サイト内検索|page:100

検索結果 合計:5821件 表示位置:1981 - 2000

1981.

境界性パーソナリティ障害と統合失調症の幻覚・妄想症状の比較

 境界性パーソナリティ障害(BPD)でみられる幻覚・妄想は、これまで十分に研究されていなかった。オーストラリア・スウィンバーン工科大学のZalie Merrett氏らは、BPD患者の多感覚幻覚・妄想を現象学的に調査し、統合失調症スペクトラム障害(SSD)患者でみられるこれらの症状との比較を行った。併せて、臨床精神病理学的調査も行った。その結果、BPD患者では多感覚幻覚・妄想が頻繁に認められることから、BPDを治療する場合にはこれらの症状の把握が重要であることが報告された。Journal of Personality Disorders誌2022年8月号の報告。 調査対象は、成人患者89例。幻聴ありBPD群、幻聴なしBPD群、高BPD特性SSD群、低BPD特性SSD群の4群に分類した。 主な結果は以下のとおり。・BPD患者のうち、幻覚および幻触が81%、幻嗅が75%で報告され、妄想は94%が経験していた。・幻聴の有無にかかわらずBPD患者を比較したところ、非精神病性精神病理学の特徴に有意な差は認められなかった。・BPDの幻覚とSSDの幻覚の比較では、わずかな違いが認められたが、全体的には同様であった。・BPD群は、SSD群と比較し、パラノイア/不信感、罪業妄想の割合が有意に高かった。

1982.

せん妄ガイドライン2022年版第2版の主な改訂点を解説

 日本サイコオンコロジー学会 / 日本がんサポーティブケア学会編『がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズ 1 がん患者におけるせん妄ガイドライン 2022年版』(金原出版)を刊行した。2019年の初版に続く改訂2版となる。改訂作業にあたった京都大学医学部附属病院緩和ケアセンター/緩和医療科 精神科医の谷向 仁氏に、主な変更点やポイントを聞いた。 がん患者さんは精神的な問題を抱えることが多いのですが、その対応は医療者個人の診療経験などによってばらつきが認められています。この経験による判断はもちろん大切なのですが、一方でさまざまなバイアスによる影響も懸念されます。 『がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズ』は、がん患者さんの精神的問題に対する対応法の基本となる部分の均てん化を図ることを目的として、多くの医療分野で近年使用されている「Minds診療ガイドライン作成マニュアル」に基づきまとめられています。 2019年の『せん妄ガイドライン』初版にはじまり、今夏刊行の『患者-医療者間のコミュニケーションガイドライン』『遺族ケアガイドライン』、そして現在シリーズ4冊目となる不安と抑うつをテーマとした『がん患者の気持ちのつらさ(仮)』を作成中です。せん妄ガイドラインはオピオイドほかがん特有のトピックを主に解説 せん妄とは、身体的異常や使用薬剤が直接的原因となって引き起こされる意識障害です。あらゆる疾患で起こり得るものですが、がん患者ではその頻度が高く、特に終末期がん患者では80~90%に認められると報告されています。また、骨転移に伴う高カルシウム血症や脳転移、症状緩和の目的で使用されるオピオイドやステロイドなど、がん患者に特有ともいえる背景を有します。さらには、がん患者のみならず家族も含めてのケアが重要となります。 せん妄ガイドラインではこのようながん特有のせん妄に関するトピックに対して、がん患者でのこれまでの質の高い研究報告を中心にシステマティックレビューを行い、検討したものをまとめています。せん妄ガイドライン改訂版ではせん妄予防視点の臨床疑問を追加 せん妄ガイドライン2019年版を発刊以後、その内容について多くの紹介の機会を頂きました。その際、さまざまなコメントと共に、今後の改定に際しての要望も頂いておりました。今回のせん妄ガイドライン改訂版では、それらの貴重なご意見を可能な限り採用して補強するように努めました。せん妄ガイドライン第2版の主な改訂点は主に以下の通りです。1)総論5「終末期せん妄のケアとゴール」の章を新設2)総論6「病院の組織としてせん妄にどう取り組むか」の章を新設3)III章の臨床疑問に「1.予防のための非薬物療法」「2.予防のための抗精神病薬」「6.症状軽減のためのトラゾドン」の3つを追加4)IV章「臨床の手引き」を新設 せん妄は発症後の対応が中心であった一昔前と異なり、近年では「せん妄を発症させない」予防が非常に重要と考えられるようになってきています。2020年度診療報酬改定で新設された「せん妄ハイリスクケア加算」はまさにせん妄予防を評価するという流れを反映したものです。せん妄予防では医師、看護師、薬剤師など多職種によるチーム医療、そして、組織としての取り組みが非常に重要となります。 また、ガイドラインの結果を臨床にどのように活かすことができるかという具体的な手引きの要望も多く聞かれたことから、まず薬物療法についての解説を加えました。さらに、可逆性のせん妄対応とは大きく異なり、不可逆性の転帰が多い終末期せん妄に対する解説を充実させました。せん妄ガイドラインをがん診療に携わるすべての医療者に がん患者さんのせん妄に初めに遭遇するのは、せん妄診療を行う精神科医や心療内科医ではなく、がん治療に携わる医療者です。また、予防、早期発見と対応(原因検索とその対応)が大切であり、これらをチームで展開することが求められます。がん治療に携わる医師はもちろんのこと、看護師、薬剤師の方々などがん医療に携わるすべての医療者に手に取っていただき、せん妄ガイドラインを日々の診療に役立てていただきたいと思っています。書籍紹介『がん患者におけるせん妄ガイドライン 2022年版』

1983.

