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sparsentan、IgA腎症の蛋白尿を長期に低減/Lancet

 免疫グロブリンA(IgA)腎症の治療において、非免疫抑制性・単分子・エンドセリン受容体とアンジオテンシン受容体二重拮抗薬であるsparsentanはイルベサルタンと比較して、36週時に達成された蛋白尿の有意な減少を110週後も持続し、腎機能の維持に有効であることが、米国・オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターのBrad H. Rovin氏らが実施した「PROTECT試験」の2年間の追跡調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年11月3日号で報告された。国際的な第III相試験、すでにIgA腎症の治療薬として迅速承認 PROTECT試験は、18ヵ国134施設が参加した二重盲検無作為化実薬対照第III相試験であり、2018年12月~2021年5月に患者の登録を行った(Travere Therapeuticsの助成を受けた)。 主要エンドポイントは、36週の時点における治療群間の蛋白尿の変化量の差であった。中間解析により、イルベサルタン群に比べsparsentan群で相対的に41%の蛋白尿の有意な減少を認め、これに基づきsparsentanはIgA腎症の治療薬として迅速承認を受けている。今回は、110週の追跡データを報告した。 本試験では、年齢18歳以上、生検で原発性IgA腎症が確認され、12週間以上レニン・アンジオテンシン系を最大限に抑制しているにもかかわらず、1.0g/日以上の蛋白尿を認める患者を、sparsentan(目標用量400mg、1日1回、経口)またはイルベサルタン(目標用量300mg、1日1回、経口)の投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 404例を解析の対象とした。sparsentan群に202例(平均年齢46.6[SD 12.8]歳、男性69%、白人64%)、イルベサルタン群に202例(45.4[12.1]歳、71%、70%)を割り付けた。eGFRの低下速度を有意に抑制 110週時における推算糸球体濾過量(eGFR)の低下速度は、イルベサルタン群に比べsparsentan群で抑制された。2年間のeGFRのchronic slope(勾配)(6~110週)は、イルベサルタン群が-3.8mL/分/1.73m2/年であったのに対し、sparsentan群は-2.7mL/分/1.73m2/年と有意に良好であった(群間差:1.1mL/分/1.73m2/年、95%信頼区間[CI]:0.1~2.1、p=0.037)。 また、2年間のeGFRのtotal slope(1日目~110週)は、イルベサルタン群(-3.9mL/分/1.73 m2/年)に比べsparsentan群(-2.9mL/分/1.73 m2/年)で抑制されていたが、有意差は認めなかった(群間差:1.0mL/分/1.73 m2/年、95%CI:-0.03~1.94、p=0.058)。 一方、36週時に認めたsparsentan群での蛋白尿の有意な減少は、試験期間を通じて維持されており、110週時の蛋白尿(尿蛋白/クレアチニン比のベースラインからの変化量で評価)はイルベサルタン群(-4.4%[95%CI:-15.8~8.7])よりもsparsentan群(-42.8%[-49.8~-35.0])で相対的に40%低かった(幾何最小二乗平均比:0.60、95%CI:0.50~0.72)。 腎不全の複合エンドポイント(eGFRの40%の低下、末期腎不全、全死因死亡)は、sparsentan群の202例中18例(9%)、イルベサルタン群の202例中26例(13%)で発生した(相対リスク:0.7、95%CI:0.4~1.2)。 試験薬投与期間中の有害事象(TEAE)は、sparsentan群が187例(93%)、イルベサルタン群は177例(88%)で発現した。sparsentan群で頻度の高いTEAEとして、めまい(15% vs.6%)と低血圧(13% vs.4%)を認めた。急性腎障害はそれぞれ6%および2%で発生し、重篤なTEAEはsparsentan群が37%、イルベサルタン群は35%、投与中止の原因となったTEAEはそれぞれ10%および9%であった。新たな安全性シグナルは認めなかった。 著者は、「重要な点は、これら2つの薬剤は異なる経路で作用するため、併用することで蛋白尿の減少および腎機能の維持において相加的な作用をもたらす可能性が示唆されることである。また、sparsentanは免疫抑制薬ではないことから、IgA腎症の治療パラダイムにおいては、腎機能を維持するための最大限の蛋白尿の抑制の達成に向け、必要に応じて免疫抑制薬を断続的に使用することが可能な長期的な基礎治療として、本薬を位置付けるよう提案する」としている。

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CKD治療、ダパグリフロジンにzibotentan併用の有用性/Lancet

 現行の推奨治療を受けている慢性腎臓病(CKD)患者において、エンドセリンA受容体拮抗薬(ERA)zibotentanとSGLT2阻害薬ダパグリフロジンの併用治療は、許容可能な忍容性と安全性プロファイルを示し、アルブミン尿を減少させ、CKDの進行を抑制する選択肢となることが示された。オランダ・フローニンゲン大学のHiddo J. L. Heerspink氏らが「ZENITH-CKD試験」の結果を報告した。先行研究で、SGLT2阻害薬およびERAは、CKD患者においてアルブミン尿を減少させ、糸球体濾過量(GFR)低下を抑制することが報告されていた。今回、研究グループはzibotentan+ダパグリフロジンの有効性と安全性を評価した。Lancet誌オンライン版2023年11月3日号掲載の報告。zibotentan+ダパグリフロジン併用vs.ダパグリフロジン単独を評価、第IIb相試験 ZENITH-CKD試験は、18ヵ国の診療施設170ヵ所で行われた第IIb相の国際多施設共同無作為化二重盲検実薬対照試験。被験者は、推定GFR(eGFR)が20mL/分/1.73m2以上、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が150~5,000mg/gの成人(18歳以上90歳以下)を適格とした。 研究グループは被験者を無作為に2対1対2の割合で、(1)zibotentan 1.5mg+ダパグリフロジン10mg、(2)zibotentan 0.25mg+ダパグリフロジン10mg、(3)ダパグリフロジン10mg+プラセボの3群に割り付けた。全被験者にスクリーニング前の少なくとも4週間、安定用量のACE阻害薬またはARBを投与し、忍容性が認められた場合に(1)~(3)の割り付け治療薬が1日1回12週間投与された。 主要エンドポイントは、12週時点のUACR(zibotentan 1.5mg+ダパグリフロジン10mg群vs.ダパグリフロジン10mg+プラセボ群)の、ベースラインからの変化量であった。着目したイベントは体液貯留で、ベースラインからの体重増が3%以上(体内総水分量が2.5%以上であること)、または無作為化後のBNP値上昇が>100%、かつBNP値が>200pg/mL(心房細動が非併存)または>400pg/mL(同併存)と定義した。12週時点のUACR、併用群で有意に低下 2021年4月28日~2023年1月17日に1,492例が適格とされた。主要解析では449例(30%)が無作為化され、そのうち447例(99%)が解析に含まれた。平均年齢62.8歳(SD 12.1)、138例(31%)が女性、305例(68%)が白人、平均eGFRは46.7mL/分/1.73m2(SD 22.4)、UACR中央値は565.5mg/g(四分位範囲[IQR]:243.0~1,212.6)であった。447例の割り付けは、zibotentan 1.5mg+ダパグリフロジン群179例(40%)、zibotentan 0.25mg+ダパグリフロジン10mg群91例(20%)、ダパグリフロジン+プラセボ群177例(40%)。 試験期間を通して、zibotentan 1.5mg+ダパグリフロジン群とzibotentan 0.25mg+ダパグリフロジン群は、ダパグリフロジン+プラセボ群と比較して、UACRの低下が認められた。 12週時点でダパグリフロジン+プラセボ群と比較したUACRの差は、zibotentan 1.5mg+ダパグリフロジン群は-33.7%(90%信頼区間[CI]:-42.5~-23.5、p<0.0001)、zibotentan 0.25mg+ダパグリフロジン群は-27.0%(-38.4~-13.6、p=0.0022)であった。 体液貯留は、zibotentan 1.5mg+ダパグリフロジン群で33/179例(18%)、zibotentan 0.25mg+ダパグリフロジン群で8/91例(9%)、ダパグリフロジン+プラセボ群14/177例(8%)で観察された。

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巣状分節性糸球体硬化症のeGFR変化、sparsentan vs.イルベサルタン/NEJM

 巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)患者において、エンドセリン受容体・アンジオテンシン受容体デュアル拮抗薬のsparsentanは、イルベサルタンと比較し尿蛋白の減少が大きかったにもかかわらず、108週時の推算糸球体濾過量(eGFR)スロープ(eGFR変化率の年率換算)に有意差は認められなかった。米国・ミネソタ大学のMichelle N. Rheault氏らが、多施設共同無作為化二重盲検第III相試験「DUPLEX試験」の結果を報告した。FSGSの治療にはアンメットニーズが存在する。sparsentanは、8週間の第II相試験ではFSGS患者の尿蛋白を減少させたが、FSGSに対する長期投与の有効性と安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2023年11月3日号掲載の報告。最終解析はeGFRスロープ(eGFR変化率の年率換算)で有効性を検証 研究グループは、生検でFSGSと確定診断された、またはFSGSに関連するポドサイト蛋白変異が確認された8~75歳の患者を、sparsentan群またはイルベサルタン群に、1対1の割合で無作為に割り付け、最大108週間投与した。 事前に規定した36週時点の中間解析では、代替エンドポイントをFSGS部分寛解の蛋白尿(尿蛋白[g]/クレアチニン[g]比が≦1.5、かつベースラインから>40%減少と定義)とした。 108週時の最終解析では、有効性のエンドポイントを全eGFRスロープ(1日目から108週時までのeGFR変化率の年率換算[米国では主要エンドポイント、米国以外では副次エンドポイント])、および慢性期eGFRスロープ(6週時から108週時までのスロープ[米国では副次エンドポイント、米国以外では主要エンドポイント])とし、追加の副次エンドポイトをベースラインから112週時(最終投与から4週間後)までのeGFR変化量とした。108週時のeGFRスロープ、sparsentan群とイルベサルタン群で有意差なし 2018年4月17日~2021年1月5日に、計371例がsparsentan群(184例)またはイルベサルタン群(187例)に無作為化された。 36週時の中間解析において、蛋白尿部分寛解率推定値はsparsentan群42.0%、イルベサルタン群26.0%で、両群間に有意差が認められた(群間差:16.0ポイント[95%信頼区間[CI]:4.0~28.0]、相対リスク:1.55[95%CI:1.10~2.18]、p=0.009)。 108週時の最終解析では、eGFRスロープに両群で有意差は確認されなかった。全eGFRスロープの群間差は0.3mL/分/1.73m2/年(95%CI:-1.7~2.4)、慢性期eGFRスロープの群間差は0.9mL/分/1.73m2/年(-1.3~3.0)であった。 二重盲検投与期を完了した患者において、ベースラインから112週時までのeGFR平均変化量は、sparsentan群-10.4mL/分/1.73m2、イルベサルタン群-12.1mL/分/1.73m2であった(群間差:1.8mL/分/1.73m2、95%CI:-1.4~4.9)。 安全性プロファイルはsparsentan群とイルベサルタン群で類似しており、有害事象の発現率もそれぞれ93.5%および93.0%で同等であった。

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味覚障害に耐えられない症例に対する処方は注意せよ(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 ゲーファピキサント(商品名:リフヌア)は、選択的P2X3受容体拮抗薬である。P2X3受容体は気道に分布する迷走神経のC線維と呼ばれる求心性神経線維末端にあるATP依存性イオンチャネルである。C線維は炎症や化学物質に反応して活性化される。ATPは炎症により気道粘膜から放出され、シグナル伝達を介して咳嗽反応を惹起させる。ゲーファピキサントはP2X3受容体を介したATPシグナル伝達を遮断することにより、感覚神経の活性化や咳嗽の抑制効果が期待されている薬剤である。現在、慢性咳嗽の原因となりうる病歴・職業歴・環境要因・検査結果などを踏まえた包括的な診断に基づく十分な治療を行っても咳嗽が続く場合、いわゆる難治性の慢性咳嗽に適応となっている。実臨床下では、慢性咳嗽の症例に一般的な鎮咳薬や気管支拡張薬、吸入ステロイド薬が適切に使用されても改善が得られない場合に処方を検討する薬剤となっている。 2005年に亀井らにより咳嗽にP2X3が関与していることが示唆(Kamei J, et al. Eur J Pharmacol. 2005;528:158-161.)されて以来、ゲーファピキサントの開発が進んできた。国際共同第III相試験である「COUGH-1試験」では、治療抵抗性あるいは原因不明の慢性咳嗽症例732例を対象に、ゲーファピキサント15mg 1日2回群、45mg 1日2回群、プラセボの3群が比較検討された(McGarvey LP, et al. Lancet. 2022;399:909-923.)。主要評価項目としては有効性として12週での24時間当たりの咳嗽頻度が評価された。732例のうち、気管支喘息は40.7%、胃食道逆流症が40.5%、アレルギー性鼻炎が19.7%含まれた。主要評価項目である咳嗽頻度はゲーファピキサント45mg群でベースラインに1時間当たり28.5回認めていたものが、12週時点で14.4回に減少。プラセボ群に対する相対減少率も-18.45%と有意差をもって咳嗽頻度を改善したとされた。また24週時点でも評価された「COUGH-2試験」でも同様の結果が示された。 今回取り上げたKum氏らのCOUGH-1, 2試験を含むメタ解析でも、ゲーファピキサント45mg群はプラセボ群と比較し、覚醒時の咳嗽頻度を17.6%減少させ、咳嗽の重症度や咳嗽に起因するQOLも、わずかではあるが改善させるとの結果であった。実臨床においても、呼吸器内科医が詳細に問診をとり、診察を行い、各医療機関でできる検査を組み合わせて適切な診断や治療を行っても残ってしまう難治性咳嗽の症例は時々見掛けることがある。そのような症例に対し、奥の手としてゲーファピキサントが選択されることがある。ただ、もちろん他の治療や環境因子に介入しても改善しなかったしつこい咳嗽に対する処方なので、他の鎮咳薬などの治療選択肢と比べて劇的な効果への期待は難しいことが多い。COUGH-1, 2試験では「治療抵抗性あるいは原因不明の慢性咳嗽症例」が含まれているが、ゲーファピキサントがより効果的な症例は喘息なのか、COPDなのか、間質性肺炎なのか、はたまた他の慢性咳嗽の原因となりうる疾患なのか、そのあたりが今後の臨床試験で明らかになると、ゲーファピキサントの立ち位置がよりはっきりしてくるのだろう。 またCOUGH-1, 2試験の併合解析でも指摘されているが、味覚に関する有害事象が高いことが知られている。ゲーファピキサントの承認時資料によると、味覚に関連する有害事象の発現時期としては、中央値で2.0日、1週間以内に52.7%の方が味覚に関する異常を訴えるとされている。さらに気になるところは、有害事象の平均持続期間が200日以上と想像以上に長いことも指摘されている。Kum氏らの報告でも味覚関連有害事象が100人当たり32人増加するとされ、効果に比べて有害事象の懸念が考えられた。 ゲーファピキサントはあくまで症状に対する対症療法に位置付けられる薬剤であり、原疾患に対する薬剤ではない。実際の現場において、内科の短い診療時間で味覚に対するきめ細やかな対応は困難であることが予想されるため、できれば歯科/口腔外科や、看護スタッフ、薬剤師、栄養士などの介入があるとよいだろう。味覚に関する有害事象で困るようであれば、1日1回に減量する、一定期間薬剤を中止するなどの対応も必要となる。承認時資料によると、通常用量の1/3量のゲーファピキサント15mgでは味覚障害の有害事象の頻度は17.5%と報告されているので、投与量の減量は有効な手段の1つと考えられる。また、有害事象を起こしやすい、あるいは起こしにくい患者背景がわかると、処方を勧める1つのきっかけになると考える。 実臨床では、慢性咳嗽で一般的な治療で難治と考えられる症例に、ゲーファピキサントが考慮される。エビデンスのない領域であるが、肥満が問題となっている喘息症例で適切な治療を行っても咳嗽が残ってしまう症例に対し、ゲーファピキサントで咳嗽が抑えられ、食欲も制限されたら、もしかしたら喘息のコントロールも改善するかもしれない。ただし、味覚に関連する有害事象の発現で致命的になりうるような悪液質状態の肺がん症例や、るい痩が進んできているCOPDや間質性肺炎に対する慢性咳嗽に対しては、安易に処方することのないようにされたい。

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高血圧治療補助アプリで8mmHgも降圧、治療効果のある患者とは

