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遺伝子型ガイドのP2Y12阻害薬選択は本当に無効なのか?(解説:中川義久氏)-1288

 血小板凝集では、周囲からの刺激に反応してADPが血小板から放出され、これが血小板のADP受容体P2Y12を介してさらなる血小板凝集の連鎖を引き起こす。この受容体へのADPの結合を阻害し、血小板の凝集と血栓の形成を抑制する代表的な薬剤がチエノピリジン系抗血小板薬である。BMSが導入された時期には、第1世代チエノピリジン系抗血小板薬のチクロピジンのみであった。現在では副作用の発生頻度がチクロピジンよりも少ない第2世代チエノピリジン系薬剤であるクロピドグレルが多く使用されている。クロピドグレルは肝臓のCYP2C19で代謝されて活性化するが、CYP2C19の遺伝子多型により薬効が異なる。代謝能の低い遺伝子型である機能喪失型(loss-of-function:LOF)を持つ患者では効きが弱い、すなわち血小板凝集が十分に抑制されない。プラスグレルは第3世代のチエノピリジン系薬剤である。チカグレロルはADP受容体阻害薬ではあるが、チエノピリジン系ではなく、シクロペンチルトリアゾロピリミジン系薬剤に分類される。この新規のADP受容体阻害薬である、プラスグレルとチカグレロルは、CYP2C19遺伝子多型による低反応性はない。 PCI後の抗血小板薬の選択を、CYP2C19のLOFの有無に基づいて行う「TAILOR-PCI試験」の結果が2020年8月25日付のJAMA誌に掲載された。これは3月のACC.20/WCCのLate-Breaking Clinical Trialsセッションで発表された内容が論文化されたものである。 遺伝子型ガイド群ではCYP2C19のLOF保有者にはチカグレロルを、従来治療群にはクロピドグレルを投与している。LOF保有者のみを解析対象としている。全患者にアスピリンが投与され、DAPTが継続されている。12ヵ月時点の心血管死・心筋梗塞・脳卒中・ステント血栓症・重度虚血再発の複合で定義される主要評価項目は、遺伝子型ガイド群で4.0%、従来治療群で5.9%に認められ、ハザード比:0.66、p=0.06と有意差はなかった。副次評価項目である出血イベントにも有意差は認められなかった。本研究の公式の解釈は、遺伝子型ガイドのP2Y12阻害薬の選択戦略は無効ということになる。 しかし、本当に遺伝子型ガイドによる個別化した治療戦略に意味がないと言い切ってもよいであろうか? 本試験の後付け解析ではあるが、初期3ヵ月に限ればハザード比:0.21、p=0.001と、遺伝子型ガイドが主要評価項目の発生を8割近く抑制している。イベント発生のリスクの高い時期でなければ差異は表出されない可能性がある。この研究が計画されたのは2012年であり、2013~18年と6年間も時間を要している。この間にDESは進化し、植込み技術の向上も相まってステント血栓症は激減した。このイベント率の低下によって研究デザインのパワーが不足することになった可能性もある。 PCI術後にDAPTを中止し単剤とする場合に、アスピリンを中止しADP受容体阻害薬のみを継続する方向への動きがある。またDAPT期間そのものが短縮化している。その代表的な研究がSTOPDAPT-2試験(Watanabe H, et al. JAMA. 2019;321:2414-2427.)である。単剤投与であれば、一層と遺伝子型ガイドによって有効な薬剤を選択する価値が高まる可能性もある。 少なくとも、この「TAILOR-PCI試験」の結果から、遺伝子型ガイドによるP2Y12阻害薬を選択する治療戦略には意味がないと、結論付けることはできない。CYP2C19のLOF保有者が多いとされる日本から決着をつける研究が望まれる。

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抗血小板薬単剤療法はアスピリン単独かP2Y12阻害薬単独か?(解説:上田恭敬氏)-1275

 脳心血管疾患患者の2次予防としての抗血小板薬単剤療法は、アスピリン単剤とP2Y12阻害薬単剤のいずれが優れているかを、メタ解析によって検討した研究が報告された。1989年から2019年までに報告された9個のRCTが解析に含まれており、P2Y12阻害薬としてはチクロピジン、クロピドグレル、チカグレロルが含まれている。観察期間は3〜36ヵ月のものが含まれている。 心筋梗塞の発生率については、P2Y12阻害薬単剤群で低くなったが、全死亡、心血管死亡、脳卒中、出血イベントについては、群間差がなかった。結果は、P2Y12阻害薬の種類によらず同じであった。よって、2次予防としては、アスピリン単剤よりもP2Y12阻害薬単剤のほうがやや優れているという結果となった。ただし、sensitivity analysisとして、解析に含まれた9個のRCTの1つであるCAPRIE試験を除外すると、心筋梗塞発生率についての差はなくなるとしている。 この結果の解釈においては、多くの点について注意を払う必要がある。著者らはメタ解析の限界について触れているが、ほかにも、P2Y12阻害薬の効果が人種や体重、遺伝子多型などによって異なる可能性や、出血イベントの人種による特性の違いや、年代による他の薬物療法の違いなど、多くの疑問点が残っている。P2Y12阻害薬単剤群で、出血イベントが多くないのに心筋梗塞予防効果が強いという結論についても、定義や統計上の問題ではないのかと疑いたくなる。 P2Y12阻害薬は、種類と投与量が決まって初めて効果が決まるため、このように「P2Y12阻害薬単剤群」として一律に扱うべきものではない。同じ薬でも投与量を2倍にすれば、結果はまったく異なるだろう。本試験にプラスグレルは含まれていないが、含まれていたとしても、その結果から日本人用に設定された欧米とは異なった投与量のプラスグレル単剤療法の効果について推定することはできない。 すなわち、対象集団を決めて、薬剤の種類・投与量を決めて、RCTを実施することで初めて、その効果を正しく比較できるだろう。

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テーマ、デザインともに価値を見いだせない(解説:野間重孝氏)-1233

 この研究デザインについてはpre-studyとも言える論文(Qaderdan K, et al. Am Heart J. 2015;170:981-985.)で説明されていると言うのであるが、元論文に当たってみても著者らが言うような明確といえるほどの説明はなされていない。この種の評論を書くと意地悪ジイさん扱いされてしまいそうであることを覚悟して書き込ませていただくと、最近の論文は研究デザインとその意味付けといった最も重要な部分や統計処理などを○○参照とかappendix参照などで済ませているケースが目立つ。それでその○○なりappendixに当たってみると―予想通りというか―説明不足であったり、非常にわかりづらかったりするのである。また、appendixだけで70~80ページなどというものも珍しくない。多くの雑誌でページ数や構成に厳しい注文が出されることが原因の1つであるようだ。これは執筆者の皆さんというより雑誌編集者の皆さんへ苦言を呈したい。 上記はさておき、この論文で行われた研究内容自体は決して難解なものではなく、70歳以上の高齢者のNSTEMI患者を対象として、クロピドグレル投与群とチカグレロル/プラスグレル投与群に無作為に分け、1年間フォローしたというものである。 疑問点はなぜ上記のような分け方がなされたのかという点にあるのだが、この点について著者らは何も説明していない。クロピドグレル、プラスグレルはいずれもチクロピジンと同じチエノピリジン系に属する薬剤であり、P2Y12に不可逆的に結合することで血小板凝集を抑制する薬剤である。この系統の薬剤はいわゆるプロドラッグで、肝臓で代謝を受けることにより効果を発揮する。ここでクロピドグレルがCYP2C19の多形性に大きく影響されるのに対して、プラスグレルは小腸のカルボキシエステラーゼに続いて複数の肝臓の代謝酵素(CYP3A、CYP2B6、CYP2C9、CYP2C19)によって速やかに代謝され活性化するため、効果の個体差が小さいことに加え、効果発現までの時間が大幅に短縮されていることに大きな違いがある。しかしながら、両薬がいずれもチエノピリジン系に属する薬剤であることには変わりはない。 一方チカグレロルはcyclo pentyl triazolo pyrimidine(CPTP)系に分類される薬剤で、チエノピリジン系薬剤との大きな違いは自身が活性体であって代謝を受けることなく効果を発揮すること、P2Y12への結合が可逆的である点にある。このため効果の発現が速やかであるとともに、中止により比較的短期間で血小板機能が回復することが利点である。しかしこの有利な特徴の反面、1日2回投与が必要であること、出血合併症の頻度がやや高いこと、呼吸困難等の副作用が比較的高頻度で生じることが欠点とされ、実際わが国の標準プロトコールではDAPTにおいて「何らかの理由で他の抗血小板薬が使用できない場合」に限定されて使用許可がなされている(ただし欧州ではクロピドグレルより優先順位が高く設定されている)。 上記より疑問点は容易に浮かび上がると思う。なぜクロピドグレルvs.チカグレロル/プラスグレルというデザインがなされたのかという点である。本研究では結果としてプラスグレルがチカグレロル/プラスグレル群の5%にしか投与されなかったことで、偶然クロピドグレルvs.チカグレロルの図式が成立したかに見えるのであるが(5%といえども決して無視できない数字だという意見は当然ある)、これは当初からのデザインによるものではない。さらにチカグレロルに出血性合併症が多いことはすでにPLATO試験、PEGASUS試験で明らかにされていることであり、とくに目新しい結果ではない。呼吸困難が問題になることも、ある程度当初からわかっていたことだったといえる。さらに上記のようにプラスグレルの作用には個人差があり、これがかえって結果に対して有利に働いた可能性も指摘されなくてはならないのではないだろうか。 大変にぶしつけな書き方になってしまい申し訳ないが、評者はこの研究については研究テーマ、デザイン両観点から価値を見いだすことができない。

