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もしも先生自身に”万が一”のことがあったら…延命治療、どうしますか?

突然やってくる死、徐々に視界に入ってくる死、目の前をかすめて通り過ぎた死…と、医師の日常診療には様々な形の「死」があります。患者のもとに訪れる死に"一時停止"を出せるのが医師という立場。意識のない患者さん、取り巻く家族の嘆きを目にしながら、どうするのが正しいのか悶々とする先生方も多いのではないでしょうか。ではもし先生ご自身がその立場になったら?今回の「医師1,000人に聞きました!」では、"医師ならでは"の死生観があるのか、それを外部に表明しているのかを伺ってみました。コメントはこちら結果概要医師の7割が「自分の延命治療は控えてほしい」と回答"自分自身の延命治療"について70.8%の医師が「控えてほしい」と回答。『自分で思考できて初めて、"生きている"と考えている』『だんだん状態が悪くなる姿をさらしたくない』といった、自らの生き方に関する考えのほか、『家族の精神的・経済的負担が大きすぎるのを普段から見ているため』『(回復が見込めないなら)お金と医療資源は必要な人のために使わなければいけない』など、現場に立つ医師ならではの声が上がった。そのほか『救命救急センターで働いていた時は"延命治療をやめる基準"があったが、一般の病院でも広めるべき』といった意見も寄せられた。「家族の判断に任せたい」とする医師、『家族が納得することが重要』22.3%の医師が「家族の判断に任せたい」と回答。『死を家族が受け容れられるかどうかにかかっているから』『死は自分の問題ではなく、生者にとっての問題だから』といった意見のほか、『負担がかかるのは家族なので判断を任せたい』とする声も上がった。そのほか『家族の意思を尊重しないと、担当医が後で何を言われるか分からないので』など、日常診療で遭遇するケースから感じている意見も寄せられた。約半数の医師が、自分の延命治療に関する希望を外部に表明している延命治療に対する自分の考えについて、「希望はあるが表明していない」と回答したのは全体の43.4%。一方「書面に残している」医師は全体の6.4%、「家族に口頭で伝えている」医師は40.0%と、約半数が何らかの形で外部に表明しているという結果となった。年代別で見ても顕著な差はなく、30代以下の若手医師でも6.4%が書面にしていると回答。設問詳細延命治療についてお尋ねします。2007年、日本救急医学会の 「救急医療における終末期医療のあり方に関する特別委員会」にて救急医療の現場で延命治療を中止する手順についてのガイドライン案がまとめられています。一方「自分らしい最期を迎えたい」として、リビング・ウィルやエンディングノートといわれる文書に延命治療に関する希望を事前に書いておく取り組みも広がりつつあります。11月11日の朝日新聞によると『全国の救命救急センターの6割以上が、過去1年間に高齢者に対して人工呼吸器や人工心肺などの装着を中止したり、差し控えたりした経験のあることが、朝日新聞社の調査でわかった。救命医療で「最後の砦(とりで)」とされる救命センターでも、回復が見込めない患者に対し、家族や本人の希望があれば、延命治療を控える動きが広がっていた。最も重症の患者を診る3次救急を担う全国254の救命救急センターに10月、高齢者への終末期医療の実態を聞いた。57%の145施設から回答があった。この1年に救急搬送された65歳以上の高齢者に、人工呼吸器や人工心肺、人工透析などの積極的な治療を中止したり差し控えたりした経験の有無と件数を尋ねた。この結果、63%にあたる91施設が「ある」と回答した。呼吸器の中止・差し控えは計302件あり、このうち、患者の年齢や病気名など具体的データを挙げた中止例は14件あった。人工心肺の差し控え・中止は37件あった』とのこと。そこでお伺いします。Q1. 万が一先生ご自身が事故・病気などで判断力・意思疎通能力を喪失し、回復が見込めないとされた場合、延命治療についていかがお考えですか。延命治療は控えてほしい家族の判断に任せたい医師の判断に任せたい積極的治療をしてほしいわからないその他(          )Q2. Q1のお考えについて、当てはまるものをお選び下さい。書面に残している家族に口頭で伝えている希望はあるが表明していない考えたことがないQ3. コメントをお願いします(Q1・2のように考える理由やきっかけ、考えを表明している方はその理由、医師として日常診療で遭遇した具体的な場面など、どういったことでも結構です)2012年11月15日(木)~16日(金)実施有効回答数:1,000件調査対象:CareNet.com医師会員CareNet.comの会員医師に尋ねてみたいテーマを募集中です。採用させて頂いた方へは300ポイント進呈!応募はこちらコメント抜粋 (一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「延命処置をして、後日家族から「こんなに苦しいのならやめておけばよかった」と言われたことがある」(50代,内科,一般診療所勤務)「本人には苦痛を理解する能力もなくなっていると思われる。であれば、家族の満足が重要。」(40代,循環器科,病院勤務)「判断力・意思疎通能力を喪失したらあとは家族に任せます。家族がどんな形でも生きていてほしいと望めば生かしてくれればいいし、延命を望まないならそれもいい。」(50代,外科,病院勤務)「身寄りの無い方がそういった状況に陥った場合、非常に困ることがよくある」(30代以下,内科,一般診療所勤務)「延命を家族の希望でのみ行うことがあるが、本人の希望は本当はどうであったか悩むことも多い。自分にはして欲しくない。」(60代以上,内科,病院勤務)「日常診療中、回復の見込めない患者の家族に延命治療について説明を行いながら、自分自身も毎回毎回受身になって考えている」(40代,腎臓内科,病院勤務)「医療費が大幅に上昇している現在、医師として自身の治療においては延命治療は遠慮したい。」(50代,外科,病院勤務)「心臓動いている=生きている とは思わない。 そう思う、思いたい家族の気持ちはわからないでもないが、心臓を動かすためだけに、安らかな最期を迎えられないケースを数多く診てきたので。」(30代以下,総合診療科,病院勤務)「延命した結果、家族関係が悪くなることをよく見る」(40代,総合診療科,病院勤務)「個人的には拒否したいのですが家族と相談していないので」(30代以下,消化器科,病院勤務)「お金と医療資源は必要な人のために使わないといけないと常に周囲に言っているので。この考え方がないと医療費の増大につながる。これは信念なので自ら実践したい」(50代,脳神経外科,病院勤務)「生まれてくる時は意思を発現出来ないのだから、 死ぬ時はせめて意思を尊重されたい」(50代,内科,一般診療所勤務)「回復不能な患者に,家族の希望で延命を行ったが,長期化し,家族が疲弊した上に,さんざん文句を言われた.」(40代,呼吸器科,病院勤務)「高齢患者を中心に多くの患者を看取った経験から、意思疎通不能でただ胃ろうやIVHで生かされているだけの寝たきり患者には自分自身はなりたくないし、そのような状況で家族に迷惑もかけたくない。」(40代,内科,病院勤務)「意味がなくても、残される家族が納得するまで頑張るのも、見送られる側の務めだと思います。 人と人とのつながり(まして家族間の絆など)は、意味があるないだけでは計り知れないはず。」(30代以下,呼吸器科,病院勤務)「医療経済面で悪影響。 ベジになった際の家族の負担。」(30代以下,血液内科,病院勤務)「控えてほしい。センチメンタルになっても仕方ない。医師なら冷静に考えたら、結果はこうなる。」(50代,消化器科,一般診療所勤務)「延命の期間は人生にとって何の意味もなく、意義があるとしたら家族が受け入れるための時間が必要なことがある場合だけでしょう。最初からそのような時の受け入れを家族が出来るのなら不必要でしょう。」(40代,内科,病院勤務)「延命治療を希望して、途中で中止する事は難しいから。」(50代,内科,病院勤務)「高齢者と若年者では異なるが、高齢者の場合は積極的治療は控えたい。」(40代,形成外科,病院勤務)「未来のことは正確には予測できません。文書を残すことはマイナスになることもあるので、家族にまかせます。」(50代,内科,一般診療所勤務)「点滴や呼吸器でつながれても短時間に抜去できれば社会復帰も可能であるが、時間の経過とともに「これは無理だな」という病態は救命医を経験したものなら判る。無理と思いながら患者さんのため、家族のためと言い聞かせながら延命を図ることが度々あった。もし自分がその様な状態になった場合延命処置は望まない。」(60代以上,循環器科,一般診療所勤務)「自分自身が何も分からなくなった場合、死を家族が受け容れられるかどうかにかかっていることから、家族の意向に任せたい。多分しばらく苦しんでから、納得したところで延命はしないと選択するとは思う。患者さんをみても、その死を家族が受け容れられるかどうかで処置が変わる。いずれ受け容れることにはなるが、本人意思だからと延命を全く行わないと、家族は受け容れる間もなく死と直面してしまう。本人が苦しむことはわかるが、残されることになる家族の考えは大事だと思う。」(40代,神経内科,病院勤務)「日々,そのような患者を面前にしているが,患者本人も浮かばれないし,家族も辛く,連れて帰ることもできず,病院のベッドも無駄に埋まっているのを黙って見ている。私自身はそういう患者に呼吸器などはつけずに看取っているが,病院全体では全く看取れず,寝たきり呼吸器+胃ろうが増えていっている。こういう状況はおかしいと思うので。」(50代,小児科,病院勤務)「眠るように死にたい。いつも疲れているので最後くらいは眠らせてほしい。」(40代,外科,病院勤務)「積極的な治療がかえって家族の負担になることを経験しているため」(40代,内科,一般診療所勤務)「書面に残している。判断できるときにしておく、 無駄なことはしない。いつかは死ぬのだから」(50代,内科,一般診療所勤務)「自分のことだけを考えれば延命治療は希望しないが 家族にとって自分が生きていること(心臓が動いていること)に意味があるなら延命してもらってもかまわない」(40代,内科,一般診療所勤務)「患者や家族の意思を尊重しないと、後で何を言われるか分からない。特に殆ど面会にすら来てない親族が後から文句を言って来る場合が多いので要注意である。」(40代,内科,一般診療所勤務)「その人の意思を無視して、ただ生きてて欲しいと願うのは家族のエゴだと思う。」(40代,泌尿器科,一般診療所勤務)「以前救命救急で働いていましたが、高齢者の場合、御家族に聞くとほぼ「もうこのまま楽に・・・」という答えが多く、 若くして突然となると、「やはり出来る限りのことは・・・」という答えが多い気がします。 私自身は、回復がみこめないのであれば、家族に負担をかけずにという思いが強いです。」(30代以下,消化器科,病院勤務)「死は自分にとっての問題ではなく、生者にとっての問題だから、他人の意思にゆだねるしかない。」(40代,産婦人科,病院勤務)「植物状態でいることは、初めのうちは少しでも長く生きてほしいという希望がかなえられるが、長期化することで家族も疲弊してくることがほとんどなので、延命治療は希望しない。」