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sFlt-1/PlGF検査を含むリスク評価により、満期の妊娠高血圧腎症リスクを低下(解説:前田裕斗氏)

 本研究は妊娠35~36週で妊娠高血圧腎症を伴わず、胎児に致命的な異常のない単胎妊娠8,136例を対象とした介入試験である。Fetal Medicine Foundationの提供する妊娠高血圧腎症発症のリスク評価により分娩時期を定め、陣痛発来のない場合に計画分娩とすることで妊娠高血圧腎症の発症率低下を目的とした。結果、介入群の発症率は3.9%、対照群は5.6%であり、30%の有意な減少を認めた。新生児合併症や帝王切開率の増加は認めなかった。 本研究に用いるリスク評価はsFlt-1/PlGF比の測定を含む。日本においては高リスク群以外に保険適用のない検査ということもあり、全妊娠を対象とするのは現実的ではない。そのため、日本において本研究を適用するためには妊娠初期・中期で妊娠高血圧症候群の高リスク群を抽出する2段階スクリーニングとする必要がある。もしくは検査の外注・検体搬送などのハードルはあるが、産婦人科医の少ない地域や離島に居住する妊婦を対象とするのも理にかなっているといえるだろう。ただし、費用面からも上記のような要件での保険適用が認められることが前提となる。今後、sFlt-1/PlGF検査自体の価格が下がることにも期待したい。

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妊娠高血圧腎症のリスク評価と層別化に基づく計画的早期分娩の有用性/Lancet

 妊娠高血圧腎症のリスク層別化に基づく計画的早期分娩は、緊急帝王切開や新生児集中治療室への入室を増加させることなく、妊娠高血圧腎症の発生を減少させたことが、英国・キングス・カレッジ病院のJames Goadsby氏らによる、英国の2施設で実施されたアダプティブデザインの無作為化非盲検並行群間比較試験「PREVENT-PE試験」の結果で示された。これまで、高リスク妊娠において、正期産での妊娠高血圧腎症を減少させる確実な介入法は存在しなかった。Lancet誌オンライン版2025年12月4日号掲載の報告。妊娠35週0日~36週6日に定期超音波検査を受けた妊婦を登録 研究グループは、妊娠35週0日~36週6日に実施される定期超音波検査の受診時に参加者を募集した。適格基準は、単胎妊娠で、重大な先天異常がなく、文書による同意が得られ、妊娠高血圧腎症の既往歴または他の類似の臨床試験への参加歴のない16歳以上の女性であった。 適格者を、施設で層別化し置換ブロック法により、介入群(妊娠高血圧腎症リスク評価で高リスク、および妊娠高血圧腎症リスクが≧1/50と判定された場合はリスク層別化計画的早期分娩)または対照群(通常ケアによる正期産)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、国際妊娠高血圧学会(ISSHP)2021年基準に基づく妊娠高血圧腎症を伴う分娩であった。リスク層別化による計画的早期分娩で、妊娠高血圧腎症を伴う分娩は30%減少 2023年5月9日~2024年6月7日に、妊娠35週0日~36週6日の定期超音波検査を受診した1万1,280例の女性のうち1万803例(95.8%)が適格で、このうち8,136例(75.3%)が無作為に割り付けられた。8,136例中6例(0.1%)が同意撤回、36例(0.4%)が無作為割り付けの誤りにより除外され、最終解析対象は8,094例(99.5%)であった(介入群4,037例、対照群4,057例)。 8,094例のうち2,098例(25.9%)が非白人系、5,996例(74.1%)が白人系と自己申告した。 主要アウトカムである妊娠高血圧腎症を伴う分娩は、介入群で4,037例中158例(3.9%)、対照群で4,057例中226例(5.6%)に発生した。補正後リスク比は0.70(95%信頼区間:0.58~0.86、p=0.0051、欠測値補完法によるITT解析)。 重篤な有害事象の発現割合は、介入群0.1%(5/4,031例)、対照群0.2%(10/4,048例)であり、差は認められなかった(Fisherの正確確率検定のp=0.30)。

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妊娠前/妊娠初期のGLP-1作動薬中止、妊娠転帰と体重変化は?/JAMA

 主に肥満の女性で構成されたコホートにおいて、GLP-1受容体作動薬の妊娠前または妊娠初期の使用とその後の中止は、妊娠中の体重増加の増大、早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群のリスク上昇と関連していた。米国・マサチューセッツ総合病院のJacqueline Maya氏らが、後ろ向きコホート研究の結果を報告した。GLP-1受容体作動薬は、妊娠中に禁忌であり、妊娠初期に投与を中止すると妊娠中の体重増加や妊娠転帰に影響を及ぼす可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2025年11月24日号掲載の報告。妊娠前3年間・妊娠後90日間、GLP-1受容体作動薬の処方妊婦vs.非処方妊婦を比較 研究グループは2016年6月1日~2025年3月31日に、マサチューセッツ州ボストン地域をカバーする15施設からなる学術医療研究機関Mass General Brighamにおいて、分娩に至った単胎妊娠14万9,790例を対象に後ろ向きコホート研究を行った。 妊娠前3年間および妊娠後90日間に、電子健康記録で少なくとも1回GLP-1受容体作動薬の処方が確認された妊婦を曝露群、確認されなかった妊婦を非曝露群として、曝露群1例につき非曝露群3例を傾向スコアでマッチングした。 主要アウトカムは妊娠中の体重増加。副次評価項目は、妊娠中の過剰体重増加、在胎期間に対する出生体重の過大・過小、妊娠週数と性別に基づく出生体重のパーセンタイル、出生身長、早産、帝王切開、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群であった。 解析では、妊娠中の体重増加が観察された正期産の妊娠体重増加コホート、出生体重および新生児の性別が記録されている正期産の出生体重コホート、在胎28週以上で分娩様式が記録されている産科コホートの3つのコホートを定義した。曝露群で、妊娠中の体重増加、早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群のリスクが上昇 14万9,790例のうち、655例が妊娠前3年間および妊娠後90日間にGLP-1受容体作動薬に曝露していた。除外基準に該当した症例を除外し傾向スコアマッチング後に、妊娠体重増加コホートは曝露群448例、非曝露群1,344例、出生体重コホートはそれぞれ442例、1,326例、産科コホートはそれぞれ566例、1,698例となった。 妊娠体重増加コホートにおいて、曝露群は母体平均年齢が34.0歳(SD 4.7)、妊娠前BMI平均値が36.1(SD 6.5)、肥満が84%、糖尿病既往が23%で、いずれも非曝露群より高かった。また、曝露群は非曝露群と比べヒスパニック系(それぞれ30%、15%)、非ヒスパニック系黒人(11%、7%)の割合が高く、公的保険加入者の割合(10%、11%)は低かった。 妊娠体重増加コホートにおいて、妊娠期間中の体重増加量(平均値±SD)は、曝露群で13.7±9.2kgであり、非曝露群の10.5±8.0kgより有意に大きかった(群間差:3.3kg、95%信頼区間[CI]:2.3~4.2、p<0.001)。曝露群では、妊娠中の過剰体重増加のリスクも高かった(65%vs.49%、リスク比[RR]:1.32、95%CI:1.19~1.47)。 出生体重コホートでは、巨大児および低出生体重児のリスクは曝露群と非曝露群で同程度であったが、平均出生体重パーセンタイルは曝露群で高かった(58.4%vs.54.8%、差3.6%、95%CI:0.2~6.9)。 産科コホートでは、曝露群で早産(17%vs.13%、RR:1.34、95%CI:1.06~1.69)、妊娠糖尿病(20%vs.15%、RR:1.30、95%CI:1.01~1.68)、妊娠高血圧症候群(46%vs.36%、RR:1.29、95%CI:1.12~1.49)のリスクが高かった。出生身長、在胎期間に対する出生体重の過大・過小のリスク、帝王切開のリスクに差はなかった。

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妊娠中の体重増加と母体および新生児の臨床アウトカムの関連/BMJ

 オーストラリア・モナシュ大学のRebecca F. Goldstein氏らは、世界のさまざまな地域および所得水準の妊産婦を対象とした観察研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を行い、米国医学研究所(IOM)の推奨値を超える妊娠中の体重増加(GWG)は、アウトカムが不良となるリスクの増加と関連していることを示した。著者は、「今回の結果は、WHOが推進している世界各地の周産期アウトカムの改善に向けたGWG基準の最適化プロセスに役立つだろう」としている。BMJ誌2025年11月19日号掲載の報告。コホート研究40件、妊婦約161万人についてレビュー&解析 研究グループは、Embase、EBM Reviews、Medline、Medline In-Process、その他のデータベースを用い、2009年~2024年5月1日に発表された論文を検索した。適格基準は、18歳超の単胎妊娠の女性300例超を対象とし、妊娠前BMIカテゴリー別の総GWG、ならびに研究で定義されたBMIおよびGWG別のアウトカムが報告されている観察研究とした。言語は問わなかった。 主要アウトカムは、出生体重、帝王切開率、妊娠高血圧症候群、早産、在胎不当過小/過大児、低出生体重、巨大児、新生児集中治療室(NICU)入室、呼吸窮迫症候群、高ビリルビン血症、および妊娠糖尿病とした。 検索の結果、2万1,729件の研究が同定され、適格と判定された計40件のコホート研究(妊産婦計160万8,711例)がレビューに包含された。体重増加がIOM推奨値を下回ると、早産、低出生体重児などが増加 コホート全体で、低体重が6%(6万5,114例)、正常体重が53%(60万7,258例)、過体重が19%(21万5,183例)、肥満が22%(25万2,970例)であった(データ入手は114万252例、WHO分類およびアジア人のBMI分類の両方を含む研究で定義されたBMI分類に基づく)。妊娠終了時、GWGがIOM推奨値を下回っていたのは23%、上回ったのは45%であった。 WHOのBMI基準を用いたところ、IOM推奨値を下回るGWGは、出生体重の低下(平均差:-184.54、95%信頼区間[CI]:-278.03~-91.06)、帝王切開分娩(オッズ比[OR]:0.90、95%CI:0.84~0.97)、在胎不当過大児(0.67、0.61~0.74)、巨大児(0.68、0.58~0.80)の低いリスク、早産(1.63、1.33~1.90)、在胎不当過小児(1.49、1.37~1.61)、低出生体重児(1.78、1.48~2.13)、呼吸窮迫症候群(1.29、1.01~1.63)の高いリスクと関連していた。上回ると、帝王切開、妊娠高血圧症候群、在胎不当過大児などが増加 一方、IOM推奨値を上回るGWGは、出生体重の増加(平均差:118.33、95%CI:53.80~182.85)、帝王切開分娩(OR:1.37、95%CI:1.30~1.44)、妊娠高血圧症候群(1.37、1.28~1.48)、在胎不当過大児(1.77、1.62~1.94)、巨大児(1.78、1.60~1.99)、およびNICU入室(1.26、1.09~1.45)の高いリスク、早産(0.71、0.64~0.79)および在胎不当過小児(0.69、0.64~0.75)の低いリスクと関連していた。 アジア人のBMI基準では、GWGが推奨値を下回ると、妊娠高血圧症候群(OR:3.58、95%CI:1.37~9.39)および早産(1.69、1.25~2.30)の高いリスク、在胎不当過大児(0.80、0.72~0.89)の低いリスクと関連し、GWGが推奨値を上回ると帝王切開(1.37、1.29~1.46)および在胎不当過大児(1.76、1.42~2.18)の高いリスク、在胎不当過小児(0.62、0.53~0.74)および低出生体重(0.44、0.31~0.6)の低いリスクと関連した。

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第272回 改正医療法が成立、来年度から病床削減・医師偏在・医療DXが同時始動へ/厚労省

