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第59回 新たな変異コロナウイルス「セミ」について私たちが知っておくべきこと

パンデミックから数年が経過し、私たちの生活はすっかり日常を取り戻しました。いわゆる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のニュースを目にする機会もすっかり減ったと感じている方が多いのではないでしょうか。しかし、ウイルスは私たちの見えないところで今も静かに進化を続けています。そんな中、現在、新しい変異ウイルスが注目を集めています。その名は「BA.3.2」。そして、このウイルスに付けられたニックネームは「Cicada(シカダ)」、日本語で「セミ」です。なぜ、「セミ」という名前が付けられたのでしょうか? そして、このウイルスに対して私たちはどう向き合うべきなのでしょうか。JAMAの記事をもとに解説します1)。なぜ「セミ」?異例の長き沈黙を破った変異ウイルスコロナの変異ウイルスの多くは、現れては消えるまでのサイクルが非常に短く、通常は数週間から数ヵ月しか流行しません。かつて猛威を振るったオミクロンのBA.1も、数ヵ月で別の変異ウイルスに置き換わりました。しかし、今回の「セミ(BA.3.2)」は、これまでの常識とはまったく異なる変わり種のウイルスです。実はこのウイルス、最初に発見されたのは1年半以上も前の2024年11月、南アフリカでのことでした。その後、モザンビークやヨーロッパなどで散発的・局地的に見つかり、こちらアメリカで最初の感染者が確認されたのは2025年6月のことです。長らく目立った動きを見せなかったこのウイルスですが、2025年12月に世界保健機関(WHO)の「監視下の変異ウイルス(Variant Under Monitoring)」に指定され、2026年に入り、アメリカ各地の排水調査などから検出が報告されるようになりました。何年も土の中でじっと身を潜め、ある時期が来ると一斉に地上へ姿を現す「周期ゼミ」。この変異ウイルスが長期間の沈黙の後に急増した奇妙な振る舞いが、まさに「セミ」に似ていることから、このユニークなニックネームが付けられたのです。免疫を逃れる力と、感染しやすさの「トレードオフ」新しい変異ウイルスと聞くと、「また強い感染の波が来るのでは?」「重症化しやすいのでは?」と不安になるかもしれません。確かにこの「セミ」は、現在のワクチン抗原(例:JN.1など)と比べて、スパイクタンパク質の遺伝子配列に70〜75程度の置換・欠失などの変化があると報告されています。こうした変化のため、これまでの感染やワクチンで得られた抗体による中和が低下しうる(免疫回避の可能性がある)と考えられ、監視が続けられています。しかし、ここで紹介したい興味深い生物学的な現象があります。それは「適応度のトレードオフ」と呼ばれるものです。コロナウイルスが人間の細胞に感染するためには、細胞の表面にある「ACE2」という受け皿にくっつく必要があります。BA.3.2は免疫の監視を潜り抜けるように変異を多く持っているため、スパイクタンパクの構造が大きく変わってしまい、逆にACE2への結合のしやすさや細胞への侵入のしやすさについては、大きく落ちている可能性があると指摘されています。このように、ウイルスの進化では「免疫回避」と「感染のしやすさ」の間で「トレードオフ」が生じることがあるというわけです。少なくとも現時点では、WHOの初期評価などで、この変異ウイルスが重症化や入院、死亡のリスクを明確に増加させるという一貫したデータは見られない、とされています。また、ワクチンについては、抗体による中和が低下し得る一方で、重症化に対する防御は一定程度維持されることが期待されています。したがって、必要以上に恐れる必要はないでしょう。子供たちの間で感染が広がりやすい?ただし、研究者が注視している点の一つとして、BA.3.2の検出が子供に多く見られることが挙げられます。なぜ子供に多いのかについては、現在も専門家の間で議論が続いています。大人のように過去の感染経験がなく、ワクチン接種の回数が多くないため、免疫を持たない子供たちが単に感染しやすいだけだという意見もあれば、ウイルスが持つ特定の変異が子供への感染を有利にしているのではないかと疑う専門家もいます。これについては、今後のさらなるデータの収集が待たれるところです。いずれにせよ、とくに小さなお子さんがいるご家庭では、日頃からお子さんの体調変化に気を配っていただくことが大切です。ウイルスとの共存は続く今回登場した「セミ」ことBA.3.2について、現時点で直ちに大規模な医療逼迫を引き起こすような懸念はされていません。もしかすると、先のトレードオフが実際にあり、感染が広がりにくいかもしれないという楽観的な見方ができる可能性もあります。しかし、流行の度合いや重症度については引き続き監視が必要で、排水調査やゲノム解析などのデータが今後さらに蓄積されていく見込みです。いずれにせよ、コロナウイルスは、決して消え去ったわけではありません。私たちの社会が日常を取り戻した今も、ウイルスは(実際にそのような意思があるわけではありませんが)環境に適応しようと試行錯誤を続けています。過度な不安を抱く必要はありませんが、ウイルスがまだ身近に存在しているという事実は心の片隅に留めておいたほうがいいでしょう。1)Rubin R. What to Know About Cicada, or BA.3.2, the Latest SARS-CoV-2 Variant Under Monitoring. JAMA. 2026 Apr 17. [Epub ahead of print]

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移植患者に対するワクチン接種/日本造血・免疫細胞療法学会

 造血幹細胞移植後の患者において、ワクチン接種は感染症予防のための重要な手段となる。しかし、免疫再構築の個別性やワクチン免疫原性の低下、さらには費用・制度面の課題などにより、実臨床における実装状況には施設間差が見られる。 2026年2月27日~3月1日に開催された第48回日本造血・免疫細胞療法学会総会では、「移植患者に対するワクチン接種」をテーマとしたシンポジウムが企画され、国内実態調査、優先度の高い予防接種の科学的根拠、実臨床における運用体制という3つの視点から、移植後ワクチン接種の現状と課題が提示された。造血幹細胞移植後のワクチン接種に関する国内実態調査より 冒頭、黒澤 彩子氏(伊那中央病院 腫瘍内科)は造血幹細胞移植後のワクチン接種に関する日本国内の実態を把握するために実施された全国規模のアンケート調査の結果について報告した。本調査は、厚生労働科学研究費補助金による研究班の一環として行われたもので、日本国内の移植認定施設(成人診療科・小児科)を対象に実施され、85%(成人診療科施設86%、小児科施設85%)という非常に高い回答率が得られている。 移植後は免疫が再構築される過程で既存の免疫が失われるため、ワクチン再接種が必要とされるが、その方針や実際の接種状況、さらにワクチンで予防可能な疾患(vaccine-preventable diseases:VPD)の発症状況を把握し、今後の施策や提言につなげることが本調査の目的であった。 まず、ワクチン再接種に対する認識について、同種移植後では成人診療科・小児科ともにほぼ100%の施設がその必要性と重要性を認識しており、約75〜80%の施設で統一した接種方針が定められていた。一方、自家移植後では診療科間で大きな差が見られた。小児科では約70%が必要性を認識し、半数以上が統一方針を有していたのに対し、成人診療科では必要性の認識は24%にとどまり、方針を持つ施設はわずか6%であった。その背景として「有用性が低い」「コストの問題」などが挙げられ、自家移植後の位置付けが十分に共有されていない実態が浮き彫りとなった。 接種されているワクチンの種類にも違いがある。回答した成人診療科の80%以上が“推奨”と回答したものはインフルエンザウイルス、肺炎球菌、麻疹風疹混合(MR)であり、接種率についてはそのうちインフルエンザと肺炎球菌で高い(対象の半数以上に接種という回答が75%超)傾向にあった。一方、小児科ではMR、おたふくかぜ、水痘、ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(Hib)、インフルエンザウイルスについて8割を超える施設が“推奨”とし、接種率も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を除いて成人診療科と比較して小児科で高かった。施設体制の面では、すべてのワクチンを院内で接種可能な施設は20〜30%にとどまり、70〜80%の施設ではワクチンの種類や症例によっては接種を他院へ依頼しているという現状が示された。 水痘・帯状疱疹対策では、成人診療科では不活化ワクチンの推奨が進む一方、高額な費用負担が障壁となっている。不活化帯状疱疹ワクチンは18歳未満に適応がなく、小児は水痘に未罹患なことが多いため、小児科では水痘予防として生ワクチンが主に使用されている。また、抗ウイルス薬は移植後1〜2年、あるいは免疫抑制薬終了時まで予防投与されることが多いが、投与のタイミングや中止時期には施設間でばらつきがあった。 VPDの発症経験については、成人診療科・小児科ともに60〜90%の施設がCOVID-19、インフルエンザ、帯状疱疹、肺炎球菌感染症などを経験しており、移植患者が依然として高リスクであることが示された。死亡例は成人診療科では半数以上の施設が経験しており、とくにCOVID-19の影響が大きかった。一方、小児科では80%以上の施設が死亡例なしと回答し、成人診療科と比べて致死的転帰は少ない傾向が見られた。注目すべきは、自家移植後であってもVPD発症は決して少なくなく、軽視できない点である。加えて、COVID-19については、致死率の観点からとくに成人診療科において重要な課題であることが示された。一方で、ワクチン接種率はインフルエンザや肺炎球菌と比較して低く、対象の半数以上に接種しているとの回答は50%未満にとどまっており、この点も本調査より明らかとなった。 ワクチン接種率向上のための課題として、保険収載、自治体等による費用助成、長期フォローアップ(long-term follow-up:LTFU)体制の強化、最新の推奨を反映した資材の整備などが挙げられた。総じて、同種移植後の再接種の重要性は定着している一方で、自家移植後の再接種に関する認識不足や成人領域での接種されるワクチンの種類が限定されていること、さらに自己負担による費用面の問題が大きな障壁となっている。今後は制度的整備と情報の標準化を進め、移植患者をVPDから守る体制の構築が不可欠であると黒澤氏は結論付けた。同種移植患者に対する優先度の高い予防接種に関する研究について 同種造血幹細胞移植後の長期生存例が増加する一方、晩期合併症としての感染症対策は依然として重要な課題となっている。とくに移植後晩期には液性免疫の回復が遅延し、VPDに対する防御能が十分に再構築されない症例が少なくない。このような背景において、冲中 敬二氏(国立がん研究センター東病院 感染症科/造血幹細胞移植科)は、同種造血幹細胞移植患者に対する優先度の高いワクチン接種について、晩期感染症の疾病負荷および再接種戦略の最新エビデンスを整理し講演した。 移植後晩期に問題となるのは、肺炎球菌などの被包化細菌、帯状疱疹・単純ヘルペスを含むヘルペスウイルス群、さらに呼吸器ウイルスなどである。なかでも、移植片対宿主病(GVHD)予防として普及した移植後シクロホスファミド(PTCy)を用いたレジメンでは、CD4陽性T細胞の回復遅延に加え、サイトメガロウイルス(CMV)感染や非CMVヘルペスウイルス感染(HHV-6血症)、呼吸器ウイルス感染などの増加が米国のレジストリ解析によって示唆されている。このように、移植後晩期には液性免疫不全のみならず細胞性免疫の再構築不全も問題となることは少なくない。 海外でのアンケート調査によると、成人患者の40%以上が移植後晩期にVPD(インフルエンザ様疾患、帯状疱疹、子宮頸部細胞診異常など)を経験していることが示されている。小児データベース研究では、VPD発症頻度は7%程度と低いものの、帯状疱疹や侵襲性肺炎球菌感染症、インフルエンザなどの発症中央値は移植後190~300日で、移植から6ヵ月以降に多いことがわかる。すなわち、移植後晩期も感染症のリスクは持続し、長期にわたる免疫学的脆弱性を前提とした管理が必要となる。 同種移植患者の市中肺炎罹患率は一般人口より著明に高く、原因菌として肺炎球菌が約9%と最も頻度が高く、重症化リスクも高いことが海外から報告されている。呼吸器ウイルス感染については、RSウイルス(RSV)、インフルエンザ、COVID-19の米国での罹患後30日以内の寄与死亡率が4~6%とされ、日本からはインフルエンザ罹患後90日以内の寄与死亡率が2.2%とのデータが示されている。日本では約4分の3の症例で発症48時間以内に抗ウイルス薬が処方されているのに対し、米国では同期間内に処方を受ける症例は約4分の1にとどまっており、この差が寄与死亡率の違いの一因と考えられる。呼吸器ウイルス感染症を疑う症状が出現した際には、速やかな受診を促す患者教育の重要性が示唆される。 院内感染で呼吸器ウイルス感染症に罹患した場合はさらに予後が不良であり、院内での伝播は防がなければいけない。このためには外来での呼吸器感染症状スクリーニング、必要に応じた迅速PCR診断、感染判明時の接触・飛沫予防策の徹底が推奨される。また、患者本人のみならず同居家族や医療従事者へのワクチン接種も重要な間接防御策となる。 免疫記憶の消失も見逃せない。国内データでは、麻疹・ムンプス・風疹(MMR)の抗体保有率が移植5年で50%未満に低下しえること、B型肝炎表面(HBs)抗体の陰性化が再活性化リスクに関与することが示されている。つまり、小児期に定期接種歴があっても、移植後の防御免疫は保証されないことになる。このため、移植後のワクチン再接種が重要となり、厚労科研研究班は優先度の高いワクチン再接種に関する研究を通じ、水痘、MMR、ジフテリア・百日咳・破傷風(DPT)、肺炎球菌、B型肝炎ウイルス(HBV)などのワクチン再接種戦略をレビューしている。加えて、帯状疱疹ワクチン、RSVワクチン、COVID-19ワクチンなど、新規・更新ワクチンの有効性データも蓄積されつつある。 冲中氏は、同種移植患者では、晩期においても液性免疫不全が残存し、VPDは現実的かつ重篤な脅威となるとし、「免疫再構築の特性、GVHD治療状況、地域流行状況を踏まえ、計画的かつ優先順位を明確にしたワクチン再接種を実装することが、長期予後改善には重要となる」と強調した。同種造血細胞移植患者におけるワクチン接種の実際 移植後の患者では、続発性免疫不全や既存免疫記憶の低下により感染症リスクが高まるため、移植後の再予防接種が重要であることは広く認識されている。しかし、実際にワクチン再接種を確実に実施するためには、院内外での運用体制の整備が不可欠となる。そこで、森 有紀氏(虎の門病院 輸血・細胞治療部/造血細胞移植後長期フォローアップセンター)は、実臨床でワクチン接種を円滑に進める具体例として、虎の門病院における体制整備や役割分担の取り組みを紹介し、移植後ワクチン接種を実装するためのポイントについて解説した。 移植後ワクチン接種の運用体制を整備するには、まず、どこで接種を行うのか(移植施設か他の医療機関か)を明確にする必要がある。そのうえで、どの診療科が中心となって担うのか(血液内科、感染症科、小児科、一般内科など)を決め、さらに看護師や薬剤師を含めた多職種連携を具体的に設計していくことが求められる。 虎の門病院では、LTFU外来で血液内科医が適応と開始時期を判断し、その後臨床感染症科医へ紹介して、詳細説明、スケジュール作成、実際の接種を行う分業体制を構築することで専門性を担保しつつ、マンパワーの軽減にもつながっている。 一方、他の医療機関に接種を依頼する場合、移植施設側が適応判断を行い、紹介状や説明文書、患者手帳などを活用して情報共有を徹底することが重要である。とくにクリニック等に紹介する際には、具体的な日程を記載した接種スケジュールの提案や、無断キャンセル防止に関する事前説明(ワクチンを個別に取り寄せる場合があるため)なども大切なポイントとなる。 接種手順は、適応・開始時期の判断、インフォームド・コンセント、接種スケジュール作成、接種、接種後の注意点説明の流れとなる。ガイドラインでは、不活化ワクチンは、GVHDの増悪がなければ移植後3ヵ月(種別により6ヵ月ないし12ヵ月)を経過した後接種可能となっているが、開始時期が遅いほど免疫応答が得られやすいとされる。生ワクチンは、免疫抑制薬が終了し慢性GVHDを認めなければ移植後24ヵ月以降で接種可能とされるが、十分な免疫回復や輸血および所定の薬剤との間隔などの条件を満たすことが前提となる。いずれにしても、個々の患者の状況に応じた判断が必要となる。 さらに、帯状疱疹ワクチン接種後の抗体価上昇や安全性に関する施設データの提示、情報共有テンプレートの整備などの実践的工夫も紹介された。一方で、多くが任意接種・自費負担であること、自治体助成が限定的であること、接種歴証明の困難さや年齢制限といった制度的課題も残されている。 最後に森氏は「移植後ワクチン接種は、単なる推奨事項ではなく、長期予後を左右する重要な支持療法である。各施設の実情に応じた体制構築と地域連携を通じて、標準化と実装を進めていくことが、今後の移植医療の質向上に直結する」と締めくくった。

