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ポンぺ病の新治療薬が製造販売承認を取得/サノフィ

 サノフィ株式会社は、2021年9月27日にポンペ病の効能または効果でアバルグルコシダーゼアルファ(商品名:ネクスビアザイム点滴静注用100mg)が製造販売承認を取得したと発表した。同社では、ポンペ病(糖原病II型)において、乳児型ポンペ病および遅発型ポンペ病の新たな標準治療となる可能性に期待を寄せている。ポンペ病は呼吸や運動機能に影響を及ぼす遺伝性の難病 ポンペ病は、ライソゾーム酵素の1つである酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の遺伝子の異常によりGAA活性の低下または欠損が原因で生じる疾患で、複合多糖(グリコーゲン)が全身の筋肉内に蓄積する。このグリコーゲンの蓄積が、不可逆的な筋損傷を引き起こし、肺を支える横隔膜などの呼吸筋や、運動機能に必要な骨格筋に影響を及ぼすことで運動機能や呼吸機能の低下をもたらす希少疾患。世界でのポンペ病の患者数は5万人と推定され、乳児期から成人後期のいずれの時期においても発症する可能性がある。ポンぺ病の新治療薬ネクスビアザイムは歩行距離を延長 ポンぺ病の新治療薬となるネクスビアザイムは、筋細胞の中にあるライソゾームにGAAを送り届けてグリコーゲンの分解を促すことで、ポンペ病がもたらす重大な症状である呼吸機能、筋力・身体機能(運動能力など)をアルグルコシダーゼアルファよりも改善させる目的で開発された。ポンペ病で生じるグリコーゲン蓄積を低下させるためには、筋細胞の中にあるライソゾームにGAAを送り届ける必要がある。そのため筋細胞内のライソゾームにGAAを送り届ける効率を高めるための手段として、GAAの輸送に大きな役割を果たすマンノース6リン酸(M6P)受容体を標的とする研究が行われ、ネクスビアザイムが開発された。ネクスビアザイムは、アルグルコシダーゼアルファと比較してM6Pレベルを約15倍増加させた分子として設計され、細胞内への酵素の取り込みを向上、標的組織において高いグリコーゲン除去効果を得る目的で開発された。 今回の承認では、2つの臨床試験で得られた肯定的な結果に基づき行われ、ピボタル第III相二重盲検比較試験である「COMET試験」では、遅発型ポンペ病の患者を対象としてネクスビアザイムの安全性と有効性を標準治療薬であるアルグルコシダーゼアルファと比較した。また、第II相Mini-COMET試験では、アルグルコシダーゼアルファの投与経験のある乳児型ポンペ病患者を対象にネクスビアザイムの安全性を主に評価するとともに、探索的に有効性の評価を行った。 その結果、COMET試験では、ネクスビアザイムが、アルグルコシダーゼアルファに比べ、第49週時点における努力肺活量(%FVC)が2.4ポイント改善し、主要評価項目である非劣性が示された。また、6分間歩行試験では、ネクスビアザイム投与群は、標準治療薬であるアルグルコシダーゼアルファ群に比べ、歩行距離が30m延長した。一方、重篤な副作用については、ネクスビアザイム投与群に高頻度、頭痛、そう痒(かゆみ)、悪心、蕁麻疹と疲労が認められた。 なお、ネクスビアザイムは、日本では2020年11月27日に希少疾病用医薬品に指定され、米国食品医薬品局は2021年8月に承認したほか、英国の医薬品・医療製品規制庁はネクスビアザイムを有望な革新的医薬品に指定している。

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脳卒中治療ガイドラインが6年ぶりに改訂、ポイントは?

 今年7月、『脳卒中治療ガイドライン2021』が発刊された。2015年の前版(2017年、2019年に追補発行)から6年ぶりの全面改訂ということで、表紙デザインから一新。脳卒中治療ガイドライン2021では追補の内容に加え、関連学会による各指針など最新の推奨が全面的に取り入れられている。そこで、脳卒中ガイドライン委員会(2021)の板橋 亮氏(岩手医科大学内科学講座脳神経内科・老年科分野 教授)に、近年目覚ましい変化を遂げる脳梗塞急性期の治療を中心として、主に内科領域の脳卒中治療ガイドライン2021の変更点について話をうかがった。脳卒中治療ガイドライン2021の変更点にエビデンスレベルの追加 まず脳卒中治療ガイドライン2021の1番大きな変更点としては、追補2019までは推奨文にエビデンスレベルはついておらず、文献のエビデンスを踏まえた推奨度のみが記載されていたが、2021年版では推奨文に推奨度(ABCDE)とエビデンス総体レベル(高中低)の両方が記載された。すべての引用文献に、エビデンスレベル(1~5)が示されている。 さらに、脳卒中治療ガイドライン2021では今回初めてクリニカルクエスチョン(CQ)方式が一部に採用され、重要な臨床課題をピックアップしている。利便性を考慮し、あえてCQ方式と従来の推奨文方式の両方にて記載した内容もある。 また、脳卒中治療ガイドライン2021の全般的な構成の変更点として、前版までリハビリテーション関連の内容はすべて後半のページにまとめられていたが、今回から急性期に関してのリハビリテーションは前半ページ(目次I「脳卒中全般」)に記載された。脳卒中治療ガイドライン2021脳梗塞急性期の変更点 脳卒中治療ガイドライン2021の具体的な内容に関しては、たとえば目次II「脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)」項の冒頭に、CQ「脳梗塞軽症例でもrt-PA(アルテプラーゼ)は投与して良いか?」「狭窄度が軽度の症候性頸動脈狭窄患者に対して頸動脈内膜剥離術(CEA)は推奨されるか?」が追加された。 また、脳卒中治療ガイドライン2021では、脳梗塞急性期における抗血小板療法の推奨として、DAPT(抗血小板薬2剤併用療法)の推奨度が見直され、発症早期の軽症非心原性脳梗塞患者の亜急性期までの治療法として、推奨度BからA(エビデンスレベル高)に引き上げられた(なお、高リスクTIAの急性期に限定した同療法は、DAPTの効果の大きさと出血リスク上昇を総合的に勘案し、推奨度Bで据え置きとなっている)。これに伴い、従来経静脈投与で用いられていた抗凝固薬アルガトロバン、抗血小板薬オザグレルNaは、推奨度BからCに引き下げられている。 さらに、脳梗塞急性期の抗凝固療法における直接阻害型経口抗凝固薬(DOAC)についての推奨、脳梗塞慢性期の塞栓源不明の脳塞栓症における抗血栓療法についての推奨などが、脳卒中治療ガイドライン2021には新たに追加された。 全体的には、『静注血栓溶解(rt-PA)療法適正治療指針 第三版』『経皮経管的脳血栓回収用機器 適正使用指針 第4版』などの推奨に準じた内容で、目新しさには欠けるかもしれないが、それが脳卒中治療ガイドライン2021として1つにまとめられたことは大きな意義を持つだろう。 詳細は割愛するが、塞栓源となる心疾患に対するインターベンションについての記載も充実した。たとえば、脳梗塞慢性期の奇異性脳塞栓症(卵円孔開存を合併した塞栓源不明の脳塞栓症を含む)については、『潜因性脳梗塞に対する経皮的卵円孔開存閉鎖術の手引き』に準じた推奨が、出血の危険性が高い非弁膜症性心房細動患者については、『左心耳閉鎖システムに関する適正使用指針』に準じた推奨が追記されている。脳卒中治療ガイドライン2021にテネクテプラーゼを記載 機械的血栓回収療法は、急性期治療の中でもとくに注目されており、軽症例や単純CTで広範な早期虚血が見られる例に関して、国際的な無作為化試験が行なわれている。本治療に関するエビデンスはここ数年で変わる可能性が高い。 また、海外ではCTPT系P2Y12拮抗薬チカグレロルとアスピリンによるDAPTの臨床試験が行われ,米国ではすでに脳卒中領域の承認を得ているが、わが国で導入される見通しは不明である。このように、推奨文にするほどではない、もしくはわが国では保険適用がない場合でも、臨床医に知っておいてほしい情報は、脳卒中治療ガイドライン2021の解説文の中にコラム形式で記載されている。 推奨文としては書いていないが、脳卒中治療ガイドライン2021の脳梗塞急性期の経静脈的線溶療法の解説文には、海外の一部で使われ始めているテネクテプラーゼについても記載がある。おそらく、無作為化試験の結果が揃えば、今後アルテプラーゼに代わって使われるようになるだろう。国内での臨床試験も行われる予定だが、わが国で導入できる目途は立っていないため、こちらも今後の展開に注目されたい。脳卒中治療ガイドライン2021は読みやすさを重視した構成 驚くことに、脳卒中治療ガイドライン2021は、前版から解説文の文字数を半分近くに減らしたという。現場で参照することを第一に、各項目はできる限り2ページ以内に収めるなど、読みやすさを重視した工夫が凝らされている。板橋氏は、「推奨文だけ読めば最低限の重要事項が確認できるように作られてはいるが、推奨度そしてエビデンスの根拠となる解説文の内容も是非確認していただきたく、できるだけ読んでもらえるように短くまとめた」と語った。また、手元に置いておきたくなるような脳卒中治療ガイドライン2021のスタイリッシュなデザインは、委員会事務局の黒田 敏氏(富山大学脳神経外科 教授)が選んだこだわりの青色が採用されたという。脳卒中治療ガイドライン2021の電子版は11月に発売予定だ。『脳卒中治療ガイドライン2021』・発行日 2021年7月15日・編集 一般社団法人日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会・定価 8,800円(税込)・体裁 A4判、320ページ・発行 株式会社協和企画

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第77回 コロナ受け入れで病院は潰れない!大阪・松本病院倒産の原因は巨額の診療報酬不正請求か?

