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治癒切除不能な進行・再発胃がんにニボルマブが有効/Lancet

 化学療法歴のある治癒切除不能な進行・再発の胃がんまたは食道胃接合部がん患者において、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体ニボルマブはプラセボに比べ全生存期間(OS)の有意な延長を示し、新たな治療選択肢となることが確認された。韓国・蔚山(Ulsan)医科大学のYoon-Koo Kang氏らが、国際共同第III相試験(ONO-4538-12、ATTRACTION-2)の結果を報告した。2レジメン以上の化学療法に不応/不耐の進行胃がんまたは食道胃接合部がん患者の予後は不良であるが、現在のガイドラインでは推奨される治療がなかった。Lancet誌オンライン版2017年10月6日号掲載の報告。日韓台3ヵ国の49施設で無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施 ONO-4538-12/ATTRACTION-2試験は、日本、韓国および台湾の49施設において実施された。対象は、20歳以上、ECOG PSが1以下、抗PD-1抗体またはその他のT細胞制御を目的とした抗体療法もしくは薬物療法の治療歴がない、2つ以上の化学療法歴を有する標準治療に不応または不耐の、切除不能な進行または再発の胃がんまたは食道胃接合部がん患者である。地域、ECOG PSおよび転移臓器数で層別化し、ニボルマブ(3mg/kg、静脈内投与、2週間間隔)群とプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、病勢進行または永続的な中断を必要とする毒性が発現するまで継続した。 主要評価項目は、intention-to-treat集団におけるOSであった。安全性に関しては、治験薬の投与を1回以上受けたすべての患者を解析対象とした。ニボルマブ群でOSが有意に延長 2014年11月4日~2016年2月26日に、計493例がニボルマブ群(330例)とプラセボ群(163例)に無作為に割り付けられた。 データカットオフ時点(2016年8月13日)の追跡期間中央値は、ニボルマブ群8.87ヵ月(IQR:6.57~12.37)、プラセボ群8.59ヵ月(IQR:5.65~11.37)で、OS中央値はそれぞれ5.26ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.60~6.37)および4.14ヵ月(同:3.42~4.86)であった(ハザード比:0.63、95%CI:0.51~0.78、p<0.0001)。 12ヵ月OS率は、ニボルマブ群26.2%(95%CI:20.7~32.0)、プラセボ群10.9%(同:6.2~17.0)であった。 Grade3もしくは4の治療関連有害事象は、ニボルマブ群330例中34例(10%)、プラセボ群161例中7例(4%)に発現し、治療関連有害事象による死亡がニボルマブ群で5例(2%)、プラセボ群で2例(1%)確認された。安全性に関する新たな懸念は観察されなかった。 なお試験は、非アジア人の患者を含めて継続中であり、さまざまな臨床設定や早期治療ラインにおけるニボルマブの進行胃がんまたは食道胃接合部がんに対する有益性を検討中である。

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ニボルマブ、導入療法後の転移性トリプルネガティブ乳がんで有望な効果(TONIC試験)/ESMO2017

 転移性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する、放射線照射または化学療法後のニボルマブによる治療の奏功率が、これまでのPD-1 / PD-L1阻害薬の単剤療法による奏効率と比較して有望なことが、スペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2017)で報告された。 2017年9月9日、オランダがん研究所(アムステルダム)のMarleen Kok氏は、TONIC試験から得られた知見について発表し、「転移性TNBC患者の任意抽出のコホートに対する以前の研究で、PD-1 / PD-L1阻害薬の単剤療法が持続性のある応答をもたらしうることは明らかになっていたが、奏功率は約5~10%と比較的低いものだった。本試験は、TNBCに対し放射線照射または化学療法にて腫瘍微小環境を調整後のニボルマブ治療が実行可能であることを示す最初の試験であり、抗PD-(L)1抗体に対してより感受性の高い状態に腫瘍微小環境を調整する戦略を明らかにすることは、臨床的に必要性の高い課題である」と述べた。 TONIC試験は、アダプティブデザインの第Ⅱ相無作為化非比較試験(Eudract number:2015-001969-49)。3ライン以下の緩和化学療法を受けた転移性TNBCの患者が、2週間、以下の5つの導入療法群に割り付けられた;(1)1つの転移巣に対し放射線量8Gyを3サイクル照射する群、(2)ドキソルビシン15mg/週を2サイクル投与する群、(3)シクロホスファミド50mg/日を経口投与する群、(4)シスプラチン40mg/m2を2サイクル投与する群、(5)導入療法を行わない群。2週間の導入療法後、iRECISTおよびRECIST v1.1評価に基づく進行が認められるまで、すべての患者が3mg / kgのニボルマブ治療を受けた。 治療群への組み入れは、生検検体(導入療法前および導入療法後)を有する評価可能な50例が登録するまで続けられ(段階1)、“pick the winner”のコンセプト(Simonの2段階デザイン)により、段階2で終了した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間の中央値10.8ヵ月(範囲1~15.7ヵ月)で、50例について評価可能となった。・患者の20%が前治療歴なし、52%が1ライン、28%が2 ライン以上の前治療を受けていた。・RECIST v1.1に基づくコホート全体に対するニボルマブの客観的奏功率(ORR)は22%、iRECISTでは24%であり、完全奏功(CR)1例(2%)、部分奏功(PR)11例(22%)であった。・さらに、1例(2%)で24週間以上持続した安定(SD)が達成され、その結果、26%の臨床的有用率(CBR = CR + PR + SD> 24週間)が得られた。・奏功した患者では、奏功期間の中央値は9ヵ月(95%信頼区間:5.5~NA)であった。・予備解析の結果、ドキソルビシンまたはシスプラチンによる導入療法後の奏功率が高い可能性が示唆された。・腫瘍生検で高値の白血球浸潤およびCD8 陽性T細胞を有する患者でより奏効率が高い可能性があることが、研究者らにより観察された。 ESMO 2017の発表でディスカッサントを務めたミラノ大学のGiuseppe Curigliano氏は、「本試験は併用療法について探る非常に革新的な試験で、放射線療法や化学療法による免疫系のプライミング(準備刺激)効果に関するデータや、Tumor infiltrating lymphocytes(TILs)の定量的・定性的評価に関するデータを提供している」と述べ、「本試験の限界は、導入療法への曝露前後での遺伝子変異量(mutational burden)やTILsについてのデータ、ER陽性やHER2陽性といった他の有用な患者群が含まれていないことである」と指摘した。■参考ESMO 2017プレスリリース

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ニボルマブ、既治療胃がんに良好な効果持続(ATTRACTION-02アップデート)/ESMO2017

 2レジメン以上に抵抗性を示した進行胃・胃食道接合部(G/GEJ)がんの予後は不良である。これらのがんにおいては、ニボルマブなどのPD-1阻害薬の効果が期待される。ATTRACTION-02は、上記患者において、日本、韓国、台湾で行われたニボルマブの第III相試験である。スペイン・マドリードで行われた欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017 Congress)では、同試験の追跡結果とPD-L1発現レベルによる有効性について、国立がん研究センター中央病院の朴成和が発表した。 ATTRACTION-02試験では、2レジメン以上の化学療法に抵抗性を示した20歳以上の切除不能の進行・再発G/GEJがん493例を、ニボルマブ3mg/kg(n=330)またはプラセボ(n=163)に2:1に無作為化し行われた。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は、無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)などの有効および安全性であった。また、探索的研究として、腫瘍細胞サンプルが得られた患者に対して、28-8pharmDxアッセイを用いて、腫瘍細胞のPD-L1発現による評価を後ろ向きに行った。 KangらによりASCO-GI 2017で発表された一次解析の結果は、追跡期間8.9ヵ月において、ニボルマブ群のOSは5.3ヵ月、プラセボ群は4.1ヵ月であった(HR:0.63、95%CI:0.51~0.78、p<0.0001)。今回は追跡期間中央値15.7ヵ月(12.1~27.2)の情報を発表した。結果、OSはニボルマブ群5.3ヵ月、プラセボ群4.1ヵ月、1年OS率はニボルマブ群27%、プラセボ群12%と、一次解析と同様ニボルマブ群で有意にOSを改善した(HR:0.62、95%CI:0.50~0.76、p<0.0001)。ORRは、ニボルマブ群12%、プラセボ群0%であった(p<0.0001)であった。 PD-L1発現別のOSをみると、PD-L1発現1%未満の症例では、ニボルマブ群では6.1ヵ月、プラセボ群では4.2ヵ月であった(HR:0.71、95%CI:0.50~1.01)。PD‐L1発現1%以上の症例では、ニボルマブ群5.2ヵ月、プラセボ群3.8ヵ月であり(HR:0.58、95%CI:0.24~1.38)、PD-L1発現の程度にかかわらずニボルマブの効果がみられた。全Gradeの有害事象(AE)は、ニボルマブ群の43%、プラセボ群の27%で発現した。ニボルマブの免疫関連AE(irAE)については、ほとんどがGrade1~2であり、その多くは治療後 3ヵ月以内に発現していた。また、Grade3以上のirAE発現率は2%以下で、その多くは治療後6ヵ月以内に発現し、時間経過とともに発現率は低下した。 今回発表された1年以上の追跡においても、進行G/GEJがん患者におけるニボルマブの長期生存ベネフィットが確認された。■参考ATTRACTION-02/ONO-4538-12試験(ClinicalTrials.gov)ASCO-GI 2017 Abstract■関連記事ニボルマブ 標準治療不応の胃がんに良好な効果(ONO-4538-12試験)/ASCO-GI 2017

