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海外渡航者へのワクチンの勧め

 11月30日・12月1日に「第23回 日本ワクチン学会学術集会」(会長:多屋 馨子〔国立感染症研究所〕)が開催された。「国際化とワクチン」をテーマに開催されたシンポジウムでは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで多数の来日外国人が持ち込む可能性がある感染症への備えとしてのワクチンの重要性などが語られた。 本稿では、「渡航医学におけるワクチン」を取り上げる。予防接種では目の前の接種希望者のリスクとベネフィットを考える シンポジウムでは、田中 孝明氏(川崎医科大学 小児科学 講師)が「海外渡航者のためのワクチン」をテーマに、インバウンドの逆、日本人が海外渡航する場合(アウトバウンド)における予防接種の対応や現在の問題点などを講演した。 アウトバウンドの予防接種では、厚生労働省検疫所(FORTH)やアメリカ疾病予防管理センター(CDC)の予防接種情報が有用と紹介し、トラベル・クリニックでの対応を例に説明した。来院した予防接種希望者には、「行き先、滞在期間、渡航目的、既往歴、接種歴など」を問診し、ワクチンを考慮し、選択する必要がある。また、先ごろ発行された『海外渡航者のためのワクチンガイドライン/ガイダンス 2019』にも触れ、海外渡航時のワクチン接種の指針が示されたことを説明した。 多くのワクチンは複数回の接種が必要だが、渡航までの期間が十分でないため、渡航先で接種を継続する場合が多い。しかし、製薬会社が異なるワクチンの互換性が確認されていないことが問題となっており、これらのエビデンスが極めて乏しいという。 そのほか、腸チフスワクチンを例に、多くの渡航者に必要であるにもかかわらず国内では希少疾患のため、ワクチンが承認されておらず、本ワクチンの接種は自己輸入して扱っている施設に限られている。しかも、接種後に健康被害が起こっても「(手厚い)予防接種法や医薬品医療機器総合機構法による救済制度の補償外であり、接種する側・される側の負担が大きい」と接種現場での悩みを語った。現状では、疾病予防効果と副反応の可能性などを衡量し、接種希望者に情報を伝え、接種をするかどうか決定することが接種の現場で行われている。 最後に同氏は、「こうした未承認ワクチンの問題や渡航ワクチンのエビデンス不足はもちろん、渡航分野の臨床研究の進展が今後の課題」と述べ、講演を終えた。

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患者団体と製薬企業とのつながりとは/BMJ

 オーストラリア・シドニー大学のLisa Parker氏らは、患者団体と製薬企業の間の相互作用を調べる質的研究を行った。疾患別に存在する患者団体の多くが、製薬企業から資金提供を受けているが、患者団体は、患者および介護者に対する支援やアドボカシー、情報提供において重要な役割を担っている。また、医療および製薬の政策において影響力のあるアドボケイト(代弁者)としての地位を増しており、研究グループは、両者間の相互作用の解明を試みた。その結果、相互作用としての「asset exchange(資産交換)」の問題が明確になったという。BMJ誌2019年12月12日号掲載の報告。質的研究で、患者団体と製薬企業との関係性を調査 検討は、患者団体の代表者の観点から製薬企業のスポンサーシップをどのように見ているのか、また相互作用がどのように、なぜ、いつ発生するのかを調べることで、相互作用の質を理解し報告することを目的とした。 研究には、製薬企業と多様なレベルの資金提供でつながりのある、オーストラリアの23の患者団体から27人が参加。患者団体は、一般的な医療消費問題や疾患別の話題にフォーカスしている、地域または全国規模の団体であった。 調査は、倫理学の理論(グラウンデッドセオリー)で知られている経験的・質的インタビュー研究法を用い、インタビューでの聞き取りをデータカテゴリーにコード化して分析した。調査結果は、データを描出し解き明かすために新しい概念カテゴリーに編成され、また引用符でサポートされた。資金提供を受ければ、何らかの見返りを求められることに留意すべき 患者団体と製薬企業の関係性のタイプとして、製薬企業のスポンサーシップに対する姿勢の違いによる4つのタイプが特定された。 支配的な関係性(dominant relationship)のタイプは、ビジネスパートナーシップとして成功したタイプといえ、患者団体は企業の人間と密接な協力関係を築いていることが示された。このタイプの患者団体は、企業の悪影響の可能性を認識しつつ、企業の影響を回避する戦略があるとの自信を示していた。 その他の患者団体は、不十分(unsatisfactory)または未発達(undeveloped)な関係性であることが示され、いくつかの患者団体(すべて一般医療消費団体)は、製薬企業とは基本的な関心事が対立しており、自分たちのミッションと相いれないものであることを示した。 患者団体は、自分たちと製薬企業の間の相互作用は、団体のメンバーが興味を示す可能性がある新薬を会社が手にしたときにより多く発生していると報告した。 また、企業の資金提供を受け入れた患者団体は、企業と“asset”(資産)の交換に関わっていることが明らかになった。患者団体は、金銭、情報、アドバイスを受け取るのと引き換えに、企業にマーケティングや主要なオピニオンリーダーとの関係構築の機会を与えることや、医薬品の入手や助成金に関する企業のロビー活動に協力したり、治験への参加者集めを支援したり、企業の信頼性を強化することに関与していた。 著者は、「製薬企業のスポンサーシップについての患者団体の幅広い見方について理解することは、両者間のあらゆる倫理的懸念を特定し統制しようとする患者団体にとって役立つものとなるだろう」と述べるとともに、「製薬企業から金銭を受け取っている患者団体は、“返礼”として特定の資産を要求される可能性があることを想定しておくべきである」と指摘。続けて「活発にマーケティングを行う機会があると見なした患者団体への製薬企業による選択的な資金提供は、患者団体本来の活動を製薬企業の関心事にねじ曲げて向かわせる可能性があり、企業の代理人としてアドボカシーを発揮し、医療政策にも影響を及ぼす可能性がある」と警鐘を鳴らした。

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ワクチン接種における副反応、副反応疑い報告制度と救済制度【今、知っておきたいワクチンの話】総論 第2回

