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TYK2を選択的に阻害する乾癬治療薬「ソーティクツ錠6mg」【下平博士のDIノート】第113回

TYK2を選択的に阻害する乾癬治療薬「ソーティクツ錠6mg」今回は、チロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬「デュークラバシチニブ錠(商品名:ソーティクツ錠6mg、製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ)」を紹介します。本剤は、TYK2を選択的に阻害する世界初の経口薬で、既存治療で効果が不十分であった患者や、副作用などにより治療継続が困難であった患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応で、2022年9月26日に製造販売承認を取得し、同年11月16日に発売されました。光線療法を含む既存の全身療法(生物学的製剤を除く)などで十分な効果が得られず皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ場合や、難治性の皮疹や膿疱を有する場合に使用します。<用法・用量>通常、成人にはデュークラバシチニブとして1回6mgを1日1回経口投与します。なお、本剤使用前には結核・B型肝炎のスクリーニングを行い、24週以内に本剤による治療反応が得られない場合は、治療計画の継続を慎重に判断します。<安全性>国際共同第III相臨床試験(IM011-046試験)において、本剤投与群の22.0%(117/531例)に臨床検査値異常を含む副作用が発現しました。主なものは、下痢2.6%(14例)、上咽頭炎2.4%(13例)、上気道感染2.3%(12例)、頭痛1.9%(10例)などでした。なお、重大な副作用として、重篤な感染症(0.2%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、乾癬の原因となる酵素の働きを抑えることで、皮膚の炎症などの症状を改善します。2.免疫を抑える作用があるため、発熱、寒気、体がだるい、咳が続くなどの一般的な感染症症状のほか、帯状疱疹や単純ヘルペスなどの症状に注意し、気になる症状が現れた場合は速やかにご相談ください。3.本剤を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹・風疹混合/単独、水痘、おたふく風邪など)の接種ができないので、接種の必要がある場合は医師にご相談ください。4.感染症を防ぐため、日頃からうがいや手洗いを行い、規則正しい生活を心掛けてください。また、衣服は肌がこすれにくくゆったりとしたものを選び、高温や長時間の入浴はできるだけ避けましょう。<Shimo's eyes>本剤は、TYK2阻害作用を有する世界初の経口乾癬治療薬です。TYK2はヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーの分子ですが、本剤のようなTYK2だけを選択的に阻害する薬剤は比較的安全に使用できるのではでないかと期待されています。乾癬の治療としては、副腎皮質ステロイドやビタミンD3誘導体による外用療法、光線療法、シクロスポリンやエトレチナート(商品名:チガソン)などによる内服療法が行われています。近年では、多くの生物学的製剤が開発され、既存治療で効果不十分な場合や難治性の場合、痛みが激しくQOLが低下している場合などで広く使用されるようになりました。現在、乾癬に適応を持つ生物学的製剤は下表のとおりです。また、同じ経口薬としてPDE4阻害薬のアプレミラスト(同:オテズラ)が「局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬」の適応で承認されています。臨床試験において、本剤投与群ではアプレミラストを上回る有効性を示しており、この点が評価されて薬価算定では40%の加算(有用性加算I)が付きました。安全性では、結核の既往歴を有する患者では結核を活動化させる可能性があるため注意が必要です。また、感染症の発症、帯状疱疹やB型肝炎ウイルスの再活性化の懸念もあるため、症状の発現が認められた場合にはすぐに受診するよう患者さんに説明しましょう。TYK2阻害薬は自己免疫疾患に対する新規作用機序の薬剤であり、今後の期待として潰瘍性大腸炎や全身性エリテマトーデスなどの幅広い疾患に適応が広がる可能性があり、注目されています。

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脱毛治療での栄養サプリ使用は、安全・有効か?

 脱毛治療のための栄養補助食品使用および食事介入は広く行われているが、安全性・有効性は不明のままである。米国・タフツ大学のLara Drake氏らはシステマティック・レビューの結果、脱毛治療における栄養補助食品使用は患者に利益をもたらす可能性があり、有害事象は報告されていないが、それらレジメンは当局の監視下にないことから、それぞれの試験デザインの条件下で安全性・有効性は解釈すべきものであるとの見解を示した。その上で、「医師は、脱毛患者にこれら治療の潜在的なリスクと利点を十分に説明して、共同意思決定をしなければならない」と述べている。また、今後の検討として、実薬比較による大規模な無作為化試験が求められると提言している。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年11月30日号掲載の報告。 研究グループは、ベースラインで栄養不足が既知ではない患者の脱毛治療における、すべての食事および栄養介入の所見を、システマティック・レビューで評価し見解をまとめた。 MEDLINE、Embase、CINAHLのデータベースを、創刊~2021年10月20日まで検索。英語で執筆され、脱毛症または脱毛を有するベースラインで栄養不足が既知ではない患者における食事・栄養介入調査の、オリジナルな所見を報告している論文を特定した。 試験の質を、Oxford Centre for Evidence Based Medicine基準で評価。注目したアウトカムは、客観的および主観的に評価した疾患経過であった。データの評価は2022年1月3日~11日に行った。 主な結果は以下のとおり。・データベースの検索で、参照リストからの11論文を加えた6,347論文の引用が得られた。総計30論文(17本が無作為化臨床試験[RCT]、11本が臨床研究[non-RCT]2本がケースシリーズスタディ)が包含された。包含基準を満たした食事ベースの介入試験はなかった。・最も質の高いエビデンスを有する栄養介入の試験では、Viviscal、Nourkrin、Nutrafol、Lamdapil、Pantogar、カプサイシンとイソフラボン、抗酸化物質を含むオメガ3と6、リンゴの栄養補助食品、シャクヤクの総グルコシド、複合グリチルリチン・タブレット、亜鉛、トコトリエノール、パンプキンシードオイルの潜在的ベネフィットが示された。・キムチとチョングクジャン、ビタミンD3、およびForti5は、疾患経過の改善に関するエビデンスの質は低かった。・有害作用は、評価を受けたすべての治療でまれで軽症であった。

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12月13日 ビタミンの日【今日は何の日?】

【12月13日 ビタミンの日】〔由来〕1910年の今日、鈴木梅太郎博士(農芸化学者)が、米糠から抽出した成分を「オリザニン」と命名し、東京化学会で発表した。このオリザニンは後に、ビタミンB1(チアミン)と同じ物質であることが判明し、「ビタミン」と呼ばれるようになったことを記念し「ビタミンの日」制定委員会が2000年に制定。関連コンテンツビタミンEってなあに?【患者説明用スライド】ビタミンCってなあに?【患者説明用スライド】葉酸ってなあに?【患者説明用スライド】ビタミンD補給、中高年において骨折予防効果なし/NEJM青年期の抑うつ症状とビタミンDレベルとの関係

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1日1回投与の新規骨形成促進薬「オスタバロ皮下注カートリッジ1.5mg」【下平博士のDIノート】第110回

