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事例28 エソメプラゾール(商品名: ネキシウム)20mgの査定【斬らレセプト】

解説事例では、プレドニゾロン錠(ステロイド剤)の投与で発症することがある胃潰瘍または十二指腸潰瘍の予防に、ネキシウム®カプセル20mgを投与していた事例である。レセプトのコメントにもその旨を記載した。しかし、適応外としてC事由(医学的理由による不適当と判断されるもの)で査定となった。査定となったことが突合点検結果連絡書で届いたので、ネキシウム®カプセル20mgに再発抑制の効能があるのか、添付文書を確認した。効能には「非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制と、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」のみが記載されており、ステロイド剤に対する胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制は記載されていなかった。このことから、適応外を理由に査定となったものであろう。医学的理由にて投与の必要性があったとしても、よほどの必要性がない限り添付文書の記載が優先されるという事例であった。

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転移性前立腺がんに対する新規ホルモン療法の威力は?(解説:勝俣 範之 氏)-274

転移性前立腺がんに対する第一選択は、去勢療法(男性ホルモンであるアンドロゲンをブロックする方法:除睾術やホルモン療法などが行われる)である。転移性がんでは、当初は去勢療法が奏効するが、ほとんどが治療抵抗性となる。治療抵抗性となった場合には、これまでは化学療法しか選択肢がなかった。 エンザルタミドは、アンドロゲン受容体を阻害する作用を持つ新規ホルモン療法の1つと考えてよい。化学療法のような強い副作用がないため、患者さんにとっては福音であるといえる。 NEJMに報告されたこの臨床試験は、去勢抵抗性になり、化学療法を受けていない1,717例の患者さんを対象として行われた。エンドポイントは、無増悪生存期間と全生存期間の2つを設定し、αは無増悪生存期間で有意水準を0.001、全生存期間で0.049と分割し、合わせてα=0.05とすることによって、検定の多重性を調整している。あらかじめ計画された中間解析は、516例の死亡イベントが起きた際に行われ、有意水準を0.0147と定められた。 今回の結果は、中間解析でエンザルタミド群がプラセボ群に対して、生存期間中央値が32.4ヵ月vs.30.2ヵ月(HR 0.71、95% CI:0.60~0.84、p<0.001)であり、あらかじめ設定したαを下回ったため、試験は有効中止となり、中間解析で試験結果が公表されることとなり、マスキングは解除され、プラセボ群の患者さんにはエンザルタミドの処方が勧められることとなった。副作用は、疲労と高血圧、背部痛、便秘、ほてりなどがややエンザルタミド群に多いものの、重篤な副作用は見られなかった。 同様の結果は、化学療法後の前立腺がん患者さんを対象としたプラセボ対照ランダム化比較試験でも、エンザルタミド群の全生存期間での有用性が証明されている1)ため、エンザルタミドの効果は再現性があると認められる。 エンザルタミドは、新規ホルモン療法として、標準治療の位置付けを獲得したといえるが、残された問題としては、わが国で同時期に承認されたアビラテロンとの位置付けである。エンザルタミドが、アンドロゲン受容体に結合し、アンドロゲンの作用を抑制することにより効果を発揮するのに対して、アビラテロンは、アンドロゲンの合成に関わるCYP17阻害薬を阻害して、抗アンドロゲン効果を発する。アビラテロンもエンザルタミドと同様に、去勢抵抗性前立腺がんに対して、プラセボ群と比較して、全生存期間を延長させている2)3)。アビラテロンの弱点としては、アンドロゲンのみならず副腎皮質ホルモンの合成も抑制してしまうため、投与する際には、副腎皮質ホルモン(プレドニン)を併用しなければならないことである。 今年になり、わが国で前立腺がんに対して、抗アンドロゲン薬として2剤、アビラテロン、エンザルタミドが相次いで承認された。今後の課題としては、アビラテロンとエンザルタミドの使用順序をどうしていくか? 併用はどうなのか? 去勢感受性前立腺がんに対してはどうなのか? などの疑問を解決すべく、臨床試験が現在進行中である。■「前立腺がんホルモン療法」関連記事ホルモン療法未治療の前立腺がん、ADTにアビラテロンの併用は?/NEJM

