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日本人健診データからみる、hsCRPと糖尿病発症の関係

糖尿病発症と高感度C-反応性タンパク質(hsCRP)との関係を明らかにする目的で、日本人男性を対象とした5年間の前向きコホート研究が行われた。試験参加者は2005年~2010年の間に毎年健康診断を受けた鉄鋼工場勤務の19~75歳の日本人男性7,392名。本研究のエンドポイントである新規糖尿病発症は、HbA1c値が6.5%以上、または、抗糖尿病薬服用として定義した。年齢、ベースライン時のBMI、ベースライン以降のBMI増加、血液生化学検査の値、業務スケジュールや業務上のストレス、といった、さまざまな因子を調整し、ロジスティック回帰分析を用いて調べた。主な結果は以下のとおり。 ・本研究における糖尿病発症率は13.9/1000人・年であった。・多変量解析の結果、糖尿病発症と、ベースライン時点におけるhsCRP高値、ベースライン以降のhsCRP上昇との間に有意な相関がみられた。オッズ比は2.9[±1幾何標準偏差]・ベースライン時点におけるhsCRP高値とのオッズ比は1.18(95%信頼区間[CI]:1.03~1.34、P=0.018]、およびベースライン以降のhsCRP上昇とのオッズ比は1.21(95%CI:1.03~1.41、P=0.018)であった。・hsCRPは、BMI、業務スケジュールや業務上のストレスといったさまざまな交絡因子と同様、日本人男性における糖尿病発症の独立した予測因子であることが示された。(ケアネット 佐藤 寿美)

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太っていると高血圧になりやすいのか?-茨城県健康研究より-

40歳以上の日本人においてBMIが25kg/㎡の人は、19kg/㎡の人に比べ、高血圧発症のリスクが1.29~1.47倍高くなることが茨城県健康研究(Ibaraki Prefectural Health Study:IPHS)の結果より明らかにされた。筑波大学大学院人間総合科学研究科の辻本氏らは、1993年に茨城県の健康診断を受診した住民のうち、高血圧でなかった68,205名を2006年まで追跡し、ベースライン時のBMIと高血圧症の発症を検証した。追跡期間中の体重変化の影響を除外するために、時間依存性共変量Cox比例ハザードモデルを用いた。高血圧の発症は、140/90mmHg以上 and/or 降圧薬の服用と定義された。主な結果は下記のとおり。1) 平均観察期間3.9年において、30,982名(45.2%)が高血圧症を発症した。2) BMIが25kg/㎡の人の高血圧発症リスク(対照:BMI<19kg/㎡の人)   40-59歳男性:1.42倍(95%信頼区間:1.17-1.73)   60-79歳男性:1.34倍(95%信頼区間:1.19-1.51)   40-59歳女性:1.47倍(95%信頼区間:1.33-1.62)   60-79歳女性:1.29倍(95%信頼区間:1.18-1.41)

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「従業員健康管理クラウドサービス」産業医向けに提供開始

株式会社日立ソリューションズは24日、産業医や保健師の業務を効率化する「従業員健康管理クラウドサービス」を11月1日より販売を開始し、初期導入カスタマイズを経て、2012年4月からクラウドによるサービスの提供を開始すると発表した。同サービスは、産業医が必要とする各種データベースや帳票情報を一元化することで、紙や個別帳票で行われてきた煩雑な管理業務の負担を軽減する。また、クラウドを利用することで、人事情報と健康診断結果や面談日程・フォローなどの履歴情報(健康管理情報)を分離して管理することにより、情報漏えいのリスクを大幅に低減するとのこと。労働安全衛生法に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業所においては、産業医を選任することが義務付けられている。産業医や保健師は、健康診断、面談指導、労働衛生教育および職場の定期巡視など、職場環境の改善や労働者の健康維持管理に従事する役割を担っているが、現状では人事情報と健康管理情報の照合作業や紙帳票類の出力・整理などにより、多くの時間を煩雑な管理業務に割かれている。同社は、対象者の抽出から面談スケジュール設定・通知、帳票出力まで産業医や保健師が必要とする基本機能を備えた業務システムを、同社のクラウドサービス「SecureOnline」に構築し、提供する。産業医の管理業務は各企業により様々な形態があるが、同システムは基本機能を予め用意し、柔軟なカスタマイズに対応できる仕掛けとなっているため、産業医の業務に合わせた形で容易に提供が可能。また、人事情報を自社内で保有し、個人を特定できない健康管理情報(機微情報)をクラウド環境に分離して保有する同社サービス「匿名バンク」(※)を活用するため、個人情報漏えいのリスクを大幅に低減する。 ※「匿名バンク」とは、血圧や体重など個人のセンシティブ情報(機微情報)と、氏名や住所などの個人情報を分離して管理するクラウドサービス。詳細はプレスリリースへhttp://www.hitachi-solutions.co.jp/company/press/news/2011/1024.html

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教授 富田剛司 先生「全身の疾患が眼に現れることは明確 眼を診るのは診断の第一歩である」

