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オズウイルス感染症に気をつけろッ! その2【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さん、こんにちは。大阪大学の忽那です。この連載では、本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。さて、前回その1では、世界初のオズウイルス感染症の事例についてご紹介しました。症例を簡単に説明しますと、「茨城県在住の70代女性が、マダニ刺咬後に発熱を呈し、血小板減少、肝障害、腎障害、CK上昇、フェリチン高値、凝固障害などがみられ、最終的には心筋炎によると思われる心室細動で亡くなられてしまった」という事例でした。オズウイルスはどこにいるか?このオズウイルスですが、すでにヒトと動物について血清疫学調査が行われています1)。まず、2013~2019年にかけて山口県の猟師24人と野生動物240頭(ニホンザル40頭、イノシシ124頭、ニホンジカ76頭)から血清サンプルを採取し、猟師2人、そしてサル47.5%、イノシシ60.5%、ニホンジカ73.7%に中和抗体が確認されました。動物における陽性率の高さは驚きですね。そして、ヒトでも抗体陽性例がみつかっていることから、他にも診断されずに感染している事例が潜在しているものと推測されます。さらにこの研究では、確立したELISA法を用いて、他の都道府県のニホンザル、イノシシ、ニホンジカのオズウイルス感染も調査しています。2007~2019年に山口県、和歌山県、三重県、大分県、岐阜県、富山県、岐阜県、千葉県で捕獲された動物の血清陽性率は以下の通りでした。ニホンザル山口県47.5%、和歌山県33.3%、三重県6.3%イノシシ山口県55.8%、和歌山県34.8%、岐阜県10.5%、大分県10.3%、富山県・栃木県ともに0%ニホンジカ山口県37.8%、千葉県30%、和歌山県11.1%、岐阜県8.3%富山県、栃木県からはオズウイルスの抗体陽性の動物はみつかっていませんが、それ以外の山口県、和歌山県、三重県、岐阜県、大分県、千葉県からは割合の違いはあれど抗体陽性の動物がみつかっています。このことからは、オズウイルスは世界初の症例が報告された茨城県、そしてマダニからウイルスがみつかった愛媛県だけでなく、より広範囲に分布していると考えられます。また、元々ウイルスがみつかったマダニがタカサゴキララマダニというマダニであったことから、このタカサゴキララマダニの分布と同じく関東以南にオズウイルスも分布している可能性があります(基本的にマダニ媒介感染症の流行地域は、媒介するマダニの分布する地域に規定されます)。ということで、今後新たなオズウイルス感染症の症例がみつかる可能性は高いと考えられます。オズウイルスの検査に困ったらでは、「どのようなときにオズウイルス感染症を疑うか」について、アプローチとしては2つあると考えられます。1つはマダニ媒介感染症が疑われるけれども原因不明の場合、もう1つは原因不明の心筋炎を診た場合です。マダニ媒介感染症が疑われる場合(たとえばマダニ刺咬歴がある、フォーカス不明で肝障害を伴う発熱があるなど)は、その地域で流行しているマダニ媒介感染症、たとえばツツガムシ病、日本紅斑熱、SFTSなど保健所を介して地方衛生研究所で検査をしてもらいます。それでも診断がつかない場合は、オズウイルス感染症が鑑別に挙がってくるかもしれません。オズウイルスの検査は国立感染症研究所で行えるはずですが、お願いすれば全例検査をしてもらえるかはわかりません。参考までに、私忽那は、日本医療研究開発機構(AMED)の海老原班「新興ダニ媒介性ウイルス重症熱に対する総合的な対策スキームの構築」の分担研究において、ダニ媒介感染症が疑われるものの診断が不明な発熱患者の症例を集積し、新興ウイルスの検査や未知の病原体の探索をするためのレジストリを構築するプロジェクトを実施しています。研究班は国立感染症研究所の先生方と行っているものですので、このレジストリに登録していただき、オズウイルスの検査に回すというフローは可能ですので、疑わしい症例があればぜひ忽那までお問い合わせください。(お問い合わせ先アドレス:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp)基本的には「地方衛生研究所で検査できるマダニ媒介感染症が除外されている症例」が対象になります。時はマダニ戦国時代ッ!図2 日本国内のマダニからみつかっている新興ウイルス画像を拡大する(筆者作成)さて、オズウイルスが注目を集めていますが、実はオズウイルスだけでなく、他にもわが国にはマダニ媒介性ウイルス感染症が潜在しています。オズウイルスが、ヒトでの感染例が報告される前から存在が知られていたように、わが国のマダニから、まだヒトでの感染例が報告されていないウイルスがたくさんみつかっているのです。その1でも触れましたがSFTSの発見以降、ヒトでの感染例がみつかる前からマダニの持っているウイルスを先に調べるという手法が行われるようになりました。オズウイルス以外にも、日本国内のマダニからは、Tarumizu tick virus2)、Muko virus3)、Kabuto Mountain virus4)、Okutama tick virus5)、Mukawa virus6)などさまざまなウイルスがみつかっています。垂水…奥多摩…甲山(かぶとやま)…そう、これらはすべて日本の地名です。日本のいろんなところに、まだヒトでの感染例が報告されていないマダニ媒介ウイルス感染症が存在しているのです…ちなみにヒトでの病原性があるのかどうかについても現時点では不明です。もちろん、これ以外にも未知のマダニ媒介ウイルスも存在しているでしょう。原因不明の発熱疾患をみた場合に、こうしたマダニ媒介感染症の可能性についてもぜひ頭の片隅に置いておいていただけましたら幸いです。1)Tran NTB, et al. Emerg Infect Dis. 2022;28:436-439.2)Fujita R, et al. Virus Res. 2017;242:131-140.3)Ejiri H, et al. Arch Virol. 2015;160:2965-2977.4)Ejiri H, et al. Virus Res. 2018;244:252-261.5)Matsumoto N, et al. J Vet Med Sci. 2018;80:638-641.6)Matsuno K, et al. mSphere. 2018;3.

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12歳から使用可能な経口の円形脱毛症治療薬「リットフーロカプセル50mg」【下平博士のDIノート】第127回

12歳から使用可能な経口の円形脱毛症治療薬「リットフーロカプセル50mg」今回は、JAK3/TECファミリーキナーゼ阻害薬「リトレシチニブ(商品名:リットフーロカプセル50mg、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は、12歳以上の小児から使用できる円形脱毛症治療の経口薬であり、広い患者におけるQOL向上が期待されます。<効能・効果>円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)の適応で、2023年6月26日に製造販売承認を取得しました。本剤投与開始時に、頭部全体のおおむね50%以上に脱毛が認められ、過去6ヵ月程度毛髪に自然再生が認められない患者に投与します。<用法・用量>通常、成人および12歳以上の小児には、リトレシチニブとして50mgを1日1回経口投与しますなお、本剤による治療反応は、通常投与開始から48週までには得られるため、48週までに治療反応が得られない場合は投与中止を考慮します。<安全性>1%以上に認められた臨床検査値異常を含む副作用として、悪心、下痢、腹痛、疲労、気道感染、咽頭炎、毛包炎、尿路感染、頭痛、ざ瘡、蕁麻疹が報告されています。なお、重大な副作用として、感染症(帯状疱疹[0.9%]、口腔ヘルペス[0.8%]、単純ヘルペス[0.5%]、COVID-19[0.2%]、敗血症[0.1%]など)、リンパ球減少(1.6%)、血小板減少(0.3%)、ヘモグロビン減少(0.2%)、好中球減少(0.2%)、静脈血栓塞栓症(頻度不明)、肝機能障害(ALT上昇[0.9%]、AST上昇[0.5%])、出血(鼻出血[0.5%]、尿中血陽性[0.1%]、挫傷[0.1%]など)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、脱毛の原因となる免疫関連の酵素の働きを抑えることで、円形脱毛症の症状を改善します。2.免疫を抑える作用があるため、発熱、寒気、体のだるさ、咳の継続などの一般的な感染症症状のほか、帯状疱疹や単純ヘルペスなどの症状に注意し、気になる症状が現れた場合は速やかにご相談ください。3.本剤を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹・風疹混合/単独、水痘、おたふく風邪など)の接種ができないので、接種の必要がある場合は医師にご相談ください。4.妊婦または妊娠している可能性がある人はこの薬を使用することはできません。妊娠する可能性のある人は、この薬を使用している間および使用終了後1ヵ月間は、適切な避妊を行ってください。5.ふくらはぎの色の変化、痛み、腫れ、息苦しさなどの症状が現れた場合は、すぐに医師にご連絡ください。<Shimo's eyes>円形脱毛症は、ストレスや疲労、感染症などをきっかけとして、自己の免疫細胞が毛包を攻撃することで脱毛症状が起こる疾患です。急性期と症状固定期(脱毛症状が約半年超)に分けられ、急性期で脱毛斑が単発または少数の場合には発症後1年以内の回復が期待できます。一方、急性期後に自然再生が認められず、脱毛症状が継続する重症の円形脱毛症では回復率は低いとされ、診療ガイドラインには局所免疫療法や紫外線療法などの治療が記載されていますが、より簡便で効果的な治療法が求められていました。本剤は、JAK3および5種類のTECファミリーキナーゼを不可逆的に阻害する共有結合形成型の経口投与可能な低分子製剤です。円形脱毛症の病態に関与するIL-15、IL-21などの共通γ鎖受容体のシグナル伝達をJAK3阻害により強力に抑制し、CD8陽性T細胞およびNK細胞の細胞溶解能をTECファミリーキナーゼ阻害により抑制することで治療効果を発揮します。全頭型および汎発型を含む円形脱毛症を有する患者を対象とした国際共同治験(ALLEGRO-2b/3、ALLEGRO-LT)で、本剤投与群は、24週時のSALT≦20(頭部脱毛が20%以下)達成割合はプラセボと比較して統計的に有意な改善を示しました。なお、円形脱毛症に使用する経口JAK阻害薬として、すでにバリシチニブ(商品名:オルミエント)が2022年6月に適応追加になっています。バリシチニブは15歳以上が対象ですが、本剤は12歳以上の小児でも使用可能です。本剤はほかのJAK阻害薬と同様に、活動性結核、妊娠中、血球減少は禁忌となっています。また、感染症の発症、帯状疱疹やB型肝炎ウイルスの再活性化の懸念もあるため、症状の発現が認められた場合にはすぐに受診するよう患者さんに説明しましょう。円形脱毛症は、多くの場合は頭皮で脱毛しますが、ときには眉毛、まつ毛を含む頭部全体や全身に症状が出ることでQOLが著しく低下する疾患です。ストレスが多い現代社会で、ニーズの高い医薬品と言えます。