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第14回 治療編(1)薬物療法【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第14回 治療編(1)薬物療法今回は、治療編として薬物療法に焦点を当てて解説していきたいと思います。「痛み」の原因の分類で、炎症性疼痛があります。何らかの原因で炎症症状が発現し、それによって発痛物質が作り出されると、それが神経の痛み受容器を刺激する結果として、患者さんは痛みを訴えて受診されます。末梢性炎症性疼痛に対する治療薬として使用されるのが、NSAIDs、ステロイド性抗炎症薬です。アセトアミノフェンはNSAIDsとは異なる作用機序ではありますが、比較的よく用いられております。痛み治療第1段階の薬物療法3種まず、痛み治療の第1段階で頻繁に用いられているNSAIDsから説明しましょう。NSAIDs(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)1)作用機序アラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase:COX)系の働きを抑制することで、プロスタグランジン(prostaglandin:PG)E2の生産を減少させ、抗炎症作用、血管収縮作用などにより鎮痛作用を示します。末梢性に効果を発揮するため、炎症や腫脹が見られる時に、とくに効果があります。2)投与上の注意COXには、全身の細胞に常在する構成型酵素のCOX-1と、炎症によって生じるサイトカインの刺激によって炎症性細胞に発現する誘導型酵素のCOX-2が存在します。COX-1由来のPGが胃粘膜の血流維持や粘液産生増加、腎血流維持に働いており、通常のNSAIDsを使用する場合には、COX-1阻害作用によって胃潰瘍や消化管出血、腎血流障害などを生じる可能性があります。一方、選択的COX-2阻害薬は、COX-2由来の血小板凝集阻止作用を有するプロスタサイクリン産生を減少させ、トロンボキサン(thromboxane:TX)A2の産生を維持するため、血圧上昇や動脈硬化、血栓形成を促進させる可能性があります。そのため、活動性の動脈硬化病変がある不安定狭心症、心筋梗塞、脳血管虚血症状を有する患者さんに投与する場合は、できるだけCOX-2阻害薬を避けることが望ましいです。以下、主なNSAIDsと投与量を示します(図)。画像を拡大するステロイド性抗炎症薬1)作用機序ステロイドはリポコルチンの生合成を促進して、ホスホリパーゼA2の作用を阻害するによって、最終的にCOX-2やサイトカインの生成を抑制し、鎮痛効果を発揮します。2)投与上の注意局所炎症、神経圧迫や神経損傷による急性疼痛に対しては有用ではありますが、慢性疼痛に対する効果の持続は限定されます。経口投与では、プレドニゾロン20~30mg/日で開始し、1週間程度で治療効果が得られなければ、漸次減量していきます。硬膜外腔投与にはデキサメタゾン2~8mg、関節内投与には同0.8~2mgを投与します。アセトアミノフェン1)作用機序NSAIDsとは異なり、中枢系プロスタノイドの抑制、内因性下行性疼痛抑制系の活性化、内因性オピオイドの増加などによる鎮痛機序が推測されています。本薬には末梢性消炎作用は存在しないために、炎症性疼痛に対してはNSAIDsの短期間投与が推奨されています。2)投与上の注意最近、安全性の高さから1日最大投与量が4,000mgと規定されました。しかしながら、最大量のアセトアミノフェンを長期投与する場合には、肝機能への影響が懸念されるため、経時的な肝機能のモニタリングに留意する必要があります。通常開始量は325~500mg を4時間ごと、500~1000mgを6時間ごとに最大量4,000mgとして投与します。高血圧や心筋梗塞、虚血性心疾患、脳卒中、などの心血管疾患系のリスクを有する患者さんで筋骨格系の痛み治療が必要になった場合には、アセトアミノフェンやアスピリンが薦められています。これらが無効な場合にはNSAIDsを考慮します。その際は、プロトンポンプインヒビターなど胃粘膜保護薬を消化管出血の予防に使用します。以上、痛み治療の第1段階における薬物を取り上げ、その作用機序、投与における注意点などを述べました。読者の皆様に少しでもお役に立てれば幸いです。1)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S152-1532)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S1543)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S167

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服薬負担を考慮した剤形・服用回数の変更提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第15回

 今回は患者さんの服薬負担を考慮した処方提案を紹介します。さまざまな薬の剤形や規格を把握している薬剤師だからこそ提案できる場面は多くあります。薬学的な判断を行いつつ、患者さんの想いも実現できるように寄り添いましょう。患者情報90歳、女性(施設入居)体  重:50kg基礎疾患:心房細動、閉塞性動脈硬化症、高血圧症、糖尿病、褥瘡既 往 歴:とくになし直近の血液検査:TG:151mg/dL処方内容1.ジゴキシン錠0.125mg 1錠 分1 朝食後2.エソメプラゾールカプセル20mg 1カプセル 分1 朝食後3.スピロノラクトン錠25mg 2錠 分1 朝食後4.アピキサバン錠2.5mg 2錠 分2 朝夕食後5.トコフェロールニコチン酸エステルカプセル200mg 2カプセル 分2 朝夕食後6.ニコランジル錠5mg 3錠 分3 毎食後7.イコサペント酸エチルカプセル300mg 6カプセル 分2 朝夕食後8.ポラプレジンク口腔内崩壊錠75mg 2錠 分2 朝夕食後本症例のポイントこの患者さんは、以前より両下肢の冷感と違和感を自覚しており、定期訪問診療で閉塞性動脈硬化症による血流障害を指摘され、イコサペント酸エチル(以下EPA)が開始となりました。EPAには300mgの軟カプセル(直径約18mm)と、300mg/600mg/900mgの3規格の小さな粒状カプセル(直径約4mm)の分包包装があります。今回、軟カプセルが処方されたのは、いつもの定期薬と一包化することで服薬アドヒアランスに影響を与えることなく治療が可能と判断されたためです。処方提案と経過しかし、実は患者さんはこれ以上薬を増やすことが嫌で、大きい薬は服用が難しいということを話されていました。また、併用注意のアピキサバンを服用していることから、EPA1,800mg/日では出血に関わる副作用を助長する可能性があり、開始用量も慎重に検討したほうがいいと考えました。そこで、患者さんの想いに沿って、負担の少ない剤形と用法用量への変更を医師に提案することにしました。医師への疑義照会を電話で行い、アピキサバンの出血リスクからEPAは900mg/日に減量し、患者さんの心理的負担を軽減するために小さい粒状カプセルに変更して1日1回服用にまとめるのはどうか提案しました。その結果、出血リスクを懸念した医師に提案を承認してもらうことができました。現在、患者さんはEPA900mgを夕食後に1包服用しており、薬剤は増えたものの問題なく服薬を続けて症状は改善傾向にあります。

