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小細胞肺がんに対するlurbinectedin+ドセタキセルの2次治療、主要評価項目は達成できず(ATLANTIS)/WCLC2021

 lurbinectedinは小細胞肺がん(SCLC)において、3.2mg/m2用量の単剤で、米国で承認されている。 in vitroでは、lurbinectedinとドセタキセルの併用による相乗効果が確認されている。この結果を基に、第I相用量拡大試験が行われ、lurbinectedin 2mg/m2とドセタキセル40mg/m2とトポテカンまたはCAV(シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン)の併用が有望な効果を示した1)。 WCLC2021では、小細胞肺がんに対する、lurbinectedin 2mg/m2とドセタキセル(またはCAV)の併用を評価する第III相試験ATLANTISの結果が発表された。 併用群は対照群に匹敵する有効性を示したが、主要評価項目は達成できなかった。・対象:2次治療のSCLC・試験群:lurbinectedin 2mg/m2 +ドセタキセル40mg/m2 3週ごと・対照群:トポテカン1.5mg/m2day1~5 3週ごとまたはCAV 3週ごと・評価項目:全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・OS中央値はlurbinectedin併用群8.6ヵ月に対し、トポテカン(またはCAV)群は7.6ヵ月であった(HR:0.967、p=0.7032 )。・独立評価委員会評価のPFS中央値は4.4ヵ月対4.0ヵ月であった(HR:0.831、p=0.0437)。・12ヵ月PFS率は10.8%対4.4%であった(p=0.0129)。・全Gradeの有害事象(AE)発現率はlurbinectedin併用群88.4%に対し、トポテカン(またはCAV)群は92.0%であった。・Grade3以上のAEは47.2%対75.4%と、lurbinectedin群ではGrade1~2が多かった。・lurbinectedin併用群で多くみられた有害事象は貧血14.5%、好中球減少37.0%、血小板減少13.1%であった。 lurbinectedinとドセタキセルの併用は主要評価項目は未達であったが、対照群に匹敵する有効性を示した。安瀬寧については、対照群よりも良好な結果を示した。

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デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法が、NSCLC1次治療の生存を改善(POSEIDON)/WCLC2021

 Stage IVの非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)と化学療法の併用、および、同併用への抗CTLA-4抗体tremelimumabの上乗せの評価結果が世界肺癌学会(WCLC2021)で発表された。 試験は無作為オープンラベル国際第III相POSEIDON試験である。その結果、デュルバルマブ、tremelimumabと化学療法の併用が、統計学的に有意に生存を延長したことが示された。・対象:未治療のStage IV NSCLC・試験群: -デュルバルマブ+化学療法*→デュルバルマブ+化学療法(+ペメトレキセド**)(Durv+CT群) -デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法→デュルバルマブ+tremelimumab(+ペメトレキセド)(Durv+T+CT群)・対照群:化学療法(CT群)・評価項目[主要評価項目]Durv+CT群における盲検下独立評価委員会(BICR)判定の無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]Durv+T+CT群におけるBICR判定のPFS、Durv+T+CT群のOS、高TMB(20mut/MB以上)症例のOS*化学療法:ゲムシタビン+シスプラチン(扁平上皮)、ペメトレキセド+カルボプラチン(非扁平上皮)、nab-パクリタキセル(扁平上皮/非扁平上皮)**初回治療でペメトレキセドを用いた症例のみに適用 主な結果は以下のとおり。・対象患者1,013例は、Durv+CT群、Durv+T+CT群、CT群に、1:1:1で無作為に割り付られた。・各群で患者の偏りはなかった。[Durv+CT群]・PFS中央値は、Durv+CT群5.5ヵ月に対し、CT群4.8ヵ月と、Durv+CT群で有意に改善した(HR:0.74、95%CI:0.62~0.89、p=0.00093)。・OS中央値は、Durv+CT群13.3ヵ月に対し、CT群11.7ヵ月と、Durv+CT群の有意な改善は認められなかった(HR:0.86、95%CI:0.72~1.02、p=0.07581)。・全奏効率(ORR)は、Durv+CT群41.5 %に対し、CT群は24.4%であった(OR:2.26)。[Durv+T+CT群]・PFS中央値は、Durv+T+CT群6.2 ヵ月に対し、CT群4.8ヵ月と、Durv+T+CT群で有意に改善した(HR:0.72 、95%CI:0.60~0.86 、p=0.00031)。・OS中央値は、Durv+T+CT群14.0ヵ月に対し、CT群11.7ヵ月と、Durv+T+CT群で有意に改善した(HR:0.77、95%CI:0.65~0.92、p=0.00304)。・ORRは、Durv+T+CT群38.8 %に対し、CT群は24.4%であった(OR:2.00)。[安全性]・いずれの群においても、新たな安全性シグナルは認められなかった。・全Gradeの有害事象(AE)発現率は、Durv+CT群96.1%、Durv+T+CT群97.3%、CT群は96.1%であった。Grade3 /4の発現率は、それぞれ、54.8、53.3、51.7%である。・全Gradeの免疫関連AE(imAE)発現率は、Durv+CT群19.2%、Durv+T+CT群33.6%、CT群は5.1%であった。Grade3 /4の発現率は、それぞれ、6.9、10.0、1.5%である。 Durv+CT群においては、PFSは有意に改善したものの、OSは有な改善には至らなかった。一方、Durv+T+CT群においは、PFS、OSともにCT群から有意に改善した。また、どちらの併用群もimAE以外のAE発現率はCT群と同程度であった。 筆者は、化学療法へのデュルバルマブとtremelimumabの併用は、Stage IV NSCLCの1次治療における、新たな選択肢となる可能性がある、と述べている。

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第74回 膵がん治療に欠かせないアブラキサン10月供給停止へ、学会、患者会が他工場製品の緊急承認要望

“末期”となり抗体カクテルも効かなかった菅首相こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。菅 義偉首相が昨年の安倍 晋三前首相に続き、またまた投げ出し退陣をすることになりました。コロナ対策も総じて後手後手でしたが、自身の政権延命策も後手後手の印象で、最後は自分で自分を“詰んで”しまいました。新聞やテレビは、退陣に追い込まれるに至ったいくつかの潮目について解説していましたが、個人的にはコロナ対策で8月2日に政府が打ち出した「新型コロナウイルスの感染者は重症患者を除き自宅療養を基本」とした方針が大きかったと思っています(「第70回 真夏のホラー、コロナ患者「重症者以外自宅療養」方針めぐるドタバタで考えた“野戦病院”の必要性」参照)。この方針は「棄民政策」とまで批判され、その後変更を余儀なくされましたが、「国民の安全、安心」と言いながら、コロナ患者の現状をまったく見ていなかったことが、この一件で明らかになりました。前回に書いた抗体カクテル療法は、発症早期の投与が求められる治療法ですが、“末期”だった自身の政権に効く“特効薬”はもはやなかったようです。今週はコロナを離れ、がん治療の現場を騒がせている抗がん剤のニュースを取り上げます。膵がん患者にとっては死活問題大鵬薬品工業のがん治療薬「アブラキサン点滴静注用100mg」(パクリタキセル アルブミン懸濁型)の供給が2021年10月以降、停滞することが明らかになり、がん治療の現場やがんの患者会では大騒ぎとなっています。この問題、夏の初めころから腫瘍内科医の間では話題となっていたようですが、表沙汰にはなっていませんでした。8月18日、大鵬薬品は「アブラキサン点滴静注用100mg供給に関するお詫び」と題した文書を医療機関向けに出し、「10月以降安定供給に一時的な支障を来す」と公表しました。2日後の8月20日には、全国のがん患者会でつくる「全国がん患者団体連合会」が厚生労働省や大鵬薬品などに対し「出庫調整並びに供給停止に関する要望書」を提出したことで、一般メディアも知るところとなりました。この要望書では、アブラキサンは膵がん、乳がん、胃がん、肺がんの治療のために重要であり、特に膵がんの治療には不可欠で、死活問題になりかねない状況だとして、供給停止に至った理由や対応策、今後の見通しなどについて速やかに情報公開を行うこと、医療機関での在庫を把握して、特に必要とする患者に対して適切に配分されるようにすることなどを求めました。アブラキサンについては、乳がん、胃がん、肺がん(非小細胞肺がん)に関してはパクリタキセルで代用できますが、膵がんでは代用品がありません。国内では年間4万人が使用しており、全アブラキサンの約65%が膵がんに使用されているとのことです。アリゾナ州フェニックスの工場の不具合なぜアブラキサンが供給停止になるのか…。はじめにこのニュースを聞いたときにはコロナの影響かとも思ったのですが、どうもそうではないようです。専門誌の報道やすい臓がんの患者会サイト(PanCAN)などによれば、大鵬薬品の海外生産拠点である米国のAbraxis BioScience社(米Bristol-Myers Squibb社の子会社)のアブラキサンの製造工場(アリゾナ州フェニックス)で製造上での不具合が見つかり、生産が中断したことから海外の供給先の1つである日本への供給が停止した、とのことです。なお、北米(米国、カナダ)とヨーロッパ(英国など)ではアブラキサンの供給停止は起こっておらず、日本への供給ストップは海外供給を担当しているアリゾナ工場の不具合が原因とのことです。日本以外ではオーストラリアでも供給停止となっています。大鵬薬品は供給停止の理由について「米国のメーカーから『製造工程に関する定期的な検証にて再評価が必要となる旨の連絡』があった」と説明していますが、詳しい内容は明らかにしていません。がん関連の6学会が合同声明、胃がん、乳がん、肺がん患者には切り替えを勧めるアブラキサン供給停止問題を受け、がん関連の6学会(日本臨床腫瘍学会、日本癌治療学会、日本膵臓学会、日本胃癌学会、日本乳癌学会、日本肺癌学会)は8月26日、医療関係者に対して合同声明を出しました。現在の状況が続くとアブラキサンの国内の在庫が10月中旬でなくなることが予想され、現時点では供給の目処が立っていないことから、声明では以下の3点を医療関係者に求めました。1.現在アブラキサンによる治療を継続中の患者さんについては、アブラキサンによる治療に効果があり継続中の患者さんを最優先してください。胃癌・乳癌・肺癌患者さんにおきましてはアブラキサンをパクリタキセルに切り替えるなど代替治療を積極的にご検討ください。2.新規に治療を開始する患者さんについては、代替治療への切り替えが困難な膵がん患者さんやアルコール不耐(パクリタキセルへの代替困難)の患者さんの治療を優先ください。胃癌・乳癌・肺癌患者さんにおきましてはアブラキサンをパクリタキセルに切り替える(肺癌、胃癌)か、他の治療法に切り替える(乳癌)など代替治療を積極的にご検討ください。3.アブラキサンはもとより、パクリタキセルなどの代替薬の必要以上の購入はお控えください。膵臓学会は他製造工場の製品の緊急承認求める9月1日には、膵がん治療の専門医の集まりである日本膵臓学会が、厚生労働省と医薬品医療機器総合機構(PMDA)に対してアブラキサンの供給一時停止という事態の打開を訴える要望書を提出しました。要望書では、「アブラキサンはゲムシタビンとの併用で進行膵がんの1次化学療法薬として延命効果が証明され、最も多く用いられている極めて重要な薬剤です。アブラキサンは膵がんにおいて代替薬が無く、供給に支障を来した状況では進行膵がん患者の生命予後に直結する極めて重大な事態となります」と供給停止の深刻さを指摘、その上で、次の2点を要望しました。1.アブラキサン製造所に関する一部変更の緊急承認(今回問題が生じている日本向けアブラキサン製造所以外で製造されたアブラキサンの緊急承認)。2.アブラキサンの海外ジェネリック製品の緊急承認Abraxis BioScience社のアブラキサンの製造拠点は米国イリノイ州メルローズ・パークとアリゾナ州フェニックスの2ヵ所にあります。日本向け製品はフェニックスで製造されており、こちらだけが製造が止まっています。そこでメルローズ・パークで製造されたものを緊急承認してもらうとともに、欧州で流通しているジェネリックも使えるようにしてくれ、という要望です。なお、全国がん患者団体連合会も同様の要望を準備しているとのことです。ファイザーのパクリタキセルも出荷調整へ今回の事態の影響はアブラキサンだけではなく、パクリタキセルにも及んでいます。パクリタキセルを供給するファイザーは8月26日、医療関係者向けに「パクリタキセル点滴静注液の出荷調整のご案内」を出しました。それによると、ファイザーはパクリタキセルを「他社同種同効薬の出荷調整の影響から平常時を大幅に超える需要が想定されるため、既存のお得意様への供給を継続すべく関係卸様への出荷調整を実施」し、「しばらくの間は新規ご採用を辞退する」としています。大鵬薬品お詫び2報でも原因わからず当の大鵬薬品ですが、9月2日にお詫びの第2報を出しました。しかし、ここでも「当該製造拠点にて原因調査およびこれまでに製造した製品への影響度評価を進めております」と、原因は説明されていません。そして、「現在弊社が保有している在庫から鑑み、本製品のメーカー在庫消尽は10 月中旬頃となる可能性が出てまいりました」として、「出庫調整の後、在庫がなくなり次第、供給を一時停止」としています。供給の再開時期については、「グローバル在庫を調整の上、日本市場向け製品の輸入を現在交渉しているところ」とのことです。医薬品供給体制の脆弱さが浮き彫りにそれにしても、米国の1工場の不具合で、がん患者が窮地に追い込まれるとは、日本の医薬品供給体制の脆弱さが改めて浮き彫りになった格好です。日本国内で使用されている薬剤のうち、がん治療に用いられる分子標的治療薬や抗体医薬はその多くが海外から輸入されています。しかも今回のように、1ヵ所の製造所に依存しているケースもあります。アブラキサンについては、フェニックスの工場が停止した場合の対応策についてまったく考えていなかった大鵬薬品の責任は重いと言えるでしょう。他製造工場でつくられたアブラキサンやヨーロッパで流通しているジェネリックの確保が果たして可能なのか、そしてPMDAは緊急承認するのか、今後の展開が気になります。医薬品供給を巡っては、ジェネリックの自主回収(「第53回 まだまだ続く日医工自主回収、ジェネリックが再び「ゾロ」と呼ばれる日」参照)が問題になったばかりですが、海外の製造工場に依存するがん治療薬などについても、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)を策定しておくなど、製薬会社にはしっかりとしたリスクマネジメントを期待したいところです。

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ペムブロリズマブ、MSI-H大腸がんとTN乳がんに適応拡大/MSD

