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末梢動脈疾患ガイドライン、7年ぶりの改訂/日本循環器学会

 日本循環器学会と日本血管外科学会の合同ガイドライン『末梢動脈疾患ガイドライン(2022年改訂版)』が、7年ぶりの改訂となった。2度目の改訂となる今回は、末梢動脈疾患の疾病構造の変化と、それに伴う疾患概念の変遷、新たな診断アルゴリズムや分類法の登場、治療デバイスの進歩、患者背景にある生活習慣病管理やその治療薬の進歩などを踏まえた大幅な改訂となっている。第86回日本循環器学会学術集会(3月11~13日)で、末梢動脈疾患ガイドライン作成の合同研究班班長である東 信良氏(旭川医科大学外科学講座血管外科学分野)が、ガイドライン改訂のポイント、とくに第4章「慢性下肢動脈閉塞(下肢閉塞性動脈硬化症)」について重点的に解説した。末梢動脈疾患ガイドラインでは下肢閉塞性動脈疾患をLEADと区別 末梢動脈疾患ガイドラインで扱う末梢動脈疾患(Peripheral Arterial Disease:PAD)は、冠動脈以外の末梢動脈である四肢動脈、頸動脈、腹部内臓動脈、腎動脈、および大動脈の閉塞性疾患を指す。同じくPADと称されている上下肢閉塞性動脈疾患(Peripheral Artery Disease:PAD)との混同を避けるため、末梢動脈疾患ガイドラインでは、下肢閉塞性動脈疾患についてはLEAD、上肢閉塞性動脈疾患についてはUEADと称し、区別している。 末梢動脈疾患ガイドラインは全20章で構成されており、各章・各節の冒頭で、診療の基本となるエッセンスや最も伝えたい概念を「ステートメント」として紹介している。また、Practical Question:PQとして、12個の臨床的話題を取り上げ、実臨床でいまだ明確な方針が示されていない臨床的課題について解説している。 PADの中で最も多くかつ重要な疾患がLEADである。LEADのリスクファクターや背景疾患の管理については、心血管イベントのリスクが高く、動脈硬化の4大因子である高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙の管理が基本となる。末梢動脈疾患ガイドラインでは、とくに脂質異常症について厳しい管理を推奨している。本邦では、腎不全・透析もLEAD発症の独立した危険因子として非常に頻度が高いため、今回の末梢動脈疾患ガイドラインより新たに追加された。LEADの抗血栓療法については、前回のガイドラインに記載されていた抗血小板療法に加え、DOACの登場によって抗凝固療法の項目が新たに追加された。末梢動脈疾患ガイドラインではLEADの症候別アプローチを記載 LEADは、症状や虚血の程度により治療方針が大きく変化する。そのため、末梢動脈疾患ガイドラインでは、無症候性LEAD、間歇性跛行、包括的高度慢性下肢虚血(Chronic Limb-Threatening Ischemia:CLTI)の3つに分類し、診断・治療の症候別アプローチを記載している。【無症候性LEAD】・無症候性LEADは、総じて下肢の予後が良好であるが、潜在的重症下肢虚血が一部含まれるため注意が必要である。下肢動脈病変の予防的血行再建術を行うべきではない(推奨クラスIII Harm)としている。【間歇性跛行】・間歇性跛行を訴える患者には、鑑別診断も兼ねた詳細な問診と身体診察を行う。下肢虚血の程度や間歇性跛行の機序を総合的に判断することが重要になる。病変評価には足関節上腕血圧比(ABI)の測定を行い、安静時のABIに異常を認めない場合は運動後のABI測定も推奨されている。・間歇性跛行の治療について、血行再建の要否は、日常生活で歩行機能の改善を見込めるか、運動を制限する合併疾患(狭心症、心不全、慢性呼吸器障害、筋骨格系の制限や神経障害など)の有無を評価したうえで決定する。保存的治療が優先され、末梢動脈疾患ガイドラインではとくに、運動療法の推奨が詳細に記載されている。・動脈硬化リスクファクターの是正、薬物療法、運動療法の検討を実施していない間歇性跛行患者には血行再建術は推奨されない。しかし、必要であれば次のとおり血行再建術を施行する。大動脈腸骨動脈領域はEVTを第1選択とする。総大腿動脈病変は血栓内膜摘除を第1選択とする。大腿膝窩動脈病変領域は、25cm未満の短~中区域病変はEVT、長区域病変は外科的血行再建を第1選択とする。膝下動脈病変領域では、EVTは推奨されない(推奨クラスIII No benefit)、同様に、人工血管による大腿-下腿動脈バイパスも行うべきではない(推奨クラスIII Harm)としている。【CLTI】・包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)は、下肢虚血、組織欠損、神経障害、感染などの肢切断リスクがあり、治療介入が必要な下肢を総称する概念だ。これまでは、「重症下肢虚血(Critical Limb Ischemia:CLI)」という用語が使われていたが、背景にある生活習慣病、とくに糖尿病や腎不全の増加といった疾病構造の変化から、高度虚血だけでなく、感染等が原因で肢切断になることもありうるため、近年の実臨床を反映したCLTIという用語が使われている。・CLTIの治療方針を決定する際は、全身のリスク評価、WIfI分類での局所評価、解剖学的評価の3点について、PLANコンセプトに基づくアルゴリズムで総合的に検討する。CLTIへの血行再建を施行する際は、全身リスクと創傷範囲の評価が重要だ。血行再建の推奨は次のとおり。総大腿動脈病変は血栓内膜摘除術を第1選択とする。下腿足部動脈病変は、2年以上の生命予後が期待され、使用可能な自家静脈がある場合は、自家静脈バイパスを行うとしている。・末梢動脈疾患ガイドラインの今回の改訂で、創傷治癒、リハビリテーション、大切断、血行再建術後の薬物療法、血行再建術後の予後と二次予防といった項目が新たに追加された。末梢動脈疾患ガイドラインに動脈硬化症以外のさまざまな疾患 末梢動脈疾患ガイドラインの第6~19章には、動脈硬化症以外の原因によるPADについて、診断や治療に関する解説がなされている。東氏は「欧米のガイドラインではあまり記載されていないものも多く含んでおり、PADには動脈硬化症以外のさまざまな病因・疾患が潜んでいることを今一度振り返っていただき、治療法を誤らないためにも、ぜひ参考にしていただきたい」と、末梢動脈疾患ガイドラインの第4章以外の章の重要性についても強調。 PADは、冠動脈疾患や脳血管疾患に比べてはるかに国民の認知度が低く、予防や早期発見が遅れている。そのため、一般市民への啓発を目的として、末梢動脈疾患ガイドラインには第20章「市民・患者への情報提供」が、今回の改訂で新たに設けられた。本章では、とくに生活習慣病に伴うLEADを中心に概説している。 東氏は、今回の末梢動脈疾患ガイドライン改訂の要点として「主軸は欧米のガイドラインと呼応するように改訂したが、本邦のエビデンスをより多く取り入れ、実情に合う治療方針を目指した。本ガイドラインの英語版も作成中で、とくに民族性や文化が似ているアジア諸国の診断に役立つことを期待している」と発表を締めくくった。

