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統合失調症の死亡率と関連するリスク因子

 統合失調症患者の死亡率に関連する因子を調査するため、トルコ・コジャエリ大学のHilmi Yasar氏らは、10年間のフォローアップ調査を実施した。Turk Psikiyatri Dergisi誌2021年秋号の報告。 2004~08年に大学病院の精神科を受診し、外来および/または入院にて治療を受けた統合失調症患者の記録を検索し、2018年末までの生存率を算出した。その結果は、同一期間の一般集団におけるすべての原因による死亡率と比較した。また、統合失調症患者の死亡率に影響を及ぼすリスク因子についても調査した。 主な結果は以下のとおり。・登録された患者626例のうち506例を本検討に含めた。・10年間の死亡率は10.6%、死亡時の平均年齢は53.1歳であった。・全体的な平均寿命は73.4歳であり、男性66.6歳、女性77.6歳と差が認められた。また、喫煙者の平均寿命は64.7歳、非喫煙者は76.5歳であった。・全体的な標準化死亡比(SMR)は3.7、男性3.9、女性3.3であった。・死亡に関連するリスク因子は、高齢、男性、喫煙者、無職、早期発症であった。 著者らは「統合失調症患者の死亡リスクに対し、喫煙は重大なリスク因子である。禁煙プログラムを優先し、患者が参加できるリハビリテーションサービスを支援することにより、死亡リスク減少が期待できるであろう」としている。

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乳児・遅発型のポンペ病の標準治療となるか?/サノフィ

 サノフィ株式会社は、ポンペ病治療剤アバルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)(商品名:ネクスビアザイム)点滴静注用100mgを、11月26日に発売した。 アバルグルコシダーゼアルファは、ポンペ病(糖原病II型)において、乳児型ポンペ病(IOPD)および遅発型ポンペ病(LOPD)の新たな標準治療となる可能性がある。世界で5万人の患者が推定されているポンペ病 ポンペ病は進行性の筋疾患で、運動機能や呼吸機能の低下を来す希少疾患。ライソゾーム酵素の1つである酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の遺伝子の異常によりGAA活性の低下または欠損が原因で生じる疾患で、複合多糖(グリコーゲン)が全身の筋肉内に蓄積する。このグリコーゲンの蓄積が、不可逆的な筋損傷を引き起こし、肺を支える横隔膜などの呼吸筋や、運動機能に必要な骨格筋に影響を及ぼす。世界でのポンペ病の患者数は5万人と推定されて、わが国では、指定難病研究班により実施された全国疫学調査において、患者数は134人と報告されている。 ネクスビアザイムは、筋細胞の中にあるライソゾームにGAAを送り届け、グリコーゲンの分解を促すことで、本症がもたらす重大な症状である呼吸機能、筋力・身体機能(運動能力など)を標準治療薬であるマイオザイム(アルグルコシダーゼアルファ)よりも改善させる目的で開発された。 わが国では2020年11月27日に希少疾病用医薬品に指定され、米国食品医薬品局は、2021年8月に承認、英国の医薬品・医療製品規制庁は、本剤を有望な革新的医薬品に指定している。 2021年9月のわが国での製造販売承認取得では、ピボタル第III相二重盲検比較試験のCOMET試験と第II相Mini-COMET試験の肯定的な結果が審査された。前者では、遅発型ポンペ病の患者を対象としてネクスビアザイムの安全性と有効性を標準治療薬であるアルグルコシダーゼアルファとの比較で検討した。後者では、アルグルコシダーゼアルファの投与経験のある乳児型ポンペ病患者を対象にネクスビアザイムの安全性を主に評価するとともに、探索的に有効性の評価を行った。 その結果、前者の試験では、アルグルコシダーゼアルファに比べネクスビアザイムは、第49週時点における努力肺活量(%FVC)が2.4ポイント改善し、主要評価項目である非劣性が示された(p=0.0074;95%CI,-0.13,4.99)。 また、後者の試験では、6ヵ月時点では、アルグルコシダーゼアルファの治療時に悪化または効果不良がみられた患者において、有効性の評価項目である粗大運動能力尺度-88、簡易運動機能検査、ポンペPaediatric Evaluation of Disability Inventory、左室心筋重量のZスコアおよび眼瞼の位置に改善または安定化がみられた。 いずれの試験でも重篤または重度の治療と関連する有害事象は認められなかった。アバルグルコシダーゼアルファの概要一般名:アバルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)販売名:ネクスビアザイム点滴静注用100mg効能または効果:ポンペ病用法および用量:通常、アバルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)として、遅発型の患者には1回体重1kgあたり20mgを、乳児型の患者には1回体重1kgあたり40mgを隔週点滴静脈内投与する。国内製造販売承認取得日:2021年9月27日薬価収載日:2021年11月25日発売日:2021年11月26日製造販売会社:サノフィ株式会社

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新型コロナ「罹患後症状のマネジメント」を公開/厚労省

 厚生労働省は、12月1日に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(暫定版)」を公開し、全国の自治体に周知を行った。 本別冊「罹患後症状のマネジメント」は、COVID-19感染・回復後の患者の経過を診ているかかりつけ医などが、自身でそれらの症状に悩む患者に対して、どこまでどのようにアプローチ・フォローアップをすればよいのか、どのタイミングで専門医の受診を勧めるのか、などについて標準的な診療とケアについてまとめることを目的に、それぞれの分野で経験のある専門家が参集し、発刊したもの。「罹患後症状のマネジメント」はさまざまな視点から解説 「罹患後症状のマネジメント」のおもな内容として下記の解説が行われている。・WHOの定義:COVID-19の罹患後症状(いわゆる遷延症状あるいは後遺症)の紹介・現時点の知見などを基にした、かかりつけ医などの医療従事者向けの診療や経過観察のあり方のまとめ・かかりつけ医などがどの範囲まで対応し経過観察するのか、どのタイミングで専門医の受診を勧めるのかなどについて、各症状(呼吸器、循環器、嗅覚・味覚、精神・神経、痛み)ごとに記載・小児へのアプローチや筋力低下などに対するリハビリテーション、および職場などへの復帰に関する産業医学的アプローチも記載別冊「罹患後症状のマネジメント」の目次1)罹患後症状2)罹患後症状を訴える患者へのアプローチ3)呼吸器症状へのアプローチ4)循環器症状へのアプローチ5)嗅覚・味覚症状へのアプローチ6)精神・神経症状へのアプローチ7)“ 痛み”へのアプローチ8)小児へのアプローチ9)罹患後症状に対するリハビリテーション10)罹患後症状と産業医学的アプローチ また、注意点として「罹患後症状のマネジメント」の内容は、2021年11月26日現在の情報を基に作成したもので、今後の知見より内容修正が必要となる場合があること、厚生労働省、国立感染症研究所などのホームページから常に最新の情報を得るようにと注意を喚起している。

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診断基準への採用を目指す!新たな変形性膝関節症予後リスク判定デバイスとは