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ニボルマブ、進行・再発胃がんに国内承認

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良暁)とブリストル・マイヤーズスクイブ社(NYSE:BMY)は2017年9月22日、抗PD-1モノクローナル抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)が、「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌」に対する国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したと発表。 ニボルマブは、標準治療に不応又は不耐の切除不能な進行又は再発胃がん(食道胃接合部がんを含む)患者を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験(ONO-4538-12/ATTRACTION-2試験)において、世界で初めて全生存期間(OS)の延長を示した。同試験の主要評価項目であるOS(中央値)は、オプジーボ群で5.26ヵ月(4.60~6.37)と、プラセボ群の4.14ヵ月(3.42~4.86)に対して統計学的に有意な延長を示した(HR:0.63、95%CI:0.51~0.78、p<0.0001)。12ヵ月OS率は、オプジーボ群で26.2%、プラセボ群で10.9%であった。Grade3以上の薬剤に関連有害事象(AE)は、オプジーボ群11.5%、プラセボ群5.6%で発現した。薬剤に関連AE(グレードを問わず)により、オプジーボ群2.7%、プラセボ群2.5%で治験薬の投与が中止された。■参考小野薬品工業株式会社ニュースリリースONO-4538-12/ATTRACTION-2試験(Clinical Trials.gov)■関連記事ニボルマブ 標準治療不応の胃がんに良好な効果(ONO-4538-12 試験)/ASCO-GI 2017

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化学療法抵抗性膀胱がんへのラムシルマブは有用か?/Lancet

 プラチナ製剤化学療法で病勢進行が認められた、進行性・転移性尿路上皮がん患者に対し、抗VEGF-R2抗体ラムシルマブ(商品名:サイラムザ)+ドセタキセルの併用療法は、ドセタキセル単独に比べて無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが示された。米国・イェール大学のDaniel P. Petrylak氏らが、530例を対象に行った第III相無作為化二重盲検試験「RANGE」の結果で、Lancet誌オンライン版2017年9月12日号で発表された。結果を踏まえて著者は「ラムシルマブ+ドセタキセルレジメンは、われわれが知る限り、プラチナ療法抵抗性の進行性尿路上皮がん患者において化学療法よりも優れたPFSを示した、第III相試験では初となるレジメンである」と述べ、「今回のデータにより、抗VEGF-R2抗体は、尿路上皮がん患者の新たな治療選択肢となりうることが確認された」と、まとめている。 ラムシルマブ(10mg/kg)をドセタキセルと併用投与 研究グループは2015年7月~2017年4月にかけて、23ヵ国124ヵ所の医療機関を通じて、プラチナ製剤化学療法で治療中または治療後に病勢進行が認められた、進行性・転移性尿路上皮がん患者530例を対象に試験を行った。以前の治療で、1種類の免疫チェックポイント阻害薬を投与していた患者も対象に含まれた。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはドセタキセル(75mg/m2)とラムシルマブ(10mg/kg)を(併用群:263例)、もう一方にはドセタキセルとプラセボを(対照群:267例)、いずれも1日1回静脈投与した。1サイクル21日間とし、病勢進行やその他の治療中止の基準が認められるまで継続した。 主要エンドポイントは、437例が無作為化された時点で評価したPFSだった。PFS中央値、併用群4.07ヵ月 vs.対照群2.76ヵ月 PFSの中央値は、対照群2.76ヵ月(95%信頼区間[CI]:2.60~2.96)に対し、併用群は4.07ヵ月(同:2.96~4.47)と有意に延長した(ハザード比:0.757、95%CI:0.607~0.943、p=0.0118)。盲検化独立中央解析においても同様の結果が示された。 奏効率も、対照群14.0%(95%CI:9.4~18.6、221例中31例)に対し、併用群は24.5%(同:18.8~30.3、216例中53例)と高率だった。 なお、Grade 3以上の有害事象の発現率は、併用群60%(156/258例)、対照群62%(163/265例)と同程度であり、予期していない毒性は認められなかった。治療に関連すると研究者が判断した重篤有害事象は、併用群24%(63/258例)、対照群20%(54/265例)で認められた。 治療中または治療中止後30日以内に死亡した患者の割合は、併用群15%(38/258例)、対照群16%(43/265例)で、そのうち治療が原因と研究者が判断したのはそれぞれ3%(8例)と2%(5例)だった。敗血症は、治療中の死亡で最も共通してみられた有害事象であった(2%[4例] vs.0%[発生なし])。また、併用群で致死的な好中球減少性敗血症1例が報告された。

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既治療の非小細胞肺がんに対するnab-パクリタキセル、単独およびdurvalumabとの併用が有望(abound2L+)/ESMO2017

 既治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する2次、3次治療は免疫チェックポイント阻害薬の登場で進化した。しかし、長期間のベネフィットを得られる患者は一部であり、最終的に化学療法を追加することになる患者も少なくない。nab-パクリタキセル(nab-P)はカルボプラチンとの併用で、進行NSCLCの1次治療の認可を得ているが、2次治療における効果も報告されている。またアザシチジン(CC-486)のようなDNAメチル基転移酵素阻害薬は免疫チェックポイント阻害薬と同様に化学療法の効果を上げるとされる。スペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017 Congress)において、nab-Pの単独療法とCC-486、およびPD-L1阻害剤durvalumabとの併用における安全性と有効性を評価したabound2L+試験の結果が、米国Washington University School of MedicineのDavid Morgenszter氏により発表された。 abound2L+試験は2つの無作為化群と1つの非無作為化群の3群で行われている。無作為化群では、化学療法既治療の進行非扁平上皮NSCLC患者161例が、nab-P単独群とnab-P+CC-486群に1:1で割り付けられた。その後、プロトコルを改訂し、無作為化群としてnab-P+durvalumab群を追加した。nab-P+durvalumab群では、扁平上皮がん、免疫チェックポイント阻害薬既治療患者の登録も許容した。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は安全性、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)である。 3群の患者背景は同様であったが、nab-P+durvalumab群においては、扁平上皮がんが29.1%、免疫チェックポイント阻害薬既治療例が11.4%含まれた。 主要評価項目であるPFSは、nab-P+CC-486群の3.2ヵ月に対しnab-P単独群は4.2ヵ月であった(HR:1.3)。副次評価項目のOSは、nab-P+CC-486群の8.4ヵ月に対しnab-P単独群は12.7ヵ月であった(HR:1.4)。ORRは13.6%に対し13.8%(HR:0.99)。nab-PへのCC-486追加によるPFS、OS、ORRの改善は見られなかった。一方、nab-P+durvalumab群の79人の患者の中間解析におけるPFSは免疫チェックポイント阻害薬未治療例では4.4ヶ月、既治療例では6.9ヵ月であった。ORRは26.6%と他の2群より高い結果を示した。OS中央値は未達である。 3群全体(240例)における治療関連有害事象(AE)で頻度の高かったものは、呼吸困難、末梢神経障害、好中球減少、貧血であった。 nab-P単独療法は、既治療の非扁平上皮NSCLCに対し期待できる効果を示した。しかし、同剤へのCC-486の追加は、ベネフィットがみられなかった。また、nab-Pとdurvalumabの併用については、2次、3次治療にける実現可能な治療法であることが示された。

