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もっと知ってほしい、乾癬患者 心の苦しみと全身炎症による合併疾患のリスク 臨床医と患者が語る、乾癬の研究と治療の最新動向

 6月25日、アボット・ジャパン株式会社、エーザイ株式会社の主催でプレスセミナー「もっと知ってほしい、乾癬患者 心の苦しみと全身炎症による合併疾患のリスク」が開催された。聖母病院皮膚科 小林里実氏を講師に、乾癬患者さんをゲストに迎え、乾癬がおかれている現状と、乾癬に罹患した患者さんがどのような症状で苦しんでいるのかを紹介した。乾癬の現状 乾癬では、炎症による表皮細胞の増殖を伴う疾患である。炎症と増殖があるという点で、皮膚炎の中でも湿疹とは異なる。表皮細胞は増殖分化する細胞であり、表皮は常に新生を繰り返すこと(turn over)で外傷や炎症に対処している。乾癬では、炎症により通常は有棘層28日+角層14日のturn overサイクルが4~7日+2日にまで亢進しているため、表皮が厚くなるとともに角層が鱗屑としてどんどん落ちていく。 また、これらの炎症は皮膚表面で起こっているため、見た目にも非常に目立ち、感染症や特殊な皮膚病などと誤解されることが多い。 乾癬の皮膚症状は、境界明瞭な紅斑、銀白色雲母様の鱗屑、盛り上がって触れる浸潤が特徴的である。初発部位は頭部、次いで肘膝などが多いが、全身どこにでも出現する。尋常性乾癬が90%近くを占めるが、そのほかにも関節症性乾癬、滴状乾癬乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬がある。 膿疱性乾癬のうち、急性型は重症で治療に難渋する例が少なくない。また、乾癬性紅皮症は、正常な皮膚がほとんどない、紅皮症を呈する病型である。そして、関節症性乾癬は、非リウマチ性関節炎一つで、の不十分な治療により関節破壊や屈曲変形をきたす。しかしながら、症状に消長があるため、軽症と判断されたり、仙腸関節炎や脊椎炎も腰痛症などとして見逃されることも少なくない。 乾癬の罹患率は欧米で2%。本邦では0.1~0.2%とされているが、生活の欧米化により日本人での発症は増えている。発症年齢は、20歳と40~50歳代の二峰性といわれているが、実際には10代での発症も稀ではない。治療をあきらめて受診しない例のほか、きちんと診断されていない例、脂漏性湿疹などと誤診される例もあり、実際は乾癬として登録されるデータ以上の患者さんがいると予想される。 このような症状を示す乾癬では患者さんのQOLは著しく低い。鱗屑は軽く触れるだけで大量に落ちる。そのために温泉やプールに行けない。皮膚症状が手足にでるため、スカートがはけない、半袖のシャツが着られないなど日常生活での支障は多い。また、このような状態におかれた患者さんは人に見られることが大きな精神的ストレスとなる。ひどい場合は引きこもりとなったり、精神的に支障を来す例も少なくない。生物学的製剤が、より高い治療レベルを達成 乾癬の治療は、外用療法、光線療法、免疫抑制剤など進歩してきたが、近年の生物学的製剤の登場で治療は格段に向上した。これにより、重症の患者さんでも皮疹のない状態を保持する事が可能となってきたのである。PASI(Psoriasis Area Sensitivity Index)90、つまり皮疹の90%改善を達成すると、QOLは著明に改善する事が明らかになった。従来の治療では、皮疹が減り医療者が「良くなった」と思っても、患者さんにとっては満足できる状態ではなく、認識の乖離がみられることも少なくなかった。生物学的製剤によりPASI90を目指すことができるようになり、患者さんのQOLもDLQI 0~1と、日常生活にほとんど支障のない状態を実現することが可能となった。また、生物学的製剤の適応となる関節症性乾癬では、有効な治療を得たことにより医療者側の治療意欲の向上、知識の普及にもつながるなど、生物学的製剤は、乾癬治療を格段に進歩させた。乾癬の病態解明とメタボリックシンドローム 近年、乾癬はメカニズムが解明されて、Th17リンパ球、またその活性経路に関わるTNFα、IL12、IL23などのサイトカインが重要であることがわかってきた。そして、これらのサイトカインをブロックするターゲット療法として、生物学的製剤の登場へとつながった。 さらに、ここ1~2年で新たな知見が加わっている。乾癬に高血圧、脂質異常症、高血糖、高尿酸血症などの合併が多いことは以前から知られていたが、これらの疾患にもTNFαが強く関連することがわかったのである。その結果、乾癬によるTNFαの増加が、イ ンスリン抵抗性、動脈硬化、虚血性疾患のリスクを上昇させるという乾癬マーチの概念まで出てきている。 乾癬の治療目的とゴールは、皮疹の改善からQOLの改善へと変化している。そして、生物学的製剤の出現により、関節症性乾癬も有効に治療できるようになった。さらに、今後はメタボリックシンドロームと心血管イベントの低減までも視野に入れた治療へと変わっていく可能性がある。社会にもっと知ってほしい セミナーでは、3名の患者さんもゲストとして発言をした。そのなかで、患者B氏の事例を紹介する。 B氏は長年、関節症状で悩まされてきた患者さんである。初期は、ふけが出始めることから始まった。その後、背中のこわばり、足先の痛み、そして2ヵ月後に足親ゆびが曲がり始める。皮膚科医を受診し、乾癬と診断されるが、その際に不治の病であるといわれた。そのショックから、診療所、病院、鍼灸など数えきれないほどの医療機関を受診する。その経過の中で、免疫抑制剤で副作用が現れるなど多くの苦痛を経験した。 少し関節症状がよくなると皮膚症状が悪化し始めた。強いステロイド外用薬を大量に使い、ついには全身が赤くなり、やけどのように、少し触っただけで皮膚がむけてしまうようにもなった。服を脱ぐと砂糖を撒いたように皮膚が落ちたそうだ。 このような状態から、勤務先を解雇になり生活保護を余儀なくされる。精神的にも支障をきたし、うつ病と診断される。自暴自棄となりギャンブル依存症、ついに自殺寸前まで精神的に追い込まれたという。 しかしながら、昨年からの生物学的製剤治療が奏効し、現在は誰もBさんを見て病気だという人はいない。だが、関節症性乾癬の症状である脊椎炎が続いて定職につけず、ボランティア活動をしているという。Bさんは長年の経験を話し、「22年間病気を理解してくれる日がくる事を望んでいた。社会にもっと知って欲しい、メディアももっと取り上げてほしい」と訴えた。 最後に小林氏は、「医師は患者から得た乾癬の情報を研究し、新たな治療法の開発に努めている。患者さんや患者会は、患者間の情報共有、医師への疑問・要望の提供など素晴らしい活動をしている。しかし、それだけでは不十分であり、社会の理解とサポートが必要だ。メディアの今後の啓発活動に大いに期待したい」と語った。(ケアネット 細田 雅之)

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乾癬とアトピー性皮膚炎患者に対する教育プログラムは治療に影響を与えるのか?

標準治療に加えて、治療に何らかの影響を与えるような患者教育の実施は、皮膚科領域では比較的新しい概念である。ベルギーのゲント大学病院のBostoen氏らは、乾癬またはアトピー性皮膚炎患者の重症度やQOLに対して12週間の教育プログラムがどのような影響を与えるかを調べるため、無作為化試験(RCT)を実施した。単独施設におけるRCTではあるが、今回実施したような教育プログラムは長期にわたる乾癬治療において付加価値をもたらすことが示唆された。British Journal of Dermatology誌オンライン版2012年6月18日号の報告。本試験では、ゲント大学病院で治療中の乾癬患者(n=29)およびアトピー性皮膚炎患者(n=21)の計50例を治療介入群またはコントロール群に1:1の割合で無作為に割り付け、乾癬の面積と重症度の指標であるPASI(Psoriasis Area and Severity Index)スコア、またはアトピー性皮膚炎の重症度の指標であるSCORAD(Scoring Atopic Dermatitis)やEASI(Eczema Area and Severity Index)を用いて盲検化された観察者によって重症度を測定した。QOLに関しては、皮膚科領域に特化したQOL指標 であるDLQI(Dermatology Life Quality Index)やPDI(Psoriasis Disability Index)などを用いて測定した。フォローアップ期間は9ヵ月間であった。主な結果は以下の通り。 ・試験開始3ヵ月の時点で、乾癬患者には重症度とQOLの有意な改善が見られたが、アトピー性皮膚炎患者には見られなかった。・試験開始3ヵ月の時点で、PASI平均値、DLQI平均値、PDI平均値は、治療介入群においてコントロール群と比較して有意に改善した。(各p=0.036、 p=0.019、 p=0.015)・この改善は、少なくとも6ヶ月間は持続した。(教育プログラム終了後3ヵ月間は改善が継続していたが、試験開始から9ヵ月後には見られなかった)(ケアネット 藤井 美佳) ========================================関連コンテンツ【レポート】第111回皮膚科学会総会

