のうち1人は、海外の大学の医学部を卒業したとして医師国家試験を受け医師免許を取得していたが、京都府警が調査したところ、医学部の卒業の事実を確認できなかった。今後、倫理的な観点からも大きな問題となるとみられる。この事件を受け、日本緩和医療学会が、「いわゆる積極的安楽死や⾃殺幇助が緩和ケアの⼀環として⾏われることは決してありません」などとの見解を25日に表明した。なお、今回逮捕された医師 2人は本学会の会員ではない。(参考)逮捕された医師は元厚労省官僚 「高齢者は社会の負担」優生思想 京都ALS安楽死事件(京都新聞)ALS嘱託殺人事件 医師2人は偽名で女性宅訪問か(NHK)筋萎縮性側索硬化症の患者に対して2名の医師が嘱託殺⼈罪の疑いで逮捕された件について(日本緩和医療学会)2.コロナ余波による医業収入の落ち込み、回復の兆し見えず日本医師会は22日に定例記者会見を開き、新型コロナウイルス感染症対応下での医業経営の状況について発表した。これによると、2020年5月の入院外保険収入の対前年同期比は病院で11.6%減、診療所で20.2%減であった。また診療所の中には、小児科、耳鼻咽喉科では総点数が50%以上減少したと報告した施設も存在した。1ヵ月単月でも、有床診療所で360万円減、無床診療所で120万円減(小児科は300万円)の赤字。これに対し、医療法人、感染防止策を行う有床診療所には上限200万円、個人開業医、無床診療所には上限100万円の補助金があるが、いずれも1回限りであるなど対応は十分とは言えない。初診料算定回数の対前年同月比は、3月、4月、5月と減少し続けており、5月には病院、診療所とも3~4割減と、回復の兆しが見られていないままだ。(参考)新型コロナウイルス感染症対応下での医業経営の状況―2019年及び2020年3~5月レセプト調査―(日本医師会)3.不正入試問題の東京医大、元理事長に1億円の申告漏れが発覚一昨年の不正入試問題が発覚した東京医科大学の前理事長が、入試の前後に受験生の親から個人的に受け取っていた謝礼をめぐって、東京国税局からおよそ1億円の申告漏れを指摘されていることが25日明らかとなった。この事件では、女子学生や浪人生の入試採点において、合否判定を不利にするような操作が長年続けられたことが明らかになっており、前理事長は辞任している。国税局は、前理事長に一昨年までの5年間でおよそ1億円、前学長も同様に謝礼を受け取ったとして、4年間で数百万円の申告漏れを指摘し、両者ともすでに修正申告したとみられる。(参考)東京医大の前理事長 1億円の申告漏れ 不正入試の謝礼(NHK)4.新型コロナワクチン、入手や流通は国が一元対応する方針政府は、国際的に開発競争が続く新型コロナウイルスワクチンの入手や国内流通について、「安全保障上の重要課題」として、首相官邸主導の元、国家安全保障局が一元的に対応することとした。年内に、ワクチン確保を含む感染症対策の充実対策を盛り込むとしているが、議論の結論をまとめた文書は特定秘密保護法に基づく特定秘密にも指定されており、現時点では具体策などは不明である。(参考)新型コロナ NSS、ワクチン確保 安保戦略改定、一元対応へ(毎日新聞)5.今年度の薬価調査、規模縮小の上で実施へ22日に開催された中央社会保険医療協議会総会において、「2020年の薬価調査」について、規模を縮小した上で実施する方針を固めた。今後、9月を対象月とする調査の実施に向けて準備が進む。これまで、新型コロナウイルス感染症の拡大もあり、医療機関や薬局・卸事業者による納入価格交渉も十分にできていないため、対応が困難であると反対していたが、薬価調査の実施方針が政府から示されたため、条件付きでの調査実施を了承した。2021年度の薬価改定が実施されるかは、あらためて検討される見込み。(参考)令和2年度医薬品価格調査(薬価調査)について(中医協)

