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朝食を抜きがちで運動不足の一人暮らしの男子大学生は太る【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第52回

朝食を抜きがちで運動不足の一人暮らしの男子大学生は太る FREEIMAGESより使用 この後ろ向きコホート研究は、男子大学生が肥満にならないようにするためにはどうしたらいいか、ヒントを与えてくれます。 これは京都大学で2000~07年に行われた研究です。被験者は、健康診断を毎年受けている法学部3回生です。私は関西出身なので、大学生のことを「年生」ではなく「回生」と呼んでいました。京都大学もおそらく「回生」と呼んでいる学生が多いのでは? Goto M, et al. Lifestyle risk factors for overweight in Japanese male college students. Public Health Nutr. 2010 Oct;13(10):1575-80. 余談はさておき、この研究に登録されたのはBMIが22.0以上の4,634人の男性学生でした。平均年齢は21.5歳。「あっ! この研究にオレも入ってるかも!」と思った読者がいるかな、とふと思ったのですが、法学部出身の人はこの連載を読んでないですよね。1年間のフォローアップで、BMIが5%以上増加したのは598人(12.9%)の生徒でした。BMI増加の独立リスク因子とされたのは、運動不足(オッズ比[OR]1.33、95%信頼区間:1.11~1.60)、アルコール摂取量が少ないこと(OR 1.30、95%信頼区間:1.08~1.57)、朝食をよく抜くこと(OR 1.34、95%信頼区間:1.12~1.61)、高脂肪食を好むこと(OR 1.36、95%信頼区間:1.04~1.78)、一人暮らし(OR 1.23、95%信頼区間:0.99~1.52)でした。該当するリスク因子数に応じて層別化を行うと、健康的な生徒と比較した場合、リスク因子最多の生徒ではBMI増加のオッズ比が6.22(95%信頼区間:2.58~15.0)でした。アルコールを飲まないほうが太るというのが「ハテナ?」と思いましたが、アルコール摂取で肥満のリスクが上昇するというコンセンサスはないのですね。知りませんでした。むしろ、アルコール摂取をしない大学生は、他のカロリー摂取源として食事を多く取るという可能性があるとかないとか。他の研究だと、早食いする大学生は体重が増えやすいという報告もあります1)。私も大学の頃はかなり早食いでしたが、子どもができてからゆっくり食べるようになりました。ところで、京都の大学に通っていると、ラーメン屋に行く頻度が多いと思います(それが統計学的に有意かどうかは神のみぞ知る)。私は研修医時代を京都で過ごしたのですが、週1回くらいの頻度でラーメン屋に通っていました。「いいちょ」という店が大好きで、ラーメンとチャーハンを毎回セットで頼んでいました。そのせいもあってか、当時は現在より体重が5kgも多かったのです。ちなみに、昼食に頻繁にラーメンを食べると日本人はトランスアミナーゼが増えるという報告があります2)。参考文献1)Yamane M, et al. Obesity (Silver Spring). 2014;22:2262-2266.2) Iwata T, et al. Tohoku J Exp Med. 2013;231:257-263.インデックスページへ戻る

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習慣飲酒が血糖状態を改善-日本の中年女性

 日本の中年女性において、アルコール摂取量と血糖状態は肥満症とは無関係に逆相関を示すことが、兵庫医科大学の下村 智子氏らによる研究で明らかになった。日本の中年女性は、飲酒することで心血管疾患の既知のリスク低下につながる可能性がある。Canadian journal of diabetes care誌オンライン版2015年8月12日号の報告。 最近の研究で、習慣飲酒は糖尿病のリスクを軽減することが示されている。しかし、アルコールと糖尿病の関係が肥満症の影響を受けるかどうかについては、いまだ明らかにされていない。本研究では、女性のアルコール摂取が血糖状態に影響を及ぼすのかについて検討した。 対象は、健康診断を受けた35~60歳の日本人女性1万8,352人。対象を、飲酒しない群、ときどき飲む群、毎日軽く飲む群(エタノール 22g以下/日)、毎日大量に飲む群(エタノール22g以上/日)の4群に分けて検討した。アルコール消費量とHbA1c値の関連は、年齢、喫煙歴、運動習慣で調整後、共分散およびロジスティック回帰分析を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・HbA1c値は、飲酒しない群と比べて、ときどき飲む群、毎日軽く飲む群、毎日大量に飲む群で有意に低かった。・これらの逆相関は、肥満状態(BMI、ウエスト身長比)によって変化しなかった。・飲酒しない群に対する高血糖のオッズ比は、ときどき飲む群で0.82 [95%CI:0.73~0.92]と1.00の基準値よりも有意に低かった(p<0.01)。毎日軽く飲む群のオッズ比は0.61 [95%CI:0.44~0.85]、毎日大量に飲む群は0.66 [95%CI:0.50~0.88]であった。・以上のことから、35~60歳の日本人女性において、アルコール摂取は肥満状態と独立しており、アルコール摂取量と血糖状態は逆相関を示すことが示唆された。

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1回の健診で26年後の心疾患やがんを予測可能?

 1回の健康診断の結果から、26年後の心血管疾患やがん、糖尿病を予測することは可能だろうか。スウェーデン・Habo健康管理センターのLars-Goran Persson氏らは、ベースライン時33~42歳の若年男性のコホートにおいて、1回の健康診断で得られた生活習慣および生物学的リスクマーカーの結果と26年後の心血管疾患やがんの罹患率・死亡率、糖尿病の罹患率との関連を検討した。その結果、1回の検査で確認されたリスク因子(とくに喫煙、BMI、血清コレステロール)により、26年後における心血管疾患、がん、糖尿病を予測できる可能性が報告された。BMJ Open誌2015年5月6日号に掲載。 対象は、1985年にHaboに住んでいた男性(757人)のうち、1985~1987年に健康診断を受けた男性652人。健康プロファイルを調査・測定し、健康に関する看護師との対話を実施、さらに高リスク群には医師との対話と検査を実施した。介入プログラムは、プライマリケア医療機関および地元関連機関の協力の下、実施した。心血管疾患およびがんの罹患はスウェーデン保健福祉庁のデータから、糖尿病については薬局での医薬品販売データから評価した。健康プロファイルより、生活習慣(喫煙、身体活動、飲酒)と生物学的リスクマーカー(BMI、血圧、血清コレステロール)に関する項目を選び、そのリスクポイントの合計で参加者を3群に分け比較した。 主な結果は以下のとおり。・リスクポイントの合計が最も低い群は、最も高い群と比較して、心血管疾患およびがんのリスクが有意に低かった。・生活習慣に関するリスクポイントが最も低い群は、最も高い群に比べて、心血管疾患リスクが有意に低く、生物学的リスクマーカーに関するリスクが最も低い群は、心血管疾患およびがんの両方のリスクが有意に低かった。喫煙と血清コレステロールは、最も重要なリスク因子であった。・糖尿病においては、BMIと喫煙が最も重要なリスク因子であった。

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ゴミを扱う仕事で起こった珍しい病気【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第43回

ゴミを扱う仕事で起こった珍しい病気 >足成より使用 ゴミを扱う仕事に従事する人がどういった呼吸器疾患にかかるのかを検証した大規模な研究はありませんが、呼吸器症状や呼吸機能検査には影響を与えないと結論付けた報告があります(Tschopp A. et al. Occup Environ Med. 2011;68:856-859.)。 しかしその一方で、ゴミと関連した感染症やアレルギーを呈する報告もあります。 Allmers H, et al. Two year follow-up of a garbage collector with allergic bronchopulmonary aspergillosis (ABPA). Am J Ind Med. 2000;37:438-442. この論文は、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)に罹患した29歳のゴミ回収業社員の症例報告です。彼は、ゴミ回収業に従事した夏に、呼吸困難感、発熱、インフルエンザ様症状を呈するようになりました。病院を受診したところ、胸部レントゲン写真では粘液栓(mucoid impaction)を示唆する索状影が観察され、IgE高値、アスペルギルス沈降抗体が陽性であることからABPAを疑われました。Aspergillus fumigatus抽出物を吸入すると、即時型喘息反応がみられました。この症例報告は日本の夏型過敏性肺炎と同様の機序と考えてよいと思いますが、過去にゴミを扱うことで真菌のアレルギー症状を起こすことが報告されています(Hagemeyer O, et al. Adv Exp Med Biol. 2013;788:313-320.)。また、ゴミ捨て場で働く子供において酸化ストレスマーカーが高いことも報告されています(Lahiry G, et al. J Trop Pediatr. 2011;57:472-475.)。日本のように医療制度が充実している国はともかくとして、健康へのリスクを有する職業に就いている人に対する健康診断は、世界的にもまだまだ課題が残されているようです。インデックスページへ戻る

