サイト内検索|page:17

検索結果 合計:447件 表示位置:321 - 340

321.

壊疽性膿皮症、免疫療法とステロイドは同等/BMJ

 壊疽性膿皮症の治療について、シクロスポリンとプレドニゾロンの有効性は同等であることが、英国内39病院から121例を登録して行われた英国・アバディーン大学のAnthony D Ormerod氏らによる無作為化比較試験STOP GAPの結果、示された。壊疽性膿皮症治療のエビデンス報告は、これまで被験者30例による無作為化試験1件のみだが、現在シクロスポリンを使用する多くの医師が、プレドニゾロンよりもシクロスポリンのほうが有効であり副作用が少ないと確信しているという。プレドニゾロンもシクロスポリンも有力な薬剤で予測可能な副作用を有する。本検討で研究グループは、シクロスポリンのプレドニゾロンに対する優越性を検討した。BMJ誌オンライン版2015年6月12日号掲載の報告より。英国内39病院121例を対象に無作為化比較試験 試験は、多施設共同並行群間比較オブザーバー盲検法にて行われ、2009年6月~2012年11月に英国内39病院から、医師が壊疽性膿皮症と診断した121例(うち女性73例、平均年齢54歳)の患者が参加した。このうち9例は、無作為化後に診断が変更となり、分析には112例が組み込まれた。 プレドニゾロン群に無作為化された被験者(53例)には0.75mg/kg/日が単回経口投与され、シクロスポリン群被験者(59例)には4mg/kg/日が2回に分けて投与された。本検討はプラグマティック試験であり、最大投与量はプレドニゾロン75mg/日、シクロスポリン400mg/日であった。 主要アウトカムは、6週間の平均治癒速度で、デジタル画像診断による評価と盲検化された試験担当医による評価が行われた。副次アウトカムは、治癒までの期間、総合的な治療効果、炎症の消退、自己報告に基づく疼痛、QOL、治療不成功の回数、有害作用、再発までの期間などであった。 アウトカムは、ベースライン、6週時、潰瘍治癒時点で評価した(最長6ヵ月)。両群とも、6ヵ月時の潰瘍治癒は約半数、有害作用発生は約3分の2 112例のうち108例(シクロスポリン群57例、プレドニゾロン群51例)について、ベースラインと6週時の評価データが得られた。両群のベースラインの特性はバランスが取れていた。 結果、6週時点で評価した平均治癒速度(SD)は、シクロスポリン群-0.21(1.00)cm2/日、プレドニゾロン群-0.14(0.42)cm2/日で、両群間の補正後平均差について有意差は示されなかった(0.003cm2/日、95%信頼区間[CI]:-0.20~0.21、p=0.97)。 6ヵ月時までに潰瘍治癒が認められたのは、シクロスポリン群28/59例(47%)、プレドニゾロン群25/53例(47%)であった(シクロスポリン群の補正後オッズ比0.94、95%CI:0.55から1.63、p=0.84)。これら治癒例における再発例は、シクロスポリン群8例(30%)、プレドニゾロン群7例(28%)であった(1.43、0.50~4.07、p=0.50)。 有害作用の報告も両群で同程度であり、約3分の2の発生であった(シクロスポリン群68%、プレドニゾロン群66%)。症例は両群で異なったが、両薬剤の既知の副作用に即していた。顕著な違いは、プレドニゾロン群において新規発症の糖尿病、高血糖が、シクロスポリン群において頭痛、消化管障害、腎障害の頻度が高いことなどであった。 重大有害作用については、両群で9例の報告であった。シクロスポリン群は2例で腹部大動脈瘤と急性腎障害であった。プレドニゾロン群は7例で、そのうち感染症例が6例(うち1例が死亡)と頻度が高かった。 これらの結果を踏まえて著者は、「プレドニゾロンとシクロスポリンは、客観的・患者主観的なアウトカムすべてにおいて差は認められなかった」と結論し、「患者個々の治療は、併存疾患を考慮しながら両薬剤の副作用プロファイルをみて、および患者希望優先で選択可能だろう」と述べている。

322.

アトピー性皮膚炎は皮膚リンパ腫のリスク因子?

 アトピー性皮膚炎(AD)患者におけるリンパ腫のリスク増加について議論となっている。フランス・ポール サバティエ大学のLaureline Legendre氏らは、AD患者のリンパ腫リスクと局所治療の影響を検討する目的でシステマティックレビューを行い、AD患者ではリンパ腫のリスクがわずかに増加していることを明らかにした。ADの重症度が有意なリスク因子であった。この結果について著者は「重度ADと皮膚T細胞性リンパ腫の混同がリンパ腫リスクの増加の一因となっている可能性がある」と指摘したうえで、「局所ステロイド薬および局所カルシニューリン阻害薬が重大な影響を及ぼすことはなさそうだ」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌2015年6月号(オンライン版2015年4月1日号)の掲載報告。 研究グループは、症例対照研究とコホート研究について、系統的な文献検索とメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・検索で得られた論文3,979本中、基準を満たした24本が本レビューに組み込まれた。・コホート研究では、リンパ腫のリスクがわずかに増加していた(相対リスク:1.43、95%信頼区間[CI]:1.12~1.81)。・症例対照研究では、リンパ腫の有意なリスク増加はみられなかった(オッズ比:1.18、95%CI:0.94~1.47)。・ADの重症度は、リンパ腫の有意なリスク因子であった。・非常に強力な局所ステロイド薬は、リンパ腫のリスク増加と関連していた。・局所カルシニューリン阻害薬については、1論文でタクロリムスと皮膚リンパ腫との有意な関連が報告された。

323.

急性坐骨神経痛に経口ステロイドは有効か/JAMA

 経口ステロイド薬は、椎間板ヘルニアによる急性神経根障害に起因する坐骨神経痛の治療に一般的に用いられるが、適切な統計学的パワーを備えた臨床試験による評価は行われていないという。米国カイザー・パーマネンテ北カルフォルニアのHarley Goldberg氏らは、今回、プレドニゾンの短期投与により身体的な機能障害はある程度改善されるが、疼痛には効果がないことを確認した。JAMA誌2015年5月19日号掲載の報告。15日間漸減投与法をプラセボ対照無作為化試験で評価 本研究は、急性坐骨神経痛に対する経口プレドニゾン投与の有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験。対象は、年齢18~70歳、割り付け前の3ヵ月以内に神経根痛がみられ、オスウェストリー障害指数(Oswestry Disability Index:ODI、0~100点、点数が高いほど機能障害が重度)スコアが30点以上であり、MRIで椎間板ヘルニアが確認された患者であった。 患者登録は、カイザー・パーマネンテ北カルフォルニアの3つの関連施設で行った。被験者は、経口プレドニゾンを15日間漸減投与する群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。プレドニゾンは、60mg/日、40mg/日、20mg/日の順に各5日間投与した(総投与量:600mg)。 主要評価項目は割り付け後3週時の患者の自己申告によるODIスコアとした。副次評価項目は、1年(52週)時のODI、下肢疼痛スコア(0~10点、点が高いほど疼痛が重度)、脊椎手術、SF-36の身体的側面のサマリースコア(PCS)と精神的側面のサマリースコア(MCS)(いずれも0~100点、点が高いほどQOLが良好)であった。 試験期間は2008年11月~2013年8月であった。269例が登録され、プレドニゾン群に181例、プラセボ群には88例が割り付けられた。平均年齢はプレドニゾン群が45.6歳、プラセボ群は46.7歳、男性がそれぞれ54.1%、58.0%だった。導入の可否は個々の患者の病態を考慮して決める 平均ODIスコアは、プレドニゾン群がベースラインの51.2点から3週時には32.2点に、プラセボ群は51.1点から37.5点に改善した。補正後の平均ODIスコアの両群間の差は6.4点(95%信頼区間[CI]:1.9~10.9、p=0.006)であり、プレドニゾン群がプラセボ群に比べ有意に良好だった。また、52週時の補正後の平均ODIスコアの差は7.4点(95%CI:2.2~12.5、p=0.005)であり、プレドニゾン群で有意に優れた。  補正後の平均下肢疼痛スコアは、プレドニゾン群がプラセボ群に比べ、3週時は0.3点(95%CI:-0.4~1.0、p=0.34)、52週時は0.6点(-0.2~1.3、p=0.15)優れたが、いずれも有意な差はみられなかった。  補正後の平均SF-36 PCSスコアは、プレドニゾン群が3週時は3.3点(95%CI:1.3~5.2、p=0.001)改善され有意差がみられたが、52週時は2.5点(-0.3~5.4、p=0.08)の改善であり有意差はなかった。 また、補正後の平均SF-36 PCSスコアは、プレドニゾン群が3週時は2.2点(95%CI:-0.4~4.8、p=0.10)の改善で有意な差は認めなかったが、52週時は3.6点(0.6~6.7、p=0.02)優れ、有意差がみられた。 52週時の脊椎手術の施行率は、プレドニゾン群が9.9%、プラセボ群は9.1%であり、両群間に有意な差はなかった(相対リスク:1.2、95%CI:0.5~2.6、p=0.68)。 1つ以上の有害事象を発現した患者は、3週時にはプレドニゾン群で有意に多かった(49.2 vs. 23.9%、p<0.001)が、多くが一過性であり、1年後には差はなくなった。治療関連の重篤な有害事象は認めなかった。 著者は、「これまでの検討では、臨床的に意味のある最小限のODIスコアの差は5~15点とされることから、今回の6.4点の改善を根拠にプレドニゾンの使用を決定するのは困難かもしれない。最終的には、個々の患者の病態を考慮して決めることになるだろう」とし、「経口ステロイド薬使用の論拠は、より侵襲的な介入の必要性を低減することであるが、手術施行率も改善しなかった。また、用量が十分でない可能性も残る」と考察している。

324.

