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HIVの2次治療、ドルテグラビルへの切り替えは可能か?/NEJM

 既治療のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者で、薬剤耐性変異の有無に関するデータがなく、ウイルス抑制下にある患者において、リトナビルブーストプロテアーゼ阻害薬(PI)ベースのレジメンからドルテグラビルへの切り替えは、リトナビルブーストPIを含むレジメンに対して非劣性であることが、ケニア・ナイロビ大学のLoice A. Ombajo氏らが同国4施設で実施した多施設共同無作為化非盲検試験の結果で示された。遺伝子型の情報がなく、リトナビルブーストPIを含む2次治療でウイルスが抑制されているHIV感染患者において、ドルテグラビルへの切り替えに関するデータは限られていた。NEJM誌2023年6月22日号掲載の報告。NRTI 2剤+リトナビルブーストPIからNRTI 2剤+ドルテグラビル群への切り替え評価 研究グループは、遺伝子型の情報がなく、ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬(NRTI)2剤と非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬(NNRTI)1剤による1次治療が無効で、NRTI 2剤とリトナビルブーストPIを含む2次治療を24週間以上行っており、ウイルスが抑制されている(登録前12週間および登録時のHIV-1 RNA<50コピー/mL)患者を、ドルテグラビルに切り替える(NRTI 2剤は継続)群(ドルテグラビル群)または現在の治療を継続する群(リトナビルブーストPI群)のいずれかに、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、米国食品医薬品局(FDA)のスナップショットアルゴリズムに基づいて評価した、48週時のウイルス学的失敗(2回の検査が連続して血漿中HIV-1 RNA≧50コピー/mLの患者の割合)であった。非劣性マージンは主要エンドポイントを満たした患者の割合の群間差が4ポイントとした。また、48週目までの安全性も評価した。ドルテグラビルへの切り替えのリトナビルブーストPI継続に対する非劣性を確認 2020年2月~9月に計1,114例がスクリーニングされ、795例が無作為化された(ドルテグラビル群398例、リトナビルブーストPI群397例)。このうち、2例が同意を撤回し、2例がプロトコール違反のため、intention-to-treat解析集団は791例(ドルテグラビル群397例、リトナビルブーストPI群394例)であった。 48週時に主要エンドポイントを満たした患者は、ドルテグラビル群20例(5.0%)、リトナビルブーストPI群20例(5.1%)であった。群間差は-0.04ポイント(95%信頼区間[CI]:-3.1~3.0)であり、非劣性基準を満たした。 ウイルス学的失敗例において、ドルテグラビル耐性変異またはリトナビルブーストPI耐性変異は検出されなかった。 治療に関連したGrade3/4の有害事象の発現率は、ドルテグラビル群5.7%、リトナビルブーストPI群6.9%で、両群で同程度であった。

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難治性クローン病の寛解導入と寛解維持に対するウパダシチニブの有用性(解説:上村直実氏)

 慢性かつ再発性の炎症性腸疾患であるクローン病(CD)の治療に関しては、病気の活動性をコントロールして患者の寛解状態をできるだけ長く保持し、日常生活のQOLに影響する狭窄や瘻孔形成などの合併症の治療や予防が非常に重要である。すなわち、十分な症状緩和と内視鏡的コントロールを提供する新しい作用機序の治療法が求められる中、最近、活動性とくに中等症から重症のCDに対しては、生物学的製剤により寛解導入した後、引き続いて同じ薬剤で寛解維持に対する有用性を検証する臨床試験が多く施行されている。今回は、CDの寛解導入および寛解維持療法における経口選択的低分子のJAK阻害薬であるウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)の有効性を示すRCTの結果が、2023年5月のNEJM誌に報告された。ウパダシチニブの導入療法および維持療法の主要評価項目である臨床的寛解および内視鏡的効果に関して、プラセボより有意に優れた結果を示すと同時に安全性に関しても許容範囲であった。この報告と同時に米国FDAは難治性CDの寛解導入と寛解維持を目的としたウパダシチニブを承認している。 リンヴォック錠は1日1回投与の経口薬で、わが国でも2020年に難治性の関節リウマチ(RA)に対して保険収載され、その後も2021年には関節症性乾癬およびアトピー性皮膚炎、2022年には強直性脊椎炎に対する治療薬として適応追加が承認されている。CDについては2023年6月26日、既存治療で効果不十分な中等症から重症の活動期CDの寛解導入および維持療法の治療薬として適応追加が承認された。 このように難治性CDに対しては潰瘍性大腸炎(UC)と同様にさまざまな生物学的製剤が開発されているが、一般臨床現場で注意すべきは重篤な感染症である。今回のJAK阻害薬であるウパダシチニブ、トファシチニブおよびフィルゴチニブは、わが国でもRAなどに対して比較的長い間使用されているが、自己免疫性疾患に対する新規薬剤のリスクとして結核やB型肝炎ウイルスの再活性化はよく知られており、感染症および悪性疾患の発生には留意する必要がある。とくに、本研究でも述べられているように、JAK阻害薬には血管血栓症や帯状疱疹の発生リスク上昇の可能性も報告されており、薬理作用に精通した長期的な患者管理が重要であろう。

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第167回 「長期収載品は差額ベッドと同じ」、止められない自己負担化の流れ 「骨太の方針2023」で気になった2つのこと(前編)

山形・酒田で日本の人口減を再び実感こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、所用があって山形県の酒田市に行ってきました。酒田には取材や登山(鳥海山、月山)で度々訪れますが、行くたびに町が寂れていくのが気になります。3年前、酒田駅前におしゃれなホテルができました。しかし、その周辺の土地は“歯抜け”の状態。駐車場にもなっていない空き地も多く、町中には閉院した診療所もありました。「第161回 止められない人口減少に相変わらずのんきな病院経営者、医療関係団体。取り返しがつかなくなる前に決断すべきこととは…(前編)」でも地方の医療機関の大変さについて書きましたが、新幹線が通っておらず、鉄路や車では大都市から時間がかかる地方都市の厳しさを、酒田に来て改めて実感しました(飛行機だと羽田からわずか1時間ですが)。とは言うものの、江戸時代から続くという居酒屋の名店、「久村の酒場」は、相変わらず料理が美味しく満員で、夏の東北の味を存分に堪能することができました。「長期収載品等の自己負担の在り方」に言及さて今回は、「骨太方針2023」について書きます。政府は16日、「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義〜未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現〜」(骨太方針2023)を閣議決定しました1)。今年の「骨太」については既にあちこちで論評されていますので、ここでは盛りだくさんの医療や社会保障関連の項目から、個人的に気になった2つを取り上げたいと思います。医療や社会保障関連の内容は、「第3章 我が国を取り巻く環境変化への対応」の「3.国民生活の安全・安心」と、「第4章 中長期の経済財政運営」の「2.持続可能な社会保障制度の構築」に盛り込まれています。「第3章」には「花粉症対策」「熱中症対策」「感染症対策」など、一般の人にもわかりやすいキャッチーな内容が並びます。一方、本丸である「第4章」には、政府が推し進めたい社会保障関連の政策が並びます。この中でまず気になったのは、「長期収載品等の自己負担の在り方」への言及です。長期収載品の後発医薬品への置換え、数量ベースでは約8割だが金額ベースでは約4割「2.持続可能な社会保障制度の構築」の中では、「創薬力強化に向けて、革新的な医薬品、医療機器、再生医療等製品の開発強化、研究開発型のビジネスモデルへの転換促進等を行うため、保険収載時を始めとするイノベーションの適切な評価などの更なる薬価上の措置」などさまざまな対策を推進するとしたうえで、「医療保険財政の中で、こうしたイノベーションを推進するため、長期収載品等の自己負担の在り方の見直し、検討を進める」と書かれています。長期収載品は、新薬の特許が切れた後に、薬価基準に収載されたままになっている医薬品のことです。後発品があるにもかかわらず、長期収載品の使用は現在でも1.8兆円と薬剤費全体の2割を占めています。また、後発医薬品への置換えは数量ベースでは約8割に達しようとしていますが、金額ベースでは約4割と諸外国と比較しても低い水準にある、とのことです。「骨太の方針2023」は、長期収載品の売上に依存した現在の日本の先発メーカーのビジネスモデルを変革せよ、と言っているわけです。厚生労働省の有識者検討会で「選定療養」とする案浮上この「骨太」の内容に至る直前には前哨戦とも言える議論がありました。今年1月26日に開かれた厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」は、先発メーカーの長期収載品に依存するビジネスモデルからの脱却が論点となりました。そこではなんと、長期収載品の選択が患者の自由意思で行われていることから、差額ベッドなどのように長期収載品を「選定療養」とし、長期収載品と後発品との差額を自己負担としては、という議論もあったとのことです。つまり、安い後発品に比べ長期収載品は無駄な医療費を使う“贅沢品”なので自己負担させよ、というのです。同検討会は6月12日に報告書2)を公表しています。そこには、「後発品への置換えが進んでいない長期収載品については、様々な使用実態や安定供給の確保を考慮しつつ、選定療養の活用など、後発品の使用促進に係る経済的インセンティブとしての患者負担の在り方について、議論が必要ではないか」との一文が入りました。日医は「極めて慎重かつ丁寧に議論することが大切」と牽制日本の先発メーカーに創薬力を付けてもらい、長期収載品の売上に頼らないビジネスモデルをつくってほしい、という考えはもっともです。実際、それが国際競争力を削いできた点は否定できないからです。併せて、「長期収載品と後発品との差額を自己負担とする」というプランも私自身は完全に同意できます。しかし、この提案、現場の医療関係者には少なからぬ動揺を引き起こしました。日本医師会の松本 吉郎会長は、6月21日の定例記者会見で「骨太の方針2023」の各項目への日医の見解を語りました。その中で「長期収載品等の自己負担の在り方の見直し、検討を進める」と記されたことに対し、「国民目線をもって極めて慎重かつ丁寧に議論することが大切」だと述べました。保険給付範囲が狭まってしまうことや、長期収載品を今でも“愛用”する医師が少なくないことを踏まえた見解と見られますが、実際に長期収載品の自己負担化が実現するかどうかは、これから本格化する中央社会保険医療協議会の議論を待つことになります。次回は、「骨太の方針」に3年連続で記述されたある制度について書きます。(この項続く)参考1)経済財政運営と改革の基本方針2023/内閣府2)医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会報告書/厚生労働省