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医師の働き方改革後、労働時間と収入はどう変わった?/医師1,000人アンケート

 ケアネットは2026年3月、会員医師1,000人を対象に「年収に関するアンケート」を実施した。最後の質問では、2024年4月からスタートした「医師の働き方改革」以降で、年収と労働時間がどう変化したかについて尋ねた。年収は「変化なし」7割、アップ1割、ダウン2割 2024年度以降の年収の変化では、「変わらない」が73%、「増えた」が9%、「減った」が18%だった。年代別では、「年収が増えた」の割合は35歳以下では14%、36~45歳では16%だった一方で、56~65歳は5%、66歳以上は1%と、年代が上がるにつれて減る傾向だった。若手は職位変化や専門医取得などの昇給機会が多いのに対し、ベテラン医師はそうした機会が少なく、体力面からアルバイト・副業なども減らす傾向にあることが背景にあるようだ。同様に「年収が減った」との回答割合も高齢層になるほど高かった。 診療科別(回答数30人以上の科)では、小児科は「収入が減った」の割合が33%と高く、消化器内科も25%と4分の1が減収と回答した。一方、「収入が増えた」の割合は呼吸器内科が21%と最も高く、続いて糖尿病・代謝・内分泌科の19%であった。労働時間、「減った」のは大学病院勤務が最多 労働時間の変化では、「変わらない」75%、「増えた」11%、「減った」14%と、年収とほぼ同様の割合という結果だった。年代別では、35歳以下では「減った」が24%、「増えた」が7%と労働時間の減少傾向が見られたが、36~45歳、46~55歳では「増えた」と「減った」が共に1割強と拮抗しており、若手の労働時間減少分の一部を中堅層が肩代わりしている状況が推察された。 男女別では、「労働時間が減った」割合は男性13%に対し女性21%と、女性のほうが減った割合が高かった。勤務先別では、大学病院勤務者が「減った」の割合が16%と最も高く、医師の働き方改革の実行の度合いが伺える結果となった。「年収アップで労働時間減」の理想型はわずか1% 年収と労働時間の変化の組み合わせでは、「いずれも変化なし」が63%と最も多く、医師の働き方改革が現場に与えた影響は、さほど大きくはない状況がみえた。「労働時間は減ったが、年収も減った」パターンが8%、「労働時間は増えたが、収入も増えた」パターンが4%、「労働時間は増えたのに、年収は減った」という厳しいパターンも2%存在した。理想的な「年収は増え、労働時間は減った」という医師はわずか1%であった。 収入や労働時間に関する自由回答では、収入増加のための行動として投資(有価証券、不動産など)、転職、アルバイト増加(当直、産業医など)が挙げられた。また、節税対策やふるさと納税の活用もみられた。「年収がアップしても税金が増えるだけなので、モチベーションが湧きにくい」という不満の声も複数寄せられた。総じて30~40代の医師は転職や自己研鑽、専門医取得などで収入アップを図るという声が目立ったが、50代以降では「現状で満足」「体力的に厳しいのでバイトを減らす」といった声もあった。「大学病院の給料をもっと上げるべき」「定年後の再任用で給与が激減するのを緩和してほしい」といった提言・要望も目立った。第1回のアンケート結果で紹介したように、この10年間、医師の給与はほとんど上がっておらず、物価高が続く中、さまざまな道を模索する医師の姿がうかがえる結果となった。アンケート概要対象:ケアネット会員医師1,000人(男性883人、女性117人)実施日:2026年3月2〜9日手法:インターネット調査 その他、詳細な結果については、以下のページに掲載している。医師の年収に関するアンケート2026【第4回】働き方改革による変化

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第292回 麻しん299人に急増、大型連休前に「症状ある場合は外出控えて」/厚労省

