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高度アルツハイマー型認知症にも使用できるドネペジル貼付薬「アリドネパッチ27.5mg/55mg」【下平博士のDIノート】第116回

高度アルツハイマー型認知症にも使用できるドネペジル貼付薬「アリドネパッチ27.5mg/55mg」今回は、アルツハイマー型認知症治療薬「ドネペジル経皮吸収型製剤(商品名:アリドネパッチ27.5mg/同55mg)、製造販売元:帝國製薬」を紹介します。本剤は、軽度~高度のアルツハイマー型認知症患者に使用することができる貼付薬であり、アドヒアランス向上や投薬管理の負担軽減が期待されています。<効能・効果>アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制の適応で、2022年12月23日に製造販売承認を取得しました。なお、既存のドネペジル経口薬には、レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制の適応が追加されていますが、本剤にはこの適応はありません。<用法・用量>通常、軽度~中等度のアルツハイマー型認知症患者にはドネペジルとして、1日1回27.5mgを貼付します。高度のアルツハイマー型認知症患者には、27.5mgで4週間以上経過後に55mgに増量しますが、症状により27.5mgに減量することができます。本剤は背部、上腕部、胸部のいずれかの正常で健康な皮膚に貼付し、24時間ごとに貼り替えます。なお、他のコリンエステラーゼ阻害作用を有する同効薬(ドネペジル塩酸塩、リバスチグミン、ガランタミン)とは作用機序が重複するため併用することはできません。<安全性>国内第III相試験において、382例中214例(56.0%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主なものは、適用部位そう痒感95例(24.9%)、適用部位紅斑93例(24.3%)、接触皮膚炎48例(12.6%)などでした。なお、重大な副作用として、QT延長(1~3%未満)、心室頻拍(torsade de pointesを含む)、心室細動、洞不全症候群、洞停止、高度徐脈、心ブロック(洞房ブロック、房室ブロック)(0.1~1%未満)、失神、心筋梗塞、心不全、消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)、十二指腸潰瘍穿孔、消化管出血、肝炎、肝機能障害(0.1~1%未満)、黄疸、脳性発作(てんかん、痙攣など)、脳出血、脳血管障害、錐体外路障害、悪性症候群(Syndrome malin)、横紋筋融解症、呼吸困難、急性膵炎、急性腎障害、原因不明の突然死、血小板減少が設定されています(発現率の記載のないものはいずれも頻度不明)。<患者さんへの指導例>1.この薬は、脳内の神経伝達物質を分解する酵素の働きを抑えることで、認知症症状の進行を遅らせます。2.アルツハイマー型認知症によって機械操作能力が低下する可能性があります。また、本剤によって意識障害、めまい、眠気などが現れることがあるため、自動車の運転など危険を伴う機械の操作には従事しないようにしてください。3.皮膚刺激を避けるため、貼付部位は毎回変更し、同一部位への貼付は7日以上の間隔を空けてください。4.光線過敏症を避けるため、貼付部位を衣服で覆うなど直射日光を避けてください。また、本剤を剥がした後も、貼付していた部位への直射日光を避けてください。<Shimo's eyes>わが国では、軽度~高度のアルツハイマー型認知症(AD)の治療薬であるドネペジル経口薬(商品名:アリセプトなど)の他、軽度~中等度ADの治療薬としてリバスチグミン貼付薬(同:リバスタッチ、イクセロンなど)やガランタミン経口薬(同:レミニールなど)、中等度~高度ADの治療薬としてメマンチン経口薬(同:メマリーなど)が承認されています。本剤は、高度ADにも適応を有する初の経皮吸収型製剤です。ドネペジル経口薬と同じく軽度~高度ADの適応を有しているため、認知症の早期から使用可能であるとともに、リバスチグミン貼付薬の投与対象とならない高度ADに対しても使用が可能です。有効成分はドネペジル経口薬の体内における活性本体です。経皮吸収型製剤は、多剤を経口服薬している患者や、嚥下困難や寝たきり状態の患者であっても治療継続がしやすく、アドヒアランスの向上が期待されています。また、介護者にとっても投薬管理の負担軽減だけでなく、貼付の有無や投与量の視認が可能であるため投与過誤のリスクも低減することができます。また、食事の有無や時間に関係なく投与ができることもメリットと言えます。本剤は既存の内服薬であるドネペジル塩酸塩錠5mgおよび10mgを1日1回経口投与したときと、本剤27.5mgおよび55mgを貼付したときに同等の効果を得られるように設計されています。経口薬と比較して血中薬物濃度の上昇が緩やかであるため、経口薬と異なり軽度~中等度ADでは漸増せずに投与が可能です。副作用では、胃腸障害の発現状況は、下痢や悪心を除き、本剤群と経口薬群で明らかな差は認められませんでした。しかし、全身性の有害事象とともに、貼付薬に特有の適用部位の有害事象にも注意する必要があります。

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医学生に労働法の知識を!医師や弁護士がモデル講義/厚生労働省

 医師の過重労働の問題が指摘されて久しいが、2024年4月から医師に対する時間外労働の上限規制をはじめとした「医師の働き方改革」がスタートする。これを踏まえ、厚生労働省では、今後医師となる医学生に対し、労使関係の基本となる労働法や医師の働き方改革の基本を知ってもらうべく、医師や弁護士を講師としたモデル授業をスタートした。 2022年度からスタートしたこのモデル講義について、大学関係者に対して紹介する「医学部等における労働法教育を考えるシンポジウム」が開催され、モデル授業を担当した医師や弁護士が講義内容やその意義を報告した。 関西医科大学などで講義を行った大阪医科薬科大学 消化器外科の河野 恵美子氏は次のように振り返る。 「講義は、医師の働き方改革のあゆみや今後のスケジュールの共有からスタートしました。私は外科医なので日本外科学会が2012年に行ったアンケート結果から、20~30代の外科医の75%近くが週80時間以上の労働時間となっている、という厳しい実態を紹介しました。そして海外と比較した日本の病床数や医師の業務実態などのデータを提供し、働き方の改善策を考えてもらいました。次に私自身のキャリアや育児期の働き方を紹介し、女性外科医のリアルな働き方を知ってもらいました。講義後のアンケートでは約9割の学生から『有意義だった』という感想が寄せられ、自由回答でも『外科は厳しい印象があったが、やり方次第では出産・育児と両立できそうだと感じた』といった声が寄せられました。講義のポイントは、働き方改革の趣旨・目的を伝え、多様な働き方を提示することで学生の内発的モチベーションを向上させることだと感じました」 続いて日本医師会で常任理事を務める神村 裕子氏が自分の講義を振り返った。 「講義の冒頭で1998年の研修医過労死、1999年の小児科医過労自死と、今の働き方改革につながった重大な事件を紹介し、合わせて働き過ぎで肉体、精神がいかに蝕まれるかについての具体的なデータを示しました。私は精神科医なので、精神疾患による労災認定が増えているデータや、ワークライフバランスが崩れている意識がある人は超過労働がうつ病の発症に結びつきやすいというデータも示しました。過重労働が心身に与える影響を理解してもらい、研修医・医師も労働法に守られかつ守る立場であること、自分だけではなく他職種の労働上の権利も尊重すべきであること、という要点を伝えました」 日本赤十字社医療センター産婦人科の木戸 道子氏は「医学生は先輩などから医師になった後の働き方の情報を入手しているが、部分的なものであることが多く、法的根拠を含めた全体的な知識を持つことが重要だ。学生も参加するワークショップ形式にすることで、まだ臨床実習の始まっていない年次の学生でも自分ごととして捉えてもらえる。モデル講義を重ねてブラッシュアップし、今後の医学教育のカリキュラムとして組み込んでいくことが求められる」と話した。 厚生労働省ではモデル講義の導入を検討する医学部関係者に対し、取り組みやモデル授業の概要、実施のステップをまとめた冊子1)を作成して配布、PDFでも公開している。