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結核性心膜炎に対するプレドニゾロンおよび免疫補助療法(解説:小金丸 博 氏)-268

結核性心膜炎は、医療資源の限られたアフリカやアジアの国々において重大な問題となっている。とくにHIV感染者では合併頻度が高く、死亡率も高い。グルココルチコイドを併用することで炎症反応が弱まり、心タンポナーデや収縮性心膜炎による死亡のリスクが低下するとの報告もあるが、その有効性は確立しておらず、米国と欧州のガイドラインでは相反する勧告が示されている。 本研究は、結核性心膜炎を疑う患者に対するプレドニゾロン、またはMycobacterium indicus praniiによる免疫療法の有効性と安全性を調べるためにアフリカで行った、2×2 要因デザインのプラセボ対照ランダム化比較試験である。 1,400例の成人患者をプレドニゾロン投与群とプラセボ投与群に割り付けし、さらにそれぞれM. indicus pranii注射群とプラセボ注射群に割り付けした。死亡、心膜穿刺を要する心タンポナーデ、収縮性心膜炎の3項目のいずれか1つ以上の発生率を主要評価項目とした。M. indicus praniiは非病原性の迅速発育抗酸菌であるが、免疫付与による抗炎症効果を期待して投与された。本試験に参加した患者の3分の2がHIV感染者であった。 主要評価項目に関して、プレドニゾロン投与群とプラセボ投与群、M. indicus pranii注射群とプラセボ注射群は、ともに有意差を認めなかった(ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.77~1.18、およびハザード比:1.03、95%信頼区間:0.82~1.29)。 ただし、プレドニゾロン投与群ではプラセボ投与群と比較して、二次評価項目である収縮性心膜炎の発生率と、入院率を有意に低下させた(ハザード比:0.56、95%信頼区間:0.36~0.87、およびハザード比:0.79、95%信頼区間:0.63~0.99)。安全性に関しては、プレドニゾロン投与群とM. indicus pranii注射群では、両群ともプラセボ群と比較してがんの発生率が有意に増加した。これらは主にカポジ肉腫などHIV感染症に関連したがんだった。 本研究では、心嚢液の抗酸菌塗抹検査、培養検査、あるいは核酸検査が陽性、心膜組織で乾酪性肉芽腫の存在あるいは核酸検査が陽性、のいずれかを満たした症例を“確定例”と定義しているが、確定例は17.1%に過ぎず、多くは“疑い例”だった。 そのため、“疑い例”の中に結核性心膜炎以外の疾患が紛れ込んでいる可能性は否定できない。しかしながら、“疑い例”の診断基準が妥当と思われること、結核性心膜炎の確定診断は難しく、臨床の現場でも“疑い例”に対して治療していることのほうが多いと思われることから、本試験の結果は実臨床の参考にすることができると考える。 主要評価項目では有意差を認めなかったものの、プレドニゾロン投与群で収縮性心膜炎の発生率や入院率が有意に減少した点は、臨床的に意義あることだと考える。しかし、HIV感染者ではプレドニゾロン投与によりがんの発生率が増加するため、結核性心膜炎患者に一律に投与するのではなく、収縮性心膜炎を起こすリスクが高い患者に選択的に投与できれば理想的である。大量の心嚢液貯留や、心嚢液中の炎症マーカー高値などが参考になるかもしれない。 M. indicus praniiによる免疫療法は、結核性心膜炎に対する抗炎症効果の機序もわかっておらず、本試験の結果からも、現時点では有効な治療法ということはできない。

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慢性閉塞性肺疾患(COPD)の内科的治療の選択について(解説:小林 英夫 氏)-261