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新型コロナワクチン、午前に打つと効果が高い?

 概日リズム(体内時計)によってワクチンによる防御効果に差が出るという研究結果が報告された。米国・ワシントン大学のGuy Hazan氏らによる本研究はJournal of Clinical Investigation誌2023年6月1日号に掲載された。 研究者らは、イスラエルの大規模コホートに登録された1回以上COVID-19ワクチンを接種した151万5,754例(12歳以上、99.2%がファイザー製BNT162bを接種)を後方的に分析、ワクチンの接種時間とCOVID-19感染予防効果との関連を分析した。エンドポイントはブレークスルー感染、COVID-19関連の救急外来受診および入院だった。ワクチン接種の時間帯は、午前(8時~11時59分)、午後(12時~15時59分)、夜間(16時~19時59分)に分けた。年齢、性別、合併症の有無の差を調整するためにCox回帰を採用した。 主な結果は以下のとおり。・2020年12月19日~2022年4月25日に27万8,488例がCOVID-19検査で陽性となり、COVID-19関連の救急外来受診(陽性判定から前後7日以内と定義)が4,501件、COVID-19関連の入院が3,824件あった。・ブレークスルー感染率はワクチン接種の時間帯によって異なり、午前中~午後の早い時間に接種した場合に最も低く、夕方に接種した場合に最も高くなった。この差異は、患者の年齢、性別、および併存疾患を調整した後も有意なままで、2回接種とブースター接種との比較でも一貫していた。・午前の接種者は高齢で併存疾患が多い人の割合が高く、人口統計学的変数調整後は午前と夜間群の差はさらに広がった。・日中接種の優位性は、若年層(20歳未満)と中高年層(50歳以上)で最も顕著であった。・COVID-19の関連入院は、2回目のブースター接種のタイミング(試験期間中は高齢の高リスク者のみが対象)によって大きく変化した(午前と夜間のハザード比:0.64、95%信頼区間:0.43~0.97、p=0.038)。 研究者らは「COVID-19の接種時刻とその効果とのあいだに有意な関連があった。このことは、集団予防接種プログラムに示唆を与えるものである」としている。

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小児への新型コロナワクチン、接種率を上げるために/ファイザー

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、5月8日に感染症法上の位置付けが5類に移行した。ワクチンや治療薬によってパンデミックの収束に貢献してきたファイザーは6月2日、「5類に移行した新型コロナウイルス感染症への対策や心構えとは~一般市民への最新意識調査の結果を交え~」と題してメディアに向けたラウンドテーブルを開催した。講師として石和田 稔彦氏(千葉大学 真菌医学研究センター感染症制御分野 教授)と舘田 一博氏(東邦大学 医学部 微生物・感染症学講座 教授)が登壇した。小児に対する新型コロナワクチン接種の意義 石和田氏は講演「小児に対する新型コロナワクチン接種の意義」にて、第6派以降の小児の新型コロナの感染経路や症状の傾向、ワクチン接種率の低い背景などについて解説した。 小児の新型コロナ感染は、第5波(デルタ株)までは主に成人が中心で小児患者は少なく、成人家族からの感染が主体だったが、第6波(オミクロン株)以降は小児患者も急増し、小児の集団感染例もみられるようになった。また、小児の入院受け入れ先が不足しており、流行時に小児患者の収容が困難な状態が続いている。 小児のコロナ入院患者の症状としては、発熱、呼吸苦、咳嗽、下痢、川崎病様症状などがあるが、とくにオミクロン株流行以降は、けいれん、クループ、嘔吐といった症状が増加しているという。また、コロナ罹患後症状(コロナ後遺症、long COVID)は、小児においても懸念されている。 一方で、国内の小児の新型コロナワクチン接種率は、成人の接種率と比べて極めて低いままとどまっている。2023年6月20日時点での接種率は、全年齢では2回接種80.0%、3回接種68.7%に対して、小児(5~11歳)では2回接種(初回シリーズ)23.4%、3回接種(追加接種1回)9.7%、乳幼児(生後6ヵ月~4歳)では3回接種(初回シリーズ)2.8%である1)。 米国の2023年5月11日時点での接種率は、全年齢の初回シリーズ接種69.5%、追加接種17.0%に対して、5~11歳の初回シリーズ32.9%、追加接種4.8%、乳幼児の初回シリーズでは2~4歳6.1%、2歳未満は4.7%であり2)、11歳以下の初回シリーズの接種率はいずれも日本を上回っている。 石和田氏は本邦における小児のワクチン接種が低い背景として、成人へのワクチンよりも導入が遅れたこと、流行の初期では小児の感染例が少なかったこと、ウイルス変異による軽症化、先に接種した保護者がワクチン副反応について懸念を抱いていたことを挙げた。小児科医の間でも、当初は国内での臨床試験結果がなかったことで副反応への懸念があったという。 より高い感染予防効果を得るためには、接種率を上げて集団免疫を得ることが必要とされる。コロナ感染によって基礎疾患のない小児でも重症化・死亡する例も認められており、なおかつ現状では小児に使用できる治療薬も極めて少ないことも危惧されている。 同氏は最後に、3月28日にWHOが発表したワクチン接種ガイダンス3)において、「健康な小児・青少年が低優先度」と記載されたことについて誤解のないように解釈することの重要性を指摘した。諸外国では感染またはワクチンによる高い集団免疫が得られつつあり、その他の疾病負担や費用対効果、医療体制の維持を考慮することが前提にある。 一方で、日本では新型コロナに対する免疫を持たない小児がいまだに多く、集団免疫が不十分である。また、医療資源が限定される国ではないため、接種に優先順位を付ける必要性は低く、小児へのコロナワクチン接種の意義は高い。本件については6月9日に、日本小児科学会からも「小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方(2023.6追補)」のなかで、すべての小児への初回シリーズおよび適切な時期の追加接種を推奨するという提言が発表された4)。どの患者に抗ウイルス薬を推奨するか 続いての舘田氏の講演「新型コロナウイルス感染症の総括と今後心掛けるべきこと」では、新型コロナが5類移行となったことを受けてファイザーが実施した意識調査の結果が紹介された。 本調査では、2023年4月に全国の20~79歳の1,200人を対象に、新型コロナウイルス感染症について人々が抱くイメージなどを聞いたところ、流行当初は8割近くが「怖い病気である」と認識されていたものの、現在は逆に、全体の65.4%が「流行当初よりも怖い病気でないと感じている」と認識していた。一方、重症化に対する意見では全体の8割以上が不安に思っており、「非常に怖いと思う」と答えた人は、60代で38%、20代では27%であった。舘田氏は、若い世代でも恐怖感を抱いている人の割合が高いことは注目に値すると言及した。 本アンケートによると、新型コロナの経口抗ウイルス薬の認知度は、「詳しく知っている」9.3%、「あることは知っているが、詳しく知らない」65.1%、「あることを知らなかった」25.7%であり十分な認知度ではなかったが、新型コロナに感染した場合は「抗ウイルス薬を使ってほしい」割合は70.9%に上った。その理由として多い順に「重症化したくない」「早く治したい」「後遺症が怖い」が挙げられた。 舘田氏は、抗ウイルス薬は医療経済的な視点からも、リスクの高い患者から優先順位を付けて投与することが望ましく、推奨する患者の特徴を次のように挙げた。・高齢者で基礎疾患から重症化しやすいと思われる人・抗がん剤、免疫抑制剤などを服用している人・呼吸苦、低酸素血症、肺炎像など、主治医の判断で重症化が否定できない人・インターフェロン(INF)-λ3検査で高値を示す人・I型INFなどに対する自己抗体を有している人・ワクチン接種を受けていない人/受けられない人・不安が強く早期の治療を希望する人 上記を踏まえて、感染した場合は早期受診と早期治療という感染症の基本原則が重要だと訴え、また今後発表されるエビデンスを注視しながら、使用方法を考慮していかなければならないとした。

