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自家幹細胞移植、中悪性度非ホジキンリンパ腫の地固め療法として有効/NEJM

 自家幹細胞移植は、高中リスクおよび高リスクのびまん性中悪性度(aggressive)非ホジキンリンパ腫(NHL)の地固め療法として有効であることが、米国・ロヨラ大学医療センターのPatrick J Stiff氏らが行ったSWOG9704試験で示された。NHL治療は、「リツキシマブ時代」と呼ばれる状況下で、さらなる予後改善に向けさまざまな治療アプローチの探索が進められている。国際予後指標(IPI)により、診断時に持続的寛解の可能性が50%未満の患者の同定が可能となり、自家幹細胞移植の早期治療への導入が図られているが、高リスク例に対する地固め療法としての有効性は、その可能性が指摘されながらも長期にわたり確立されていなかった。NEJM誌2013年10月31日号掲載の報告。導入療法奏効例での有用性を無作為化試験で評価 SWOG9704試験は、米国のSWOG、ECOG、CALGBおよびカナダNCIC-CTGに所属する40施設が参加した無作為化試験。対象は、年齢15~65歳、生検でNHLが確認され、IPIで年齢調整リスクが高中または高と判定されたびまん性aggressive NHL患者であった。 1999年8月15日~2007年12月15日までに397例が登録され、導入療法としてシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン(prednisone)(CHOP)療法またはリツキシマブ+CHOP(R-CHOP)療法が5コース施行された。このうち奏効が得られた患者が、地固め療法としてさらに3コースの導入療法レジメンを施行する群(対照群)または1コースの導入療法レジメン施行後に自家幹細胞移植を行う群(移植群)に無作為に割り付けられた。 有効性に関する主要エンドポイントは、2年無増悪生存率(PFS)および全生存率(OS)であった。高リスク群では、OSも有意に改善 適格基準を満たした370例のうち、導入療法が奏効した253例が無作為割り付けの対象となった(移植群125例、対照群128例)。370例の患者背景は、年齢中央値51(18.3~65.9)歳、男性59%で、B細胞リンパ腫が89%、T細胞リンパ腫は11%であった。 追跡期間中に病態が進行または死亡した患者は、移植群が46/125例、対照群は68/128例で、推定2年PFSはそれぞれ69%、55%であった。リスクスコアで調整したCox回帰モデルによる多変量解析では、ハザード比(HR)は1.72(95%信頼区間[CI]:1.18~2.51、p=0.005)であり、移植群が有意に良好だった。 死亡例数は移植群が37例、対照群は47例で、2年OSはそれぞれ74%、71%であり、両群に差は認めなかった(HR:1.26、95%CI:0.82~1.94、p=0.30)。 探索的解析では、高中リスク例と高リスク例で治療効果が異なることが示された。すなわち、高中リスク群の2年PFSは、移植群が66%、対照群は63%と同等であった(p=0.32)が、高リスク群ではそれぞれ75%、41%であり、有意差が認められた(p=0.001)。2年OSも、高中リスク群では移植群が70%、対照群は75%と差は認めなかった(p=0.48)のに対し、高リスク群では移植群が82%と、対照群の64%に比べ有意に良好だった(p=0.01)。 予測されたように、移植群では対照群に比べGrade 3/4の有害事象が多くみられた。治療関連死は移植群が6例(5%)(肺障害3例、出血と腎不全1例、感染症1例、多臓器不全1例)、対照群は3例(2%)(心血管障害1例、感染症1例、原因不明1例)に認められた。 著者は、「自家幹細胞移植の早期導入により、導入療法で奏効が得られた高中および高リスク患者のPFSが改善された」とまとめ、「対照群の再発例62例(48%)のうち29例(47%)にサルベージ療法として化学療法や移植が行われており、これがOSに有意差がなかった理由と考えられる」と指摘している。

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早期胃がん術後の抗がん剤副作用で死亡したケース

癌・腫瘍最終判決判例タイムズ 1008号192-204頁概要53歳女性、胃内視鏡検査で胃体部大弯に4~5cmの表層拡大型早期胃がん(IIc + III型)がみつかり、生検では印環細胞がんであった。胃2/3切除およびリンパ節切除が行われ、術後に補助化学療法(テガフール・ウラシル(商品名:UFT)、マイトマイシン(同:MMC)、フルオロウラシル(同:5-FU))が追加された。ところが、5-FU®静注直後から高度の骨髄抑制を生じ、術後3ヵ月(化学療法後2ヵ月)で死亡した。詳細な経過患者情報とくに既往症のない53歳女性経過1992年3月6日背中の痛みを主訴に個人病院を受診。3月18日胃透視検査で胃体部大弯に陥凹性病変がみつかる。4月1日胃内視鏡検査にて、4~5cmに及ぶIIc + III型陥凹性病変が確認され、生検でGroup V印環細胞がんであることがわかり、本人にがんであることを告知の上、手術が予定された。4月17日胃2/3切除およびリンパ節切除術施行。術中所見では漿膜面にがん組織(のちに潰瘍瘢痕を誤認したものと判断された)が露出していて、第2群リンパ節にまで転移が及んでいたため、担当医師らはステージIIIと判断した。4月24日病理検査結果では、リンパ節転移なしと判定。4月30日病理検査結果では、早期胃がんIIc + III、進達度m、印環細胞が増生し、Ul III-IVの潰瘍があり、その周辺にがん細胞があるものの粘膜内にとどまっていた。5月8日病理検査結果では前回と同一で進行がんではないとの報告。ただしその範囲は広く、進達度のみを考慮した胃がん取り扱い規約では早期がんとなるものの、すでに転移が起こっていることもあり得ることが示唆された。5月16日術後経過に問題はなく退院。5月20日白血球数3,800、担当医師らは術後の補助化学療法をすることにし、抗がん剤UFT®の内服を開始(7月2日までの6週間投与)。6月4日白血球数3,900、抗がん剤MMC® 4mg投与(6月25日まで1週間おきに4回投与)。6月18日白血球数3,400。6月29日抗がん剤5-FU® 1,250mg点滴静注。6月30日抗がん剤5-FU® 1,250mg点滴静注。7月1日白血球数2,900。7月3日白血球数2,400、身体中の激痛が生じ再入院。7月4日白血球数2,200、下痢がひどくなり、全身状態悪化。7月6日白血球数1,000、血小板数68,000。7月7日白血球数700、血小板数39,000、大学病院に転院。7月8日一時呼吸停止。血小板低下が著しく、輸血を頻回に施行。7月18日死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.リンパ節転移のないmがん(粘膜内がん)に補助化学療法を行った過失診療当時(1992年)の知見をもってしても、表層拡大型IIc + III早期胃がん、ステージI、リンパ節、腹膜、肝臓などのへの転移がなく外科的治癒切除を行った症例に、抗がん剤を投与したのは担当医師の明らかな過失である。しかも、白血球数が低下したり、下痢がみられた状態で抗がん剤5-FU®を投与するのは禁忌であった2.説明義務違反印環細胞がん、表層拡大型胃がんについての例外的危険を強調し、抗がん剤を受け入れざるを得ない方向に誘導した。そして、あえて危険を伴っても補助化学療法を受けるか否かを選択できるような説明義務があったにもかかわらず、これを怠った3.医療知識を獲得して適切な診断・治療を患者に施すべき研鑽義務を怠った病院側(被告)の主張1.リンパ節転移のないmがんに補助化学療法を行った過失術中所見ではがん組織が漿膜面まで明らかにでており、第2群のリンパ節に転移を認めるのでステージIIIであった。病理組織では摘出リンパ節に転移の所見がなく、肝臓などに肉眼的転移所見がみられなかったが、それで転移がなかったとはいえない。本件のような表層拡大型早期胃がんはほかの胃がんに比べて予後が悪く、しかも原発病巣が印環細胞がんという生物学的悪性度のもっとも強いがんであるので、再発防止目的の術後補助化学療法は許されることである。白血球数は抗がん剤の副作用以外によっても減少するので、白血球数のみを根拠に抗がん剤投与の適否を評価するべきではない2.説明義務違反手術で摘出したリンパ節に転移がなく、進達度が粘膜内ではあるが、この結果は絶対的なものではない。しかも原発病巣が生物学的悪性度のもっとも強い印環細胞がんであり、慎重に対処する必要があるので、副作用があるが抗がん剤を投与するかどうか決定するように説明し、患者の同意を得たので説明義務違反はない3.医療知識を獲得して適切な診断・治療を患者に施すべき研鑽義務1980年以降に早期胃がんに対して補助化学療法を行わないとの考えが確立したが、担当医師ががん専門病院に勤務していたのは1970~1980年であり、この当時は抗がん剤の効果をみるために早期胃がんに対しても術後補助化学療法治療試験が盛んに行われていた。したがって、早期胃がんに対して補助化学療法を行わないとの考えを開業医レベルの担当医師に要求するのは無理である裁判所の判断1. リンパ節転移のないmがんに補助化学療法を行った過失担当医師らは肉眼所見でがん組織が漿膜面まで露出していたとするが、これは潰瘍性瘢痕をがんと誤認したものである。また、第2群のリンパ節に転移を認めるステージIIIであったと主張するが、数回にわたって行われた病理検査でがんが認められなかったことを優先するべきであるので、本件は進行がんではない。したがって、そもそも早期がんには不必要かつ有害な抗がん剤を投与したうえに、下痢や白血球減少状態などの副作用がみられている状況下では禁忌とされている5-FU®を、常識では考えられないほど大量投与(通常300~500mgのところを1,250mg)をしたのは、医師として当然の義務を尽くしていないばかりか、抗がん剤の副作用に対する考慮の姿勢がみじんも存在しない。2. 説明義務違反説明義務違反に触れるまでもなく、担当医師に治療行為上の重大な過失があったことは明らかである。3. 医療知識を獲得して適切な診断・治療を患者に施すべき研鑽義務を怠った。担当医師はがん専門病院に勤務していた頃の知見に依拠して弁解に終始しているが、がん治療の方法は日進月歩であり、ある知見もその後の研究や医学的実践において妥当でないものとして否定されることもあるので、胃がんの治療にあたる以上最新の知見の修得に努めるべきである。原告側合計6,733万円の請求を全額認定考察この判例から得られる教訓は、医師として患者さんの治療を担当する以上、常に最新の医学知識を吸収して最良の医療を提供しなければならないということだと思います。いいかえると、最近ようやく臨床の現場に浸透しつつあるEBM(evidence based medicine)の考え方が、医療過誤かどうかを判定する際の基準となる可能性が高いということです。裁判所は、以下の知見はいずれも一般的な医学文献等に掲載されている事項であると判断しました。(1)mがんの再発率はきわめて低いこと(2)抗がん剤は胃がんに対して腫瘍縮小効果はあっても治療効果は認められないこと(3)印環細胞がん・表層拡大型胃がん、潰瘍型胃がんであることは再発のリスクとは関係ないこと(4)抗がん剤には白血球減少をはじめとした重篤な副作用があること(5)抗がん剤は下痢の症状が出現している患者に対して投与するべきでないことこれらの一つ一つは、よく勉強されている先生方にとっては常識的なことではないかと思いますが、医学論文や学会、症例検討会などから疎遠になってしまうと、なかなか得がたい情報でもあると思います。今回の担当医師らは、術中所見からステージIIIの進行がんと判断しましたが、病理組織検査では「転移はないmがんである」と再三にわたって報告が来ました。にもかかわらず、「今までの経験」とか「直感」をもとに、「見た目は転移していそうだから、がんを治療する以上は徹底的に叩こう」と考えて早期がんに対し補助化学療法を行ったのも部分的には理解できます。しかし、われわれの先輩医師たちがたくさんの症例をもとに築き上げたevidenceを無視してまで、独自の治療を展開するのは大きな問題でしょう。ことに、最近では医師に対する世間の評価がますます厳しくなっています。そもそも、総務庁の発行している産業分類ではわれわれ医師は「サービス業」に分類され、医療行為は患者と医療従事者のあいだで取り交わす「サービスの取引」と定義されています。とすると、本件では「自分ががんの研修を行った10~20年前までは早期胃がんに対しても補助化学療法を行っていたので、早期胃がんに補助化学療法を行わないとする最新の知見を要求されても困る」と主張したのは、「患者に対し10~20年前のまちがったサービスしか提供できない」ことと同義であり、このような考え方は利用者(患者)側からみて、とうてい受容できないものと思われます。また、「がんを治療する以上は徹底的に叩こう」ということで5-FU®を通常の2倍以上(通常300~500mgのところを1,250mg)も使用しました。これほど大量の抗がん剤を一気に投与すれば、骨髄抑制などの副作用が出現してもまったく不思議ではなく、とても「知らなかった」ではすまされません。判決文でも、「常識では考えられないほど抗がん剤を大量投与をしたのは、抗がん剤の副作用に対する考慮の姿勢がみじんも存在しない」と厳しく批判されました。「医師には生涯教育が必要だ」、という声は至るところで耳にしますが、今回の事例はまさにそのことを示していると思います。日々遭遇する臨床上の問題についても、一つの考え方にこだわって「これしかない」ときめつけずに、ほかの先生に意見を求めたり、文献検索をしなければならないと痛感させられるような事例でした。癌・腫瘍

