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医師の約3割が肥満度1以上の肥満に該当/医師1,000人アンケート

 わが国にはBMIが25以上の「肥満」と定義される人は、約2,800万人と推計され、BMIが35以上の高度肥満者の増加も報告されている。従来、肥満症の治療では、食事療法、運動療法、認知行動療法、外科的療法が行われてきたが、近年、治療薬も登場したことで「肥満」・「肥満症」にスポットライトが当たっている。一方で、診療する側の医師も、診療や論文作成やカンファレンスなどで座位の時間が多く、運動不足となり、体型も気になるところである。CareNet.comでは、2025年10月15~21日にかけて、会員医師1,000人(うち糖尿病・代謝・内分泌科の医師100人を含む)に「医師の肥満度とその実態」について聞いた。肥満で困ることは服選びや購入場所が制限されること 質問1で「BMIはいくつか(肥満度は『肥満症診療ガイドライン2022』に準拠)」(単回答)」を聞いたところ、18.5以上25未満(普通体重)が61%、25以上30未満(肥満度1度)が25%、18.5未満(低体重)が6%の順で多く、肥満でない医師が約7割を占めた。 質問2で肥満度1以上の医師に「実施している肥満解消法や予防法」(複数回答)を聞いたところ、「食事や飲み物への配慮」が68%、「定期的な運動、意識的な運動」が64%、「何もしていない」が12%の順で多かった。診療科による比較では、糖尿病・代謝・内分泌科以外の医師で「市販薬の使用」が7%と肥満の予防法に差があった。 質問3で肥満度1以上の医師に「肥満の原因は何か」(複数回答)を聞いたところ、「食事や飲料の摂取カロリーが多すぎる」が75%、「運動不足」が66%、「ストレスなどの影響」が26%の順で多かった。なお、診療科による比較では、糖尿病・代謝・内分泌科の医師で「運動不足」を挙げる医師が一番多かった。 質問4で肥満度1以上の医師に「肥満、肥満体型で困ること」(複数回答)を聞いたところ、「衣服のデザインやサイズ、購入場所が限られる」が30%、「仕事や日常生活の動作に支障」が28%、同順位で「周囲の人からの視線」、「運動が困難」、「とくに困ることはない」が24%の順で多かった。また、診療科による比較では、糖尿病・代謝・内分泌科の医師で「運動が困難」、「周囲の人からの視線」の順で多かった。 質問5で「今後、肥満解消や肥満予防法で試してみたいもの」(複数回答)を聞いたところ、「運動療法」が57%、「食事療法」が48%、「とくにない」が23%の順で多かった。また、診療科による比較では、「食事療法」、「運動療法」、「薬物療法」で回答が分かれていた。 質問6で「肥満/肥満症」にまつわるエピソードについて聞いたところ以下のような回答があった。【ダイエット成功のエピソード】 ・カロリーのある飲料水、とくに果糖ブドウ糖の含まれているものは制限するようにしている(50代/呼吸器内科) ・運動を生活の中に取り入れて、実践することで自然に体型維持が今もできている(40代/消化器内科)【ダイエット失敗のエピソード】 ・過去に15kg程度の減量に成功したが、5~6年をかけて20kgリバウンドして太った(50代/麻酔科) ・適度な運動はかえって食事やビールを美味しくし、より太る(60代/耳鼻咽喉科)【肥満/肥満症での課題など】 ・ダイエットのアドバイスが奏功しても、患者さんが必ずリバウンドする。リバウンドをどうするかが、肥満症治療の最大のポイント(60代/病理診断科) ・「フルーツは体に良いので控える必要がない」と思っている患者さんが多い(60代/糖尿病・代謝・内分泌内科)【患者さんへの指導例】 ・ステロイド服薬中の患者さんには、炭水化物の摂取と体重の増加の関係についてよく説明している(60代/内科) ・少し痩せてからウォーキングなどの軽い運動から開始させる。突然激しい運動はさせない(60代/精神科)■参考医師の肥満度とその実態について

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平均気温の変化により誘発される精神疾患は?

 気温変化や緯度勾配といった潜在的な環境要因が精神疾患に及ぼす影響は、これまで十分に研究されていなかった。キプロス大学のSofia Philippou氏らは、地理的緯度と気温が精神疾患の罹患率にどのように関連しているかを調査するため、本プロジェクトを実施した。Brain and Behavior誌2025年10月号の報告。 201ヵ国を対象に、年間平均気温と7つの主要な精神疾患(うつ病、気分変調症、双極症、不安症、摂食障害、自閉スペクトラム症、統合失調症)の年齢調整罹患率(有病率)を分析し、線形回帰分析を実施した。また、これらの相関データがすでに発表されている原著論文によって裏付けられているかどうかを検証するため、系統的レビューも実施した。 主な結果は以下のとおり。・線形回帰分析では、摂食障害、自閉スペクトラム症、統合失調症の3つの精神疾患において、年間平均気温と年齢調整罹患率の間に有意な相関関係が認められた(p<0.0001)。・系統的レビュー分析では、自閉スペクトラム症と統合失調症の罹患率は地理的要因および気候要因の影響を受ける可能性が示唆された。・しかし、摂食障害に関する今回の知見を裏付ける既発表データは確認されなかった。 著者らは「これらの知見は、精神疾患における環境要因、遺伝的要因、社会経済的要因間の複雑な相互作用を浮き彫りにしている。精神疾患の発症機序に関与するいまだに明らかとなっていない疫学的要因を解明するためには、気温と精神疾患の罹患率との関連性について、さらなる研究が必要とされる」とまとめている。

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老いの心、寂しさと怒りの二人三脚【外来で役立つ!認知症Topics】第35回

認知症医療は「知」に偏っていないか?認知症のことを以前は「痴呆」といった。「痴」とは病ダレに「知」と書くことから、これは知性の病を意味している。しかし、この病気には感情や意志・意欲面の症状もみられる。それなのに認知症医療においては、この「知」ばかりが重視され過ぎているのではないかと、筆者は思うようになった。心理学や精神医学の領域では、人間の基本的な精神活動を意味する「知情意」という言葉が使われる。「知」とは「知性や知恵」を、「情」とは「喜怒哀楽などの感情」で、「意」は「意欲や意志」を指す。哲学者カントによれば、この3要素は相互に関係し合っており、それらのバランスを保ち調和させることが、人格形成や人間性の向上をもたらすとされる。この考え方が「知情意」にまとめられている。ところで認知症に関する情報媒体は、主に2つに分けられると思う。まずは本稿もその1つだが、症状や検査、治療法などを扱う医学的な記述である。これは知能とか記憶という「知」を主として扱うから、当事者や家族の「情」や「意」からみた認知症の記載は概して乏しい。もう1つは、『恍惚の人』(有吉 佐和子著)のような文学、『ケアニン』シリーズ、『毎日がアルツハイマー』(関口 祐加監督)のような映画という芸術媒体もある。こうした芸術は当事者や家族の「情」や「意」を描くが、そう多いものではないから、社会一般に浸透するのは難しい。「老い≒寂しさ」という本質筆者は、高齢者や認知症者の臨床活動において、心得るべき根本は「老≒寂しさ」ではないかと思う。この「寂しさ」とは、高齢者が経験する退職、死別、病、老いなどがもたらす活動範囲の狭まりや社会的孤立と捉えられがちだ。しかしその本質は、「相手が期待するほど自分のことを思ってくれていない」と感じることかもしれない。逆に、この寂しさを癒すポイントは、高齢者が「次世代から受け入れられたと感じること」、つまり承認欲求が満たされることだろう。高齢者の二面性:「老の知」と「不機嫌」敬老の日があるように、高齢者は敬うべき対象とされている。敬われる理由は、高齢者には実経験や「老の知」があるからだといわれてきた。たとえば40年前に活躍したジャーナリスト草柳 大蔵氏は、老人の価値を次のようにまとめている。「老人には老人の値打ちがある。成功と失敗の情報を実例として蓄積している。後輩の失敗を温かく見守り、才能を伸ばしてやり、対立や抗争のエネルギーを修復してもっと有効な対象に向けさせることができるのも老人であればこそである」ところが、その裏の面もある。要約すれば「寂しさ」と「怒り・不機嫌」だろう。医師の日野原 重明氏は、75歳頃に次のように述べている1)。「人は老いるにつれ、心の柔軟性がなくなって頑なになり、他との妥協を許さず、気も短くなって、怒りやすくなる。一方、何でもマイペースでしたくなる。人間が老いるまでに平素から自制心と協調心を十分に身につけていない限り、老人は社会や家庭から孤立する」筆者の穿った見方ながら、後期高齢の域に達した日野原氏が、自戒を込めて著された言葉かもしれない。また、宗教評論家のひろ さちや氏は、これに関して、「店で少しでも待たされると腹が立つ」というご自身の経験を踏まえて、次のように述べている2)。「年を取ると欲望(支配欲や性欲等)は小さくなる。しかしたとえば、『他人から大事にされたい』といった老人特有の小さな欲望が常に膨れ上がっている。だから逆に少しでもないがしろにされると、すぐにかっとなる」老人が不機嫌であったり怒りっぽかったりする理由はさまざまだろう。できないことが増える現実を受け入れたくない、ふがいない情けない自分に腹が立っている、などである。筆者自身は、とくに男性の場合、十把一絡げに扱われたと感じたときなど、「『この誇り高き俺』に対するリスペクトが足りない!」と反射的な怒りが炸裂しやすいと見てきた。寂しさと怒りの「悪循環」さて、本稿が注目するのは、「寂しさ」と「怒り」の関係だ。このポイントは、両者が互いに相乗効果を持つことである。逆説的かもしれないが、怒りは心の奥底にある寂しさを、自分にも他人にも隠す「仮面」のようだ。というのは、いつも寂しさを感じている人は、それを恥じたり、満たされない思いに沈んだり、さらに「自分は除け者にされている」と感じている。こうした負の感情を、「怒る」ことで隠すから仮面である。また怒りは、自分に束の間のパワーを感じさせ、征服感をもたらすこともある。そうなれば、刹那であっても、孤独感に伴う孤立無援の気持ちや無力感から救われる。その反面、怒りは、寂しい本人と周囲との間に「壁」を作り、寂しさを増強する。つまり人は寂しさを感じるとき、「自分は世間から軽蔑されていないか?」あるいは「自分は誤解されているのではないか?」と過敏になるものだ。その結果、イライラしやすく、憎まれ口を利き、喧嘩腰にもなる。こうなると他人との間の溝はさらに広がり、寂しい人はその孤独感をより深めてしまう。以上が、寂しさと怒りの相乗効果あるいは悪循環である。問題は、この寂しさや怒りの気持ちを抑えるために、本人はどうするか?そして、われわれはどう対応するか?である。紙面の関係で今回はここで終了とするが、次回につなぐ接点を挙げておく。俳優の山本 學氏は、対談の中で、ご自身の寂しさへの対応法として次のように語っている3)。「歳を重ねて一人暮らしをしていると、急に寂しくなるときがあります。そういう時にはね、思い切って泣く。声を上げておいおいと泣くんですよ。」参考文献1)日野原 重明. 老いの意味するもの 老いのパラダイム(老いの発見2). 岩波書店;1986.2)ひろ さちや. 諸行無常を生きる(角川oneテーマ21). 角川書店;2011.3)山本 學, 朝田 隆. 老いを生ききる 軽度認知障害になった僕がいま考えていること. アスコム;2025.