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味噌汁・漬物を減らせば減塩できるか

 日本人一般集団において、味噌汁・漬物の摂取を控えることは、減塩のアプローチとして効果的だが、これは80~90代には当てはまらないことが、新潟大学の若杉 三奈子氏らによる研究で明らかになった。Internal medicine誌オンライン版2015年4月15日号の報告。 食事の食塩摂取量を減少させるために、味噌汁と漬物の摂取を減らすことが推奨されている。しかし現在、日本人の食生活は欧米化しており、味噌汁や漬物をかつてほど頻繁に消費していない。よって、味噌汁・漬物のナトリウム摂取による影響を、あらためて検証した。 本研究では、新潟県佐渡市で2013年に健康診断を実施した8,821人(男性3,956人、女性4,865人;19~97歳)の結果データを用いて、味噌汁・漬物の摂取頻度と、推定24時間尿中ナトリウム排泄量との関連を検討する断面研究を行った。毎日の食塩摂取量のレベルは、スポット尿中のナトリウムおよびクレアチニン測定値に基づいて推定した。味噌汁と漬物の摂取頻度は自己申告のアンケートを用いて決定した。関連性は、多重線形回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・1日あたりの平均塩分摂取量は9.4gであった。・味噌汁と漬物の摂取頻度は年齢とともに増加し、1日の食塩摂取量のレベルと関連する傾向が認められた(傾向のp<0.0001)。・年齢、性別、BMI、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、慢性腎臓病で調整した線形回帰モデル分析の結果、80歳以上を除く全年齢層における1日の食塩摂取量は、味噌汁(p<0.0001)および漬物(p<0.0001)の摂取頻度と関連が認められた。・以上のことから、味噌汁・漬物の摂取頻度の減少は、一般的な日本人集団における食塩摂取量を減少させるためのアプローチとして効果的であるが、80歳以上の人には効果的ではないことが示唆された。

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アリスミアのツボ Q18

Q18健康診断で見つかった脚ブロックに対する対応は?紹介されることはあるものの、これだけで心疾患診断の契機になったことは少ないのが実情。自分の経験では・・・最近ではあまり多くはないのですが、かつて健康診断で新たに発見された脚ブロック症例の紹介を受け、その方たちのチェックを行っていたことがありました。右脚ブロックでは心房中隔欠損症が、左脚ブロックでは冠動脈疾患や拡張型心筋症の初期に出会うことがありましたが、これはかなりレアケースだったと言えるでしょう。また、そのような場合の多くは、問診すると何らかの症状があったり、胸部レントゲン写真で軽度の心拡大が認められるなど、pureな脚ブロックだけという症例ではなかった気がします。公衆衛生学的見地ではどうなのでしょう公衆衛生学的な研究もなされており、(1)apparently healthy peopleでの右脚ブロックは、その後の生命予後に影響を与えないこと(2)新しく発見された左脚ブロックは、急性期には死亡率増加に寄与するが(これはおそらく虚血性心疾患や心不全の発症を見ています)、長期的には死亡率増加への寄与は小さいことが報告されています(Cuddy TE,et al. Can J Cardiol. 2006;22:205-211)。調べることは悪いことではない公衆衛生学的な情報はそうであれ、それを知ったうえで個別に基礎心疾患のチェックを行うことは有意義なことだと思います。そのほうが、患者さん(健常者?)にとっても安心できるからです。ただし、右脚ブロックではそもそも何かが見つかるということは滅多にない、左脚ブロックでも、最近初めて見つかったもの、何らかの症状や胸部レントゲンでの心拡大がないものでは、何かが見つかるという可能性はきわめて低いと考えておくべきでしょう。

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正常体重者も非アルコール性脂肪肝に注意!

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を含む生活習慣病における介入は、過体重および肥満者にフォーカスしていたため、正常体重者のNAFLD発症における成人期の体重増加の影響は明らかになっていない。 聖路加国際病院附属クリニック・予防医療センターの木村 武志氏らによる横断的研究の結果、NAFLDが20歳以降の体重変化と強く関連し、この影響は正常体重の人でとくに大きかったことが報告された。この結果から、正常体重の健康な人でも早期および長期的な体重モニタリングが重要であることが示唆された。Journal of gastroenterology and hepatology誌オンライン版2014年12月3日号に掲載。 著者らは、健康診断を受けた参加者からデータを収集し、超音波診断によるNAFLD有病率を、20歳以降の体重変化1kg刻みで調査した。相対リスク(RR)は、現在の体重(正常、過体重、肥満)によって層別化し、男女別に算出した。ロジスティック回帰を用いて、潜在的な交絡因子を調整したオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・2万1,496人の参加者のうち、NAFLDが3,498例(16.3%)にみられた。・20歳以降の体重増加に伴いNAFLDの有病率が増加した。10.1~11.0kg増加した群では、男性で41.6%、女性で24.8%がNAFLDであった。・四分位による多変量解析により、体重増加が男性および女性のNAFLDリスクと有意に関連していることが示された。・体重変化(10kg増ごと)に伴うNAFLDのリスクは、過体重および肥満の参加者に比べて、正常体重の参加者で有意に高かった。正常体重 男性:OR 7.53(95%CI 4.99~11.36)     女性:OR 12.20(95%CI 7.45~19.98)過体重  男性:OR 1.61(95%CI 0.91~2.85)     女性:OR 2.90(95%CI 0.99~8.54)肥満   男性:OR 4.0(95%CI 2.97~5.39)     女性:OR 2.68(95%CI 2.00~3.60)

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女性は男性より有害な心血管代謝プロファイルを示す―日本の糖尿病患者

 日本人の糖尿病患者は、男性よりも女性のほうが有害な心血管代謝プロファイルを示すことが、兵庫医科大学の若林 一郎氏による研究で明らかになった。日本の糖尿病女性は、男性よりも腹部肥満、高脈圧、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、メタボリックシンドロームの有病率が高いという。Journal of women's health誌オンライン版2014年11月14日号の報告。 糖尿病患者の心血管疾患リスクの性差に関する研究は、主に欧米で行われており、日本人を含むアジア人を対象とした報告は限られている。 そのため、本研究では、日本の地域住民の健康診断データベースから糖尿病患者1,707例を抽出して横断研究を行い、心血管代謝リスク因子を男女で比較した。男性1,138例、女性569例で男女比を2:1とし、年齢を一致させて検討を行った(男女とも53.8±7.4歳)。 主な結果は以下のとおり。・女性のウエスト・身長比は男性と比較し、有意に高かった。・BMIは男女で有意な差を認めなかった。・女性の拡張期血圧は、男性と比較し、有意に低かった。・女性の脈圧は、男性と比較し、有意に高かった。・収縮期血圧は、男女で有意な差を認めなかった。・女性のLDLコレステロールは、男性と比較し、有意に高かった。・女性のトリグリセリド(対数変換)は、男性と比較し、有意に低かった。・女性の脂肪蓄積量(対数変換)は、男性と比較し、有意に高かった。・女性の腹部肥満のオッズ比は2.00 であった(vs 男性、95%CI: 1.48~2.69)。・女性の高脈圧のオッズ比は1.48であった(vs 男性、95%CI: 1.15~1.91)。・女性の高LDLコレステロール血症のオッズ比は、1.48であった(vs 男性、95%CI: 1.13~1.92)。・女性の低HDLコレステロール血症のオッズ比は、1.77であった(vs 男性、95% CI: 1.32~2.37)。・女性のメタボリックシンドローム(IDF基準)のオッズ比は、1.68であった(vs 男性、95%CI: 1.28~2.21)。