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新しい慢性めまい疾患「PPPD」とは?【知って得する!?医療略語】第8回

第8回 新しい慢性めまい疾患「PPPD」とは?新しいめまいの疾患概念が登場したって本当ですか?めまいに関して、持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)という疾患概念が確立し、耳鼻科系医学誌を中心に注目されています。そのため、複数の診療科が関与しうるPPPDは、多くの医師が知っておくと良いかもしれません。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】PPPD【日本語】持続性知覚性姿勢誘発めまい【英字】Persistent Postural-Perceptual Dizziness【分野】脳神経・心療内科【診療科】耳鼻科・精神科【関連】視覚起因性めまい VV(visual vertigo)恐怖性姿勢めまいPPV(phobic postural vertigo)空間と動きの不快感 SMD(space motion discomfort)慢性自覚性めまい CSD(chronic subjective dizziness)実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。めまいは多くの臨床医が遭遇する症状の1つですが、慢性的めまいに関して、近年注目されている『持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD:Persistent Postural-Perceptual Dizzines)』は、耳鼻科医のみならず内科、心療内科、精神科、リハビリ科など複数診療科の医師が関わる可能性のある疾患のため、取り上げたいと思います。PPPDは2017年にBarany学会から診断基準が提示された新しい慢性めまいの疾患です。診断基準は、日本語版が日本めまい平衡医学会から示されており、「3ヵ月以上持続する浮遊感」「不安定感」「非回転性めまい」を主訴に、体動や動く物体を見たとき、あるいは複雑な視覚パターンを見たときに増悪します。筆者が経験した患者2名は、縞模様の物をみると、明らかな症状の増悪があり、1名は前庭片頭痛が前駆していました。両名とも日常生活や仕事に大きな支障がありました。慢性めまいの39%がPPPDだったとする報告もあり、慢性めまいの鑑別として重要です。PPPDに特徴的な検査異常はなく、臨床症状と経過より診断します。PPPDの治療法は、抗うつ薬や抗不安薬による薬物治療と、認知行動療法・前庭リハビリテーションによる非薬物治療があります。PPPDを認識しておくことは有用だと思います。お時間が許せば、下の総説論文で詳細をご確認ください。1)堀井 新. 日耳鼻. 2020;123:170-172.2)五島 史行. 日耳鼻. 2021;124;1467-1471.

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リハビリテーションでの感染症対応の指針まとまる/日本リハビリテーション医学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防では、人と人との間に距離をとることが推奨されているが、理学療法や運動療法では患者の体を支えたりする必要もあり難しい。そのためCOVID-19に感染する、感染させるリスクが日常生活に比べて高くなる。 日本リハビリテーション医学会(理事長:久保 俊一氏[京都府立医科大学])は、2022年2月21日に「日本リハビリテーション医学会 感染対策指針 COVID-19含む」を制作、同学会のホームページで公開した。 本指針は、リハビリテーション診療患者と医療従事者の距離が近く、接している時間も長時間となることに鑑み、同学会診療ガイドライン委員会において、新興感染症などに対応した医療関連感染対策の指針が必要と判断され、策定が決定されたもの。COVID-19だけでないリハビリテーションでの感染症対策 主な内容は次の通り。1)平常時対応・(平常時の)標準予防策、経路別予防策は?・(平常時)の職員教育の方法は?2)新興・再興感染症・新興・再興感染症にはどのようなものがあり、どのような感染予防策が必要か?3)COVID-19蔓延期・地域での対応・入院リハビリテーションに際する対応は?・外来リハビリテーションに際する対応は?・訪問リハビリテーションに際する対応は?・通所リハビリテーションに際する対応は?・発熱や上気道症状などCOVID-19を疑う症状を呈している患者への対応は?・職員の健康管理はどのように行うか?・家族との面談方法は?・外部関係者との面会・手続きは?・その他の対応は?4)COVID-19確定症例との濃厚接触・COVID-19患者との濃厚接触の定義は?・濃厚接触者となった患者への対応は?・濃厚接触者となった職員の就業は?5)COVID-19確定症例の対応・COVID-19と診断された患者の訓練はどのように行うか?レッドゾーンの中でリハビリテーションを行う際の感染対策は?・COVID-19と診断された場合、特別な対策が必要な期間は? 同学会では、指針の利用にあたり「2021年12月での一般論をまとめたものであり、各医療機関内に設定されている感染対策指針がある場合には、そちらが優先される」としている。また、「医療関連感染対策の基本は、すべての職員が、すべての患者・利用者に対して基本的手順を確実に実施することにあり、医療機関ごとに設定された指針を熟知し、それを遵守することが必須である」とし、医療関連感染において、「リハビリテーション診療はハイリスク領域であり、そのことを十分に認識して診療にあたる必要で、医療関連感染対策の推進のため、本指針を役立てて欲しい」と記している。

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歳を取ると本当に筋肉痛は遅れてやってくるのか【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第206回