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コロナ急性期、葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏の症状消失までの期間は?/東北大

 コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期症状を有する患者に、対症療法に加えて葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を投与した結果、有意差はなかったもののすべての症状の消失までの期間は対照群よりも早い傾向にあり、息切れの消失は補足的評価において有意に早かったことを、東北大学の高山 真氏らが明らかにした。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2023年7月26日号の報告。コロナ患者に葛根湯2.5g+小柴胡湯加桔梗石膏2.5gを1日3回投与 高山氏らが2021年2月22日~2022年2月16日にかけて実施した多施設共同ランダム化比較試験1)において、葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏の併用により、軽症~中等症I患者の発熱が早期に緩和され、とくに中等症I患者では呼吸不全への悪化が抑制傾向にあったことが報告されている。コロナウイルス感染症の症状や病状悪化のリスクはワクチン接種の有無によって異なる可能性があるため、今回はこのランダム化比較試験のデータを用いて、ワクチン接種の有無も加味した症状の消失に焦点を当てた事後分析を行った。 研究グループは、20歳以上で軽症~中等症Iのコロナウイルス感染症患者を対象に、通常の対症療法(解熱薬、鎮咳薬、去痰薬投与)を行うグループ(対照群)と、対症療法に加えて葛根湯2.5g+小柴胡湯加桔梗石膏2.5gを1日3回14日間経口投与するグループ(漢方群)の風邪様症状(発熱、咳、痰、倦怠感、息切れ)が消失するまでの日数を解析した。 コロナウイルス感染症患者に対症療法に加えて葛根湯2.5g+小柴胡湯加桔梗石膏2.5gを1日3回14日間経口投与した主な結果は以下のとおり。・解析には、漢方群73例(男性64.4%、年齢中央値35.0歳)、対照群75例(65.3%、36.0歳)が含まれた。そのうち、コロナワクチン接種者は、漢方群7例(9.6%)、対照群8例(10.7%)であった。初回診察時のリスク因子や重症度は両群で同等であった。・少なくとも1つ以上の症状が消失した割合は、漢方群84.9%、対照群84.0%であった。消失までに要した日数の中央値は漢方群2日(90%信頼区間[CI]:2.0~3.0)、対照群3日(90%CI:3.0~4.0)で、有意差は認められなかったものの漢方群のほうが短い傾向にあった(ハザード比[HR]:1.28、90%CI:0.95~1.72、p=0.0603)。コロナワクチン接種の有無別では、ワクチン未接種の漢方群のHRは1.31(90%CI:0.96~1.79、p=0.0538)でほぼ同等であった。・すべての症状が消失した割合は、漢方群47.1%、対照群9.1%であった。消失までに要した日数の中央値は、漢方群9日(6.0~NA)、対照群NAで、同様に漢方群のほうが短い傾向にあった(HR:3.73、95%CI:0.46~29.98、p=0.1763)。コロナワクチン未接種の漢方群のHRは4.17(95%CI:0.52~33.64、p=0.1368)であった。・競合リスクを考慮した共変量調整後の補足的評価において、息切れの消失は漢方群のほうが対照群よりも有意に早かった(HR:1.92、95%CI:1.07~3.42、p=0.0278)。コロナワクチン未接種の漢方群では、発熱(HR:1.68、95%CI:1.00~2.83、p=0.0498)および息切れ(HR:2.15、95%CI:1.17~3.96、p=0.0141)の消失が有意に早かった。 これらの結果より、研究グループは「軽症~中等症Iのコロナウイルス感染症患者に対する漢方治療の分析において、すべての症状の評価においても各症状の評価においても、対照群よりも漢方群のほうが早く症状が消失していた。これらの結果は、急性期のコロナウイルス感染症患者に対する漢方治療の利点を示すものである」とまとめた。

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C型肝炎にDAA治療成功も死亡率高い、その理由は/BMJ

 インターフェロンを使用せず直接作用型抗ウイルス薬(DAA)で治療に成功したC型肝炎患者では、一般集団と比較して死亡率が高く、この過剰な死亡の主な要因は薬物や肝臓関連死であることが、英国・グラスゴー・カレドニアン大学のVictoria Hamill氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年8月2日号に掲載された。カナダと英国の3地域のコホート研究 本研究は、ブリティッシュコロンビア州(カナダ)、スコットランド(英国)、イングランド(英国)の3つの地域のデータを用いた住民ベースのコホート研究である(研究資金は主に、責任著者のHamish Innes氏[グラスゴー・カレドニアン大学]が英国のMedical Research Foundationから受けたウイルス性肝炎フェローシップの報奨金が充てられた)。 対象は、インターフェロンフリーの抗ウイルス薬治療の時期(2014~19年)に、C型肝炎の治療に成功(ウイルス学的著効[SVR]を達成)した2万1,790例であった。 これらの参加者を肝疾患の重症度で、肝硬変なし(肝硬変前)、代償性肝硬変、末期肝疾患(ESLD)の3つの群に分けた(イングランドは肝硬変とESLDのみ)。追跡調査は、抗ウイルス薬治療の終了後12週の時点から開始し、死亡日または2019年12月31日に終了した。 主要アウトカムは、粗死亡率と年齢・性別標準化死亡率、および標準化死亡率比であり、年齢、性別、年度で調整した一般集団と比較した。ポアソン回帰分析で、全死因死亡率と関連する因子を同定した。3地域とも、肝疾患の重症度の上昇と共に死亡率増加 追跡期間中に1,572例(7%)が死亡した。主な死因は、薬物関連死(383例、24%)、肝不全(286例、18%)、肝がん(250例、16%)だった。 粗全死因死亡率(1,000人年当たりの死亡数)は、ブリティッシュコロンビア州が31.4(95%信頼区間[CI]:29.3~33.7)、スコットランドが22.7(20.7~25.0)、イングランドが39.6(35.4~44.3)であった。また、標準化死亡率はそれぞれ31.4(95%CI:29.3~33.7)、28.6(24.7~32.5)、38.5(34.1~42.9)だった。 全死因死亡率は、各コホートおよびすべての重症度の群において、一般集団に比べC型肝炎治療成功者でかなり高かった。たとえば、ブリティッシュコロンビア州の全死因死亡率は、肝硬変のない集団では一般集団の約3倍(標準化死亡率比:2.96、95%CI:2.71~3.23、p<0.001)、肝硬変の集団では約4倍(3.96、3.26~4.82、p<0.001)、ESLDの集団では10倍以上(13.61、11.94~15.49、p<0.001)であった。 また、スコットランドとイングランドでも同様に、疾患の重症度が上がるに従って全死因死亡率の標準化死亡率比が高くなり、いずれも有意な差が認められた(すべてのp<0.001)。 回帰分析では、高齢、最近の薬物乱用による入院、アルコール乱用による入院、併存疾患が死亡率の上昇と関連していた。 著者は、「これらの知見は、直接作用型抗ウイルス薬の効果を最大限に発揮させるためには、C型肝炎の治療が成功した後も、継続的な支援と追跡調査が必要であることを強調するものである」としている。

