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点鼻のアナフィラキシー補助治療薬「ネフィー」発売/アルフレッサファーマ

 アナフィラキシー補助治療薬「ネフィー点鼻液(1mg、2mg)」がアルフレッサファーマから2026年2月12日に発売された。アナフィラキシー補助治療薬としては自己注射製剤のエピペンに続く2剤目となるが、点鼻液での発売は国内初となる。 本製剤はアドレナリンを有効成分とする点鼻液で、蜂毒、食物、および薬物などに起因するアナフィラキシー反応に対する補助治療薬で、点鼻により簡便な投与が可能である。 ただし、適正使用の観点から安全性および有効性を十分に理解し、使用に関して適切かつ十分な指導ができる医師のみによって本剤が処方・使用されるよう、あらかじめ動画講習を受講し、処方医師登録を済ませておく必要がある。 アルフレッサファーマは2020年4月、米国のバイオ医薬品企業ARS Pharmaと日本国内でのアドレナリン点鼻液の開発および販売におけるライセンス契約を締結。その後、日本人健康成人を対象とした薬物動態試験および第III相臨床試験を実施し、その有効性と安全性が認められたことから、2025年9月19日に製造販売承認を取得していた。<製品概要>販売名:ネフィー点鼻液1mg、2mg一般名:アドレナリン効能又は効果:蜂毒、食物及び薬物等に起因するアナフィラキシー反応に対する補助治療(アナフィラキシーの既往のある人またはアナフィラキシーを発現する危険性の高い人に限る)用法及び用量: 通常、体重30kg未満の患者には、アドレナリンとして1回1mgを、体重30kg以上の患者には、アドレナリンとして1回2mgを鼻腔内に投与する。薬価:1mg:2万2,975.30円/瓶、2mg:2万4,672.10円/瓶製造販売承認日:2025年9月19日薬価基準収載日:2025年11月12日発売日:2026年2月12日製造販売元:アルフレッサファーマ株式会社

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政府主導の現金給付プログラムが死亡率に関連する行動および健康決定要因に与える影響:差の差研究(解説:名郷直樹氏)

 ランダム化比較試験で検討困難な疑問に関して、ビッグデータを用いた観察研究によって検討しようという流れの中にある研究である。37の低~中所得国家を対象とし、政府主導の現金給付プログラムを提供している国と提供していない国を比較し、また提供された国における提供前と提供後を比較して、死亡に関連する17のアウトカムを検討している。 解析方法は、“difference-in-differences study”とあるように、少し特殊である。具体的には、現在現金給付を行っている国の行っていない時期とのアウトカムの差から、行っていない国の現在のアウトカムと行っている国の行っていないのと同時期のアウトカムの差を差し引いたものを効果の指標としている。それぞれのアウトカムの差は、介入前後比較と呼ばれるもので、時間経過に伴う変化が大きなバイアスとなる。この研究で言えば、現金給付が行われる前後で比較すると、時代によるさまざまな変化があり、現金給付と無関係な社会の変化の影響を排除することができず、効果を過大評価しやすい。その影響を考慮するために、両国の時間的なアウトカムの変化を除いて、バイアスの影響を調整しているというわけである。実際の計算式であるが、現在現金給付を行っている国のアウトカムがa%、行っていない国でb%、現在現金給付を行っている国の行っていない時期のアウトカムがc%、行っていない国の同時期でd%としたときに、“difference-in-differences”、「差の差」は (a-c)-(b-d) ということになる。 実際の結果を見てみよう。アウトカムの変化における差95%信頼区間は、早期妊婦健診で+5.0%(2.1~7.9)、施設分娩 +7.3%(3.2~11.3)、熟練者による分娩 +7.9%(3.2~12.6)、望まれた妊娠 +1.9%(0.5~3.2)、排卵間隔の延長 +2.5ヵ月(1.8~3.1)、避妊法の情報不足 -10.3%(-15.2~-5.3)、完全母乳育児 +14.4%(13.3~15.5)、最低限の食事提供 +7.5%(5.5~9.5)、麻疹ワクチン接種 +5.3%(1.6~8.9)、男児の双胎出産0.8/1,000男児出産(0.3~1.4)、下痢の罹患率 −6.4%(-11.7~-1.1)、低体重 −2.0%(-3.6%~-0.4)で、17のうち12の項目で改善がみられている。 この「差の差」分析では、現金給付を行っている国と行っていない国でのアウトカムのトレンドが同様という仮定が必要である。行っていない国での改善が小さければ効果を過大評価するし、大きければ効果を過小評価する危険がある。それについてはほぼパラレルであることが示されている。しかしながら、ランダム化比較試験ほど交絡因子が排除できるわけではない。このデザインから言えるのは、因果というより相関と考えるのが妥当かもしれない。

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PFAS曝露が若者の脂肪性肝リスクを3倍に高める?

 「永遠の化学物質」と呼ばれている有機フッ素化合物(PFAS)によって、若者が代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)を発症するリスクが約3倍上昇する可能性のあることが、新たな研究で示された。PFASの一種であるペルフルオロオクタン酸(PFOA)の血中濃度が2倍高まるごとにMASLD発症のオッズが2.7倍上昇するとの結果が得られたという。米南カリフォルニア大学(USC)ケック医学校ポピュレーションヘルス・公衆衛生科学および小児科学教授のLida Chatzi氏らによるこの研究の詳細は、「Environmental Research」1月1日号に掲載された。 Chatzi氏は、「MASLDは、深刻な健康問題を引き起こすようになるまで、何年にもわたって自覚症状なく進行する可能性がある。思春期に肝臓で脂肪が蓄積し始めると、それが生涯にわたる代謝および肝臓の健康問題の基になってしまいかねない。早期にPFASへの曝露を抑えることができれば、将来の肝疾患の予防につながるかもしれない。これは公衆衛生上、極めて大きなチャンスになる」と述べている。 PFASは炭素とフッ素が強固に結合した化合物で、「永遠の化学物質」との異名の通り、除去や分解は極めて困難である。PFAS化合物は1940年代以降、泡消火薬剤や焦げ付き防止調理器具、食品の包装紙、汚れ防止加工の家具、防水性の衣類など、さまざまな製品に使用されてきた。Chatzi氏らによると、米国人の99%以上で血液中に測定可能なPFASが存在している。また、米国で供給されている飲料水のほぼ半分に、少なくとも1種類のPFAS化学物質が含まれているという。 今回の研究では、USCの2つの先行研究の一環で収集された南カリフォルニア在住の284人(SOLARコホート:8〜13歳の162人、Meta-AIRコホート:17〜23歳の122人)の青少年と若年成人のデータが分析された。全ての参加者が2型糖尿病または過体重の親を持ち、すでに代謝疾患のリスクが高い状態にあった。PFASの血中濃度は血液検査で測定され、肝臓の脂肪量はMRI検査によって評価された。 その結果、PFOAの血中濃度が倍増するごとに、MASLDオッズが約2.7倍(オッズ比2.69、95%信頼区間1.16〜6.26)高まり、この影響は、年齢が高いほど強まることが示された。さらに、喫煙習慣がある若者や、肝臓の脂肪蓄積に関与する遺伝的変異(PNPLA3高リスクアレル)保有者では、そのリスクがさらに高まることも判明した。 Chatzi氏は、「PFAS曝露は肝臓の生物学的機能を阻害するだけでなく、若者の肝疾患リスクにつながる。思春期は特に影響を受けやすい重要な時期であると見られ、肝臓がまだ発達しつつある段階でのPFAS曝露は最も強い影響を及ぼす可能性があることが示唆される」と述べている。 論文の筆頭著者である米ハワイ大学公衆衛生科学分野のShiwen “Sherlock” Li氏は、「特に思春期は発達と成長の重要な時期であることから、PFASがもたらす健康への影響を受けやすい」とニュースリリースの中で指摘。また同氏は、「PFAS曝露は肝疾患だけでなく、いくつかの種類のがんを含むさまざまな有害な健康アウトカムに関連していることが示されている」と述べている。 共著者の1人であるUSCケック医学校ポピュレーションヘルス・公衆衛生科学分野のMax Aung氏は、「この研究結果は、ライフステージに応じたPFAS曝露、遺伝的要因、そして生活習慣要因の相互作用が、MASLDの発症リスクに影響していることを示唆している。遺伝と環境の相互作用について解明を進めることは、MASLDのためのプレシジョン・エンバイロメンタル・ヘルスの発展の一助になる」とニュースリリースの中で述べている。