妊娠中の不眠症~12年間の米国調査

 米国・サウスフロリダ大学のAnthony M. Kendle氏らは、全米の代表的な大規模データベースを用いて、12年間にわたる妊産婦の不眠症有病率とその傾向を推定し、不眠症、妊産婦の併存疾患、重度の妊産婦罹患率(SMM)との関連を調査した。その結果、妊産婦の不眠症の有病率は年々増加しており、不眠症はSMMの独立した予測因子であることが明らかとなった。Sleep誌オンライン版2022年7月28日号の報告。 2006~17年の入院患者サンプルより、米国の妊娠関連入院の連続横断的分析を実施した。分娩中および非分娩中の不眠症および産科併存疾患の診断には、ICD-9およびICD-10コードを用いた。主要アウトカムは、分娩中のSMM診断とした。不眠症とSMMの傾向を推定するため、ジョインポイント回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・分娩入院件数約4,700万件のうち、不眠症と診断された女性は2万4,625例であった。・研究期間中の不眠症の年間発症率は、1万人当たり1.8から8.6に増加していた。・不眠症の粗発症率は、分娩以外の入院の場合で6.3倍高かった。・不眠症患者は、とくに神経筋疾患、精神疾患、喘息、物質使用障害などを併存していることが多かった。・非輸血SMMの有症率は、不眠症患者で3.6倍高かった(2.4% vs.0.7%)。・不眠症患者のSMMの割合は、年11%(95%信頼区間[CI]:3.0~19.7)で増加していた。・併存疾患で調整した後においても、不眠症患者のSMMの割合は、24%増加していた。

1984.

日本人統合失調症患者に対するブレクスピプラゾールと他の非定型抗精神病薬による治療中止率の比較

 統合失調症の再発予防には、治療継続が不可欠である。横浜市立大学の菱本 明豊氏らは、日本の実臨床現場における統合失調症患者に対するブレクスピプラゾール治療(BRX群)と他の抗精神病薬治療(OAA群)による治療中止までの期間を比較するため、健康保険レセプトデータを用いて検討を行った。その結果、BRX群はOAA群よりも治療中止リスクが低いことが示唆されたことから、統合失調症患者の治療継続にブレクスピプラゾールが有用である可能性を報告した。Advances in Therapy誌オンライン版2022年7月29日号の報告。 2017年4月~2020年5月の日本のレセプトデータベースより抽出した75歳未満の就業中の統合失調症患者およびその扶養家族の匿名化されたデータを評価した。ベースライン時の患者変数で調整した後、Cox比例ハザードモデルを用いて、主要アウトカムであるBRX群とOAA群における180日間の治療中止までの期間を比較し、ハザード比(HR)を95%信頼区間(CI)で推定した。180日間の累積治療継続率も合わせて推定した。主要アウトカムについては、感度分析およびサブグループ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・分析には、BRX群978例、OAA群4,898例を含めた。・BRX群は、OAA群よりも治療中止リスクが有意に低かった(HR:0.86、95%CI:0.78~0.95、p=0.0024)。・累積治療継続率は、BRX群(45.9%、95%CI:42.5~49.2)のほうがOAA群(39.5%、95%CI:38.1~41.0)よりも高かった(log-rank検定:p<0.0001)。・傾向スコアが一致した患者による分析においても、BRX群はOAA群よりも治療中止リスクが有意に低かった(log-rank検定:p=0.0466)。・感度分析およびサブグループ解析においても、同様の結果が得られた。

1985.

統合失調症入院患者の口腔衛生状態とそれに関連する要因

 愛知学院大学の黒川 誉志哉氏らは、統合失調症入院患者における口腔衛生の状態と不良となる因子を明らかにするため、調査を行った。その結果、統合失調症患者は、口腔衛生状態が不良である傾向があり、バーゼル指数[BI]、男性、ADLの低さが口腔衛生不良と関連している可能性が示唆された。また、高齢になるほど虫歯リスクが高くなることも報告された。International Journal of Dental Hygiene誌オンライン版2022年8月3日号の報告。 対象は、統合失調症入院患者249例。口腔衛生状態(歯石指数[CI]、歯垢指数[DI])、虫歯歴を有する歯の平均数(平均DMFT)、関連因子(入院、クロルプロマジン換算量、年齢、バーゼル指数、歯磨きの頻度、口腔セルフケア能力)を含む改訂版の口腔評価ガイド(ROAG)について調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・口腔衛生状態の結果は、以下のとおりであった(中央値[範囲])。 ●CI:0.5(0~6.0) ●DI:1.7(0~6.0) ●ROAG:10.0(7.0~15.0)・平均DMFTは21.7±7.3であった。・クロルプロマジン換算平均量は524.4±353.6mg、BIは76.4±30.7であった。・BIとDIとの間に負の相関があり(r=-0.34)、年齢と平均DMFTとの間に正の相関が確認された(r=0.57)。・男性患者は、女性患者よりも口腔状態(ROAG)が不良な傾向が認められた。・最小二乗重回帰分析では、口腔健康状態に関連する因子として以下が確認された。 ●DIに対するBI ●平均DMFTに対する年齢 ●ROAGに対する性別 ●CI、DI、平均DMFTに対する口腔セルフケア能力

1986.

