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モデルナXBB対応コロナワクチン、BA.2.86「ピロラ」にも有効

 米国・Moderna社は9月6日付のプレスリリースにて、同社のXBB対応の新型コロナワクチンが、高度な変異のある新たな変異株のBA.2.86(通称:ピロラ)に対して、中和抗体をヒトで8.7倍増加させることを、同社の臨床試験データで確認したことを発表した。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、BA.2.86は、新型コロナワクチンを以前接種した人でも感染する可能性があり、新たなXBB対応ワクチンは重症化や入院を減らすのに有効な可能性があるという。 同社のXBB対応ワクチンは、日本を含む全世界で現在主流となっているEG.5系統1)や、FL.1.5.1に対する有効性も確認されている。BA.2.86は、以前のオミクロン株と比較して30以上の変異を持つ高度な変異株であることから、公衆衛生当局により厳重に監視されている2)。9月7日に、日本でも初めてBA.2.86が検出されたことがGISAIDに報告された3,4)。一部の国では、BA.2.86が過去の新型コロナワクチン接種または感染による保護免疫を逃避する可能性があることから、ワクチンの接種開始時期を早めようとする動きもあるという。日本では、本ワクチンは9月20日以降の秋開始接種で使用される予定。今回のBA.2.86に対するワクチンの臨床試験データは、規制当局と共有され、査読付き論文として提出されている。

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プロスポーツチームを誘致した都市でインフルエンザによる死亡者数が増加

 プロスポーツチームを新たに誘致した都市では、インフルエンザによる死亡者数が急増するという研究結果が報告された。米ウェストバージニア大学ジョン・チェンバース・カレッジ・オブ・ビジネス&エコノミクスのBrad Humphreys氏らによる研究で、詳細は「Sports Economics Review」に6月8日掲載された。 新しい都市にプロスポーツチームを誘致する際には、多額の税金が投入されることが多い。研究グループによると、2000年以降、米国の州政府や地方自治体は、新しいスタジアムの建設に200億ドル(1ドル143円換算で約2兆8600億円)近く、年間にするとおよそ10億ドル(同約1430億円)を投じてきた。これらの投資は、主に政府が債券を発行して調達した補助金で賄われている。 Humphreys氏らは、米疾病対策センター(CDC)の54年間にわたる122都市でのインフルエンザによる死亡データと、NBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)、NHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)、MLB(メジャー・リーグ・ベースボール)のプロスポーツチームが都市に到着した日付およびこれらのリーグの試合開催期間のデータを収集。都市の人口、気温、降雨量、毎年流行するインフルエンザ株など、ウイルスの拡散に関連する要因を考慮して、両者の関連を検討した。 その結果、1962年から2016年の間にプロチームを誘致した米国の都市では、チーム到着後にインフルエンザによる10万人当たりの死亡者数が4〜24%増加していたことが明らかになった。具体的には、NFLのチームがこれまでプロスポーツチームを抱えたことのない都市に移動してきたときには、インフルエンザによる死亡者数が平均で17%増加していた。これはインフルエンザにより年に約13人の超過死亡が生じたことを意味する。また、NBAのチームを新たに迎え入れた場合には、その都市のインフルエンザの死亡者数が平均して4.7%増加していた。影響が最も小さかったのはMLBチームを迎え入れた場合で、年に3人のインフルエンザによる超過死亡をもたらしていた。これとは反対に影響が最も大きかったのはNHLのチームを迎え入れた場合で、インフルエンザによる10万人当たりの死亡者数が24.6%増加していた。これは年に約20人の超過死亡に相当するという。 論文の共著者である、ウェストバージニア大学のJane Ruseski氏は、「ホッケーチームを迎え入れることでインフルエンザによる死亡者がこれほど増える理由には、NHLのシーズンとチームが本拠を置く場所の両方が関係していると考えられる。NHLのシーズンは、インフルエンザのシーズンとほぼ完全に重なっている上に、NHLチームは寒冷地に本拠を構える可能性が高いからだ」と説明している。ただし、インフルエンザとスポーツリーグのシーズンの重なりが、インフルエンザによる死亡者数増加の主な要因であると断定することはできないと同氏は言う。 一方Humphreys氏は、「スポーツチームがある都市の人々は、チームがない都市の人々よりも病気になる可能性が高いことが、この研究で示された。この結果は、プロスポーツイベントの開催に関するわれわれの考え方を変える可能性がある」と指摘する。そして、「納税者が、プロスポーツチームのせいで病気になり、医療制度に負担をかけ、仕事を休むことで企業の収益に悪影響を与え得ることを理解すれば、プロスポーツ施設に補助金を出すことに消極的な姿勢を示すようになるだろう」と話している。 論文の筆頭著者である米オールド・ドミニオン大学のAlexander Cardazzi氏は、「同様の傾向が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にも当てはまる可能性が高い」との見方を示す。同氏は、「スタジアムやアリーナで開催されるスポーツイベントでは、大勢の人々が至近距離に集まる。これらの観客は、手であちこちの環境表面に触れ、話したり大声を出したり、ハイタッチなどで人と接触をする」と述べ、このような行動がインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスの拡散につながると話している。

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第163回 コロナワクチン接種、来年度も高齢者向けは無料、一般は自己負担に/厚労省

<先週の動き>1.コロナワクチン接種、来年度も高齢者向けは無料、一般は自己負担に/厚労省2.コロナ病床確保料504億円過大支給、医療機関に返還要求/厚労省3.新型コロナ治療薬の自己負担、10月より最大9,000円へ/厚労省4.2022年度、医療費の高騰続く、高額薬の影響で「高額レセプト」過去最多更新/健保連5.出産費用、全国平均で2万円増加、456施設が値上げ/厚労省6.医師の過労自殺問題、日医会長と遺族が働き方改革を訴える1.コロナワクチン接種、来年度も高齢者向けは無料、一般は自己負担に/厚労省来年度の新型コロナウイルスワクチンの接種に関する方針が明らかになった。厚生労働省は、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会を9月8日に開き、来年度のコロナウイルスワクチン接種について、65歳以上の高齢者や重症化リスクの高い人を対象に、年1回とする案を議論した。これまで「臨時接種」の位置付けで行われていた無料接種は、今年度をもって終了し、2024年度からは原則自己負担となる見込み。なお、高齢者らは公費助成の「定期接種」として、無料または低額での接種が検討されている。一方、65歳未満の人々は「任意接種」としての扱いとなり、自己負担が必要となる可能性が高い。今回の方針変更の背景には、新型コロナの変異株オミクロンの重症化率の低下や感染症法上の「5類」への移行、さらに抗ウイルス薬の普及などが影響しており、厚労省は接種の目的を「重症化予防」と位置付け、接種時期を「秋・冬」とする案も示している。参考1)第55回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会(厚労省)2)高齢者接種、年1回で調整 来年度コロナワクチン 厚労省(時事通信)3)コロナワクチン、国費での無料接種終了へ 65歳未満は原則自己負担(毎日新聞)4)新型コロナワクチン、無料接種は今年度限りで終了…高齢者らには助成も検討(読売新聞)2.コロナ病床確保料504億円過大支給、医療機関に返還要求/厚労省厚生労働省は2020年度と2021年度の2年間で、新型コロナウイルスの感染拡大に対応し、病床を確保した医療機関に支払われる「病床確保料」に関して、計約504億円を過大に支給していたと発表した。この過大交付は、岩手と徳島を除く45都道府県の延べ1,536の医療機関で発生。原因として、退院日を空き病床と誤判断して病床確保料を申請した医療機関が多数確認され、その95%以上が制度の誤認識によるものとされている。また、医師や看護師の不足により患者を受け入れられないにもかかわらず、誤って申請していたケースも見受けられた。会計検査院は昨年、病床確保料の過大支給が約55億円発生していたとの報告を公表。これを受け、厚労省は全国の医療機関に対する調査を進めていた。厚労省は、これらの医療機関に対して全額返還を求めている。参考1)病床確保料 国が504億円過大支給…医療機関に全額返還求める(読売新聞)2)コロナ病床確保料、500億円過大交付 医療機関からの返還求める(朝日新聞)3)コロナ患者の病床確保料、過大交付500億円超 制度の認識誤りか(毎日新聞)3.新型コロナ治療薬の自己負担、10月より最大9,000円へ/厚労省新型コロナウイルス治療薬に関する政府の支援策の変更により、10月以降、高額治療薬の費用に自己負担が導入されることが明らかになった。これまで治療薬の費用は全額公費で賄われていたが、今後、窓口負担が3割の患者には最大9,000円、2割の患者では6,000円、1割の患者では3,000円の自己負担が求められる方向で調整が進められている。今回の方針変更では、治療1回当たりの患者負担に上限額を設け、それを超えた分は公費でカバーされる予定。高額な治療薬には、米メルクのモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)や米ファイザーのニルマトレルビル/リトナビル(同:パキロビッドパック)があり、これらの薬価は9万円以上となっている。さらに入院費用の補助も公費支援自体は継続されるものの、10月以降については減額される方針で、これは他の5類感染症との公平性を踏まえて重症患者に重点化される見通し。新型コロナの法的な位置付けが5月に「5類」に移行して以降、医療対応は平時に近付いており、8月時点での新型コロナウイルスに対応する外来は4.9万ヵ所、入院対応可能な病院も7,300病院となっていることが明らかにされた。参考1)コロナ薬、患者負担9,000円 10月以降、低所得者は軽減(東京新聞)2)コロナ治療薬自己負担 “最大”9,000円 来月から(FNN)3)コロナ治療薬、3割負担なら上限9,000円に 厚労省調整(日経新聞)4.2022年度、医療費の高騰続く、高額薬の影響で「高額レセプト」過去最多更新/健保連健康保険組合連合会(健保連)が9月7日に発表した2022年度のデータによれば、1ヵ月の医療費が1,000万円以上となる「高額レセプト」が前年度比275件増の1,792件となり、過去最多を記録したことが明らかになった。この増加の背景には、高額な医薬品の保険適用が大きく影響している。とくに、脊髄性筋萎縮症の治療薬オナセムノゲン アベパルボベク(商品名:ゾルゲンスマ)や白血病など治療薬チサゲンレクルユーセル(同:キムリア)の利用が目立つ。ゾルゲンスマは1億6,708万円で、国内で保険適用されている薬の中で最も高額。上位9位までの患者は主に脊髄性筋萎縮症の治療薬利用者であり、1億円超の医療費を記録している。健保連では、このような高額薬の増加による医療費の膨張を受け、医療の効率化や合理化の推進が必要であると指摘している。参考1)令和4年度 高額医療交付金交付事業における高額レセプト上位の概要 (健保連)2)医療費月1,000万円以上過去最多 22年度、高額薬利用が増加 健保連調査(時事通信)3)高額レセプト件数8年連続で過去最多 22年度1,792件、健保連集計(CB news)4)2022年度の1か月医療費上位1-9位は脊髄性筋萎縮症患者で各々1億7,000万円程度、1,000万円超レセは1,792件で過去最高-健保連(Gem Med)5.出産費用、全国平均で2万円増加、456施設が値上げ/厚労省厚生労働省は、9月7日に社会保障審議会医療保険部会を開き、出産費用の見える化について議論した。この中で、令和5年7月時点で分娩を取り扱っている分娩取扱施設を対象に行ったアンケート調査の結果、出産育児一時金が2022年12月に原則42万円から50万円に増額された後、出産費用を値上げした医療機関が全国で456施設に上ることが明らかになった。2023年5月時点の出産費用の平均は50万3,000円となり、昨年と比べて約2万円増加していた。値上げの主な理由として、「光熱費などの高騰」が約9割、「一時金の増額で妊産婦の自己負担への影響が少ないと考えた」という回答が半数以上であった。厚労省は、出産費用の「見える化」を目的として、施設ごとの費用内訳を公式ホームページで公開する予定。参考1)出産費用の見える化等について(厚労省)2)出産費用、半数近くが値上げ 「出産育児一時金の増額」も理由に(朝日新聞)3)出産費値上げ、医療機関の26.5% 一時金の増額後に(日経新聞)4)出産費用4月までに増額4割超、厚労省調べ 医療保険部会で、「一時金引き上げに伴い上昇」(CB news)5)出産育児一時金引き上げ後に出産費用値上げは456施設 厚労省(NHK)6.医師の過労自殺問題、日医会長と遺族が働き方改革を訴える神戸市東灘区の甲南医療センターで2022年に26歳の専攻医・高島 晨伍さんが自殺し、この問題では西宮労働基準監督署が、長時間労働が原因として労災認定を行った。そして、高島さんの過去1ヵ月の時間外労働が、国の基準を超える207時間50分だったことが明らかになった。8月31日、高島さんの母・淳子さんは、厚生労働省にて嘆願書を提出し、医師の働き方改革を求め、「医療、行政、社会が協力してほしい」と訴えた。日本医師会の松本 吉郎会長は9月6日の記者会見でこの件を重く受け止め、医師の労働環境改善と再発防止の取り組みを強化するとの考えを示した。参考1)医師の自殺 労災認定 “再発防止に力尽くす” 日本医師会会長(NHK)2)松本日医会長、兵庫県の勤務医過労自殺「大変重く受け止めている」-会見で弔意を表明(日本医事新報)3)「息子の死を教訓に」医師の働き方改革を 甲南医療センター過労自殺の遺族、厚労省に嘆願書(神戸新聞)

