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2002.

自然呼吸で吸入可能な1回完結型インフル治療薬「イナビル吸入懸濁用160mgセット」【下平博士のDIノート】第35回

自然呼吸で吸入可能な1回完結型インフル治療薬「イナビル吸入懸濁用160mgセット」今回は、長時間作用型ノイラミニダーゼ阻害薬「ラニナミビル(商品名:イナビル吸入懸濁用160mgセット)」を紹介します。本剤は、吸入力が弱く、既存の吸入粉末薬の使用が困難だった小児や高齢者などにも使える1回完結型のインフルエンザ治療薬として期待されています。<効能・効果>本剤は、A型またはB型インフルエンザウイルス感染症の適応で、2019年6月18日に承認され、2019年10月25日より発売される予定です。なお、既存の吸入粉末薬とは異なり、予防投与としては使用できません。<用法・用量>成人および小児には、ラニナミビルオクタン酸エステルとして160mgを日本薬局方生理食塩液2mLで懸濁し、ネブライザを用いて単回吸入投与します。<副作用>国内で実施された第III相試験において、安全性評価対象症例441例中9例(2.0%)に副作用が認められました。主な副作用は、下痢・嘔吐が各2例(0.5%)、便秘・悪心・虚血性大腸炎が各1例(0.2%)でした。インフルエンザ異常行動・言動に該当する有害事象は1例(気分変化)に認められましたが、本剤との因果関係は「関連なし」と判定されています。なお、重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー、気管支攣縮、呼吸困難、異常行動、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、多形紅斑(いずれも頻度不明)が吸入粉末薬で認められている重大な副作用として注意喚起されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、インフルエンザウイルスの増殖を抑えることで、インフルエンザの症状を緩和します。2.吸入時は、吸入マスクを口元にあててリラックスしながら、深く口で呼吸してください。3.小児が泣いたり暴れたりして吸入の継続が困難になった場合、いったん機械を止めて、落ち着いてから吸入を再開してください。霧が出なくなったら終了です。4.インフルエンザにかかった時は、薬の有無や種類を問わず飛び降りなどの異常行動を起こす恐れがあります。発熱から少なくとも2日間は、窓の鍵を確実にかけるなど、転落などの事故に対する防止対策を徹底してください。<Shimo's eyes>同成分の既存の剤形として吸入粉末薬がありますが、今回ネブライザで吸入するタイプの製剤が発売されます。本剤は、吸入力が弱い小児や高齢者でも十分量の吸入が期待できます。ジェット式ネブライザを使用して吸入するため、通常は吸入用機器(コンプレッサー)を設置している病院で使用されることが想定されます。凍結乾燥製剤の溶解に用いる生理食塩水、シリンジ、注射針などは、医療施設で用意する必要があります。吸入粉末薬と異なる点として、添加剤に乳糖が含まれないので、乳糖不耐症や乳製品アレルギーなどの患者に対しても使用できます。また、年齢に応じた用量の設定はありません。本剤は、従来の吸入容器による吸入手技を必要としないため、医療機関の感染予防対策にも有効と考えられます。

2003.

ムコ多糖症I型〔MPS I : Mucopolysaccharidosis I〕

ムコ多糖症I型のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 概念・定義ムコ多糖症(mucopolysaccharidosis:MPS)は細胞内小器官のリソゾーム内でムコ多糖の一種であるグリコサミノグリカン(GAG)を加水分解する酵素の異常により、リソゾーム内にGAGが蓄積し、種々の臨床症状を引き起こす先天代謝異常症である。ムコ多糖症I型(MPS I型)は、1919年にGertrud Hurlerにより報告されHurler症候群と呼ばれていたが、1962年にHarold Scheieが軽症型を報告し、1970年代に欠損酵素がα-L-イズロニダーゼ(α-L-iduronidase)であることが明らかとなり、両者ともにMPS I型に分類されるようになった。現在では、重症型はHurler症候群(MPS I H)、中間型はHurler-Scheie症候群(MPS I H-S)、軽症型はScheie症候群(MPS I S)に分類されている。MPS I型は、リソゾーム酵素の1つであるα-L-イズロニダーゼの異常によりリソゾーム内にGAGの一種であるデルマタン硫酸とヘパラン硫酸が異常に蓄積するため、慢性で進行性の多様な臨床症状を呈する。MPS I型は常染色体劣性遺伝形式をとるためII型と異なり男女共に認められる。■ 疫学MPSの頻度は人種により異なり、欧米では2万4千人に1人と多いが、わが国では5~6万人に1人とされ、MPS I型の頻度はその約15%程度である。■ 病因リソゾーム酵素の1つである、α-L-イズロニダーゼをコードする遺伝子の変異に基づく遺伝性の疾患で、この酵素の欠損はリソゾーム内にGAGの一種であるデルマタン硫酸とヘパラン硫酸が異常に蓄積するため、MPS I型では慢性で進行性の多様な臨床症状を呈する。デルマタン硫酸の蓄積は、骨の変形に関与し、ヘパラン硫酸の蓄積は精神運動発達遅滞の原因となる。■ 症状リソゾームはほとんどすべての細胞に存在するため、障害も多臓器に及ぶ。新生児期からヘルニアや蒙古斑の多発が認められる。その後、ガルゴイ様と呼ばれる粗野な顔貌、関節拘縮、骨変形、肝脾腫、心弁膜症、精神運動発達遅滞、角膜混濁、網膜変性、滲出性中耳炎、難聴、閉塞性呼吸障害、低身長などが出現する。重症型のMPS I Hではこれらの症状が6ヵ月頃から出現するのに対して、軽症型のMPS I Sでは出現が遅く、軽度の関節拘縮や心臓弁膜症を認めても、ガルゴイ顔貌、低身長や精神発達遅滞などを示さず、成人まで診断されない場合もある(表)。画像を拡大する■ 分類(表)重症型はHurler症候群(MPS I H)、中間型はHurler-Scheie症候群(MPS I H-S)、軽症型はScheie症候群(MPS I S)に分類される。■ 予後無治療の場合、重症型では小児期に死亡することが多いが、治療法の進歩により生命予後はかなり改善している。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床診断ヘルニアや蒙古斑のほか、粗野な顔貌や関節拘縮を認めた場合、全身骨のX線撮影、頭部CT、眼科、耳鼻科の受診を行う。1)胸部X線正面画像:肋骨のオール状変形が認められる。2)腰部X線側面画像:上部腰椎の卵状変形、下部腰椎椎体の下部が前方に突出する所見が認められる。3)手のX線画像:指の骨の弾丸状変形が認められる。4)頭部CT:水頭症5)眼科診断:角膜混濁6)耳鼻科診断:滲出性中耳炎■ 生化学診断:尿中ムコ多糖分析1)尿中ウロン酸定量値が高値である。2)ウロン酸分画:デルマタン硫酸とヘパラン硫酸の増加が認められる。■ 酵素診断:イズロニダーゼ活性の測定白血球のイズロニダーゼ活性の低下を認める。■ 遺伝子診断確定診断に必須の検査ではないが、保因者診断や出生前診断には有用である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 対症療法1)中耳炎・難聴:鼓膜チューブ挿入や補聴器など耳鼻科的処置を行う。2)角膜混濁:角膜移植など眼科的手術を行う。3)骨変形:整形外科的手術を行う。4)睡眠時無呼吸症候群:耳鼻咽喉科的手術や経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)を行う。5)心弁膜症:弁置換術など心臓外科的手術を行う。6)水頭症:シャント術など脳外科的手術を行う。■ 造血幹細胞移植1)現在は移植によるリスクがかなり軽減しているため、最も勧められる治療法である。2)肝脾腫の縮小、関節拘縮の軽度改善、心弁膜症の進行抑制、粘膜の肥厚の改善などが認められるが、骨変形や精神発達の退行を防ぐことは難しい。3)2歳未満でIQが70以上の患児には、かなりの効果が期待される。■ 酵素補充療法1)人工的に合成されたイズロニダーゼ酵素(一般名:ラロニダーゼ、商品名:アウドラザイム)を毎週点滴静注により補充する治療法である。2)診断後すぐに治療が開始できるため、造血幹細胞移植を施行するまでのつなぎの治療として有効である。3)血流が豊富な組織:粘膜の肥厚の改善による呼吸状態の改善、肝臓や脾臓の縮小、皮膚・関節拘縮の軽減などの効果が認められる。4)血流が豊富でない組織:角膜・骨の改善は困難である。5)血液脳関門が存在する中枢神経への効果は期待できない。4 今後の展望リソゾーム酵素は、作られた細胞からいったん分泌され血流により全身の臓器に運ばれた後、各臓器組織に取り込まれ、リソゾームに移行し作用する性質がある。このため、移植された細胞から分泌された正常の酵素か、あるいは人工的に作られた酵素を点滴で血液中に注入すると、各臓器組織に取り込まれて症状の改善が認められる。しかしながら、この治療法は、各臓器組織における血流に依存するため、血流の豊富でない骨や血液脳関門の存在する脳などの重要な臓器での症状の改善が認められないという問題点がある。今後これらの臓器組織への移行を改善した酵素補充療法の開発が期待される。5 主たる診療科先天代謝異常症であるため主たる診療科は小児科であるが、全身の臓器に異常が生じるため、該当するいくつかの診療科と並行して受診と治療が必要となる。また、20歳を超えた成人症例には小児科の入院は難しいため、必要となる診療科に入院し、小児科が共同で観察することが重要である。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター ムコ多糖症I型(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報日本ムコ多糖症患者家族の会(患者とその家族の会)ムコ多糖症支援ネットワーク(患者とその家族の会)1)Neufeld EF, Muenzer J. et al. The Mucopolysaccharidoses. In. Scriver CR, Beaudet AL et al editors. The Metabolic & Molecular Bases of Inherited Disease vol. III 8th Edition. New York: McGraw-Hill; 2001. p.3421-3452.2)Neufeld EF, Muenzer J. The Mucopolysaccharidoses. In Valle D, et al edts. The Online Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease. DOI: 10.1036/ommbid.165.3)遠藤文雄総編集 奥山虎之ほか専門編集.先天代謝異常ハンドブック. 中山書店; 2013. p.190-191.4)奥山虎之. 小児疾患の診断治療基準 第4版. 小児内科 2012; 44(増刊号): 168-169.公開履歴初回2013年10月03日更新2019年10月08日

2004.

