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第99回 厚労省のワクチン情報と併せて読みたい、お奨め情報源は?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の5~11歳の小児に対するワクチン接種が各地でスタートした。ご存じのようにこの年代の小児を対象とした新型コロナワクチン接種に関しては、現時点ではオミクロン株への効果に関するデータが不十分なことなどを理由に、予防接種法に基づく接種の「努力義務」は課せられていない。一方、今回の5~11歳の小児に対する接種開始とともに、SNS上ではワクチンに否定的な人たちの活動が活発化している。そんな最中、Twitterではある動画が話題になっている。一見すると店員と見間違うような服装をした女性が、とあるフードコートで新型コロナワクチンの危険性を訴えるビラを配布していた様子を撮影した動画だ。この件はすでに一部インターネットメディアでも報じられている。街角でビラを配られるのとは違い、店員を装えば店にいるお客さんも警戒心が薄れ、何の気なしに受け取るだろう。当事者たちが否定したとしても「錯覚商法」のような悪質さが漂う。また、一部の医療機関には、やはり小児への接種を行わないよう求めるビラが郵送されているとも聞く。かく言う私は小児接種に関してある週刊誌のコメント取材を受け、小児でも接種を推奨する向きのコメントをしたが、その記事がネット上で公開されると、Twitter上でわざわざ記事を引用しながら、こちらのアカウントに嫌味を飛ばしてくるツイートを数件ほど経験している。ちなみに私のコメントの趣旨は、(1)基礎疾患を有する/同居家族に基礎疾患を有する人がいる小児の接種は待ったなし、(2)この年代は他人との触れ合いが教育の大きな目的の一つであり、この点はリモートでは代用不可能、(3)幼稚園・保育園、小学校でクラスターによる休園・休校が相次いでいるが、成人でオミクロン株の感染・発症予防効果も一定程度認められているワクチンの接種は休園・休校のリスク低減のためには無駄ではない、などである。冒頭に紹介したように一部の行き過ぎた抗議活動がある現状とTwitter上で私をわざわざ探し出してメンションを飛ばしてくるような人の存在を考えれば、編集部のほうに直接抗議があってもおかしくはないだろう(こういう場合、編集者はこちらを気遣って実際に抗議があっても一切知らせないことが多い)。一方で対象の子供を持つ知人たちからは接種を考えるうえで私のコメントが参考になったという声をもらった。その中には子供に接種させるという人もいれば、それでもまだ見合わせたいという人もいる。大人で接種直後の発熱経験者が多く、それこそ副反応報告大会よろしく自身の体温計画像を付けた投稿がSNS上に散見されるような状況に加え、未成年では感染時も無症状・軽症で治癒する確率が成人と比べて高いことなど、子供への接種についてはいろいろ考えるところもあるだろう。そんな中に「厚生労働省のホームページの記述が分かりにくくて」という意見を耳にした。たまたま小児向けに厚生労働省がどのような情報を発信しているかは未確認だったため、覗いてみたが…一瞬にして「これはダメだ」と思ってしまった。まず、厚生労働省の新型コロナワクチンのページに行くと、3回目の追加接種、一般的な有効性・安全性、小児接種の項目に飛ぶ部分がほぼ似たようなデザインで並列となっている。民間ならばこうした時に、それぞれのシーンをイメージさせるような柔らかいイラストのアイコンなどを設置するだろう。この点の違いだけで先のページに進む人の数が変わってくることもしばしばだ。そしてこの厚労省設置の小児接種のタブをクリックして先に進むと、冒頭ページは接種の基本情報や手順を解説している。この点は中央官庁としては当然のことだろう。しかし、問題はここからだ。子供の接種に迷う親が一番気にするのは当然ながらワクチンの有効性と安全性、とりわけ後者である。ところがこれらの情報に飛ぶ部分が無機質に並べられているだけで、分かりにくく、さらに飛んだ先でも情報を無機質に羅列している。たとえば、副反応については発生頻度ごとに表にまとめている。これはこれで良いのだが、ある程度噛み砕いた解釈を文字で付記する必要がある。これまで大人の接種で多くの人が苦しんだ副反応は発熱である。この点で言うと小児の臨床試験で確認された発熱頻度は10%未満で大人と比べればかなり少ない。これは成人向けと比べて接種量が3分に1になっていることが影響していると思われる。にもかかわらず、そうした解説がまるでない。行政的には中立的に表記をしなければならないのかもしれないが、発熱頻度が成人と比べてかなり低いのは事実であり、その点は付記しても問題はないはずだ。そしてこの事実を知るだけでも安心する親は少なくないだろう。また、そもそも使用している用語が硬すぎる。たとえばQ&Aの「小児(5~11歳)の接種では、どのような効果がありますか。」では、「中和抗体価」「抗体応答率」「非劣性」など一般人には馴染みのない用語がポンポン飛び出す。後二者については直後のカッコ内で補足しているが、むしろ一般向けではこのカッコ内の解説文章を主文にし、中和抗体価などのなじみのない用語をカッコの中に入れるか、あるいは使わないという選択肢のほうが無難だ。官僚や医療従事者が思っている以上に一般人は見慣れない文字の並びには拒否反応を示すからだ。こうしたすべての点で優れているのが、最近有名になっている若手医師有志が作成した新型コロナワクチン情報サイト「こびナビ」である。今このサイトに飛べば分かるが、すでに冒頭から小児接種の解説ページに飛べるようにアイコンが設置されている。その中では前述の発熱の副反応頻度についても、わざわざ「大人の半分以下」と解釈がつけられている。実際、このサイトの取り組みは、厚生労働省が医療機関へのかかり方の改善につながる優れた取り組みを奨励し広く普及することを目的に開催している第3回「上手な医療のかかり方アワード」の最優秀賞をこの度受賞している。私自身このサイトは当初から非常に興味深く閲覧してきたし、「こびナビ」のメンバーとなっている医師たちがSNS上で行っている積極的な情報発信にも注目してきた。ただ、その反面こびナビに参加している医師たちは、今回の新型コロナワクチンを快く思わない多数の個人からの支離滅裂な言説やいわれのない誹謗中傷を投げつけられ、それに個人レベルで必死に対応している様子も私は目にしている。だからこそ厚生労働省が彼らのこうした取り組みを表彰したことは非常に望ましいことだと思う。一方で彼らこびナビの医師たちは、誤解に基づくとはいえ本来厚労省に投げつけられるはずの石を代わりに投げつけられ苦闘している。懸賞も結構だが、こびナビのような発信手法をもう少し自身の情報発信にも生かしてはどうだろうかと思わずにいられない。

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口唇(口腔)のけがに対する縫合処置【漫画でわかる創傷治療のコツ】第9回

第9回 口唇(口腔)のけがに対する縫合処置《解説》図1今回は顔面外傷の中でも、口唇と口腔内の創傷についての対応を説明していきます。口唇は特殊な構造であり、外傷の際は適切な処置を施さないと傷跡が非常に目立ってしまう部位です。診察では、まず創部を観察しましょう。創傷の範囲、程度を推測するのに受傷機転は重要なので、処置の前に状況をしっかり聞き取ります。その上で、創がどんな状態か見て縫合が必要なのか判断します。知覚や表情に異常がないか(ある場合は顔面神経の損傷を疑う)を確認し、耳下腺管の損傷についても確認します(図1参照)。疑われる場合は造影が必要になることもあります。また、異物の有無も確認しましょう。場合によって単純X線、CT検査を検討します。口唇部の解剖と傷の程度による縫合処置口唇部の解剖の特徴としては、赤唇と白唇と呼ばれる皮膚と粘膜の境界があることと、遊離縁を形成し、皮膚・口輪筋の筋層・粘膜の3層構造になっていることです。(1)口唇の擦過創、浅いびらん口唇・口腔部に創傷被覆材は使いにくいため、白色ワセリンや口内炎用軟膏などの塗布で保存的に診ていけばよいです。(2)筋層に達する裂創口唇部の外傷の多くが外力と歯による損傷であり、筋層深くまでの損傷または貫通創であることが多いです。とくに口唇は遊離縁になっており組織欠損しやすい部分です。粘膜や舌は感染に強く治癒しやすい部位ではありますが、しっかり洗浄し縫合後も自宅で清潔に保ってもらうよう指示することが大切です。図2欠損がほぼない場合ズレないように縫合開始しましょう(基本は粘膜~筋層~皮膚の3層縫合)。糸は皮膚側6−0、角針の非吸収糸、粘膜側4−0、5−0、丸針の吸収糸などを選びます。エピネフリン入りの麻酔薬を注射すると、赤唇の赤みがなくなって境界がわからなくなるので先にマーキングしておくことが重要です!(図2参照)それでは、縫合を始めましょう!まずは口腔粘膜と赤唇(乾燥唇)の境界部を縫合します。次に、口輪筋の全層縫合を赤唇と白唇の境界部が一致するように行います。そして、赤唇と白唇の境界部に真皮縫合を行います。その後、赤唇と白唇の境界部から表皮縫合を開始します(できればルーペを使用)。最後に、口唇下縁が下垂しないよう粘膜部をラフに縫合します。組織欠損がある場合瘢痕が目立ちにくい縦方向に縫縮していくことが多いです。その際、白唇の長さが変化すると2次修正が困難になってしまいます。縫合に自信がない時は、洗浄・軟膏処置を行い、形成外科(または歯科口腔外科)外来へ依頼しましょう。(3)動物咬傷や高度な汚染創の場合洗浄、デブリードマンのみ、大まかな縫合にとどめて形成外科に紹介しましょう。最後に、後療法についても説明します。口唇周囲は摂食や発語で動きがある部位なので、瘢痕の炎症が遷延しやすく、肥厚性瘢痕やケロイドを起こしやすいです。トラニラスト内服や可能な範囲で傷を安静にするためのテーピングを行います。患者さんにはあらかじめ説明しておきましょう。参考1)波利井 清紀ほか監修. 形成外科治療手技全書III 創傷外科. 克誠堂出版;2015.2)安瀬 正紀監修, 菅又 章編. 外傷形成外科―そのときあなたは対応できるか. 克誠堂出版;2007.3)Frank H. Netter著, 相磯貞和訳. ネッター解剖学アトラス 原著第4版. 南江堂;2007.