1955年2月4日生まれ。80年岐阜大学医学部卒業。専門分野は眼科で主に緑内障。86年緑内障学研究のため米国留学。92年客員研究員としてフィンランド留学。93年岐阜大学医学部眼科講師。99年東京大学医学部眼科助教授。07年東邦大学医療センター大橋病院眼科診療部教授就任。日本緑内障学会理事、データ解析委員会委員、ガイドライン作成委員会委員。眼科医の魅力眼科医というのは自分で所見を取って、そのまま自分で治療ができます。外科疾患ですと最初は内科で診断を受けても、腫瘍が発見された場合、薬物治療以外は外科医の担当となります。ですが、眼科は診断から治療まで一貫して担当することができるのです。眼科というと全身を診る医師のイメージから離れているので魅力を感じないという医学生もいますが、実は私もそう考えていました。眼底にはいろいろな変化が現れてきますので、それを診て今までわからなかった身体の状態、もしくは病気が発見されることが多々あります。眼底の変化から高血圧や糖尿病などが発見されることも多いのです。これらの病気を眼科医に指摘されて、あらためて内科を受診することは少なくありません。循環器内科の先生や生活習慣病などを専門にしている先生からは「眼科医が常駐していない病院は不安だ」という意見を聞いたこともあるほど、内科医の先生方からは頼りにされていると自負しています。医師にとって眼を診るのは診断の第一歩であり大切な所見過程の一つです。しかし、私見ではこのような診断方法が多少なりとも軽視されているのではないかと危惧していますし、眼の所見を取らない医師がいることについては嘆かわしいことと思っています。人は眼をつぶると80%の情報量がさえぎられるそうです。哲学的にいうと、眼を診ているというのは存在すべてをみている。このような意味でも、眼科医は誇りを持ってよいと思います。眼の診断からわかることたとえば眼底出血の場合、網膜の浅い部分からの出血であれば、視神経の疾患を疑うか、高血圧症や動脈硬化症などの疾患も考えられます。また、深い層からの出血であれば糖尿病や貧血、白血病などが疑われます。このように全身疾患が眼に現れることは明確です。さらに、がんの転移が眼に現れてわかる場合もあります。「眼が見え難くなった」という症状を訴えて来診した患者さんの場合、明らかに眼が原発の腫瘍ではない腫瘍が認められました。これは身体のどこかに悪性腫瘍があるに違いない、となって内科系の検査をしたところ、がんが発見された例がありました。また、自覚症状はなく、健康診断ということで視野検査をしたところ異常がみつかりましたが、それは眼の異常でないことは明白で、結果、脳腫瘍が発見された例もありました。視野の欠損にはパターンがあって、眼病からなるものとそうでないものは明確にわかります。このようなケースがままあるので、眼科学会としては40歳を過ぎたら年に一度は眼の検診を受けてほしい旨を推奨しています。「眼は心の窓」といいますが、極端にいえば病態を知るための身体の窓でもあるのです。40歳以上は20人に1人が罹患する緑内障緑内障は眼圧の影響を強く受けて視神経が障害される疾患で、なかなか完治させることが難しい病気です。放置すれば、重篤な視覚障害をもたらします。ですから、早期に発見し眼圧を下げて軽度のうちに進行を止めることが重要です。近年40代以上の20人に1人は緑内障があるともいわれるほど身近な病気ですので、何らかの理由で眼科を受診した患者さんの中に緑内障を疑われる人は意外と多いのです。また、急性緑内障の場合は激烈な症状として、強い頭痛、嘔吐など内科的発作が現れます。これらの症状を訴えて救急に行った場合、たいていは脳出血などを疑ってCTやMRIの検査をします。その後症状が落ち着いたら、脳神経外科の受診を勧められるでしょう。しかし、まったく眼の診断がなされず、緑内障も疑われなかったために、治療が遅れて残念な結果になってしまった例も少なからずあります。どの科の専門であっても医師ならば必ず眼科の講義は受けているはずですが、眼の疾患がおざなりになっている現状を危惧せずにはいられません。緑内障診断の正確性を高めたい緑内障は眼球の内圧により、視神経が圧迫または障害されて、視野狭窄や視力が低下する病気です。検査は眼圧測定、視野検査、眼底検査が行われますが、日本人の場合、眼圧は正常なのに視神経が障害される「正常眼圧緑内障」が多いので、早期発見のためには視神経乳頭の状態をみる眼底検査が重要です。しかし、従来の眼底検査は平面写真で診断するため、視神経乳頭の凹み具合の判定は、眼科医の技量・経験によって判断が異なるという問題がありました。私が研究の主体としているのは、誤診が多いとされている緑内障の診断について、これをより正確にするための標準化――スタンダリゼーションを目指しています。そこで、客観的かつ的確に眼底を診断する手段として生まれたのが、眼底三次元画像解析装置です。これはまだ完成には至っていませんが、緑内障の診断が得意ではないような方、または緑内障との判断が難しい場合や自信がない場合、装置の結果をみることによって判断材料が増えると考えています。補助的な診断材料としては有効であると思います。もちろん、機械ですべて判断できればそれに越したことはありませんが、それはこれからの課題です。適切に診断し、適切に治療することが難しい病気であることは認識しておりますので、経験を積んだ指導医のもとで学ぶことが必要だと考えております。また、これは緑内障学会としてきちんとした指導システムを構築しなければいけないのではないかとも考えております。医学生の皆さんへ白内障の手術であれば自らの執刀が20件以上、助手であれば100件以上の実績が前提になりますが、ほとんどの人が後期研修医から5~6年で専門医になれます。眼科医は視覚が何らかの理由によって衰えた患者さんが、自分の診断、治療によって治癒していくのをつぶさに確認できる。私自身もそうでしたが、医師となって比較的早い時期に達成感を得られる可能性が高いと思います。研修を始めてから10年ほどで患者さんを満足させる十分な医療技術を身につけることができるのは、眼科医ならではの特徴です。さらに、マイクロサージェリーは実体顕微鏡(マイクロスコープ)を使うため老眼の影響を受けないので、現役でいられる時間が長いのです。医師にはなりたいけど手術には向いていないという人ならば、網膜の病気であってもレーザー治療などメスを持たない眼科の診療もあります。逆に、自分は手術が好きだという人であったら、それを主に選択することもできるのです。医学生の皆さんは、とかく近い未来しか考えていない面があり、20年後、30年後の自分のビジョンを持っている人は少ないようです。長い目でみた場合、眼科ほど息が長く医師としての活動が行える分野はないように思えます。また、家庭の事情があって出産などによる数年のブランクがあっても復帰しやすいのも眼科医です。当大学の眼科で行っている最新治療としては、網膜黄斑症などの疾患に対して、硝子体の手術を行うのですが、その後、眼の中に空気を入れて穴を塞ぎます。その場合、術後1週間はうつ伏せ状態でいなくてはなりませんでした。これは患者さんにとって大変な負担です。そこで、うつぶせ状態でなくてもよい状態の研究を始めています。また、学術活動にも力を入れており、国内学会での研究発表はもとより、海外での国際学会にも積極的に参加し、高い診療レベルを維持するよう努めています。質問と回答を公開中!