重症アルコール性肝炎の推奨薬、その効果は?/NEJM

 アルコール性肝炎は、重症化すると短期的死亡率が30%を超えるという。英国・インペリアル・カレッジのMark R Thursz氏らSTOPAH試験の研究グループは、本症の治療におけるプレドニゾロンとペントキシフィリン(国内未承認)の有用性について検討した。本症は黄疸と肝障害を特徴とする臨床症候群であり、多量のアルコールを長期間摂取することで発症する。両薬剤とも重症例の治療薬として推奨されているが、そのベネフィットは確立されていない。NEJM誌2015年4月23日号掲載の報告より。4群を無作為化試験で比較 STOPAH試験は、2×2要因デザインを用いた二重盲検無作為化試験で、2011年1月~2014年2月に英国の65施設で患者登録が行われた。 対象は、年齢18歳以上、臨床的にアルコール性肝炎と診断され、平均アルコール摂取量が男性は80g/日以上、女性は60g/日以上であり、血清ビリルビン>4.7mg/dL、Maddrey判別関数(discriminant function)≧32(発症後の1ヵ月死亡率20~30%、6ヵ月死亡率30~40%と予測される重症例)の患者とした。 被験者は、以下の4つの投与群に無作為に割り付けられ、28日間の治療が行われた。(1)プレドニゾロンにマッチさせたプラセボ+ペントキシフィリンにマッチさせたプラセボ(プラセボ群)、(2)プレドニゾロン+ペントキシフィリンにマッチさせたプラセボ(プレドニゾロン群)、(3)ペントキシフィリン+プレドニゾロンにマッチさせたプラセボ(ペントキシフィリン群)、(4)プレドニゾロン+ペントキシフィリン(併用群)。 主要評価項目は28日時の死亡とし、副次的評価項目は90日および1年時の死亡または肝移植などであった。 1,103例が登録され、プラセボ群に276例、プレドニゾロン群に277例、ペントキシフィリン群に276例、併用群には274例が割り付けられ、1,092例(272例、274例、273例、273例)が解析の対象となった。プレドニゾロン投与で28日死亡率が改善傾向 ベースライン時の全体の平均年齢は48.7±10.2歳、男性が63%で、アルコール摂取量は男性200.1±125.2g/日、女性149.5±104.3g/日であり、血清ビリルビンが17.6±9.1mg/dL、Maddrey判別関数は62.6±27.2であった。 主要評価項目のデータは1,053例で得られた。28日死亡率は、プラセボ群が17%(45/269例)、プレドニゾロン群が14%(38/266例)、ペントキシフィリン群が19%(50/258例)、併用群は13%(35/260例)であった。 プレドニゾロン投与例(プレドニゾロン群、併用群)の非投与例(プラセボ群、ペントキシフィリン群)に対する28日死亡率のオッズ比(OR)は0.72(95%信頼区間[CI]:0.52~1.01、p=0.06)であり、有意ではないものの投与例で良好な傾向がみられた。一方、ペントキシフィリン投与例(ペントキシフィリン群、併用群)の非投与群(プラセボ群、プレドニゾロン群)に対するORは1.07(95%CI:0.77~1.49、p=0.69)と差を認めなかった。 プレドニゾロン投与例とペントキシフィリン投与例のいずれにおいても、90日時の死亡/肝移植率に差はなく(それぞれ、OR:1.02、95%CI:0.77~1.35、p=0.87、OR:0.97、95%CI:0.73~1.28、p=0.81)、1年時の死亡/肝移植率もほぼ同等であった(それぞれ、OR:1.01、95%CI:0.76~1.35、p=0.94、OR:0.99、95%CI:0.74~1.33、p=0.97)。 年齢や肝性脳症、白血球数などの有意な予後因子で補正後の多変量ロジスティック回帰分析では、28日死亡率に関してプレドニゾロン投与は非投与に比べ有意に良好であった(OR:0.61、95%CI:0.41~0.91、p=0.02)が、90日死亡率(OR:1.00、95%CI:0.73~1.36、p=0.98)および1年死亡率(OR:1.01、95%CI:0.74~1.39、p=0.94)については有意ではなかった。 全体で重篤な有害事象は42%(461/1,092例)に発現し、このうち20%(220/1,092例)が死亡した。4群の重篤な有害事象の頻度は39~47%であり、大きな差はなかった。重篤な感染症は、プレドニゾロン投与例の13%(71/547例)に発現し、非投与例の7%(38/545例)に比べ有意に頻度が高かった(p=0.002)。 著者は、「ペントキシフィリンは生存率を改善しなかったのに対し、プレドニゾロンは28日死亡率を有意ではないものの抑制する傾向がみられたが、90日および1年時の転帰は改善しなかった」とまとめ、「アルコール性肝炎の転帰には感染症の影響が大きいことから、プレドニゾロンにN-アセチルシステインを併用すると感染症が抑制されるとの報告(Nguyen-Khac E, et al. N Engl J Med 2011;365:1781-1789)は注目に値する」と指摘している。

325.

水泳は気管支喘息の子供の運動耐容能や呼吸機能を改善【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第41回

水泳は気管支喘息の子供の運動耐容能や呼吸機能を改善 >足成より使用 水泳は気管支喘息のリスクでもあり、一方で気管支喘息の呼吸リハビリテーションにもなりうるという二面性を持っています。といっても運動誘発性気管支攣縮は別に水泳に限ったことではないため、後者の利益を重視する研究者のほうが多いように感じます。 Beggs S, et al. Swimming training for asthma in children and adolescents aged 18 years and under. Cochrane Database Syst Rev. 2013; 4: CD009607. この報告は、18歳以下の気管支喘息患者さんに対する、水泳の訓練の効果と安全性を調べたシステマティックレビューです。水泳の訓練と他のケアを比較した試験を集め、メタアナリシスを行いました。その結果、8試験・262人が組み込まれました。安定した患者さんから重症の患者さんまで気管支喘息の重症度はさまざまでした。水泳の訓練はおおむね30~90分で、週2~3回、期間としては6~12週継続されました。水泳の比較対象としては、通常ケアが7試験、ゴルフが1試験でした。結果として、水泳は通常のケアやゴルフと比較してQOL、喘息発作、副腎皮質ステロイドの使用というアウトカムに対して統計学的に有意な効果をもたらしませんでした。ただし、水泳は通常のケアと比べて最大酸素消費量、すなわち運動耐容能に効果がみられました。また、呼吸機能検査のパラメータにもわずかながら効果があったと報告されています。プールに使用されている塩素の有無によって、これらのアウトカムに変化がみられるのかどうかはわかりませんでしたが、少なくとも水泳が気管支喘息の患者さんにとって悪さをするものではないだろうと結論付けられました。ただし、他の運動療法と比較して水泳がベストかどうかという点は、不明といわざるを得ません。この研究では塩素について触れられていましたが、とくに室内プールにおける塩素は小児の気管支喘息を悪化させるのではないかとする意見もあります(Immunol Allergy Clin North Am. 2013; 33: 395-408.)。水泳に運動耐容能を増加させる可能性があるにもかかわらず、塩素が気管支喘息を悪化させるのであれば本末転倒ですね。インデックスページへ戻る

326.

ピメクロリムス、乳幼児アトピーの第1選択に?

 アトピー性皮膚炎(AD)は主に乳幼児に発症する。しばしば局所ステロイド薬が処方されるが、副作用に対する懸念のためコンプライアンス不良となることが多く、非ステロイド薬が必要となる。アイスランド大学のBardur Sigurgeirsson氏らは、5年間の長期大規模非盲検試験を行い、ピメクロリムス1%クリーム(PIM、国内未承認)および局所ステロイド薬はいずれも安全で長期治療による免疫系への影響はなく、局所ステロイド薬の使用量を減少させることを示した。著者らは、「PIMは局所ステロイド薬と同程度に有効で、軽~中等症のAD乳幼児に対する第一選択の治療薬となりうることを支持する結果である」とまとめている。Pediatrics誌オンライン版2015年3月23日号の掲載報告。 軽~中等症のAD乳児2,418例を対象に検討した。PIM+増悪時の局所ステロイド薬短期併用(PIM)群(1,205例)または局所ステロイド薬群(1,213例)に無作為化し、5年間治療した。 主要評価項目は安全性とし、副次的評価項目は長期有効性であった。治療成功は、治験責任医師による皮膚症状の重症度の全般評価(Investigator's Global Assessment:IGA)スコアが0(寛解)または1(ほぼ寛解)と定義した。 主な結果は以下のとおり。・PIM群および局所ステロイド薬(TCS)群は、いずれも速やかに効果が発現し、3週までに治療成功率は50%を超えた。・5年後の治療成功率(IGAで評価)は、全体で85%超(PIM群88.7%、TCS群92.3%)、顔で95%(同:96.6%、97.2%)であった。・PIM群ではTCS群と比較し、局所ステロイド薬の使用日数が非常に少なかった(7 vs. 178日)。・有害事象のプロファイルおよび発現頻度は両群で類似しており、液性あるいは細胞性免疫機能障害の所見は認められなかった。

327.

