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第56回 コロナ変異株巡る国の対応に喝、塩崎元厚労相の忖度なき発言

新型コロナウイルスの感染拡大の要因の1つである変異ウイルス。英国型や南ア型、ブラジル型に共通の変異株N501Yや、南ア型やブラジル型にもある変異株E484Kに加え、最近では東京などで確認されている日本型変異株も現れた。さらにインドでは、感染力や免疫効果に影響を与える恐れのある遺伝子変異を2つ以上併せ持つ変異株も登場し、日本でも確認されている状況だ。およそ2週間ごとに変異するコロナウイルスだけに、変異株に関する状況把握や分析が喫緊の課題になってきた。日本でもようやくワクチン接種がスタートしたものの、こうした変異ウイルスが再感染の可能性を高めたり、ワクチンの効果を低下させたりすることが懸念されている。変異株への警戒が高まる中、N501Yは変異株PCR検査で探し出すことができるが、E484Kを探し出す変異株PCR検査は地方衛生研究所(地衛研)などでは運用されていないという。しかも、ゲノム解析の対象はN501Yで変異株陽性になった場合だけだ。E484KのPCR検査法を導入しない不思議これに対し、新型コロナに関する情報をSNSやブログで積極的に発信している塩崎 恭久・元厚生労働大臣は、歯に衣着せぬ物言いをしている。まず、国立感染症研究所(感染研)と一部の地衛研に集中されているゲノム解析のプロトコルと体制の抜本的見直しが必要だと指摘。第2次緊急事態宣言の解除の際、変異株PCR検査の実施率をPCR陽性者対比で40%とするという目標が決められただけで、ゲノム解析の数値目標が設けられていないことを問題視している。実際、E484Kをスクリーニングする変異株PCR検査は存在する。塩崎氏は、海外のみならず国内でも実用化され、流通していると指摘した上で、なぜスピーディに導入しないのか理解に苦しむと述べている。データベースの構築・公開・活用をまた、変異株の地域性は臨床上、極めて有益な情報だが、感染研が積極的に示していないと批判。大学などの病院ネットワークを通じたゲノム解析を格段に増やし、解析結果を臨床医療に還元すべきだと提言している。さらに、ゲノム解析結果は国際的なウイルスゲノム解析結果公開サイト「GISAID」では、厚労省・感染研の方針で、採取地を「JAPAN」としか登録していないため、国内の分布がわからないと指摘。どの地域に変異株が流行しているのか拡散状況が正確に把握できるようにすれば、国内外の研究者が分析できるようになり、実態解明が加速すると提案している。ウイルスゲノム・サーベイランス体制の強化塩崎氏は具体的な施策として、官民合同のゲノム解析チームによるゲノム解析体制の構築、公衆衛生によるサーベイランス、そして地域臨床医療との有機的一体化を早急に実現することで世界に遅れをとることのない科学を実践すると共に、コロナウイルスの変化のスピードに負けない迅速性をもって対応し、変異株問題でも先端を行く覚悟が必要だ、と提言する。政権が変異株に対する具体的な施策を示せない中、塩崎氏の提言は具体的であり、納得できるものがある。政府には専門家による分科会などが複数あるが、政治に忖度した発言が目に付く一方、政権与党の一議員である塩崎氏が忖度なき発言をしているのがなんとも皮肉だ。

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J&Jの新型コロナワクチン、重症・重篤化に高い予防効果/NEJM

 Janssen(米国・Johnson & Johnsonグループの医薬品部門)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「Ad26.COV2.S」は、単回接種によりCOVID-19を予防し、とくに入院や死亡を含む重篤なCOVID-19に対する有効率が高いことが認められた。安全性は、他のCOVID-19ワクチンの第III相試験と同様であった。オランダ・Janssen Vaccines and PreventionのJerald Sadoff氏らが、Ad26.COV2.Sの国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「ENSEMBLE試験」の結果を報告した。Ad26.COV2.Sは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の完全長・安定化スパイク(S)タンパク質をコードする遺伝子組み換え非増殖型アデノウイルス血清型26(Ad26)ベクターである。NEJM誌オンライン版2021年4月21日号掲載の報告。米国、南米、南アフリカにおいて、約4万4,000人にワクチンまたはプラセボを接種 ENSEMBLE試験は、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、メキシコ、ペルー、南アフリカおよび米国において実施された。研究グループは、18歳以上の成人をAd26.COV2.S(ウイルス粒子量5×1010/mL)群(以下ワクチン群)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、単回接種した。 主要評価項目は、per-protocol集団における接種後14日以降、および接種後28日以降の中等症~重症・重篤COVID-19発症で、安全性についても評価した。 2020年9月21日に登録を開始し、計4万4,325人が無作為化され、うち4万3,783人が接種を受けた(ワクチン群2万1,895人、プラセボ群2万1,888人)。per-protocol集団は、ワクチンまたはプラセボの接種を受け、接種時SARS-CoV-2血清陰性または不明でプロトコールの逸脱がなかった参加者と定義し、3万9,321人(ワクチン群1万9,630人、プラセボ群1万9,691人)が含まれた(データカットオフ日は2021年1月22日)。重症・重篤COVID-19予防の有効率は接種後14日以降で77%、28日以降で85% 接種後14日以降に発症した中等症~重症・重篤COVID-19症例は、ワクチン群116例、プラセボ群348例であり、有効率は66.9%(補正後95%信頼区間[CI]:59.0~73.4)であった。また、投与後28日以降の同症例はそれぞれ66例および193例で、有効率は66.1%(55.0~74.8)であった。 COVID-19重症度別の有効率は、接種後14日以降発症例で中等症64.8%(補正後95%CI:55.8~72.2)に対し重症・重篤76.7%(54.6~89.1)、接種後28日以降発症例でそれぞれ62.0%(48.7~72.2)および85.4%(54.2~96.9)であり、ワクチンは重症・重篤COVID-19の予防効果がより高いことが示された。 南アフリカでは、20H/501Y.V2変異株が高頻度に検出されたが(91配列中86配列、94.5%)、有効率は、接種後14日以降発症の中等症~重症・重篤COVID-19に対して52.0%(補正後95%CI:30.3~67.4)、重症・重篤COVID-19に対して73.1%(40.0~89.4)、接種後28日以降でそれぞれ64.0%(41.2~78.7)および81.7%(46.2~95.4)であった。 重篤な有害事象の発現率は、両群とも0.4%であった。静脈血栓塞栓症はワクチン群11例、プラセボ群3例に認められたが、多くは基礎疾患や素因に起因している可能性が考えられた。死亡例はワクチン群で3例(COVID-19との関連なし)、プラセボ群で16例(5例がCOVID-19関連死)であった。

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新型コロナワクチン接種日や副反応の記録に有用なアプリ/MDV

 メディカル・データ・ビジョン株式会社(以下、MDV)は、同社が開発し2015年からサービスを開始しているパーソナルヘルスレコード(PHR)サービス『カルテコ』に新型コロナワクチン接種の実施状況や副反応の有無を残せる新機能を搭載したことを、4月26日にプレスリリースした。 同システムはこれまで「カルテコ」を導入している医療機関の患者やその病院に付設する健診施設の受診者のみが利用できるサービスだったが、今回の新機能をアプリにしたことで、アプリをダウンロードした誰もが利用可能になったという。具体的な登録内容と手順 ワクチン接種記録の登録は「(1)新型コロナワクチンを選択(2)接種日を選択(3)初回か2回目かを選択(4)メーカーを選択(5)接種済証の写真を保存(6)接種後の副反応を記録」の手順で行う。「接種後にどのような副反応があったか」または「まったくなかったか」などを記録しておくと、次回の接種時に医師に対して前回の状況を伝えたり、自分で確認したりすることができる仕組みになっている。カルテコとは カルテコは、患者が医療機関を受診した際の診療記録(傷病名、検査結果、診療中に使われた薬、処方された薬、処置・手術など)や検査画像、健診結果をWeb上に保管し、インターネット環境があれば、いつでもどこでも閲覧できるサービス。現在、約3万人が利用している。

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COVID-19ワクチンにまだ過半数が不安/アイスタット