はじめにワクチンの予防接種は、個人と集団(社会)を感染症から守るために重要な予防的措置である。しかし、ほかの医薬品と同様に副作用が起こるリスクはゼロではなく、極めてまれではあるが、不可避的に健康被害が起こり得る。そのため、私たち医療者はワクチン接種における副作用(副反応)とその報告制度、健康被害時の救済制度について理解し、ワクチン接種を受ける方(被接種者)やその保護者に対して予診の際にこれらについて説明し、副反応や健康被害が発生した際にはサポートできるようにしておく必要がある。「有害事象」「副作用」「副反応」は何が違う?「有害事象」「副作用」「副反応」、これらはワクチン接種に関連して使用される用語だが、使い分けができているだろうか(表1)。「有害事象」や「副作用」は、ワクチンを含む医薬品や手術などの医療行為に関連して使用され、「副反応」はワクチン接種に関連した事象に限定して使用される。いずれも「ワクチン接種をしたあとに起こった症状」に対して使用される用語だが、しばしば混同されている。とくに一般の方やマスメディアでは、誤解して使用や理解されていることがあり、医療者として注意が必要である。(図1)1)有害事象因果関係の有無を問わず、ワクチン接種など医薬品の投与や手術や放射線治療など医療行為を受けたあと患者(被接種者)に生じた医療上のあらゆる好ましくない出来事のこと。医療行為と有害事象との間に時間的に関連がある、前後関係はあるが、因果関係の有無は問わないということになる。そのため有害事象には、ワクチン接種後に偶然あるいは別の原因で生じた出来事も含まれる。しばしば、この時間的な前後関係をただちに因果関係であるかのようにメディアが報じたり、一般の方がそのように誤解していることに注意する。2)副作用治療や予防のために用いる医薬品の主な作用を主作用といい、主作用と異なる作用を副作用という。広義の副作用(side effect)には、人体にとって有害な作用と有害でない(好ましい、肯定的な)作用の両方が含まれる。一般的には医薬品による副作用に対しては、有害な作用である狭義の副作用(adverse drug reaction)が用いられる。医薬品と副作用の間には前後関係があり、また、副作用は医薬品の「作用」であるため、医薬品と副作用(による症状)の間には、因果関係があるということになる。3)副反応ワクチン接種の主作用(ワクチン接種の目的)は、ワクチン接種によって免疫反応を起こし、ワクチンが対象とするVPD(Vaccine Preventable Diseases:ワクチンで防げる病気)に対する免疫を付与することである。一方、ワクチン接種に伴う、免疫の付与以外の反応や接種行為による有害事象を副反応という。言い換えると副反応とは「ワクチン接種による(狭義の)副作用と接種行為が誘因となった有害事象」のことである。そのため、ワクチン接種と副反応の間には前後関係があり、因果関係があるということになる。表1 有害事象、副作用、副反応の違い画像を拡大する図1 有害事象、副作用、副反応の概念図画像を拡大する副反応・有害事象の要因と症状副反応・有害事象の主な要因と症状を表2に示す。表2 副反応・有害事象の主な要因と症状画像を拡大する1)不活化ワクチン一般的な副反応として、接種した抗原・アジュバンドやワクチン構成成分などで誘起された炎症による局所反応(発赤、硬結、疼痛など)や全身反応(発熱、発疹など)がある。また、数10万〜100万分の1の確率とまれではあるが重篤な副反応として、アナフィラキシーや血小板減少性紫斑病、脳炎・脳症などがある。医療者はこれらの副反応について、事前に被接種者や保護者に説明を行う。とくに頻度の高い一般的な副反応については、症状出現時の対応(表3)まで含めて説明する。また、接種後のアナフィラキシーなどに対応するため、接種後30分は院内で経過観察を行う。2)生ワクチン弱毒化したワクチン株による感染、つまり病原性の再獲得によって生じる副反応がある。なお、局所の発赤や発熱などの高頻度な副反応は、軽微な症状であるため、単独では予防接種後副反応疑い報告基準(後述)における医療者の報告義務規定にはあたらない。表3 高頻度な副反応の経過と対応画像を拡大する予防接種後副反応疑い報告制度とは予防接種後副反応疑い報告制度とは、予防接種法に基づき、「医師などが予防接種を受けた者が一定の症状を呈していると知った場合に厚生労働大臣に報告しなければならない(報告義務がある)制度」である。この制度は、予防接種後に生じる種々の身体的反応や副反応疑いについて情報を収集し、ワクチンの安全性について管理・検討を行い、国民に情報を提供すること、および今後の予防接種行政の推進に資することを目的としている。本制度は、2013年の法改正により大幅に変更され、2014年11月から副反応疑い報告(予防接種法)と医薬品・医療機器等安全性情報報告(医薬品医療機器等法)の報告先は独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA:Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)に一元化され、報告の方法が簡素化された。報告基準1)定期接種の場合予防接種法に基づいて報告基準があり、ワクチン(対象疾患)ごとに報告すべき症状、症状発生までの時間(期間)が規定されている(表4)。この報告基準にある症状(「その他の反応」を除く)について、それぞれに定められている時間までに発症した場合は、因果関係の有無を問わず、医師などは報告する義務がある。「その他の反応」については(1)入院、(2)死亡または永続的な機能不全に陥るおそれがある場合で、それが予防接種との因果関係が疑われる症状について報告する。また、報告基準にある症状でこの時間を超えて発生した場合でも、因果関係が疑われるものについては「その他の反応」として報告する。2)任意接種の場合定期接種の場合のような報告基準はなく、医師などは予防接種後副反応疑い報告書に症状名を記載する。表4 報告基準の例(一部抜粋)画像を拡大する報告方法予防接種後副反応疑い報告書を厚生労働省のWebサイトよりダウンロードし記入、または国立感染症研究所のWebサイトより入力アプリをダウンロードし、報告書PDFを作成、印刷し、PMDAへFAX(FAX番号:0120-176-146)にて送信する。これら報告の流れを図2に示す。図2 予防接種後副反応疑い報告の流れ画像を拡大する救済制度についてきちんと説明していますか?インフルエンザワクチンの任意接種用の予診票の医師記入欄には「本人又は、保護者に対して、予防接種の効果、副反応及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済について説明しました。」と記載がある。あなたは被接種者や保護者に対して、ワクチン接種における救済制度についてきちんと説明ができているだろうか。予防接種後の健康被害に対する救済制度前述のとおり、予防接種は感染症から個人と社会を守るための重要な施策であるが、極めてまれに健康被害が起こり得る。そのため、予防接種によって健康被害を受けた方に対する特別な配慮が必要であり、公的な救済制度が設けられている。救済制度は一律ではなく、定期接種、任意接種によって異なることに注意する。いずれの場合も給付の請求者は健康被害を受けた本人や家族であるため、医師は救済制度を紹介し、診断書や証明書の作成に協力する。ワクチン接種と健康被害との間に因果関係が認められた場合に救済給付が実施される(表5)。表5 予防接種後の健康被害救済制度の違い画像を拡大する給付の種類には、(1)医療機関での治療に要した医療費や医療手当(医療を受けるために要した諸費用)、(2)障害が残った場合の障害児養育年金または障害年金、(3)死亡時の葬祭料および一時金、遺族年金があるが、各制度によって給付額は大きく異なる。なお、国内未承認ワクチン(いわゆる輸入ワクチン)に対しては、輸入業者が独自の補償制度を設定している場合もあるが、これらの公的な制度は適応されないことにも注意する。1)定期接種の場合:予防接種健康被害救済制度予防接種健康被害救済制度は、予防接種法に基づく定期の予防接種(定期接種)により健康被害を受けた方を救済するための公的な制度である。定期接種を受けた方に健康被害が生じた場合、対象となる予防接種と健康被害との因果関係があるかどうかを疾病・障害認定審査会で個別に審査し、厚生労働大臣が因果関係を認定した場合は、市町村長は健康被害に対する給付を行う。給付の内容は、定期接種のうちA類疾病(B型肝炎、Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症、ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ、結核、麻しん・風しん、水痘、日本脳炎、ヒトパピローマウイルス感染症)とB類疾病(インフルエンザ、高齢者の肺炎球菌感染症)で異なる。B類疾病による健康被害の請求の期限は、その内容によって2年または5年となっているため、とくに留意する。なお、健康被害について賠償責任が生じた場合であっても、その責任は市町村、都道府県または国が負うものであり、当該医師は故意または重大な過失がない限り、責任を問われるものではない。2)任意接種の場合:医薬品副作用被害救済制度および生物由来製品感染等被害救済制度医薬品副作用被害救済制度および生物由来製品感染等被害救済制度は、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構法(PMDA法)に基づく公的な制度である。これらの制度は、医薬品などを適正に使用したにもかかわらず発生した副作用による入院が必要な程度の疾病や日常生活が著しく制限される程度の障害などの健康被害を受けた方に対して、医療費などの給付を行い、被害を受けた方の迅速な救済(民事責任との切り離し)を図ることを目的としている。どちらの制度が適用されるかは、健康被害の内容や原因によって異なるが、申請窓口はいずれもPMDAであるため、患者や家族から健康被害の相談を受けた際にはPMDAの相談窓口(電話番号:0120-149-931)を紹介する。被接種者・保護者への説明資料以下のような一般の方向けの資料を活用する。日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」〔予防接種の副反応と有害事象〕医薬品副作用被害救済制度リーフレットまとめ「有害事象」「副作用」「副反応」はしばしば混同されて使用されており、医療者としてこれらの違いを理解する。医師などには予防接種後の副反応を疑った際に報告する義務がある。報告制度は定期接種、任意接種によって異なるが、報告先はPMDAに一元化されている。予防接種後の健康被害に対する公的な救済制度は、定期接種、任意接種によって異なるが、いずれもその請求は本人・家族が行うため、医療者はこれらの制度を紹介しサポートする。副反応疑い報告制度と救済制度制度の詳細については、「参考になるサイト」に示した、それぞれ厚生労働省やPMDAのWebサイトおよび『予防接種必携』1)を参照していただきたい。1)予防接種実施者のための予防接種必携 令和元年度(2019).公益財団法人予防接種リサーチセンター.2019.2)藤岡雅司ほか. 予防接種マネジメント. 中山書店;2013.3)中山久仁子編集. おとなのワクチン. 南山堂;2019.参考になるサイト1)予防接種後の有害事象.予防接種基礎講座〔2017年3月開催資料〕(厚生労働省)2)予防接種後副反応疑い報告制度(厚生労働省)[予防接種法に基づく医師等の報告のお願い][予防接種法に基づく副反応疑い報告(医療従事者向け)]3)予防接種後副反応疑い報告書〔別紙様式1〕(厚生労働省)4)「予防接種後副反応疑い報告書」入力アプリ(国立感染症研究所)5)予防接種健康被害救済制度(厚生労働省)6)医薬品副作用被害救済制度(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構〔PMDA〕).[制度の概要][医療関係者向け][一般の方向け]7)日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」予防接種の副反応と有害事象(日本小児科学会)講師紹介

