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第19回 炎上したLINE健康相談の件、広報からのモヤモヤ回答を一挙公開!

新型コロナウイルス感染症パンデミックの結果、日本国内の医療の中でやや前進を見せていることがあるとするならば、オンライン診療の拡大傾向である。4月7日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」では、感染拡大防止の観点から、「非常時対応」と断りながらも電話やオンラインによる診療・服薬指導の活用を促した。これに対応し、厚生労働省(以下、厚労省)の医政局医事課と医薬・生活衛生局総務課は連名で4月10日付の事務連絡を発出し、初診を含むオンライン診療・服薬指導を時限的・特例的に容認している。同事務連絡は感染拡大動向を踏まえて3ヵ月に1度の見直しを行っているが、今のところは継続されている。あくまで時限的・特例的措置だが、今後これをきっかけに診療報酬上のオンライン診療の条件緩和などが進められる可能性は否定できない。このオンライン診療は厚労省が作成した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づいて行われる。そして同指針ではオンライン診療と似て非なる「遠隔(オンライン)健康医療相談」を定義している。これは、医師がパソコンやスマホなどの通信機器を利用して医学的な助言を行うもの、医師以外が一般的な医学情報の提供や受診勧奨を行い、いずれも相談者個人の状況に応じた具体的な判断を行わないものを指す。ちなみに厚労省指針では「遠隔健康医療相談」について詳細な規定はしていない。ただ、今回のコロナ禍を反映し経済産業省の主導下で「遠隔健康相談事業」が開始され、メドピアの連結子会社Mediplat社、コミュニケーションアプリLINEで有名なLINE株式会社の連結子会社LINEヘルスケアが受託し、8月末まで無料の健康相談を提供している。ところが今月2日、LINEヘルスケアの遠隔健康相談を利用した人が相談対応医師から罵倒されたというチャット内容がTwitter上に投稿され炎上。この結果、同社はこの事例が規約違反の不適切事例に当たるとしてホームページ(HP)に謝罪文を公表した。この件、端的に言うならば、ごく1人のアウトサイダー医師がやったことで終わりになるはずだが、このLINEヘルスケアのHPでの規約、医師募集の要綱などを見ると、いくつかの疑問が浮かんできた。まず、このオンライン健康相談は、対応診療科が内科、小児科、産婦人科、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科の6診療科である。ところがこの募集要項では「これらの科目における専門医資格等は必要ございません」「相談対応可能な診療科は自己申告いただきます」とのこと。たぶん多くの利用者は、対応診療科の専門家から回答が得られると期待しているはずだ。また、利用規約では相談でのやり取りを「コンテンツ」と規定し、再利用の可能性があることを表記している。今回の不適切事例でモニタリングを強化すると同社は謝罪文に記載しているが、それがどのような形で行われるのかが想像しにくい。ということで、4点の質問を送ったところ広報部門であるPR室からは次のような回答が返ってきた。▽今回の遠隔健康相談に関して、医師募集要項では対応診療科の専門医資格などは要らない旨を明記しておりますが、これはどういう理由からそのような規定としたのでしょうか?回答LINEヘルスケア社では、医師免許および本人確認を徹底し、当社所定の基準を満たした医師に参加いただいております。さらに、参加する医師には当社ガイドライン、各種法規制の遵守する事に同意いただいております。LINEヘルスケアの健康相談サービスには医行為は含まれませんが、対応科目については、医師自身が対応可能と判断したものを標榜いただいております。▽相談内容と回答内容を「コンテンツ」として、再頒布を可能としたのはなぜでしょうか?回答利用規約7.4及び7.5については、知的財産その他のプライバシー以外の観点から、弊社が、医師と相談者の間で交わされた健康相談の内容について、本人を識別しうる情報を削除した上で二次利用を行う上で必要な許諾等を得るためのものです。同規定に基づく許諾にかかわらず、医師と相談者間の健康相談の内容については、通信の秘密であり、かつ個人情報にあたることから、個別かつ明示的な同意を相談者から取得した上で利用させていただいており、無制限に弊社が相談内容を利用しうることを予定したものではありません。▽お詫びのページに追記した、「モニタリング」とは具体的にどのように行うのでしょうか?回答厚労省のオンライン診療ガイドラインを基にLINEヘルスケア社独自の医師向けガイドラインを作成しており、24時間365日モニタリングを実施しております。しかしながら、医師と相談者の間のコミュニケーションは、電気通信事業法上の通信の秘密に当たり、また医師法上も医師の守秘義務の対象として、弊社を含む第三者がみだりに内容を閲覧することは制限されております。そのため、弊社では、双方の事前同意の範囲内で、リアルタイムでの監視については自動モニタリングを実施しております。今後は、キーワードの見直しを含むモニタリング体制等の見直しを図り、再発防止策を検討、対応してまいります。▽(健康相談で)「おすすめ医師」として推奨表示される医師は、科目×回答数の多さのようですが、回答が多い医師は専門性が高いとはいえますか?回答おすすめ医師のレコメンドのロジックについては、公表していないため、お応え出来かねます。個人的な感想を言うと、どの回答もすっきりと腹落ちはしない。ちょうどこの件については私も発起メンバーの一人でもある「医薬品産業イノベーション研究会」で8月5日に緊急オンライン講演会を開催した。演者はこれまで複数の医療者向けあるいは患者向けの医療情報サイトに携わった編集者の田中 智貴氏(元QLife編集長)だ。今回の問題の根底について田中氏は「LINEヘルスケアではB to Cのサービスとして考えているのに対し、相談者側はD(Doctor) to P(Patient)と考え、双方の期待値に差異があった」と指摘する。いわゆる診断のような医学的判断を伴うオンライン診療、オンライン受診勧奨をメディカル領域、今回のLINEヘルスケアによる健康相談をヘルスケア領域と分類した場合、田中氏は「へルスケア領域はメディカルと同等の権威付けをしたがる」との見解示す。具体的に言うと、たとえば健康食品の宣伝で「○○学会で効果に関して発表」のようなもの。今回の件で言うと、オンラインの健康相談は医師でなくとも可能だが、それを医師がやることを強調する点だ。実際、LINEヘルスケアのHPでは今回のサービスについて「さまざまな不安に医師が直接お答えします」と銘打っている。ただ、そのHPをスクロールして最後になるとようやく注意事項として「本サービスは医師による健康相談のサービスです。症状の診断や治療といった判断を医師に求めることはできません」と表記してある。結果として、この辺はサービス利用者自身の不注意・誤解も含め、期待値の齟齬を起こしてしまう可能性があるということだ。また、田中氏は前述のような回答診療科医師をあくまで自己申告制で募集している背景には、昨年12月のサービススタート以降、LINEヘルスケア公式アカウントの友だち数や相談件数の急増により、回答医師を急募して今回のような利用者に暴言を吐くような医師まで参加する質の低下を招いているのではないかと分析。さらに今回の健康相談サービス全般を見た印象としてIT系のB to C企業によくみられる、ベーシックな機能を備えた段階でとりあえずサービスをスタートさせ、その後、要所要所でユーザーの反応などを見ながら改修していくアジャイル的手法が見受けられると指摘。「医療に関しては軽微でもトラブルがあってはならない」と述べて、そもそもIT系企業お得意の手法がこの領域では馴染まないとの認識を示した。こうした田中氏の指摘、LINEヘルスケアのアカウントを友だち追加後に中を見て発見した疑問点、第一弾の問い合わせの回答に対する疑問点などを含め、再度LINEのPR室に質問を送付し、回答を受け取った。▽前回の回答で登場する厚労省のオンライン診療ガイドラインを参考にした医師向けの自社のガイドラインは、厚労省ガイドラインとどのような違いがあるのでしょうか?回答医師向けのガイドラインは一般向けに公表しておりませんので、お応えしかねます。▽健康相談の回答医師の「資格」の欄には学会しか明記されておらず、単に学会員としての登録なのか、専門医・指導医なのか、会員資格などが更新されているかどうかのチェックは御社では行われているのでしょうか?回答一部ユーザーの方に誤解を招く可能性も勘案し、ご指摘の箇所についての対応の見直しを検討いたします。▽相談可能な診療科が自己申告であり、かつ一般的な医師の専門診療科数が1~2科である中で、御社サービスのおすすめ医師として表示された32人中20人が6診療科対応となっており、御社がコンテンツと定義する医師側の相談対応内容のクオリティコントロールが適正とは言えないかと思います。回答本サービスにて健康相談を実施するのは医師であり、医師自らの責任で相談がなされるサービスです。他方、クオリティコントロールをプラットフォーム提供事業者としてどのようにしていくのかという点については検討のうえ、対応していければと思います。▽サービス利用者は各診療科の専門医に相談ができるとの期待値を持って相談しているケースは少なくないと思われます。結果として「錯覚商法」のようになっていますが、この点について御社ではどのようにお考えでしょうか?回答遠隔健康相談は、個別具体的な症状に対する診断を下すものでなく、医学的知見を用いて医師が一般的な助言をするにとどまるものであり、LINEヘルスケアとしては特段専門医とつながるサービスを標榜してはおりません。専門分野の標榜の箇所もあるので、診療科の標榜が必ずしもユーザーの誤解を招くものではないと認識しております。▽登録医師の中には医療法上広告が認められていない診療科を標榜したり、自由診療を行っている旨の記載など自院誘導ともとられかねないプロフィール表記も認められます。また、登録を禁止している海外勤務医も存在します。法令や規約に基づくチェック体制が不十分と思われますが、この点についてのご見解をお聞かせください。また、現状このチェック体制がどのようになっているかも合わせてご回答お願い致します。回答LINEヘルスケアにおける医師の表記については、医療広告ガイドラインの適用は受けないと判断しております。しかしながら、ご指摘の「自院誘導ととらえられかねないプロフィール表記」については、場合によっては同ガイドラインの適用を受けることはあるものと存じます。もっとも、このような表記は、利用規約において禁止される行為となっています。現在のプロフィールチェック体制につきましては、回答を控えさせていただきます。ただし、今後は、ユーザーの皆さまに誤解を招く可能性があることを勘案し、ご指摘いただいている内容の見直しは検討してまいります。▽今回の不適切事例は相談内容が対応診療科ではない精神科のものでしたが、これまでのモニタリングではこのようなものの検出は不可能だったのでしょうか? また、キーワードによるモニタリングを行っているようですが、モニタリングキーワードは何件くらい設定しているのでしょうか? 今後の強化でこの件数はどのくらい増加する見込みでしょうか?回答モニタリング体制については、先日ご回答をさせていただきました内容以上の開示をしておりません。今後の見直しにつきましても、詳細が確定しましたらご案内とさせていただきます。▽他の医療相談サービスでは規約に含まれていない「コンテンツ」を定義した目的を教えてください。また、コンテンツの再頒布はどのような事例を念頭に置いてのことかを具体例をお教えください。回答おそらく指摘いただいているものと思われる規定は、いわゆるUGC(ユーザー生成コンテンツ)の取扱いに係るものであり、一般的な規定と考えます。現に、他社の同種サービスの規約にもUGCの取扱に係る規定があることはご指摘を受けて確認しておりますので、貴社にて改めてご確認ください。なお、繰り返しになりますが、コンテンツの利用に係る規定は、ご指摘の規定以外にもプライバシーポリシー等に従う必要があり、弊社がコンテンツを自由に扱うことを目的としたものとはならないため、ご留意ください。*注:LINEのPR室によるとUGCのユーザーに医師は該当していないとのこと▽「令和2年度補正遠隔健康相談体制強化事業」として税金補助を受けており、「オンライン遠隔健康相談サービス」において、主導的な役割を果たす立場でありながら、「回答は一般的なアドバイスであること」や「診断・治療行為ではないこと」を発見性が低い、ページ下部に表記することなど、消費者の有利誤認を誘うようなサービスデザインを行っていることについて、企業姿勢としてどのようにお考えでしょうか?回答本件につきましては、利用いただく際に誤認が生じないよう、利用開始時冒頭に注意事項の情報が必ず表示されるようになっております。残念ながら個人的なもやもや感はこの2回目の回答を受けても解消されてはいない。結局、最終的には遠隔(オンライン)健康相談そのものについても厚労省による指針作成が必要になるということだろうか?

