サイト内検索|page:26

検索結果 合計:1586件 表示位置:501 - 520

501.

血漿ACE2濃度上昇が心血管イベントリスク増大と関連/Lancet

 血漿アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)濃度の上昇は主要な心血管イベントのリスク増大と関連することが、カナダ・マックマスター大学のSukrit Narula氏らによる「Prospective Urban Rural Epidemiology(PURE)研究」において示された。ACE2は、レニン-アンジオテンシン系ホルモンカスケードの内因性の拮抗的調節因子であり、循環血中のACE2活性と濃度の上昇は、さまざまな心血管疾患を持つ患者の予後不良マーカーとなる可能性が示唆されていた。Lancet誌2020年10月3日号掲載の報告。5大陸14ヵ国のデータを用いたケースコホート研究 研究グループは、血漿ACE2濃度と、死亡および心血管疾患イベントのリスクとの関連を検証する目的で、PURE研究のデータを用いてケースコホート研究を行った(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成による)。 PURE研究の参加者のうち、5大陸(アフリカ、アジア、欧州、北米、南米)の14ヵ国のデータを用いた。血漿ACE2濃度を測定し、血漿ACE2値の潜在的な決定因子とともに、ACE2と心血管疾患イベントの関連を評価した。 2005年1月~2006年12月の期間にPURE研究に登録された集団のうち、1万753人が解析に含まれた。フォローアップ期間中央値は9.42年(IQR:8.74~10.48)であった。男性、東アジア、高BMIで高値、死亡の最も優れた予測因子の可能性 相対的重要度の最も高い血漿ACE2値の決定因子は性別で、次いで地理的家系、BMI、糖尿病、年齢、収縮期血圧、喫煙、LDLコレステロール値の順であった。男性は女性よりも血漿ACE2値が高く、血漿ACE2濃度は地理的家系によって大きく異なっていた(南アジアが最も低く、東アジアが最も高い)。高BMI、糖尿病、高齢、高血圧、高LDLコレステロール、喫煙は、すべて血漿ACE2値の上昇と関連していた。 臨床的リスク因子と血漿ACE2値の関連の因果関係を検討したところ、遺伝学的に高BMIと2型糖尿病は血漿ACE2の高値と関連したが、高LDLコレステロール、高収縮期血圧、喫煙には関連を認めなかった。 血漿ACE2濃度の上昇は、死亡リスクの増加と関連し(1SD増加ごとのハザード比[HR]:1.35、95%信頼区間[CI]:1.29~1.43)、同様の関連が心血管死(1.40、1.27~1.54)および非心血管死(1.34、1.27~1.43)にも認められた。 また、血漿ACE2濃度は、初発の心不全(1SD増加ごとのHR:1.27、95%CI:1.10~1.46)、心筋梗塞(1.23、1.13~1.33)、脳卒中(1.21、1.10~1.32)、糖尿病(1.44、1.36~1.52)と関連し、これらの結果には年齢、性別、家系、従来の心臓リスク因子とは独立の関係が認められた。脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を加えて補正しても、新規心不全イベントを除き、ACE2値と臨床的エンドポイント(死亡を含む)との独立の関係には頑健性が保持されていた。 ACE2と臨床的リスク因子(糖尿病、BMI、喫煙、非HDLコレステロール、収縮期血圧)の死亡や心血管疾患への影響を解析(臨床的リスク因子、年齢、性別、家系で補正)したところ、ACE2は全死亡(p<0.0001)、心血管死(p<0.0001)、非心血管死(p<0.0001)の最も優れた予測因子であり、心筋梗塞(p<0.0001)では喫煙、糖尿病に次ぐ3番目(非HDLコレステロールとほぼ同等)、心不全(p=0.0032)および脳卒中(p=0.0010)では収縮期血圧、糖尿病に次ぐ3番目に強固な予測因子であった。 著者は、「このようなレニン-アンジオテンシン系の影響を理解して調節することで、心血管疾患の発生を抑制する新たなアプローチがもたらされる可能性がある」としている。

502.

非小細胞肺がん、デュルバルマブ術前補助療法の成績/ESMO2020

 早期非小細胞肺がん(NSCLC)における免疫チェックポイント阻害薬の術前補助療法は、すでに幾つかの試験で検討され、有望な結果が得られている。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)では、デュルバルマブの術前補助療法を評価する第II相多施設共同試験(IFCT-1601 IONESCO)の中間解析の結果を、フランス・Cochin病院のMarie Wislez氏が発表した。・対象:Stage1B(4cm以上)、2、3A(N2除く)の切除可能NSCLC・介入:デュルバルマブ750mg 2週ごと3サイクル投与後2〜14日目に手術・評価項目:[主要評価項目]完全(R0)切除の割合[副次評価項目]術後90日死亡率、安全性、全生存期間(OS)、無病生存期間(DFS)、奏効率、MPR(Major Pathologic Response、生存腫瘍細胞10%以下)、初回投与から手術までの期間 主な結果は以下のとおり。・2017年4月〜2019年8月に50例が登録され、46例がデュルバルマブ投与対象となった。・患者の年齢中央値61.0歳、 男性70%、喫煙者は94%であった。・R0切除割合は89.1%(46例中41例)と、仮説割合の85%を超え、主要評価項目を達成した。・46例中4例はPR、36例がSD、6例がPDで、MPRは43例中8例の18.6%であった。・術後90日の死亡率は9%(4例)。そのため、登録は中止となった。死亡した4例中3例は、心血管系などの併存疾患を有しており、デュルバルマブとの直接の関連はみられなかった。・全Gradeの有害事象(AE)は33.3%、すべてGrade2以下であった。 ・追跡期間23ヵ月におけるOSとDFSの中央値は未達、 1年OS率は89.7%、12ヵ月DFS率は78.2.%であった。

503.

不規則な月経周期、早期死亡リスクを増大/BMJ

 18~22歳、29~46歳時の月経周期の乱れ(不規則でサイクル期間が長い)は、70歳未満の早期死亡リスクの増大と関連することが明らかにされた。同関連は喫煙女性で、わずかだが強いことも示されたという。米国・ハーバード大学医学大学院のYi-Xin Wang氏らが、同国の看護師を対象とした前向きコホート試験「Nurses’ Health Study(NHS、看護師健康調査)II」の被験者約8万例を対象に行った大規模試験で明らかにした。不規則で長期の月経周期は、生殖年齢の女性においてよくみられ、主要な慢性疾患リスクの上昇と関連していることが知られている。一方でそのエビデンスは脆弱であった。BMJ誌2020年9月30日号掲載の報告。14~17歳、18~22歳、29~46歳時の月経期間・規則性と早期死亡の関連を検証 研究グループは、一生涯を通じた不規則で長期間の月経周期が、全死因死亡と関連しているかどうか、また、特定の早期(70歳未満)死亡を引き起こすかどうかを評価する検討を行った。 1993~2017年にNHS IIに参加し、心血管疾患、がん、糖尿病の既往がなく、14~17歳、18~22歳、29~46歳時の月経期間とその周期の規則性に関する情報を得られた女性7万9,505例を対象とした。 全死因死亡と特定の早期(70歳未満)死亡の発生について、多変量Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推算して評価した。18~22歳、29~46歳時の月経不規則群、規則群に比べ早期死亡リスクは約1.4倍 追跡期間24年間に発生した早期死亡は1,975例で、死因はがんが894例、心血管疾患が172例だった。 同一年齢範囲群において、常に月経周期が不規則だった女性(月経不規則群)の追跡期間中の死亡率は、月経周期がきわめて規則的だった女性(月経規則群)に比べ高かった。1,000人年当たりの補正前死亡率は、14~17歳時の月経規則群1.05、同月経不規則群1.23であり、18~22歳時の月経規則群1.00、同月経不規則群1.37、29~46歳時の月経規則群1.00、同月経不規則群1.68だった。 追跡期間中の早期死亡に関する多変量補正後HRは、14~17歳時の月経不規則群vs.同月経規則群で1.18(95%CI:1.02~1.37)、18~22歳時の月経不規則群vs.同月経規則群では1.37(1.09~1.73)、29~46歳時の月経不規則群vs.同月経規則群では1.39(1.14~1.70)だった。 これらの関連性は、心血管疾患による早期死亡で最も強かった。長期で不規則な月経周期と早期死亡リスク増大の関連性は、現喫煙者でわずかだが強く認められた。

504.

1日1杯以上の飲酒が糖尿病患者の高血圧リスクと関連?