(30代以下,代謝・内分泌科,病院勤務)「命そのものの重大さについては言うまでもないが、その一方、いわゆる「生ける屍」として生き長らえることに「人間」としての尊厳があるのかどうか、疑問に思う」(50代,その他,その他)「本人が意思を失っていれば、家族が代役を務めるしかない。負担がかかるのは家族なので家族の判断を尊重したい。」(30代以下,整形外科,病院勤務)「長期療養型病院に15年勤務していますが、入院患者さんの平均年齢がこの15年で80代から90代に。認知症、経管栄養で寝たきり、意志の疎通が図れなくなった多くの患者さんの最期に立ち会う際、お元気に通院されていた姿を思い出し、自分は長生きしたくない、と切に感じる今日この頃です」(40代,循環器科,病院勤務)「自身が高齢となり長患いをしていた場合は延命治療を控えていただきたいが、突然の事故などの場合は家族に判断してもらいたい。」(40代,循環器科,病院勤務)「研修病院で延命治療をした経験から、延命をして喜ぶ結果になった人は(患者の)年金などを目当てにした人以外見たことがないから。医師、本人、家族とも負担になるだけだったから。」(30代以下,総合診療科,病院勤務)「呼吸器を外すと警察やマスコミにたたかれる可能性があるので、積極的に行うことを避けなければ仕事を続けることができないと思う。」(40代,内科,病院勤務)「積極的治療をしてほしい。どんな姿でも命は大切。」(50代,内科,病院勤務)「寝たきり10年以上、MRSAなどの感染も加わり、体も固まって、胃ろうになってボロボロになって、死んでいく高齢者が多いです。人間らしい生活が送れないなんてみじめ!です。そのころには周囲の親戚に『まだ死んでいなかったの?』なんて言われてしまうかも?実際、90歳の自分の祖母が一番年上の孫に言われていましたが・・・『税金泥棒』とも・・・葬式もなくなってしまいました。」(30代以下,代謝・内分泌科,病院勤務)「(書面に残しているが)今でも悩んでいます。今後方針が変わるかもしれません。」(40代,耳鼻咽喉科,病院勤務)「回復の見込みがなく、延命のみを目的とする自分の生には(自分としては)意義を感じられない」(40代,精神・神経科,その他)「実際その状態の患者を診ていて、延命治療のある意味残酷さが見えてきたから。」(40代,外科,病院勤務)「親と同居のため、 親の分の意思確認時に、自分のことについても同時に伝えた」(40代,産業医,その他)「自分の父がそうであったように、惨めな姿を見せたくない、家族に負担をかけたくない、そして残された者がそういう思いにいたったので。」(40代,泌尿器科,一般診療所勤務)「回復の見込みがなくても移植臓器を提供できれば良い。その為には延命は不都合」(40代,内科,病院勤務)「家族の希望で延命処置をすることがあるが、患者本人にとっては何もメリットはなく、家族が死を受け入れるまでの時間稼ぎでしかない。いつまでも生きていてほしいという心情は十分理解できるが、死を受け入れることは患者のためでもあることを理解してほしい」(50代,外科,病院勤務)「本当に、家族も延命治療を望んでいるのか疑わしいのにも関わらず、延命治療が行われている場面が多々ある。」(40代,産婦人科,病院勤務)「救命救急センターで働いていた時は延命をやめる基準というのがあったが、そういった基準を一般の病院でも広めるべきである。」(40代,整形外科,病院勤務)「胃ろう患者を毎日見ており、 家族を含め 無理な延命治療を避けるよう書面にしました」(50代,内科,病院勤務)「経済的な理由で苦しんでいる家族もある。杓子定規に判断基準があっても困る」(40代,内科,一般診療所勤務)「意識のない状態で点滴や呼吸器で治療されている方をたくさん見てきて、自分ではそういう治療は希望しないと判断した」(40代,内科,一般診療所勤務)「日常の診療でいつも以下の内容を患者家族に説明している。『いつまでも病院へは入院出来ない。いずれは自宅で家族が看なければならない。意思疎通も出来ない、寝たきりの患者の介護は非常に大変で、介護サービスを利用しても夫や妻だけでは必ずと言いよい程破綻する。子供も協力して、自分たちで介護出来る覚悟が無ければ安易に延命措置を望まないで欲しい。そうでなければ患者にも家族にとっても不幸である。 また、現在医療費は毎年増加し、膨大な額になっている。 そのため社会全体の考え方も、出来るだけ医療費を効率的に使う方向であり、将来性の見込めない方への多大な配分は望まれていない。 このような考えを踏まえて総合的に判断してほしい』」(40代,神経内科,病院勤務)「『回復の見込みのない患者』に対する積極的な治療は、本人だけでなく家族、親戚も不幸にしてしまうような気がする。自分自身は、回復の見込みがないのなら、そのまま看取ってもらいたい。(家族が延命を希望したとしても・・・)」(40代,小児科,病院勤務)「無駄な延命治療(ほとんどは家族が希望)のために、本人の意思に沿わないと思われる悲惨な症例をたくさん見てきたため。 自分の配偶者は医療従事者ではないので、どこまで理解しているか甚だ疑問です。 書面に残す必要性も感じていますが、具体的にはその時その時の状況で判断すべきことが多いため、なかなか難しいと感じています。」(50代,内科,一般診療所勤務)「医学的には延命治療は行うべきではないと考えるが、実臨床では関わっている家族などの人たちの考えを無視できない。」(50代,外科,病院勤務)「自分自身は長生きしようと思わないが、死とは周りの人が受け入れる過程も大切なので、結局家族の意向にそった治療にならざるを得ないのではないだろうか。」(40代,小児科,病院勤務)「延命だけで長く生きておられる人をたくさん見ているが、意味のない延命は自分のためにも、社会のためにも無駄な時間に感じる」(50代,代謝・内分泌科,病院勤務)「胃ろう、気管切開して延命を図っている人を見かけるが、その患者さん本人のためになっているのか疑問。自分が、そうなった場合は、少なくともこれらの処置はお断りします。」(40代,外科,病院勤務)「やはり自己で思考できて初めて意義ある人生と思うので。また、自分に意識や思考能力がない回復の見込みのない状態で、家族に負担のみかけさせるのには耐えられないから。」(50代,外科,病院勤務)「その状態では意識もなく自分自身の人生としてはすでに終わっている。もし、年金等の条件や心の準備のために家族が延命させて欲しいと望めばそれでもよいので任せたい」(40代,内科,病院勤務)「無駄な延命は人間の尊厳を害し、無駄な介護を発生させ、無駄な医療費をかけ、若い世代に負担をかけるのみ、だと思います。日常的に現場を見ていて、少しでも回復の見込みがあれば全力を尽くす価値を感じますが、回復の見込みがないのに挿管、人工呼吸器などつないで意識のない患者をひたすら輸液で栄養して…という場面を見るたびに、やるせない気持ちになります。徒労感も倍に感じます」(30代以下,代謝・内分泌科,病院勤務)「かつての延命と言われる処置を行っていたとき、患者の家族から「いつまでこんな状態が続くのか」と恨み節のように言われたことがあった。自分でも本当に必要な処置なのかと考えるきっかけになった」(40代,内科,一般診療所勤務)「積極的治療をしてほしい。回復が見込めないという判断が早計なことがあるので、とりあえず、全力を尽くすのが医師としての義務である。」(60代以上,産婦人科,病院勤務)「回復の見込みがないのであれば肌の色艶のいい時に死んでしまいたい」(40代,脳神経外科,病院勤務)「今や高齢者が、「胃ろう」「気切」「ポート」を持つのが、施設に入る条件になっていたりするのを見ると、そこまでして生かされるよりも、寿命と思って死んでいきたいと思う」(30代以下,神経内科,病院勤務)「患者本人としても、無駄に回復の見込みがないのに苦しみたくないと思うが、書面に残すような形で意思表示することまでは考えていなかった。」(40代,精神・神経科,病院勤務)「自分としては延命治療は望まない。しかし家族がどんな形でも生きていることを望む(もしくは何らかの精神的支えになりうる)場合は家族の判断にまかせたい。」(40代,腎臓内科,病院勤務)「私と家内は、生命末期には無駄な延命措置(治療ではない)をしないように書面に残し、家族にも伝えてあります。延命措置をするかしないかはあくまで本人の意思で、リビング・ウイル をきちんとしておくべきでしょう。延命措置を望む人はそれで結構でしょう。」(60代以上,整形外科,一般診療所勤務)「自分の祖母が認知症のある状態で昏睡状態になり、経鼻胃管からの栄養剤注入と酸素投与で生命を保ったまま、心臓の限界に達するまで生命を維持していたが、果たしてそれが本当に良かったのか7年経った今でもわからないので、自分は同じようにはしたくないから。」(30代以下,小児科,病院勤務)「面会などもなく、ただただ心肺が活動しているだけというのをたくさんみてきたから」(40代,消化器科,病院勤務)「通常自分でも経管などしますが、最後は結構悲惨です。高齢化進む中でこれらはもう一度考えてみる必要があります。両手を挙げて賛成ではありませんが、個人の意志を尊重した最期も必要かもしれません」(50代,内科,病院勤務)「伯母がくも膜下出血で植物状態になり、二年間見舞い、看病していた母の精神的負担をみていたから。」(50代,精神・神経科,病院勤務)「延命治療でだんだん状態が悪くなる姿を家族にさらしたくない。できるだけ自然な状態で亡くなりたい。」(50代,小児科,病院勤務)「一度延命治療を始めてしまうと、それを中止するのが家族も医師も難しい判断をせまられるから」(50代,小児科,一般診療所勤務)「『悲しいけど仕方ない』と惜しまれながら最期を迎えられたら幸せかと思っています。『やっと終わった』と思われての最期は避けたいです」(30代以下,内科,病院勤務)「延命治療を行い,した甲斐があったという症例が非常に少ない印象」(30代以下,外科,病院勤務)「父の死の直前、同じような状況になった。無理な延命は、かえって父を苦しめているような気がした」(50代,眼科,一般診療所勤務)「カルテに書く事はあるが、専用の用紙はない状態です。 トラブルなどが多い為、残した方が良いです」(30代以下,内科,一般診療所勤務)「そういう状況になったとき、自分の体はもう自分のものではなく、家族など残される人のものかと思いますので、家族に決めてもらえば十分です。 葬式なんかも故人のものではなく、生きている人のためのものだと考えていますし」(50代,泌尿器科,一般診療所勤務)「現状では、家族からの希望により途中で延命治療を中止すると、あとでややこしいことになる可能性があるから」(30代以下,消化器科,病院勤務)「10年前は、新生児集中治療室NICUに勤務で、超未熟児を必死で治療し、後遺症なき生存をめざして心血を注ぐ日々でした。 一生懸命救命しえた幼い命ですが、脳出血や脳性麻痺など後遺症も多く、一生人工呼吸器が必要だったり、よくても車椅子、寝たきりの状態の子も少なくありません。苦労や愚痴も口にせず、我が子のために一生介護する親御さんたちを数多くみてきましたが、やはり家族の負担はあまりに大きかったのを間近でみていたので、自分の時には延命を望まない思いが強いです」(30代以下,小児科,一般診療所勤務)「自身では控えてほしいと考えているが、家族とは相談していないので、急にこのような状態になったら現状では家族の判断通りになると思う。」(30代以下,外科,病院勤務)「やはり主治医がベストと思われる方法を選択してもらえればよいと考えます」(50代,消化器科,一般診療所勤務)「三次救急の現場を数年経験し、本人の意思と家族の意思の違いに悩むことが多かった」(30代以下,消化器科,病院勤務)