<先週の動き> 1.麻しん299人に急増、大型連休前に「症状ある場合は外出控えて」/厚労省 2.2040年見据え、急性期集約と高齢者救急対応へ 地域医療構想を転換/厚労省 3.医学部定員削減へ、医師過剰時代に向け政策転換を/財務省 4.献血者数は横ばいも若年層が4割減、血液製剤の供給に懸念/厚労省 5.人材紹介料が医療経営を圧迫、10年で2.4倍に 早期離職トラブルも/日医 6.看護師不足が地域医療を直撃、養成校の募集停止相次ぐ/日看協 1.麻しん299人に急増、大型連休前に「症状ある場合は外出控えて」/厚労省麻しん(はしか)の感染拡大が続いている。国立健康危機管理研究機構によると、2026年の累計患者数は4月12日までに299人となり、2025年1年間の265人をすでに上回った。過去10年では2019年の744人に次ぐペースで、1週間の報告数も今年初めて50人を超えた。前回報じた236人からさらに増加しており、厚生労働省は警戒を強めている。上野 賢一郎厚労相は24日の記者会見で、「新型コロナウイルス感染症の流行以降、最多のペースで感染が拡大している」と述べ、ワクチン接種歴の確認と定期接種の徹底を呼びかけた。発熱、せき、鼻水、発疹など麻しんを疑う症状がある場合は外出を控え、医療機関を受診する際も公共交通機関の利用を可能な限り避けるよう求めた。感染拡大の背景には、海外からのウイルス流入と国内の免疫低下がある。わが国は2015年に世界保健機関(WHO)から、国内に土着する麻しんウイルスが確認されない「排除状態」と認定されたが、海外からの帰国者や訪日客を起点に感染が広がっている。患者は東京都が100人超と最も多く、神奈川県、千葉県、埼玉県を含む首都圏で過半数を占める。また、愛知県や鹿児島県では、高校などで集団感染も確認されている。麻しんは空気感染し、同じ部屋にいるだけで感染することがある。感染力はインフルエンザの約10倍とされ、発症すると発熱や上気道症状に続き、発疹が出る。脳炎などで重症化し、死亡することもある。対策の柱はMRワクチンの2回接種である。1回接種で93~95%、2回接種で97~99%の予防効果があるとされるが、国内の2回接種率はコロナ禍後に低下し、2024年度は91%まで下がった。流行抑制には95%以上の接種率が必要とされ、専門家は集団免疫の低下に警鐘を鳴らす。とくに20代後半から50代では、未罹患や1回接種のみで免疫が不十分な人も多い。大型連休で海外渡航や人流が増える時期を迎え、国は自治体向け緊急説明会を開き、接種歴確認と早期相談を呼びかけている。 参考 1)麻しん(はしか)の発生状況について(国立健康危機管理研究機構) 2)麻しん累積報告数の推移 2019~2026年(第1~15週)(同) 3)上野厚労相、はしか増に警戒「症状ある場合は外出控えて」 累計で昨年1年間を上回る(産経新聞) 4)はしか感染拡大 厚労相「ワクチン接種を」呼びかけ(日経新聞) 5)ウイルス定着していないはずなのに はしか患者が増えているのは(毎日新聞) 6)はしか患者が増加 ~何が真の脅威なのか~(時事通信) 2.2040年見据え、急性期集約と高齢者救急対応へ 地域医療構想を転換/厚労省厚生労働省は、2040年を見据えた「新たな地域医療構想」の具体化を進めている。従来の地域医療構想は、2025年の医療需要を前提に病床機能の分化・連携を促す枠組みだったが、今後は人口減少、85歳以上の高齢者の増加、医療・介護の複合ニーズ、医療従事者不足を踏まえ、入院だけでなく外来、在宅、介護連携を含む医療提供体制全体の再編へと対象を広げる。国の方針では、医療機関の連携・再編・集約化を進め、急性期医療を担う「急性期拠点機能」、高齢者救急や2次救急を受ける「高齢者救急・地域急性期機能」、在宅医療を支える「在宅医療等連携機能」、リハビリや慢性期などを担う「専門等機能」など、地域ごとに医療機関の役割を明確化する。急性期拠点は、人口20~30万人に1ヵ所を基本に確保する考え方が示されており、手術や重症救急は集約し、それ以外の高齢者救急は地域急性期病院が担う方向となる。その一方で、政府内では病床削減も重要な論点となっている。一般病床・療養病床で約5.6万床、精神病床で約5.3万床の削減を想定し、厚労省は病床削減を反映したKPIを検討する。年末に改訂される経済・財政新生計画の「改革実行プログラム」やEBPMアクションプランに盛り込む方針。勤務医にとって重要なことは、地域医療構想が単なる病床数調整ではなく、病院の機能や専門性、救急対応のほか、紹介・逆紹介、介護施設との連携を変える政策である点である。 今後は各医療機関が、2028年度までに2040年に向けて担う機能を決定し、2035年度をめどに一定の成果を出すことが求められる。地域の中小病院は、高齢者救急や在宅後方支援へ、大規模急性期病院は高度急性期・専門医療に特化と役割分担が進む可能性が高い。 参考 1)病床削減踏まえ地域医療構想のKPI設定へ、厚労省 年末改訂の「改革実行プログラム」に(CB news) 2)勤務医にとっての「新たな地域医療構想」~病床数等の議論から地域の医療提供体制全体の課題解決の議論へ~(日医) 3)新たな地域医療構想に関するとりまとめ(厚労省) 3.医学部定員削減へ、医師過剰時代に向け政策転換を/財務省財務省は、4月23日の財政制度等審議会で人口減少を踏まえた大学・医師養成の見直しを提起した。18歳人口が減少する一方で大学数は増え続け、半数超の私立大学が定員割れとなっているとして、2024年に624校ある私立大学を2040年までに217~372校へ縮減する目標を示した(少なくとも約4割の削減に当たる)。あわせて、医学部定員についても将来的な医師過剰を理由に「大胆な削減に踏み切るべきだ」と求めた。財務省は、医師需給は2029~32年ごろに均衡し、その後は過剰になることが「確定的」と分析している。医学部定員が現在の9,000人台で推移すれば、人口10万人当たり医師数は2022年の274人から2040年には340人まで増える見通しで、「医療費適正化や人材の最適配分の観点からも定員削減が必要だ」としている。その一方で、医療現場では医師不足の実感が根強い。日本経済新聞の調査では、地域で不足を感じる診療科として産婦人科と小児科が最多で、外科、総合診療科、救急科も多かった。とくに外科は若手医師の敬遠が目立ち、消化器外科医は今後20年で半減するとの推計もある。また、医師の「病院離れ」も進む。2024年末の病院勤務医は約21万9,000人で、2年前より約700人減少した。病院勤務医の減少は1979年以降で初めて。その一方で、診療所医師は約11万1,000人と約4,300人増加した。自由開業制のもと、都市部や負担の少ない外来中心の診療所に医師が流れ、地域・診療科・勤務形態の偏在が強まっている。厚生労働省は、これらの偏在対策として医学部臨時定員の削減を段階的に進める方針。2027年度は医師多数県で原則2割削減を継続し、2028年度からは医師多数県以外にも削減対象を広げる方向で検討する。その一方で、地域枠医師については、県内9年以上勤務などの義務を柔軟化し、離脱を防ぎながら地域定着を促す考えだ。今後の政策は、医師総数を抑えつつ、地域枠、専門研修、勤務環境改善、病院集約化を組み合わせ、限られた医師を効率的に配置する方向へ進む。医師が「余る」とされる一方で、地方病院、外科、救急、産婦人科、小児科などでは不足が続く可能性が高く、単なる定員削減ではなく、偏在是正とキャリア支援を一体で進められるかが焦点となる。 参考 1)医学部の大胆な定員削減を 人口減で医師余り「確定的」に 財政審(時事通信) 2)財政審「私大は40年までに4割減を」 医学部定員も削減要求(毎日新聞) 3)2028年度から医師多数県「以外」でも医学部入学定員を減員へ、地域枠医師の義務履行の柔軟化を検討-医師偏在対策検討会(Gem Med) 4)人口減少社会の中での総合的な国力の強化(財務省) 5)全国の診療科偏在、日経調査 小児・産婦人科が「不足」最多(日経新聞) 6)医師の病院離れ深刻に 診療所に転出、地域に偏り(同) 4.献血者数は横ばいも若年層が4割減、血液製剤の供給に懸念/厚労省若年層の献血離れが進み、輸血用血液だけでなく、血液由来医薬品の安定供給にも懸念が広がっている。厚生労働省によると、2024年度の献血者数はのべ約499万人で、全体では近年500万人前後を維持している。しかし、30代以下の献血者は2009年度の283万人から158万人へと15年間で4割以上減少した。その一方で、50・60代の献血者は2倍近くに増え、現在の血液供給は中高年のリピーターに支えられている。背景には、少子化に加え、コロナ禍で学校や企業での集団献血が減り、若者が献血に触れる機会が少なくなったことがある。献血可能年齢である16~69歳の人口は、今後20年間で約1,500万人減少すると推計されており、若年層の協力拡大は急務となっている。とくに深刻なのが、献血血液から作られる血漿分画製剤の供給問題である。献血血液のうち約4割は輸血用血液製剤に、6割弱は血漿分画製剤に使われる。このうち免疫グロブリン製剤は、川崎病、神経疾患、がん治療後の免疫低下、重症肺炎や敗血症など幅広い疾患に用いられ、需要は15年前の約2倍に増加した。川崎病では冠動脈後遺症を防ぐため早期投与が重要で、代替困難な薬剤でもある。その一方で、国内製造は限界に近付いている。血漿分画製剤を製造する国内メーカーは3社に限られ、設備の老朽化や厳しい品質管理、長い製造期間、薬価引き下げによる採算性低下が増産の壁となっている。免疫グロブリン製剤の国内自給率は、15年前の95%から2026年度には54%程度まで低下する見込みで、輸入依存度が高まっている。厚労省は、メーカーの設備投資補助や薬価面での支援を進めるとともに、小中学生への啓発パンフレット配布、学校献血、学生ボランティアによる呼びかけなど、若い世代への働きかけを強める。血液は人工的に作れず、保存期間も限られるために、若者の献血参加は、将来の輸血医療と血液由来医薬品の国内安定供給を支える重要な課題となっている。 参考 1)日本の未来を変える、若者の献血:今、若者の献血が必要な理由(厚労省) 2)若者の献血が変える日本のミライ:高校生が広げる献血の輪(同) 3)若者の献血離れで医薬品安定供給に懸念も 国も対策(NHK) 4)「このままでは輸血できなくなる未来に」献血離れが深刻 学校に献血バスの取り組みも(TBS) 5.人材紹介料が医療経営を圧迫、10年で2.4倍に 早期離職トラブルも/日医医療機関や介護施設が民間の有料職業紹介事業者に支払う紹介手数料が急増している。厚生労働省の2024年度職業紹介事業報告書によると、医師の紹介手数料は約283億円、看護師・准看護師は約598億円、施設・訪問介護職は約257億円で、3職種合計は約1,139億円に上った。10年前の2.4倍で、2年連続で1,000億円を超えた。背景には、医療・介護分野の慢性的な人手不足がある。2026年2月の有効求人倍率は、医師・薬剤師などが2.04倍、看護師などが2.21倍、介護職が3.78倍と、全職種平均を大きく上回る。医療機関や介護施設は人員配置基準を満たさなければ診療報酬・介護報酬を得られないため、退職者が出ると迅速な補充が迫られる。民間紹介サービスは、短期間で採用につながりやすく、求職者側もスマートフォンで条件検索しやすいため利用が広がっている。しかし、紹介手数料の原資は保険料や税金を含む公的財源であり、経営が厳しい医療機関にとっては負担が重い。さらに、採用後の早期離職や、紹介内容と実際の能力との不一致などのトラブルも多い。調査では、医療・介護・保育分野で有料紹介を使った事業者の56.8%が「紹介人材がすぐに辞めた」と回答している。日本医師会と四病院団体協議会は、紹介手数料の上限制、返戻金制度の義務化、定着期間に応じた手数料体系などを厚労省に要望した。日医は、高額な紹介料が中小病院の人材確保を一層困難にし、地域医療提供体制を揺るがす恐れがあると訴えている。その一方で、厚労省は市場への過度な介入には慎重姿勢を示している。公的なマッチング機能の強化も進む。日本医師会はドクターサポートセンターとドクターバンクをリニューアルし、都道府県医師会や行政のドクターバンク、ハローワークとの連携を拡大している。今後は、民間紹介に過度に依存しない採用ルートの整備と、求職者・医療機関双方の意識改革が課題となる。 参考 1)人材紹介料に消える医療費 10年で2.4倍1,000億円超、上限制要望の声(日経新聞) 2)日本医師会ドクターサポートセンターのリニューアル内容を説明(日医) 3)人材紹介料に苦しむ医療機関 経験した医師「ドクターバンクの充実を」(日経メディカル) 4)有料職業紹介事業の適正化とハローワークの機能強化に関する要望書(日本医師会・四病院団体協議会) 6.看護師不足が地域医療を直撃、養成校の募集停止相次ぐ/日看協看護師不足が地域医療の維持を揺るがしている。背景には、看護師を目指す若者の減少と、現場で働き続けることの難しさがある。全国の看護学校では定員割れや募集停止が相次ぎ、埼玉県秩父市の秩父看護専門学校も定員40人に対し、今年度の新入生は9人にとどまり、3年後に閉校する予定となった。関東甲信越では21校・22課程が今後の募集停止を決めている。養成校の縮小は地域医療に直結する。秩父市の中核病院では、この15年間に採用できた新卒看護師は地元看護学校の卒業生に限られ、今年度の新卒採用は1人。その一方で、昨年度は5人が退職した。千葉県銚子市の総合病院では、看護師不足により120床のうち24床を休止。千葉県内では少なくとも7病院で計424床が稼働できなくなっている。現場では、看護師1人が受け持つ患者数が増え、患者と向き合う時間も削られている。検温や血圧測定、清拭などのケアが十分に行えず、カルテ入力や薬剤確認などの業務負担も重い。日本看護協会の調査では、看護職として働き続けたいと答えた人は62.9%にとどまり、前回調査から低下した。新卒看護職員の離職率も8.2%で、休みの取りにくさや夜勤・残業の負担が離職要因となっている。その一方で、看護師確保に向けた取り組みも始まっている。ペットと暮らせる寮や休暇制度を整備して離職防止を図る病院、社会人学生を積極的に受け入れる看護専門学校もある。 准看護師制度については、地域医療を支える役割がある一方で、学生数の減少や看護教育の大学化を背景に、制度のあり方や看護師への一本化を巡る議論も続いている。看護師の就業者数は増えているが、高齢化による需要増には追い付いていない。有効求人倍率は高く、医療機関同士が人材を奪い合う状況にある一方で、賃金は公定価格である診療報酬・介護報酬に左右され、物価高や他産業の賃上げを反映しにくい。看護師不足は単なる人手不足ではなく、病床休止、患者ケアの質低下、地域医療の縮小につながる問題であり、養成制度、処遇改善、勤務環境改革を一体で進める必要がある。 参考 1)“憧れの職業”に何が起きたか 「看護学校」定員割れの衝撃 「不要論」と「新たなニーズ」の間で揺れる准看護師という存在(東洋経済オンライン) 2)相次ぐ募集停止 看護師不足の行く末は…(NHK) 3)看護師になっても...「働き続けたい」は6割、新卒で1割が離職 背景に過酷な労働実態(産経新聞)

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診断エラーを防ぐ-小児科の落とし穴

迷いのない診断、日常診療に潜む誤診の回避体験を読んで積み上げる臨床は知識と経験に基づく連続したタスクであり、状況によって変化する。そのため正確な診断には常に誤診のリスクが付きまとう。本書は国立成育医療研究センターの医師60人が総力を挙げて執筆。診断エラーを回避するため、コミュニケーション技術に基づく問診、身体診察、検査、家族説明、鑑別疾患、診断のステップを通して、落とし穴の回避術をシステマティックに展開。収載された、教科書では得られないニアミス症例、ピットフォール症例が心に刻み込まれる。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する診断エラーを防ぐ-小児科の落とし穴定価4,400円(税込)判型A5判(並製)頁数296頁発行2026年3月編集窪田 満(国立成育医療研究センター)/永井 章(国立成育医療研究センター)ご購入はこちらご購入はこちら

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CD19-CAR-T細胞療法/日本造血・免疫細胞療法学会

