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抗PD-1抗体療法に対する耐性のメカニズムは?/NEJM

 悪性黒色腫の抗PD-1抗体療法に対する耐性は、インターフェロン受容体シグナル伝達や抗原提示経路の異常と関連していることが明らかとなった。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJesse M. Zaretsky氏らが、悪性黒色腫患者4例の生検サンプルを分析し報告した。抗PD-1抗体療法で奏効(objective response)が得られた悪性黒色腫患者の約75%は、効果が永続的に長期間持続するが、客観的腫瘍縮小が最初に確認された後、治療を継続しているにもかかわらず遅発性再発がみられることがある。このことについて、免疫監視機構の回避メカニズムは不明であった。NEJM誌オンライン版2016年7月13日号掲載の報告。抗PD-1抗体療法で奏効後に遅発性再発を来した症例の生検サンプルを分析 研究グループは、免疫チェックポイント阻害薬pembrolizumabを用いた抗PD-1抗体療法により客観的腫瘍縮小が確認され、数年後に病勢進行を認めた転移性黒色腫患者4例(再発までの平均期間は624日、範囲419~888日)を対象に、ベースライン時および再発時の病変の生検サンプルについて、免疫組織化学染色、免疫蛍光法、ウェスタンブロット法、フローサイトメトリー法、ならびに遺伝子転写プロファイリング(全エクソーム解析)等により分析を行った。なお、ベースライン時の検体採取は、症例1はBRAF阻害薬(ベムラフェニブ)投与初期、症例2~4についてはpembrolizumab投与直前であった。4例中3例で耐性獲得に関連する遺伝子変異を確認 4例中2例において、耐性に関連する遺伝子変異として、インターフェロン受容体関連ヤヌスキナーゼ1(JAK1)またはヤヌスキナーゼ2(JAK2)をコードする遺伝子の、野生型対立遺伝子の欠失を伴う機能喪失型変異を確認した。 症例3では、抗原提示蛋白β2ミクログロブリン(B2M)をコードする遺伝子の短縮型変異を認めた。JAK1とJAK2の短縮型変異は、がん細胞の増殖阻害作用低下を含むインターフェロンγの活性低下をもたらしており、B2Mの短縮型変異は主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIの表面発現の消失を引き起こした。 症例4では、T細胞に対する耐性を獲得したことは明らかであったが、明確な遺伝子変異は確認できず、インターフェロン誘導遺伝子の発現変化による非遺伝子メカニズムが関与している可能性が示唆された。

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HSCT後の造血器腫瘍再発、イピリムマブが有効の可能性/NEJM

 同種造血幹細胞移植(HSCT)後に造血器腫瘍を再発した患者に対し、免疫チェックポイント阻害薬イピリムマブを投与することで、抗腫瘍効果が得られる可能性があることが示された。米国・ダナファーバーがん研究所のMatthew S. Davids氏らが第I・Ib相臨床試験の結果、明らかにしたもので、NEJM誌2016年7月14日号で発表した。被験者のうち完全奏効が認められたのは、約2割だった。一方で免疫関連の有害事象を発症した人も約2割に上っている。イピリムマブ3mg/kgまたは10mg/kgを投与 研究グループは、HSCT後に造血器腫瘍を再発した28例を対象に、多施設共同試験を行い、イピリムマブの安全性・有効性について検証した。被験者に対して、イピリムマブ3mg/kgまたは10mg/kgを、導入療法として3週ごとに4回投与した。そのうち臨床的効果が認められた人については、その後も12週ごとに最長で60週間投与を継続した。 イピリムマブにより、T細胞の補助刺激受容体CTLA-4を標的にすることで、免疫チェックポイントを阻害し、移植片対腫瘍効果による抗腫瘍効果を保つことができるかどうかを検証した。完全奏効が23%、部分奏効は9% その結果、免疫に関連する有害事象を発症したのは6例(21%)で、そのうち1例が死亡。さらに移植片対宿主病(GVHD)を発症しイピリムマブ投与を中止したのは4例(14%)だった。 10mg/kgを投与した22例については、完全奏効が5例(23%)で、部分奏効が2例(9%)、また腫瘍量の減少が6例(27%)で認められた。 完全奏効が認められた人のうち4例は、髄外性急性骨髄性白血病の再発で、1例は急性骨髄性白血病に至る骨髄異形成症候群だった。また4例で、治療効果の1年以上の継続が認められた。効果として、細胞傷害性CD8+T細胞の上皮内浸潤、制御性T細胞活性化の低下、血液中のエフェクターT細胞亜集団の増加がみられた。 なお、イピリムマブ3mg/kgを投与した群では、正式な治療効果基準を満たした人はいなかった。

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【JSMO2016見どころ】肺がん

 2016年7月28日(木)から3日間にわたって、第14回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立って、先月、日本臨床腫瘍学会(JSMO)のプレスセミナーが開かれ、がん治療の最新動向と、今回のJSMOで注目すべき各領域のトピックが紹介された。 このうち、肺がんについては里内 美弥子氏(兵庫県立がんセンター 呼吸器内科部長)が登壇した。以下、里内氏のコメントを紹介する。【里内 美弥子氏コメント】 肺がんは、がんの個別化治療や分子標的薬の開発が最も進んだ領域であり、昨年末には免疫チェックポイント阻害剤も実地医療に導入され、治療効果を上げてきている。今年はさらに分子標的治療薬の耐性に効果を示す薬剤などが臨床導入されており、今後も新薬導入が続く見通しとなっており、大きな治療の変遷の只中にある。 これらの進展を背景に本学会では、免疫療法の臨床成績、EGFR変異・ALK融合遺伝子陽性肺がんの最新治療、抗がん剤耐性の克服、これら薬剤のバイオマーカー診断に関するトピックス、本邦で行われている全国規模の肺がん遺伝子解析(LC-SCRUM)の現状と、この解析で判明したドライバー変異を持った肺がんの新薬での治療成績など最新の話題が数多く発表される。海外の第一線で活躍する多くの研究者を招聘しており、これらのホットな話題に世界レベルの活発かつ意義深い討論が期待される。【注目演題】 本学会で、里内氏が肺がん関連の注目演題として挙げたのは、以下のとおり。一般口演「EGFR遺伝子変異陽性肺がん」日時:7月29日(金)16:00~17:00場所:Room3(神戸国際展示場2号館2F 2A会議室)「肺がん EGFR・VEGFR」日時:7月29日(金)8:30~9:30場所:Room3(神戸国際展示場2号館2F 2A会議室)「肺がん バイオマーカー」日時:7月29日(金)9:30~10:30場所:Room3(神戸国際展示場2号館2F 2A会議室)「肺がん ALK、ROS、RET」日時:7月29日(金)10:30~11:30場所:Room3(神戸国際展示場2号館2F 2A会議室)「分子・遺伝子診断」日時:7月28日(木)14:30~15:30場所:Room10(神戸国際会議場4F401・402会議室)International Symposium「ALK inhibitors and other targeted therapies」日時:7月28日(木)9:00~11:00場所:Room5(神戸国際展示場1号館2F展示室A)「Resistance of cancer molecular targeted drug and new insights of overcoming therapy」日時:7月28日(木)12:30~14:30場所:Room6(神戸国際展示場1号館2F展示室B)「Immune Check Point Inhibitor;Paradigm Shift of Cancer Treatment」日時:7月28日(木)13:15~14:45場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)「Resistance of cancer molecular targeted drug and new insights of overcoming therapy」日時:7月28日(木)12:30~14:30場所:Room6(神戸国際展示場1号館2F展示室B)Panel Discussion「免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理」日時:7月30日(土)13:30~15:30場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)ESMO/JSMO Joint Symposium「Evolving molecular targeting treatment for lung cancer」日時:7月28日(木)12:50~14:50場所:Room5(神戸国際展示場1号館2F展示室A)ASCO/JSMO Joint Symposium「Cancer Immunotherapy」日時:7月30日(土)8:50~11:50場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)Encore Session日時:7月29日(金)15:40~17:00場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)【第14回日本臨床腫瘍学会学術集会】会期:2016年7月28日(木)~30日(土)会場:神戸国際展示場・神戸国際会議場会長:南 博信(神戸大学大学院医学研究科 腫瘍・血液内科 教授)テーマ:Breaking through the Barriers:Optimizing Outcomes by Integration and Interaction第14回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

