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COPD治療薬による肺炎発症リスクの差があるだろうか?(コメンテーター:小林 英夫 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(106)より-

COPD(慢性閉塞性肺疾患)治療において、吸入ステロイド/長時間作用型β2刺激薬配合剤は標準的治療の1つとして位置づけられ、本邦でも2種の製品が利用可能となっている。本研究(PATHOS)では、そのいずれかで、治療中のCOPD症例において、肺炎発症のリスクと肺炎関連mortalityに差があるかどうかを後方視的に観察している。本論文の評価の大前提として、観察研究の限界を熟知したうえで評価しなければならないことを強調しておきたい。 結果は、フルチカゾン/サルメテロールではブデソニド/ホルモテロールより1.73倍肺炎が多く、肺炎関連死亡も多かった(ハザード比:1.76)。 著者らも考察しているように、COPDや肺炎の診断が専門医によりなされていないなどいくつかの限界は否めないが、背景因子をマッチさせた1群2,734名という大きな集団で、明らかな推計学的有意差が得られたことにはインパクトがある。このような結果となった機序は、フルチカゾンは肺内に高濃度かつ長時間とどまりやすいため、局所の感染防御機構を抑制するのではないかと著者らは推察している。 吸入ステロイド薬は気管支喘息治療薬として普及し始めた当初、易感染性や、骨代謝への悪影響が生じるのではないかと懸念された時期があった。多くの報告がなされたものの、どの薬剤であっても通常用量で大きな問題が生じることはなく、現在まで喘息治療の第一選択として位置づけられている。また、筆者の日常臨床において肺炎合併が高率という経験も有していない。今回のPATHOSがエビデンスとなりえるかどうかは、今後の前向き比較試験を待って判断すべきであろう。

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抗精神病薬へのNSAIDs追加投与、ベネフィットはあるのか?

 米国・ザッカーヒルサイド病院精神医学研究部門のMasahiro Nitta氏らは、統合失調症における非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)追加投与の意義を検討するためメタ解析を実施した。その結果、NSAIDs追加によるベネフィットは明確に示されなかったことを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2013年5月29日号の掲載報告。 統合失調症におけるNSAIDsの有効性と忍容性をプラセボと比較評価するため、メタ解析を行った。2012年12月31日までに公表されたPubMed、PsycINFO、ISI Web of Scienceおよび米国国立精神保健研究所(NIMH)の臨床試験登録を検索し、無作為化プラセボ対照試験のシステマティックレビューとメタ解析により、NSAIDs追加の有効性を評価した。主要アウトカムは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)総スコアの変化とした。副次アウトカムは、PANSSの陽性および陰性サブスコアの変化、全原因による試験中止、忍容性とした。プールされた標準化平均変化によるランダム効果(Hedges'g)およびリスク比を算出した。 主な結果は以下のとおり。・未公表の3試験を含む8試験(774例)において、PANSS総スコアの平均効果量(effect size)は、-0.236(95%CI:-0.484~0.012、p=0.063、I2=60.6%)であり、NSAIDsのプラセボに対する優越性は傾向を示すにとどまった。・PANSS陽性スコアの平均効果量は、-0.189(同:-0.373~-0.005、p=0.044)、PANSS陰性スコアの平均効果量は-0.026(同:-0.169~0.117、p=0.72)であった。・全原因による試験中止の相対リスクは1.13(同:0.794~1.599、p=0.503)であった。・PANSS総スコアにおけるNSAIDsのプラセボに対する有意な優越性は、アスピリン投与(2件、p=0.017)、入院(4件、p=0.029)、初回エピソード(2件、p=0.048)およびメタ回帰解析におけるPANSS陰性サブスコア低値(6件、p=0.026)などの状況下で減弱がみられた。・以上のように、抗精神病薬によるファーストライン治療が行われている統合失調症患者において、NSAIDsの追加はPANSS総スコアの変化においてベネフィットをもたらさないことが示された。・また、陽性症状においてはNSAIDsによるベネフィットが得られる可能性があるが、その効果はわずかで小さいものであった。・データベースに限界があるため、とくに初回エピソード患者においてはさらなる対照試験が必要である。関連医療ニュース 統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法は有用か? 高齢の遅発統合失調症患者に対する漢方薬の効果は? 統合失調症治療にベンゾ併用は有用なのか?

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糖質コルチコイド短期投与、COPD増悪例の急性再増悪を抑制/JAMA

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪例に対する糖質コルチコイド全身療法の5日間投与は、再増悪の抑制効果に関して14日投与に対し非劣性であり、ステロイド曝露量は有意に低下することが、スイス・バーゼル大学病院のJorg D Leuppi氏らが実施したREDUCE試験で示された。COPDでは頻回の増悪により死亡率が上昇し、スイスのプライマリ・ケア医ベースのCOPDコホートの検討では約23~25%が1年以内に薬物療法を要する増悪を経験することが知られている。COPDの国際的ガイドラインは、急性増悪時の糖質コルチコイドによる全身療法の治療期間は7~14日を推奨しているが、至適な用量や治療期間は不明だという。JAMA誌オンライン版2013年5月21日号掲載の報告。ステロイド薬5日間投与の14日間投与に対する非劣性を検証 REDUCE(Reduction in the Use of Corticosteroids in Exacerbated COPD)試験は、COPD増悪時の糖質コルチコイド全身療法の短期投与(5日間)の、従来投与(14日間)に対する非劣性を検証し、ステロイド曝露量の低減の可能性を評価する二重盲検無作為化非劣性試験。対象は40歳以上のCOPD増悪例で、喘息の既往歴のない喫煙経験者または喫煙者(≧20 pack-years)であった。COPD増悪は、呼吸困難、咳嗽、喀痰量の増加または膿性化のうち2項目以上を認める場合とした。 これらの患者が、プレドニゾン40mg/日を5日間投与する群(短期投与群:第1日は静注投与、第2~5日は経口投与、6~14日はプラセボを投与)または14日間投与する群(従来療法群)に無作為に割り付けられた。180日の観察期間における再増悪率の絶対差の上限値が15%以内(再増悪率が50%と仮定した場合のハザード比[HR]:1.515)の場合に非劣性と判定した。 主要評価項目は、180日の観察期間における通常の段階的増悪を超える急性の増悪とした。再増悪率のHRはITT解析0.95、PP解析0.93、非劣性基準満たす 2006年3月~2011年2月までにスイスの5つの教育病院の救急診療部から314例が登録され、両群とも157例が割り付けられた。289例(92%)が入院した。 短期投与群の156例[平均年齢69.8歳、女性32.7%、現喫煙者49.4%、COPD grade 4(GOLD)55.3%]、従来療法群の155例(同:69.8歳、46.5%、40%、52.3%)がintention-to-treat(ITT)解析の対象となり、それぞれ147例、149例でper-protocol(PP)解析が行われた。 主要評価項目の発現率は、短期投与群が35.9%(56/156例)、従来療法群は36.8%(57/155例)だった。 短期投与群の従来療法群に対する再増悪率のHRは、ITT解析で0.95(90%信頼区間[CI]:0.70~1.29、非劣性検定:p=0.006)、PP解析では0.93(90%CI:0.68~1.26、非劣性検定:p=0.005)であり、非劣性基準を満たした。 180日間における推定再増悪率は短期投与群が37.2%、従来療法群は38.4%で、群間差は-1.2%(95%CI:-12.2~9.8)であった。再増悪までの期間はそれぞれ43.5日、29日だった。死亡までの期間、増悪・死亡またはその両方の複合エンドポイント、肺機能の回復には両群間に差がなかった。 プレドニゾンの平均累積投与量は従来療法群が有意に多かった(379 vs 793mg、p<0.001)が、脂質異常や高血圧などの治療関連有害事象の頻度は両群で同等であった。 著者は、「COPDの急性増悪で救急診療部を受診した患者に対する糖質コルチコイド全身療法の5日間投与は、180日間の再増悪率について14日投与に対し非劣性であり、ステロイド曝露量は有意に低下した」とまとめ、「これらの知見は、COPD急性増悪時の治療として糖質コルチコイドの5日間投与を支持するもの」と指摘している。

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dupilumab、好酸球数増多を伴う喘息患者の増悪を抑制/NEJM

 新たな抗体医薬dupilumabは、吸入ステロイド薬+長時間作用型β2刺激薬(LABA)でコントロール不十分な好酸球増多を伴う中等症~重症の持続型喘息患者の治療において、これらの併用薬を中止後もプラセボに比べ増悪を高度に抑制することが、米国・ピッツバーグ大学のSally Wenzel氏らの検討で示された。dupilumabはインターロイキン(IL)-4受容体のαサブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体で、2型ヘルパーT(Th2)細胞経路の主要なサイトカインであるIL-4およびIL-13双方のシグナル伝達を遮断することから、Th2細胞経路関連疾患の治療薬としての評価が進められている。本報告は第109回米国胸部学会(ATS、5月17~22日、フィラデルフィア)で発表され、NEJM誌オンライン版2013年5月21日号に掲載された。増悪抑制効果をプラセボ対照無作為化第IIA相試験で評価 研究グループは、好酸球増多を伴う中等症~重症の持続型喘息患者に対するdupilumabの有効性および安全性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第IIa相試験を実施した。 対象は、18~65歳、中~高用量の吸入ステロイド薬(フルチカゾン)+LABA(サルメテロール)でコントロールが不十分な、血中好酸球数≧300/μLまたは喀痰中好酸球濃度≧3%の中等症~重症の持続型喘息患者。これらの患者が、dupilumab群(300mg)またはプラセボを週1回皮下投与する群に無作為に割り付けられ、12週の治療が行われた。 割り付けから4週後にLABAを中止、6週後から3週をかけて吸入ステロイド薬を漸減して9週目に中止し、以降はdupilumabのみを12週目まで投与した。 主要評価項目は喘息の増悪、副次的評価項目は喘息コントロールの指標とし、Th2細胞関連バイオマーカーや安全性についても検討を行った増悪を87%抑制、FEV1、起床時PEF、ACQ5スコアも改善 2011年3月~2012年10月までに米国の28施設から104例が登録され、dupilumab群に52例(平均年齢37.8歳、男性50%、喘息罹患期間24.2年、過去2年間の平均喘息増悪回数1.4回、血中好酸球数0.55×10-9/L)、プラセボ群にも52例[41.6歳、50%、26.9年、1.4回、0.47×10-9/L(p=0.04)]が割り付けられた。 喘息増悪の発症率はdupilumab群が6%(3/52例)と、プラセボ群の44%(23/52例)に比べ有意に低下した(オッズ比[OR]:0.08、95%信頼区間[CI]:0.02~0.28、p<0.001)。これは、dupilumabにより増悪のリスクが87%抑制されたことを意味するという。増悪による入院例は両群ともにみられなかった。 増悪までの期間はdupilumab群がプラセボ群に比べ延長し、Kaplan-Meier解析による12週時の増悪率はdupilumab群が有意に良好だった(0.06 vs 0.46、OR:0.10、95%CI:0.03~0.34、p<0.001)。すべての副次的評価項目がdupilumab群で良好で、ベースラインから12週までの1秒量(FEV1)の変化(p<0.001)のほか、起床時最大呼気流量(PEF)(p=0.005)、5項目からなる喘息コントロール質問票(ACQ5)スコア(p=0.001)などには有意差が認められた。 12週後の呼気中一酸化窒素濃度(FENO)、TARC(Thymus and Activation-Regulated Chemokine)、eotaxin-3(CCL26)、IgEは、いずれもdupilumab群がプラセボ群よりも有意に低下した(すべてp<0.001)。YKL-40、がん胎児性抗原(CEA)には有意差はみられなかった。 治療関連有害事象の発現率はdupilumab群が81%、プラセボ群は77%であった。このうち重篤な有害事象はそれぞれ2%、6%、有害事象による治療中止は6%、6%だった。dupilumab群で多い有害事象として、注射部位反応(29 vs 10%)、鼻咽頭炎(13 vs 4%)、悪心(8 vs 2%)、頭痛(12 vs 6%)などが確認された。 著者は、「吸入ステロイド薬+LABA投与中の好酸球数増多を伴う中等症~重症の持続型喘息患者の治療において、dupilumabはこれらの併用薬を中止後もプラセボに比べ増悪を高度に抑制し、Th2細胞関連炎症マーカーを低下させた」と結論している。

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チオトロピウム投与がコントロール不十分な喘息患者の重度喘息増悪までの期間を延長

 吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用性β刺激薬(LABA)による併用療法にもかかわらず、コントロール不十分な喘息患者において、チオトロピウム投与(レスピマットソフトミスト吸入器使用)は、初回の重度喘息増悪および喘息悪化までの期間を延長させることが、米国フィラデルフィアで開催されている2013年5月21日ATS(米国胸部疾患学会年次総会)で発表された。  これは第3相試験PrimoTinA-asthmaTMの結果であり、この改善効果は年齢、アレルギーの有無、喫煙の有無、気管支拡張薬への反応にかかわらず認められた。また、試験参加患者は、COPDを合併しない喘息患者である。 PrimoTinA-asthmaTM試験は2つの二重盲検並行群間比較試験(反復投与)からなる臨床試験。対象は、40歳前に喘息と診断され5年以上の喘息歴を有し、喫煙歴なし、あるいは10パック・年未満の喫煙歴があるものの試験1年以上前に禁煙した18~75歳の喘息患者で、ICSとLABAの併用療法を受けていながら、コントロール不十分であった。 912人がチオトロピウム5μg投与群(n=456)とプラセボ投与群(n=456)に割り付けられ、48週間の追加投与を受けた。結果、チオトロピウムの追加投与により初回重度喘息増悪までの期間が延長した(RR 21%、HR 0.79、p=0.03)。 現在のあらゆる治療選択肢をもってしてもなお、成人喘息患者の少なくとも40%がコントロール不十分であり、時には致命的な喘息発作が起きる可能性があるという。ベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim GmbH)のプレスリリース