1日1回投与の新規骨形成促進薬「オスタバロ皮下注カートリッジ1.5mg」今回は、骨粗鬆症治療薬「アバロパラチド酢酸塩注射剤(商品名:オスタバロ皮下注カートリッジ1.5mg、帝人ファーマ)」を紹介します。本剤は、骨吸収作用に対して骨形成作用がより優位な新規の骨形成促進薬であり、1日1回の皮下投与により、骨量の増加と骨折の抑制が期待されています。<効能・効果>本剤は、骨折の危険性の高い骨粗鬆症の適応で、2022年8月31日に製造販売承認を取得しました。なお、オスタバロ皮下注3mgが2021年3月に同様の適応で製造販売承認されていますが、3mg製剤は28日投与の製剤であり、新薬の14日処方制限への対応が必要であったため現時点での薬価収載は見送られています。<用法・用量>通常、成人には1日1回アバロパラチドとして80μgを皮下に注射します。本剤の投与期間は18ヵ月間までです。なお、本剤は使用開始前も開始後も冷蔵庫で保管します。<安全性>国内および海外の第III相試験を統合した結果、臨床検査値異常を含む副作用は962例中357例(37.1%)で報告されました。主な副作用は、高カルシウム尿症81例(8.4%)、浮動性めまい55例(5.7%)、悪心52例(5.4%)、頭痛34例(3.5%)、動悸33例(3.4%)などでした。重大な副作用として、アナフィラキシー(頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.本剤は、骨形成を促進して骨量を増やすことで、骨折を予防します。2.投与後30分程度はできる限り安静にして、高所での作業、自動車の運転など危険が伴う作業に従事する場合は注意してください。3.投与後に血圧低下、めまい、立ちくらみ、動悸、気分不良、悪心、顔面蒼白、冷汗などが生じた場合には、症状が治まるまで座ったり横になったりしてください。4.悪心、嘔吐、便秘、食欲減退、腹痛などが生じた場合は受診してください。5.(妊娠可能な女性に対して)本剤の投与期間中は避妊してください。<Shimo's eyes>骨粗鬆症に伴う骨折は、日常生活動作やQOLの低下、生命予後の悪化につながるため、初回骨折の予防に加え、すでに骨折が生じた場合は次の骨折を予防して、骨折の連鎖を起こさないための治療が重要です。本剤はヒト副甲状腺ホルモン関連蛋白質(hPTHrP)のアミノ酸配列の一部を改変したアナログ製剤で、骨代謝に関わるPTH1型受容体のRG型を選択的に刺激するため、骨量の増加と骨折抑制が期待できます。既存の副甲状腺ホルモン製剤(PTH製剤)としては、テリパラチド(遺伝子組換え)(商品名:フォルテオ皮下注キット)、テリパラチド酢酸塩(同:テリボン皮下注用、テリボン皮下注オートインジェクター)などが発売されています。また、抗体薬としては、抗ランクル抗体のデノスマブ(遺伝子組換え)(同:プラリア皮下注)、抗スクレロスチン抗体のロモソズマブ(遺伝子組換え)(同:イベニティ皮下注)が発売されており、超高齢社会に対応すべく効果の高い骨粗鬆症治療が近年続々と登場しています。本剤は、海外における骨折の危険性の高い閉経後骨粗鬆患者を対象とした海外第III相試験(BA058-05-003試験、ACTIVE試験)において、プラセボに比べて投与18ヵ月の新規椎体骨折の発生率が低く、最初の非椎体骨折の発生までの期間が有意に延長されました。また、本剤投与終了後のアレンドロネートによる継続治療により、プラセボ投与終了後のアレンドロネート治療群と比較して、ACTIVE試験の開始から投与後25ヵ月および43ヵ月までの新規椎体骨折発生率が有意に低く、最初の非椎体骨発生までの期間に有意な延長が認められました(BA058-05-005試験、ACTIVE延長試験)。本剤の電動式注入器(オスタバロインジェクター)は、製剤カートリッジを14日ごとに交換するよう設計されていて、液晶画面には操作手順、投与履歴、累計投与回数が表示されるとともに、カートリッジの交換や冷所保管忘れの通知機能なども備えられています。診察では、インジェクターに記録された投与履歴や累積回数を確認することができます。なお、本剤の使用にあたっては、インジェクターのほかに製剤カートリッジ、A型専用注射針、消毒用アルコール綿が別途必要となるので、処方の確認が必要です。安全面では、活性型ビタミンD製剤との併用は、血清カルシウム値が上昇する恐れがあるため避けることが望ましいとされています。本剤投与直後から数時間後にかけて、一過性の急激な血圧低下が現れることがあるので注意が必要です。また、一過性の血清カルシウム値上昇がみられることもあり、悪心、嘔吐、便秘、食欲減退、腹痛などが生じた場合は速やかに診察を受けるように患者さんに指導しましょう。

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11月3日 ホルモンの日【今日は何の日?】

【11月3日 ホルモンの日】イラスト・いわみせいじ氏〔由来〕ホルモンや内分泌疾患に関する正しい知識を社会に広め、早期診断・治療につなげることを目的にアドレナリンを発見した高峰譲吉博士の誕生日にちなみ日本内分泌学会が制定。関連コンテンツDr. 坂根のすぐ使える患者指導画集 Part1第128回 承認済のホルモン薬でダウン症候群患者の認知機能が改善【バイオの火曜日】手引き改訂で診断基準に変化、テストステロン補充療法/日本メンズヘルス医学会5年間のビタミンD補給により自己免疫疾患のリスク低減/BMJ潜在性甲状腺機能低下症併発の急性心筋梗塞患者、ホルモン療法は有効か/JAMA

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ビタミンD欠乏で筋力低下→サルコペニア発症の可能性/長寿研ほか

 ビタミンDが欠乏することで、将来的に筋力が低下してサルコペニア罹患率が上昇する可能性を、国立長寿医療研究センター運動器疾患研究部の細山 徹氏や、名古屋大学大学院医学系研究科整形外科学の水野 隆文氏らの研究グループが発表した。 先行研究において、ビタミンDは加齢性の量的変動やサルコペニアとの関連性が指摘されていたが、それらの多くが培養細胞を用いた実験や横断的な疫学研究から得られたものであり、成熟した骨格筋に対するビタミンDの作用や加齢性疾患であるサルコペニアとの関連性を示す科学的根拠は十分ではなかった。Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle誌2022年10月13日掲載の報告。 研究グループは、国立長寿医療研究センターで実施している老化に関する長期縦断疫学研究「NILS-LSA」のデータを用い、血中ビタミンD量低値の一般住民の4年後の筋力変化や筋量変化、新規サルコペニア発生数などについて検討した。 主な結果は以下のとおり。・NILS-LSAに登録されている1,919人のデータから傾向スコアでマッチさせたビタミンD欠乏群(血中25OHD量が20ng/mL未満、n=384)および充足群(20ng/mL以上、n=384)の比較解析の結果、ビタミンD欠乏群では握力低下が進行した(欠乏群:-1.55±2.47kg、充足群:-1.13±2.47kg、p=0.019)。・サルコペニアの新規発生率は、ビタミンD欠乏群で有意に高かった(欠乏群:3.9%、充足群:1.3%、p=0.039)。・ビタミンD受容体遺伝子Vdrを成熟した筋線維で特異的に欠損させたコンディショナルノックアウト(VdrmcKO)マウスの表現型の解析では、VdrmcKOマウスでは有意な筋力低下を認めた。なお、筋重量、筋線維径、筋線維タイプ、骨格筋幹細胞数など骨格筋の量的形質には影響はみられなかった。・VdrmcKOマウスでは、筋線維の収縮・弛緩に関わる遺伝子Serca1とSerca2aの発現が減少し、骨格筋における筋小胞体Ca2+-ATPアーゼ活性も低下していた。 これらの結果より、研究グループは「ビタミンD欠乏と将来的な筋力低下およびサルコペニア罹患率の上昇には関連性がある可能性があり、成熟筋線維におけるビタミンDシグナルは、筋量には影響を与えないものの筋力発揮へ寄与する」とまとめた。

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ビタミンD補給、中高年において骨折予防効果なし/NEJM