 CD19キメラ抗原受容体T(CD19-CAR-T)細胞療法は、再発・難治性B細胞性悪性腫瘍に対する革新的な細胞免疫療法であり、急性リンパ芽球性白血病(ALL)や大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)を中心に臨床実装が進んでいる。 2026年2月27日~3月1日に開催された第48回日本造血・免疫細胞療法学会総会では、「CD19-CAR-T細胞療法」をテーマとしたシンポジウムが開催され、ALLやLBCLに対する治療の進化と課題、さらに治療アクセスの課題などを含めた包括的な議論が展開された。CD19-CAR-T細胞療法はすでに重要な治療選択肢として位置付けられている中で、その治療最適化に伴い、治療戦略の再設計や医療提供体制の整備などが同時に求められる段階に入っていることが示された。LBCLに対するCD19-CAR-T細胞療法の最前線 冒頭、米国のCaron Jacobson氏(米国・Dana-Farber Cancer Institute)は、LBCLにおけるCD19-CAR-T細胞療法の現状と将来展望について、主要な臨床試験データを基に包括的に概説した。 まず、3つの主要臨床試験により、LBCLに対するCD19-CAR-T細胞療法(Axi-cel、Tisa-cel、Liso-cel)の長期寛解の可能性が示され、再発・難治性患者の約40%で長期寛解が達成されていることが確認された。さらに、長期寛解を維持している患者の多くが、CAR-T細胞投与後に微小残存病変(MRD)陰性を達成していることも示されている。 また、CD19-CAR-T細胞療法は治療戦略のタイミングにも大きなパラダイムシフトをもたらしている。ZUMA-7試験(Axi-cel)やTRANSFORM試験(Liso-cel)などの第III相試験では、ハイリスク患者に対して二次治療の段階でCAR-T細胞療法を早期導入することにより、従来の化学療法および自家幹細胞移植と比較して、無イベント生存率(EFS)が有意に改善することが示された。一方で、三次治療以降にCAR-T細胞療法を施行した患者では治療成績が低下する傾向がみられ、投与時期の遅れが治癒機会の減少につながる可能性が示唆された。さらに、リアルワールドデータ(CIBMTR解析)もこれらの知見を支持しており、併存疾患や攻撃的な疾患生物学的背景により臨床試験の対象外であった患者においても、有効性および安全性がおおむね再現されていることが示された。 続いて、次世代CAR-T細胞製品の開発動向が紹介された。CD19/CD20二重標的CAR-Tや、迅速製造プロセスを導入した製品(例:KITE-753)などが開発されており、T細胞の幹性(stemness)を維持・向上させながら毒性を抑制し、高い完全寛解率(CR)を確保することを目指している。また、CD19陰性再発への対応策として、CD22やB細胞活性化因子受容体(BAFF-R)を標的とするCAR-T細胞療法の可能性についても解説された。 さらに、患者側、T細胞側、腫瘍側の各因子は相互に影響し合い、CAR-T細胞療法の治療効果を規定していることが強調された。したがって、腫瘍微小環境、既存の免疫状態、ならびに最終的に投与されるT細胞製品の特性が治療アウトカムに及ぼす影響を総合的に理解することが、より精緻で多面的な治療戦略を構築するうえで不可欠となる。 最後にJacobson氏は、「現時点において、CD19-CAR-T細胞療法は高リスクLBCLに対する最も有力な治癒選択肢として確立されている。しかし、今後さらなる治療成績の向上を実現するためには、腫瘍微小環境の制御やT細胞機能の最適化に加え、患者個々の免疫学的背景を踏まえた個別化アプローチの導入が重要となる。これらを統合的に発展させることで、より安全かつ持続的な治療効果の達成が期待される」と締めくくった。ALLに対するCART療法の位置付け:小児・若年成人例を中心として 続いて、加藤 格氏(京都大学医学部附属病院 小児科)は、ALLにおけるCD19-CAR-T細胞療法の臨床的位置付けについて、小児および思春期・若年成人(AYA)世代を中心に概説した。 近年、ALLの治療成績は年代を追うごとに着実に向上している。治療プロトコールの改良や支持療法の進歩を背景に、生存率は全体として改善傾向にあり、とりわけ小児領域(0~14歳)では2000年ごろに5年全生存率が約90%に達するなど、きわめて良好な成績が得られている。一方で、初回治療後に再発を来した症例の予後は依然として不良であり、長年にわたり重要な臨床課題とされてきた。こうした状況の中、2014年以降(日本では2019年以降)にCD19-CAR-T細胞療法(Tisa-cel)が承認され、再発・難治例に対する治療戦略を大きく変える画期的治療法として位置付けられるようになった。 現在、日本で小児ALLに対するTisa-cel療法を実施可能な施設は35施設に及ぶ(造血幹細胞移植実施施設は71施設)。2019~21年にTisa-cel投与実績のあった11施設におけるリアルワールドデータ(42症例)の解析では、完全寛解率(CR/CRi)93%、MRD陰性化率97%と高率であり、1年全生存率(OS)は82%、1年EFSは56%と良好な成績が示された。これらは国際共同第III相試験(ELIANA試験)などと比較しても遜色のない結果であり、日本の実臨床においても高い有効性と再現性が確認された。 治療成績に影響を及ぼす因子についても検討が進んでいる。遺伝子異常は従来の化学療法では重要な予後因子であったが、CD19-CAR-T細胞療法の初期反応性には大きな影響を与えないとされる。ただし、KMT2A遺伝子再構成例では再発時に骨髄性白血病への形質転換を来しやすく、予後不良であることから慎重な経過観察が必要である。また、投与時の残存腫瘍量も重要であり、低腫瘍量であるほど望ましいが、造血細胞移植とは異なり、必ずしも投与前にMRD陰性化を達成する必要はない。骨髄中芽球比率が5%未満にコントロールされていれば、十分な治療効果が期待できるとされている。さらに、ブリナツモマブの先行使用については、理論上はCD19発現低下が懸念されるものの、現時点では治療成績に重大な悪影響を及ぼすとは示されていない。 CD19-CAR-T細胞療法後の造血幹細胞移植の適応については、「全例に実施するか」ではなく、「どの症例に実施すべきか」という個別化医療の観点から議論されている。再発リスクや持続的寛解の可否、CAR-T細胞の持続性などを踏まえたリスク層別化が重要である。とくに、B細胞無形成が6ヵ月未満で回復する症例や、投与後28日目の次世代シーケンシング(NGS)でMRD陽性が確認される症例では、再発リスクが高い可能性があり、追加移植を検討すべきとされる。 このように、CD19-CAR-T細胞療法はALL治療のパラダイムを大きく変革した。今後は、治療後に一律に移植を行うのではなく、B細胞回復動態や遺伝学的背景などを踏まえ、患者ごとに最適な後療法を選択する個別化治療の重要性がいっそう高まっている。CAR-T 治療アクセスを向上させる体制整備 最後に、加藤 光次氏(九州大学病院 血液・腫瘍・心血管内科)は、日本におけるCD19-CAR-T細胞療法のアクセス格差と、その解消に向けた体制整備に関する現状と課題について論じた。 CD19-CAR-T細胞療法は国内導入から7~8年が経過し、再発・難治性びまん性LBCLを中心に実臨床で定着している。累積症例数は3,000例以上に達し、全国レジストリを通じて長期フォローを含むリアルワールドデータが蓄積されつつある。細胞治療ワーキングの解析では、2019~21年と2022~23年を比較して治療成績は改善傾向を示した。支持療法の標準化、患者選択の適正化、治療プロセスの成熟がその背景にあると考えられる。一方で、患者からT細胞を採取するアフェレーシスから、製造されたCAR-T細胞を輸注するまでのVein-to-Vein(V2V)期間は中央値約60日と、大きな短縮には至っていない。海外では米国約50日、欧州約66日と報告され、約2週間の差が無増悪生存率に20%以上の影響を及ぼしうることが示唆されている。国内データでもV2V延長は予後不良と関連しており、時間的ボトルネックの解消は喫緊の課題である。V2Vは単なる製造期間ではなく、紹介タイミング、施設選択、情報共有など、医療システム全体の「アクセス設計」によって規定される指標となる。 こうした課題に対し、日本造血・免疫細胞療法学会主導の下、企業と連携して全国共通の紹介フォームが整備された。病歴、治療歴、病勢、検査値などを標準化フォーマットで共有することで、紹介の迅速化と情報の質向上を図るものである。これは同時にリアルワールドデータの精度向上にも寄与する。また、施設偏在の是正を目的としたマッチングアプリ構想も進行中である。紹介元が患者情報を入力すると、各施設の受け入れ状況を踏まえた候補が提示される仕組みで、地域研究を経て全国展開が検討されている。 約4%で発生し、現在治験薬として提供されている規格外製品(Out of Specification:OOS)への対応も重要な論点である。OOS投与例の解析では、Grade3以上のサイトカイン放出症候群(CRS)13%、Grade3以上の免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)4.3%と、安全性はおおむね許容範囲内であった。完全寛解率も約40%と一定の有効性が示されている。薬機法改正により、市販後の枠内での適切な提供の位置付けと長期データの構築が求められる。 長期安全性の観点では、CAR-T細胞療法後二次がんが焦点となる。海外では発症率約4%と報告され、T細胞リンパ腫の発症もまれながら注目を集めている。CAR-T関連T細胞リンパ腫疑い例ではCAR遺伝子の確認や挿入部位解析を行い、企業と連携した検査体制が整備されつつある。さらに、妊娠例に対する対応や、全身性エリテマトーデスなど自己免疫疾患への応用も進み、診療科横断的な連携体制の構築が新たな課題となっている。 加藤氏は次のように述べて講演をまとめた。「経済面では、日本の薬価は欧米より低水準に設定されており、企業の採算性低下によるドラッグロスが懸念される。持続可能なアクセス確保には、アカデミアによる質の高いリアルワールドデータの提示、企業の開発意欲の維持、国による適正な価格・償還制度設計が不可欠である。CD19-CAR-T細胞療法の均てん化とは、紹介標準化、V2V短縮、安全性監視、経済的持続性を包含する包括的なアクセス再設計にほかならない。全国的な連携強化が、次世代細胞療法時代の基盤整備につながることが期待される。」

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ワクチン接種率向上のための介入、有効な要素は?/BMJ

 ワクチン接種率向上のための介入について、全体的には機会の拡大、予約の支援、金銭的インセンティブ、費用負担支援および動機付け面接が有効な構成要素であり、人との対話や、医療従事者のみでなく医療従事者+地域住民による提供が効果的な実施要素であることを、英国・ブリストル大学のSarah R. Davies氏らが、システマティックレビューおよびコンポーネントネットワークメタ解析の結果で示した。ただし、有効な要素は、年齢層、医療サービスが不十分な集団およびCOVID-19パンデミック前後で異なっていた。著者は、「今回の知見は、対象を絞った介入の策定、最適化および実装に重要な示唆を与えるものであり、異なる集団や状況においてどの要素が有効であるかを明らかにしている。介入に関する経済データを考慮することで、資源に基づいた意思決定がさらに支持されるだろう」とまとめている。BMJ誌2026年4月15日号掲載の報告。無作為化比較試験237件について解析 研究グループは、ワクチン接種率向上のための介入における各要素の有効性を特定する目的で、システマティックレビューおよびコンポーネントネットワークメタ解析を行った。 解析対象は、英国の予防接種スケジュールに基づくすべてのワクチンの接種対象者またはその介護者を対象とする介入群と、適格な対照(非介入、通常ケア、アテンションプラセボ)群を比較した、参加者が100例以上のクラスター無作為化比較試験で、高所得国および高中所得国で実施され、2000年1月~2024年4月に発表された237件の研究(570の介入、参加者436万1,717例)であった。 介入は、ワクチン接種率向上を目的としたあらゆる介入とし、介入の主要な内容および実施形態は独自のコーディングフレームワークを用いて特定した。研究者(5人)がペアとなり、独立して各介入の構成要素や実施方法のすべてについてコーディングを行った。また、Cochrane Risk of Bias 2ツールを用いてバイアスリスクを評価した。 主要アウトカムはワクチン接種率で、要素レベルのベイズメタ回帰分析により、介入要素の相対効果をオッズ比の比(ROR)として推定し、95%信用区間(CrI)を算出した。小児は費用負担支援、青少年・若年成人は医療従事者+地域住民、成人は人との対話で介入効果が高い 解析対象研究237件のうち、バイアスリスクが「低」の研究は110件、「懸念あり(some concern)」は96件、「高」は31件であった。参加者の40%(174万4,686例)が男性であった。 小児集団においては、費用負担支援(ROR:3.01、95%CrI:1.49~6.06)および意思決定支援ツール(2.73、1.14~7.06)に有益な効果のエビデンスがあり、機会の拡大(1.37、0.98~1.95)および社会的要因(1.27、0.99~1.65)にはある程度のエビデンスがあることが示された。 青少年・若年成人集団においては、医療従事者のみと比較し医療従事者+地域住民による提供(ROR:6.42、95%CrI:1.94~25.62)、社会的要因(2.62、1.45~5.04)、非個人的と比較し個人的に働き掛ける形式の介入(2.13、1.09~4.40)に有益な効果のエビデンスが認められたが、意思決定支援ツール(0.43、0.18~0.98)および自動化された対話(0.47、0.21~1.02)には負の効果が示された。 成人集団においては、人との対話(ROR:1.86、95%CrI:1.42~2.45)、動機付け面接(1.79、1.21~2.64)、機会の拡大(1.63、1.35~2.00)、費用負担支援(1.47、1.03~2.16)、予約の支援(1.38、1.06~1.78)が有益な効果を示し、金銭的インセンティブ(1.15、0.99~1.35)およびワクチンの安全性・有効性に関する情報(1.15、0.99~1.32)はある程度のエビデンスを示したが、自動化された対話は対話なしと比較し負の効果をもたらすことが示された(0.72、0.57~0.92)。 サブグループ解析では、医療サービスが不十分な集団や、COVID-19パンデミックとの関連(2020年以前と2020年以降)で結果にばらつきがみられた。

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第310回 麻疹患者の発生情報、個人特定のリスクか

INDEX都内の集団発生はブレークスルー感染?情報開示による個人特定のリスク都内の集団発生はブレークスルー感染?以前も本連載(第301回)で触れた麻疹の流行が止まらない。国立健康危機管理研究機構が公表している感染症発生動向調査週報(IDWR)によると、2026年15週(4月6~12日)時点の全国での報告数(速報値)は299例。報告事例は25都道府県に及び、最多は東京都の108例。すでに昨年末の52週(12月22日~28日)までの265例をわずか3ヵ月強で超えてしまった。今年は麻疹の流行がかなり危惧される状況だ。東京都では新宿区の小学校で生徒・教職員18例の感染が確認され、都内では12年ぶりの学年閉鎖という異例の事態にまで発展している。感染者の年齢は10代と40代で、由々しきことは、現時点で判明している感染者のワクチン接種歴は1回以下が2例、2回が16例と、そのほとんどがブレークスルー感染という現実である1)。あくまで推測になるものの、感染事例のうちワクチン2回接種済みの16例はおそらくほぼ全員が10代の生徒だろう。小学校であることを考えれば、これら16例の年齢は10~12歳。麻疹ワクチンの定期接種スケジュールから考えれば、2回目接種からわずか5~6年でブレークスルー感染に遭遇した計算になる。現在の新宿区内の小学校は公立私立含めて30校あり、総生徒数は約1万1,000人。単純計算すれば1校1学年当たりの生徒数は約60人。麻疹ワクチンの2回接種でも抗体価が得られない事例が1~5%、同ワクチンの発症予防効果が97%、接種後も10〜20年単位で防御効果が大きくは崩れないという一般的な認識から考えると、新宿区での多数のブレークスルー感染は説明がつかない。小学校の同一教室で朝から夕方まで時間を共有している結果、相当なウイルス量による曝露が起こり、その結果、ブレークスルー感染が起こったと考えるしかなさそうだ。情報開示による個人特定のリスクさて、今回の流行で各種発表を参照していた中、私が気になった事例がある。その理由は後述するが、最近では麻疹感染例が確認されると、各自治体は感染例の行動履歴のうち不特定多数に接触した可能性がある部分を公表し、注意を促す。これ自体はむしろ公衆衛生の観点からは必要な対応だと考えている。私が気になったのは、ある自治体での麻疹感染者の行動履歴の公表事例である。そこには不特定多数への感染リスクがある、立ち寄り先と公共交通機関の利用日時が分刻みで公表されていた。どちらも同一日のことだが、同事例を見ると、感染者がある時間の範囲内でどのような行動をしていたかが、かなりの確度で推定できる。そして、たまたまGoogleマップを利用して同事例の履歴と照らし合わせてみた際にハッとした。少なくとも同事例では、当たっているかどうかは別にして感染者個人の居住地域を推定できてしまう。この自治体の人口は数十万人規模だが、行動履歴から推定できる地域の人口はその5分の1程度。それでも10万人以上だが、公表された行動履歴からは、さらに数万人規模まで絞り込める。しかも今やネット時代。さまざまな情報をつなぎ合わせることで、誤認も含め個人を特定できてしまう可能性がある。ちなみにこうした行動履歴の公表内容は、旧国立感染症研究所感染症疫学センターが2016年6月に公表した『麻疹発生時対応ガイドライン 第二版:暫定改訂版』2)を基に各自治体の裁量に任されている。同ガイドラインでは以下のような記載があるのみである。「情報発信に際しては、患者数が減少しており、個人を特定できる可能性が以前より増しているため発症者及びその周囲にいる感染を受けた者両者への人権に配慮する必要がある。ただし、感染拡大や対策を実施するうえで、麻疹患者の情報の共有が重要となることもある。公表する情報の質、範囲などについては関係機関と十分協議し、個人のプライバシーと感染拡大防止の公衆衛生学的意義を考慮したうえで決定することが望ましい」もちろんこの自治体の公表内容については、個人情報保護と感染拡大防止のせめぎあいのギリギリのラインで決定されたものだろうとは思っている。とくに麻疹の場合は基本再生産数が12~18と、きわめて感染力が強い。時間を分刻みで公表しているのも、パニックのような過剰な反応が起きないようにとの配慮があるのだろうとも受け止めている。しかし、ケースによっては公表された情報から“犯人探し“が行われてしまう可能性は否定できない。言葉として不適切なことを承知で言えば、今回のケースは麻疹という一般には聞き慣れた感染症だから、そこまでのことは起きていないだろうと推察している。ただ、これが多くの人にとって聞き慣れない新興感染症で、この事例のような公表をした場合は、犯人探しリスクはかなり高まる。その意味では、今回のケースは個人特定を防ぐために、行動履歴の時間の粒度をやや粗めにするという対応はできなくもない。国はそろそろ過去の事例なども参照しながら、情報公開に関してはもう少し詳しいガイドラインを作成してもよいのではと思うのだが…。1)都庁総合ホームページ:麻しん(はしか)患者の集団発生について2)国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト::麻疹発生時対応ガイドライン〔第二版:暫定改訂版〕