うつ病リスクは旅行をしないと高くなる?高齢者の旅行とうつ病との関係

 韓国・ソウル大学のSeungjae Hyun氏らは、うつ病と旅行との相互関係を調査した。その結果、旅行しない人はうつ病リスクが高くなり、旅行とうつ病との間には相互関係があることが報告された。Annals of General Psychiatry誌2022年8月10日号の報告。うつ病リスクが1年間の旅行の有無で70%高く プロスペクティブコホート研究である韓国縦断研究(Korean Longitudinal Study of Ageing)より2008~16年のデータを用いて、参加者8,524人(平均年齢:63.1±10.5歳)を抽出し、分析を行った。うつ病の診断には、10項目のうつ病自己評価尺度(CES-D10)を用い、スコア4以上をうつ病と定義した。統計分析は、一般化推定方程式および交差遅延パネルモデルを用いた。 うつ病と旅行との相互関係を調査した主な結果は以下のとおり。・1年間旅行しなかった参加者は、旅行した参加者と比較し、翌年のうつ病リスクが71%高かった(相対リスク[RR]:1.71、p<0.001)。・うつ病の参加者は、非うつ病の参加者と比較し、旅行しないリスクが2倍以上高かった(RR:2.08、p<0.001)。・交差遅延パネルモデルでは、旅行での移動距離とうつ病のCES-D10スコアとの間に悪循環が観察された。より頻繁に旅行する参加者は、CES-D10スコアが低くなる傾向があり(係数:-0.04~-0.03、ps<0.01)、CES-D10スコアが高い参加者ほど、旅行する可能性が低かった(係数:-0.06~-0.03、ps<0.01)。

1987.

アルツハイマー病およびMCIに対する治療薬aducanumabとリチウムの有効性比較~ネットワークメタ解析

 2021年、米国FDAはアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)を有する患者に対する治療薬としてaducanumabの迅速承認を行ったが、そのコストは高く、患者1人当たり年間約2万8,000ドルを要する。一方、リチウムは年間約40ドルと非常に安価であり、MCIおよびアルツハイマー病にみられる認知機能低下に効果があると報告されている。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬とは対照的に、aducanumabやリチウムにはdisease-modifying drugとしての可能性が示唆されている。東京医科大学の寺尾 樹氏らは、MCIおよびアルツハイマー病の認知機能低下に対するaducanumabとリチウムの効果を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Ageing Research Reviews誌オンライン版2022年8月9日号の報告。MCI治療薬aducanumabとリチウムの認知機能低下に対する有用性評価 2022年1月までに公表されたMCIまたはアルツハイマー病患者に対する治療薬として承認されたaducanumabとリチウムの認知機能低下に対する有用性を評価したランダム化比較試験を、PubMed、Cochrane Library、CINHAL、ClinicalTrials.govより検索した。直接的および間接的な効果を推定するため、頻度論的固定効果ネットワークメタ解析を用いた。主要アウトカムは、ミニメンタルステート検査(MMSE)で測定した認知機能スコアの変化とした。 MCI治療薬として承認されたaducanumabとリチウムの認知機能低下に対する有用性を評価した主な結果は以下のとおり。・ネットワークメタ解析では、リチウムはaducanumabよりも、主要アウトカムに対する有効性が有意に高いことが示唆された。・本研究では、さまざまな制限があったものの、MCIおよびアルツハイマー病の認知機能低下に対するリチウム治療は、MCIまたはアルツハイマー病患者に対する治療薬として承認されたaducanumabよりも費用対効果に優れる治療法である可能性が示唆された。

1988.

