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抗体-薬物複合免疫賦活薬(iADC)の創製で戦略的提携/アステラス・Sutro

 アステラスは2022年06月28日、Sutro Biopharma, Inc.(Sutro)と、抗体-薬物複合免疫賦活薬(immunostimulatory Antibody-Drug Conjugates、iADC)の共同研究・開発に関する全世界における戦略的提携およびライセンスに関する契約を締結した。 Sutroの抗体-薬物複合技術と、アステラス製薬のがん領域におけるグローバルな研究開発ケイパビリティを組み合わせ、次世代モダリティiADCの治療薬創製を目指す。 免疫チェックポイント阻害薬を含む主要ながん免疫療法の課題は、免疫細胞が浸潤しづらいがん微小環境にある非炎症性腫瘍に対して効果を得にくいことである。 今回の戦略的提携では、既存の治療法が有効でない患者に治療薬を届けるため、非炎症性腫瘍に効果的かつ効率的にアプローチできる可能性があると考えられる次世代モダリティのiADCの創製に取り組む。免疫を活性化する免疫賦活剤に加え、免疫原性細胞死(immunogenic cell death)を誘導する抗がん剤を抗体に結合させたiADCは、より強力な抗がん作用を発揮する可能性を有する。 この提携により、アステラスとSutroは、3つの異なる標的に対するiADCの創製を加速する、としている。

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ASCO2022 レポート 消化器がん(上部・下部消化管)