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教育講演「分子標的薬の現状と展望―副作用対策を含めて―」

座長 清原 祥夫氏 (静岡がんセンター 皮膚科)中川 秀己氏(東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座)ビスフォスフォネートの抗腫瘍効果についてはいまだ賛否両論がある。現在までにいくつかの臨床試験の結果が報告されており、システマティックレビューとメタ分析が行われた。ここでは、主にチロシンキナーゼ阻害薬による皮膚症状の特徴と対処法、抗体医薬使用時の注意すべき副作用について前編、後編に分けてレポートする。皮膚科医とチロシンキナーゼ阻害薬・抗体医薬の関わりとは?本教育講演では、まず、自治医科大学皮膚科学教室 大槻マミ太郎氏が分子標的薬の概要について講演を行った。初めに、大槻氏は、今後、シェアを確実に伸ばしていく薬剤として低分子のチロシンキナーゼ阻害薬や高分子の抗体医薬などを挙げ、これらの薬剤がターゲットを絞り込む分子特異的治療の両輪となっていると述べた。キナーゼ阻害薬は主に抗がん剤として用いられており、皮膚科領域でも、悪性黒色腫などに対する開発に期待が高まっている一方、現時点では、その副作用として高頻度に発現する皮膚症状とその対処法に注目が集まっている。また、抗体医薬は免疫疾患のQOL改善に貢献度が高く、皮膚科では乾癬治療薬としてTNFαやIL-12、IL-23を標的とした生物学的製剤に期待が寄せられているが、ほかの適応疾患における使用により、乾癬型の薬疹の発現が報告されており、その対処も議論されている。このことを踏まえ、乾癬の治療に関しては、新しい分子標的薬は標的がピンポイントであるため、副作用も絞り込まれると期待されているが、特定の経路のみ抑制すると別の経路が活性化される可能性があり、未知なる「逆説的副作用」が生じる可能性がある。一方で、シクロスポリンなど作用点は多岐にわたるがさまざまな経路を幅広く抑制しうる薬剤は、副作用も経験的に熟知されており、古典的であるがゆえに、使い勝手の良い薬剤ともいえる、と大槻氏は述べた。EGFR阻害薬の皮膚症状と対処法:主にざ瘡様発疹について滋賀医科大学皮膚科学講座 藤本徳毅氏はEGFR(上皮増殖因子受容体)阻害薬による皮膚症状と対処法について、考察を述べた。EGFR阻害薬には、ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)やエルロチニブ(同:タルセバ)などのチロシンキナーゼ阻害薬と、セツキシマブ(同:アービタックス)やパニツムマブ(同:ベクティビックス)などのモノクローナル抗体があり、非小細胞肺がんや大腸がん、膵がんなどに使用されている。これらの薬剤は、EGFRシグナルを阻害することにより、腫瘍の増殖を抑制し、原疾患への効果を発揮する。一方でEGFRは正常皮膚の表皮基底細胞や外毛根鞘細胞などにも発現することがわかっており、EGFR阻害により、活性化EGFRが減少し、ケラチノサイトの角化異常、角質の菲薄化、角栓の形成が亢進することで高頻度で皮膚障害が生じると言われている。EGFR阻害薬の皮膚症状としては、主にざ瘡様発疹や乾皮症、爪囲炎などが多く、稀なものとしては脱毛性病変などが挙げられる。これら皮膚症状は、重症度が高いほど、原疾患に対するEGFR阻害薬の有効性が高い、つまり生存期間が長いことが示されており、治療効果をはかる指標となる可能性も示唆されている。ざ瘡様発疹の対処法とは?続いて、それぞれの皮膚障害の特徴や対処法について言及した。ざ瘡様発疹はEGFR阻害薬投与後、数日で発現し、4~6週でピークを迎え、6~8週で軽快するケースが多い。また、顔面や体幹に好発し、掻痒や疼痛を伴うが面疱は認められず、大半が無菌性であると言われている。藤本氏は、ざ瘡様発疹は高頻度に発現することがわかっているが、チロシンキナーゼ阻害薬よりもモノクローナル抗体のほうが重症な皮疹が出る印象がある、とつけ加えた。重症度については、日本臨床腫瘍研究グループによって公表されている「有害事象共通用語規準ver4.0 日本語訳JCOG版」(CTCAE v4.0 - JCOG)を用いるのが一般的である。ここでは、体表面積と社会的要素を中心に5段階のGradeに分類されている。ほかにも、各製品の適正使用ガイド等に、掻痒、疼痛の有無によるGradeの目安や発疹出現時の用量調節の基準などが掲載されており、参考にできるとした。対処法については、基本的に、皮膚症状による薬剤の休薬や減量は避けたいとしながら、確立していないものの経験的に実施されているいくつかの治療法について紹介した。ざ瘡様発疹の場合、炎症性ざ瘡の治療に準じて、外用抗菌薬が用いられる。また、局所療法の1つとして、ステロイド外用薬が使用されており、藤本氏は、顔面については、Grade2の場合はstrong class、Grade3でvery strong classを使用すると述べた。しかし、これまでの国内外の文献を見てみると、その評価は一定していないことにも触れ、ステロイド外用薬は即効性はあるが、上手に使いこなすことが重要であると強調した。さらに、Grade2以上または細菌感染合併例には、テトラサイクリン系抗菌薬内服(とくにミノサイクリン)が有効であることも述べた。ミノサイクリンに関しては、海外から、「6週間程度の服用を推奨する」、「皮膚症状の予防効果がある」などの報告がある一方で、「そのエビデンスレベルは不明」とする報告もあるとした。ほかにも、免疫抑制剤の外用薬を使用し、有効性が認められた報告やアダパレンゲルについても言及したが、いずれも一定の評価は得られていないとした。その他の副作用への対処法は?乾皮症は4~35%程度の発現頻度であり、EGFR阻害薬投与後、1~2ヵ月で症状が発現することが多い。治療としては、まずはヘパリン類似物質やワセリン、尿素製剤外用などによって保湿を行い、効果が得られない場合は、ステロイド外用薬を併用する。この症状に関しては、保湿による予防が重要である、と述べた。また、爪囲炎は6~12%程度の発現頻度であり、薬剤投与後2~4ヵ月くらいから見られる症状である。基本的には、浸出液が見られる場合、洗浄、クーリング、テーピング、保湿剤等による処置を行うが、発赤や腫脹が見られる場合には、初期から、very strong~strong classのステロイド外用薬を積極的に用いることが重要である。そのほか、細菌感染合併例には短期間のミノサイクリン内服、さらに外科的処置として部分抜爪や人口爪も考慮されるとした。毛髪異常に関しては、薬剤投与開始後2、3ヵ月で見られることが多いが、頻度は不明であり、中にはまつ毛や眉毛が伸びる症例も見られる。基本的には、EGFR阻害薬を中止しないことには改善しないが、患者さんからの訴えも多くはないため、中止・休薬するケースは少ないと述べた。このようなEGFR阻害薬による皮膚症状では、予防が重要であると言われている。スキンケアの指導は、清潔、保湿、刺激からの保護を基本とし、たとえば、「保湿剤はこすらずに、手のひらでおさえて塗る(スタンプ式塗布)」「外出時は日焼け止めを使用する」「爪は長く伸ばしてまっすぐ切る」などこまめな指導が必要となってくる。藤本氏は、これらスキンケアの方法を患者にわかりやすく説明し、薬剤の写真が入った説明書を配布するなどして、皮膚症状が出ても患者があわてずにすむように指導を行うことも重要である強調し、講演を締めくくった。

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わが国の乾癬治療における生物学的製剤の費用対効果 3剤比較