まず、掲載された本論文の概略にお目通しいただきたい。本論文から読み取るべき点は、どのような薬剤が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬として優れているかについてランダム化試験を実施すべきである、という記述に尽きるというのが筆者の印象である。 Gershon氏らが指摘するように、COPDの内科的治療法には複数の選択肢が存在し、いずれも有効性を支持する報告に裏付けられているものの、最適な治療法がどれなのかについては不明なままである。 本報告では長時間作用性β2刺激薬と吸入ステロイド薬(LABA+ICS)併用群とLABA単独群間で、死亡と入院の発生をアウトカムとして検討を行った。約2年半の追跡によりLABA+ICS併用群において軽度良好な結果が示されたが、この記述をそのまま受け入れるには少なからぬ問題点がある。 本論文は約1万2,000例という多数例を基にした解析であり、それなりの意義があることは間違いない。また、本邦で2薬剤の有効性比較試験を多数例で実行することの困難性を想定すれば、本研究から得られる示唆は重要であろう。しかし、本報告を根拠として今後のCOPD治療を変更することは早計に思う。本報告は薬剤効果を比較する試験デザインではないことを意識していただきたい。 以下、本論文の特徴を列記すると、まず、本研究は後ろ向き観察研究であり、2群の優劣を判定するためのランダム化比較試験ではない。次に、症例はadministrative databasesからの抽出であり、COPDの診断の妥当性や精度について検討できていない。その点について、同著者の既報(1 を引用し、診断精度はsensitivity、specificityともに80%以上としている。しかし、1秒量、1秒率、画像所見など検討されていないのである。さらに25%の症例は呼吸機能検査が実施されていない。 同著者は気管支喘息でも同登録データに基づく診断精度を報告し(2、そちらもsensitivity、specificityがそれぞれ約80%としている。この論文でもピークフロー値などの臨床検査は記述されていない。臨床で重要視する項目と疫学的観察における視点には少なからぬ差異が存在するようである。 上記2点に加え、対象COPD群には糖尿病が25%以上、気管支喘息が約30%、高血圧が70%以上に合併していた点は、本邦症例と比すると近似した集団なのであろうか。 4点目として、集計母集団がLABA単独群3,258例、併用群3万4,289例であり、propensity score matchingを導入した後でもLABA+ICS併用群8,712例、LABA単独群3,160例となっており、対等な2群とは評価しがたい大きな開きが存在している。当初から治療選択にバイアスが存在していることが想定される。 5点目として、サブグループとしての気管支喘息+COPD群はLABA+ICS併用により良好なアウトカムが得られたと報告している。そもそも、気管支喘息合併群をLABA単独で治療するという症例が含まれていることが、行政登録データに基づく症例選択の限界であろう。治療法の優劣を判定する目的では、本研究のような後ろ向き解析には限界があることを前提に、本論文を評価していただきたい。 しかし、疾患歴、入院歴、救急受診歴などの医療情報登録システムが構築され、疫学研究に活用できるカナダの体制を知らされると、本邦でも早急にこのような観察研究が可能となる日を願ってやまない。

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ステップ4の気管支喘息患者にできればステロイドを内服させたくない(解説:倉原 優 氏)-258