歳を取ると本当に筋肉痛は遅れてやってくるのかpixabayより使用筋肉痛には、「即発性」と「遅発性」の2種類があります。その名の通り、運動直後に起こるものが「即発性」で、翌日~翌々日にアイタタタタ…と出てくるのが「遅発性」です。私も、何度か子供の運動会ではりきって体を動かしたことがあるのですが、翌日ではなく翌々日に筋肉痛がやってくることがあります。専門用語でカッコよく書くと、遅発性筋痛(Delayed Onset Muscle Soreness:DOMS)と呼ぶのですが、ここでは筋痛ではなく筋肉痛と書かせていただきます。遅発性筋肉痛は、運動してから1~3日後に起こりますが、これは筋の微細な損傷によるものと思われています。筋の損傷がひどいほど強い筋肉痛が出るのかどうかは、まだよくわかっていません。筋線維には直接痛みを感じる神経があるわけではないので、筋肉周囲の炎症やむくみが広がって筋膜に達するまで時間がかかるため、遅れて筋肉痛がやってくるとされています。俗に、「歳を取ると筋肉痛が遅れてやってくる」と言われています。私も実際そう感じているのですが、実際のところはどうなのでしょうか?野坂和則. 遅発性筋肉痛のメカニズムと意義と予防・対処法. 上原記念生命科学財団研究報告集. 2006; 19: 77-79.野坂による研究では、18~22歳の被験者と60~70歳代被験者にダンベル運動をさせて、筋肉痛の発生を観察しています。これによれば、筋肉痛の発現タイミングに年齢による差はなかったとされています。しかし、若年者の遅発性筋肉痛については、幼稚園児や小学校低学年では遅発性筋肉痛が生じにくく、小学校高学年から生じやすくなることも明らかとなっています。片山憲史. 習慣と加齢による遅発性筋痛の発生パターンに関する磁気共鳴画像による検討. 明治鍼灸医学. 2004; 35: 11-20.一方、運動不足の人ではやはり遅れてやってくるという見解があります。片山の研究によれば、普段から運動をしていない人は、体育会系のクラブやサークル活動などで自己トレーニングを週3回以上継続している人と比較すると、年齢による影響を受けやすい(歳を取るほど遅発性筋痛が出やすい)と報告されています。つまり、「運動不足の人間は、歳を重ねるほど、その後強い筋肉痛を起こしやすい」ということが言えるのかもしれません。起こってしまった筋肉痛に対する治療としてはエビデンスの高いものはなく、よく行われている冷却やマッサージが有効とされています1)。本当に冷やすほうがよいのか、温めるのがよいかは論争が続いています2)。1)Nahon RL, et al. Physical therapy interventions for the treatment of delayed onset muscle soreness (DOMS): Systematic review and meta-analysis. Phys Ther Sport . 2021 Nov;52:1-12.2) Petrofsky J, et al. The Efficacy of Sustained Heat Treatment on Delayed-Onset Muscle Soreness. Clin J Sport Med. 2017 Jul;27(4):329-337.

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終末期でも「リハビリ」が大切な理由【非専門医のための緩和ケアTips】第22回

第22回 終末期でも「リハビリ」が大切な理由リハビリテーション(リハビリ)と聞くと、身体機能の改善・回復を目指して理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、そして言語聴覚士(ST)といった専門職が取り組む光景を思い浮かべますよね。実はこのリハビリ、緩和ケア領域でも重要な役割を担っています。今日の質問通院が困難となって訪問診療を担当している患者さん。原疾患は肺がんで、労作時を中心に呼吸困難も出現しています。おそらく数ヵ月の予後かと思うのですが、心配した家族から「体力が低下しないよう訪問リハビリをしてほしい」という希望がありました。終末期のリハビリに意味はあるのでしょうか?終末期の患者さんに緩和ケアを提供する中でリハビリの重要性はあまり知られておらず、同じような質問をよく頂きます。多くの方がイメージするリハビリは、「身体機能の改善」を目標としたものでしょう。それも正しいのですが、それだけですと「終末期患者のリハビリ」はイメージしにくいかもしれません。こうした病状の患者さんは身体機能が徐々に低下していくのが前提ですから…。しかし、私が緩和ケアを実践していくうえでは、症例を選びながらリハビリをオーダーする機会が多く、在宅における指示を行うことも多くあります。呼吸困難は薬剤だけで改善することが難しく、症状に対する不安から動かなくなり、ますます廃用が進むケースが多くあります。在宅酸素のチューブなども動きの制限になります。このような背景から、ベッドの起床が大変であれば支えを入れ、トイレまでの移動が難しければ途中に休憩できる場所を設置するといった住環境に合わせた調整を行ったうえで、患者さんにはなるべく動くようにしてもらいます。さらに、呼吸が荒くなった時に、ゆっくりと呼吸をして息を整えるといった練習にも取り組んでもらいます。生活の中で症状が悪化しやすい場面に、リハビリのアプローチを活用するのです。リハビリ自体に価値を見いだす患者さんやご家族も多いと感じます。薬物療法は効果のある・なしで判断しますが、リハビリにはまた違った側面があります。リハビリの専門職は「次はこのやり方でやってみましょう」「一緒に取り組んでみませんか?」といったように、患者さんにさまざまな提案をします。そして、症状緩和だけでなく、生活上で困っていることの相談にも乗ります。こうしたアプローチは、患者さんに「私のことを大切に考えてくれている」という思いをもたらし、心理的な支援としても効果を発揮します。このようにリハビリは緩和ケアにおいても重要ですが、少し注意が必要です。PT・OT・STといった専門職にもそれぞれ得意・不得意があります。通常は元気がある患者さんに接しており、終末期の患者さんを担当した経験が少ない場合は、つらく感じることもあるようです。医師よりも患者さんとの距離が近いが故に、「あと、どれくらいだと思いますか?」といったプレッシャーのかかる対話を求められることもあります。私の工夫としては、緩和ケアの一環としてリハビリを依頼する際は、担当者と直接やりとりをして患者さんの状況やリハビリの意義をしっかり説明するようにしています。ぜひ、皆さんもリハビリを活用した緩和ケアに取り組んでください。今回のTips今回のTips緩和ケアにおいてもリハビリは重要な役割を持つ。リハビリの専門職とコミュニケーションをとって取り組もう。

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排泄リハビリテーション 理論と臨床 改訂第2版

排泄に関連するすべての領域を網羅した成書 待望の改訂第2版!排泄リハビリテーションとは、排泄障害をもつ人が排泄の自立やQOLの向上を目指すとともに、その人の社会的統合の達成を目的とするものである。これを進めるうえで必要となる解剖や生理、障害を引き起こす疾患などの知識はもとより、治療・ケア、社会環境や医療経済について、多くの最新情報をもとに解説をアップデートした。 改訂第2版にあたって1)新しいガイドラインに基づいた知見を詳述2)排泄にかかわる解剖と生理を分かりやすい図を用いて解説3)排泄障害をもつ人に対し、どのような検査・アセスメントを行い、どのように治療・ケアを行っていけばよいかを詳述4)排泄障害に用いる製品の最新の情報を網羅5)「脳腸相関」「ディスバイオーシス」「仙骨神経刺激療法」「がん終末期の排泄ケア」「多職種連携・病診連携」などを新項目として追加6)改訂しても価格は据え置きの定価9,680円!!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    排泄リハビリテーション 理論と臨床 改訂第2版定価9,680円(税込)判型B5判/並製頁数576頁発行2022年2月編集後藤 百万(独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院)本間 之夫(日本赤十字社医療センター)前田 耕太郎(藤田医科大学病院 国際医療センター)味村 俊樹(自治医科大学)