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5~17歳へのファイザー製ワクチン、オミクロン株への効果と持続期間は?/CDC

 ファイザー製の新型コロナワクチンについて、12〜17歳におけるデルタ株への2回接種の効果は認められているが、オミクロン株に対する効果や効果持続期間、5〜11歳における効果のデータは少ない。今回、米国・Kaiser Permanente Northern California Division of ResearchのNicola P. Klein氏らの調査から、本ワクチン2回接種により小児および青年のCOVID-19関連の救急部および緊急医療機関への受診を抑制することがわかった。しかしながら、オミクロン株優位の期間ではワクチンの効果は低く、接種後は経時的に低下していた。米国疾病予防管理センター(CDC)のMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2022年3月4日号に掲載。 本研究では、2021年4月9日~2022年1月29日に米国10州において、COVID-19様疾患で救急部や緊急医療機関を受診した5~17歳の3万9,217例および入院した1,699例を調査し、case-control test-negative designを用いてワクチン効果(VE)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19関連の救急部や緊急医療機関への受診に対するVEは、5〜11歳では2回目接種後14〜67日で46%、12〜15歳および16〜17歳では2回目接種後14〜149日でそれぞれ83%および76%、150日以降はそれぞれ38%および46%だった。なお、16〜17歳では、3回目(ブースター)接種後7日以降にVEは86%に上昇した。・オミクロン株優位の期間におけるCOVID-19関連の救急部や緊急医療機関への受診に対するVEは、12~17歳においてデルタ株優位の期間よりも大幅に低く、2回目接種後150日以降は有意な効果はみられなかった。しかしながら、16~17歳で3回目(ブースター)接種後7日以降に81%に上昇した。・COVID-19関連入院に対するVEは、デルタ株以前/デルタ株/オミクロン株が優位な期間を含む調査した全期間で、5~11歳では2日目接種後14~67日で74%(95%信頼区間が広く、0をまたいでいる)、12~15歳および16~17歳では2日目接種後14~149日でそれぞれ92%および94%、150日以降はそれぞれ73%および88%であった。 今回の結果から、著者らは「対象となるすべての小児および青年は、推奨されるワクチン接種のアップデート(12~17歳におけるブースター接種を含む)を継続する必要がある」としている。

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若者がADHD治療薬の使用を中止する理由

 注意欠如多動症(ADHD)は、成人期まで継続する可能性のある神経発達障害である。ADHD治療薬は、継続的に使用することが重要であるにもかかわらず、若者の多くは成人期にやめてしまうことが少なくない。そのため、成人期よりADHD治療薬を再開することもあり、中止が時期尚早であった可能性が示唆されている。英国・エクセター大学のDaniel Titheradge氏らは、若者がADHD治療薬を中止してしまう理由について、調査を行った。Child: Care, Health and Development誌オンライン版2022年1月31日号の報告。 CATCh-uS(Children and Adolescents with ADHD in Transition between Children's services and adult Services)プロジェクトの定性データを用いて、ADHD治療薬の使用中止理由を調査した。若者を次の3群に分類した。(1)成人向け治療介入移行前の若者21例(2)成人向け治療介入への移行が成功した若者22例(3)小児向け治療介入離脱後、成人向け治療介入を再度受けた若者21例。対象患者には、半構造化面接を実施し、主題分析およびフレームワーク分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ADHD治療薬の使用を中止した理由は、以下のとおりであった。 ●薬物治療のベネフィットと副作用のバランス ●小児期のADHDの認識および教育障害 ●若者の生活環境と治療介入へのアクセスの課題 著者らは「ADHDの若者における長期的な予後やQOL改善のためには、ADHD治療薬の中止に対処するための多元的アプローチ、非薬理学的治療へのアクセスや心理教育の改善などが必要とされる。これら、若者のADHD治療薬の中止理由は、ADHD特有のものではないため、小児でみられる他の慢性疾患においても、服薬アドヒアランスと関連していると考えられる」としている。

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ロタウイルスワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第12回

ワクチンで予防できる疾患ロタウイルスは、乳幼児の急性胃腸炎を引き起こす代表的な病原体である。発熱と嘔吐から症状が始まり、水様性下痢を伴うようになる。ほとんどの場合は1週間程度で自然軽快するが、激しい嘔吐や下痢のために脱水症を起こし、点滴治療や入院が必要になる場合もある。5歳未満の急性胃腸炎の入院患者のうち、40〜50%はロタウイルスが原因である。また、脱水症の他にも、けいれん、腎不全、脳症などを起こすことがあり、5歳未満児の急性脳症の起因病原体としては、インフルエンザウイルス、ヒトヘルペスウイルス-6に次いで3番目に多い1)。ロタウイルスは糞口(経口)感染により拡大するが、非常に感染力が強く、衛生状態に関係なく5歳までにほとんどすべての乳幼児が感染すると言われている。重症例は初感染時に起こりやすく、繰り返し感染することで徐々に軽症化するため、年長児以降では不顕性感染になることも多い。わが国でのロタウイルス胃腸炎は冬から春に多く報告されているが、新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2020年以降はロタウイルスによる感染性胃腸炎の患者報告数は激減している(図)。図 定点あたり報告数画像を拡大する国立感染症研究所. 感染症発生動向調査2022年第3週より抜粋ロタウイルス感染症には抗ウイルス薬などの特異的な治療方法はなく、対症療法が中心となる。また、感染力が非常に強いため、適切な感染対策を行っても完全に予防することが困難である。そのため、乳児へのワクチン接種によるロタウイルス感染予防および重症化予防が重要となる。ロタウイルスワクチンの概要わが国では、1価ロタウイルスワクチン(商品名:ロタリックス)および5価ロタウイルスワクチン(同:ロタテック)の2種類の経口生ワクチンが認可されている(表)。表 ロタウイルスワクチン接種スケジュール画像を拡大するカバーする血清型は異なるが、1価ワクチンは交差免疫により他の血清型にも効果を発揮するため、同等の有効性が認められている2)。ロタウイルスワクチンは、前述のようにロタウイルス胃腸炎が2回目以降は軽症化するという性質を応用したものであり、その効果は、胃腸炎感染予防74~87%、重症化予防85~98%と非常に高い3)。効果の持続期間も生後2~3年まで確認されている。また、国内においてもワクチン接種による5歳未満児の入院率減少の効果が報告されている4)。ワクチン接種後に易刺激性、下痢、嘔吐などの副反応が国内で報告されているが、いずれも数日以内に回復し、重篤なものはまれである。頻度は非常に低いが(2~10万人に1人3))、初回接種後に腸重積を起こすことがある。第一世代のロタウイルスワクチン(同:RotaShield)が導入された際に、腸重積発症頻度の増加が確認されたため販売中止となった。現在使用されているワクチンは、腸重積発症リスクがRotaShieldの1/5~1/10と低くワクチン接種のメリットがリスクをはるかに上回る4)が、注意深く観察する必要がある。接種のスケジュールロタウイルスワクチンの接種スケジュールを表に示す。1価ロタウイルスワクチンと5価ロタウイルスワクチンでは接種回数が異なるため注意が必要である。原則として同じ種類のワクチンでスケジュールを完遂することが望ましい。しかし、転居後にいずれか一方のワクチンしか実施されていないなどの理由により、原則によることができないやむを得ない事情があると当該市町村長が認めた場合には、他方のワクチンにて接種することが可能である(具体的な接種方法については定期接種実施要領を参照5))。また、月齢3ヵ月以降に腸重積の発症率が増加するため、ワクチンの初回接種はできるだけ早い時期に実施することが必要である。出生15週0日以降の初回接種については安全性が確立されていないため、出生14週6日までに初回接種を完了させることが望ましい。日常診療で役立つ接種ポイントロタウイルスワクチンは経口生ワクチンであり、接種後1週間程度は便中にウイルスが排出されるため、おむつ交換時の手洗いなどの感染対策について説明しておくと良い。また、接種後の吐き出しを避けるために、接種前後は授乳を控えるように説明する。少量でも飲み込んでいれば一定の効果があり、ロタウイルスワクチンは複数回接種することから、万が一吐き出した場合でも1回投与と考え、追加の投与は必要ない5)。ロタリックスについては添付文書上、任意接種としての再投与が可能となっているが推奨はされていない。重篤な副反応として腸重積の可能性についても事前に保護者などに説明しておく必要がある。接種後1週間以内に、激しく泣く、機嫌が良かったり悪かったりを繰り返す、嘔吐を繰り返す、血便が出るなどの症状があった場合には、必ず医療機関を受診するように伝えておく。今後の課題・展望ロタウイルスワクチンは非常に効果の高いワクチンであるが、わが国では長年任意接種のために接種率が上がらなかった。ようやく2020年10月より定期接種化され、今後のロタウイルス胃腸炎および合併症の減少が期待されるところである。参考となるサイトこどもとおとなのワクチンサイト予防接種Q&A1)国立感染症研究所. IASR. 2019;40:209-210.2)Jonesteller CL, et al. Clin Infect Dis. 2017;65:840-850.3)CDC. The Pink Book. Chapter19:Rotavirus. 4)国立感染症研究所. 日本におけるロタウイルスワクチンの効果. 2019;40:212-213.5)厚生労働省. 定期接種実施要領.講師紹介