 ビタミンD欠乏症、骨量低下、骨粗鬆症を有していない概して健康な中高年以上の集団では、ビタミンD3を摂取してもプラセボと比較し骨折リスクは有意に低下しないことが、米国・ハーバード・メディカル・スクールのMeryl S. LeBoff氏らが行った「VITAL試験」の補助的研究で示された。ビタミンDサプリメントは、一般集団において骨の健康のために広く推奨されている。しかし、骨折予防に関するデータは一貫していなかった。NEJM誌2022年7月28日号掲載の報告。米国人男性50歳以上、女性55歳以上の計2万5,871例で骨折発生をプラセボと比較 VITAL試験は米国の50歳以上の男性と55歳以上の女性を対象に、ビタミンD3(2,000 IU/日)、n-3系脂肪酸(1g/日)、またはその両方の摂取により、がんや心血管疾患を予防できるどうかをプラセボと比較した2×2要因デザインの無作為化比較試験である。選択基準にビタミンD欠乏症、骨量低下、骨粗鬆症は含まれていない。 年1回、質問票によりレジメンの遵守、副作用、他のサプリメント(例:カルシウム、ビタミンD)や薬剤の使用、大きな病気、骨粗鬆症または関連する危険因子、身体活動、転倒、および骨折について調査し、骨折を報告した参加者にはさらに詳細な質問票を送付して調査するとともに、骨折の治療を行った施設から医療記録(股関節または大腿骨骨折の場合は放射線画像を含む)を入手し、中央判定を行った。 主要評価項目は全骨折、非椎体骨折、股関節骨折の初回発生で、intention-to-treat集団を解析対象として比例ハザードモデルを用いて治療効果を推定した。 計2万5,871例(女性50.6%、黒人20.2%)がビタミンD3+n-3系脂肪酸、ビタミンD3+プラセボ、n-3系脂肪酸+プラセボ、プラセボ+プラセボの4群に無作為に割り付けられた。全骨折、非椎体骨折および股関節骨折、いずれもプラセボ群と有意差なし 追跡期間中央値5.3年において、1,551例に1,991件の骨折が確認された。 初発全骨折は、ビタミンD群(ビタミンD3+n-3系脂肪酸群およびビタミンD3+プラセボ群)で1万2,927例中769例、プラセボ群(n-3系脂肪酸+プラセボ群およびプラセボ+プラセボ群)で1万2,944例中782例に認められた(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.89~1.08、p=0.70)。同様に非脊椎骨折はそれぞれ721例および744例(0.97、0.87~1.07、p=0.50)、股関節骨折は57例および56例(1.01、0.70~1.47、p=0.96)に認められ、いずれもビタミンD群とプラセボ群で有意差はなかった。 年齢、性別、人種/民族、BMI、血清25-ヒドロキシビタミンD値などベースラインの患者背景は、この結果に影響しなかった。 また有害事象は親試験で評価されたとおり、両群間で差はなかった。 なお、著者は研究の結果は限定的なものであり、骨粗鬆症または骨軟化症患者、高齢の施設入所者には一般化されない可能性があるとしている。

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妊娠中のビタミンD補充、児のアトピー性皮膚炎を予防?

 母体へのビタミンD補充が、出生児の4歳時までのアトピー性湿疹リスクを減少させたことが、英国・サウサンプトン大学のSarah El-Heis氏らによる無作為化試験「UK Maternal Vitamin D Osteoporosis Study(MAVIDOS)」で示された。これまで、母体へのビタミンD補充と出生児のアトピー性湿疹リスクとを関連付けるエビデンスは一貫しておらず、大半が観察試験のデータに基づくものであった。著者は、「今回のデータは、乳児のアトピー性湿疹リスクに対する胎児期のビタミンD(コレカルシフェロール)補充の保護効果に関する無作為化試験初のエビデンスであり、保護効果が母乳中のコレカルシフェロール値上昇による可能性を示唆するものであった」と述べ、「所見は、アトピー性湿疹への発育上の影響と、アトピー性湿疹への周産期の影響は修正可能であることを支持するものである」とまとめている。British Journal of Dermatology誌オンライン版2022年6月28日号掲載の報告。 研究グループは、二重盲検無作為化プラセボ対照試験「MAVIDOS」の被験者データを用いて、妊娠中の母体へのコレカルシフェロール補充と、出産児のアトピー性湿疹リスクへの影響を月齢12、24、48ヵ月の時点で調べる検討を行った。 MAVIDOSでは、妊産婦は、コレカルシフェロールを投与する群(1,000 IU/日、介入群)または適合プラセボを投与する群(プラセボ群)に無作為に割り付けられ、おおよそ妊娠14週から出産まで服用した。主要アウトカムは、新生児の全身の骨ミネラル含有量であった。 主な結果は以下のとおり。・出生児のアトピー性湿疹(UK Working Party Criteria for the Definition of Atopic Dermatitisに基づく)の有病率の確認は、月齢12ヵ月で635例、同24ヵ月で610例、同48ヵ月で449例を対象に行われた。・母体および出生児の特性は、介入群のほうで授乳期間が長期であったことを除けば、両群で類似していた。・母乳育児期間を調整後、介入群の出生児のアトピー性湿疹のオッズ比(OR)は、月齢12ヵ月時点では有意に低かった(OR:0.55、95%信頼区間[CI]:0.32~0.97、p=0.04)。・介入の影響は徐々に減弱し、月齢24ヵ月時(OR:0.76、95%CI:0.47~1.23)、月齢48ヵ月時(0.75、0.37~1.52)は統計学的な有意差は認められなかった。・月齢12ヵ月時の湿疹に関連した介入と母乳育児期間の統計学的相互作用について、有意性はみられなかった(p=0.41)。・ただし、介入群の乳児湿疹リスクの低下は、母乳育児期間が1ヵ月以上の乳児では有意差が認められたが(OR:0.48、95%CI:0.24~0.94、p=0.03)、1ヵ月未満の乳児では有意差は認められなかった(0.80、0.29~2.17、p=0.66)。

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青年期の抑うつ症状とビタミンDレベルとの関係

 クウェートは、ビタミンD欠乏症の有病率が高い国の1つである。また、ビタミンD不足はうつ病のリスク因子であるといわれている。クウェート大学のReem Al-Sabah氏らは、同国の青年期における25-ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)と抑うつ症状との関連を調査した。その結果、ビタミンDの状態は、青年期の抑うつ症状と関連していないことを報告した。しかし著者らは、他の健康へのベネフィットを考慮し、青年期に十分なビタミンDレベルを維持することは重要であるとしている。Child and Adolescent Psychiatry and Mental Health誌2022年6月27日号の報告。ビタミンD不足と抑うつ症状との間に有意な関連は認められず クウェートの中学校でランダムに選択された青年704人を対象に、学校ベースの横断的研究を実施した。抑うつ症状に関するデータは、小児抑うつ尺度(CDI)を用いて収集した。共変量に関するデータは、対象の青年より対面式インタビューで、その両親より自己記入式アンケートを用いて収集した。血液サンプルの分析は、認定された研究所で実施した。25[OH]Dの測定には、液体クロマトグラフィータンデム質量分析を用いた。 ビタミンD不足はうつ病のリスク因子であるかを研究した主な結果は以下のとおり。・抑うつ症状(CDIスコア19以上)が認められた青年は、94人(13.35%、95%CI:10.35~17.06)であった。・ビタミンDの状態の違いによるCDIスコア(中央値)に、有意差は認められなかった(p=0.366)。・血清25[OH]D濃度とCDIスコアとの間に有意な関連は認められなかった(Spearman's rank correlation=0.01、p=0.825)。・さまざまな分析でも、25[OH]Dと抑うつ症状との間に有意な関連は認められなかった。●25[OH]Dを連続変数として適応(粗オッズ比:0.99、95%CI:0.98~1.01、p=0.458)(調整オッズ比:1.01、95%CI:0.99~1.02、p=0.233)●許容可能なカットオフ値によるカテゴリ変数(粗分析:p=0.376、調整済み分析:p=0.736)●四分位数によるカテゴリ変数(粗分析:p=0.760、調整済み分析:p=0.549)

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活性型ビタミンD3は耐糖能異常患者の2型糖尿病発症を予防しない(解説:住谷哲氏)

 後ろ向きの観察研究で有効性が示唆されたが、前向きのランダム化比較試験で有効性が否定されることは少なくない。ビタミンD3物語もその1つだろう。がん、心血管病、認知症などの発症を予防できるのではないかと期待されたが、残念ながら現時点でビタミンD3がこれらの疾患の発症を予防するエビデンスは存在しない。今回、新たにその物語に追加されたのが2型糖尿病発症予防効果である。 わが国で多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を実施することはかなりの困難があると思われる。2型糖尿病発症予防における活性型ビタミンD3エルデカルシトールの有効性を検証した本試験は、結果は否定的であったが、その点で貴重な報告と思われる。 ビタミンD3の2型糖尿病発症予防効果を検証した試験としては、既にD2d試験の結果が報告されている1)。天然型ビタミンD3を用いたこの試験においても、ビタミンD3の2型糖尿病発症予防効果は認められなかった。この研究におけるサブグループ解析では、ビタミンD3欠乏症のグループ(血清ビタミンD3<12ng/mL)では、2型糖尿病発症のハザード比[HR]は0.38(95%信頼区間[CI]:0.18~0.80)であり有効である可能性が示唆されていた。したがって次のステップとしては、ビタミンD3欠乏症を有する耐糖能異常患者を対象としたRCTを実施したほうがよかったかもしれない。しかし本試験とD2d試験はほぼ同時進行で実施されており、本試験で患者の組み込み基準に血清ビタミンD3が入っていないのは無理からぬことと思われる。しかし本試験で、多変量分数多項式Cox回帰分析を用いた事後解析で有効性が示唆されたのは、組み込み時の血清ビタミンD3低値ではなく、基礎インスリン分泌量低値であった。したがってこの結果が正しいとすると、インスリン分泌能の低下した耐糖能異常患者においてはビタミンD3が2型糖尿病発症予防効果を有する可能性もある。しかし、これもそのような患者を対象としたRCTの結果が出るまでは仮説にとどままるだろう。 本試験においてもエルデカルシトールの投与により腰椎と大腿骨頸部の骨密度および血清オステオカルシン濃度が有意に上昇した。現時点ではビタミンD3には骨密度増加作用のみを期待するのが妥当と思われる。

