サイト内検索|page:24

検索結果 合計:748件 表示位置:461 - 480

461.

民谷式 内科系試験対策ウルトラCUE Vol.3

第9回  消化器(肝胆膵) 第10回 消化器(消化管) 第11回 感染症 第12回 呼吸器 内科系試験に対応した全3巻の基本講座の第3巻です。試験内容が異なる認定内科医と総合内科専門医試験ですが、学生の頃に学んだことを復習するというスタートラインは同じ。全13領域で出題頻度の高いテーマを、わかりやすいシェーマと明快な講義で総復習しましょう。題名の「CUE」は放送業界用語の「キュー」、『臨床的有用性』(Clinical Utility)、そしてパーキンソン病医療における「CUE」から来ています。つまり、「動こうとしてもはじめの一歩が踏み出せない状態」に対して、このレクチャーが試験勉強を始める一歩を踏み出すきっかけになってほしいという思いです。講師の民谷先生の実臨床経験を組み込んだクリアな解説は、とても役に立ちます。専門外や苦手科目からチェックして、次のステップへ進んでください。第9回 消化器(肝胆膵)出題数の多い消化器領域は、まずは民谷式の解剖図を用いて肝臓の病態や疾患を解説します。ミクロの視点で疾患を整理していくと、長い臨床問題を論理的な筋道を追いながらスムーズに解いていけるようになります。また、この領域でとくに出題が多いのはIgG関連疾患。試験に役立つポイントが丸わかりです。第10回 消化器(消化管) 出題数の多い消化器領域の消化管領域について取り上げます。まずは消化管の壁断面をおさらいしてから、それぞれの疾患について掘り下げていきます。クローン病と潰瘍性大腸炎、マロリー・ワイス症候群と特発性食道破裂。症状が似たの疾患の区別も、民谷式オリジナルシェーマを用いた解説ですんなりと頭に入ります。第11回 感染症 感染症の領域では、原因微生物・薬理学・臨床症状を総合して理解することが大切になります。民谷式でわかりやすくまとめた表で一つひとつ整理していくと、長い臨床問題を短い時間で解くためのポイントがわかっていきます。さらにどの抗菌薬がどこまでカバーしているかをまとめた表は、試験に必ず役に立ちます。第12回 呼吸器 呼吸器領域では、肺の疾患を中心におさらいしていきます。民谷式オリジナルの簡略化したシェーマでまずは全体の流れを掴みます。臨床問題では、低酸素血症と二酸化炭素が不足している状態をしっかり分けて考えることが、問題文を読み解くヒントになります。

462.

抗菌薬が効かなくなる -AMR(薬剤耐性)との闘いに人類は勝てるのか?

感染症のエキスパートとAMR対策行政官が、その「危機」を伝えますフレミングが「ペニシリン」を発見して90年。人類は感染症を克服するかにみえましたが、すぐさま病原菌は抗菌薬に対し耐性を獲得、再び人類を脅かす存在となりました。薬剤耐性(AMR)の問題です。2050年には耐性菌による死者は1,000万人と推定され、2015年世界保健機関(WHO)は「薬剤耐性に関する国際行動計画」を採択し、厚生労働省もただちに動きだしました。この運動のきっかけとなったのが本書("The Drugs Don’t Work")です。原著者のサリー・デービスは英国保健省のトップであり、監訳に感染症専門医の忽那賢志医師を迎え、井上肇WHO事務局長補、長谷川学内閣官房国際感染症対策調整室企画官が編集を務め、ここに「感染症エキスパート」と「AMR対策行政官」がタッグを組んだ書籍が出来上がりました。日本語版には,オリジナルコンテンツ(わが国の薬剤耐性菌対策)も加わり、まさに感染症に関わる臨床医、専門家、行政官が訴える危機と対策が各視点で述べられています。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。    抗菌薬が効かなくなる-AMR(薬剤耐性)との闘いに人類は勝てるのか?定価1,900円 + 税判型A5判 ソフトカバー頁数124頁発行2018年4月原著者Sally C. Davies監訳忽那 賢志編集井上 肇・長谷川 学訳・著者高山 義浩Amazonでご購入の場合はこちら

463.

全国の抗菌薬の使用状況が一目瞭然

 薬剤耐性(AMR)対策のために国立国際医療研究センターに設置された「AMR臨床リファレンスセンター」(センター長:大曲 貴夫氏)は、国内初の取り組みとして「国内都道府県別抗菌薬使用量(販売量)統計データ」の公開ならびに「薬剤耐性(AMR)ワンヘルス動向調査」のWEBサイト開設を4月3日に発表した。これら抗菌薬使用量や薬剤耐性菌のサーベイランス(調査・監視システム)は、今後のAMR対策の重要な基礎データとなる。2016年の抗菌薬使用量が一番多いのは石川県 「都道府県別抗菌薬使用量(販売量)集計データ」は、AMRアクションプラン実行のため、都道府県別抗菌薬使用量や使用増減率を発表することで、医療従事者をはじめ行政団体への抗菌薬処方量の意識改革につなげる。また、サーベイランス事業を通じ、情報の収集・分析・発信を積極的に行うことでAMRの認知、啓発を行うことを目的に公開される。 今回公開された2016年の「都道府県別抗菌薬使用量」では、石川県、徳島県、大分県、東京都、広島県の順で多く、とくに石川県では、「ペニシリン以外のβラクタム」の使用が目立った。また、「都道府県別抗菌薬使用量増減2013~2016」では、石川県、沖縄県、大分県の順で増加していることが示された。 主な公開データとして「抗菌薬使用量変化2013-2016(抗菌薬種類別)」「同(投与経路別)」「都道府県別抗菌薬使用量2013-2016」「同(薬効割合)」「都道府県別抗菌薬使用増減 2013-2016」などを照会することができる。・都道府県別抗菌薬使用量サーベイランス薬剤耐性をワンヘルスの視点からみる 「薬剤耐性ワンヘルス動向調査」は、ヒト・動物・食品および環境から分離される薬剤耐性菌に関する統合的なワンへルス動向調査データである。これらのデータは、AMRの現状把握、問題点抽出、適切な施策の遂行に役立てられ、データは視覚的なグラフと表形式を用意し、直感的でわかりやすく提供されている。 今後、多分野間の連携・協力が進むことで、AMR対策のさらなる前進が期待され、これら先進的な調査が、世界のAMR対策をリードするうえでも重要になると考えられている。 主な統計データとして「耐性菌・感染症の推移」「抗菌薬の推移」「一般国民の意識」「医療関係者の意識」の4つを照会することができる。・薬剤耐性ワンヘルス動向調査

464.

早期胃がん切除後のピロリ除菌は有益か/NEJM

 早期胃がんまたはハイグレード腺腫で内視鏡的切除を受けた患者に対し、抗菌薬によるヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)の除菌治療はプラセボと比較して、1年以降に評価した異時性胃がんの発生リスクは低く、3年時に評価した胃体小彎の腺萎縮についても改善効果があることが示された。韓国・国立がんセンターのIl Ju Choi氏らが、470例を対象に行った前向き二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果で、NEJM誌2018年3月22日号で発表した。これまで、H. pylori除菌治療による、組織学的改善や異時性胃がんの予防に関する長期的効果は不明だったという。異時性胃がんの発生と胃体部小彎の腺萎縮の程度を比較 研究グループは、早期胃がんまたはハイグレード腺腫で内視鏡的切除を行った470例を、無作為に2群に分け、一方には抗菌薬によるH. pylori除菌治療を行い、もう一方にはプラセボを投与した。 主要評価項目は2つで、(1)追跡1年以降に内視鏡検査で認められた異時性胃がんの発生、(2)追跡3年時点における胃体部小彎の腺萎縮の程度のベースラインからの改善とした。治療群の半数で胃体部小彎腺萎縮が改善 被験者のうち修正intention-to-treat解析の対象者は、治療群が194例、プラセボ群が202例の計396例だった。平均年齢は、治療群59.7歳、プラセボ群59.9歳、男性がそれぞれ72.7%、77.7%を占めた。飲酒者は55.2%、63.4%、喫煙者は41.2%、37.6%。 中央値5.9年の追跡期間中に、異時性胃がんを発生したのは、プラセボ群が13.4%(27例)だったのに対し、治療群は7.2%(14例)だった(ハザード比:0.50、95%信頼区間:0.26~0.94、p=0.03)。 組織学的解析を行ったサブグループ327例において、胃体部小彎における腺萎縮の程度についてベースラインからの改善が認められた患者の割合は、プラセボ群15.0%だったのに対し、治療群は48.4%と大幅に有意に高率だった(p<0.001)。 重篤な有害事象は認められなかったが、軽度の薬剤性有害事象(味覚変化、下痢、めまいなど)については、治療群の頻度が有意に高かった(42.0% vs.10.2%、p<0.001)。

465.