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short DAPT vs.standard DAPTの新展開:黄昏るのはアスピリン?クロピドグレル?(解説:中野明彦氏)-1170

はじめに 本邦でBMSが使えるようになったのは平成6年、ステント血栓症予防には抗凝固療法(ワルファリン)より抗血小板剤:DAPT(アスピリン+チクロピジン)が優れるとわかったのはさらに数年後だった。その後アスピリンの相方が第2世代のADP受容体P2Y12拮抗薬:クロピドグレルに代わり、最近ではDAPT期間短縮の議論が尽くされているが、DAPT後の単剤抗血小板薬(SAPT)の主役はずっとアスピリンだった。そして時代は令和、そのアスピリンの牙城が崩れようとしている。 心房細動と異なり、ステント留置後の抗血栓療法には虚血リスク(ステント血栓症)と出血リスクの交差時期がある。薬剤溶出性ステント(DES)の進化・強化、2次予防の浸透などによる虚血リスク減少と、患者の高齢化に代表される出血リスク増加を背景に、想定される交差時期は前倒しになってきている。最新の欧米ガイドラインでは、安定型冠動脈疾患に対するDES留置後の標準DAPT期間を6ヵ月とし、出血リスクに応じて1~3ヵ月のshort DAPTをオプションとして認めている。同様に急性冠症候群(ACS)では標準:12ヵ月、オプション:6ヵ月である。もちろん日本循環器学会もこれに追従している。 しかし2018年ごろから、アスピリンに代わるSAPTとしてP2Y12拮抗薬monotherapyの可能性を模索する試験が続々と報告されている。・STOPDAPT-21):日本、3,045例、1 Mo(→クロピドグレル)vs.12 Mo、all comer(ACS 38%)、心血管+出血イベント・出血イベントともにshort DAPTに優越性・SMART-CHOICE2):韓国、2,993例、3 Mo(→クロピドグレル)vs.12 Mo、all comer(ACS 58%)、MACCEは非劣性、出血イベントはshort DAPTに優越性・GLOBAL-LEADERS3):EUを中心に18ヵ国、1万5,968例、1 Mo(→クロピドグレル、ACSはチカグレロル)vs.12 Mo DAPT→アスピリン、2年間、all comer(ACS 47%)、総死亡+Q-MI・出血イベントともに非劣性チカグレロルのmonotherapy チエノピリジン系(チクロピジン、クロピドグレル、プラスグレル)とは一線を画するCTPT系P2Y12拮抗薬であるチカグレロルは、代謝活性化を経ず直接抗血小板作用を発揮するため、作用の強さは血中濃度に依存し個体差がない。またADP受容体との結合が可逆的なため薬剤中断後の効果消失が速い。DAPTの一員としてPEGASUS-TIMI 54・THEMIS試験などで重症安定型冠動脈疾患への適応拡大が模索されているが、現行ガイドラインではACSに限定されている。 今回のTWILIGHT試験はPCI後3ヵ月間のshort DAPT(アスピリン+チカグレロル)とstandard DAPTの比較試験で、SAPTとしてチカグレロルを残した。前掲試験と異なる特徴は、・虚血・大出血イベントを合併した症例を除外し、3ヵ月後にランダム化したランドマーク解析であること・all comerではなく、虚血や出血リスクが高いと考えられる症例・病変*に限定したこと・3分の2がACSだがST上昇型心筋梗塞は含まれていないなどである。*:年齢65歳以上、女性、トロポニン陽性ACS、陳旧性心筋梗塞・末梢動脈疾患、血行再建の既往、薬物療法を要する糖尿病、G3a以上の慢性腎臓病、多枝冠動脈病変、血栓性病変へのPCI、30mmを超えるステント長、2本以上のステントを留置した分岐部病変、左冠動脈主幹部≧50%または左前下行枝近位部≧70%、アテレクトミーを要した石灰化病変 結果、ランダム化から1年間の死亡+虚血イベントは同等(short DAPT:3.9% vs.standard DAPT:3.9%)で、BARC基準2/3/5出血(4.0% vs.7.1%)・より重症なBARC基準3/5 出血(1.0% vs.2.0%)はほぼダブルスコアだった。 筆者らは「PCI治療を受けたハイリスク患者は、3ヵ月間のDAPT(アスピリン+チカグレロル)を実施した後、DAPT継続よりもチカグレロル単剤に切り替えたほうが総死亡・心筋梗塞・脳梗塞を増やすことなく出血リスクを減らすことができる」と結論付けた。日本への応用、そしてその先は? しかしどこか他人事である。 第1に、ACSに対するクロピドグレルvs.チカグレロルのDAPT対決(PLATO試験4))に参加できず別に施行したブリッジ試験(PHILO試験5))が不発に終わった日本では、チカグレロルの適応が大幅に制限されている。したがって、われわれが日常臨床で本試験を実感することはできない。 第2に出血イベントの多さに驚く。3ヵ月のDAPT期間内に発生した死亡+虚血イベントが1.2%だったのに対し、BARC 3b以上の大出血は1.5%だった。出血リスクの高い対照群や人種差のためかもしれないが、本来なら虚血イベントが上回るはずのPCI後早期に出血イベントのほうが多かったのでは本末転倒である。ランダム化後の出血イベント(上記)も加えると、さらに日本の臨床試験とかけ離れてくる。PHILO試験が出血性イベントで失敗したことを考えれば、プラスグレルのように日本人特有の用量設定が必要なのでは、と感じる。 とはいえ、脳出血や消化管出血のリスクが付きまとうアスピリンに代わるP2Y12拮抗薬monotherapyは魅力的なオプションではある。PCI後の抗血小板療法は血栓症予防と出血性合併症とのトレードオフで論ずるべき問題であり、症例や使用薬剤によって虚血リスクと出血リスクの交差時期(至適short DAPT期間)は変わるに違いない。さらに、どのP2Y12拮抗薬がmonotherapyとして最適なのか? 2次予防としても有効なのか? アスピリンのように「生涯」継続するのか? 医療経済的に釣り合うのか? 最初からmonotherapyではダメなのか? …検討すべき問題は山積するが、新しい時代に本試験が投じた一石は小さくない。

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2次予防のアスピリン、投与すべき患者は?~MAGIC試験

 心血管イベントの再発予防のための低用量アスピリンの使用は、リスク-ベネフィットのバランスに基づくべきである。今回、国際医療福祉大学臨床医学研究センター/山王病院・山王メディカルセンター脳血管センターの内山 真一郎氏らが、わが国の全国規模の多施設共同前向き研究であるMAGIC(Management of Aspirin-induced Gastrointestinal Complications)試験において、心血管疾患の既往のある患者のアスピリン長期使用による心血管イベントと出血イベントの発生率を調査した。その結果、虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作、冠動脈疾患、複数の心血管疾患の既往のある患者ではベネフィットがリスクを上回っていたが、心房細動または静脈血栓塞栓症の既往のある患者ではリスクとベネフィットが同等であった。Heart and Vessels誌オンライン版2019年8月24日号に掲載。 本研究は、血栓塞栓リスクのある心血管疾患(虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作、冠動脈疾患、心房細動、静脈血栓塞栓症)の既往があり、アスピリン(75~325mg)を服用している日本人患者1,506例を対象とし、重大な心血管イベント(虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作、冠動脈疾患、心血管死、血管形成術またはステント留置、心血管疾患による入院)および出血イベント(入院と輸血のいずれか、もしくは両方とも必要な大出血)の発生について1年間調査した。対象患者を、虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作(540例)、冠動脈疾患(632例)、心房細動/静脈血栓塞栓症(232例)、これらの2つ以上に該当(101例)の4つのカテゴリーに分け、心血管イベントおよび出血イベントの年間発生率を評価した。 主な結果は以下のとおり。・心血管イベントは61例(3.82%/年)、出血イベントは15例(0.93%/年)に発生した。・各カテゴリーにおける心血管イベントおよび出血イベントの年間発生率は、虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作では2.81%および0.93%、冠動脈疾患では5.32%および0.75%、心房細動/静脈血栓塞栓症では1.15%および1.15%、2つ以上に該当した患者では6.44%および0.91%であった。