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第281回 インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省

<先週の動き> 1.インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省 2.在宅医療「頻回・囲い込み」に診療報酬改定で歯止め、訪問看護は1日包括も/厚労省 3.診療報酬改定で看護配置基準を柔軟化、ICT活用を厳格要件化/厚労省 4.わいせつや盗撮で医師・歯科医師28人を行政処分、医師3人が免許取消/厚労省 5.医療保険改革で高額療養費を見直し加速、負担上限を「2年ごと検証」へ/政府 6.電子カルテで患者取り違え、経過観察患者に前立腺全摘出手術/千葉県がんセンター 1.インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省2月6日に厚生労働省は、1月26日~2月1日の第5週に全国約3,000の定点医療機関から報告されたインフルエンザ患者数が1医療機関当たり30.03人となり、警報基準(30人)を超えたと発表した。前週比の約1.8倍で4週連続の増加となり、患者総数は11万4,291人に達した。今シーズンは1度警報水準を下回った後に再び増加しており、1季で2度警報レベルに達するのは少なくとも過去10シーズンで初めてとされる。都道府県別では大分県52.48人、鹿児島県49.60人、宮城県49.02人、山梨県46.97人、千葉県46.08人など22県で警報基準を上回った。その一方で、香川県8.61人、鳥取県9.45人、北海道10.33人は比較的低水準だった。ウイルス型はA型56%、B型44%で、年明け以降はB型の検出割合が増加し、流行再拡大の一因とみられている。B型は学校など集団生活で小児を中心に広がりやすく、嘔吐や下痢など消化器症状を伴う例も報告される。重症例として脳症や筋炎後の腎機能障害がまれに生じうるため注意が必要となる。休校・学級閉鎖は約6,200校に増加した。なお、新型コロナウイルス感染症の定点報告も前週比25%増の2.49人と上昇している。厚労省はマスク着用、手指衛生、換気など基本的対策の徹底を呼びかけ、今後1~2週間は患者増加が続く可能性があるとして警戒を促している。 参考 1)インフルエンザ患者数 前週の倍近くに増加 B型 半数近く占める(NHK) 2)全国インフル定点報告 前週の1.8倍に 1月26日-2月1日(CB news) 3)コロナ新規感染者 前週比25%増 1月26日-2月1日(同) 4)インフルエンザ、再び警報水準に 2度の警報は過去10シーズンで初(日経新聞) 2.在宅医療「頻回・囲い込み」に診療報酬改定で歯止め、訪問看護は1日包括も/厚労省厚生労働省は2026年度の診療報酬改定で、在宅医療を「量の拡大」から「必要性に見合う質と適正化」へ転換する方針を示した。1月30日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で提示された個別改定項目では、通院可能にもかかわらず頻回の訪問診療を受けるケースや、高齢者住宅に併設・隣接する訪問看護ステーションが同一建物内で短時間に多数利用者を回ることで報酬が膨らむような過度な同一建物対応に歯止めをかける。訪問診療では、在宅時医学総合管理料(在医総管)・施設入居時等医学総合管理料(施設総管)の高い評価を、末期がんや要介護度の高い患者を一定割合以上診療する医療機関に限定し、医療・介護ニーズの低い患者への頻回訪問を抑制する。24時間往診体制の評価も、自院での実働体制や連携・委託の関与度に応じてメリハリを付ける。看取り実績の高い在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)の評価は「在宅医療充実体制加算」へ再編し、地域の24時間体制を面的に支える往診時医療情報連携加算の対象も拡大する。また、訪問看護では、同一建物居住者への評価を細分化し、人数が多い区分は月内訪問日数で段階化、20分未満は算定不可とする。さらに併設・隣接ステーションが高齢者住まいに頻回提供する場合、利用者数と1日当たり提供時間に応じた「包括型訪問看護療養費(1日定額)」を新設し、同日の回数増で報酬が伸びにくい仕組みとする。その一方で、情報通信技術(ICT)による情報共有を評価する訪問看護医療情報連携加算など質向上策も導入する。背景には同一建物での訪問看護急増や高収益事例への問題意識がある。運営基準では値引き誘引や紹介対価、特定施設への誘導を禁止し、安全管理と記録の正確性を求める。事業継続計画(BCP)策定や残薬管理、電子処方せん活用も要件化される。詳細は告示・通知待ちだが、契約・記録・連携体制の再点検が急務となる。 参考 1)個別改定項目について(厚労省) 2)在宅医療「もうけすぎ」にメス 診療報酬見直し、高齢者囲い込み防止(日経新聞) 3)2026年度診療報酬改定でも、「適切な形の在宅医療」が量・質の双方で拡大することを目指した対応図る(Gem Med) 4)訪問看護ステーションが隣接等の高齢者住まい居住者に行う訪問看護を「1日当たり包括」療養費で評価(同) 5)在宅医療巡り病院・診療所にBCP策定義務化へ…厚労省、災害時の地域連携促す(読売新聞) 6)高齢者住まい等への頻回訪問に包括評価を導入(日経メディカル) 3.診療報酬改定で看護配置基準を柔軟化、ICT活用を厳格要件化/厚労省2026年度診療報酬改定で、厚生労働省は病院の看護配置基準を「人手不足への救済」と「医療DXによる業務量削減」を前提に柔軟的な設定とする。突発的な欠員で夜勤時間などが一時的に基準から外れても、超過が1割以内で3ヵ月を超えない場合は、入院基本料などの施設基準の変更届を不要とする方向で、感染症対応の特例を人材不足にも広げ、恒久化も視野に入れる。対象は平時からハローワークや都道府県ナースセンターなどの公的紹介を活用し、求人票の提示など採用努力を行う医療機関とし、民間紹介会社の高額手数料による経営圧迫も抑えたい考え。加えて、見守り、記録作成、職員間情報共有などでICT機器を病棟で広く活用し、超過勤務が平均10時間以下で増加傾向がないこと、導入前後の業務量評価・安全配慮、調査への協力など複数の要件を満たす場合、看護要員数や看護師比率等を「基準の9割以上(最大1割減)」でも基準充足と扱い、急性期一般入院料や7対1・10対1、地域包括医療病棟、緩和ケア病棟などに適用する方針。さらに医師事務作業補助者も、生成AIによる退院サマリー・診断書・紹介状などの原案作成、音声入力、RPA、説明動画活用などを条件に、配置要件の見直し(緩和)も検討する。急性期医療機関では救急搬送・全麻手術件数を要件とする新たな入院基本料(A・B)も構想され、看護必要度は項目追加や救急応需状況の反映で基準見直しが議論されている。看護職は全体では増加傾向でも、病院就業者は減少し、求人倍率も高い。算定要件を満たせず収入が落ちる事態を避け、夜勤負担の軽減と地域医療の持続を図る狙い。