 MSDは2021年8月25日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん(大腸がん)およびPD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんに関する国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを発表した。治癒切除不能な進行・再発MSI-H大腸がんに対する適応拡大について 今回の承認は、化学療法歴のない治癒切除不能な進行・再発のミスマッチ修復(MMR)欠損またはMSI-Highを有する結腸・直腸がん患者307例(日本人22例を含む)を対象とする国際共同第III相試験KEYNOTE-177試験のデータ等に基づく。 同試験において、ペムブロリズマブ群は化学療法群と比較して、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(HR:0.60、95%CI:0.45~0.80)。安全性については、安全性解析対象例153例中、ペムブロリズマブ群で高頻度(10%以上)に認められた有害事象は、下痢(24.8%)、疲労(20.9%)、そう痒症(13.7%)、悪心(12.4%)、AST増加(11.1%)、発疹(11.1%)、関節痛(10.5%)および甲状腺機能低下症(10.5%)であった。PD-L1陽性のHR陰性/HER2陰性の手術不能または再発乳がんに対する適応拡大について 今回の承認は、転移・再発乳がんに対する化学療法歴のない転移・再発または局所進行性のトリプルネガティブ乳がん患者847例(日本人87例を含む)を対象とした国際共同第III相試験KEYNOTE-355試験のデータ等に基づく。 同試験において、ペムブロリズマブ+化学療法(ゲムシタビンおよびカルボプラチン、パクリタキセルまたはnab-パクリタキセル)併用群はプラセボ+化学療法併用群に対して、PD-L1陽性(CPS≧10)患者323例(日本人28例を含む)において、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(HR:0.65、95%CI:0.49~0.86)。安全性については、PD-L1陽性(CPS≧10)患者における安全性解析対象例219例中、ペムブロリズマブ併用群の主な副作用(20%以上)は、貧血(48.9%)、悪心(41.1%)、好中球減少症(39.7%)、脱毛症(34.7%)、疲労(29.2%)、好中球数減少(23.7%)、下痢(21.9%)、ALT増加(21.5%)および嘔吐(20.1%)であった。 なお、PD-L1の発現状況を検査するための体外診断薬として、アジレント・テクノロジー株式会社のPD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」が承認されている。

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ペムブロリズマブ併用、PD-L1陽性進行TN乳がんでOS改善/MSD

 MSDは2021年7月27日、転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)患者を対象として抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)と化学療法との併用療法を評価する第III相KEYNOTE-355試験において、全生存期間(OS)の改善が認められたことを発表した。 同試験の最終解析の結果、PD-L1陽性(CPS≧10)のmTNBC患者に対する一次治療として、ペムブロリズマブと化学療法(ナブパクリタキセルパクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチン)との併用療法は、化学療法単独と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるOSの改善が認められた。なお、米国ではFDAが承認した検査で腫瘍にPD-L1の発現が認められる(CPS≧10)切除不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ乳がんを適応症として、化学療法との併用療法が承認されている。今回のOSの結果は今後主要な学会で発表され、規制当局に提出される予定。 KEYNOTE-355試験は、化学療法歴のない切除不能な局所再発または転移を有する進行トリプルネガティブ乳がんの患者を対象として、ペムブロリズマブと3種の化学療法のうち1種との併用療法をプラセボと3種の化学療法のうち1種との併用療法と比較する2つのパートからなる、第III相無作為化プラセボ対照試験。主要評価項目はPD-L1陽性(CPS≧1およびCPS≧10)の患者およびすべての被験者(ITT集団)におけるPFSおよびOSであった。このほかの評価項目は客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、患者報告アウトカム(PRO)および安全性。 KEYNOTE-355試験のパート2では、被験者847例を2:1の割合でペムブロリズマブ(200mgを3週間毎)と化学療法(ナブパクリタキセルパクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチンから医師が選択)との併用療法、またはプラセボとナブパクリタキセルパクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチンとの併用療法のいずれかに無作為に割り付けた。各群に登録された被験者のうち、CPS≧1のPD-L1陽性患者は約75%(ペムブロリズマブ+化学療法群566例中425例、プラセボ+化学療法群281例中211例)であり、CPS≧10のPD-L1陽性患者は約38%(ペムブロリズマブ+化学療法群566例中220例、プラセボ+化学療法群281例中103例)であった。

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子宮内膜がんに対するペムブロリズマブ+レンバチニブをFDAが承認/メルク・エーザイ

 メルクとエーザイは、2021年7月22日、治療ラインに関わらず全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応なMSI-Highを有さない進行子宮内膜がんに対する抗PD-1抗体ペムブロリズマブとチロシンキナーゼ阻害薬レンバチニブの併用療法の適応について、米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したと発表。 今回の承認は、第III相臨床試験 (KEYNOTE-775 試験/309 試験)の結果に基づいたもの。同試験において、対照薬の化学療法(治験医師選択によるドキソルビシンまたはパクリタキセル)と比較して、同併用療法は全生存期間(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.56~0.84、p=0.0001)、無増悪生存期間(HR:0.60、95%CI:0.50-0.72、p<0.0001)共に有意に延長した。さらに奏効率は30%で、対照群の15%に比べ有意な改善を示した。 根治的治療に不適応な進行性子宮内膜がんの5年生存率は17%と低い。なかでも、全身化学療法後に増悪した患者の治療選択肢は限られているが、今回の承認で、生存期間を延長する新たな治療選択肢が加わった。

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ASCO2021 レポート 消化器がん(肝胆膵がん)