経口フルオロキノロンが大動脈瘤リスク増と関連/BMJ

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のBjorn Pasternak氏らは、スウェーデン国内の登録データを用いたコホート研究を行い、経口フルオロキノロン系抗菌薬の使用が大動脈瘤のリスク増加と関連していることを報告した。フルオロキノロンには、血管壁の細胞外マトリックスの完全性を損なう可能性のある非抗菌的特性があり、最近の研究でフルオロキノロン系抗菌薬が大動脈瘤のリスクを増加させる懸念が高まっていた。BMJ誌2018年3月8日号掲載の報告。フルオロキノロンとアモキシシリンによる大動脈瘤/解離の発生を72万人を対象に比較 研究グループは、2006年7月~2013年12月のスウェーデンの全国患者登録、処方薬登録、統計局ならびに死因登録のデータを用い、コホート研究を実施した。対象は、フルオロキノロン系抗菌薬使用例36万88件(78%はシプロフロキサシン)と、傾向スコアでマッチングした対照のアモキシシリン使用例36万88件であった。 主要評価項目は、治療開始から60日以内の大動脈瘤/解離の初回診断(大動脈瘤/解離による病院/救急部への入院、または大動脈瘤/解離による死亡)とし、Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。フルオロキノロン系抗菌薬使用で、大動脈瘤/解離のリスクが66%増加 治療開始後60日間の大動脈瘤/解離の発生頻度は、フルオロキノロン系抗菌薬使用群1.2例/1,000人年、アモキシシリン使用群0.7例/1,000人年であった。両群の大動脈瘤/解離発生推定絶対差は、60日までの治療100万人当たり82例(95%信頼区間[CI]:15~181)で、フルオロキノロン系抗菌薬使用が大動脈瘤/解離のリスク増加と関連していることが認められた(ハザード比:1.66、95%CI:1.12~2.46)。 副次解析の結果、フルオロキノロン系抗菌薬使用に関連するハザード比は、大動脈瘤が1.90(95%CI:1.22~2.96)、大動脈解離が0.93(95%CI:0.38~2.29)であった。

466.

複雑性尿路感染症に対するメロペネム/vaborbactamの効果(解説:吉田 敦 氏)-826

 多剤耐性グラム陰性桿菌、とくにカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)の増加と蔓延は、抗菌薬療法の限界を示唆する耐性菌、いわゆる「悪魔の耐性菌」として今や人類の脅威となっている。現在使用できる抗菌薬が限られている中で、セリン型のクラスAおよびクラスC βラクタマーゼを阻害するボロン酸であるvaborbactamとカルバペネム(メロペネム)を配合したメロペネム/vaborbactam(以下MEPM/VBT)が登場し、体内動態に関する第I相試験が行われていたが、今回第III相試験の結果が発表された。 本試験は国際多施設参加ランダム化比較試験であり、18歳以上の複雑性尿路感染症あるいは腎盂腎炎の症例を無作為にMEPM/VBT投与群(2g/2gを3時間かけて投与、1日3回)とピペラシリン/タゾバクタム(PIPC/TAZ)投与群(4g/0.5gを30分で投与、1日3回)に割り付けた。15回以上投与した後、あらかじめ定めた臨床的な改善基準を満たした場合、経口のレボフロキサシンに変更可能とし、治療期間は計10日間とした。primary end pointにはFDA基準(臨床的改善・治癒と、静注薬終了時の尿細菌数が104 CFU/mL未満)とEMA(欧州医薬品庁)基準(治療終了後に治癒確認を目的に診察した際の尿細菌数が103 CFU/mL未満)を用いた。 最終的に17ヵ国550例を対象とすることができ、272例がMEPM/VBT投与群に、273例がPIPC/TAZ投与群に割り付けられた。このうち腎盂腎炎は59%、尿中菌数が105 CFU/mL以上であったのは69%であり、原因微生物のうち65%は大腸菌、15%はK. pneumoniaeであった。なお大腸菌のうちPIPC/TAZ耐性率は5%、MEPM耐性菌はなく、K. pneumoniaeのうちPIPC/TAZ耐性率は42%、MEPM耐性率は5%であった。Primary end pointを達成した成功率は、FDA基準ではMEPM/VBT群98.4%、PIPC/TAZ群94.0%であり、MEPM/VBTはPIPC/TAZに非劣性であるばかりか、それよりも優れていた。EMA基準では、MEPM/VBT群66.7%、PIPC/TAZ群55.7%であり、これでも非劣性が判明した。有害事象はMEPM/VBT群39.0%、PIPC/TAZ群35.5%で報告されたが、抗菌薬に関連したものはそれぞれ15.1%、12.8%であり、重度のものは2.6%、4.8%であった。MEPM/VBT群で多かったのは頭痛や下痢、ALT上昇などであったが、副作用のために投与を中止したのは2.6%とPIPC/TAZ群の5.1%より少なかった。 今回の報告は、βラクタマーゼ・カルバペネム配合剤のヒト感染症例でのランダム化比較試験としては、初めてのものである。この結果を受けて、FDAは2017年8月に成人の複雑性尿路感染症を対象に本剤を認可した(Vabomere)。ただし本試験にはいくつかの限界が存在する。SIRSの基準を満足している割合が1/3以下と高くないこと、原因微生物がメロペネム耐性菌である割合が低く(PIPC/TAZ耐性率は高い)、そもそもカルバペネム耐性菌を主対象とした研究でないことである。そしてこれまでの検討で、MEPM/VBTはCPEのうちKlebsiella pneumoniae Carbapenemase(KPC)には有効であるが、クラスBのメタロβラクタマーゼ産生菌(代表的なのはNDM)にはあまり有効でないことが指摘されている1)。カルバペネム耐性腸内細菌科細菌による複数の感染症に対し、本剤の有効性を調べた続発試験(TANGO II)が行われたとも聞く。KPCが多い地域と、メタロβラクタマーゼ産生菌が多い本邦やアジアでは、本剤が適応となる状況は異なると思われる。メタロβラクタマーゼ産生菌に使用できる選択肢が増えることが、さらに望まれる状況にある。

467.

複雑性尿路感染症、メロペネム/vaborbactam配合剤の有効性/JAMA

 複雑性尿路感染症の治療において、メロペネム/vaborbactam配合剤の効果は、ピペラシリン/タゾバクタム配合剤に対し非劣性であることが、米国・ミシガン大学のKeith S. Kaye氏らが実施したTANGO I試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年2月27日号に掲載された。カルバペネム系抗菌薬メロペネムとβ-ラクタマーゼ阻害薬vaborbactamの配合剤は、薬剤抵抗性グラム陰性菌による重症感染症に有効である可能性が示唆されている。2種の配合剤の非劣性を評価する無作為化試験 TANGO Iは、急性腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症の治療における、メロペネム/vaborbactam配合剤の有効性と有害事象の評価を目的とする二重盲検ダブルダミー無作為化実薬対照非劣性試験である(The Medicines Company社などの助成による)。 年齢18歳以上の尿路感染症または急性腎盂腎炎の確定例または疑い例が、8時間ごとにメロペネム/vaborbactam配合剤(2g/2g、3時間静注)またはピペラシリン/タゾバクタム配合剤(4g/0.5g、30分静注)を投与する群にランダムに割り付けられた。患者は、盲検を維持するために、薬剤を含まない生理食塩水(30分または3時間静注)の投与を受けた。 15回以上の静注後は、全10日間の治療を完了するために、事前に規定された改善の判定基準を満たす場合は、経口レボフロキサシン(500mg、24時間ごと)に切り替えることとした。 米国食品医薬品局(FDA)の基準による主要エンドポイントとして、微生物学的に修正したintent-to-treat(ITT)集団における静注投与終了時のoverall success(臨床的な治癒または改善と、除菌の複合)、および欧州医薬品庁(EMA)の基準による主要エンドポイントとして、微生物学的に修正したITT集団および微生物学的に評価可能な集団における治癒検査受診時の除菌の評価を行った。事前に規定された非劣性マージンは-15%であった。すべての主要エンドポイントで非劣性を確認 2014年11月~2016年4月の期間に、17ヵ国60施設に550例が登録され、545例(メロペネム/vaborbactam配合剤群:272例、ピペラシリン/タゾバクタム配合剤群:273例)が1回以上の投与を受けた(修正ITT集団)。 全体の平均年齢は52.8歳、361例(66.2%)が女性であった。微生物学的に修正したITT集団は374例(68.6%)、微生物学的に評価可能な集団は347例(63.7%)だった。 FDAの主要エンドポイントであるoverall successは、メロペネム/vaborbactam配合剤群の192例中189例(98.4%)で達成され、ピペラシリン/タゾバクタム配合剤群の182例中171例(94.0%)に対し非劣性であった(群間差:4.5%、95%信頼区間[CI]:0.7~9.1%、非劣性のp<0.001)。 EMAの主要エンドポイントである微生物学的に修正したITT集団における除菌は、メロペネム/vaborbactam配合剤群の192例中128例(66.7%)で達成され、ピペラシリン/タゾバクタム配合剤群の182例中105例(57.7%)に対し非劣性であった(群間差:9.0%、95%CI:-0.9~18.7%、非劣性のp<0.001)。また、微生物学的に評価可能な集団における除菌は、それぞれ178例中118例(66.3%)、169例中102例(60.4%)で達成され、同様に非劣性が示された(群間差:5.9%、95%CI:-4.2~16.0%、非劣性のp<0.001)。 有害事象は、メロペネム/vaborbactam配合剤群の272例中106例(39.0%)、ピペラシリン/タゾバクタム配合剤群の273例中97例(35.5%)で発現し、試験薬関連有害事象はそれぞれ15.1%、12.8%に認められた。メロペネム/vaborbactam配合剤群で最も頻度の高い有害事象は頭痛(8.8%)で、すべて軽度~中等度であり、頭痛が原因で治療が中止された患者はなかった。 著者は、「メロペネム/vaborbactam配合剤が臨床的利益をもたらす患者のスペクトルを知るために、さらなる検討を要する」としている。

468.