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低リスク骨髄異形成症候群の貧血にluspaterceptは?/Lancet

 赤血球造血刺激因子製剤(ESA)による治療歴のない低リスクの骨髄異形成症候群(MDS)患者の貧血治療において、エポエチンアルファと比較してluspaterceptは、赤血球輸血非依存状態とヘモグロビン増加の達成率に優れ、安全性プロファイルは全般に既知のものと一致することが、ドイツ・ライプチヒ大学病院のUwe Platzbecker氏らが実施した「COMMANDS試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年6月10日号に掲載された。26ヵ国の第III相無作為化対照比較試験 COMMANDSは、26ヵ国142施設が参加した第III相非盲検無作為化対照比較試験であり、2019年1月~2022年8月の期間に患者の登録が行われた(CelgeneとAcceleron Pharmaの助成を受けた)。今回は、中間解析の結果が報告された。 対象は、年齢18歳以上、ESAによる治療歴がなく、WHO 2016基準でMDSと診断され、国際予後判定システム改訂版(IPSS-R)で超低リスク、低リスク、中等度リスクのMDSと判定され、赤血球輸血を要し、骨髄芽球割合<5%の患者であった。 被験者は、luspaterceptまたはエポエチンアルファの投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。luspaterceptは3週間に1回皮下投与され、1.0mg/kg体重から開始して可能な場合は最大1.75mg/kgまで漸増した。エポエチンアルファは週1回皮下投与され、450IU/kg体重から開始して可能な場合は最大1,050IU/kgまで漸増した(最大総投与量8万IU)。 主要エンドポイントは、intention-to-treat集団において、試験開始から24週までに、12週以上で赤血球輸血非依存状態が達成され、同時に平均ヘモグロビン量が1.5g/dL以上増加することであった。 356例(年齢中央値74歳[四分位範囲[IQR]:69~80]、男性 56%)が登録され、luspatercept群に178例、エポエチンアルファ群にも178例が割り付けられた。中間解析には、24週の投与を完遂、および早期に投与中止となった301例(luspatercept群147例、エポエチンアルファ群154例)が含まれた。主要エンドポイント達成率はluspatercept群59%、エポエチンアルファ群31% 主要エンドポイントを達成した患者は、エポエチンアルファ群が48例(31%)であったのに対し、luspatercept群は86例(59%)と有意に高率であった(奏効率の共通リスク差:26.6、95%信頼区間[CI]:15.8~37.4、p<0.0001)。 また、(1)24週のうち12週以上で赤血球輸血非依存状態を達成した患者(luspatercept群67% vs.エポエチンアルファ群46%、名目p=0.0002)、(2)24週のすべてで赤血球輸血非依存状態を達成した患者(48% vs.29%、名目p=0.0006)、(3)国際作業部会(IWG)基準で8週間以上持続する赤血球系の血液学的改善効果(HI-E)(74% vs.51%、名目p<0.001)は、いずれもluspatercept群で有意に良好だった。 投与期間中央値は、エポエチンアルファ群(27週[IQR:19~55])よりもluspatercept群(42週[20~73])が長かった。最も頻度の高いGrade3/4の治療関連有害事象(患者の≧3%)として、luspatercept群では高血圧、貧血、呼吸困難、好中球減少症、血小板減少症、肺炎、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、MDS、失神が、エポエチンアルファ群では貧血、肺炎、好中球数減少症、高血圧、鉄過剰症、COVID-19肺炎、MDSがみられた。 luspatercept群の1例(78歳)が、3回目の投与後に急性骨髄性白血病と診断されて死亡し、担当医により試験薬関連と判定された。 著者は、「これらの結果をより強固なものにし、低リスクMDSの他のサブグループ(SF3B1遺伝子の変異なし、環状鉄芽球なしなど)に関する知見をさらに精緻なものにするために、今後、長期のフォーアップと追加データが求められるだろう」としている。

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第153回 ふたたび医療崩壊の危機 新型コロナ感染拡大による病床不足深刻化/沖縄県