レポーター紹介はじめに2022年6月3日~7日に、2022 ASCO Annual Meetingが開催された。世の中は徐々に渡航を緩和しつつあるが、残念ながら今年も日本からvirtualでの参加になってしまった。今年も消化管がん分野において標準治療を変える発表が複数報告されたが、その中でもとくに重要と考える発表をここで報告する。食道がん・胃がん昨年の2021 ASCO Annual Meetingでは、食道がん・胃がんにおいて免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性を検証する大規模臨床試験の結果が複数報告されたが、今年は大きな結果の報告は乏しかった。一方でClaudin18.2(CLDN18.2)に対するchimeric antigen receptor(CAR)T細胞の安全性・有効性の報告など、今後の治療開発につながる報告が行われており、これらを中心に報告を行う。CLDN18.2-redirected CAR T-cell therapy(CT041)Claudinは4つの膜貫通ドメインと2つの細胞外ループを持つ分子量23kDの小さな4回膜貫通タンパク質であり、隣り合う細胞の両側から細胞接着部位に集積し、タイトジャンクションの細胞膜密着構造と膜内のストランド構造を形成している。Claudin18.2は、胃腸腺がんの80%、膵臓がん、胆管がん、卵巣がん、肺がんでは60%と複数のがんで高発現しているとされている。抗Claudin18.2抗体薬であるzolbetuximab(IMAB362)が無作為化第II相試験(FAST試験)で無増悪生存期間(PFS)の有意な改善を認めており、現在国際共同第III相試験であるSPOTLITE試験が進行中である。CAR T細胞療法では、患者からT細胞を採取し、遺伝子医療の技術を用いてCAR(キメラ抗原受容体)と呼ばれる特殊なタンパク質を作り出すことができるようT細胞を改変する。そして厳重な品質管理の下で増幅し、リンパ球除去化学療法の後に患者に投与を行う。CT041(CLDN18.2-redirected CAR T-cell therapy)は免疫染色でCLDN18.2陽性(2+/3+を≧40%の腫瘍細胞で認める)の前治療歴のある進行胃がん症例に対して行われた第Ib/II相試験である。報告の時点で14例の症例が登録され、最も多いGrade3以上の有害事象はlymphodepletionに伴うリンパ球減少であったが、Dose limited toxicities(DLTs)となるものは存在しなかった。Cytokine release syndromeも認められたが、多くの症例はGrade1~2であり、許容されるものであった。有効性では奏効率(ORR)が57.1%、病勢制御率(DCR)が78.6%、PFS中央値が5.6ヵ月、全生存期間(OS)中央値が10.8ヵ月と、全例2つ以上の前治療を受けていることを考えると非常に有望な結果であり、現在第II相パートが進行中である。大腸がん今年のASCOにおける大腸がん分野の最大のトピックは、本邦から報告された切除不能・転移性大腸がんに対して、最適な1次治療を前向きに検証する第III相試験である、PARADIGM試験である。そのほか、StageII結腸がんの術後補助化学療法実施の要否を、血漿循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いて前向きに検証する無作為化第II相試験であるDYNAMIC試験と、米国のMemorial Sloan Kettering Cancer Center(MSKCC)が行ったミスマッチ修復異常を認める(dMMR/MSI-H)直腸がんに対する抗PD-1抗体の有効性の報告が、発表と同時にNew England Journal of Medicineにpublicationされた。今回はこれらの結果を報告する。PARADIGM試験切除不能転移再発大腸がんに対する1次治療の標準はFOLFOX/FOLFIRI等の化学療法と、抗EGFR抗体もしくはVEGF抗体であるベバシズマブの併用であり、生存期間中央値がおおよそ30ヵ月と報告されている。過去に行われた6つの無作為化試験の統合解析では、RAS野生型かつ左側大腸がん(下行結腸・S状結腸・直腸)症例には抗EGFR抗体薬の併用が、RAS変異型もしくはRAS野生型かつ右側大腸がん(盲腸・上行結腸・横行結腸)症例にはベバシズマブの併用が有意に優れていることが示されていたが1)、前向きの検証試験の報告は行われていなかった。PARADIGM試験は、周術期のオキサリプラチン(フッ化ピリミジン単剤は許容)を含む前治療のない切除不能転移再発大腸がんを対象に、mFOLFOX6+パニツムマブ(Pmab群)とmFOLFOX6+ベバシズマブ(Bmab群)を1対1に無作為化割り付けした第III相試験である。主要評価項目は左側大腸がん症例における全生存期間(OS)であり、それが有意であれば全症例で全生存期間を解析する計画であった。合計802例(Pmab群400例、Bmab群402例)が有効性の解析対象であり、そのうち左側大腸がん症例が312例、292例であった。左側大腸がん症例における、OS中央値はPmab群で37.9ヵ月、Bmab群で34.3ヵ月(ハザード比[HR]:0.82、p=0.03)と有意にPmab群が優れていたが、生存曲線は24ヵ月あたりまでほぼ重なっており、それ以降Pmab群が上回る結果であった。全症例におけるOS中央値はPmab群36.2ヵ月、Bmab群31.3ヵ月(HR:0.84、p=0.03)とPmab群が有意に優れた結果であった。また右側大腸がん症例の解析では、OS中央値がPmab群で20.2ヵ月、Bmab群で23.2ヵ月(HR:1.09)と治療成績に大きな差はないが、Pmab群のメリットが乏しく、過去の無作為化試験の統合解析と同様の結果であった。PFSは、左側大腸がん症例においてPmab群が中央値で13.7ヵ月、Bmab群が13.2ヵ月(HR:0.98)、全症例において中央値で12.9ヵ月、12.0ヵ月(1.01)と両群で差を認めない結果であった。一方、ORRは左側大腸がん症例においてPmab群が80.2%、Bmab群が68.6%、全症例において74.9%、67.3%であり、Depth of Response(DoR)もPmab群で優れていた。FIRE-3試験2)などと同様にORR、DoRの改善が結果的にOSの改善につながった可能性が考察できる。2次治療以降の化学療法実施割合も両群で差を認めなかった。これまでESMOガイドラインや本邦のガイドラインは、RAS野生型左側大腸がん症例は化学療法+抗EGFR抗体薬を推奨し、NCCNのガイドラインは前向き試験のデータがないことから化学療法+抗EGFR抗体薬、化学療法+ベバシズマブを併記していた。PARADIGM試験の結果でRAS野生型左側大腸がん症例には化学療法+抗EGFR抗体薬が第1選択であることが前向きに検証されたことで、切除不能転移再発大腸がんの1次治療における標準治療がようやく整理されたことになる。DYNAMIC試験StageII結腸がんは手術のみで80%治癒する対象であり、現在の臨床では臨床病理学的にhigh risk(T4、低分化がん、脈管侵襲など)とされる症例のみに術後補助化学療法が行われている。一方、治癒切除後のctDNA陽性症例はその後80%以上再発するとされており、この対象に対する術後補助化学療法の意義も臨床試験では証明されていない。DYNAMIC試験は治癒切除が行われたStageII症例を対象に、術後4週と7週にctDNAの検査を行い、ctDNA陽性であれば術後補助化学療法をctDNA陰性であれば経過観察を行う試験治療群と、臨床病理学的特徴によって術後補助化学療法の実施を決める標準治療群に2対1に無作為化割り付けを行う第II相試験である3)。主要評価項目は2年無再発生存(RFS)率である。合計455例が無作為化され、解析対象は試験治療群で294例、標準治療群で153例であった。両群ともにhigh riskの症例が40%であったが、実際に術後補助化学療法が行われた症例が試験治療群で15%、標準治療群で28%(p=0.0017)と試験治療群で有意に少なく、オキサリプラチンbasedの術後補助化学療法を行った症例の割合が試験治療群で62%、標準治療群で10%(p<0.0001)と試験治療群で有意に高い結果であった。これは、試験治療群で術後再発のリスクがより高い症例に、より強力な化学療法が実施されたことを意味している。最も再発リスクが高いとされるT4症例でも試験治療群で術後補助化学療法の実施が少なく、ctDNA陽性が従来の臨床病理学的な再発リスクとは独立している可能性が示唆された。主要評価項目である2年RFS率は、試験治療群で93.5%、標準治療群で92.4%と両群の差は+1.1%(95%CI:-4.1~6.2%)と信頼区間の下限が事前に設定した-8.5%を下回っており、試験治療群の非劣性が確認された。サブグループ解析では、T4症例における試験治療群の再発が少ない(HR:1.88)結果であった。試験治療群におけるctDNA陽性・陰性症例の比較では、2年RFS率がctDNA陽性群で86.4%、陰性群で94.7%(HR:1.83)と差が認められた一方で、ctDNAと臨床病理学的なhigh risk/low riskを組み合わせると、ctDNA陰性かつlow riskとctDNA陽性でHRが3.69、ctDNAとT stageを組み合わせると、ctDNA陰性かつT3とctDNA陽性でHRが2.62と、ctDNAと従来の臨床病理学的なriskを組み合わせることでさらに精度の高い再発予測が可能である可能性が示された。本試験により、StageII症例においてctDNA陽性・陰性によって術後補助化学療法の実施を決めることにより、術後補助化学療法の対象を減らしても治療成績が劣らないことが示された。一方でctDNA陽性症例に術後補助化学療法を行う意義、ctDNA陰性に術後補助化学療法を行わない意義はまだ検証されておらず、今後の前向き試験による検証結果が待たれる。ミスマッチ修復異常を認める(dMMR/MSI-H)直腸がんに対する抗PD-1抗体薬の有効性切除不能転移再発のdMMR/MSI-H大腸がんに対して抗PD-1抗体薬のペムブロリズマブがすでに1次治療の第1選択として確立しており4)、いくつかの少数例の検討では切除可能なdMMR/MSI-H大腸がんにも抗PD-1抗体薬の有効性が報告されている5)。局所進行直腸がんに対する標準治療は化学療法、放射線療法、手術の併用であるが、術後の直腸機能の低下が大きな問題であり、化学療法、放射線療法で完全奏効(cCR)に至った症例には、手術を行わず経過を見ていくWatch and Wait(W&W)が普及しつつある。dMMR/MSI-H直腸がんは直腸がんの5~10%(本邦の報告では2%程度)に認められる、まれな対象であるが、今回MSKCCが行っているStageII/IIIのdMMR/MSI-H直腸がんに対する抗PD-1抗体薬の有効性を見る第II相試験の結果が、試験の途中で報告された。試験治療として抗PD-1抗体薬であるdostarlimabを6ヵ月行った後に、画像と内視鏡でcCRと判定された症例にはW&Wを行い、遺残が認められた症例には化学放射線療法を実施し、それでも遺残がある症例には救済手術を行う計画であった。目標症例数は30例であったが、14例まで登録が行われ、全例が6ヵ月のdostarlimabでcCRと判定された。観察期間中央値は6.8ヵ月と短いが、現時点で再増大を認める症例は認めなかった6)。長期的な観察を行わなければPD-1抗体薬のみで治癒に至るかの結論は出ないが、臓器横断的にdMMR/MSI-H固形がんに検討すべき画期的な結果であり、発表と同時にNew England Journal of Medicineにpublicationされた。おわりに食道がん、胃がん、dMMR/MSI-H大腸がんの1次治療におけるICIの有効性が大規模臨床試験で検証され、標準治療としてすでに実臨床に組み込まれている。今後は、周術期治療における有効性の検証結果が報告されてくるものと思われ、またDYNAMIC試験のようなctDNAを用いた術後再発モニタリングは、大腸がんのみならず固形がん全般で主流になってくるものと考える。また、胃がんのような固形がんに対してCAR T細胞療法の有効性が示されるなど次の治療開発が進捗する兆しが認められ、今後の報告に期待したい。1)Arnold D, et al. Ann Oncol. 2017;28:1713-1729.2)Heinemann V, et al. Lancet Oncol. 2014;15:1065-1075.3)Tie J, et al. N Engl J Med. 2022 Jun 4. [Epub ahead of print]4)Andre T, et al. N Engl J Med. 2020;383:2207-2218.5)Chalabi M, et al. Nat Med. 2020;26:566-576.6)Cercek A, et al. N Engl J Med. 2022 Jun 5. [Epub ahead of print]

