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第291回 診療報酬「ベースアップ評価料」の対象が拡大、5月中の再届出が必須/厚労省

<先週の動き> 1.診療報酬「ベースアップ評価料」の対象が拡大、5月中の再届出が必須/厚労省 2.麻しん236人、コロナ後最多ペース 10~20代中心に感染拡大/小児学会 3.中東情勢緊迫化で医療物資「目詰まり」 5月に手袋5,000万枚放出/内閣府 4.2040年の外科医不足に備え、がん治療の拠点病院を再編へ/厚労省 5.医師偏在対策の柱・地域枠が再設計へ 2028年度以降は定員減も/厚労省 6.医療機関倒産、20年で最多 人件費高騰が経営圧迫/東京商工リサーチ 1.診療報酬「ベースアップ評価料」の対象が拡大、5月中の再届出が必須/厚労省人件費や物価の上昇で経営環境が厳しさを増すなか、厚生労働省はクリニックや中小病院に対して支援策を拡充し、日本医師会はその活用を呼びかけている。国は2026年度の「働き方改革推進支援助成金」を拡充し、常勤10人未満の小規模事業所では賃上げ加算の上限を引き上げ、最大300万円を上乗せできるようにした。労務管理研修やソフト導入、勤務間インターバル導入、時間外労働削減などの取り組みに応じ、補助上限は最大520万円となる。加えて、月60時間以内の時間外労働の割増賃金率を5%以上引き上げた場合の加算も新設された。その一方で、診療報酬ではベースアップ評価料が見直され、対象職種は看護師や薬剤師に加え、40歳未満の医師や歯科医師、事務職員にも広がった。点数も大幅に引き上げられ、継続的な賃上げを行う医療機関はより高く評価される。しかし、診療所の届出率は病院よりも低く、無床診療所59.2%、有床診療所70.0%にとどまっている。6月の診療報酬改定に向けて、算定するためには医療機関は5月中に必ず届出を行う必要がある。また、2024年度にすでに届け出ている医療機関も再届出が必要となる。賃金改善計画書は不要となり、手続き負担は軽減された。さらに、評価料収入は全額を賃上げに充てること、8月の実績報告に備えて対象職員数や賃上げ実績を整理しておくことが重要となる。人材流出を防ぎ、他産業に見劣りしない処遇改善を進めるためにも、診療所は助成金と評価料を組み合わせて活用する姿勢が求められる。 参考 1)働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)(厚労省) 2)令和8年度診療報酬改定ベースアップ評価料による賃上げについて(日医) 3)日医がベースアップ評価料の積極的な算定を呼びかけ、届け出率は無床診療所で約6割(日経メディカル) 4)日医がベースアップ評価料の届け出を呼びかけ(MEDICAL TRIBUNE) 2.麻しん236人、コロナ後最多ペース 10~20代中心に感染拡大/小児学会麻しん(はしか)の感染拡大が続いている。2026年4月上旬までに報告された患者は236人に達し、新型コロナ禍後で最多だった2025年(265人)を上回るペースで推移している。感染者は10~20代が半数を占め、若年層を中心に流行の兆しが強まっている。麻しんは極めて感染力が強く、免疫を持たない場合ほぼ100%発症するほか、肺炎や脳炎など重篤な合併症を引き起こす可能性がある。わが国は2015年に世界保健機関(WHO)から「排除状態」と認定されたが、近年は海外からの持ち込みを起点とした感染が続いている。世界的にも患者数は増加しており、各国で流行が拡大している。国内ではコロナ禍の水際対策で患者数は一時減少したが、2023年以降は増加に転じた。地域別では東京都が最多で、鹿児島県、愛知県と続く。とくに都市部での感染が目立ち、成人を含む若年層への広がりが確認されている。背景にはワクチン接種率の低下がある。麻疹の排除維持には2回接種で95%以上の接種率が必要とされるが、現状はこれを下回っている。感染者の半数以上が未接種、1回接種、あるいは接種歴不明であり、十分な免疫を持たない層の存在が流行拡大の要因となっている。麻しんへの予防接種は1歳時と小学校入学前の2回接種で高い予防効果が得られる。日本小児科学会は、接種歴を確認し未接種や不明の場合は任意接種を検討するよう呼びかけるとともに、発熱や発疹などの症状がある場合は事前連絡のうえで医療機関を受診するよう求めている。流行抑制には、ワクチン接種の徹底と早期受診が不可欠だ。 参考 1)麻しん累積報告数の推移 2019~26年 (JIHS) 2)2026年における麻疹患者数増加に関する注意喚起 (小児科学会) 3)はしか感染、230人超 新型コロナ後で最多ペース-10~20代が中心(時事通信) 4)はしか感染者増加“子どもの定期接種確実に”日本ワクチン学会(NHK) 5)海外からの流入・予防接種率低下等で麻疹(はしか)流行の兆し、適切なワクチン接種(定期・任意)と医療機関受診を-小児科学会(Gem Med) 3.中東情勢緊迫化で医療物資「目詰まり」 5月に手袋5,000万枚放出/内閣府中東情勢の緊迫化による原油・ナフサ供給不安が、医療物資の流通に影響を及ぼしている。政府は4月16日に「中東情勢に関する関係閣僚会議」を開き、対策として感染症流行に備え備蓄している医療用手袋約5億枚のうち、5,000万枚を2026年5月から医療機関向けに放出する方針を決定した。放出対象は、採血や検査で用いる非滅菌手袋で、新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(G-MIS)を通じて医療機関が必要量を申請し供給される仕組みを整備する。厚生労働省によると、医療物資の供給不安に関する相談はメーカー・卸・医療機関を合わせ2,956件に上り、うち34件が供給に影響ありと判断された。消毒液や透析関連物資など一部は解決が進む一方で、透析用チューブや滅菌関連資材などでは中長期的な供給不安が残る。医療機関からの相談は急増しており、需給逼迫の兆しが強まっている。背景には、医療用手袋やガウン、チューブなど多くの医療消耗品が石油由来であり、原料のナフサを中東に依存している構造がある。現場では価格上昇や出荷制限の動きもみられ、手術や透析など生命維持医療への影響を懸念する声が上がる。実際に通販業者では購入制限が導入され、需給の不安定化が流通段階にも波及している。政府は約1.3万の医療機関から情報収集できるシステムを稼働させ、専門チームを増員して供給状況の把握と対策を強化している。また、アジア諸国との連携によるサプライチェーン強靭化にも着手し、エネルギー供給の安定化を通じた医療物資確保を図る方針。医療物資の安定供給は、エネルギー安全保障と一体の課題となっており、短期対応と中長期対策の両立が求められる。 参考 1)石油関連製品の供給不足に伴う厚生労働分野の影響・対応について(厚労省) 2)中東情勢に関する関係閣僚会議(首相官邸) 3)高市首相 5月から医療用手袋5,000万枚の備蓄放出を表明(NHK) 4)高市首相、医療用手袋5,000万枚放出表明 中東情勢で確保困難(毎日新聞) 4.2040年の外科医不足に備え、がん治療の拠点病院を再編へ/厚労省厚生労働省は、4月16日に「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」を開き、高度ながん治療を担う病院の集約化を進める方針を明確にした。従来は全国どこでも一定水準のがん医療を受けられる「均てん化」を重視してきたが、今後は人口減少や医師不足、医療の高度化を踏まえ、質の高い治療を維持するために「集約化」との両立へ軸足を移す。とくに消化器外科では担い手不足が深刻で、現状のままでは2040年にがん治療を担う外科医が約9,200人と足元から39%減り、需要の5,200人を下回る見通しとなっている。一般の医師数は増加している一方で、一般外科医・消化器外科医はこの10年で減少し、若手ほど減り幅が大きい。長時間労働や負担に見合わない処遇が背景にあり、外科医がいる病院の約半数で消化器外科医は1~2人にとどまる。こうした状況から、厚労省は食道がんや膵がんなど高難度手術を拠点病院や大学病院へ集約し、希少がんでは県域を超えた集約も視野に入れる。その一方で、胃がんや大腸がんの標準的手術、長期の薬物療法や検診などは地域の医療機関で担う考え。今後は、新たな地域医療構想と連動し、各医療機関の機能を2028年度までに整理し、第9次医療計画へ反映する。がん診療連携拠点病院の整備指針も見直され、指定期間は最長3年に短縮される見通しで、構想や医療計画との整合性を高める。もっとも、都道府県ごとの議論の進捗にはばらつきが大きく、実施時期未定の地域も多い。国によるデータ提供や技術支援を強化しつつ、患者の受療アクセス低下を防ぎながら、医療の質、病院経営、勤務環境改善を両立できる再編を進められるかが焦点となる。 参考 1)第20回がん診療提供体制のあり方に関する検討会(厚労省) 2)がん医療・地域医療構想・医療計画等を連動させ「集約化すべき病院、高度医療の内容」等を明確化する-がん診療提供体制検討会(Gem Med) 3)がんの医療体制、地域医療構想と連動して整備へ 厚労省案 「28年度までに決定」(CB news) 4)がん手術維持へ病院集約 40年に外科医5,000人超不足、厚労省(日経新聞) 5.医師偏在対策の柱・地域枠が再設計へ 2028年度以降は定員減も/厚労省医師偏在対策の柱として拡大してきた医学部の地域枠が、現在見直しの局面に入っている。厚生労働省は、4月17日に開催した「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」で、2027年度の医学部臨時定員の調整方法を了承し、医師多数県を中心に削減を進めつつ、へき地尺度などを用いて一部地域では削減幅を緩和する方針を示した。医学部定員に占める地域枠などは2007年度の173人から2025年度には1,847人へと増え、全体の19.9%を占めるまで拡大しており、医学部定員9,393人のなかで大きな比重を占めている。この拡大は2008年度以降の臨時定員増を背景とするが、近年は医師数の増加ペース見直しの議論が進み、今後は臨時定員の縮減とともに、地域枠を恒久定員内で運用する方向が示された。検討会では、2027年度以降は医師多数県の臨時定員削減を基本としつつ、へき地尺度や高齢化の進展を踏まえて調整する方針を確認した。さらに2028年度以降は、医師多数県に限らず定員適正化を進める方向性が示され、量的拡大から質的最適化への転換が明確になりつつある。地域枠の制度設計も見直し対象となっている。現在は卒後9年以上の地域勤務が求められ、一定期間を医師不足地域で従事する仕組みとなっているが、義務履行中断者が約7%に上るなど、若手医師のライフイベントや専門医取得との両立が課題となっている。厚労省の資料でも、仕事と育児の両立志向の高まりなど、若年層の価値観変化が制度運用に影響していることが示されている。実際、日経メディカルの調査では「地域枠は必要だが見直しが必要」との回答が約半数を占め、当事者では6割近くに達した。背景には、都市部の生活の利便性や教育環境、キャリア形成機会の偏在があり、単なる配置義務では地域定着につながらない現実がある。地域枠は一定の成果を上げつつも、若手医師の価値観変化や医師需給の転換期を受け、制度疲労が顕在化している。今後は定員管理、勤務環境改善、経済的インセンティブを組み合わせた総合的な再設計が求められる。 参考 1)医師の確保・偏在対策における医学部臨時定員の方針について(厚労省) 2)今後の地域枠等の運用について(同) 3)27年度臨時定員、へき地尺度で多数県の削減幅を緩和 検討会が了承(MEDIFAX) 4)地域枠、医師48%が「従事期間や奨学金の利息見直しが必要」(日経メディカル) 6.医療機関倒産、20年で最多 人件費高騰が経営圧迫/東京商工リサーチ東京商工リサーチの調査によると、2025年度に倒産した医療機関(病院、診療所、歯科医院)は前年度比20.3%増の71件となり、過去20年で最多を更新した。コロナ禍では支援策により低水準に抑えられていたが、収束後の2023年度以降は53件、59件、71件と増加が続き、経営の悪化が顕在化している。業態別では診療所が32件、歯科医院が31件といずれも最多で、とくに歯科は前年度比1.5倍と急増した。その一方で、病院は8件と減少したものの、依然として高い水準にある。負債規模では1億円以上の案件も多く、中堅規模以上の医療機関の倒産が目立つ点も特徴だ。原因は「販売不振」が66%を占め、「既往のシワ寄せ」と合わせ約9割に達した。人口減少による患者数減少や診療報酬改定の影響に加え、光熱費や人件費、医療材料費の上昇により収益構造が悪化している。さらに、経営者の高齢化や人手不足、設備の老朽化も重なり、経営継続が困難となるケースが増えている。倒産形態は破産が69件で全体の97%を占め、再建型の民事再生は2件にとどまった。医療機関は収益規制や後継者不足などから再建が難しく、退出に直結しやすい構造が浮き彫りとなっている。医療機関の倒産は地域の医療提供体制に影響を及ぼし、とくに高齢化が進む地方では受診機会の喪失につながる懸念が強い。2026年6月の診療報酬改定の効果は不透明で、今後、公的支援の強化に加え、M&Aなどを含めた医療機関の再編・集約が一層進む可能性がある。 参考 1)2025年度の「医療機関」倒産 20年で最多の71件 クリニック・歯科医院の淘汰が加速、「破産」が97%超(東京商工リサーチ) 2)25年度の医療機関倒産、過去20年で最多の71件 商工リサーチ調べ(日経新聞)

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第307回 2026年4月より定期接種に加わったワクチンは?

INDEX妊婦の7割、「無料であれば接種をする」イレギュラーな定期接種ワクチン妊婦の7割、「無料であれば接種をする」4月1日から2026年度がスタートした。フリーランスの私にとって3月31日と4月1日は、単なる1日違い以上の意味はないのだが、世の中はそうではない。医療業界もこの日を境にいろいろと変わることがある。その1つがワクチンの定期接種である。2026年4月1日から妊婦に対するRSウイルスワクチン接種が予防接種法に基づくA類疾病として定期接種に加わった。これまでは任意接種だったため、約3~4万円の自己負担が必要だったが、これが原則無料となる。国立成育医療研究センターのグループが2024年7月〜2025年8月に出産した1,279例の女性を対象としたオンライン全国調査では、妊娠中のRSウイルスワクチン接種率は約11.6%(95%信頼区間[CI]:9.8〜13.3%)。同ワクチンを公費負担で接種できる米国や英国の接種率の約30〜50%と比べれば、かなり低い水準である。同調査では未接種者にその理由を尋ねているが、「予防効果を知らなかった」(28.9%)、「ワクチンの存在を知らなかった」(27.3%)、「自費での支払額が高過ぎる」(18.7%)など。このうち77.5%は「無料であれば接種をする」と回答したことも明らかになっている。また、接種した人でも接種費用について「やや高い」または「とても高い」と回答した人は87.2%に上っており、やはり高額なワクチン接種費用は接種率向上の大きなハードルになっていることは確実と言ってよい。今後は少なくとも前出の11.6%よりは接種率が高くなると考えられる。もっともこの調査で未接種であった人の15.0%が、「無料でも受けたくない」と回答していることのほうが大きな問題かもしれない。イレギュラーな定期接種ワクチンそもそも今回のRSウイルスワクチン自体が既存の定期接種ワクチンの中では異質である。接種対象者が単なる健常者ではなく妊婦限定であることに加え、接種した妊婦の体内で産生された抗体が胎盤を通じて胎児に移行し、出生直後の乳児のRSウイルス感染を防御するというやや分かりにくいものだからだ。少なからぬ人が経験しているだろうが、妊娠期間中の女性は自身だけでなく胎児の健康を慮るあまり、体内に入る薬や食品などには、平時以上に神経質になりがちである。その意味ではVaccines誌に掲載されたサハラ以南で行われた妊婦の新型コロナウイルスワクチンに関する研究1)が興味深い。同研究はアフリカのサハラ以南というやや特殊な地域で行われ、例数も少ないが、妊婦と非妊婦の年齢マッチングを行ったうえでの研究である。それによると妊婦は非妊婦に比べ有意にワクチンを受ける可能性が低いことがわかっている(オッズ比[OR]:0.12、95%信頼区間[CI]:0.06~0.27、p<0.001)。また、学歴が低いほど接種率が有意に高く(OR:0.04、95%CI:0.01~0.18、p<0.001)、一時“流行”した新型コロナワクチンにマイクロチップが含まれているという誤情報を信じる人ほどワクチン接種率が有意に低いという結果だ(OR:3.63、95%CI:1.12~11.79、p=0.032)。一瞬、これを読むと頭が混乱するかもしれないが、ここはやや補足が必要だ。まず、この研究では、いわゆる高学歴は被験者全体の92.6%を占め、低学歴者の割合は極端に低い。このため学歴による有意差は表面的な結果と受け止められる。また、たとえば新型コロナワクチンがDNAに変化を与えるという誤情報を信じる割合は、妊婦が79.6%、非妊婦が76.6%で有意差はない。むしろシンプルに妊婦のほうが非妊婦に比べ、何事も慎重になりやすい、考え過ぎるゆえにワクチンに対しても忌避傾向がみられることを示唆していると解釈したほうがいいだろう。一方、ワクチン接種については従来から医療者による推奨などが接種率に大きな影響を与えることが知られている。米国疾病予防管理センター(CDC)の「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」2023年9月29日号に掲載された妊婦に関するワクチン接種に関する調査結果2)では、2022年10月~2023年1月の間に妊娠していたと報告した1,814人の女性でのインフルエンザワクチン接種率は47.2%(95%CI:44.4~50.1)に過ぎなかったが、医師による推奨があり、その場で接種が可能だったケースでの接種率は61.4%(同:58.0~64.7)。これに対し、推奨のみでは22.7%(同:15.0~32.0)、推奨なしでは10.8%(同:7.5~14.9)で、各群間では有意差(p<0.05)が認められたとしている。その意味で新たに定期接種に加わったRSウイルスワクチンの接種率向上については、限られた診療時間内で医療者がどのように妊婦に情報提供できるかにかかっているともいえる。もちろんこの点を医療者側も重々承知しているであろうことは、日本産婦人科医会のホームページ3)にRSウイルスワクチン接種に関する医師・患者向け資材が掲載されていることからもうかがい知れる。同時に私たちメディアにもそうした責任は向けられているのだと、新年度を迎え、心新たにもしている。1)Amiebenomo OM, et al. Vaccines (Basel). 2023;11:484.2)Razzaghi H, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2023;39:1065-1071.3)日本産婦人科医会:RSウイルスに関するご案内