レポーター紹介今年のASCOもCOVID-19の影響でVirtual meetingとなり、2年連続Web開催となった。2021年6月4日から始まったが、いつものようなワクワク感がない。今年は、肝胆膵領域でそこまで面白い演題がなかったこともあるのだが、海外の先生と接する機会もなく質問もできないので、演題を生で聞かなきゃという気持ちに焦りもなく、あとでon demandで見ようという感じになる。また、ASCO期間中に集中して行われていたmeetingも数少なくなり、ASCOが終わって1ヵ月たってもだらだらと行われている感じである。そして、気が付いたらESMO-GI(WCGC)まで終わっているという状況であり、ASCOだという華やかさがなく、寂しさを感じた。やはり顔を見ながら、お互いの意見を突き付けてdiscussionする機会が欲しい。いろんな先生と交流の機会があることで、やる気も高まってくるものである。しかも、昨年、ASCO memberは参加費が不要だったので、今年も不要になることを信じて事前登録もしていなかったため、ASCO当日、慌てて全額を支払い、Virtual meetingに参加することとなった。当日参加は1,395ドルもかかり、非常に痛い出費である。「くっそー、COVIDの野郎め」と八つ当たりしながら、ChicagoでDeep-Dish Pizzaを食べている自分をイメージして、いつものDomino’s Pizzaを食べつつ、今年のASCOを振り返りたいと思う。肝臓がんさて、本題です。まずは肝臓がんから解説します。今年の肝胆膵領域はあまり面白い演題がなかったなというのが本音である。肝細胞がん領域では、Oral presentationに2演題が選ばれていたが、Poster discussionでは1演題も採択されていなかった。また、今年発表されるであろうと期待されていたデュルバルマブ+tremelimumabの第III相試験(HIMALAYA)やペムブロリズマブ+レンバチニブの第III相試験(LEAP-002)、tislelizumabの第III相試験(RATIONALE-301)などの大規模試験の結果を期待していたのだが、報告されなかった。そして、今年も中国からFOLFOX肝動注化学療法の第III相試験が2演題であり、中国1国のみでいくつもの第III相試験を発表しており、どんなに肝細胞がんの患者さんがいるのだろうかと感じずにはいられなかった。進行肝細胞がんに対するオキサリプラチン+フルオロウラシル併用肝動注療法とソラフェニブ療法の比較:ランダム化第III相試験(The FOHAIC-1 study)著者:Ning Lyu, et al.、Oral presentation本試験は、肝内腫瘍量が多い進行肝細胞がん症例に対する1次薬物療法として、FOLFOX肝動注療法の有効性を、ソラフェニブをコントロールとして検証するランダム化第III相試験(FOHAIC-1試験)である。主な適格基準はBarcelona Clinic Liver Cancer(BCLC)Stage BまたはC、Child-Pugh分類A~B7、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)-Performance Status(PS)0~2などで、肝動注群とソラフェニブ群に1:1で割り付けられた。FOLFOX肝動注療法は、オキサリプラチン130mg/m2、ロイコボリン(LV)200mg/m2、5-フルオロウラシル(5-FU)400mg/m2および5-FU 2,400mg/m2 46時間持続投与を3週間ごとに行い、ソラフェニブ群はソラフェニブ1回400mgを1日2回内服した。ソラフェニブ群の全生存期間(OS)の中央値を8.0ヵ月、肝動注群を14ヵ月、検出力90%、両側α=0.05として、36ヵ月間の登録期間、最大60ヵ月の追跡期間として、247例の登録が必要となり、260例の登録を目標症例数として設定された。登録患者は肝動注群(130例)とソラフェニブ群(132例)に割り付けられた。患者背景は両群において有意な差は認めなかった。本試験の治療成績を表に示す。主要評価項目であるOSは、ソラフェニブ群と比べて肝動注群で有意に良好であった。薬物療法によるダウンステージングは、肝動注群で16例(12.3%)、ソラフェニブ群で1例(0.8%)に認めた。また、腫瘍の肝占拠割合が50%以上または門脈本幹に腫瘍栓を有する高リスク群のOSも肝動注群で有意に良好であった。RECISTv1.1による客観的奏効割合(ORR)は肝動注群で有意に良好だった(p<0.001)。薬剤に関連したGrade3以上の有害事象はむしろソラフェニブ群で有意に多く、主な有害事象は、肝動注群のオキサリプラチン投与に伴う腹痛(40.6%)であったが、投与による有害事象で肝動注療法を中止した患者はいなかった。画像を拡大するこのように、肝内病変が進行した肝細胞がん患者を対象として、FOLFOX肝動注療法はソラフェニブと比較した第III相試験において、有意に良好なOSとORRが示された。かなり予後の厳しい肝腫瘍量が50%以上の症例や門脈本幹に腫瘍栓を有する症例でも有効であり、ダウンステージできた症例、局所療法にコンバージョンできた症例も高率に認められ、有害事象も低頻度であり、今後が期待される結果であった。しかし、本試験は中国単施設の結果で、B型肝炎の患者が90%前後を占める対象で行われた試験であり、解釈には注意が必要であることや、現在の標準治療であるアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法と比較してどうなのかなど疑問点も残っており、この試験の結果に基づきFOLFOX肝動注療法が標準治療と位置付けられるまでには至っていない。術前補助療法としてのFOLFOX肝動注療法は、ミラノ基準外の切除可能BCLC Stage A/Bの肝細胞がん患者の予後を改善させた:多施設共同ランダム化第III相試験の中間解析著者:Li S, et al.、Oral presentationミラノ基準外のBCLC Stage A/Bの切除可能肝細胞がんに対して、術前補助療法FOLFOX肝動注療法を行った患者と肝動注療法は行わずに切除した患者の有効性と安全性を、多施設共同ランダム化第III相試験にて検討した。ミラノ基準外の切除可能BCLC Stage A/Bの肝細胞がん患者に対して、術前補助療法としてFOLFOX肝動注療法を施行した群と、術前補助療法を行わずに直接手術を行う群に1:1でランダムに割り付けられた。術前肝動注群は2サイクルのFOLFOX肝動注療法を施行し、忍容性があれば抗腫瘍効果を確認し、完全奏効/部分奏効が得られていれば切除、安定であれば追加の2サイクルの肝動注療法を行い、増悪の場合には次治療へ移行した。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、無再発生存期間(RFS)と安全性とした。切除可能肝細胞がん患者208例が登録され、術前化療群99例、切除先行群100例が解析対象となった。患者背景において、両群間に差は認めなかった。本試験の治療成績を表に示す。術前化療群では、ORR 63.6%、病勢制御割合(DCR)96.0%で、88例(88.9%)で肝切除が施行された。術前化療群は、脈管浸潤の割合が11.4%であり、切除先行群(39.0%)と比べて低値であった。OSとPFSは術前化療群で有意に良好であったが、RFSは両群間に有意差はなかった。FOLFOX肝動注療法群の有害事象は、Grade1を59.6%、Grade2を26.3%に認めたが、Grade3以上の重篤な有害事象は認めなかった。なお、OSとPFSのサブグループ解析では、50歳以下の若い患者や腫瘍が単発である患者、AFPが400ng/mL以上と高い患者、HBV-DNAが低い患者においてより良好な結果が示された。画像を拡大する著者らは、FOLFOXによる肝動注療法は、肝細胞がんに対して効果的で安全であること、ミラノ基準外の切除可能BCLC A/Bの肝細胞がん患者に対して生存期間の延長効果が見込まれることを結論付けた。本試験の結果、肝細胞がんの術前補助療法として、FOLFOX肝動注療法の有用性が示された。この演題のDiscussantは、39%の症例が多発例であり、通常、切除しないような症例が多数含まれていることや中国の5施設の結果であり、B型肝炎の患者が中心である点については注意して解釈すべきであり、日常診療に取り入れる前に世界規模または欧米での検証が必要であろうとコメントしていた。このように、中国からFOLFOX肝動注療法に関連する2演題が発表された。ともに、中国1ヵ国での第III相試験であり、全世界で受け入れられるには、さらなる試験が必要である。しかし、これだけの試験を中国だけで、症例集積できることが驚きである。しかも、この試験のほかにも、昨年、sintilimab+ベバシズマブ-バイオシミラーの第III相試験(ORIENT-32)、donafenibの第III相試験、apatinibの第III相試験など、進行がんでも中国1ヵ国で行った試験の結果が報告されており、計り知れないほど患者さんがいて、臨床試験に参加してくれる環境ができていることを考慮すると、今後の肝細胞がんの薬物療法の開発において、中国の存在が重要になってくることが改めて予想された。また、この数年、アジアを中心に肝細胞がんに対する肝動注療法の有用性を示唆する結果が報告されてきており、肝細胞がんの薬物療法において、肝動注療法が再度、見直される日が来る可能性も十分にあることが示された。余談であるが、Q&Aセッションで、抗がん剤の投与方法についてDiscussionがあった。通常、米国では肝動注を行う場合に抗がん剤が100mL程度注入できるポンプを皮下に埋め込んで投与を行うことが多い(ポンプは結構な大きさで、皮下に埋められる米国人患者もすごいのではあるが…)。中国ではポンプの合併症はどうかという質問があり、演者らはポンプを使用していないことを説明し、腫瘍の多いところにカテーテルを挿入して投与しているとのことであった。柔軟に対応が可能で、より効率よく抗がん剤が投与できることを解説していたが、では、カテーテルを留置せず、どうやって2日間のFOLFOXを投与しているのか、私には謎であった。質問できる知り合いの先生が中国にはいなかったため答えはわからないのであるが、おそらく3週に1回、血管造影を行い、カテーテルを挿入した後は2日間、動かずに安静にして投与しているのかなと勝手に想像しているところである。胆道がん胆道がんでは、ナノリポソーマルイリノテカン(Nal-IRI)+5-フルオロウラシル(5-FU)+ロイコボリン(LV)と5-FU/LVを比較したランダム化第II相試験がOral presentationで1演題、取り上げられていた。非常に期待できる2次治療のレジメンが報告されたが、遺伝子異常に基づく分子標的治療薬の開発に移行していた胆道がんが、また細胞障害性抗がん剤の開発に戻るのかなと、少し不安も隠せなかった。ゲムシタビン+シスプラチン併用療法後の転移性胆道がん患者に対するリポソーム型イリノテカンとフルオロウラシル、ロイコボリンの併用療法:多施設ランダム化比較第IIb相試験(NIFTY試験)著者:Yoo C, et al.、Oral presentation切除不能・転移性胆道がんに対してゲムシタビン+シスプラチン療法(GC)後に進行した症例の2次治療の標準治療は確立していない。ABC-06試験によって、2次治療としてFOLFOX療法を行うことで、積極的な症状コントロールのみを行った患者と比べて、OSが延長したことが示されたが、まだその治療成績は十分とは言い難い。ゲムシタビン耐性の膵がんに対するナノリポソーマルイリノテカン(Nal-IRI)+5-FU/ロイコボリン(LV)療法は、NAPOLI-1試験の結果、プラセボと比較してPFSとOSの延長が示された。胆道がんでも本レジメンによる治療が有効である可能性がある。1次治療でGC療法を行った転移性胆道がん患者を対象として、2次治療としてNal-IRI+5-FU/LVと5FU/LVを比較した多施設共同非盲検ランダム化比較第IIb相試験(NIFTY試験)が行われた。対象は、1次治療でGC療法を行って病勢の進行が確認された胆道がん患者174例であった。患者は、Nal-IRI(70mg/m2、90分)+5-FU(2400mg/m2、46時間)/LV(400mg/m2、30分)を2週に1回投与する群と、5-FU(2400mg/m2、46時間)/LV(400mg/m2、30分)を2週に1回投与する群に、1:1でランダムに割り付けられた。主要評価項目は盲検下の独立中央判定委員会によるPFSとして、副次評価項目は担当医師によるPFS、OS、ORR、安全性などであった。症例数設定は、Nal-IRI+5-FU/LV群のPFS中央値を3.3ヵ月、5-FU/LV群の中央値を2ヵ月、検出力80%、両側α=5%、ハザード比0.6で有意差が検出できるように設定し、総数174例が必要と判断された。患者背景において、両群に差は認めなかった。本試験の治療成績を表に示す。主要評価項目である独立中央判定委員会によるPFSはNal-IRI+5-FU/LV群で有意に良好であった。副次評価項目である担当医師によるPFSやOSもNal-IRI+5-FU/LV群で有意に良好であった。独立中央判定委員会によるORRは両群で有意差を認めなかったが、担当医師判定では統計学的な有意差を認めた。安全性について、好中球減少症と疲労は、5-FU/LV群と比較してNal-IRI+5-FU/LV群に多く認められたが、膵がんに対して行われたNAPOLI-1試験の結果と同様の結果であった。画像を拡大するNal-IRI+5FU/LV療法は、1次治療でGC療法を行った転移性胆道がん患者に対してPFS、OS、ORRを有意に改善させた。Nal-IRI+5-FU/LV療法の有害事象は十分に管理可能で、膵がんに対するNAPOLI-1試験で示された安全性と同様の結果であった。今回の検討は韓国のみで行われた臨床試験であり、全世界に一般化できる結果ではないが、この試験の統計学的事項は十分な検出力があり、PFSやORRも中央判定で行われており、抗腫瘍効果も十分に評価できる。この試験の結果から、Nal-IRI+5-FU/LV療法はGC療法で増悪した進行胆道がん患者に対する標準治療の1つとして考慮されるべきであると著者らは結論していた。確かに、本試験の結果はNal-IRI+5-FU/LV療法は、GC療法の2次治療としてABC-06試験で優越性が示されたFOLFOXレジメンよりも良好なPFS、OS、ORRが示されており、かなり期待できるレジメンである。また、ランダム化第II相試験ではあるが、第III相試験と遜色のない試験デザインで行われている。演者であるYoo先生は知り合いなので、直接、試験デザインについて聞いてみたところ、症例数設定は第III相試験としても十分であるが、主要評価項目としてPFSを選択したので、第IIb相試験としたとコメントがあった。なるほど、第IIb相試験というあまり聞き慣れない相にしているのはそういうことであったか、と。そして、Yoo先生は、第III相試験と宣言して行えばよかったなと後悔されていた。しかし、仮に本試験が第III相試験であったとしても、韓国1ヵ国の試験であり、アジアの結果を米国のFDAや欧州のEMEAが受け入れるかどうかは微妙である。また、本試験でOSでも有意差があるといっても、PFSが主要評価項目であるランダム化第II相試験であり、OSを主解析として行った試験ではないため、この試験結果をもって標準治療とするには時期尚早と考える。今後、Nal-IRI+5-FU/LVとFOLFOXのどちらが良いのかを明らかにする検討も必要であり、IDH1変異に対するIDH阻害剤、FGFR変異に対するFGFR阻害剤など、actionableな遺伝子変異を有する患者において、どちらを先行して治療すべきかなども明らかにする必要があると思われる。膵がん膵がんでは、Oral presentationに1演題も取り上げられていなかったが、Poster discussionでは6演題、取り上げられていた。膵がんにおいては薬物療法も停滞期で、なかなか次の良い薬剤が登場してこない状況である。今回のASCO2021で何らかの目を見張る結果が報告されることを期待したが、まだ突破口が見えていない現状であった。その中でも、やはり日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)からの発表などいくつか知っておいてほしい結果があるので、取り上げて解説する。局所進行膵がんに対するmodified FOLFIRINOXとゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法の無作為化比較第II相試験(JCOG1407)著者:Ozaka M, et al.、Poster discussionFOLFIRINOX療法とゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法(GEM+nab-PTX療法)は、それぞれProdige4-ACCORD11試験およびMPACT試験においてゲムシタビン単剤と比較して優越性を示したレジメンである。どちらも遠隔転移膵がんのみを対象とした試験であり、局所進行膵がんに対する評価はこれまで十分に行われていない。今回、局所進行膵がん患者を対象として、FOLFIRINOX療法の5-FUの静注とイリノテカンの投与量を150mg/m2に減量し、有害事象を軽減させたmodified FOLFIRINOX(mFOLFIRINOX)療法とGEM+nab-PTX療法の有効性と安全性を検討し、より有望な治療法を選択することを目的としてランダム化第II相試験(JCOG1407)が行われた。本試験の対象は、全身化学療法歴のない局所進行膵がん患者であり、mFOLFIRINOX療法群とGEM+nab-PTX療法群に1:1でランダムに割り付けられた。主要評価項目はOS(1年生存割合)、副次的評価項目はPFS、無遠隔転移生存期間、ORR、CA19-9奏効割合、有害事象発生割合などであった。症例数設定は、2つの試験治療群のうち、1年生存割合が良好な群を53%、不良な群を63%と仮定し、良好な試験治療を正しく選択できる確率が85%以上となるように算出した。また、2つの試験治療群のうち、良好な群の期待1年生存割合を70%と仮定し、閾値1年生存割合を53%、片側有意水準α=5%、検出力80%とし、必要症例数は120例と算出された。mFOLFIRINOX療法群に62例、GEM+nab-PTX療法群に64例で、計126例が登録された。患者背景では、両群に大きな偏りは見られなかった。JCOG1407試験の結果を表に示す。1年生存割合はGEM+nab-PTX療法群で良好だったが、2年生存割合はmFOLFIRINOX療法群で良好であり、ハザード比は1.162(95%CI:0.737~1.831)であった。PFSと無遠隔転移生存期間は有意差を認めなかったが、mFOLFIRINOX療法群で良好な傾向であった。ORRは有意差を認めなかったが、GEM+nab-PTX療法群で良好であった。CA19-9奏効割合はGEM+nab-PTX療法群で有意に良好であった。有害事象において、Grade3~4の好中球減少/白血球減少はGEM+nab-PTX療法群で高率、全Gradeの悪心/嘔吐や下痢はmFOLFIRINOX療法群で高率に認められたが、治療関連死は見られなかった。画像を拡大する本試験は、局所進行膵がんに対する2つのレジメンを比較した最初のランダム化試験であった。GEM+nab-PTX療法群の1年生存割合はmFOLFIRINOX療法群より良好であったが、mFOLFIRINOX療法群は2年生存割合が高く、その他の項目では良かったり悪かったりとなっており、どちらが良好とは言い難い結果であった。局所進行膵がんに対しては、『膵癌診療ガイドライン2019年版』でも転移性膵がんのエビデンスに基づき、mFOLFIRINOXとGem+nab-PTXが提案されているが、しっかりしたランダム化比較試験は行われていない。今回はJCOG肝胆膵グループで行われたmFOLFIRINOXとGem+nab-PTXを比較するランダム化第II相試験の結果は、主要評価項目である1年生存割合では、Gem+nab-PTXが良好であったが、全体の生存曲線や2年生存割合ではmFOLFIRINOXが優勢であった。下痢、悪心、嘔吐などの消化器毒性はmFOLFIRINOX群で高頻度に認められたが、骨髄抑制や神経障害はGem+nab-PTX群で高頻度に認められており、優劣はつけ難い結果であった。今後、長期間の追跡調査を行い、どちらを選択すべきかを明らかにしていくことが必要である。NRG1融合遺伝子陽性の膵がんや他の固形がんに対するzenocutuzumabの有効性と安全性著者:Schram AM, et al.、Oral presentation膵がんに対するNRG1融合遺伝子に対するzenocutuzumabのpreliminaryな結果が報告されていた。zenocutuzumab(MCLA-128)はADCC活性を持つHER2、HER3を阻害する二重特異性抗体で、HER3にNRG1 fusionのEGF-likeドメインの結合を阻害することで、HER2/HER3の二量体形成を阻害し、下流のPI3K/AKT/mTORシグナルによる腫瘍増殖を阻害する抗体製剤である。NRG1融合遺伝子を有する患者に有効性が期待され、開発が進んでいる。膵がんパートに登録された12例のうち5例(42%)に奏効が得られており、11例中11例全例でCA19-9の50%以上の低下が認められ、7例(64%)においては正常値まで低下したことが報告された。有害事象はGrade1~2であり、重篤な消化器や皮膚、心毒性は認めなかったことが報告され、期待されている薬剤である。膵がんにおけるNRG1融合遺伝子の頻度は1%未満といわれており、非常にまれではあるが、60歳以下の若年者やKRAS wildの患者に多く認められることを手掛かりとして、聖マリアンナ医大と国立がん研究センター東病院を中心に、NRG1のスクリーニングが行われている。術前化学放射線療法が膵がん患者の生存期間を改善させる:多施設共同第III相試験(PREOPANC)の長期治療成績著者:Van Eijck C, et al.、Poster discussion切除可能膵がんまたは切除可能境界膵がんに対して、ゲムシタビンによる術前化学放射線療法は、切除先行と比べて、R0切除割合や無病生存期間を改善させた。生存期間においては良好な傾向は示されていたが、有意な差を認めていなかった。今回、この試験を長期フォローアップすることで、生存期間への効果が検討された。結果を表に示す。R0切除割合やN0切除割合、Intention to treatによるOS、切除できた患者のOS、補助療法を受けた患者のOSにおいて、化学放射線療法群で有意に良好な結果が示された。切除可能膵がんまたは切除可能境界膵がんに対する術前治療の有効性が示されたことにより、日本ではすでに術前治療が標準治療であるが、海外でも術前治療へよりシフトすることが推測された。画像を拡大するまとめ今年のASCO2021では、肝細胞がんでは初回薬物療法として肝動注化学療法、胆道がんでは2次治療としてNal-IRI+5-FU/LV、膵がんでは局所進行膵がんの1次治療としてmFOLFIRINOX/Gem+nab-PTX、切除可能/切除可能境界膵がんに対する術前化学放射線療法など、少し昔の時代に戻ったかのように、主要演題には細胞障害性抗がん剤による治療が席巻していた。しかし、肝胆膵がんでは分子標的治療や免疫チェックポイント阻害薬を中心に治療開発が進んでおり、今後、新たなエビデンスはこれらの治療から生まれてくると思われる。今年のASCOでは世の中を大きく変えるような結果は出てこなかったが、世界的にも注目される重要な学会であり、Web開催であろうと、みんなが参加する学会である。ぜひ来年は、COVID-19が落ち着いて、現地でみんなと一緒にFace to Faceで談笑しながら、肝胆膵のOncologyについて語り合いたいものである。1)Ning Lyu, Ming Zhao. Hepatic arterial infusion chemotherapy of oxaliplatin plus fluorouracil versus sorafenib in advanced hepatocellular carcinoma: A biomolecular exploratory, randomized, phase 3 trial (The FOHAIC-1 study). J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4007)2)Shaohua Li, Chong Zhong, Qiang Li, et al. Neoadjuvant transarterial infusion chemotherapy with FOLFOX could improve outcomes of resectable BCLC stage A/B hepatocellular carcinoma patients beyond Milan criteria: An interim analysis of a multi-center, phase 3, randomized, controlled clinical trial. J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4008)3)Changhoon Yoo, Kyu-Pyo Kim, Ilhwan Kim, et al. Liposomal irinotecan (nal-IRI) in combination with fluorouracil (5-FU) and leucovorin (LV) for patients with metastatic biliary tract cancer (BTC) after progression on gemcitabine plus cisplatin (GemCis): Multicenter comparative randomized phase 2b study (NIFTY). J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4006)4)Masato Ozaka, Makoto Ueno, Hiroshi Ishii, et al. Randomized phase II study of modified FOLFIRINOX versus gemcitabine plus nab-paclitaxel combination therapy for locally advanced pancreatic cancer (JCOG1407). J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4017)5)Alison M. Schram, Eileen Mary O'Reilly, Grainne M. O'Kane, et al. Efficacy and safety of zenocutuzumab in advanced pancreas cancer and other solid tumors harboring NRG1 fusions. J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 3003)6)Casper H.J. Van Eijck, Eva Versteijne, Mustafa Suker, et al. Preoperative chemoradiotherapy to improve overall survival in pancreatic cancer: Long-term results of the multicenter randomized phase III PREOPANC trial. J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4016)