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全年齢対象の非ホジキンリンパ腫に対するR-CHOP療法、強化療法vs.標準療法/Lancet

 びまん性大細胞型B細胞性非ホジキンリンパ腫に対するR-CHOP療法の全年齢を対象とした強化療法(毎2週投与)について、標準療法(毎3週投与)と比べて有意な改善を示さなかったことが報告された。英国・ロイヤルマーズデンNHS財団トラストのDavid Cunningham氏らが第3相無作為化試験の結果、報告した。これまでに、2004年に60歳以上を対象とした試験でCHOP強化療法(毎2週×6サイクルvs. 毎3週×6サイクル)の全生存の改善が示されていた。ただし、その後日本で行われた強化療法(毎2週×8サイクル)を検証した小規模試験では改善が示されず、またCHOP+エトポシド療法の検討においても全年齢の全生存改善は示されなかった。Lancet誌オンライン版2013年4月22日号掲載より。毎14日投与と毎21日投与を比較 本検討は、新たにびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断された未治療の患者における、リツキシマブとシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン(R-CHOP)療法の全年齢層におけるベネフィットを検討することを目的とした。 対象は、英国内119施設でステージIA~IVと診断された18歳以上の患者とし、R-CHOP毎14日×6サイクル+リツキシマブ毎14日×2サイクルを受ける群(R-CHOP-14)と、R-CHOP毎21日×8サイクルを受ける群(R-CHOP-21)に1対1の割合で無作為に割り付け(マスキングなし)検討した。 主要評価項目は、全生存期間(OS)とした。 R-CHOP-14群は、シクロホスファミド750mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、ビンクリスチン2mg、リツキシマブ375mg/m2を1日に、経口プレドニゾロン100mg/m2を1~5日に、これを毎14日×6サイクルし、続いてリツキシマブ375mg/m2/日の毎14日×2サイクルを投与した。 R-CHOP-21群は、シクロホスファミド750mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、ビンクリスチン1.4mg(最大2mg)、リツキシマブ375mg/m2を1日に、経口プレドニゾロン40mg/m2を1~5日に、これを毎21日×8サイクル投与した。2年OS達成、R-CHOP-14群82.7%、R-CHOP-21群80.8%で有意差はない 1,080例が、R-CHOP-21群(540例)、R-CHOP-14群(540例)に割り付けられた。 追跡期間中央値46ヵ月(IQR:35~57)において、2年OS達成は、R-CHOP-14群82.7%(95%信頼区間[CI]:79.5~85.9)、R-CHOP-21群80.8%(同:77.5~84.2)で有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.90、95%CI:0.70~1.15、p=0.3763)。2年無増悪生存にも有意差は認められなかった(75.4%vs. 74.8%、HR:0.94、95%CI:0.76~1.17、p=0.5907)。 また両群ともに、国際予後指標高値、予後不良の分子的特性、発生細胞を予測するベネフィットは示されなかった。 グレード3または4の好中球減少症の発現が、R-CHOP-21群で高く(60%vs. 31%)、同群では予定されていなかった遺伝子組換え型顆粒球コロニー刺激因子の投与が行われた。一方、R-CHOP-14群ではグレード3または4の血小板減少症の発現頻度が高かった(9%vs. 5%)。その他に発熱性好中球減少症(11%vs. 5%)、感染(23%vs. 18%)のグレード3または4の有害事象の発現頻度が高かった。 非血液学的有害事象の頻度は、両群で同程度であった。 これらの結果を踏まえて著者は「R-CHOP-14はR-CHOP-21よりも有効ではなく、R-CHOP-21が依然として標準的なファーストライン療法である」と結論している。

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DA-EPOCH-R療法、原発性縦隔B細胞性リンパ腫に高い効果/NEJM