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新型コロナワクチン、米の第I相試験で全例が抗体獲得/NEJM

 米国・国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)とModerna(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)が共同で開発中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)mRNAワクチン「mRNA-1273」の、第I相臨床試験の結果が発表された。全例で中和抗体が検出され、試験中止について事前に規定した安全性に関する懸念は発生しなかった。米国・カイザーパーマネンテ(Kaiser Permanente Washington Health Research Institute)のLisa A. Jackson氏らmRNA-1273 Study Groupによる報告で、著者は「結果は、本ワクチンのさらなる開発を支持するものであった」とまとめている。NEJM誌オンライン版2020年7月14日号掲載の報告。25μg、100μg、250μgを28日間隔・2回投与 研究グループは2020年3月16日~4月14日にかけて、18~55歳の健康な成人45例を対象に、第I相の用量漸増非盲検試験を行った。被験者を15例ずつ3群に分け、mRNA-1273ワクチンを、25μg、100μg、250μgのいずれかの用量で28日間隔・2回投与した。2回投与後の全身性有害事象、25μg群54%、100μg・250μg群は全例 1回投与後(29日目)の抗体反応は高用量群ほど高く、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によるS-2P抗体の幾何平均抗体価(GMT)は、25μg群が4万227、100μg群が10万9,209、250μg群が21万3,526だった。 2回投与後(57日目)のELISAによるS-2P抗体のGMTは、25μg群が29万9,751、100μg群が78万2,719、250μg群が119万2,154と上昇した。これらは、SARS-CoV-2感染回復者のGMTの14万2,140を上回っていた。 また、2回接種後、評価が行われた全被験者において、血清中和抗体は2通りの方法(pseudotyped lentivirus reporter single-round-of-infection neutralization assay[PsVNA]とplaque-reduction neutralization testing[PRNT])で検出された。同検出値は、感染回復期血清検体パネルの上半分値とほぼ同等だった。 被験者の半数以上で認められた有害事象は、疲労感、悪寒、頭痛、筋肉痛、注射部位痛だった。2回投与後の全身性有害事象の頻度は高く、低用量の25μg群では7/13例(54%)、100μg、250μg群では全員(それぞれ15例、14例)と高用量群で高かった。250μg群の3例(21%)では、1つ以上の重篤有害事象が報告された。

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第16回 世界が嘱望の新型コロナ予防ワクチン試験、質が伴うスピード感?