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統合失調症における抗精神病薬使用と心臓突然死リスク

 抗精神病薬で治療される統合失調症患者は、心臓突然死のリスクが高いといわれている。獨協医科大学の岡安 寛明氏らは、統合失調症患者における抗精神病薬の使用と心臓突然死リスクとの関連を明らかにするため、deceleration capacity(DC)(心臓突然死の予測因子として用いられる心拍変動の指標)の低下を調査し、抗精神病薬の使用による心臓突然死リスクを、DCの評価と補正QT間隔(QTc)との関連で評価した。DCが抗精神病薬を使用する統合失調症患者の心臓突然死リスク増加の特定に役立つ可能性 その結果、抗精神病薬を使用している統合失調症患者においてDCを評価することは、心臓突然死リスク増加のモニタリングおよび特定に役立つ可能性が示唆された。また、DCとQTcの両方の評価で、心臓突然死の予測精度が向上する可能性があることも報告された。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2023年1月14日号の報告。 統合失調症患者138例のDCとQTcを測定し、年齢、性別をマッチさせた健康対照者86例と統合失調症患者86例のDCを比較した。統合失調症患者138例のDCと使用する抗精神病薬の用量の相関関係を調査するため、線形回帰分析を用いた。QT延長の有無による統合失調症患者のDCを比較した。 統合失調症患者における抗精神病薬の使用と心臓突然死リスクとの関連を評価した主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬を使用している統合失調症患者と健康対照者で、DCが有意に異なることが確認された。・DCは抗精神病薬の使用(とくにクロルプロマジン、ゾテピン、オランザピン、クロザピン)と用量依存的な負の相関が認められた。・DCとQTcとの間に有意な関連は認められなかった。

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Yes/No調査による認知症スクリーニングの精度~福井県での調査

 認知症の予防には、早期介入が非常に重要である。しかし、認知症の早期発見に、どのようなスクリーニングが有用であるかは、これまで明らかになっていない。福井大学の濱野 忠則氏らは、サポートやケアを必要とするリスクが高い高齢者を特定するため厚生労働省が作成した基本チェックリストに基づき福井県の認知症予防チームが開発したYes/No自己申告調査の結果と、ミニメンタルステート検査(MMSE)との関連を検討し、Yes/No自己申告調査の認知症スクリーニングに対する有効性を評価した。その結果、認知症スクリーニングに対するYes/No自己申告調査の有効性が示された。とくに、「電話番号を調べて電話をかけられない」「銀行やATMで自身の預貯金を管理できない」などは、認知症のサインであると報告されている。Frontiers in Aging Neuroscience誌2023年1月4日号の報告。 福井県在住の介護保険制度を利用していない65歳以上の高齢者8万7,867人を対象に、Yes/No自己申告調査を郵送にて実施した。調査結果に基づき、選択された対象者には個別に、MMSEによる評価のため地元の病院での受診を勧めた。 主な結果は以下のとおり。・Yes/No自己申告調査に回答した5万1,043人(58.1%)のうち、8,803人(17.2%)に対し、認知症の可能性を確認するため、かかりつけ医の診療を受けるように促した。・地元の病院で受診した高齢者1,877人(21.3%)のうち、MMSEのデータが収集できた1,873人(男性:803人、女性:1,070人、平均年齢:76.8±6.4歳)を分析に含めた。・多変量解析で低MMSEスコア(23以下)との関連が認められた項目は次のとおりであった。 ●電話番号を調べて電話をかけられない(オッズ比[OR]:2.74、95%信頼区間[CI]:1.89~3.97、p<0.0001) ●銀行やATMで自身の預貯金を管理できない(OR:2.12、95%CI:1.46~3.07、p<0.0001) ●今日が何日かわからない(OR:2.03、95%CI:1.40~2.96、p<0.0001) ●同じことを繰り返し質問する(OR:1.98、95%CI:1.45~2.70、p<0.0001)

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日本人・小中高校生の頭痛有病率~糸魚川紅ズワイガニ研究

 新潟・糸魚川総合病院の勝木 将人氏らは、小児および青年期の頭痛、片頭痛、薬物乱用頭痛の有病率を調査するため、小学校から高校までの日本人学生を対象に、学校ベースのオンラインアンケートを実施した。また、片頭痛を引き起こすトリガーについて調査するとともに、頭痛頻度に対するCOVID-19パンデミックの影響も併せて検討を行った。その結果、小児および青年期において、頭痛による生活への支障は大きいことが明らかとなった。結果を踏まえ著者らは、頭痛の臨床診療におけるアンメットニーズを修正する必要があるとしている。Clinical Neurology and Neurosurgery誌オンライン版2023年1月20日号の報告。 2022年4月~8月に、新潟県糸魚川市内の小中高の学生(6~17歳)に対しオンラインアンケートを実施した。片頭痛および薬物乱用頭痛の定義には、国際頭痛分類第3版を用いた。片頭痛を引き起こすトリガーを調査するため、因子分析およびクラスタリングを実施した。頭痛頻度へのCOVID-19パンデミックの影響についての回答も収集した。 主な結果は以下のとおり。・有効回答数2,489例のうち、頭痛は907例(36.44%)、片頭痛は236例(9.48%)、薬物乱用頭痛は11例(0.44%)で認められた。・頭痛の回答者の最大70%は日常生活への支障を訴え、約30%は医師に相談していた。・片頭痛のトリガーは、因子分析により5つの因子にグループ化され、因子に対する片頭痛患者の感受性は、3つのクラスターに分類された。 ●クラスター1は、さまざまなトリガーに対し強い感受性を示していた。 ●クラスター2は、天気、スマートフォン、ビデオゲームに対し敏感な反応がみられた。 ●クラスター3は、トリガーに対する感受性が低かった。・クラスター2は、片頭痛による支障が非常に大きいにもかかわらず、医師の診察を受けていない傾向が認められた。・COVID-19パンデミック下では、頭痛の回答者の10.25%で頭痛の発作が増加し、3.97%で減少していた。

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春は出会いの季節【Dr. 中島の 新・徒然草】(466)

