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進行悪性黒色腫、TIL療法でPFSが延長/NEJM

 進行悪性黒色腫の治療において、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を用いた養子免疫細胞療法は、抗細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)抗体であるイピリムマブと比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長させ、病勢進行と死亡のリスクが半減したとの研究結果が、オランダがん研究所(NKI)のMaartje W. Rohaan氏らによって報告された。研究の成果は、NEJM誌2022年12月8日号に掲載された。欧州2施設の無作為化第III相試験 本研究は、進行悪性黒色腫の1次または2次治療におけるTILとイピリムマブの有用性の比較を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2014年9月~2022年3月の期間に、2施設(NKI、デンマーク国立がん免疫療法センター[CCIT-DK])で参加者の登録が行われた(Dutch Cancer Societyなどの助成を受けた)。 対象は、年齢18~75歳、StageIIICまたはIVの切除不能または転移を有する悪性黒色腫の患者であった。被験者は、TILまたはイピリムマブ(3mg/kg[体重]、3週ごと、最大4回、静脈内)の投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 TIL群は、骨髄非破壊的リンパ球除去化学療法(シクロホスファミド+フルダラビン)を施行された後、5×109~2×1011個のTILを1回注入され、次いで高用量インターロイキン-2(60万IU/kg/回、8時間ごと、最大15回)の投与が行われた。 主要評価項目は、PFSであった。PFS、奏効割合が2倍以上に 168例が登録され、TIL群に84例、イピリムマブ群にも84例が割り付けられた。全体の年齢中央値は59歳(範囲26~77)、男性が100例(60%)であった。前治療歴のある患者は89%で、残りの11%は未治療だった。149例(89%)は、全身療法(術後抗PD-1療法が40例[24%]、抗PD-1療法による1次治療が105例[62%])を受けたのち病勢が進行した患者であった。追跡期間中央値は33.0ヵ月。 PFS中央値は、TIL群が7.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.2~13.1)と、イピリムマブ群の3.1ヵ月(3.0~4.3)に比べ有意に延長した(病勢進行と死亡のハザード比[HR]:0.50、95%CI:0.35~0.72、p<0.001)。6ヵ月時のPFS率は、それぞれ52.7%(95%CI:42.9~64.7)および21.4%(14.2~32.2)であった。 客観的奏効の割合は、TIL群が49%(95%CI:38~60)、イピリムマブ群は21%(13~32)であった。このうち、完全奏効がそれぞれ20%および7%、部分奏効は29%および14%であった。 全生存期間(OS)中央値は、TIL群が25.8ヵ月(95%CI:18.2~未到達)、イピリムマブ群は18.9ヵ月(13.8~32.6)であった(死亡のHR:0.83、95%CI:0.54~1.27)。2年OS率は、それぞれ54.3%および44.1%だった。 Grade3以上の治療関連有害事象は、TIL群が全例、イピリムマブ群は57%で発現し、TIL群は主に化学療法関連の骨髄抑制であった。重篤な治療関連有害事象は、それぞれ15%および27%で認められた。TIL群では、前処置としてのリンパ球除去化学療法によるGrade 3以上の好中球数減少が全例で、インターロイキン-2関連の毛細血管漏出症候群(全Grade)が30%で発現した。 著者は、「本試験では、前治療歴のない集団、術後補助療法として抗PD-1療法を受けた集団、1次治療で抗PD-1療法を受けた集団において、無増悪生存期間中央値に大きな差はなかった。これは、TIL療法の1次治療としての可能性を示唆するが、治療法の選択では、患者や疾患の特性(脳転移、血清乳酸脱水素酵素の高値、全身状態不良)、潜在的な毒性などが重要な役割を担う」としている。

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2022年の消化器がん薬物療法の進歩を振り返る!【Oncology主要トピックス2022 消化器がん編】【消化器がんインタビュー】第12回

がんに対する薬物療法の開発は日進月歩の勢いで進んでおり、新たなエビデンスが日々生み出されている。かつて、消化器がんに対する薬物療法は、選択肢やその治療効果が限定的であったが、近年では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が実臨床に導入され、さらには抗体薬物複合体も標準治療に組み込まれるなど、目覚ましい進歩を遂げている。2022年はCheckMate 648試験を皮切りに、消化器がん薬物療法に関する学会発表や論文を含め多くの新知見が報告された印象的な1年であった。本稿ではその中でも実臨床に直結し得るインパクトのあった報告を、がん種ごとにまとめて概説する。がん種ごとのエビデンス1. 食道がん・CheckMate 648試験(Doki Y, et al. N Engl J Med 2022;386:449-462.)CheckMate 648試験は、未治療の根治切除不能な進行・再発食道扁平上皮がんを対象に、シスプラチン+5-FU(CF)療法を対照として、CFとニボルマブ併用療法の優越性、ニボルマブとイピリムマブ併用療法の優越性を検証した国際共同第III相試験である。主要評価項目はPD-L1陽性(TPS≧1)例における全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)と設定された。本試験には970例が登録され、PD-L1陽性例におけるOS中央値はCF療法群が9.1ヵ月、ニボルマブ併用群が15.4ヵ月と優越性(ハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.37~0.80、p

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がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2022、利用者の意見反映

 『がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン』が6年ぶりに改訂された。2016年の初版から分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による治療の知見が増えたことや腎障害にはさまざまな分野の医師が関与することを踏まえ、4学会(日本腎臓学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本腎臓病薬物療法学会)が合同で改訂に携わった。 本書は背景疑問を明確に定義する目的で16の「総説」が新たに記載されている。また、実用性を考慮して全体を「第1章 がん薬物療法対象患者の腎機能評価」(治療前)、「第2章 腎機能障害患者に対するがん薬物療法の適応と投与方法」(治療前)、「第3章 がん薬物療法による腎障害への対策」(治療中)、「第4章 がんサバイバーのCKD治療」(治療後)の4章にまとめている。とくに第4章は今回新たに追加されたが、がんサバイバーの長期予後が改善される中で臨床的意義を考慮したものだ。2022版のクリニカルクエスチョン(CQ)※総説はここでは割愛■第1章 がん薬物療法対象患者の腎機能評価CQ 1 がん患者の腎機能(GFR)評価に推算式を使用することは推奨されるか?CQ 2 シスプラチンなどの抗がん薬によるAKIの早期診断に新規AKIバイオマーカーによる評価は推奨されるか?CQ 3 がん薬物療法前に水腎症を認めた場合、尿管ステント留置または腎瘻造設を行うことは推奨されるか?■第2章 腎機能障害患者に対するがん薬物療法の適応と投与方法CQ 4 透析患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の使用は推奨されるか?CQ 5 腎移植患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の使用は推奨されるか?■第3章 がん薬物療法による腎障害への対策CQ 6 成人におけるシスプラチン投与時の腎機能障害を軽減するために推奨される補液方法は何か?CQ 7 蛋白尿を有する、または既往がある患者において血管新生阻害薬の投与は推奨されるか?CQ 8 抗EGFR抗体薬の投与を受けている患者が低Mg血症を発症した場合、Mgの追加補充は推奨されるか?CQ 9 免疫チェックポイント阻害薬による腎障害の治療に使用するステロイド薬の投与を、腎機能の正常化後に中止することは推奨されるか?CQ 10 免疫チェックポイント阻害薬投与に伴う腎障害が回復した後、再投与は治療として推奨されるか?■第4章 がんサバイバーのCKD治療CQ 11 がんサバイバーの腎性貧血に対するエリスロポエチン刺激薬投与は推奨されるか?アンケート結果で見る、認知度・活用度が低かった3つのCQ 本書を発刊するにあたり、日本腎臓学会、日本がんサポーティブケア学会、日本医療薬学会、日本臨床腫瘍学会、日本癌治療学会の5学会は初版(2016年版)の使用に関する実態調査報告を行っている。回答者は1,466人で、学会別で見ると、日本腎臓学会から264人(アンケート実施時の会員数:約1万人)、日本臨床腫瘍学会から166人(同:9,276人)、日本癌治療学会から107人(同:1万6,838人)、日本医療薬学会から829人(同:1万3,750人)、日本がんサポーティブケア学会から25人(同:約1,000人)、そのほかの学会より74人の回答が得られた。 なかでも、認知度が低かった3つを以下に挙げる。これらは腎臓病学領域での認知度はそれぞれ、63.1%、69.7%、62.0%であったのに対し、薬学領域での認知度はそれぞれ52.9%、51.9%、39.5%。腫瘍学領域での認知度はそれぞれ49.5%、56.5%、43.2%と比較的低値に留まった。(1)CQ2:がん患者AKI(急性腎障害)のバイオマーカー(2)CQ14:CDDP(シスプラチン)直後の透析(3)CQ16:抗がん剤TMA(血栓性微小血管症)に対するPE(血漿交換) 認知度・活用度の低いCQが存在する理由の1つとして、「CQの汎用性の高さに比して、実用性に関しては当時十分に普及していなかった」と可能性を挙げおり、たとえば「CQ2は認知度55.2%、活用度59.8%とともに低値である。抗がん薬によるAKI予測は汎用性の高いテーマではあるが、2016年のガイドライン時点では、代表的なバイオマーカーである尿NGAL、尿KIM-1、NephroCheck(R)[尿中TIMP-2とIGFBP7の濃度の積]が保険適用外であった。しかし、尿NGAL(好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン)が2017年2月1日に保険適用となり、バイオマーカーの実用性が認識されてきた。加えて、エビデンスを評価できる論文も増加してきたことから、今回あらためてシステマティックレビューを行い、positive clinical utility index(CUI)が0.782でgood(0.64以上0.81未満)、negative CUIも0.915でexcellent(0.81以上)と高い評価が得られたことを、2022年のガイドラインで記載している」としている。 本ガイドラインに対する要望として最も多かったのは「腎機能低下時の抗がん薬の用量調整に関して具体的に記載してほしい」という意見であったそうで、「本調査結果を今後のガイドライン改訂に活かし、より実用的なガイドラインとして発展させていくことが重要」としている。

