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再発寛解型多発性硬化症に対するlaquinimod治療は、増量しても有効かつ耐用可能

再発寛解型多発性硬化症(RRMS)の新たな治療薬であるlaquinimodは、0.6mg/日に増量しても十分に耐用可能で、MRI上の疾患活動性を有意に低減させることが、イタリアVita-Salute大学San Raffaele科学研究所のGiancarlo Comi氏らが実施した第IIb相試験で明らかとなった。すでに、laquinimod 0.3mg/日の安全性および有効性は確かめられていた。Lancet誌2008年6月21日号掲載の報告。2つの用量を比較する国際的なプラセボ対照無作為化第IIb相試験本研究は、9ヵ国51施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第IIb相試験。1年以内に1回以上のRRMSの再燃がみられ、MRIによるスクリーニングで1ヵ所以上のガドリニウム増強病変を認めた症例を登録することとした。720例がスクリーニングを受け、306例が適格例として登録された。年齢は18~50歳であった。プラセボ群に102例、laquinimod 0.3mg/日群に98例、laquinimod 0.6mg/日群に106例が割り付けられた。脳MRIおよび臨床評価は、ベースラインの4週前およびベースライン時に行い、その後は12週目から36週目まで毎月1回実施した。主要評価項目は、24、28、32、36週目のガドリニウム増強病変の累積数とした。0.6mg投与群で有意な改善効果0.6mg投与群では、最後の4回のMRI検査におけるガドリニウム増強病変の補正平均累積数のベースラインからの低下率が、プラセボ群の40.4%に減少し、有意な改善効果が認められた[単純平均4.2回(SD 9.2) vs. 2.6回(SD 5.3)、p=0.0048]。0.3mg投与群では有意な改善効果は認めなかった(p=0.6740)。両用量群とも、数例で肝酵素の用量依存性の上昇が一過性に見られたが、耐用性は良好であった。基質的に血液凝固亢進が見られる0.6mg群の1例で、投与1ヵ月後にBudd-Chiari症候群(肝静脈の血栓性の閉塞)が認められた。抗血栓療法によって肝酵素が減少し、臨床的に肝の代償不全の徴候のない状態に正常化した。Comi氏は、「RRMSに対するlaquinimod治療では、投与量を0.6mg/日に増量しても良好な耐用性を示し、MRI上の疾患活動性を有意に低減させた」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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中国製原料使用のヘパリンが毒ヘパリンであるEBM

年明けの日本では毒ギョーザが話題となっていたが、米国では透析患者から相次いでいた静脈注射用ヘパリン投与後のアナフィラキシー様反応の報告が大きな関心事となっていた。死亡例も相次いだ本件に関して米国疾病管理センターは共通の症例報告からBaxter Healthcare社のヘパリン製剤を特定。1月17日にリコール開始、2月28日に回収を終了する。しかし3月6日、ドイツから他社製品での事例が報告。これを受け米食品医薬品局(FDA)はヘパリンの全製造業者に汚染物質混入の検査を命じた。そして混入が明らかになったのが、過硫酸化コンドロイチン硫酸(OSCS)。本論は、これまで立証されていなかったOSCSと臨床有害事象との生物学的関連を目的に、Momenta Pharmaceuticals社のTakashi Kei Kishimoto氏らが、FDAの協力を得て行った試験結果。NEJMオンライン版2008年4月23日に速報され、本誌では2008年6月5日号にて掲載された。ブタ体内で有害事象の再現実験試験はFDAから、有害事象との関連が疑われたヘパリン製剤ロットと比較対照用のロットの提供を受けて実施された。OSCSの有無、および汚染物質と観察された臨床有害事象(低血圧、顔面浮腫、頻脈、蕁麻疹、吐き気など)とを結び付ける可能性がある生物活性について盲検下でスクリーニング。in vitroで接触系活性化と補体カスケードを分析。さらにブタの生体内でOSCSが問題の臨床症状を再現するかどうかin vivoの試験も行われた。ブタもヒトもOSCSに同様の反応示す未分画へパリンの汚染ロットで見つかったOSCSは、標準試料の合成OSCSと同様に直接、ヒト血漿中のキニンカリクレイン経路を活性化したが、これは強力な血管作用を持つブラジキニン産生につながる可能性を示唆するものでもあった。加えてOSCSは、補体系タンパク由来の強力なアナフィラトキシンであるC3a、C5aの産生も誘導した。意外なことに、この2つの経路の活性化は連鎖しており、第XII因子の液相活性化に依存していた。また、さまざまな種の血漿サンプルのスクリーニングによって、ブタとヒトのOSCSの作用に対する感受性は同様なことがわかった。ブタの静脈に投与したOSCS汚染ヘパリンと合成OSCSは、いずれもカリクレイン活性化に関連する低血圧を引き起こした。これらからKishimoto氏は「本試験結果は、疑惑のヘパリン・ロットに混入しているOSCSが、観察された有害事象と生物学的な関連のあることを示す科学的根拠を提供するものだ」と結論。また、カリクレインのアミド溶解性の活性を評価する分析試験を行い、ヘパリンのOSCSや、その他の接触系を活性化する高度の過硫酸化多糖類の混入物質をスクリーニングすることで、ヘパリン供給経路を保護するための分析試験を補足できるとも報告した。(武藤まき:医療ライター)