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中国のゼロコロナ政策終了直後、超過死亡が急増か

 中国では、コロナパンデミックの開始から厳格なゼロコロナ政策によって罹患率と死亡率は低く抑えられていた。しかし、2022年12月のゼロコロナ政策の解除により、以降2ヵ月間、中国全土の30歳以上において推定187万人の超過死亡が発生したことが、米国・シアトルのFred Hutchinson Cancer Research CenterのHong Xiao氏らの研究チームによる調査で確認された。JAMA Network Open誌2023年8月25日号掲載の報告。 本調査では、北京市の北京大学と精華大学、黒竜江省のハルビン工業大学の2016年1月1日~2023年1月31日までの職員の公開された訃報記事データが用いられた。訃報記事は、年齢、性別、役職、雇用形態(現職、退職)に関係なく、死亡したすべての職員が含まれ、掲載のプロセスはCOVID-19の流行前も流行中も一貫して行われていた。本データから30歳以上の死亡率の相対的変化を推定した。前COVID-19期(2016年1月~2019年12月)、ゼロコロナ政策期(2020年1月~2022年11月)、ポスト・ゼロコロナ政策期(2022年12月~2023年1月)の3つの期間に分け、負の二項回帰モデルを使用した。また、中国のインターネット検索エンジンBaiduにて、総検索量に対する死に関連するワード(葬儀社、火葬、埋葬など)の検索の頻度(Baidu指数:BI)の相対的変化も推計し、大学における30歳以上の死亡率との相関関係も分析した。さらに、これらの数値を基に、中国のその他の地域における超過死亡率を算出した。 主な結果は以下のとおり。・北京市と黒竜江省ともに、死亡数は2022年12月第4週にピークに達した。それと同時期の12月25日に、中国のほとんどの省で、死に関連するワードのネット検索のBIが最も高くなった。・ゼロコロナ政策の終了後、北京の2つの大学における死亡数は、予想死亡数に比べて大幅な増加を示し、2022年12月と2023年1月にそれぞれ403%(95%CI:351~461)と56%(95%CI:41~73)の増加を示した。ハルビン工業大学における死亡数は、2022年12月(12 vs.3、p<0.001)と2023年1月(19 vs.3、p<0.001)の両方で、予想された死亡数よりも統計的に有意に高かった。・ポスト・ゼロコロナ政策期の北京の大学での死亡のうち、男性は75.6%(95%信頼区間[CI]:65~84)、85歳以上は80.0%(95%CI:70~87)だった。85歳以上の死亡の割合は、前COVID-19期(51.9%)およびゼロコロナ政策期(62.3%)よりも高かった(p<0.001)。ハルビン工業大学でも同様のパターンがみられ、ポスト・ゼロコロナ政策期の死亡は、男性82.1%、85歳以上69.0%だった。・ポスト・ゼロコロナ政策期(2022年12月~2023年1月)では、中国全土で30歳以上の推定187万人(95%CI:71万~443万、1,000人当たり1.33人)の超過死亡が発生した。・チベットを除くすべての省で統計学的に有意な死亡率の増加が推計され、増加範囲は広西チワン族自治区の77%増(95%CI:24~197)から寧夏回族自治区の279%増(95%CI:109~658)であった。・超過死亡数は中国政府の公式推計値である6万人をはるかに上回ったが、超過死亡のパターンは、COVID-19に関連した病院での入院と死亡が2022年12月末にピークに達したという中国政府の報告と一致していた。 中国には包括的で一般に入手可能なデータが存在しないために、超過死亡数を推定するために行われた本研究において、中国のゼロコロナ政策の突然の解除が、全死因死亡率の有意な上昇と関連していることが明らかになった。著者は本結果について、COVID-19の集団への突然の伝播が集団死亡率に与える影響を理解するうえで重要だとまとめている。

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米FDAが産後うつ病の経口治療薬Zurzuvaeを承認

 米食品医薬品局(FDA)は8月4日、産後うつ病(PPD)に対する初めての経口治療薬としてZurzuvae(一般名zuranolone)を承認した。Zurzuvaeの1日当たりの推奨用量は50mgで、毎夕14日間、脂肪の多い食事とともに摂取する。産後うつに対する治療薬としては、2019年にZulresso(一般名ブレキサノロン)がFDAにより承認されている。この承認は画期的ではあったが、Zulressoは、医療機関で医療従事者による点滴投与が必要な上に、点滴には60時間もの時間を要する。 PPDは他のタイプのうつと同様、悲しみ、かつて楽しんでいた物事への関心の喪失や楽しみの減少などを特徴とする。また、認知機能の障害、悲嘆や無力感、活力の喪失、自殺念慮を伴うこともある。米国では、8人に1人の女性が出産の直前、あるいは出産後に抑うつ症状を発症している。 ZulressoとZurzuvaeは両方とも、プロゲステロンの副産物である神経ステロイドのアロプレグナノロンを有効成分とする薬剤である。アロプレグナノロンの濃度は、妊娠中に劇的に上昇し、出産後に急降下することがあり、産後抑うつ症状の一因となる可能性が指摘されている。 Zurzuvaeの有効性は、PPD患者を対象にした2件の多施設共同ランダム化比較試験において確認された。対象者は、1件目の研究では、Zurzuvae 50mgを毎夕14日間摂取する群とプラセボを摂取する群に、2件目の研究では、毎日1回、zuranolone 30mg(Zurzuvae 40mgに相当)、またはプラセボを14日間摂取する群にランダムに割り付けられた。その結果、いずれの研究でも、介入群では15日目にハミルトンうつ病評価尺度17項目で評価した抑うつ症状が、プラセボ群よりも有意に改善したことが示された。この治療効果は、介入終了から42日目でも維持されていた。 安全性に関しては、Zurzuvaeの服用で最も頻繁に生じた副作用は、眠気、めまい、下痢、倦怠感、鼻咽頭炎、尿路感染症などであった。また、Zurzuvaeの服用は、自殺念慮や自殺行動を引き起こす可能性があるほか、胎児に害を及ぼす可能性もある。さらにFDAは添付文書の枠組み警告において、Zurzuvaeの服用が運転などのリスクを伴う活動を行う能力に影響を与える可能性があるとし、服用後12時間は運転や重機の操作をしないように注意を促している。 2件の論文の筆頭著者である、米ザッカー・ヒルサイド病院のKristina M. Deligiannidis氏は、「zuranoloneが迅速に抗うつ効果を発揮する機序は、現状では正確には分かっていない。しかし、zuranoloneのような神経ステロイドは、ストレスを迅速に軽減し、健全な脳内ネットワークのつながりを回復させることで、脳の健康をサポートする働きをすることが研究で示唆されている」と説明する。同氏はさらに、Zulresso投与で報告されている意識消失がZurzuvaeでは報告されていないことを指摘し、Zurzuvaeの方が安全性の高い可能性があるとの見方を示している。 なお、Zurzuvaeの承認は、Sage Therapeutics社に対して付与された。