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心房細動/心房粗動の発症リスク、低亜鉛が影響

 亜鉛欠乏症は心房細動(AF)/心房粗動(AFL)発症の重要な独立した危険因子となる可能性が、台湾・Chi Mei Medical CenterのI-Wen Chen氏らの研究から明らかになった。近年、AF/AFLの有病率が世界的に増加しており、修正可能なリスク因子の特定が喫緊の課題である。また、心血管疾患との関連が示唆されている亜鉛欠乏症について、AF/AFLの発症を関連付けるような大規模なエビデンスは依然として限られていた。Frontiers in Nutrition誌2026年2月20日号掲載の報告。 本研究は、電子健康記録(EHR)のプラットフォームであるTriNetX社のデータベースを用いて実施された多施設共同後ろ向きコホート研究。2010~23年に血清亜鉛の測定記録日(インデックス日)のある40歳以上の患者を解析した。傾向スコアマッチングにより、患者を亜鉛欠乏症群(70μg/dL未満、6万1,732例)と亜鉛正常群(70~120μg/dL、6万1,732例)に1対1に調整した。主要評価項目はインデックス日から2年以内のAF/AFL新規発症とした。副次評価項目は、肺炎(陽性対照)、AF/AFL、虚血性脳卒中リスクとした。アウトカムイベントは、それぞれ1~6ヵ月以内および6~24ヵ月以内に発症するものと定義し、早期発症と晩期発症に層別化した。 主な結果は以下のとおり。・亜鉛欠乏症は、追跡期間の早期(ハザード比[HR]:1.62、95%信頼区間[CI]:1.39~1.90、p<0.001)および晩期(HR:1.42、95%CI:1.29~1.57、p<0.001)の両方において、AF/AFL発症リスクの有意な増加と関連していた。・血清亜鉛濃度別に早期発症ならびに晩期発症の用量反応関係を調べた結果、軽度~中等度亜鉛欠乏症(50~70μg/dL、各群5万6,206例)では、早期発症(HR:1.40、95%CI:1.18~1.67)と晩期発症(HR:1.26、95%CI:1.14~1.41)の両方でAFリスクに対する統計学的有意差がわずかに認められた。対照的に、重度亜鉛欠乏症(50μg/dL未満、各群8,961例)では、リスクが著しく上昇し、早期発症は約3倍(HR:2.79)、晩期発症は2倍(HR:2.04)に増加した。・重度の亜鉛欠乏症(50μg/dL未満)は、対照群と比較して晩期AF/AFLリスクが約2倍であった(HR:2.04、95%CI:1.67~2.49)。一方、軽度~中等度の亜鉛欠乏症(50~70μg/dL)は、対照群と比較し、わずかだが有意な増加を示した(HR:1.26、95%CI:1.14~1.41)。 ・亜鉛欠乏症とAF/AFLの関連は、多様な患者サブグループにおいて、また新型コロナウイルス感染症のパンデミック前(2010~19年)とパンデミック期(2020~23年)のいずれにおいても一貫していた。・肺炎リスク(早期のHR:1.56、晩期のHR:1.40)や虚血性脳卒中リスク(早期のHR:1.19、晩期のHR:1.12)も亜鉛欠乏症患者で上昇した。ただし、心室細動/心室粗動は亜鉛欠乏症と有意な関連を示さず、心房性不整脈に特異的に影響を与えることが示唆された。 研究者らは、「血清亜鉛値を心血管リスク評価に組み込み、亜鉛補給を費用対効果の高い予防戦略として検討することに潜在的な価値がある」としている。

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遠隔診療で医療費が対面診療の約5分の1に

 遠隔診療は単に便利なだけでなく、患者と医療システム双方の医療費削減につながることが、新たな研究で示された。特に頻度の高い症状の診療においては、遠隔診療では対面診療と比べて医療費を約5分の1に抑えられることが明らかになったという。米ペンシルベニア大学戦略的イニシアチブのシニアバイスプレジデントであるDavid Asch氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に2月9日掲載された。 Asch氏は「この研究を行う前は、遠隔診療は“応急処置”を気軽に受けられる手段の一つに過ぎず、対面診療を先延ばしにするだけで、結果的に全体の医療費を押し上げるのではないかという懸念があった」と説明。その上で、「しかし、われわれの研究から、それが事実ではないことが明らかになった。多くの患者にとって、遠隔診療は応急処置のための一時的な対応となるだけでなく、完全な解決策となり得るのだ」とニュースリリースの中で述べている。 論文の研究背景によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中の緊急措置により遠隔診療へのアクセスが拡大し、その利用が急増した。例えば、ペンシルベニア大学ヘルスシステム(UPHS)での遠隔診療の件数は、2020年3月から2021年2月までの1年間で100万件に達し、2019年の1万1,000件から約90倍に増加した。 しかし、遠隔診療の有効性や費用対効果については依然として疑問が残っていたという。論文の上席著者である同大学生物統計学教授のYong Chen氏は、「遠隔診療が万能ではないことは認識している。特に精神および行動の健康問題に対しては、慎重なトリアージやフォローアップ、継続的なケアが依然として重要である。そのため、われわれは、医療資源の効率的な配分が実現されているのかを解明したいと考えた」と述べている。 研究グループは今回、2024年1月1日から4月30日までの4カ月間にわたる16万3,308件の診察データを分析した。データには、対面診療および遠隔診療の両方の診察データが含まれていた。対象はCOVID-19、呼吸器症状、神経発達障害、睡眠障害、不安症など10種類の一般的な症状や疾患の診察とし、初回受診の7日前から30日後まで追跡し、その後の受診の必要性を調べた。 その結果、遠隔診療に関連する請求額は平均で96.60ドル(1ドル158円換算で約1万5,300円)だったのに対し、対面診療では509.21ドル(約8万円)だった。また、その後の受診回数は、遠隔診療で平均3.44回であったのに対し、対面診療では平均4.44回であった。特に呼吸器症状などでは対面診療よりも遠隔診療の方が平均で800ドル(約12万6,400円)以上医療費が少なかった。一方、精神科医療については、対面診療と遠隔診療の医療費はほぼ同額であることが示された。 論文の筆頭著者である同大学応用数学・計算科学のBingyu Zhang氏は、「多くの医療システムでは、すでに精神科医療の大部分を遠隔診療によって提供している。精神科医療は、他の疾患のような検査や処置ではなく、カウンセリングや服薬管理が主体となるからだ。したがって、治療や処方の流れは診療形態にかかわらず同じようなものであり、診療エピソードにかかる費用も同程度になる。ただし、それでも遠隔診療ではその後の受診回数が少ない傾向にある」と説明している。 研究グループはまた、遠隔診療へのアクセスを拡大したコロナ禍の規制を維持するために米議会が対応する必要があると主張している。UPHSのCEOであるKevin Mahoney氏はニュースリリースの中で、「もし遠隔診療がCOVID-19以前のような制限された形に戻れば、今回われわれが明らかにした医療費削減効果は失われる可能性がある」と指摘し、「病院や医療システムが深刻な財政的逆風にさらされている今、このような節減は極めて重要だ。それによって、患者ケアへの再投資やイノベーションの推進が可能になる」と述べている。

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呼吸器感染症やアレルギーに対する点鼻ワクチン、動物実験で有望な結果

 注射を何本も打たれるのが嫌でワクチン接種を避けてきた人にとって、希望の持てるニュースがある。米国の主要5大学の科学者たちが、将来的にはインフルエンザや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、細菌性肺炎、さらには一般的なアレルギーにまで効果を発揮し得る点鼻スプレー型ワクチンの開発に大きな一歩を踏み出したのだ。このワクチンのマウスでの実験に携わった米スタンフォード大学医学部の微生物学・免疫学教授であるBali Pulendran氏は、「これは医療のあり方を一変させる可能性がある」と語っている。この研究の詳細は、「Science」に2月19日掲載された。 現行のワクチンは、病原体の一部をあらかじめ免疫に提示することで、実際の感染に備えさせるものだ。しかし、多くのウイルスは瞬く間に変異してしまうため、追加接種やインフルエンザワクチンのような毎年の接種が必要とされている。Pulendran氏は、「ヒョウが模様を変えるように、ウイルスは表面の抗原を容易に変えてしまう」と説明する。 一方、「GLA-3M-052-LS+OVA」と名付けられた今回のワクチンは、感染時に免疫細胞同士が交わすシグナルを模倣することで体の主要な防御機構を総動員し、より長く続く協調的な免疫反応を引き起こすように設計されている。具体的には、この点鼻ワクチンは、脂質から成る粒子であるリポソームを用いて、免疫を強く刺激するTLR4(Toll様受容体4)およびTLR7/8のリガンドと、モデル抗原である卵白由来のタンパク質、オボアルブミンを組み合わせたもので、鼻腔に投与することで気道や肺の免疫系を直接活性化する。 実験では、マウスの鼻腔にワクチンを滴下投与し、一部のマウスには1週間おきに複数回投与した。その後、呼吸器系ウイルスに曝露させた。その結果、これらのマウスは、新型コロナウイルスやSARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルス、コウモリ由来のSARS関連コロナウイルスであるSHC014-CoVなどの複数のウイルスだけでなく、黄色ブドウ球菌やアシネトバクター属菌などの細菌、さらにはダニなどのアレルゲンに対しても3カ月以上続く防御効果を示した。一方、未接種のマウスでは著しい体重減少と重症化が認められ、死亡例も多く確認された。 Pulendran氏は、「最初は突拍子もないアイデアに思えた。こんなことが可能だと本気で考えていた人はほとんどいなかったと思う」と話す。しかし、実際に成果は得られた。同氏は、「ワクチンを投与された肺の免疫システムは、ウイルスに対処する準備が万全であり、通常は2週間程度かかるウイルス特異的T細胞や抗体による適応免疫反応をわずか3日で起こすことができるのだ」と述べている。 とはいえ、すぐに現行のワクチン接種をやめられるわけではない。動物実験の結果がそのまま人間に当てはまるとは限らず、GLA-3M-052-LS+OVAについても、これからヒトを対象にした試験が必要である。しかし、ヒトでも同様の結果が得られれば、将来は毎年必要な複数の注射をこの1本の点鼻ワクチンに置き換えられる可能性がある。また、新たに出現したパンデミックを引き起こし得るウイルスに対して迅速に防御を提供できる可能性もあるという。研究グループは、ヒトでの試験が成功すれば、5〜7年以内に「呼吸器系ウイルスに対するユニバーサルワクチン」が利用可能になる可能性があるとしている。 なお、今回の研究には、スタンフォード大学のほか、エモリー大学、ノースカロライナ大学チャペルヒル校、ユタ州立大学、アリゾナ大学の研究者も参加した。

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第308回 地域の医療機関の共倒れを防ぐために、日本病院会会長、元日本医師会長の病院も取り組む地域医療連携推進法人

コロナ禍を経て2024年度から連携法人の認定数急増こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。2026年度診療報酬改定の全体像が明らかになり、また新たな地域医療構想策定ガイドラインもまもなく発出されるということで、地域における医療機関の役割分担、棲み分けが活発化していきそうです。とくに今改定では「第303回 病院と診療所で『メリハリ』に違いが出た2026年度診療報酬改定、病院は急性期病院一般入院基本料新設、地域包括医療病棟入院料大幅見直しなどで地域医療構想後押しへ」で書いた、「急性期病院一般入院基本料」の新設と「地域包括医療病棟入院料」の再編、「救急患者連携搬送料」の大幅見直し(搬送の受け入れ側も新たに評価)などによって、地域における医療機関連携の様相も大きく変わっていくでしょう。診療報酬による経済的インセンティブの有無に関係なく、自発的に取り組む医療連携も着実に広がっています。そうした動きの1つが「地域医療連携推進法人」(以下、連携推進法人)の設立です。連携推進法人については、本連載でも、「第214回 岸田首相、初夏の山形・酒田へ。2024年度から制度テコ入れの地域医療連携推進法人に再び脚光」、「第168回 3年連続3回目、地域医療連携推進法人言及の背景」などで度々取り上げてきましたが、コロナ禍を経て2024年くらいから認定数が急増しています。これまで59法人が認定、最多は大阪府で9法人、次いで北海道と静岡県が4法人連携推進法人とは、地域での医療機能の分担や連携を進める目的で、母体の異なる複数の医療機関や介護事業者などが参加して共同でさまざまな連携業務を行う事業体です。「競争よりも協調」を重視し、「地域医療構想達成のための一つの選択肢」として2015年の医療法改正で制度化が決まり、2017年4月から認定がスタートしました。制度創設から約9年が経過し、2026年1月末現在、全国でこれまでに59法人が連携推進法人として認定されています。注目されるのは昨年の2024年度から認定数が急増している点です。2023年度はわずか3法人の認定でしたが、2024年度は13法人、2025年度は8法人が認定されました。都道府県別に見ると、一番多いのは大阪府で9法人、次いで北海道と静岡県が4法人、秋田県、滋賀県、高知県が3法人となっています。人口減少、医療人材不足、コロナ禍後の患者数減少に加え、物価高、円安、人件費高騰などが医療機関を直撃この連携推進法人について、日経ヘルスケアは「地域医療連携推進法人の現在地」と題する記事を2025年11月号と12月号に前後編に分けて掲載、急増の理由を分析するとともに最近設立された連携推進法人のトレンドについてレポートしており、参考になります。同記事は、連携推進法人が急増している理由・背景として、「制度が創設された10年前の医療法改正時よりも、医療機関を取り巻く経営環境が厳しさを増したことが挙げられる。人口減少、医療人材不足、新型コロナウイルス感染症禍後の患者数減少に加え、物価高、円安、人件費高騰などが医療機関を直撃している」と分析、「そんな中、地域の医療機関の多くが、単独ではなく、地域の複数の医療機関、介護施設、介護事業所などとともに、機能の分担、集約化、連携強化を図り、この難局を乗り切ろうと考えるようになった。そのためのツールとして、連携推進法人制度に今まで以上に注目が集まっている」と書いています。「経営コストの削減、医療人材の交流・有効活用に重点を置き取り組んでいく」と日病会長同記事には、地域で高度急性期機能を担う大病院が主導して地域内で患者をシームレスに引き継ぐ仕組みの構築を図る「垂直連携型」のケース、医療機能が同等、あるいは似通った医療機関同士による「水平連携型」のケース、大学病院が取り組むケースなどが紹介されていますが、とくに興味深かったのは、日本病院会会長を務める相澤 孝夫氏が理事長を務める社会医療法人財団慈泉会・相澤病院(長野県松本市、456床)が中心となって、地域の民間病院、診療所、介護老人保健施設、特別養護老人ホームなど6法人を参加法人として2025年10月に設立された「信州松本ヘルスケアネットワーク」です。同記事で相澤氏は「制度ができた当初も設立を検討したが、今ほど医療機関経営の状況も悪くはなく、地域の医療機関経営者の関心を呼び起こすことができず断念した。しかし新型コロナウイルスの感染拡大を経て、経営状況も厳しくなってきたため、周辺の医療機関の要望も聞きながら設立を決断した。まずは経営コストの削減、医療人材の交流・有効活用に重点を置き取り組んでいく」と語っています。“強い”急性期病院が1つだけが生き残っても、慢性期・回復期に入った患者を受け入れる後方病院や介護事業所が地域になければ経営は行き詰まります。相澤氏の言葉からは、地方の民間医療機関が共倒れせず、生き残っていくための最終手段として連携推進法人に早くから着目していたことがわかります。元日本医師会長の病院も連携推進法人の設立準備日本病院会会長自らが連携推進法人設立に動いたということで、同制度に改めて大きな注目が集まることとなったわけですが、今年になって元日本医師会長の横倉 義武氏が理事長を務める、社会医療法人弘恵会・ヨコクラ病院(福岡県みやま市、199床)も、地域の医療法人、診療所、社会福祉法人などとともに連携推進法人の設立準備をしている、というニュースも入ってきています。2015年に連携推進法人の制度化が決まった当時は、一部の県では連携推進法人の設立に県医師会が猛反対し、設立計画が潰されることもありました。制度誕生の元々の発端が、安倍 晋三政権時代の2014年6月に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2014」に記された「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」だったため、大規模法人が中小を吸収合併していくイメージが先行し、中小病院や診療所の経営者などに警戒感が芽生えたことなどがその背景にはありました。しかし、時代は大きく変わりました。なにせ日本病院会会長や、元日本医師会会長までもが取り組むようになったのですから。ところで、連携推進法人の取り組みには、王道とも言える垂直連携型以外にも、ユニークな事例が数多くあります。次号ではそうしたケースについて紹介します。(この項続く)