<先週の動き> 1.改正医療法が成立、来年度から病床削減・医師偏在・医療DXが同時始動へ/厚労省 2.OTC類似薬と低価値医療について、保険給付の選別が本格化/政府 3.出産無償化へ正常分娩を保険適用、全国一律「分娩基本単価」導入へ/厚労省 4.高齢者の応能負担強化、「通い放題」外来特例にメス/政府 5.美容医療に国がメス 改正医療法で安全管理と情報公開を義務化/厚労省 6.訪問看護付高齢者住宅の過剰請求、2026年度改定でどこまで是正できるか/厚労省 1.改正医療法が成立、来年度から病床削減・医師偏在・医療DXが同時始動へ/厚労省医師偏在対策、病床削減支援、医療DXの推進などを柱とする改正医療法が、2025年12月5日の参議院本会議で可決・成立した。2026年4月以降、順次施行される。今回の改正は、2024年末に厚生労働省がまとめた医師偏在対策と、2040年を見据えた地域医療構想の再設計、さらに電子カルテの全国共有を軸とする医療DXを同時に動かす「構造改革法」と位置付けられる。最大の注目点の1つが「病床削減への公的支援の明文化」である。都道府県は、医療機関が経営安定のため緊急に病床数を削減する場合、支援事業を実施でき、国が予算の範囲内で費用を補助する。2025年度補正予算では約3,490億円の「病床数適正化緊急支援基金」を創設し、稼働病床1床当たり410万円、非稼働病床では205万円を支給する。これまでの補助分と合わせ、最大約11万床の削減が想定され、削減後は基準病床数も原則引き下げられる。実質的に国主導での病床整理が本格化する。医師偏在対策も制度として動き出す。都道府県は「重点医師偏在対策支援区域」を設定し、当該地域で勤務する医師に対して保険料財源による手当を支給できる。その一方で、外来医師が過剰な都市部では、無床診療所の新規開業に事前届け出制を導入し、在宅医療や救急など不足機能の提供を要請できる。したがわない場合は勧告・公表、さらには保険医療機関指定期間の短縮も行われ得る。都市部での開業自由は、制度的に大きく制約される局面に入る。そして、医療DXでは、2030年末までに電子カルテ普及率100%を目標に明記された。電子カルテ情報共有サービスの全国展開、感染症発生届の電子提出、NDB(全国レセプト・健診データ)の仮名化データ提供などが法的に後押しされる。今後は医療機関にとって、電子カルテ未導入のままでは制度対応が困難になる。さらに、地域医療構想は「病床中心」から「入院・外来・在宅・介護の一体設計」へ刷新される。高齢者救急、地域急性期、在宅連携、急性期拠点、専門機能といった医療機関機能の報告制度が新設され、2040年を見据えた再編の基盤となる。加えて、美容医療への規制整備も盛り込まれ、安全管理措置の報告義務や管理者要件(一定期間の保険診療従事歴)などが導入される。自由診療偏重への歯止めが制度として明確になった。今回の改正は、病床・開業・人材・DX・自由診療までを横断的に再設計する点に本質がある。医療機関、勤務医、開業医すべてにとって、経営・キャリア・診療体制の前提条件が同時に変わる転換点となる。 参考 1)医療法等の一部を改正する法律案の概要(厚労省) 2)医師の偏在対策へ 改正医療法など参院本会議で可決・成立(NHK) 3)医師の偏在是正、開業抑制へ DX推進や手当増も、改正医療法(東京新聞) 4)都市部の診療所、26年度から開業抑制 改正医療法が成立(日経新聞) 5)改正医療法が成立 病床削減支援盛り込み 美容医療は規制整備へ(毎日新聞) 6)病床削減の支援事業盛り込む、改正医療法成立 医療機関機能の報告制度を創設(CB news) 2.OTC類似薬と低価値医療について、保険給付の選別が本格化/政府政府は社会保障改革の柱として、「OTC類似薬」の患者負担見直しを2025年内に結論付け、2026年度予算・制度改正へ反映させる方針を明確化した。高市 早苗首相は経済財政諮問会議で、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し、金融所得の反映を含む応能負担の徹底、高額療養費制度の見直しを年末までに整理するよう財務相・厚労相に指示した。狙いは現役世代の保険料負担軽減と医療費抑制である。一方、自由民主党と日本維新の会の協議は難航している。維新はOTC類似薬の「保険適用除外」による最大1兆円の医療費削減を主張してきたが、自民・厚生労働省は必要な受診抑制や患者負担増への懸念から慎重姿勢を崩していない。現在は「保険適用を維持した上で、特別料金として定率上乗せする案」と「原則、自費化し配慮対象のみ保険適用とする案」が併存し、党内でも意見が割れている。これに対し、全国保険医団体連合会はOTC類似薬の保険適用継続を求める21万筆の署名を提出し、患者団体・医療団体の反対姿勢も鮮明化した。同時期に厚労省は「低価値医療」対策にも着手し、風邪への抗菌薬投与や腰痛への一部鎮痛薬など、科学的有効性に乏しい診療行為を2028年度診療報酬改定で抑制・保険除外も視野に入れる方針を示した。OTC類似薬の問題は、単なる薬剤負担の見直しにとどまらず、「保険給付の選別」と「低価値医療排除」を同時に進める医療費構造改革の試金石となりつつある。 参考 1)社会保障分野における今後の対応について(経済財政諮問会議) 2)高市首相 「OTC類似薬」含む薬剤自己負担など年末までに結論を(NHK) 3)風邪に抗菌薬・腰痛に一部鎮痛薬、効果乏しい「低価値医療」は年1,000億円以上…医療保険の対象除外化も検討(読売新聞) 4)「OTC類似薬」足踏みの自維協議 保険適用除外、維新内で意見分裂(朝日新聞) 5)OTC類似薬の保険適用「継続を」21万筆署名提出-保団連(CB news) 3.出産無償化へ正常分娩を保険適用、全国一律「分娩基本単価」導入へ/厚労省厚生労働省は、12月4日に開かれた社会保障審議会医療保険部会で、正常分娩を公的医療保険の対象とし、全国一律の「分娩基本単価」を設定して自己負担をゼロにする案を提示した。現在の出産育児一時金(50万円)は廃止し、分娩費を現物給付で賄う方向で、導入は2027年度以降とされる。正常分娩はこれまで自由診療で、24年度の平均費用は約52万円と物価高もあり上昇傾向となっており、東京都と熊本県では20万円超の地域差もある。出産育児一時金の引き上げに合わせて費用も上昇するという「いたちごっこ」や、費用が一時金を下回る場合に差額が妊婦側に渡る仕組みへの公平性の疑問も指摘されてきた。新制度では、標準的な出産費用をカバーする全国一律の基本単価を設定し、「基本単価×分娩件数」を産科医療機関の収入とする包括払いが想定されている。安全な分娩のための手厚い人員・設備体制や、ハイリスク妊婦の積極受け入れには加算評価を行う方向である。その一方で、帝王切開など異常分娩や妊娠合併症への対応は従来通り3割負担の保険診療を継続し、「お祝い膳」やエステ、写真撮影などアメニティは保険外で原則自己負担とする。産科側からは、基本単価が不十分だとクリニックの撤退が進み、周産期医療体制が崩壊しかねないとの懸念が強く、日本産婦人科医会などは慎重な検討を要請している。他方で、包括払いにより年間収入の予見可能性が高まることや、サービス内容の「見える化」により妊婦が納得して施設を選択できる利点もある。厚労省は施設の準備状況を踏まえ、現行の一時金制度と新制度を一定期間併存させつつ段階的に移行する案も示しており、少子化対策と産科医療提供体制の両立をどう図るかが、今後の焦点となる。 参考 1)医療保険制度における出産に対する支援の強化について(厚労省) 2)出産無償化へ「分娩費用」を全額公的保険で、全国一律の「公定価格」定める案提示…実施は27年度以降の見通し(読売新聞) 3)出産無償化へ、分娩費用を全国一律に 厚労省案「お祝い膳」など対象外 業界、収益悪化を懸念(日経新聞) 4)分娩費に「基本単価」設定 厚労省案 手厚い人員体制などへの評価検討(CB news) 5)産科医療機関を維持できる水準の「正常分娩1件当たりの基本単価」を設定、妊産婦の自己負担はゼロへ-社保審・医療保険部会(Gem Med) 4.高齢者の応能負担強化、「通い放題」外来特例にメス/政府12月5日に開かれた経済財政諮問会議で、2026年度予算編成方針として、医療・介護費の「応能負担」の徹底と、現役世代の保険料率の上昇を止め引き下げを目指す方針が示された。民間議員からは、物価高・賃上げを診療報酬などに適切に反映しつつ、高齢者を中心に金融所得や資産も踏まえた負担を求めるべきとし、OTC類似薬を含む薬剤自己負担、高額療養費制度、介護利用者負担の見直しを年末までに結論付けるよう求めた。厚生労働省はこれと並行して、高額療養費制度の具体的な見直し案を調整中である。70歳以上の外来医療費を抑える「外来特例」については、月額上限(現行1万8,000円など)の引き上げや対象年齢引き上げを検討し、現役世代に存在しない実質「通い放題」状態を是正する。その一方で、がん・難病など長期療養患者向けの「多数回該当」は、上限引き上げ案への強い反発を受け、上限額据え置きとする方向で一致しつつあり、月単位で上限に届かない患者にも対応するため、新たに年間の負担上限を設ける案も示された。所得区分も細分化し、高所得高齢者には2~3割負担を拡大する一方、低所得層の負担増は避けるとされる。さらに、後期高齢者医療制度から、株式配当など金融所得を保険料算定に反映させるため、法定調書とマイナンバーを用いた情報基盤整備が進められている。これら一連の改革は、2026年度診療報酬改定での賃上げ対応とセットで、高齢者負担の精緻化と給付の重点化を通じ、現役世代の保険料負担を抑制することが狙いであり、医療現場には高齢患者の受診行動や窓口負担の変化を踏まえた説明と支援体制の整備が求められる。 参考 1)社会保障改革の新たなステージに向けて(経済財政諮問会議) 2)医療・介護費「応能負担の徹底を」 諮問会議の民間議員(日経新聞) 3)70歳以上の負担上限引き上げ 高額療養費見直し 厚労省調整(時事通信) 4)長期治療患者の軽減策を維持 高額療養費見直し案判明、厚労省(東京新聞) 5)高額療養費制度 「多数回該当」の上限額据え置きで調整 厚労省(NHK) 5.美容医療に国がメス 改正医療法で安全管理と情報公開を義務化/厚労省若手医師が、初期研修後すぐに美容医療へ進む「直美(ちょくび)」問題が国会で相次いで取り上げられ、上野 賢一郎厚生労働大臣は「多くの医師が特定の診療科を選択するのは好ましくない」と述べ、医師偏在や医療安全の観点から懸念を示した。形成外科や救急科、麻酔科などの十分な臨床経験を経ずに美容医療に従事する若手医師が増えることで、合併症対応や重篤事例への対処能力が不足している点が問題視されている。こうした状況を受け、2025年12月に成立した改正医療法では、美容医療に対する規制整備が盛り込まれた。具体的には、美容医療を実施する医療機関に対し、専門医資格の有無、安全管理体制、合併症対応の体制などを都道府県へ定期的に報告・公表させる制度を新設し、行政が実態を把握できる仕組みを整える。背景には、美容医療を巡る深刻な被害の急増がある。国民生活センターへの相談はこの10年で約5倍に増え、2024年度は1万737件と過去最多、合併症や後遺症の相談も約900件に達した。レーザー脱毛による熱傷、脂肪吸引後の高熱・感染症、充填剤による慢性炎症や敗血症など、生命に関わる事例も多い。美容医療は原則自由診療であり、後遺症や合併症の治療も保険適用外となるケースが多く、患者は長期にわたる高額な自己負担を強いられている。その一方で、施術を行った美容クリニックが合併症対応を十分に行えず、救急搬送先が見つからない事例も相次いでいる。こうした中、春山記念病院(東京都)のように、美容医療の合併症に特化した救急外来を設置し、提携クリニックが治療費を負担する新たな連携モデルも生まれている。厚生労働省は、安全管理報告の義務化や合併症対応指針の整備を進めており、今後、美容医療は「自由診療だから自由」という扱いから、安全性と責任を強く問われる分野へと転換点を迎えている。 参考 1)改正医療法が成立 病床削減支援盛り込み 美容医療は規制整備へ(毎日新聞) 2)若手医師が美容医療に直接進む「直美(ちょくび)」、国会で質疑 厚労相「好ましくない」(産経新聞) 3)美容医療、被害相談が急増 後遺症など不十分な対応多く(日経新聞) 6.訪問看護付高齢者住宅の過剰請求、2026年度改定でどこまで是正できるか/厚労省訪問看護ステーション併設のホスピス型住宅を巡り、診療報酬の見直しが本格化している。日本在宅医療連合学会が行なった調査結果では、ホスピス型住宅で訪問診療を行う医師の4割が「訪問看護指示書に虚偽病名や頻回訪問の記載を求められた経験あり」と回答し、こうした要請を断った結果、主治医変更などの圧力を受けた医師は6割に及んだ。外部の訪問看護ステーション利用を原則認めない住宅も9割近くに達し、「同一建物・高頻度訪問」に診療報酬が集中する現在の仕組みの歪みが露呈している。厚生労働省は、2026年度の診療報酬改定に向けて、高齢者住宅入居者への訪問看護について医療保険点数を細分化し、同一建物内の多数利用・短時間の頻回訪問に対する評価を引き下げる方針を11月12日の中央社会保険医療協議会(中医協)で示した。介護保険ですでに導入されている「同一建物減算」を参考に、利用者数や訪問回数に応じた段階的減算や、1日複数回訪問の新たな評価区分創設が検討されている。また、頻回訪問を医療保険で認める条件として、訪問看護指示書に主治医の医学的判断と必要性を明記させる案も中医協で議論されている。医師側への影響は小さくない。第1にホスピス型住宅への訪問診療を収益の柱としてきた在宅クリニックでは、併設訪問看護の報酬が縮小すれば、全体の経営モデルの見直しを迫られる。住宅側から「点数を落とさないように」と指示書への記載を求められる場面は今後さらにグレーゾーン化し、監査リスクも高まる。虚偽病名や過剰指示への関与は、事業者だけでなく医師自身も問われかねない。一方で、診療報酬側に明確なルールが入ることで、「指示書を書かされている」医師の立場はむしろ守られる可能性もある。頻回訪問が必要な末期がんや難病患者については、医学的根拠を添えて指示を出せば正当に評価される一方、「全員一律1日3回」といった運用は点数上もメリットを失い、事業者のインセンティブは弱まる。結果として、患者の症状に応じた訪問頻度の再設計が求められるだろう。ホスピス型住宅は本来、自宅療養が困難な終末期患者の受け皿として一定の役割を果たしてきた。その社会的ニーズを認めつつ、「営利目的の頻回訪問」と「必要な24時間体制」を診療報酬でどう切り分けるかが次改定の焦点となる。医師には、自らの訪問看護指示がどのような点数体系に乗っているのかを理解し、不適切な請求に巻き込まれない距離感と、必要な患者には十分な看護支援を確保する姿勢の両立が求められている。 参考 1)中央社会保険医療協議会資料 在宅その3(厚労省) 2)ホスピス型住宅における訪問看護と訪問診療の連携に関する実態調査結果(速報)(日本在宅医療連合学会) 3)ホスピス型住宅における訪問看護と訪問診療の連携に関する実態調査報告(同) 4)ホスピス住宅、医師に不適切要求 虚偽の病名や過剰な訪問回数(共同通信) 5)過剰な訪問看護の是正へ診療報酬下げ 厚労省、一部事業所が高収益で(日経新聞) 6)ホスピス型住宅への訪問看護指示書、4割の医師が不適切な記載を要求された経験あり(日経メディカル) 7)今、話題のホスピス型住宅を現場の医師はどう見ているか(同)