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PCI前提で早期にabciximabを投与しても転帰改善に寄与しない

急性のST上昇型心筋梗塞患者に対して、プライマリ経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行する直前に抗血小板薬abciximabを投与するより、もっと早い段階で、abciximabとreteplase半量を投与する「併用facilitated-PCI」、もしくはabciximabを単独投与する「abciximab facilitated-PCI」を行ったほうが、転帰が改善する可能性があるのではないか。大規模な試験が行われていたが、米国・クリーブランド・クリニックのStephen G. Ellis氏らは「PCIを前提として早期にfacilitated-PCIを行っても、臨床転帰は改善されない」との結果を報告した。NEJM誌2008年5月22日号より。2,452例を対象にPCI「前処置」と臨床転帰を比較これは、患者計2,452例を対象に行われた国際的な二重盲検プラセボ対照試験で、患者はST上昇型心筋梗塞を発症してから6時間以内に、「併用facilitated-PCI」または「abciximab facilitated-PCI」もしくは「プライマリPCI」に無作為に割り付けられた。すべての患者には、PCI前に未分画ヘパリンまたはエノキサパリンが投与され、PCI後には12時間のabciximab静脈投与が行われた。主要エンドポイントは、全死因の死亡、無作為化後48時間以降に発生した心室細動、心原性ショック、無作為化後90日間に発症したうっ血性心不全の複合とした。ST上昇は解消するがエンドポイントには有意差なしST上昇がいち早く解消された患者は、併用facilitated-PCI群の43.9%に対して、プライマリPCI群31.0%、abciximab facilitated-PCI群は33.1%と、後二者に比べて有意に高かった(それぞれP = 0.01と同 = 0.003)。これに対して主要エンドポイントの発生は、併用facilitated-PCI群は9.8%だったが、abciximab facilitated-PCI群は10.5%、初回PCI群が10.7%だった(P = 0.55)。また、90日間の死亡率はそれぞれ5.2%、5.5%、4.5%だった(P = 0.49)。この結果、ST上昇型心筋梗塞の患者に対して、PCI施行直前になってからabciximabを投与するのではなく、PCIを前提として発症後早期にabciximabおよびreteplaseを投与する「併用facilitated-PCI」または「abciximab facilitated-PCI」を行っても、臨床転帰は有意に改善されないと結論している。(武藤まき:医療ライター)

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prasugrelのステント血栓症抑制効果はクロピドグレルよりも優れる