わが国では、この数年のうちに、中等症から重症の乾癬に対して生物学的治療が導入されるようになった。NTT東日本関東病院の五十嵐氏らは、日本の医療環境におけるアダリムマブ、インフリキシマブ、ウステキヌマブによる治療の費用対効果を評価すべく、本試験を実施。「日本の乾癬治療の現場においても、ウステキヌマブはアダリムマブやインフリキシマブと比較して費用対効果のよい生物学的製剤である」と結論づけている。Journal of Dermatological Treatment誌オンライン版2012年5月28日掲載の報告。本試験は、二重盲検無作為化比較試験のデータを元にPASIスコア(乾癬の面積重症度指数)を用いて有効性を算出し、混合治療比較法にて検討された。また、国内において承認された用量と投与スケジュールにて割り出された薬剤費をコストとした。費用対効果はコストをPASI75達成の確率で割り、算出した。主な結果は以下のとおり。 ・インフリキシマブはPASI75を達成した割合が最も高く(83%)、次にウステキヌマブ45mg(74%)、アダリムマブ(59%)と続いた。・インフリキシマブは最も薬剤費の高い生物学的製剤である一方、ウステキヌマブ45mgとアダリムマブのコストは同程度であった。・1年間の導入療法期において、反応を示した患者一人当たりのコストはウステキヌマブ45mgが最も低く、アダリムマブ、インフリキシマブと続いた。・続く維持療法期においても、一人当たりのコストはウステキヌマブ45mgが最も低かった一方で、インフリキシマブとアダリムマブでは費用対効果に差がなかった。(ケアネット 藤井 美佳) ========================================【関連コンテンツ】いかに寛解を維持するか?アトピー性皮膚炎再発抑制のコツを伝授!

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ヒュミラ、尋常性乾癬と関節症性乾癬に関する承認条件解除

アボット ジャパンとエーザイは23日、尋常性乾癬及び関節症性乾癬等の適応症で販売中のヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ 皮下注40mgシリンジ0.8mL」(一般名:アダリムマブ 、以下:ヒュミラ)について、承認条件となっていた「尋常性乾癬及び関節症性乾癬」に関する使用成績調査(全例調査)に関し、厚生労働省から解除の通達を受けたことを発表した。ヒュミラは、2010年1月に「尋常性乾癬及び関節症性乾癬」に対する効能・効果が承認された。その際の承認条件として「製造販売後、一定数の症例に係るデータが蓄積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること」が付されていたとのこと。今回の承認条件の解除は、同調査の解析結果として厚生労働省に提出した634名の全例調査中間報告書をもとにヒュミラの安全性および有効性が審査された結果に基づき、決定・通知されたものだという。なお解析結果は、これまでに確立されたヒュミラの安全性および有効性を支持するもであるとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.eisai.co.jp/news/news201218.html

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brodalumab、中等度~重度の乾癬に有効

尋常性乾癬に対する、brodalumab(開発コードAMG 827)の有効性と安全性を検討した第2相試験の結果が報告された。brodalumabは、抗IL-17受容体完全ヒト抗体で、第1相試験において、1回700mg投与の6週間時点での相当な改善が示され、本試験では用量プロファイルが模索された。乾癬は、米国では人口の2~3%、欧州では0.6~6.5%に存在するとされる慢性T細胞自己免疫疾患で、皮膚細胞が炎症症状を起こし角化するのが特徴で、最近の研究で、その発現にIL-17が関わっていることが明らかになっている。カナダ・Probity Medical ResearchのKim A. Papp氏らによる本報告は、NEJM誌2012年3月29日号で発表された。重症度の高い患者を4段階の用量別に無作為化Papp氏らによる、第2相無作為二重盲検プラセボ対照用量探索試験は、乾癬面積・重症度指数(PASI、0~72までのスコアで、高いほど重篤であることを示す)が12以上で、体表面積の10%以上が乾癬病変である患者198例を、brodalumab(用量70mg、140mg、210mg を1日目と1・2・4・6・8・10週目に、または280mgを月1回)、またはプラセボを投与する群に、無作為に割り付け行われた。主要エンドポイントは、12週時点のPASIスコアのベースラインからの改善率とした。副次エンドポイントは、12週時点のPASIスコア75%以上の改善、同90%以上の改善、医師による総合評価(sPGA)スコアとした。重症度、医師の総合評価とも、有意に改善12週時点のPASIスコア平均改善率は、brodalumab用量70mg群45.0%、140mg群85.9%、210mg群86.3%、280mg群76.0%で、プラセボ群は16.0%だった(プラセボとの全比較におけるP<0.001)。12週時点のPASIスコア75%以上の改善は、brodalumab用量140mg群(77%)、210mg群(82%)で報告され、プラセボ群は0%であった。また、同90%以上の改善は、140mg群で72%、210mg群で75%であったのに対し、プラセボ群は0%だった(全比較のP<0.001)。sPGAの結果、症状が消失または最小と評価された患者の割合は、プラセボ群3%であったのに対し、brodalumab用量70mg群で26%、140mg群85%、210mg群80%、280mg群69%だった(いずれもプラセボとの比較のP<0.01)。安全性については、brodalumab用量210mg群でグレード3の好中球減少症が2例報告された。すべて用量brodalumab群を合わせた中で、最も高頻度に報告された有害事象は鼻咽腔炎(8%)、上気道感染症(8%)、注射部位紅斑(6%)だった。研究グループは、「12週投与の第2相試験の結果、brodalumabは、尋常性乾癬を有意に改善したことが認められた」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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教授 向井秀樹先生「患者さんと真摯に向き合う中から病態は解明される」