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ASCO2021 レポート 泌尿器科腫瘍

レポーター紹介2021 ASCO Virtual Scientific ProgramCOVID-19の影響で昨年に引き続きバーチャル開催となったASCO2021。この1年でわれわれもバーチャル開催の学会に随分慣れてしまった感があります。将来、現地開催が復活した時にはどのように感じるのでしょうか。本年のPresidential Themeは“Equity: Every Patient. Every Day. Everywhere.”ということで、いまや全世界に蔓延しているCOVID-19を強烈に意識してのことでしょうか。何はともあれ急速に進歩していくがん治療をさらに推進することももちろん重要ですが、時には足下を見直して、がん患者のケア・治療・研究の偏在をなくし、世界中の人々に平等なアクセスを可能にする努力も忘れてはならないことだと思います。さて、Scientific Programの中から注目の演題をピックアップして紹介するこのレポート、前立腺がん領域では昨年に引き続きPSMA-PET関連の重要な報告が、尿路上皮がんと腎細胞がんでも引き続き免疫チェックポイント治療の話題が中心となっています。米国におけるアフリカ系米国人の若年男性におけるPSA検診の増加は前立腺がんの転帰を改善する(Abstract #5004)上記のPresidential Themeに合致するように、racial disparityをテーマとしたアブストラクトが取り上げられています。背景として、アフリカ系米国人の男性は、前立腺がんの罹患率・死亡率ともに多人種に比べて高いことが知られています。つまり、開始年齢や頻度などスクリーニングを強化すべき対象であると考えられます。実際に家族歴などの他のリスク因子も有する場合には、アフリカ系米国人のPSA検診開始推奨年齢は40歳とされています。にもかかわらず、PSA検診に関する研究への参加者におけるアフリカ系米国人の占める割合が低いことなどがしばしば指摘され、本集団に対する適切な受診勧奨の妨げになってきました。今回の研究では55歳未満のアフリカ系米国人男性におけるPSA検診の頻度と診断時の前立腺がんリスクおよび前立腺がん特異的死亡率(PCSM)との関連を調べるために、退役軍人保健局(Veterans Health Administration、退役軍人に対する健康保険プログラムがあるため医療受給に対するバリアが低いこと、病歴情報へのアクセスが可能なシステムが構築されていること、などから本研究のような解析に適している)が有する登録データを用いて、2004~17年に前立腺がんと診断された40〜55歳のアフリカ系米国人男性を特定しました。前立腺がん診断からさかのぼること最長5年間に受けたPSA検診の頻度を算出し、診断時の転移の有無と、PCSMについてその関連を解析しました。前立腺がんと診断されたアフリカ系米国人男性が4,654例特定され、その平均年齢は51.8歳、毎年のPSA検診受診率は平均で53.2%でした。平均値を境にPSA検診受診頻度の高かったグループと低かったグループとに分けて比較すると、低グループでは高グループよりも診断時に転移を有する患者の割合が高かったとのことです(3.7% vs.1.4%、p<0.01)。PSA検診率の増加は診断時の有転移率の低下(オッズ比:0.61、95%信頼区間[CI]:0.47~0.81、p<0.01)およびPCSMのリスクの低下(サブ分布ハザード比:0.75、95%CI:0.59~0.95、p=0.02)と有意に関連していました。若年アフリカ系米国人男性に対するPSA検診は早期前立腺がん検出を促し、その転帰を改善する可能性があるという仮説を支持しています。ただし、前向きコントロール研究ではないこと、過剰診断・過剰治療の問題など、まだ解決すべき課題は残されているといえるでしょう。mCRPCに対するルテチウム-177-PSMA-617の効果:VISION Trial(Late-breaking abstract #LBA4)PSMAを標的にβ線を発する177Luを腫瘍微小環境に送達する標的放射性リガンド療法のmCRPCに対する効果を検証した国際ランダム化非盲検第III層試験(VISION Trial, NCT03511664)の結果が公表されました。対象は少なくとも1剤の新規ARシグナル阻害薬と1剤のタキサン系抗がん剤に抵抗性となったmCRPC患者で、事前に68Ga-PSMA-11 PETでPSMA陽性が確認されました。参加者は標準治療に加えて1回7.4GBqの177Lu-PSMA-617を6週間ごとに6サイクル投与する治験薬群と標準治療のみの群(標準治療群)とに2:1の割合で無作為割り付けされました。主要評価項目は、PCWG3 criteriaに基づき、独立した中央レビューによる画像評価によって判定されたrPFSと、OSでした。計831例が治験薬群(551例)あるいは標準治療群(280例)に割り付けられ、観察期間の中央値は20.9ヵ月でした。治験薬群は、標準治療群と比較して有意に長いrPFSを示しました(rPFS中央値:8.7ヵ月vs.3.4ヵ月、HR:0.40、99.2%CI:0.29~0.57、p<0.001、片側)。OSも治験薬群では標準治療群と比較して有意に延長されました(OS中央値:15.3ヵ月vs.11.3ヵ月、HR:0.62、95%CI:0.52~0.74、p<0.001、片側)。治験薬群ではGrade3以上の有害事象の発生率が標準治療群と比較して高くなりましたが(52.7% vs.38.0%)、治療の忍容性は良好でした。177Lu-PSMA-617治療は忍容性の高いレジメンであり、既存治療に対して抵抗性を獲得したPSMA陽性mCRPC患者において、標準治療単独と比較して、rPFSおよびOSの延長効果を示しました。わが国では、放射性医薬品規制の面で解決すべき課題があるものの、今後、本セッティングにおける標準治療として承認されることが期待されます。mCSPCに対する新規ARシグナル阻害薬治療時代の局所療法:PEACE-1 Trial (Abstract #5000)mCSPC患者に対する局所放射線照射は、低腫瘍量(low metastatic burden)の患者でOSベネフィットを示しており、NCCNガイドラインでも低腫瘍量患者において推奨されています。しかしこれらの根拠となった臨床試験(HORRADやSTAMPEDE)における全身治療はADTが標準でした。しかし現在、リスクにかかわらずmCSPC患者に対する全身治療はADTに新規ARシグナル阻害薬を上乗せすることが推奨されています。PEACE-1試験(NCT01957436, Abstract #5000)は、mCSPC患者に対するベースラインADT治療にアビラテロン(プレドニゾン併用)と局所放射線治療(EBRT)のいずれかあるいは両方を追加することがOSの延長につながるかどうかを、2×2の分割デザインで検証しようというものです。途中ドセタキセルの併用が許容されるなどのプロトコール変更があり、やや複雑となっていますが、基本的なデザインはmCSPC患者をADT治療のみあるいは、アビラテロンとEBRTのいずれかあるいは両方を追加する4群に無作為割り付けするというものです。主要評価項目はrPFSとOSで、今回はEBRTの有無にかかわらず、アビラテロンの有無がrPFSに与える影響を解析した結果が報告されました。アビラテロン(±EBRT)群はADT(±EBRT)群と比較してrPFSを有意に延長(HR:0.54[0.46~0.64]、p<0.0001、中央値2.2年vs.4.5年)し、その効果はドセタキセル併用群でも一貫していました(HR:0.38[0.31~0.47]、p<0.0001、中央値1.5年vs.3.2年)。今回の結果は既存のSTAMPEDE試験の結果などにそれほどの新規知見を加えるわけではありませんが、今後EBRTの有無によるrPFSあるいはOSの延長効果の解析結果が待たれるところです。腎細胞がん患者の術後補助療法としてのペムブロリズマブの効果:KEYNOTE-564 Trial(Late-breaking abstract #LBA5)淡明細胞型腎細胞がん(ccRCC)におけるペムブロリズマブの術後再発予防効果を検証した、プラセボ対照ランダム化二重盲検第III相試験(KEYNOTE-564 Trial, NCT03142334)の結果が公表されました。これまでに、ccRCCにおいて術後補助療法として明確な再発予防効果やOS延長効果を示した薬剤は存在しませんでした。本試験は、組織学的に診断された術後再発リスクの高いccRCC患者を対象として実施されました。術後再発の高リスクは、(1)pT2N0M0でグレード4あるいは肉腫様コンポーネントを有する、(2)pT3-4N0M0(組織学的悪性度は問わない)、(3)pTanyN1M0(組織学的悪性度は問わない)、(4)M1 NED(腎摘除術後1年以内に再発巣あるいは軟部組織転移巣が完全切除され残存病変を認めない)と定義されました。3週ごとのペムブロリズマブあるいはプラセボ投与は術後1年間(計17回投与)続けられました。主要評価項目は無再発生存(DFS)で全生存(OS)は副次的評価項目とされました。計994例がペムブロリズマブ群(496例)あるいはプラセボ群(498例)に割り付けられ、観察期間の中央値(範囲)は24.1ヵ月(14.9~41.5ヵ月)でした。事前に計画されていた第1回目の中間分析で、主要評価項目であるDFSにおいてペムブロリズマブ群の優位性が示されました(両群とも中央値未到達、HR:0.68、95%CI:0.53~0.87、p=0.0010、片側)。24ヵ月での推定DFS率は、ペムブロリズマブ群で77.3%、プラセボ群で68.1%でした。全体として、ペムブロリズマブ群のDFSに対する効果はサブグループ間で一貫していました。OSイベントが観察されたのは51例(ペムブロリズマブ群で18例、プラセボ群で33例)とまだ少なく、両群間のOSに統計学的な有意差は認めませんでした(両群とも中央値未到達、HR:0.54、95%CI:0.30~0.96、p=0.0164、片側)。24ヵ月での推定OSは、ペムブロリズマブ群で96.6%、プラセボ群で93.5%でした。Grade3以上の有害事象の発生頻度はペムブロリズマブ群で32.4%、プラセボ群で17.7%でした。ペムブロリズマブ群における治療関連死亡は報告されませんでした。ペムブロリズマブは、術後再発リスクの高いccRCCの患者において、プラセボと比較して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるDFS延長効果を示しました。OSに関しては追加のフォローアップが計画されています。今回、KEYNOTE-564試験は、RCCの術後補助療法として免疫チェックポイント阻害薬を用いた第III相試験としては初めて主要エンドポイントを満たしました。今後、本セッティングにおける新たな標準治療として期待が持てる結果といえるでしょう。長期フォローアップでOSの延長効果も示すことができるかが重要なポイントであると考えます。また、長期フォローの結果、プラセボ群の無再発生存率がどれくらいでプラトーに達するのか(プラセボ群での無再発生存率が高いということは不必要なアジュバント治療を受ける患者が多いことを示しており、対象患者のさらなる最適化が望ましいということになります)という点にも注目したいと思います。このほか腎がん領域では、上記のほかにKEYNOTE-426試験(NCT02853331)の長期(42ヵ月)フォローアップデータ(Abstract #4500)が公表されました。筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)における選択的膀胱温存療法:3つのP II試験の結果(Abstracts #4503/#4504/#4505)MIBCの標準治療はネオアジュバント化学療法に続く根治的膀胱全摘ですが、以前から膀胱を温存しながら根治を目指す治療が一部患者で可能であることは知られています。しかし、膀胱温存可能な患者の治療前からの予測が難しいこと、臨床的CRの基準が曖昧であること、そして救済膀胱全摘の意義が不明であることなどから、適応の是非が未確定な状態が続いています。今回は3つの第II相試験の結果がOral sessionで報告されています。1つ目はHCRN GU 16-257試験(NCT03558087, Abstract #4503)で、本試験ではシスプラチン適格なcT2-T4aN0M0の膀胱尿路上皮がん患者をエントリーし、ゲムシタビン+シスプラチン(GC)にニボルマブを上乗せしたレジメンを4コース施行後に画像検査(CT/MRI)、尿細胞診、経尿道的生検/切除によって再評価を行っています。いずれの検査でもがんなしと判断された場合(Ta腫瘍の残存は許容)には、cCRと判断しニボルマブを2週間隔で8回投与した後に経過観察となります。主要評価項目はcCRの達成率に加え、cCRによる2年無転移性生存(MFS)の予測能となっています。また、副次的評価項目としてcCRによるMFS予測において初回TUR-BT組織を用いて解析した遺伝子変異プロファイル(TMB、ERCC2変異、FANCC変異、RB1変異、ATM変異)の有用性も評価されました。今回はcCR達成率と1年の中間解析の結果が報告されました。76例(男性79%、年齢の中央値69歳、cT2:56%、cT3:32%、cT4:12%)がエントリーされ、うち64例(84%)が4サイクルのGC+ニボルマブ治療後の再評価を受けました。64例中31例(48%、95%CI:36~61%)がcCRと判定されました。TMB≧10 mutations/Mb(p=0.02)、ERCC2変異(p=0.02)がCRと関連していました。今後より長期の観察に基づくアウトカムに期待を持たせる結果と考えられます。2つ目は放射線治療も組み合わせた、いわゆるTrimodality therapyの第II相試験(NCT02621151, Abstract #4504)で、これもcT2-T4aN0M0のMIBC患者が対象ですが、こちらは膀胱全摘拒否または不耐患者が対象となっています。シスプラチン適/不適は不問でeGFR>30mL/minが条件となっています。治療プロトコールは、ペムブロリズマブの初回投与の2~3週間後にTURによる可及的切除を行い、さらに膀胱に寡分割照射によるEBRT(52Gy/20回、IMRTを推奨)と同時に週2回(×4週間)のゲムシタビン(27mg/m2)と3週ごとのペムブロリズマブを3回投与するというものです。EBRTの12週後に画像検査(CT/MRI)、尿細胞診、経尿道的生検/切除による効果判定を実施します。その後も画像検査(CT/MRI)、尿細胞診、膀胱鏡によるフォローアップを行いました。最初の6例が安全性評価の対象となり、さらに48例が治療効果評価の対象となりました。主要評価項目は2年の膀胱温存無病生存(BIDFS)でした。本研究でも腫瘍検体およびPBMCを用いた解析が行われています。予定されていた54例がエントリーされ、ステージの内訳はcT2が74%、cT3が22%、cT4が4%でした。安全性評価の対象となった最初の6例全例が治療プロトコールを完遂しました。治療効果評価の対象となった48例のうち1例(2%)がEBRTとゲムシタビンを、2例(4%)がゲムシタビンを、4例(8%)がペムロリズマブを主に副作用を理由に中断しました。48例の観察期間の中央値(範囲)は11.7ヵ月(0.6~32.2ヵ月)で、12例(25%)が何らかの様式で再発を来しました(NMIBC 6例、MIBC 0例、所属リンパ節2例、遠隔転移4例)。Grade3以上の有害事象は35%の症例で観察され、ペムブロリズマブに限るとGrade3以上の有害事象発生率は6%でした。ここまでのところ、有害事象は既報と同等で、2年フォローアップの最終解析と、バイオマーカー探索の結果が報告される予定になっています。3つ目はIMMUNOPRESERVE-SOGUG trial試験(NCT03702179, Abstract #4505)で、本試験でもcT2-T4aN0M0の膀胱尿路上皮がんを有し、膀胱全摘拒否または不耐患者が対象となっています。治療プロトコールは、まずTUR-BTを先行し、それに続くデュルバルマブ(1,500mg/body)+トレメリムマブ(75mg/body)を4週間ごとに3回投与しました。治療開始2週間後には、小骨盤に46Gy、膀胱に64~66Gyの線量で正常分割EBRTを開始しています。腫瘍残存あるいは再発例に対しては救済膀胱全摘を推奨しています。主要評価項目は経尿道的生検による筋層浸潤がんの消失によって定義されるCR達成率でした。最初の12例で6例以上がCRを達成した場合にさらに20例を追加する2段階デザインが採用されました。32例がエントリーされ、臨床病期の内訳はT2が28例(88%)、T3が3例(9%)、T4が1例(3%)でした。全例が少なくとも2コースのデュルバルマブ+トレメリムマブ治療を受け、膀胱への照射線量の中央値(範囲)は64Gy(60~65)でした。経尿道的生検によるCR達成率は81%でした。観察期間の中央値(範囲)は6.1ヵ月(2.5~20.1)で、BIDFS、DFS、OSはそれぞれ76%(95%CI:61~95%)、80%(95%CI:66~98%)、93%(95%CI:85~100%)でした。Grade3以上の有害事象は31%の症例で観察されています。前二者に比べてT2症例の割合が比較的高いものの、本レジメンも良好な成績を残しているといえるでしょう。今回の報告のほかにもさまざまなレジメンが膀胱温存療法として試されており、今後どのような治療レジメンが標準治療として残ってくるのか不透明な状態ですが、バイオマーカー探索などにより、対象症例とレジメンの最適化が進めば、MIBC患者にとって福音となることが期待されます。このほか尿路上皮がん領域ではKEYNOTE-052試験(NCT02335424, Abstract #4508)およびKEYNOTE-045試験(NCT02256436, Abstract #4532)の5年フォローアップデータが発表されております。おわりに総じて、前立腺がんではPSMA-PET関連の話題が昨年に引き続き大きなインパクトをもって報告されています。腎がんでは術後アジュバント、尿路上皮がんではネオアジュバントあるいは膀胱温存と、免疫チェックポイント阻害薬を絡めた治療が着実にEarly lineに食い込んできています。とくに尿路上皮がんではそのタイミングや併用薬、放射線治療の有無など、治療プロトコールが多様化しており、今のところは混沌としています。ゲノム関連を中心としたバイオマーカーによる個別化に進むか、それを凌駕する効果的な治療法が開発されるか、いずれにしても今後どのように最適化されてくるのか注視したいと思います。