看護職就業者は2023年時点で約174.6万人、需要推計は2025年約180.1万人とされ、病院就業者は約98.7万人まで減少。日本病院団体協議会は、ICT前提の緩和と一時救済を歓迎している。その一方で、患者安全と効果検証のデータ提出が求められており、今後、医療現場での投資と運用体制が鍵となる。 参考 1)病院の看護職員、必要数を緩和 人手不足の施設の経営安定後押し(日経新聞) 2)ICT利活用・適切な業務遂行等の厳格な要件を前提として「看護職員や医師事務作業補助者の柔軟配置」を認める(Gem Med) 3)ICT利活用により看護師業務負担が減少、この分の看護配置基準柔軟化は病院団体として歓迎-日病協・望月議長・神野副議長(同) 4)救急・手術件数を評価する急性期病院一般入院基本料を新設(日経メディカル) 4.わいせつや盗撮で医師・歯科医師28人を行政処分、医師3人が免許取消/厚労省厚生労働省は2月4日、医道審議会医道分科会の答申を受け、刑事事件で有罪判決を受けるなどした医師16人、歯科医師12人の計28人に対する行政処分を決定した。内訳は免許取消5人、業務停止22人(3ヵ月~2年6ヵ月)、戒告1人で、2月18日に発効する。別途10人には行政指導(厳重注意)が行われた。このうち免許取消は、児童へのわいせつ行為や健診時の盗撮、診療報酬詐欺や脱税などの事案で有罪が確定した医師3人と歯科医師2人。業務停止は収賄、詐欺、薬物関連、暴行・傷害、迷惑行為防止条例違反、道路交通法違反など理由は多岐に及ぶ。2025年12月3日の医道審議会の議事要旨では、医師16件中、免許取消1件、停止3年~3ヵ月の各処分、戒告3件とされたほか、歯科医師7件で免許取消3件、停止7~3ヵ月が答申された。また、元医師1人の再免許付与については適当とする答申は出されなかった。処分は医療への信頼確保を目的とし、医療機関には不祥事の予防とガバナンス、コンプライアンス教育の徹底が改めて求められる。さらに、健診や学校現場での診療行為における倫理遵守、金銭・契約関係の透明化、薬物・交通事案を含む私生活上の法令順守も含め、組織的な再発防止策の整備が重要となる。今回の一連の処分では、刑事有罪事案が中心であり、医師個人の資質管理に加え、採用時のバックグラウンド確認や通報体制の整備など、医療機関側のリスク管理体制の実効性が問われている。 参考 1)医道審議会医道分科会議事要旨(厚労省) 2)医師、歯科医師28人処分 免許取り消しや業務停止(共同通信) 3)厚労省、医師・歯科医師28人の処分決定 免許取り消しや業務停止(毎日新聞) 5.医療保険改革、高額療養費を「2年ごと検証」へ 患者自己負担増の時代に/政府政府が検討する医療保険改革法案で、高額療養費制度の患者負担上限を「少なくとも2年ごとに検証」する規定が新設される見通しとなった。医療費総額の抑制を目的に、上限額が定期的に引き上げられる可能性がある一方で、決定に当たっては「長期治療患者の家計影響を考慮する」と明記する。昨年末には上限を来年8月までに最大38%引き上げる方針が示され、給付抑制で保険料負担を軽くする狙いだ。併せて、出産費用の無償化(分娩費の全国一律化と保険適用)や、OTC類似薬に薬剤費25%を上乗せする新制度、75歳以上の金融所得の保険料・窓口負担への反映徹底も盛り込む。こうした「負担と給付」の再設計が進む中、がん医療では費用の見える化が始まった。日本肺癌学会は『肺がん診療ガイドライン(Web版)』の付録に薬物療法別の薬剤費一覧(保険適用前)を掲載した。術後補助療法では、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)が月56万円×3年で約2,030万円、アレクチニブ(同:アレセンサ)は月168万円×2年で約4,032万円、アテゾリズマブ(同:テセントリク)は総額902万円、再発小細胞肺がんの二重特異性抗体タルラタマブ(同:イムデトラ)は1年で約3,184万円と示している。推奨度の根拠には用いないが、患者から費用を問われた際の説明材料とし、今後の制度変更で自己負担が増え得る現実を共有する狙いがある。日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が、臨床研究の医療経済評価を基本方針化するなど、効果・安全性に加え「費用と持続可能性」を臨床判断に組み込む動きが広がっている。高額療養費は、重い疾患ほど利用頻度が高く、上限の見直しは治療継続や就労、家族介護に直結する。こうした高額な医薬品を用いた医療を提供する医師は、治療選択肢の効果・副作用に加え、想定される自己負担の幅(多数回該当、年間上限など)について患者への説明責任が一段と増す。同時に、薬価・給付の議論は選挙の争点化も進むため、現場から実データを発信しつつ、費用対効果と公平性の両立を問う姿勢が求められる。治療内容のみならず、診療費用の自己負担についての情報提供が、今後いっそう重要になる。 参考 1)高額療養自己負担、2年ごと検証(共同通信) 2)医療保険制度を維持するには 医療費削減で患者が負担? 高額療養費制度の見直しで治療を受けられない恐れも(中日新聞) 3)年収700万円の人なら約3万円の負担増!「高額療養費の見直し」再燃で、8月からどう変わる?(ダイヤモンドオンライン) 4)肺がん診療指針に薬剤費の一覧、数千万円の治療も 見える化の狙いは(朝日新聞) 6.電子カルテで患者取り違え、経過観察患者に前立腺全摘出手術/千葉県がんセンター千葉県がんセンターは2026年2月6日、60代男性患者に対し、検査結果の取り違えにより不要な前立腺全摘出手術を行った、医療事故を公表し、患者に謝罪した。事故は2025年に発生。男性は前立腺生検の結果、経過観察が妥当とされていたが、検査を担当した医師が、同日に別患者から得られた悪性度の高い前立腺がんの病理結果を、誤って当該患者の電子カルテに貼り付けた。主治医は、この誤った情報を基に高リスク前立腺がんと診断し、約3ヵ月後に前立腺全摘出および骨盤内リンパ節切除を実施した。手術後、摘出組織の病理所見がカルテ記載と大きく異なることに主治医が気付き、調査の結果、検査結果の取り違えが判明した。患者の身体には手術に起因するとみられる影響が出ているが、詳細は公表されていない。病院は賠償について協議中としている。その一方で、検査結果を誤って外された別患者には、主治医が原本確認を行っており、治療への影響はなかった。同センターでは、11年前にも乳がん検査結果の取り違えによる誤切除事故が発生しており、再発防止が課題となっていた。病院は外部委員を含む医療安全調査委員会を設置し、電子カルテへの検査結果貼付時の患者確認、主治医による原本確認の徹底など、原因究明と再発防止策を検討するとしている。 参考 1)千葉県がんセンターにおけるアクシデントの発生について(千葉県) 2)検査結果取り違え前立腺摘出 電子カルテ誤追記、千葉県がんセンター(朝日新聞) 3)千葉県がんセンター 検査結果取り違え不必要手術 患者に謝罪(NHK) 4)千葉県がんセンター、誤って前立腺摘出 60代男性を別患者と取り違え(日経新聞)