尿路感染へのトリメトプリムで突然死リスクは増えるのか/BMJ

 尿路感染症(UTI)に対するトリメトプリムの使用は、他の抗菌薬使用と比べて、急性腎障害(AKI)および高カリウム血症のリスクは大きいが、死亡リスクは高くないことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のElizabeth Crellin氏らによるコホート研究の結果で示された。また、相対リスクの上昇は試験対象集団全体においては類似していたが、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬およびカリウム保持性利尿薬を服用していた群ではベースラインのリスクが高いほど、AKIや高カリウム血症の絶対リスク上昇がみられたという。BMJ誌2018年2月9日号掲載の報告。一般集団を対象に、AKI、高K血症、死亡の発生を他の抗菌薬と比較 合成抗菌薬のコトリモキサゾール(ST合剤:スルファメトキサゾールとトリメトプリムの合剤)は、突然死のリスク増大と関連しており、そのリスク増大は血清カリウム値の上昇による可能性が報告されている。しかし先行研究は、対象が特定集団(RAS阻害薬服用患者など)であり、交絡因子(感染症のタイプや重症度)の可能性が排除できず、結果は限定的であった。また、トリメトプリムとST合剤のリスクが同程度のものなのかについても、明らかになっていなかった。 研究グループは、一般集団においてUTIに対するトリメトプリム使用が、AKI、高カリウム血症、あるいは突然死のリスクを増大するかを検証した。 英国のClinical Practice Research Datalinkに集積されているプライマリ受診者の電子カルテ記録を用い、Hospital Episode Statisticsデータベースからの入院記録データと関連付けて解析を行った。 対象は、1997年4月~2015年9月に、プライマリケアでUTIの診断後に最長で3日間、トリメトプリム、アモキシシリン、セファレキシン、シプロフロキサシン、またはnitrofurantoinのいずれかを処方されていた65歳以上の患者。UTIの抗菌薬治療14日間でのAKI、高カリウム血症、死亡の発生について評価した。RAS阻害薬とスピロノラクトンの使用群ではリスクが上昇 コホートには、65歳以上の患者119万1,905例が組み込まれた。このうち、17万8,238例がUTIの抗菌薬治療を1回以上受けており、UTIの抗菌薬治療エピソード総計42万2,514件が確認された。 抗菌薬投与開始後14日間のAKI発生のオッズ比(OR)は、アモキシシリン群との比較において、トリメトプリム群(補正後OR:1.72、95%信頼区間[CI]:1.31~2.24)およびシプロフロキサシン群(同:1.48、1.03~2.13)で高かった。 抗菌薬投与開始後14日間の高カリウム血症発生のORは、アモキシシリン群との比較において、トリメトプリム群(同:2.27、1.49~3.45)のみで高かった。 しかしながら、抗菌薬投与開始後14日間の死亡発生のORは、アモキシシリン群と比べてトリメトプリム群では高くなく、全集団における補正後ORは0.90(95%CI:0.76~1.07)であった。一方で、RAS阻害薬使用群における補正後ORは1.12(同:0.80~1.57)であった。 解析の結果、65歳以上で抗菌薬治療を受けた1,000UTIについて、RAS阻害薬使用の有無にかかわらず、アモキシシリンの代わりにトリメトプリムを用いた場合の高カリウム血症の追加症例は1~2例であり、AKIによる入院は2例であることが示唆された。一方で、RAS阻害薬およびスピロノラクトンの使用群では、アモキシシリンの代わりにトリメトプリムを用いた場合、高カリウム血症の追加症例は18例、AKIによる入院は11例であった。

469.

リファキシミンの腸内細菌叢への調整作用で肝性脳症を抑える

 2018年1月31日、あすか製薬株式会社は、同社が販売する経口難吸収性抗菌薬リファキシミン(商品名:リフキシマ)の処方制限が昨年12月に解除され、長期投与が可能となったことを機に、都内において肝性脳症に関するプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、「『肝性脳症』診断・治療の最新動向 腸内細菌への働きかけによる生存率向上への兆し」をテーマに、吉治 仁志氏(奈良県立医科大学 内科学第三講座 教授)を講師に迎え、レクチャーが行われた。原因不明の認知症10%に潜む肝性脳症 はじめに、認知症の概要が語られた。2025年には、認知症患者が推定730万人になると予想される。そして、認知症の原因ではアルツハイマー型が一番多く、次いで脳血管性型、レビー小体型と続き、そのほか原因不明も全体の1割(70万人以上)を占めるという。現在の『認知症疾患診療ガイドライン』では、認知症と鑑別が必要な疾患として、「ビタミン欠乏症」「甲状腺機能低下症」「神経梅毒」「肝性脳症」「特発性正常圧水頭症」の5つが規定されている。なかでも「肝性脳症」では、認知症やうつ病と同じように睡眠異常、指南力低下、異常行動、物忘れなど共通する症状がみられ、正確に診断されていない例もあると指摘した。 肝性脳症は、肝臓の線維化によりアンモニアの分解能が落ちることで、アンモニアが体内に蓄積され、さまざまな認知機能を障害する。その原因となる肝細胞障害、とくに肝硬変はC型肝炎ウイルスによるものが多く、そのウイルス保菌者数は年齢に比例して増加することから、肝性脳症が発症した場合、認知症と診断されている例もあると示唆した。服薬アドヒアランスを上げるリファキシミン 肝性脳症の症状は、人格・行動の微妙な変化から始まり、判断力の低下、睡眠の不規則、見当識障害、興奮・せん妄、昏睡状態へと進展する。典型的な患者の訴えでは、「頭がボーッとする」「足がつまずく」「手が震える」などが聞かれ、家族の訴えでは「目つきがおかしい」「おかしなことを言う」「食事を摂らない」などがある。 本症の診断では、身体所見など一般的な診断のほかに、認知症との鑑別のためナンバーコネクション、ブロックデザインテストなども行われ、「本症を疑った場合、アンモニア値の検査も重要」と吉治氏は述べる。 本症の治療では、これまで合成二糖類、カルニチン・亜鉛、BCAA製剤などの治療薬が使われてきたが、服用のしにくさや副作用などでアドヒアランスは決して良好とはいえなかった。 そこで、今回長期投与が可能になったリファキシミンは、こうした問題に対応し、他の治療薬の減量・削減の可能性、全身症状の改善、医療コストの削減などで期待されている。リファキシミンの作用機序は腸管内でのアンモニアの産生を防ぐことで、血中濃度が低下し、脳へのアンモニア移行を減少、肝性脳症を改善し、便と共に排泄される作用を持つ。リファキシミンは欧米では30年以上前より使用されてきたが、わが国では2016年に保険適用となった。 エビデンスでは、リファキシミンは使用群とプラセボ群との比較で、本症の再発を0.42ポイント有意に軽減したほか1)、5年間の長期投与でも肝硬変患者の生存率を改善したことが報告されている2)。リファキシミンの腸内細菌叢の調整機能 次に、わが国で増えている肥満型の肝硬変患者に触れ、現在1,000万人と推定される非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の患者のうち、約200万人が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に移行すると考えられ、今後の肝硬変の患者数増加に警鐘を鳴らした。 さらに最近の話題として、腸内細菌叢について語った。この細菌叢のバランスの崩れから起こる疾患として、NAFLD、NASH、肝硬変、炎症性腸疾患などを挙げ、近年この腸内細菌叢の構成に注目が集まっているという。 肝硬変患者に、実際にリファキシミンを投与した前後で腸内細菌叢を調べた結果、細菌叢の多様性に変化はなかったものの、属レベルでは、肝硬変患者で増加するとされていた細菌が減少したと自験例を報告した3)。また、リファキシミンは、腸内細菌モジュレーターとして、肝硬変患者の予後を改善することが示唆されると期待を寄せた。 最後に吉治氏は、「今後、リファキシミンの腸内細菌叢の調整機能も踏まえ、日本人の長期投与効果の研究を行い、日本発のエビデンスを出していきたい」と今後の展望を語り、セミナーを終了した。

470.