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2剤以上のTKI治療歴のある慢性期CML、asciminibの96週時点における効果(ASCEMBL)/ASCO2022

 2剤以上のTKI治療歴のある慢性期慢性骨髄性白血病(CML-CP)患者に対して、BCR-ABL特異的アロステリック阻害薬であるasciminibの効果や忍容性は、2年を超えても持続することが示された。米国・Georgia Cancer CenterのJorge E. Cortes氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。 2剤以上のTKI治療歴を有するCML-CP患者に対するasciminibの投与は、ボスチニブに比べて24週時点での分子遺伝学的大奏効(MMR)率が高いことが、オープンラベルの無作為化第III相ASCEMBL試験によって報告されている。今回は、重要な副次評価項目として設定されていた96週時点の結果について評価した。・対象:2剤以上のTKIによる治療歴を有するCML-CP患者(233例)・試験群:asciminib 40mg✕2/日を投与(157例)・対照群:ボスチニブ 500mg/日を投与(76例)・評価項目:[主要評価項目]24週時点におけるMMR率[重要な副次評価項目]96週時点におけるMMR率 主な結果は以下のとおり。・観察期間中央値2.3年の時点で、試験群の84例(53.5%)と対照群の15例(19.7%)で服薬が継続していた。服薬期間の中央値は試験群で23.7ヵ月、対照群では7.0ヵ月であり、試験群の7.0%、対照群の25.0%は有害事象(AE)により服薬中止となっていた。・96週時点のMMR率は試験群が37.6%、対照群が15.8%であり、両群間の差は21.7%で、試験群は対照群の2倍以上のMMR率を達成していた。・試験群と対照群のMMR率を経時的にみると、24週時点では25.5%と13.2%(差は12.2%)、48週時点では29.3%と13.2%(差は16.1%)であり、時間の経過に伴い試験群のMMR率は上昇し、対照群との差も広がっていた。・いずれのサブグループで解析しても、も96週時点のMMR率は試験群で高かった。・96週時点でBCR-ABL1ISが1%以下だった患者は、試験群で45.1%、対照群では19.4%であった。

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NSCLC1次治療でのLAG-3タンパク+ペムブロリズマブの効果(TACTI-002)/ASCO2022