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円錐角膜〔keratoconus〕

1 疾患概要■ 定義円錐角膜は、進行性の両眼角膜中央部もしくは下方の菲薄化と突出を来す疾患であり、近視化と不正乱視による視力低下を来す。■ 疫学円錐角膜の発症頻度は、450〜2,000人に1人とされてきた。しかし、診断技術の進歩により、軽症の円錐角膜の検出頻度が上がっている。屈折矯正外来を訪れる患者のうち円錐角膜または円錐角膜疑い患者は5%前後にみられる。また、難波らの調査からは、疑い例も含めると日本人の約100人に1人程度の有病率であるという結果が報告されていることから、軽症例も含めると従来考えられているよりも罹患人口が多い可能性が高い。性差については報告により異なるが、わが国では男性に多いという報告が多数ある。■ 病因明らかな病因はいまだに不明である。数多くの遺伝子変異が報告されているが、実際に遺伝的素因が明らかな例はあまり多くない。ダウン症候群やレーバー先天盲、エーラス・ダンロス症候群、マルファン症候群などでは円錐角膜の発症率が高いことが知られている。その他リスクファクターとしては、アトピーなどのアレルギー眼疾患、頻繁に目をこする、などが挙げられる。■ 症状軽度の症例では自覚症状はほとんどない場合もあるが、中等度以上になると近視性乱視と不正乱視が出現する。そのために眼鏡矯正視力が不良になりハードコンタクトレンズによる矯正が必要になる。ほとんどの場合両眼性に生じるが、程度に左右差があることも多い。■ 分類角膜の突出部位別の分類としては、以下のものがある。Nipple角膜中央の狭い範囲(5ミリ以下)に突出がみられるもの。Oval     突出部位が中央やや下方にみられるもの。最も頻度が高い。Globus突出部位が角膜の4分の3の範囲に及ぶもの。また、重症度分類としては、Amsler分類(表)が古くから用いられているが、測定機器の進歩によって、細隙灯顕微鏡で検出できない初期の変化が捉えられるようになってきたために、見直す必要がある。表 Amsler-Krumeich分類画像を拡大する■ 予後円錐角膜の多くは思春期から青年期にかけて発症し、その後加齢とともに進行するが、中年以降になると進行速度が緩やかになってやがて停止する。しかしながら、進行の有無やスピードには個人差が大きく、近年の報告によれば30歳以降でも進行する症例もみられることが明らかになっている。経過中に、デスメ膜破裂を来す場合がある。局所的な実質の浮腫と、それに伴う急速な視力低下と軽度の眼痛を認める(急性水腫:図1)。浮腫は自然に軽快するが、実質瘢痕を残すと視力が回復せずに角膜移植が必要となることもあるので、急性水腫を来さないような治療方針を建てることが重要となる。図1 急性水腫の前眼部所見急激に発症する角膜中央部の浮腫で、スリットランプでしばしば実質の裂隙とデスメ膜の断裂を認める。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)円錐角膜の診断には、正確な視力検査、自覚的屈折検査と角膜形状解析検査を行う必要がある。細隙顕微鏡での異常所見としては、角膜中央〜Vogt’s striae(角膜実質の線状の皺壁:図2)、Fleisher ring(突出部の周辺に認められるリング状のヘモジデリン沈着)、上皮化の瘢痕などが挙げられ、主として中等症以上で初めて認められる。図2 Vogt’s striae突出部に生じる細かい実質の皺壁。初期の円錐角膜の診断には、角膜トポグラフィー(形状解析検査)が有用であり、角膜中央から下方の前方突出が特徴的である(図3)。図3 典型的な円錐角膜の角膜トポグラフィー像下方角膜曲率の急峻化を認める。近年では、多くの機器で円錐角膜のスクリーニングプログラムが搭載されている。より初期の診断には、角膜前面だけではなく後面も評価でき、角膜厚の分布も検出できる角膜トモグラフィー(断層撮影)の感度が高い。さらに、角膜形状でなく生体力学的特性を調べる検査の有用性も報告されている。鑑別疾患としては、円錐角膜よりも周辺部角膜の菲薄化と突出を来たすペルーシド角膜辺縁変性が挙げられる。円錐角膜よりも発症が遅く進行が停止するまでの期間も長い。その他、レーシックなどの角膜屈折矯正手術後の角膜拡張症(エクタジア)も円錐角膜と同様の所見を呈する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)円錐角膜の治療は、視力矯正と進行予防の2つの目的があり、前者はさらに保存的治療と外科的治療に分かれる。■ 視力矯正1)保存的治療軽度の場合は眼鏡やソフトコンタクトレンズも用いられるが、一般的には酸素透過性ハードコンタクトレンズによる矯正が中心となる。角膜突出の程度が強くなると、多段階のベースカーブを有する円錐角膜用のハードコンタクトレンズが必要となる場合もある。ハードコンタクトレンズに伴う異物感が強い場合は、ソフトコンタクトレンズの上にハードコンタクトレンズを乗せる“piggy-back”とよばれる装用法や、中心部がハードレンズで周辺部がソフトレンズのハイブリッドレンズ、あるいは強膜レンズが用いられることもある。2)外科的治療軽度の非進行例については、有水晶体眼内レンズによる近視・乱視の矯正も試みられている。近年、角膜実質の混濁をともなわない例については、角膜実質にPMMA製のリングを入れる「角膜内リング」も一部で行われるようになった(国内未承認)。これによって角膜形状の改善とハードコンタクトレンズ装用感の向上が得られる場合がある。保存的治療で充分な視力矯正が得られない場合、角膜移植が1つの選択となりうる。かつては角膜全層を移植する「全層角膜移植」が広く行われたが、術後合併症への対策が欠かせないという欠点があり、それを補うために角膜実質をデスメ膜の直上まで切除して移植する「深層層状角膜移植」が行われているが、手術手技が難しいという欠点を持つ。■ 進行抑制約20年前から、「角膜クロスリンキング」という円錐角膜の進行抑制を目的とした治療が、諸外国で広く行われるようになった(国内未承認)。角膜実質内にリボフラビン(ビタミンB12)を浸透させた後に、紫外線を照射することで角膜実質のコラーゲン線維の架橋を促して強度を向上させる。これまでの研究で、円錐角膜の進行抑制が大半の例で得られ、若干の形状改善効果もあることが報告されている。進行抑制が得られれば、角膜移植などの外科的治療を受けずに済む可能性が高く、患者の生活の質の向上に役立つ。4 今後の展望上に挙げた治療法のいくつかは保険未収載であったり、機器の承認が取れていないため、治療は多くの場合が自費診療として行われる。特に角膜クロスリンキングは、疾患の進行抑制を効率で得られるために患者のQOLを長期にわたって改善できることが海外で報告されており、わが国でも早急に実施体制が整うことが求められる。また、多くの円錐角膜患者にとってハードコンタクトレンズは生活に欠かせないが、市町村によってはその購入に対する補助がなされないなど、患者負担が大きいことが問題となっている。5 主たる診療科眼科。しかし多くの例では、眼鏡店やコンタクトレンズ販売店、あるいは屈折矯正手術施行施設を訪れることも多く、これらの施設で適切に円錐角膜の診断をつけることが重要である。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報円錐角膜研究会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)National Keratoconus Foundation(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Amsler M. Ophtalmologica. 1946;111:96–101.公開履歴初回2023年3月8日

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英語で「吐き戻す」は?【1分★医療英語】第18回

第18回 英語で「吐き戻す」は?I am worried about my daughter because she spit up milk a lot yesterday.(娘が昨日何度もミルクを吐き戻したので心配です)Okay, what is her baseline?(なるほど、通常はどの程度[吐き戻すの]ですか?)《例文》医師Helping her burp during and after feeding will prevent from spitting up.(授乳中や授乳後にげっぷをさせてあげると、吐き戻しを防げますよ)患者Oh, that is good to know!(そうなのですね、良いことを伺いました!)《解説》今回は小児医療でよく使われる「吐き戻す」という表現をお伝えします。AAP(米国小児科学会)のサイトでは、“vomiting”は胃の内容物が口から体外に強制的に吐き戻されること、“spitting up”は強制的な筋収縮は関与せず、しばしばげっぷに伴い胃の内容物が口から出てくること、と説明されています。母乳や人工乳を飲んだ赤ちゃんが、食後にミルクを口から吐き出してしまうことがあるのですが、これがまさに“spitting up”(吐き戻す)に当たります。大人が悪心を伴って嘔吐するときのニュアンスとは大きく異なります。“spit”を単体で使う際には、「唾を吐く」もしくは「口に入れたものを飲み込まずに出す」という意味合いとなり、こちらもまた上記とはニュアンスが異なります。小児領域で言えば、子供が食べようとしたものが口に合わず、すぐに「ぺっ」と外に出すような状況です。米国で小児医療に携わっていると、赤ちゃんの“spit up”を心配して救急やクリニックを訪れる家族が非常に多く、たびたび耳にする言葉です。英語圏の方は“spit up”“vomit”“spit”といった表現を自然に使い分けていますので、ニュアンスの違いを理解して、患者の年齢や症状に応じて使い分けてみてください。講師紹介

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第102回 ファイザーCOVID-19ワクチンの5~11歳での感染予防効果、相次ぐ報告

小学生(5~11歳)ごろを含む小児の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの感染予防効果はかなり低いようで、オミクロン株優勢の昨今においては追加接種の出番が必要なようです。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株出現後の米国ニューヨーク州のデータを調べた査読前のmedrxiv掲載報告によると、5~11歳小児へのPfizer/BioNTechワクチンBNT162b2接種の感染(COVID-19)予防効果は接種が済んでから僅か1ヵ月ばかりで激減していました1,2)。先週末4日にMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)に発表された米国疾病管理センター(CDC)主催VISION Network試験の査読済み(reviewed)結果報告3)でもニューヨーク州データほどではないもののその年齢層の小児へのBNT162b2の効果の衰えは比較的早いらしいことが示唆されています。試験では救急や急診(emergency department and urgent care)を要した小児のCOVID-19とワクチン接種歴が検討され、5~11歳小児の2回目接種から2週後(14日後)~およそ2ヵ月後(67日後)のCOVID-19予防効果は46%でした。ニューヨーク州の試験では去年12月13日から今年1月2日までにBNT162b2接種済みの5~11歳小児の検討が含まれ、それら小児のSARS-CoV-2感染予防効果は接種が済んでから2週間(13日間)以内では65%だったのが約1ヵ月(28~34日)後には12%に低下していました(medrxiv報告1)のFigure 2)。より年長の12~17歳小児のBNT162b2接種の同期間の感染予防効果は76%と56%であり、5~11歳小児ほどは低下しませんでした。5~11歳小児への投与量はそれより年長の小児に比べて少ないことが効果の大方の消滅の原因かもしれないと著者は考えています。12~17歳小児への投与量は30μgで、5~11歳小児への投与量はその3分の1の10μgです。5~11歳小児のCOVID-19入院予防効果は感染予防の大方の消失とは対照的に比較的保たれました。オミクロン株検出が感染の19%であった去年12月13~19日の入院予防効果は100%、オミクロン株検出が感染のほぼ100%(99%超)を占めるようになった今年1月24~30日では48%でした。効果はおよそ半減したとはいえワクチンは重病を防いだ(was protective)と著者は判断しており、5~11歳小児への接種普及の取り組みを続けるべきと言っています。報告時点での米国のそれら幼い小児のワクチン接種率は4人に1人に満たない25%未満でした。同様にVISION Network試験でも5~11歳小児のBNT162b2接種の入院予防効果は感染予防効果よりどうやら高いと示唆されています。2回目接種から14~67日間のCOVID-19関連入院予防効果は74%でした。ただし、統計解析にデータは不十分でその95%信頼区間は0をまたぐ-35%~+95%であり、BNT162b2が5~11歳小児のCOVID-19関連入院をどれほど防ぐのかを更にデータを集めて検討する必要があります。加えて、5~11歳小児にワクチンをどう投与するかの検討も必要でしょう。感染予防効果は現状ではどうやら早く低下するようであり、工夫した投与方針を考えてその試験を実施すべきとニューヨーク州試験の著者は言っています1)。Pfizer/BioNTechはすでにその方向で事を進めています。去年12月の両社の発表4)によると、2歳以上5歳未満小児への両社のワクチン2回接種後1ヵ月間の免疫反応はワクチンの確かな効果が判明している青少年(16~25歳)の人のそれに残念ながら及ぶものではありませんでした。この結果を受けて両社は生後6ヵ月から5歳未満の小児を対象にした進行中の試験に3回目投与を含めることを決めています。3回目の用量は1回目と2回目と同量の3μgで、2回目から2ヵ月過ぎてから投与されます。3回目接種の検討が成功したら生後6ヵ月以上5歳未満小児への同ワクチン使用の米国FDAの取り急ぎの認可を今年前半に手にするのに必要なデータが揃うと両社は見込んでいます。その発表の際に両社は5~11歳の小児への3回目接種も検討することを明らかにしています。それら小児への3回目接種の用量もより幼い小児への投与がそうであるように1回目と2回目と同じ10μgです。参考1)Effectiveness of the BNT162b2 vaccine among children 5-11 and 12-17 years in New York after the Emergence of the Omicron Variant. medRxiv. February 28, 20222)Vaccine’s protection for kids dives / Science3)Klein NP, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022 Mar 4; 71;352-358.4)Pfizer and BioNTech Provide Update on Ongoing Studies of COVID-19 Vaccine / Pfizer

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5~11歳の新型コロナ重症度、インフルやRSウイルスと比較すると?