冠動脈ステント留置術を受けた急性冠症候群(ACS)における抗血栓薬prasugrelのステント血栓症の予防効果はクロピドグレル(国内商品名:プラビックス)よりも優れることが、TRITON TIMI 38試験のサブ解析で明らかとなった。Harvard大学医学部循環器科のStephen D Wiviott氏がLancet誌2008年4月19日号(オンライン版2008年4月2日号)で報告した。ACSにおける冠動脈ステント留置術の施術成功率および再狭窄低下効果はバルーン血管形成術よりも優れるが、ステント血栓症などの血栓性合併症が増加する可能性が指摘されている。TRITON TIMI 38試験ではすでにprasugrelの有意な虚血性イベント低下効果が確認されている。ステント留置術施行ACS例に抗血栓療法を実施、心血管死などを評価解析の対象となったのは、TRITON TIMI 38試験に登録された中~高リスクのACSのうち、無作為化後に少なくとも1つの冠動脈ステントを留置された症例であり、ステントのタイプによりさらなるサブグループに分類した。無作為化後、できるだけ早期に負荷量(prasugrel 60mg、クロピドグレル300mg)を投与したのち、維持療法(それぞれ10mg/日、75mg/日)を行った。全例がアスピリンの投与を受けた。治療期間は最短でも6ヵ月とし、最長15ヵ月とした。無作為割り付けの際にステントのタイプによる層別化は行わなかった。主要評価項目は、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合エンドポイントとした。ステント血栓症はAcademic Research Consortiumの定義により評価し、intention-to-treat解析を行った。複合エンドポイント、ステント血栓症発症率ともにprasugrel群が有意に低値1万2,844例が少なくとも1つのステントを留置された。そのうち薬物溶出ステント(DES)のみを留置されたのが5,743例(prasugrel群:2,865例、クロピドグレル群:2,878例)、ベアメタルステント(BMS)のみは6,461例(それぞれ3,237例、3,224例)であり、640例は両ステントが留置された。prasugrel群の複合エンドポイントは、全ステント留置術施行例[9.7% vs 11.9%、ハザード比(HR):0.81、p=0.0001]、DES留置例(9.0% vs 11.1%、HR:0.82、p=0.019)、BMS留置例(10.0% vs 12.2%、HR:0.80、p=0.003)のいずれにおいてもクロピドグレル群よりも有意に低値を示した。ステント血栓症を発症した症例の89%(186/210例)が死亡あるいは心筋梗塞をきたした。prasugrel群のステント血栓症の発症率は、全ステント留置術施行例(1.13% vs 2.35%、HR:0.48、p=0.0001)、DES留置例(0.84% vs 2.31%、HR:0.36、p=0.0001)、BMS留置例(1.27% vs 2.41%、HR:0.52、p=0.0009)のいずれにおいてもクロピドグレル群よりも有意に低かった。Wiviott氏は、「prasugrel+アスピリンによる強化抗血栓療法は、ステント血栓症を含む虚血性イベントの発症率がクロピドグレル+アスピリン療法よりも低かった。これらの知見はステントのタイプにかかわらず強い有意差を示し、冠動脈ステント留置例における強化抗血栓療法の重要性が確認された」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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ワルファリンへの反応の違い、遺伝子異型と強く関連

血栓症の抗凝固療法でワルファリン(国内商品名:ワーファリンなど)を服用している患者の反応は、ワルファリン代謝酵素であるチトクロームP-450 2C9(CYP2C9)の遺伝異型と、ワルファリンの薬理学的標的のカギであるビタミンKエポキシド・レダクターゼ(VKORC1)の遺伝異型によって異なることが知られているが、これら異型の初回抗凝固療法で果たす役割についてはわかっていなかった。米国・ヴァンダービルト大学医学部のUte I. Schwarz氏らが報告。NEJM誌2008年3月6日号より。VKORC1ハプロタイプとCYP2C9遺伝子型で反応を比較Schwarz氏らは、ワルファリン療法を開始したばかりの297例の患者について、CYP2C9遺伝子型(CYP2C9*1、*2、*3)、VKORC1ハプロタイプ(Aと非A)、臨床的特徴、治療に対する反応を国際標準比(INR)により判定して出血イベントを評価する臨床試験を実施した。転帰項目は、初めてINRが治療域内に初めて達するまでに要した時間、INR が4以上に達するまでに要した時間、INRが治療域内を上回るまでに要した時間、INR反応の経時的変化、そしてワルファリン投与必要量とした。VKORC1は遺伝的変異性とより強く関連するVKORC1のハプロタイプが非A/非A患者よりもA/A患者で、INRが治療域に初めて達するまでに要した時間は短く(P=0.02)、INRが4以上となるのに要した時間も短かった(P=0.003)。一方CYP2C9遺伝子型は、INRが治療域に達するための有意な予測因子であることはみいだされなかったが(P=0.57)、INRが4以上に達する有意な予測因子であることは示された(P=0.03)。VKORC1のハプロタイプとCYP2C9遺伝子型はいずれも、最初の治療2週間以降に、ワルファリン投与必要量に対して有意な影響を及ぼした。これらの結果から研究グループは、初回療法時のワルファリン反応は、CYP2C9よりもVKORC1の遺伝的多様性が強く関連していると結論づけた。(武藤まき:医療ライター)