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durvalumabとオシメルチニブは新たな標準治療となりうるか:PACIFIC/FLAURA試験

 欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017)では、抗PD-L1抗体durvalumabの第III相PACIFIC試験ならびに第3世代EGFR-TKIオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)の第III相FLAURA試験という、肺がん領域の2つの大きな臨床試験結果が発表された。発表後、PACIFIC試験の主任研究者であるスペイン・Hospital Universitario de OctubreのLuis Paz-Ares氏、FLAURA試験の主任研究者である米国・Winship Cancer Institute of Emory UniversityのSuresh Ramalingam氏がプレスに対して試験結果について解説した。本稿では、開発企業であるアストラゼネカ株式会社メディカル本部オンコロジー領域部部門長の橋上 聖氏および同社Global Medicines Development、Head of Oncology、Senior Vice PresidentのKlaus Edvadsen氏へのインタビュー内容を交え、今回の結果からみえてきた点や今後の展望について紹介する。放射線療法と免疫療法の間に相乗効果か:PACIFIC試験 切除不能局所進行(ステージIII)非小細胞肺がん(NSCLC)は本邦では年間約2万人が新たに罹患する。標準治療である同時化学放射線療法(CCRT)後、約9割の患者が長期的には何らかの形で進行するが、その治療法は定まっていない。「メディカルニーズの高い患者群であること、皮膚がん領域での近年の研究で、放射線療法と免疫チェックポイント阻害薬の間に相乗効果の可能性が示唆されていたことが、今回の試験につながった」と橋上氏は説明した。 ESMO2017で発表されたPACIFIC試験の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS、追跡期間14.5ヵ月の中間解析結果)はdurvalumab群16.8ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月で、durvalumab群で有意な延長が認められた(HR:0.52、95%CI:0.42~0.65、p<0.0001)。橋上氏は「3倍近いPFSの延長という結果は予想を上回るもので、抗PD-L1抗体による付加的な効果というよりは、やはり何らかの相乗効果があるのではないかと考えている」と語った。 Paz-Ares氏は、安全性プロファイルについて「全体的にdurvalumab群で有害事象がわずかに増加しているが、重度の事象については両群で同程度といえる」と述べ、「CCRT後のdurvalumabによる治療は、管理可能な安全性プロファイルを持ち、約11ヵ月PFSを延長したことで、ステージIIIのNSCLC 患者に対する治療の新たな選択肢といえる。長期フォローアップにより、全生存率(OS)への影響を見ることが重要だ」と結論付けている。 今後について橋上氏は、「免疫療法を行う時期や期間については、本試験での条件に限らず、検討の余地がある。実臨床で患者にとってのベネフィットが最も大きな組合せ、条件を明らかにしていきたい」と語った。脳転移に対する効果が大きな収穫:FLAURA試験 ESMO2017で発表されたFLAURA試験の主要評価項目であるPFS中央値は、オシメルチニブ群が18.9ヵ月、標準治療群が10.2ヵ月であり、オシメルチニブ群で有意な延長が示された(HR:0.46、95%CI: 0.37~0.57、p<0.0001)。これらの改善効果は、脳転移の有無にかかわらず確認されている。また副次評価項目のうちOSについては、中間解析のハザード比が0.63(95%CI: 0.45~0.88)とオシメルチニブ群における延長傾向がみられたが、現時点では統計学的な有意差は得られていない。Ramalingam氏は、「標準治療と比較して、オシメルチニブの安全性プロファイルはより良好であり、PFS中央値を約11ヵ月延長した。オシメルチニブはEGFR変異陽性の進行NSCLC患者の新たな標準治療となるだろう」と結論付けている。 一方、ESMO2017でディスカッサントを務めた香港・香港中文大学のTony Mok氏は、脳転移例に対する有効性は支持したものの、第1/第2世代TKIとの最適な治療の順番・組合せについては、AURA3試験ならびにFLAURA試験の最終的なOSにより判断すべきと指摘していた。Edvadsen氏は、「もちろん最終的なOSが明らかになるまで確定的なことは言えない。しかし、少なくとも第1世代TKI投与後のオシメルチニブ投与との比較については、ゲフィチニブを1次治療に使った場合に20%以上の患者で脳転移が起こること、20~30%の患者が2次治療前に亡くなってしまうことを考えれば、私は1次治療からオシメルチニブを使っていくべきだと考えている」と述べ、10月に横浜で開催される世界肺がん学会で、FLAURA試験の解析結果について続報を発表予定とした。 また、オシメルチニブを1次治療で使った場合の耐性の獲得についてEdvadsen氏は、「オシメルチニブ耐性となった患者の20~25%に、MET遺伝子変異があることが明らかになっている。この変異に対しては、savolitinibという阻害薬の開発を進めており、将来的にはその他の変異についても阻害薬の開発を進めていく」と語った。 最後に橋上氏は、今後発表されるOSの最終データと、日本人を含むアジア人サブグループ解析の結果を踏まえ、本邦におけるオシメルチニブの1次治療での承認申請に向けて進めていきたいとの考えを示した。■関連記事durvalumab維持療法、Stage III肺がんのPFSを有意に改善(PACIFIC)/ESMO2017肺がんMYSTIC試験、durvalumab・tremelimumab併用の一部結果を発表HR0.46、オシメルチニブが1次治療で標準治療を上回る(FLAURA)/ESMO2017ステージ3切除不能肺がん、durvalumab維持療法が良好な結果:PACIFIC試験durvalumab、切除不能StageIII肺がんのブレークスルー・セラピーに指定オシメルチニブ、肺がんFLAURA試験の主要評価項目を達成オシメルチニブ、CNS転移例にも有効性示す:AURA3試験/ASCO2017

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検証 NSCLCにおけるニボルマブの適正投与期間(CheckMate-153)/ESMO2017

 PD-1/PD-L1阻害薬の適正な治療期間は明らかになっておらず、今後の重要な問題である。スペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017)において、米国Sarah Cannon Research Institute/Tennessee OncologyのDavid Spigel氏が、PD-1/PD-L1阻害薬の治療期間を評価する初めての無作為化試験であるCheckMate-153試験の結果を発表した。 CheckMate-153試験は、既治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)で、ニボルマブの治療(3mg/kg 2週ごと)を1年間継続した患者を、同剤の治療を継続するcontinuous nivolumab群(治療継続群)と、同剤の治療を1年間で中止するstop nivolumab群(ストップ群)に無作為に割り付け、臨床効果と安全性を評価した。主要評価項目は、Grade3~5の治療関連有害事象。探索的評価項目は、治療継続群とストップ群の安全性と有効性である。 1,245例が試験に登録され、ニボルマブの治療が1年間継続されている220例が無作為割り付けの対象となった。そのうち病勢コントロール(CR、PR、SD)されていた治療継続群76例とストップ群87例で有効性評価が行われた。両群の患者背景は同等で、患者の4分の1は3つ以上の前治療がある重度治療集団であった。 データカットオフ時(2017年5月15日)の追跡期間は、最短10.0ヵ月、最長14.9ヵ月であった。無作為割り付け後1年の無増悪生存(PFS)率は、治療継続群65%、ストップ群40%と、治療継続群で高かった(HR:0.42、95%CI:0.25~0.71)。PFSサブグループ解析においても、ほとんどの項目で治療継続群が優位であった。全生存期間については、治療継続群は未到達、ストップ群は23.2ヵ月と、統計学的有意には至らなかったものの、治療継続群で優れた傾向にあった(HR:0.63、95%CI:0.33~1.20)。今後の追跡結果が待たれるところである。 ストップ群ではPD後、ニボルマブによる再治療が認められているが、同群87例中49%(43例)がPDとなり、このうちの79%(34例)がニボルマブによる再治療を選択している。 安全性については、全Grade、重症Grade共に、治療継続群でわずかに頻度が高かった。治療関連死は両群共に認められていない。 Discussantであるドイツ Lungen Clinic Grasshausdorf Airway research CenterのMartin Reck氏は、「本試験は有効性を探索的評価項目としているが、PD-1/PD-L1阻害薬の適正な治療期間は重大な臨床的疑問である。今後橋渡し研究を進めると共に、有効性を主要評価項目とした、適切な統計パワーと患者数および統計デザインによる医師主導前向きランダム化試験が必要である」と述べた。■参考CheckMate-153試験(Clinical Trials.gov)