 新型コロナワクチン接種の対象が5~11歳に拡大されたが、この年代の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症度は、同年代のインフルエンザやRSウイルス感染症と比較すると高いのか、低いのか。米国医療研究品質局(AHRQ)のWilliam Encinosa氏らは、米国の11州での入院患者データを用いて分析した横断研究の結果を、JAMA Pediatrics誌オンライン版2022年2月21日号リサーチレターに報告した。 米国で5~11歳に対するファイザー社の新型コロナワクチンの緊急使用許可が出された2021年10月までに、この年齢層の小児でSARS-CoV-2感染と診断されたのは180万人、死亡者は143人で、入院は8,000人以上だった。本研究では米国内の11州1,333病院における、2021年第1四半期(1~3月)のCOVID-19、COVID-19による小児多系統炎症性症候群(MIS-C)、インフルエンザ、RSウイルス感染症による入院患者データを調査。COVID-19流行期には感染者が少なかったため、インフルエンザとRSウイルスについては10年間の平均的な感染者数であった2017年第1四半期のデータも用いられた。 心臓血管系、呼吸器系、神経系、血液系、腎臓系、胃腸系、筋骨格系の46の合併症のほか、入院日数や治療に要した費用についても調査された。両側検定におけるp値は、Stata/MP version 17(StataCorp)を使用して線形回帰分析から求められ、p値<0.05で有意と設定された。 主な結果は以下の通り。・計2,269例(平均[SD]年齢:7.6[2.0]歳、男児:56.0%)のデータが分析された。・343例のCOVID-19(MIS-Cなし)、379例のMIS-C、1,134例のインフルエンザ、413例のRSウイルス感染症による入院があり、10万人当たりの入院はそれぞれ5.1例、5.7例、17.0例、6.2例であった。・すべての感染症で入院中の死亡は稀であった。・COVID-19(MIS-Cなし)では神経系合併症が多く(9.6%[95%CI:6.5~12.8%]、p=0.03)、MIS-Cでは血液系(55.4%[50.4~60.4%]、p=0.001)、胃腸系(47.2%[42.2~52.3%]、p=0.001)、心血管系(29.8%[25.2~34.4%]、p=0.001)、および腎臓系(21.9%[17.7~26.1%]、p=0.001)の合併症が多くみられた。・RSウイルス感染症では呼吸器系合併症が多くみられた(75.8%[71.6~79.9%]、p=0.001)。・インフルエンザでは筋骨格系合併症が多くみられた(9.5%[7.8~11.2%]、p=0.001)。・MIS-Cでは、入院期間中央値(IQR)が最も長く(5[3~7]日)、費用の中央値は23,585ドルで、インフルエンザの場合(入院期間中央値:2[1~4]日、費用中央値:5,200ドル)と比べて長期かつ高額だった。・COVID-19感染とMIS-Cを合わせた総入院日数は,入院率が低い(10万人当たり10.8人 vs.17.0人)にもかかわらず,インフルエンザとほぼ同じ(4,384日vs.4,202日、p=0.65)であった。 著者らは、5~11歳の小児において、COVID-19入院1件に対してMIS-C入院1件であり、この知見は、MIS-Cがこれまで考えられていたほどCOVID-19の後遺症として稀ではない可能性を示唆すると考察。COVID-19の他の長期合併症も懸念され、MIS-Cの重症度はインフルエンザより低いものの、COVID-19感染とMIS-Cの複合による経済的・健康的負担は、過去のインフルエンザ流行時と同程度に高いとまとめている。

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抗ウイルス薬+ブースターで重症化を防ぐ経口COVID-19治療薬「パキロビッドパック」【下平博士のDIノート】第93回

抗ウイルス薬+ブースターで重症化を防ぐ経口COVID-19治療薬「パキロビッドパック」今回は、抗ウイルス薬「ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は、SARS-CoV-2陽性で重症化リスクを有する軽症~中等症Iの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、臨床的回復までの期間を短縮し、重症化や入院・死亡を予防することが期待されています。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症の適応で、2022年2月10日に特例承認されました。なお、重症度の高いSARS-CoV-2による感染症患者に対する有効性は確立していません。<用法・用量>通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、ニルマトレルビルとして1回300mgおよびリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与します。中等度の腎機能障害患者(30mL/min≦eGFR<60mL/min)の場合には、ニルマトレルビルとして1回150mgおよびリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与します。重度の腎機能障害患者(eGFR<30mL/min)への投与は推奨されていません。なお、SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに本剤の投与を開始することが望ましく、臨床試験において症状発現から6日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていません。<安全性>国際共同第II/III相試験の中間解析時点で認められた副作用は672例中49例(7.3%)で、主なものは味覚不全25例(3.7%)、下痢13例(1.9%)、高血圧(頻度不明)などでした。なお、重大な副作用として中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、肝機能障害(いずれも頻度不明)が設定されています。 <患者さんへの指導例>1.この薬は、新型コロナウイルスの増殖に必要な酵素を阻害する抗ウイルス薬と、この抗ウイルス薬の分解を抑えて血中濃度を維持する薬の2種類がセットになっています。2.食事の有無にかかわらず、朝と夕の1日2回、12時間ごとに服用してください。症状が改善しても指示どおりに5日分を飲み切ってください。3.飲み合わせに注意が必要な薬剤が多数ありますので、服用している薬剤や健康食品、サプリメント、嗜好品をすべて報告してください。4.服薬開始後、疲れやすい、体がだるい、力が入らない、吐き気、食欲不振などの症状のほか、異常が現れた場合はすぐに相談してください。<Shimo's eyes>本剤は、COVID-19に対する抗ウイルス薬として特例承認されました。経口薬としては、2021年12月に特例承認されたモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオカプセル)に続く2剤目の薬剤となります。セットとなっている2剤のうち、ニルマトレルビルは新型コロナウイルスの増殖に関わるメインプロテアーゼの作用を阻害して抗ウイルス効果を発揮し、リトナビルは抗HIV薬としても用いられている強力なCYP3A阻害薬であり、ニルマトレルビルの濃度を上げるブースター薬として働きます。主な治療対象は、モルヌピラビルと同様に、重症化リスクの高い軽症~中等症Iの患者ですが、本剤は12歳以上(体重40kg以上の場合)から服用できます。ほかに軽症患者を対象とした薬剤としては、中和抗体製剤カシリビマブ/イムデビマブ(同:ロナプリーブ注射液セット)と、ソトロビマブ(同:ゼビュディ点滴静注液)の2剤が承認されています。また、適応外ではありますが、2022年1月よりレムデシビル(同:ベクルリー点滴静注用)も限定された条件下で使用可能です。わが国も参加している国際共同第II/III相EPIC-HR試験の結果において、症状発現から3日以内に本剤の投与を受けた患者では入院・死亡リスクが89%減少し、5日以内に投与を受けた患者では88%減少しました。なお、各変異株に対する臨床試験の有効性データは現時点では得られていませんが、in vitroにおいてはオミクロン株ほか懸念すべき変異株に対する抗ウイルス効果が認められています。用法は、1日2回5日間の経口投与です。シート1枚が1日分となっており、1回にニルマトレルビル錠を2錠およびリトナビル錠を1錠服用します。なお、重度の腎機能障害患者には禁忌となっており、中等度の腎機能障害患者はニルマトレルビル錠を1回1錠に減量して服用します。この場合は薬剤の交付前に朝および夕の服用分それぞれからニルマトレルビル錠1錠を取り除き、取り除いた箇所に専用のシールを貼り付けてから交付します。不要な錠剤を取り除いたことを必ず患者さんに伝えてください。リトナビルはCYP3Aを強く阻害し、またニルマトレルビルおよびリトナビルはCYP3Aの基質となっています。そのため、併用に注意すべき薬剤が多数あり、併用禁忌薬としてはフレカイニド、アミオダロン、ピモジド、ピロキシカム、アゼルニジピン、リバーロキサバン、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、トリアゾラム、ボリコナゾールなど38成分とセイヨウオトギリソウが挙げられています。ほかにも注意すべき薬剤はあると考えられていて、国立国際医療研究センター病院が国内外の資料を基に作成した「パキロビッドパックとの併用に慎重になるべき薬剤リスト」を公開しています。本剤を使用する医療機関は、ファイザーが開設する「パキロビッドパック登録センター」に登録して配分依頼を行います。処方に際しては患者の同意書が必要であり、院外処方に際しては、対応薬局に処方箋とともに記入済みの「投与前チェックシート」を提出する必要があります。処方箋を応需した薬局薬剤師は、とくに併用薬に注意すべきであり、服薬中のすべての薬剤を確認しなければなりません。また、腎機能に応じて適切な投与量になっているかどうかのチェックも行いましょう。参考1)PMDA 添付文書 パキロビッドパック2)ファイザー 新型コロナウイルス『治療薬』医療従事者専用サイト パキロビッドパック

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第91回 5~11歳への接種開始を踏まえたワクチン手引き第7版を公表/厚労省