 LAG-3タンパクeftilagimod alpha(efti)とペムブロリズマブとの併用は、PD-L1の発現状態にかかわらず非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療に有効である可能性が示された。スペイン・Vall d’Hebron Institute of OncologyのEnriqueta Felip氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。 eftiは、MHCクラスII分子のサブセットに結合して抗原提示細胞(APC)の活性化とCD8T細胞の活性化を仲介する可溶性LAG-3タンパクで、抗PD-1抗体薬とは異なる免疫チェックポイント阻害薬として注目されている。eftiの併用によるAPCの刺激とT細胞の活性化は、抗PD-1抗体薬の単独療法よりも強い抗腫瘍効果をもたらす可能性がある。そこで、NSCLC患者を対象にeftiとペムブロリズマブとの併用効果について評価する第II相試験(TACTI-002)が現在進行している。今回は、同試験におけるPD-L1の発現状態を問わないコホート集団の結果から、両薬剤の併用効果について評価した。・対象:PD-L1 の発現状態を問わない進行 NSCLC患者(114例)・方法:efti 30mg 2週ごと+ペムブロリズマブ200mg 3週ごと8サイクル→両剤を3週ごと9サイクル→ペムブロリズマブ3週ごと16サイクル・評価項目: [主要評価項目]iRECISTに基づく奏効率(ORR) [副次評価項目]RECIST v1.1に基づくORR、病勢コントロール率(DCR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は67歳、男性74%、95%喫煙歴あり、PD-L1陽性率(TPS)1%未満は32.5%、1~49%が35.1%、70%超が27.2%であった。・iRECISTに基づくORRは38.6%であった。すべてのPD-L1サブグループで効果がみられ、TPS 50%以上のORRは52.6%であった。・RECIST v1.1に基づくORRは37.7%で、DCRは71.9%であった。・11例(9.6%)の患者が有害事象のために治療を中止していた。

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進行腎細胞がんに対するニボルマブ+イピリムマブ併用療法の効果はQOLと関連(CheckMate 214)/ASCO2022

 進行腎細胞がんに対するニボルマブ+イピリムマブの併用療法(Nivo-Ipi)の生存に及ぼす効果と健康関連QOL(HRQoL)の関連が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)において米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのRobert J. Motzer氏より報告された。 これはNivo-Ipiとスニチニブを比較した国際共同の第III相CheckMate 214試験の結果で、過去にNivo-Ipiの無増悪生存期間(PFS)や全生存期間(OS)の有意な延長効果が報告されている。今回はそれらとHRQoLの相関をみた報告である。・対象:未治療の進行性の淡明細胞型腎細胞がん症例(mRCC)・試験群:ニボルマブ+イピリムマブ3週ごと4回→ニボルマブ2週ごと(NivoIpi群 425例)・対照群:スニチニブ4週連日投与2週休薬(Suni群 422例)・評価項目:[主要評価項目] IMDC予後リスクでの中/高リスク症例におけるOS、PFS、奏効率(RR)[副次評価項目] 全登録症例におけるOS、PFS、RR[探索的評価項目] 治療前のHRQoLとPFSおよびOSとの関連性、試験中のHRQoL変化とPFS、OSとの関連性 主な結果は以下のとおり。・登録症例の年齢中央値は61歳で中リスクが79%、高リスクが21%だった。・治療前のHRQoLのスコアが高い(状態が良い)症例ほど、OSが有意に延長した。ハザード比(HR)0.80(95%信頼区間[CI]:0.76~0.84)、p<0.0001であった。・治療中のHRQoLの改善がみられた症例ほど、OSが有意に延長した。HRは0.65(95%CI:0.60~0.71)、p<0.0001であった。OSの改善については、治療前のHRQoLスコアより、治療中のスコア改善の方が、相関が強かった。・PFSについても同様に、治療前のHRQoLのスコアが高いほど、または治療中のHRQoLの改善がみられるほど、PFSが有意に延長した。それぞれ、HR0.89、p<0.0001と、HR0.84、p<0.0001であった。・さらに、HRQoLのスコアの改善または維持があったグループ(改善群)と、悪化したグループ(悪化群)に分けOSの解析を実施したところ、改善群のOS中央値は67.8ヵ月で、悪化群では32.0ヵ月、HRは0.48(95%CI:0.39~0.59)、p<0.0001と改善群で有意にOS良好であった。このOSの延長については、Suni群(HR:0.57)に比べ、NivoIpi群(HR:0.39)でより顕著であった。

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抗PD-1抗体sintilimab+化学療法のNSCLC術前補助療法、2サイクル対3サイクル/ASCO2022

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対して、抗PD-L1抗体薬sintilimabと化学療法による術前補助療法は、2サイクルよりも3サイクルでより高い病理学的奏効(MPR)率を示し、サブタイプ別ではとくに扁平上皮がんで良好なMPR率が得られた。無作為化単施設2群第II相比較試験の結果として、中国Zhejiang大学のFuming Qiu氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。 免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用による術前補助療法は、切除可能なNSCLC患者に対して有望な治療選択肢となっている。しかし、術前補助療法の最適な期間は明らかではなく、臨床試験では2~4サイクルで実施されていることが多い。 一方、sintilimab単剤の術前投与は良好なMPR率が報告されている。同試験では、切除可能なNSCLC患者を対象に、sintilimabと化学療法による術前補助療法の効果を2サイクルと3サイクルで比較した。・対象:未治療のStageIB~IIIA NSCLC患者(ECOG PS 0~1)60例・治療法:手術前にsintilimab+化学療法(扁平上皮がんカルボプラチン+nab-パクリタキセル、非扁平上皮がん:カルボプラチン+ペメトレキセド)3週間ごとに2サイクル行う群と3サイクル行う群に無作為に割り付け。術前補助療法終了から4週間以内に手術を施行・評価項目:[主要評価項目]MPR[副次評価項目]病理学的完全奏効(pCR)、奏効率(ORR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・年齢中央値は64.5歳、StageIB~IIBが46.7%でIIIAが53.3%、PD-L1(TPS)は1%未満が48.3%、1%以上が51.7%であった。・MPR率は3サイクル群41.4%、2サイクル群に26.9%で、3サイクル群で傾向を示した(p=0.260)。pCR率はそれぞれ24.1%、19.2%であった(p=0.660)。・ORRは3サイクル群55.2%、2サイクル群50.0%であった(p=0.701)。・組織形別にみると、非扁平上皮がんに比べて扁平上皮がんでMPR率が有意に高かった(51.6% vs.12.5%、p=0.002)。・扁平上皮がんにおけるMPR率は3サイクル群60.0%、2サイクル群43.8%であった(p=0.366)。・両群間ともに安全性に問題はなく、高い忍容性が示された。