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教授 富田剛司 先生の答え

緑内障手術を受けた患者さんの細菌感染について日本緑内障学会からの災害時の注意を読みました。緑内障手術を受けた患者様では、衛生環境の悪化や抵抗力の低下によって細菌感染(濾過胞炎・眼内炎)を生じる危険があります。とありますが、術後どのくらいの期間までを指すのでしょうか?術後1年以上であれば危険がないのか、そもそも緑内障手術を受けた患者さんは常に細菌感染のリスクがあるのか?教えていただけると助かります。私の地域でも被災地からの避難者(疎開?)が増えてきました。整形外科(クリニック)をやっていますが、できることは全てやって差し上げようと他の領域についても勉強を始めた次第です。初歩的なことかとは思いますが宜しくお願いします。緑内障手術の中でも術部位に濾過胞が形成される線維柱帯切除手術後の、濾過胞関連感染症の発症頻度は、報告にもよりますが、1から3%とされており、感染のリスクは濾過胞が形成されている限り(これがあるために眼圧が下がるのですが)続きます。濾過胞の壁(結膜)が非常に薄くそこから房水が漏出しているような状況の場合、濾過胞が眼球下方に形成されている場合は、特に感染のリスクは高くなります。逆に、十分に壁の厚い(厚い結膜で覆われている)濾過胞の場合はリスクはほとんど無くなります。眼科医にすぐ診察を受けられないような状況下で緑内障術後の患者さんがいらした場合は、点眼中止が可能かどうかの判断は難しいと思いますので、念のため抗生物質の点眼薬を継続して使用していただく方がよいと思います。 眼底三次元画像解析装置について眼底三次元画像解析装置については3,4年前に記事を読んだ記憶があります。(確か富田先生の記事でした。)まだ完成に至ってないとのことですが、完成度としてはどの程度まできているのか教えてください。眼底三次元画像解析装置は、すでに検査技術料が保険収載されており、そういう意味では眼科診療に一般的に受け入れられています。完成に至っていないとの記事内容ですが、画像解析装置のみを用いて緑内障を100%自動診断するには至っていない、という意味で書きました。画像解析装置の使用目的として、健康診断などで眼科医がいないような状況下においても緑内障を早期に自動診断することが究極的な目標の一つに挙げられています。しかし、今のところ装置のみによる診断精度は80%から90%くらいであり、現時点では画像解析結果の最終判断は眼科専門医に委ねられるべきであると考えています。心身不安からくる疾患(眼科領域)について災害時などでは心身不安から急性緑内障発作をおこす方がいるとのことですが、他にも気をつけるべき疾患はありますでしょうか?眼科分野において、緑内障の急性発作以外に急激に発症し早急な治療を要する疾患としては、網膜剥離、網膜中心動脈あるいは静脈閉塞症、視神経炎(眼を動かすと眼の奥が痛いなどの症状を伴って、強い視力低下を自覚する)、ぶどう膜炎の発作(ベーチェット病など)等々がありますが、自覚症状としては通常、眼の症状に限定されるので、少なくとも眼疾患であることは比較的分かりやすいと思います。災害時の心身不安ということを考えた場合、逆に目に関する不定愁訴のようなものが増える可能性もあると思います。緊急性を見分ける検査としては、やはり視力検査が重要と思いますので、どこかに視力表があるとよいと思います。この場合、メガネを掛けた状態で矯正視力を評価するのが重要な点です。急性緑内障先生の記事大変勉強になりました。大橋病院さんで、救急に運ばれてきて、結果、急性緑内障だったケースは年間何例くらいあるのでしょうか?私は、強い頭痛、吐き気を訴えてきた患者さんは、まず近くの脳神経外科に直ぐ行かせていました。今のところ、結果急性緑内障と診断されたことはないのですが、先生の記事を拝見する限りでは、眼科もある病院を紹介した方がよいのでは?と考え直しているところです。緑内障の発作であると最初はわからなくて体調不良として救急を受診される方はさすがに少なくて、ほとんどがすでに眼科医を受診された上で緊急紹介されるか、救急で受診されても眼の症状ということで最初から眼科に廻されてくることが多いです。大橋病院で救急に運ばれてきて、最初はわからなくて脳外科的検査も受けた後、結果、急性緑内障だったケースは私の記憶では、この5年間でお一人くらいだったと思います。なので、ほとんどの場合は問題とはならないと思いますが、眼科医が眼をみて初めて、「あ、緑内障の発作だ」という事例はありますので、やはり、可能であれば眼科もある施設にご紹介されるのがベストと考えます。40歳からの眼科健診先生が推奨されている「40歳からの眼科健診」は私も賛成です。先生も他でご指摘されているように、生活習慣病に焦点があてられている住民健診では眼科健診を取り入れることは難しい、と考えますが…。しかし一方で、全ての自治体が動き、住民健診の中に眼科健診が取り入れられた場合、現状の眼科医でさばけるのでしょうか?緑内障の診断は難しいと聞きます。健診を標準化できるように眼底三次元画像解析装置など開発されているかと思いますが、住民健診の場全てにその装置を配備することは難しいのでは?と思います。この点について先生の見解をお聞かせいただければと思います。先生のご指摘はまったくその通りだと思います。先の眼底画像解析装置のご質問にもお答えしましたが、画像解析装置での眼底スクリーニングには限界がありますので、住民健診の場で使用できる現状にはまだ至っていません。現時点で私が考える最も効率的な緑内障を含めての眼底疾患スクリーニング法は、無散瞳眼底写真撮影です。考え方としては、胸部レ線による疾患のスクリーニングに近いと思います。眼底カメラの価格は300から500万円くらい。熟練した技師であれば眼底写真撮影は数分ですみますので、畳一畳分くらいの暗室があればOKです。写真はカラープリント(あるはスライド)にして眼底読影医(眼科専門医が望ましい)が判定することになります。したがって、健診の場に眼科医がかならずしも常駐する必要はありません。問題は、先生もご指摘のように、眼科医が対応できるのか、ということです。眼底読影という点については、各健診地区で読影の拠点施設(眼科医会の協力が必要か)を確立できれば良いように思いますが、スクリーニングで精密検査が必要となった場合が問題となります。