認知症者のお金の問題【コロナ時代の認知症診療】第18回

認知症患者の凍結資産は200兆円!?最近のアンケートによれば、息子が実家に帰って、老親に会う回数は、年間1~2回程度だそうだ。私事ながら、母は80歳の頃に認知症を発病し、87歳で亡くなった。一人暮らしであった母が80歳の頃だと、私はこれに比べると多く、ふた月に1回程度は実家に行っていた。最初に「おかしいな」と思ったのは、母親の歯ブラシの毛先の曲がりである。何ヵ月使ったのか知らないが、全体が左右に倒れている事だった。この頃からお金に関するトラブルや誤解も出てきた。当時、知人から聞いた話がある。認知症の母を施設に預けて数ヵ月が経過。2人で当座の生活費を引き出すために銀行に立ち寄った。そこで彼は母親に、キャッシュカードを出して、お金を引き出すように言った。ところが、母が暗証番号を覚えていない。そこでATMを離れ、女性行員に、「実は50万円ほど出したいのですが」と言った。彼女は奥へ下がり、しばらくして管理職らしい男性行員とともに戻ってきた。男性行員は、認知症の母親名義の預金を引き出すには家庭裁判所に申請して成年後見人をつけてもらわねばならないと述べた。長時間を費やして説明したが、わかってもらえず、結局複雑な手続きをすることになった。この後から後述するような苦難の歴史が始まった。こうした問題は認知症者の増加とともに全国に広まっているようだ。例えば、最近のある経済新聞に「認知症患者の凍結資産は200兆円!!」と見出しがあった。実に国家予算の2倍である。成年後見制度の難しささて平成12年成立の成年後見制度だが、認知症、知的障害、精神障害等により、判断能力がないため、財産管理や福祉サービスの契約が1人ではできない人を裁判所が守ってくれる制度だ。ところが、そのデメリットも大きいと診察の場で家族から投げかけられる機会が増えた。要約するならば、1)親族が後見人に立候補しても選任されるとは限らない。2)親族は本人の財産に手をだせない。3)成年後見人等への報酬は本人の財産から支払う必要がある(専門職だとひと月に2万円以上)。4)本人の意思に反して成年後見人等が行動することもある。5)本人は、医師、弁護士、公務員などの資格を失う。よく聞くのは、本人が居住しなくなった不動産を売却するにも家庭裁判所の許可が必要だということだ。実は、よほど正当な理由がないとこれは難しいそうだ。以上はすでに認知症になっている方の問題である。一方で軽度認知障害や認知症が心配なだけという人やその家族の問題もある。成年後見制度には、法定後見と任意後見の2つがある。任意後見という字面から、自分が後見人になれて、自分の意志で親の通帳からお金の出し入れができるのではないかと思い込みがちである。ここがよくある誤解だ。これは、今はとくに問題がないが、判断能力、意思能力があるうちに、やってもらいたいことについて、あらかじめ取り決め(公正証書を締結)をして、近い将来に備えるものである。これには3つのタイプがあるが、多いのは将来型だと思われる。このタイプでは認知能力が低下してきたと思われたら、任意後見監督人選任申し立てをする。すると家庭裁判所は、任意後見監督人を選任し、任意後見が開始されるのである。申し立てた人は、実際には受任者に過ぎない。だから聞くところでは、この人が後見人になれる確率は20%くらい。本人の財産額が少なく、家族間の対立がない時などに限られるようだ。さて仮に任意後見人になれたとしてもその先がまた厳しい。というのは、もし任意後見人になると、法定後見人以上にその財産管理がなされる。加えて、任意後見制度を使うと法定後見に誘導されやすいとも言われる。こうしたことを知ると、もし今自分がその立場なら、任意後見には関わりたくないと思ってしまう。医師は資産問題の相談相手になれるのか?ところで高齢者が資産問題を相談する相手は、銀行、法律家、そして医者なのだそうだ(なぜ医者かと疑問ながら)。このごろでは、後見制度に関するセミナーが盛んである。主催は、この銀行や法律系が多い。ところが、その説明をよく聞いてみると問題も感じる。一言でいえば、のれんの力で不都合な説明を隠し、高齢者をその気にさせているのではないかとすら思える。遺産問題など本来は子供たちに相談するのが先決だろう。ところがそれ以前に、こうしたセミナーに参加して、その考えをしっかり受け入れている高齢者は少なくないようだ。医師が本当に資産問題の相談相手と思われているならば、この種の相談ごとは近い将来に増えるかもしれない。とくに軽度認知障害やそれ以前の人、あるいはそのお子さん達からである。けれどもわれわれの多くにとっては、これは専門外の領域である。こうした分野で経験深い人にどうしたらいいかと尋ねてみた。要は、「親子の絆さえしっかりしていれば、制度に頼る必要はない。親子で真剣に向き合って話し合い完結させるべきだ」と彼は述べた。私のクリニックでは最近、認知症になった人の遺産相続に関わる裁判沙汰が多い。これらに関わる時、もし早い時期にそうした話し合いが行われていたら、骨肉の争いはなかったろうにと、思う。

1989.

低血圧+低BMI+非HDL-C低値で認知症リスク4倍

 低血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値の3要素が組み合わさるほど認知症リスクが増大することを、オランダ・ラドバウド大学医療センターのMelina Ghe den Brok氏らが報告した。低血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値はそれぞれ認知症のリスク因子として知られているが、これらが相加的なリスク因子であるかどうかは不明であった。Neurology誌オンライン版2022年8月2日号掲載。低血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値は認知症リスクが大幅に高い 本調査は、認知症予防を目的とした介入試験であるPrevention of Dementia by Intensive Vascular Care(preDIVA)試験の拡張フォローアップの事後解析として行われた。対象は、オランダの総合診療施設に登録されている70~78歳の非認知症の地域住民であった。ベースラインの低収縮期血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値と認知症発症の関連性を、Cox回帰分析を用いて評価した。 低血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値と認知症発症の関連性を分析した主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値10.3年(四分位範囲[IQR]:7.0~10.9年)の間で、2,789例中308例(11.0%)が認知症を発症し、793例(28.4%)が死亡した。・低血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値の各リスク因子の最低五分位の人では、認知症の発症リスクが高かった。・リスク因子を有さない人と比較して、リスク因子を1つのみ有する人の調整ハザード比(aHR)は1.18(95%信頼区間[CI]:0.93~1.51)、2つ有する人のaHRは1.28(95%CI:0.85~1.93)、3つすべて有する人のaHRは4.02(95%CI:2.04~7.93)であった。・これらの結果は、リスク因子の特定の組み合わせによるものではなかった。 著者らは、「3つのリスク因子を有する人では、認知症の発症リスクは大幅に高かった。これは、個々のリスク因子の独立した影響ではなく、複数のリスク因子が包括的に関与する現象の可能性がある」と述べている。

1990.

不安症・強迫症・PTSDの薬物治療ガイドライン(WFSBP)第3版:強迫症・PTSD編

 ドイツ・University Medical Center GottingenのBorwin Bandelow氏らは、2002年に発行(2008年改訂)された、世界生物学的精神医学会連合(WFSBP)タスクフォースによる不安症・強迫症・PTSDの薬物治療のためのガイドライン第3版に関する報告を行った。本論文(パート2)では、強迫症およびPTSDの治療について、認知行動療法(CBT)と薬理学的治療が効果的であると報告している。The World Journal of Biological Psychiatry誌オンライン版2022年7月28日号の報告。 22ヵ国を代表する34人の国際的専門家で構成されたコンセンサスパネルにより、治療の有効性および受容性に基づき推奨事項が作成された。第3版では、薬物治療に限らず心理療法やその他の非薬理学的介入についても、薬物治療の標準的な評価と同様の厳格な方法を適用し、評価を行った。 主な内容は以下のとおり。・本論文(パート2)には、小児、青年、成人を対象とした公開済みのランダム化比較試験(RCT)(強迫症:291件、PTSD:234件)に基づき、強迫症およびPTSD治療に関する推奨事項を含めた。・パート1(https://www.carenet.com/news/general/carenet/54902)には、不安症治療に関する推奨事項が含まれている。・強迫症治療の第1選択は、SSRIとCBTが推奨される。・オンラインCBTにおいても、アクティブコントロールより優れた結果が得られていた。・第2選択薬として、クロミプラミンを含むいくつかの薬剤が使用可能である。・治療抵抗性強迫症では、SSRI治療に抗精神病薬や他の薬剤による増強療法を行うなど、いくつかの選択肢がある。・反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法や深部脳刺激(DBS)療法などを含む他の非薬理学的治療についても評価された。・PTSD治療では、SSRIおよびSNRIであるベンラファキシンが第1選択薬として推奨される。・最も優れたエビデンスを有する心理療法はCBTである。・治療抵抗性PTSDでは、SSRI治療に抗精神病薬による増強療法を行うことが、選択肢の1つとなりうる可能性が示唆されている。