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食道癌診療ガイドライン2022改訂、日本発エビデンスで治療戦略が大きく変更

 2022年9月に「食道癌診療ガイドライン」が刊行された。2002年に「食道癌治療ガイドライン」が発刊されてから20年、前版から5年振りの改訂となる。 10月に行われた日本癌治療学会の北川 雄光氏(慶應義塾大学・食道癌治療ガイドライン検討委員会委員長)の講演「食道癌集学的治療のこれまで、これから」、浜本 康夫氏(慶應義塾大学・腫瘍センター)による教育講演「食道扁平上皮がんに対する薬物療法」を参考として、食道癌診療ガイドライン2022年版の主な変更点をまとめた。食道癌診療ガイドライン2022年版で大きく変更のあったCQ 食道がんは他の消化器がんと比べて薬物療法において使用できる薬剤の種類が限られており、近年まで切除可能症例については外科手術を基軸として、化学療法や放射線療法を用いた周術期治療が主に術前治療として行われてきた。しかし、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が登場し、この3年ほどのあいだに大幅に治療戦略幅が広がってきた。そこには日本発のエビデンスも大きな役割を果たしている。今回の食道癌診療ガイドライン2022年版の改訂において、とくに大きく変更のあったクリニカルクエスチョン(CQ)は以下のとおり。CQ8:cStageII、III食道癌に対して手術療法を中心とした治療を行う場合、術前化学療法、術前化学放射線療法のどちらを推奨するか?→ cStageII、III食道癌に対して手術療法を中心とした治療を行う場合、DCF3剤併用術前療法を強く推奨する。 切除可能局所進行食道がんの術前療法としては、日本ではシスプラチン+5-FU(CF療法)が長らく標準療法であったが、欧米においては化学放射線療法が標準療法となっている。日本と海外では術式や組織型が異なるため、海外の臨床試験の結果をそのまま受け入れるのは難しいと考えられていた。一方、CF療法にドセタキセルを加えたDCF療法が頭頸部がんなどで有望な効果を示しており、術前療法としてのCF vs. DCF vs. CF+放射線(RT)療法の3つを比較したJCOG1109(NExT)試験が計画され、今年初めに結果が報告された。 NExT試験の結果は、CF群の3年生存率62.6%に対してDCF群は72.1%と10%近く上回り、CF群とCF+RT群には統計学的な有意差は示されない、というものだった。徹底的な郭清を行う日本の外科手術においては術前の強い化学療法が有効性を示す、という治療戦略の正しさを世界に示す結果となった。DCF群では遠隔転移が少ない一方で、CF+RT群では他病死が多く、放射線治療による晩期障害が他病死につながっている可能性が指摘されている。CQ9:cStageII、III食道癌に術前補助療法+手術療法を行った場合、術後補助療法を推奨するか?→ 1)cStageII、IIIの食道癌に対して、術前化学放射線療法および手術を行い、根治切除が得られるも病理学的完全奏効が得られない場合、組織型や腫瘍細胞におけるPD-L1の発現によらず、術後ニボルマブ療法を行うことを強く推奨する。→ 2)cStageII、IIIの食道癌に対して、術前化学療法および手術を行い、根治切除が得られるも病理学的完全奏効が得られない場合、術後ニボルマブ療法については、現時点で推奨を決定することができない。 1)は2020年に発表されたCheckMate-577試験の結果を受けたもの。術前化学放射線療法後に切除を行った食道がんまたは胃食道接合部がんに対するニボルマブの効果を見た試験であり、主要評価項目である無病生存期間(DCF)はニボルマブ群で22.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.6~34.0)、プラセボ群で11.0ヵ月(95%CI:8.3~14.3)と、ニボルマブ群の優越性が示された。ニボルマブの有効性は組織型にも拠らないという結果だった。 2)の術前化学療法+術後のニボルマブ投与の有用性は準拠するエビデンスがない状態で、日本の標準療法が術前DCF療法であることを考えると、ここは早急にエビデンスの確立が求められる部分だ。CQ15:切除不能進行・再発食道癌に対して一次治療として化学療法は何を推奨するか?→ 1)切除不能進行・再発食道癌に対して一次治療として、ペムブロリズマブ+シスプラチン+5-FU療法を行うことを強く推奨する。→ 2)切除不能進行・再発食道癌に対して一次治療として、ニボルマブ+シスプラチン+5-FU療法もしくはニボルマブ+イピリムマブ療法を行うことを強く推奨するが、患者の全身状態および、PD-L1発現状況(TPS)、忍容性等を考慮する。 近年、二次化学療法においてICIの有用性が示され、一次療法においても検討が行われている。1)はKEYNOTE-590試験の結果を受けたもので、749例を対象に初回治療としてのペムブロリズマブの有効性を見た試験おいて、扁平上皮がんかつCPS>10の患者集団における全生存期間(OS)中央値は、ペムブロリズマブ群13.9ヵ月(95%CI:11.1~17.7)に対して、プラセボ群8.8ヵ月(95%CI:7.8~10.5)であり、ペムブロリズマブ併用群の優越性が示された。 2)はCheckMate-648試験の結果を受けたもので、登録患者970例はニボルマブ+化学療法群、ニボルマブ+イピリムマブ群、化学療法単独群に1:1:1で割り付けられた。ニボルマブ+化学療法群の無増悪生存期間(PFS)中央値は、TPS≧1集団において6.9ヵ月(95%CI:5.7~8.3)であり、化学療法単独群の4.4ヵ月(95%CI:2.9~5.8)を有意に上回ったが、全ランダム化集団においては有意差を認めなかった。 食道がんも他のがん種と同様に、外科手術中心の時代から化学療法に加えて放射線療法やICIも組み合わせた集学的・個別化医療の時代に突入しており、今後はロボット支援手術によるさらなる低侵襲化や合併症の軽減によって長期予後を狙うことなどに焦点が当てられている。また、食道癌診療ガイドライン2022版の改訂にあわせ、『食道癌取扱い規約』も12版に改訂されている。『食道癌診療ガイドライン 2022年版 第5版』編集:日本食道学会定価:3,520円(税込)発行:2022年9月B5判・176頁・図数:19枚・カラー図数:13枚

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再発リスクの高い腎細胞がん術後患者においてアテゾリズマブ補助療法は有効性を見出せず(解説:宮嶋哲氏)

 転移性腎細胞がんに対する標準治療は、免疫チェックポイント阻害薬やチロシンキナーゼ阻害薬の併用療法である。抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブもまた、その有効性が期待される薬剤であるが、本研究は28ヵ国215施設において、外科的切除後に再発リスクの高い腎細胞がん患者を対象に、アテゾリズマブ補助療法の有効性を検討した第III相無作為化プラセボ対照二重盲検試験である(IMmotion010試験)。主要評価項目はDFS。 2017年から約2年に778症例が登録され、観察期間中央値はアテゾリズマブ群57.2ヵ月、プラセボ群49.5ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.75~1.15、p=0.50)。Grade3~4の有害事象のほとんどは高血圧、高血糖および下痢であった。アテゾリズマブ群の18%とプラセボ群の12%に重篤な有害事象が発生したが、治療に伴う死亡例は認めなかった。3年DFSでは、アテゾリズマブ群65.0%でプラセボ群62.7%と有意差を認めなかった。OSについても時期尚早とはいえ、アテゾリズマブによる死亡リスク低減を観察するに至らなかった。 KEYNOTE-564試験では抗PD-1抗体であるペムブロリズマブが腎細胞がん術後患者のDFSにおいて有効性を示しているので、本試験では明らかに異なる結果が導かれたことになる。その要因として、母集団の特徴が異なる点(転移の時期、Fuhrman gradeの程度、リンパ節転移症例の多さなど)を筆者らは考察している。昨今普及するようになった遺伝子パネル検査を含め、筆者らも指摘しているように免疫チェックポイント阻害薬の有効性を予測しうるバイオマーカーの探索も重要と考える。

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ガーダントヘルスジャパン、Guardant360 CDxでエスアールエルと業務提携

 ガーダントヘルスジャパンとエスアールエルは、固形がん患者を対象とした包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)用リキッドバイオプシー検査Guardant360 CDx がん遺伝子パネル(Guardant360CDx)のサービス提供のために業務提携契約を締結した。 ガーダントヘルスジャパンは、今回の業務提携によりSRLの遺伝子検査領域におけるロジスティックスならびにネットワーク、サービスを活用することが可能となる。SRLが医療機関から検体を受理してから14日を目途に、国立がん研究センター、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)およびGuardant360 CDxがん遺伝子パネル検査ポータルに解析結果を提供する。 Guardant360 CDxは、米国食品医薬品局(FDA)から2020年8月、日本では2022年3月10日に、すべての固形がんに対する包括的リキッドバイオプシーとして承認を取得している。また、わが国のコンパニオン診断としては、2021年12月にKRAS G12C阻害薬ソトラシブの切除不能非小細胞肺がん、2022年3月にペムブロリズマブのMSI-High固形がんおよびニボルマブのMSI-High結腸・直腸がんに承認されている。