緑内障で言うと有病率は5%であり、おそらく日本人全体で350万人くらいの緑内障が患者いると想定されます。日本眼科学会に登録している眼科医は現在1万5千名くらいですので、単純計算で眼科医すべて(後期研修医も含め)が200人強の緑内障患者を受け持つことになります。残念ながらこれは眼科医からみれば無理な数字です。誰が緑内障を診るのか、ということについては今後の議論を待たねばなりませんが、"40歳以降の目の健診"については、現在は会社の健康診断や各病院の人間ドックメニューに眼底写真撮影を取り入れてもらうようにすることから健診者を増やしていければと思っています。手術時の患者さん対応について目の手術となると患者さんの不安は大きく(当然ながらメスが近づいてくるのが見えるんですよね?)、しかも局所麻酔なので、周囲の音も聞こえ、ますます不安が大きくなるのかと想像します。手術の時に患者さんをリラックスさせるために行っていることや、気をつけていることがあればご教示ください。大変重要なご質問です。手術前の患者さんをリラックスさせるための手段として、多くの眼科施設でBGMを流しています。私の施設でもクラッシックやヒーリング系の音楽を流すようにしています。子供や若い患者さんには、あらかじめ自分の好きなCDなどを持ってきてもらって、それを流しています。また、洗眼などの手術準備中はできるだけ声を掛けながら、場合によっては世間話をしながら、患者さんの緊張をほぐすようにしています。富田先生は最初から眼科医を目指していたのでしょうか?富田先生は最初から眼科医を目指していたのでしょうか?また眼科医を目指そうと思ったきっかけなどあれば教えていただければと思います。私は学生の頃は、循環器内科に興味を持っていました。心電図を読むのが好きで、先生に褒められたのも一因です。ただ、眼科のポリクリの時に、アメリカのNIHでの留学から帰ってきたばかりの講師の先生が、眼科の疾患の説明はそっちのけで、人間の眼と、魚やカタツムリの眼の構造上の違いや類似点を楽しそうに話してくれたのが強い印象となって、父が眼科医であることもありましたが、眼科医の道を選びました。日本人と欧米人の眼の違い外科系の先生からは日本人と欧米人では体質が違う(肉食系の欧米人は血がドロドロ、でも止まりやすい、日本人は臓器が小ぶりなので欧米人よりも手術に気を遣う)ので、注意するようにと教わりました。眼もそのような質の違いがあるのでしょうか?(医学生)確かに日本人の眼と欧米人の眼で違いがあるように感じます。眼球は、眼窩という頭蓋骨のくぼみの中に収まっていますが、欧米人の眼窩は広くゆったりしており、日本人の眼窩はそれよりは狭い感じがあります。眼球の大きさはさほど違わないので、日本人の眼は眼窩周囲の組織に圧迫されているような感じがあります。したがって、硝子体圧が高めです。これは、白内障手術などをする場合、水晶体がせりあがってくる感覚があり、やや、手術がやりにくいと感じる場合があります。ただ、日本人の眼で慣れてしまうと、逆に白人の手術をする場合、眼球内がふにゃふにゃしている感じがあります。したがって、白人の眼はそっと丁寧に扱う必要性があるように思います。ただ、これは微妙な違いなので、ものすごく問題になることはありません。眼科医以外が眼科のことを学べる取り組み「どの科の専門であっても医師ならば必ず眼科の講義は受けているはずですが、眼の疾患がおざなりになっている現状を危惧せずにはいられません。」全くその通りです。私も講義を受けた記憶はありますが…。数年前から大学を離れ、診療所で患者を診るようになり、今更ながら後悔しています。プライマリー・ケア医に役立つ眼科セミナーや、勉強会など、眼科医以外が眼科のことを学べる取り組みがあれば参加したいと思います。もしご存知でしたらご教示お願いします。真摯なご姿勢に敬意を表します。大変重要なポイントをご指摘いただいたと思います。残念ながら、日本眼科学会や眼科医会には、他科の医師を対象とした眼科プライマリー・ケアに関する講習プログラムはこれまで存在しておりません。今回のような大震災を経験しますと、専門科を超えて医師が最低限知っておくべきプライマリー・ケアの知識と技量の生涯教育の必要性を痛感します。他科医師を対象とした眼科のプライマリー・ケア―のセミナーに関して、一度、学会に提言してみたいと思います。海外と日本の違い富田先生は海外留学のご経験も豊富とのこと。富田先生が思う、世界で一番眼科医療が進んでいる国はどこでしょうか?またその理由もご教示ください。失明率(一定人口中の失明者の数)や人口あたりの眼科医の数、眼科診療器械の普及度、眼科手術の件数、等々でその国の眼科医療を評価した場合、日本の眼科医療が実は世界一という結果が出ています。これは、日本の保険医療制度が大きく貢献しているとも言われていますが、日本の眼科医の質の高さを示す、誇るべきことであると思っています。近年、岐阜県の多治見市と沖縄の久米島で緑内障に関する疫学調査が行われましたが、それに付随するデーターとして、両地域間の失明率に違いはないことが明らかになりました。このことは、すくなくとも眼科医療に関しては、日本のどの地域であっても遜色なく普遍的に行われていることが示されており、日本の眼科医療が世界一であることを裏付けるものであると思います。総括大変多くの方からご質問をいただき感激しました。今回の質問にもありましたが、何と言っても、東日本大震災に関することで、眼科医療の重要性が再認識されていることをお伝えしたいと思います。今回、被災地から点眼薬やコンタクトレンズ用品、眼科医の不足を訴える声が大きいと聞きます。災害地が広範囲にわたるため、とりあえず近隣の眼科医を受診するということが出来なくなっているのです。災害では救急救命が重要なことは言うまでもありませんが、避難生活が長期化しだすと、やはり慢性疾患や、視覚などの生活の質を左右する要素に関するする対応も重要であることが痛切に感じられました。現在、産科医や小児科医の不足が問題になっていますが、実は、眼科医の数も年々減っています。今後日本が超高齢化社会を迎えるにあたり、物がみえているという最低限の生活のクオリティーを守るべき人がもっと増えてもいいのではないかと思っています。教授 富田剛司 先生「全身の疾患が眼に現れることは明確 眼を診るのは診断の第一歩である」