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医師によるコロナのデマ情報、どう拡散された?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中、ソーシャルメディア(SNS)上で、ワクチン、治療法、マスクなどに関する誤った医療情報が広く拡散されたことが社会問題となった。このような誤情報の拡散には、一部の医師も関わっていたことが知られている。COVID-19の誤情報について、情報の種類や、利用されたオンラインプラットフォーム、誤情報を発信した医師の特徴を明らかにするために、米国・マサチューセッツ大学のSahana Sule氏らの研究チームが調査を行った。JAMA Network Open誌2023年8月15日号に掲載の報告。 本調査では、2021年1月1日~2022年5月1日の期間に米国在住の医師によって拡散されたCOVID-19の誤情報を特定するため、SNS(Twitter、Facebook、Instagram、Parler、YouTube)およびニュースソース(The New York Times、National Public Radio)の構造化検索を行った。誤情報を発信した医師の免許取得州と専門分野を特定し、フォロワー数やメッセージの質的内容分析を行い、記述統計を用いて定量化した。COVID-19の誤情報は、評価期間中の米国疾病予防管理センター(CDC)のガイダンスに裏付けされていない、またはそれに反する主張、CDCがカバーしていないトピックに関しては既存の科学的エビデンスに反する主張と定義した。 主な結果は以下のとおり。・評価期間中にCOVID-19の誤情報を伝えたことが確認された米国の医師は52人だった。うち50人は米国29州において医師免許を取得したことがあり、ほか2人は研究者だった。医師免許は1州以上で有効44人、無効3人、一時停止/取り消し4人、一部の州で停止/取り消し1人。専門は28分野にわたり、プライマリケアが最も多かった(18人、36%)。・16人(30.7%)が、America's Frontline Doctors※のような、誤った医療情報のプロパガンダを過去に行ったことがある団体に所属していた。・20人(38.5%)が5つ以上の異なるSNSに誤情報を投稿し、40人(76.9%)が5つ以上のオンラインプラットフォーム(ニュースなど)に登場した。最も利用されたSNSはTwitterで、37人(71.2%)が投稿していた。フォロワー数の中央値は6万7,400人(四分位範囲[IQR]:1万2,900~20万4,000人)。・誤情報は次の4カテゴリーに分類された:(1)ワクチンは安全ではない/効果がない、(2)マスクやソーシャルディスタンスはCOVID-19の感染リスクを減少させない、(3)臨床試験を終えていない/FDAの承認を受けていない薬剤を有効と主張する(イベルメクチン、ヒドロキシクロロキンなど)、(4)その他(国内外の政府や製薬企業に関連する陰謀論など)。・40人(76.9%)の医師は、4カテゴリーのうち1カテゴリー以上投稿していた。・カテゴリー別で投稿が多い順に、ワクチンに関する誤情報(42人、80.8%)、その他の誤情報(28人、53.8%)、薬剤に関する誤情報(27人、51.9%)。 本結果は、パンデミック中にさまざまな専門分野や地域の医師が誤情報の拡散という“インフォデミック”に加担したことを示唆している。研究チームが確認した限り、本研究はSNS上での医師によるCOVID-19誤情報の拡散に関する初めての研究だという。フェイクニュースを拡散することは、近年、医学の内外で利益を生む産業となっているという。医師による誤った情報の拡散に関連する潜在的な有害性の程度、これらの行動の動機、説明責任を向上するための法的・専門的手段を評価するために、さらなる研究が必要だと指摘している。※America's Frontline Doctorsは、遠隔医療サービスを実施し、主にCOVID-19に対するヒドロキシクロロキンとイベルメクチンを全国の患者に処方するために、1回の診察につき90ドルを請求し、少なくとも1,500万ドルの利益を得ている。このような団体は、パンデミックの公衆衛生上の危機、政治的分裂、社会的孤立という状況の中で、より声高に発言し、目立つようになっていた。

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第一三共のコロナワクチン、XBB.1.5対応を一変承認申請、2価は第III相で主要評価項目達成

 第一三共は9月6日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する同社が開発中の2価(起源株/オミクロン株BA.4-5)mRNAワクチン「DS-5670」について、追加免疫を対象とした国内での第III相臨床試験で、主要評価項目を達成したことを発表した。また、翌7日付のプレスリリースにて、DS-5670の12歳以上の追加免疫に対するオミクロン株XBB.1.5系統対応の1価mRNAワクチンについて、日本における製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったことも発表した。DS-5670については、「SARS-CoV-2による感染症の予防」の適応で、追加免疫を対象に起源株1価ワクチンとして2023年8月に製造販売承認を取得している。 DS-5670の2価ワクチンの第III相試験では、12歳以上の新型コロナワクチン初回免疫および追加免疫完了者を対象として、追加免疫の免疫原性および安全性が検討された。主要評価項目は、治験薬投与4週間後の血中抗SARS-CoV-2(オミクロン株BA.5)中和活性の幾何平均抗体価および免疫応答率だ。DS-5670の2価ワクチンは、国内承認済みのオミクロン株対応2価ワクチンを接種した対照群と比較して高い値を示し、統計学的に非劣性であることが検証された。安全性では臨床上の懸念は認められなかった。本試験の結果の詳細は、今後、学会や論文などを通じて公表される予定。 同社は9月7日に、DS-5670のXBB.1.5対応ワクチンの一変承認申請を行った。2023年9月開始の特例臨時接種に使用されるオミクロン株XBB.1系統を含有する1価ワクチンの年内供給開始を目指すとしている。DS-5670の研究開発は、日本医療研究開発機構(AMED)の「ワクチン開発推進事業」および厚生労働省の「ワクチン生産体制等緊急整備事業」の支援を受けて実施されている。

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第61回 カンピロバクター流しそうめん

流しそうめんで食中毒Unsplashより使用石川県津幡町の山中にある飲食店「大滝観光流しそうめん」で、合計93人が食中毒になるという異例のニュースが話題になりました。原因菌はカンピロバクターです。カンピロバクターは低温に強く、冷蔵庫内でも長期間生存が可能です。十分に加熱調理しないと食中毒が起こりえるため、一時期流行した「低温調理」は、食中毒リスクを顔面で受け止める行為になります。さて、流しそうめんでなぜカンピロバクターの食中毒になるのか。そうめんに何か練り込まれていたのか、つゆが汚染されていたのか。いや、はたまた流れてくる水そのものか。今回は、流していた水が原因とされています。通常、上から流す水というのは水質検査後のきれいな水を使うべきですが、アウトドアで流しそうめんイベントを開催する場合、清流をそのまま使ってしまうことがあるそうです。清流と書くと、めちゃきれいな水じゃん、と思ってしまいますが、そうでもないようです。川の水は汚い?アウトドアが趣味の医師に、この件について聞いてみると、「沢の水は飲まないほうがいいっす」と断言していました。「動物の糞から出た微生物が存在する、『うんこ水』ですよ」とのことでした。そこまで言うか。私はインドアな人間なので、このリスクは比較的低いのですが、もしキャンプなどで沢の水を飲む場合、浄水器を使用、あるいは加熱処理をして水を浄化するといったひと手間が、カンピロバクターなどの食中毒のリスクを下げます。そのほか、井戸水、貯水槽水、湧き水にも食中毒のリスクがあります。今回提供された流しそうめんでは、流している水の源泉がかなり汚染されていたようです。年1回の水質検査が台風で行えず、そのまま流しそうめんの営業シーズンに突入してしまったとのこと。もちろん鶏肉にも注意教科書的な鶏肉にも、もちろん注意が必要です。農場の出荷段階では、生きた鶏のうち30%がカンピロバクターに汚染されているそうです。私たちは普段の食事において、平均して5回に1回、鶏肉を食べています。通常調理の場合、カンピロバクター感染率は家庭で0.2%程度ですが、生食や鶏レバーとなると、それが約2%となり、リスクは約10倍です。目の前の患者さんにどのような病態が起こっているのか、症状や検査データなどから筋道を立てることを「臨床推論」と言いますが、それよりもマクロな視点で流しそうめん食中毒の原因を探す「臨床推理」は、名探偵のようで興味深いですね。『ドクター・ハウス』を思い出しました。