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アジソン病〔Addison's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義慢性副腎皮質機能低下症(アジソン病)は、アルドステロン(ミネラルコルチコイド)、コルチゾール(グルココルチコイド)、デヒドロエピアンドロステロンとデヒドロエピアンドロステロンサルフェート(副腎アンドロゲン)の分泌が生体の必要量以下に慢性的に低下した状態である。アジソン病は、副腎皮質自体の病変による原発性副腎皮質機能低下症であり、その病因として、副腎皮質ステロイド合成酵素欠損症による先天性副腎過形成症、先天性副腎低形成(X連鎖性、常染色体性)、ACTH不応症などの責任遺伝子が明らかとされた先天性のものはアジソン病とは独立した疾患として扱われるため、アジソン病は後天性の病因による慢性副腎皮質機能低下症を指して用いられる。■ 疫学わが国における全国調査(厚生労働省特定疾患「副腎ホルモン産生異常症」調査分科会)によるとアジソン病の患者は1年間で660例と推定され、病因としては特発性が42.2%、結核性が36.7%、その他が19.3%であり、時代とともに特発性の比率が増加している。先天性副腎低形成症は約12,500人出生に1人である。副腎不全症としては、10,000人に5人程度(3人が下垂体性副腎不全、1人がアジソン病、1人が先天性副腎過形成症)の割合である。■ 病因病因としては、感染症、その他の原因によるものと特発性がある。感染症では結核性が代表的であるが、真菌性、後天性免疫不全症候群(AIDS)に合併するものが増えている。 特発性アジソン病は、抗副腎抗体陽性の例が多く(60~70%)、21-水酸化酵素、17α-水酸化酵素などに対する自己抗体が原因となる自己免疫性副腎皮質炎であり、その他の自己免疫性内分泌疾患を合併する多腺性自己免疫症候群と呼ばれる。I型は特発性副甲状腺機能低下症、皮膚カンジダ症を合併するHAM症候群、II型は橋本病などを合併するシュミット症候群などがある。その他の原因によるものとしては、がんの副腎転移、副腎白質ジストロフィーなどがある。また、最近使用される頻度が増えている免疫チェックポイント阻害薬の免疫関連有害事象(irAE)として内分泌障害があり、副腎炎によるアジソン病もみられる(約0.6%)。■ 症状コルチゾールの欠乏により、易疲労感、脱力感、食欲不振、体重減少、消化器症状(悪心、嘔吐、便秘、下痢、腹痛など)、血圧低下、精神症状(無気力、嗜眠、不安、性格変化)、発熱、低血糖症状、関節痛などを認める。副腎アンドロゲン欠乏により女性の腋毛、恥毛の脱落、ACTHの上昇により、歯肉、関節、手掌の皮溝、爪床、乳輪、手術痕などに色素沈着が顕著となる。■ 分類副腎皮質の90%以上が障害されて起きる原発性副腎皮質機能低下症(アジソン病)と続発性副腎皮質機能低下症にまず大きく分類できる。続発性副腎皮質機能低下症には、下垂体性(ACTH分泌不全)と視床下部性(CRH分泌不全)に分けられる。■ 予後欧州の大規模疫学研究によると、原発性副腎不全症患者の全死亡リスクは、男性で2.19、女性では2.86との報告がある。長期予後が悪い理由は、グルココルチコイドの過剰投与によるQOLの低下、心血管イベントや骨粗鬆症のリスクの増加などが、生存率の低下につながると考えられている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)一般検査では、低血糖(血糖値が70mg/dL以下)、低ナトリウム血症(135mEq/L以下)、正球性正色素性貧血(男性13g/dL以下、女性12g/dL以下)、血中総コレステロール値低値(150mg/dL以下)、末梢血の好酸球増多(8%以上)、相対的好中球減少、リンパ球増多、高カリウム血症を示す。内分泌学的検査では、非ストレス下で早朝ACTHとコルチゾール値を測定する(絶食で9時までに)。早朝コルチゾール値が18μg/dL以上であれば副腎不全症を否定でき、4μg/dL未満であれば副腎不全症の可能性が高いが、4~18μg/dLでは可能性を否定できない。血中コルチゾール基礎値が18μg/dL未満のときは、迅速ACTH負荷試験(合成1-24 ACTHテトラコサクチド[商品名:コートロシン]250μg静注)を施行する。血中コルチゾール頂値が18μg/dL以上であれば副腎不全症を否定でき、18μg/dL未満であれば副腎不全症を疑うほか、15μg/dL未満では原発性副腎不全症の可能性が高い。迅速ACTH負荷試験では、原発性と続発性副腎皮質機能低下症の鑑別ができないため、ACTH連続負荷試験、CRH負荷試験、インスリン低血糖試験などを組み合わせて行う(図)。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)可能な限り、生理的コルチゾールの分泌量と日内変動に近い至適な補充療法が望まれる。コルチゾールを1日当たり10~20mg補充するのが生理的補充量の目安である。日本人は食塩摂取量が多いので、ヒドロコルチゾン(同:コートリル)10~20mg/日を2~3回に分割服用する(2分割投与の場合は、朝2:夕1、3分割投与では朝:昼:夕=3:2:1)。4 今後の展望現在、使用されているヒドロコルチゾンは放出が早く、内因性コルチゾールの日内リズムを完全に再現できない。わが国では使用できないが、欧州を中心にヒドロコルチゾン放出時間を遅らせる徐放型ヒドロコルチゾンの開発研究が進んでおり、生理的補充に近い薬理動態を再現できることが期待される。5 主たる診療科内科(とくに内分泌代謝内科)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本内分泌学会臨床重要課題(副腎クリーゼを含む副腎皮質機能低下症の診断基準作成と治療指針作成)(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター アジソン病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Charmandari E, et al. Lancet.2014;383:2152-2167.2)南学正臣 総編集.内科学書 改訂第9版.中山書店; 2019. p.153-160.3)矢崎義雄 総編集.内科学 第11版.朝倉書店; 2017. p.1630-1633.公開履歴初回2015年01月08日更新2016年07月19日更新2022年02月28日