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第159回 新型コロナ感染拡大時の注意喚起に、4つの指標を作成/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ感染拡大時の注意喚起に、4つの指標を作成/厚労省2.コロナワクチン接種、定期接種移行の議論に着手/厚労省3.ポストコロナで動き出す病院再編、地域住民が抗議相次ぐ/厚労省4.子宮頸がん検診の指針見直し、5年毎のHPV検査の導入も検討/厚労省5.医療資源を活用する「紹介受診重点医療機関」を初公表/厚労省6.地域に根ざした医師会活動プロジェクトを始動/日医1.新型コロナ感染拡大時の注意喚起に、4つの指標を作成/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルス感染拡大時の都道府県の注意喚起のための指標を示し、全国の自治体などに通知した。これによると、医療機関の外来が逼迫している割合が25%を超えたり、病床使用率が50%を超えたりした場合に注意喚起が行われることとなる。また、感染者数については、最近のオミクロン型感染拡大で外来の逼迫状況がピークとなる2週間前の感染者数を基準としている。さらに、感染拡大の際、医療機関の受診者数などを報告するシステムが外来逼迫割合が25%を超えるなどの指標に達した場合、各都道府県は住民に対して注意喚起や医療提供体制の強化を行うよう求めている。すでに都道府県で独自の基準を設けているところもあり、国の目安を使用するかどうかは、自治体が地域の医療提供体制や特性を踏まえて判断することになる。これらの指標は、新型コロナウイルス感染拡大の進行による医療逼迫に備えるための措置であり、今後、変更される可能性がある。各都道府県はこうした指標を参考にし、適切な注意喚起や対策を実施していくことが求められている。参考1)新型コロナウイルス感染症に関する住民への注意喚起等の目安について(厚労省)2)コロナ感染拡大時の注意喚起に目安 厚労省、医療逼迫で判断(日経新聞)3)コロナ感染拡大時“注意喚起の目安”4指標作成 厚生労働省(NHK)2.コロナワクチン接種、定期接種移行の議論に着手/厚労省厚生労働省は、8月9日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会を開催し、新型コロナウイルスワクチン接種に関する議論を行った。新型コロナウイルスのワクチン接種は、オミクロン株の流行と重症化率の低下から、定期接種化を検討しているが、現在の公費負担による臨時接種であり、今後は自己負担が発生する定期接種への移行を視野に入れ、年内に結論を出す予定。9月20日から行われるオミクロン株の派生型に対応したワクチン接種は、生後6ヵ月以上のすべての人を対象に無料で来年3月まで行うことが承認されたが、積極的な勧奨は高齢者や重症化リスクの高い人に限定して行う。来年度以降の接種について厚労省は、WHOの新指針に基づき、定期的な追加接種を推奨せず、努力義務や接種勧奨は重症化リスクの高い人にのみ適用する。なお、定期接種化は2024年度からの実施を検討しており、今年中に部会で対象者や費用負担について結論を出す予定。参考1)第49回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(厚労省)2)今後の新型コロナワクチン接種について(その7)(同)3)コロナワクチン、来年度以降のあり方議論始まる 定期接種化も視野に(朝日新聞)4)新型コロナワクチン 秋接種、高齢者や重症化リスクのみ勧奨(毎日新聞)3.ポストコロナで動き出す病院再編、地域住民が抗議相次ぐ/厚労省厚生労働省が、新型コロナウイルス感染拡大前から取り組んでいる、「地域医療構想に基づいた病院再編・統合の方針」に対して、地域住民から地域医療の充実を求める意見が相次いでいる。岩手県の県立病院の再編、新潟県では上越市の新潟労災病院の閉院に伴う再編など、人口減少に伴う地域の医療機関の再編はコロナ対策でも必要とする行政側の方針に対して、地域住民からは医療態勢の確保と充実が求める声があげられている。今後、行政では地域のニーズに即した対応が求められている。参考1)県立病院の縮小・統合に反対 署名1万8千筆を県に提出 いわて労連など(デーリー東北)2)上越の病院再編 安心できる将来像確実に(新潟日報)3)三田市民病院の存続求める 市民団体が神戸市長に申し入れ(サンテレビ)4)病院の再編って必要なの? 感染症・高齢化対応で重要に(日経新聞)4.子宮頸がん検診の指針見直し、5年毎のHPV検査の導入も検討/厚労省厚生労働省はがん検診のあり方に関する検討会を開き、子宮頸がんの早期発見を促すため、HPV(ヒトパピローマウイルス)感染を調べる検査を公的検診に導入するため、指針を改正する方針を決定した。厚労省は、30歳以上の女性に対しては2年毎の細胞診と5年おきのHPV検査のどちらかを選ぶことができるように提案。これにより、検診間隔が長くなり、受診者の負担が軽減される一方で、精度管理体制の整備が必要となる。新たな指針は2023年度中に見直され、24年度から導入される見通し。ただし、細胞診とHPV検査は異なるアプローチで、受診者の特定と負担軽減を図るための選択肢として提供される。新たな検診方法では、がんの発症前に高リスクな人を特定し、受診者の負担を軽減する上でのメリットがある。ただし、導入には自治体ごとの準備期間や陽性者のフォローが必要であり、実際の導入は限定的となる可能性がある。HPV検査導入については、自治体が従来の細胞診とHPV検査のどちらかを選択できる形で実施する予定。また、従来通りHPV感染を防ぐワクチンの定期接種も行われる。参考1)HPV検査導入へ指針改正、子宮頸がん早期発見に期待 厚労省検討会(産経新聞)2)指針での子宮頸がん検診、30歳以上にHPV検査も可 各自治体が判断、年度内に指針見直し(CB news)3)子宮頸がん検診、「2年毎の細胞診単独法」のほか、体制整った市町村では「5年毎のHPV検査単独法」も可能に-がん検診あり方検討会(Gem Med)4)第39回がん検診のあり方に関する検討会[資料](厚労省)5.医療資源を活用する「紹介受診重点医療機関」を初公表/厚労省東京都は、医療資源を重点的に活用するための外来施設である「紹介受診重点医療機関」83ヵ所を初めて公表した。この制度は、外来機能報告をもとに地域ごとの「協議の場」で承認されており、病院や診療所の医療実績データを使って医療関係者の協議を通じて決定される。紹介受診重点医療機関は、外来での特定の領域に特化した医療を提供する施設で、病院の外来診療の役割分担と連携を進め、患者の受診をスムーズにし、医療従事者の負担を軽減することを目指している。区中央部では大規模病院が多く、一方、医療資源の少ない地域では施設数は限られている。紹介受診重点医療機関の明示によって、東京都は医療資源の集中と均衡を促進し、地域医療の充実を図りたい考え、また、紹介受診重点医療機関では、病院の外来患者の待ち時間の短縮や勤務医の外来負担の軽減等の効果を見込んでいる。東京都以外の各道府県でも公表を進めており、厚生労働省はこれらをまとめた一覧を掲載している。参考1)紹介受診重点医療機関を都が初公表、計83カ所 1日時点(CB news)2)紹介受診重点医療機関について(厚労省)3)都道府県紹介受診重点医療機関リスト(同)4)紹介受診重点医療機関になると何が変わるのか?(PRRISM)6.地域に根ざした医師会活動プロジェクトを始動/日本医師会日本医師会は「地域に根ざした医師会活動プロジェクト」を発表し、市民への理解を深めることを目指すことを明らかにした。プロジェクトはシンポジウム形式で、実地とWebのハイブリッド開催を予定している。第1回のテーマは「有事の医師会活動」で、大規模災害時の対応や新型コロナウイルス感染症の対策などを取り上げる。シンポジウムはアーカイブ動画や電子パンフレットで提供され、多くの市民が参加できるようにする。プロジェクトを通して、医師会の活動の周知と理解を促進し、地域医療の充実に寄与する目的を持つ。渡辺 弘司常任理事は、地域の時間外や災害時の医療対応など、医師会の多様な活動を通じて地域を支える重要性を語った。また、地域医師会と専門基幹病院の連携事例も紹介され、全国の医師会の活動を通じて地域の医療を支える取り組みを広く知らしめる狙いがある。参考1)日医、市民への新規プロジェクトを開始(時事通信)2)地域に根ざした医師会活動プロジェクトについて(日本医師会)

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出生前母体ステロイド投与、児の重篤な感染症のリスク大/BMJ

 出生前ステロイド投与1コースが行われた母親から生まれた児は、生後12ヵ月間、重篤な感染症のリスクが有意に高いことが、台湾・長庚記念病院のTsung-Chieh Yao氏らによる全国コホート研究の結果で示された。新生児の死亡率および罹患率の減少における出生前ステロイド投与の有益性が多くの研究で報告されているが、小児の重篤な感染症に対する出生前ステロイド曝露の潜在的な有害性に関するデータは乏しく、とくに地域住民を対象とした大規模なコホートに基づく厳密なエビデンスは不足していた。著者は今回の結果について、「治療を開始する前に、出生前ステロイド投与による周産期の有益性と、まれではあるが重篤な感染症の長期的リスクについて慎重に比較検討する必要がある」とまとめている。BMJ誌2023年8月2日号掲載の報告。生後12ヵ月以内の重篤な感染症の発生率を出生前ステロイド曝露児と非曝露児で比較 研究グループは、台湾のNational Health Insurance Research Database、Birth Reporting DatabaseおよびMaternal and Child Health Databaseを用い、2008年1月1日~2019年12月31日における台湾のすべての妊婦とその出生児を特定し解析した。 主要アウトカムは、出生前に副腎皮質ステロイド曝露があった児と非曝露児における、生後3ヵ月、6ヵ月および12ヵ月時の入院を要する重篤な感染症、とくに敗血症、肺炎、急性胃腸炎、腎盂腎炎、髄膜炎または脳炎、蜂窩織炎または軟部組織感染症、敗血症性関節炎または骨髄炎、心内膜炎の発生率で、Cox比例ハザードモデルを用い補正後ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出して評価した。 台湾において一般的な母体出生前ステロイド投与は、ベタメタゾン12mgを24時間間隔で2回筋肉内投与、またはデキサメタゾン6mgを12時間間隔で4回筋肉内投与である。すべての重篤な感染症、敗血症、肺炎、急性胃腸炎のリスクが有意に増加 解析対象は、196万545組の妊婦(単胎妊娠)とその出生児で、出生前に副腎皮質ステロイド曝露があった児が4万5,232例、非曝露児が191万5,313例であった。 生後6ヵ月において、出生前ステロイド曝露児は非曝露児と比較し、すべての重篤な感染症、敗血症、肺炎および急性胃腸炎の補正後HRが有意に高かった。補正後HRは、すべての重篤な感染症1.32(95%CI:1.18~1.47、p<0.001)、敗血症1.74(1.16~2.61、p=0.01)、肺炎1.39(1.17~1.65、p<0.001)、急性胃腸炎1.35(1.10~1.65、p<0.001)であった。 同様に、生後12ヵ月において、すべての重篤な感染症(p<0.001)、敗血症(p=0.02)、肺炎(p<0.001)、急性胃腸炎(p<0.001)の補正後HRも有意に高かった。 きょうだいをマッチさせたコホートにおいても、コホート全体で観察された結果と同様、生後6ヵ月(p=0.01)および12ヵ月(p=0.04)において敗血症のリスクが有意に高かった。

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あらゆる動物で新型コロナ感染が確認できる検査法を開発

 あらゆる動物種に対して使用可能な新型コロナウイルスの検査法の開発に成功したことを、米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校病理生物学分野教授のYing Fang氏らが報告した。研究グループは、「野生動物や家畜での新型コロナウイルス変異株の追跡に役立てることができる成果だ」と述べている。この研究の詳細は、「mSphere」に7月6日掲載された。 現在用いられている新型コロナウイルスの主な検査は、PCR検査と抗体検査である。PCR検査はウイルスの核酸を標的とし、採取した検体の中にウイルスが存在するかどうかを調べるものだ。これに対して抗体検査は、ウイルス曝露により産生される抗体の有無を調べるもので、一般に感染歴の有無の指標とされている。 抗体検査には、ELISA法(酵素免疫測定法)と呼ばれる検査法がよく用いられている。これは、検体中の標的とする抗原や抗体をそれに特異的な抗原や抗体と結合させ、酵素反応を利用して検出したり定量化したりする方法だ。ELISA法は簡便で信頼性の高い検査法ではあるが、その開発には障害もある。新型コロナウイルスは、人間だけでなく、猫や犬、ネズミ、鹿、猿、農場や動物園の動物など多様な動物種に感染する。しかし、抗体検査は主に人間や限られた動物種を対象にしているため、動物種によっては検査に必要な試薬(種特異的な二次抗体など)の入手が困難な場合がある。研究グループは、「動物における感染症を迅速に検出して予防し、状況をコントロールするためには、感度と特異度の高い診断試薬とアッセイが喫緊で必要とされている」と述べている。 新型コロナウイルスに対する抗体には、主に、ウイルス表面に発現するSタンパク質(スパイクタンパク質)を標的にするものと、ウイルスの遺伝子を包むNタンパク質(ヌクレオカプシドタンパク質)を標的にするものがあるが、今回開発された新しい抗体検査はNタンパク質に焦点を当てたものだ。Fang氏によると、Nタンパク質は、Sタンパク質よりも豊富な上に、アミノ酸配列に変化が起こりにくいため構造が動物の種を超えて保存されている。そのため、あらゆる動物種に対する抗体検査の標的として、Sタンパク質よりもふさわしいと考えられるのだという。 Fang氏らはまず、新型コロナウイルスのNタンパク質に対するモノクローナル抗体パネルを作成。このパネルを基にした、ブロッキングELISA法による抗体検査を開発した。具体的には、ELISA用のプレートをNタンパク質でコーティングし、そこに検査対象となる動物の血清サンプルを加える。もしその動物が新型コロナウイルスに感染していれば、血清サンプルの中に含まれている抗Nタンパク質抗体(一次抗体)が、プレート上のNタンパク質と結合する。その後、プレートを洗浄して、Nタンパク質を標的とするビオチンで標識されたモノクローナル抗体(二次抗体)を追加する。対象動物が感染している場合には、一次抗体が二次抗体のNタンパク質への結合を妨害する。感染していない場合には、二次抗体がプレート上のNタンパク質に結合する。ここに特定の化学物質を加えると発色が起きるため、それを指標として標的とする分子の量を決定することができる。 この抗体検査の性能を、新型コロナウイルスへの感染の有無が判明しているさまざまな動物の血清サンプルを用いて検証したところ、感度は97.8%、特異度は98.9%であることが明らかになった。また、試験的に新型コロナウイルスに感染させたペットの猫から採取した血清サンプルを用いた経時的なテストでは、ウイルスへの曝露から最速7日で感染を確認できることが示された。 これらの結果に基づいてFang氏は、「この抗体検査法は、さまざまな動物種での感染状況のサーベイランスや将来の疾患の発生を予防するのに役立つだろう」と話している。 なお、本研究は、米国立衛生研究所(NIH)の支援を受けて実施された。