医師も学会も「発信体質」になろう【Doctors' Picksインタビュー】第4回

――ご自身のブログ「肺癌勉強会」で新たな研究結果を紹介しているほか、FacebookやTwitterでも頻繁に情報を発信していらっしゃいます。多忙の中ここまでされる理由をお聞かせください。私が勤務している川崎市立 川崎病院は公立の総合病院なので、肺がんだけでなく、喘息やCOPD、肺炎などの一般的な呼吸器の疾患も診ています。しかし昨年のデータでは、呼吸器内科で受け持った約1,500人の入院患者のうち、約半数は肺がんでした。地域の中核病院ですから、紹介で来院されるがん患者さんは多く、がんは肺炎などの呼吸器疾患より求められる専門性が高いので、それに応える必要があります。この病院に来たころから、自分の肺がん治療への知識不足を感じるようになりました。どの疾患も日々治療法は進化しており、日々の勉強が大事なのは同じですが、肺がん領域はとくにその変化が激しい。日々論文が発表され、ガイドラインの変更も多く、昨年勉強した治療のストラテジーがもう使えなくなる。この変化の大きさが、喘息や肺炎とは大きく異なる点だと思います。こと肺がんに関しては、自分に負荷を課して勉強しないと診療に当たれない、目の前の患者さんを助けられない、という切迫感がありました。それが5年ほど前のことです。そこから、肺がん関連の論文を片っ端から読みはじめました。PubMedで肺がん関連の気になる単語を検索し、上から順に読むのです。あまりに大量なので、自分の中で整理するために各論文の要点をメモにまとめたことがブログのスタートになりました。自分の勉強の記録を残すツールにすぎなかったものが、こんなに続くとは思っていませんでしたし、ほかの方に見てもらえるとはさらに思っていなかったですね。――ブログのほかにもFacebookやTwitterを使われ、まめに更新されています。毎日の負荷は相当だと思うのですが、どんな風にサイクルを回しているのでしょうか?勉強することはインプットに当たりますが、それを自分の頭に保持するにはアウトプットが重要です。「人に教えたこと」や「文章に書いたこと」は忘れにくい、というアレです。よって、私の中でインプットとアウトプットは完全にセットです。ベストセラーになった、樺沢 紫苑先生の『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版. 2018年)やマイクロソフト日本法人元社長の成毛 眞氏の『黄金のアウトプット術』(ポプラ社. 2018年)などにも、「インプットだけでなくアウトプットの重要性」が書かれていて納得しました。これらの本で気付いたというよりは、「自分なりにずっとやってきたことを再確認した」という感覚です。――実際に論文を読む時間は、どうやって確保されているのでしょう?1本の論文を読み込むのにかかる時間はトータルで2時間ほど。病院への通勤時間、電車の中で読むことが一番多いですね。とはいえ、一度に連続した2時間はとれないので、スキマ時間をかき集めています。具体的には、平日の勤務後や週末の時間を使い、PubMedで気になるキーワードを入れて論文を検索します。そうして集めた論文はすべてPDF化してプリントアウトし、クリアファイルに挟んでおきます。出勤時にはそこから数枚取り、手帳などに挟んでおくのです。また、手帳だけでなく、かばんや白衣のポケットなどあちこちに挟んでおき、休憩時間や勤務中のエレベーターの待ち時間などで30秒程度あればさっと目を通すのです。気になったところにマーカーを引き、再び夜や週末に見返してブログなどにアップする、という流れです。読み込みを始めた当初は、最初から最後まで和訳していたのですが、次第に時間的に厳しくなり、かつ意味も薄いことがわかったので、最近はAbstract、ポイントになるfigure、discussionの部分を中心に見ています。筆者はどんな点に着目してこのデータを解析したのかという部分が大事なので、そこは落とさず確認するようにしています。――読むべき論文は、どのように選んでいるのでしょう?ブログを始めた当初はLancetやNEJMなど一流誌を中心に読んでいたのですが、やっていくうちに気付いたのは、こうした主要誌の論文は日本の医療雑誌やサイトがすぐ翻訳し、高名な先生が解説も付けてくれるのです。それらと速さで張り合っても意味がないので、一流誌はそちらで目を通しつつ、いま現在の私は、医療メディアがあまり取り上げない、最先端というよりは明日の臨床で活かせる本邦での研究やリアルワールドな論文を中心に探しています。たとえば、高齢者に対象を絞っている研究、間質性肺炎の併存症のある症例、がん性髄膜炎や脳転移のある症例を集めた研究であったりします。大規模スタディには載らないセッティングや、小規模であっても日本で行われたデータが臨床の場では貴重なので、こうしたものに目を光らせているのです。私は英語がネイティブではなく、肺がんを専門に勉強したこともなかったので、最初は用語を調べるのにかなりの時間を要しました。それでも、数年も続けていれば人は慣れます。今ではずいぶん速く読めるようになりましたし、読みはじめて興味がなければゴミ箱へ、面白いと思ったものだけを熟読する、といった判別もすぐにつくようになりました。――ブログ、Facebook、Twitterなど、ツールごとの使い分けはどうされているのでしょう?自分のブログは、医療者・専門家が見ることを前提に専門性の高い内容にしています。「EGFR」「複合免疫療法」などの用語も注釈なしでそのまま使っています。Facebookはつながりのある人との少し狭いコミュニティなので、「ブログにこんなことを書いた」「こんな面白い記事があった」といった活動や情報をシェアする場として使っています。Facebookでは読んだ本の書評も書いているのですが、肺がんを患われた医師がご自身の病期について書かれた本1)に感銘を受けて感想を上げたところ、ご本人から直接メッセージをいただくことができました。こうしたつながりがSNSの面白さであり、楽しさですね。Twitterの場合は匿名性が高く、自分のフォロワーが誰なのか、すべては把握できません。看護師や薬剤師などの医療関係者ともつながっていますし、患者さんやご家族もいるかもしれません。拡散力が高いのも特徴なので、より一般的な話題を、わかりやすい言葉で発信することを意識しています。このほかにも医療者向けSNS2)やメディアでも発信しているので、1つの論文をいくつか切り口を変えて取り上げることも多いですね。――医療者の情報発信についてどうお考えですか?今の時代、ネットに医療情報はあふれかえっており、患者さんは病院や自身の疾患について膨大な量の情報に接して来院されます。それなのに、医師サイドはまだまだ情報弱者が多い。ごくごく限られた医師が多大な労力を払って発信を続けている、というのが現状でしょう。Twitter上には多くの有名医師の方々がいますが、パパ小児科医(ぱぱしょー)先生(@papa_syo222)、アレルギーご専門のほむほむ先生(@ped_allergy)は長く続けられているだけあって、一般の方が興味を持つネタや言葉の選び方が上手で参考になります。一般の読者やフォロワーが増えると、自分の発言にはとくに気を付けねばならなくなります。私はどのツールでも名前や立場をオープンにしているので、発言は「医師が発信している情報」として見られます。質の低い情報を発信することは許されません。医療情報をアップするときは、慎重に見直すようにしています。医療者のネットリテラシー向上のためには、学会から変わるといいのでは、と思います。私がTwitterを本格的に始めたのは、2019年の呼吸器学会がきっかけでした。一緒に参加した親しい医師と「Twitterで学会中のトピックスをツイートしてみよう」という話になったのです。思い立ったのは学会の2週間前と時間はなかったのですが、学会事務局に連絡して快諾をいただきました。ハッシュタグをつくり、知り合いの製薬会社の方に呼び掛けたり、母校のメーリングリストで告知するなど、急ごしらえながら準備をしました。会期中のツイートは全部で200ツイート程度でしたが、リツイートも多く、当事者としては大きな満足感がありました。そこまで関心を持っていない発表であっても「伝えなければ」と思えば本腰を入れて聴講しますし、ポイントを捉えようとします。「新しい学会の楽しみ方」という感じがありました。また、ツイートしている同士で同じ演題への見方・捉え方が違うなどの点も、興味深いものがありました。さまざまな知見がたまったので、また別の学会でも取り組みたいと考えています。欧米の学会では、アプリやネットに上がった抄録からすぐに感想をツイートし、発表者自身もキースライドを即時に投稿して世界中から反応が集まる、という時代になっています。日本の研究者・学会も、どんどん情報発信をしないと世界から置いていかれてしまうでしょう。電話帳のような学会抄録とはお別れし、講演スライドも公開したり販売したりすればいい。知見はシェアすることでさらに入ってくる時代になっているのですから。1)『Passion(パッション)~受難を情熱に変えて~』(前田恵理子/著. 医学と看護社. 2019年)2)Doctors’Picksこのインタビューに登場する医師は医師専用のニュース・SNSサイトDoctors’ PicksのExpertPickerです。Doctors’ Picksとは?著名医師が目利きした医療ニュースをチェックできる自分が薦めたい記事をPICK&コメントできる今すぐこの先生のPICKした記事をチェック!私のPICKした記事悪性胸膜中皮腫に対するニボルマブの本邦での効果と安全性中皮腫に対するニボルマブの投与は、日本においては2018年に適応拡大が承認され、まさに今、実臨床で使われはじめたところです。本研究の広島大学・岡田 守人先生をはじめ、全国で症例を集めている途上にあります。呼吸器を専門とする医師であれば、誰もが注目するトピックスでしょう。私が重視する「明日の臨床に役立つデータ」だと判断し、発表後すぐに自分のブログで取り上げ、多くの方の目に留まるようDoctors'PicksでもPickしました。

2005.