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キャッスルマン病〔Castleman's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義キャッスルマン病は多様な病態を呈する多クローン性リンパ増殖疾患であり、臨床的に限局型と多中心(全身)型に大きく分類される。限局型では無症状で経過することが一般的であるが、多中心(全身)型では多くが血清IL-6の上昇に伴う全身倦怠感、発熱、貧血、高CRP血症、低アルブミン血症、高γグロブリン血症などの多彩な症状を伴う。欧米では、human immunodeficiency virus(HIV)感染を基礎としたhuman herpes virus(HHV)-8の感染が原因となっている症例が多いが、わが国ではHIV感染と関連のないHHV-8陰性の症例がほとんどである。■ 疫学1)患者数希少な疾患であり、国内に約1,500人と推測する資料もあるが、正確な数は不明である。2)病型臨床的には限局型(localized type/unicentric Castleman's disease: UCD)と多中心(全身)型(multicentric Castleman's disease: MCD)に分類される。病理学的には、形態からhyaline-vascular type(HV type)とplasma cell type(PC type)に分類されるが、両者の中間型(mixed type)も見受けられる。一般的に限局型はHV typeの病理像を示し、多中心型はPC typeの病理像を示すことが多い。割合としてはHV typeが全体の約90%を占め、残りの約10%がPC typeまたは中間型とされている。上述の通り、限局型は無症状で経過することが多く発症年齢が若年の傾向があるが、多中心(全身)型はIL-6産生の亢進に伴う多彩な症状を呈することが多く、50~60代の中・高年に好発がみられる。■ 病因欧米ではHIV感染による免疫不全を背景としたHHV-8感染が基礎となるケースが多く、IL-6のviral homologyであるvIL-6がHHV-8によって産生されることが病因と考えられている。また、HIV感染のない症例でもHHV-8が陽性の症例が多い。一方、わが国ではHIV感染を伴う例は珍しく、HHV-8自体もほとんどの症例で検出されない。まったく別の病因が関係しているものと考えられるが、いまだ不明な点が多く、特定はされていない。■ 症状1)限局型典型的には縦隔リンパ節の腫脹がみられるが、他のリンパ節やリンパ節以外の部位に病変を形成することもしばしばある。周囲臓器の圧迫に伴う症状が出ることはあるが基本的には無症候性であり、画像検査で偶然発見されるケースもある。まれに多中心型のような症状を呈するもの例もみられる。2)多中心(全身)型多中心型では全身リンパ節腫脹がみられ、IL-6の過剰産生に伴うリンパ球・形質細胞の増加、慢性炎症、血管新生などにより、以下の表に示すような多彩な症状がみられる。リンパ節以外に肺、腎、神経、皮膚などにも病変を形成することがある。画像を拡大する■ 予後限局型は無症候で経過し、完全切除により予後は非常に良好である。一方、多中心(全身)型は、日本人の多くは緩徐な経過を辿るケースが多いが、時に進行性のものもある。ステロイド治療によりコントロール良好な例もあるが、多くは抗IL-6受容体抗体の適応になることが多い。また、治療抵抗性となり多臓器不全に陥って死亡するケースも存在する。HIV陽性例では陰性例よりも急速に進行することが多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床診断1)限局型一般的に症状はないが、血液検査所見は正常範囲のものと炎症反応や貧血を伴うものがある。後者では病変部の摘出で正常化するものが多い。病変部の切除生検による病理組織診断が行われる。2)多中心(全身)型診断基準は確立されていない。症状も多彩で非特異的であるため、臨床経過や血液検査所見、画像所見を総合的に判断する必要がある。鑑別疾患としては、悪性リンパ腫、POEMS症候群、膠原病、感染症、IgG4関連疾患などが挙げられる。画像を拡大する画像を拡大する■ 病理診断最終的な確定診断は病理組織診断で行われる。上述のように、形態からHV typeとPC typeに分けられる。HV typeは以下に挙げる特徴的な所見を有することが多いが、PC typeの病理組織像は非特異的な所見が主体で、膠原病や薬剤に対する反応性リンパ節腫脹、IgG4関連疾患などと鑑別が困難なことが多い。そのため、キャッスルマン病は、初診から確定診断に至るのに長期間を要する場合もまれではない。臨床所見、血液検査結果、画像所見などとで総合的に判断する必要がある。画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)キャッスルマン病の治療については、症例数の少なさもあり無作為化試験が組まれたことはなく、標準的な治療法は確立されていないのが現状である。限局型は、完全切除によりほぼ全例で治癒が見込まれる。全身型についてはステロイドの投与が基本であるが、ステロイド抵抗例では、抗IL-6受容体抗体(トリシズマブ)の適応となる。■ 限局型一般的に無症候性で予後良好であるが、悪性リンパ腫などの腫瘍との鑑別が必要となるため、病理組織による確定診断の意味も含め、病変部を切除することが多い。症状がある場合でも完全切除により症状の消失が期待できる。第1選択は完全切除であり、切除が難しい場合には局所放射線治療が選択されることもある。■ 全身型症状がある場合は、一般的にはステロイドの全身投与が行われる。無症状の場合は経過観察も選択肢となる。海外ではリツキシマブ(商品名:リツキサン)が使用されることがあるが、日本ではキャッスルマン病に対する使用については、まだ保険適応となっていないのが現状である。免疫抑制薬や化学療法が選択されることがあるが、見解の一致を得ない。抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブ(同:アクテムラ)が2005年に承認されてからは、ステロイド抵抗例で使用され、効果を挙げている。HIV陽性例についてはリツキシマブや抗がん剤などが使用されるが、わが国でのHIV陽性例はまれであり、知見は少ない。4 今後の展望全身型キャッスルマン病の治療には、ステロイドを用いるのが一般的であるが、ステロイド抵抗性の症例や耐糖能に問題のある症例では管理が難しくなる。近年では、抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブの有効性が示されてきており、今後はこのような分子標的薬がkey drugに加わっていくと考えられる。5 主たる診療科血液内科、免疫内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)患者会情報社会福祉法人 復生あせび会(希少疾病患者の会)1)Van Rhee F, et al. Clinical advances in hematology & Oncology. 2010; 8: 486-498.2)本田元人. HIV感染症とAIDSの治療. 2012; 3: 12-18.3)西本憲弘. 実験医学. 2010; 28: 2026-2031.

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聖路加GENERAL【Dr.衛藤の皮膚科疾患アーカイブ】<下巻>

第5回「症状のない皮膚疾患(1)-黒い疾患-」第6回「症状のない皮膚疾患(2)-赤い疾患-」第7回「内臓系の皮膚疾患(1)-爪の皮膚疾患-」第8回「内臓系の皮膚疾患(2)-舌の皮膚疾患-」第9回「内臓系の皮膚疾患(3) -黒色表皮腫と皮膚筋炎- 」 第5回「症状のない皮膚疾患①-黒い疾患-」症状のない皮膚疾患、なかでもPaget病(ページェット病)と黒い疾患を中心にみていきます。最初の症例は75歳男性。3年ほど前から陰嚢に発赤を認めたが、毎日80キロを自転車走行するための摩擦だと思い放置。ところが3ヵ月前から特に赤みが増したため来院。ステロイド軟膏を処方するが回復せず検査をしてみると乳房外Paget病でした。乳房Paget病は、症状が湿疹と似ていること、乳房以外の部位にも発症するのが特徴です。乳房Paget病の鑑別ポイントを解説します。他にも間違えてはならない湿疹の鑑別疾患を詳しくみていきます。黒い皮膚疾患には、脂漏性角化症のような良性のものの他に悪性黒色腫のように早期に発見しなければならない危険なものもあります。症例を通して鑑別法を学びましょう。第6回「症状のない皮膚疾患②-赤い疾患-」 乾癬は日本でも多くみられるようになってきましたが、湿疹と似ているのでしっかり鑑別する必要があります。爪に見られる乾癬から、膿疱性乾癬のように、場合によっては命に関わる重篤な疾患まで、さまざまなものがあります。また、最近増えてきた乾癬性関節炎についてもわかりやすく紹介します。二つめは皮膚がんです。半年前に猫に噛まれた傷が治らず、化膿して悪化したため受診した68歳の女性。猫に噛まれたことが直接の原因とは考えにくく、このような経過を辿り徐々に増大しているというのは腫瘍性の増殖を起こしている可能性があります。生検の結果、この方は扁平上皮がんでした。痛みや痒みもないのに赤い腫瘤は重篤な皮膚疾患の場合もあるので、早期に発見することが鍵となります。その他の皮膚がんについてもわかりやすい症例写真をまじえて詳しく紹介していきます。第7回「内臓系の皮膚疾患①-爪の皮膚疾患-」 第7回は実態がわかりにくい内臓系の皮膚疾患です。中でも様々な病変が現れる爪にフォーカスします。症例は約半年前から手指の爪甲に変形が現れた63歳男性。進行が気になり皮膚科を受診することにしました。爪にはclubbingが見られ、全身倦怠感や息切れも進んでおり、喫煙歴も20本×40年と高いリスク因子がありました。この患者さんは呼吸器疾患のデルマドロームで、検査の結果肺がんとわかりました。他にもばち状指に出現する先天性疾患などの原因疾患を詳しくみていきます。また、爪の病変は様々で、砒素中毒や化学療法、ステロイド治療や重症疾患等が原因となるケースがあり多岐に渡りますが、その見極め方を豊富な症例写真をとおして解説します。第8回「内臓系の皮膚疾患②-舌の皮膚疾患-」 第8回は内蔵にまつわる皮膚疾患から“舌”の皮膚疾患をとりあげます。症例は36歳男性。半年前から舌が荒れて白い斑点のようなものが出現。最近では発熱と下痢を繰り返し、約10㎏の体重減少もみられました。この患者はHIV感染に起因する舌カンジダ症でした。一口にカンジダ症と言っても、その分類、病因は様々です。カンジダ感染症を中心に地図状舌、黒毛舌、全身性強皮症など特徴のある舌の皮膚疾患や総合内科領域で見られる皮膚病変を解説します。その昔ヒポクラテスの時代から「診療のときはまず舌と爪を診ろ」と言われたほど、爪や舌の疾患は内蔵の状態を表します。先生方も普段の診察から爪と舌に注意してみてはどうでしょうか。第9回「内臓系の皮膚疾患③ ―黒色表皮腫と皮膚筋炎― 」 最終回は内臓系皮膚疾患の中から黒色表皮腫と皮膚筋炎をとりあげます。半年前から脇の下が粗造になってきて、褐色の色素沈着が現れたため受診した62歳の女性。診断は黒色表皮腫でした。さらに内臓の検査を行うと大腸がんが見つかりました。“皮膚は内臓の鏡”というようにさまざまな内臓病変が現れ、重篤な病気が隠れていることがあります。日々の診察では多岐に渡る内臓悪性腫瘍のデルマドロームを見落とさないことが重要です。今回も様々な皮膚症例から診察のポイントと間違えやすい注意すべき病変を解説していきます。

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4年ぶりの改訂!『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン 第4版』の改訂ポイントは?