<先週の動き>1.ふたたび医療崩壊の危機 新型コロナ感染拡大による病床不足深刻化/沖縄県2.2024年度の診療報酬改定に向けて「かかりつけ医機能」を議論/厚労省3.認知症基本法に基づく対策の強化と推進を本格化へ/厚労省4.コロナ禍で高齢者の医療情報収集が急増、ネット利用率50%に/内閣府5.来年度の専攻医シーリングを了承-地域医療の偏在是正へ検討を進める/厚労省6.眼科医、白内障手術で賄賂受け取りの疑い 医療機器会社が関与/奈良県1.ふたたび医療崩壊の危機 新型コロナ感染拡大による病床不足深刻化/沖縄県沖縄県では新型コロナウイルスの感染拡大により入院患者が増加し、病床不足が深刻化している。すでに救急を一部制限している医療機関が7ヵ所の他、一般医療の制限もかけている医療機関が3ヵ所になっており、医療従事者は、「今後、必要な医療を受けられなくなる可能性がある」と警告している。沖縄県立中部病院では、人手不足と病床の不足から救急外来を制限しており、他の病院と連携して対応しているが、すでに限界に近い状況であり、さらなる感染拡大で他の病気に対応できなくなる恐れがある。石垣島の沖縄県立八重山病院では、コロナ専用病床が満床となり、感染者が急増していることから医療破綻の危機に直面している。住民に対しては感染防止対策の徹底を呼びかけている。沖縄県全体でも新型コロナの患者数が前週比で1.5倍に増え、患者の搬送先を探すのに時間がかかるケースも出ている。医療提供体制のひっ迫が進んでおり、救急診療や一般診療の制限も行われている。県内の医療機関では医療従事者の感染や勤務困難者も増加しており、深刻な状況が続いている。県は軽症の場合は救急受診を控えるよう呼びかけている。参考1)沖縄がコロナ拡大で救急制限 入院500人超え、搬送が困難な事例も増加「ぎりぎりの総力戦」(琉球新報)2.2024年度の診療報酬改定に向けて「かかりつけ医機能」を議論/厚労省厚生労働省は、6月21日に中央社会保険医療協議会の総会を開催した。この中で2024年度の診療報酬改定に向けて、外来医療の評価について議論を始めた。地域医療の提供体制を整備するために、診療所などの「かかりつけ医機能」を強化し、医療機関の役割分担と連携を後押しすることが目標。議論の中では「かかりつけ医機能」に加えて、生活習慣病対策やオンライン診療についても検討される。また、2025年4月からは診療所や病院が「かかりつけ医機能」の整備状況を報告する新制度が開始される。今後、同省内で制度の具体的な評価内容が検討され、診療報酬における評価も議論、来年春の診療報酬改定で具体化される見通し。参考1)中央社会保険医療協議会 総会(厚労省)2)「かかりつけ医機能」推進の議論始まる 介護との連携強化などがテーマに(CB news)3)かかりつけ医機能は「地域の医療機関が連携して果たす」べきもの、診療報酬による評価でもこの点を踏まえよ-中医協総会(1)(Gem Med)3.認知症基本法に基づく対策の強化と推進を本格化へ/厚労省6月14日に参議院本会議で厚生労働省提出の「認知症基本法」が全会一致で可決・成立した。同省では、この法律に基づいて、認知症患者への対策の強化と推進を目指し、基本計画の策定に向けた検討を本格化させることが明らかになった。同法は、認知症の人が暮らしやすい環境を整えるため、国や自治体の取り組みを定めており、法律では、認知症の人が尊厳を保持し、希望を持って暮らせるよう、認知症施策推進本部の設置や交通手段の確保、地域での見守り体制整備などを求め、課題の整理と政策について検討を年末までに行う予定。今後、増えていく認知症について、国民の理解促進や若年性アルツハイマー患者の就労機会の確保、脳科学の研究などが論点となる見通し。同省の研究班による推計では、認知症は増加傾向であり、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になる見込み。参考1)認知症基本法案(衆議院)2)政府 認知症対策の検討本格化へ 若い患者が働ける機会確保など(NHK)3)参院本会議 認知症基本法が成立 国や自治体の取り組み定める(同)4.コロナ禍で高齢者の医療情報収集が急増、ネット利用率50%に/内閣府内閣府は6月20日に、令和5年版「高齢社会白書」閣議決定を行い、高齢者のインターネット利用に関するデータを発表した。この中で、新型コロナウイルスの感染拡大により、高齢者の間でネット利用が急速に広まったことが明らかになった。政府が実施した調査によれば、65歳以上の高齢者のうち、医療や健康に関する情報をインターネットで調べる人の割合が2022年には50.2%に達し、5年前の調査結果の20.0%から大幅に増加していた。高齢者がネットで調べる内容は、病気に関する情報が最も多く、39.0%を占めていた。具体的には、病名や症状、処置方法についての情報収集が主な目的。その他、医療機関や薬の効果や副作用、自分でできる運動やマッサージの方法などについてもネットで調べる割合が増えていることが明らかとなった。政府は、新型コロナウイルスの感染拡大により人との直接的な接触が制約されたため、高齢者にとってインターネットが重要な情報収集手段となったと分析している。政府は、この結果を踏まえて高齢者の情報アクセスの向上策やインターネット利用の支援策を検討していく方針。参考1)令和5年版高齢社会白書[全体版/PDF版](内閣府)2)ネット使う高齢者、コロナ前の20%から50%に急増…医療機関や病気の症状調べる(読売新聞)3)ネットで医療情報調べる高齢者、コロナ禍前の2.5倍に 23年版の高齢社会白書(CB news)5.来年度の専攻医シーリングを了承-地域医療の偏在是正へ検討を進める/厚労省厚生労働省は、6月22日に医道審議会医師分科会の医師専門研修部会を開催し、24年度の専攻医採用のシーリング(最大採用数)について、日本専門医機構の提案を了承した。既存のプログラムについては、23年度と同じシーリング数とすることが決まり、厚労省や都道府県知事の意見も検討する。今後、審査を経て、12月から専攻医の募集が開始される予定。専攻医の採用については、地域の医師や診療科の偏在を是正するために、都道府県や診療科ごとにシーリングが設けられており、2023年度の専攻医採用では、東京や京都、大阪、福岡などが対象となっていた。部会では、地域医療を守るためにシーリングを維持する必要があるとの指摘があり、医師の偏在が解消されるよう、さまざまな角度から検証するよう求める意見も出された。また、シーリング開始後全国で人口当たりの専攻医数は増加傾向にあり、診療科別では「総合診療科」「救急科」の医師は増加しているが、「外科」「内科」では苦戦していることが明らかになった。参考1)2024年度からの新専門医制度研修を受ける専攻医、募集遅らせるわけにいかず「現行シーリングを維持」したい-専門医機構(Gem Med)2)令和5年度第1回医道審議会医師分科会 医師専門研修部会(厚労省)4)日本専門医機構 2024年度プログラム募集シーリング数[案](同)6.眼科医、白内障手術で賄賂受け取りの疑い 医療機器会社が関与/奈良県奈良県の公立病院の眼科医が、白内障の手術で使用する眼内レンズを優先的に使う見返りに現金80万円を受け取った疑いで書類送検された。大阪府警によると、この医師が2019年から2021年にかけて3回にわたり、医師名義の口座に現金を振り込ませたため、収賄疑いで書類送検した。さらに大阪府警はこの医師の他に、医療機器会社「スター・ジャパン」の役員ら5人も書類送検した。府警は、医師と会社との間での契約期間中に使用されるレンズの割合が異常に高かったため、現金はレンズの売り上げ確保のための賄賂だったと判断した。 この問題は、全国の総合病院などの眼科医が同社に対し手術動画を提供し、現金を受け取っていた問題から発展している。医療機器業公正取引協議会は、同社に厳重警告を行っており、大和高田市立病院は事実関係を確認し、市との対応を協議する意向。スター・ジャパンは捜査に全面的に協力し、再発防止のためのコンプライアンス強化策を実施するとコメントしている。参考1)報道の件に関して (スター・ジャパン合同会社)2)手術動画の提供医を書類送検 医療機器会社役員ら5人も(東京新聞)3)大和高田市立病院の眼科医 医療機器使用で収賄疑い 書類送検(NHK)

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事例026 在宅療養指導管理料算定時のオスバン消毒薬の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説在宅自己導尿指導管理料を算定している患者に蜂窩織炎ができたため、その部位の消毒用に院外処方箋にてオスバン消毒薬(一般名:ベンザルコニウム塩化物液)を処方したところ、「突合点検結果連絡書(兼 処方箋内容不一致連絡書)」にて薬剤料の査定通知が届きました。査定理由には、「在宅療養指導管理料の算定」とありました。事例では、蜂窩織炎に使用するために処方されており「C106 在宅自己導尿指導管理料」とは異なる部位と目的に対しての投与とカルテに記載されていました。ところが、レセプトにも処方箋にもそのコメントがありません。「処方箋内容不一致連絡」を行いましたが、認められずに翌月の報酬から相殺となりました。「第1款 在宅療養指導管理料」のすべてにかかる「一般的事項」には「(12)在宅療養指導管理料を算定する場合には、当該指導管理に要する消毒薬、衛生材料(中略)等は、当該保険医療機関が提供すること。なお、当該医療材料の費用は、別に診療報酬上の加算等として評価されている場合を除き所定点数に含まれ、別に算定できない」とあります。在宅療養指導管理料の款に属する「在宅自己導尿指導管理料」を算定する場合にも適用される規定です。消毒薬は施行目的がいかなる場合であっても包括されて算定できないとされて査定になったものでした。医師にはこの旨を説明し、院外処方箋では消毒薬を処方しないことをお願いして査定対策としました。消毒薬は、傷病名と部位ならびに施用法・用量を処方箋ならびにレセプトに簡潔明瞭に記載し、同日に処置料ならびに在宅療養指導管理料などの算定がない場合に算定を認められるケースがあることを申し添えます。

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感染対策義務のない学会参加、コロナ感染はどれくらい?

 対面式の学術集会参加後の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染率を調べた報告はあるが1,2)、オミクロン株流行期に開催された感染対策義務のない学術集会参加後のSARS-CoV-2感染率は報告されていない。そこで、Saarland University Medical CenterのAlaa Din Abdin氏らは、オミクロン株流行期に感染対策義務なしで開催された、ドイツ眼科学会年次総会2022の参加者4,463人を対象として、学術集会参加後のSARS-CoV-2感染率と感染に関連する因子を検討した。その結果、調査対象者の8%が学術集会後にSARS-CoV-2検査陽性となり、ほかの研究1,2)で報告されている割合(0~1.7%)よりも高かった。また、過去にSARS-CoV-2感染歴があると学術集会での感染は少なく、民泊利用者は感染が多かった。本研究結果は、JAMA Network Open誌2023年6月13日号のリサーチレターで報告された。 ドイツ眼科学会年次総会2022は、2022年9月28日~10月2日にドイツ・ベルリンで開催された。参加にあたり、SARS-CoV-2感染の自己検査やワクチン接種、マスク着用などは求められなかった。学術集会後の2022年10月22日に、参加者にオンラインでアンケートを送付し、SARS-CoV-2検査陽性率、SARS-CoV-2感染に関連する因子を検討した。 主な結果は以下のとおり。・学術集会参加者4,463人のうち、38.2%(1,709人)がアンケートに回答し、有効回答率は30.4%(1,355人)であった。・学術集会後にSARS-CoV-2陽性になったと回答したのは8.0%(109人)であった。・SARS-CoV-2検査を実施した786人の検査実施時期は、学術集会後1週間以内が88%(690人)であった。・SARS-CoV-2感染歴ありは、学術集会後にSARS-CoV-2陽性になった参加者の17.4%(19人)であったのに対し、陰性の参加者では62.5%(423人)であり、学術集会後のSARS-CoV-2陰性と関連していた(p<0.001)。・民泊の利用は、学術集会後のSARS-CoV-2検査陽性と関連していた(p=0.01)。・ワクチン接種者(2回以上の接種)の割合は97.8%(1,342人)であり、ワクチン接種歴は、学術集会後のSARS-CoV-2検査結果と関連がなかった。・移動手段、移動中・学術集会中のマスク着用、学術集会への参加期間は、いずれも学術集会後のSARS-CoV-2検査結果と関連がなかった。