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第287回 医師国試合格率91.6%と低下、新卒合格者も9千人割れ/厚労省

<先週の動き> 1.医師国試合格率91.6%と低下、新卒合格者も9千人割れ/厚労省 2.はしか患者100人超、若年層中心に増加、感染拡大に警戒/厚労省 3.移植医療を集約化と体制強化、報酬を4倍加算、逼迫した現場を支援/厚労省 4.「新たな地域医療構想」機能選択で病院の再編・集約本格化/厚労省 5.2027年度専攻医シーリング決定、偏在是正へ都道府県連携強化/厚労省 6.薬剤アレルギー既往見落としで死亡事故が発生、市民病院を提訴/愛知県 1.医師国試合格率91.6%と低下、新卒合格者も9千人割れ/厚労省厚生労働省は2026年3月16日、第120回医師国家試験の合格者を発表した。受験者9,980人のうち合格者は9,139人で、合格率は91.6%と前回から0.7ポイント低下した。合格者数は前年より347人減少し、とりわけ新卒合格者は8,716人(合格率94.7%)と313人減少となり、3年ぶりに9,000人を下回った。医師供給動向に変化が生じている可能性が示唆される。試験は2026年2月に実施され、合格基準は必修問題で200点満点中160点以上、一般・臨床問題で300点満点中224点以上、禁忌肢3問以下とされた。近年と同様の基準であるが、合格率の微減と新卒者数の減少が今回の特徴となっている。大学別では、自治医科大学が新卒・既卒ともに合格率100%を達成したほか、北海道大学、京都大学も新卒で100%を記録した。平均合格率は国立93.0%、公立93.5%、私立92.5%と大きな差はないものの、既卒者を含むその他区分では54.8%と低水準にとどまった。男女別では女性92.4%、男性91.1%と女性が上回った。合格者数はコロナ禍以降、回復傾向にあったが、今回の減少は医学生数の変動や受験動向の影響が考えられる。医師偏在や地域医療構想の議論が進む中、今後の医師供給の量と質のバランスが一層重要となる。とくに新卒者数の減少は初期研修医確保にも影響を与える可能性があり、今後もこの傾向が続けば、各医療機関や自治体にとっても注視すべき事態となる。 参考 1)第120回医師国家試験の合格発表について(厚労省) 2)第120回医師国家試験の学校別合格者状況(同) 3)第120回医師国家試験合格者の状況(大学別合格者数)-9,139人が合格、合格率は91.6%(医事新報) 4)医師国家試験、合格率91.6%-新卒合格者は3年ぶりに9千人下回る(CB news) 5)2026年医師国家試験大学別合格率…合格率100%は自治医科大学(リセマム) 2.はしか患者100人超、若年層中心に増加、感染拡大に警戒/厚労省国内の麻疹(はしか)報告数が増加し、厚生労働省は注意喚起を強めている。2026年第9週までの累計報告数は87例、第10週時点では100例に達し、新型コロナ禍以降で最多となった。前年同期の22例を大きく上回る水準で、感染拡大の兆しがみられる。近年、わが国では土着株による感染は確認されておらず、2015年には世界保健機関(WHO)から排除状態と認定されている。現在の流行は、海外から持ち込まれたウイルスを起点に、国内で2次感染が広がる構図となっている。事例として、愛知県の高校での集団感染をはじめ、各地で散発的な発生が報告されており、都市部を中心に感染が拡大している。患者の約7割は10~30代で、ワクチン接種歴の不十分な層の影響が示唆されている。麻疹は空気感染を起こす極めて感染力の高い疾患であり、同一空間にいるだけで感染する可能性がある。発熱、咳、鼻水に続き発疹を呈し、重症例では脳炎を合併するリスクもある。その一方で、予防の柱であるMRワクチンの接種率は低下傾向にある。2024年度の接種率は1期92.7%、2期91.0%と、目標の95%を下回った。コロナ禍以降の接種控えが影響しているとみられ、集団免疫の維持に懸念が生じている。厚労省は、渡航前の接種歴確認や帰国後の健康観察を呼びかけるとともに、疑わしい症状がある場合は事前連絡のうえ医療機関を受診するよう求めている。感染再拡大を防ぐには、早期診断とワクチン接種率の回復が急務である。 参考 1)麻疹報告数、コロナ禍以降最多 厚労省が注意喚起(MEDIFAX) 2)はしか患者数、2026年累計100人に 25年同期22人を上回る(日経新聞) 3)感染症発生動向調査週報 2026年第9週第9号(国立健康危機管理研究機構) 3.移植医療を集約化と体制強化、報酬を4倍加算、逼迫した現場を支援/厚労省厚生労働省は、脳死下臓器提供の増加を背景に、移植医療の集約化と体制強化に舵を切った。今回の診療報酬改定で、多くの移植手術を担う施設を「拠点病院」として位置付け、人的・設備面の支援を検討する方針を打ち出している。臓器提供数は近年増加し、2025年には150例を超えたが、心臓や肺、肝臓など複数臓器の同時対応が求められるため、実施可能な施設は一部大学病院に限られている。その一方で、突発的な手術対応により手術室や看護師の確保が困難となり、受け入れ断念例も生じている。こうした現場の逼迫は深刻で、東京大学病院では移植件数が年間100例を超える中、ICUベッドに余裕があっても人員不足で受け入れられない状況や、病院経営への負担が指摘されている。実際、移植医療は従来、手術準備や人員確保のコストが大きく、病院側の持ち出しが問題となっていた。このため2026年度診療報酬改定では、臓器移植実施体制確保加算が新設され、手術料の実質4倍相当の評価が行われる。大学病院の試算では、従来は肺移植1例当たり約400万円の赤字だったが、新加算によりほぼ解消可能とされる。また、ドナーコーディネーターの業務も評価対象とし、院内での同意取得体制強化を促す。背景には、体制不足により移植を受けられなかった患者が2024年に延べ662人に上った現状がある。国立大学病院全体でも今回の改定により年間443億円の増収が見込まれ、赤字解消に寄与すると評価されている。しかし、紹介・逆紹介要件の厳格化による減収も予測され、経営改善には引き続き対応が求められる。移植医療は高度化・集約化が不可避な領域であり、今後は拠点化と財政支援を軸に、持続可能な提供体制の構築が問われる局面に入ったと言える。 参考 1)臓器移植支援へ一部病院を拠点化 厚労省、東大病院「経営苦しく」(朝日新聞) 2)脳死者の臓器移植に診療報酬加算へ…ドナーコーディネーターの働きも評価、報酬を手厚く(読売新聞) 3)国立大学病院長会議 26年度診療報酬改定年間443億円増収で赤字解消へ 外科医療確保や臓器移植加算を評価(ミクスオンライン) 4.「新たな地域医療構想」機能選択で病院の再編・集約本格化/厚労省厚生労働省は、2040年を見据えた「新たな地域医療構想」のとりまとめ案を示し、2028年度末までに各医療機関の「主たる機能」を明確化する方針を打ち出した。従来の病床機能報告に加え、新たに医療機関機能報告を導入し、各病院が担う役割を整理することで、再編・集約化と病床削減を一層進める構えである。新構想では、「医療機関の機能を急性期拠点」「高齢者救急・地域急性期」「在宅医療等連携」「専門等機能」の4区分に整理し、各施設が2040年に向けて担う機能を選択・報告する。複数機能の併存は認めつつも、急性期拠点については手術件数や救急対応などの実績要件を設け、実質的に高度急性期病院の集約を図る。人口20~30万人に1施設程度とする考え方が示され、全国では400~600施設に集約される見通しである。また、人口減少地域では構想区域の広域化を求め、より広い圏域で医療資源を維持する方向性も示された。その一方で、急性期以外の救急医療や夜間手術機能についても集約が検討されており、地域によってはアクセス低下への懸念が指摘されている。病床数の算定では、在宅医療の強化や早期リハビリによる在院日数短縮、医療DXによる効率化を前提に必要病床数を低く見積もる仕組みが採用される。急性期病床の稼働率も78%から84%へ引き上げられ、将来的な病床削減圧力が強まる見通しである。さらに、リハビリテーションでは、入院から在宅までの連続的な提供体制を支える「地域インフラ」として位置付けられ、栄養管理や口腔ケアとの一体的な取り組みも明記された。2026年10月からの機能報告を経て、各都道府県が調整を行い、医療機関ごとの役割分担が具体化する。医療提供体制の再構築が本格化する中、地域医療への影響が注視される。 参考 1)新たな地域医療構想に関するとりまとめ(厚労省) 2)新たな地域医療構想とりまとめ案 28年度末までに病院の「主な機能」を決定(保団連) 3)「新たな地域医療構想」とりまとめを了承、リハビリテーションは「地域のインフラ」へ(PT-OT-ST.NET) 5.2027年度専攻医シーリング決定、偏在是正へ都道府県連携強化/厚労省厚生労働省は、2026年3月18日に開催した「医道審議会医師専門研修部会」で、2027年度に専門研修を開始する専攻医の採用上限、いわゆるシーリング数案を了承した。新たに加算対象となった都道府県診療科から提出された指導医派遣実績を踏まえ、日本専門医機構が算定したもので、委員から大きな異論は出なかった。今後、6月下旬以降に都道府県へプログラム情報を提供し、各都道府県知事の意見や厚生労働大臣の要請を反映した修正を経て、11月の募集開始を予定している。今回のシーリングでは、最新の必要医師数と足下の医師数を用いて対象都道府県を設定し、特別地域連携プログラムと都道府県限定の連携プログラムを統合した点に特徴がある。特別地域連携プログラムの受け入れ可能数は全領域で採用上限を上回り、地域偏在是正に向けた受け皿整備は一定程度進んだ。その一方で、通常プログラム加算は実績に応じて付与されるが、加算上限を下回る領域もあり、制度運用はなお調整段階にある。あわせて部会では、2040年を見据えた医療需要の変化に対応する専門医養成も論点となった。85歳以上人口の増加、高齢者救急の拡大、生産年齢人口の減少を踏まえ、各基本領域学会に対し、将来重要となる疾患や患者像、専門医制度上の課題を尋ねるアンケート調査を実施する方針が示された。専攻医以降のキャリアチェンジやリカレント教育の必要性も指摘された。さらに、医師偏在対策では都道府県、大学医学部、大学病院の連携強化が不可欠とされた。地域枠、広域連携型臨床研修、専門研修連携プログラム、総合診療医育成などを医師確保計画に明確に位置付け、地域定着を後押しする方向で議論が進む。専攻医シーリングは、単なる採用枠調整にとどまらず、地域医療を支える医師養成全体を再設計する局面に入った。 参考 1)令和7年度第5回医道審議会医師分科会 医師専門研修部会(厚労省) 2)2027年度の専攻医シーリング数が決定、募集開始に向けた調整進む(日経メディカル) 3)医師偏在是正策の強化に向け「都道府県・大学医学部・大学病院の連携」をこれまで以上に強化せよ-医師偏在対策検討会(Gem Med) 6.薬剤アレルギー既往見落としで死亡事故が発生、市民病院を提訴/愛知県愛知県の西尾市民病院で診療を受けた70代女性が、薬剤アレルギー既往のある薬を処方・服用後に死亡したとして、遺族が市と調剤薬局を相手取り約2,541万円の損害賠償を求め提訴した。訴状によれば、女性は2025年2月に受診し、処方箋を受け取り、院外薬局で調剤された薬剤を服用後、約41日後に死亡した。遺族側では、医療機関はアレルギー既往歴を把握可能であったにもかかわらず看過したと主張している。その一方で、市側はアレルギー薬剤の処方自体は認めつつも、死亡との因果関係には争いがあるとしている。この事件は単なる確認漏れが原因ではなく、電子カルテおよびオーダリングシステムにおけるアレルギー情報の管理・共有体制が問題の根幹にある。日本医療機能評価機構は、医療安全情報の分析レポートで、アレルギー情報が「登録されているが参照されない」「画面上で視認性が低い」「更新が不十分」といった要因により、処方時に活用されない事例が発生していることを繰り返し指摘している。また、院内で把握されていた情報が院外薬局に十分伝達されないケースや、薬局側での最終確認が機能しなかった事例も報告されている。院外処方が一般化してから、医療機関と薬局の間の情報連携不足は構造的リスクとなっており、患者申告に依存した運用には限界がある。電子カルテ上のアレルギー情報については、入力の標準化、警告アラートの強化、処方時の確認が不可欠である。このためマイナ保険証の活用のほか、2重3重のチェック体制をどのように実効性ある形で運用するかが問われている。今回の訴訟は、医療安全について「情報があること」と「実際に使われること」の乖離を改めて浮き彫りにした。現場での確認フローの見直しなど再発防止策が求められる。 参考 1)「薬のアレルギーで死亡」70代女性遺族、愛知県西尾市などを提訴(中日新聞) 2)電子カルテ・オーダリングシステムを用いた薬剤アレルギーの情報共有に関連した事例(日本医療機能評価機構) 3)電子カルテ・オーダリングシステムを用いた薬剤アレルギーの情報共有に関連した事例(日本医療機能評価機構)

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第304回 Lancet誌が怒りあらわに、ケネディ氏に向けたEditorialを掲載