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胎児循環という神業、突貫工事の心臓が生み出す奇跡【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第90回

「オンギャー」それは新たな生命の始まりを告げる、母親にとって祝福の合図です。肺が初めて外の空気を抱きしめた瞬間の歓声でもあります。単なる泣き声ではありません。その声によって呼気に陽圧がかかり、肺の中の小さな部屋である肺胞が均一に拡がるのです。お母さんのお腹の中で沈黙していた肺は水(肺水)で満たされており、その水が空気に置き換わるために必要なのが、この「オンギャー」なのです。生命誕生の瞬間は感動に満ちていますが、その背景には驚くほど精巧でダイナミックな仕組みが隠れています。分娩に立ち会った日の感動30年ほど前に医学生として初めて分娩に立ち会った日のことを、今も忘れられません。手術室の光の下で静かな緊張が漂っています。帝王切開が始まり、産科医の手が正確に、しかし驚くほど柔らかに母体を守りながら進んでいきます。胎児の頭が見えた瞬間に、室内の空気が一変しました。手術という医療行為が、次の瞬間には生命の誕生に姿を変えたのです。自然分娩も見学する機会がありました。文字通り、「ぬるり」と赤ん坊の全身がこの世に現れ、産声が響きます。その声は思ったよりも高く、そして強かったです。母親の目に涙が浮かび、スタッフの顔がほころびます。医療の現場で、ここまで純粋な歓喜が生まれる瞬間を、自分はそれまで知らなかったのです。産科の先生が言いました。「この瞬間だけは、何度立ち会っても胸が熱くなるんですよ」その言葉の意味が少しわかる気がしました。医学生としての私が目の当たりにしたのは、人間としての最も根源的な喜びだったのです。あのとき分娩室で聞いた「オンギャー」の声は、今も私の心に響いています。いま目の前で成人先天性心疾患の患者さんの鼓動を聴くとき、私はあの産声の続きを聴いているのかもしれません。胎児循環の不思議、命が宿る初めの拍動人の心臓は、胎児の姿が豆粒のようなころ、すでに鼓動を始めています。それは、胎児の成長を支えるために血液を送り出す必要があるからです。ひとつ大きな問題があります。胎児はまだ肺呼吸をしていません。空気を吸っていないのに、血液をどうやって酸素化するのか? その答えが「胎盤」です。胎盤は、まるで人工心肺装置のECMOのように、母体の血液から酸素を取り込み、それを臍帯(へその緒)という管を通じて胎児へ送ります。母親がいわば酸素供給装置で、胎盤が人工肺、そして臍帯が回路チューブです。ECMOの回路図を、神が先に描いていたのです。胎児の脳に酸素化された血液が十分に届くように、そして未完成の肺に血液をあまり送らずに済むよう、右心房から左心房へ血液をバイパスさせる「卵円孔」と、肺動脈から大動脈への抜け道である「動脈管」があります。道路工事の仮設バイパスのように、胎児だけが使う特別ルートが設けられているのです。この神業のような仕組みを、胎児はごく短期間で完成させなければなりません。肺は、出産後から機能し始めれば良いのと対照的に、心臓は胎児期から循環を支える必要があります。受精後わずか3週間余りで、心臓は拍動を開始しています。この早さは、人間の発生のなかでも際立っており、心臓が「生命の最初の臓器」と呼ばれるゆえんです。いわば突貫工事で、胎児が、心房・心室・弁・中隔を形づくり、稼働を開始します。建築現場でも、急ぎの工事ではどうしても小さなズレや継ぎ目の不整合が生じるように、この過程で生まれる“設計上のゆらぎ”が、先天性心疾患の一因となることがあります。命を守るために早く動かさねばならない心臓が、ギリギリのバランスで仕上げた証ともいえます。生まれたあと、卵円孔や動脈管が閉じ、肺が働き始めて、赤ちゃんは独り立ちの循環系を完成させます。その瞬間、胎児循環という仮設システムは退場します。分娩・出産を集中治療室の患者に例えれば、肺水腫で人工呼吸器とV-A ECMOという補助循環装置をつけた状態から、抜管とECMO離脱を同時に行うようなものです。この荒業を成功させた赤ちゃんの雄叫びが「オンギャー」です。成人先天性心疾患へ、そしてその先に生まれつきの心臓病である先天性心疾患は、長い間、子供の病気と見られてきました。生まれつき心臓に小さな“ゆらぎ”を抱えた子どもたちは、今や成人となり、自分の人生を力強く生きています。これらを成人先天性心疾患(ACHD:Adult Congenital Heart Disease)と呼びます。心臓外科手術治療の発達、内科治療の進歩によって先天性心疾患の子供の85%以上は思春期、成人期まで到達する事が可能になってきました。複雑な先天性心疾患の子供も学校に通い社会に出ていく時代になっているのです。こうして突貫工事でつくられた心臓は、生まれた瞬間に肺呼吸へと切り替わり、そのまま何十年も鼓動を続けていきます。成人先天性心疾患の患者さんの心臓もまた、あの仮設バイパスの名残をどこかに抱えながら、けなげに働いているのです。思えば、あの胎児循環こそ、神様による究極の応急工事だったのかもしれません。もし建築基準法の審査があったら、「構造的に無理があります」と一蹴されていたことでしょう。それでも見事に稼働し、命を支え続ける。医者としてどれほど工夫を凝らしても、この“神業の設計図”にはとうていかなわないと思うのです。

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U=Uは、母子感染予防にも適応できるか?(解説:岡慎一氏)

 HIVの母子感染予防を論じた論文である。その前に、U=Uについて簡単に解説しておく。U=Uとは、「治療で血中のウイルス量(VL)が検出限界以下(<50copies/mL)になれば、HIVはうつらない:Undetectable equals Untransmittable」を略したものである。U=Uは、782組の片方がHIV+で治療を受けていてVLが検出限界以下、片方がHIV-のゲイカップルが、2年間に7万6,088回のコンドーム無しの肛門性交を行っても感染はゼロであったという、臨床試験の結果から導き出された結論である。 今回の論文は、「最も感染リスクが高いコンドーム無しの肛門性交でもうつらないのであるから、母子感染も大丈夫ではないか?」という疑問に答えるものである。母子感染には、妊娠中、出産時、授乳時という3つの場面がある。4,675例の妊婦の出産データから、妊娠前からHIVがわかっており、治療により妊娠期間中VLが検出限界以下の場合、母子感染はゼロで、出産に関してはU=Uが示された。出産方法に関しては、経膣分娩でも帝王切開でもウイルス量にかかわらず感染率に差はなかった。また、データが不十分ではあるが、母乳に関しては、ウイルスが検出限界以下でも、感染率は0.1%と非常に低いもののゼロではなかった。 日本では、感染妊婦への治療は行われており、帝王切開で出産し、新生児への6週間のAZT投与を行い人工乳で育てることが多い。母子感染リスクだけで言うならば、帝王切開に関しては、見直してもよいのかもしれない。また、U=U出産新生児には、AZTは不要かもしれない。幸い日本では、感染妊婦は少ない。このため、本邦における限られたデータでは、独自のガイドライン作成は困難である。今後の日本の母子感染予防ガイドラインを改訂する際に参考にすべき論文である。

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日本人の妊娠関連VTEの臨床的特徴と転帰が明らかに

 妊娠中の女性は静脈血栓塞栓症(VTE)リスクが高く、これは妊産婦死亡の重要な原因の 1 つである。妊婦ではVTEの発症リスク因子として有名なVirchowの3徴(血流うっ滞、血管内皮障害、血液凝固能の亢進)を来たしやすく、妊婦でのVTE発生率は同年齢の非妊娠女性の6〜7倍に相当するとも報告されている1)。そこで今回、京都大学の馬場 大輔氏らが日本人の妊婦のVTEの実態を調査し、妊娠関連VTEの重要な臨床的特徴と結果を明らかにした。 馬場氏らは、メディカル・データ・ビジョンのデータベースを用いて、2008年4月~2023年9月までにVTEで入院した可能性のある妊婦1万5,470例を特定。さらに、抗凝固療法が実施されていない患者や画像診断検査が施行されていない患者などを除外し、最終的に妊婦でVTEと確定診断され抗凝固療法を含めた介入が行われた410例の臨床転帰(6ヵ月時のVTE再発、6ヵ月時の出血イベント、院内全死因死亡)などを評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は33歳、平均BMIは23.8kg/m2であった。・対象患者の既往歴は、糖尿病19例(4.6%)、出血の既往17例(4.1%)、先天性凝固異常17例(4.1%)、消化性潰瘍13例(3.2%)、高血圧症10例(2.4%)、脂質異常症7例(1.7%)などであった。・410例中110例(26.8%)は、肺塞栓症(PE)であり、300例(73.2%)は深部静脈血栓症(DVT)のみであった。・VTE発症時の妊娠週数の中央値は31週であった。・VTEの発生率は二峰性分布を示し、126例(30.7%)が妊娠初期(0~妊娠13週)にVTEを発症し、236例(57.6%)が妊娠後期(妊娠28週以降)にVTEを発症し、PEは妊娠後期に多くみられた。・抗凝固療法に関しては、374例(91.2%)には未分画ヘパリンが、18例(4.4%)には低分子量ヘパリン(LMWH、ダルテパリン:2例、エノキサパリン:16例)が投与された。・急性期治療について、血栓溶解療法は2例(0.5%)、下大静脈フィルター留置は17例(4.1%)が受けた。人工呼吸器管理は8例(2.0%)、ECMOは5例(1.2%)に使用された。・ 6ヵ月の追跡期間中、17例(4.1%)でVTEの再発が認められ、3例(0.7%)で頭蓋内出血および消化管出血を含む出血が発生した。・入院中に4例(1.0%)が死亡し、そのうち3例には帝王切開などの外科手術の既往があった。 本研究の限界として、データベースが急性期病院のデータに限定されているため、他の医療機関で治療された患者データが含まれていないこと、詳細な臨床データ(バイタルサイン、PE重症度、検査結果など)が不足していること、PEの過小診断の可能性、入院中のVTE再発を除外したことにより急性期の再発が過小評価されている可能性が挙げられている。 最後に、研究者らは「今回の検討にて、循環器系および産科の医師にとって参考となる妊娠関連のVTEの実態が明らかになった。また、その治療において、LMWHが欧米のガイドラインで推奨されているにもかかわらず、国内ではVTEに対するLMWHの使用が保険適用外であるため、未分画ヘパリンが大半に選択されている実情も明らかになった。この問題は今後対処されるべき」と結んでいる。