1951年東京都生まれ。76年北里大学医学部卒業。81年同大皮膚科助手、84年同大皮膚科講師兼医局長。91年横浜労災病院皮膚科部長。2007年より現職。日本皮膚科学会専門医・代議員、日本アレルギー学会専門医・指導医・代議員、日本皮膚悪性腫瘍学会評議員他。皮膚科医に求められるもの人と話すことが好きな私は、本当は神経内科医になりたかったのですが、師匠である教授との出会いがきっかけで皮膚科医を選択しました。教授が「向井君、この患者さんはγ-GTP100だよ」と、手や皮膚の状態を見ただけで内臓のことまで言い当てたのです。皮膚科医としての知識を元に視診で内臓までを診てしまう。私はそこに魅力を感じたのです。皮膚疾患は目に見える症状がほとんどのため、そこから発生する患者さんの精神的ストレスは深刻な問題となっています。したがって、皮膚科医には患者さんのメンタルをケアすることも重要な治療の一つなのです。その点からみても、話好きな私にはとてもよい選択だったと考えています。「皮膚科は死なないからいいよね」と言われることがありますが、決してそうではありません。病としての生き死にではなく、病状による精神的苦痛で自殺してしまうケースもあります。だからこそ、精神面でのサポートも考慮しつつケアしてあげるという心構えで、皮膚疾患を治していくことが常に求められているのです。たかが皮膚病ではなく、それに伴う精神的苦痛は個々によりレベルが違うもので測り知れません。今後も私はそこを踏まえた上での最善の治療を、皮膚科医として追求していきたいと考えています。患者さんと医師の信頼関係を構築する間違った情報を鵜呑みにしてステロイドへの偏見を持ち、薬を処方通りに使わなかったり、誤った民間療法に頼ったり、医師との信頼関係を築けないまま治療にも専念できない患者さんもいます。その結果、かえって症状を悪化させているケースも少なくありません。東邦大学ではアトピー性皮膚炎の思い切った治療として、入院をすすめています。これは、仕事などで忙しくて毎日のスキンケアがままならず、症状が悪化して不眠状態になっている状態をクールダウンさせる意味もあります。皮膚炎が起こる原因の中には生活習慣や住環境も関わりますから、その点でも改善指導できますし、日常のストレスからの解放も期待できます。その上で、すべての治療をこちらに任せてもらい、ディスカッションしながら薬の塗り方、包帯の巻き方等まで、こまごまと指導できる利点があります。そうすれば患者さんは退院した後も、症状が悪化した場合には自分で処置することができるようになる。つまり、治療をしながら生活全般の教育指導もできるのが入院の利点です。将来的には、栄養士による食事指導も加えたいと考えています。ステロイドへの偏見をなくしたいステロイドのガイドラインとして現在も使用されている安全塗布量は、40年以上前に海外でステロイドを使う必要のない正常な人を対象にして行われたデータで、その後の追試はありません。では、実際にアトピー性皮膚炎の入院患者さんに多量のステロイドを使用した場合、安全塗布量を超えると副腎機能に影響を与えるのかどうか、私は入院時と退院時の血液や尿を採取して調べました。驚いたことに、入院時のコルチゾール値は平均3.7μg/dLと正常値より明らかに低く、0.1μg/dL以下と極めて強く副腎機能が抑制されている患者さんは半数以上でした。つまり、入院を要するほどの患者さんは、ステロイド治療をする前に皮膚状態の悪化で、すでに副腎機能が強く抑制されていたのです。入院を要しない軽症例では抑制がかかっていないことから、副腎機能の抑制は重症度に起因するという新事実をみつけました。さらに、入院中大量のステロイドを使用したにもかかわらず、退院時のコルチゾール値は11.5μg/dLと正常化していました。入院中に皮膚状態を改善するために使用したステロイドの量は、臨床効果とともに漸減し薬効ランクも落としています。この治療法によって副腎機能に及ぼす副作用は認められず、安全性の高いものといえる結果となりました。同時に測定したACTH値も同様で、退院時には正常値に回復していました。入院での治療は皮膚症状を劇的に改善させるだけでなく、抑制されていた副腎・下垂体機能を大幅に正常化するという画期的なデータでした。しかし、なぜ副腎機能が抑制されてしまうのかはまだ不明で、これからの研究課題です。ホルモンが分泌されない原因のファクターとしては、ストレスや睡眠障害などが挙げられています。確かに来院した患者さんから「眠れなくて、体がだるくて、成績が落ちたり、仕事上でのミスが多くなったりして上司から怒られる。でも、睡眠薬を使うと寝坊してしまう」との意見が大半でした。ところが、入院することによってまず不眠が解消され、リラックスした精神状態になり、熟睡できた喜びを口にした患者さんが7割から8割を占めたのです。これによってインペアード・パフォーマンスも大きく改善されました。尋常性乾癬における最新治療乾癬に関しては劇的な治療薬ができました。これまで患者さんは、お風呂から出て、時間をかけて全身に薬を塗って、包帯を巻いて……という作業を毎日繰り返していました。患者さんの負担はかなり重いものでした。それが、TNF-α阻害薬が出てきたお陰で、今では注射1本で済んでしまう。患者さんのQOLは飛躍的に向上しました。これは大変画期的なことだと思います。私が東邦大学に来る前の病院で、5、6回入退院を繰り返している、30代の関節症性乾癬の男性がいました。それまで、できうる限りの治療を行ったのにもかかわらず、結局車椅子の生活を余儀なくされた患者さんです。TNF-α阻害薬が治験できるとなった時に、真っ先にその彼に声をかけました。しかし、彼には「これまで先生の言うことはすべて聞いてきたが、結局治らなかった。訳のわからない治療法で、もっと悪くなるかもしれない」と断られてしまいました。それでも私は1時間以上かけて説得しました。やっと彼を治せるかもしれない治療薬が出てきたからです。今、彼は杖で歩けるまで回復しています。少し前までは治せなかった難病も、今では治せてしまう。医学の進歩にはいつも驚かされます。ただし、このTNF-α阻害薬ですが、高い臨床効果の一方、免疫を抑えることにより副作用として細菌性肺炎や肺結核など重篤な感染症の発現が危惧されています。日本皮膚科学会では"TNF-α阻害薬の使用指針および安全対策マニュアル"を作成し、本薬の使用に際して、(1)乾癬の診断・治療や合併症対策に精通した皮膚科専門医が行うこと (2)副作用発現に留意して、定期的な検査および重篤な合併症に対して迅速な対応すなわち呼吸器内科や放射線医と密接な連携で対処すること、の2点を挙げていますので注意が必要です。私ども東邦大学大橋病院皮膚科はTNF-α阻害薬使用施設として正式に認定され、すでに2例の患者さんに治療を開始しております。病気の原因究明こそ臨床の醍醐味外来で若手医師に指導する時は「なぜこういう現象が起きたのか?」を自分の頭でよく考えさせるようにしています。単に病状や治療についての説明をするのではなく、なぜこの患者さんはこうなったのか、その"なぜ"を考えさせるようにしています。ありふれた皮膚病は、生活習慣に起因していることが多いのです。だからこそ患者さんのライフスタイルを知り、なぜそうなったのか? 原因となっているものは何か? を見極めないことには治療もできません。たとえば、道を歩いているだけなのに、急にアナフィラキシーショックを起こして倒れた人がいました。朝食にパンを食べて、その後に運動をする。満員電車の中でどっと汗をかいたらアナフィラキシーショックを起こして倒れた。ご飯ならば発作は起こらないのに、パンだとなぜだかショックを起こす。また、就寝時にアナフィラキシーショックを起こす例がありました。なぜか納豆を食べた日に限り、発作を起こしていました。いずれの方も発作を2、3回繰り返し、そのつど救急搬送されるのですが、病名どころか何が原因かさえわからない。前者は小麦アレルギーでした。小麦を食べて運動をする、抗炎症薬のアスピリンを服用する、飲酒、疲労、ストレスといったファクターが加わるとアナフィラキシーショックを起こす。また後者は、まだ10例ほどしか発見されていませんが、納豆アレルギーでした。納豆を食べて30分や1時間で症状が出れば誰でも納豆アレルギーとわかりますが、食べてから10何時間か経って就寝時に出てくるので、何が原因なのかわからなかった。実は納豆のネバネバ成分がアレルゲンをコーティングしているため、腸管からの吸収が遅れ、すぐには症状が出なかったのです。このような患者さんが今まで原因がわからず病院を転々としてきて、それを自分が究明できた時の喜びは大きいですね。臨床の面白さや醍醐味はそこにあると思います。また、最近の技術的進歩も著しいものがあります。これまで皮膚科領域で治療に難渋していた疾患が、上述した生物学的製剤のような画期的な薬剤の登場で治療できてしまう。虚血性壊死を起こした状態でも、皮膚や筋肉に注射して血管を新生する遺伝子治療もそろそろ世に出てくる。たとえば、糖尿病で足先がすでに壊死を起こしている場合、まず内科で糖尿病のコントロールを行い、皮膚科で外用療法をし、最終的には整形外科や形成外科で切断するのが主流となっていたのが、この遺伝子治療により血管を再生することによって指先を切断しなくても済むようなるというものです。これまで、難病といわれてきたものが、最新の治療によって難病ではなくなる時代に変わってきています。これからの皮膚科学は、ますます面白くなってくると思います。質問と回答を公開中!