 いよいよ4月から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が高齢者へ始まった。COVID-19収束に向けてワクチンへの期待、接種の希望など、どのような意識の変化があるのだろうか。 「一般市民へのワクチン接種の意識について」をテーマに、株式会社アイスタットは2020年12月に引き続き2回目となるワクチンに関するアンケートの調査を4月18日に行った。アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員20~79歳の300人が対象。調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2021年4月18日対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(20~79歳/全国地域)を対象アンケート結果の概要・ワクチンをいつ接種したいかでは「すぐ受ける」(41.7%)が最多。前回調査(20年12月)より30.3%上昇・12月20日時点のワクチン接種の意向は、消極的(60.0%)が前向き(40.0%)を上回ったが、4月18日時点では前向き(58.3%)が消極的(41.7%)を上回った・どこの国(製薬会社)で開発されたワクチンを接種したいかでは、第1位「アメリカ」(53.3%)、第2位「日本」(48.0%)、第3位「ヨーロッパ」(20.0%)の順。前回第1位「日本」(67.7%)と第2位の「アメリカ」(27.3%)が逆転・4月18日時点で「安全性」「副作用」「有効性」「検証のデータ不足」について気になると回答した割合は、12月20日より減少。ワクチンに関する「マイナス」のイメージは払拭傾向・ワクチン接種について「不安である」の割合は、12月20日時点では72.3%、4月18日時点では55.3%を示し、この4ヵ月間で17%減少したものの、いまだ過半数超約4割の回答者がワクチンは「すぐ接種したい」と回答 「COVID-19のワクチンを『受ける/受けても良い』と思う時期はいつか」を聞いたところ、今回の調査では「すぐに受ける」(41.7%)が最も多く、「現時点では判断できない」(31.0%)、「1ヵ月過ぎてから~3ヵ月以内」(9.0%)と続いた。前回調査との比較では、「すぐ受ける」が30.3%伸長し、意識の変化がうかがわれた。同様に接種に「前向き」の回答も前回調査に比べ18.3%上昇し、年齢と前向きな回答傾向は正比例した。 「前問で『すでに受けた/すぐに受ける/6ヵ月以内に接種』と回答した人(n=175)にその理由」を聞いたところ複数回答で、「個人の感染症予防対策だけでは限界があるから」(66.9%)、「集団の感染症予防対策にはワクチン接種が有用だから」(52.6%)、「新型コロナウィルスの感染状況が深刻だから」(52.0%)と続いた。前回調査との比較で差が最も大きかったのは「集団の感染症予防対策にはワクチン接種が有用だから」で7.6%増加していた。 「最初の質問でワクチンを受ける時期について、『6ヵ月以内に受けない/期間に関わらず絶対に受けない/現時点では判断できない』と回答した人(n=125)にその理由」を聞いたところ複数回答で、「副作用が怖いから」(44.0%)、「ワクチンの安全性がまだ十分に検証されていないから」(36.8%)、「ワクチンの有効性がまだ十分に検証されていないから」(28.8%)と続き、ワクチンへの不安を感じる回答が上位を占めた。前回調査との比較で差が最も大きかったのは「ワクチンの安全性がまだ十分に検証されていないから」で20.4%減少となり、徐々に安全性の啓発が進んでいることがうかがわれた。 「どこの国(製薬会社)で開発されたワクチンを日本で接種できるのが良いと思うか」を聞いたところ複数回答で「アメリカ」(53.3%)、「日本」(48.0%)、「わからない/決められない」(22.7%)の順だった。前回調査に比べ、日本製を希望する人が19.7%減少し、アメリカ製が増えたが、わからない・決めらない人も微増していた。 「わが国のワクチンの接種開始・状況についてどう思うか」を5段階評価で聞いたところ、「非常に遅すぎると思う」(50.7%)、「やや遅すぎると思う」(23.0%)、「どちらでもない」(18.7%)と続いた。「非常に/やや遅すぎると思う」の割合は73.7%を示し、多くの回答者が接種の遅延を危惧する様子がうかがわれた。 「日本で開始されたCOVID-19ワクチンの気になること」を聞いたところ、複数回答で「安全性」(64.7%)、「副作用」(60.3%)、「有効性」(47.3%)の順番だった。前回の調査と比較すると上位3つの安全性・副作用・有効性がいずれも減少し、「接種できる時期」(30.0%)が4位に上り、一般の人々の関心が接種へ移っていることがうかがえた。 「接種が開始されたワクチンに不安があるか」を5段階評価で聞いたところ、「やや不安である」(37.7%)、「どちらでもない」(24.0%)、「非常に不安である」(17.7%)と続いた。「非常に/やや」を足し合わせた「不安である」の割合は55.3%と過半数を占めているが、前回の調査との比較でみると17%減少していた。 「COVID-19の患者数を抑えるためどうすればよいと思うか」を聞いたところ複数回答で、「集団での予防対策(3密対策など)の強化」(60.7%)、「個人の予防対策の強化」(59.7%)、「早急なワクチン接種の開始」(47.0%)と続いた。とくに「早急なワクチン接種の開始」は前回調査と比較すると25.0%増加し、接種への期待の広がりをうかがわせた。

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COVID-19ワクチン接種完了者、変異株に感染/NEJM

 新型コロナワクチンを2回接種後にも、新型コロナウイルスへのブレークスルー感染が認められ、変異株への感染があることが確認された。米国・ロックフェラー大学のEzgi Hacisuleyman氏らが、同大学職員で新型コロナワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)または「mRNA-1273」(Moderna製)を2回接種した417人について調べた結果で、うち女性2人にブレークスルー感染が認められたという。NEJM誌オンライン版2021年4月21日号掲載の報告。2021年1月21日~3月17日のPCR検査結果を分析 ロックフェラー大学の全職員および学生(約1,400人)は2020年秋から、少なくとも週1回PCR検査を受けている。研究グループは、2021年1月21日~3月17日に、ニューヨーク州の適格規制に従い「BNT162b2」または「mRNA-1273」ワクチンの2回接種を受けた職員417人のPCR検査結果を調べた。 対象者は、調査期間よりも2週間以上前にワクチン接種を受けていたが、2人の女性について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状が出現し、PCR検査の結果でSARS-CoV-2陽性が示された。COVID-19の症状あり、PCR陽性、変異株が検出 患者1は、51歳女性でCOVID-19の重症化リスク因子はなし。日常生活上の予防措置は順守していた。1月21日に「mRNA-1273」ワクチンの1回目接種を、2月19日に2回目接種を受けた。2回目接種の10時間後にインフルエンザ様の筋肉痛が発症したが翌日に解消している。2回目ワクチン接種から19日後の3月10日に喉の痛み等を呈し、大学でPCR検査を受けSARS-CoV-2陽性が確認された。翌11日に嗅覚を消失したが、1週間ほどで症状は解消していったという。 患者2は、65歳の健康な女性でCOVID-19の重症化リスク因子はなし。1月19日に「BNT162b2」ワクチンの1回目接種を、2月9日に2回目接種を受けており、接種した腕の痛みが2日間続いたことが示されている。3月3日、ワクチン未接種のパートナーがSARS-CoV-2陽性。3月16日に患者2に倦怠感、副鼻腔うっ血、頭痛の症状が現れ、ワクチン接種から36日後の3月17日に体調不良を訴え、検査の結果、SARS-CoV-2陽性が確認された。症状はそれ以上悪化せず、3月20日から回復に向かったという。 両患者のウイルスのシークエンシング解析の結果、臨床的重要性があると考えられる変異株、E484Kが1人から、3種の変異株(T95I、del142-144、D614G)が両者から検出された。 こうした観察結果から、研究グループは、ワクチン接種後にもCOVID-19発症リスクがあり、さらに変異株へ感染する可能性もあることが示唆されたとし、「ワクチン接種後にも、COVID-19の予防と、同感染の診断、さらに変異株の特定を続ける取り組みが重要であることが確認された」としている。

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第55回 コロナワクチン接種に駆り出される歯科医師、その心情は

新型コロナウイルスのワクチン接種の打ち手確保が難しくなる状況下、厚生労働省の検討会は4月23日、接種に必要な医師や看護師らを確保できない地域に限り、歯科医師が接種を行うことを特例で認める方針を決めた。厚労省は4月中にも各自治体に周知する。これに対し、各歯科医師会は4月24日現在、正式な声明を公表していない。これに対し、歯科医師からは前向きな声から反発までさまざまな声が上がっている。菅 義偉首相は19日、9月までにすべての対象者にワクチンが供給されるめどが立ったと胸を張った。しかし、ワクチンが確保できても、打ち手がいなければ、接種できないも同然だ。現行法上、ワクチン接種は原則として医師や看護師に限られており、実際すでに打ち手不足が表面化している。厚労省の3月25日時点の調査では、全国1,741市町村のうち、集団接種の予定会場で18.1%は医師が、22.8%は看護師が不足していると回答している。5月中旬以降、高齢者接種が本格化すれば、打ち手不足は一層深刻化するはずだ。そのような中、歯科医師のワクチン接種が認められたのだった。歯科医師は約10万5,000人おり、歯科医師によるワクチン接種が実施されたら、打ち手不足の緩和の助けにはなるだろう。「歯科医師を馬鹿にするな」の声もただ、歯科医師によるワクチン接種には、2時間程度の研修を受ける、接種を受ける人の同意を得る、医師らがいる集団接種会場に限定、などのいくつかの条件が設けられる。そもそも4月12日頃までの情報では、歯科医師の役割はワクチン接種を行う医師や看護師の補助を行うということになっていた。歯科医師会には、こうした状況に対しさまざまな声が寄せられているという。例えば、「医療従事者として可能な補助は行うべきだ」という前向きな声のほか、「手伝ってもいいが、報酬はどのくらいなのか」という現実的な疑問などだ。一方で、「歯科医師を馬鹿にするのもいい加減にしろ。医師のしもべ要請は、世界の笑いものだ」といった強い反発も見られるという。歯科医師のワクチン接種の話は、千葉県が千葉県歯科医師会に対しワクチン接種を依頼したことに端を発しているという。同会の役員はテレビ局の取材に対して、「大学で修業している時に採血とか、入院患者への点滴などは日常的に行っている。(注射そのものは)何も問題なくできると思う」と述べている。海外では薬剤師、医学生、ボランティアも担い手に感染者数が多い海外では、ワクチン接種に当たる職種は幅広い。米国の一部の州や英国では歯科医師や薬剤師も接種を行っている。米国の一部の州では、医学生や救急隊員も接種できる。英国では、医療資格を持たない一般のボランティアでも、条件を満たせば研修を受けて接種の資格が得られる。日本の場合、歯科医師の中から、どれだけの人数がワクチン接種の打ち手に名乗りを上げるか。ワクチン接種の安全性は重要だが、ここへ来て明らかに海外に遅れをとっている日本の現状もまた憂慮すべきである。接種のスピードを上げるには、さらなる医療職種の対象拡大を検討しなくて大丈夫なのだろうかと一市民ながら心配になる。

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ワクチン副反応疑い、リンパ節腫脹や消化器症状など多様/厚労省