INDEX保健福祉省長官が公衆衛生を破綻に追い込む危険な結果を導き出す愚策感染症の流行で結果は明確保健福祉省長官が公衆衛生を破綻に追い込む前回は米国によるイラン攻撃の影響を取り上げたが、米国の無茶苦茶ぶりはほかでも進行中である。何かといえば、昨年2月に保健福祉省長官に就任したロバート・ケネディ・ジュニア氏のことである。過去に本連載でもケネディ氏によるLancet誌、NEJM誌、JAMA誌の3誌の腐敗呼ばわり、米国疾病予防管理センター(CDC)が推奨する小児向けワクチン接種スケジュールの大幅縮小、CDCにワクチン政策の助言・提案を行う外部専門家機関・ACIP(予防接種の実施に関する諮問委員会)の委員全員解任とワクチン懐疑派委員への入れ替え、mRNAワクチン開発への研究支援の縮小、自分の主張と反する科学的研究論文を掲載したジャーナルへの論文撤回要請などを取り上げてきた。しかし、ケネディ氏の傍若無人ぶりには、いよいよ目を背けたくなる。ケネディ氏の長官就任1年を経た2026年2月28日付のLancet誌407巻では、表紙にデカデカと“The destruction that Kennedy has wrought in 1 year might take generations to repair, and there is little hope for US health and science while he remains at the helm.”(ケネディがこの1年で引き起こした破壊は、修復するのに何世代もかかるかもしれない。そして彼が指揮を執り続ける限り、米国の保健と科学に希望はほとんどない)と謳い、冒頭では「Robert Kennedy Jr:1year failure(ロバート・ケネディ・ジュニア:1年間の失敗)」と題したEditorialが掲載された1)。詳細は省くが、これまでの数々の悪行を取り上げ、「ジャンクサイエンスや異端の信念が正当な説明もなく重視されている」「誤情報を拡散し、国の最も弱い立場にある人々を犠牲にして政治的な政策を推進し続けている」「議会から自身の決定について説明を求められても、彼は逃げ腰で攻撃的な態度をとってきた」と徹底的にこき下ろしている。危険な結果を導き出す愚策前述のようにケネディ氏は、小児向けワクチン接種スケジュールの大幅縮小により、従来は小児全員に推奨されていたインフルエンザ、B型肝炎、A型肝炎、ロタウイルス、髄膜炎菌、新型コロナウイルスの6種類のワクチンを推奨から外し、「高リスク群のみ」または「医師と個別に相談して決定」という枠組みに変更した。また、2025年10月、ケネディ氏が刷新したACIPは、「MMRV(麻疹・おたふくかぜ・風疹・水痘)ワクチン」の4歳未満への定期接種の推奨を取り消した。これにより州レベルでは、フロリダ州が接種義務解除に踏み切ったほか、低所得者層向けの無料接種プログラム(VFC)からMMRVワクチンが外れ、接種のハードルが上がった。そしてこれらの影響と思われる現実は深刻である。感染症の流行で結果は明確CDCによると、米国での2025年の麻疹感染報告は2,283例、2026年(3月6日時点)は1,281例で、今年はわずか3ヵ月で前年の半数超に達している。2024年が285例なので昨年は前年比で9倍弱、感染報告が増加したことになる。もちろんMMRVワクチンの非推奨は2025年秋のことなので、これが同年の麻疹患者増加の主要な原因とまでは言えない。しかし、2026年の急速な感染報告数の立ち上がりを見る限り、ケネディ氏の政策の影響は徐々に顕在化していると言わざるを得ない。しかも、ケネディ氏はこうした危機的な状況に対して何も具体的な対策を講じてはおらず、保健福祉省の公式声明でもコメントしていない。そもそも、ケネディ氏は以前からワクチン懐疑派であることは有名だが、昨年3月のFOX Newsでのインタビュー2)では麻疹ワクチンに関し、「ワクチンの効果は年間約4.5%低下する」「麻疹ワクチン接種が毎年死者を出している」と科学的根拠の乏しい発言をしている。ちなみにこの当時、麻疹が流行していたテキサス州では、米国では10年ぶりとなる麻疹による死者が発生し、2025年全体で麻疹による死者は3例が確認され、いずれもワクチン未接種者だったことがわかっている。この数字から算出される2025年の米国の麻疹感染者の死亡率は0.1%強。一般に先進国の麻疹感染者の死亡率は0.01%程度と言われるが、それより1桁高い数字だ。このままでは2026年はもっと悲惨なことになるかもしれない。また、インフルエンザについても懸念が生じ始めている。CDCの報告では、2025~26年シーズンの小児のインフルエンザによる死者は暫定値で90例。2024~25年シーズンの293例と比べればかなり少ない。ケネディ氏の考えに基づき、インフルエンザワクチンの接種推奨が外された中で、この数字は不思議に思われるかもしれない。ここはおそらく米国小児科学会(AAP)のケネディ氏に抗った努力の成果かもしれない。2025年9月にはAAP独自でインフルエンザワクチンの接種を推奨する声明を発表した3)ほか、今年1月にはアメリカの保険業界団体であるAHIP(America's Health Insurance Plans)と直接交渉し、インフルエンザワクチンなど推奨から外されたワクチン接種を2026年末までは無償提供を維持する旨の共同声明を発表している。もっとも2026年2月最終週の死者報告は11例だが、それ以前の3シーズンでは同時期に死者はいない。これも踏み込んで解釈すれば、ケネディ氏の政策決定の負の効果が表れているとは言えないだろうか。いずれにせよ国外では戦争、国内ではパンデミックというまさに内憂外患状態が今の米国である。ボーダレス化が一層加速する現在の世界で、この禍に日本が無縁でいられるだろうか?参考1)The Lancet. Lancet. 2026;407:825.2)FOX NEWS:We will make sure anyone who wants a vaccine can get one, says HHS secretary3)Committee on Infectious Diseases. Pediatrics. 2025;156:e2025073620.

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筋強直性ジストロフィー1型、del-desiranが有望/NEJM

 筋強直性ジストロフィー1型(DM1)は、常染色体優性遺伝性の進行性神経筋疾患であり、DMPK遺伝子の3'-非翻訳領域におけるCTGリピートの伸長によって発症する。本症は、身体機能障害を引き起こし、余命を短縮させるが、承認された治療法はない。米国・Virginia Commonwealth UniversityのNicholas E. Johnson氏らは「MARINA試験」において、本症の治療薬として開発中の抗体-オリゴヌクレオチド複合体delpacibart etedesiran(del-desiran[AOC 1001])の筋組織への送達が一部の患者で確認され、異常な選択的スプライシング(ミススプライシング)の改善を示唆するデータを得たことを報告した。del-desiranは、抗体部分がトランスフェリン受容体1を、オリゴヌクレオチド部分がDMPK遺伝子mRNAを標的とする。研究の成果は、NEJM誌2026年2月19日号で発表された。米国の無作為化プラセボ対照第I/II相試験 MARINA試験は、米国の8施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第I/II相試験(Avidity Biosciencesの助成を受けた)。2021年10月~2022年9月に、年齢18~65歳、遺伝子診断でDM1と診断され、DMPK遺伝子のCTGリピートが100回以上に伸長した患者38例(平均年齢42[±12.9]歳、女性28例[74%])を登録した。 本試験は2つのパートから成り、パートAではdel-desiran 1mg/kg体重を1回静脈内投与する群(6例)またはプラセボ群(2例)に、パートBではdel-desiran 2mg/kg体重を3回(1、43、92日)静脈内投与する群(9例)、同4mg/kg体重を3回(同)静脈内投与する群(13例)、またはプラセボ群(8例)に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは安全性であった。副次エンドポイントは、del-desiranの薬物動態・薬力学的プロファイル、および1mg群では投与43日目、2mg/4mg群では投与92日目(2回目投与後49日目)における下流の異常スプライシングパターンの変化とした。重篤な有害事象の1件が試験薬関連と判定 38例中35例に軽度または中等度の有害事象が発現した。プロトコールで規定された投与中止基準に該当した患者はいなかった。投与期間中に、del-desiranの投与を受けた患者のうち5例以上に発現した有害事象は、筋生検に伴う痛み、貧血、新型コロナウイルス感染症、頭痛、悪心であった。 2mg群の1例と4mg群の1例に、重篤な有害事象が1件ずつ発現した。前者は試験薬との関連はないと判定された。後者では、初回投与後24時間以内に記憶力低下と視覚障害の症状が発現し、数日後の頭部MRI検査で視床外側膝状体核領域の両側性の虚血とそれに続く出血性変化の可能性が推定され、試験薬関連と判定されたためその後の投与を中止した。 これにより、米国食品医薬品局によって新規の患者登録が一時的に停止されたが、すでに登録されていた参加者は投与の継続が許可された。この停止措置は、その後解除されている。DMPK mRNAの低下率は3つの用量で同程度 筋生検標本におけるDMPK mRNAレベルの変化率は、del-desiran 1mg群で-46%、2mg群で-44%、4mg群で-37%といずれも同程度に低下し、プラセボ群では0.9%増加した。また、低分子干渉RNA(siRNA)の血漿中最大濃度および曲線下面積は用量の増量に比例して増加し、尿中からは微量のsiRNAが回収された。 ベースラインからの平均複合ミススプライシングスコアの減少率は、1mg群で3%、2mg群で17%、4mg群で16%、プラセボ群で7%であり、2mgおよび4mg群におけるミススプライシングの改善が確認された。 著者は、「総DMPK mRNAの明らかな減少と、オルタナティブスプライシング調節の回復は、siRNAが筋組織に送達されたことを示すと考えられる」「これらのデータは、臨床研究の継続を支持するものである」としている。 現在、MARINA試験を完了した参加者を対象に、より長期の治療効果を評価する目的で、非盲検下の延長試験が進行中で、並行してdel-desiran 4mg/kg体重の8週ごとの投与を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(HARBOR試験)が進められているという。

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寿命の半分以上は遺伝で決まる?

 長生きするためには、健康的な食生活を送り、適度に運動を行い、悪い習慣を避けることが基本だと言われている。しかし、遺伝の影響(遺伝率)はそれ以上に重要かもしれない。新たな研究で、寿命の約55%は遺伝によって説明される可能性が示された。これは、これまでの推定(6〜33%)を大きく上回る数字だ。ワイツマン科学研究所(イスラエル)のBen Shenhar氏らによるこの大規模研究の詳細は、「Science」に1月29日掲載された。 これまで推定された寿命の遺伝率は20~25%程度と推定されており、なかには6%と見積もられたこともあった。しかし研究グループは、これらの推定値は、事故や感染症などの外的要因による死亡(外因性死亡)と、老化や病気などの内的要因による死亡(内因性死亡)を区別せずに推定された数字だと指摘している。この欠点を踏まえて今回の研究では、外因性死亡と内因性死亡を数学的に分離するモデルを構築し、双子を対象にした3つの大規模研究のデータを用いて、内因性死亡による寿命がどの程度遺伝の影響を受けるのかを検討した。 その結果、外因性死亡の影響を補正すると、内因性死亡の遺伝率は約55%と、従来の推定値より大幅に高いことが示された。このような高い遺伝率は、ヒトの複雑な形質の多くや他の種の寿命の遺伝率とほぼ同様であった。 Shenhar氏は、「この数字は根拠のないものではない。双子研究を見ると、ほとんど全ての人間の形質の遺伝率は50%程度だ。例えば、閉経年齢の遺伝率も約50%だ」と述べている。コペンハーゲン大学(デンマーク)のMorten Scheibye-Knudsen氏も、この方法によって老化を理解する際の「外的ノイズ」を除去できたと指摘している。同氏は、「人間は、最長で120歳まで生きる。酵母の寿命は13日、ボウヘッドクジラ(北極クジラ)の寿命は200年だ。われわれは、遺伝子が寿命の限界を決めていることをすでに知っている。それゆえ、寿命は、われわれの行動だけで説明できる問題ではないということについて、もう少し考えるべきだったと思う」と話している。 一方、米バック老化研究所のEric Verdin氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの感染症による死亡も遺伝の影響を受ける可能性があると指摘している。しかしShenhar氏らによると、加齢に伴う健康リスクの上昇を考慮してデータを再分析しても、寿命の約50%は遺伝的要因によって説明されることが確認されたという。 さらにこの研究は、100歳まで生きる人が慢性疾患のリスクを下げる遺伝子を持っていることを示す以前の研究結果とも一致している。Shenhar氏は、「100歳まで生きる人は、単に頑張って生き延びているわけではない。加齢による悪影響から身を守る遺伝子を持っているのだ」と説明している。現在、寿命に関わることが分かっている遺伝子はFOXO3、APOE、SIRT6とわずかだが、Verdin氏は、「寿命は一つの遺伝子ではなく、多くの遺伝子が相互に作用して決まる」と述べている。 ただし、Verdin氏とShenhar氏はいずれも、生活習慣の重要性を強調している。Shenhar氏は、「遺伝が寿命の55%を決めるとしても、残りの45%は食事や運動、生活習慣などに左右される。このことは、『それなら何をしたって一緒だ。遺伝で寿命が決まっているのなら、生活習慣を改め、飲酒を控え、運動を行う必要があるのか』と悲観的に捉えられがちだ」と指摘する。その上で、「われわれの論文が伝えているメッセージは、生活習慣や運動、食事が重要ではないということではない。遺伝が潜在的な寿命の範囲を決めているとしても、それは生活習慣次第で多少は伸びたり縮んだりする。だからこそ、生活習慣は依然として大切なのだ」と強調している。

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第307回 小児科医由来の抗体が強力にRSウイルスを阻止

およそひっきりなしに呼吸器ウイルスに接することがいわば宿命の小児科医の血液由来の抗体が、承認済みの抗体より25倍も強力に呼吸器合胞体ウイルス(RSV)を阻止し、しかもより多種のウイルス株を相手にできることが示されました1,2)。ニューモウイルス科に属するRSVやヒトメタニューモウイルス(hMPV)は世界の健康を蝕む主因の1つで、高齢者、免疫不全者、2歳以下の小児、とくに生後6ヵ月までの乳児の急な下気道感染症を引き起こします。RSVの融合前Fタンパク質抗原やその抗原を作るmRNA入りのワクチンの高齢者への接種は承認されていますが、小児向けの開発は難航しています。たとえば高齢者への使用が承認済みのモデルナのmRNAワクチンmRESVIAの生後8~23ヵ月の乳幼児への接種試験では、期待とは裏腹に重度/要入院の下気道感染症がより多く発生しており3)、試験中断を余儀なくされています。RSVとhMPVの両方を相手するワクチンmRNA-1365でもやはりRSVによる重度/要入院の下気道感染症がより多く発生しました。成人へのRSVワクチン接種でも心配事があります。RSVワクチンの普及は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が変異株を次々に発生させているように、網の目を潜る変異株の発生を促す恐れがあります。一方、ウイルスの不変領域に取り付く抗体であれば変異株を発生し難くできそうですが、そういう抗体はウイルス阻止効果がいまひとつという弱みがあります。では弱みのない抗体を見つけるにはどうしたらよいか? 小児のさまざまな感染症に日々取り組む仕事柄、RSVやhMPVに繰り返し接する小児科医の自然免疫は実は宝の山で、ウイルスとの歴戦で鍛え上げられた強力な抗体を備えているかもしれません。中国の重慶医科大学小児病院のHui Zhai氏らはそう考え、同病院で10年を超えて働く小児科医10人の血液を調べてみました。すると、それら小児科医の抗体のRSV阻止活性は、仕事でRSVやhMPVに接することのない健康な成人14人を3倍超上回りました。阻止活性が高かった小児科医3人の血液中の抗体をふるいに掛けところ、調べた57の抗体のほぼすべての56がRSVの融合前Fタンパク質にしかと結合しました。続いてそれらの抗体の人工品を作って研究室で検討したところ、CNR2056とCNR2053という呼び名の2つがRSV株のより多くに対してとくに活性を示しました。CNR2047という名称のもう1つの抗体はRSVとhMPVの両方を手広く阻止する交差活性がありました。CNR2056、CNR2053、CNR2047を単独または組み合わせてマウスやラットに投与したところ、RSVやhMPV感染症状を防げました。ウイルス阻止活性は強力で、既存のRSV阻止抗体のニルセビマブ(商品名:ベイフォータス)やclesrovimabを最大25倍上回りました。ニルセビマブやclesrovimabにせよRSVワクチンにせよ今のところ相手しうるRSV株の種類は限られます。小児科医がその職業人生で身に着けた自然免疫から見つかった今回の抗体の組み合わせは、多用途でより手広く感染を防ぐ手段となりうるとZhai氏らは示唆しています1)。参考1)Antibody cocktails based on the occupationally acquired immunity of pediatricians neutralize and confer protection against RSV and hMPV / Science Translational Medicine2)Paediatricians’ blood used to make new treatments for RSV and colds / NewScientist(MSN)3)Snape MD, et al. Safety and Immunogenicity of an mRNA-Based Rsv Vaccine and an Rsv/hMPV Combination Vaccine in Children 5 to 23 Months of Age. Preprints. 2024 Dec 11.