外来で診ている最重症の気管支喘息患者では、ステロイドの経口投与やIgEをターゲットにしたオマリズマブ(商品名:ゾレア)を使うことがある。それでもコントロールができない患者は多く、さらなる武器に期待している呼吸器内科医は少なくないだろう。その1つが、モノクローナル抗体を用いた抗体医薬品である。メポリズマブは、インターロイキン-5をターゲットとしている。 本試験の登録患者は、少なくとも半年間、ステロイドの全身投与をプレドニゾロン換算で1日当たり5~35mg内服している。すなわち、ステップ4の中でも“やむなく”経口ステロイドを使わざるを得なかった患者が対象となっている。 ご存じの通り、経口ステロイドを長期に続けていると、数々の副作用を起こすだけでなく、日和見感染症によって呼吸器疾患が急性増悪することがしばしばある。そのため、喘息治療においては、できる限り経口ステロイドを減らしたいというのが呼吸器内科医の総意であろう。 今回の結果、メポリズマブによる経口ステロイドの減量効果が認められた。半数以上の患者が50%以上の減量に成功しているが、ただしプラセボにおいても3割の患者が50%以上の減量に成功している。統計学的に有意な差とはいえ、ベースラインとして、本当に経口ステロイドが必要なステップ4の患者だったのかどうか疑問は残る。 ちなみに、ゾレアにもステロイド減量効果があると言われているが、現時点ではまだ結論は出ていない1)。

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がん疼痛緩和治療にステロイドがもたらすもの

 オピオイド治療中のがん患者で、その痛みに炎症が重要な役割を占めると考えられる場合、抗炎症効果を期待して、コルチコステロイドを用いることが多い。しかし、そのエビデンスは限られている。そこでノルウェー大学のOrnulf Paulsen氏らは、メチルプレドニゾロンの疼痛緩和効果の評価を行った。試験は、ステロイドの進行がん患者を対象とした疼痛緩和効果の評価としては初となる、多施設無作為二重盲検比較で行われた。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2014年7月7日号の掲載報告。 対象は、中等度から重度の疼痛でオピオイド治療を受けている18歳以上、直近24時間の平均NRSスコア4点以上のがん患者。登録患者は、メチルプレドニゾロン32mg/日群(以下MP群)とプラセボ群(以下PL群)に無作為に割り付けられ、7日間治療を受けた。 主要評価項目は7日時点の平均疼痛強度(NRSスコア、範囲0~10)。副次的評価項目は鎮痛薬使用量(経口モルヒネ換算)、疲労感および食欲不振 、患者満足度である。 主な結果は以下のとおり。・592例がスクリーニングされ、そのうち50例が無作為に割り付けられ、47例が解析対象となった。・患者の平均年齢は64歳、Karnofsky スコアの平均は66であった。・主ながん種は前立腺がん、肺がん、胃・食道がん、婦人科がんであった。・ベースラインのオピオイド使用量(経口モルヒネ換算)は、MP群269.9mg、PL群は160.4mgと差があった。・7日時点の平均疼痛強度はMP群3.60、PL群3.68と両群間で差は認められなかった(p=0.88)。・ベースラインからのオピオイド使用量の変化はMP群1.19 、PL群 1.20と両群間に差はなかった(p=0.95)。・疲労感はMP群では17ポイント改善、PL群で3ポイント悪化と、MP群で有意に改善した(p=0.003)。・食欲不振はMP群で24ポイント減少、PL群では2ポイント増加 と、MP群で有意に改善した(p=0.003)。・患者の全体的な治療満足度はMP群5.4ポイント、 PL群2.0ポイントと、MP群で有意に良好であった(p=0. 001)。・有害事象は両群間に差は認められなかった。 当試験では、メチルプレドニゾロン32mg/日によるオピオイドへの疼痛緩和追加効果は認められなかった。しかしながら、コルチコステロイド治療を受けた患者は、臨床的に有意な疲労感軽減、食欲不振の改善が認められ、患者満足度も高かった。今回の試験は、両群患者のベースラインにおいて、とくにオピオイド使用量に違いがあり、サンプルサイズも小さいものであった。今後は長期的な試験で臨床的利点を検証すべきであろう。

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LABA/ICS vs. LABAの長期有効性を観察/JAMA