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席を譲りたくない人【Dr. 中島の 新・徒然草】(412)

四百十二の段 席を譲りたくない人大阪では第6波が大変な猛威をふるっています。高熱+咽頭痛の患者さんは、おそらくオミクロンなのでしょう。さて、今回は席を譲りたくない人のお話です。この女性は50代の患者なのですが、身体障害者手帳を取りたいので何とかならないか、と相談がありました。数年前にくも膜下出血の手術をして社会復帰したのですが、とくにどこも悪いところはなさそうです。でも御本人によれば、手術の後から立っているのが辛い、歩くのが苦しい、という症状があるのだとか。以前は駅から帰宅するときの坂が平気だったのに、今は休みながらでないと登れません。起立性低血圧だろうか、VPシャントの流れ過ぎだろうか、といろいろ検査したりしたのですが、とくにこれといった原因が見当たりません。患者「手術の後からこんなふうになってしまって」中島「でも、こちらに担ぎこまれたときは生きるか死ぬかの状態だったんですよ」患者「先生には感謝していますけど、手術してから調子悪いんです」中島「困ったなあ。そもそも何で身体障害者手帳が必要なんですか?」身体障害者1級や2級に該当するはずもなく、手帳を取ってもあまり御利益があるようには思えません。患者「私、電車で席を譲りたくないんですよ」中島「えっ?」患者「譲れと言われたときに身体障害者手帳を見せることができるでしょ」中島「いやいや、歩いているし働いているし、どう見ても非該当ですよ」驚いた理由もあったもんです。でも脳外科に通院している患者さんからはたまに聞く訴えですね、席を譲りたくないって。ところが、某整形外科クリニックで驚くべき診断がついたのです。強直性脊椎炎。脊椎が変形しているので立っているのが苦痛胸郭拡張制限があるので歩くと息が切れるなんとまあドンピシャの症状じゃん!患者「今考えたら30代から腰が痛かったです」中島「ホントですか」患者「寝てたら腰が痛くて、起きたら何ともなくなっていました」その症状、手術のだいぶ前からですよ。ともかく、某整形外科クリニックの計らいで身体障害者手帳とヘルプマークを取ることができました。ヘルプマークというのは赤の背景に白で十字とハートのついたもので、彼女は常時バッグに付けています。中島「ヘルプマークをつけていると違いますか?」患者「全然違います。皆、席を譲ってくれますし」すごい威力ですね。日本人というのは、「助けてくれ」という明確な意思表示さえあれば親切なのかも。逆に明確な意思表示がなければ、全員がもじもじしています。確かBLS (basic life support) の講習会でも、周囲の人たちに「あなたとあなた、手伝ってください!」と指示する場面があったはず。キチンと指名すれば、BLSでも手伝ってもらえる可能性がグッと上がるのではないかと思います。あれこれ考えさせられた外来診察でした。最後に1句春夕(しゅんせき)の 電車の中で 席譲る

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医療マンガ大賞2021 言葉にしないと伝わらないこと(言語聴覚士視点)フクラアカリガエル氏

医療マンガ大賞2021 言葉にしないと伝わらないこと(言語聴覚士視点)フクラアカリガエル氏ケアネット部門受賞者・フクラアカリガエル氏からのコメント今回、このような賞をいただき大変光栄に思っています。コミカルで温かみのある素敵な原案エピソードを、この漫画で少しでも表現できていたらうれしいです。今回の漫画を描くことで、言語聴覚士(ST)の方の仕事を深く知るきっかけとなりました。STは思っていたよりもずっと私達の身近にある職業で、この漫画を通してSTさんの仕事も少しでも知っていただけたら幸いです。原作エピソード『医療に関する言葉にしないと伝わらないこと(言語聴覚士視点)』はこちら

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第23回 痛み診療のコツ・治療編(2)リハビリテーション療法(1)【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第23回 痛み診療のコツ・治療編(2)リハビリテーション療法(1)前回は理学療法の中でもとくに高齢患者さんに好まれている光線療法ついてお話しました。今回は、社会復帰に向けた痛みのリハビリテーション療法についてお話ししたいと思います。痛みを訴える患者さんにおいては、病態は類似していても、痛みの性質や程度は実に多種多様です。そのため、疼痛緩和療法も神経ブロック療法、薬物療法、各種理学療法、インターベンショナル治療、光線療法など、患者さんに沿った有効な治療法を選択する必要があります。それに加えて、痛みのリハビリテーション療法としての理学療法、とりわけ運動療法や物理療法が必要とされています。一般的には急性痛においては急性炎症が強く、痛みの程度が高い時には、患部を休ませることが基本となりますが、慢性痛においては、多少の慢性炎症が存在して痛く感じていても、患部を含めて運動が重要になります。痛みがあるからといって患部を動かさないでいると、拘縮などによりさらに痛みが増すことになります。リハビリテーションの目的は、大別すると以下に挙げたさまざまな療法を用いて、痛みの緩和、運動機能の維持・改善を図ることにあります。その結果、日常生活の動作や生活の質の向上が得られます。(1)理学療法(physical therapy)(ア)運動療法(therapeutic exercise)治療体操(exercise)マッサージ(massage)(イ)物理療法(physical therapy)温熱療法(heat therapy):ホットパック療法、渦流浴療法光線療法(actinotherapy):赤外線療法、スーパーライザー電気刺激療法(electrotherapy):低周波療法、経皮的電気神経刺激療法水治療法(hydrotherapy):コールドパック療法、寒冷療法、アイスマッサージ療法牽引療法(traction treatment):頸椎牽引療法、腰椎牽引法(2)装具療法(orthosis)装具(brace)自助具(self help device)車椅子(wheelchair)(3)作業療法(Occupational therapy)(4)心理療法(Psychothrapy)(5)言語療法(Speech therapy)(6)社会自立支援療法(Support for independence of social life)運動療法は、筋力の増強と保持、関節可動域の拡大、筋作用の協調性改善、持久力の増強を目的としています。物理療法は、局所の血流改善などにより筋過緊張軽減や疼痛緩和効果が期待できます。また、リハビリテーションには、リハビリテーション医、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語療法士(ST)、臨床心理士(CP)、社会福祉士(MSW)など、多くのスタッフが携わっており、患者さんを中心とした各々の連携維持が最も大切です。そうした意味を含め、チーム医療の重要性が認識できるかと思います。リハビリテーションによって、機能障害の改善、復職や社会的任務への復帰、日常生活における健康と健康感の増進などによってQOL、ADLの向上が得られれば、結果的に痛みのとらえ方が良い方向に向かい、痛みの軽減という好循環に入ることが期待されます。次回の「痛みの治療編・総まとめ」をもって、本連載は最終回となります。どうぞ最後までお付き合いください。1)花岡一雄編. 痛みとリハビリテーション 麻酔. 2015 ; 64 : 690‐7512)花岡一雄他監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014 ;143 : S173-S1743)花岡一雄編. 痛みとリハビリテーション ペインクリニック. 2014;35 : S1-S286