 DA-EPOCH-R(用量調整エトポシド/ビンクリスチン/シクロホスファミド/ドキソルビシン/プレドニゾン+リツキシマブ)療法は、原発性縦隔B細胞性リンパ腫の治療として、放射線療法を行わなくとも高い治癒率をもたらすことが、米国国立がん研究所(NCI)のKieron Dunleavy氏らの検討で示された。原発性縦隔B細胞性リンパ腫はびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)のサブタイプで、結節硬化型ホジキン病と密接な関連を持ち、若年者に多く、巨大な縦隔腫瘤を形成する。標準治療は確立されておらず、免疫化学療法だけでは不十分なため縦隔への放射線照射による地固め療法がルーチン化しているが、遅発性の重篤な有害事象が懸念されるという。NEJM誌オンライン版2013年4月11日号掲載の報告。前向き単群第II相試験を、その他の後ろ向き解析と比較 研究グループは、原発性縦隔B細胞性リンパ腫の治癒率を改善し、放射線療法を不要にする治療戦略の開発を目的に、G-CSF(フィルグラスチム)併用下DA-EPOCH-R療法のプロスペクティブな単群第II相試験を実施した。 未治療の原発性縦隔B細胞性リンパ腫に対し、フィルグラスチム投与下にDA-EPOCH-R療法を6コースまたは8コース施行した。4コースおよび6コース目の終了時に病変の評価を行った。4~6コース目に20%以上の減量を要した場合は8コースまで治療を継続し、この間の減量が20%以下の場合は6コースで治療を終了することとした。 比較のために、スタンフォード大学医療センターの2007~2012年の診療記録の中から、放射線療法は施行されずにDA-EPOCH-R療法を受けた未治療の原発性縦隔B細胞性リンパ腫患者のデータを抽出し、レトロスペクティブな解析を行った。放射線療法なしでEFS 93%、OS 97%を達成、リツキシマブ追加の効果も確認 NCIの前向き第II相試験には、1999年11月~2012年8月までに51例(年齢中央値30歳、腫瘍径5~18cm、女性59%)が登録された。65%がbulky腫瘍(≧10cm)で、78%に乳酸脱水素酵素(LDH)上昇を認め、29%はStage IVであった。90%が6コースで治療を終了した。 スタンフォードの後ろ向き試験には16例[年齢中央値33歳(p=0.04)、腫瘍径7~18cm、女性56%]が登録された。bulky腫瘍(56%)、LDH上昇(69%)、Stage IV(44%)の頻度はNCI第II相試験と同等であったが、節外病変が有意に少なかった(53 vs 19%、p=0.02)。 NCI前向きコホートでは、フォローアップ期間中央値63ヵ月の時点で無イベント生存率(EFS)が93%、全生存率(OS)は97%であった。スタンフォード後ろ向きコホートでは、フォローアップ期間中央値37ヵ月におけるEFSは100%、OSも100%で、放射線治療を受けた患者はいなかった。 遅発性の合併症や心毒性は観察されなかった。フォローアップ10ヵ月から14年までの間に、2例(4%)を除く全例がDA-EPOCH-R療法により完全寛解に到達した。非完全寛解の2例は放射線療法を受けフォローアップ期間中は無病状態が維持された(1例は後に急性骨髄性白血病で死亡)。 なお、リツキシマブを併用しないDA-EPOCH療法の第II相試験(18例)では、フォローアップ期間中央値16年におけるEFSが67%、OSは78%であり、リツキシマブの追加によってEFS(p=0.007)、OS(p=0.01)が有意に改善することも確認された。 著者は、「DA-EPOCH-R療法は、原発性縦隔B細胞性リンパ腫の治療において、放射線療法を必要とせずに高い治癒率をもたらす」と結論付けている。また、確定的なエビデンスを得るために、小児を対象とするDA-EPOCH-R療法の国際的な臨床試験がすでに開始されているという。

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消化管神経内分泌腫瘍〔GI-NET : gastrointestinal neuroendocrine tumor〕

1 疾患概要■ 概念・定義消化管神経内分泌腫瘍は原腸系組織に存在する神経内分泌細胞由来の腫瘍群(neuroendocrine tumor: NET)である。消化管NETは、悪性度が低いものから高いものまで多彩であるにもかかわらず、これまで消化管カルチノイドの呼称でひとまとめに扱われてきたが、2010年以降、生物学的悪性度を指標としたWHO分類に従って扱われるようになってきている。本稿では、WHO分類に従ったデータは乏しいため、以下、消化管カルチノイド腫瘍として報告されてきた知見を示す。■ 疫学わが国における消化管カルチノイド腫瘍の発生頻度は、直腸(39%)、胃(27%)、十二指腸(15%)の順である。欧米では、小腸、虫垂での発生頻度が高い。■ 病因消化管粘膜の腺底部に存在する内分泌細胞が腫瘍化し、粘膜下層を主座としながら腫瘤を形成するため、粘膜下腫瘍様の形態を呈する。■ 症状(1)無症状で発見されることが多い。(2)腫瘍増大による腹痛、腸閉塞、下血で発見されることもある。(3)生理活性物質(セロトニン、ヒスタミンなど)を産生する腫瘍の肝転移例では、カルチノイド症候群と呼ばれる皮膚紅潮、喘息様発作、下痢、右弁膜傷害の症状がみられることがある。■ 分類1)WHO分類腫瘍細胞の核分裂像や細胞増殖マーカー(Ki-67)の発現指数に基づいて表1のようにNET grade 1、NET grade 2、Neuroendocrine carcinoma(NEC)に分類される。2)TNM分類腫瘍の深達度(T因子)、リンパ節転移の有無(N因子)、遠隔転移の有無(M因子)を評価し、腫瘍の進行度(病期)をI~IVの4段階に分類するもの。3)Rindi分類胃NETは他の消化管NETと比べ悪性度の低いものが多く、疾患背景や高ガストリン血症の有無でType I~IIIと低分化型内分泌細胞がんの4グループに分けるRindi分類が有用である(表2)。画像を拡大する画像を拡大する■ 予後1)胃NETType I、Type IIの胃NETは、高ガストリン血症を伴わないType III胃NETに比べ転移率が低く(I:4.9%、II:30%、III:62.5%)、5年生存率(I:正常生命期待値、II:87%、III:79%)は、明らかに良好である。Type IVの胃NETは、WHO分類のNECに相当し、予後が悪い。2)その他の消化管NET胃以外の消化管NETでは、予後予測因子が明らかでない。腫瘍径が1cmを超えた場合、転移率が20%以上とする報告が多い。米国の報告では、5年生存率が局所限局で79.7%、近傍進展で50.6%、遠隔転移を有する症例で21.8%である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)1)血液検査カルチノイド症候群を疑う場合は、血中セロトニン、尿中5-ヒドロキシインドール酢酸の測定を行う。機能性NETの場合は、疑うホルモンの血清値の測定を行う。2)画像診断内視鏡検査では、黄白色調の表面平滑な粘膜下腫瘍として観察されることが多い。確定診断は生検による組織診断で行う。転移の有無は、腹部超音波、CT、MRIなどの検査で行う。内視鏡的切除を行う場合には、超音波内視鏡検査による腫瘍の深達度が有用である。3)病理特徴的な細胞像(好酸性微細顆粒状の細胞質、円形~卵円形の均一な小型核、細胞分裂はまれ)と胞巣形態を呈する。銀染色やクロモグラニン免疫染色が有用である。NETのグレード分類には細胞増殖マーカーKi67の免疫染色が行われる。4)その他欧米では血中クロモグラニンA値を腫瘍マーカーとして用い、ソマトスタチン受容体シンチグラフィーを病変の検出に用いられているが、日本では未承認である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)外科的または内視鏡的切除(1)胃NET高ガストリン血症を伴うtype I、IIの腫瘍は2cm未満の場合、まず内視鏡治療を試み、病理組織学的に細胞異型が強い腫瘍の残存や脈管浸潤を認める場合には、外科的切除を追加する。腫瘍が2cm以上あるいは個数が6個以上、あるいは腫瘍が固有筋層に浸潤している場合は、リンパ節郭清を含む外科的切除を行う。Type III、IVの腫瘍は胃がんに準じた外科切除を行う。(2)その他の消化管NET筋層浸潤を伴わない1cm以下の腫瘍では、内視鏡的切除か筋層を含む局所切除を行う。筋層浸潤を伴わない1~2cmの腫瘍では、広範な局所切除または所属リンパ節郭清を含む腸管の部分切除を行う。筋層浸潤を伴う腫瘍または2cm以上の腫瘍では、広範なリンパ節転移を含む根治的切除術を行う。2)化学療法5-FU、ドキソルビシン、ストレプトゾトシン、インターフェロン、シクロホスファミドが投与されるが有効性は低い。肝転移巣に対して肝動脈塞栓術が有効な場合がある。NECは、小細胞がんに準じてシスプラチン+エトポシド、シスプラチン+イリノテカンが投与される(わが国ではすべて未承認)。3)カルチノイド症候群に対する治療ソマトスタチン誘導体であるオクトレオチド(商品名:サンドスタチン)は、NETからのセロトニンやヒスタミンの放出を抑制し、カルチノイド症候群でみられる症状(前述)を改善する。4 今後の展望消化管NETの解釈は、さまざまな分類によって取り扱われ混乱していたが、2010年に新しい WHO分類が提唱され、今後徐々にその分類に沿った治療成績や予後が明らかになり、データが整理されていくと思われる。治療の原則は、腫瘍の根治的切除と再発予防であるが、欧米で検討されているソマトスタチンアナログなど抗腫瘍効果が期待される新薬もNETの集約的治療に加わってくるかもしれない。5 主たる診療科消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療に関する情報サイトNET Links(一般向け、医療従事者むけのサイト)患者会情報しまうま倶楽部(患者・患者の家族の会)