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国内コロナ入院患者の精神症状の実態―不眠やせん妄は重症度と相関

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院患者では、ほかの呼吸器疾患患者よりも精神症状発現率が高く、また一部の症状はCOVID-19重症度と相関することが明らかになった。九州大学大学院医学研究院精神病態医学の中尾智博氏らの研究によるもので、詳細は「Brain, Behavior, & Immunity - Health」5月号に掲載された。 COVID-19の後遺症、いわゆるlong COVIDでは倦怠感などの身体症状に加えて、抑うつや不安などの精神症状が高頻度に現れることが知られている。一方、COVID-19急性期の精神症状については大規模研究の報告が限られている。これを背景として中尾氏らは、福岡県内の9病院のDPC(診療報酬包括評価)データおよび精神科カルテデータを用いた解析から、COVID-19入院患者に発生する精神症状の実態の把握を試みた。 2020年1月~2021年9月に、4件の大学病院、3件の国立病院機構病院、および公立病院、民間病院各1件に入院したCOVID-19患者数は2,743人(平均年齢53.7±22.7歳、女性44.3%)だった。なお、COVID-19以外の呼吸器感染症が併存している患者は除外されている。 36.1%に対して入院中に睡眠薬、11.2%に抗うつ薬、5.8%に抗不安薬が処方され、27.6%には抗うつ薬や抗不安薬およびその他の向精神薬が併用されていた。睡眠薬の処方に関連する因子を多変量解析で検討すると、年齢〔オッズ比(OR)1.03〕、糖尿病(OR1.53)、慢性腎臓病(OR1.59)が独立した因子として抽出された。また、向精神薬の処方に関連する因子の多変量解析からは、年齢(OR1.04)、糖尿病(OR1.29)、認知症(OR1.88)が有意な正の関連因子、BMIが18~25であることは有意な負の関連因子(BMI18未満と比較してOR0.56)として抽出された。 次に、入院中に精神科の介入を要した患者221人(8.1%)に着目し、この患者群をCOVID-19の重症度で分類(厚生労働省の診療の手引き第6版に基づく分類)すると、不眠やせん妄は重症度が高いほど出現頻度が高いという有意な関連が認められた。一方、不安の出現頻度はCOVID-19重症度との関連が見られなかった。 続いて、インフルエンザ入院の患者データを用いて、傾向スコアマッチングにより年齢や性別の分布、併存疾患有病率が一致する各群211人から成るデータセットを作成。両群の薬剤処方状況を比較すると、睡眠薬の処方率はインフルエンザ群が25.1%、COVID-19群が41.7%であり、後者に対して有意に多く処方されていた(P<0.001)。抗不安薬については同順に3.3%、7.6%でやはり後者で高かったが、群間差はわずかに非有意だった(P=0.054)。抗うつ薬は7.1%、10.9%だった(P=0.174)。 同様に、インフルエンザ以外の急性気道感染症と診断されていた患者データを用いて、性別の分布、併存疾患有病率が一致する各群1,656人から成るデータセットを作成(年齢はCOVID-19群の方が若年で有意差あり)。両群を比較すると、睡眠薬の処方率は急性気道感染症群37.0%、COVID-19群40.5%でやはり後者の方が有意に高く(P=0.039)、抗うつ薬についても同順に9.6%、12.9%で後者の方が高かった(P=0.003)。一方、抗不安薬は7.7%、5.9%であり、前者の方が高かった(P=0.039)。 これらの結果から論文の結論は、「COVID-19入院患者は不眠や抑うつ、不安が発症しやすく、他の呼吸器感染症より向精神薬の処方率が高かった。一部の精神症状はCOVID-19の重症度と相関していた。COVID-19は既存の感染症より精神機能へ与える影響が大きいと考えられる」とまとめられている。また考察として、「COVID-19の急性期に発症する精神症状とlong COVIDの精神症状が連続したものである可能性もある」と述べ、この点についての今後の検討の必要性を指摘している。

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新型コロナ、住民への注意喚起のタイミングの目安を発表/厚労省

 厚生労働省は8月9日の事務連絡にて、感染拡大する新型コロナウイルス感染症の早期対応のため、各都道府県に向けて住民等に注意喚起を行う際の検討の参考となるタイミングの目安を発表した1)。 なお、本目安は、新型コロナ流行時において医療への負荷が主たる課題となることから、感染拡大が継続したとしても医療提供体制を確保するために設定されたものであり、感染症サーベイランスにおける感染症の流行の程度に関する注意報・警報レベルとは考え方が異なる。また、本目安は暫定的に設定されたもので、今後の流行状況等を踏まえ、変更される可能性もあるという。 今回設定された住民への注意喚起等の目安は以下のとおり。1 住民への注意喚起等として考えられる内容(1)住民への注意喚起 都道府県において、住民に対し、医療に負荷がかかっている状況とあわせて、以下の注意喚起を行うことが考えられる。1. 発熱等の体調不良時、発症後5日間、症状軽快後24時間経過するまで外出を控えること2. 手洗いや換気などの基本的な感染対策の強化3. マスク着用推奨場面(医療機関や高齢者施設等の訪問時)でのマスク着用の徹底4. 軽症時や検査、診断書発行等のための救急受診を控えること5. 軽症の場合の自宅療養(食料、医薬品、検査キット等の準備)(2)医療提供体制等の強化 「今夏の新型コロナウイルス感染症等の感染拡大に備えた保健・医療提供体制の確認等について」(令和5年7月14日付事務連絡)で示されたとおり2)、感染拡大が継続したとしても医療提供体制を確保するため、以下の事項が徹底されるよう、各都道府県において、改めて病院長会議等を通じた医療関係者等との協議、入院先決定における助言等の必要な支援を行うことが考えられる。 1. 医療機関間の入院先の決定にあたり、重症者等を優先すること2. 地域における医療機関の役割に応じた受け入れを行うこと(重症者を受け入れる急性期病院、状態改善後の転院先として軽症者を受け入れる回復期病院等)3. 新型コロナ以外の疾患により入院している患者が新型コロナに感染した場合に、転院させず、継続的に診療を行うこと4. 円滑な入院調整を行うためのG-MIS等の活用5. 自宅等における療養体制を確保すること(薬局、訪問看護事業所、ケアマネジャー等との連携、酸素濃縮装置の確保等)6. 高齢者施設等における療養体制を確保すること2 都道府県による住民への注意喚起等の目安について 各都道府県において、1に示した住民への注意喚起や医療提供体制の強化(医療機関等への呼びかけ)を行う場合に、その参考となりうる目安を以下のとおり示すこととする。下記の目安も参考にして、過去の流行及びこれに伴う医療への負荷も含めて総合的に勘案し、必要に応じて基準を設定する(※)など、地域の実情に応じた対応をお願いしたい。(※)既に独自の基準等を設定して対応している都道府県に対して、変更を求めるものではない。また本目安は暫定的であり、今後変更される可能性がある。(1)目安の設定の考え方 これまでの考え方3,4)や直近の沖縄県における感染拡大の状況等を踏まえ、感染者数のピークの2週間前、在院者数及び確保病床使用率のピークの3週間前の数値を参考に目安を設定。(2)考えられる目安・外来の状況:「外来逼迫あり」割合(※)が25%を超えるとき・定点あたり報告数:直近のオミクロン株による感染拡大時の「外来逼迫あり」割合(※)のピーク時から2週間前の「定点当たり報告数」を超えるとき注 なお、足下の医療提供体制の状況も踏まえ、直近のピーク時を参照するのではなく、別途、個別に設定することも考えられる。(※)「外来逼迫あり」割合とは、医療機関等情報支援システム(G-MIS)の週次調査において、診療枠の関係で、当日中の来院を断っているかどうかを目安に、逼迫が生じていたかについて、該当ありと回答した医療機関の割合を指す。・在院者数:これまでのオミクロン株による感染拡大ピーク時の当該数の1/2を超えるとき(過去の感染拡大ピーク時と比較して軽症者の割合が高い場合は除くなど、入院患者の重症度等に応じて判断)。※欠勤している医療従事者数5)、救急搬送困難事案件数の増加傾向も参考とする。・確保病床使用率:50%を超えるとき(確保病床外の在院者数も留意すること。また、過去の感染拡大ピーク時と比較して軽症者の割合が高い場合は除くなど、入院患者の重症度等に応じて判断)。※(2)で記載した目安については、すべての目安を活用して各都道府県において基準の設定を求めるものではなく、これらを参考にして、総合的に勘案した上で必要に応じて基準を設定し、注意喚起などに活用することを想定している。※厚生労働省においても、各都道府県と密接に連携するとともに、感染拡大や医療提供体制の状況を踏まえて、必要に応じてリエゾン派遣等の支援を行うこととしている。■参考文献・参考サイト1)厚生労働省:新型コロナウイルス感染症に関する住民への注意喚起等の目安について(令和5年8月9日)2)厚生労働省:今夏の新型コロナウイルス感染症等の感染拡大に備えた保健・医療提供体制の確認等について(令和5年7月14日)3)BA.5強化宣言(令和4年7月新型コロナウイルス感染症対策本部決定)4)今秋以降の感染拡大で保健医療への負荷が高まった場合に想定される対応(令和4年11月新型コロナウイルス感染症対策分科会)5)重点医療機関における新型コロナウイルス感染症に関連して休んでいる看護職員数

