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高齢者に対するICIは効きが悪い?【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第4回

第4回 高齢者に対するICIは効きが悪い?1)Lichtenstein MRL, et al. Impact of Age on Outcomes with Immunotherapy in Patients with Non-Small Cell Lung Cancer(NSCLC). J Thorac Oncol. 2018 Nov 23. [Epub ahead of print]2)Grossi F, et al. Use of nivolumab in elderly patients with advanced squamous non-small-cell lung cancer: results from the Italian cohort of an expanded access programme. Eur J Cancer. 2018;100:126-134.NSCLCのみならず、今後SCLCでも初回治療に導入が進むと期待される免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。一方で、治験データからは見えてこない高齢者やPS不良例に対する効果についてはしばしば議論がなされてきた。今回、高齢者に対する2つのレトロ解析を紹介する。1)について2013~17年まで、MGH(マサチューセッツ総合病院)でPD-1/L1単剤治療を受けた245例。31.0%が70代、11.4%が80代。PD-L1免疫染色はE1L3N cloneで実施。PFSは70代までは年齢が上がるごとに延長(70代のmPFS 3.8ヵ月)、しかし80代のmPFSは1.6ヵ月と短かった。OSは60歳未満、60代、70代で同等(12~14ヵ月)であったが、80代で3.6ヵ月と短かった。有害事象は年代によって大きな差はなし。2)について欧州におけるexpanded access programmeをまとめたもの。2015年に欧州にある96の病院で治療を受けた、扁平上皮がん371例が対象。75歳以上は19%、80歳以上の割合は不明。ORRは年代で差はなし。PFSについても3.2~4.2ヵ月と同様。OSは75歳以上で5.8ヵ月と、そのほか(7.9~8.6ヵ月)に比して短かった。有害事象は年代によって大きな差はなし。解説高齢者に対する化学療法は本邦でも重要な課題だが、これまでの治験のサブセットは多くが65歳や70歳などで区切られており、われわれが実臨床で考える高齢者とはかけ離れているという問題がある。また、免疫応答が異なる集団でICIの効果が異なるかについてはいろいろ興味深い検討がなされており、最近のJAMA Oncol誌にも男女間でICIの効果に差はなさそうだ、というメタアナリシスが報告されている(Wallis CJD, et al. JAMA Oncol. 2019 Jan 3. [Epub ahead of print])。高齢者については、「免疫応答が落ちているのでICIの効果が劣る」という意見と「高齢者にできる腫瘍はTMBが高い可能性があるのでICIの効果は高いのでは」という、相反する意見があった。今回紹介した論文について、前者では80歳以上の高齢者で効果が低そう、という知見だが、この集団の患者背景を見てみると脳転移を有する患者の割合が他よりも有意に多く(約30%)、PS2の患者も35%を占めるなど、予後不良な因子を有する集団である。PFSは1.6ヵ月と非常に短く、OSも3.6ヵ月と同様に短いこともこれを反映していると思われる。一方、EJC誌のレトロ解析では、ORR、PFSはいずれの年代でも同様であった。こちらは逆に75歳以上の集団でのみ脳転移の頻度が少ないので解釈が悩ましいところだが、全体、高齢者集団とも過去の第III相試験における有効性データと近い結果であり、サンプルサイズもより多く、信頼性はやや高いと思われる。なお、双方の研究ともに高齢者ではOSが非常に短くなっているが、何らかの予後不良因子が隠れているのか、もしくはICI後の治療割合が本邦に比して低いのかなど、まだ不明な点は多いといえる。有害事象については、いずれの報告でも年齢による差はない、つまり細胞障害性薬剤より軽い、ということであるので、結局のところ、これらの報告から「高齢者だからといってICIの使用を躊躇する必要はなさそうだ」、というのが自分の考えである。PD-L1高発現など選別した集団において年齢によって効果の違いがあるのか、今後の研究が望まれる。

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術前化学療法を施行したHER2陽性乳がんにおける術後T-DM1の有効性(解説:矢形寛氏)-996

 ドイツのKATHERINE試験結果が2018年サン・アントニオ乳癌シンポジウムで報告された後、すぐに論文化されたものであり、まだ最終結果ではないものの、われわれの臨床を変える情報であった。 全体として3年無浸潤病変生存率の差が10%以上と大きな改善をみている。全生存率は境界域ではあるものの、より長期に追跡することにより十分な有意差が出てくることを期待させる内容である。現時点でも十分臨床応用するに値する結果であり、HER2陽性進行乳がんで、術前化学療法により十分な効果があったものの、浸潤がん残存が認められるもの、HR陰性例などで、とくに有用性が高いものと思われる。 注意が必要なのは、本試験の適格基準が、術前HER2標的剤治療を完遂したものとなっており、PDやSD、あるいは有害事象などで中断したものは適応とはなっていないことは知っておくべきである。さらにT-DM1群で血小板減少症を来した1例が脳内出血により死亡しており、不要な有害事象を避けるためにも適応は慎重に選択しなければならない。

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ニボルマブ、食道がん第III相試験でOS延長(ATTRACTION-3)/小野薬品

 小野薬品工業株式会社は、2019年1月9日、ニボルマブ(商品名: オプジーボ)について、フルオロピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む併用療法に不応または不耐となった切除不能な進行または再発食道がん患者を対象に実施した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(ATTRACTION-3:ONO-4538-24/CA209-473)の最終解析において、ニボルマブ群が化学療法群(ドセタキセルまたはパクリタキセル)と比較して、主要評価項目である全生存期間(OS)の有意な延長を示したと発表。 ニボルマブは、切除不能な進行または再発食道がんにおいて、腫瘍細胞のPD-L1発現を問わない集団全体においてOSの有意な延長を示した世界で初めての免疫チェックポイント阻害薬となる。なお、本試験の結果については、今後、関連学会にて公表する予定とのこと。

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mFOLFIRINOXが膵がん術後補助療法に有望/NEJM

 転移を有する膵がんの術後補助療法において、フルオロウラシル/ロイコボリン+イリノテカン+オキサリプラチンによる併用化学療法(修正FOLFIRINOX[mFOLFIRINOX])はゲムシタビン(GEM)療法に比べ、全生存期間が有意に延長する一方で、高い毒性発現率を伴うことが、フランス・ロレーヌ大学のThierry Conroy氏らが実施した「PRODIGE 24-ACCORD 24/CCTG PA 6試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年12月20日号に掲載された。膵がんの治療では、手術単独の5年生存率は約10%と低く、術後補助療法ではGEM(日本ではS-1のエビデンスもある)が標準治療とされるものの、2年以内に69~75%が再発する。転移を有する膵がんの1次治療では、従来のFOLFIRINOXはGEMに比べ、全生存期間を延長することが知られている。mFOLFIRINOX群に247例、GEM群に246例を割り付け 研究グループは、膵がん切除例において、術後補助療法としてのmFOLFIRINOXレジメンの有効性と安全性をGEMと比較する非盲検無作為化第III相試験を行った(R&D Unicancerなどの助成による)。 mFOLFIRINOXレジメンは、従来のFOLFIRINOXレジメンに含まれるフルオロウラシルのボーラス投与を行わないことで、血液毒性や下痢の発生を抑制し、重症度の軽減を図るもので、進行膵がんでは治療効果は低下しないことが確認されている。 対象は、年齢18~79歳、組織学的に膵管腺がんが確認され、割り付けの3~12ヵ月前に肉眼的完全切除術(R0:すべての切除断端から1mm以内にがん細胞がない、R1:1つ以上の切除断端から1mm以内にがん細胞がある)を受け、転移病変や悪性腹水、胸水のエビデンスがない患者であった。 被験者は、mFOLFIRINOX群(オキサリプラチン[85mg/m2体表面積]、イリノテカン[180mg/m2、プロトコールで規定された安全性解析後は150mg/m2に減量]、ロイコボリン[400mg/m2]、フルオロウラシル[2,400mg/m2]を、2週ごとに12サイクル投与)またはGEM群(4週を1サイクルとし、1、8、15日目に1,000mg/m2を静脈内投与、6サイクル)に無作為に割り付けられ、24週の治療が行われた。 主要エンドポイントは無病生存期間(割り付け日から初回がん関連イベント、2次がん、全死因死亡までの期間)とし、副次エンドポイントには全生存期間、安全性などが含まれた。 2012年4月~2016年10月の期間に、フランスの58施設とカナダの19施設で493例が登録され、mFOLFIRINOX群に247例、GEM群には246例が割り付けられた。mFOLFIRINOX群で無病生存期間が8.8ヵ月、全生存期間は19.4ヵ月延長 ベースラインの年齢中央値は、mFOLFIRINOX群が63歳(範囲:30~79)、GEM群は64歳(30~81)、男性がそれぞれ57.5%、54.9%であった。リンパ管浸潤(73.7% vs. 63.1%、p=0.02)を除き、人口統計学データや疾患特性に差はなかった。治療期間中央値は、mFOLFIRINOX群が24.6週、GEM群は24.0週だった。 フォローアップ期間中央値は33.6ヵ月であった。無病生存期間中央値は、mFOLFIRINOX群が21.6ヵ月と、GEM群の12.8ヵ月に比べ有意に延長した(層別化ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.46~0.73、p<0.001)。3年無病生存率は、それぞれ39.7%、21.4%であった。イリノテカンの減量は無病生存期間に影響しなかった(p=0.87)。 全生存期間中央値は、mFOLFIRINOX群は54.4ヵ月であり、GEM群の35.0ヵ月に比し有意に良好であった(層別化HR:0.64、95%CI:0.48~0.86、p=0.003)。3年全生存率は、それぞれ63.4%、48.6%だった。 mFOLFIRINOX群は、無転移生存期間(割り付け日から初回遠隔転移または死亡までの期間、30.4ヵ月vs.17.7ヵ月、p<0.001)およびがん特異的生存期間(割り付け日から治療対象がんまたは治療関連合併症による死亡までの期間、未到達vs.36.4ヵ月、p=0.003)も有意に優れた。 Grade3/4の有害事象は、mFOLFIRINOX群が75.9%、GEM群は52.9%で発現した。血液毒性の発現には両群間に差はないものの、好中球減少/発熱性好中球減少へのG-CSFの投与がmFOLFIRINOX群で多く(62.2% vs.3.7%、p<0.001)、非血液毒性の多く(疲労、下痢、悪心、腹痛、嘔吐、感覚性末梢神経障害、異常感覚、粘膜炎)がmFOLFIRINOX群で有意に発現率が高かった。GEM群の1例が治療関連毒性(間質性肺炎)により死亡した。 著者は、「予想どおりmFOLFIRINOXの安全性プロファイルはGEMに比べ不良であったが、管理可能だった。フルオロウラシルのボーラス投与の非施行(およびイリノテカンの減量)により、Grade3/4の好中球減少は既報(PRODIGE試験)のFOLFIRINOXの46%から、本試験では28%に減少した」としている。