 10月29日にWeb開催された日本抗加齢協会主催『第3回ヘルスケアベンチャー大賞』において、変形性膝関節症(以下、膝OA)の進行予後を推定するウェアラブルデバイスを開発した、株式会社iMUが大賞に選ばれた。 同社は慶應義塾大学医学部発のヘルスケアスタート・アップ*であり、受賞に結び付いた製品は、変形性膝関節症の進行予後リスクが5m歩くだけで見える化できるウェアラブルデバイスだ。既存製品で90分を要した計測時間はわずか5分に短縮され、医師・患者の双方にメリットのある製品開発に成功した。*:ベンチャー企業は既存ビジネスをスケール化したり中長期的に課題解決に取り組む。一方、スタート・アップは革新的なアイデアや独自性で新たな価値を生み出し、社会にインパクトを与える企業のこと。KAMを変形性膝関節症の国際基準へ導くことを目標「KAMという指標を変形性膝関節症の国際診断基準へ導く」ことを目標に掲げ、開発の起爆剤としているという名倉氏。彼らの原点は、医師、患者どちらにも痛みになっている変形性膝関節症診断のあいまいさを払拭させることだという。“KAM”(膝内反モーメント=膝の力学的負荷)とはラテラルスラスト**(以下、スラスト現象)を定量化したもので、変形性膝関節症の進行予測・治療効果判定に有用と考えられている。現時点で1,000以上もの論文報告がされ、変形性膝関節症の予後予測の精度はおおよそ感度90%、特異度85%と、世界から脚光を浴びるデジタルバイオマーカーだ。**:歩行時の立脚中期に特徴的に観察される膝関節の横ぶれ そもそも、変形性膝関節症の診断基準は“KLグレード分類”が1957年に確立された後、現代までそれが継承され続けてきた。すなわち、現在まで新たな診断基準の確立には至っておらず、2016年に変形性膝関節症のガイドラインが改訂されてもなお、「“痛み+診断所見”のみというアナログな診断方法が用いられている」と名倉氏は説明。また、変形性膝関節症の治療戦略には保存療法から人工関節置換手術まで幅広い治療が存在するが、これらを選択するにも診断マーカーがないため医師の裁量にかかっているのが現状だという。そこで同氏らはKAMに注目し開発を推し進めてきた。変形性膝関節症の予後予測しながらの治療が実現! これまでは、モーションキャプチャーを利用してKAMの計測を行っていたが、KAMを算出するまでに90分、結果報告を当日にできないというデメリットがあった。これらを解決したのが、同氏らの開発したiMU ver.1というウェアラブルデバイスによるKAM推定技術だ。加速度センサーとAIを組み合わせたことで、いつでもどこでも測定ができ、既存製品と比べ算出時間も大幅に短縮、さらに低コスト化も実現可能だ。これについて同氏は「スラスト現象に注目し、そこに加速度センサーを用いたからこそ実現できた」とコメントした。 このデバイスを使ってKAMを測定した場合、KAMが閾値未満であればマイルドな治療で経過観察と診断、一方でKAMが閾値以上なら変形性膝関節症の進行リスクが高く積極的な介入治療が必要と診断できる。これについて、「医者・患者の意識変革をもたらし、プレシジョンメディシンの実践に有用」と話した。KAM推定技術で変形性膝関節症の予後予測ができるメリット 本デバイスは医療機器として販売準備中で、現在、整形外科クリニック3施設においてプロトタイプを用いたヒアリングなどを行っている。2022年春に初期モデルの発売を目指し、最終調整に入っている。実証実験に参加している医師は「保険点数うんぬんよりも患者の治療モチベーション向上や受診機会を増やせる点がメリットにほかならない」とコメントを寄せた。 潜在患者が多い変形性膝関節症の領域において、KAM推定技術で予後予測ができるメリットは患者にも医師にも朗報であり、来春の発売に期待が高まりそうだ。<会社情報>株式会社iMU創業:2020年2月ホームページ:https://www.imujapan.com/ このほか、各受賞者は以下のとおり。―――・ヘルスケアベンチャー大賞(企業)iMU株式会社「ウェアラブルセンサーによる膝痛対策ツールの開発」・学会賞(企業)ペリオセラピア株式会社「化学療法抵抗性トリプルネガティブ乳癌への新規治療法の開発」・ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞(企業)あっと株式会社「非侵襲指先皮下毛細血管スコープによるCapillary Function Index!」株式会社サイキンソー「腸内フローラからアプローチするスマート生活習慣病対策事業」株式会社トニジ「緑内障患者向け家庭用自己測定眼圧計の開発・事業化」・最優秀アイデア賞(個人)首藤 剛氏(熊本大学大学院生命科学研究部遺伝子機能応用学講座 准教授)「Cエレガンスを用いた健康寿命の指標化で挑む 新(ネオ)LIFESPAN革命!!」・アイデア賞(個人)藤本 千里氏(東京大学大学院医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野)「ノイズ前庭電気刺激によるバランス改善治療」山下 積穂氏(つみのり内科クリニック)「人生100年時代の健康づくりを学ぶりんご教室」――― 年々、応募レベルが高くなっているヘルスケアベンチャー大賞。この賞はアンチエイジング領域においてさまざまなシーズをもとに新しい可能性を拓き社会課題の解決につなげていく試みとして、坪田 一男氏(日本抗加齢医学会イノベーション委員会委員長)らが2019年に立ち上げたもの。コロナ禍でありながら、設立間もない企業のみならず医師個人など多数の応募者が切磋琢磨し、書類審査、1次審査、最終審査の3段階で評価され表彰された。

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骨格筋量維持が術後の高齢食道がんの生命予後を改善/日本癌治療学会

 手術後の高齢食道がんの生命予後は、骨格筋量減少が減少が小さい患者で良好なことが、第59回日本癌治療学会学術集会で報告された。 骨格筋量の減少はがん患者の生命予後に影響する。消化器がん領域では、患者の高齢化でサルコペニアが増加しており、骨格筋量への注目は高い。 そのような中、完全切除後の高齢食道がん患者における術後の骨格筋量の変化が、生命予後に与える影響を調査するため、単施設の後ろ向き研究が行われた。国立がん研究センター東病院の原田剛志氏が試験結果を発表した。 2016~2020年に根治的手術および周術期リハビリテーションを受けた、70歳以上の食道癌患者が166が分析の対象となった。 完全切除4ヶ月後の骨格筋量指数(SMI)の減少が小さかった群(6.05%未満)は、大きかった群(6.05%以上)に比べ、3年全生存(3yOS)率が有意に良好であった(p=0.0073)。SMIの変化と3yOS率の関係は用量依存的であり、また、SMIの大幅な減少(6.05%以上)は、独立した危険因子であった。 この後ろ向き研究では、周術期リハビリテーションを受けた高齢食道がん患者において、手術後の骨格筋量の変化は生命予後に影響することが示された。発表者の原田氏は 、手術後の継続したリハビリテーションが骨格筋量を維持する可能性を示唆した。

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熱傷診療ガイドライン改訂第3版が発刊

 前回の改訂より5年が経過したことを機に『熱傷診療ガイドライン 改訂第3版』が7月に発刊された。今回の改訂目的は、本邦における熱傷入院診療の標準治療を示すことで、本書で扱う熱傷は、「十分な診療リソースを利用できる環境にある本邦のような高所得国における」「概ね受傷後4週間以内」「入院治療が必要な程度にある重症度」。また、今回の改訂では、改訂第2版公開以降の新知見を十分な時間をかけ検討し、これまでの版で盛り込むことができなかった電撃傷・化学損傷などの特殊熱傷、鎮痛・鎮静、輸血、深部静脈血栓症対策のみならず、リハビリテーション、リエゾン・終末期・家族対応などを取り上げ、診療指針が示されている。対象とする患者集団小児から成人にいたる全年齢の患者において、おおむね受傷後4週間程度、集中治療室、熱傷ケアユニット、一般病棟で入院治療を必要とする重症度の熱傷。外来通院のみで治療が可能な重症度の熱傷は対象としていない。熱傷のなかには、気道損傷、化学損傷、電撃傷を含む。対象とする利用者(本ガイドラインの使用者)医師、看護師、薬剤師、理学療法士など、熱傷診療にかかわるすべての医療従事者。治療の環境は、熱傷専門施設に限らず、本邦における日常診療を想定して患者に対し十分な診療リソースを利用できる環境とした。13領域69題のCQ 本書のclinical question(CQ)は2019 年 4 月にパブリックコメントを募集し、第45回日本熱傷学会総会学術集会で学会員の意見を求めた。得られた意見を参考にCQの修正を行い、ガイドライン作成グループで最終的に13領域69題のCQが決定された。―――・CQ 1 重症度評価・CQ2 気道損傷・CQ3 初期輸液療法・CQ4 初期局所療法・CQ5 外科的局所療法・CQ6 熱傷感染・CQ7 栄養・CQ8 特殊熱傷・CQ9 鎮痛・鎮静・CQ10 輸血・CQ11 深部静脈血栓症・CQ12 リハビリテーション・CQ13 リエゾン―――