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第293回 脳の超音波洗浄がマウスで有効

脳の超音波洗浄がマウスで有効スタンフォード大学の研究者らが開発したいわば脳の超音波洗浄法が脳出血マウスで効果を示し1)、近々臨床試験が始まる運びとなっています2,3)。脳脊髄液(CSF)循環の障害は種々の神経疾患の発生と関連します。CSFや細胞間の間質液に散らばったくずの除去が滞ることは神経を傷害し、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷性脳損傷、神経変性疾患などの神経病変や症状に寄与するようです。髄膜リンパ管を薬で後押しして神経毒のくずの除去を促す治療の効果がマウス実験で示されていますが、頭蓋内の水はけをよくする薬物治療はいまだ承認されていません。くも膜下出血(SAH)のCSF排出や脳内出血(ICH)の血腫除去の手術は有効ですが、対象は最も重症な患者に限られます。薬も外科処置も不要の集束超音波(FUS)が脳の神経炎症を抑制するなどの有益な効果をもたらしうることが知られています。たとえば低強度のFUS法がアルツハイマー病を模すマウスの記憶を改善しうること4)やCSF循環を促すことが示されています。それらの先立つ研究を踏まえると、低強度FUSが中枢神経系(CNS)の病原性成分を除去して病気を治す効果を担うかもしれません。そこでスタンフォード大学のRaag Airan氏らは神経を害するくず(neurotoxic debris)の除去を促すことに特化した非侵襲性の低強度FUS法を開発し、出血性脳卒中を模すマウスでその効果を確かめました。尾から採取した血液を脳の右側の線条体に注入することでマウス一揃いを出血性脳卒中のようにし、その後3日間にそれらの半数の頭蓋には開発した方法で超音波を照射し、残り半数は超音波なしの偽治療を受けました。超音波は毎日10分間照射されました。続いて四つ角の容器にそれらのマウスを入れて感覚運動の正常さが検査されました5)。正常なマウスは角で向きを変えるときに使う脚が左右でおよそ偏りがなく、左脚を使う割合が右脚を使う割合とほぼ同じ51%でした。一方、超音波照射なしの出血性脳卒中マウスが角で向きを変えるときに左脚を使った割合は正常なマウスに比べてほど遠い27%でした。しかし超音波が頭蓋に毎日照射された出血性脳卒中マウスのその割合は正常マウスにより近い39%であり、振る舞いの改善が見て取れました。超音波照射マウスは身体機能もより保っており、非照射マウスに比べて鉄棒をより強く握れました。さらには死を防ぐ効果もあるらしく、超音波なしのマウスは脳への血の注入から1週間におよそ半数が絶命したのに対して、超音波照射マウスの死は5分の1ほどで済みました。すなわち1日わずか10分ばかりの超音波照射3回で生存率が30%ほども改善しました。安楽死させたマウスの脳組織を解析したところ、超音波は脳の免疫担当細胞のマイクログリアの圧感知タンパク質を活性化し、場違いな赤血球がより貪食されて取り除かれていました。加えて、脳のCSF循環をよくし、首のリンパ節へと不要な細胞が捨てられるのを促しました。開発された低強度FUS法は脳出血以外の脳病変も治療できそうです。超音波がだいぶ大ぶりの赤血球を脳から除去するのを促すことが確かなら、パーキンソン病やアルツハイマー病などに関係するより小ぶりなタウなどの有毒タンパク質も脳から除去できそうだとAiran氏は述べています。話が早いことにAiran氏らの低強度FUS法は米国FDAの安全性要件を満たしており、臨床試験での検討に進むことが可能です。研究チームは人が被れるヘルメット型装置を作っており、一刻を争う出血性脳卒中ではなく、まずはアルツハイマー病患者を募って試験を実施する予定です5)。スタンフォード大学の先週11日のニュースには早くも向こう数ヵ月中に臨床試験が始まるとの見通しが記されています2)。 参考 1) Azadian MM, et al. Nat Biotechnol. 2025 Nov 10. [Epub ahead of print] 2) A new ultrasound technique could help aging and injured brains / Stanford University 3) Preclinical Research: Focused Ultrasound to Noninvasively Clear Debris from the Brain / Focused Ultrasound Foundation 4) Leinenga G, et al. Mol Psychiatry. 2024;29:2408-2423. 5) Ultrasound may boost survival after a stroke by clearing brain debris / NewScientist