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アテゾリズマブ、NSCLCへの1次治療に国内承認

 中外製薬株式会社は、抗PD-L1抗体アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)に関し、2018年12月21日、「化学療法未治療の扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」に対する用法・用量の追加について厚生労働省より承認を取得した。 今回の承認は、国際共同第III相臨床試験(IMpower150試験)の成績に基づいている。IMpower150試験では、アテゾリズマブとベバシズマブおよび化学療法の併用により、ベバシズマブおよび化学療法の併用と比較し、統計学的に生存期間の有意な延長が認められた。アテゾリズマブの併用療法の安全性プロファイルは、これまで各薬剤で認められている安全性プロファイルと一致しており、本併用療法で新たな安全性のシグナルは確認されなかった。■「アテゾリズマブ」関連記事アテゾリズマブ、小細胞肺がんのOS、PFS改善(IMpower133)/NEJM

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ペムブロリズマブのNSCLC1次治療、3パターンが国内承認/MSD

 MSD株式会社は、2018年12月21日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、非小細胞肺がんにおける以下の国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得した。・PD-L1発現にかかわらず切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)に対する初回治療としてペメトレキセド+プラチナ製剤(シスプラチンまたはカルボプラチン)との併用療法としての適応拡大・PD-L1発現にかかわらず切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(扁平上皮癌)に対する初回治療としてカルボプラチン+パクリタキセルまたはnab-パクリタキセルとの併用療法としての適応拡大・PD-L1陽性(TPS1≧1%)の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対する初回治療としての単独療法としての適応拡大3パターンの試験でペムブロリズマブの有効性および安全性が示された 今回の適応拡大にあたっては、未治療の転移のある非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)患者を対象とした国際共同第III相KEYNOTE-189試験、未治療の転移のある非小細胞肺がん(扁平上皮がん)患者を対象とした国際共同第III相KEYNOTE-407試験、およびPD-L1陽性(TPS≧1%)の未治療の非小細胞肺がん患者を対象とした国際共同第III相臨床試験KEYNOTE-042試験のそれぞれにおいて、ペムブロリズマブの有効性および安全性が示された。 KEYNOTE-189試験では、PD−L1発現にかかわらず、未治療の転移を有する非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)患者616例において、ペムブロリズマブとペメトレキセド+プラチナ製剤(シスプラチンまたはカルボプラチン)の併用療法が、標準化学療法であるペメトレキセド+プラチナ製剤(シスプラチンまたはカルボプラチン)の併用療法と比較して、全生存期間(OS)を有意に改善した(HR=0.49、95%CI:0.38~0.64、p<0.00001)。ペムブロリズマブとペメトレキセド+プラチナ製剤の化学療法併用群の91.9%に副作用が認められ、主な副作用(20%以上)は、悪心46.2%、貧血38.0%、疲労33.1%、好中球減少症24.9%および食欲減退20.7%であった。 KEYNOTE-407試験では、PD−L1発現にかかわらず、未治療の転移を有する非小細胞肺がん(扁平上皮がん)患者559例において、ペムブロリズマブとカルボプラチン+パクリタキセルまたはnab-パクリタキセルとの併用療法が、プラセボとカルボプラチン+パクリタキセルまたはnab-パクリタキセルの併用療法と比較して、OSを有意に改善した(HR=0.64、95% CI:0.49~0.85、p=0.0008)。ペムブロリズマブと化学療法の併用群の95.3%に副作用が認められ、主な副作用(20%以上)は、脱毛症45.3%、貧血44.2%、好中球減少症34.9%、悪心30.6%、血小板減少症29.1%および下痢21.9%であった。 KEYNOTE-042試験では、PD-L1陽性(TPS≧1%)の未治療の非小細胞肺がん患者1,274例において、ペムブロリズマブ単独療法がプラチナ製剤併用化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルまたはカルボプラチン+ペメトレキセド)と比較してOSを有意に延長した(HR=0.81、95%CI:0.71~0.93、p=0.002)。ペムブロリズマブ群の62.7%に副作用が認められ、主な副作用(10%以上)は甲状腺機能低下症10.8%であった。 今回の適応拡大により、ペムブロリズマブは、PD-L1発現にかかわらず切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん患者に対する初回治療(PD-L1発現にかかわらず化学療法との併用療法。PD-L1陽性[TPS≧1%]の場合は単独療法も使用可能)に使用できる抗PD-1抗体となる。