インフルエンザ発症リスクは喫煙者で5倍超

 喫煙者は、非喫煙者と比較してインフルエンザの発症リスクが高い可能性が示唆された。英国・ノッティンガム大学のLawrence Hannah氏らは、喫煙とインフルエンザ感染との関連をシステマティックレビューで調査し、結果をthe Journal of Infection誌2019年8月26日号に報告した。 研究グループは、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、LILACS、Web of Scienceのデータベースを、それぞれ創刊から2017年11月7日までの期間検索し、関連するランダム化比較試験、コホート研究および症例対照研究を特定した。臨床症状からインフルエンザを定義した研究6件と、検査でインフルエンザウイルスが確認された研究3件が対象とされた。 研究の質は、Newcastle-Ottawa Scaleを使用して評価され、プールされたオッズ比(OR)は、ランダム効果モデルを使用して推定された。 主な結果は以下のとおり。・9つの研究、4万685例の患者についてレビューを行った。・インフルエンザ様症状を報告した6つの研究において、現在の喫煙者は非喫煙者よりも、発症リスクが34%高かった(OR:1.34、95%信頼区間[CI]:1.13~1.59)。・検査で発症が確認された3つの研究において、現在の喫煙者は、インフルエンザ発症リスクが非喫煙者の5倍を超えていた(OR:5.69、95%CI:2.79~11.60)。

2006.

東京都でインフルエンザ流行開始、昨年比で3ヵ月早く

 東京都が9月26日付でまとめた、都内のインフルエンザ定点医療機関からの第38週(9月16~22日)の患者報告数が、流行開始の目安となる定点当たり報告数1.0を超えた。インフルエンザは、例年12月から3月にかけて流行しているが、昨年と比べても11週早い。今シーズンの異例ともいえる速さでの流行開始に、都は早めの注意と対策を呼び掛けている。 都内419ヵ所のインフルエンザ定点医療機関から報告された第38週の患者報告数は、定点当たり1.06人。今シーズン(9月2日以降)において、都内の学校や社会福祉施設等で発生したインフルエンザと思われる集団感染事例は、22日までに55件報告されている。 定点当たりの患者報告数が1.0人/週を超えた保健所は、都内31ヵ所中12ヵ所。報告数が多い順に、多摩小平(4.05人)、中央区(1.80人)、文京・渋谷区(1.57人)、杉並(1.53人)、世田谷(1.46人)、中野区(1.40人)、板橋区(1.38人)、江戸川(1.37人)、八王子市(1.33人)、北区(1.18人)、西多摩(1.14人)。

2007.

エヌトレクチニブ発売、脳転移へのベネフィットに注目

 臓器横断的ながん治療薬として本邦で2剤目となる低分子チロシンキナーゼ阻害薬エヌトレクチニブ(商品名:ロズリートレク)が販売開始したことを受け、9月5日、都内でメディアセミナー(主催:中外製薬)が開催された。吉野 孝之氏(国立がん研究センター東病院 消化管内科長)が登壇し、同剤の臨床試験結果からみえてきた特徴と、遺伝子別がん治療の今後の見通しについて講演した。 エヌトレクチニブは、2018年3月に先駆け審査指定を受け、2019年6月に「NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がん」を適応症とした承認を世界で初めて取得した。すでに承認・販売されているMSI-H固形がんへのペムブロリズマブの適応が、標準的治療が困難な場合に限られるのに対し、NTRK融合遺伝子陽性固形がんであれば治療歴および成人・小児を問わないことが特徴。遺伝子検査にはコンパニオン診断薬として承認されたFoundationOne CDxがんゲノムプロファイルを用いる。がん種ごとの陽性率は? NTRK融合遺伝子陽性率をがん種ごとにみると、成人では唾液腺分泌がん(80~100%)1,2)、乳腺分泌がん(80~100%)3-6)などの希少がんで多く、非小細胞肺がん(0.2~3.3%)7,8)や結腸・直腸がん(0.5~1.5%)7,9-10)、浸潤性乳がん(0.1%)7)などでは少ない。しかし患者の絶対数を考えると、1%であっても相当数の患者がいるという視点も持つ必要があると吉野氏は指摘した。 一方、小児では、乳児型線維肉腫(87.2~100%)11-14)、3歳未満の非脳幹高悪性度神経膠腫(40%)15)など陽性率の高いがん種が多く、同氏は「小児がんへのインパクトはとくに大きい」と話した。治療開始後“早く・長く効く”こと、脳転移への高い有効性が特徴 今回の承認は、成人に対する第II相STARTRK-2試験および小児に対する第Ib相STARTRK-NG試験の結果に基づく。STARTRK-2試験は、NTRK1/2/3、ROS1またはALK遺伝子陽性の局所進行/転移性固形がん患者を対象としたバスケット試験。このうち、とくにNTRK陽性患者で著明な効果が確認され、今回の迅速承認につながった経緯がある。 NTRK有効性評価可能集団は51例。肉腫が13例と最も多く、非小細胞肺がん9例、唾液腺分泌がんおよび乳がんが6例ずつ、甲状腺がんが5例、大腸がん・膵がん・神経内分泌腫瘍が3例ずつと続く。また、何らかの治療歴がある患者が約6割を占めていた。主要評価項目である奏効率(ORR)は56.9%、4例で完全奏功(CR)が確認された。本試験結果だけでは母数が少ないが、がん種ごとに有効性の大きな差はないと評価されている。吉野氏は、とくに奏効例のスイマープロットに着目。初回検査の時点で奏効が確認された症例、治療継続中の症例が多く、「奏功例では早く長く効くことが特徴」と話した。また、ベースライン時の患者背景として、脳転移症例が11例含まれることにも言及。評価対象となった10例での成績は、頭蓋内腫瘍奏効率50%、2例でCRが確認されている。 Grade3以上の有害事象は多くが5%以下と頻度が低く、貧血が10.7%、体重増加が9.7%でみられた。同氏は、「総じて、副作用は非常に軽いといえる」と述べた。3学会合同、臓器横断的ゲノム診療のガイドラインを発行予定 小児・青年期対象のSTARTRK-NG試験においても、エヌトレクチニブの高い有効性が確認されている(ORR:100%)。5例はCNS原発の高悪性度の腫瘍で、うち2例でCRが確認された。周辺組織への浸潤が早い小児がんにおいて、非常に大きなインパクトのある治療法と吉野氏は話し、「どのタイミングで、どんな患者に検査を行い、薬を届けていくかを標準化していく必要がある」とした。 今回の承認を受け、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本小児血液・がん学会は合同で、『成人・小児進行固形がんにおける臓器横断的ゲノム診療のガイドライン(案)』をホームページ上で公開、パブコメの募集を行った。同ガイドラインは、今回のエヌトレクチニブ承認を受け、2019年3月公開の『ミスマッチ修復機能欠損固形がんに対する診断および免疫チェックポイント阻害薬を用いた診療に関する暫定的臨床提言』を改訂・進化させた内容となっている。「NTRK融合遺伝子の検査はいつ行うべきか?」など、NTRK融合遺伝子の検査・治療についてもCQが設けられ、実践的な診断基準として知見が整理される。 最後に、同氏はこれまで消化器がん・肺がん領域を対象として行ってきたSCRUM-Japanのがんゲノムスクリーニングプロジェクトが、2019年7月からすべての進行固形がん患者を対象に再スタートしたことを紹介(MONSTAR-SCREEN)16)。リキッドバイオプシーおよび便のプロファイリング(マイクロバイオーム)を活用しながら、臓器によらないTumor-agnosticなバスケット型臨床試験を実施していくという(標的はFGFR、HER2、ROS1)。承認申請に使用できる前向きレジストリ研究を推進させ、全臓器での治療薬承認を早めていきたいと語り、講演を締めくくった。■参考1)Skalova A, et al.Am J Surg Pathol. 2016;40:3-13.2)Bishop JA, et al.Hum Pathol. 2013;44:1982-8.3)Del Castillo M, et al. Am J Surg Pathol. 2015;39:1458-67.4)Makretsov N, et al. Genes Chromosomes Cancer. 2004;40:152-7.5)Tognon C, et al. Cancer Cell. 2002;2:367-76.6)Lae M, et al. Mod Pathol. 2009;22:291-8.7)Stransky N, et al. Nat Commun. 2014;5:4846.8)Vaishnavi A, et al. Nat Med. 2013;19:1469-1472.9)Ardini E, et al. Mol Oncol. 2014;8:1495-507.10)Creancier L, et al. Cancer Lett. 2015;365:107-11.11)Knezevich SR, et al. Nat Genet. 1998;18:184-7.12)Rubin BP, et al. Am J Pathol. 1998;153:1451-8.13)Bourgeois JM, et al. Am J Surg Pathol. 2000;24:937-46.14)Chiang S, et al. Am J Surg Pathol. 2018;42:791-798.15)Wu G, et al. Nat Genet. 2014;46:444-450.16)国立がん研究センターSCRUM-Japan/MONSTAR-SCREEN

2008.