1991.

事例006 こころの連携指導料(I)の算定【斬らレセプト シーズン3】

解説今回の改定で新設された「B005-12 こころの連携指導料」には、「(精神科または心療内科以外の診療科において)地域社会からの孤立の状況などにより、精神疾患が増悪するおそれがあると認められるものまたは精神科もしくは心療内科を担当する医師による療養上の指導が必要であると判断されたものに対して算定ができる」とあります。算定は、初回算定日の属する月から起算して1年を限度として、患者1人につき月1回限りです。初回算定日はレセプト電算処理システム用コードを利用して記載しなければなりません。紹介は文書で行わなくてはなりませんが、「診療情報提供料(I)」は別に算定することはできません。本事例の医療機関の懸念は、医師が施設基準の1つである「自殺対策等に関する適切な研修を受講」をできていないことです。令和4(2022)年9月30日までに受講予定であれば差し支えないとされています。施設基準届出時には、同日までに受講見込みと記載されていますが、多忙を理由に受講申し込みもできていませんでした。オンラインでも受講できる研修もありますので、できる限り早く受講されることをお勧めしました。なぜならば、厚生労働省のホームページに記載されている令和4年度適時調査(施設基準の順守状況の調査)にかかる要領では、重点項目として「受講している」ことが取り上げられたからです。受講期限までに受講できていないと施設基準を取り下げなければならないこともお伝えしました。

1992.

DSWPD(睡眠覚醒相後退障害)に対する超少量ラメルテオンの有用性

 睡眠覚醒相後退障害(DSWPD)は、概日リズム睡眠覚醒障害の1つであり、「朝起きられない病気」として知られている。DSWPD患者は、夜の早い時間に眠ることができず、朝起きられない、または起きたとしても強い心身の不調を来すことにより、社会生活に重大な問題を抱えていることが少なくない。DSWPDの薬物療法ではメラトニンが主な治療オプションとなりうるが、日本では市販薬として販売されておらず、多くの国ではメラトニンの市販薬には品質にばらつきがあることが問題となっている。メラトニン受容体アゴニストであるラメルテオンは、潜在的な治療オプションになりうる可能性があるが、DSWPD患者に使用した報告はほとんどない。これまでの薬理学的および時間生物学的研究では、夕刻の超少量ラメルテオン投与がDSWPDに有益であることが示唆されている。東京医科大学の志村 哲祥氏らは、DSWPD患者に対する夕刻の超少量ラメルテオン投与について、薬理学的レビューおよび検討を行うとともに臨床経験を紹介した。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2022年8月5日号の報告。DSWPD患者に対する超少量ラメルテオン投与で起床時の睡眠酩酊が消失 対象は、診断後に睡眠衛生指導を行ったが症状が改善せず、再診したDSWPD患者23例(平均年齢:23.5歳、男性:15例、女性:8例)。そのうち18例にラメルテオンの通常用量(8mg)による治療歴があった。対象患者には、夕刻(平均:18時10分)に超少量のラメルテオン(平均:0.571mg、1/7~1/50錠)を投与した。 DSWPD患者に対する夕刻の超少量ラメルテオン投与を評価した主な結果は以下のとおり。・治療前には、すべてのDSWPD患者において、朝の覚醒困難による学校や職場への遅刻および欠勤があった。・治療後、著効(学校や職場への遅刻が消失)と判断された患者は60.9%であった。・部分奏効は26.1%、改善がみられない無効は13.0%であった。・治療前には、69.6%のDSWPD患者で起床時の睡眠酩酊が認められたが、治療後ほとんどの患者で消失した(87.5%)。・DSWPD患者の不眠症状に対してラメルテオンを投与する際には、患者の就寝時間のばらつきなどを考慮し、服用のタイミングを夕刻の具体的な時間に設定することが重要である。

1993.

初期のパーキンソン病に抗体療法は無効(解説:内山真一郎氏)

 パーキンソン病はアルツハイマー病に次いで2番目に多い神経変性疾患であり、先進国では60歳以上の約1%に存在する。ドーパミン補充療法は症状の改善に有効であるが、病気の進行を防ぐことはできず、時間が経つとLドーパ抵抗性が出現することから、疾患修飾療法の登場が期待されている。パーキンソン病の病理はα-シヌクレインにリンクしており、α-シヌクレインはパーキンソン病の病理に特徴的なレビー小体の主要な構成成分である。cinpanemabは凝集した細胞外のα-シヌクレインに特異的に結合するヒト由来のモノクローナル抗体である。 この第II相試験(SPARK)では初期のパーキンソン病患者にcinpanemabを静脈投与し、有効性、安全性、薬力学、薬物動態を評価した。一次評価項目はMovement Disorder Society-sponsored revision of the Unified Parkinson’s Disease Rating Scale(MDS-UPDRS)のベースラインからの変化であった。試験は72週後の時点でMDS-UPDRSスコアはいずれの用量でもプラセボと差がなかったため中止された。二次評価項目であった52週後のDATスキャン画像も実薬群とプラセボ群の間に差がなかった。抗α-シヌクレイン抗体であるprasinezumabの第II相試験(PASADENA)でも治療の有効性が示されなかったことから、もっと早期の前臨床期あるいは前駆期のパーキンソン病でないと効果が期待できないのかもしれない。

1994.