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アリスミアのツボ Q13

Q13たまたま見つかった無症候性の発作性心房細動はどう対処するべきでしょうか?脳梗塞予防のみを行い、心房細動はまずその行方を観察するに留めておきます。最近よく見かけるたまたま健診で捕まった発作性心房細動社会の高齢化のためでしょうか、最近よく出会うのが・・・、健康診断の心電図で偶然見つかった心房細動で受診を促されたものの、受診時には洞調律だったという例です。自然に洞調律に復しているので、発作性心房細動です。しかし、本人につぶさに問診しても、まったく症状らしきものがなく(健康診断を受けたぐらいですから、そうでしょう)、定義上「無症候性発作性心房細動」で、私の前にいるときは洞調律という患者です。まずは脳梗塞リスクを考える発作性心房細動でも、持続性・永続性と同じように脳梗塞が生じることが知られています。だから、まず、脳梗塞予防を脳梗塞リスクに応じて行うことが基本となります。なんとなく、一度健康診断だけで偶然見つかった無症候性発作なのに、脳梗塞予防まで必要?と感じてしまうのですが・・・。心臓血管研究所では、無症候性発作性心房細動の行方を追ってみたことがあります。このような無症候性発作性心房細動は、症状のある発作性心房細動よりもむしろ速いスピードで持続性心房細動に移行していたのです。「たまたま見つかった」無症候の発作性心房細動だからといって、症状のある発作性心房細動となんら大きな違いはありません。実際、脳梗塞の発症リスクは、無症候性と有症候性で違いはありませんでした。見つかったときが脳梗塞リスクを患者に伝えるチャンスなのです。その心房細動の行方は・・・無症候ですから、発作の頻度や持続時間はとうてい知ることができません。状況がわからないのに、心房細動の治療を行ったとしても、その治療効果の判定ができません。判定できないからこそ、心房細動自身に対する治療は行わず、経過観察することにしています。やがて、いつの日か持続性心房細動に移行するでしょう。そのときが治療のチャンスです。少し遅れ気味になってしまいますが、治療の効果も判定することが初めてできるようになります。私は、持続性心房細動に移行して1年以内が、カテーテルアブレーションという治療を行う価値のある最初のそして最後の猶予期間だと患者に伝えています。 

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アリスミアのツボ 第3回

Q7症状のない上室・心室期外収縮は、どの程度まで経過観察すべきでしょうか。心機能が正常ならば経過観察しない、という考え方ではどうでしょうか。私は基本的に心機能が正常である限り、期外収縮の経過観察をしていません。これには異論や反論があるかもしれません。心房期外収縮の場合「心房期外収縮の頻発は、放置するとやがて無症状の心房細動に発展してしまうのではないか?」という不安。これはそのとおりだと思います。しかし、問題はその発生確率だと思うのです。一見健康者で、心房期外収縮頻発が見られた例での心房細動の発生確率は、年間約1.5%とされています。これをどう見るか……人によって異なるかもしれません。心房期外収縮例をすべて経過観察しようとするのは、間違いではないのですが効率性に劣る気がします。これを行うための外来診療の時間があれば、もっと有意義な(もっと重篤な疾患をもつ患者のケアに)使えばよいのではないでしょうか。もちろん例外があります。心原性脳梗塞のようだけれども心房細動が見つかっていない患者、心房細動がひとたびもし生じてしまえば脳梗塞のリスクがきわめて高いという患者では、心房期外収縮の頻発を経過観察する価値が高まるでしょう。ただし、これらの患者の経過観察としての適切な方法はまだ誰も知りません。心室期外収縮の場合「心室期外収縮の頻発は、やがて心機能低下を引き起こしてしまうのではないか?」という不安。これもその可能性はあると思います。ただし、どのような発生確率が見込めるのかという確かな数字がない以上、そして基本的に予後はよいという情報がある以上、効率性という意味で経過観察の価値が低いと感じてしまうのです。脳梗塞とは異なり、心機能低下はirreversibleではありません。健康診断をきちんと受けることを指導する、というような経過観察でもよいのではないでしょうか。Q8発作性心房細動に対する抗不整脈薬の用い方について教えてください。安全性重視という考え方で、患者の意向次第で減量や中止も随時可能専門家の現場での用い方「抗不整脈薬の使い方がわからない。ガイドラインや教科書と、循環器内科医の実臨床での使い方がかなり違う気がする」というご意見もありました。抗不整脈薬は諸刃の剣と言われることから、どうしても経験則が幅を利かせているのが実情です。ESCの心房細動ガイドラインで書かれていることESCの心房細動ガイドラインにはこの抗不整脈薬の使い方の原則が書かれているので、それを引用しておきましょう。1)抗不整脈薬治療は症状を軽減する目的で行うものである2)抗不整脈薬で洞調律を維持する効果は“modest”である3)抗不整脈薬治療は心房細動の再発をなくすものでなく、減らすことで臨床的には成功と考えるべきだろう4)1つの抗不整脈薬が効果のない場合、他の抗不整脈薬が効果を示すことがあるかもしれない5)抗不整脈薬による新たな不整脈の出現、心外性副作用はしばしば生じる6)抗不整脈薬の選別は効果よりもまず安全性を指針とすべきである私の使い方私の臨床現場での用い方はこれを基本にしています。たとえば、抗不整脈薬をいつ始めて、いつ中止するのかについての一定の見解はないのですが、患者が心房細動の症状で困っている時に開始し(1参照)、その際あらかじめ発作が完全に消失するものではないことを伝え(2、3参照)、症状が軽くなればいつでも薬物の減量をトライし、症状に困らなくなればいつでも中止をトライする(6参照)、ということを基本にしています。もちろん、減量や中止によって患者が困るようになれば、また再開することはたびたびです(むしろ、そのほうが多いかもしれません)。ただ、これを行うことで患者が薬物の効果を実感してくれることもアドヒアランスを高めると思っています。Q9NOACをどのように開始すべきでしょうか?ワルファリン時代とまったく異なる抗凝固療法のやり方を会得する必要がありますワルファリン時代に染みついた慣習心房細動の脳卒中予防には抗凝固療法が必要です。抗凝固療法の仕方…これについては、あまりにもワルファリンを使用してきた歴史が長く、ワルファリン時代のやり方が身に染みついてしまっていることを私自身が痛感しました。そこで、ワルファリン時代とは異なるNOACによる抗凝固療法の私のやり方をまとめておきます。1)心房細動初診患者では(脳卒中の一次予防ならば)その日のうちに抗凝固療法を始めない。ワルファリン時代は初診患者で脳卒中予防の説明をして、ワルファリン1.5~2mg/dayをその日から開始していました。しかし、NOACでは危なっかしくてできないですね。初診日は、脳卒中に関する啓蒙、年齢、体重の把握、血清Cr、Hbの採血をするだけにしています。クリアチニンクリアランスを把握してから抗凝固療法はするものと考え、次の外来から(つまりクレアチニンクリアランスが手に入ってから)NOACを処方します。次回の外来までに脳卒中になってしまうのでは……と不安に思う方がおられるかもしれませんが、所詮ワルファリン時代も初診時に処方する少量のワルファリン量ではそもそも効いていませんでした。NOACを初診日に処方すると禁忌症例に処方してしまう可能性があり、こちらのほうが危険でしょう。また、貧血のある患者にNOACを処方するのも危険です。今まさに、じわじわとどこからか出血しているのかもしれないからです。2)2週間以内の出血に関する問診とHbのチェックを忘れないワルファリン時代はゆっくりと抗凝固がなされ、しかもPT-INRによる処方量決定のためたびたび外来受診が行われるので、出血のケアは自然になされやすい環境にありました。しかし、長期処方が可能なNOACは大出血直前の気付きの機会を減らしています。そこで、私は、NOAC処方時には必ず2週間以内に受診してもらい、皮下出血、タール便の有無を聞き、必ずHbをチェックすることにしています。2週間でHbが明らかに減少していれば、どこからか出血していることになるからです。逆にHb値に変化がなければ安心できます。3)バイオマーカーはどうする?ワルファリン時代のPT-INRというモニタリングはなくなりました。では何もチェックしていないかというと、私は、ダビガトランではaPTT、リバーロキサバンとアピキサバンではPTをチェックしています。固定用量の薬物では必ず効きすぎの患者が、わずかといえども存在しているからです。ただし、これはモニタリングではありません。処方後2週間以内の外来で、Hbと一緒にバイオマーカーを一度採血するのです。バイオマーカーについては「あまり見かけないほど高い値である」ことがなければ、それで良しとしています。その後の採血ですが、クレアチニンクリアランスを高齢者では年に4回程度、若年者では年に1、2回チェックしますが、それと同時にこれらのバイオマーカーもチェックしています。NOACのバイオマーカーはモニタリングではなく、あくまでもチェックにすぎないのです。