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short DAPTとlong DAPTの新しいメタ解析:この議論、いつまで続けるの?(解説:中野明彦氏)-1105

【はじめに】 PCI(ステント留置)後の適正DAPT期間の議論が、まだ、続いている。 ステントを留置することで高まる局所の血栓性や五月雨式に生じる他部位での血栓性イベントと、強力な抗血小板状態で危険に晒される全身の出血リスクの分水嶺を、ある程度のsafety marginをとって見極める作業である。幾多のランダム化試験やメタ解析によって改定され続けた世界の最新の見解は「2017 ESC ガイドライン」1)に集約されている。そのkey messageは、・安定型狭心症は1~6ヵ月、ACSでは12ヵ月間のDAPTを基本とするが、その延長は虚血/出血リスクにより個別的に検討されるべきである(DAPT score・PRECISE DAPT score)。・ステントの種類(BMS/DES)は考慮しない。・DAPTのアスピリンの相方として、安定型狭心症ではクロピドグレル、ACSではチカグレロル>プラスグレルが推奨される。 一方本邦のガイドラインは、安定型狭心症で6ヵ月、ACSでは6~12ヵ月間を標準治療とし、long DAPTには否定的である。 言うまでもないが、DAPTの直接の目的はステント血栓症予防である。ステント血栓症の原因は複合的で、病態(ACS vs.安定型狭心症)のほかにも、患者因子(抗血小板薬への反応性・糖尿病・慢性腎臓病・左室収縮能など)、病変因子(血管径・病変長・分岐部病変など)、ステントの種類(BMS、第1世代DES、第2世代以降のDES)、さらには手技的因子(stent underexpansion、malappositionなど)が関連すると報告されている。そしてステント血栓症は留置からの期間によって主たるメカニズムが異なり、頻度も変わる2)。1年以降(VLST:Very Late Stent Thrombosis)の発生頻度は1%をはるかに下回り、in-stent neoatherosclerosisが主役となる。またVLSTの数倍も他病変からのspontaneous MIが発症するといわれている。こうした点がDAPTの個別的対応の背景であろう。【本メタ解析について】 ステント留置後のadverse eventは時代とともに減少し、したがって数千例規模のRCT でもsmall sample sizeがlimitationになってしまう。これを補完すべく2014年頃からRCTのメタ解析が年2~3本のペースで誌上に登場してきた。本文はその最新版で、これまでで最多の17-RCT(n=46,864)を解析した。DAPTはアスピリン+クロピドグレルに限定し、単剤抗血小板療法(SAPT)はアスピリンである。従来の「short DAPT=12ヵ月以内」を細分化して「short(3~6ヵ月)」と「standard(12ヵ月)」に分離、これを「long(>12ヵ月)」と比較する3アーム方式で議論を進めている。 その結論・主張は、(1)総死亡・心臓死・脳卒中・net adverse clinical eventsはDAPT期間で差がない(2)long DAPTはshort DAPTに比して非心臓死や大出血を増やす(だからlong DAPTは極力避けたほうがいい)(3)short DAPTとstandard DAPTではACSであってもステント血栓症や心筋梗塞に差がない(だからshort DAPTでいい) などである。しかし一方、long DAPTの超遅発性ステント血栓症・心筋梗塞抑制効果についてはほとんど触れられておらず、short DAPTに肩入れしている印象を受ける。筆者が、おそらく虚血患者に接する機会が少ないであろう臨床薬理学センター所属のためだろうか? 本メタ解析の構図は「DAPTに関するACC/AHA systematic review report(2017)」3)に似ていて、これに2016年以降発表されたRCTを中心に6報加えて議論を展開している。long DAPTほど血栓性イベント抑制に勝り出血性合併症が増える結論は同じだが、ACC/AHA reportはテーラーメードを意識してかリスクによる選択の余地を強調している。 さらにいくつか気になる点がある。評者もご多分に漏れず統計音痴なので、その指摘は的を射ていないかもしれないけれど、できれば本文をダウンロードしてご意見をいただきたい。 たとえば、MIやステント血栓症はlong DAPTで有意に抑制しているのに心臓死はshort DAPTで少ない傾向にあったこと。あるいは非心臓死(有意差あり)・心臓死のOdd Ratioが共に総死亡より大きかったこと。これらは各エンドポイントが試験により含まれたり含まれなかったりしていたためらしい。 また、たとえば各試験でのevent ratioが大きく異なること。同じshort vs.standard DAPTの試験でも12ヵ月MI発症率が0%(IVUS-XPL)~3.9%(I-LOVE-IT2)と幅がある。調べてみるとperiprocedural MIを含めるかどうかなど、そもそも定義が異なるようである。 そして、例えばランダム化の時期である。short vs.standardのほとんどがPCI前後に振り分けているのに対し、standard vs.longはすべてで急性期イベントが終了した12ヵ月後に振り分けランドマーク解析している。これでもshort vs.longの図式が成り立つのだろうか?【まとめ】 DAPT有用性の議論はあのゴツイPalmaz-Schatz stentから始まった。第1世代DESも確かに分厚かった。しかし技術の粋を集め1年以内のステント血栓症が大幅に減少した現時点において、short DAPTにシフトするのは異論がないところであろう。とりわけcoronary imagingを駆使してoptimal stentingを目指すことができる本邦においては、なおさらである。しかし一方、心筋梗塞二次予防に特化したメタ解析4)では、long DAPTが致死性出血や非心臓死を増やすことなく心臓死やMI・脳卒中を有意に抑制した、との結果だった。 ステント血栓症が減ったからこそ、二次予防に抗血小板薬(DAPT)をどう活かすかという視点も必要であろう。解析の精度はさておき「short term DAPT could be considered for most patients after PCI with DES」と結論付けたSAPT(アスピリン)vs.DAPT(アスピリン+クロピドグレル)の議論はそろそろ終わりにしても良いのではないだろうか。 現在はアスピリンの代わりにクロピドグレルやP2Y12 receptor inhibitor(チカグレロル)によるSAPT、少量DOACの有効性も検討されて、PCI後の抗血栓療法は新しい時代に入ろうとしている。 木ばかりでなく森を見るようにしたいと思う。

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PCI技術の爛熟の時代―「不射の射」を目指す(解説:後藤信哉氏)-1086

 PCI日本導入直後のころ、1枝病変を対象に心臓外科のback upの下、POBAをしていた。5%が急性閉塞して緊急バイパスとなった。ステントの導入により解離による急性閉塞から、2週間以内のステント血栓症に合併症がシフトした。頑固なステント血栓症もアスピリンとチクロピジンの抗血小板薬併用療法により制圧された。安全性の改善されたクロピドグレルが標準治療となると、長期に継続する抗血小板療法による出血合併症が血栓イベントよりも大きな時代を迎えた。 PCIをしている先生方には外科的な直感があるのであろう。本邦のSTOPDAPT、 STOPDAPT-2、今回のSMART-CHOICEなどアスピリン早期中止の有用性を示唆する論文が多く発表されている。DAPTの長期継続の有無にかかわらず、総死亡を含む一次エンドポイントの発現率は3%程度にすぎない。また総死亡に占める心血管死亡の比率も半分を割っている。 歴史的に考えると、1)急性期に5%が急性冠閉塞したPOBA時代、2)亜急性期の10%近いステント血栓症を2~3%に低減させたステントと抗血小板薬併用療法の時代が終わり、3)補助的な抗血小板療法が不要となったPCI技術の爛熟の時代に入っている可能性が高い。 筆者は中島 敦の『名人伝』を愛読している。弓の名人を目指して鍛錬する若者が、「君は射の射をして不射の射を知らない」と諭され、修行の後「弓の名人になって」ついに弓を忘れるという物語である。PCIの黎明期に多くのinterventionistが技を極める鍛錬をした。これからは「不射の射」として心血管病の一次予防に注力する必要がある。