コロナ禍で離婚は増えたのか?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第216回

コロナ禍で離婚は増えたのか?pixabayより使用日本では少子高齢化がどんどん進んでおり、このままだとあまり明るい未来が期待できない状況です。COVID-19の流行が結婚と出生の減少を加速させ、離婚までも増加させているのではないかと懸念されています。そんな日本の結婚・離婚・出生について扱った論文が、BMJ Gobal Health誌から発表されました。Ghaznavi C, et al.Changes in marriage, divorce and births during the COVID-19 pandemic in Japan.BMJ Glob Health. 2022 May;7(5):e007866.2011年12月~2021年5月の日本の人口動態統計データを収集しました。コロナ禍を含む任意の月に、有意な過不足が発生していないかどうかを判断するために、Farringtonアルゴリズムを使用して、結婚・離婚・出生数を観察しました。Farringtonアルゴリズムは、アウトブレイク検出法としても広く用いられている手法です。さて、1度目の緊急事態宣言中(2020年4〜5月)に、結婚数と離婚数に減少が見られることがわかりました。さらに、2020年12月〜2021年2月には出生数の減少が確認されました。つまり、1度目の緊急事態宣言の8〜10ヵ月後に当たるわけで、その時期に妊娠を控えていた夫婦が多かったということを意味します。この報告で興味深かったのは結婚と出生数はともかく、離婚数の減少も見られていたことです。意外な結果でした。コロナ禍で自宅にいる人が増えたため、夫婦で話し合う時間が増えたから離婚が減ったのでしょうか。あるいは、「本当は離婚したいけど、新型コロナがこんな感じだし、ちょっと保留にしようか」ということでしょうか。…神のみぞ知る。

1995.

診療科別、専門医の平均取得数は?/1,000人アンケート

 2018年からスタートした新専門医制度は、昨年初の機構認定の専門医が誕生し、新制度への移行が進む予定となっている。一方、サブスぺ領域の認定や、学会認定の専門医との位置付けなど、課題も多く指摘されている。CareNet.comの20~50代の会員医師1,000人を対象に、現在の専門医取得状況や今後の取得・更新意向について聞いた(2022年7月28日実施)。専門医の取得数が多い傾向がみられた診療科は? 全体で、専門医取得数を2つ以上と回答した医師は51%だった。少数派ではあったが、1.7%の医師が6つ以上と回答した。年代別にみると、30代では2つ以上と回答したのが42.3%だったのに対し、40代では62.5%まで増加、40代と50代はほぼ横ばいだった。 診療科別にみた専門医取得数の平均値(中央値)は以下のとおり。消化器は外科・内科ともに専門医取得数が多かったほか、神経内科や腎臓内科も高い傾向がみられた。一方、精神科や皮膚科では少ない傾向がみられた。消化器外科[n=24]:3.4(3)神経内科[n=26] :3.0(3)消化器内科[n=58]:3.0(3)腎臓内科[n=25]:2.9(3)感染症内科[n=4]:2.8(3)腫瘍科[n=10]:2.7(2.5)外科[n=33]:2.7(2)脳神経外科[n=25]:2.6(3)循環器内科[n=59]:2.5(2)糖尿病・代謝・内分泌内科[n=31]:2.4(2)呼吸器内科[n=34]:2.2(2)心臓血管外科[n=11]:2.1(2)救急科[n=10]:1.9(2)整形外科[n=55]:1.9(2)産婦人科[n=18]:1.9(2)形成外科[n=11]:1.8(1)内科[n=183]:1.7(2)血液内科[n=8]:1.6(2)小児科[n=45]:1.6(2)呼吸器外科[n=4]:1.5(1.5)リハビリテーション科[n=12]:1.5(1)放射線科[n=27]:1.5(1)総合診療科[n=15]:1.5(1)病理診断科[n=9] :1.4(2)耳鼻咽喉科[n=15]:1.3(1)泌尿器科[n=20] :1.3(1)その他[n=21]:1.2(1)麻酔科[n=27] :1.1(1)眼科[n=16]:1.0(1)膠原病・リウマチ科[n=7]:1.0(1)皮膚科[n=22] :0.8(1)精神科[n=76] :0.8(1)臨床研修医[n=59]:0.3(0)58%の医師が持っている専門医をすべて更新予定と回答 現在持っている専門医資格について聞いた質問では、認定内科医が24.5%と最も多く、総合内科専門医(18.8%)、外科専門医(8.4%)が続いた。新専門医制度の基本19領域と認定内科医、総合内科専門医以外の資格(“その他”として自由回答)を持つと回答した医師も14.4%おり、各学会認定の多様な専門医資格を取得している状況がわかる。 今後の更新予定については、現在持っている専門医資格について、58.6%の医師が「資格をすべて更新予定」と回答。「一部は更新しない予定」は3.0%、「すべてを更新しない予定」は1.1%に留まった。専門医取得による給与・待遇の向上があったと回答したのは14% 専門医を取得することによるメリットについては、「知識向上やスキルアップができた」が39.6%と最も多く、「開業時に役立った(15.8%)」「他の医師・スタッフから信頼が得られた(14.6%)」という回答が続いた。「給与や待遇が向上した」と回答したのは14.1%だった。 一方のデメリットについては、「受験料、更新料、学会参加などで費用がかかる」が36.3%と最も多く、「学会での単位取得など、時間的な負担が大きい(31.3%)」「評価システムへの登録等、手続きが煩雑(15.7%)」といった時間・手間等の負担を挙げる声が多く上がった。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。会員医師の専門医取得状況は―医師1,000人に聞きました

1996.