去勢抵抗性前立腺がん治療、今後の課題は

 去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に対して、昨年わが国で3つの新薬が承認・発売された。これらの薬剤の特徴や注意点、さらに今後の治療戦略について、3月10日に東京都内で開催された第13回日本泌尿器科学会プレスセミナーにて、鈴木 啓悦氏(東邦大学医療センターさくら病院泌尿器科 教授)が紹介した。去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に対する新規薬剤 CRPCに対する新規薬剤として、より強化されたホルモン療法を目指したエンザルタミド(商品名:イクスタンジ)とアビラテロン(同:ザイティガ)、ドセタキセル療法後の新規タキサン系化学療法薬であるカバジタキセル(同:ジェブタナ)がわが国で承認されている。また、国内では未承認であるが、免疫に作用する薬剤(ワクチン療法)であるSipuleucel-T、骨転移に対する薬剤である塩化ラジウム-223といった薬剤がある。エンザルタミドとアビラテロン エンザルタミドはアンドロゲン受容体をより強力にブロックすることにより、またアビラテロンはアンドロゲン産生を強力に低下させることにより効果を発揮する。 エンザルタミドとアビラテロンの2剤は、当初はドセタキセル治療後のみに適応であったが、現在はドセタキセル治療の前にも適応を取得している。 ドセタキセルには抗がん作用のみだけでなく、アンドロゲン受容体を抑える作用があることから、ドセタキセル・エンザルタミド・アビラテロンの3剤の間には交差耐性があることが明らかになってきている。この交差耐性のため、ドセタキセル治療後にエンザルタミドやアビラテロンを投与した場合、必ず効果があるわけではないという。 両剤の大規模臨床試験での全生存期間の延長効果は、ともにドセタキセル治療前で約1年~1年半、ドセタキセル治療後で約5ヵ月程度という。また、主な有害事象として、エンザルタミドでは全身倦怠感、食欲低下、まれに痙攣発作、アビラテロンでは低カリウム血症と肝機能障害に注意が必要である。なお、アビラテロンはプレドニゾロン併用が必須である。カバジタキセル エンザルタミドやアビラテロンで治療しても、3人に1人は効果がなく、3人に1人はしばらく経過後に効果がなくなってくるため、これらの患者に対する薬剤として、カバジタキセルが必要になってくる。カバジタキセルはエンザルタミド・アビラテロンと交差耐性がなく、海外ではよく使用されているという。 ただし、日本人の試験では重篤な好中球減少が100%、重篤な発熱性好中球減少症が55%発現しているため、注意が必要である。今後、持続型G-CSF製剤の予防投与で副作用の回避が期待できるが、やはり注意が必要という。個々の患者に応じた治療へ 最後に鈴木氏は、現在の前立腺がん治療薬について、「従来のホルモン製剤とドセタキセルのほかにエンザルタミドとアビラテロンが発売されたが、これら2剤とドセタキセルには交差耐性があるため、必ずしもそれぞれの薬剤が効果を示すわけではない。これら3剤に効果のない患者に対してカバジタキセルが期待されているが、副作用のマネジメントという点で注意が必要である」と述べた。そのうえで、「よい薬剤を、よいタイミングで、適切な患者に、適切な手順で使用されることが今後の課題である」と指摘した。

328.