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介護施設の入居者、乳製品増量で骨折、転倒が減少/BMJ

 高齢者介護施設の入居者では、乳製品を用いてカルシウムとタンパク質の摂取量を増量する栄養学的介入は、転倒や骨折のリスクの抑制に有効で、容易に利用できる方法であることが、オーストラリア・メルボルン大学のSandra Iuliano氏らの調査で示された。死亡率の改善は認められなかった。研究の成果は、BMJ誌2021年10月21日号で報告された。オーストラリアの介護施設のクラスター無作為化試験 本研究は、ビタミンDの摂取量は十分だが、カルシウムの平均摂取量が600mg/日で、タンパク質の摂取量が1g/kg体重/日未満の高齢者介護施設入居者における、乳製品による栄養学的介入の骨折予防効果と安全性の評価を目的とする2年間のクラスター無作為化対照比較試験であり、2013年12月~2016年8月の期間に参加施設と参加者の募集が行われた(Dairy Australiaなどの助成を受けた)。 この試験には、オーストラリアの主に歩行可能な高齢者が居住する60の認定介護施設が参加し、介入群に30施設、対照群に30施設が無作為に割り付けられた。参加者は、7,195例(平均年齢86.0[SD 8.2]歳、女性4,920例[68%])だった。 介入群では、牛乳(250mL)、ヨーグルト(100g)またはチーズ(20g)が増量され、これによりカルシウムの平均摂取量が562(SD 166)mg/日、タンパク質の平均摂取量が12(6)g/日増え、摂取量の合計はそれぞれ1,142(353)mg/日および69(15)g/日(1.1g/kg体重)となった。介入により、乳製品の摂取量が2.0サービングから3.5サービングに増加した。対照群は通常の食事を維持し、カルシウムの摂取量は700(247)mg/日、タンパク質の摂取量は58(14)g/日(0.9g/kg体重)だった。骨折が33%、転倒は11%のリスク低下 56施設(介入群27施設、対照群29施設)のデータが解析に含まれた。参加者は、介入群が3,301例、対照群は3,894例であった。追跡期間中のエネルギー摂取量は両群で差はなく、各群内で有意な変動はなかった。骨折が324件(大腿骨近位部骨折135件)、転倒が4,302件、死亡が1,974件発生した。 2年間で、介入群は対照群に比べ、骨折リスクが33%低下し(121件[3.7%]vs.203件[5.2%]、ハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.48~0.93、p=0.02)、大腿骨近位部骨折のリスクは46%減少した(42件[1.3%]vs.93件[2.4%]、0.54、0.35~0.83、p=0.005)。また、転倒のリスクは介入群で11%抑制された(1,879件[57%]vs.2,423件[62%]、0.89、0.78~0.98、p=0.04)。 5ヵ月の時点で、全骨折(p=0.002)および大腿骨近位部骨折(p=0.02)のリスクに有意な差がみられ、いずれも介入群で良好であった。また、3ヵ月の時点で、転倒(p=0.04)のリスクに有意差が認められ、介入群で優れた。1件を除き、骨折の原因はすべて転倒であった。 死亡には両群間に差はなかった(900件[27%]vs.1,074件[28%]、HR:1.01、95%CI:0.43~3.08)。予防治療を要した参加者の数は、全骨折が52件、大腿骨近位部骨折が82件、転倒は17件だった。 著者は、「この栄養学的介入は、入居者の好みに合わせて個別に行われ、既存の献立に通常の小売り用の牛乳、ヨーグルト、チーズを組み合わせた給食サービスを活用して行われたが、円滑な運用が可能であった。この介入は、高齢者介護施設における骨折予防のための公衆衛生対策として広く利用でき、より広範な地域社会でも使用できる可能性がある」としている。

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事例036 絆創膏固定術の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説左ひざを捻挫したとして来院された患者に対して「J001-2 絆創膏固定術」を施して、レセプト請求したところ、C事由(医学的理由による不適当)にて査定となりました。カルテを確認したところ、膝靭帯の損傷所見が記入されており、画像診断にて骨挫傷と診断し、絆創膏固定術を選択されたことが記載されていました。カルテの傷病名欄には、レセプトと同じ「左膝関節骨挫傷」のみが記載されていました。医師に尋ねると、膝靭帯の損傷は骨挫傷の病名を付けてあれば不要であろうと考えられており、レセプトへの膝靭帯損傷にかかるコメントも不要と考えたようです。絆創膏固定術の算定要件には「足関節捻挫または膝関節靭帯損傷に対して行った場合に算定する」とあります。事例のレセプト記載内容では算定要件である膝関節靭帯損傷の確認ができず、医学的に保険診療の適応がないと判断されて査定となったものでした。いわゆる保険病名とは異なり、診断にてより精緻な病名が判明した場合であっても、保険診療が必要とする病名は必要となります。今回の問題点を医師に説明し、レセプトチェックシステムにも登録して査定対策としました。

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新型コロナでのECMO治療開始後の死亡率、流行初期より増加/Lancet

 体外式膜型人工肺(ECMO)治療の初期導入施設では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者におけるECMO治療開始後の死亡率が2020年に約15%上昇し、治療期間が約6日延長したことが、米国・ミシガン大学のRyan P. Barbaro氏らExtracorporeal Life Support Organization(ELSO)が世界41ヵ国で実施した調査で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年10月2日号に掲載された。レジストリデータで3群を後ろ向きに比較解析 研究グループは、2020年5月1日以前にECMOによる治療を受けた患者と、これ以降にECMO治療を受けた患者で、ベースラインの患者特性やECMO治療を行った施設の特性、患者アウトカムなどを比較する目的で、ELSOレジストリのデータを後ろ向きに解析した(研究助成は受けていない)。 対象は、年齢16歳以上、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)陽性と診断され、2020年1月1日~12月31日の期間にECMO治療を受けた患者であった。 患者は、ECMO治療を開始した時期と施設で次の3つの群に分けられた。(1)初期導入施設(2020年1月1日~12月31日にECMO導入)で2020年1月1日~5月1日の期間にECMO治療を開始した患者(A1群)、(2)初期導入施設で2020年5月2日~12月31日の期間にECMO治療を開始した患者(A2群)、(3)後期導入施設(2020年5月2日~12月31日にECMO導入)でECMO治療を開始した患者(B群)。 主要アウトカムは、ECMO治療開始から90日後に生存時間(time-to-event)解析で評価した院内死亡率とされた。Cox比例ハザードモデルを用いて、3群間の補正後の相対的死亡リスクを患者および施設レベルで比較した。同じ5月2日以降でも、後期導入施設は死亡リスクが高い 2020年に、日本を含む41ヵ国349施設(初期導入236施設、後期導入113施設)でECMO治療を受けたCOVID-19患者4,812例が解析に含まれた。A1群が1,182例(年齢中央値50歳、男性74%)、A2群が2,824例(51歳、73%)、B群は806例(49歳、74%)であった。 ECMO治療開始後90日時の院内死亡の累積発生率は、A1群の36.9%(95%信頼区間[CI]:34.1~39.7)から、A2群では51.9%(50.0~53.8)へと15%増加した。また、B群の90日累積院内死亡率は58.9%(55.4~62.3)であり、同じ5月2日以降のECMO開始であったA2群よりも約7%高率だった。これらの差は、患者および施設レベルの背景因子で補正後にも認められた。 A1群はA2群に比べ、90日院内死亡の補正後相対リスクが低かった(ハザード比:0.82、95%CI:0.70~0.96)。一方、B群はA2群よりも、90日院内死亡の補正後相対リスクが高かった(1.42、1.17~1.73)。また、ECMO治療開始前の年齢(高齢になるほど高リスク)、がん・心停止の既往歴、および開始時の急性腎障害の存在は、死亡の相対リスクの上昇と関連していた。 A1群はA2群に比べ、自宅退院や急性期リハビリテーション施設への転院(32% vs.22%)および他院への転院(18% vs.11%)の割合が高かった(並べ替え検定のp=0.01)。また、ECMO治療期間中央値は、A1群では14.1日(IQR:7.9~24.1)であったが、A2群では20.0日(9.7~35.1)へと、約6日延長していた(p<0.001)。ECMO治療開始後の入院期間中央値は、A1群の27.1日(15.8~44.2)から、A2群では30.7日(17.6~50.7)へと延長した。 著者は、「COVID-19の世界的大流行の進行中にECMO治療を開始した患者の死亡率は悪化していることから、今後もECMOの転帰の継続的な監視が求められる。ECMOは限られた資源であり、COVID-19患者の25%が5週間以上のECMO治療を受けていることを考慮すると、各施設は資源が限定的な場合のECMOの倫理的な配分に関する自施設の指針の策定を検討する必要がある」と指摘している。