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ニボルマブ+イピリムマブによるNSCLC1次治療、CheckMate227試験5年追跡結果/JCO

 CheckMate 227 Part1の5年間の結果がJournal of Clinical Oncology誌2022年10月12日号で発表された。ニボルマブとイピリムマブの併用は、PD-L1の状態にかかわらず、転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)の5年生存(OS)率を改善していた。(試験デザインは下記関連記事を参照)ニボルマブ+イピリムマブの5年生存率は24% 最低追跡期間61.3ヵ月の解析で、PD-L1≧1%集団の5年OS率はニボルマブ+イピリムマブ群の24%に対し、化学療法群では14%であった。PD-L1<1%集団では、ニボルマブ+イピリムマブ群の19%に対し、化学療法群では7%であった。  PD-L1≧1%の奏効期間(DoR)はニボルマブ+イピリムマブ群の24.5ヵ月に対し、化学療法群では6.7ヵ月、PD-L1≧1%のDoRは19.4ヵ月対4.8ヵ月であった。投与中止後も生存ベネフィットは持続 ニボルマブ+イピリムマブの5年生存患者で、解析時点に投与を中止していた患者は、60%を超えていた(PD-L1≧1%集団66%、PD-L1<1%集団64%)。 治療関連有害事象でニボルマブ+イピリムマブを中止した場合も生存ベネフィットは持続しており、5年OS率は39%にのぼった。

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ESMO2022 レポート 消化器がん

レポーター紹介ESMO2022を見て考えたこと昨年、一昨年と参加できなかったESMOであるが、abstract締め切りとなる2022年5月ごろはコロナも一段落していて今年こそは参加できる、と非常に心待ちにしていた。今回筆者は投稿演題がポスターとしてacceptとなり参加する気満々でいたのだが、7月ごろからの第7波の影響をもろに受け、今年も参加できなかった。仕方なくSNSを介して学会の様子を味わいつつ、レポートを書くこととなってしまった。今年のESMOで筆者が注目したのは大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の開発である。MSS大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の開発:迷路はゴールから解け?連戦連敗を続けていたMSS大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬であるが、こうすればうまくいくかも? というヒントが提示された。C-800 studybontesilimabはFc部分を改良し、APCやNK細胞のFcγIIIとの結合能を向上させた新規の抗CTLA-4抗体であり第1世代抗CTLA-4抗体と比して、活性化樹状細胞の割合、T細胞のプライミング、増殖(拡大)、メモリー化、Tregを減少させる能力が向上し、さらに有害事象が減少する、とされている。C-800試験(NCT03860272)はさまざまながん種を対象とした抗PD-1抗体balstilimab(BAL、3mg/kg Q2W)と抗CTLA-4抗体botensilimab(BOT、1 or 2mg/kg Q6W)併用療法のfirst-in human phase I試験である。今回、MSS大腸がんコホートの結果が2022年6月29日から7月2日にかけてバルセロナで開催されたWorld Congress on Gastrointestinal Cancer(ESMO-GI)のLate breaking abstractとして発表された。標準治療に不応となったMSS大腸がん41例が登録された。前治療ラインの中央値は4(2~10)であり、14例(34%)が何らかの免疫療法を過去に投与されていた(!)。RAS変異は21例(51%)、BRAF変異は2例(5%)に認められた。部分奏効(partial response:PR)は10例に認められたが完全奏効(complete response:CR)は認めず、奏効率(overall response rate:ORR)は24%であった。病勢制御率(disease control rate:DCR)は73%であった。10例の奏効例のうち8例は報告時点で治療効果が持続しており、3例は1年以上持続していた。フォローアップ中央値が5.8ヵ月と短いがduration of response(DOR)の中央値は未到達であった。有害事象としてGrade4以上のものはなく、いずれも既知のものであった。注目を集めたのは以下の解析結果である。登録症例44例のうちactiveな肝転移を有さない症例が24例であった(肝転移となったことがない19例と切除ないし焼灼し現在肝転移がない5例)。この「肝転移がない」症例に限って解析を行うと、ORRが42%(10/24)、DCRが96%(23/24)という結果であった。何らかの免疫療法で加療された後の症例を34%含む集団ということを考えれば期待の持てる有効性と感じた。また肝転移という臨床的な要素での患者選択による治療開発の方向性を示唆する結果であった。RIN上記結果報告から2ヵ月後のESMOにおいて、レゴラフェニブ (REG)、イピリムマブ (IPI)、ニボルマブ(NIVO)併用療法(RIN)のphase I試験の結果が報告された。対象となったのはフッ化ピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカン、および左側RAS野生型およびBRAF変異症例においては抗EGFR抗体に不応となったMSS大腸がんである。Dose escalationパート(9例)にてレゴラフェニブ 80mg QD、ニボルマブ 240mg Q2W、ipilimumab 1mg Q6W(すなわちlow-dose IPI+NIVO)が決定され、Dose expansionパート(20例)に移行した。今回は両パートを合わせたMSS大腸がん29例の結果が報告された。前治療ラインの中央値は2(1~6)であり、免疫療法を過去に投与された症例は適格性から除外されている。RAS変異は9例(31%)、BRAF変異は3例(10.3%)に認められた。TMBの中央値は3(1~11)であった。懸念される安全性については以下の通りである。免疫チェックポイント阻害薬関連Grade3以上の毒性としては斑点状・丘面状発疹(37.9%)、AST/ALT上昇(17.2%)、リパーゼ・アミラーゼ上昇(10.3%)であり、REGが加わることにより毒性はやや増す印象を持った。有効性については上述のC-800試験の結果を受けたものと想定されるが、肝転移の有無も情報として加えられている。全体のORRは40.9%(9例)であったが、奏効はすべて肝転移なし症例であった。全体のDCRは65.5%であり、肝転移なし群で72.7%、肝転移あり群で42.9%であった。無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)の中央値は全体で4ヵ月、肝転移なし群で5.0ヵ月、肝転移あり群で2ヵ月であった。以上のようにここでも肝転移の有無によって治療効果が明瞭に分かれる結果であった。今後の展開肝転移を有する症例で免疫チェックポイント阻害薬ないし(殺細胞性抗がん剤を用いない)免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が効きづらいという現象は他がん種で複数報告されており、真実であるように思える。しかしこれを前向きに評価した研究は筆者の知る限りこれまでにない。肝転移の有無という非常にシンプルな臨床パラメータで症例を絞るという開発ができれば成功が見えてくるのではないかと感じた。複雑な迷路を解く簡単な方法は何かといえばゴールから解くことである。All comerでの勝利を目指さず、まず「勝てそう」な手堅い対象(たとえsmall populationであっても)から承認を得て、徐々に広げていくという戦略が必要と強く感じている。とはいえMSS大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬治療の開発はこれまで連敗続きであり、一筋縄ではいかないのは周知の事実である。結局はphase IIIの結果を見るまではわからないと思っている。MSI-H大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の開発:過ぎたるは及ばざるが如し?2022年ASCO最大の話題の1つがNEJM誌に同時掲載されたStage II/III dMMR直腸がんに対する抗PD-1抗体dostarlimab(500mg Q3W)の単剤療法の結果であろう(Cercek A, et al. ASCO2022, #LBA5. Cercek A, et al. NEJM 2022)。MSKCCの単施設で行われたphase II試験であるが、12例のcase seriesとして報告された。この試験では、前治療歴のないdMMR Stage II/III直腸がん患者に対し、dostarlimabを合計6ヵ月間投与した。臨床的完全奏効(cCR)が得られた場合、患者は非手術管理と経過観察を行いcCRが認められない場合は、化学放射線療法(放射線療法+カペシタビン同時併用療法)に続き、TMEを行うこととした。結果、全例がcCRが得られるという驚愕の結果であった。重要なことは、これらの症例には化学放射線療法および/または手術が行われなかったという点である。この結果はdMMR Stage II/III 直腸がんに対しては免疫チェックポイント阻害薬での治療が標準となることを強く予感させるものであった。NICHE-2この試験は先行したNICHE-1試験の発展版である。NICHE-1試験(NCT03026140)は、Stage I~III dMMRまたはpMMR結腸直腸がん患者に対する術前NIVO+IPI(といってもIPI 1mg/kg併用は初回サイクルのみ。2サイクル目はNIVO 3mg/kgで終了という短期投与であるが)の安全性と忍容性を主要評価項目として行われた。治療の忍容性は良好で、全症例で根治的切除術を受けた(主要評価項目を達成した)。NIVO+IPI投与群のうち、dMMRでは、20例全例で病理学的効果(patholigic response:PR)が認められ、19例のmajor pathological response (MPR、残存生存腫瘍10%以下)、12例の病理学的完全奏効が認められた(Chalabi M, et al. Nat Med. 2020:566-576.)。NICHE-2試験はcT3以上の腫瘍を有する切除可能 dMMR結腸がんに対する術前治療としてのニボルマブ(NIVO)+イピリムマブ(IPI)併用療法(治療は上記と同様)の安全性と忍容性、3年の無病生存期間(disease-free survival:DFS)を主要評価項目とした試験である。95%の症例で手術が予定通りに行われた場合に安全性と忍容性があり、有効な3年DFSとして93%以上と定義された。この設定により95症例が必要と算出された。120例がスクリーニングされ112例が加療され107例で有効性解析が行われた。Stage I/IIが13%、低リスクStage IIIが13%、高リスクStage III(T4a/4b、N2)が74%であった。右側原発が68%、横行結腸原発が17%と全体の大勢を占めた。一方リンチ症候群の割合は31%であった。Grade3以上の有害事象は4%であった。98%の症例で切除術を遅延なく受けることができ、安全性と忍容性について主要評価項目を達成した。一方、病理学的有効性に関してはmajor pathological response 95%、67%の症例でpCRが得られており「This is the waterfall plot」という、まさに滝が落ちるようなvisualで聴衆を圧倒した(らしい)。有意差はなかったもののリンチ症候群の方が孤発性よりpCR率が高い結果であった。3年DFSは今後発表予定である。今後の展開さてこの結果をどう考えるか、である。そもそもdMMR大腸がんはとくにStage IIでは手術単独で3年DFSが90%程度あり(Sargent DJ, et al. J Clin Oncol. 2010;28:3219-3226.)予後良好であることが知られている。dMMR結腸がんの特徴としてcStageとpStageの乖離があると筆者は考えている。dMMR腫瘍はimmunogenicな免疫環境を反映し、腫瘍内に著明なリンパ球浸潤を来す。そのため腫瘍径としてはT4が多く、また近傍のリンパ節では活発に免疫応答を生じるためradiologicalにはN(+)と判断される。しかしこうした症例を手術すると、累々と腫脹していたリンパ節は実は免疫応答の結果でありそこに腫瘍細胞は存在しない(N=0)ことがあり、cStage IIIが実はpStage II(high-risk)だった、ということをdMMR大腸がんでしばしば経験する。つまり今回の試験で定義されている高リスクStage IIIはdMMR腫瘍の典型であり実際にはStage IIなのではないかという懸念がある。ところが全例で術前にNIVO+IPIが入るため、見た目(clinical stage)と実際(pathological stage)の違いがわからなくなってしまっている。今回3年DFS 93%以上で有効と定義しているが、全体の集団が実はStage II dominantであった場合にこれが妥当といえるだろうか。実はdMMRはStage IIの15%、Stage IIIの10%程度に存在する決して珍しいとはいえない存在である。ランダム化試験での検証が望ましいが、結局上述のcStageとpStageの乖離が悩ましいところである。さらに、Stage II/IIIに対して抗PD-1抗体以上の免疫チェックポイント阻害薬が必要かどうかについても興味がある。上述のdostarlimab試験で100%のCRが得られた、という結果を見て「おや」と感じられた方もおられると思う。未治療の進行・再発MSI-H/dMMR結腸直腸がんを対象としたKEYNOTE-177試験ではpembrolizumab単剤の奏効率が43.8%であり病勢進行(progressive disease:PD)が29.4%も認められたことと大きく相違するからである。この違いは何に由来するのか。そもそもMSI-H/dMMRというimmunogenicな腫瘍がなぜ「進行がん」として存在するかであるが、チェックポイント分子の発現によって免疫環境から逃避できているから、かもしれない。Stage II/IIIで留まっているということは、腫瘍増殖と免疫機能が腫瘍とその近傍で拮抗している状態であり、おそらくPD-1が免疫逃避において大きな役割を果たしている。したがって抗PD-1抗体単剤で非常に高い効果が得られる、と理解できる。一方でそうした拮抗状態を乗り越えさらに腫瘍増悪を来している状態(進行・再発)では、さらなるチェックポイント分子の発現を獲得している可能性があり、それゆえ抗PD-1抗体単剤の治療効果はある程度で頭打ちであり、さらなるチェックポイント分子に対する加療(たとえば抗CTLA-4抗体の追加)が必要なのではないかと考えている。この仮説が正しいかどうかはNIVO monotherapy vs.NIVO+IPI vs.標準化学療法というデザインで現在ongoingのphase III試験(CheckMate-8HW、NCT04008030)の結果を待ちたい。さらにこの試験の結果により、どういう症例にIPIが必要かという使い分けができればと期待しているし、それによりNICHE-2デザインが本当に必要かはさらに明らかになると考えている。最後にコロナ第7波もようやく収束に向かい、徐々にリアルの学会・研究会が復活してきているが、やはりリアルの会の良さを感じている。単純に情報の交換だけではないsomethingが学会・研究会会場にはあると思うし(例えばwaterfall plotの件)、それが自身の活力となっていると感じる。というわけで、来年こそは参加したいESMO、である。皆さま、マドリードでお会いしましょう!