<先週の動き>1.5~11歳への接種開始を踏まえたワクチン手引き第7版を公表/厚労省2.初の国産コロナ治療薬となるか?塩野義製薬が経口薬を承認申請3.2021年の死亡数6.7万人増で戦後最多、デルタ株の影響か/厚労省4.内科や外科を目指す若手医師が減少?新制度で問題は解消されるのか5.旧優生保護法による強制不妊手術、国に初の賠償命令/大阪高裁6.乳房インプラントによるリンパ腫の国内報告が新たに2例、計4例に1.5~11歳への接種開始を踏まえたワクチン手引き第7版を公表/厚労省厚労省は、5~11歳の小児への新型コロナウイルスワクチン接種について、副反応に対応できる医療提供体制の確保を確認の上、専門的な医療機関の見直しを検討するよう事務連絡を発出した。副反応に関する相談窓口の設置などにかかる経費は補助の対象となる。早いところでは2月末からワクチン接種が開始されるが、12歳以上への接種と異なり、有効成分量を成人の3分の1にするほか、ワクチン接種は努力義務ではなく、保護者の同意の上実施することになっている。乳幼児・小児に対して接種を行う場合は、保護者の同伴を求めることも含め、21日に「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き」の第7版を公表した。(参考)5~11歳へのワクチン接種 自治体の必要経費 全額助成へ 厚労省(NHK)小児接種、副反応に対応可能な医療体制確保を 厚労省(CB newsマネジメント)新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の幼児児童生徒に対する実施についての学校等における考え方及び留意点等について(厚労省)2.初の国産コロナ治療薬となるか?塩野義製薬が経口薬を承認申請塩野義製薬は25日、新型コロナウイルスに対する経口薬の製造販売承認を厚労省に申請したことを発表した。本剤は新型コロナウイルスの増殖を抑制するプロテアーゼ阻害薬。12歳以上の軽症・中等症患者を対象とした臨床試験において、1日1回、5日間投与したところ、3回目の投与後に感染性ウイルスが検出された割合が10%未満となり、プラセボを服用した群よりも低かった。また、副作用も軽度だったとしている。承認されれば、軽症者向けの飲み薬としては3剤目、国内の製薬会社では初めてとなる。すでに製造を始めており、3月末までに1100万人分を生産し、4月以降は年間1,000万人分の供給体制の構築を目指す。現時点では臨床試験がすべて終了しておらず、この前に実用化できる「条件付き早期承認制度」の適用を求めている。(参考)塩野義、コロナ飲み薬を年間1000万人分供給へ…厚労省に製造販売の承認申請(読売新聞)塩野義製薬 新型コロナの飲み薬 厚労省に承認申請(NHK)塩野義がコロナ経口薬を承認申請、条件付き早期承認制度の適用を希望(日経バイオテク)新型コロナウイルス感染症治療薬S-217622の国内における製造販売承認申請について(塩野義製薬)3.2021年の死亡数6.7万人増で戦後最多、デルタ株の影響か/厚労省厚生労働省は25日、2021年12月の人口動態統計の速報を公表した。昨年亡くなった人は前年より6万7,745人(4.9%)増加し、戦後最多の145万2,289人だった。死者数の増加は2年ぶりで、新型コロナウイルスのデルタ株による影響が考えられる。死因が公表されている21年1~9月分のデータをみると、新型コロナによる死者は前年の同じ期間より1万4,563人多かった。東日本大震災の犠牲者も1万5,000人余りだったが、21年はコロナ禍の余波とみられる心臓など循環器系疾患の死亡が前年同期より1万人余り増加し、戦後最多の死亡数となった。なお、脳卒中など救急医療が必要な死因の死亡数は横ばいだったため、第5波の医療逼迫では死亡数の増加を防げたとみられる。ほかにも老衰1万5,035人、誤嚥性肺炎5,429人など増えており、いずれも高齢化が背景とみられる一方で、出生数は84万2,897人と過去最少であり、人口減少は加速している。(参考)21年の死者、戦後最多145万人 デルタ株流行が影響 厚労省速報(朝日新聞)死亡増加数は戦後最大 6万7000人増、震災時上回る 心不全などコロナ余波(日経新聞)人口動態統計速報(令和3年12月分)(厚労省)4.内科や外科を目指す若手医師が減少?新制度で問題は解消されるのか日本専門医機構は21日にオンラインで行った定例記者会見で、2022年度に専門医研修を開始する専攻医の領域ごとの採用者数を発表した。総数は9,519人と前年度より300人余り増加しているが、内科や外科が前年度に比べ減少している。地域医療の現場からは「内科医師が圧倒的に不足している」との声が強い。各学会からは「専攻医に占める内科のシェアが減少しており、将来の我が国の医療を考えたとき大きな問題である(内科)」「外科医不足は深刻で、まだまだ増やす必要がある(外科)」「ICTが発達する中で放射線科医の働き方は大きく変わっており、従前と同じ考え方で地域偏在などを議論することは難しくなってきている(放射線科)」などの意見が出ており、寺本 民生理事長は、「今後、『診療科、領域間の偏在』の是正を検討していく必要がある。ただしシーリング(採用数の上限設定)には負の面があることにも留意しなければならない」との考えを述べた。(参考)専門医を目指す医師 内科、外科が減少 診療科の偏在解消へ課題も(読売新聞)新専門医目指す「専攻医」の2022年度採用は9519名、「内科医不足の解消」などが今後の重要課題―日本専門医機構(Gem Med)5.旧優生保護法による強制不妊手術、国に初の賠償命令/大阪高裁旧優生保護法による「不良な子孫の出生防止」を目的に、知的障害などを理由に本人の同意なく不妊手術を強制された原告らの訴えに対して、憲法13条・14条に違反とし、国側に初の賠償命令がでた。これまでの地裁判決では、旧優生保護法による不妊手術を違憲としつつも、20年の除斥期間を理由に請求を退けてきた。今回の高裁判決は、被害者の救済を求めた原告らが、法改正直後であっても、社会的な差別や偏見などで原告の訴訟が難しかったことを考慮し、請求を退けた一審判決と異なり、国側に計2,750万円の賠償を命じた。(参考)除斥期間の例外を認定 被害者救済の道広がる 強制不妊訴訟の大阪高裁判決(産経新聞)旧優生保護法「違憲」、国に初の賠償命令 大阪高裁(日経新聞)6.乳房インプラントによるリンパ腫の国内報告が新たに2例、計4例に厚労省は、2019年から豊胸術や乳がん再建術に用いられるインプラント(ゲル充填人工乳房)のまれな合併症「乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)」について継続した情報提供を行っているが、このほど新たに2例の発症報告があったと発表した。国内ではこれまでに4例が報告されているが、現時点で死亡症例は認められていない。本製品は2019年7月、米国FDAの決定によりアラガン社が全世界を対象として自主回収(リコール)しており現在は流通していないが、該当する製品が挿入された患者のうち、2,200〜3,300人に1例(0.030~0.045%)でBIA-ALCLが発症している。発症までの期間は術後平均7~9年とされ、引き続き継続的な検診を呼び掛けている。(参考)人工乳房による悪性リンパ腫が国内でも散発、生涯にわたり「定期検診と自己検診」継続を―厚労省・関係学会(Gem Med)ゲル人工乳房でリンパ腫発症、国内3・4例目 継続的な検診を呼び掛け、厚労省(CB newsマネジメント)乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)についてよくあるご質問(日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会)ゲル充填人工乳房及び皮膚拡張器植込み患者等における乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)の発生及び植込み患者等に対する情報提供について(厚労省)

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転職では「選ぶ側」だったのに…【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第36回

第36回 転職では「選ぶ側」だったのに…漫画・イラスト:かたぎりもとこ人材紹介会社を通じて転職やアルバイト斡旋を受けた経験のある医師ならば、「完全なる売り手市場」という実態を理解しやすいでしょう。実際、医師が人材紹介会社に登録すれば即時に多くの求人紹介を受けることができます。これは全国10万超ある医療機関の多くで医師が不足しており、常時「求職中の医師」より「医師を採用したい医療機関」のほうが多いために発生する事象です。一方、医業承継の場合、状況は転職とはまったく異なります。医業承継の場合、診療所を売りたい「売り手」と、買いたい「買い手」の二者が存在しますが、その数は売り手が圧倒的に少ないのが実情です。弊社で毎月お問い合わせを頂く売り手と買い手を見ると、その比率は「売り手:1」に対して「買い手:10」。つまり、承継物件を探す買い手が売り手の10倍存在する、ということです。転職では圧倒的な売り手市場なので、医師側は希望条件をコンサルタントに伝えれば多くの求人があったり条件を希望に近づけてもらったりできますが、医業承継の買い手となった場合はそうはいきません。私たちはメールマガジンを通じて会員に承継物件を案内していますが、「自分の理想(希望条件)に当てはまらない」となかなか検討していただけないケースがあります。でも、時間をかけても希望に近い案件がない場合は、その希望が実態とかけ離れている可能性もあります。そうした場合は希望条件の中で妥協できるところを探し、現実と折り合いをつけることが承継成功の近道です。転職時には「選ぶ側」だった医師も、医業承継で「買い手」になれば今度は売り手に「選ばれる側」。そうした意識の転換が必要なのです。

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妊娠中のコロナワクチン2回接種、乳児の入院61%予防効果/CDC

 母親が妊娠中にCOVID-19ワクチンを2回接種することで、生後6ヵ月未満の乳児の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による入院を61%予防する効果があることが、米国の研究チームの調査で明らかになった。研究結果は、米疾病対策センター(CDC)のMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2022年2月15日号に掲載。 これは米国の研究チームOvercoming COVID-19が、2021年7月1日~22年1月17日、米国17州20の小児病院において実施したケースコントロール研究である。生後6ヵ月未満の入院乳児379例が対象で、このうちCOVID-19による入院が176例(症例群)で、COVID-19以外による入院が203例(対照群)だった。乳児の母親は、妊娠中にファイザー製またはモデルナ製のコロナワクチンを2回接種完了と、未接種の2グループに分類。症例群で母親がワクチンを接種していたのは16%(28/176例)だったのに対し、対照群で母親がワクチンを接種していたのは32%(65/203例)だった。 調査の結果、生後6ヵ月未満の乳児の新型コロナによる入院予防効果は、母親が妊娠中にワクチン2回接種完了で61%(95%信頼区間[CI]=31~78%)だった。このうち、妊娠初期(20週以前)に2回接種を完了した場合の効果は32%(95%CI=-43%~68%)だった(ただし、信頼区間が広いため慎重な解釈が必要)。妊娠後期(21週~出産14日前)では80%(95%CI=55~91%)だった。いずれにおいても、妊娠中のワクチン2回完了は、乳児の入院リスク低減と関連していることが示された。 症例群の43例(24%)がICUに入院した。このうち25例(15%)は重症で、入院中に人工呼吸器、血管作動性物質、ECMOなどを導入し、1例が死亡した。また、ICU入院の43例のうち、88%は母親がワクチン未接種であった。ECMO導入例(1例)と死亡例(1例)の母親は、いずれもワクチン未接種であった。 妊婦には3回目のブースター接種が推奨されているが、本研究はサンプル数が少ないため、その効果は不明だ。また今回の解析では、母親が妊娠前または妊娠中にSARS-CoV-2に感染していたかどうかを評価しておらず、それによって乳児が母体の抗体を得られたかもしれないことなどが、課題として挙げられており、妊娠前と妊娠中のワクチン接種のタイミングを比較検討する必要があるとしている。