アナフィラキシーの治療の実際

アナフィラキシーの診断 詳細は別項に譲る。皮膚症状がない、あるいは軽い場合が最大20%ある。 治療(表1)発症初期には、進行の速さや最終的な重症度の予測が困難である。数分で死に至ることもあるので、過小評価は禁物。 ※筆者の私見適応からは、呼吸症状に吸入を先に行う場合があると読めるが、筆者は呼吸症状が軽症でもアナフィラキシーであればアドレナリン筋注が第1選択と考える。また、適応に「心停止」が含まれているが、心停止にはアドレナリン筋注は効果がないとの報告9)から、心停止の場合は静注と考える。表1を拡大する【姿勢】ベッド上安静とし、嘔吐を催さない範囲で頭位を下げ、下肢を挙上して血液還流を促進し、患者の保温に努める。アナフィラキシーショックは、distributive shockなので、下肢の挙上は効果あるはず1)。しかし、下肢拳上を有効とするエビデンスは今のところない。有害ではないので、薬剤投与の前に行ってもよい。【アドレナリン筋肉注射】気管支拡張、粘膜浮腫改善、昇圧作用などの効果があるが、cAMPを増やして肥満細胞から化学物質が出てくるのを抑える作用(脱顆粒抑制作用)が最も大事である。α1、β1、β2作用をもつアドレナリンが速効性かつ理論的第1選択薬である2)。緊急度・重症度に応じて筋注、静注を行う。血流の大きい臀部か大腿外側が薦められる3)。最高血中濃度は、皮下注で34±14分、筋注で8±2分と報告されており、皮下注では遅い4)。16~35%で2回目の投与が必要となる。1mLツベルクリンシリンジを使うと針が短く皮下注になる。1)アドレナリン1回0.3~0.5mg筋注、5~30分間隔 [厚生労働省平成20年(2008)5)]2)アドレナリン1回0.3~0.5mg筋注、5~15分間隔 [UpToDate6)]3)アドレナリン1回0.01mg/kg筋注 [日本アレルギー学会20141)]4)アドレナリン1回0.2~0.5mgを皮下注あるいは筋注 [日本化学療法学会20047)]5)アドレナリン(1mg)を生理食塩水で10倍希釈(0.1mg/mL)、1回0.25mg、5~15分間隔で静注 [日本化学療法学会20047)]6)アドレナリン持続静脈投与5~15µg/分 [AHA心肺蘇生ガイドライン20109)]わが国では、まだガイドラインによってはアドレナリン投与が第1選択薬になっていないものもあり(図1、図2)、今後の改訂が望まれる。 ※必ずしもアドレナリンが第1選択になっていない。 図1を拡大する ※皮膚症状+腹部症状のみでは、アドレナリンが第1選択になっていない。図2を拡大する【酸素】気道開通を評価する。酸素投与を行い、必要な場合は気管挿管を施行し人工呼吸を行う。酸素はリザーバー付マスクで10L/分で開始する。アナフィラキシーショックでは原因物質の使用中止を忘れない。【輸液】hypovolemic shockに対して、生理食塩水か、リンゲル液を開始する。1~2Lの急速輸液が必要である。維持輸液(ソリタ-T3®)は血管に残らないので適さない。【抗ヒスタミン薬、H1ブロッカー】経静脈、筋注で投与するが即効性は望めない。H1受容体に対しヒスタミンと競合的に拮抗する。皮膚の蕁麻疹には効果が大きいが、気管支喘息や消化器症状には効果は少ない。第1世代H1ブロッカーのジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)クロルフェニラミンマレイン酸塩(ポララミン®)5mgを静注し、必要に応じて6時間おきに繰り返す。1)マレイン酸クロルフェニラミン(ポララミン®)2.5~5mg静注 [日本化学療法学会20047)]2)ジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)25~50mg緩徐静注 [AHA心肺蘇生ガイドライン20109)] 保険適用外3)ジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)25~50mg静注 [UpToDate6)]4)経口では第2世代のセチリジン(ジルテック®)10mgが第1世代より鎮静作用が小さく推奨されている [UpToDate6)] 経口の場合、効果発現まで40~60分【H2ブロッカー】心収縮力増強や抗不整脈作用がある。蕁麻疹に対するH1ブロッカーに相乗効果が期待できるがエビデンスはなし。本邦のガイドラインには記載がない。保険適用外に注意。1)シメチジン(タガメット®)300mg経口、静注、筋注 [AHA心肺蘇生ガイドライン9)] シメチジンの急速静注は低血圧を引き起こす [UpToDate6)]2)ラニチジン(ザンタック®)50mgを5%と糖液20mLに溶解して5分以上かけて静注 [UpToDate6)]【βアドレナリン作動薬吸入】気管支攣縮が主症状なら、喘息に用いる吸入薬を使ってもよい。改善が乏しい時は繰り返しての吸入ではなくアドレナリン筋注を優先する。気管支拡張薬は声門浮腫や血圧低下には効果なし。1)サルブタモール吸入0.3mL [日本アレルギー学会20141)、UpToDate6)]【ステロイド】速効性はないとされてきたが、ステロイドのnon-genomic effectには即時作用がある可能性がある。重症例ではアドレナリン投与後に、速やかに投与することが勧められる。ステロイドにはケミカルメディエーター合成・遊離抑制などの作用により症状遷延化と遅発性反応を抑制することができると考えられてきた。残念ながら最近の研究では、遅発性反応抑制効果は認められていない10)。しかしながら、遅発性反応抑制効果が完全に否定されているわけではない。投与量の漸減は不要で1~2日で止めていい。ただし、ステロイド自体が、アナフィラキシーの誘因になることもある(表2)。とくに急速静注はアスピリン喘息の激烈な発作を生じやすい。アスピリン喘息のリスクファクターは、成人発症の気管支喘息、女性(男性:女性=2:3~4)、副鼻腔炎や鼻茸の合併、入院や受診を繰り返す重症喘息、臭覚低下。1)メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム(ソル・メドロール®)1~2mg/kg/日 [UpToDate6)]2)ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム(ソル・コーテフ®)100~200mg、1日4回、点滴静注 [日本化学療法学会20047)]3)ベタメタゾン(リンデロン®)2~4mg、1日1~4回、点滴静注11) 表2を拡大する【グルカゴン】βブロッカーの過量投与や、低血糖緊急時に使われてきた。グルカゴンは交感神経を介さずにcAMPを増やしてアナフィラキシーに対抗する力を持つ。βブロッカーを内服している患者では、アドレナリンの効果が期待できないことがある。まずアドレナリンを使用して、無効の時にグルカゴン1~2mgを併用で静注する12)。β受容体を介さない作用を期待する。グルカゴン単独投与では、低血圧が進行することがあるので注意。アドレナリンと輸液投与を併用する。急速静注で嘔吐するので体位を側臥位にして気道を保つ。保険適用なし。1)グルカゴン1~5mg、5分以上かけて静注 [UpToDate6)]【強力ミノファーゲンC】蕁麻疹単独には保険適用があるがアナフィラキシーには効果なし。観察 いったん症状が改善した後で、1~8時間後に、再燃する遅発性反応患者が4.5~23%存在する。24時間経過するまで観察することが望ましい。治療は急いでも退室は急ぐべきではない13)。 気管挿管 上記の治療の間に、嗄声、舌浮腫、後咽頭腫脹が出現してくる患者では、よく準備して待機的に挿管する。呼吸機能が悪化した場合は、覚醒下あるいは軽い鎮静下で挿管する。気道異物窒息とは違い準備する時間は取れる。 筋弛緩剤の使用は危険である。気管挿管が失敗したときに患者は無呼吸となり、喉頭浮腫と顔面浮腫のためバッグバルブマスク換気さえ不能になる。 気管挿管のタイミングが遅れると、患者は低酸素血症の結果、興奮状態となり酸素マスク投与に非協力的となる。 無声、強度の喉頭浮腫、著明な口唇浮腫、顔面と頸部の腫脹が生じると気管挿管の難易度は高い。喉頭展開し、喉頭を突っつくと出血と浮腫が増強する。輪状甲状靭帯穿刺と輪状甲状靭帯切開を含む、高度な気道確保戦略が必要となる9)。さらに、頸部腫脹で輪状軟骨の解剖学的位置がわからなくなり、喉頭も皮膚から深くなり、充血で出血しやすくなるので輪状甲状靭帯切開も簡単ではない。 絶望的な状況では、筆者は次の気道テクニックのいずれかで切り抜ける。米国麻酔学会の困難気道管理ガイドライン2013でも、ほぼ同様に書かれている(図3)14)。 1)ラリンゲアルマスク2)まず14G針による輪状甲状靭帯穿刺、それから輪状甲状靭帯切開3)ビデオ喉頭鏡による気管挿管 図3を拡大する心肺蘇生アナフィラキシーの心停止に対する合理的な処置についてのデータはない。推奨策は非致死的な症例の経験に基づいたものである。気管挿管、輪状甲状靭帯切開あるいは上記気道テクニックで気道閉塞を改善する。アナフィラキシーによる心停止の一番の原因は窒息だからだ。急速輸液を開始する。一般的には2~4Lのリンゲル液を投与すべきである。大量アドレナリン静注をためらうことなく、すべての心停止に用いる。たとえば1~3mg投与の3分後に3~5mg、その後4~10mg/分。ただしエビデンスはない。バソプレシン投与で蘇生成功例がある。心肺バイパス術で救命成功例が報告されている9)。妊婦対応妊婦へのデキサメタゾン(デカドロン®)投与は胎盤移行性が高いので控える。口蓋裂の報告がある15)。結語アナフィラキシーを早期に認識する。治療はアドレナリンを筋注することが第一歩。急速輸液と酸素投与を開始する。嗄声があれば、呼吸不全になる前に準備して気管挿管を考える。 1) 日本アレルギー学会監修.Anaphylaxis対策特別委員会編.アナフィラキシーガイドライン. 日本アレルギー学会;2014. 2) Pumphrey RS. Clin Exp Allergy. 2000; 30: 1144-1150. 3) Hughes G ,et al. BMJ.1999; 319: 1-2. 4) Sampson HA, et al. J Allergy Clin Immunol. 2006; 117: 391-397. 5) 厚生労働省.重篤副作用疾患別対応マニュアルアナフィラキシー.平成20年3月.厚生労働省(参照2015.2.9) 6) F Estelle R Simons, MD, FRCPC, et al. Anaphylaxis: Rapid recognition and treatment. In:Uptodate. Bruce S Bochner, MD(Ed). UpToDate, Waltham, MA.(Accessed on February 9, 2015) 7) 日本化学療法学会臨床試験委員会皮内反応検討特別部会.抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン(2004年版).日本化学療法学会(参照2015.2.9) 8) 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会.第9章治療.In:食物アレルギー診療ガイドライン2012.日本小児アレルギー学会(参照2015.2.9) 9) アメリカ心臓協会.第12章 第2節 アナフィラキシーに関連した心停止.In:心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2010(American Heart Association Guidelines for CPR & ECC). AHA; 2010. S849-S851. 10) Choo KJ, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012; 4: CD007596. 11) 陶山恭博ほか. レジデントノート. 2011; 13: 1536-1542. 12) Thomas M, et al. Emerg Med J. 2005; 22: 272-273. 13) Rohacek M, et al. Allergy 2014; 69: 791-797. 14) 駒沢伸康ほか.日臨麻会誌.2013; 33: 846-871. 15) Park-Wyllie L, et al. Teratology. 2000; 62: 385-392.

329.

REACT試験:ロフルミラストが使用できるようになったら、痩せ型のCOPD患者には注意が必要(解説:倉原 優 氏)-318

 ロフルミラストは、COPDに対して効果が期待されている経口ホスホジエステラーゼ-4阻害薬である。標準治療を施行しても増悪のリスクが高いCOPD患者に対する効果はわかっていない。 なお、コクランレビューにおいて、ホスホジエステラーゼ-4阻害薬は、COPD患者に対する呼吸機能の改善と急性増悪の減少をもたらすとされているが、実臨床における症状やQOL改善の度合いとしては乏しいものと考えられている1)。また、過去の研究では消化器系の副作用が懸念されており、とくに下痢による体重減少は日本のCOPDを診療している医師にとってゆゆしき事態である。というのも、多くのCOPD患者が痩せ型の体型だからだ。 今回のREACT試験は、重症COPDに対するロフルミラストの効果を検証した、多施設共同プラセボ対照ランダム化比較試験である。重症COPDと銘打っていることもあって、適格患者は過去1年間に2回以上の急性増悪を経験し、なおかつ吸入ステロイド薬(ICS)と、長時間作用性β2刺激薬(LABA)を併用している患者とした。上記2吸入薬以外にも、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の使用も許可された(個人的には、臨床においてICSを吸入しているCOPD患者の中には、相当数のトリプル吸入[ICS/LABA/LAMA]を行っている患者が存在すると考える)。患者はランダムに、ロフルミラスト500μg、あるいはプラセボを1日1回投与する群に割り付けられた。 本研究のプライマリアウトカムである中等症以上の急性増悪の頻度は、ロフルミラスト群のほうが少なかったが、ポアソン回帰分析と負の二項回帰モデルを用いた感度分析の両方の結果が示されているものの、思ったほどインパクトは大きくない。COPD急性増悪による入院アウトカムについても、ロフルミラストが効果ありと書かれているようである(率比0.761、95%信頼区間0.604~0.960、p=0.0209)。また、1秒量と努力性肺活量に対しては、過去の報告と同様に効果があると報告された。COPDの研究でよく使用されるアウトカムである「急性増悪までの期間」については微妙な結果で、急性増悪の回数によってその統計学的有意差がまちまちであり、到底一貫性のある結果とはいい難い。 さて、懸念されていた下痢の副作用は、ロフルミラスト10%、プラセボ4%(差6.6%、95%信頼区間5.50~7.71%)という結果だった。体重減少や悪心についても、やはりロフルミラスト群のほうが多かった。もし、ロフルミラストが使用される日がくるならば、われわれ臨床医は下痢と体重減少に注意する必要があるだろう。 この論文を読んでいるうちに「実臨床にインパクトは大きくない」と感じたのは私だけではないだろう。おおむね、当該コクランレビューの結論に変化を与えないと考える。 確かに、重症COPDの患者に対する治療選択肢は少ない。高齢者の場合、テオフィリンが使いにくく、吸入コンプライアンスの維持も難しいことから効果的な経口治療薬が求められているのは事実である。ロフルミラストがその光となるとはまだいえないが、呼吸器内科で最もコモンなこの疾患に対して、副作用の少ない経口治療薬の選択肢が増えることを祈るばかりである。

330.