1964.

インフルエンザ様疾患にも抗インフル薬が有益か/Lancet

 インフルエンザ様疾患でプライマリケア医を受診し、通常治療に加えオセルタミビルの投与を受けた患者は、通常治療のみの患者に比べ、平均で1日早く回復し、高齢で症状が重く、併存疾患があり症状持続期間が長い患者では回復までの期間が2~3日短縮することが、英国・オックスフォード大学のChristopher C. Butler氏らの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年12月12日号に掲載された。欧州のプライマリケアでは、インフルエンザ様疾患への抗ウイルス薬の処方はまれだという。その主な理由は、プライマリケアの実臨床では抗ウイルス薬の効果はないとの認識があること、また、独立の臨床試験で、とくに利益を得ると予測される患者が特定されていないこととされる。欧州15ヵ国のプライマリケア施設が参加した実際的臨床試験 本研究は、欧州15ヵ国のプライマリケア施設で行われた実際的な非盲検無作為化対照比較試験であり、2016年1月15日~2018年4月12日の期間に患者登録が実施された(欧州委員会第7次研究開発枠組計画の助成による)。 対象は、年齢1歳以上、インフルエンザ様疾患でプライマリケア施設を受診した患者であった。インフルエンザ様疾患は、季節性インフルエンザ流行期に、自己申告による突然の発熱がみられ、1つ以上の呼吸器症状(咳、喉の痛み、鼻水、鼻づまり)および1つの全身症状(頭痛、筋肉痛、発汗/悪寒、疲労感)を伴い、症状持続期間が72時間以内と定義された。被験者は、通常治療+オセルタミビルまたは通常治療のみを行う群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは患者報告による回復までの期間とした。回復は、発熱、頭痛、筋肉痛が軽減または消失し、通常の日常活動への復帰が達成された場合と定義された。便益はインフルエンザ感染の有無にかかわらない 3回の季節性インフルエンザ流行期に3,266例(2015~16年:495例、2016~17年:1,225例、2017~18年:1,546例)が登録された。オセルタミビル群に1,629例、通常治療群には1,637例が割り付けられ、主要エンドポイントの解析にはそれぞれ1,533例(94%)および1,526例(93%)が含まれた。 ベースラインの年齢層別の患者割合は、両群とも12歳未満が14%、12~65歳が80%、65歳以上が6%であった。オセルタミビル群の56%、通常治療群の55%が女性だった。3,059例中1,590例(52%)が、PCRによりインフルエンザ感染症と確定された。 全体の回復までの期間は、オセルタミビル群が通常治療群に比べ短かった(ハザード比[HR]:1.29、95%ベイズ信用区間[BCrI]:1.20~1.39)。事前に規定された36のサブグループ(年齢層、症状の重症度、併存疾患の有無、症状持続期間で分類)のうち30サブグループのHRの範囲は1.13~1.72であり、類似していた。 オセルタミビルによる推定平均便益は、全体では1.02日(95%BCrI:0.74~1.31)であり、オセルタミビル群のほうが約1日回復が早かった。便益のサブグループ解析では、12歳未満/症状が重症でない/併存疾患なし/症状持続期間が短い集団の0.70日(95%BCrI:0.30~1.20)から、65歳以上/症状が重症/併存疾患あり/症状持続期間が長い集団の3.20日(1.00~5.50)までの幅が認められた。 インフルエンザ感染患者におけるオセルタミビル群の推定平均便益のHRは1.27(95%BCrI:1.15~1.41)、非感染患者のHRは1.31(1.18~1.46)であり、感染の有無にかかわらずオセルタミビルによる類似の便益が示された。 抗菌薬の使用割合(オセルタミビル群9%、通常治療群13%)は、オセルタミビル群で低く、家族内の新規感染(39%、45%)も少なかった。一方、医療機関への再受診(3%、4%)、X線で確定された肺炎(47%、57%)、市販のアセトアミノフェン(60%、64%)またはイブプロフェン(38%、41%)含有薬の使用の割合には差がなかった。 嘔吐/悪心の新規発症または増悪が、オセルタミビル群で21%(325/1,535例)に認められ、通常治療群の16%(248/1,529例)に比べ頻度が高く、症状軽減までの期間も長かった(HR:0.94、95%CI:0.86~1.01)。これ以外の症状は、オセルタミビル群のほうが迅速に軽快した。 重篤な有害事象は29件(オセルタミビル群12件、通常治療群17件)報告された。オセルタミビル群では、2件がオセルタミビル関連と考えられたが、残りの10件は関連がなかった。 著者は、「併存疾患を有し、体調不良が長く続く症状が重い患者や高齢患者では、オセルタミビルにより2~3日早い回復の可能性があるため、本薬を考慮してよいと考えられる」としている。

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今もしも自分がブラック・ジャックの患者だったら

 2019年9月、神奈川県横浜市は、医療現場で生じるコミュニケーションギャップの改善を目的に、医療現場における“視点の違い”を描く「医療マンガ大賞」を募集した。同年12月、その受賞作決定を記念したアフタートークイベントでは、「SNS医療のカタチ」所属医師4人と写真家の幡野 広志氏が、それぞれの視点で医療漫画について語った。 中学時代から『ブラック・ジャック』を何度も読んだという写真家・幡野 広志氏は、「病気になってからブラック・ジャックを読んだら、結構つらかった」という。その真意とは?第2回 患者になって『ブラック・ジャック』を読んだらつらかった話https://www.carenet.com/useful/medmanga/cg002553_002.html 患者と医療従事者の間に生じるコミュニケーションギャップは、誰もが少なからず感じたことがあるだろう。「医療マンガ大賞」では、患者・医療従事者の実体験に基づくエピソードが、患者視点・医療従事者視点のそれぞれで漫画化されている。 本イベントでは、今日診た患者さんの話から終末期の対応まで、日々患者と向き合う医師の本音が語られた。医療マンガ大賞受賞記念イベントレポートhttps://www.carenet.com/useful/medmanga/cg002553_index.html