 これまで、2型糖尿病患者における飲酒と高血圧の関連は、十分に研究されていない。今回、米国・ウェイクフォレスト大学のJonathan J. Mayl氏らのデータ分析で、2型糖尿病患者では、適度な飲酒でも高血圧リスクに関連する可能性が示された。JAHA誌オンライン版2020年9月9日号での報告。 本研究は、成人の2型糖尿病患者を対象に心血管疾患(CVD)を軽減するための介入を比較したランダム化試験(ACCORD試験)の参加者1万200人(平均年齢約63歳)のデータを利用した。参加者は、軽度の飲酒(1~7杯/週)、中程度の飲酒(8~14杯/週)、重度の飲酒(15杯以上/週)の3群に分類された。なお、“1杯”の定義は12オンスのビール、6オンスのワインまたは1.5オンスのリキュールとした。 血圧については、ACC/AHA2017高血圧ガイドラインに従って、正常(収縮期血圧[SBP]120mmHg未満かつ拡張期血圧[DBP]80mmHg未満)、血圧上昇(SBP:120~129mmHgかつDBP:80mmHg未満)、ステージ1高血圧(SBP:130~139mmHgまたはDBP:80~89mmHg)、ステージ2高血圧(SBP:140mmHg以上またはDBP:90mmHg以上)に分類された。 主な結果は以下のとおり。・年齢、性別、人種、BMI、CVDの既往、現在・過去の喫煙状態、2型糖尿病の罹患年数を考慮した多変量ロジスティック回帰モデルでは、軽度の飲酒と血圧上昇または高血圧との間に関連は見られなかった。・中程度の飲酒では、血圧上昇(オッズ比[OR]:1.79、95%CI:1.04~3.11、p=0.03)、ステージ1高血圧(OR:1.66、95%CI:1.05~2.60、p=0.03)およびステージ2高血圧(OR:1.62、95%CI:1.03~2.54、p=0.03)と関連していた。・重度の飲酒では、血圧上昇(OR:1.91、95%CI:1.17~3.12、p=0.01)、ステージ1高血圧(OR:2.49、95%CI:1.03~6.17、p=0.03)およびステージ2高血圧(OR:3.04、95%CI:1.28~7.22、p=0.01)と関連していた。 著者らは「2型糖尿病患者は心血管リスクがとくに高いため、飲酒と高血圧の関係を理解することが非常に重要だ。週に7杯以上の飲酒は、2型糖尿病患者の高血圧に関連している可能性がある」と結論している。

505.

統合失調症患者のCOVID-19による院内死亡率

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により入院が必要となる統合失調症患者の特徴やアウトカムに関する情報は限られている。フランス・エクス=マルセイユ大学のG. Fond氏らは、COVID-19に罹患した統合失調症患者の臨床的特徴およびアウトカムを明らかにするため、統合失調症でない感染者との比較検討を行った。L'Encephale誌オンライン版2020年7月30日号の報告。 本検討は、南フランス・マルセイユの4つの公的支援急性期医療病院に入院したCOVID-19患者の症例対照研究として実施した。入院を必要とするCOVID-19患者は、鼻咽頭サンプルのPCR検査および/または胸部CTの陽性結果で確認した。主要アウトカムは院内死亡率とし、副次的アウトカムはICU入室とした。 主な結果は以下のとおり。・対象感染者数は、1,092例であった。・院内死亡率は、全体で9.0%であった。・COVID-19に罹患した統合失調症患者は、統合失調症でない感染者と比較し、死亡率が高かった(26.7% vs.8.7%、p=0.039)。このことは、年齢、性別、喫煙状況、肥満、合併症で調整した後の多変量解析でも確認された(調整オッズ比:4.36、95%CI:1.09~17.44、p=0.038)。・COVID-19に罹患した統合失調症患者は、統合失調症でない感染者と比較し、ICU入室率が低かった。・COVID-19に罹患した統合失調症患者の63.6%は、施設に入所しており、死亡した患者は、すべて施設に入所していた。また、これらの患者は、がんや呼吸器疾患の合併症を有する割合が高かった。 著者らは「COVID-19に罹患した患者の中で、統合失調症患者の適切な評価がなされていない可能性が示唆された。統合失調症患者では、COVID-19による死亡リスクが高く、身体合併症などの有無を確認する必要がある」としている。

506.

夜間低酸素血症のCOPDへの長期夜間酸素療法は有効か/NEJM

 カナダ・ラヴァル大学のYves Lacasse氏らINOX試験の研究グループは、夜間に動脈血酸素飽和度低下を認めるものの長期酸素療法の適応ではない慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、長期夜間酸素療法の有用性を評価した。試験は、患者の登録が継続できず早期中止となったため検出力が不十分であり、長期夜間酸素療法の有効性に関して結論は得られなかった。COPDを有し、慢性的に日中に重度低酸素血症を呈する患者では、長期酸素療法により生存率が改善する。しかしながら、夜間のみの低酸素血症の管理における酸素療法の有効性は知られていない。研究の詳細は、NEJM誌2020年9月17日号に掲載された。4ヵ国28施設が参加したプラセボ対照無作為化試験 本研究は、4ヵ国(カナダ、ポルトガル、スペイン、フランス)の28施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化試験であり、2010年11月~2015年1月の期間に患者登録が行われた(カナダ国立保健研究機構の助成による)。 対象は、喫煙歴のあるCOPDで、試験登録の少なくとも6週間前には病態が安定し、6ヵ月以上は喫煙しておらず、夜間酸素飽和度が低下した患者であった。夜間酸素飽和度低下は、夜間パルスオキシメトリーによる記録時間(就寝時)の30%以上が酸素飽和度(Spo2)90%未満であることと定義された。試験登録時に、Nocturnal Oxygen Therapy Trial(NOTT)の判定基準で長期酸素療法の適応となる可能性が高い患者は除外された。 被験者は、在宅夜間酸素療法を受ける群または偽酸素濃縮器から室内空気を吸入する群(プラセボ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、intention-to-treat(ITT)集団における全死因死亡またはNOTT基準で長期酸素療法の適応の複合とした。 計画されていた600例のうち243例が無作為割り付けされた時点で、患者の募集とその継続が困難となったため、募集は中止された。3年時の主要アウトカム:39.0% vs.42.0% 夜間酸素療法群に123例(平均年齢69±8歳、男性65.9%)、プラセボ群には120例(69±9歳、64.2%)が割り付けられた。192例(79.0%)が、試験登録時の2回の夜間パルスオキシメトリー検査で夜間酸素飽和度低下の基準を満たした。 3年間で53例(夜間酸素療法群27例、プラセボ群26例)が介入を中止し、4年までにさらに3例(2例、1例)が中止した。 フォローアップ期間3年の時点で、ITT集団におけるNOTTの長期酸素療法適応基準を満たすか死亡した患者の割合は、夜間酸素療法群が39.0%(48/123例)、プラセボ群は42.0%(50/119例)であった(群間差:-3.0ポイント、95%信頼区間[CI]:-15.1~9.1、p=0.64)。 また、フォローアップ期間4年の時点でのtime-to-event解析では、NOTTの長期酸素療法適応基準を満たすか死亡した患者の割合は、夜間酸素療法群が47.5%(57/120例)、プラセボ群は54.0%(61/113例)であった(群間差:-6.5ポイント、95%CI:-18.9~5.9、ハザード比[HR]:0.87、95%CI:0.61~1.25、p=0.44)。死亡(HR:0.98、95%CI:0.60~1.63)およびNOTTの長期酸素療法適応基準に適合(0.87、0.57~1.34)のいずれにも両群間に差はなかった。 COPDの急性増悪や全原因による入院、QOLの経時的な変化にも、両群間に差は認められなかった。また、試験期間中に、介入の直接的な関与による重篤な有害事象の報告はなかった。 著者は、「データの信頼区間が広いことは、酸素療法の有益性を排除するものではないが、本試験単独および既報の他試験の結果を合わせて検討しても、夜間酸素療法の明確な臨床的有益性は示されていない」としている。

507.