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肘内障【すぐに使える小児診療のヒント】第12回

肘内障「急に片腕を使わなくなった」という小児にどのように対応しますか? 肘内障は小児の外傷でも比較的よく遭遇するため、即座に治療可能な方法をマスターしましょう。症例4歳、男児。「突然右腕を動かさなくなった」とのことで救急外来を受診した。母親によると、自宅で手を引っ張って抱き起こした直後に突然泣き出し、その後から右腕を動かさなくなったという。診察時、児は左手で右手首を支えるようにしており、動かそうとすると嫌がって啼泣した。肘内障の病態肘内障は、橈骨頭が輪状靭帯からずれることで生じる状態で、肘が伸びたまま腕に牽引力やねじれの力が加わることで起こります。好発年齢は2~6歳で、7歳を超えると少なくなります。幼児では輪状靭帯や橈骨頭周囲の構造が未熟なため、発症しやすいと考えられています。そのため、日常診療では比較的よく遭遇する外傷の1つです。小児科外来だけでなく、救急外来や当番診療でも出会う機会があり、「腕を動かさない幼児」をみたときにまず思い浮かべたい疾患です。受傷機転は「手を引っ張った」だけではない典型的には、手を引いて歩いていた、腕を引っ張って抱き起こした、転びそうになってとっさに腕を引いた、などが契機となります。ただし、腕を下にして寝返りをした、などでも起こりえます。受傷機転がはっきりしないことも少なくありません。受傷後は突然痛がって腕を動かさなくなり、肘を軽く曲げ、前腕を回内した位置で保持することが多いです。診察では、患児の自然な姿勢をよく見るだけでも多くの情報が得られ、健側の手で患側の手首を支える姿勢は典型的です。保護者からは「肘が痛い」ではなく、「肩を痛がる」「手首を痛がる」「腕がだらんとしている」と表現されることもあります。痛みの場所をうまく言葉にできない年齢の子どもも多いため、実際には訴えそのものよりも、どのように腕を使っていないかを観察することが大切です。まず大切なのは骨折を見逃さないこと肘内障を疑っても、まず骨折を除外することが重要です。明らかな腫脹や変形、限局した圧痛がある場合や、転落・強打など典型的でない受傷機転であれば、安易に整復せず画像評価を考えます。一方、典型的な受傷機転があり、腫脹や変形がなく、全体として肘内障が強く疑われる場合には、X線を撮らずに整復を試みることも多くあります。ただし、整復しても改善しない場合には、「整復できなかった」のではなく、「そもそも肘内障ではない」という可能性を考えるべきでしょう。無理な整復を繰り返さず、整形外科への相談を検討します。何度も整復操作を行うと、患児の苦痛が強くなるだけでなく、診断を遅らせることにもつながります。骨折の可能性を少しでも感じたら、一度立ち止まる姿勢が大切です。整復と確認画像を拡大する整復法としては回内法と回外・屈曲法が知られており、一般には回内法が第1選択になりやすいです。過去のランダム化比較試験では、回内法のほうが初回での成功率が有意に高いとされています。実際の整復方法をYouTubeなどで紹介しているものが多くあります。施行する前に一度確認して、イメージしてから行うとよいでしょう。整復はエコーで確認しながら行うこともあります。特徴的なエコー所見としては、輪状靭帯と回外筋が腕橈関節内に引き込まれる「Jサイン」が挙げられます。エコー下であれば、Jサインの確認・消失をもって診断と治療後の確認が可能であり、また骨折を疑うような関節内の血腫の有無を確認できるというメリットもあります。とくに好発年齢から外れる年長児や非典型的な受傷機転のときなど、臨床所見のみでは悩ましい場合に非常に重宝します。整復時に「コクッ」とした感触があることもありますが、最終的には患児が自然に腕を使うようになるかで判断します。整復後の確認では、患側でバイバイをする、おもちゃに手を伸ばすといった自然な動きが参考になります。診察者が「動かしてください」と促すよりも、好きなジュースを渡して両手で持って飲めるかなど、子どもが思わず手を使いたくなる場面を作るほうが、評価しやすいこともあります。機嫌がまだ十分に戻っていない場合には、子どものそばで保護者に立ち上がってもらうと、抱っこを求めて両手を上げる様子を確認できたりすることもあります。一方で、整復直後は痛みの余韻や不機嫌さのため、すぐには動かさないことも少なくありません。そのため慌てて判定せず、数分から10分ほど待って再評価するとよいでしょう。少し余裕をもって観察することが、結果的に正確な評価につながります。帰宅前に伝えたいこと肘内障は再発することがあるため、「腕を強く引っ張らない」「片手で急に持ち上げない」といった注意点を伝えます。また、整復後もしばらく違和感を訴えることはありますが、半日〜1日経ってもまったく使わない、腫れが出てくる、強い痛みが続く、数日経っても改善しない場合には再受診が必要です。初診時には明らかでなかった骨折が判明することもあります。肘内障は、知っていれば診断しやすい外傷であり、その場で改善すると保護者の安心につながります。一方で、「ただの肘内障」と決めつけず、骨折の除外と帰宅後の説明まで丁寧に行うことが大切です。 1) Macias CG, et al. Pediatrics. 1998;102:e10. 2) Aksel G, et al. Am J Emerg Med. 2025;88:29-33. 3) Sohn Y, et al. Pediatr Emerg Care. 2014;30:919-921. 4) 田島康介 著. 救急整形外科レジデントマニュアル第2版. 医学書院;2018.

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インフリキシマブとエタネルセプト、重大な副作用が追加/厚労省

 2026年4月21日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、インフリキシマブ(商品名:レミケードほか)とエタネルセプト(同:エンブレルほか)の重大な副作用の項に「自己免疫性肝炎」が追加された。自己免疫性肝炎の発生状況 各製剤における自己免疫性肝炎関連症例を評価した結果、因果関係が否定できない症例が集積したことから、使用上の注意改訂が適切と判断された。[国内症例]インフリキシマブ:9例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例が2例あるが、1例は承認効能・効果外の症例)【死亡0例】エタネルセプト:4例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例2例)【死亡0例】[海外症例]インフリキシマブ:4例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例4例)【死亡0例】エタネルセプト:6例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例6例)【死亡0例】カルシウム注射薬の禁忌が削除 また、低カルシウム血症の治療などに用いるグルコン酸カルシウム水和物(同:カルチコール注射液8.5%5mLほか)と塩化カルシウム水和物(同:大塚塩カル注2%、塩化カルシウム注2%「NP」)においては、禁忌と併用禁忌が削除され、併用注意が新設された。<グルコン酸カルシウム水和物>禁忌の「強心配糖体の投与を受けている患者」→削除相互作用の併用禁忌の「強心配糖体」→削除相互作用の併用注意の「強心配糖体」→追記<大塚塩カル注2%、塩化カルシウム注2%「NP」>禁忌の「ジギタリス製剤(ジゴキシン等)を投与中の患者」→削除相互作用の併用禁忌の「ジギタリス製剤」→削除相互作用の併用注意の「強心配糖体」→追記 このほか、抗悪性腫瘍薬2剤に対しても、重大な副作用の項が新設され、アベルマブ(同:バベンチオ)には「重度の皮膚障害」が、レゴラフェニブ(同:スチバーガ)には「高アンモニア血症」が追記されている。

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6割超が年収2,000万円以上を適正と回答したのは◯◯科/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2026年3月に会員医師1,000人を対象として「年収に関するアンケート」を実施した。そのなかで、自身の年収額を妥当と感じるか尋ねたところ、60.2%(そう思う、ややそう思うの合計)が妥当と考えていた。また、自身の業務内容・仕事量に見合った適正年収を尋ねたところ、2,000万円以上と回答した割合は36.3%であった(実年収2,000万円以上は24.0%)。現在の年収、「妥当」と感じる医師は約6割 年収額の妥当性について、自身の年収額が妥当だと思うかという問いに対し「そう思う」が25.8%、「ややそう思う」が34.4%であり、合計すると60.2%となった。2016年もそれぞれ25.2%、36.4%で合計61.6%となり、大きな変化はみられなかった。年代が上がるほど年収の納得感が高い 年代別にみると、年代が上がるほど自身の年収を妥当と感じる割合が高くなる傾向がみられた。「そう思う」「ややそう思う」の割合は、35歳以下がそれぞれ20.5%、33.0%、合計53.5%であったのに対し、66歳以上はそれぞれ32.5%、40.5%、合計73.0%となった。大学病院勤務は年収の納得感が低い 勤務先別にみると、大学病院に勤務する医師は自身の年収を妥当と感じる割合が低い傾向がみられた。「そう思う」「ややそう思う」の割合は、一般診療所がそれぞれ33.9%、33.9%、合計67.8%と最も高かった。一方、大学病院はそれぞれ15.8%、28.3%、合計44.1%と低かった。診療科別の年収の納得感の傾向は? 「そう思う」「ややそう思う」と回答した医師の割合が70%以上、50%以下であった診療科は以下のとおりであった(30人以上の回答が得られた診療科を抽出)。<70%以上>・糖尿病・代謝・内分泌科(31人):74.2%(35.5%、38.7%)・呼吸器内科(34人):70.6%(32.4%、38.2%)<50%以下>・消化器外科(34人):29.4%(5.9%、23.5%)・小児科(52人):50.0%(19.2%、30.8%)適正年収2,000万円以上は36.3% 自身の業務内容・仕事量に見合った適正年収について尋ねた結果、「2,000万~2,500万円」が16.1%、「2,500万~3,000万円」が7.8%、「3,000万円以上」が12.4%で合計すると36.3%となった。2016年もそれぞれ17.1%、6.7%、10.9%で合計34.7%となり、大きな変化はみられなかった。実年収より高い額を適正年収として回答した割合は52.9%であり、実年収別にみると、実年収よりも適正年収を高く回答した割合は1,200万~1,400万円の集団(69.7%)が最も高かった。男性のほうが適正年収を高く回答 男女別にみると、男性のほうが自身の適正年収を高く回答する傾向がみられた。「2,000万~2,500万円」「2,500万~3,000万円」「3,000万円以上」の割合(括弧内は実年収の割合)は、男性がそれぞれ17.7%(14.9%)、8.4%(5.8%)、13.6%(5.3%)、合計41.7%(26.0%)であったのに対し、女性はそれぞれ4.3%(4.3%)、3.4%(4.3%)、3.4%(0%)、合計11.1%(8.6%)となった。消化器外科、脳神経外科は半数以上が適正年収2,000万円以上と回答 「2,000万~2,500万円」「2,500万~3,000万円」「3,000万円以上」と回答した医師の割合が50%以上、30%以下であった診療科は以下のとおりであった(30人以上の回答が得られた診療科を抽出)。<50%以上>・消化器外科(34人):64.7%(32.4%、20.6%、11.8%)・脳神経外科(37人):56.7%(21.6%、10.8%、24.3%)<30%以下>・内科(197人):29.4%(16.8%、2.0%、10.7%)・精神科(78人):29.5%(7.7%、6.4%、15.4%)アンケート概要対象:ケアネット会員医師1,000人(男性883人、女性117人)実施日:2026年3月2〜9日手法:インターネット調査 その他、詳細な年収分布については、以下のページで結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2026【第3回】年収の妥当性・適正年収

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第291回 診療報酬「ベースアップ評価料」の対象が拡大、5月中の再届出が必須/厚労省