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統合失調症の死亡率と関連するリスク因子

 統合失調症患者の死亡率に関連する因子を調査するため、トルコ・コジャエリ大学のHilmi Yasar氏らは、10年間のフォローアップ調査を実施した。Turk Psikiyatri Dergisi誌2021年秋号の報告。 2004~08年に大学病院の精神科を受診し、外来および/または入院にて治療を受けた統合失調症患者の記録を検索し、2018年末までの生存率を算出した。その結果は、同一期間の一般集団におけるすべての原因による死亡率と比較した。また、統合失調症患者の死亡率に影響を及ぼすリスク因子についても調査した。 主な結果は以下のとおり。・登録された患者626例のうち506例を本検討に含めた。・10年間の死亡率は10.6%、死亡時の平均年齢は53.1歳であった。・全体的な平均寿命は73.4歳であり、男性66.6歳、女性77.6歳と差が認められた。また、喫煙者の平均寿命は64.7歳、非喫煙者は76.5歳であった。・全体的な標準化死亡比(SMR)は3.7、男性3.9、女性3.3であった。・死亡に関連するリスク因子は、高齢、男性、喫煙者、無職、早期発症であった。 著者らは「統合失調症患者の死亡リスクに対し、喫煙は重大なリスク因子である。禁煙プログラムを優先し、患者が参加できるリハビリテーションサービスを支援することにより、死亡リスク減少が期待できるであろう」としている。

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乳児・遅発型のポンペ病の標準治療となるか?/サノフィ

 サノフィ株式会社は、ポンペ病治療剤アバルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)(商品名:ネクスビアザイム)点滴静注用100mgを、11月26日に発売した。 アバルグルコシダーゼアルファは、ポンペ病(糖原病II型)において、乳児型ポンペ病(IOPD)および遅発型ポンペ病(LOPD)の新たな標準治療となる可能性がある。世界で5万人の患者が推定されているポンペ病 ポンペ病は進行性の筋疾患で、運動機能や呼吸機能の低下を来す希少疾患。ライソゾーム酵素の1つである酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の遺伝子の異常によりGAA活性の低下または欠損が原因で生じる疾患で、複合多糖(グリコーゲン)が全身の筋肉内に蓄積する。このグリコーゲンの蓄積が、不可逆的な筋損傷を引き起こし、肺を支える横隔膜などの呼吸筋や、運動機能に必要な骨格筋に影響を及ぼす。世界でのポンペ病の患者数は5万人と推定されて、わが国では、指定難病研究班により実施された全国疫学調査において、患者数は134人と報告されている。 ネクスビアザイムは、筋細胞の中にあるライソゾームにGAAを送り届け、グリコーゲンの分解を促すことで、本症がもたらす重大な症状である呼吸機能、筋力・身体機能(運動能力など)を標準治療薬であるマイオザイム(アルグルコシダーゼアルファ)よりも改善させる目的で開発された。 わが国では2020年11月27日に希少疾病用医薬品に指定され、米国食品医薬品局は、2021年8月に承認、英国の医薬品・医療製品規制庁は、本剤を有望な革新的医薬品に指定している。 2021年9月のわが国での製造販売承認取得では、ピボタル第III相二重盲検比較試験のCOMET試験と第II相Mini-COMET試験の肯定的な結果が審査された。前者では、遅発型ポンペ病の患者を対象としてネクスビアザイムの安全性と有効性を標準治療薬であるアルグルコシダーゼアルファとの比較で検討した。後者では、アルグルコシダーゼアルファの投与経験のある乳児型ポンペ病患者を対象にネクスビアザイムの安全性を主に評価するとともに、探索的に有効性の評価を行った。 その結果、前者の試験では、アルグルコシダーゼアルファに比べネクスビアザイムは、第49週時点における努力肺活量(%FVC)が2.4ポイント改善し、主要評価項目である非劣性が示された(p=0.0074;95%CI,-0.13,4.99)。 また、後者の試験では、6ヵ月時点では、アルグルコシダーゼアルファの治療時に悪化または効果不良がみられた患者において、有効性の評価項目である粗大運動能力尺度-88、簡易運動機能検査、ポンペPaediatric Evaluation of Disability Inventory、左室心筋重量のZスコアおよび眼瞼の位置に改善または安定化がみられた。 いずれの試験でも重篤または重度の治療と関連する有害事象は認められなかった。アバルグルコシダーゼアルファの概要一般名:アバルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)販売名:ネクスビアザイム点滴静注用100mg効能または効果:ポンペ病用法および用量:通常、アバルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)として、遅発型の患者には1回体重1kgあたり20mgを、乳児型の患者には1回体重1kgあたり40mgを隔週点滴静脈内投与する。国内製造販売承認取得日:2021年9月27日薬価収載日:2021年11月25日発売日:2021年11月26日製造販売会社:サノフィ株式会社