負債約52億円で民事再生法の適用を申請こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。MLBのレギュラーシーズンの試合も残り少なくなってきました。9月27日は朝5時に起きて、NHKBSでロサンジェルス・エンジェルスの大谷 翔平投手の登板試合を観戦しました。7回1失点、10奪三振という好投でしたが、今回もチームの打撃が振るわず、10勝目をあげることはできませんでした。あと、残り6試合(9月28日現在)です。10勝目の登板機会がやってくるかどうかと、アメリカン・リーグのホームラン王争いがとても気になります。それにしてもエンジェルス、打てなさ過ぎです。さて、8月26日、大阪市福島区で松本病院を経営する医療法人友愛会が、負債約52億円を抱え大阪地裁に民事再生法の適用を申請、弁済禁止の保全処分と監督命令を受けました。このニュース、「コロナ受け入れ病院が倒産」といったセンセーショナルな切り口で取り上げるメディアがいくつかありました。コロナを受け入れている病院は、「第55回 コロナで“焼け太り”病院続出? 厚労省通知、財務省資料から見えてくるもの(前編)」でも書いたように、非常に手厚い補助金が入っています。「コロナ受け入れが理由で倒産はあり得ない」と思ったのですが、その後、興味深い続報が出たので、今回はそれについて書きます。不正請求分の返還が求められると事業継続困難に医療法人友愛会・松本病院は阪神電鉄野田駅前に建つ199床の病院です。内科、外科、循環器内科、脳神経外科、整形外科、形成外科など外科系に強く、救急患者の24時間受け入れを行っています。病床構成は一般病棟93床、回復期リハビリテーション病棟49床、地域包括ケア病棟44床、ハイケアユニット13床で、民間の中規模病院に多い典型的なケアミックス型病院と言えます。今年1月からは新型コロナの軽症と中等症の患者も受け入れていました。倒産報道から2週間ほど経った9月10日、毎日新聞が、民事再生法の適用を申請した医療法人友愛会が診療報酬を不正に請求していた疑いのあることが判明したと報道しました。債権者への説明資料に基づく情報として、保険医療機関の指定取り消しの可能性があるとともに、不正請求分の返還が求められた場合、事業継続が困難になると判断したことが民事再生法の適用を申請した理由であると同紙は報じています。不正請求が疑われているのは、前理事長時代の2014年2月~2017年4月の約3年間。入院基本料や回復期リハビリテーション病棟入院料について、施設の基準を満たしていないにも関わらず、満たしたとして不正請求を続けていたとのことです。通常、医療機関の不正請求の調査は、地方厚生局(大阪だと近畿厚生局)の指導監査担当部署の指導から始まります。悪質な場合は本格的な監査となり、改善命令、処分決定と続きます。返還命令が下されるのは処分決定後ですから、医療法人友愛会はその決定を待っている段階とみられます。返還金額が決まる前に民事再生法の適用を申請したということは、相当悪質かつ巨額な不正請求だったことが予想されます。8月の倒産報道時は、理事長名で倒産の理由を「過去の設備投資に伴う過大な有利子負債など経営の稚拙さに起因する」というコメントを出していましたが、実際のところは過大な設備投資が経営悪化を招き、不正請求に走ったのかもしれません。コロナで焼け太りの病院、日赤は黒字1,000億円松本病院の民事再生法の適用申請はコロナ患者受け入れとは全く無関係(というよりむしろ、収入増で倒産までの時間が長くなった可能性もあります)で、「コロナ受け入れで倒産はあり得ない」という見立ては正しかったわけです。実際、2020年度の病院の経営状況は、コロナを受け入れた病院については、以前も書いたように桁違いに“ウハウハ”だったようです。いくつかの病院団体の調査や決算などを見ても、コロナに伴う患者数の減少で通常診療の収支は悪化したものの、コロナに対応する医療機関に対する補助金がプラスに働き、最終的な損益としては黒字を計上しているところがほとんどです。例えば、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会の3病院団体による病院経営状況調査では、20年度はコロナ関連の支援金を加えた利益率は、コロナ受け入れ実績のある病院では2.4ポイント増でした。また、日本赤十字社(91病院中89病院でコロナ対応)の20年度医療施設特別会計の決算は最終的に1,090億円の黒字を計上しました。うち約1,000億円はコロナ関連補助金などとのことです。東京都病院経営本部がまとめた2020年度の都立8病院の決算も、経常収支が102億円の黒字(19年度は42億円の赤字)でした。都立病院も外来患者や入院患者の医業収益は落ち込んだものの、コロナ病床確保に対する国からの約300億円の補助金によって黒字となったとのことです。1,000億円とか、100億円とか、とにかく桁違いの数字に唖然とします。日赤と都立病院は公的・公立の病院で民間病院とは事情が違う部分もあると思いますが、大雑把に「コロナを受け入れた急性期病院は1病院あたり10億円前後の黒字」と言えそうです。「ポスト・コロナ倒産」が起きるかも一方で、コロナに対応していない病院の経営状況は芳しくありません。前述の3病院団体の病院経営状況調査では、コロナ受け入れ実績のない病院の利益率は、コロナ関連の支援金を加えても0.3ポイント減となっていました。そんな中、コロナ未対応の医療機関にとってショックなニュースが、先週末飛び込んで来ました。田村 憲久厚生労働相は9月24日、新型コロナウイルス感染対策を促す目的で、全医療機関を対象としてきた診療報酬の特例加算を9月末で廃止する方針を表明したのです。代わりに実費分を補助する仕組みを設ける予定だそうです。これまでは、防護服着用や職員研修の経費として、初診・再診は1回50円、入院は1日1,000円、調剤は1回40円などを加算。この特例加算はコロナ患者を受け入れていない医療機関も対象となっており、「なぜコロナ未対応の医療機関も」という強い批判がありました。この加算の創設が決まった2020年12月当時、厚労省と財務省は「21年10月以降は延長しないことを基本想定としつつ、感染状況や地域医療の実態を踏まえ、年度前半の措置を単純延長することを含め、必要に応じ、柔軟に対応する」という玉虫色の内容で合意していました。ギリギリまで決まらなかった特例加算の廃止ですが、結局はコロナの第5波の収束も踏まえ、財務省の意向を反映する形で廃止が決まったわけです。コロナとは無関係の医療機関にとっては“お年玉”のような加算の廃止は、相当な打撃でしょう。世の中が徐々にポスト・コロナに動き始めています。医療機関も、そろそろコロナで変わった人々の受療行動や、マスク習慣化による感染症減少といったさまざまな要素も勘案しつつ新しい医業経営の仕方を考えないと、それこそ「ポスト・コロナ倒産」が起きてしまうかもしれません。

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脊髄性筋萎縮症で初の経口治療薬エブリスディ発売/中外製薬

 中外製薬株式会社は、8月12日に乳幼児では最も頻度の高い致死的な遺伝性疾患である脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬であるリスジプラム(商品名:エブリスディ)のドライシロップ60mgの販売を開始した。本製品はSMAで初の経口の治療薬であり、患者・患児の治療での利便性の向上が期待される。 SMAは、脊髄の運動神経細胞の変性により筋萎縮や筋力低下を示す遺伝性の神経筋疾患。乳幼児では最も頻度の高い致死的な遺伝性疾患で、乳児期から小児期に発症するSMAの患者数は10万人あたり1~2人とされる。SMAの原因遺伝子はSMN遺伝子で、SMN1遺伝子の機能不全に加え、SMN2遺伝子のみでは十分量の機能性のSMNタンパクが産生されないため発症する疾患。 リスジプラムは、SMN(survival motor neuron)タンパクの欠損につながる5番染色体の変異によって引き起こされる、SMAを治療するためにデザインされたSMN2スプライシング修飾剤。SMNタンパクレベルを増加させ、維持することでSMAを治療するよう設計されている。SMNタンパクは全身にみられ、運動神経と運動機能の維持に重要な働きをする。リスジプラムは、2020年8月に米国で、2021年3月に欧州で承認を取得し、わが国では同年6月23日に製造販売承認を取得している。 同社では、「本治療薬は、乳児から成人までの広い年齢層で有効性を示し、経口剤のため在宅治療が可能となる。SMAの患者とその家族の皆様に、新たな治療選択肢によるこれまでにない価値を届けられるように、適正使用の推進に努めていきたい」と抱負を語っている。製品概要販売名:エブリスディ ドライシロップ 60mg一般名:リスジプラム効能・効果:脊髄性筋萎縮症用法・用量:通常、生後2ヵ月以上2歳未満の患者にはリスジプラムとして、0.2mg/kgを1日1回食後に経口投与する。通常、2歳以上の患者にはリスジプラムとして、体重20kg未満では0.25mg/kgを、体重20kg以上では5mgを1日1回食後に経口投与する。薬価:エブリスディ ドライシロップ60mg 97万4,463.70円/1瓶承認日:2021年6月23日薬価基準収載日:2021年8月12日販売開始日:2021年8月12日