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ESMO2022 レポート 肺がん

レポーター紹介ESMO2022は2022年9月9日~13日まで現地(フランス、パリ)とオンラインのハイブリッドで開催されました。胸部疾患に関して注目をされていた重要な演題について取り上げてみたいと思います。Osimertinib as adjuvant therapy in patients (pts) with resected EGFR-mutated (EGFRm) stage IB-IIIA non-small cell lung cancer (NSCLC): Updated results from ADAURA(LBA47)国立がんセンター東病院坪井先生のご発表でした。日本でも、2022年8月に本試験の結果に基づいてオシメルチニブ(タグリッソ)はII~III期のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)術後補助化学療法の適応を受けました。しかし、DFSに関して公表されたデータは2020年の論文(N Engl J Med 2020;383:1711-1723.)公表後初とのことで注目を集めました。イベントにおいて50%の成熟度に到達したことに伴う結果公表です。フォローアップ期間の中央値はオシメルチニブ群で44.2ヵ月(range 0~67、n=233)、プラセボ群で19.6ヵ月 (range 0~70、n=237)でした。主要評価項目であった、II期/IIIA期を対象としたDFS(Disease free survival, 無病生存期間)中央値はオシメルチニブ群65.8ヵ月(95%CI:54.4~算出不能) vs.プラセボ群21.9ヵ月(95%CI:16.6~27.5),(hazard ratio[HR]:0.23、95% CI:0.18~0.30)でした。DFS、OSのデータを見ると、フォローアップ期間が延びても術後補助化学療法としてのオシメルチニブの有用性はより手堅いデータになっていると感じます。「再発してからオシメルチニブ」では何故追いつかないのか?一つの仮説として、再発時にオシメルチニブ群では「遠隔」転移が少なく、その後の治療も組み立てやすかったのではないかと予想します。さらにイベントが集積されてからOSベネフィットについても議論されるでしょうが、再発予防としては十分に魅力的なデータと感じました。今後、より早期の症例におけるデータ創出などが予定されています。PD-L1 expression and outcomes of pembrolizumab and placebo in completely resected stage IB-IIIA NSCLC: Subgroup analysis of PEARLS/KEYNOTE-091(930MO)周術期のデータをもう一つ。WCLC2022でも取り上げられていましたが、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)を用いた術後補助化学療法の有用性を検討する試験です。PD-L1の発現ごとに詳細なデータが公表されました。既に承認を得ているアテゾリズマブ(テセントリク)ではIMpower010の中でPDL1発現によって治療効果が異なる傾向が示されていましたが、ペムブロリズマブは少し様子が異なるようです。以下の表を見てみましょう。すでに報告されている通り、KEYNOTE-091試験の全体の結果として、ペムブロリズマブはプラセボに比較して無病生存期間を有意に延長しています。主要評価項目の一つである(co-primary end point)TPS>0におけるDFSにおいてはプラセボと比較し統計学的には有用性が証明されませんでした。殺細胞性抗がん剤使用の有無など背景の違いに応じて、化学療法の今後、術後補助化学療法においてもPD-L1の発現をどの抗体で調べるのか、そしてその結果に応じてどう使い分けるのか議論がしばらく続きそうです。今のデータでは、PDL1高発現であれば○○、という使い分けではなく、ドライバーなしの症例では“化学療法使用にフィットするかどうか”が鍵になるような気がします。Sotorasib versus docetaxel for previously treated non-small cell lung cancer with KRAS G12C mutation: CodeBreaK 200 phase III study(LBA10)KRAS G12C阻害剤のソトラシブ(ルマケラス)は、治療歴のあるNSCLC患者に対するドセタキセル治療と比較して、12ヵ月時点での無増悪生存率を2倍にし、進行または死亡のリスクを34%低減しました。追跡期間の中央値は17.7ヵ月で、12ヵ月のPFS率は、ドセタキセル10.1%に対して、ソトラシブは24.8%でした。無増悪生存期間(PFS)の中央値は、ソトラシブで 5.6ヵ月(95%CI:4.3~7.8)、ドセタキセルで4.5ヵ月(95%CI:3.0~5.7) でした (HR:0.66、95%CI:0.51~0.86、p=0.002)。化学療法と比較して、KRAS G12C 阻害薬によるグレード3以上の治療関連有害作用(TRAE)はソトラシブ群で少ない傾向にありました(33.1% vs.40.4%)。クロスオーバーもあり、OSデータは参考ながらソトラシブ群10.6ヵ月(95%CI,:8.9~14.0)ドセタセル群11.3ヵ月(95% CI:9.0~14.9)(HR:1.01、95%CI:0.77~1.33、p=0.53)でした。日本でもKRAS G12C変異をもつ既治療NSCLに対して承認を得ています。今後ソトラシブの高い忍容性から単剤での使用だけでなく、さまざまな薬剤との併用試験が行われており、結果が待たれます。Mechanism of Action and an Actionable Inflammatory Axis for Air Pollution Induced Non-Small Cell Lung Cancer: Towards Molecular Cancer Prevention.(LBA1)薬剤開発ではなく、予防の話題がLBAで取り上げられておりました。本発表は、TRACERx(NCT01888601)、The PEACE(NCT03004755)、Biomarkers and Dysplastic Respiratory Epithelium (NCT00900419)の3つの研究を統合したもので、40万人以上の症例が解析の対象となりました。大気汚染と肺がんの発症にはいくつかのエビデンスがあると報告されていますが、非喫煙者における肺がんの発症と大気汚染の関連について分子生物学的な解析は十分ではありませんでした。まず研究者らは2.5μmの粒子状物質 (PM2.5 )への暴露が増加すると、肺がんの発症が増加することを突き止めました。次に、247例の肺組織のディープシークエンスを行うことにより、正常肺にもそれぞれ15%と53%の頻度でEGFRとKRASドライバーの突然変異を発見しました。しかし、これらの変異は加齢などに伴って存在するものであり、がん化への影響は少ないようでした。しかし、PM2.5への暴露を受けた細胞はその後がん化が促進され、その機序としてインターロイキン(IL)-1βの関与が予想されました。今回得られた知見は、非喫煙者において正常細胞のEGFR変異などを検知し、IL-1βなどを標的とする治療で予防が可能になるかもしれない、という期待を持たせてくれる内容ですが、まだまだ未知のことも多く、検討の余地があります。低線量CTを用いた早期発見の取り組みと並行し、大気汚染による非喫煙者のがんを予防、治療が出来る時代が来るのかもしれません。Durvalumab (D) ± tremelimumab (T) + chemotherapy (CT) in 1L metastatic (m) NSCLC: Overall survival (OS) update from POSEIDON after median follow-up (mFU) of approximately 4 years (y).(LBA59)POSEIDON試験からのOSの最新の探索的解析によると、1次治療におけるtremelimumabとデュルバルマブおよび化学療法の併用療法は、転移を伴うNSCLC患者にOS延長のベネフィットがあったことが報告されました。長期フォローアップ(中央値46.5ヵ月[範囲0.0~56.5])の結果に基づく報告です。3剤併用療法では、OS中央値が14.0ヵ月(95%CI:11.7~16.1)、化学療法単独では11.7カ月(95%CI:10.5~13.1)となり、死亡リスクを25%低減しました(HR:0.75、95%CI:0.63~0.88)。36ヵ月OS率は、それぞれ25%対13.6%でした。併存する変異状態別のOS は、トレメリムマブとデュルバルマブおよび化学療法による治療が継続的に有利でした。STK11変異を有する患者では、3剤併用により死亡リスクが 38% (HR:0.62、95% CI:0.34~1.12) 減少し、OSの中央値は15.0ヵ月(95%CI:8.2~23.8)でした。化学療法単独で10.7ヵ月(95%CI:6.0~14.9)。3年後のOS率は、それぞれ25.8%対4.5%でした。同様に、KEAP1変異を有する患者では、トリプレット療法により死亡リスクが57%減少し (HR:0.43、95%CI:0.16~1.25)、OS中央値が 13.7ヵ月(95% CI:7.2~26.5)、化学療法単独では8.7ヵ月(95%CI:5.1~評価不能)でした。最後に、KRAS変異を有する患者は、トレメリムマブ+デュルバルマブおよび化学療法により、死亡リスクが45% 減少し(HR:0.55、95%CI:0.36~0.85)、OS中央値は25.7ヵ月(95%CI:9.9~36.7)に対し、化学療法単独では10.4ヵ月(95%CI:7.5~13.6)でした。WCLCでも、3剤併用療法は特に遺伝子変異を有す症例においてベネフィットが大きい可能性を指摘されていました。checkmate9LAやCheckmate227など、抗PDL1抗体+化学療法に抗CTLA4抗体を上乗せすべき対象をどのように目の前で選択するのか?遺伝子検査の結果がその一つの答えになるように思います。問題は、現在の日本では1次治療の前に保険診療でこれらの遺伝子を測定出来ないことでしょう。エビデンスの積み重ねで、免疫チェックポイント阻害薬の使い分けにも遺伝子検査が有用、となる時期が遠くないと感じています。