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コロナ禍、がん診断の遅れで5年後がん死増加の恐れ/Lancet Oncol

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、がん死に影響するとの報告が英国から寄せられた。同国ではCOVID-19のパンデミックにより2020年3月に全国的なロックダウンが導入されて以降、がん検診は中断、定期的な診断・診療も延期され、緊急性の高い症候性患者のみに対して診断・治療が行われているという。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のCamille Maringe氏らは、診断の遅れが主ながん患者の生存率にどのような影響を及ぼすのかモデリング研究にて検討し、回避可能ながん死が相当数増加すると予想されることを明らかにした。結果を踏まえて著者は、「緊急の政策介入が必要である。とくに、COVID-19パンデミックのがん患者への影響を軽減するため、定期的な診断サービスの確保を管理する必要がある」とまとめている。Lancet Oncology誌オンライン版2020年7月20日号掲載の報告。コロナ禍の診断遅延によるがんの5年間の追加死亡は3,291~3,621例 研究グループは、英国の国民保健サービス(NHS)のがん登録および病院管理データを用い、2010年1月1日~12月31日の間に乳がん、大腸がんまたは食道がんと診断され2014年12月31日までの追跡データがある、または、2012年1月1日~12月31日の間に肺がんと診断され2015年12月31日までの追跡データがある15~84歳の患者を特定し、物理的距離を確保する対策が開始された2020年3月16日から1年間の診断遅延が及ぼす影響について解析した。 診断遅延の生存に対する2次的影響をモデル化するため、通常のスクリーニングと紹介の経路での患者を、診断時の病期がより進行していることと関連する緊急経路に割り当て、最良から最悪まで3つのシナリオについて、診断後1、3、5年時点でのがんに起因する追加死亡および全損失生存年数(YLL)を算出し、パンデミック前のデータと比較した。 コロナ禍の診断遅延による診断後1、3、5年時点でのがんに起因する追加死亡を算出した主な結果は以下のとおり。・乳がん患者3万2,583例、大腸がん患者2万4,975例、食道がん患者6,744例、肺がん患者2万9,305例が解析に組み込まれた。・乳がんでは、診断後5年時までの乳がん死が7.9~9.6%(追加死亡相当で281例[95%信頼区間[CI]:266~295]~344例[329~358])増加すると推定された。・同様に、診断後5年時までの大腸がん死は15.3~16.6%(追加死亡1,445例[95%CI:1,392~1,591]~1,563例[1,534~1,592])、肺がん死は4.8~5.3%(追加死亡1,235例[1,220~1,254]~1,372例[1,343~1,401])、食道がん死は5.8~6.0%(追加死亡330例[324~335]~342例[336~348])、それぞれ増加すると推定された。・これら4種のがんについての5年間の追加死亡は、3つのシナリオ全体で3,291~3,621例であり、追加YLLは5万9,204~6万3,229年と推定された。

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新型コロナ、無症状者のウイルス排出量と臨床経過

 無症状の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者の臨床経過とウイルス量に関する情報は少ない。今回、韓国・天安の地域治療センターに隔離されたSARS-CoV-2感染者のコホート研究で、感染者のウイルス排出を定量的に調べたところ、多くの感染者が長期間無症状で、無症状者のウイルス量は有症状者と同等であることが示唆された。報告した韓国・Soonchunhyang University Seoul HospitalのSeungjae Lee氏らは、この結果から「SARS-CoV-2の蔓延を防ぐために、無症状感染者の隔離が必要」としている。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2020年8月6日号に掲載。新型コロナの無症状患者の下気道検体でのウイルス量は有症状患者よりもゆっくり減少 本研究は、2020年3月6日~26日にSARS-CoV-2感染が認められ、韓国・天安の地域治療センターで隔離された無症状または有症状の303例を対象とした後ろ向き研究である。著者らは、人口統計学的特性、併存症、症状に関するデータとSARS-CoV-2の逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査の結果を収集し分析した。隔離の終了については、上気道検体(鼻咽頭および中咽頭スワブ)と下気道検体(喀痰)のRT-PCR検査の結果に基づき、隔離から8、9、15、16日目に決定した。医師の裁量で10、17、18、19日目に上気道または下気道検体のRT-PCR検査を行った。RT-PCR検査におけるCycle threshold(Ct)値を無症状患者と有症状患者の両方で測定した。 無症状または有症状の新型コロナ感染者のウイルス排出を定量的に調べた主な結果は以下のとおり。 ・SARS-CoV-2感染者303例のうち、年齢中央値(四分位範囲)は25(22~36)歳、女性が201例(66.3%)であった。・併存症を有する感染者は12例(3.9%)で、高血圧10例、がん1例、喘息1例であった。・SARS-CoV-2感染者303例のうち193例(63.7%)は隔離時に症状があった。・無症状患者110例(36.3%)のうち21例(19.1%)が隔離中に症状が出現した。これらの患者におけるSARS-CoV-2検出から発症までの期間の中央値(四分位範囲)は15(13~20)日であった。・診断から14日目と21日目に陰性になった感染者の割合は、無症状患者ではそれぞれ33.7%と75.2%、有症状患者(隔離中に発症した患者を含む)ではそれぞれ29.6%と69.9%であった。・診断から最初に陰性となるまでの中央値(SE)は、無症状患者で17(1.07)日、有症状患者で19.5(0.63)日であった(p=0.07)。・下気道検体のエンベロープ(env)遺伝子のCt値から、無症状患者における診断から退院までのウイルス量は、有症状患者(隔離中に発症した患者を含む)よりもゆっくり減少する傾向があることが示された(β=-0.065[SE:0.023]、p=0.005)。

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オンライン学会に参加した【Dr. 中島の 新・徒然草】(336)

三百三十六の段 オンライン学会に参加した新型コロナの流行でオンライン学会が主流となっています。そんな中、私もオンライン学会に出席したので、その経験と感想を述べたいと思います。学会参加の方法は以下の通り。あらかじめ学会参加費を支払って登録しておく開催前日に学会ホームページにログインし、動作を確認する本番で再びログインし、聴きたい演題を選んで「視聴開始」ボタンを押す各セッションが終わるごとに「視聴終了」ボタンを押す1つのセッションを見るごとに1単位のクレジットが付く実際に経験すると、ネットを使った学会のメリットとしては以下の点がありました。遠くの会場に行かなくていい自室で視聴しながら単純作業ができて雑用も片付く→逆に、現地会場にいると身の置き場のない時間ができてしまう→2、3日でも病院を留守にすると仕事が溜まっている自宅で寝転んでスマホで見ることもできる(演者の先生方、どうもすみません)大画面ゆえスライドがよく見えるなぜか現地参加で聴かないような演題を見てしまう。これが結構面白かったといったところで、オンライン学会の良いところはいろいろありました。いつもよりどっぷり参加したくらいです。一方、オンラインのデメリットとしてはセッション間の時間が全くなかったのでトイレに行けないシステムの動作の不安定さゆえ「視聴開始」「視聴終了」のボタンを何度も押してしまった病院で視聴しているときにも院内PHSが鳴る→オンライン参加であっても学会出張扱いにしてPHSを切っておくべし結論としては、メリットがデメリットをはるかに上回る気がします。コロナが去ってもオンライン参加のオプションは残しておいて欲しいところ。もちろん現地参加と好きなほうを選択できれば最高ですね。最後に1句ネットなら 学会出席 疲れません

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コロナショック後は、「タダ株」戦略で丸儲け!?【医師のためのお金の話】第35回