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ポンぺ病の新治療薬が製造販売承認を取得/サノフィ

 サノフィ株式会社は、2021年9月27日にポンペ病の効能または効果でアバルグルコシダーゼアルファ(商品名:ネクスビアザイム点滴静注用100mg)が製造販売承認を取得したと発表した。同社では、ポンペ病(糖原病II型)において、乳児型ポンペ病および遅発型ポンペ病の新たな標準治療となる可能性に期待を寄せている。ポンペ病は呼吸や運動機能に影響を及ぼす遺伝性の難病 ポンペ病は、ライソゾーム酵素の1つである酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の遺伝子の異常によりGAA活性の低下または欠損が原因で生じる疾患で、複合多糖(グリコーゲン)が全身の筋肉内に蓄積する。このグリコーゲンの蓄積が、不可逆的な筋損傷を引き起こし、肺を支える横隔膜などの呼吸筋や、運動機能に必要な骨格筋に影響を及ぼすことで運動機能や呼吸機能の低下をもたらす希少疾患。世界でのポンペ病の患者数は5万人と推定され、乳児期から成人後期のいずれの時期においても発症する可能性がある。ポンぺ病の新治療薬ネクスビアザイムは歩行距離を延長 ポンぺ病の新治療薬となるネクスビアザイムは、筋細胞の中にあるライソゾームにGAAを送り届けてグリコーゲンの分解を促すことで、ポンペ病がもたらす重大な症状である呼吸機能、筋力・身体機能(運動能力など)をアルグルコシダーゼアルファよりも改善させる目的で開発された。ポンペ病で生じるグリコーゲン蓄積を低下させるためには、筋細胞の中にあるライソゾームにGAAを送り届ける必要がある。そのため筋細胞内のライソゾームにGAAを送り届ける効率を高めるための手段として、GAAの輸送に大きな役割を果たすマンノース6リン酸(M6P)受容体を標的とする研究が行われ、ネクスビアザイムが開発された。ネクスビアザイムは、アルグルコシダーゼアルファと比較してM6Pレベルを約15倍増加させた分子として設計され、細胞内への酵素の取り込みを向上、標的組織において高いグリコーゲン除去効果を得る目的で開発された。 今回の承認では、2つの臨床試験で得られた肯定的な結果に基づき行われ、ピボタル第III相二重盲検比較試験である「COMET試験」では、遅発型ポンペ病の患者を対象としてネクスビアザイムの安全性と有効性を標準治療薬であるアルグルコシダーゼアルファと比較した。また、第II相Mini-COMET試験では、アルグルコシダーゼアルファの投与経験のある乳児型ポンペ病患者を対象にネクスビアザイムの安全性を主に評価するとともに、探索的に有効性の評価を行った。 その結果、COMET試験では、ネクスビアザイムが、アルグルコシダーゼアルファに比べ、第49週時点における努力肺活量(%FVC)が2.4ポイント改善し、主要評価項目である非劣性が示された。また、6分間歩行試験では、ネクスビアザイム投与群は、標準治療薬であるアルグルコシダーゼアルファ群に比べ、歩行距離が30m延長した。一方、重篤な副作用については、ネクスビアザイム投与群に高頻度、頭痛、そう痒(かゆみ)、悪心、蕁麻疹と疲労が認められた。 なお、ネクスビアザイムは、日本では2020年11月27日に希少疾病用医薬品に指定され、米国食品医薬品局は2021年8月に承認したほか、英国の医薬品・医療製品規制庁はネクスビアザイムを有望な革新的医薬品に指定している。

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脳卒中治療ガイドラインが6年ぶりに改訂、ポイントは?

 今年7月、『脳卒中治療ガイドライン2021』が発刊された。2015年の前版(2017年、2019年に追補発行)から6年ぶりの全面改訂ということで、表紙デザインから一新。脳卒中治療ガイドライン2021では追補の内容に加え、関連学会による各指針など最新の推奨が全面的に取り入れられている。そこで、脳卒中ガイドライン委員会(2021)の板橋 亮氏(岩手医科大学内科学講座脳神経内科・老年科分野 教授)に、近年目覚ましい変化を遂げる脳梗塞急性期の治療を中心として、主に内科領域の脳卒中治療ガイドライン2021の変更点について話をうかがった。脳卒中治療ガイドライン2021の変更点にエビデンスレベルの追加 まず脳卒中治療ガイドライン2021の1番大きな変更点としては、追補2019までは推奨文にエビデンスレベルはついておらず、文献のエビデンスを踏まえた推奨度のみが記載されていたが、2021年版では推奨文に推奨度(ABCDE)とエビデンス総体レベル(高中低)の両方が記載された。すべての引用文献に、エビデンスレベル(1~5)が示されている。 さらに、脳卒中治療ガイドライン2021では今回初めてクリニカルクエスチョン(CQ)方式が一部に採用され、重要な臨床課題をピックアップしている。利便性を考慮し、あえてCQ方式と従来の推奨文方式の両方にて記載した内容もある。 また、脳卒中治療ガイドライン2021の全般的な構成の変更点として、前版までリハビリテーション関連の内容はすべて後半のページにまとめられていたが、今回から急性期に関してのリハビリテーションは前半ページ(目次I「脳卒中全般」)に記載された。脳卒中治療ガイドライン2021脳梗塞急性期の変更点 脳卒中治療ガイドライン2021の具体的な内容に関しては、たとえば目次II「脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)」項の冒頭に、CQ「脳梗塞軽症例でもrt-PA(アルテプラーゼ)は投与して良いか?」「狭窄度が軽度の症候性頸動脈狭窄患者に対して頸動脈内膜剥離術(CEA)は推奨されるか?」が追加された。 また、脳卒中治療ガイドライン2021では、脳梗塞急性期における抗血小板療法の推奨として、DAPT(抗血小板薬2剤併用療法)の推奨度が見直され、発症早期の軽症非心原性脳梗塞患者の亜急性期までの治療法として、推奨度BからA(エビデンスレベル高)に引き上げられた(なお、高リスクTIAの急性期に限定した同療法は、DAPTの効果の大きさと出血リスク上昇を総合的に勘案し、推奨度Bで据え置きとなっている)。これに伴い、従来経静脈投与で用いられていた抗凝固薬アルガトロバン、抗血小板薬オザグレルNaは、推奨度BからCに引き下げられている。 さらに、脳梗塞急性期の抗凝固療法における直接阻害型経口抗凝固薬(DOAC)についての推奨、脳梗塞慢性期の塞栓源不明の脳塞栓症における抗血栓療法についての推奨などが、脳卒中治療ガイドライン2021には新たに追加された。 全体的には、『静注血栓溶解(rt-PA)療法適正治療指針 第三版』『経皮経管的脳血栓回収用機器 適正使用指針 第4版』などの推奨に準じた内容で、目新しさには欠けるかもしれないが、それが脳卒中治療ガイドライン2021として1つにまとめられたことは大きな意義を持つだろう。 詳細は割愛するが、塞栓源となる心疾患に対するインターベンションについての記載も充実した。たとえば、脳梗塞慢性期の奇異性脳塞栓症(卵円孔開存を合併した塞栓源不明の脳塞栓症を含む)については、『潜因性脳梗塞に対する経皮的卵円孔開存閉鎖術の手引き』に準じた推奨が、出血の危険性が高い非弁膜症性心房細動患者については、『左心耳閉鎖システムに関する適正使用指針』に準じた推奨が追記されている。脳卒中治療ガイドライン2021にテネクテプラーゼを記載 機械的血栓回収療法は、急性期治療の中でもとくに注目されており、軽症例や単純CTで広範な早期虚血が見られる例に関して、国際的な無作為化試験が行なわれている。本治療に関するエビデンスはここ数年で変わる可能性が高い。 また、海外ではCTPT系P2Y12拮抗薬チカグレロルとアスピリンによるDAPTの臨床試験が行われ,米国ではすでに脳卒中領域の承認を得ているが、わが国で導入される見通しは不明である。このように、推奨文にするほどではない、もしくはわが国では保険適用がない場合でも、臨床医に知っておいてほしい情報は、脳卒中治療ガイドライン2021の解説文の中にコラム形式で記載されている。 推奨文としては書いていないが、脳卒中治療ガイドライン2021の脳梗塞急性期の経静脈的線溶療法の解説文には、海外の一部で使われ始めているテネクテプラーゼについても記載がある。おそらく、無作為化試験の結果が揃えば、今後アルテプラーゼに代わって使われるようになるだろう。国内での臨床試験も行われる予定だが、わが国で導入できる目途は立っていないため、こちらも今後の展開に注目されたい。脳卒中治療ガイドライン2021は読みやすさを重視した構成 驚くことに、脳卒中治療ガイドライン2021は、前版から解説文の文字数を半分近くに減らしたという。現場で参照することを第一に、各項目はできる限り2ページ以内に収めるなど、読みやすさを重視した工夫が凝らされている。板橋氏は、「推奨文だけ読めば最低限の重要事項が確認できるように作られてはいるが、推奨度そしてエビデンスの根拠となる解説文の内容も是非確認していただきたく、できるだけ読んでもらえるように短くまとめた」と語った。また、手元に置いておきたくなるような脳卒中治療ガイドライン2021のスタイリッシュなデザインは、委員会事務局の黒田 敏氏(富山大学脳神経外科 教授)が選んだこだわりの青色が採用されたという。脳卒中治療ガイドライン2021の電子版は11月に発売予定だ。『脳卒中治療ガイドライン2021』・発行日 2021年7月15日・編集 一般社団法人日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会・定価 8,800円(税込)・体裁 A4判、320ページ・発行 株式会社協和企画