禁煙と睡眠障害との関係

 喫煙と睡眠障害は密接に関連しているといわれている。スウェーデン・ウプサラ大学のShadi Amid Hagg氏らは、睡眠障害が禁煙の予測因子であるか、喫煙の継続が睡眠障害の発症と関連しているかについて、検討を行った。Respiratory Medicine誌2020年8~9月号の報告。睡眠障害の治療には禁煙プログラムの導入を検討すべき 北欧の男女を対象に、1999~2001年にランダムにアンケートを実施し(RHINE II)、その後2010~12年にフォローアップのアンケートを実施した(RHINE III)。ベースライン時に喫煙者であり、フォローアップ時に喫煙に関するデータを提供した2,568人を分析した。不眠症は、3回/週以上の入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒の発現と定義した。オッズ比(OR)の算出には、多重ロジスティック回帰分析を用いた。 睡眠障害が禁煙の予測因子であるか、喫煙の継続が睡眠障害の発症と関連しているかについて検討した主な結果は以下のとおり。・年齢、BMI、pack-years、高血圧症、糖尿病、慢性気管支炎、鼻炎、喘息、性別、BMI差で調整した後、長期禁煙を達成する可能性が低かった因子は以下のとおりであった。 ●入眠障害(調整OR:0.6、95%CI:0.4~0.8) ●中途覚醒(調整OR:0.7、95%CI:0.5~0.9) ●早朝覚醒(調整OR:0.6、95%CI:0.4~0.8) ●不眠症(調整OR:0.6、95%CI:0.5~0.8) ●日中の過度な眠気(調整OR:0.7、95%CI:0.5~0.8)・いびきと禁煙には、有意な関連が認められなかった。・ベースライン時に睡眠障害でない人では、喫煙を継続すると、フォローアップ中に禁煙した人と比較し、入眠困難リスクの増加が認められた(調整OR:1.7、95%CI:1.2~2.3)。 著者らは「不眠症状や日中の過度な眠気は、禁煙にマイナスに働くと考えられる。また、喫煙は、入眠障害のリスク因子であることが示唆された。睡眠障害の治療には、禁煙プログラムの導入を検討すべきである」としている。

508.

KRASG12C変異陽性肺がんにおけるsotorasib(CodeBreaK100)/ESMO2020

 KRAS p.G12C変異は固形がんの1〜3%、非小細胞肺がん(NSCLC)では13%に認められる。KRASG12C阻害薬sotorasib(開発コード:AMG510)は、KRASp.G12C変異陽性の進行固形腫瘍患者の第I相試験で良好な抗腫瘍活性と安全性プロファイルを示した。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)では、この国際オープンラベル第I相試験CodeBreaK100におけるNSCLCの結果を、米国・MDアンダーソンがんセンターのD. S. Hong氏が発表した。・対象:既治療の局所進行または転移を有するKRAS p.G12C変異陽性固形腫瘍患者・試験薬:sotorasibを進行または忍容できない有害事象が発現するまで投与(コホート1:180mg、2:360mg、3:720mg、4:960mg)・評価項目[主要評価項目]安全性[副次評価項目]客観的奏効率(ORR)、病勢制御率(DCR)、奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)など 主な結果は以下のとおり。・登録患者129例中NSCLCは59例であった。・患者の年齢中央値は68.0歳、女性35%、現・元喫煙者89.8%、前治療中央値は3、抗PD-1/L1薬投与89.8%、化学療法投与は全例、脳転移は30.5%であった。・データカットオフ時(2020年6月1日)の追跡期間中央値は11.7ヵ月であった。・用量制限毒性はなく、致死的有害事象の報告もなかった。・Grade3/4の有害事象発現率は18.6%であった。頻度の高い(5%以上)の治療関連有害事象は下痢(66.1%)、ALT・AST上昇(それぞれ20.3%)、疲労感(10.2%)、悪心( 10.2%)などであった。・NSCLC全集団のPFS中央値は6.9ヵ月であった。・ NSCLC全集団のORRは32.2%、DCRは88.1%、推奨用量960mg集団のORRは35.3%、DCRは91.2%であった。 ・DoRは10.9ヵ月であった。・全集団のPFS中央値は6.3ヵ月であった。 ・KRASp.G12Cアリル頻度、血漿腫瘍変異量、PD-L1発現の程度と効果に相関はなかった。

509.

慢性期統合失調症患者における喫煙と認知機能障害との関係

 これまでの研究において、統合失調症患者は喫煙率が高く、認知機能が低下していることが知られている。しかし、喫煙と認知機能障害との関係については、一貫した結論に至っていない。中国・中国科学院大学のShuochi Wei氏らは、中国人男性の統合失調症患者の認知機能に対する喫煙の影響を調査するため、MATRICS認知機能評価バッテリー(MCCB)を用いて検討を行った。Psychopharmacology誌オンライン版2020年8月5日号の報告。 対象は、慢性期統合失調症患者164例、健康対照者82例。喫煙状況に関する面談を、すべての対象者に実施した。認知機能は、MCCBとストループテストにより評価した。患者の臨床症状の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者は、対照群と比較し、全項目のMCCBスコアが低かった(すべてp<0.05)。・統合失調症患者において、喫煙患者は非喫煙患者と比較し、以下のスコアが低かった(すべてp<0.05、エフェクトサイズ:0.28~0.45)。 ●空間スパンテスト:42.3±11.6 ●デジタルシークエンステスト:42.9±10.6 ●ホプキンス言語学習テスト:42.2±10.1・ロジスティック回帰分析では、統合失調症患者の喫煙状況と、デジタルシークエンステストのスコアとの相関が示唆された(p<0.05、OR=1.072、95%CI:1.013~1.134)。・多変量回帰分析では、統合失調症患者の喫煙期間と、空間スパンテストの合計スコアとの関連が示唆された(β=-0.26、t=-2.74、p<0.001)。 著者らは「喫煙している慢性期統合失調症患者は、とくにワーキングメモリや実行機能などの認知機能に重大な問題を抱えていることが示唆された」としている。

510.

予期せぬ体重減少、がん精査をすべき?/BMJ

 プライマリケアで予期せぬ体重減少を呈した成人のがんリスクは2%以下で、英国の現行ガイドラインに基づく検査対象とはならないことが明らかにされた。英国・オックスフォード大学のBrian D. Nicholson氏らによる、予期せぬ体重減少のがん予測を定量化することを目的とした診断精度研究の結果で、著者は、「しかしながら、50歳以上の男性喫煙者および臨床所見を有する患者では、がんリスクを考慮すると、侵襲的な検査受診を紹介する必要がある」と述べている。報告では、特定のがん部位と関連する典型的な臨床所見は、予期せぬ体重減少が生じた際は複数のがん種のマーカーとなることも明らかにされた。BMJ誌2020年8月13日号掲載の報告。予期せぬ体重減少を呈した患者6万3,973例で、がんの診断精度を検証 研究グループは、英国のプライマリケアにおけるNational Cancer Registration and Analysis Service(NCRAS)およびClinical Practice Research Datalink(CPRD)電子健康記録を用いて、2000年1月1日~2012年12月31日に予期せぬ体重減少が記録された成人(18歳以上)6万3,973例を特定し解析した。 主要評価項目は、最初に体重減少が記録された日(インデックス日)から6ヵ月以内のがんの診断である。インデックス日の3ヵ月前から1ヵ月後までの期間の、付加的な臨床所見についても特定された。診断精度は、陽性および陰性の尤度比、陽性予測値、診断のオッズ比(OR)で評価した。 予期せぬ体重減少を認めた成人6万3,973例のうち、3万7,215例(58.2%)が女性、3万3,167例(51.8%)が60歳以上、1万6,793例(26.3%)が喫煙者であった。予期せぬ体重減少のみでプライマリケアを受診した成人患者のがんリスクは2%以下 インデックス日から6ヵ月以内にがんと診断された人は908例(1.4%)で、このうち882例(97.1%)が50歳以上であった。がんの陽性予測値は、50歳以上の男性喫煙者では英国国立医療技術評価機構による緊急検査の推奨閾値である3%を超えていたが、女性ではどの年齢でも確認されなかった。 予期せぬ体重減少を伴う男性では10項目の臨床所見が、女性では11項目が、がんと関連していた。陽性尤度比は、男性で非心臓性胸痛の1.86(95%信頼区間[CI]:1.32~2.62)から腹部腫瘤の6.10(3.44~10.79)までの範囲、女性では背部痛の1.62(1.15~2.29)から黄疸の20.9(10.7~40.9)までの範囲であった。 がんと関連があった血液検査異常値は、アルブミン低値(4.67、95%CI:4.14~5.27)、血小板数増加(4.57、3.88~5.38)、カルシウム高値(4.28、3.05~6.02)、白血球数増加(3.76、3.30~4.28)、C反応性蛋白高値(3.59、3.31~3.89)などであった。一方で、単独でがんの否定につながる血液検査正常値はなかった。また、予期せぬ体重減少を伴う臨床所見は、複数のがん部位と関連していた。

511.