注射剤のアナフィラキシーについて提言 医療安全調査機構

 日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)は、注射剤のアナフィラキシーによる事故防止のための提言(医療事故の再発防止に向けた提言 第3号)を公表している(1月18日)。アナフィラキシー発症の危険性が高い薬剤や発症が疑われる場合の具体的な対応、常時から備えておくべき事項などについて、以下の6つの提言が示された。提言1(アナフィラキシーの認識):アナフィラキシーはあらゆる薬剤で発症の可能性があり、複数回、安全に使用できた薬剤でも発症し得ることを認識する。提言2 (薬剤使用時の観察):造影剤、抗菌薬、筋弛緩薬等のアナフィラキシー発症の危険性が高い薬剤を静脈内注射で使用する際は、少なくとも薬剤投与開始時より5分間は注意深く患者を観察する。提言3(症状の把握とアドレナリンの準備):薬剤投与後に皮膚症状に限らず患者の容態が変化した場合は、確定診断を待たずにアナフィラキシーを疑い、直ちに薬剤投与を中止し、アドレナリン0.3 mg(成人)を準備する。提言4 (アドレナリンの筋肉内注射):アナフィラキシーを疑った場合は、ためらわずにアドレナリン標準量0.3 mg(成人)を大腿前外側部に筋肉内注射する。提言5 (アドレナリンの配備、指示・連絡体制)アナフィラキシー発症の危険性が高い薬剤を使用する場所には、アドレナリンを配備し、速やかに筋肉内注射できるように指示・連絡体制を整備する。提言6 (アレルギー情報の把握・共有):薬剤アレルギー情報を把握し、その情報を多職種間で共有できるようなシステムの構築・運用に努める。 この提言は、医療事故調査制度のもと収集した院内調査結果報告書を整理・分析し、再発防止策としてまとめているもの。第1号は「中心静脈穿刺合併症」、第2号は「急性肺血栓塞栓症」をテーマとしてそれぞれ2017年に公表されている。 今回の第3号では、同制度開始の2015年10月から2017年 9 月の 2 年間で、同機構に提出された院内調査結果報告書476 件のうち、「注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例」として報告された12事例を分析。“死亡に至ることを回避する”という視点で、同様の事象の再発防止を目的としてまとめられている。■参考日本医療安全調査機構:医療事故の再発防止に向けた提言 第3号■関連記事中心静脈穿刺の事故防止に向けて提言公表 医療安全調査機構

471.

ARREST試験:黄色ブドウ球菌菌血症に対するリファンピシン併用療法(解説:小金丸博氏)-811

 黄色ブドウ球菌菌血症は、市中でも院内でもみられるありふれた疾患である。他臓器への転移病巣形成や深部臓器感染の原因となり、死亡率は約20%と高率である。頻度や重症度が高い疾患であるにもかかわらず、いまだに最適な治療方法は定まっていない。 黄色ブドウ球菌感染症に対する併用薬の候補の1つにリファンピシンが挙げられる。リファンピシンは消化管からの吸収率が高く、細胞、組織、バイオフィルムによく浸透するため、βラクタム薬やグリコペプチド系薬と併用することで黄色ブドウ球菌感染症の予後を改善する可能性があると考えられてきた。主に感染性心内膜炎や人工物感染に対して世界中でリファンピシン併用が行われているが、高いエビデンスのある研究は存在しなかった。 本研究は、黄色ブドウ球菌菌血症に対するリファンピシン併用投与の効果を検証した多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対象比較試験である。標準的な抗菌薬治療開始から96時間以内の成人(18歳以上)を対象に、リファンピシン併用投与群とプラセボ併用投与群に分けて評価した。プライマリアウトカムは細菌学的治療失敗、再発、あらゆる原因による死亡までの時間とした。その結果、試験開始から12週までに、これらいずれかのアウトカムを経験した患者割合は、リファンピシン投与群17%、プラセボ投与群18%であり、両群間で有意差は認めなかった(絶対リスク差:-1.4%、95%信頼区間:-7.0~4.3、ハザード比:0.96、p=0.81)。アウトカムを個別にみてみると、リファンピシンを併用しても死亡率は減少しなかったものの、再発率は有意に減少した。細菌学的再発を1例防止するのに必要な治療数(number needed to treat:NNT)は29だった。 本試験では、黄色ブドウ球菌菌血症に対してリファンピシンを併用しても全体的なベネフィットは変わらないことが確認された。本試験は過去の試験よりサンプルサイズが大きいことが特徴の1つである。本試験の結果から、黄色ブドウ球菌菌血症と診断した全例に対してリファンピシンを併用する根拠は乏しいといえる。 黄色ブドウ球菌は、薬剤感受性パターンからMSSAとMRSAに分類される。本試験に組み込まれた患者の原因菌のうちMRSAは全体の6%しか占めておらず、MRSA菌血症に対するリファンピシンの併用効果を評価することは困難と考える。また、人工弁あるいは人工関節を有する患者は2%と少なく、本試験の結果のみでは人工物感染に対する併用効果を評価することも難しい。 MSSA感染症に対する世界標準薬は抗黄色ブドウ球菌用ペニシリンである。英国、オーストラリアではFlucloxacillin、米国ではNafcillinやクロキサシリンが好んで利用され、本試験では82%でFlucloxacillinが選択されている。ところが、日本では純粋な抗黄色ブドウ球菌用ペニシリンは認可されておらず、MSSA感染症に対しては第一世代セフェム系抗生物質であるセファゾリンが選択されることが多いため、本試験の結果を日常臨床にそのまま当てはめることはできない。本邦でも、世界標準薬が利用できる日がくることを希望する。

472.