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第X凝固因子阻害剤idraparinuxの心房細動患者塞栓症抑制への有用性認められず:Amadeus試験

抗トロンビン作用を有する抗凝固剤ximelagatranの臨床応用が見送られ、非弁膜性心房細動患者の脳塞栓症を抑制しうる新薬の登場が期待されているが、第X凝固因子阻害剤であるidraparinuxは、安全性の面でワルファリンに劣るようだ。Lancet誌2008年1月26日号に掲載された、無作為化非盲検化試験Amadeusでは塞栓予防作用はワルファリンと同等ながら、出血リスクは有意に増加していた。出血著明増加により早期中止Amadeus試験の対象は、非弁膜性心房細動を認める脳塞栓高リスク患者4,576例。当初6,000例近くを登録予定だったが、安全性監視委員会の勧告に基づき早期の中止となった。平均年齢は70歳、31%は75歳以上だった。ワルファリン群(2,293例)はINR:2~3を目標に用量を調節、idraparinux群(2,283例)は2.5mgを週1回皮下注した。その結果、追跡期間中(平均300日強)、一次評価項目であった「全脳卒中+全身性塞栓症」はidraparinux群で減少傾向を認め(ハザード比:0.71 vs. ワルファリン群、95%信頼区間:0.39~1.30)、さらにワルファリンに対する非劣性が確認された(p=0.007)。しかし安全性に関しては、idraparinux群全出血(ハザード比:1.74、95%信頼区間:1.47~2.06)、脳出血(ハザード比:2.58、95%信頼区間:1.18~5.63)ともに有意かつ著明な増加を認めた。サブグループ解析の結果、idraparinuxで出血リスクが増加する患者群の存在が示唆されるため研究者らは、よりきめ細かな用量設定により有用性が得られる可能性を訴えている。(宇津貴史:医学レポーター)

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肺塞栓症の画像診断でCTPAは本当に有用なのか?

 肺塞栓症が疑われる患者に対して、肺換気・血流シンチグラフィ (V/Q)とCT肺アンギオグラフィ(CTPA)は広く行われている画像診断法だが、多くの医療施設でCTPAが主流となりつつある。Dalhousie University(カナダ)のDavid R. Anderson氏らは、CTPAがV/Qスキャンより有用であるかを検討した。JAMA誌2007年12月19日号にて掲載。カナダ・アメリカ1,417例を対象にCTPAとV/Qを比較 V/QスキャンとCTPAについて正式に比較検討したものは少なく、またCTPAについては感受性が低い(臨床的に重要な肺塞栓見落としの可能性が高い)懸念が言われている。Anderson氏らは、急性肺塞栓症の診断を行う最初の肺画像診断として、CTPAがV/Qスキャンの安全な代替方法かどうかを確認するため、無作為単盲検臨床試験を実施した。 対象は、高度医療を担うカナダ4施設、米国1施設の医療機関で、2001年5月~2005年4月の間にWells clinical model score 4.5以上、Dダイマー検査陽性との結果に基づき急性肺塞栓症とみなされた1,417例の患者。 患者は、V/Q(701例)もしくはCTPA(716例)に無作為に振り分けられ、肺塞栓症と診断された患者は抗凝固療法を受け3ヵ月間フォロー。除外された患者についても、抗凝固療法を受けることなく3ヵ月間追跡調査が行われた。 主要評価項目は、肺塞栓症が除外された患者の症候性肺塞栓症または深在静脈血栓症の発現。CTPAはV/Qスキャンに劣っていない? 肺塞栓症と診断され抗凝固療法を受けたのは、CTPA群133例(19.2%)、V/Q群101例(14.2%)。初回検査による相違は5.0%(95%信頼区間:1.1%~8.9%)だった。肺塞栓症が除外された患者のうち、フォローアップ期間中に静脈血栓塞栓症を呈したのは、CTPA群2/561例(0.4%)、V/Q群6/611例(1.0%)。これには致死性肺塞栓症1例が含まれる。両群相違は-0.6%(95%信頼区間:1.6%~-0.3%)だった。研究者らは、「本研究においてCTPAは肺塞栓症を除外する際、V/Qスキャニングより劣ってはいなかった」としながらも、「CTPAアプローチで肺塞栓症と診断された患者が、かなり上回っていたが、CTPAで見つかった全ての肺塞栓症が抗凝固療法の対象としなければならないかどうか、さらなる調査が必要だ」とまとめている。