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新型コロナ「罹患後症状のマネジメント」を公開/厚労省

 厚生労働省は、12月1日に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(暫定版)」を公開し、全国の自治体に周知を行った。 本別冊「罹患後症状のマネジメント」は、COVID-19感染・回復後の患者の経過を診ているかかりつけ医などが、自身でそれらの症状に悩む患者に対して、どこまでどのようにアプローチ・フォローアップをすればよいのか、どのタイミングで専門医の受診を勧めるのか、などについて標準的な診療とケアについてまとめることを目的に、それぞれの分野で経験のある専門家が参集し、発刊したもの。「罹患後症状のマネジメント」はさまざまな視点から解説 「罹患後症状のマネジメント」のおもな内容として下記の解説が行われている。・WHOの定義:COVID-19の罹患後症状(いわゆる遷延症状あるいは後遺症)の紹介・現時点の知見などを基にした、かかりつけ医などの医療従事者向けの診療や経過観察のあり方のまとめ・かかりつけ医などがどの範囲まで対応し経過観察するのか、どのタイミングで専門医の受診を勧めるのかなどについて、各症状(呼吸器、循環器、嗅覚・味覚、精神・神経、痛み)ごとに記載・小児へのアプローチや筋力低下などに対するリハビリテーション、および職場などへの復帰に関する産業医学的アプローチも記載別冊「罹患後症状のマネジメント」の目次1)罹患後症状2)罹患後症状を訴える患者へのアプローチ3)呼吸器症状へのアプローチ4)循環器症状へのアプローチ5)嗅覚・味覚症状へのアプローチ6)精神・神経症状へのアプローチ7)“ 痛み”へのアプローチ8)小児へのアプローチ9)罹患後症状に対するリハビリテーション10)罹患後症状と産業医学的アプローチ また、注意点として「罹患後症状のマネジメント」の内容は、2021年11月26日現在の情報を基に作成したもので、今後の知見より内容修正が必要となる場合があること、厚生労働省、国立感染症研究所などのホームページから常に最新の情報を得るようにと注意を喚起している。

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診断基準への採用を目指す!新たな変形性膝関節症予後リスク判定デバイスとは

 10月29日にWeb開催された日本抗加齢協会主催『第3回ヘルスケアベンチャー大賞』において、変形性膝関節症(以下、膝OA)の進行予後を推定するウェアラブルデバイスを開発した、株式会社iMUが大賞に選ばれた。 同社は慶應義塾大学医学部発のヘルスケアスタート・アップ*であり、受賞に結び付いた製品は、変形性膝関節症の進行予後リスクが5m歩くだけで見える化できるウェアラブルデバイスだ。既存製品で90分を要した計測時間はわずか5分に短縮され、医師・患者の双方にメリットのある製品開発に成功した。*:ベンチャー企業は既存ビジネスをスケール化したり中長期的に課題解決に取り組む。一方、スタート・アップは革新的なアイデアや独自性で新たな価値を生み出し、社会にインパクトを与える企業のこと。KAMを変形性膝関節症の国際基準へ導くことを目標「KAMという指標を変形性膝関節症の国際診断基準へ導く」ことを目標に掲げ、開発の起爆剤としているという名倉氏。彼らの原点は、医師、患者どちらにも痛みになっている変形性膝関節症診断のあいまいさを払拭させることだという。“KAM”(膝内反モーメント=膝の力学的負荷)とはラテラルスラスト**(以下、スラスト現象)を定量化したもので、変形性膝関節症の進行予測・治療効果判定に有用と考えられている。現時点で1,000以上もの論文報告がされ、変形性膝関節症の予後予測の精度はおおよそ感度90%、特異度85%と、世界から脚光を浴びるデジタルバイオマーカーだ。**:歩行時の立脚中期に特徴的に観察される膝関節の横ぶれ そもそも、変形性膝関節症の診断基準は“KLグレード分類”が1957年に確立された後、現代までそれが継承され続けてきた。すなわち、現在まで新たな診断基準の確立には至っておらず、2016年に変形性膝関節症のガイドラインが改訂されてもなお、「“痛み+診断所見”のみというアナログな診断方法が用いられている」と名倉氏は説明。また、変形性膝関節症の治療戦略には保存療法から人工関節置換手術まで幅広い治療が存在するが、これらを選択するにも診断マーカーがないため医師の裁量にかかっているのが現状だという。そこで同氏らはKAMに注目し開発を推し進めてきた。変形性膝関節症の予後予測しながらの治療が実現! これまでは、モーションキャプチャーを利用してKAMの計測を行っていたが、KAMを算出するまでに90分、結果報告を当日にできないというデメリットがあった。これらを解決したのが、同氏らの開発したiMU ver.1というウェアラブルデバイスによるKAM推定技術だ。加速度センサーとAIを組み合わせたことで、いつでもどこでも測定ができ、既存製品と比べ算出時間も大幅に短縮、さらに低コスト化も実現可能だ。これについて同氏は「スラスト現象に注目し、そこに加速度センサーを用いたからこそ実現できた」とコメントした。 このデバイスを使ってKAMを測定した場合、KAMが閾値未満であればマイルドな治療で経過観察と診断、一方でKAMが閾値以上なら変形性膝関節症の進行リスクが高く積極的な介入治療が必要と診断できる。これについて、「医者・患者の意識変革をもたらし、プレシジョンメディシンの実践に有用」と話した。KAM推定技術で変形性膝関節症の予後予測ができるメリット 本デバイスは医療機器として販売準備中で、現在、整形外科クリニック3施設においてプロトタイプを用いたヒアリングなどを行っている。2022年春に初期モデルの発売を目指し、最終調整に入っている。実証実験に参加している医師は「保険点数うんぬんよりも患者の治療モチベーション向上や受診機会を増やせる点がメリットにほかならない」とコメントを寄せた。 潜在患者が多い変形性膝関節症の領域において、KAM推定技術で予後予測ができるメリットは患者にも医師にも朗報であり、来春の発売に期待が高まりそうだ。<会社情報>株式会社iMU創業:2020年2月ホームページ:https://www.imujapan.com/ このほか、各受賞者は以下のとおり。―――・ヘルスケアベンチャー大賞(企業)iMU株式会社「ウェアラブルセンサーによる膝痛対策ツールの開発」・学会賞(企業)ペリオセラピア株式会社「化学療法抵抗性トリプルネガティブ乳癌への新規治療法の開発」・ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞(企業)あっと株式会社「非侵襲指先皮下毛細血管スコープによるCapillary Function Index!」株式会社サイキンソー「腸内フローラからアプローチするスマート生活習慣病対策事業」株式会社トニジ「緑内障患者向け家庭用自己測定眼圧計の開発・事業化」・最優秀アイデア賞(個人)首藤 剛氏(熊本大学大学院生命科学研究部遺伝子機能応用学講座 准教授)「Cエレガンスを用いた健康寿命の指標化で挑む 新(ネオ)LIFESPAN革命!!」・アイデア賞(個人)藤本 千里氏(東京大学大学院医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野)「ノイズ前庭電気刺激によるバランス改善治療」山下 積穂氏(つみのり内科クリニック)「人生100年時代の健康づくりを学ぶりんご教室」――― 年々、応募レベルが高くなっているヘルスケアベンチャー大賞。この賞はアンチエイジング領域においてさまざまなシーズをもとに新しい可能性を拓き社会課題の解決につなげていく試みとして、坪田 一男氏(日本抗加齢医学会イノベーション委員会委員長)らが2019年に立ち上げたもの。コロナ禍でありながら、設立間もない企業のみならず医師個人など多数の応募者が切磋琢磨し、書類審査、1次審査、最終審査の3段階で評価され表彰された。