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【JSMO2016見どころ】免疫療法

 2016年7月28日(木)から3日間にわたって、第14回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立って、先月、日本臨床腫瘍学会(JSMO)のプレスセミナーが開かれ、がん治療の最新動向と、今回のJSMOで注目すべき各領域のトピックが紹介された。 このうち、がん免疫療法については西川 博嘉氏(国立がん研究センター研究所/先端医療開発センター 腫瘍免疫学担当/免疫TR分野)が登壇した。以下、西川氏のコメントを紹介する。【西川 博嘉氏コメント】 免疫チェックポイント阻害剤(とくに抗PD-1抗体)が悪性黒色腫、非小細胞肺がんに臨床導入され、がんに対する免疫応答を人為的に操作することで、がん治療が可能であることが示された。これに続いて腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、一部の大腸がんで従来の治療に対する優位性が示され、臨床応用が期待されている。また膀胱がんに対しては、抗PD-L1抗体がFDAに承認され、さまざまな免疫チェックポイント阻害剤の臨床導入が加速している。加えて、これらのがん免疫療法では、臨床効果が20~30%程度の患者でしかみられないことから、レスポンダーの層別化、ノンレスポンダーへの新規がん免疫療法開発の検討も急速に進んでいる。一方、レスポンダーでの投与継続の必要性、従来の抗がん剤ではみられない副作用など、解決すべき課題も多い。本学会では、世界初の免疫チェックポイント阻害剤、抗CTLA-4抗体の開発者であるJames Allison博士をはじめとする国内外の研究者を集め、現在のがん免疫療法が抱える課題について討論し、今後の展開を考える。【注目演題】 本学会では、免疫チェックポイント阻害薬企画特集として、以下7つの演題が用意されている。特別講演「がん免疫療法の進歩」日時:7月29日(金)11:00~12:00場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南) 教育講演「免疫チェックポイント阻害剤~過去、現在、今後の展望~」日時:7月28日(木)9:00~9:30場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)International Symposium「免疫チェックポイント阻害薬の新展開」日時:7月28日(木)13:15~14:45場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)「免疫チェックポイント阻害薬の期待」日時:7月28日(木)14:55~16:55場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)「免疫チェックポイント阻害薬に対するバイオマーカー研究の最前線」日時:7月29日(金)8:30~10:10場所:Room5(神戸国際展示場1号館2F展示室A) Panel Discussion「免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理」日時:7月30日(土)13:30~15:30場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)JSMO/ASCO Joint Symposium「Cancer Immunotherapy」日時:7月30日(土)8:50~11:50場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)【第14回日本臨床腫瘍学会学術集会】会期:2016年7月28日(木)~30日(土)会場:神戸国際展示場・神戸国際会議場会長:南 博信(神戸大学大学院医学研究科 腫瘍・血液内科 教授)テーマ:Breaking through the Barriers:Optimizing Outcomes by Integration and Interaction第14回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

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抗がん剤で劇症1型糖尿病を発症させない

 日本糖尿病学会(理事長:門脇 孝)は、5月18日、本年1月29日に公表した「免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病ことに劇症1型糖尿病の発症について」に追記として「免疫チェックポイント阻害薬使用患者における1型糖尿病の発症に関するRecommendation」を加えた。 Recommendationでは、劇症1型糖尿病を「発症後直ちに治療を開始しなければ致死的」と警告を発するとともに、疾患の存在を想定した早期発見と適切な対処を呼びかけている。また、血糖値の検査・確認、専門医へのコンサルテーション、糖尿病治療の早期開始、患者への事前説明、ステロイド薬使用の注意などを5項目にわたり推奨している。 免疫チェックポイント阻害薬であるヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体ニボルマブ(オプジーボ)を使用した推定4,888人中12人(0.25%)に、1型糖尿病(劇症、急性発症ともに)が発症したことが報告された(使用期間:2014年7月4日~2016年3月31日)。 そこで同学会では、免疫チェックポイント阻害薬投与患者における1型糖尿病発症に対応するため、Recommendationを発表したものである。Recommendation1) 投与開始前および投与開始後、来院日ごとに、高血糖症状の有無を確認し、血糖値を測定する。2) 測定値は当日主治医が確認し、高血糖症状を認めるか、検査に異常値(空腹時126mg/dL以上、あるいは随時200mg/dL以上)を認めた場合は、可及的速やかに糖尿病を専門とする医師(不在の場合は担当内科医)にコンサルトし、糖尿病の確定診断、病型診断を行う。3) 1型糖尿病と診断されるか、あるいはそれが強く疑われれば、当日から糖尿病の治療を開始する。4) 患者には、劇症1型糖尿病を含む1型糖尿病発症の可能性や、注意すべき症状についてあらかじめ十分に説明し、高血糖症状(口渇、多飲、多尿)を自覚したら予定来院日でなくても受診または直ちに治療担当医に連絡するよう指導しておく。5) 該当薬の「適正使用ガイド」に、過度の免疫反応による副作用が疑われる場合に投与を検討する薬剤として記載されている副腎皮質ホルモン剤は、免疫チェックポイント阻害薬による1型糖尿病の改善に効果があるというエビデンスはなく、血糖値を著しく上昇させる危険があるため1型糖尿病重症化予防に対しては現時点では推奨されない。また、他の副作用抑制のためにステロイド剤を投与する場合は、血糖値をさらに著しく上昇させる危険性があるため、最大限の注意を払う。「【追記】免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病ことに劇症1型糖尿病の発症について 」(日本糖尿病学会)の詳細についてはこちら。(ケアネット)関連ニュースがん治療で気付いてほしい1型糖尿病

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関節リウマチ、従来型合成DMARDsを用いた3剤併用の効果/BMJ

 関節リウマチ(RA)に対し、従来型合成DMARDsを用いた3剤併用(メトトレキサート[MTX]+サラゾスルファピリジン+ヒドロキシクロロキン)は、現在最もよく処方されている生物学的DMARDs+MTXと同程度、疾患活動性コントロールに対する効果があり、MTX未治療および既治療の患者を問わず概して忍容性も良好である。カナダ・カルガリー大学のGlen S Hazlewood氏らが、Cochraneシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果、明らかにした。これまでに生物学的DMARDs+MTX併用療法は、MTX単独療法よりも疾患活動性のコントロールに優れていることがメタ解析の結果、報告されていたが、MTXと従来型合成DMARDsの有用性については検討されていなかった。BMJ誌オンライン版2016年4月21日号掲載の報告。生物学的製剤、JAK阻害薬などと比較した効果をメタ解析 研究グループは、MTX未治療または効果不十分のRA成人患者に対するMTX単独と、MTX+従来型合成DMARDsの併用、または生物学的製剤、もしくはJAK阻害薬トファシチニブとの併用を評価する、システマティックレビューとベイズ統計のランダム効果ネットワークメタ解析を行った。2016年1月19日時点でMedline、Embase、Cochrane Centralのデータベース、2009~15年の欧米2大RA学会の要約、2大臨床登録試験サイト(Clinical Trials.govほか)を検索し、さらにCochrane reviewsの手動検索を実施。MTXと他のあらゆるDMARDs、またはDMARDs併用と比較した無作為化もしくは準無作為化試験で、治療間比較のネットワークエビデンス構築に寄与していたものを選択した。 主要評価項目は、ACR50反応率(主要臨床的改善)、X線画像所見での疾患進行、有害事象による投与中断とした。 比較療法間に統計的有意差があるか否かは、効果なしを除外して算出した95%信頼区間(CI)を評価し、97.5%超確率で優越性が認められる場合とした。MTX未治療患者でのACR50、56~67%で類似 検索により得られたのは患者3万7,000例超が参加した158試験のデータで、各アウトカムについて、10~53試験からデータを分析に包含した。 MTX未治療患者集団についての検討では、ACR50反応率についてMTX単独よりも統計的に効果が優れていることを示す療法として、3剤併用療法、生物学的製剤(アバタセプト、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、リツキシマブ、トシリズマブ)、トファシチニブが認められた。推定ACR50反応率はMTX単独41%に対し、これらの治療は56~67%の範囲で類似していた。 MTXとアダリムマブまたはエタネルセプト、セルトリズマブペゴルもしくはインフリキシマブとの併用は、X線所見上の疾患進行についてMTX単独よりも有意に優れていた。しかし、年間の推定平均変化値は、臨床的意義がある最小差(Sharpスコア5)よりも小さかった。 3剤併用療法は、MTX+インフリキシマブよりも有害事象による投与中断が有意に少なかった。 一方、MTX効果不十分の集団についての検討では、ACR50反応率についてMTX単独よりも統計的に効果が優れていることを示す療法として、3剤併用療法、MTX+ヒドロキシクロロキン、MTX+レフルノミド、MTX+金療法、MTX+大半の生物学的製剤、MTX+トファシチニブが認められた。推定ACR50反応率は、3剤併用療法は61%、その他は27~70%と広範囲にわたっていた。 X線所見上の疾患進行についてMTX単独と比較して統計的に優れている療法はなかった。 MTX+アバタセプトは、有害事象による投与中断率が複数の治療と比べて統計的に有意に低かった。 著者は、「検討の結果は、3剤併用療法が、MTX未治療または効果不十分の患者両者で効果があることを示すものであった。また、疾患活動性コントロールについてMTX+生物学的製剤と統計的に有意差はないことも示された」と述べ、「3剤併用療法のコストは生物学的製剤の10~20分の1と低いことを考慮し、初回あるいはMTX効果不十分後のいずれにおいても、有効な治療選択肢とすべきである」とまとめている。