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抗CD7塩基編集CAR-T細胞療法、T細胞性ALLに有望/NEJM

 英国・Great Ormond Street Hospital for Children NHS TrustのRobert Chiesa氏らは、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)の小児患者を対象とした、抗CD7塩基編集キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法の第I相試験において、最初の3例中2例で寛解が得られたことを報告した。CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)によるシチジンの脱アミノ化は、DNAに切断を生じさせることなくシトシンからチミンへ極めて正確に塩基置換変異を起こすことができる。すなわち、転座やその他の染色体異常を誘発することなく遺伝子を塩基編集し不活性化できることから、再発T細胞白血病小児患者において、この技術の使用が検討されている。著者は、「今回の中間結果は、再発白血病患者に対する塩基編集T細胞療法のさらなる研究を支持するもので、また、免疫療法に関連した合併症の予想されるリスクも示している」とまとめている。NEJM誌オンライン版2023年6月14日号掲載の報告。塩基編集したCAR-T細胞を作製 研究グループは、塩基編集を使用して万能で容易に入手可能なCAR-T細胞を作製した。健康ボランティアドナーのT細胞を、T-ALL患者で発現するCD7(CAR7)に特異性を有するCARを発現するよう、レンチウイルスを用いて形質転換した。 次に、リンパ球除去血清療法、CAR7 T細胞のフラトリサイド(CD7を発現している正常T細胞の殺傷性)および移植片対宿主病を回避するため、塩基編集を使用してCD52受容体、CD7受容体、およびT細胞受容体(TCRαβ)のβ鎖をコードする3つの遺伝子をそれぞれ不活化した。 再発白血病小児患者3例を対象に、これらの塩基編集CAR7(BE-CAR7)の安全性を検討した。3例中2例で分子学的寛解 1例目は同種幹細胞移植後に再発したT-ALLの13歳女児で、BE-CAR7単回投与後28日以内に分子的寛解が得られた。その後、元のドナーから強度を下げた(非骨髄破壊的前処置後)同種幹細胞移植を受け、免疫学的再構成に成功し、白血病寛解が継続した。 2例目は維持療法中に再発したcortical T-ALLの13歳男児である。BE-CAR7単回投与後、19日目および25日目の骨髄評価では形態学的寛解がみられたものの、PCR検査で微小残存病変が認められ、黒色アスペルギルスの重複感染による肺合併症の進行により33日目に死亡した。 3例目は、2回目の同種幹細胞移植後に再発し、混合型急性白血病からCD7陽性のT-ALLに移行した15歳男児である。BE-CAR7単回投与後28日目に分子学的完全寛解が認められ、同種幹細胞移植を受けた。 重篤な有害事象は、サイトカイン放出症候群、多系統細胞減少症、日和見感染症などであった。

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Long COVIDに早期メトホルミン投与が有効

 Long COVID(いわゆる新型コロナ後遺症)は、倦怠感や味覚症状など多岐にわたる症状があり、世界中で多くの人が苦しんでいるものの、現時点で確立された治療法はない。米国・ミネソタ大学、Carolyn T Bramante氏らは、COVID-19感染直後の外来患者に、メトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミンの単独投与と併用投与を行い、COVID-19の重症化予防とLong COVIDのリスク低減効果を評価した研究を行った。メトホルミンはLong COVID発症を約41%減少させた 米国の6施設で行われたこの第III相無作為化四重盲検プラセボ対照COVID-OUT試験において、3剤に重症化予防効果がなかったことはすでに報告されている1)が、本試験のLong COVIDのリスク低減効果の分析がThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年6月8日号に掲載された。・対象:COVID-19発症から7日未満、SARS-CoV-2感染確認から3日以内、30~85歳、過体重または肥満の成人参加者は、・メトホルミン+イベルメクチン・メトホルミン+フルボキサミン・メトホルミン・イベルメクチン・フルボキサミン・プラセボの6群にランダムに割り当てられた。・評価項目[主要評価項目]14日目までの重症化率(低酸素血症、救急外来受診、入院、死亡の複合)[副次評価項目]医療従事者によるLong COVID診断 メトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミンのLong COVIDのリスク低減効果を評価した研究の主な結果は以下のとおり。・2020年12月30日~2022年1月28日に1,431例が登録され、ランダム化された。1,126例が長期フォローアップに同意し、180日目のLong COVIDの評価を受けた。・1,074/1,126例(95%)が9ヵ月以上のフォローアップを完了した。56.1%が女性でうち7%が妊娠していた。年齢中央値は45歳、BMI中央値は29.8であった。93/1,126例(8.3%)が、300日目までにLong COVIDの診断を受けたと報告した。・300日目までのLong COVIDの累積発生率は、メトホルミン群では6.3%(95%信頼区間[CI]:4.2~8.2)、プラセボ群では10.4%(95%CI:7.8~12.9)だった(ハザード比[HR]:0.59、95%CI:0.39~0.89、p=0.012)。・メトホルミンの有効性は、事前に規定されたサブグループ間でも一貫していた。メトホルミン投与が症状発現から3日以内に開始された場合のHRは0.37(95%CI:0.15~0.95)だった。イベルメクチン(HR:0.99、95%CI:0.59~1.64)、フルボキサミン(HR:1.36、95%CI:0.78~2.34)は、Long COVIDの累積発生率に影響がなかった。 著者らは「メトホルミンによる外来治療は、プラセボと比較して、Long COVID発症を約41%減少させ、絶対減少率は4.1%であった。メトホルミンはCOVID-19の外来治療として臨床的利益があり、世界的に入手可能で低コスト、かつ安全である」としている。

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第50回 「また接種券が届いたが接種すべき?」にどう答える

新型コロナワクチンの推奨が相次いで追補Pixabayより使用最近、「6回目の接種券が届いたんですけど…接種したほうがよいでしょうか?」と患者さんから質問を受けることが増えました。今日も外来だったのですが、10人以上に質問を受けました。これまでは、接種券が届いたら周囲に相談することなく接種していた患者さんのほうが多かったのですが、最近は「本当に接種し続ける意味があるのか」と疑問を持っている人が増え、躊躇しておられる印象です。そんな国民の逡巡を見越してか、日本感染症学会と日本小児科学会から相次いでワクチンに関する提言が追補されました。■日本感染症学会:「COVID-19ワクチンに関する提言(第7版)」の公表に際して1)「わが国での流行はまだしばらく続くためワクチンの必要性に変わりはありません。COVID-19ワクチンが正しく理解され、安全性を慎重に検証しながら、接種がさらに進んでゆくことを願っています。」■日本小児科学会:小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方(2023.6追補)2)「国内小児に対するCOVID-19の脅威は依然として存在することから、これを予防する手段としてのワクチン接種については、日本小児科学会としての推奨は変わらず、生後6か月~17歳のすべての小児に新型コロナワクチン接種(初回シリーズおよび適切な時期の追加接種)を推奨します。」新型コロナワクチンのエビデンスは驚異的なスピードで積み上げられていて、パンデミック初期の頃と比べると不明な点が減りました。患者さんを相手に診療をしていると、リスクとベネフィットを天秤にかける瞬間というのは何度か経験しますが、新型コロナワクチンについてはほぼエビデンスは明解を出しているので接種推奨の意見を持つ人のほうが多いはずですが、なぜか医療従事者でも接種しなくなった人が増えている現状があります。EBM副反応がしんどいというのは1つの理由です。「しんどい思いをしてまで接種する理由がない」というのはまっとうな理由ですし、私もそれに否定的な見解は持っていません。そのほかの理由として、「もういいや」といワクチン疲れしている人が増えていることです。ワクチン接種に懐疑的な報道やSNSのコメントがあるという理由で、「もう接種しなくていいと思う」と患者さんに持論を伝える医療従事者も次第に増えてきました。さすがに政府や学会が上記のような推奨を出しているさなか、それはまずいなと思います。私は対象の集団が多いほどエビデンスの威力は大きいと思っていて、たとえば喘息の初期治療にロイコトリエン受容体拮抗薬単剤を使うより吸入ステロイドを使うほうが患者さんのQOLは向上しますし、市中肺炎のエンピリック治療ではテトラサイクリン系抗菌薬よりもβラクタム系抗菌薬のほうがおそらく多くの人を救えます。普段の診療でわりとEBMを重視するのに、対象の集団が多いワクチンについてEBMを軽視するというのが、私にはよく理解できないです。まとめ繰り返しますが、個々でワクチンを接種しないと決めるのは個人の自由です。ただ、医療機関に勤務している人については通常の推奨度よりも高く、また基礎疾患のある患者さんに対しては学会も接種を推奨しているということは、納得できないとしても「医療従事者として理解しておく」必要があります。おそらく次第に接種間隔を空けていくことになるでしょうが、ひとまず9月以降はXBB対応ワクチンを接種することになります。参考文献・参考サイト1)日本感染症学会:「COVID-19ワクチンに関する提言(第7版)」の公表に際して2)日本小児科学会:小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方(2023.6追補)