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睡眠障害のタイプ別、推奨される不眠症治療薬

 不眠症治療には、デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)、ベンゾジアゼピン系薬剤(BZD)、Z薬、メラトニン受容体作動薬などの薬剤が用いられるが、これらの薬剤の有効性と安全性に関する包括的な比較は、依然として十分に行われていない。中国・長春中医薬大学のHui Liu氏らは、不眠症治療薬の有効性と安全性のプロファイルを調査し、特定の交絡因子を調整して得られた「time window」に基づき、不眠症のタイプに応じた臨床アルゴリズムを確立するため、本研究を実施した。Sleep Medicine誌オンライン版2025年10月10日号の報告。 2025年4月15日までに公表された関連するランダム化比較試験(RCT)を、PubMed、Embase、Scopus、Cochrane Library、Web of Science、ClinicalTrials.govより検索した。中途覚醒時間(WASO)、持続睡眠潜時(LPS)、総睡眠時間(TST)、睡眠効率(SE)などの連続変量について、フォローアップ期間と年齢で調整したベイジアンネットワークメタ回帰(NMR)分析によるペアワイズ比較を行い、RStudio 4.4.2を用いて標準平均差(SMD)を算出した。ファーマコビジランス(PV)は米国食品医薬品局の有害事象報告システム(FAERS)データベースを活用して調査し、二値変数および順序変数についてペアワイズ比較を行い、STATA 18.0 MPを用いて、オッズ比(OR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・最終解析には、10種類の治療法を評価した合計15件(2,408例)の研究を含めた。・WASOに関して、プラセボ群と比較して、有意に優れていた薬剤は次のとおりであった。【dimdazenil:2.5mg/日】SMD=-0.388、95%信頼区間(CI):-0.608~-0.166【レンボレキサント:10mg/日】SMD=-0.624、95%CI:-0.894~-0.355【レンボレキサント:5mg/日】SMD=-0.612、95%CI:-0.88~-0.342【ダリドレキサント:25mg/日】SMD=-0.957、95%CI:-1.436~-0.479【メラトニン:6mg/日】SMD=-0.741、95%CI:-1.423~-0.044【ゾルピデム:10mg/日】SMD=-0.348、95%CI:-0.61~-0.068【doxepin:3mg/日】SMD=-0.497、95%CI:-0.713~-0.282・これらの治療法の中で、レンボレキサント10mg/日、レンボレキサント5mg/日、ダリドレキサント25mg/日、メラトニン6mg/日、doxepin 3mg/日は同等の効果を示した。・しかし、dimdazenil 2.5mg/日(SMD=0.568、95%CI:0.046~1.096)およびゾルピデム10mg/日(SMD=0.608、95%CI:0.074~1.171)は、ダリドレキサント25mg/日よりも有意に劣っていた。・フォローアップ期間で調整後においても、メラトニン6mg/日(SMD=-0.727、95%CI:-1.48~0.01)のプラセボに対する有意な優位性が失われたことを除いて、未調整解析の結果と同様であった。・しかし、メラトニン6mg/日は、10~40週目にかけて対照群と比較し、有意な優位性を示す「time window」を示した。・年齢で調整後、dimdazenil 2.5mg/日(SMD=-0.355、95%CI:-0.652~-0.1)、レンボレキサント10mg/日(SMD=-0.508、95%CI:-0.9~-0.114)、ゾルピデム10mg/日(SMD=-0.526、95%CI:-0.84~-0.158)はプラセボに対して有意な優位性を示した。・安全性に関して、神経系障害は、スボレキサント(IC025=0.212、95%CI:1.214~1.334)、レンボレキサント(IC025=0.221、95%CI:1.236~1.567)、ダリドレキサント(IC025=0.205、95%CI:1.21~1.427)、doxepin(IC025=0.066、95%CI:1.091~1.411)で安全性のシグナルが検出された。・呼吸困難については、エスゾピクロン(OR:0.556~0.669)は、ダリドレキサント、メラトニン、ゾルピデムよりも有意に低かった。一方、メラトニン(OR=1.568、95%CI:1.192~2.061、p=0.001)およびゾルピデム(OR=1.302、95%CI:1.026~1.653、p=0.03)は、スボレキサントよりも有意に高かった。・ダリドレキサントによる重度の呼吸困難の患者の割合(OR=0.256、95%CI:0.096~0.678、p=0.006)は、スボレキサントおよびレンボレキサントよりも有意に低かった。・有害事象の転帰については、zaleplon(OR=9.888、95%CI:1.124~86.944、p=0.039)は、ダリドレキサントよりも重度の呼吸困難に対する影響が有意に高かった。 著者らは「不眠症の薬剤選択は、不眠症のタイプと薬剤の安全性に基づいて行うべきである」とし、「総合的に有効性のエフェクトサイズ、time window(フォローアップ期間、年齢、不眠症のタイプ)、PV値、重篤な有害事象の発生率などを考慮すると、中途覚醒および睡眠不足を特徴とする不眠症には、ダリドレキサント25mg/日、入眠障害には、レンボレキサント10mg/日またはゾルピデム10mg/日、全体的な睡眠効率の低下には、レンボレキサントの使用が推奨される」としている。これらの知見を検証するためには、さらなる直接比較臨床試験が必要とされるとまとめている。

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大規模災害時の心理的支援、非精神科医ができること【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第10回

大規模災害時の心理的支援、非精神科医ができること地震の後の津波で自宅が流され、ご家族を亡くされた避難者が、食事も取らず憔悴しきっています。「私も一緒に死にたかった。誰とも話したくない」と訴えている時、避難所を管理する医師として、何ができるでしょうか?大規模災害時の医療支援では、身体的な疾患への治療が優先されがちですが、被災者が抱える精神的な苦痛も決して見過ごすことはできません。避難所には「死」の情報があふれ、家族や住居を失った人々は、急性ストレス反応、不眠、抑うつなど多彩な心理的症状を呈します。精神科専門医が診察できれば理想的ですが、急性期には非精神科医が心理的ケアを担わざるを得ない場面が少なくありません。本稿では岡山大学病院精神科神経科の協力を得て、「専門家でなくともできるアプローチ」を概説します。特殊な技法より「寄り添う姿勢」災害直後の被災者は強い不安と混乱の中にあり、見知らぬ医療者に心を開くことは容易ではありません。落ち着いた声掛け、丁寧な自己紹介、プライバシーの尊重といった基本的な配慮は大前提です。そのうえで、医師としては「診断」よりも「寄り添い」を重視します。すぐに励ましたり「頑張って」と声を掛けるのではなく、まずは話を聴く姿勢が重要です。「大切な方を亡くされて本当につらいですね」「そのお気持ちは自然なことです」と、感情を否定せず受け止める言葉を心掛けましょう。災害後の心理的反応は時間とともに変化し、約75%は自然回復が期待できます1)。傾聴と共感は非精神科医でも実践可能であり、感情を言語化して受け止めるだけでも、被災者の気持ちは整理されやすいとされています。安全の確保「死にたい」という発言は軽視せず、真剣に受け止める必要があります。一人で抱え込まず、看護師・ボランティア・行政職員などチームで対応し、記録を残して支援を引き継ぎましょう。まず優先すべきは、ご本人の安全と安心の確保です。被災者を一人にせず、落ち着くまで信頼できる人が付き添い、孤立を防ぎます。また、刃物や紐など危険物が周囲にないか確認することも忘れないようにしましょう。身体と精神の休息環境の整備生活リズムの安定は、心理的な安定に直結します。食事・睡眠・休息の確保は心身の回復に不可欠です2)。とくに睡眠障害への対応は重要であり、静かな環境、カフェイン制限、朝の光を浴びることなどの生活指導が有効です。さらに、社会的つながりを整えることも大切です。避難所での役割を持つことや住民同士の交流は、自己肯定感を回復させます。これらは集団精神療法的な効果を持ち、PFA(Psychological First Aid)の「見る」「聞く」「つなぐ」の考え方にも通じます3)。限界を意識し、医療従事者のメンタルヘルスも確保非精神科医の役割は「初期対応」と「つなぎ」です。専門的介入が必要と判断した場合は、速やかに地域の精神保健福祉センターや保健所に連絡しましょう。災害派遣精神医療チーム(DPAT)が活動していれば、専門的な支援や処置を行ってくれます。支援に当たる医療従事者自身も、同僚の喪失や過重労働、燃え尽き、自責感といった心理的問題を抱えることがあります。「自分は大丈夫」と考える人は多いですが、セルフケアには限界があるため、チームでのケアが不可欠です4)。業務ローテーションの導入、役割分担の明確化、ストレスチェックや相談体制の整備、被災現場でのシミュレーション、業務の意義付けなど、組織として体制を整えることが重要です。避難所では、突然の喪失や過酷な環境により、強い悲嘆や自殺念慮を訴える人が現れることがあります。非精神科医による対応には限界がありますが、専門医がすぐに介入できない状況でも、避難所を管理する医師にできることは多くあります。基本的な心理的ケアを理解し、寄り添い、安全を確保し、生活リズムを整えること。それだけでも被災者の重症化を防ぎ、自然回復を促進する大きな支えとなります。被災者に対して意識すべきポイント安全確保・安心感の提供声掛け、自己紹介、プライバシーの確保など傾聴と共感感情の言語化、共感の声掛けなど社会的つながりの整備他者との交流、役割の付与などその他食事、睡眠、休息の確保、リラクゼーションの紹介など 1) Norris FH, et al. Looking for resilience: understanding the longitudinal trajectories of responses to stress. Soc Sci Med. 2009;68:2190- 2198. 2) Liang L, et al. Everyday life experiences for evaluating post-traumatic stress disorder symptoms. Eur J Psychotraumatol. 2023;14:2238584. 3) 世界保健機関、戦争トラウマ財団、ワールド・ビジョン・インターナショナル. 心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド:PFA)フィールド・ガイド. (2011)世界保健機関:ジュネーブ. (訳:国立精神・神経医療研究センター、ケア・宮城、公益財団法人プラン・ジャパン, 2012). 4) Brooks SK, et al. Social and occupational factors associated with psychological distress and disorder among disaster responders: a systematic review. BMC Psychol. 2016;4:18.