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コラテジェン:ヒト肝細胞増殖因子遺伝子治療薬

国内初の遺伝子治療薬が承認コラテジェン(一般名:ベペルミノゲン ペルプラスミド)は、ヒト肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子治療薬であり、国内初の遺伝子治療薬である。2019年3月、「標準薬物治療の効果が不十分で、血行再建術が難しい慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症・バージャー病)における潰瘍の改善」を効能・効果とする再生医療等製品として承認を得た。慢性動脈閉塞症におけるアンメットニーズ閉塞性動脈硬化症は、下肢動脈の狭窄、閉塞により血流障害を来たし、歩行時の足のしびれや痛みなどさまざまな症状を引き起こす。バージャー病は、閉塞性血栓血管炎とも呼ばれ、四肢の主幹動脈に閉塞性の血管全層炎を来す疾患であり、とくに下肢動脈に好発して、虚血症状として間欠性跛行や安静時疼痛、虚血性皮膚潰瘍、壊疽を引き起こす。難病として国の特定疾患に指定され、特定のヒト白血球抗原(HLA)との関連が疑われるが正確な原因は不明であり、本邦の患者数は約7,000例と推計されている。閉塞性動脈硬化症の重症虚血肢においては、下腿~足部動脈の閉塞性病変に対するカテーテルによる血管内治療の成績は不良で、再治療が必要となる場合が多い。加えて、狭窄部位が広範囲にわたる場合や完全閉塞では適応となるものは少ない。また、バージャー病では、末梢ほど病変が強くなるため、血行再建術の開存率は不良で、それ自体が施行不可能な場合が多い。そのため、重症虚血肢において、潰瘍及び安静時疼痛を改善し、QOLを向上させる治療へのメディカルニーズは高いと考えられている。コラテジェンによる虚血症状改善のメカニズムコラテジェンは、HGFをコードする遺伝子(cDNA)を含む、5,181 塩基対からなるプラスミドDNAである。HGFは血管内皮細胞の増殖作用を有し、血管新生において重要な役割を果たす。コラテジェンを虚血病巣付近の筋肉内に投与すると、虚血肢の筋肉細胞内で転写・翻訳されてHGF を産生・分泌し、血管新生が促進されて虚血部位における血管数と血流が増加し、虚血症状が改善される。コラテジェンは閉塞性動脈硬化症/バージャー病による潰瘍を改善国内の閉塞性動脈硬化症を対象とする二重盲検比較試験(ASO第III相試験)、バージャー病を対象とする一般臨床試験(TAO一般臨床試験)、および両病態を対象とする臨床研究(先進医療B臨床研究)では、コラテジェン初回投与から12週後の評価対象潰瘍の完全閉鎖率は、閉塞性動脈硬化症で50.0%(7/14例)、バージャー病では60.0%(6/10例)であったのに対し、閉塞性動脈硬化症のみで検討されたプラセボ投与の完全閉鎖率は20.0%(1/5例)であった。また、閉塞性動脈硬化症とバージャー病を対象とする探索的な医師主導臨床研究(大阪大学臨床研究)では、2つの用量を投与し、12週後の潰瘍改善(潰瘍の長径が75%以下に縮小)の割合は63.6%(7/11例)であった。慢性動脈閉塞症に対するコラテジェンの投与条件今回の条件及び期限付承認では、1)重症化した慢性動脈閉塞症に関する十分な知識・治療経験を持つ医師のもとで、創傷管理を複数診療科で連携して実施している施設で本品を使用すること。2)条件及び期限付承認後に改めて行う本品の製造販売承認申請までの期間中は、本品を使用する症例 全例を対象として製造販売後承認条件評価を行うこと(目標症例数:本品投与群120 例、比較対照群80 例)。が承認の条件とされており、その期限は5年となっている。今後の慢性動脈閉塞症診療への期待重症下肢虚血の治療選択肢は少なく、本薬は新たな選択肢として期待される。また、本薬の臨床導入をきっかけに、さらなる遺伝子治療薬の開発が進展する可能性がある。なお、アンジェス社は、2019年5月、販売開始時期の延期を発表しており、現時点で発売時期は未定である。

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脳梗塞リスク有するAF患者への経皮的植込み型頸動脈フィルターの有用性は?【Dr.河田pick up】

 脳梗塞リスクが高いものの、経口抗凝固薬が適さない心房細動(AF)患者に対しては、異なった脳梗塞予防の戦略が必要となる。両側の頸動脈に直接植込むことができる、新規のコイル型永久フィルターは、径が1.4mm以上の塞栓を捕捉するようにデザインされている。 この論文は、Icahn School of Medicine at Mount Sinai(米、ニューヨーク)のVivek Reddy氏とHomolka Hospital(チェコ、プラハ)のPetr Neuzil氏がJACC誌オンライン版5月3日号に発表したものである。米国では新規のデバイスに対するFDAの審査が厳しく、治験に時間がかかる。そのため、不整脈分野においては最近、Reddy氏が新しいデバイスの試験をチェコで行うことが多く、このデバイスについても同様に、チェコをはじめとする欧州で治験が行われている。初のヒト臨床試験における頸動脈フィルター植込み これは多施設非無作為化試験で、頸動脈フィルターに関する初めてのヒト臨床試験である。両側の頸動脈にフィルターを安全に植込み、使用できるかを評価することを目的に実施された。対象は、心房細動を有し、CHA2DS2-VAScスコアが2以上、経口抗凝固薬が内服できず、総頸動脈サイズが4.8~9.8mm、30%を超える動脈狭窄が存在しない患者。超音波ガイド下で直接経皮的に頸動脈の穿刺を24ゲージの針で行うと、電動式のユニットがフィルターを押し出して頸動脈で広がるようになっている。患者は、アスピリンとクロピドグレルを3ヵ月内服し、その後はアスピリンを継続した。主要評価項目は、(1)手技の成功(両側の頸動脈に適切にフィルターが留置されること)、(2)30日間の主要有害事象、死亡、脳梗塞、出血、フィルターの移動、頸動脈の血栓や狭窄の発生の有無。頸動脈エコーは、手技後、退院前、1週間後、1、3、6、12ヵ月後に実施された。脳梗塞の発症なし、4例で血栓捕捉 試験には、4施設から25例が参加した。平均年齢は71±9歳、CHA2DS2-VASc スコアは4.4±1.0、参加者の48%に塞栓の既往があった。手技の成功率は92%(25例中23例)で、1例は片側の留置のみに終わった。デバイスや手技に関連した重大事象は認められなかった。穿刺部位における軽度の血腫が5例(20%)に認められた。平均6ヵ月のフォローアップ後、脳塞栓の発症は認められなかった。4例で、フィルターでの血栓捕捉が認められたが、それに伴う症状は認められなかった。全例において、ヘパリンの皮下投与により塞栓は溶解した。1例で、2度の非総頚動脈領域における軽度の脳梗塞が認められた。 筆者らは、脳梗塞予防のための植込み型頸動脈フィルターは、技術的に可能で、安全に実施できると結論付けている。■関連記事発作性心房細動に対する第2世代クライオバルーンの長期成績【Dr.河田pick up】心房細動患者への抗凝固薬とNSAID併用で大出血リスク上昇【Dr.河田pick up】スマートウオッチによる自動心房細動検知の精度は?【Dr.河田pick up】心房細動、サイナスになっても 脳梗塞リスク 高いまま/BMJ

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CABG施行中の揮発性麻酔薬、臨床転帰を改善するか/NEJM