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潰瘍性大腸炎の寛解導入および維持療法におけるミリキズマブの有用性(解説:上村直実氏)

 潰瘍性大腸炎(UC)の治療に関しては、従来、軽症から中等症に対する第一選択薬としては5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤が用いられ、効果不十分な場合にはステロイド経口剤や免疫調整薬の併用が一般的であったが、最近、生物学的製剤や低分子化合物の出現により、ステロイド依存性ないしは不応性を含む難治性のUC患者に対する薬物治療が大きく変化している。すなわち、抗TNFα抗体薬、インターロイキン(IL)阻害薬、インテグリン阻害薬、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬など、新規の薬剤が次々と出現して難治性のUCが次第に少なくなってきている。しかしながら、UC症例の中にはこれらの新規薬剤でも十分な効果が得られない患者や副作用により治療が中断される患者も少なくないため、さらに新たな作用機序を有する治療薬の開発が求められているのが現状である。 今回、新たなIL阻害薬であるミリキズマブに関して、既存治療で効果不十分な中等症から重症のUC患者を対象とした寛解導入試験と引き続き施行された寛解維持試験の結果、ミリキズマブの有効性と安全性が示された研究結果が2023年6月のNEJM誌に掲載された。 ミリキズマブの特徴として、本剤がターゲットとするIL-23-p19は、本邦ですでに承認されているIL-12/23-p40モノクローナル抗体であるウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)と同じIL-12ファミリーに属する炎症性サイトカインであるが、IL-23のp19サブユニットに対してのみ特異的に結合して大腸粘膜の炎症を抑えることから、感染症や悪性腫瘍の発生リスクを軽減する可能性が期待される。 なお、ミリキズマブは2023年3月に本邦で薬事承認を取得して、5月に薬価収載されている(商品名:オンボー)。今回、NEJM誌に掲載された国際共同治験の成績が発表される前に薬事承認されていることは驚きであるが、今後は国際共同治験の結果がトップジャーナルに掲載される前に保険適用の承認を取得する薬剤が増加する可能性があるのかもしれない。 一方、難治性のUCに対する薬物療法に対して臨床現場からの要望としては、「既存治療で効果不十分な中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入・寛解維持に対する有用性と安全性」により保険適用が承認されている新規薬剤それぞれの具体的な使用方法に関するエビデンスが期待されている。

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第57回 9月以降の「秋開始接種」の概要は?

XBB.1.5対応1価ワクチンが登場ソコストより使用医療従事者では最多で新型コロナワクチンを6回接種している方がいると思います。私も2023年6月に6回目接種を終えています。現在「令和5年春開始接種」が終盤になっていますが、新型コロナワクチンの接種率がかなり下がってきた印象です。1年以上経過すると、さすがに重症化リスクも上がってくるようなので、前回からの接種期間が空いている人は接種してもよいのではないかと思いますが。65歳以上の高齢者および5歳以上の基礎疾患を有する人やその他重症化リスクが高いと医師が認める方の場合は、基本的に接種が推奨されます。これ以外の健康な人は、予防接種法による接種勧奨・努力義務のいずれの適用もありません。「看護学生がワクチン接種していないと実習に参加できない」問題がわりとSNSで炎上していますが、デリケートな問題ですよね…(遠い目)。さて、9月20日以降使用されるXBB.1.5対応1価ワクチンは、マウスを用いた非臨床試験において、XBB.1.5に対して現行2価ワクチンよりも高い中和抗体価を誘導することが報告されています。XBB.1.5対応1価ワクチンの契約は、モデルナ社とファイザー社を合わせて2,500万回分がすでに済んでいます。数が少し少な目な気がしますが、第一三共の「ダイチロナ」がXBB.1.5対応1価ワクチンとして早期に参入してくるのかどうかは不明です。従来株でのダイチロナ承認となっていますが、変異ウイルス用のものを次々に出してくるのではないかと期待しています。「秋開始接種」の概要9月20日から始まる「秋開始接種」の概要は図のとおりになります。春開始接種では基礎疾患のない12~64歳は接種対象外だったのですが、今回再び対象になっています。とはいえ、「もう接種はいいや」と思っている人がかなり多いので、ヘタするとインフルエンザワクチンよりも打たれないという未来が待っているかもしれません。画像を拡大する図.新型コロナワクチン接種スケジュール(筆者作成)8月7日からオミクロン株対応2価ワクチンが初回接種可能にところで、あまり報道すらされていませんが、8月7日からオミクロン株対応2価ワクチンを初回接種できるようになりました。現状流通するのは5歳以上になります。生後6ヵ月~4歳に対するオミクロン株対応2価ワクチンも書面上は接種可能ですが、いずれXBB.1.5対応1価ワクチンを接種することになるため、こちらについては流通させない方針のようです。現在流行しているのはXBB系統ですが、従来型ワクチンと比べるとオミクロン株対応2価ワクチンでは、約7割の死亡予防効果が確認されています1)。そのため、「系統が違うから効かないのでは」と懸念しなくてもよいと思います。参考文献・参考サイト1)Lin DY, et al. Durability of Bivalent Boosters against Omicron Subvariants. N Engl J Med. 2023;388:1818-1820.

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わが国の平均寿命、コロナの影響などで男女とも低下/厚生労働省

 厚生労働省は、7月28日に令和4年の簡易生命表の概況を発表した。これによると男性の平均寿命は81.05歳、女性の平均寿命は87.09歳となり、前年と比較し男性は0.42年、女は0.4年下回ったほか、平均寿命の男女差は6.03年で前年より0.07年縮小した。 平均寿命の前年との差を死因別に分解すると、男性は悪性新生物(腫瘍)などの死亡率の変化が平均寿命を延ばす方向に働いていたが、男女とも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、心疾患(高血圧性を除く)、老衰などの死亡率の変化が平均寿命を縮める方向に働いていた。 死因別死亡確率(主要死因)について、65歳では男女とも悪性新生物(腫瘍)の死亡確率が低く、心疾患、老衰の死亡確率が高くなっており、75歳および90歳ではさらにこの傾向が強くなっていた。前年と比較すると、悪性新生物(腫瘍)、心疾患、脳血管疾患および肺炎の死亡確率は、65歳、75歳および90歳のすべての年齢で男女とも低下していた。老衰の死亡確率は、男性はすべての年齢で上昇、女性は65歳および75歳で低下、90歳で上昇していた。平均寿命の男女差は年々縮小【平均寿命の年次推移】( )内は男女差令和2年 男性81.56歳 女性87.71歳(6.15年)令和3年 男性81.47歳 女性87.57歳(6.10年)令和4年 男性81.05歳 女性87.09歳(6.03年)【平均寿命の前年との差に対する死因別寄与年数】・平均寿命の延長に寄与した死因 男性:悪性新生物[腫瘍](0.06年)、肺炎(0.01年) 女性:肺炎(0.01年)・平均寿命の短縮に寄与した死因 男性:COVID-19(0.12年)、心疾患(0.07年)、老衰(0.05年) 女性:COVID-19(0.13年)、老衰(0.10年)、心疾患(0.06年)【死因別死亡確率(主要死因)上位3つ】・65歳 男性:悪性新生物[腫瘍](26.16%)、心疾患(14.31%)、老衰(8.31%) 女性:老衰(19.79%)、悪性新生物[腫瘍](17.72%)、心疾患(16.32%)・75歳 男性:悪性新生物[腫瘍](24.49%)、心疾患(14.50%)、老衰(9.73%) 女性:老衰(21.18%)、心疾患(16.76%)、悪性新生物[腫瘍](15.50%)・90歳 男性:老衰(17.91%)、心疾患(15.94%)、悪性新生物[腫瘍](14.43%) 女性:老衰(29.51%)、心疾患(17.61%)、悪性新生物[腫瘍](9.02%)【平均寿命の国際比較】※入手可能な資料より算出 日本 男性81.05歳 女性87.09歳 男性の最高:スイス(81.6歳)/男性の最低:コンゴ民主共和国(56.5歳)  女性の最高:日本(87.09歳)/女性の最低:コンゴ民主共和国(59.7歳)

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長時間作用型の抗HIV薬は患者を問わず有効な可能性

 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症患者では、30年近く前から、抗レトロウイルス薬の毎日の服用が、AIDS(後天性免疫不全症候群)発症を抑える上で非常に効果的な方法となっている。しかし患者の中には、薬物中毒や精神疾患などの理由で毎日の服薬が困難な者もいる。こうした中、新たな研究で、長時間作用型の抗レトロウイルス薬の注射により、ほぼ全ての患者が完全な防御を得られる可能性が示された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)ベイエリア・エイズ研究センター(CFAR)のMonica Gandhi氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に7月4日掲載された。 Gandhi氏は、「注射による抗レトロウイルス療法(ART)を望むHIV感染症患者は多い。おそらく、錠剤を飲むことに嫌気がさしている患者や、生活上の困難が多過ぎて錠剤を飲めない人などがそれに該当するだろう」と話す。 抗HIV治療における最初の長時間作用型注射レジメンであるCabenuva(一般名カボテグラビルおよびリルピビリン)は、2021年1月に米食品医薬品局(FDA)により承認された。Cabenuvaは月に1回、または高用量を隔月に1回、投与するものだが、現時点での投与対象は、ウイルス量が抑制されている患者に限定されている。これは、毎日の錠剤服用が困難なためにウイルス量が抑制されていない患者を対象に、長時間作用型ARTの有効性を評価する研究が、いまだ実施されていないためだ。 Gandhi氏らは、2021年6月から2022年11月にかけて、米サンフランシスコ在住のHIV感染症患者133人を対象に長時間作用型ARTによる治療を行い、その有効性を検証した。対象者の年齢中央値は46(四分位範囲25〜68)歳で、88%がシスジェンダー(出生時の性別と性自認が一致)であり、62%が白人以外の人種だった。また、76人は経口ARTによりウイルス量が抑制されていたが、残る57人は経口ARTを受けておらず、ウイルス量が抑制されていなかった。さらに、34%の患者は物質使用障害を抱えており、42%がホームレスであった。なお、対象者はいずれもGandhi氏が所属するUCSFのHIV専門クリニックであるWard 86の患者だった。Ward 86では目下、約2,600人の患者が治療を受けているが、その多くは貧困で、ほとんどがメディケイド加入者であるという。 長時間作用型ARTによる治療の結果、ウイルス量が抑制されていた対象者では、全員が試験終了時まで、引き続きウイルス量が抑制されていることが明らかになった。一方、試験開始時にウイルス量が抑制されていなかった対象者では、治療開始から中央値33日後に57人中54人でウイルス量が抑制されていることが確認された。残る3人のうちの1人ではHIVのRNA量が予想通り100分の1にまで減少したが、その他の2人は早期に治療が奏効しないと判断された。 Gandhi氏は、「対象患者の多くで、初めてウイルス量を抑制することができた」と強調し、「特に、ホームレスの患者は、経口薬を持ち歩く必要がなく、月に1回、あるいは2カ月に1回、クリニックで注射を受ければ良い点に非常に満足していた」と付け加えた。 Gandhi氏によると、より規模の大きな臨床試験がすでに計画されているとのことだ。同氏は、「この大規模臨床試験の結果次第では、FDAが、錠剤服用が困難で、すでに体内のウイルス量が多い患者に対しても、長時間作用型ARTによる治療を承認する可能性がある」と期待を寄せている。