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durvalumab維持療法、Stage III肺がんのPFSを有意に改善(PACIFIC)/ESMO2017

 切除不能な局所進行Stage III肺がんに対するdurvalumab維持療法が、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善。抗PD-L1抗体durvalumabの第III相PACIFIC試験の最新の結果を2017年9月9日、スペイン・マドリードで行われた欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017)でスペインHospital Universitario de OctubreのLuis Paz-Ares氏が発表した。 PACIFIC試験は、プラチナベース化学療法と放射線の同時併用療法後に進行が認められないStage IIIのNSCLC患者において、抗PD-L1抗体durvalumab維持治療を標準療法と比較する第III相試験である。 NSCLCと診断される患者の3分の1はStage IIIである。PS良好なStage III NSCLCの標準治療は、プラチナ併用療法を用いたCCRTであるが、CCRT開始からのPFS中央値は8~10ヵ月、5年生存率は15%程度で良好な成績とはいえず、新たな治療が望まれていた。 PACIFIC試験では、切除不能な局所進行(Stage III)NSCLCと診断され、2サイクル以上のプラチナ・ベースのCCRT後に病勢進行が認められない患者を対象とし、CCRT後42日間に、durvalumab(10mg/kg、2週ごと最大12ヵ月投与)群とプラセボ群に2:1の割合で無作為に割り付けを行った。患者はPD-L1発現状況にかかわらずに登録された。 主要評価項目は、盲検化独立判定委員会評価のPFSと全生存期間(OS)。副次評価項目は奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性などであった。本試験は、Stage III NSCLC患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の効果を評価した初めての第III相試験である。 2014年5月~2016年4月に713例が登録され、durvalumab群に473例、プラセボ群に236例が割り付けられた。患者背景には大きな偏りはなかった。PD-L1発現25%未満は、durvalumab群とプラセボ群でそれぞれ、39.3%と44.3%。発現25%以上は24.2%と18.6%、不明は36.6%と37.1%であった。 今回の発表は、追跡期間14.5ヵ月(データカットオフ2017年2月13日)におけるPFSの中間解析の結果である。主要評価項目のPFSは、durvalumab群16.8ヵ月(13.0~18.1)、プラセボ群5.6ヵ月(4.6~7.8)と、durvalumab群で有意なPFSの延長が認められた(HR:0.52、95%CI:0.42~0.65、p<0.0001)。PFSのサブグループ解析では、EGFR変異陽性または不明のサブグループを除き、durvalumab群が一貫して優位であった。また、いずれのPD-L1発現状況(25%未満、25%以上、不明)においても、durvalumab群が優位であることが示された。 副次評価項目であるORRは、durvalumab群28.4%、プラセボ群16.0%と、durvalumab群で有意な改善がみられた(p<0.001)。DORは、durvalumab群では未到達、プラセボ群は13.8ヵ月と、durvalumab群で延長が認められた(HR:0.43、95%CI:0.22~0.84)。遠隔転移または死亡までの期間は、durvalumab群23.2ヵ月(23.2~未到達)、プラセボ群14.6ヵ月(10.6~18.6)と、durvalumab群で有意に延長していた(HR:0.52、95%CI:0.39~0.69、p<0.0001)。なお、OSについては、解析に十分なイベントが発生していなかった。 durvalumab群の安全性プロファイルは、進行NSCLCに対する単剤療法の場合と同様であり、本試験で新たな有害事象(AE)の発現は認められなかった。Grade 3/4のAE発現頻度はdurvalumab群で29.9%、プラセボ群で26.1%であり、AEによる治療中止はdurvalumab群15.4%、プラセボ群9.8%であった。Grade 3/4の肺臓炎または放射線肺臓炎の発現頻度はdurvalumab群で3.4%、プラセボ群で2.6%であり、これらによる死亡は、それぞれ1.1%と1.7%であった。 以上の結果より、「durvalumabはIII期NSCLC患者に対するCCRT後の治療オプションとして有望である」とPaz-Ares氏は述べた。 この結果は、同時にNew England Journal of Medicine誌に掲載された。■参考ESMO2017プレスリリースAntonia SJ, et al.N Engl J Med. 2017 Sep 8.[Epub ahead of print]PACIFIC試験(Clinical Trials.gov)■関連記事ステージ3切除不能肺がん、durvalumab維持療法が良好な結果:PACIFIC試験

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ペムブロリズマブ、既治療の転移性胃がんに有望な効果(KEYNOTE-059)/ESMO2017

 20017年9月8日、欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2017)で発表された第2相KEYNOTE-059試験の最新結果によると、ペムブロリズマブは既治療の転移性胃がん患者に対し有望な奏効を示した。 KEYNOTE-059試験は、再発または転移性胃がんにおける免疫治療の大規模試験であり、3つのコホートが含まれている。コホート1は、2ライン以上の化学療法治療後にペムブロリズマブの単独投与を受けた転移性胃がん患者(259例)、コホート2は新たに転移性胃がんと診断され、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法を受けた患者(25例)、コホート3は、新たに転移性胃がんと診断されペムブロリズマブ単独投与を受けた患者(31例)。主要評価項目は安全性(3つすべてのコホート)、コホート1と3における客観的奏効率(ORR)であった。 6ヵ月間の中央値追跡調査後、コホート1の既治療患者におけるペムブロリズマブ単独投与の治験担当医によるORRは12%であった。PD-L1発現患者は、非発現患者よりも良好な奏効を示し、ORRはそれぞれ16%および6%であった。また、効果は多くが持続的であった。Grade3〜5の治療関連有害事象は、コホート1の患者の18%で生じ、3%が結果として治療中止となった。 新たに診断された転移性がん患者では、併用療法(コホート2)とペンブロリズマブ単独(コホート3)の両方が安全で有望な活動を示した。 英国Royal Marsden Hospitalのmedical oncologistであるIan Chau氏は、このESMOでの結果について「現在のところ、転移性胃がんの3ライン以降の標準治療はないが、KEYNOTE-059コホート1の結果は、ONO-4538ランダム化試験における東アジアの患者で報告されたニボルマブの有効性が、西洋人集団にも適用できることを確認したもの」とコメントした。■参考ESMO2017プレスリリースKeynote-059試験(Clinical Trials.gov)■関連記事進行胃がん、ペムブロリズマブの治療効果は?KEYNOTE-059/ASCO2017ペムブロリズマブの胃がん適応拡大に優先審査:FDA

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心血管イベント抑制薬、肺がん発症も抑制/ESC2017

 IL-1βは炎症性アテローム性動脈硬化症の継続的な進行に関与することで知られているが、がんの微小環境においても、その増殖や転移に関与しているという仮説がある。そのような中、IL-1β阻害薬canakinumab(ACZ885)が、炎症を軽減することによって心血管疾患および肺がんリスクのリスクを低下させるという、最新の試験結果が2017年8月27日、ESC(欧州心臓病学会)2017で発表された。 これは、炎症性アテローム性動脈硬化症患者における、canakinumabの第III相試験CANTOS(Canakinumab Anti-inflammatory Thrombosis Outcomes Study)の探索的研究の結果である。CANTOSは、心筋梗塞の既往があり、がんの診断歴がなく、炎症マーカー高感度であるC反応性蛋白(hsCRP)が2mg/L以上のアテローム性動脈硬化症患者1万61例において、canakinumabによる心血管イベント抑制を評価した無作為比較試験。患者は、プラセボまたは3用量(50mg、150mg、300mg)のcanakinumabに無作為に割り付けられ、探索的研究では、がんの発症について追跡調査された。 3.7年の追跡期間中、canakinumabはプラセボと比較して、hsCRPの濃度を26~41%、IL-6の濃度を25~43%、用量依存的に減少した(いずれもp<0.0001)。全がん発症率はcanakinumab群とプラセボ群で有意差はなかった(p=0.31)。全がん死亡率は、canakinumab群でプラセボ群よりも有意に低かった(p=0.0007)。用量別にみると300mg群でプラセボ群に比べ有意であった(HR:0.49、95%CI:0.31~0.75、p=0.0009)。また、肺がん発症率は、プラセボ群に対し300mg群(HR:0.33、95%CI:0.18~0.59、p<0.0001)および150mg群(HR:0.61、95%CI:0.39~0.97、p=0.034)で有意な低下が見られた。肺がん死亡率は、プラセボ群に対し300mg群で有意に低下した(HR:0.23、95%CI:0.10~0.54、p=0.0002)。 ノバルティスは、canakinumabがIL-1βを標的とするがん免疫療法としての可能性を示したとし、規制当局と肺がんに対する仮説についての議論を行い、追加の第III相試験の実施を検討する予定。この結果は発表と同時にLancet誌にも掲載されている。■参考ECSプレスリリースノバルティス株式会社メディアリリースRidker, PM, et al.Lancet. 2017 Aug 25. [Epub ahead of print]CANTOS(Clinical Trials.gov)