7月に入り第2波ではないかと噂されるほど感染者が急増している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。いま、医療従事者も一般人も一番待ち望んでいるのが予防ワクチンの登場だ。そのような中、開発中のワクチンの中では最も先行していると言われるアストラゼネカ社とオックスフォード大学の第I/II相試験結果がLancet誌に掲載1)され、メディアもこれを取り上げている。オックスフォード大のワクチン、初期の治験で効果確認(朝日新聞)新型コロナ ワクチン臨床で抗体 英・中のチーム発表(毎日新聞[共同通信配信記事])コロナワクチン臨床試験、治験者95%で抗体4倍増…英製薬大手が中間発表(読売新聞)英アストラゼネカのワクチン「強い免疫反応」 初期治験(日本経済新聞)4本の記事を比べると、読売以外は「有望」「期待」という用語を使っており、この記事を読み「いよいよワクチンが登場してくるのか」と期待を膨らませる人は少なくないはずだ。今回の試験は、COVID-19ワクチン候補を髄膜炎菌ワクチンと比較した被験者1,077例の無作為化単盲検比較試験で、うち10例は無作為化の対象とせず、ワクチンのブースター(28日の間隔を置いた2回接種)投与を受けている。また、一部の被験者ではワクチンの副反応軽減目的でアセトアミノフェンの投与が行われている。この結果、投与14日後には新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)のスパイクタンパク質に特異的なT細胞反応がピークに達し(n=43)、投与28日後のSARS-Cov-2のスパイクタンパク質に対するIgG抗体量の上昇(n=127)が確認された。抗体量は一部の単回投与例とブ―スター投与例では56日後まで上昇し続けた。また、投与28日後のSARS-Cov-2のスパイクタンパク質に対する中和抗体反応は91%(n=35)で認められ、ブースター投与9例では全例で確認されたとのこと。主な有害事象は疲労感(アセトアミノフェン非投与群70%vs.アセトアミノフェン投与群71%)と頭痛(同68%vs.61%)。このほかには筋肉痛、不快感、熱感、悪寒など(発現率は50~60%前後)で、重篤なものは認められなかった。このようにしてみると、まだ第I/II相試験ということもあり、抗体量の測定などが行われたn数も少なく、個人的には前向きには捉えられるものの、まだまだプリミティブな結果だと受け止めている。ただ、この各紙を一覧すると、細かいことを書いたらそもそも読んでもらえないという一般向け紙面の限界もあり、漠然とした希望だけを持ってしまいかねない。もっともこの中でも朝日新聞は研究チームの会見コメントとして、まだ課題も多く先行き不透明なものであることを強調している。Lancet誌の論文内ではこの点について、まず被験者の年齢中央値が35歳であることを指摘している。第I/II相試験ゆえにこうした年齢中央値になるのはやむを得ないが、COVID-19で重症化、死亡リスクが高いとされる集団の一つは高齢者である。実際、米国医師会雑誌(JAMA)に中国の国立疾病予防管理センター(中国名:中国疾病預防控制中心[中国CDC])のグループが発表した新型コロナ感染者4万4,672人の解析データ2)では、40歳代までの致死率は最大でも0.4%に過ぎないが、50歳代では1.3%、60歳代で3.6%、70歳代で8.0%、80歳代以上では14.8%と右肩上がりに上昇する。このためワクチンが登場した暁には高齢者は優先接種の対象となる可能性は高い。だが、B型肝炎ワクチンに代表されるように加齢とともに抗体価を獲得しにくいワクチンもあるため、今後高齢者を対象とした試験が必要になるはずだ。また、研究グループは論文内でベクターとして使用しているアデノウイルスに対する抗体の影響評価も必要と指摘している。そして、この試験は今年の4月23日~5月21日までに行われたもので、主要評価項目は接種後6ヵ月間のCOVID-19発症抑制と重篤な有害事象の発現率である。単純計算すれば試験終了は11月末になり、データの解析はその後ということになる。ただ、従来からアストラゼネカ社は9月には供給を開始したい旨を公表している。国内外で特例承認のようなスキームを活用すると思われるが、2009年の新型インフルエンザと違い、これまでまったくワクチンのなかったコロナウイルスに対してこのスピードはすごいと思う以上に、「???」「大丈夫?」と思ってしまう。私は最近、こうした仕事柄もあり医療に無縁な人から「新型コロナのワクチンっていつぐらいまでにできる?」と尋ねられることはよくあるが、以前から「まあ極めて順調に行って、来春ぐらいじゃない? でもできない可能性も十分あるよ」と答えている。少なくとも今回の結果を見てもこの答えに変更はない。参考1)Folegatti PM, et al. Lancet. 2020 Jul 20.[Epub ahead of print]2)Wu Z,et al. JAMA. 2020 Feb 24.[Epub ahead of print]

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糖尿病患者にエクササイズ動画を配信/ノボ ノルディスク ファーマ