 CureApp HT高血圧治療補助アプリ(以下、治療アプリ)が保険収載、処方が開始してから1年が経過した。現在までの治療効果について、株式会社CureAppが「スマート降圧療法RWD発表記者会見」において、全国の医療機関で処方された治療アプリに入力された血圧データの解析結果を説明した。 本データ解析によると、全体集団における12週後の収縮期血圧の変化は起床時では8.8mmHg、就寝前では8.5mmHgの低下がみられた。これについて同社取締役の谷川 朋幸氏は「治験で検証されていなかった65歳以上の患者を含む、幅広い患者集団において薬事承認・保険適用を受けた治療アプリによるスマート降圧療法の効果が示された」とコメント。薬事承認・保険適用を受けた治療アプリによる実臨床での降圧データの公開は世界初である。 本試験の概要ならびに結果は以下のとおり。<試験概要> 高血圧症向け治療アプリへの入力データを用いた後ろ向き研究で、以下の条件で実施された。対象者:2022年9月~2023年4月にアプリを処方された患者家庭血圧を少なくとも1回入力した患者情報の研究利用を拒否する旨の意思表示を行っていない患者主要評価項目:高血圧症向け治療アプリ使用開始(ベースライン)後12週間での降圧量(ベースラインの週およびアプリ使用開始12週後の週においてそれぞれ5日以上血圧を入力した患者が対象)解析方法:年齢、アプリ使用開始時点での服薬の有無、塩分チェックシートスコア、BMIでの層別解析結果:・解析対象者は554例で女性は263例(55.1%)だった。・アプリ使用者の平均年齢は55.1歳(範囲:22~87歳)で、そのうち65歳以上は115例(21%)だった。・薬物治療を行っていたのは248例(45%)であったが、その薬剤の種類や用量は不明であった。・アプリ使用開始後12週間での全体集団における収縮期血圧の降圧変化は、起床時は-8.8mmHg、就寝前は-8.5mmHgだった。・65歳以上での12週後の収縮期血圧変化は、起床時で-11.8mmHg、就寝前で-10.1mmHgだった。・ベースラインでの平均収縮期血圧は起床時が133.6mmHg、就寝前が129.7mmHgで、治験1)時(起床時:149.3mmHg、就寝前:143.3mmHg)より低い傾向にあった。・2023年8月時点で報告対象となる健康被害はみられなかった。―――医師に向き合ってもらえている、この感覚が患者のやる気に 実際に本治療アプリによるスマート降圧療法を行っている野村 和至氏(野村医院)は処方が推奨される患者の特徴や処方経験からみえたことについて語った。同氏は患者13例に処方を行い11例がプログラムを終了(1例中断、1例は導入後一度も使用せず)、そのうち8例が改善を示した。この患者変化について、「医師は患者の入力データをネット接続したPCで確認するわけだが、患者の生活習慣の問題点、配慮すべき心理面などを把握することができる。本治療アプリを通して患者の全体像がみえてくるため、患者の良い所をみつけて褒めることもできた。過去に薬物療法を自己中断していた方でも行動変容に合わせた声かけにより継続することができ、スマート降圧療法で血圧も改善した」と述べ、別の症例では「毎年冬に血圧上昇がみられ降圧薬を増量する患者に対しスマート降圧療法を勧めた結果、2剤服用していた降圧薬のうちCa拮抗薬を中止するに至った。また、それに伴いHbA1cなどの数値にも改善がみられた」といった、驚くべき改善が得られたことを報告した。 一方、治療アプリを処方する際に困った点として、予想以上に血圧低下するケース、スマート降圧療法を求め別の施設から同氏の元へ来院するケースがあったそうで、前者については、「血圧低下時の対処方法を決めておく必要がある」と説明。後者については、かかりつけの医療機関で治療ができないか相談してもらい、難しいようであれば半年間だけスマート降圧療法留学をお願いする」などの工夫を紹介した。 なお、同氏が考える“スマート降圧療法が推奨される”患者像は以下のとおり。 ■推奨される患者像 健康志向の強い人、高血圧症の早期、内服薬に抵抗のある人 ■推奨される併存疾患 メタボリックシンドローム、心不全、腎疾患(運動のみ注意) このほか、減塩、減量、運動が推奨される疾患を有するなど成功モデル・離脱モデルのデータ蓄積に期待 さらに、プログラム終了間近の患者が “終わってしまうのが寂しい”“まだ続けていたい”という感想を漏らしたことに同氏は驚いたそうで、「プログラム上で自身の話を受け止め、病気についてアドバイスしてくれる点が行動変容に効果があるのではないか」と見解を示した。 最後に同氏は、スマート降圧療法は治療効果や治療中断の防止もさることながら、「“やったらできる!”という自己効力感の向上に重要」と強調し、「行動変容モデルを意識した適切なアプローチ、マンネリ化の防止のために、データ蓄積と本治療アプリのアップデートに期待したい」と締めくくった。

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デュシェンヌ型筋ジストロフィー、高用量rAAV9遺伝子療法後の死亡/NEJM

 米国・イェール大学のAngela Lek氏らは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の27歳の男性患者において、dSaCas9(Cas9ヌクレアーゼ活性を不活化した“死んだ[dead]”黄色ブドウ球菌Cas9)-VP64融合を含有する組み換えアデノ随伴ウイルス血清型9(rAAV9)による治療を行った。投与後、患者は軽度の心機能障害と心嚢液貯留を発症し、遺伝子導入治療後6日目に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と心停止を来し、その2日後に死亡した。研究の詳細は、NEJM誌2023年9月28日号で「短報」として報告された。5歳時に診断、18歳で自立歩行能力を失う 患者は5歳時にDMDと診断され、21年間にわたりdeflazacort 1.1mg/kg/日の投与を受けてきた。18歳時に自立歩行能力を失った。腕の機能が進行性に低下し、心肺機能障害が徐々に増強した。 2022年10月4日、患者はCRISPR-transactivator治療薬(CK8e.dSaCas9.VP64.U6.sgRNA)を含有するrAAV9ベクターの投与を受けた。その時点で、除脂肪筋肉量の割合が45%と低く、拘束性換気障害および軽度の左室収縮機能障害を伴う重度の全身性筋力低下を呈していた。その後、左室駆出率(LVEF)は維持されていたが、肺機能は経時的に低下した。治療を行わなければDMDの筋症状の悪化が予測され、代替療法がないことから、遺伝子治療の候補と判断した。自然免疫反応がARDSを引き起こした 導入遺伝子は、custom CRISPR-transactivator療法として皮質型ジストロフィンをアップレギュレートするように設計された。使用したrAAV9の用量は、体重1kg当たり1×1014ベクターゲノムと、高用量であった。予防的免疫療法として、リツキシマブ、グルココルチコイド、シロリムスの投与を行った。 ベクター投与後1日目に、患者は心室性期外収縮を発症し、引き続き血小板数が減少傾向を示し、BNPとN末端proBNPの値が上昇した。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値とアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値の上昇は、DMD患者に見られるように、クレアチンキナーゼ値の増加と比例した。γ-グルタミルトランスフェラーゼ値は正常だった。 3~4日目には、呼吸性アシドーシスを伴う無症候性高炭酸ガス血症が発現した。5日目には、心機能が悪化し、LVEFは45~50%に低下した。トロポニンI値が上昇し、心エコー図検査でタンポナーデの生理的特徴を示す心嚢液貯留が認められたため、患者は心筋心膜炎と推定された。6日目には、急性呼吸困難を呈し、胸部X線所見でARDSと左室収縮機能不全(LVEF:45~50%)を認めた。 この間、緩和的な治療として、グルココルチコイドの増量、エクリズマブ(抗C5モノクローナル抗体)、トシリズマブ(抗IL-6受容体モノクローナル抗体)、anakinra(IL-1受容体拮抗薬)の投与を行った。 患者は6日目に心肺停止となり、体外式膜型人工肺による治療を受けたが、2日後の遺伝子治療から8日目に、多臓器不全と重篤な低酸素性虚血性神経障害により死亡した。死後の検査では、重度のびまん性肺胞障害が認められた。肝臓における導入遺伝子の発現はわずかであり、臓器におけるAAV9抗体やエフェクターT細胞反応性は認めなかった。 著者は、「これらの所見は、高用量のrAAV9遺伝子治療を受けた進行性DMD患者において、自然免疫反応がARDSを引き起こしたことを示している」としている。この研究は、米国・Cure Rare Diseaseの助成を受けて行われた。

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高血圧に対するアルドステロン合成酵素阻害薬Lorundrostatの効果(解説:石川讓治氏)

 アルドステロンが高血圧性臓器障害に影響を与えていると考えられており、いくつかのミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が、現在、臨床で使用可能である。lorundrostatはアルドステロン合成阻害をする降圧薬として開発されている。本研究において、2剤以上の降圧薬を用いても目標血圧レベルに達していない高血圧患者に対して、アルドステロン合成阻害薬lorundrostatを投与し、その投与量、投与回数による降圧度および安全性を比較している。研究1では血漿レニン活性が低い患者、研究2では高い患者を選択して投与し、いずれの投与方法においてもlorundrostatはプラセボと比較して有意に血圧を低下させ、高カリウム血症は6例に認められたのみであった。 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は治療抵抗性高血圧に使用されることが多く、治療抵抗性高血圧は、サイアザイド系利尿薬を含む3剤以上の降圧薬でも目標血圧に達しない高血圧と定義されている。本研究の対象には、3剤以上の降圧薬の内服者も含まれているが、サイアザイド系利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)もしくはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の内服者の割合に各群間でばらつきが認められた。今後は、lorundrostatにおける(1)治療抵抗性高血圧に対する効果、(2)ACEIやARBに対する相加効果、(3)サイアザイド系利尿薬との降圧効果の比較、(4)ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬との比較など、今後、われわれが実臨床で使用していくためのデータの積み重ねが必要であると思われた。

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難治性慢性咳嗽に対するゲーファピキサント、9試験をメタ解析/JAMA