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マスクで心筋梗塞リスクが低下!?/Eur Heart J

 PM2.5への短期曝露は、急性心筋梗塞(AMI)リスクと関連することが知られている。AMIのなかでも、冠動脈閉塞を伴わない心筋梗塞(MINOCA)は、PM2.5の影響を受けやすい可能性がある。そこで、石井 正将氏(熊本大学病院 医療情報経営企画部)らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに伴うマスク着用や行動制限などの公衆衛生上の介入が、PM2.5曝露とAMIによる入院との関連に及ぼす影響を調査した。その結果、パンデミック前後のPM2.5への曝露に伴う心筋梗塞による入院リスクは、AMI全体および閉塞性冠動脈疾患を伴う心筋梗塞(MI-CAD)では不変であったが、MINOCAではパンデミック後に有意に低下した。本研究結果は、European Heart Journal誌オンライン版2026年2月13日号に掲載された。 本研究の対象は、2012年4月1日~2022年3月31日に、日本循環器学会が認定する施設へ入院したAMI患者27万91例(MI-CAD:24万7,054例、MINOCA:2万3,037例)とした。パンデミックの影響を評価するため、日本で緊急事態宣言が発令された2020年4月7日を境界として、研究期間をパンデミック前(2012年4月1日~2020年4月6日)とパンデミック後(2020年4月7日~2022年3月31日)に分類した。時間不変因子(性別、基礎疾患など)の影響を排除するため、時間層別ケース・クロスオーバー法を用いて、入院2日前のPM2.5濃度が10μg/m3上昇した際のAMIによる入院のオッズ比(OR)を算出した。気温や湿度などの気象条件、長期的なPM2.5の傾向、Googleが提供するコミュニティモビリティレポートを用いた人流データなどを調整して解析した。 主な結果は以下のとおり。・MI-CAD群、MINOCA群の年齢中央値はそれぞれ70歳、71歳であり、男性の割合はそれぞれ75.5%、65.1%であった。・全期間において、入院2日前のPM2.5濃度が10μg/m3増加するごとに、AMI全体、MI-CAD、MINOCAのいずれについても入院リスクの有意な上昇が認められた。・年間の平均PM2.5濃度を15μg/m3とした場合、2日前にPM2.5濃度が10μg/m3上昇すると、入院のORはAMI全体が1.105(95%信頼区間[CI]:1.022~1.193)、MI-CADが1.088(95%CI:1.004~1.180)、MINOCAが1.303(95%CI:1.005~1.688)に上昇した。・年間の平均PM2.5濃度を15μg/m3とした場合、パンデミック前後の比較において、AMI全体、MI-CADでは有意な変化はみられなかった。一方で、MINOCAについては、パンデミック後にリスクが減弱した。パンデミック前後のOR、交互作用のp値は以下のとおり。 AMI全体:1.105→1.091、p for interaction=0.070 MI-CAD:1.088→1.079、p for interaction=0.241 MINOCA:1.303→1.230、p for interaction=0.017・パンデミック開始日の定義を変更するなど、複数の感度分析を実施しても、パンデミック後のMINOCAによる入院リスク低下の傾向は一貫していた。 本研究結果について、著者らは「パンデミック後の期間においてMINOCAによる入院リスクが低下したことは、マスク着用や行動制限などの公衆衛生上の介入が大気汚染に関連する心血管イベントに影響を及ぼすことを示唆している」と結論を述べた。また、パンデミック後のMINOCAによる入院リスクの低下は、行動制限や他の大気汚染物質の影響を考慮しても有意であったことに触れ「MINOCAの主な原因とされる冠攣縮や冠微小循環障害に対し、行動変容が保護的に働いた可能性が強く示唆される」と考察した。

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2024~25年コロナワクチンは重症化をどれくらい防いだのか?

 2024~25年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種がCOVID-19関連アウトカムの予防に及ぼした効果を推定した症例対照研究の結果、入院に対するワクチンの有効性は40%であった一方、アウトカムが重篤であるほど有効性は高く、最も重篤な人工呼吸器使用または死亡に対する予防効果は79%であることが示された。これらの重症化予防効果は、ワクチン接種後少なくとも3~6ヵ月は持続した。米国疾病管理予防センター(CDC)のKevin C. Ma氏らが、JAMA Network Open誌2026年2月3日号で報告した。 対象は、2024年9月1日~2025年4月30日に、米国20州の26病院でCOVID-19様症状により入院し、SARS-CoV-2検査を受けた成人患者(18歳以上)であった。主要評価項目は、COVID-19関連の入院および重篤なアウトカム(補助酸素療法、急性呼吸不全、集中治療室入室、侵襲的人工呼吸器の使用、死亡)とした。ロジスティック回帰を用いて、SARS-CoV-2検査陽性か陰性かをアウトカムとし、COVID-19ワクチン接種の有無との関連を評価した。解析は人口統計学的特性、臨床的特徴および地域で調整した。 主な結果は以下のとおり。・合計8,493例が登録された(年齢中央値:66歳、女性:51.1%)。SARS-CoV-2検査陽性群が1,888例、陰性群が6,605例であった。・2024~25年のCOVID-19ワクチン接種率は、陽性群11.4%(216例)、陰性群18.5%(1,224例)であった。・COVID-19関連入院に対するワクチンの有効性は40%(95%信頼区間[CI]:27~51)であった(接種後の期間中央値:陽性群80日、陰性群108日)。・経過時間別のCOVID-19関連入院に対するワクチンの有効性は、接種後7~89日で34%(95%CI:14~49)、90~179日で52%(95%CI:34~65)であった。研究グループは、接種早期の低い有効性については、ワクチン接種前の自然感染増加によって一時的に集団免疫が上昇した可能性を指摘している。・最も重篤な転帰である人工呼吸器使用または死亡に対するワクチンの有効性は79%(95%CI:55~92)とより高かった。・SARS-CoV-2系統別の入院に対するワクチンの有効性は、KP.3.1.1株では49%(95%CI:25~67)、XEC株では34%(95%CI:4~56)、LP.8.1株では24%(95%CI:-19~53)であった(接種後の期間中央値:KP.3.1.1株60日、XEC株89日、LP.8.1株141日)。・推定ワクチン効果は、スパイクタンパク質の変異がある場合であっても同様であった(S31欠失変異株:41%、T22NおよびF59S置換変異株:37%)。 これらの結果より、研究グループは「LP.8.1株については、免疫の経時的減弱と変異による免疫回避を区別することが困難であり、低い推定値がウイルスの遺伝子変化によるものか、あるいは接種後の経過時間が長かったことによるものかは不明」としたうえで、「JN.1系統の子孫株が進化し続けているため、重症COVID-19に対するCOVID-19ワクチンの有効性を評価することは、ワクチン接種戦略を導くうえで依然として重要である」とまとめた。

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肌の色はパルスオキシメーターの測定精度に影響する

 パルスオキシメーターで測定した血中酸素飽和度(SpO2)は、肌の色が濃い人では誤った値を示す可能性があり、医療に影響を及ぼす恐れのあることが、新たな研究で明らかになった。パルスオキシメーターは、肌の色が濃い患者に対しては実際よりも高いSpO2値を示す傾向があり、低酸素状態を見逃してしまう可能性のあることが示唆されたという。パルスオキシメーターは、光を使ってSpO2を測定する。ほとんどの人において、SpO2の正常値は95〜100%であり、90〜92%未満になると医療的注意が必要となる。英プリマス大学周術期・集中治療医学分野のDaniel Martin氏らによるこの研究結果は、「The BMJ」に1月14日掲載された。 本論文の付随論評の著者の1人である米コロラド大学の肺専門医・集中治療専門医であるThomas Valley氏は、「本研究で評価した5種類のパルスオキシメーターは、いずれも肌の色が濃い患者に対して、肌の色が明るい患者よりも高いSpO2を示した。この誤った測定値は、治療に実質的な影響を及ぼす可能性がある」と述べている。同氏はさらに、「医師はSpO2の値に基づいて重要な医療判断を行っている。SpO2が正常値を示せば、救急救命士は患者を病院に搬送しないかもしれないし、救急科の医師は患者を入院させないかもしれない。また、パルスオキシメーターの測定値が不正確な場合、集中治療室(ICU)で治療を受けている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の低酸素状態が適切に判断されず、ステロイドなどの救命薬が投与されない可能性もある」と指摘している。 今回の研究では、2022年6月から2024年8月の間に、イングランドの24カ所のICUで治療を受けた903人の成人患者のデータを用いて、肌の色がパルスオキシメーターの測定値と診断精度に与える影響が検討された。パルスオキシメーターは、英国の国民保健サービス(NHS)が、COVID-19対策の一環として家庭に配布していた5種類を対象とした。対象者の肌の色は、携帯型の分光光度計を用いて、利き手ではない方の手の甲の皮膚の明るさを測定して評価した。SpO2の測定値は、動脈血ガス分析の測定値(動脈血酸素飽和度〔SaO2〕)と比較された。 最終的に、全体で1万1,018組のSpO2とSaO2測定値が解析された。その結果、いずれのパルスオキシメーターも、SaO2が低値の範囲では過大評価し、高値の範囲では過小評価する傾向が認められ、肌の色が濃い患者では、肌の色が明るい患者に比べてSpO2が平均0.6~1.5パーセントポイント高く測定されていた。また、SpO2の閾値(92%以下、94%以下)のいずれを用いても、SaO2が92%以下であることを判別する際の偽陰性率は、肌の色が濃くなるほど上昇していた。具体的には、SaO2が92%以下であるのにSpO2が94%超であった患者の割合は、肌の色が明るい患者で1.2~26.9%、肌の色が濃い患者で7.6~62.2%であり、後者は前者に比べて5.3~35.3パーセントポイント高かった。 研究グループは、医師は肌の色が濃い患者を治療する際には、SpO2だけに頼らず、他の症状や兆候と照らし合わせて判断することを提案している。Valley氏らも付随論評の中で、「現時点では、医師は最善を尽くすしかなく、機器の欠点を理解しながら対応する必要がある。目的はSpO2の測定を放棄することではなく、その限界を理解し、公平性を確保し、酸素測定の技術自体が医療格差を助長しないようにすることだ」と述べている。

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第281回 インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省