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重症例に対するアンチトロンビンIII投与は無効なばかりか、むしろ有害

アンチトロンビンIII(AT III)の投与は高価な介入法であるが、重症例に対し広く使用されている。これまでに、無作為化および非無作為化試験に関する4つの小規模なメタ解析が報告されているが、死亡率に関して結論に至るエビデンスは得られていない。 Arash Afshari氏(デンマーク、コペンハーゲン大学Juliane Marieセンター麻酔科)らは、重症例におけるAT IIIの有効性および有害性を評価するために、無作為化試験の系統的レビューおよびメタ解析を行った。BMJ誌12月15日号(オンライン版11月23日号)掲載の報告。2名のレビューワーが個々に文献を選び、データを抽出データベースなどの文献から、2名のレビューワーが個々にAT III投与群とプラセボ群あるいは非介入群を比較したパラレルグループ無作為化臨床試験を選び出し、試験法、介入法、アウトカム、バイアスのリスク、有害事象に関連するデータを抽出した。レビューワーの見解が一致しない場合はディスカッションを行って解決した。ICUに収容された重症例に関する試験は解析対象として適格とし、二重盲検か否かおよび論文の言語は問わないこととした。バイアスのリスクが低い試験とは、適切な無作為化、二重盲検、intention-to-treat解析を行っているものとした。重症例の死亡率を改善せず、出血リスクが増大合計3,458例を無作為に割り付けた20試験が適格規準を満たした。8試験がバイアスのリスクが低いとされた。プラセボ群あるいは非介入群に比べ、AT III投与群は全体の死亡率を低下させなかった(相対リスク:0.96、95%信頼区間:0.89~1.03)。バイアスのリスク、患者集団、ヘパリンによる補助療法の有無に関するサブグループ解析では有意な結果は得られなかった。AT IIIは出血のリスクを増大させた(相対リスク:1.52、95%信頼区間:1.30~1.78)。 trial sequential analysisでは、死亡率の10%以上の低下を「有効」と定義すると、重症例に対するAT IIIの投与はこの基準を満たさなかったことから、「無効」とのエビデンスが示された。以上の知見により、Afshari氏は「AT IIIは重症例の死亡率を改善しないだけでなく、出血のリスクを増大させるため推奨されない」と結論している。(菅野 守:医学ライター)