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Dr.大山のがんレク!すべての医療者に捧ぐがん種別薬物療法講義(上巻)

第1回 がん総論 第2回 肺がん 第3回 乳がん 第4回 胃がん 第5回 大腸がん 第6回 副作用&合併症マネジメント がん化学療法が一般的な治療となり、一般内科でもがん患者を診る機会が多くなりました。この番組では、がん種ごとに、基本的知識、ステージ、主な治療法、化学療法とその副作用をコンパクトに解説。上下巻11種のがんのうち、上巻では4つのがんと、がん医療用語などをまとめた総論、副作用&合併症マネジメントを収録。すべての医療者が自信を持ってがん患者と向き合えるための知識を、腫瘍内科 大山優先生がレクチャーします!第1回 がん総論 「2人に1人はがんになる」時代。すべての医療者に捧ぐがん種別薬物療法講義「がんレク!」第1回はその基本中の基本である「がん総論」。がん治療で使用される用語や指標、治療方法とその進め方をコンパクトに解説。さらに、注目を集める免疫療法をはじめ、医療のプロとして今必ず知っておくべきがんにまつわる知識をまとめました。第2回 肺がん 第2回は男性のがん死因1位であり、一般内科医でも遭遇する機会の多い肺がんのレクチャーです。肺がんの予後を劇的に改善した分子標的薬や、ニボルマブが注目を集める免疫チェックポイント阻害薬など、一般内科医でもこれだけは知っておきたい知識がこの番組を見るだけで得られます。肺がんの基本的知識、治療薬、副作用をコンパクトに解説します。第3回 乳がん 今回は女性が最も多く罹患する乳がんについて解説します。患者数が多いため、一般内科医でも診る機会が多いがんの1つです。サブタイプ分類による個別化医療が進んでいることも乳がんの特徴です。ホルモン感受性の有無、HER2の発現状況、増殖のしやすさなどによって選択されるそれぞれの治療法をコンパクトにレクチャーします。期待されるホルモン療法と分子標的薬は是非チェックしてください。第4回 胃がん罹患率が大腸がんに次ぎ第2位の胃がん。内視鏡検査で早期発見されることも多く、外科的切除による治癒率も比較的高いがんです。また、化学療法にも感受性で、さらにHER陽性にはベバシズマブなど分子標的薬による治療が有効です。また免疫チェックポイント阻害薬も開発中であり、さらなる個別化医療が期待されています!一方、胃切除後の合併症等には注意が必要です。がん患者の治療中・治療後のフォローを解説します。第5回 大腸がん 罹患率第1位の大腸がん。一般内科でも診る機会の多い大腸がんは、化学療法感受性で、分子標的薬による治療、サブタイプによる個別化治療も進んでいるがんです。抗がん剤はどのように選択されるのか、患者の全身状態やがんの性質によって処方が異なる、がん化学療法の基本的な考え方をお教えします。第6回 副作用&合併症マネジメント 外来による抗がん剤治療が普及し、一般内科でも抗がん剤を使用中の患者に遭遇する機会が増えました。すなわち、抗がん剤には必発であるさまざまな副作用を、一般内科医も診なければならないということです。第6回では典型的副作用の発現時期や、それらの治療、がんの合併症について解説します。がん患者の容態悪化、Oncologic Emergencyは経過観察ができません。それらに対応できるよう、この機会にぜひ勉強してください。

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抗PD-1/PD-L1抗体治療で白髪もよみがえる?

 スペインの研究グループが、抗PD-1/PD-L1抗体による皮膚有害事象の研究中に毛髪再色素化の現象を発見し、JAMA Dermatology誌2017年7月12日号で報告した。免疫チェックポイント阻害薬による発疹、白斑、そう痒症などの皮膚関連事象発生は報告されているが、毛髪再色素化の報告は初めて。また、メラノーマ治療で報告されている皮膚や毛髪の脱色(白斑様)とは相反する作用である。 スペインUniversitari Germans Trias i Pujol病院のNaelia Rivera氏らの報告によれば、抗PD-1/PD-L1抗体の前向き試験に登録された、肺がん患者52例中、14例(男性13例、女性1例、平均年齢64.9歳)で、以前の髪色への再色素化が確認された。この再色素化は、びまん性の色素化、あるいは白髪中への黒斑として現れている。また、同有害事象の発現患者では、14例中13例がPRかSDと、良好な臨床効果を示して治療継続されていることから、同有害事象が良好な反応の指標である可能性も示唆している。14例の免疫チェックポイント阻害薬の内訳は、ニボルマブ12例、ペムブロリズマブ1例、atezolizumab1例である。 しかし、同試験は進行中であり、統計的な分析も行われていない。毛髪再色素化については、患者の古い写真とフォローアップ中に撮った最近の写真を比較することによって観察しているが、ヘアカラーによる髪染めにまつわる適切な質問が行われていない点などを指摘する懐疑的な研究者もいるようである。

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非小細胞肺がん化学放射線同時併用療法(CCRT)のアンメットニーズ 第3回【肺がんインタビュー】

第3回 非小細胞肺がん化学放射線同時併用療法(CCRT)のアンメットニーズStage III非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、化学放射線同時併用療法(CCRT)の適用レジメンについて検討した「TORG1018試験」。この試験に関する記事が、肺がん治療医師の方々からの高い関心を集めている。そこで、NSCLCのCCRTに適用する化学療法、そしてTORG1018試験について、日本医科大学の久保田 馨氏に聞いた。CCRTの適応になる患者さんは、どの程度おられますか?縦郭リンパ節転移があるStage IIIAおよびStage IIIBでは、化学放射線同時併用療法(CCRT)が治療の中心になります。内科的治療対象の3~4割程度になると思います。III期NSCLCにおけるCCRTのアンメットニーズは高いのでしょうか?画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大するTORG1018試験のStudyデザインおよび主要結果CCRTに適用するレジメンとして確立したものがなかった、というのが現状だと思います。おそらく皆さん、どのレジメンを用いるか悩んでおられると思います。Stage IIIで根治を期待する場合は、やはりCDDPレジメンが中心になります。2000年代初めまでは、MVPレジメン(MMC+Vindesine+CDDP)を用いていました。1999年以降、プラチナ製剤と第3世代抗がん薬との併用がIV期に対する標準レジメンとなりましたが、第3世代抗がん薬は、毒性のため放射線とのfull doseでの同時併用が困難でした。減量する、weekly投与にする等の工夫がなされましたが、明らかな優位性をもったレジメンは現れませんでした。そのような中、day 1、8に分割したDTX+CDDPは岡山大学の研究で、Stage III切除不能局所進行NSCLCのCCRTにおいて、MVPレジメンとの比較試験を行い、良好な成績を収めていました。また、S-1+CDDPは進行NSCLCに対する標準化学療法レジメンの1つであるとともに、CCRTにおける良好な成績も報告されていました。TORG1018試験の結果は、臨床にどのように反映できると思われますか?TORG1018試験は、ランダム化第II相試験として、CCRT施行患者に対しDTX+CDDPとS-1+CDDP、それぞれの成績を評価しました。GEM、PTX、DTXなどはIV期のfull doseを使えないというのが難点でしたが、本試験でのDTX+CDDPレジメンはfull doseに近く、前述の研究からも高い有効性が期待されます。一方のS-1+CDDPレジメンも同様にfull doseで使用でき、アクティビティが期待できます。試験の結果、主要評価項目である2年OSはS-1+CDDP群79%、DTX+CDDP群が69%でした。数字としては、S-1+CDDP群がDTX+CDDP群を上回っていました。また、肺障害を含めた有害事象もS-1+CDDP群で少ないという結果でした。このように、有効性および安全性の双方ともS-1+CDDPは良好であり、実臨床では、このS-1+CDDPを化学放射線同時併用療法の標準化学療法として日常臨床で用いることができる、と言えるでしょう。今後、S-1+CDDPはCCRTの適用レジメンとして、どのように拡大していくと思われますか?アジアでのトライアルで、S-1+CDDPレジメンを評価することができると思います。また、今後、CCRT後の免疫チェックポイント阻害薬維持療法が、標準治療となることが期待されています。S-1+CDDPレジメンは、比較的副作用が軽度で、免疫チェックポイント阻害薬の効果を、より引き出すことができるかも知れません。免疫チェックポイント薬併用のベースレジメンとしての位置付けも期待できると思います。■関連記事III期NSCLCの化学放射線同時併用療法に適用するレジメンは?本邦のランダム化試験の結果発表/ASCO2017