四百六十六の段 春は出会いの季節早いもので、もう3月になりました。春は別れの季節であるとともに出会いの季節。今回は出会いについてのお話をさせていただきます。遠い昔、昭和の頃。塾講師をしていた後輩が、遅くまで残っていた女子高生を車で家まで送ってあげた時のこと。家から出て来たご両親が、実は全国仲人連盟の世話人だったかな。正確な名称は覚えていませんけど。以来、彼は毎月のようにお見合いをすることになり、ついにゴールインしました。お相手は、とある病院の跡取り娘だったそうです。昭和が仲人連盟なら、令和の今はマッチングアプリが大活躍。私の外来に通院している若者たちも、それぞれに活用しています。彼らの話を聞いているうちに、私もだんだん詳しくなってきました。マッチングアプリにもいろいろあり、婚活専門から出会い目的まで用途が異なっています。前者の場合、独身証明書や源泉徴収票も提出しなくてはなりません。後者の場合はもっと緩くて、既婚者も紛れ込んでいるのだとか。ある20代男性の通院患者さんの場合。「最初に会うところまでいっても、その後が続かないんです」と、お母さんが嘆いていました。別のある20代の女性患者さんは、マッチングアプリで彼氏を見つけて楽しんでいるそうです。彼女の妹さんは遠距離恋愛が破局したのですが、すぐさまマッチングアプリで新しい彼氏を作ったとか。皆さん、頑張っていますね。そんな中、ついに結婚に至った30代の女性患者さんが現れました。彼女は当初「なかなかピンとくる男性に出会えない」とこぼしていましたが、諦めずに婚活を続けた結果、ついに運命の相手が登場!患者「先生、ちょっと写真を見てくれる?」中島「えっと、この人かな」患者「見かけは全然ダメやけど」写真を見せてもらいましたが、うっかり同意したら大変なことになります。患者「でも、すごく優しくて、私の実家の近くに引っ越してくれたし」中島「そりゃあ、何かとご両親に助けてもらうべきやね」聞けば、ご主人の出身は遥か遠いところだそうです。このような成功事例を聞いて、ほかの患者さんたちも俄然ヤル気を見せました。私に根掘り葉掘り尋ねてきます。どのマッチングアプリか、とか。出会いまでどのくらいかかったのか、とか。どの時点で自分の障害について相手に説明したのか、とか。やはり障害のことが1番の問題のようですね。相手に話すのは、できるだけ早いほうがいいんじゃないかと思うのですけど。それぞれに頭部外傷の後遺症を持っていたり、抗痙攣薬を服用したりしているわけですから。もちろん、頼まれれば私が代わってお相手に説明をすることもあります。なかには小学生の時から診ている患者さんもいるので、そのくらいのことは問題ありません。ニュースでは「マッチングアプリで知り合った相手が原因で事件に巻き込まれた」みたいな報道がされることもあるので、何となくネガティブなイメージを持っていました。が、それ以上に若者たちはガンガン活用して自分の人生を切り開いているようです。ということで、さらに面白い話を耳にしたら、読者の皆さんに報告いたしましょう。最後に1句マチアプの 成果を語る 弥生かな★ 「マチアプ」とはマッチングアプリの略称

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双極性障害、うつ病、自殺企図へのT. gondiiの影響

 双極性障害、うつ病、自殺企図における寄生性原生生物トキソプラズマ(T. gondii)の潜伏感染の影響については長期間にわたり議論されているが、T. gondiiが脳や行動を操作する方法に関してエビデンスは不足しており、この推測は不明のままである。トルコ・イスタンブール大学のOmer Faruk Demirel氏らは、自殺企図を有する/有さない双極性障害およびうつ病患者へのT. gondii感染の影響を検討するため本研究を実施した。その結果、T. gondii潜伏感染は、双極性障害および自殺企図の原因と関連している可能性が示唆された。Postgraduate Medicine誌オンライン版2023年2月6日号の報告。 自殺企図の有無にかかわらず双極性障害およびうつ病患者に対するT. gondii感染の影響を検討するため、血清学的および分子ベースの評価を行い、年齢、性別、居住地域(県)がマッチした健康対照者と比較した。双極性障害患者147例、うつ病患者161例、健康対照者310例をプロスペクティブに評価した。 主な結果は以下のとおり。・T. gondiiの血清陽性率は、双極性障害患者で57.1%、うつ病患者で29.2%、自殺企図を有する患者で64.8%、健康対照者で21.3%であった。・二項ロジスティック回帰分析では、T. gondii陽性の免疫グロブリンG(IgG)の状態は、双極性障害および自殺企図の顕著な傾向因子である可能性が示唆されたが、うつ病では示唆されなかった。 ●双極性障害(OR:3.52、95%信頼区間[CI]:2.19~5.80、p<0.001) ●自殺企図(OR:17.17、95%CI:8.12~36.28、p<0.001) ●うつ病(OR:1.21、95%CI:0.74~1.99、p=0.45)・PCRによるT. gondiiのDNA比率では、双極性障害およびうつ病との関連が認められた。

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第150回 かかりつけ医機能の確認めぐりひと悶着、制度化の芽も摘んだ日本医師会の執念