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第77回 コロナ受け入れで病院は潰れない!大阪・松本病院倒産の原因は巨額の診療報酬不正請求か?

負債約52億円で民事再生法の適用を申請こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。MLBのレギュラーシーズンの試合も残り少なくなってきました。9月27日は朝5時に起きて、NHKBSでロサンジェルス・エンジェルスの大谷 翔平投手の登板試合を観戦しました。7回1失点、10奪三振という好投でしたが、今回もチームの打撃が振るわず、10勝目をあげることはできませんでした。あと、残り6試合(9月28日現在)です。10勝目の登板機会がやってくるかどうかと、アメリカン・リーグのホームラン王争いがとても気になります。それにしてもエンジェルス、打てなさ過ぎです。さて、8月26日、大阪市福島区で松本病院を経営する医療法人友愛会が、負債約52億円を抱え大阪地裁に民事再生法の適用を申請、弁済禁止の保全処分と監督命令を受けました。このニュース、「コロナ受け入れ病院が倒産」といったセンセーショナルな切り口で取り上げるメディアがいくつかありました。コロナを受け入れている病院は、「第55回 コロナで“焼け太り”病院続出? 厚労省通知、財務省資料から見えてくるもの(前編)」でも書いたように、非常に手厚い補助金が入っています。「コロナ受け入れが理由で倒産はあり得ない」と思ったのですが、その後、興味深い続報が出たので、今回はそれについて書きます。不正請求分の返還が求められると事業継続困難に医療法人友愛会・松本病院は阪神電鉄野田駅前に建つ199床の病院です。内科、外科、循環器内科、脳神経外科、整形外科、形成外科など外科系に強く、救急患者の24時間受け入れを行っています。病床構成は一般病棟93床、回復期リハビリテーション病棟49床、地域包括ケア病棟44床、ハイケアユニット13床で、民間の中規模病院に多い典型的なケアミックス型病院と言えます。今年1月からは新型コロナの軽症と中等症の患者も受け入れていました。倒産報道から2週間ほど経った9月10日、毎日新聞が、民事再生法の適用を申請した医療法人友愛会が診療報酬を不正に請求していた疑いのあることが判明したと報道しました。債権者への説明資料に基づく情報として、保険医療機関の指定取り消しの可能性があるとともに、不正請求分の返還が求められた場合、事業継続が困難になると判断したことが民事再生法の適用を申請した理由であると同紙は報じています。不正請求が疑われているのは、前理事長時代の2014年2月~2017年4月の約3年間。入院基本料や回復期リハビリテーション病棟入院料について、施設の基準を満たしていないにも関わらず、満たしたとして不正請求を続けていたとのことです。通常、医療機関の不正請求の調査は、地方厚生局(大阪だと近畿厚生局)の指導監査担当部署の指導から始まります。悪質な場合は本格的な監査となり、改善命令、処分決定と続きます。返還命令が下されるのは処分決定後ですから、医療法人友愛会はその決定を待っている段階とみられます。返還金額が決まる前に民事再生法の適用を申請したということは、相当悪質かつ巨額な不正請求だったことが予想されます。8月の倒産報道時は、理事長名で倒産の理由を「過去の設備投資に伴う過大な有利子負債など経営の稚拙さに起因する」というコメントを出していましたが、実際のところは過大な設備投資が経営悪化を招き、不正請求に走ったのかもしれません。コロナで焼け太りの病院、日赤は黒字1,000億円松本病院の民事再生法の適用申請はコロナ患者受け入れとは全く無関係(というよりむしろ、収入増で倒産までの時間が長くなった可能性もあります)で、「コロナ受け入れで倒産はあり得ない」という見立ては正しかったわけです。実際、2020年度の病院の経営状況は、コロナを受け入れた病院については、以前も書いたように桁違いに“ウハウハ”だったようです。いくつかの病院団体の調査や決算などを見ても、コロナに伴う患者数の減少で通常診療の収支は悪化したものの、コロナに対応する医療機関に対する補助金がプラスに働き、最終的な損益としては黒字を計上しているところがほとんどです。例えば、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会の3病院団体による病院経営状況調査では、20年度はコロナ関連の支援金を加えた利益率は、コロナ受け入れ実績のある病院では2.4ポイント増でした。また、日本赤十字社(91病院中89病院でコロナ対応)の20年度医療施設特別会計の決算は最終的に1,090億円の黒字を計上しました。うち約1,000億円はコロナ関連補助金などとのことです。東京都病院経営本部がまとめた2020年度の都立8病院の決算も、経常収支が102億円の黒字(19年度は42億円の赤字)でした。都立病院も外来患者や入院患者の医業収益は落ち込んだものの、コロナ病床確保に対する国からの約300億円の補助金によって黒字となったとのことです。1,000億円とか、100億円とか、とにかく桁違いの数字に唖然とします。日赤と都立病院は公的・公立の病院で民間病院とは事情が違う部分もあると思いますが、大雑把に「コロナを受け入れた急性期病院は1病院あたり10億円前後の黒字」と言えそうです。「ポスト・コロナ倒産」が起きるかも一方で、コロナに対応していない病院の経営状況は芳しくありません。前述の3病院団体の病院経営状況調査では、コロナ受け入れ実績のない病院の利益率は、コロナ関連の支援金を加えても0.3ポイント減となっていました。そんな中、コロナ未対応の医療機関にとってショックなニュースが、先週末飛び込んで来ました。田村 憲久厚生労働相は9月24日、新型コロナウイルス感染対策を促す目的で、全医療機関を対象としてきた診療報酬の特例加算を9月末で廃止する方針を表明したのです。代わりに実費分を補助する仕組みを設ける予定だそうです。これまでは、防護服着用や職員研修の経費として、初診・再診は1回50円、入院は1日1,000円、調剤は1回40円などを加算。この特例加算はコロナ患者を受け入れていない医療機関も対象となっており、「なぜコロナ未対応の医療機関も」という強い批判がありました。この加算の創設が決まった2020年12月当時、厚労省と財務省は「21年10月以降は延長しないことを基本想定としつつ、感染状況や地域医療の実態を踏まえ、年度前半の措置を単純延長することを含め、必要に応じ、柔軟に対応する」という玉虫色の内容で合意していました。ギリギリまで決まらなかった特例加算の廃止ですが、結局はコロナの第5波の収束も踏まえ、財務省の意向を反映する形で廃止が決まったわけです。コロナとは無関係の医療機関にとっては“お年玉”のような加算の廃止は、相当な打撃でしょう。世の中が徐々にポスト・コロナに動き始めています。医療機関も、そろそろコロナで変わった人々の受療行動や、マスク習慣化による感染症減少といったさまざまな要素も勘案しつつ新しい医業経営の仕方を考えないと、それこそ「ポスト・コロナ倒産」が起きてしまうかもしれません。

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脊髄性筋萎縮症で初の経口治療薬エブリスディ発売/中外製薬