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がん患者のメンタル問題、うつ病と不安障害で発症期に差

 がん患者におけるうつ病と不安障害の発症率と時間的傾向を明らかにした研究結果が、International Journal of Cancer誌オンライン版2025年8月29日号に発表された。九州大学の川口 健悟氏らは日本の14の自治体から収集された診療報酬請求データを用いて、がん診断後、最大24ヵ月間の追跡期間中にうつ病と不安障害を発症した例について調査した。 2018年4月~2021年3月に新たにがんと診断された2万2,863例を対象とした。粗発症率を算出し、ポアソン回帰分析を用いて月別発症率と時間的傾向を可視化した。全患者を対象とした分析と、性別、年齢、治療法、がんの種類別の分析が行われた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病の全体的な粗発症率は1,000人月当たり3.36、不安障害は同3.11であることが明らかになった。・うつ病と不安障害ではピークを迎える時期が異なっていた。うつ病の発症はがん診断後2ヵ月頃にピークを迎え、不安障害は診断された月にピークを迎えた。・女性や化学療法を受けている患者では、うつ病と不安障害の両方で発症率が高いことが示された。がんの種類別では、膵臓がん患者が両疾患において最も高い発症率を示した。 研究者らは「うつ病と不安障害はがん治療への遵守率、生活の質、生存率などに悪影響を及ぼすことが知られているが、これらの発症時期を特定することで、より効果的な介入時期を計画できる可能性がある。とくに、不安障害は診断直後に、うつ病は診断から2ヵ月後頃に注意が必要であることが示された。また、女性患者、化学療法を受ける患者、膵臓がん患者などのハイリスク群に対しては、より積極的なメンタルヘルスのスクリーニングとサポートが必要かもしれない。今後は、これらの知見に基づいたハイリスク期間における的を絞った介入プログラムの開発と評価が期待される」とした。

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アルツハイマー病に伴うアジテーションを軽減する修正可能な要因は

 アルツハイマー病患者の興奮症状に影響を与える介護者、環境、個々の因子を包括的に評価し、修正可能な因子を特定するため、中国・上海交通大学のXinyi Qian氏らは、本研究を実施した。Dementia and Geriatric Cognitive Disorders誌オンライン版2025年9月22日号の報告。 対象は、2022年10月〜2023年6月に上海精神衛生センターより募集した、参加者220例(アルツハイマー病患者110例とその介護者)。対象患者から、人口統計学的情報、生活習慣、病歴、ミニメンタルステート検査(MMSE)や老年期うつ病評価尺度(GDS)などの神経心理学的検査のデータを収集した。介護者から、Neuropsychiatric Inventory Questionnaire(NPI)、環境要因に関する質問票、ハミルトンうつ病評価尺度およびハミルトン不安評価尺度などの感情状態の評価に関するデータを収集した。アジテーション症状の重症度評価には、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)を用いた。グループ間の差および潜在的な要因と興奮症状との関連性についても分析した。 主な結果は以下のとおり。・アルツハイマー病患者110例のうち、アジテーション症状を示した患者は56.36%であった。・アジテーション症状を有する患者は、男性患者が多い(p=0.012)、女性介護者が多い(p=0.003)、中庭や庭園が見える部屋へのアクセスが少ない(p=0.007)、MMSEスコアが低い(p=0.005)、GDSスコアが低い(p=0.012)といった特徴が認められた。・変数調整後、アジテーション症状に対する保護因子として、中庭や庭園が見える部屋へのアクセス(オッズ比[OR]=0.256、p=0.042)、男性介護者(OR=0.246、p=0.005)、MMSEスコアが高い(OR=0.194、p=0.007)であることが示唆された。・男性介護者の存在は、アジテーション症状の発生率の低下との関連が認められた。 著者らは「生活環境の改善、男性介護者の増加、介護者支援の強化、早期認知機能介入は、アルツハイマー病に伴うアジテーションを軽減する可能性がある」と結論付けている。

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頭痛は妊娠計画に影響を及ぼすのか?

 頭痛は、生殖年齢の人にとって社会経済的な負担となる一般的な神経疾患である。しかし、妊娠計画への影響についてはほとんど知られていない。埼玉医科大学の勝木 将人氏らは、日本における学齢期の子供を持つ保護者を対象に、頭痛の特徴と妊娠計画との関連性を調査した。The Journal of Headache and Pain誌2025年7月4日号の報告。 2024年に新潟県燕市の学校に通う生徒の保護者を対象に、学校を拠点としたオンライン調査をプロスペクティブコホートに実施した。調査項目には、年齢、性別、頭痛の特徴、急性期治療薬および予防薬の使用状況、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)、1ヵ月当たりの急性期治療薬の使用日数(AMD)、頭痛影響テスト(HIT-6)、Migraine Interictal Burden Scale(MIBS-4)、子供の数を含めた。また、「頭痛のために妊娠を避けているまたは避けたことがありますか」という質問を通して、頭痛が妊娠計画に及ぼす影響についても調査した。この質問に対し「はい」と回答した人は、妊娠回避群と定義された。 主な結果は以下のとおり。・5,227世帯のうち1,127世帯(21.6%)から回答が得られ、そのうち頭痛を有する保護者からの回答599件を分析した。・回答者の年齢中央値は43歳(第1四分位数~第3四分位数:40~48歳)、562例(93.8%)が女性であった。・回答者は、MHD中央値が3日(第1四分位数~第3四分位数:1~4日)、AMD中央値が3日(1~6)、HIT-6中央値が60(58~68)、MIBS-4中央値が4(2~8)であった。・50例(8.3%)が予防薬を使用しており、492例(82.1%)が頭痛発作時に急性期治療薬を使用していると回答した。・子供の数の中央値は2人(第1四分位数~第3四分位数:2~2)。・女性回答者562例のうち、22例(3.9%)が、頭痛のために妊娠を避けている、または避けていたと回答した。・妊娠回避群では、HIT-6スコア(中央値:58[第1四分位数~第3四分位数:53~64]vs.63[59~66]、p=0.033)、MIBS-4スコア(4[2~7]vs.6[4~7]、p=0.012)が有意に高かった。・多変量解析では、妊娠回避群は、高齢(オッズ比[OR]:1.16、95%信頼区間[CI]:1.05~1.29、p=0.004)、頭痛持続時間の短さ(OR:0.91、95%CI:0.85~0.98、p=0.016)、MHDの多さ(OR:1.08、95%CI:1.01~1.16、p=0.031)、悪心または嘔吐(OR:6.11、95%CI:1.46~25.60、p=0.013)、音過敏(OR:6.40、95%CI:1.71~23.99、p=0.006)との有意な関連が認められた。・妊娠回避群では、妊娠中、育児、薬剤による潜在的リスクに関する懸念がより多かった。 著者らは「頭痛のために妊娠を避けているまたは避けたことがある女性は、一部であった。しかし、このような女性は、発作時および発作間欠期共に重度の頭痛負担を抱えており、頭痛疾患が妊娠計画に悪影響を及ぼしていると感じていた」とまとめている。

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第36回 1日5,000歩で認知機能の低下が遅れる可能性、「歩行」と「タウ」の意外な関係

「認知症予防のために運動が良い」ということは、多くの人が耳にしたことがあるでしょう。とくにアルツハイマー病のリスク要因のうち、運動不足は自らの力で改善できる(修正可能な)重要な要素の一つとされています。しかし、「具体的にどれくらい歩けばいいのか?」「運動が脳の中で一体何をしているのか?」という核心的な部分は、これまでハッキリとはわかっていませんでした。 この疑問に対し、一つの答えを示す研究が、医学誌Nature Medicine誌に発表されました1)。この研究は、従来の曖昧な自己申告による運動量ではなく、「歩数計」で客観的に測定した歩数と、最新の脳画像診断(PET検査)を組み合わせています。その結果、アルツハイマー病の進行を遅らせるために必要な「歩数の目安」と、運動が脳を守る「メカニズム」が、具体的にみえてきました。脳に「アミロイド」が溜まった人ほど、歩く効果は絶大この研究は、ハーバード大学加齢脳研究に参加した、認知機能が正常な296人の高齢者(50~90歳)を対象に行われました。参加者は研究開始時に歩数計を7日間装着し、1日の平均歩数を測定されました。その後、最大14年間にわたり、毎年認知機能テストを受け、定期的に脳のPETスキャンでアルツハイマー病の原因物質とされる「アミロイドβ(Aβ)」と「タウタンパク質」の蓄積量を追跡しました。そして、分析の結果、興味深い事実が判明しました。それは、「歩く」ことによる認知機能低下の抑制効果は、研究開始時点ですでに脳内にAβが溜まっていた人(つまり、アルツハイマー病の初期段階)においてのみ、顕著にみられたのです。脳がきれいな状態(Aβが溜まっていない)の人では、歩数と将来の認知機能低下との間に明確な関連は見られませんでした。つまり、「歩く」という行為は、すでに病気のリスクを抱えている人にとって、認知症の発症を遅らせる強力な「防御因子」として働いていたのです。研究報告によると、Aβが溜まっている人が3,001~5,000歩程度歩くだけでも、座りがちな人(3,000歩以下)に比べて認知機能の低下が平均で約3年遅くなり、5,001~7,500歩歩く人では、低下が平均で約7年も遅くなる可能性が示されました。歩行がブレーキをかけるのは「タウ」の蓄積では、なぜ歩くことが認知機能の低下を遅らせるのでしょうか? 多くの人が「運動がAβの蓄積を減らすのではないか」と考えるかもしれません。しかし、今回の研究結果で、歩数(身体活動)は、Aβの蓄積量とは無関係であることが示されました。よく歩く人でも、歩かない人でも、脳内のAβは同じように蓄積し続けたのです。では、何が違ったのか? それは「タウタンパク質」でした。Aβが溜まっている人において、よく歩く人ほど、タウタンパク質が脳に蓄積するスピードが有意に遅かったのです。アルツハイマー病は「Aβが引き金となり、タウが実行犯となって神経細胞を壊す」という流れで進行すると考えられています。今回の研究は、Aβという「引き金」がすでに引かれてしまっている人でも、「歩く」ことによって「タウ」という実行犯の暴走にブレーキをかけられる可能性を示したのです。そして、この「タウの蓄積を遅らせる効果」こそが、認知機能の低下を遅らせる主な理由であることも示されました。目標は1万歩でなくて良いこの研究が示すもう一つの重要なメッセージは、必要な歩数の目標値です。健康のために「1日1万歩」という目標がよく掲げられますが、高齢者にとってこれはかなりハードルの高い目標です。しかし、今回の研究では、認知機能の低下やタウの蓄積を遅らせる効果は、1日の歩数が「5,001~7,500歩」の範囲で頭打ち(プラトー)になることが示されました。それ以上、たとえば1万歩歩いても、追加の効果はあまりみられなかったのです。さらに言えば、最も活動量が少ない「非活動的」なグループ(1日3,000歩以下)と比較した場合、その次の「低活動」グループ(1日3,001~5,000歩)でも、認知機能低下の速度は有意に遅くなっていました。この結果は、座りがちな生活を送っている高齢者にとって、「まずは5,000歩を目指す」という、より現実的で達成可能な目標が、認知症予防の観点からも重要であることを示しています。研究の限界と今後の課題この研究は強力なデータを提供するものですが、いくつかの限界点も理解しておく必要があります。第一に、これは「観察研究」であり、因果関係を完全に証明するものではありません。「歩くからタウが減った」のではなく、「タウが溜まり始めている人は、症状に出ないまでも活動性が低下し、結果的に歩数が減った」(逆の因果関係)という可能性を完全には否定できません。ただし、研究チームは、研究開始時点で認知機能に差がなかったことや、さまざまな統計的調整を行うことで、その可能性は低いとしています。第二に、歩数は研究開始時点でのみ測定されており、長期間の活動量の変化は追跡されていません。また、歩数計では水泳やサイクリング、筋力トレーニングといった「歩行以外」の運動や、運動の「強度」は測定できていません。第三に、研究参加者は主に高学歴の白人であり、この結果がより多様な人種や社会的背景を持つ人々にも当てはまるかどうかは、さらなる検証が必要です。とはいえ、これらの限界を考慮しても、客観的な歩数計のデータと長期的な脳のPET検査を組み合わせて、「適度な身体活動(1日5,000歩程度)が、Aβリスクを持つ人のタウ蓄積を遅らせ、認知機能低下を抑制する」という具体的なメカニズムを示唆した意義は大きいと思います。「Aβが陽性の座りがちな人」を対象に運動介入を行うことの重要性を示す、力強いエビデンスとなるでしょう。 参考文献・参考サイト 1) Yau WYW, et al. Physical activity as a modifiable risk factor in preclinical Alzheimer’s disease. Nat Med. 2025 Nov 3. [Epub ahead of print]