 新型コロナワクチン接種後、倦怠感や頭痛、発熱などのほかに、稀ではあるもののリンパ節腫脹や消化器症状など多様な症状がみられていることが報告された。4月23日に開催された厚生労働省第56回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会で1)、ファイザー社製ワクチン接種者の安全性を調査する前向き観察研究の更新データを、伊藤 澄信氏(順天堂大学医学部臨床研究・治験センター)が報告した2)。 この観察研究は、先行接種が行われた医療従事者を対象に、ワクチン接種者の最終接種4週後までの安全性を調査するコホート研究。体温のほか疼痛や発赤などの接種部位反応、倦怠感や頭痛などの全身反応の有無が報告され、それらの集計結果概要は既報の通り。 本稿では、健康観察日誌の自由記載欄の中間集計結果を以下に抜粋する(1回目/2回目)。なお、同集計データのデータカットオフは4月14日、1回目は1万9,162例、2回目は1万6,907例が集計対象となっている。筋肉痛:412例(2.15%)/559例(3.31%)悪寒:361例(1.88%)/1,758例(10.40%)関節痛:272例(1.42%)/1,709例(10.11%)ワクチン接種部位運動障害:245例(1.28%)/93例(0.55%)悪心:231例(1.21%)/629例(3.72%)下痢:200例(1.04%)/277例(1.64%)四肢不快感:193例(1.01%)/84例(0.50%)口腔咽頭痛:166例(0.87%)/211例(1.25%)傾眠:160例(0.83%)/95例(0.56%)疼痛:134例(0.70%)/161例(0.95%)浮動性めまい:133例(0.69%)/189例(1.12%)ワクチン接種部位疼痛:121例(0.63%)/-感覚鈍麻:119例(0.62%)/97例(0.57%)頭痛:97例(0.51%)/143例(0.85%)咳嗽:95例(0.50%)/154例(0.91%)背部痛:84例(0.44%)/364例(2.15%)発疹:76例(0.40%)/-筋骨格硬直:74例(0.39%)/100例(0.59%)腹痛:73例(0.38%)/117例(0.69%)異常感:72例(0.38%)/64例(0.38%)ワクチン接種部位内出血:72例(0.38%)/-四肢痛:68例(0.35%)/81例(0.48%)熱感:59例(0.31%)/-口腔咽頭不快感:59例(0.31%)/-そう痒症:57例(0.30%)/-筋力低下:53例(0.28%)/-発熱:46例(0.24%)/313例(1.85%)腹部不快感:45例(0.23%)/85例(0.50%)蕁麻疹:44例(0.23%)/56例(0.33%)腋窩痛:-/207例(1.22%)食欲減退:-/143例(0.85%)リンパ節症:-/120例(0.71%)嘔吐:-/101例(0.60%)リンパ節痛:-/68例(0.40%)倦怠感:-/68例(0.40%)頚部痛:-/66例(0.39%)  なお、1回目接種後49例(0.26%)、2回目接種後1,093例(6.46%)が翌日病休していることも報告された。伊藤氏は、とくに2回目接種後に腋窩リンパ節腫大を含む反応性リンパ節腫脹が2%強みられている点について、通常のワクチン接種ではあまりみられないと指摘。消化器症状なども含め、このように多様な症状がみられる可能性があるということを、あらかじめ知っておくことが重要ではないかと話した。

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南アフリカ株(B.1.351)の遺伝子変異とワクチンの効果(解説:山口佳寿博氏)-1381

 前回の論評で考察したように、コロナウイルスは間断なく進化/変異を遂げ、世界に流布するウイルスは武漢原株からD614G株(S蛋白614位のアミノ酸がアスパラギン酸[D]からグリシン[G]に置換)へ、さらには、N501Y株(S蛋白501位のアミノ酸がアスパラギン[N]からチロシン[Y]に置換)に変化しつつある。2021年度には、N501Y変異株が世界に流布するウイルスの主流を占めるようになるものと予測される。本論評ではD614G株を“従来株”と定義し論を進める。 N501Y株に分類される変異株の主たるものとして、英国株(B.1.1.7)、南アフリカ株(B.1.351)、ブラジル株(P.1)の3種類が存在するが、これらの変異株の実効再生産数(R)は、英国株、南アフリカ株、ブラジル株の順であり、英国株が最も高い値を示す(WHO 2021年3月21日)。それ故、現時点では、英国株が流布する地域が最も多く、4月13日現在、世界132ヵ国/地域に及ぶ。次いで、南アフリカ株の流布する地域が多く世界82ヵ国、R値が最も小さいブラジル株の播種領域は少なく、世界52ヵ国で検出されている。これら3種類のN501Y変異株は1つの国/地域で1種類の変異株が流布しているわけではなく、3種類の変異株が共存していることが多い。本邦においては、2020年12月末より、検疫での検出を含めN501Y株の国内播種が始まっており、2021年4月13日現在、1,341名(検疫:200名、国内事例:1,141名)のN501Y変異株感染者が同定されている。国内事例のうち、英国株が94%、南アフリカ株が1.3%、ブラジル株が4.4%を占める(厚労省 2021年4月13日)。本邦での南アフリカ株の発生頻度は低いが世界的には英国株に次いで重要であり、本論評では南アフリカ株の特徴、とくに、武漢原株のS蛋白遺伝子配列を基に作成された種々のワクチンの効果について考察する。 南アフリカ株の遺伝子配列上の特徴に関する詳細は他紙(山口. 日本医事新報. 2021;5053:32-38.)に譲るが、S蛋白の構造を規定する遺伝子配列としてD614G変異を除いて9個の非同義変異が確認されている。これらの変異にあって重要なものは、ACE2との親和性を増強しウイルスの生体への侵入を助長、播種性を増加させるS1蛋白の受容体結合ドメイン(RBD)におけるN501Y変異と“免疫回避反応”を惹起するE484K変異(S蛋白484位においてグルタミン酸[E]がリシン[K]に置換)である(Tegally H, et al. medRxiv. December 22, 2020. [Epub ahead of print])。この2つの遺伝子変異はブラジル株でも認められる(Sabino EC, et al. Lancet. 2021;397:452-455.)。英国株ではE484K変異を認めないが、代わりに69~70位と144位におけるアミノ酸欠損が“免疫回避反応”を惹起する。 以上のような遺伝子変異の結果として、従来株感染後の回復期血漿に含まれるS蛋白特異的IgG抗体による液性中和作用は、南アフリカ株に対して11~33倍低下していた(Wang P, et al. bioRxiv. January 26, 2021. [Epub ahead of print])。同時に、南アフリカ株に対する液性中和作用は、Pfizer社のBNT162b2で8.8~14倍(Liu Y, et al. N Engl J Med. 2021 Mar 8. [Epub ahead of print])、Moderna社のmRNA-1273で6.4倍(Wu K, et al. N Engl J Med. 2021 Mar 17. [Epub ahead of print])、AstraZeneca社のChAdOx1で8.9倍(Emary KRW, et al. Lancet. 2021;397:1351-1362.)低下していることが報告された。その他、南アフリカ株に対する液性中和作用は、Novavax社のNVX-CoV2373で14.5倍、ロシアのGam-Covid-Vac(Sputnik V)で6.8倍、中国Sinovac社のCoronaVacならびにSinopharm社のBBIBP-CorVで2.4~3.3倍低下していた(WHO 2021年4月13日; Wang GL, et al. N Engl J Med. 2021 Apr 6. [Epub ahead of print])。従来株感染後あるいはワクチン接種後に得られた血漿の南アフリカ株に対する液性中和作用の減弱は主としてE484K変異によってもたらされるが、その他、K417N変異(S蛋白417位でリシン[K]がアスパラギン[N]に置換)、242~244位のアミノ酸欠損も関与するとされている。一方、BNT162b2の英国株、ブラジル株に対する液性中和作用は維持されていた(Liu Y, et al. N Engl J Med. 2021 Mar 8. [Epub ahead of print])。すなわち、南アフリカ株に対するワクチンの液性中和作用は、mRNAワクチン(BNT162b2、mRNA-1273)、Adenovirus (Ad)-vectoredワクチン(ChAdOx1、Gam-Covid-Vac)、蛋白ワクチン(NVX-CoV2373)、不活化ワクチン(CoronaVac、BBIBP-CorV)とワクチンの種類によらず減弱しているものと考えなければならない。 南アフリカ株感染に対するワクチンの実際の予防効果を検討した報告は多くないが、Madhiらは、AstraZeneca社のAd-vectoredワクチンであるChAdOx1は南アフリカ株感染に対して有効な発症予防効果を示さないことを明らかにした(Madhi SA, et al. N Engl J Med. 2021 Mar 16. [Epub ahead of print])。彼らの報告によると、南アフリカ株に対するChAdOx1の発症予防効果は、1回の接種後で33.5%(95%信頼限界[CI]:-13.4~+61.7%で非有意)、2回接種後で10.4%(95%CI:-76.8~+54.8%で非有意)でともに有意な予防効果ではなかった。一方、1回接種のAd-vectoredワクチンとして開発されたJohnson & Johnson社のAd26.COV2.Sの発症予防効果は、従来株に対して72%、南アフリカ株に対して57%であった(ENSEMBLE Study, PRNewswire. 2021年1月29日)。興味深い事実として、Ad26.COV2.Sのブラジルを中心とした南米での発症予防効果は66%で、従来株と南アフリカ株に対する予防効果の中間に位置した。Novavax社の蛋白ワクチンNVX-CoV2373の2回接種後の発症予防効果は、英国株(従来株を含む)に対して85.6%、南アフリカ株(対象はHIV陰性者)に対して55%であった(Brown. Evaluate Vantage. 2021年1月29日)。以上の結果を総括すると、武漢原株のS蛋白遺伝子情報を基に作成された種々のワクチンの変異株に対する液性中和作用は著明に減弱しているにもかかわらず、発症予防効果は英国株に対してはほぼ維持、南アフリカ株に対しては低下(しかし、有効)、ブラジル株に対しては両者の中間(有効)に位置するものと考えられる。以上の事実は、ワクチン接種後の液性中和作用の減弱がT細胞由来の細胞性免疫の賦活によって補完されていることを示唆する。 現状のワクチン接種が世界的に推進されていくと、従来株に加え変異株の中心的存在である英国株に対しても、今年中に集団免疫が確立されるものと予測される。その結果、コロナウイルスは集団免疫を回避するため、現状のワクチンに対して英国株より強い免疫回避作用を有する南アフリカ株、ブラジル株を近未来のウイルスとして選択する可能性がある。あるいは、現在の変異株と質的に異なる免疫回避作用を有する強力な新規変異株が形成される可能性も否定できない。ワクチン接種による従来株、英国株に対する集団免疫の確立は人類にとって必要不可欠な事項であるが、それでコロナ感染症が終焉を迎えるわけではなく、その先には、新たな未知の闘いが待っている可能性を念頭に置く必要がある。

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049)コロナワクチン、インフルワクチンとの違いは?【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第49回 コロナワクチン、インフルワクチンとの違いは?ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆いよいよ、医療従事者に加えて高齢者への新型コロナワクチン接種が始まりましたね。私の勤める病院でも職員への集団接種が始まり、先日1回目の接種を受けました。医局でも、やはりワクチン接種の話題で持ち切りで、筋注のこと、副反応のことなど情報が飛び交っています。周囲の人たちは、だいたい3割くらいが1回目の接種を受け終わっているような印象で、まだの人も予定はちらほらと決まってきました。なかには2回目の接種が終わっている医師も。よく耳にする副反応は、接種翌日の刺入部の筋肉痛。腕を動かさなければ気にならない程度という医師が多く、私自身も確かにそのような感じでした。(しかし、刺入部をうっかり壁にぶつけてしまうと、なかなかの痛みが……)私の周囲では、今のところ1回目の接種が終わったばかりの医師が多いため、2回目接種の副反応についてはまだあまり耳にしません。発熱、頭痛、全身倦怠感など、つらいのは2回目という話も聞くので、3週間後の2回目の接種も、心して挑みたいです。なお、肩の筋肉注射を受けたのは今回が初めてでしたが、想像以上に痛みが少なかったです。刺すときにわずかな痛みがあるのと、注入時に奥のほうが少し痛い気がする程度。インフルエンザワクチンの皮下注射のときのような、指の爪の先で思いっきり皮膚をつねるかのような注入時の痛みと比べれば、本当にごくわずか。皮下注射後によくある刺入部の腫脹発赤、痛痒さもなく、筋肉注射のほうが快適かもしれないという事実に気が付きました。施術者が筋注に慣れている人だったら、今後のインフルエンザワクチンもぜひ筋肉注射でお願いしたいくらいです。以上、コロナワクチン接種にまつわるあれこれでした。それでは、また~!