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ニボルマブ、MSI-H転移性大腸がんに承認/FDA

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社(NYSE:BMY/本社:米国ニューヨーク/CEO:ジョバンニ・カフォリオ)は2017年8月1日、米国食品医薬品局(FDA)が、フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカンによる治療後に病勢進行した高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)の転移性大腸がん(mCRC)の成人および小児(12歳以上)患者の治療薬として、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)を承認したことを発表した。この適応は、奏効率(ORR)および奏効期間に基づき、迅速承認された。この適応の承認の継続条件は、検証試験において臨床的有用性を証明し記載すること。推奨用量は240mgで、病勢進行または忍容できない毒性が認められるまで、2週間ごとに60分以上かけて静脈内投与する。 CheckMate-142試験では、フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカンによる治療歴を有する患者(74例中53例)において、ニボルマブの投与により28%(95%CI:17~42、53例中15例)の奏効が認められた。完全奏効(CR)は1.9%(53例中1例)、部分奏効(PR)は26%(53例中14例)であった。これらの奏効患者における奏効期間中央値は未達(2.8+~22.1+ヵ月)であった。登録された全患者では、ニボルマブORRは、32%(95%CI:22~44、74例中24例)であり、CRは2.7%(74例中2例)、PRは30%(74例中22例)であった。■参考ブリストル・マイヤーズ スクイブ(米国)ニュースリリースCheckMate-142試験(Clinical Triakls.gov)■「MSI-H」関連記事 いよいよ臨床へ、がん種を問わないMSI-H固形がんをどう診断し、治療していくか

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肺がん治療ターゲット・セラピー、未来への系譜/アストラゼネカ 第2回【肺がんインタビュー】

第2回 肺がん治療ターゲット・セラピー、未来への系譜/アストラゼネカ肺がん治療に大きな変化をもたらしたEGFR-TKIゲフィチニブ。さらに、2016年には第1・第2世代の耐性をも克服した第3世代EGFR-TKIオシメルチニブを発売したアストラゼネカ。ターゲット・セラピーを通し、肺がん治療の発展に貢献し続ける同社だが、その道のりは平坦ではなかった。同社オンコロジー事業本部マーケティング統括部長 森田慎一郎氏に、肺がん治療と共に進んできた道のりと今後の展開を聞いた。ケアネットの調査で、すべてのがん種を通し、ドクターが最もインパクトが大きいと評価した薬剤はゲフィチニブでした。ゲフィチニブは、発売前から非常に高い期待を背負っていましたが、その後の有害事象の発現で事態が大きく変わったかと思います。その当時の状況はいかがでしたかアストラゼネカ株式会社 オンコロジー事業本部マーケティング統括部長 森田 慎一郎氏メディア報道の影響が大きいのですが、ゲフィチニブは発売前から夢の新薬として扱われました。実際に、助からない患者さんがゲフィチニブにより短期間で劇的に改善するといった、従来の抗がん剤では経験したことのない効果を治験ドクターが体験しており、それも前評判を高めた要因だと思います。しかし、発売後に間質性肺炎の有害事象が発現し、一気にネガティブな報道に変わってしまいました。報道の影響は非常に大きく、患者さんがゲフィチニブによる治療を拒否するという事態が起きました。せっかくゲフィチニブが使える可能性があっても使えないという、歯がゆい思いを、臨床現場のドクターもわれわれも経験しました。有害事象発現の後に3,000例以上を対象とした特別調査と、間質性肺炎のリスク特定のためのケースコントロール試験も実施しました。このような状況の中でも、ドクターは臨床でゲフィチニブが一定の患者さんには確実に効果があるという実感を得ていました。この薬剤は絶対に必要な薬だ、とドクターが確信されていたこともあり、全面的な協力をいただき、短期間でデータを収集できました。逆風の中にはありましたが、ドクターからは訪問するたびに、良い話を聞かせてもらえるので、弊社としても勇気づけられ、逆風に倒れることなく、活動していたことを覚えています。そのような経過を経て、EGFR-TKIの位置付けが、明らかになっていくわけですね前述のとおり、どのような患者さんに効果があり、どういう患者さんに副作用が起こるのか、早い段階で日本のドクターは掴んでおられました。そこで、奏効が期待できる臨床的背景(腺がん、非喫煙者[あるいは過去少量喫煙者]、アジア人)の患者さんを対象に、IPASS試験を実施しました。予想どおり、この患者集団では著明な効果を証明しました。その後、EGFR遺伝子変異におけるEGFR-TKIの有効性が明らかになり、以前からのドクターの勘どころが、ターゲット・セラピーとして科学的に証明されました。ゲフィチニブはグローバルな薬剤ですが、日本のドクターの熱意が育ててくれた薬剤であるといえます。画像を拡大する画像を拡大する臨床背景で選択した患者で有意なPFS延長を示し、EGFR変異によるサブグループ解析では、さらなる著明な効果を示したIPASS試験EGFR-TKIの位置付けが確立していきますが、今度は耐性の問題が浮上します。そこで、耐性を克服した第3世代EGFR-TKIオシメルチニブを臨床現場に登場させますが、その経緯について教えていただけますかEGFR-TKI耐性メカニズムにT790M遺伝子が関与することは、かなり以前から明らかになっていました。臨床現場からも耐性を克服する薬剤の開発について強い要望をいただいており、多くの製品が、耐性克服に挑戦しましたが、T790Mを抑制するまで薬剤濃度を上げると、野生型EGFRチロシンキナーゼも阻害してしまい、有害事象が強くなってしまいます。画像を拡大するT790M変異症例でオシメルチニブが著明かつ有意なPFS延長を示したAURA3試験そのような中、オシメルチニブは最新テクノロジーを活用し、野生型EGFR チロシンキナーゼへの活性を抑え、T790Mを強力に阻害するようデザインされました。従来の薬剤と根本的に異なる方法で開発されたのです。実際にAURA試験などの臨床試験で、T790M変異症例に対する著明な効果を証明しています。オシメルチニブはまた、T790Mのみならず、Exon19、21といったEGFR遺伝子変異にも良好な効果を示します。現在、T790M変異から拡大し、EGFR変異の非小細胞肺がんに対する1次治療の第III相試験FLAURA試験も進行中です。その後、オシメルチニブが承認されるわけですが、承認から薬価収載までの間、同剤の無償提供をされました。その状況について教えていただけますかT790M変異の患者さんは、治療選択肢がきわめて限られています。オシメルチニブを1日も早くに使うべき患者さんが大勢おられ、臨床現場からの強い要望がありました。そういった要望にお応えするために、薬価収載前の薬剤提供を検討しました。実際に困っている患者さんに使えるよう、さまざまな方法を検討した結果、厚生労働省の定める「保険外併用療養費制度」のもと、本剤の無償提供に踏み切りました。ただし、有害事象などの問題もありますので、提供先は、治験実施施設のうち、承認された適応、用法・用量に従ってのみ使用する、弊社が実施する市販直後調査・全例調査や適正使用推進等の各種安全対策に協力いただける、といった条件に合意いただけた施設に限定しました。オシメルチニブの使用には再生検によるT790Mの確認が必要となります。とはいえ、再生検をしてもらうというのは容易ではないと思いますが画像を拡大する第3世代EGFR-TKIオシメルチニブオシメルチニブが登場するまでは、T790Mへの治療手段がなかったため、再生検という概念はなかったわけです。いわゆるゼロからのスタートですが、EGFR-TKI耐性となった患者さんに一人でも多く、治療機会を見つけていただくため、講演会などを開催し、再生検の重要性と共に、再生検の実際について広める活動を行っています。呼吸器科の先生方は気管支鏡の専門家ですが、再生検は新たなチャレンジです。そこで、スペシャリストを招いて、組織へのアプローチ、採取のテクニックなどを紹介いただきました。また、気管支鏡メーカーとタイアップして、機械を現場に持ち込んだハンズオンセミナーを開催し、実際の手技を体験いただいています。さらに、肺外、肝臓、骨、脳といった、呼吸器科がアクセスできない部位の対策として、消化器内科、整形外科、脳外科、放射線科といった他科連携のノウハウも講演会でオピニオンリーダーから共有していただきました。このような再生検の普及活動をしていますが、オシメルチニブ上市時、40%程度だった再生検実施施設が、現在では90%を超えています。海外では50%程度ですので、日本がいかに高いかわかります。この数字は、日本の先生方が、患者さんのために非常に熱心に再生検に取り組んでいることを表しているものです。われわれも何らかの形で、ここに貢献できたのではないかと思っています。組織再生検不能な患者さんのためにリキッドバイオプシーの手段があります。リキッドバイオプシーについても、保険点数が付くまで検査結果の倫理提供をなさっていましたね再生検実施率は海外とは比較にならないほど高くなりました。とはいえ、組織生検できる症例は60%で、残りの40%は患者さんの病状や腫瘍の形状など何らかの理由で生検できないというのが現状です。治療できるかもしれない患者さんが、目の前にいるのに何もできない、というジレンマが臨床現場にもわれわれにもありました。しかし、検査の保険適用には時間がかかります。その間にT790M変異検査ができないまま、状態が悪くなっていく患者さんが大勢いらっしゃいます。そのような患者さんの緊急治療を支援する観点から、保険適用前に何かできることはないか、社内で検討し、関係各省との調整を行いました。そして、オシメルチニブのコンパニオン診断薬コバスEGFR変異検出キットv2.0(ロシュ・ダイアグノスティックス)を用いたT790M血漿検査結果の倫理提供の実施に至りました。T790M検査の結果を弊社が購入、無償提供することになるのですが、再生検不能な患者さんにアクセスしてもらう環境を作りたい、という強い思いから実現できたのだと思います。今後はどのような製品で肺がん治療に貢献する予定ですか? パイプラインについて教えていただけますかこれまでEGFR-TKIを通して肺がん医療に貢献してきました。しかし、EGFR変異は非小細胞肺がん患者さんの35%程度です。残りの65%の患者さんにも貢献したいと考えています。免疫チェックポイント阻害薬は、その目標を実現する1つの候補です。われわれは、抗PD-L1抗体durvalumabを有しており、この製品を肺がん領域でも開発しています。durvalumabでは、他の免疫チェックポイント阻害薬とは異なるアプローチをしています。代表的なものの1つとして、非小細胞肺がんStageIII患者さんの化学放射線治療後の維持療法として効果を検討した、PACIFIC試験があります。Unmet Medicalニーズの高い患者集団ですが、すでにポジティブな結果が出ており、今秋の国際学会で詳細を発表する予定です。durvalumabについては、StageIVの1次治療という、より多くの患者さんを対象とした臨床試験MYSTIC試験も進行しています。この試験では、durvalumabと弊社の抗CTLA-4抗体であるtremelimumabを併用しています。PD-L1が50%未満の症例では、PD-1阻害薬の効果はどうしても低下してしまいますが、たとえば、この患者集団に対して免疫チェックポイント薬の併用がベネフィットをもたらすことができるか、といった免疫チェックポイント阻害薬の新たな可能性を検証します。この研究も今後の国際学会で発表の予定です。そのほか、私どもには多くの作用機序の異なる肺がん治療薬のパイプラインがあり、自社品の中で併用試験を組むことも容易です。今後も、さまざまな薬剤の組み合わせにもチャレンジし、肺がん治療の研究を進めていければと思っています。