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骨格筋量維持が術後の高齢食道がんの生命予後を改善/日本癌治療学会

 手術後の高齢食道がんの生命予後は、骨格筋量減少が減少が小さい患者で良好なことが、第59回日本癌治療学会学術集会で報告された。 骨格筋量の減少はがん患者の生命予後に影響する。消化器がん領域では、患者の高齢化でサルコペニアが増加しており、骨格筋量への注目は高い。 そのような中、完全切除後の高齢食道がん患者における術後の骨格筋量の変化が、生命予後に与える影響を調査するため、単施設の後ろ向き研究が行われた。国立がん研究センター東病院の原田剛志氏が試験結果を発表した。 2016~2020年に根治的手術および周術期リハビリテーションを受けた、70歳以上の食道癌患者が166が分析の対象となった。 完全切除4ヶ月後の骨格筋量指数(SMI)の減少が小さかった群(6.05%未満)は、大きかった群(6.05%以上)に比べ、3年全生存(3yOS)率が有意に良好であった(p=0.0073)。SMIの変化と3yOS率の関係は用量依存的であり、また、SMIの大幅な減少(6.05%以上)は、独立した危険因子であった。 この後ろ向き研究では、周術期リハビリテーションを受けた高齢食道がん患者において、手術後の骨格筋量の変化は生命予後に影響することが示された。発表者の原田氏は 、手術後の継続したリハビリテーションが骨格筋量を維持する可能性を示唆した。

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熱傷診療ガイドライン改訂第3版が発刊

 前回の改訂より5年が経過したことを機に『熱傷診療ガイドライン 改訂第3版』が7月に発刊された。今回の改訂目的は、本邦における熱傷入院診療の標準治療を示すことで、本書で扱う熱傷は、「十分な診療リソースを利用できる環境にある本邦のような高所得国における」「概ね受傷後4週間以内」「入院治療が必要な程度にある重症度」。また、今回の改訂では、改訂第2版公開以降の新知見を十分な時間をかけ検討し、これまでの版で盛り込むことができなかった電撃傷・化学損傷などの特殊熱傷、鎮痛・鎮静、輸血、深部静脈血栓症対策のみならず、リハビリテーション、リエゾン・終末期・家族対応などを取り上げ、診療指針が示されている。対象とする患者集団小児から成人にいたる全年齢の患者において、おおむね受傷後4週間程度、集中治療室、熱傷ケアユニット、一般病棟で入院治療を必要とする重症度の熱傷。外来通院のみで治療が可能な重症度の熱傷は対象としていない。熱傷のなかには、気道損傷、化学損傷、電撃傷を含む。対象とする利用者(本ガイドラインの使用者)医師、看護師、薬剤師、理学療法士など、熱傷診療にかかわるすべての医療従事者。治療の環境は、熱傷専門施設に限らず、本邦における日常診療を想定して患者に対し十分な診療リソースを利用できる環境とした。13領域69題のCQ 本書のclinical question(CQ)は2019 年 4 月にパブリックコメントを募集し、第45回日本熱傷学会総会学術集会で学会員の意見を求めた。得られた意見を参考にCQの修正を行い、ガイドライン作成グループで最終的に13領域69題のCQが決定された。―――・CQ 1 重症度評価・CQ2 気道損傷・CQ3 初期輸液療法・CQ4 初期局所療法・CQ5 外科的局所療法・CQ6 熱傷感染・CQ7 栄養・CQ8 特殊熱傷・CQ9 鎮痛・鎮静・CQ10 輸血・CQ11 深部静脈血栓症・CQ12 リハビリテーション・CQ13 リエゾン―――

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介護施設の入居者、乳製品増量で骨折、転倒が減少/BMJ

 高齢者介護施設の入居者では、乳製品を用いてカルシウムとタンパク質の摂取量を増量する栄養学的介入は、転倒や骨折のリスクの抑制に有効で、容易に利用できる方法であることが、オーストラリア・メルボルン大学のSandra Iuliano氏らの調査で示された。死亡率の改善は認められなかった。研究の成果は、BMJ誌2021年10月21日号で報告された。オーストラリアの介護施設のクラスター無作為化試験 本研究は、ビタミンDの摂取量は十分だが、カルシウムの平均摂取量が600mg/日で、タンパク質の摂取量が1g/kg体重/日未満の高齢者介護施設入居者における、乳製品による栄養学的介入の骨折予防効果と安全性の評価を目的とする2年間のクラスター無作為化対照比較試験であり、2013年12月~2016年8月の期間に参加施設と参加者の募集が行われた(Dairy Australiaなどの助成を受けた)。 この試験には、オーストラリアの主に歩行可能な高齢者が居住する60の認定介護施設が参加し、介入群に30施設、対照群に30施設が無作為に割り付けられた。参加者は、7,195例(平均年齢86.0[SD 8.2]歳、女性4,920例[68%])だった。 介入群では、牛乳(250mL)、ヨーグルト(100g)またはチーズ(20g)が増量され、これによりカルシウムの平均摂取量が562(SD 166)mg/日、タンパク質の平均摂取量が12(6)g/日増え、摂取量の合計はそれぞれ1,142(353)mg/日および69(15)g/日(1.1g/kg体重)となった。介入により、乳製品の摂取量が2.0サービングから3.5サービングに増加した。対照群は通常の食事を維持し、カルシウムの摂取量は700(247)mg/日、タンパク質の摂取量は58(14)g/日(0.9g/kg体重)だった。骨折が33%、転倒は11%のリスク低下 56施設(介入群27施設、対照群29施設)のデータが解析に含まれた。参加者は、介入群が3,301例、対照群は3,894例であった。追跡期間中のエネルギー摂取量は両群で差はなく、各群内で有意な変動はなかった。骨折が324件(大腿骨近位部骨折135件)、転倒が4,302件、死亡が1,974件発生した。 2年間で、介入群は対照群に比べ、骨折リスクが33%低下し(121件[3.7%]vs.203件[5.2%]、ハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.48~0.93、p=0.02)、大腿骨近位部骨折のリスクは46%減少した(42件[1.3%]vs.93件[2.4%]、0.54、0.35~0.83、p=0.005)。また、転倒のリスクは介入群で11%抑制された(1,879件[57%]vs.2,423件[62%]、0.89、0.78~0.98、p=0.04)。 5ヵ月の時点で、全骨折(p=0.002)および大腿骨近位部骨折(p=0.02)のリスクに有意な差がみられ、いずれも介入群で良好であった。また、3ヵ月の時点で、転倒(p=0.04)のリスクに有意差が認められ、介入群で優れた。1件を除き、骨折の原因はすべて転倒であった。 死亡には両群間に差はなかった(900件[27%]vs.1,074件[28%]、HR:1.01、95%CI:0.43~3.08)。予防治療を要した参加者の数は、全骨折が52件、大腿骨近位部骨折が82件、転倒は17件だった。 著者は、「この栄養学的介入は、入居者の好みに合わせて個別に行われ、既存の献立に通常の小売り用の牛乳、ヨーグルト、チーズを組み合わせた給食サービスを活用して行われたが、円滑な運用が可能であった。この介入は、高齢者介護施設における骨折予防のための公衆衛生対策として広く利用でき、より広範な地域社会でも使用できる可能性がある」としている。