<先週の動き> 1.インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省 2.在宅医療「頻回・囲い込み」に診療報酬改定で歯止め、訪問看護は1日包括も/厚労省 3.診療報酬改定で看護配置基準を柔軟化、ICT活用を厳格要件化/厚労省 4.わいせつや盗撮で医師・歯科医師28人を行政処分、医師3人が免許取消/厚労省 5.医療保険改革で高額療養費を見直し加速、負担上限を「2年ごと検証」へ/政府 6.電子カルテで患者取り違え、経過観察患者に前立腺全摘出手術/千葉県がんセンター 1.インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省2月6日に厚生労働省は、1月26日~2月1日の第5週に全国約3,000の定点医療機関から報告されたインフルエンザ患者数が1医療機関当たり30.03人となり、警報基準(30人)を超えたと発表した。前週比の約1.8倍で4週連続の増加となり、患者総数は11万4,291人に達した。今シーズンは1度警報水準を下回った後に再び増加しており、1季で2度警報レベルに達するのは少なくとも過去10シーズンで初めてとされる。都道府県別では大分県52.48人、鹿児島県49.60人、宮城県49.02人、山梨県46.97人、千葉県46.08人など22県で警報基準を上回った。その一方で、香川県8.61人、鳥取県9.45人、北海道10.33人は比較的低水準だった。ウイルス型はA型56%、B型44%で、年明け以降はB型の検出割合が増加し、流行再拡大の一因とみられている。B型は学校など集団生活で小児を中心に広がりやすく、嘔吐や下痢など消化器症状を伴う例も報告される。重症例として脳症や筋炎後の腎機能障害がまれに生じうるため注意が必要となる。休校・学級閉鎖は約6,200校に増加した。なお、新型コロナウイルス感染症の定点報告も前週比25%増の2.49人と上昇している。厚労省はマスク着用、手指衛生、換気など基本的対策の徹底を呼びかけ、今後1~2週間は患者増加が続く可能性があるとして警戒を促している。 参考 1)インフルエンザ患者数 前週の倍近くに増加 B型 半数近く占める(NHK) 2)全国インフル定点報告 前週の1.8倍に 1月26日-2月1日(CB news) 3)コロナ新規感染者 前週比25%増 1月26日-2月1日(同) 4)インフルエンザ、再び警報水準に 2度の警報は過去10シーズンで初(日経新聞) 2.在宅医療「頻回・囲い込み」に診療報酬改定で歯止め、訪問看護は1日包括も/厚労省厚生労働省は2026年度の診療報酬改定で、在宅医療を「量の拡大」から「必要性に見合う質と適正化」へ転換する方針を示した。1月30日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で提示された個別改定項目では、通院可能にもかかわらず頻回の訪問診療を受けるケースや、高齢者住宅に併設・隣接する訪問看護ステーションが同一建物内で短時間に多数利用者を回ることで報酬が膨らむような過度な同一建物対応に歯止めをかける。訪問診療では、在宅時医学総合管理料(在医総管)・施設入居時等医学総合管理料(施設総管)の高い評価を、末期がんや要介護度の高い患者を一定割合以上診療する医療機関に限定し、医療・介護ニーズの低い患者への頻回訪問を抑制する。24時間往診体制の評価も、自院での実働体制や連携・委託の関与度に応じてメリハリを付ける。看取り実績の高い在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)の評価は「在宅医療充実体制加算」へ再編し、地域の24時間体制を面的に支える往診時医療情報連携加算の対象も拡大する。また、訪問看護では、同一建物居住者への評価を細分化し、人数が多い区分は月内訪問日数で段階化、20分未満は算定不可とする。さらに併設・隣接ステーションが高齢者住まいに頻回提供する場合、利用者数と1日当たり提供時間に応じた「包括型訪問看護療養費(1日定額)」を新設し、同日の回数増で報酬が伸びにくい仕組みとする。その一方で、情報通信技術(ICT)による情報共有を評価する訪問看護医療情報連携加算など質向上策も導入する。背景には同一建物での訪問看護急増や高収益事例への問題意識がある。運営基準では値引き誘引や紹介対価、特定施設への誘導を禁止し、安全管理と記録の正確性を求める。事業継続計画(BCP)策定や残薬管理、電子処方せん活用も要件化される。詳細は告示・通知待ちだが、契約・記録・連携体制の再点検が急務となる。 参考 1)個別改定項目について(厚労省) 2)在宅医療「もうけすぎ」にメス 診療報酬見直し、高齢者囲い込み防止(日経新聞) 3)2026年度診療報酬改定でも、「適切な形の在宅医療」が量・質の双方で拡大することを目指した対応図る(Gem Med) 4)訪問看護ステーションが隣接等の高齢者住まい居住者に行う訪問看護を「1日当たり包括」療養費で評価(同) 5)在宅医療巡り病院・診療所にBCP策定義務化へ…厚労省、災害時の地域連携促す(読売新聞) 6)高齢者住まい等への頻回訪問に包括評価を導入(日経メディカル) 3.診療報酬改定で看護配置基準を柔軟化、ICT活用を厳格要件化/厚労省2026年度診療報酬改定で、厚生労働省は病院の看護配置基準を「人手不足への救済」と「医療DXによる業務量削減」を前提に柔軟的な設定とする。突発的な欠員で夜勤時間などが一時的に基準から外れても、超過が1割以内で3ヵ月を超えない場合は、入院基本料などの施設基準の変更届を不要とする方向で、感染症対応の特例を人材不足にも広げ、恒久化も視野に入れる。対象は平時からハローワークや都道府県ナースセンターなどの公的紹介を活用し、求人票の提示など採用努力を行う医療機関とし、民間紹介会社の高額手数料による経営圧迫も抑えたい考え。加えて、見守り、記録作成、職員間情報共有などでICT機器を病棟で広く活用し、超過勤務が平均10時間以下で増加傾向がないこと、導入前後の業務量評価・安全配慮、調査への協力など複数の要件を満たす場合、看護要員数や看護師比率等を「基準の9割以上(最大1割減)」でも基準充足と扱い、急性期一般入院料や7対1・10対1、地域包括医療病棟、緩和ケア病棟などに適用する方針。さらに医師事務作業補助者も、生成AIによる退院サマリー・診断書・紹介状などの原案作成、音声入力、RPA、説明動画活用などを条件に、配置要件の見直し(緩和)も検討する。急性期医療機関では救急搬送・全麻手術件数を要件とする新たな入院基本料(A・B)も構想され、看護必要度は項目追加や救急応需状況の反映で基準見直しが議論されている。看護職は全体では増加傾向でも、病院就業者は減少し、求人倍率も高い。算定要件を満たせず収入が落ちる事態を避け、夜勤負担の軽減と地域医療の持続を図る狙い。看護職就業者は2023年時点で約174.6万人、需要推計は2025年約180.1万人とされ、病院就業者は約98.7万人まで減少。日本病院団体協議会は、ICT前提の緩和と一時救済を歓迎している。その一方で、患者安全と効果検証のデータ提出が求められており、今後、医療現場での投資と運用体制が鍵となる。 参考 1)病院の看護職員、必要数を緩和 人手不足の施設の経営安定後押し(日経新聞) 2)ICT利活用・適切な業務遂行等の厳格な要件を前提として「看護職員や医師事務作業補助者の柔軟配置」を認める(Gem Med) 3)ICT利活用により看護師業務負担が減少、この分の看護配置基準柔軟化は病院団体として歓迎-日病協・望月議長・神野副議長(同) 4)救急・手術件数を評価する急性期病院一般入院基本料を新設(日経メディカル) 4.わいせつや盗撮で医師・歯科医師28人を行政処分、医師3人が免許取消/厚労省厚生労働省は2月4日、医道審議会医道分科会の答申を受け、刑事事件で有罪判決を受けるなどした医師16人、歯科医師12人の計28人に対する行政処分を決定した。内訳は免許取消5人、業務停止22人(3ヵ月~2年6ヵ月)、戒告1人で、2月18日に発効する。別途10人には行政指導(厳重注意)が行われた。このうち免許取消は、児童へのわいせつ行為や健診時の盗撮、診療報酬詐欺や脱税などの事案で有罪が確定した医師3人と歯科医師2人。業務停止は収賄、詐欺、薬物関連、暴行・傷害、迷惑行為防止条例違反、道路交通法違反など理由は多岐に及ぶ。2025年12月3日の医道審議会の議事要旨では、医師16件中、免許取消1件、停止3年~3ヵ月の各処分、戒告3件とされたほか、歯科医師7件で免許取消3件、停止7~3ヵ月が答申された。また、元医師1人の再免許付与については適当とする答申は出されなかった。処分は医療への信頼確保を目的とし、医療機関には不祥事の予防とガバナンス、コンプライアンス教育の徹底が改めて求められる。さらに、健診や学校現場での診療行為における倫理遵守、金銭・契約関係の透明化、薬物・交通事案を含む私生活上の法令順守も含め、組織的な再発防止策の整備が重要となる。今回の一連の処分では、刑事有罪事案が中心であり、医師個人の資質管理に加え、採用時のバックグラウンド確認や通報体制の整備など、医療機関側のリスク管理体制の実効性が問われている。 参考 1)医道審議会医道分科会議事要旨(厚労省) 2)医師、歯科医師28人処分 免許取り消しや業務停止(共同通信) 3)厚労省、医師・歯科医師28人の処分決定 免許取り消しや業務停止(毎日新聞) 5.医療保険改革、高額療養費を「2年ごと検証」へ 患者自己負担増の時代に/政府政府が検討する医療保険改革法案で、高額療養費制度の患者負担上限を「少なくとも2年ごとに検証」する規定が新設される見通しとなった。医療費総額の抑制を目的に、上限額が定期的に引き上げられる可能性がある一方で、決定に当たっては「長期治療患者の家計影響を考慮する」と明記する。昨年末には上限を来年8月までに最大38%引き上げる方針が示され、給付抑制で保険料負担を軽くする狙いだ。併せて、出産費用の無償化(分娩費の全国一律化と保険適用)や、OTC類似薬に薬剤費25%を上乗せする新制度、75歳以上の金融所得の保険料・窓口負担への反映徹底も盛り込む。こうした「負担と給付」の再設計が進む中、がん医療では費用の見える化が始まった。日本肺癌学会は『肺がん診療ガイドライン(Web版)』の付録に薬物療法別の薬剤費一覧(保険適用前)を掲載した。術後補助療法では、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)が月56万円×3年で約2,030万円、アレクチニブ(同:アレセンサ)は月168万円×2年で約4,032万円、アテゾリズマブ(同:テセントリク)は総額902万円、再発小細胞肺がんの二重特異性抗体タルラタマブ(同:イムデトラ)は1年で約3,184万円と示している。推奨度の根拠には用いないが、患者から費用を問われた際の説明材料とし、今後の制度変更で自己負担が増え得る現実を共有する狙いがある。日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が、臨床研究の医療経済評価を基本方針化するなど、効果・安全性に加え「費用と持続可能性」を臨床判断に組み込む動きが広がっている。高額療養費は、重い疾患ほど利用頻度が高く、上限の見直しは治療継続や就労、家族介護に直結する。こうした高額な医薬品を用いた医療を提供する医師は、治療選択肢の効果・副作用に加え、想定される自己負担の幅(多数回該当、年間上限など)について患者への説明責任が一段と増す。同時に、薬価・給付の議論は選挙の争点化も進むため、現場から実データを発信しつつ、費用対効果と公平性の両立を問う姿勢が求められる。治療内容のみならず、診療費用の自己負担についての情報提供が、今後いっそう重要になる。 参考 1)高額療養自己負担、2年ごと検証(共同通信) 2)医療保険制度を維持するには 医療費削減で患者が負担? 高額療養費制度の見直しで治療を受けられない恐れも(中日新聞) 3)年収700万円の人なら約3万円の負担増!「高額療養費の見直し」再燃で、8月からどう変わる?(ダイヤモンドオンライン) 4)肺がん診療指針に薬剤費の一覧、数千万円の治療も 見える化の狙いは(朝日新聞) 6.電子カルテで患者取り違え、経過観察患者に前立腺全摘出手術/千葉県がんセンター千葉県がんセンターは2026年2月6日、60代男性患者に対し、検査結果の取り違えにより不要な前立腺全摘出手術を行った、医療事故を公表し、患者に謝罪した。事故は2025年に発生。男性は前立腺生検の結果、経過観察が妥当とされていたが、検査を担当した医師が、同日に別患者から得られた悪性度の高い前立腺がんの病理結果を、誤って当該患者の電子カルテに貼り付けた。主治医は、この誤った情報を基に高リスク前立腺がんと診断し、約3ヵ月後に前立腺全摘出および骨盤内リンパ節切除を実施した。手術後、摘出組織の病理所見がカルテ記載と大きく異なることに主治医が気付き、調査の結果、検査結果の取り違えが判明した。患者の身体には手術に起因するとみられる影響が出ているが、詳細は公表されていない。病院は賠償について協議中としている。その一方で、検査結果を誤って外された別患者には、主治医が原本確認を行っており、治療への影響はなかった。同センターでは、11年前にも乳がん検査結果の取り違えによる誤切除事故が発生しており、再発防止が課題となっていた。病院は外部委員を含む医療安全調査委員会を設置し、電子カルテへの検査結果貼付時の患者確認、主治医による原本確認の徹底など、原因究明と再発防止策を検討するとしている。 参考 1)千葉県がんセンターにおけるアクシデントの発生について(千葉県) 2)検査結果取り違え前立腺摘出 電子カルテ誤追記、千葉県がんセンター(朝日新聞) 3)千葉県がんセンター 検査結果取り違え不必要手術 患者に謝罪(NHK) 4)千葉県がんセンター、誤って前立腺摘出 60代男性を別患者と取り違え(日経新聞)

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第299回 いよいよ明後日投票日、今回の各党の医療・社会保障政策は?~野党各党編