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大幅なスピード違反、高級車が多い診療科は?/BMJ

 医師の運転時のスピードや高級車の所有率は、診療科によって異なるのだろうか。米国・ハーバード大学メディカルスクールのAndre Zimerman氏らがスピード違反の切符を切られた医師を対象とした観察研究で、大幅なスピード超過で切符を切られる可能性が高い診療科や、高級車の所有率が高い診療科を調査した。BMJ誌2019年12月18日号(クリスマス特集号)に掲載。 本観察研究の対象は、2004~17年に米国フロリダ州でスピード違反のチケットを切られた医師5,372人と医師以外の1万9,639人。年齢および性別を調整後、制限速度より20mile/時(32.19km/時)を超える大幅なスピード違反、高級車の所有、警察官による違反切符の減免割合を診療科ごとに調査した。 主な結果は以下のとおり。・20mile/時を超える大幅なスピード違反で運転していたドライバーの割合は、違反切符を切られた医師および医師以外で同じだった(26.4% vs.26.8%)。・違反切符を切られた医師の中では、精神科医が大幅なスピード違反で罰金を科される可能性が最も高かった(基準とした麻酔科医に対する調整オッズ比は1.51、95%信頼区間[CI]:1.07〜2.14)。・違反切符を切られたドライバーの中で、循環器科医が最も高級車の所有が多く(違反切符を切られた循環器科医で高級車を所有する割合は40.9%、95%CI:35.9~45.9%)、救急科、家庭医療、小児科、一般外科、精神科の医師では少なかった(例として、家庭医で高級車を所有する割合は20.6%、95%CI:18.2〜23.0%)。・警察官が違反切符を切る際に速度の数字を減らして、罰金額が上がる値のすぐ下の速度を記録することは多くみられたが、その割合は診療科ごと、また医師と医師以外で差はなかった。 今回の観察研究では、スピード違反切符を切られた医師の中で、精神科医が大幅なスピード違反の割合が最も高く、循環器科医が高級車を運転している割合が最も高かった。

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医師数32万7,210人、増えた科や多い都道府県は?―厚労省調査

 厚生労働省は19日、「医師・歯科医師・薬剤師統計」の最新結果を取りまとめ、公表した。それによると、全国の医師数は、32万7,210人で、前回調査(16年)に比べ2.4%増となり、一貫して増加傾向が続いている。このうち、女性医師は7万1,758人で、前回よりも6.3%増と大きく数字を伸ばし、過去最多を更新した。一方、医療施設に従事する医師の平均年齢は上がり続けており、診療所に従事する医師の平均年齢は初めて60歳代となり、高い年齢層が支えていることがわかる。 「医師・歯科医師・薬剤師統計」は、厚労省が2年おきに実施しており、今回は2018(平成30)年12月31日時点に調査を行ったもの。それによると、全国の医師数は32万7,210人(前回比で7,730人、2.4%増)、歯科医師数は10万4,908人(同375人、0.4%増)、薬剤師数は31万1,289人(同9,966人、3.3%増)であった。都道府県別にみた医師数が最も多いのは徳島県 医師数を男女別にみると、男性医師は25万5,452人(前回比で3,465人、1.4%増)、女性医師は7万1,758人(同4,265人、6.3%増)となっており、女性医師数の躍進が顕著であった。 医師のうち、医療施設従事者は31万1,963人(総数の95.3%)で、前回比で7,204人(2.4%)増加した。平均年齢は49.9歳。このうち、病院は44.8歳で前回調査時から0.3ポイント上昇し、診療所は60.0歳で前回から0.4ポイント上昇して、初めて60歳代となった。 主たる診療科別にみると、前回調査時より従事者が増えたのは、美容外科が最も多く(対前回比で130%)、以下、産科(同112%)、腎臓内科・救急科(同111%)、リハビリテーション科(同109%)などとなっている。一方、従事者が減ったのは、気管食道外科が最も多く(対前回比で94%)、以下、外科(同95%)、肛門外科(同97%)、内科・産婦人科・臨床検査科(同99%)などとなっている。なお、本稿で紹介した診療科別の統計結果においては「臨床研修医」や「不詳」および「その他」の回答はいずれも除外している。 従業地の都道府県別にみた医療施設に従事する人口10万人当たりの医師数は、全国では246.7人で、前回比で6.6人増加した。このうち、医師数が最も多いのは徳島県(329.5人)で、次いで京都府(323.3人)、高知県(316.9人)などとなっている。一方、最も少ないのは埼玉県(169.8人)で、次いで茨城県(187.5人)、千葉県(194.1人)などとなっている。

1969.

ワクチンの歴史と概念【今、知っておきたいワクチンの話】総論 第1回

予防接種の意義予防接種とは、病気に対する免疫をつけたり、免疫を強くするために、ワクチンを接種することをいう。その目的は、ワクチンを接種した人が病気に罹患することや、発病、重症化を予防したり、人に感染させてしまうことで社会に病気がまん延してしまうのを防ぐことである。そして最終的には、その感染症の排除・根絶などを目的としている。日本の予防接種の歴史わが国における予防接種は、1849年の種痘接種に始まり、今まで多くの感染症を予防してきた。たとえばジフテリアは1945年には約8万6,000人の患者の届出があり、その10%が亡くなっていたが、近年では患者報告は無くなっている。ポリオや狂犬病も過去の病気になり、2015年にはWHOから麻しん排除国と認定された。一方で、海外から疾患に罹患した人の入国がたびたび報告され、国内での流行を阻止するために、予防接種率を上げておくことが重要であることに変わりはない。また、わが国の予防接種制度の歴史(表1)は、ワクチンの副反応、有害事象(ワクチンと実際には関係のない、ワクチン接種後に起こる負の事象)に影響を受けながら変遷を遂げてきた。表1 日本の予防接種制度の主な歴史画像を拡大する(上部)画像を拡大する(下部)予防接種で防げる病気予防接種で防げる病気を“Vaccine Preventable Diseases(VPD)”という。予防接種には、予防接種法に基づき実施される「定期接種」、「臨時接種」、「新臨時接種」と、予防接種法に基づかない「任意接種」がある(表2)。表2 予防接種の対象疾患画像を拡大する定期接種と任意接種定期接種は、市区町村が主体となって実施する。定期接種には、A類疾病とB類疾病がある。前者は主に集団予防と重篤な疾患の予防のため、本人(保護者)に努力義務があり、国は接種を積極的に勧奨しているワクチン。後者は主に個人予防に重点を置いているワクチンと分類されている。接種費用は、定期接種は公費(一部で自己負担あり)、任意接種は自己負担である。なお、「臨時接種」とは、まん延予防上緊急の必要があるときに実施され、「新臨時接種」は病原性の低い新型インフルエンザが発生したときなどに実施される接種方法である。ワクチンの種類ワクチンは、生ワクチン、不活化ワクチン、トキソイドに大別される。また、抗毒素は発病の予防と治療目的に接種する(表3)。表3 ワクチンの種類画像を拡大する年々、海外へ渡航する人とわが国に入国する人が増えており、海外からVPDが持ち込まれる機会が増えている。来年(2020年)には東京オリンピック・パラリンピックの開催もあり、わが国で定期接種として推奨されているワクチンが、諸外国では接種されていない場合やその逆も考えられ、現時点で国内で流行していないVPDが持ち込まれる可能性がある。予防接種は有効な感染予防手段であるため、定期接種や必要な任意接種の接種率をさらに高めておき、日本でVPDが発生することの無いように各々が関心を高めていくことが望まれる。各ワクチンについては、今後の各論を参照いただきたい。講師紹介

1970.