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化学療法+ニボルマブ+ベバシズマブによる非扁平上皮NSCLC1次治療の成績(ONO-4538-52/TASUKI-52)/Ann Oncol

 非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、ニボルマブとプラチナ含有化学療法およびベバシズマブの併用を評価する国際無作為化二重盲検第III相試験ONO-4538-52/TASUKI-52試験の結果がAnnals of Oncology誌に発表された。TASUKI-52試験のPFS中央値はニボルマブ群12.1ヵ月・対象:未治療のStage IIIB/IVの非扁平上皮NSCLC患者(PD-L1発現問わず)・試験群:ニボルマブ(360mg)+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ(3週間ごと6サイクル)→ニボルマブ+ベバシズマブ(ニボルマブ群)・対照群:プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ→プラセボ+ベバシズマブ(プラセボ群) ニボルマブ/プラセボ+ベバシズマブは、疾患進行または許容できない毒性発現まで継続・評価項目:[主要評価項目]独立放射線審査委員会(IRRC)評価の無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、安全性 TASUKI-52試験の主な結果は以下のとおり。・2017年6月~2019年7月に、日本、韓国、台湾から550例が登録され、ニボルマブ群とプラセボ群に無作為に割り付られた。・追跡期間中央値13.7ヵ月であった。・IRRC評価のPFS中央値はニボルマブ群12.1ヵ月に対し、プラセボ群8.1ヵ月と、ニボルマブ群で有意に長かった(ハザード比:0.56、96.4%信頼区間:0.43~0.71、p<0.0001)。・サブグループ解析では、PD-L1発現レベルを問わず、ニボルマブ群でPFS良好であった。・IRRC評価のORRは、ニボルマブ群で61.5%、プラセボ群で50.5%であった。・OS中央値は両群とも未到達であった。・治療関連有害事象の発現率は、全Grade、Grade3/4ともに両群で同等であった。

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ASCO2021 レポート 肺がん

レポーター紹介2021年のASCOは、昨年に引き続き完全Webでの開催であり、肺がん領域については周術期での重要な発表がいくつかあったものの、進行期については真新しい話題は乏しい印象であった。本稿では、その中からIMpower010試験、IMPACT(WJOG6410L)試験、CheckMate9LA試験、amivantamab+lazertinib併用療法Phase I試験、patritumab deruxtecan(HER3-DXd)Phase I試験、JCOG1210/TORG1528試験について解説したい。IMpower010試験完全切除後の非小細胞肺がんを対象として、標準治療としてシスプラチン+ペメトレキセド/ゲムシタビン/ドセタキセル/ビノレルビンを最大4サイクル実施した後に、経過観察群と、アテゾリズマブ1,200mg/body 16サイクルを比較する第III相試験の結果が、Heather A. Wakelee先生から報告された。本試験では、完全切除後の非小細胞肺がん、病理病期StageIB~IIIA、1,280例が1:1にランダム化され、無病生存期間を主要評価項目として実施された。本試験はヒエラルキカルに3つの主要評価項目、順にPD-L1 TC≧1%のII~IIIA期における無病生存期間、II~IIIA期全体での無病生存期間、IB~IIIA期、最後に全生存期間の解析が実施されるプロトコールとなっている。今回報告されたのは、無病生存期間の第1回中間解析の結果である。最初の解析対象となるPD-L1 TC≧1%のII~IIIA期においては、ハザード比が0.66、95%信頼区間0.50~0.88、無病生存期間中央値がアテゾリズマブ群で未到達、経過観察群で35.3ヵ月という結果であり、統計学的にも有意に優越性が示されている。次の対象となるII~IIIA期全体での無病生存期間においても、ハザード比が0.79、95%信頼区間0.64~0.96、無病生存期間中央値がアテゾリズマブ群42.3ヵ月、経過観察群35.3ヵ月という結果であり、統計学的にも有意に優越性が示された。一方、IB~IIIA期においては、ハザード比が0.81、95%信頼区間0.67~0.99、無病生存期間中央値がアテゾリズマブ群未到達、経過観察群37.2ヵ月という結果であり、今回の中間解析では統計学的な優越性は示されなかった。この結果に基づき、全生存期間の解析は現時点では公式なものではないが、両群で明らかな差はないという結果が報告されている。有害事象に関しては、アテゾリズマブで従来報告されていた内容と大きな違いは認められなかった。周術期治療においては、免疫チェックポイント阻害剤を用いた術前、術後、さらには術前+術後の臨床試験が実施されている。その中でも、今回のIMpower010試験が、術後療法についてはいち早く報告された。PD-L1 TC≧1%のII~IIIA期の集団において、無病生存期間で明確な利益が示されているだけでなく、今後観察期間が延長された段階での無病生存期間の中間解析、さらには、全生存期間の結果を期待したい。IMPACT(WJOG6410L)試験WJOGで実施された、完全切除後のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんを対象として、標準治療としてのシスプラチン+ビノレルビン療法と試験治療としてのゲフィチニブを比較する第III相試験の結果を多田先生が報告された。本試験では、完全切除後に病理病期でII期もしくはIII期と診断されたEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん、230例が1:1にランダム化され、無病生存期間を主要評価項目として実施された。完全切除後のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんにおける、EGFR-TKIを用いたPhase III試験としては、アストラゼネカ社が主導したADAURA試験、中国で実施されたADJUVANT(CTONG1104)試験がすでに報告されている。ADAURA試験では第3世代EGFR-TKIのオシメルチニブが、ADJUVANT試験ではIMPACT試験同様にゲフィチニブが、EGFR-TKIとして用いられている。とくにADAURA試験では、無病生存期間においてオシメルチニブの明らかな優越性が示されたものの、進行肺がんでのEGFR-TKIの治療成績を踏まえて、全生存期間ではその差が解消されてしまうのではないか等の見解が示され議論を呼んでいる。一方、ゲフィチニブを用いたAJUVANT試験においては、ゲフィチニブのシスプラチン+ビノレルビンに対する、無病生存期間での優越性がハザード比0.60、95%信頼区間0.42~0.87で示されている。中国で行われたADJUVANT試験に比べても、いち早く立案されたIMPACT試験の結果は、日本国内だけでなく、世界的にも注目を集めていた。今回、残念ながら主要評価項目である無病生存期間、今後追跡される予定である副次評価項目の全生存期間いずれにおいても、試験治療であるゲフィチニブの優越性は示されないという結果であり、驚きをもって迎えられている。無病生存期間については、ハザード比0.92(p値0.63)、期間中央値はゲフィチニブで35.9ヵ月、シスプラチン+ビノレルビン療法で25.0ヵ月であり、全生存期間については、ハザード比1.03(p値0.89)、期間中央値は両群とも未到達という結果であった。同様のデザインで実施されたADJUVANT試験では、4年時点で両群ともに無病生存がほぼゼロとなっていたのに比べ、IMPACT試験の無病生存曲線は、5年目以降、約30%のところで平坦になり3人に1人で根治が得られていることが示唆されている。さらに、ADJUVANT試験においては、標準治療群のシスプラチン+ビノレルビンの無病生存期間中央値が18.0ヵ月、ゲフィチニブ群で28.7ヵ月であったのに対し、IMPACT試験では標準治療群でも25.0ヵ月、試験治療群では35.9ヵ月と明らかに異なる結果であった。ADAURA試験においては、プラチナ併用療法による術後療法を実施していない患者も含む解析での標準治療群の無病生存期間中央値は20.4ヵ月(II~IIIA期)であり、プラチナ併用療法による術後療法を実施された患者集団での無病生存期間中央値は22.1ヵ月(ただしこちらはIB期含む)という結果であった。これらの試験結果より、IMPACT試験において、標準治療群のシスプラチン+ビノレルビンによる無病生存期間が最も良好であることが、主要評価項目を達成できなかった1つの要因となっていると考えられる。さらに、試験治療群についても、ゲフィチニブに比べオシメルチニブの有効性が高いことが示唆される。IMPACT試験は、残念ながら主要評価項目を達成できなかったものの、今後もフォローアップの結果が得られ、また、実臨床にも応用される可能性のあるEGFR-TKIによる術後療法について、考察を深めるために必須の情報をもたらした重要な試験と評価でき、追加解析の結果含め期待したい。CheckMate9LA試験CheckMate9LA試験は、未治療進行非小細胞肺がん患者を対象として、標準治療としてのプラチナ併用療法(腺がんプラチナ+ペメトレキセド、扁平上皮がんカルボプラチン+パクリタキセル、いずれも3週おき4サイクル、ペメトレキセドは維持療法あり)、試験治療としてのプラチナ併用療法(3週おき2サイクル)にニボルマブ(Nivo、360mg/body、3週おき)、イピリムマブ(Ipi、1mg/kg、6週おき)を追加し、Nivo+Ipiについては増悪もしくは2年までの維持療法実施を比較する第III相試験であり、Martin Reck先生が報告された。本試験では、EGFR陰性、ALK陰性、PS 0~1のIV期もしくは再発の非小細胞肺がん、719例が1:1にランダム化され、全生存期間を主要評価項目として実施された。2020年のASCOでの初回報告から、追跡期間を延長し最短でも2年の追跡がされたデータセットでのアップデート報告である。進行非小細胞肺がんにおいては、プラチナ併用療法に対するNivo+Ipiの優越性を示したCheckMate227試験の結果も併せて、日本においてもNivo+Ipi、Nivo+Ipi+プラチナ併用療法が承認され、実臨床で実施可能な状態となっている。今回、CheckMate227試験は、4年のフォローアップ結果がポスター発表されており、PD-L1 TPS≧1%、<1%のそれぞれの群における4年の全生存割合が29%、24%であり、長期生存につながることが示されている。CheckMate9LA試験の2年フォローアップ結果では、全生存期間については、ハザード比0.72、95%信頼区間が0.61~0.86、全生存期間中央値はNivo+Ipi+プラチナ併用療法群で15.8ヵ月、プラチナ併用療法群で11.0ヵ月であり、無増悪生存期間については、ハザード比0.67、95%信頼区間が0.56~0.79、無増悪生存期間中央値は試験治療群で6.7ヵ月、標準治療群で5.3ヵ月であった。2年の全生存割合については、全体集団、PD-L1 TPS≧1%、≦1%においてそれぞれ、38%、41%、37%、2年の無増悪生存割合についても同様の順番で、20%、20%、20%であった。この結果は、PD-L1の発現状況によらず維持されており、従来指摘されているPD-1とCTLA-4の双方を阻害する併用療法の特徴が再現されている。有害事象に関しては、すべてのGrade3/4について試験治療群48%、標準治療群で38%、いずれかの治療の中止に関連したすべての有害事象が試験治療群で22%、標準治療群で8%、治療関連死が両群ともそれぞれ2例であった。昨年の報告時と比べ、有害事象の頻度はほとんど変動しておらず、Nivo+Ipi併用療法に懸念されている有害事象も、多くは1年以内に発生していることが示唆された。フォローアップ期間が延長されるたびに、いわゆるTail plateauと呼ばれる生存曲線後半がフラットになっているかが注目され、今回のCheckMate9LA試験では従来に比べ曲線がフラットになっていない印象があることが話題になっている。ただ、生存曲線の後半の部分は、打ち切り症例の影響を受けやすく、最も信頼できない部分でもあり、他の免疫チェックポイント阻害剤の試験と同様に、5年などの長期の結果を待たなければならない。CheckMate9LAについては、プラチナ併用療法が含まれていないものの、同様の併用療法であるCheckMate227試験の4年のデータが、ある程度長期の成績を占うものとして参考になると考えられる。amivantamab+lazertinib近年、オシメルチニブ耐性後のEGFR遺伝子変異陽性肺がん患者を対象とした、次世代の治療について期待の持てる結果が報告されている。オシメルチニブ耐性後の患者に対して、amivantamabとlazertinibの併用療法を検討するCHRYSALIS Phase I試験について有効性に関するアップデートと、バイオマーカー解析の結果が報告された。amivantamabはEGFRとMETを標的としたBispecific抗体であり、EGFRやMETそのものに対する効果だけでなく、免疫細胞を介在した効果(immune cell-directing activity)も期待されている薬剤である。lazertinibはオシメルチニブ同様第3世代EGFR-TKIに位置付けられる薬剤である。今回の報告では、EGFR経路の耐性機序、METに関連する耐性機序を有することがバイオマーカー解析の結果判明した集団と、それらの耐性機序が明らかではない集団での有効性が示された。EGFRやMETに何らかのオシメルチニブ耐性機序が出現していた集団での奏効割合は47%、他の耐性機序が報告されている患者集団での奏効割合が29%であった。全体集団での奏効割合は36%、無増悪生存期間中央値が4.9ヵ月であった。今回有害事象に関する追加データは乏しかったものの、amivantamabには従来EGFR抗体として特徴的な皮疹等の有害事象に加え、比較的高い割合の患者で注入に伴う反応が報告されており、適切な支持療法の併用が求められる。今回の結果から、従来示されているように多様な耐性機序が混在するオシメルチニブ治療後の患者集団においても一定の効果が期待されるものの、可能な限り耐性機序を明らかにすることにより、より高い有効性を追求することができることも明らかになった。patritumab deruxtecan(HER3-DXd)オシメルチニブを中心としたEGFR-TKI耐性化後の治療薬として注目されているもうひとつのカテゴリーが、抗体薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate:ADC)である。複数のADCが開発中であるが、その中でも注目を集めている薬剤がpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)である。HER3に対する完全ヒト化モノクローナル抗体であるpatritumabに、トラスツズマブ デルクステカンでも用いられているトポイソメラーゼ阻害剤をペイロードとして付加したADCである。今回は、Phase I試験のうち、用量漸増パートと、拡大コホートの結果が報告された。オシメルチニブだけでなくさまざまなEGFR-TKI耐性化後の患者が登録され、有効性については前治療によらず39%の奏効割合が報告され、無増悪生存期間中央値も8.2ヵ月と、オシメルチニブ後の治療薬として期待される結果であった。耐性機序別にみても、オシメルチニブ等EGFR-TKIに対する多様な耐性に対応できることが示されている。また、今回は、脳転移を有する患者に関するサブグループ解析も報告されたが、脳転移を有する集団においても同様の有効性が示されていた。HER3を標的としたADCであることから、HER3の発現状況によって有効性に違いがあるのではと従来指摘されていたが、今回の報告では、H-scoreで評価したHER3の発現の強度によらず効果が示されていることが示された。Grade3以上の有害事象としては、血小板減少、好中球減少、倦怠感、貧血等が報告されており、有害事象による治療中止は10%前後であった。トラスツズマブ デルクステカンで注目されている肺障害についても、今回、全体集団で出現割合が5%とされており、注意は要するものの大きな懸念は示されなかった。今後単剤での開発だけでなく、オシメルチニブとの併用療法等の開発も検討されており、期待したい。JCOG1210/TORG1528試験JCOG肺がん内科グループ、TORGのインターグループ試験として実施された、71歳以上の高齢、進展型小細胞肺がん患者を対象として、標準治療としてのカルボプラチン+エトポシド(CE療法、カルボプラチンAUC5、エトポシド80mg/m2)、試験治療としてのカルボプラチン+イリノテカン(CI療法、カルボプラチンAUC4、イリノテカン50mg/m2)を比較する第II/III相試験の結果を、研究事務局の下川先生が報告された。本試験では、71歳以上の進展型小細胞肺がん、258例が1:1にランダム化され、全生存期間を主要評価項目として実施された。高齢者進展型小細胞肺がんにおいては、JCOG9702試験の結果に基づき、日常診療で幅広くCE療法が実施されている。本試験は、JCOG9511試験において、シスプラチンの併用療法薬としてエトポシドに対する優越性を示したイリノテカンを、高齢者においても検討することを目的に実施されている。残念ながら主要評価項目である全生存期間、副次評価項目である無増悪生存期間いずれにおいても、試験治療であるCI療法の優越性は示されず、CE療法が変わらず標準治療とされるという結論であった。全生存期間については、ハザード比0.848、95%信頼区間が0.650~1.105、全生存期間中央値はCE療法で12.0ヵ月、CI療法で13.2ヵ月であり、無増悪生存期間については、ハザード比0.851、95%信頼区間が0.664~1.090、無増悪生存期間中央値はCE療法で4.4ヵ月、CI療法で4.9ヵ月であった。有害事象(Grade3以上)に関しては、CE療法、CI療法それぞれについて、白血球減少59.2%、16.1%、好中球減少87.2%、46.0%、貧血28.0%、12.9%、血小板減少27.2%、12.9%、発熱性好中球減少症11.2%、9.7%であった。残念ながら高齢者進展型小細胞肺がんにおいて、新たなプラチナ併用療法の有効性が示されることはなかったものの、アテゾリズマブ、デュルバルマブ等免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の登場で使用頻度の増えたCE療法について、高齢者も含め国内多施設臨床試験での有効性、安全性のデータが得られ、今後の追加解析の結果が待たれる。さいごに昨年に続くVirtual meetingであり、発表者、司会者、聴講者ともに、Webでの学会運営への習熟が明らかなASCOであった。おそらく今後も、Webでのライブ配信は継続されるのではないかと思われるが、来年こそはシカゴで開催したいという参加者の熱意が感じられた。昨今の状況が一刻も早く解決され、会場に集えない方がVirtualで、また、会場に集える場合は現地で、同じように最新のエビデンスを体感できる時代が来ることを祈念している。