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低悪性度非ホジキンリンパ腫の1次治療、B-RがR-CHOPよりも有用/Lancet

 ベンダムスチン+リツキシマブ併用療法(B-R)は、低悪性度非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫の1次治療において、従来の標準治療であるシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン(CHOP)+リツキシマブ(R-CHOP)併用療法よりも、有効性および安全性が優れることが、ドイツ・Justus Liebig大学病院のMathias J Rummel氏らStudy group indolent Lymphomas(StiL)の検討で示された。米国では、毎年、約6万6,000人が新規に非ホジキンリンパ腫と診断され、そのうち約40%が低悪性度リンパ腫、約3~10%がマントル細胞リンパ腫だという。現在、欧米における進行期低悪性度非ホジキンリンパ腫および高齢マントル細胞リンパ腫の標準的な1次治療はリツキシマブと化学療法(ほとんどがCHOP)の併用療法だが、再発や難治性の病変にはB-R療法が有効なことが確認されている。Lancet誌オンライン版2013年2月20日号掲載の報告。B-RのR-CHOPに対する非劣性を無作為化試験で検証 研究グループは、低悪性度非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫に対するB-RのR-CHOPに対する非劣性を検証する多施設共同非盲検無作為化試験を実施した。 対象は、年齢18歳以上、新規に診断されたStage III/IVの低悪性度非ホジキンリンパ腫またはマントル細胞リンパ腫で、PS(WHO)0~2の症例とした。これらの患者が、リンパ腫の組織学的サブタイプで層別化されたのち、ベンダムスチン(90mg/m2静注、第1、2日、4週毎)またはCHOP(シクロホスファミド750mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、ビンクリスチン1.4mg/m2を第1日に投与、プレドニゾン100mg/日は第1~5日目に投与、3週毎)を投与する群に割り付けられ、最大6コースまで施行することとした。両群とも、第1日目にリツキシマブ375mg/m2が投与された。 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)とし、per-protocol解析を行った。3年後のPFSの非劣性のマージンは10%とした(たとえば、R-CHOP群のPFSが50%の場合、B-R群が40%以上であれば非劣性と判定)。これにより、ハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)の上限値が1.32を超えない場合に非劣性と判定された。PFS中央値のHR:0.58(95%CI:0.44~0.74)、脱毛:0% vs 100%、血液毒性:30% vs 68% 2003年9月1日~2008年8月31日までに、ドイツの81施設から549例が登録され、B-R群に274例が、R-CHO群には275例が割り付けられ、それぞれ261例(年齢中央値64歳、Stage IV 77%、マントル細胞リンパ腫18%)、253例(同:63歳、78%、19%)が評価可能であった。 フォローアップ期間中央値45ヵ月の時点で、PFS中央値はB-R群が69.5ヵ月(四分位範囲:26.1~未到達)、R-CHOP群は31.2ヵ月(同:15.2~65.7)であり、HRは0.58(95%CI:0.44~0.74、p<0.0001)であった。 耐用性もB-D群がR-CHOP群よりも良好だった。すなわち、3コース以上の治療を受けた患者のうち、脱毛はB-D群が0%であったのに対しR-CHOP群は100%(p<0.0001)であった。また、血液毒性がそれぞれ30%、68%(p<0.0001)、感染症が37%、50%(p=0.0025)、末梢神経障害が7%、29%(p<0.0001)、口内炎は6%、19%(p<0.0001)であった。紅斑性皮膚反応の頻度はB-R群のほうが高かった(16% vs 9%、p=0.024)。 著者は、「PFS中央値については、B-R群のR-CHOP群に対する非劣性とともに優位性も示され、耐用性もB-R群が良好であった。未治療の低悪性度非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫の1次治療では、R-CHOPよりもB-Rが好ましいと考えられる」と結論し、「今後は、B-R療法の有効例に対するRによる維持療法の有用性を評価する臨床試験を行う必要があるだろう」と指摘している。

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【日本癌治療学会2012】膀胱がん治療の過去と未来(筋層非浸潤性膀胱がん)

 第50回日本癌治療学会学術集会(2012年10月25日~27日)のシンポジウム「泌尿器がん治療の過去と未来」にて、大園 誠一郎氏(浜松医科大学泌尿器科)は、「筋層非浸潤性膀胱がんの治療」と題して、筋層非浸潤性膀胱がんの治療における、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)の意義、BCGの維持療法、高齢者などに対する副作用を考慮した低用量BCG、そして今後の展望について講演を行った。TURBT再手術(セカンドTURBT)の意義 大園氏はまず、NCCNや日本泌尿器科学会による膀胱がんの診療ガイドラインを紹介した。筋層非浸潤性がんでは、膀胱の温存を目的としてTURBTが施行される。その後リスク分類に応じて、低リスクでは抗がん剤即時単回注入のみ、中リスクでは抗がん剤即時単回注入に続いて抗がん剤あるいはBCGの注入が行われ、中~高リスクに対してはセカンドTURBTが推奨される。 TURBTで完全切除を行っても残存腫瘍が認められることが多い。すなわち、初回TURBT後には76%に残存腫瘍があるとした報告(Herr HW. J Urol. 1999; 162: 74-76)に始まり、諸家により追試が行われ、まとめるとT1(粘膜下結合組織までの浸潤)腫瘍ではセカンドTURBTにより約45%の残存腫瘍が認められることが明らかになった(Schwaibold HE, et al. BJU Int. 2006; 97: 1199-1201)。さらに、セカンドTURBTの有用性を検討したプロスペクティグなランダム化試験も行われ(Divrik RT, et al. Eur Urol. 2010; 58: 185-190)、無再発生存率(59% vs. 32%、p=0.0001)および無増悪生存率(93% vs. 79%、p=0.0001)ともに、セカンドTURBTをルーチンに施行した群が非施行群に比較して有意に優っていた。 これらのエビデンスに基づいて、欧州泌尿器科学会(EAU)のガイドラインでは、多発および大きい腫瘍、病理組織に筋層が含まれていない場合、高グレードTa/T1またはT1腫瘍に対し、セカンドTURBTを考慮すべきとしている。NCCNガイドラインでも高グレードTaまたはT1腫瘍ではセカンドTURBTが施行される。日本泌尿器科学会の診療ガイドラインでも、高グレードT1腫瘍または病理組織に筋層が含まれていない場合には、セカンドTURBTが推奨レベルAとなっている。 さらに大園氏は、グレード3T1腫瘍に対してセカンドTURBTを施行して、T0となった症例をBCG膀胱内注入群と非注入経過観察(Watchful Waiting)群とにランダム化割り付けを行い、膀胱内再発率および進展率を比較するJCOG-1019試験が進行中であることを紹介した。BCG膀胱内注入および維持療法の意義と課題 米国におけるBCG膀胱内注入維持療法の無作為化比較試験(SWOG8507試験、Lamm DL, et al. J Urol. 2000; 163:1124-1129)では、高リスクのpTaT1上皮内がん(CIS)においては、コンノート株を用いたBCG導入療法単独群に比べ、導入療法に続いて維持療法を施行した群(導入療法開始から3年間)において有意な予後改善効果が得られた。とくに無再発生存期間中央値は2倍以上に延長し(77ヵ月vs. 36ヵ月、p<0.0001)、無増悪生存率にも有意差が認められた。 その後、9つの無作為化試験に登録された2,820例のメタ解析(Malmstrom PU, et al. Eur Urol. 2009; 56: 247-256)から、再発予防においてマイトマイシンCに比べBCG維持療法が優ることが報告された。 日本におけるBCG膀胱内注入維持療法の無作為化比較試験としては、エピルビシン群を対照群とし、コンノート株を用いた導入療法のみの群と維持療法を加えた群を比較する試験(PMCJ-9第Ⅲ相試験、Hinotsu S, et al. BJU Int. 2011; 108: 187-195)が実施されている。本試験では、エピルビシン群と比較して、BCG群(BCG導入療法群+維持療法群)で膀胱内無再発生存期間において有意な改善が認められた。また、維持療法施行群が導入療法のみの群よりも再発までの期間を有意に延長した。 これらのエビデンスより、日本泌尿器科学会の診療ガイドラインでBCG維持療法はTURBT施行後の高グレードの筋層非浸潤性膀胱がん、および上皮内がんに対して推奨レベルBとされている。 BCG膀胱内注入においては、副作用低減の目的から、BCGの減量が検討されている。BCG 81mgと27mgの比較では再発までの期間に差が認められず、全身性・局所性ともに有害事象が認められなかった症例の割合は、81mg群に対し、27mg群では有意に少ないことが示された(Martinez-Pineiro JA, et al. J Urol. 2005; 174: 1242-1247)。 日本でもBCG東京172株を用いたヒストリカル・コホート研究が行われ(Yoneyama T, et al. Urology. 2008; 71: 1161-1165)、80mgと40mgでは無再発生存率と無増悪生存率に差はなかった。現在、BCG日本株を用いて80mgと40mgの有用性を比較する医師主導型の無作為化第III相試験が進行中であり、2011年1月に160例の登録が完了した。 また、大園氏は、BCG膀胱内注入の課題として、病勢増悪を抑制できていないことを挙げた。一方、T1グレード3の高リスク筋層非浸潤性膀胱がんを対象として、TURBT後にBCG注入を行った群と診断後ただちに膀胱全摘術を行った群を比較した試験(De Berardinis E, et al. Int Urol Nephrol. 2011;43:1047-1057)では、無増悪生存率および膀胱がん特異的生存率には両群で差はなかったものの、全生存率はBCG群のほうが高いという結果であったことから、高リスク筋層非浸潤性膀胱がんに対して、まずBCG注入療法によるコントロールを試みることの重要性を強調した。 大園氏はBCG膀胱内注入療法の限界として、「約20%の患者が副作用のためにBCGに忍容性がないこと」、「約30%の患者がBCGに奏効しないか、5年以内に再発すること」、「セカンドラインのBCG注入を行っても長期間治療できるのは20~30%であること」などを挙げた。今後、これらの課題の克服と、BCGに対する効果予測因子の同定ならびにBCG注入療法の適切な注入レジメンの検討が求められる。「他の演題はこちら」