INDEX国民民主党日本共産党れいわ新選組減税日本・ゆうこく連合参政党日本保守党社民党チームみらいさて2026年2月8日投開票の衆院選に関連し、前回は与党の自民党、日本維新の会、最大野党の中道改革連合が掲げる医療・社会保障政策を取り上げた。今回は残る野党各党を取り上げる。国民民主党まずは昨今、議席増を続け野党内でも台風の目になりつつある同党は、5つの大きな政策を掲げ、そのもとで中項目(<>内)、さらに小項目(数字項目)を置き、小項目の下にさらにナンバリングした政策各論を提示している。その中身は以下に要約・列挙した。詳細は以下のとおり1.手取りを増やす<1.令和の所得倍増計画>1「消費」の拡大(1)介護職員、看護師、保育士等の給料倍増(介護職員、看護師、保育士等の給料、10年で倍増。処遇改善加算等を対象者に直接給付)(4)社会保険料軽減策の導入(社会保険料還付制度の導入、130万円の壁突破助成金の創設、社会保険料に上乗せされる「子ども・子育て支援金」の廃止)2「中小企業・非正規賃上げ応援10策」1)社会保険料負担軽減(中小・中堅企業の新規正規雇用の増加に伴う社会保険料の事業主負担の半分相当を助成)3.「人づくり」こそ国づくり<5.出産・子育て支援策の拡充と所得制限撤廃>8妊娠・出産に係る公費支援(不妊治療への公的支援やノンメディカルな卵子凍結の助成拡充、小児、若年性がん治療薬の妊孕性温存療法[精子・卵子保存]を保険適用、安全な無痛分娩を受けられる体制整備)9日本型ネウボラの創設(保健師・医師などによる妊娠時から高校卒業までの「伴走型支援」を制度化)<6.子どもの安全と福祉の確保>2子どもの死亡検証(チャイルドデスレビュー)の導入3ヤングケアラー対策(ヤングケアラー支援法の施行状況の検証、実態調査の定期的実施、実態調査に基づく効果的な支援の方法の調査研究)11介護と仕事の両立支援(ビジネスケアラー対策)12ダブルケアラー対策(ダブルケアラー支援法の制定)<10.現役世代と次世代の負担適正化と医療・介護の質向上を両立させる社会保障制度の確立>1年齢ではなく能力に応じた負担(後期高齢者の医療費自己負担の原則2割化、現役並所得者3割。現役並所得の判断基準での金融所得、金融資産等の保有状況を反映)2高齢者医療制度への公費投入増3科学的根拠に基づいた保険給付範囲の見直し(OTC類似薬の医療保険対象見直し、保険外併用療養費制度の弾力化)4ヘルスリテラシー教育の推進5セルフメディケーションの推進(医療用成分のスイッチOTC化推進、検査薬OTC化、リフィル処方箋普及)6中間年薬価改定の廃止(経済成長率を踏まえた新たな薬価改定ルールの策定、中央社会保険医療協議会への医薬品関連業種の代表者の追加)7予防医療・リハビリテーション(認知症・フレイルの予防、リハビリテーションの充実による健康寿命の延伸)8医療提供体制の充実、医療の質と効率の改善(1)医療従事者の負担軽減と働き方改革(医師・看護師・薬剤師等が実施可能な行為や役割の見直し、女性医療従事者の就業継続・再就職支援)(2)地域医療体制の見直しと機能強化(医師の地域偏在や診療科偏在の是正に資する診療報酬評価、かかりつけ医[日本版GP]・かかりつけ薬局[日本版CPCF]制度の導入、人頭払制度、薬剤師の職能活用、地域フォーミュラリー[医薬品の使用指針]の推進)(3)医療DXの推進(オンライン診療、標準型電子カルテ、電子処方箋の普及の推進、「全国医療情報プラットフォーム」の整備を通じた医療情報の共有化)9終末期医療の見直し10介護サービス・認知症対策の充実(訪問介護の基本報酬を引き上げ、全介護職員の賃金を引き上げ、介護福祉士の上位資格「地域包括ケア士(仮称)」の制度化)11介護研修費用の一部補助12介護福祉士国家試験に外国人人材向けの母国語併記13ケアマネジャー研修の負担の軽減(ケアマネジャー研修内容・体制の全国一律化)<12.ジェンダー後進国脱却、多様性社会実現>1生理、更年期障害政策(「生理の貧困」に対応した生理用品の無償配布)4.自分の国は「自分で守る」<1.防災・減災対策強化>4熱中症対策(公共施設、商業施設等の冷房設備を備えた「クーリングシェルター」の指定促進と周知、熱中症警戒アラートのわかりやすい発信と高齢者などへの周知)<3.「総合的な経済安全保障」の強化>1国内調達の拡充(1)国民の命と生活を守る医薬品や医療機器の安定供給確保(革新的新薬へのアクセス確保とドラッグラグ・ドラッグロス改善のため、欧米と比較して相対的に低い新薬収載時の価格算定方式を見直し、特許期間中の薬価維持制度、市場拡大再算定制度の市販後にイノベーションを再評価できる仕組みへ、共連れルール廃止、供給不安に陥っている医薬品について増産支援、不採算に陥ることのない薬価下支え制度、急激な物価高騰に対応できる制度の構築、医薬品メーカーの生産・在庫・出荷状況等を一元管理するデータベース構築)(2)イノベーション創出環境の整備(医薬品や医療機器での「社会課題(公的医療介護費、生産性損失)の解決につながるイノベーション」や「世界に先駆けて生み出されたイノベーション」、「医療の質の向上や医療の効率化に資するイノベーション」を積極的に評価、創薬エコシステム・イノベーション拠点を構築、医薬品や医療機器のイノベーションを促進に向けた各種法規制の国際的調和の推進、質の高い効率的な医療の提供と医薬品や医療機器の研究開発の効率化に向けた「仮名加工医療情報」の二次利用にかかる法整備、臨床試験等に活用しうるデータの標準化と信頼性確保等の推進、フェムテック関連医療機器や医薬部外品の届出、認証の円滑化) 以前から指摘していることだが、同党の医療・社会保障政策は与野党すべてを見回しても、もっとも充実していると言っていい。そして今回の内容は昨年の参院選時のものとまったく同じである。まあ、作り込んでいるがゆえに今さら変更の必要はないということなのだろう。日本共産党現存する日本最古の政党(1922年結党)である同党だが、今回公表された医療・社会保障政策は、かなり数が多い。以下に列挙する(歯科は除く)。詳細は以下のとおり患者負担増や保険料の負担増を起こさないための国費投入・国庫負担の引き上げを行い、診療報酬のさらなる増額・改善を進め、医療従事者の賃上げを実現「地域医療構想」による病床削減、強引な病院統廃合の阻止医師養成数の削減計画を中止し、「臨時増員措置」を継続するなど医師の計画的増員を推進病院の勤務医などの時間外労働上限を引き下げ看護師の計画的な増員を推進OTC類似薬の「特別料金」徴収の阻止70歳以上の窓口負担を一律1割に引き下げ、軽減・無料化を推進1兆円の公費投入増で国保料を協会けんぽの保険料並みへ保険料の「均等割」「平等割」を廃止。「所得割」の保険料率の引き下げ、低所得世帯に重い「資産割」改善生活困窮者の国保料を免除し国庫で補填「国保の都道府県化」による国保料引き上げに反対保険料滞納者への支援なしの10割負担(特別療養費の支給)の中止保険料滞納者の生活相談による収納活動へ転換保険料・窓口負担の軽減障害者、高齢者などの医療費無料化(現物給付)を行う自治体への国保の国庫負担を減額制度の中止国保法第44条の規定にもとづく、生活困窮者の窓口負担(一部負担金)の減免を積極的に推進国保組合が行う独自給付への国庫補助削減を止めて拡充へ18歳までの医療費無料化現役世代の窓口負担の2割への引き下げ高額療養費制度の改善・拡充後期高齢者医療制度の保険料・窓口負担の引き上げを中止。制度を廃止高齢者医療への国庫負担を増額し、現役世代の支援金負担、高齢者の保険料負担を軽減マイナ保険証の強制をやめて健康保険証を存続資格確認書はマイナ保険証の有無に関係なく国民全員に交付不具合続出のマイナカードによるオンライン資格確認の中止・見直し「子ども・子育て納付金」の廃止高額療養費制度の患者負担増案の“復活”を許さず、制度の改善高額療養費制度の負担限度額の上限を引き下げ、「1%」の定率部分を廃止高額療養費限度額の設定を“月ごと”から“治療ごと”に変更世帯の所得区分ごとに年間を通じた高額療養費負担上限額を設定3疾患(血友病、HIV、人工透析の腎臓病)限定の「高額長期疾病にかかわる高額療養費の支給特例」を拡大し、療養が長期にわたる場合に対応した「長期療養費給付制度(仮称)」を創設新型コロナ感染症の抗ウイルス薬などに公費補助の仕組みを設定し、患者の自己負担を、インフルエンザのタミフル並みに新型コロナワクチン接種の経済負担軽減の仕組みを創設新型コロナワクチン接種後の有害事象の原因を徹底究明と接種と症状との因果関係の認定に至らなかった事例も含めた幅広い補償・救済コロナ感染者や疑いのある人に対する十分な検査と治療の体制整備(救急・入院の拡充など「コロナ以外」の医療の逼迫が起こらないようにする体制の強化、高齢者・障害者施設、医療機関などにおける検査等の防護措置の実施を国が支援)国の負担で肺・心臓の長期的障害や筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)など、「コロナ後遺症」の治療・研究、患者への生活支援を推進コロナ危機の教訓を踏まえ感染症病床の2倍化、保健所の箇所・職員数の大幅増、集中治療室(ICU)設置を支援する制度の創設ワクチンや治療薬の研究・開発に対する財政支援、水際・検疫体制の抜本的な強化新興・再興感染症の発生・拡大に備える検査・医療体制を拡充し、体制・人員・資器材等を確保教育・保健の連携による性に関わる正しい知識の普及と予防法の周知、検査体制の強化、一般医療機関への情報提供による性感染症の予防・早期発見・治療の実現安全性・有効性が確認されたワクチンの公費接種事業を推進。ワクチン接種後に有害事象が起こった事例の原因の徹底究明と調査、被害者の治療・補償・救済を、国の責任で推進。医療費適正化計画の撤廃混合診療、保険外治療の拡大の阻止差額ベッド料などの自費負担を廃止株式会社による医療経営解禁を阻止協会けんぽへの国庫補助を法定上限の「20%」に引き上げ、労働者・中小企業の負担軽減にむけた、国の支援を強化国民の健診データ・情報の営利企業に引き渡しに反対薬価構造を根本的に見直し新薬などの高薬価是正で得られた財源を医療の充実や医療従事者の処遇改善などへ必須医薬品の安定供給を確保するため、後発品(長期収載品)の薬価を採算のとれる水準にするよう見直し。同時にメーカーに責任を課し、委託生産の規制強化や、原薬の国産化を推進無料低額診療への支援を強化し、薬剤費への制度適用を目指す医薬品・医療機器に偏った報酬評価のあり方を見直し、医療従事者の労働を適正に評価する診療報酬に改革「包括払い(定額制)」の導入・拡大に反対初・再診料、入院基本料の引き上げ標準算定日数を超えたリハビリを「保険外併用療養」とする制限を廃止人工透析「夜間・休日加算」を患者負担の軽減とともに適切な水準へ引き上げ出産一時金のさらなる増額と出産費用の無償化助産師の養成数を増やし、助産院へ公的支援助産院を地域の周産期医療ネットワークに位置付け、助産師と産科医の連携を国の責任で推進通常分娩の保険適用・窓口無料化の実現時は助産師による出産、妊産婦へのケアや各種指導なども産科医療機関との連携など安全確保を前提に保険適用医療事故の検証を行う調査機関に関する制度の改善産科医療補償制度の抜本的見直しを進めつつ、無過失補償制度を創設患者の権利を明記し、医療行政全般に患者の声を反映する仕組みをつくる「医療基本法」の制定現行の「診療明細書の発行」を見直し国の責任で、がんの専門医の配置や専門医療機関の設置を推進未承認抗がん剤の治験の迅速化とすみやかな保険適用、研究予算の抜本増、専門医の育成、がん検診への国の支援の復活など、総合的がん対策を推進保険診療には「ゼロ税率」を適用し、医薬品などにかかった消費税を還付社会保険診療報酬に係る事業税の非課税措置、医療機関の概算控除の特例の継続・存続救急・救命体制への国の補助を2倍化。新しい国の補助制度をつくり、ICU病床(HCUを含む)の2倍化救急隊員の抜本増、ドクターヘリの充実、地域医療の再生とあわせた救急・搬送体制の整備・拡充国の責任で小児救急体制を整備し、新生児特定集中治療室(NICU)の増設はり・きゅうの保険適用の改善・拡充在宅医療・介護における駐車問題の解決 いやはや、今回の同党の政策の多いこと多いこと。ただし、率直に言えば既存政策への「反対」「撤廃」「中止」などの文言が多く、実現の可能性について、私個人は相当疑問符が付く。もっとも、どの政党も提案していない新型コロナワクチンの定期接種に関する接種費用補助は目を引く。この辺は他党に見習ってもらいたいものである。れいわ新選組ご存じ山本 太郎氏を代表とする同党だが、山本氏が「多発性骨髄腫の一歩手前」と公表し議員辞職。そして最近は共同代表の大石 あきこ氏が代わりにメディアに登場している。同党のマニフェストでは5つの大項目を掲げ、その下に具体的な政策を標榜している。以下、要約・列挙する。詳細は以下のとおり03.社会保険料は国のお金で引き下げる後期高齢者医療制度は廃止し、全額国費負担介護保険の国負担割合を50%以上に引き上げ04.生きててよかったと思える国~今すぐできる少子高齢化対策~介護・保育の月給10万円アップ民間事業者が少ない地域で介護士を公務員化し「公務員ヘルパー」を復活介護保険の利用者負担を一律1割。低所得者の利用料免除・減免を制度化要支援1、2のホームヘルプ、デイサービス利用の保険給付復活介護保険サービスを趣味など生活の充実にも利用可能に 上記以外にも「国立病院、公立病院の統廃合、病床の削減(地域医療構想)の中止」「マイナンバーカード廃止」「健康保険証の復活」などがあるが、基本的に同党も2025年の参院選と政策に変更はない。減税日本・ゆうこく連合衆院解散直前の立憲民主党と公明党の新党結成に反発した立憲民主党の原口 一博氏(元総務相)と、日本保守党を離党し、衆院内会派で「減税保守こども」を結成していた河村 たかし氏(元名古屋市長)、竹上 裕子氏、平岩 征樹氏、参政党を離党した鈴木 敦氏が参加して、原口・河村両氏が共同代表で結成した。当初5人の国会議員がいることで、政党要件を満たしたが、最終的には鈴木氏が出馬を見送ったため、現状は4人。今回は4つの大きなスローガンを公約として発表している。その中の1つ「三、日本救世【命・安全・教育】国民の命を利権から守り抜き、次世代へ豊かな国土を引き継ぎます」の項で以下のような公約を掲げている。詳細は以下のとおり命を守る決断:新型コロナワクチン(遺伝子製剤)の接種を直ちに中止し、被害の実態解明と全ての被害者の救済を最優先医療・福祉の最適化:ICTを活用した「かかりつけ医制度」の導入により、過剰医療や医療過誤を是正。難病・障害者基本法の改正により合理的配慮を徹底 2番目はまだしも、1番目ははっきり言っていただけない。ご存じのように共同代表の原口氏は、mRNAワクチンについて、かなり出所不明な情報を発信するワクチン懐疑派。このためmRNAワクチンの製造・販売元の1社であるMeiji Seikaファルマから、名誉棄損による損害賠償請求訴訟を起こされている。参政党さて、前回の参議院選も含め昨今の選挙では、国民民主党とともに議席を伸ばしている同党。以前も取り上げたように、失礼ながらややトンデモ政策が多いのだが、今回はどうだろう?今回は3つの柱と9の政策(<>内)を掲げ、9つの政策の下に詳細な説明も加わっているほか、分野別の詳細政策も掲げている。詳細は以下のとおり1の柱 日本人を豊かにする~経済・産業・移民~<政策1“集めて配る”より、まず減税>消費税減税と社会保険料軽減で国民負担率上限35%実現2の柱 日本人を守り抜く〜食と健康・一次産業〜<政策6 安心医療で健康国家>診療・介護・障害福祉報酬を抜本的に引き上げ、基礎年金の受給額の底上げ医療・介護・福祉従事者の賃金アップと過重労働の改善健康維持・重症化予防に取り組む人へのインセンティブ付与新型コロナ対応を検証し、実効的な感染症対策を再構築以下は「健康・医療」の分野別政策守る医療、正す医療。現場を救い、制度を持続させる仕組みを再構築診療・介護・障害福祉報酬(各サービスの公定価格)を抜本的に引き上げ、医療・介護・福祉従事者の賃金をアップし、過重労働を改善不必要な重複検査や過剰な治療・投薬等については、医学的妥当性を重視し、適正化かかりつけ医機能を重視し、継続的な健康管理や相談に取り組む医療機関を評価する報酬体系を検討OTC医薬品で対応可能な軽症疾患はセルフケアを基本とし、安易な処方を抑制(重症化や合併症のリスクが高い疾病での必要な治療・投薬を妨げるものではない)フリーアクセスで、いつでも何回でもどの医療機関でも受診ができる仕組みを見直す医療DXを活用し、業務効率化や研究開発に繋げる予防医療の推進により、医療費適正化と地域経済活性化を両立科学的根拠が確立した予防医療・重症化予防を段階的に保険対象へ生活習慣病、フレイル、認知症等について、予防・再発防止に取り組んだ医療機関を評価する制度を導入健康診断、重症化予防、生活習慣改善等により、医療費適正化に貢献した方を評価する仕組みを導入。評価に応じて、国内旅行クーポンや地域消費につながるインセンティブ制度を検討。新型コロナ対応とmRNAワクチン施策の検証~次なる感染症に備えるための、責任ある再構築政府で新型コロナ対応およびmRNAワクチン施策全体について、独立性・透明性を確保した検証実施を求め、検証結果を国民に分かりやすく公表mRNAワクチンは短期的な効果だけでなく、中長期的影響を見据えた安全性評価と治験・調査を徹底新型コロナウイルスを含む新興感染症でウイルスの発生経緯・拡大要因・対応について、政府が専門的かつ独立性の高い検証を実施WHOなど国際機関の情報や勧告などは、日本の実情に即して妥当性を科学的に評価し、主体的に判断できる体制を整備。国際機関の判断が日本の状況に適さないと合理的に判断される場合は、国内専門機関の評価を優先できる制度設計高リスク病原体を扱う国内研究施設について、立地、管理、運用に関する安全基準を厳格化し、事故・流出リスクを最小化科学的根拠の明確な提示と、国民一人ひとりの自己決定権を最優先とするワクチン政策ワクチン接種は、年齢・基礎疾患・重症化リスクを踏まえた任意接種を原則効果と副反応などのリスクについて、国民に分かりやすく情報提供接種後の健康影響について、中長期的な追跡調査と結果の公表を実施医師による副反応報告と健康被害救済制度への協力体制を強化がん・難病の“治療と生活”を国の責任でしっかり守る総合支援がん・難病に関し、国の責任で「治療と生活」を守る。診断の遅れ、手続きの壁、医療格差、地域格差をゼロへがん・難病の患者が抱える就労・学業・介護・移動・家族負担を含む「生活困難」に対し、医療にとどまらず、福祉・労働・教育・地域政策を束ねて一体で実装治療法の確立と新薬開発支援を拡充し、実用化までの期間短縮。そのための研究投資とデータ基盤整備を推進有効性が確認されたがん検診の費用補助等により、受診率を全国的に引き上げ老老介護やヤングケアラーを地域全体で支える仕組みを構築介護を社会の基盤へ:地域包括ケア強化と年金改革で老後不安を解消「65歳以上を高齢者」の定義の見直し介護報酬を引き上げ老老介護や介護離職を防ぎ、制度と地域で支える仕組み作り加算の申請手続きなど、行政が現場に要求する過剰な負荷を減らし、DX化も推進介護・医療・住まい等を包括的に捉えて、地域で密に連携する仕組み作りフレイル・認知症予防への積極的取組、地域の居場所・見守りを国が支援本人が望んでいない終末期における過度な延命治療を見直す本人の意思を尊重し、医師の法的リスクを回避するための尊厳死法制を整備人生会議(ACP)、事前指示書、生命維持治療に関する医師の指示書(POLST)の普及と制度的位置づけの明確化緩和ケア、在宅看取り、ホスピス等、尊厳を保持した医療の拡充終末期の延命措置医療費の負担の在り方の見直し さてざっと見まわすと、以前に本連載で批判的に捉えた予防医療のインセンティブ(Go Toトラベル)やすべてのワクチンを任意接種にするなど、まるで米国・保健福祉長官ケネディ氏のような政策が目につく。一方、がん・難病でのデータ基盤整備や介護での加算申請手続きの軽減などは玄人的な政策がある点も目を引く。誰かが入れ知恵したのだろうか?日本保守党移民反対を前面に打ち出す同党の医療・社会保障政策は結党以来、まったく変更はなく以下の2点である。詳細は以下のとおり移民政策の是正―国益を念頭に置いた政策へ健康保険法・年金法改正(外国人の健康保険・年金を別立てに)教育と福祉出産育児一時金の引き上げ(国籍条項をつける) そもそもシングルイシューの政党と言ってもよく、有体に言えば、少なくとも現時点では社会保障政策自体にそれほど強い関心はないのだろう。社民党旧日本社会党を源流とし、社会民主党、社民党と名称を変えてきた同党だが、最盛期の日本社会党時代に衆院で166議席も有していた議席は今やゼロ。参院で2議席のみである。今回は「社民党8つの提言」の中で「最低保障年金制度の樹立で老後の安心を!介護と医療の負担を軽減!」を掲げ、以下のような政策を提唱している。詳細は以下のとおり介護報酬を引き上げ、介護従事者の待遇を改善して人手不足を解消。混合介護と自由診療を規制高額医療費や一般用医薬品(OTC)医薬品の自己負担増に反対マイナ保険証の取得強制に反対し、紙の健康保険証を継続国公立病院の統廃合を認めない 今回唱えている政策は、ほとんどが前回の参院選時に掲げていたもの。唯一異なる点があるとするならば、「混合介護」と表現している介護の保険外サービス利用と自由診療の規制の点である。チームみらいAI研究者だった安野 貴博氏が創設した新党で、昨年の参院選では安野氏自身が比例で1議席を獲得して政党要件を満たした。2024年東京都知事選挙に立候補した時に本連載でも本人に取材し、安野氏の政策はアジャイルな設計で、有権者からの意見を受け付け柔軟に変化することがわかった。そのため、ここに記述したものも投票日までに変更されている可能性がある。政策は大きく3つの大項目で構成され、その下にテーマ(<>内)、さらに個別政策という構成。以下、要約・抜粋する。詳細は以下のとおり(2)「今」の生活をしっかり支援<経済財政・社会保障>現役世代の社会保険料負担を軽減し、フェアな税・社会保障制度を目指す「税収」(1)現役世代の過度な負担を回避し、国民全体で支えられる方法を検討(2)入国税や非居住外国人に対する固定資産税の引上げ、外国人旅行者の消費税免税制度の見直しなど日本の生活者に影響の小さい歳入源の拡充も検討「支出」影響が大きい方への配慮を行いながら、医療費の自己負担割合の一律3割を目指す。 加えて、「医療」パートに示す制度改革に取り組む<医療>1.医療の有効性・重要度に応じたきめ細やかな自己負担へ高額医療費制度の上限の拙速な引き上げを見直し中長期的に診療行為のエビデンス、費用対効果や重症度に基づく自己負担割合の複数段階化を検討電子レセプトに連携し窓口で即時に自己負担額が算出できるAI、システムの開発を支援。医療DXを推進する支援の枠組みも整備2.治療成果に報いる医療アウトカム評価制度の導入「どれだけ診療が行われたか」だけでなく、「どれだけ良くなったか」にも報いる医療制度への転換を目指し、成果連動型の診療報酬制度を導入(治療の効果が高い医療機関に対しての報酬加算、患者に対しての還元を設計し、医療機関・患者の双方に動機づけを行う)診療データを匿名化し、全国医療データベース(NDB)で一元管理。AIを活用した公平で迅速な評価を行う仕組みを整備(電子カルテの標準化、相互運用性の確保を推進。診療記録や検査結果をデータ化して治療成果を判定、成果加算が自動的に反映される仕組みを設計。アウトカム評価指標の提出、確認が行われることで医療機関の負担が増えないよう、民間企業と連携した電子カルテの解析システムの開発を促進)3.オンライン診療/処方受け取り方法を充実し、通院のない受診を実現オンライン診療普及のための診療報酬、インセンティブの設計(オンライン診療を普及促進の診療報酬の加算を検討)安全性を担保するためのガイドライン整備(本人確認、重症化時のバックアップ体制など、オンライン診療を安全に行い、標準的なサービスを担保するための規定を整備)薬の受け取りまでオンラインで完結するための枠組みの整備(自動運転やドローンでの配送物流コストの診療報酬での手当を検討)4.画像診断AIで見逃しリスクと医師不足の解消を同時にシステム導入費の補助による画像解析システムの導入診断AIへの加算を制定し継続利用を促進。AI画像解析の成果について評価を実施人とAIが協働する医療のルール整備<福祉>5.福祉・介護従事者の処遇改善・テクノロジーによる業務負担軽減を推進障害福祉・介護従事者の給与水準を全産業平均に近づける賃上げ方策の検討テクノロジー活用推進、福祉・介護従事者の待遇改善を目的とした基本報酬改定の検討生産性向上推進体制加算の拡充とテクノロジー活用を標準とした新たな報酬類型を創設施設類型を中心に進められている生産性向上推進体制加算の適用を在宅系サービスへ拡大福祉・介護職員等処遇改善加算による賃上げ効果を向上のため、テクノロジー活用と経営改善による利益を福祉・介護職員へ還元する制度の改定 さて比較的AIに懐疑的な人は、これらを見て「テクノロジーで解決できるほど医療は簡単ではない」と言うかもしれない。ただ、ここで提言されている政策をよく読めば、実はテクノロジー一辺倒ではないことがわかるのではないだろうか?たとえば、医療者が嫌うであろう診療報酬のアウトカム評価も何を行ったかの実績評価との併用で語っている。また、ここでは私が要約したが、実はチームみらいのホームページに行くと、それぞれの政策を掲げるテーマの背景まで深く分析している。私見を言えば、既存政党は長らく政治に関わりながら、こうした背景分析をきちんとしているだろうか?ここまで超長文、かつかなり駆け足で各党の政策を紹介した。このように駆け足になったのはひとえに戦後最短の選挙期間というのが最大の理由であるため、ご容赦願いたい。さて8日の投開票結果はいかに?