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双極性障害患者の原因別死亡率~メタ解析

 双極性障害は、早期死亡と関連しているといわれている。双極性障害患者におけるすべての原因による死亡および特定の死亡リスクに関しては、十分明らかになっておらず、これらを理解し、双極性障害患者の死亡を予防する戦略を考えるうえでも、さらに多くの研究が必要とされる。ブラジル・サンパウロ大学医学部のTais Boeira Biazus氏らは、一般集団と比較した双極性障害患者の死亡リスクを評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、双極性障害患者の早期死亡リスクは、自殺や不自然死によるものだけでなく、身体合併症とも関連していることが示唆された。著者らは、双極性障害患者の早期死亡率を改善するためには、自殺予防だけでなく、身体的な健康増進や身体合併症の予防も重要であるとしている。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年7月25日号の報告。 主要アウトカムは、すべての原因による死亡率とし、副次的アウトカムは、自殺、自然死、不自然死、特定の原因による死亡の割合とした。 主な結果は以下のとおり。・57件の研究(67万8,353例)をメタ解析に含めた。・双極性障害患者は、すべての原因による死亡率(RR:2.02、95%信頼区間[CI]:1.89~2.16、k=39)が高かった。・特定の原因による死亡率は、自殺(RR:11.69、95%CI:9.22~14.81、k=25)が最も高かった。・不自然死(RR:7.29、95%CI:6.41~8.28、k=17)および自然死(RR:1.90、95%CI:1.75~2.06、k=17)の死亡リスクも高かった。・分析された特定の自然死の中で、感染症による死亡(RR:4.38、95%CI:1.5~12.69、k=3)がより高かったが、研究数が少なく、限定的であった。・呼吸器疾患(RR:3.18、95%CI:2.55~3.96、k=6)、心血管疾患(RR:1.76、95%CI:1.53~2.01、k=27)、脳血管疾患(RR:1.57、95%CI:1.34~1.84、k=13)による死亡リスクも同様に高かった。・がんによる死亡リスク(RR:0.99、95%CI:0.88~1.11、k=16)に差は認められなかった。・サブグループ解析およびメタ回帰は、結果に影響を及ぼさなかった。

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標的部位で持続的に放出される潰瘍性大腸炎薬「コレチメント錠9mg」【下平博士のDIノート】第128回

標的部位で持続的に放出される潰瘍性大腸炎薬「コレチメント錠9mg」今回は、潰瘍性大腸炎治療薬「ブデソニド腸溶性徐放錠(商品名:コレチメント錠9mg、製造販売元:フェリング・ファーマ)」を紹介します。本剤は、標的部位の大腸にブデソニドが送達され、持続的に放出されるように設計されている1日1回服用の薬剤で、良好な治療効果や服薬アドヒアランスが期待されています。<効能・効果>活動期潰瘍性大腸炎(重症を除く)の適応で、2023年6月26日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはブデソニドとして9mgを1日1回朝経口投与します。投与開始8週間を目安に本剤の必要性を検討し、漫然と投与を継続しないように留意します。<安全性>2~5%未満に認められた副作用として潰瘍性大腸炎増悪があります。2%未満の副作用は、乳房膿瘍、感染性腸炎、乳腺炎、口腔ヘルペス、不眠症、睡眠障害、腹部膨満、口唇炎、ざ瘡、湿疹、蛋白尿、月経障害、末梢性浮腫、白血球数増加、尿中白血球陽性が報告されています。<患者さんへの指導例>本剤は、大腸に送られて持続的に炎症を鎮める潰瘍性大腸炎活動期の薬です。服薬時にかまないでください。生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)を接種する際には医師に相談してください。疲れを残さないよう十分な睡眠と規則正しい生活が重要です。消化の悪い繊維質の多い食品や脂肪分の多い食品、香辛料などを避けて、腸に優しい食事を心がけましょう。<Shimo's eyes>潰瘍性大腸炎は、活動期には下痢や血便、腹痛、発熱などを伴い、寛解と再燃を繰り返す炎症性腸疾患であり、わが国では指定難病に指定されています。潰瘍性大腸炎の活動期には、軽症~中等症では5-アミノサリチル酸製剤が広く用いられ、効果不十分な場合や重症例にはステロイド薬などが投与されます。ステロイド抵抗例ではタクロリムスや生物学的製剤、ヤヌスキナーゼ阻害薬などが使用されます。本剤の特徴は、MMX(Multi-Matrix System)技術を用いた薬物送達システムにあり、pH応答性コーティングにより有効成分であるブデソニドを含むマルチマトリックスを潰瘍性大腸炎の標的部位である大腸で送達し、親水性基剤と親油性基剤がゲル化することでブデソニドを持続的かつ広範囲に放出させます。また、本剤の有効成分であるブデソニドはグルココルチコイド受容体親和性が高いステロイド薬であり、局所的に高い抗炎症活性を有する一方、肝初回通過効果によって糖質コルチコイド活性の低い代謝物となるため、経口投与によるバイオアベイラビリティが低いと考えられ、全身に曝露される糖質コルチコイド活性の軽減が期待されるアンテドラッグ型のステロイドとなります。本剤は1日1回投与の経口薬であることから、良好な服薬利便性や服薬アドヒアランスも期待でき、海外では2023年3月現在、75以上の国または地域で承認されています。なお、本成分を有効成分とする既存の潰瘍性大腸炎治療薬には、直腸~S状結腸に薬剤を送達するブデソニド注腸フォーム(商品名:レクタブル2mg注腸フォーム)がありますが、本剤は大腸全体が作用部位となる点に違いがあります。本剤の主な副作用として、潰瘍性大腸炎の増悪が2~5%未満で報告されています。本剤はほかの経口ステロイド薬と同様に、誘発感染症、続発性副腎皮質機能不全、クッシング症候群、骨密度の減少、消化性潰瘍、糖尿病、白内障、緑内障、精神障害などの重篤な副作用に注意が必要です。本剤投与前に水痘または麻疹の既往歴や予防接種の有無を確認しましょう。製剤の特性を維持するために、本剤を分割したり、乳鉢で粉砕したりすることはできません。患者さんにもかんで服用しないように伝えましょう。潰瘍性大腸炎治療の新たな選択肢が増えることで、患者さんのQOL向上が期待されます。

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第179回 血液凝固タンパク質2つがコロナ感染後の脳の不調と関連

血液凝固タンパク質2つがコロナ感染後の脳の不調と関連疲労に加えて認知機能障害、いわゆる脳のもやもや(brain fog)が数ある新型コロナウイルス感染(COVID-19)罹患後症状(long COVID)の1つとしてよく知られています。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染して認知機能障害に見舞われる人とそうでない人を隔てる仕組みへの血液凝固タンパク質2つの寄与を示唆する大規模観察試験結果が報告されました1)。試験ではCOVID-19で入院した患者約2千例(1,837例)が追跡され、入院時のそれらタンパク質2つと感染から半年と1年時点での認知機能障害の関連が認められました。その1つはフィブリノゲンです。C反応性タンパク質(CRP)に比してフィブリノゲンが入院時に多かった患者は少なかった患者に比べて記憶や注意などの認知機能の客観的検査成績や主観評価が劣りました。もう1つはDダイマーで、CRPに比してDダイマーが多かった患者は認知機能の主観評価が劣りました。たとえばDダイマーが多かった患者の6ヵ月時点の認知機能主観評価C-PSQ(0~7点)の点数は約1.5点劣りました。また、Dダイマーが多かった患者は疲労や呼吸困難の訴えや仕事への差し障りをより多く報告しました。フィブリノゲンやDダイマーとCOVID-19の関連を示した報告は今回が初めてではありません。先立つ複数の試験でCOVID-19入院患者にそれらタンパク質の増加が血栓過剰とともに認められています2)。フィブリノゲンが多いことと認知機能障害や認知症の関連を示したCOVID-19流行前の報告もあり、フィブリノゲンは認知機能欠損と何はさておき関連するのかもしれません。一方、DダイマーはCOVID-19以外で認知機能障害との関連は示されておらず、SARS-CoV-2感染に特有の指標かもしれません。フィブリノゲンやDダイマーが認知機能障害を引き起こすとしてその仕組みがいくつか想定されています。フィブリノゲンは脳の血液循環を妨げる血栓を形成するのかもしれません。あるいは神経系の受容体と直接相互作用することも想定されます。Dダイマーは肺での血栓形成をより反映していると思われ、それが呼吸困難に寄与し、酸欠による脳の不具合をもたらすのかもしれません。今回の試験結果を解釈するうえでいくつか注意点があります。1つは変異株がぼこぼこ出現する前のコロナ流行初期に募った被験者を対象にしていることであり、変異株が優勢の現在の感染患者に今回の結果が当てはまるかどうかは不明です。また、ワクチン非接種の重症の入院患者を対象としていることも注意が必要です。感染症状が軽度だったlong COVID患者は多く、そういう患者は今回の試験の対象ではありません。フィブリノゲンやDダイマー、あるいはより大まかに血栓を標的とする治療のlong COVID予防の裏付けはほとんどありません。抗凝固薬が治療手段の1つとしてみなされていますが、決定的な試験結果はまだありません2)。それに抗凝固薬は出血などの副作用と隣り合わせでもあります。抗凝固薬の検討のために必要な前段階として、認知機能障害をSARS-CoV-2感染後に被った患者の脳を画像診断して脳虚血の兆候があるかどうかを調べることを著者は提案しています1)。もし脳虚血が見つかるようなら先行きが心配な患者の感染初期のころの抗凝固薬使用の試験を実施する価値はありそうです。参考1)Taquet M, et al. Nat Med. 2023 Aug 31. [Epub ahead of print] 2)Clotting proteins linked to Long Covid’s brain fog / Science

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医師の役割が重要な高齢者の肺炎予防、ワクチンとマスクの徹底を/MSD