 新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大により、高血圧や糖尿病などの慢性疾患を抱える患者の診療の手控えに加え、不要不急の外出への遠慮から外での運動機会も減少している。とくに糖尿病では、運動療法は患者にとって食事療法・薬物療法と並ぶ治療の3本柱の1つであり、運動不足により血糖値のコントロール不良が憂慮されている。 ノボ ノルディスク ファーマ株式会社は、こうした状況に鑑み、糖尿病患者の健康維持を目的とした「自宅で簡単にできるエクササイズ動画」を制作し、7月より配信を開始した。糖尿病である元エアロビクス世界チャンピオンが動画で実演 糖尿病患者向けエクササイズ動画は、日本糖尿病協会(理事長:清野 裕)の監修のもと、自身も1型糖尿病である元エアロビクス世界チャンピオンの大村 詠一氏がエクササイズ内容を考案し、自ら動画で実演しているもの。 動画の種類は、糖尿病を持つ「子供向け」、「初級編」を各3編、「中級編」4編と、誰でもできる「準備運動/ストレッチ編」3編を加えた計13本。糖尿病患者向けの各動画は3~4分と短く、毎日無理なく続けやすいエクササイズの内容が配信される。 これらの動画は、同社の糖尿病サイト、日本糖尿病協会ならびに同社の公式YouTubeチャンネルで順次公開される予定。糖尿病患者向けエクササイズ動画の内容と配信日・糖尿病患者向けエクササイズ動画の特徴(1)「準備運動/ストレッチ編」気持ちよく体を伸ばす、肩・首回りをほぐす運動など(2)「初級編」高齢者の方ができるよう座位を中心にしたエクササイズなど(3)「中級編」テレワーク疲れを解消する椅子と机を用いたエクササイズ、美しい姿勢を保つためのエクササイズなど(4)「子供向け」ジャンプ力やバランス力を高めるエクササイズや頭の体操にもなる運動、など・糖尿病患者向けエクササイズ動画公開スケジュール 公開中:「準備運動/ストレッチ編」3編 7月27日(月)頃:「初級編」、「中級編」、「子供向け」各1編 7月31日(金)頃:「初級編」、「中級編」、「子供向け」各1編 8月7日(金)頃:「初級編」、「子供向け」各1編、「中級編」2編

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COVID-19、1割が軽症でも嗅覚・味覚異常が1ヵ月継続

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状として、嗅覚や味覚の異常が多く報告されている。またCOVID-19を巡っては、回復後1~2ヵ月もなお諸症状がしつこく残るケースが多いことも、これまでの研究で明らかになっている。本研究は、イタリア・パドヴァ大学のPaolo Boscolo-Rizzo氏ら研究グループが、2020年3月19日~22日、同国Treviso Regional HospitalにおいてRT-PCR 検査でSARS-CoV-2陽性と診断された18歳以上の軽症患者202例を対象に、嗅覚・味覚障害の経過を連続的に評価したもの。JAMA otolaryngology-head & neck surgery誌オンライン版2020年7月2日号での掲載。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時に調査した202例中、187例(92.6%)が追跡調査を完了した。103例(55.1%)が女性で、年齢の中央値は56歳。・ベースライン時に嗅覚あるいは味覚異常を報告したのは113例だった。このうち55例(48.7%、95%信頼区間[CI]:39.2~58.3)は、発症から4週間後には症状が完全に解消し、46例(40.7%、95%CI:31.6~50.4)は症状の改善が見られた。・嗅覚あるいは味覚異常が継続、または悪化したのは12例(10.6%、95%CI:5.6~17.8)だった。 本研究では、COVID-19の後遺症としての嗅覚・味覚異常は、患者の約9割で完全に解消または改善していたが、1割の患者では、発症から4週間後もなお症状を有していた。

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第16回 医師不在で議論進むオンライン初診、裏には経済界の皮算用が?