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不思議の国のアリス症候群、特定の薬剤が関連か

 不思議の国のアリス症候群(Alice in Wonderland syndrome:AIWS)は、物体や人の大きさが変わって見える、体が宙に浮くような感覚、時間の歪みなどの視覚的・知覚的歪みを伴う神経疾患である。従来から片頭痛やてんかん発作との関連が指摘され、その後、腫瘍や感染症、さらには薬物との関連も報告されている。フランス・ニース大学病院のDiane A. Merino氏らによる研究グループは、世界保健機関(WHO)の医薬品安全性データベースを解析した結果、モンテルカストやアリピプラゾールなどの特定の薬剤がAIWSの発現に関与している可能性を明らかにした。Psychiatry Research誌2026年2月号に掲載。 本研究では、1967年~2024年12月15日までにWHO医薬品安全性データベースVigiBaseに登録されたAIWS症例を抽出し、小児(0〜17歳)と成人(18歳以上)に分けて不均衡分析を実施した。AIWSと薬剤の関連性は、シグナル指標としてInformation Component(IC)と95%信頼区間(CI)を算出し、95%CIの下限値(IC025)が正の値を示す場合をシグナルが検出されたとみなした。 主な結果は以下のとおり。・抽出されたAIWS 87例のうち、小児は26例(29.9%)で平均年齢7.1歳(標準偏差[SD] 4.0)、成人は45例(51.7%)で40.6歳(SD 13.0)であった。・56例(64.4%)が重篤と判断された。転帰が判明している症例のうち43例(79.6%)が回復または回復中であることが確認された。・小児群では、喘息・アレルギー治療薬のモンテルカスト(IC:3.2、95%CI:1.7~4.2)および注意欠如・多動症(ADHD)治療薬のメチルフェニデート(IC:2.3、95%CI:0.3~3.5)において有意なシグナルが検出された。・成人群では、抗うつ薬のセルトラリン(IC:3.4、95%CI:2.1~4.4)、抗てんかん薬のトピラマート(IC:3.1、95%CI:1.3~4.2)、抗精神病薬のアリピプラゾール(IC:3.6、95%CI:2.5~4.4)、およびモンテルカスト(IC:2.7、95%CI:0.7~3.9)に有意な関連が認められた。・新型コロナウイルスワクチンも頻繁に報告されていたが(17例、19.5%)、統計的に有意なシグナルは検出されなかった(IC:0.63、95%CI:-0.26~1.31)。一方で、髄膜炎菌ワクチンについては有意なシグナルが認められた(IC:2.7、95%CI:1.2~3.7)。 本研究により、メチルフェニデートやモンテルカストといった特定の薬剤が年齢層に応じてAIWSを引き起こすトリガーとなる可能性が示唆された。著者らは、AIWSは通常、薬剤の投与中止により回復するが、視覚的・知覚的歪みの症状が患者に混乱をもたらす可能性があるため、慎重なリスク・ベネフィット評価が必要であり、本研究は自発報告データベースに基づくため、今後さらに大規模な集団ベースの調査が必要だとまとめている。

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第47回 脅威の致死率「ニパウイルス」について、私たちが知っておくべきこと

南アジアを中心に、散発的ながらも深刻な被害をもたらし続けている「ニパウイルス」。高い致死率とパンデミックを引き起こす潜在的なリスクから、世界保健機関(WHO)も「最優先で対策すべき病原体」の一つに指定しています1)。日本とニューヨークの医療現場ではもちろん出会ったことのない感染症ではありますが、最近になりインドで感染者が確認され、話題となっています。今回は、このウイルスの正体や感染の仕組み、そして希望の光となりうるワクチン開発状況について、これまで報告されている論文に基づいて解説します。「最優先病原体」ニパウイルスの正体とは ニパウイルスは、1998年にマレーシアで初めて確認されたウイルスで、オオコウモリを自然宿主としています1)。当初はブタを介してヒトへ感染しましたが、その後のバングラデシュやインドでの流行では、ウイルスに汚染されたナツメヤシの樹液を摂取することによる感染や、ヒトからヒトへの直接感染も確認されています2)。 このウイルスが恐れられている最大の理由は、その高い致死率にあります。流行の場所やウイルスの変異などによっても異なりますが、致死率は40%から、高い場合では75〜100%にも達すると報告されています1, 2)。ただし、新興感染症が生じた場合の常ですが、軽症者や無症状の患者は検出されていない可能性があり、実際の致死率は報告されている数値よりも低くなる可能性が高いと考えられます。しかしいずれにしても、新型コロナウイルスと比較すると、感染した場合の重症度は桁違いでしょう。 感染すると、発熱、頭痛、筋肉痛といった風邪のような症状から始まり、多くの場合は急速に悪化して重篤な脳炎を引き起こします2)。けいれんや意識障害が現れ、発症からわずか24〜48時間で昏睡状態に陥ることもまれではありません1, 2)。また、回復した場合でも、約20%の人に神経学的な後遺症が残るとされており、長期的な生活の質への影響も甚大とされています1)。ヒトからヒトへはどう広がるのか? 一般的にニパウイルスのヒトからヒトへの感染伝播(基本再生産数)は起こりにくいとされていますが、特定の条件下では「スーパースプレッダー」のような現象が起こりうることも指摘されています。この点について、バングラデシュでの14年間にわたる調査データがNew England Journal of Medicine誌に掲載されているのでご紹介します3)。 この研究によれば、ヒトからヒトへの感染リスクを高める要因として、呼吸器症状、年齢、濃厚接触かどうかといった点が指摘されています。 呼吸困難などの呼吸器症状がある患者は、そうでない患者に比べて、他者に感染させるリスクが劇的に高いようです。この研究では、呼吸器症状のない患者からの感染拡大は、きわめてまれであったのに対し、呼吸困難を伴う患者は感染源になりやすいことが示されています3)。これは、咳などによる飛沫が感染の主要なルートとなりうることを裏付けています。 また、患者の年齢が高い場合や、看病などで長時間(とくに48時間以上)患者と接した場合、または患者の体液に直接触れた場合に、感染リスクが有意に増加するようです。実際、配偶者への感染率は他の親族よりも高いという結果が報告されています3)。 こうしたデータは、私たちが住む地域で万が一感染者が発生した場合にどう行動すべきかを教えてくれます。つまり、呼吸器症状のある患者との接触には飛沫感染予防策を含む最大限の警戒が必要で、体液への曝露を防ぐための厳重な感染防御策も不可欠だということです。進むワクチン開発 現在、ニパウイルス感染症に対して承認された特効薬やワクチンは残念ながら存在しません1)。治療はあくまで症状を和らげる対症療法に限られており、これが高い致死率が報告される一因となっています。リバビリンなどの抗ウイルス薬が試されたこともありますが、その効果は限定的あるいは不明確のようです1)。 しかし、希望がまったくないわけではありません。すでに、ニパウイルスワクチンの第I相臨床試験の結果が発表されています4)。 この試験で用いられたのはサブユニットワクチン。これは、ニパウイルスと非常に似た構造を持つヘンドラウイルスのタンパク質(G糖タンパク質)を利用したもので、交差免疫(似たウイルスに対する免疫反応)によってニパウイルスも防ごうという戦略です。 この試験は18~49歳の健康な成人を対象に行われていますが、深刻な副反応や死亡例は報告されず、主な副反応は注射部位の痛みなどの軽度なものでした。 また、100μgのワクチンを28日間隔で2回接種したグループで最も高い効果が得られ、2回目の接種から7日後には、ニパウイルスに対する中和抗体(ウイルスを無力化する抗体)が劇的に上昇しました4)。 この結果は、まだ初期段階の試験ではあるものの、将来的にこのワクチンが実用化されれば、流行地域で感染拡大を防ぎ医療従事者を守る予防接種として使える可能性を示唆しています。今、どう向き合うか ニパウイルスは、現時点ではヒトからヒトへの感染伝播が起こりにくい以上、日本国内で大規模な感染流行が起こったり、世界的なパンデミックを起こすリスクは低いと考えられます。そこは冷静に捉えておくべきでしょう。しかし、グローバル化が進む現代において「対岸の火事」と決めつけることもできません。 同時に、私たち人間は無力でもありません。ワクチンのような科学の進歩が、着実に解決への道を切り開きつつもあります。今私たちに必要なのは、「ただ恐れる」ことではなく「解像度の高い理解」でしょう。病原体が身近になればなるほど、誤情報も増加します。データが示す科学的根拠とともに、今後の動向を冷静に見つめていく必要があります。 1) Madhukalya R, et al. Nipah virus: pathogenesis, genome, diagnosis, and treatment. Appl Microbiol Biotechnol. 2025;109:158. 2) Ganguly A, et al. The rising threat of Nipah virus: a highly contagious and deadly zoonotic pathogen. Virol J. 2025;22:139. 3) Nikolay B, et al. Transmission of Nipah Virus - 14 Years of Investigations in Bangladesh. N Engl J Med. 2019;380:1804-1814. 4) Frenck RW Jr, et al. Safety and immunogenicity of a Nipah virus vaccine (HeV-sG-V) in adults: a single-centre, randomised, observer-blind, placebo-controlled, phase 1 study. Lancet. 2025;406:2792-2803.

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日本人高齢者の緊急入院で死亡率が高いのは? インフルvs.コロナvs.RSV

 50歳以上(平均年齢81.4歳)を対象とした前向きコホート研究において、急性呼吸器症状による緊急入院では、RSウイルス(RSV)陽性者がSARS-CoV-2やインフルエンザA/B陽性者と比較して、30日全死亡率が高かった。このことからRSV感染症は、高齢者の看過できない死亡リスク因子であることが示唆された。本研究結果は、森本 剛氏(兵庫医科大学)らによって、Clinical Microbiology and Infection誌オンライン版2026年1月10日号で報告された。 研究グループは、日本の3施設(島根県立中央病院、洛和会音羽病院、奈良市立病院)において、急性呼吸器症状または徴候を呈して緊急入院した50歳以上の成人を対象に、前向きコホート研究「EVERY study」を実施した。登録期間は2023年7月1日~2024年12月31日とした。入院後24時間以内に採取された鼻咽頭ぬぐい液を用いて、FilmArray呼吸器パネル2.1による多項目遺伝子検査を行い、RSV、SARS-CoV-2、インフルエンザA/Bの陽性割合と臨床転帰(30日全死亡、下気道疾患[LRTI]、modified LRTI[画像所見を組み込んだ定義])を検討した。また、ワクチン接種歴(COVID-19[新型コロナウイルス感染症]ワクチンとRSVワクチンは過去に1回以上接種で接種あり、インフルエンザワクチンは当該シーズンに1回以上接種で接種ありとした)も調べた。 主な結果は以下のとおり。・解析対象となった3,067例(平均年齢81.4歳、男性55.3%)において、各ウイルスの陽性割合は、インフルエンザA/Bが2.3%、SARS-CoV-2が18.0%、RSVが1.6%であった。・解析対象(3,067例)のワクチン接種割合は、インフルエンザワクチン37.9%、COVID-19ワクチン62.3%、RSVワクチン0%であった。・抗ウイルス薬の投与割合は、インフルエンザA/B群62.3%、SARS-CoV-2群71.8%、RSV群0%であった。・30日全死亡率は、インフルエンザA/B群が2.9%であったのに対し、SARS-CoV-2群8.4%、RSV群14.3%であった。・インフルエンザA/B群を対照とした場合の30日全死亡の調整オッズ比は、SARS-CoV-2群が2.9(95%信頼区間[CI]:0.83~17.9)、RSV群が5.2(95%CI:1.2~36.7)であり、RSV群が高かった。・入院時のLRTIの割合は、インフルエンザA/B群88.4%、SARS-CoV-2群82.8%、RSV群87.8%であった。modified LRTIは、それぞれ95.7%、93.1%、93.9%といずれも高率であった。 本研究結果について、著者らは「急性呼吸器症状で緊急入院する高齢者において、RSVはインフルエンザやCOVID-19よりも高い死亡率に関連するリスク因子であった」と結論付けている。また「RSV陽性者の高い死亡率の背景には、抗ウイルス薬の使用機会がないことやワクチン未接種が影響している可能性がある」と考察し、日常診療におけるRSVの認識向上とともに、ワクチン接種を含む予防の重要性を強調している。

20.

コロナワクチン接種を躊躇する理由を大規模解析についてのコメント(解説:栗原宏氏)

特徴・ワクチン接種に関して「どの階層」が「どんな理由で」ためらったかを明らかにし、経時的な変化と実際の接種行動を調査している。・自己申告ではなく、本当に接種したかまでNHSワクチン記録で追跡している。 本調査は、イギリスの一般住民を対象とした大規模COVID-19モニタリングプログラムに参加した成人113万人を対象として、COVIDワクチンに対する態度(ためらいや拒否など)とその後実際にワクチンを接種したかどうかをNHSワクチン記録と照合して分析したコホート研究である。 この研究のポイントは、ワクチン接種への考え方が変化しやすい群と拒否や不信が強く接種に至りにくい群を、理由・属性と併せて定量的に示した点にある。 多変量ロジスティック回帰の結果では、接種を躊躇する傾向が強いのは、若年層(18~24歳)、女性、白人以外の民族(とくに黒人)、社会経済的な不利、低学歴、失業・非労働人口、COVID既感染、うつ病・不安症、喫煙者であった。最終的に接種しなかったことと関連した要因として・学歴が低い・失業・非労働人口・COVID既感染歴・喫煙者・うつ病、不安症などの精神疾患(自己申告)が挙げられている。未接種の理由としては、・ワクチン全般に反対・COVIDの影響が誇張されていると認識している・ワクチン開発者を信頼していない・COVIDは自分にとってリスクではないと感じているといった回答と強く結びついていた。 COVIDワクチンへの躊躇の多くは「効果」「安全性」「長期的影響」に関する具体的な懸念に由来しており、これらは時間経過、情報提供によって解消されやすい。これに対して、「ワクチン全般への拒否感」「COVIDそのものへのリスク認識の低さ」「政府・専門科・情報への不信」を背景にした人たちは最後まで接種しない傾向が強い。 本研究よりも小規模な調査が日本国内でも実施されており、ほぼ同様に若年層や女性、低学歴・低所得・既感染・不信感の強い層では接種に躊躇する傾向が報告されている。イギリスでの調査ではあるが、日本においても属性による経時的な考えの変化があると推測される。ワクチン接種を推奨するに当たり、一律の情報提供では不十分で、理由・属性ごとに「変わりやすさ」が異なることを踏まえた対応が求められる。

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