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ミスマッチ修復機能欠損の局所進行直腸がん、PD-1阻害薬単独で治癒?/NEJM

 ミスマッチ修復機能欠損を有する局所進行直腸がんは、PD-1阻害薬のみの治療で治癒する可能性が高いことが、米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのAndrea Cercek氏らが行った、前向き第II相試験の結果、示された。局所進行直腸がんは、術前化学療法と放射線療法、その後の手術療法が標準治療となっているが、ミスマッチ修復機能欠損を有する局所進行直腸がんでは、標準的な化学療法では十分な奏効を得られないことが示されていた。一方で、転移を有する患者および治療抵抗性の患者における免疫チェックポイント阻害薬のみの客観的奏効率は33~55%と、第一選択薬として非常に有効であることが報告されており、研究グループはこれらの知見に基づき、PD-1阻害薬の単剤投与が、ミスマッチ修復機能欠損の局所進行直腸がんに有益であるとの仮説を立て、dostarlimabによる術前化学療法の奏効率を調べる試験を行った。NEJM誌オンライン版2022年6月5日号掲載の報告。dostarlimabを単独投与しCRを評価 試験は、ミスマッチ修復機能欠損を有するStageIIまたはIIIの直腸腺がんの患者を対象とし、抗PD-1モノクローナル抗体dostarlimab単剤を3週ごと6ヵ月間(9サイクル)投与した。 患者は本治療後に、標準化学放射線療法と手術療法が行われたが、dostarlimab療法で臨床的完全奏効(cCR)を示した患者には、その後の治療は行われなかった。 主要評価項目は、dostarlimab療法後12ヵ月の持続的cCR、または化学放射線療法の有無を問わないdostarlimab療法後の病理学的CR、および化学放射線療法の有無を問わないdostarlimab術前療法の全奏効(OR)であった。治療完遂12例全例でCRを示し、フォローアップ25ヵ月時点で進行/再発例なし 計16例の患者が登録された。年齢中央値は54歳(範囲:26~78)、女性62%、臨床Stageは15例がIII、腫瘍StageはT3が9例(56%)、T4が3例(19%)で、腫瘍遺伝子変異量は37.9~103.0/Mb(平均60.0)と高値であった。 このうち12例がdostarlimab療法を完遂し、少なくとも6ヵ月時点のフォローアップを受けた。 全12例がCRを示し(100%、95%信頼区間[CI]:74~100)、MRI、18F-FDG PET、内視鏡評価、直腸指診または生検で、腫瘍は認められなかった。 本報告時点で、化学放射線療法または手術を受けた患者はおらず、追跡期間中(範囲:6~25ヵ月)に進行または再発が報告された症例はなかった。 Grade3以上の有害事象の報告はなかった。 なお、今回の試験の結果を踏まえて著者は、「さらなる追跡を行い、奏効の期間を評価する必要がある」と述べている。

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ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法のNCSLC1次治療、3年フォローアップ(CheckMate 9LA) /ASCO2022

 非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療、ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法(NIVO+IPI+Chemo)の無作為化第III相CheckMate9LA試験の3年間の追跡で、同レジメンの生存ベネフィットが引き続き観察されている。スペイン・Universidad Complutense de MadridのLuis G. Paz-Ares氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で、解析結果を発表した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間は最低36.1ヵ月であった(データカットオフ2022年2月15日)・3年全生存(OS)率はNIVO+IPI+Chemo群27%、化学療法(Chemo)群19%であった(HR:0.74、95%CI:0.62~0.87)。 ・PD-L1発現別の3年OS率は、PD-L1<1%では25%対15%(HR:0.67)、PD-L1≧1%では28%対19%(HR:0.74)、PD-L1 1~49%では26%対15%(HR:0.70)、PD-L1≧50%では33%対24%(HR:0.75)、といずれもNIVO+IPI+Chemo群で良好であった。・全集団の3年無増悪生存率はNIVO+IPI+Chemo群13%、Chemo群5%であった。・全集団の奏効率はNIVO+IPI+Chemo群38%、Chemo群25%であった。・全集団の奏効期間中央値はNIVO+IPI+Chemo群12.4ヵ月、Chemo群5.6ヵ月であった。・探索的研究における遺伝子変異とOS解析の結果、KRAS、TP53、STK11、KEAP1いずれもNIVO+IPI+Chemo群で良好な傾向だったが、遺伝子異常による違いは見られなかった。・3年追跡でも新たな安全性シグナルは確認されなかった。 発表者のPaz-Ares氏は、この結果は転移を有するNSCLCの1次治療の選択肢としてニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法を支持するものだと述べている。