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サン・アントニオ2018レポート

レポーター紹介2018年のサン・アントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)は、12月4~8日の5日間で開催された。天候は連日曇りで肌寒く、後半は雨で、会場周辺の風も強かった。最近はどのがん種においても免疫チェックポイント阻害剤の話題が花盛りであるが、乳がん領域でも報告が目立ってきた。それに伴ってTIL(Tumor Infiltrating Lymphocyte)やPD-L1の免疫染色の報告も多くなったように思う。また、原発巣と転移巣の遺伝子変化の違いが徐々に明らかにされ、CTCs (Circulating Tumor Cells)とcfDNA(cell free DNA)を同時に測定してその違いをみるような報告もあり、遺伝子検索が当たり前のように、われわれの臨床に取り込まれつつある。また、私たちの臨床に有用な発表も多くあり、かなり充実した内容であったと思う。アナストロゾール5年終了後さらに5年の追加投与の有効性を検証する本邦の臨床試験(AERAS、N-SAS BC 05)なんと言っても最初に取り上げたい報告である。日本発の大規模無作為化比較試験である。広島市民病院の大谷 彰一郎先生が素晴らしいパフォーマンスで発表され、会場が笑いで包まれていた。もちろんその内容も充実したものであった。試験名はAERAS(Arimidex Extended adjuvant RAndomized Study)であり、その意味はギリシャ語で“風”である。アナストロゾール(ANA)を約5年使用した方が対象だが、タモキシフェン(TAM)からANAに切り替えて2年以上使用した方も許容している。主要評価項目はDFSで1,697例が2群に割り付けされた。ステージはT1が約50%、N0が約78%であった。TAM→ANAは約9%と少数であった。中央観察期間4.9年でDFSはコントロール群(84.4%)と比較しANA群(91.9%)で良好であった(HR=0.548、p=0.0004)。DDFS(HR=0.514、p=0.0077)も同様であった。OSには差はなかったが(HR=1.389、p=0.665)、症例数、患者背景、観察期間が影響しているものと思われる、会場でも質問があったが、第2がん(対側乳がんを除く)の発生がANA群で1.5%(コントロール群4.3%)と低かった理由は不明である。一般的に考えられることは、他がんの発生リスクに影響するような遺伝的、環境的因子までは層別化できないので、症例数が多いといえども若干の偏りが起こりうることは否定できず、ANAの効果とは通常は考えられないだろう。有害事象も少ないが、これはANAを5年完遂した方が対象であるためであろうと推測される。私自身はとくに臨床が変わることはなく、TAM延長と同様に高リスクに対してANAを含めたAI剤の延長を提案している。EBCTCGメタアナリシス − 内分泌療法5年終了後のアロマターゼ阻害剤追加効果EBCTCGメタアナリシスで、11の比較試験で2万2,192例の女性が対象となっている。これは3つに分類され、簡単にまとめると、a)TAM5年のみ:7,500例→全再発、遠隔転移、乳がん特異的死亡率に有意差ありb)TAMからAIへのスイッチで5~10年:12,600例→全再発のみに有意差ありc)AI5年のみ:4,800例→全再発のみに有意差ありであった。当然のことながら、リンパ節転移が多いほど絶対差が大きくなっていた。AIの延長により骨折率が有意に上昇していたが、再発以外の死亡率には差がなかった。今回の解析にはAERASのデータは残念ながら含まれていなかったが、今後さらに複数の結果が統合され再解析されるだろう。AERAS試験の解説で述べたように、やはり高リスク群でAI延長の価値があるものと考えられる。乳管内新生物の再発予防のための低用量タモキシフェンこれは私にとって驚くべき臨床試験であった。タモキシフェン(TAM)に対して副作用の強い患者は決して少なくなく、アドヒアランスの低下につながっていた。そのため、どうしても副作用をマネジメントしきれない患者に対しては、実臨床上本来20mg/日のところを10mg/日に下げて使用することもあった。もちろん治療効果の低下につながる可能性も否定できないことを伝えての話である。しかし、TAMは一定の血中濃度を保たないとまったく効果がなくなるというおそらく不適切な知識をどこかで得て、10mgの使用をやめた経緯がある。あらためて『乳癌のホルモン療法4 抗エストロゲン剤(SERM)』(医学図書出版、野村 雍夫著)をひもとくと、かなり古くから10mg/日以下の低用量TAMが有効で、有害事象も少ない可能性が指摘されていた。またKi67の低下は1mg、5mg、20mgでまったく異ならなかった(Decensi A, et al. J Natl Cancer Inst. 2003;95:779-790. )。そして高リスクDCISの再発は10mgでも十分に抑制していた(Guerreri Gonzaga et al.Int J Cancer.2016;139:2127-2134.)。研究デザインはADH、LCIS、ER+のDCISでイタリア14施設から500例を集積しTAM 5mgとプラセボを無作為化割り付けし、3年の治療と少なくともさらに2年の経過観察を行った。中央観察期間は5.1年であった。その結果、乳房の全イベント、対側乳がんの発生ともに十分な抑制効果が得られていた。重篤な有害事象はほとんど差がなく、むしろプラセボ群のほうが多かったくらいである。ホットフラッシュはTAMでやや頻度が高かった。膣乾燥、筋骨格系の痛み、関節痛は有意差を認めなかった。またアドヒアランスもまったく差がなかった。本研究によりDCIS等で局所再発および対側乳がん発症抑制のための術後内分泌療法を提案しやすくなった。また、これは本研究の内容とは話がずれてしまうが、20mgで副作用が強く生活に大きな支障を来している乳がん患者にとっても10mgというオプションを提案することができる。治療は1か0ではない。1ほどでなくても0より十分高い効果が得られるのであれば、それを使用する価値が私はあると考えている。オキシブチニンによるホットフラッシュ抑制効果をみる二重盲検プラセボ対象無作為化試験(ACCRU SC-1603)オキシブチニンは尿失禁・尿意切迫感・頻尿治療剤として古くから使われている抗コリン薬であり、汗を減少させるため多汗症に有効とされている。難治性のホットフラッシュに対しても後方視的、前方視的研究で有効性が示されていた。ただし、15mg/日では毒性も無視できないものであった。本試験はTAMまたはAIを内服していて、ホットフラッシュが1週間に28回以上で30日以上持続している女性を対象に、オキシブチニン2.5mg、5mg、プラセボの3群に分けて比較している。過去の試験とともに比較するとホットフラッシュの改善度は、クロニジン、フルオキセチン、シタロプラム、ハラヴェン、ベンラファキシン、プレガバリンよりも大きかった、オキシブチニンの用量による差を正式にはみていないが、5mgの方がホットフラッシュ改善度、QOL尺度の改善度ともに大きく、毒性も許容範囲であった。本研究でよくわからないのは、過去のどの研究を比較対象にしたのか記載がないことと、詳細な有害事象の記録がないことであった。いずれにしてもオキシブチニンは本邦でも安価で低用量から使えるので、尿失禁の病名が今後増えるかもしれない。HR陽性浸潤がんに対しては、まずTAMは20mgの標準量で開始し、ホットフラッシュが強ければオキシブチニンで対応してみる。他の副作用とともにコントロールが難しくアドヒアランスが保てない状況では、低用量TAMの提案も考慮する。一方DCISであれば、最初から低用量TAM3年予定で開始するのも許容されるだろう。EBCTCGメタアナリシス−領域リンパ節照射EBCTCGメタアナリシスで、14試験、1万3,500例の女性が対象となっている。領域照射は腋窩、内胸、鎖骨上が含まれる。実際の照射は領域だけでなく、乳房や胸壁への照射もほとんどが同時に行われていたと思われる。今回の解析では古い試験(1961~78年)と最近の試験(1989~2003年)に分けて解析されたが、その理由は照射の技術が大きく異なり心臓への影響が異なると予想されるからである。最近の試験では10年の乳がん特異的死亡率はN0~3個では差がなくN4個以上で有意差(7.9%の絶対差)が認められた。ただし、Forest plotでは照射の効果は転移個数によらず一定していることから、N1~3個では症例を選択して照射を考慮するのがよいだろう。すなわち悪性度の高いタイプでは、胸壁を含めた照射の候補となろう。術前化学療法を施行している場合は、悪性度の高い浸潤がんで効果が弱く、胸壁やリンパ節に残存している症例に対して有効であろう。センチネルリンパ節生検陽性に対し、腋窩郭清群と照射群を比較した試験-AMAROS試験の10年の結果5年の結果はASCO2013 乳がん会員聴講レポートにて既に報告しているので、研究の詳細はそちらを参照して欲しい。腋窩照射の範囲はlevel I+II+III+鎖骨上内側であり、全摘症例も約20%含まれている。今回10年という長期成績であるが、結論は変わらず腋窩再発は両群ともきわめてわずかであった(郭清群0.43%[5yrs]→0.93%[10yrs] vs.照射群1.19%→1.82%)。もちろんDFS、DDFS、OSとも差はなかった。リンパ浮腫は5年で24.5% vs.11.9%であり、照射群での出現率が半分以下である。リンパ浮腫治療を要する割合も18.2% vs.6.6%であり、照射群での程度の軽さをうかがわせる。肩の機能は両群で差はなかった。このことから全摘症例でセンチネルリンパ節生検陽性でも、もはや郭清は不要で、腋窩照射の適応となろう。考慮すべき問題はZ0011と合わせて、照射範囲をどこまで行うかである。むやみやたらと鎖骨上まで照射するのも考えものである。1つの目安として腋窩リンパ節転移4個以上を予測するKatzのノモグラムが参考になる。Validationもしっかり行われている。(Katz A,et al.J Clin Oncol. 2008;26:2093-2098.)。計算式は原発巣浸潤径 (cm) x 2.6 +(センチネルリンパ節転移陽性数 x 9.2)+11 リンパ管侵襲+のとき+11 i小葉がんのとき+11 iリンパ節節外浸潤+のとき+16 iリンパ節転移相の最大径> 2mmのとき-8.6 センチネルリンパ節1個以上のとき-58であり、合計0で4個以上の確率50%である。これくらいの確率があれば、胸壁と鎖骨上まで照射する価値が十分あるかもしれない(ここは意見の違いがあるだろう)。悪性度の高いサブタイプも考慮に入れるべきである。術前化学療法が行われた場合には、リンパ節転移残存、原発巣浸潤がん残存、悪性度の高いサブタイプ、となろうか。細胞診や針生検で腋窩転移があらかじめわかっている症例はどうするか。この場合は陽性リンパ節+αのlower axillary dissectionを行い、病理結果からKatzのノモグラムと合わせて照射の範囲を決定してはどうか。これらはあくまで1つの提案であり、各施設でよく議論して決めていくべきである。トリプルネガティブ乳がんに対する標準化学療法へのカペシタビンの上乗せ効果スペインからの報告である。標準化学療法を終えた後にカペシタビンを8サイクル行うか経過観察するかの第III相無作為化比較試験であり、主要評価項目はDFSである。スペインおよび中南米の8ヵ国から876例が無作為化され、N0が約55%であった。結果として5年DFSは79.6% vs.76.8%であり、有意差は認められなかった。サブセット解析ではBasalでは差がないものの、Non-basalで82.6% vs.72.9%(HR=0.53、p=0.02)と有意にカペシタビン群で良好であった。OSもNon-basalで89.5% vs.79.6%(p=0.007)と有意であった。サブセット解析のためあくまで参考データではあり、今後の研究が待たれる。CREATE-Xでは術前化学療法でnon-PCRに対してカペシタビンが追加され、その効果が証明された(Masuda N, et al.N Engl J Med.2017;376:2147-2159.)。サブセット解析ではTNBCで差が大きかった。こちらについてもBasal vs.Non-basalで比較してみると面白そうである。いずれにしてもTNBCではなるべく術前化学療法で効果判定をして、カペシタビンの使用を考えるのが賢明であろう。トリプルネガティブ乳がんに対して術後補助化学療法の遅れが与えるインパクト2004~2014年にトリプルネガティブ乳がん(TNBC)と診断され、術後補助化学療法を行った687例を対象に、手術から最初の化学療法開始までの期間を130日以内(189例、27.5%)、31~60日(329例、47.9%)、61~90日(115例、16.7%)、91日以上(54例、7.9%)の4グループに分類して予後をみた。年齢中央値は48歳、ステージはIIが60%、化学療法はAnthracycline-Taxaneが54.6%、Anthracycline41.5%であった。OS、DFSともに、30日以内が最も良好であった。多変量解析でも独立した因子であった。10年OSは30日以内とそれ以上で10%以上の絶対差があった。化学療法の遅れと予後に関する研究を一部紹介する。Zhan QH, et al. Oncotarget.2017;9:2739-2751.システマティックレビューとメタアナリシスであり、最終的に12研究(15の解析グループ)が選択され、12グループではOS、5グループではDFSが検討された。4週間遅れるごとに、OS、DFSともに予後不良と関連していた。総合解析では、2週から18週までの間で、1週間遅れるごとにOSが低下していく傾向がみられた。2つの研究ではサブタイプについても検討され、TNBCにおいて61日以上の遅れは、30日までと比較しOSが不良であった。HER2タイプで有意差が出なかったのは、トラスツズマブの使用にばらつきがあるかもしれないと考察している。Gallagher CM, et al. Breast Cancer Res Treat.2016;157:145-156.米国国務省健康保険請求データベースから抽出された2,749例のHER2陽性乳がん患者において、診断から術後トラスツズマブ使用までの間隔が6ヵ月を超える例(552例)では、6ヵ月以下(2,197例)と比較して、再発、OS、RFSとも不良であった。Riba LA, et al. Ann Surg Oncol. 2018;25:1904-1911.米国国立がんデータベースから抽出された16万6,681例の乳がん女性患者を対象に、術後90日以上の化学療法の遅れに関連した外科的因子を解析している。4.3%が90日を超えていて、関連する因子は術後の予期しない再入院、より小さな切除量、自家組織再建を伴う全摘、断端陽性であった。また90日以上の遅れは5年のOSの低下と関連していた。予後不良因子としては、より高齢、より高い併存疾患指数、より大きい腫瘍径、より多いリンパ節転移、HR-/HER2+、TNBCであった。これらの研究は当然のことながら、すべてnon-RCTである。しかし、いずれもほぼ一貫した結果となっており、より高悪性度の腫瘍、とくにTNBCやトラスツズマブ使用を前提としたHER2陽性(HR陰性)では、できるだけ早期に化学療法が行えるよう配慮していくことが求められる。化学療法の遅れは、手術からだけではなく、初診から、さらには異常発見時からの期間も関係している可能性がある。乳がんに限らず、これらすべての流れが円滑に行えるようなシステムの構築が、病院、地域、国単位で必要であろう。6ヵ月と12ヵ月のトラスツズマブ投与を比較するPHARE試験の最終結果非劣性試験で、マージンは1.15と設定されていて、3,384例の患者が無作為化割り付けされた。3.5年の観察期間での結果は以前に論文化されており、非劣性は証明されなかった。Pivot X, et al. Lancet Oncol. 2013;14:741-748.今回は7.5年の経過観察で最終解析であり、HR=1.08、95%CI 0.93~1.25、p=0.39であった。生存率曲線はほぼぴったりとくっついているものの、やはり非劣性は証明されなかったということである。演者が語っていたのは他試験との非劣性マージンの設定の違いである。PERSEPHONE試験ではマージンを1.25に設定していたために、非劣性を証明できた。結果はほぼ同様なのに、この違いで非劣性を証明できなかったことを結論で述べていた。確かにその通りである。結局は私たち臨床家がどの程度の非劣性マージンを許容するかにかかっている。心毒性は長期投与のほうが増えることは確実である。多くの試験結果が揃ってきたので、これらの結果に基づいて臨床的にどのように対応するべきか私たちはよく話し合う必要がある。私自身のスタンスは以前から変わっておらず、ASCO 2017乳がん会員聴講レポートのShort-HER試験のところで述べた。予後良好群ではタキサンとHERの同時併用3ヵ月で終了するが、より予後の悪い群では従来通り12ヵ月使用する。現時点で6ヵ月のオプションは提示していない。トラスツズマブを受けるHER2陽性乳がん患者の心毒性予防としてのアンジオテンシン変換酵素阻害薬(リシノプリル)とβブロッカー(カルベジロール)の無作為化地域密着型試験小規模の研究からACE阻害薬とβブロッカーの心毒性予防効果が示唆されていた。本研究は無作為化二重盲検プラセボ対照多施設地域密着型試験であり、主要評価項目は52週のトラスツズマブ使用中から終了後1年以内の心毒性率である。アントラサイクリンを含むレジメンではプラセボよりもリシノプリルとカルベジロール使用群で心毒性のない生存率が良好であった。それに対してアントラサイクリンを含まないレジメンでは差がなかった。リシノプリルとカルベジロールでは有意な差はなかったが、絶対差としてカルベジロールのほうが良好な傾向であった。心毒性以外の有害事象として、疲労、めまい、頭痛、咳、低血圧ともにカルベジロールのほうが低頻度であった。本結果からカルベジロールとリシノプリルはトラスツズマブによる心毒性を抑制できることがわかり、十分に使用する価値がある。トラスツズマブを含む術前化学療法にて浸潤がんが残存した乳がんに対する術後補助療法としてのトラスツズマブとT-DM1の比較-KATHERINE試験からの初回報告本試験は、HER2陽性乳がんでHER2標的薬を含む術前化学療法により、浸潤がんが残存した場合に、T-DM1またはトラスツズマブを無作為化割り付けし、いずれも14サイクル行った場合の生存率をみたもので、発表後すぐに論文化された(Von Minckwitz G, et al. N Engl J Med. 2018 Dec 5.)。主要評価項目はIDFSで、1,486例が無作為化割り付けされた。HR陽性が72%で、術前化学療法後のリンパ節転移陽性が46%であった。また術前に使われたHER2標的剤トラスツズマブ単独が80%であったが、残りはペルツズマブ等が併用されていた。中央観察期間は41ヵ月で、3年IDFSはT-DM1群が有意に良好であった(77.0% vs.88.3%、HR=0.50、p