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数の増加や、インフルエンザの流行の継続が報告されているが、高齢者にとっては肺炎球菌による肺炎の予防も重要となる。そこで、これら3つの予防に関する啓発を目的として、MSDは2023年8月28日にメディアセミナーを実施した。国立病院機構東京病院 感染症科部長の永井 英明氏が「人生100年時代、いま改めて65歳以上が注意しておきたい肺炎対策-Life course immunizationの中での高齢者ワクチン戦略-」をテーマとして、高齢者の肺炎の特徴や原因、予防方法などについて解説した。肺炎は高齢者の大敵、肺炎による死亡の大半は高齢者 肺炎は日本人の死因の第5位を占める疾患である1)。65歳を超えると肺炎による死亡率は大きく増加し、肺炎による死亡者の97.9%は65歳以上と報告されている2)。そのため、肺炎は高齢者の大敵であり、とくに「慢性心疾患」「慢性呼吸器疾患」「腎不全」「肝機能障害」「糖尿病」を有する患者は肺炎などの感染症にかかりやすく、症状も重くなる傾向があると永井氏は指摘した。また、「高齢者の肺炎は気付きにくいという問題も存在する」と言う。肺炎の一般的な症状は発熱、咳、痰であるが、高齢者では「微熱程度で、熱があることに気付かない」「咳や痰などの呼吸器症状が乏しい」「元気がない、食欲がないという症状のみ」といった場合があるとし、「高齢者の健康状態については注意深く観察してほしい」と述べた。とくに肺炎球菌に注意が必要 肺炎の病原菌として最も多いものは肺炎球菌である3)。肺炎球菌の感染経路は飛沫感染とされる。主に小児や高齢者において侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)を引き起こすことがあり、これが問題となる。IPDの予後は悪く、成人の22.1%が死亡し、8.7%に後遺症が残ったことが報告されている4)。 インフルエンザウイルス感染症も2次性細菌性肺炎を引き起こすため、注意が必要である5)。季節性インフルエンザ流行時に肺炎で入院した患者の原因菌として肺炎球菌が最も多いことが報告されている6)。肺炎予防の3本柱 肺炎を予防するために重要なこととして、永井氏は以下の3つを挙げた。(1)細菌やウイルスが体に入り込まないようにする当然ではあるが、マスク、手洗い、うがいが重要であり、とくにマスクが重要であると永井氏は強調する。「呼吸器感染症を抑制するためには、マスクが最も重要である。国立病院機構東京病院では『不織布マスクを着用して院内へ入ってください(布マスクやウレタンマスクは不可)』というメッセージのポスターを掲示している」と述べた。また、口腔ケアも大切であると指摘した。高齢者では誤嚥が問題となるが、「咳反射や嚥下反射が落ちることで不顕性誤嚥が生じ得るため、歯磨きなどで口腔内を清潔に保つことが重要である」と話した。(2)体の抵抗力を強める重要なものとして「規則正しい生活」「禁煙」「持病の治療」を挙げた。(3)予防接種を受ける肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチン、新型コロナワクチンなどのワクチン接種が肺炎予防のベースにあると強調した。医師の役割が大きいワクチン接種 永井氏は、高齢者に推奨されるワクチンとして肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチン、帯状疱疹ワクチン、新型コロナワクチンの4つを挙げた。「これらの4つの感染症は疾病負荷が大きく、社会に与えるインパクトが大きいため、高齢者に対して積極的にワクチン接種を行うことで、医療機関の負担の軽減や医療費削減につながると考えている」と述べる。しかし、健康に自信のある高齢者はワクチンを打ち控えているという現状があることを指摘した。そこで、医師の役割が重要となる。本邦の家庭医クリニックに通院中の65歳以上の患者を対象として、23価肺炎球菌ワクチン(PPSV23)の接種につながる因子を検討した研究では、PPSV23を知っていること(オッズ比[OR]:8.52、p=0.003)、PPSV23の有効性を認識していること(OR:4.10、p=0.023)、医師の推奨(OR:8.50、p<0.001)が接種につながることが報告されている7)。 また、COVID-19の流行後、永井氏は「コロナワクチンのほかに打つべきワクチンがありますか?」と患者から聞かれることがあったと言う。そこで、COVID-19の流行によって、ワクチン忌避が減ったのではないかと考え、ワクチン接種に対する意識の変化を調査した。COVID-19流行前に肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチン、帯状疱疹ワクチンを打ったことがない人に、それぞれのワクチン接種の意向を調査した。その結果、新型コロナワクチン0~2回接種の人と比べて、3~4回接種した人はいずれのワクチンについても、接種を前向きに検討している割合が高かった(肺炎球菌ワクチン:27.3% vs.54.5%、p=0.009、インフルエンザワクチン:15.8% vs.62.0%、p<0.001、帯状疱疹ワクチン:18.8% vs.41.1%、p=0.001)。この結果から、「コロナワクチン接種はワクチン接種に対する意識を変えたと考えている」と述べた。 ワクチン接種について、永井氏は「肺炎球菌ワクチンは定期接種となったが、接種率が低く、接種率の向上が求められる。ワクチン接種の推進には、医療従事者の勧めが大きな力となる。コロナワクチン接種はワクチン接種に対する意識を変えた」とまとめた。■参考文献1)厚生労働省. 令和4年人口動態調査2)厚生労働省. 令和3年人口動態調査 死因(死因簡単分類)別にみた性・年齢(5歳階級)別死亡率(人口10万対)3)日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017作成委員会編集. 成人肺炎診療ガイドライン2017. 日本呼吸器学会;2017.p.10.4)厚生労働科学研究費補助金 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業「重症型のレンサ球菌・肺炎球菌感染症に対するサーベイランスの構築と病因解析 その診断・治療に関する研究」(2023年8月31日アクセス)5)Brundage JF. Lancet Infect Dis. 2006;6:303-312.6)石田 直. 化学療法の領域. 2004;20:129-135.7)Sakamoto A, et al. BMC Public Health. 2018;18:1172.

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第162回 2022年度の医療費46兆円、2年連続過去最高/厚労省