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第242回 糖尿病薬の適正使用について、医師と患者に注意喚起/PMDA

<先週の動き> 1.糖尿病薬の適正使用について、医師と患者に注意喚起/PMDA 2.百日咳患者が前年比3倍に急増、ワクチン接種と耐性菌対応が急務に/厚労省 3.国立大学病院の6割が赤字見通し、医師の働き方改革と物価高が直撃/国立大学病院長会議 4.子どもの数、過去最少に 出生数減少が深刻化/総務省 5.地方公務員の医師が無許可で副業、2,740万円報酬で免職/静岡県 6.「逆子」施術で医療事故、書類送検の医師に謝罪なし/京都府 1.糖尿病薬の適正使用について、医師と患者に注意喚起/PMDA近年、2型糖尿病治療薬として承認されているGLP-1受容体作動薬リラグルチド(商品名:ビクトーザ)およびGIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(同:マンジャロなど)を、痩身や美容目的で適応外使用するケースが急増しており、重大な健康被害も報告されている。これを受け、製薬企業各社および医薬品医療機器総合機構(PMDA)、日本糖尿病学会が相次いで注意喚起を行っている。これらの薬剤は、本来「2型糖尿病」に限定して承認されたものであり、減量や美容目的での使用は認められていない。また、肥満症の適用を取得しているGLP-1受容体作動薬セマグルチド(ウゴービ皮下注)についても、適用患者はBMI27以上で、2つ以上の肥満に関連する合併症(高血圧、脂質異常症、2型糖尿病、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、心血管疾患など)を有する、またはBMI35以上の成人の肥満症に対して、6ヵ月以上の食事療法・運動療法を行い、効果不十分の患者に処方可能とされている。実際、ダイエット目的で処方された患者が、嘔吐・下痢・意識喪失などの副作用を訴える事例も相次いでいる。オンライン診療や美容クリニックにおいて「簡単に痩せる薬」として紹介されて処方されるケースが多く、安易な使用が健康リスクを高めている。日本糖尿病学会は、適用外使用によって本来の患者への供給が妨げられる問題も深刻だとし、2023年11月に見解を改訂。不適切な広告や処方を厳しく戒め、医師による慎重な対応を求めている。また、PMDAは、承認効能外での使用を助長する広告や診療が確認された場合には、速やかに規制当局へ報告する体制をとると発表した。さらに、GLP-1作動薬を肥満症治療に用いるには、セマグルチドのように、厚生労働省が定めた適正使用推進ガイドラインに基づいて、施設側には専門医の所属あるいは専門医が所属する施設と適切な連携体制の確立のほか、常勤の管理栄養士による適切な栄養指導ができることが条件になっており、適切な処方が求められている。製薬会社、医療機関、学会のいずれもが「安全性と有効性が確認された範囲での適正使用」を強調しており、医療関係者および患者に対し、安易なダイエット目的での使用を控えるよう改めて強く呼びかけている。 参考 1) GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用に関するお知らせ(PMDA) 2) GLP-1受容体作動薬及び GIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用について(同) 3) 最適使用推進ガイドライン セマグルチド(厚労省) 4) GLP-1受容体作動薬および GIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解(糖尿病学会) 5) 糖尿病治療薬の「ダイエット薬」としての使用の危険性を改めて強調、医療関係者・患者ともに「適正な使用」に協力を!-PMDA(Gem Med) 6) GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用に関するお知らせ(ノボ) 7) 【GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬】ダイエット目的での使用に関する注意喚起について(リリー) 2.百日咳患者が前年比3倍に急増、ワクチン接種と耐性菌対応が急務に/厚労省国立健康危機管理研究機構(JIH)によれば、百日咳の感染が全国的に拡大していることが明らかになった。今年の累計患者数は5月初旬時点で1万1,921人に達し、前年(4,054人)の約3倍に上っている。4月21~27日の1週間だけで2,176人の新規患者が報告され、5週連続で過去最多を更新した。新潟県では感染者が全国最多となるなど、各地で過去に例のない規模で流行が続いている。百日咳は細菌による呼吸器感染症で、激しい咳が長期間続き、とくに生後6ヵ月未満の乳児が感染すると重症化して肺炎や脳症、死亡のリスクもある。主な感染経路は飛沫感染で、家庭や学校などでの拡大が指摘されている。今シーズンは、抗菌薬が効きにくい「耐性菌」の感染例も報告されており、治療が難航するケースもある。各自治体では手洗いやマスク着用など基本的な感染対策の徹底を呼びかけており、日本小児科学会は、生後2ヵ月以降の定期接種ワクチンの速やかな実施を推奨。宮城県では追加接種や妊婦へのワクチン接種で母子の抗体を高める対策も紹介されている。10代や小学生を中心とした感染の広がりが目立ち、学校などでの集団感染の可能性も懸念されている。大型連休明けの今後、さらなる拡大を防ぐには、予防接種と日常的な感染対策の両立が鍵となる。 参考 1) 百日せきの累計患者1万人超、5週連続最多…治療薬効きにくい耐性菌が広がったか(読売新聞) 2) 都内の百日咳報告数 連休で前週比3割減 132人、累計は1千人に迫る(CB news) 3) 百日せき ことしの患者が1万人超える 去年1年間の倍以上に(NHK) 4) 百日せき 症状や注意点は? 2025年は流行中 乳児は特に注意を 患者増加で過去最多5週連続に(同) 5) 百日せき感染状況MAP(同) 3.国立大学病院の6割が赤字見通し、医師の働き方改革と物価高が直撃/国立大学病院長会議国立大学病院長会議は2025年5月9日、全国42の国立大学病院のうち6割に当たる25病院が、2024年度決算で赤字になる見通しであると発表した。赤字総額は、前年度の約26億円から大幅に膨らみ、213億円に達する。国立大病院全体として赤字となるのは2年連続となり、経営の悪化が深刻化している。赤字の主な要因は、物価やエネルギー価格の上昇と、「医師の働き方改革」や人事院勧告対応に伴う人件費の急増。2023年度と比較して人件費は284億円増加した一方、診療報酬改定などによる増収は111億円に止まり、コスト増を賄いきれていない。診療材料や医薬品費も20~40%上昇し、高度な医療を提供すればするほど赤字が膨らむ構造となっている。加えて、診療報酬は公定価格で柔軟な調整が難しく、物価高騰に制度が追いついていない状況。赤字幅は一部基金による支援で抑えられたが、根本的な改善には至っていない。大鳥 精司会長(千葉大学病院長)は「診療数を増やしても材料費が高騰しており、やればやるだけ赤字になる」と語り、報酬の引き上げと財政支援の必要性を訴えている。現場ではすでに節約努力が限界に達しており、「あと1~2年で資金が枯渇する病院も出る」との懸念も示された。病院の経営悪化は大学本体の財政にも波及しかねず、国立大病院全体の存続に関わる危機として注視が必要だ。 参考 1) 国立大病院の6割が赤字見通し 2024年度「働き方改革」による人件費増や物価高影響(産経新聞) 2) 国立大病院213億円の赤字、24年度収支 6割の病院が赤字(CB news) 3) 国立大病院、6割が赤字 前年度を大幅に上回る 24年度決算(毎日新聞) 4.子どもの数、過去最少に 出生数減少が深刻化/総務省総務省が子どもの日にあわせて公表した統計によると、今年4月1日時点の15歳未満の子どもの数は1,366万人で、前年より35万人減少し、過去最少を更新した。減少は44年連続で、総人口に占める割合も11.1%と過去最低を記録している。1975年以降、51年連続で割合が低下しており、少子化の進行に歯止めがかかっていないことが鮮明になった。年齢別では、0~2歳が222万人(全体の1.8%)、3~5歳が250万人(2.0%)と、年少層ほど人口が少ない構造が続いている。将来的な労働力や社会保障の担い手が着実に減少していることがうかがえる。都道府県別でもすべての地域で子どもの数が前年を下回り、割合が最も高かったのは沖縄県の15.8%、最も低かったのは秋田県の8.8%だった。少子化は医療や社会保障、教育など多方面に影響を及ぼす。とくに医療では、出生数の減少とともに産婦人科や小児科の診療体制の維持が課題となっており、地方では分娩施設そのものが減少している現状がある。出生率は近年1.3%前後で推移しており、同時に65歳以上の高齢者が総人口の29%を超える中、医療ニーズの変化への対応も急務となっている。地域における出産医療の体制は、今後さらに集約・再編が進むとみられ、自治体による子育て支援や住環境整備といった包括的な政策とあわせて、医療資源の再配分と効率的な活用が要望されている。また、医療関係者にも、地域の実情を踏まえた持続可能な体制構築への関与が求められている。 参考 1) 我が国のこどもの数-「こどもの日」にちなんで-(総務省) 2) 15歳未満の子ども数は44年連続、人口に占める子どもの割合は51年連続で減少-総務省(Gem Med) 3) 子どもの数1,366万人、44年連続減で最低更新 1,400万人割る(日経新聞) 4) 15歳未満の子ども、人口の11.1%に 日本で進む人口危機(CNN) 5) 「世界一安全」な医療が崩れる!? 少子化に苦しむ“産婦人科”「出産費用の保険適用化」がもたらす“負”のシナリオとは(弁護士JPニュース) 6) 地元の病院で産めない…なぜ?いま何が?(NHK) 7) 子どもの数 44年連続減少 手厚い住宅支援に取り組む自治体も(同) 5.地方公務員の医師が無許可で副業、2,740万円報酬で免職/静岡県静岡県は2025年5月9日、健康福祉部の男性理事(62)を、地方公務員法に違反する無許可の兼業行為により懲戒免職とした。部長級職員の懲戒免職は県政史上初めてとなる。理事は、2019年10月~2024年12月までの約5年間、県外の複数の医療機関で診療業務に従事し、25の医療法人から計約2,740万円の報酬を得ていた。理事は県職員であることを伏せ、有給休暇などを使って少なくとも310日勤務。内部通報により発覚し、県が調査を進めたが、本人は一貫して否定。しかし、医療機関への聞き取りなどで事実が判明した。理事は2021年にも同様の無許可診療で文書訓告を受けていたが、再発し、反省もみられなかったことから、最も重い懲戒免職処分とされた。医師は医療提供体制や災害医療、医師確保事業の中核を担っており、県庁内では「県民への裏切り」との批判とともに「穴は大きい」との懸念も出ている。県は税務署や警察にも情報提供し、後任には地域医療課技監を専任配置した。地方公務員についても兼業を原則容認する国の方針はあるが、現状、地方公務員法第38条では今も営利活動には許可が必要であり、無許可の副業は懲戒対象となる。今回の事例は制度の運用とモラル両面での課題を浮き彫りにしている。 参考 1) 兼業許可得ず診療 医師免許持つ静岡県幹部職員を懲戒免職(NHK) 2) 静岡県理事を無許可兼業で懲戒免職…県外の医療機関に勤務、部長級の懲戒免職処分は県政史上初(読売新聞) 3) 副業で計2,740万円あまりの収入…医師免許を持つ県幹部が兼業許可を受けずに県外の医療機関で診療業務に従事し報酬得る 複数の医療法人から給与の受領も 事情聴取に事実を否定も懲戒免職(テレビ静岡) 4) 地方公務員の兼業について(総務省) 5) 地方公務員の兼業・副業促す 総務省が自治体に基準明示(日経新聞) 6.「逆子」施術で医療事故、書類送検の医師に謝罪なし/京都府京都第一赤十字病院(京都市東山区)で、「逆子」の胎児に対して行われた医療行為に関して、施術を担当した50代の男性医師が業務上過失傷害の疑いで京都府警に書類送検された。医師は2020年12月、当時妊娠中だった女性(当時37歳)に対し、腹部を圧迫して胎児を正常な向きに戻す「外回転術」を2度実施。その際、胎児が低酸素状態に陥ったにもかかわらず、緊急帝王切開などの適切な処置を怠った疑いが持たれている。その後、女性は別の医師による帝王切開で出産したが、生まれた男児(現在4歳)は脳の大部分に損傷を受け、脳性麻痺などの重度障害が残った。母親は2023年7月、医師を刑事告訴。京都府警が捜査を進めていた。病院側は「医療過誤があった」と認め、再発防止に取り組むとしているが、医師個人からの謝罪はなく、すでに同病院を退職し、他の医療機関に勤務しているという。母親は「息子の人生にどれほど重いものを残したか。正面から受け止めてほしい」「この件が医療の在り方を見直すきっかけになれば」とコメントしている。今回の事案は、出産医療におけるリスク対応と説明責任のあり方を問い直す事例となっている。 参考 1) 逆子の治療で重い障害負わせた疑い、医師を書類送検(朝日新聞) 2) 「逆子矯正」で胎児に障害、適切な処置怠った疑いで医師を書類送検(読売新聞) 3) 逆子の胎児を回転処置で低酸素状態に 帝王切開せず脳性まひなど障害残す 医師を書類送検(産経新聞)