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ペムブロリズマブのMSI-H固形がんが国内承認…臓器横断的がん治療が現実に/MSD

 MSD株式会社は、2018年2月12日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」の国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得した。この適応拡大は医薬品の条件付き早期承認制度の適用を受けていた。 高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)とは、傷ついたDNAを修復する機能が低下していることを示すバイオマーカー。細胞は、DNA複製時に自然に起こる複製ミスを修復する機能をもっているが、この修復機能の低下によって、DNAの繰り返し配列(マイクロサテライト)が正常な細胞と異なる状態になっていることをマイクロサテライト不安定性(MSI)と呼び、このMSIが高頻度に起きている現象を高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)と呼ぶ。 MSI-High固形がんは、大腸がん、胃がんや膵臓がんといった消化器系のがんのほか、子宮内膜がんや卵巣がん、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、甲状腺がんなどでも報告されている。大腸がんの約6%、子宮内膜がんの約17%にMSI-High固形がんがみられたとの報告がある。 この適応拡大にあたっては、治療歴を有するMSI-High固形がんを対象とした2つの国際共同第II相試験において、ペムブロリズマブの有効性および安全性が示された。1つは、治療歴を有するMSI-Highの結腸・直腸がん患者61名を対象にしたKEYNOTE-164試験(コホートA)。この試験での奏効率(ORR)は27.9%(95%CI:17.1~40.8)であった。対象者の57.4%に副作用が認められ、主な副作用(10%以上)は、関節痛16.4%、悪心14.8%、下痢13.1%、無力症11.5%およびそう痒症11.5%であった。もう1つは、治療歴を有するMSI-Highの結腸・直腸以外の固形がん患者94名を対象にしたKEYNOTE-158試験。この試験でORRは37.2%(95%CI:27.5~47.8)であった。対象者の61.7%に副作用が認められ、主な副作用(10%以上)は、疲労11.7%およびそう痒症11.7%であった 共通のバイオマーカーに基づいてがん種横断的に効能・効果(適応)を有するがん治療薬は、国内初となる。 なお、ペムブロリズマブの適応判定を目的としたMSI-Highを検出するためのコンパニオン診断薬として、株式会社ファルコバイオシステムズの「MSI検査キット(FALCO)」が承認されている。■関連記事ペムブロリズマブ、臓器横断的ながんの適応取得:FDA小細胞肺がんへのペムブロリズマブ単独投与、PD-L1陽性例でより高い効果(KEYNOTE-158)/ASCO2018いよいよ臨床へ、がん種を問わないMSI-H固形がんをどう診断し、治療していくかMSI-H固形がんへのペムブロリズマブ、日本人サブ解析結果(KEYNOTE-158)/癌治療学会 いよいよ臨床へ、がん種を問わないMSI-H固形がんをどう診断し、治療していくか

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アジア人でより良好な結果、ニボルマブ+イピリムマブによる高TMB肺がん1次治療(CheckMate-227)/日本肺癌学会

 第III相CheckMate-227試験(Part 1)の結果、高腫瘍遺伝子変異量(TMB)の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療において、ニボルマブ・イピリムマブの併用療法が標準化学療法と比較して有意に無増悪生存期間(PFS)を延長したことがすでに報告されている。本試験のアジア人サブグループ解析結果を、がん研究会有明病院の西尾 誠人氏が11月29~12月1日に東京で開催された第59回日本肺癌学会学術集会で発表した。なお、本結果は、11月8~10日に中国・広州市で開催されたIASLC ASIAでのKeunchil Park氏による発表のアンコール演題。CheckMate-227試験Part 1: PD-L1発現1%以上および1%未満のStage IVまたは再発NSCLCの初回治療患者(EGFR /ALK不明、ECOG PS 0~1)対象に、ニボルマブ+イピリムマブ群、ニボルマブ群、ニボルマブ群+化学療法群と化学療法群を比較した第III相試験[主要評価項目]高TMB(≧10変異/メガベース)患者におけるPFS、PD-L1発現状況ごとの全生存期間(OS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性など ※今回は、上記2つの主要評価項目のうち高TMB患者におけるPFSのニボルマブ+イピリムマブ群と化学療法群の比較について、アジア人サブグループ解析結果が発表された。 主な結果は以下のとおり。・有効なTMBデータを有した153例のうち、高TMB患者は53例であった。・上記の53例のうち、21例(うち日本人:13例)がイピリムマブ+ニボルマブ群に、32例(同:16例)が化学療法群に割り付けられた(全集団ではイピリムマブ+ニボルマブ群139例、化学療法群160例)。・高TMB患者における1年PFS率は、全集団でニボルマブ+イピリムマブ群43% vs.化学療法群13%、アジア人サブグループで64% vs.17%であった。・PFS中央値は、全集団で7.2ヵ月 vs.5.5ヵ月(HR:0.58、97.5%CI:0.41~0.81)、アジア人サブグループでNR vs.5.5ヵ月(HR:0.34、95%CI:0.15~0.75)であった。日本人集団でも、ニボルマブ+イピリムマブ群で同様のPFSベネフィットが得られた(HR:0.44、95%CI:0.15~1.35)。・ORRは、全集団で45%(完全奏効[CR]:4%、部分奏効[PR]:42%)vs. 27%(CR:1%、PR:26%)、アジア人サブグループで76%(CR:14%、PR:62%)vs. 22%(CR:0%、PR:22%)であった。日本人集団でも、85% vs. 31%とニボルマブ+イピリムマブ群で高いORRが得られた。・Grade3/4の治療関連有害事象の発現は、全集団でニボルマブ+イピリムマブ群31% vs.化学療法群36%、アジア人サブグループでは40% vs. 37%。治療中止例はそれぞれ17%vs. 9%、22% vs. 12%であった。・全Gradeの治療関連有害事象発現状況は、アジア人で若干皮疹の発現が多かったが(50% vs. 34%)、全体として全集団における発現状況と同様の傾向がみられた。

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デュルバルマブMYSTIC試験のOS結果/アストラゼネカ

 アストラゼネカとそのグローバルバイオ医薬品研究開発部門であるメディミューンは、2018年12月13日、スイスのジュネーブで開催された2018年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)がん免疫療法会議において第III相MYSTIC試験の全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)に関するデータを発表した。 MYSTIC試験は、未治療のステージIV非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象としてデュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)単剤またはデュルバルマブと抗CTLA-4抗体tremelimumabの併用療法を、プラチナベースの標準化学療法(SoC)と比較検討した多施設共同無作為化非盲検国際第III相試験。主要評価項目は、PD-L1発現25%以上の患者における、デュルバルマブ単独療法のOS、デュルバルマブ・tremelimumab併用療法のPFSおよびOS(いずれもSoCとの比較)。結果、デュルバルマブ単剤群のOSは、SoC群12.9ヵ月に対し16.3ヵ月、2年OS率は、SoC群22.7%に対しデュルバルマブ単剤群38.3%と、主要解析集団(PD-L1発現25%以上)で上回ったが、統計学的有意差には到達しなかった(HR:0.76、97.54%CI:0.564~1.019、p=0.036)。 デュルバルマブ・tremelimumab併用群のOSは、SoC群12.9ヵ月に対し11.9ヵ月、2年OS率は、同22.7%に対し35.4%であった(HR:0.85、98.77%CI:0.611~1.173)。併用群のPFS中央値は、SoC群5.4ヵ月に対し3.9ヵ月、1年PFS率はSoC群25.8%に対し14.3%であった(HR:1.05、99.5%CI:0.722~1.534)。デュルバルマブ・tremelimumabの併用療法はPFSおよびOSともに未達成であった。なお、標準化学療法群のうち39.5%は、化学療法後に免疫療法を受けていた。 また、あらかじめ規定された探索的解析では、腫瘍遺伝子変異量(bTMB)による生存を調査している。メガベースあたり16以上の変異と定義されたbTMB高値におけるデュルバルマブ・tremelimumab併用群のOS HRは標準化学療法群との比較で0.62(95%CI:0.451~0.855)、デュルバルマブ単剤群のOS HRは0.80(0.588~1.077)であった。 MYSTIC試験のデュルバルマブおよびデュルバルマブ・tremelimumab併用療法の安全性ならびに忍容性プロファイルは過去の試験と一貫していた。Grade3/4の有害事象はデュルバルマブ単剤群40.4%、デュルバルマブ・tremelimumab併用群47.7%、化学療法群46.0%であった。治療関連有害事象による治療中止はデュルバルマブ単剤群5.4%、デュルバルマブ・tremelimumab併用群13.2%、化学療法群の9.4%であった。