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医療ジャーナル査読者、コロナ流行で変化か/BMJ

 BMJ出版グループの医療ジャーナルについて、査読依頼と依頼同意に関するジェンダーおよび地域性の格差について調べたところ、女性への依頼率が低いことや、依頼同意率は編集者が女性の場合のほうが男性の場合よりも低いといった偏りがあることが示された。また、地域的に欧州に比べアジアやオセアニアへの査読依頼率が低く、高所得国に偏っていることも明らかになったという。スイス・ジュネーブ大学病院のKhaoula Ben Messaoud氏らが後ろ向きコホート研究の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「編集者は、偏りを減らしダイバーシティ(多様性)を改善するために、効果的な戦略を見つけて実行する必要があり、上位中所得国・低所得国からより多くの女性や研究者が査読に参加するよう、戦略の進捗状況を評価し続けなければならない」と述べている。BMJ誌2023年6月13日号掲載の報告。 新型コロナウイルス感染症の流行初期と後期において、査読依頼に対して性別や地域による偏りが発生したかを評価するため、BMJの19の専門医療ジャーナルと2つの総合医療ジャーナルの査読依頼状況を調査。 研究グループは、BMJ出版グループの19の専門医療ジャーナルと2つの総合医療ジャーナルを対象に後ろ向きコホート研究を行った。2018年1月1日~2021年5月31日に提出された原稿について、査読を依頼された査読者を調査。2022年2月28日まで追跡した。 主要アウトカムは、査読依頼への同意だった。査読依頼の85%が高所得国へ、48%が欧州、26%が北米に所属 査読を依頼された査読者は、合計25万7,025人で(女性の割合は38.6%[8万8,454/22万8,869人])、査読に同意したのは9万467人(35.2%)だった。 依頼を受けた査読者の大部分(84.7%、21万7,682人)は高所得国に属していた。地域別に多い順にみると、欧州(47.6%、12万2,414人)、北米(26.0%、6万6,931人)、アフリカ(10.0%、2万5,735人)、アジア(8.8%、2万2,693人)、オセアニア(6.3%、1万6,175人)、南アメリカ(1.2%、3,076人)となっていた。 査読依頼への同意に関する独立因子として、ジェンダー(男性と比較した女性のオッズ比[OR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.87~0.92)、地域性(欧州と比較したORは、南アメリカ:3.32[2.94~3.75]、アジア:2.89[2.73~3.06]、オセアニア:1.35[1.27~1.43]、アフリカ:0.35[0.33~0.37])、国の所得(高所得国と比較したORは、上位中所得国:0.47[0.45~0.49]、下位中所得国:5.12[4.67~5.61]、低所得国:4.66[3.79~5.73])が認められた。 また、同意に関する独立因子として、編集者のジェンダー(男性と比較した女性のOR:0.96、95%CI:0.93~0.99)、最終著者の所属地域(欧州と比較したORは、アジア:0.80[0.78~0.83]、オセアニア:0.89[0.85~0.94])、インパクトファクター(5未満に比べ10超のOR:1.78[1.27~2.50]、査読プロセスの種類(匿名に比べオープンのOR:0.52[0.35~0.77])が認められた。 この他、期間とCOVID-19関連トピック、査読者の性別に有意な相互作用はみられなかったが、期間とCOVID-19関連トピック、査読者の所属地域性に有意な相互作用が認められた(p<0.001)。

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コロナ外出自粛が高齢者の健康に及ぼした影響/日本抗加齢医学会

 新型コロナウイルス感染症流行時の外出自粛が機能年齢、酸化ストレスなどの抗加齢医学的指標に及ぼす影響について検討した結果、運動している自覚がある人であっても、実際には体重支持指数が低下して筋年齢が老化していたことを、草野 孝文氏(アエバ外科病院)が第23回日本抗加齢医学会総会で発表した。 調査対象は2006年6月1日~2022年12月31日にアンチエイジング・ドックを受診した413例(男性204例[平均年齢64.0±12.5歳]、女性209例[平均年齢66.4±13.5歳])で、2類感染症指定期間中に外出自粛を行っていた群と行っていなかった群の機能年齢や抗加齢的指標を比較解析した。抗加齢的指標は筋年齢、神経年齢、血管年齢、ホルモン年齢、骨年齢、遺伝子損傷度、酸化ストレス度であった。 主な結果は以下のとおり。・外出自粛群は33例(男性15例、女性18例)で、平均年齢は65歳であった。非自粛群に比べて基礎疾患は少ない傾向にあり、男女ともに運動習慣がない人は有意に少なかったが、男性では食生活の悪化がみられた。・外出自粛群では筋力評価の指標である体重支持指数が有意に低下し、とくに高齢者ほど低下していた。・筋年齢は非自粛群よりも有意に高かったが、血管年齢、神経年齢、ホルモン年齢、骨年齢では有意差はみられなかった。・遺伝子損傷度(尿中8-OHdG生成速度)、酸化ストレス度(尿中イソプラスタン生成速度、CoQ10酸化率)は高値を示した。・ストレス耐性の指標(DHEA-s/コルチゾール比[20以上が目標値])は高値であった。 これらの結果より、草野氏は「新型コロナ感染対策の外出自粛は体重支持指数を低下させ筋年齢を老化させた。外出自粛時の運動には主観と客観のずれがあり、大腿四頭筋の筋力量を増加させるスクワットや有酸素運動の正しい指導が必要である。また、食生活が悪化し、酸化ストレス度が増加していた。アンチエイジングや健康長寿のために、抗酸化的物質の食事指導の重要性が示唆される」とまとめた。