 66歳以上慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者を対象とした住民ベースの長期コホート試験の結果、とくに喘息を有しており長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の治療を受けていない患者で、長時間作用性β2刺激薬(LABA)+吸入ステロイド薬(ICS)組み合わせ投与はLABA単独投与と比べて、死亡またはCOPD入院の複合アウトカムの発生リスクが有意に低かったことが示された。カナダ・サニーブルックヘルスサイエンスセンターのAndrea S. Gershon氏らが報告した。JAMA誌2014年9月17日号掲載の報告より。66歳以上住民コホートを2.7年、2.5年追跡 LABA/ICS組み合わせ治療の長期ベネフィットを、LABA単独投与と比較した検討は、2003~2011年に、カナダのオンタリオ州で行われた。健康管理データでCOPD症例定義を満たしていた66歳以上の住民を対象とした。傾向スコア適合後、新規投与開始のLABA/ICS治療群8,712例を中央値2.7年、同じく新規LABA単独治療群3,160例を同2.5年、それぞれ追跡した。 主要評価項目は、死亡およびCOPD入院の複合アウトカムだった。LABA/ICS群で死亡・COPD入院リスクが低下 主要アウトカムは、LABA/ICS群5,594例、LABA単独群2,129例について観察された。結果、LABA/ICS群では、死亡3,174例(36.4%)、COPD入院2,420例(27.8%)、LABA単独群では死亡1179 例(37.3%)、COPD入院950例(30.1%)が観察された。 新規LABA/ICS群は新規LABA単独群と比べて、わずかだが死亡・COPD入院のリスクが減少した(5年時点の複合アウトカム差:-3.7%、95%信頼区間[CI]:-5.7~-1.7%、ハザード比[HR]:0.92、95%CI:0.88~0.96)。 両群差は、喘息疾患が併存している患者(同:-6.5%、-10.3~-2.7%、0.84、0.77~0.91)、LAMA治療を受けていない患者で大きかった(同:-8.4%、-11.9~-4.9%、0.79、0.73~0.86)。 著者は、「COPDは管理が可能な呼吸器疾患であるが、世界の主要な死因で3番目に多い。どの処方薬が、COPD患者の健康アウトカム改善に最も効果があるのかを知っておくことが、健康アウトカムを極限まで増すための基本となる」と述べるとともに、今回の所見について無作為化試験で確認すべきであるとまとめている。

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新規抗IL-5抗体薬が重症喘息のステロイド低減/NEJM

 喘息コントロールについて経口ステロイド薬を必要とする重症患者に対して、新たな抗IL-5抗体薬メポリズマブは、有意に経口ステロイド薬の服用を節減し、急性増悪の低下および喘息症状を改善したことが、オランダ・アムステルダム大学のElisabeth H. Bel氏らによる無作為化二重盲検試験の結果、報告された。メポリズマブについてはこれまでに、重症の好酸球性喘息患者において、急性増悪を低下したことは示されていた。NEJM誌オンライン版2014年9月8日号掲載の報告より。重症の好酸球性喘息患者135例を対象に経口ステロイド薬併用の低減効果を検討 研究グループが行ったのは、多施設共同無作為化プラセボ対照の二重盲検並行比較にデザインした第IV相試験であった。 重症の好酸球性喘息患者135例を無作為に、メポリズマブ(100mg用量)またはプラセボを投与群に割り付け、4週ごとに20週間皮下注にて投与し、ステロイドの節減効果について比較検討した。 主要アウトカムは、ステロイド用量低下の程度で、90~100%減少、75~90%未満減少、50~75%未満減少、0~50%未満減少、または減少せず、喘息コントロール不良で評価した。評価は、20~24週間または治療中止時に行った。 そのほかに、急性増悪、喘息コントロール、安全性の割合についても評価した。ステロイド用量低下の可能性はプラセボの2.39倍 結果、ステロイド用量低下の可能性は、メポリズマブ群がプラセボ群よりも、有意に2.39倍(95%信頼区間[CI]:1.25~4.56、p=0.008)高かった。 ベースライン時からの割合の減少中央値は、プラセボ群は減少なしであったのに対し、メポリズマブ群は50%(95%CI:20.0~75.0%)であった(p=0.007)。 ステロイド用量が減少したメポリズマブ群の患者について、プラセボ群と比較して、急性増悪の年間発生率は32%減少(1.44対2.12、p=0.04)、喘息症状(喘息コントロール質問票5[ACQ 5]で評価、臨床的に意味のある差は最小で0.5ポイント)に関しては0.52ポイントの減少(p=0.004)であった。 安全性プロファイルは、メポリズマブとプラセボで同等だった。