ロフルミラストは重度増悪リスクが高いCOPDに有効/Lancet

 ロフルミラスト(roflumilast、 国内未承認)は、吸入ステロイド薬+長時間作用型β2遮断薬にチオトロピウムを併用しても高頻度の重度増悪発症リスクを有する重度慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、増悪を抑制し入院リスクを低減することが、米国・ワイルコーネル大学のFernando J Martinez氏らが行ったREACT試験で示された。ロフルミラストは、抗炎症作用を有する経口ホスホジエステラーゼ-4(PDE-4)阻害薬で、とくに重度~きわめて重度のCOPD、慢性気管支炎の症状、増悪のリスクを有する患者において、中等度~重度の増悪や肺機能の有意な改善効果が示されているが、標準治療を施行しても増悪のリスクが高い患者に関する検討は行われていなかった。Lancet誌オンライン版2015年2月12日号掲載の報告。追加による増悪抑制効果を無作為化試験で評価 REACT試験は、吸入ステロイド薬や長時間作用型β2遮断薬を併用しても、増悪のリスクのある重症COPD患者に対する、ロフルミラストによる増悪の抑制効果を評価する多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化第III/IV相試験。 対象は、年齢40歳以上、喫煙歴が20pack-years以上で、重篤な気流制限や慢性気管支炎の症状を伴い、前年に2回以上の増悪を来した重度COPD患者であった。 被験者は、固定用量の吸入ステロイド薬と長時間作用型β2遮断薬とともに、ロフルミラスト500μgまたはプラセボを1日1回経口投与する群に無作為に割り付けられた。試験前からの吸入チオトロピウム投与例は、継続投与が可とされた。 患者と担当医には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は、中等度~重度のCOPDの増悪の年間発症率とした。感度分析で13.2%の改善 2011年4月3日~2014年5月27日までに、21ヵ国203施設に1,945例が登録された。ロフルミラスト群に973例、プラセボ群には972例が割り付けられ、それぞれ969例、966例が解析の対象となった。平均年齢は両群ともに65歳、男性がそれぞれ74%、75%で、喫煙状況は両群とも48pack-yearsで、現喫煙者はそれぞれ42%、45%だった。 ポアソン回帰分析では、中等度~重度COPD増悪の発症率はプラセボ群に比べロフルミラスト群で13.2%減少し(0.805 vs. 0.927、率比[RR]:0.868、95%信頼区間[CI]:0.753~1.002、p=0.0529)、負の二項回帰モデルを用いた事前に定義された感度分析では、ロフルミラスト群で14.2%の減少が示された(0.823 vs. 0.959、RR:0.858、95%CI:0.740~0.995、p=0.0424)。 ベースラインから気管支拡張薬投与後52週までのFEV1の変化および重度COPD増悪率は、いずれもプラセボ群に比べロフルミラスト群で有意に良好であった(それぞれ、p<0.0001、p=0.0175)。 有害事象は、ロフルミラスト群で67%(648/968例)、プラセボ群では59%(572/967例)に発現した。有害事象関連の治療中止は、ロフルミラスト群が11%(104/968例)であり、プラセボ群の5%(52/967例)に比べ高率であった。 最も頻度の高い有害事象はCOPDの増悪であり、ロフルミラスト群で15%(145/968例)、プラセボ群では19%(185/967例)に認められた。また、下痢がそれぞれ10%、4%、体重減少が9%、3%、悪心が6%、2%、鼻咽頭炎が5%、5%、頭痛が4%、2%、肺炎が4%、5%にみられた。ロフルミラスト群の17例(2%)、プラセボ群の18例(2%)が治療期間(二重盲検期)中に死亡した。 著者は、「ロフルミラストは、許容されない副作用を発現せずに、臨床的に付加的ベネフィットをもたらす唯一の経口抗炎症薬である。本試験の知見は、既存の吸入薬の最大用量を使用しても重度の増悪のリスクがある重度~きわめて重度のCOPDと慢性気管支炎がみられる患者に対する、治療選択肢の情報として役立つだろう」と述べている。

331.

高CRPの重症市中肺炎、ステロイドで治療失敗減/JAMA

 重症市中感染性肺炎で高度炎症反応を示す患者に対し、メチルプレドニゾロンを5日投与することで、治療失敗リスクは18ポイントほど低下することが明らかにされた。スペインのバルセロナ・ホスピタル・クリニックのAntoni Torres氏らが多施設共同プラセボ対照二重盲検無作為化試験の結果、報告した。重症市中肺炎患者では、治療失敗と高度炎症反応とが関係しており、予後が不良となることが知られていた。こうした患者について、コルチコステロイドは炎症サイトカイン放出を調整するが、その治療の有益性については議論の的となっていた。JAMA誌2015年2月17日号掲載の報告より。入院36時間以内からメチルプレドニゾロンを5日投与 研究グループは、2004年6月~2012年2月にかけて、スペイン3ヵ所の教育病院で、重症市中感染性肺炎で高度炎症反応を示す患者を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはメチルプレドニゾロン(0.5mg/kg/12時間、61例)を、もう一方にはプラセボ(59例)を、入院36時間以内から5日間、それぞれ静脈内ボーラス投与した。 高度炎症反応については、入院時CRP値が150mg/L超と定義した。 主要評価項目は、(1)臨床的増悪によるショックの発症、(2)ベースライン時には不要だった侵襲的人工呼吸器の必要性の発生、(3)治療72時間以内の死亡、で定義した「初期治療失敗」。または、(1)X線検査で増悪を確認、(2)持続的な重度呼吸不全、(3)ショックの発症、(4)ベースライン時には不要だった侵襲的人工呼吸器の必要性の発生、(5)治療開始後72~120時間内の死亡、で定義した「後期治療失敗」のいずれかだった。治療失敗に関するメチルプレドニゾロン群のオッズ比は0.34 結果、治療失敗はプラセボ群18例(31%)に対し、メチルプレドニゾロン群は8例(13%)と、有意に低率だった(群間差:18%、95%信頼区間:3~32%、p=0.02)。 メチルプレドニゾロン群のプラセボ群に対する、治療失敗リスクに関するオッズ比は、0.34(同:0.14~0.87、p=0.02)だった。 一方で、院内死亡率はプラセボ群9例(15%)、メチルプレドニゾロン群6例(10%)で、有意差はみられなかった(p=0.37)。また、高血糖症が、メチルプレドニゾロン群11例(18%)で、プラセボ群7例(12%)で確認されたが有意差はみられなかった(p=0.34)。

332.