<先週の動き>1.2022年度の医療費46兆円、2年連続過去最高/厚労省2.新学期スタートでも学級閉鎖相次ぐ、新型コロナ感染者数が5類移行後で最多に/厚労省3.ワクチン接種後の副反応の解析用にデータベースを整備へ/厚労省4.30年ぶりの肥満症新薬の登場も、メディカルダイエットの流行が弊害に/厚労省5.生殖補助医療における課題の解決に向け、公的機関の設立を/日本産科婦人科学会6.2021年度の介護費用、過去最大の11兆円に、高齢化が影響/厚労省1.2022年度の医療費46兆円、2年連続過去最高/厚労省2022年度の日本の概算医療費が46兆円に達し、2年連続で過去最高を更新したことが厚生労働省から発表された。前年度に比べて4.0%増加しており、新型コロナウイルスの感染拡大と高齢化が主な影響因子とされている。厚労省によると、新型コロナウイルスのオミクロン株の流行が、とくに影響を与え、発熱外来などの患者数が大幅に増加した。コロナ患者の医療費は前年度の倍近い8,600億円に上った。また、75歳以上の人々が全体の医療費の約39.1%(18兆円)を占め、その1人当たりの医療費が95万6千円であり、75歳未満の24万5千円に比べ3.9倍だった。診療種類別では、医科が34.3兆円(4.5%増)、歯科が3.2兆円(2.6%増)、調剤が7.9兆円(1.7%増)といずれも増加。とくに、医科の外来や在宅などの入院外が16.2兆円(6.3%増)と目立つ伸びをみせた。診療所においては、不妊治療の保険適用が拡大したことで、産婦人科が前年度比41.7%増と大幅に伸びた。このような背景から、医療費の増加が持続している現状において、その抑制方法が課題となっている。とくに新型コロナウイルスの影響と高齢化が相まって、今後も医療費の増加が予想される。参考1)令和4年度 医療費の動向-MEDIAS-(厚労省)2)医療費が過去最大46兆円 4年度概算、コロナ影響(産経新聞)3)医療費1.8兆円増の46兆円 2年連続過去最高 新型コロナが影響(朝日新聞)4)22年度概算医療費46兆円、2年連続で過去最高 前年度比4%増(CB news)2.新学期スタートでも学級閉鎖相次ぐ、新型コロナ感染者数が5類移行後で最多に/厚労省厚生労働省によると、全国の新型コロナの患者数は前週比で1.07倍増となり、とくに岩手、青森、宮城の患者数が多い状況が明らかとなった。新たな入院者数は全国で1万3,501人と、前週よりは減少しているものの、重症患者数は増加している。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、学校における影響も顕著になっており、とくに新学期が始まった地域で学級閉鎖が相次いでいる。日本学校保健会によると、全国の小中高校と幼稚園、保育園で149クラスが閉鎖されている。長野県では、新学期が始まったばかりで31クラスが閉鎖され、これは5月以降で最多。感染症の専門家は、学校が再開されることで、子供たちでの感染がさらに広がる可能性を指摘している。また、ワクチン接種から時間が経過すると効果が下がるため、高齢者や基礎疾患のある人は、次の接種が必要になると警告している。自治体や学校は、発熱や倦怠感などがある場合には、無理に登校しないよう呼びかけており、基本的な感染対策の徹底を求めている。参考1)新型コロナで学級閉鎖相次ぐ 「5類移行」後、最多更新の地域も(毎日新聞)2)新型コロナ 全国の感染状況 前週の1.07倍 2週連続の増加(NHK)3)コロナ感染者数、2週続けて増加 前週比1.07倍 5類後最多に(朝日新聞)3.ワクチン接種後の副反応の解析用にデータベースを整備へ/厚労省厚生労働省は、9月1日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会を開き、自治体が管理している予防接種の記録や、国が保有する副反応の情報などをまとめた全国的なデータベースを作成する方針を明らかにした。これまでの手書きでの報告を改訂し、効率的に情報収集を行う予定。データベースには、接種記録や副反応疑い報告などが匿名化されて格納され、他のデータベースと連携し、予防接種の有効性・安全性の調査・研究が可能となるため、大学研究機関などに第三者提供も行われる予定。これらの取り組みで、ワクチン接種後の副反応や重篤な有害事象の発生について、副反応の情報と接種歴を結びつけて詳細な分析を可能になる見込み。また、データベースの情報は、レセプト(診療報酬明細書)とも結びつけられ、接種した人としていない人の間で副反応が疑われる症状が起きる割合に差があるかを調査することも計画されている。厚労省は、このデータベースを令和8年度中に稼働させ、ワクチンの有効性や安全性の分析に役立てる方針としている。参考1)予防接種データベースについて(厚労省)2)予防接種データベース「整備イメージ」提示 厚労省、報告様式改訂し情報収集を効率化(CB news)3)ワクチン分析 自治体や国保有の情報データベース作成へ 厚労省(NHK)4.30年ぶりの肥満症新薬の登場も、メディカルダイエットの流行が弊害に/厚労省今春、肥満症治療の新薬「セマグルチド(商品名:ウゴービ)」が承認され、1992年に承認されたマジンドール(同:マサノレックス)以来、約30年ぶりの肥満症治療の新薬の登場で、肥満症の治療は大きく進歩している。さらに糖尿病治療薬として承認された持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド(同:マンジャロ)」は20%の体重減少効果が確認されており、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬は、糖尿病の治療だけでなく、肥満症の治療としても注目されている。その一方、近年、痩せるために糖尿病薬を処方する「メディカルダイエット」が横行し、その弊害として欠品が問題となっている。厚生労働省は、この問題に対処するために、医療機関や卸業者に対してGLP-1受容体作動薬について「買い込みを控え適正使用」を呼びかけ、適正な使用と供給の優先を求めている。メーカー側は「医師の処方権」や「独占禁止法」により、適応外処方を厳しく規制することができないとしている。しかし、GLP-1受容体作動薬が適応外使用での処方や適応外でありながら大量に広告されていることから有害事象の発生など懸念が広がっている。参考1)GLP-1 受容体作動薬の在庫逼迫に伴う協力依頼(厚労省)2)30年ぶりの肥満症新薬と、「メディカルダイエット」が招く弊害(毎日新聞)3)“体重20%減”のダイエット効果があだに、糖尿病薬「空前の品不足」で診療に支障も(ダイヤモンド・オンライン)5.生殖補助医療における課題の解決に向け、公的機関の設立を/日本産科婦人科学会日本産科婦人科学会は、生殖補助医療の倫理的課題やデータ管理に対応するための公的機関設立の準備を始めたと発表した。医療技術の進展に伴い、第三者からの精子や卵子の提供など、新たな治療法が増加している一方で、倫理的な議論や法制度の整備が遅れている現状に対処するよう国側に強く働きかけたいとして同学会が決定した。1978年に世界で初めて体外受精が成功して以降、多くの国では親子関係や提供者の情報管理に関する法制度が整備されているのに対し、わが国では、生殖補助医療に関する法整備が世界に比べて遅れており、法整備が進まず、議論が始まったのは比較的最近であり、その結果としての法制度も不十分な状態が続いている。2020年には「生殖補助医療法」が成立し、一定の規定は確立されたが、提供者と子の「出自を知る権利」などがいまだに十分に考慮されていないのが現状。この法には2年以内に詳細を検討するという付則があったが、その期限が過ぎても議論は進展していない状態となっている。具体的には、新たな改正案で提案されている公的機関(独立行政法人)は、提供者の氏名や住所、生年月日などを100年間保存するよう求められている。しかし、この機関が情報を開示するかどうかは、提供者の同意に依存しており、その点が問題視されている。また、法案では提供を受けられるのは法律上の夫婦に限定されているなど、性的マイノリティーや代理出産に対する規定も不明確となっている。これらの課題を解決するためには、公的機関の設立だけでなく、広範な倫理的、法的議論が必要であり、産婦人科学会は国や関連団体に対して、専門の調査委員会を設けて、これらの課題に十分に議論を重ねることを求めている。参考1)“生殖補助医療の課題対応” 学会 公的機関の設立準備委(NHK)2)世界から遅れ 生殖補助医療法の必要性を指摘してきた識者の憂い(毎日新聞)3)生殖補助医療法、2年の改正期限過ぎるも議論混迷、次期国会どうなる(朝日新聞)6.2021年度の介護費用、過去最大の11兆円に、高齢化が影響/厚労省厚生労働省は、2021年度の介護費用(保険給付と自己負担を含む)が11兆2,838億円に達し、過去最大を更新したと発表した。この額は2年連続で11兆円を超え、高齢化に伴い、介護サービスの利用者が増加している。同時に、介護保険の給付費(利用者負担を除く)も前年度比2.0%増の10兆4,317億円となり、これもまた過去最高を更新した。介護や支援が必要とされる人々も、21年度末時点で前年度比1.1%増の690万人となり、うち601万人が75歳以上であることが明らかとなり、これも過去最多の数値。給付費の内訳については、訪問介護などの「居宅サービス」が4兆9,604億円で最も多く、次いで特別養護老人ホームなどの「施設サービス」が3兆1,938億円となっている。高齢化が進む中で、介護費用と給付費の増加は持続的な問題となっている。とくに、75歳以上の高齢者が多くを占めていることから、今後もこの傾向は続くと予想される。参考1)令和3年度 介護保険事業状況報告(厚労省)2)介護費、最大の11兆円 21年度(日経新聞)3)介護給付費、10兆4千億円 21年度、高齢化で更新続く(共同通信)

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ファイザーのXBB.1.5対応コロナワクチン承認/厚労省

 厚生労働省は9月1日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のオミクロン株対応ワクチンの一部変更について承認したことを発表した。今回の承認で、ファイザーのオミクロン株XBB.1.5系統のスパイクタンパク質をコードするmRNAを含む1価ワクチンが追加された。一変承認されたのは対象年齢別に、「コミナティRTU筋注」、「コミナティ筋注5~11歳用」、「コミナティ筋注6ヵ月~4歳用」の3タイプとなる。いずれも2023年7月7日に製造販売承認事項一部変更申請されていたもので、9月20日以降の秋開始接種に使用される。 一変承認されたワクチンの概要は以下のとおり。(1)販売名:コミナティRTU筋注一般名:コロナウイルス(SARS-CoV-2)RNAワクチン(有効成分名:トジナメラン及びリルトジナメラン、トジナメラン及びファムトジナメラン又はラクストジナメラン)(下線部追加)接種対象者:12歳以上の者効能・効果:SARS-CoV-2による感染症の予防用法・用量:初回免疫として、1回0.3mLを合計2回、通常、3週間の間隔で筋肉内に接種する。追加免疫として、1回0.3mLを筋肉内に接種する。接種間隔:通常、前回のSARS-CoV-2ワクチンの接種から少なくとも3ヵ月経過した後に接種することができる。(2)販売名:コミナティ筋注5~11歳用一般名:コロナウイルス(SARS-CoV-2)RNAワクチン(有効成分名:トジナメラン、トジナメラン及びファムトジナメラン又はラクストジナメラン)(下線部追加)効能・効果:SARS-CoV-2による感染症の予防用法・用量:本剤を日局生理食塩液1.3mLにて希釈する。初回免疫として、1回0.2mLを合計2回、通常、3週間の間隔で筋肉内に接種する。追加免疫として、1回0.2mLを筋肉内に接種する。接種間隔:通常、前回のSARS-CoV-2ワクチンの接種から少なくとも3ヵ月経過した後に接種することができる。(3)販売名:コミナティ筋注6ヵ月~4歳用一般名:コロナウイルス(SARS-CoV-2)RNAワクチン(有効成分名:トジナメラン、トジナメラン及びファムトジナメラン又はラクストジナメラン)(下線部追加)効能・効果:SARS-CoV-2による感染症の予防用法・用量:本剤を日局生理食塩液2.2mLにて希釈する。初回免疫として、1回0.2mLを合計3回、筋肉内に接種する。2回目は通常、3週間の間隔で、3回目は2回目の接種から少なくとも8週間経過した後に接種する。追加免疫として、1回0.2mLを筋肉内に接種する。接種間隔:通常、前回のSARS-CoV-2ワクチンの接種から少なくとも3ヵ月経過した後に接種することができる。(注)トジナメラン、リルトジナメラン、ファムトジナメラン及びラクストジナメランは、それぞれSARS-CoV-2の起源株、オミクロン株BA.1系統、オミクロン株BA.4-5系統及びオミクロン株XBB.1.5系統のスパイクタンパク質をコードするmRNA。

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NSAIDsがC. difficile感染症を悪化させる機序とは