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pembrolizumab、進行性悪性黒色腫に有望/JAMA

 進行性悪性黒色腫の治療において、免疫チェックポイント阻害薬pembrolizumabは、高い有効性と良好な安全性を発揮することが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のAntoni Ribas氏らが行ったKEYNOTE-001試験の長期データの解析で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年4月19日号に掲載された。pembrolizumabは、プログラム細胞死1(PD-1)に対するヒト型モノクローナルIgG4-κ抗体であり、同試験の悪性黒色腫の拡大コホート奏効例のフォローアップ期間中央値11ヵ月時の解析では、投与スケジュールの違いやイピリムマブ投与歴の有無により25~52%の客観的奏効率が報告されている。4ヵ国、655例の第Ib相試験の長期的な統合データを解析 KEYNOTE-001試験は、さまざまながん種に対するpembrolizumabの安全性と抗腫瘍効果を評価する非盲検第Ib相試験であり、研究グループは今回、進行性悪性黒色腫の長期的な統合データの解析を行った(Merck社の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、全身状態(ECOG PS)が0~1の切除不能な進行性悪性黒色腫の患者であった。イピリムマブの投与を受けていない患者は前治療レジメン数を1~2とし、同薬の投与を受けた患者はレジメン数に制限を設けなかった。 被験者は、pembrolizumab10mg/kgを2週ごとに投与する群、同10mg/kgを3週ごとに投与する群、同2mg/kgを3週ごとに投与する群に割り付けられ、病勢進行、耐用不能な毒性の発現、担当医が中止すべきと判断するまで継続された。 主要評価項目は、ベースライン時に測定可能性病変を有していた患者における確定された客観的奏効率(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])とし、中央判定を行った。 2011年12月~13年9月までに、オーストラリア、カナダ、フランス、米国の研究施設に655例が登録された。このうち135例が非無作為化コホート(イピリムマブ未治療:87例、同既治療:48例)で、520例は無作為化コホート(イピリムマブ未治療:226例、同既治療:294例)であった。奏効率33%、1年PFS 35%、OS 23ヵ月、Grade 3/4の有害事象14% ベースラインの全体の年齢中央値は61歳(範囲:18~94歳)、男性が62%(405例)であり、測定可能病変は655例中581例に認められた。フォローアップ期間中央値は15ヵ月(範囲:8~29ヵ月)であった。 客観的奏効率は33%(194/581例、95%信頼区間[CI]:30~37)であり、前治療を受けていない例では45%(60/133例、同:36~54)に達した。イピリムマブ既治療例は29%(87/304例)、未治療例は39%(107/277例)だった。 最終的なデータ・カットオフ日(2014年10月18日)の時点で、測定可能病変以外の患者を含めた全体の奏効例のうち、74%(152/205例)で奏効が持続しており(前治療のない患者では82%[53/65例])、奏効期間が1年以上の患者は44%(90/205例)、6ヵ月以上は79%(162/205例)であった。 1年無増悪生存(PFS)率は、全体では35%(95%CI:31~39)であり、前治療なしの患者では52%(同:43~60)であった。 全体の全生存(OS)期間中央値は23ヵ月(95%CI:20~29)であり、1年OS率は66%(同:62~69)、2年OS率は49%(同:44~53)であった。前治療なしの患者では、それぞれ31ヵ月(同:24~未到達)、73%(同:65~79)、60%(同:51~68)だった。 PFSおよびOSは、イピリムマブによる治療歴のある患者とない患者でほぼ同じであった。 Grade3/4の治療関連有害事象を1件以上経験した患者の割合は14%(92/655例)であり、治療関連有害事象による治療中止は4%(27/655例)であった。また、治療関連の重篤な有害事象は9%(59/655例)にみられた。治療関連死は認めなかった。 著者は、「これらの結果は、もう1つの抗PD-1抗体製剤であるニボルマブの同様の試験(奏効率31%、1年OS率62%、2年OS率43%)と類似していた」としている。

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急性前骨髄球性白血病〔APL : acute promyelocytic leukemia〕