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平均BMI値は世界的に上昇傾向、肥満者は5億人以上に

1980年以降、平均BMIは世界的に増加傾向にあるが、その変動の傾向や直近の2008年の値には大きな差がみられることが、アメリカ・ハーバード大学公衆衛生大学院生物統計学科のMariel M Finucane氏らによる系統的な解析で明らかとなった。過体重は公衆衛生学上の重大な関心事だが、BMIの長期的な変動を世界規模で検討した解析はほとんどなく、直近の全国的な健康診断調査のデータに基づくものは皆無だという。Lancet誌2011年2月12日号(オンライン版2011年2月4日号)掲載の報告。1980~2008年の199の国と地域、910万人のデータを解析研究グループは、1980~2008年までの199の国と地域における20歳以上の成人の平均BMIの世界的な変動傾向を推定するために系統的な解析を行った。既報または未公開の健康診断や疫学試験を調査し、960ヵ国・年、910万人分のデータを収集した。ベイジアン階層モデルを用いて、年齢、国、年度別の平均BMIをそれぞれ男女別に推算し、各調査・試験が当該国の典型を示すものか地域限定的なものかを明らかにした。2008年の世界の肥満者:男性2億500万人、女性2億9,700万人1980~2008年の間に、最も多くの全国規模のデータを有していたのは日本であった(16の調査データ)。この間に、世界全体の男性の平均BMIは10年ごとに0.4kg/m2[95%不確かさ区間(uncertainty interval):0.2~0.6]増加し(真の増加となる事後確率:>0.999)、女性では0.5kg/m2(同:0.3~0.7)増加した(事後確率:>0.999)。国別の女性の平均BMIの変化は、有意差のない低下を示した19ヵ国から、10年ごとに2.0kg/m2増加(事後確率>0.99)したオセアニアの9ヵ国までの幅が認められた。男性では、8ヵ国を除く国々で平均BMIが上昇しており、オセアニアのナウルとクック諸島では10年ごとに2kg/m2以上の増加(事後確率>0.999)がみられた。2008年の平均BMIは男女ともにオセアニア諸国で最も高く、ナウルでは男性が33.9kg/m2(95%不確かさ区間:32.8~35.0)、女性は35.0kg/m2(同:33.6~36.3)に達していた。平均BMIが最も低かった国は、女性がバングラデシュの20.5kg/m2(同:19.8~21.3)、男性はコンゴの19.9kg/m2(同:18.2~21.5)であり、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国と東、南、東南アジアの数ヵ国は男女ともに21.5kg/m2未満であった。高所得国の中で最も平均BMIが高かったのは、男性がアメリカ、イギリス、オーストラリアの順で、女性はアメリカ、ニュージーランドの順であった。2008年に、過体重以上(BMI≧25kg/m2)の成人は世界で14億6,000万人(95%不確かさ区間:14億1,000~15億1,000万人)と推算され、そのうち男性の2億500万人(同:1億9,300万~2億1,700万人)、女性の2億9,700万人(同:2億8,000万~3億1,500万人)が肥満(BMI≧30kg/m2)と推定された。著者は、「1980年以降、平均BMIは世界的に増加していたが、変動の傾向および2008年の平均値は、国によって大きなばらつきがみられた」と結論し、「ほとんどの国では、BMIの増加の抑制や低下への転換を進めたり、代謝メディエーターを標的に高BMIの健康への影響を軽減する介入法や方策が必要である」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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収縮期血圧は世界的に微減するも、低~中所得国で高い傾向に

世界全体の平均収縮期血圧(SBP)は1980年以降わずかに低下傾向にあるが、その変動には地域や国によって大きなばらつきがあり、近年は低~中所得国でSBPが高い傾向がみられることが、アメリカ・ハーバード大学公衆衛生大学院疫学科のGoodarz Danaei氏らによる系統的な解析で判明した。血圧が食事やライフスタイル、薬理学的決定因子に及ぼす影響を解明して介入の優先順位を決め、国の健康プログラムを評価するには血圧の変動に関するデータが不可欠だが、世界規模で実施された血圧の変動傾向に関する解析はほとんどないという。Lancet誌2011年2月12日号(オンライン版2011年2月4日号)掲載の報告。1980~2008年の199の国と地域、540万人のデータを解析研究グループは、1980~2008年までの199の国と地域における25歳以上の成人の平均SBPの変動傾向を推定するために系統的な解析を行った。既報または未公開の健康診断や疫学試験を調査し、786ヵ国・年、540万人分のデータを収集した。ベイジアン階層モデルを用いて、年齢、国、年度別の平均SBPをそれぞれ男女別に推算し、各調査・試験が当該国の典型を示すものか地域限定的なものかを明らかにした。2008年の世界の平均SBP:男性128.1mmHg、女性124.4mmHg2008年の世界全体の年齢調整平均SBPは、男性が128.1mmHg(95%不確かさ区間:126.7~129.4)、女性は124.4mmHg(同:123.0~125.9)であった。1980~2008年までの世界全体のSBPは、男性が10年ごとに0.8mmHg(同:−0.4~2.2)低下し(真の低下となる事後確率=0.90)、女性は1.0mmHg(同:−0.3~2.3)低下した(事後確率=0.93)。西ヨーロッパやオーストラリアでは女性のSBPが10年ごとに3.5mmHg以上低下していた(事後確率≧0.999)。男性のSBPは、北米の高所得国で10年ごとに2.8mmHg(95%不確かさ区間:1.3~4.5)低下し(事後確率>0.999)、次いで西ヨーロッパとオーストラリアで10年ごとに2.0mmHg以上低下していた(事後確率>0.98)。オセアニア、東アフリカ、南アジア、東南アジアでは男女ともに、また西アフリカでは女性のみSBPが上昇しており、男性は10年ごとに0.8~1.6mmHg(事後確率:0.72~0.91)、女性は10年ごとに1.0~2.7mmHg(事後確率:0.75~0.98)の上昇がみられた。女性のSBPが最も高かったのは東・西アフリカ諸国で、平均135mmHg以上であった。男性の場合はバルト海沿岸諸国と東・西アフリカ諸国でSBPが最高域にあり、平均値は138mmHg以上に達していた。西ヨーロッパ地域では、男女ともに高所得国でSBPが最も高かった。著者は、「平均して、世界全体のSBPは1980年以降わずかに低下していたが、その変動には地域や国によって大きなばらつきがみられた。最近の傾向としては、低~中所得国でSBPが高かった」と結論し、「低~中所得国をターゲットに地域住民ベースまたは個別化された有効な介入を行うべきである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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O157による急性胃腸炎が、高血圧、腎障害、心血管リスクの増大と関連