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出直し看護塾 呼吸管理に関する基礎知識

1.「おさえておくべき酸素療法の肝」2.「弱点克服!血液ガス」3.「楽しく学ぶ人工呼吸モードの基礎」4.「これで安心!人工呼吸器使用中の患者管理の基礎」 私たちにとって酸素は必要不可欠なものですが、高濃度の酸素を吸入することで呼吸が停止したり、取り返しのつかない合併症を引き起こしたりすることもあります。まずは、酸素療法についてわかりやすく解説します。人工呼吸器のグラフィックモニターやそれぞれの数字の意味、SIMVやCPAPといった各種モードの特徴、呼吸管理に必要な言葉の解説など、日常業務で使える知識が満載です。1.「おさえておくべき酸素療法の肝」人工呼吸器の管理方法について解説します。酸素は、医療において特別なものではなく、外来や病棟、手術室などすべての医療シーンで登場します。「酸素」と言うと、体にいいイメージがあるかもしれませんし、実際、酸素がなければ我々は生きていくことができません。しかし、必要不可欠な酸素も、高濃度の酸素を吸入すると呼吸が停止したり、取り返しのつかない合併症を引き起こすことがあります。色もなく、匂いもない酸素を安全に使用するために、しっかりとした知識を身につけておきましょう。呼吸器の解剖/呼吸器の生理/医療ガス/呼吸とは?/低酸素状態とCO2ナルコーシス/低流量システム(カヌラ、マスク、リザーバー付きマスク)/高流量システム(ベンチュリーマスク)/バッグバルブマスク2.「弱点克服!血液ガス」わけのわからない数字の羅列をスラスラ読んでいく先輩たち…「自分もああなれたら」と血液ガスの本を手に取った人は少なくないでしょう。ところが、実際に本を読んでもチンプンカンプンだったり…。確かに血液ガスは、難しいです。でも、すべてを理解する必要はありません。看護師の業務の中で必要な6つの検査項目だけを抽出し、そこにポイントを絞って解説します。pH の変動には必ず意味があるため、その意味を患者の呼吸状態や人工呼吸器の設定に絡めて判断していけば、「ちょっと二酸化炭素がたまってアシドーシスになっているかなぁ」とか、きっと呟けるようになりますよ。血液ガスの考え方/理解するために必要な正常値/呼吸性アシドーシス/呼吸性アシドーシスの代償反応/慢性呼吸性アシドーシス/呼吸性アシドーシスを呈する疾患とその治療/呼吸性アルカローシス/呼吸性アルカローシスを呈する疾患とその治療3.「楽しく学ぶ人工呼吸モードの基礎」人工呼吸器にグラフィックモニターがつくようになってから、人工呼吸器に詳しい人にとっては、より分かりやすくなりましたが、そうでない人にはより分かりにくくなってしまった、という現実があります。人工呼吸器から流れてくる空気には、色も臭いもありません。胸が上がっているのはわかっても、肺の膨らみを目で確認することはできません。そのために、空気の流れによって変化する気道の圧力や、気流のスピードを目に見えるようにしたのがグラフィックモニターなのですが、これらのことは、本を読んでもなかなか理解できるものではありません。実際に人工呼吸器を動かし、グラフや数字の意味、各種モードの特徴、人工呼吸器を管理していくうえで必要な略語を解説します。苦手だった人工呼吸器がきっと好きになると思いますよ。人工呼吸器の換気様式/グラフィックモニターの特徴/PEEP/I : E比/EIP/調節機械換気/補助調節換気/同期式間欠的強制換気/持続気道陽圧/圧支持換気/人工呼吸器の初期設定/ウィーニング

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重症敗血症、症例数の多さと良好なアウトカムは関連しない

英国の成人重症敗血症患者の一般集中治療室への入院症例数と患者アウトカムの間に関連はないことが、カナダ・McGill大学のJason Shahin氏らの検討で示された。過去30年以上にわたり、種々の外科的、内科的疾患において、治療例数と患者アウトカムの関連の評価が行われている。腹部大動脈瘤の修復や特定のがん種、小児の心疾患の手術など複雑な手技では、症例数とアウトカムの間に強い関連を認め、AIDSや心筋梗塞などの内科的疾患でも症例数の多い施設での治療はアウトカムの改善が確認されている。症例数と人工呼吸器の使用や重症敗血症との関連や、重症敗血症における症例数-アウトカム関連を示唆する研究結果もあるという。BMJ誌2012年6月16日号(オンライン版2012年5月29日号)掲載の報告。集中治療室入院症例数と患者アウトカムの関連を後ろ向きに評価研究グループは、英国の成人敗血症患者の一般集中治療室への入院における、症例数と患者アウトカムの関連について検討するために、統合データベースを用いたレトロスペクティブなコホート試験を実施した。客観的で標準化された重症敗血症の判定基準を満たし、2008~2009年に集中治療室に入院した患者を対象とし、救急病院からの最終的な退院時の死亡率について評価した。症例数と重症度、人工呼吸器装着との間にも関連なし一般化推定方程式を用いた多変量ロジスティック回帰分析で、入院症例数と院内死亡率の関連を評価したところ、英国の成人重症敗血症患者の一般集中治療室への入院症例数と患者アウトカムに関連はなかった。サブ解析にて症例数と疾患の重症度、人工呼吸器装着との交互作用の検定を行ったところ、これらの間にも有意な関連は認めなかった。著者は、「本試験では、成人重症敗血症患者の一般集中治療室への入院症例数と患者アウトカムに関連はみられなかった」とし、「今後は、症例数や一般集中治療室以外の要素に焦点を当てた検討を行うべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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亜鉛追加、乳児の重症細菌感染症に有効