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終末期の運動機能の低下は死亡と関連するか/BMJ

 高齢期初期の運動機能は死亡と強い関連があり、終末期の運動機能の減退は、全般的な運動機能の指標(椅子立ち上がり時間、SF-36の身体的側面のQOL要約スコア)では早期(それぞれ死亡の10年前と7年前)に、基本的/手段的日常生活動作(ADL)の制限では後期(死亡の4年前)に出現することが、フランス・パリ大学のBenjamin Landre氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年8月4日号に掲載された。英国のWhitehall IIのデータを用いた前向きコホート研究 研究グループは、運動機能に関する複数の客観的または患者の自己申告による指標と死亡との関連の評価を目的に、前向きコホート研究を行った(米国国立老化研究所などの助成による)。 解析には、英国のWhitehall II研究のデータが使用された。この研究は1985~88年に35~55歳であった英国の公務員を対象に開始。2007~09年に6,194人(平均年齢65.6[SD 5.9]歳、女性27.3%)を対象に運動機能の評価が導入され、その後2012~13年および2015~16年に追跡調査が行われた。 主要アウトカムは、2007~19年の期間における全死因死亡と、運動機能の客観的指標(歩行速度、握力、椅子立ち上がり時間[秒、立つ-座るの5回繰り返しに要する時間])および自己申告による指標(SF-36の身体的側面のQOL要約スコア、基本的/手段的ADLの制限)との関連とした。1標準偏差の低下で死亡リスクが14~30%増加 解析に含まれた6,194人のうち、ベースライン(2007~09年)から2019年10月の期間に654人が死亡した。死亡時の平均年齢は76.8(SD 6.2)歳だった。死亡した参加者は、追跡終了時に生存していた参加者に比べ、ベースラインの平均年齢が高く(69.7歳 vs.65.1歳)、複数の併存疾患を持つ割合が高く(27.2% vs.12.1%)、運動機能が劣っていた。 平均10.6年の追跡期間中にベースライン(2007~09年)の運動機能が1標準偏差低くなると(5,645人中610人)、死亡リスクが、歩行速度では22%(95%信頼区間[CI]:12~33)、握力では15%(6~25)、椅子立ち上がり時間では14%(7~23)、身体的側面のQOL要約スコアでは17%(8~26)、基本的/手段的ADLの制限では30%(7~58)増加した。これらの関連性は、2012~13年(平均追跡期間6.8年)および2015~16年(同3.7年)には、さらに強くなる傾向が認められた。これは、平均年齢65歳、69歳、72歳時の運動機能の低下は高い死亡率と関連し、いずれの指標も年齢が進むほど関連性が強くなることを示唆する。 一方、軌跡解析では、死亡者(484人)は生存者(6,194人)に比べ、死亡前の運動機能が劣っていた。すなわち、椅子立ち上がり時間では死亡の10年前の死亡者-生存者間の標準化平均差は0.35(95%CI:0.12~0.59、p=0.003、男性で1.2秒、女性で1.3秒の差に相当)、歩行速度では死亡の9年前の標準化平均差が0.21(0.05~0.36、p=0.01、男性で5.5cm/秒、女性で5.3cm/秒の差に相当)、握力では6年前の標準化平均差が0.10(0.01~0.20、p=0.04、男性で0.9kg、女性で0.6kgの差に相当)、身体的側面のQOL要約スコアでは7年前の標準化平均差が0.15(0.05~0.25、p=0.003、男性で1.2点、女性で1.6点の差に相当)であり、基本的/手段的ADLの制限では4年前の有病率の差が2%(0~4、p=0.03)であった。また、このうち椅子立ち上がり時間、身体的側面のQOL要約スコア、基本的/手段的ADLの制限では、死亡までに両集団間の差がさらに大きくなった。 著者は、「これらの知見は、運動機能の変化を早期に検出することで、予防および目標を絞った介入の機会が得られる可能性があることを示唆する」としている。

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那須・ハコラ病〔PLOSLまたはOMIM221770:Polycystic lipomembranous osteodysplasia with sclerosing leukoencephalopathy〕

1 疾患概要■ 定義・概念那須・ハコラ病(OMIM221770)は、1970年代に那須博士とハコラ博士により報告された疾患である。臨床的には、病的骨折、前頭葉症状、進行性の若年性認知症に特徴付けられる。常染色体劣性の遺伝性疾患であり、原因遺伝子はDNAX activating protein of 12 kDa(DAP12)とtriggering receptor expressed on myeloid cells 2(TREM2)である。 また、本症はpolycystic lipomembranous osteodysplasia with sclerosing leukoencephalopathy(PLOSL)とも呼ばれている1)。■ 疫学本疾患は希少疾患であり、わが国と北欧のフィンランドからの報告が多い。フィンランドでは、DAP12のExon1-4の欠失変異(c.-2897_277-1227del5265)の創始者効果のために有病率が高いと考えられており、同国の推定有病率は100万人あたり1~2人である2)。なお、わが国では平成21年度に厚生労働科学難治性疾患克服研究事業「那須・ハコラ病の臨床病理遺伝学的研究」の研究班が実施したアンケート調査の結果から、患者数は200人程度と推定されている3)。■ 病因那須・ハコラ病は、DAP12またはTREM2の機能喪失変異で発症する。DAP12とTREM2は破骨細胞やミクログリアの細胞膜表面に発現し、複合体を形成する。リガンドがTREM2と結合することで、DAP12/TREM2の複合体から下流にシグナル伝達が生じる。那須・ハコラ病は、DAP12またはTREM2の変異により、下流へのシグナル伝達が阻害されることが原因と考えられている。しかし、その他の詳細な分子生物学機序については明らかになっていない3)。■ 症状那須・ハコラ病は進行性の疾患であり、その臨床経過は4期に分けることができる。(1)特に症状が認められない無症候期(Latent stage)。(2)骨嚢胞や病的骨折が認められる骨症状期(Osseus stage)。(3)脱抑制などの前頭葉症状を中心とした精神症状などが認められる早期精神神経症状期(Early neuropsychiatric stage)。(4)認知機能障害低下が顕著となる晩期精神神経症状期(Late neuropsychiatric stage)、である。無症候期においては特に発達などに異常は認められない。20代で骨症状期に移行する。骨症状期では、軽微な事故などを契機に足関節や足に疼痛や圧痛を認めるようになる。また、最初の骨折は30歳以前で認められる。骨折は主に長管骨で認められる。30代では、早期精神神経症状期へと移行する。この時期には、性格の変化に加え、注意力や判断力の低下、多幸感や社会性の欠如などの前頭葉症状が緩徐に進行する。神経学的には、痙性などの上位運動ニューロン徴候が認められる。さらに、不随意運動としてアテトーゼや舞踏運動が認められ、30代半ばには頻繁にてんかん発作が経験される。40代で晩期精神神経症状期に移行する。この時期では、歩行などは困難となる。50代には、寝たきり、意思疎通が困難となる。これまでに明らかな骨症状を認めずに精神神経症状を呈した症例も報告されている4)。■ 予後本疾患は進行性で、50代には誤嚥性肺炎などを契機に死亡する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)那須・ハコラ病の診断には、(1)骨嚢胞、(2)中枢神経病変、(3)遺伝子変異を確認するために各種検査を実施する必要がある1-3)。骨嚢胞は長管骨の骨端部に多発する。手指や手根骨、足根骨の骨X線検査で嚢胞様病変や骨梁の菲薄化が認められる。これらの異常所見の確認にはCT検査やMRI検査も有用である。骨生検は必ず行う必要はないものの、生検組織で膜嚢胞性変化(lipomembraneous osteodysplasia)が確認できる。中枢神経病変の確認には神経症状に加えて、頭部CT検査や頭部MRI検査が有用である。CT検査では両側性に基底核の石灰化が認められる。側脳室の拡大、基底核や視床の萎縮、脳溝の開大などの萎縮所見も認められる。加えて、頭部MRI T2強調像やfluid-attenuated inversion recovery(FLAIR)では、白質のびまん性高信号所見が認められる。Single photon emission computed tomography(SPECT)やpositron emission tomography(PET)検査では皮質領域、視床、基底核に血流低下が認められる場合がある。遺伝子検査ではDAP12またはTREM2の遺伝子変異が認められる。一般的にはホモ接合性変異であるが、複合ヘテロ接合性変異の症例も確認されている5)。他に進行期の脳波では徐波やてんかん性放電が確認される。なお、わが国では「那須・ハコラ病の臨床病理遺伝学的研究」研究班が作成した診断基準がある(表)3)。表 那須・ハコラ病の診断基準画像を拡大する本疾患と鑑別疾患としては、前頭側頭型認知症(ピック病など)やスフェロイドを伴う遺伝性びまん性白質脳症(hereditary diffuse leukoencephalopathy with spheroids:HDLSまたはadult-onset leukoencephalopathy with axonal spheroids and pigmented glia:ALSP)などが挙げられる。HDLSは常染色体優性遺伝形式の疾患で、頭部MRI検査では白質のびまん性高信号所見が認められる。原因遺伝子はcolony stimulating factor l receptor(CSFIR)である。これらの疾患では骨病変が認められない点や遺伝形式の違いが鑑別点となる1-3)。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)那須・ハコラ病の根治的な治療は現時点ではない。骨病変に対しては、骨折については整形外科的な治療が行われる。加えて骨病変に対する疼痛管理や装具装着なども試みられることがある。精神症状については抗精神病薬が用いられる。てんかん発作に対しては、抗てんかん薬が用いられる。4 今後の展望現在、治験などは予定されていない。DAP12/TREM2のシグナル伝達異常がどのように病態に関わっているのかが不明な点が多く、病態の解明が望まれる。5 主たる診療科脳神経内科対症療法として、整形外科、精神科、リハビリテーション科、呼吸器科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 那須・ハコラ病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Adam MP, et al.(eds). GeneReviews. Seattle.WA;2020.2)Pekkarinen P, et al. Am J Hum Genet. 1998;62:362-372.3)佐藤準一. 新薬と臨牀. 2016;65:76-81.4)Bock V, et al. J Neurol Sci. 2013;326:115-119.5)Kuroda R, et al. J Neurol Sci. 2007;252:88-91.公開履歴初回2021年8月6日

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HFrEFの質改善プログラムの介入効果、通常ケアと差なし/JAMA