若年性乳がん、高出生体重と親の子癇前症が関連

 若年性乳がんと母親の周産期および出生後における曝露因子との関連について、米国・国立環境衛生科学研究所のMary V Diaz-Santana氏らが調査したところ、母親が妊娠時に子癇前症であった場合と高出生体重の場合に若年性乳がんリスクが高い可能性があることが示唆された。Breast Cancer Research誌2020年8月13日号に掲載。 本研究(Two Sister Study)は姉妹をマッチさせたケースコントロール研究で、ケースは50歳になる前に非浸潤性乳管がんまたは浸潤性乳がんと診断された女性、コントロールは乳がんを発症した同じ年齢まで乳がんではなかった姉妹とした。リスク因子として、母親の妊娠時における子癇前症・喫煙・妊娠高血圧・ジエチルスチルベストロールの使用・妊娠糖尿病、低出生体重(5.5ポンド未満)、高出生体重(8.8ポンド超)、短い妊娠期間(38週未満)、母乳育児、乳幼児期の大豆粉乳摂取を検討した。 主な結果は以下のとおり。・条件付きロジスティック回帰分析では、高出生体重(オッズ比[OR]:1.59、95%信頼区間[CI]:1.07~2.36)と母親の妊娠時における子癇前症(調整後OR:1.92、95%CI:0.824~4.5162)が若年性乳がんリスクと関連していた。浸潤性乳がんに限定した場合、子癇前症との関連はより大きかった(OR:2.87、95%CI:1.08~7.59)。・ケースのみの分析から、母親が妊娠時に子癇前症で若年性乳がんを発症した女性は、エストロゲン受容体陰性のオッズが高かった(OR:2.27、95%CI:1.05~4.92)。

512.

日本人COVID-19死亡例、80代と2型糖尿病併存で最多

 メディカル・データ・ビジョン株式会社(以下、MDV)は、自社診療データベースから新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の死亡事例を調査。その結果、2020年2月~5月までの期間の死亡者は110例(男性:77例 、女性:33例)で、年代別では80代が4割超を占めていることが明らかになった。また、併存疾患では2型糖尿病が最も多かった。 主な結果は以下のとおり。・年代別では、90代が17例(15.5%)、80代が48例(43.6%)、70代が33例(30%)、60代が7例(6.4%)、50代が5例(4.5%)だった。100歳以上と40代から下の年齢層はいなかった。・死亡例の中で、併存疾患を有した95例を解析したところ、慢性疾患で最多は2型糖尿病の25例(26%)、その次に高血圧症が22例(23%)、心房細動/心房粗動が9例(9%)と続いた。・また、死亡例の喫煙歴を調べたところ、110例のうち喫煙歴「あり」*は40例、喫煙歴「なし」は41例、喫煙歴「不明」は29例だった。*現在、非喫煙者でも過去に実績があれば「あり」とカウント 今回の調査には、全国の急性期医療を提供する419施設からの診療データベース(実患者数3,257万人、2020年7月末日集計)を用い、その診療データベースのうち402施設の約550万人を対象に、退院日が同年2月1日以降のCOVID-19死亡例を抽出した。なお、厚生労働省が公表した5月31日までの死亡者数は891例だった。

513.

抗糸球体基底膜抗体病〔anti-glomerular basement membrane(GBM) disease〕

1 疾患概要■ 定義抗糸球体基底膜抗体病(anti-glomerular basement membrane disease:抗GBM病)とは、抗GBM抗体によって引き起こされる予後不良の腎・肺病変を指す。このうち腎病変を「抗GBM抗体型(糸球体)腎炎」または「抗糸球体基底膜腎症」と呼ぶ。本疾患の最初の記載は古く1919年Goodpastureによるが、のちに肺と腎に病変を生ずる症候群として後に「Goodpasture症候群」と呼ばれるようになった1,2)。■ 疫学頻度は比較的まれであり、発症率は人口100万人当り0.5~1.0人/年とされる。厚生労働省の調査によると、平成18年度までに集積された1,772例の急速進行性糸球体腎炎(RPGN)症例のうち抗GBM抗体型腎炎は81例(4.6%)、肺出血を伴うGoodpasture症候群は27例(1.5%)、抗GBM病は合計6.1%であった。抗GBM抗体型腎炎の平均年齢は61.59歳(11~77歳)、Goodpasture症候群の平均年齢は70.88歳(57~93歳)と高齢化が進んでいる3)。■ 病因自己抗体である抗GBM抗体が原因と考えられており、腎糸球体と肺胞の基底膜に結合し、基底膜を破綻させて発症する。抗GBM抗体の対応抗原は、糸球体基底膜や肺毛細血管基底膜に分布するIV型コラーゲンα3鎖のC末端noncollagenous domain1(NC1ドメイン)の、N末端側17-31位のアミノ酸残基(エピトープA:EA)ないしC末端側127-141位のアミノ酸残基(エピトープB:EB)である4,5)。このうち、EBエピトープを認識する抗体が腎障害の重症化とより関連すると推定されている。IgGサブクラスでは、IgG1とIgG3が重症例に多いとの報告もある。α5鎖のNC1ドメインEA領域も抗原となりうる。通常の状態においては、これらの抗原エピトープはIV型コラーゲンα345鎖で構成された6量体中に存在し、基底膜内に埋没している(hidden antigen)。抗GBM抗体型腎炎では、感染症(インフルエンザなど)、吸入毒性物質(有機溶媒、四塩化炭素など)、喫煙などにより肺・腎の基底膜の障害が生じ、α345鎖の6量体が解離することで、α3鎖、α5鎖の抗原エピトープが露出し、これに反応する抗GBM抗体が産生される。この抗GBM抗体の基底膜への結合を足掛かりに、好中球、リンパ球、単球・マクロファージなどの炎症細胞が組織局所に浸潤し、さらにそれらが産生するサイトカイン、活性酸素、蛋白融解酵素、補体、凝固系などが活性化され、基底膜の断裂が起こる。腎糸球体においては、断裂した毛細管係蹄壁から毛細血管内に存在するフィブリンや炎症性細胞などがボウマン囊腔へ漏出するとともに、炎症細胞から放出されるサイトカインなどのメディエーターによってボウマン囊上皮細胞の増殖、すなわち細胞性半月体形成が起こる。後述のように、以前より抗GBM抗体と抗好中球細胞質抗体(ANCA)の両者陽性の症例の存在が知られており、抗GBM抗体型腎炎症例の多くで、発症の1年以上前から低レベルのANCAが陽性となっているとの報告がある。ANCAによりGBM障害が生じ、抗原エピトープが露出する可能性が推測されている。最近、MPOと類似構造をもつperoxidasinに対する抗体が抗GBM病の患者から発見されたと報告され、病態における意義が注目される6)。また、以前より感染が契機になることが推測されているが、最近、Actinomycesに存在するα3鎖エピトープと類似のペプチド断片がB細胞、T細胞に認識され抗GBM病の発症に関与することを示唆する報告がなされている7)。■ 症状・所見症状は、肺出血による症状のほか、倦怠感や発熱、体重減少、関節痛などの全身症状が高頻度で見られる8)。初発の症状としては、全身倦怠感、発熱などの非特異的症状が最も多い。肉眼的血尿も比較的高頻度で見られる。タバコの喫煙歴、直近の感染の罹患歴を調べることも重要である。■ 分類2012年改訂Chapel Hill Consensus Conference(CHCC)分類では、抗GBM病は、基底膜局所でin situ免疫複合体が形成されて生ずる病変であるため、免疫複合体型小型血管炎に分類されている9)。抗GBM病は、(1)腎限局型の抗GBM抗体型腎炎、(2)肺限局型抗GBM抗体型肺胞出血、(3)腎と肺の双方を障害する病型(Goodpasture症候群)の3つに分けられる。肺胞出血を伴う場合と伴わない場合があり、遅れて肺出血が見られることもある。2012年に改訂されたChapel Hill Consensus Conference(CHCC)分類では、抗GBM抗体陽性の血管炎を抗GBM病(anti-GBM disease)とし、肺と腎のどちらかあるいは両者が見られる病態を含むとしている。腎と肺の双方を障害する病型はGoodpasture症候群と呼ばれる。■ 予後予後規定因子としては、治療開始時の腎機能、糸球体の半月体形成率が挙げられる。Levyらは85例の抗GBM抗体型腎炎患者の腎予後を後ろ向きに検討し、治療開始の時点で、血清Cr値が5.7mg/dL以上または透析導入となった重症例、半月体が全糸球体に及ぶ場合は腎予後不良としている10)。抗GBM抗体価と腎予後・生命予後については、一般に、高力価の抗GBM抗体陽性所見は予後不良因子と考えられている。Herodyらは、診断時の腎機能、無尿、腎生検所見とともに抗GBM抗体価が有意な腎予後不良因子であったと報告している11)。2001年のCuiらの報告でも、抗GBM抗体価が患者死亡の独立した予知因子であることが示されている12)。抗GBM抗体が陰性となり、臨床的に寛解に至ればその後の再燃はまれである。ただし、初発時より長年経過して再発した例も報告されているため、経過観察は必要である。ANCA同時陽性例では抗GBM抗体単独陽性例よりも再燃が多い傾向にある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査所見全例で、血尿と腎炎性尿所見、血清クレアチニン値の急上昇、強い炎症所見(CRP値高値)を認める。肉眼的血尿のこともある。尿蛋白もさまざまな程度で見られ、時にネフローゼレベルに達することもある。貧血も高度のことが多い。抗GBM抗体が陽性となり、確定診断に必須である。抗GBM抗体値は病勢とほぼ一致し、治療とともに陰性化することが多い。抗GBM抗体とANCA(とくにMPO-ANCA)の両者が陽性になる症例が存在し、抗GBM抗体型腎炎のANCA陽性率は約30%、逆に、ANCA陽性患者の約5%で抗GBM抗体が陽性と報告されている13)。腎生検、高度の半月体形成性壊死性糸球体腎炎の病理所見が見られる。蛍光抗体法では、係蹄壁に沿ったIgGの線状沈着を示す。■ 診断と鑑別診断診断基準は以下の通りである。1)血尿(多くは顕微鏡的血尿、まれに肉眼的血尿)、蛋白尿、円柱尿などの腎炎性尿所見を認める。2)血清抗糸球体基底膜抗体が陽性である。3)腎生検で糸球体係蹄壁に沿った線状の免疫グロブリンの沈着と壊死性半月体形成性糸球体腎炎を認める。上記の1)および2)または1)および3)を認める場合に「抗糸球体基底膜腎炎」と確定診断する。鑑別としては、臨床的に急速進行性糸球体腎炎を示す各疾患(ANCA関連腎炎、ループス腎炎など)や急性糸球体腎炎を示す疾患が挙げられるが、検出される抗体により鑑別は通常容易である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療の目標は、可及的速やかに腎・肺病変を改善すると同時に、病因である抗GBM抗体を取り除くことである。腎予後が期待できず、肺出血が見られない場合を除き、ステロイドパルス療法を含む高用量の副腎皮質ステロイドと血漿交換療法による治療を早急に開始する12,14)。シクロホスファミドの併用が推奨されている。血漿交換は、血中から抗GBM抗体が検出されなくなるまで頻回に行う。重要なのは、治療が遅れると腎予後は著しく不良となる、腎機能低下が軽度の初期の段階で、全身症状・炎症所見・腎炎性尿所見などから本疾患を疑うことである。初期治療時は通常6~12ヵ月間免疫抑制療法を継続する。通常、抗GBM抗体が陰性であればそれ以上の長期維持治療は必要ない。末期腎不全患者に対する腎移植は、抗GBM抗体が陰性化してから6ヵ月後以降に行う15)。4 今後の展望B細胞をターゲットとした抗CD20抗体(リツキシマブ)が有効であったとの症例報告があるが、有用性は不明である。黄色ブドウ球菌由来のIgG分解活性を持つエンドペプチダーゼ(imlifidase:IdeS)の臨床試験が現在進行中である(NCT03157037)。5 主たる診療科腎臓内科、呼吸器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 抗糸球体基底膜腎炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Goodpasture EW. Am J Med Sci. 1919;158:863-870.2)Benoit, LFL,et al. Am J Med. 1964;37:424-444.3)Koyama A, et al. Clin Exp Nephrol. 2009;13:633-650.4)Pedchenko V, et al. N Engl J Med. 2010;363:343-354.5)Chen JL, et al. Clin J Am Soc Nephrol. 2013;8:51-58.6)McCall AS, et al. J Am Soc Nephrol. 2018;29:2619-2627)Gu Q, et al. J Am Soc Nephrol. 2020;31:1282-1295. 8)Levy JB, et al. Kidney Int. 2004;66:1535-1540.9)Jennette J, et al. Arthritis Rheum. 2012;65:1-11.10)Levy JB, et al. Ann Intern Med. 2001;134:1033-1042.11)Herody M, et al. Clin Nephrol. 1993;40:249-255.12)Cui Z, et al. Medicine(Baltimore). 2011;90:303-311.13)Levy JB, et al. Kidney Int. 2004;66:1535-1540.14)KIDIGO Clinical Practice Guideline. Anti-glomerular basement membrane antibody glomerulonephritis. Kidney Int. 2012(Suppl2):233-242.15)Choy BY, et al. Am J Transplant. 2006;6:2535-2542.公開履歴初回2020年08月18日