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事例41 胃腸炎への抗生物質製剤の査定【斬らレセプト シーズン4】

解説事例の診療所では、風邪から派生したと考えられる胃腸炎であっても、必要があれば経口用セフェム系製剤を投与していました。今回、C事由(医学的理由による不適当)にて査定となりました。査定理由を調べるためにカルテを参照しました。咽頭に発赤がある旨と下痢が複数回あったとの記録がありました。医師は、単なる感冒はウイルス性疾患であり、いわゆる抗生物質製剤は有効ではなく、他に必要性があると判断した場合に投与できることを承知されていました。添付文書を調べてみたところ適応に「咽頭・喉頭炎」と類似の病名がありました。事例には「咽頭・喉頭炎」が表示されていないために査定となったものと考えましたが、類似と考えられる「感冒性」が表示されているので適応があると考えられたのではないかと推測しました。しかしながら、支払基金の審査基準である「審査の一般的取り扱い」に、「支払基金・国保統一事例651(令和7年8月29日)」として、「感冒性胃腸炎」には「抗生物質製剤【内服薬】又は合成抗菌薬【内服薬】の算定は、原則として認められない」とあります。この基準に基づき査定となったものと推測できます。他には、感冒、小児のインフルエンザ、小児の気管支喘息、感冒性胃腸炎、感冒性腸炎、慢性上気道炎、慢性咽喉頭炎のみの病名では抗生物質製剤または合成抗菌薬の算定が認められない病名として列記されていました。医師には、この基準を伝えて、抗生物質製剤または合成抗菌薬を投与する場合は、医学的必要性がわかる病名を付与していただくようにお願いして査定対策としています。

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英語で「脱水症」って?インバウンド客にも多い訴え【患者と医療者で!使い分け★英単語】第49回

医学用語紹介:脱水(脱水症)dehydration救急外来に来る外国人の患者さんの中には、旅行中に「脱水(脱水症)」になって搬送されるケースも多いのではないでしょうか。脱水症を表す医学用語はdehydrationですが、ほかにどのように説明できるでしょうか?講師紹介

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不思議の国のアリス症候群、特定の薬剤が関連か

 不思議の国のアリス症候群(Alice in Wonderland syndrome:AIWS)は、物体や人の大きさが変わって見える、体が宙に浮くような感覚、時間の歪みなどの視覚的・知覚的歪みを伴う神経疾患である。従来から片頭痛やてんかん発作との関連が指摘され、その後、腫瘍や感染症、さらには薬物との関連も報告されている。フランス・ニース大学病院のDiane A. Merino氏らによる研究グループは、世界保健機関(WHO)の医薬品安全性データベースを解析した結果、モンテルカストやアリピプラゾールなどの特定の薬剤がAIWSの発現に関与している可能性を明らかにした。Psychiatry Research誌2026年2月号に掲載。 本研究では、1967年~2024年12月15日までにWHO医薬品安全性データベースVigiBaseに登録されたAIWS症例を抽出し、小児(0〜17歳)と成人(18歳以上)に分けて不均衡分析を実施した。AIWSと薬剤の関連性は、シグナル指標としてInformation Component(IC)と95%信頼区間(CI)を算出し、95%CIの下限値(IC025)が正の値を示す場合をシグナルが検出されたとみなした。 主な結果は以下のとおり。・抽出されたAIWS 87例のうち、小児は26例(29.9%)で平均年齢7.1歳(標準偏差[SD] 4.0)、成人は45例(51.7%)で40.6歳(SD 13.0)であった。・56例(64.4%)が重篤と判断された。転帰が判明している症例のうち43例(79.6%)が回復または回復中であることが確認された。・小児群では、喘息・アレルギー治療薬のモンテルカスト(IC:3.2、95%CI:1.7~4.2)および注意欠如・多動症(ADHD)治療薬のメチルフェニデート(IC:2.3、95%CI:0.3~3.5)において有意なシグナルが検出された。・成人群では、抗うつ薬のセルトラリン(IC:3.4、95%CI:2.1~4.4)、抗てんかん薬のトピラマート(IC:3.1、95%CI:1.3~4.2)、抗精神病薬のアリピプラゾール(IC:3.6、95%CI:2.5~4.4)、およびモンテルカスト(IC:2.7、95%CI:0.7~3.9)に有意な関連が認められた。・新型コロナウイルスワクチンも頻繁に報告されていたが(17例、19.5%)、統計的に有意なシグナルは検出されなかった(IC:0.63、95%CI:-0.26~1.31)。一方で、髄膜炎菌ワクチンについては有意なシグナルが認められた(IC:2.7、95%CI:1.2~3.7)。 本研究により、メチルフェニデートやモンテルカストといった特定の薬剤が年齢層に応じてAIWSを引き起こすトリガーとなる可能性が示唆された。著者らは、AIWSは通常、薬剤の投与中止により回復するが、視覚的・知覚的歪みの症状が患者に混乱をもたらす可能性があるため、慎重なリスク・ベネフィット評価が必要であり、本研究は自発報告データベースに基づくため、今後さらに大規模な集団ベースの調査が必要だとまとめている。

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小児の上腕骨内側上顆転位骨折、手術的固定術はベネフィット示さず/Lancet

 上腕骨内側上顆転位骨折は、小児の骨折で最も議論の余地のある損傷の1つだが、裏付けとなるエビデンスが乏しいにもかかわらず、手術的固定術を行う傾向が強い状況であるという。英国・リバプール大学のDaniel C. Perry氏らは「SCIENCE試験」において、転位した骨片の位置を回復させる手術的固定術は非手術的治療と比較して、臨床的有益性をもたらさず費用対効果も優れないうえに、これらの小児を回避可能な外科的リスクにさらす可能性があることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2026年1月20日号で報告された。3ヵ国の無作為化優越性試験 SCIENCE試験は、3ヵ国(英国、オーストラリア、ニュージーランド)の59施設で実施した実践的な多施設共同無作為化優越性試験(英国国立衛生研究所[NIHR]などの助成を受けた)。2019年6月~2023年9月に参加者を登録した。 年齢7~15歳の転位を伴う内側上顆骨折の患者を対象とした。被験者を、手術的固定術を受ける群または非手術的治療を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 手術的固定術は、全身麻酔下に切開、解剖学的整復、骨片の固定を行った。非手術的治療は、ギプス、副木、スリングを用いて肘を約90度の屈曲位に固定した。 主要アウトカムは、12ヵ月の時点での上肢機能の回復とし、ITT集団において小児用PROMIS(Patient Report Outcomes Measurement System)上肢スコア(13.7~57.3点、高点数ほど上肢機能が良好)で評価した。手術的固定術は術中・術後合併症と追加手術が多い 334例(平均年齢11.7[SD 2.3]歳、女児170例[51%])を登録し、手術群に168例、非手術群に166例を割り付けた。194例(58%)はスポーツによる骨折で、体操(55例[16%])とフットボール/サッカー(37例[11%])による損傷が多かった。主要アウトカムのデータは285例(85%)から得られた。 12ヵ月時のPROMIS上肢スコアは、手術群が54.3(SD 5.7)点、非手術群は53.1(SD 7.8)点であり、両群間に有意な差を認めなかった(平均治療群間差:1.57点、95%信頼区間[CI]:-0.01~3.14、p=0.052)。また、この治療効果の推定値は臨床的に意義のある差(4点)を下回っていた。 追加手術(計画手術、合併症関連手術)は、手術群で24例、非手術群で3例に行われた。手術的固定術を受けた150例のうち、13例(9%)に14件の術中合併症が、7例(5%)に術後合併症が発生し、それぞれ手術を要した。さらに、17例(11%)ではスクリューやワイヤの除去手術がルーチンに行われた。 非手術的治療を受けた184例では、4例(2%)に5件の合併症が発生し、このうち3件(2%)で追加手術を要した。費用は手術群で2,435ポンド高額 英国の国民保健サービス(NHS)および福祉サービス(Personal Social Services)の評価法で算出した患者1例当たりの平均費用は、手術群で2,435ポンド(95%CI:1,812~3,057)高く、患者1人当たりの質調整生存年(QALY)の群間差は平均-0.008(95%CI:-0.039~0.024)であった。 また、1QALY当たり2万ポンドまたは3万ポンドの支払い意思額閾値において、手術的固定術で費用対効果が優れる確率は0%だった。 著者は、「非手術的治療では、後日手術が必要となるリスクがごくわずかに残るが、これは手術的固定術における2次的手術の実施率と比較して低い」「これらの知見は、小児の上腕骨内側上顆転位骨折では非手術的治療を標準的な管理戦略へと転換し、手術的固定術は例外的な状況に限定すべきであることを示唆する」「このエビデンスは、今後のガイドラインに反映すべきであり、治療選択肢に関する臨床医と患児、家族との話し合いに有益と考えられる」としている。