2020年2月から株式市場で始まったコロナショックは、3月23日に大底を迎えました。この1ヵ月間の恐ろしいほどの暴落に対して、果敢に買い向かった方も多かったことでしょう。私も神経をすり減らしながら、1ヵ月にわたる長丁場を戦い抜きました。参考:第31回 新型コロナショックで株暴落!投資家はどう立ち向かうべき?ここで勝負できた人は大きな果実を得たわけですが、今後の投資方針については少し考えたほうがよいと思います。つまり、そのまま保有し続けるのか、売却して利益を確定するのか、はたまた一部だけ売却するのか、などの出口戦略を立てる必要があります。株式投資の成果は出口戦略次第で大きく変わります。株式市場が比較的安定している今だからこそ、一度立ち返って、自分の投資方針について考えてみましょう。成長株vs.割安株、ここ10年は成長株が優勢株式銘柄の分類方法はいくつもあります。代表的なものは、「成長株」と「割安株」に分ける考え方でしょう。成長株はグロース株とも呼ばれており、成長産業の銘柄や、高い成長性のために長期間にわたって株価が上昇している銘柄を指します。株式市場における花形的銘柄が多く、その代表は米国株のGAFA*です。これらの銘柄を所有していると、企業の成長に伴って株価が上昇するので、面白いほど利益を得ることができます。多くの投資家は成長株を選好するため、割高に評価されることが特徴です。一方、割安株はバリュー株とも呼ばれており、本来の企業価値と比べて過小に評価されている銘柄です。株価が割安に放置されている理由はさまざまですが、業界の成長性が低い場合や、業績面・財務面の問題を抱えているケースが多いです。投資家に人気がないために割安に甘んじているわけですが、経営戦略の変更などで注目されると本来の価値が再評価されることもあります。もともと低評価なので、株価の下値が限定的であることが魅力です。成長株と割安株で分類した場合、最近の10年は成長株への投資が優勢でした。世界的に有名な米国の投資家、ウォーレン・バフェット氏の成績が低迷している理由は、割安株のパフォーマンスが悪かったことに起因しているといわれています。*IT業界において支配的な力を持つGoogle、Amazon、Facebook、Appleの総称堅実な「ストック型」の収益構造を持つ銘柄を厳選このように紹介してきましたが、実は私自身は、成長株や割安株という分類で投資方針を決定していません。私が投資対象としているのは、割安株の中でもストック型の収益構造を持つ銘柄群です。ストック型の収益構造とは、電気やガス、携帯電話、新聞などのように、一旦契約すると安定的で長期的な収入に結び付くビジネスモデルです。大きな成長は見込みにくいものの、急激に売り上げが減少する可能性が低いため、破綻の危険性がきわめて低いことが特徴です。株式投資において、銘柄の破綻リスクを考慮しなくてよいことは非常に大きなアドバンテージです。今回のコロナショックでは、オンライン診療のメドレー(4480)や米国のZoom(ZM)が高騰しました。これらの銘柄は成長株ですが、ビジネスモデルはストック型の収益構造です*。しかし、私はこれらの銘柄を投資対象としていません。その理由は、これらの企業は「無形資産」をベースにしているからです。無形資産とは、特許、商標、技術などの「物的な実態」が存在しない資産のことです。無形資産の特徴は「サンクコスト(埋没コスト)」が高いことにあります。サンクコストが高い理由は、商標や技術などの無形資産は時価で売却することが難しいからです。不動産や鉱山などの有形資産は時価で売却できるため、投資資金の回収が容易であることと対照的です。*メドレーの収益の大部分は人材仲介事業ですが、ここでは株価上昇の理由であるオンライン診療事業にスポットを当てています。無形資産株は「タダ株」戦略を!無形資産にはサンクコストが高いこと以外にも、「スピルオーバー」といって自社技術が簡単に外部へ漏出してしまう特徴があります。ビジネスモデルとして成功していても、技術的に模倣できないことはほとんどありません。このため、無形資産がベースの企業は常に競争にさらされており、長期間生存することが難しくなります。今現在、隆盛を誇るZoomといえども、10年後に存在している可能性は高くないと考えています。無形資産をベースにした銘柄は不安定なので、確実に収益を確保するには投資資金を回収しておく必要があります。そのための手段の1つが「タダ株戦略」です。タダ株戦略とは、「株価が2倍になったときに手持ち株式の半分を売却する」という投資戦略で、成功すれば投資資金をすべて回収できる手法です。手元に残った半分の株は、文字通りタダで手に入れたことになります。このようにして投資資金を回収することで、確実に収益を積み上げていきます。今回のコロナショックで株式市場に開いたチャンスをつかんだ人は多いことでしょう。しかし、出口戦略で失敗すると、せっかくつかんだチャンスもふいになります。出口戦略で思い悩んでいる人は、自分が勝負した銘柄が有形資産・無形資産のどちらをベースにしているのかを確認し、成功率の高い出口戦略を検討しましょう。

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第19回 医療倫理なおざりに?政治主導の「大阪発ワクチン」開発は「人体実験」との批判

新型コロナウイルス対策を巡り、その決断力と実行力がたびたび称賛されてきた吉村 洋文・大阪府知事だが、ここに来て迷走気味である。先日、ヨウ素系うがい薬の推奨で品薄状態を招いたのは記憶に新しいが、6月に発表したワクチン開発を巡り、臨床試験を医療従事者対象に実施すると発言。医療従事者からは「人権侵害」「人体実験」との批判の声が相次いだのだ。吉村知事は8月4日の記者会見で、「うがい薬でうがいをすると、新型コロナの陽性者が減っていくのではないかという研究結果が出た」と述べ、20日までを強化月間として、ポビドンヨード液を使ってうがいするように呼び掛けた。会見の直後から、各地の店舗で当該製品の売り切れが続出し、ネットでは高額転売も見られた。これに対し、日本医師会の中川 俊男会長は「エビデンスとして十分ではない」と批判。大阪府保険医協会は「ポビドンヨードを使い過ぎると、かえって甲状腺機能を低下させる。感染予防には水うがいのほうが優れている」と懸念を示した。また、大阪府・市や大阪大、医療ベンチャー企業などが連携して開発を進めている「大阪発ワクチン」を巡っては、6月17日の記者会見で「今月末に大阪市立大学医学部附属病院の医療従事者に、まずは20~30例に投与予定」と話した。知事だけではない。その前日、16日には松井 一郎・大阪市長も同様の発言をしている。18日には、ワクチン開発に携わる森下 竜一・大阪大学寄附講座教授が日本抗加齢医学会のWEBメディアセミナーで、「秋に大阪大学医学部附属病院でも医療従事者を対象とした400人規模の臨床試験を実施する予定」と述べた。これに対し、医療従事者からは「病院の職員に検査を強制する人権侵害ではないか」といった批判や、「人体実験にならないか」との指摘が出ている。大阪府保険医協会は7月25日、吉村知事らの発言に対し声明を発表。最も問題視したのは「知事および市長が治験開始を発表した6月16、17日には、まだ大阪市立大学の審査委員会は開かれていなかった」ことだ。治験は、医薬品医療機器総合機構が調査を行った上で、実施医療機関の審査委員会による審査・承認を経なければスタートできない。専門家が誰からの干渉も受けず、効果と安全性を客観的、科学的に検証する必要がある。にもかかわらず、「治験を行う大阪市立大学の審査の1週間も前に知事や市長が公表したことは、厳正であるべき医薬品審査の手続きを完全に無視する非常に危険な行為である」と同協会は指摘。さらに、市大に予算や人事で大きな影響力を持つ知事や市長が先んじて公表することにより、「審査側が治験を認める方向に進むのは避けられず、本来指摘されるべき危険性が見逃されてしまう可能性もある」と懸念している。政治主導で推し進められている感のある「大阪発ワクチン」の開発。ワクチン自体、実現すれば大きな希望になることは間違いないが、あくまで政治家である吉村・松井両氏の胸の内にあるのは医療倫理よりも功名心なのではなかろうか。

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COVID-19罹患の精神疾患患者に対する推奨治療

 精神疾患患者における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のマネジメントでは、とくに薬物相互作用に関して、いくつかの課題がある。スペイン・バルセロナ大学のG. Anmella氏らは、COVID-19に罹患した精神疾患患者に関する代表的な3つのケースと、既知の文献およびコンサルテーション・リエゾン精神科の専門家チームの臨床経験に基づいた実践的なアプローチの報告を行った。Journal of Affective Disorders誌2020年9月1日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・ロピナビル・リトナビル治療を受けている患者の場合には、継続中の精神薬理学的治療が優先されるべきであり、多くの薬剤においてその投与量は25~50%減量すべきである。例外として、クエチアピン、アセナピン、オランザピン、セルトラリン、ラモトリギン、bupropion、メサドンなどが挙げられる。・精神薬理学的治療の通常の投与量が低~中程度の範囲にある場合には、COVID-19治療薬併用中の用量変更は推奨されない。ただし、必要に応じてECG、副作用および薬物レベルの臨床モニタリングのみ推奨される。・精神薬理学的治療を開始する場合には、心毒性の相互作用の有無をECGでモニタリングしながら漸増しなければならない。(A)興奮性せん妄に対しては、第1選択の抗精神病薬としてオランザピンが推奨され、クエチアピンは避けるべきである。(B)重度の精神疾患に対しては、基本的な治療を維持する必要がある。(C)抑うつ/不安症状を有する重度でない精神疾患に対しては、心理的サポートを実施し、症状を特定したうえで治療を行う必要がある。 著者らは「薬理学的相互作用に関する推奨事項は、限られた定性的なアプローチのみを提供している」としながらも、「COVID-19に罹患した精神疾患患者は、いくつかの臨床基準を考慮し個別にマネジメントするべきであり、COVID-19治療の対象から除外すべきではない。薬理学的相互作用のリスクは絶対的ではなく、状況に応じて対応する必要がある。ほとんどの精神薬理学的治療では、QTc間隔にとくに注意し、ECGを検討すべきである」としている。