514.

COVID-19患者の約7割は転帰良好/国立国際医療研究センター

 8月7日、国立国際医療研究センターはメディア向けに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をテーマとし、「COVID-19レジストリ研究の中間報告」のセミナーを開催した。 セミナーでは、2020年1月から現在まで収集された約4,800例のCOVID-19患者のデータから患者の入院時症状の傾向、予後、重症化傾向などの中間解析結果が説明された。COVID-19患者5,977例を精査 はじめに同センター理事長の國土 典宏氏が、東京・新宿区におけるセンターの意義、患者数の推移・傾向、患者対応などを説明した。 今回の研究では、センターで診療した5,977例(うち陽性1,335例、22.3%)の症例で検討がなされたこと、患者数も一度減少したものの、最近では増加傾向にあり、東京都の感染者数の拡大とパラレルであることが説明された。 センターでは、COVID-19対応総合病院機能として、検疫、重症者対応、診断法・治療法の開発、行政との連携だけでなく、疫学としてゲノム解析や患者レジストリにも力を入れていくと展望を述べた。全国748施設から4,797例を解析 続いて同センターのAMR臨床リファレンスセンターの松永 展明氏と同感染症センターの大津 洋氏が「COVID-19 レジストリ研究に関する中間報告について」をテーマに、レジストリ体制、システムの概要ならびに中間解析の結果について説明を行った。 レジストリ研究の概要について、目的は「COVID-19患者の臨床像および疫学動向を明らかにする」と定め、対象は「COVID-19と診断され医療機関において入院管理されている症例」と規定し、2020年1月(レジストリオープンは3月)からデータ収集されている(詳細は下記のホームページ参照)。 レジストリシステムは、世界保健機関とISARICが作成した症例報告書テンプレートを使用し、日本独自調査の項目も追加。センター内にサーバを設置し、データの集積が行われており、将来的には他国のデータとの統合分析も予定できる設計という。レジストリの登録施設は、全国で748施設、登録症例数は4,797例(8月3日現在)に上る。男性・高齢者・喫煙者や併存疾患のある例は重症化 続いて感染症センターの早川 佳代子氏が解析結果を説明した。中間解析の対象は、約230施設、約2,700例であり、レジストリ開設から7月7日までに登録された「入院治療を行った患者かつ入院時SARS-CoV-2陽性の患者」について行われた。 重症度の内訳として、入院後最悪の状態では「酸素不要」(61.8%)、「酸素要」(29.7%)、「挿管など」(8.5%)だった。入院中に酸素不要であった軽症者は約60%、挿管や体外式膜型人工肺(ECMO)を要した例は8.5%だったほか、入院時に重症であった例では、5人に1人以上が挿管やECMOを要したが、非重症であった例では2%未満だった。 患者背景では、2週間以内に陽性例や疑い例と濃厚接触があった例が58.3%。男性で喫煙者では重症化しやすかったほか、酸素や挿管などを要した患者は年齢が高めであった。また、60代以降では重症化しやすい(=酸素投与・挿管などが必要)傾向がみられた。 併存疾患では、軽症糖尿病(14.2%)、高脂血症(8.2%)、脳血管障害(5.5%)などがみられ、海外(一例としてイギリス:軽症糖尿病[22%]、重症糖尿病[8.2%]、 肥満[9%])の入院患者報告に比べると、併存疾患の割合は低めだった。 入院時の症状では、(37.5度以上)発熱、咳、倦怠感、呼吸困難感が多く、軽症例では頭痛、味覚障害、嗅覚障害を訴える例が多かった(発症から入院までの中央値:7日間)。とくに味覚障害と嗅覚障害の頻度は、海外からの報告でもばらつきが大きいものの、今後症状として増える可能性があると指摘した。 薬剤の使用歴について(併用例もそれぞれカウント)、酸素不要、酸素要、挿管などのいずれでも「ファビピラビル」が一番多く、次にシクレソニドだった。挿管などが必要な患者ではステロイドの使用も多かった。なお、有効性などの中間解析は未解析としている。 退院時の転帰について、全体で自宅退院(66.9%)が最も多く、ついで転院(16.6%)、医療機関以外への施設への入所(7.4%)で、入院死亡は7.5%だった。とくに挿管などの処置の例での死亡は33.8%と高い数値だった。なお、わが国では、海外の入院患者報告に比べると、死亡の割合は低めだという(イギリス:26%、米国NY:21~24%、中国:28%)。 以上から中間解析では、男性・高齢者・喫煙者や併存疾患のある例(心血管系・糖尿病・COPDなど慢性肺疾患)では重症化しやすく、入院中に酸素不要であった軽症者では約8割が自宅退院となり、予後良好であること。そして、欧米と比較し、低めの併存疾患の割合(糖尿病:16.7%、肥満:5.5%)や死亡率(7.5%)であったことが示唆されると説明した。 最後に臨床研究センターの大曲 貴夫氏が、「疫学研究としてさらなる知見の創出」、「医薬品医療機器開発への活用」、「臨床情報と検体情報の融合によるさらなる研究発展」を柱に研究を行っていくと展望を語り、セミナーを終えた。■参考サイトCOVID-19に関するレジストリ研究 COVIREGI-JP