かかりつけ医確認は「事実行為」or「行政行為」?法案提出直前までドタバタこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、久しぶりに八ヶ岳山麓に住む大学時代の先輩宅を訪れ、硫黄岳に登って来ました。夏沢鉱泉から夏沢峠までは穏やかで快適な雪道でしたが、峠からピークまでは氷雪が覆う急登ルートで、冷たい強風が吹いていました。頂上には寒過ぎて長居できず、記念撮影だけして早々に下山しました。それでも、赤岳、甲斐駒ケ岳、富士山、北アルプスの山々が見える素晴らしい眺望で、厳冬期の八ヶ岳を堪能することができました。ただ、雪は例年よりもかなり少なかったです。さて、今回は、再度、かかりつけ医機能の制度整備について書いてみたいと思います。法案提出直前までドタバタしたかかりつけ医問題。かかりつけ医機能の確認が「事実行為」か「行政行為」か、などは患者にとっては些末などうでもいいことですが、日本医師会にとっては徹底的にこだわるべきポイントだったようです。全世代型社会保障制度関連法案、閣議決定し通常国会に提出政府は2月10日、かかりつけ医機能の制度整備などを盛り込んだ「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(通称、全世代型社会保障制度関連法案)」を閣議決定し、同日、通常国会に提出しました。この連載の「第147回 かかりつけ医機能制度化、全世代型社会保障構築会議構成員の発言から見えてくる『骨抜き』の背景」では、しょぼい制度になってしまった理由について考察しました。この回を書いていた段階では、法案は自民党の厚生労働部会で審査中でした。「かかりつけ医の制度化などを巡って慎重論が出たため、了承は見送られたようです。報道等によれば、都道府県の確認体制への不安(確認を厚労省は行政行為と説明し、それへの反発があった模様)などがあるようです。いずれにせよ、政府は与党の了承を経て閣議決定し、今国会で成立させたい考えなので、小幅の修正で法律案提出となりそうです」と書きました。しかし、「小幅」どころか見方によっては180度転換とも言える修正となりました。「確認は行政行為」という説明を取り下げ、処分性を伴わない「事実行為」と再説明自民党の厚生労働部会は2月6日に再度審査を行いました。この時、厚生労働省は、「かかりつけ医機能」を報告した医療機関が機能の要件を満たしているかなどを都道府県が「確認」する仕組みについて、前回行った「確認は行政行為」という説明を取り下げ、処分性を伴わない「事実行為」だと改めて説明し直しました。2月7日付のメディファクスの報道によれば、「厚労省は、考え方の整理が十分でなかったと謝罪し、確認は行政行為ではなく、『取り消し』などの処分性を伴わない事実行為と整理した、と報告した」とのことです。「都道府県による法的な確認の仕組みがない、従来の病床機能報告などと同様の仕組みになる」との考え方も示したそうです。さらに「『制度でかかりつけ医を縛るものではないのか』との議員の声に対しては、制度的に定めるものではないと強調した」とのことです。この説明変更によって自民党の厚生労働部会は同法案を了承、10日の閣議決定となりました。なお、法案そのものの条文は変更せず、解釈変更で対応するそうです。登録制や認定制の“芽”を摘んでおきたかった日本医師会「行政行為」とは、行政庁が法律の定めに従って、一方的な判断に基づいて、国民の権利義務その他法的地位を具体的に決定する行為のことを言います。厚労省が最初、「かかりつけ医機能」報告の確認を行政行為としたのは、単純なミスなのか、何らかの意図を持っていたのかは不明です。ただ、仮に「行政行為」ということになれば、確認によって不備や虚偽が見つかった時、何らかの行政処分(認定や登録の制度が仮にできれば、その取り消しも)が下される可能性があります。今回のかかりつけ医機能の制度整備が、将来的にかかりつけ医の登録制や認定制につながらないよう、“族議員”によって「行政行為」ではなく単なる「事実行為」だという言質を取り、早めに“芽”を摘んでおきたかった、という日医の強い執念が透けて見えます。「『かかりつけ医』と『かかりつけ医以外の医師』を区別するものでもない」と松本会長日医の松本 吉郎会長は2月15日の定例記者会見で、全世代型社会保障制度関連法案が2月10日に閣議決定され、通常国会において今後審議されること関連して、日医の「かかりつけ医機能の制度整備」などに対する考え方を説明しました。そこで松本会長は法案について、「加藤 勝信厚生労働大臣のリーダーシップの下、ステークホルダーそれぞれのベクトルの均衡点で一定の決着をみた」と話すとともに、かかりつけ医について改めて、「あくまで国民が選ぶものであり、国民にかかりつけ医をもつことを義務付けたり、割り当てたりするものではない」と強調しました。そして、「かかりつけ医・かかりつけ医機能の認定制」には明確に反対する考えを示すとともに、法案に書かれた「かかりつけ医機能の報告」は、「かかりつけ医機能を認定するものではなく、機能を持っていないからその人はかかりつけ医ではない、といったものではない。ましてや『かかりつけ医』と『かかりつけ医以外の医師』を区別するものでもない」と主張しました。そして、自民党の厚生労働部会に出席した国会議員から、「法案に明記された都道府県の『確認』は、行政処分につながる『行政行為』ではなく、現時点での診療実績の有無や受け入れる体制等を含めた、事実行為の『確認』であると厚労省から説明があった」と伝え聞いたことも付け加えましたただ「制度を作った」という事実を作るための制度行政行為か事実確認かのひと悶着は、日医の意を受けた自民党議員からの質問によって起こっていたと予想できます。それにしても、何の強制力も、発展性も、拡張性もない、ただ「制度を作った」という事実を作るためだけの制度というものは果たして必要なのでしょうか?担当する厚生労働省の役人に徒労感はないのでしょうか。この連載の「第147回 かかりつけ医機能制度化、全世代型社会保障構築会議構成員の発言から見えてくる『骨抜き』の背景」では、全世代型社会保障構築会議の権丈 善一構成員(慶應義塾大学商学部教授)の「手さえ挙げれば誰でもみんながかかりつけ医になることができるという方向で制度設計することは、これまで岸田総理や加藤大臣が言ってきた患者の視点に立った改革とは距離が相当にあると思います」という言葉を紹介しましたが、法案ができてからも「行政行為」か「事実行為」かにこだわる日医の姿勢からは、確かに患者のことを思いやる視点はまったく見えてきません。「かかりつけ医機能」の報告制度に果たして実効性はあるのか、法案成立後も注視していきたいと思います。

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日本人統合失調症患者に対する長時間作用型抗精神病薬注射剤の有効性比較

 明治薬科大学のYusuke Okada氏らは、日本人統合失調症患者に対する各種長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬(アリピプラゾール、パリペリドン、リスペリドン、フルフェナジン/ハロペリドール)の有効性の比較を行った。その結果、アリピプラゾールとパリペリドンのLAIは、フルフェナジン/ハロペリドールと比較し、精神科入院およびLAI中止のリスクが低かった。また、アリピプラゾールLAIは、リスペリドンよりもLAI中止リスクが低いことも報告した。Schizophrenia Research誌2023年2月号の報告。 2つのレセプトデータベースを用い、レトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、2015年5月~2019年11月の間にLAI抗精神病薬による治療を開始した統合失調症外来患者。精神科入院リスクとLAI中止リスクをLAI間で比較するため、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・薬剤ごとの適格基準を満たした使用開始患者数は、アリピプラゾール303例、パリペリドン124例、リスペリドン73例、フルフェナジン/ハロペリドール123例であった。・精神科入院リスクについて、アリピプラゾール(HR:0.47、95%信頼区間[CI]:0.28~0.78)とパリペリドン(HR:0.50、95%CI:0.28~0.89)は、フルフェナジン/ハロペリドールと比較し、リスクが有意に低かった。また、リスペリドンは、アリピプラゾールおよびパリペリドンと同様の傾向が認められた。・LAI中止リスクについて、アリピプラゾール(HR:0.53、95%CI:0.35~0.80)とパリペリドン(HR:0.57、95%CI:0.35~0.92)は、フルフェナジン/ハロペリドールと比較し、リスクが有意に低かった。・アリピプラゾールは、リスペリドンと比較し、LAI中止リスクが有意に低かった(HR:0.56、95%CI:0.32~0.98)。

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うつ病や高レベルの不安症状を有する患者に対するボルチオキセチンの最新分析

 うつ病患者の多くは、不安症状を合併している。デンマーク・H. Lundbeck A/SのMichael Adair氏らは、うつ病患者の不安症状の治療に有効であるといわれているボルチオキセチンが、承認されている用量の範囲で有効性および忍容性が認められるかを検討した。その結果、ボルチオキセチンは、前治療で効果不十分であった患者を含むうつ病および高レベルの不安症状を有する患者に対し、有効かつ良好な忍容性を示し、最大の効果が20mg/日で認められたことを報告した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年1月25日号の報告。 うつ病および高レベルの不安症状(ハミルトン不安評価尺度[HAM-A]総スコア20以上)を有する患者を対象に、ボルチオキセチン5~20mg/日の有効性および忍容性を検討するため、4つのランダム化固定用量プラセボ対照試験(842例)からプールされたデータを用いた。前治療で効果不十分であった患者299例において、ボルチオキセチン10~20mg/日とagomelatine 25~50mg/日を比較したランダム化二重盲検試験のデータを個別に分析した。Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)、HAM-A、シーハン障害尺度(SDS)の総スコアのベースラインからの平均変化量を、ボルチオキセチンの投与量別に分析した。 主な結果は以下のとおり。・固定用量試験からプールされた分析では、MADRS、HAM-A、SDSの総スコアの改善に関して、ボルチオキセチン5~20mg/日における用量反応関係が認められた。・ボルチオキセチン20mg/日は、プラセボと比較し、4週目以降の有意な効果が確認された。・前治療で反応が不十分であった患者を対象とした事後分析では、ボルチオキセチン10~20mg/日はagomelatineと比較し、4週目以降のすべてのアウトカムにおいて優れた効果が確認された。・ボルチオキセチンを20mg/日まで増量した場合でも、有害事象の増加は認められなかった。・いずれの研究も短期試験であり、長期的な影響は確認できなかった。