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第130回 手放しに喜べない?新たな認知症治療薬の良好な臨床成績

長らく続くコロナ禍で医療系学会の取材はこの間ご無沙汰していたが、先日久しぶりに学会に参加した。たまたま開催地が実家から近いこともあり、両親と昼食をとる機会に恵まれた。以下、今回はかなり私事を交えることになるが、お付き合いいただきたい。私の場合、地元で開催された学会の取材に赴く際でも実家に宿泊することはほとんどない。あくまで仕事で来ているという線引きが必要だというのが表向きの理由だが、実のところはある種、鬱陶しいからという事情もある。すでに私が50代になっているとはいえ、80代半ばの両親にとっては子供なので、実家でパソコンを開いて仕事をしていても何かと話しかけられるし、食事の時間になると「○○があるから食え」だの、とくに食べたいものでもないのに勧められるのは正直言うならば厄介なことこの上ない。それでも両親を食事に誘ったのは、近年急速に弱ってきている父親が賑やかなところが好きな人だからだ。実家は地元の繁華街から離れた田園地帯にある。父親本人は常に外出したくて仕方ないのだが、すでに足腰も弱り、その牛歩に毎回付き添うのは母親がくたびれるため、週末ぐらいしか外出できない。加えて父親は軽度認知障害(MCI)の診断を受けている。それでも元が几帳面な性格だったことも手伝ってか、現時点でも買い物では小銭から計算して使いたがるので、まだましなほうかもしれない。とはいえ、緩やかに症状は進行しており、先日は銀行に出かけた際にATM前から母親に「使い方がわからなくなった」と連絡があったという。昼時、待ち合わせ場所の寿司屋近くの路上にいると、人混みの向こうから両親がゆっくりと歩いてきた。視界に入ってきた両親はなかなか近づいてこない。父親のゆっくりとした歩みに母親が合わせざるを得ないからである。それでも数年前から介護保険を使って理学療法士のお世話になってからはかなり改善している。一時は「カタツムリか?」と思うほどの歩みだったのだから。私は路上に立ったまま両親が近くに来るのを待った。ようやく顔が良く見える距離になって私を見つけた父親は、「破顔一笑」とも言える表情を見せた。私も微笑んで見せたが、内心はこの上なく複雑だった。幼少期の記憶の中の父親は口下手で喜怒哀楽に乏しく、私に笑顔を向けてきた記憶がほとんどない。常にむすっとしていて、時に激しく叱られることが私の記憶のデフォルトである。母親がよく話題に出すのは、私が2歳ぐらいの時の父親と私のやり取りだ。父親が私を大声で呼びつけた際に登場した私は頭に座布団を乗せていたという。叱られて叩かれると勘違いしたらしい。やや長くなってしまったが、なぜこうつらつらと書いてしまったかというと、今話題のエーザイ・バイオジェン共同開発のアルツハイマー病(AD)治療薬候補lecanemab(以下、レカネマブ)について、こうしたMCI患者を持つ家族と医療ジャーナリストという職業の狭間で揺れ動く自分がいるからだ。ご存じのようにADに関しては、脳内に蓄積するタンパク質「アミロイドβ(Aβ)」が神経細胞を死滅させるというAβ仮説に基づき、過去20年近く新薬開発が進められてきた。Aβ仮説は、Aβ前駆タンパク質から酵素のβセクレターゼ(BACE)の働きで、Aβの一量体(モノマー)が作り出され、そこからモノマーが重合した重合体(オリゴマー)、高分子オリゴマーである可溶性プロトフィブリル、そこから形成されたアミロイド線維である不溶性フィブリルへと進行し、最終的にアミロイド線維から形成されるアミロイドプラークが神経細胞を死滅させADに至るというのが大まかな理論だ。これまでのAβ仮説に基づく新薬開発では、BACE阻害薬と脳内の神経細胞に沈着したAβを排除する抗Aβ抗体が2つの大きな流れだったが、ほとんどが事実上失敗している。唯一飛び抜けていたとも言えるのが、同じエーザイとバイオジェンが共同開発していた抗Aβ抗体のアデュカヌマブ。Aβの生成過程の中でもフィブリルに結合する抗体で第II相試験での成績が良好だったことから期待されたが、2019年3月に独立データモニタリング委員会が主要評価項目を達成できる見通しがないと勧告した結果、進行中の2件の第III相試験が中止された。しかし、勧告後に入手できた症例データを加えて再解析した結果、うち1件では、高用量群でプラセボ群との比較で、臨床的認知症重症度判定尺度(CDR-SB:Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)の有意な低下が認められた。このためバイオジェンは一転して米食品医薬品局(FDA)に承認を申請。FDA諮問委員会の評決では、ほぼ否定的な評価を下されていたものの、社会的要請の高さなどを理由に新たな無作為化比較試験の追加実施とそのデータ提出を求める条件付き承認となった。もっともこの承認には専門家の中でも批判が多く、米国ではメディケア・メディケイド サービスセンター(CMS)がアデュカヌマブの保険償還対象を特定の臨床試験参加者のみに限定。さらにヨーロッパと日本では現状の臨床試験結果では効果が十分確認されていないとして承認見送りとなった。まさにジェットコースターのようなアップダウンを繰り返して、ほぼ振出しに戻ったのがAD治療薬開発の現状である。もちろんレカネマブの開発が続いていたことは承知していた。しかし、前述のような開発を巡るドタバタを知っている身としては、必死に開発を行っていた人たちには申し訳ないが、期待はせずに横目で見ていたというのが実状である。そんな最中、エーザイがレカネマブの第III相試験「Clarity AD」の主要評価項目で有意差を認め、記者発表するとのニュースリリースを9月28日早朝に発表した。今回はあの抗寄生虫薬イベルメクチンの時と違って、すでに結果がポジティブだったことはわかっている。要はどの程度のポジティブだったかがカギだ。当日、オンラインで記者会見に参加した私はディスプレイに釘付けになった。ちなみにClarity AD の登録症例は1,795例。脳内Aβ病理が確認され、スクリーニングおよびベースラインの認知症ミニメンタルステート検査(MMSE)が 22~30点、論理的記憶検査(WMS-IV LM II:Wechsler Memory Scale-IV logical memory II)の点数が年齢調整済み平均値を少なくとも1標準偏差を下回り、エピソード記憶障害が客観的に示されることが認められるADによるMCIと軽度ADが対象だ。これを2群に分け、レカネマブ10mg/kgの点滴静注を2週に1回とプラセボ点滴静注を2週に1回行い、主要評価項目は、ベースラインから投与18ヵ月時点でのCDR-SBの変化を比較したものだ。アデュカヌマブとレカネマブの最大の違いは、レカネマブはフィブリル形成直前の可溶性プロトフィブリルが標的となっていることに加え、アデュカヌマブでは漸増投与が必要だったのに対し、レカネマブは初回から有効用量の投与が可能なことである。公表された結果ではプラセボ比でのCDR-SB変化量で見た悪化抑制率は27%、詳細は発表されなかったが副次評価項目すべてでプラセボに対して統計学的有意差が認められたという。また、抗Aβ抗体では付き物の副作用がアミロイド関連画像異常(ARIA)だが、その発現率はARIAのうち脳浮腫をさすARIA-Eが12.5%(症候性2.8%)、脳微小出血をさすARIA-Hが17.0%(同0.7%)。アデュカヌマブが高用量群でプラセボ比でのCDR-SB変化量で見た悪化抑制率は23%(低用量群では14%)で、ARIA発現率がレカネマブの約3倍であることを考えれば、確かに成績は良いと言える。しかも、あくまでエーザイ側の説明に依拠するが、プラセボと比較したCDR-SB変化量の差は治験開始6ヵ月後に発現しているというのだ。私が驚いたのはむしろこの効果発現の早さだ。さてエーザイではこの結果をもって日米欧で2022年度中のフル申請、2023年度中のフル承認を目指すという。「フル」というのはアデュカヌマブの時のような条件付き承認ではないということである。ちなみに米国では、すでにClarity AD以外の試験結果で迅速承認制度の指定を受け、その結果は来年1月上旬までに明らかになる予定だが、この試験結果を追加提出することで、アデュカヌマブのような「失敗」はしないという意味である。CMSはアデュカヌマブの保険償還制限に当たって、同薬のような“条件付きの迅速承認の場合”とこちらも条件を付けている。では、このまま承認に至った際の課題は…やはり投与対象と薬価の問題である。米国でアデュカヌマブが承認された際の年間薬剤費は約600万円となった。前述のCMSの付けた条件が制限となったため、現実にはほとんど売上と言えるほどの数字にはなっていない。抗体医薬品である以上、どんなに頑張ってもレカネマブの年間薬剤費が100万円以下というのは世界のどの国でも考えにくい。たとえば仮に年間100万円としても、現在日本には推定約700万人の認知症患者がいる。日本国内でこのうちの1%強に当たる10万人が処方を受けたとすると、年間薬剤費は1,000億円となる。世界最速とも言える少子高齢化が進み、社会保障費の増大に危機感が募るばかりの昨今の状況を考えれば、簡単に容認できる話ではない。これまでの経緯を考えれば、承認されたあかつきに厚生労働省は最適使用推進ガイドラインなどでかなり投与対象を絞り込んでくるだろう。それに仮に成功しても、その先が相当厄介である。まず、投与開始後にどのような状態を有効・無効と判定するのか。かつて話題になった免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(商品名:オプジーボ)の場合ならば、画像診断での腫瘍縮小効果という指標もあった。では、レカネマブでは1回数十万円もするアミロイドPETでAβ量を定量化するのか? それともある程度ばらつきもあるMMSEで判定するのか?有効基準が決まったとして、投与はいつまで続けるのか? そもそもADは高齢者の病気である。期待余命は長くはなく、悪化抑制効果が最大限得られたとしても患者本人の社会的・経済的生産性の向上が見込めるかと言えば、そこには「?」がつく。とはいえ、MCIの父親を持つ自分にとってみれば、たとえ3割弱の遅延抑制効果とはいえ、老老介護となっている母親の肉体的・精神的負担を考えれば、使える物なら使ってみたいという気持ちもある。約束した寿司屋でうまそうに漬け丼をほおばる父親を見ながら、そんなことばかりを考えていた。寿司屋を出て両親と一緒に牛歩で駅に向かった。とくに何時の新幹線に乗るかは決めていなかった。アーケード街を歩きながら、途中でベンチが見えると父親はそこに腰を掛けて休むと言い出した。母親は私に気を遣って、「私たちはゆっくり行くから、あなたは先に帰りなさい」と促した。私は父親に「またね?」と言ってその場を後にした。父親はまた破顔一笑。そのまま後ろを振り返らずにまっすぐ駅へと向かった。医療経済性、社会保障費の増大、患者家族としての思いがぐるぐる頭を巡りながら、今日この時点でも結論は出ていない。たぶんこの先も容易に結論は出ないだろう。正直、メディアの側にいるというだけで私たちは他人から忌み嫌われることは少なくない。とはいえ、それでも自分で自分の仕事を嫌だと思ったことは、こと私自身に関しては数えられるほど少ない。ただ、この日ばかりは「何も知ならきゃ良かった。本当に因果な商売だな」と自分の仕事が嫌になった数少ない日として、生涯忘れられない日になりそうである。