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コロナの現状を鑑み、識者らが東京五輪の再考求め提言/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はここへ来て急拡大の様相を呈している。これに対し政府は、東京など4都府県に対し緊急事態宣言を発出。まん延防止等重点措置よりも強い規制力をもって感染拡大を抑え込みたい考えだ。それは今夏に延期・開催が予定されている東京オリンピックまで3ヵ月を切り、待ったなしの状況への強い憂慮にほかならない。そんな状況の中、4月14日付のBMJ誌に、「大会の安全管理には重大な疑問があり、再考すべき」と断じる論文(エディトリアル)が掲載された。 本稿は、英国・ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの清水 和希氏、同・エディンバラ大学メディカルスクールのDevi Sridhar氏、同・キングズカレッジロンドン人口衛生研究所の渋谷 健司氏、国立病院機構三重病院の谷口 清州氏の4人が連名で発表した。 著者らは、COVID-19の現状について「世界的に依然としてパンデミックの真っただ中にある。SARS-CoV-2変異種は国際的な関心事であり、公衆衛生および社会対策の維持、行動変化の促進、ワクチン普及、保健システムの強化により、パンデミックの封じ込めと終息に向けた取り組みを加速しなければならない」との認識を示した。さらに、「アジア太平洋地域諸国と異なり、日本はいまだCOVID-19の感染制御ができていない。日本における限られた試験能力とワクチン接種開始の遅れは、政治的リーダーシップの欠如に起因している」とし、「一般市民はいうまでもなく、医療従事者や高リスク人口に対してもオリンピック開始までにワクチンを接種できない」と指摘した。 その上で著者らは、「今夏のオリンピック・パラリンピック開催計画は、喫緊の課題として再考されるべきだ。国際社会全体が、コロナ・パンデミックを封じ込め、命を救う必要性を認識している。科学的・道徳的ルールを無視し、日本が自国の政治・経済目的で東京2020(オリンピック・パラリンピック)を開催することは、国際的な健康および安全保障に対する向き合い方と矛盾するものだ」と断じている。

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COVID-19を経験した男性は勃起不全になりやすい?

 勃起不全(ED)は、COVID-19の短期的または長期的な合併症の可能性がある。今回、イタリア・ローマ大学のAndrea Sansone氏らが、COVID-19と診断された被験者におけるEDの有病率を調査し、COVID-19とEDの関連を検討した。Andrology誌オンライン版2021年3月20日号に掲載。 本研究では、2020年4月7日~5月4日、イタリアで実施されたSex@COVIDオンライン調査(心理的、社会的、性的健康を調査する匿名のWebアンケート)に参加した18歳以上6,821例(女性4,177例、男性2,644例、平均年齢32.83±11.24歳)のデータから、性的に活発なイタリア人男性985例が抽出され、そのうち25例(2.54%)がSARS-CoV-2陽性だった。 被験者は、GAD-7(Generalized Anxiety Disorder-7)とPHQ-9(Patient Health Questionnaire-9)によって、心理的健康スコアが測定された。各テストでスコアが10以上の場合、全般性不安障害とうつ病性障害をそれぞれ示唆していると見なされた。勃起機能は、IIEF-5(国際勃起機能スコア)またはその簡易版SHIMによって測定された。スコア21以下はED、スコア22〜25は正常と見なされた。 主な結果は以下のとおり。・1:3の傾向スコアマッチングに従って、985例の性的に活発なイタリア人男性から、SARS-CoV-2陽性者25例(COVID+)とSARS-CoV-2感染歴のない75例(COVID-)がマッチングされた。・2つの群間の年齢、GAD-7およびPHQ-9スコア、BMIについて、統計的に有意な差は見られなかった。・EDの有病率は、COVID+群(7/25例、28%)のほうが、COVID-群(7/75例、9.33%)よりも高かった(p=0.0274)。・年齢、BMI、および心理的健康スコアを調整したロジスティック回帰モデルにより、SARS-CoV-2感染とED発症との関連を確認したところ、COVID-19既往歴を持つ男性におけるED発症のオッズ比は5.66(95%信頼区間[CI]:1.50~24.01)だった。・同じサンプルで、年齢とBMIを調整したロジスティック回帰モデルにより、ED診断後に SARS-CoV-2感染が発覚した場合を調査したところ、ED有病者におけるSARS-CoV-2感染のオッズ比は5.27(95%CI:1.49~20.09)で、有意な関連を示した。 研究者らは、「COVID-19発症リスクは、ED発症の危険因子と似ており、われわれの研究結果は、ED、血管内皮機能障害、およびCOVID-19に関連する病態生理学的メカニズムと一致している。ワクチンやマスクの着用は、おそらく性機能障害を防ぐという追加の利益をもたらす可能性がある」とコメントしている。

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英国株(B.1.1.7)の遺伝子変異、疫学、臨床、今後の重要性(解説:山口佳寿博氏)-1380

 2019年の末に発生した新型コロナの原型である武漢原株は、2020年2月末ごろからD614G株(S蛋白614位のアミノ酸がアスパラギン酸(D)からグリシン(G)に置換、その他、4個の遺伝子変異を伴う)に置換された。D614G変異は生体へのウイルス侵入量を増加させ武漢原株より高い感染性を示す(山口. 医事新報 No.5026:26-31, 2020)。2020年9月ごろまではD614G変異株が世界の中心的ウイルスであったが、9月以降、英国、南アフリカ、ブラジルを中心にD614G株からさらなる変異を遂げたN501Y株(S蛋白501位のアミノ酸がアスパラギン(N)からチロシン(Y)に置換)が蔓延するようになった。以上のような背景を鑑み、本論評ではD614G株を“従来株”と定義する。英国、南アフリカ、ブラジルで播種しているN501Y変異株は同じウイルスではなく互いに独立したものであるが3種の変異株の共通項がN501Y変異である(山口. 医事新報 No.5053:32-38, 2021)。PANGO lineageに則った名称として、英国株はB.1.1.7、南アフリカ株はB.1.351、ブラジル株はP.1と命名された。別名として、英国株はVOC 202012/01、20I/501Y.V1、南アフリカ株はVOC 202012/02、20H/501Y.V2、ブラジル株はVOC 202101/02、20J/501Y.V3とも呼称される。2021年4月13日現在、世界206ヵ国/地域の中で英国株は132ヵ国/地域(64%)、南アフリカ株は82ヵ国/地域(40%)、ブラジル株は52ヵ国/地域(25%)で検出され、N501Y株がD614G株を凌駕し世界に流布するコロナウイルスの中心的存在になりつつある(WHO 2021年4月13日)。これら代表的なN501Y変異株に加え、フィリピンではN501Y変異を有するが英国株、南アフリカ株、ブラジル株とは異なる変異株が同定されている(B.1.1.28.3/P.3)。以上のN501Y関連変異株以外にN501Y変異を有さない5種類の変異株が米国(B.1.427/B.1.429、B.1.526)、英国(B.1.525)、フランス(B.1.616)、ブラジル(B.1.1.28.2/P.2)、ナイジェリア(B.1.525)において同定されている。以上の変異株にあって英国株の流布範囲が最も広く、アフリカ、中南米の一部を除き多数の感染者が確認されている。アフリカ、中南米の一部で英国株が検出されていないのは、検査不十分である可能性が高く、実際は、これらの地域にも英国株は侵入しているものと考えなければならない。すなわち、今後の世界的ウイルス播種として、この数ヵ月の間に従来株が英国株を中心とするN501Y株に置換されていくものと推察される。 本邦においてもN501Y株の播種は始まっており、2020年12月25日に英国株が英国からの帰国者において、2020年12月28日に南アフリカ株が南アフリカからの帰国者において、2021年1月6日にはブラジルからの渡航者からブラジル株が検出された。2021年4月6日現在、1,038例のN501Y株の感染者(検疫:152例、国内発症:886人)が確認されている(厚生労働省2021年4月6日)。国内事例は、47都道府県の81%に当たる38都道府県で発生しているが、英国株が92%、南アフリカ株が1.7%、ブラジル株が6.3%を占めている。1週後の4月13日には、変異株の検出は42都道府県(89%)まで増加している(厚生労働省2021年4月13日)。N501Y株感染者の多くは、大阪府、兵庫県を中心とする関西圏で検出されており、北海道、関東圏がこれに続く。変異株陽性率(変異株陽性/変異株総検査数)は、3月初旬で6.6%であったものが3月下旬では20.1%に上昇しており、この傾向が持続するならば、この数ヵ月の間に英国株を中心とするN501Y株が従来株を凌駕し本邦で播種するウイルスの主流を占めるようになるものと予測される。英国では、9月末の発症から3ヵ月間でウイルスの75%が英国株に置換(Challen R, et al. BMJ. 2021;372:n579.)、カナダのトロント地域でも12月中旬より3ヵ月の間にウイルスの75%が英国株に置換された(Brown KA, et al. JAMA. 2021 Apr 8. [Epub ahead of print])。 以上のような播種ウイルスの質的変化を考えるならば、今後のコロナ感染症は従来株で明らかにされた内容から英国株を中心に考え直す必要がある。まず遺伝子配列の変化を考えていく。英国株は従来株から発生した変異株でD614G変異を含めウイルス全体で18個の非同義変異(アミノ酸配列の変化あり)と6個の同義変異(アミノ酸配列の変化なし)を発現している(Public Health England)。S蛋白にはD614G変異を除いて8個の非同義変異を有し、N501Y変異はS蛋白とACE2の親和性を高め感染性を増強する。同様に、P681H(S蛋白681位のアミノ酸がプロリン(P)からヒスチジン(H)に置換)は生体のserine proteaseによるS蛋白の切断力を高めN501Y変異と同様に感染性を増強する。69~70位のアミノ酸欠損(Δ69~70、69位、70位におけるヒスチジン(H)とバリン(V)の欠損)とY144変異(144位におけるチロシン(Y)の欠損)はS蛋白に対する抗体(自然感染、ワクチン接種により形成された抗体)の結合を阻害し“免疫回避反応”を惹起する(英国株の免疫回避反応は南アフリカ株に比べ弱い)。興味深い事実として、Δ69~70はS蛋白を標的としたPCR反応を阻害する(SGTF:S-gene test failure)。そこで、nucleocapsid(N)、open reading frame-1ab(ORF1ab)を標的としたPCRが陽性であるにもかかわらずSGTFを示す場合には、遺伝子解析を施行せずとも英国株感染と診断できる(診断精度:99.5%)。 上記の遺伝子変異を背景として英国株の臨床的特徴を従来株と比較しながら考察する:(1)英国株の播種性は従来株より43~90%高く(Davies NG, et al. Science. 2021;372:eabg3055.)、実効再生産数(R)は1.5~2.0倍に達する(Volz E, et al. Nature. 2021 Mar 25. [Epub ahead of print])。(2)本論評で採り上げたChallen氏らの論文(Challen R, et al. BMJ. 2021;372:n579.)では、英国株は従来株に比べ重症度が高く、死亡率を1.64倍上昇させると報告されたが、英国株が重症度、死亡率を変化させないという逆の報告もあり(Frampton D, et al. Lancet Infect Dis. 2021 Apr 12. [Epub ahead of print])、この問題に関してはさらなる検討が必要である。(3)英国株感染者の男女比、年齢分布は従来株とほぼ同様である(Public Health England)。(4)再感染率に関しても従来株と明確な差を認めない(従来株:0.2~0.65%、英国株:0.7%)(Boyton RJ, et al. Lancet. 2021;397:1161-1163.、Graham MS, et al. Lancet Public Health. 2021 Apr 12. [Epub ahead of print])。(5)mRNAワクチン(Pfizer社BNT162b2、Moderna社mRNA-1273)は、英国株に対する液性中和反応を維持した(Liu Y, et al. N Engl J Med. 2021 Feb 17. [Epub ahead of print]、Wu K, et al. N Engl J Med. 2021 Feb 17. [Epub ahead of print])。この基礎的結果を支持する知見として、データ集積時に英国株が80%を占めたイスラエルでの解析においてBNT162b2の発症予防効果は94%であり、従来株に対する発症予防効果(95%)と同一であることが示された(Dagan N, et al. N Engl J Med. 2021;384:1412-1423.)。(6)一方、AstraZeneca社のadenovirus-vectoredワクチン(ChAdOx1)の英国株に対する液性中和反応は従来株に比べ約9倍低かった。それにもかかわらず、ChAdOx1の英国株感染に対する実際の発症予防効果は70.4%であり、従来株に対する予防効果(81.5%)より低いものの有効な範囲に維持されていた(Emary KRW, et al. Lancet. 2021;397:1351-1362.)。ChAdOx1に関する液性中和反応と臨床的予防効果の解離は、T細胞性免疫の維持によって説明できる。ワクチン接種によって記憶T細胞を介する細胞性免疫が賦活されるが、このT細胞性免疫機能は限局した変異に規定されるものではない(山口. 医事新報 No.5053:32-38, 2021)。それ故、たとえ、遺伝子変異によって液性中和反応が低下したとしてもT細胞性免疫機能の賦活によって英国株に対する発症予防効果が維持されたものと考察される。 本邦においても小数例(n=874、92%までが英国株)であるが英国株を中心とするN501Y変異株感染に関する臨床的特徴が発表された(国立感染症研究所2021年4月5日)。内容は海外で報告されたものとほぼ一致し、実効再生産数は従来株の1.32倍であった。海外の報告と異なった点は、15~29歳の若年層におけるN501Y株感染率が従来株の場合に比べ少し高値であったことである。再感染率、入院率、死亡率などは検討されていない。英国株感染に起因する臨床像には人種差が存在する可能性があり、本邦を含め世界各国においてさらなる解析を期待するものである。