515.

すべての診療科に関わる!タバコ問題を自分事にするために知っておきたいこと(2)(最終回)【新型タバコの基礎知識】第21回

第21回 すべての診療科に関わる!タバコ問題を自分事にするために知っておきたいこと(2)(最終回)Key Points喫煙者も煙を吸わされる非喫煙者もどちらもタバコの被害者新型タバコの登場で新たな対立が起きている医療者のあるべき姿を目指して、タバコ問題を自分事に重要な観点の一つは、タバコを吸う人がタバコの一番の被害者であるということです。タバコによって最も大きな害を被ることとなるのは喫煙者です。多くの人は、受動喫煙で被害を受ける非喫煙者こそ一番の被害者だと考えています。喫煙者が加害者であって、非喫煙者だけが被害者だと主張する人もいます。しかし、それは対立が誘導された結果だと気付いてほしいと思います。タバコを吸う人も、タバコの煙を吸わされる人も、どちらもタバコの被害者です*1。自治体や医療機関などで禁煙支援やタバコ対策に取り組んでいる人達が、タバコを吸う人にひどいことを言われたとか、あからさまに嫌な態度をとられたとか、辛いことがあっていやになるという話をよく聞きます*2。逆に、タバコを吸う人が、病院や路上で馬鹿にされたり、ひどい扱いを受けたりしたという話も聞きます。対立するのではなく、お互いの歩み寄りが必要ですが、なかなかうまくいきません。タバコを吸う人と吸わない人が対立すればするほど、タバコ会社が望んだ状況になってしまいます。対立すればするほど、タバコを吸う人は、タバコを吸わない人や禁煙を勧める人の言うことに耳を傾けなくなり、禁煙から遠ざかってしまうのです。*1:受動喫煙問題においては、喫煙者が加害者であり、非喫煙者が被害者だという構図もある。喫煙者は被害者だけでなく、加害者にもなってしまう。ぜひ喫煙者は、加害者とならないように受動喫煙を起こさないように努めてほしい。*2:タバコ対策をしっかり進めることは大変だと同意する。筆者もできる限り協力すると約束する。皆で励ましあって助け合ってやっていってほしい。新型タバコの登場により、新しい対立が起きてしまっています。新型タバコに関する認識の違いから対立が生じてしまっているのです。また、禁煙支援やタバコ対策の現場においても、新型タバコがハーム・リダクションとして機能するかどうか(第9回、第10回記事参照)、意見が対立しています。問題が複雑で難しければ難しいほど、考えや意見がまとまらず、対立が継続してしまいます。新型タバコ問題は、まさしく複雑で難しい問題です。さらには、実際の健康リスクについて、長期追跡の結果はしばらくは分からない状態が続きます。新型タバコ問題について見解が分かれ、タバコ対策の専門家も対立させられています。これがタバコ会社が意図して作り出した状況だとしたら、タバコ会社の大成功と言えるでしょう。この対立の社会的デメリットは計り知れません。喫煙者と非喫煙者、そしてすべてのタバコ対策の専門家集団が、対立するよりも協力して、タバコの害から逃れる道を模索していくことが必要です。医療者のあるべき姿を目指して、タバコ問題を自分事に医療者にとって、新型タバコを含めたタバコ問題は決して他人事では済まされません。タバコによりすべての診療科の疾患が増加もしくは増悪すると分かっています(図の疾患リスト参照)。この図のリストは単に一つの研究があるというわけではなく、複数の研究によりリスクの増大が確認されて、確実に喫煙によりリスクが増加すると考えられる疾患が羅列されています。実際に喫煙により増える病気は、まだ研究が少ないだけで、この他にもたくさんあると考えられます。画像を拡大する2002年に欧米の学会が発表した21世紀の医師憲章に掲げられた基本原則の一つは、「『患者の健康・幸福の追求』、すなわち、患者の健康・幸福を守ることを何よりも優先し、市場や社会からの圧力に屈してはならない」です。これをタバコ問題に当てはめれば、医療者はタバコ問題を放置しようとするさまざまな圧力に屈せず、患者の幸せのために禁煙支援・禁煙指導に努めなければならない、となるものと考えられます。喫煙はニコチン依存症であり、本人の意思だとは必ずしも言えません。もしも、医療者がタバコを吸っている患者に禁煙を勧めなければ、患者の健康・幸福を守る姿勢とは大きく乖離することとなってしまうのではないでしょうか。タバコ問題を自分事にして関心を持ち続けなければ、タバコ問題をきちんと理解することはできません。タバコ問題はとても複雑であり、タバコ問題の長い歴史に加えて、タバコ産業という意図的にタバコ対策を妨害してきた組織があることも問題を難しくしています(第20回記事参照)。一般的に医学や保健学の授業で簡単に伝えられるような表層的なタバコ問題の内容から、タバコ問題の深い闇に気付くことはできません。タバコ問題には、タバコ産業という明確な妨害者が存在するという特徴があり、世の中が歪められていると認識しなければ見えてこない部分があり、多くの人が騙されてしまっています。その延長線上に新型タバコ問題があります。医療現場においても、皆さんのエフォートを禁煙支援・禁煙指導に少しだけ割いて頂き、協働して新型タバコ時代のタバコ対策に取り組んでいきたいと考えています。最後に、タバコ問題を自分事にしてもらうための動画(タイで作られたテレビCM動画およそ2分)をご紹介します。喫煙者だけでなく、医療者やすべての人にタバコ問題を自分の問題として考えてもらうキッカケにできると考えています。いつも大好評をいただいている感動的動画です。是非ご覧ください。~Fin~

516.

認知症発症に対する修正可能なリスク因子~メタ解析

 高齢者の認知症発症に対する修正可能なリスク因子について、中国・蘇州大学のJing-Hong Liang氏らが、システマティックレビューおよびベイジアン・ネットワークメタ解析を実施した。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2020年6月17日号の報告。 複数の電子データベースより、2019年5月1日までのプロスペクティブコホート研究を網羅的かつ包括的に検索した。認知症でない参加者は、50歳以上とした。ベイジアン・ネットワークメタ解析を行うため、必要なデータを適格研究より抽出した。 主な結果は以下のとおり。・43件のコホート研究より27万7,294例が抽出された。・抗酸化物質を除く、以下の定義されたリスク因子は、すべての原因による認知症発症リスクの低下と関連していた。 ●睡眠障害なし(オッズ比[OR]:0.43、95%確信区間[CrI]:0.24~0.62) ●教育水準の高さ(OR:0.50、95%CrI:0.34~0.66) ●糖尿病の既往歴なし(OR:0.57、95%CrI:0.36~0.78) ●非肥満(OR:0.61、95%CrI:0.39~0.83) ●喫煙歴なし(OR:0.62、95%CrI:0.45~0.79) ●家族との同居(OR:0.67、95%CrI:0.45~0.89) ●運動の実施(OR:0.73、95%CrI:0.46~0.94) ●禁酒(OR:0.78、95%CrI:0.56~0.99) ●高血圧症の既往歴なし(OR:0.80、95%CrI:0.65~0.96) 著者らは「修正可能な身体的およびライフスタイル因子が、すべての原因による認知症の強力な予測因子であることが示唆された」としている。

517.