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第119回 英国のサル痘の症状は先立つ流行と異なる/ウイルス感染者の匂いが蚊を呼ぶ

英国のサル痘といえば西アフリカ帰りの人発端に限られていましたが今やそうではないサル痘が同国や他の幾つかの国の性保健(sexual health)診察で確認されることが急に増えています。今年2022年5月14日から25日の12日間に英国ロンドンで性保健診察されてサル痘が判明した患者54人の症状はこれまでの典型的なサル痘感染とは異なっており1-3)、適切な治療や感染拡大予防のせっかくの機会を診断ミスで逃さないようにするためにもこれまでとは異なりうるという心構えが必要なようです。調べられた54人は全員が男性とセックスする男性(men who have sex with men;MSM)であり、先立つ流行に比べて性器や肛門領域の皮膚に病変が認められることがより多く、発熱や疲労感は逆に少なくて済んでいました。54人の全員に近い94%(51人)が性器や肛門領域に少なくとも1つの皮膚病変を有し、疲労/倦怠感と発熱の発生率はそれぞれ67%(36/54人)と57%(31/54人)でした3)。38℃以上の発熱や疲労を含む英国の目下のサル痘同定の目安4)は見直しが必要だろうと著者は言っています。他の特徴として性感染症(STI)・淋病やクラミジアの併発も多く、4人に1人がそうでした。サル痘は進行過程でヘルペスや梅毒などのよくあるSTIに似通うこともありうるのでそれらと見間違わないように用心する必要があります1)。ペニスや肛門領域の皮膚病変やSTIの併発が多いことから察するに性行為などでの皮膚や粘膜の密着の際にサル痘は伝播するようです。54人の約10人に1人(9%;5/54人)は主に痛みや細菌性蜂窩織炎の治療のために入院を要しました。死亡した患者はいません。サル痘患者が性的にかなり活発なことは本連載の前号で紹介したのと同様に今回の報告でもうかがわれ、性行為に関する質問に答えた52人の9割47人(90%)は発症前の3週間に新たな人との性交渉があり、半数を超える29人はサル痘診断に先立つ12週間に5人を超える性交渉の相手がいました。ジカ/デングウイルス感染は蚊を引き付ける匂いをより作らせるジカ熱やデング熱を引き起こすウイルスは蚊に運ばれてヒトからヒトに移ります。そのためにそれらフラビウイルスは感染者の皮膚の細菌を手入れして蚊がより好む匂いをどうやら放たせるようです5-7)。フラビウイルス感染マウスは甘い香りの揮発性成分アセトフェノン(acetophenone)を非感染マウスに比べておよそ10倍多く放ち、蚊はアセトフェノンで嗅覚が強力に刺激されて引き寄せられると分かりました。デング熱患者がアセトフェノンをより多く放つことも確認されています。アセトフェノンの主な出どころは皮膚の共生細菌であり、フラビウイルスは皮膚の抗菌タンパク質RELMα発現を抑制することでアセトフェノン生成共生細菌を増やし、その結果アセトフェノンが多くなります。RELMαの合成はビタミンA誘導体で増えます。そこでビタミンA誘導体イソトレチノイン(isotretinoin)をマウスに与えたところアセトフェノンが減って蚊に見つかり難くなって感染の伝播を減らすことができました。イソトレチノインでヒトのアセトフェノン生成も減るかどうかを調べることが今後の課題の一つとなっています5)。London School of Hygiene & Tropical Medicineの研究者James Logan氏によると今回の結果は診断を刷新しうる可能性を秘めています6)。デング熱やジカ熱の診断には結果判明までしばらくかかる血液検査が今のところ必要ですが、それら患者が放つアセトフェノンを嗅ぐ装置を使えば血液検査なしですぐに診断が可能になるかもしれません。Logan氏はマラリアを匂いで同定しうるセンサーを開発する会社を興しており、似た技術がジカ熱やデング熱にも通用しうると言っています6)。参考1)Monkeypox symptoms in patients attending London sexual health clinics differ from previous outbreaks, study of May 2022 UK outbreak suggests / Eurekalert2)Monkeypox symptoms differ from previous outbreaks - UK study / Reuters3)Girometti N, et al. Lancet Infect Dis. 2022 July 01. [Epub ahead of print]4)Monkeypox: case definitions /UK Health Security Agency5)Some viruses make you smell tastier to mosquitoes / Eurekalert6)Zika, dengue viruses make victims smell better to mosquitoes / Science7)Zhang H, et al.Cell. 2022 Jun 28;S0092-8674.00641-9. [Epub ahead of print]

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2種のIL-17を直接阻害する乾癬治療薬「ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/オートインジェクター」【下平博士のDIノート】第99回

2種のIL-17を直接阻害する乾癬治療薬「ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/オートインジェクター」提供:ユーシービージャパン(2022年4月現在)今回は、ヒト化抗ヒトIL-17A/IL-17Fモノクローナル抗体製剤「ビメキズマブ(遺伝子組換え)(商品名:ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/オートインジェクター、製造販売元:ユーシービージャパン)」を紹介します。本剤は、乾癬の症状の原因となる炎症性サイトカインIL-17AとIL-17Fを選択的かつ直接的に阻害することで、強力な炎症抑制効果が期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応で、2022年1月20日に承認され、同年4月20日から発売されています。なお、次のいずれかを満たす患者に投与されます。光線療法を含む既存の全身療法(生物製剤を除く)で十分な効果が得られず、皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ患者。難治性の皮疹または膿疱を有する患者。<用法・用量>通常、成人にはビメキズマブ(遺伝子組換え)として、1回320mgを初回から16週までは4週間隔で皮下注射し、以降は8週間隔で皮下注射します。なお、患者の状態に応じて16週以降も4週間隔で皮下注射可能です。<安全性>臨床試験で報告された主な副作用は、口腔カンジダ症(13.2%)、鼻咽頭炎(5.1%)、毛包炎(1.7%)、上気道感染(1.5%)、中咽頭カンジダ症(1.2%)、咽頭炎・結膜炎(1.1%)などでした。また、重大な副作用として、重篤な感染症、好中球数減少(各0.5%)、炎症性腸疾患(0.1%未満)、重篤な過敏症反応(頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、乾癬の症状の原因となる炎症性物質の働きを抑えることで皮膚の炎症などの症状を改善します。2.薬の使用により感染症にかかりやすくなる場合があるので、発熱、寒気、体がだるいなどの症状が現れた場合には、医師にご連絡ください。3.この薬を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹・風疹混合/単独、水痘、おたふく風邪など)の接種はできないので、接種の必要がある場合には医師に相談してください。4.口腔内や舌の痛み、白い苔のようなものが付着する、味覚がおかしく感じるなどの症状が現れた場合には、医師にお申し出ください。5.感染症を防ぐため、日頃からうがいや手洗いを行い、規則正しい生活を心掛けてください。また、衣服は肌がこすれにくくゆったりとしたものを選びましょう。高温や長時間の入浴によりかゆみが増すことがあるので、温度はぬるめにして長い入浴はできるだけ避けましょう。<Shimo's eyes>乾癬の治療として、副腎皮質ステロイドあるいはビタミンD3誘導体の外用療法、光線療法、または内服のシクロスポリン、エトレチナートなどによる全身療法が行われています。近年では、多くの生物学的製剤が開発され、既存治療で効果不十分な場合や難治性の場合、痛みが激しくQOLが低下している場合などで広く使用されるようになりました。現在発売され乾癬に適応を持つ生物学的製剤は、本剤と同様にIL-17Aの作用を阻害するセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)、イキセキズマブ(同:トルツ)およびブロダルマブ(ルミセフ)、IL-23阻害薬のグセルクマブ(トレムフィア)、リサンキズマブ(スキリージ)、ウステキヌマブ(ステラーラ)、チルドラキズマブ(イルミア)、TNF阻害薬のアダリムマブ(ヒュミラ)、インフリキシマブ(レミケード)およびセルトリズマブ ペゴル(シムジア)などがあります。本剤の特徴は、IL-17Aに加えてIL-17Fにも結合することです。乾癬の病態において、IL-17AとIL-17Fはそれぞれ独立して炎症を増幅すると考えられているため、両方を直接阻害することで、強力な炎症抑制効果が期待できます。また、16週以降の投与間隔は8週間隔、患者さんの状態に応じて16週以降も4週間隔を選択することができます。安全性に関しては、ほかの生物学的製剤と同様に、結核の既往歴や感染症に注意する必要があります。投与に際しての安全上の留意点については、日本皮膚科学会「乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2018年版)」「ビメキズマブ使用上の注意」等で参照できると思います。本剤には2種類の剤形(シリンジ、オートインジェクター)が存在しますが、2022年6月時点においては医療機関で投与が行われます。薬局では感染症や口腔カンジダ症の兆候がないか聞き取り、必要に応じて生活上のアドバイスを伝えるなど、治療中の患者さんをフォローしましょう。参考1)PMDA 添付文書 ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/ビンゼレックス皮下注160mgオートインジェクター2)UCB Japan 医療関係者向けサイト