 選択的P2X3受容体拮抗薬ゲーファピキサント45mgの1日2回経口投与は、プラセボと比較し咳嗽頻度、咳嗽重症度および咳嗽特異的QOLを改善するもののその効果は小さい可能性が高く、一方で有害事象、とくに味覚に関連する有害事象のリスクが高いことが、カナダ・マクマスター大学のElena Kum氏らによるシステマティック・レビューおよびメタ解析の結果、明らかとなった。ゲーファピキサントは、難治性または原因不明の慢性咳嗽に対する初の治療薬として開発され、日本およびスイスでは承認されているが、米国、欧州、カナダなどでは規制当局の審査中である。JAMA誌2023年9月11日号掲載の報告。ゲーファピキサントの無作為化比較試験9件をメタ解析 研究グループは、2014年11月~2023年7月のMEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled TrialsおよびWeb of Scienceを検索し、8週間以上持続する難治性または原因不明の慢性咳嗽患者において、ゲーファピキサントとプラセボ、またはゲーファピキサント2用量以上(用量間比較、プラセボありまたはなし)を比較した並行群間またはクロスオーバーの無作為化比較試験(RCT)を対象として解析した。 2人の研究者が独立してデータを抽出し、各結果について頻度論的ランダム効果用量反応メタ解析またはペアワイズメタ解析を行った。GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluation)を用いて、患者が効果を重要と感じるか(臨床的最小重要差[MID]より大きい)または小さいと感じるか(MIDより小さい)のエビデンスの確実性を評価した。 主要アウトカムは、VitaloJAK咳モニターを用いて測定された24時間、覚醒時および睡眠時の咳嗽頻度(MID:-20%)、咳嗽の重症度(視覚的アナログスケール[VAS]、範囲:0~100mm、高値ほど重症、MID:-30mm)、咳嗽特異的QOL(レスター咳質問票[LCQ]、スコア範囲:3~21、スコアが高いほどQOLは良好、MID:+1.3点)、治療関連有害事象、投与中止に至った有害事象、および味覚関連有害事象であった。 9件(合計2,980例)のRCTが主要解析に組み込まれた。プラセボとの比較で咳嗽頻度は17.6%減少、味覚関連有害事象が32%増加 ゲーファピキサント45mgの1日2回投与はプラセボと比較し、覚醒時の咳嗽頻度(17.6%減少、95%信頼区間[CI]:10.6~24.0%減少、エビデンスの確実性:中)、咳嗽の重症度(平均群間差:-6.2mm、95%CI:-4.1~-8.4、エビデンスの確実性:高)、および咳嗽特異的QOL(平均群間差:1.0点、95%CI:0.7~1.4、エビデンスの確実性:中)に対してわずかな効果を示した。 一方、ゲーファピキサント45mgの1日2回投与はプラセボと比較し、治療関連有害事象(32[95%CI:13~64]/100人当たり増加、エビデンスの確実性:中)および味覚関連有害事象(32[95%CI:22~46人]/100人当たり増加、エビデンスの確実性:高)に関して、重大な増加を引き起こすと思われた。 ゲーファピキサント15mgの1日2回投与は、味覚関連有害事象に及ぼす影響が小さいことが示唆された(6[95%CI:5~8人]/100人当たり増加、エビデンスの確実性:高)。

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国内初の経口人工妊娠中絶薬「メフィーゴパック」【下平博士のDIノート】第129回

国内初の経口人工妊娠中絶薬「メフィーゴパック」今回は、人工妊娠中絶用製剤「ミフェプリストン・ミソプロストール(商品名:メフィーゴパック、製造販売元:ラインファーマ)」を紹介します。本剤は、国内で初めて承認された経口の人工妊娠中絶薬であり、中絶を望む女性にとって身体的にも精神的にも負担が少ない薬剤と考えられます。<効能・効果>子宮内妊娠が確認された妊娠63日(妊娠9週0日)以下の者に対する人工妊娠中絶の適応で、2023年4月28日に製造販売承認を取得し、5月16日より販売されています(薬価基準未収載)。本剤を用いた人工妊娠中絶に先立ち、本剤の危険性および有効性、本剤投与時に必要な対応を十分に説明し、同意を得てから本剤の投与を開始します。なお、異所性妊娠に対しては有効性が期待できません。<用法・用量>ミフェプリストン錠1錠(ミフェプリストンとして200mg)を経口投与し、その36~48時間後の状態に応じて、ミソプロストールバッカル錠4錠(ミソプロストールとして計800μg)を左右の臼歯の歯茎と頬の間に2錠ずつ30分間静置します。30分後も口腔内に錠剤が残っている場合は飲み込みます。ミフェプリストン投与後に胎嚢の排出が認められた場合、子宮内容物の遺残の状況を踏まえてミソプロストールの投与の要否を検討します。<安全性>国内第III相試験において1%以上に認められた副作用は、下腹部痛、悪心、嘔吐、下痢、発熱、悪寒でした。重大な副作用として、重度の子宮出血(0.8%)のほか、感染症、重度の皮膚障害、ショック、アナフィラキシー、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.本剤は、妊娠9週以下の人に対する人工妊娠中絶の薬です。妊娠の継続に必要な黄体ホルモンの働きを抑える薬剤と、子宮収縮作用により子宮内容物を排出させる薬剤を組み合わせたパック製剤です。2.この薬の投与後は下腹部痛や子宮出血が現れて一定期間継続します。まれに重度の子宮出血が生じて貧血が悪化することがあるため、自動車の運転などの危険を伴う機械操作を行う場合は十分に注意してください。3.服用後、2時間以上にわたって夜用ナプキンを1時間に2回以上交換しなければならないような出血が生じた場合、発熱、寒気、体のだるさ、腟から異常な分泌物などが生じたときは速やかに医師に連絡してください。4.授乳中に移行することが知られているので、授乳をしている場合は事前にお伝えください。5.子宮内避妊用具(IUD)またはレボノルゲストレル放出子宮内システム(IUS)を使用中の人はこの薬の投与を受ける前に除去する必要があります。<Shimo's eyes>本剤は、国内で初めて承認された人工妊娠中絶のための経口薬です。これまで妊娠初期の中絶は掻把法や吸引法によって行われてきましたが、今回新たに経口薬が選択肢に加わりました。ミフェプリストンとミソプロストールの順次投与による中絶法は、世界保健機関(WHO)が作成した「安全な中絶−医療保険システムにおける技術及び政策の手引き−」で推奨されており、海外では広く使用されています。使用方法は、1剤目としてミフェプリストン錠1錠を経口投与し、その36~48時間後にミソプロストール錠4錠をバッカル投与します。ミフェプリストンはプロゲステロン受容体拮抗薬であり、プロゲステロンによる妊娠の維持を阻害する作用および子宮頸管熟化作用を有します。ミソプロストールはプロスタグランジンE1誘導体であり、子宮頸管熟化作用や子宮収縮作用を有します。両剤の作用により妊娠の継続を中断し、胎嚢を排出します。国内第III相試験では、投与後24時間以内の人工妊娠中絶が成功した患者の割合は93.3%で、安全性プロファイルは認容できるものでした。本剤投与後に、失神などの症状を伴う重度の子宮出血が認められることがあり、外科的処置や輸血が必要となる場合があります。また、重篤な子宮内膜炎が発現することがあり、海外では敗血症や中毒性ショック症候群に至り死亡した症例が報告されていることから、異常が認められた場合に連絡を常に受けることができる体制や、ほかの医療機関との連携も含めた緊急時に適切な対応が取れる体制で本剤を投与することが求められています。併用禁忌の薬剤として、子宮出血の程度が悪化する恐れがあるため、抗凝固薬(ワルファリンカリウム、DOAC)や抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレル硫酸塩、EPA製剤など)があります。また、ミフェプリストンの血漿中濃度が低下し、効果が減弱する恐れがあるため、中~強程度のCYP3A誘導剤(リファンピシン、リファブチン、カルバマゼピン、セイヨウオトギリソウ含有食品など)も併用禁忌となっています。本剤の承認申請が行われた2021年12月以降、社会的に大きな関心を集めました。厚生労働省が承認にあたってパブリックコメントを実施したところ1万1,450件もの意見が寄せられ、そのうち承認を支持する意見が68.3%、不支持が31.2%でした。欧米では経口薬による人工妊娠中絶法は30年以上前から行われていて、先進国を中心に主流になりつつあります。中絶を望む女性は、健康上の懸念がある、性的暴力を受けた、若すぎる、経済的に困窮している、パートナーの協力を得られないなどさまざまな背景があります。わが国では現在、薬局やインターネットで購入することはできませんが、多くの議論を経て、中絶を望む人たちにとって、医学的にも精神的にも寄り添うことのできるシステムが構築されることが望まれます。

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高血圧への第1選択としての利尿薬vs.他の降圧薬~コクランレビュー