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低量分割ゲムツズマブ・オゾガマイシン追加療法、AMLの1次治療アウトカムを改善

ゲムツズマブ・オゾガマイシン(GO、商品名:マイロターグ)の低量分割投与法は、急性骨髄性白血病(AML)の1次治療において安全に施行可能で、標準的な化学療法との併用により、標準治療単独に比べアウトカムを実質的に改善することが、フランスVersailles-Saint Quentin大学Mignot病院のSylvie Castaigne氏らが行ったALFA-0701試験で示された。標準治療と、ヒト化抗CD33モノクローナル抗体とカリケアマイシンの複合体であるGOの併用療法は、第III相試験で相反する結果が報告されている。一方、GOは当初、9mg/m2を第1、14日に投与するレジメンが用いられたが、血液毒性や肝中心静脈閉塞(VOD)に起因する肝毒性が高頻度に発現したことから、低量分割レジメン(3mg/m2[最大5mg/m2]、第1、4、7日)が開発されたという。Lancet誌2012年4月21日号(オンライン版2012年4月5日号)掲載の報告。低量分割GOの上乗せ効果を無作為化第III相試験で検証ALFA-0701試験は、AMLに対する1次治療としての標準的化学療法への低量分割GOの上乗せ効果を検証する非盲検無作為化第III相試験。2008年1月~2010年11月までに、フランスの26施設から新規に診断された50~70歳の未治療ALM患者が登録された。これらの患者が、寛解導入療法として標準治療単独あるいは標準治療+GOを施行する群に無作為に割り付けられた。標準治療群はダウノルビシン(60mg/m2、第1~3日)+シタラビン(200mg/m2、第1~7日間)を行い、GO追加群は標準治療に加えGO(3mg/m2、第1、4、7日)を投与した。15日目に骨髄穿刺を行い、骨髄芽球が10%以上の患者には2回目の寛解導入療法としてダウノルビシン(60mg/m2、第1~2日)+シタラビン(1,000mg/m2/12時間、第1~3日)を施行した。完全寛解(CR)または血小板回復が不十分なことを除きCR(CRp)を達成した患者には、さらに2回の地固め療法を実施した。すなわち、標準治療群では、1回目はダウノルビシン(60mg/m2、第1日)+シタラビン(1,000mg/m2/12時間、第1~4日)、2回目はダウノルビシン(60mg/m2、第1~2日)+シタラビン(1,000g/m2/12時間、第1~4日)を施行した。GO追加群には各回とも標準治療に加えGO(3mg/m2、第1日)を投与した。1次治療としてのGOの再評価を正当化する知見280例が登録され、標準治療群に140例、GO追加群にも140例が割り付けられた。それぞれ139例ずつが解析の対象となった。寛解導入療法のCR/CRp率は、標準治療群が75%(104/139例)、GO追加群は81%(113/139例)であり、有意な差はなかった(オッズ比:1.46、95%信頼区間[CI]:0.20~2.59、p=0.25)。主要評価項目である2年後の無イベント生存率(EFS)は、標準治療群の17.1%に対しGO追加群は40.8%と有意に改善し(ハザード比[HR]:0.58、95%CI:0.43~0.78、p=0.0003)、副次的評価項目である全生存率(OS)にも有意差が認められた(標準治療群:41.9% vs. GO追加群:53.2%、HR:0.52、95%CI:0.36~0.75、p=0.0003)。無再発生存率(RFS)もGO追加群が有意に優れた(22.7% vs. 50.3%、HR:0.52、95%CI:0.36~0.75、p=0.0003)。血液毒性のうち、特に持続性血小板減少が標準治療群に比べGO追加群で多かったが(3% vs. 16%)、毒性に起因する死亡リスクの増大は認めなかった。著者は、「GOは低量分割投与により、累積的高用量を安全に投与することが可能となり、実質的なアウトカムの改善をもたらした」と結論づけ、「これらの知見は、AMLに対する1次治療としてのGOの再評価を正当化するものだ」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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急性骨髄性白血病の遺伝子プロファイリング

急性骨髄性白血病(AML)患者について、その体細胞変異の遺伝子プロファイリングがリスク層別化に有用であり、予後および治療を決定することができる可能性があることが報告された。米国・Sloan-Kettering記念がんセンターJay P. Patel氏らが、60歳未満のAML患者398例の遺伝子プロファイリングについて検証した結果による。最近の研究成果として、体細胞突然変異に予後因子としての価値があることが示されていたが、AML治療における評価は、第3相試験では系統的になされていなかった。NEJM誌2012年3月22日号(オンライン版2012年3月14日号)掲載報告より。18遺伝子の変異解析から予後因子としての意義を調査Patel氏らは、60歳未満のAML患者398例をダウノルビシン(商品名:ダウノマイシン)による寛解導入療法を、標準用量または高用量で受ける2群に無作為に割り付け、それぞれについて18遺伝子の変異解析を実施した。そのうえで、104例の独立した患者群で同解析所見についての検証を行った。 結果、患者の97.3%で1個以上の体細胞変異が確認された。そして、FLT3遺伝子内の縦列重複(FLT3-ITD、P=0.001)、MLL遺伝子内の縦重複(MLL-PTD、P=0.009)、ASXL1遺伝子変異(P=0.05)、PHF6遺伝子変異(P=0.006)は、全生存率の低下と関連していることが、一方で、CEBPA遺伝子変異(P=0.05)、IDH2遺伝子変異(P=0.01)は、全生存率の改善と関連している所見が得られた。また、NPM1変異は、NPM1変異とIDH1変異またはIDH2変異の両方を有する患者に限って、好ましい効果をもたらすことも確認された。生存率を改善する遺伝子変異を確認それら所見を踏まえて、研究グループは、年齢、白血球数、導入量、寛解後の治療法とは独立した、リスク層化を改善する遺伝的予測因子を定めて、独立コホートで、その予測因子としての有意性を検証した。結果、高用量ダウノルビシン投与群は、同標準用量投与と比較して、DNMT3A変異かNPM1変異またはMLL転座のいずれかを有する患者で生存率を改善することが認められた(P=0.001)。野生型のDNMT3A、NPM1、MLL各遺伝子をを有する患者では改善は認められなかった(P=0.67)。(朝田哲明:医療ライター)

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早期乳がんの術後化学療法、どのレジメンが最も有効か?:約10万例のメタ解析