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座り仕事の15%が腰痛持ち、その発症要因とは

 腰痛は重要な公衆衛生問題であり、労災補償や医療費の点で大きな経済的負担となっている。北里大学の井上 玄氏らの調査によれば、腰痛発症のリスク因子として知られる座位を、長時間強いられる座作業労働者における最近の腰痛有病率は15%で、その発症には、腰痛既往歴や体重などが関与していたことを報告した。結果を踏まえて著者は、「本報告は、職場における腰痛発症の潜在的なリスク因子についての情報を提供するものである」とまとめている。Journal of Orthopaedic Science誌オンライン版2014年9月8日号の掲載報告。 研究グループは、電子機器製造会社の座作業労働者を対象に、腰痛の有病率を調査し、腰痛発症のリスク因子を分析する目的で前向き横断研究を行った。 直近1週間で48時間以上持続する腰痛の有病率を調査するとともに、毎年の健康診断から人口統計学的特性およびリスク因子に関するデータを収集し、腰痛を有する労働者についてはローランド・モリス障害質問票(RDQ)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・全座作業労働者1,329例中、201例(15.1%)が腰痛を有していた。・女性では、体重およびBMIがRDQスコアと有意な相関を認めた。・単変量解析の結果、男性、腰痛既往歴、身長170cm以上、体重70kg以上が腰痛の有意なリスク因子として同定された。・多変量ロジスティック回帰分析では、腰痛既往歴、腰椎の手術歴が腰痛の有意なリスク因子であった。

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残業時間と高血圧は逆相関~日本の横断研究

 長時間労働は、心血管疾患リスクの増加と関連しているが高血圧との関係は不明である。J-ECOH(Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health)スタディグループの今井 鉄平氏らは、日本の大規模企業研究データを使用して、残業と高血圧の関係を横断研究により検討した。その結果、残業時間と高血圧は逆相関することが示唆された。Chronobiology International誌オンライン版2014年9月17日号に掲載。 参加者は、健康診断データと自己報告の残業データがある4社の労働者5万2,365人。収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上、または降圧薬服用者(もしくはその両方)を高血圧と定義した。ロジスティック回帰分析を用いて、残業時間によるカテゴリ(月間45時間未満、45~79時間、80~99時間、100時間以上)別に高血圧のオッズ比(年齢・性別・会社・喫煙状態・BMIを調整)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・高血圧の有病率は残業時間の増加に伴って減少する傾向があった(残業時間の少ないカテゴリから順に17.5%、12.0%、11.1%、9.1%)。・年齢、性別、会社の調整オッズ比(95%信頼区間)は、それぞれ1.00(基準)、0.81(0.75~0.86)、0.73(0.62~0.86)、0.58(0.44~0.76)であった(線形傾向のp<0.001)。・サブコホートにおいて、この逆相関は、他の潜在的な交絡因子を追加調整後も統計的に有意であった。

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食べる速さはメタボと関連~日本の横断的研究

 国立国際医療研究センターの長濱 さつ絵氏らは、日本人における食べる速度とメタボリックシンドロームとの関連性を横断的研究で調査した。その結果、食べる速度がメタボリックシンドロームと関連し、この関連は主に、食べる速度による体重の違いで説明されることが示唆された。著者らは「食べる速度を遅くすることで肥満やメタボリックシンドロームを予防できるかどうか、さらなる研究が必要」としている。BMJ Open誌2014年9月5日号に掲載。 著者らは、2011年に国内の健康管理センターの健康診断を受け、冠動脈心疾患や脳卒中の既往がない5万6,865人(男性4万1,820人、女性1万5,045人)について、食べる速度(自己申告による)とメタボリックシンドロームおよびその要素について調査した。なお、メタボリックシンドロームは、国際糖尿病連合および米国心臓協会/米国国立心肺血液研究所の共同暫定声明に基づいて定義した。 主な結果は以下のとおり。・多重ロジスティック回帰モデルでは、食べる速度はメタボリックシンドロームと有意な正相関を示した。・男性における多変量調整オッズ比(95%信頼区間)は、食べる速度が「遅い」「普通」「速い」の順に、0.70(0.62~0.79)、1.00(基準)、1.61(1.53~1.70)であった(傾向のp<0.001)。女性では、0.74(0.60~0.91)、1.00(基準)、1.27(1.13~1.43)であった(傾向のp<0.001)。・メタボリックシンドロームの要素のうち、腹部肥満が食べる速度と最も強い関連を示した。・食べる速度とメタボリックシンドロームおよびその要素との関連性は、BMIによる調整後に大きく減衰した。しかし、「遅い」と高血圧(男女とも)および高血糖(男性)での低オッズ、「速い」と脂質異常(男性)での高オッズとの関連については、統計的に有意なままであった。

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13種類のがんを1回の採血で診断―次世代のがん診断システム開発プロジェクト始動

 8月18日(月)、独立行政法人国立がん研究センター(東京都中央区)は、血液から乳がんや大腸がんなど13種類のがんを診断するシステムの開発を始めると発表した。 これは、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、国立がん研究センター(以下、NCC)、東レ株式会社(以下、東レ)およびアカデミア、企業など他の7機関とともに、健康診断などで簡便にがんや認知症を検査できる世界最先端の診断機器・検査システムの開発を行うプロジェクトの一環である。計画では、患者への負担が小さく、より早期に一度にさまざまながんを診断できる技術の開発を支援することを目的としている。 血液検査によるがんの早期発見では、胃がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、胆道がん、膵臓がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、乳がん、肉腫、神経膠腫の13種をターゲットにしている。 具体的には、NCCに蓄積された膨大な臨床情報とバイオバンクの検体、マイクロRNA腫瘍マーカーについての研究成果を基盤とし、東レが開発した高感度DNAチップと、東レとNCCが共同開発した血液中に存在するマイクロRNAバイオマーカーの革新的な探索方法を活用して、体液中のマイクロRNAの発現状態についてのデータベースを構築、網羅的に解析するというもの。 この測定技術により、がんや認知症の早期発見マーカーを見出し、これらのマーカーを検出するバイオツールを世界に先駆け実用化することを目指すとしている。詳細はプレスリリースへ

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胸のしこりに対し触診や精密検査を行わず肝臓がんを見逃したケース