 4月19日(金)~4月21日(日)、東京国際フォーラム(東京・千代田区)にて「第53回 日本呼吸器学会学術講演会」が行われた。 学会2日目、2009年以来4年ぶりの改訂となる「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン 第4版」のポイントについて、作成委員長である永井厚志氏(東京女子医科大学 統括病院長)より発表された。 主な改訂のポイントは以下のとおり。●COPDの疾患定義ガイドライン第3版のCOPDの定義は「体動時の呼吸困難や慢性の咳、痰を特徴とする」(一部抜粋)であったが、第4版では「労作時の呼吸困難や慢性の咳、痰を特徴とするが、これらの症状に乏しいこともある」(一部抜粋)と改訂されている。COPDは自覚症状が乏しいケースもあるため、見過ごされる事も少なくない。永井氏はこれを避けるために、あえて「症状に乏しいこともある」という記載を追記したとしている。●COPDの病態概念COPDの併存疾患、合併疾患の内容がアップデートされた。なかでも、「喘息とCOPDのオーバーラップ症候群」と「気腫合併肺線維症(CPFE)」については充実した内容が盛り込まれている。また近年、話題となっているオーバーラップ症候群については、喘息を合併していないCOPDと比較して、予後が不良となることも記載された。●薬物治療 長時間作用性β2刺激薬(LABA)、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)、吸入用ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬(ICS/LABA)配合薬などの薬剤が新たに上市されため、エビデンスとともにその情報がまとめられた。●COPDの増悪COPDの増悪に対する管理は、QOLや予後の観点から重要である。わが国でも、その認識を高める必要があるため、増悪管理について記載内容の見直しが行われた。●運動耐容能から身体活動性への概念転換COPD患者の運動耐容能はこれまで6分間歩行試験などが指標とされてきたが、患者自身の活動性に、より重きを置いた身体活動性へ概念が転換された。●災害時などへの対応東日本大震災後に作成する初めてのガイドラインとなるため、災害時の対応に関する記述が盛り込まれた。●その他「気流閉塞」と「気流制限」の用語の整理や、参考文献についてMindsに準じたエビデンスレベルの付記が行われた。 今回の第4版は、初めて日本呼吸器学会会員からのパブリックコメントを参考に作成された改訂版である。したがって、永井氏は今回のガイドラインについて「学会全体の協力により作成したガイドラインである」と述べた。

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エキスパートに聞く!「関節リウマチ」Q&A part2

CareNet.comでは4月の関節リウマチ特集を配信するにあたって、事前に会員の先生より関節リウマチ診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、慶應義塾大学 花岡 洋成先生にご回答いただきました。今回は生物学的製剤の投与方法や新規薬剤に関する質問です。生物学的製剤の開始時期について教えてください。また、開始時にルーチンで実施する検査を教えてください。日本リウマチ学会より、関節リウマチに対するTNF阻害薬、トシリズマブ、アバタセプト使用ガイドラインが発行されている。これに基づくと、1.既存の抗リウマチ薬通常量を3ヵ月以上継続して使用してもコントロール不良の関節リウマチ患者(コントロール不良の目安として、圧痛関節数6関節以上、腫脹関節数6関節以上、CRP 2.0mg/dL以上あるいはESR 28mm/hr以上)や、画像検査における進行性の骨びらんを認める患者、DAS28-ESRが3.2(moderate disease activity)以上の患者2.既存の抗リウマチ薬による治療歴のない場合でも、罹病期間が6ヵ月未満の患者では、DAS28-ESRが5.1超(high disease activity)で、さらに予後不良因子(RF陽性、抗CCP抗体陽性または画像検査における骨びらんを認める)を有する患者には、メトトレキサート(MTX)との併用による使用を考慮するとある。開始時のルーチンで施行する検査は、上記ガイドラインに記されている禁忌・要注意事項に該当する患者を除外する目的で、以下の検査を行う。白血球分画を含む末梢血検査、β-Dグルカン、胸部X線、ツベルクリン反応、クォンティフェロン(QFT)、HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体また開始後の骨破壊の進展を評価するために、生物学的製剤開始前の関節X線を撮影することが多い。生物学的製剤の休薬や中止の判断基準を教えてください。いくつかの生物学的製剤で、休薬後、寛解や低疾患活動性を維持できるか(バイオフリー)を検証されている。日本発のエビデンスで最初の報告はRRR studyである(Ann Rheum Dis. 2010; 69: 1286-1291)。これはインフリキシマブによって低疾患活動性および寛解を24週間以上維持できた患者を対象に、インフリキシマブを中止し、その1年後の休薬達成率を確認したものである。その結果、55%が休薬を達成し続けた。ここで、休薬を達成し続けられた群は、そうでない群と比較して罹病期間が短く(4.7 vs 8.6年、p=0.02)、mTSS(modified total sharp score)が低値(46.9 vs 97.2、p=0.02)であると報告されている。他の製剤については検証中のものが多く確定的なことは言えないが、早期例で骨破壊が少なく、深い寛解を維持できた症例はバイオフリー寛解を維持しやすいようである。生物学的製剤投与中の感染症の早期発見方法について教えてください。わが国で施行した市販後全例調査の結果、生物学的製剤使用者の1~2%で重篤な細菌性肺炎の報告があった。ただし、早期発見する確実な手段はない。重要なことは感染症のリスクを評価し、リスクが高い症例は注意深く慎重に観察していくことである。さらに、事前の肺炎球菌ワクチンや冬期のインフルエンザワクチン接種を推奨する。生物学的製剤において感染症のリスクとして共通しているのは、ステロイドの内服、既存の肺病変、高齢、長期罹患などである(Arthritis Rheum. 2006; 54: 628-634)。さらに、インフリキシマブでは投与開始20~60日に細菌性肺炎の発症が増加する(Ann Rheum Dis. 2008; 67: 189-194)。よって投与2ヵ月以内は注意しながら診療する。また、トシリズマブ投与例ではCRPは上昇しないことが知られているため、スクリーニングの画像検査を積極的に行うことが望ましい。また、ニューモシスチス肺炎も0.2~0.3%程度報告されている。これについては、β-Dグルカンの測定を定期的に行い、労作時呼吸困難や咳嗽などを訴えた症例は慎重に精査を進めていく。間質性肺炎を合併した関節リウマチ患者に対して、どのように治療したらよいでしょうか?間質性肺疾患合併例ではMTX肺炎を誘発する懸念があるため、MTXを軸とした管理ができないことがある。米国リウマチ学会の治療推奨(Arthritis Care Res. 2012; 64: 625-639)などに基づき治療戦略を決定するが、一般的にわが国では、まず推奨度Aの抗リウマチ薬(ブシラミン、サラゾスルファピリジン、タクロリムスなど)で疾患活動性のコントロールを試みることが多い。これで活動性が抑制できなければ生物学的製剤の適応を考慮する。例外的に、活動性がきわめて高く、予後不良因子を有する症例や短期間で骨破壊が進行する症例などでは、生物学的製剤を積極的に第一選択薬として用いることもある。この場合、MTX併用を必須とするインフリキシマブは投与できない。よって、残りの製剤のどれかを選択することになるが、「既存の肺病変」の存在は生物学的製剤において重篤感染症やニューモシスチス肺炎などのリスク因子になりうる(N Engl J Med. 2007; 357 : 1874-1876)ため、リスクとベネフィットを考慮して治療方針を決定する。JAK阻害薬(トファシチニブ)など、新規薬剤の可能性について教えてください。生物学的製剤の登場によって関節リウマチの診療は大きく変わった。これらは劇的な効果をもたらしたが、無効例も存在することは間違いなく、TNFやIL-6などの阻害だけでは病態を十分制御できないことを示唆している。これを受けて、現在、新規治療薬として1,000kDa以下の低分子化合物の開発が進行しており、なかでもJAK阻害薬の有効性が臨床でも確認されている。FDAが、2012年11月に関節リウマチの治療薬として、JAK1/JAK3阻害薬であるトファシチニブを認可した。承認用量である5mg 1日2回12週間の投与によって、12.5%の寛解率を示した(Arthritis Rheum. 2012; 64: 617-629)。その効果は生物学的製剤に匹敵する。一方、JAK阻害によって多数のサイトカインシグナルが阻害され、炎症と免疫に与える影響は複雑である。高分子化合物である生物学的製剤が細胞外の受容体に作用するのに対して、低分子化合物であるJAK阻害薬は細胞内で作用する。細胞内で作用した同薬剤が、最終的にヒトにおける長期安全性にどのような影響を及ぼすのか、今後の解明が待たれる。

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【CASE REPORT】腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症 症例経過

■症例:65歳 女性 腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症自転車で転倒して腰部を打撲した直後から、腰部の持続痛と体動時の激痛を自覚し臥床して過ごしていた。近医整形外科を受診したところ腰椎レントゲン検査によって第4腰椎圧迫骨折と診断され、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を処方された。しかし疼痛、とくに体動時痛が非常に強いことから1%リン酸コデイン40mgを処方されたものの、疼痛に変化がなかった。そこで、転倒のエピソードから2週間目に塩酸モルヒネ散20mgを導入された。吐き気と便秘に対しては適切に制吐剤や緩下剤が使用されたため、オピオイド鎮痛薬による副作用はなかった。効果不十分のためモルヒネは30→50→60mgまで約2週間かけて漸増され、転倒から約1ヵ月後には持続痛と体動時痛のいずれも著明に改善し、日中も臥床して過ごしていた状態から体動時痛が増強しない程度に家事を行えるまでにADLは改善した。残存している痛みに対してモルヒネが漸増され、20~30mgずつ増量されると1~2週間程度は疼痛が緩和するが再び増悪することを繰り返すようになった。さらに、主治医から疼痛が増強しないように安静にするように指導されたことと、患者本人が体動時痛を過度に恐れることから、再び日中もほぼ臥床して過ごすようになりADLは低下していった。また、疼痛が増強した際の頓用薬には当初NSAIDsが処方されていたが、疼痛の増強の訴えに応じてモルヒネを頓用するように指導されていた。転倒から6ヵ月目にはモルヒネの服薬量は200mgになっていたが日中も臥床していることが多くなり家事のほとんどは夫が担当し、痛み以外に緩下剤に抵抗性の便秘や口渇、不眠も出現していた。モルヒネの頓用をしても鎮痛効果を実感していなかったが1日に数回はモルヒネの頓用を続けていた。転倒から約9ヵ月後、オピオイド鎮痛薬に抵抗性の難治性腰痛として当科を紹介され夫とともに受診した。当院受診時に下肢痛はなかったが、転倒当初の腰部に限局した疼痛ではなく腰背部全体の疼痛を訴え、痛みの増減は体動とは無関係であった。疼痛部位の感覚低下はなかった。また、両下肢の筋力低下は認められなかった。痛みの訴え以外には、不眠(入眠困難感と中途覚醒)を強く述べたが、夫から日中はしばしば傾眠傾向であることや夜間はいびきをかいて寝ていることが聴取された。患者本人は気分の落ち込みが強いが食欲はあり、夫が作った食事を食べておりADLの低下・不活動状態と相まって体重は増加していた。腰部MRIでは第4腰椎椎体に圧迫骨折所見があるが、新鮮な炎症所見や偽関節はなかった。現在の腰背部痛は、腰椎圧迫骨折に伴う侵害受容性疼痛ではなく、痛みの原因として妥当な器質的な障害を伴わない非特異的腰痛と診断した。オピオイド鎮痛薬の鎮痛効果を実感していないにもかかわらず、定期内服に加えて頓用を繰り返しており、オピオイド鎮痛薬の不適切使用(aberrant drug taking behavior)状態と評価した。モルヒネの頓用を禁止するとともに、1日量200mgから30mgずつ1週間毎に漸減し、夫にもモルヒネを中心とした鎮痛薬についての知識を教育しそれらの管理を患者と一緒に行うように指導した。加えて、痛みを理由とした行動制限を解除すること(具体的には、日中の臥床時間を減らすこと、積極的に家事に参加するようにすること)を指導し、ADLの改善とともに行動目標(散歩、ショッピング、家事全般)を段階的に増加させていった。当院初診から4ヵ月程度で腰痛は軽度残存しているが許容範囲内であり、不眠は解消した。モルヒネは漸減・中止でき、ADLおよびQOLは転倒前の状態に回復した。

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ステロイド依存性皮膚症に対するトリアムシノロンアセトニド筋注、適正使用に道筋?

 米国・ボストン大学医学部のShalini Reddy氏らは、ステロイド依存性皮膚症に対するトリアムシノロンアセトニド筋注(商品名:ケナコルト)の有効性と安全性を評価する前向き観察試験を行った。その結果、6週間隔で2回にわたる接種についての安全性と、有意な改善が認められたことを報告した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2013年3月29日号の掲載報告。 Reddy氏らは、皮膚疾患に対するコルチコステロイド筋注に関して、投薬・投与に関する勧告がないことや、接種による視床下部・脳下垂体・副腎系への影響のリスクが不明なこと、および有効性が明らかになっていないことが使用を制限している可能性があるとして本検討を行った。 トリアムシノロンアセトニド筋注(IM TAC)を受けた患者の医原性クッシング症候群および続発性副腎機能低下症の発症と期間を評価することを目的とし、医師と患者のアウトカムの報告についても評価した。 試験は、ステロイド依存性皮膚症の診断を受けている14例に対し、IM TACを6週間隔で1回または2回の接種を行い、コルチゾル量、副腎皮質刺激ホルモン、医師・患者の全般的疾患活性評価尺度によるスコア、かゆみの視覚的アナログスケールスコアを、ベースラインと6週、12週時点で評価した。 主な結果は以下のとおり。・総コルチゾル値の平均値は、ベースラインと比べて6週、12週時点で有意に減少した。・一方で、IM TACによる医原性クッシング症候群や続発性副腎機能低下症は、いずれの患者においてもみられなかった。・医師・患者の全般的疾患活性評価尺度スコアの平均値は、ベースラインと比べて6週、12週時点で有意に改善した。・視覚的アナログスケールかゆみスコアの平均値は、ベースラインと比べて6週時点で有意な改善が認められた。・本試験はコホートサイズが小さく比較群がないという点で限定的なものであるが、以上の結果から、IM TACは6週間隔で2回の投与は安全であり、ステロイド依存性皮膚症について有意な改善をもたらすことは明らかであった。・今回の結果は、IM TACの臨床での適正使用を考慮している皮膚科医に対して、接種対象患者、接種回数および投与に関する指針となる可能性がある。