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COVID-19に有効な薬剤は?RCT23報のメタ解析/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者への薬物治療の有効性について比較検討したところ、グルココルチコイド投与は標準治療と比べて、死亡率および人工呼吸器リスクを減少する可能性が示されたという。カナダ・マックマスター大学のReed A. C. Siemieniuk氏らが、米国疾病予防管理センター(CDC)のCOVID-19試験結果データベースを基に、システマティック・レビューとネットワークメタ解析を行い明らかにした。なお、有症状期間を短縮する可能性がある薬物治療として、ヒドロキシクロロキン、レムデシビル、ロピナビル・リトナビルが挙げられたが、著者は、「ほとんどの試験が小規模でエビデンスの質は低く、治療薬の有効性については確定できないままだ」と述べている。BMJ誌2020年7月30日号掲載の報告。7月20日時点でのシステマティック・レビュー 研究グループは2020年7月20日時点で、電子データベース25件と中国のデータベース6件を含む、CDCのCOVID-19試験結果データベースを基に、システマティック・レビューとネットワークメタ解析を行った。COVID-19の疑いや可能性が高い患者、また確定診断を受けた患者を対象に、薬物治療と標準治療、またはプラセボ投与を比べた無作為化比較試験を抽出した。 2人組のレビュアーによってデータが抽出。重複データを削除後、ベイズ変量効果ネットワークメタ解析を行った。各試験のバイアスリスクは改訂版コクラン・バイアスリスク2.0ツールを用い、エビデンスの質(確実性)は、GRADEシステムでそれぞれ評価した。グルココルチコイドは標準治療と比べて死亡を37/1,000人減 2020年6月26日までに行われた23件の無作為化比較試験を包含しメタ解析が行われた。試験が盲検化されていないというバイアスリスクのために、ほとんどの治療薬の比較に関するエビデンスの確実性は非常に低かった。 その中で唯一、グルココルチコイドによる治療は標準治療に比べ、死亡および人工呼吸器リスクを減少することに関してエビデンスが得られた。死亡リスクの群間差は37/1,000人(95%信頼区間[CI]:63~11/1,000人)、人工呼吸器リスクは同31/1,000人(47~9/1,000人)だった(いずれも中等度の確実性)。これらの予測値は、直接的エビデンスに基づくもので、ネットワーク・エビデンスでは異質性により同予測値の正確性は低下した。 また、有症状期間を短縮する可能性があった治療薬(標準治療との比較において)は、ヒドロキシクロロキン(平均群間差:-4.5日、低度の確実性)、レムデシビル(-2.6日、中等度の確実性)、ロピナビル・リトナビル(-1.2日、低度の確実性)だった。 ヒドロキシクロロキンはその他の薬物治療と比べ、有害事象のリスクを増大する可能性が示された。レムデシビルは、おそらく投与を中断するに至る有害事象リスクは、実質的に増大しないと考えられることが示された。その他については、投与の中断に結びつく有害事象について解釈するだけの十分な患者が試験に組み込まれていなかった。

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第19回 医師の質・能力、実はどうでもいい? LINEヘルスケア事件の先にある世界

「ガキンチョ」「死ぬのが正解」などと応じる こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。やっと関東に夏本番がやって来ました。またしても愛知の実家から「しばらく帰ってこんでええ!」と言われたので、この週末、帰省は止めにして懸案の越後駒ヶ岳に山仲間と行ってきました。自粛期間中にもかかわらず、ピーク直下の駒の小屋の狭いテントサイトはほぼ満床で、密を避けるのに苦労しました。さて、今週気になったのは、IT企業、LINE(ライン)傘下のLINEヘルスケアが展開する、医師にLINEで相談できるサービス「LINEヘルスケア」で、相談を担当した医師がユーザーに対して不適切な対応をし、その内容がSNSで拡散、炎上したというニュースです。医師はユーザーからの相談に、「リスカやOD(オーバー・ドーズ)で発散するのは低レベル」「診断なんかいくらでも付けられますよ。よくいる世間知らずの10代の女の子」「言葉にできないやつはガキンチョ」「深く考えすぎると結論としては、死ぬのが正解となりますし、たぶん正解なんでしょう」などと回答。この一連のやりとりのスクリーンショットが流出し、“事件”になってしまいました。8月2日、同社はこの事態を受けて「LINEヘルスケアに登録している医師1名において、お客様に対して、利用規約違反の行為が確認されました」とした上で、この医師を利用停止処分としたことを発表。「お客様のお心を傷つけ、多大なるご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」と謝罪しました。同社はモニタリング体制を強化することで再発防止策を徹底していく、としています。LINEのトーク画面で医師に直接相談できる「LINEヘルスケア」は、LINEと医療情報専門サイト「m3.com」のエムスリーによる合弁会社であるLINEヘルスケアが運営する、LINE上で利用できるオンラインの健康相談サービスです。内科、小児科、産婦人科、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科に対応しており、利用者は相談内容や診療科から医師を選んだ上で、「いますぐ相談する」か、「あとから回答をもらう」か相談方法を選択、体の不調などについてLINEのトーク画面で医師に直接相談する、という仕組みです。「いますぐ相談する」の利用料金は2000円、「あとから回答をもらう」の1000円です。昨年12月からサービスをスタートしていますが、経済産業省の「令和2年度補正遠隔健康相談事業体制強化事業」(上限1億円/件)に採択されており、2020年8月31日までは無料となっています。「遠隔健康医療相談」がカテゴライズされたのは2年前このニュース、対応した医師の”暴言”に目が向きがちですが、こうした人間はどんなプロフェッションでも一定数はいるものです。ここでは、もう一つの側面である「医師による医療相談」について少し考えてみたいと思います。そもそも、医師などが健康相談に乗る、というサービスは、カード会社や生命保険会社などの付帯サービスとして従来から行われてきました。ただ、国がこうしたサービスをきちんとカテゴライズしたのはつい最近のことです。2018年度の診療報酬改定でオンライン診療に対する評価が新設されました。これを受け厚生労働省は同年3月、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下、ガイドライン)を公表しました。その中で情報通信機器を活用した健康増進や医療に関する行為を「遠隔医療」と定義し、さらに「オンライン診療」「オンライン受診勧奨」「遠隔健康医療相談」の3つに区分したのです。本ガイドラインでは「遠隔健康医療相談」について、医師が行うものと、医師以外が行うものに分けて次のように定義しています。・遠隔健康医療相談(医師)遠隔医療のうち、医師-相談者間において、情報通信機器を活用して得られた情報のやりとりを行い、患者個人の心身の状態に応じた必要な医学的助言を行う行為。相談者の個別的な状態を踏まえた診断など具体的判断は伴わないもの。・遠隔健康医療相談(医師以外)遠隔医療のうち、医師又は医師以外の者-相談者間において、情報通信機器を活用して得られた情報のやりとりを行うが、一般的な医学的な情報の提供や、一般的な受診勧奨に留まり、相談者の個別的な状態を踏まえた疾患のり患可能性の提示・診断等の医学的判断を伴わない行為。つまり、「遠隔健康医療相談」とは、医師など(必ずしも医師限定ではない)が遠隔地(その場にいない)の患者に対して医療・健康に関連する相談を行うもので、医療行為(診察や治療)は伴わず、相談行為だけを行うもの、という位置づけなのです。というわけで、LINEヘルスケアの事業は「遠隔健康医療相談(医師)」にあたります。ちなみに、医師法第20条は「医師は自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付」することを禁止していますが、「遠隔健康医療相談(医師)」の定義(医学的助言にとどめ、相談者の個別的な状態を踏まえた診断など具体的判断は行わない)に則った運用を守れば、医師法には抵触しないことになります。LINEで“自費診療”を受けさせてみる大実験さて、LINEヘルスケアが、従来のカード会社などが提供する限定的な特別サービスと一線を画するのは、LINEという8,400万人(2020年4月現在)のユーザー数を持つソーシャルメディアの世界での事業展開という点です。さらに、前述したように、新型コロナウイルス感染症の流行で患者の医療機関の受診控えが進む中、国民がスマートフォンやパソコンを通じて医師に手軽に相談できるよう経済産業省がスタートさせた事業に採択(同社は3月にこの事業を受託、一度途切れた後、再び5月から8月まで受託しています)された点も注目に値します。国(厚生労働省ではなく経済産業省ですが)のお墨付きをもらった事業という見方もできるからです。そう考えるとこの事業、極端なことを言ってしまえば、コロナ禍で医療機関に行きづらくなった国民のうち、軽症者や自然に治るような病気の人についてLINEで“自費診療”を受けさせてみる大実験…と解釈することもできそうです。もちろん、サービス提供者側は「医学的助言にとどめ、相談者の個別的な状態を踏まえた診断など具体的判断は行わない」ことで、医療行為ではないという厳格な線引きを守っているとは思いますが、ユーザー側から見れば、医療機関の代替機能であることは間違いありません。政府は国民に、軽度の病気や怪我の患者にOTCを用いたセルフメディケーションを勧めています。背景には医療リソースの効率的利用と医療費削減があります。同様のことは「遠隔健康医療相談」にも言えるでしょう。受診前の相談の段階で、患者(や健常者)が無駄な受診を思い留まったとしたら、国や保険者は大喜びでしょう。一部の医療機関は困るかもしれませんが…。「遠隔健康医療相談」はAIに取って代わられる仮に大実験だとしたら、この事件後ネット上でも話題となった、登録医師のクオリティや、医師の取り分が安価過ぎる(いますぐ相談/予約相談で1件あたり30分1,400円、あとから回答で1件あたり700円らしいです)ことなどは、あまり大きな問題ではなくなります。なぜならば、「遠隔健康医療相談」はやがてAIに取って代わられるに違いないからです。私はAIについては詳しくありませんが、軽症疾患やコモンディジーズを患者の訴えなどから推察し、療養のアドバイスや受診勧奨をすることは、学習を積んだAIにとっては容易いことのように思えます。ここからは全くの想像です。ひょっとしたらLINEヘルスケアは、法律と規制が許せば「遠隔健康医療相談」をAIに任せようとしているのではないでしょうか(表向きは絶対に言えないとは思いますが)。AIならば相談業務を無難にこなすのはもちろん、「ガキンチョ」とか「死ぬのが正解」と言ったセリフを吐くこともおそらくありません。顧客対応も万全で、「寄り添い、共に考える医師」のフリもしてくれるでしょう。さらに、運営企業の医師への支払いも必要なくなります。もし、利用者が増えていけば、医療財政的にもそれなりの効果が期待できるでしょう。うまく運営すれば、医療機関以外にはいいことづくしです。もっとも、法律と規制を乗り越えるのはなかなか大変です。オンライン診療の規制緩和に対して、一貫して慎重姿勢をとってきた日本医師会の存在もあります。新型コロナ感染症で「オンライン診療」が進みましたが、ポストコロナの時代の“新しい生活様式”におけるダークホースとして、「遠隔健康医療相談」の行方にも、目を配っておいたほうがいかもしれません。