 多くの人々に鎮痛薬や抗炎症薬として使用されている非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)は、クロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile;C. difficile)への感染により生じる消化管感染症(C. difficile感染症;CDI)を悪化させることが報告されている。こうした中、マウスを用いた研究でこの機序の解明につながる結果が得られたことを、米ペンシルベニア大学のJoshua Soto Ocana氏らのグループが発表した。詳細は、「Science Advances」に7月21日号に掲載された。 C. difficileは世界の抗菌薬関連下痢症の主要な原因菌である。CDIは、軽度の下痢から複雑な感染症まで多様な症状を引き起こし、死亡の原因になることもある。先行研究では、インドメタシンやアスピリン、ナプロキセンといったNSAIDsが、CDI患者だけでなく、クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(IBD)の患者の消化管に有害な影響を与えることが示されていた。 また、長期間のNSAIDsの使用は、胃潰瘍や小腸壁の出血および穿孔といったさまざまな問題を引き起こすことがある。その理由には、NSAIDsによるシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害が関与しており、そのプロセスによって炎症や痛みが抑制される一方で、上部消化管の粘膜機能が障害される可能性が示唆されている。さらに、NSAIDsが、本来の標的とは異なる細胞内小器官のミトコンドリアと相互作用して脱共役を起こし、ATP産生を低下させるなど、ミトコンドリアの機能を阻害するオフターゲット効果を持つことを示した研究報告もあるという。 研究グループは今回、in vitroおよびCDIマウスを用いた研究で、NSAIDsの一種であるインドメタシンの存在下で大腸上皮細胞の透過性を評価し、NSAIDsがどのようにCDIを悪化させるのかを明らかにしようと試みた。 その結果、インドメタシンとC. difficile由来の毒素の両方が上皮細胞のバリア透過性と炎症性細胞死を増加させることが明らかになった。この効果は相乗的であり、毒素とインドメタシンの両方が細胞透過性を高める作用は、それぞれ単独で作用した場合よりも大きかった。また、インドメタシンは、大腸の粘膜細胞のミトコンドリアにオフターゲット効果を与えて、C. difficile由来の毒性によるダメージを大きくする可能性のあることも示された。ただし、動物実験の結果が必ずヒトに当てはまるとは限らない。 論文の上席著者で、米ペンシルベニア大学病理診断学助教のJoseph Zackular氏は、「われわれの研究は、CDI患者にとってNSAIDsが臨床的に問題となることをさらに示したものだ。なぜNSAIDsとC. difficileの二つが組み合わさるとこのような有害な影響がもたらされるのか、その理由を解明するための一助となる知見が得られた」と述べている。 Zackular氏はさらに、「この知見は、C. difficile感染時のミトコンドリアの機能への影響について理解を深めるための研究の第一歩となるものだ。今回の研究から得られたデータはまた、NSAIDsを介したミトコンドリア脱共役が、小腸損傷やIBD、大腸がんといった他の疾患に与える影響についての有用な情報となる可能性がある」との見方を示している。 なお、本研究は、米国立衛生研究所(NIH)の助成を受けて実施された。

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コロナ後遺症、1年後は約半数、急性期から持続は16%/CDC

 米国疾病予防管理センター(CDC)が実施したコロナ罹患後症状(コロナ後遺症、long COVID)に関する多施設共同研究において、COVID-19に罹患した人の約16%が、感染から12ヵ月後も何らかの症状が持続していると報告した。また、感染から一定期間を置いて何らかの症状が発症/再発した人を含めると、感染から12ヵ月時点での有病率は約半数にも上った。本結果はCDCのMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)誌2023年8月11日号に掲載された。コロナ後遺症で何らかの症状が発症/再発した人は1年後で約半数に上った 本研究では、前向き多施設コホート研究であるInnovative Support for Patients with SARS-CoV-2 Infections Registry(INSPIRE)の2020年12月~2023年3月のデータが用いられた。米国8施設において、研究登録時に新型コロナ様症状を発症した18歳以上の1,296例(SARS-CoV-2検査陽性1,017例と検査陰性279例)を対象に、長期症状および転帰を評価した。ベースライン調査、3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月、12ヵ月時点の追跡調査を行い、継続する症状と、新たに発症/再発した症状を区別した。アウトカムは自己申告による8カテゴリーの症状:(1)頭、目、耳、鼻、喉(HEENT)、(2)体質、(3)肺、(4)筋骨格系、(5)消化器、(6)循環器、(7)認知障害、(8)極度の疲労。検査陽性群と検査陰性群の統計学的比較はχ2検定を用いて評価した。追跡期間中にSARS-CoV-2検査結果が陽性になった参加者は解析から除外した。 コロナ後遺症に関する多施設共同研究の主な結果は以下のとおり。・6,075例が登録され、12ヵ月間のすべての調査を完了し、追跡期間中にコロナに再感染しなかった参加者は1,296例。女性67.4%(842例)。非ヒスパニック系白人72%(905例)。年齢の比率は、18~34歳39.3%、35~49歳31.1%、50~64歳20.7%、65歳以上8.7%。・検査陽性群では、検査陰性群と比べて女性の割合が低く(陽性群:65.2% vs.陰性群75.2%、p<0.01)、既婚またはパートナーと同居(60.3% vs.48.9%、p<0.01)、コロナ急性期症状での入院(5.6% vs.0.4%、p<0.01)の割合が高かった。・症状の持続について、ベースライン時では陽性群のほうが陰性群よりも各症状カテゴリーの有病率が高く、3ヵ月時点で大幅に減少し、6~12ヵ月にかけて徐々に減少し続けた。・12ヵ月時点で、何らかの症状が急性期から持続していると報告したのは、陽性群18.3%、陰性群16.1%で、統計学的な有意差は認められなかった。・12ヵ月時点での「極度の疲労」の持続は、陰性群が有意に高かった(陽性群3.5% vs.陰性群6.8%)。・感染から一定期間を置いて何らかの症状が発症/再発した人は、陽性群と陰性群共に、12ヵ月時点で約半数に上った。・感染から一定期間後の症状の発症/再発について、症状カテゴリー別の有病率は、陽性群と陰性群共に、「極度の疲労」以外は各検査時点で同程度であった。・「極度の疲労」の有病率は、9ヵ月と12ヵ月時点において、陽性群よりも陰性群のほうが高かった。 著者は本結果について、「陽性群と陰性群を評価した本調査において、多くの参加者は急性期から6ヵ月以上経て新たな症状を経験しており、コロナ後遺症の有病率は相当なものである可能性が示唆された。認知障害と極度の疲労は、6ヵ月後に出現する一般的な症状だ。時間の経過とともに消失する症状と出現する症状を区別することは、コロナ後遺症を特徴付けるのに役立つ。一方、単一時点での測定は、疾病の真の影響を過小評価したり、誤った特徴付けをしてしまうことを示唆している」としている。

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ファイザーXBB.1.5対応ワクチン、EMAで生後6ヵ月以上に推奨

 米国・Pfizer社とドイツ・BioNTech社は8月30日付のプレスリリースにて、両社のオミクロン株XBB.1.5対応1価の新型コロナワクチン「COMIRNATY Omicron XBB.1.5」について、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)が、5歳以上に対して、過去の新型コロナワクチンの接種歴の有無にかかわらず単回投与すること、および生後6ヵ月~4歳の小児に対して、過去の接種回数に応じて投与することを推奨したと発表した。欧州委員会(EC)は本推奨を検討のうえ、承認について近く最終決定を下す予定。 本ワクチンの生後6ヵ月~4歳の小児への投与は、初回シリーズ(3回)のうちの一部または3回すべて、もしくは初回シリーズが完了している小児や感染歴のある小児に対しては、追加接種として単回投与することが推奨されている。 CHMPの推奨は、両社の新型コロナワクチンの安全性と有効性を支持するこれまでの臨床試験、非臨床試験、およびリアルワールドデータのエビデンスに基づく。これらのデータには、XBB.1.5対応1価ワクチンが、BA.4/5対応2価ワクチンと比較して、XBB.1.5、XBB.1.16、XBB.2.3を含む複数のXBB亜系統に対してより優れた反応を示す前臨床試験のデータも含まれている。同試験のデータでは、世界保健機関(WHO)によって「注目すべき変異株(VOI)」に指定されているEG.5.1(エリス)に対しても有効性を示すことが認められている。 本XBB.1.5対応1価ワクチンは、米国でも生後6ヵ月以上を対象として米国食品医薬品局(FDA)に申請されており、近く承認が決定される予定。日本を含む世界各地の規制当局にも申請中だ。

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新型コロナウイルスに伴う肺炎で入院した患者を対象に、標準治療に免疫調整薬を併用した効果(解説:寺田教彦氏)