 中外製薬株式会社は、8月12日に乳幼児では最も頻度の高い致死的な遺伝性疾患である脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬であるリスジプラム(商品名:エブリスディ)のドライシロップ60mgの販売を開始した。本製品はSMAで初の経口の治療薬であり、患者・患児の治療での利便性の向上が期待される。 SMAは、脊髄の運動神経細胞の変性により筋萎縮や筋力低下を示す遺伝性の神経筋疾患。乳幼児では最も頻度の高い致死的な遺伝性疾患で、乳児期から小児期に発症するSMAの患者数は10万人あたり1~2人とされる。SMAの原因遺伝子はSMN遺伝子で、SMN1遺伝子の機能不全に加え、SMN2遺伝子のみでは十分量の機能性のSMNタンパクが産生されないため発症する疾患。 リスジプラムは、SMN(survival motor neuron)タンパクの欠損につながる5番染色体の変異によって引き起こされる、SMAを治療するためにデザインされたSMN2スプライシング修飾剤。SMNタンパクレベルを増加させ、維持することでSMAを治療するよう設計されている。SMNタンパクは全身にみられ、運動神経と運動機能の維持に重要な働きをする。リスジプラムは、2020年8月に米国で、2021年3月に欧州で承認を取得し、わが国では同年6月23日に製造販売承認を取得している。 同社では、「本治療薬は、乳児から成人までの広い年齢層で有効性を示し、経口剤のため在宅治療が可能となる。SMAの患者とその家族の皆様に、新たな治療選択肢によるこれまでにない価値を届けられるように、適正使用の推進に努めていきたい」と抱負を語っている。製品概要販売名:エブリスディ ドライシロップ 60mg一般名:リスジプラム効能・効果:脊髄性筋萎縮症用法・用量:通常、生後2ヵ月以上2歳未満の患者にはリスジプラムとして、0.2mg/kgを1日1回食後に経口投与する。通常、2歳以上の患者にはリスジプラムとして、体重20kg未満では0.25mg/kgを、体重20kg以上では5mgを1日1回食後に経口投与する。薬価:エブリスディ ドライシロップ60mg 97万4,463.70円/1瓶承認日:2021年6月23日薬価基準収載日:2021年8月12日販売開始日:2021年8月12日

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終末期の運動機能の低下は死亡と関連するか/BMJ

 高齢期初期の運動機能は死亡と強い関連があり、終末期の運動機能の減退は、全般的な運動機能の指標(椅子立ち上がり時間、SF-36の身体的側面のQOL要約スコア)では早期(それぞれ死亡の10年前と7年前)に、基本的/手段的日常生活動作(ADL)の制限では後期(死亡の4年前)に出現することが、フランス・パリ大学のBenjamin Landre氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年8月4日号に掲載された。英国のWhitehall IIのデータを用いた前向きコホート研究 研究グループは、運動機能に関する複数の客観的または患者の自己申告による指標と死亡との関連の評価を目的に、前向きコホート研究を行った(米国国立老化研究所などの助成による)。 解析には、英国のWhitehall II研究のデータが使用された。この研究は1985~88年に35~55歳であった英国の公務員を対象に開始。2007~09年に6,194人(平均年齢65.6[SD 5.9]歳、女性27.3%)を対象に運動機能の評価が導入され、その後2012~13年および2015~16年に追跡調査が行われた。 主要アウトカムは、2007~19年の期間における全死因死亡と、運動機能の客観的指標(歩行速度、握力、椅子立ち上がり時間[秒、立つ-座るの5回繰り返しに要する時間])および自己申告による指標(SF-36の身体的側面のQOL要約スコア、基本的/手段的ADLの制限)との関連とした。1標準偏差の低下で死亡リスクが14~30%増加 解析に含まれた6,194人のうち、ベースライン(2007~09年)から2019年10月の期間に654人が死亡した。死亡時の平均年齢は76.8(SD 6.2)歳だった。死亡した参加者は、追跡終了時に生存していた参加者に比べ、ベースラインの平均年齢が高く(69.7歳 vs.65.1歳)、複数の併存疾患を持つ割合が高く(27.2% vs.12.1%)、運動機能が劣っていた。 平均10.6年の追跡期間中にベースライン(2007~09年)の運動機能が1標準偏差低くなると(5,645人中610人)、死亡リスクが、歩行速度では22%(95%信頼区間[CI]:12~33)、握力では15%(6~25)、椅子立ち上がり時間では14%(7~23)、身体的側面のQOL要約スコアでは17%(8~26)、基本的/手段的ADLの制限では30%(7~58)増加した。これらの関連性は、2012~13年(平均追跡期間6.8年)および2015~16年(同3.7年)には、さらに強くなる傾向が認められた。これは、平均年齢65歳、69歳、72歳時の運動機能の低下は高い死亡率と関連し、いずれの指標も年齢が進むほど関連性が強くなることを示唆する。 一方、軌跡解析では、死亡者(484人)は生存者(6,194人)に比べ、死亡前の運動機能が劣っていた。すなわち、椅子立ち上がり時間では死亡の10年前の死亡者-生存者間の標準化平均差は0.35(95%CI:0.12~0.59、p=0.003、男性で1.2秒、女性で1.3秒の差に相当)、歩行速度では死亡の9年前の標準化平均差が0.21(0.05~0.36、p=0.01、男性で5.5cm/秒、女性で5.3cm/秒の差に相当)、握力では6年前の標準化平均差が0.10(0.01~0.20、p=0.04、男性で0.9kg、女性で0.6kgの差に相当)、身体的側面のQOL要約スコアでは7年前の標準化平均差が0.15(0.05~0.25、p=0.003、男性で1.2点、女性で1.6点の差に相当)であり、基本的/手段的ADLの制限では4年前の有病率の差が2%(0~4、p=0.03)であった。また、このうち椅子立ち上がり時間、身体的側面のQOL要約スコア、基本的/手段的ADLの制限では、死亡までに両集団間の差がさらに大きくなった。 著者は、「これらの知見は、運動機能の変化を早期に検出することで、予防および目標を絞った介入の機会が得られる可能性があることを示唆する」としている。

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那須・ハコラ病〔PLOSLまたはOMIM221770:Polycystic lipomembranous osteodysplasia with sclerosing leukoencephalopathy〕