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COVID-19、小児は軽症でもウイルス量が成人の10~100倍

 子供がCOVID-19に罹患した場合、一般的には成人に比べて比較的軽度の症状を示す。米国・イリノイ州シカゴAnn & Robert H. Lurie Children's HospitalのTaylor Heald-Sargent氏らが、軽~中等症のCOVID-19患者におけるウイルス量を年齢との相関で調べたところ、5歳未満の小児では症状が軽くてもウイルス保有量が多く、とくに上気道から検出されたSARS-CoV-2は成人の10~100倍にも相当することがわかった。JAMA Pediatrics誌オンライン版2020年7月30日号のリサーチレターに掲載。 本研究では、2020年3月23日~4月27日の期間、シカゴの3次医療機関においてCOVID-19の症状発症から1週間以内の入院および外来、救急部門、ドライブスルーで収集された145例の鼻咽頭スワブから検体を採取し、PCR検査を実施。cycle threshold(Ct)値を記録し、SARS-CoV-2 RNAウイルス量を評価した。 主な結果は以下のとおり。・患者はいずれも軽~中等症で、5歳未満が46例、5~17歳が51例、18~65歳が48例。いずれも発症から1週間以内に検体を採取した。・5~17歳のグループのCt値は、18~65歳のグループとほぼ同等であった(中央値[四分位範囲]:11.1[6.3~15.7] vs. 11.1[6.9~17.5])。・一方、5歳未満のグループのCt値は有意に低かった(同:6.5[4.8~12.0])。・5歳未満の小児とその他2つのグループのCt値の差異により、小児においては、とくに上気道のSARS-CoV-2が約10~100倍多いことが示唆される。 著者らは、本研究で明らかになったのはあくまで小児における高いウイルス核酸の検出量であると断っているが、これまでのSARS-CoV-2の研究では、より高い核酸レベルと感染力のあるウイルスの培養能力との相関が報告されている。このため著者らは、公衆衛生対策を進めるうえで小児の感染および拡散リスクを理解することが重要であると述べている。

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薬局薬剤師でもコロナ慰労金をもらえるケースはある!【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第52回

新型コロナウイルスとの闘いは、残念ながら共存というよりも第2波襲来と言わざるを得ない状況になっています。そのような中、医療機関を中心に今回のコロナ対応をねぎらうための慰労金である「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業」が始まりました。第2次補正予算案に盛り込まれていたため、6月の時点ですでに対象や金額などが発表されていましたが、疑義が多かったようで、Q&Aの第4版が7月に出されています。この慰労金は、都道府県から役割を設定された医療機関などに勤務して患者と接する医療者や職員の場合、実際に新型コロナウイルス感染症患者に診療などを行った医療機関などである場合に20万円、それ以外の場合に10万円を給付し、その他病院・診療所・訪問看護ステーション・助産所に勤務して患者と接する医療者や職員に5万円を給付するものです。しかし、ご存じの方が多いと思いますが、薬局薬剤師は対象外です。薬局は医療機関ではないのか? 薬剤師は医療者ではないのか? とSNSがざわつきましたが、Q&Aによると、薬局は患者に直接処置や治療を行う医療機関の医療従事者などとは性質が異なると考えられることから、慰労金の対象ではないとのことです。敷地内薬局も対象外ですが、病院薬剤師や宿泊療養などの軽症者を訪問で支援する薬剤師は対象です。しかし、介護の領域においては、薬局薬剤師も対象となることがあるようです。新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金(介護分)は、新型コロナウイルス感染者が発生した、または濃厚接触者に対応した介護サービス事業所や施設に勤務して利用者と接する職員で、感染者・濃厚接触者の発生日以降に勤務やサービス提供を行った場合は20万円、上記以外の場合は5万円が給付されます。Q&Aには下記のような記述があります。新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(介護分)に関するQ&A(第2版)対象となる職員について。要件に該当した職員、派遣労働者、業務受託者において対象となります。対象職種には限定はありません。みなし指定の居宅療養管理指導事業所における「10日以上勤務した者」とは、薬局などに10日間勤務すればよいのでしょうか。居宅療養管理指導事業所の職員として、「利用者と接する」必要があることから、居宅療養管理指導を提供するために利用者宅を訪問した日数が、暦日で10日以上ある必要があります。薬局で介護施設などの居宅管理をしている薬剤師がいる場合、こちらの慰労金の対象になる可能性がありますので、あきらめずに一度実施要綱を確認してほしいと思います。また、以下のような薬局の感染防止対策に使用した費用の支援である「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」もあります。フェイスシールドや消毒薬、空気清浄機の設置など、いろいろ出費がかさんだ薬局も多いと思いますが、薬局の場合は上限額70万円まで補助を受けることができます。医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業どのような施設が補助の対象となるのでしょうか。新型コロナ感染症の院内などでの感染拡大を防ぐための取組を行う病院(医科、歯科)、有床診療所(医科、歯科)、無床診療所(医科、歯科)、薬局、訪問看護ステーション、助産所が対象となります。どのような経費が対象となるのでしょうか。感染拡大防止対策に要する費用に限られず、院内等での感染拡大を防ぎながら地域で求められる医療を提供するための診療体制確保等に要する費用について、幅広く対象となります。(例:清掃委託、洗濯委託、検査委託、寝具リース、感染性廃棄物処理、個人防護具の購入など)薬局経営が厳しくなっているだけでなく、従業員の心労が積み重なっているなか、少しでも負担を減らせるように活用してほしいと思います。

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渡米までのカウントダウン開始!最後まで気が抜けない事務手続き【臨床留学通信 from NY】第10回

第10回:渡米までのカウントダウン開始!最後まで気が抜けない事務手続き今回は、マッチ後から渡米までの手続きの流れについてご紹介します。一般的にマッチが決まるのは3月中旬であり、渡米までの猶予は3ヵ月しかありません。その間にビザの取得と、病院で働くために必要な書類を揃えなければならず、かなりタイトなスケジュールでした。国の情勢でも変わるビザのルールとメリット/デメリット私の場合、まずは同じ病院で働くことになる同僚達と連絡を取り合い、必要書類を確認しました。本当に事務手続きが苦手で、渡米前から現在に至るまで同僚にはいつも助けられています。ビザは大きくJ-1ビザとH-1Bビザがあります。H-1B ビザには「2年ルール」がなく、5年が経過した後はグリーンカードの申請ができます(編集部注:2020年6月22日付米国大統領令により、グリーンカードおよび就労ビザの新規発給は2020年末まで停止中)。その代わりTax returnはなく、フェローシップのマッチングにおいて受け入れてくれるプログラムが限定されるというデメリットもあります。またH-1B ビザ取得にはUSMEL Step3をパスしていることが必須条件です。一方、J-1ビザのデメリットは、7年を超えて米国に滞在することが難しく、2年での帰国、もしくは3年のwaiver(医療過疎地、軍人退役病院への勤務)を余儀なくされることです。その時点で相当な業績があればOビザ(卓越能力者ビザ)に切り替えますが、2年ルールからは逃れられません。私の場合はレジデンシーマッチ後、次の大きなフェローシップへのマッチングが主な目的となるため、J-1ビザを選択しました。それが正しかったかどうかは今でもわかりませんが、当時、どうしても永住したいという意思がなかったことに加え、Cardiologyは競争率が高く、IMG(international medical graduate)であることや、卒後年数が経過していることからも不利となることが予想され、より確実なJ-1ビザを選択しました。J-1ビザ取得に必要な書類は、厚生労働省とやりとりをしてStatement of Needと呼ばれる政府証明書をECFMG(Education Commission of Foreign Medical Graduates)に送ります。証明書の申請に必要となる主な書類は、(1)病院の契約書原本とその和訳(2)履歴書(3)保証書(J-1ビザは帰国が前提であるため、帰国後の勤務を保証してくれる書類)(4)誓約書などです。契約書類については、PDFで送られてくるものだと思って数日待っていたのですが、一向に送られて来ません。実はすべてNew Innovationというサイト(就労前に全ての書類を病院側に提出する際に使用するサイト)上に転がっていたのです。私はしばらくそのことに気付かず、貴重な時間をロスしてしまいましたので、思い込みにはくれぐれもご注意ください。さらに、書類の英訳を同僚数人で分割して行い、厚労省に郵送したのですが、日本の3~4月はちょうど年度の変わり目で担当者が代わる時期であったため、より一層時間がかかりました。ひと通りの書類を申請し、病院側のIMGの窓口担当者と連絡を取り合い、ECFMG certificate(USMEL Step2までの合格証明書)や医学部の卒業証明書をアップロードしてもらい、最終的にDS2019という書類を入手します。DS2019を入手したら、記載された番号などにより大使館の予約が出来ます。大使館ウェブサイトに必要事項を入力するわけですが、家族の分も必要で数時間かかってしまいますが、手続きを先に進めるためにはやむを得ません。また、混んでいる時期だとすぐに予約ができないこともあるため要注意です。大使館で面接を受けると、1週間ほどビザが手元に届き、晴れて渡航準備は完了です。ただし、こうした手続きは時期によって大きく変わるものなので、申請する方は必ず最新情報を入手するようにしてください。「たかが…」と思うことなかれ!事務手続きの山は最後までハード事務手続きと並行して、米国の病院で働くためのオリエンテーションをweb上で履修します。膨大な数のネット講習を受ける必要があり、ナメてかかるとIDカードがもらえなかったりするので、確実に履修しなければならず、本当に面倒でした。一連の事務作業が終わり、残りの期間は、渡米後に機会が増えるであろう米国の学会(AHAなど)への参加を見越して、病院のカテーテルデータをまとめたり、慶應関連病院のPCI registryからの論文作成1)やAHAへのSubmit2,3)をしたりしたほか、久しぶりの総合内科研修を控え、MKSAPという米国内科専門医の取得のための問題集を地道に解いて少しでもスムーズに入れるように準備をしました。参考1)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30819656/2)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30212493/3)https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/circ.138.suppl_1.10930Column画像を拡大するニューヨークの新型コロナ患者はかなり減少し、現在はたまに診察する程度です。ただ3~5月のパンデミック中は途方もない多くの方々が罹患し、亡くなりました。そうした患者さんの最期にPalliative care teamの介入が有用ではないかという論文が先日オンラインとなりましたので、皆さんに共有させていただきます。不幸にも未曾有のウィルスに罹患し、治療が奏功しなかった患者さんが最期をいかに迎えるのか、いろいろと考えさせられました。参考サイト:https://twitter.com/MSBI_IM/status/1286667020751245313