再生不良性貧血〔AA : aplastic anemia〕

再生不良性貧血のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 概念・定義再生不良性貧血は、末梢血でのすべての血球の減少(汎血球減少)と骨髄の細胞密度の低下(低形成)を特徴とする症候群である。同じ徴候を示す疾患群から、概念のより明確なほかの疾患を除外することによって診断することができる。病気の本態は「骨髄毒性を示す薬剤の影響がないにもかかわらず、造血幹細胞が持続的に減少した状態」である。再生不良性貧血という病名は、鉄欠乏性貧血や悪性貧血などのように、不足している栄養素を補充すれば改善する貧血とは異なり、血液細胞が再生しにくいという意味で付けられたが、治療方法が進歩した現在では、再生不良性貧血の骨髄は必ずしも「再生不良」とはいえないので、この病名は現実に即さなくなってきている。■ 疫学臨床調査個人票による調査では、2004~2012年の9年間の罹患数は約9,500(年間約1,000人)、罹患率は8.2(/100万人年)と推計された。罹患率の性比(女/男)は1.16であり、男女とも10~20歳代と70~80歳代でピークが認められ、高齢のピークの方が大きかった1)。これは欧米諸国の約3倍の発生率である。■ 病因成因によってFanconi貧血、dyskeratosis congenitaなどの先天性と後天性に分けられる。後天性の再生不良性貧血には原因不明の一次性と、クロラムフェニコールをはじめとするさまざまな薬剤や放射線被曝・ベンゼンなど化学物質による二次性がある。一次性(特発性)再生不良性貧血は、何らかのウイルスや環境因子が引き金になって起こると考えられているが詳細は不明である。わが国では特発性が大部分(90%)を占める。また、そのほかに特殊型として肝炎後再生不良性貧血は、A型、B型、C型などの既知のウイルス以外の原因による急性肝炎発症後1~3ヵ月で発症する。若年の男性に比較的多く重症化しやすいが、免疫抑制療法に対する反応性は特発性再生不良性貧血と変わらない。再生不良性貧血-発作性夜間ヘモグロビン尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria:PNH)症候群は、臨床的には再生不良性貧血でありながら、末梢血中にglycosylphosphadidylinositol(GPI)アンカー膜蛋白の欠失した血球が増加しており、溶血を伴う状態を指す。そのなかには、発症時から再生不良性貧血‐PNH症候群状態のもの(骨髄不全型のPNH)と、再生不良性貧血と診断されたのち長期間を経てPNHに移行するもの(二次性PNH)の2種類がある。再生不良性貧血の重症度は、血球減少の程度によって表1のように5段階に分けられている1)。画像を拡大する特発性再生不良性貧血の約70%は抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(anti-thymocyte globulin:ATG、商品名:サイモグロブリン)やシクロスポリン(CsA〔同:ネオーラル〕)などの免疫抑制療法によって改善することから、免疫学的機序による造血幹細胞の破壊・抑制が多くの例で関与していると考えられている。しかし、免疫反応の標的となる自己抗原は同定されていない。再生不良性貧血の約60%に、GPIアンカー膜蛋白の欠失したPNH形質の血球(PNH型血球)が検出されることや、第6染色体短腕の片親性二倍体により細胞傷害性T細胞からの攻撃を免れて造血を支持するようになった造血幹細胞由来の血球が約25%の例で検出されること2,3)などが、免疫病態の関与を裏付けている。一方、Fanconi貧血のように、特定の遺伝子異常によって発症する先天性再生不良性貧血が存在することや、特発性再生不良性貧血と診断されていた例のなかにテロメラーゼ関連の遺伝子異常を持つ例があることなどから、一部の例では造血幹細胞自身に異常があると考えられている。ただし、これらの遺伝子異常が検出される頻度は非常に低い。免疫抑制療法が効かない再生不良性貧血例のなかには、骨髄が脂肪髄であったために再生不良性貧血として治療されたが、その後短期間で異常細胞が顕在化し、診断が造血器悪性腫瘍に変更される例も含まれている。さらに、免疫抑制療法が効かないからといって、必ずしも免疫病態が関与していないという訳ではない。そのなかには、(1)免疫異常による発病から治療までの時間が経ち過ぎているために効果が出にくい、(2)免疫抑制療法の強さが不十分である、(3)免疫学的攻撃による造血幹細胞の枯渇が激しいために造血が回復しえない、などの理由で免疫抑制療法に反応しない例もある。このため、発病して間もない再生不良性貧血のほとんどは、造血幹細胞に対する何らかの免疫学的攻撃によって起こっていると考えたほうがよい。■ 症状息切れ・動悸・めまいなどの貧血症状と、皮下出血斑・歯肉出血・鼻出血などの出血傾向がみられる。好中球減少の強い例では発熱がみられる。軽症・中等症例や、貧血の進行が遅い重症例では無症状のこともある。他覚症状として顔面蒼白、貧血様の眼瞼結膜、皮下出血、歯肉出血などがみられる。■ 予後かつては重症例の50%が半年以内に死亡するとされていた。最近では血小板輸血、抗菌薬、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)などの支持療法が進歩し、免疫抑制療法や骨髄移植が発症後早期に行われるようになったため、約7割の患者が輸血不要となるまで改善し、9割が長期生存するようになっている。一部の重症例や、発症後長期間を経過した例は免疫抑制療法によっても改善せず、定期的な赤血球輸血・血小板輸血を必要とする。赤血球輸血が40単位を超えると糖尿病・心不全・肝障害などの鉄過剰症による症状が現れる。最近では、デフェラシロクス(商品名:エクジェイド)による鉄キレート療法が行われるようになったため、輸血依存例の予後の改善が期待されている。一方、免疫抑制療法により改善した長期生存例の約5%が骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)、5~10%がPNHに移行する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 末梢血所見通常は赤血球、白血球、血小板のすべてが減少する。重症度の低い例では貧血と血小板減少だけしか認めないこともある。急性型では正球性正色素性、慢性型では通常大球性を示し、すべての例で網赤血球の増加を伴わない。重症例では好中球だけではなくリンパ球も減少する。■ 血液生化学検査血液生化学検査では血清鉄、鉄飽和率、血中エリスロポエチン値、トロンボポエチン値などの増加がみられる。とくにトロンボポエチンの増加は、前白血病状態との鑑別に重要である。トロンボポエチンが300pg/mL未満であれば再生不良性貧血は否定的である4)。■ 骨髄穿刺・生検所見再生不良性貧血と診断するためには両者を行うことが必須である。骨髄生検では細胞成分の占める割合が全体の30%以下に減少している。なかでも巨核球・幼若顆粒球・赤芽球の著しい減少が特徴的である。骨髄細胞が残存している場合には多くの例で赤芽球に異形成が認められる。好中球にも異形成を認めることがあるが、その割合が全好中球の10%を超えることはない。巨核球は減少しているため、異形成の有無は評価できないことが多い。ステージ4までの再生不良性貧血では、穿刺する場所によって骨髄が正形成または過形成を示すことがあるが、そのような場合でも巨核球は通常減少している。染色体は原則として正常であるが、病的意義の明らかでない染色体異常を少数認めることがある。■ 病理腸骨からの骨髄生検では細胞成分の占める割合が全体の30%以下に減少し、重症例では完全に脂肪髄化する(図1)。ただし、ステージ 1~3の患者では、細胞成分の多い部分が残存していることが多い。画像を拡大する■ 骨髄MRI骨髄穿刺・生検で評価できる骨髄は一部に限られるため、骨髄細胞密度を評価するためには胸腰椎を脂肪抑制画像で評価することが望ましい。重症再生不良性貧血例の胸腰椎をMRIで検索するとSTIR法では均一な低信号となり、T1強調画像では高信号を示す。ステージ3より重症度の低い例の胸腰椎画像は、残存する造血巣のため不均一なパターンを示す。■ フローサイトメトリーによるCD55・CD59陰性血球の検出Decay accelerating factor(DAF、CD55)、homologous restriction factor(HRF、CD59)などのGPIアンカー膜蛋白の欠失した血球の有無を、感度の高いフローサイトメトリーを用いて検索すると、明らかな溶血を伴わない再生不良性貧血患者の約半数に少数のCD55・CD59陰性血球が検出される。このようなPNH形質の血球陽性例は陰性例に比べて免疫抑制療法が効きやすく、また予後もよいことが知られている5)。■ 診断基準・鑑別診断わが国で使用されている診断基準を表2に示す1)。画像を拡大する再生不良性貧血との鑑別がとくに問題となるのは、MDS(2008年分類)のなかでも芽球の割合が少ないrefractory cytopenia with unilineage dysplasia(RCUD)、refractory cytopenia with multilineage dysplasia(RCMD)、idiopathic cytopenia of undetermined significance(ICUS)、骨髄不全の程度が強いPNH、欧米型の有毛細胞白血病などである。RCUD、RCMDまたはICUSが疑われる症例において、巨核球増加を伴わない血小板減少や血漿トロンボポエチンの上昇がみられる場合には、再生不良性貧血と同様の免疫病態による骨髄不全を考えたほうがよい。PNH形質血球の増加がみられる骨髄不全のうち、網赤血球の増加(>10万/μL)、正常上限の1.5倍を超えるLDH値の上昇、間接ビリルビンの上昇、ヘモグロビン尿などの溶血所見がみられる場合には、骨髄不全型PNHと診断する。骨髄生検上細網線維の増加や、血清可溶性インターロイキン2レセプター値の著増などがみられる場合は、有毛細胞白血病を疑う。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ ステージ1、2に対する治療輸血を必要としないこの重症度で、血球減少の進行がみられない場合には、血球減少が自然に回復する可能性があるため、無治療で経過をみることが勧められてきた。しかし、再生不良性貧血では診断から治療までの期間が長くなるほど免疫抑制療法の奏効率が低くなるため、診断後はできるだけ早期にCsAを投与して効果の有無をみたほうがよい。とくに血小板減少が先行する例は、免疫抑制療法に反応して改善することが多いので、血小板減少が軽度であっても、少量のCsAを短期間投与し反応性をみることが望ましい。図2は筆者の私案を示している。画像を拡大する■ 重症例(ステージ3以上など)に対する治療この重症度の患者に対する治療方針(筆者私案)を図3に示す。画像を拡大する患者が40歳以下でHLAの一致する同胞ドナーが得られる場合には、同種骨髄移植が第一選択の治療方法である。とくに20歳未満の患者では治療関連死亡の確率が低く、長期生存率も90%前後が期待できるため、最初から骨髄移植を行うことが勧められる。40歳以上の高齢患者に対してはATG・CsAか、ATG・CsA・エルトロンボパグ(ELT〔商品名:レボレード〕)併用療法を行う。サイモグロブリンの市販後調査によると、ステージ4・5例およびステージ2・3例におけるATG+CsAの有効率はそれぞれ44%(219/502)、64%(171/268)とされている。ELTは、ATG+CsAと同時またはATG+CsAの2週間後から併用することにより、ウマATG+CsAの有効率が90%まで向上することが、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の臨床研究により示された6)。日本でも2017年8月より保険適用が認められ、初回のATG+CsA療法後に併用することが可能になっている。これにより、日本で唯一使用できるサイモグロブリンの有効率が高まる可能性がある。ただし、NIHの臨床試験では、2年間で約12%の症例に、第7染色体異常を中心とする新たな染色体異常が出現していることから、ELT併用によって異常造血幹細胞の増殖が誘発される可能性は否定できない。このため、若年患者に対する初回治療にELTを併用するかどうかは、患者の重症度、罹病期間、免疫病態マーカーの有無などを考慮して判断することが勧められる。とくに、治療前に骨髄FISH検査で第7染色体欠失細胞がないかどうかを確認する必要がある。保険で認められているサイモグロブリンの投与量は2.5~3.75mg/kgと幅が広く、至適投与量についてはよく分かっていない。サイモグロブリンは、リンフォグロブリンに比べて免疫抑制作用が強いため、サイトメガロウイルスやEBウイルスの再活性化のリスクが高いとされている。このため、治療後2~3週以降はできる限り頻回にEBウイルスコピー数をモニタリングする必要がある。重症例のうち初診時から好中球がほとんどなく、G-CSF投与後も好中球がまったく増えない劇症型の場合には、緊急的な臍帯血移植やHLA部分一致血縁ドナーからの移植適応がある。■ 難治例に対する治療免疫抑制療法が無効であった場合、初回治療としてELTが使用されなかった例に対しては約40%にELTの効果が期待できる7)。メテノロンやダナゾール(保険適用外)も重症度の低い一部の例には有効である。これらの薬物療法にすべて抵抗性であった場合には、非血縁ドナーからの骨髄移植の適応がある。支持療法としては、貧血症状の強さに応じて、ヘモグロビンで7g/dL以上を目安に1回あたり400mLの赤血球濃厚液‐LRを輸血する。輸血によって血清フェリチン値が1,000ng/mL以上となった場合には経口鉄キレート剤のデフェラシロクスを投与し、輸血後鉄過剰症による臓器障害を防ぐ。血小板数が1万/μL以下となっても、明らかな出血傾向がなければ予防的血小板輸血は通常行わないが、感染症を併発している場合や出血傾向が強いときには、血小板数が2万/μL以上となるように輸血を行う。4 今後の展望再生不良性貧血の発症の引き金となる自己抗原が同定されれば、その抗原に対する抗体や抗原特異的なT細胞を検出することによって、造血幹細胞に対する免疫的な攻撃によって起こった骨髄不全、すなわち再生不良性貧血であることが積極的に診断できるようになる。自己抗原やそれに対する特異的なT細胞が同定されれば、現在用いられているATGやCsAのような非特異的な免疫抑制剤ではなく、より選択的な治療法が開発される可能性がある。また、近年使用できるようになったELTは、治療抵抗性の再生不良性貧血に対しても約40%に奏効する画期的な薬剤であるが、どのような症例に奏効し、またどのような症例に染色体異常が誘発されるのか(ELTを使用すべきではないのか)は不明である。これらを明らかにするために前向きの臨床試験と定期的なゲノム解析が必要である。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)特発性造血障害に関する調査研究班(資料)(再生不良性貧血診療の参照ガイドがダウンロードできる)公的助成情報難病情報センター 再生不良性貧血(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報再生つばさの会(再生不良性貧血の患者と家族の会の情報)1)再生不良性貧血の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ. 再生不良性貧血診療の参照ガイド 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業特発性造血障害に関する調査研究班:特発性造血障害疾患の診療の参照ガイド(平成22年度改訂版); 2011. p3-32.2)Katagiri T, et al. Blood. 2011; 118: 6601-6609.3)Maruyama H, et al. Exp Hematol. 2016; 44: 931-939 e933.4)Seiki Y, et al. Haematologica. 2013; 98: 901-907.5)Sugimori C, et al. Blood. 2006; 107: 1308-1314.6)Townsley DM, et al. N Engl J Med. 2017; 376: 1540-1550.7)Olnes MJ, et al. N Engl J Med. 2012; 367: 11-19.公開履歴初回2013年09月26日更新2018年01月23日