 待機的冠動脈バイパス移植術(CABG)中の麻酔では、揮発性麻酔薬による吸入麻酔は、静脈麻酔薬のみを用いる全静脈麻酔と比較して、1年時の死亡を抑制しないことが、イタリア・IRCCS San Raffaele Scentific InstituteのGiovanni Landoni氏らが実施したMYRIAD試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年3月28日号に掲載された。CABG施行中の麻酔は、一般に全静脈麻酔または揮発性麻酔薬による吸入麻酔と静脈麻酔薬の併用で導入される。揮発性麻酔薬は心保護作用を有し、CABG施行患者の臨床転帰を改善する可能性が示唆されている。13ヵ国5,400例の単盲検無作為化試験 MYRIAD試験は、13ヵ国36施設が参加したプラグマティックな多施設共同単盲検無作為化試験であり、2014年4月~2017年9月に患者登録が行われた(イタリア保健省の助成による)。 待機的CABGを予定されている5,400例が、揮発性麻酔薬を含む術中麻酔レジメンを受ける群(2,709例、平均年齢62.2歳、女性19.2%)または全静脈麻酔を受ける群(2,691例、62.3歳、18.5%)に無作為に割り付けられた。 揮発性麻酔薬は、セボフルラン(83.2%)が最も多く使用され、次いでデスフルラン(9.2%)、イソフルラン(5.8%)の順であった。全静脈麻酔では、プロポフォール(87.7%)とミダゾラム(32.2%)の使用頻度が高かった。全体の64%でon-pump CABGが施行され、人工心肺を用いた平均時間は79分だった。術後1年時の全死因死亡:2.8% vs.3.0%、中間解析で無効中止を勧告 本研究は、2回目の中間解析時に、データ安全性監視委員会により、無効中止が勧告された。 主要評価項目である術後1年時の全死因死亡(5,353例[99.1%]のデータを使用)には有意差を認めなかった(揮発性麻酔薬群2.8% vs.全静脈麻酔群3.0%、相対リスク[RR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.69~1.29、p=0.71)。 また、術後30日時の全死因死亡(5,398例[99.9%]のデータを使用)にも有意な差はみられなかった(1.4% vs.1.3%、RR:1.11、95%CI:0.70~1.76)。ほかの副次評価項目(1年および30日時の心臓死、30日時の非致死性心筋梗塞と死亡の複合、フォローアップ期間中の再入院、集中治療室入室期間、入院期間)にも、有意な差はなかった。 プロポフォール注入症候群および悪性高熱症の報告はなかった。導入時のアレルギー反応が9例(揮発性麻酔薬群4例、全静脈麻酔群5例)で発現し、重度のプロタミン反応が5例(4例、1例)にみられた。術中に3例が心原性ショックで死亡した。心筋梗塞を含め、ほかの事前に規定された有害事象の頻度は、両群で差はなかった。 著者は、これらの結果に影響を及ぼした可能性のある要因の1つとして、多くの既報の試験とは異なり、off-pump CABGを受けた患者が約3分の1含まれた点を挙げている。

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日本人うつ病に対するω3脂肪酸と心理学的介入

 勤労者における軽度~中等度のうつ病に対し、心理教育とω3多価不飽和脂肪酸(PUFA)の併用療法が有用であるかについて、長崎大学の田山 淳氏らが検討を行った。Journal of Affective Disorders誌2019年2月15日号の報告。 二重盲検並行群間ランダム化比較試験として実施した。対象患者は、ω3脂肪酸を投与する介入群またはプラセボを投与する対照群に割り付けられた。介入群には、15×300mgカプセル/日を12週間投与した。ω3PUFAの1日の総投与量は、ドコサヘキサエン酸(DHA)500mg、エイコサペンタエン酸(EPA)1,000mgであった。治療後のうつ病重症度評価には、ベック抑うつ質問票(BDI-II)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・治療12週間後のBDI-IIスコアは、介入群(t=-7.3、p<0.01)および対照群(t=-4.6、p<0.01)のいずれにおいてもベースラインと比較し有意に低かった。・しかし、両群間の有意な差は認められなかった(0.7、95%CI:-0.7~2.1、p=0.30)。・本研究の限界として、血中ω3脂肪酸濃度が測定されておらず、脱落率も高かった。また、他の地域で一般化できない可能性があった。 著者らは「軽度~中等度のうつ病に対する心理教育とω3脂肪酸の併用療法は、症状改善に寄与するものの、心理教育単独療法と比較し、うつ症状の改善に違いが認められなかった」としている。■関連記事EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすかうつ病にEPAやDHAは有用なのかうつ病補助療法に有効なのは?「EPA vs DHA」

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統合失調症患者のメタボリックシンドロームに対するオメガ3脂肪酸の影響

 統合失調症患者は、ライフスタイルや抗精神病薬の影響によりメタボリックシンドローム(MetS)を発症するリスクが高いと言われている。中国・上海交通大学のFeikang Xu氏らによるこれまでの研究では、MetSを合併した統合失調症患者では、腫瘍壊死因子α(TNF-α)の発現や産生が増加することが示唆されていた。今回著者らは、TNF-αの抑制には、ω3脂肪酸が関連していると言われていることから、MetSを合併した統合失調症患者において、ω3脂肪酸が炎症を緩和し、代謝異常を改善することに役立つかどうかについて検討を行った。Psychopharmacology誌オンライン版2018年12月5日号の報告。 本研究では、統合失調症患者のMetsに対するω3脂肪酸の効果を調査するため、無作為化プラセボ対照試験を実施した。対象は、長期オランザピン治療を行ったMetSを合併した統合失調症患者80例。対象患者は、ω3群(40例)またはプラセボ群(40例)にランダムに割り付けられた。 主な結果は以下のとおり。・MetSを合併した統合失調症患者では、対照群よりもTNF-αレベルが有意に高かった(Z=-4.37、p<0.01)。・本研究完了時、ω3脂肪酸治療とトリグリセライド(TG)レベル減少との間に有意な相関が認められた(F群×時間=13.42、df=1,66、p<0.01)。・ω3脂肪酸治療は、12週間後に、代謝改善とともにTNF-αレベルを減少させた(F群×時間=6.71、df=1,66、p=0.012)。・TNF-αレベルの減少とTG減少には有意な相関が認められた(r=0.38、p=0.001)。 著者らは「MetSを合併した統合失調症患者に対するω3脂肪酸治療は、炎症レベルの低下とともに、TG代謝に有用であることが示唆された」としている。■関連記事統合失調症とω3脂肪酸:和歌山県立医大初回エピソード統合失調症の灰白質に対するω-3脂肪酸の影響EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか

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第13回 魚アレルギー患者はEPA/DHA製剤や魚油サプリを服用できる?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 薬局で勤務していると、魚アレルギーを自認している患者さんに出会う機会があるかと思います。自認と書いたのは、魚アレルギーといっても、実際はアニサキスアレルギーや鮮度の落ちた魚中のヒスタミンによるアレルギー様食中毒である場合もあり、新鮮な魚を食べても起こる本当の魚アレルギーと区別が必要なこともあるためです。このため、自称・魚アレルギーの患者さんからEPA/DHA製剤や魚油サプリメントを摂取してよいかというご質問にはやや答えづらいと思っています。反射的にダメと言ってしまうこともありそうですが、本当に魚アレルギーとEPA/DHA製剤やサプリメントは関連があるのでしょうか。この辺りのエビデンスは豊富ではないようで、思ったようには見つかりませんでしたが、現状調べてみた情報を紹介しますので、参考にしていただければ幸いです。まず、EPA/DHA製剤であるイコサペント酸エチル(商品名:エパデール)とオメガ-3脂肪酸エチル(同:ロトリガ)の添付文書を参照すると、前者には魚アレルギー患者に投与禁忌との記載はなく、後者では「本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者は禁忌」という記載のみで、魚アレルギーとの関連について明示的な記載はありません。魚アレルギーの原因物質は皮に含まれる魚ゼラチンというタンパク質であるとの研究を紹介します1)。この研究では、魚アレルギーを有する小児の魚ゼラチン(1型コラーゲン)に対するIgE抗体の分析を行うため、血清サンプルを以下の3グループから採取しています。1.魚アレルギーを有し、魚肉に特異的IgEを有する10例2.魚肉とウシゼラチンの両方に対するアレルギーおよび特異的IgEを有する2例 3.アトピー性皮膚炎で魚肉に特異的IgEを有する15例 これらのグループの魚ゼラチンに対するIgE抗体をELISAおよびイムノブロッティングを用いて分析したところ、1の群では10例中3例、2の群では全例、3の群では15例中5例が魚ゼラチンに対する特異的IgEを有していました。このことから、魚ゼラチンは魚に過敏な患者さんのアレルゲンである可能性があるという結果が示唆されています。ただし、高純度の医薬品であれば、理論上魚ゼラチンなどの不純物は入らないはずですので、EPA/DHA製剤を服用したところでアレルゲンとなることは考えにくいのではないかと推察できます。明確な関連は不明だが、アレルギー症状が生じた事例も存在サプリメントの場合でも、魚アレルギーを持つ患者6例が、2種類の魚油サプリメントを1時間ごとに経口摂取して皮膚アレルギーテストを行ったところ、いずれも陰性だったという試験もあり2)、かなり関連性は薄いと考えられます。なお、総合医薬品データベースのLexicompにおけるOmega-3-acid ethyl esters(fish oil) の項目では、「Fish allergy: Use with caution in patients with known allergy or sensitivity to fish and/or shellfish.」と記載があり、注意レベルにとどまっています。ただし明確な根拠を示しているコメントではなさそうです。一方で、魚介類アレルギーがある女性の症例報告で、魚油カプセル服用開始4日後に息切れ、胸部圧迫感など重度のアレルギー症状を呈し、中止後5日以内に鎮静化したというケースも報告されています3)。一定の注意を払ってもよさそうですが、明確に関連を語れるほどの根拠とまでは言えず、即時型アレルギーを誘発していない方の服用をストップするほどではないかもしれません。これから服用を開始したいと考える方に関しては、冒頭で述べたように本当は魚アレルギーではない可能性もあるため、アレルギー検査をすすめたり、体内でEPA/DHAに変換されるαリノレン酸を多く含むえごま油やあまに油を提案したりするのもよいかもしれません。1)Sakaguchi M, et al. J Allergy Clin Immunol. 2000;106:579-584.2)Mark BJ, et al. Allergy Asthma Proc. 2008;29:528-529.3)Howard-Thompson A, et al. Int J Clin Pharm. 2014;36:1126-1129.