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急性筋骨格系損傷の小児、イブプロフェン単独療法vs.併用療法/JAMA

 非観血的急性筋骨格系損傷の小児(6~17歳)において、薬剤投与60分後の疼痛スコアは、イブプロフェン+アセトアミノフェン併用投与またはイブプロフェン+ヒドロモルフォン併用投与を行っても、イブプロフェン単独投与と比較して有意な改善は認められず、副作用の発現割合はヒドロモルフォン併用投与で約4倍高かった。カナダ・アルバータ大学のSamina Ali氏らが、カナダの3次医療施設6施設の小児救急部門で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Non-Steroidal or Opioid Analgesia Use for Children With Musculoskeletal Injuries:No OUCH試験」の結果を報告した。イブプロフェンは、筋骨格痛に対する第1選択薬であるが、小児の3例に2例がイブプロフェン単独では十分な疼痛緩和が得られず、中等度から重度の筋骨格痛に対する鎮痛薬の追加併用の有効性は不明であった。JAMA誌オンライン版2026年1月8日号掲載の報告。オピオイド併用の3群比較試験と、非オピオイド併用の2群比較の2試験を実施 No OUCH試験は、オピオイド試験と非オピオイド試験の2試験で構成され、保護者および患者がいずれに参加するかを決定できる治療選好を考慮した補完的試験デザインで実施された。 対象は6~17歳の小児で、発症後24時間以内の急性筋骨格系損傷(明らかな変形や神経血管障害を伴わない)を呈し、verbal numerical rating scale(vNRS)による疼痛スコアが10点満点中5点以上の患者とした。 研究グループは、適格患者を、オピオイド試験では(1)イブプロフェン+ヒドロモルフォン群、(2)イブプロフェン+アセトアミノフェン群、(3)イブプロフェン単独群のいずれかに、非オピオイド試験では(1)イブプロフェン+アセトアミノフェン群、または(2)イブプロフェン単独群のいずれかに無作為に割り付け、それぞれ単回経口投与した。 両試験とも、イブプロフェンは10mg/kg(最大600mg)、アセトアミノフェンは15mg/kg(最大1,000mg)、ヒドロモルフォンは0.05mg/kg(最大5mg)を投与した。 有効性の主要アウトカムは、投与後60分時点の自己申告によるvNRS疼痛スコア(スコア範囲:0[無痛]~10[最悪の痛み]、臨床的意義のある最小群間差:1.5[SD 2.7])、安全性の主要アウトカムは、治療関連有害事象の発現割合であった。平均疼痛スコアは3群間で有意差なし 2019年4月~2023年3月に8,098例がスクリーニングされ、適格患者699例が無作為化された(オピオイド試験249例[イブプロフェン+ヒドロモルフォン群110例、イブプロフェン+アセトアミノフェン群70例、イブプロフェン単独群69例]、非オピオイド試験450例[イブプロフェン+アセトアミノフェン群225例、イブプロフェン単独群225例])。2試験の患者の平均(SD)年齢は11.5(3.5)歳、47.4%が女性で、登録時の平均(SD)vNRSスコアは6.4(1.8)であった。 有効性の解析対象集団653例において、投与60分後の平均(SD)vNRSスコアはイブプロフェン+ヒドロモルフォン群4.8(2.6)、イブプロフェン+アセトアミノフェン群4.6(2.4)、イブプロフェン単独群4.6(2.3)であった(p=0.78)。 治療関連有害事象の発現割合は、イブプロフェン+ヒドロモルフォン群で28.2%と、イブプロフェン+アセトアミノフェン群6.1%、イブプロフェン単独群5.8%と比較して高かった。重篤な有害事象は報告されなかった。