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【JSMO2017見どころ】プレナリーセッション、免疫・細胞療法

 2017年7月27日(木)から3日間にわたって、第15回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち先月、日本臨床腫瘍学会(JSMO)のプレスセミナーが開かれ、プレナリーセッションをはじめ、「免疫・細胞療法」「Precision medicine」「AYA世代のがん治療」「緩和・支持療法」の4つのテーマにおける注目トピックが紹介された。 はじめに、本学術集会会長の谷本 光音氏(岡山大学大学院 血液・腫瘍・呼吸器内科学講座)より、未発表の結果が発表されるプレナリーセッション3題の紹介がなされた。プレナリーセッション日時:7月28日(金)15:30~17:00場所:Room1(ポートピアホール)※Room 10(神戸際会議場メインホール)にて中継(1)「切除不能大腸癌に対するmFOLFOX6/CapeOX+BmabとS-1/CPT-11+Bmabとの第3相試験:TRICOLORE試験」蒲生 真紀夫(大崎市民病院 腫瘍内科)(2)「全身化学療法治療歴のない切除不能な肝細胞がん患者を対象としたレンバチニブの臨床第Ⅲ相試験の日本人部分集団解析」池田 公史(国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科)(3)「PD-L1高発現の未治療非小細胞肺癌に対するペムブロリズマブの国際共同ランダム化第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024)の日本人集団解析」里内 美弥子(兵庫県立がんセンター 呼吸器内科) 続いて、「免疫・細胞療法」分野の最新動向・注目演題について前田 嘉信氏(岡山大学病院 血液・腫瘍内科 講師)が登壇した。以下、前田氏のコメントと注目演題を紹介する。【前田 嘉信氏コメント】 免疫・細胞療法は、手術療法、放射線療法、化学(薬物)療法に続く第4の治療法として近年大きな注目を集めている。とくに免疫チェックポイント阻害薬は、2014年に進行悪性黒色腫に対して抗PD-1抗体が国内承認を得て臨床応用されて以来、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、大腸がんなどに次々に応用されている。 最も広く用いられている肺がんに関しては、インターナショナルシンポジウムをはじめ、免疫療法に関する一般口演の大半を占めるほど多くの発表が予定されている。免疫チェックポイント阻害薬に関する最新情報は教育講演で、また、免疫チェックポイント療法を最適化するための大きなテーマとして、副作用の対策がシンポジウムで取り上げられている。ここでは、各分野からの副作用対策が提案され、議論される。さらに、最適化のために効果を予測するバイオマーカーの研究や免疫チェックポイントの基礎的研究がインターナショナルシンポジウムで討論される予定となっている。 免疫チェックポイント療法を超えて免疫・細胞療法の今後の展開を考えるうえで、「免疫制御とがん治療」と題した特別講演と、インターナショナルシンポジウム「Cancer Immunotherapy -What's the next?」が予定されている。【注目演題】シンポジウム「免疫チェックポイント阻害薬の副作用とその対策」日時:7月27日(木)9:00~11:00場所:Room1(神戸ポートピアホテル南館1F ポートピアホール)International Symposium「Immunotherapy for head and neck cancer: Future direction」日時:7月27日(木)14:30~16:30場所:Room 11(神戸国際会議場3F 国際会議室)「Emerging evidence of immunocheckpoint inhibitors in non-small cell lung cancer」日時:7月28日(金)8:20~10:20場所:Room 2(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール南)「The future of immune checkpoint therapy」日時:7月28日(金)17:00~19:00場所:Room 2(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール南)「Cancer Immunotherapy -What's the next?」日時:7月29日(土)8:20~10:30場所:Room 1(神戸ポートピアホテル南館1F ポートピアホール)一般口演「免疫療法 1」日時:7月28日(金)8:20~9:20 場所:Room 11(神戸国際会議場3F 国際会議室)「免疫療法 2(非小細胞肺がん)」日時:7月28日(金)9:20~10:20 場所:Room 11(神戸国際会議場3F 国際会議室)「免疫療法 3(有害事象)」日時:7月28日(金)10:20~11:20 場所:Room 11(神戸国際会議場3F 国際会議室)「呼吸器 4(免疫療法)」日時:7月29日(土)8:20~9:20場所:Room 5(神戸国際展示場1 号館2F Hall B)教育講演「免疫チェックポイント阻害剤最新情報」日時:7月29日(土)16:30~17:00場所:Room 1(神戸ポートピアホテル南館1F ポートピアホール)特別講演「免疫制御とがん治療」日時:7月29日(土)15:00~16:00場所:Room 1(神戸ポートピアホテル南館1F ポートピアホール)【第15回日本臨床腫瘍学会学術集会】■会期:2017年7月27日(木)~29日(土)■会場:神戸コンベンションセンター、Junko Fukutake Hall(岡山大学鹿田キャンパス)■会長:谷本 光音氏(岡山大学大学院 血液・腫瘍・呼吸器内科学講座)■テーマ:最適のがん医療— いつでも、何処でも、誰にでも —第15回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