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乾癬治療のターニングポイント

肉体的、精神的、社会的に大きな苦痛を強いる乾癬(Psoriasis)乾癬Psoriasisの歴史は古く、古代ギリシャの書物にも登場します。その後、19世紀初頭に英国のRobert Willanにより独立疾患として臨床的特徴が紹介されました。乾癬はよく目立つ紅斑、浸潤、鱗屑といったきわめて特徴的な皮膚症状を呈します。死に至る疾患ではないものの、進行すると全身に症状が拡大したり、関節炎を合併して重篤な状態に発展することがあります。患者さんにとっては肉体的のみならず精神的、社会的にも大きな苦痛やハンディキャップを強いられる疾患です。発症には遺伝的素因に加えさまざまな後天的、環境的因子が関与すると考えられています。典型的な乾癬皮疹画像を拡大する重症例(乾癬性紅皮症)画像を拡大する乾癬による関節炎と爪の変化画像を拡大する乾癬の病変部では表皮細胞(ケラチノサイト)の増殖亢進が生じています。そのため、乾癬病変でのケラチノサイトのターンオーバーは3~4日と、正常組織の4週間に比べ著しく短縮しています。その結果ケラチノサイトの角層への成熟・分化が不十分となり、臨床的特徴の一つである銀白色の厚い鱗屑を形成します。また、紅斑は病巣部に浸潤してくるリンパ球が産生するサイトカインにより起こる炎症の結果です。乾癬は病態論の進展に伴って治療法が著しく変化、進展した疾患の一つです。免疫抑制剤シクロスポリンの治療効果が明らかになる以前は、乾癬の発症機序はケラチノサイトの異常(増殖亢進、分化不全)にあると考えられていました。そのためケラチノサイトの増殖亢進の抑制を目的とした治療法が開発されてきました。ケラチノサイト増殖抑制を狙った光線療法の登場1931年にゲッケルマン療法が発表されています。これはコールタール軟膏を塗布して太陽灯(水銀灯紫外線)を照射するという治療法です。日光浴が乾癬を改善することは昔から知られており、機序は不明ながらコールタールの何等かの成分が紫外線の作用を増強し、ケラチノサイトの過剰増殖を減少させることで効果を発揮すると考えられます。炎症を抑制する作用もあると思われます。欧米では今日でも使用される療法ですが、我が国ではほとんど実施されていません。1970年代には別の光線療法であるPUVA療法が発表されました。PUVAとはソラレンPsoralenのPと長波長紫外線UVAを組み合わせた治療名です。ソラレンは光増感物質で長波長紫外線(UVA)を照射されると、励起状態となって反応性が高まり、細胞内DNAの二重螺旋の間に結合して細胞分裂を抑制することが知られています。やはりケラチノサイトの増殖亢進の抑制を目的として始められた治療ですが、炎症(紅斑)を抑制する効果も知られています。紫外線療法は21世紀に入っても進化し、より簡便な方法として中波長紫外線UVBの単独照射法、さらにはUVBに含まれる非常に狭い波長閾の紫外線ナローバンドUVBが照射されるようになりました。日常の診療で効果を発揮しています。ケラチノサイト増殖抑制を狙った薬物療法の登場膿疱化:ステロイドによる副作用その間に薬物療法も進化していきます。1950年代に入り、ステロイド外用療法が登場しました。当初の製剤は抗炎症効果がそれほど強くはなかったものの、従来の外用薬と比べれば確かな効果があり、当時としては大きな朗報でした。それ以降、より強い作用を有する外用ステロイド製剤が次々に開発され、今日まで乾癬外用療法の基本となっています。以前は内服ステロイドを用いることもあったのですが、全身性副作用に加えて、膿胞性乾癬を引き起こすなどの問題もあり、用いられなくなりました。1959年に抗腫瘍薬・免疫抑制薬であるメトトレキサートを乾癬の治療に用いる試みが報告されています。これも当初はケラチノサイトに対する増殖抑制効果を期待したものでしたが、後から考えればリンパ球に対する免疫抑制効果をも併せ持った(むしろこちらが主体?)治療法といえます。日本ではリウマチによく使用されますが、乾癬に対する適応はありません。欧米では乾癬にも使用されています。1975年には、ビタミンA誘導体であるレチノイドの治療成績が報告されました。ビタミンAは上皮組織に作用するビタミンで、ケラチノサイトの増殖および分化をコントロールすることで、効果を発揮すると考えられます。乾癬以外にも多くの角化異常症に使われています。 本邦でも1985年にレチノイドの一種エトレチナートが承認され、現在も乾癬治療薬の選択肢の一つとなっていますが、胎児催奇形性の問題から慎重な投与が求められる薬剤です。1990年代にはビタミンD3外用療法が治療法の一つとして加わりました。そのきっかけは、骨粗鬆症の患者さんにビタミンD3製剤を投与したところ、その患者さんが罹患していた乾癬の皮疹がきれいになったことでした。その少し前にビタミンD3の全く新しい作用(細胞の増殖抑制、分化誘導作用)が明らかにされており、乾癬表皮ケラチノサイトの増殖亢進、分化不全を是正することで効果を発揮することが想定されました。そこで研究が開始され、偶然の臨床的観察から始まった治療法が、新たな乾癬治療外用薬として実を結びました。今日ステロイドと並んで外用療法の主役を担っています。私はこの臨床研究に直接関係しましたが、医学の進歩における偶然の契機の重要性を強く感じた体験となりました。ビタミンD3外用の効果塗布前画像を拡大する塗布4週後 > 印画像を拡大する新たな薬物療法の流れ…自己免疫年代は少し戻りますが、別の治療の流れが起こってきます。1979年に免疫抑制薬シクロスポリン療法の難治性乾癬に対する有効性が報告されました。これは臓器移植を受けた乾癬の患者さんで効果が確認されたことがきっかけとなり、研究が始まったものです。シクロスポリンはTリンパ球の作用を阻害しますから、乾癬の病態におけるTリンパ球の重要性が認識され、免疫異常説が一挙に花開いたといえます。シクロスポリンは本邦でも1992年に乾癬に対する使用が認可され、次に紹介する生物学的製剤の登場まで、難治性症例に対する最も確かな治療法として用いられて来ました。乾癬の病態解明はその後も進展し、現在は自己免疫・炎症説が主流となっています。それには真皮樹状細胞、Th1細胞、Th17細胞が重要で、樹状細胞が産生するIL-12がTh1細胞を、IL-23がTh17細胞を刺激し、IFN-γ、TNF-α、IL-17、IL-22などを産生させます。樹状細胞自身もTNF-αを産生します。これらが複雑なネットワークを形成して反応し合い、炎症を持続させるとともに表皮ケラチノサイトを活性化し、乾癬に特徴的な皮膚症状を示すのです。2010年代に入ると、分子細胞工学的手技を応用した生物学的製剤が登場してきました。インフリキシマブ、アダリムマブ、ウステキヌマブなどです。インフリキシマブ、アダリムマブはTNF-α、ウステキヌマブはIL-12、IL-23といった前述の炎症ネットワークで重要な役割を演じるサイトカインを阻害することで治療効果を発揮します。難治重症例に対する効果は劇的で、乾癬治療の歴史に新たなページを開いたと言えるでしょう。ほかにも多くの生物学的製剤が続々と開発途上にあり、乾癬の治療は今後大きく変わって行くかも知れません。現在の乾癬治療以上、乾癬治療の変遷について述べましたが、現在の治療は、軽症例ではステロイド外用剤とビタミンD3外用剤の単独または併用です。併用の場合にはsequential therapyなど、効果を最大限に発揮させる工夫がなされます。痒みの強い例では抗アレルギー薬の内服を併用します。効果が不十分な例では症例に応じてこれらに紫外線療法やエトレチナートを上乗せします。重症・難治例ではシクロスポリンや生物学的製剤を用います。重症・難治性の評価には皮疹の広がりや強さ、QOLの低下をBSA(Body Surface Area)、PASI(Psoriasis Area Severity Index)、PDI(Psoriasis Disability Index)などで数値化して判断します。おおむねこれらが10以上の例が適応とされます。ただし、関節炎を合併する例では関節症状の進行を予防する意味で、皮疹の程度は軽くても生物学的製剤の使用が勧められます。本邦において使用される製剤種 類一般名製品名剤 形ビタミンD3タカルシトールボンアルファボンアルファハイ外用ビタミンD3カルシポトリオールドボネックス外用ビタミンD3マキサカルシトールオキサロール外用レチノイドエトレチナートチガソン内服免疫抑制剤シクロスポリンネオーラルサンディミュン内服生物学的製剤インフリキシマブレミケード点滴静注生物学的製剤アダリムマブヒュミラ皮下注生物学的製剤ウステキヌマブステラーラ皮下注※ ステロイド外用剤は種類が多いので省略。乾癬にはストロング以上の製剤が必要である。これらの薬剤を使いこなすコツは、副作用をいかに防止するかでしょう。ステロイド外用剤は強いほど効果も確かですが、長期使用による皮膚副作用が避けられません。それを押さえるためにはビタミンD3外用薬との併用が大切で、ステロイドの使用量をできるだけ減らすよう努力します。軽症例の外用薬によるコントロールでは生活指導も大切です。シクロスポリンや生物学的製剤の使用に際しては皮膚がん予防の観点から、紫外線療法との併用は避けるべきです。また感染症とくに結核の合併には注意が必要です。乾癬治療に関わる先生方へ私が皮膚科を始めた昭和40年には弱いステロイド、ゲッケルマン療法、メトトレキサート以外の治療法はまだ存在していませんでした。今日の治療リストを眺めると乾癬研究の進歩の跡は歴然で、まさに夢のようです。とはいえ治療はまだ対症的で副作用の心配も残っており、完全からはほど遠いと言わなければなりません。今後も研究がさらに進歩し、より良い治療法が生み出される事を願っております。

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乾癬治療のターニングポイント 質問/回答

ダーマトロジーエキスパートQ&A「乾癬治療のターニングポイント」において、乾癬治療に関する最新の情報をお送りしてきました。今回は、質問募集期間に視聴者の先生方からいただいた代表的な質問について、吉川邦彦先生にご回答いただきます。ビタミンD3外用剤にステロイド外用剤を併用する場合、どのランクのステロイドを用いるべき?できるだけ強いランクのステロイド(very strongからstrongest)と併用するのがよいと思います。強いステロイドで皮疹をできるだけ速やかにコントロールした上で、週5日はステロイド、週末2日はビタミンD3を使用します。それでコントロールが維持できていれば週5日をビタミンD3、週末をステロイドに、それでも経過良好ならビタミンD3単独でという具合に、段階的にステロイドの使用量を減らしていきます。途中で皮疹が悪化すれば前段階へ戻します(sequential therapy)。弱いステロイドは乾癬に対する効果が不明確なので、ステロイドの強さを減じていくよりは使用頻度、使用量を減じていくのが基本的な考え方です。ただし、顔面や間擦部位等では副作用防止のために弱めのステロイドを使用する必要があります。ビタミンD3外用剤とステロイド外用剤を混合した場合の効果は?効果は期待でき、外国では混合製剤が市販されています。ただし、酸性を示すステロイド製剤が数種類あり、それらとの混合ではビタミンDの分解が起こるため、避ける必要があります。紫外線療法において、照射部位以外の作用について、現在はどう考えられているのでしょうか?広範囲に照射する場合には全身的な免疫抑制効果もあるため、照射部位以外への効果も多少はあります。しかし、確かな作用として期待できるものではありませんから、基本的には照射部位への効果と考えた方がよいでしょう。生物学的製剤の適応、開始の判断基準はどのようなものでしょうか?乾癬の重症度判定基準BSA: Body Surface Area、PASI: Psoriasis Area Severity Index、PDI: Psoriasis Disability Indexなどで10以上を示すと重症例と考え、生物学的製剤の使用を考慮します。関節症状がみられる場合には機能障害防止のため、上記の基準を満たさない例でも早期の使用が勧められています。使用に際しては、結核など重篤な副作用を防止するための除外基準や注意事項が設定されていますから、十分な注意が必要です。インフリキシマブ(商品名:レミケード)などの生物学的製剤、シクロスポリン(商品名:ネオーラルなど)などの免疫抑制剤、エトレチナート(商品名:チガソン)のようなレチノイド、これらはどのように使い分ければよいでしょうか?一般論として言えばエトレチナート、シクロスポリン、インフリキシマブの順で使用を考慮すべきです。それぞれ1段階ずつ治療のランクが上がっていくと考えればよいと思います。後者になるほど、より確かな効果が期待できますが、同時に副作用に対する注意もより重要になるからです。ただし、エトレチナートでは催奇形性や骨、関節への影響、シクロスポリンでは血圧、腎機能への影響、インフリキシマブでは結核や他の慢性感染症、悪性腫瘍等患者さん個々で考慮すべき問題の重要性が異なりますから、使い分けについて一概には言えません。一段階飛ばして選択するケースもありえます。乾癬は治癒しない疾患との考えから、かゆみを抑える程度の治療しかできていませんでした。 生物学製剤で寛解するのでしょうか?寛解はあります。うまく使用し続ければ寛解期間を維持することも可能です。ただし、長期使用に際しては副作用に対する十分な注意が必要です。また、高価な薬剤ですから患者さんの経済的負担に対する配慮も必要です。専門医への紹介のタイミングについて教えてください。外用療法のみでは皮疹のコントロールが十分でなくなった場合、皮疹は少ないが目立つ部位に見られ(額、手、爪など)心理的、社会的ストレスが大きい場合、関節炎が合併している場合(放置すると関節の機能障害を残す)などが専門医へ紹介すべき状態です。皮疹の上に小膿疱が多発する場合はステロイドによる副作用(膿疱性乾癬)の可能性がありますから、やはり専門医に紹介すべきです。ステロイドを長期に外用し続けると白癬などの感染症を合併することもあります。これまでの乾癬皮疹と異なる皮疹が現れた場合は、鑑別のため専門医にコンサルトする必要があります。

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第13回 添付文書 その2:どこまで必要?添付文書の厳格さのさじ加減!