473.

骨折治療用インプラント除去後感染に術前抗菌薬は有用か/JAMA

 膝下の骨折の治療に用いた整形外科用インプラント除去後の手術部位感染の予防において、手術前に抗菌薬投与を行っても感染リスクは低減しないことが、オランダ・アムステルダム大学医療センターのManouk Backes氏らが実施したWound Infections Following Implant Removal(WIFI)試験で示された。整形外科用インプラント除去術の手技は“clean(皮膚の菌汚染や局所感染がない)”とされ、手術部位感染率は2~3.3%と予測されるため、米国疾病管理予防センター(CDC)の最新のガイドラインでは抗菌薬の予防投与の適応はない。その一方で、予測を超える高い感染率が複数の研究で報告されている。JAMA誌2017年12月26日号掲載の報告。予防投与の効果を無作為化試験で評価 WIFI試験は、感染率が最も高い領域とされる膝下の骨折治療に用いられた整形外科用インプラント除去後の、抗菌薬予防投与の効果を評価する多施設共同二重盲検無作為化試験である(Netherlands Organization for Health Research and Development[ZonMw]の助成による)。 対象は、年齢18~75歳で、膝下(足、くるぶし、下腿)の骨折治療後に整形外科用インプラントの除去術を受けた患者であった。除外基準は、活動性の手術部位感染症や瘻孔、インプラント除去時の抗菌薬治療、術中の骨接合材の再設置、セファロスポリンのアレルギー、腎疾患、免疫抑制薬の使用、妊娠であった。 被験者は、術前にセファゾリン1,000mg+生理食塩液(0.9%)または生理食塩液(0.9%)をそれぞれ静脈内ボーラス投与する群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、米国CDCの判定基準に基づく術後30日以内の手術部位感染であり、副次アウトカムは身体機能、健康関連QOL、患者満足度とした。 2014年11月~2016年9月にオランダの19施設に500例が登録され、477例が割り付けの対象となった。6ヵ月間のフォローアップが行われ(最終フォローアップ日:2017年3月28日)、470例(セファゾリン群:228例、生食群:242例)が解析の対象となった。30日以内の手術部位感染:13.2% vs.14.9% 割り付け対象例(477例)の平均年齢は44歳(SD 15)、女性が274例(57%)であった。インプラント設置からの経過期間中央値は11ヵ月(IQR:7~16)だった。 30日以内の手術部位感染は66例(14.0%)で発症した(表層感染:58例、深層感染:8例)。このうちセファゾリン群が30例(13.2%)、生食群は36例(14.9%)と、両群間に有意な差を認めなかった(絶対リスク差:-1.7、95%信頼区間[CI]:-8.0~4.6、p=0.60)。 表層感染はセファゾリン群が29例(12.7%)、生食群は29例(12.0%)で、深層感染はそれぞれ1例(0.4%)、7例(2.9%)であり、いずれも両群間に有意差はみられなかった。 健康関連QOL(EuroQol 5-Dimension 3-Level[EQ-5D-3L])、身体機能(Lower Extremity Functional Scale[LEFS])、患者満足度(視覚アナログスケール[VAS])についても、両群間に有意な差はなかった。 著者は、「本試験の手術部位感染率は、既報の一連の後ろ向き試験に比べて高かった。前向き試験では退院後の手術部位感染の適切な把握は困難で、一般に過少報告となるため感染率は高くなることが多いとはいえ、14.0%は予想を超えて高く、観血的整復固定術後の感染率を上回る値である」としている。

474.

ビッグデータの分析による正常体温の個体差/BMJ

 正常体温は、加齢とともに低下し、正常体温が高いことはがんやBMIの増加と関連する可能性があることが、米国・ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のZiad Obermeyer氏らによる、長期的なビッグデータを用いた検討で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2017年12月13日号に掲載された。19世紀に開始されたヒトの深部体温の研究には長い伝統があるが、主に特定の集団の平均体温の確立に重点が置かれてきた。一方、体温は、患者によって大きく異なる多彩な因子(年齢と体内時計、代謝、排卵周期など)の影響を受けることが知られ、個々の患者のベースラインの正常体温には系統的な差異がある可能性が高まっているという。約3万5,000例の患者の体温と併存疾患などとの関連を解析 研究グループは、個々の患者の体温の評価を行い、ほかの生理学的測定値や健康状態との相関について検討するコホート研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。 米国の大規模研究病院の電子記録のデータセットを用いた。2010~12年に病院の救急部および外来を受診した患者を同定し、これらの患者の2009~14年の体温測定を含む外来受診データを収集した(37万4,306件)。 このうち、感染症の診断を受けていないか、抗菌薬を処方されておらず、体温が正常範囲内と予測される患者3万5,488例(体温測定:24万3,506件)を解析の対象とした。解析した因子では説明不能な体温が、死亡の予測因子に ベースラインの平均年齢は52.9歳で、女性が64%、非白人が41%であった。最も頻度の高い初回診断名は、変形性関節炎/変形性関節症(5.9%)であり、次いで背部痛(4.9%)、定期健診(4.5%)の順であった。 ベースラインの平均体温は36.6度(95%range:35.7~37.3度、99%range:35.3~37.7度)であった。3次医療施設で治療を受けた患者の1年死亡率は6.2%だった。 個々の患者のベースラインの体温は、さまざまな人口統計学的因子や併存疾患、生理学的測定値と関連した。たとえば、体温は加齢とともに低下し、年齢が10歳高くなるごとに0.021度低くなった(p<0.001)。白人男性と比較して最も体温が高かったのはアフリカ系米国人女性で、0.052度の差が認められた(p<0.001)。 また、がんは、体温が高いことと関連が認められた(0.020度、p<0.001)のに対し、甲状腺機能低下症は、体温が低いことと関連した(-0.013度、p=0.01)。さらに、BMIの1単位の増加は、体温が高いことと関連した(0.002度、p<0.001)。 一方、全体として、これらの因子で説明可能な体温の範囲は8.2%にすぎなかった。これに対し、事前に年齢、性別、人種、バイタル・サイン、併存疾患で補正すると、体温の0.149度(全体の1SDに相当)の上昇ごとに、1年死亡リスクが8.4%増加した(p=0.014)ことから、残りの説明不能な体温の範囲は、死亡の有意な予測因子であることが示唆された。 著者は、「個々の患者の体温には、測定誤差や環境因子のみに帰すことのできない重要な多様性があることが示された」とし、「説明不能な体温の範囲と死亡との顕著な相関は興味深く重要な知見であり、さらなる研究を要する」と指摘している。

475.