 高血圧患者における死亡率、心血管イベントの発生率、有害事象による中止率などについて、第1選択薬としてのサイアザイド系利尿薬と他のクラスの降圧薬を比較したシステマティックレビューの結果を、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のMarcia Reinhart氏らがThe Cochrane Database of Systematic Reviews誌2023年7月13日号に報告した。 2021年3月までのCochrane Hypertension Specialized Register、CENTRAL、MEDLINE、Embase、および臨床試験登録が検索された。対象は1年以上の無作為化比較試験で、第1選択薬としての利尿薬と他の降圧薬の比較、および死亡率とその他のアウトカム(重篤な有害事象、総心血管系イベント、脳卒中、冠動脈性心疾患[CHD]、うっ血性心不全、有害作用による中止)が明確に定義されているものとした。 主な結果は以下のとおり。・9万例超が対象の、26の比較群を含む20件の無作為化試験が解析された。・今回の結果は、2型糖尿病を含む複数の合併症を有する50〜75歳の男女高血圧患者における第1選択薬に関するものである。・第1選択薬としてのサイアザイド系およびサイアザイド系類似利尿薬が、β遮断薬(6試験)、Ca拮抗薬(8試験)、ACE阻害薬(5試験)、およびα遮断薬(3試験)と比較された。・他の比較対照には、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、アリスキレン(直接的レニン阻害薬)、およびクロニジン(中枢作用薬)が含まれていたが、データが不十分だった。・重篤な有害事象の総数に関するデータを報告した研究は3件のみで、利尿薬とCa拮抗薬を比較した研究が2件、直接的レニン阻害薬と比較した研究が1件だった。β遮断薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(リスク比[RR]:0.96[95%信頼区間:0.84~1.10]、5試験/1万8,241例/確実性:中程度)。・総心血管イベント(5.4% vs.4.8%、RR:0.88[0.78~1.00]、絶対リスク減少[ARR]:0.6%、4試験/1万8,135例/確実性:中程度)。・脳卒中(RR:0.85[0.66~1.09]、4試験/1万8,135例/確実性:低)、CHD(RR:0.91[0.78~1.07]、4試験/1万8,135例/確実性:低)、心不全(RR:0.69[0.40~1.19]、1試験/6,569 例/確実性:低)。・有害作用による中止(10.1% vs.7.9%、RR:0.78[0.71~0.85]、ARR:2.2%、5試験/1万8,501例/確実性:中程度)。Ca拮抗薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(RR:1.02[0.96~1.08]、7試験/3万5,417例/確実性:中程度)。・重篤な有害事象(RR:1.09[0.97~1.24]、2試験/7,204例/確実性:低)。・総心血管イベント(14.3% vs.13.3%、RR:0.93[0.89~0.98]、ARR:1.0%、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)。・脳卒中(RR:1.06[0.95~1.18]、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)、CHD(RR:1.00[0.93~1.08]、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)、心不全(4.4% vs.3.2%、RR:0.74[0.66~0.82]、ARR:1.2%、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)。・有害作用による中止(7.6% vs.6.2%、RR:0.81[0.75~0.88]、ARR:1.4%、7試験/3万3,908例/確実性:低)。ACE阻害薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(RR:1.00[0.95~1.07]、3試験/3万961例/確実性:中程度)。・総心血管イベント(RR:0.97[0.92~1.02]、3試験/3万900例/確実性:低)。・脳卒中(4.7% vs.4.1%、RR:0.89[0.80~0.99]、ARR:0.6%、3試験/3万900例/確実性:中程度)、CHD(RR:1.03[0.96~1.12]、3試験/3万900例/確実性:中程度)、心不全(RR:0.94[0.84~1.04]、2試験/3万392例/確実性:中程度)。・有害作用による中止(3.9% vs.2.9%、RR:0.73[0.64~0.84]、ARR:1.0%、3試験/2万5,254例/確実性:中程度)。α遮断薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(RR:0.98[0.88~1.09]、1試験/2万4,316例/確実性:中程度)。・総心血管イベント(12.1% vs.9.0%、RR:0.74[0.69~0.80]、ARR:3.1%、2試験/2万4,396例/確実性:中程度)。・脳卒中(2.7% vs.2.3%、RR:0.86[0.73~1.01]、ARR:0.4%、2試験/2万4,396例/確実性:中程度)、CHD(RR:0.98[0.86~1.11]、2試験/2万4,396例/確実性:低)、心不全(5.4% vs.2.8%、RR:0.51[0.45~0.58]、ARR:2.6%、1試験/2万4,316例/確実性:中程度)。・有害作用による中止(1.3% vs.0.9%、RR:0.70[0.54~0.89]、ARR:0.4%、3試験/2万4,772例/確実性:低)。 著者らは、本結果を以下のようにまとめている。・利尿薬と他のクラスの降圧薬の間で、おそらく死亡率に差はない。・利尿薬はβ遮断薬と比較して、心血管イベントをおそらく減少させる。・利尿薬はCa拮抗薬と比較して、心血管イベントと心不全をおそらく減少させる。・利尿薬はACE阻害薬と比較して、脳卒中をおそらくわずかに減少させる。・利尿薬はα遮断薬と比較して、心血管イベント、脳卒中、心不全をおそらく減少させる。・利尿薬はβ遮断薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、α遮断薬と比較して、有害作用による中止がおそらく少ない。

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経口CGRP受容体拮抗薬atogepant、慢性片頭痛の予防に有望/Lancet

 慢性片頭痛の予防治療において、経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬atogepantはプラセボと比較して、12週の治療期間における1ヵ月当たりの平均片頭痛日数(MMD)に関して臨床的に意義のある抑制効果を示すとともに、安全性プロファイルも良好で既知のものと一致することが、スペイン・バルセロナ自治大学のPatricia Pozo-Rosich氏らが実施した「PROGRESS試験」で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年7月26日号で報告された。16の国と地域の無作為化プラセボ対照第III相試験 PROGRESS試験は、日本を含む16の国と地域の142施設で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年3月11日~2022年1月20日に参加者の適格性の評価が行われた(Allergan[現AbbVie]の助成を受けた)。 年齢18~80歳で、50歳以前に発症し、1年以上の病歴を有する慢性片頭痛の患者を、atogepant 30mg(1日2回)、同60mg(1日1回)、プラセボを経口投与する群に1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、修正intent-to-treat(mITT)集団における12週の治療期間中の平均MMDの変化量であった。 778例を登録し、このうち773例(安全性評価集団、atogepant 30mg群255例、同60mg群257例、プラセボ群261例)が実際に試験薬の投与を受け、755例(253例、256例、246例)がmITT集団に含まれた。臨床的に意義のある体重減少効果の可能性も 安全性評価集団の平均年齢は42.1歳、88%が女性、59%が白人で、平均罹患期間は21.4(SD 12.2)年、平均MMDは16.0(5.9)日であり、83%に予防薬の使用歴があった。mITT集団におけるベースラインの平均MMDは、30mg群が18.6(SE 5.1)日、60mg群が19.2(5.3)日、プラセボ群は18.9(4.8)日だった。 12週の治療期間におけるmITT集団でのベースラインからのMMDの変化量は、atogepant 30mg群が-7.5(SE 0.4)日、同60mg群が-6.9(0.4)日、プラセボ群が-5.1(0.4)日であった。プラセボ群との最小二乗平均差は、atogepant 30mg群が-2.4(95%信頼区間[CI]:-3.5~-1.3、p<0.0001)、同60mg群が-1.8(-2.9~-0.8、p=0.0009)であり、いずれもatogepant群で有意に優れた。 atogepant群で最も頻度の高い有害事象は、便秘(30mg群10.9%、60mg群10%、プラセボ群3%)と、吐き気(8%、10%、4%)であった。重篤な治療関連有害事象は、30mg群が2%、60mg群が3%、プラセボ群が1%で、投与中止の原因となった有害事象はそれぞれ5%、3%、4%で発現した。 また、臨床的に有意義な可能性のある体重減少(ベースライン以降の任意の評価時点で7%以上の減少)が、各治療群で観察された(30mg群6%、60mg群6%、プラセボ群2%)。 著者は、「本試験の知見は、atogepantの有益性を慢性片頭痛にも拡大するものである。これにより、慢性片頭痛における初のCGRPを標的とする有効で忍容性が良好な経口予防薬の選択肢が確立された」としている。

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etripamilは上室頻拍に対する特効薬となるか(解説:高月誠司氏)

 etripamilは即効性の鼻腔噴霧型のLタイプカルシウム拮抗薬で、鼻腔粘膜で吸収され投与7分後に最高血中濃度に到達し、素早く代謝される。本剤は上室頻拍の急性期停止効果が期待されている。 RAPID試験は上室頻拍の急性期停止をエンドポイントとしたプラセボとetripamilのランダム化比較試験で、結果としてetripamilはプラセボよりも多くの患者で上室頻拍の停止に成功した。上室頻拍の発作時には迷走神経刺激手技あるいはカルシウム拮抗薬の内服が試されるが、今後本薬は特効薬として期待される。 カルシウム拮抗薬の副作用として血圧低下、徐脈などが懸念される。本試験での投与前後の脈拍数や血圧は不明だが、失神は両群ともに認めなかった。ただし投薬後の速脈、動悸、ふらつきなどの症状はetripamil群で多かった。また被験者の平均体重はおよそ82~83kgであり、本試験の用量を日本人の標準投与量としてよいかは検討が必要であろう。

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治療抵抗性高血圧の有病率は意外に高い

 高血圧患者の10人に1人近くが見かけ上の治療抵抗性高血圧(apparent resistant hypertension;aRH)の基準を満たすが、aRHに対する治療は医療提供者により大きく異なることが、新たな研究で明らかにされた。米シダーズ・サイナイ医療センター、シュミット心臓研究所のJoseph Ebinger氏らによる研究で、「Hypertension」に6月26日掲載された。 Ebinger氏らは、3つの大規模なヘルスケアシステムの電子健康記録(EHR)を用いて、登録患者242万468人のデータを解析した。その結果、これらの患者の55.6%(134万3,489人)が高血圧の基準を満たし、そのうちの8.5%(11万3,992人)はaRHの基準も満たすことが明らかになった。また、これらのaRH患者は合併症を有していることが多く、特に、糖尿病や心不全の有病率が高いことも示された。さらに、血圧がコントロールされているaRH患者では、コントロール不良のaRH患者に比べて、β遮断薬、利尿薬、硝酸薬が処方されることが多く、特にミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の処方は、前者で35.4%、後者で10.4%と大きな差があることも判明した。 Ebinger氏は、「aRHの有病率は、多くの人が想像するよりも高い。われわれの研究では、この高リスク集団に対する高血圧の治療法が、医療提供者により大きく異なることも明らかになった。このことは、aRHに対するケアを標準化する必要性を示している」と話す。 さらにEbinger氏は、「この大規模データの解析からは、aRH患者では非治療抵抗性の高血圧患者と比べて、心血管系の有害事象の発症リスクが極めて高いことも示された」と述べ、「このような患者と患者の血圧を上昇させている原因を特定することが、ますます重要になっている」と話している。 Ebinger氏によると、aRHの治療はその診断と同様、やっかいだという。実際、aRHにa(apparent;見かけ上の)という言葉が使われているのは、医師が、aRHの診断を下す前に患者の血圧が高い他の潜在的な原因を除外しなければならないからだ。例えば、服薬不遵守、不適切な薬剤選択、あるいは「白衣高血圧」とも呼ばれる、診察室での人為的な血圧上昇などがそうした潜在的な原因の例だ。 Ebinger氏はこの研究の重要なポイントとして、医師に対しては、患者が血圧をコントロールするために4種類以上の降圧薬を服用している場合、高血圧の別の原因を考慮するか、専門医を紹介するよう助言している。また、患者に対しては、服薬遵守の方法や治療により起こり得る副作用への対処法を医療提供者と話し合うなど、複雑な疾患に対処する際には医療提供者に頼ることを勧めている。