アナフィラキシー総論 シンプル解説

1.疾患または病態の定義、概念 アナフィラキシーは、食物、薬物、蜂毒、ラテックスなどの原因物質により誘発される即時型アレルギー反応の一型であり、その症状は複数の臓器症状が短時間のうちに全身性に現れ、生命に危機を与えるものを指す。またアナフィラキシーのうち、血圧低下やそれに伴う意識レベルの変容を伴う場合を、アナフィラキシーショックという。 2.病態生理 アナフィラキシーは、典型的には原因物質が感作マスト細胞や好塩基球上のIgEを架橋することにより、系統的なメディエーターの放出および分泌により引き起こされる。メディエーターはヒスタミンやロイコトリエン、トロンボキサン、プロスタグランジン、PAFなどであり、これらは平滑筋攣縮、粘液分泌、血管拡張、血管透過性亢進などの作用を示す。 3.診断基準国際的には複数の診断基準があるが、わが国で採用されている診断基準を以下に示す。3つのクライテリアがあり、そのうちいずれかに該当すればアナフィラキシーと診断する。 1)患者が数分から数時間の経過において、「皮膚・粘膜のどちらか、または両症状」と「呼吸器症状か血圧低下または末梢循環不全」の合併がある。 2)患者が抗原に曝露されて数分から数時間に以下の症状が2つもしくはそれ以上出現した場合。(1)皮膚・粘膜のどちらか、または両症状、(2)呼吸器症状、(3)血圧低下または末梢循環不全、(4)消化器症状。 3)患者が既知の抗原に曝露されて数分から数時間の間の血圧低下。4.臨床症状アナフィラキシー症状は、その定義にもあるように全身的に現れる。このため、あらゆる症状が発現しうるといっても過言ではない。しかし症状出現頻度には大きな違いがある。1)皮膚症状最も現れやすい症状である(図)。皮膚症状は掻痒を伴う蕁麻疹が典型的であるが、掻痒は軽度もしくは伴わずに紅斑のみが広がっていくこともよく経験する。 図を拡大する 2)粘膜症状皮膚症状に次いで頻度が多い。主に口唇腫脹や、眼瞼腫脹、眼球粘膜症状、また口腔咽頭粘膜症状(イガイガ感、違和感など)がよく認められる。皮膚・粘膜症状は程度が強いと、外観的な重篤感をうかがわせるが、生命維持には関与しないので、重症度は高く捉える必要はない。3)喉頭症状(上気道)喉頭は容易には視認できないので、初期は患者の主観症状に依存する。しかし、進行すると窒息から致死の転帰をたどる可能性がある。患者は胸部圧迫感や胸部・喉頭絞扼感、喉頭違和感、嚥下困難感などの主観的症状、嗄声、無声など客観的症状、さまざま訴える。しかし、小児にはこれら主観症状の表出が不得手であり、検者は常に患児の喉頭症状に注意を払うべきである。4)呼吸器症状(下気道)喉頭症状も上気道、つまり呼吸器症状に本来は包含されるが、注意点が異なるので、便宜的に分けて表記した。下気道症状として散発的な咳嗽が、じきに連続性となり咳き込む。喘鳴などraleを伴うようになると呼吸困難症状も現れてくる。5)消化器症状腹痛、嘔吐が多く、時に下痢を認める。腹痛は主観的な症状であるので、重篤度を推し量るには難しい。まれであるが、腹痛の中に膵炎を発症している症例もあり、注意を要する。6)循環器症状血圧低下を代償するために、頻脈、顔面蒼白、四肢冷感、活動性の低下が初期に認められる(プレショック)。さらに低血圧に陥ると、意識レベルの悪化が進行し、持続すると多臓器不全に至る(ショック)。循環器症状は生命維持に直結するので、迅速で適切な対応が求められる。症状は抗原に曝露されてから速やかに出現する。食物・薬物で5分以内が25.8%、30分以内が56.1%、蜂毒では5分以内が41.4%にも及ぶ。ただし、なかには抗原曝露から1~2時間後に症状が誘発される場合もある。その進行はきわめて急速である。蜂毒によるアナフィラキシーの場合は秒単位、食物アレルギーや薬物では分単位で症状悪化を認めるため、急激な変化に即応できるような意識と体制が求められる。また初期症状がいったん収まった後、しばらくして再燃する二相性反応も知られる。その頻度は報告によりさまざまであるが、アナフィラキシー反応の6%で、初期反応の後1.3~28.4時間後に再燃したとする報告がある。初期症状におけるアドレナリン投与の遅れが二相性反応を誘発する指摘もある。5.治療1)アドレナリンアドレナリンがアナフィラキシー治療の第1選択薬であることはきわめて重要な知識である。アドレナリンは、アナフィラキシーによって生じている病態を改善させる最も効果的な薬剤である。アドレナリンの効果発現は早いが、代謝も早く(10~15分)、必要に応じて反復投与する。投与量は0.01mg/kg、投与経路は筋肉注射であり、添付文書には記載されているものの皮下注射は推奨されない。吸入による循環器系に対する効果は否定的であり、挿管時の経気道的投与とは一線を画して理解するべきである。アドレナリン投与の遅れが、致死と関連があるとする報告は枚挙にいとまがない。しかし日常診療においてアドレナリンは使い慣れない薬剤であり、治療指数(治療効果を示す量と致死量との比較)が狭く、また劇薬指定であることが影響して、その投与時期が遅れることがきわめて多い。致死の可能性がある症状、すなわちショックおよびプレショック、そして呼吸器(上下気道)症状に対して、迅速積極的に投与されるべきである。わが国では、アドレナリン自己注射薬(エピペン)が平成18年に小児にも適応となり、平成20年には学校・幼稚園、平成23年には保育所における注射が認められるようになった。医師は指導的な立場で、病院外でのアドレナリンの適正使用に貢献することが求められている。アドレナリンを米国だけはエピネフリンと公称するが、その歴史の事実は、高峰 譲吉氏が1900年に発見し、結晶化に成功した物質であり、そのときの命名がアドレナリンである。2)抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬)アドレナリン以外の薬剤のアナフィラキシー治療における位置づけは実は低い。それにもかかわらず漫然と使用されている臨床現場があるのも事実である。抗ヒスタミン薬の蕁麻疹や掻痒に対する効果は明らかであるが、紅斑にすらその効果は限定的である。ましてショックはもちろん、呼吸器、消化器症状に対する効果は期待できない。さらに注射薬はその鎮静効果から、かえって患者の意識レベルの評価を困難にする。このため、安易な投与はむしろ避け、投与対象を慎重に考え、使用後は継続的なモニタリングを行い急変に備える。3)ステロイド薬抗ヒスタミン薬と同様、アナフィラキシーの急性期の治療に対するステロイド薬の効果に関するエビデンスはきわめて乏しい。それにもかかわらず、経験的に多用されている特殊な薬剤である。二相性反応に対する効果を期待されて投与されることが多いが、そのエビデンスも乏しい。漫然と投与して、モニタリングもせずに経過を追うことがあってはならない。4)その他呼吸器症状にはβ2刺激薬吸入が効果的なことが多い。また十分な酸素投与および輸液管理は基本であり。ショック体位を早期から取らせ、不用意な体位変換も避けるべきである。6.臨床検査 アナフィラキシーにおける臨床検査所見の価値はきわめて限定的である。なぜなら検査結果が出た時点では、アナフィラキシー症状の趨勢は決しているからである。 事後的にアナフィラキシー症状を確認する目的としては、マスト細胞や好塩基球由来のメディエーター(血漿ヒスタミンや血清トリプターゼ、PAFなど)の上昇はアナフィラキシーの存在を支持する。特異的IgE値や皮膚テスト(プリックテスト)の結果は、アナフィラキシーのリスクと一定の相関性があるが、強くはない。 7.小児期のアナフィラキシー 小児期のアナフィラキシーの主な原因は食物である。一般的にソバや落花生のアナフィラキシーリスクが高いと考えられるが、鶏卵、牛乳、小麦のリスクが低いわけではなく、同様の管理が必要である。 症状は、小児に限って発症しやすいものはない。しかし、成人と異なり、症状の表出が十分にできないため、気道症状やショック症状の初期症状、たとえば喉頭違和感や閉塞感、立ちくらみ、元気がなくなるなどの症状を、見落とさないよう気を付ける必要がある。疫学調査で、小児期のショック発生率が成人に比べて少ないのは、こうした症状が見落とされているためと考えられる。小児のアナフィラキシーが、成人に比べて軽症であると安易に考えないほうが良い。 アナフィラキシーの治療は成人と変わらない。アドレナリンが第1選択薬であり、投与量は0.01mg/kgで0.5mgを上限とする。 自己判断ができない小児期のアナフィラキシー管理は、保護者や日々の管理者が代行することになる。このためリスクの認識と発症時の対応方法を、彼らに十分に習熟させることが求められる。

333.

気管支喘息、スピリーバ レスピマットへの期待

 2014年12月3日、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社によるスピリーバ レスピマット喘息適応追加記者発表会が都内にて行われた。当日は足立 満氏(国際医療福祉大学 臨床医学研究センター山王病院アレルギー内科)が「喘息治療の現状とスピリーバ レスピマットへの期待」と題し講演した。■本邦における喘息コントロールの課題 本邦における喘息死は大きく減少し2012年には1,728人と2000人を下回っている。だが、一見コントロールされているようでも、実際は症状が残る患者は少なくない。 2012年の本邦の報告によれば、ICS(吸入ステロイド薬)またはICS/LABA(吸入ステロイド・長時間作用性β刺激薬合剤)を継続使用しても喘息症状が発現・悪化する患者は86.2%、そのうち31.5%は緊急受診や入院などの喘息増悪を起こしている1)。このように患者のコントロールレベルは万全とはいえない状況である。さらにコントロール不十分・不良患者は重症例だけでなく軽症例でも6~7割みられる2)。■喘息治療薬として見直される抗コリン薬 抗コリン薬は喘息治療薬としては本邦では主流の位置付けとはいえない。しかし、海外では中等症から重症例の救急治療において使用が推奨されるなど、その位置付けは本邦以上に確立しているという。抗コリン薬の作用機序はβ刺激薬をはじめとする気管支拡張薬とは異なる。また気管支拡張による肺機能改善以外にも、入院の減少などの効果も認められることから、近年は治療選択肢の1つとして期待されている。 そのようななか、COPD治療薬の定番である長時間作用性抗コリン薬(LAMA)チオトロピウムについても、気管支喘息の臨床エビデンスが続々と報告されている。ICS/LABAでコントロール不能な中等~重症の喘息患者におけるチオトロピウム(スピリーバ レスピマット)の有用性を明らかにした国際大規模試験PrimoTinA3)に続き、本邦の国内長期試験であるCadenTinA試験の結果が紹介された。本試験は、中用量のICSによっても症状が持続する軽~中等症の喘息患者を対象に行われた無作為化並行群間比較試験である。結果、最も薬剤効果の低下するトラフ値の評価において、ICS/チオトロピウム(レスピマット5μg/日)併用群は、ICS単独群に比べ110mL以上の有意なFEV1の上昇を認め、喘息関連QOLも改善している。■重症持続型喘息とはいえ適応は広い スピリーバ レスピマットの本邦での喘息の適応は重症持続型に限られる。ただし、この重症持続型とは、現在の治療ステップに、その治療による現状の症状を加味した評価である。つまり、ステップ2の軽症持続型の治療を行っていても、「症状が毎日ある」など現治療に対する症状が中等症持続型の基準を満たすほど不良な場合、重症持続型の治療適応となる(詳しくは喘息予防・治療ガイドラインを参照)。重症持続型の治療といっても、その適応範囲は広い。「調査データはないものの、現在の治療ステップに治療を加味した“真の重症持続型”はけっして少なくないであろう」と足立氏は述べた。 最後にレスピマット吸入デバイスのデモンストレーションが行われた。レスピマットは噴霧速度が遅く霧の状態が長く保たれることが、記者にも印象的であった。薬剤の効果以外にも薬剤噴霧と吸気を同調しやすいというメリットもありそうだ。【参考文献】1) 秋山一男. アレルギー・免疫. 2012; 19: 1120-1127.2) 大田健ほか. アレルギー. 2010; 59: 2010-2020.3)Kerstjens HA, et al. N Engl J Med. 2012; 367: 1198-1207.