消化器最終判決判例時報 1610号101-105頁概要狭心症の診断で近医内科に約5年間通院していた74歳の女性。血液検査では大きな異常はみられなかったが、胸のしこりに気付き担当医師に相談したところ、劔状突起であると説明され腹部は触診されなかった。最終診察日に血液検査で肝臓疾患の疑いがもたれたが、その後別の病院を受診して多発性肝腫瘍と診断され、約4ヵ月後に肝腎症候群で死亡した。詳細な経過患者情報1981年4月20日~1994年3月14日まで、狭心症の診断で内科医院に月2回通院していた74歳女性。通院期間中の血液検査データは以下の通り(赤字が正常範囲外)■通院期間中の血液検査データ経過1994年2月24日担当医師に対し、胸にしこりがあることを訴えたが、劔状突起と説明され腹部の診察はなかった。3月10日市町村の補助による健康診断を実施。高血圧境界領域、高脂血症、肝疾患(疑いを含む)および貧血(疑いを含む)として、「要指導」と判断した。1994年3月14日健康診断の結果説明。この時腹部の診察なし(精密検査が必要であると説明したが、検査日は指定せず、それ以降の通院もなし)。3月22日別の病院で検査を受けた結果、肝機能異常および悪性腫瘍を示す数値が出た(詳細不明)。1994年4月1日さらに別医院で診察を受けた結果、触診によって肝臓が腫大していることや上腹部に腫瘤があることがわかり、肝腫瘍の疑いと診断され、総合病院を紹介された。4月4日A総合病院消化器内科で多発性肝腫瘍と診断された。4月7日A総合病院へ入院。高齢であることから積極的治療は不可能とされた。5月6日B病院で診察を受け、それ以後同病院に通院した。5月22日発熱、食欲低下のためB病院に入院した。次第に黄疸が増強し、心窩部痛などの苦痛除去を行ったものの状態が悪化した。7月27日肝内胆管がんを原因とする肝腎症候群で死亡した。当事者の主張患者側(原告)の主張診察の際に実施された血液検査において異常な結果が出たり、肝臓疾患ないしは、肝臓がんの症状の訴え(本件では胸のしこり)があったときには、それを疑い、腹部エコー検査や腫瘍マーカー(AFP検査)などの精密検査を実施すべき注意義務があり、また、エコー検査の設備がない場合には、同設備を有するほかの医療機関を紹介すべき義務がある。担当医師がこれらの義務を怠ったために死亡し、延命利益を侵害され、肝臓がんの適切な治療を受けて治癒する機会と可能性を失った。病院側(被告)の主張当時、肝臓疾患や肝臓がんを疑わせるような症状も主訴もなく、血液検査でも異常が認められなかったから、AFP検査をしたり、エコー検査の設備のあるほかの医療機関を紹介しなかった。患者が気にしていた胸のしこりは、劔状突起のことであった。また、最後の血液検査の結果に基づき、「要指導」と判断してAFP検査を含む精密検査を予定したが、患者が来院しなかった。仮に原告主張の各注意義務違反であったとしても、救命は不可能で、本件と同じ経過を辿ったはずであるから、注意義務違反と死亡という結果との間には因果関係はない。裁判所の判断通院開始から1994年3月10日までの間に、血液検査で一部基準値の範囲外のものもあるが、肝臓疾患ないし肝臓がんを疑わせるような兆候および訴えがあったとは認められない。しかし、1994年3月14日の時点では、肝臓疾患ないし肝臓がんを疑い、ただちに触診などを行い、精密検査を行うか転医させるなどの措置を採るべきであった。精密検査の約束をしたとのことだが、検査の日付を指定しなかったこと自体不自然であるし、次回検査をするといえば次の日に来院するはずであるのに、それ以降の受診はなかった。ただし、これらの措置を怠った注意義務違反はあるものの、死亡および延命利益の侵害との間には因果関係は認められない。患者は1981年以来5年間にわたって、担当医師を主治医として信頼し、通院を続けていたにもかかわらず、適時適切な診療を受ける機会を奪われたことによって精神的苦痛を受けた。1,500万円の請求に対し、150万円の支払命令考察外来診療において、長期通院加療を必要とする疾患は数多くあります。たとえば高血圧症の患者さんには、血圧測定、脈の性状のチェック、聴診などが行われ、その他、血液検査、胸部X線撮影、心電図、心エコーなどの検査を適宜施行し、その患者さんに適した内服薬が処方されることになります。しかし、患者さんの方から腹部症状の訴えがない限り、あえて定期的に腹部を触診したり、胃カメラなど消化器系の検査を実施したりすることはないように思います。本件では、狭心症にて外来通院中の患者さんが、血液検査において軽度の肝機能異常を呈した場合、どの時点で肝臓の精査を行うべきであったかという点が問題となりました。裁判所はこの点について、健康診断による「要指導」の際にはただちに精査を促す必要があったものの、検査を実施しなかったことに対しては死亡との因果関係はないと判断しました。多忙な外来診療では、とかく観察中の主な疾患にのみ意識が集中しがちであり、それ以外のことは患者任せであることが多いと思います。一方、患者の側は定期的な通院により、全身すべてを診察され、異常をチェックされているから心配ないという思いが常にあるのではないでしょうか。本件でも裁判所はこの点に着目し、長年通院していたにもかかわらず、命に関わる病気を適切に診断してもらえなかった精神的苦痛に対して、期待権侵害(慰藉料)を認めました。しかし実際のところ、外来通院の患者さんにそこまで要求されるとしたら、満足のいく外来診療をこなすことは相当難しくなるのではないでしょうか。本件以降の判例でも、同じく期待権侵害に対する慰藉料の支払いを命じた判決が散見されますが、一方で過失はあっても死亡との因果関係がない例において慰謝料を認めないという判決も出ており、司法の判断もケースバイケースといえます。別の見方をすると、本件では患者さんから「胸のしこり」という肝臓病を疑う申告があったにもかかわらず、内科診察の基本である「腹部の触診」を行わなかったことが問題視されたように思います。もしその時に丁寧に患者さんを診察し(おそらく腹部の腫瘤が確認されたはずです)、すぐさま検査を行って総合病院に紹介状を作成するところまでたどり着いていたのなら、「がんをみつけてくれた良い先生」となっていたかもしれません。今更ながら、患者さんの訴えに耳を傾けるという姿勢が、大切であることを実感しました。消化器

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アディポネクチンは肺機能低下の予測因子:高畠研究

 血漿アディポネクチンは一般集団においてFEV1低下の予測因子となることが山形大学医学部内科学第一講座の佐藤 建人氏らが報告した。International Journal of Medical Sciences誌2014年5月21日号の掲載報告。 アディポネクチンは抗炎症、心保護のサイトカインである。しかしながら、いくつかの研究では、血漿アディポネクチンレベルはCOPD患者における肺機能と逆相関の関係にあることが示されており、これはアディポネクチンが炎症促進や肺組織の破壊を示唆していると考えられる。しかしながら、現在のところアディポネクチンが肺機能低下の有用な予測因子であるかどうかは定かではない。 本研究の目的は、毎年地域行われている健康診断に参加した日本人を対象にアディポネクチンと肺機能の関係を調べることである。対象は2004年~2006年の間に山形県東置賜郡高畠町で行われた地域の健康診断に参加した40歳以上の3,253人である。スパイロメトリーにより肺機能を、血液検査により血漿アディポネクチンの値を測定した。2011年にスパイロメトリーを再び実施し、縦断的に分析が可能であったのは872人(男性405人、女性467人)であった。 主な結果は以下のとおり。 血漿アディポネクチンの値は・男性、女性とも年齢、BMI、ALT、TG、HDL-cと有意な関連が認められた。・男性においてのみ、長期的な喫煙曝露の指標であるブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)と関連が認められた。・男性、女性とも1秒率(FEV1/FVC)と負の相関関係が認められた。・男性、女性ともFEV1の経年変化とアディポネクチンレベルとの間に負の相関関係が認められた。 上記の関連性は重回帰分析後においても、年齢、BMI、ブリンクマン指数、ALT、TG、HDL-cのような他の交絡因子とは独立していることが明らかになった。