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初発統合失調症患者が抗精神病薬を服薬中断した理由

 統合失調症患者の多くは、初回治療で使用した抗精神病薬の服薬を中止する。初発統合失調症患者における服薬中断の理由については、明らかになっていないことも多い。デンマーク・コペンハーゲン大学病院のAnne Emilie Sturup氏らは、初発統合失調症患者における抗精神病薬治療の服薬中断または継続の理由、それらの個人差、予測因子を特定するため、事後デザインによるプロスペクティブコホート研究を行った。その結果、抗精神病薬の服薬中断の主な理由は副作用であり、継続の主な理由は効果であった。著者らは、抗精神病薬治療の服薬中断および継続の理由を認識することは、統合失調症治療における意思決定の共有、服薬中断する可能性が高い患者の特定、アドヒアランスの向上、安全な治療中止に有用であるとしている。Early Intervention in Psychiatry誌オンライン版2023年1月24日号の報告。初発統合失調症患者215例で服薬中断の理由を報告した患者は76例 対象は、2009~12年にデンマークの精神疾患早期介入チーム(early intervention teams:EIT)が治療を行った初発統合失調症患者。社会人口統計学的および臨床的変数はベースライン時に収集し、抗精神病薬の服薬中断および継続の理由は3.5年間フォローアップし評価した。 初発統合失調症患者における抗精神病薬治療の服薬中断または継続の理由を研究した主な結果は以下のとおり。・初発統合失調症患者215例中、抗精神病薬の服薬中断の理由を報告した患者は76例、継続の理由を報告した患者は139例であった。・主な服薬中断の理由は、「副作用」「以前よりも改善したので、服薬の必要がないと思った」であった。・主な継続の理由は、「陽性症状に対してメリットがあると感じている」「他者から継続するよう言われた」であった。・抗精神病薬を服薬中断した患者は、継続した患者と比較し、次の特徴が認められた。●ベースライン時の年齢が若い●未治療期間が長い●陰性症状が少ない●社会機能が良好●コンプライアンスが低い●対処法に自信がある●使用する抗精神病薬が少ない

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アリピプラゾール長時間作用型注射剤切り替えの有効性

 急性期および慢性期の統合失調症患者を対象に、パリペリドンパルミチン酸エステルの長時間作用型注射剤(LAI)を含む第2世代抗精神病薬から月1回のアリピプラゾールLAIへ切り替えた場合の有効性について、韓国・全南大学校のSung-Wan Kim氏らが検討を行った。その結果、他の抗精神病薬からアリピプラゾールLAIへの切り替え成功率は高く、アリピプラゾールLAIの優れた忍容性と有効性が示唆された。また、精神病理や社会的機能の改善は、罹病期間が短い統合失調症患者においてより顕著に認められ、代謝異常の改善は、慢性期患者でより顕著に認められた。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2023年2月28日号の報告。 統合失調症患者82例を対象に、24週のプロスペクティブ・オープンラベル・フレキシブルドーズ切り替え試験を実施した。陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、個人的・社会的機能遂行度尺度(PSP)、臨床全般印象度(CGI)、主観的ウェルビーイング評価尺度短縮版(SWN-K)、コンピュータ化されたemotional recognition test(ERT)を用いて評価した。対象患者は、5年間の罹病期間に基づいて急性期群と慢性期群に分類した。 主な結果は以下のとおり。・82例中67例(81.7%)が24週間の試験を完了した。・アリピプラゾールLAIに切り替えた後の中止率において、切り替え前の抗精神病薬の種類を含む臨床的特徴による差は認められなかった。・アリピプラゾールLAIに切り替え後、PANSS、PSP、CGI、SWN-K、ERTスコアの有意な改善が認められた。また、代謝パラメータや体重の増加は認められなかった。・急性期群は慢性期群よりも、PANSS、PSP、CGIスコアの改善が有意に高く、慢性期群は急性期群よりも、代謝パラメータの有意な改善が認められた。

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行政・学校・病院が連携して行う疾患啓発~糸魚川ジオパーク頭痛啓発キャンペーン

 頭痛は、一般的な公衆衛生上の問題である。その負荷を軽減するためには、頭痛に関する意識を高め、急性症状の管理や予防可能な薬剤を適切に使用することが求められる。しかし、一般の人々における頭痛に関する意識向上の研究は、これまでほとんど行われていなかった。新潟・糸魚川総合病院の勝木 将人氏らは、2021年8月~2022年6月に、2つの介入による「糸魚川ジオパーク頭痛啓発キャンペーン」をプロスペクティブに実施し、有効性の評価を行った。著者らは、本キャンペーンの実施により一般の人々の頭痛に関する認知率が向上したとし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でほぼすべての住民が集まるワクチン集団接種会場や、学校を基盤とした対面のないオンデマンドe-ラーニングでの疾患啓発活動は、きわめて効果的な方法であると報告している。Headache誌オンライン版2023年1月27日号の報告。 15~64歳の一般の人々を対象に、次の2つの介入を実施した。介入1では、COVID-19ワクチン接種会場で頭痛に関するリーフレットの配布および紙面アンケートを実施。介入2では、学校を通じたオンデマンドe-ラーニングおよびオンライン調査を実施した。これらの介入は、『頭痛の診療ガイドライン2021』に記載されている、一般の人々にとって重要な6つのトピックで構成した。2つの介入のそれぞれの回答は実施の前と後に収集し、キャンペーン前後の6つのトピックの認知度を評価した。 主な結果は以下のとおり。・糸魚川市の生産年齢人口2万458人中6,593人(32.3%)が、2つの介入のいずれかに参加した(介入1:ワクチン接種を受けた6,382人のうち有効回答が得られた4,016人、介入2:高校生1,085人のうち594人と保護者3,699人のうち1,983人を含む2,577人)。・6つのトピックは以下のとおりであった。 Topic1:頭痛による経済損失は大きい Topic2:アブセンティズム(頭痛による欠勤・欠席)よりプレゼンティズム(頭痛によるパフォーマンス低下)のほうが損失は大きい Topic3:頭痛の治療は可能かつ必要 Topic4:月に2回以上の片頭痛があれば受診する Topic5:頭痛の治療は急性期治療薬と予防治療の2本立てである Topic6:薬剤の使用過多による頭痛がある・6つのトピックの認知率は、介入前は6.6(39/594)~40.0%(1,606/4,016)の範囲であったのに対し、介入後は64.1(381/594)~92.6%(1,836/1,983)の範囲へ有意な増加が認められた(すべて、p<0.001)。【介入1(対象:ワクチン接種会場4,016人)】 Topic1:介入前:27%→介入後:70% Topic2:介入前:25%→介入後:72% Topic3:介入前:40%→介入後:84% Topic4:介入前:33%→介入後:80% Topic5:介入前:27%→介入後:75% Topic6:介入前:27%→介入後:72%【介入2(対象:高校生594人)】 Topic1:介入前: 7%→介入後:64% Topic2:介入前:11%→介入後:69% Topic3:介入前:28%→介入後:79% Topic4:介入前:23%→介入後:76% Topic5:介入前:24%→介入後:76% Topic6:介入前:19%→介入後:75%【介入2(対象:保護者1,983人)】 Topic1:介入前: 7%→介入後:80% Topic2:介入前: 8%→介入後:84% Topic3:介入前:35%→介入後:90% Topic4:介入前:32%→介入後:92% Topic5:介入前:24%→介入後:93% Topic6:介入前:34%→介入後:92%