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腎細胞がんに対するbempegaldesleukin+ニボルマブ1次治療の成績(PIVOT-09)/ESMO2022

 未治療の腎細胞がん患者を対象に、インターロイキン2(IL-2)作動薬であるbempegaldesleukinとニボルマブの併用療法を、スニチニブまたはカボザンチニブと比較検討した無作為化第III相試験PIVOT-09において、主要評価項目とした奏効率(ORR)と全生存期間(OS)に差が認められなかった。米国・MDアンダーソンがんセンターのNizar Tannir氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO2022)で報告した。・対象:未治療の進行・転移腎細胞がん・試験群:bempegaldesleukin+ニボルマブ3週ごと(311例)・対照群:医師が選択したTKIスニチニブまたはカボザンチニブ(312例)・主要評価項目:盲検独立中央判定(BICR)の評価によるORR、OS 主な結果は以下のとおり。・623例が無作為に対照群(312例)ではスニチニブ225例、カボザンチニブ87例に割り付けられた。・患者背景は両群間でおおむね一致しており、年齢中央値は62歳、男性比率は約75%で、IMDCリスク分類では17%が低リスク、63%が中リスク、20%が高リスクであった。・中リスクおよび高リスクの患者が有効性評価の解析対象となり、ORRは試験群で23.0%、対照群で30.6%であった。・試験群のOS中央値は29.0ヵ月で、対照群では未到達であった(ハザード比:0.82、95%信頼区間:0.61〜1.10、p=0.1915)。・全患者を解析対象とした安全性解析では、Grade3/4の治療関連有害事象(TRAE)が試験群では25.8%、対照群では56.5%に発現し、TRAEによる治療中止は試験群と対照群でそれぞれ7.7%と7.2%であった。・試験群のTRAEで主なものは、発熱(32.6%)、痒み(31.3%)、悪心(24.2%)、好酸球増加(23.9%)、甲状腺機能低下症(22.9%)、発疹(22.9%)、関節痛(20.0%)などであった。

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皮膚扁平上皮がんの術前cemiplimab、病理学的完全奏効は5割以上/NEJM

 切除可能な皮膚扁平上皮がん患者の術前補助療法において、抗プログラム細胞死1(PD-1)モノクローナル抗体cemiplimabは、約半数の患者で病理学的完全奏効を達成し、安全性の新たなシグナルは特定されなかったことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのNeil D. Gross氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年9月12日号で報告された。3ヵ国の非無作為化単群第II相試験 本研究は、皮膚扁平上皮がん患者の術前補助療法におけるcemiplimabの有効性と安全性の評価を目的とする検証的非無作為化単群第II相試験であり、2020年3月~2021年7月の期間に、オーストラリア、ドイツ、米国の施設で参加者の登録が行われた(Regeneron PharmaceuticalsとSanofiの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、切除可能なStageII、III、IV(M0)の皮膚扁平上皮がんで、実臨床で手術が推奨されている患者であった。被験者は、治癒目的の手術を受ける前に、12週間でcemiplimab(350mg)を3週ごとに4回(1、22、43、64日目)、静脈内に投与された。 主要評価項目は、独立審査委員会の中央判定による病理学的完全奏効(手術検体に生存腫瘍細胞が存在しないことと定義)とされ、主な副次評価項目には、独立審査委員会の中央判定による病理学的著効(手術検体に残存する生存腫瘍細胞が≦10%と定義)、各施設の担当医判定による病理学的完全奏効と病理学的著効、画像検査での客観的奏効(完全奏効、部分奏効)、有害事象などであった。画像検査での客観的奏効割合は68% 79例が登録された。年齢中央値は73歳(範囲:24~93歳)で、67例(85%)が男性だった。腫瘍部位は72例(91%)が頭頸部、全身状態の指標であるECOG PSはスコア0が60例(76%)で、ステージはIIが5例(6%)、IIIが38例(48%)、IV(M0)が36例(46%)であり、47例(60%)はリンパ節転移を有していた。 術前cemiplimab療法により、病理学的完全奏効が40例(51%、95%信頼区間[CI]:39~62)で、病理学的著効は10例(13%、6~22)で得られた。担当医の評価による病理学的完全奏効は42例(53%、42~65)で、病理学的著効は10例(13%、6~22)で達成され、独立審査委員会の判定結果と一致していた。また、画像検査での客観的奏効は54例(68%、57~78)で得られ、このうち完全奏効が5例(6%)、部分奏効は49例(62%)だった。 手術を受けた70例のうち、画像検査で5例が完全奏効、44例が部分奏効、16例は安定であった。画像検査で完全奏効の5例はすべて病理学的完全奏効で、部分奏効の44例では30例(68%)が病理学的完全奏効、8例(18%)は病理学的著効だった。 試験期間中に発現した全Gradeの有害事象は69例(87%)で認められた。最も頻度の高い有害事象は疲労(24例[30%])で、次いで下痢、悪心、斑状丘疹状皮疹が11例(14%)ずつで発現した。試験期間中に、Grade3以上の有害事象は14例(18%)でみられ、このうちGrade3が8例(10%)、4が2例(3%)、5は4例(5%)だった。 死亡した4例のうち、1例が治療関連の有害事象による死亡(うっ血性心不全の悪化[93歳の女性])と判定され、3例は治療とは関連しない有害事象による死亡であった。また、免疫関連有害事象は12例(15%)で発現した。 著者は、「機能温存手術の可能性と、高い病理学的完全奏効の割合を考慮すると、この患者集団におけるcemiplimabによる術前補助療法の使用は支持される」と結論している。