1 疾患概要■ 定義・概念那須・ハコラ病(OMIM221770)は、1970年代に那須博士とハコラ博士により報告された疾患である。臨床的には、病的骨折、前頭葉症状、進行性の若年性認知症に特徴付けられる。常染色体劣性の遺伝性疾患であり、原因遺伝子はDNAX activating protein of 12 kDa(DAP12)とtriggering receptor expressed on myeloid cells 2(TREM2)である。 また、本症はpolycystic lipomembranous osteodysplasia with sclerosing leukoencephalopathy(PLOSL)とも呼ばれている1)。■ 疫学本疾患は希少疾患であり、わが国と北欧のフィンランドからの報告が多い。フィンランドでは、DAP12のExon1-4の欠失変異(c.-2897_277-1227del5265)の創始者効果のために有病率が高いと考えられており、同国の推定有病率は100万人あたり1~2人である2)。なお、わが国では平成21年度に厚生労働科学難治性疾患克服研究事業「那須・ハコラ病の臨床病理遺伝学的研究」の研究班が実施したアンケート調査の結果から、患者数は200人程度と推定されている3)。■ 病因那須・ハコラ病は、DAP12またはTREM2の機能喪失変異で発症する。DAP12とTREM2は破骨細胞やミクログリアの細胞膜表面に発現し、複合体を形成する。リガンドがTREM2と結合することで、DAP12/TREM2の複合体から下流にシグナル伝達が生じる。那須・ハコラ病は、DAP12またはTREM2の変異により、下流へのシグナル伝達が阻害されることが原因と考えられている。しかし、その他の詳細な分子生物学機序については明らかになっていない3)。■ 症状那須・ハコラ病は進行性の疾患であり、その臨床経過は4期に分けることができる。(1)特に症状が認められない無症候期(Latent stage)。(2)骨嚢胞や病的骨折が認められる骨症状期(Osseus stage)。(3)脱抑制などの前頭葉症状を中心とした精神症状などが認められる早期精神神経症状期(Early neuropsychiatric stage)。(4)認知機能障害低下が顕著となる晩期精神神経症状期(Late neuropsychiatric stage)、である。無症候期においては特に発達などに異常は認められない。20代で骨症状期に移行する。骨症状期では、軽微な事故などを契機に足関節や足に疼痛や圧痛を認めるようになる。また、最初の骨折は30歳以前で認められる。骨折は主に長管骨で認められる。30代では、早期精神神経症状期へと移行する。この時期には、性格の変化に加え、注意力や判断力の低下、多幸感や社会性の欠如などの前頭葉症状が緩徐に進行する。神経学的には、痙性などの上位運動ニューロン徴候が認められる。さらに、不随意運動としてアテトーゼや舞踏運動が認められ、30代半ばには頻繁にてんかん発作が経験される。40代で晩期精神神経症状期に移行する。この時期では、歩行などは困難となる。50代には、寝たきり、意思疎通が困難となる。これまでに明らかな骨症状を認めずに精神神経症状を呈した症例も報告されている4)。■ 予後本疾患は進行性で、50代には誤嚥性肺炎などを契機に死亡する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)那須・ハコラ病の診断には、(1)骨嚢胞、(2)中枢神経病変、(3)遺伝子変異を確認するために各種検査を実施する必要がある1-3)。骨嚢胞は長管骨の骨端部に多発する。手指や手根骨、足根骨の骨X線検査で嚢胞様病変や骨梁の菲薄化が認められる。これらの異常所見の確認にはCT検査やMRI検査も有用である。骨生検は必ず行う必要はないものの、生検組織で膜嚢胞性変化(lipomembraneous osteodysplasia)が確認できる。中枢神経病変の確認には神経症状に加えて、頭部CT検査や頭部MRI検査が有用である。CT検査では両側性に基底核の石灰化が認められる。側脳室の拡大、基底核や視床の萎縮、脳溝の開大などの萎縮所見も認められる。加えて、頭部MRI T2強調像やfluid-attenuated inversion recovery(FLAIR)では、白質のびまん性高信号所見が認められる。Single photon emission computed tomography(SPECT)やpositron emission tomography(PET)検査では皮質領域、視床、基底核に血流低下が認められる場合がある。遺伝子検査ではDAP12またはTREM2の遺伝子変異が認められる。一般的にはホモ接合性変異であるが、複合ヘテロ接合性変異の症例も確認されている5)。他に進行期の脳波では徐波やてんかん性放電が確認される。なお、わが国では「那須・ハコラ病の臨床病理遺伝学的研究」研究班が作成した診断基準がある(表)3)。表 那須・ハコラ病の診断基準画像を拡大する本疾患と鑑別疾患としては、前頭側頭型認知症(ピック病など)やスフェロイドを伴う遺伝性びまん性白質脳症(hereditary diffuse leukoencephalopathy with spheroids:HDLSまたはadult-onset leukoencephalopathy with axonal spheroids and pigmented glia:ALSP)などが挙げられる。HDLSは常染色体優性遺伝形式の疾患で、頭部MRI検査では白質のびまん性高信号所見が認められる。原因遺伝子はcolony stimulating factor l receptor(CSFIR)である。これらの疾患では骨病変が認められない点や遺伝形式の違いが鑑別点となる1-3)。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)那須・ハコラ病の根治的な治療は現時点ではない。骨病変に対しては、骨折については整形外科的な治療が行われる。加えて骨病変に対する疼痛管理や装具装着なども試みられることがある。精神症状については抗精神病薬が用いられる。てんかん発作に対しては、抗てんかん薬が用いられる。4 今後の展望現在、治験などは予定されていない。DAP12/TREM2のシグナル伝達異常がどのように病態に関わっているのかが不明な点が多く、病態の解明が望まれる。5 主たる診療科脳神経内科対症療法として、整形外科、精神科、リハビリテーション科、呼吸器科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 那須・ハコラ病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Adam MP, et al.(eds). GeneReviews. Seattle.WA;2020.2)Pekkarinen P, et al. Am J Hum Genet. 1998;62:362-372.3)佐藤準一. 新薬と臨牀. 2016;65:76-81.4)Bock V, et al. J Neurol Sci. 2013;326:115-119.5)Kuroda R, et al. J Neurol Sci. 2007;252:88-91.公開履歴初回2021年8月6日

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HFrEFの質改善プログラムの介入効果、通常ケアと差なし/JAMA

 症状を有する左室駆出率40%以下の心不全(HFrEF)で入院した患者において、院内および退院後のさまざまな質の改善を目的とした介入を行っても、通常ケアと比較して、初発の心不全再入院または全死因死亡までの期間、ならびに複合心不全ケアの質スコアの変化に有意差は認められなかった。米国・デューク大学医学部のAdam D. DeVore氏らが5,746例を対象に行ったクラスター無作為化試験の結果、示された。心不全患者に対するガイドラインに基づく治療の採択にはばらつきがあり、ガイドラインに基づく治療を改善する介入は、目標とする評価基準を一貫して達成できておらず、心不全のケアの質を改善するための取り組みに役立つデータは限られていた。JAMA誌2021年7月27日号掲載の報告。161施設において、質の改善を目的とした介入と通常ケアを比較 研究グループは、米国の病院161施設において、自宅に退院するHFrEF成人患者を登録し、心不全アウトカムとケアについて、通常ケアと比較した院内および退院後の質的改善の介入効果を評価した。 無作為化は病院単位で行われ、161施設を介入群(82施設)と通常ケア群(79施設)に無作為に割り付け、介入群施設は、心不全と質改善の専門家のトレーニングを受けたグループによる医師への定期的な教育と、心不全プロセス指標(たとえば、HFrEFのガイドラインに基づく薬物療法の使用)およびアウトカムに関する監査とフィードバックを受けた。通常ケア群施設は、ウェブサイトにアクセスして一般的な心不全の教育を受けた。 主要評価項目は、初発の心不全再入院または全死因死亡と、心不全の質に関する複合スコアの変化であった。心不全の質に関する複合スコアは、退院時および外来フォローアップ時に提供されるケアの質に関するガイドラインに基づいた推奨事項を評価し、全機会のうち無事達成されたものの割合とした。 本試験は、2017~20年に実施された(最終フォローアップ日は2020年8月31日)。介入群の臨床アウトカム、ケアの質スコアは改善せず 5,746例が登録され、退院前にイベントが発生した患者を除く5,647例(介入群2,675例、通常ケア群2,972例)が解析対象となった。平均年齢は63歳、女性33%、黒人38%、慢性心不全87%、最近心不全で入院した患者49%であった。このうち、5,636例(99.8%)で試験終了時に生命予後が判明した。 心不全再入院または全死因死亡の発生率は、介入群38.6% vs.通常ケア群39.2%であった(補正後ハザード比[HR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.81~1.05)。ベースラインのケアの質のスコアは、それぞれ42.1% vs.45.5%、ベースラインから追跡期間終了時までの変化は2.3% vs.-1.0%(群間差:3.3%、95%CI:-0.8%~7.3%)であり、最終フォローアップ時に高い心不全の質のスコアを達成するオッズ比は、両群間に有意差はなかった(補正後オッズ比:1.06、95%CI:0.93~1.21)。

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緩和ケアを体系的に学ぶなら、まずはここから!【非専門医のための緩和ケアTips】第7回