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新開発の着用可能な血液透析機の有用性を確認

 透析あるいは腎移植を要する慢性腎不全患者は世界で約130万人に上る。これらの患者は、より頻回の血液透析を行えば生存率およびQOLの双方が改善される可能性があるが、イギリスにはそれを可能にするcapacityがほとんどないという。そこで、Andrew Davenport氏(ロンドン大学、Royal Free and University College Hospital Medical School)らは、新たな透析手段として着用して使用する透析機を開発、その安全性および有効性を評価するパイロット試験を実施した。Lancet誌12月15日号掲載の報告。標準的透析治療を受けている末期腎不全患者が着用透析機を装着 対象は、週に3回の標準的な血液透析を受けている末期腎不全患者8例(男性5例、女性3例、平均年齢51.7歳、平均透析期間17.9年)。これらの患者が新たに開発された着用透析機(重量約5kg)を1日に4~8時間装着し、標準の透析法と同様に抗凝固薬として未分画ヘパリンを投与された。 心血管系への重大な影響や血清電解質、酸塩基のバランスの変化は認めなかった。いずれの症例でも臨床的に有意な溶血のエビデンスは得られなかった。より長時間の装着が可能となるよう改良を重ねるべき 平均血流量は58.6mL/分、透析液流量は47.1mL/分であった。また、平均血漿尿素クリアランスは22.7mL/分、クレアチニンクリアランスは20.7mL/分であった。これらのデータは従来の透析法に比べ低値であるが、透析の時間および期間を延長できれば従来法よりも改善されることが示唆された。 ヘパリン用量が低下した際に2例に血管穿刺部位の血液凝固がみられたが、2例とも部分トロンボプラスチン時間は正常域へと回復した。1例で穿刺針の脱落がみられたが安全装置により失血は防止され、穿刺針を取り換えて治療が継続された。 これらの結果により、Davenport氏は「新開発の着用して使用する透析機器は安全性および有効性ともに有望な結果が得られた」と結論している。また、「これらの知見をより多くの症例で検証する試験が必要である。今後は、有効性を高めるために、より長時間の装着が可能となるよう改良を重ねれば、末期腎不全患者の透析回数をふやす実用的な手段となる可能性がある」と指摘している。

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高齢AF患者に対してもワルファリンはアスピリンよりも有用:BAFTAスタディ

これまでのメタ解析では確認されなかった75歳以上の心房細動(AF)患者に対するワルファリンの有用性だが、Lancet誌8月11日号に掲載された BAFTA(Birmingham Atrial Fibrillation Treatment of the Aged)スタディの結果によれば、ワルファリンによる出血性合併症の増加は必ずしも脳塞栓症・脳梗塞の減少による有用性を相殺しないという。英国 University of BirminghamのJonathan Mant氏らが報告した。平均年齢81.5歳、血圧140/80mmHgの973例が対象BAFTA スタディの対象は一般医を受診している75歳以上のAF患者973例(平均年齢81.5歳)。ワルファリン(目標INR:2~3)群(488例)とアスピリン75mg/日群(485例)に無作為化され、オープンラベルで追跡され、イベント評価は割り付けをブラインドされた研究者が行なった。両群とも約 40%がワルファリンを服用していたが試験薬以外は服用を中止した。42%が服用していたアスピリンも同様だった。試験開始時の血圧は約140/80mmHg、収縮期血圧が160mmHgを超えていたのはワルファリン群13%、アスピリン群16%だった。ワルファリン群に出血性合併症増加なし平均2.7年間の追跡期間後、1次評価項目である「脳卒中死、後遺症を伴う脳卒中、その他の脳出血、確定診断のついた脳塞栓症」発生頻度はワルファリン群 1.8%/年(24件)、アスピリン群3.8%/年(48例)で、ワルファリン群において相対的に52%の有意(p=0.0027)な減少が認められた。年齢、性別等のサブグループ別に比較しても、ワルファリン群で増加傾向の見られたグループはなかった。一方、ワルファリン群で懸念されていた脳出血は、「死亡・後遺症を伴う脳出血」発生率が0.5%/年でアスピリン群の0.4%/年と同等(p=0.83)、また「その他の脳出血」も発生率はワルファリン群0.2%/年、アスピリン群0.1%/年と差はなかった(p=0.65)。筆者らはこれらより、高齢者AFに対する抗凝固療法の有用性は過小評価されているのではないかと主張する。しかし本試験で用いられたアスピリン75mg/日という用量はAFASAK試験においてすでに、虚血性脳イベント予防作用がプラセボと同等だと明らかになっている。(宇津貴史:医学レポーター)

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