1 疾患概要■ 概念・定義急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)は急性骨髄性白血病の1つで、FAB分類ではM3に分類される。大部分の症例でt(15;17)(q22;q12)を認め、15番染色体q22上のpromyelocytic leukemia(PML)遺伝子と17番染色体q12上のretinoic acid receptor α(RARA)遺伝子の融合遺伝子を形成するため、WHO分類ではt(15;17)(q22;q12); PML-RARAを伴う急性前骨髄球性白血病という一疾患単位が設定されている。線溶亢進型の播種性血管内凝固症候群(DIC)を高率に合併し、脳出血など致命的な臓器出血を来しやすく、出血による早期死亡が寛解率を低下させていたが、ビタミンAの一種である全トランス型レチノイン酸(all-trans retinoic acid: ATRA、一般名:トレチノイン、商品名:ベサノイド)を寛解導入療法に用いることで、APL細胞を分化させるとともにDICが軽減され、きわめて高い寛解率が得られるようになった。また、APL細胞はP糖蛋白の発現が低く、アントラサイクリン系薬をはじめ抗腫瘍薬に対する感受性も高い。したがって十分な寛解後療法を行えば再発の危険性も低く、急性白血病の中では化学療法により完治を得る可能性が最も高い疾患と認識されている。■ 疫学わが国において白血病は、年に10万人当たり男性で約6人、女性で約4人に発症し、その約60%が急性骨髄性白血病、さらにその10~15%がAPLといわれている。世界的にみると、イタリアやスペインなど南ヨーロッパで発症率が高い。ほかの急性骨髄性白血病よりも発症年齢が若い傾向がある。■ 病因15番染色体q22上のPML遺伝子と17番染色体q12上のRARA遺伝子は、骨髄系細胞の増殖抑制、分化の調整を行うが、相互転座の結果PML-RARA融合遺伝子が形成されると、骨髄系細胞の分化が抑制され、前骨髄球レベルで分化を停止した細胞が腫瘍性に増殖することで発症すると考えられる。■ 症状1)出血最も重要な症状は出血で、主としてDICに起因する。皮膚の紫斑・点状出血のほか、歯肉出血、鼻出血などを来す。抜歯など、観血的な処置後の止血困難もしばしば診断のきっかけになる。脳出血など、致命的な出血も少なくない。2)貧血骨髄での赤血球産生低下と出血のため貧血となり、動悸、息切れ、疲れやすさなどを自覚する。3)感染、発熱正常な白血球、とくに好中球数が低下し、発熱性好中球減少症を起こしやすい。病原微生物として、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌、腸球菌、緑膿菌などの細菌、カンジダやアスペルギルスなど真菌が多い。感染部位として菌血症、肺炎が多いが、起因菌や感染部位が同定できないことも少なくない。■ 予後寛解導入療法に広くATRAが用いられるようになった1990年代以後、寛解率は90%を超えている。非寛解例の多くが出血による早期死亡であり、初期にDICをコントロールできるかどうかが生存に大きく影響する。いったん寛解に入り、十分な寛解後療法を行えば再発しにくく、70%以上の患者は無再発での長期生存が可能である。とくに白血球数が少なく(≦10,000/mm3)、血小板数が比較的保たれた(>40,000/mm3)症例では再発のリスクが低い1)。一方、地固め療法後にRQ-PCR法にてPML-RARAが消失しない、あるいはいったん消失したPML-RARAが再出現する場合は、血液学的再発のリスクが高い2)。ただし、再発した場合も多くは亜ヒ酸(一般名:三酸化ヒ素、商品名: トリセノックス)が奏効し、さらに自家造血幹細胞移植も有効であるため、急性白血病の中で最も予後良好といえる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 血液検査所見白血球数は減少していることが多い。APL細胞はアズール顆粒が充満しており、アウエル小体が束状に存在するFaggot細胞として存在するものもある。貧血もほぼ必発で大部分が正球性である。産生低下およびDICにより、血小板数は著しく低下する。DICのため、プロトロンビン時間(PT)延長、フィブリン分解産物(FDP)およびD-ダイマー高値、フィブリノーゲン低値を示す。DICは線溶亢進型で、トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)、プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)ともに高値となる。アンチトロンビンは正常のことが多い。■ 骨髄所見骨髄は末梢血と同様の形態をもつAPL細胞が大部分を占め、正常な造血は著しく抑制される。APL細胞は、ペルオキシダーゼに強く染まり、細胞表面マーカーはCD13、CD33が陽性、CD34、HLA-DR陰性である。染色体および遺伝子検査では90%以上にt(15;17)(q22;q12)が、約98%にPML-RARA融合遺伝子が証明される。t(15;17)(q22;q12)以外の非定型染色体転座にt(5;17)(q35;q12); NPM1-RARA、t(11;17)(q23;q12); ZBTB16(PLZF)-RARA、t(11;17)(q13;q12); NUMA1-RARAなどがある。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ATRAを中心とした初回寛解導入療法、寛解導入後の地固め療法や維持療法、再発例に対する治療、造血幹細胞移植などがある。■ 初回寛解導入療法診断が確定したら、ATRAを寛解到達まで内服する。ATRA単独の寛解導入療法はATRAと従来の化学療法剤との併用療法に比べ寛解率に差はないが、再発のリスクが高いとする報告もあり3)、とくに診断時白血球数の多い症例、ATRA投与中に白血球数増加を来した症例、APL分化症候群を合併した症例では積極的にイダルビシン(商品名: イダマイシン)などのアントラサイクリンやシタラビン(同:キロサイド)を併用する。初回寛解導入療法中の重篤な合併症として、DICに伴う出血とAPL分化症候群がある。DICに伴う致命的な出血を予防するため、最低でも血小板数は50,000/mm3、フィブリノーゲンは150mg/dLを保つように血小板および新鮮凍結血漿の輸血を行うとともに、トロンボモジュリン(同:リコモジュリン)などDICに対する薬物療法を行う。APL分化症候群は、ATRAや亜ヒ酸の刺激を受けたAPL細胞から過剰産生される、さまざまな炎症性サイトカインやAPL細胞の接着分子発現増強などにより発症する。80%以上の患者に発熱や低酸素血症による呼吸困難が認められるほか、体重増加、浮腫、胸水、心嚢水、低血圧、腎不全などを来す。両側の間質性肺炎様のX線あるいはCT所見は診断に有用である。好発時期は寛解導入療法開始後1~2週間であり、ATRAや亜ヒ酸投与期間中に白血球数の増加を伴って発症することが多い。治療にはステロイドが有効で、重篤な場合はATRAや亜ヒ酸を中止するとともに、未投与であればアントラサイクリンやシタラビンを投与する。■ 地固め療法寛解導入後には、地固め療法としてイダルビシン、ダウノルビシン(同:ダウノマイシン)などアントラサイクリンや同様の作用機序を有するミトキサントロン(同:ノバントロン)の3~5日間点滴を、約1ヵ月おきに2~4回繰り返す。シタラビンについては意見が分かれるが、診断時の白血球数が10,000/mm3未満の症例では、十分なアントラサイクリンが投与されればその意義は低く、むしろ再発を高める可能性もある一方で、10,000/mm3以上の症例では高用量での投与が有用と報告されている4)。■ 維持療法ATRAを中心とした維持療法は再発予防に有用である。通常、地固め療法終了後にATRA 14日間の内服を約3ヵ月間隔で2年間繰り返す。6-メルカプトプリン(同:ロイケリン)やメトトレキサート(同:メソトレキセート)の併用はさらに再発抑制効果を高める可能性がある5)。■ 再発例に対する治療亜ヒ酸が第1選択薬であり80%以上の再寛解が期待できる。ゲムツズマブ オゾガマイシン(同:マイロターグ)や合成レチノイド、タミバロテン(同:アムノレイク)も有用である。なお、血液学的寛解中であってもRQ-PCR法でPML-RARA陽性となった場合は再発と判断し、上記の再寛解導入療法を開始する。■ 造血幹細胞移植本症はATRAを中心とした化学療法が有効であり、通常第1寛解期には造血幹細胞移植は行わない。第2寛解期では造血幹細胞移植が推奨される。第2寛解期での自家造血幹細胞移植は、同種造血幹細胞移植に比べ再発率は高いものの治療関連死が少なく、全生存率は同種造血幹細胞移植を上回っている6)。そのため、地固め療法後にRQ-PCR法でPML-RARA陰性例には自家移植、陽性例には同種移植を考慮する。4 今後の展望今後もATRAを中心とした化学療法が治療の主体であると考えられる。診断時の白血球数や地固め療法後のPML-RARA融合遺伝子の有無など、リスクファクターによる層別化治療を寛解導入療法のみならず寛解後療法においても広く用いることにより、再発リスクと有害事象の軽減が図れると期待される。さらに寛解導入療法でのATRAと亜ヒ酸の併用や、地固め療法での亜ヒ酸の積極的使用により、治療成績はさらに向上する可能性がある。5 主たる診療科血液内科あるいは血液腫瘍内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報JALSGホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)がんプロ.comホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公益財団法人先端医療振興財団 臨床研究情報センター「がん情報サイト」(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報つばさの広場(血液疾患患者とその家族の会)海好き(白血病患者とその家族の会)1)Sanz MA, et al. Blood. 2000; 96: 1247-1253.2)Gallagher RE, et al. Blood. 2003; 101: 2521-2528.3)Fenaux P, et al. Blood. 1999; 94: 1192-1200.4)Adès L, et al. Blood. 2008; 111: 1078-1084.5)Adès L, et al. Blood. 2010; 115: 1690-1696.6)de Botton S, et al. J Clin Oncol. 2005; 23: 120-126.公開履歴初回2014年03月20日更新2016年04月26日