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ASCO2021 レポート 老年腫瘍

レポーター紹介これまでは高齢がん患者を対象とした臨床試験が乏しいといわれてきたが、徐々に高齢者を対象とした第III相試験のデータが発表されつつある。ASCO2021では、高齢者進展型小細胞肺がんに対するカルボプラチン+エトポシド併用療法(CE療法)とカルボプラチン+イリノテカン併用療法(CI療法)のランダム化比較第II/III相試験(JCOG1201/TORG1528:#8571)、高齢者化学療法未施行IIIB/IV期扁平上皮肺がんに対するnab-パクリタキセル・カルボプラチン併用療法とドセタキセル単剤療法のランダム化第III相試験(#9031)、76歳以上の切除不能膵がんに対する非手術療法の前向き観察研究(#4123)など、高齢者を対象とした臨床研究の結果が複数、発表されている。これら治療開発に関する第III相試験の情報はさまざまな場所で得られると思われるため詳述はせず、ここでは老年腫瘍学に特徴的な研究を紹介する。高齢者の多様性を示すかのように、今回の発表内容も多様であった。高齢がん患者に対する高齢者総合的機能評価および介入に関するランダム化比較試験(THE 5C STUDY)高齢者総合的機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment:CGA)は、患者が有する身体的・精神的・社会的な機能を多角的に評価し、脆弱な点が見つかれば、それに対するサポートを行う診療手法である。NCCNガイドライン1)をはじめ、高齢がん患者に対してCGAを実施することが推奨されている。これまで、がん領域では高齢者の機能の「評価」だけが注目されることが多かったが、最近では、「脆弱性に対するサポート」まで含めた診療の有用性を評価すべきという風潮になっている。昨年のASCOでは、「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性を評価するランダム化比較試験が4つ発表され、その有用性が検証されつつある。今回、世界的にも注目されていた第5のランダム化比較試験、THE 5C STUDY2)がシンポジウムで発表された。画像を拡大する主な適格規準は、70歳以上、がん薬物治療が予定されている患者(術前補助化学療法、術後補助化学療法は問わず、また分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬も対象)、PS:0~2など。標準診療群は「通常の診療」、試験診療群は「高齢者総合的機能評価および介入(CGAに加え、通常の腫瘍治療に加えて老年医学の訓練を受けたチームによるフォローアップ)を行う診療」である。primary endpointはEORTC QLQ-C30のGlobal health status(項目29および30)で評価した健康関連の生活の質(HR-QOL)であり、key secondary endpointは手段的日常生活動作(Instrumental Activities of Daily Living:IADL)。primary endpointについてはパターン混合モデルを使用した(0、3、6ヵ月目)。カナダの8つの病院から351例の参加者が登録され、治療開始翌日以降に介入が行われた(患者の要望に合わせた研究であるため)。HR-QOLスコアの変化は両群で差がなく(p=0.90)、またIADLも両群間で差はなかった(p=0.54)。筆者はlimitationとして、CGAを実施したタイミングが悪かったことを挙げている。本研究では、患者の利便性を考えて、「治療開始時」または「治療開始後」にCGAを実施していたが、一般的には、治療方針を決定する前にCGAを実施すれば、患者の脆弱性を考慮して適切な治療を選択できると考えられている。しかし、今回は治療開始時または治療開始後にCGAを実施された患者が多かったため、CGAの意義が乏しかった可能性があるという理屈である。その他、COVID-19により、十分な介入ができなかったこと、またHR-QOLが影響を受けた可能性があること、そもそも「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性を評価するためのアウトカムとしてEORTC QLQ-C30のGlobal health statusが適切でなかった可能性などをlimitationに挙げている。昨年のASCOで発表された研究では「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性が示されたが、残念ながら、本試験ではその有用性は検証できなかった。しかし、研究デザインに問題があること、またひと言で「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」といっても、その内容はさまざまであることなどから、本試験がnegative studyであるからといって、その有用性が否定されたわけではないだろう。個人的には、筆者がlimitationで挙げているとおり、治療開始「前」にCGAを実施できていれば、より適切な治療が選択され、その結果、介入もより効果的になって、本試験の結果も変わっていたのではないかと想像してしまう。高齢者総合的機能評価と局所進行頭頸部扁平上皮がんの治療方針単施設の後ろ向き研究ではあるが、THE 5C STUDYのlimitationと関係するため、ここで紹介する。要は、治療開始「前」に高齢がん患者を包括的に評価することで、適切な治療を選択できる可能性があるという発表である3)。局所進行頭頸部扁平上皮がん(LA-HNSCC)を伴う高齢者を対象として、2016~18年の間に通常の診療を受けた集団(通常診療コホート)と、2018~20年の間にCGAを実施された集団(CGAコホート)を比較し、実際に受けた治療(標準治療、毒性を弱めた治療、緩和目的の治療、ベストサポーティブケア)、治療完遂割合、奏効割合などを評価した。通常診療コホート96例、CGAコホート81例の計197例の患者が対象となった。CGAコホートでは、通常診療コホートと比較して、標準治療を受ける患者が多かったが(36% vs.21%、p=0.048)、治療完遂割合(84% vs.86%、p=0.805)や奏効割合(73.9% vs.66.7%、p=0.082)に有意な差は認めなかった。これまでは、CGAを実施することで過剰な治療を防ぐことができるという、いわば脆弱な患者を守る方向で議論されることが多いと感じていた。しかし、本研究では、CGAを実施することで標準的な治療を受けることができた患者が増え、またベストサポーティブケアを受ける患者が少なくなるということが示されたことで、CGAにより、過小な治療を受けていた患者が適切な治療を受けられることが示唆されたといえる。つまり、治療開始「前」に高齢がん患者を包括的に評価することは大事という話。Choosing Unwisely(賢くない選択):高齢者における骨髄異形成症候群の確定診断Choosing Wiselyとは科学的な裏付けのない診療を受けないように賢い選択をしましょうという国際的なキャンペーンだが、本研究ではChoosing Unwiselyとして、高齢者に対して骨髄異形成症候群(MDS)の正確な診断をすること、を挙げている4)。MDSに正確な診断(Complete Diagnostic Evaluation:CDE)をするためには、骨髄生検、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション、染色体分析が必要だが、この意義があるか否かを2011~14年のメディケアデータベースを用いて検討した。対象は、2011~14年の間に66歳以上でメディケアを受けている患者のうち、MDSの診断を受けており、1種類以上の骨髄細胞減少を有し、MDS診断前後16週間に輸血を受けていない集団(1万6,779例)。CDEが臨床的に正当化されない患者の要因の組み合わせを特定するために、機械学習の手法であるCART(Classification and Regression Tree)分析を行い、CDEの有無による生存率の比較を行うためにCox比例ハザード回帰分析を行った。結果、1種類の血球減少(例:貧血のみ)を有する集団のうち、66~79歳の57.7%(1,156例)、80歳以上の46.0%(860例)がCDEを受けていた。また、血球減少がない患者3,890例のうち、866例がCDEを受けていた。背景因子を調整後の解析では、CDEを受けたことによる生存率の向上は認められなかった(p=0.24)。筆者は、高齢者のMDSに対して不要なCDEを減らすことを提案している。COVID-19患者の全米データベースの「がんコホート」高齢者に限定した研究ではないが、知っておくべきデータだと思うので簡単に紹介する。米国国立衛生研究所(NIH)が運営している全米COVIDコホート共同研究(National COVID Cohort Collaborative:N3C)のデータベースのうち、がん患者のみのコホートが公表された5,6)。N3Cコホートから合計37万2,883例の成人がん患者が同定され、5万4,642例(14.7%)がCOVID-19陽性。入院中のCOVID-19陽性患者の平均在院日数は6日(SD 23.1日)で、COVID-19の初回入院中に死亡した患者は7.0%、侵襲的人工呼吸が必要な患者は4.5%、体外式膜型人工肺(ECMO)が必要な患者は0.1%であった。生存割合は、10日目で86.4%、30日目で63.6%であった。65歳以上の高齢者(HR:6.1、95%CI:4.3~8.7)、併存症スコア2以上(HR:1.15、95%CI:1.1~1.2)などが全死因死亡のリスク増加と関連していた。18~29歳を基準とした場合、30~49歳のHRは1.09(0.67~1.76)、50~64歳では1.13(0.72~1.77)に対して、65歳以上ではHR:6.1と異常に高いことから、これまで以上に、高齢がん患者ではCOVID-19に注意を払う必要があると感じた。もちろん、併存症スコアが上昇するにつれ死亡割合が上昇していることから、暦年齢は併存症スコアに関連している可能性があり、暦年齢だけの問題ではない可能性はある。参考1)NCCN GUIDELINES FOR SPECIFIC POPULATIONS: Older Adult Oncology2)Comprehensive geriatric assessment and management for Canadian elders with Cancer: The 5C study.3)Impact of comprehensive geriatric assesment (CGA) in the treatment decision and outcome of older patients with locally advanced head and neck squamous cell carcinoma (LA-HNSCC).4)Choosing unwisely: Low-value care in older adults with a diagnosis of myelodysplastic syndrome.5)Outcomes of COVID-19 in cancer patients: Report from the National COVID Cohort Collaborative (N3C).6)Sharafeldin N, et al. J Clin Oncol. 2021:Jun 4. [Epub ahead of print]

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ASCO2021 レポート 消化器がん(上部・下部消化管)