 症状を有する左室駆出率40%以下の心不全(HFrEF)で入院した患者において、院内および退院後のさまざまな質の改善を目的とした介入を行っても、通常ケアと比較して、初発の心不全再入院または全死因死亡までの期間、ならびに複合心不全ケアの質スコアの変化に有意差は認められなかった。米国・デューク大学医学部のAdam D. DeVore氏らが5,746例を対象に行ったクラスター無作為化試験の結果、示された。心不全患者に対するガイドラインに基づく治療の採択にはばらつきがあり、ガイドラインに基づく治療を改善する介入は、目標とする評価基準を一貫して達成できておらず、心不全のケアの質を改善するための取り組みに役立つデータは限られていた。JAMA誌2021年7月27日号掲載の報告。161施設において、質の改善を目的とした介入と通常ケアを比較 研究グループは、米国の病院161施設において、自宅に退院するHFrEF成人患者を登録し、心不全アウトカムとケアについて、通常ケアと比較した院内および退院後の質的改善の介入効果を評価した。 無作為化は病院単位で行われ、161施設を介入群(82施設)と通常ケア群(79施設)に無作為に割り付け、介入群施設は、心不全と質改善の専門家のトレーニングを受けたグループによる医師への定期的な教育と、心不全プロセス指標(たとえば、HFrEFのガイドラインに基づく薬物療法の使用)およびアウトカムに関する監査とフィードバックを受けた。通常ケア群施設は、ウェブサイトにアクセスして一般的な心不全の教育を受けた。 主要評価項目は、初発の心不全再入院または全死因死亡と、心不全の質に関する複合スコアの変化であった。心不全の質に関する複合スコアは、退院時および外来フォローアップ時に提供されるケアの質に関するガイドラインに基づいた推奨事項を評価し、全機会のうち無事達成されたものの割合とした。 本試験は、2017~20年に実施された(最終フォローアップ日は2020年8月31日)。介入群の臨床アウトカム、ケアの質スコアは改善せず 5,746例が登録され、退院前にイベントが発生した患者を除く5,647例(介入群2,675例、通常ケア群2,972例)が解析対象となった。平均年齢は63歳、女性33%、黒人38%、慢性心不全87%、最近心不全で入院した患者49%であった。このうち、5,636例(99.8%)で試験終了時に生命予後が判明した。 心不全再入院または全死因死亡の発生率は、介入群38.6% vs.通常ケア群39.2%であった(補正後ハザード比[HR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.81~1.05)。ベースラインのケアの質のスコアは、それぞれ42.1% vs.45.5%、ベースラインから追跡期間終了時までの変化は2.3% vs.-1.0%(群間差:3.3%、95%CI:-0.8%~7.3%)であり、最終フォローアップ時に高い心不全の質のスコアを達成するオッズ比は、両群間に有意差はなかった(補正後オッズ比:1.06、95%CI:0.93~1.21)。

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緩和ケアを体系的に学ぶなら、まずはここから!【非専門医のための緩和ケアTips】第7回

第7回 緩和ケアを体系的に学ぶなら、まずはここから!だんだん暑くなってきましたね。外来に通院している患者さんに「熱中症に気を付けて」とアドバイスするのもこんな時期です。今日の質問緩和ケアを学んでみたいのですが、何から始めればいいのでしょうか? 関連する学会は入ったほうがいいですか?今回は、緩和ケアを学びはじめた若手の先生からよく聞かれる質問です。実は5、6月にかけ、緩和ケア業界は忙しくなります。それは、毎年6月に最も会員数が多い関連学会である、日本緩和医療学会の学術大会が開催されるからです。コロナの影響による学会オンライン化の流れもあり、演題の打ち合わせだけでなく発表の事前収録なども含め、タスクが多くなる時期です。私も所属するこの日本緩和医療学会について、少し紹介させてください。会員数は1万2,012名(2021年7月1日時点)、医師は約半数で、残りは看護師が最多、次いで薬剤師、リハビリテーション専門職など多職種で構成されています。緩和ケアを実践するうえでチーム医療は非常に大切であり、いろいろな職種が参加する学会である点が特徴です。日本緩和医療学会が取り組んでいる事業をいくつか紹介します。緩和ケアに関連したガイドラインの作成エビデンスの集積が難しい分野ではありますが、その中でもわかっていることを理解し、根拠をもって診療することは大切です。学会では「がん疼痛」「がん患者の呼吸器症状の緩和」「がん患者の消化器症状の緩和」「苦痛緩和のための鎮静」といった、緩和ケアで重要な分野についてのガイドラインを作成しています。これらのガイドラインは学会サイトより無料でダウンロード可能となっており、困ったとき、迷ったときに調べてみるのに便利です。緩和ケアセミナー学会では、緩和ケアを学びたい医療者を対象としたセミナーを数多く開催しています。たとえば、年2回開催される「教育セミナー」では、1日かけてさまざまなトピックの講演が行われます。最近はオンライン形式で参加が容易になり、1,000人近い参加者が一緒に学ぶ場となっています。医師だけでなく看護師など緩和ケアに関わる多職種が参加し、テーマも他学会ではなかなか聞くことのできないものがめじろ押し。最近でも、臨床宗教師の方のお話や、意思決定を支援するうえで知っておきたい法律と倫理のセッションなどユニークな講演が行われています。学会に入会すればストリーミング配信も視聴できるので、自己学習教材にもなります。こうした、ほかにないコンテンツを利用できるだけでも学会入会のメリットがあると感じます。また、緩和医療認定医や専門医を目指す先生にとっては資格取得要件ともなっているので、計画的に受講いただければと思います。2021年6月18日~19日に第26回日本緩和医療学会学術大会がオンラインと現地開催のハイブリッド形式で開催されました。どこの分野も同様でしょうが、学術大会はパンデミック下における学術活動を基盤とした、貴重な学びとネットワーキングの機会を創出しています。次回は、開催直後の今年の学術大会の内容を報告します。日本緩和医療学会今回のTips今回のTips緩和ケアを学ぶならぜひ日本緩和医療学会へ。ガイドラインやセミナーを通じて、緩和ケアの学習機会を提供しています。近年はオンラインで参加しやすくなっています!

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第22回 痛み診療のコツ・治療編(2)光線療法(1)【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第22回 痛み診療のコツ・治療編(2)光線療法(1)前回は、知覚神経と交感神経を同時にブロックする代表的な応用範囲の広い硬膜外ブロックについてお話しました。今回は、理学療法の中でもとくに高齢患者さんに好まれている光線療法ついて述べたいと思います。高齢社会を反映して、帯状疱疹後神経痛や脊椎術後疼痛症候群など本来の疾病が治癒した後に、強い痛みだけが取り残されることも稀ではありません。いわゆる難治性慢性疼痛患者さんの数が、高齢者の人口の増加に比例して急激に増加しています。痛みを訴える患者さんにおいては、病態は類似していても、痛みの性質や程度は個々の患者さんによって実に多様です。そのために、疼痛緩和療法も神経ブロック療法、薬物療法、各種理学療法、インターベンショナル治療など患者さんに合った有効な治療法に苦慮する機会も少なくありません。とくに最近では、高齢者を含めて血液抗凝固薬を服用する患者さんが増加しており、神経ブロックを回避しなくてはならない状況も少なくありません。しかも、痛みで悩まされている患者さんにとっては、より痛みの少ない治療法を望む声も多く見られます。このような背景を考慮すると、疼痛を訴えられている患者さんにとって光線療法は非常に有用な治療法であり、痛みの緩和を得られる機会も想像以上に多くみられます。今回はこの光線療法について解説いたします。光線療法機器の分類(1)低出力半導体レーザーGa-Al-As半導体をレーザー光源とした低出力半導体レーザーには、ソフトレーザリーJQ310、マルチレーザー5 MLF-601、メディアレーザーソフトパルス10などが市販されています。(2)ハロゲンランプ治療器自然灯の一種、ハロゲンランプを光源として、フィルターによって近赤外線のみを出力する装置です。アルファビームALB-200H、スーパーライザーHA-2200LEシリーズ、スーパーライザーPXシリーズのほか、家庭用としても使用できるスーパーライザーminiシリーズなどが使用されています。また、最近では、スーパーライザーPXシリーズも市販され、さらに性能を上げています。(3)キセノンライト治療器ストロボライト光源のキセノン励起光を利用したキセノンライトは、可視光よりも近赤外光を多く発光するので、近赤外線光源として利用されています。ベータエクセルXe10は、パルスモードを有する上、低周波通電機能もあり、光線療法と低周波治療を同時に施行できる特徴があります。光線療法の鎮痛作用機序レーザーの生体への影響は熱作用、光作用が基本になっています。その作用により、以下の効果が期待されています。(1)血流改善作用レーザー光による血管への直接作用、交感神経反射の減弱化、軸索反射による血管拡張などが考えられています。(2)神経伝達抑制作用脊髄後根線維の自発放電発射増加の減少作用、C線維の脱分極の抑制作用などが報告されています。(3)抗炎症作用関節リウマチ患者さんの膝関節滑膜炎症所見が、レーザー照射によって軽減されることが報告されています。(4)創傷治癒作用創傷治癒の促進が実験的、臨床的に認められています。(5)下行性疼痛抑制系の賦活ナロキソンによりレーザー鎮痛効果が抑制されることから、内因性オピオイドや、下行性疼痛抑制系の関与が考えられています。(6)その他神経細胞膜の安定化作用、免疫機能の賦活、筋緊張の緩和などが認められており、鎮痛作用の補助になりそうです。レーザー治療の対象疾患レーザー治療の鎮痛作用機序から考えて、以下のような疾患に有効性が認められています。 帯状疱疹痛、帯状疱疹後神経痛、筋・筋膜性疼痛、頭痛、外傷性頸部疼痛症候群、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、腰痛症、術後疼痛症候群、非定形顔面痛、関節リウマチ、肩関節周囲炎、膝関節症などで、実に多岐にわたっています。初期の疼痛緩和療法を怠ると、一生痛みが持続することも稀ではありません。できるだけ早期に鎮痛対策をとることが、その後の痛みの遷延を和らげるという認識が大切です。光線療法が疼痛治療の一環として取り入れられ、多少なりとも痛みに苦しむ患者さんの疼痛緩和療法に役立てられれば幸いです。次回は、痛みとリハビリテーション療法について説明したいと思います。1)花岡一雄他. 日本医師会雑誌.2012:140;2352-23532)花岡一雄他監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S177-178