早期乳がんの術後化学療法では、アントラサイクリン系薬剤+タキサン系薬剤ベースのレジメンおよび高用量アントラサイクリン系薬剤ベースレジメンによって乳がん死が約3分の1低下することが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)の検討で明らかとなった。乳がんの術後化学療法の効果には差があり、治療法の選択に影響を及ぼす可能性があるという。EBCTCGは、すでに1995年までに開始された試験のメタ解析の結果を報告しているが、用量は考慮されず、タキサン系薬剤は含まれていなかった。Lancet誌2012年2月4日号(オンライン版2011年12月6日号)掲載の報告。1973~2003年に開始された123件、約10万例のメタ解析研究グループは、早期乳がんに対する個々の化学療法レジメンの有用性を比較するために、無作為化試験の患者データを用いたメタ解析を実施した。1973~2003年に開始された全無作為化試験123件の2005~2010年の個々の患者データ(約10万例)を収集した。試験の内訳は、1)タキサン系薬剤(TAX)ベースレジメンと非TAX系薬剤ベースレジメンを比較した33試験(1994~2003年に開始)、2)アントラサイクリン系薬剤(Anth)ベースレジメンとCMF(シクロホスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル)を比較した20試験(1978~1997年に開始)、3)高用量と低用量のAnthベースレジメンを比較した6試験(1985~1994年に開始)、4)多剤併用化学療法と非化学療法を比較した64試験(1973~1996年に開始、種々のAnthベースレジメンに関する22試験およびCMFに関する12試験を含む)。年齢や腫瘍の性状などの背景因子は影響しない用量を固定したAnthベースの対照群に比べ、これにTAXを4コース追加して治療期間を延長した群では、乳がん死が有意に低下した(率比[RR]:0.86、両側検定:2p=0.0005)。同様にTAX 4コースを追加し、対照群も他の薬剤をほぼ2倍の用量を追加してバランスを調整した試験では、有意な差は認めなかった(RR:0.94、2p=0.33)。CMFを対照とした試験では、標準4AC(ドキソルビシン+シクロホスファミド、3週ごと、4コース)と標準CMF(4週ごと、6コース)の乳がん死抑制効果はほぼ同等(RR:0.98、2p=0.67)だったが、標準4ACよりも高用量である3剤併用Anthベースレジメン(CAF[シクロホスファミド+ドキソルビシン+フルオロウラシル、4週ごと、6コース]、CEF[シクロホスファミド+エピルビシン+フルオロウラシル、4週ごと、6コース])は、標準CMFに比べ高い効果を示した(RR:0.78、2p=0.0004)。非化学療法群との比較試験では、CAF(RR:0.64、2p<0.0001)、標準4AC(RR:0.78、2p=0.01)、標準CMF(RR:0.76、2p<0.0001)のいずれのレジメンも、有意に乳がん死抑制効果を改善したが、標準4ACや標準CMFに比べCAFの有効性が優れることが示唆された。すべてのTAXベースまたはAnthベースレジメンに関するメタ解析では、年齢、リンパ節転移の有無、腫瘍径、腫瘍分化度、エストロゲン受容体の状態、タモキシフェンの使用歴による有効性の差はほとんどみられなかった。それゆえ、年齢や腫瘍の性状とは無関係に、TAX+Anthベースまたは高用量Anthベースレジメン(CAF、CEF)は乳がん死を平均で約3分の1低下させることが確認された。著者は、「非化学療法群と比べても、TAX+Anthベースまたは高用量Anthベースレジメンは10年間で乳がん死亡率を約3分の1低下させた。エストロゲン受容体陽性例に適切なホルモン療法を行ってもリスクは変わらなかった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫に対する標準+リツキシマブvs. 強化+リツキシマブ

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫に対し、標準化学療法(CHOP)+リツキシマブ(R-CHOP)と比べて、強化化学療法(ACVBP)+リツキシマブ(R-ACVBP)が、18~59歳患者の生存を有意に改善することが第III相オープンラベル無作為化試験の結果、示された。フランス・トゥールーズ大学病院のChristian Recher氏らによる。強化療法の血液毒性は高まったが管理可能だったという。びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫のアウトカムは、化学療法にリツキシマブ(抗CD20モノクローナル抗体、商品名:リツキサン)を加えることでかなり改善される。その知見を踏まえRecher氏らは、標準療法への追加と強化療法への追加について比較を行った。Lancet誌2011年11月26日号掲載報告より。無イベント生存率を主要エンドポイントに各群レジメンは、強化療法リツキシマブ(R-ACVBP)群が、リツキシマブ、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンデシン、ブレオマイシン、プレドニゾンで、標準療法リツキシマブ(R-CHOP)群が、リツキシマブ、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンであった。試験は2003年12月~2008年12月に、フランス、ベルギー、スイスの73施設部門で行われ、コンピュータシステムにて4ブロックの無作為化介入群に割り付けがされた。無作為化された被験者は、18~59歳の年齢補正国際予後指数が1の未治療患者380例(R-ACVBP群196例、R-CHOP群184例)だった。主要エンドポイントは、無イベント生存率とし、intention-to-treatにて、有効性と安全性について解析が行われた。被験者のうち、治療開始前に1例が同意を取り下げ(R-ACVBP群)、54例が治療を完了しなかった(R-ACVBP群35例、R-CHOP群19例)。強化リツキシマブ(R-ACVBP群)のほうが有意に上昇追跡期間中央値44ヵ月時点の、推定3年無イベント生存率は、R-ACVBP群81%(95%信頼区間:75~86)であり、R-CHOP群67%(同:59~73)も有意な上昇が認められた(ハザード比:0.56、95%信頼区間:0.38~0.83、p=0.0035)。推定3年無増悪進行生存率[87%(同:81~91)vs. 73%(同:66~79)、ハザード比:0.48(同:0.30~0.76)、p=0.0015]、全生存率[92%(同:87~95)vs. 84%(同:77~89)、ハザード比:0.44(同:0.28~0.81)、p=0.0071]も、R-ACVBP群で有意な上昇が認められた。R-ACVBP群196例のうち重篤な有害事象を伴ったのは82例(42%)だった。これに対してR-CHOP群は183例のうち28例(15%)だった。R-ACVBP群のほうがグレード3~4の血液毒性がより多くみられ、発熱性好中球減少患者の割合が高かった[38%(75/196例)vs. 9%(16/183例)]。

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HER陽性乳がんへのトラスツズマブ併用について新たなレジメン検討

HER陽性乳がんの補助療法として生存率改善が認められているトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)について、非アントラサイクリンベースレジメンへの併用の有効性と安全性が検討された。これまで、トラスツズマブのアントラサイクリンベースレジメンへの併用では心毒性が認められていた。試験・報告は、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のDennis Slamon氏ら乳がん国際研究グループ(BCIRG)による。NEJM誌2011年10月6日号掲載報告より。AC-T群、AC-T+トラスツズマブ群、TCH群に無作為化し検討研究グループは2001年4月~2004年3月の間に、41ヵ国からHER2陽性で早期乳がん(ステージT1、T2、T3)の女性3,222例を対象に試験を行った。被験者は無作為に、(1)3週ごとに、ドキソルビシンとシクロホスファミド投与後にドセタキセルを投与する(AC-T)群、(2)(1)+トラスツズマブを52週併用投与する(AC-T+トラスツズマブ)群、または(3)ドセタキセルとカルボプラチンに、トラスツズマブを52週併用投与する(TCH)群に割り付けられ、無病生存率を主要エンドポイントに、副次エンドポイントは全生存率と安全性として検討された。無病生存率はAC-T群75%、AC-T+トラスツズマブ群84%、TCH群81%追跡期間中央値は65ヵ月だった。その間、事前特定されていたイベントの発生は656例だった。5年推定無病生存率は、AC-T群75%、AC-T+トラスツズマブ群84%、TCH群81%であった。推定全生存率はそれぞれ、87%、92%、91%であった。有効性(無病生存率と全生存率)について、2つのトラスツズマブ併用療法群の間に有意差は認められなかったが、いずれもAC-T群より優れていた。リスクベネフィットの観点からはTCH療法が優れるうっ血性心不全と心機能不全の発生率は、TCH群よりもAC-T+トラスツズマブ群で有意に高かった(P<0.001)。また急性白血病は8例報告された。そのうち7例はアントラサイクリンベースレジメンでの発生例だった。TCH群での1例の発生は、本試験後にアントラサイクリン投与を受けたことに起因していた。以上を踏まえて研究グループは、「トラスツズマブ併用レジメンの1年間施行は、HER2陽性乳がん患者の無病生存率と全生存率を有意に改善した」と述べた上で、「有効性は同等だが、急性毒性作用が少なく、心毒性や白血病のリスクも低いというリスクベネフィットの観点から、AC-T+トラスツズマブよりも非アントラサイクリンベースレジメンのTCH療法が支持される」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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多発性骨髄腫の治療戦略-日欧における現状と展望