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小児の熱傷【すぐに使える小児診療のヒント】第10回

小児の熱傷子供の成長は喜ばしいものですが、その一方で成長に伴ってこれまで想像もしていなかった事故が起こり得ます。熱傷は家庭内での日常的な事故として発生することが多く、「一瞬の不注意」が重症化につながることも少なくありません。小児は成人と比較して皮膚が薄く、体表面積当たりの熱吸収量が大きいため、同じ条件でもより深く、より広範囲の熱傷となることがあり、注意が必要です。症例11ヵ月、女児。カップラーメンの熱湯が顔面にかかり、熱傷を負ったため受診した。父が自宅のテーブルの上に作りかけで置いていたカップラーメンを、一瞬目を離した隙に児が触ってこぼしてしまったとのこと。顔面にII度熱傷、肩、腕にもI度熱傷あり。熱傷の評価熱傷の評価に関しては成人と大きくは変わりません。熱傷とは、「高熱(加熱液体・気体・固体、火炎など)、低温(液体・気体・固体など)、化学物質、電流などが皮膚に接触し生じる外傷」であり、温度と接触時間で深達度が規定され、その深達度とその範囲によってどの程度全身に影響を与えるのかが決まります。温度 × 接触時間 = 深達度深達度 × 熱傷面積 = 重症度(1)深達度I度熱傷:表皮のみ。発赤・疼痛あり、水疱なしII度熱傷:真皮に及ぶ。水疱形成、強い疼痛浅達性:自然上皮化が期待できる深達性:瘢痕形成のリスクありIII度熱傷:全層壊死。白色~黒色、疼痛に乏しい※急性期には深達度が過小評価される可能性があり、繰り返し評価が必要画像を拡大する画像を拡大する(2)熱傷面積熱傷面積の算出には、成人では「9の法則」を用いることが多いですが、全身に占める頭部や躯幹の割合が大きい乳幼児においては不正確です。簡易的には、下記に示すように「5の法則」や「手掌法」を用いて算出します。<5の法則>画像を拡大する<手掌法>患者手掌が体表面積の1%熱傷面積を算出する際に小範囲の面積を加算算出するのに用いる(3)重症度判定とアルゴリズム下記アルゴリズムは、小児の熱傷において全身管理と局所治療の優先順位を整理することを目的としています。II度15%未満、III度2%未満は軽症に分類され、局所治療を基本とします。それ以上の場合は中等症/重症に分類され、気道・顔面・手足などの部位の熱傷、電撃傷などでは全身管理を優先し、経過に応じて手術も含めた治療選択を行います。画像を拡大する<熱傷診療ガイドラインを参考に作成>熱傷の初期治療軽症および中等症の熱傷の場合、火傷の直後に冷却すると創傷治癒が向上します。可能であれば20分間冷却することが推奨されます。感染管理としては、水洗浄、受傷状況と汚染の程度によって破傷風トキソイド接種(参考:小児の創傷処置)を考慮します。受傷初期の熱傷に対して、創部感染予防目的に抗菌薬の予防的全身投与を画一的に行うことは勧められていません。明らかな汚染創であったり、易感染宿主状態の患者であったりする場合に考慮します。急性期の熱傷では、I~III度熱傷が混在していることも多く、正確な深達度評価は難しいとされています。まずは洗浄して、油脂性基材軟膏(ワセリン、プロペト、アズノールなど)で湿潤療法を行うことが基本です。虐待の可能性を考える乳幼児の熱傷では、常に虐待の可能性を念頭に置いて診療にあたる必要があります。身体的虐待の約9%に熱傷が含まれるとの報告もあり、決してまれな所見ではありません。虐待による熱傷を見逃さないためには、受傷時の状況を詳細に問診すること、全身をくまなく診察すること、そして受傷部位だけでなく熱傷痕そのものの特徴に注目することが重要です。事故による乳幼児の熱傷では、手掌や前腕などの上半身に受傷していることが多い傾向があります。一方で、虐待による熱傷には、以下のような特徴がみられます。臀部、大腿内側、腋窩、腹部など、通常は露出していない部位に生じている円形で境界が明瞭なタバコ熱傷など、熱源を推定しやすい形状を呈する熱傷の深達度が均一で、健常皮膚との境界がはっきりしている熱源が飛び散ることによる不規則な熱傷(splash burn)を伴わないこうした「事故らしさ」「虐待らしさ」をあらかじめ知っておくことが、違和感に気づき、見逃さない診療につながります。事故予防の観点から熱傷は、実は家庭内での事故のうち多くの割合を占めています。とくに、0~1歳児に多く、発生場所としては居室と台所で約8割を占めるといわれています。その原因で最も多いのが、味噌汁や麺類、シチューなどの調理食品で、次いでストーブ、電気ケトルなどが挙げられます。まさに今回の症例のように「カップラーメンの待ち時間で子供がやけどしてしまった」といったエピソードは、日常診療の中でもよく経験します。問診例テーブルの上に置いていたカップラーメンをひっくり返して被ってしまいました。そうだったのですね。テーブルのどのあたりに置いていましたか?端の方に置いてしまっていました。最近つかまり立ちをするようになったのですが、まだ届かないだろうと気を抜いていました。事故予防は、保護者が気をつけることだけで成り立つものではありません。電気ケトルの転倒による熱傷事故が多く報告されたことを受けて、転倒してもお湯がこぼれにくい設計の商品が開発されるなど、社会全体でもさまざまな工夫が進められています。ぜひ日本小児科学会のホームページに掲載されているInjury Alertも参考にしていただければと思います。保護者との関わり熱傷の正確な評価や適切な処置はもちろん重要ですが、同時に、保護者に対して事故予防について話をすることも欠かせないポイントです。二度と同じ事故を繰り返さないためには、「喉元過ぎて熱さを忘れない」うちに、受診のタイミングで具体的に伝えることが、最も効果的であると感じています。問診例(続き)お父さんの近くやテーブルの中央など、手の届かない場所に置く工夫が必要かもしれませんね。お子さんは日々成長するので、『まだ大丈夫』と思っていても思いもよらなかったような事故が起こることがあります。そうしたことを前提に対策していくことが大切ですね。一緒に考えていきましょう。こども家庭庁のホームページに掲載されている「こどもの事故防止ハンドブック」は、PDFを無料でダウンロードできるため、外来で保護者に紹介する資料としても有用です。また、今回の症例のように顔面に熱傷を負った場合には、外見の変化に対する心のケアも重要になります。たとえ最終的に治癒が見込まれるものであっても、顔面の皮膚がただれ、痛々しい状態になっているわが子の姿を目の前にすると、保護者は少なからずショックを受け、自身や配偶者を責めてしまうことも少なくありません。「お子さんの状態を良くしたい」という気持ちは、保護者も医療者も同じです。その思いを共有し、寄り添う姿勢を言葉にしながら、身体面だけでなく精神面にも配慮して関わることが大切だと考えています。参考資料 1) 日本皮膚科学会:熱傷診療ガイドライン第3版 2) 日本小児科学会:虐待による熱傷の所見 3) 日本小児科学会:I Injury Alert(傷害速報) 4) こども家庭庁:こどもの事故防止ハンドブック

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出産年齢が高いほど子供のアレルギーリスクが低い~日本の全国調査

 高齢出産は遺伝的およびエピジェネティックな変化と関連しているものの、小児アレルギーリスクとの関連は不明である。今回、国立成育医療研究センターの山本 貴和子氏らが3万4,942組の母子を対象としたコホート研究で調査したところ、出産時の年齢が高い母親の子供は、幼児期の食物アレルギー、喘鳴、ハウスダスト感作のオッズが低く、高齢出産が幼児期のアレルギー疾患を防御する可能性があることが示唆された。JAMA Network Open誌2026年1月2日号に掲載。 本研究は、全国における集団ベースの多施設共同前向き出生コホート研究で、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータを用いた。2011年1月~2014年3月に日本国内の15センターで参加者を登録し、1歳、2歳、4歳時に追跡調査データを収集した。本解析は親の年齢とアレルギーに関するデータを有する単胎出生児を対象とし、2024年7月8日~2025年2月4日に実施した。ハウスダスト感作はサブコホートで評価した。主要評価項目は、1歳、2歳、4歳における医師診断による食物アレルギー、喘鳴、喘息、湿疹、副次評価項目は、2歳および4歳におけるハウスダスト感作であった。調整オッズ比(OR)は欠損値の多重代入後、多変量ロジスティック回帰を用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・3万4,942組の母子が対象となり、登録時の母親の平均年齢は31.0歳(標準偏差:4.7)、1万7,892人の母親(51.2%)にアレルギー歴があった。・1歳時の食物アレルギー有病率は6.6%(95%信頼区間[CI]:6.4~6.9)で、母親の年齢とともに減少した。・出産時の母親の年齢が25~29歳の子供と比較して、35~39歳で出産した子供(OR:0.79、95%CI:0.70~0.90)および40歳以上で出産した子供(OR:0.59、95%CI:0.44~0.79)のほうが食物アレルギーのオッズが低かった。・両親共に35歳以上で生まれた子供は、4歳時に喘鳴を呈するオッズが低かった(OR:0.89、95%CI:0.82~0.95)。・ハウスダスト感作について、2歳児1,991人と4歳児1,840人を評価した結果、出産時の母親の年齢が高いほどオッズが低かった(30~34歳で出産した子供のOR:0.76、95%CI:0.59~0.98、35~39歳で出産した子供のOR:0.68、95%CI:0.50~0.91)。

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小児片頭痛、起立性調節障害を伴わない場合は亜鉛欠乏か?