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食物繊維の摂取とうつ病・不安との関係~メタ解析

 食物繊維の摂取とうつ病との関連について、これまでの研究結果には一貫性が認められていない。イラン・テヘラン医科大学のFaezeh Saghafian氏らは、食物繊維の摂取とうつ病および不安症との関連を明らかにするため、メタ解析を実施した。その結果、食物繊維の摂取が増加するほど、成人のうつ病リスクに対し保護的に作用することが示唆された。Nutritional Neuroscience誌2023年2月号の報告。 2021年5月までに公表された研究を、電子データベースよりシステマティックに検索した。食物繊維の摂取とうつ病および不安症との関連を調査した18件の研究(横断研究:12件、コホート研究:5件、ケースコントロール研究:1件)をメタ解析に含めた。うつ病に関する研究は、15件が成人を対象に、3件が青少年を対象に実施されていた。不安症に関する研究は、適格研究が不十分なため、分析には含めなかった。 主な結果は以下のとおり。・食物繊維の総摂取量は、成人のうつ病オッズ比(OR)の10%低下(OR:0.90、95%信頼区間[CI]:0.86~0.95)および青少年のうつ病ORの57%低下(OR:0.43、95%CI:0.32~0.59)と関連していた。・用量反応メタ解析では、成人において食物繊維の総摂取量とうつ病ORとの間に逆線形関係が認められ、食物繊維の総摂取量が5g増加するごとに、うつ病リスクが5%減少することが示唆された(OR:0.95、95%CI:0.94~0.97)。・野菜からの食物線維の摂取(OR:0.73、95%CI:0.66~0.82)、水溶性食物繊維の摂取(OR:0.80、95%CI:0.71~0.91)とうつ病ORとの間に、有意な逆相関の関連が認められた。・穀物および果物からの食物繊維、不溶性食物繊維とうつ病リスク低下との関連は、わずかであった。

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血管性認知症やパーキンソン病認知症と尿酸値との関連~メタ解析

 中国・Shenyang Medical CollegeのQian Li氏らは、尿酸値と血管性認知症(VaD)およびパーキンソン病認知症(PDD)との関連を調査するため、メタ解析を実施した。その結果、尿酸値はPDDとの関連が認められたが、VaDとは認められなかった。著者らは、本研究がVaDやPDDの病態生理に関する知識を強化し、予防や治療戦略の開発促進に役立つことが期待されるとしている。Neurological Sciences誌オンライン版2023年1月24日号の報告。 2022年5月までに公表された関連研究を、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Collaboration Databaseより検索した。プール分析、感度分析、出版バイアスの評価を実施した。すべての分析にSTATA 16を用いた。 主な結果は以下のとおり。・12件の研究より2,097例を分析に含めた。・プール分析では、尿酸値はVaDとの関連は認められなかったが(WMD:-10.99μmol/L、 95%信頼区間[CI]:-48.05~26.07、 p=0.561)、PDDとは関連が認められた(WMD:-25.22μmol/L、95%CI:-43.47~-6.97、p=0.007)。・感度分析および出版バイアスの評価において、統計学的に安定性および信頼性が認められた。

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統合失調症に対する抗精神病薬の治療反応の性差~メタ解析

 オランダ・アムステルダム大学のBram W. C. Storosum氏らは、統合失調症に対する抗精神病薬の治療反応が、性別や閉経状態により影響を受けるかについて、調査を行った。その結果、統合失調症治療において女性のほうが男性よりも抗精神病薬に対する治療反応が得られやすく、この影響は閉経状態やベースライン時の症状重症度(陰性症状)による影響を受けていなかった。Psychiatry Research誌2023年2月号の報告。 統合失調症患者5,231例を対象とした抗精神病薬の短期プラセボ対照登録研究22件のデータを分析した。個々の患者データについて2段階のメタ回帰分析を行い、症状重症度の平均差と治療反応の差(30%超の症状改善)に対する性別および閉経状態の影響を調査した。ベースライン時の症状重症度(陰性症状)で補正した場合としない場合の両方で、分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬による統合失調症治療は、女性において男性よりも、平均的な症状改善効果が高かった。・性別ごとのNNTは、女性で6.9、男性で9.4であった。・治療効果による性差は、閉経前の状態およびベースライン時の症状重症度(陰性症状)の影響を受けなかった。・急性期抗精神病薬治療のエフェクトサイズに対する性別および年齢の影響があるものの、すべてのサブグループにおいて臨床的有効性が認められた。

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子育て世代の日本人女性のうつ症状スクリーニング尺度MDPS-M

 産後うつ病は、出産後の女性にとって重要な問題の1つである。産後うつ病の早期発見と適切な治療には、うつ病リスクの高い女性を迅速かつ簡便に特定することが必要である。大阪大学の竹内 麻里子氏らは、子育て世代の女性の身体症状からうつ症状をスクリーニングする尺度を開発し、検証の結果を報告した。今回、著者らが開発した子育て世代の女性のうつ症状スクリーニング尺度「MDPS-M」は、プライマリケアにおいてうつ病リスクが高い母親の早期の特定に有用かつ簡便な臨床尺度である可能性が示唆されたという。Frontiers in Psychiatry誌2022年12月1日号の報告。 漢方医学の概念に基づいた身体症状に関する17項目の質問(0、1、2点の3段階スコア)からなる、軽症以上のうつ症状をスクリーニングする簡便な自己記入式の尺度Multidimensional Physical Scale(MDPS)を開発した。子育て世代(産後0~6年)の女性1,135人のうち、学習用データとして偏りなくランダムに抽出した785人、検証用データとして350人を対象に解析を行った。うつ病の判定には、ベック抑うつ質問票(BDI-II)を用いた。学習用データの多変量ロジスティック回帰分析を行い、最終モデルを作成した。 主な結果は以下のとおり。・MDPS合計スコア(0~34点)に月経再開の有無(-3、0点)を加えたMDPS for mothers(MDPS-M)を作成した。・うつ病リスク特定のためのROC分析では、MDPS-M(-3~34点)の良好な鑑別が示唆された(AUC:0.74、95%信頼区間[CI]:0.70~0.78)。・MDPS-Mのカットオフ値(9/10)における軽症以上のうつ病検出精度は、感度84.9%、特異度45.7%、陽性的中率36.7%、陰性的中率89.2%であった。・MDPS-Mの外部検証では、開発コホートと同様の分析において良好な鑑別が確認された(AUC:0.74、95%CI:0.68~0.79)。

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幸せになる方法【Dr. 中島の 新・徒然草】(464)

四百六十四の段 幸せになる方法冬の寒さも幾分緩んできたような気がします。出勤前に、車のフロントガラスにお湯をかける頻度も減ってきました。また、コロナ第8波も収まりつつあります。皆で集まってのカンファレンスを再開することにしました。さて、最近よく考えるのは「幸福とは何か、不幸とは何か?」ということです。もちろん絶対的な基準はありません。収入は1つの基準ではありますが、不幸な金持ちは大勢いることでしょう。私が思うには、自分の人生をコントロールできているか否かが1つの指標になるのではないか、ということです。その目で物事を見ると「なるほど!」と思うことが沢山あります。夏休みの初日がなぜ幸せか。それは、自由に使える膨大な時間が目の前に横たわっているからです。逆に、2学期が迫ってくると何故悲しいのか。残り少ない日々を宿題に支配されてしまうからだと思います。どうして貧乏だと不幸なのか。それは、生活のいろいろな場面で経済的制限を受けるからです。空腹を我慢したり、疲れていても徒歩で移動したり。休日に自分の意思で職場に行っても不幸な気がしません。すべての時間を自分が好きに使え、途中で帰るのも勝手だからです。患者さんの急変で深夜休日に呼び出されるのとはまったく違っています。年を取るのがつらいのは、自分の体を自分でコントロールできないからでしょう。夜中に3回もトイレに行くとか、2階に上がるのにエレベーターを使ってしまうとか。若い時には想像すら出来ませんでした。では、どうすれば幸福度を上げることができるのか?1日の生活の中で、自分がコントロールできる部分を増やす、というのが1つの方法ではないかと思います。たとえば部屋の中の物を減らすと幸福感が増すのではないでしょうか。逆に、物が溢れ返ってコントロールできていない状況は、考えただけでも憂鬱になります。また、自分の貯金や借金の量を把握できていなければ、これも辛いですね。宝くじが当たっても「今は忙しいから後にしてくれ!」と言いたくなるかも。知らんけど。ということで、私自身、時間や仕事量をできるだけコントロールしよう、と頑張っております。そうすれば、自分自身の幸福感がアップするのではなかろうかと期待してのことですが。仕事については、溜め込まずにすぐに取り掛かるのが有効な方法かと思います。読者の皆さんはどのようにお考えでしょうか?ということで最後に1句立春に 幸せ何かと 考える