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事例036 絆創膏固定術の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説左ひざを捻挫したとして来院された患者に対して「J001-2 絆創膏固定術」を施して、レセプト請求したところ、C事由(医学的理由による不適当)にて査定となりました。カルテを確認したところ、膝靭帯の損傷所見が記入されており、画像診断にて骨挫傷と診断し、絆創膏固定術を選択されたことが記載されていました。カルテの傷病名欄には、レセプトと同じ「左膝関節骨挫傷」のみが記載されていました。医師に尋ねると、膝靭帯の損傷は骨挫傷の病名を付けてあれば不要であろうと考えられており、レセプトへの膝靭帯損傷にかかるコメントも不要と考えたようです。絆創膏固定術の算定要件には「足関節捻挫または膝関節靭帯損傷に対して行った場合に算定する」とあります。事例のレセプト記載内容では算定要件である膝関節靭帯損傷の確認ができず、医学的に保険診療の適応がないと判断されて査定となったものでした。いわゆる保険病名とは異なり、診断にてより精緻な病名が判明した場合であっても、保険診療が必要とする病名は必要となります。今回の問題点を医師に説明し、レセプトチェックシステムにも登録して査定対策としました。

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新型コロナでのECMO治療開始後の死亡率、流行初期より増加/Lancet

 体外式膜型人工肺(ECMO)治療の初期導入施設では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者におけるECMO治療開始後の死亡率が2020年に約15%上昇し、治療期間が約6日延長したことが、米国・ミシガン大学のRyan P. Barbaro氏らExtracorporeal Life Support Organization(ELSO)が世界41ヵ国で実施した調査で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年10月2日号に掲載された。レジストリデータで3群を後ろ向きに比較解析 研究グループは、2020年5月1日以前にECMOによる治療を受けた患者と、これ以降にECMO治療を受けた患者で、ベースラインの患者特性やECMO治療を行った施設の特性、患者アウトカムなどを比較する目的で、ELSOレジストリのデータを後ろ向きに解析した(研究助成は受けていない)。 対象は、年齢16歳以上、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)陽性と診断され、2020年1月1日~12月31日の期間にECMO治療を受けた患者であった。 患者は、ECMO治療を開始した時期と施設で次の3つの群に分けられた。(1)初期導入施設(2020年1月1日~12月31日にECMO導入)で2020年1月1日~5月1日の期間にECMO治療を開始した患者(A1群)、(2)初期導入施設で2020年5月2日~12月31日の期間にECMO治療を開始した患者(A2群)、(3)後期導入施設(2020年5月2日~12月31日にECMO導入)でECMO治療を開始した患者(B群)。 主要アウトカムは、ECMO治療開始から90日後に生存時間(time-to-event)解析で評価した院内死亡率とされた。Cox比例ハザードモデルを用いて、3群間の補正後の相対的死亡リスクを患者および施設レベルで比較した。同じ5月2日以降でも、後期導入施設は死亡リスクが高い 2020年に、日本を含む41ヵ国349施設(初期導入236施設、後期導入113施設)でECMO治療を受けたCOVID-19患者4,812例が解析に含まれた。A1群が1,182例(年齢中央値50歳、男性74%)、A2群が2,824例(51歳、73%)、B群は806例(49歳、74%)であった。 ECMO治療開始後90日時の院内死亡の累積発生率は、A1群の36.9%(95%信頼区間[CI]:34.1~39.7)から、A2群では51.9%(50.0~53.8)へと15%増加した。また、B群の90日累積院内死亡率は58.9%(55.4~62.3)であり、同じ5月2日以降のECMO開始であったA2群よりも約7%高率だった。これらの差は、患者および施設レベルの背景因子で補正後にも認められた。 A1群はA2群に比べ、90日院内死亡の補正後相対リスクが低かった(ハザード比:0.82、95%CI:0.70~0.96)。一方、B群はA2群よりも、90日院内死亡の補正後相対リスクが高かった(1.42、1.17~1.73)。また、ECMO治療開始前の年齢(高齢になるほど高リスク)、がん・心停止の既往歴、および開始時の急性腎障害の存在は、死亡の相対リスクの上昇と関連していた。 A1群はA2群に比べ、自宅退院や急性期リハビリテーション施設への転院(32% vs.22%)および他院への転院(18% vs.11%)の割合が高かった(並べ替え検定のp=0.01)。また、ECMO治療期間中央値は、A1群では14.1日(IQR:7.9~24.1)であったが、A2群では20.0日(9.7~35.1)へと、約6日延長していた(p<0.001)。ECMO治療開始後の入院期間中央値は、A1群の27.1日(15.8~44.2)から、A2群では30.7日(17.6~50.7)へと延長した。 著者は、「COVID-19の世界的大流行の進行中にECMO治療を開始した患者の死亡率は悪化していることから、今後もECMOの転帰の継続的な監視が求められる。ECMOは限られた資源であり、COVID-19患者の25%が5週間以上のECMO治療を受けていることを考慮すると、各施設は資源が限定的な場合のECMOの倫理的な配分に関する自施設の指針の策定を検討する必要がある」と指摘している。

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