重症細菌感染症が疑われる生後7~120日の乳児に対し、標準抗菌薬治療の補助療法として亜鉛を追加投与すると、治療不成功リスクが低減する可能性があることが、全インド医科学研究所(AIIMS)のShinjini Bhatnagar氏らの検討で明らかとなった。重症細菌感染症は開発途上国の乳児期早期の主要な死因である。標準的な抗菌薬治療に安価で入手しやすい介入法を追加することで、乳児死亡率の抑制が可能と考えられている。Lancet誌2012年6月2日号(オンライン版2012年3月31日号)掲載の報告。亜鉛追加の有効性をプラセボ対照無作為化試験で評価研究グループは、重症細菌感染症の可能性がある乳児に対する抗菌薬治療の補助療法としての亜鉛の有効性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。2005年7月6日~2008年12月3日まで、インド・ニューデリー市の3つの病院に、重症細菌感染症が疑われる生後7~120日の乳児が登録された。これらの患児が、登録時の低体重や下痢の有無で層別化した上で、標準抗菌薬治療に加えて亜鉛10mgあるいはプラセボを毎日経口投与する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は治療不成功率(割り付けから7日以内の抗菌薬の変更を要する病態、21日以内の集中治療[人工呼吸器装着もしくは血管作動薬投与]を要する病態あるいは死亡)とした。治療不成功率:10% vs 17%352例が亜鉛追加群に、348例がプラセボ群に割り付けられ、それぞれ332例、323例が評価可能だった。治療不成功率は、プラセボ群の17%(55/323例)に対し、亜鉛追加群は10%(34/332例)と有意に少なかった[相対リスク低下率:40%、95%信頼区間(CI):10~60%、p=0.0113、絶対リスク低下率:6.8%、95%CI:1.5~12.0、p=0.0111)。治療不成功を1例回避するのに要する治療例数は15例(95%CI:8~67)であった。死亡例は亜鉛追加群が10例で、プラセボ群は17例と、有意な差はなかったものの亜鉛追加群で低下する傾向を認めた(相対リスク:0.57、0.27~1.23、p=0.15)。著者は、「生後60日までの乳児に限ってもベネフィットが確認された。回復、体重増加、完全経口摂食までの期間には影響はなかった。亜鉛は、標準抗菌薬治療の補助療法として、重症細菌感染症が疑われる生後7~120日の乳児の治療不成功リスクを低減する可能性がある」と結論し、「亜鉛はすでに一般的に使用可能で、多くの低~中所得国で急性下痢の治療薬として市販されており、重症細菌感染疑いの乳児への介入に使用しても医療コストの増分はわずかだ」と指摘している。

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聖路加GENERAL 【Dr.香坂の循環器内科】

第1回「階段がつらいのは歳のせい ? 」第2回「夜間の呼吸困難は花粉症のせい ? 」第3回「心雑音と言われたのですが元気なんです」第4回「ためらってはいけないCAB」 第1回「階段がつらいのは歳のせい ? 」地下鉄階段昇降時などに胸部圧迫感を感じるようになった50歳男性。他の領域の胸痛疾患に比べてリスクの高い場合が多い循環器疾患。まずは、この患者が循環器疾患かどうかを確かめることが重要です。胸痛の鑑別において大切なのは、1にも、2にも問診です。問診は、3つのポイントをおさえればOK。このような典型的な狭心症患者の他、顎が痛い、歯が痛いと訴えてくる患者さんも放散痛によるもので、実は心筋梗塞や狭心症だった、という非典型的な例もOPQRST3Aを使って解説していきます。また、胸痛においては、ACS(急性冠動脈症候群)という概念が重要になってきます。その診断方法についても詳しくお伝えします。第2回「夜間の呼吸困難は花粉症のせい ? 」数年前から動悸を自覚していた44歳の男性。夜間に呼吸困難が出るようになり、起き上がってもすぐには改善しなくなってしまいました。呼吸困難の原因はさまざまですが、起き上がっても改善しないなど心疾患が疑われます。特に、発作性夜間呼吸困難や起座呼吸は、心不全である確からしさが高い症状です。頚静脈、心音などの身体所見、X線、心エコーなどの画像診断、血液検査として有用性の高いBNPによって心不全であるかどうかを確認した結果、この男性は心不全であることがわかりました。そして、その原因については驚くべき事実が・・・。III音の聞き分け方、薬剤の使い方については「北風と太陽」を引用するなど、香坂先生ならではのユニークな講義が展開されます。第3回「心雑音と言われたのですが元気なんです」長い間微熱が続いたため、病院を訪れた62歳の男性。健診で「心雑音がある」と言われましたが、スポーツもこなし元気に過ごしていました。心雑音をみたときには、まず経過観察でよいものか、それともすぐに処置が必要なものかを見分ける必要があります。最強点がどこにあるのか、収縮期か拡張期か、収縮期であれば駆出性か逆流性かという鑑別が重要になります。この患者は2年後に症状が出始め、重症のMRと診断され、手術を受けることになりました。重症のMRは、10年以内に死亡、または手術を実施する確率が90%と高く、フォローが重要となります。ポイントは、重症度によってスパンを短くして、心不全症状やEFの低下がないかなどを慎重に観察することです。また、僧帽弁、大動脈弁治療に関して、最新の弁膜症手術も紹介していきます。第4回「ためらってはいけないCAB」最近動悸がするということで診療所を訪れた32歳男性。待合室で診察を待っている時、突然倒れて心肺停止状態になってしまいました。今まで心肺停止というと、まずA(気道確保)、続いてB(人工呼吸)の後、C(心臓マッサージ)という手順が常識でしたが、ACLSのプロトコル改訂により、ABCからCABと変わってきました。すなわち、なにはなくとも即座に心臓マッサージを!ということです。そこで、本来求められる心肺蘇生法に対し、病院外で行われるCPRの現状や、心臓マッサージの基本原理をしっかりと見直していきます。また、改訂で変更された薬剤、その効果や投与のタイミングについても具体的に紹介します。心肺蘇生後は患者の状態をよくみて判断していくことが重要となりますが、具体的に何をすべきか、また、突然死を防ぐための方法、心電図から突然死の確率が高い疾患の読み方についてもご紹介します。

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ARDSに対するサルブタモール治療により死亡率が増加

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する早期のサルブタモール静脈内投与による治療は、プラセボに比べ28日死亡率が有意に高く、転帰を悪化させると考えられることが、英国・Warwick大学のFang Gao Smith氏らが行ったBALTI-2試験で示された。人工呼吸器装着患者の約14%にARDSがみられ、その死亡率は40~60%に達し、生存例もQOLが大きく損なわれることが報告されている。ARDSの治療では、短時間作用性β2アドレナリン受容体刺激薬であるサルブタモールの最大7日間の静脈内投与により、肺血管外水分量やプラトー気道内圧が低下することが、無作為化対照比較第II相試験で示されている。Lancet誌2012年1月21日号(オンライン版2011年12月12日号)掲載の報告。サルブタモールの死亡率抑制効果を評価する無作為化試験BALTI-2試験の研究グループは、ARDSに対するサルブタモールの最大7日間静脈内投与の死亡率の抑制効果を評価する多施設共同無作為化プラセボ対照試験を実施した。2006年12月~2010年3月までに、イギリスの46の集中治療施設からARDS発症後72時間以内の16歳以上の人工呼吸器装着患者が登録され、サルブタモール(15μg/kg標準体重/時)あるいはプラセボを最大7日間投与する群に無作為に割り付けられた。患者、介護士、担当医には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は、無作為割り付けから28日以内の死亡とした。中間解析で28日死亡率が有意に高く、試験中止に326例が登録され、サルブタモール群に162例が、プラセボ群には164例割り付けられた。両群で1例ずつが同意を取り消したため、それぞれ161例、163例で評価が可能だった。2回目の中間解析の結果、安全性に関する懸念により登録は中止された。28日死亡率は、サルブタモール群が34%(55/161例)と、プラセボ群の23%(38/163例)に比べ有意に高かった(リスク比:1.47、95%信頼区間:1.03~2.08)。著者は、「ARDSに対する早期のサルブタモール静脈内投与による治療は忍容性が不良であった。効果が得られる可能性は低く、転帰を悪化させると考えられた」と結論し、「人工呼吸器装着ARDS患者に対するβ2作動薬によるルーチン治療は推奨されない」としている。(菅野守:医学ライター)

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新たなサーファクタント治療が早産児の人工呼吸器適応を低減