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NSCLC1次治療のNIVO+ IPI、5年生存は24%(CheckMate 227)/ASCO2022

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療としてのニボルマブとイピリムマブ(NIVO+IPI)の併用療法は、PD-L1の発現状態を問わず、化学療法と比較して長期的な生存効果を示すことがCheckMate 227試験の5年間追跡結果から示された。この結果は米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)において、米国・Johns Hopkins Kimmel Cancer CenterのJulie R. Brahmer氏が発表した。CheckMate 227試験の5年追跡結果でNIVO+IPI群でのOS改善が継続 CheckMate 227試験の主な5年間追跡結果は以下のとおり。・最小フォローアップは61.3ヵ月であった(データカットオフ2022年2月15日)。・PD-L1≧1%は1189例、PD-L1

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F1CDx 、非小細胞肺がんと悪性黒色腫の4薬剤のコンパニオン診断追加承認/中外

 中外製薬は2022年6月3日、遺伝子変異解析プログラム「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」について、チロシンキナーゼ阻害薬ダコミチニブ(製品名:ビジンプロ)およびブリグチニブ(製品名:アルンブリグ)の非小細胞肺がん、ならびにBRAF阻害薬エンコラフェニブ(製品名:ビラフトビ)およびMEK阻害薬ビニメチニブ(製品名:メクトビ)の悪性黒色腫の適応に対するコンパニオン診断として、6月2日に厚生労働省より承認を取得した。 下線部が今回の追加適応・活性型EGFR遺伝子変異非小細胞肺がん:アファチニブマレイン酸塩、エルロチニブ塩酸塩、ゲフィチニブ、オシメルチニブメシル酸塩、ダコミチニブ水和物・EGFRエクソン20 T790M 変異:オシメルチニブメシル酸塩・ALK融合遺伝子:アレクチニブ塩酸塩、クリゾチニブ、セリチニブ、ブリグチニブ・ROS1融合遺伝子:エヌトレクチニブ・METエクソン14スキッピング変異:カプマチニブ塩酸塩水和物・BRAF V600Eおよび V600K変異:悪性黒色腫 ダブラフェニブメシル酸塩、トラメチニブジメチルスルホキシド付加物、ベムラフェニブ、エンコラフェニブ、ビニメチニブ・HER2遺伝子増幅陽性乳がん:トラスツズマブ・KRAS/NRAS野生型結腸・直腸がん:セツキシマブ、パニツムマブ・高頻度マイクロサテライト不安定性結腸・直腸がん:ニボルマブ・高頻度マイクロサテライト不安定性固形がん:ペムブロリズマブ・腫瘍遺伝子変異量高スコア固形がん:ペムブロリズマブ・NTRK1/2/3融合遺伝子固形がん:エヌトレクチニブ、ラロトレクチニブ硫酸塩・BRCA1/2遺伝子変異卵巣がん:オラパリブ・BRCA1/2遺伝子変異 前立腺がん:オラパリブ・FGFR2融合遺伝子 胆道がん:ペミガチニブ

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食道がんに対するニボルマブ+イピリムマブとニボルマブ+化学療法が承認/小野薬品・BMS

 小野薬品とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2022年5月26日、ニボルマブとイピリムマブについて、根治切除不能な進行・再発の食道がんを対象とした併用療法に係る国内製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表。 また小野薬品は、ニボルマブについて、同適応症に対してニボルマブと化学療法との併用療法に係る一部変更承認も取得した。 今回の承認は、治療歴のない切除不能な進行性、再発または転移のある食道扁平上皮がん患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法およびニボルマブと化学療法の併用療法を、化学療法と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第III相試験であるCheckMate-648試験の結果に基づいている。 同試験において、あらかじめ計画された中間解析で、ニボルマブによる上記2種類の併用療法が、化学療法と比較して、PD-L1発現率が1%以上の患者および全無作為化患者集団において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある全生存期間(OS)の延長を示した。本試験におけるニボルマブとイピリムマブの併用療法およびニボルマブと化学療法の併用療法の安全性プロファイルは、これまでに報告されている各薬剤のものと一貫していた。

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HR+/HER2-乳がんへの術前ニボルマブ+パルボシクリブ+アナストロゾール、安全性データを発表(CheckMate 7A8)/ESMO BREAST 2022

 ホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2−)乳がん患者に対する術前療法としての、ニボルマブ+パルボシクリブ+アナストロゾールの3剤併用は、主に肝毒性による安全性上の懸念から組み入れが停止され、無作為化試験には進まないことが報告された。前臨床試験では免疫チェックポイント阻害薬とCDK4/6阻害薬の相乗効果の可能性が示唆されていた。米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で第Ib/II相CheckMate 7A8試験の安全性確認期間における安全性データおよび予備的有効性データを報告した。[CheckMate 7A8試験]・対象:新たにHR+/HER2−乳がんと診断された閉経後女性あるいは男性(腫瘍径≧2cm、ECOG PS 0~1)・試験群1(9例):ニボルマブ480mgを4週間間隔で静脈内投与+パルボシクリブ125mgを1日1回経口投与(3週間)後1週間休薬+アナストロゾール1mgを1日1回経口投与×5サイクル・試験群2(12例):ニボルマブ480mgを4週間間隔で静脈内投与+パルボシクリブ100mgを1日1回経口投与(3週間)後1週間休薬+アナストロゾール1mgを1日1回経口投与×5サイクル・評価項目:[主要評価項目]用量制限毒性(DLT:治療開始後最初の4週間に発生した治療に起因する有害事象)[副次評価項目]安全性、病理学的完全奏効(pCR)、奏効率(ORR) 主な結果は以下のとおり。・主なGrade≧3の治療関連AE(TRAE)は、試験群1ではALT上昇(33.3%)、AST上昇(33.3%)、好中球減少症(22.2%)、白血球数減少(22.2%)、試験群2では好中球数減少(41.7%)、好中球減少症(16.7%)だった。両群で治療関連の死亡は報告されていない。・DLTは、試験群1では9例中2例で報告され(22.2%)、1例は肝炎、もう1例は発熱性好中球減少症だった。試験群2では報告されていない。・両群の全21例中9例で毒性により治療が中止された。6例(29%)はGrade≧3の肝臓のAE(ALT上昇とAST上昇:2例、ALT上昇:1例、トランスアミナーゼ上昇:2例、高トランスアミナーゼ血症:1例)、Grade≧3の発疹とGrade2の免疫介在性肺障害、Grade1の肺臓炎、Grade3の発熱性好中球減少症が1例ずつだった。・pCRが得られたのは試験群2の1例で、全体としてpCR率は4.8%。CRは1例、PRは14例で、放射線画像評価によるORRは、71.4%だった。 Tolaney氏は、今回の結果と文献上の他データに基づくと、抗PD-1薬とCDK4/6阻害薬の併用は、肝毒性および肺毒性のリスク増加のため、安全な使用は難しい可能性があるとまとめている。

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免疫チェックポイント阻害薬、放射線治療の心毒性、どう回避する?【見落とさない!がんの心毒性】第11回

がん治療は大きく進歩しており、がんの生物学的特性が明らかになるにつれ、疾患の臓器特性を超えた臓器横断的治療が開発され承認されるようになりました。今回は前回の予告通り、臓器横断的治療における心毒性についてのアンケート結果をお示しいたします。ここでは、免疫チェックポイント阻害薬と放射線療法に焦点を当てます。さらに、がんゲノム医療の進歩により遺伝子変異の解析が進み、それに伴い開発されたTRK阻害薬(NTRK(neurotrophic receptor tyrosine kinase)融合遺伝子陽性固形がんに投与される)による心毒性や、同じ薬剤でも投与される臓器別に異なる副作用が発生するなど新たな問題が出現しているようです。これからのがん治療は、ゲノム関連も含めた病院全体を巻き込んだ臓器横断的な診療科の協力が必要となっています。免疫チェックポイント阻害薬における心毒性第9回、第10回でお届けしてきた読者アンケートからも見えてきたのは、多くの読者においてやはり免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による心毒性の影響に関心があることでした。このICIに関する点については第5回「免疫チェックポイント阻害薬:“予後に影響大”の心筋炎を防ぐには?」(塩山 渉氏、筆者)で解説しました。ICIは臓器横断的に発症する悪性腫瘍に適応が拡大することで、がん治療に大きな変化をもたらしました。その一方で、全身に及ぶ免疫関連副作用(irAE)が大きな問題となっています。irAEに対応するためには、腫瘍科医のみならず、免疫専門医、内分泌内科医、神経内科医、循環器科医、さらには呼吸器内科医や皮膚科医など幅広い医療スタッフの参加が必要です。irAE症例によっては救急治療医の参加も必要ですね!がん免疫療法において、ICI療法の中心は血管新生阻害薬や放射線療法を併用する複合免疫療法へ移行しており、心毒性においてirAEに併用療法による副作用が加わりその管理がより複雑化しています。しかし複合免疫療法は、がん免疫における血管新生阻害因子の作用が解明したことから生み出されており、血管・がん・免疫に共通点があるところなどは腫瘍循環器医として非常に興味深く感じています。放射線関連心血管合併症(RACD:Radiation Associated Cardiovascular diseases)第7回では「進化する放射性治療に取り残されてる?new RTの心毒性対策とは」(志賀 太郎氏)について解説しました。免疫療法と同様に臓器横断的に用いられる放射線治療は、その有効性から使用頻度が急速に増加している反面、やはりRACDが大きな問題となりつつあります。とくに遅発性に出現することから、その病態や対応に関して多くの腫瘍科医や循環器科医に十分理解されているとは言えない病態でした。このような背景の元で2021年9月に開催された第4回日本腫瘍循環器学会学術集会で、このRACDに関するシンポジウムが日本心血管インターベンション治療学会との共催で開催され、とても好評でした。今後は、放射線治療医の先生方が主体となり日本放射線腫瘍学会でも日本腫瘍循環器学会との共催プログラムの開催が決定しています。課題としては、放射線治療後晩期障害に対するフォローアップ診療の構築が成されていない点でしょうか。学会間交流をきっかけに異業種間連携の拡がりを期待し、将来的には連携網の発達により実地医家への連携発展を期待します。また、実地医家の方との連携が深まる事で、放射線治療後晩期障害のすくい上げに繋がる「放射線治療後の遠隔期・長期的フォローアップ」の仕組み作りに結び付く事を期待します。循環器医(心血管インターベンション専門医)における放射線障害と放射線治療医の放射線障害の概念は微妙に異なっていたようです。さらに、がん治療において放射線療法は腫瘍科医ではなく放射線治療医が行うことから、両者の間にも微妙な隙間があったかもしれません。その一方で、小児・AYA世代がんサバイバーにおける放射線化学療法による晩期合併症は、心毒性のみならず内分泌毒性、神経毒性、そして二次発生がんなど多くの問題点を有しています。今後は、腫瘍循環器医は急性期・慢性期そして晩期心毒性などを通じて腫瘍科医、放射線治療科、そして小児科の間をつなぐ役割を果たすことが期待されています。今回のアンケート結果(前編、中編含む)でご紹介した内容以外にもたくさんのご意見をいただき誠にありがとうございました。紙面の関係から一部のご紹介となりました。がんと循環器における関係は、2017年の日本腫瘍循環器学会設立を機に、国や学会レベルでも学際領域の連携が進み、基礎・臨床・疫学研究への支援が加速しています。今回の企画により、今まで触れることのなかった多くの皆さまにおかれましてOnco-Cardiology(腫瘍循環器学)が身近なものになりましたら幸いです。第二部では、症例編として症例クイズ形式にて臨床で難渋した例など興味ある事柄について解説していく予定です。臨床の現場で毎日がん診療を行っている私どもにとって、総論だけでは語りつくせないたくさんの事柄やさまざまな問題点がございます。そして、同じく第一線で診療をなさっておられる読者の皆さまはさらに多くの疑問をお持ちなのではないでしょうか。読者の皆さまの声、リクエストは以下よりお待ちしております。講師紹介