全粒食品摂取量と2型DMリスクは逆相関/BMJ

 全粒穀物およびいくつかの全粒食品(全粒朝食用シリアル、オートミール、ライ麦パン、玄米、ふすま入り、小麦胚芽など)の摂取量が多いほど2型糖尿病のリスクは有意に低下することが示された。米国・ハーバード公衆衛生大学院のYang Hu氏らが、3つの前向きコホート試験(米国看護師健康調査[NHS]、看護師健康調査II[NHS II]、医療従事者追跡調査)のデータを分析し明らかにしたもので、BMJ誌2020年7月8日号で発表した。これまで、全粒穀物摂取と2型糖尿病のリスク低下との関連は一貫していることが認められていたが、個々の全粒食品摂取との関連はあまり検討されていなかった。男女合わせて約19万5,000人を調査 研究グループは、NHS(1984~2014年)、NHS II(1991~2017年)、医療従事者追跡調査(1986~2016年)の参加者を対象に、全粒穀物の摂取量と、2型糖尿病発症の関連を検証した。 対象被験者は、ベースラインで2型糖尿病や心血管疾患、がんの既往がない、女性15万8,259人と男性3万6,525人。主要評価項目は、追跡アンケート調査時および検証済みの補足アンケート調査で確認された自己申告の2型糖尿病発症とした。身体活動レベルや喫煙の有無にかかわらずリスクは低下 延べ追跡期間461万8,796人年の間に、1万8,629人が2型糖尿病を発症した。全粒穀物の1日総摂取量について、3つのコホートをそれぞれ5つのグループに等分し、2型糖尿病発症との関連を分析した。 糖尿病のリスク因子となるライフスタイルや食事内容で補正後、全粒穀物摂取量の最大五分位群は、最少五分位群に比べ、2型糖尿病リスクが29%(95%信頼区間[CI]:26~33)低かった。 全粒食品の種類別にみると、コールド全粒朝食用シリアルについて1日に1サービング以上摂取群は1ヵ月1サービング未満群に比べ2型糖尿病発症に関する統合ハザード比(HR)は、0.81(95%CI:0.77~0.86)だった。ライ麦パンの同HRは0.79(0.75~0.83)、一方でポップコーン摂取の同HRは1.08(1.00~1.17)だった。 摂取量が平均して少ないその他の全粒食品について、1週間に2サービング以上摂取群は1ヵ月に1サービング未満群に比べて同統合ハザード比は、オートミールが0.79(95%CI:0.75~0.83)、玄米は0.88(0.82~0.94)、ふすま入り食品は0.85(0.80~0.90)、小麦胚芽は0.88(0.78~0.98)だった。 スプライン回帰分析の結果、全粒穀物摂取量と2型糖尿病リスクには、非線形用量反応関係がみられ、同リスク減少の最大水準は1日2サービング超だった(曲率に関するp<0.001)。また、コールド全粒朝食用シリアルとライ麦パンでは、割合低下は1日約0.5サービングでプラトーに達した。ポップコーンの摂取についてはJカーブの関連性が認められ、その摂取量が1日1サービングを超えるまでは2型糖尿病率の有意な上昇はみられなかった。 全粒穀物摂取量の増加と2型糖尿病リスク減少の関連性は、痩せている人のほうが、過体重または肥満者に比べ強かった(相互作用に関するp=0.003)。同関連性は、身体活動レベルや糖尿病家族歴、喫煙の有無にかかわらず認められた。

518.

身体活動ガイドライン順守で、全死因・原因別死亡リスク減/BMJ

 米国では、「米国人の身体活動ガイドライン2018年版(2018 Physical Activity Guidelines for Americans)」で推奨されている水準で、余暇に有酸素運動や筋力強化運動を行っている成人は、これを順守していない集団に比べ、全死因および原因別の死亡リスクが大幅に低いことが、中国・山東大学のMin Zhao氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2020年7月1日号に掲載された。本研究の開始前に、身体活動ガイドラインの推奨を達成することと、全死因死亡や心血管疾患、がんとの関連を評価した研究は4件のみで、その結果は一致していなかった。また、身体活動ガイドラインと他の原因別の死亡(アルツハイマー病や糖尿病などによる死亡)との関連を検討した研究は、それまでなかったという。推奨順守で4群に分け、全死因と原因別の死亡を評価 研究グループは、米国の成人を代表するサンプルを用いて、米国人の身体活動ガイドラインの2018年版で推奨されている身体活動と、全死因死亡および原因別死亡の関連を評価する目的で、地域住民ベースのコホート研究を行った(責任著者は山東大学から研究支援を受けた)。 国民健康聞き取り調査(National Health Interview Survey)の1997~2014年のデータと、国民死亡記録(National Death Index)の2015年12月31日までのデータを関連付けた。成人(年齢18歳以上)47万9,856人が解析に含まれた。 調査参加者の自己申告に基づき、1週間の余暇時間のうち有酸素運動および筋力強化運動に費やした時間を集計し、身体活動ガイドラインに従って、4つの群(運動不足、有酸素運動のみ、筋力強化運動のみ、有酸素運動+筋力強化運動)に分類した。 主要アウトカムは、国民死亡記録から得た全死因死亡と原因別死亡とした。原因別死亡には、8つの疾患(心血管疾患、がん、慢性下気道疾患、事故/負傷、アルツハイマー病、糖尿病、インフルエンザ/肺炎、腎炎/ネフローゼ症候群/ネフローゼ)が含まれた。有酸素+筋力強化運動で、死亡リスク40%減 47万9,856人中7万6,384人(15.9%)が有酸素運動+筋力強化運動群、11万3,851人(23.7%)が有酸素運動群、2万1,428人(4.5%)が筋力強化運動群、26万8,193人(55.9%)は運動不足群に分類された。 ガイドライン2018年版の推奨を完全に満たした成人の割合は、男女とも年齢が上がるに従って低下した。ベースラインの背景因子のすべてで、4つの群に有意な差が認められた。ガイドラインの推奨を満たさなかった運動不足群に比べ、これを満たした3群の参加者は、年齢が若く、男性や白人、未婚者、非喫煙者、少量~中等量の飲酒者が多く、学歴が高く、正常体重者が多く、慢性疾患を有する者が少なかった。 追跡期間中央値8.75年の期間中に、5万9,819人が死亡した。このうち、1万3,509人が心血管疾患、1万4,375人ががん、3,188人が慢性下気道疾患、2,477人が事故/負傷、1,470人がアルツハイマー病、1,803人が糖尿病、1,135人がインフルエンザ/肺炎、1,129人が腎炎/ネフローゼ症候群/ネフローゼで死亡した。 全死因死亡のリスクは、ガイドラインの推奨を満たさなかった運動不足群と比較して、筋力強化運動群が11%(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.85~0.94)、有酸素運動群が29%(0.71、0.69~0.72)低く、有酸素運動+筋力強化運動群(0.60、0.57~0.62)では、さらに大きな生存に関する利益が認められ、リスクは40%減少していた。 また、同様の関連が、心血管疾患死(筋力強化運動群のHR:0.82[95%CI:0.74~0.92]、有酸素運動群:0.65[0.62~0.69]、有酸素運動+筋力強化運動群:0.50[0.46~0.56])、がん死(0.85[0.77~0.95]、0.76[0.73~0.80]、0.60[0.56~0.65])、慢性下気道疾患死(0.76[0.62~0.93]、0.42[0.37~0.47]、0.29[0.23~0.37])で観察された。 著者は、「これらのデータは、ガイドラインで推奨されている身体活動の水準が、重要な生存上の利益と関連していることを示唆する」としている。

519.