持続的気道陽圧法(CPAP)で自発呼吸が保持されている早産児では、細いカテーテルを用いたサーファクタント治療によって人工呼吸器の適応が低減することが、ドイツLubeck大学のWolfgang Gopel氏、Cologne大学のAngela Kribs氏らが実施したAMV試験で示された。サーファクタント治療は、通常、呼吸窮迫症候群の治療のために人工呼吸器を装着された早産児に気管内チューブを介して施行されるが、挿管せずに安定状態が保持されている早産児にはCPAPの不利益を考慮してこの治療は行われない。一方、ドイツの新生児集中治療施設では、気管内挿管や人工呼吸器を必要としないサーファクタント治療(治療中のみ気管内に細いカテーテルを留置してCPAPを行いながら施行)が広く普及しつつあるという。Lancet誌2011年11月5日号(オンライン版2011年9月30日号)掲載の報告。人工呼吸器の使用を回避して自発呼吸をうながす新たなサーファクタント治療AMV(Avoiding Mechanical Ventilation)試験の研究グループは、早産児において人工呼吸器の使用を回避して自発呼吸を促す新たなサーファクタント治療の有用性を評価するための無作為化対照比較試験を行った。2007年10月~2010年1月までに、ドイツの12の新生児集中治療施設に在胎週数26~28週、出生時体重1.5kg未満の早産児220人が登録された。これらの新生児が、生後12時間以内に標準治療群あるいは介入群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。すべての早産児はCPAPで安定状態を保持され、必要に応じてレスキュー挿管が行われた。介入群の早産児には、自発呼吸をうながすために吸入気酸素濃度(FiO2)が0.30以上となるよう、喉頭鏡で気管内に細いカテーテル(2.5~5 french)を留置して経鼻的CPAPが施行された。カテーテル留置後に喉頭鏡を外して1~3分間の気管内サーファクタント治療(100mg/kg体重)を行い、治療終了後は即座にカテーテルを抜去した。主要評価項目は、生後25~72時間において、人工呼吸器の適応もしくは人工呼吸器は使用しないが二酸化炭素分圧(pCO2)65mmHg(8.6kPa)以上かFiO2 0.60以上、あるいはその双方を要する状態が2時間以上に達した場合とした。生後2~3日および在院期間中の人工呼吸器適応率が有意に改善介入群に108人が、標準治療群には112人が割り付けられ、すべての新生児が解析の対象となった。生後2~3日における人工呼吸器の適応率は介入群の28%(30/108人)に対し標準治療群は46%(51/112人)であり、有意な差が認められた(絶対リスク低下:-0.18、95%信頼区間:-0.30~-0.05、p=0.008)。在院期間中の人工呼吸器適応率は介入群の33%(36/108人)に比べ標準治療群は73%(82/112人)と、有意差がみられた(絶対リスク低下:-0.40、95%信頼区間:-0.52~-0.27、p<0.0001)。人工呼吸器使用日数中央値は、介入群が0日、標準治療群は2日であり、生後28日までに酸素補給療法を要した早産児は30%(30/101人)、標準治療群は45%(49/109人)(p=0.032)であった。死亡数は介入群が7人、標準治療群は5人、重篤な有害事象はそれぞれ21人、28人であり、いずれも有意な差はなかった。著者は、「CPAPによって自発呼吸が保持されている早産児に対する細いカテーテルを用いたサーファクタント治療は、標準治療に比べ人工呼吸器の適応を低減させた」と結論したうえで、「鎮痛薬や鎮静薬の使用は主要評価項目に影響を及ぼさなかったが、極度な未熟児ではこれらの薬剤による血圧低下や脳灌流障害の有害な影響が指摘されており、介入群で使用頻度が低かったことがベネフィットにつながった可能性もある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

308.

腸管出血性大腸菌O104: H4感染による重度神経症状に免疫吸着療法が有効

腸管出血性大腸菌O104: H4感染に起因する溶血性尿毒症症候群(HUS)患者にみられる重篤な神経症状のレスキュー治療として免疫吸着療法が有効なことが、ドイツ、エルンスト・モーリッツ・アルント大学のAndreas Greinacher氏らの検討で明らかとなった。2011年5月の北ドイツ地方におけるShiga毒素産生性腸管出血性大腸菌O104: H4の感染拡大により、血漿交換療法や抗補体抗体(eculizumab)に反応しない腸炎後の溶血性尿毒症症候群や血栓性微小血管症が多発した。患者の中には、腸炎発症の1週間後に発現した重篤な神経学的合併症のために人工呼吸を要する者がおり、これは症状の発現機序に抗体が介在することを示唆するという。Lancet誌2011年9月24日号(オンライン版2011年9月5日号)掲載の報告。免疫吸着療法の有用性を評価するプロスペクティブな非対照試験研究グループは、大腸菌O104: H4感染に関連して重度神経症状がみられる患者に対する、レスキュー治療としての免疫吸着療法の有用性を評価するプロスペクティブな非対照試験を実施した。重篤な神経学的症状を呈し、大腸菌O104: H4感染が確認され、他の急性の細菌性感染症やプロカルシトニン値の上昇がみられない患者を対象とした。12Lの血漿量のIgG免疫吸着処置を2日間行った後、IgG補充(0.5g/kgの静脈内IgG投与)を実施した。連日、複合的神経症状スコア(低いほど良好)を算出し、免疫吸着療法前後の変化を評価した。12例中10例で神経症状、腎機能が完全回復初期症状として腸炎を発症したのち腎不全を来した12例が登録された。そのうち10例(83%)は、中央値8.0日(5~12日)までに腎代替療法を要した。神経学的合併症(患者の50%にせん妄、刺激感受性ミオクローヌス、失語、てんかん発作がみられた)の発症までの期間は中央値で8.0日(5~15日)であり、9例で人工呼吸を要した。免疫吸着療法開始の3日前の時点で3.0(SD 1.1、p=0.038)まで上昇した複合的神経症状スコアは、免疫吸着療法施行後3日目には1.0(SD 1.2、p=0.0006)まで改善した。人工呼吸を必要としなかった患者では、免疫吸着療法中に失語の消失など明らかな改善がみられた。人工呼吸を要した9例のうち5例は48時間以内に、2例は4日までに機器が外されたが、残る2例は呼吸障害のために人工呼吸が継続された。12例全例が生存し、10例は神経症状および腎機能が完全に回復した。著者は、「大腸菌O104: H4感染に起因する溶血性尿毒症症候群患者の重篤な神経症状の病因として抗体の関与が示唆される。免疫吸着療法は、これらの重篤な合併症を迅速に改善するレスキュー治療として安全に施行可能である」と結論している。(菅野守:医学ライター)

309.

院外心肺停止のバイスタンダー心肺蘇生、人工呼吸併用の従来法で良好なアウトカム

 その場に居合わせた者(バイスタンダー)が行う人工呼吸+胸骨圧迫による心肺蘇生(CPR)は、胸骨圧迫単独によるCPRに比べて良好なアウトカムをもたらすことが、奈良県立医科大学健康政策医学講座の小川俊夫氏らが行った観察試験で示された。バイスタンダーによる救急救命処置としては、現在、胸骨圧迫単独によるCPRが唯一の方法として普及しているが、院外心肺停止患者では従来のマウス・トゥ・マウスによる人工呼吸と胸骨圧迫を併用するCPRとの効果の差は明確でないという。BMJ誌2011年2月5日号(オンライン版2011年1月27日号)掲載の報告。約4万例を対象とした日本の全国的な観察試験  研究グループは、院外心肺停止患者に対する胸骨圧迫単独によるCPRと、従来のマウス・トゥ・マウスによる人工呼吸+胸骨圧迫によるCPRの有用性を比較する日本全国規模の地域住民ベースの観察試験を実施した。2005年1月~2007年12月までに院外で倒れ、適格基準を満たした患者10万1,781例のうち、バイスタンダーCPRが施行されなかった患者(5万6,851例)などを除く4万35例が解析の対象となった。胸骨圧迫単独群に2万707例が、人工呼吸+胸骨圧迫群には1万9,328例が割り付けられ、救急車で病院に搬送された。 主要評価項目は、より良好なアウトカムの関連因子としての1ヵ月生存率および良好な神経機能(正常な脳機能あるいは中等度の脳機能障害)を保持した1ヵ月生存率であった。1ヵ月生存率:8.7%vs. 10.3%、神経機能保持1ヵ月生存率:4.6%vs. 5.6% 人工呼吸+胸骨圧迫群は胸骨圧迫単独群に比べ、1ヵ月生存率(8.7%vs. 10.3%、調整オッズ比:1.17、95%信頼区間:1.06~1.29、p=0.002)および良好な神経機能を保持した1ヵ月生存率(4.6%vs. 5.6%、同:1.17、同:1.01~1.35、p=0.037)がいずれも有意に優れていた。 両群ともに、良好な神経機能を保持した1ヵ月生存率は高齢になるほど低下し、CPR開始の遅れが10分までの間は時間の経過とともに低下した。心停止の原因が心臓以外の場合、人工呼吸+胸骨圧迫群における良好な神経機能を保持した1ヵ月生存率は、より若年の患者で有意に大きく(p=0.025)、CPR開始時間が遅くなるほど有意に上昇(p=0.015)した。心停止の原因が心臓の患者では、両群間でCPR開始時間によるベネフィットの差は認めなかった(p=0.369)。 著者は、「従来の人工呼吸+胸骨圧迫によるCPRは、院外心肺停止のうち、心臓以外の原因で心停止を来した若年患者およびCPR開始が遅れた患者において、胸骨圧迫単独によるCPRに比べて良好なアウトカムをもたらした」と結論している。

310.