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腎細胞がん周術期ニボルマブの有用性(PROSPER、ECOG-ACRIN EA8143試験)/ESMO2022

 腎摘出術を受ける再発リスクの高い腎細胞がん患者に対して、抗PD-1抗体ニボルマブによる周術期療法で無増悪生存期間(PFS)の改善はみられなかった。米国の臨床試験ネットワークによる無作為化第III相試験の結果として、米国・ジョンズホプキンス大学のMohamad Allaf氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO2022)で報告した。・対象:T2以上M0/1の腎摘出術が予定された腎細胞がん(淡明細胞がん/非淡明細胞がん)患者・試験群:腎摘出術+ニボルマブ周術期投与(術前480mg×1、術後4週ごと480mg×9)[404例]・対照群:腎摘出術[415例]・評価項目:[主要評価項目]PFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、淡明細胞がん患者のPFS、安全性など 主な結果は以下のとおり。・患者背景は両群間でほぼ一致しており、年齢中央値は61歳、臨床病期はT1とT2で50%超、N1が15%、M1が3%であった。・中央値16ヵ月の追跡期間において、両群間でRFSに差は認められなかった(ハザード比:0.97、95%信頼区間:0.74〜1.28、片側検定p=0.43)。なお、いずれのサブグループにおいても両群間にPFSの差は示されなかった。・治療関連有害事象(TRAE)は試験群で78%、対照群で27%に認められ、主な有害事象は疲労感、腹痛、悪心、クレアチニン値上昇、痒みなどだった。Grade3/4のTRAEは試験群で15%、対照群で4%に認められ、Grade5はそれぞれ3%、1%であった

254.

TN乳がんの免疫チェックポイント阻害薬によるOS延長(解説:下村昭彦氏)

 2022年7月21日のNew England Journal of Medicine誌にKEYNOTE(KN)-355試験の全生存期間(OS)についての結果が公表された。すでにCPS(combined positive score)が10以上のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の初回化学療法に対するペムブロリズマブの上乗せが、無増悪生存期間(PFS)を延長することは発表され、国内でも標準治療として実施されている(Cortes J, et al. Lancet. 2020;396:1817-1828.)。 KN-355試験ではCPS 10以上のグループにおけるOSが9.7ヵ月vs.5.6ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.50~0.88)と統計学的有意にペムブロリズマブ群で良好であった。一方、ITT集団やCPS 1以上のグループではその差を検出できなかった。 KN-355試験では併用化学療法のパクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、ゲムシタビン+カルボプラチンが選択可能であったが、併用化学療法ごとのサブグループ解析のハザード比はパクリタキセルで最も顕著(28.6 vs.8.5ヵ月、HR:0.34、95%CI:0.16~0.72)、ゲムシタビン+カルボプラチンではその差がはっきりとは示されていなかった(19.1 vs.16.2ヵ月、HR:0.88、95%CI:0.61~1.25)。薬剤ごとに差が見られる理由は明確ではないが、パクリタキセル+プラセボ群のOSが極端に悪いこと、ゲムシタビン+カルボプラチン群には無病期間(DFI)が12ヵ月未満の症例が多く入ったことが原因として考察される。 現在TNBCでは2種類の免疫チェックポイント阻害薬が使用されているが、OSの延長を統計学的に証明したのはKN-355試験が初である。もうひとつの免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブとはPD-L1の評価方法が異なること、併用化学療法が異なること(アテゾリズマブはアルブミン結合パクリタキセルの併用のみ)であり、有効性の結果を考慮しながら、両方の方法でPD-L1を評価し、投与スケジュールなども加味して治療方針を決定していくことが重要であろう。

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dMMR大腸がん術前療法としてニボルマブとイピリムマブの併用が有用な可能性(NICHE-2)/ESMO2022

 DNAミスマッチ修復機能欠損(dMMR)の大腸がんに対する術前療法としてのニボルマブ・イピリムマブ併用療法の有用性が、オランダ・Netherlands Cancer InstituteのMyriam Chalabi氏から、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表された。 2020年にNICHE-1試験において両剤併用の術前療法としての有用性は報告されている。今回は同様にオランダ国内で実施されたNICHE-2試験の結果も統合しての解析結果発表である。・対象:他臓器転移のないdMMR大腸がん(T3以上またはN+)(112例)・試験群:ニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgを1回投与、その2週間後にニボルマブ3mg/kgを1回投与初回投薬から6週以内に手術を施行・評価項目:[主要評価項目]安全性、忍容性、3年無病生存率(DFS)[副次評価項目]病理学的効果、ctDNA解析など病理学的奏効率(pRR:原発巣の残存腫瘍が50%以下)、主要病理学的奏効率(mPR:原発巣の残存腫瘍が10%以下)、病理学的完全奏効率(pCR:原発巣とリンパ節の両方共に残存腫瘍が0%) 主な結果は以下のとおり。・NICHE-1試験からの32例とNICHE-2試験からの80験の全症例が安全性解析の対象となり、5例が除かれた107例が有効性判定に用いられた。・症例背景は、年齢中央値が60歳、病期分類は高リスクIII期が74%であった。高リスクの内訳はT4aが35%、T4bが28%、N2が62%、T4かつN2だったのが48%だった。・免疫関連性有害事象については61%の症例に認められ、Grade3以上の事象は膵臓機能障害、肝炎、筋炎、皮膚障害などで4%に発現した。・全症例で中央値5.4週間以内にR0切除術が施行された。・各奏効率はpRRが99%、mPRが95%、pCRは67%と高率であった。とくにリンチ症候群症例ではpCRが78%であった。・14例で術後化学療法が追加され、追跡期間中央値13.1ヵ月時点で、1例も再発の報告は無かった。 演者は「dMMR大腸がんに対する術前の免疫チェックポイント阻害薬の使用は、今後の標準治療となる可能性を示した」と結んだ。

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肝細胞がん1次治療 レンバチニブ+ペムブロリズマブの成績(LEAP-002)/ESMO2022

 切除不能な肝細胞がん(aHCC)に対する1次治療としてのレンバチニブ+ペムブロリズマブ併用療法は、レンバチニブ単独に比べ、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)ともに統計学的な有意差は認められなかった。 日本も参加した国際共同の二重盲検第III相LEAP-002試験の解析結果である。米国・カリフォルニア大学のRichard S. Finn氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。・対象:前治療歴を持たない切除不能なaHCC症例・試験群:ペムブロリズマブ3週ごと+レンバチニブを連日投与(Pem群:395例)・対照群:プラセボ3週ごと+レンバチニブを連日投与(Len群:399例)ペムブロリズマブとプラセボは最大35サイクルまで・評価項目:[主要評価項目]OS、独立評価委員会判定によるPFS[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・最終解析のデータカットオフ(2022年6月)での観察期間中央値は32.1ヵ月であった。・両群の患者背景に偏りはなく、ウィルス性病因が約6割、肝外病変ありが約6割、BCLC病期分類のBが約2割であった。・OS中央値は、Pem群21.2ヵ月、Len群19.0ヵ月、ハザード比(HR)は0.840(95%信頼区間[CI]:0.780~0.997)、p=0.0227であったが、事前に規定されたOSのp=0.0185を超えることはできなかった。24ヵ月OS率はPem群が43.7%、Len群が40.0%だった。・中間解析時のPFS中央値は、Pem群8.2ヵ月、Len群8.0ヵ月、HRは0.867(95%CI:0.734~1.024)、p=0.0466と、こちらも事前規定のp=0.002を超えることはなかった。・最終解析時点のPFSのHRは0.834で、1年PFS率はPem群34.1%、Len群29.3%、2年PFS率は16.7%と9.3%であった。・ORRはPem群26.1%、Len群17.5%、DoR中央値は、Pem群16.6ヵ月、Len群10.4ヵ月であった。・両剤併用による新たな安全性シグナルは報告されなかった。Grade3/4の有害事象はPem群で61.5%、Len群で56.7%に発現した。有害事象により投薬を中止した割合は18.0%と10.6%であった。・ステロイドが投与された免疫原性の有害事象症例は、Pem群で9.6%、Len群で1.8%であった。・試験の後治療として免疫チェックポイント阻害薬の投与を受けた割合は、Pem群で14.4%、Len群で22.8%であった。