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XBB.1対応コロナワクチン、秋接種から導入へ/厚労省

 厚生労働省は6月16日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会を開催し、2023年度秋冬の接種に使用する新型コロナワクチンについて、XBB.1系統を含有する1価ワクチンを用いることが妥当であるという方針を示した1)。現在の主流であるオミクロン株XBB.1系統に対して、現行のBA.4/5対応2価ワクチンでは中和抗体価の上昇が低く、移行しつつある主流流行株に対してより高い中和抗体価を誘導するためには、最も抗原性が一致したワクチンを選択することが適切であるという。XBB.1系統を含むワクチンを秋接種に用いることが妥当 6月16日に国立感染症研究所が公表した、民間検査機関の検体に基づくゲノムサーベイランスによる系統別検出状況によると、XBB.1.16(25.13%)、XBB.1.9.1(7.04%)、FL.4(XBB.1.9.1の下位系統、5.53%)といった、いずれもXBB.1系統が上位3位を占めている2)。今秋以降もXBB系統の流行が続くことが想定され、XBB.1系統内におけるさまざまな変異体の抗原性の差は小さいことがこれまでの調査で確認されていることから、本会議では秋冬の接種にXBB.1系統を含むワクチンを用いることが妥当とされた。 また、従来株成分の必要性については、免疫刷り込み現象を理由として従来株成分を排除すべき状況ではないものの、現時点では、今後にわたり、従来株を含める必要性はないため、新たなワクチンはXBB.1系統に対する1価でよいという見解が示されている。なお、今年度春開始の重症化リスクが高い者に対する接種では、重症化予防の観点から現在入手可能な既存の2価ワクチンを用いて引き続き実施される。 XBB.1系統を含むワクチンに関する知見は限られているが、製薬企業から提出されたマウスを用いた非臨床試験によると、XBB.1.5の成分を含む1価ワクチンは、追加接種として、既存の2価ワクチンと比較して、XBB.1.5に対する中和抗体価が約4倍高かったという。 今後のコロナワクチン接種についてXBB系統の使用を推奨する動きは、世界保健機関(WHO)3)や、欧州医薬品庁(EMA)/欧州疾病予防管理センター(ECDC)4)、米国食品医薬品局(FDA)5)が、5月から6月にかけて相次いで出した声明にも同様にみられる。■参考1)第47回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料(令和5年6月16日)2)国立感染症研究所:新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報 2023年第22週(2023年5月29日~2023年6月4日)3)WHO:Statement on the antigen composition of COVID-19 vaccines4)EMA and ECDC statement on updating COVID-19 vaccines to target new SARS-CoV-2 virus variant5)FDA:Updated COVID-19 Vaccines for Use in the United States Beginning in Fall 2023

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第152回 新型コロナウイルス、アドバイザリーボードが夏の感染拡大の可能性を指摘/厚生労働省

<先週の動き>1.新型コロナウイルス、アドバイザリーボードが夏の感染拡大の可能性を指摘/厚生労働省2.骨太の方針を閣議決定、防衛費増額とともに子育て支援を強化へ/内閣府3.391項目の規制緩和策を盛り込んだ新たな規制改革実施計画を決定/政府4.ドクターカーの運用に関する全国調査、人員不足が課題/厚労省5.旧優生保護法下での強制不妊手術問題、調査報告書全文が判明/国会6.医療脱毛クリニックが破産手続き、被害者は900人以上に1.新型コロナウイルス、アドバイザリーボードが夏の感染拡大の可能性を指摘/厚生労働省厚生労働省は6月16日に新型コロナウイルス対策を助言する「アドバイザリーボード」を開催した。厚労省の定点把握データに基づき、新型コロナウイルス感染者数が夏の間に一定の拡大が生じる可能性があるとの見解をまとめた。定点把握による感染者数は前週比で1.12倍増加し、全国で36都府県で感染者数は増加していた。会合では高齢者など重症化リスクのある人々に対するワクチン接種の検討を求める一方、基本的な感染対策の重要性も強調された。専門家からは、感染拡大の可能性や医療提供体制についての懸念が述べられた。また、変異ウイルスのオミクロン株の亜系統「XBB」の増加や免疫逃避性の変異などにも注意が必要とされた。これに先立ち、日本小児科学会は6月6日に、新型コロナワクチンの子どもへの接種を「すべての小児に推奨する」と発表しており、「コロナ対策の緩和によって多くの子供が感染する可能性があるため、ワクチン接種は重要であり、重症化を防ぐ手段として有効だ」と主張している。同学会側は、WHOが子供へのワクチン接種を支持しており、複数の研究でも予防効果が確認されていることを指摘している。参考1)第122回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年6月16日)2)コロナ感染「夏に拡大恐れ」=定点把握は前週比1.12倍-「5類」後初会合・厚労省助言組織(時事通信)3)コロナ1カ月で2倍に、沖縄注意 専門家組織「夏に拡大の可能性」(朝日新聞)4)新型コロナワクチン「すべての小児に接種推奨」日本小児科学会(NHK)5)小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方[2023.6追補](日本小児科学会)2.骨太の方針を閣議決定、防衛費増額とともに子育て支援を強化へ/内閣府政府は6月16日に「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定した。少子化対策の財源について具体的な言及はなく、新たな税負担も考えていないとした。防衛費の財源については増税の実施時期を2025年以降と先送りする方針だが、具体的な財源の確保は困難であり、実現するためには安定した財源が必要とされている。政府は年末までに具体化を進める予定。骨太の方針の中で、社会保障分野については、引き続き経済・財政一体改革の強化・推進を行い、限りある資源を有効に活用して質の高い医療介護サービスを提供するために、医療の機能分化と連携のさらなる推進を行い、医療・介護人材の確保や育成にあたるほか、働き方改革の実現のために医療DXの推進、医療費適正化や地域医療構想の推進のために、地域医療連携推進法人制度の有効活用などの推進が盛り込まれた。介護の分野では、高齢者の自己負担2割の対象者を拡大するか否かを年末に判断することを正式に決めた。参考1)経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~(内閣府)2)政府、骨太の方針を閣議決定 防衛増税後ろ倒し示唆、歳出増ずらり(朝日新聞)3)骨太の方針のポイント 物価安定・賃金上昇狙う 少子化対策 児童手当や育休給付拡充(日経新聞)4)終身雇用など日本の“常識”見直しへ 骨太方針閣議決定(産経新聞)3.391項目の規制緩和策を盛り込んだ新たな規制改革実施計画を決定/政府政府が391項目の規制緩和策を盛り込んだ新たな規制改革実施計画を6月16日の閣議で決定した。この中には、医療データの個人情報を加工すれば同意が不要で研究開発に利用できる法整備や、AIを活用した契約書審査のガイドライン作成、医師の業務を一部看護師にも許可するなど、さまざまな分野での規制緩和が含まれている。また、都市部でもオンライン診療のための診療所を開設できるよう検討し、診療所管理者の常勤要件の緩和や特定行為の範囲拡充も検討する。これにより、医療のデジタル化や効率化が進む見込み。さらに、医療データの2次利用の同意不要化や、在宅患者への薬剤提供体制整備、プログラム医療機器の保険適用の検討なども行われている。この実施計画は2023年中に結論を出す予定。参考1)『規制改革実施計画』[令和5年6月16日閣議決定](内閣府)2)参考資料[内閣府規制改革推進室作成](同)3)規制緩和策 391項目盛り込んだ政府の計画 閣議決定(NHK)4)都市部でも公民館でオンライン診療、年内に結論 新たな規制改革実施計画を閣議決定(CB news)4.ドクターカーの運用に関する全国調査、人員不足が課題/厚労省厚生労働省が行なったドクターカーの運用に関する全国調査の内容が判明した。これによると、24時間体制で運用している病院は全体の約20%に過ぎず、手術可能なドクターカーは約30%、輸血可能なドクターカーは約10%であることが明らかになった。この中で人員不足が主な課題とされており、厚労省は効率的な運用のための指針を策定し、救命率の向上につなげたいと考えている。調査は厚生労働省調査研究事業「ドクターカーの運用事例等に関する調査研究事業」として全国ドクターカー協議会によって実施され、約140病院が回答した。調査によると2021年1月~2022年9月にかけて、ドクターカーで診療された患者は約5万4,800人。しかし、夜間運用や手術能力、輸血能力に関しては課題があり、運用している病院は限られていた。また、ドクターカーの購入費用は装備を含めて1台当たり1,000~4,000万円かかり、国の補助もあるが、病院の負担も大きい。全国ドクターカー協議会は、データ収集と分析を行い、ドクターカーの診療能力向上のために、車内診療の訓練コースなどを設けるなどの取り組みを行っていく考えを示している。参考1)ドクターカー「24時間」運用2割、人員不足など課題…「手術可能」は3割(読売新聞)5.旧優生保護法下での強制不妊手術問題、調査報告書全文が判明/国会旧優生保護法下で障害者らに不妊手術が強制された問題について、衆参両院がまとめた調査報告書原案の全文が判明した。調査では、手術の65%が本人の同意なしに行われ、盲腸など別の手術と偽って手術が行われたり、審査会を開催せずに書類だけで手術を決定するなど、ずさんな実態が浮かび上がった。最年少の被害者は9歳で、児童施設や福祉施設の入所条件として手術が行われた事例も認められた。報告書によれば、旧法に基づき全国で実施された手術は2万4,993件で、本人の同意なしの手術は1万6,475件だった。被害の背景には経済的な困難や家族の意向、福祉施設の入所条件などがあった。報告書の原案は衆参両院に提出され、公表される予定。この問題について、国会の議長や厚生労働委員会の委員長は謝罪の意を表明した。参考1)盲腸と偽り不妊手術、最年少9歳 同意なし65%、旧優生報告判明(東京新聞)2)強制不妊、最年少は9歳 国の報告書全文判明 旧優生保護法、衆参議長提出へ(時事通信)3)旧優生保護法 いきさつなど調べた国会の報告書案まとまる(NHK)6.医療脱毛クリニックが破産手続き、被害者は900人以上に医療脱毛クリニック「ウルフクリニック」が突如として全店舗を休業し、破産手続きの準備を進めていることが明らかになった。クリニックはコース契約を結んだ患者に対する返金も行わず、従業員の給与も未払いのままで、被害総額は約1億8,000万円と推定されている。男性の医療脱毛を扱うウルフクリニックは東京、神奈川、愛知、大阪に5店舗を展開していたが、今年4月に全店舗を休業し、先月末に突然の破産を発表した。被害者たちは、返金対応がずさんであることを、クリニックの会議の録音や返金対応マニュアルから明らかにした。運営会社の幹部の会議の録音データからは、クリニックが自転車操業に陥っており、客からの入金がなくなったために従業員への給与支払いができなくなったことが判明している。被害者は900人以上を上回っており、被害者らは集団訴訟を起こす見込み。参考1)「通い放題」トラブル相次ぐ脱毛サロン、倒産が過去最多に 年度内には業界大手「脱毛ラボ」が破綻、一般利用者3万人に被害(産経新聞)2)「マジ終わった」脱毛クリニック破産手続き準備 被害総額1億8,000万円か 集団提訴へ(テレビ朝日)