■今回のテーマのポイント1.医薬品の添付文書の記載に不備があった場合には、指示・警告上の欠陥として、製造物責任法が適用される2.添付文書の記載に不備があるか否かは、当該医薬品を処方する専門家である医師が理解するに足りるかという視点から判断される3.医薬品については、無過失補償制度である医薬品副作用被害救済制度があることから、同制度による救済範囲を狭めるべきではない。また、同時に制度の穴を埋めるべく前向きな議論がなされるべきである事件の概要平成14年7月5日にゲフィチニブ(商品名:イレッサ)は、肺がんの治療薬(内服薬)として、世界に先駆け、申請から承認まで半年と異例の短さで日本で承認されました。承認時点において、イレッサ®による間質性肺炎の報告は、国内外合わせて日本の3例(133人中)であり、死亡例はありませんでした。承認に際して、添付文書の「重大な副作用」欄の4番目に「間質性肺炎(頻度不明):間質性肺炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常がみとめられた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと」と記載し、かつ、承認条件として市販後の臨床試験を指示しました。しかし、承認から約3ヵ月で間質性肺炎および急性肺障害の副作用発症が22例(死亡11例)報告されました。平成14年10月15日、厚生労働省の指示により、添付文書が改訂され、間質性肺炎について「警告」欄を設けて記載すると同時に緊急安全性情報を作成し、医療機関等へ配布しました。このような流れの中、イレッサ®による間質性肺炎で死亡した患者3名の遺族が、製薬会社に対しては、製造物責任法または不法行為上の損害賠償責任として、国に対しては、国家賠償法上の損害賠償請求として、計7,700万円を請求しました。第1審では、製薬会社に対しては、「当該添付文書の記載(「警告」欄ではなく、「重大な副作用」欄の4番目に記載したこと)が指示・警告上の欠陥である」として製造物責任法上の責任を認め、国に対しては、イレッサ®を薬事承認したことについて違法性はないものの、「承認後、間質性肺炎による死亡事例が出たにもかかわらず、10月15日まで添付文書を改訂するよう指導しなかったことは国家賠償法上違法である」とし、計1,760万円の損害賠償責任を認めました。これに対し、控訴審は、下記の通り判示し、原判決を破棄し、原告の請求を棄却しました。*なお本件は、現在、最高裁判所(以下、最高裁)に係属中であり、判断が待たれています。事件の経過●患者A(31歳)の経過平成13年2月頃から咳嗽が続き、6月頃からは咳嗽に加え、左胸痛が認められるようになったことから、同年9月13日D病院に検査入院となりました。検査の結果、肺腺がんでⅣ期と診断されました。その後、化学療法は行わず、丸山ワクチンを受けていましたが改善を認めず、胸水も貯留してきたため、同年11月29日D病院に入院しました。その時点で多発性骨転移が認められ、がん性疼痛も生じたため、化学療法が開始されました。腫瘍の縮小は認められなかったものの、自覚症状の改善が一定程度みられたことから、平成14年2月11日に退院となり、外来化学療法を行っていました。しかし、化学療法の副作用による、吐気、食思不振、脱毛が強かったため、同年7月1日を最後に外来化学療法は中止されました。同年7月19日の時点で、小脳、脳幹、大脳に多発転移が認められました。そのような折、Aの父がインターネットでイレッサ®の存在を知り、主治医と相談の上、8月15日より入院の上、イレッサ®の服用が開始されると同時に、多発性脳転移に対して放射線全脳照射を行いました。イレッサ®開始1ヵ月後に肺の腫瘍は約1/3にまで縮小を認め、自覚症状の改善もみられたことから、9月21日に退院となり、外来にてイレッサ®の服用を継続することとなりました。ところが、退院後最初の外来である10月3日に撮影した胸部X線写真上、気になる影があるといわれ、イレッサ®内服を中止の上、同日入院となりました。しかし、入院3日目から呼吸状態が悪化し、治療を行うも増悪。10月17日に呼吸不全にて死亡しました。●患者B(55歳)嗄声および呼吸困難のため平成14年6月に近医受診。肺がん疑いにてE病院を紹介受診したところ、肺腺がん(Ⅳ期)で左副腎に転移ありと診断されました。7月15日より入院にて化学療法が行われたものの、副作用が強く10月には中止されました。また、12月24日には多発性脳転移が認められたため、放射線全脳照射が行われました。平成15年1月28日、主治医Fは、BおよびBの妻よりイレッサ®による治療を求められました。しかし、平成14年10月15日にイレッサ®に関する緊急安全性情報がでていたことから、主治医Fは、「イレッサ®はがん細胞を狙い撃ちする抗がん剤で、20~30%の人に有効ですが、最近、重大な副作用として間質性肺炎が問題になっており、0.2~0.4%の方が肺炎で命を落としました」との緊急安全性情報等を踏まえた説明をしたところ、それでも治療を受けたいとの希望があり、入院にてイレッサ®の服用が開始されました。ところが、2月3日の胸部X線写真上、間質性陰影の増悪が認められ、その2日後には呼吸困難等が出現したことから、イレッサ®による間質性肺炎を疑い、服用を中止し、ステロイドパルス療法を行いました。しかし、翌日より真菌感染を引き起こしてしまい、2月11日に死亡しました。●患者C(67歳)平成11年12月、近医で胸部X線写真上、間質性陰影が認められ、G病院紹介受診。肺線維症の診断にて外来治療を受けていました。しかし、平成14年1月頃から血痰、咳嗽、胸痛等が認められるようになったため、同年4月15日にH病院を紹介され、精査目的で入院となりました。H病院での検査の結果、肺腺がん(III期)と診断され、化学療法が行われました。しかし、化学療法の効果はなく、副作用も強かったことから、7月には化学療法は中止されました。その後も呼吸状態、全身状態が悪化したため、同年9月2日から入院にてイレッサ®の服用が開始されました。しかし、服用開始2日目から間質性変化を認めるようになり、10月9日には、間質性肺炎が急性増悪し、ステロイドパルス療法を行ったものの、翌10月10日に死亡しました。事件の判決「本件添付文書第1版の記載はこれとは異なり、文書冒頭に警告欄が設けられていない。しかし、間質性肺炎は従来の抗癌剤等による一般的な副作用であり、イレッサを処方するのは癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医であり、当該医師は、薬剤性間質性肺炎により致死的事態が生じ得ることを認識していたものといえる。仮にその医師に、「分子標的薬には従来の抗癌剤に生じる副作用が生じない」という医学雑誌記事等に基づく予備知識があったとしても、本件添付文書第1版は、イレッサの適応を「手術不能・再発非小細胞肺癌」に限定し、「重大な副作用」欄に間質性肺炎を含む4つの疾病又は症状を掲げていたのであり、添付文書を一読すれば、イレッサには4つの重大な副作用があり、適応も非小細胞肺癌一般ではなく、手術不能・再発非小細胞肺癌に限定されていることを読み取ることができ、それを読む者が癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医であるならば、それが副作用を全く生じない医薬品とはいえないものであることを容易に理解し得たと考えられる。これらの医師が、仮に本件添付文書第1版の記載からその趣旨を読み取ることができなかったとすれば、その者は添付文書の記載を重視していなかったものというほかない。イレッサについての臨床試験等の結果が前記記載のとおりであったにもかかわらず、肺癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医を対象とした本件添付文書第1版の記載の違法性の判断において、「間質性肺炎の副作用について文書冒頭に警告欄を設けないのは違法である」、「警告欄について赤枠囲いをしないのは違法である」等として、添付文書の内容如何ではなく、目に訴える表示方法を違法性の判断基準として取上げるとすれば、それは司法が癌専門医及び肺癌に係る抗癌剤治療医の読解力、理解力、判断力を著しく低く見ていることを意味するのであり、真摯に医療に取り組むこれら医師の尊厳を害し、相当とはいえない。警告欄のない本件添付文書第1版に指示・警告上の欠陥があったということはできない。・・・以上のとおり、「重大な副作用」欄中の1番目から3番目までに掲げられた副作用も、4番目の間質性肺炎と同様に、いずれも重篤な副作用に区分され、当該患者の全身状態等によっては、そのいずれもが死亡又は重篤な機能不全に陥るおそれのあるものであり、また、評価対象臨床試験において間質性肺炎が高い割合で発現していたとはいえない状況にあったものである。しかも、本件添付文書の説明の対象者が癌専門医及び肺癌に係る抗癌剤治療医であり、また、イレッサについての評価対象外臨床試験等の結果における死亡症例についてイレッサ投与との因果関係の認定を揺るがす症状又は現象が存在していたことに照らせば、間質性肺炎を本件添付文書第1版の「重大な副作用」欄の4番目に掲げ、1番目に掲げなかったことをもって、指示・警告上の欠陥があったものということはできないものというべきである」(東京高判平成23年11月15日判時2131号35頁)ポイント解説今回は、前回に引き続き添付文書について解説させていただきます。前回の判例は、添付文書に反した場合の法的取扱いについてでした。今回解説する判例は、添付文書の記載に不備があった場合の取扱いについてです。本判決の最大の特徴の1つは、抗がん剤であるイレッサ®による副作用被害に対し、製造物責任法(PL法)を適用したことです。製造物責任は、1960年代にアメリカの判例理論として形成され、「不法行為の要件である過失がなくても、その物に欠陥があった場合には、損害賠償責任を認める」という無過失責任の1つです。平成6年にわが国で製造物責任法が成立するにあたって、副作用が出ることが必然である医薬品に対して、製造物責任法を適用すべきか否かが議論されました。すなわち、副作用を欠陥とした場合には、一定の確率で必然的に生ずる副作用被害をすべて製薬企業が賠償しなければならなくなるおそれがあるからです。さまざまな議論の末、最終的には、同法4条1号において、「当時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかった場合には、免責する」という開発危険の抗弁を認め、医薬品に対しても製造物責任法を適用することとなりました。ただ、開発危険の抗弁における「「科学又は技術に関する知見」とは、科学技術に関する諸学問の成果を踏まえて、当該製造物の欠陥の有無を判断するに当たり影響を受ける程度に確立された知識のすべてをいい、それは、特定の者が有するものではなく客観的に社会に存在する知識の総体を指すものであって、当該製造物をその製造業者等が引き渡した当時において入手可能な世界最高の科学技術の水準がその判断基準とされるものと解するのが相当である。そして、製造業者等は、このような最高水準の知識をもってしても、なお当該製造物の欠陥を認識することができなかったことを証明して、初めて免責されるものと解するのが相当である」(東京地判平成14年12月13日判タ1109号285頁)とされており、開発危険の抗弁は、非常に限定的な場合にしか認められないこととなっています。その一方で、製造物責任法における欠陥とは、「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」(同法2条2項)と定義されたことから、医薬品における設計上の欠陥とは、「医薬品は、適正な使用目的に従い適正に使用された場合にも、人体に有害な副作用をもたらす場合があることを避けられない。それにもかかわらず医薬品が使用されるのは、副作用による有害性の程度が、その医薬品の有効性を考慮するとなお許容され得るからであると解される。このような医薬品の特性にかんがみれば、当該医薬品に副作用があることをもって直ちに設計上の欠陥があるとはいえず、副作用による有害性が著しく、その医薬品の有効性を考慮してもなお使用価値を有しないと認められる場合に、当該医薬品について設計上の欠陥が認められるものというべきである」(本判例第1審)と医薬品の特徴に応じた判断がされています。また、製造物責任法上の欠陥には、設計上の欠陥だけでなく、取扱説明書の記載不備のような指示・警告上の欠陥もあります。本判例第1審において、「医薬品は、副作用による有害性の程度が、その有効性を考慮した場合に許容される限度を超えないものとして、設計上の欠陥を有するとは認められない場合にも、個別の患者がその副作用による被害を受けることを防止するため、なお適切な指示・警告を必要とし、これを欠く場合には、指示・警告上の欠陥を有するものと認められる。そして、医薬品が指示・警告上の欠陥を有するかどうかは、当該医薬品の効能、効果、通常予見される処方によって使用した場合に生じ得る副作用の内容及び程度、副作用の表示及び警告の有無、他の安全な医薬品による代替性の有無並びに当該医薬品を引渡した時期における医学的、薬学的知見等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきものと解される。そして、添付文書は、上記のとおり、法の規定に基づいて、医薬品の製造業者又は輸入販売業者が作成するものであり、その投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載されるものであって、医薬品を治療に使用する医師等が必ず確認し、そこに記載された使用上の注意事項に従わなければならないものであるから、医薬品の副作用等その安全性を確保するために必要な使用上の注意事項は基本的に添付文書に記載されていなければならないものというべきであり、これを欠く場合には他の方法により安全管理が十分に図られたなどの特段の事情のない限り、指示・警告上の欠陥があると認めるのが相当である。なお、医療用医薬品のように医師等が使用することが予定されているものについては、これを使用することが予定された医師等の知識、経験等を前提として、当該医師等が添付文書に記載された使用上の注意事項の内容を理解できる程度に記載されていれば足りるものと解される」と判示されているように、医薬品における指示・警告上の欠陥は、原則的に添付文書の記載によって判断されることとなります。また、処方箋薬の添付文書の記載に不備があったか否かは、上記判示の通り、専門家である医師が理解するに足りるかという視点から判断されることとなります。本件第1審においては、「重大な副作用」欄の4番目に書かれたことをもって、指示・警告上の欠陥であるとして、製造物責任法上の損害賠償責任を認めました(「4番目判決」)が、高裁においては、「4番目に書かれていたとしても、本件添付文書の説明の対象者が癌専門医及び肺癌に係る抗癌剤治療医であること等から、指示・警告上の欠陥とはいえない」として、損害賠償責任を認めませんでした。本判決のもう1つの大きな特徴は、第1審において、添付文書に警告欄を設けるよう指導しなかったとして、国の責任を認めたことです。薬事法上、医薬品を製造販売するためには、厚生労働大臣による承認が必要となります(薬事法14条1項)。この承認を受けるために製薬企業は治験を行うわけですが、被験者の数は限られますので、稀な副作用は、上市後に、多くの患者に使用されなければわからないことがある等限界があります。だからといって治験において安全性を過度に追及すると、今度は承認が大きく遅れ、薬がないために治療できない患者が出てきてしまいます(ドラッグ・ラグ)。薬事承認においてはこのように、安全性と迅速性のバランスが常に求められることとなり、わが国では、諸外国と比べて大きく迅速性に欠ける、換言すればドラッグ・ラグが長く、適時に必要な薬が患者に届かず場合によっては生命を落とすという状況となっています。そのようなわが国の現状において、製造物責任をテコに国に損害賠償責任を認めるとなると、結局のところ国は、薬事承認において安全性に大きく判断ウエイトを置くこととなり、ますますドラッグ・ラグが加速するのではないかという懸念がでてきます。本件の東京高裁判決は第1審を覆し、国の責任を否定しましたが、現在最高裁で係争中であり、その判断が待たれています(*2013年4月2日の報道では、「国に対する請求については上告が受理されず遺族敗訴が確定し、製薬企業に対する請求は受理されたものの弁論を開くことなく2013年4月12日に判決が出される」とのことです)。●添付文書再考本連載で、2回にわたって、添付文書について解説してきました。製薬企業自らが作成する添付文書に対し、内容が不足していると製薬企業に対し厳格に製造物責任を問われることとなれば、製薬企業としては、できうる限りのことを添付文書に記載する方向にインセンティブが働きます。その結果、本来の薬の適用対象にまで慎重投与として警告が付されたり、場合によっては禁忌とするなど、実医療とはかけ離れた添付文書が作成されることとなります。しかし、医師がそのような添付文書の記載に形式的に反した場合には、前回の判例により過失が推定されてしまうことから、結果的に、医師が萎縮してしまい、患者が適切な治療を受けられなくなるという悪循環が生ずるおそれがあります(図1)。図1 添付文書の厳格性のジレンマ画像を拡大するこのように添付文書に過度の法的意義を持たせることは、患者にとってマイナスの効果を生じかねませんし、そもそも、過剰な警告文書はアラートとしての機能を喪失してしまうことから、その意味においても患者にとって危険となります。●医薬品副作用被害救済制度2つの判決を異なる視点でみてみましょう。医薬品によって生じた副作用被害に対しては、公的に医薬品被害救済制度が整備されています(独立行政法人医薬品医療機器総合機構法15条1項)。製薬企業が拠出金を出し合い基金をつくり、副作用被害が生じた場合には、そこから医療費や障害年金、遺族年金が支払われます(同法16条1項)。医薬品の副作用被害については、すでに公的な無過失補償制度ができているのです。しかし、本制度の給付対象外として、表が定められています。みていただければわかるように、前回の判例は2-(1)に該当し、今回の判例は、2-(1)および4に該当します。つまり、添付文書に関する訴訟は、この医薬品副作用被害救済制度から漏れてしまっているために止むを得ず生じているのです。実際、本件第1審で国が敗訴した後に「制度の穴」を埋めるべく厚生労働省内で、「抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会」が立ち上げられました(残念ながら、高裁にて国が勝訴したため、平成24年8月10日の同検討会によるとりまとめにおいて見送りとされました)。表 医薬品副作用被害救済制度除外事由画像を拡大する●まとめ2回にわたり解説したように、添付文書に製造物責任を厳格に問うことは、製薬企業自らの責任回避のために添付文書の過度な長文化・不適切化を生じさせます。そのような状況下で添付文書を不磨の大典のごとく扱うと萎縮医療を生み出し、結果として患者が適切な医療を受けることができなくなります。さらに、添付文書の指示・警告上の欠陥をテコに国に責任を認めるとドラッグ・ラグが加速し、適切な医薬品が患者のもとに届かなくなってしまいます(図2)。図2 添付文書厳格化による問題点画像を拡大するもちろん、副作用被害の救済はできうる限り行われるべきです。しかし、その方向は、無過失補償制度による救済範囲を広げる方向で行われるべきであり、個別事案における救済に固執するあまり、制度全体に問題を生じさせてしまっている現状を認識すべきものと思われます。すなわち、添付文書に対し指示・警告上の欠陥を広く認めることは、一般的には、医薬品副作用被害救済制度の除外事由を広げること(=救済範囲を狭めること)となりますし、添付文書違反に対し過失の推定をかけることも同様に、医薬品副作用被害救済制度の除外事由を広げること(=救済範囲を狭めること)になるのです。添付文書に関する紛争は、医薬品副作用被害救済制度に穴があるために生じています。いがみ合い、争う方向に進めるのではなく、手に手を取って「制度の穴」を埋める方向に進んでいくことを切に願います(図3)。図3 副作用被害の早急な救済のモデル画像を拡大する裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)東京高判平成23年11月15日判時2131号35頁東京地判平成14年12月13日判タ1109号285頁