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水分摂取量が日本人の認知症リスクに及ぼす影響

 適切な水分摂取は、高齢者の認知機能の維持に不可欠である。しかし、水分摂取量の促進を推奨する前に、解決しなければならない課題が残存している。まず、水分摂取量と認知機能の改善との関係は線形であるのか、そしてもう1つは、この関連性を媒介する根本的なメカニズムは何かという点である。これらの課題を解決するため、北海道・北斗病院の保子 英之氏らは、日本人高齢者を対象に、水分摂取量が認知症リスクに及ぼす影響を検討した。PloS One誌2025年10月6日号の報告。 対象は、高齢者向け介護施設に入所し、看護を受けている日本人高齢者33例。水分摂取量は、日常的な臨床診療の一環として記録した。認知機能は、入所期間中にミニメンタルステート検査日本語版(MMSE-J)を用いて2回評価した。さらに、超音波検査を用いて左右の総頸動脈の血流を測定し、約82.6±14.9日の間隔で評価した。除脂肪体重(LBM)当たりの水分摂取量、MMSE-Jスコアの変化、超音波検査パラメーター間の関係は、ノンパラメトリックブートストラップ法を用いたスピアマンの線形相関分析により解析した。 主な結果は以下のとおり。・相関分析の結果、1日当たりの水分摂取量が42mL/LBM(kg)未満の場合、水分摂取量とMMSE-Jスコア改善との間に正の線形相関が認められた(p[FDR]=0.012)。・さらに、水分摂取量は右総頸動脈の抵抗指数と負の相関が認められ(p[FDR]=0.046)、脳血行動態の変化が示唆された。 本研究の主な限界として、臨床上の制約により、施設入所前の水分摂取量や水分状態を評価できなかったこと、観察研究であるため、水分摂取量、認知機能の変化、脳血流パラメーター間の因果関係を推論できないことが挙げられる。 著者らは「適度な水分摂取は、認知機能改善と線形の関連が認められており、この効果は、脳血行動態により媒介される可能性が示唆された」としている。

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摂食障害を誘発する9つの薬剤を特定

 摂食障害の誘発因子としての薬剤の影響は、心理社会的影響に比べ、十分に認識されていないのが現状である。中国・南昌大学のLiyun Zheng氏らは、米国食品医薬品局の有害事象報告システム(FAERS)データベースを用いて、摂食障害と関連する可能性のある薬剤を特定するため、本研究を実施した。Eating Behaviors誌2025年12月号の報告。 2004年1月~2024年12月にFAERSに報告された摂食障害に関連するデータを抽出した。不均衡なシグナルを検出するために報告オッズ比(ROR)を算出し、多重比較の調整にはフィッシャーの正確確率検定とボンフェローニ補正を適用した。100件以上の報告があり、有意な正のシグナル(RORの95%信頼区間下限値が1超、調整済みp値が0.01未満)を示した薬剤をLASSO回帰分析の対象とした。年齢、性別、報告者タイプで調整したロジスティック回帰分析を用いて、誘発因子となる薬剤を特定した。 主な結果は以下のとおり。・2万145件の報告のうち、女性の割合は62.7%であり、年齢中央値は59歳(四分位範囲:42~71歳)であった。・30種類の薬剤において有意な正のシグナルが認められた。・LASSO回帰分析とロジスティック回帰分析により、オクトレオチド、ribociclib、スニチニブ、リバスチグミン、エベロリムス、クエチアピン、パルボシクリブ、エソメプラゾール、プレガバリンを含む9種類の薬剤が潜在的な誘発因子として特定された。 著者らは「これらの薬剤は、とくに中高年層において、潜在的な摂食障害の誘発因子となる可能性が高かった。臨床医は、食欲や体重に影響を与える薬剤、乱用される可能性のある薬剤について、とくに摂食障害患者や高リスク集団においては、有害事象を防ぐためにも注意深くモニタリングする必要がある」と結論付けている。

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統合失調症のステージ別抗精神病薬治療戦略、どう使い分けるべきか

 スイス・ジュネーブ大学のMarco De Pieri氏は、統合失調症における抗精神病薬の戦略的および戦術的な使用について、現在の使用慣行に関する考察を報告した。Discover Mental Health誌2025年9月30日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・抗精神病薬は、統合失調症治療においてきわめて重要なツールであり、幻覚、妄想、思考障害などの精神症状を軽減する。・抗精神病薬は、錐体外路症状や過鎮静を引き起こす可能性があり、長期使用を困難にする。その一方で、急性期の管理には必要不可欠である。・抗精神病薬によるメタボリックシンドロームは、平均寿命短縮の主な因子であるが、短期治療においては、その懸念は最小限である。・抗精神病薬の有効性に関する研究結果はさまざまであり、試行錯誤により使用されている。・メタ解析では、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、amisulprideは、急性期において有効であり、オランザピンやハロペリドールは、統合失調症に伴う興奮状態に有効であることが示唆されている。・経験的な観察では、オランザピンやハロペリドールのような高力価の抗精神病薬は、急性期においてより効果的であり、zuclopenthixolも鎮静作用の点で有用であることが示唆されている。・ブレクスピプラゾール、アリピプラゾール、ルラシドン、低用量amisulpride、cariprazineは、良好な副作用プロファイルを有し、陰性症状に対して有効である可能性が示唆されている。 統合失調症を再発寛解型の疾患と捉え、急性期と維持期で異なる薬物療法アプローチが必要であると著者は考えている。「初期段階では、症状を迅速にコントロールするため、高用量、高力価、増量しやすい抗精神病薬(例:ハロペリドール、オランザピン、リスペリドン、高用量amisulpride、zuclopenthixol)を使用すべきであり、これを『戦術的』抗精神病薬治療と定義し、急性期症状が落ち着いたら、副作用(メタボリックシンドローム、錐体外路症状、高プロラクチン血症など)リスクが少なく、陰性症状や社会機能に対する効果が期待できる薬剤(例:ブレクスピプラゾール、アリピプラゾール、ルラシドン、低用量amisulpride、cariprazine)に徐々に切り替え、長期的に継続すべきであり、これを『戦略的』抗精神病薬治療と定義できる」としている。このアプローチは、これまでの経験的な観察結果と一致しており、病期に応じた抗精神病薬の使用を通して、統合失調症治療をさらに改善することを目的としている。本アプローチの有効性を検証するためには、さらなる研究が求められる。

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帯状疱疹ワクチンは心臓病、認知症、死亡リスクの低減にも有効