不安症・強迫症・PTSDの薬物治療ガイドライン(WFSBP)第3版:不安症編

 ドイツ・University Medical Center GottingenのBorwin Bandelow氏らは、2002年に発行、2008年に改訂された、世界生物学的精神医学会連合(WFSBP)タスクフォースによる不安症・強迫症・PTSDの薬物治療のためのガイドライン第3版に関する報告(パート1)を行った。The World Journal of Biological Psychiatry誌オンライン版2022年7月28日号の報告。 22ヵ国を代表する33人の国際的専門家で構成されたコンセンサスパネルにより、治療の有効性および受容性に基づき推奨事項が作成された。各疾患を有する成人、青年、小児を対象とした、薬物治療、心理療法、その他の非薬理学的介入についてのランダム化比較試験(RCT)合計1,007件を評価した。心理療法やその他の非薬理学的介入については、薬物治療の標準的な評価と同様の厳格な方法を適用とした。 主な内容は以下のとおり。・本論文(パート1)には、パニック症/広場恐怖症、全般不安症、社交不安症、特定の恐怖症、小児および青年の混合不安症、分離不安症、選択性緘黙(かんもく)の治療に関する推奨事項が含まれる。・SSRIおよびSNRIが、第1選択薬とされる。・認知行動療法(CBT)は、不安症に対する精神療法の第1選択肢である。・標準治療に反応しない患者やエビデンスが不十分な介入についても、専門家パネルからの推奨事項が設けられた。

1997.

『がん医療における患者-医療者間のコミュニケーションガイドライン』 、作成の狙いは?

 2022年7月、日本サイコオンコロジー学会 / 日本がんサポーティブケア学会編『がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズ 2 がん医療における患者-医療者間のコミュニケーションガイドライン 2022年版』(金原出版)が出版された。本ガイドラインはこれが初版となる。作成にあたった日本サイコオンコロジー学会・コミュニケーション小委員会委員長の秋月 伸哉氏(都立駒込病院・精神腫瘍科)に、作成の狙いやに苦労した点について聞いた。--がん医療における患者-医療者間のコミュニケーションガイドラインの作成の狙いと経緯は? がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズは2019年に『せん妄ガイドライン』初版でスタートしました。この作成準備をはじめた2015年時点から、続けて『患者-医療者間のコミュニケーション』をガイドライン化する構想はあったのです。ただ、『せん妄』に比べてガイドライン化のハードルが高く、出版までに時間がかかった、という事情があります。--がん医療における患者-医療者間のコミュニケーションガイドライン作成で苦労された点は? まずは「臨床疑問(CQ)や推奨の強さの設定」に苦労しました。コミュニケーションというエビデンスが少なく、白黒付けにくい分野をテーマにしているため、ある程度予想はしていましたが、委員会内や外部学会の方との議論が長引く場面が多々ありました。 たとえば、患者が質問しやすくするための「質問促進リスト」を渡すことがその後の治療に益をもたらすか、といったCQであれば、「渡すか、渡さないか」なので検証する試験を設計できますが、これが「根治しない病気であることを伝える」といったコミュニケーションのパーツの益害を問うとなると、試験として設計しにくく、先行研究がほとんどありません。でもそうした細部も重要なので、できる限りエビデンスを集め、盛り込むように努力しました。 もう一つは、「アウトカムの設定」です。一般のガイドラインでは「患者の生存期間延長に寄与する治療法」が推奨される、というシンプルな構図があります。しかし、コミュニケーションそれ自体は治療ではないので、「医療者への信頼増強」や「適切な治療へのアクセス」といった間接的な寄与、社会的にあるべき情報伝達といった複数のアウトカムを総合して評価する必要がありました。--エビデンス確立が難しい分野で、敢えて「ガイドライン」にされた理由は? 医療者のあいだで「患者コミュニケーションは重要な医療技術である」という統一見解はあっても、それに関する先行研究は少なく、難渋しました。しかし、患者側からのニーズは非常に強いことも感じており、完全なものでなくても、今ある知見をガイドラインとしてまとめ、世に出すことに意味があると考えました。 がん患者とのコミュニケーションでは、再発や予後といった、非常に厳しい情報を伝えねばならない場面が多々あります。決して一律に「こうすべき」とは決められない分野ですが、現場の医療者は日々悩みながら判断し、実行しています。そうしたときに少しでも判断の助けになるものをつくりたい、という思いで取り組みました。 「診療の手引き」など、ガイドラインの体裁をとらない推奨事項のまとめ方もありますが、ガイドラインはその後の標準治療となるもので、インパクトが強い。今後の改訂の機会にまた議論ができますし、医療者教育を考える際にも検討しやすくなります。そうした波及効果に期待しています。--がん医療における患者-医療者間のコミュニケーションガイドラインを一番手にとってほしい層は? がん診療に関わる医師、とくに若手の方が今後のがん診療を支える中心なので、まずはそうした方々ですね。それに患者さん自身や患者さんの支援団体の方が読んでいただいても、医療者とのやり取りをより深く捉えるヒントになると思います。【書籍紹介】がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズ 2 がん医療における患者-医療者間のコミュニケーション ガイドライン 2022年版https://www.carenet.com/store/book/cg003800_index.html

1998.