内臓脂肪指数は大腸がん発症の予測因子~日本人コホート

 内臓脂肪蓄積は大腸がん発症に関連しているが、内臓脂肪蓄積と機能障害のマーカーである内臓脂肪指数(VAI)と大腸がん発症との関連についての報告はない。今回、京都府立医科大学の岡村 拓郎氏らが、大規模コホートNAGALA研究で検討した結果、VAIの最高三分位群において大腸がん発症リスクが有意に高いことが示された。BMJ Open Gastroenterology誌2020年6月号に掲載。 本研究では、2万7,921人(男性1万6,434人、女性1万1,487人)の参加者をVAIによって三分位に分けた。VAIは、男性では(腹囲/(39.68+1.88×BMI))×(トリグリセライド/1.03)×(1.31/HDLコレステロール)、女性では(腹囲/(36.58+1.89×BMI))×(トリグリセライド/0.81)×(1.52/HDLコレステロール)で算出した。性別、年齢、喫煙、飲酒、運動、ヘモグロビンA1c、収縮期血圧で調整し、Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間(中央値4.4年)中に、116人が大腸がんを発症した。・単変量解析では、最低三分位群と比較して、中間および最高三分位群における大腸がん発症のハザード比(HR)は1.30(95%信頼区間[CI]:0.76~2.28、p=0.338)および2.41(同:1.50〜4.02、p<0.001)で、最高三分位群で有意に高かった。・共変量の調整後、中間および最高三分位群における大腸がん発症のHRは1.27(95%CI:0.73〜2.23、p=0.396)および1.98(同:1.15〜3.39、p=0.013)で、最高三分位群で有意に高かった。 著者らは「VAIは大腸がん発症の予測因子になりうる。大腸がんの早期発見のために、VAIが高い人に大腸がん検診を勧めるべき」と結論している。

520.

恥ずかしいけど口に出したら幸せになるカード【これで「コロナ離婚」しなくなる!(レクリエーションセラピー)】Part 1

今回のキーワード「ポジティブ合戦」社会的報酬ピグマリオン効果認知(マインドセット)健康(ウェルビーイング)幸福感(主観的ウェルビーイング)マズローの動機(欲求)のピラミッドポジティブ心理学コロナ禍の中、親の在宅勤務や子どもの自宅学習が増え、家族が家にいる時間が増えたことで絆が強まる…と思ったら、実際は、逆でした。その距離感に戸惑い、夫婦げんかや親子げんかが増えています。そして、モラハラやDVが社会問題となり、「コロナ離婚」という言葉が生まれています。このようにならないためには、どうすれば良いでしょうか?その答えが、今回紹介するカードゲーム「恥ずかしいけど口に出したら幸せになるカード」です。今回は、いつもとは違い、シネマセラピーのスピンオフバージョン「レクリエーションセラピー」をお送りします。このゲームは、一言で言うと、ファミリーやカップル向けの「ポジティブ合戦」です。それでは、なぜポジティブなセリフを言い合うとポジティブになるのでしょうか? なぜポジティブになると幸せになるのでしょうか? そもそもなぜ私たちは幸せになりたいのでしょうか? これらの答えを、このゲームに触れながら、進化心理学的に解き明かします。ネガティブになりがちな今だからこそ、ポジティブになることについて考え、「コロナ離婚」しない、幸せな夫婦のあり方、家族のあり方を一緒に探っていきましょう。 なんでポジティブなセリフを言い合うとポジティブになるの?このゲームのアイテムは、ポジティブなセリフが書かれた48枚のカードと30枚のチップを使います。ルールは、プレイ人数2~4人で、毎朝1~5枚ずつカードを引いて、そのカードに書かれたセリフを1日の間で「対戦相手」にどれだけ言えるかを1週間単位で競います。また、自分が引いたカードを「対戦相手」にアピールしてそのセリフを言ってもらうと、お互いにポイントになります。毎日の夕食の時など一緒にいる時に「対戦結果」を集計し、ポイントのチップをゲットして、勝敗を決めます。このゲームをし続けるうちに、プレイヤーはだんだんとポジティブになっていきます。ここから、この心理メカニズムを3つに分けて、ご説明しましょう。(1)言われると心地良く感じるたとえば、「素敵だね」というカードがあります。こう相手から言われると、どうなるでしょうか?1つ目は、私たちが美味しいものを食べた時と同じように、ポジティブなことを言われると心地良く感じるからです。これを心理学では、社会的報酬と言います。さらに、相手からポジティブに見られると、自分も相手をポジティブに見るようになります。これを心理学では、魅力の返報性(互恵性)と言います。(2)言われるとその良さを再認識するたとえば、「思いやりがあるね」というカードがあります。こう相手から言われると、どうでしょうか?2つ目は、ポジティブなことを言われるとその良さを再認識するからです。これを心理学では、リソースの発見と言います。これは、自尊心や自信を高めることにつながり、ポジティブになります。また、期待されるという暗示的な効果によって、その良さを生かすことに意識が向いて、実際にそのようになっていきます。これを心理学では、ピグマリオン効果と言います。なお、ピグマリオンとは、ギリシア神話に登場する彫刻家です。彼に恋をした石像が、その彼の期待に応えようと本物の人間の女性になったというストーリーにちなんでいます。日本のことわざの「ひょうたんから駒」や「嘘から出た真」にも通じます。(3)言い続けると癖になるたとえば、「一緒にいられて嬉しいな」というカードがあります。こう自分が言おうとすると、どうなるでしょうか?3つ目は、ポジティブなことを言い続けると癖になるからです。これは、カードのセリフを言うタイミングを見極めようと、そのセリフが頭の中を占めるようになることです。そして、相手の良さを探し出す発想が自分自身にも向き、自分も自分の良さに気付き、ポジティブ思考の「癖」が身に付きます。この考え方の「癖」を心理学では、認知(マインドセット)と言います。ある心理学者(ジェームズ・ランゲ)が、「悲しいから泣くのではない。泣くから悲しい」という名言を残しています。言い換えれば、「楽しいから笑うのではない。笑うから楽しい」です。これは、「笑う門には福来たる」という日本のことわざにも通じます。つまり、私たちは行動を変えることで、思考パターン(認知)を変えるができます。この思考パターンは、まさにスポーツや楽器演奏と同じく、練習すればするほどうまくなります。これは、心理カウンセリングでよく行われる認知行動療法です。認知とは、心のあり方そのものです。もっと言えば、どういう生き方をしたいのか、生き方そのものとも言えるでしょう。 なんでポジティブになると幸せになるの?幸せとは、健康(ウェルビーイング)と言い換えられます。ここから、ポジティブになると得られる健康を3つに分けて、紹介しましょう。(1)精神的な健康たとえば、「いつもそばにいるよ」というカードは、「自分は大丈夫」という自尊心(自尊感情)を高めます。「センスがいいね」というカードは、「自分はできる」という自信(自己効力感)を高めます。そして、「ワクワクするね」というカードは、「自分はこうしたい」という積極性(内発的動機付け)や目標意識(自己実現)を高めます。これの心理によって、たとえストレスにさらされても、解決しようと働きかけるようになります(ストレスコーピング)。これは、裏を返せば、心が折れにくくなります(レジリエンス)。1つ目は、うつ病などの精神障害を発症しにくくなる、つまり精神的な健康です。なお、レジリエンスの詳細については、末尾の関連記事1をご参照ください。(2)身体的な健康精神的な健康によって、ストレスを減らすことは、脳血管疾患や心血管疾患のリスクを減らします。また、免疫力を維持して、がんのリスクも減らします。2つ目は、寿命が延びる、つまり身体的な健康です。実際に、「修道女研究」によって、若年期にポジティブであることは長寿の傾向になることが示されています。これは、アメリカのある教会の修道女180人の若年期の日記の中にあるポジティブワードの割合を分析した研究です。結果として、順位付けた4つのグループの間で明らかな生存率の違いが判明しました。なお、修道女である理由は、質素な食事量、適度な運動、喫煙や飲酒などの嗜好品の禁止などが徹底されており、生活習慣が完全にコントロールされているからです。(3)社会的な健康たとえば、「あなたがいてくれて良かった」というカードは、「自分は周りから大切にされている」という自尊心(集団的アイデンティティ)から「周りを大切にしたい」という愛他性(利他性)を高めます。また、「人の心を動かせる人だね」というカードは、「自分たちは社会の役に立てる」という自信(集団的効力感)を高め、「自分たちは世の中の役に立ちたい」という社会貢献(向社会性)につながります。これが制度化されたものが、ソーシャルサポートであり福祉です(コミュニティ・レジリエンス)。3つ目は、ソーシャルサポート(福祉)が充実する、つまり社会的な健康です。実際に、宗教に入信している人は、一般の人よりも寿命が平均7年長いことが分かっています。その理由として、宗教というコミュニティに属することで、精神的な健康だけでなく、助け合いによるソーシャルサポートも得られることが指摘されています。また、対人魅力の研究によると、結婚相手に選ばれるのは、ネガティブな人よりもポジティブな人であることが分かっています。つまり、ポジティブであることは、それだけ社会、そして子孫が繁栄することが示唆されます。次のページへ >>

検索結果 合計:1586件 表示位置:501 - 520