<先週の動き> 1.診療報酬「ベースアップ評価料」の対象が拡大、5月中の再届出が必須/厚労省 2.麻しん236人、コロナ後最多ペース 10~20代中心に感染拡大/小児学会 3.中東情勢緊迫化で医療物資「目詰まり」 5月に手袋5,000万枚放出/内閣府 4.2040年の外科医不足に備え、がん治療の拠点病院を再編へ/厚労省 5.医師偏在対策の柱・地域枠が再設計へ 2028年度以降は定員減も/厚労省 6.医療機関倒産、20年で最多 人件費高騰が経営圧迫/東京商工リサーチ 1.診療報酬「ベースアップ評価料」の対象が拡大、5月中の再届出が必須/厚労省人件費や物価の上昇で経営環境が厳しさを増すなか、厚生労働省はクリニックや中小病院に対して支援策を拡充し、日本医師会はその活用を呼びかけている。国は2026年度の「働き方改革推進支援助成金」を拡充し、常勤10人未満の小規模事業所では賃上げ加算の上限を引き上げ、最大300万円を上乗せできるようにした。労務管理研修やソフト導入、勤務間インターバル導入、時間外労働削減などの取り組みに応じ、補助上限は最大520万円となる。加えて、月60時間以内の時間外労働の割増賃金率を5%以上引き上げた場合の加算も新設された。その一方で、診療報酬ではベースアップ評価料が見直され、対象職種は看護師や薬剤師に加え、40歳未満の医師や歯科医師、事務職員にも広がった。点数も大幅に引き上げられ、継続的な賃上げを行う医療機関はより高く評価される。しかし、診療所の届出率は病院よりも低く、無床診療所59.2%、有床診療所70.0%にとどまっている。6月の診療報酬改定に向けて、算定するためには医療機関は5月中に必ず届出を行う必要がある。また、2024年度にすでに届け出ている医療機関も再届出が必要となる。賃金改善計画書は不要となり、手続き負担は軽減された。さらに、評価料収入は全額を賃上げに充てること、8月の実績報告に備えて対象職員数や賃上げ実績を整理しておくことが重要となる。人材流出を防ぎ、他産業に見劣りしない処遇改善を進めるためにも、診療所は助成金と評価料を組み合わせて活用する姿勢が求められる。 参考 1)働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)(厚労省) 2)令和8年度診療報酬改定ベースアップ評価料による賃上げについて(日医) 3)日医がベースアップ評価料の積極的な算定を呼びかけ、届け出率は無床診療所で約6割(日経メディカル) 4)日医がベースアップ評価料の届け出を呼びかけ(MEDICAL TRIBUNE) 2.麻しん236人、コロナ後最多ペース 10~20代中心に感染拡大/小児学会麻しん(はしか)の感染拡大が続いている。2026年4月上旬までに報告された患者は236人に達し、新型コロナ禍後で最多だった2025年(265人)を上回るペースで推移している。感染者は10~20代が半数を占め、若年層を中心に流行の兆しが強まっている。麻しんは極めて感染力が強く、免疫を持たない場合ほぼ100%発症するほか、肺炎や脳炎など重篤な合併症を引き起こす可能性がある。わが国は2015年に世界保健機関(WHO)から「排除状態」と認定されたが、近年は海外からの持ち込みを起点とした感染が続いている。世界的にも患者数は増加しており、各国で流行が拡大している。国内ではコロナ禍の水際対策で患者数は一時減少したが、2023年以降は増加に転じた。地域別では東京都が最多で、鹿児島県、愛知県と続く。とくに都市部での感染が目立ち、成人を含む若年層への広がりが確認されている。背景にはワクチン接種率の低下がある。麻疹の排除維持には2回接種で95%以上の接種率が必要とされるが、現状はこれを下回っている。感染者の半数以上が未接種、1回接種、あるいは接種歴不明であり、十分な免疫を持たない層の存在が流行拡大の要因となっている。麻しんへの予防接種は1歳時と小学校入学前の2回接種で高い予防効果が得られる。日本小児科学会は、接種歴を確認し未接種や不明の場合は任意接種を検討するよう呼びかけるとともに、発熱や発疹などの症状がある場合は事前連絡のうえで医療機関を受診するよう求めている。流行抑制には、ワクチン接種の徹底と早期受診が不可欠だ。 参考 1)麻しん累積報告数の推移 2019~26年 (JIHS) 2)2026年における麻疹患者数増加に関する注意喚起 (小児科学会) 3)はしか感染、230人超 新型コロナ後で最多ペース-10~20代が中心(時事通信) 4)はしか感染者増加“子どもの定期接種確実に”日本ワクチン学会(NHK) 5)海外からの流入・予防接種率低下等で麻疹(はしか)流行の兆し、適切なワクチン接種(定期・任意)と医療機関受診を-小児科学会(Gem Med) 3.中東情勢緊迫化で医療物資「目詰まり」 5月に手袋5,000万枚放出/内閣府中東情勢の緊迫化による原油・ナフサ供給不安が、医療物資の流通に影響を及ぼしている。政府は4月16日に「中東情勢に関する関係閣僚会議」を開き、対策として感染症流行に備え備蓄している医療用手袋約5億枚のうち、5,000万枚を2026年5月から医療機関向けに放出する方針を決定した。放出対象は、採血や検査で用いる非滅菌手袋で、新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(G-MIS)を通じて医療機関が必要量を申請し供給される仕組みを整備する。厚生労働省によると、医療物資の供給不安に関する相談はメーカー・卸・医療機関を合わせ2,956件に上り、うち34件が供給に影響ありと判断された。消毒液や透析関連物資など一部は解決が進む一方で、透析用チューブや滅菌関連資材などでは中長期的な供給不安が残る。医療機関からの相談は急増しており、需給逼迫の兆しが強まっている。背景には、医療用手袋やガウン、チューブなど多くの医療消耗品が石油由来であり、原料のナフサを中東に依存している構造がある。現場では価格上昇や出荷制限の動きもみられ、手術や透析など生命維持医療への影響を懸念する声が上がる。実際に通販業者では購入制限が導入され、需給の不安定化が流通段階にも波及している。政府は約1.3万の医療機関から情報収集できるシステムを稼働させ、専門チームを増員して供給状況の把握と対策を強化している。また、アジア諸国との連携によるサプライチェーン強靭化にも着手し、エネルギー供給の安定化を通じた医療物資確保を図る方針。医療物資の安定供給は、エネルギー安全保障と一体の課題となっており、短期対応と中長期対策の両立が求められる。 参考 1)石油関連製品の供給不足に伴う厚生労働分野の影響・対応について(厚労省) 2)中東情勢に関する関係閣僚会議(首相官邸) 3)高市首相 5月から医療用手袋5,000万枚の備蓄放出を表明(NHK) 4)高市首相、医療用手袋5,000万枚放出表明 中東情勢で確保困難(毎日新聞) 4.2040年の外科医不足に備え、がん治療の拠点病院を再編へ/厚労省厚生労働省は、4月16日に「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」を開き、高度ながん治療を担う病院の集約化を進める方針を明確にした。従来は全国どこでも一定水準のがん医療を受けられる「均てん化」を重視してきたが、今後は人口減少や医師不足、医療の高度化を踏まえ、質の高い治療を維持するために「集約化」との両立へ軸足を移す。とくに消化器外科では担い手不足が深刻で、現状のままでは2040年にがん治療を担う外科医が約9,200人と足元から39%減り、需要の5,200人を下回る見通しとなっている。一般の医師数は増加している一方で、一般外科医・消化器外科医はこの10年で減少し、若手ほど減り幅が大きい。長時間労働や負担に見合わない処遇が背景にあり、外科医がいる病院の約半数で消化器外科医は1~2人にとどまる。こうした状況から、厚労省は食道がんや膵がんなど高難度手術を拠点病院や大学病院へ集約し、希少がんでは県域を超えた集約も視野に入れる。その一方で、胃がんや大腸がんの標準的手術、長期の薬物療法や検診などは地域の医療機関で担う考え。今後は、新たな地域医療構想と連動し、各医療機関の機能を2028年度までに整理し、第9次医療計画へ反映する。がん診療連携拠点病院の整備指針も見直され、指定期間は最長3年に短縮される見通しで、構想や医療計画との整合性を高める。もっとも、都道府県ごとの議論の進捗にはばらつきが大きく、実施時期未定の地域も多い。国によるデータ提供や技術支援を強化しつつ、患者の受療アクセス低下を防ぎながら、医療の質、病院経営、勤務環境改善を両立できる再編を進められるかが焦点となる。 参考 1)第20回がん診療提供体制のあり方に関する検討会(厚労省) 2)がん医療・地域医療構想・医療計画等を連動させ「集約化すべき病院、高度医療の内容」等を明確化する-がん診療提供体制検討会(Gem Med) 3)がんの医療体制、地域医療構想と連動して整備へ 厚労省案 「28年度までに決定」(CB news) 4)がん手術維持へ病院集約 40年に外科医5,000人超不足、厚労省(日経新聞) 5.医師偏在対策の柱・地域枠が再設計へ 2028年度以降は定員減も/厚労省医師偏在対策の柱として拡大してきた医学部の地域枠が、現在見直しの局面に入っている。厚生労働省は、4月17日に開催した「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」で、2027年度の医学部臨時定員の調整方法を了承し、医師多数県を中心に削減を進めつつ、へき地尺度などを用いて一部地域では削減幅を緩和する方針を示した。医学部定員に占める地域枠などは2007年度の173人から2025年度には1,847人へと増え、全体の19.9%を占めるまで拡大しており、医学部定員9,393人のなかで大きな比重を占めている。この拡大は2008年度以降の臨時定員増を背景とするが、近年は医師数の増加ペース見直しの議論が進み、今後は臨時定員の縮減とともに、地域枠を恒久定員内で運用する方向が示された。検討会では、2027年度以降は医師多数県の臨時定員削減を基本としつつ、へき地尺度や高齢化の進展を踏まえて調整する方針を確認した。さらに2028年度以降は、医師多数県に限らず定員適正化を進める方向性が示され、量的拡大から質的最適化への転換が明確になりつつある。地域枠の制度設計も見直し対象となっている。現在は卒後9年以上の地域勤務が求められ、一定期間を医師不足地域で従事する仕組みとなっているが、義務履行中断者が約7%に上るなど、若手医師のライフイベントや専門医取得との両立が課題となっている。厚労省の資料でも、仕事と育児の両立志向の高まりなど、若年層の価値観変化が制度運用に影響していることが示されている。実際、日経メディカルの調査では「地域枠は必要だが見直しが必要」との回答が約半数を占め、当事者では6割近くに達した。背景には、都市部の生活の利便性や教育環境、キャリア形成機会の偏在があり、単なる配置義務では地域定着につながらない現実がある。地域枠は一定の成果を上げつつも、若手医師の価値観変化や医師需給の転換期を受け、制度疲労が顕在化している。今後は定員管理、勤務環境改善、経済的インセンティブを組み合わせた総合的な再設計が求められる。 参考 1)医師の確保・偏在対策における医学部臨時定員の方針について(厚労省) 2)今後の地域枠等の運用について(同) 3)27年度臨時定員、へき地尺度で多数県の削減幅を緩和 検討会が了承(MEDIFAX) 4)地域枠、医師48%が「従事期間や奨学金の利息見直しが必要」(日経メディカル) 6.医療機関倒産、20年で最多 人件費高騰が経営圧迫/東京商工リサーチ東京商工リサーチの調査によると、2025年度に倒産した医療機関(病院、診療所、歯科医院)は前年度比20.3%増の71件となり、過去20年で最多を更新した。コロナ禍では支援策により低水準に抑えられていたが、収束後の2023年度以降は53件、59件、71件と増加が続き、経営の悪化が顕在化している。業態別では診療所が32件、歯科医院が31件といずれも最多で、とくに歯科は前年度比1.5倍と急増した。その一方で、病院は8件と減少したものの、依然として高い水準にある。負債規模では1億円以上の案件も多く、中堅規模以上の医療機関の倒産が目立つ点も特徴だ。原因は「販売不振」が66%を占め、「既往のシワ寄せ」と合わせ約9割に達した。人口減少による患者数減少や診療報酬改定の影響に加え、光熱費や人件費、医療材料費の上昇により収益構造が悪化している。さらに、経営者の高齢化や人手不足、設備の老朽化も重なり、経営継続が困難となるケースが増えている。倒産形態は破産が69件で全体の97%を占め、再建型の民事再生は2件にとどまった。医療機関は収益規制や後継者不足などから再建が難しく、退出に直結しやすい構造が浮き彫りとなっている。医療機関の倒産は地域の医療提供体制に影響を及ぼし、とくに高齢化が進む地方では受診機会の喪失につながる懸念が強い。2026年6月の診療報酬改定の効果は不透明で、今後、公的支援の強化に加え、M&Aなどを含めた医療機関の再編・集約が一層進む可能性がある。 参考 1)2025年度の「医療機関」倒産 20年で最多の71件 クリニック・歯科医院の淘汰が加速、「破産」が97%超(東京商工リサーチ) 2)25年度の医療機関倒産、過去20年で最多の71件 商工リサーチ調べ(日経新聞)

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増える麻しん、医療従事者向け「麻しんを疑った際の対応」公開/JIHS