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第57回 運動が良いのはヒスタミンのおかげ/抗老化成分がヒト試験で効果/mRNAワクチンの威力

運動はおそらく骨格筋順応を介して体調を上向かせ、骨格筋の衰えは老化を招きます。そんな健康維持に不可欠な骨格筋にまつわる2つの研究成果を紹介します。また、mRNAワクチンの威力を示した介護施設での感染解析結果を簡単にお知らせします。運動はヒスタミン受容体を介して体を鍛えるヒスタミンに関わる研究といえば主にアレルギー・炎症・胃酸分泌ですが、運動とのおそらく重要な関わりが随分古くから知られており、今から遡ること100年近く前の1935年には犬の静脈血のヒスタミンが筋肉収縮で増えることが報告されています1)。そのおよそ20年後の1958年には人の血中のヒスタミンが運動で増えることを示した報告2)があり、同時期の報告では人の前腕や手の動脈でヒスタミンが血管拡張作用を担うことが確認されています3)。時代は進んで今世紀初めの2006年の報告では人の運動後の骨格筋の血流増加(postexercise hyperemia)にヒスタミンH1/H2受容体が携わることが示され、幾つかの報告をまとめるとヒスタミンは運動後の回復に与る血管拡張にどうやら寄与すると示唆されました4)。有酸素運動はなんであれ体によく、心疾患などの慢性疾患の治療や予防に大変役立ちます。運動が健康に良いことを支える仕組みはよく分かっていませんでしたが、Science Advances誌に今月中頃に発表された試験報告によるとヒスタミンは運動後の回復に与するのみならず運動の健康増進作用にもなくてはならない働きをどうやら担っているようです5,6)。ベルギーのゲント大学の運動生理学者Wim Derave氏らのチームは健康な男性20人を募り、きつめのインターバル運動を6週間にわたって週3回繰り返してもらいました。男性の半数は運動の1時間前にヒスタミン受容体H1とH2を遮断する薬フェキソフェナジンとラニチジンかファモチジンを服用し、残り半数はプラセボを服用しました。そうして6週間後、ヒスタミン受容体遮断薬を服用した男性はプラセボ服用男性に比べて運動性能指標やミトコンドリアのエネルギー生成の改善が劣りました。また、血中の糖を細胞に移すインスリンの働きはプラセボ群では改善していたのにヒスタミン受容体遮断薬服用群ではそうなっていませんでした。ヒスタミン受容体遮断薬服用群では脚の筋肉の毛細血管形成が少なく、内皮細胞の形成に不可欠な内皮型一酸化窒素合成酵素の上昇が見られませんでした。先達の研究でも示唆されている通りヒスタミンは運動後の筋肉血流の最適化に関わって運動への全身反応を指示するのかもしれないと著者は考察しています。ヒスタミンH1/H2受容体が体調を整える仕組みや慢性疾患がヒスタミン作用にどう影響するかを今後調べることで新たな薬の標的の発見や運動の最適化の道が開けそうです5)。抗老化成分NMNでヒトのインスリンの働きもマウスと同様に改善マウスの老化の弊害を食い止めて代謝を改善することが知られる細胞成分・ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の元となるニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を糖尿病になりそうな太った女性に投与した無作為化試験で有望なことにインスリン感受性改善が認められました7)。糖尿病の水準には至っていないものの血糖値が高めで太り過ぎか肥満の女性25人が試験に参加しました。13人はNMN 250 mgを10週間毎日服用し、残り12人にはプラセボが同じように投与されました。その結果、骨格筋に糖を受け取らせるインスリンの働きがNMN投与で改善し、骨格筋の構えや作り変え(remodeling)に関わる遺伝子発現も向上しました。ただし、血糖値や血圧は残念ながら下がりませんでした。それに血液中の脂質や肝臓のインスリン感受性の改善も認められず、肝臓の脂肪も減りませんでした。骨格筋のインスリン感受性が改善すればたいてい他の代謝指標も同様に改善するのですが今回の試験ではそうなりませんでした。とはいえ今回の試験結果は抗老化治療の開発を確かに一歩前進させるものです。インスリンは筋肉の糖の取り込みや貯蔵を促し、その効果が衰えると2型糖尿病を生じ易くなります。その衰えをどうやら食い止めるらしいNMNが骨格筋でどう働くかを今後の研究で詳しく把握する必要があります。また、前糖尿病や糖尿病を予防したり乗り切るのにNMNが役立つかどうかを試験しなければなりません。NMNは雌のマウスにとくに有効なので今回の試験は女性を募りましたが、男性も含めた試験に研究者はすでに着手しています8)。介護施設でmRNA COVID-19ワクチン接種が威力を発揮Pfizer/BioNTechかModernaのmRNAワクチンを去年12月から接種し始めた米国イリノイ州シカゴの75の介護施設で3月末までに居住者7,931人と職員6,834人が2回目接種を済ませ、その期間に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染した627人のうちワクチン2回目接種から14日以降に感染したのはわずか22人(4%;22/627人)のみでした9,10)。感染したとはいえそれら22人の6割以上14人は無症状で、22人から施設の他の人への感染は認められませんでした。また、PCR検査結果によると22人のウイルス量は少なめでした。同国ケンタッキー州の介護施設1つでのCOVID-19感染流行を調べた別の報告でもPfizer/BioNTechのmRNAワクチンの効果を裏付ける結果が得られています。2回目のワクチン接種から2週間が過ぎた居住者や職員の感染率はおよそ87%低かったと推定されました11)。参考1)McCord JL,et al. J Appl Physiol (1985). 2006 Dec;101:1693-701. 2)DUNER H, et al. Scand J Clin Lab Invest. 1958;10. :394-6.3)DUFF F, et al. J Physiol. 1954 Sep 28;125:581-9.4)Luttrell MJ, et al.Exerc Sport Sci Rev. 2017 Jan;45:16-23.5)Van der Stede T, et al. Sci Adv. 2021 Apr 14;7:eabf2856.6)Regular HIIT Exercise Enhances Health via Histamine / TheScientist7)Yoshino M, et al. Science. 2021 Apr 22:eabe9985. [Epub ahead of print]8)Anti-aging compound improves muscle glucose metabolism in people / Eurekalert9)Postvaccination SARS-CoV-2 Infections Among Skilled Nursing Facility Residents and Staff Members - Chicago, Illinois, December 2020-March 2021. MMWR. April 21, 2021.10)US administers 200 million COVID-19 vaccine doses / University of Minnesota11)COVID-19 Outbreak Associated with a SARS-CoV-2 R.1 Lineage Variant in a Skilled Nursing Facility After Vaccination Program - Kentucky, March 2021. COVID-19 Outbreak Associated with a SARS-CoV-2 R.1 Lineage Variant in a Skilled Nursing Facility After Vaccination Program - Kentucky, March 2021. MMWR. April 21, 2021.