インフルエンザ予防効果、N95マスクvs.医療用マスク/JAMA

 外来医療従事者(HCP)におけるN95マスクと医療用マスク装着によるインフルエンザ予防効果を調べた結果、インフルエンザの罹患率について有意差は認められなかったことが示された。米国疾病予防管理センター(CDC)のLewis J. Radonovich Jr氏らが、米国の7医療センター・137外来部門で行ったクラスター無作為化プログマティック効果比較試験の結果で、JAMA誌2019年9月3日号で発表した。両マスクの効果については結論が出ていなかった。インフルエンザ予防効果を無作為にN95または医療用マスクに割り付けて比較 研究グループは2011年9月~2015年5月にかけて、米国内7医療センターの外来部門137ヵ所を通じて試験を行い、HCPがN95マスクまたは医療用マスクを装着した場合の、インフルエンザおよびウイルス性呼吸器感染症の予防効果を比較した。最終フォローアップは2016年6月だった。 4年間の試験期間中、毎年、ウイルス性呼吸器感染症の発症率がピークとなる12週間に、各医療センター内の外来部門を被験者数や患者数などでマッチングした。被験者は、無作為にN95マスク群と医療用マスク群に割り付けられ、呼吸器感染症の患者に近づく際には割り付け指定されたマスクを装着した。 主要アウトカムは、検査で確定したインフルエンザの罹患率。副次アウトカムは、急性呼吸器疾患、検査確定の呼吸器感染症、検査確定の呼吸器疾患、インフルエンザ様疾患の各罹患率などだった。また、介入アドヒアランスも評価した。インフルエンザ罹患率、N95マスク群8.2%、医療用マスク群7.2% N95マスクと医療用マスク装着によるインフルエンザ予防効果を調べた被験者数は2,862例で、平均年齢は43歳、女性は82.8%だった。N95マスク群は189クラスター(1,993例、延べ2,512HCPシーズン)、医療用マスク群は191クラスター(2,058例、延べ2,668HCPシーズン)だった(1被験者の複数シーズン参加あり)。 検査確定のインフルエンザ感染症は、N95マスク群207例(HCPシーズンの8.2%)、医療用マスク群193例(同7.2%)で、両群間に有意差は認められなかった(群間差:1.0ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.5~2.5、p=0.18、補正後オッズ比:1.18、95%CI:0.95~1.45)。 副次アウトカムについても両群で有意差はなく、急性呼吸器疾患はN95マスク群1,556例vs.医療用マスク群1,711例(群間差:-21.9/1,000HCPシーズン、[95%CI:-48.2~4.4]、p=0.10)、検査確定の呼吸器感染症は679例vs.745例(同:-8.9[-33.3~15.4]、p=0.47)、検査確定の呼吸器疾患は371例vs.417例(同:-8.6[-28.2~10.9]、p=0.39)、インフルエンザ様疾患は128例vs.166例(同:-11.3[-23.8~1.3]、p=0.08)だった。 マスクの装着について、「いつも」または「時々」と回答した人の割合は、N95マスク群89.4%に対し、医療用マスク群90.2%だった。

2009.

第15回 薬剤投与後の意識消失、原因は?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)アナフィラキシーはいつでも起こりうることを忘れずに!2)治療薬はアドレナリン! 適切なタイミング、適切な投与方法で!3)“くすりもりすく”を常に意識し対応を!【症例】62歳女性。数日前から倦怠感、発熱を認め、自宅で様子をみていたが、食事も取れなくなったため、心配した娘さんと共に救急外来を受診した。意識は清明であるが、頻呼吸、血圧の低下を認め、悪寒戦慄を伴う発熱の病歴も認めたため、点滴を行いつつ対応することとした。精査の結果、「急性腎盂腎炎」と診断し、全身状態から入院適応と判断し、救急外来で抗菌薬を投与し、病床の調整後入院予定であった。しかし、抗菌薬を投与し、付き添っていたところ、反応が乏しくなり、血圧低下を認めた。どのように対応するべきだろうか?●抗菌薬投与後のバイタルサイン意識10/JCS血圧88/52mmHg脈拍112回/分(整)呼吸28回/分SpO297%(RA)体温38.9℃瞳孔3/3mm+/+既往歴高血圧内服薬アジルサルタン(商品名:アジルバ)、アトルバスタチン(同:リピトール)アナフィラキシーの認識本症例の原因、これはわかりやすいですね。抗菌薬投与後に血圧低下を認める点から、アナフィラキシーであることは、誰もが認識できると思いますが、「アナフィラキシーであると早期に認識すること」が非常に大切であるため、いま一度整理しておきましょう。アナフィラキシーとは、「アレルゲンなどの侵入により、複数臓器に全身性のアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与えうる過剰反応」と定義されます。また、アナフィラキシーショックとは、それに伴い血圧低下や意識障害を伴う場合とされます1)。アナフィラキシーの診断基準は表1のとおりですが、シンプルに言えば、「食べ物、蜂毒、薬などによって皮膚をはじめ、複数の臓器に何らかの症状が出た状態」と理解すればよいでしょう。表2が代表的な症状です。皮膚症状は必ずしも認めるとは限らないこと、消化器症状を忘れないことがポイントです。そして、本症例のような意識消失の原因がアナフィラキシーであることもあるため注意しましょう。表1 アナフィラキシーの診断基準画像を拡大する表2 アナフィラキシーの症状と頻度画像を拡大するアナフィラキシーの初期対応-注射薬によるアナフィラキシーは「あっ」という間!アナフィラキシー? と思ったら、迷っている時間はありません。とくに、抗菌薬や造影剤など、経静脈的に投与された薬剤によってアナフィラキシーの症状が出現した場合には、進行が早く「あっ」という間にショック、さらには心停止へと陥ります。今までそのような経験がない方のほうが多いと思いますが、本当に「あっ」という間です。万が一の際に困らないように確認しておきましょう。一般的に、アナフィラキシーによって、心停止、呼吸停止に至るまでの時間は、食物で30分、蜂毒で15分、薬剤で5分程度と言われていますが、前述のとおり、経静脈的に投与された薬剤の反応はものすごく早いのです4)。アドレナリンを適切なタイミングで適切に投与!アナフィラキシーに対する治療薬は“アドレナリン”、これのみです! 抗ヒスタミン薬やステロイドを使う場面もありますが、どちらも根本的な治療薬ではありません。とくに、本症例のように、注射薬によるアナフィラキシーの場合には、重症化しやすく、早期に対応する必要があるため、アドレナリン以外の薬剤で様子をみていては手遅れになります。ちなみに、「前も使用している薬だから大丈夫」とは限りません。いつでも起こりうることとして意識しておきましょう。日本医療安全調査機構から『注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析』が平成30年1月に報告されました。12例のアナフィラキシーショックによる死亡症例が分析されていますが、原因として多かったのが、造影剤、そして抗菌薬でした。また、どの症例もアナフィラキシーを疑わせる症状が出てからアドレナリンの投与までに時間がかかってしまっているのです5)。アドレナリンの投与を躊躇してしまう気持ちはわかります。アドレナリンというと心肺停止の際に用いるもので、あまり使用経験のない人も多いと思います。しかし、アナフィラキシーに関しては、治療薬は唯一アドレナリンだけです。正しく使用すれば恐い薬ではありません。どのタイミングで使用するのか、どこに、どれだけ、どのように投与するのかを正確に頭に入れておきましょう。アドレナリンの投与のタイミングアドレナリンは、皮膚症状もしくは本症例のように明らかなアレルゲンの曝露(注射薬が代表的)があり、そのうえで、喉頭浮腫や喘鳴、呼吸困難感などのairwayやbreathingの問題、または血圧低下や失神のような意識消失などcirculationの問題、あるいは嘔気・嘔吐、腹痛などの消化器症状を認める場合に投与します。大事なポイントは、造影剤や抗菌薬などの投与後に皮膚症状がなくても、呼吸、循環、消化器症状に異常があったら投与するということです。アドレナリンの投与方法アドレナリンは大腿外側広筋に0.3mg(体型が大きい場合には0.5mg)筋注します。肩ではありません。皮下注でも、静注でもありません。正しく打てば、それによって困ることはまずありません。皮下注では効果発現に時間がかかり、静注では頻脈など心臓への影響が大きく逆効果となります。まずは筋注です!さいごに抗菌薬、造影剤などの薬剤は医療現場ではしばしば使用されます。もちろん診断、治療に必要なために行うわけですが、それによって状態が悪化してしまうことは、極力避けなければなりません。ゼロにはできませんが、本当に必要な検査、治療なのかをいま一度吟味し、慎重に対応することを心掛けておく必要があります。救急の現場など急ぐ場合もありますが、どのような場合でも、常に起こりうる状態の変化を意識し、対応しましょう。1)日本アレルギー学会 Anaphylaxis対策特別委員会. アナフィラキシーガイドライン. 日本アレルギー学会;2014.2)Sampson HA, et al. J Allergy Clin Immunol. 2006;117:391-397.3)Joint Task Force on Practice Parameters, et al. J Allergy Clin Immunol. 2005;115:S483-523.4)Pumphrey RS. Clin Exp Allergy. 2000;30:1144-1150.5)日本医療安全調査機構. 医療事故の再発防止に向けた提言 第3号 注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析. 日本医療安全調査機構;2018.

2010.