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足首骨折、石膏ギプスはブレースに優越性なし/BMJ

 成人の急性足関節骨折において、石膏ギプスの、取り外し可能な固定ブレースに対する優越性は認められなかったことが、英国・ウォーリック大学のRebecca Kearney氏らによる無作為化比較試験の結果、示された。16週時点で両群間にOMAS(Olerud Molander ankle score)の統計学的な差は示されなかったという。足関節骨折の治療では、固定を最大限とする石膏ギプスが伝統的に利用されてきたが、固定中に関節の硬直や筋肉の衰弱を引き起こす可能性がある。取り外し可能なブレースは早期の可動により、それらの問題を解決できる可能性はあるが、いずれの治療法が優れているかは明らかになっていなかった。BMJ誌2021年7月5日号掲載の報告。16週後のOMASで比較 研究グループは、英国の国民保健サービス(NHS)傘下の20ヵ所の外傷センターを通じて、急性足関節骨折を呈し、ギプス固定が適切な18歳以上、669例を無作為に2群に分け、一方には石膏ギプスで(334例)、もう一方には取り外し可能なブレースで(335例)足関節を固定した。石膏ギプス群は、膝下ギプスを装着し、ギプスが取れてから足首を動かすエクササイズを開始した。ブレース群は同練習を、装着後すぐに開始した。 主要アウトカムは、16週時点のOMASで、ITT解析にて評価した。副次アウトカムは、6週、10週、16週時点のマンチェスター-オックスフォード・フット質問票、機能障害評価指数(DRI)、生活の質(QOL)、合併症だった。OMASは有意差なし 被験者の平均年齢は46歳(SD 17)、57%(381例)が女性だった。試験を終了したのは、502例(75%)だった。 16週時点のOMASについて、両群間で有意差はみられなかった(ブレース群を支持する値:1.8、95%信頼区間:-2.0〜5.6)。他の評価時点のOMASについては、補正前、代入法、PPS解析でも、臨床的に重要な差はなかった。

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認知症またはMCIの高齢者に対するVR介入~メタ解析

 バーチャルリアリティ(VR)介入は、脳卒中やパーキンソン病などの神経疾患の患者にとって、革新的かつ効果的なリハビリテーションツールとして期待されている。中国・南京医科大学のShizhe Zhu氏らは、軽度認知障害(MCI)または認知症の高齢者における認知機能や運動機能に対するVR介入の有効性を評価するため、メタ解析を実施した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2021年5月5日号の報告。 2020年4月までに公表された関連文献を、7つのデータベースよりシステマティックに検索した。60歳以上のMCIまたは認知症の患者を対象としてVR介入の検討を行ったランダム化比較試験を含めた。主要アウトカムは、全体的な認知機能、包括的な認知機能、注意、実行機能、記憶、視空間認知能力を含む認知機能とした。副次的アウトカムは、全体的な運動機能、バランス、歩行を含む運動能力とした。不均一性の潜在的な因子を特定するため、研究の特徴に基づいてサブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・分析には、11研究、359例が含まれた。・主要アウトカムの解析では、以下の認知機能に対するVR介入の有意な効果が認められた(エフェクトサイズ:中)。 ●全体的な認知機能:g=0.45、95%信頼区間(CI):0.31~0.59、p<0.001 ●注意/実行機能:g=0.49、95%CI:0.26~0.72、p<0.001 ●記憶:g=0.57、95%CI:0.29~0.85、p<0.001 ●包括的な認知機能:g=0.32、95%CI:0.06~0.58、p=0.02・副次的アウトカムの解析では、全体的な運動機能に対する有意な効果が認められた(エフェクトサイズ:小)。 ●全体的な運動機能:g=0.28、95%CI:0.05~0.51、p=0.018・バランスのエフェクトサイズに対する有意な効果が認められた(エフェクトサイズ:中)。 ●バランス:g=0.43、95%CI:0.06~0.80、p=0.02・視空間認知能力と歩行のエフェクトサイズには、統計学的に有意な影響は認められなかった。・サブグループ解析では、VRのイマージョンタイプと診断名において不均一性が検出された。 著者らは「VR介入は、MCIまたは認知症高齢者の認知機能および運動機能を改善するために有用な非薬理学的アプローチであることが示唆された。とくに、注意/実行機能、記憶、全体的な認知機能、バランスに対する有意な効果が認められた。一方、視空間認知能力や歩行パフォーマンスに対する効果は認められなかった」としている。

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関節リウマチ診療ガイドライン改訂、新導入の治療アルゴリズムとは

 2014年に初版が発刊された関節リウマチ診療ガイドライン。その後、新たな生物学的製剤やJAK阻害薬などが発売され、治療方法も大きく変遷を遂げている。今回、6年ぶりに改訂された本ガイドライン(GL)のポイントや活用法について、編集を担った針谷 正祥氏(東京女子医科大学医学部内科学講座膠原病リウマチ内科学分野)にインタビューした。日本独自の薬物治療、非薬物治療・外科的治療アルゴリズムを掲載 本GLは4つの章で構成されている。主軸となる第3章には治療方針と題し治療目標や治療アルゴリズム、55のクリニカルクエスチョン(CQ)と推奨が掲載。第4章では高額医療費による長期治療を余儀なくされる疾患ならではの医療経済的な側面について触れられている。 関節リウマチ(RA)の薬物治療はこの20年で大きく様変わりし、80年代のピラミッド方式、90年代の逆ピラミッド方式を経て、本編にて新たな治療アルゴリズム「T2T(Treat to Target)の治療概念である“6ヵ月以内に治療目標にある『臨床的寛解もしくは低疾患活動性』が達成できない場合には、次のフェーズに進む”を原則にし、フェーズIからフェーズIIIまで順に治療を進める」が確立された。 薬物治療アルゴリズムの概略は以下のとおり。<薬物治療アルゴリズム>(対象者:RAと診断された患者)◯フェーズI(CQ:1~4、26~28、34を参照)メトトレキサート(MTX)の使用を検討、年齢や合併症などを考慮し使用量を決定。MTXの使用が不可の場合はMTX以外の従来型抗リウマチ薬(csDMARD)を使用。また、MTX単剤で効果不十分の場合は他のcsDMARDを追加・併用を検討する。◯フェーズII(CQ:8~13、18、19、35を参照)フェーズIで治療目標非達成の場合。MTX併用・非併用いずれでの場合も生物学的製剤(bDMARD)またはヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬の使用を検討する。ただし、長期安全性や医療経済の観点からbDMARDを優先する。また、MTX非併用の場合はbDMARD(非TNF阻害薬>TNF阻害薬)またはJAK阻害薬の単剤療法も考慮できる。◯フェーズIII(CQ:14を参照)フェーズIIでbDMARDまたはJAK阻害薬の使用で効果不十分だった場合、ほかのbDMARDまたはJAK阻害薬への変更を検討する。TNF阻害薬が効果不十分の場合は非TNF阻害薬への切り替えを優先するが、その他の薬剤については、変更薬のエビデンスが不足しているため、future questionとしている。 このほか、各フェーズにて治療目標達成、関節破壊進行抑制、身体機能維持が得られれば薬物の減量を考慮する仕組みになっている。過去にピラミッドの下部層だったNSAIDや副腎皮質ステロイド、そして新しい治療薬である抗RANKL抗体は補助的治療の位置付けになっているが、「このアルゴリズムは単にエビデンスだけではなく、リウマチ専門医の意見、患者代表の価値観・意向、医療経済面などを考慮して作成した推奨を基に出来上がったものである」と同氏は特徴を示した。新参者のJAK阻害薬、高齢者でとくに注意したいのは感染症 今回の改訂で治療のスタンダードとして新たに仲間入りしたJAK阻害薬。ただし、高齢者では一般的に有害事象の頻度が高いことも問題視されており、導入の際には個々の背景の考慮が必要である。同氏は、「RA患者の60%は65歳以上が占める。もはやこの疾患では高齢者がマジョリティ」と話し、「その上で注意すべきは、肝・腎機能の低下による薬物血中濃度の上昇だ。処方可能な5つのJAK阻害薬はそれぞれ肝代謝、腎排泄が異なるので、しっかり理解した上で処方しなければならない」と強調した。また、高齢者の場合は感染症リスクにも注意が必要で、なかでも帯状疱疹は頻度が高く、日本人RA患者の発症率は4~6倍とも報告されている。「JAK阻害薬へ切り替える際にはリコンビナントワクチンである帯状疱疹ワクチンの接種も同時に検討する必要がある。これ以外にも肺炎、尿路感染症、足裏の皮下膿瘍、蜂窩織炎などが報告されている」と具体的な感染症を列挙し、注意を促した。非薬物療法や外科的治療―患者は積極的?手術前後の休薬は? RAはQOLにも支障を与える疾患であることから、薬物治療だけで解決しない場合には外科的治療などの検討が必要になる。そこで、同氏らは“世界初”の試みとして、非薬物治療・外科的治療のアルゴリズムも作成した。これについては「RAは治療の4本柱(薬物療法、手術療法、リハビリテーション、患者教育・ケア)を集学的に使うことが推奨されてきた。今もその状況は変わっていない」と述べた。 非薬物治療・外科的治療アルゴリズムの概略は以下のとおり。< 非薬物治療・外科的治療アルゴリズム>◯フェーズI慎重な身体機能評価(画像診断による関節破壊の評価など)を行ったうえで、包括的な保存的治療(装具療法、生活指導を含むリハビリテーション治療、短期的ステロイド関節内注射)を決定・実行する。◯フェーズII保存的治療を十分に行っても無効ないし不十分な場合に実施。とくに機能障害や変形が重度の場合、または薬物治療抵抗性の少数の関節炎が残存する場合は、関節機能再建手術(人工関節置換術、関節[温存]形成術、関節固定術など)を検討する。場合によっては手術不適応とし、可能な限りの保存的治療を検討。 患者の手術に対する意識については「罹病期間が短い患者さんのほうが手術をためらう傾向はあるが、患者同士の情報交換や『日本リウマチ友の会』などの患者コミュニティを活用して情報入手することで、われわれ医療者の意見にも納得されている。また、手術によって関節機能やQOLが改善するメリットを想像できるので、手術を躊躇する人は少ない」とも話した。 このほか、CQ37では「整形外科手術の周術期にMTXの休薬は必要か?」と記載があるが、他科の大手術に関する記述はない。これについては、「エビデンス不足により盛り込むことができなかった。個人的見解としては、大腸がんや肺がんなどの大手術の場合は1週間の休薬を行っている。一方、腹腔鏡のような侵襲が少ない手術では休薬しない場合もある。全身麻酔か否か、手術時間、合併症の有無などを踏まえ、ケース・バイ・ケースで対応してもらうのが望ましい」とコメントした。患者も手に取りやすいガイドライン 近年、ガイドラインは患者意見も取り入れた作成を求められるが、本GLは非常に患者に寄り添ったものになっている。たとえば、巻頭のクイックリファレンスには“患者さんとそのご家族の方も利用できます”と説明書きがあったり、第4章『多様な患者背景に対応するために』では、患者会が主導で行った患者アンケート調査結果(本診療ガイドライン作成のための患者の価値観の評価~患者アンケート調査~)が掲載されていたりする。患者アンケートの結果は医師による一方的な治療方針決定を食い止め、患者やその家族と医師が共に治療方針を決定していく上でも参考になるばかりか、患者会に参加できない全国の患者へのアドバイスとしての効力も大きいのではないだろうか。このようなガイドラインがこれからも増えることを願うばかりである。今後の課題、RA患者のコロナワクチン副反応データは? 最後に食事療法や医学的に問題になっているフレイル・サルコペニアの影響について、同氏は「RA患者には身体負荷や生命予後への影響を考慮し、肥満、骨粗鬆症、心血管疾患の3つの予防を掲げて日常生活指導を行っているが、この点に関する具体的な食事療法についてはデータが乏しい。また、フレイル・サルコペニアに関しては高齢RA患者の研究データが3年後に揃う予定なので、今後のガイドラインへ反映させたい」と次回へバトンをつないだ。 なお、日本リウマチ学会ではリウマチ患者に対する新型コロナワクチン接種の影響を調査しており、副反応で一般的に報告されている症状(発熱、全身倦怠感、局所反応[腫れ・痛み・痒み]など)に加えて、関節リウマチ症状の悪化有無などのデータを収集している。現段階で公表時期は未定だが、データ収集・解析が完了次第、速やかに公表される予定だ。