マルファン症候群における大動脈拡張の進行をイルベサルタンが抑制/Lancet

 長時間作用型選択的ARBのイルベサルタンは、マルファン症候群の小児および若年成人患者において大動脈拡張率を減少し、大動脈合併症の発症を減少させる可能性があることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のMichael Mullen氏らにより英国22施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Aortic Irbesartan Marfan Study:AIMS試験」の結果、示された。ARBであるロサルタンとβ遮断薬との併用療法について検証した無作為化試験では、マルファン症候群の大動脈拡張に対する明らかな有効性は確認されなかったが、イルベサルタンはロサルタンと比較して降圧作用が強く生物学的利用率が良好で半減期も長いことから、マルファン症候群患者の大動脈解離や破裂に関連する大動脈拡張を抑制することが期待されていた。Lancet誌オンライン版2019年12月10日号掲載の報告。マルファン症候群と確認された6~40歳の患者をイルベサルタンとプラセボに割り付け 研究グループは、臨床的にマルファン症候群と確認された6~40歳の患者に、非盲検下でイルベサルタン75mgを1日1回投与した後、イルベサルタン群(150mg 1日1回、忍容性があり体重>50kgの場合は1日1回最大300mgまで増量可)、または適合プラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。ベースライン時および1年ごとに心エコーで大動脈径を測定(盲検下中央判定)した。 主要評価項目は、大動脈起始部の拡張率で、線形混合効果モデルを用いてintention-to-treat解析を行った。マルファン症候群患者の大動脈拡張率はイルベサルタン群で有意に減少 2012年3月14日~2015年5月1日にマルファン症候群と確認された患者192例が無作為化され(イルベサルタン群104例、プラセボ群88例)、5年間追跡を受けた。募集時点の年齢中央値は18歳(IQR:12~28)、女性99例(52%)、平均血圧110/65mmHg(SD 16/12)、108例(56%)がβ遮断薬を使用していた。ベースラインの大動脈起始部の直径(平均±SD)は、イルベサルタン群34.4±5.8mm、プラセボ群34.4±5.5mmであった。 マルファン症候群と確認された患者の大動脈起始部の拡張率(年変化率、平均値)は、イルベサルタン群0.53mm/年(95%信頼区間[CI]:0.39~0.67)、プラセボ群0.74mm/年(0.60~0.89)であり、群間差は-0.22mm/年(95%CI:-0.41~-0.02、p=0.030)であった。大動脈Zスコアの変化率も同様にイルベサルタン群で減少した(平均群間差:-0.10/年、95%CI:-0.19~-0.01、p=0.035)。イルベサルタンの忍容性は良好で、重篤な有害事象の発現率の差は確認されなかった。 なお、著者は研究の限界として、全体的なマルファン症候群の症例数が少なかったこと、イルベサルタン群の症例数が多かったこと、無作為化が不完全であったことなどを挙げている。

1971.

「ワクチン忌避」への対応と医療者教育の重要性/日本ワクチン学会

 「ワクチンの有効性・安全性に疑いを持つ人が接種を控える動き(ワクチン忌避)」が世界的に広がりを見せている。世界保健機関(WHO)は2019年に発表した「世界の健康に対する10の脅威」の1つとして「ワクチン忌避」を挙げている。日本においてもHPVワクチンの接種推奨が停止され、再開を求める医療者の声にもかかわらずいまだ果たされていない、等の現状がある。 11月30日~12月1日に開催された「第23回日本ワクチン学会学術集会」では、このワクチン忌避への危機感と対応策が大きなテーマの一つとなった。ワクチン忌避対抗の第一歩はデータ収集から シンポジウム「予防接種の教育啓発」では、国立感染症研究所・感染症疫学センターの砂川 富正氏が「国内外のVaccine hesitancyに関する状況」と題した講演を行った。砂川氏は「Vaccine hesitancy(ワクチン忌避)」に関連すると思われる報告が増加しており、「ある自治体における予防接種歴と百日咳に罹患した児の年齢分布を示すデータを見たところ、2~5歳と年齢が上がっても接種歴の無い児が含まれていた。ワクチンを受けさせない方針の保護者のコミュニティーができ、流行の一部となった疑いがある」と懸念を呈した。 2019年に報告数が急増し、学会でも大きなトピックスとなった麻しんについて「予防接種を受けていない10~20代の患者が30人以上出た、という事例を大きな衝撃を持って受け止めた。ワクチン接種率が90%を超える地域でも、ワクチンに否定的な医師に賛同する保護者のコミュニティなどができ、未接種者が固まって居住しているなどの条件が揃えば、一定規模の流行を生みかねない」と危機感を示した。こうした状況を踏まえ、自治体の予防接種担当者から保護者とのコミュニケーションについてアドバイスを求められることも増えている、という。 ワクチン忌避の動きは世界中で見られ、ブラジル、バルカン半島などで問題が顕在していることが報告されており、バルカン半島に位置するモンテネグロではワクチン反対派の運動で麻しん含有ワクチンの接種率が5割まで低下したという事例も報告された。科学誌Natureが、日本ではワクチン安全性への懸念が世界で最も高いレベルにあるとの風潮をニュース記事として取り上げるなど、日本は先進国の中でもワクチンを用いた取り組みが容易でない国として注視されている。 砂川氏は、「米国のようにワクチン忌避に関する定量調査でデータを蓄積し、分析と対応を行っていくことが急務」とまとめた。米国を参考に医療者向け教育プログラムを作成 続けて、同じく国立感染症研究所・感染症疫学センターの神谷 元氏が「予防接種従事者への教育の重要性」と題した講演を行った。 神谷氏は「定期接種・任意接種の問題はあるが、現在では国内で28種類のワクチンを受けられるようになり、海外との差を示すいわゆる『ワクチンギャップ』は数字の上では解消しつつある」と述べたうえで、「ワクチン忌避には歴史的・文化的背景があり、世界的に有効な手段は限られるが、その中で確実に有効性が証明されているのが『医療者への教育』であり、真のギャップをなくす手段である」と述べた。 そして、自身の留学時に経験した、米国疾病予防管理センター(CDC)とサンディエゴ郡保健局予防接種課の取り組みを紹介。CDCではACIP(Advisory Committee on Immunization Practices)という外部の専門家集団と連携し、ワクチンに関連したエビデンスを検証し、ルール化する作業を常時行っている。ACIPの助言を基に決定したワクチンに関するルールは、全米の関係者・関係機関に通達され、患者からの問い合わせに対して全員が同じ回答ができることが信頼性につながっていると説明。また、米国には小学校入学前にワクチン接種を促す「School Law」と呼ばれるルールがあり、接種させない保護者にはペナルティが課されるという。 サンディエゴ郡保健局では、ワクチンに関するオンライン教育システムを用意し、担当地域の小児科・プライマリケアのレジデント全員に受講義務を課している。学習内容は臨床に即した実践的なロールプレイングを行うチーム学習プログラムであり、患児の予防接種歴確認の重要性などを体感できる。さらに、保健局はクリニックに対して担当地域の予防接種率のデータをフィードバックしており、「2回目の接種率は90%だが、3回目は70%に落ちている」等の実際のデータを見せることで、医師に対してワクチン接種を促す意識付けを図っている。こうしたさまざまな取り組みによって、サンディエゴ郡の予防接種率は全米トップクラスを達成、維持している。 同保健局の取り組みをヒントに、神谷氏は有志とともに医療従事者向けにワクチン知識を深めるためのオンライン講座を作成。医師向けに続き、看護師や事務員版についてもトライアルを進めているという。

1972.