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教授 向井秀樹先生の答え

アトピー性皮膚炎30年間悩まされています。昨年近医にてネオーラル処方され、症状改善し漸減中止しました。が、症状悪化しネオーラル再開(一回50mg一日2回)しました。この量でないと有効でないようで…飲み続けてもいいのでしょうか?皮膚の良い状態がこんなに楽なのもかと思い知り、ステロイドだろうが免疫抑制剤だろうが(副作用が多少あっても)なんでも使いたい!という思いです。 シクロスポリンは使用ガイドラインが出来ており、体重当たり3mg換算とされています。効果があれば12週間を1クールにして、最低2週間以上の休薬とあります。スタンダードな治療法として有用だと思います。但し、極めて重症度の高い方には中止が出来ない、再度内服するという方も少なくありません。さらに高価なお薬のため経済的にも再燃時のショックは大きいのは理解できます。文章からは十分に理解しているとは言えないかも知れませんが、ダラダラと服用しているより、2クール目&3クール目と繰り返すうちに症状が安定する場合も経験します。焦らず頑張って下さい。そして併用している外用剤ですが、内服していると痒くないからといって使用していない、使用量が大幅に減っていないことはありませんか? こんな高級品を使っているのです、今こそ徹底的に改善して寛解状態を得て元を取るぞ!という覚悟で頑張って下さい。そして、悪化時の原因を考え悪化要因の対処法などの工夫、アドバイスを貰うなどの積極性を出すこと!綺麗な肌を取り戻して下さい!発汗異常について手汗がひどく悩んでいる方がいます。来年4月から社会人になりますが事務関係で書類を触るのに用紙がくしゃくしゃになってしまい、仕事に支障がでてしまうのではないかと・・手術以外になにか方法がありませんか?漢方 刑芥蓮ぎょう湯を服用して様子を見ています。程度は個人差がありますが、お悩みのことと推察いたします。大学時代の友人がひどい汗かきで、いつもタオル持参で授業内容を記載していました。現在会って話をすると昔より良くなっているそうですが完治はしていないとのことです。一般的に自律神経を安定させる内服薬を飲み続け、汗を抑える塩化アルミニウム溶液を外用します。漢方薬を試されているようですが、防己黄耆湯や補中益気湯はお飲みになりましたでしょうか?漢方薬は一般的にすぐに効果がでる訳ではありません、最低1~2ヶ月間は内服してみて下さい。手術に関しては現在しない方向です。脇の下の交感神経を切断するは一時流行りました。確かに手の効果はありますが、背中や胸などが代償性に発汗するようになり患者さんの生活の質が低下するので行わない方が良いようと思います。専門に手術する施設が増えましたが、医療問題にまで発展し陰が薄くなりました。発汗を専門とする施設は少ないですが、東京医科歯科大学皮膚科には専門外来があります。塩化アルミニウム溶液を器械で皮膚に導入するイオントフォレーシス法を行っており、それなりの有用性を報告しています。機会があれば受診してみて下さい。まずは、一般初診を受診して専門外来にまわしてくれるそうです。研究分野について東邦大学大橋病院での研究分野について教えてください。どのような研究をされているのでしょうか?ホームページを拝見しましたが、「研究について」のページを見ても、「爪白癬動物モデルを用いた病理組織学的検討」しかなかったので、もう少し情報を頂きたく思います。(後期研修先を探している研修医です)大橋皮膚科はアトピー性皮膚炎の治療を専門にしております。1~2週間の入院療法は、短期間で急速&確実に改善する方法を言えます。しかし、入院期間に多量に使用する極めて強いステロイド外用剤の副腎機能に関する影響に関して、明らかな文献は見当たりません。そこで、入院前後の血中コルチゾール値を測定してみました。その結果は予想に反して、重症例では入院前のステロイド外用量と関係がなく血中コルチゾール値は大幅に低下。この変化は不可逆性で退院時には上昇して正常値に戻るという結果が得られました。そこで次に、血中ACTHや1日尿中コルチゾール値を測定しました。両者とも同様の推移を呈することより、皮疹の重症度に相関して不可逆性の副腎機能抑制状態が生じていることを昨年11月の日本皮膚科学会誌に報告いたしました。これから入院する患者さんにもその結果をお話して、入院で使用するステロイドの安全性を強調する共に検査し確認を取る旨を了承して頂いております。なお、このデータは昨年の第26回日本臨床皮膚科学会で金賞そして学内の柴田奨学助成金をめでたく選考授賞&授与することが出来ました。次に、この入院期間の前後で治療効果を判定できる"短期的な治療マーカー検査"を検討し、昨年日本アレルギー学会で発表しました。皮膚の改善やかゆみの程度で患者さんは退院を希望されます。明らかな検査データを示し改善度を示すことは疾患の理解を更に深めると思います。大橋皮膚科で行っている入院療法の有用性を評価するために、患者さんを対象にしたアンケート調査を行いこの2月に行なわれる東京支部学術大会で発表します。今年度からは重症例に多くみられる睡眠障害に関して研究を始めます。激しい痒みに伴うものと基礎にある心因反応に伴うものに大別できます。そこで、入院前後の睡眠障害を詳細に分析しその違いを見つけ、後者の人に関しては早期に入眠剤や心療内科的アプローチを検討します。さらに、外来患者にも行い重症度の違い、罹患率など調査していく予定です。ホームページにある"爪白癬動物モデルを用いた病理組織学的検討"は、日本真菌学会および国際学会で報告したので掲載したものです。動物モデルを使って、爪に感染後の経過を臨床面と爪の病理組織像を同時に立体的に観察した興味あるデータです。近く真菌専門の英文誌に掲載されますので、機会があればご一読下さい。この他に、帯状疱疹後の神経痛に関する薬剤間の比較、各種皮膚良性腫瘍におけるダーモスコープ所見の検討、炭酸ガスレーザーを用いた難治性皮膚疾患の治療の試みなどいろいろと考えて行っています。化粧品会社や製薬会社の研究所とも連携して研究し、その成果を順次発表しております。大橋皮膚科では目の前にいる患者さんの疾患をみて、その病態を考えどのようなアプローチをすべきか、解明のための臨床研究を積極的に行っています。珍しい疾患の解明ばかりでなく、ありふれた疾患の新しい考え方や治療法なども発信できればと思っています。やる気のある方は大歓迎です、是非とも来て下さい。アトピー性皮膚炎、診断のコツ研修中なので基本的な質問ですみません。アトピー性皮膚炎の診断について、治療ガイドラインの診断基準を見ながら勉強しているのですが、確信を持って診断を下すことができません。診断間違ってステロイドを処方すると悪化する症例もあるので、少し怖くなっています。今は当然ながら自分一人で診察をして診断を下すわけではないのですが、皮膚科を目指しているので、どうにかしたいです。診断のコツや、先生がどのように勉強されてきたか?などアドバイスいただけると幸いです。難しい問題だと思います。でも専門とする私でも治療&診断ガイドラインは講演のときに使う程度で診療の際に見ることはありません。患者さんを見れば検査をしなくとも100%診断が付きます。皮膚科の醍醐味とはそういうもので、見たことがある、本で読んだ、学会で聞いたなどで診断が出来るのです。要するに、長年たくさんの患者さんを見ることで感じ覚えていくのだと思います。とくにアトピーの難しさは年齢によって皮膚症状の好発部位や臨床像も変化します。時期ごとに出やすい部位、臨床像を整理して覚え、鑑別疾患を挙げその違いを頭の中で除外していく必要性があります。アトピー素因の有無は必要です、そして皮膚所見が有用で湿疹病変と分かってもかぶれもありますし,自家感作性皮膚炎や皮脂減少性皮膚炎もあります。年齢や部位などが役立ちます。血清IgEや各種アレルゲン特異抗体価も診断に有用です。症例をたくさん見て、いろいろな鑑別疾患を整理して頭の中に入れることが重要です。疑問があれば上級医を呼んで,診断の決め手や考え方を教えてもらうのも良いと思います。重症のアトピーとして治療していたら皮膚リンフォーマという事例もあります、皮膚生検も時として有用です。よく見てよく考え疾患の特性を理解して下さい。患者さんを診て、患者さんから教えられる、学ぶものです。民間療法との戦いについて皮膚の疾患、特にアトピーなどは民間療法が多くて困っています。全てを否定するわけではないですが、処方した薬を使わなくなったり、通院しなくなったりするので(大体症状が悪化して戻ってきますが…)かなり厄介です。先生も当然同じような状況かと思います。先生のこれまでのご経験から「このように民間療法と戦っている!」「こんな説明をすると有効だ!」というものがあれば是非ご伝授いただきたく思っております。宜しくお願いします。日本皮膚科学会の努力もあり民間療法は20年前に比べるとかなり淘汰された感はあります。随分日常診療でその対策と説明に苦労させられて来ましたし、重症で入院を要する患者さんの半数以上が民間療法経験者でした。皮膚科医以外の医師や医療関係者が行っている場合が多いようです。患者自身が現在の治療法に不満を抱いているのは事実だと思います。頭ごなしに否定することなく、ゆっくり時間を掛けて話をする・聞くことを心掛けています。どうしてもしたいと言ってくるものに関しては、現在の治療を中止せず併用することや部分使用を認めています。専門家の私が冷静に判断してその効果を認めるなら、継続すべきだし、効果が見えない場合にこだわって皮膚が悪化することは避けたいと話します。ただ、使用しているステロイド剤の副作用を強調して中止を強要し高額な治療費を請求するものは絶対的に反対します。ステロイド治療に不満や不安が強い人が多いので、ステロイドの使用法や安全性を十分説明する必要はあると思います。いずれにせよ、本人は悩んでの事ですから、頭ごなしに叱らない、救済方法を残すやり方で指導しております。 電子付加治療は効きますか?患者より、アトピー性疾患治療として電子付加治療というものがあると聞きました。私も調べてみたのですが、日本アトピー治療学会という聞きなれない学会が推奨しているようです。一見理にかなっているようには見えるのですが、実際のところ如何なものでしょうか?もし電子付加治療について何かご存知でしたらご教示お願いします。残念ながら実態は良く分かりません。私の外来では慢性かつ難治性の重症例が多く受診されますが、受診前の治療法としても電子付加治療は初耳です。アトピー性皮膚炎の治療&診断ガイドラインにも電子付加治療などは記載されていません。日本アトピー治療学会と実にもっともそうなネーミングですが、所属会員がどれほどいるのか?我々のような皮膚科専門医、アレルギー専門医や指導医がいるのか疑問です。これでは質問のお返事とはなりません。丁度インフルエンザAに罹患して自宅待機の身ですので、ホームページをしっかりと拝見しました。基本的におかしいのがアトピーの原因を酸化アレルゲンとして一つに括っていることだと思います。この論理はアトピー性皮膚炎診療&治療ガイドラインをご一読されればすぐ分かります。どこにも記載されている言葉ではありません。アトピーの発生機序は、最近北大皮膚科が皮膚の角層に日本特有のフィラグリン遺伝子多型を30%の症例に発見以来、バリア機能の破綻が発症の第一要因とされました。これに伴い、環境にいるダニやハウスダストが経皮的に侵入してアレルギー炎症が生じるのです。但し乳児は卵など食事の関与が強い時期ですし、年齢的&季節的にアレルゲンや増悪因子は変化します。