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抗PD-L1抗体atezolizumab、既治療NSCLCのOS延長/Lancet

 既治療の非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、新規免疫チェックポイント阻害薬atezolizumabは、ドセタキセル(商品名:タキソテールほか)に比べ予後が良好であることが、米国・カイザーパーマネンテ医療センターのLouis Fehrenbacher氏らが行ったPOPLAR試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年3月9日号に掲載された。ニボルマブやペムブロリズマブがT細胞上のPD-1を標的とするのに対し、atezolizumabは腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞上に発現しているPD-L1(PD-1のリガンド)に対するヒト型IgG1モノクローナル抗体で、T細胞上のPD-1だけでなくB7.1(CD80)との結合を阻害する。それゆえ、T細胞活性化阻害作用の抑制効果が抗PD-1抗体よりも高い可能性があり、またPD-L2とPD-1の相互作用には影響しないことから、免疫系の恒常性への影響を回避できると考えられている。ドセタキセルと比較する無作為化第II相試験 POPLAR試験は、既治療のNSCLC患者においてatezolizumabとドセタキセルの有用性を比較し、PD-L1発現レベルを評価する非盲検無作為化第II相試験(F Hoffmann-La Roche/Genentech社の助成による)。 対象は、プラチナ製剤による化学療法後に病勢が進行したNSCLCで、全身状態(ECOG PS)が0/1、測定可能病変(RECIST ver.1.1)を有する患者であった。 被験者は、腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1の状態、組織型、前治療レジメン数で層別化され、atezolizumab(1,200mg、静脈内投与)またはドセタキセル(75mg/m2、静脈内投与)を3週ごとに投与する群に無作為に割り付けられた。 免疫組織化学(IHC)検査に基づき、腫瘍細胞上のPD-L1(TC3:≧50%、TC2:5~50%、TC1:1~5%、TC0:<1%)および腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1(IC3:≧10%、IC2:5~10%、IC1:1~5%、IC0:<1%)をスコア化した。 主要評価項目は全生存期間(OS)とし、探索的解析としてバイオマーカーの評価を行った。 2013年8月5日~14年3月31日までに、13ヵ国61施設に287例が登録された。atezolizumab群に144例、ドセタキセル群には143例が割り付けられ、それぞれ142例、135例が1回以上の投与を受けた。OS中央値:約3ヵ月延長、PD-L1発現率が高いほど良好 年齢中央値は両群とも62歳、男性はatezolizumab群が65%、ドセタキセル群は53%であり、喫煙者/元喫煙者がそれぞれ81%、80%、前治療レジメン数は1が65%、67%、2が35%、33%だった。 OS中央値はatezolizumab群が12.6ヵ月であり、ドセタキセル群の9.7ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.53~0.99、p=0.04)。 また、OS中央値はPD-L1の発現率が高い患者ほど良好であった(TC3またはIC3=HR:0.49[0.22~1.07]、p=0.068/TC2/3またはIC2/3=HR:0.54[0.33~0.89]、p=0.014/TC1/2/3またはIC1/2/3=HR:0.59[0.40~0.85]、p=0.005/TC0およびIC0=HR:1.04[0.62~1.75]、p=0.871)。 既存免疫(エフェクターT細胞およびインターフェロン-γの関連遺伝子発現≧中央値で定義)を有する患者の探索的解析では、atezolizumab群のOS中央値が有意に改善された(HR:0.43、95%CI:0.24~0.77)。 atezolizumab群で頻度の高い全原因有害事象として、食欲減退、呼吸困難、悪心、下痢、発熱などが認められ、免疫関連有害事象としてAST上昇(4%)、ALT上昇(4%)、肺臓炎(3%)、腸炎(1%)、肝炎(1%)がみられた。 治療関連有害事象の発現率は、atezolizumab群が67%、ドセタキセル群は88%であった。有害事象による治療中止は、atezolizumab群が8%(11例)、ドセタキセル群は22%(30例)、Grade 3/4の治療関連有害事象はそれぞれ11%(16例)、39%(52例)であり、atezolizumab群で少なかった。治療関連死はatezolizumab群が<1%(1例:心不全)、ドセタキセル群は2%(3例:敗血症、急性呼吸窮迫症候群、原因不明)だった。 著者は、「atezolizumabはドセタキセルに比べ既治療のNSCLC患者の予後を改善した」とまとめ、「PD-L1の発現は、atezolizumabのベネフィットを予測するバイオマーカーとなる可能性が示唆される」と指摘している。

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がん免疫療法薬・安全性は「多職種連携」がカギ

 2016年2月17日、都内にて「がん免疫療法で変わる肺がん治療」をテーマにプレスセミナーが開催された(主催:小野薬品工業株式会社/ブリストル・マイヤーズ株式会社)。脚光を浴びているがん免疫療法、安全性は? ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は2014年9月に発売された、世界初の抗PD-1モノクローナル抗体で、がん免疫療法薬と呼ばれている。がん免疫療法は従来の化学療法や手術、放射線療法とはまったく異なる新たな治療法で、身体の免疫系に直接作用してがんと闘う機序を持つ。本邦において、ニボルマブは「根治切除不能な悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の2つの疾患に適応がある。免疫系に作用するという新しいアプローチと、治験時における有害事象、とくに骨髄抑制の少なさからがん治療において大きな期待を寄せられている。 しかし、使用経験の蓄積からこれまでの薬剤では経験のない免疫関連有害事象が報告されている。注意すべき、免疫関連有害事象とは? がん免疫療法薬は全身の臓器にも働きかけるといわれており、過度の免疫反応により免疫関連有害事象が複数の臓器で報告されている。演者の中西 洋一氏(九州大学大学院 呼吸器内科学分野 教授)は、とくに注意すべき副作用として間質性肺炎、重症筋無力症、劇症1型糖尿病、甲状腺機能障害の4つを挙げた。 とくに劇症1型糖尿病は、インスリンを産生する膵島細胞の急速な破壊により急激に高血糖を来す。また、時には致死的であり、たとえ回復してもインスリン産生の枯渇により、血糖コントロール困難となり、社会生活に高度の支障を来す重大な疾患である。ニボルマブの臨床試験において、劇症1型糖尿病は報告されていなかったが、使用経験の蓄積により報告が上がってきた。2016年1月に日本腫瘍学会と日本糖尿病学会より、連名でステートメントが出たことは記憶に新しい1)。副作用に立ち向かうには? 九州大学病院の事例 上記の重症筋無力症、劇症1型糖尿病、甲状腺機能障害などの副作用は必ずしもオプジーボを使用している医師の専門であるとはいえない。このような副作用に、どのように対応していけばよいのだろうか? 対応策の一例として、中西氏は九州大学病院の「免疫チェックポイント阻害薬適正使用委員会」を挙げた。同委員会では、副作用対策において、呼吸器内科・腫瘍内科・皮膚科など免疫療法実施診療科を、他の専門科や看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどがサポートする、診療科・職域横断的なチェック体制づくりに取り組んでいる。専門外の医師をはじめとし、看護師・薬剤師などコメディカルとの連携によって、副作用の早期発見や適切な管理、細やかな対応が可能になるという。 ニボルマブは安全性の面以外にも、コストとの兼ね合い、バイオマーカーの探索、他剤との併用などさまざまな点に課題があるものの、これまで治療の選択肢に難渋していた患者にとって希望の光となりうる薬剤である。しかし、2016年2月より包括医療費支払い制度(DPC)の対象外となったため、今後さらなる使用患者数の増加が予想され、これに伴い予期せぬ副作用が生じる可能性も否定できない。治療医師のみならず、多職種が連携することで患者にとって最適な医療を行うことが望まれる。【参考】1)免疫チェックポイント阻害薬に関連した劇症 1 型糖尿病の発症について(PDFがダウンロードされます)