政府にとって都合良く専門家集団を使うのは、新型コロナウイルスの専門家会議(現・分科会)だけではないようだ。今回のコロナ禍で、初診からのオンライン診療が可能となったが、厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(座長=山本 隆一・医療情報システム開発センター理事長)の構成員から上がった反対意見の多くは無視された形だ。オンライン診療のガイドラインを定期的に見直していた検討会は3月11日、新型コロナ対策の方向性を出していた。しかし、内閣府の規制改革推進会議(議長=小林 善光・三菱ケミカルホールディングス会長、元経済同友会代表幹事)から「初診対面原則の見直し」などの要請を受け、急きょ4月2日に検討会(ビデオ通話によるオンライン形式)が開かれた。構成員に開催が知らされたのは2日前、具体的な議題や資料が明らかになったのは会議開始の10分前だったという。会合の検討内容は、「継続した発熱等、新型コロナウイルスへの感染を疑う患者の治療」と「軽度の発熱、上気道症状、腹痛、頭痛等について、対症療法として解熱剤等の薬を処方」だった。議論の焦点となったのは、初診でオンライン診療を認めるケースとして、以下の4項目が妥当か否かであった。(1)既に診断され、治療中の慢性疾患で定期受信中の患者に対し、新たに別の症状についての診療・処方を行う場合(2)過去に受診歴のある患者に対し、新たに生じた症状についての診療・処方を行う場合(3)過去に受診歴のない患者に対して診療を行う場合(4)過去に受診歴のない患者に対し、かかりつけ医などからの情報提供を受けて、新たに生じた症状についての診断・処方を行う場合そもそも、新型コロナの感染症はPCR検査などをしないでは診断できない。責任感のある医師ならば、過去に一度も診ていない患者をオンラインで判断することにはためらいがあるだろうし、患者としてもオンライン診療のみで判断されることに不安を感じるだろう。ある構成員は「オンライン初診でできるのは『相談』と『受診勧奨』で、『診療』にまでは至らないのではないか」と現実的な意見を述べている。実際、オンライン診療を行っている医師も含め、医療関係者が大半を占める構成員の多くは、(3)を認めることに反対した。しかし2日後、官邸と規制改革推進会議は検討会の反対意見を無視し、新型コロナが収束するまでの時限措置とはいえ、(3)についてもオンラインの「診療」を認めることを決めた。同会議は企業人と学者が委員の大半を占め、医師の代表はおろか、医療現場を知る委員もほとんどいない。にもかかわらず、同会議は7月2日、オンライン初診の恒久化を見据えた、さらに踏み込んだ検討を安倍 晋三首相に答申。経団連も9日、同様の趣旨の提言書を公表した。新型コロナの院内感染を防ぎたい医療人が声を上げるのならわかるが、企業人がオンラインの初診診療に前のめりになるのはなぜなのか。社員のテレワーク化に伴う対応という側面もあるかもしれないが、オンライン診療に対応する医療機関は、7月1日時点で約1万6,000施設(厚労省調べ)と少なく、伸びしろの大きい分、医療機関による専用機器やアプリなどの購入による経済効果も期待しているのではないだろうか。経済優先の結論ありきでの専門家への諮問は、専門家に対し非礼であるだけでなく、国民の健康と命を犠牲にする「規制改革」と称した“悪巧み”とさえ受け取れる。

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COVID-19、31ヵ国716例にみる皮膚科症状の特徴は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、特徴的な皮膚科症状が認められると伝えられている。米国・ハーバード大学医学大学院/マサチューセッツ総合病院皮膚科部門のEsther E. Freeman氏らは、それらの皮膚科症状を特徴付け、根底にある病態生理の解明を促進する目的で、国際レジストリの症例集積研究を行った。その結果、多くの症状は非特異的であったが、COVID-19の病態生理における潜在的な免疫や炎症性反応の解明に役立つ可能性がある知見が得られたという。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年7月2日号掲載の報告。 研究グループは、米国皮膚科学会および国際皮膚科学会連盟の国際レジストリを用いて症例集積研究を行い、COVID-19が確認または疑われ、新規発症の皮膚科症状が認められた患者のデータを分析した。 主な結果は以下のとおり。・レジストリから、COVID-19確認/疑い症例716例が収集された。・検査でCOVID-19が確認された患者は171例であった。・そのうち最も一般的に認められた皮膚科症状の形態的特徴は、麻疹様(22%)で、次いでペルニオ様(18%)、蕁麻疹(16%)、黄斑紅斑(13%)、小胞(11%)、扁平上皮丘疹(9.9%)、網状紫斑(6.4%)であった。・ペルニオ様病変は、疾患が軽症の患者で一般的に認められた。・網状紫斑は、入院を要した患者にのみ認められた。・なお、著者らは、「本検討では発生率や有病率を推定できず、またバイアスの確認が必要という点で結果は限定的である」としている。