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『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』改訂のポイント/日本腎臓学会

 6月9日~11日に開催された第66回日本腎臓学会学術総会で、『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』が発表された。ガイドラインの改訂に伴い、「ここが変わった!CKD診療ガイドライン2023」と題して6名の演者より各章の改訂ポイントが語られた。第1章 CKD診断とその臨床的意義/小杉 智規氏(名古屋大学大学院医学系研究科 腎臓内科学)・実臨床ではeGFR 5mL/分/1.73m2程度で透析が導入されていることから、CKD(慢性腎臓病)ステージG5※の定義が「末期腎不全(ESKD)」から「高度低下~末期腎不全」へ変更された。・国際的に用いられているeGFRの推算式(MDRD式、CKD-EPI式)と区別するため、日本人におけるeGFRの推算式は「JSN eGFR」と表記する。・一定の腎機能低下(1~3年間で血清Cr値の倍化、eGFR 40%もしくは30%の低下)や、5.0mL/分/1.73m2/年を超えるeGFRの低下はCKDの進行、予後予測因子となる。※GFR<15mL/分/1.73m2第2章 高血圧・CVD(心不全)/中川 直樹氏(旭川医科大学 内科学講座 循環・呼吸・神経病態内科学分野)・蛋白尿のある糖尿病合併CKD患者においては、ACE阻害薬/ARBの腎保護に関するエビデンスが存在するが、蛋白尿のないCKD患者においては、糖尿病合併の有無にかかわらず、ACE阻害薬/ARBの優位性を示す十分なエビデンスがない。したがって、ACE阻害薬/ARBの投与は糖尿病合併の有無ではなく、蛋白尿の有無を参考に検討する。・CKDステージG4※、G5における心不全治療薬の推奨クラスおよびエビデンスレベルが次のとおり明記された。ACE阻害薬/ARB:2C、β遮断薬:2B、MRA:なしC、SGLT2阻害薬:2C、ARNI:2C、イバブラジン:なしD。※eGFR 15~29mL/分/1.73m2第3章 高血圧性腎硬化症・腎動脈狭窄症/大島 恵氏(金沢大学大学院 腎臓内科学)・2018年版では「腎硬化症・腎動脈狭窄症」としていたが、本ガイドラインでは「高血圧性腎硬化症・腎動脈狭窄症」としている。高血圧性腎硬化症とは、持続した高血圧により生じた腎臓の病変である。・片側性腎動脈狭窄を伴うCKDに対する降圧薬として、RA系阻害薬はそのほかの降圧薬に比べて末期腎不全への進展、死亡リスクを抑制する可能性がある。ただし、急性腎障害発症のリスクがあるため注意が必要である。・動脈硬化性腎動脈狭窄症を伴うCKDに対しては、合併症のリスクを考慮し、血行再建術は一般的には行わない。ただし、治療抵抗性高血圧などを伴う場合には考慮してもよい。第4章 糖尿病性腎臓病/和田 淳氏(岡山大学 腎・免疫・内分泌代謝内科学)・尿アルブミンが増加すると末期腎不全・透析導入のリスクが有意に増加することから、糖尿病性腎臓病(DKD)患者では定期的な尿アルブミン測定が強く推奨される。・DKDの進展予防という観点では、ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬の使用について十分なエビデンスはない。体液過剰が示唆されるDKD患者ではループ利尿薬、尿アルブミンの改善が必要なDKD患者ではミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が推奨される。・糖尿病患者においては、DKDの発症、アルブミン尿の進行抑制が期待されるため集約的治療が推奨される。・DKD患者に対しては、腎予後の改善と心血管疾患発症抑制が期待されるため、SGLT2阻害薬の投与が推奨される。第9章 腎性貧血/田中 哲洋氏(東北大学大学院医学系研究科 腎・膠原病・内分泌内科学分野)・PREDICT試験、RADIANCE-CKD Studyの結果を踏まえて、腎性貧血を伴うCKD患者での赤血球造血刺激因子製剤(ESA)治療における適切なHb目標値が改定された。本ガイドラインでは、Hb13g/dL以上を目指さないこと、目標Hbの下限値は10g/dLを目安とし、個々の症例のQOLや背景因子、病態に応じて判断することが提案されている。・「HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation(2020年9月29日版)」に関する記載が追記された。2022年11月、ロキサデュスタットの添付文書が改訂され、重要な基本的注意および重大な副作用として中枢性甲状腺機能低下症が追加されたことから、本剤投与中は定期的に甲状腺機能検査を行うなどの注意が必要である。第11章 薬物治療/深水 圭氏(久留米大学医学部 内科学講座腎臓内科部門)・球形吸着炭は末期腎不全への進展、死亡の抑制効果について明確ではないが、とくにCKDステージが進行する前の症例では、腎機能低下速度を遅延させる可能性がある。・代謝性アシドーシスを伴うCKDステージG3※~G5の患者では、炭酸水素ナトリウム投与により腎機能低下を抑制できる可能性があるが、浮腫悪化には注意が必要である。・糖尿病非合併のCKD患者において、蛋白尿を有する場合、腎機能低下の進展抑制、心血管疾患イベントおよび死亡の発生抑制が期待できるため、SGLT2阻害薬の投与が推奨される。・CKDステージG4、G5の患者では、RA系阻害薬の中止により生命予後を悪化させる可能性があることから、使用中のRA系阻害薬を一律には中止しないことが提案されている。※eGFR 30~59mL/分/1.73m2 なお、同学会から、より実臨床に即したガイドラインとして、「CKD診療ガイド2024」が発刊される予定である。

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事例027 アムロジピン錠の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例ではレザルタス配合錠HD(一般名:オルメサルタンメドキソミル/アゼルニジピン、以下「配合錠HD」)とアムロジピン錠(一般名同じ)を組み合わせて処方をしたところ、アムロジピン錠がB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)にて査定となりました。査定の理由を調べるために、まずはアムロジピンの添付文書を参照しました。持続性Ca拮抗薬に分類され、通常5mgを1日1回経口投与する。また、「効果不十分な場合は10mgまで増量できる」と記載されています。とくに、問題は見当たりません。次に、配合錠HDの添付文書を参照しました。高親和性ARB(アンジオテンシンII受容体阻害剤)オルメサルタンメドキソミル20mgと持続性Ca拮抗薬アゼルニジピン16mgの配合薬と記載があります。また、1日最大量はそれぞれ40mgと16mgまで増量可能と記載があります。ARBに対しては、1日最大量以内ですが、アゼルニジピンをみると、配合錠HD1錠に最大量が含まれていることがわかります。したがって、配合剤HDでは効果が不十分であったことを理由にアムロジピン5mgを追加したところ、持続性Ca拮抗薬の1日量上限を超えてしまったことが、査定の理由だと推測できます。薬剤処方システムに対して、同一分類の薬剤処方にはアラートを表示させるように改修し、レセプトチェックシステムにも事例のパターンを登録して査定対策としました。

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片頭痛治療薬抗CGRP抗体の比較~メタ解析

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体は、新しい片頭痛予防薬である。また、米国においてCGRP受容体拮抗薬であるatogepantが片頭痛予防薬として承認された。中国・首都医科大学のWenfang Sun氏らは、将来の臨床試験の参考となるよう、さまざまな用量の抗CGRPモノクローナル抗体およびatogepantを含む片頭痛治療に対する有効性および安全性を評価するため、ネットワークメタ解析を実施した。その結果、すべての抗CGRP薬は片頭痛予防に効果的であり、とくにフレマネズマブ225mg/月、エレヌマブ140mg/月、atogepant 60mg/日は、副作用リスクが低く、効果的な介入であることが示唆された。The Clinical Journal of Pain誌オンライン版2023年6月2日号の報告。 2022年5月までに公表された文献をPubMed、Embase、およびコクランライブラリーより検索した。対象には、反復性または慢性片頭痛患者を対象にエレヌマブ、フレマネズマブ、eptinezumab、ガルカネズマブ、atogepantまたはプラセボによる治療を評価したランダム化比較試験(RCT)を含めた。主要アウトカムは、1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少、50%治療反応率、有害事象数とした。バイアスリスクの評価には、Cochrane Collaboration toolを用いた。 主な結果は以下のとおり。・24件の文献を分析対象に含めた。・有効性に関しては、すべての介入がプラセボよりも優れており、統計学的に有意な差が認められた。・もっとも効果的な介入は、以下のとおりであった。【1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少】 フレマネズマブ225mg/月(標準化平均差[SMD]:-0.49、95%信頼区間[CI]:-0.62~-0.37)【50%治療反応率】 フレマネズマブ225mg/月(相対リスク:2.98、95%CI:2.16~4.10)【急性投薬日数の減少】 エレヌマブ140mg/月(SMD:-0.68、95%CI:-0.79~-0.58)・有害事象に関しては、ガルカネズマブ240mg/月およびフレマネズマブ675mg/四半期を除き、すべての治療においてプラセボとの統計学的な優位性は認められなかった。・有害事象による治療中止に関しては、介入群とプラセボ群との間に有意な差は認められなかった。