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第20回 風邪コロナウイルスがSARS-CoV-2免疫を授けうる? / キャンプ場で小児にCOVID-19が大流行

風邪コロナウイルス反応T細胞がSARS-CoV-2も認識する?新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染していないのにSARS-CoV-2に反応するCD4+ T細胞が少なくとも5人に1人、多ければ2人に1人に備わっていると示唆されています。SARS-CoV-2が流行する前に25人から採取した血液検体を調べた新たなScience誌報告でもこれまでの幾つかの研究と同様にSARS-CoV-2反応T細胞が見つかり、SARS-CoV-2の142の領域(抗原決定基)がT細胞への反応と関連しました1,2)。そして、これまでにない新たな発見として、SARS-CoV-2に反応するT細胞が風邪を引き起こす馴染みのコロナウイルス(風邪コロナウイルス)4種のSARS-CoV-2に似た抗原決定基にも同様に反応しうることが示されました。この結果は、SARS-CoV-2流行前から馴染みのコロナウイルスに曝露したことでSARS-CoV-2にも反応しうるT細胞が備わったという考えを支持しています3)。また、感染前から備わるSARS-CoV-2への免疫反応はT細胞だけではなさそうです。先月23日にmedRxivに発表された報告によると、英国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が本格的に流行する前の2018~2020年初めに非感染者262人から採取した血液検体のうち15検体(6%)にはSARS-CoV-2に反応する抗体が認められました4)。さらに特筆すべきことに小児でのその割合はとくに高く、1~16歳の小児48人のうち少なくとも21人(44%)はSARS-CoV-2スパイクタンパク質に反応するIgG抗体を有していました。小児は一般的に他のコロナウイルスとの接触がより多く、それが小児にIgG抗体が多い理由かもしれません。そのようなSARS-CoV-2反応抗体は小児におけるCOVID-19感染者の多くがかなり軽症で済むことの理由の一つかもしれないと著者の1人Rupert Beale氏はツイートしています5)。ただし、SARS-CoV-2への幾ばくかの免疫で感染を絶対に防げるという保証はありませんし、悪くすると正反対の効果、免疫反応を乱して手に負えない炎症やウイルスの蹂躙を招く恐れがあります。たまたま備わったSARS-CoV-2反応T細胞はとくに高齢者にとっては有害になる恐れがあるとシンガポールの免疫学者Nina Le Bert氏は言っています3)。Le Bert氏もCOVID-19へのT細胞反応を調べている研究者の一人です。キャンプ場で小児にCOVID-19が大流行小児はSARS-CoV-2感染しても多くが軽症で済み、それに感染し難いことが示唆されている一方で、米国ジョージア州のキャンプ場で6月に発生した小児のCOVID-19大流行はどの年齢の小児も感染と無縁ではないことを改めて示しました6)。そのキャンプ場では、キャンプする小児(6~19歳、中央値12歳)の受け入れの準備のためにまずは世話係(年齢14~59歳、中央値17歳)が6月17日にキャンプ場に集まり、キャンプはその週末21日から始まりました。キャンプ場のCOVID-19食い止め対策は完全ではなく、世話係は綿製マスク着用が義務でしたがキャンプする小児のマスク着用は必須とせず、ドアや窓を開けて建物内の換気を促すこともしませんでした。6月23日に10代の世話係の1人が前の晩に寒気を覚えてキャンプ場を去り、検査の結果24日にSARS-CoV-2感染が確認されました。キャンプ場は24日から滞在者を帰宅させはじめ、27日に閉鎖しました。キャンプには世話係251人とキャンプ参加小児346人合わせて597人が集い、検査結果が判明した344人(内訳は未報告)のうち260人(76%)が陽性でした。マスクが必須ではない環境で大勢が集まって同じ部屋で寝て、勢いよく歌ったり声援したりを繰り返したことが恐らく感染を広まらせたようであり、集いの場では相手との距離を保ってマスクを絶えず装着する必要があると著者は言っています。参考1)Selective and cross-reactive SARS-CoV-2 T cell epitopes in unexposed humans. Science 04 Aug 20202)Exposure to common cold coronaviruses can teach the immune system to recognize SARS-CoV-2 / Eurekalert 3)Does the Common Cold Protect You from COVID-19? / TheScientist4)Pre-existing and de novo humoral immunity to SARS-CoV-2 in humans. bioRxiv. July 23, 20205)Rupert Beale氏ツイッター 6)SARS-CoV-2 Transmission and Infection Among Attendees of an Overnight Camp - Georgia, June 2020. MMWR. Early Release / July 31, 2020

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米国学校閉鎖でCOVID-19罹患率・死亡率が約6割減/JAMA

 米国で2020年3月9日~5月7日にわたった州レベルの学校閉鎖が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患率と死亡率を一時的に減少したことが明らかにされた。閉鎖が早かった州では、累積罹患率が低い時点で学校閉鎖を行った場合ほど、相対的減少率が大きかったという。米国・シンシナティ小児病院のKatherine A. Auger氏らが、全米50州について行った観察試験の結果で、JAMA誌オンライン版2020年7月29日号で発表した。なお、結果について著者は、「減少には、同時期の他の非薬物的介入が関連している可能性は捨てきれない」と述べている。学校閉鎖・時期で減少に差があるかを検討 研究グループは2020年3月9日~5月7日の期間に米国住民ベースの観察試験を行い、遅延期を組み込んだ分割時系列分析を実施し、学校閉鎖およびその時期がCOVID-19罹患率・死亡率の減少と関連しているかどうかを検証した。検証の対象としたのは初等・中等学校(幼稚園~12学年)。 州レベルの非医薬品による公衆衛生上の対策と属性を、負の二項回帰モデルに組み入れ、学校閉鎖とアウトカムの関連を分離。各州について、学校閉鎖時の10万人ごとのCOVID-19累積罹患率に応じ、4等分に分類したうえで、統計モデルを用いて、閉鎖した学校と閉鎖しなかった学校のCOVID-19罹患率・死亡率の絶対差、また州が学校を閉鎖した時のCOVID-19累積罹患率が最も低い四分位範囲群と最も高い四分位範囲群の、罹患率と死亡率の絶対差を算出し評価した。学校閉鎖時の州累積罹患率が低いほど、罹患率・死亡率は低値 学校閉鎖時の州のCOVID-19累積罹患率は、0~14.75/10万人だった。 学校閉鎖により、COVID-19罹患率は有意に低下し、補正後の週当たりの相対変化率は-62%(95%信頼区間[CI]:-71~-49)だった。死亡率も有意に低下し、補正後同変化率は-58%(-68~-46)だった。 これら罹患率・死亡率の低下は、学校閉鎖時の州のCOVID-19累積罹患率が低いほど顕著だった。同累積罹患率が最も低かった州では、COVID-19罹患率の週当たりの相対変化率は-72%(95%CI:-79~-62)だった一方、最も高かった州の同変化率は-49%(-62~-33)だった。 この解析から作成したモデルにおいて、州のCOVID-19累積罹患率が最低四分位範囲で学校閉鎖を行った場合、最高四分位範囲で行った場合に比べ、COVID-19の罹患者は26日間で128.7/10万人、死亡は16日間で1.5/10万人少なくなると推定された。

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COVID-19へのヒドロキシクロロキン、AZM併用でも臨床状態改善せず/NEJM