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コロナ5類移行後の院内感染対策の現状は?/医師1,000人アンケート

 5月8日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の位置付けが「5類感染症」に移行となったが、医療機関ではその前後の過渡期に、これまで継続してきたさまざまな院内感染対策の緩和について議論されていた。5類に移行して約1ヵ月経過し、新規コロナ感染者は全国的に増加傾向にあり、院内感染対策をどこまで緩和するか、今なお難しい判断が迫られている。 病床の有無やコロナ診療状況など条件の異なる医療機関において、院内感染対策の現状や、抱えている課題を把握するため、病院を20床以上、診療所を20床未満と定義し、病院522人、診療所502人の会員医師1,024人を対象に『病院・診療所別 新型コロナ5類移行後の院内感染対策アンケート』を5月30日に実施した。5類移行後、病院93%、診療所72%がコロナ診療している 「Q1. 勤務先の医療機関における、5類移行前後での新型コロナの診療状況」という設問では、「5類移行の前後で、いずれもコロナ診療を受け付けている」「5類移行前は受け付けていなかったが、移行後は受け付けている」「5類移行前は受け付けていたが、移行後は受け付けていない」「5類移行の前後で、いずれも受け付けていない」の4つの選択肢から最も当てはまるものを聞いた。 病院では、84%がいずれの時期もコロナ診療を受け付けており、9%が5類移行後に新たに受け付けるようになった。診療所では、56%がいずれの時期もコロナ診療を受け付けており、16%が移行後に新たに受け付けるようになった。なお本調査では、コロナ診療の割合の低い眼科、皮膚科、泌尿器科といった診療科も含まれている。コロナ5類移行後、PPE着用は感染症疑い患者の診察時のみが多数 「Q2. 個人防護具(PPE)の着用について」という設問では、「勤務中は常にPPEを着用している」「感染症疑いの患者の診察時のみPPEを着用している」「PPEを着用していない」の3つの選択肢から最も当てはまるものを聞いた。 コロナ診療している病院では、常にPPE着用している割合は12%で、79%が感染症疑いの患者の診察時のみ着用していた。コロナ診療している診療所でも、常にPPE着用している割合は12%で、64%が感染症疑いの患者の診察時のみ着用していた。コロナ診療をしていない医療機関でも、病院の49%、診療所の33%が感染症疑いの患者の診察時のみPPE着用し、診療所の5%が常に着用していると回答した。 「Q3. 診療中の手指消毒のタイミングについて」という設問では、「診療室や病室に入るとき」「1人の診察ごと」「処置や検査を行ったとき」のそれぞれの場合に対して、病院では約60%の医師がいずれの場合も手指消毒を行っているとした。診療所では、45%が「診療室や病室に入るとき」、約55%が「1人の診察ごと」「処置や検査を行ったとき」に手指消毒を行っていると回答した。コロナに罹患した職員の療養期間、病院と診療所で傾向の差 「Q4. 勤務先の医療機関での、コロナに罹患した医療従事者の療養期間は何日か」という設問では、医療機関の規模とコロナ診療の有無で、結果に若干の傾向の差が出た。最も慎重な結果だったのはコロナ診療している病院であり、4日以下が8%、5日が56%、7日が24%、8日以上が10%であった。コロナ診療していない病院では、4日以下が8%、5日が64%、7日が21%、8日以上が5%であった。 診療所はコロナ診療の有無にかかわらずほぼ同等で、コロナ診療している場合は、4日以下が13%、5日が63%、7日が17%、8日以上が2%。コロナ診療していない場合は、4日以下が17%、5日が62%、7日が16%、8日以上が3%であった。病院と比べて診療所のほうが、4日以下の割合が約2倍多くなっている一方で、7日、8日以上の割合は病院のほうが多かった。 「Q5. 入院予定患者に対する事前のコロナスクリーニング検査の実施状況について」という設問では、病院では、PCR検査を実施しているのが31%、抗原検査を実施しているのが27%、検査は行わず、事前に診察でコロナの診断を行っているのが9%、事前スクリーニング検査は実施していないとしたのが29%となり、結果が拮抗していた。コロナ院内感染が広がった際の責任の所在に課題感 「Q6. 院内の感染対策を緩和していくうえで、判断に迷っていること、難しいと感じること」という設問では、以下のような意見が挙げられ、新型コロナに対する人々の危機感の薄れとは裏腹に、医療機関がさまざまな課題を抱えていることが浮き彫りになった。患者がコロナ感染対策せずに来院する・ウイルス感染は依然として続いているのに、あたかも、なくなったかのごとく振る舞う患者が結構みられるようになった。(診療所・内科・60代)・マスクをしない患者さんがよく来るようになった。(診療所・皮膚科・40代)コロナ院内感染・クラスター・感染が広がった際の責任の所在。(病院・呼吸器外科・30代)検査・入院時に陰性でも、後に感染が判明することがある。(病院・糖尿病・代謝・内分泌内科・30代)・明らかにコロナ感染症だと思われる方の中には、検査を希望されない方が一定の割合で存在する。(診療所・内科・60代)・以前は患者負担なく検査できたのでやりやすかったが、今はそうではないので困る。(診療所・消化器内科・40代)動線・ゾーニング・現状は時間分離で診療を行っているが、一般患者さんとの分離が十分できている保証はない。(診療所・内科・70代以上)面会・新型コロナ感染者が1人でも院内に発生した場合に、面会制限をしたほうがいいのか、判断に困っています。(病院・内科・50代)PPE・どこまでPPEを緩めるか。(診療所・内科・50代)職員への対応・職員の同居人に発熱者が出ても新型コロナかどうか不明の場合の出勤調整の判断に迷う。(診療所・内科・60代)・咳嗽が残った従事者の勤務。(診療所・内科・60代)コロナ感染対策の基準がわかりづらい・適正な指針が見当たらない。(病院・消化器内科・50代)・高齢者が多いため緩和しにくい。(診療所・内科・50代)・最近また新型コロナウイルス感染患者が増えてきた。(病院・外科・40代)・コロナ以外にもインフルエンザや麻疹、結核などのルールアウトもしておらず、アウトブレイクに対して一抹の不安はある。(病院・麻酔科・50代)・地域・全国のコロナ患者の状況、ベッドがどれくらい埋まっているかの情報・統計が得られなくなり、院内の感染対策を緩めていい時期が不明瞭。(診療所・内科・50代)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。5類移行後の院内感染対策はどうしている?/医師1,000人アンケート なお、ケアネットライブでは『アフターコロナの院内感染対策・新ルール』を6月21日(水)20時からライブ配信する。聖路加国際病院 感染管理担当の坂本 史衣氏が、最新の知見を踏まえ、今後のコロナ院内感染対策で徹底すべきこと、緩和してもよいことなど、実践例を交えながら解説する。本講義はCareNet.com会員であれば無料で視聴できる。

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