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新型コロナワクチン接種、間違い防止チェックリストの活用を/厚労省

 厚生労働省は各医療機関などが新型コロナワクチン接種を実施するにあたり、ホームページ内の「新型コロナワクチンの接種を行う医療機関へのお知らせ」「新型コロナワクチンに関する自治体向け通知・事務連絡等」ページにて『予防接種を適切に実施するための間違い防止チェックリスト』を公開している。 このリストは、「確認チェックリスト」「医師がチェックする確認事項の解説」「事故予防対策の例」の3つに項目立てされており、受付・問診から救急搬送措置に至るまで、注意すべきポイントが一連の流れに沿って記載されている。 医師がチェックする確認事項は多岐にわたり、ワクチンの種類(メーカー名)や接種量はもちろんのこと、受付で確認済みの診察券、予診票、母子健康手帳、予防接種済証も医師が再確認することになっている。また、現時点では16歳未満への接種は推奨されていないが、沖縄の離島で年齢確認を誤り15歳の高校生に接種してしまった事例が報告されており、「来場者がワクチンの対象接種年齢であるか」「直前の予防接種実施日(新型コロナワクチン以外の場合は、原則13日以上の間隔が空いていること)」などの確認について、医療者より知識の少ない一般市民への接種には十分な配慮が必要である。 以下はリストの項目のみ抜粋したもの。1 確認チェックリスト(医師、看護師、保健師等及び事務従事者が分担し、ダブルチェックを行う。)(1)個別接種A.受付時の確認事項B.問診時の確認事項C.接種時の確認事項D.接種後の確認事項E.ワクチン保管の確認事項I.救急搬送措置の確認事項(2)集団接種A.受付時の確認事項 B.問診時の確認事項 C.接種時の確認事項 D.接種後の確認事項については、(1)個別接種と同じ。F.事前の準備での確認事項G.当日の準備での確認事項H.予防接種液の調整I.救急搬送措置の確認事項2 医師がチェックする確認事項の解説 医師は、上記のチェックリストの「B.問診時の確認事項」「C.接種時の確認事項」「D.接種後の確認事項」「E.ワクチン保管の確認事項」について、看護師、保健師等及び事務従事者のチェックが適切に行われているか再確認する。 とくに、以下のBの1)、2)、3)、4)、5)及びCの4)については、慎重に確認する。B.問診時の確認事項C.接種時の確認事項D.接種後の確認事項E.ワクチン輸送・保管の確認事項3 事故予防対策の例1)予定外のワクチン接種(ワクチンの取り違え)2)接種量の誤り3)接種回数の誤り4)接種方法の誤り5)接種間隔の誤り6)接種開始時期の誤り7)予診票確認の不備8)有効期限切れワクチンや注射器での接種9)接種後の安全確保10)ワクチン保管の不備11)特設の接種会場における事故

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第52回 上がらないワクチン接種率、歯科医参入が打開策となるか?

<先週の動き>1.上がらないワクチン接種率、歯科医参入が打開策となるか?2.基礎疾患者のワクチン、高齢者の接種待たずに開始/厚労省3.元三重大の准教授、カルテ捏造で執行猶予4年の有罪判決4.75歳以上の医療費負担引き上げ法案、収入に応じた制度に5.コロナの影響大、けんぽ組合の8割が赤字に転落/健保連6.病室Wi-Fi導入は申請で全額補助、患者団体らの申し入れから1.上がらないワクチン接種率、歯科医参入が打開策となるか?厚労省は、全国1,741市町村のうち、集団接種を予定する会場で18.1%が医師不足、22.8%が看護師不足とする3月25日時点の調査結果をもとに、歯科医の協力なしに集団接種が困難であるとし、歯科医も(1)筋肉注射の経験がある、(2)必要な研修を受けている、(3)接種者の同意を得ている、などの条件を満たせば、新型コロナワクチンの実施を特例的に認める方針を決めた。首相官邸によると、22日時点で1回以上接種した医療従事者等は約162万人、高齢者は約5万人(全例1回接種)で、全人口に対する接種率は先進国と比べると極端に低い水準にある。(参考)新型コロナワクチン注射、歯科医も 厚労省が方針決定(朝日新聞)新型コロナワクチン 歯科医師が接種 特例で認める方針 厚労省(NHK)これまでのワクチン総接種回数(首相官邸)2.基礎疾患者のワクチン、高齢者の接種待たずに開始/厚労省厚労省は、新型コロナウイルスワクチンの接種について、65歳以上の高齢者向けの接種が完了する前でも、がんや慢性心臓病などの基礎疾患を持つ者に対しての接種を認める方針を示し、自治体にも通知を発出した。認知症の高齢者などで、意思確認が難しい場合についても、ほかの季節性インフルエンザなどの定期接種と同じく、状況に応じて、家族やかかりつけ医、高齢者施設の介護者などの協力を得て、本人の意向を丁寧にくみ取って行う。また、意思は確認できても、自署ができない場合には、家族などによる代筆を行うなど適切な運用を求めている。(参考)基礎疾患者の接種、高齢者の完了待たず可能 厚労省(日経新聞)コロナのワクチン優先接種の基礎疾患(NHK)資料 新型コロナウイルスワクチンに係る予防接種の高齢者に次ぐ接種順位の者(基礎疾患を有する者等)への接種の開始等について(事務連絡 令和3年4月21日)資料 新型コロナ予防接種の実施に係る留意事項について(事務連絡 令和3年4月23日)3.元三重大の准教授、カルテ捏造で執行猶予4年の有罪判決22日、津地方裁判所は、三重大学附属病院で行われた手術において、使っていない薬の電子カルテを改ざんし、診療報酬をだまし取ったとして詐欺罪などを問われた元准教授に、懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の判決を言い渡した。判決理由は、「自らの立場を悪用した犯行で、医療現場での重要な記録に対する社会の信用が害された程度は大きい」と非難し、懲戒解雇された点などを考慮し、執行猶予となった。この事件を巡っては、被告の上司にあたる元教授も詐欺罪で起訴されている。(参考)カルテ改ざん有罪判決 津地裁、三重大元准教授に(日経新聞)当院臨床麻酔部における不正事案に対する取り組みについて(三重大学)4.75歳以上の医療費負担引き上げ法案、収入に応じた制度に菅総理大臣は23日に開催された衆議院厚生労働委員会で、75歳以上の医療費の自己負担を年収200万円以上の人を対象に2割に引き上げる医療制度改革関連法案について、「現在の社会保障制度を次の世代に引き継いでいくため、負担能力に応じた制度に改める必要がある」と述べ、理解を求めた。なお、法案は2022年1月1日からの施行を予定しており、単身世帯で年収200万円以上、複数世帯では75歳以上の年収合計が320万円以上の場合に対象となる者は約370万人。引き上げ後3年間は、激変緩和措置を設ける方針が打ち出されている。(参考)菅首相 社会保障制度「負担能力に応じた制度に改める必要」(NHK)全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案概要(衆議院)5.コロナの影響大、けんぽ組合の8割が赤字に転落/健保連22日、健康保険組合連合会(健保連)が、全国の大企業の社員が加入している健康保険組合の財政について、2021年度は77.9%の赤字が見込まれると推計を発表した。実質保険料率が初めて10%を超え、義務的経費に占める拠出金割合が50%超の健保組合が全体の26.2%を上回っている。加入者の所得減に伴う保険料収入の減少など、さらに厳しくなっている財政状況に、今後の展開が危ぶまれる。2022年以降は団塊世代が後期高齢者入りするため、さらに拠出金負担が増大することが見込まれ、想定より早く保健財政に危機が到来したと考えられる。国民皆保険制度の維持、現役世代の負担軽減のため、現在、国会で法改正について審議を行なっているが、後期高齢者2割負担導入による現役世代の負担軽減は必須とし、早期の施行を求めている。(参考)健保組合、8割が赤字の見通し 21年度予算を公表(毎日新聞)コロナ響き、健保組合の8割が赤字 保険料率引き上げも(朝日新聞)資料 令和3年度 健康保険組合の予算早期集計結果(概要)について(健保連)医療保険制度改革関連法案に関する資料(同)6.病室Wi-Fi導入は申請で全額補助、患者団体らの申し入れから23日、新型コロナ感染拡大時に闘病生活を送ったフリーアナウンサーの笠井 信輔氏を始め、神経難病患者らで作る団体や病院に入院中の患者らが、院内で無線LAN(Wi-Fi)を使えるようにしてほしいと厚労省に申し入れをした。これは、笠井氏が悪性リンパ腫を患って入院中、コロナの影響で友人などのお見舞いも受けられず孤立していた時に、スマホのデータ通信で毎月1万円近くの追加料金がかかったことや、オンラインでお見舞いの会を開いてもらったことなどをきっかけとして、難病患者らとともに病院がWi-Fiを設置できるよう国に政策として予算をつけてほしいと訴えた形。今回、補正予算で通信関連設備への補助がつき、上限はあるものの、申請があれば全額補助可能となった。電波環境協議会の2019年のサンプル調査によると、医療機関のうち81.1%がWi-Fiを導入し、電子カルテなどの医療系システムやインターネットサービスを利用しているが、患者にWi-Fiアクセスを提供しているのは27.3%に過ぎない。申請に当たっては、「令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金に関するQ&A」を参照されたい。(参考)病室にWiFi「今やライフライン」 笠井アナら訴え(朝日新聞)#病室WiFi協議会 ホームページ【拡散希望】病室のWi-Fi開設に国の予算が付きました(笠井信輔氏のブログ)