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映画「アバター」【私たちの心はどうやって生まれたの?(進化心理学)】Part 1

今回のキーワード社会脳進化的適応環境(EEA)プレゼント仮説ダンバー数クッキング仮説人間関係の量と質映画「アバター」の舞台は、近未来の地球からやや離れた惑星パンドラ。そこに侵略しようとする地球人と先住民族との戦いを描いています。CGによる実写を超えた大自然の映像美とシンプルなストーリーで、私たちは時間を忘れてその世界観にどっぷり浸かることができます。今回の記事では、この映画に登場する先住民族たち同士のやり取りを通して、私たち人類の心がどうやって生まれたのかという心の起源に迫ります。そして、進化心理学そのものについて解説します。私たちの心とは?主人公は、先住民族ナヴィの森の民の長であるジェイク。もともと人間でしたが、アバターに完全に乗り移ることによって先住民族の一員になり、地球人から村を守ろうとします。しかし、彼だけが裏切り者として地球人のターゲットになってしまっていたため、彼は森の民を守るために自分の家族だけを引き連れて、遠い海の民の村に身を潜めます。ここから、その後の3つのシーンを通して、私たちの心の本質を説明します。(1)助けるか迷う1つ目は、ジェイク一家が海の民の村にやってくるシーン。出迎えた海の民の長トノワリは、他の海の民たちが見守るなか、そして妻ロナルが拒む様子を見せるなか、ジェイクたちを受け入れるか一時迷います。そのわけは、個人的には同じ長として助けたいと思いつつ、助ければ自分の部族が危険にさらされる恐れがあったからでした。(2)気を遣う2つ目は、ジェイクの息子ロークがトノワリの息子アオノンからよそ者として馬鹿にされたことに腹を立てるシーン。ロークはアオノンについ手を出してしまいます。ロークは父親ジェイクから「相手は長の息子だぞ。トラブルを起こすな」と叱られます。ジェイクは海の民たちに気を遣っていたのでした。こうして、ロークはアオノンに渋々謝りに行きます。(3)かばう3つ目は、アオノンがロークを危険な海に無理やり連れ出すシーン。なんと、アオノンはロークを置いてけぼりにして、仕返しをします。ロークは1人で何とか危険を脱して夜遅くに帰ってきます。アオノンが父親トノワリから叱られるなか、ロークは「いや、自分が行きたいって頼んだんだ」とアオノンをかばうのです。不思議に思ったアオノンは「なんでかばったんだ?」とあとで聞きます。すると、ロークは「部族の長の息子の気持ちはよくわかるから」と答えて、2人は仲直りをするのです。このように、助けるか迷ったり、気を遣ったり、かばったりするのは、私たちがどこかで見たことがあるような、よくあるシーンです。彼らは地球とは違う惑星の、人類とは違う生物種族でありながら、その心は私たちとまったく同じように描かれています。この心のあり方とは、常に相手の気持ちを推し量り、周り(集団)とうまくやっていくことです。これは、社会脳と呼ばれています。私たちの心の進化を促した環境とは?この私たちの社会脳は、いつ生まれたのでしょうか? それは、まさにナヴィ族が生きているような部族社会をつくっていた原始の時代であったと考えられています。それは、どんな環境でしょうか? ナヴィ族を通して、その特徴を大きく3つ挙げてみましょう1)。(1)その日暮らしで助け合うナヴィ族の森の民も海の民も他の動物を狩ったり、木の実や海藻を採ったりするなどの狩猟採集生活をしています。しかし、これらの食料は、基本的に蓄えることができません。そのため、誰かの食料が尽きれば、部族の別の誰かの食料を分けてもらいます。1つ目の特徴は、その日暮らしで助け合うことです。周りにある資源は部族全員のもので、所有の概念がありません。人口密度が低いため、資源がなくなれば、部族全員で別の場所に移住します。もちろん、他の部族の縄張りを侵せば、争いに発展します。なお、獲物を捕まえる心理の進化の詳細ついては、ギャンブル脳として関連記事1をご覧ください。(2)みんな顔なじみでわかり合うジェイク一家を出迎えた時に集まった海の民の数は、100人程度でした。そして、ロークが行方不明になった時、トノワリの指示のもと、部族全員がすぐに結束して、みんなで捜索をしていました。部族全員がお互いのことをよく知っており、通じ合っています。2つ目の特徴は、みんな顔なじみでわかり合うことです。そのために、部族の規模はそれぞれの家族や親族を中心としてつながった100人程度の小規模な集団になります。なお、一致団結する心の進化の詳細については、同調の心理として関連記事2をご覧ください。(3)いつも死と隣り合うジェイクはロークに「トラブルを起こすな」と叱りました。しかし、もしもそうしなかったら海の民からひんしゅくを買って追い出されたでしょう。そして、他にどこの部族も入れてくれなければ、それは死を意味します。なぜなら、彼らは集団になって食べ物を分け合い、猛獣から自分や子供たちを守り合って、何とか助け合って生きているからです。また、ロークは危険な海に置いてけぼりにされて、危うくサメのような魚に食べられて死ぬところでした。ジェイクの娘のキリがてんかん発作を起こした時、治療のためにやっていたことは、ロナル(トノワリの妻)の祈祷だけでした。3つ目の特徴は、いつも死と隣り合うことです。仲間外れにされたら死を待つだけです。それだけでなく、そもそも医療が発展していないため、乳幼児の死亡率は高いです。その日暮らしであるため若くして死ぬことも珍しくなく、平均寿命も低いです。だからこそ、人口密度が低いのです。なお、いつも死と隣り合う心の進化の詳細については、不安の心理として関連記事3をご覧ください。私たちの心の進化を促したこのような環境は、進化的適応環境(EEA)と呼ばれています。この映画では、ナヴィ族を通して、実は原始の時代の人類の生活環境をわかりやすく描いています。言い換えれば、ナヴィ族の暮らす森や海は、私たち人類の心の進化を考えるうえで、うってつけのモデル環境であるといえます。次のページへ >>

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映画「アバター」【私たちの心はどうやって生まれたの?(進化心理学)】Part 2