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迅速抗原検査での新型コロナ感染の除外には2回以上の検査が必要

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中に、医師は患者に、自宅での迅速抗原検査で陰性の結果が出ても、48時間後に再検査するよう伝えてきたが、どうやらこの助言は正しかったようだ。新たな研究により、症状の有無にかかわらず、迅速抗原検査で新型コロナウイルス感染を除外するには、陰性判定から48時間後の再検査が必要であることが示された。米マサチューセッツ大学(UMass)チャン医科大学のCarly Herbert氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に7月4日掲載された。 この研究は、有症状と無症状の新型コロナウイルス感染者における、新型コロナウイルスの迅速抗原検査であるAg-RDTの性能を検証するために実施された。試験参加者には、48時間の間隔を空けて自宅でAg-RDTを複数回実施してもらうとともに、RT-PCR検査用の鼻腔ぬぐい液も採取してもらった。鼻腔ぬぐい液は研究室に送られ、RT-PCR検査で感染の確認が行われた。試験に登録された7,361人のうち、試験1日目には症状がなく、検査結果も陰性だった2〜90歳の5,353人(平均年齢37.4歳)が解析対象とされた。このうちの154人は、試験期間中にRT-PCR検査で1回以上、新型コロナウイルス陽性と判定されたが、このうちの97人は無症状だった。 RT-PCR検査で感染が確認された日にAg-RDTを行った場合の感度は、有症状の人で59.6%、無症状の人で9.3%であった。Ag-RDTの感度は48時間の間隔を空けて検査を繰り返すごとに向上し、2回目の検査では有症状の人で92.2%、無症状の人で39.3%、3回目の検査では同順で93.6%、56.4%であった。さらに、リアルワールドでは、感染が確認されたその日にAg-RDTで検査をするとは限らないため、RT-PCR検査での陽性確定から2、4、6、8、10日後にAg-RDTを行った場合の検査性能を割り出した。その結果、感染確認後0〜6日の間のいずれかの日に48時間の間隔を空けてAg-RDTを2回行った場合の感度は、有症状の人で93.4%、無症状の人で55.3%と推定された。無症状の人の中から1回目のテストで陽性が判明した人を除くと、この感度は62.7%に、Ag-RDTを3回行った場合には79.0%に向上した。なお、初回の検査で陽性と判定された場合は、偽陽性率が低かったため、再検査は必要なかったという。 Herbert氏は、「迅速抗原検査の結果が陰性でも、体内のウイルス量が検査で検出される量に達していないだけの可能性があり、迅速抗原検査で検出されるまでには2、3日かかるかもしれない。この検査でのウイルス検出には、RT-PCR検査より多くのウイルス量が必要となる」と話す。 COVID-19は今でも公衆衛生上の問題であり、1回の迅速抗原検査での陰性の結果だけに頼ると、深刻な事態を招きかねない。「もし、その結果が偽陰性だった場合、ただのアレルギーだったと思って仕事に復帰することで、ウイルスを他の人にうつしてしまう可能性がある」とHerbert氏は言う。同氏はまた、「早期に自分が新型コロナウイルスに感染していることが分かれば、症状や罹病期間を抑えるために利用可能な治療を早く受けることもできる」としている。 さらに、COVID-19の後遺症も懸念材料の一つだ。Herbert氏は、「新型コロナウイルス検査での陽性結果を記録しておくことは、健康状態を把握する上で重要だ」と強調している。

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第175回 コロナ後遺症への抗ウイルス薬パキロビッド長期投与の試験開始

コロナ後遺症への抗ウイルス薬パキロビッド長期投与の試験開始新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)を治療しうる手段をいくつかに分類して次々に検討する第II相試験の2つが米国で始まりました1)。それら試験はCOVID-19の長期経過の把握、治療、予防を目指す米国国立衛生研究所(NIH)の取り組みであるResearching COVID to Enhance Recovery(RECOVER)の一環として実施されています。早速始まった2試験の1つはRECOVER-VITAL2)と呼ばれます。ウイルス感染の持続、ウイルスの再活性化、過剰あるいは慢性的な免疫反応や炎症がlong COVIDに寄与し、ウイルスの除去や炎症の抑制をもたらす治療でlong COVIDが改善しうるという仮説の検証を目的としています。RECOVER-VITAL試験でプラセボと対決する治療の先鋒として白羽の矢が立てられたのはファイザーの抗ウイルス薬であるニルマトレルビル・リトナビル(日本での商品名:パキロビッドパック)です。より長期(25日間)の同剤投与によるlong COVID症状改善効果の検討への被験者組み入れはすでに始まっています。RECOVER-VITALとともに始まったRECOVER-NEURO3)という名称のもう1つの試験は遂行機能や注意などのlong COVID絡みの認知機能の低下を改善しうる治療手段の検討を目当てとしています。RECOVER-NEUROで検討される手段はすでに3つが決まっています。1つはインターネットを介した脳トレで、BrainHQと呼ばれます。BrainHQは認知障害の改善手段としてすでに普及しています。もう1つはPASC-Cognitive Recovery(PASC CoRE)と呼ばれ、BrainHQと同様にインターネットを介した脳トレであり、注意や遂行機能を改善する効果があります。3つ目は脳の活動や血流増加を助けることが知られるSoterix Medical社の製品を利用した脳の電気刺激です。同社の経頭蓋直流刺激(tDCS)製品は自宅で簡単にできるように作られています。睡眠や自律神経に注目した2つの試験RECOVER-SLEEPとRECOVER-AUTONOMICも準備段階にあり、間もなく始まります。RECOVER-SLEEPはコロナ感染後に変化した睡眠習慣や寝付きに対処しうる手段を検討します。同試験の一環として過眠や日中の過度の眠気への覚醒促進薬2種の効果がプラセボと比較されます。また、入眠や睡眠の維持の困難などの睡眠障害に睡眠の質を改善する手段が有効かどうかも検討されます。準備段階のもう1つの試験はRECOVER-AUTONOMICと呼ばれ、心拍、呼吸、消化などの生理機能ひとそろいを制御する自律神経系の失調と関連する症状への対処法を調べます。心拍異常、めまい、疲労などの症状を特徴とする体位性頻脈症候群の治療手段いくつかが手始めに検討されます。免疫疾患治療薬とプラセボの比較がその1つで、心拍亢進を伴う慢性心不全の治療薬とプラセボの比較も予定されています。運動できなくなることや疲労への手段を検討する試験も患者や専門家からの意見を取り入れて開発されています。今後次々に始まっていくRECOVER試験はlong COVIDの影響が最も大きい地域を含めて被験者を募っていきます。試験参加施設は自治体と協力してlong COVIDについての理解を促し、RECOVER試験への参加の普及に努めます。効果的な治療や手当てを検討する臨床試験はlong COVIDへの政府の取り組みの肝であり、苦労が絶えない患者やその家族が楽になるように努力していくと米国政府の役員は言っています1)。参考1)NIH launches long COVID clinical trials through RECOVER Initiative, opening enrollment / NIH 2)RECOVER-VITAL試験(ClinivalTrials.gov) 3)RECOVER-NEURO試験(ClinivalTrials.gov)

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不要な抗菌薬処方、60歳以上の医師に多く特定の医師に集中か

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含むウイルス感染症には、抗菌薬が無効であるにもかかわらず、抗菌薬が処方されている実態が報告されている1,2)。ただし、抗菌薬処方に関連する医師や患者の特徴については明らかになっていない。そこで、東京大学大学院医学系研究科の宮脇 敦士氏らは、本邦の一般開業医を対象としたデータベース(Japan Medical Data Survey:JAMDAS)を用いて、COVID-19の外来受診データを分析した。その結果、本邦の新型コロナのプライマリケアにおいて、抗菌薬の処方は少数の診療所に集中していた。また、60歳以上の医師は抗菌薬の処方が多かった。本研究結果は、JAMA Network Open誌2023年7月25日号のリサーチレターで報告された。新型コロナの抗菌薬処方の傾向についてJAMDASを用いて解析 2020年4月1日~2023年2月28日の期間において、継続観察された843診療所の新型コロナの外来受診データ(JAMDAS)を分析し、抗菌薬処方の傾向について検討した。ロジスティック回帰モデル(月と都道府県で調整)を用いて、患者特性(性、年齢、合併症の有無)や医師特性(性、年齢)と抗菌薬処方の関連を調べた。なお、抗菌薬の処方が適切である可能性のある疾患の診断を有する患者の受診データは除外した。 JAMDASを用いて新型コロナの抗菌薬処方の傾向について検討した主な結果は以下のとおり。・COVID-19患者52万8,676例(年齢中央値33歳[四分位範囲:15~49]、女性51.6%)のうち、4万7,329例(9.0%)に抗菌薬が処方された。・新型コロナで最も多く処方された抗菌薬は、クラリスロマイシン(25.1%)であった。次いで、セフカペン(19.9%)、セフジトレン(10.2%)、レボフロキサシン(9.9%)、アモキシシリン(9.4%)の順に多かった。・新型コロナの抗菌薬処方絶対数の上位10%の診療所で、全体の処方数の85.2%を占めていた。・新型コロナの抗菌薬処方絶対数の上位10%の診療所における抗菌薬の平均処方率が29.0%であったのに対し、残りの90%の診療所における抗菌薬の平均処方率は1.9%であった。・医師が新型コロナに抗菌薬を処方する割合は、44歳以下の医師と比較して、60歳以上の医師で高かった(調整オッズ比[aOR]:2.38、95%信頼区間[CI]:1.19~4.47、p=0.03)。医師の性別によって、抗菌薬の処方に違いはなかった。・新型コロナ患者が抗菌薬を処方される割合は、18歳未満の患者と比較して、18~39歳(aOR:1.69、95%CI:1.37~2.09、p<0.001)および40~64歳(aOR:1.36、95%CI:1.11~1.66、p=0.01)の患者で高かった。・併存疾患のない新型コロナ患者と比較して、併存疾患を有する患者は抗菌薬を処方される割合が高かった(aOR:1.48、95%CI:1.09~2.00、p=0.03)。 本研究結果について、著者らは「本研究の限界として、患者の重症度など、未測定の交絡因子の影響を十分に考慮できないこと、JAMDASに含まれない診療所などへの一般化可能性には限界があることなどが挙げられる」としたうえで、「本研究結果は、抗菌薬の適正使用促進の取り組みに役立つ可能性がある」とまとめた。