 帯状疱疹ワクチンは中年や高齢者を厄介な発疹から守るだけではないようだ。新たな研究で、このワクチンは心臓病、認知症、死亡のリスクも低下させる可能性が示された。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部の内科医であるAli Dehghani氏らによるこの研究結果は、米国感染症学会年次総会(IDWeek 2025、10月19〜22日、米アトランタ)で発表された。 米疾病対策センター(CDC)によると、米国では3人に1人が帯状疱疹に罹患することから、現在、50歳以上の成人には帯状疱疹ワクチンの2回接種が推奨されている。帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)の既往歴がある人に発症するが、CDCは、ワクチン接種に当たり水痘罹患歴を確認する必要はないとしている。1980年以前に生まれた米国人の99%以上は水痘・帯状疱疹ウイルスに感染しているからだ。 水痘・帯状疱疹ウイルスは、数十年間にわたって人の免疫システム内に潜伏し、その後、再び活性化して帯状疱疹と呼ばれる痛みやチクチク感、痒みを伴う発疹を引き起こす。水痘への罹患経験がある人なら年齢を問わず帯状疱疹を発症する可能性があるが、通常は、ストレスにさらされ、免疫力が低下している50歳以上の人に多く発症する。 Dehghani氏らは、米国の107の医療システムから収集した17万4,000人以上の成人の健康記録を分析し、帯状疱疹ワクチン接種者の健康アウトカムをワクチン非接種者のアウトカムと比較した。ワクチン接種者は接種後3カ月〜7年間追跡された。 その結果、帯状疱疹ワクチンの接種により、以下の効果が得られる可能性が示された。・血流障害による認知症のリスクが50%低下・血栓のリスクが27%低下・心筋梗塞や脳卒中のリスクが25%低下・死亡リスクが21%低下 Dehghani氏は、「帯状疱疹は単なる発疹ではない。心臓や脳に深刻な問題を引き起こすリスクを高める可能性がある。われわれの研究結果は、帯状疱疹ワクチンが、特に心筋梗塞や脳卒中のリスクがすでに高い人において、それらのリスクを低下させる可能性があることを示している」とニュースリリースの中で述べている。 研究グループによると、これまでの研究でも、帯状疱疹への罹患が心臓や脳の合併症を引き起こす可能性のあることが指摘されているという。専門家は、この新たな知見は、帯状疱疹ワクチンが帯状疱疹そのものだけでなく、それらの合併症の予防にも役立つ可能性があることを示唆しているとの見方を示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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友人に対する支援は高齢者のポジティブな気分を高める

 高齢者にとって、友情は最高の薬となるかもしれない。親しい友人を車で送ったり手伝ったりするなどの実際的な支援の提供は、高齢者のポジティブな気分を高める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。一方で、感情的支援の提供の場合には性差が見られ、女性ではポジティブな気分に影響しなかったのに対し、男性ではポジティブな気分が低下する傾向が認められたという。米ミシガン大学調査研究センターのYee To Ng氏らによるこの研究結果は、「Research on Aging」に9月26日掲載された。 Ng氏は、「高齢男性の場合、友人に感情的な支援を提供することがポジティブな気分の低下につながる可能性がある。このような気分の低下は、共感を示したり、感情について話し合ったりすることが男性に期待される役割と衝突し、それが不快感や精神的ストレスを引き起こすためと考えられる」と考察している。 この研究では、米テキサス州オースティン大都市圏に住む高齢者180人(平均年齢74.02歳、女性57%)を対象に調査を行った。参加者は5〜6日にわたってエコロジカル・モーメンタリー・アセスメント(EMA)を受け、3時間ごとにポジティブ・ネガティブな気分を報告した。また、友人との支援のやり取りについても毎日報告した。友人に対する支援のタイプとして最も多かったのは、相手の話を聞いたり慰めたりといった感情的な支援であり、次いで、助言、実際的な支援の順だった。 分析からは、実際的な支援を行った日にはポジティブな気分が高まることが示された。また、男性は女性に比べて、友人に感情的支援を提供することが少ない傾向が認められた。さらに男性では、感情的な支援を提供した日にはポジティブな気分が低下する傾向も認められた。一方、女性ではこのような傾向は認められなかった。 Ng氏は、「男性も女性も友情から恩恵を受けるが、男性の友情は共通の活動に重点が置かれている。これに対し、女性の友情は感情的な親密さとコミュニケーションに重点が置かれる傾向がある」と述べている。同氏はまた、「友人というのは自分で選ぶ存在であり、通常は喜びをもたらしてくれる。そのため友人は、特に、未婚、パートナーと死別、離婚、独身、または子どものいない高齢者にとっては、感情的ウェルビーイングを保つ上で非常に重要となる可能性がある」と語っている。 さらに研究グループは、実際的な支援は友人を助けるだけでなく、支援を提供した人自身が、自分は役に立っていると感じたり、社会や活動に関わっていると感じたりすることにも役立つ可能性があると述べている。他人の用事や仕事の手伝いはたいていの場合、労力を伴うことから、高齢者の目的意識の向上にもつながり得る。特に高齢男性にとっては、こうした積極的かつ実践的な支援方法を推進することが、長期的に見て大きな価値をもたらす可能性がある。 これらのことを踏まえてNg氏は、「こうした高齢者支援プログラムでは、感情的支援に加え、社会との関わり方の別の手段を模索すべきだ。あるいは、感情的支援のやりとりの中で意味付けを促すことで、高齢男性の感情的ウェルビーイングをより効果的に支援するべきだ。なぜなら感情的な支援は、少なくとも親しい友人に対して行う場合、日々の感情的負担を伴う可能性があるからだ」と述べている。 研究グループは今後の研究で、高齢者が友人の介護をする動機を探る研究を行う予定であると述べている。なお、この研究は、米国立老化研究所の支援を受けて実施された。

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抗うつ薬は体重を増やすか?(解説:岡村毅氏)

 精神科の外来では、対話から患者さんの症状を探る。うつ病の診察で最も有効なのは「眠れてますか」「食べられてますか」であろう。頑張ったらよく眠れるとか、頑張ったら食欲が湧いてくるものではないので、かなり客観的に患者さんの状態を把握できる。 意外かもしれないが、「どういったストレスがありますか」は、最重要ではない。意味がないとは言わないが、患者さんの理解や世界観に沿った長い物語が展開することが多く、まず知りたいことではない。 さて、治療が進むと、患者さんたちは、よく眠り、よく食べるようになる。それは良いのだが、女性の患者さんからは「体重が増えて困ってます」と言われることがしばしばある。女性は体重をモニターしている人が多いからと思われる。そうなると、「抗うつ薬で体重は増えるのだろうか?」「どの抗うつ薬で増えるのだろうか?」と考えるのは自然だ。 星の数ほどある抗うつ薬のどれを使うのがよいのか、という課題に対して、今や古典ともなった2009年のLancet誌の「MANGAスタディ」では、ネットワークメタ解析を用いて「効果」と「許容性」のバランスがよいのはセルトラリンとエスシタロプラムだと喝破した。同じようなネットワークメタ解析の手法で、抗うつ薬の身体への影響を調べたものが本研究である。 結果を見ると、確かに抗うつ薬の間で身体への影響には差があることがわかる。とはいえ、個人的には体重と心拍数以外は臨床的に意味のあるものはないと感じた。 心拍数は、面白いくらいに薬理学の教科書どおりの結果だ。つまり三環系抗うつ薬では軒並み上がる。ノルアドレナリン再取り込み阻害、抗コリン、α1遮断といった効果によるものだろう。とはいえ、三環系抗うつ薬はもはや臨床では絶滅危惧種になっており、あまり影響はなさそうだ。 問題は体重である。最も体重増加が多そうなのはマプロチリン(四環系抗うつ薬、こちらも希少種になっている)であり、2kg以上の体重増加が48%に、2kg以上の体重減少は16%にみられる。現役でよく使われる抗うつ薬では、セルトラリンは増加が31%、減少41%、エスシタロプラムは増加が38%、減少40%である。マスで見たら、体重増加はなさそうだ。 ただ気を付けねばならないのは、疫学研究と個別の患者さん個人の体験は、まったく次元が異なるということだ。「エビデンス上はあまり増えませんよ」と言うだけでは大失敗するだろう。患者さんが自分の身体健康あるいは見られ方を真剣に考えて、体重が増えていることを心配している場合は、しっかり対応しないと内服を自己中断したり、通院を自己中断してしまうリスクがある。その場合、もちろん再発してしまうリスクがある。 私の場合は、適宜血液検査などをするのが前提ではあるが、・体重増加は精神科薬物治療ではとても重要な課題。あなたの心配はまったく正しい! ただね、非定型抗精神病薬とかが最も気を付けないといけない薬で、このお薬はそれほどではないのでもう少し様子を見てみよう(エビデンス重視の説明)・今はうつ病の症状としての食思不振が改善していると考えたい。クスリが合っているのだ、ともいえる。だから安心して! しっかり回復したら抗うつ薬は中止するので今はまずはうつ病のほうに取り掛かろう(治療目標を明確にする説明)・食欲が増した。ここまで良くなったということ。運動を始めても(あるいは運動強度を上げても)よい時期ですよ(運動推奨)・今のお薬は大丈夫だけど、あなたがとても心配していることは放置できないから、変更しようか(不安が大きい場合)といった対応を、患者さんによって使い分けている(あるいは組み合わせる)。 うつ病が良くなると、食べ物がおいしくなって食べ始める人もいれば、ひきこもり生活から外に出るようになって痩せる人もいる。運動をすれば、カロリー消費は増えるが、当然ご飯はおいしくなるので体重が増える人もいる。難しいものだ。一般的には人の体重なんて知ったことではないが、こちらは抗うつ薬を投与しているので、関わる必要はあろう。個人の生活や認知パターンまで配慮するのが精神科医療であり、楽しいと言うと大変語弊があるが、人の多様性をいつも感じられるので飽きないものである。