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者の治療において、標準治療にヒドロキシクロロキン(HCQ)単剤またはHCQ+アジスロマイシン(AZM)を併用しても、標準治療単独と比較して15日後の臨床状態を改善しないことが、ブラジル・HCor Research InstituteのAlexandre B. Cavalcanti氏らが行った「Coalition COVID-19 Brazil I試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2020年7月23日号に掲載された。HCQは、in vitroで抗ウイルス作用が確認され、小規模な非無作為化試験において、AZMとの併用で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2)のウイルス量を減少させると報告されている。これらの知見に基づき、HCQはCOVID-19患者の治療に用いられているが、安全性や有効性のエビデンスは十分ではないという。3群を比較する無作為化対照比較試験 本研究は、ブラジルの55の病院が参加した非盲検無作為化対照比較試験であり、2020年3月29日~5月17日の期間に患者登録が行われ、2020年6月2日にフォローアップを終了した(Coalition COVID-19 BrazilとEMS Pharmaの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、酸素補充療法を受けていないか、最大4L/分の酸素補充を受けており、発症から14日以内の入院中のCOVID-19疑い例または確定例であった。 被験者は、標準治療を受ける群(対照群)、標準治療+HCQ(400mg、1日2回)を受ける群(HCQ群)、標準治療+HCQ(400mg、1日2回)+AZM(500mg、1日1回)を受ける群(HCQ+AZM群)に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、7日間の治療が行われた。 主要アウトカムは、修正intention-to-treat(mITT)集団(COVID-19確定例)における、7段階の順序尺度(1[入院しておらず、活動に制限がない]~7[死亡])で評価した15日後の臨床状態とした。すべての副次アウトカムにも差はない 667例が無作為割り付けの対象となり、504例がmITT解析に含まれた。221例がHCQ群、217例がHCQ+AZM群、229例が対照群に割り付けられた。全体の平均年齢は50歳、58%が男性で、42%が酸素補充療法を受けていた。 COVID-19確定例における、15日後の7段階順序尺度スコア中央値は3群とも1(IQR:1~2)であった。高スコア(臨床状態不良)の比例オッズ(OR)は、対照群と比較して、HCQ群(OR:1.21、95%信頼区間[CI]:0.69~2.11、p=1.00)およびHCQ+AZM群(0.99、0.57~1.73、p=1.00)のいずれにおいても有意な差は認められなかった。また、HCQ群とHCQ+AZM群の間にも、差はみられなかった(0.82、0.47~1.43、p=1.00)。 副次アウトカム(7日後の6段階[非入院~死亡]順序尺度、15日以内の呼吸補助なしの日数、15日以内の高流量鼻カニューレ/非侵襲的換気の使用日数、15日以内の機械的換気の使用日数、入院日数、院内死亡、15日以内の血栓塞栓症の発生割合、15日以内の急性腎障害の発生割合)のすべてで、有意差は確認されなかった。 補正後QT間隔の延長は、対照群に比べHCQ群およびHCQ+AZM群で頻度が高く、フォローアップ期間中に連続心電図検査を受けた患者は対照群で少なかった。また、肝酵素値(ALT、AST)の上昇は、対照群に比しHCQ+AZM群で高頻度であった。 著者は、「この研究の効果の点推定は、主要アウトカムに関して群間に大きな差はないことを示唆するが、試験薬の実質的な有益性および有害性のいずれかを確実に排除することはできない」としている。

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COVID-19治癒後、8割に心臓MRIで異常所見

 最近COVID-19が治癒した100例におけるコホート研究で、心臓MRI(CMR)により78%に心臓病併発、60%に進行中の心筋炎症が認められたことを、ドイツ・フランクフルト大学病院のValentina O. Puntmann氏らが報告した。また、これらは既往歴、COVID-19の重症度や全体的な経過、診断からの期間とは関連がなかったことという。JAMA Cardiology誌オンライン版2020年7月27日号に掲載。 COVID-19の心血管系への影響は症例報告では示唆されているが、全体的な影響は不明だった。今回、著者らはCOVID-19が最近治癒した患者の心筋障害の存在を調査するために、2020年4~6月にフランクフルト大学病院COVID-19レジストリにおいて、COVID-19が最近治癒した100例を対象とした前向き観察コホート研究を実施した。COVID-19の治癒については、上気道スワブのRT-PCR検査でSARS-CoV-2消失とした。人口統計学的特徴、心臓の血中マーカー、CMRについて、年齢と性別を一致させた健康ボランティアの対照群(n=50)と危険因子を一致させた患者の対照群(n=57)と比較した。 主な結果は以下のとおり。・100例のうち、男性は53例(53%)で、年齢中央値(四分位範囲[IQR])は49(45~53)歳であった。・COVID-19診断からCMRまでの期間の中央値(IQR)は71(64~92)日であった。・COVID-19が最近治癒した100例のうち、67例(67%)が自宅で治癒し、33例(33%)が入院を必要とした。・CMRの時点で、COVID-19が治癒した71例(71%)で高感度トロポニンT(hsTnT)が検出され(3pg/mL以上)、5例(5%)で著明な増加を示した(99パーセンタイルの13.9pg/mL以上を「著明な増加」と定義)。・COVID-19治癒患者群は、健康ボランティアの対照群と危険因子を一致させた患者の対照群と比較して左室駆出率が低く、左室容積および左室心筋重量が大きく、native T1およびT2が上昇していた。・COVID-19が治癒した78例(78%)で、心筋のnative T1の上昇(73例)、心筋のnative T2の上昇(60例)、心筋のlate gadrinium enhancement(32例)、心膜のenhancement(22例)などのCMRの異常所見がみられた。・自宅で治癒した患者と病院で治癒した患者では、native T1 mappingについて、わずかだが有意な差があった(中央値[IQR]:1122 [1113~1132] ms vs.1143 [1131~1156] ms、p=0.02)が、native T2 mapping、hsTnTでは差がなかった。これらはいずれもCOVID-19診断からの日数と相関していなかった(native T1:r=0.07、p=0.47、native T2:r=0.14、p=0.15、hsTnT:r=-0.07、p=0.50)。・hsTnTは、native T1 mapping(r=0.35、p<0.001)およびnative T2 mapping(r=0.22、p=0.03)と有意に相関していた。・重症所見がみられた患者の心筋生検で、活動性のリンパ球性炎症がみられた。 この結果から著者らは、COVID-19の心血管系への長期における影響を継続的に調査する必要があるとしている。

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コロナウイルスワクチンへの期待(解説:後藤信哉氏)-1270

 新興感染症と人類との戦いにおいてワクチンは強力な武器であった。コロナウイルスは感冒のウイルスであるが、現時点までに感冒への有効なワクチンが開発されていない。COVID-19へのワクチン開発には期待が大きい。 コロナウイルスの細胞への感染にはウイルスのスパイク様蛋白が寄与する。タンパク質に対する抗体をワクチンとするのであれば、北里柴三郎の破傷風抗毒素血清療法以来実績がある。本研究はチンパンジーのSARS-CoV-2ウイルスのスパイク蛋白を発現したチンパンジーのアデノウイルスベクターを用いたワクチン(ChAdOx1 nCoV-19 vaccine)と髄膜炎菌のワクチンを比較したphase 1/2試験である。ウイルスの表面抗原を標的としたワクチン開発は一般的に最初に思い付く方法だと思う。液性、細胞性免疫により細胞侵入前にウイルスの細胞侵入を防げるとは想定されるが、細胞内に入ってしまったウイルスに対する効果には疑問が残る。 本研究は1,077例のボランティアを対象としたランダム化比較試験である。COVID-19の予防効果、重症化予防効果などのハードエンドポイントを用いた試験ではない。ワクチンに安全性の観点から忍容性があるか? ワクチンがCOVID-19に対する液性、細胞性免疫を惹起するか否か? が検証された。 痛みがあるのでアセトアミノフェンが必要な症例は多い。実際、本研究では予防的にアセトアミノフェンを使用された症例が多い。それでもSARS-CoV-2ウイルスのスパイク蛋白を用いたワクチンにて痛みなどの副反応は多かった。スパイク蛋白に対するT細胞の反応性は接種14日後、IgGは28日後までには産生された。 本研究は早期の臨床試験である。忍容性はありそう、かつ細胞性、液性免疫は誘発されそうである。しかし、実際にCOVID-19の感染予防、重症化予防に役立つか否かは不明とせざるを得ない。古典的ともいえるスパイク蛋白を抗原としてワクチンができれば開発は早いと想定される。革新的な方法を用いることなく感染を制圧できればよいが…。

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侮れない中国の科学力(解説:後藤信哉氏)-1271

 筆者は免疫学者でもウイルス学者でもない。ランダム化比較試験による有効性、安全性検証をリードするclinical trialistであるとともに一人の臨床医である。免疫の仕組みに詳しいわけではない。それでもウイルス表面に存在する細胞への侵入を担う蛋白を標的とした抗体ができれば感染予防ができるのではないかとの仮説は持てる。本研究は新型コロナウイルスの表面に発現しているスパイク蛋白をアデノウイルスの一種であるAd5に発現させたワクチンを用いた臨床試験の結果である。エビデンスレベルの高い二重盲検のランダム化比較試験である。対照群をプラセボとしている。タンパク質を注射すれば副反応として疼痛などが起こるのは一種当然である。プラセボとの比較は安全性比較にはハードルが高いと思う。 本研究は武漢で施行された。登録症例数は603例である。新型コロナウイルスにより壊滅的な社会的ダメージを被りながら、ワクチン開発の第II相試験の結果は今の時点で公表できるレベルにまで進めた中国の科学力は甘く見れない。本研究は単一施設の研究であるので結果の一般化にはハードルが高い。プラセボとの比較においても忍容性には大きな問題がなかった。新型コロナウイルスのスパイク蛋白に対する中和抗体は産生される。しかし、スパイク蛋白の中和抗体が新型コロナウイルス感染、重症化を予防できるか否かはわからない。 ワクチン開発への期待は高い。各種薬剤でも演繹的に有益性が期待され、phase 1、phase 2を通過した後に、phase 3にて問題が発見される例はきわめて多い。新型コロナウイルスのワクチン開発への道は遠い。古典的発想のワクチンにて解決できればよいとは考えるものの、革新的技術の開発が必要かもしれない。

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COVID-19患者の約7割は転帰良好/国立国際医療研究センター