 日本では、2015年にWHOにより麻しんの排除認定を受けているが、2026年1月からの国内の発生報告数(速報値)は4月8日までに236例と、2020年以降同期間としては最多で、すでに2025年の1年間の発生報告数(265例)に迫る数字となっている。国立健康危機管理研究機構(JIHS)では、医療機関向けのリーフレット「 麻しんを疑った際の対応」を公開。典型的皮疹やコプリック斑を写真で示すとともに、感染対策や臨床対応のポイントを簡潔にまとめている。<麻しんを疑った際の対応(一部抜粋)>麻しんを疑う所見:・発熱+発疹+カタル症状(咳・鼻汁・結膜充血)・口腔内のコプリック斑・海外渡航歴または麻しん患者発生地域への移動歴、接触歴・ワクチン2回未完了または不明※修飾麻しん(麻しんに対する免疫が不十分な人に生じる、軽症で非典型的な麻しん)では、典型所見に乏しいことがあるので注意(1)感染対策・個室管理対応、患者にマスク着用を促し、扉を閉める(可能なら陰圧室)・空気感染対策(原則、N95マスク)+標準予防策を行う・対応する医療者と接触者を最小化する(2)臨床対応・ワクチン接種歴聴取、臨床評価、脱水や呼吸管理等・合併症:中耳炎、肺炎、下痢等による脱水、脳炎※麻しん患者との接触後、72時間以内に麻しん含有ワクチンを接種すること等によって、麻しんの発症を予防できる可能性がある(3)連絡・届け出・院内ICTへ即時連絡・麻しんと臨床診断したら直ちに発生届提出・できるだけ早期(発疹出現後1週間以内)に、保健所の指示に基づく検体(咽頭ぬぐい液・尿・EDTA血)を採取し、提出する・提出方法は、自治体ごとに異なるため、管轄の保健所に問い合わせる※必要に応じてIgM抗体検査も実施するが、発疹出現後3日以内は偽陰性に注意する

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マバカムテン、青年期の閉塞性肥大型心筋症には?/NEJM

 青年期(12歳以上18歳未満)の閉塞性肥大型心筋症(HOCM)患者において、マバカムテンの投与はプラセボ投与と比較して、28週の試験期間にわたり、左室流出路閉塞を有意に大きく改善した。米国・フィラデルフィア小児病院のJoseph W. Rossano氏らSCOUT-HCM Investigatorsが、第III相の二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。肥大型心筋症の小児に対する承認薬はなく、左室流出路閉塞を認める患者では外科的介入が選択肢になる。マバカムテンは成人HOCMに対して承認されている選択的心筋ミオシン阻害薬で、有効性と良好な安全性プロファイルが確認されているが、小児患者に対する臨床的評価は行われていなかった。NEJM誌オンライン版2026年3月29日号掲載の報告。マバカムテン群vs.プラセボ群で左室流出路圧較差の変化量を評価 研究グループは、NYHA心機能分類IIまたはIII度の症候性HOCMの青年期患者(12歳以上18歳未満)を対象に、マバカムテンの有効性と安全性を評価した。 被験者を、マバカムテン群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。マバカムテン群では、ベースライン時点における体重45kg以上は1日1回5mg、35kg以上45kg未満は1日1回2.5mgで投与を開始し、バルサルバ法による左室流出路圧較差および左室駆出率(LVEF)に基づき、増量(5週目と9週目に1段階まで)または減量(12週目と24週目に1段階まで)が可能であった。 主要エンドポイントは、バルサルバ法による左室流出路圧較差の、ベースラインから28週時の変化量であった。28週時の変化量の群間差は-48.0mmHg 計44例が無作為化された。23例がマバカムテン群(女性8例[35%])、21例がプラセボ群(女性5例[24%])であった。平均(±SD)年齢はマバカムテン群14.7±1.7歳、プラセボ群14.6±1.7歳、ベースラインのバルサルバ左室流出路圧較差はそれぞれ78.4±34.1mmHg、80.8±47.4mmHgであり、両群で類似していた。 28週時点のバルサルバ左室流出路圧較差の最小二乗平均変化量は、マバカムテン群-48.5mmHg、プラセボ群-0.5mmHgであった(群間差:-48.0mmHg、95%信頼区間:-67.7~-28.3、p<0.001)。 有害事象の発現率は両群で同程度であった。重篤な有害事象は、各群2例で認められた。マバカムテン群では1例で失神エピソードを2回、もう1例で植込み型除細動器による不適切ショックが報告された。プラセボ群では1例で胸痛を、もう1例で自殺念慮を伴ううつ病が報告された。 LVEFが50%未満に低下した患者はいなかった。試験期間中の死亡の報告はなかった。

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麻疹患者の劇的な増加はワクチン接種率のわずかな低下と関連

 ワクチン接種率がわずかに低下するだけで、麻疹(はしか)の新規感染者数や入院・死亡数がいずれも7倍以上に増える可能性があるとする報告書がCommon Health Coalitionから発表された。米国で、小児の麻疹、おたふくかぜ、風疹の3種混合ワクチン(MMRワクチン)の接種率が年間1%低下するだけで、5年後には年当たり約1万7,000例の麻疹症例と4,000件の入院、36件の死亡につながる可能性があると、報告書は結論付けている。この研究は、査読前論文のオンラインリポジトリ「medRxiv」に2月20日公開された。 報告書によると、この年間1%の接種率低下によって、現在から2030年までの間に米国における麻疹に関連する医療費として年間15億ドル(1ドル159円換算で約2385億円)の追加負担が生じるという。Common Health Coalitionの委員長で医師のDave Chokshi氏はニュースリリースの中で、「ワクチン接種は子どもの健康のためにわれわれができる最も強力な投資の一つだ。しかし、高い接種率を維持できなければ、われわれ自身がその代償を支払うことになる」と述べている。 最近では、サウスカロライナ州、ユタ州、アリゾナ州、テキサス州で大規模な麻疹アウトブレイクが発生し、ワクチン接種の重要性は改めて浮き彫りになっている。米疾病対策センター(CDC)によると、2026年に入ってからこれまでに(3月12日時点)、1,362件の麻疹症例が報告され、14件の新たなアウトブレイクが発生し、その影響は31州に及んでいるという。麻疹は極めて感染力が強く、最大で90%の二次感染率が見込まれる。 米イェール大学公衆衛生大学院の研究グループは今回、米国の郡ごとのMMRワクチン接種率データを用いて、2030年まで0~6歳の接種率が毎年1%下がり、5年後に合計5%低下した場合に何が起こるかを予測した。研究グループは、「現在の傾向を踏まえると、今後5年間でMMRワクチンの接種率が5%低下する可能性は十分に考えられる。実際、2020年以降、最近の政策変更以前の時点ですでに接種率は約2.5~3ポイント低下している。このシナリオでは、全国の接種率は約87.5%にまで下がると予測される。これは、感染力が強い疾患に対して集団免疫を維持するために必要と広く認識されている95%の基準を7.5ポイント下回る水準だ」と指摘している。 このシナリオ通りになった場合、麻疹の年間症例数は2025年の2,181例から1万5,000例以上増えて年間1万7,232例になり、麻疹による入院数は2025年(554件)から3,000件以上増えて年間4,085件に、死亡数は5件から36件になると予測された。また、これらの症例の治療に年間4110万ドル(約65億3490万円)、公衆衛生上の麻疹流行への対応に9億4700万ドル(約1,505億7300万円)が必要になると推定された。さらに、生産性の低下や欠勤による損失も5億1040万ドル(約811億5360万円)に達すると推計された。 論文の上席著者であるイェール大学公衆衛生大学院感染症モデリング分析センター所長のAlison Galvani氏は、「今回の予測は、回避可能なリスクがどれほど急速に増大し得るか、また、高い接種率を維持することでいかに人々の苦痛と経済的負担の双方を回避できるのかを示している」と述べている。 研究グループは、ワクチン接種率を向上させる対策として、1)保険会社がワクチン接種費を全額カバーし、家庭の費用負担が生じないようにすることを確実にする、2)就学時のワクチン接種要件を維持または強化する、3)広報を通じてワクチンに対する人々の信頼を醸成する、4)地域の予防接種連携組織を通じてワクチンへのアクセスを改善する、などを提言している。

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潰瘍性大腸炎の症状を抑えるグセルクマブ皮下注への期待/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は、潰瘍性大腸炎(UC)の治療薬グセルクマブ(商品名:トレムフィア)の皮下注製剤の製造販売承認事項一部変更の承認取得に伴い、都内でメディアセミナーを開催した。グセルクマブは、IL-23のp19サブユニットに結合してIL-23を阻害する医薬品として初めて承認された完全ヒト型モノクローナル抗体であり、わが国では尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬などの治療薬としてすでに承認を得ている。皮下注製剤は、中等症~重症のUCの寛解導入療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)の治療薬として、2026年2月19日に製造販売承認事項一部変更の承認を取得した。 セミナーでは、UCの病態、診療、グセルクマブの臨床試験結果などの解説のほか、UC患者の声などが語られた。患者にも医療者にもメリットがあるグセルクマブ皮下注製剤 「潰瘍性大腸炎における課題とトレムフィア皮下注製剤による導入療法に期待すること」をテーマに久松 理一氏(杏林大学医学部消化器内科学 教授/炎症性腸疾患包括医療センター長)が、UCの疾患概要、診療などの講演を行った。 炎症性腸疾患(IBD)とは消化管に炎症が起こる疾患の総称であり、原因不明のものを「非特異性炎症性腸疾患」といい、UCやクローン病がある。UCでは、主に大腸に炎症が起こり、重症化すると大腸全体に及ぶ。主な症状としては、下痢、血便、腹痛、便意の切迫感などのほか、重症になると体重減少や発熱、貧血などもある。また、病勢としては、病状が落ち着く「寛解」と病状が悪化する「再燃」を繰り返し、寛解状態を維持するために継続的な治療と定期的な診療が必要となる。 わが国では患者数は年々増加しており、UCでは約31万人の患者数が推定されている(参考までにクローン病は約9.6万人と推定される)。発症年齢は、男性で20~24歳、女性で25~29歳にピークがあり、IBD全体では30~40代の働き盛りの世代に多く発症する。この年代はまさに就業中枢の世代であり、かつ、人生ではさまざまなイベントが発生する時期であり、患者のQOLが阻害されることになる。 UCの治療としては、5-ASA製剤をベースに重症度に応じて、ステロイド、免疫調節薬、免疫抑制薬などが使用されるほか、近年では抗TNF-α抗体薬、JAK阻害薬、抗α4β7インテグリン抗体製剤が登場し、中等症~重症のUCで使用されている。今回、皮下注製剤による導入療法の適応が追加されたグセルクマブは、中等症~重症の寛解導入療法の治療薬として期待されている。 グセルクマブの臨床試験では、点滴静注での導入によるプラセボとの二重盲検ランダム化比較試験である「QUASAR試験」と皮下注での導入によるプラセボとの二重盲検ランダム化比較試験である「ASTRO試験」が実施された。 主要評価項目である12週時点での臨床的寛解について、QUASAR試験ではグセルクマブ群(n=421)が22.6%に対し、プラセボ群(n=280)は7.9%だった。ASTRO試験ではグセルクマブ群(n=279)が27.6%に対し、プラセボ群(n=139)は6.5%だった。12週時点での臨床的改善について、QUASAR試験ではグセルクマブ群(n=421)が61.5%に対し、プラセボ群(n=280)は27.9%だった。ASTRO試験ではグセルクマブ群(n=279)が65.6%に対し、プラセボ群(n=139)は34.5%だった。12週時点での内視鏡的改善(MES 0~1)について、QUASAR試験ではグセルクマブ群(n=421)が26.8%に対し、プラセボ群(n=280)は11.1%だった。ASTRO試験ではグセルクマブ群(n=279)が37.3%に対し、プラセボ群(n=139)は12.9%だった。両試験の結果から皮下注であっても点滴静注と同程度の寛解の効果があることが示唆された。また、安全性では、両試験ともに死亡に至った有害事象はなく、発疹、頭痛のほかASTRO試験では注射部位の紅斑などが報告されている。 グセルクマブの投与スケジュールとして、既存治療で効果不十分な中等症~重症のUCで導入療法から使用できるだけでなく、維持療法では導入療法終了4週後以降に1回200mgを4週間隔で皮下投与することもできる。 今後、グセルクマブが使えることで、患者では病院での滞在時間の短縮につながり、医師では導入から維持療法へのスムーズな移行ができる。そして、医療従事者では薬剤調整・ルート確保などの業務削減につながることが期待されている。 まとめとして久松氏は「グセルクマブは皮下注導入で適応追加となり、点滴静注と一貫性ある導入効果が証明されたことで患者の在院時間の短縮、施設の処置時間の短縮につながる」と述べ、講演を終えた。治療の選択肢が増えることは安心できる UC患者の声として一宮 亜美氏が、自身の疾患経験と生活上の課題や診療への思いなどを語った。一宮氏は、12歳のときにUCを発症し、いくつかの診療科を経て、小児科に入院したときにUCと確定診断された。中学生のころから生物学的製剤をスタートしたが、ステロイド治療では効果に抵抗性があったという。食生活では摂取制限もあり、摂取できない食品リストを作成し、とくに脂質の多いものやカレーなどの刺激の強いものは避けていると説明した。学生時代は、周囲には「おなかの病気」とだけ伝えており、社会人になってからはとくに伝えていないという。医療機関への受診は土曜日に行い、「医師には疑問があったら質問する」「普段から病状をメモして伝えるなどを行っている」と述べた。 最後に一宮氏は「治療の選択肢が増えることで安心できる。病状がコントロールできないときに、内科的治療の選択肢はあることがうれしい」と治療薬への期待を語った。

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第290回 はしか急増、3月末で全国に197人 接種歴確認と2回接種が急務/厚労省