 片頭痛は学童期の子供の約10%にみられ、起立性調節障害を併存していることが多い。成人では血清亜鉛レベルの低下と片頭痛の関連が報告されているが、小児におけるエビデンスはこれまで限られていた。兵庫医科大学の徳永 沙知氏らの研究によると、小児片頭痛患者のうち、起立性調節障害を併存していない群では併存群に比べて血清亜鉛レベルが有意に低く、両者の病態生理が異なる可能性が示唆された。Nutrients誌2025年11月28日号に掲載。 本研究では、2017年12月~2022年3月に片頭痛と診断された小児患者57例を対象に、初診時の血清亜鉛、鉄、銅、フェリチン濃度および起立性調節障害併存の有無を後ろ向きに調査した。亜鉛欠乏は血清濃度80μg/dL未満と定義し、起立性調節障害の診断は日本の診断基準に基づき、立ちくらみ、悪心、動悸や呼吸困難、朝起きるのが困難などの主要症状のうち2つ以上ある場合とした。 主な結果は以下のとおり。・解析対象の57例(男児26例、女児31例、年齢中央値13歳[範囲:7~19])において、血清亜鉛濃度の中央値は80.7μg/dL(範囲:57.8~113.3)であり、全体の40%に亜鉛欠乏が認められた。・起立性調節障害を併存していないのは31例(54.4%)、併存しているのは26例(45.6%)であった。・起立性調節障害を併存していない群の血清亜鉛濃度中央値は77.5μg/dL(範囲:57.8~102.9)であり、併存群の86μg/dL(74.4~113.3)と比較して有意に低かった(p<0.001)。・亜鉛欠乏の割合は、起立性調節障害の非併存群で67.7%(21/31例)であったのに対し、併存群では7.7%(2/26例)であった(p<0.001)。・線形混合モデル(LMM)解析の結果、年齢、性別、BMI、鉄、銅、フェリチンなどの要因を調整した後も、起立性調節障害の併存の有無のみが血清亜鉛濃度と有意に関連する因子であった(p=0.019)。・鉄、銅、フェリチンの各レベルについては、起立性調節障害併存の有無による有意な差は認められなかった。 本研究により、片頭痛と診断される小児患者であっても、起立性調節障害の併存の有無によって亜鉛の栄養状態が大きく異なることが示された。著者らは、起立性調節障害を伴わない片頭痛患者では亜鉛欠乏が病態に関与している可能性を指摘しており、血清亜鉛レベルを考慮することが、これら2つの病態を鑑別するための有用な指標になる可能性があるとし、今後の課題として、健康対照群を用いた大規模な前向き研究が必要だとまとめている。

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英語で「百日咳」ってどう言う?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第47回

医学用語紹介:百日咳 pertussis日本でもたびたび流行のニュースが聞かれる「百日咳」。海外からの旅行客の診察で、疑わなければならないシーンもあるかもしれません。専門用語ではpertussisといいますが、患者さんにはまず通じないでしょう。患者さんにこの百日咳を説明する際に、どのような一般用語で言い換えればよいでしょうか?講師紹介

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小児眼科領域における診断と治療 最近の進歩

発達段階に応じた診療の決定版「眼科」67巻10号(2025年10月臨時増刊号)雑誌『眼科』本年の臨時増刊号のテーマは「小児眼科領域における診断と治療 最近の進歩」です。迅速で正確な診断と個々の発達段階に応じた治療選択がきわめて重要である小児に対する眼科診療について、前眼部から後眼部までの基本事項はもちろん、近視、斜視、弱視、病診連携やロービジョンケアといった分野まで、忙しい日常臨床の場で役に立つ基礎知識と最新の知見を第一線で活躍されている専門家の先生方にご執筆いただきました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する小児眼科領域における診断と治療 最近の進歩定価9,350円(税込)判型B5判頁数272頁発行2025年10月編集後藤 浩/飯田 知弘/雑賀司 珠也/門之園 一明/石川 均/根岸 一乃/福地 健郎ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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妊娠中のアセトアミノフェン、神経発達症と関連なし

 アセトアミノフェンは、妊娠中の解熱・鎮痛の第1選択薬であり、非ステロイド性抗炎症薬やオピオイドより安全性が高いとされる一方で、近年自閉スペクトラム症(ASD)などの神経発達症への影響が議論され、注目を集めた。そこで、イタリア・University of ChietiのFrancesco D'Antonio氏らは、妊娠中のアセトアミノフェン使用と児のASD、注意欠如・多動症(ADHD)、知的障害(ID)リスクの関連を検討するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、妊婦のアセトアミノフェン使用とこれらの神経発達症のリスクとの間に関連はみられなかった。本研究結果は、The Lancet Obstetrics, Gynaecology, & Women's Health誌オンライン版2026年1月16日号に掲載された。 研究グループは、MEDLINE、Embase、ClinicalTrials.gov、Cochrane Libraryを用いて、2025年9月30日までに発表されたコホート研究を検索した。対象の研究は、妊娠中のアセトアミノフェン使用と小児アウトカム(ASD/ADHD/ID)を評価し、調整済み推定値が示されているものとした。本研究の主要解析では、きょうだい比較を用いた研究に限定して、妊娠中のアセトアミノフェン使用とASD、ADHD、IDの関連を評価した。また、バイアスリスクが低い研究や追跡期間が5年以上の研究についても解析した。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューには43件の文献が抽出され、そのうち17件がメタ解析の対象となった。・きょうだい間比較を用いた研究において、妊娠中のアセトアミノフェン使用は、児のASD、ADHD、IDのいずれとも関連がみられなかった。オッズ比(OR)、95%信頼区間(CI)、p値、I2値は以下のとおり。 ASD:0.98、0.93~1.03、p=0.45、I2=0% ADHD:0.95、0.86~1.05、p=0.31、I2=18% ID:0.93、0.69~1.24、p=0.63、I2=48%・バイアスリスクが低い研究のみに限定した解析でも、児のASD、ADHD、IDのいずれとも関連はみられなかった。OR、95%CI、p値、I2値は以下のとおり。 ASD:1.03、0.86~1.23、p=0.78、I2=75% ADHD:0.97、0.89~1.05、p=0.49、I2=10% ID:1.11、0.92~1.34、p=0.28、I2=57%・調整済み推定値を報告したすべての研究を含めた解析や、5年以上の追跡期間を有する研究に限定した解析においても、一貫して関連はみられなかった。 本研究結果について、著者らは「現在のエビデンスでは、用法・用量どおりにアセトアミノフェンを使用した妊婦の児において、ASD、ADHD、IDが臨床的に重要な程度で増加することは示されなかった。これらの知見は、妊娠中のアセトアミノフェンの安全な使用に関する現在の推奨を支持するものである」とまとめている。

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片頭痛へのフレマネズマブ、小児・思春期児にも有益/NEJM