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分娩後出血の最大原因、子宮収縮不全と特定/Lancet

 英国・バーミンガム大学のIdnan Yunas氏らは、システマティックレビューとメタ解析により、分娩後出血の原因で最も多くみられたのは子宮収縮不全であることを明らかにした。著者は、「この所見は、すべての出産した女性に対して予防的に子宮収縮薬を投与すべきという世界保健機関(WHO)の推奨を裏付けるものである」と述べている。分娩後出血の原因を明らかにすることは、適切な治療およびサービスの提供に必要であり、分娩後出血のリスク因子を知ることは、修正可能なリスク因子への対応を可能とする。研究グループは、分娩後出血の原因とリスク因子の特定および定量化を目的に本検討を行った。Lancet誌オンライン版2025年4月3日号掲載の報告。分娩後出血の発生率、リスク因子を評価 研究グループは、MEDLINE、Embase、Web of Science、Cochrane Library、Google Scholarにより、1960年1月1日~2024年11月30日に行われた分娩後出血のコホート研究を言語を問わず検索。2人以上の試験研究者が独立して、試験の選択、データ抽出、質の評価を行い、英語で入手できた住民ベースコホート研究を適格とした。 分娩後出血の発生率ならびにリスク因子に対する粗オッズ比(OR)および補正後ORを、ランダム効果モデルを用いて統合した。リスク因子は統合ORに基づき、関連性の強さ(弱い[OR>1~1.5]、中程度[OR>1.5]、強い[OR>2])で分類し評価した。子宮収縮不全70.6%、複数原因7.8% 年齢、人種または民族を問わない女性8億4,741万3,451例を対象とした327件の研究データを組み入れた。ほとんどの研究は方法論的な質が高かった。 分娩後出血の原因として報告された統合割合上位5つは、子宮収縮不全(70.6%[95%信頼区間[CI]:63.9~77.3]、83万4,707例、14研究)、産道損傷(16.9%[9.3~24.6]、1万8,449例、6研究)、胎盤遺残(16.4%[12.3~20.5]、23万5,021例、9研究)、胎盤の異常(3.9%[0.1~7.6]、2万9,638例、2研究)、血液凝固障害(2.7%[0.8~4.5]、23万6,261例、9研究)であった。 また、分娩後出血の原因を複数有する女性の統合割合は7.8%(95%CI:4.7~10.8、666例、2研究)であった。 分娩後出血の原因との関連性が強いリスク因子は、貧血、分娩後出血既往、帝王切開、女性器切除、敗血症、産前受診なし、多胎妊娠、前置胎盤、生殖補助医療の利用、出生体重4,500g超の巨大児、肩甲難産などであった。 分娩後出血の原因との関連性が中程度のリスク因子は、BMI値30以上、COVID-19、妊娠糖尿病、羊水過多、妊娠高血圧腎症、分娩前出血などであった。 分娩後出血の原因との関連性が弱いリスク因子は、黒人およびアジア人、BMI値25~29.9、喘息、血小板減少症、子宮筋腫、抗うつ薬の使用、分娩誘発、鉗子分娩、前期破水などであった。 これらの結果を踏まえて著者は、「分娩後出血との関連性が強いリスク因子に関する知識は、分娩後出血リスクの高い女性を特定するのに役立ち、それらの女性は強化された予防および治療の恩恵を受けることができるだろう」とまとめるとともに、分娩後出血の原因は複数で多重的に存在すると示されたことについて、「治療バンドルの活用が重要であることを裏付けるものである」と述べている。

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帝王切開は子どもの成長に影響しない?

 帝王切開(CD)で生まれた子どもと、長期的な健康や発達における悪影響との間には有意な関連はないとする研究結果が報告された。0.5~9歳までの全原因入院、肥満、発達マイルストーン(発達がどこまで進んでいるかという指標)といったさまざまな評価項目で有意な関連は認められなかったという。岡山大学大学院医歯薬学総合研究科疫学・衛生学分野の松本尚美氏らによるこの研究結果は、「Scientific Reports」に1月20日掲載された。 出産方法は長期的に見た場合、子どもの健康と発達に影響を及ぼすことが示唆されてきた。CDは、母子の安全確保のため、ある特定の臨床的状態のときに実施される。しかしながら、この外科的介入が子どもの身体的成長、認知発達、慢性疾患のリスクなどさまざまな側面に及ぼす潜在的な影響については現在も議論が続いている。松本氏らは、「日本産科婦人科学会周産期登録(PRN)データベース」にリンクされた「21世紀出生児縦断調査」を利用して、CDと子どもの健康および発達との関連を調査した。 本研究では、出生日、性別、出生時体重、出生時の母親の年齢、在胎週数の情報を使用し、PRNデータベースと21世紀出生児縦断調査を組み合わせた独自のデータセットを作成した。最終的に、2010年5月10日から5月24日に出生した2,114人(正常分娩群;1,351人、CD群;763人)を研究に含め、0.5~9歳までに発生した複数の転帰を評価した。 入院(呼吸器感染症と胃腸疾患による入院、および呼吸器感染症と胃腸疾患を含む全原因入院)は1.5~5.5歳までの調査で報告された0.5~5.5歳までの入院経験と定義。過体重・肥満は、世界保健機関(WHO)の基準に基づいたBMIスコアを用いて5.5歳と9歳で評価された。発達のマイルストーン(運動、言語、認知、自己制御、社会情緒、注意、適応能力、素行など)は2.5歳、5.5歳、8歳で評価された。 潜在的な交絡因子を調整して解析した結果、CDは全原因入院(調整リスク比1.25〔95%信頼区間0.997~1.56〕)、5.5歳(同1.05〔0.68~1.62〕)および9歳(0.83〔0.52~1.32〕)での過体重・肥満、およびさまざまな発達マイルストーンを含むほとんどの転帰と有意な関連は認められなかった。また、多胎出産および早産の状態別に層別化したサブグループ解析を行った結果、多胎出産ではいくつかの発達マイルストーンと、早産では胃腸疾患による入院といくつかの発達マイルストーンに、それぞれCDとの関連が高い傾向が認められたが、いずれも有意ではなかった。 本研究の結果について、研究グループは、「今回の研究で得られた知見は、子どもの親や医療従事者に安心感を与えるものではあるが、統計的に有意でないからといって、必ずしも臨床的に関連する影響がないことを意味するわけではない。今後の研究では、より長期間の追跡調査、サブグループ解析のためのサンプルサイズの拡大、腸内細菌叢の活性化など潜在的な媒介因子のより詳細な評価を検討すべきである」と総括した。なお、本研究の限界については、比較的小規模のサンプルサイズで日本の子どものみを対象としていること、高リスク妊娠の症例が多いデータセットであることから一般化できない点などを挙げている。

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妊娠糖尿病、メトホルミン±SU薬vs.インスリン/JAMA

 妊娠糖尿病治療において、経口血糖降下薬(メトホルミンおよび必要に応じてグリベンクラミドを追加)は、インスリンと比較して、在胎不当過大児の出生割合に関する非劣性基準を満たさなかった。オランダ・アムステルダム大学医療センターのDoortje Rademaker氏らが、無作為化非盲検非劣性試験の結果を報告した。妊娠糖尿病のコントロールにおいて、メトホルミンおよびグリベンクラミドの単剤投与はインスリンの代替として使用されているが、これらの経口血糖降下薬による治療がインスリン単独の治療と比較して、周産期アウトカムに関して非劣性であるかどうかは明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2025年1月6日号掲載の報告。在胎不当過大児の増加予防に関して非劣性であるかを検証 研究グループは、2016年6月~2022年11月にオランダの25医療センターで、経口血糖降下薬による治療戦略がインスリン療法に対して、在胎不当過大児の増加予防に関して非劣性であるかを検証した。最終フォローアップは2023年5月。 試験には、2週間の食事療法後に血糖コントロールが不十分(空腹時血糖値95mg/dL超[5.3mmol/L超]、食後1時間血糖値140mg/dL超[7.8mmol/L超]、食後2時間血糖値120mg/dL超[6.7mmol/L超]のいずれかとして定義)であった単胎妊娠16~34週の妊娠糖尿病患者820例が登録された。 被験者は、メトホルミン(1日1回500mgで開始し、3日ごとに1日2回1,000mgまたは最大許容量まで増量、409例)またはインスリン(試験施設の処方による、411例)による治療を受ける群に無作為に割り付けられた。メトホルミン群では必要に応じてグリベンクラミドを追加投与した。その後、必要に応じてグリベンクラミドに代えてインスリンを用いた。 主要アウトカムは、在胎不当過大児(在胎期間と性別に基づく出生体重が90パーセンタイル超)の割合の群間差であった。副次アウトカムは、母体の低血糖、帝王切開、妊娠高血圧症候群、妊娠高血圧腎症、母体の体重増加、早産、分娩損傷、新生児の低血糖、新生児の高ビリルビン血症、新生児集中治療室(NICU)入室などであった。在胎不当過大児は経口血糖降下薬群23.9%、インスリン療法群19.9% 被験者820例のベースライン(試験登録時)の平均年齢は33.2(SD 4.7)歳、妊娠時BMI値30.4(6.2)、35%が初産であった。アウトカムの解析(per protocol解析)には、同意を得られなかった被験者、追跡データを得られなかった被験者を除外した、経口血糖降下薬群406例、インスリン療法群398例が対象に含まれた。 試験期間中、インスリンを使用せずに経口血糖降下薬のみ(メトホルミン単剤および必要に応じてグリベンクラミド追加)で血糖コントロールを維持したのは320例(79%)であった。 新生児における在胎不当過大児の割合は、経口血糖降下薬群23.9%(97例)、インスリン療法群19.9%(79例)であり(絶対リスク差:4.0%、95%信頼区間[CI]:-1.7~9.8、非劣性のp=0.09)、絶対リスク差の95%CI値は非劣性マージンの8%を超えていた。 母体の低血糖は、経口血糖降下薬群53例(20.9%)、インスリン療法群26例(10.9%)であった(絶対リスク差:10.0%、95%CI:3.7~21.2)。その他の副次アウトカムは、群間差は認められなかった。