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高齢の急性心不全入院患者、漸進的リハ併用で身体機能が改善/NEJM

 急性非代償性心不全で入院した高齢の多様な患者集団において、通常治療に加え、4つの身体機能領域を含む、早期の段階的で個別化された漸進的リハビリテーションを併用すると、通常治療単独と比較して、身体機能の改善効果が促進されるが、再入院や死亡の抑制効果には差はないことが、米国・Wake Forest School of MedicineのDalane W. Kitzman氏らが実施した「REHAB-HF試験」で示された。NEJM誌オンライン版2021年5月16日号掲載の報告。介入による身体能力の改善効果を評価する無作為化試験 研究グループは、4つの身体機能領域を含む個別化された漸進的リハビリテーションによる早期介入は、身体機能を改善し、6ヵ月後の全原因による入院率を低下させるとの仮説を立て、これを検証する目的で単盲検無作為化対照比較試験を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 対象は、年齢60歳以上、急性非代償性心不全(駆出率の値は問わない)で入院し、登録時に補助具の有無にかかわらず4m以上の歩行が可能で、入院前は機能的に自立しており、自宅退院が期待される患者であった。 被験者は、通常治療に加えリハビリテーションによる介入を受ける群または通常治療のみを受ける群(対照群)に無作為に割り付けられた。介入は、可能な場合は入院中に開始し、退院後はできるだけ早期に外来施設の段階へと移行した。1回60分の訓練が週3回、12週間(合計36回)行われた。 介入は、急性非代償性心不全でフレイルがみられる高齢患者向けに開発された、段階的で個別化された漸進的リハビリテーションプログラムで、4つの身体機能領域(筋力、バランス能力、移動能力、持久力)に重点が置かれた。訓練の強度や種類は、患者の能力に基づき個別に設定された。本試験の重要な目標は、持久力(歩行時間)の向上であったが、これを安全に行うには、筋力、バランス能力、移動能力の障害に対処する必要があるとの方針に基づいて実施された。 主要アウトカムは、3ヵ月の時点での簡易身体能力試験(SPPB、0~12点、点数が低いほど身体機能障害が重度)のスコアとした。副次アウトカムは6ヵ月後の全原因による再入院であった。97%がフレイル+プレフレイル、併存疾患数は5つ 2014年9月~2019年9月の期間に349例(平均年齢72.7歳、女性52%)が登録され、介入群に175例、対照群に174例が割り付けられた。ベースラインにおいて両群の患者は身体機能が著しく低下しており、97%がフレイルまたはその前段階(プレフレイル)であり、各群の平均併存疾患数は5つであった。 介入群では、介入の終了前に12例が死亡した。介入群における介入継続率は82%で、介入訓練の平均(±SE)完遂回数は24.3±1.0回、介入訓練への参加率は67±3%だった。 3ヵ月の時点におけるベースラインのSPPBスコアと他の背景因子で補正後SPPBスコアの最小二乗平均値は、介入群は8.3±0.2であり、対照群の6.9±0.2に比べ身体能力が有意に改善された(平均群間差:1.5、95%信頼区間[CI]:0.9~2.0、p<0.001)。 6ヵ月時の全原因による再入院率は、介入群が1.18、対照群は1.28であり、両群間に明確な差は認められなかった(率比[RR]:0.93、95%CI:0.66~1.19)。また、死亡は介入群で21例(心血管系の原因15例)、対照群で16例(同8例)みられ、全死因死亡率はそれぞれ0.13および0.10であり、両群間に差はなかった(RR:1.17、95%CI:0.61~2.27)。 著者は、「6分間歩行距離やフレイルの状態、QOL、抑うつについても、介入による臨床的な利益が示唆された。全原因による再入院や心不全による再入院、死亡の発生は、両群とも高率であった」としている。

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事例027 トラムセット配合錠の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説両手拇指CM関節慢性疼痛にて初診の患者に、トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合剤錠(商品名:トラムセット配合錠)のジェネリック版を投与したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)にて査定となりました。そこで、病名に「慢性疼痛」が入っていたため、適応があるのではないかと考え添付文書を読み返しました。投与量は添付文書通りでした。効能または効果には、「非オピオイド鎮痛剤で治療困難な疾患における鎮痛、非がん性慢性疼痛」とあり、当該患者の慢性疼痛には適応があります。さらによく読むと、「非オピオイド鎮痛剤で治療困難」と前段にあります。当該患者は、初診で来院されています。疼痛に対する第1選択は、非オピオイド鎮痛剤であり、治療困難と判断したのちに、トラムセット配合錠に変更するというストーリーが読み取れます。したがって、初診時からトラムセット配合錠を投与した理由が、このレセプトからは読み取れず、添付文書の要件に沿っていないとD事由が適応されたものと推測できます。診療録を確認したところ、「他院から非オピオイド鎮痛剤に対して効果が薄いとの情報提供を受けていたことを理由にトラムセット配合錠を処方した」ことが記載されていました。同院のレセプト担当は、「病名が合致しているのでコメントは必要ない」と判断したようです。審査支払機関では、このように判断を必要とするところまでコンピュータ審査に対応しているようです。今後の査定対策として、医師には投与条件によってはコメントを必要とする薬剤であることを伝え、レセプトチェックシステムには初診時などの投与要件外であった場合にコメントを要することを登録しました。

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脳卒中後の上肢麻痺、“慢性期”でも回復の希望―リハビリの効果を底上げする神経刺激デバイス(解説:森本悟氏)-1399

 脳卒中診療は、近年血栓溶解療法や血栓回収療法、あるいは急性期・回復期リハビリテーションの発達により、機能予後の改善は着実にみられている。しかしながら、それでもなお、麻痺等の後遺障害が残存、数ヵ月以上を経て症状が固定し、いわゆる慢性期というそれ以上回復の望みにくいステージへと移行していく。 無論治療法がないわけではなく、脳卒中治療ガイドライン2015(追補2019対応)において、脳卒中後の上肢機能障害に対するリハビリテーションは、慢性期であっても麻痺の程度に応じて、麻痺側上肢の強制使用や、特定の動作の反復を伴った訓練、あるいは電気刺激の使用が、(上肢機能障害に対して)行うよう勧められている。さらに、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)や経頭蓋直流電流刺激(tDCS)、robotic therapy(装着型サイボーグHAL(R)など)といった、新たな併用療法も登場し、患者の選択や安全面に配慮したうえで、上肢機能障害に対する治療選択肢として一部考慮しても良いことになっている。 このように、麻痺症状が固定した慢性期であっても、リハビリテーション治療の有用性というのは複数の根拠をもって示されている。 今回、過去の知見を踏まえ1,2)、スコットランドのグラスゴー大学らのグループから、108人の患者を対象として、迷走神経刺激デバイスを体内に埋め込み、リハビリテーション時に同時に神経刺激を行うことで、中等症から重症の障害を受けた上肢機能の改善幅が、リハビリテーション単独より有意に大きくなり、有害事象に関しても許容できるものであったと報告された。 治療の作用メカニズムとしては、迷走神経刺激を介したヘテロなシナプス伝達修飾(ノルアドレナリン作動性、コリン作動性、およびセロトニン作動性システムの活性化)により、リハビリテーション中という反復する短時間刺激でも、運動ニューロンの長期的なシナプス変化を促進する可能性が想定されている。 リハビリテーションがさまざまな原因による運動機能後遺障害に対して最も重要な選択肢であることは言うまでもないが、脳卒中や脊髄損傷等の外傷後障害に対する、新薬、デバイス、細胞治療についても、臨床試験や評価を行ううえで「リハビリテーション」+「新たな治療法」という枠組みが一般的となっている。 本治験結果は、その中でも対象としては最も治療が困難な「慢性期(当該治験では発症から9ヶ月〜10年の患者)」に対する「臨床的に意義のあるレベル(FMA-UEスコアのベースラインからの変化が6ポイント以上)」で改善効果を示したという点で、期待の持てるものであろう。6週間の施設内治療で改善がみられ、以降90日まで在宅でリハビリ+神経刺激療法を継続したところ、その効果は維持されていた。 ただし、本試験は90日までを評価対象としており、長期の機能改善持続効果、あるいは治療を中断した後の効果が不明なこと、さらには長期の反復する迷走神経刺激による有害事象については懸念材料である。 総括すれば、虚血性脳卒中による上肢運動麻痺に対する、最もハードルの高い慢性期治療に対して、在宅でも実施可能という簡便さと高いアドヒアランスを兼ね備えた、「リハビリテーション」+「埋め込み式神経刺激療法」という新たな治療選択肢のエビデンスが加わったといえる。今後さらに長期の使用成績が得られ、本邦でも心臓ペースメーカーや脳深部刺激療法といった広く使用されている体内埋め込み式デバイスと同様に、開発が進むことが期待される。

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あのエクササイズゲームの治療効果は?