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TG低下療法によるCVイベント抑制作用が示される:REDUCE-IT/AHA

 スタチン服用下でトリグリセライド(TG)高値を呈する例への介入は、今日に至るまで、明確な心血管系(CV)イベント抑制作用を示せていない。そのような状況を一変させうるランダム化試験がREDUCE-IT試験である。その結果が、米国・シカゴで開催された米国心臓協会(AHA)学術集会の11月10日のLate Breaking Clinical Trialsセッションで報告された。精製イコサペンタエン酸エチル(EPA-E)を用いた服用で、プラセボに比べ、CVイベントリスクは、相対的に25%の有意減少を認めた。スタチン服用下で高TGを呈するCV高リスク例が対象 REDUCE-IT試験の対象は、スタチン服用下でTG「150~499mg/dL」の、1)CV疾患既往例(2次予防:5,785例)、2)CVリスクを有する糖尿病例(高リスク1次予防:2,394例)である。LDLコレステロール(LDL-C)「≦40mg/dL」と「>100mg/dL」例、魚類に対する過敏症例などは除外されている。 平均年齢は64歳、30%弱が女性だった。試験開始時のTG値の平均は216mg/dL、全体の60%が「TG≧200mg/dL」だった。 これら8,179例はEPA-E群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で4.9年間(中央値)追跡された。EPA-EでTGは低下、HDL-Cは増加せず まず脂質代謝の変化を見ると、試験開始1年後、EPA-E群のTG値は175mg/dLへ有意に低下し(p<0.001)、プラセボ群では逆に221mg/dLへ上昇していた(p<0.001)。またHDLコレステロール(HDL-C)は、EPA-E群で39mg/dLへの有意低下と、プラセボ群における42mg/dLへの有意上昇を認めた(いずれもp<0.001)。CVイベント4.9年間NNTは21例 その結果、プライマリーエンドポイントである「CV死亡・心筋梗塞・脳卒中・冠血行再建術・不安定狭心症」の発生率は、EPA-E群で17.2%、プラセボ群で22.0%となり、EPA-E群における有意なリスク低下が認められた(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.68~0.83)。21例でプラセボをEPA-Eに切り替えれば、4.9年間(中央値)に1例でプライマリーエンドポイントを回避できる計算になる。 EPA-E群におけるプライマリーエンドポイント抑制作用は、「2次予防と1次予防」や治療前TG値「200mg/dLの上下」「150mg/dLの上下」、「糖尿病合併の有無」など、さまざまなサブグループで検討しても一貫していた。 有害事象は、EPA-E群で「末梢浮腫」が有意に多く(6.5% vs.5.0%、p=0.002)、同様に「便秘」(5.4% vs.3.6%、p<0.001)、「心房細動」(5.3% vs.3.9%、p=0.003)の発現も、EPA-E群で有意に多かった。一方、「下痢」(9.0% vs.11.1%、p=0.002)と「貧血」(4.7% vs.5.8%、p=0.03)の発現は、EPA-E群で有意に少なかった。 その結果、試験薬服用中止に至った有害事象発現率は、EPA-E群(7.9%)とプラセボ群(8.2%)の間に有意差を認めなかった(p=0.60)。重篤な出血も、EPA-E群2.7%、プラセボ群2.1%で、有意差はなかった(p=0.06)。 本試験はAmarin Pharmaの資金提供を受けて実施された。また発表と同時に、NEJM誌オンライン版で公開された。(医学レポーター/J-CLEAR会員 宇津 貴史(Takashi Utsu))「速報!AHA2018」ページはこちら【J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは】J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

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薬剤耐性てんかん患者に対するEPA、DHAの無作為化二重盲検比較試験

 オメガ3脂肪酸(EPA、DHA)は、神経機能の維持および調整に重要な役割を果たしていると知られており、抗けいれん効果を有するとのエビデンスがある。スーダン・ハルツーム大学のFatma A. S. Ibrahim氏らは、薬物治療抵抗性てんかん患者の発作率に対するEPA、DHAの効果について検討を行った。Epilepsy & Behavior誌オンライン版2018年8月28日号の報告。 薬物治療抵抗性てんかん患者99例(5~16歳:85例、17~45歳:14例)を対象に、二重盲検ランダム化プラセボ対照臨床研究を実施した。対象患者は、DHA群33例(DHA 417.8mg+EPA 50.8mgカプセル)、EPA群33例(EPA 385.6mg+DHA 81.2mgカプセル)、プラセボ群33例(高オレイン酸ヒマワリ油)にランダムに割り付けられ、それぞれ1年間治療を継続した。主要評価項目は、発作率に対する治療効果とした。患者の1ヵ月当たりの発作回数をモデル化するため、ランダム効果負の二項分布回帰モデルを用いた。共変量(性別、年齢、研究参加時の1週間当たりの発作率、発作のタイプ、研究参加時に併用していた抗てんかん薬の数)で調整した後、発作発生率比に対する治療効果を検討した。 主な結果は以下のとおり。・試験を完了した患者は、59例(59.6%)であった。・1ヵ月当たりの平均発作回数は、EPA群で9.7±1.2回、DHA群で11.7±1.5回、プラセボ群で16.6±1.5回であった。・年齢、性別、発作のタイプで調整後の発作発生率比は、プラセボ群と比較し、EPA群で0.61(95%CI:0.42~0.88、p=0.008、42%減少)、DHA群で0.67(95%CI:0.46~1.0、p=0.04、39%減少)であった。・EPA群とDHA群の間で、発作発生率比に差は認められなかった(p=0.56)。・EPA群、DHA群ともに、プラセボ群と比較し、発作のない日数が有意に多かった(p<0.05)。 著者らは「EPAおよびDHAは、薬物治療抵抗性てんかん患者の発作頻度の減少に有効であることが示唆された」としている。■関連記事低用量EPA+DHA、てんかん発作を抑制治療抵抗性焦点性てんかんに対する第3世代抗てんかん薬補助療法の間接比較難治性てんかん重積状態への有用な対処法

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EBMの威力を痛感させたGLOBAL LEADERS試験(解説:後藤信哉氏)-914