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日本における認知症診断、アイトラッキング式認知機能評価の有用性はどの程度か

 認知機能低下および認知症に対する効率的なスクリーニングツールは、多くの臨床医や患者に求められている。大阪大学の鷹見 洋一氏らはこれまで、アイトラッキング技術を用いた新規認知機能評価ツールの認知症スクリーニングにおける有用性について報告している。今回、アイトラッキング式認知機能評価(ETCA)アプリのタブレット版を開発し、プログラミング医療機器(SaMD)としての臨床的有用性を検証するための臨床試験を実施し、その結果を報告した。GeroScience誌オンライン版2025年10月20日号の報告。 対象は、認知症患者および非認知症者。2020年12月〜2021年7月に参加者を募集した。参加者は、ETCAアプリを使用し、現在に最も広く用いられているスクリーニング検査であるミニメンタルステート検査(MMSE)も併せて実施した。主要アウトカムは、ETCAとMMSEのスコア間の相関とした。主要副次的アウトカムは、ETCAの実施時間、検査関連負担に関する質問票による評価、各サブスコア間の相関とした。認知症検出精度は、探索的に評価した。 主な内容は以下のとおり。・全解析対象者での解析結果から、両検査の合計スコア間に強い正の相関が認められた(r=0.831、95%信頼区間:0.743〜0.891、p<0.0001)。・ETCAの実施時間中央値は254.0秒であり、参加者の70%超がMMSEと比較し、ETCAアプリによる検査関連負担が少ないまたは同程度であると回答した。・すべてのサブスコアにおいて有意な相関が認められた。・ETCAは、認知症患者の検出においてAUC 0.864を達成した。 著者らは「ETCAアプリのタブレット版は、迅速な認知機能評価ツールであり、臨床的に有用であることが示された」とし、これらの結果に基づき、ETCAアプリは日本においてSaMDとして薬事承認されるに至った。

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抗うつ薬治療で効果不十分なうつ病患者に対するブレクスピプラゾール補助療法の有用性

 うつ病患者の多くは、抗うつ薬治療による症状が50%未満しか軽減せず、症状改善には非定型抗精神病薬の補助療法が有益となる可能性がある。米国・大塚ファーマシューティカルD&CのShivani Kapadia氏らは、抗うつ薬治療に対する最小限(0%超~25%未満)および部分的な(25%~50%未満)治療反応を示したうつ病患者におけるブレクスピプラゾールの補助療法の有効性と安全性を検討するため、3つのランダム化比較試験のデータを統合し、事後解析を実施した。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌2025年10月1日号の報告。 3つの6週間の国際共同ランダム化二重盲検プラセボ対照第III相試験のデータを統合した。対象は、抗うつ薬治療で効果不十分な成人うつ病外来患者。患者を8週間の抗うつ薬治療期間における治療反応に基づき、最小反応群または部分反応群に層別化した。ブレクスピプラゾール2~3mg/日またはプラセボのいずれかにランダム化し、6週間の補助療法を行った。補助療法期間における有効性の評価には、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)および臨床全般印象度-重症度(CGI-S)を用いた。安全性は、治療中に発現した有害事象(TEAE)により評価した。 主な結果は以下のとおり。・最小反応群663例では、ランダム化治療期間中のMADRS総スコア変化量の最小二乗平均値は、抗うつ薬+ブレクスピプラゾールで-8.8±0.3ポイント、抗うつ薬+プラセボで-6.3±0.3ポイントであった。6週目における最小二乗平均値差は-2.47(95%信頼区間[CI]:-3.38~-1.55)であった(p<0.001、Cohen's d:0.41)。・部分反応群235例では、MADRS総スコア変化量の最小二乗平均値は、それぞれ-6.4±0.5ポイント、-4.9±0.5ポイントであり、6週目における最小二乗平均値差は-1.53(95%CI:-2.94~-0.11)であった(p=0.035、Cohen's d:0.28)。・CGI-Sの結果は、MADRSの結果と同様であった。・最小反応群におけるTEAEの発現率は、抗うつ薬+ブレクスピプラゾールで328例中196例(59.8%)、抗うつ薬+プラセボで335例中160例(47.8%)であった。・部分反応群におけるTEAEの発現率は、それぞれ115例中63例(54.8%)、120例中49例(40.8%)であった。 著者らは「抗うつ薬治療に対する最小限または部分的な治療反応の有無にかかわらず、ブレクスピプラゾール補助療法はうつ病に有効である可能性が示された」と結論付けている。

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ホスピスでよく使われる薬は認知症患者の死亡リスクを増加させる

 ホスピスでケアを受けているアルツハイマー病および関連認知症(ADRD)患者に対するベンゾジアゼピン系薬剤(以下、ベンゾジアゼピン)および抗精神病薬の使用は、患者の死を早めている可能性のあることが新たな研究で示された。ホスピス入所後にベンゾジアゼピンまたは抗精神病薬の使用を開始したADRD患者では、使用していなかった患者と比べて180日以内に死亡するリスクがそれぞれ41%と16%高いことが示されたという。米ミシガン大学の老年精神科医であるLauren Gerlach氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に10月14日掲載された。 ホスピスケアは、もともとは死期の近いがん患者の精神的・身体的苦痛を緩和するために作り出されたが、今ではその対象は認知症などの他の末期疾患患者にも広がっている。研究グループによると、ホスピスに入所するADRD患者の割合は、1995年の1%未満から2023年には25%にまで増加している。しかし、ADRDはがんと比べると、長期にわたり予測不可能な経過をたどるため、ホスピス入所患者が必ずしもすぐに死亡するわけではない。実際、これらの患者の約20%は、ホスピス入所条件である予後6カ月を超えて生存し、ケアプログラムを終えていると研究グループは述べている。 研究グループによると、ホスピス入所患者の興奮、不安、せん妄の管理ではベンゾジアゼピンや抗精神病薬が処方されることが多い。しかし、これらの薬の使用は、転倒や混乱、鎮静のリスクを高め、患者の生活の質(QOL)に影響を及ぼす可能性がある。 この研究でGerlach氏らは、ホスピス施設に処方箋の報告が義務付けられていた2014年7月1日から2018年9月30日までの間の全国のメディケアデータを分析した。対象は、ホスピス入所前の6カ月間にベンゾジアゼピンや抗精神病薬の使用歴がないADRD患者13万9,103人(平均年齢87.6歳、女性75.8%)とした。ホスピス入所時にベンゾジアゼピンおよび抗精神病薬の使用リスクが高いとされた患者はそれぞれ10万58人と11万4,933人で、入所後、4万7,791人(47.8%)と1万5,314人(13.4%)で実際に薬の使用が開始されていた。患者のホスピス滞在日数の平均は130日を超えていた(ベンゾジアゼピン使用患者で136.4日、抗精神病薬使用患者で154.0日)。 ベンゾジアゼピンと抗精神病薬の使用患者と非使用患者を1対1でマッチングしたペア(ベンゾジアゼピンで2万6,872ペア、抗精神病薬で1万240ペア)を抽出して、それぞれの薬の使用と死亡との関連を検討した。その結果、使用患者では非使用患者と比べて、薬の使用開始後180日以内に死亡するリスクが、ベンゾジアゼピンでは41%、抗精神病薬では16%、有意に上昇することが示された。 Gerlach氏は、「こうした早期の処方パターンは、これらの薬が個々の患者に合わせて調整されるのではなく、標準的なホスピスケアの実践の一部として使用されているケースがあることを示唆している」と述べている。その上で同氏は、「ホスピス滞在期間中に認知症患者に使用する薬は、QOLを低下させるのではなく、向上させるものでなければならない」と話す。さらに同氏は、「メディケアのホスピス給付は、加入者のほとんどががん患者で、病状の経過が短く予測可能であることを想定して設計されている。病気の進行が何年にもわたることがあるADRD患者に適したケアモデルと処方ガイドラインが必要だ」と指摘している。

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映画「エクソシスト」【その1】どうやって憑依するの?-「ニューラルネットワーク分離作動説」