COVID-19パンデミック中の長期抑うつ症状の予測因子

 COVID-19パンデミックは、それ以前と比較し、精神疾患の増加を引き起こしている。しかし、成人うつ病の長期的軌跡に対するパンデミックの影響は十分に検討されていない。英国・サウサンプトン大学のLara Rosa氏らは、COVID-19パンデミックの初期段階以降での抑うつ症状の軌跡と予測因子を明らかにするため、潜在成長曲線モデルを用いて検討を行った。その結果、COVID-19パンデミックによる孤独感は、すべての年齢層において抑うつ症状の長期的軌跡に多大なる影響を及ぼすことが示唆されたが、ソーシャルディスタンスの順守が抑うつ症状増加の予測因子ではないことから、著者らは、孤独を感じないようにつながりを育んでいくことが重要であると報告している。Evidence-Based Mental Health誌オンライン版2022年7月28日号の報告。 2020年5月、同年9月/10月、2021年2月/3月の各COVID-19パンデミック期間におけるデータを、英国の4つのコホート研究(MCS、NSコホート、BCS、NCDS)より収集した。分析対象は1万6,978人であり、ベースライン時の平均年齢はコホート研究別にそれぞれ20歳、30歳、50歳、62歳であった。アウトカムは、自己報告による抑うつ症状とした。 主な結果は以下のとおり。・すべてのパンデミック期間において、若年者は高齢者よりも抑うつ症状を有する割合が高かった(d=0.7)。・抑うつ症状は、2020年5月~9月/10月では全体的に安定していたが(標準化平均差[SMD]:0.03、95%CI:0.02~0.04)、2020年5月~2021年2月/3月ではすべての年齢層において増加が認められた(SMD:0.12、95%CI:0.11~0.13)。・孤独感は、すべてのコホート研究で抑うつ症状増加の最も強力な予測因子であり、相関が確認された。・パンデミック前のメンタルヘルスの問題や長期罹患は、すべての年齢層において、抑うつ症状の増加と有意な関連が認められた。・一方、ソーシャルディスタンスの順守は、抑うつ症状増加の予測因子ではなかった。

2000.

うつ病の急性単剤治療反応、プラセボと比較/BMJ

 米国食品医薬品局(FDA)のMarc B. Stone氏らは、同局に提出された無作為化プラセボ対照試験におけるうつ病の急性単剤治療に対する反応を、試験参加者レベルの個別データを基に解析した。その結果、実薬およびプラセボとも大幅な改善をもたらす可能性があるが、同様に認められた三峰性の反応分布から、臨床試験でプラセボ効果を上回る実質的な抗うつ効果を有する被験者は約15%であることが示唆された。著者らは、薬物治療に特異的な意味のある反応を示す予測因子の必要性が明らかになったことを報告している。BMJ誌2022年8月2日号掲載の報告。232の無作為化二重盲検プラセボ対照試験の被験者データを解析 研究グループは、1979~2016年に米国FDAに提出された無作為化プラセボ対照試験における、うつ病の急性単剤治療に対する被験者個人レベルの反応分布を特徴付けるデータ解析を行った。 解析には、抗うつ薬の有効性研究の包含基準を満たした232の無作為化二重盲検プラセボ対照試験から、成人および子供の被験者7万3,388例が含まれた。 各試験で有効性の評価にはさまざまな手法が用いられていたことから、すべてのスコアを17項目のハミルトンうつ病評価尺度(HAMD17)スコアに変換。多変量解析にて、抗うつ薬(実薬)群とプラセボ群のうつ症状の改善への、年齢、性別、ベースライン重症度、試験年数の影響を調べた。反応分布は、有限混合モデルを用いて解析した。実薬vs.プラセボのLarge responses達成は24.5% vs.9.6% 実薬群とプラセボ群のランダムエフェクト平均群間差は1.75点(95%信頼区間[CI]:1.63~1.86)であり、実薬群を支持するものであった。 実薬とプラセボ間の差は、ベースライン重症度が増すほど有意に増大した(p<0.001)。被験者のベースライン特性で調整後、治療効果またはプラセボ反応の経時的な傾向はみられなくなった。 反応分布の最適適合モデルとして、3つの正規分布が見いだされた。それぞれベースラインから治療終了までの平均改善点16.0、8.9、1.7を示すもので、改善の程度が大きい反応(Large responses)、改善の程度が限定的な非特異的反応(Non-specific responses)、改善の程度がほとんどまたはまったく認められない反応(Minimal responses)として出現した。 実薬群はプラセボ群と比較して、Large responsesを示す可能性が大きく(24.5% vs.9.6%、オッズ比[OR]:3.07[95%信頼区間[CI]:2.05~4.91])、Minimal responsesを示す可能性は小さかった(12.2% vs.21.5%、0.51[0.41~0.62])。一方で、ほとんどの反応(実薬の63.3%、プラセボの68.9%)が、Non-specific responsesに分布されていた。また、Large responsesが得られる患者を1人増やすための実薬での治療必要数(NNT)は6.7(95%CI:5.7~7.7)であり、Minimal responsesの患者を1人減らすための実薬でのNNTは10.8(9.0~12.5)であった。 これらの結果を踏まえて著者は、「抗うつ薬で実質的な改善が得られる可能性の高い患者のサブセットを特定する、さらなる研究が必要である」と述べている。

検索結果 合計:5821件 表示位置:1981 - 2000