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複合免疫療法の時代へ、変化する腎細胞がん薬物療法

 転移した場合は有効な抗がん化学療法がなく、術後10年以上経過しても再発がみられる場合があるなど、ほかのがん種とは異なる特徴を多く持つ腎細胞がん。近年は分子標的治療薬が薬物療法の中心だったが、2016年8月に抗PD-1抗体ニボルマブの単剤療法(2次治療)、2018年8月にニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法(1次治療)が承認され、大きな変化が訪れている。12月7日、都内で「変化する腎細胞がんに対する薬物療法」と題したメディアセミナーが開催され(共催:小野薬品工業、ブリストル・マイヤーズ スクイブ)、大家 基嗣氏(慶應義塾大学医学部泌尿器科 教授)が講演した。根治ではなく逐次療法。副作用管理が課題だった分子標的薬治療 腎細胞がんは早期から血管新生が顕著という特徴があり、分子標的薬はこの豊富な腫瘍血管をターゲットとしている。2008年にソラフェニブ、スニチニブという第1世代チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が、2012年にアキシチニブ、2014年にパゾパニブという第2世代TKIが承認された。1次治療でスニチニブ、2次治療でアキシチニブという流れがゴールドスタンダードだった時代を経て、「2017年度版 腎癌診療ガイドライン」ではTKI後の2次治療にニボルマブが加わっている。大家氏は、「2次治療でのニボルマブを含め、薬物療法での根治は難しく、効かなくなったら次の薬という逐次治療がこれまでの主体だった」と話した。 また、これらの分子標的薬では、副作用のコントロールが大きな課題であった。血圧上昇、下痢、発疹が主な副作用で、スニチニブでは白血球減少や血小板減少も問題となる。CheckMate-214試験からみえてきたこと CheckMate-214試験は、進行または転移を有する腎細胞がん1次治療において、ニボルマブ・イピリムマブ併用群のスニチニブ群に対する優越性・安全性を比較した第III相試験。腎細胞がんの80%以上を占める淡明細胞型、IMDC分類でIntermediateまたはPoorリスクの患者を対象として、観察期間中央値25.2ヵ月における全生存期間(OS)は、併用群で未達、スニチニブ群で26.0ヵ月(ハザード比:0.63)と、併用群で有意に延長した。本試験結果において、大家氏はとくに奏効率(ORR)に注目。併用群で完全奏効(CR)が9%だったことに触れ、「10人に1人で長期予後、場合によっては治癒すら狙えるというのは非常に大きい」と話した。 副作用については、スニチニブ群と比較すると全体では少ない(Grade3以上の全副作用:併用群45.7% vs.スニチニブ群62.6%)。しかし注意すべきは免疫関連の有害事象で、ニボルマブ単剤の場合とその傾向は必ずしも一致しないという。大家氏は「胃腸毒性(大腸炎)や肝毒性(肝機能障害)はイピリムマブ併用で多い傾向がみられる。内分泌系臓器障害については、これまでのニボルマブ投与による甲状腺機能低下症のほか、下垂体炎の発現がみられている。肺毒性(間質性肺疾患)などと合わせて、常に注意を払う必要がある」と話した。 また投与中止例について、治験薬毒性によるものが併用群24.5% vs.スニチニブ群11.8%と、むしろ併用群で多かったことを指摘。「全体として副作用は軽い傾向があるが、重篤な事象が発現した場合は中止が必要だという二面性がある」とコメントした。1次治療での複合免疫療法の時代が到来 NCCNガイドラインの2019年ver.1では、再発またはStageIVおよび切除不能な淡明細胞型腎細胞がんの1次治療として、IMDC分類のIntermediateまたはPoorリスクの患者に対しては、ニボルマブとイピリムマブの併用がpreferedレジメンとして推奨されている。 現在、1次治療においては、CheckMate-214試験のほか、免疫療法に分子標的治療薬を組み合わせた複合免疫療法の臨床試験が複数進行中である。そのうち、これまで2次治療で使われていたアキシチニブと抗PD-1抗体ペムブロリズマブの併用によるKEYNOTE-426試験、アキシチニブと抗PD-L1抗体アベルマブの併用によるJAVELIN RENAL-101試験などで、すでに良好な結果が報告されている。大家氏は、「今後は異なる組み合わせの複合免疫療法が登場してくるだろう。バイオマーカーを探すことは容易ではないが、どんな患者さんにどの治療法が適切かを臨床家は判断していかなければならない」と今後への期待感と課題を示した。■関連記事進行性腎細胞がんの1次治療、ニボルマブとイピリムマブ併用が有効/NEJM

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がん患者の静脈血栓塞栓症予防、アピキサバンが有望/NEJM

 がん患者は静脈血栓塞栓症のリスクが高いとされる。カナダ・オタワ大学のMarc Carrier氏らAVERT試験の研究グループは、中等度~高度の静脈血栓塞栓症リスク(Khoranaスコア≧2)を有し、化学療法を開始した外来がん患者では、アピキサバンにより静脈血栓塞栓症の発生が抑制されることを示し、NEJM誌オンライン版2018年12月4日号で報告した。Khoranaスコアは静脈血栓塞栓症のリスクが高いがん患者を同定し、予防治療により便益を得ると考えられる患者の選定に役立つ可能性がある。また、直接経口抗凝固薬は、がん患者の血栓予防薬として、利便性や費用も含め、非経口薬よりも優れる可能性が示唆されている。静脈血栓塞栓症の予防におけるアピキサバンの有用性を評価 本研究は、化学療法を開始した外来がん患者の静脈血栓塞栓症の予防におけるアピキサバンの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験である(カナダ保健研究機構およびBristol-Myers SquibbとPfizerの提携組織の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、新規に診断されたがんまたは完全/部分寛解後に進行した既知のがんを有し、治療期間が最短でも3ヵ月の化学療法を新たに開始する患者であった。Khoranaスコア(0~6点、点数が高いほど静脈血栓塞栓症のリスクが高い)は、≧2(中等度~高度のリスク)とした。 被験者は、アピキサバン(2.5mg×2回/日)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要な有効性評価項目は180日後の静脈血栓塞栓症(近位深部静脈血栓症、肺塞栓症)の発現であり、主な安全性評価項目は大出血エピソードとした。 2014年2月~2018年4月の期間に、カナダの13施設で574例(アピキサバン群291例、プラセボ群283例)が無作為割り付けの対象となり、563例(288例、275例)が修正intention-to-treat解析に含まれた。静脈血栓塞栓症の発生率はアピキサバン群が有意に低い 全体の平均年齢は61歳、女性が58.2%であった。がん種は多い順に、婦人科がん(25.8%)、リンパ腫(25.3%)、膵がん(13.6%)であった。転移病変を有する固形がんの患者が、アピキサバン群に73例、プラセボ群には67例含まれた。治療期間中央値はそれぞれ157日、155日、追跡期間中央値は両群とも183日だった。 追跡期間中の静脈血栓塞栓症の発生率は、アピキサバン群が4.2%(12/288例)と、プラセボ群の10.2%(28/275例)に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.41、95%信頼区間[CI]:0.26~0.65、p<0.001)。治療期間中の静脈血栓塞栓症の発生率は、それぞれ1.0%(3例)、7.3%(20例)であり、アピキサバン群で有意に低かった(0.14、0.05~0.42)。 一方、大出血エピソードの発生率は、アピキサバン群は3.5%(10/288例)であり、プラセボ群の1.8%(5/275例)に比し有意に高かった(HR:2.00、95%CI:1.01~3.95、p=0.046)。治療期間中の大出血の発生率は、それぞれ2.1%(6例)、1.1%(3例)であり、有意差は認めなかった(1.89、0.39~9.24)。 死亡率はアピキサバン群が12.2%(35例)、プラセボ群は9.8%(27例)であった(HR:1.29、95%CI:0.98~1.71)。死亡した62例中54例(87%)の死因は、がんまたはがんの進行に関連していた。 著者は、「全生存に差がないのは、最も一般的な死因である進行がんの患者が多かったという事実を反映している可能性がある。静脈血栓塞栓症の予防が死亡率の低減に結びつくのが理想だが、この課題に取り組むには、異なるデザインの、より大規模な試験を要するだろう」としている。

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若年者に増加しているヒトパピローマウイルス陽性中咽頭がんに対する標準的放射線化学治療(解説:上村直実氏)-976

 中咽頭がんは頭頸部がんの1つで、日本では年間の罹患者数が数千人であるのに対して、米国では毎年5万人が罹患し1万人が死亡する疾患である。生命予後とともに嚥下や発生などの機能の温存が重要で、手術療法とともに放射線化学療法が用いられる機会が多いのが特徴的である。 近年、中咽頭がんの原因の1つとしてヒトパピローマウイルス(HPV)が同定された後、HPV関連(p16陽性)がんと非関連(p16陰性)がんに大別され、前者は後者に比べて若年者に多く、予後が良いのが特徴であり、罹患者が急増していることで注目されている。 HPV関連の中咽頭がんに対する低侵襲治療法の代表として、放射線治療+シスプラチンを用いる放射線化学療法が標準治療とされている。最近、EGFR阻害薬セツキシマブがシスプラチンと比較して副作用が少ない治療として注目されている折、2018年11月15日のLancet誌にHPV陽性中咽頭がんを対象とした放射線化学療法に関する同じ内容の多施設共同RCTの結果が報告された。研究された場所は北米(米国とカナダ)と欧州(英国、アイルランドとオランダ)で異なっているが、得られた研究結果はほぼ同様である。「放射線療法+セツキシマブは放射線療法+シスプラチンに比べて重度の有害事象リスクには差がなく、生存率や再発率の延長に寄与しない」、すなわち「現時点では、HPV陽性中咽頭がんに対する放射線化学療法としては放射線療法+シスプラチンが標準レジメンである」との結論であった。 欧州と北米の異なる2つのグループが同時期に同様の臨床試験を行い、同じ結果を得た訳であるが、私が専門としているピロリ菌と胃がんの関連に関する世界初の疫学研究報告も、1991年の同じ号のNEJM誌に「ピロリ菌は胃がんの発生に関与している」との結果がスタンフォード大学とハワイ大学から同時に掲載された。さらに、低悪性度の胃MALTリンパ腫がピロリ菌の除菌により消退する研究結果が、1993年のLancet誌に英国とドイツから同時に報告されたことを思い出した。「世界には、同時期に同じアイデアを持って研究しているグループが最低でも3組ある」と言われた恩師の言葉が懐かしく思われた。 最後に、上部消化管内視鏡検査の際に、機器の発達に伴って咽頭や食道の観察精度が向上して、内視鏡的切除の対象となる上皮内がんとして発見される症例が劇的に増加していることは、日本独自の保険診療体制によることを強調したい。

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術前治療で浸潤病変残存の早期乳がん、術後T-DM1が有望/NEJM