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便失禁を起こしやすい患者とは?便失禁診療ガイドライン改訂

 日本大腸肛門病学会が編集を手掛けた『便失禁診療ガイドライン2024年版改訂第2版』が2024年10月31日に発刊された。2017年に発刊された初版から7年ぶりの改訂となる。今回、便失禁の定義や病態、診断・評価法、初期治療から専門的治療に至るまでの基本的知識がアップデートされ、新たに失禁関連皮膚炎や出産後患者に関する記載が拡充された。また、治療法選択や専門施設との連携のタイミングなど、判断に迷うテーマについてはClinical Question(CQ)で推奨を示し、すべての医療職にとっての指針となるように作成されている。 便失禁の定義とは「無意識または自分の意思に反して肛門から便が漏れる症状」である。このほかに「無意識または自分の意思に反して肛門からガスが漏れる症状」をガス失禁、便失禁とガス失禁を合わせて肛門失禁と定義される。国内での有病率について、65歳以上での便失禁は男性8.7%、女性6.6%である。一方、ガス失禁を含む肛門失禁は34.4%であるが、男性15.5%に対して女性42.7%と性差が見られる。主な便失禁の発症リスク因子として、年齢・性別などの身体的条件や産科的条件に加え、BMIが30を超える肥満、全身状態不良、身体制約などが報告されている。また、過敏性腸症候群や炎症性腸疾患、糖尿病、過活動膀胱、骨盤臓器脱、認知症や脊髄損傷といった疾患もリスク因子となる。直腸がんも便失禁の原因になりうるが、とくに直腸がんに対する肛門温存手術後の排便障害である低位前方切除後症候群の発生率は高率で、主訴の直腸がんが根治した後に排便障害を抱えて生活している患者は増加傾向であるという。 このような病態背景があるなか、本診療ガイドラインは「便失禁診療・ケアを普及することで、便失禁症状を改善し、便失禁を有する患者の生活の質の改善」を目的として、便失禁の診断・治療とともに便失禁の程度とその状態の評価、便失禁に伴う皮膚症状や生活の質への評価と対応、寝たきりとなっている患者への介護などの側面からも捉え、8つの重要臨床課題と5つのClinical Question(CQ)が設定されている。<重要臨床課題>(1)便失禁の臨床評価(2)特殊病態の臨床評価(3)治療方針決定に必要な検査(4)食事・生活・排便習慣指導の有用性(5)薬物療法の適応と有用性(6)骨盤底筋訓練・バイオフィードバック療法の適応と有用性(7)洗腸療法の適応と有用性(8)手術療法の適応と有用性<Clinical Question>CQ1:便失禁の薬物療法において、ポリカルボフィルカルシウムとロペラミド塩酸塩はどのように使い分けるか?CQ2:出産後に便失禁が発症した場合、専門施設への最適な紹介時期はいつか?CQ3:分娩時肛門括約筋損傷の既往を有する妊婦の出産方法として、経腟分娩と帝王切開のどちらが推奨されるか?CQ4:肛門括約筋断裂による便失禁に対して、肛門括約筋形成術と仙骨神経刺激療法のどちらを先行すべきか?CQ5:脊髄障害を原因とする便失禁の治療法として、仙骨神経刺激療法は有用か? なお、日本大腸肛門病学会は本ガイドラインの使用について、便失禁を診療する医師だけではなくケアを行う介護者や一般市民も想定しており、便失禁診療の一助となることを願っているという。

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妊娠中のビタミンD摂取は子どもの骨を強くする

 妊娠中のビタミンDの摂取は、子どもの骨と筋肉の発達に良い影響をもたらすようだ。英サウサンプトン大学MRC Lifecourse Epidemiology CentreのRebecca Moon氏らによる研究で、妊娠中にビタミンDのサプリメントを摂取した女性の子どもは、摂取していなかった女性の子どもに比べて、6〜7歳時の骨密度(BMD)と除脂肪体重が高い傾向にあることが明らかにされた。この研究結果は、「The American Journal of Clinical Nutrition」11月号に掲載された。Moon氏は、「小児期に得られたこのような骨の健康への良い影響は、一生続く可能性がある」と話している。 ビタミンDは、人間の皮膚が日光(紫外線)を浴びると生成されるため「太陽のビタミン」とも呼ばれ、骨の発達と健康に重要な役割を果たすことが知られている。具体的には、ビタミンDは、丈夫な骨、歯、筋肉の健康に必要なミネラルであるカルシウムとリン酸のレベルを調節する働きを持つ。 今回の研究では、妊娠14週未満で単胎妊娠中の英国の妊婦(体内でのビタミンDの過不足の指標である血液中の25-ヒドロキシビタミンD濃度が25~100nmol/L)を対象に、妊娠中のビタミンD摂取と子どもの骨の健康との関連がランダム化比較試験により検討された。対象とされた妊婦は、妊娠14~17週目から出産までの期間、1日1,000IUのコレカルシフェロール(ビタミンDの一種であるビタミンD3)を摂取する群(介入群)とプラセボを摂取する群(対照群)にランダムに割り付けられた。これらの妊婦から生まれた子どもは、4歳および6~7歳のときに追跡調査を受けた。 6〜7歳時の追跡調査を受けた454人のうち447人は、DXA法(二重エネルギーX線吸収法)により頭部を除く全身、および腰椎の骨の検査を受け、骨面積、骨塩量(BMC)、BMD、および骨塩見かけ密度(BMAD)が評価された。解析の結果、介入群の子どもではプラセボ群の子どもと比較して、6〜7歳時の頭部を除く全身のBMCが0.15標準偏差(SD)(95%信頼区間0.04~0.26)、BMDが0.18SD(同0.06~0.31)、BMADが0.18SD(同0.04~0.32)、除脂肪体重が0.09SD(同0.00~0.17)高いことが明らかになった。 こうした結果を受けてMoon氏は、「妊婦に対するビタミンD摂取による早期介入は、子どもの骨を強化し、将来の骨粗鬆症や骨折のリスク低下につながることから、重要な公衆衛生戦略となる」と述べている。 では、妊娠中のビタミンD摂取が、どのようにして子どもの骨の健康に良い影響を与えるのだろうか。Moon氏らはサウサンプトン大学のニュースリリースで、2018年に同氏らが行った研究では、子宮内の余分なビタミンDが、「ビタミンD代謝経路に関わる胎児の遺伝子の活動を変化させる」ことが示唆されたと述べている。さらに、2022年に同氏らが発表した研究では、妊娠中のビタミンD摂取により帝王切開と子どものアトピー性皮膚炎のリスクが低下する可能性が示されるなど、妊娠中のビタミンD摂取にはその他のベネフィットがあることも示唆されているという。

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ナロキソン併用で、オピオイド使用障害妊婦と新生児の転帰改善の可能性/JAMA

 米国では過去20年間に、一般市民におけるオピオイド使用障害の増加に伴い、妊婦での本疾患の発生も著明に増えているが、併用薬の周産期の安全性データが不十分であるためブプレノルフィンの単独投与が推奨されている。米国・ハーバード大学医学大学院のLoreen Straub氏らは、妊娠初期のブプレノルフィン単剤投与と比較してブプレノルフィンとナロキソンの併用投与は、新生児および母体の転帰が同程度か、場合によってはより良好であり、オピオイド使用障害の安全な治療選択肢であることを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年8月12日号に掲載された。米国のコホート研究 研究グループは、出産前のブプレノルフィンとナロキソン併用投与による周産期の転帰の評価を目的に、人口ベースのコホート研究を行った(米国国立薬物乱用研究所[NIDA]の助成を受けた)。 解析には、2000~18年の米国のメディケイド受給者の医療利用データを用いた。妊娠第1三半期に、ブプレノルフィン+ナロキソンの併用投与を受けた妊婦3,369例(平均年齢28.8[SD 4.6]歳)と、ブプレノルフィン単剤または併用からブプレノルフィン単剤投与に切り替えた妊婦5,326例(28.3[4.5]歳)を対象とした。 新生児では、13の主な臓器特異的先天奇形(腹壁、中枢神経系、眼、耳、消化器、生殖器、四肢など)と心奇形のほか、低出生体重、新生児薬物離脱症候群、新生児集中治療室入室、早産、呼吸器症状、在胎不当過小について評価し、母体の転帰として帝王切開による分娩と重度の疾患(分娩後30日以内の急性心不全、急性腎不全、急性肝疾患、急性心筋梗塞、急性呼吸窮迫症候群/呼吸不全、播種性血管内凝固/凝固障害、昏睡、せん妄、産褥期脳血管障害など)への罹患を検討した。新生児薬物離脱症候群のリスクが低い、母体の重度疾患は同程度 ブプレノルフィン+ナロキソン併用群はブプレノルフィン単剤群に比べ、新生児薬物離脱症候群(絶対リスク:37.4% vs.55.8%、重み付け相対リスク:0.77[95%信頼区間[CI]:0.70~0.84])のリスクが低く、新生児集中治療室入室(30.6% vs.34.9%、0.91[0.85~0.98])および在胎不当過小(10.0% vs.12.4%、0.86[0.75~0.98])のリスクはわずかだが低かった。 母体の重度疾患の発生率は両群で同程度だった(絶対リスク:2.6% vs.2.9%、重み付け相対リスク:0.90[95%CI:0.68~1.19])。主な先天奇形や心奇形、帝王切開のリスクには差はない 主な先天奇形(絶対リスク:5.2% vs.5.1%、重み付け相対リスク:0.95[95%CI:0.73~1.25])、心奇形(1.4% vs.1.3%、1.06[0.62~1.82])、低出生体重(8.5% vs.7.6%、1.07[0.91~1.25])、早産(14.9% vs.13.1%、1.06[0.94~1.19])、呼吸器症状(12.7% vs.11.4%、1.04[0.91~1.18])、および帝王切開(35.0% vs.32.7%、1.05[0.98~1.12])のリスクには両群間に差を認めなかった。 著者は、「これらの知見は、両薬剤とも妊娠中のオピオイド使用障害治療の妥当な選択肢であるとの見解を支持し、併用治療における意思決定の柔軟性を肯定するものである」としている。

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手術部位感染予防、ポビドンヨードvs.クロルヘキシジン/JAMA

 心臓手術または腹部手術後の手術部位感染(SSI)の予防において、術前の皮膚消毒薬としてのポビドンヨードのアルコール溶液はクロルヘキシジングルコン酸塩のアルコール溶液に対し非劣性で、心臓と腹部の手術のいずれにおいてもSSI発生率に有意な差はないことが、スイス・バーゼル大学のAndreas F. Widmer氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年6月17日号で報告された。スイス3施設のクラスター無作為化クロスオーバー非劣性試験 本研究は、スイスの3つの大学病院で実施したクラスター無作為化クロスオーバー非劣性試験であり、2018年9月~2020年3月の期間に患者を登録した(スイス国立科学財団[SNSF]の助成を受けた)。 心臓または腹部の待機的手術が予定されている成人患者を対象とした。各施設は、連続18ヵ月間にわたり、毎月、ポビドンヨードまたはクロルヘキシジングルコン酸塩のいずれかのアルコール溶液を使用する群(クラスター)に無作為化された。治療の割り付け情報は、アウトカムの評価者や各施設の責任医師、統計解析の担当者などにはマスクされたが、試験薬の固有の色の違いのため患者と外科医のマスクは不可能だった。 主要アウトカムは、腹部手術後30日以内のSSIと心臓手術後1年以内のSSIの発生とした。非劣性マージンは2.5%に設定した。SSI発生率:5.1% vs.5.5% 3,360例を登録し、ポビドンヨード群に1,598例(26クラスター)、クロルヘキシジングルコン酸塩群に1,762例(26クラスター)を割り付けた。平均年齢は、いずれの群も65.0歳で、女性はそれぞれ32.7%および33.9%であった。 SSIは、ポビドンヨード群で1,570例中80例(5.1%)、クロルヘキシジングルコン酸塩群で1,751例中97例(5.5%)に発生し、群間差は0.4%(95%信頼区間[CI]:-1.1~2.0)であり、CIの下限値は事前に規定した非劣性マージン(-2.5%)を超えておらず、ポビドンヨード群はクロルヘキシジングルコン酸塩群に対して非劣性であった。 クラスタリングで補正しても結果は同様であった。また、クロルヘキシジングルコン酸塩群に対するポビドンヨード群の未補正の相対リスク(RR)は0.92(95%CI:0.69~1.23)だった。SSIの3種の深さでも、有意な差はない 心臓手術におけるSSI発生率はポビドンヨード群で高く(4.2% vs.3.3%、RR:1.26、95%CI:0.82~1.94)、腹部手術では同群で低かった(6.8% vs.9.9%、0.69、0.46~1.02)が、いずれも有意な差を認めなかった。 また、SSIの深さ別の解析では、表層切開創(ポビドンヨード群2.1% vs.クロルヘキシジングルコン酸塩群1.7%、RR:1.22、95%CI:0.74~2.01)、深部切開創(1.0% vs.1.2%、0.84、0.43~1.63)、臓器・体腔(1.9% vs.2.3%、0.81、0.51~1.30)のいずれにおいても、SSI発生率に関して両群間に有意な差はなかった。 著者は、「本試験では、退院後の患者の追跡調査がきわめて良好で、アウトカムが適切に特定されたことが重要である」と述べつつ、「2021年のメタ解析では、ポビドンヨードは整形外科手術や腹部手術に適しているが、帝王切開にはあまり適さない可能性があるとの仮説が提示され、外科的介入の種類も消毒薬の効果に影響を及ぼす可能性が示唆されている」と指摘している。