第7回 緩和ケアを体系的に学ぶなら、まずはここから!だんだん暑くなってきましたね。外来に通院している患者さんに「熱中症に気を付けて」とアドバイスするのもこんな時期です。今日の質問緩和ケアを学んでみたいのですが、何から始めればいいのでしょうか? 関連する学会は入ったほうがいいですか?今回は、緩和ケアを学びはじめた若手の先生からよく聞かれる質問です。実は5、6月にかけ、緩和ケア業界は忙しくなります。それは、毎年6月に最も会員数が多い関連学会である、日本緩和医療学会の学術大会が開催されるからです。コロナの影響による学会オンライン化の流れもあり、演題の打ち合わせだけでなく発表の事前収録なども含め、タスクが多くなる時期です。私も所属するこの日本緩和医療学会について、少し紹介させてください。会員数は1万2,012名(2021年7月1日時点)、医師は約半数で、残りは看護師が最多、次いで薬剤師、リハビリテーション専門職など多職種で構成されています。緩和ケアを実践するうえでチーム医療は非常に大切であり、いろいろな職種が参加する学会である点が特徴です。日本緩和医療学会が取り組んでいる事業をいくつか紹介します。緩和ケアに関連したガイドラインの作成エビデンスの集積が難しい分野ではありますが、その中でもわかっていることを理解し、根拠をもって診療することは大切です。学会では「がん疼痛」「がん患者の呼吸器症状の緩和」「がん患者の消化器症状の緩和」「苦痛緩和のための鎮静」といった、緩和ケアで重要な分野についてのガイドラインを作成しています。これらのガイドラインは学会サイトより無料でダウンロード可能となっており、困ったとき、迷ったときに調べてみるのに便利です。緩和ケアセミナー学会では、緩和ケアを学びたい医療者を対象としたセミナーを数多く開催しています。たとえば、年2回開催される「教育セミナー」では、1日かけてさまざまなトピックの講演が行われます。最近はオンライン形式で参加が容易になり、1,000人近い参加者が一緒に学ぶ場となっています。医師だけでなく看護師など緩和ケアに関わる多職種が参加し、テーマも他学会ではなかなか聞くことのできないものがめじろ押し。最近でも、臨床宗教師の方のお話や、意思決定を支援するうえで知っておきたい法律と倫理のセッションなどユニークな講演が行われています。学会に入会すればストリーミング配信も視聴できるので、自己学習教材にもなります。こうした、ほかにないコンテンツを利用できるだけでも学会入会のメリットがあると感じます。また、緩和医療認定医や専門医を目指す先生にとっては資格取得要件ともなっているので、計画的に受講いただければと思います。2021年6月18日~19日に第26回日本緩和医療学会学術大会がオンラインと現地開催のハイブリッド形式で開催されました。どこの分野も同様でしょうが、学術大会はパンデミック下における学術活動を基盤とした、貴重な学びとネットワーキングの機会を創出しています。次回は、開催直後の今年の学術大会の内容を報告します。日本緩和医療学会今回のTips今回のTips緩和ケアを学ぶならぜひ日本緩和医療学会へ。ガイドラインやセミナーを通じて、緩和ケアの学習機会を提供しています。近年はオンラインで参加しやすくなっています!

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第22回 痛み診療のコツ・治療編(2)光線療法(1)【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第22回 痛み診療のコツ・治療編(2)光線療法(1)前回は、知覚神経と交感神経を同時にブロックする代表的な応用範囲の広い硬膜外ブロックについてお話しました。今回は、理学療法の中でもとくに高齢患者さんに好まれている光線療法ついて述べたいと思います。高齢社会を反映して、帯状疱疹後神経痛や脊椎術後疼痛症候群など本来の疾病が治癒した後に、強い痛みだけが取り残されることも稀ではありません。いわゆる難治性慢性疼痛患者さんの数が、高齢者の人口の増加に比例して急激に増加しています。痛みを訴える患者さんにおいては、病態は類似していても、痛みの性質や程度は個々の患者さんによって実に多様です。そのために、疼痛緩和療法も神経ブロック療法、薬物療法、各種理学療法、インターベンショナル治療など患者さんに合った有効な治療法に苦慮する機会も少なくありません。とくに最近では、高齢者を含めて血液抗凝固薬を服用する患者さんが増加しており、神経ブロックを回避しなくてはならない状況も少なくありません。しかも、痛みで悩まされている患者さんにとっては、より痛みの少ない治療法を望む声も多く見られます。このような背景を考慮すると、疼痛を訴えられている患者さんにとって光線療法は非常に有用な治療法であり、痛みの緩和を得られる機会も想像以上に多くみられます。今回はこの光線療法について解説いたします。光線療法機器の分類(1)低出力半導体レーザーGa-Al-As半導体をレーザー光源とした低出力半導体レーザーには、ソフトレーザリーJQ310、マルチレーザー5 MLF-601、メディアレーザーソフトパルス10などが市販されています。(2)ハロゲンランプ治療器自然灯の一種、ハロゲンランプを光源として、フィルターによって近赤外線のみを出力する装置です。アルファビームALB-200H、スーパーライザーHA-2200LEシリーズ、スーパーライザーPXシリーズのほか、家庭用としても使用できるスーパーライザーminiシリーズなどが使用されています。また、最近では、スーパーライザーPXシリーズも市販され、さらに性能を上げています。(3)キセノンライト治療器ストロボライト光源のキセノン励起光を利用したキセノンライトは、可視光よりも近赤外光を多く発光するので、近赤外線光源として利用されています。ベータエクセルXe10は、パルスモードを有する上、低周波通電機能もあり、光線療法と低周波治療を同時に施行できる特徴があります。光線療法の鎮痛作用機序レーザーの生体への影響は熱作用、光作用が基本になっています。その作用により、以下の効果が期待されています。(1)血流改善作用レーザー光による血管への直接作用、交感神経反射の減弱化、軸索反射による血管拡張などが考えられています。(2)神経伝達抑制作用脊髄後根線維の自発放電発射増加の減少作用、C線維の脱分極の抑制作用などが報告されています。(3)抗炎症作用関節リウマチ患者さんの膝関節滑膜炎症所見が、レーザー照射によって軽減されることが報告されています。(4)創傷治癒作用創傷治癒の促進が実験的、臨床的に認められています。(5)下行性疼痛抑制系の賦活ナロキソンによりレーザー鎮痛効果が抑制されることから、内因性オピオイドや、下行性疼痛抑制系の関与が考えられています。(6)その他神経細胞膜の安定化作用、免疫機能の賦活、筋緊張の緩和などが認められており、鎮痛作用の補助になりそうです。レーザー治療の対象疾患レーザー治療の鎮痛作用機序から考えて、以下のような疾患に有効性が認められています。 帯状疱疹痛、帯状疱疹後神経痛、筋・筋膜性疼痛、頭痛、外傷性頸部疼痛症候群、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、腰痛症、術後疼痛症候群、非定形顔面痛、関節リウマチ、肩関節周囲炎、膝関節症などで、実に多岐にわたっています。初期の疼痛緩和療法を怠ると、一生痛みが持続することも稀ではありません。できるだけ早期に鎮痛対策をとることが、その後の痛みの遷延を和らげるという認識が大切です。光線療法が疼痛治療の一環として取り入れられ、多少なりとも痛みに苦しむ患者さんの疼痛緩和療法に役立てられれば幸いです。次回は、痛みとリハビリテーション療法について説明したいと思います。1)花岡一雄他. 日本医師会雑誌.2012:140;2352-23532)花岡一雄他監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S177-178

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足首骨折、石膏ギプスはブレースに優越性なし/BMJ

 成人の急性足関節骨折において、石膏ギプスの、取り外し可能な固定ブレースに対する優越性は認められなかったことが、英国・ウォーリック大学のRebecca Kearney氏らによる無作為化比較試験の結果、示された。16週時点で両群間にOMAS(Olerud Molander ankle score)の統計学的な差は示されなかったという。足関節骨折の治療では、固定を最大限とする石膏ギプスが伝統的に利用されてきたが、固定中に関節の硬直や筋肉の衰弱を引き起こす可能性がある。取り外し可能なブレースは早期の可動により、それらの問題を解決できる可能性はあるが、いずれの治療法が優れているかは明らかになっていなかった。BMJ誌2021年7月5日号掲載の報告。16週後のOMASで比較 研究グループは、英国の国民保健サービス(NHS)傘下の20ヵ所の外傷センターを通じて、急性足関節骨折を呈し、ギプス固定が適切な18歳以上、669例を無作為に2群に分け、一方には石膏ギプスで(334例)、もう一方には取り外し可能なブレースで(335例)足関節を固定した。石膏ギプス群は、膝下ギプスを装着し、ギプスが取れてから足首を動かすエクササイズを開始した。ブレース群は同練習を、装着後すぐに開始した。 主要アウトカムは、16週時点のOMASで、ITT解析にて評価した。副次アウトカムは、6週、10週、16週時点のマンチェスター-オックスフォード・フット質問票、機能障害評価指数(DRI)、生活の質(QOL)、合併症だった。OMASは有意差なし 被験者の平均年齢は46歳(SD 17)、57%(381例)が女性だった。試験を終了したのは、502例(75%)だった。 16週時点のOMASについて、両群間で有意差はみられなかった(ブレース群を支持する値:1.8、95%信頼区間:-2.0〜5.6)。他の評価時点のOMASについては、補正前、代入法、PPS解析でも、臨床的に重要な差はなかった。

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