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抗TNF療法は帯状疱疹リスクを増大しない/JAMA

 先行研究において、関節リウマチ(RA)やその他の炎症性疾患に対する生物学的製剤は、結核などの感染リスクを増大することが知られる。一方、同療法の帯状疱疹リスクに与える影響については相反する試験結果が示され、これまで明らかではなかった。米国・オレゴン健康科学大学のKevin L. Winthrop氏らは、Safety Assessment of Biologic Therapyの一環として、抗TNF療法が帯状疱疹リスクを増大するのか、米国の4つの大規模データベースの集約コホートにて後ろ向き研究を行った。その結果、抗TNF療法群は非生物学的抗リウマチ薬(DMARDs)療法群と比べて帯状疱疹リスクが高くはなかったことを報告した。JAMA誌2013年3月6日号掲載の報告より。抗TNF療法群とDMARDs療法群の帯状疱疹発症率を比較 研究グループは、米国の4つの組織(Kaiser Permanente Northern California、Pharmaceutical Assistance Contract for the Elderly、テネシー州メディケイド、国のメディケイド/メディケア・プログラム)からのデータ(1998~2007年)を集約した大規模コホートを組み立て、炎症性疾患[RA、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎]を有した患者コホートにおける、抗TNF療法の新規導入患者の特定を行った。その上で、抗TNF療法群(総計3万3,324例)とDMARDs療法群(同2万5,742例)の帯状疱疹発症率を比較した。また一方で、ベースラインでのコルチコステロイド使用量の違い(非使用、0~<5、5~<10、≧10mg/日)による比較も行った。被験者の最終追跡調査日は2007年12月31日であった。補正後罹患率、抗TNF療法群とDMARDs療法群で同程度 結果、抗TNF療法群における帯状疱疹の発症は、3万3,324例のうち310例であった。同群粗罹患率は、RA患者では1,000患者・年当たり12.1[95%信頼区間(CI):10.7~13.6]、IBD患者で同11.3(同:7.7~16.7)、乾癬・乾癬性関節炎または強直性脊椎炎患者で同4.4(同:2.8~7.0)だった。 RA患者における解析で、補正後罹患率は抗TNF療法群とDMARDs療法群で同程度[補正ハザード比(HR):1.00、95%CI:0.77~1.29]であった。IBD患者(補正HR:0.79)、乾癬・乾癬性関節炎または強直性脊椎炎患者(同:0.63)についても同様で、全疾患対象の補正HRは1.09(95%CI:0.88~1.36)だった。 一方、ベースラインでのコルチコステロイド使用量でみた比較では、全疾患対象の解析において、コルチコステロイド使用≧10mg/日群が非使用群と比較して、リスクが有意に高かった(補正HR:2.13、95%CI:1.64~2.75)。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(74)〕 進行性腎機能障害を呈する特発性膜性腎症の治療にはステロイド+アルキル化剤が有用

特発性膜性腎症は、その経過中に自然寛解する例が20~30%あるため、これが薬物療法の評価を一部左右する可能性がある。また、腎機能がすでに低下している症例に関しては、臨床試験の確実なエビデンスが得られていない。  本研究は進行性の腎機能障害が確認されている例が対象であるため、自然寛解の影響を考慮する必要がなく、また、すでに腎機能障害のある症例の治療効果を検証するという意味で、意義が大きい。  わが国では、厚労省の班研究の結果から、まずステロイド治療を行い、ステロイド治療抵抗性であればシクロスポリン(CyA)、ミゾリビン(MZR)、シクロホスファミド(CPA)のいずれかの併用を考慮するとの診療指針が提示されている。しかし欧米では、1990年頃のカナダ・イギリスにおける複数の研究で、膜性腎症に対するステロイド単独療法の効果は否定され、現在は本研究の治療群のようにステロイドとアルキル化剤のクロラムブシル併用、CyAによる治療が臨床試験のエビデンスとして報告されているため、これらが治療の主体である。  本研究ではCyA群の効果は否定されたが、これは著者らも述べているようにCyAには高血圧や腎機能障害の合併症があるため、腎機能障害例では効果が出にくいと推測される。  わが国ではアルキル化剤としてはクロラムブシルの代わりにCPAを用い、ステロイドと併用したPonticelliの変法が用いられることが多い。まだ、大規模なRCTの結果は報告されていないが、他の治療法に比較して優っている印象がある。

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腰痛患者の椎体骨折スクリーニングで“レッドフラッグ”の診断精度は低い

 各国の腰痛診療ガイドラインでは、椎体骨折など追加検査や特別な治療を要する病変を有している可能性が高い患者を特定するため“レッドフラッグ”の使用を勧告している。しかし、オーストラリア・シドニー大学のChristopher M Williams氏らによるシステマティックレビューの結果、ほとんどのレッドフラッグが椎体骨折のスクリーニングには役に立たないことが明らかとなった。レッドフラッグを複数組み合わせた場合は有用性が改善する可能性はあるものの、多くは偽陽性率が高く、レッドフラッグに基づいた腰痛の診療は医療費と治療成績に影響するだろうとまとめている。Cochrane database of systematic reviews 2013年1月31日掲載の報告。 腰痛患者における椎体骨折のスクリーニングに関する“レッドフラッグ”の診断精度を評価することを目的とした。 電子データベースから主要な研究論文ならびに被引用・引用論文を検索し(最も初期から2012年3月7日まで)、腰痛患者の既往歴や検査結果を参照基準(画像診断)の結果と比較した研究を2名のレビュアーが別々に選択した。 3名のレビュアーがそれぞれ、11項目からなる診断精度研究の質評価(QUADAS)ツールを用いてバイアスリスクを評価するとともに、研究デザインの特性、患者、指標検査および参照基準に関するデータを抽出して各検査に関する尤度比を算出し、臨床的有用性の指標とした。 主な結果は以下のとおり。・8件の研究(プライマリ・ケア4件、二次医療1件、三次医療[救命救急]3件)がレビューに組み込まれた。・バイアスリスクは中等度で、指標検査と参照基準の報告は不良であった。・椎体骨折の有病率は、プライマリ・ケアで0.7~4.5%、3次医療で6.5~11%であった。・指標検査は29種あったが、2件以上の研究で採用されたのは2種だけであった。・陽性尤度比が得られた“レッドフラッグ”は、プライマリ・ケアでは3項目あったものの大部分は不正確であった(著しい外傷、年齢[高齢]、ステロイド使用:尤度比推定値範囲はそれぞれ3.42~12.85、3.69~9.39、3.97~48.50)。一方、3次医療では1項目であった(挫傷/擦過傷:尤度比推定値31.09、95%CI:18.25~52.96)。・複数の“レッドフラッグ”の組み合わせは、陽性尤度比が大きく単独より有用と思われた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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第12回 添付文書 その1:「添付文書」の解釈、司法と臨床現場の大きな乖離!