院外心停止、胸骨圧迫のみの心肺蘇生法の有効性がメタ解析で示された

成人の院外心停止例に対する処置では、その場に居合わせた者への救急医療係員による指導は、胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせた標準的な心肺蘇生法(CPR)よりも、胸骨圧迫のみによるCPRに焦点を絞るべきであることが、オーストリア・ウイーン医科大学のMichael Hupfl氏らによるメタ解析で示された。これまでの検討でも、標準的なCPRよりも胸骨圧迫のみを行うCPRの方が、予後が良好な可能性が指摘されているが、有意な予後改善効果を示すエビデンスは確立されていないという。Lancet誌2010年11月6日号(オンライン版2010年10月15日号)掲載の報告。無作為化試験および観察試験の2つのメタ解析研究グループは、胸骨圧迫のみのCPRが院外心停止例の予後を改善することを検証するためのメタ解析を行った。データベース(Medline、Embase)を検索し、1985年1月~2010年8月までに報告された成人の院外心停止例を対象に、胸骨圧迫のみのCPRと標準的CPRを比較した試験を抽出した。一次的メタ解析では、居合わせた者が救急医療係員の指導を受けながらいずれかのCPRを施行する群に無作為に割り付けられた患者を対象とした試験の検討を行い、ニ次的メタ解析では、胸骨圧迫のみのCPRを施行されたコホートに関する観察試験について検討した。解析対象の試験はすべて、生存データを有するものとした。主要評価項目は退院時の生存とし、試験間の不均一性を排除するために両メタ解析ともに固定効果モデルを用いた。退院時生存率、絶対値で2.4%改善一次的メタ解析において、3つの無作為化試験のデータのプール解析を行ったところ、胸骨圧迫のみのCPR群の退院時生存率は14%(211/1,500例)と、標準的CPR群の12%(178/1,531例)に比べ有意に改善されていた(リスク比:1.22、95%信頼区間:1.01~1.46、p=0.040)。生存率上昇の絶対値は2.4%(95%信頼区間:0.1~4.9)、1例の生存に要する処置例数(NNT)は41例(95%信頼区間:20~1,250)であった。ニ次的メタ解析では7つの観察試験が対象となったが、退院時生存率は胸骨圧迫のみのCPR群が8%(223/2,731例)、標準的CPR群も8%(863/11,152例)と同等であった(リスク比:0.96、95%信頼区間:0.83~1.11、p=0.54)。著者は、「成人の院外心停止例に対しては、その場に居合わせた者への救急医療係員による指導は、胸骨圧迫のみによるCPRに焦点を絞るべき」と結論している。(菅野守:医学ライター)

311.

重症ARDS患者への筋弛緩薬早期投与、90日生存率を改善

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)で人工呼吸器を装着した患者に対する、新しい筋弛緩薬である神経筋遮断薬cisatracurium besylateの早期投与が、臨床転帰を改善したことが、フランスUniversite de la Mediterranee Aix-MarseilleのLaurent Papazian氏ら「ACURASYS」研究グループにより報告された。神経筋遮断薬投与は酸素化を改善し、人工呼吸器によって誘発された肺損傷を改善する可能性の一方、筋力低下を招く可能性が懸念されていたが、Papazian氏らによる多施設共同プラセボ対照二重盲検無作為化試験の結果、筋力低下を招くことなく90日生存率が改善したことが認められたという。NEJM誌2010年9月16日号より。340例をプラセボ対照で無作為割り付け試験は、2006年3月~2008年3月にフランス国内20施設のICUに、48時間以内に収容された重症ARDS患者340例を、神経筋遮断薬cisatracurium besylate(178例)またはプラセボ(162例)のいずれかを、48時間にわたって投与するよう無作為に割り付けられた。重症ARDSの定義は、動脈血酸素分圧(PaO2)/吸入酸素濃度(FiO2)150未満、呼気終末陽圧5cmH2O以上、1回換気量6~8mL/kg予測体重とされた。主要評価項目は、退院前または試験登録後90日以内に死亡した患者の割合(90日院内死亡率)とした。あらかじめ定義された共変量とベースラインの群間差はCoxモデルを用いて補正された。90日生存率を改善、呼吸器を外す時間も増加プラセボ群との比較によるcisatracurium群の90日死亡のハザード比は、PaO2/FiO2・呼気プラトー圧・重症度スコア(Simplified Acute Physiology II score)をベースラインで補正後、0.68(95%信頼区間:0.48~0.98、P=0.04)だった。90日粗死亡率は、cisatracurium群が31.6%(95%信頼区間:25.2~38.8)、プラセボ群が40.7%(同:33.5~48.4)(P=0.08)。28日死亡率は、cisatracurium群23.7%(同:18.1~30.5)、プラセボ群33.3%(同:26.5~40.9)(P=0.05)だった。ICUでの後天性の不全麻痺の発生率は、2群間で有意差は認められなかった。これらの結果から研究グループは、重症ARDS患者への神経筋遮断薬による早期投与は、筋力低下を招くことなく、補正後90日生存率を改善し、人工呼吸器を外す時間が増したと結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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一般市民による心肺蘇生は胸骨圧迫に集中させた方がよいか?(その2)

一般市民による心肺蘇生(CPR)について、スウェーデン・ストックホルム・プレホスピタルセンターのLeif Svensson氏らは、「心停止で倒れている人と遭遇した場合の一般市民によるCPRは、より簡単に学べ実行できる胸骨圧迫のみを実行すべきという仮説を、後押しする結果を得た」とする、胸骨圧迫単独実施と胸骨圧迫+人工呼吸実施との有効性を比較した前向き無作為化試験の結果を報告した。30日生存率について検討した結果、両群間で有意差が認められなかったという。NEJM誌2010年7月29日号掲載より。通報者へのCPR指示を、胸骨圧迫単独実施群、+人工呼吸実施群に無作為化し検討救急医療サービス(EMS)隊員が到着する前に、通報を受けた通信隊員は心停止が疑われる患者に対し、通報をしてきた現場に居合わせた一般市民に電話で、CPRを実行するよう指示を与える。その指示方法についてこれまでの試験で、胸骨圧迫だけのCPR実行指示の治療有効性が、標準とされているCPR実行(胸骨圧迫+人工呼吸)とほとんど変わらない、むしろ胸骨圧迫だけの方が優れているとする報告もあったが、それら試験結果は、生存の違いを評価する原動力とまではなっていなかった。そこで、Svensson氏らは、胸骨圧迫単独実施の優位性を評価する前向き無作為化試験(人口900万人のスウェーデン国内にある18の救急医療派遣センター、1センターのコール件数は約1万件/日)を行った。試験は、院外心停止が疑われ証言者がいるケースを、胸骨圧迫単独実施群と、胸骨圧迫+人工呼吸の標準実施群とに無作為化し、30日生存率を主要エンドポイントとして実行された。両群の30日生存率に有意差認められず主要エンドポイント解析対象となるデータは、2005年2月~2009年1月の間に、1,276例あった。そのうち、620例が胸骨圧迫単独実施群に割り付けられ、652例が併用の標準実施群に割り付けられた。結果、両群の30日生存率は同等だった。単独群は8.7%(54/620例)、標準群は7.0%(46/656例)、絶対差1.7ポイント(95%信頼区間:1.2~4.6、P=0.29)で有意差は認められなかった。(武藤まき:医療ライター)

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一般市民による心肺蘇生は胸骨圧迫に集中させた方がよいか?(その1)

一般市民による心肺蘇生(CPR)について、米国ワシントン大学のThomas D. Rea氏らは、「胸骨圧迫を重視させるべきとの戦略を後押しする結果を得た」とする、胸骨圧迫単独実施と胸骨圧迫+人工呼吸実施との有効性を比較した無作為化試験の結果を報告した。全体的な生存率改善に関しては両群で有意な差はみられなかったが、発作時の臨床症状別で解析した結果で、単独実施群の生存率の方が高い傾向がみられたという。NEJM誌2010年7月29日号掲載より。通報者へのCPR指示を、胸骨圧迫単独実施群、+人工呼吸実施群に無作為化し検討一般市民によるCPRで、人工呼吸を実施することの有効性については明らかになっていない。Rea氏らは、胸骨圧迫単独実施よりも、胸骨圧迫+人工呼吸併用実施の方が、生存率を改善するであろうと仮定し、多施設共同無作為化試験(米国ワシントン州キング郡とサーストン郡、英国ロンドン市)を行った。試験は、救急医療サービスに通報があった際に、通信隊員が胸骨圧迫のみを実行するよう指示する場合、もしくは胸骨圧迫+人工呼吸を実行するよう指示する場合に無作為に割り付け実行された。対象は、18歳以上の院外心停止のケース(外傷、溺水、仮死状態は除く)で、通信隊員が、通報してきた現場に居合わせた一般市民によるCPR実行が必要と判断した場合だった。主要評価項目は、生存退院とし、副次評価項目は、神経学的転帰良好な生存退院[CPC(Cerebral Performance Category)5段階評価で1、2に該当]とされた。なお、患者に対する事前承諾は行われなかったが、生存回復後に試験に組み入れられていたことが知らされた。生存退院者割合は有意差認められず、ただし……患者登録は3地域トータルで、2004年6月1日~2009年4月15日に行われ計1,941例が試験に組み入れられた。内訳は、胸骨圧迫単独群に割り付けられたのは981例、胸骨圧迫+人工呼吸併用群は960例だった。結果、生存退院した人の割合は、単独群12.5%、併用群11.0%で、両群間に有意差は認められなかった(絶対差:1.5ポイント、95%信頼区間:-1.4~4.4、P=0.31)。副次評価項目の、神経学的転帰良好で生存退院した人の割合も両群間に有意差は認められなかった(それぞれ14.4%、11.5%、P=0.13)。ただし臨床症状別に検討した事前規定のサブグループ解析の結果、単独群の方が生存退院者の割合が高い傾向がみられた。すなわち、心原性心停止ケースにおける生存退院者の割合は、単独群15.5%に対し併用群12.3%(P=0.09)、AED適応ケースでは単独群31.9%に対し併用群25.7%(P=0.09)だった。(武藤まき:医療ライター)