<先週の動き> 1.はしか急増、3月末で全国に197人 接種歴確認と2回接種が急務/厚労省 2.中東情勢悪化で医療現場に不安 EMIS活用して在庫把握へ/厚労省 3.医師偏在に現場が危機感、4割が開業規制支持 地域格差是正へ/日経新聞 4.オンライン診療を医療法に明記 96項目の遵守事項で安全確保/厚労省 5.OTC類似薬に25%負担 医療保険改革が審議入り、応能負担強化へ/政府 6.看護専門学校の定員割れ深刻化 2040年見据えた人材確保策を議論/厚労省 1.はしか急増、3月末で全国に197人 接種歴確認と2回接種が急務/厚労省麻疹(はしか)の感染拡大が続いている。国立健康危機管理研究機構(JIHS)によると、2026年第13週までの全国累計患者数は197人に達し、前年同時期の3倍超と、2020年以降で最も速いペースで増加している。東京都48人、鹿児島県24人、愛知県23人が多く、海外流行地からの持ち込みを起点に国内感染が広がった可能性が高い。麻疹は空気感染し、免疫のない人は同じ空間にいるだけで感染し得るうえ、肺炎や脳炎など重い合併症を招くこともあるが、特効薬はない。唯一有効な予防策はワクチン接種で、MRワクチン2回接種が基本となる。日本感染症学会も、流行防止には2回接種率95%以上が必要だと注意喚起をしている。東京都では4月10日時点の患者数が速報値で97人に達し、昨年同時期の10倍超となった。10~30代が約9割を占め、接種歴が1回のみ、あるいは不明な若年成人の脆弱性が浮き彫りになっている。千葉県では今年22例目が確認され、昨年通年に並んだほか、川崎市でも4月だけで複数例が報告された。厚生労働省は、発熱や発疹がある場合は事前に医療機関へ連絡し、公共交通機関を避けて受診するよう求めている。接種歴の確認と未完了者への追加接種が急務となる。 参考 1) 感染症発生動向調査(IDWR)2026年第13週(国立健康危機管理機構) 2) 麻しん(はしか)が世界・国内で増加しています(日本感染症学会) 3) 空気感染するはしか、増加続く 厚労省が接種徹底と注意呼びかけ(Science Portal) 4) はしか患者3月までに197人、コロナ禍後最多だった前年同時期の3倍以上…子どものワクチン接種呼びかけ(読売新聞) 5) はしかの全国感染者数 1週間の新たな感染者30人 感染者数高止まり(日テレNEWS) 2.中東情勢悪化で医療現場に不安 EMIS活用して在庫把握へ/厚労省中東情勢の悪化を受け、石油由来原料を使う医薬品、医療機器、医療物資の供給不安が医療現場で強まっている。厚生労働省と経済産業省の対策本部によると、4月8日時点で医療機関やメーカー・卸業者からの相談は計543件に上り、このうち16件が安定供給に影響ありと判断された。透析回路や医療用手袋など10件はなお対応検討中であり、政府は流通段階の「目詰まり」解消を急ぐとしている。政府は現時点で「直ちに供給が滞る状況ではない」と説明する一方で、医療7団体は買い占めや過剰発注が連鎖すれば、供給不足や価格上昇を招きかねないと懸念を表明した。上野 賢一郎厚生労働大臣との意見交換では、需給見通しの正確な情報発信や、必要量に見合った発注の徹底、医療機関同士で物資を融通できる体制整備を求める声が相次いだ。とくに医療用手袋など日常的に消費する物資への警戒感が強い。厚労省は10日から、災害時に使う広域災害救急医療情報システム(EMIS)を活用し、全国約1万3,000の病院などから在庫や受け入れ状況をオンラインで把握する体制を開始した。今後は定点観測や相談窓口、EMISによる情報収集を通じて需給逼迫の兆候を早期に捉え、厚労・経産両省と医療団体が連携して、安定供給を維持する構え。焦点は、実際の不足が起きる前に冷静な発注行動と情報共有で市場不安を抑え込めるかにある。 参考 1) EMISポータルサイト(厚労省) 2) 医師会ら “医療用物資の需給情報発信し安定的な確保”要請(NHK) 3) 厚労省 医療用物資の調達 災害時にシステム活用で経産省と連携(同) 4) 医療機関1.3万ヵ所から物資の供給状況把握へ 厚労省 災害時システムで10日から情報収集(CB news) 5) 医療物資の供給把握 厚労省、システム運用 全国1.3万の病院(日経新聞) 3.医師偏在に現場が危機感、4割が開業規制支持 地域格差是正へ/日経新聞医師の地域偏在・診療科偏在が深刻化する中、医師自身の間でも自由開業の規制を求める声が強まっている。日本経済新聞と日経メディカルの共同調査では、「開業規制が必要」との回答は42%で、「必要ない」の21%を大きく上回った。地域偏在を深刻とみる回答は46%、診療科偏在も47%に達し、現場の危機感が明確となった。偏在の認識は地域で差が大きく、東京23区では29%にとどまる一方、町村では65%に達する。人口10万人当たり医師数などを基にした偏在指標でも、東京都と岩手県で約2倍の格差があり、西日本に多く東日本に少ない「西高東低」の傾向も続く。勤務医ほど規制支持が強く、病院勤務医では46%が必要と回答したのに対し、開業医では賛否が拮抗した。こうした背景には、現行の自由開業制の下で都市部・人気診療科への集中が進み、地域医療の持続性が揺らいでいる現状がある。厚生労働省の医師確保計画見直しでは、医師偏在は「地域」と「診療科」の二重構造で進行し、とくに外来中心の診療所医師が都市部に偏在している点が課題とされている。政府は改正医療法に基づき、2026年4月から「外来医師過多区域」を設定し、新規開業者に対し在宅医療や夜間対応、医師不足地域での診療などを要請できる制度を開始した。応じない場合には保険医療機関の指定期間短縮というディスインセンティブも設けたが、あくまで要請ベースにとどまる。その一方で、厚労省の資料では、医師確保は単なる配置の問題にとどまらず、勤務環境やキャリアパス、地域医療構想との整合的な政策が不可欠とされる。そのため、単純な規制だけではなく、地域勤務へのインセンティブやタスクシフト、医療提供体制の再編といった総合的な対策が求められている。先述のアンケートの自由回答でも「自由開業制を続ける限り偏在は解消しない」との声がある一方で、「過疎地への誘導策が重要」との指摘も多い。規制と誘導の最適な組み合わせが、今後の医師偏在対策の焦点となる。 参考 1) 野放図な開業を医師も危惧、4割「規制を」 大都市・診療科の偏り加速(日経新聞) 2) 医師の42%が「開業規制が必要」と回答、「不必要」にダブルスコア(日経メディカル) 3) 外来医師過多区域に係る候補区域の公表について(厚労省) 4) 医師確保計画の見直し等に向けたとりまとめ(同) 5) 医師偏在解消に向け、2026年4月から外来医師過多区域・重点医師偏在対策支援区域を設定し対応を強化-地域医療構想・医療計画検討会(Gem Med) 4.オンライン診療を医療法に明記 96項目の遵守事項で安全確保/厚労省2026年4月1日、改正医療法に基づくオンライン診療の関連規定が施行され、これまで通知や指針を中心に運用されてきたオンライン診療が、医療法上明確に位置付けられた。厚生労働省は施行に先立ち、医療機関向けチェックリストを通知し、計96項目の遵守事項と14項目の推奨事項を整理。オンライン診療の提供面では34項目、提供体制では62項目を求め、安全性と適正実施の徹底を図る。新ルールでは、オンライン診療は対面診療の代替ではなく補完とされ、医師は診療の都度、医学的観点から実施の可否を判断し、不適切な場合は速やかに対面診療へ切り替える必要がある。患者への事前説明と同意取得も必須で、触診ができず得られる情報が限られること、対面診療を組み合わせる必要があること、診療計画や急変時対応などを説明しなければならない。初診からのオンライン診療は原則として「かかりつけ医」が行うが、休日夜間やかかりつけ医不在時など例外的に他医師が行う場合は、診療前相談を経た上で、対面診療へ確実につなぐ体制整備が求められる。処方では初診時の麻薬・向精神薬投与や長期処方を制限し、メールやチャットのみで完結する診療も認めない。加えて、通信環境やセキュリティ対策も厳格化され、システムの安全性確認やアクセス管理、情報漏洩対策などが医療機関の責務として明確化された。今回の法改正では、患者がオンライン診療を受ける場所として「オンライン診療受診施設」も制度化された。公共施設などを活用した受診環境整備が可能となる一方で、広告規制も拡大され、受診施設に関する表示も新たな規制対象となる。こうした制度整備の背景には、医療アクセス改善への期待がある。日経新聞・日経メディカルの調査では、医師の51%が「オンライン診療は地域偏在の緩和に寄与する」と回答した。ただ、届け出医療機関はなお限定的で、導入コストや対面より低い診療報酬が普及の壁として残っている。今後は安全確保と普及促進をどう両立させるかが焦点となる。 参考 1) (医療機関向け)基準等遵守の確認をするためのチェックリスト(厚労省) 2) オンライン診療の実施に際し患者に対して説明すべき内容のチェックリスト(同) 3) オンライン診療の基準、厚労省がチェックリスト 順守事項に計96項目挙げる(CB news) 4) 医師の51%が遠隔診療に期待 地域偏在対策、普及へ報酬増求める声(日経新聞) 5) 改正医療法によるオンライン診療規制に伴う医療広告規制の変容~その1 医療広告規制と「オンライン診療受診施設に関する広告」規制~(のぞみ総合法律事務所) 5.OTC類似薬に25%負担 医療保険改革が審議入り、応能負担強化へ/政府4月9日、政府が国会に提出した健康保険法等改正案が衆議院本会議で審議入りした。今回の改革は、増大する社会保障費と現役世代の保険料負担の抑制を背景に、「給付と負担の見直し」と「制度の持続可能性確保」を柱とするものである。最大の焦点は、市販薬と同等の効能を持つ「OTC類似薬」に対する新たな患者負担の導入だ。対象は解熱鎮痛薬や抗アレルギー薬など約77成分・1,100品目に及び、薬剤費の4分の1を保険給付から外し、追加負担として患者に求める仕組みを創設する。これは「一部保険外療養」として制度化され、現役世代の保険料負担を年間2,600億円程度軽減する効果が見込まれている。その一方で、がんや難病患者、小児、長期使用が必要な患者などには負担を課さない方向で検討が進められている。また、後期高齢者医療制度では、株式配当などの金融所得を保険料や窓口負担に反映させる仕組みを強化する。現行制度では申告方法により負担に差が生じる問題があり、金融機関からのデータ提出を義務化することで「応能負担」の徹底を図る。さらに、出産費用については、全国一律の基本単価を設定し、保険で全額給付する仕組みへの転換を進める。従来の出産育児一時金では費用上昇に追いつかず自己負担が残る課題があり、現物給付化と情報の見える化により負担軽減と選択の透明性向上を目指す。このほか、高額療養費制度では長期療養者への影響配慮を明文化し、医療機関の業務効率化や勤務環境改善を支援する新たな基金事業も創設される。DXや生成AI活用などによる効率化も政策的に後押しされる点が特徴となっている。政府は「世代間・世代内の公平性確保」と「限られた財源の効率的活用」を強調する一方で、野党からは「患者負担増による受診控え」や「治療遅延のリスク」が指摘されており、制度設計の妥当性が今後の審議の焦点となる。 参考 1) 健康保険法等の一部を改正する法律案について(厚労省) 2) 健保法等改正案が衆院で審議入り 高市首相「不断の改革に取り組む」 上野厚労相「負担の公平性確保」(ミクスオンライン) 3) OTC類似薬の追加負担「がんや入院中の患者には求めず」 上野厚労相(日経新聞) 6.看護専門学校の定員割れ深刻化 2040年見据えた人材確保策を議論/厚労省厚生労働省は4月10日、「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」の初会合を開き、2040年ごろの看護職員の需給を都道府県別に推計する方針を示した。新たな地域医療構想の実現に向け、看護人材の確保と資質向上は不可欠であり、秋ごろまでに養成・確保策と推計方法を議論し、冬ごろに取りまとめる見通し。背景には、看護人材確保を巡る状況の悪化がある。厚労省の調査では、3年制看護専門学校の2025年度入学者は2万868人で、定員充足率は79.5%と初めて8割を下回った。2017年度をピークに減少傾向が続いており、大学入学者は増えているものの、専門学校と大学を合わせた入学者総数も5年連続で減少している。専門学校卒業生は地元就職率が高いとされ、地方の看護師確保への影響が懸念されている。実際、地域では養成基盤の縮小が進む。埼玉県では看護専門学校44校のうち少なくとも7校が募集停止を表明し、少子化や志願者減、4年制大学志向の強まりが経営難に拍車をかけている。人口10万人当たり看護師数が全国最下位の同県では、地域医療への影響に強い危機感が広がる。秩父地域では唯一の看護師養成校の存続も不透明となっている。厚労省の検討会では、若年人口減少に加え、現在の就業者の多くを占める45歳以上が2040年には高齢化することを踏まえ、退職増や高年齢者就業も見込んだ推計を行う。加えて、訪問看護の深刻な人手不足や領域偏在、ICT活用による業務効率化、育児・介護との両立支援、ハラスメント対策など勤務環境の改善も主要な論点となる。看護師不足は、単なる人数の問題ではなく、地域偏在、領域偏在、養成基盤の弱体化が重なった構造的な問題として対策が求められている。 参考 1) 第1回 2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会:資料(厚労省) 2) 看護専門学校の入学者、定員比で初めて8割下回る…学生離れ進み地方で不足との指摘も(読売新聞) 3) 看護職員の40年ごろの需給を地域別に推計へ 厚労省、養成・確保対策の検討会が初会合(CB news) 4) 埼玉県内の看護専門学校 本年度以降、7校が学生募集停止 志願者減少で経営難(東京新聞)

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英語で「感染性胃腸炎」、患者に説明するには?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第57回

医学用語紹介:感染性胃腸炎 infectious gastroenteritis「感染性胃腸炎」を表す医学用語はinfectious gastroenteritisですが、患者さんに説明するときは、どのように伝えたらよいでしょうか?講師紹介

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