 任天堂のエクササイズゲーム『リングフィット アドベンチャー(RFA)』は、慢性腰痛患者における痛みの自己効力感を高め、痛みを軽減する可能性があることが、千葉大学のTakashi Sato氏らによって報告された。著者らは「痛みの自己効力感の改善を目的にした治療プロトコールの開発が望まれる」としている。本研究は、Games for Health Journal誌オンライン版2021年4月22日号に掲載された。 近年、エクササイズの治療効果に関する研究が増加しているが、慢性腰痛症に対するこれらのタイプの介入に関する研究は多くない。したがって本研究では、エクササイズゲーム RFAが慢性腰痛患者に有用であると仮定し、前向き無作為化縦断研究を実施した。 40例の慢性腰痛患者を、経口薬単独群(男性12例および女性8例、平均年齢55.6歳)、経口薬に加えてRFAエクササイズを週1回40分行う経口薬+RFA併用群(男性9例および女性11例、平均年齢49.3歳)にランダムに割り付け、8週間にわたる治療の前後における、痛みと心理的スコア(痛みの自己効力感、痛みの破局的思考および運動恐怖症)を分析した。 主な結果は以下のとおり。・経口薬+RFA併用群において、8週間後の腰痛、臀部の痛みおよび痛みの自己効力感が有意に改善された。・下肢のしびれ、痛みの破局的思考および運動恐怖症といった心理的スコアに有意な改善はみられなかった。・経口薬単独群では、8週間後の治療効果に変化は認められなかった。

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視神経脊髄炎治療薬イネビリズマブ発売/田辺三菱製薬

 田辺三菱製薬株式会社は、「視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)[視神経脊髄炎を含む]の再発予防」を適応症として2021年3月23日に製造販売承認を取得した、ヒト化抗CD19モノクローナル抗体イネビリズマブ(商品名:ユプリズナ点滴静注100mg)が2021年5月19日に薬価収載されたことを受け、6月1日に販売を開始した。イネビリズマブは半年に1回の長い間隔の治療薬 NMOSDは、日本での有病率が10万人あたり2~4人と低く、重度の再発を繰り返し致命的となり得る中枢神経系の自己免疫疾患。身体の免疫システムが、健康な細胞(一般的には視神経、脊髄および脳)を攻撃し、再発や重篤な傷害をもたらす。その結果、眼の痛みや失明、重度の筋力低下、麻痺、しびれ、腸や膀胱の機能低下および呼吸不全を引き起こす。これらは再発を繰り返し、1回の再発で失明や車椅子生活に至ることもある。病態には、主に抗アクアポリン4(AQP4)抗体が関与し、NMOSD患者の約73~90%で抗AQP4抗体が検出されるとされる。 今回発売されたイネビリズマブは、抗体を産生する形質芽細胞や形質細胞を含むB細胞に発現するCD19というタンパク質に結合し、CD19陽性B細胞を循環血液中から速やかに除去することで、NMOSDの再発を予防する。NMOSD患者を対象とした日本を含むグローバル臨床試験において、イネビリズマブ投与により、主要評価項目である再発抑制効果が確認された。また、イネビリズマブ投与間隔が半年に1回という利便性から同社では「患者の生活様式に合わせた治療を可能とし、再発予防期のNMOSD患者に新たな治療選択肢が提供できる」と期待を膨らませている。イネビリズマブはすでに米国では2020年6月11日にNMOSDの適応で承認されている。イネビリズマブの製品概要製品名:ユプリズナ点滴静注 100mg一般名:イネビリズマブ(遺伝子組換え)効能・効果:視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防用法・用量:通常、成人には、イネビリズマブ(遺伝子組換え)として1回300mgを初回、2週後に点滴静注し、その後、初回投与から6ヵ月後に、以降6ヵ月に1回の間隔で点滴静注する薬価:100mg 10mL 1瓶 349万5,304円製造販売承認日:2021年3月23日薬価基準収載日:2021年5月19日発売日:2021年6月1日製造販売元:田辺三菱製薬株式会社

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第60回 スギ、亀田、セコム…。“ずる賢い”医療者たちの“抜け駆け”接種で垣間見えた病院経営のダークサイド

“抜け駆け”ワクチン接種で大騒ぎこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週は神宮球場にセ・パ交流戦のヤクルト−日ハム戦を観戦に行って来ました。ヤクルト球団に勤める友人に頼んで5,000人限定のチケットを確保、友人との2年ぶりのプロ野球観戦が実現しました。小雨降る中、カッパ、マスク、飲酒なしの観戦は、なかなか辛いものがありましたが、入団2年目、星稜高校出身の奥川 恭伸投手の好投を間近で観ることができ、満足の一日でした。観戦後、外苑前で一杯、と思ったのですが、当然ながらどこの飲食店もやっておらず、空きっ腹のまま現地解散になったのは少々残念でした…。さて、東京や大阪など9都道府県に出されていた緊急事態宣言が6月20日まで延長となりました。東京都、京都府、大阪府、兵庫県は4月25日からですから、実に2ヵ月近く緊急事態宣言下にあることになります。各地の新規陽性者数が引き続き高い水準であること、関西圏や北海道などで病床逼迫が続いていること、インドで発生した変異株の流行が懸念されること、などが延長の理由とされています。そんな中、医療従事者に続き、65歳以上の高齢者のワクチン接種が遅々として、ではあるものの進んでいます。予約電話がつながらない、高齢者には到底できないと思われるインターネット予約の煩雑さなどが話題となっていますが、まあ新しい試みには困難が付きものです。高齢者以外の一般人が打つころには、もう少しスムーズに予約ができるシステムになっていることを願うばかりです。今回は、高齢者接種が始まってから大騒ぎとなった”抜け駆け”ワクチン接種について考えてみたいと思います。スギ薬局を経営するスギホールディングス会長夫妻による地元・愛知県西尾市での”抜け駆け”接種未遂や、いくつかの市町村の首長の接種が話題となりましたが、先々週は亀田総合病院、先週はセコム医療システムの”抜け駆け”接種が週刊誌やTVなどで報道されました。ただ、それぞれの“抜け駆け”の意味合いや悪質性は微妙に異なっているようです。医療従事者よりVIPを優先した亀田総合病院千葉県鴨川市の医療法人鉄蕉会・亀田総合病院の”抜け駆け”接種は、週刊文春の5月27日号(5月20日発売)でスッパ抜かれました。同誌の報道によれば、東証一部上場のシステム関連会社、オービックの代表取締役会長夫妻(共に80歳代、東京都大田区在住)が、亀田総合病院に割り当てられた医療従事者枠の新型コロナウイルス・ワクチンを4月に接種していたとのことです。会長夫妻が接種した時点で、同病院の医療従事者の接種は完了していませんでした。おそらく、同病院の従業員によるタレコミで週刊文春が動いたのでしょう。同誌によれば、会長夫妻は同病院にとってのVIPであり、亀田医療大学の開学に際しての寄付など、毎年多額の寄付を行っているとのことです。会長夫妻への接種を勧め、医療従事者用のワクチンの使用を決めたのは、鉄蕉会理事長の亀田 隆明氏とされています。亀田総合病院は週刊文春に対し書面で「ご夫妻には亀田医療大学設立当初から理事にもなっていただき、以来個人として寄付をいただき何とか経営が成り立っています。(中略)ご夫妻の年齢を考慮し、早めのワクチン接種は不可欠と判断しました。(中略)当院職員の接種希望者全員分のワクチン確保の目途が立った上で、余剰分を使用しています。当院配布分の『対象となる医療従事者等』の枠を使用しました」と回答していますが、鴨川市以外の住民に、医療従事者用を自院で働くスタッフよりも先に打つのは明らかにアウトですね。なお、この件よりも前に発覚したスギ薬局の会長夫妻の接種未遂は、会長夫妻側から西尾市への強固な要請があったということです。夫妻は薬剤師の免許は持っているようですが現場には出ていないわけですから、こちらもアウトですね。亀田が位置する医療圏の高齢化、人口減は深刻さて、私は記者時代に何度も亀田総合病院を取材し、理事長の亀田氏にも取材を行ったことがあります。週刊文春は、亀田総合病院が、米週刊誌Newsweekが患者満足度などを基に毎年発表している「World's Best Hospitals 2021」で国内第3位にランクインしたことや、亀田氏が、2019年『カンブリア宮殿』(テレビ東京)に「革新経営者」として登場した、といった“明”の部分に触れていますが、地元の地銀や都銀などからの巨額な借り入れの存在や、医療以外の事業の失敗といった“暗”の部分は書かれていません。亀田氏はまだ副理事長だったバブル時代、関連企業で千葉県・幕張に「ホテルフランクス」を開業、ホテル事業に乗り出しましたが、結局失敗し、ホテルは売却に至っています。「革新経営者」は言い過ぎのような気もします。現在、亀田総合病院が位置する医療圏の高齢化や人口減は深刻で、病院経営にも少なからぬ影響を及ぼしているでしょうし、成田空港に近いことから力を入れていたメディカルツーリズムもコロナで開店休業状態でしょう。従業員のタレコミのリスクを負い、ルールを曲げてまでVIP(いわゆるパトロン)のワクチン接種を敢行しなければならないほどに、医療法人鉄蕉会の経営は苦しいのかもしれません。セコム役員が提携先の病院で接種と報道もう一つニュースになった“抜け駆け”接種は、セコムの常務で子会社・セコム医療システムの取締役会長である布施 達朗氏によるものです。5月21日、TBS(JNN系列)は警備大手セコムの役員である布施氏が、提携先の病院で“医療従事者向け”の新型コロナワクチンを接種していた、と報じました。この報道によれば布施氏は、千葉県松戸市の医療法人誠馨会・新東京病院で、3月13日と4月1日の2回、医療従事者向けに優先的に割り当てられたワクチンを接種したということです。JNNの取材に対し、セコム医療システムは「3月初旬に新東京病院から『ワクチンに余剰が出た』として、接種のお誘いを受けた」「布施会長は医師と席を同じにする機会も多く、接種の必要があるとの病院側の判断だったが、軽率であり、お断り申し上げるべきだった」とコメントしたとのことです。また、報道では、新東京病院では、ほかにも病院職員ではない取引先など、少なくともおよそ80人が医療従事者向けワクチンの接種を受けたとされています。新東京病院は「セコムの病院」このケース、亀田と似ているようで構造はまったく違います。JNNの記者はその点もきちんと報道すべきだったと思いますが、気がついていなかった可能性もあります。報道では、ワクチンを接種したのは「提携先の病院」とされていますが、新東京病院は「セコムの病院」であり、布施氏は自分が“経営する”病院でワクチン接種を行ったのです。医療関係者なら既知のことだと思いますが、セコムは「提携病院」と称して多くの病院を実質的に経営しています。セコム医療システムはセコムのさまざまな医療事業を束ねる会社であると同時に、病院経営を行う会社でもあります。その先駆けは東京都世田谷区にある久我山病院で1992年から経営に当たっています。その後も経営が傾いたり、経営者が手放したりした病院などに支援の手を差し伸べてきました。その経営スキームはさまざまですが、基本、セコムが言う「提携」とは、債務保証を含む経営支援であり、土地や建物をセコムが賃貸したり、医療機器などをセコムの関連会社が販売・リースをしたりすると共に、医療法人に経営スタッフを送り込む、という仕組みになっています。かねてから循環器系が強かった新東京病院は、2006年にセコム医療システムの提携病院となり、2008年に前から提携法人であった千葉県の医療法人誠馨会が吸収し、現在に至っています。なお、セコムの提携医療機関はセコム医療システムのサイトで見ることができます。病院については現在、北海道から兵庫まで20病院が提携先となっています。札幌で有名な手稲渓仁会病院、あの長嶋 茂雄氏もリハビリをした東京都渋谷区の初台リハビリテーション病院も提携医療機関です。アウトとセーフの間、グレーの“抜け駆け”そう見てくると、「ほかにも病院職員ではない取引先などの少なくともおよそ80人が医療従事者向けワクチンの接種を受けた」というのは、病院に出入りするセコムの関連会社の社員たちがワクチンの接種を受けた、と考えられなくもありません。善意で解釈すれば、関東地区の提携病院の中の基幹病院とも言える新東京病院でセコムの関連社員たちをまとめて受けさせ、出入りする病院で感染したり感染させたりすることを予防するのが目的であったとも考えられます。市町村の首長が優先接種の際に語る理由、「私は病院の管理者だから」というのと同じロジックです。新東京病院のホームページには「一部報道につきまして」として、今回の件について中村 淳病院長のお詫びの文章が掲載されています。そこでは「不当又は軽率な新型コロナワクチン接種はしておりません」として、「報道の一部にありました『非職員』というのは派遣業務、委託業者等で病院内部に頻回に出入りし、医療機関としての業務に携わっている者であり、患者さまにも接触する可能性のある方々です。医療従事者等に含まれうる非職員らを守るためにワクチンを接種したのではなく、あくまで病院内部で入院しておられる患者さまを守るために、通常医療を適正に提供するために」接種した、と弁明しています。他の病院では、クラークや清掃担当、そして首長も医療従事者として接種を受けているのですから、この接種はアウトとセーフの間、グレーだったと解釈できます。もっとも布施氏が既に病院にはほとんど赴かない立場だったとしたら問題ですが。 観客制限なし、マスクなしでビール飲みまくりの米国球場それにしても、日本のこのワクチン接種を巡るドタバタ振りはなんでしょう。この日曜(5月30日)、NHKBSでMLBのヒューストン・アストロズ対サンディエゴ・パドレスを観戦していたのですが、ヒューストンにあるミニッツメイド・パークはもはや観客制限はなく、ほとんどの観客はマスクなしで、ビールを飲みまくり観戦していました(州によって基準は違うようですが)。米国疾病予防管理センター(CDC)はワクチンの接種を完了すれば、屋内外を問わず、マスクを着用しなくてもよいとする新たな指針を5月13日に発表(バスや飛行機、病院など混雑した屋内では引き続きマスク着用が求められる)、それがもう全米で浸透しつつあります。全米の1日の新規感染者はまだ2万人近くもいるのに、です。私も早くワクチンを打って、神宮球場恒例の「生ビール半額ナイター」に行きたい、と切に思ったこの週末でした。