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COVID-19感染拡大予防に対するフィジカルディスタンスの有効性をグローバルな観点から統計学的に証明(解説:桑島巌氏)-1261

 最近、WHOは“ソーシャルディスタンス”を“フィジカルディスタンス”に言い換えた。“社会的距離”では、心理面も含めた距離を含むと誤解されやすいので、単に“物理的”な接触を避けるという適切な用語の変更であろう。 そのフィジカルディスタンスが新型コロナ感染拡大を本当に予防できるのかを統計学的に分析したのがこの論文である。「そんなこと当たり前だろう」と誰もが思っていることはしばしば実は違っていたというのはままあるので、そこは科学発祥の地、英国である。武漢や香港などでの局地的な調査報告はあったが、今回はグローバルに149ヵ国でのPD政策とcovid-19抑制効果との関連をoxford covid-19 government response tracker(OxCGRT)のデータを元に統計学的に検証した成績である。 2020年1月1日から5月30日までに行われた7日以上のフィジカルディスタンス政策の感染者の拡大予防効果を、1)学校閉鎖、2)職場閉鎖、3)イベントなどの集合禁止、4)公共移動手段の閉鎖、5)都市封鎖(ロックダウン)の5つに分けて分析した。 その結果、これらの政策は全体として、13%の統計学的に有意な感染予防に結び付いたという。これらの5項目中4項目以上が実施された国では有意な予防効果が得られたが、3項目以下では予防効果はなかった。 最初の感染者報告から政策実施までの日数と感染者数減少には関連がみられなかったという。さらに分析すると“国民1人当たりのGDPが高い国”、“65歳以上の高齢者が多い国”、“医療保険が整備されている国”ほど効果が大きかったという。全体として13%の感染抑制という数字はかなり少ないが、わが国ではこの3要件とも満たしていることから予防効果はさらに大きいと思われる。 13%という数字はあくまでも国家施策との関連をみたものであり、どの程度国民が政策を遵守したかという国民性や法的罰則の有無といった各国の事情は考慮されていない点にも注意が必要である。 5つの組み合わせのうち、学校閉鎖、職場閉鎖、集合禁止、ロックダウンの4項目が行われていれば、公共移動手段の閉鎖は、それ以上の予防効果は見いだせなかったという。 先日、尾身会長が、「3密が守られていれば旅行は問題ない」との見解を示したが、この論文を読んだからかもしれない。ただし、集合禁止や都市封鎖が実施されていれば当然移動も制限がかかっている可能性があり、統計上、移動制限によるさらなる有意な抑制効果が現れなかったのかもしれない。 いずれにしろ感染拡散防止の観点からみればフィジカルディスタンスの重要性はこの論文が示すとおりであるが、反面、経済活動が大きく停滞するという一面もあり、難しいところである。

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ASCO作成COVID-19流行下のがん治療の指針、和訳版を公開/日本癌治療学会

 日本癌治療学会は7月9日、米国臨床腫瘍学会(ASCO)が作成した「ASCOスペシャルレポート:COVID-19の世界的流行下におけるがん治療の実施に関する指針」をホームページ上で公開した。この指針は、COVID-19 の世界的大流行への対応を継続する中で患者および医療スタッフの安全性を保護するため、がん診療で実施可能な即時および短期の措置についてASCOが世界的視野に立ち作成、5月19日に発表されたもの。 和訳版は全22ページからなり、下記20項目について知見がまとめられている:・トリアージ/スクリーニング・COVID-19検査中/陽性の患者・COVID-19診断検査・感染防止対策・勤務者・リソースおよび資材・医療機関における留意事項・指定区域でのサービスおよび診療時間・COVID-19感染が急増した場合の計画・衛生関連手順・サポートサービス・健康および安全性に関する患者教育・遠隔医療・腫瘍内科・腫瘍放射線治療・付帯的サービス・がんスクリーニング・手術・治験・その他 役立つ参考文献

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