黄色ブドウ球菌菌血症へのリファンピシン併用、効果は?/Lancet

 黄色ブドウ球菌菌血症の成人患者において、標準抗菌薬治療にリファンピシンの補助的投与を行っても、全体的なベネフィットは変わらないことが確認された。英国・オックスフォード大学のGuy E Thwaites氏ら英国臨床感染症研究グループ(UKCIRG)による多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ARREST試験」の結果として、Lancet誌オンライン版2017年12月14日号で発表された。黄色ブドウ球菌は、世界中で重症市中感染症や院内感染の原因としてよくみられる。研究グループは、リファンピシンの補助的投与は、黄色ブドウ球菌の死滅を早め、原病巣や感染血液を速やかに除菌し伝播や転移のリスクを減じることで、細菌学的定義の治療失敗や菌血症の再燃、死亡を減らせるのではないかと仮説を立て、検証試験を行った。リファンピシン補助的投与を2週間行い、プラセボ投与と12週アウトカムを比較 試験は英国内の29病院から、黄色ブドウ球菌菌血症で積極的な抗菌薬治療を受けてから96時間以内の、18歳以上の患者を集めて行われた。 被験者は、中央で作成されたコンピュータ生成の経時的無作為化リストによって、標準抗菌薬治療とともに、2週間のリファンピシン補助的投与(体重によって600mgまたは900mg/日を経口または静注)もしくは同用量によるプラセボ投与を受ける群に1対1に割り付けられ追跡を受けた。患者、試験担当医、患者介護者は割り付けを盲検化された。 主要アウトカムは、細菌学的定義の治療失敗または菌血症再燃もしくは死亡(全死因)までの時間であった。評価期間は無作為化から12週間までで、治療について盲検化された独立レビュー委員会が判定にあたった。解析はintention-to-treat法にて行われた。治療失敗・再燃・死亡について、プラセボ投与と有意差なし 2012年12月10日~2016年10月25日に、試験適格であった758例が無作為化を受けた(リファンピシン群370例、プラセボ群388例)。 被験者は、男性が65%、年齢中央値65歳(IQR:50~76)、チャールソン併存疾患スコアは2(0~3)、ICU入室者は9%で、平均C反応性蛋白値は164(SE 3.7)mg/Lであった。 また、485例(64%)が市中感染患者で、132例(17%)が院内発症患者(入院後48時間以上で発症)であった。47例(6%)にメチシリン耐性が認められた。301例(40%)は原病巣が深部にあった(埋設した血管デバイスや心臓弁など)。標準抗菌薬の投与期間は29日間(IQR:18~45)。619例(82%)がflucloxacillinの投与を受けた。 12週時点の評価で、治療失敗・菌血症再燃・死亡を経験していた患者は、リファンピシン群62例(17%)、プラセボ群71例(18%)であった(絶対リスク差:-1.4%、95%信頼区間[CI]:-7.0~4.3、ハザード比[HR]:0.96、95%CI:0.68~1.35、p=0.81)。 無作為化から12週間に観察された有害事象について、重篤例(p=0.17)またはGrade3-4例(p=0.36)ともにエビデンスのある差は認められなかった。しかし、抗菌薬または試験薬が変更となった有害事象(リファンピシン群63例[17%]vs.プラセボ群39例[10%]、p=0.004)、薬物相互作用(リファンピシン群24例[6%]vs.プラセボ群6例[2%]、p=0.0005)について有意な差が観察された。

476.

小児の急性上気道感染症への抗菌薬、広域 vs.狭域/JAMA

 小児の急性気道感染症において、広域抗菌薬(アモキシシリン-クラブラン酸、セファロスポリン系、マクロライド系薬)の投与と狭域抗菌薬(アモキシシリン、ペニシリン)の投与は、臨床的アウトカムや大部分の患者中心アウトカムについて同等であることが示された。一方で有害事象の発生頻度は、広域抗菌薬群が狭域抗菌薬群よりも高率だった。米国・フィラデルフィア小児病院のJeffrey S. Gerber氏らが、3万例超の小児を対象にした後ろ向きコホート試験と、約2,500例の小児を対象とした前向きコホート試験を行って明らかにしたもので、著者は「今回の結果は、大部分の小児の急性気道感染症に対しては、狭域抗菌薬を使用することを支持するものだ」とまとめている。JAMA誌2017年12月19日号掲載の報告。生後6ヵ月~12歳の小児を対象に試験 研究グループは、米国ペンシルベニア州とニュージャージー州の小児プライマリケアネットワークに参画する診療所31ヵ所を通じて、2015年1月~2016年4月に急性気道感染症の診断を受け経口抗菌薬を投与した生後6ヵ月~12歳の小児を対象に、臨床的アウトカムを検証する後ろ向きコホート試験と、患者評価のアウトカムを検証する前向きコホート試験をそれぞれ行った。広域抗菌薬と狭域抗菌薬のアウトカムについて比較した。 後ろ向きコホート試験では、主要アウトカムは診断後14日間の治療失敗と有害事象だった。前向きコホート試験では、主要アウトカムは生活の質(QOL)、その他の患者評価のアウトカム、患者報告の有害事象だった。 両コホート試験について、層別解析や傾向スコアマッチング解析を行い、医療者による交絡因子や患者個人の背景による交絡因子をそれぞれ補正した。患者報告QOL、広域抗菌薬群でわずかに低スコア 後ろ向きコホート試験の被験者数は3万159例で、そのうち1万9,179例が急性中耳炎、6,746例がA群レンサ球菌性咽頭炎、4,234例が急性副鼻腔炎だった。このうち、広域抗菌薬を投与されたのは、14%(4,307例)だった。治療失敗率は、広域抗菌薬群3.4%、狭域抗菌薬群3.1%と同等だった(完全マッチング解析によるリスク差:0.3%、95%信頼区間[CI]:-0.4~0.9)。 前向きコホート試験の被験者は2,472例で、うち1,100例が急性中耳炎、705例がA群レンサ球菌性咽頭炎、667例が急性副鼻腔炎だった。広域抗菌薬を投与されたのは35%(868例)だった。小児患者のQOLについて、狭域抗菌薬群の平均スコアが91.5点だったのに対し、広域抗菌薬群では90.2点と、わずかに低かった(同リスク差:-1.4%、95%CI:-2.4~-0.4)。一方、その他の患者評価のアウトカムについては、両群で同等だった。 医療者が報告した有害事象の発生率は、狭域抗菌薬群2.7%に対し広域抗菌薬群は3.7%と高率だった(同リスク差:1.1%、95%CI:0.4~1.8)。患者が報告した有害事象の発生率も、狭域抗菌薬群25.1%に対し広域抗菌薬群は35.6%と高率だった(同リスク差:12.2%、95%CI:7.3~17.2)。

477.

再発性ディフィシル感染症に対する糞便移植-経口カプセル投与は有効か-(解説:小金丸博氏)-788

 クロストリジウム・ディフィシルは抗菌薬関連下痢症の原因となる主要な細菌である。クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)は、治療によりいったん改善しても約20%で再発し、再入院や医療費増加の原因となることが知られている。また1度再発した患者のうち、40~65%がさらなる再発を経験する。再発を繰り返すCDIの治療アルゴリズムはまだ確立していないが、近年、糞便移植の有効性が数多く報告され注目を集めている。 本研究は、再発性CDI患者を対象に、便細菌叢の投与経路による有効性の違いを検討した非盲検ランダム化非劣性試験である。少なくとも3回以上CDIを繰り返した18~90歳の患者を対象とし、経口カプセルで投与する群と大腸内視鏡で投与する群に分けて、治療効果、有害事象発生率、患者不快感などを評価した。慢性下痢症、炎症性腸疾患、がんで治療中の患者などは対象から除外された。1回の糞便移植で12週後にCDI再発を予防できたのは、経口カプセル投与群、大腸内視鏡投与群ともに96.2%であり、経口カプセル投与群の大腸内視鏡投与群に対する非劣性が示された(群間差:0%、片側95%信頼区間:-6.1%~無限大、p<0.001)。また、経口カプセル投与群では「まったく不快でない」と回答した人の割合が、大腸内視鏡投与群と比較し有意に高率だった。 糞便移植とは、健常者の便に含まれる腸内細菌叢を患者に投与することで正常な腸内環境を復元し、腸炎の治癒を図る治療法である。本研究では、再発性CDIに対する治療法として、経口カプセルによる糞便移植が大腸内視鏡投与と同等の高い有効率を示した。カプセル製剤にすることで経口投与が可能となり、患者の心理的、肉体的負担を軽減できるのは大きなメリットである。再発性CDIに対する糞便移植の有効性については評価が定まりつつあるが、投与経路、長期安全性、ドナーの選定方法など未解決な部分も存在するため、今後のさらなる研究が待たれる。 CDIに対する糞便移植は、日本ではまだ一般的でなく、保険適用にもなっていない。しかしながら、再発性CDIに対する高い有効性は魅力的であり、利便性や安全性が高まれば、治療方法の1つとして日本でも広がる可能性が十分あると考える。■「糞便移植」関連記事糞便移植は潰瘍性大腸炎の新たな治療となるか/Lancet

478.