大腸菌O157:H7に起因する急性胃腸炎の経験者は、高血圧、腎障害、心血管疾患のリスクが増大していることが、カナダ・ロンドン健康科学センターのWilliam F Clark氏らが行ったコホート試験で示された。アメリカでは年間、O157:H7感染症による消化管疾患が5~12万例にみられ、そのうち2,000例以上が入院し、約60例が死亡している。O157:H7が産生するShiga toxinは腎臓や血管を傷害し、溶血性尿毒症症候群(HUS)をきたす可能性がある。O157:H7曝露によるHUSの長期的な影響は、子どもではよく知られているが、症状がみられ比較的曝露量の少ない成人では不明であったという。BMJ誌2010年11月20日号(オンライン版2010年11月17日号)掲載の報告。汚染水飲用後8年以内の高血圧、腎障害、心血管疾患のリスクを評価研究グループは、大腸菌O157:H7とカンピロバクターに汚染された水道水の飲用による胃腸炎から8年以内に、高血圧、腎障害、心血管疾患を発症するリスクの評価を目的にプロスペクティブなコホート試験を行った。2000年5月のWalkerton市(カナダ、オンタリオ州)の水道システムの汚染による胃腸炎の集団発生後、2002~2005年までにWalkerton Health Studyに登録された成人1,977人を解析の対象とした。調査、健康診断、臨床検査を通じて年ごとに情報を収集した。主要評価項目は、急性胃腸炎(3日以上持続する下痢性疾患、出血性の下痢、1日3回以上の軟便)、高血圧(≧140/90mmHg)、腎障害(微量アルブミン尿、推算糸球体濾過量<60mL/分/1.73m2)であった。自己申告後に医師によって診断された心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全)を副次評価項目とした。O157:N7胃腸炎経験者は定期的に血圧、腎機能をモニタリングすべき集団発生時の急性胃腸炎の発生率は54%(1,067/1,977人)であった。高血圧は35%(697/1,977人)で確認され、非急性胃腸炎例では32%(294/910人)であったのに対し、急性胃腸炎例では38%(403/1,067人)であった。腎障害の指標を少なくとも一つ満たした例は29%(572/1,977人)で、非急性胃腸炎例29%(266/910人)、急性胃腸炎例29%(306/1,067人)ともに同率であった。二つの指標のいずれをも満たした例は1.5%(30/1,977人)にすぎなかったが、非急性胃腸炎例の0.9%(8/910人)に対し、急性胃腸炎例では2.1%(22/1,067人)であった。心血管疾患は1.9%(33/1,749人)に認められた。急性胃腸炎の集団発生前に対する発生後の高血圧および心血管疾患の補正ハザード比は、それぞれ1.33(95%信頼区間:1.14~1.54)、2.13(同:1.03~4.43)と有意であった。腎障害の指標のいずれか一方を満たす例における急性胃腸炎発生前後の補正ハザード比は1.15(同:0.97~1.35)であったが、二つの指標の双方を満たす例では3.41(同:1.51~7.71)に上昇した。著者は、「大腸菌O157:H7とカンピロバクターに汚染された水道水の飲用による急性胃腸炎は、高血圧、腎障害、自己申告による心血管疾患のリスクの上昇と有意な相関を示した」と結論し、「大腸菌O157:H7に起因する胃腸炎を経験した患者に対しては、血圧と腎機能の定期的なモニタリングを行うべきである」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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約4割の主婦が過去1年以内に検診を受けていない?

主婦の約4割が「過去1年以内に検診を受けていない」という結果が、ソニー損害保険株式会社が27日に発表した「主婦の健康診断・健康意識に関する調査」より明らかになった。この調査は、2010年5月14日~5月17日の4日間、20歳~49歳の主婦(パート/アルバイト、専業主婦)に対し、インターネットリサーチで実施し、1,000名の有効回答を得たもの。過去1年間に受けた検診の種類を複数回答で聞いたところ、「過去1年以内にどの検診も受けていない」が39.8%と最も多い結果だった。過去1年以内にどの検診も受けていない398名に、検診を受けていない理由を複数回答で聞いたところ、「検診にお金がかかる」が39.4%と、経済面での理由が約4割となり、続いて「検診へ行く時間がない」32.7%、「面倒くさい」31.9%、「今のところ特に体に異常がみられない」29.1%となった。過去1年以内に検診したガンの種類を複数回答で聞いたところ、「子宮けいガン」が33.4%と最も多く、主婦の3人に1人が子宮けいガン検診を受けていたようだ。次に多かったのは「乳ガン」の25.9%で、「子宮体ガン」14.1%、「胃ガン」8.4%、「大腸ガン」5.7%、「肺ガン」4.1%となっている。全回答者1,000名に、あなたが受けてみたいと思う検診を複数回答で聞いたところ、1位「500円で受けられるワンコイン検診」58.5%、2位「自宅でできるキット検診」40.8%、3位「検診後に昼食が付いているランチ付き検診」30.0%となり、経済的かつ手軽に受けられる検診が求められていることがわかったという。また、ガン以外の女性特有の病気や女性がかかりやすい病気の中で気になっているものを複数回答で聞いたところ、「更年期障害」で62.8%、「子宮筋腫」 55.5%、「骨粗鬆症」33.0%、「子宮内膜症」31.8%、「貧血」29.5%となった。「更年期障害」と回答した割合は年齢があがるにつれて高くなっており、20代主婦で42.2%、30代主婦で59.2%、40代主婦では70.2%となっている。また、20代主婦では他の年代よりも回答した割合が高いものが多く、「貧血」(51.8%)、「子宮内膜症」(50.6%)、「卵巣のう腫」(38.6%)、「膀胱炎」(32.5%)で他の年代より10ポイント以上高くなっていた。詳細はこちらhttp://from.sonysonpo.co.jp/topics/pr/2010/05/20100527_1.html