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早期発見、早期治療!心アミロイドーシス治療の今とこれから【心不全診療Up to Date】第10回

第10回 早期発見、早期治療!心アミロイドーシス治療の今とこれからKey Points早期発見がなぜ重要か?心アミロイドーシスに対して今できる治療は?心アミロイドーシス治療のこれから早期発見がなぜ重要か?〜心アミロイドーシス治療の今とこれから〜前回は心アミロイドーシスの種類や特徴、有病率などに触れた。今回は早期発見の意義について触れていこう。早速だが、心アミロイドーシスの早期発見がなぜ必要なのだろうか。その理由はただ一つ、早期に治療を開始すればするほど、治療のメリットが大きいからである。ではなぜ早期治療のメリットが大きいかというと、アミロイドが沈着する過程を治療するには、『アミロイド前駆蛋白の産生やアミロイド線維の集積を阻害するか』『臓器に一旦沈着したアミロイドの除去を促すか』が標的となるが、現在われわれができる治療は前者のみで、後者は最近ようやく第I相試験の結果が出たところで1)、まだ日常診療には使用できない。つまり、今できる治療は今以上にアミロイドを沈着させないようにするしかないため、まだ臓器へのアミロイド沈着が少ない早期から治療を開始したほうが、予後改善効果が高いというわけである。それでは、具体的な治療法をみていこう。心アミロイドーシスの治療は、(1)合併症の治療と予防、(2)特異的な治療によるアミロイド沈着の停止または遅延、の2つに大きく分けられる。心アミロイドーシスの合併症への対策は、心不全以外にも、不整脈、伝導障害、血栓塞栓症、重度大動脈狭窄症に対する治療など、注意すべきものがさまざまあり、詳細は図5をご覧いただきたい。(図5)心アミロイドーシスの心臓合併症と併存疾患の治療画像を拡大するとくに、心不全を伴う場合、『心不全予後改善薬の投与をどうするか』はとても重要なポイントである。実臨床において、どの薬剤がどのように使用され、予後との関連はどうであるか、という点について、最近イギリスから興味深い報告があった2)。この研究は、2000~22年にNational Amyloidosis CentreでATTR心アミロイドーシスと診断された2,371例(平均年齢:78歳、男性:90%、ATTRwt:78%、平均LVEF:48%)を対象に、心不全予後改善薬(β遮断薬、RAS阻害薬[ACEi/ARB]、MR拮抗薬)の処方パターン、用量、中断率と予後との関連を調べたものである。その結果は図6の通りであるが、とくに予後との関連が興味深い。それぞれの処方率は、β遮断薬が55%、RAS阻害薬が57%、MR拮抗薬が39%で、β遮断薬とRAS阻害薬はしばしば中断されていたが、低用量のβ遮断薬は、HFrEF(EF≦40%)患者の死亡リスク軽減と関連していた。一方、MR拮抗薬はほとんどの症例で継続されており、すべての心不全症例(とくにEF>40%)に対して死亡リスク軽減と関連していた。もちろん、前向きRCTで確認する必要があるが、とても重要な報告であると考える。(図6)ATTR心アミロイドーシスに対する心不全従来治療と予後の関連画像を拡大するそして、近年の医学の進歩により、心アミロイドーシスに対する特異的な治療も出てきている。その治療法は心アミロイドーシスの病型により異なるため、病型ごとに説明していく。ALアミロイドーシスまず、ALアミロイドーシスに対する特異的な治療の基本は、アミロイド前駆蛋白であるFLC(free light chain)の産生を抑制することであり、基礎となる血液疾患に対する治療法に大きく依存している3,4)。具体的には、骨髄でモノクローナルに増殖しているCD38陽性形質細胞を選択的に攻撃する抗体薬であるダラツムマブ、プロテアソームを阻害する分子標的薬であるボルテゾミブ、シクロホスファミド、デキサメタゾン、メルファランなどの薬剤や自己末梢血幹細胞移植も治療の選択肢になるが、さらなる詳細は成書に譲ることとする。ATTRアミロイドーシス次に、ATTRアミロイドーシスに対する治療について、TTRの歴史とTTRアミロイド線維生成経路を見ながら考えていこう(図7)。(図7)ATTR心アミロイドーシス治療の今とこれから画像を拡大するTTRは127アミノ酸残基からなる血漿タンパク質で、ホモ四量体として肝臓で産生され、血液中においても四量体として存在する。1940年代後半から1950年代前半にかけて発見されたTTRは、栄養状態の指標として用いられていたことから、以前はプレアルブミンと呼ばれていた。この名前は、ゲル電気泳動でアルブミンよりも先に移動することに由来する。プレアルブミンはサイロキシンとレチノール結合タンパク質の輸送を行うことがその後にわかり、1980年にTTRという名称が正式に採用された5)。TTRがアミロイドを形成するには、自然構造である四量体から単量体への解離と単量体の変性が必要であることから、ATTRアミロイドーシスに対する特異的な治療としては、変異型および野生型TTRの産生を特異的に抑制する薬剤(TTR silencers)と、TTRの四量体を安定化し、単量体への解離を抑制する薬剤(TTR stabilizers)がある。なお、アミロイド線維を除去し、組織浸潤を回復させる薬剤(抗TTR抗体製剤)は現在第I相試験が終了1)したところで、まだ実用化には至っていないが、画期的な薬剤であり、今後の展開が大変期待されている(図7)。ちなみに、従来のTTR(プレアルブミン)測定法は、四量体のみを測定するものであるため、ATTRアミロイドーシス症例では血中TTR濃度は低下し、後で述べるTTR安定化薬投与後は上昇することになり、早期診断や予後予測に有用となる可能性があるという報告もある6,7)。これらの薬剤のなかで、RCTで効果が検証された最初の薬剤がタファミジスであり、現在本邦でも生存期間が十分に見込まれるATTR心アミロイドーシス患者に対して2019年3月から保険適用されている。タファミジスは、TTR四量体の2つのサイロキシン結合部位に結合し、その四量体構造を安定化させ、アミロイド形成を抑制するTTR安定化薬(TTR stabilizers)である。第III相ATTR-ACT試験(年齢中央値:75歳、男性:90%)では、ATTRvまたはATTRwt心筋症患者(ATTRwt:76%)において、プラセボと比較して、治療30ヵ月後に全死亡および心血管関連入院が30%減少し、QOL低下が緩やかになることが示された9)。つまり、ATTR-ACT試験は、(1)HFpEFにおける死亡率および心不全入院の減少が初めて示された薬物療法(2)ATTRアミロイドーシスにおける死亡率と病的状態の減少が初めて示された薬物療法(3)末梢性や神経ホルモン調節ではなく心筋に対して中心的に作用してハードエンドポイントへの効果を実証した初めての心不全治療薬これら“3つの初めて”を成し遂げた試験と言える8)。ただし、タファミジスはかなり高額な薬剤(2020年当時、1カプセル43,672.8円、年間の薬剤費は1人あたり6,376万円)であり、米国からも費用対効果に関する論文が発表9)され、費用対効果を高めるためには、92.6%(ビックリ!)の薬価引き下げが必要との報告もあるくらいであり、費用対効果もしっかり考えて処方すべき薬剤であろう。なお、同じTTR安定化薬であるAG10についても、症候性ATTR心筋症患者を対象に、第III相試験(ATTRibute-CM)が現在進行中である。また、TTR silencersとしては、TTR mRNAを選択的に分解して、遺伝子レベルでTTRの産生を特異的に抑制するsiRNA製剤(核酸医薬)であるパチシランが、ATTRvアミロイドーシスの治療薬として本邦でも2019年6月から保険適用されている。そして、現在ATTRwtも含めたATTR心筋症患者に対するパチシランの有効性を検証する第III相試験(APOLLO-B)が進行中である。そして、冒頭でも少し述べた通り、最も切望されている図7の(3)に相当する治療、つまり、抗体を介したATTR線維の貪食と組織からのATTR沈着物の除去を誘導することにより、ATTRを消失させる画期的な治療薬(遺伝子組換えヒト抗ATTRモノクローナルIgG1抗体)の研究も進みつつあり、今年5月に第I相試験(first-in-human)の結果がなんとNEJM誌に掲載され、安全性が確認された1)。その論文には実際に薬剤を使用した患者の画像所見が掲載されているが、沈着したアミロイドが除去されていることを示唆する所見が認められており、今後の第II相、第III相試験の結果が期待される。以上、今回は、早期診断、早期治療がきわめて重要な心アミロイドーシスを取り上げてみた。ぜひ明日からの診療に活かしていただければ幸いである。1)Garcia-Pavia P, et al. N Engl J Med. 2023 May 20.[Epub ahead of print]2)Ioannou A, et al. Eur Heart J. 2023 May 22. [Epub ahead of print]3)Palladini G, et al. Blood. 2016;128:159-168.4)Garcia-Pavia P, et al. Eur Heart J. 2021;42:1554-1568.5)Robbins J, et al.Clin Chem Lab Med. 2002;40:1183-1190.6)Hanson JLS, et al. Circ Heart Fail. 2018;11:e004000.7)Greve AM, et al. JAMA Cardiol. 2021;6:258-266.8)Maurer MS, et al. N Engl J Med. 2018;379:1007-1016.9)Kazi DS, et al. Circulation. 2020;141:1214-1224.