レポーター紹介食道がん本邦における進行・転移性食道扁平上皮がん1次治療の第1選択は、これまでフルオロウラシル+シスプラチン(FP療法)であった(『食道癌診療ガイドライン 2017年版』)。20年以上も標準治療が変わらなかったわけであるが、ESMO virtual congress 2020で進行・転移性食道がん(扁平上皮がんが7割強、腺がんが3割弱)のFP療法に対する抗PD-1抗体薬ペムブロリズマブ(PEM)の有効性を見たランダム化盲検第III相試験KEYNOTE-590がすでに報告されており、全体集団で全生存期間(OS)中央値が12.4ヵ月vs.9.8ヵ月(HR:0.73、p<0.0001)と有効性を検証した。2021年3月には米国で承認となっている(本邦でも2020年11月に一変申請済み)が、今回ニボルマブ(NIVO)についても第III相試験の結果が報告された。CheckMate 648CheckMate 648は、進行・転移性食道扁平上皮がんの1次治療において、通常の化学療法(FP療法)に対する、化学療法+NIVOの併用とイピリムマブ(IPI)+NIVOの有効性を見たランダム化第III相試験である。主要評価項目は腫瘍細胞のPD-L1≧1%の症例におけるOSと無増悪生存期間(PFS)であり、副次評価項目としてその他の有効性が評価された。結果を化学療法+NIVO群vs.化学療法群から見ていくと、OSにおいて主要評価項目のPD-L1≧1%の症例でOS中央値15.4ヵ月vs.9.1ヵ月(HR:0.54、p<0.0001)、全ランダム化症例でOS中央値13.2ヵ月vs.10.7ヵ月(HR:0.74、p=0.0021)と、いずれも統計学的有意差をもって化学療法+NIVO群が優れていた。PFSにおいても主要評価項目のPD-L1≧1%の症例でPFS中央値6.9ヵ月vs.4.4ヵ月(HR:0.65、p=0.0023)、全ランダム化症例でPFS中央値5.8ヵ月vs.5.6ヵ月(HR:0.81、p=0.0355)と、PD-L1≧1%の症例で統計学的有意差を認めたものの、全ランダム化症例では事前に設定した統計学的有意差を示すことができなかった。全奏効率(ORR)はPD-L1≧1%の症例で53% vs.20%、全ランダム化症例で47% vs.27%と、NIVOの併用によるメリットが認められた。次にIPI+NIVO群vs.化学療法群を見ていくと、OSにおいて主要評価項目のPD-L1≧1%の症例でOS中央値13.7ヵ月vs.9.1ヵ月(HR:0.64、p=0.0010)、全ランダム化症例でOS中央値12.8ヵ月vs.10.7ヵ月(HR:0.78、p=0.0110)と、いずれも生存曲線で最初は化学療法群が上を行っている傾向があったが、統計学的有意差をもってIPI+NIVO群が優れていた。PFSにおいては、主要評価項目のPD-L1≧1%の症例でPFS中央値4.0ヵ月vs.4.4ヵ月(HR:1.02、p=0.8958)、全ランダム化症例でPFS中央値2.9ヵ月vs.5.6ヵ月(HR:1.26)と、統計学的有意差を認めなかった。ORRはPD-L1≧1%の症例で35% vs.20%、全ランダム化症例で28% vs.27%と、IPI+NIVO群が化学療法群より優れていたが、化学療法+NIVO群よりも劣る結果であった。毒性に関しては、これまで他がん種で行われた化学療法+NIVOやIPI+NIVOと大きな違いはなかった。本試験では化学療法+NIVO群、IPI+NIVO群いずれもOSで有意差を示しており、いずれも今後承認が期待される。一方、IPI+NIVO群は、もうひとつの主要評価項目であるPD-L1≧1%の症例におけるPFSで有効性を検証することができず、また生存曲線で最初は化学療法群の下を行くことを考えると、化学療法+NIVOのほうがより好んで使われることが予測される。KEYNOTE-590の結果と併せて、PEMとNIVO両者が承認された後は、化学療法+PEMまたは化学療法+NIVOが最も使われるレジメンになるであろう。CheckMate 577の追加解析切除可能進行食道・食道胃接合部がんに対して、術前化学放射線療法(CRT)後の手術は、海外では重要な標準治療の1つであり、ランダム化第III相試験であるCheckMate 577は、術後のNIVOの1年間投与が無病生存期間(DFS)を有意に改善(NIVO群vs.プラセボ群で中央値22.4ヵ月vs.11.0ヵ月、HR:0.69、p=0.0003)することをすでに報告している。今回、有効性、安全性、QOLの追加解析が報告された。DFSのサブグループ解析では、年齢、性別、人種、PS、術前ステージ、原発の部位、組織型、リンパ節転移、組織のPD-L1発現、いずれのグループにおいてもNIVOの上乗せ効果が認められ、NIVOによるQOLの低下も認めなかった。食道がんにおける本邦の標準治療は、術前化学療法の後の手術である。本試験は日本人症例の登録が行われているが、この結果を本邦の実臨床に適用していけるかは解釈が分かれるところである。本邦でNIVOが術後補助療法というかたちで承認されれば、本邦の実臨床に適用する臨床試験をぜひ行ってほしい。胃がんHER2陰性の切除不能進行胃がんにおいては、PEMがKEYNOTE-062で1次治療の有効性が検証できなかった一方で、NIVOは全世界で行われたCheckMate 649や東アジアで行われたATTRACTION-4で、有効性(ATTRACTION-4のOSはnegative)が検証できたことがESMO virtual congress 2020ですでに報告されている。CheckMate 649の追加解析CheckMate 649は、HER2陰性の切除不能胃がんの1次治療において化学療法+NIVOと化学療法を比較した(IPI+NIVO群は途中で登録中止)ランダム化第III相試験であり、主要評価項目であるPD-L1 CPS≧5症例のOSとPFS、副次評価項目であるCPS≧1、全ランダム化症例のOSとPFSにおいて、化学療法+NIVO群が化学療法群より優れていることが報告されている。今回、さらなる有効性の解析が報告された。1,581例のランダム化された症例で最低でも12.1ヵ月以上フォローアップされた段階で、NIVO+化学療法群は全ランダム化症例でOS中央値13.8ヵ月vs.11.6ヵ月(HR:0.80、p=0.0002)、PFS中央値7.7ヵ月vs.6.9ヵ月(HR:0.77)と改善を認めた。ORRは58% vs.46%と化学療法+NIVO群で良好な結果であり、PD-L1 CPSはOS、PFSが良好な症例の選別に有効であることも示された。さらに、化学療法+NIVO群は臨床症状の悪化までの期間についても有意な改善を認めた(HR:0.77)。米国では化学療法+NIVOが2021年4月16日に、CPSにかかわらずすべての切除不能胃がんの1次治療として承認となっており、本邦でも2020年12月に一変申請がすでに提出されている。承認後は本邦でも切除不能胃がんの第1選択になっていくものと考える。KEYNOTE-811の奏効割合の報告KEYNOTE-811はHER2陽性の切除不能胃腺がんの1次治療において、化学療法+トラスツズマブ(Tmab)+PEMと化学療法+Tmab+プラセボを比較したランダム化第III相試験である。合計692例が登録予定で主要評価項目はOSとPFSであるが、最初の260例が8.5ヵ月以上フォローアップされたところで1回目の中間解析が行われた。有効性の評価対象は264例、安全性の評価対象は433例であった。ORRにおいて化学療法+Tmab+PEM群で74.4%、化学療法+Tmab+プラセボ群で51.9%とPEM併用によって22.7%(p=0.00006)も奏効例の増加が認められ、完全奏効例が11%も認められるなど深い奏効が得られていた。安全性において新たに懸念される事項は認められなかった。この結果をもって米国では化学療法+Tmab+PEMが2021年5月に迅速承認を得たが、本邦で同様の承認が得られるか不明である(本邦には同様の迅速承認制度はなく、また本邦において胃がんは希少疾患ではないため難しいと思われる)。今後OS、PFSなどの主要評価項目の有効性を確認し、正式な承認が得られていくものと考える。大腸がん高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)転移性大腸がんの1次治療において、PEM単剤と通常の化学療法を比較するランダム化第III相試験であるKEYNOTE-177試験では、すでに主要評価項目の1つであるPFSの有意な改善が報告されていて、米国、欧州で1次治療として承認を得ている(本邦では2020年9月に一変申請済み)。今回、最終解析としてもうひとつの主要評価項目であるOSの報告が行われた。KEYNOTE-177試験の生存データの最終解析PEM群200mg/3週間ごととmFOLFOX6/FOLFIRI±ベバシズマブ/セツキシマブ2週間ごと(化学療法群)を1対1に割り付け、化学療法群は病勢進行(PD)後、PEMのcrossoverがプロトコール治療として認められていた。OSはp値が0.0246を下回ったとき有意と判定されることとなっていた。最終解析ではPEM群と化学療法群でPFS中央値16.5ヵ月vs.8.2ヵ月(HR:0.59)であり、化学療法群のうち56例(36.4%)がPEMにcrossoverされ、さらに37例にプロトコール治療外でPD-1/PD-L1抗体が投与されたため、合計60.4%の症例がcrossoverとなった。OS中央値はPEM群と化学療法群で、到達せずvs.36.7ヵ月(HR:0.74、p=0.0359)とPEM群で良好な結果であったが、事前に設定された統計学的な有意差は検証できなかった。以上より、MSI-H転移性大腸がんの1次治療においてPEMはPFSで統計学的に有意に優れており毒性は軽かった。化学療法群でcrossoverした症例が多く、また、想定していたOSイベント数に到達しない段階での解析であることもあり、統計学的有意差は検証できなかったが、OSにおいても明らかに優れた結果であった。本邦でも、承認後はMSI-H転移性大腸がんの1次治療における標準治療になるであろう。TRUSTY試験転移性大腸がんの3次治療以降の選択肢としてトリフルリジン・チピラシル(FTD/TPI)+ベバシズマブ(BEV)の有効性がすでに複数の試験で報告されており、『NCCNガイドライン』にも記載されている。今回、本邦において、2次治療でFTD/TPI+BEVとFOLFIRIまたはS-1+イリノテカン(IRI)+BEVを比較する第II/III相臨床試験が実施された。1次治療においてオキサリプラチン/フルオロピリミジン+BEVまたは抗EGFR抗体薬(RAS野生型の場合)を行った症例を対象とし、FTD/TPI+BEV(試験群)とFOLFIRIまたはS-1+IRI+BEV(対照群)に1対1に割り付けを行った。主要評価項目はOSで、非劣性マージンのハザード比を1.33に設定した。副次評価項目はPFS、ORR、病勢制御割合(DCR)などであった。目標症例数は524例であったが、397例を登録した時点の中間解析で中止が勧告され、登録終了となった。試験群と対照群で、OS中央値は14.8ヵ月vs.18.1ヵ月(HR:1.38、p=0.5920)であり非劣性を示すことはできず、むしろ試験群が劣っている傾向であった。PFS中央値は4.5ヵ月vs.6.0ヵ月(HR:1.45)、ORRは3.8% vs.7.1%、DCRは61.2% vs.71.7%であった。次治療の実施率は59.9% vs.52.3%であった。サブグループで見ると、OSにおいてS-1+IRI+BEV例で試験群vs.対照群が13.2ヵ月vs.未到達(HR:2.14)とS-1+IRI+BEVが良好である一方で、FOLFIRI例では16.4ヵ月vs.17.5ヵ月(HR:1.07)であり、レジメンによる大きな差を認めた。転移性大腸がん2次治療としてのFTD/TPI+BEVはフルオロピリミジン+IRI+BEVに対して非劣性を検証できず、今後も2次治療の標準治療はフルオロピリミジン+IRI+BEVである。S-1+IRI+BEV例で対照群が良好であった理由は結論が出ないが、RAS変異症例の割合、前治療の抗EGFR抗体薬の使用割合などに偏りがあり、それらが影響している可能性が考えられる。DESTINY-CRC01試験の最終解析HER2遺伝子増幅を認める大腸がんは、転移性大腸がんの2~3%に存在し、抗HER2療法が有効であることが報告されている。トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は、すでにHER2陽性の乳がん・胃がんで標準治療となっているが、大腸がんにおいてもその有効性を見るDESTINY-CRC01が2020 ASCO virtualで報告されており、今回、最終解析の結果が報告された。HER2 IHC3+ or IHC2+/ISH+の症例においては、確定されたORRが45.3%、PFS中央値6.9ヵ月、OS中央値15.5ヵ月と優れた結果であり、前治療の抗HER2治療にかかわらず有効性を認めた。一方、HER2 IHC2+/ISH-、HER2 IHC1+の症例は奏効例が1例もおらず、有効性は認めなかった。毒性ではやはり間質性肺障害の頻度が9.3%と懸念される結果であった。現在、T-DXdの用量を5.4mg/kg Q3Wで6.4mg/kg Q3Wをランダム化比較する第II相試験であるDESTINY-CRC02が進行中である。終わりにこの1~2年の報告で、食道がん、胃がん、MSI-H大腸がんの1次治療で抗PD-1抗体の有効性が検証されたことにより、間もなくこれらの消化管がんの1次治療で抗PD-1抗体を第1選択で使う時代が来るだろう。NIVO、PEM、IPIの有効性の検証が一巡した現在、新たな治療標的に対する分子標的薬やADC製剤の開発や、ウイルス療法、光免疫療法など、まったく新しい発想の治療が消化管がんにおいて積極的に開発されることを期待したい。

253.

TN乳がんの術前化学療法、デュルバルマブ併用でOS改善(GeparNUEVO)/ASCO2021

 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対するデュルバルマブ+化学療法の術前治療の予後に関する有望な結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、ドイツ・German Breast Group(GBG)のSibylle Loibl氏から報告された。 本試験(GeparNUEVO試験)は、ドイツの臨床試験グループ(GBGとAGO-B)により実施された多施設共同のプラセボ対照第II相無作為化比較試験である。すでに2019年に、その主要評価項目である病理学的奏効率(pCR率)については報告されており、今回はその生存期間に関する追加報告である。・対象:腫瘍径2cm以上の未治療のTNBC(閉経状況、リンパ節転移状況は問わず)・試験群:デュルバルマブ1,500mg 4週ごと+nab-パクリタキセル125mg/m2/週 12週→針生検→デュルバルマブ1,500mg 4週ごと+エピルビシン・シクロホスファミド(EC)2週ごと8週→手術(Durva群:88例)・対照群:上記投与スケジュールと同様にデュルバルマブのプラセボを投与(化学療法は実薬投与)(Pla群:86例)・評価項目:[主要評価項目]pCR率(完全に残存腫瘍のないypT0 ypN0での割合)[副次評価項目]無浸潤疾患生存期間(iDFS)、遠隔無再発生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)、安全性、バイオマーカー検索など 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、年齢中央値49.5歳、N+が約30%、核異型度3が約80%、デュルバルマブやプラセボの単剤投与歴ありが67%あった。・追跡期間中央値43.7ヵ月時点での3年iDFS率は、Durva群85.6%、Pla群77.2%、ハザード比(HR)は0.48(95%信頼区間[CI]:0.24~0.97)、p=0.0398、3年OS率は、Durva群95.2%、Pla群83.5%、HRは0.24(95%CI:0.08~0.72)、p=0.0108と、Durva群で有意に良好であった。・各群においてpCRが得られた症例と、得られなかった症例のOSを3年OS率でみると、Pla群ではnon-pCR例78.8%、pCR例88.9%、Durva群ではnon-pCR例92.0%、pCR例100%と、いずれの群でもpCR獲得症例で予後が良好であった(HR:0.27、p=0.012)。・これはiDFSでもDDFSでも同様の結果であった。 演者のLoibl氏は「TNBCへの術前化学療法へのデュルバルマブの併用は、DFS、OS共に有意に延長することが判明した。しかし、免疫チェックポイント阻害薬(CPI)によるpCR獲得例と長期予後との関連性や、CPIを用いた術後療法についてはさらなる検討が必要である」と述べた。

254.

進行TN乳がんへのアテゾリズマブ、どの免疫フェノタイプや分子サブタイプに有効か(IMpassion130)/ASCO2021

 未治療の進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する第III相IMpassion試験の探索的解析から、免疫フェノタイプや分子サブタイプによりアテゾリズマブの上乗せ効果が異なることが示された。米国・University of Pittsburgh Medical Center Hillman Cancer CenterのLeisha A. Emens氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。 IMpassion130試験は、進行TNBCの1次治療として、アテゾリズマブ+nab-パクリタキセル(アテゾリズマブ併用群、451例)をプラセボ+nab-パクリタキセル(プラセボ群、451例)と比較した第III相試験で、PD-L1 IC+(腫瘍浸潤免疫細胞が1%以上発現)患者において、アテゾリズマブ併用群で有意な無増悪生存期間(PFS)の改善と臨床的に意味のある全生存期間(OS)の改善が報告されている。また探索的分析では、腫瘍微小環境(TME)がリッチな患者や腫瘍遺伝子変異量が多い患者におけるアテゾリズマブ併用による臨床アウトカムの改善が、PD-L1 IC+患者に限られることも報告されている。今回は、アテゾリズマブの併用効果に関連するTMEの構成要素を特定するために探索的解析を実施した。 PD-L1発現の有無と免疫フェノタイプ(inflamed/excluded/desert)は免疫組織化学染色(IHC)で評価し、分子サブタイプと経路の分析にはRNA-seqを使用した。アテゾリズマブ併用群とプラセボ群のPFSおよびOSは、タキサン治療歴、肝転移を調整しCox回帰分析を用いて比較した。 主な結果は以下のとおり。・免疫フェノタイプ別では、PD-L1 IC+患者のinflamedタイプ(ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.42~0.80)およびexcludedタイプ(HR:0.72、95%CI:0.51~1.00)で、アテゾリズマブ併用群のPFS改善がみられ、OSの改善はinflamedタイプ(HR:0.61、95%CI:0.42~0.88)のみでみられた。・分子サブタイプ別には、PD-L1 IC+患者のBLIA(basal-like immune-activated)タイプ(HR:0.49、95%CI:0.34~0.69)およびBLIS(basal-like immune-suppressed)タイプ(HR:0.66、95%CI:0.44~0.98)でアテゾリズマブ併用群のPFS改善がみられ、OS改善はBLIAタイプ(HR:0.54、95%CI:0.36~0.80)のみでみられた。 Emens氏は、「TMEの特徴は、PD-L1 IC+の進行TNBC患者におけるアテゾリズマブ+nab-PTXの臨床アウトカムと関連している。一方、PD-L1 IC-の患者のアウトカムと関連する特徴は確認されていない」とまとめた。

255.