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LDLコレステロールは総コレステロールを測定してFriedewaldの式による計算法で求める

 日本動脈硬化学会は26日、「LDLコレステロール直接測定法に関する記者会見」において日常臨床でLDLコレステロール値を管理指標とすべきとした上で、LDLコレステロール値は総コレステロールを測定し、Friedewaldの式による計算法で求めるべきで、LDLコレステロール直接測定法は改良の必要があるとの声明を発表した。LDLコレステロールをFriedewaldの式による計算法で算出してみた Friedewaldの式によるLDLコレステロールの計算法は、総コレステロール(TC)値、HDLコレステロール(HDL-C)値、トリグリセリド(TG)値の3つの測定値から、LDLコレステロール(LDL-C)値を算出する。LDL-C=TC - HDL-C - TG/5 ここに2007年8月に健康診断で測定した私のデータがある(2008年度以降は、健康診断で総コレステロール値が測定されなくなった)。TC値205mg/dL、HDL-C値41mg/dL、LDL-C値(直接測定法)139mg/dL、TG値 147mg/dLとあまり誉められた健康状態ではない。Friedewaldの式による計算法よってLDLコレステロール値を算出してみると、135mg/dLと直接測定法の値とおおよそ一致している。総コレステロール値からLDLコレステロール値へ脂質管理指標が改訂 さて、総コレステロール値に取って代わったLDLコレステロール値であるが、2007年4月に日本動脈硬化学会が発表した『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年度版』では、脂質管理指標から総コレステロール値が外され、LDLコレステロール値による管理が色濃くなった。これ自体は、従来の誤解が是正される方向に導いた。そもそも総コレステロール値はLDL-C、HDL-C、VLDL-Cの総和であり、動脈硬化を惹起させるリポ蛋白(LDLなど)と、逆に抑制するリポ蛋白(HDLなど)が含まれている。そのため、総コレステロール値よりLDLコレステロール値を動脈硬化の危険因子とする方が科学的に妥当である。2007年の改訂ではこの点が色濃く映った。 同ガイドラインではLDLコレステロール値の算出方法について、本文中および診断基準の表の脚注に、「直接測定法あるいはFriedewaldの式による計算法で算出する」との旨が併記されており、「食後やTG値400mg/dL以上の時には直接法を用いてLDLコレステロール値を測定する」としている。Friedewaldの式によるLDLコレステロール計算法はTG値400mg/dL以上の症例では適用できないことが背景 LDLコレステロール直接測定法はわが国で1997年に開発され、98年には診療保険適用となり、現在7つのキットが使用可能である。しかし、これら7つは方法論の違いによりキット間でLDLコレステロール値にバラツキがあり、特に脂質異常症例、TGが高い場合においては「外れ値」を示すことが多い。場合によってLDLコレステロール直接測定法はキット間で30mg/dL以上の差が認められるということが明らかになった。一方、脂質異常症例ではLDLコレステロール標準測定法であるBQ法とのバリデーションが許容範囲を超えていることも報告された。Friedewaldの式によるLDLコレステロール計算法ではTG値400mg/dL以上の症例では適用できないことから直接測定法が勧められていたが、直接測定法も完全な解決策ではないことが見出された。LDLコレステロール値は直接測定法が79.3%で計算法は20.7% それでは臨床現場ではLDLコレステロール値をどのようにして求めているのか?弊社が2008年12月に行ったアンケート調査によると、高LDLコレステロール血症患者を1ヵ月に20名以上診察している医師の79.3%が直接法を用いており、Friedewaldの式による計算法を用いている医師は20.7%にとどまった(ケアネット調べ)。この結果を見る限り、臨床現場ではLDLコレステロール直接測定法が主流になっている。LDLコレステロール値は総コレステロール値を測定してFriedewaldの式による計算法で求める学会は次のことを推奨している。 ・日常臨床の場では、TC値、HDL-C値、TG値を測定し、Friedewaldの式による計算法よってLDLコレステロール値を求める。・食後に来院した患者については、空腹での再診を求める。・TG異常高値例では、リスク管理の指標としてnon-HDL-C値を参考とする(non-HDL-C=TC-HDL-C)。non-HDL-Cにおける管理目標値は「LDL-C値+30mg/dL」とする。 なお、学会は、LDLコレステロール直接測定法について、今後、標準化、精度管理・情報公開が必要であると述べている。合わせて、現在、LDLコレステロール直接測定法が推奨されている「特定健診」については、総コレステロール値を測定項目に加えることを強く要望していることを述べた。学会は「特定健診」における直接測定法の導入に関して標準化および情報公開を付帯条件に容認したが、なされないまま特定健診がスタートした。 我々は現在、患者指導支援ツールを開発している。このシステムは患者さんの診療情報をもとに、患者さんに最適な指導ツールを作成できるサービスではある。残念ながら、現在の開発版ではLDLコレステロール値についてFriedewaldの式による計算法が適用されていない。今回の発表を受け、Friedewaldの式による計算法を適用したものに変更を検討し、TC値、HDL-C値、TG値からFriedewaldの式によってLDLコレステロール値が自動計算できるようになる見通し。

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がん、生活習慣病の発症リスクを自己判定する「リスクチェックシリーズ」発売