334.

事例28 エソメプラゾール(商品名: ネキシウム)20mgの査定【斬らレセプト】

解説事例では、プレドニゾロン錠(ステロイド剤)の投与で発症することがある胃潰瘍または十二指腸潰瘍の予防に、ネキシウム®カプセル20mgを投与していた事例である。レセプトのコメントにもその旨を記載した。しかし、適応外としてC事由(医学的理由による不適当と判断されるもの)で査定となった。査定となったことが突合点検結果連絡書で届いたので、ネキシウム®カプセル20mgに再発抑制の効能があるのか、添付文書を確認した。効能には「非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制と、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」のみが記載されており、ステロイド剤に対する胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制は記載されていなかった。このことから、適応外を理由に査定となったものであろう。医学的理由にて投与の必要性があったとしても、よほどの必要性がない限り添付文書の記載が優先されるという事例であった。

335.

転移性前立腺がんに対する新規ホルモン療法の威力は?(解説:勝俣 範之 氏)-274

転移性前立腺がんに対する第一選択は、去勢療法(男性ホルモンであるアンドロゲンをブロックする方法:除睾術やホルモン療法などが行われる)である。転移性がんでは、当初は去勢療法が奏効するが、ほとんどが治療抵抗性となる。治療抵抗性となった場合には、これまでは化学療法しか選択肢がなかった。 エンザルタミドは、アンドロゲン受容体を阻害する作用を持つ新規ホルモン療法の1つと考えてよい。化学療法のような強い副作用がないため、患者さんにとっては福音であるといえる。 NEJMに報告されたこの臨床試験は、去勢抵抗性になり、化学療法を受けていない1,717例の患者さんを対象として行われた。エンドポイントは、無増悪生存期間と全生存期間の2つを設定し、αは無増悪生存期間で有意水準を0.001、全生存期間で0.049と分割し、合わせてα=0.05とすることによって、検定の多重性を調整している。あらかじめ計画された中間解析は、516例の死亡イベントが起きた際に行われ、有意水準を0.0147と定められた。 今回の結果は、中間解析でエンザルタミド群がプラセボ群に対して、生存期間中央値が32.4ヵ月vs.30.2ヵ月(HR 0.71、95% CI:0.60~0.84、p<0.001)であり、あらかじめ設定したαを下回ったため、試験は有効中止となり、中間解析で試験結果が公表されることとなり、マスキングは解除され、プラセボ群の患者さんにはエンザルタミドの処方が勧められることとなった。副作用は、疲労と高血圧、背部痛、便秘、ほてりなどがややエンザルタミド群に多いものの、重篤な副作用は見られなかった。 同様の結果は、化学療法後の前立腺がん患者さんを対象としたプラセボ対照ランダム化比較試験でも、エンザルタミド群の全生存期間での有用性が証明されている1)ため、エンザルタミドの効果は再現性があると認められる。 エンザルタミドは、新規ホルモン療法として、標準治療の位置付けを獲得したといえるが、残された問題としては、わが国で同時期に承認されたアビラテロンとの位置付けである。エンザルタミドが、アンドロゲン受容体に結合し、アンドロゲンの作用を抑制することにより効果を発揮するのに対して、アビラテロンは、アンドロゲンの合成に関わるCYP17阻害薬を阻害して、抗アンドロゲン効果を発する。アビラテロンもエンザルタミドと同様に、去勢抵抗性前立腺がんに対して、プラセボ群と比較して、全生存期間を延長させている2)3)。アビラテロンの弱点としては、アンドロゲンのみならず副腎皮質ホルモンの合成も抑制してしまうため、投与する際には、副腎皮質ホルモン(プレドニン)を併用しなければならないことである。 今年になり、わが国で前立腺がんに対して、抗アンドロゲン薬として2剤、アビラテロン、エンザルタミドが相次いで承認された。今後の課題としては、アビラテロンとエンザルタミドの使用順序をどうしていくか? 併用はどうなのか? 去勢感受性前立腺がんに対してはどうなのか? などの疑問を解決すべく、臨床試験が現在進行中である。■「前立腺がんホルモン療法」関連記事ホルモン療法未治療の前立腺がん、ADTにアビラテロンの併用は?/NEJM

336.

結核性心膜炎に対するプレドニゾロンおよび免疫補助療法(解説:小金丸 博 氏)-268

結核性心膜炎は、医療資源の限られたアフリカやアジアの国々において重大な問題となっている。とくにHIV感染者では合併頻度が高く、死亡率も高い。グルココルチコイドを併用することで炎症反応が弱まり、心タンポナーデや収縮性心膜炎による死亡のリスクが低下するとの報告もあるが、その有効性は確立しておらず、米国と欧州のガイドラインでは相反する勧告が示されている。 本研究は、結核性心膜炎を疑う患者に対するプレドニゾロン、またはMycobacterium indicus praniiによる免疫療法の有効性と安全性を調べるためにアフリカで行った、2×2 要因デザインのプラセボ対照ランダム化比較試験である。 1,400例の成人患者をプレドニゾロン投与群とプラセボ投与群に割り付けし、さらにそれぞれM. indicus pranii注射群とプラセボ注射群に割り付けした。死亡、心膜穿刺を要する心タンポナーデ、収縮性心膜炎の3項目のいずれか1つ以上の発生率を主要評価項目とした。M. indicus praniiは非病原性の迅速発育抗酸菌であるが、免疫付与による抗炎症効果を期待して投与された。本試験に参加した患者の3分の2がHIV感染者であった。 主要評価項目に関して、プレドニゾロン投与群とプラセボ投与群、M. indicus pranii注射群とプラセボ注射群は、ともに有意差を認めなかった(ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.77~1.18、およびハザード比:1.03、95%信頼区間:0.82~1.29)。 ただし、プレドニゾロン投与群ではプラセボ投与群と比較して、二次評価項目である収縮性心膜炎の発生率と、入院率を有意に低下させた(ハザード比:0.56、95%信頼区間:0.36~0.87、およびハザード比:0.79、95%信頼区間:0.63~0.99)。安全性に関しては、プレドニゾロン投与群とM. indicus pranii注射群では、両群ともプラセボ群と比較してがんの発生率が有意に増加した。これらは主にカポジ肉腫などHIV感染症に関連したがんだった。 本研究では、心嚢液の抗酸菌塗抹検査、培養検査、あるいは核酸検査が陽性、心膜組織で乾酪性肉芽腫の存在あるいは核酸検査が陽性、のいずれかを満たした症例を“確定例”と定義しているが、確定例は17.1%に過ぎず、多くは“疑い例”だった。 そのため、“疑い例”の中に結核性心膜炎以外の疾患が紛れ込んでいる可能性は否定できない。しかしながら、“疑い例”の診断基準が妥当と思われること、結核性心膜炎の確定診断は難しく、臨床の現場でも“疑い例”に対して治療していることのほうが多いと思われることから、本試験の結果は実臨床の参考にすることができると考える。 主要評価項目では有意差を認めなかったものの、プレドニゾロン投与群で収縮性心膜炎の発生率や入院率が有意に減少した点は、臨床的に意義あることだと考える。しかし、HIV感染者ではプレドニゾロン投与によりがんの発生率が増加するため、結核性心膜炎患者に一律に投与するのではなく、収縮性心膜炎を起こすリスクが高い患者に選択的に投与できれば理想的である。大量の心嚢液貯留や、心嚢液中の炎症マーカー高値などが参考になるかもしれない。 M. indicus praniiによる免疫療法は、結核性心膜炎に対する抗炎症効果の機序もわかっておらず、本試験の結果からも、現時点では有効な治療法ということはできない。

337.