プロバイオティクス・カプセル、アトピー性皮膚炎を改善

 新たな剤形で複数成分を含むプロバイオティクス・カプセル製剤は、小児・若年者におけるアトピー性皮膚炎(AD)の経過を改善する可能性が、スペイン・Hospital Universitario VinalopoのVicente Navarro-Lopez氏らによる無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果、示された。アトピー性皮膚炎疾患重症度評価(SCORAD)スコアが低下し、局所ステロイドの使用も減少したという。JAMA Dermatology誌オンライン版2017年11月8日号掲載の報告。 研究グループは2016年3月~6月に、新たな混合プロバイオティクス製剤の経口摂取について、有効性と安全性、ならびに局所ステロイドの使用に及ぼす影響を評価する目的で、12週間の無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を行った。 対象は、4~17歳の中等度AD患者50例(女児26例[50%]、平均[±SD]年齢:9.2±3.7歳)。試験前3ヵ月以内に全身性免疫抑制剤の使用歴のある患者、2週以内に抗菌薬使用歴のある患者、腸疾患合併の診断や細菌感染症の症状のある患者は除外された。 性別、年齢、発症年齢により層別化し、ブロックランダム化法によりプロバイオティクス群または対照群(プラセボ)に割り付け、凍結乾燥させたビフィズス菌(Bifidobacterium lactis)CECT 8145、ビフィズス菌(B.longum)CECT 7347、乳酸菌(Lactobacillus casei)CECT 9104を計109 CFU含むカプセル製剤(キャリアとしてマルトデキストリン使用)、またはプラセボ(マルトデキストリン)を毎日、12週間経口投与した。 主要評価項目は、SCORADスコアと局所ステロイドの使用日数とした。 主な結果は以下のとおり。・12週後、プロバイオティクス群は対照群と比較して、SCORADスコアの平均減少幅が19.2ポイント大きかった(群間差:-19.2、95%信頼区間[CI]:-15.0~-23.4)。・ベースラインから12週時点までのSCORADスコアの変化は、プロバイオティクス群-83%(95%信頼区間[CI]:-95~-70)、対照群-24%(95%CI:-36~-11)であった(p<0.001)。・対照群(220/2,032患者・日、10.8%)と比較して、プロバイオティクス群(161/2,084患者・日、7.7%)では局所ステロイドの使用が有意に減少したことが認められた(オッズ比:0.63、95%CI:0.51~0.78)。

479.

眼瞼炎は初期メタボリックシンドロームのサイン

 眼瞼炎は、メタボリックシンドローム(MetS)と有意に関連していることを、台湾・Show Chwan Memorial HospitalのChia-Yi Lee氏らが、台湾のLongitudinal Health Insurance Database(LHID)を用いて後ろ向きに症例対照研究を行い明らかにした。著者は、「眼瞼炎は初期のMetSであることを示すサインとして役立つ可能性がある。今後は、重症度の観点から眼瞼炎とMetSとの関連を調査すべきであろう」とまとめている。British Journal of Ophthalmology誌オンライン版2017年11月16日号掲載の報告。 研究グループは、台湾のLHIDを用い、2009~13年のデータを解析した。適格基準は、国際疾病分類(ICD)第9版の診断コードに従い、眼瞼炎と診断された患者で、法的盲、眼球除去、眼腫瘍の既往、眼瞼炎の診断と同時に抗菌薬治療が開始された患者は除外した。 眼瞼炎患者群と年齢、性別および疾患をマッチさせた非眼瞼炎患者(対照)群について、眼瞼炎とMetSとの関連について、多重Cox回帰モデルを用いた多変量解析にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、眼瞼炎患者群1万93例、対照群4万372例であった。・条件付きロジスティック回帰分析の結果、脂質異常症および冠動脈疾患の累積確率が高いことが示された。・補正後、眼瞼炎患者群は対照群に比べ、新規MetSの発症率が高かった。・サブグループ解析で、脂質異常症と冠動脈疾患は、眼瞼炎の先行発症と有意な相関が認められた。高血圧症、糖尿病、インスリン抵抗性と、眼瞼炎との間には相関は認められなかった。

480.

ペストに気を付けろッ! その2【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。今回は前回に引き続いてペストについてです。前回は、主にペストの歴史と疫学について学びました。現在、マダガスカルでアウトブレイク中ッ! とか言っていましたが、いつの間にかほぼ終息していますね。良かった良かった。しかし、またいつペストが流行するかわかりませんから、最低限の知識は持っておきましょう!ペストは「一類感染症」 疑ったら保健所に!はじめに重要な点ですが、ペストはわが国では「一類感染症」に指定されています。一類感染症と言えば、数年前に問題となったエボラ出血熱などと同じ括りになります。つまりッ! ペストが疑われた場合は、ただちに保健所に連絡して、特定感染症指定医療機関(全国に4施設)または第一種感染症指定医療機関(おおむね各都道府県に1施設)に転送し、隔離の上で診断・治療を行うことになります。自分の病院で診てはいけないのですッ!ところで漫画『リウーを待ちながら』(作・朱戸アオ/講談社)というペストを扱った作品をご覧になったことがありますでしょうか(本書でのCOIはありません)。これは日本のS県横走市という架空の自治体でアウトブレイクした多剤耐性(!)ペストと闘う話で、まぁ確かに面白いです。面白いんだけど…ペストだっつってんのに普通の総合病院で診療をしてるんですッ! 感染症法を完全無視ッ! 肺ペスト患者が普通に大部屋で入院ッ! 患者を隔離せんかい、隔離ッ! まあ飛沫感染ですから、厳密には個室隔離は不要だとは思いますが、一応法律上は隔離が必要です、はい。つーか、本来は、保健所に連絡して転院って流れになるんですが、そのまま自分の病院で診ちゃってるっていう…。良い子は絶対にマネすんなよっ! ていう内容です。ペストの感染経路のまとめさて、それはともかく前回ペストの感染経路について「腺ペストはノミに刺されることによって感染する」「腺ペストの患者の体液に曝露するとヒト-ヒト感染が成立する」「肺ペストの感染者やげっ歯類から飛沫感染によっても感染する」とご紹介しました。我ながら、何がなんだかわかりませんので、もう少し詳しくペストの感染経路についてご紹介したいと思います。図1はペストの感染経路について超絶わかりやすく示したものです。ペスト菌は、流行地域において野生のげっ歯類とノミの間をサイクルしています。なお、野生のげっ歯類がペストに感染して死亡した場合、土壌にペスト菌がプールされることがあります。野生のげっ歯類(あるいはヒト)が、この土壌の粉塵を吸入することで感染することがあります。画像を拡大するヒトへの感染経路は、要約しますと、1)ペスト菌を持つ野生環境でノミに吸血される2)ペストに感染した野生環境でげっ歯類(またはその死体)と直接接触する3)屋内・人間社会に生息するペストに感染したげっ歯類(またはその死体)と直接接触する4)ペスト菌に汚染された土壌の粉塵を吸入する5)肺ペストの患者からの飛沫感染の5つがあります(厳密にはほかにも感染動物の食肉を生で食べる、とかもあります)。基本的には、このうち1)~3)では腺ペスト、4)と5)では肺ペストを発症します。ペストの主な症状腺ペストは、ペストの80~90%を占めるといわれており、通常は曝露してから1~7日の潜伏期間の後に高熱、頭痛、嘔吐、ノミに刺された部位の所属リンパ節の腫大と疼痛などの症状が出現します。肺ペストは、腺ペストに比べると潜伏期が短く、急激に進行する呼吸困難、血痰などの呼吸器症状が急激に進行します。ペスト全体に対する割合は、数%とされていますが、2017年のマダガスカルのアウトブレイクでは、肺ペスト患者がより多くの割合で報告されています。いずれの病型も敗血症を起こし、全身に出血斑、壊死が出現することがあります。ペスト敗血症に至ると、治療を行わなければ数日~1週間程度で致死的になります。ペスト全体の10%程度が敗血症に至るとされています。図2は米疾病対策センター(CDC)の医師が撮影したペスト敗血症の臨床写真ですが、手指末端が壊死しています。これが「黒死病」と呼ばれた所以ですね。画像を拡大するペストの診断と治療ペストの診断ですが、ペストはペスト菌(Yersinia pestis)による細菌感染症ですので、ペスト菌を証明することで診断されます。血液、リンパ節、喀痰、病理組織などそれぞれの病態に応じた感染臓器の検体からの分離同定、蛍光抗体法での抗原検出、PCR法による遺伝子検出などによる病原体検出により確定診断となります。しかし! 何度も申しあげますが、ペストが疑われる場合は、保健所にただちに連絡すべしッ! ですので不用意に診断しちゃわないようにご注意ください。治療は抗菌薬が有効です。ストレプトマイシン、ドキシサイクリン、クロラムフェニコールといった「動物由来感染症によく使う系抗菌薬」で治療を行います。最後に予防ですが、残念ながらペストには有効なワクチンが現在ありません。ペスト発生国では、ネズミなどのげっ歯類、ノミ、ペストからの感染可能性のある患者や死体に接しないことが大切です(誰もそんなこと好き好んでしないと思いますが)。 また、入院患者対応としては、肺ペスト患者からは飛沫感染があるので、サージカルマスクの着用が有用です。ということで、2回にわたりペストについてお送りいたしました。次回こそは「バベシア症」についてご紹介したいと思います。1)Jonathan Cohen, et al. Infectious Diseases 4th Edition.Elsevier.2017.2)World Health Organaization. Plague: Fact sheet.

検索結果 合計:748件 表示位置:461 - 480