また最近ではフィラグリン遺伝子多型がなく血清IgE値が正常&主に金属アレルギー関与が示唆される内因性という概念も出ていますし、現代人が抱える心理的なストレスも大きな要因の一つです。またいくつかの要因が複雑に絡み合い病態を複雑にしています。酸化が皮膚の老化以外に種々の炎症を起こすことは知られています。同じ論理で四国の方では活性酸素の除去を目的とした外用剤や内服を行っています。理論は同じで酸素の毒を取り除くというもので、当初大した効果はありませんでした。そこでステロイドを外用剤に混ぜるようになりました。アトピーの機序はすでにお話したように実に複雑で、単に酸素の毒を抑えられても寛解できるか疑問です。理論とシェーマと治療前後の臨床写真だけで基礎的な実験データがありません。ところで、以前中国で何にもよく効く漢方薬がネット上で評判になり日本のアトピー患者も購入者が続発しました。とにかくステロイド張りのすごい臨床効果なのです。そこで成分を調査したところ、何と最強のステロイドが入っていたのです。われわれ専門家でも滅多に使用しない最強のステロイド入りとは驚きです。本当に良い薬は正式に承認され薬価が付きます、新薬の欲しい薬品会社がほっとくわけはありません。入院療法の期間アトピー性皮膚炎に対する治療として「入院療法」が紹介されていましたが、入院期間はどの程度必要なのでしょうか?全国で少数ですが入院療法を当科のように展開しているところはあります。ばらばらで決まり残念ながらありません。治療ガイドラインをみても、マニュアル通りの治療で効果のない場合は入院とありますが期間に関する記載はありません。以前私のいた横浜労災病院では徹底的に良くなるまで入院させました。全国から多数の患者さんが来られたので皮膚症状や検査所見の改善、試験外泊で悪化症状のなしを目安にしたところ平均26.5日という入院期間でした。入院後のアンケート結果をみると、退院時の皮膚症状は改善以上の有効率は93.3%で極めて高く、不変や悪化例はいません。また、調査時の皮膚症状に関しても88.1%と高率に症状が改善維持できていることが判明しました。一方で10%の患者さんが入院期間の長さを指摘、33.3%の方が悪化時の再入院を"出来れば外来で頑張りたい"と答えています。確かに仕事を持つ社会人が1ヶ月近く休むということは問題ですし、家庭を任された主婦そして通学、受験や試験などの問題を抱えた学生にとって長すぎます。そこで、東邦大学に来てからは2週間を原則に致しました。1週間で徹底的に皮膚症状を抑え、残りの1週間で安定化を図る。退院後しばらく頑張ればコントロールできると考えたからです。その結果は2月の東京支部学術大会で発表します。退院時の皮膚症状は改善以上の有効率は92%で極めて高く、調査時の皮膚症状に関しても76%の方が改善維持できていました。一方で9%の患者さんが入院期間の長さを指摘、43%の方が悪化時の再入院を"出来れば外来で頑張りたい"と答えています。重症度や対象患者の遠距離度が異なるかも知れませんが、平均年齢は30歳代と同様でした。やはり2週間でも患者さんにとって長すぎるのかもしれません。そこで次の裏付けデータをもとに1週間に減らしています。そのデータとは、質問3でお答えした入院前後で血中のコルチゾール値を測定した結果を参考にしました。重症度と血中コルチゾール値が相関するなら、入院時に正常値以下まで低下したものが何日入院すると正常値に戻るのか?入院期間と血中のコルチゾール値の推移で計算すると4.8日という値が出ました。そこで、約1週間の入院期間で一過性の副腎機能低下状態は改善できると判断しました。現在、極めて治しにくい重症度の極めて高い皮膚症状を有する例を除き、1週間の入院を基本として初診患者に説明しております。TNF-α阻害薬について乾癬の患者さんがTNF-α阻害薬での治療に興味をもっております。乾癬であれば全て有効なのでしょうか?また、感染症の発現が危惧されると聞きましたが、大橋病院さんではどのような体制で望んでいるのでしょうか?差し支えなければ、これまでの成績も含めて教えていただけると大変参考になります。この治療はどこの施設でも自由に行える訳ではありません。副作用として重要な感染症に対して、診療体制のとれる呼吸器内科医や放射線医の常勤が必要で、皮膚科学会に正式に申請してTNF-α阻害薬使用施設として認定される必要があります。TNF-α阻害薬は2種類あり、多少適応疾患が異なります。詳細は大橋病院皮膚科のホームページを参考にして頂くと役立ちます。本剤の副作用の最も多いのが感染症です。潜在的に持っている、感染しやすいものを発症させます。日本は結核が多く、治験段階で最も危惧されたところです。ところが、しっかりとした体制が奏功したのか肺結核はおらず、細菌性肺炎が見られています。致死的な副作用は今のところありません。勿論、私どもの症例も毎回診察していますが副作用はありません。対象は、重症、難治性&治療抵抗性の乾癬および関節症性乾癬の患者さんです。罹患部位が全身で外用剤のみでコントロール不良な症例、ネオーラルやチガソンの内服でも不安定ないしその薬剤の副作用で中止した例、関節症状のコントロール不良例、さらにステロイド外用剤による局所の副作用が生じている例などです。今後あちこちの施設から有用性のデータが報告されると思いますが、有用率90%は全国の諸施設で行った治験結果の驚異的な数字です。私の経験でとくに驚いたのが、関節症性乾癬の患者さん達です。その効果は患者さんのQOL向上に素晴らしいものです。但し、最大の難点が支払い額の高さです。高額療養費制度を用いて医療費が還付されますが、それでも負担金は極めて高く、投与前に概算を示し了解を得ないと継続した治療が受けられなくなります。また、今後判明してくると思いますが予後が問題です。投与中は良いのですが、中止できるのか再燃しやすいのか、検討課題だと思います。また新薬も開発中で楽しみです。ステロイドの安全塗布量、参考文献先生の記事を拝見して「ステロイドのガイドラインとして現在も使用されている安全塗布量は、40年以上前に海外でステロイドを使う必要のない正常な人を対象にして行われたデータで、その後の追試はありません。」ということを初めて知りました。大変びっくりしています。ステロイドの安全塗布量について他に参考になる文献等がありましたらご教示お願いします。本においてステロイド(ス)外用剤は1953年から登場し、現在までに30種類以上の外用剤が開発。薬効の強さから上位からI~V群の5つに分類され使用されています。幅広い皮膚疾患に有効で、従来まで治療法のなかった疾病の治療薬として大いに役立ったことは事実です。全身皮膚が障害し多量の外用を必要とする症例の中で、Cushing様症状、骨粗しょう症や小児の発育遅延など極めて少ない確率ですが起こることが判明。多量にス外用剤を使用例が突然中止すると、皮疹悪化以外に発熱、悪寒、悪心、嘔吐などの全身症状を呈するものを離脱反応、これは一種の副腎クリーゼの状態です。質問5でお答えした民間療法が横行した時期に、ス外用剤を中止してこの反応を起こしQOLが大幅に悪化、私どもの病院に入院した症例を数多く経験しました。外用を再開し症状を改善させました。全身的な副作用を知るには、主に視床下部-下垂体-副腎皮質機能がどの程度抑制されるのかをチェックします。日常で処方される外用量、成人で10~30g/週程度では抑制は起こりません。この全身的な副作用に関しては1960~1970年代に精力的に研究されたのですが、それ以降はほとんど行われていません。薬効ランクⅢ群(リンデロン)を成人入院に1日30g、幼小児に1日13gと大量塗布した結果。1.副腎皮疹機能は一過性に生じるが、中止後1~2日で回復。2.症例によっては継続中でも抑制が回復。その理由は、皮膚が改善して経皮吸収率が低下する。3.密封療法を行うと経皮吸収率が高まり、臨床効果も上がるが抑制は顕著となる。4.小児では成人より抑制は起こりやすいので強い薬効ランクのものは控える。また、外用方法として1日5~10gで開始し、症状に合わせて漸減し3ヶ月間使用しても、一過性&可逆性の抑制は生じても不可逆性の抑制は生じないとされています。私どもの入院を要する重症例では1日12gも投与しましたが、抑制例は2例と少なくしかも正常範囲内で何ら身体的にも問題は起きませんでした。それどころが、正常値以下に抑制された症例の多くが逆に正常に復したという事実は大きな驚きでした。十分な診察もせず漫然と使い続けるのではなく、メリとハリの要領で使用量や部位別に上手に使うことが大切です。最近外来で勧めているのがプロアクティブ治療です。適切な薬剤で十分量の使用で寛解状態を作り、その後すぐに休薬するのではなく、週2回は外用することで再燃効果を大幅に減少することが出来ます。何も全身同時に開始することはありません。顔からでも、腕からでも良くなった場所はスタートO.K !眼に見えない副作用に怯えることなく、上手に使うことが重要なのです。尋常性ざ瘡(にきび)の食事療法について最近、20~30代の女性の患者様から肌に関するちょっとした質問を受けます。医者なので、ある程度はアドバイスしてあげたいのですが、尋常性ざ瘡の方の食事に気をつけることや最近の新しい治療の動向を、他科医師として知っておくべき事はありますでしょうか?御教示よろしくお願いします。一般的によく言われていることですが、甘いものや脂っこいものは避けるべきです。スナック菓子も同様です。ただ、肌に良くないからといって全部やめようと話しても難しいと思います。食べる回数や量を減らすことが大切です。また女性には生理があります。ホルモンバランスの変化する生理前に悪化する例が多く、イライラする精神的なストレス以外にヤケ食いや飲酒など食生活が悪化要因の場合があります。ディフェリンと言う新しいにきび用の外用薬が発売されています。効果は従来品のアクアチムクリームやダラシンゲルより期待出来ます。但し、皮膚のカサツキがでる場合がありますので注意して下さい。基本的なこととして、入浴時の洗顔が大切です。オイリー肌用の石鹸で十分に洗うこと、とくにベタツク&症状の強い部位は2度洗いを勧めます。入浴後、ご自身の肌にあった化粧水を塗るとかさつきは予防できますが、べたつくクリームやローションは毛穴をつぶしてしまうので禁止です。難治性の症例には、このほかピーリングが行なわれています。毛穴が詰まって角質の溜まった白ニキビや炎症の強い赤ニキビに有効です。自費診療になりますが、皮膚科専門医で行なっている施設は少なくありません。総括いろいろとご質問を頂き感謝しております。話すのは自信が多少あるのですが、文章では相手の理解度が伝わりません。また質問があれば聞いて下さい。実は私が大橋病院ホームページ委員会の責任者なのですが、機械音痴と雑用が多く皮膚科ホームページの更新が遅れ気味なのです。時間があるときに更新いたしますので、時々見て下さい。研修希望者に:どんどん大橋皮膚科を見学に来て下さい。大橋病院は歴史的な作りで驚くかもしれませんが、アットホームな環境で仲良く頑張っています。教える体制はしっかりしています。何をしたいのかをはっきり明示してそれが努力に値する仕事なら全面的にサポートします。ただ、まず皮膚科医としての基本を覚えなければいけません。皮膚科は奥が深く、自己完結型の科と言えます。ある程度オールラウンドの皮膚科医を目指し、その上で疑問、難問の解決を同時進行で行うと臨床が100倍楽しくなります。教授 向井秀樹先生「患者さんと真摯に向き合う中から病態は解明される」