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コロナ異種ワクチンによる追加接種を支持するエビデンス/BMJ

 オミクロン株が優勢な時期における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種では、プライマリ接種スケジュール(2回接種)や同種ブースター接種(3回)と比較して、異種ブースター接種(3回)はCOVID-19による入院や死亡の予防効果が優れていたことが、デンマーク・Statens Serum InstitutのNiklas Worm Andersson氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2023年7月24日号に掲載された。3種のワクチンを比較する北欧のコホート研究 本研究は、北欧の4ヵ国(デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン)のデータを用いた住民ベースのコホート研究である(欧州医薬品庁[EMA]の助成を受けた)。 対象は、初回接種時に年齢18歳以上で、2020年12月27日~2022年12月31日に、プライマリ接種スケジュールとして、AZD1222(アストラゼネカ製)、BNT162b2(1価、ファイザー製)、mRNA-1273(モデルナ製)、あるいはこれらの任意の組み合わせで、少なくとも1回の接種を受けた集団であった。 主要アウトカムは、4ヵ国を合わせたCOVID-19関連入院とCOVID-19による死亡とした。フォローアップはブースター接種後14日目から75日間行い、相対的なワクチンの有効性を75日目の累積発生率を用いて(1-リスク比)として算出した。異種接種戦略を支持する新たなエビデンス 北欧4ヵ国全体で、108万6,418人がAZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273による異種ブースター接種(3回)を、250万5,093人がBNT162b2+mRNA-1273による異種ブースター接種(3回)を受けた。 プライマリ接種(2回)のみと比較して異種ブースター接種は有効性に優れ、COVID-19関連入院の予防に関する有効性はAZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273が82.7%(95%信頼区間[CI]:77.1~88.2)、BNT162b2+mRNA-1273は81.5%(78.9~84.2)であり、COVID-19による死亡の予防に関する有効性はそれぞれ95.9%(91.6~100.0)、87.5%(82.5~92.6)であった。 また、同種ブースター接種(BNT162b2またはmRNA-1273の3回接種)も同様に、プライマリ接種のみの場合に比べCOVID-19関連入院(≧76.5%)およびCOVID-19による死亡(≧84.1%)の予防効果の向上と関連が認められた。 異種ブースター接種を同種ブースター接種と比較すると、COVID-19関連入院の予防に関してはAZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273が27.2%(95%CI:3.7~50.6)、BNT162b2+mRNA-1273が23.3%(15.8~30.8)で、COVID-19による死亡の予防ではそれぞれ21.7%(−8.3~51.7)、18.4%(−15.7~52.5)であり、小幅ながら異種ブースター接種で良好だった。 著者は、「COVID-19ワクチン接種は現在、異種接種スケジュールへの依存が高くなり、この傾向は今後も続くと考えられるが、本研究の結果はこの戦略を支持する新たなエビデンスを付け加えるものである」としている。

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第158回 コロナ新規患者報告数、今後も感染拡大の見通し/厚労省

<先週の動き>1.コロナ新規患者報告数、今後も感染拡大の見通し/厚労省2.膨らみ続ける社会保障給付費、高齢化とコロナ対策で過去最高額に/厚労省3.マイナンバーカード一体化続行、健康保険証の来秋廃止は延期に含み-岸田首相/政府4.診療報酬改定時期が6月に変更、医療機関などの負担軽減を目指す/厚労省5.不正アクセスで患者情報が4万8千件以上流出/福岡6.市民病院が経営難から来年3月に閉院へ/大阪1.コロナ新規患者報告数、今後も感染拡大の見通し/厚労省厚生労働省は、8月4日に新型コロナウイルス感染症の発生状況(7/24~7/30)を公表した。その結果、5類移行後も11週連続で増加が継続し、直近では全国約5,000の定点医療機関1施設当たり15.91人と前週比1.14倍に増加していた。地域別の新規患者数は、42都府県で前週より増加傾向にあり、沖縄県では7月上旬以降、減少傾向がみられていた(沖縄県、前週比0.78)が、全国の年代別新規患者数は、10歳代を除きすべての年代で前週より増加傾向にある。定点医療機関の報告に基づく過去の推計値と比較すると、全国で感染者が約10万人に上っていた2022年11月中旬と同水準であり、感染症法上の分類が5類に移行したことで、感染者数は8.8倍となっており、とくに西日本で感染が急速に拡大、新規入院者数も増加していることが明らかになっている。新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード座長の脇田 隆字氏(国立感染症研究所長)は「今後も感染が拡大する」と見通しを公表し、「冷房中でもなるべく換気するように」と発言した。参考1)第124回 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(厚労省)新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの資料等(第116回~)新型コロナウイルス感染症の直近の感染状況の評価等2)コロナ新規患者報告数、42都府県で増加-厚労省が第30週の発生状況を公表(CB news)3)新型コロナ 感染警戒レベルの基準設定を検討 厚労省(毎日新聞)4)コロナ感染、定点あたり15人超 全国で1日10万人規模か(日経新聞)2.膨らみ続ける社会保障給付費、高齢化とコロナ対策で過去最高額に/厚労省厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は、日本の社会保障給付費が2021(令和3)年度に過去最高の138兆7,000億円を記録したことを明らかにした。社会保障給付費の内訳は、年金(55兆8,151億円)、医療(47兆4,205億円)、介護・福祉(35兆5,076億円)。1人当たりの給付費は110万5,500円で、前年度と比べ5万7,400円、5.5%増加していたほか、国内総生産(GDP)比では25.2%と、初めて25%を超えていた。増加の原因として、高齢化による医療費の増加と新型コロナウイルスワクチン接種関連費用などのコロナ対策、子育て世帯への給付金などがあげられている。参考1)令和3(2021)年度 社会保障費用統計の集計結果を公表します(国立社会保障・人口問題研究所)2)社会保障給付費138兆円 コロナ影響で過去最高(産経新聞)3)社会保障給付費138兆円、過去最高 21年度(日経新聞)3.マイナンバーカード一体化続行、健康保険証の来秋廃止は延期に含み-岸田首相/政府岸田文雄総理大臣は、8月4日に記者会見を開き、2024年秋に予定されている健康保険証の廃止は当面は延期せず、マイナンバーカードの問題に対応する施策を続ける考えを示した。しかし、トラブルの総点検の結果によっては廃止を延期する可能性も示した。また、国民の不安を払拭するため、マイナンバーカードと一体化した保険証を持っていない人には「資格確認書」を発行する方針を明らかにした。さらに、デジタル化を進めて国民がメリットを実感できるように広報にも力を入れると述べた。岸田首相は、総点検の中間報告を近く公表する予定。ただ、資格確認書を有資格者全員に交付することについては、多額のコストを要するとして効率化の批判が集まっている。参考1)岸田首相、健康保険証の廃止時期など「適切に対応」-延期に含み(CNET)2)岸田首相会見 “健康保険証廃止は当面維持 不安払拭に努力”(NHK)3)資格確認書、有資格者全員交付は多額のコスト 遠のく効率化(産経新聞)4)保険証、来秋廃止を維持 岸田首相「総点検踏まえ判断」(日経新聞)4.診療報酬改定時期が6月に変更、医療機関などの負担軽減を目指す/厚労省厚生労働省は、8月2日に中央社会保険医療協議会の総会を開き、2024年度以降の診療報酬の改定時期を、従来の4月から6月に変更することを提案し、了承された。診療報酬の改定内容が早く決まることで医療機関などが対応しやすくなるよう準備期間が長くなる。これまで改定の時期は4月で医療機関や薬局、システム改修業者は短期間で準備をしなければならず、負担が大きいとして改善を求める声があったため、厚労省では6月に後ろ倒しすることで負担軽減を図る方針。一方、薬価の改定はこれまで通り4月に実施される予定で、24年度以降も引き続き4月となる見込み。診療側の委員からは、診療報酬と薬価の2回の改定を行うことに対する医療現場への負担や影響についての懸念が示された。参考1)中央社会保険医療協議会 総会[第551回]議事次第(厚労省)2)診療報酬改定、来年度から「6月実施」へ 2カ月後ろ倒し(朝日新聞)3)診療報酬改定6月1日施行、24年度から 薬価改定は4月1日施行を維持(CB news)5.不正アクセスで患者情報が4万8千件以上流出/福岡福岡徳洲会病院は、第三者から不正アクセスを受け、データベースに保存されていた患者の個人情報について、最大で約4万8,983件が流出した可能性を明らかにした。病院の発表によると、流出した情報には、病名や検査値も含まれていたが、悪用は確認されていない。不正アクセスは今年4月4日に、職員が業務用のパソコンで外部のホームページを閲覧していた際に、警告画面に記載された電話番号に連絡して指示に従って操作したところ、パソコンが遠隔操作に切り替わり、金銭を要求されたとしている。同病院はただちにシステムを中止し、より高度なセキュリティー水準のシステムに切り替えている。病院は福岡県警や厚生労働省、個人情報保護委員会へ報告し、専門業者に調査を依頼している。対象の患者には個別に謝罪し、専用の相談窓口を設けて対応しているほか、「再発防止に向けて、管理体制の強化に努める」とコメントしている。参考1)不正アクセスによる個人情報流出の可能性についてお知らせとお詫び(福岡徳洲会病院)2)福岡徳洲会病院、患者情報4万8千件流出か データベースに不正アクセス(産経新聞)3)福岡徳洲会病院 個人情報など5万件余が一時閲覧可能な状態に(NHK)4)福岡徳洲会病院で患者などの個人情報5万件が流出か 不正アクセス受け病名や検査の値も(福岡放送)6.市民病院が経営難から来年3月に閉院へ/藤井寺市民病院大阪府藤井寺市は市立藤井寺市民病院(病床数98床)を、令和6年3月31日で閉院する基本方針案を公表し、市民からの意見を募集している。同病院は厚生労働省から再検証要請対象医療機関に挙げられ、総務省の公立病院改革ガイドラインに基づき、改革(経営)プランを策定してきたが、経常損益も5年度で約8億5千万円、6年度も約9億2千万円の赤字が見込まれている。藤井寺市は平成10年頃から施設の更新を検討してきたが、老朽化も進み、建て替えに多額の費用が必要とされ、さらに医師派遣の減少で診療に制限が出ており、赤字が続くことから、市民病院の経営継続は困難と判断され、閉院が避けられないと結論付けられた。市側は市民説明会を開催し、閉院後の小児科の入院診療機能、災害医療などの機能移転に向けて努めるとしている。なお、「市立藤井寺市民病院のあり方に関する基本方針」に対するパブリックコメントの締め切りは8月16日まで。参考1)「市立藤井寺市民病院のあり方に関する基本方針」(案)についてパブリックコメントを実施します(藤井寺市)2)市民病院を来年3月に閉院案公表 大阪・藤井寺市(産経新聞)3)市民病院、経営難で3月に閉院へ 藤井寺市が方針(朝日新聞)