 ステント留置後の血栓性閉塞にはアスピリン・チクロピジン併用療法が画期的効果を示した。その後、多くの抗血小板薬が冠動脈インターベンション、急性冠症候群を対象として開発された。血栓イベントを恐れるあまり、欧米では大容量の抗血小板薬が使用され、出血イベントが増えた。その結果、抗血小板薬の早期中止を求めて「必要期間短縮」を目指すランダム化比較試験が計画された。本研究でも12ヵ月のアスピリン・P2Y12受容体阻害薬(クロピドグレルまたはチカグレロル)を標準治療として、アスピリン・チカグレロル1ヵ月使用後、チカグレロル単剤にするプロトコールと比較された。実臨床に近い試験としてエンドポイントは冠動脈の閉塞を反映するQ波性心筋梗塞と総死亡とされた。 世界の実臨床を反映する試験として、試験結果以上にベースラインの各項目が興味深い。登録された症例の半数弱は急性冠症候群であった。70%以上の症例は橈骨動脈アプローチが選択されている。インターベンション施行前から75%程度の症例ではTIMI 3の血流があり、インターベンション後に99%以上になった。カテーテルの術者にとってステント血栓症、Q波性心筋梗塞に興味が集中しがちだが、これらのイベントは総死亡の半数以下であった。総死亡の詳細は示されていない。心血管死亡でなく総死亡であることに注目する必要がある。急性冠症候群、冠動脈インターベンション後の症例は血栓イベントリスクが高いとして抗血小板薬の開発標的となっていた。今回のGLOBAL LEADERS試験は半数に急性冠症候群を選択しても、冠動脈インターベンション後の症例の予後は現在の標準治療にて十分に良好であることを示した。多数の薬剤を開発し、多数のランダム化比較試験を施行した結果、疾病の予後がシステム的に改善された好例である。まさに仮説検証を繰り返し、標準治療をシステム的に改善させたEBMの威力を実感させた試験であった。

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心房細動患者への抗凝固薬とNSAID併用で大出血リスク上昇【Dr.河田pick up】

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は頻繁に使用される薬剤である一方、出血と血栓症のリスクを高める可能性がある。心房細動患者におけるNSAIDsの影響を定量化して求めることを目的として、Yale大学のAnthony P. Kent氏らが行ったRE-LY(Randomized Evaluation of Long Term Anticoagulant Therapy)試験のPost-Hoc解析結果が報告された。Journal of American College of Cardiology誌2018年7月17日号に掲載。RE-LY試験のpost-Hoc解析 RE-LY試験は、1万8,113例の心房細動患者を対象としてダビガトラン(110mgまたは150mgを1日2回)とワルファリンの有効性・安全性を比較した前向き試験で、2009年にNew England Journal of Medicine誌に報告された。 今回のPost-Hoc解析では、治療と独立した多変量Cox回帰解析を用いて、NSAIDsを使用した患者とそうでない患者の臨床成績を比較。相互作用解析は治療に応じたCox回帰分析を用いて求められた。NSAIDsの使用に関しては、時間依存共変量解析がCoxモデルを求めるのに使用された。大出血のエピソードはNSAIDsの使用で有意に上昇 RE-LY試験に組み入れられた1万8,113例の心房細動患者のうち、2,279例がNSAIDsを少なくとも一度、試験期間中に使用した。大出血の頻度はNSAIDs使用例で有意に高かった(ハザード比[HR]:1.68、95%信頼区間[CI]:1.40~2.02、p<0.0001)。 NSAIDsは糸球体濾過量(GFR)を減少させることが知られていて、ダビガトランは80%が腎臓からろ過されるが、NSAIDsの使用はダビガトラン110mg群、150 mg群いずれにおいても、ワルファリン群と比較して大出血のリスクに変化を与えなかった(相互作用のp=ダビガトラン110mg群:0.93、ダビガトラン150 mg群:0.63)。消化管出血はNSAIDs使用例で有意に高かった(HR:1.81、95% CI:1.35~2.43、p <0.0001)。脳梗塞および全身の血栓症もNSAIDs使用例で有意に高かった (HR:1.50、95% CI:1.12~2.01、p=0.007)。NSAIDsの使用による影響、ダビガトランとワルファリンで違いみられず NSAIDs使用例での脳梗塞、全身の血栓症に対する影響は、ダビガトラン110 mg群または150 mg群いずれでもワルファリン群との比較において違いはなかった。(相互作用のp=ダビガトラン110mg群:0.54、ダビガトラン150 mg群:0.59)。心筋梗塞の発生率や全死亡率はNSAIDs使用の有無で違いは認められなかった(HR:1.22、95% CI:0.77~1.93、p=0.40)が、NSAIDs使用例では入院率が高かった(HR:1.64、95% CI:1.51~1.77、p <0.0001)。心房細動患者で抗凝固薬が必要な患者において、NSAIDsの併用には注意が必要 筆者らは結論として、NSAIDsの使用は大出血、脳梗塞、全身の血栓症、入院率の上昇と関連していたと報告している。NSAIDsとの併用においてダビガトラン(110mgまたは150mg)の安全性と有効性は、NSAIDsとワルファリンの併用と比較しても違いがなかったとしている。 今回の研究で、これまでの研究と同様にNSAIDsは無害な薬ではないことが確認され、心房細動で抗凝固薬が使用されている患者においては、必要性を検討すべきであるとも記されている。

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人工関節全置換術後のVTE予防、アスピリンへの切り替えは有効か/NEJM

 股関節および膝関節の人工関節全置換術(THA/TKA)後にリバーロキサバンの短期投与を受けた患者では、その後アスピリンに切り替えても、リバーロキサバンを継続した場合と比較して、症候性静脈血栓塞栓症(VTE)の予防効果に差はないことが、カナダ・ダルハウジー大学のDavid R. Anderson氏らが行ったEPCAT II試験で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2018年2月22日号に掲載された。アスピリンは、安価で、副作用プロファイルが十分に確立されており、THA/TKA後のVTE(近位深部静脈血栓症、肺塞栓症)の予防効果を有する可能性が臨床試験やメタ解析で示されているが、退院後の延長投与の予防効果を直接経口抗凝固薬と比較した試験は、これまで行われていなかった。アスピリンへの切り替えの有用性を無作為化試験で評価 EPCAT II試験は、THA/TKA施行後のVTEの予防として、リバーロキサバンの短期投与を受けた患者において、アスピリンの延長投与の有効性と安全性を評価する二重盲検無作為化対照比較試験である(カナダ保健研究機構の助成による)。 待機的に、片側の初回または再置換(revision)THA/TKAを受ける患者が、術後5日までリバーロキサバン(10mg、1日1回)の投与を受けた後、アスピリン(81mg/日)へ切り替える群またはリバーロキサバンを継続する群にランダムに割り付けられた。TKA例は9日間、THA例は30日間の投与が行われ、追跡期間は90日であった。 有効性の主要アウトカムは症候性VTEであり、安全性の主要アウトカムは出血性合併症(大出血、大出血ではないが臨床的に問題となる出血)であった。VTE発生率:0.64% vs.0.70%、非劣性を確認 2013年1月~2016年4月の期間に、カナダにある15の大学関連医療センターに3,424例(THA:1,804例、TKA:1,620例)が登録され、アスピリン切り替え群に1,707例(THA:902例、TKA:805例)、リバーロキサバン継続群には1,717例(THA:902例、TKA:815例)が割り付けられた。 全体の平均年齢は62.8歳、47.8%が男性であった。初回手術例が90%以上を占め、術後の平均入院期間は3.5日だった。 VTEの発生率は、切り替え群が0.64%(11/1,707例)と、継続群の0.70%(12/1,717例)に比べ優越性は認めなかったが、非劣性が確認された(群間差:0.06ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.55~0.66、優越性:p=0.84、非劣性:p<0.001)。 大出血の発生率は、切り替え群が0.47%(8例)、継続群は0.29%(5例)であり(群間差:0.18ポイント、95%CI:-0.65~0.29、p=0.42)、大出血ではないが臨床的に問題となる出血の発生率は、それぞれ1.29%(22例)、0.99%(17例)であった(群間差:0.30ポイント、95%CI:-1.07~0.47、p=0.43)。 著者は、「症候性VTEの発生率は両群とも低く、ほぼ同じであった」とまとめ、「いくつかの限界はあるが、これらの知見は臨床的に重要である。本試験は規模が大きく、アスピリンのリバーロキサバンに対する非劣性を示すに十分な検出力を持っている」としている。

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