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他の睡眠薬からレンボレキサントへの切り替え効果~SLIM研究

 ほりこし心身クリニックの堀越 翔氏らは、他の睡眠薬からデュアルオレキシン受容体拮抗薬レンボレキサント(LEB)への切り替えによる有効性および安全性を評価するため、本研究を行った。その結果、他の睡眠薬からLEBに切り替えることで、ベンゾジアゼピン(BZD)、Z薬に関連するリスクが低下する可能性が示唆された。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2023年5月30日号の報告。 対象は2020年12月~2022年2月に、ほりこし心身クリニックを受診した不眠症患者61例。アテネ不眠症尺度(AIS)、エプワース眠気尺度(ESS)、Perceived Deficits Questionnaire-5 item(PDQ-5)を含む診療記録から得られた臨床データを分析した。切り替え前の睡眠薬には、BZD、Z薬、スボレキサント、ラメルテオン、ミルタザピン、トラゾドン、抗精神病薬を含めた。主要アウトカムは、LEBへの切り替え3ヵ月後のAISスコアの平均変化とした。副次的アウトカムは、LEBへの切り替え3ヵ月後のESSスコアおよびPDQ-5スコアの平均変化とした。また、切り替え前後のジアゼパム換算量の比較も行った。 主な結果は以下のとおり。・LEBへの切り替え後3ヵ月間、平均AISスコアの減少が認められた。 【1ヵ月後】-2.98±5.19(p<0.001) 【2ヵ月後】-3.20±5.64(p<0.001) 【3ヵ月後】-3.38±5.61(p<0.001)・平均ESSスコアは、切り替え3ヵ月間で有意な変化が認められなかった。 【1ヵ月後】-0.49±3.41(p=0.27) 【2ヵ月後】0.082±4.62(p=0.89) 【3ヵ月後】-0.64±4.80(p=0.30)・平均PDQ-5スコアは、切り替え3ヵ月間で有意な改善が認められた。 【1ヵ月後】-1.17±2.47(p=0.004) 【2ヵ月後】-1.05±2.97(p=0.029) 【3ヵ月後】-1.24±3.06(p=0.013)・総ジアゼパム換算量の有意な減少が観察された(ベースライン時:14.0±20.2、切り替え3ヵ月後:11.3±20.6、p<0.001)。

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急性脳梗塞の血栓除去術、術前ビタミンK拮抗薬は出血リスク?/JAMA

 急性期脳梗塞で血管内血栓除去術(EVT)を受けた患者では、術前のビタミンK拮抗薬(VKA)の使用と術後の症候性頭蓋内出血(sICH)には関連がないが、国際標準比(INR)が1.7を超えるサブグループではVKAの使用はsICH発生のリスクを高めることが、米国・デューク大学医学大学院のBrian Mac Grory氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年6月20日号で報告された。米国594病院の後ろ向きコホート研究 研究グループは、EVTを受ける脳梗塞患者における術前のVKAの使用とアウトカムとの関連を明らかにする目的で、後ろ向きコホート研究を行った(ARAMIS registry[Daiichi Sankyo、Genentech、Janssenの助成で運営]の支援を受けた)。 解析には、米国心臓協会(AHA)のGet With the Guidelines-Stroke(GWTG-Stroke) Programの2015年10月~2020年3月のデータを用いた。対象は、米国の594の病院に入院し、最終健常確認時刻から6時間以内にEVTの施行が選択された大血管閉塞による急性期脳梗塞患者であった。VKA以外の抗凝固薬や抗凝固薬の併用療法を受けた患者は除外した。 主要エンドポイントはsICHの発生であり、病院到着前7日以内のVKAの使用の有無別に評価した。5つの副次エンドポイントにも有意差なし 3万2,715例(年齢中央値72歳[四分位範囲[IQR]:60~82]、女性50.7%)が登録された。このうち3,087例(9.4%)(INR中央値:1.5[IQR:1.2~1.9])が病院到着前にVKAを使用しており、2万9,628例(90.6%)(1.1[1.0~1.1])は使用していなかった。 sICHの発生率は、VKA使用群6.8%(211/3,087例)、非使用群6.4%(1,904/2万9,628例)であり、両群間に有意な差は認められなかった(補正後オッズ比[OR]:1.12[95%信頼区間[CI]:0.94~1.35]、補正後リスク差:0.69%[95%CI:-0.39~1.77])。 また、次の5つの副次エンドポイントにも有意差はみられなかった。(1)36時間以内の生命を脅かす重篤な全身性出血(VKA使用群1.2% vs.非使用群1.0%)、(2)その他の重篤な合併症(5.1% vs.5.0%)、(3)再灌流療法の合併症(12.8% vs.12.2%)、(4)院内死亡(16.2% vs.13.1%)、(5)院内死亡またはホスピスへの転院(27.1% vs.20.6%)。 入院時INRが記録された2,415例のうち、1,585例はINRが1.7以下(INR中央値:1.3[IQR:1.1~1.5])、830例は1.7以上(2.1[IQR:1.9~2.5])であった。sICHのサブグループ解析では、INR 1.7以上の830例におけるsICHの発生率は、VKA使用群が8.3%と、非使用群の6.4%に比べ有意に高率であった(補正後OR:1.88[95%CI:1.33~2.65]、補正後リスク差:4.03%[95%CI:1.53~6.53])のに対し、1.7以下の1,585例では、それぞれ6.7%、6.4%であり、両群間に有意差はなかった(1.24[0.87~1.76]、1.13%[95%CI:-0.79~3.04])。 著者は、「本研究では、EVTを受けることが決まった患者のみを対象としており(EVTを受ける可能性があり、VKA治療を受けている患者全体ではない)、そのため指標イベントバイアス(index event bias)や合流点バイアス(collider bias)が生じる可能性がある。したがって、試験デザインによるバイアスの影響を受けやすく、解釈には注意を要する」としている。

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発作性上室頻拍、etripamil点鼻スプレーが有用/Lancet

 発作性上室頻拍に対する短時間作用型のL型Caチャネル拮抗薬であるetripamilの点鼻投与は、房室結節依存性の発作性上室頻拍の洞調律への迅速な復帰に関してプラセボより優れており、忍容性および安全性は良好であることが、北米および欧州の160施設で実施された多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照イベントドリブン試験「RAPID試験」の結果、示された。米国・Piedmont Heart InstituteのBruce S. Stambler氏らが報告した。RAPID試験は、NODE-301試験のパート2として実施された試験である。Lancet誌オンライン版2023年6月15日号掲載の報告。投与後30分以内の発作性上室頻拍から洞調律への復帰率をプラセボと比較 研究グループは、心電図で確認された持続性(20分以上)のエピソードを伴う発作性上室頻拍既往の18歳以上の患者を登録した。洞調律中にスプレー型のetripamil 70mgを2回、10分間隔で点鼻投与する試験投与で忍容性が認められた患者を、etripamil群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 患者は、日常生活で発作性上室頻拍の症状が発現した場合、心電図を装着し、事前に訓練された迷走神経刺激手技を行い、症状が消失しない場合は試験薬を患者自身が点鼻し、症状が10分以上持続する場合は再投与した。 主要エンドポイントは、投与後30分以内での発作性上室頻拍から洞調律(30秒以上)への復帰率(独立中央評価)であった。洞調律復帰率はetripamil群64% vs.プラセボ群31%で有意な差 2020年10月13日~2022年7月20日に、計692例が無作為化され、このうち有効性解析集団(房室結節依存性であることが確認され、発作性上室頻拍のエピソードに対して試験薬を自己投与した患者)は184例(etripamil群99例、プラセボ群85例)であった。 発作性上室頻拍から洞調律への復帰率(Kaplan-Meier推定値)は、etripamil群64%(63/99例)、プラセボ群31%(26/85例)であった(ハザード比[HR]:2.62、95%信頼区間[CI]:1.66~4.15、p<0.0001)。洞調律復帰までの時間の中央値は、etripamil群17.2分(95%CI:13.4~26.5)、プラセボ群53.5分(38.7~87.3)であった。 事前に規定された主要エンドポイントの頑健性を検証する感度解析においても同様の結果が得られた。 試験薬投与後24時間以内の有害事象発現率は、etripamil群50%、プラセボ群11%であった。そのほとんどが投与部位に生じた軽度または中等度の事象で、いずれも一過性であり介入なしで消失した。etripamil群で5%以上に発現した有害事象は、鼻不快感(23%)、鼻づまり(13%)、鼻漏(9%)などで、重篤な有害事象および死亡は報告されなかった。

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