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の内科的治療の選択について(解説:小林 英夫 氏)-261

まず、掲載された本論文の概略にお目通しいただきたい。本論文から読み取るべき点は、どのような薬剤が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬として優れているかについてランダム化試験を実施すべきである、という記述に尽きるというのが筆者の印象である。 Gershon氏らが指摘するように、COPDの内科的治療法には複数の選択肢が存在し、いずれも有効性を支持する報告に裏付けられているものの、最適な治療法がどれなのかについては不明なままである。 本報告では長時間作用性β2刺激薬と吸入ステロイド薬(LABA+ICS)併用群とLABA単独群間で、死亡と入院の発生をアウトカムとして検討を行った。約2年半の追跡によりLABA+ICS併用群において軽度良好な結果が示されたが、この記述をそのまま受け入れるには少なからぬ問題点がある。 本論文は約1万2,000例という多数例を基にした解析であり、それなりの意義があることは間違いない。また、本邦で2薬剤の有効性比較試験を多数例で実行することの困難性を想定すれば、本研究から得られる示唆は重要であろう。しかし、本報告を根拠として今後のCOPD治療を変更することは早計に思う。本報告は薬剤効果を比較する試験デザインではないことを意識していただきたい。 以下、本論文の特徴を列記すると、まず、本研究は後ろ向き観察研究であり、2群の優劣を判定するためのランダム化比較試験ではない。次に、症例はadministrative databasesからの抽出であり、COPDの診断の妥当性や精度について検討できていない。その点について、同著者の既報(1 を引用し、診断精度はsensitivity、specificityともに80%以上としている。しかし、1秒量、1秒率、画像所見など検討されていないのである。さらに25%の症例は呼吸機能検査が実施されていない。 同著者は気管支喘息でも同登録データに基づく診断精度を報告し(2、そちらもsensitivity、specificityがそれぞれ約80%としている。この論文でもピークフロー値などの臨床検査は記述されていない。臨床で重要視する項目と疫学的観察における視点には少なからぬ差異が存在するようである。 上記2点に加え、対象COPD群には糖尿病が25%以上、気管支喘息が約30%、高血圧が70%以上に合併していた点は、本邦症例と比すると近似した集団なのであろうか。 4点目として、集計母集団がLABA単独群3,258例、併用群3万4,289例であり、propensity score matchingを導入した後でもLABA+ICS併用群8,712例、LABA単独群3,160例となっており、対等な2群とは評価しがたい大きな開きが存在している。当初から治療選択にバイアスが存在していることが想定される。 5点目として、サブグループとしての気管支喘息+COPD群はLABA+ICS併用により良好なアウトカムが得られたと報告している。そもそも、気管支喘息合併群をLABA単独で治療するという症例が含まれていることが、行政登録データに基づく症例選択の限界であろう。治療法の優劣を判定する目的では、本研究のような後ろ向き解析には限界があることを前提に、本論文を評価していただきたい。 しかし、疾患歴、入院歴、救急受診歴などの医療情報登録システムが構築され、疫学研究に活用できるカナダの体制を知らされると、本邦でも早急にこのような観察研究が可能となる日を願ってやまない。

338.

ステップ4の気管支喘息患者にできればステロイドを内服させたくない(解説:倉原 優 氏)-258

外来で診ている最重症の気管支喘息患者では、ステロイドの経口投与やIgEをターゲットにしたオマリズマブ(商品名:ゾレア)を使うことがある。それでもコントロールができない患者は多く、さらなる武器に期待している呼吸器内科医は少なくないだろう。その1つが、モノクローナル抗体を用いた抗体医薬品である。メポリズマブは、インターロイキン-5をターゲットとしている。 本試験の登録患者は、少なくとも半年間、ステロイドの全身投与をプレドニゾロン換算で1日当たり5~35mg内服している。すなわち、ステップ4の中でも“やむなく”経口ステロイドを使わざるを得なかった患者が対象となっている。 ご存じの通り、経口ステロイドを長期に続けていると、数々の副作用を起こすだけでなく、日和見感染症によって呼吸器疾患が急性増悪することがしばしばある。そのため、喘息治療においては、できる限り経口ステロイドを減らしたいというのが呼吸器内科医の総意であろう。 今回の結果、メポリズマブによる経口ステロイドの減量効果が認められた。半数以上の患者が50%以上の減量に成功しているが、ただしプラセボにおいても3割の患者が50%以上の減量に成功している。統計学的に有意な差とはいえ、ベースラインとして、本当に経口ステロイドが必要なステップ4の患者だったのかどうか疑問は残る。 ちなみに、ゾレアにもステロイド減量効果があると言われているが、現時点ではまだ結論は出ていない1)。

339.

がん疼痛緩和治療にステロイドがもたらすもの

 オピオイド治療中のがん患者で、その痛みに炎症が重要な役割を占めると考えられる場合、抗炎症効果を期待して、コルチコステロイドを用いることが多い。しかし、そのエビデンスは限られている。そこでノルウェー大学のOrnulf Paulsen氏らは、メチルプレドニゾロンの疼痛緩和効果の評価を行った。試験は、ステロイドの進行がん患者を対象とした疼痛緩和効果の評価としては初となる、多施設無作為二重盲検比較で行われた。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2014年7月7日号の掲載報告。 対象は、中等度から重度の疼痛でオピオイド治療を受けている18歳以上、直近24時間の平均NRSスコア4点以上のがん患者。登録患者は、メチルプレドニゾロン32mg/日群(以下MP群)とプラセボ群(以下PL群)に無作為に割り付けられ、7日間治療を受けた。 主要評価項目は7日時点の平均疼痛強度(NRSスコア、範囲0~10)。副次的評価項目は鎮痛薬使用量(経口モルヒネ換算)、疲労感および食欲不振 、患者満足度である。 主な結果は以下のとおり。・592例がスクリーニングされ、そのうち50例が無作為に割り付けられ、47例が解析対象となった。・患者の平均年齢は64歳、Karnofsky スコアの平均は66であった。・主ながん種は前立腺がん、肺がん、胃・食道がん、婦人科がんであった。・ベースラインのオピオイド使用量(経口モルヒネ換算)は、MP群269.9mg、PL群は160.4mgと差があった。・7日時点の平均疼痛強度はMP群3.60、PL群3.68と両群間で差は認められなかった(p=0.88)。・ベースラインからのオピオイド使用量の変化はMP群1.19 、PL群 1.20と両群間に差はなかった(p=0.95)。・疲労感はMP群では17ポイント改善、PL群で3ポイント悪化と、MP群で有意に改善した(p=0.003)。・食欲不振はMP群で24ポイント減少、PL群では2ポイント増加 と、MP群で有意に改善した(p=0.003)。・患者の全体的な治療満足度はMP群5.4ポイント、 PL群2.0ポイントと、MP群で有意に良好であった(p=0. 001)。・有害事象は両群間に差は認められなかった。 当試験では、メチルプレドニゾロン32mg/日によるオピオイドへの疼痛緩和追加効果は認められなかった。しかしながら、コルチコステロイド治療を受けた患者は、臨床的に有意な疲労感軽減、食欲不振の改善が認められ、患者満足度も高かった。今回の試験は、両群患者のベースラインにおいて、とくにオピオイド使用量に違いがあり、サンプルサイズも小さいものであった。今後は長期的な試験で臨床的利点を検証すべきであろう。

340.

LABA/ICS vs. LABAの長期有効性を観察/JAMA

 66歳以上慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者を対象とした住民ベースの長期コホート試験の結果、とくに喘息を有しており長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の治療を受けていない患者で、長時間作用性β2刺激薬(LABA)+吸入ステロイド薬(ICS)組み合わせ投与はLABA単独投与と比べて、死亡またはCOPD入院の複合アウトカムの発生リスクが有意に低かったことが示された。カナダ・サニーブルックヘルスサイエンスセンターのAndrea S. Gershon氏らが報告した。JAMA誌2014年9月17日号掲載の報告より。66歳以上住民コホートを2.7年、2.5年追跡 LABA/ICS組み合わせ治療の長期ベネフィットを、LABA単独投与と比較した検討は、2003~2011年に、カナダのオンタリオ州で行われた。健康管理データでCOPD症例定義を満たしていた66歳以上の住民を対象とした。傾向スコア適合後、新規投与開始のLABA/ICS治療群8,712例を中央値2.7年、同じく新規LABA単独治療群3,160例を同2.5年、それぞれ追跡した。 主要評価項目は、死亡およびCOPD入院の複合アウトカムだった。LABA/ICS群で死亡・COPD入院リスクが低下 主要アウトカムは、LABA/ICS群5,594例、LABA単独群2,129例について観察された。結果、LABA/ICS群では、死亡3,174例(36.4%)、COPD入院2,420例(27.8%)、LABA単独群では死亡1179 例(37.3%)、COPD入院950例(30.1%)が観察された。 新規LABA/ICS群は新規LABA単独群と比べて、わずかだが死亡・COPD入院のリスクが減少した(5年時点の複合アウトカム差:-3.7%、95%信頼区間[CI]:-5.7~-1.7%、ハザード比[HR]:0.92、95%CI:0.88~0.96)。 両群差は、喘息疾患が併存している患者(同:-6.5%、-10.3~-2.7%、0.84、0.77~0.91)、LAMA治療を受けていない患者で大きかった(同:-8.4%、-11.9~-4.9%、0.79、0.73~0.86)。 著者は、「COPDは管理が可能な呼吸器疾患であるが、世界の主要な死因で3番目に多い。どの処方薬が、COPD患者の健康アウトカム改善に最も効果があるのかを知っておくことが、健康アウトカムを極限まで増すための基本となる」と述べるとともに、今回の所見について無作為化試験で確認すべきであるとまとめている。

検索結果 合計:447件 表示位置:321 - 340