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慢性血栓塞栓性肺高血圧症の治療に明るい兆しか

 バイエル薬品株式会社は2014年6月10日(火)、都内にて「バイエル・PHプレスセミナー」を開催した。セミナーでは久留米大学医学部内科学講座心臓・血管内科部門の福本 義弘氏、NPO法人「PAHの会」の村上 紀子氏が講演した。 久留米大学医学部の福本 義弘氏は、CTEPHの疾患と治療について紹介した。CTEPH(慢性血栓塞栓性肺高血圧症)は、肺高血圧症の一種で、肺血管の血栓により徐々に肺動脈圧が上昇し、右心不全を来す疾患である。エコノミー症候群などの急性肺血栓塞栓症から数%の割合で慢性化に移行する。本邦における発症率は年間0.5~0.8人/100万人、男性に比べ女性に、年齢は50~70歳代に多い。まれな疾患ではあるものの、診断率の向上により患者数は急激に増加している。 CTEPHの予後は不良で、東北大学のデータでは、平均年齢55歳の患者が60歳となる5年経過後も生存する例は約半数だという。患者の自覚症状は労作時の息切れであるが、診断には右心カテーテルが必要であり、健康診断でのスクリーニングは困難。よって、発見が遅れることも少なくなかった。 治療は、不要な血栓を摘出する血栓内膜摘除術(PEA)が行われ良好な成績を収めているものの、手術非適応例が40%ある。一方、近年は右心カテーテルを通し塞栓部位をバルーンで拡張するカテーテル治療も良好な成績を収めている。しかしながら、末梢血管病変、血管の破綻による吐血などの問題点もあり、手術、カテーテル治療に加え、薬物療法も必要であった。 そのようななか、2014年4月、バイエル薬品からアデムパス錠(一般名:リオシグアト)が発売された。可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬である本剤は、NO(一酸化窒素)経路に介入し、血管拡張作用を発揮する。国際的な第III相無作為化二重盲検比較試験であるCHEST-1および2の中間解析では、6分間歩行距離の有意な改善をはじめ、心肺血行動態、疾患関連バイオマーカーなどの改善がみられた。 次に、NPO法人PAHの会の村上紀子氏が、患者会の立場から初めての承認薬への期待について述べた。CTEPHは診断できる疾患になったこと、さらに、今まで在宅酸素主体だった治療に、同薬剤が加わったことは患者・家族にとって非常に心強い、としたうえで「CTEPHは早期発見早期治療が重要であり、この機会に疾患について広く知ってほしい」と結んだ。

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肝炎「検査無料」「高い治癒率」「医療費助成」認知度高めて

 2014年4月23日(水)、ヤンセンファーマ株式会社主催の「肝炎の検査・治療、医療現場の現状に関するメディアセミナー」が開催された。まず、同社政府機関・医療政策 日本担当のブルース J. エルズワース氏より、全国1万5,000人を対象とした肝炎ウイルスについての全国意識調査の結果が発表された。本調査は、日本における肝炎ウイルス検査率の向上、抗ウイルス療法の普及、医療費助成の認知を促進することを目的として行われたものであり、その結果、日本におけるウイルス検査率の低さ、早期治療による完治率や治療費助成についての認知度の低さなどが浮き彫りになった。 その後、武蔵野赤十字病院 副院長の泉 並木氏、広島大学の田中 純子氏よりC型肝炎の現状や治療について語られ、「最近の治療は、短期間で高い治癒率が見込め、医療費助成も受けられる。積極的に肝炎ウイルス検査を受け、陽性であればすぐに治療を始めてほしい」と訴えた。日本の肝がん死亡者を減らしたい 日本には、B型およびC型肝炎ウイルスの患者・感染者は370万人いると推定されている(B型肝炎:約110~140万人/C型肝炎:約190~230万人)。また、日本における肝がん死亡者数は、2010年時点で約3.3万人であり、その約80%はC型肝炎ウイルス、約10%はB型肝炎ウイルスの持続感染に起因しているという。C型肝炎の感染予防対策として、2002年から全国の地方自治体で無料検診が行われ、一定の成果が上がっているものの、自身の感染に気づいていないと考えられる感染者は約80万人と推定されている。B型肝炎の対策としては、1986年からB型肝炎キャリアの妊婦から生まれる新生児へのワクチン接種が開始され、キャリア率が0.04%にまで低下したものの、依然として課題が残されている。肝炎の検査率、治療率に影響を与える要素とは このような状況のもと、日本における疾患や検査、治療などの認識の実態を把握し、肝炎ウイルス検査の受検率や肝炎ウイルスの治療率に影響を与える要素を探ることを目的として、同社は2013年11月15日から20日まで、一般国民1万5,003人を対象としたインターネット調査を行った。対象者の構成は、日本全国および都道府県レベルにおいて性別、年齢(20代、30代、40代、50代、60歳以上)の項目で代表性が保たれるように設計された。検査を受けたことがない53%、受けたが自覚なし23% 調査した1万5,003人のうち、53%が肝炎ウイルス検査を受けたことがないと回答した。検査を受けていない主な理由は、「とくに理由なし」、「自分は感染していないと思うから」、「定期健康診断や人間ドックの検査項目に入っていないから」とのことであった。また、23%は外科手術や出産などの際に肝炎ウイルス検査を受けたと考えられるが、受検の自覚がなく、関心の低さが浮き彫りになった。肝炎ウイルス検査を受けていない人に聞いた、受けてみたいと思うきっかけとしては、「無料検査の知らせが送られてきたら」、「定期健康診断や人間ドックのついでに検査できれば」といった意見が多かった。肝炎の治療費、治療期間、治癒率に対する不安がある 肝炎の治療を積極的に受けるようになるきっかけとしては、「治療費の個人負担額が安い」、「仕事や家事を休まずに治療ができる」、「治療により完治する確率が高い」といった項目を選んだ人が多かった。また、肝炎の治療が格段に進歩し、完治する確率が高くなっていることについて、76%もの人が認識していなかった。さらに、肝炎治療費の公費補助制度の存在を認知していない人は90%にのぼった。検査が無料であることを知らない 行政の取り組みとして、肝炎ウイルス検査を無料実施していることに関する認知度はわずか13%であった。しかし、無料検査の周知や啓発活動、肝炎ウイルスに関する国民の正しい理解の促進に向けた取り組み、感染が疑われる人に対するフォローアップについては、80%以上がとても重要であると回答した。まとめ 日本の肝がん死亡者を減らすには、まず、肝炎ウイルス検査の受検率を向上させなければならない。とはいえ、「自分には関係ない」と考える人が多いなか、関心を高めるのは難しい。やはり、定期健診の際に検査が受けられるようになると、状況は大きく変わるのではないだろうか。もちろん、検査の結果、感染が判明した場合は、自覚症状がなくても必ず医療機関を受診することが重要である。現在の肝炎治療は大きく進歩し、短期間で高い治癒率が見込めるうえ、公費補助制度もある。「高い治療費は払えない」、「副作用も心配だし、長い間治療しても完治しないのでは?」といった懸念を持ち、治療をためらっている人がいたら、ぜひ、助言していただきたい。関連記事 2013年11月にC型肝炎治療ガイドラインが大幅改訂―新薬登場で

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心臓カテーテル検査によって脳血管障害を来し死亡したケース

