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先月7月の初めから中旬(7月3日~17日)に米国・マサチューセッツ州バーンスタブル郡で開催された幾つかの催しに同国全域から数千人が訪れ、それらの催しの最中に同郡に居合わせた同州住民469人の新型コロナウイルス感染(COVID-19)が7月26日までに確認されており、必要な回数のワクチン投与後2週間以上過ぎて接種完了状態(fully vaccinated)の人がそれら感染者のほとんど74%(346人)を占めました1)。133人の検体のウイルス配列を調べたところほとんど(120人、90%)がデルタ変異株(デルタAY.3株を含む)でした。7月3日時点でのマサチューセッツ州のCOVID-19ワクチン接種完了者の割合は69%であり、感染者469人のワクチン接種完了者の割合74%とだいたい同じでした。配列解析から示唆されるように469人の感染のほとんどがデルタ変異株で、催しに接した人々が同州の人口統計と一致すると仮定するなら接種完了者とそうでない人のデルタ変異株の感染しやすさはほぼ同程度だったのでしょう。感染者469人のうち先月27日時点で死亡例はなく、入院したのは5人で、そのうち4人はワクチン接種を完了しており、残り1人は非接種でした。また、ワクチン接種完了者とそうでない人のウイルス量にどうやら差はないようでした。米国疾病予防管理センター(CDC)はこれまでワクチン接種完了者のマスク着用はおよそ不要との見解を示していましたが、MMWR掲載の上記の解析を含む情報を受け、COVID-19が相当またはかなり多発している郡(areas of substantial and high transmission)の公の場の室内ではワクチン接種が済んでいようといまいと誰もがマスク着用を要するとの方針を先月27日に新たに示しました2)。COVID-19が相当またはかなり多発している郡の割合は先月末31日時点で約79%3)ですので、米国のほとんどの地域はCDCの新たなマスク着用方針の対象になります。ワクチン接種完了者のCOVID-19はたとえ感染ウイルスがデルタ変異株でも全体のほんの一握りであり、たいてい軽症で済みます。しかし、MMWRの報告が示すようにデルタ変異株感染者のウイルス量はワクチン接種が完了していても非接種と同様に多くなり、接種完了者でもデルタ変異株にひとたび感染すれば他の人を感染させてしまう恐れがあります4)。それゆえ、知らぬ間にうっかりウイルスを他人に広めてしまわないようにするためにCDCは今回の新たなマスク着用方針を決めました。CDCのマスク着用方針はあくまでもCOVID-19が相当またはかなり多発している郡に限りますが、マスク着用を含む予防対策の実行はそうでない地域でも検討すべきかもしれないとMMWR報告の著者は言っています1)。米国ではデルタ変異株が感染の増加を助長していますが、同国感染症対策リーダーAnthony Fauci(アンソニー・ファウチ)氏によると感染のほとんどはワクチン非接種のおよそ1億人における出来事です5)。ワクチン普及はCOVID-19流行を消し去るほどのものではないが昨冬のような事態の回避に十分なレベルに達しているに違いなく、再度の足止め(ロックダウン)はしないと同氏は言っています。参考1)Outbreak of SARS-CoV-2 Infections, Including COVID-19 Vaccine Breakthrough Infections, Associated with Large Public Gatherings - Barnstable County, Massachusetts, July 2021. Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR). July 30, 2021.2)When You’ve Been Fully Vaccinated / CDC3)COVID-19 Integrated County View / CDC4)Statement from CDC Director Rochelle P. Walensky, MD, MPH on Today’s MMWR / CDC5)U.S. will not lock down despite surge driven by Delta variant, Fauci says / REUTERS