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活性型ビタミンD3、2型DMの発症予防に無効か/BMJ

 活性型ビタミンD3製剤エルデカルシトールは、前糖尿病から2型糖尿病への発症予防効果は認められなかったものの、インスリン分泌が不十分な人に対する有益性を示唆する結果が得られた。産業医科大学病院の河原哲也氏らが、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Diabetes Prevention with active Vitamin D study:DPVD試験」の結果を報告した。観察研究では、ビタミンD欠乏がインスリン抵抗性および将来的な糖尿病のリスク増加と関連することが示されている。一方、ビタミンD補充については、2型糖尿病予防を目的とした無作為化比較試験では一貫した結果は認められていないが、先行研究でビタミンD欠乏症を伴う前糖尿病者に対して有益であることが示唆されていた。BMJ誌2022年5月25日号掲載の報告。耐糖能異常からの2型糖尿病発症をエルデカルシトール群vs.プラセボ群で検討 研究グループは、2013年6月1日~2015年8月31日の期間に、国内32施設において30歳以上の耐糖能異常(75g経口ブドウ糖負荷試験で空腹時血糖値<126mg/dLおよび負荷後2時間値が140~199mg/dL、かつ糖化ヘモグロビン[HbA1c]<6.5%)患者1,256例を登録し、エルデカルシトール(0.75μgを1日1回経口投与)群またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付け、3年以上投与した。 主要評価項目は、2型糖尿病の発症で、事前に定めた基準(HbA1c≧6.5%、空腹時血糖値≧126mg/dL、負荷2時間後血糖値≧200mg/dL(11.1mmol/L)または随時血糖値≧200mg/dL)のうち少なくとも2つを満たす場合と定義した。 副次評価項目は、耐糖能異常から正常型への移行、およびベースラインの交絡因子(年齢、性別、高血圧の有無、BMI、糖尿病家族歴、HbA1c、空腹時血糖値、2時間血糖値、25(OH)D、HOMA-IR、およびインスリン分泌指数)で補正後の2型糖尿病発症に関するエルデカルシトール群のプラセボ群に対するハザード比(HR)であった。さらに骨密度、骨代謝/糖代謝マーカーについても評価した。2型糖尿病発症率、エルデカルシトール群12.5%、プラセボ群14.2%で有意差なし 1,256例の患者背景は、571例(45.5%)が女性、2型糖尿病家族歴ありが742例(59.1%)、平均年齢61.3歳、ベースラインの血清25(OH)D濃度は平均20.9ng/mL(52.2nmol/L)で、548例(43.6%)は20ng/mL(50nmol/L)未満であった。 追跡期間中央値2.9年において、2型糖尿病発症率はエルデカルシトール群で12.5%(79/630例)、プラセボ群で14.2%(89/626例)であった(HR:0.87、95%信頼区間[CI]:0.67~1.17、p=0.39)。 耐糖能異常から正常型への移行は、エルデカルシトール群で23.0%(145/630例)、プラセボ群で20.1%(126/626例)に認められた(HR:1.15、95%CI:0.93~1.41、p=0.21)。多変量分数多項式Cox回帰分析による交絡因子補正後の2型糖尿病発症に関するHRは0.69(95%CI:0.51~0.95、p=0.020)で、エルデカルシトールは2型糖尿病発症を抑制し、とくに基礎インスリン分泌量が少ない患者において有益であることが示唆された(HR:0.41、95%CI:0.23~0.71、p=0.001)。 また、追跡期間中、エルデカルシトール群ではプラセボ群と比較して、腰椎と大腿骨頸部の骨密度および血清オステオカルシン濃度が有意に上昇した(すべてのp<0.001)。 重篤な有害事象は、両群で有意差は認められなかった。

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日本人高齢者における野菜・果物の摂取と認知症リスク~久山町研究

 これまで、欧米で行われていたプロスペクティブ研究では、野菜や果物の摂取が認知症リスクを低下させることが示唆されている。しかし、アジア人を対象とした疫学的なエビデンスは限られていた。九州大学の木村 安美氏らは、日本人コミュニティにおける野菜や果物およびそれらの栄養素の摂取と認知症発症リスクと認知症サブタイプとの関連について調査を行った。その結果、野菜とその構成栄養素の摂取量が多いほど、日本人高齢者の認知症リスクが低下することを報告した。BMC Geriatrics誌2022年3月28日号の報告。野菜では認知症リスク低下を認めるも果物は有意な関連なし ベースライン時に認知症でない60歳以上の日本人1,071人(男性:452人、女性:619人)を対象に、24年間プロスペクティブにフォローアップを行った。野菜、果物、栄養素の摂取量は、ベースライン時に70項目の半構造化された食物摂取頻度調査票で評価し、性別ごとに四分位で分類した。評価項目は、認知症とそのサブタイプ(アルツハイマー病、血管性認知症)の発症とした。認知症発症のリスク推定値の算出には、Cox比例ハザードモデルを用いた。 野菜や果物、およびそれらの栄養素の摂取と認知症発症リスクと認知症サブタイプとの関連について調査を行った主な結果は以下のとおり。・長期フォローアップ期間中の認知症発症は464例であり、その内訳はアルツハイマー病286例、血管性認知症144例であった。・交絡因子で調整した後、野菜の摂取量が多い人では認知症(p trend<0.05)およびアルツハイマー病(p trend<0.05)のリスク低下が認められたが、血管性認知症のリスク低下は認められなかった。・野菜の摂取量が最高四分位の人では、最低四分位の人と比較し、認知症リスクが27%、アルツハイマー病リスクが31%低かった。・認知症リスクは、ビタミンA、リボフラビン、ビタミンC、マグネシウム、カルシウム、カリウムの摂取量が増加するほど有意な減少が認められた(各々:p trend<0.05)。・食物繊維の総摂取量が多い人は、認知症リスクが低い傾向にあった(p trend=0.07)。・果物の摂取量と認知症および認知症サブタイプのリスクとの有意な関連は認められなかった。

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高カルシウムだったら疑いたいMAH【知って得する!?医療略語】第11回