循環器最終判決判例タイムズ 824号183-197頁概要胸痛の精査目的で心臓カテーテル検査が行われた61歳男性。検査中に250を超える血圧上昇、意識障害がみられたため、ニトログリセリン、ニフェジピン(商品名:アダラート)などを投与しながら検査を続行した。検査後も意識障害が継続したが頭部CTでは出血なし。脳梗塞を念頭においた治療を行ったが、検査翌日に痙攣重積となり、気管切開、人工呼吸器管理となった。検査後9日目でようやく意識清明となり、検査後2週間で一般病室へ転室したが、その直後に消化管出血を合併。輸血をはじめとするさまざまな処置が講じられたものの、やがて播種性血管内凝固症候群、多臓器不全を併発し、検査から19日後に死亡した。詳細な経過患者情報高血圧、肥満、長期の飲酒歴、喫煙歴、高脂血症、軽度腎障害を指摘されていた61歳男性経過1983年1月12日胸がモヤモヤし少し苦しい感じが出現。1月18日胸が重苦しく圧迫感あり、近医を受診して狭心症と診断され、ニトログリセリンを処方された。1月26日某大学病院を受診、胸痛の訴えがあり狭心症が疑われた。初診時血圧200/92、心電図は正常。2月2日血圧160/105、心電図では左室肥大。3月初診から1ヵ月以上経過しても胸痛が治まらないので心臓カテーテル検査を勧めたが、患者の都合により延期された。9月胸痛の訴えあり。10月同様に胸痛の訴えあり。1983年5月25日左手親指の痺れ、麻痺が出現、運動は正常で感覚のみの麻痺。7月8日脳梗塞を疑って頭部CTスキャン施行、中等度の脳萎縮があるものの、明らかな異常なし。1985年9月血圧190/100、心電図上左軸偏位あり。1986年7月健康診断の結果、肥満(肥満度26%)、心電図上の左軸偏位、心肥大、動脈硬化症などを指摘され、「要精査」と判断された。冠状動脈の狭窄を疑う所見がみられたので、担当医師は心臓カテーテル検査を勧めた。9月17日心臓カテーテル検査目的で某大学病院に入院。9月18日12:30検査前投薬としてヒドロキシジン(同:アタラックス-P)50mg経口投与。検査開始前の血圧158/90、脈拍71。13:30血圧154/96。右肘よりカテーテルを挿入。13:48右心系カテーテル検査開始(肺動脈楔入圧、右肺動脈圧)。13:51心拍出量測定。13:57右心系カテーテル検査終了。この間とくに訴えなく異常なし。14:07左心系カテーテル検査開始、血圧169/9114:13左心室圧測定後間もなく血圧が200以上に上昇。14:21血圧232/117、胸の苦しさ、顔色口唇色が不良となる。ニトログリセリン1錠舌下。14:27血圧181/111と低下したので検査を再開。14:28左冠状動脈造影施行(結果は左冠状動脈に狭窄なし)、血圧は150-170で推移。左冠状動脈造影直後に約5.1秒間の心停止。咳をさせたところ脈は戻ったが、徐脈(45)、傾眠傾向がみられたので硫酸アトロピン0.5mg静注。血圧171/10214:36左心室撮影。血圧17514:40左心室のカテーテルを再び大動脈まで戻したところ、再度血圧上昇。14:45血圧253/130、アダラート®10mg舌下。14:50血圧234/12314:56血圧220程度まで低下したので、右冠状動脈造影再開。14:59血圧183/105。右冠状動脈造影終了(25~50%の狭窄病変あり)、直後に約1.8秒の心停止出現。15:01検査終了後の血管修復中に血圧230/117、ニトログリセリン4錠舌下。15:04カテーテル抜去、血圧224/11715:30検査室退室。血圧150/100、脈拍77、呼びかけに対し返答はするものの、すぐに眠り込む状態。15:40病室に帰室、血圧144/100、うとうとしていて声かけにも今ひとつ返答が得られない傾眠状態が継続。19:00呼名反応やうなずきはあるがすぐに閉眼してしまう状態。検査から3時間半後になってはじめて脳圧亢進による意識障害の可能性を考慮し、脳圧降下薬、ステロイド薬の投与開始。9月19日08:00左上肢屈曲位、傾眠傾向が継続したため頭部CT施行、脳出血は否定された。ところが検査後から意識レベルの低下(呼名反応消失)、左上肢の筋緊張が強くなり、左への共同偏視、左バビンスキー反射陽性がみられた。15:00神経内科医が往診し、脳塞栓がもっとも疑われるとのコメントあり。9月20日全身性の痙攣発作が頻発、意識レベルは昏睡状態となる。気管切開を施行し、人工呼吸器管理。痙攣重積状態に対しチオペンタールナトリウム(同:ラボナール)の持続静注開始。9月24日痙攣発作は消失し、意識レベルやや改善。9月27日ほぼ意識清明な状態にまで回復したが、腎機能の悪化傾向あり。9月30日人工呼吸器より離脱。10月3日09:30状態が改善したためICUから一般病室へ転室となる。13:00顔面紅潮、意識レベルの低下、大量の消化管出血が出現。10月4日上部消化管内視鏡検査施行、明らかな出血源は指摘できず、散在性出血がみられたためAGML(急性胃粘膜病変)と診断された。ところが、その後肝機能、腎機能の悪化、慢性膵炎の急性増悪、腎不全などとともに、血小板数の低下、フィブリノーゲンの著明な減少などからDICと診断。10月8日15:53全身状態の急激な悪化により死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.心臓カテーテル検査の適応検査前に狭心症に罹患していたとしても軽度なものであり、心臓カテーテル検査を行う医学的必要性はなかった。また、検査の3年前から脳梗塞の疑いがもたれていたにもかかわらず、脳梗塞の症状がある患者にとってはきわめて危険な心臓カテーテル検査を行った2.異常高血圧にもかかわらず検査を中止しなかった過失250を越える異常な血圧の上昇を来した時点で、事故の発生を未然に防止するために検査を中止すべき注意義務があったのに、検査を強行した3.神経内科の診察を早期に手配しなかった過失検査終了時点で意識障害があり、脳塞栓が疑われる状況であったのに、神経内科専門医の診察を依頼したのは検査後24時間も経過してからであり、適切な処置が遅れた4.死因医学的に必要のない検査を行ったうえに、検査中の脳梗塞発症に気付かず検査を続行し、検査後もただちに専門医の診察を依頼しなかったことが原因で、最終的には胃出血によるDICおよび多臓器不全により死亡に至ったものである病院側(被告)の主張1.心臓カテーテル検査の適応患者には胸痛のほか、高血圧、肥満、長期の飲酒歴、喫煙歴、高脂血症、軽度腎障害などの冠状動脈狭窄を疑わせる所見が揃っており、冠状動脈を精査し、手術なり薬剤投与なりを開始することが治療上不可欠であった。脳梗塞については、検査の3年前に施行した頭部CTスキャンで異常はなく、自覚症状としてみられた左手親指、人差し指の感覚障害は末梢神経または神経根障害と考えられ、改めて脳梗塞を疑うべき症状は認められなかった2.異常高血圧にもかかわらず検査を中止しなかった過失心臓カテーテル検査中に最高血圧が230-250になるのは臨床上起こり得ることであり、血圧上昇時には必要に応じて降圧薬を投与し、経過を観察しながら検査を継続するものである。そして、200以上の血圧上昇がもつ意味は患者によって個体差があり、普段の血圧が170-190くらいであった本件の場合には検査時のストレスによって血圧が200以上になっても特別に異常な反応ではない3.神経内科の診察を早期に手配しなかった過失検査後に意識レベルが低下し、四肢硬直がおきたため脳梗塞、脳幹部循環障害などの可能性を考え、治療を開始するとともに神経内科などに相談しながら、最良の治療を行った4.死因死因は脳病変に基づくものではなく、意識障害が回復した後の消化管出血によるDIC、および多臓器不全に伴った心不全である。この消化管出血にはステロイド薬の使用、ストレスなどが関与したものであるが、抗潰瘍薬の投与などできるだけ予防策は講じていたのであるから、やむを得ないものであった裁判所の判断1. 心臓カテーテル検査の適応患者には検査前から高血圧、肥満、長期の喫煙歴、軽度の腎障害など、虚血性心疾患の危険因子のうちいくつかが明らかに存在し、さらに心電図で左室肥大および左軸偏位が認められ、胸痛という自覚症状もあったので、狭心症を疑って心臓カテーテル検査を行ったことに誤りはない。さらに急性期の脳梗塞患者、発症直後の脳卒中患者には冠状動脈造影を行ってはならないとされているが、本件の場合には検査前に急性期の脳梗塞が疑われるような症状はないので、心臓カテーテル検査を差し控えなければならないとはいえない。2. 異常高血圧にもかかわらず検査を中止しなかった過失250を越える異常な血圧の上昇がみられた時点で、検査のストレスによる血圧上昇だけでは説明できない急激な血圧の上昇であることに気付き、脳出血を主とする脳血管障害発生の可能性を考え、検査を中止するべきであった。さらに検査で用いた76%ウログラフィン®(滲透圧の高い造影剤)のため、脳梗塞によって生じた脳浮腫をさらに増強させる結果になった。3. 神経内科の診察を早期に手配しなかった過失検査終了後は、ただちに専門の神経内科医に相談するなどして合併症の治療を開始するべきであったのに、担当医らが脳血管障害の可能性に気付いたのは、検査終了から3時間半後であり、その間適切な治療を開始するのが遅れた。4. 死因脳梗塞が発症したにもかかわらず、検査を続行したことによって脳浮腫が助長され、意識障害が悪化した。さらに検査終了後もただちに適切な処置が行われなかったことが、胃からの大量出血を惹起し死亡にまで至らしめた大きな原因の一つになっている。原告側合計8,276万円の請求に対し4,528万円の判決考察心臓カテーテル検査に伴う死亡率は、1970年代までは多くの施設で1%を越えていましたが、技術の進歩とヘパリン使用の普及により、現在は0.1~0.3%の低水準に落ち着いています。また、心臓カテーテル検査に伴う脳血管障害の合併についても、0.1~0.2%の低水準であり、「組織だった抗凝固処置」によって大部分の脳血管系の事故が防止できるという考え方が主流になっています。カテーテル検査中に脳塞栓を生じる機序としては、(1)カテーテルによって動脈硬化を起こした血管に形成された壁在血栓が剥離されて飛ばされ、脳の血管に流れた結果脳梗塞を生じる(2)カテーテルの周囲に形成された血栓またはカテーテルのなかに形成された血栓が飛ばされ、脳の血管に移行して脳梗塞を生じる(3)粥状硬化、動脈硬化を起こした血管の粥腫(アテローム)がカテーテルによって剥離されて飛ばされ、脳の血管に流された結果脳梗塞を生じるの3つが想定されています。これに対する処置としては、(1)十分なヘパリン投与を行った患者においても、カテーテルのフラッシュは十分注意しかつ的確に行うこと(2)ガイドワイヤーは使用する前に十分に拭い、血液を付着させないこと(3)ガイドワイヤーを入れたままのカテーテル操作は、1回あたり2分以内にとどめること(2分経過後はガイドワイヤーを必ず抜き出して拭い、再度ガイドワイヤーを用いる時はカテーテルをフラッシュする)(4)リスクの高い患者では不必要にカテーテルやガイドワイヤーを頸動脈や椎骨脳底動脈に進めないなどが教科書的には重要とされていますが、現在心臓カテーテル検査を担当されている先生方にとってはもはや常識的なことではないかと思います。つまり本件では、心臓カテーテル検査中に発症した脳血管障害というまれな合併症に対し、どのように対処するべきであったのか、という点が最大のポイントでした。裁判所の判断では、心臓カテーテル検査中に「血圧が250以上に上昇した時点ですぐに検査を中止せよ」ということでしたが、循環器内科医にとってすぐさまこのような判断をすることは実際的ではないと思います。ここで問題となるのが、(1)コントロールはこれでよかったか(2)障害の可能性を念頭に置いていたかという2点にまとめられると思います。この当時の状況を推測すると、大学病院の循環器内科に入院して治療が行われていましたので、1日に数件の心臓カテーテル検査が予定され、全例を何とか(無事かつ迅速に)こなすことに主眼がおかれていたと思います。そして、検査中にみられた高血圧に対しては、とりあえずニトログリセリン、アダラート®などを適宜使用するのがいわば常識であり、通常のケースであれば何とか検査を終了することができたと思います。にもかかわらず、本件では降圧薬使用後も250を越える高血圧が持続していました。この次の判断として、血圧は高いながらも一見神経症状はなく大丈夫そうなので検査を続行してしまうか、それとも(少々面倒ではありますが)ニトログリセリン(同:ミリスロール)などの降圧薬を持続静注することによって血圧を厳重にコントロールするか、ということになると思います。結果的には前者を選択したために、裁判所からは「異常高血圧を認めた時点で検査中止するのが正しい」と判断されました。日常の心臓カテーテル検査では、時に200を超える血圧上昇をみることがありますが、ほとんどのケースでは無事に検査を終了できると思います。さらに、心臓カテーテル検査中に脳梗塞へ至るのは1,000例ないし500例に1例という頻度ですから、当時の状況からして、急いで微量注入器を準備して降圧薬の持続静注をするとか、血圧が安定するまでしばらく様子をみるなどといった判断はなかなか付きにくいのではないかと思います。しかし、本件のように心臓カテーテル検査中に脳血管障害が発症しますと、あとからどのような抗弁をしようとも、「異常高血圧に対して適切な処置をせず検査を強行するのはけしからん」とされてしまいますので、たとえ時間がかかって面倒に思っても、厳重な血圧管理をしなければあとで後悔することになると思います。次に問題となるのが、心臓カテーテル検査中に生じた「少々ボーっとしている」という軽度の意識障害をどのくらい重要視できたかという点です。後方視的にみれば、誰がみてもこの時の意識障害が脳梗塞に関連したものであったことがわかりますが、当時の担当医は「検査前投薬の影響が残っていて少しボーっとしているのであろう」と考えたため、脳梗塞発症を認識したのは検査から3時間半も経過したあとでした。前述したように、心臓カテーテル検査で脳梗塞を合併するのは1,000例ないし500例に1例という頻度ですから、ある意味では滅多に遭遇することのないリスクともいえます。しかし、日常的にこなしている(安全と思いがちな)検査であっても、どこにジョーカーが潜んでいるのか予測はまったくつかないため、本件のような事例があることを常に認識することによって早めの処置が可能になると思います。本件でも脳梗塞発症の可能性をいち早く念頭においていれば、たとえ最悪の結果に至ってしまっても医事紛争にまでは発展しなかった可能性が十分に考えられると思います。判決文全体を通読してみて、今回この事例を担当された先生方は真摯に医療の取り組まれているという印象が強く、けっして怠慢であるとか、レベルが低いなどという次元の問題ではありません。それだけに、このような医事紛争へ発展してしまうのは大変残念なことですので、少しでも侵襲を伴う医療行為には「最悪の事態」を想定しながら臨むべきではないかと思います。循環器