糖尿病妊婦の子供は早発性CVDリスクが高い/BMJ

 糖尿病の母親の子供は、小児期から成人期初期に、非糖尿病の母親の子供に比べ早発性の心血管疾患(CVD)の発生率が高く、とくに母親がCVDや糖尿病性合併症を併発している場合はCVDリスクがさらに増加することが、デンマーク・オーフス大学のYongfu Yu氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年12月4日号に掲載された。最近の数10年間で、世界的に子供や若年成人のCVD有病率が高くなっている。妊娠前および妊娠中の母親の糖尿病は、子供のメタボリック症候群や先天性心疾患のリスク上昇と関連するとされるが、母親の糖尿病への出生前の曝露が、生命の初期段階にある子供の早発性CVDに影響を及ぼすか否かは知られていないという。糖尿病妊婦の子供を40年追跡したコホート研究 研究グループは、妊娠前または妊娠中に診断された母親の糖尿病と、その後40年間における子供の早発性CVDの関連を評価する目的で、住民ベースのコホート研究を行った(デンマーク・Lundbeck Foundationなどの助成による)。 データの収集には、デンマークの全国的な健康関連の登録システムを用いた。1977~2016年の期間に、デンマークで出生し、先天性心疾患のない243万2,000例の子供が解析の対象となった。追跡は出生時に開始され、CVDの初回診断、死亡、海外移住、2016年12月31日のうち、いずれかが最も早く到来するまで継続された。 曝露因子は、母親の糖尿病合併妊娠(1型糖尿病[2万2,055例]、2型糖尿病[6,537例])と妊娠糖尿病(2万6,272例)であった。 主要アウトカムは、病院の診断によって定義された早発性CVD(先天性心疾患を除く)とし、母親の糖尿病と子供の早発性CVDリスクとの関連を評価した。また、Cox回帰を用いて、この関連への、母親のCVDおよび糖尿病性合併症の既往歴の影響を検討した。糖尿病単独で29%、合併症併発で60%、CVD併発で73%増加 5万4,864例(2.3%)の子供が、母親の糖尿病合併妊娠(1型糖尿病0.9%、2型糖尿病0.3%)または妊娠糖尿病(1.1%)に曝露していた。40年の追跡期間中に、糖尿病の母親の子供1,153例と、非糖尿病の母親の子供9万1,311例が、CVDと診断された。 糖尿病の母親の子供は、非糖尿病の母親の子供に比べ、早発性CVDの発生率が29%高かった(ハザード比[HR]:1.29、95%信頼区間[CI]:1.21~1.37)。母親の糖尿病に曝露しなかった子供の40歳時の累積CVD発生率は13.07%(12.92~13.21)であった。曝露と非曝露の子供の累積CVD発生率の差は4.72%(2.37~7.06)だった。 また、同胞コホートで近親デザイン(sibship design)の解析(共通の遺伝的、家族的な背景因子に起因する未調整の交絡を評価)を行ったところ、マッチングを行っていないコホート全体の主解析とほぼ同様の結果(1.26、1.18~1.35)であった。 糖尿病合併妊娠(HR:1.34、95%CI:1.25~1.43)および妊娠糖尿病(1.19、1.07~1.32)のいずれにおいても、子供のCVDは増加していた。また、個々の早発性CVDの発生率の増加の割合は多様であり、増加率の高かったCVDとして、心不全(1.45、0.89~2.35)、高血圧性疾患(1.78、1.50~2.11)、深部静脈血栓症(1.82、1.38~2.41)、肺塞栓症(1.91、1.31~2.80)が挙げられた。 CVD発生率の増加は、母親の糖尿病の種類にかかわらず、小児期から、40歳までの成人期初期の個々の年齢層で認められた。 CVD発生率の増加は、糖尿病合併妊娠のみの母親の子供(HR:1.31、95%CI:1.16~1.48)に比べ、糖尿病性合併症を併発した母親の子供(1.60、1.25~2.05)で、より顕著であった(合併症併発の非併発に対するHR:1.22、95%CI:0.92~1.62)。また、母親が糖尿病とともにCVDを併発していた場合、子供の早発性CVDの発生率はさらに高く(1.73、1.36~2.20)、これは併発CVDの付加的影響であったが、糖尿病とCVDの交互作用に起因するものではなかった(交互作用の相乗スケールのp=0.94)。 著者は、「出産可能年齢の女性における糖尿病の予防、スクリーニング、治療は、女性の健康の改善だけでなく、子供の長期的なCVDリスクの抑制においても重要と考えられる」としている。

1973.

米国中高生にフレーバー電子タバコが蔓延/JAMA

 2019年の米国の高等学校(high school)および中学校(middle school)の生徒における電子タバコ使用者の割合は高く(それぞれ27.5%、10.5%)、特定の銘柄の電子タバコ使用者の多くがフレーバー電子タバコを使用(72.2%、59.2%)している実態が、米国食品医薬品局(FDA)タバコ製品センターのKaren A. Cullen氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2019年11月5日号に掲載された。米国の青少年における電子タバコの使用率は、2011年から2018年に、実質的に増加しているという。青少年の電子タバコや他のタバコ製品の使用率の継続的な監視は、公衆衛生学上の施策や計画立案、規制の取り組みへの情報提供として重要とされる。第6~12学年1万9,018人の横断研究 研究グループは、2019年の米国の高等学校および中学校の生徒における電子タバコの使用状況(使用頻度、銘柄、フレーバー製品の使用など)を調査する目的で、横断研究を行った(FDAと米国疾病予防管理センター[CDC]の助成による)。 2019年度の全国青少年タバコ調査(National Youth Tobacco Survey)に参加した第6~12学年(高等学校:第9~12学年、中学校:第6~8学年)の米国人生徒1万9,018人を対象とした。調査期間は、2019年2月15日~5月24日。 参加者の自己申告に基づき、現在電子タバコを使用中(過去30日以内に1回以上使用)、頻回使用(過去30日間に20日以上)、現使用者が習慣的に使用している銘柄(JUUL、blu、Logic、MarkTen、NJOY、Vuse、その他、なし)、特定銘柄の使用者(他のタバコ製品は使用しない)におけるフレーバー電子タバコの使用の有無と、使用しているフレーバーの種類を調査した。使用率の推定値は複雑抽出デザイン(complex sampling design)で重み付けした。頻回(月に20日以上)使用者は160万人、毎日使用者は97万人 調査には、高等学校の生徒1万97人(平均年齢16.1[SD 3.0]歳、女性47.5%)と、中学校の生徒8,837人(12.7[2.8]歳、48.7%)が含まれた。学年別の参加者割合は全体として類似していた(範囲:第12学年12.9%~第7学年14.6%)。全体の回答率は66.3%だった。 2019年の電子タバコの現使用率の推定値は、高等学校生が27.5%(95%信頼区間[CI]:25.3~29.7)、中学校生は10.5%(9.4~11.8)であった。また、現使用者のうち、高等学校生の34.2%(31.2~37.3)、中学校生の18.0%(15.2~21.2)が頻回使用者であり、それぞれ63.6%(59.3~67.8)および65.4%(60.6~69.9)が特定の銘柄の電子タバコを使用していた。 現使用者のうち、高等学校生の59.1%(95%CI:54.8~63.2)、中学校生の54.1%(49.1~59.0)が、過去30日間にJUUL(ニコチン塩ベースの電子タバコ製品)を習慣的に使用しており、それぞれ13.8%(12.0~15.9)および16.8%(13.6~20.7)は、習慣的に使用している電子タバコの銘柄はないと回答した。 特定の銘柄の電子タバコの使用者のうち、高等学校生の72.2%(95%CI:69.1~75.1)、中学校生の59.2%(54.8~63.4)が、フレーバー電子タバコを使用しており、使用頻度の高いフレーバーは、果物(高等学校生66.1%[62.4~69.5]、中学校生67.7%[62.6~72.5])、メンソール/ミント(57.3%[53.3~61.3]、31.1%[25.6~37.2])、キャンディー/デザートなどの甘い物(34.9%[31.3~38.7]、38.3%[32.6~44.2])であった。 なお、過去30日間に、電子タバコ以外のタバコ製品を使用したと答えた生徒の割合は、高等学校生が5.8%(95%CI:4.6~7.3)、中学生は2.3%(1.8~2.9)であり、電子タバコと合わせると、それぞれ31.2%(29.1~33.5)および12.5%(11.2~13.9)が、何らかのタバコ製品を使用していた。 著者は、「これらのデータにより、2019年に米国の高等学校生410万人と中学校生120万人が電子タバコを使用したと推定される。このうち160万人が頻回使用者で、97万人は毎日使用しており、特定銘柄のフレーバー電子タバコの使用者は240万人と考えられる」としている。

1974.