後期早産・妊娠高血圧腎症妊婦、計画出産は有益か/Lancet

 後期早産・妊娠高血圧腎症の女性における計画出産は、待機的管理と比較して、母体の障害発生や重症高血圧の頻度は低い一方で、新生児治療室への入室が多いことが、英国・キングス・カレッジ・ロンドンのLucy C. Chappell氏らが行ったPHOENIX試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年8月28日号に掲載された。後期早産・妊娠高血圧腎症の女性では、母体の疾患進行に関連する制約と、新生児の合併症とのバランスをとる必要があり、至適な分娩開始時期は不明だという。英国の46施設が参加した無作為化試験 研究グループは、後期早産・妊娠高血圧腎症女性では、計画された早期の出産開始が、待機的管理(通常治療)と比較して、新生児/乳幼児の転帰を悪化させずに、母体の有害な転帰を抑制するかどうかを検証する目的で、多施設共同非盲検無作為化対照比較試験を実施した(英国国立衛生研究所[NIHR]健康技術評価プログラムの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、妊娠期間が34~<37週で、単胎または2絨毛膜2羊膜双胎の妊娠高血圧腎症または加重型妊娠高血圧腎症の女性であった。被験者は、48時間以内に計画的に出産を開始する群または待機的管理を行う群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 母体の主要評価項目は、障害発生(fullPIERSモデルの転帰:母体死亡、中枢神経系・心肺・血液・肝臓・腎臓の障害、胎盤早期剥離)と、割り付け後の収縮期血圧≧160mmHgの複合とし、優越性の評価を行った。周産期の主要評価項目は、出産から7日以内の新生児の死亡と、新生児の退院前の新生児治療室への入室の複合とし、非劣性の評価を行った(非劣性マージンは10%)。 2014年9月29日~2018年12月10日の期間に、イングランドとウェールズの46の産科施設で参加者の登録が行われた。分娩時期の共同意思決定のために、転帰のトレードオフを説明すべき 901例の女性が登録され、計画出産群に450例、待機的管理群には451例が割り付けられた。intention-to-treat(ITT)解析の対象は、計画出産群が448例の女性(平均年齢30.6[SD 6.4]歳)と471例の乳幼児、待機的管理群は451例の女性(30.8[6.3]歳)と475例の乳幼児であった。 母体の複合アウトカムの発生率は、計画出産群が65%(289例)と、待機的管理群の75%(338例)に比べ有意に低く、優越性が確認された(補正後相対リスク[RR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.79~0.94、p=0.0005)。 一方、周産期の新生児の複合アウトカムの発生率は、計画出産群は42%(196例)であり、待機的管理群の34%(159例)と比較して有意に高かった(補正後RR:1.26、95%CI:1.08~1.47、p=0.0034)。per-protocol(PP)解析でも、同様の結果が示され(1.40、1.18~1.66、p<0.0001)、周産期の複合アウトカムに関して、計画出産群は待機的管理群に劣ると判定された。 副次評価項目である母体の障害発生(計画出産群15% vs.待機的管理群20%、補正後RR:0.76、95%CI:0.59~0.98)および収縮期血圧≧160mmHg(60% vs.69%、0.85、0.77~0.94)はいずれも計画出産群が優れ、重症妊娠高血圧腎症への進行(64% vs.74%、0.86、0.79~0.94)も計画出産群のほうが良好だった。 死産、出産後7日以内の新生児の死亡、退院前の新生児の死亡は、両群とも認められなかった。新生児治療室への入室は、計画出産群で頻度が高かった(42% vs.34%、補正後RR:1.26、95%CI:1.08~1.47)。また、母親と新生児を合わせた医療費は計画出産群のほうが安価だった(p=0.00094)。 重篤な有害事象は、計画出産群の9例、待機的管理群の12例で認められた。このうち両群2例ずつが介入に関連する可能性があり、待機的管理群の1例は介入に関連する可能性が高いと判定された。 著者は、「この母体と新生児の転帰のトレードオフについては、分娩時期に関する共同意思決定(shared decision making)のために、後期早産・妊娠高血圧腎症女性と話し合う必要がある」と指摘している。

2011.

脳クレアチン欠乏症候群〔CCDSs:cerebral creatine deficiency syndromes〕

1 疾患概要■ 概念・定義脳クレアチン欠乏症(cerebral creatine deficiency syndromes:CCDSs)は、脳内クレアチンが欠乏することにより発症し、知的障害、言語発達遅滞、痙攣、自閉症スペクトラム、筋緊張低下を特徴とする遺伝性疾患である。CCDSsは、クレアチン産生障害によるアルギニン:グリシンアミジノ基転移酵素(AGAT)欠損症(MIM#612718)と、グアニジノ酢酸メチル基転移酵素(GAMT)欠損症(MIM#612736)、およびクレアチン輸送障害によるクレアチントランスポーター(SLC6A8)欠損症(MIM#300352)の3疾患からなる。とくに、AGAT欠損症、およびGAMT欠損症はクレアチン投与が症状改善に有効であり、治療法のある知的障害として、見逃してはいけない疾患である。 本症は2018年4月に小児慢性特定疾病に登録されている。■ 疫学SLC6A8欠損症は、男性の知的障害(IQ<70)の0.3〜3.5%の原因と推定され、知的障害の単一遺伝子疾患として頻度の高い疾患の1つであるが、国内における症例の報告は10家系未満であり、わが国では未診断症例が多いと推測されている。AGAT欠損症は、世界でも極めてまれである。GAMT欠損症は、SLC6A8欠損症についで頻度が高く、110例以上の報告があるが、国内では1例のみ報告されている。■ 病因クレアチンは、グアニジノ基(HN=C(NH2)2)を持つグアニジノ化合物の1つである。クレアチンとATPは、クレアチンキナーゼにより可逆的にクレアチンリン酸とADPに変換する。脳におけるクレアチンの役割は不明な点も多いが、脳の機能や発達においてATPを的確に供給するための貯蔵庫としての機能以外に、神経修飾物質、神経伝達物質、抗酸化作用、細胞保護作用、骨や筋の成長促進作用、神経保護作用、視床下部に働き食欲や体重を調節する作用が報告されている。クレアチンは、食事の摂取によるものと、体内で生成されるものとがある。体内でのクレアチン生成は、グリシンアミジノ基転移酵素(L-arginine:glycine amindinotransferase:AGAT)とグアニジノ酢酸メチル基転移酵素(guanidinoacetate methyltransferase:GAMT)の2つの酵素により生成される。グリシン(glycine)はAGATによりアルギニン(L-arginine)のグアニジノ基を受け取り、グアニジノ酢酸(guanidinoacetate)とオルニチンになり、グアニジノ酢酸はGAMTによってメチル化され、クレアチンとなる。血液中のクレアチンの組織への取り込みやクレアチンの尿細管での再吸収はクレアチントランスポーター(SLC6A8)を介している(図1)。AGATとGAMTはそれぞれ、GATM遺伝子(15q21.1)とGAMT遺伝子(19p13.3)にコードされ、常染色体劣性(潜性)遺伝形式で男女とも発症する。SLC6A8は、SLC6A8遺伝子(Xq28)にコードされ、X連鎖性遺伝形式で主に男性に発症する。女性も男性に比べると一般に軽症ではあるが、さまざまな程度の症状を呈する。図1 クレアチン代謝経路画像を拡大する■ 症状知的障害(軽度〜重度)を主症状に、言語発達遅滞、痙攣、自閉症スペクトラム、筋緊張低下を特徴とする。運動異常(錐体外路症状)や行動異常を呈することもある。■ 予後合併症の程度によるが、生命予後は悪くないと推測される。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)1)プロトン-MRスペクトロスコピー(1H-MRS)(図2)3疾患に共通の所見として、Crピークの低下を認める。2)尿・血清・髄液中のグアニジノ酢酸、クレアチン、クレアチニンの測定(表)スクリーニングとして有用である。とくに、知的障害のある男性患者では、尿中クレアチン/クレアチニン比上昇(mg/dL換算で、2以上)により、SLC6A8欠損症が強く疑われる。尿・血清のクレアチン、クレアチニンは検査会社で測定可能である。LC-MS/MSあるいはGC-MSを用いたグアニジノ酢酸を含めたグアニジノ化合物の代謝産物は研究室レベルで測定可能である。図2 脳クレアチン欠乏症候群の診断画像を拡大する表 脳クレアチン欠乏症の診断画像を拡大する3)遺伝子検査検査会社(かずさDNA研究所など)で解析可能である(本稿公開の時点では、保険収載されておらず、自費診療となる)。とくに、女性のSLC6A8欠損症では、唯一の診断方法である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)AGAT欠損症およびGAMT欠損症には、クレアチン補充療法が有効である。後者では、神経細胞毒性のあるグアニジノ酢酸の産生を抑えるために、オルニチン、安息香酸ナトリウムの併用、アルギニン摂取制限を行う。SLC6A8欠損症に対しては、クレアチン投与は有効ではないが、酵素活性が残存している可能性がある患者(とくに女児)ではクレアチン単独、あるいはアルギニンやグリシンとの併用が有効であるかもしれない。4 今後の展望SLC6A8欠損症に対しては、海外においては、サイクロクレアチンの臨床研究が始まっている。ホスホクレアチン、クレアミド(クレアチルグリシンメチルエステル)、クレアチンエチルエステル、ドデシルクレアチンエステル、S-アデノシルメチオニンなども可能性がある。また、タンパクの折りたたみに影響を与える遺伝子変異の場合、シャペロン療法が有効な可能性がある。5 主たる診療科小児科(小児神経内科)、児童精神科、神経内科、遺伝子診療部門(遺伝カウンセリング)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病 脳クレアチン欠乏症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)遺伝子医療実施施設検索システム(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本小児神経学会認定小児神経専門医(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)ATR-X症候群研究班&脳クレアチン欠乏症候群研究班(医療従事者向けのまとまった情報)Association for Creatine Deficiencies(クレアチン欠乏症協会の英文による医療従事者向けのまとまった情報)GeneReviews(「遺伝性疾患情報サイト」英文による医療従事者向けのまとまった情報)Treatable Intellectual Disability(「治療できる知的障害について」英文による医療従事者向けのまとまった情報)1)van de Kamp JM, et al. J Med Genet. 2013;50:463-472.2)Kato H, et al. Brain Dev. 2014;36:630-633.3)野崎章仁ほか. 脳と発達. 2015;47:49-52.4)Mercimek-Mahmutoglu S, et al. GeneReviews. December 10;2015.5)Curt MJC, et al. Biochimie. 2015;119:146-165.公開履歴初回2019年09月10日

2012.