 8月7日、国立国際医療研究センターはメディア向けに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をテーマとし、「COVID-19レジストリ研究の中間報告」のセミナーを開催した。 セミナーでは、2020年1月から現在まで収集された約4,800例のCOVID-19患者のデータから患者の入院時症状の傾向、予後、重症化傾向などの中間解析結果が説明された。COVID-19患者5,977例を精査 はじめに同センター理事長の國土 典宏氏が、東京・新宿区におけるセンターの意義、患者数の推移・傾向、患者対応などを説明した。 今回の研究では、センターで診療した5,977例(うち陽性1,335例、22.3%)の症例で検討がなされたこと、患者数も一度減少したものの、最近では増加傾向にあり、東京都の感染者数の拡大とパラレルであることが説明された。 センターでは、COVID-19対応総合病院機能として、検疫、重症者対応、診断法・治療法の開発、行政との連携だけでなく、疫学としてゲノム解析や患者レジストリにも力を入れていくと展望を述べた。全国748施設から4,797例を解析 続いて同センターのAMR臨床リファレンスセンターの松永 展明氏と同感染症センターの大津 洋氏が「COVID-19 レジストリ研究に関する中間報告について」をテーマに、レジストリ体制、システムの概要ならびに中間解析の結果について説明を行った。 レジストリ研究の概要について、目的は「COVID-19患者の臨床像および疫学動向を明らかにする」と定め、対象は「COVID-19と診断され医療機関において入院管理されている症例」と規定し、2020年1月(レジストリオープンは3月)からデータ収集されている(詳細は下記のホームページ参照)。 レジストリシステムは、世界保健機関とISARICが作成した症例報告書テンプレートを使用し、日本独自調査の項目も追加。センター内にサーバを設置し、データの集積が行われており、将来的には他国のデータとの統合分析も予定できる設計という。レジストリの登録施設は、全国で748施設、登録症例数は4,797例(8月3日現在)に上る。男性・高齢者・喫煙者や併存疾患のある例は重症化 続いて感染症センターの早川 佳代子氏が解析結果を説明した。中間解析の対象は、約230施設、約2,700例であり、レジストリ開設から7月7日までに登録された「入院治療を行った患者かつ入院時SARS-CoV-2陽性の患者」について行われた。 重症度の内訳として、入院後最悪の状態では「酸素不要」(61.8%)、「酸素要」(29.7%)、「挿管など」(8.5%)だった。入院中に酸素不要であった軽症者は約60%、挿管や体外式膜型人工肺(ECMO)を要した例は8.5%だったほか、入院時に重症であった例では、5人に1人以上が挿管やECMOを要したが、非重症であった例では2%未満だった。 患者背景では、2週間以内に陽性例や疑い例と濃厚接触があった例が58.3%。男性で喫煙者では重症化しやすかったほか、酸素や挿管などを要した患者は年齢が高めであった。また、60代以降では重症化しやすい(=酸素投与・挿管などが必要)傾向がみられた。 併存疾患では、軽症糖尿病(14.2%)、高脂血症(8.2%)、脳血管障害(5.5%)などがみられ、海外(一例としてイギリス:軽症糖尿病[22%]、重症糖尿病[8.2%]、 肥満[9%])の入院患者報告に比べると、併存疾患の割合は低めだった。 入院時の症状では、(37.5度以上)発熱、咳、倦怠感、呼吸困難感が多く、軽症例では頭痛、味覚障害、嗅覚障害を訴える例が多かった(発症から入院までの中央値:7日間)。とくに味覚障害と嗅覚障害の頻度は、海外からの報告でもばらつきが大きいものの、今後症状として増える可能性があると指摘した。 薬剤の使用歴について(併用例もそれぞれカウント)、酸素不要、酸素要、挿管などのいずれでも「ファビピラビル」が一番多く、次にシクレソニドだった。挿管などが必要な患者ではステロイドの使用も多かった。なお、有効性などの中間解析は未解析としている。 退院時の転帰について、全体で自宅退院(66.9%)が最も多く、ついで転院(16.6%)、医療機関以外への施設への入所(7.4%)で、入院死亡は7.5%だった。とくに挿管などの処置の例での死亡は33.8%と高い数値だった。なお、わが国では、海外の入院患者報告に比べると、死亡の割合は低めだという(イギリス:26%、米国NY:21~24%、中国:28%)。 以上から中間解析では、男性・高齢者・喫煙者や併存疾患のある例(心血管系・糖尿病・COPDなど慢性肺疾患)では重症化しやすく、入院中に酸素不要であった軽症者では約8割が自宅退院となり、予後良好であること。そして、欧米と比較し、低めの併存疾患の割合(糖尿病:16.7%、肥満:5.5%)や死亡率(7.5%)であったことが示唆されると説明した。 最後に臨床研究センターの大曲 貴夫氏が、「疫学研究としてさらなる知見の創出」、「医薬品医療機器開発への活用」、「臨床情報と検体情報の融合によるさらなる研究発展」を柱に研究を行っていくと展望を語り、セミナーを終えた。■参考サイトCOVID-19に関するレジストリ研究 COVIREGI-JP

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第18回 身近に迫る新型コロナ、COCOAより基本的な感染予防が勝る

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者拡大に歯止めがかからない。クルーズ船での感染例も含む国内感染者数は既に4万人を突破。3万人突破からこの数字に至るまでわずか9日間しか要していないという。数ヵ月前のニューヨークやイタリア国内を彷彿とさせる状況である。実際、先週は自分の周囲にもCOVID-19がヒタヒタと足音を忍ばせて近づいてきていると感じたことを2度も経験した。そもそも私の場合、最初に身近の感染例を見聞きしたのは4月下旬。まだ国内のPCR検査陽性者が1万2,000人強、人口当たりでは陽性者が1万人当たり1人の時だ。この時は自宅マンションを出て近所で買い物をし、そのまま約1km離れた賃貸アパート一室の事務所へ戻ろうと再びマンション前を通り、異変に気付いた。マンション前の道路にパトカーと救急車が横付けされていたのだ。買い物をしたスーパーまで50mも離れていないのにサイレンを聞いた覚えはない。目を凝らすと自宅マンションのエントランスにあるインターホン前で完全防護服の人間が複数うごめいている。救急車の消防署要員と警察官だろう。職業柄、警察官が複数たむろしていると、ついつい近づいて「コロシ(殺し)ですか?」と業界用語で尋ねてしまう癖があり、警戒につく警察官に「もしかして非番(の同業者)の方ですか?」とぎょっとされたりするのだが、今回はあまりの緊迫感に近づける雰囲気ではない。明日、管理人に尋ねれば良いと思い、そのまま事務所に戻った。翌日、管理人に尋ねたところ、「発熱を訴えた住民がいきなり110番した」とのこと。いやはや神経質な人が過剰反応したのだろうと思ったのだが、結局数日後にこの住民がPCR検査陽性者だと判明した。マンション内の掲示板には、建物内の大規模な消毒はせず、共用部分で多くの人が手を触れる場所を管理人が入念に掃除をする、との管理組合からの決定が張り出されたことで決着がついた。そこからしばらくは周囲でそれらしい話を聞くことなく日々が過ぎていった。ついに知り合いから出たPCR検査陽性者そして先週水曜日の夕刻、旧知の編集者と対面した時、そっと耳打ちされた。「A君が新型コロナのPCR検査で陽性だったらしいです」A君もやはり旧知の編集者。本人がメディア業界に入った当時から現在に至るまで15年以上の付き合いがあり、何度か一緒に仕事をしたこともある。もちろん、時々飲食を共にすることもあり、最後に会ったのも昨年12月の飲食の場でだ。この原稿執筆時点で本人は既に回復し、仕事にも復帰している。本人に連絡を取ると、発熱の症状があり3日間休暇を取得。解熱したため職場に出勤したところ、翌日再度発熱して再び休暇を取り、その後陽性が判明したとのこと。職場に出勤したのは1日のみでとくにクラスターも発生していない。感染経路も不明だという。A君は次のように語った。「実は発熱後から今までまったく咳が出てないんですよね。そんなこともあり正直、油断してました」COVID-19の場合、これまでのデータからはほぼ全例に発熱があり、これに次いで7割以上の患者で観察されるのが乾性咳嗽。ところがA君本人はこの症状がまったくなかったことに加え、3日目の解熱というインフルエンザや風邪との臨床鑑別に用いられる現象があったのだから、実に厄介な感染症といえる。実はすれ違っていたCOVID-19そして2日後の先週金曜日、行きつけのスポーツジムで一汗かいてシャワーを浴びて帰宅しようと出口に向かったところ、従業員に名指しで呼び止められた。私が利用しているジムは時々利用者にちょっとしたプレゼントを配ったりするので、今回もその手のものかと思ってニコニコ顔で振り返ったら、思わぬ“プレゼント”をいただく羽目になった。「実は月曜日に保健所から連絡があり、当店の利用者から新型コロナの陽性者が発生しました。で、その方の直近の利用時間に村上さんが店内にいたことが判明しまして…」一瞬反射的に驚いたものの、もはや感染者がどこにいてもおかしくないと考えていたこともあり、厚生労働省がダウンロードを推奨する新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)を既に自分のスマホでも稼働させていたが反応してなかったな、とぼんやりと思ったくらいだ。従業員の話を聞いてみると、判明した陽性者は、入会のための初来店で、ほぼ入口付近のテーブル席におり、店内の防犯カメラの解析結果でこの時の私はテーブル席から離れたストレッチ・エリア、トレッドミル・エリアにいたとのこと。厚生労働省の一般向けQ&Aで示している濃厚接触者の基本定義は『1m以内、15分以上の接触の可能性がある場合』であり、この定義を満たしたとしてもマスクの有無、会話など発声を伴う行動や対面での接触の有無など、“3密”の状況などを考慮して最終的な濃厚接触者が決定されている。従業員によると、保健所が店内で濃厚接触者として認定した人はいないという。しかも来店日は2週間前のことで、既にウイルスの潜伏期間は過ぎている。従業員からは「この間体調に変化はありませんでしたか?」と尋ねられたが、もちろん変化はない。「一応、同時刻にいた方には念のためお知らせしています」とにこやかに言われて話は終了した。ちなみに前述のCOCOAは陽性と診断された人に対し、保健所が処理番号を発行し、本人が自らの意思で処理番号をアプリに入力しないと、陽性者の登録にはならない。厚生労働省の発表によると、8月5日時点でのCOCOAのダウンロード件数は約1,157万件、陽性登録者は135件であり、まだまだ利用者にとって有効に機能する状態にはなっていないのが現状である。結局、今回私の傍らをCOVID-19が通り過ぎて行ったことで改めて認識したのが、現時点ではソーシャルディスタンスの確保、屋内での距離確保が難しい場合のマスク着用、手洗いの励行という、もはや聞き飽きたといわれるようなことを自分自身が腐らず実行し、そして外に向けては繰り返し伝えていかねばならないということだ。

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