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多発性骨髄腫、最新の治療法と薬剤選択のコツは

 2016年2月15日、都内にて「多発性骨髄腫における最新治療」をテーマにメディアセミナー(主催:セルジーン株式会社)が開催された。本セミナーは、昨年末に未治療の多発性骨髄腫に対する追加承認を取得したレナリドミド(商品名:レブラミド)に関する最新の知見や、他の新規治療薬に関する情報が提供された。レナリドミドの追加承認に関するエビデンス レナリドミドが初発の多発性骨髄腫(以下、MM)治療に対する適応を取得した背景に、「FIRST試験」がある1)。本試験は、移植非適応患者における現在の標準治療であるMPT※)療法とレナリドミド+デキサメタゾン併用のLd※※)療法(継続治療群/18サイクル固定群)の3群間ランダム化比較試験である。この結果、以下の3点が示唆された。1. 継続的なLd療法群は他群より無増悪生存期間を有意に延長した2. 1の結果は75歳以上/未満でも同等の成績であった3. Ld療法において、両群における有害事象は75歳以上/未満で同程度であった 上記の結果から、Ld継続投与は高齢者にも安心して使用できる、移植非適応初発骨髄腫に対する標準治療になりうるとされた。レナリドミドの追加承認がもたらす影響 レナリドミドは2015年12月の効能・効果の追加承認取得を受けて、ファーストラインでの使用が可能となった。本邦において、これまで未治療MMではボルテゾミブが選択されるケースが多かったが、これからはレナリドミドも選ぶことができる。そのため、両薬剤の使い分けが重要になってくる。ボルテゾミブvsレナリドミド、最適な患者像を探る 演者の木崎 昌弘氏(埼玉医科大学総合医療センター 血液内科 教授)は、2剤の使い分けのコツや利点について、以下のような考えを提案した。・レナリドミド:経口であるため幅広い患者に使用でき、副作用もマネジメントしやすい・ボルテゾミブ:幹細胞に影響を与えにくく、移植を考慮している患者にも使用しやすい。副作用の1つである末梢神経障害は、皮下投与にすることで軽減可能 各製剤の利点・欠点を考慮し、安全性を重要視したうえで適切な患者を選定していくことが重要であるという。選択肢が増え続ける多発性骨髄腫治療、今後の展望は? 現在サードラインの位置づけであるポマリドミドは、ボルテゾミブ/レナリドミド投与歴なしの患者に対する使用を念頭に置き、セカンドライン取得に向けた試験を開始している。また、がん免疫療法薬など新薬の開発も始まっている。 さらに、既存の治療に対するエビデンス収集も着々と進んでいる。たとえば、Ld継続治療において、レナリドミド長期投与における二次発がんと、ステイロイド長期投与における白内障が問題視されている。これらを評価するための市販後調査が現在進行中である。 多発性骨髄腫は現時点では完治が難しく、また、移植以外の外科的療法で治療を行うことができない。そのため、いかに多くの薬剤が開発されるかが重要になってくる。木崎氏は治療選択肢の増加と生存期間に強い相関があることを述べたうえで、今後の治療薬開発の意義を強調し、セミナーを結んだ。※)MPT療法:メルファラン/プレドニゾロン/サリドマイド併用※※)Ld療法:レナリドミド/低用量デキサメタゾン併用

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悪性胸膜中皮腫へのシスプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ療法(解説:小林 英夫 氏)-478

 悪性胸膜中皮腫は早期発見が困難で、診断時点では進行期である症例が大多数を占める。2003年のVogelzang 氏らの報告に基づいて、ペメトレキセドが世界初の悪性胸膜中皮腫治療薬として米国で承認され、わが国でも2007年に薬価収載された。現在、悪性胸膜中皮腫標準化学療法はペメトレキセド+シスプラチン併用と認識されている。しかし、その治療成績は必ずしも満足できるレベルには到達しておらず、胸膜肺全摘除術や片側全胸郭照射などを組み合わせたマルチモダリティー療法などが検討されている。 こうした中、中皮腫において血管内皮増殖因子(VEGF)シグナルが重大な役割を果たすことが示唆され、2010年以降いくつかの試験が実施された。そこで、VEGFをターゲットとする抗血管新生治療薬ベバシズマブの上乗せ効果について、Zalcman氏らによる本検討(第III相試験)が実施された。その結果、彼らは「循環器系の有害事象が増えるものの予想範囲内のものであり、ベバシズマブ上乗せは全生存期間(OS)を有意に改善する」とまとめている。Appendixを閲覧すると循環器系有害事象のほとんどは高血圧であった。 本研究デザインは、フランスの73病院において、18~75歳の切除不能悪性胸膜中皮腫、化学療法未治療、Eastern Cooperative Oncology Group PSスコア0~2、重大な心血管疾患の併存なし、CTで評価可能病変が少なくとも1つあり、余命12週超の症例が対象である。除外基準は、脳転移、抗血小板薬使用中、ビタミンK拮抗薬・ヘパリン・非ステロイド性抗炎症薬の投与中などであった。被験者は、ペメトレキセド+シスプラチン+ベバシズマブ投与のPCB群、またはベバシズマブの代わりにプラセボを投与するPC群に無作為に割り付け、3週間に1回を最大6サイクル、病勢進行または毒性効果が認められるまで投与した。主要アウトカムはOSである。 計448例が無作為化され、PCB群223例、PC群225例、男性75%、年齢中央値65.7歳、上皮型中皮腫81%であった。6サイクルを完遂したのは、PCB群74.9%、PC群76.0%。フォローアップ中央値は39.4ヵ月で両群に差はなかった。 主要アウトカムであるOS中央値は、PC群(16.1ヵ月、95%信頼区間[CI]:14.0~17.9)と比べPCB群(18.8ヵ月、15.9~22.6)で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.77、95%CI:0.62~0.95、p=0.0167)。なお、PFS(無増悪生存)もPCB群で有意な改善が認められた(9.2ヵ月 vs.7.3ヵ月、HR:0.61、95%CI:0.50~0.71、p<0.0001)。 Grade3/4の有害事象は、PCB群158/222例(71%)、PC群139/224例(62%)であった。PC群と比べてPCB群では、Grade3以上の高血圧症(51/222例[23%] vs.0例)、血栓イベント(13/222例[6%]vs. 2/224例[1%])の頻度が高かった。 これまで進行性悪性中皮腫へのペメトレキセド+カルボプラチン療法効果は、OS中央値は約12ヵ月、無増悪生存(PFS)中央値は約6ヵ月、とされていた。抗血管新生治療の上乗せ効果は期待できそうだが、それでも5年生存率は20%弱であり、さらなる検討が望まれる。また、血清VEGF値により治療効果に差が生じる可能性も示唆されており、今後、中皮腫のバイオマーカーとして活用していくことも考慮される。 悪性胸膜中皮腫の臨床試験は、現在本邦で4試験が実施されている。免疫チェックポイント阻害薬トレメリムマブ、がん抑制遺伝子アデノウイルスベクター、シスプラチン+ペメトレキセド+Napabucasin、アネツマブ・ラブタンシン、の第I、II相試験であり、どのような結果が得られるのか注視していきたい。なお、胸膜腫瘍WHO分類は2015年に改訂され、Journal of thoracic oncology誌2016年2月号(オンライン版2015年12月22日号)1)で発表されている。