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小児の非心原性の院外心停止、胸部圧迫に人工呼吸を併用する心肺蘇生が有効

院外で非心原性の原因で心停止をきたした子どもに対する処置として、胸部圧迫に人工呼吸を併用する従来の心肺蘇生(CPR)は、胸部圧迫のみのCPRに比べ神経学的予後が良好な生存の可能性を高めることが、京都大学保健管理センターの北村哲久氏らが実施したコホート試験で明らかとなった。アメリカ心臓協会(AHA)は、成人の院外心停止例にはその場に居合わせた目撃者による胸部圧迫のみのCPRを推奨しているが、子どもはその限りでない。これは、成人の心停止は心原性の場合が多く、従来型CPRと胸部圧迫のみのCPRに生存率の差はなく、また胸部圧迫単独の方が簡便であるのに対し、小児の心停止は心原性よりも呼吸器疾患(窒息、溺水など)を原因とする場合が多く、動物実験では呼吸器疾患による心停止には人工呼吸併用CPRの方が予後が良好なことが示されているためだ。Lancet誌2010年4月17日号(オンライン版2010年3月3日号)掲載の報告。種別、年齢、心停止の原因などでCPRの効果を比較する前向きコホート試験研究グループは、小児の院外心停止例に対するその場に居合わせた目撃者による処置として、胸部圧迫に人工呼吸を併用する従来型CPRと胸部圧迫のみのCPRの効果を比較する地域住民ベースのプロスペクティブなコホート試験を行った。2005年1月1日~2007年12月31日までに、院外で心停止をきたした17歳以下の小児5,170例が登録され、年齢、心停止の原因、目撃者の有無、CPRの種別などが記録された。主要評価項目は、院外心停止後1ヵ月の時点における良好な神経学的予後(Glasgow-Pittsburgh脳機能カテゴリーが1あるいは2)とした。1~17歳の非心原性心停止例の良好な予後率:従来型7.2%、胸部圧迫のみ1.6%全心停止例のうち、3,675例(71%)が非心原性、1,495例(29%)は心原性であった。居合わせた目撃者によって、1,551例(30%)に人工呼吸を併用する従来型CPRが施行され、888例(17%)は胸部圧迫のみのCPRを受けた。12例でCPRの種別が同定されなかった。CPRの有無別の解析では、良好な神経学的予後の割合は、居合わせた目撃者によるCPRを受けた小児が4.5%(110/2,439例)と、CPRを受けなかった小児の1.9%(53/2,719例)に比べ有意に高かった(補正オッズ比:2.59、95%信頼区間:1.81~3.71)。次に、年齢別(1歳未満の幼児、1~17歳の小児)、心停止の原因別(非心原性、心原性)の解析を行った。1~17歳の非心原性心停止例の良好な神経学的予後率は、居合わせた目撃者によるCPR施行例が5.1%(51/1,004例)と、CPR非施行例の1.5%(20/1,293例)に比べ有意に優れた(補正オッズ比:4.17、95%信頼区間:2.37~7.32)。CPRの種別では、従来型CPRの良好な予後率は7.2%(45/624例)と、胸部圧迫単独CPRの1.6%(6/380例)に比べ有意に優れた(補正オッズ比:5.54、95%信頼区間:2.52~16.99)。1~17歳の心原性心停止例においては、良好な神経学的予後率は居合わせた目撃者によるCPR施行例が9.5%(42/440例)と、CPR非施行例の4.1%(14/339例)に比べ有意に高値を示した(補正オッズ比:2.21、95%信頼区間:1.08~4.54)が、種別間の比較では従来型CPRが9.9%(28/282例)、胸部圧迫単独CPRは8.9%(14/158例)と差を認めなかった(補正オッズ比:1.20、95%信頼区間:0.55~2.66)。1~17歳の小児に比べ、1歳未満の幼児の院外心停止例の神経学的予後は、一様に不良であった[4.1%(127/3,076例)vs. 1.7%(36/2,082例)、補正オッズ比:1.60、95%信頼区間:1.07~2.36]。これらの結果から、著者は「院外で非心原性の心停止をきたした小児に対しては、居合わせた目撃者が胸部圧迫に人工呼吸を併用したCPRを行うのが好ましいアプローチである。心原性の心停止の場合は、従来型と胸部圧迫単独のCPRの効果は同等であった」と結論している。また、「医療従事者、安全監視員、教師、子どもを持つ家族など、小児の非心原性心停止に遭遇する機会の多い人々には2つのCPRの訓練を行うのがよいと考えられるが、一般市民には、従来型CPRに比べ、教える側、学ぶ側の双方にとって簡便な胸部圧迫のみのCPRの普及を図る方が、CPRがまったく行われない場合に比べれば望ましいと言えるだろう」と考察を加えている。(菅野守:医学ライター)

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高齢ICU生存者の約4割が、3年以内に死亡

米国の65歳以上で入院中に集中治療室(ICU)での治療を受け生存退院した人のうち、約4割が3年以内に死亡していたことが報告された。年齢や性別などをマッチした対照群に比べ、そのリスクは約2.4倍だったという。米国コロンビア大学救急部門のHannah Wunsch氏らが、3万5,000人超のICU生存者とその対照群について後ろ向きに調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年3月3日号で発表した。非ICU・入院の対照群、入院の有無を問わない対照群を抽出、3年追跡同研究グループは、米国の高齢者向け公的医療保険「メディケア」加入者のうち、入院中ICUで治療を受け、2003年に生存退院した、3万5,308人を抽出した。その対照群として、年齢・性別・人種などをマッチした、(1)2003年に入院し、ICUでの治療は受けず、生存退院した人(入院対照群)、(2)2003年に最低1回はメディケア支払いによる医療を受けたが、ICUでの治療は受けず、入院の有無も問わない人(一般対照群)――の2つの対照群を抽出した。人工呼吸器を受けたICU生存者、退院後6ヵ月以内の死亡率増大が顕著退院後3年以内の死亡率について比較したところ、ICU群が最も高率で39.5%(1万3,950人)、次いで入院対照群34.5%(1万2,173人)で、補正後ハザード比は1.07(95%信頼区間:1.04~1.10、p

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人工呼吸器装着の重症疾患患者、非鎮静で非装着日数が増加

人工呼吸器装着中の重症疾患患者では、毎日中断しながら鎮静を継続する方法よりも鎮静を行わない方法が、非装着日数を増加させることが、デンマークOdense大学病院麻酔科・集中治療医学のThomas Strøm氏らが実施した無作為化試験で示された。人工呼吸器装着重症疾患患者の標準治療では、通常、持続的な鎮静が行われる。最近は毎日中断しながら鎮静を継続する方法の有用性も示されているが、Odense大学病院の集中治療室(ICU)では非鎮静のプロトコールが標準だという。Lancet誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月29日号)掲載の報告。非鎮静群と中断的鎮静群の非装着日数を比較する単施設無作為化試験研究グループは、人工呼吸器装着期間は毎日中断しながら鎮静を継続する方法よりも鎮静を行わない方法で短縮できることを検証するために、単施設における無作為化試験を実施した。24時間以上の人工呼吸器の装着を要すると考えられる成人重症疾患患者140例が登録され、非鎮静群(70例)あるいは毎日中断しながら鎮静[プロポフォール(商品名:ディプリバンなど)20mg/mLを48時間、以後ミダゾラム(同:ドルミカムなど)1mg/mL]を続ける群(70例)に無作為に割り付けられた。両群ともモルヒネ(2.5あるいは5mg)がボーラス投与された。主要評価項目は人工呼吸器装着後28日までの非装着日数とし、入院~28日までのICU収容日数および入院~90日までの入院日数も記録した。28日までの非装着日数:13.8日 vs. 9.6日48時間以内に死亡あるいは人工呼吸器が抜管された27例が試験から除外された。平均人工呼吸器非装着日数は、非鎮静群(55例)が13.8日と中断的鎮静群(58例)の9.6日に比べ有意に増加した(平均差:4.2日、p=0.0191)。非鎮静群は、ICU在室日数(ハザード比:1.86、p=0.0316)および30日までの入院日数(同:3.57、p=0.0039)がともに、中断的鎮静群よりも有意に短かった。事故による抜管、CTやMRIによる脳検査を要する症例、人工呼吸器関連の肺炎はみられなかった。激越型せん妄の頻度は、非鎮静群が20%(11/55例)と中断的鎮静群の7%(4/58例)に比べ有意に高かった(p=0.0400)。著者は、「人工呼吸器装着重症疾患患者では、毎日中断しながら鎮静を行うよりも鎮静を行わない方法が非装着日数を増加させる」と結論し、「この効果の他施設における再現性を検証するために多施設共同試験を実施すべき」としている。(菅野守:医学ライター)

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ICU収容の人工呼吸器装着患者、毎日の胸部X線検査は本当に必要か?