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軟骨無形成症〔ACH:achondroplasia〕

1 疾患概要■ 定義軟骨無形成症(achondroplasia:ACH、MIM100800)は四肢短縮型低身長症を呈する骨系統疾患の代表である。成人身長は男性で約130cm、女性で約124cmと低く著明な四肢短縮のため、患者は日常生活でさまざまな制約をうける。脊柱管狭窄のため中高年になると両下肢麻痺を呈したり、下肢アライメントの異常による変形性関節症を発症し、歩行障害を生じたりすることが少なくない(指定難病)。■ 疫学ACHの頻度は出生10,000~30,000に1人と報告されている。■ 病因ACHの97%以上に、染色体4p26.3に位置するFGFR3遺伝子のGly380Arg病的バリアント(ほとんどがc.1138G>A、ごく一部がc.1138G>C)を認め、遺伝型としての均質度は高い。遺伝様式は常染色体顕性遺伝であるが、約80%は新規突然変異によるものとされる。変異FGFR3は恒常的に活性化された状態にあり、軟骨細胞の分化、軟骨基質の産生および増殖が抑制される。軟骨組織を介して骨が形成される軟骨内骨化が障害されるため、長管骨の伸長不良、頭蓋底の低形成などが生じると考えられている。■ 症状ACHでは、近位肢節により強い四肢短縮型の著しい低身長、特徴的な顔貌、三尖手などがみられる(表)。成長とともに低身長が目立つようになる。思春期の成長スパートがみられず、この間にも相対的に低身長の程度が悪化する。成人身長は男性130cm程度、女性124cm程度である。顔貌の特徴は出生時からみられる。乳幼児期(3歳頃まで)に問題となるのは、大後頭孔狭窄および頭蓋底の低形成による症状である。大後頭孔狭窄では延髄や上位頚髄の圧迫により、頚部の屈曲制限、後弓反張、四肢麻痺、深部腱反射の亢進、下肢のクローヌスがみられ、中枢性無呼吸、脊髄症、水頭症、突然死の原因となる。ACHの脳室拡大は、2歳までに生じる可能性が最も高く、一般的には交通性であり、真の水頭症(神経症状を伴う脳室拡大)はまれであるが、重篤な合併症の1つである。上気道閉塞はよくみられ、10~85%の患者が睡眠時無呼吸や慢性呼吸障害の治療が必要とされる。胸郭の低形成が高度な場合、拘束性肺疾患や呼吸器感染症の反復、重症化も問題になる。中耳炎の罹患も多く、ACHの約90%で2歳までに発症する。多くは慢性中耳炎に移行し、30~40%で伝音性難聴を伴う。脊柱管狭窄は必発であり、幼児期に症状が発現することはまれであるが、成長とともに狭窄が増強し、しびれ、脱力、間欠性跛行、下肢麻痺、神経因性膀胱による排尿障害などを呈することが多い。40歳までに約7%の患者が手術を受けると報告されている。胸腰椎後弯、内反膝をよく認め、腰痛、下肢痛もしばしばみられる。乳児期に運動発達の遅延はあるが、知能は正常である。このほか、咬合不整、歯列不整がみられる。表 軟骨無形成症の診断基準A.症状1.近位肢節により強い四肢短縮型の著しい低身長(−3SD以下の低身長、指極/身長<0.96の四肢短縮)2.特徴的な顔貌(頭蓋が相対的に大きい、前額部の突出、鼻根部の陥凹、顔面正中部の低形成、下顎が相対的に突出):頭囲>+1SD3.三尖手(手指を広げたときに中指と環指の間が広がる指)B.検査所見単純X線検査1.四肢(正面)管状骨は太く短い、長管骨の骨幹端は幅が広く不整で盃状変形(カッピング)、大腿骨頸部の短縮、大腿骨近位部の帯状透亮像、大腿骨遠位骨端は特徴的な逆V字型、腓骨が脛骨より長い(腓骨長/脛骨長>1.1、骨化が進行していないため乳幼児期には判定困難)。2.脊椎(正面、側面)腰椎椎弓根間距離の狭小化(椎弓根間距離L4/L1<1.0)(乳児期には目立たない)、腰椎椎体後方の陥凹。3.骨盤(正面)坐骨切痕の狭小化、腸骨翼は低形成で方形あるいは円形、臼蓋は水平、小骨盤腔はシャンパングラス様。4.頭部(正面、側面)頭蓋底の短縮、顔面骨低形成。5.手(正面)三尖手、管状骨は太く短い。C.鑑別診断以下の疾患を鑑別する。骨系統疾患(軟骨低形成症、変容性骨異形成症、偽性軟骨無形成症など。臨床症状、X線所見で鑑別し、鑑別困難な場合、遺伝子診断を行う)D.遺伝学的検査線維芽細胞増殖因子受容体3型(FGFR3)遺伝子のG380R変異を認める。<診断のカテゴリー>DefiniteAのうち3項目+Bのうち5項目すべてを満たしCの鑑別すべき疾患を除外したもの。または、Probable、PossibleのうちDを満たしたもの。ProbableAのうち2項目以上+、Bのうち3項目以上を満たしCの鑑別すべき疾患を除外したもの。PossibleAのうち2項目以上+Bのうち2項目以上を満たしCの鑑別すべき疾患を除外したもの。(出典:難病情報センター 軟骨無形成症)■ 予後積極的な医学的評価を行わない場合、乳幼児期に約2~5%の突然死が生じる。突然死の原因は主に無呼吸であると考えられている。大半が知能面では正常であり、平均余命も正常であるとされる。脊柱管狭窄に伴う両下肢麻痺や下肢のアライメント異常による下肢変形が経年的に増加する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)上記の症状と下記の骨単純X線所見と合わせて診断する(表)。骨X線所見にて、太く短い管状骨、長管骨の骨幹端は幅が広く不整で盃状変形(カッピング)、脛骨より長い腓骨、腰椎椎弓根間距離の狭小化、腰椎椎体後方の陥凹、坐骨切痕の狭小化などがみられる(表)。新生児期には、扁平椎を認めることがある。鑑別疾患として軟骨低形成症、変容性骨異形成症、偽性軟骨無形成症などが挙げられる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 成長ホルモン(GH)治療ACHのヒトGH治療開始時の適応基準として、3歳程度以上、現在の身長が同性、同年齢の標準値-3SD以下、手術的治療を考慮するほどの大後頭孔狭窄、脊柱管狭窄、水頭症、脊髄・馬尾圧迫などの合併症がMRI ・CT所見上認められないこと。また、これらのための圧迫による臨床上問題となる神経症状が認められないことなどがある。GH治療の身長に対する短期的な効果はいくつか報告されている。5年間に身長SDSが低用量で1.3SD、高用量で1.6SD改善したという報告や、治療開始前に比べて成長速度が1年目に2.6cm/年、2年目に0.7cm/年増加したという報告がある。一方、3年間のGH治療で身長SDSの改善が0.3SDにとどまったという報告もある。成人身長の検討では、男性で0.6SD(3.5cm)の増加、女性で0.5SD(2.8cm)の増加がみられたと報告されている。■ C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)アナログ治療ACHに対してCNPアナログであるボソリチド(商品名:ボックスゾゴ)が2022年に製造販売承認された。国際多施設共同治験においてボソリチド群ではプラセボ群に比べて、52週において1.57cm/年の成長促進効果を認めたことが報告された。この成長促進効果は104週でも維持されていた。今後の中長期的な効果の検討が必要である。なお、ボソリチドは3歳未満の患者でも投与可能である。■ 四肢延長術:ACHの低身長、四肢短縮の改善のため実施されることが多い。創外固定器を用いた下肢延長術は長期の治療期間、高頻度の合併症がみられるため、脚延長術開始の意思決定は患者自身で行うことが望ましい。下肢延長術では8.4~9.8cmの平均獲得身長とされている。後遺症として、尖足、腓骨神経麻痺の残存、膝関節・足関節の外反変形、骨折、股関節の拘縮などが報告されている。上腕骨延長術も施行されているがまとまった報告は少ない。4 今後の展望新規治療として以下の第II相臨床試験が行われている。TransCon CNP(CNPアナログ/週1回注射)、Infigratinib(FGFR阻害薬/経口投与)、塩酸メクリジン(抗ヒスタミン薬/経口投与)、RBM-007(FGF2 アプタマー/1~4週間隔注射)。今後、成長障害や他の症状により有効な治療法が実施可能となることが期待される。5 主たる診療科小児科、整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 軟骨無形成症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター 軟骨無形成症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「先天性骨系統疾患の医療水準と患者QOLの向上を目的とした研究」(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報つくしんぼ-軟骨無形成症と骨疾患低身長の会(患者とその家族および支援者の会)つくしの会:軟骨無形成症患者・家族の会(患者とその家族および支援者の会)1)軟骨無形成症診療ガイドライン-日本小児内分泌学会2)GeneReviewsJapan:軟骨無形成症3)Hoover-Fong J, et al. Pediatrics. 2020;145(6):e20201010.4)Savarirayan R, et al. Nat Rev Endocrinol. 2022;18:173.公開履歴初回2023年8月7日

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