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がん治療で気付いてほしい1型糖尿病

 1月29日、日本糖尿病学会(理事長:門脇 孝氏)は、日本臨床腫瘍学会(理事長:大江 裕一郎氏)とともにお知らせとして「免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病ことに劇症1型糖尿病の発症について」と題し、注意喚起を行った。 抗PD-1(programmed cell death-1)抗体をはじめとする免疫チェックポイント阻害薬は、抗がん剤として発売され、また現在も多くが開発されている。そのうち、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体であるニボルマブ(商品名:オプジーボ)は、従来の「根治切除不能な悪性黒色腫」に加え、2015年12月17日からは「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」にも承認され、2016年2月からは包括医療費支払制度の対象外となることもあり、使用患者の増加が予想されている。 そうしたなか、薬事承認以降に因果関係不明例を含め1型糖尿病(劇症1型糖尿病も含む)が7例(うち死亡例はなし)、副作用として報告されている(2015年11月に添付文書は改訂され、「1型糖尿病」が副作用として記載された)。(劇症)1型糖尿病の病態 1型糖尿病は、膵β細胞の破壊により絶対的インスリン欠乏に陥る疾患があり、とりわけ劇症1型糖尿病は、きわめて急激な発症経過をたどり、糖尿病症状出現から早ければ数日以内にインスリン分泌が完全に枯渇し、重篤なケトアシドーシスに陥る病態である。適切に診断し、ただちにインスリン治療を開始しなければ死亡する可能性が非常に高い。しかし、診断時に劇症1型糖尿病の可能性が念頭にないと、偶発的な高血糖として経過観察とされたり、通常の2型糖尿病として誤った対応がなされ、不幸な転帰をたどることも危惧される。 そこで、免疫チェックポイント阻害薬使用中に、急激な血糖値の上昇、もしくは口渇・多飲・多尿・全身倦怠感などの糖尿病症状の出現をみた際には、劇症1型糖尿病の可能性も考慮し、糖尿病専門医との緊密な連携のもと早急な対処が必要となる。また、患者に対しても、劇症1型糖尿病の可能性や、注意すべき症状について、あらかじめ十分に説明しておくことが求められるとしている。参考資料:劇症1型糖尿病診断基準(2012) 下記1~3のすべての項目を満たすものを劇症1型糖尿病と診断する。1. 糖尿病症状発現後1週間前後以内でケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る(初診時尿ケトン体陽性、血中ケトン体上昇のいずれかを認める)。2. 初診時の(随時)血糖値が288mg/dL(16.0 mmol/L)以上であり、かつHbA1c値(NGSP)<8.7%※である。3. 発症時の尿中Cペプチド<10μg/日、または、空腹時血清Cペプチド<0.3ng/mLかつグルカゴン負荷後(または食後2時間)血清Cペプチド<0.5ng/mLである。 ※劇症1型糖尿病発症前に耐糖能異常が存在した場合は、必ずしもこの数字は該当しない。〔参考所見〕 A)原則としてGAD抗体などの膵島関連自己抗体は陰性である。 B)ケトーシスと診断されるまで原則として1週間以内であるが、1~2週間の症例も存在する。 C)約98%の症例で発症時に何らかの血中膵外分泌酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1など)が上昇している。 D)約70%の症例で前駆症状として上気道炎症状(発熱、咽頭痛など)、消化器症状(上腹部痛、悪心・嘔吐など)を認める。 E)妊娠に関連して発症することがある。 F)HLA DRB1*04:05-DQB1*04:01との関連が明らかにされている。詳しくは、「日本糖尿病学会 重要なお知らせ」まで

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サン・アントニオ2015 レポート-2

レポーター紹介ポスターセッションに移る。ポスターでも重要な臨床試験の結果が報告されていた。FACE試験:リンパ節転移陽性ホルモン受容体陽性閉経後乳がんにおける、術後補助療法としてのレトロゾールとアナストロゾールとの第III相比較試験である。2005年12月から2008年3月までにレトロゾール2,061例、アナストロゾール2,075例が無作為に割り付けされた。レトロゾール群36.1%、アナストロゾール群38.1%が有害事象(15.1%対14.3%)や再発(9.5%対10.4%)のために継続中止となった。結果として5年無再発生存率、全生存率ともにまったく差がなかった。関節痛やホットフラッシュ、疲労感といった有害事象もまったく同等であった。試験開始当初はATAC試験とBIG1-98試験の間接的比較などから、リンパ節転移陽性例でのレトロゾールの優越性が期待されていたが、見事なまでに同等の結果となった。Neo-Shorter試験:リンパ節転移陽性乳がんに対して、FEC3サイクル→DOC3サイクルがAC4サイクル→DOC4サイクルと比較して治療効果が劣らないかを、術前化学療法で検証する第III相試験で、韓国からの報告である。フランスではPACS01試験の結果からFEC×3→DOC×3が標準化学療法の1つとなっている。しかし、多くの標準療法は4サイクル→4サイクルであり、レジメンを短縮しても良いのかという疑問があった。AC4-D4が80例、FEC3-D3が93例である。pCRはそれぞれ17.5%、12.9%であり、ほぼ同等の効果となっている。この程度の数値上の差では、生存率に差が出ることはまずないだろうと思われる。ACとFEC100は治療効果が変わらないことはすでに証明されている(参照)のでどちらでも良い。また、意見の相違はあるかもしれないが、DOCをweekly PTXに変えても何の問題もないと思われる。今後、3サイクル→3サイクルを標準治療の1つとして考えることも十分許容されるだろう。少なくとも患者にとって副作用がつらい状態のとき、3サイクル終了した時点で4サイクル頑張らないと治療効果が低下するかもしれないと言う必要はないだろう。GBG69は、weekly paclitaxel(80)とweekly nab-paclitaxel(150 or 125)に引き続くEC(90/600)の効果を比較するドイツの無作為化術前化学療法試験である。当初nab-paclitaxel(nP)を150で開始したが、減量と中止が多かったため途中から125に変更している。結局nP 150を229例に、nP 125を377例に施行した。投与中止した割合はnP 150で26.8%、nP 125で16.6%、P80で13.3%であった。最も大きな懸念事項である末梢性感覚神経障害はGrade3以上がそれぞれ14.5%、8.1%、2.7%に認められた。治療効果(pCR率)はnP 125で最も高かった。この結果からweekly nab-paclitaxel は150ではなく125が考慮されるべきである。しかし、125でもまだ毒性が強いように思う。彼らはさらにGeparX試験でレジメンの改善が可能か調べるようである。nab-paclitaxelの意義はアルコールを使わないこと、薬剤調製時間、投与時間が大きく短縮できること、アレルギーの心配が非常に少ないというところにもあるので、weekly paclitaxelと同等の効果が得られる程度でもっと減量することも考慮して良いのではないかと考える。

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