■今回のテーマのポイント1.医薬品の使用において、添付文書の記載に反した場合には、特段の合理的理由がない限り、過失が推定される2.「特段の合理的理由」の該当性判断は、判例により幅があることから、一定のエビデンスを確保したうえで行うことが安全といえる3.その場合においては、インフォームド・コンセントの観点から、患者に対し適切な説明がなされるべきである事件の概要7歳男性(X)。昭和49年9月25日午前0時30分頃、腹痛と発熱を訴え、救急車にてA病院を受診し、経過観察及び加療目的にて入院となりました。その後、同日午後3時40分まで保存的治療を行っていたものの、化膿性ないし壊阻性の虫垂炎と診断されたため、虫垂切除手術を行うこととなりました。Y医師は、自身と看護師3名、看護補助者1名とで、Xに対する虫垂切除術を行うこととしました(麻酔科医不在)。Y医師は、同日午後4時32分頃、Xに対し腰椎麻酔として0.3%のジブカイン(商品名: ペルカミンS)1.2mLを投与しました。Y医師は、A看護師に対しては、Xの脈拍を常時とるとともに、5分ごとに血圧を測定して自身に報告するよう指示し、B看護師に対しては、Xの顔面等の監視にあたるよう指示し、午後4時40分より執刀を開始しました。午後4時45分頃、Xの虫垂の先端が後腹膜に癒着していたため、Y医師が、ペアン鉗子で虫垂根部を挟み、腹膜のあたりまで牽引したところ、Xが「気持ちが悪い」と訴えました。同時に、A看護師が「脈拍が遅く弱くなった」と報告しました。Y医師が、Xに対し、「どうしたぼく、ぼくどうした」と声をかけましたが、返答はなく、Xの顔面は蒼白で唇にはチアノーゼ様のものが認められ、呼吸はやや浅い状態で意識はありませんでした。A看護師から、血圧は触診で最高50mmHgであると報告されました。午後4時47分には、Xは心肺停止となり、Y医師および応援に駆け付けた医師らによる蘇生処置が行われた結果、午後4時55分には、Xの心拍は再開し、自発呼吸も徐々に回復しましたが、残念ながらXの意識が回復することはありませんでした。Xは、その後、長期療養を行いましたが、脳機能低下症のため意思疎通は取れず、寝たきりのため全介助が必要な状態となりました。これに対し、Xおよび両親は、A病院およびY医師らに、9,400万円の損害賠償の請求を行いました。第1審では、検査、腰麻の選択、手術方法、術中の管理、救急措置のいずれにおいても、過失を認めることはできないとして請求を棄却しました。第2審においては、Xの血圧低下は、Y医師が虫垂をペアン鉗子で挟んだことによる迷走神経反射が起因しているとして、その場合、仮にペルカミンS®の添付文書記載通り2分ごとに血圧を測定していたとしても、午後4時45分以前にはXの血圧に異状は認められないことから、添付文書の記載に従わなかったこととXの血圧低下との間には因果関係がないとして原告らの請求を棄却しました。この原審に対し、原告らが上告したところ、最高裁は、午後4時45分に脈拍が低下した時点で、Xの唇にチアノーゼ様のものが認められたことから、Xの血圧低下の原因は、迷走神経反射だけでなく、ペルカミンS®による腰麻ショックも存在していたとし、下記の通り判示し、原判決を破棄し、原審に差し戻しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過7歳男性(X)。昭和49年9月25日午前0時30分頃、腹痛と発熱を訴え、救急車にてA病院を受診し、経過観察および加療目的にて入院となりました。その後、同日午後3時40分まで保存的治療を行っていたものの、化膿性ないし壊阻性の虫垂炎と診断されたため、虫垂切除手術を行うこととなりました。Y医師は、自身と看護師3名、看護補助者1名とで、Xに対する虫垂切除術を行うこととしました(麻酔科医不在)。Y医師は、同日午後4時32分頃、Xに対し腰椎麻酔として0.3%ペルカミンS® 1.2mLを投与しました。 なお、麻酔実施前のXの血圧は112/68mmHg、脈拍は78/分であり、麻酔後3分(午後4時35分)の血圧は124/70mmHg、脈拍は84/分でした。Y医師は、A看護師に対しては、Xの脈拍を常時とるとともに、5分ごとに血圧を測定して自身に報告するよう指示し、B看護師に対しては、Xの顔面等の監視にあたるよう指示し、午後4時40分(40分時点での血圧122/72mmHg)より執刀を開始しました。午後4時45分頃、Xの虫垂の先端が後腹膜に癒着していたため、Y医師が、ペアン鉗子で虫垂根部を挟み、腹膜のあたりまで牽引したところ、Xが「気持ちが悪い」と訴えました。同時に、A看護師が「脈拍が遅く弱くなった」と報告しました。Y医師が、Xに対し、「どうしたぼく、ぼくどうした」と声をかけましたが、返答はなく、Xの顔面は蒼白で唇にはチアノーゼ様のものが認められ、呼吸はやや浅い状態で意識はありませんでした。この時点で、A看護師から、血圧は触診で最高50mmHgであると報告されました。午後4時47分には、Xは心肺停止となり、Y医師および応援に駆け付けた医師らによる蘇生処置が行われた結果、午後4時55分には、Xの心拍は再開し、自発呼吸も徐々に回復しましたが、残念ながらXの意識が回復することはありませんでした。Xは、その後、長期療養を行いましたが、脳機能低下症のため意思疎通は取れず、寝たきりのため全介助が必要な状態となりました。事件の判決「本件麻酔剤の能書には、「副作用とその対策」の項に血圧対策として、麻酔剤注入前に1回、注入後は10ないし15分まで2分間隔に血圧を測定すべきであると記載されているところ、原判決は、能書の右記載にもかかわらず、昭和49年ころは、血圧については少なくとも5分間隔で測るというのが一般開業医の常識であったとして、当時の医療水準を基準にする限り、被上告人に過失があったということはできない、という。しかしながら、医薬品の添付文書(能書)の記載事項は、当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有している製造業者又は輸入販売業者が、投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するものであるから、医師が医薬品を使用するに当たって右文書に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定されるものというべきである。そして、前示の事実に照らせば、本件麻酔剤を投与された患者は、ときにその副作用により急激な血圧低下を来し、心停止にまで至る腰麻ショックを起こすことがあり、このようなショックを防ぐために、麻酔剤注入後の頻回の血圧測定が必要となり、その趣旨で本件麻酔剤の能書には、昭和47年から前記の記載がされていたということができ(鑑定人によると、本件麻酔剤を投与し、体位変換後の午後4時35分の血庄が124/70、開腹時の同40分の血圧が122/72であったものが、同45分に最高血圧が50にまで低下することはあり得ることであり、ことに腰麻ショックというのはそのようにして起こることが多く、このような急激な血圧低下は、通常頻繁に、すなわち1ないし2分間隔で血圧を測定することにより発見し得るもので、このようなショックの発現は、「どの教科書にも頻回に血圧を測定し、心電図を観察し、脈拍数の変化に注意して発見すべしと書かれている」というのである)、他面、2分間隔での血圧測定の実施は、何ら高度の知識や技術が要求されるものではなく、血圧測定を行い得る通常の看護婦を配置してさえおけば足りるものであって、本件でもこれを行うことに格別の支障があったわけではないのであるから、Y医師が能書に記載された注意事項に従わなかったことにつき合理的な理由があったとはいえない。すなわち、昭和49年当時であっても、本件麻酔剤を使用する医師は、一般にその能書に記載された5分間隔での血圧測定を実施する注意義務があったというべきであり、仮に当時の一般開業医がこれに記載された注意事項を守らず、血圧の測定は五分間隔で行うのを常識とし、そのように実践していたとしても、それは平均的医師が現に行っていた当時の医療慣行であるというにすぎず、これに従った医療行為を行ったというだけでは、医療機関に要求される医療水準に基づいた注意義務を尽くしたものということはできない」(最判平成8年1月23日民集50号1巻1頁)ポイント解説今回と次回は添付文書の法的意義について解説いたします。第1回のポイント解説で示したように、民事医療訴訟における過失とは、一般的には「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」に満たない診療のことをいいます。しかし、この文言をいくら眺めたところで、具体的な事例についての線引きの基準を導き出すことはできません。したがって、例えば、本件における腰椎麻酔下での虫垂切除術において血圧測定を何分間隔で行うことが「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」なのかは、個別具体的に判断せざるを得ません。しかし、裁判官は、医学知識を有しているわけではありませんし、当然、医療現場を経験したこともありません(ロースクール制度により、最近、医師として医療現場を経験した裁判官が生まれるようになりましたがわずか数名です)。したがって、民事医療訴訟において、そういった個別具体的な事例における医療水準を決定する際に用いられるのが、今回のテーマとなる添付文書や次々回のテーマであるガイドラインであったり、医学文献、教科書、意見書、鑑定等です。添付文書は、薬事法52条(医療機器については63条の2)によって下記のように定められています。 (添附文書等の記載事項)第52条  医薬品は、これに添附する文書又はその容器若しくは被包に、次の各号に掲げる事項が記載されていなければならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。一用法、用量その他使用及び取扱い上の必要な注意二日本薬局方に収められている医薬品にあつては、日本薬局方においてこれに添附する文書又はその容器若しくは被包に記載するように定められた事項三第四十二条第一項の規定によりその基準が定められた医薬品にあつては、その基準においてこれに添附する文書又はその容器若しくは被包に記載するように定められた事項四前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項 そして、添付文書の記載については、「医療用医薬品添付文書の記載要領について」(薬発第606号平成9年4月25日厚生省薬務局長通知、薬安第59号厚生省薬務安全課長通知)「医療機器の添付文書の記載要領について」(薬食発第0310003号平成17年3月10日厚生労働省医薬食品局長通知)があり、記載内容、方法について詳細に定められています。同通知別添に記載されている添付文書作成の目的は、「医療用医薬品の添付文書は、薬事法第52条第一号の規定に基づき医薬品の適用を受ける患者の安全を確保し適正使用を図るために、医師、歯科医師及び薬剤師に対して必要な情報を提供する目的で当該医薬品の製造業者又は輸入販売業者が作成するものであること」となっています。このようなことから、古くから裁判所は、医薬品の使用に関する医療水準の判断について、添付文書の記載を他の証拠と比べ重視していました。そのような背景の中で出された、本判決の特徴は、「医薬品の添付文書(能書)の記載事項は、当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有している製造業者又は輸入販売業者が、投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するものであるから、医師が医薬品を使用するに当たって右文書に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定されるものというべきである」と示されるとおり、医薬品の使用に関しては、特段の合理的理由がない限り、添付文書の記載がすなわち医療水準となるとしたことです。確かに、高度の専門性を有する医療訴訟の判断をすることは、裁判所にとって非常に困難でありストレスであることは理解できますし、医師がいつでも手に取って読むことができる添付文書の記載さえ遵守していれば、医薬品の使用に関しては違法と問われることがないという意味においては、適法行為の予見可能性を高めるものであり、医師にとって有利なのかもしれません。しかし、皆さんご存知の通り添付文書の記載には、臨床の実情を反映しているとはいえない記載がしばしば見受けられます。そのような場合、医師が、患者に最善の治療を提供しようと添付文書記載に反する治療を行うことに躊躇してしまう(萎縮効果)こととなり問題といえます。特にわが国では、ドラッグラグが問題となっており、世界標準の治療薬の半数程度しか保険適用されていない現状において、未承認薬や適用外処方が原則違法であるとすることは、医学的に不当な結論といえます。このような医療界からの指摘を受け、現在では、例外となる「特段の合理的理由」を広く解することにより適切な判断をするように対応している判例が複数認められます。「添付文書の内容に違反した場合に,医師に過失が推定されるのは,製造業者や輸入販売業者は,当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有しており,それが添付文書に反映されているという事情に基づくものであるところ,本件においては,ベサコリン散の添付文書に,パーキンソン病の患者に対して禁忌であると記載がされたことについては,販売元の株式会社○○に対する調査嘱託の結果,厚生労働省からの指導によるものであって,株式会社○○自身が裏付けとなる研究結果等に基づいて記載したものではないことが判明しており,禁忌とされた根拠は必ずしも明確ではない。その上,ベサコリン散の成分は血液脳関門を通過しないからパーキンソニズムを悪化させることはないものとの考えが一部の出版物にも掲載されており,また,ベサコリン散のインタビューフォームにも,ベサコリン散の成分は血液脳関門を通過しない旨の記載がある。以上によれば,本件におけるベサコリン散の投与については,添付文書の記載内容には違反しているものの,原告に対してベサコリン散を投与すべき必要性が認められる反面,添付文書上の禁忌の根拠が明確でなく,むしろY医師自身は禁忌の根拠はないものと考えてあえて投与を行っていたものといえる。したがって,添付文書に反していても,本件においてはそこに合理的理由があるものといえ,直ちにY医師に過失があるものということはできない。パーキンソニズムの患者に対し、添付文書においてパーキンソン病の患者には禁忌であると記載されているベサコリン散を投与したとしても、当該患者に対してベサコリン散を投与すべき必要性が認められる反面、添付文書上の禁忌の根拠が明確でなく、当該医師が禁忌の根拠はないものとあえて投与を行っていたときには、当該投与が添付文書に反していても、そこには合理的な理由があるものといえるから、直ちに当該医師に過失があるものということはできない」(横浜地判平成21年3月26日判タ1302号231頁)とした判決や、ステロイド抵抗性の喘息患者に対し、適用外となる免疫抑制剤の投与を行った事案において、「ガイドラインに『難治性喘息に対する治療法として,免疫抑制剤の併用を考慮する場合がある』とされていることや有効性を示す症例報告が複数存在することを理由にただちに違法とはならない」とした判決(京都地判平成19年10月23日)などがあります。とはいえ、本件最高裁判決はまだいきていますので、適用外処方を行う場合には、事前にガイドラインや複数の医学文献等エビデンスを確保したうえで行うことが望ましいといえます。また、適用外処方をする場合には、インフォームド・コンセントの観点から、患者に対し、「(1) 当該治療方法の具体的内容、(2) 当該治療方法がその時点でどの程度の有効性を有するとされているか、(3) 想定される副作用の内容・程度及びその可能性、(4) 当該治療方法を選択した場合と選択しなかった場合とにおける予後の見込み等について、説明を受ける者の理解力に応じ、具体的に説明し、その同意を得た上で実施」(前掲京都地判平成19年10月23日より引用)すべきといえます。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)最判平成8年1月23日民集50号1巻1頁横浜地判平成21年3月26日判タ1302号231頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。 京都地判平成19年10月23日