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国内オミクロン株感染者139例の臨床的特徴/感染研

 国立感染症研究所は、国内におけるオミクロン株の疫学的・臨床的特徴を迅速に把握することを目的として、検疫および国内にて初期に探知されたオミクロン株症例について、積極的疫学調査を行った。18日、第5報として収集されたすべての結果が報告された。【対象症例】 2021年11月29日~2022年1月12日までに本調査の協力医療機関に入院し診療を行った新型コロナウイルス感染者の中から、ゲノム解析によりオミクロン株感染が確定した139例。【調査方法】 退院後に調査票を用いて、基本情報、渡航情報、ワクチン接種歴、基礎疾患、入院時のバイタルサイン・臨床症状、入院期間中に観察された臨床症状、合併症、入院中の治療、入院経過・退院時転帰などの情報を収集し、疫学的記述を行った。【主な結果】・調査対象139例の内訳は、男性91例(65.5%)、女性48例(34.5%)であり、年齢の中央値は33歳(0-81)。20~50代が7割を占め、10代以下が2割、60代以上は1割だった。・BMIの中央値(四分位範囲)は22.3kg/m2(19.1-25.3)で、33例(23.7%)に喫煙歴、73例(52.5%)に飲酒歴を認めた。・5例(3.6%)に過去のSARS-CoV-2感染歴が認められた。発症から入院までの期間の中央値(四分位範囲)は3日(2-4)であった。・ワクチン接種歴は3回が3例(2.2%)、2回が86例(61.9%)、1回が4例(2.9%)、接種なしが46例(33.1%)。未接種者(1回接種・接種なし)50例は10歳未満が32%と多くを占めた。・何らかの基礎疾患を有した症例は30例(21.6%)であり、高血圧(12.2%)、脂質異常症(7.9%)、肥満(4.3%)の頻度が高かった。・入院時の体温、脈拍数、呼吸数の中央値(四分位範囲)は、それぞれ36.8℃(36.5-37.2)、86回/分(77-98)、18回/分(16-20)だった。酸素飽和度の中央値(範囲)は98%(95-100)で、1例が酸素2L/分の投与を必要とした(基礎疾患を有する80代のワクチン未接種者)。・入院時、106例(76.3%)が何らかの症状を認めていた一方、無症状者は33例(23.7%)で、うち5例が入院後に何らかの症状を認めた。・COVID-19診断による入院時の主な症状は、咳嗽(46.0%)、咽頭痛(33.8%)、37.5℃以上の発熱(30.9%)、鼻汁(18.0%)で、味覚障害・嗅覚障害はそれぞれ1例(0.7%)に認められた。・入院時、139例中124例が胸部X線検査もしくはCT検査を受け、7例(5.6%)に肺炎像を認めた(X線:3/108例、CT:5/45例)。血液検査所見は概ね正常範囲内だった。・139例中26例(18.7%)にCOVID-19への直接的な効果を期待して治療介入が行われ、113例(81.3%)が対症療法のみであった。ICUでの加療や、人工呼吸器、体外式膜型人工肺(ECMO)の使用といった重症治療を受けた者は認めなかった。・全入院期間の中央値(四分位範囲)は11日(9-14)で、細菌性肺炎や急性呼吸切迫症候群(ARDS)の合併例は認めなかった。・発症から退院までの期間に観察された主な症状は、咳嗽(56.8%)、37.5℃以上の発熱(56.1%)、咽頭痛(41.7%)、鼻汁(32.4%)、味覚障害(7.2%)、嗅覚障害(5.8%)だった。・28例(20.1%)が退院まで無症状で経過し、133例(95.7%)が自宅退院した。残りのうち4例(2.9%)は医療機関へ転院し、2例(1.4%)が医療機関以外の施設へ入所した。・ワクチン接種者、未接種者ともに死亡例は認めなかった。 なお、本調査結果はワクチン接種者と未接種者の比較を目的としたものではない。

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症例報告は自分のキャリア形成である【ちょっくら症例報告を書いてみよう】第2話

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。大阪大学の忽那です。この連載では、臨床医が症例報告を書くことについて考えてみたいと思います。連載を読んでちょっとでも皆さまが症例報告を書くお役に立てましたら幸いです。前回は「自分が得た知識・経験を共有することの意義」について述べました。今回は症例報告をすることによる自身のキャリアにとってのメリットについて述べたいと思います。症例報告を積み重ねると「専門家」になる「症例報告なんて大した実績にならないし、自分のキャリアにとって無駄なんで…」なんて思っていませんか。症例報告が実績にならないというのは大きな誤解です。もちろん症例報告だけでアカデミックな地位が得られるわけではありませんが、自分の専門性を高めるためには大いに役に立ちます。私の人生最初の症例報告は、「回帰熱」という珍しい輸入感染症の症例でした。Kutsuna S, et al. The first case of imported relapsing fever in Japan. Am J Trop Med Hyg. 2013;89:460-461.〔被引用数:17〕「回帰熱ってなんやねん」と思われたかと思いますが、数日間熱が続いた後、1週間くらいの無熱期があり、また数日間発熱し…という発熱を繰り返す珍しい感染症です。記録が残っている範囲では、この報告が最初の日本での回帰熱の報告になります(ちなみに日本ではこれまでに2例の回帰熱が報告されており、どちらも私が診断しています)。このような珍しい症例報告をすると、何が起こるかというと、ときどき症例相談が舞い込んでくることになります。「この周期性発熱の患者さん、回帰熱の可能性ないですか?」「回帰熱の検査ってどこでできるんですか?」とかそういう相談です。こうした相談を受けていると、そのうち「回帰熱のことは忽那に相談すればいい」という流れになります。回帰熱なんて激レアな感染症なので、そんなに活躍の場はありませんが、とりあえず「誰も診たことがない疾患を診たことがある」というのは大きなアドバンテージです。症例報告は連鎖するさて、回帰熱の症例報告の影響は回帰熱だけに留まりません。たとえば私が書いた症例報告をインターネットでみつけた患者さん自身が「私も熱を周期的に繰り返してるんですが、回帰熱じゃないですか?」と受診されたことがありました。この方は回帰熱ではなく最終的に「成人発症PFAPA症候群」というこれまた日本初の症例ということがわかりました。Kutsuna S, et al. The first case of adult-onset PFAPA syndrome in Japan. Mod Rheumatol. 2016;26:286-287.〔引用数:19〕ここから私の興味は周期性発熱にも波及することになります。また、輸入感染症の世界にも足を踏み入れることになった私は、とりあえず自分の経験した珍しい輸入感染症の症例をひたすら報告していきました。当時はこれが自分の将来にどういう影響を与えるかなんてことはもちろん考えずに書いていました。その中に、「ジカウイルス感染症」の報告があります。Kutsuna S, et al. Two cases of Zika fever imported from French Polynesia to Japan, December 2013 to January 2014. Euro Surveill. 2014;19:20683.〔被引用数:212〕ジカウイルス感染症という、当時まったく不明であった蚊媒介感染症による輸入例を“Eurosurveillance”というヨーロッパCDCの学術誌に報告したものです。これも当時は日本第1例目と2例目だったわけですが、報告した当初は「また忽那がマニアックな症例報告を書いとるわ…ホンマしょーもない…」くらいに思われていたわけです。しかし、この後ブラジルでジカウイルス感染症がアウトブレイクし、「妊婦さんが感染すると児が小頭症になることがある」ということがわかりジカウイルス感染症は世界な注目を集めます。私の“Eurosurveillance”の報告は、日本最初の報告であったというだけでなく、尿からジカウイルスを検出したのが世界で初めてということもあって、尿検体を使った診断という点でも評価されました。症例報告で被引用数が200超えというのはなかなかではないでしょうか。こうした症例報告を経て、私は蚊媒介感染症の専門家としての確固たる地位を固めていったわけです(自分で言う)!症例報告は連鎖して、それがいつしか大きな円となり専門性へと繋がることがあるということですね。症例報告は医師の職務経歴書ということで、たかが症例報告、されど症例報告です。症例報告とは、自分はこういう症例を経験してきました、という言わば自己紹介のようなものであり、症例報告が自分自身のキャリアを形成していくことがあります。そして、その症例報告から派生して、別の症例報告に繋がることもあるし、それらの症例報告が繋がることでより広いカテゴリーでの専門性を身に付けることも可能になります。自分が経験した症例を報告することで発生するポジティブ・フィードバックを期待して、ガンガン症例報告していきましょう!!

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ちびまる子ちゃん(続編)【その教室は社会の縮図? エリート教育の危うさとは?(社会適応能力)】Part 1