 術前補助療法終了後に浸潤性病変が残存するHER2陽性早期乳がん患者の術後補助療法において、T-DM1(トラスツズマブ・エムタンシン)はトラスツズマブに比べ、浸潤性乳がんの再発および死亡のリスクを半減させることが、ドイツ・German Breast GroupのGunter von Minckwitz氏らが行ったKATHERINE試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年12月5日号に掲載された。術前補助化学療法+HER2標的治療を受けたのちに残存する浸潤性乳がんを有する患者は、残存がんのない患者に比べ予後不良とされる。T-DM1は、モノクローナル抗体であるトラスツズマブと、メイタンシン誘導体で微小管阻害薬であるエムタンシン(DM1)を結合させた抗体薬物複合体で、化学療法+HER2標的治療を受けた転移を有する乳がん患者に便益をもたらすことが知られている。残存がん例で術後補助療法の無浸潤病変生存を検討 KATHERINEは、HER2陽性早期乳がんで、タキサン系薬剤±アントラサイクリン系薬剤による術前補助化学療法とHER2標的治療を終了後の手術時に、乳房または腋窩リンパ節に浸潤性の残存病変が認められた患者を対象に、T-DM1とトラスツズマブの有用性を比較する非盲検無作為化第III相試験である(F. Hoffmann-La RocheとGenentechの助成による)。 被験者は、術後補助療法としてT-DM1(3.6mg/kg)またはトラスツズマブ(6mg/kg)を3週ごと(1サイクル)に静脈内投与する群に無作為に割り付けられ、14サイクルの治療が行われた。 主要エンドポイントは、無浸潤病変生存(同側乳房の浸潤性乳がん再発、同側乳房局所領域の浸潤性乳がん再発、対側乳房の浸潤性乳がん、遠隔再発、全死因死亡のいずれかが発現するまでの期間)であった。 2013年4月~2015年12月の期間に、28ヵ国273施設で1,486例が登録され、T-DM1群に743例、トラスツズマブ群にも743例が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は、T-DM1群が41.4ヵ月、トラスツズマブ群は40.9ヵ月だった。遠隔再発は有意に少ない、全生存はさらなる追跡を ベースラインの年齢中央値は49歳で、72.3%がホルモン受容体陽性例であった。76.9%がアントラサイクリン系薬剤を含む術前化学療法を受けており、19.5%がトラスツズマブと他のHER2標的薬(ペルツズマブなど)を投与されていた。 今回の中間解析時に、浸潤性病変または死亡は、T-DM1群が91例(12.2%)、トラスツズマブ群は165例(22.2%)に認められた。3年無浸潤病変生存率はそれぞれ88.3%、77.0%であった。無浸潤病変生存は、T-DM1群がトラスツズマブ群に比べ有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.50、95%信頼区間[CI]:0.39~0.64、p<0.001)。 無浸潤病変生存のサブグループ解析では、ホルモン受容体陽性/陰性、術前補助療法後の病理学的リンパ節転移陽性/陰性、1cm以下の浸潤性原発巣の有無にかかわらず、T-DM1群が有意に良好であった。 初回浸潤病変イベントとしての遠隔再発は、T-DM1群が78例(10.5%)と、トラスツズマブ群の118例(15.9%)に比べ有意に少なかった(HR:0.60、95%CI:0.45~0.79)。全生存期間には差を認めなかった(HR:0.70、95%CI:0.47~1.05)。 安全性のデータは、T-DM1の既知の安全性プロファイルと一致しており、有害事象の頻度はT-DM1群のほうが高かった。Grade3以上の有害事象は、T-DM1群が25.7%、トラスツズマブ群は15.4%に発現し、重篤な有害事象はそれぞれ12.7%、8.1%、投与中止の原因となった有害事象は18.0%、2.1%に認められた。 著者は、「術後T-DM1治療の全生存への効果を決定するために、さらなるフォローアップを行う必要がある」としている。

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いよいよ臨床へ、がん種を問わないMSI-H固形がんをどう診断し、治療していくか

 2017年の米国FDAでの承認に続き、本邦でもがん種横断的な免疫チェックポイント阻害薬による治療法が臨床現場に登場する日が近づいている。がん種によって頻度が異なる高度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の固形がんを有する患者を、どのように診断して治療につなげていくのか。2018年11月16日、都内で「キイトルーダとがん種を横断したMSI診断薬利用の意義と今後の医療に与えるインパクト」と題したメディアセミナーが開催され(主催:株式会社ファルコホールディングス)、吉野 孝之氏(国立がん研究センター東病院 消化管内科長)が講演した。MSI-Hの固形がんに強烈に効く可能性がある薬 米国で39のがん種、1万例以上を対象とした研究で、MSI-Hの固形がんは27がん種、3.8%で確認されている1)。全体でみると大きなポピュレーションとは言えないが、「これまでの試験結果から、MSI-Hの固形がん患者に対するペムブロリズマブの効果は“著効”と言えるもので、膵がんなどの一般的に予後が悪いがん種でも完全奏効する例が確認された意義は大きく2)、今までの治療体系を大きく変えるものと言える」と吉野氏。対象となる患者を確実に診断していくことの重要性を指摘した。MSI検査は腫瘍部組織のみで可能。ただし慎重になるべき症例も MSI-H固形がんに対するペムブロリズマブの適応拡大に先立ち、本邦では2018年9月10日にMSI検査キット(FALCO)がコンパニオン診断薬として製造販売承認を取得し、12月1日より保険適用されている (保険点数は2,100点)。FDAの承認ではコンパニオン診断薬の指定はなく、がん種横断的なコンパニオン診断薬が承認されたのは世界初。従来法では、正常部と腫瘍部の組織が必要だったが、本キットを使った検査では腫瘍部の組織のみで検査可能な点が特徴だという。吉野氏は、「腫瘍部の組織だけで検査可能なため、MSI検査を追加するに当たり、検体採取について現場で新たな手順を加える必要がないことは大きい」と話した。 ただし、腫瘍組織のみで判断することに慎重になるべき症例も存在する。本検査法では、マルチプレックスPCR法による電気泳動波形を目視で判定するが、特定のがん種で正常範囲として設定された波形とのズレが小さく、腫瘍組織のみでの判断が難しい場合があるという。吉野氏は「大腸がんでは正常範囲とのズレが大きく、明らかな波形の違いがみられるが、子宮がんや卵巣がん、乳がんなどではズレが小さく、判断が難しいケースが確認された。そのような場合は、正常部との比較が必要になる」と話し、特にこれらのがん種では慎重な対応を求めている。MSI-Hを有する固形がんにペムブロリズマブの適応を追加 固形がんにおけるMSI-H頻度については、子宮内膜がんや胃がん、大腸がんや膵がんなど、婦人科系・消化器系がんで高い傾向が報告されている2,3)。しかし日本人では消化器がん以外のデータがほとんどなく、まずはそのデータを蓄積していく必要性を吉野氏は指摘した。米国のデータでは、悪性リンパ腫や急性骨髄性白血病(AML)など12のがん種ではMSI-Hが確認されていない1)。「がん種横断的といってもどこまで検査すべきか、現状では世界的に指針がない。患者さんにとっては非常に大きな問題であることは間違いなく、どのように適正使用を促していくかは大変大きな問題。何らかの形で国際的なコンセンサスを取り、レコメンデーションを発出していく必要があると考えている」と同氏はコメントした。 また、「臓器横断的なゲノムスクリーニングに対する知識の習得」を目的とした医師・CRC向けのe-leaningシステム(e Precision Medicine Japan)を紹介し、MSI-H(MMR genes)を含む各ドライバー遺伝子別のエビデンスや薬剤承認状況等の把握・学習に役立ててほしいと話した。 なお、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は2018年11月29日、ペムブロリズマブの適応に、「進行・再発のMSI-Hを有する固形がん」を追加することを了承した(化学療法後に増悪しており、標準的な治療が困難な場合に限る)。近く承認が見込まれている。

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第5回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座【ご案内】

 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター、同院消化器化学療法外科、同大学院臨床腫瘍学分野、同大学院未来がん医療プロフェッショナル養成プランは、2019年1月13日(日)に、第5回「がんを考える」市民公開講座を開催する。本講座は、同院が地域がん診療連携拠点病院の活動の一環として、がんに関するさまざまなテーマで開催する公開講座の5回目となる。今回は『がん治療とQOL(生活の質)』をテーマに、がん治療中のQOLの維持に積極的に取り組む意味や、QOLの維持に役立つ情報を広く知ってもらうための内容となっており、各種ブース展示や体験コーナーなど、楽しく学べる企画が多数予定されている。 開催概要は以下のとおり。【日時】2019年1月13日(日)《ブース展示》12:00~17:00《セミナー》13:00~16:40【場所】東京医科歯科大学 M&Dタワー2F 鈴木章夫記念講堂〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45現地キャンパスマップはこちら【参加費】無料(※参加申し込み不要)【テーマ】がん治療とQOL(生活の質)【予定内容】《セミナー》13:00~16:40 鈴木章夫記念講堂 司会:石黒 めぐみ氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科)13:00~13:05 開会挨拶 三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター/緩和ケア科)13:05~13:25 講演1 知ってますか? がん治療とQOLの関係 石川 敏昭氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科)13:25~13:55 講演2 がん患者さんのための栄養・食事の工夫 有本 正子氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 臨床栄養部)13:55~14:25 講演3  摂食嚥下(食べる・飲み込む機能)の大切さ 中川 量晴氏(東京医科歯科大学歯学部附属病院 摂食嚥下リハビリテーション外来)14:25~14:55 講演4 「がんのリハビリテーション」ってどんなもの? 何のため? 酒井 朋子氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 リハビリテーション部)14:55~15:15 休憩15:15~15:35 医科歯科大のがん治療 update(1) 「遺伝性乳がん・卵巣がん(HBOC)外来」がスタートしました 大島 乃里子氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 周産・女性診療科)15:35~15:55 医科歯科大のがん治療 update(2) もっと知ってほしい!「緩和ケア病棟」のこと 三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター/緩和ケア科)15:55~16:35 パネルディスカッション がん治療とQOL 座長:植竹 宏之氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科)16:35~16:40 閉会挨拶 川﨑 つま子氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 看護部長)《ブース展示》 12:00~17:00 講堂前ホワイエ■がんと栄養・食事 (東京医科歯科大学医学部附属病院 臨床栄養部)■お口の楽しみ、支えます (東京医科歯科大学歯学部 口腔保健学科)■「がんのリハビリテーション」ってどんなもの? (東京医科歯科大学医学部附属病院 リハビリテーション部)■「がんゲノム医療」ってなに? (東京医科歯科大学医学部附属病院 がんゲノム診療科)■ウィッグ・メイクを楽しもう! (アプラン東京義髪整形/マーシュ・フィールド)■術後の補正下着・パッドのご紹介 (株式会社ワコール リマンマ)■抗がん剤治療の味方「CVポート」ってどんなもの? (株式会社メディコン)■がん患者さんの家計・お仕事に関するご相談 (特定非営利活動法人 がんと暮らしを考える会)■がん患者と家族へのピアサポートの紹介 (特定非営利活動法人 がん患者団体支援機構)■リレー・フォー・ライフ・ジャパン(RFLJ)のご紹介 (RFLJ御茶ノ水実行委員会)■その情報、図書館で調べられます (東京都立中央図書館/東京医科歯科大学医学部附属病院 がん相談支援センター)■看護師よろずミニ相談 (東京医科歯科大学医学部附属病院 専門・認定看護師チーム)■「もっと知ってほしい」シリーズ冊子 (認定NPO法人 キャンサーネットジャパン)【お問い合わせ先】東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45TEL:03-5803-4886(平日 9:00~16:30)【共催】東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科東京医科歯科大学大学院 臨床腫瘍学分野東京医科歯科大学大学院 未来がん医療プロフェッショナル養成プラン【協力】認定NPO法人キャンサーネットジャパン【後援】東京医科歯科大学医師会東京都医師会/東京都/文京区第5回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座 詳細はこちら