インフルエンザ、リンゴ病、例年比で「かなり多い」~感染研

 国立感染症研究所が9月6日付でまとめた感染症週報(8月19~25日)によると、全国の指定された医療機関(定点)約5,000ヵ所から報告されたインフルエンザおよび伝染性紅斑(リンゴ病)の報告数が、過去5年の同時期(前週、当該週、後週)と比較して「かなり多い」数値となっており、注意が必要だ。 インフルエンザは、全国総数では定点当たりで0.24(報告数:1,157)となり、都道府県別に見ると、前週に引き続き、沖縄県で突出して多く(定点当たり:13.21)、次いで大分県(同:0.47)、三重県(同:0.39)などとなっている。学校では新学期が始まって間もないが、患者数が急増している沖縄県をはじめ、東京都や埼玉県などの首都圏、九州地方などで学級閉鎖や学年閉鎖が報告されている。 伝染性紅斑は、小児科定点報告疾患だが、滋賀県(定点当たり:1.88)、長野県(同1.53)、福岡県(同1.43)などで多くなっている。 このほか、RSウイルス、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、ヘルパンギーナ、流行性耳下腺炎などの小児科定点報告疾患における定点当たり報告数が増加している。手足口病については、依然定点当たり報告数が多い状態で推移しているものの、減少傾向にある。

2013.

小児・思春期2型糖尿病患者におけるGLP-1受容体作動薬の有用性と安全性(解説:吉岡成人氏)-1111

 2019年6月、米国食品医薬品局(FDA)は10歳以上の2型糖尿病患者に対してGLP-1受容体作動薬であるリラグルチドの適応を承認した。米国において小児2型糖尿病治療薬が承認されるのは、2000年のメトホルミン以来のことである。 わが国における『糖尿病診療ガイドライン2016』(日本糖尿病学会編・著)には、小児・思春期における2型糖尿病の治療薬について、メトホルミン(10歳以上)とグリメピリドを除いた薬剤は「『小児などに対する安全性は確立していない』ことを本人ならびに保護者に伝え、使用に際しては説明に基づいた同意を得るようにする」と記載されている。 NEJM誌8月15日号に、基礎インスリンの併用の有無を問わず、メトホルミンによる治療を受けている小児・思春期2型糖尿病患者にリラグルチドを追加投与することの有用性について検討した成績が発表されている(Tamborlane WV, et al. N Engl J Med. 2019;381:637-646.)。10~16歳の患者135例を、リラグルチドを最大1.8mg/日まで追加投与する群とプラセボ群に分け、26週間二重盲検試験を行い、その後、非盲検試験として26週間延長して追跡を行っている。リラグルチド投与群では26週でHbA1cが0.64ポイント低下し、プラセボ群では0.42ポイント上昇しており、その差は-1.06ポイント、52週では群間の差が-1.30ポイントとなった。リラグルチド投与群では、嘔気、嘔吐、下痢など消化器系の有害事象が投与開始8週目までに多かったものの、小児・思春期糖尿病患者においてGLP-1受容体作動薬を併用することの血糖コントロール改善に対する有用性が確認されたと結論付けている。 2型糖尿病では経年的に膵β細胞の容積が減少し、それに伴い、インスリン分泌能が低下する。その要因として、膵β細胞のアポトーシスや分化転換(trans-differentiation)が関与していると想定されている。膵β細胞が脱分化し、α細胞などの非β細胞に分化するのではないかというのである。マウスのデータではあるが、GLP-1が膵α細胞を分化転換させ、膵β細胞を新生させるという実験成績もある(Lee YS, et al. Diabetes. 2018;67:2601-2614.)。膵細胞の分化転換に重要な役割を担っていると推定されるGLP-1 の受容体は多くの臓器に存在している。さまざまな臓器においてGLP-1受容体を長期にわたって刺激することの安全性は確立されておらず、膵腫瘍の発生リスクに関しても一定の結論は得られていない。 臨床の現場において、新たに、有用性が高い革新的な治療を行うことは重要であろうが、保守的であっても、安全性の高い医療を心掛ける姿勢も忘れてはならないのではなかろうか。

2014.

ゾフルーザに低感受性の変異株に関する調査結果

 昨年発売された抗インフルエンザウイルス薬のバロキサビル(商品名:ゾフルーザ)は、臨床試験において、本剤に対する感受性が低下したPA/I38アミノ酸変異株の発現が報告されたことから、各国でその影響について検証が進められている。 2019年9月2日、塩野義製薬は、バロキサビルの特定使用成績調査におけるPA/I38アミノ酸変異株に関する結果を公表した。この内容は8月28日~9月1日にシンガポールで開催されたOptions X for the Control of Influenza(OPTIONS X)にて発表された。同学会では、1 歳以上12 歳未満の小児インフルエンザ患者に対するグローバル第III相試験、インフルエンザ発症抑制効果を検証した国内第III相試験の結果も報告された。わが国の特定使用成績調査におけるPA/I38アミノ酸変異株 OPTIONS Xでは、2018-2019シーズンに実施されたバロキサビルの特定使用成績調査における、PA/I38アミノ酸変異株に関する結果を、齋藤 玲子氏(新潟大学大学院 医歯学総合研究科 教授)が発表した。本調査の対象は、国内6医療施設を受診しバロキサビルの投与を受けた20歳以下のA型インフルエンザ患者96例で、A/H1N1pdm型が32例、A/H3N2型が64例だった。 主な結果は以下のとおり。・バロキサビル投与3~6日後(再診時)におけるPA/I38Tアミノ酸変異株は、A/H1N1pdm型感染患者の6.3%(2/32例)、A/H3N2型感染患者の10.9%(7/64例)で検出された。同様に、PAタンパク質のどこかに変異の入った株の出現頻度は、それぞれ12.5%(4/32例)および14.1%(9/64例)だった。・解熱までの平均時間は、再診時にPA/I38Tアミノ酸変異株が検出された患者(9例)では0.99±1.21日、変異のないウイルス株が検出された患者(21例)では1.02±1.06日、インフルエンザウイルスが検出限界以下であった患者(62例)では0.76±0.86日で、PA/I38Tの変異による差は認められなかった。・患者より単離したPA/I38変異株は、バロキサビルに対する感受性がおよそ1/50~1/250に低下していたが、これらの患者個別の解熱までの時間はいずれも1日程度だった。小児における有害事象と有効性 同学会では、適応追加に向けた第III相試験の結果も報告された。1つは、1歳以上12歳未満の小児インフルエンザ患者を対象とするMINISTONE-2試験で、本試験はRocheグループによる多施設共同、無作為化、二重盲検比較のグローバル第III相試験である。 主要評価項目として、被験薬投与後29日目までに有害事象(重篤な有害事象を含む)を示した被験者の割合が検討された。その結果、1つ以上の有害事象を示した被験者の割合は、バロキサビル群で46.1%、オセルタミビル群で53.4%だった。本試験で示された小児における安全性プロファイルに、これまでに実施された成人・青少年における試験結果との矛盾はなかった。 さらに、副次評価項目としてバロキサビルの有効性をオセルタミビルと比較した結果、インフルエンザ罹病期間の中央値は、バロキサビル群で138.1時間、オセルタミビル群で 150.0時間だった。一方、体内からのウイルス排出期間の中央値は、バロキサビル群24.2時間、オセルタミビル群75.8時間で、バロキサビルはウイルス排出期間を短縮した。国内予防投与試験の結果、インフルエンザ発症が86%減少 日本でバロキサビルの予防効果を検討したBLOCKSTONE試験の結果も報告された。本試験は、インフルエンザ患者(初発)の同居家族または共同生活者750例を対象に実施した、多施設共同、無作為化、プラセボ対照二重盲検比較の第III相試験である。 主要評価項目として、被験薬を予防投与後10日間でインフルエンザを発症した被験者の割合が検討された。その結果、インフルエンザウイルスに感染し、発熱かつ呼吸器症状を発現した被験者の割合は、バロキサビル群1.9%(7/374例)、プラセボ群13.6%(51/375例)であり、バロキサビルの投与により、インフルエンザの発症割合はプラセボ群に対し86%減少した(p<0.0001)。 また、サブグループ解析により、重症化および合併症を起こしやすいリスク要因を持つ被験者および12歳未満の小児においても、バロキサビルはプラセボに対し発症抑制効果を示し、ウイルスの亜型やワクチン接種の有無にかかわらず有効だった。 有害事象の発現率は、バロキサビル群22.2%、プラセボ群20.5%で、バロキサビル群において重篤な有害事象の発現は認められなかった。

2015.