 多発性骨髄腫の治療においては、近年、ボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)、サリドマイド(商品名:サレド)、レナリドミド(商品名:レブラミド)といった新規薬剤が開発・発売され、わが国では、現在、再発・難治性症例に対して承認されている。一方、欧米では、これらの薬剤が、再発・難治性症例だけでなく、他のステージでも使用され、次々と臨床研究結果が報告されている。 ここでは、2011年8月8日に都内で開催された多発性骨髄腫治療に関するセミナー(主催:セルジーン株式会社)における、トリノ大学血液学科骨髄腫ユニットチーフ Antonio Palumbo氏、がん研有明病院化学療法科・血液腫瘍科部長 畠清彦氏の講演から、欧米とわが国における多発性骨髄腫治療の現状と展望についてレポートする。欧米における治療戦略とレナリドミドの成績 Palumbo氏によると、多発性骨髄腫の治療には、まず完全寛解(CR)を達成すること、さらにCR期間を延長させるために治療を継続することが重要である。また、CRのなかでも、より深い寛解である分子生物学的寛解、すなわちDNAレベルでの効果が重要である。 今回の講演で、Palumbo氏は、主にレナリドミドによる維持療法の成績について取り上げ、移植適応の若年者に対する移植後の維持療法については、フランスIFMの試験では無増悪期間(PFS)が、また米国CALGBの試験ではPFS、全生存期間(OS)が、レナリドミド投与群において有意に延長したことを紹介した。 また、移植非適応の65歳以上の高齢者におけるレナリドミド維持療法については、MPR(メルファラン、プロドニゾン、レナリドミド)による寛解導入療法後にレナリドミド(10mg/日、3週間投与)で維持療法を行うMPR-R群を、維持療法を行わないMPR群、MP群と比較した海外多施設臨床試験を紹介した。この試験では、MPR-R群ではMPR群に比べ増悪リスクが約70%減少し、また、年齢、寛解の程度、病期(ISS)にかかわらずPFSが有意に延長したことが示されている。 Palumbo氏は、欧米における多発性骨髄腫患者に対する治療アルゴリズムを、多発性骨髄腫に関する最新のレビューにまとめている(N Engl J Med. 2011;364:1046)。それによると、移植適応症例では、新規薬剤を含む併用レジメン(主に欧州では3剤、米国では2剤併用)で寛解導入後に移植を実施し、サリドマイドもしくはレナリドミドによる維持療法を実施、また、移植非適応例では、新規薬剤を含む併用レジメンを実施し、そのうちレナリドミドを含むレジメンの場合は、増悪もしくは不耐容となるまで継続するとしている。日本における現状と展望 畠氏は、わが国における課題と展望について、レナリドミドの特徴やがん研有明病院における使用状況を交えて紹介した。 レナリドミドの特徴については、経口剤のため外来治療が可能で、頻回通院の必要がなく遠方の患者さんでも通院しやすい、2011年8月から長期投与可能となり使いやすくなった、と畠氏は評価している。その他の特徴として、高リスク例に対して有効である、細胞性免疫の増強作用がある、腎障害例における減量が必要、末梢血幹細胞は早期採取が必要であることを挙げた。また主な副作用として、好中球減少、疲労、筋痙攣などが報告されている。 がん研有明病院においては、7月28日時点のレナリドミド使用経験は14例で、投与症例は、経口剤が適している、遠方から来院、肺障害がある、高齢といった症例という。投与方法は、レナリドミド25mg(21日間投与、7日間休薬)+デキサメタゾン40mg(週1回投与)であり、血栓予防としてアスピリンを、またアスピリンによる消化器障害に対してプロトンポンプ阻害薬を併用しているとのことである。また、がん研有明病院の取り組みとして、レナリドミドの承認前から医師、病棟看護師、外来看護師、病棟薬剤師によってチームを立ち上げ、院内マニュアルの作成や投与すべき症例の選択などの準備を進めていたことを紹介した。 わが国における課題として畠氏は、海外とのドラッグラグはもちろん、臨床現場への普及の遅れを指摘している。多発性骨髄腫においては、日本で長い間標準治療であったMP療法、VAD(ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン)療法から、新規薬剤による治療に移行しつつあり、現時点ではこれらの薬剤を年齢、病態、合併症に応じて選択し、日本での長期の成績により評価していく必要があると述べた。 最後に、畠氏は、今後はわが国では承認されていない初発例に対する治療や新規薬剤どうしの併用やアルキル化剤との併用、さらに維持療法など、より有効な治療法の確立が望まれると締めくくった。

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高齢急性骨髄性白血病に対する強化寛解導入化学療法の予後を予測するスコア法

高齢の急性骨髄性白血病(AML)患者に対する強化寛解導入療法による完全寛解(CR)の可能性および早期死亡(ED)のリスクの予測に有用なスコア法が、ドイツ・ミュンスター大学血液腫瘍科のUtz Krug氏らGerman Acute Myeloid Leukaemia Cooperative Group and the Study Alliance Leukemia Investigatorsによって開発された。60歳以上のAMLのうちAML以外は健康な状態(すなわち強化寛解導入療法が施行可能な病態)の患者の約半数は強化化学療法によってCRが達成されるが、若年の患者に比べEDのリスクが高いという。Lancet誌2010年12月11日号(オンライン版2010年12月4日号)掲載の報告。AMLCG1999およびAML1996のデータを別個に解析研究グループは、60歳以上のAML患者において標準的な臨床因子および検査値とCR、EDの関連を検証し、強化化学療法のリスクを評価するウェブベースのアプリケーションを開発するための検討を行った。German Acute Myeloid Leukaemia Cooperative Group 1999 study(AMLCG1999)に登録された60歳以上の、AML以外は健常な患者1,406例について、細胞遺伝学的および分子的リスクプロフィール情報の有無別のリスクスコア法を開発するために、多変量回帰分析を用いた解析を行った。これらの患者は、以下の二つのレジメンのいずれかによる強化寛解導入療法を2コース施行された。(1)tioguanine+標準用量シタラビン(商品名:キロサイド)+ダウノルビシン(同:ダウノマイシン)併用療法→高用量シタラビン+ミトキサントロン(商品名:ノバントロン)併用療法、(2)高用量シタラビン+ミトキサントロン併用療法。AMLCG1999に基づくリスク予測の妥当性は、Acute Myeloid Leukaemia 1996 study(AML1996)で、シタラビン+ダウノルビシン併用療法を2コース施行された60歳以上のAML患者801例において別個に検証された。治療法の決定が困難な場合の医師支援に有用CRあるいはEDと有意な相関を示す因子として、体温、年齢、骨髄異形成症候群(MDS)を経ずに発症した白血病(de-novo leukaemia)か抗がん剤治療あるいは先行する血液疾患に起因する二次性の白血病か、ヘモグロビン、血小板数、フィブリノーゲン、血清乳酸脱水素酵素濃度が確認された。CRの確率は、細胞遺伝学的および分子的リスクがある場合(スコア1)は12~91%、ない場合(スコア2)は21~80%であった。EDリスクの予測値はスコア1の場合は6~69%、スコア2の場合は7~63%であった。リスクスコアの予測能は個々の患者コホートにおいて確定された(CRスコア1:10~91%、CRスコア2:16~80%、EDスコア1:6~69%、EDスコア2:7~61%)。著者は、「AMLスコアは、AML以外は健常な高齢患者に対して強化寛解導入療法を施行した場合のCRおよびEDの確率の予測に使用可能である」と結論し、「これらの情報は、治療法の決定が困難な場合の医師の支援に有用と考えられる」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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リンパ節転移陰性の高リスク乳がんでも、ドセタキセル補助療法が優位

タキサン系抗がん剤のドセタキセル(商品名:タキソテール)を含むTACレジメン(ドセタキセル、ドキソルビシン、シクロホスファミド)の有効性について、これまでリンパ節転移陽性乳がんについては明らかになっていたが、リンパ節転移陰性の高リスク乳がんの治療においても、フルオロウラシル(商品名:5-FUなど)を含む標準療法とされるFACレジメン(フルオロウラシル、ドキソルビシン、シクロホスファミド)よりも高い奏効率が認められた。欧州で行われた「GEICAM 9805」試験からの報告で、スペイン・Hospital General Universitario Gregorio MaranonのMiguel Martin氏らが、追跡期間中央値77ヵ月時点の無病生存率、全生存率、毒性について解析した。NEJM誌2010年12月2日号掲載より。TACレジメンとFACレジメンに割り付け5年以上追跡第III相オープンラベル無作為化試験として行われたGEICAM 9805試験は1998年に、リンパ節転移陰性の乳がんを有し、再発リスクの高い因子(1998ザンクトガレン基準に準拠)を一つ以上有する女性を対象に、TACレジメンとFACレジメンの効果を比較検討することを目的にスタートした。スペイン、ドイツ、ポーランドからの被験者1,060例が、術後補助療法として3週間ごとに1回×6サイクルの、TACレジメン(ドセタキセル75mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、シクロホスファミド500mg/m2)もしくはFACレジメン(フルオロウラシル500mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、シクロホスファミド500mg/m2)を受ける群に割り付けられ追跡された。主要エンドポイントは、5年以上追跡調査後の無病生存率とされ、全生存率と毒性などが副次エンドポイントに含まれた。TAC群の再発リスク32%減少を示す追跡期間中央値77ヵ月時点において、無病生存率は、TAC群(539例)が87.8%と、FAC群(521例)の81.8%よりも高く、TACレジメンによって再発リスクが32%減少していたことが示された(ハザード比:0.68、95%信頼区間:0.49~0.93、log-rank検定によるP=0.01)。TACレジメンの有効性は、ホルモン受容体の状態、閉経の有無、高リスク因子の数にかかわらず一貫していた。生存率は、TAC群95.2%、FAC群93.5%で、両群間の差は有意ではなかったが(ハザード比:0.76、95%信頼区間:0.45~1.26、非階層化ベースでのlog-rank検定によるP=0.29)、イベント数はTAC群が26件と、FAC群34件より少なかった。有害事象グレード3または4の発生率は、TAC群28.2%、FAC群17.0%だった(P<0.001)。なお当初プロトコルにはなかったが、試験開始後、TAC群で発熱性好中球減少症が25%以上にみられたため、登録230例以後の被験者には、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の予防的投与を行うようプロトコルが改定された。TACレジメンの毒性は、それ以後減少していた。(武藤まき:医療ライター)