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外陰部硬化性苔癬にはプロアクティブな維持療法が効果的であり安全

 外陰部硬化性苔癬(VLS)のプロアクティブな維持療法について、局所ステロイド治療で症状が安定した後、週に2回の0.1%フランカルボン酸モメタゾン軟膏(商品名:フルメタほか)を56週間塗布した結果、寛解維持と再発防止が得られ、効果的で安全な治療オプションであることが示された。イタリア・フェラーラ大学のA. Virgili氏らが、無作為化試験の中間結果を報告した。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年2月12日号の掲載報告。 外陰部硬化性苔癬の慢性化や再発は、局所ステロイド治療で効果が得られた後の、長期間にわたる症状管理において問題となる。研究グループは、プロアクティブな治療(週2回の0.1%フランカルボン酸モメタゾン軟膏塗布)の効果を、1日1回の局所ビタミンEあるいはコールドクリーム塗布との比較で、3ヵ月間の局所ステロイド治療後の寛解維持と再発リスクの低下について調べた。 被験者はまず12週間のアクティブ治療期に登録され、1日1回の0.1%フランカルボン酸モメタゾン軟膏塗布を受けた。その後、寛解が得られた患者は52週間の維持治療期に登録され、無作為に週2回の0.1%フランカルボン酸モメタゾン軟膏塗布群、1日1回のコールドクリーム塗布、1日1回の局所ビタミンE治療群に割り付けられた。 主要有効性指標は、再発率と再発までの平均期間であった。 主な結果は以下のとおり。・試験登録された被験者は27例であった。アクティブ治療期後に、完全(あるいはほぼ完全)な寛解を得た25例が維持治療期に入った。・52週の維持治療期終了までに、再発を認めたのは10例(40%)であった。5例(55.6%)はビタミンE群、5例(62.5%)はコールドクリーム群であった。・一方で同期間に、0.1%フランカルボン酸モメタゾン軟膏塗布群での再発はみられなかった。・再発率は、ビタミンEおよびコールドクリーム両治療群のほうが、プロアクティブな治療群よりも有意に高率であった。・ビタミンEおよびコールドクリーム治療群の再発までの平均期間は同一で、21.6週であった。

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「岐阜県COPDストップ作戦」一丸となってCOPDに取り組む

大林 浩幸 ( おおばやし ひろゆき )氏岐阜県COPD対策協議会 本部長(東濃中央クリニック 院長)※所属・役職は2013年2月現在のものです。岐阜県におけるCOPDの現状大規模なCOPD疫学調査NICE Study*の結果によれば、COPD患者は40歳以上の8.6%、約530万人と推定されています。COPDによる死亡者数は年々増加しており2011年の死亡者数は16,639人です。このNICEstudyの有病率に岐阜県の人口を当てはめると、岐阜県のCOPD患者数は12万3070人と推定されます。一方、岐阜県の治療中のCOPD患者数を主要なCOPD治療薬の販売量から推定すると5,000人未満となり、推測患者数の1割にも満たないことがわかりました。すべての治療患者さんが対象ではないとしても、これはあまりにも少なすぎます。残りの10万人以上の方は潜在患者として、気づかれないままでいるか、他疾患の治療のみ受けている可能性もあるわけです。また、岐阜県のCOPD死亡者数は1997年から2009年までの12年間、全国平均を常に上回っています。このように岐阜県のCOPD治療は重要な課題を抱えていました。*NICE(Nippon COPD Epidemiology)study:2004年に順天堂大学医学部の福地氏らが報告した40歳以上の男女2,343名のデータによるCOPDの大規模な疫学調査研究COPD死亡率(人口10万人対)2009年画像を拡大するCOPD死亡率(人口10万人対)岐阜VS全国画像を拡大する手をかけなければいけない疾患COPD喘息には吸入ステロイドなどの治療薬があり、適切な治療で症状改善が可能ですが、COPDには進行を遅らせる治療しかありません。具体的には、禁煙、増悪防止のための感染予防(ワクチン)、日常管理といった基本と、その上で行われる気管支拡張薬、呼吸リハビリテーションなどがそれにあたります。この中の一つでも欠けると奏功しません。このように、COPDはさまざまな医療が必要となる“手をかけなければいけない疾患”だといえます。COPDの認知度の低さCOPDの認知度はきわめて低いものです。一般の方の半数以上はCOPDをご存じありませんし、知っていたとしても名前だけで、COPDがどういう疾患かわかる方はとても少ないです。息切れは年齢のせい、喫煙者だから多少の息切れは当たり前と考えているのですから、医療機関を受診をすることはありません。このように、COPDの認知の低さにより、自分がCOPDである事を知らずに過ごしている方が数多くいることになります。また、受診してもCOPDを理解していないと治療はうまくいきません。COPDの薬剤を吸入しながら喫煙しているケースなどは、その典型例といえます。肺機能検査の普及COPDの早期発見と診断には肺機能検査が必要です。しかし、プライマリ・ケア領域では機器がない、あるいは機器があっても使っていない状況であり、肺機能検査を実施しているのはほとんどが大病院です。つまり、COPD潜在患者のほとんどが医療機関未受診かプライマリ・ケア領域に潜んでいる可能性があります。高血圧などの循環器疾患、脂質異常症や糖尿病、消化器疾患などの疾患治療患者の何割かに隠れCOPDがいると思われます。COPDストップ作戦立ち上げこのような背景の中、岐阜県としては早急にCOPDへの対策を図る必要がありました。COPDは片道切符で、一旦悪化するとなかなか元に戻りません。ブレーキの始動が遅れると終着駅は在宅酸素になります。だからこそ、重症化する前にいかに早期発見・早期診断し、いかに禁煙、薬物治療、リハビリテーションという一連の治療を導入していくのかを考えなければなりません。また、これらの治療はバラバラでは意味をなさず、全県が同じレベルでこれらの治療がカバーできるよう足並み揃えて取り組む必要がありました。そこで平成23年度に岐阜県医師会と岐阜県で協議し、委託事業として県医師会がCOPD対策事業を始めることになりました。まず岐阜県医師会COPD対策協議会を立ち上げ、その下にCOPD対策本部を設置しました。そして岐阜県を5地区に分け、各地区に対策委員会を設置しました。地域医師会との連携がスムーズに行われるように、専門医と共に、地域医師会役員も地区委員に就任していただきました。そして私、大林が岐阜県COPD対策本部長に指名され、平成23年10月に全県一斉に「COPDストップ作戦」を立ち上げ開始しました。岐阜県5ブロック画像を拡大するCOPD対策協議会画像を拡大するCOPDストップ作戦の目的は、COPD死の減少です。活動の軸は、COPDの頭文字をとって、Care COPD(COPDの早期治療)、Omit COPD(COPD発症の最大原因である喫煙習慣の排除) 、Prevent COPD(COPD発症の原因であるタバコの害を啓発し、喫煙開始させない)、Discover COPD(COPDを早期から発見し、早期治療に結びつける)の4本としました。県医師会“COPDストップ作戦”の4つのコンセプト画像を拡大するCOPDストップ作戦 第1弾COPD教育講演会ストップ作戦の第1弾はCare COPDとして、COPD教育講演会を実施しました。COPDの適切な治療法の普及を目的とし、H23年10月〜12月に第1回、翌年のH24年10月〜12月に第2回を県内5地区すべてで行っています。H25年には第3回を実施の予定です。この講演会の特徴は、外部講師を招かず、地元の専門医に座長と講師をお願いしていることです。地域の核となる先生と地域の先生が顔の見える連携を築き、今後の病診連携に役立てることを意図しています。COPDストップ作戦第2弾 スパイロキャラバン第2弾はDiscover COPDとして、スパイロキャラバンを実施しました。COPDの早期発見・早期治療の最大の障壁は肺機能検査(スパイロメトリ―)の普及不足です。肺機能検査を体験していただき、より日常診療的な検査にしていただくことを目的として行っています。まず、岐阜県下の診療所等を対象に、各地区での説明会を行い、ボランティア参加で協力診療所を募りました。肺機能検査装置のない診療所には貸し出し、患者さんに無料で肺機能検査を実施していただくというものです。検査対象者は、COPD以外の疾患で受診中の、喫煙中または禁煙歴があり、労作性呼吸困難の訴えがある40歳以上の患者さんです。この方たちに書面で同意を得て肺機能検査を実施しました。第1回はH23年10月〜12月、第二回はH24年9月〜12月の期間に実施しています。第1回のスパイロキャラバンの結果、COPD疑いありの患者さんは、検査を行った方の30.9%でした。とくに、70歳代では半数、80歳代では6割が疑いありと非常に高い頻度でした。人数でいうと、計530例の潜在患者さんを参加51施設が引き出したことになります。また、肺年齢はII期以上から実年齢に比べ有意に下がっていることもわかりました。このスパイロキャラバンの結果は、県下において積極的にCOPDストップ作戦を展開すべき根拠を明らかにしたといえます。スパイロキャラバン実施結果画像を拡大する年齢別COPD(疑)存在率(%)画像を拡大するCOPDストップ作戦第3弾 禁煙指導セミナー第3弾はOmit COPDとして、プライマリ・ケアの医師、薬剤師を対象に県5地区すべてで禁煙治療法セミナーを開講しました。目的は禁煙治療ができる施設を増やし、禁煙治療をもっと市民に身近なものにすることと、県内の禁煙治療レベルの底上げです。COPDの進行を止める最も有効かつ根本的な治療法は禁煙です。ただし、禁煙指導は標準治療に則り正しく行わないと成果が上がりません。ところが、実際は施設によって禁煙指導のやり方に差があるなど多くの課題がありました。平成24年10月~12月に第1回を行いましたが、反響が大きく、各地域とも非常に多くの先生方に参加いただきました。今年は第2回を開催する予定です。COPDストップ作戦第4弾 吸入指導セミナー第4弾はCare COPDとして、吸入指導セミナーを薬剤師会との連携により実施していきたいと考えています。このセミナーは薬局の吸入指導技術の向上と、すべての薬局で同じ指導ができるようにすることが目的です。COPD治療薬の主軸は吸入薬です。しかし、吸入指導が不十分で、患者さんが誤った吸入方法を行ったり、有効に吸入できていないケースが多くみられます。吸入デバイスもメーカーごとに異なり、すべての薬剤・デバイスを網羅したセミナーが必要とされています。東濃地区では2009年から行っていますが、薬剤師の方は非常に熱心で、成果も上がっています。これから全県下に展開していきたいと思います。COPDストップ作戦の成果と今後スパイロキャラバンで新たに多くの潜在患者から引き出し、プライマリ・ケア領域に多くのCOPD患者さんが埋もれている可能性を示したことは、大きな成果といえます。また、この作戦を通し、医療者の意識の変化も感じられます。COPD患者さんを積極的にみられる先生方も増えるなどCOPDの意識が定着し始めてきたと思います。また、肺機能検査実施の意識が高まってきたと思います。スパイロキャラバンに2回とも参加したり、数多く肺機能検査を実施される熱心な先生も増えてきました。肺機能検査の重要性や簡単さが浸透し、第1回目のスパイロキャラバン開始後、肺機能検査装置の新規購入が増えたようです。禁煙指導セミナーについては非常に反響が強く、禁煙治療の標準化が県下で底上げされたと思います。とはいえ、一般市民へのCOPDの認知率向上は今後も必要ですし、Prevent COPDとして学校での禁煙教室も非常に重要です。さらに、病診連携の実現もありますので、これら4つのコンセプトを軸にCOPD作戦を今後も進めて行きたいと考えています。COPD治療は前述のとおり、しなければならないことが多いのですが、それだけのことを行わないと、患者さんに良い医療を十分に提供できたことにはなりません。しかし、個々の施設ごとで、十分に対応できるとは限りません。そこで、これまでのような局地戦でなく、県全体が力を合わせた総力戦で行うことで、患者さんが救われるのだと思います。

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