今回のキーワード小学校受験インクルーシブ教育自己愛性パーソナリティ障害非認知能力ギャング・エイジ(仲間時代)ストレス関連成長(SRG)性格の機能「グッド・イナッフ・スクール」皆さんは、自分の子どもに小学校受験をさせたいですか? もちろん子どもがエリート学校に入学して、やがてエリート職に就けば、将来が輝かしく、それが子どもの幸せだと信じている親は多いでしょう。そのベネフィットがある一方で、そのリスクはないでしょうか? ベネフィットばかりに目が向き、そのリスクについてはあまり気にしていない親が多いようです。この答えを探るために、今回は、アニメ「ちびまる子ちゃん」のキャラクターを使います。このアニメのキャラクターたちは、過去の回で、性格(パーソナリティ)の分類のために登場してもらいました。今回は、ちびまる子ちゃんのクラスメイトを選抜したエリート学校を想定し、そこからエリート教育のリスクを明らかにします。そして、その根拠を行動遺伝学的に掘り下げます。さらに、性格を「能力」として捉え直し、性格の機能を解き明かしてみましょう。どんなキャラクターがエリート学校にいそう?ちびまる子ちゃんのクラスメイトは、まる子をはじめとするいろんなキャラクターがいました。その中で、エリート学校にいそうなキャラクターは誰でしょうか?エリート学校に選ばれる基準は、その学校によって多少違うかもしれませんが、多くに共通するのは、最終的にエリート大学に入学するための学力(認知能力)と育ちの良さ(厳格な家庭環境)があることでしょう。なぜなら、そもそも親がそれを望み、学校がそれを“売り”にしているという利害関係があるからです。それでは、ここから、男子と女子に分けて、誰が選ばれるかを一緒に想像してみましょう。(1)男子男子として、まず挙げられるのは、花輪クンです。セレブキャラで賢そうな彼が公立小学校にいることのほうが不思議です。次に挙げられるのが、丸尾君です。生真面目キャラの彼は、エリート学校にも多くいるでしょう。一方で、永沢、藤木君、はまじは、セレブでも生真面目でもないので、その学校にはいないでしょう。サッカー少年の大野君やガキ大将キャラの杉山君もいないでしょう。ましてや、おバカキャラの山田君、口癖キャラのブー太郎、胃弱キャラの山根、食いしん坊キャラの小杉など変わったキャラは、エリート学校には決して選ばれないでしょう。(2)女子女子として、まず挙げられるのは、城ヶ崎さんです。お嬢様キャラの彼女は、まる子のクラスではパーソナリティとして際立っていないですが、その育ちの良さからエリート学校には好まれるでしょう。次に挙げられるのが、みぎわさんです。彼女は、思い込みキャラではありますが、丸尾君と並んで学級委員を務めあげている点で前に出ていく積極的なタイプであり、表向きは優等生です。一方で、まる子、前田さん、野口さんは、お嬢様でも優等生でもないので、選ばれないでしょう。なお、しっかり者キャラのたまちゃんは、優等生ではあるのでエリート学校に好まれそうです。しかし、父親が変わり者であるため、親子面接の時点で落とされるでしょう。エリート教育のリスクとは?エリート学校にいるキャラクターは、花輪クン、丸尾君、城ヶ崎さん、みぎわさんとかなり限られていることが分かります。よくよく考えると、だからエリート(選ばれし者)なのです。それでは、ここから、この4人のキャラクターたちばかりが30人いるエリート小学校のクラスをイメージしながら、エリート教育のリスクを大きく3つ挙げてみましょう。(1)勉強以外が軽視される-消極性そのクラスでは、もちろん勉強をすることが最優先されます。先取り学習や家庭学習も多いでしょう。競争意識を煽る仕組みもあるでしょう。そして、この4人のキャラクターなら頑張って取り組んでいくでしょう。一方で、勉強以外のことはあまり好ましく思われなくなります。学業につながる習いごとには力を入れますが、友達と遊んだりスポーツや課外活動をすることにそこまで力を入れないでしょう。高学年にもなれば、異性のことが気になりますが、学業が疎かになる恐れがある点で、あまり好ましくは思われないでしょう。この点で、花輪クンラブのみぎわさんは不満を持つかもしれませんが。エリート教育のリスクの1つ目は、勉強(認知能力)以外が軽視される、つまり勉強以外への消極性です。勉強に対しては意欲的または執着的になりますが、そのほかの活動には相対的に労力をかけなくなります。そもそも学校とは、勉強だけでなく、人間関係(社会性)を学ぶところです。それは、生身の人間関係で揉まれるという実体験です。この社会性を学ぶチャンスが減っていけば、それだけ深い人間関係を築く能力が高まらなくなるでしょう。つまり、それだけ「世間慣れ」ができないリスクがあります。(2)うまく行かない状況が軽視される-ストレス脆弱性そのクラスでは、自分たちが選ばれし者であることが自覚され、うまく行っていることが当然とされます。エリートになるだけの家庭環境にも恵まれ、勉強ができるというアドバンテージがあり、経済的にも心理的にも困ることがないでしょう。一方で、勉強以外の活動への消極性によって、うまく行かない経験を積むことが必然的に減ってしまい、ストレスがかかることに慣れていないでしょう。城ヶ崎さんは、良く言えば「育ちが良い」のですが、悪く言えば「苦労を知らない」と言えます。エリート教育のリスクの2つ目は、うまく行かない状況が軽視される、つまりうまく行かない状況へのストレス脆弱性です。うまく行く状況においてはイケイケですが、うまく行かない状況においては実はビクビクです。うまく行っているのが当たり前になってしまうと、ちょっとでもうまく行かないことは恐怖でしかないのです。ひと言で言うと、攻めには強いが守りには弱いです。つまり、「ストレス慣れ」ができないリスクがあります。(3)自分たち以外が軽視される-排他性そのクラスには、自分と似た恵まれた人しかいません。性格も家庭環境も近いために、とても仲良しになるでしょう。一方で、先ほどあげた際立ったキャラはいません。火事で家を失った永沢に同情したり、卑怯なことをする藤木君に怒ったり、ふざけてばかりのはまじに笑ったり、怒ってばかりの前田さんに反論したりする経験はありません。もちろん変わり者キャラもいません。おバカキャラの山田君、口癖キャラのブー太郎、胃弱キャラの山根と一緒に過ごすことで、知的障害、チック症、心身症を見慣れることもありません。ちびまる子ちゃんのアニメのエピソードで毎回ワクワクしたりハラハラする展開はほぼ起こりません。エリート教育のリスクの3つ目は、自分たち以外が軽視される、つまり自分たち以外への排他性です。自分たちとは結束(同調)を強めるために、それだけ自分たち以外の人とはあまり一緒にいたくないと思いがちになります。なぜなら、多様な人たちのことを生身の体験としてよく知らないからです。苦労をしておらず、苦労をしている人を見ていないことは、それだけ苦労している人の気持ちが分かりにくくなってしまうからです。もちろん、エリート学校も、表向きは教育カリキュラムに障害者・障害児、マイノリティへの理解を盛り込んでいます。しかし、現実的には、知識として知ったとしても、実感として受け入れるのはまったくの別問題です。なぜなら、とくに子どもにとっては、実際に触れ合うのと触れ合わないのとでは、感受性(嗜癖性)の点では、天と地の差だからです。そして、そもそもエリート教育は、多様性を受け入れるインクルーシブ教育とは真逆の理念だからです。つまり、「弱者慣れ」ができないリスクがあります。ちなみに、先ほどの「ストレス慣れ」ができないとは、自分自身が弱者になるという意味での「弱者慣れ」ができないことであるとも言えます。なお、以上のエリート教育のリスクである消極性、ストレス脆弱性、排他性は、自己愛性パーソナリティ障害の診断基準(DSM-5)である特権意識、万能感、共感性欠如にそれぞれ言い換えられます。また、これらの対になる言い回しとしてご紹介した「世間慣れ」「ストレス慣れ」「弱者慣れ」は、それぞれ自発性、セルフコントロール、共感性という非認知能力に言い換えられます。この詳細については、関連記事1をご覧ください。次のページへ >>

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ちびまる子ちゃん(続編)【その教室は社会の縮図? エリート教育の危うさとは?(社会適応能力)】Part 2

学校環境は性格にどれくらい影響を与えるの?エリート教育のリスクとは、勉強以外が軽視されること(消極性)、うまく行かない状況が軽視されること(ストレス脆弱性)、自分たち以外が軽視されること(排他性)であることが分かりました。それでは、いったい学校環境は性格にどれくらい影響を与えるのでしょうか? その程度と根拠を行動遺伝学的に掘り下げてみましょう。なお、行動遺伝学の基本知識については、関連記事2をご覧ください。まず、どの性格の特性(ビッグ・ファイブなど)の研究においても、遺伝、家庭環境、家庭外環境の影響度は、概ね50%:0%:50%であることが分かっています。つまり、性格に影響があるのは、遺伝と家庭外環境であることが分かります。逆に、家庭環境の影響の違いはないことが分かります。なお、性格に、家庭環境の影響の違いがないことは驚きです。この原因については、性格を非認知能力に置き換えて、癖になりやすさ(嗜癖性の強さ)の観点から、関連記事3で詳しく解説しています。さらに、性格への影響度について、児童期、青年期、成人期の各年齢でそれぞれ分けて見てみると、児童期は70%:0%:30%、青年期は50%:0%:50%、成人期は40%:0%:60%となります。つまり、年齢が上がっていくにつれて、遺伝の影響は70%→50%→40%とどんどん減っていく一方、家庭外環境の影響は30%→50%→60%とどんどん増えています。なお、家庭環境の影響は0%→0%→0%と影響度は見られません。家庭外環境の影響度は、児童期から青年期にかけて急増する一方、成人期以降は一気に鈍化しています。このことから、児童期から青年期に多くの時間を過ごす学校環境は経時的に遺伝を上回り性格に影響を与えていると結論付けることができます。これは、従来から発達心理学で指摘されている「ギャング・エイジ」(仲間時代)を裏付けます。そして、成人すると性格形成の可塑性がなくなるというパーソナリティ特性の定義を裏付けます。この点で、青年期が終わる20歳までが、性格形成の臨界期と言えるでしょう。逆に言えば、臨界期がないとしたら、自分はこういう人間であるというアイデンティティ(性格)が定まらず、そして相手とはこういう人間であるという他者のアイデンティティ(性格)も定まらず、人間関係(社会環境)を安定して築いていくのが難しくなってしまうでしょう。ちなみに、学力(認知能力)への家庭外環境の影響度については、児童期25%→青年期30%→成人初期20%と大きな変化はありません。むしろ、学力(認知能力)に影響を与えるのは、年齢が上がれば上がるほど遺伝になることが分かっています。つまり、学校環境は、学力よりも圧倒的に性格に影響を与えていると結論付けることができます。そして、エリート教育(学校環境)は、そのベネフィットとされていた学力(認知能力)への影響力が思ったほどなく、むしろ自己愛性パーソナリティになるリスクを高めているだけという可能性も出てきます。なお、認知能力への遺伝、家庭環境、家庭外環境のそれぞれの影響度の詳細については、関連記事4をご覧ください。家庭環境ではなく学校環境で高まる心理は?性格に影響を与えるのは、家庭環境ではなく、学校環境であることが分かりました。それでは、家庭環境になく学校環境にあるもの、つまり家庭環境ではなく学校環境で高まる心理とは何でしょうか? その心理を大きく3つ挙げてみましょう。(1)相手にしてほしいという好奇心―快感1つ目の心理は、相手にしてほしいという好奇心です。これは、友達をはじめとしていろいろな人と仲良くなる状況によって、ドパミンが活性化して得られる快感です(社会的報酬)。ひと言で言うと「人好き」になることです。これが、「世間慣れ」(自発性)を高めます。つまり、「出会いが人をつくる」と言えます。この心理は、新しい出会いの刺激(嗜癖性)がない家庭環境では高まりません。ちなみに、この心理が高まり過ぎたのが、好かれることにハマってしまう状態(共依存)です。この詳細については、関連記事5をご覧ください。(2)相手にされないという恐怖心―不安2つ目の心理は、相手にされないという恐怖心です。これは、仲違いや仲間外れなど友達が自分を受け入れてくれない状況によって、セロトニンが不活性化して得られる不安です(社交不安)。この不安への曝露が、「ストレス慣れ」(セルフコントロール)を高めます。つまり、「ストレスが人をつくる」と言えます。昨今、このメカニズムは、ストレス関連成長(SRG)と呼ばれています。これは、むしろほどほどのストレスが人間的成長を促すという考え方です。この心理は、人間関係のストレスの刺激がない(ストレス耐性ができない)家庭環境では高まりません。ちなみに、この心理が高まり過ぎたのが、気を使い過ぎてしまう状態(過剰適応)です。この詳細については、関連記事6をご覧ください。(3)相手にされているという連帯感―同調3つ目の心理は、相手にされているという連帯感です。これは、いろいろな友達と一緒にいて同じことをする状況によって、オキシトシンとドパミンが連動的に活性化して得られる同調です。これが、「弱者慣れ」(共感性)を高めます。つまり、「つながりが人をつくる」と言えます。この心理は、友達とずっと一緒にいるという刺激(嗜癖性)がない家庭環境では高まりません。ちなみに、この心理が高まり過ぎたのが、いじめ被害者が罪悪感を抱くこと(ストックホルム症候群)です。この詳細については、関連記事7をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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ちびまる子ちゃん(続編)【その教室は社会の縮図? エリート教育の危うさとは?(社会適応能力)】Part 3