 反復性片頭痛を有する6~17歳の小児・思春期児において、フレマネズマブはプラセボと比較して、片頭痛および頭痛の日数を減少させたことが、米国・シンシナティ小児病院医療センターのAndrew D. Hershey氏らが行った3ヵ月間の海外第III相多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果で示された。フレマネズマブ群で最も多くみられた有害事象は、注射部位紅斑であった。フレマネズマブは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に選択的に結合するヒト化モノクローナル抗体で、成人の片頭痛予防について承認されている。小児・思春期児について、無作為化試験のエビデンスが求められていた。結果を踏まえて著者は、「小児・思春期児におけるフレマネズマブの有効性と安全性をさらに調べるため、長期の追跡調査を行う必要がある」とまとめている。NEJM誌2026年1月15日号掲載の報告。プラセボと比較、3ヵ月投与の有効性と安全性を評価 試験は2020年8月20日~2024年3月13日に、9ヵ国89施設で被験者を募り行われた(74施設で少なくとも被験者1例が登録された)。 研究グループは、反復性片頭痛(片頭痛が6ヵ月以上持続かつ月当たりの頭痛日数が14日以下と定義)と診断された6~17歳の患児を、フレマネズマブ(体重45kg未満は120mg、45kg以上は225mgを月1回)皮下投与群または適合プラセボ投与群に無作為に割り付けて3ヵ月投与し、有効性と安全性を評価した。被験者は、急性頭痛の治療に、片頭痛に特異的な治療薬を用いることが許容された。 主要エンドポイントは、月当たりの平均片頭痛日数のベースラインからの変化量。重要な副次エンドポイントは、月当たりの中等度以上の頭痛日数の変化量、月当たりの片頭痛日数の50%以上低減などであった。月当たりの平均片頭痛日数減少、-2.5日vs.-1.4日で有意差 237例が無作為化され、234例が全解析集団に包含された。フレマネズマブ群が123例(120mg群36例、225mg群87例)、プラセボ群が111例であった。3ヵ月の二重盲検試験期間を完了したのは、フレマネズマブ群96.7%、プラセボ群94.6%であった。ベースラインの人口統計学的および臨床的特性は両群で類似しており、月当たり平均片頭痛日数(±SD)はフレマネズマブ群7.8±3.1日、プラセボ群7.5±2.8日であった。 主要エンドポイントについて、月当たりの平均片頭痛日数は、フレマネズマブ群(-2.5日、95%信頼区間[CI]:-3.2~-1.7)がプラセボ群(-1.4日、95%CI:-2.2~-0.7)と比べて有意に減少した(群間差:1.1日、p=0.02)。 月当たりの中等度以上の頭痛日数は、フレマネズマブ群(-2.6日)がプラセボ群(-1.5日)と比べて有意に減少した(群間差:1.1日、p=0.02)。また、月当たりの片頭痛日数が50%以上低減した被験者は、フレマネズマブ群47.2%、プラセボ群27.0%であった(群間差:20.1%、p=0.002)。 安全性について、少なくとも1つの有害事象を有したのはフレマネズマブ群68/123例(55.3%)、プラセボ群55/112例(49.1%)であったが、ほとんどが重篤ではなく、軽度~中程度の有害事象であった。 フレマネズマブ群で最も多く見られた有害事象は、注射部位紅斑(9.8%)であった(プラセボ群5.4%)。

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1歳6ヵ月時点の母乳育児がむし歯発症と関連、口腔衛生指導の重要性を示す縦断研究

 乳幼児のう蝕(むし歯)は生活習慣や食事習慣など複数の要因が絡み、授乳との関係はこれまで議論が続いてきた。今回、日本の子ども約6,700人を1歳6ヵ月~3歳6ヵ月まで追跡した縦断研究で、1歳6ヵ月時点で母乳育児を続けていた子どもで、その後のむし歯発症との関連が示された。一方で、母乳育児を継続していても多くの子どもはむし歯を経験しておらず、母乳育児そのものではなく、食事習慣や口腔衛生習慣などのケアが重要である可能性が示唆された。研究は大阪大学大学院歯学研究科小児歯科学講座の三笠祐介氏、大継將寿氏、仲野和彦氏、同大学口腔生理学講座の加藤隆史氏らによるもので、11月27日付で「Scientific Reports」に掲載された。 乳歯のむし歯は世界で5億人以上の子どもに影響する公衆衛生上の重要な健康課題であり、日本では全体として減少傾向にあるものの、依然として高リスク層への偏在がみられる。むし歯の原因は多因子的だが、母乳栄養とむし歯の関係については研究間で一致した結論が得られていない。1歳以降の授乳をむし歯リスクとする報告がある一方で、1歳6ヵ月までの授乳はむし歯リスクの低下と関連するとの報告や、砂糖摂取こそが主要因であるとする研究もあり、見解は分かれている。また、早期に歯が萌える(はえる)こともむし歯リスクに関与するとされるが、縦断的な検討は限られている。そこで本研究では、日本の中核都市の子どもを対象に、1歳6ヵ月〜3歳6ヵ月のむし歯発症と、1歳6ヵ月時点の授乳状況および萌えている歯の数との関連を縦断的に検討した。 本研究では、大阪府豊中市、豊中市歯科医師会と連携のもと、市の乳幼児健康診査の受診者を対象に調査を行った。2018年4月から2020年3月までの間に、豊中市の3つの保健センターで歯科健診を受けた3歳6ヵ月の子どもを対象とした。1歳6ヵ月時および3歳6ヵ月時に身体計測と歯科健診を行い、萌えている歯の本数やむし歯の有無(dmft指数)を評価した。1歳6ヵ月時には、口腔内細菌の状態を評価するむし歯リスク検査と、授乳状況や食事習慣、就寝時刻などに関する保護者向けアンケートを実施し、3歳6ヵ月時点でのむし歯発症との関連をロジスティック回帰分析で検討した。 5,161名の子どものうち、3歳6ヵ月時点でむし歯を経験していた子どもは738人(14.3%)であった。内訳は、1歳6ヵ月時点ですでにむし歯を有していた子どもが50人(1.0%)、1歳6ヵ月~3歳6ヵ月の間に新たにむし歯を発症した子どもが688人(13.3%)であった。1歳6ヵ月時点ですでにむし歯を有していた50人を除外し、5,111人を対象として、1歳6ヵ月~3歳6ヵ月におけるむし歯発症に関する追加のリスク解析を行った。 出生順位、歯の本数、むし歯リスクの検査結果、食事習慣、授乳・哺乳状況などの潜在的な交絡因子を調整した多変量解析の結果、3歳6ヵ月時点でのむし歯発症は、1歳6ヵ月時に萌えている歯が12本以下であること(オッズ比〔OR〕0.78、95%信頼区間〔CI〕0.63~0.97、P<0.05)と負の関連を示した。一方、17本以上であること(OR 2.06、95%CI 1.12~3.79、P<0.05)、母乳のみで授乳していたこと(OR 2.03、95%CI 1.68~2.46、P<0.001)、および母乳と哺乳瓶の併用(OR 2.45、95%CI 1.36~4.44、P<0.01)は、むし歯発症と有意な正の関連を示した。 著者らは、「本研究は、1歳6ヵ月時点の歯の萌え方や授乳状況が、その後のむし歯発症と関連することを示した。得られた知見から、乳歯が萌え始める早期の段階から歯科受診や適切な口腔ケア、食事習慣に関する指導を行うことで、母乳育児の利点を活かしつつ、将来的なむし歯リスクを低減できる可能性が示唆される」と述べている。 なお、本研究では、歯の本数のみを評価し歯種や萌える順番を評価していない点や、保護者向けアンケートにて夜間授乳や授乳頻度について評価していない点を限界として挙げている。

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小児診療ガイドラインのダイジェスト解説&プログレス2025

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