第11回 高カルシウムだったら疑いたいMAH高カルシウム(Ca)血症に遭遇した時に注意することを教えてください高Ca血症を見かけたら、悪性疾患も鑑別に想定します。悪性疾患に伴う高Ca血症と言っても、鑑別すべき病態は複数あるので注意が必要です。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】MAH【日本語】悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症・悪性腫瘍随伴高カルシウム血症【英字】malignancy-associated hypercalcemia【分野】腫瘍関連【診療科】全診療科【関連】局所骨溶解性高Ca血症(LOH:local osteolytic hypercalcemia)腫瘍随伴体液性高Ca血症(HHM:humoral hypercalcemia of malignancy)PTH非依存性活動性ビタミンD産生腫瘍(悪性リンパ腫)異所性PTH産生腫瘍実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。最近、ハッとしたことがありました。高Ca血症の鑑別を考えたとき、悪性腫瘍に伴う高Ca血症(MAH:malignancy-associated hypercalcemia)について、筆者自身が悪性疾患を念頭に置いてどれくらい血清Ca値に注意を払えていただろうか、という振り返る機会があったからです。高Ca血症の鑑別は多岐に及びますが、悪性腫瘍に関連する高Ca血症の病態だけでも、以下のように複数挙げられます。悪性腫瘍に関連した高カルシウム血症腫瘍随伴体液性高Ca血症(HHM:humoral hypercalcemia of malignancy)(腫瘍細胞からのPTHrP過剰産生に基づく全身性液性機序)局所骨溶解性高Ca血症(LOH:local osteolytic hypercalcemia)(多発性骨髄腫・悪性疾患骨転移)悪性リンパ腫による活性型ビタミンD過剰産生異所性PTH産生腫瘍ただ、臨床現場では、血清Ca値の結果報告は、未補正値のみが表示されることが多く、意識してアルブミン値で補正しないと、軽度の高Ca血症は見落としてしまう可能性があります。また、血清Ca値が正常範囲内でも、過去のデータと見比べると上昇傾向になっている場合もあります。このため、過去のデータとの比較が重要となってきます。また、薬剤が血清Ca値を修飾する場合があります。高齢女性では骨粗鬆症の治療薬を使用している場合も多く、たとえばビスホスホネート製剤はその血中Ca濃度の低下作用から、血清Ca値の上昇をマスクしてしまう可能性も否定できません。血清Ca値を悪性疾患の早期発見やスクリーンニングという観点で利用することは難しいです。しかし、血清Caに異常を認めたときは悪性疾患をしっかり想定する必要があり、未診断の悪性疾患が潜んでいる可能性をきちんと想起したいものです。しばらく経ってから悪性疾患が見つかるという事態は極力避けたい状況であり、日常臨床で当たり前に検査している血清Caの解釈には、より一層の注意を払いたいと感じます。1)井上 大輔. 日内会誌. 2020;109:740-745.2)福原 傑. 日腎会誌. 2017;59:598-605.

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第28回 原因は1つとは限らない【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)検査で異常値をみつけたからといって今回の原因とは限らない。2)検査で異常が認められないからといって異常なしとは限らない。3)症状を説明し得るか、結論付ける前に再考を!【症例】81歳男性。意識障害自宅で反応が乏しいところを仕事から帰宅した息子が発見し救急要請。●受診時のバイタルサイン意識20/JCS血圧148/81mmHg脈拍92回/分(整)呼吸18回/分SpO295%(RA)体温36.1℃瞳孔4/3.5 +/+既往歴認知症、高血圧、脂質異常症、便秘、不眠内服薬ドネペジル塩酸塩、トリクロルメチアジド、アトルバスタチンカルシウム水和物、酸化マグネシウム、ゾルピデム酒石酸塩所見顔面の麻痺ははっきりしないが、左上肢の運動障害あり検査の異常が今回の原因とは限らない採血、心電図、X線、CTなどの検査を行い異常がみつかることは、よくあります。特に高齢者の場合にはその頻度は高く、むしろまったく検査に異常が認められないことの方が多いでしょう。しかし、異常を認めるからといって今回の主訴の要因かというとそんなことはありません。腎機能障害、肝機能障害、貧血、電解質異常、中には急を要する場合もありますが、症状とは関係なく検査の異常が認められることはよくあるものです。そのため、検査結果は常に病歴や身体所見、バイタルサインを考慮した結果の解釈が重要です。以前から数値や所見が変わっていなければ、基本的には今回の症状とは関係ないことが多いですよね。慢性腎臓病患者のCr、Hb、心筋梗塞の既往のある患者の心電図など、けっして正常値でありません。急性の変化か否かが、1つのポイントとなりますので、以前の検査結果と比較することを徹底しましょう。検査で異常が認められないから原因ではないとは限らないコロナ禍となり早2年が経過しました。抗原検査、PCRなど何回施行したか覚えていないほど、皆さんも検査の機会があったと思います。抗原陰性だからコロナではない、PCR陰性だからコロナではない、そんなことないことは皆さんもよく理解していると思います。頭痛患者で頭部CTが陰性だからクモ膜下出血ではない、肺炎疑い患者でX線所見陰性だから肺炎ではない、CRPが陰性だから重篤な病気は否定的、CO中毒疑い患者の一酸化炭素ヘモグロビン(CO-Hb)が正常値だからCO中毒ではないなど、例を挙げたらきりがありません。皆さんも自身で施行した検査結果で異常の1つや2つ、経験ありますよね?!原因が1つとは限らない今回の症例の原因、皆さんは何だと思いますか? もちろんこれだけでは原因の特定は難しいかもしれませんが、高齢男性の急性経過の意識障害で麻痺もあるとなると脳梗塞や脳出血などの脳卒中が考えやすいと思います。低血糖や大動脈解離、痙攣なども“stroke mimics”の代表であるため考えますが、例えばMRI検査を実施し、画像所見が光っていたらどうでしょうか? MRIで高信号な部分があるのであれば、「原因は脳梗塞で決まり」。それでよいのでしょうか?脳梗塞の病巣から症状が完全に説明できる場合にはOKですが、「この病巣で意識障害来すかな…」「こんな症状でるのかなぁ…」こんなことってありますよね。このような場合には必ず「こんなこともあるのだろう」と思考停止するのではなく、他に症状を説明し得る原因があるのではないかと再考する必要があります。この患者さんの場合には、脳梗塞に加え低栄養状態に伴うビタミン欠乏、ゾルピデム酒石酸塩による薬剤性などの影響も考えられました。ビタミンB1欠乏に伴うウェルニッケ脳症は他疾患に合併することはけっして珍しくありません1)。また、高齢者の場合には「くすりもりすく」と考え、常に薬剤の影響を考える必要があります。きちんと薬は飲んでいるのに…患者さんが訴える症状が、内服している薬剤によるものであると疑うのは、どんなときでしょうか?新規の薬剤が導入され、その後からの症状であれば疑うことは簡単です。また、用法、用量を誤って内服してしまった場合なども、その情報が得られれば薬剤性を疑うのは容易ですよね。意外と見落とされがちなのが、腎機能や肝機能の悪化に伴う薬効の増強や電解質異常などです。フレイルの高齢者は大抵の場合、食事摂取量が減少しています。数日の単位では大きな変化はなくても、数ヵ月の単位でみると体重も減少し、食事だけでなく水分の摂取も減少していることがほとんどです。そのような場合に、「ご飯は食べてますか?」と聞くだけでは不十分で、具体的に「何をどれだけ食べているのか」「数ヵ月、半年前と比較してどの程度食事摂取量や体重が変化したか」を確認するとよいでしょう。「ご飯は食べてます」という本人や家族の返答をそのまま鵜呑みにするのではなく、具体的に確認することをお勧めします。骨粗鬆症に対するビタミンD製剤による高Ca血症、利尿薬内服に伴う脚気心、眠剤など、ありとあらゆる薬の血中濃度が増加することに伴う、さまざまな症状が引き起こされかねません。薬の変更、追加がなくても「くすりもりすく」を常に意識しておきましょう。最後に高齢者は複数の基礎疾患を併せ持ち、多数の薬剤を内服しています。そのような患者が急性疾患に罹患すると検査の異常は複数存在するでしょう。時には検査が優先される場面もあるとは思いますが、常にその変化がいつからのものなのか、症状を説明しうるものなのか、いちいち考え検査結果を解釈するようにしましょう。1)Leon G. Clinicians Who Miss Wernicke Encephalopathy Are Frequently Called Defendants. Toxicology Rounds. Emergency Medicine News. 2019;41:p.14.