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食道扁平上皮がんに対する1次治療における新たな抗PD-L1阻害薬sintilimabの有用性(解説:上村直実氏)

 切除不能進行・再発食道扁平上皮がんに対するファーストライン治療は、シスプラチンを中心とした白金製剤と5-FUないしはパクリタキセルの2剤併用化学療法であったが、最近、1次治療から化学療法に免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-L1阻害薬)を加えたレジメンの有用性が次々と報告され、日常診療における治療方針が急激に変化している。すなわち、最近のランダム化比較試験の結果、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、camrelizumab、toripalimabと化学療法の併用群が化学療法単独群と比較して安全性に差を認めない一方、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が有意に延長することが示されている。今回は、すでに報告されている4剤と同様の試験デザインによって、5番目の抗PD-L1阻害薬であるsintilimabの切除不能食道扁平上皮がんに対する同様の有効性がBMJ誌に報告されている。 わが国の臨床現場でも食道学会ガイドラインに記載されるとともに、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)とペムブロリズマブ(同:キイトルーダ)が保険収載され、切除不能食道がんに対する1次治療における有用性が実際の診療において役に立つ体制が整備されつつあると思われる。ただ一方では、これら高価な抗PD-L1阻害薬によるOSの延長期間は3ないしは4ヵ月間であるが、コストパフォーマンスの観点からこの延命期間がコストに適合したものかどうか議論されていることも事実である。 最後に、筆者のコメントでは必ず述べているが、日本における食道がん診療は欧米と異なる保険診療体制の下「がんの早期発見」による死亡率低下に注力しており、内視鏡検査により小さな早期がんを発見し、内視鏡的切除により根治することが可能となっていることを強調したい。

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初のSTAMP阻害薬アシミニブ、忍容性に期待/ノバルティスファーマ

 ノバルティス ファーマは、前治療薬に抵抗性または不耐用の慢性骨髄性白血病(CML)患者に対するSTAMP阻害薬であるアシミニブ塩酸塩(商品名:セムブリックス、以下アシミニブ)が3月に国内承認を受けたことを受け、4月19日にプレスセミナーを行った。セミナーでは、国立がん研究センター東病院 血液腫瘍科の南 陽介氏がCMLの治療戦略とアシミニブへの期待について講演を行った。アシミニブは従来の分子標的薬とは作用機序が異なる 2020年の国内のCML罹患数は約2,000人で10年有病数は約1万2,000人。慢性期から移行期、急性期と進行し、できるだけ早期に白血病細胞の増殖を抑えることが肝要となる。かつては予後の厳しい疾患だったが、20年前に登場した分子標的薬(TKI)により劇的に治療成績が向上した。ただ、治療が長期となるケースが多く、治療抵抗性や不耐容が課題となっている。現在CMLに対して承認されたTKIは5剤でアシミニブは6剤目となる。アシミニブは従来のTKIとは阻害の作用機序が異なり、TKIに抵抗性または不耐容であった患者の選択肢として期待される。 今回のアシミニブの承認は、第2世代TKIであるボスチニブとアシミニブを比較した国際共同第III相検証試験(ASCEMBL試験)の結果に基づいたもの。2つ以上のTKIによる前治療歴を有する成人CML患者を対象とした本試験において、主要評価項目である24週時点の分子遺伝学的大奏効(MMR)率は、アシミニブはボスチニブのほぼ倍(25.48%vs.13.16%、共通リスク差12.2%、95%信頼区間2.19~22.3、p=0.029)となった。Grade3以上の重篤な有害事象はアシミニブ群12.2%、ボスチニブ群21.1%で発生し、治験中止に至った有害事象はアシミニブ群7.1%、ボスチニブ群25%で発生した。最も多く認められた有害事象は、アシミニブ群では血小板減少症(29.5%)および好中球減少症(23.1%)、ボスチニブ群では下痢(71.1%)、悪心(46.1%)などだった。 南氏は「作用機序が異なるアシミニブは、既存TKIで治療効果が低下した患者さんに対しても効果が期待できる。またSTAMP阻害作用はABLキナーゼを選択的に阻害するため、高い忍容性が期待できることも魅力だ」とした。

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