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免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブとnab-PTXの併用は未治療の進行/転移性乳がんの予後を改善する(解説:矢形寛氏)-962

 乳がん領域での免疫チェックポイント阻害薬の有効性に関する初のP3 RCTの報告である。化学療法は腫瘍抗原の放出と免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果を高めるようであり、とくにタキサンはToll様受容体の活性化と樹状細胞の活動性を促進するため、併用効果が期待されてきた。 本試験ではnab-PTXとヒト型抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体アテゾリズマブの併用効果が検証され、追跡期間約1年でPFSの有意性が示された。また、PD-L1が免疫染色にて腫瘍浸潤免疫細胞の1%以上発現がみられるものは、より有効性があるようであった。Grade3以上のアテゾリズマブに関連する有害事象はとくにないようであった。OSはmarginalであったが、症例数の設定とTNBCという一般的に予後が短い特殊な集団であることを考えると、OSへの寄与も十分見込めるのではないかと考えられる。 コストの問題は常につきまとうが、乳がん領域への重要な知見である。PD-L1の免疫染色の臨床的有用性だけでなく、マイクロサテライト不安定性や遺伝子変異数(Tumor Mutation Burden:TMB)との関連も検証してほしい。■「nab-PTX(ナブパクリタキセル)」関連記事進行膵がんのnab-PTX+GEM療法、新たな標準治療のエビデンス/NEJMnab-パクリタキセル+アテゾリズマブ、トリプルネガティブ乳がんでPFS延長(IMpassion130)/ESMO 2018

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アテゾリズマブ+CBDCA+nab-PTX、進行肺がん1次治療でPD-L1発現によらずPFS延長(IMpower130)/ESMO2018

 StageIV非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療におけるカルボプラチンとnab-パクリタキセルの併用療法へのPD-L1阻害薬アテゾリズマブの上乗せ効果を検討した第III相IMpower130試験の結果、アテゾリズマブ併用群でPD-L1発現状態にかかわらず、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが発表された。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で、AUSL della Romagna-RavennaのFederico Cappuzzo氏が発表した。 IMpower130試験は、化学療法未治療の進行非扁平上皮NSCLC患者を対象とし、カルボプラチンとnab-パクリタキセル併用+アテゾリズマブ→アテゾリズマブ維持療法群(atezo+CnP群)とカルボプラチンとnab-パクリタキセル併用→BSCあるいはペメトレキセドによる維持療法群(CnP群)を比較したオープンラベル多施設共同無作為化第III相試験。患者は、atezo+CnP群とCnP群に2:1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、EGFRまたはALK陽性患者を除くITT解析集団(ITT-WT)における治験担当医評価による無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)。副次評価項目は、全集団におけるPD-L1発現状態に応じたPFSおよびOS、客観的奏効率(ORR)、安全性であった。 主な結果は以下のとおり。・全体で723例(ITT-WT:679例)が登録された。・ITT-WTにおけるatezo+CnP群は451例/CnP群は228例。<65歳:50.3%/50.0%、男性:59.0%/58.8%、登録時点での肝転移有症例:15.3%/13.6%、ECOG PS 0:42.0%/39.9%、PD-L1高発現(TC3またはIC3):19.5%/18.4%、PD-L1低発現(TC1/2またはIC1/2):28.4%/28.5%、PD-L1陰性:52.1%/53.1%。・データカットオフ(2018年3月15日)時点の追跡期間中央値は19.0ヵ月であった。・ITT-WTにおけるPFS中央値は、atezo+CnP群7.0ヵ月に対しCnP群5.5ヵ月と、atezo +CnP群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.64、95%信頼区間[CI]:0.54~0.77、p<0.0001)。・ITT-WTにおけるOS中央値は、atezo+CnP群18.6ヵ月に対しCnP群13.9ヵ月と、atezo +CnP群で有意に改善した(HR:0.79、95%CI:0.64~0.98、p=0.033)。・全集団におけるPFS中央値は、atezo+CnP群7.0ヵ月に対しCnP群5.6ヵ月と、atezo +CnP群で有意に改善した(HR:0.65、95%CI:0.54~0.77、p<0.0001)。・全集団におけるOS中央値は、atezo+CnP群18.1ヵ月に対しCnP群13.9ヵ月と、atezo +CnP群で有意に改善した(HR:0.80、95%CI:0.65~0.99、p=0.039)。・PD-L1発現状態ごとのサブグループ解析では、PD-L1高発現(88例/42例):PFS中央値は6.4ヵ月 vs. 4.6ヵ月(HR:0.51、95%CI:0.34~0.77)、OS中央値は17.3ヵ月 vs. 16.9ヵ月(HR:0.84、95%CI:0.51~1.39)。PD-L1低発現(128例/65例):PFS中央値は8.3ヵ月 vs. 6.0ヵ月(HR:0.61、95%CI:0.43~0.85)、OS中央値は23.7ヵ月 vs. 15.9ヵ月(HR:0.70、95%CI:0.45~1.08)。PD-L1陰性(235例/121例):PFS中央値は6.2ヵ月 vs. 4.7ヵ月(HR:0.72、95%CI:0.56~0.91)、OS中央値は15.2ヵ月 vs. 12.0ヵ月(HR:0.81、95%CI:0.61~1.08)。と、PD-L1発現状態に関わらず、PFS、OSにおけるベネフィットが確認された。・EGFR / ALK陽性患者におけるサブグループ解析では、PFS中央値は7.0ヵ月 vs. 6.0ヵ月(HR:0.75、95%CI:0.36~1.54)、OS中央値は14.4ヵ月 vs. 10.0ヵ月(HR:0.98、95%CI:0.41~2.31)であった。・Grade3/4の治療関連有害事象(TRAE)は、atezo+CnP群で73.2%、CnP群で60.3%の患者に発現した。 ディスカッサントを務めたフランス・Institute of Gustave Roussy のBenjamin Besse氏は、IMpower-150試験の結果とともに本結果を解説し、EGFR / ALK陽性患者を対象とした場合にベバシズマブが役割を果たす可能性があると指摘した。■参考IMpower130試験(Clinical Trials.gov)■関連記事アジア人でより有効、進行肺がんへのプラチナ+ペメトレキセド+アテゾリズマブ(IMpower132)/ESMO2018アテゾリズマブ併用療法、進行肺がん1次治療でPD-L1発現、遺伝子ステータスに関わらずPFSの改善示す(IMpower-150)/AACR2018進行膵がんのnab-PTX+GEM療法、新たな標準治療のエビデンス/NEJMnab-パクリタキセル+アテゾリズマブ、トリプルネガティブ乳がんでPFS延長(IMpassion130)/ESMO 2018※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’ Picksはこちら