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ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ」強直性脊椎炎に関する効能・効果を国内追加申請

アボット ジャパン株式会社とエーザイ株式会社は28日、国内で共同開発を進めてきたヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ皮下注40mgシリンジ0.8mL」(一般名:アダリムマブ、以下「ヒュミラ」)について、強直性脊椎炎に関する効能・効果の追加申請を行ったと発表した。国内においては、関節リウマチ(2008年4月製造販売承認取得)、尋常性乾癬および関節症性乾癬(2007年9月申請)、クローン病(2009年9月申請)に続き4番目の効能・効果を追加する申請となる。国内で実施した活動性の強直性脊椎炎患者様を対象とした臨床試験において、「ヒュミラ」は海外試験と同様、強直性脊椎炎の症状・徴候を改善し、良好な忍容性が認められたとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.eisai.co.jp/news/news200944.html

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ヒュミラ、国内においてクローン病に関する効能・効果を追加申請

アボット ジャパン株式会社とエーザイ株式会社は30日、国内で共同開発を進めてきたヒト型抗ヒトTNFモノクローナル抗体「ヒュミラ皮下注40mg シリンジ0.8mL」(一般名:アダリムマブ)について、クローン病に関する効能・効果の追加申請を行ったことを発表した。国内においては、関節リウマチ(2008年4月製造販売承認取得)、尋常性乾癬および関節症性乾癬(2007年9月申請)に続き3番目の効能・効果を追加する申請となる。ヒュミラは、ヒト型抗ヒトTNFモノクローナル抗体で、自己免疫疾患の炎症反応に関わる中心的なタンパク質であるTNFを中和することにより、効果を発揮する。国内で実施された中等症または重症のクローン病患者を対象としたプラセボ対照二重盲検試験の導入療法及び維持療法試験において、ヒュミラ投与群は寛解導入及び寛解維持効果を示し、海外試験と同様の成績が得られたという。詳細はプレスリリースへhttp://www.eisai.co.jp/news/news200939.html

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尋常性乾癬に対する「NF-κBデコイオリゴ」の医薬特許成立

 アンジェス MG株式会社は29日、日本において尋常性乾癬に対するNF-κBデコイオリゴの医薬特許が成立し、特許公報(特許第4305857号)が発行されたことを発表した。 同特許は「尋常性乾癬を治療するための薬学的組成物であって、少なくとも1つのNF-κBのデコイ、および薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物であって、該デコイは2本鎖オリゴヌクレオチドまたはそのS-オリゴである組成物」を対象とするもの。 なお同社は、NF-κBデコイオリゴのアトピー性皮膚炎に対する第II相臨床試験を終了し、現在、第III相臨床試験に向けて実施計画の詳細を検討中とのこと。

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皮膚とアレルギー性疾患情報サイト『かゆみナビ』がリニューアル

協和発酵キリン株式会社は14日、同社webサイト内にある皮膚とアレルギー性疾患情報サイト『かゆみナビ』(http://www.kyowa-kirin.co.jp/kayumi/)を7月1日に全面リニューアルオープンした。サイト開設5周年を機にデザインが一新され、新コンテンツとして「夏のかゆみ」「尋常性乾癬でお悩みの方へ」が追加された。新コンテンツ「夏のかゆみ」では、夏に起こりやすいかゆみの原因と対策についてわかりやすくまとめられており、かゆみの予防と対策、かゆくなってしまった時の対処法も紹介されている。「尋常性乾癬でお悩みの方へ」では、症状から診断、治療、患者へのアドバイスについて紹介している。詳細はプレスリリースへhttp://www.kyowa-kirin.co.jp/news/2009/20090714_01.html