 本研究は、2020年10月から2021年12月までに新型コロナウイルス肺炎で入院した患者に対して、標準治療に加えて、アバタセプト、cenicriviroc、あるいはインフリキシマブを追加した治療群とプラセボ群を比較した試験であり、和文要約は「コロナ肺炎からの回復、アバタセプトやインフリキシマブ追加で短縮せず/JAMA」にまとめられている。 本研究は、マスタープロトコルを使用したランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験で、プライマリーエンドポイント(1次アウトカム)は新型コロナウイルス肺炎からの28日目までの回復期間(8段階の順序尺度を使用して評価)と設定されたが、標準治療にアバタセプト、cenicriviroc、あるいはインフリキシマブを追加してもプラセボ群に比較して短縮しなかった。しかし、本研究結果のうち、アバタセプトとインフリキシマブのセカンダリーエンドポイント(2次アウトカム)である28日死亡率および14日後の臨床状態は、統計的な有意差こそ認められなかったものの、プラセボに対しては良好な結果だった。 今回の試験結果は、1次アウトカムに対する効果を示せなかったが、2次アウトカムは良好そうに見える結果でもあり、単純にNegative studyと片付けてしまわずに、今回のような結果になった理由を考える必要はあるだろう。本論文のEDITORIAL(Kalil AC, et al. JAMA. 2023;330:321-322.)でも、この1次アウトカムと2次アウトカムのねじれに対する解釈を提案している。 さて、本研究結果ではアバタセプトとインフリキシマブのセカンダリーエンドポイントは良好に見えたと記載はしたものの、この結果のみでは実臨床で新型コロナウイルスに伴う肺炎患者に対する臨床プラクティスを変更するほどの影響はないと考える。 では、今後どのような研究結果が判明すれば臨床プラクティスを変更しうるかを考えてみる。まずアウトカムは、今回のセカンダリーアウトカムである28日死亡率の低下や14日後の臨床状態の改善を設定することがよいだろう。そして、本研究で有意差を示すことができなかった理由は、検出力が不足していた可能性が考えられる。本研究結果を参考に28日死亡率の低下、14日後の臨床状態の改善で有意差を示すことができる参加者人数を再計算して、臨床試験を実施し、アウトカムの改善を再現することができれば、臨床のプラクティスとして検討してもよさそうである。 ただし、2023年8月の本原稿執筆時点としては、わざわざそのような臨床試験を行うメリットは乏しいと考える。 理由を説明するうえで、新型コロナウイルス肺炎に対する免疫抑制薬・免疫調整薬の役割について振り返ってみようと思う。重症COVID-19患者では、肺障害および多臓器不全をもたらす全身性炎症反応が宿主免疫反応により発現するが、コルチコステロイドの抗炎症作用薬が有効であることがRECOVERY試験(RECOVERY Collaborative Group. N Engl J Med. 2021;384:693-704.)で示された。本邦でも中等症II以上の患者で、宿主免疫反応に対して、抗ウイルス薬のレムデシビルと共にデキサメタゾンやバリシチニブ(Kalil AC, et al. N Engl J Med. 2021;384:795-807., Wolfe CR, et al. Lancet Respir Med. 2022;10:888-899.)が用いられている。その後、ステロイド薬とトシリズマブの併用により全死亡率が低下する可能性も示唆され(RECOVERY Collaborative Group. Lancet. 2021;397:1637-1645., WHO Rapid Evidence Appraisal for COVID-19 Therapies (REACT) Working Group. JAMA. 2021;326:499-518.)、本邦の「COVID-19に対する薬物治療の考え方」や、米国国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)の「COVID-19治療ガイドライン」でもデキサメタゾン、バリシチニブ、トシリズマブは治療薬の候補に記載されている。 中等症II以上の新型コロナウイルス肺炎に対する治療薬としては、上記のようにエビデンスのある薬剤がすでにあり、これらの薬剤の効果を上回ることが期待される薬剤でなければ、わざわざ費用をかけて臨床試験を行うメリットは乏しいだろう。 また、新型コロナウイルスの変異株の特徴とワクチン・抗ウイルス薬の効果についても考えてみる。 宿主免疫反応による肺炎による死亡者の増加は、主にデルタ株流行下以前で問題となることが多かった。現在の本邦における新型コロナウイルスの亜系統検出割合はEG.5.1を含めたXBB系統が上昇傾向であり、免疫回避の高いオミクロン株が主流である(国立感染症研究所感染症疫学センター. 新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報: 発生動向の状況把握. 2023年第31週[2023年7月31日~2023年8月6日])。オミクロン株流行下でも、まれにデルタ株流行下のようなCOVID-19肺炎患者を診療する機会はあるが、頻度は低く、本研究の対象となったようなCOVID-19に対する宿主免疫反応が原因で中等症Ⅱ~重症となるような患者層は、適切なワクチン接種や抗ウイルス薬の投与が行われるならば、今後も臨床現場で診療する機会は以前よりは少なくなると考える。 以上より、本研究は、臨床診療を担当する立場からは本邦の新型コロナウイルス感染症治療に与える影響は乏しい試験と考えるが、臨床研究を担当する立場としては、パンデミック状況下で複数の治療候補薬がある際に、適切かつ効果的なランダム化プロセスとバイアスを最小限にする工夫をした試験であり、今後の臨床研究でも参考にすることができる研究デザインと考える。

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第60回 新型コロナBA.2.86「ピロラ」が結構マズイ説

「ピロラ」Unsplashより使用先週EG.5通称「エリス」の話をしたばかりですが、BA.2.86通称「ピロラ」がネット上で結構話題になっています。な、なんだ「ピロラ」って…と思って調べてみたら、ギリシャ神話と関係なさそうな感じです。どうやら、小惑星の名前から付けたということが命名者のポスト(ツイート)に書かれていました。(参考:Wikipedia 1082 Pirola)8月30日の時点で、GISAIDにはBA.2.86は21株が登録されており、デンマーク10株、アメリカ3株、南アフリカ2株、スウェーデン2株、ポルトガル2株、イスラエル1株、イギリス1株です。日本からの検出はありませんが、アメリカの症例は日本からの渡航例です。離れた地域から短期間にこれだけ検出されていることや、以下に述べる変異部位の多さによる免疫回避能の強さを考えると、ビビっている専門家が多いのがこの変異ウイルスです。変異が多いオミクロン株BA.2の子孫に当たるBA.2.86「ピロラ」ですが、変異部位が多いです。過去に流行したオミクロン株の系統は、直前の流行株と比べてスパイクタンパクにわずかな変異がある程度だったのですが、BA.2.86はオミクロン株BA.1が登場したときと同じくらいのインパクトの変異数です。BA.2.86「ピロラ」の特徴1,2,3)BA.2.86は変異部位が多く、祖先と思われるBA.2や現在流行しているXBB系統の変異型とも離れている。ゲノムサーベイランスを実施している複数の国で、渡航歴のない人にBA.2.86が急速に出現していることから、世界中で伝播していると推測される(アメリカでは日本からの渡航例で確認)。配列は世界中で類似しており、比較的最近出現し、急速に増加したことを示している。XBBと比べても、新たに34の変異を獲得しており、免疫回避能が大きい可能性がある。これまで効果が確認されている治療薬は有効である。新型コロナワクチン接種は重症化や入院予防に有効と考えられる。ほかの変異ウイルスと比べて重症化するというエビデンスはない。マスク等の有効な感染対策はこれまでどおりである。8月23日時点で、アメリカにおいて増えているCOVID-19入院例の原因はBA.2.86ではない(まだそこまで流行は拡大していない)。Nature誌のBA.2.86の解説3)によると、もしこの変異ウイルスが今後蔓延して、免疫回避能が高かったとしても、基本的に重症化する懸念は大きくないとされています。ただ、オミクロン株BA.1が登場したときのように、かなりの数の感染者が出てしまうことで、医療が再び逼迫する可能性はあります。現時点では、WHOはBA.2.86を監視下の変異株(VUM: Variants Under Monitoring)という位置付けにしています4)。参考文献・参考サイト1)UK Health Security Agency:Risk assessment for SARS-CoV-2 variant V-23AUG-01(or BA.2.86)2)CDC:Risk Assessment Summary for SARS CoV-2 Sublineage BA.2.863)Callaway E. Why a highly mutated coronavirus variant has scientists on alert. Nature. 2023 Aug 21.4)WHO:Currently circulating variants under monitoring(VUMs)(as of 17 August 2023)

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コロナ禍の大学生のメンタルへの影響は2021年時点の4年生が最大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの大学生のメンタルヘルスへの影響を、学年別に検討した結果が報告された。2021年時点の4年生に、メンタルヘルスへの影響が最も強く現れていたという。岐阜大学保健管理センターの堀田亮氏らの研究によるもので、詳細は「Psychiatry Research」7月号に掲載された。 日常生活を急変させたCOVID-19パンデミックが、人々のメンタルヘルスに大きな影響を与えたことについて、多くの研究報告がなされている。ただし、大学生のメンタルヘルスへの影響を経時的かつ学年別に比較検討した研究は見られない。一方、岐阜大学では毎年、全学生を対象に健康状態のオンライン調査を実施している。堀田氏らは今回そのデータを用いて、大学2~4年生のパンデミックによるメンタルヘルスへの影響を詳細に検討した。 解析対象は6,441人(平均年齢20.27歳、男性48.8%)で、2~4年生がほぼ3分の1ずつを占めていた。調査の実施時期は各年の2月で、2020年は国内ではまだパンデミックに至っておらず、大学では平常の講義が行われていた。2021年はリモート講義が行われている時期で、2022年は正常に回復する段階での調査だった。 メンタルヘルス状態の評価には、大学生の心理カウンセリングのために開発された指標(CCAPS)の日本語版を用いて、過去2週間の状態をオンラインで回答してもらった。解析は、8領域のサブスケール(抑うつ、全般性不安、社会不安、食事関連の懸念、家族関係のストレス、飲酒習慣、学業ストレス、敵意)について実施。回答者が「全く当てはまらない」~「かなり当てはまる」の5段階から選択した結果を、0~4点のリッカートスコアとして判定し、スコアが高いほどストレスをより強く感じていると判断した。 調査年・学年別に解析した結果、2~4年生の全てにおいて、2021年は2020年よりCCAPSのサブスケールのスコアが総じて高く、2022年にはやや低下するという傾向が認められた。ただし、飲酒習慣を表すスコアは、いずれの学年でも2020年が最も高値であった。この点について著者らは、飲酒行動につながりやすいサークル活動やイベント開催は、2020年の春以降に減少したためではないかとの考察を述べている。 なお、2年生では食事関連の懸念が2022年、家族関係のストレスは2020年に最高値であり、3年生では食事関連の懸念が2022年に最高値という、一部の例外的な変化が認められた。ただし、4年生については飲酒習慣を除く全てのサブスケールのスコアが、2021年に最高値であり、2020年や2022年のスコアとの比較で有意差が認められた。また、2021年の4年生のスコアは、2年生や3年生よりも高値であった。例えば、2021年の抑うつスコアは2年生が0.89±0.73、3年生0.94±0.77であるのに対して4年生は1.11±0.83であり、全般性不安も同順に0.97±0.71、1.00±0.74、1.16±0.75だった。 以上に基づき著者らは、「2021年に大学2~4年生の全てでメンタルヘルスの悪化が観察され、上級学年でその傾向が強く、特に4年生で顕著だった」と結論付けている。また、本研究は「大学生の学年別にパンデミック前後の影響を比較検討した初の研究」であり、「上級学年の大学生のメンタルヘルスを適切にサポートするための公衆衛生プログラム策定に向けた基礎データとなり得る」と述べている。

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