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COVID-19感染流行下における血液疾患診療の指針まとめ/日本血液学会【Oncologyインタビュー】第32回

日本血液学会は3月半ば、「新型コロナウィルス感染症蔓延下における血液疾患診療について」と題した声明を発表した。血液腫瘍を専門とする医療者に向け、疾患別に分けたうえで新型コロナ流行下での診療方針と、患者へのワクチン接種の推奨について留意事項をまとめたものだ。この声明をまとめた日本血液学会理事、造血器腫瘍診療ガイドライン委員会委員長である筑波大学の千葉 滋氏(血液内科 教授)に作成の経緯と狙いを聞いた。インタビューはzoom形式で行われた―このタイミングで声明を出された経緯は?これまでも、学会としては米国血液学会(ASH)や欧州血液学会(EHA)が発表した情報(Q&Aなど)を紹介、アップデートしてきました。ただ、日本は感染蔓延状況が欧米に比べればマイルドであり、また治療を入院で行うか外来で行うかが異なることもあります。このため、欧米における危機対応の判断の中には必ずしも日本の現状にそぐわない点もある、という声がありました。そこで、作業のためのワーキングチームで議論を始めました。また、学会誌である「臨床血液」の2月号がCOVID-19の特集号となっており、こちらと相互補完的に情報共有ができればよい、とも考えました。―COVID-19の影響で血液疾患の治療にはどんな変化がありましたか?日本では感染者の絶対数が北米や欧州諸国ほど多くありません。日本で血液疾患を診療しているのは中〜大規模医療機関が主体ですが、こうした病院において血液疾患の診療を大幅に抑制せざるを得なくなったところはあまり多くないのではと思います。血液疾患には「急速に病態が進む」ものと「緩やかな経過をたどる」ものがあります。急速に病態が進む疾患は、COVID-19感染リスクを勘案したとしても、治療を待てないケースが大半です。一方で、緩やかな経過をたどる疾患では、計画どおり治療を進めるべきか、COVID-19感染リスクを考慮して計画を変更すべきか、慎重に判断すべき時期があります。血液疾患は疾患そのものが要因で免疫不全になり、さらに治療によって一段と深刻になるケースが多いため、治療のベネフィットと感染リスクの見極めが必要になるからです。たとえば悪性リンパ腫の中で緩やかな経過をたどる疾患における寛解後の維持療法では、ベネフィットがリスクと比して少ないと医師が判断した場合には、治療を延期・中断するなどの判断が行われると思います。日本血液学会のサイト上で公開されている声明他のがんでは、「COVID-19による受診控えでがんの診断や治療が遅れる」といった問題も指摘されてきました。しかし、血液腫瘍は病態進行の速さから何ヵ月も受診を控えることが現実的でない場合が多いですし、一般に血液腫瘍が疑われるとなるべく早く専門施設の受診を勧められるケースが大半です。ですから、COVID-19蔓延のための受診控えによって治療の遅れが多数のケースで生じた、ということはなかったのではないかと想像しています。血液学会で計画されている「COVID-19レジストリ―研究ワーキンググループ」の調査により、血液疾患を持つ新型コロナ感染者の実態の一部が明らかになると思います。―今回の声明では、ASH等の海外学会が発信しているQ&Aと違う意見が述べられているのでしょうか?米国はもともと人口当たりの病床数が日本に比べて圧倒的に少なく、入院費用も非常に高額であるため入院期間が短く、日本では入院となるような治療(たとえば自家造血幹細胞移植など)でも外来で行われてきたという実態がありました。ここに、日本よりも2桁多い累計3,000万人を超えるような数の新型コロナの感染者が発生したことから、外来・入院それぞれで病院機能が受けた影響は日本に比べ格段に大きかったと推察されます。このために、血液疾患の治療も平時の治療から変更せざるを得ないケースが出てきて、そのノウハウが情報発信されているものです。一方で、日本では先にお話ししたように、血液疾患の治療を平時のものから変更しなければならないような事態には必ずしも至っていないため、今回の声明でも「従来のガイドラインに沿った治療を継続すべき」との見解が多くなっています。ただ、一部には、通院間隔を空けるため投与間隔の長い薬剤に変更する、維持療法を見送る、等の提案をしている箇所もあります。―血液疾患患者に対するワクチン接種の推奨はどのようになっていますか?基本的には「打てる状況ならば、打っておいたほうがいい」というスタンスです。実際には、ワクチン開発中の治験に組み入れられた血液疾患の患者はおらず、エビデンスが蓄積されるのはこれからです。一般にがん患者がCOVID-19に罹患すると重症化リスクが高いとさまざまに報告されており、ワクチンの有効性のデータからも血液がんあるいは他の血液疾患で接種を推奨しない理由はありません。ただ、実際はそれほど単純ではありません。血液疾患患者は免疫不全状態にあることが多く、抗がん剤や免疫抑制剤による治療中であればさらにそれが顕著となります。結果として、一般の方よりもワクチンの効果が低くなることが予想されます。もともとワクチン接種による免疫獲得の成功率は100%ではありませんが、血液疾患患者の成功率はさらに下がる可能性が高い。とくに同種造血幹細胞移植後の患者さんは免疫がほとんど消えてしまいます。移植後に免疫が回復するには時間がかかりますので、これまでも移植後は6ヵ月経過し免疫抑制剤を中止した後に、肺炎球菌や麻疹・風疹などへの予防接種をしていました。生ワクチンは移植後1年経過してからです。新型コロナワクチンについては、移植後いつ接種すべきかが一層深刻な問題です。免疫回復を待っている間にも感染する危険がありますので。こうした点について声明では、欧米の推奨と共に、基本的な考え方を記述しています。一方、新型コロナワクチンを優先接種したすぐ後で抗がん剤治療や移植を実施すれば、ワクチンの効果が消えてしまう可能性もあります。「消えたら再接種ができるのか」という問題はまだ議論もされていない状況ですから、抗がん剤治療や移植が計画されている場合にいつ接種するかは、慎重な判断が求められるわけです。骨髄腫など治療が長期に及ぶ疾患においても、治療中のどのタイミングでワクチンを接種するのか、という別の判断が必要です。骨髄腫についてはつい先頃、日本骨髄腫学会が独自に留意点などを公表しています。こう見ていくと、大多数の血液疾患の患者さんにワクチン接種は推奨されるものの、実際にどのタイミングで接種するかは、個々の患者さんの疾患と治療の段階に応じて主治医と相談しながら決めていただく、という結論になるでしょう。血液疾患といっても多種多様です。血液学会のほかに移植・免疫療法、骨髄腫、血栓・止血、小児血液・がんなどの専門学会があるので、そちらからの声明もご確認いただければと思います。参考サイト日本血液学会「新型コロナウィルス感染症蔓延下における血液疾患診療について-留意事項-」日本骨髄腫学会「骨髄腫患者に対する新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン接種について」

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内科レジデントを終え次のステップへ、臨床留学医の挑戦はなお続く【臨床留学通信 from NY】第20回

第20回:内科レジデントを終え次のステップへ、臨床留学医の挑戦はなお続く全世界の死者が300万人を超える中、米国ではワクチン接種が進み、4月6日以降は16歳以上の全員が接種できるようになりました。それでもニューヨーク州は、変異株の影響で依然として1日5,000人程度の感染者数が続いています。しかしながらCOVID-19のために入院を要する高齢者の数は劇的に減少し、4月になってからは、ほぼ新規の入院はなくなりました。そんな中、私は7月よりAlbert Einstein Medical College/Montefiore Medical Centerという同じニューヨーク市にある病院でCardiology fellowをすることになり、その書類作業に追われております。日本と違って、入職前に健康診断を済ませる必要がある上、HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act)の兼ね合いから、数多くのweb based moduleをこなさないと働かせてもらえないのです。さて、今回よりフェローシップのマッチングについて話をしていきたいと思います。レジデント同様、内科のサブスペシャリティのフェローについても、マッチングのアルゴリズムに則って、ウェブ上で出願する必要があります。誰もが希望する診療科に進める日本と異なり、そこは残酷な競争の原理が働いています。例えば、内科系で最も競争の激しい循環器内科は、全米で1,083のスポットしかありません。それは、1,000人強ほどのフェローに対し必要十分な研修が行えるように、国全体でspotの数を定めているからです。それに対し、通年ならば1,400人弱ほどの出願数があるのですが、昨年は新型コロナの影響でより多く循環器科などのフェローシップへの道に流れ、さらにzoomなどによるウェブ面接となったことで、強い候補者が例年ならあまり行かないような遠隔地にある病院の面接を数多く勝ち取った上、通常ならば出るキャンセル待ちもなくなってしまい、弱肉強食の原理が色濃く出る結果となりました。そのため昨年は例年より多い1,567人の出願者数に対し、3人に1人はアンマッチという現実でした。残念ながら私の同僚でほかに4人が循環器科に出願していましたがいずれもアンマッチという状況でした(例年ならば、当院からはアンマッチは循環器科にはありません)。詳しくはこちらのウェブサイトをご覧ください1,2)。このPDFを見ると具体的な数字がありますが、IMG (international medical graduates)は、AMG (American Medical Graduates)に比べてビザ保有という点で圧倒的に不利な中で、DOと呼ばれるMDとは違う医学部の医学教育を得て卒業した米国人や、主にカリブ海地域の医学部を卒業した米国人(US Foreign)と遜色のないマッチ率となっていますが、ここに至るまでには非常に熾烈な競争を余儀なくされます。次回以降、マッチのための準備やプロセス等について述べていきたいと思います。参考1)https://mk0nrmp3oyqui6wqfm.kinstacdn.com/wp-content/uploads/2020/12/MSMP-Match-Results-Report-AY2021.pdf2)https://mk0nrmp3oyqui6wqfm.kinstacdn.com/wp-content/uploads/2019/12/415_MRS.pdfColumn画像を拡大する日本よりも数週間遅れでニューヨークにも春が来て、セントラルパークで花見を楽しむ人の姿がありました。なかなか風情のある景色が都会のオアシスに広がっています。