集中治療室(ICU)に収容され人工呼吸器を装着されている患者に対する胸部X線検査は、病態により必要に応じて施行しても治療の質や安全性を損なうことはないため、従来のように毎日ルーチンに行う必要はないことが、フランス国立保健医学研究所(INSERM)のGilles Hejblum氏らが実施したクラスター無作為化試験で判明した。米国放射線医学会(ACR)は、人工呼吸器装着患者には毎日のルーチン検査として胸部X線を施行し、必要に応じてさらなる検査を行うよう勧告しているが、患者の病態に応じて施行すれば十分との意見もあるという。ルーチン検査には、危機的病態における誤診を発見して対処できる、検査の可否を判断する必要がないという利点があるが、不要な放射線被曝やコストの面では必要に応じた検査のほうが有利と言える。Lancet誌2009年11月14日号(オンライン版2009年11月5日号)掲載の報告。21のICUを2つのクラスターに割り付け、検査法をクロスオーバー研究グループは、ICU収容の人工呼吸器装着患者に対してルーチンの胸部X線検査を毎日行う群(ルーチン検査群)あるいは患者の病態により必要に応じて胸部X線検査を施行する群(オンデマンド検査群)の有効性および安全性を評価するクラスター無作為化クロスオーバー試験を実施した。フランスの18病院に付設された21のICUをルーチン検査群またはオンデマンド検査群に無作為に割り付けて治療を行い(第1期)、その後2つの検査法を入れ替えて治療を実施した(第2期)。各治療期間は個々のICUに20例の患者が登録されるまでとし、患者のモニタリングは退院あるいは人工呼吸器装着期間が30日に達するまで実施した。ICUには967例が登録され、そのうち人工呼吸器装着期間が2日に満たない118例は除外された。主要評価項目は、人工呼吸器装着例数×装着日数(人・日)当たりの胸部X線検査の平均施行数とした。オンデマンド検査で検査数が32%低減、死亡率は同等第1期には、11のICUがルーチン検査群(222例)に、10のICUがオンデマンド検査群(201例)に無作為に割り付けられた。第2期には、第1期のルーチン検査群でオンデマンド検査(224例)が、オンデマンド検査群でルーチン検査(202例)が実施された。全体として、424例に4,607件のルーチンの胸部X線検査が施行され、平均検査施行数は1.09件/人・日であったのに対し、オンデマンドの胸部X線検査は425例に対して3,148件が施行され、平均検査施行数は0.75件/人・日であった(p<0.0001)。オンデマンド検査では、ルーチン検査に比べ胸部X線検査数が32%低減した。装着日数、入院期間、死亡率は両検査で同等であった。著者は、「これらの結果は、ICU収容の人工呼吸器装着患者に対する胸部X線検査は毎日ルーチンに行うのではなく、病態により必要に応じて施行する戦略を強く支持する」と結論し、「膨大な人工呼吸器装着患者の総数からみて、オンデマンド検査は日常診療に実質的なベネフィットをもたらす可能性がある」としている。(菅野守:医学ライター)

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2009新型インフル治療実態:オーストラリア、ニュージーランドの6~8月のICU

「オーストラリアとニュージーランドの集中治療(ANZIC)インフルエンザ研究班」は、両国における2009年冬季(6~8月)の、新型インフル(2009H1N1ウイルス)感染患者に対する集中治療体制および稼働状況に関する情報を収集・分析し発表した。研究班は、新型インフルのパンデミック宣言後の初の冬季シーズンをこれから迎えようとしている北半球の、類似の医療提供体制を有する先進諸国への情報提供と本論を位置付けている。報告は、NEJM誌2009年11月12日号(オンライン版2009年10月8日号)で掲載された。南半球の冬季シーズン(2009年6~8月)に調査ANZICインフルエンザ研究班は、オーストラリアとニュージーランドのすべての集中治療室(ICU)を対象に、発端コホート研究を行った。調査期間は、南半球では2009年の冬季シーズンである6月1日から8月31日の間。新型インフル感染による人口100万人当たりのICUへの入院患者数、入院日数、人工呼吸器の利用日数を算出した。また患者の人口統計学的または臨床上の特性、さらに治療とアウトカムに関するデータを収集した。65歳未満の患者が93%、1日最大ICU占有率は7.4床/100万人、死亡率は14.3%結果、新型インフル感染が確認されICUに入院した患者は合計722例だった(人口100万人当たり28.7例、95%信頼区間:26.5~30.8)。そのうち669例(92.7%)が65歳未満であり、妊婦は66例(9.1%)だった。またデータが入手できた601例の成人を分析したところ、172例(28.6%)がBMI35超だった。新型インフル患者のICU入院日数は、総計で8,815床・日(人口100万人当たり350床・日)だった。ICUでの治療期間は中央値7.0日(四分位範囲2.7~13.4日)であった。データが入手できた706例(64.6%)について調べたところ、456例が中央値で8日間(四分位範囲4~16日)人工呼吸器を装着していた。1日最大のICU占有率は、人口100万人当たり7.4床(95%信頼区間:6.3~8.5)であった。2009年9月7日現在、ICUに入院した722例のうち103例(14.3%、95%信頼区間:11.7~16.9)が死亡し、114例(15.8%)が入院中だった。これらから研究班は、「新型インフルは、オーストラリアとニュージーランドの冬季のICU業務にかなりの影響を及ぼしていた。本データは、北半球の冬季の医療計画の助けとなるだろう」とまとめている。(医療ライター:朝田哲明)

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2009新型インフル、治療の実態:アメリカの4~6月の入院患者

本論は、アメリカの「2009パンデミックインフルエンザA(H1N1)ウイルス入院医療調査チーム」からの報告で、米国で2009年4月1日~6月5日にかけて新型インフルに感染し入院治療を受けた患者(生後21日~86歳)の臨床上の特性について解説したものである。NEJM誌2009年11月12日号(オンライン版2009年10月8日号)に掲載された。入院患者272例のうち、ICU入院25%、死亡7%。ICU入院患者年齢中央値は29歳調査チームは患者カルテから、インフルエンザ様疾患で24時間以上入院し、リアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応法によって2009H1N1ウイルス陽性だった、272例の患者に関するデータを集め分析した。調査対象となった272例のうち集中治療室(ICU)に入院したのは67例(25%)、死亡は19例(7%)だった。ICU入院患者の年齢中央値は29歳(範囲:1~86)。またICUに入院した67例のうち42例(63%)が人工呼吸器を装着していた。24例が急性呼吸不全症候群(ARDS)、21例が敗血症と診断されている。ICUで治療を受けた65例のうち抗ウイルス薬治療を受けたのは56例(86%)で、発症から抗ウイルス薬治療開始までの時間の中央値は6日(範囲:0~24)、発症後48時間以内治療開始は23%だった。入院患者には抗ウイルス薬治療の早期開始が有益入院患者272例のうち、18歳未満の子どもは122例(45%)で、65歳以上の高齢者は14例(5%)だった。また、患者198例・73%(子ども60%、成人83%)は1つ以上の基礎疾患(喘息、糖尿病、心疾患、肺疾患、神経疾患、妊娠)を有していた。妊婦は18例(7%)だった。なお2つ以上の基礎疾患を有していたのは32%だった。入院時に胸部X線撮影を受けた249例のうち100例(40%)に、肺炎と同様の所見が見られた。抗ウイルス薬治療に関するデータが入手できた268例のうち、治療を受けたのは200例(75%)で、発症から治療開始までの時間の中央値は3日(範囲:0~29)、発症後48時間以内治療開始は39%だった。研究チームは、「評価期間中に、新型インフルは肺炎や死亡など入院を要する重度疾患を引き起こすこと、患者の約4分の3に1つ以上の基礎疾患があること、65歳以上では重症の報告が少ないことが確認された」と述べるとともに、「入院患者には早期からの抗ウイルス療法が有益なようだ」とまとめている。(医療ライター:朝田哲明)

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抗生物質「テラバンシン」欧州にて承認申請へ

アステラス製薬株式会社は10月29日、米国テラバンス社(本社:カリフォルニア州サウス・サンフランシスコ)より導入した抗生物質「テラバンシン(一般名)」について、同社の欧州子会社アステラス ファーマヨーロッパB.V.が、成人における「人工呼吸器関連肺炎を含む院内肺炎」および「複雑性皮膚・軟部組織感染症(cSSTI)」を目標適応症として10月26日(現地時間)に欧州医薬品審査庁(EMEA)に承認申請を行ったと発表した。テラバンシンは、細菌の細胞壁合成を阻害するとともに細胞膜透過性の増大作用をあわせ持つ、1日1回投与の脂質化グリコペプチド系の注射剤。米国においては、「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)を含むグラム陽性菌に起因する複雑性皮膚・軟部組織感染症(cSSSI)」の適応症について9月に承認を取得しているほか、「院内肺炎」についても現在、申請中とのこと。また、日本では「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症」を目標適応症として第I相臨床試験段階にあるという。詳細はプレスリリースへhttp://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/post-70.html

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