家族性高コレステロール血症の基礎知識

 8月27日、日本動脈硬化学会は、疾患啓発を目的に「家族性高コレステロール血症」(以下「FH」と略す)に関するプレスセミナーを開催した。 FHは、単一遺伝子疾患であり、若年から冠動脈などの狭窄がみられ、循環器疾患を合併し、予後不良の疾患であるが、診療が放置されている例も多いという。 わが国では、世界的にみてFHの研究が進んでおり、社会啓発も広く行われている。今回のセミナーでは、成人と小児に分け、本症の概要と課題が解説された。意外に多いFHの患者数は50万人超 はじめに斯波 真理子氏(国立循環器病研究センター研究所 病態代謝部)を講師に迎え、成人FHについて疾患の概要、課題について説明が行われた。FHは大きくヘテロ結合体とホモ結合体に分類できる。 FHのヘテロ結合体は、LDL受容体遺伝子変異により起こり、200~500例に1例の頻度で患者が推定され、わが国では50万人以上とされている。生来LDL-C値が高い(230~500mg/dL)のが特徴で、40代(男性平均46.5歳、女性平均58.7歳)で冠動脈疾患などを発症し、患者の半数以上がこれが原因で死亡する。 診断では、(1)高LDL-C血症(未治療で180mg/dL以上)、(2)腱黄色腫あるいは皮膚結節性黄色腫、(3)FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(2親等以内)の3項目中2項目が確認された場合にFHと診断する。 また、診断では、LDL-C値に加えて、臨床所見ではアキレス腱のX線画像が特徴的なこと(アキレス腱厚をエコーで測定することも有用)、角膜輪所見が若年からみられること、家族に高コレステロール血症や冠動脈疾患患者がみられることなど、詳細なポイントを説明するとともに、診断のコツとして「『目を見つめ よく聴き、話し 足触る』ことが大切」と同氏は強調した。 FH患者は、健康な人と比較すると、約15年~20年早く冠動脈疾患を発症することから、早期より厳格な脂質コントロールが必要となる。 本症の治療フローチャートでは、生活習慣改善・適正体重の指導と同時に脂質降下療法を開始し、LDL-C管理目標値を一次予防で100mg/dL未満あるいは治療前の50%未満(二次予防70mg/dL未満)にする。次に、スタチンの最大耐用量かつ/またはエゼチミブ併用し、効果が不十分であればPCSK9阻害薬エボロクマブかつ/またはレジンかつ/またはプロブコール、さらに効果が不十分であればLDL除去療法であるLDLアファレシスを行うとしている。医療者も社会も理解しておくべきFHの病態 次に指定難病であるホモ結合体について触れ、本症の患者数は100万例に1例以上と推定され、本症の所見としてコレステロール値が500~1,000mg/dL、著明な皮膚および腱黄色腫があると説明を行った。確定診断では、LDL受容体活性測定、LDL受容体遺伝子解析で診断される。 治療フローチャートでは、ヘテロ受容体と同じように生活習慣改善・適正体重の指導と同時に脂質降下療法を開始し、LDL-C管理目標値を一次予防で100mg/dL未満(二次予防70mg/dL未満)にする。次に、第1選択薬としてスタチンを速やかに最大耐用量まで増量し、つぎの段階ではエゼチミブ、PCSK9阻害薬エボロクマブ、MTP阻害薬ロミタピド、レジン、プロブコールの処方、または可及的速やかなるLDLアファレシスの実施が記載されている。ただ、ホモ結合体では、スタチンで細胞内コレステロール合成を阻害してもLDL受容体の発現を増加させることができず、薬剤治療が難しい疾患だという。その他、本症では冠動脈疾患に加え、大動脈弁疾患も好発するので、さらに注意する必要があると同氏は指摘する。 最後に同氏は「FHは、なるべく早く診断し、適切な治療を行うことで、確実に予後を良くすることができる。そのためには、本症を医療者だけでなく、社会もよく知る必要がある。とくにFHでPCSK9阻害薬の効果がみられない場合は、LDL受容体遺伝子解析を行いホモ接合体を見つける必要がある。しかし、このLDL受容体遺伝子解析が現在保険適応されていないなど課題も残されているので、学会としても厚生労働省などに働きかけを行っていく」と展望を語り、説明を終えた。小児の治療では成長も加味して指導が必要 続いて土橋 一重氏(山梨大学小児科、昭和大学小児科)が、次のように小児のFHについて解説を行った。 小児のヘテロ接合体の診断では、「(1)高LDL-C血症(未治療で140mg/dL以上、総コレステロール値が220mg/dL以上の場合はLDL-Cを測定する)、(2)FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(2親等以内)の2項目でFHと診断する(小児の黄色腫所見はまれ)」と説明した。また、「小児では、血液検査が行われるケースが少なく、本症の発見になかなかつながらない。採血の機会があれば、脂質検査も併用して行い、早期発見につなげてほしい」と同氏は課題を指摘した。 治療では、確定診断後に早期に生活習慣指導を行い、LDL-C値低下を含めた動脈硬化リスクの低減に努め、効果不十分な場合は10歳を目安に薬物療法を開始する。 とくに生活習慣の改善は、今後の患児の成長も考慮に入れ、できるだけ早期に食事を含めた生活習慣について指導し、薬物療法開始後も指導は継続する必要がある。食事療法について、総摂取量は各年齢、体格に応じた量とし、エネルギー比率も考慮。具体的には、日本食を中心とし、野菜を十分に摂るようにする。また、適正体重を維持し、正しい食事習慣と同時に運動習慣もつける。そして、生涯にわたる禁煙と周囲の受動喫煙も防止することが必要としている。 薬物療法を考慮する基準として、10歳以上でLDL-C値180mg/dL以上が持続する場合とし、糖尿病、高血圧、家族歴などのリスクも考える。第1選択薬はスタチンであり、最小用量より開始し、肝機能、CK、血清脂質などをモニターし、成長、二次性徴についても観察する。 管理目標としては、LDL-C値140mg/dLとガイドラインでは記載されているが、とくにリスク因子がある場合は、しっかりと下げる必要があるとされているとレクチャーを行った。

2016.

インフルエンザ増加傾向、例年比較で「かなり多い」~感染研

 国立感染症研究所が8月30日付でまとめた感染症週報(8月12~18日)によると、全国の指定された医療機関(定点)約5,000ヵ所から報告されたインフルエンザの報告数が3週連続で増加しており、過去5年の同時期(前週、当該週、後週)と比較して「かなり多い」数値だった。 全国総数では定点当たりで0.23(報告数:1,075)となり、都道府県別に見ると、沖縄県で突出して多く(定点当たり:12.26)、次いで愛媛県(同:0.38)、福島県(同:0.28)となっている。 このほか、今夏各地で流行した手足口病やRSウイルスなどの主な小児科定点報告疾患については、軒並み減少傾向。一方で、マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数が2週連続で増加している。都道府県別では、北海道(定点当たり:0.65)、大阪府(同:0.50)、栃木県(0.43)で報告数が多かった。

2017.

スクリーンタイムとうつ病との関連

 スクリーンを見ている時間(スクリーンタイム)の増加は、抑うつ症状増加と関連していることがわかっているが、縦断的研究が不足している。カナダ・モントリオール大学のElroy Boers氏らは、スクリーンタイムとうつ病との関連を繰り返し測定し、3つの説明仮説(超越性、上方社会比較、スパイラル強化)について検証を行った。JAMA Pediatrics誌オンライン版2019年7月15日号の報告。 パーソナリティーをターゲットとした薬物とアルコール予防介入の4年間の有効性を評価したランダム化臨床試験のデータを用いて、2次解析を行った。本研究では、グレーターモントリオール地区の31校に入学した7年生を対象に年次調査を行い、4年間のスクリーンタイムとうつ病を評価した。データは、2012年9月~2018年9月に収集し、2018年12月に分析を行った。独立変数は、ソーシャルメディア、テレビ、テレビゲーム、コンピューターの使用とした。うつ症状をアウトカムとし、Brief Symptoms Inventoryを用いて測定した。運動および自尊心を評価し、超越性と上方社会比較の仮説検証を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象は、3,826人(女性1,798人[47%]、平均年齢:12.7±0.5歳)であった。・うつ症状は年々増加していた。1年目平均は4.29±5.10点、4年目平均は5.45±5.93点であった。・学校や個人レベルでのrandom interceptを含むマルチレベルモデルでは、スクリーンタイムとうつ病との個人間および個人内での関連性が推定された。・個人間では、ソーシャルメディアに費やされる時間が増加するごとに、抑うつ症状の0.64ユニット増加し(95%CI:0.32~0.51)有意な関連が認められた。・コンピューターの使用についても同様の関連が認められた(0.69ユニット、95%CI:0.47~0.91)。・個人内では、特定の年にソーシャルメディアの使用が1時間増加すると、その年のうつ症状が0.41ユニット増加し有意な関連が認められた。・テレビにおいても、同様の関連が認められた(0.18ユニット、95%CI:0.09~0.27)。・スクリーンタイムと運動や自尊心の間の有意な個人間および個人内の関連は、上方社会比較仮説を支持した。・ソーシャルメディアと自尊心に関する個人間および個人内の関連における有意な相互作用は、スパイラル強化の仮説を支持した。 著者らは「ソーシャルメディアやテレビのスクリーンタイムとうつ病との関連が示唆された。予防措置の開発や親の助言の際には、これらのスクリーンタイムを考慮する必要がある」としている。

2018.

全国の医療施設、災害対策の実情はいかに!?