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新型コロナワクチン、既感染者での効果は?/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)既感染者にワクチンを接種すべきかどうか、まだはっきりしていない。これまでに既感染者が未感染者よりワクチンによる抗体応答が有意に高かった報告は少ない。今回、イタリア・シエナ大学のGabriele Anichini氏らが実施したコホート研究では、既感染者でのワクチン単回接種後の中和抗体価が、未感染者における2回接種後より有意に高いことが示された。NEJM誌オンライン版2021年4月14日号のCORRESPONDENCEに報告。 本研究では、SARS-CoV-2既感染者38人(男性9人と女性29人、平均年齢35.1歳、95%信頼区間[CI]:31.7~38.6歳、感染からワクチン接種までの平均日数:111日)と、未感染者62人(男性25人と女性37人、平均年齢44.7歳、95%CI:41.0~47.6歳)の計100人の医療従事者が参加した。 両群ともファイザー社製mRNAワクチンBNT162b2を接種。既感染者は初回接種の10日後に、未感染者は2回目接種の10日後に血清サンプルを採取した。すべての参加者において、化学発光微粒子免疫分析を用いて、特異的抗SARS-CoV-2スパイクIgGの有無を調べた。 主な結果は以下のとおり。・血中循環抗スパイクIgG抗体力価は、既感染者と未感染者で有意差はなかった。・特異的抗SARS-CoV-2中和抗体の幾何平均力価は、既感染者(569、95%CI:467〜670)と未感染者(118、95%CI:85〜152)に差がみられた(p<0.001)。年齢や性別による実質的な差はなかった。・既感染者(血中循環抗スパイクIgG抗体が検出されなかった1人を除く)を感染からワクチン接種までの期間が1〜2ヵ月(8人)、2〜3ヵ月(17人)、3ヵ月以上(12人)の3グループに分類したところ、血中循環IgG抗体の平均力価は、感染1〜2ヵ月後に接種したグループ(1mL当たり15,837任意単位)と2〜3ヵ月後に接種したグループ(同21,450任意単位)で差がみられた。感染2~3ヵ月後に接種されたグループと3ヵ月以降に接種されたグループ(同21,090任意単位)の間には有意差はみられなかった。中和抗体の幾何平均力価では、感染1〜2ヵ月後に接種されたグループが437(95%CI:231〜643)、2~3ヵ月後に接種されたグループが559(同:389~730)、3ヵ月以降に接種されたグループが694(同:565~823)であり、感染後3ヵ月以上以降に接種するとブースター反応がより効果的であることを示しているが、決定的な結論を下すには十分ではなかった。 著者らは、「これらの結果は、SARS-CoV-2既感染者のワクチン単回接種後は未感染者の2回目接種後より強い液性応答を示すというエビデンスを提供する」と述べている。

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イスラエルの新型コロナワクチンの効果、地域や年齢による差は?

 新型コロナワクチンの接種が各国にて急ピッチで進められているが、社会における実質的な効果の検証が求められている。イスラエル・ワイツマン科学研究所のHagai Rossman氏ら研究チームが、国内におけるワクチン接種の開始前後におけるCOVID-19症例数と入院数の経時的変化について分析したところ、ワクチン接種における年齢および地域の優先順に、COVID-19症例数および入院者数が大幅かつ速やかに減少傾向を示していたことがわかった。イスラエルでは、2020年12月20日から新型コロナワクチン接種が始まり、優先対象の60歳以上では、2月24日時点で85%が2回の接種済みだという。著者らは、本結果がコロナパンデミックに対する全国的なワクチン接種キャンペーンの実効性を示唆するものだと述べている。Nature Medicine誌オンライン版2021年4月19日号に掲載の報告。 本研究では、2020年8月28日~2021年2月24日に収集したイスラエル保健省のデータを後ろ向きに分析。2020年12月20日に開始されたファイザー社製ワクチン(BNT162b2 mRNAワクチン)接種キャンペーン後の新しいCOVID-19症例数と入院数の経時的変化を検証した。具体的には、(1)優先接種対象の60歳以上とそれ以下の年齢層(2)2020年9月のロックダウンと2021年1月のロックダウン(3)ワクチン接種の実施が早かった都市と遅い都市―の3項目について、ワクチン接種がどのように影響しているか調べた。 年齢層の検証では、ワクチン接種の優先順位の高かった60歳以上で、それ以下の年齢層よりもCOVID-19症例数および入院数が大幅かつ速やかな減少が見られた。この傾向は、国のワクチン接種優先スケジュールの順番と正比例していた。また、同様の減少傾向は2021年1月のロックダウン時には見られたが、ワクチン接種の実施前となる2020年9月のロックダウン時には観察されなかった。 地域の検証では、早期にワクチン接種を実施した都市において、60歳以上のCOVID-19症例数および入院数の大幅かつ速やかな減少が見られた。具体的には、早期に実施した都市では、ピーク値と比べCOVID-19症例数は88%、重症者入院率は79%減少したのに対し、後期に実施した都市ではCOVID-19症例数78%、重症者入院率66%の減少にとどまった。

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第54回 専門家コメントの揚げ足を取る奴ら、新型コロナ感染対策の赤点取るなよ

もう高校を卒業してから30年以上が経過しているが、先日同世代のある方と電話で話していて「赤点」という懐かしい言葉を耳にした。いうまでもなく学習の習熟度を測る基準点で、高校時代はこの点数を下回ると最低でも追試、最悪は留年となった。赤点ラインは学校によってかなり差があり、私の高校では全教科一律で50点未満が赤点。ちなみに大学入学後、この母校の赤点ラインは周囲と比べてかなり厳し目であることを初めて知った。かくいう私は2度の赤点経験者だが、なんとか無事に卒業はしている。そんなこんなを思い出しながら、ふと今のコロナ禍に思いが至った。というのも、この電話をしていた日に以下の記事が文藝春秋の運営する情報サイト「文春オンライン」に掲載され、話題を呼んでいたからだ。「『東京五輪1年再延期の検討を』 西浦教授が提言」西浦教授とは言うまでもなく、コロナ禍の当初、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症クラスター対策班の一員として活動し、流行拡大を阻止のために人と人との接触を8割減にする必要があると繰り返し主張してきた通称「8割おじさん」こと、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻教授(クラスター対策班当時は北海道大学大学院医学研究院教授)の西浦 博氏のことである。内容は何のことはない。「今の感染急増を踏まえると、ワクチン接種の機会が医師ですら不足する可能性もある。そのことを考慮して、国民に広くワクチンが行き渡るであろう来年に東京オリンピック・パラリンピックを再延期してはどうか」という西浦氏の提言が紹介された記事だ。この記事は「Yahoo!ニュース」で配信されると瞬く間にネット上で拡散され、4月21日時点で「Yahoo!ニュース」コメント欄には6000件超のコメントが寄せられている。コメントの多くは、おおむね西浦氏の主張には理解を示している。ただ、「延期はない。中止だろう」の趣旨のものが目立つ。私は西浦氏の本音は中止なのだろうが、大会関係者の意向も忖度して「再延期」と表現しているのだと勝手に推測している。ただ、このコメント欄や記事を引用したTwitterやFacebookの投稿の一部には、もはや誹謗中傷の域としか思えないコメントも見受けられる。この記事に対する反響は配信直後から良くも悪くも相当大きかったのだろう。西浦氏はTwitter上でお詫びも含めたツイートをしている。悪いほうの反響で多く見かけるのが、西浦氏が2020年4月に発表した数理モデルを利用した試算への批判だ。これは感染拡大に無対策だった場合、流行終息までに日本国内では約42万人が死亡するというもの。当時、社会に衝撃を与えた試算だったが、前述の批判とはこれを「大外れだったではないか」と指摘するものである。その多くは医療と無関係な一般人だが、ごく一部には医療従事者もいるようだ。私はこの批判は的外れだと思っている。そもそも試算は、「無対策ならば」などの条件付きであり、試算結果のようにならないために「人と人の接触8割減」が必要という提言もセットで発表されている。冒頭のテストに例えれば、私たちは予め問題と模範解答を示され、赤点を回避するよう迫られていたわけである。もし試算が的中したら政治、アカデミアも含め国民全員の敗北、言葉は汚いが日本は「国民総アンポンタン」との烙印を押されていたのである。この西浦氏の「人と人の接触8割減」提言について、政治の側で満額回答を示したわけではなかったが、インフルエンザ等特別措置法(特措法)に基づく初の緊急事態宣言発出とそれを根拠にした飲食店の時短営業や一部商業施設の休業、イベントの中止・延期、テレワークの推奨などといった対策に落とし込まれ、さらに国民には「3密の回避」「マスク着用」「手洗いの励行」などのメッセージが繰り返し伝えられた。その結果として一時的とはいえ感染拡大はかなり抑制できた。今現在、私たちは第4波とでも言うべき感染急増に晒されている。4月5日以降、特措法に基づく「まん延防止等重点措置」が10都府県に順次発出されたが、それでも連日1,000人を超える感染者が報告されている大阪府、感染拡大傾向を見せる東京都はともに緊急事態宣言発出が確実視されている。この感染急拡大の原因の一つとして英国株を中心とする感染力が強い変異株の流行が指摘されている。それは事実だろうが、改めて言うまでもなく、野生株だろうが、変異株だろうが、▽人と人との接触減(その中でもとりわけ3密の回避)▽マスク着用▽手洗いの励行といった感染拡大阻止の対策は変わらない。むしろその徹底がより必要となってくる。強いて言うならば、これらの対策に「接種できる人は速やかにワクチン接種をする」という対策が加わる。いずれにせよ西浦氏の最初の試算発表時から今まで、私たちは同じ問題とそれに対応したほぼ同じ模範解答が示され、その徹底を求められている。医療従事者と私たち報道関係者は、自分自身の徹底に加え、他者への呼びかけも今まで以上に求められることになる。最終的に東京オリンピック・パラリンピックが予定通り1年遅れで開催されるのか、再延期となるのか、それとも中止となるのか。この点は医学的な判断のみならず高度に政治的な判断も加わるため、今の時点で予測不可能だ。現在、緊急事態宣言発出を巡って、一部への休業要請も含めたより強い対策をどこまで行うのかは水面下で調整が行われている。が、まん延防止等重点措置にしろ緊急事態宣言にしろ、一度発出されてしまえばその後は単に政治家や医療従事者だけでなく、対象となる地域の住民も行動の真価が問われることになる。そして私たちに「赤点」が付くかどうかは数ヵ月以内に判明することになる。

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