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睡眠、不安、ビタミンDと周産期うつ病リスク

 周産期うつ病の頻度は高く、死亡率に影響を及ぼす疾患である。米国・サウスカロライナ医科大学のCourtney E. King氏らは、周産期うつ病リスクに影響を及ぼす修正可能な心理学的および生物学的因子を特定するため、検討を行った。その結果、妊娠初期の睡眠、不安および潜在的なビタミンD不足は、周産期うつ病リスクの増加と関連していることが示唆された。Reproductive Sciences誌オンライン版2022年3月29日号の報告。睡眠障害や不安症状、ビタミンD不足とうつ症状スコア 対象は、妊娠中の女性105人。妊娠8~12週および24~28週、産後6~8週および10~12週に、うつ症状、不安症状、睡眠障害の評価と血液検査を実施した。評価尺度として、うつ症状にはエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)、不安症状には全般不安症スコア(GAD)、睡眠障害にはピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いた。 妊娠中の女性105人にうつ症状、不安症状、睡眠障害の評価と血液検査を実施した主な結果は以下のとおり。・研究期間中にうつ病基準を満たした女性は、105例中35例(33.3%)であった。・妊娠8~12週にPSQIスコア(OR:1.17、95%CI:1.04~1.33)またはGADスコア(OR:1.33、95%CI:1.18~1.48)の上昇が認められた女性は、その後の評価でうつ症状スコアが上昇する可能性が高かった。・ビタミンDレベルが20ng/L以下の女性は、フォローアップ期間中にうつ症状スコアが上昇する可能性が高かったが、統計学的な有意差は認められなかった(OR:2.40、95%CI:0.92~6.27)。・産後の評価への参加率は低かった。・本研究の限界として、うつ症状、不安症状、睡眠障害の評価には、自己報告尺度を用いた点が挙げられる。 著者らは「妊娠中の睡眠や不安の問題を軽減させ、適切なビタミンDレベルを確保することを目的とした介入は、周産期うつ病リスクを減少させるために重要である」としている。

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薬物性味覚障害マニュアルが11年ぶりに改定、注意すべき薬剤と対策は?/厚労省

 『重篤副作用疾患別対応マニュアル』は77項目に細分化され、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページに掲載されているが、今回、「薬物性味覚障害」の項が11年ぶりに改定された。薬剤性味覚障害は味覚障害の原因の約20%を占めていること、多くの薬剤の添付文書の副作用に記載されていることから、以下に示すような薬剤を服用中の患者の訴えには十分注意が必要である。<添付文書に口腔内苦味の記載がある薬剤の一例>・ニコチン(禁煙補助剤)・フルボキサミンマレイン酸塩(選択的セロトニン再取り込み阻害薬[SSRI])・ラベプラゾールナトリウム(PPI)・レバミピド(胃炎・胃潰瘍治療薬) ・レボフロキサシン水和物(ニューキノロン系抗菌薬)・炭酸リチウム(躁病・躁状態治療薬)*そのほかは重篤副作用疾患別対応マニュアル(薬物性味覚障害)参照<添付文書に味覚障害の記載がある薬剤の一例>・アロプリノール(キサンチンオキシダーゼ阻害薬・高尿酸血症治療薬)・ジクロフェナクナトリウム(フェニル酢酸系消炎鎮痛薬)・レトロゾール(アロマターゼ阻害薬・閉経後乳癌治療薬)・ロサルタンカリウム(アンギオテンシンII受容体拮抗薬)*そのほかは重篤副作用疾患別対応マニュアル(薬物性味覚障害)参照<添付文書に味覚異常の記載がある薬剤の一例>・アカルボース(α-グルコシダーゼ阻害薬)・アプレピタント(選択的NK1受容体拮抗型制吐薬)・イリノテカン塩酸塩水和物(I型DNAトポイソメラーゼ阻害型抗悪性腫瘍薬)・インスリンデグルデク[遺伝子組換え]・リラグルチド[遺伝子組換え](持効型溶解インスリンアナログ/ヒトGLP-1アナログ配合薬)・エルデカルシトール(活性型ビタミンD3)・オロパタジン塩酸塩(アレルギー性疾患治療薬)・チアマゾール(抗甲状腺薬)・テルビナフィン塩酸塩(アリルアミン系抗真菌薬)・バルサルタン(選択的AT1受容体遮断薬)・フェンタニル(経皮吸収型持続性疼痛治療薬)・ボリコナゾール(トリアゾール系抗真菌薬)・メトトレキサート(抗リウマチ薬/葉酸代謝拮抗薬)*そのほかは重篤副作用疾患別対応マニュアル(薬物性味覚障害)参照 上記のような薬剤を服用している患者が症状を訴えた場合、まずは(1)原因薬剤の中止・減量を行うが、原疾患の治療上、中止などの対応ができない場合、または味覚障害を起こす可能性のある薬剤を複数服用して特定が困難な場合もある。そのような場合でも(2)亜鉛剤の補給[低亜鉛血症がある場合、味蕾の再生促進を期待して補給]、(3)口腔乾燥の治療などで唾液分泌を促進させる、(4)口腔掃除とケアで対応することが必要で、とくに(1)(2)は重要度が高いと記載されている。<早期に認められる症状>薬物性味覚障害は高齢者に多く、複数の薬剤を服用しており、また発症までの時間や症状もまちまちで、初期の症状を捉えることは困難なことが多い。初期症状を含め、よく訴える症状に以下のようなものがある。 1:味(甘・塩・酸・苦)が感じにくい 2:食事が美味しくない3:食べ物の好みが変わった 4:金属味や渋味など、嫌な味がする 5:味のしないところがある 6:口が渇く<患者が訴えうる自覚症状>1:味覚減退:「味が薄くなった、味を感じにくい」2:味覚消失・無味症:「まったく味がしない」 3:解離性味覚障害:「甘みだけがわからない」4:異味症・錯味症:「しょう油が苦く感じる」 5:悪味症:「何を食べても嫌な味になる」6:味覚過敏:「味が濃く感じる」 7:自発性異常味覚:「口の中に何もないのに苦みや渋みを感じる」 8:片側性味覚障害:一側のみの味覚障害 本マニュアルには医師、薬剤師などの医療関係者による副作用の早期発見・早期対応に資するため、ポイントになる初期症状や好発時期、医療関係者の対応などが記載されている。 また、患者が読みやすいように、患者やその家族に知っておいてもらいたい副作用の概要、初期症状、早期発見・早期対応のポイントをできるだけわかりやすい言葉で記載してもいるので、ぜひ参考にしていただきたい。

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コロナ禍で医療従事者のビタミンD欠乏が顕著/国立成育医療研究センター

 日々の生活でビタミンDが不足すると免疫力を低下させる可能性があり、長期間の屋内生活での運動不足(骨刺激不足)では骨粗鬆症への影響も懸念される。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が蔓延する環境下で、医療従事者の長期間の屋内生活での影響はどのようなものがあるだろうか。 国立成育医療研究センター(理事長:五十嵐 隆氏)の「ナショナルセンター職員における新型コロナウイルス感染症の実態と要因に関する多施設共同観察研究」グループは、感染者の易感染性や重症化要因を評価する目的で、COVID-19患者受け入れ病院である同センターのハイリスク医療従事者361人(男性87人、女性274人)を対象に、2021年3月1日~5日に調査を行い、その結果を発表した。 調査の結果、対象者にはビタミンDの欠乏が顕著にみられた。そのため医療従事者だけでなく、長期間の屋内生活をしている方には、適度な日光浴もしくはビタミンDの補充(食事、サプリメント、薬剤)が重要である可能性が示唆された。屋内生活が長いときに意識したいビタミンDの摂取【背景・目的】 COVID-19の最大の特徴は、ウイルス側の感染性および病原性の変化に加え、感染者(ホスト側)の年齢や基礎疾患などによる病状の多様性にある。この点に着目し、ホスト側の易感染性もしくは重症化要因を評価するために、感染防御能力低下、動脈硬化、耐糖能異常、肝・腎機能障害、栄養低下、骨髄機能低下のスクリーニング調査を行った。【結果概要】 ・本調査で顕著に異常を認めたのはビタミンDであり、性別、年齢を問わず多くの研究参加者で不足していた。・COVID-19の防御対策や、医療従事による長期間の室内生活が紫外線吸収の低下を招いたことが原因の1つとして考えられる。・ビタミンDには多様な生理作用があり、細胞の分化・増殖や免疫機構、骨代謝と深くかかわっている。・ビタミンD不足においては、感染防御能力の低下に加え、骨代謝の低下と運動不足(骨刺激不足)による骨粗鬆症や、それに起因する骨折への注意が必要。【今後の展望・発表者のコメント】 ビタミンDを補充する方法はまちまちだが、日光(紫外線)曝露、経口摂取とそれに加え薬剤(活性型ビタミンD3製剤)の補充により免疫能力の改善、骨粗鬆症の予防が期待される。この調査は医療従事者を対象とした調査結果だが、コロナ禍で長期間の屋内生活をしている方は、適度の日光浴やビタミンDの補充を行い、ビタミンD不足を起因とする感染防御能力の低下、骨代謝の低下と運動不足による骨粗鬆症や、骨折への注意が必要と警鐘を鳴らしている。