株式会社パシフィックマーケティングは12日、がんや生活習慣病等の病気が発症する可能性(リスク)を自己判定する予防観点での検査サービス「リスクチェックシリーズ」の販売を同日より開始した。この検査サービスは、株式会社バイオマーカーサイエンスが、研究開発・事業化していたバイオマーカー技術に基づき、一般検査用として開発したもの。検査はバイオマーカーとして評価の高い「尿中8-OHdG」を採用し、微量(1mL)の尿をサンプルとして、DNA損傷度を判定する。DNAの酸化度合いから、がんの発症リスクや生活習慣病の発症リスクを自己判定することにより、受診者本人の予防への自覚を促すことが可能となっているという。検査は一般的な健康診断に追加できる「一般健診追加タイプ」と、郵送で検体を送付する「郵送検診タイプ」の2種類。一般向けではなく、企業・団体等の検査機関に対してのみ販売される。がん発症リスクを検査する一般健診追加タイプの価格は、5,250 円/個(税込)。最低申込数は5,000検体。生活習慣チェック、DNA損傷度等も選択できる郵送検診タイプの価格は、6,300 円/個(税込)。こちらは100検体より申し込み可能。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.pacific-m.com/riskcheck/img/bms_pc20100412.pdf

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メタボへの危機感は20代から始まっている 働く女性の「メタボと生活習慣」に関する意識調査より

株式会社ナガセ ビューティケァは30日、同社が首都圏の20歳代~50歳代の働く女性を対象に行ったアンケート“働く女性の「メタボと生活習慣」に関する意識調査”の結果を発表した。結果から、働く女性の7割以上が、自分はメタボまたはメタボ予備軍だと思っていることがわかった。危機感は20代からすでに始まっているようだ。「メタボ=男性」というイメージを持ってしまいがちだが、同社では、仕事が忙しく生活習慣の乱れた働く女性も、知らぬ間に「メタボへの道」を歩き始めているのではないかと仮定して調査を行った。それを裏切る予想外の回答が続々とあがり、多くの働く女性が「メタボ」に危機感を持っていることが浮き彫りになったという。働く女性に『自分はメタボあるいはメタボ予備軍だと思いますか?』と質問したところ、7割以上が自分はメタボ・メタボ予備軍だと感じている、と回答した(「メタボだと思う」13.4%、「ややメタボ気味だと思う」22.8%、「今はメタボではないが、危機感はある」38.8%)。また、なぜそのように思うのかを自由に答えてもらったところ、「お腹が出てきた・肉がついたと感じるから」(98人)という答えが一番多く、次いで「太っている・太ってきたと感じるから」(47人)、「体重が以前に比べて増加したから」(46人)という回答が続いた。また、「階段を上る時に息切れがし、降りる時は膝に体重がかかり痛みを感じるため」(30代)というリアルな回答もあった。健康診断や医師からメタボと診断されたり、メタボの基準に当てはまるというよりも、以前と比べて変化した体重や体型がきっかけで、自己流でメタボと判断しているようだ。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://nbc.jp/beauty/pdf/20100330.pdf

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【トピック】肥満解消が必要と思っても、4割は何もしていない

4月のメタボ健診スタートも近いが、オムロンヘルスケアがまとめた意識調査によると、30―50歳代の7割が肥満解消の必要性を感じているが、このうち4割は特に何もしていないことがわかった。調査によると、メタボリックシンドロームという言葉を知っている人が3年連続増加し80%を突破。しかし、2人にひとりが自身をメタボリックシンドローム(予備軍を含む)と感じているが、それらの人の中には診断基準(ウエスト径)を正しく理解していない人も多いという。さらに、全体の7割が肥満解消(ダイエット)の必要性を感じているが、そのうち4割は特に努力していない。そして、ダイエットが必要と感じて何らかの努力をしている人でも、努力に「たいへん満足している」人は100人に1人だった。また、全体のうち4割の人が過去1年間に健康診断を受けていなかった。詳細はプレスリリースへhttp://www.healthcare.omron.co.jp/corp/news2007/0124.html

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国外に連れ出され売春強要されたネパール少女・女性のHIV感染の実態

性的搾取を目的とする少女・女性の人身売買は南アジア全域にわたり、凶悪な性犯罪かつ重大な人権侵害と認められる。その被害少女・女性たちのHIV有病率と感染予測因子について、ハーバード大学公衆衛生スクールのJay G. Silverman氏らが調査を行った。報告は、JAMA誌8月1日号に掲載された。売買時年齢17.0歳、HIV陽性38.0%本研究は、ネパールの被害少女・女性を対象に行われた。性的搾取を目的にネパールから連れ出され、NGOによって保護され本国へ戻りリハビリサービスを受けた287例。1997年1月~2005年12月にかけての彼女たちの健康診断および診療録を、2006年1月に総合的に調査した。主要評価項目は、人口統計学的特性および人身売買・売春体験に基づくHIV有病率とリスク。無事に本国に戻れた少女・女性のうち38.0%(109/287)がHIVポジティブだった。このうち人身売買の証拠書類が残っていた225例の記録から、売買時の年齢正中値は17.0歳、15歳未満の少女が14.7%(33例)いたことが確認された。15歳未満の少女のリスクがとりわけ高い売買時の年齢が18歳以上群と15歳未満群を比べると、15歳未満群のHIVリスクが高かった(補正オッズ比;AOR 3.70)。感染率は60.6%(20/33)である。さらに、HIVポジティブには、売買先がインドのムンバイである(AOR 4.85)、強制売春の期間が比較的長い(AOR 1.02)との特性が見られ、売春宿での隷属的な期間が増すほどリスクは増加していた。事後解析では、複数の売春宿に抑留されていた15歳未満群でオッズ比が高く(対18歳以上群オッズ比5.03)、抑留期間が1年以上に及んだ者で高かった(同2.67)。以上のように対象のHIV有病率は高く、とりわけ15歳未満で人身売買された少女のリスクが高いことが明らかとなった。Silverman氏らは、「明らかとなった所見は、南アジアの特に若年者を対象に、性的搾取を目的とした人身売買が減るよう注意を払うこと、および治療介入する必要性を示している」と結論づけた。(武藤まき:医療ライター)

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