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ソトラシブ、KRAS G12C変異陽性NSCLCのPFSを有意に延長(CodeBreaK-200)/ESMO2022

 KRAS G12C変異陽性の既治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、ソトラシブがドセタキセルよりも有意に無増悪生存期間(PFS)を延長することが、米国・Sarah Cannon Research InstituteのMelissa L. Johnson氏から、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表された。 ソトラシブの有効性は単群試験のCodeBreaK100で示されていたが、今回発表されたのは、日本も参加した国際共同無作為化比較第III相試験CodeBreaK 200試験の主解析の結果である。・対象:免疫チェックポイント阻害薬と化学療法薬の治療歴を有するKRAS G12C変異陽性のNSCLC(過去の脳転移治療例は許容)・試験群:ソトラシブ960mgx1/日(Soto群:171例)・対照群:ドセタキセル75mg/m2を3週ごと(DTX群:174例)DTX群からSoto群へのクロスオーバー投与は許容・評価項目:[主要評価項目]独立評価委員会評価によるPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性、患者報告アウトカムなど 主な結果は以下のとおり。・試験は2020年6月から開始されたが、2021年2月にプロトコール修正が行われ、登録症例数が650例から330例へと変更になり、DTX群のSoto群へのクロスオーバー投与も認められた。・DTX群からSoto群へのクロスオーバー率は26.4%で、DTX治療の後治療として別のKRAS阻害薬の投与を受けた割合は7.5%であった。・両群の年齢中央値は64.0歳、脳転移の既往有りが約34%、前治療歴は2ライン以上が55%であった。・データカットオフ時(2022年8月)のPFS中央値はSoto群が5.6ヵ月、DTX群が4.5ヵ月で、ハザード比(HR)は0.66(95%信頼区間[CI]:0.51~0.86)、p=0.002と有意にSoto群が良好であった。1年PFS率は、Soto群24.8%、DTX群10.1%だった。・ORRはSoto群が28.1%、DTX群が13.2%、p<0.001とSoto群が有意に高かった。腫瘍縮小効果があった割合は、それぞれ80.4%と62.8%であった。・DoR中央値はSoto群8.6ヵ月、DTX群は6.8ヵ月で、奏効までの期間中央値は、それぞれ1.4ヵ月と2.8ヵ月であった。・症例数が大幅に減ったこととクロスオーバー投与が許容されたことで、OSにおける両群間の差は検出されなかった。OS中央値は10.6ヵ月と11.3ヵ月、HRは1.01(95%CI:0.77~1.33)であった。・Grade3以上の有害事象は、Soto群で33.1%、DTX群で40.4%に発現した。重篤な有害事象はそれぞれ10.7%と22.5%であった。・Soto群で多く認められたGrade3以上の有害事象は、下痢、肝機能障害で、DTX群で多く認められたものは、倦怠感、貧血、脱毛、好中球減少(発熱性好中球減少症含む)などであった。・患者報告アウトカムは、Soto群で良好であり、がん関連の身体症状悪化までの期間もSoto群の方がDTX群よりも長かった。

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中・高リスクの進行腎細胞がんに対するカボザンチニブ+ニボルマブ+イピリムマブの3剤併用が有意にPFSを延長(COSMIC-313)/ESMO2022

 中・高リスクの進行腎細胞がん(RCC)に対する1次治療として、カボザンチニブ+ニボルマブ+イピリムマブの3剤併用療法とニボルマブ+イピリムマブの2剤併用療法の比較結果が、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのToni K. Choueiri氏から、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表された。 これは国際共同の二重盲検第III相のCOSMIC-313試験の第1回目の報告である。・対象:前治療のない淡明細胞型RCCで、IMDCリスク分類の中間リスクまたは高リスクの症例・試験群:カボザンチニブ連日投与にニボルマブ+イピリムマブを3週間隔で4コース併用投与。その後、カボザンチニブ+ニボルマブ(4週間隔)をメンテナンス投与(Cabo群:428例)・対照群:プラセボ連日投与にニボルマブ+イピリムマブを3週間隔で4コース投与。その後プラセボ+ニボルマブ(4週間隔)をメンテナンス投与(Pla群:427例)両群ともニボルマブの投与は最長2年間まで・評価項目:[主要評価項目]独立評価委員会による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)[追加評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・PFS解析対象の症例群(Cabo群276例とPla群274例)の追跡期間中央値は20.2ヵ月で、全症例では、17.7ヵ月であった。・両群の患者背景には偏りはなく、両群共に中間リスクが75%、高リスクが25%で、腎摘除術を受けていた症例は65%であった。主な転移部位は肺、リンパ節、肝臓、骨であった。・PFS中央値は、Cabo群は未到達で、Pla群は11.3ヵ月、ハザード比(HR)は0.73(95%信頼区間[CI]:0.57~0.94)、p=0.013とCabo群で有意な延長を認めた。12ヵ月時のPFS率は57%と49%だった。・ORRはCabo群43%(うちCR:7%)、Pla群36%(CR:3%)であった。・DoR中央値は両群とも未到達であった。腫瘍縮小を認めた症例は、Cabo群で90%、Pla群で75%、30%以上の腫瘍縮小があった症例は55%と45%であった。・中間リスクグループのPFS中央値はCabo群は未到達、Pla群は11.4ヵ月、HRは0.63(95%CI:0.47~0.85)であり、ORRは45%と35%であった。また、高リスクグループでのPFS中央値はCabo群9.5ヵ月、Pla群11.2ヵ月、HRは1.04(95%CI:0.65~1.69)で、ORRはそれぞれ37%と38%であった。・Cabo群の安全性プロファイルに新たな事象はなく、全般的に管理可能であったが、Pla群に比し肝機能障害、下痢、皮膚障害が多く認められた。有害事象治療のために、ステロイド剤の投与を受けた症例はCabo群で58%、Pla群で35%であった。また、有害事象によってすべての治療を中止した症例の割合はCabo群で12%、Pla群で5%であった。

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TILsを有するTN乳がんへの術前ニボルマブ±イピリムマブ、高い免疫活性示す(BELLINI)/ESMO2022

 術前化学療法への免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の追加による、早期トリプルネガティブ(TN)乳がん患者の転帰改善が報告されているが、どのような患者にICIが有効なのか、そしてどのような患者で術前化学療法のde-escalationが可能なのかは分かっていない。また早期TN乳がんでは、抗PD-1抗体への抗CTLA-4抗体の追加は検討されていない。オランダ・Netherlands Cancer InstituteのMarleen Kok氏らは、ニボルマブ±低用量イピリムマブの投与が、TILsを有するTN乳がんにおいて免疫応答を誘発するという仮説の検証を目的として、第II相非無作為化バスケット試験(BELLINI試験)を実施。その最初の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。・対象:T1c~T3、TILs≧5%のTN乳がん患者 31例・試験群:ニボルマブ群(NIVO群):ニボルマブ(240mg)×2サイクル 16例ニボルマブ+イピリムマブ群(NIVO+IPI群):ニボルマブ(240mg)×2サイクル+イピリムマブ(1mg/kg)×1サイクル 15例※両群ともにTIL5~10%:5例、TIL11~49%:5例、TIL≧50%:5例※両群ともに4週間後患者は術前化学療法あるいは手術を受ける・評価項目:[主要評価項目]4週間後のCD8+T細胞および/またはIFN-γ発現の2倍変化で定義される免疫活性化[副次評価項目]安全性、放射線学的反応(RECIST1.1)、トランスレーショナル解析※Simonの2段階デザインにより、30%の患者で免疫活性が確認された場合、コホートの拡大が可能となる。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時点の年齢中央値はNIVO群48歳、NIVO+IPI群50歳。grade3腫瘍が93.8%、73.3%。BRCA1/2変異有が18.8%、20.0%だった。無作為化されていないため、NIVO群ではN0が81.3%と最も多かったのに対し、NIVO+IPI群ではN1が60.0%と最も多かった。・4週間後の放射線学的部分奏効(PR)は7/31例(23%)で認められ、うちNIVO群3例(19%)、NIVO+IPI群4例(27%)であった。また、7例のうち3例はTIL≧50%、4例はTIL11~49%だった。・主要評価項目である4週間後の免疫活性化はNIVO群8例(53.3%)、NIVO+IPI群9例(60.0%)でみられ、コホート拡大基準(30%)を満たした。・PRを示した患者ではベースライン時点のIFN-γ発現量が多かった(p=0.014)。・ベースライン時点のCD8+T細胞レベルは奏効と相関しなかったが、空間解析により、CD8+T細胞が腫瘍細胞により隣接していることが奏効と強く関連していることが明らかになった(p=0.0014)。・ベースライン時点では全体の83%の患者でctDNA陽性が確認されたが、4週間後のctDNAクリアランスは24%の患者で確認された。・安全性については、Grade3以上の有害事象はNIVO群1例(6%、甲状腺機能亢進症)、NIVO+IPI群1例(7%、糖尿病)のみであった。 Kok氏らは、TILsを有するTN乳がん患者の多くが、わずか4週間のICI投与で免疫活性の上昇を示し、臨床効果が得られたことから、TN乳がん患者に対する術前化学療法なしのICI投与の可能性が示唆されたと結論付けている。そのうえで同氏は今後の展望として、NIVO群vs. NIVO+IPI群のシングルセル解析や、TIL>50%・N0の患者群における6週間のニボルマブ+イピリムマブ投与後手術を行った場合のpCR率の評価が必要とした。

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