『がん医療におけるせん妄ガイドライン 』第2版の主な改訂点を解説

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2022/08/30

 

 日本サイコオンコロジー学会 / 日本がんサポーティブケア学会編『がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズ 1 がん患者におけるせん妄ガイドライン 2022年版』(金原出版)を刊行した。2019年の初版に続く改訂2版となる。改訂作業にあたった京都大学医学部附属病院緩和ケアセンター/緩和医療科 精神科医の谷向 仁氏に、主な変更点やポイントを聞いた。

 がん患者さんは精神的な問題を抱えることが多いのですが、その対応は医療者個人の診療経験などによってばらつきが認められています。この経験による判断はもちろん大切なのですが、一方でさまざまなバイアスによる影響も懸念されます。

 『がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズ』は、がん患者さんの精神的問題に対する対応法の基本となる部分の均てん化を図ることを目的として、多くの医療分野で近年使用されている「Minds診療ガイドライン作成マニュアル」に基づきまとめられています。

 2019年の『せん妄ガイドライン』初版にはじまり、今夏刊行の『患者-医療者間のコミュニケーションガイドライン』『遺族ケアガイドライン』、そして現在シリーズ4冊目となる不安と抑うつをテーマとした『がん患者の気持ちのつらさ(仮)』を作成中です。

がん患者に特有のせん妄について主に解説

 せん妄とは、身体的異常や使用薬剤が直接的原因となって引き起こされる意識障害です。あらゆる疾患で起こり得るものですが、がん患者ではその頻度が高く、特に終末期がん患者では80~90%に認められると報告されています。また、骨転移に伴う高カルシウム血症や脳転移、症状緩和の目的で使用されるオピオイドやステロイドなど、がん患者に特有ともいえる背景を有します。さらには、がん患者のみならず家族をも含めてのケアが重要となります。

 本ガイドラインではこのようながん特有のせん妄に関するトピックに対して、がん患者でのこれまでの質の高い研究報告を中心にシステマティックレビューを行い、検討したものをまとめています。

終末期せん妄へのケアや病院組織としての対応と臨床の手引きの新設およびせん妄予防視点の臨床疑問を追加

 せん妄ガイドライン2019年版を発刊以後、その内容について多くの紹介の機会を頂きました。その際、さまざまなコメントと共に、今後の改定に際しての要望も頂いておりました。今回の改訂版では、それらの貴重なご意見を可能な限り採用して補強するように努めました。第2版の主な改訂点は主に以下の通りです。

1)総論5「終末期せん妄のケアとゴール」の章を新設
2)総論6「病院の組織としてせん妄にどう取り組むか」の章を新設
3)III章の臨床疑問に「1.予防のための非薬物療法」「2.予防のための抗精神病薬」「6.症状軽減のためのトラゾドン」の3つを追加
4)IV章「臨床の手引き」を新設

 せん妄は発症後の対応が中心であった一昔前と異なり、近年では「せん妄を発症させない」予防が非常に重要と考えられるようになってきています。2020年度診療報酬改定で新設された「せん妄ハイリスクケア加算」はまさにせん妄予防を評価するという流れを反映したものです。せん妄予防では医師、看護師、薬剤師など多職種によるチーム医療、そして、組織としての取り組みが非常に重要となります。

 また、ガイドラインの結果を臨床にどのように活かすことができるかという具体的な手引きの要望も多く聞かれたことから、まず薬物療法についての解説を加えました。さらに、可逆性のせん妄対応とは大きく異なり、不可逆性の転帰が多い終末期せん妄に対する解説を充実させました。

がん診療に携わるすべての医療者に

 がん患者さんのせん妄に初めに遭遇するのは、せん妄診療を行う精神科医や心療内科医ではなく、がん治療に携わる医療者です。また、予防、早期発見と対応(原因検索とその対応)が大切であり、これらをチームで展開することが求められます。がん治療に携わる医師はもちろんのこと、看護師、薬剤師の方々などがん医療に携わるすべての医療者に手に取っていただき、日々の診療に役立てていただきたいと思っています。

書籍紹介『がん患者におけるせん妄ガイドライン 2022年版』

(ケアネット 杉崎 真名)