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喫煙に対する感受性がバイオマーカーでわかる可能性:日本人男性における検討

 血清鉄(sFe)の値は喫煙に対する感受性のバイオマーカーとなりうることが山形大学の柴田 陽光氏らにより報告された。PLoS One誌オンライン版2013年9月9日号の掲載報告。 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は喫煙習慣のある高齢者では一般的な疾患である。しかし、タバコ煙の曝露期間に応じて呼吸機能が低下する、喫煙に対する感受性の高い人々がいる一方で、呼吸機能が低下しない高齢者もいる。しかしながら、これまで、こうした喫煙に対して感受性のない人々に関する研究はあまりなかった。 本研究では、喫煙しているにもかかわらず、肺の健康状態が維持されている人々を識別するバイオマーカーを同定することを目的とした。 2004年~2006年に山形県高畠町で定期健康診断を受けた3,257人を対象に、血液のサンプリングとスパイロメトリーを実施した。このうち、(1)年齢が70歳以上(2)ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上(3)喫煙歴が30年以上、の3つに該当する117人の喫煙者を対象とした。喫煙感受性なしの定義はFEV1(1秒量)/FVC(努力性肺活量)≧0.7かつFEV1%predicted(1秒量対予測値)≧80とした。 主な結果は以下のとおり。・喫煙感受性のないグループは感受性のあるグループに比べ、ベースラインの血清鉄(sFe)の値が高かった。・男性では、血清鉄(sFe)の値が低いとFEV1/FVCも低かった。・男性では、呼吸機能の測定値と血清鉄(sFe)の値の間に明らかな関連が認められた。・多重線形回帰分析においても、他の臨床的な因子とは独立して、血清鉄(sFe)が呼吸機能の値の予測因子となることが明らかとなった。・血清鉄の値はFEV1の低下に対する予測因子にもなっていた。

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