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第200回 相次ぐ往診サービスの終了、診療報酬改定の影響で経営困難に

<先週の動き>1.相次ぐ往診サービスの終了、診療報酬改定の影響で経営困難に2.美容医療トラブル急増、消費者保護のために規制強化へ/厚労省3.新たに3大学が心臓移植に参入、移植医療の逼迫改善を目指す4.紅麹サプリ問題、新たに76人の死亡例が判明/厚労省5.森光 敬子氏を医政局長に起用、初の女性医政局長が誕生/厚労省6.出産費用の保険適用へ議論開始、妊婦の負担軽減を目指す/厚労省1.相次ぐ往診サービスの終了、診療報酬改定の影響で経営困難に夜間や休日の往診サービスを提供する医療スタートアップが、2024年度の診療報酬改定により相次いで事業の縮小やサービスの提供を終了している。今春の診療報酬改定により往診報酬が大幅に減額されたことが、主な原因とされている。「キッズドクター」を運営するノーススターは、5月までに往診サービスを終了し、オンライン診療や健康相談に特化する方針を示した。また、「コールドクター」も3月末で往診サービスから撤退し、オンライン診療と医療相談にシフトしている。さらに、「家来るドクター」は、往診エリアの縮小と料金の引き上げを行い、最大手の「ファストドクター」も自己負担額を引き上げることを決定した。これらの事業者は、新型コロナウイルス感染症の影響下で自宅療養者の急増に対応し、往診サービスを拡大してきた。しかし、今回の診療報酬改定では「普段訪問診療を受けていない患者への夜間・休日の往診」が厳しく見直され、報酬が大幅に減額された。最も報酬が高い「深夜往診加算」は従来の2万3,000円から4,850円に減額されるケースもある。これら改定の結果、往診サービスの提供が経済的に困難となり、多くの事業者が撤退を余儀なくされている。ファストドクターの菊池 亮社長は「改定により往診サービスが縮小すると救急医療の負担増加につながる可能性がある」と懸念を示している。一方、往診サービスを頼りにしてきた自治体では、診療報酬改定の影響で公共サービスとしての往診の見直しが迫られている。とくに、高齢化が進み医療機関が少ない地域では、往診サービスの縮小が医療体制に深刻な影響を与える可能性がある。東京都医師会理事の西田 伸一医師は「今回の改定は不要な往診を減らすことが目的だが、在宅医療の充実には夜間・休日の往診サービスに特化した事業者も必要」と述べ、医療財源の最適化と救急医療のバランスが課題であると指摘している。参考1)夜間休日往診サービス、撤退・縮小相次ぐ 診療報酬減で(日経新聞)2)“往診サービス”続々終了、利用者負担増 理由は「診療報酬改定」?(withnews)2.美容医療トラブル急増、消費者保護のために規制強化へ/厚労省厚生労働省は、美容医療に関するトラブルが急増していることを受け、6月27日に「美容医療の適切な実施に関する検討会」の初会合を開催した。検討会では、やけどや皮膚障害などの健康被害に関する相談が、2018~2023年度にかけて倍増し、2023年度には796件に達したことが報告された。相談件数は、新型コロナウイルス感染症の影響で一時的に減少したものの美容医療の施術回数も急増しており、2022年度には373万件を超え、とくに非外科的手技が大幅に増加していた。一方で、美容医療に従事する医師の数も増加し、おもに若い世代の医師が多くを占めていた。消費者庁によれば、美容医療サービスに関する相談件数は2019年度の2,036件から2023年度には6,264件に増加がみられており、具体的なトラブルの例として、脱毛後にシミが残ったり、リフトアップ後に神経麻痺が生じたりするケースについて報告があった。また、料金トラブルも多く、たとえば発毛治療の費用が予想以上に高額になることがある。美容医療の多くは自由診療であり、料金や診療内容の妥当性を審査する制度がないことが問題視されている。これに対し、厚労省では、ガイドラインの策定やルール作りの必要性を議論しており、年内を目途に取りまとめを行う予定。さらに、医師資格を持たない者が施術を行うケースや、医師不在のクリニックでのトラブルも指摘され、これらの問題に対する対策が求められている。消費者が被害を避けるために、消費者庁などは美容医療を受ける前に確認すべきチェックリストを作成し、リスクや副作用を十分に理解した上で医療機関を選ぶことを推奨している。厚労省の検討会では、医療行為に関する法的な線引きや、モラルに欠ける医師に対する取り締まりの強化を議論し、美容医療に関する安全性の向上を目指し、年内にも報告書をまとめる方針となっている。参考1)第1回美容医療の適切な実施に関する検討会(厚労省)2)美容医療「危害」の相談倍増、5年間で やけどや皮膚障害など(CB news)3)“美容医療で健康被害” 対策話し合う検討会 議論開始 厚労省(NHK)4)美容医療巡る健康被害、国が対策議論 医師不在の事例も(日経新聞)3.新たに3大学が心臓移植に参入、移植医療の逼迫改善を目指す6月27日、東京医科歯科大学、岡山大学、愛媛大学が新たに心臓移植を実施する方針を発表した。日本心臓移植学会の調査では、2023年に心臓移植を断念せざるを得なかった例が16件あり、移植施設の人員や病床不足が原因となっていた。3大学の参入により、全国の心臓移植施設は14ヵ所に増え、医療体制の逼迫解消が期待される。東京医科歯科大学は、東京大学と近距離にあり、東京大学での移植断念例が多い現状を踏まえ、東大との連携を視野に入れている。今年10月には東京工業大学と統合し、新大学「東京科学大学」として心臓移植を実施することで、実力のアピールを図る狙いもある。岡山大学は現在、肺、肝臓、腎臓の移植を行っており、心臓移植施設となれば中国地方で唯一の存在となる。愛媛大学は、四国初の心臓移植施設として登録され、現在は実施に向けた準備を進めている。心臓移植を行うには、日本循環器学会などの協議会の推薦を受け、日本医学会の委員会で選定される必要がある。さらに、臓器あっせん機関「日本臓器移植ネットワーク(JOT)」に登録されることが必要条件。東京医科歯科大学と岡山大学は、来年度にも申請を予定し、愛媛大学はすでに登録を完了している。心臓移植に詳しい福嶌 教偉氏(千里金蘭大学長)は、「移植施設が増え、待機患者の偏りが緩和されれば、臓器の受け入れを断念する問題を解決する一助となる」と期待を寄せる。医療機関の多くは収益性が低いため、心臓移植に新たに参入する動きが鈍かったが、今回の3大学の参入は移植を待つ患者にとっては朗報となる。厚生労働省も移植医療体制の強化に向け、待機患者が複数の施設に登録できる仕組みを進める方針を示している。これにより、東大で受け入れが難しい場合、連携する東京医科歯科大学で手術を受けるなどの選択肢が増えることが期待されている。参考1)心臓移植断念の防止へ一歩、3大学が参入へ…収益性低く国公立に偏り(読売新聞)2)心移植に東京医科歯科・岡山・愛媛の3大学参入へ…医療のひっ迫改善に期待(同)3)四国初 愛媛大附属病院が心臓移植施設に認定(NHK)4.紅麹サプリ問題、新たに76人の死亡例が判明/厚労省小林製薬が販売する「紅麹」サプリメントを巡る健康被害問題で、摂取との関連性が疑われる死者数が新たに76人に上ることが判明した。同社は3月に5人と公表して以来、厚生労働省への報告を怠っており、今回の発覚は厚労省からの問い合わせが契機となった。厚労省は、6月13日に小林製薬に問い合わせた際、「新たな死亡事例はない」との回答を受けたが、翌14日に「調査中の事例がある」と一転して報告があった。最終的に27日に170人の死者についての相談が寄せられていることが明らかになり、28日のうち76人について調査中と報告された。これに対し、武見 敬三厚労相は記者会見で「小林製薬だけに任せておけない」と不信感を示し、今後は厚労省が詳細な指示を出す方針を明らかにした。小林製薬は、これまでは腎疾患と診断されたケースのみを報告対象としていたと説明したが、厚労省は3月の時点で因果関係が不明でも早急に報告するようにと指示していた。消費者庁はこれを受けて、機能性表示食品制度の見直しを進め、9月1日から健康被害情報の報告を義務化する方針を示している。今回の問題をきっかけに、政府は機能性表示食品の製造・販売事業者に対し、医師の診断がある健康被害情報を因果関係にかかわらず速やかに報告することを義務付ける再発防止策を決定した。また、食品表示基準も改正され、2026年9月からはパッケージ表示に「国による評価を受けていない」「医薬品ではない」などの記載が義務化される予定。小林製薬の対応について、消費者問題のある専門家は「消費者を軽んじている」と指摘し、情報開示と透明性の確保が欠かせないと批判している。また、台湾では30人が同社に対して集団訴訟を起こす予定であり、同社への批判は国際的にも広がっている。参考1)小林製薬またも後手 「紅麹」死亡疑い76人、国に報告せず(日経新聞)2)厚労省の問い合わせで発覚=小林製薬側から報告なし-紅麹問題(時事通信)3)「小林製薬だけに任せられない」 3月にも問題視された報告漏れ(毎日新聞)4)「紅麹」死者調査の報告3月以降なし、武見厚労相「もう任せておけない」…小林製薬「確認を重視」と釈明(読売新聞)5.森光 敬子氏を医政局長に起用、初の女性医政局長が誕生/厚労省2024年6月28日に厚生労働省は、新たな事務次官に伊原 和人保険局長を起用する人事を発表した。発令は7月5日付で、現次官の大島 一博氏は退官する。伊原氏は、東京大学法学部卒業後、1987年に旧厚生省に入省し、厚労省政策企画官、大臣官房総務課企画官、健康局総務課長、医政局長などを歴任し、2022年より現職。今回の人事では、医政局長に森光 敬子危機管理・医務技術総括審議官が就任することも発表された。森光氏は、佐賀医科大学医学部を卒業後、1992年に旧厚生省に入省。医薬安全局監視指導課医療監視専門官や厚労省保険局医療課長などを歴任し、2023年9月から現職を務めていた。森光氏の就任により、医政局長に女性が初めて就任することになる。さらに、保険局長には鹿沼 均政策統括官(総合政策担当)が起用される。鹿沼氏は、東京大学経済学部卒業後、1990年に旧厚生省に入省し、保険局総務課長や大臣官房審議官(医療保険担当)、首相秘書官などを歴任してきた。今回の人事発表について、武見 敬三厚労相は「適材適所の人事」と評価しつつ、女性幹部のさらなる登用に努める考えを示した。参考1)厚労事務次官に伊原和人氏起用へ 医政局長など歴任(CB news)2)医政局長に森光敬子氏を起用へ、女性初 保険局長は鹿沼均氏 厚労省人事(同)3)厚労次官に伊原氏(日経新聞)6.出産費用の保険適用へ議論開始、妊婦の負担軽減を目指す/厚労省厚生労働省は、2026年度からの出産費用の保険適用について話し合う有識者検討会の初会合を6月26日に開催した。現在、出産費用は帝王切開などを除き保険適用外であり、国が「出産育児一時金」として原則50万円を支給している。検討会では、保険適用の範囲や全国一律の公定価格の在り方などを議論し、来春を目途に妊産婦の経済的負担軽減策の方向性をまとめる予定。この検討は少子化対策の一環として進められており、2022年度時点の出産費用の全国平均額は約48万2,000円で、都道府県別では最も低い熊本県が約36万円、最も高い東京都が約60万円となり、地域間格差が顕著となっている。保険適用により、出産費用の地域差を縮小し、経済的負担を軽減することが期待される。会合では、保険適用による医療機関の経営悪化を懸念する声が上がったほか、産婦人科医の一部からは、保険適用によって減収となり、分娩を取り扱う医療機関が減少する可能性が指摘された。これを受け、厚労省は出産を担う病院やクリニックの経営実態を調査し、適切な診療報酬の設定を検討する方針を確認した。現在、正常分娩で出産育児一時金が支給されているが、一時金の増額に伴い、医療機関の出産費用も上昇しているため、十分な負担軽減につながっていないとの指摘がある。2022年度の正常分娩の平均費用は54万円で、10年間で12%上昇した。検討会では、出産費用の保険適用によって「天井知らず」の出産費用に歯止めをかけることが狙いだが、産科医側は自由な料金設定ができなくなることによる経営悪化を懸念している。出産は昼夜関係なく発生するため、夜間の受け入れ体制も整える必要があり、医師の働き方改革も考慮しなければならない。今後の議論のポイントは大きく4つある。1つ目は保険適用時の診療報酬設定であり、高めの報酬を求める声があるが、費用抑制の目的から逸脱しないようにする必要がある。2つ目は保険適用の範囲であり、無痛分娩や助産所での出産の扱いを議論する必要がある。3つ目は妊婦側の費用負担であり、自己負担が発生しない仕組みを求める声がある。最後に、給付を増やす場合の財源に関する議論も重要である。厚労省では、2025年春を目途に検討会としての意見をまとめ、2026年度から自己負担を求めない方向にする予定。参考1)第1回「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」資料(厚労省)2)出産費用、保険適用で初会合 妊婦の自己負担焦点に(日経新聞)3)出産費用への医療保険適用巡り初会合 厚労省、26年度から自己負担求めない方向で検討(産経新聞)4)自己負担分は?閉院可能性など影響指摘も 出産の保険適用で検討会(朝日新聞)5)分娩医療機関が24年間でほぼ半減 産婦人科医は増加、厚労省集計(CB news)