 地震大国の日本において、異常気象の常態化によるスコール、それに伴う洪水・土砂災害などが後を絶たない。このような災害時には、DMAT(災害急性期に活動できる機動性を持った トレーニングを受けた医療チーム)と呼ばれる災害派遣医療チームにより医療支援が行われる場合がある。 しかし、医療者一人ひとりが日頃から災害を意識し準備を行っていなければ、家族や患者、ましてや自らの命は救えないだろう。 そこで、ケアネットでは2019年7月に会員医師約200名を対象とし、「院内の災害対策」に関するアンケート調査を実施。医師たちの災害に対する意識や対策状況などの実態について、実情や意見を聞いた。アンケート回答者の内訳 アンケートは2019年8月1~7日、ケアネット会員の医師を対象にインターネット上で実施。回答者の年代別内訳は50代が31%と最も多く、40代(28%)、30代(20%)、60代(14%)と続いた。このように今回のアンケートでは責任世代の回答が多く、具体的な対策を行っていると回答したのも、この年代が多かった。病床数別内訳は、200床以上が58%で最も多く、0床(20%)、100~199床(12%)、20~99床(6%)、1~19床(3%)、NA(2%)だった。早めの休診連絡で患者を外の危険から守る 「自施設で災害対策を行っている」と回答した方の具体策内訳は、休診連絡(29%)が最も多く、その他(25%)、備蓄(20%)、処方対応(15%)、災害拠点病院(6%)、スタッフの保護(5%)と続いた。 具体的な対策の一例を以下に示す。・インターネットで休診状況発表・避難経路の確立・備蓄食料、非常電源、災害対応チームの訓練・薬剤の処方日数を10日分ほど増やした・入院患者のための食料、飲料水の備蓄を増やした・泊まれるように寝袋を用意した また、大規模災害の場合、特定施設の問題ではなく地域の問題に発展するため、医療施設間、さらには地方自治体との連携が要求される。これを踏まえ、地域での災害対策の話し合い実施状況と実施時に話し合われた内容についても調査した。 この結果を含む、今回のアンケート調査の詳細データや自由記述で挙げられた具体的な理由は、CareNet.comに掲載中。

2019.

災害対策、周りの施設はどうしている?-アンケート結果発表

9月1日は「防災の日」。皆さまの施設は災害時に備え、万全の対策を行っているでしょうか? 自然災害時には医師も被災者の1人。しかし、自らの家族だけではなく、経営者や勤務医としての立場から患者や従業員の命を守ることが求められます。今後、いつなんどき発生するかわからない災害に備え、全国の医師の災害に対する認識や自施設での取り組みについて、CareNet.com会員医師約200人に調査しました。結果概要「自施設において、検討または実施している対策はあるか?」という問いに対し、半数以上の施設で対策をしていないという結果に。画像を拡大する対策を行っていない回答者の中には、「災害拠点病院ではない」という理由も見られたが、災害拠点病院以外でもスタッフや患者への配慮が必要となるため、スタッフとの話し合いは欠かせないと考えられる。医師が考える具体的な対策とは…?自施設での対策を実施していると回答した69人(うち、4人は無効)における主な対策の内訳を『スタッフの安全確保』『休診対応』『災害拠点病院としての対応』『(日々の診療における)薬剤処方に関する対応』『備蓄』『その他』の6つに区分したところ、グラフのような結果になった。画像を拡大する具体的な回答として、「スタッフの出勤方法と出勤時間の確認」「緊急連絡用の掲示板整備やホームページでの休診連絡」「災害拠点病院として他院に連絡をとる」「日頃から薬剤の処方日数を1週間分増やす」「缶詰、米、水、燃料を備蓄する」などが挙がった。また、『その他』としては、「自家発電機を準備」「行政と連携し障害者や老人の存在を把握する」「在宅酸素療法の会社に災害時の態勢を確認」「院内放送で津波の有無を連絡」などがあった。具体策を講じている回答者で最も割合が高かった年代は、50代(34%)と40代(26%)であった。また、所属施設で最も割合が高かったのは、200床以上の病院(60%)で、続いて0床のクリニックなどが15%だった。画像を拡大する地域での話し合いは14%にとどまる「近隣のクリニックや病院、地域医師会などで対策を話し合ったことはあるか?」については、あると回答したのは14%のみで、ほとんどの施設が「地域間での話し合いの経験がない」と回答した。画像を拡大する地域の話し合いがあると回答した30人(14%)には、自施設での対策を行っていない12人が含まれていた。「ない」の理由は“機会がない”だけ?話し合われた内容としては、「患者の情報提供」「受け入れ状況の伝達」「避難経路や連絡・中継場所」「患者さんへの説明方法」「地震発生時の拠点病院、地域の医療ケア児の対策」「スプリンクラーの設置について」などが挙がった。一方で、「ない」と答えた医師の主な回答として「話し合いの機会がない」が最も多く(23%)、「自治体に委ねられている」「役員・立場ではない」「近隣のクリニックとは対象疾患が異なるから」などがあった。また7%と少数意見ではあるが、「大きな災害の想定がない」など危機感の乏しさも明らかになった。画像を拡大する設問詳細Q1.自施設において、検討または実施している対策はありますか?あるないQ2.設問1で「ある」と答えた方にお伺いします。それはどのような対策ですか?(自由記述)例)「薬剤の処方日数を1週間分増やした」「患者ごとにインスリンなどの対策を説明」「スタッフや来院患者の被害を防ぐため、早めに休診を決定し、患者にその旨を連絡する」などQ3.災害対策について、近隣のクリニックや病院、地域医師会などで対策を話し合ったことはありますか?あるないQ4.設問3で「ある」と答えた方は主な対策内容を、「ない」と答えた方はその理由をお答えください(自由記述)。画像を拡大する

2020.

アナフィラキシーには周囲の理解が必要

 2019年8月21日、マイランEPD合同会社は、9月1日の「防災の日」を前に「災害時の食物アレルギー対策とは」をテーマにしたアナフィラキシー啓発のメディアセミナーを開催した。セミナーでは、アナフィラキシー症状についての講演のほか、患児の親の声も紹介された。アナフィラキシーの原因、小児は食物、成人は昆虫 セミナーでは、佐藤さくら氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター 病態総合研究部)を講師に迎え、「アナフィラキシーの基礎知識とガイドラインに基づく正しい治療法について」をテーマに講演を行った。 アナフィラキシーとは「短時間に全身に現れる激しい急性のアレルギー反応」とされ、その原因として抗菌薬やNSAIDsなどの医薬品、手術関連、ラテックス、昆虫、食物などがある。とくに小児では食物が本症の一番大きな誘因となる(65%)のに対し、成人では昆虫刺傷が一番大きな誘因となる(48%)というデータが欧州では報告されている1)。 日本アレルギー学会が行った「全国アナフィラキシー症例集積研究」(n=767、平均年齢6歳[3~21歳])によれば、本症の誘因は食物(68.1%)、医薬品(11.6%)、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA:5.2%)の順で多く、誘因が食物の場合、牛乳(21.5%)、鶏卵(19.7%)、小麦(12.5%)の順で発生があったと報告されている。また、アナフィラキシーショックによる死亡は毎年60例前後(多い年は70例超)が報告されている。必要ならば早くアドレナリン筋注を 診断として次の3項目のいずれかに該当すればアナフィラキシーと診断する。1)皮膚症状(全身の発疹、瘙痒または紅斑)または粘膜症状(口唇・舌・口蓋垂の腫脹など)のいずれかが存在し、急速(数分~数時間以内)発現する症状で、かつ呼吸症状(呼吸困難、喘鳴など)、循環器症状(血圧低下、意識障害)の少なくとも1つを伴う2)一般的にアレルゲンとなりうるものへの曝露後、急速に(数分~数時間以内)発現する皮膚・粘膜症状(全身の発疹、瘙痒、紅潮、浮腫)、呼吸器症状(呼吸困難、喘鳴など)、循環器症状(血圧低下、意識障害)、持続する消化器症状(腹部疝痛、嘔吐)のうち、2つ以上を伴う3)当該患者におけるアレルゲンへの曝露後の急速な(数分~数時間以内)な血圧低下。具体的には、収縮期血圧の場合、平常時血圧の70%未満、または生後1~11ヵ月まで(<70mmHg)、1~10歳(<70mmHg+2×年齢)、11歳~成人(<90mmHg) 以上の診断のあとグレード1(軽症)、2(中等症)、3(重症)の重症度を評価2)し、それぞれのグレードに応じた治療が行われる。 グレード1(軽症)であれば抗ヒスタミン薬やβ2アドレナリン受容体刺激薬、ステロイド薬が選択されるが、即効性はない。グレード3(重症)ならアドレナリン筋肉注射(商品名:エピペンなど)の適応となる(ただしグレード2[中等症]でも過去に重篤な本症の既往がある、病状進行が激烈な場合、気管支拡張薬吸入で改善しない呼吸症状では適応となる)。 佐藤氏は、本症の診療では「初期対応が大切で、軽いうちから治療していくことが重要。エピペンの使用率が低く、使用に対する教育・啓発も必要」と説明を行った。災害時の食物アレルギーのリスクを最低限に抑えるために つぎに大規模災害とアナフィラキシーについて触れ、とくに食物アレルギー患者への対応が重要と指摘した。 災害時には、患者の誤食リスクの上昇、アレルギー対応食品の入手困難、症状発症時の治療薬不足、周囲の病気への理解不足などリスクが生じるため、さまざまな対応が必要となる。現在は、「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(平成25年8月内閣府作成)などが決められ、避難所にはアルファ米や特別ミルクなどの備蓄と配給上の配慮などが決められている。その一方で、熊本地震でのアレルギー対応食への取り組みについて自治体に聞いたアンケートでは、「十分取り組まれていた」がわずか3.1%など現場への浸透に課題があることも紹介された。 災害時の食物によるアナフィラキシーへの備えとして、地域公的機関での備蓄、ネットワーク作り、病気への理解、アレルギー情報の携帯、発症時の対応、炊き出し原材料の確認、アレルギー表示の確認、自宅での備蓄が必要であり、こうした情報は「アレルギーポータル」などのwebサイト、自治体の各種配布物に記されている。おわりに「こうした媒体で医療者も患者もよく学び、病気への理解を深めることが大切」と語り、佐藤氏は講演を終えた。 続いて、患者会代表の田野 成美氏が、実子の闘病経験を語り、親の目の届かない学校生活での不安や周囲の理解不足による発症の危険性、氾濫する診療情報などの問題点を指摘した。■参考「アレルギーポータル」(日本アレルギー学会)「アナフィラキシーってなあに.jp」(マイランEPD合同会社)

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