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ESMO2018レポート 消化器がん

レポーター紹介胃がんに対する後方ライン治療(1)-ATTRACTION-2試験長期成績-切除不能胃がんに対する標準治療は1次治療フルオロピリミジン+白金製剤(HER2陽性の場合にはさらにトラスツズマブ併用)、2次治療パクリタキセル+ラムシルマブである。3次(後方ライン)治療以降は、ニボルマブもしくはイリノテカンが治療選択肢である。ニボルマブは、2レジメン以上の化学療法不応の切除不能胃がん(胃食道接合部がん含む)を対象としたプラセボ群との比較第III相試験(ATTRACTION-2)で有効性が示され、本邦でも2017年9月に胃がんへと適応拡大された。ESMO2018では、ATTRACTION-2のアップデート結果が報告された。2018年2月までの2年間の長期追跡でも、ニボルマブ群はプラセボ群と比較して有意なOS延長が確認され、2年全生存(OS)割合は、ニボルマブ群10.6%、プラセボ群3.2%、2年無増悪生存(PFS)割合は、ニボルマブ群3.8%、プラセボ群0%であった。奏効例のOS中央値26.61ヵ月、2年OS割合61.3%であった。また、SD症例におけるOS中央値は、ニボルマブ群8.87ヵ月、プラセボ群7.62ヵ月(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.52~1.23)であり、有意差はないもののニボルマブ群で良好であった。本結果は、実施臨床でのニボルマブ使用においても実感できる。奏効例では長期奏効が得られることも多く、まさにノーベル賞受賞の最近の報道でなされる“奇跡の薬”との表現にも同意する。一方で胃がんでのニボルマブの奏効率はわずか10%程度であり、治療のメリットが実感できない場面が多いのも事実である。さらに、最近は約10%にhyperprogressionが認められ、むしろdetrimentalに働く集団の存在も示唆されている。抗PD-1抗体薬の効果予測バイオマーカーが必要であり、有効もしくは無効のバイオマーカーがないと、1次・2次治療や補助療法での抗PD-1抗体薬の使用は困難であろう。胃がんに対する後方ライン治療(2)-新たな治療選択肢の登場-TAGS試験(TAS-102 Gastric Study)は、2レジメン以上の前治療歴のある切除不能胃がんに対するTAS-102の有効性を検証したプラセボ対照第III相試験である。結果はすでに本年の世界消化器癌学会議(ESMO-GI)で発表されているが、ESMO2018ではサブグループ解析と腫瘍縮小効果の結果が追加された(TAS-102群:337例、プラセボ群:170例)。主要評価項目であるOS(中央値/12ヵ月OS割合)は、プラセボ群3.6ヵ月/13%に対して、TAS-102群5.7ヵ月/21%(HR:0.69、95%CI:0.56~0.85、p=0.0003)であり、TAS-102群が有意に良好であった。サブグループ解析でも、各サブグループにおいてTAS-102群が良好な結果であった。腫瘍縮小効果はTAS-102群で1例の完全奏効(CR)と部分奏効(PR)12例を認め、奏効割合(ORR)は4%であった。安定(SD)も含めた病勢制御割合(DCR)はTAS-102群44%であり、プラセボ群14%に比べ有意に良好であった。有害事象は、TAS-102群においてgrade 3以上の有害事象が多くみられ(TAS-102 80% vs.プラセボ58%)、好中球数減少(38% vs.0%)や白血球減少(21% vs.0%)、貧血(19% vs.7%)、血小板数減少(6% vs.0%)などの血液毒性が主であった。これら有害事象によるTAS-102の減量・休薬は58%で、13%の症例は試験治療中止となり、16%の症例でG-CSFが投与されていた。本試験より、TAS-102は胃がん後方ライン治療の新たな選択肢として、本邦においても使用可能となるだろう。位置付けはニボルマブと同様になると思われる。有害事象も大腸がんでの報告と同程度であり、胃がんでも比較的スムーズに臨床導入できるだろう。一方で、胃がんと大腸がんの病態の違いには注意が必要である。つまり、胃がんの方がよりaggressiveな病態を呈する患者が多く、経口摂取が困難となるケースも多い。本試験でもTAS-102後の後治療移行率は、TAS-102群25%、プラセボ群26%と両群ともきわめて低率であった。ニボルマブ、TAS-102、イリノテカンをすべて単剤療法として使い切るストラテジーよりも、併用療法の開発が期待される。大腸がん1次治療としてのTriplet療法の再検証-TRIBE2試験-大腸がん1次治療においてFOLFOXIRI+ベバシズマブ療法は、本邦におけるガイドラインでも推奨されるレジメンの1つである。その根拠となったTRIBE試験は、FOLFOXIRI+ベバシズマブ療法(Triplet)とFOLFIRI+ベバシズマブ療法との第III相試験であり、ORR 65% vs.53%(p=0.006)、PFS中央値12.1ヵ月vs.9.7ヵ月(ハザード比[HR]:0.75、p=0.003)、OS中央値29.8ヵ月vs.25.8ヵ月(HR:0.80、p=0.030)と、いずれもTriplet群が有意に良好であった。しかし本試験では、FOLFIRI群の後治療のオキサリプラチン導入割合が低く、本邦の実地臨床への外挿に疑問の声もあった。ESMO2018では、続編としてTriplet+ベバシズマブ療法を1次治療および2次治療で使用する群(triplet群)と1次治療FOLFOX+ベバシズマブ療法→2次治療FOLFIRI+ベバシズマブ療法を逐次的に行う群(doublet群)を比較した第III相試験(TRIBE2試験)の結果が報告された。すべての治療は最大8コースの施行とされ、その後は、増悪まで5-FU+ベバシズマブ療法継続が実施された。679例が登録され、患者背景は両群に大きな差はなく、RAS変異型60%程度、BRAF変異型10%、右側結腸38%と、一般的な大腸がんのpopulationよりも多い傾向であった。主要評価項目であるPFS2(2次治療終了までの無増悪生存期間)中央値は、doublet群16.2ヵ月、triplet群18.9ヵ月(HR:0.69、95%CI:0.57~0.83、p<0.001)とtriplet群で有意に良好であった。1次治療PFSはdoublet群9.9ヵ月、triplet群12.0ヵ月(HR:0.73、p<0.001)、2次治療PFSの中央値はdoublet群5.5ヵ月、triplet群6.0ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.70~1.05、p=0.120)と有意差を認めなかった。doublet群の86%(248/288例)、triplet群の74%(194/261例)が2次治療に移行し、規定された2次治療が、doublet群では88%(FOLFIRI±Bmab)、triplet群では76%(FOLFOXIRI±Bmab)に行われていた。有害事象は既報のとおりで、1次治療における安全性は、grade 3以上の有害事象のうち、下痢(doublet群5% vs.triplet群17%、以下同様)、好中球減少(21% vs.50%)、発熱性好中球減少症(3% vs.7%)で群間差を認めた。本発表は、初回治療におけるtripletの有効性を再現したものと考えられる。doublet群の88%で2次治療に移行できているにもかかわらずtriplet群でPFS2が良好であったことはインパクトが大きいが、その理由は明らかではない。治療早期に強いレジメンを実施し、腫瘍縮小を達成することが生存延長につながっているのであろうか。とくに本試験の対象として多く含まれているRAS/BRAF変異型や右側結腸原発症例で有用である。今後発表されるOS結果にも注目したい。大腸がんに対する免疫療法の明暗-Checkmate142試験とMODUL試験-大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害剤は、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)やミスマッチ修復(mismatch repair:MMR)タンパク発現消失を示すMMR機能欠損(deficient MMR:dMMR)がんとMMR機能欠損を示さないproficient MMR(pMMR)がんに分けて治療開発が行われている。dMMR例は遺伝子変異数(tumor mutation burden:TMB)が多く、腫瘍浸潤性リンパ球(tumor infiltrating lymphocyte:TIL)の強い免疫腫瘍環境を有することから、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できる。CheckMate142試験は抗PD-1抗体薬ニボルマブ(NIVO)単剤療法、NIVOと抗CTLA-4抗体薬イピリムマブ(IPI)との併用療法を検討した第II相試験であり、ESMO2018では1次治療としてのNIVO+IPI併用療法コホートの結果が報告された。本コホートは、dMMR例を対象に、NIVO(3mg/kgを2週間隔)と低用量IPI(1mg/kgを6週間隔)の併用療法であり、既報の同薬剤併用の既治療コホート(NIVO 3mg/kg+IPI 1mg/kgを3週間隔×4回→その後はNIVO 3mg/kgを2週間隔)とは異なったスケジュールである。今回のコホートには45例が登録され、BRAF変異型38%、Lynch症候群18%が含まれていた。主要評価項目である担当医判定によるORRは60%(完全奏効[CR]:3例[7%]を含む)、DCRは84%であった。BRAF変異例17例でも、ORR 71%、DCR 88%と良好だった。解析時点において82%の症例が効果継続中であり、12ヵ月PFS割合77%、OS割合83%と、長期の生存延長効果が期待された。Grade 3以上の重篤な有害事象割合は16%であり、治療中止に至る有害事象も7%と低かった。今回の報告は既治療例通常用量のNIVO+IPIコホートと比較して有効性は同程度、重篤な有害事象は少ない傾向であった。これが、低用量IPIのおかげなのか、それとも初回治療例を対象としたものかはランダム化比較試験でないため確証はないが、個人的には有害事象と有効性のバランスが良い本投与法を実地臨床では使用したい。とくにBRAF変異型も含めた高い有効性は魅力的である。dMMRがんに対するpembrolizumabは本年度中に適応拡大予定であるが、NIVO+IPI療法もdMMR大腸がんに必要なレジメンと考えられる。一方でpMMR大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の治療開発は、いまだ成功していない。MODUL試験は、大腸がんにFOLFOX+ベバシズマブ導入化学療法後の維持療法に関するランダム化比較試験で、バイオマーカーに基づくアンブレラ型試験である。今回、BRAF野生型コホート(コホート2)としてフッ化ピリミジン系薬剤+Bevacizumab(Bmab)とAtezolizumabの併用療法との比較パートの結果が発表された。患者背景はRAS変異型60~65%、dMMR2%であり、本試験はpMMR大腸がんへの免疫チェックポイント阻害剤の有効性を探索する試験と言える。追跡期間中央値18.7ヵ月時点におけるupdate analysisでのPFS中央値は試験治療群7.20ヵ月、標準治療群7.39ヵ月(HR:0.96、95%CI:0.77~1.20、p=0.727)、OS中央値は試験治療群22.05ヵ月、標準治療群21.91ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.66~1.13、p=0.283)と、有意差は認められなかった。ESMO-GIでは後方ラインでのAtezolizumab(+cobimetinib)の第III相試験(COTEZO)もnegativeな結果が報告された。pMMR大腸がんへの免疫療法は、まだまだ暗い闇の中といったところである。

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新規NK1受容体拮抗薬fosnetupitantの可能性/癌治療学会

 新規NK-1受容体拮抗薬fosnetupitantは、NK1受容体に対して高い選択性を有するnetuspitantのプロドラッグである。また、長い半減期を有し、第I相試験で日本人患者に良好な成績を示している。第56回日本癌治療学会学術集会では、浜松医科大学 乾 直輝氏らが、第II相Pro-NETU試験の結果を発表した。 Pro-NETU試験は、シスプラチン(CDDP)ベースの化学療法を受けている患者における、fosnetupitant 81mgと235mgの有効性と安全性を評価する目的で行われた多施設二重盲検プラセボ対照用量決定試験。・対象:CDDP 70mg/m2以上のレジメンを受ける、20歳以上で、高度および中等度催吐性化学療法の治療歴のない患者・試験薬: [fosnetupitant 81mg群]fosnetupitant(81mg)+パロノセトロン(0.75mg)+デキサメタゾン(9.9/6.6/6.6/6.6mg) [fosnetupitant 235mg群]fosnetupitant(235mg)+パロノセトロン(0.75mg)+デキサメタゾン(9.9/6.6/6.6/6.6mg)・対象薬:プラセボ+パロノセトロン(0.75mg)+デキサメタゾン(13.2/6.6/6.6/6.6mg)・評価項目: [主要評価項目]全段階(化学療法開始0~120時間)における化学療法投与後0~120分後の完全奏効(CR:嘔吐なし、救済療法なし)率。 [副次評価項目]年齢、性別で無調整のCR率、Complete Protection Rate、安全性プロファイルなど。 仮説CR率はプラセボ50%、81mg群65%、235mg群65%であった。 主な結果は以下のとおり。・594例が、プラセボ群に197例、fosnetupitant 81mg群に199例、fosnetupitant 235mg群に198例に、無作為に割り付けられた。・全CR率は、プラセボ群54.7%、fosnetupitant 81mg群63.8%(p=0.061)、fosnetupitant 235mg群76.8%(p<0.001)と、235mg群で有意に改善した。・無調整のCR率は、fosnetupitant群は全用量群、急性期、遅発期のいずれにおいても、効果と用量は相関した。・fosnetupitant群における有害事象の発現傾向はプラセボと同等であった。また、インフュージョンリアクションの発現は1%で、すべてGrade1~2であった。 fosnetupitantの推奨用量は235mgであり、これは米国での承認用量と同様であった。

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