今回のキーワードトランス憑依アイデンティティ暗示「解離=ローカルスリープ」説統合情報理論分離脳エイリアンハンド症候群ローカル・アウェイクニング[目次]1.憑依の特徴とは?2.どうやって憑依するの?-「ニューラルネットワーク分離作動説」憑依の特徴とは?何かに憑りつかれている、悪霊が乗り移った…いわゆる憑依現象は、昔から世界中でみられます。そして、お祈りやお祓いなどの儀式は今でもごく自然に行われています。しかしながら、まったく科学的ではありません。いったい、憑依とは何なんでしょうか? どうやって憑依するのでしょうか? そして、そもそもなぜ憑依は「ある」のでしょうか?今回は、オカルト映画の金字塔「エクソシスト」を取り上げ、精神医学の視点から憑依の特徴を説明し、脳科学の視点からそのメカニズムを解明します。エクソシストとは、悪魔祓いをする神父のことで、日本では祈祷師とも呼ばれます。このストーリーでは、ある少女リーガンが悪魔に憑りつかれたとされます。対応した精神科医もお手上げとなり、悪魔祓いをする神父が決死の覚悟で彼女を救おうとします。それでは、まず彼女の状況を踏まえて、精神医学の視点から憑依の特徴を大きく3つ挙げてみましょう。(1)自分をコントロールできない―トランスリーガンは、ベッドの上で、急に激しく起き上がったり反り返ったりするなか、「ママ助けて!(何かが)私を殺す気よ」と叫び続けます。彼女が首を180度後ろに向けるシーンもあります。このシリーズの別の映画では、いわゆるスパイダーウォークなどのありえない動きをするシーンもあります。1つ目の特徴は、自分の発言や動きをコントロールできないことです。精神医学では、トランス(意識変容)と呼ばれます。なお、リーガンには見られませんでしたが、ぶつぶつと同じ言葉を口癖のように言う場合もあります。ちなみに、ベッドや棚などが勝手に動き出すのは、この映画の悪魔の仕業であるという演出であり、このトランスとは無関係です。(2)憑依されたものになりきる-憑依アイデンティティやがてリーガンは、白目をむいて近くにいた精神科医を殴りつけます。そして、野太い声で「このメ〇豚はおれのものだ」「ファッ〇してみろ」とあざ笑うのです。2つ目の特徴は、憑依されたものになりきることです。精神医学では、憑依アイデンティティ(自我障害)と呼ばれます。なお、憑依の対象は、悪魔だけでなく、神、死者の霊、動物、架空のキャラクターなど人間が想像できうるすべてのものになります。とくにこれまで日本では、狐憑きなど動物が憑依の対象となることが多くありました1)。また、霊媒師のように死者の霊が憑依の対象となることもよく見られました。(3)宗教儀式に誘発される-暗示当初リーガンは、精神科医による催眠療法を受けました。精神科医は厳かに「リーガンの中にいる者に言う。この催眠に反応して、すべて答えるのだ。進み出ろ」「中にいる者か?」「何者だ?」と問い詰めます。すると、リーガンは鬼の形相になってにらみつけ、いきなりその精神科医の股間を両手で握りつぶし押し倒すのでした。その後、神父が登場し、聖水をかけたり、聖書を朗読して、何とか悪魔を退散させようとしますが、そのたびに悪魔が憑依しているリーガンは激しく抵抗するのです。3つ目は、宗教儀式に誘発されることです。精神医学では、暗示と呼ばれます。催眠療法にしても宗教儀式にしても、本人に悪魔が憑依していることを強く認識させることで、実はますます憑依状態を引き起こして助長しています。つまり、周りから悪魔が「いる」と言われることで、ますます本人自身がその悪魔になりきってしまうのです。これは、役者が、他の役者との相互作用でその役に入り込んでしまい、役が抜けなくなり、日常生活でもその役の振る舞いをしてしまうことに似ています。なお、催眠療法は、現在は精神科で行われることはありませんが、この映画が製作された1970年代は有効とされ行われていました。どうやって憑依するの?-「ニューラルネットワーク分離作動説」憑依の特徴とは、自分をコントロールできない(トランス)、憑依されたものになりきる(憑依アイデンティティ)、宗教儀式に誘導される(暗示)であることがわかりました。このような憑依の状態は、精神医学では、憑依トランス症と診断され、解離症の1つと分類されています。それでは、どうやって憑依するのでしょうか?脳科学の視点から、憑依のメカニズムは、同じく解離症に分類される記憶喪失や腰抜けのメカニズムを発展させて解き明かすことができます。そこで、まず記憶喪失と腰抜けのメカニズムを理解する必要があります。この詳細については、関連記事1をご覧ください。記憶喪失と腰抜けのメカニズムは、ローカルスリープという概念を使って、「解離=ローカルスリープ」説を提唱して、解き明かしました。ただし、この仮説は、意識から特定の精神機能または身体機能だけが分離して不活性化する病態のメカニズムを説明することができますが、意識から精神機能や身体機能が分離して逆に活性化する憑依のメカニズムを説明することはできません。それではさらに、このメカニズムをどう説明すればいいでしょうか?これは、統合情報理論を使って説明することができます2)。この理論を簡単に言うと、意識とは、脳のある部位で生まれるのではなく脳全体のネットワークで生まれる、つまり脳内のニューラルネットワーク(神経のつながり)の情報が統合される状態であるということです。逆に言えば、意識とは、まさに私たちが実感しているような1つの魂という存在として体に宿っているわけではなく、脳がつくり出している世界をただ「見ている」にすぎないことになります。つまり、意思決定は、意識による「独裁政治」(トップダウン)ではなく、脳全体の活動のせめぎ合いの調整(統合)による「民主主義」(ボトムアップ)であるということになります。たとえば、これがうまくいかなくなったのが、分離脳です。分離脳とは、左右の大脳半球をつなぐ部位である脳梁を、難治性てんかんの治療として切断(分離)した脳の状態を意味します。分離脳になると、完全に切り離された左右の大脳半球が独立して見聞きすることができます。さらに、「他人」の手のように勝手に物を取ろうとしている片方の手を、もう片方の「自分」の手が押さえ込んで、もみ合いになってしまう病態(エイリアンハンド症候群)になることがあります。これは、脳梁の部位でのネットワークが途切れてしまったために、連携のアルゴリズムがうまく働かなくなってしまったと説明することができます。このアルゴリズムは、ちょうどSNSのアドワーズ広告がユーザーの検索ワードの傾向などの情報に合わせて広告を自動的に表示するのと同じように、脳が外界刺激に最適化された反応をしていると言えます。このような意思決定をする意識の時間的な連続性(一貫性)を、私たちは人格(アイデンティティ)と呼んでいるにすぎません。つまり、意識にしても、人格にしても、最初から1つであるという前提が私たちの思い込みであったという衝撃の事実がこの理論からわかります。なお、意思決定と分離脳の詳細については、関連記事2をご覧ください。この理論を踏まえると、分離脳が右脳と左脳にそれぞれ分かれて独立しているのと同じように、憑依は、憑依アイデンティティが影響を及ぼす特定のニューラルネットワークがもともとの人格のニューラルネットワークから暗示の影響(ストレス)によって分離し活性化する一方で、もともとの人格のニューラルネットワークが不活性化(ローカルスリープ)してしまったと仮定することができます。この記事では、これを「ニューラルネットワーク分離作動説」と名付けます。これは、特定のニューラルネットワークだけがローカルスリープになる記憶喪失や腰抜けとは逆に、特定のニューラルネットワークだけが活性化している点で、真逆の病態です。ローカルスリープの逆、「ローカル・アウェイクニング(局所覚醒)」と言えます。ちょうど、脳がまだ未発達な子供が深く眠っている最中(ノンレム睡眠中)に、一部のニューラルネットワークが活性化する「夜泣き」(睡眠時驚愕症)や「夢遊病」(睡眠時遊行症)の病態に似ています。実際に、宗教儀式で夜通し同じ聖書の文言やお経(歌)を唱え続けたり、同じ仕草や振り付け(ダンス)を繰り返して疲れ果てて意識レベルが下がっている極限状態や、催眠療法でまさに眠りが催されている状態は、特定のニューラルネットワークの「ローカル・アウェイクニング」とそれ以外のローカルスリープを誘発していることになり、理に適っています。また、演技派俳優が役に完全になりきるために、肉体的にも精神的にも極端に自分を追い込む行動も、理に適っています。なお、リーガンがベッドの上で不自然な動きをしながら助けを呼ぶトランスのシーンは、分離脳によるエイリアンハンド症候群の病態に通じる点で、そこまで不思議な現象でもないと理解することができます。しかしながら、それではなぜ暗示ごときで分離脳と同じように特定のニューラルネットワークが分離してしまうのでしょうか? もっと根本的な原因があるのではないでしょうか? 1) 祈祷性精神病 憑依研究の成立と展開、p12:大宮司信、日本評論社、2022 2) 意識はいつ生まれるのか、p122:マルチェッロ・マッスィミーニ、ジュリオ・トノーニ、亜紀書房、2015 3) 心の解離構造、p196:エリザペス・F・ハウエル、金剛出版、2020 ■関連記事米国ドラマ「24」【その1】なんでショックで記憶喪失になるの? なんで恐怖で腰が抜けるの?-「解離=ローカルスリープ」説インサイド・ヘッド(続編・その1)【やったのは脳のせいで自分のせいじゃない!?】

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