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ホルモン受容体陽性閉経後乳がん、新たな術後補助療法が確立

ホルモン受容体陽性、リンパ節転移陽性の閉経後乳がんに対する術後補助療法では、化学療法施行後に逐次的にタモキシフェン(TAM、商品名:ノルバデックスなど)を5年間投与する方法が、TAMのみを投与する治療法よりも良好な予後をもたらすことが、アメリカLoyola大学のKathy S Albain氏らBreast Cancer Intergroup of North Americaの研究グループが実施した第III相試験で明らかとなった。TAMはホルモン受容体陽性閉経後乳がんに対する術後補助療法のgold standardであり、化学療法との併用療法は理論的には有望視されていたもののコンセンサスが得られていなかった。最近のメタ解析において、術後TAM+化学療法は閉経前乳がんでは大きな生存べネフィットが示されたが、閉経後乳がんにおける有用性は境界域にとどまったという。Lancet誌2009年12月19/26日合併号(オンライン版2009年12月10日号)掲載の報告。TAM+化学療法併用はTAM単剤よりも、逐次投与は同時投与よりも優れるか?研究グループは、ホルモン受容体陽性閉経後乳がんに対する術後補助療法としてのTAM単剤とTAM+化学療法の併用療法の有用性を比較し、併用療法のうち逐次投与と同時投与ではどちらが優れるかを検討するオープンラベル無作為化比較第III相試験(SWOG-8814, INT-0100)を実施した。ホルモン受容体陽性でリンパ節転移陽性の閉経後乳がん患者が、術後補助療法としてTAM単剤を投与する群(毎日、5年間)、シクロホスファミド+ドキソルビシン+5-FU(CAF、4週毎、6コース)とTAM(毎日、5年)を逐次投与する群(CAF→T群)、CAFとTAMを同時投与する群(CAFT群)に2:3:3の割合となるよう無作為に割り付けられた。主要評価項目は、TAM単剤群に対するTAM+化学療法併用群(CAF→T群、CAFT群)の無病生存率(DFS)の優位性、および同時投与(CAFT群)に対する逐次投与(CAF→T群)のDFSの優位性とした。副次評価項目は、全生存率(OS)および安全性であった。アンスラサイクリン系薬剤ベースレジメン施行後に、逐次的にTAMを5年間投与する方法が有用1989年6月~1995年7月までに1,558例が登録され、1,477例(95%)が評価可能であった。TAM単剤群に361例、CAF→T群に566例、CAFT群には550例が割り付けられた。フォローアップ期間中央値8.94年(最長13年)の時点で、DFSイベント数はTAM単剤群が179件、CAF→T群が216件、CAFT群は242件であった。10年DFSは、TAM+化学療法併用群(CAF→T群、CAFT群)が57%と、TAM単剤群の48%よりも有意に優れた(補正Cox回帰分析によるハザード比:0.76、p=0.002)。10年OSは併用群が65%、TAM単剤群が60%であり、ハザード比は0.83、p値は境界域(p=0.057)で有意差は認めなかった。併用群間の比較では、CAF→T群の10年DFSは60%、CAFT群は53%と、逐次投与群でより良好な傾向が見られたものの有意差はなかった(ハザード比:0.84、p=0.061)。10年OSはそれぞれ68%、62%であり、両群で同等であった(ハザード比:0.90、p=0.30)。CAF→T群はTAM単剤群よりも10年DFS(ハザード比:0.70、p=0.0002)、10年OS(同:0.79、p=0.032)がともに有意に優れたが、CAFT群とTAM単剤群間には10年DFS(同:0.83、p=0.062)、10年OS(同:0.87、p=0.22)ともに有意差はなかった。TAM単剤群に比べTAM+化学療法併用群で頻度の高い有害事象として、好中球減少、口内炎、血栓塞栓症、うっ血性心不全、白血病が認められた。著者は、「ホルモン受容体陽性、リンパ節転移陽性の閉経後乳がんの術後補助療法は、TAMのみを5年間投与する方法よりも、アンスラサイクリン系薬剤をベースとする化学療法を施行後に逐次的にTAMを5年間投与する方法が、リスク/ベネフィット比が優れる。しかし、アンスラサイクリン系薬剤ベースレジメンが無効なサブグループが存在する可能性も示唆される」と結論し、「術後補助療法の有用性を評価するには、長期にわたるフォローアップが不可欠なことを、この試験は示している」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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抗悪性腫瘍剤ドキシルに効能追加承認

ヤンセンファーマ株式会社は、4月22日付で抗悪性腫瘍剤「ドキシル注20mg」(一般名:ドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤)の追加効能となる「がん化学療法後に増悪した卵巣がん」の承認を取得したと発表した。現在、ドキシル注20mgは米国を含む約80ヵ国以上で発売され、再発卵巣がんに対する適応は1999年に米国にて初めて承認を取得して以降、約75ヵ国で承認されている。また、同剤は国内において2007年1月にエイズ関連カポジ肉腫に対する適応を取得し、発売中である。詳細はプレスリリースへhttp://www.janssen.co.jp/inforest/public/home/?paf_gear_id=2100029&paf_gm=content&paf_dm=full&vid=v11&cid=cnt57254

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国内における抗悪性腫瘍薬ヨンデリスのライセンス契約が締結

大鵬薬品工業株式会社は31日、スペインのファーママー社と抗悪性腫瘍薬「ヨンデリス」の日本での開発販売に関し、3月29日にライセンス契約を締結したと発表した。ヨンデリス(トラベクテジン)はカリブ海産のホヤ類から発見された海洋産物起源の新規抗悪性腫瘍薬。ヨンデリスはDNAに結合し、細胞分裂、遺伝子転写、DNA修復機構を妨げる。2007年9月に欧州委員会から進行または転移性軟部組織肉腫の治療薬として販売承認を受け、2008年にはペグ化リポソームドキソルビシンとの併用で再発卵巣癌を適応として、EMEA(欧州医薬品審査庁)とFDA(米国食品医薬品局)に承認申請を提出しているという。今回の契約により、大鵬薬品は日本でのヨンデリスの開発・販売のライセンスを受け、ファーママー社に契約一時金、および達成報奨金、日本での売上に応じたロイヤリティを支払う。また同剤の日本での開発販売費用は大鵬薬品が負担するという。http://www.taiho.co.jp/corporation/news/2009/20090331.html

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【医師・薬剤師限定】乳がんにおける術前・術後補助化学療法ではACよりもECを選択?

癌情報のスペシャルサイト「実践!化学療法」において開催中のアンケート「手術可能乳がんにおけるACおよびEC療法の選択ついて」の途中経過によると、AC(ドキソルビシンADM+シクロフォスファミドCPA)よりもEC(エピルビシンEPI+シクロフォスファミドCPA)をメインに使うとの回答が多くなっている。現状の投票状況は、ACが3割弱なのに対して、ECが6割に及んでいる。また、ACとECを選択する場合、もっとも重視する項目としては慣れ(経験の多さ)」「副作用の少なさ」が多く選ばれている。先生のご意見はどうでしょうか?アンケートはこちらhttp://www.carenet.com/oncology/chemo/cngpage/c_bc090319.html

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抗HIV薬インテレンス錠発売

ヤンセンファーマ株式会社は19日、HIV-1感染症に適応を有する抗HIV薬「インテレンス錠100mg」(一般名:エトラビリン、以下インテレンス)の発売を開始すると発表した。同剤は昨年12月25日に承認を取得し、本年1月16日に緊急薬価収載された。インテレンスは、J&Jグループの研究開発会社であるティボテック社が開発をすすめてきた多剤耐性ウイルスにも効果の高い非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)の新しい抗HIV薬。同剤の発売により同社のエイズ関連製品は、抗HIV薬「プリジスタ錠300mg」(一般名:ダルナビル、適応症:HIV感染症)、抗悪性腫瘍剤「ドキシル注20mg」(一般名:ドキソルビシン塩酸塩、適応症:エイズ関連カポジ肉腫)を含め計3剤となった。詳細はプレスリリースへhttp://www.janssen.co.jp/inforest/public/home/?paf_gear_id=2100029&paf_gm=content&paf_dm=full&vid=v11&cid=cnt54720

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