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硬化性萎縮性苔癬〔LSA:lichen sclerosus et atrophicus〕

1 疾患概要■ 概念・定義外陰部に好発する難治性炎症性疾患である。男性の陰茎部に生じるbalanitis xerotica obliterans、女性の外陰部にみられるkraurosis vulvaeやhypoplastic dystrophyと呼ばれる疾患も本症と同義である。■ 疫学性差は男女比が1:9と、圧倒的に女性の罹患者が多い。初経前と閉経後の2つの年齢層に発症のピークがある。男性例は30~50歳の壮年層に発症頻度が高い。■ 病因不明であるが、Borrelia burgdorferi感染の関与が示唆されたことはあるが、菌体が同定された報告は無く、現在では否定的と考えられている。■ 症状女性外陰部の病変は、象牙色調の浸潤を触れる硬化性または萎縮性の紅色局面が主体で、びらん、水疱、紫斑、出血を伴うことがある(図1)。図1 女性外陰部の硬化性苔癬大陰唇から膣口にびらん、苔癬化、脱色素斑が混在する。劇痒と形容される強い瘙痒感や、灼熱感を訴えることが多い。約3割で肛門周囲にも病変がみられ、外陰部から肛門周囲にかけて「8の字型」と称される連続病変を呈することがある(図2)。図2 外陰部から肛囲までの8の字病変肛門部では萎縮した白色調の病変が広がり、さまざまな程度で色素脱失や色素沈着が混在することが多い。同部の皮膚粘膜境界部に生じた場合には、尿道口や腟口部の狭窄を来たしうる。経過中に瘢痕を生じやすく、進展すると癒着による小陰唇の消失や陰核包皮の癒着・閉鎖、陰核の埋没などを来す。通常は腟や子宮頸部などの粘膜部位は侵さないが、辺縁の皮膚病変からびらん、亀裂、腟口部の狭窄が進展した場合には、自発痛や排尿痛、性交痛を生じることがある。その一方、高齢者では無症状の場合もあり、健診で初めて指摘されることもある。男性例は、成人では包皮、冠状溝、亀頭部、小児では通常包皮に生じる。女性例に比べて瘙痒が主症状になることは少なく、陰茎や肛囲の病変はまれである。高度の包茎や癒着による尿道口の狭小化のため、排尿異常を生じることがある。■ 分類性差を問わず、ほとんどが外陰部のみに限局する。外陰部以外の病変が併存することや、外陰部外のみの症例もあるが、諸外国と比べてわが国では極めてまれである。■ 予後長期の罹患に伴って上皮系悪性腫瘍(ほとんどが有棘細胞がん)が本症の5~11%で出現し、最も予後に影響する。また、溶血性貧血、白斑、自己免疫性水疱症のような自己免疫疾患や臓器特異的な自己抗体が検出される症例が、おのおの全体の2割と4割に合併することが知られており、予後に関わるものもある。中でも甲状腺疾患が12%、次いで白斑が6%と多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 諸検査1)皮膚生検と病理組織学的所見病理組織学的に不全角化を伴う過角化、毛孔性角栓を伴う様々な厚さの表皮肥厚や液状変性を認め、完成期には萎縮して表皮突起が平坦化する。直下の真皮浅層では、毛細血管拡張やリンパ球を主体とする炎症細胞浸潤に加え、膠原線維が均一化した無構造物「硝子様均質化(ヒアリン化, hyalinization)」が特徴的である(図3)。生検組織の蛍光抗体直接法では、免疫グロブリンや補体の沈着は通常認めない。図3 外陰部硬化性苔癬の病理組織像過角化、表皮突起の不規則化と消失、真皮上層の毛細血管拡張とヒアリン化、リンパ球浸潤を特徴とする。2)血液学的所見一般血液・生化学検査は正常であることが多く、本疾患の診断や病勢把握に有益な保険適応内のバイオマーカーは存在しない。上述のように、10~30%に自己免疫異常(抗甲状腺抗体、抗BP180抗体など)を認めることがある。■ 鑑別疾患外陰部カンジダ症を含む股部白癬、扁平苔癬、乳房外パジェット病、粘膜類天疱瘡、限局性強皮症(モルフェア)、白斑、円板状ループスエリテマトーデスなどを鑑別する必要がある。■ 合併症進行すると尿道狭窄や性交障害など、排尿や外陰部の機能障害を来すことがある。女性外陰部の硬化性苔癬では7~11%、また表皮が肥厚した病変では約30%に有棘細胞がんが出現するとの報告がある(図4)。図4 有棘細胞がんを合併した女性外陰部の硬化性苔癬右大陰唇から小陰唇の病変部内に隆起性の腫瘤を認める。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療目標ほとんどの症例が難治であり、各種治療に難渋することが多い。長期にわたって症状のコントロールが不良な症例では局所発癌の頻度が高まるため、通常の治療に抵抗する場合は、まず症状の緩和とその維持を目指す。■ 治療内容1)初期治療局所へのステロイド外用剤が第1選択である。外陰部は他の部位と比べて薬の吸収率が良いものの(42倍 vs. 0.14~13倍:前腕内側の吸収率を1とした場合)、治療効果を優先して、欧米やわが国のガイドラインでは強めのステロイド外用剤の使用が推奨されている。掻爬行為によって症状が悪化するため、抗ヒスタミン薬などを併用して瘙痒のコントロールを行うこともある。2)治療後期症状が軽快したのちも無治療ではなく、保湿剤による外陰部の保護を継続することで、再燃やそのピークが抑えられる場合が多い。3)治療抵抗例保険適応外ではあるが、ステロイド外用に加えてタクロリムス含有軟膏の併用や、局所への光線療法が奏効する場合もある。男性の場合、既存の包茎が症状の遷延化を招くことが多いため、症状に応じて専門科への紹介を考慮する。4)合併症への治療硬化性苔癬における外科的治療は、悪性腫瘍合併例の病変部切除や尿道口狭窄例の尿道拡張術や尿道再建手術などに限って行う。4 今後の展望■ 治療外用療法が基本となるため、ステロイド以外の抗炎症作用ならびに免疫抑制効果をもつ外用剤が期待されている。上述したタクロリムス外用や活性型ビタミンD3外用剤、局所紫外線療法の奏効例が報告されている(本邦保険適用外)。全身療法ではシクロスポリンやバリシチニブ(JAK阻害薬)の内服が奏効した報告がある。■ 診断本症の確定診断には皮膚生検による病理組織所見の確認が必須であるが、女性の罹患者が多く、病変部がプライベートパーツであることから、生検が困難な症例も少なくない。患者血清中の細胞外基質extracellular matrix protein 1(ECM1)に対するIgG抗体を用いた血清診断が、非侵襲的かつ経過中の病勢の把握に有用バイオマーカーになる可能性が指摘されている。いまだ本抗体の病的意義は不明であり、今後の検討が待たれる。5 主たる診療科皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本皮膚科学会 硬化性萎縮性苔癬 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン(医療従事者向けのまとまった情報)1)長谷川 稔ほか. 日皮会誌. 2016;126:2251-2257.2)強皮症・皮膚線維化疾患の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン作成委員会.全身性強皮症・限局性強皮症・好酸球性筋膜炎・硬化性萎縮性苔癬の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン 2017. 金原出版;2017.3)Lewis FM, et al. Br J Dermatol. 2018;178:839-853.4)Kirtschig G, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2017;31:e81-e83.5)Oyama N, et al. Lancet. 2003;362:118-123.公開履歴初回2022年3月2日

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