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ニボルマブ、転移・再発NSCLCの1次治療で予後改善せず/NEJM

 未治療のStage IVおよび再発の非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、抗PD-1抗体製剤ニボルマブは標準的な化学療法と比較して予後を改善しないことが、米国・オハイオ州立大学総合がんセンターのDavid P. Carbone氏らが行ったCheckMate 026試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年6月22日号に掲載された。ニボルマブは、既治療の転移のあるNSCLCの2つの第III相試験でドセタキセルよりも全生存(OS)期間が優れ、未治療のNSCLCの第I相試験では持続的奏効や良好な安全性プロファイルが報告されている。一方、PD-L1を超えるバイオマーカーの探索が進んでおり、腫瘍の遺伝子変異負荷(tumor-mutation burden:TMB)が高度な患者は、免疫療法からベネフィットを得る可能性が高いことが示唆されている。541例で有用性を直接比較する無作為化試験 本研究は、Stage IV・再発NSCLCの1次治療におけるニボルマブの安全性と有効性を評価する国際的な非盲検無作為化第III相試験である(Bristol-Myers Squibb社などの助成による)。 対象は、組織学的に扁平上皮がんまたは非扁平上皮がんが確認されたStage IV・再発NSCLCで、全身状態(ECOG PS)が0/1、登録前6ヵ月以内の生検で採取された検体のPD-L1発現が、中央判定で1%以上の患者であった。 被験者は、ニボルマブ3mg/kgを2週ごとに静脈内投与する群または担当医が選択したプラチナ製剤ベースの2剤併用化学療法を3週ごとに4~6サイクル施行する群に、1対1の割合でランダムに割り付けられた。化学療法群の患者は、病勢進行後、ニボルマブへのクロスオーバーが可能とされた。 主要評価項目はPD-L1の発現が≧5%の患者における無増悪生存(PFS)とし、評価は独立審査委員会によって盲検下の中央判定で行われた。また、探索的検討として、TMB別の有効性の解析も行った(全エクソームシーケンスで検出された腫瘍の体細胞ミスセンス変異数が0~99個の場合を低TMB、100~242個を中TMB、243個以上を高TMBと定義)。 2014年3月~2015年4月に1,325例が登録され、541例(41%)がランダム化の対象となった。ニボルマブ群に271例が、化学療法群には270例が割り付けられた。実際に治療を受けたのは530例(98%)だった。ベースラインの全体の年齢中央値は64歳(範囲:29~89歳)、女性が39%であった。Stage IVが92%、再発は8%だった。PFS期間中央値、ニボルマブ群4.2ヵ月、化学療法群5.9ヵ月  PD-L1≧5%の423例(ニボルマブ群:211例、化学療法群:212例)の解析では、PFS期間中央値はニボルマブ群が4.2ヵ月と、化学療法群の5.9ヵ月に比べむしろ短かった(ハザード比[HR]:1.15、95%信頼区間[CI]:0.91~1.45、p=0.25)。1年PFS率は、それぞれ24%、23%であった。 PD-L1≧5%の患者のOS期間中央値にも、有意な差は認めなかった(14.4 vs. 13.2ヵ月、HR:1.02、95%CI:0.80~1.30)。1年OS率は、それぞれ56%、54%だった。なお、化学療法群212例のうち128例(60%)が、後治療としてニボルマブの投与を受けていた。 PD-L1≧5%の患者の最良総合効果は、ニボルマブ群が26%(完全奏効[CR]:4例、部分奏効[PR]:51例)、化学療法群は33%(1例、70例)であった。奏効までの期間中央値は両群でほぼ同様であった(2.8 vs. 2.6ヵ月)のに対し、奏効期間中央値はニボルマブ群が2倍以上長かった(12.1 vs. 5.7ヵ月)。 TMB別の探索的解析では、高TMB例においてニボルマブ群が化学療法群に比べ奏効率(47 vs. 28%)、PFS期間中央値(9.7 vs. 5.8ヵ月)が良好であった。しかし、OS期間に差は認めなかった。 治療関連有害事象は、ニボルマブ群が71%、化学療法群は92%に発現した。このうちGrade 3/4は、それぞれ18%、51%であった。ニボルマブ群で最も頻度の高い有害事象は疲労(21%)であり、次いで下痢(14%)、食欲減退(12%)、悪心(12%)、皮疹(10%)の順であり、皮疹は免疫学的原因による可能性が示唆された。 著者は、「化学療法群は、患者の多くがニボルマブによる後治療を受け、ベースラインの背景因子のうちいくつかが良好な予後と関連した可能性が高い(わずかだが肝転移例が少なく、標的病変径和が小さく、女性が多い)が、ニボルマブ群は、ニボルマブ治療で予後が良好となる可能性が高い因子(PD-L1≧50%、高TMB)を持つ患者が少なかったことが、これらの結果に影響を及ぼした可能性がある」と考察している。

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ネガティブスタディだが効果予測指標はPD-L1ではない!?(解説:倉原 優 氏)-696

 CheckMate026試験は、腫瘍細胞の1%以上がPD-L1を発現している、未治療のIV期非小細胞肺がん患者に対して、初回治療としてのニボルマブ(商品名:オプジーボ)単剤治療とプラチナ併用療法を比較するランダム化比較試験である。ニボルマブは現時点では2次治療で一定の地位を確立している。それにしても、CheckMateと名の付く臨床試験が多いため、一臨床医にはなかなか覚えにくい。 CheckMate026試験では、無増悪生存期間および全生存期間のいずれにおいても、両群に有意差は観察されなかった。いわゆる、ネガティブスタディだった。なんだニボルマブは初回治療には使えないのか、という声が出てきそうだが、実はそう簡単な帰結にはならないと考えている。この論文の最後には、探索的研究の興味深い結果がコメントされている。 多くの医師はご存じかもしれないが、PD-L1ではなくTumor Mutation Burden(TMB)※1が効果を推定する規定因子として注目を集めている1)。事実、このCheckMate026試験の後解析2)が米国がん研究会議(AACR 2017)で発表されており、TMBが高い場合※2、ニボルマブ群で無増悪生存期間が延長し(ハザード比:0.62、95%信頼区間:0.38~1.00)、奏効率も良好だった(ニボルマブ群46.8% vs.プラチナ併用療法群28.3%)と報告されている。全生存期間は後治療のクロスオーバーの影響もあって、有意差はついていない。※1 腫瘍組織中の遺伝子変異量を示す指標のこと。※2 TMBレベルを低TMB(0~99)、中TMB(100~242)、高TMB(243以上)に分けて解析。 当然ながら、副作用が患者に与える影響は免疫チェックポイント阻害薬のほうが軽度である(注意しなければならない副作用は特殊なものが多いが)。たとえ後解析でTMB高低によって差があったとしても、腫瘍細胞にPD-L1の発現が多ければ、今後はプラチナ併用療法を優先的に使う機会は少なくなるのではないだろうか。■参考1)Rizvi NA, et al. Science. 2015;348:124-128.2)AACR 2017 abstract

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