私たちの心が進化したのはなんで原始の時代なの?それでは、私たちの進化的適応環境(EEA)がなぜ原始の時代なのでしょうか? その根拠を、大きく3つ挙げてみましょう。(1)脳の大きさの変化約700万年前に、人類がチンパンジーと共通の祖先から分かれて直立二足歩行をするようになりました。現在のチンパンジーやゴリラの平均脳容量が400~500mL程度であることから、初期の人類の脳の大きさもその程度であったと推定されています。そして、約200~300万年前から徐々に脳容量が増加していき、現在の1,400mLに達していることが遺跡から発掘された人骨の調査からわかっています2)。1つ目の根拠は、脳が大きくなったのが原始の時代だからです。ちなみに、人類が直立二足歩行になった原因として、プレゼント仮説が提唱されています2)。これは、人類が二足歩行をすることで、手が自由になり、得た食料を持ち歩けるようになり、とくにオスがメスにそれをプレゼントしていたという説です。そして、メスはそのお礼としてセックスをして、そのオスとの子供を育てていたという説です。これは、ジェンダーギャップ(性別役割分業)の起源です。この詳細については、関連記事4をご覧ください。(2)群れの大きさの変化それでは、なぜ脳が大きくなったのでしょうか? それは、群れが大きくなったからです。群れが大きくなるということは、それぞれのメンバーを見分けるだけでなく、自分とメンバーとの関係性、さらにはメンバー同士の関係性を覚えておく必要が出てきます。たとえば、誰と誰が親子か、誰と誰が仲良しか(または不仲か)、誰より誰が上か(または下か)など実は膨大です。さらに、群れの一員であり続けるためには、ジェイクやロークのように血縁が近くなくても周り(群れ)と仲を深めて信頼関係を築いていく必要もあります。つまり、量的にも質的にも群れで適応する能力が必要になります。2つ目の根拠は、群れが大きくなったのが原始の時代だからです。実際に、サルの野外実験では、ある子ザルの不安な鳴き声を録音してスピーカーで再生すると、その母親が瞬時にそのスピーカーのほうを見るだけでなく、他のメスザルたちが一斉にその子ザルの母親がどこにいるかを探していたという結果が得られました。まさに、海の民たちが、長のトノワリの動向を見守る状況に重なります。また、霊長類の脳(厳密には脳の中での大脳新皮質の比率)の大きさと群れの大きさには相関関係が見いだされています2)。たとえば、ゴリラは10~15頭、ニホンザルは10~100頭、チンパンジーは20~100頭です。この相関関係から、人間の群れの大きさは、約150人と割り出されています。これは、発見した学者の名前をとって、ダンバー数と呼ばれています。実際に、アフリカなどの文明化されていない未開の氏族(クラン)の平均人数は150人程度であり、一致しています3)。なお、脳が大きくなった原因は、群れが大きくなったことだけでなく、クッキング仮説も提唱されています2)。これは、火が使えるようになったことで、調理ができるようになり、消化に消費していたエネルギーが回るようになったという説です。(3)生活環境の変化それでは、なぜ群れが大きくなったのでしょうか? それは、地殻変動からアフリカの東側の森が草原になっていったからです。草原では、森のように木の実や獲物などが少なくなります。また、逃げ隠れできるところも少なくなるため、とくに子供はすぐに猛獣に狙われます。そのため、ジェイクが家族の絆を大切にしていたように、父親も子育てに参加して家族として一緒に暮らすようになったのでした。そして、家族を核とする血縁集団をどんどん大きくして、食料を分け合い、危険から身を守り合うようになったのでした。3つ目の根拠は、助け合う必要がある生活環境に変わったのが原始の時代だからです。ちなみに、森が草原になっていった時、チンパンジーやゴリラなどの他の霊長類はそこでは生き残れませんでした。そのわけは、彼らは人類のようにプレゼントを介してオスとメスが助け合うベースがもともとなかったからであると考えられます。なお、家族の起源の詳細については、関連記事5をご覧ください。進化心理学とは?私たちの心が進化したのが原始の時代であったのは、危険な草原で生き残り子孫を残すために、群れが大きくなり、結果的に脳が大きくなったからであることがわかりました。その産物が社会脳なのです。言い換えれば、たまたま地殻変動が起きて、危険な草原でも社会脳を進化させ生き残り子孫を残した種が、人類と名乗っているともいえます。逆にいえば、地殻変動が起きなければ、人類は、社会脳を進化させるチャンス(淘汰圧)がなく、現在になっても森の中でチンパンジーやゴリラの脅威を感じながら弱々しく細々と生きていただけかもしれません。このように、進化とは、世代を経ていくうちに、環境の変化に合わせて、遺伝子が変化するプロセスです。そして、進化心理学とは、その進化の視点で、心(脳)の成り立ちをとらえる学問です。なお、進化するには、何万年という長い歳月を必要とします。一方、農耕牧畜生活から始まる現代の文明社会は、たかだか1万数千年しか経っていません。この環境変化に進化が追いつくにはまだ期間が短いのです。つまり、私たちの心の原型は、原始の時代のとくに大きな群れをつくり狩猟採集生活をしていた約300万年の間に形作られたといえます。そして、私たちの心(脳)は、現代の文明社会ではなく、むしろ原始の時代の社会に適応しやすいと結論づけることができます。アバターとは?この映画に登場する地球人たちは、お金のことばかり考え、自然を破壊し、不老不死を手に入れようとしていました。まさに文明社会で生きる私たちの価値観が、皮肉を込めてあえて露悪的に描かれています。そんな文明社会で生きる私たちの人間関係は、SNSなども含めると150人(ダンバー数)をはるかに上回っています。この数の多さは明らかに脳のキャパオーバーです。その労力や時間のコストに限りがあることを考えると、量的に増えれば質的に落ちるのは必然です。つまり、不特定多数の誰かと浅く付き合ってしまう分、特定少数の誰かと深く付き合いにくくなってしまうということです。それは、たとえば、親友や恋人をつくりにくくなることです。そして、損得勘定(スペック)で相手を品定めしてしまうことです。まさに現代人の価値観です。この進化心理学の視点によって、私たちは人付き合いのあり方を見つめ直す必要があることに気付かされます。それは、先ほどにも触れたロークのように、自然とともに素朴に友情や恋愛を育むことでしょう。この映画「アバター」は、スクリーンを通して私たち自身がジェイクやロークたちの目になり心になることで、彼らになりきるだけでなく、原始の時代の私たち人類の心にもなりきることができるでしょう。そして、進化心理学とは、まさに「アバター」の目や心になって、原始社会に思いを馳せ、原始社会の私たちの心の原点に気付いていくことともいえるでしょう。なお、今回は、心(社会脳)の起源に迫りました。これを含む意識の起源については、関連記事6をご覧ください。1)「感情心理学・入門」P75:大平秀樹(編)、有斐閣アルマ、20102)「進化と人間行動」(第2版)P123、P109、P122、P135:長谷川寿一ほか、東京大学出版会、20223)「友達の数は何人?ダンバー数とつながりの進化心理学」P23:ロビン・ダンバー、インターシフト、2011<< 前のページへ■関連記事「カイジ」と「アカギ」(後編)【ギャンブル依存症とギャンブル脳】美女と野獣【実はモラハラしていた!? なぜされるの?どうすれば?(従う心理)】ウォーキングデッド【この世界観だからこそわかる!「コロナ不安」への処方せん】あなたには帰る家がある(後編)【なんで倦怠期は「ある」の?どうすればいいの?】Part 1カレには言えない私のケイカク【結婚をすっ飛ばして子供が欲しい!?そのメリットとリスクは?(生殖戦略)】Part 1インサイド・ヘッド(続編・その3)【意識はなんで「ある」の? だから自分がやったと思うんだ!】Part 1

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