子育て医師必携の「家庭の医学」【Dr.倉原の“俺の本棚”】第25回

【第25回】子育て医師必携の「家庭の医学」いま、増刷を重ねている、Twitterで話題の本です。子供が38度の熱を出したら、近所の小児科へ連れていく医師。医学を学んでも、自分の子供のこととなると頭が真っ白になる人が多いそうで。私も、絶対に手足口病と思われるわが子の症状をみても、「やはり専門家に…」ということで小児科に連れて行ったことがあります。恥ずかしい。私でさえこんなんですから、一般の親にとっては、わが子の病気なんて恐怖以外の何ものでもないのです。「家庭の医学」本はいくつかありますが、一般人にとってわかりにくい作りになっており、医療従事者にとっては物足りない内容のことが多い。そもそも、本の設計がダメなのです。『マンガでわかる! 子どもの病気・おうちケアはじめてBOOK 』佐久医師会 教えて!ドクタープロジェクトチーム/著.KADOKAWA.2019この本は、長野県佐久医師会の「教えて!ドクター」プロジェクトが発行している冊子を書籍としてまとめたものです。特長は、小児救急のプロ集団が書いたであろう、おそるべきクオリティの高さにあります。熱や腹痛があったとき、どのタイミングで受診すればよいか、どのようにして救急車を呼べばよいのか、そういう具体的な部分に手が届く内容になっています。非の打ち所がない構成の「家庭の医学」本なのです。ママのメンタルについて言及している点が素晴らしい。ウチもそうでしたが、育児が大変すぎて、赤ちゃんから少し離れたいときってありますよね。「ベビーフリータイム」なんて言葉もあるそうで。そこまでわかっている人たちが書いた「家庭の医学」本って、これまでなかったと思います。子供が生まれる予定の医師から、3~4歳の子育て医師までがよい対象になると思います。出産祝いに最適のギフトでしょう。ああ、あと出版が数年早ければわが子にも使えたのに! この本、小児科に数冊くらい常備しておいてもいいんじゃないですかね。この本のクオリティと厚さで1,300円というのは、破格としか言いようがありません。「マンガでわかる!」という部分で、ちょっと購入を踏みとどまってしまう人がいるかもしれませんが、マンガに関しては思ったより少なかったです。『マンガでわかる! 子どもの病気・おうちケアはじめてBOOK 』佐久医師会 教えて!ドクタープロジェクトチーム/著出版社名KADOKAWA定価本体1,300円+税サイズA5判刊行年2019年

1975.

小児および青年期のうつ病の評価と治療

 米国では、小児や青年におけるうつ病の有病率が増加している。米国・オレゴン健康科学大学のShelley S. Selph氏らは、小児および青年期のうつ病の評価や治療に関するレビューを行った。American Family Physician誌2019年11月15日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・2016年には、12歳の約5%、17歳の約17%が過去12ヵ月間でうつ病エピソードを経験していることが報告されている。・12歳以上の青年に対するうつ病のスクリーニングは、10代向けPHQ-9などの検証済みの評価尺度を用いて、毎年実施する必要がある。・診断確定後は、中等度および重度のうつ病では、継続的な治療を開始する必要がある。・軽度のうつ病では、積極的なサポートやモニタリングで十分な可能性がある。・重度のうつ病では、心理療法(認知行動療法など)と抗うつ薬治療を併用することで、いずれかの単独療法よりも治療反応が良好であることを示すエビデンスが報告されている。・小児および青年のうつ病治療に対し米国FDAに承認されている抗うつ薬は、fluoxetineとエスシタロプラムのみである。・fluoxetineは8歳以上、エスシタロプラムは12歳以上での使用が推奨されている。・薬物療法中の小児および青年期うつ病患者では自殺念慮のモニタリングが必要であり、その頻度は、各患者のリスクに基づき決定する必要がある。・治療法の変更(治療薬の併用、増量、変更または心理療法の併用)は、治療開始の約4~8週間後に行う必要がある。・治療にもかかわらず症状が悪化または改善しない場合や、自己または他者に対するリスクとなる場合には、メンタルヘルスのサブスペシャリストへの相談または紹介が必要である。

1977.

「抗微生物薬適正使用の手引き」第二版、乳幼児編が追加/厚労省

 2019年12月5日、厚生労働省は「抗微生物薬適正使用の手引き(第二版)」をホームページに公表した。抗微生物薬適正使用の手引きの主な改正点として、生後3ヵ月以上から学童期未満の「乳幼児編」が加わった。小児特有の副作用がある抗菌薬への注意事項として「小児における急性気道感染症の特徴と注意点」が盛り込まれ、「小児の急性気道感染症各論」「小児の急性下痢症」「小児の急性中耳炎」の項目が追加された。抗微生物薬適正使用の手引き第一版発行時からの要望を実現化 抗微生物薬適正使用の手引きの第一版は、学童期以降の急性気道感染症と急性下痢症を対象に、2017年6月に発表・発行。ところが、発行後にはさらなる抗微生物薬の適正使用推進や扱うべき領域拡大のため、学童期未満の小児を含めた改正が求められていた。 なお、抗微生物薬適正使用の手引きは、主に外来診療を行う医療対象者(とくに診察や処方、保健指導を行う医師)を対象としているため、外来診療時に多く処方される経口抗菌薬(第3世代セファロスポリン系、フルオロキノロン系、マクロライド系抗菌薬)を中心に、抗微生物薬の必要な状況などの判別支援に念頭をおいて作成されている。

1978.