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帝王切開で生まれた児は2回の麻疹ワクチン接種が必要

 帝王切開で生まれた児は、初回の麻疹ワクチン接種だけでは予防効果を得にくいようだ。新たな研究で、経膣分娩で生まれた児に比べて帝王切開で生まれた児では、初回の麻疹ワクチン接種後に免疫を獲得できないワクチン効果不全に陥る可能性が2.6倍も高いことが示された。英ケンブリッジ大学遺伝学分野のHenrik Salje氏らによるこの研究結果は、「Nature Microbiology」に5月13日掲載された。 研究グループは、「麻疹ウイルスは感染力が非常に強く、たとえワクチン効果不全率が低くてもアウトブレイク発生のリスクはかなり高くなる」と説明する。麻疹は、鼻水や発熱などの風邪に似た初期症状が生じた後に特徴的な発疹が現れる。重症化すると失明、発作などの重篤な合併症を引き起こしたり、死に至ることもある。1963年にワクチン接種が導入される以前は、麻疹により毎年推定260万人が死亡していた。 この研究では、中国の母親と新生児から成るコホートと小児コホートの2つのコホートから抽出された0歳から12歳の小児1,505人の血清学的データと実証モデルを用いて、出生後の抗体の推移を調べた。これらの試験対象者は、ベースライン時とその後6回の追跡調査時(新生児コホートでは生後2・4・6・12・24・36カ月時、小児コホートでは2013〜2016年の間にほぼ6カ月おき)に静脈血を採取されていた。 その結果、対象児ごとの差異はあるものの、出生時からワクチン接種後までの麻疹ウイルスに対する抗体レベルの変化を、かなり正確に予測できることが明らかになった。また、経膣分娩で生まれた児と比べて帝王切開で生まれた児では、初回の麻疹ワクチン接種がワクチン効果不全になるオッズが2.56倍であることも示された。初回接種後にワクチン効果不全が確認された児の割合は、帝王切開で生まれた児で12%(16/133人)であったのに対し、経膣分娩で生まれた児では5%(10/217人)であった。しかし、初回接種後にワクチン効果不全が確認された児でも、2回目の接種後には強固な免疫反応が認められた。 Salje氏は、「この研究により、帝王切開か経膣分娩かという分娩法の違いが、成長過程で遭遇する疾患に対する免疫力に長期的な影響を及ぼすことが明らかになった」と述べている。同氏は、「多くの児が麻疹ワクチンを2回接種していないことが分かっている。2022年に麻疹ワクチン接種を1回しか受けていなかった児の数は世界で83%に上り、これは2008年以降で最低の数字だ。そのような状態は、本人のみならず周囲の人にも危険をもたらしかねない」と危惧を示し、「帝王切開で生まれた児は、われわれが確実にフォローアップして、麻疹ワクチンの2回目接種を受けさせるようにするべきだ」と述べている。 帝王切開で生まれた児でワクチン効果不全に陥る可能性が高い理由について、研究グループは、腸内マイクロバイオームの違いによるものではないかと推測している。経膣分娩では、母親からより多様なマイクロバイオームが児に移行する傾向があり、それが免疫系に保護的に働く。Salje氏は、「帝王切開で生まれた児では、経膣分娩で生まれた児のように母親のマイクロバイオームにさらされることはないため、腸内細菌叢の発達に時間がかかる。このことが、ワクチン接種後のプライミング効果を低下させていると考えられる」との考えを示している。

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sFlt-1/PlGFの繰り返し検査は妊娠高血圧腎症に伴う新生児合併症率を低下させず(解説:前田裕斗氏)

 Soluble fms-like tyrosine kinase-1(sFlt-1)と血管新生因子、とくに placental growth factor(PlGF)を用いた検査は、妊娠中から後期にかけて妊娠高血圧腎症が疑われる妊婦について1週間以内の発症可能性を予測するための検査であり、日本でも妊娠18週から36週未満の間に、原則一連の妊娠に対して1回のみ算定することができる。今回のPARROT-2試験の前身であるPARROT試験では、PlGFベースの検査結果を診療に利用する群で妊娠高血圧腎症の診断までの期間が有意に早くなり、母体合併症の有意な減少を認めた。PARROT-2試験ではPlGFベースの検査を繰り返し行い、結果を利用しながら管理する群と管理に検査結果を利用しない群で新生児合併症を主要評価項目としてランダム化比較試験が行われた。 結果としては、PlGFベースの検査結果を繰り返し利用した群では新生児合併症・母体の重篤な有害転期は減少せず、分娩時の妊娠期間が短縮し、妊娠34週以前の早産・帝王切開が有意に増加した。 本研究はPlGFベースの検査を繰り返し利用することを支持しない結果であった。手法はランダム化比較試験であり、共変量も十分な項目が考慮されている。研究参加者のアジア人割合が12%と低い点は日本に結果を応用するうえでは気になるが、信頼性の高い研究である。主要評価項目の結果以外に、Figure 3で示された初回から最後までのPlGFベースの検査結果の推移にも注目したい。本研究では2種類の検査が利用されたが、どちらの検査でも初回に異常を検出した場合、その後の検査結果は約95%で異常のままであった。これらの結果を踏まえれば、初回で検査結果が異常であった例についてはそれ以上検査を行う意味はなく、逆に無用な介入を増やす可能性があるといえる。一方、初回検査結果が正常であったがその後異常となる割合は約30~40%であり、これらの症例については今後、PlGFベースの検査を繰り返し行う管理方法を検討する余地があるといえるだろう。 日本ではまだsFlt-1/PlGF比検査は一般的ではなく、まずは本邦での観察研究結果などから単回の検査をアルゴリズムとして取り入れるかどうかの検討から始めることになる。その点、本研究結果からPlGFベースの検査は発症予測のための検査であり、病勢を診る検査ではないこと、単回で十分であると示されたことは重要であり価値の高い論文であるといえる。

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既往帝王切開、多面的介入で周産期合併症が減少/Lancet

 帝王切開分娩歴が1回の女性において、分娩方法の選択を支援しベストプラクティスを促進する多面的な介入により、帝王切開分娩や子宮破裂の発生率が増加することなく、主要な周産期合併症および妊産婦合併症の罹患率が有意に減少した。カナダ・ラヴァル大学のNils Chaillet氏らが、多施設共同クラスター無作為化非盲検比較試験「PRISMA試験」の結果を報告した。帝王切開分娩歴のある女性は、次の妊娠で難しい選択に直面し、再度帝王切開分娩を行うにしても経膣分娩を試みるにしても、いずれも母体および周産期合併症のリスクがあった。Lancet誌2024年1月6日号掲載の報告。意思決定支援やベストプラクティスなどの介入群vs.非介入(対照)群 研究グループはカナダ・ケベック州の公立病院40施設を、1年間のベースライン期間後にブロック無作為化法により医療レベル(地域病院、基幹病院、3次病院)で層別化して介入群と非介入(対照)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 介入群には、帝王切開分娩歴のある女性の分娩期ケアに対するベストプラクティスに関する研修や臨床ツール(陣痛モニタリングの臨床アルゴリズムと改良パルトグラフ、分娩方法に関する意思決定支援ツール)の提供を行い、ベストプラクティスの実施、経膣分娩の可能性や超音波検査による子宮破裂リスクの推定などを実施することとした。対照群は介入なしとした。実施期間は5~8ヵ月で、介入期間は2年であった。 主要アウトカムは、死亡を含む主要周産期合併症(分娩時または新生児死亡、Apgarスコア5分値4未満、代謝性アシドーシス、重症外傷、脳室内出血、脳室周囲白質軟化症、痙攣発作、侵襲的人工呼吸、重大な呼吸器疾患、壊死性腸炎、低酸素性虚血性脳症、新生児敗血症、昇圧剤を要する低血圧)の複合リスクとし、帝王切開分娩歴が1回のみで、参加施設で出産し、新生児の在胎週数が24週以上、出生時体重500g以上の単胎妊娠の女性を解析対象とした。介入群で主要周産期合併症、母体の主要合併症が有意に減少 2016年4月1日~2019年12月13日に分娩した適格女性は、2万1,281例であった(介入群1万514例、対照群1万767例)。追跡不能例はなかった。 主要周産期合併症罹患率は、対照群ではベースライン期間の3.1%(110/3,507例)から介入期間は4.3%(309/7,260例)に増加したが、介入群では4.0%(141/3,542例)から3.8%(265/6,972例)に減少し、介入群において対照群と比較しベースライン期間から介入期間の主要周産期合併症罹患率の有意な減少が認められた(補正後オッズ比[OR]:0.72[95%信頼区間[CI]:0.52~0.99]、p=0.042、補正後絶対群間リスク差:-1.2%[95%CI:-2.0~-0.1])。介入の効果は、病院の医療レベルにかかわらず同等であった(交互作用のp=0.27)。 母体の主要合併症(妊産婦死亡、子宮摘出、血栓塞栓症、4日以上のICU入室、急性肺水腫、心原性ショック、敗血症、内臓損傷、子宮破裂)の罹患率も、対照群と比較して介入群で有意に減少した(補正後OR:0.54、95%CI:0.33~0.89、p=0.016)。 軽度の周産期合併症および母体合併症の罹患率、帝王切開分娩率、子宮破裂率については、両群間で有意差は確認されなかった。

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