なんで性格は「ある」の?家庭環境ではなく学校環境で高まる心理は、相手にしてほしいという好奇心(快感)、相手にされないという恐怖心(不安)、相手にされているという連帯感(同調)であることが分かりました。そして、これらの心理が、「世間慣れ」(自発性)、「ストレス慣れ」(セルフコントロール)、「弱者慣れ」(共感性)という非認知能力を高め、性格に影響を与えることが分かりました。それでは、そもそもなぜ性格は「ある」のでしょうか? その答えを、心の進化の歴史から掘り下げて見ましょう。約700万年前に人類が誕生し、約300万年前に家族をつくり、さらにその血縁から部族をつくるようになりました。この時、部族(社会環境)の中で狩りや子育てのためにお互いに協力し合うように進化しました(社会脳)。たとえば、それが、周りの人とうまくやっていくために自分で考えて行動すること(自発性)、周りの人に対して自分を落ち着かせること(セルフコントロール)、周りの人と心を通わせること(共感性)などの非認知能力です。そして、この非認知能力を高めた「性格」の人類が、より生き残り、より子孫を残したでしょう。つまり、性格はただ「ある」のではなく、生存と生殖のために「ある」のです。これが、なぜ性格が「ある」かの答えと言えるでしょう。そもそも性格とは?進化心理学的に考えると、性格は、人類が社会環境の中で生存と生殖の適応度を上げるために「ある」ことが分かりました。つまり、性格とは、社会適応するための機能であり、非認知能力と同じ「能力」であると言えます。その能力を名付けるなら、社会適応能力です。逆に言えば、この社会適応能力を、私たちが「性格」と定義し、その評価尺度をつくっただけに過ぎないとも言えます。そう考えれば、性格に家庭環境の影響に違いがないのは何も不思議なことではないことが分かります。性格を機能として見ると、性格とは、家庭環境の刺激にある程度一様に反応した非認知能力を基盤として(家庭環境の影響の違いはないながら)、さらに特定の学校環境(家庭外環境)の刺激に多様に反応したそれぞれの非認知能力の高まり具合(または高まらない具合)のバリエーションの結果であると言えるでしょう。そもそも、家庭環境は、親などの家族から無条件に守られているため、家庭環境だけでは社会適応能力としての性格を形成することができないとも言えます。逆に、教育虐待を含むマルトリートメント(不適切な子育て)は、無条件に守られていない家庭環境である点で、「マルトリートメント適応能力」が高まってしまいます。その分、社会適応能力が偏って高まるリスクがあるとも言えます(代償性過剰発達)。ということは、逆に、学校環境(社会環境)にいながら人間関係が抑制されたエリート教育のような特殊な状況においては、「エリート適応能力」が高まってしまう分、社会適応能力が必ずしも高まらないリスクがあるというわけです。これが、先ほどにもご紹介した自己愛性パーソナリティ障害です。なお、現時点で、エリート教育と自己愛パーソナリティ障害の因果関係を明らかにした研究はあまり見当たりません。しかし、エリート意識という言葉があるように、エリートならではの認知の偏り(自己愛性パーソナリティ)があるのは明らかでしょう。この傍証として、児童期・青年期の性格への家庭外環境の影響力が挙げられるのです。ちなみに、この自己愛性パーソナリティをはじめとして、最初にご紹介した性格の分類におけるキャラクターたちは、社会適応能力が偏ることに伴い、それぞれの性格の特性が顕在化していることが分かります。じゃあどんな学校がいいの?エリート教育のリスクを踏まえて、その性格形成への影響を掘り下げました。それでは、どんな学校が良いのでしょうか? その答えは、その学校が社会の縮図であるような、ほどほどに良い学校です。そんな学校が、社会適応のための性格という「能力」をバランス良く高めるでしょう。その点で、いくらエリート教育にリスクがあるからと言って、学級崩壊をしている学校に無理に通う必要もありません。そこは、エリート学校と同じく、もはや社会の縮図ではないため、転校を検討するべきでしょう。この「ほどほどに良い」という言い回しは、完璧な子育てを目指さない「グッド・イナッフ・マザー(ほど良い母親)」という発達心理学の用語に重なります。つまり、学校に置き換えると、完璧な教育を目指さない「グッド・イナッフ・スクール」です。なぜなら、それが結果的に、最適な子育てと同じように、最適な教育になるからです。ちびまる子ちゃんの教室のように、そこにはいろんなクラスメイトがいたほうが良いです。極端な話、変わった(性格に偏りのある)教師がいても良いです。なぜなら、世の中にはそんな人がいるからです。なお、「グッド・イナッフ・マザー」の詳細については、関連記事3をご覧ください。もちろん、これは、ちびまる子ちゃんたちがいる小学校の話です。中学校になると、エリート教育を受けるかはもはや本人の意思です。そして、その決断を強いるのではなく、ほど良くサポートすることが、「グッド・イナッフ・マザー」であり、その子どもがほど良く希望して進む学校が「グッド・イナッフ・スクール」と言えるのではないでしょうか? さらに、そうする子どもが大人になって人生にほど良く幸せを感じることができるのではないでしょうか?1)ちびまる子ちゃん大図鑑DX:フジテレビ、扶桑社、20152)DSM-5(精神疾患の分類と診断の手引)、アメリカ精神医学会、医学書院、20143)「心は遺伝する」とどうして言えるのか:安藤寿康、創元社、2017<< 前のページへ■関連記事そして父になる(続編・その1)【英才教育で親がハマる「罠」とは?(教育虐待)】Part 1そして父になる(続編・その2)【子育ては厳しく? それとも自由に? その正解は?(科学的根拠に基づく教育(EBE))】Part 1そして父になる(続編・その2)【子育ては厳しく? それとも自由に? その正解は?(科学的根拠に基づく教育(EBE))】Part 3そして父になる(続編・その2)【子育ては厳しく? それとも自由に? その正解は?(科学的根拠に基づく教育(EBE))】Part 2だめんず・うぉ~か~【共依存】Mother(前編)【過剰適応】美女と野獣【実はモラハラしていた!? なぜされるの?どうすれば?(従う心理)】

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第96回 医学部入試差別が解消しても、解決しない女性医師の「二重負担」問題

2021年度の医学部入試では、女性受験者の合格率が男性を上回った。男女別の合格率の公表を始めた2013年度以降、初めてとなる。東京医科大学をはじめとした医学部入試差別の社会問題化や、文部科学省が男女別合格率の毎年公表に踏み切ったことなどが、女性差別のない公正な入試の実施を後押ししたと思われる。医学部入試差別に潜む性別役割分業意識ただ、入試差別の要因である出産・育児による女性医師離職の背景には、過労死ラインを超えるような医師の過酷な働き方や、日本社会に根強い「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業がある。入試差別が解消されても、女性医師の働き方が改善されたり性別役割分業が解消されたりしない限り、根本的な解決にはなり得ない。医学部入試差別問題が発覚した際、「女性医師が増えると(産休・育休・時短勤務が増えて)現場が回らない」という声があった。仕事と家事の「二重負担」を抱えている女性医師にとっては、理不尽で無慈悲な言葉に聞こえたことだろう。家事は女性医師が2時間以上、男性医師は30分未満全国保険医団体連合会(保団連)は医師・歯科医の開業会員を対象に「開業医の実態・意識基礎調査」を実施、約2,600人から回答を得た。2月9日に公表された調査結果によると、女性医師では半数が平日でも2時間以上の家事・育児・介護を行っていたのに対し、男性医師は半数が「0~30分未満」だった。実労働時間を見ると、9時間以上の割合は男女で差はなく、夫婦共に医師または歯科医師の場合でも、平日家事時間は女性のほうが圧倒的に多いという結果が出た。調査結果を詳しく見てみる。「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方については、医科・歯科共に反対意見が賛成意見を上回った。男女別に見ると、女性は医科で70.9%、歯科で62.8%が反対だったが、男性は医科で41.5%、歯科で37.6%にとどまった。1日の家事・育児・介護時間(平日)は、男性は医科で46.6%、歯科で39.5%が「0~30分未満」で最多だったのに対し、女性は医科で45.2%、歯科で38.8%が2時間以上だった。夫婦共に医師・歯科医師の場合、家事・育児・介護時間(平日)を見ると、男性は「0~30分未満」が34.2%で最多、女性は「2~4時間未満」が39.3%と最も多く、同じ医師・歯科医師でも男女で家事などの時間に大きな差があることがわかった。女性医師は「二重負担」に耐えるか、低評価に甘んじるかの二者択一実労働時間を男女別に見ると、女性は「7時間未満」の割合がやや高いが、「9時間以上」は医科・歯科共に差はなかった。一方、フルタイム勤務(実労働時間7時間以上)での家事などの時間(平日)を見ると、男性は医科で47.0%、歯科で39.2%が「0~30分以内」とそれぞれ最多だったのに対し、女性の最多は医科で「2~4時間」(37.8%)、歯科で「1~2時間」(28.3%)だった。家事と仕事の時間を合わせると、女性に多くの負担がかかっていると言える。女性に家事などの負担がのしかかる状況では、女性医師は過酷な医師の仕事と家事労働の二重負担に耐えるか、「男並みの仕事ができない」という評価に甘んじるかの、悪しき二者択一になってしまっている。この結果に対し、保団連女性部は「男女共に人間らしく働ける医療現場の実現を目指して、医師数の増員と、医療界の性別役割分業意識の解消を求める」との声明を発表した。男女格差、世界120位の恥ずかしい現状世界経済フォーラムの「男女格差報告書(ジェンダー・ギャップ指数)2021」では、日本はなんと156ヵ国中120位で、下から数えたほうが早いくらいの順位だった。主要7ヵ国(G7)では最下位だ。1位は12回連続でアイスランド。2位フィンランド、3位ノルウェーと北欧諸国が上位を占めた。米国は30位、アジアでは韓国が102位、中国は107位だった。ちなみに最下位はアフガニスタンだ。ようやく医学部受験を巡る性差別にメスが入った段階の日本。ただ、医学部が変わるだけでなく、現場の医師や社会全体の意識も変わらなければ、医療界における女性差別の解消はまだまだ遠い道のりだろう。

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