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乾癬のUVB光線療法は自宅でも外来と同等の効果

乾癬患者の治療として有用なUVB光線療法について、自宅で行っても外来で行うのと同じ効果が得られ安全面でも問題ないことが明らかにされた。オランダ・ユトレヒト大学皮膚科学のMayke B G Koek氏らによって行われたプラグマティック多施設単盲検無作為化試験(PLUTO Study)からの報告で、自宅での治療は患者の負担軽減につながり、満足度が高いことも報告されている。自宅治療用のUVB光線療法機器は1970年代後半から使われているが、これまで効果や安全性、コンプライアンスについては検討されていなかった。BMJ誌2009年5月16日号(オンライン版2009年5月7日号)より。UVB光線療法適応の乾癬患者を自宅治療群と外来治療群とに無作為化し検討同研究グループはこれまでにも、皮膚科医の55%以上はUVB光線療法を自宅で行うことが外来治療よりも劣ると考えていること、約3割は自宅で行うのは大きなリスクを伴うと考えていることなどを明らかにしてきた。また機器販売は、ドイツでは3,000個、アメリカでは5,000個の実績があり、オランダでは在宅医療機関が毎年1,400例の患者に機器を供給し管理していることなども報告している。PLUTO Studyは、オランダの14病院の皮膚科で、ナローバンド(TL-01)UVB光線療法が適応となった乾癬患者196例を、外来治療群と自宅治療群に無作為に割り付け行われた。このうち105例の患者について治療後1年間経過観察が行われた。治療効果(主要評価項目)に関しては、乾癬面積が50%以下に減少した患者の割合、乾癬面積と重症度インデックスの組み合わせ指標(PASI)、自己管理下での乾癬面積と重症度インデックス(SAPASI)の組み合わせ指標を用いて判定。PASI 50とSAPASI 50に達した患者を「臨床的に効果があった」とした。また、PASIとSAPASIの中央値スコアの低下パーセンテージがほぼ同じ場合も、効果があったとし、PASI 75、SAPASI 75の患者は「治療に成功」、PASI 90、SAPASI 90の患者は「ほぼ完全にクリアランス」とした。また、生活の質(SF-36、乾癬による障害指数)、治療負荷(アンケート)、患者選択と満足度(アンケート)、線量計測と短期副作用(日記)を副次評価項目とした。生活の質改善への満足度、自宅治療群42%、外来治療群23%SAPASI 50に達した患者の割合は、自宅群は82%、外来群は79%、PASI 50に達した割合はそれぞれ70%と73%だった。自宅群のSAPASIスコア(中央値)は82%低下、PASIスコアは74%の低下が見られた。外来群はそれぞれ79%、70%の低下だった。PASIとSAPASIスコアの低下で定めた治療効果の指標は有意であった(P

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乾癬性関節炎に対するustekinumabの有効性と安全性を確認

乾癬性関節炎に対する抗インターロイキン(IL)-12/23ヒトモノクローナル抗体ustekinumabの有効性と安全性が、無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験の第Ⅱ相試験の結果、確認された。この米国Tufts Medical CenterのAlice Gottlieb氏らによる試験結果は、Lancet誌2009年2月21日号(オンライン版2009年2月12日号)で掲載されている。乾癬性関節炎は乾癬患者の約11%が有し、抗リウマチ薬(DMARDs)や生物学的製剤(抗TNF薬)が有効とされるが、治療に反応しない患者も存在し治療選択肢の拡充が求められていた。プラセボとの比較でACR20達成の臨床効果を検討試験は、北米および欧州の計24施設から活動性関節炎患者の参加を募り行われた。2005年12月21日から開始され146例が登録。それら患者を2群(グループ1:ustekinumab投与群、グループ2:プラセボ群)に割り付け実行された。グループ1の患者(76例)は、4週にわたり毎週(0週~第3週)ustekinumabを投与(90 mgもしくは63 mg)したのち、12週時点、16週時点ではプラセボを投与。グループ2の患者(70例)は、4週にわたり毎週プラセボを投与したのち、12週時点、16週時点でustekinumabが投与(63 mg)されるという試験デザインで、12週時点ではプラセボ対照試験が確立、マスキングは16週まで維持された。患者は36週時点まで追跡され、intention to treat解析にて評価。主要評価項目は、12週時点でのACR20(米国リウマチ学会が臨床効果として掲げる「ベースラインからの20%改善」目標)の達成状況とされた。投与群とプラセボ群との20%改善達成の差は28%、75%以上改善の差は47%12週時点で主要評価項目を達成したのは、グループ1では32例(42%)、グループ2では10例(14%)で、その差は28%(95%信頼区間:14.0~41.6、p=0.0002)だった。乾癬が体表面積3%以上に及ぶ患者(両群計124例、全体の85%)のうち、12週時点でグループ1では52%(33/63例)が、病変が占める体表面積および重症度指数について75%以上の改善を示した。グループ2では同5%(3/55例)で、両群の差は47%(33.2~60.6、p

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中等度~重度の乾癬に対するustekinumabの有効性と安全性を確認

中等度~重度の乾癬に対する抗インターロイキン(IL)-12/23ヒトモノクローナル抗体ustekinumab(ウステキヌマブ、CNTO 1275)の有効性が、米国Saint Louis医科大学のCraig L Leonardi氏らが行った第III相試験(PHOENIX 1)で確認された。乾癬は皮膚の慢性的な免疫介在性炎症性疾患であり、世界の人口の2~3%が罹患しているという。ustekinumabは乾癬の病態生理で重要な役割を担うヒトIL-12とIL-23の共通サブユニットp40蛋白に特異的に結合することで細胞表面上のIL12Rβ1受容体との相互作用を阻害する。同様の試験PHOENIX 2でも同様の結果が得られており、ともにLancet誌2008年5月17日号で報告された。2種類の用量とプラセボの短期的効果、長期的な維持療法の効果を検証本研究は、2005年12月~2007年9月に北米およびベルギーの48施設で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験。中等度~重度の乾癬766例が、0および4週(12週ごと)にustekinumabを45mg投与する群(255例)、90mg投与する群(256例)、プラセボ群(255例)に無作為に割り付けられた(プラセボ対照期:0~12週)。プラセボ投与群は12週時にustekinumab 45mg投与群(123例)あるいは90mg投与群(120例)に割り付けられた(プラセボクロスオーバー・積極的治療期:12~40週)。0週にustekinumabの投与を受けた例のうち長期的な有効性[28および40週に、乾癬範囲および重症度指標が少なくとも75%改善(PASI 75)]が達成された症例は、40週の時点で、効果が消失するまで同用量で維持療法を継続する群と治療を中止する群(プラセボ投与)に無作為に割り付けられた(無作為化治療中止期:40~76週)。ustekinumab投与群の有効性は短期的にも長期的にも有意に優れる12週の時点で、45mg投与群の171例(67.1%)、90mg投与群の170例(66.4%)、プラセボ群の8例(3.1%)がPASI 75を達成した(プラセボ群に対し45mg投与群:p<0.0001、90mg投与群:p<0.0001)。40週における長期的な効果は45mg投与群の150例、90mg投与群の172例で達成された。これらのうち、162例が維持療法群に、160例が治療中止群に割り付けられた。PASI 75は、40週で治療が中止された群よりも維持療法が行われた群において少なくとも1年以上にわたり良好に維持された[p<0.0001(log-rank検定)]。12週までの有害事象は、ustekinumab投与510例のうち278例(54.5%)に、プラセボ群255例のうち123例(48.2%)に認められた。重篤な有害事象は、それぞれ6例(1.2%)、2例(0.8%)であった。有害事象のパターンは、プラセボクロスオーバー・積極的治療期、無作為化治療中止期ともに、プラセボ対照期ときわめて類似していた。Leonardi氏は、「中等度~重度の乾癬に対するustekinumabの12週ごとの投与法は、多くの症例において少なくとも1年間は効果が持続しており、安全に投与可能なことが示唆された」と結論し、「この高い有効性は、現在使用されている生物学的製剤に匹敵する」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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エタネルセプトは小児・思春期の尋常性乾癬にも有効

わが国では関節リウマチ薬として販売されているエタネルセプトは、成人の尋常性乾癬の重症度を軽減することが示され、欧米では承認されている。本論は、小児・思春期の中等度~重度の尋常性乾癬に対する有効性と安全性について評価した、Etanercept Pediatric Psoriasis Study Groupによるフェーズ3の治験報告。NEJM誌2008年1月17日号に掲載された。4~17歳の乾癬患者211例を48週調査対象は4~17歳の乾癬患者211例。まず二重盲検下で無作為に、プラセボを投与する群と、体重1kg当たりエタネルセプト0.8mg(最高50mg)を投与する群に割り付け、12週にわたり週1回の皮下注射が行われた。続く24週は、非盲検でエタネルセプトを週1回投与。36週目に患者138例を再度無作為にプラセボ群とエタネルセプト群に割り付け、投薬中断と再投与が行われ、計48週にわたる効果が検討された。主要評価項目は、12週時点で乾癬部位の面積と重症度を示す指数PASIが、基線から75%以上改善(PASI 75)していることとし、副次評価項目はPASI 50、PASI 90、医師の総合評価による疾患消失またはほぼ消失、安全性評価とした。有害事象3例4件もすべて後遺症なく回復12週時点でPASI 75を達成したのは、エタネルセプト群が57%だったのに対し、プラセボ群は11%だった(P

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