アテゾリズマブによるNSCLCアジュバントの成績は?(IMpower010)/ASCO2021

 完全切除された早期NSCLCにおける化学療法アジュバント後のアテゾリズマブを評価した無作為化第III相非盲検試験IMpower010中間解析の結果がASCO2021で発表された。アジュバントアテゾリズマブはBSCに比べ、良好な無病生存(DFS)を示した。・対象:Stage IB~IIIAで術後化学療法(プラチナ+ペメトレキセド/ドセタキセル/ゲムシタビン/ビノレルビン)、21日ごと最大4回サイクル)受けた完全切除NSCLC患者(ECOG PS 0~1)・試験群:アテゾリズマブ1,200mg/日 3週ごと16サイクル(Atezo群)・対照群:ベストサポーティブケア(BSC群)・評価項目[主要評価項目]治験責任医評価の無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)[副次評価項目]Stage II~IIIAのPD-L1(TC)≥1%のDFS、Stage II~IIIA全患者の DFS、ITT集団(Stage IB-IIIA)のDFS、ITT集団のOS(階層的に検証)、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時(2021年1月21日)の追跡調査中央値は32.2ヵ月であった。・Stage II~IIIA PD-L1(TC)≧1%のDFS中央値はAtezo群未達、BSC群35.3ヵ月と、Atezo群で有意な改善を示した(HR:0.66、95%CI:0.50~0.88、p=0.0039)。・Stage II~IIIA全集団のDFS中央値はAtezo群42.3ヵ月、BSC群35.3ヵ月と、Atezo群で有意な改善を示した(HR:0.79、95%CI:0.64~0.96、p=0.0205)。・IITT集団のDFS中央値は、Atezo群未達、BSC群37.2ヵ月であった(HR:0.88、95%CI:0.67~0.99、p=0.0395)。・全Gradeの有害事象(AE)は、Atezo群92.7%、BSC群70.7%で発現した。Grade3/4はそれぞれ21.8%と11.5%であった。投与中止につながるAtezo群のAEは18.2%で発現、Grade5の治療関連AEはAtezo群の0.8%で発現した。

256.

進行TN乳がんIMサブタイプの1次治療にfamitinib+camrelizumab+nab-パクリタキセルが有望(FUTURE-C-PLUS)/ASCO2021

 immunomodulatory(IM)サブタイプの進行トリプル(TN)乳がんの1次治療として、中国で複数のがんに承認されている抗PD-1抗体camrelizumabとnab-パクリタキセルの併用に、VEGFR-2、PDGFR、c-kitを標的とした経口チロシンキナーゼ阻害薬famitinibを追加することにより、有望な抗腫瘍活性および管理可能な毒性プロファイルを示したことが、前向き単群第II相試験のFUTURE-C-PLUS試験で示された。中国・Fudan University Shanghai Cancer CenterのZhi-Ming Shao氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。 camrelizumabおよびnab-パクリタキセルは、転移を有するIMサブタイプのTN乳がんに有望な抗腫瘍活性を示すことが報告されている(第Ib/II相アンブレラ試験のFUTURE試験で、複数の抗がん剤治療歴のある患者における奏効率52.6%)。一方、血管新生阻害薬は免疫チェックポイント阻害薬への反応を増強することが知られていることから、IMサブタイプのTN乳がんに対するfamitinib+camrelizumab+nab-パクリタキセルの3剤併用の有効性と安全性を評価した。・対象:治療歴のない切除不能な局所進行もしくは転移を有するIMサブタイプのTN乳がん・介入:camrelizumab(200mgを1、15日目に静注、4週ごと)+nab-パクリタキセル(100mg/m2を1、8、15日目に静注、4週ごと)+famitinib(20mg 1日1回を1~28日目に経口投与、4週ごと)を病勢進行もしくは耐容不能な毒性の発現まで継続(nab-パクリタキセルは最低6サイクル投与)・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2019年10月~2020年10月に48例が登録された。・奏効率は、ITT集団で81.3%(48例中39例、95%信頼区間[CI]:70.2~92.3)、per protocol集団で84.8%(46例中39例、95%CI:74.4~95.2)だった。・2021年4月30日時点で観察期間中央値は11.5ヵ月、PFS中央値は未到達で、9ヵ月でのPFS率は60.2%(95%CI:43.2~77.3) 、10ヵ月でのPFS率は53.5%(95%CI:37.6~69.3)だった。・奏効までの期間の中央値は 1.8ヵ月(95%CI:1.8~2.0)だった。・重篤な治療関連有害事象(TRAE)は2例(4.2%)、投与中止に至ったTRAEは3例(6.3%)に発現し、治療関連死亡はなかった。・Grade 3/4の有害事象として、好中球減少症(33.3%)、貧血(10.4%)、発熱性好中球減少症(10.4%)、血小板減少症(8.3%)、高血圧症(4.2%)、甲状腺機能低下症(4.2%)、末梢感覚ニューロパチー(2.1%)、ALT/AST上昇(2.1%)、蛋白尿(2.1%)、敗血症(2.1%)、免疫関連心筋炎(2.1%)がみられた。・バイオマーカー分析から、次世代シークエンサーパネルで検出されたBACA1、KAT6A、PKD1の体細胞変異が免疫療法の効果を予測できる可能性が示唆された。 現在、無作為化比較試験のFUTURE-SUPERが進行している。

257.

HR-/HER2+乳がん術前治療、トラスツズマブ+ペルツズマブ±PTXの予後(ADAPT)/ASCO2021

 ホルモン受容体陰性HER2陽性(HR-/HER2+)の乳がん患者に対する、トラスツズマブ+ペルツズマブ±パクリタキセルによる術前療法の予後に関する有望な結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、ドイツ・West German Study Group(WSG)のNadia Harbeck氏から報告された。 このADAPT試験はWSGにより実施されたオープンラベルの第II相無作為化比較試験である。この試験のpCR率の結果は2017年に公表されており、今回はその生存に関する報告である。また、本試験と同じデザインでのHR-/HER2+集団に対するpCR率の良好な結果は2020年のESMOで公表されている。・対象:遠隔転移のないHR-/HER2+乳がん134例(5:2の割合で2群に割り付け)・試験群A:トラスツズマブ(初回8mg/kg、その後3週ごとに6mg/kg)+ペルツズマブ(初回840mg、その後3週ごとに420mg)(TP群:92例)・試験群B:トラスツズマブ+ペルツズマブ+パクリタキセル(80mg/m2を1回/週)(TPPtx群:42例)・評価項目:[主要評価項目]pCR率(乳房内の浸潤がんとリンパ節転移がない例[ypT0/is ypN0]におけるpCR率と、非浸潤がんも含めて完全に残存腫瘍のない例[ypT0 ypN0]におけるpCR率)[副次評価項目]無浸潤疾患生存期間(iDFS)、遠隔無再発生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)、安全性、バイオマーカー検索など 3週間目にKi67値がベースライン比30%以上低下、もしくは浸潤がん細胞数が500個以下への減少が認められた症例などを早期奏効例とした。 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、50歳未満が33~41%(年齢中央値:52~54歳)、N0が54~62%、核異形度3が88.0%、HER2-IHC3+が86~91%、ベースラインのKi67値は50%であった。・既報のpCR率は、ypT0/is ypN0でTP群34.4%、TPPtx群90.5%であった。また、ypT0 ypN0ではTP群24.4%、TPPtx群78.6%であった。・iDFS率は、5年時点でTP群87%、TPPtx群98%、ハザード比[HR] 0.32(95%信頼区間[CI]:0.07~1.47)、p=0.144であった。・OS率は、5年時点でTP群94%、TPPtx群98%(死亡は1名のみ)、HR 0.41(95%CI:0.05~3.55)、p=0.422であった。・pCRが得られた症例(69例)と得られなかった症例(63例)でiDFSを比較した場合、pCR例は5年時iDFS率が98%、non-pCR例では82%、HRは0.14(95%CI:0.03~0.64)、p=0.011であった。・TP群において、pCRが得られなかったIHC1+/2+およびFISH陽性例や、Basalタイプ、または早期奏効を得られなかった症例を、non-sensitive症例(31例)として、その他の症例とiDFSを比較した場合、5年時のiDFS率はnon-sensitive79%、その他93%、HRは1.99、p=0.255であった。 演者のHarbeck氏は「化学療法の有無によらず、両群とも優れたpCR率と生存率を示した。また、抗体2剤のみによる術前治療は早期奏効が得られた場合に有望であり、今後はさらにIHC3+症例やBasalタイプ以外、RNAなどで選別した症例でも検討する必要がある」と述べた。

258.

ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法のNCSLS1次治療、2年フォローアップ(CheckMate 9LA)/ASCO2021

 非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療、ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法の無作為化第III相CheckMate9LA試験の2年間のフォローアップデータが米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表された。結果、同併用による生存ベネフィットが引き続き観察されている。・対象:未治療のStage IVまたは再発NSCLC患者(PS 0~1)・試験群:ニボルマブ360mg 3週ごと+イピリムマブ1mg 6週ごと+組織型別化学療法(シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド+ペメトレキセド維持療法またはカルボプラチン+パクリタキセル)3週ごと2サイクル(NIVO+IPI+Chemo群)・対照群:組織型別化学療法 3週ごと4サイクル(Chemo群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]盲検下独立中央画像判定機関(BICR)評価の無増悪生存期間(PFS)、BICR評価の全奏効率(ORR)、PD-L1発現別抗腫瘍効果 主な結果は以下のとおり。・追跡期間は最低 24.4ヵ月であった。・NIVO+IPI+Chemo群は40%、Chemo群では47%が全身療法の後治療を受けていた。・OS中央値はNIVO+IPI+Chemo群の15.8ヵ月に対して、Chemo群11.0ヵ月と、NIVO+IPI+Chemo群で良好なOSを維持した (ハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.61~0.86)、2年OS率はそれぞれ、38%と26%であった。・PFS中央値はNIVO+IPI+Chemo群6.7ヵ月に対し、Chemo群では 5.3ヵ月であった (HR:0.67、95%CI:0.56~0.79)。2年PFS率はそれぞれ、20%と8%であった。・ORRは、NIVO+IPI+Chemo群38.0%、Chemo群では25.4%であった。・奏効期間(DoR)中央値はNIVO+IPI+Chemo群13.0ヵ月、Chemo群5.6ヵ月、2年DoR率はそれぞれ、34%と12%であった。・PD-L1発現別にみると、PD-L<1%のOS HRは0.67、PFS HRは0.68、≧1%のOS HRは0.70、PFS HRは0.67、≧50%のOS HRは0.67、PFS HRは0.59と、いずれもNIVO+IPI+Chemo群で良好であった。・有効性はまた、組織形を問わずNIVO+IPI+Chemo群で良好であった。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)発現率は、NIVO+IPI+Chemo群92%、Chemo群88%。Grade3/4のTRAE発現率はそれぞれ、48%と38%であった。新たな安全性シグナルは確認されていない。・Post Hoc解析の結果、TRAEによって治療中止となったNIVO+IPI+Chemo群のNIVO+IPI+Chemo群の2年OS率は54%(全集団の2年OS率は38%)と、治療中止による生存への悪影響はみられなかった。 発表者のドイツ・Martin Reck氏は、この2年間のフォローアップ結果は、ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法が、進行NSCLCに対する有効な1次治療であることを支持するものだと述べた。

259.

HER2+乳がんの術前薬物療法、アントラサイクリンの有無別の生存率/TRAIN-2試験2次解析

 Stage II/IIIのHER2陽性乳がんの術前薬物療法において、アンスラサイクリンを含む化学療法+トラスツズマブ+ペルツズマブと、アンスラサイクリンを含まない化学療法+トラスツズマブ+ペルツズマブを比較したTRAIN-2試験では、すでに病理学的完全奏効率に差がない(67% vs. 68%)ことが示されている。今回、オランダ・the Netherlands Cancer InstituteのAnna van der Voort氏らのフォローアップ解析により、3年無イベント生存率(EFS)および3年全生存率(OS)も差がないことが示された。また、アントラサイクリンの使用は、発熱性好中球減少症、心毒性、2次がん発症リスクの増加と関連していた。JAMA Oncology誌オンライン版2021年5月20日号に掲載。 TRAIN-2試験は非盲検無作為化第III相試験で、2013年12月9日~2016年1月14日にオランダの37病院で登録されたStage II/IIIのHER2陽性乳がん438例が対象。参加者は、年齢、Stage、リンパ節転移状況、エストロゲン受容体の有無で層別化され、FEC 3サイクル後パクリタキセル+カルボプラチン6サイクル(アントラサイクリン群)とパクリタキセル+カルボプラチン9サイクル(非アントラサイクリン群)に1:1で無作為に割り付けられた(両群ともトラスツズマブとペルツズマブを3週ごとに投与)。 主な結果は以下のとおり。・計438例が各群219例ずつに割り付けられ、年齢中央値はアントラサイクリン群が49歳(四分位範囲:43~55歳)、非アントラサイクリン群が48歳(同:43~56歳)だった。観察期間中央値は48.8ヵ月(四分位範囲:44.1〜55.2ヵ月)。・EFSイベントは、アントラサイクリン群で23(10.5%)、非アントラサイクリン群で21(9.6%)発生した(ハザード比:0.90、95%CI:0.50~1.63)。・3年EFSはアントラサイクリン群92.7%(95%CI:89.3~96.2%)、非アントラサイクリン群93.6%(同:90.4~96.9%)、3年OSはアントラサイクリン群97.7%(同:95.7~99.7%)、非アントラサイクリン群98.2%(同:96.4~100%)だった。・ホルモン受容体やリンパ節転移状況にかかわらず、EFSおよびOSの結果に差はなかった。・左室駆出率がベースラインから10%以上低下し50%未満になった患者の割合は、アントラサイクリン群が7.7%(220例中17例)で、非アントラサイクリン群の3.2%(218例中7例)より高かった(p=0.04)。・アントラサイクリン群の2例で急性白血病を発症した。

260.

非小細胞肺がん2次治療以降のnab-パクリタキセルドセタキセルに非劣性(J-AXEL)/JTO

 既治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対するnab-パクリタキセルの有効性と安全性を評価する無作為化非盲検非劣性第II相J-AXEL試験の結果が発表された。・対象:既治療(2レジメン以内)の進行NSCLC患者・試験群:nabパクリタキセル(n-PTX)・対照群:ドセタキセル(DTX)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)非劣性検証[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全奏効割合(ORR)、安全性、QOLなど 主な結果は以下のとおり。・ 503例がnab-パクリタキセル群252例、ドセタキセル群251例に無作為に割り付けられた。・OS中央値はnab-パクリタキセル群16.2ヵ月、ドセタキセル患者13.6ヵ月と、nab-パクリタキセル群はドセタキセル群に対する非劣性を達成した。(HR:0.85、 95.2%CI:0.68~1.07)。・PFS中央値はnab-パクリタキセル群4.2ヵ月に対し、ドセタキセル群では3.4ヵ月であった(HR:0.76、95%CI:0.63~0.92、p=0.0042)。・ORRはnab-パクリタキセル群29.9%、ドセタキセル群15.4%で、組織形に関係なく、nab-パクリタキセルで有意な改善を示した(p=0.0002)。・Grade3以上の発熱性好中球減少症はnab-パクリタキセル群2%、ドセタキセル群22%、末梢神経障害はnab-パクリタキセル群10%、ドセタキセル群1%で発現した。

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