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MSのB細胞を標的とする治療薬発売/ノバルティス ファーマ

 ノバルティス ファーマ株式会社は、多発性硬化症(以下「MS」)に対してわが国で初めてのB細胞を標的とする治療法であるオファツムマブ(商品名:ケシンプタ皮下注 20mgペン)を発売した。 MSは、ミエリンの損傷、脳、視神経および脊髄の機能障害を特徴とする中枢神経系の慢性炎症性疾患。わが国のMS患者数は約1万5千人とされ、年々増加している。また、発症のピークは20歳代で、女性に多い疾患。MSは、再発期と寛解期を繰り返す再発寛解型MS(RRMS)として経過し、半数は次第に再発の有無にかかわらず病状が進行する二次性進行型(SPMS)に移行する。進行期に移行すると日常生活に影響を及ぼす不可逆的な身体的障害が徐々にみられるようになる。また、認知機能障害が進み、雇用に影響をもたらすこともあり、日常生活において、次第に家族のサポートが必要となることから、進行の症状は患者のみならず家族の社会生活にも少なからず影響を与える指定難病である。日本初のB細胞を標的とした治療 今回発売されたオファツムマブは、ペン型デバイスを用いて月1回皮下投与で治療可能な完全ヒト抗CD20モノクローナル抗体で、主にリンパ節のCD20陽性B細胞表面に結合することにより、B細胞の融解および減少を誘発する、国内で初めてのMSに対するB細胞を標的とする治療法。B細胞はMSの障害進行の原因となる炎症性サイトカイン産生やT細胞の異常活性化を促すため、B細胞の除去がMSの効果的な病態修飾ならびに優れた臨床的有効性の発現につながると考えられている。また、B細胞は、MS病態における初期から進行期に至る一連の臨床経過ステージにおいて関与が示唆されていることから、幅広い患者に対して治療選択肢となることが期待されている。製品概要製品名:ケシンプタ皮下注 20mgペン一般名:オファツムマブ効能・効果:下記患者における再発予防および身体的障害の進行抑制再発寛解型多発性硬化症疾患活動性を有する二次性進行型多発性硬化症用法・用量:通常、成人にはオファツムマブ(遺伝子組換え)として1回20mgを初回、1週後、2週後、4週後に皮下注射し、以降は4週間隔で皮下注射する。製造発売承認日: 2021年3月23日発売日:2021年5月24日薬価:20mg 0.4mL 1キット:230,860円製造販売元:ノバルティス ファーマ株式会社

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日本循環器協会が発足―予防啓発や人材育成など7つの事業を柱に

 5月10日、循環器病の新たな団体として『日本循環器協会』が発足した。代表理事に小室 一成氏(東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授)、平田 健一氏(神戸大学大学院医学研究科 循環器内科学分野教授)を迎え、各都道府県などと連携を取ることで、患者の心不全予防の啓発に力をいれていく。日本循環器学会・日本心臓財団と三位一体で活動 循環器病による国内死亡率は近年の高齢化に伴いがんよりも高い。また、健康寿命にも大きく影響を及ぼしており、平均寿命に対し、健康寿命は男性で8.84年、女性で12.35年も短く、国としての大きな問題になっている。そこで、2016年から「脳卒中・循環器病克服5ヵ年計画」や「脳卒中・循環器病対策基本法」が、昨年10月には「循環器病対策推進基本計画」が動き出したことで、各都道府県でも基本計画が実行されていくことになる。これまでも循環器病領域には歴史のある日本循環器学会や日本心臓財団が存在するが、いずれも患者やサポート企業、自治体との連携が限定的であったことを踏まえ、市民により近い距離での情報発信や患者・家族サポートなどの活動を行うための新たな組織が必要となり設立に至った。 小室氏は「 “心不全は4回予防できる”。このなかで協会の関与する範囲は広く、ステージAの前段階である予防啓発からステージDの緩和ケアにまで及ぶ。われわれは事業活動として7つの柱を推進し、患者向けの相談窓口の設置、医師以外の医療者の育成にも積極的に関わっていく。臨床研究の分野においても上市した薬剤の日本人での適正などの把握に努める」と説明した。また、このコロナ禍で心筋梗塞による外来者数は減少傾向を示すことに触れ、「受診控えをなくすための啓発も必要」とコメントした。 同じく代表理事を務める平田氏は、「平均寿命と健康寿命の乖離を縮めるために循環器病対策が課題となる。救急診療にならびリハビリテーションも有効な治療法。これまで、循環器診療は“救命”は当然の意義であったものの、予防啓発活動や市民活動に及んでおらず、以前より問題視されてきた。患者・患者家族の言葉を拾い上げるためにはなくてはならない団体として、今日の設立は日本循環器学会としても長年の夢であった。車の両輪のように日本循環器学会や日本心臓財団と一丸となって取り組んでいきたい」とコメントした。日本循環器協会の主な事業活動(1)シンポジウム、セミナー、レクチャー会等の開催(2)産学連携による一般向けおよび医療者向け広報・啓発資材の制作・配布(3)SNSを利用した国民に向けた循環器病の予防及び治療に関する知識の普及啓発(4)循環器病の患者・家族への療養指導(5)患者・家族支援を目的としたチャリティ活動(6)チーム医療実践のための多職種ネットワーク形成支援と調査研究(7)循環器病診療に係る人材の育成 ※特に循環器専門医以外のメディカルスタッフの育成(8)産学連携および患者団体との連携に基づく循環器領域の調査・研究(9)循環器に関する基礎・臨床研究の支援(10)国外を拠点とする循環器病関連団体と連携した予防啓発活動及び交流事業 なお、協会ホームページは今後の作成を予定している。

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