咽頭・扁桃炎に対するペニシリンV減量の試み(解説:小金丸博氏)-1153

 咽頭・扁桃炎は、プライマリケアの現場において抗菌薬の処方が多い感染症の1つである。今回、A群溶連菌による咽頭・扁桃炎に対して、適切な臨床効果を維持しながら抗菌薬投与量を減らすことができるかどうかを検討した臨床試験の結果が発表された。 本研究は、A群溶連菌による咽頭・扁桃炎に対して、ペニシリンV 800mgを1日4回5日間投与する群(計16g)とペニシリンV 1,000mgを1日3回10日間投与する群(計30g)の有効性と安全性を比較検討したランダム化非盲検非劣性試験である。6歳以上で、Centor criteria(38.5℃以上の発熱、圧痛を伴うリンパ節腫脹、扁桃に白苔の付着、咳の欠如)を3または4項目満たし、かつA群溶連菌迅速検査陽性の患者を対象とした。プライマリアウトカムである臨床的治癒率は、5日間投与群で89.6%、10日間投与群で93.3%であり(両群差:-3.7ポイント、95%信頼区間:-9.7~2.2)、非劣性が確認された。除菌率は5日間投与群で80.4%、10日間投与群で90.7%だった。患者の症状緩和までの時間は、5日間投与群のほうが有意に短かった(log rank検定でp<0.001)。1ヵ月以内の再発例はほぼ同数だった。有害事象は主に下痢、嘔気、膣の分泌物や掻痒であり、これらの症状は10日間投与群でより高率に長期間認めた。 スウェーデンでは成人のA群溶連菌による咽頭炎に対してペニシリンV 1,000mgを1日3回10日間(計30g)投与することが推奨されている。この治療期間はほかの国の推奨と同じであるが、総投与量はほかと比較して多い。ちなみに米国感染症学会(IDSA)のガイドラインでは、ペニシリンV 250mgを1日4回、あるいは1回500mgを1日2回、どちらも治療期間は10日間(計10g)投与することが推奨されている。A群溶連菌による咽頭炎に対して抗菌薬を投与する主な理由は、急性リウマチ熱や糸球体腎炎などの合併症を防止することであるが、高所得国ではこれらはまれな合併症となっている。そのため、今日の主な治療目的は速やかな症状改善を得ることであり、同時に扁桃周囲炎、中耳炎、副鼻腔炎などの合併症を予防することである。 本研究では、A群溶連菌による咽頭・扁桃炎に対するペニシリンV 1日4回5日間の治療は1日3回10日間の治療に対して、臨床効果は非劣性であることが示された。投与期間を短縮することで抗菌薬の副作用の減少、服薬遵守率の向上、ヒト細菌叢への影響低下、社会全体の抗菌薬コスト削減などが期待できる。除菌率が10日間投与群のほうが優れていた点や急性リウマチ熱の発症率が評価されていない点が気になるが、高所得国においては5日間治療が代替となりうることを示した研究として評価できる。症状緩和までに要する時間は5日間投与群のほうが有意に短かったというのは興味深い結果であった。その理由として、1日4回投与というtime above MICを考慮した投与方法が有効性を高めた要因として考えられる。 残念ながら世界では標準治療薬であるペニシリンVは日本国内で発売されておらず、本研究の結果をそのまま日本の医療に当てはめることはできない。本邦ではA群溶連菌による咽頭炎に対してアモキシシリンを10日間経口投与することが推奨されている(JAID/JSC感染症治療ガイド2019)。当然ながら、本研究の結果をもってアモキシシリンの投与期間を5日間に短縮可能とは評価できない。

1979.

後期早産・妊娠高血圧腎症妊婦は即時分娩・待機ともに一長一短、新生児の長期予後には注意が必要(解説:前田裕斗氏)-1151

 妊娠高血圧腎症(Pre-eclampsia)を発症した妊婦の至適分娩時期の決定においては、胎児の未熟性と母体合併症(脳血管障害や肝・腎機能障害)のバランスをとる必要に迫られる。34週0日〜妊娠36週6日までのLate-pretermと呼称される時期では胎児臓器が一通りできていることから重症妊娠高血圧腎症の妊婦については即時分娩が望ましいと考えられ、実際に多くの先行文献で確かめられてきた。今回の論文は重症の徴候がない妊娠高血圧腎症(臓器障害がなく血圧が160/110mmHgを上回らない)の妊婦について即時分娩と待機方針を比較したRCTである。主要エンドポイントは母体・新生児ともに合併症の複合アウトカムであり、詳細は別記事を参照されたい。 結果は即時分娩群で有意に母体合併症が少なく(リスク比[RR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.79~0.94)、有意に新生児合併症は多かった(RR:1.26、95%CI:1.08~1.47)。著者らは母体と新生児アウトカムはトレードオフの関係にあり、妊婦との共同意思決定のためにこうした情報を共有すべきだとしている。 この論文を臨床に適用するうえで注意すべき点は2つある。(1)具体的にどんな合併症が増えているのか、(2)母体・新生児の長期予後についての影響はないのか。(1)については、母体合併症では重症域の高血圧、肝機能異常の2つが待機群で有意に上昇している。肝機能異常については、最も重症型であるHELLP症候群の頻度には差がないことから比較的軽度のものであると予測される。これら2つは確かに重症妊娠高血圧腎症の診断基準であるが、生じた時点での即時分娩で臨床的には十分対応可能、短期予後にも大きな問題はない。一方、新生児合併症についても両群の差はほぼ未熟性のみでついており、呼吸障害を含む臓器障害では差がない。呼吸障害についてはサンプルサイズの問題があるため結論は出せないが、即時分娩群で生じる新生児合併症は待機群と比較して重篤なものではない可能性は示唆される。 次に長期予後に目を向けてみよう。重症域の高血圧を短時間経験することや、軽度の肝機能異常が将来母体の予後を左右するかについては不明瞭だ。しかしながら後期早産児ではすでに正期産児と比較して新生児死亡率は高く、神経発達が遅れるリスクが高いという疫学データが出ている。また、出生体重が欧米と比較して低い日本では低出生体重児となるリスクも高く、将来の生活習慣病罹患のリスクも気になるところだ。 以上のことから、短期予後については即時分娩・待機方針ともに一長一短ではあるが、長期予後としてすでに後期早産児の新生児合併症リスクについて判明しているデータがある以上、即時分娩の方針は依然として取りにくいと考えられる。もちろん重症域の高血圧や軽度の肝機能異常を少しでも経験することで母体の将来的な何らかの疾患発症リスクが高まる可能性もあり、この点で長期予後を追跡した研究結果が待たれる。

1980.

インフル予防、エタノール消毒だけでは不十分なケースも?

 エタノールベースの擦式手指消毒薬は広く普及し、医療機関や学校など多くの場所で手指衛生・接触感染予防を目的に使われている。しかし以前の研究で、粘液中の病原体に対してエタノール消毒の有効性が低下する可能性が示唆されている。京都府立医科大学の廣瀬 亮平氏らは、エタノール消毒薬による季節性インフルエンザAウイルス(IAV)の不活性化メカニズムを調べ、その効果が手指に付着した感染性粘液が完全に乾燥するまでの間は大幅に低下することを明らかにした。一方、手洗いによる手指衛生は、乾燥および非乾燥の感染性粘液に対してともに効果的であることが確認された。mSphere誌オンライン版9月18日号への報告より。なお、本研究については、11月27日にmSphere誌オンライン上でレターが掲載され、議論が行われている。 研究者らはまず、IAVに感染した患者の上気道由来粘液を使用して、IAVの不活化試験とエタノール濃度測定を実施。物性解析の結果、感染性粘液は粘度が非常に高く、生理食塩水と比較してエタノールの拡散/対流速度が遅くなることが明らかになった。「エタノール濃度がIAV不活性化レベルに達する時間」すなわち「エタノール消毒薬がIAVを完全に不活性化するのに必要な時間」は、生理食塩水条件下より粘液条件下の方が約 8 倍程度長い結果となった。 続いて、10人のボランティアの手指に付着した感染性粘液中のIAVに対する、流水と80%エタノール消毒薬の有効性を評価した。その結果、流水によりIAVは30秒以内に完全に不活性化されたが、エタノール消毒薬では、120秒後も不活性化されなかった。 一方で、感染性粘液が完全に乾燥した条件(本研究では約30~40分間と想定)においては、エタノール消毒薬は30秒以内に粘液中のIAVを不活性化した。また、物理的に感染性粘液を洗い流す流水による手洗いでも、30秒以内にIAVを不活性化した。  これらの結果および議論を受けて研究者らは、本研究は基礎研究であり、手を擦り合わせる動作による効果等、実使用を再現した評価系でのさらなる検討が必要とした。そのうえで、感染性粘液が付着した(あるいは付着が疑われる)状況では、エタノール消毒薬による擦式手指消毒の効果を過信せず、手洗いをこまめに行うことでより高い消毒効果が得られる可能性があるとしている。

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