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次世代の気管支喘息治療、重症喘息患者に希望の光となりうるか(解説:倉原 優 氏)-248

気管支喘息の治療においてヒト化モノクローナル抗体といえば、IgEをターゲットにしたオマリズマブ(商品名:ゾレア)が知られており、とくにステップ4の気管支喘息患者においては私も使用することがある。決して切れ味がよいとは思っていないが、いくばくかの効果が出る患者もいる。 インターロイキンをターゲットとした喘息治療は数多く報告されているが、その中でもインターロイキン-4に対するヒト化モノクローナル抗体であるデュピルマブ1)、インターロイキン-5に対するヒト化モノクローナル抗体であるメポリズマブ2)の治療効果がとくに期待されている。 今回は、そのうちのメポリズマブのプラセボ対照比較試験である。適格基準は、持続的な好酸球炎症による繰り返す喘息発作を有する患者で、高用量の吸入ステロイド薬でもコントロールが困難なケースである。すなわち、実臨床において「コントロールしにくい」と感じる、われわれが最も治療に難渋するケースを想定している。 この試験の結果で特筆すべきは、増悪の頻度がほとんど半減している点である。また、同号に掲載されたもう1つのメポリズマブの研究においても経口ステロイドの減量効果が認められており3)、今後の重症気管支喘息患者の治療選択肢が広がるだけでなく、経口ステロイドを使いにくい患者群での喘息コントロールに有効な選択肢になりえよう。 治療選択肢の限られた重症患者において、細胞内シグナル伝達系や転写因子に対する分子標的治療薬のさらなる報告を個人的に期待している。ただ、実現したとしても、抗体医薬品の高い薬価が患者にとって大きなハードルになることは否めない。

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結核性心膜炎でのステロイドや免疫療法を検証/NEJM

 結核性心膜炎患者に対し、補助的プレドニゾロン治療またはM. indicus pranii免疫療法のいずれも、有意な効果は認められなかったことが示された。南アフリカ共和国のケープタウン大学のBongani M Mayosi氏らが報告した。結核性心膜炎は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症を有している患者の頻度が高く、抗結核治療にもかかわらず有病率や死亡率が高いことが報告されている。また、補助的グルココルチコイド療法の効果については、死亡率の減少などが報告されていたが、HIV感染症患者についてはがんリスクを増大するといった報告が寄せられ、その使用について国際ガイドラインでは相反する勧告が示されている。研究グループは、補助的プレドニゾロンについてHIV感染症患者を含む結核性心膜炎に対し効果があるのではないかと仮定し検討を行った。NEJM誌オンライン版2014年9月1日号掲載の報告より。1,400例対象に、プレドニゾロンvs. M. indicus pranii免疫療法vs. プラセボ 検討は無作為化2×2要因試験にて、結核性心膜炎と診断または疑われた患者1,400例を対象に行われた。6週間のプレドニゾロンまたはプラセボを投与する群と、3ヵ月間で5回注射投与するM. indicus pranii免疫療法またはプラセボを投与する群に、無作為に割り付けた。 被験者のうち3分の2がHIV感染症を有していた。 主要有効性アウトカムは、死亡・心タンポナーデ・収縮性心膜炎の複合とした。主要複合アウトカムに有意差なし、がんリスク増大 結果、主要アウトカムの発生について、プレドニゾロン投与群(23.8%)とプラセボ投与群(24.5%)との間に有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.95、95%信頼区間[CI]:0.77~1.18、p=0.66)。また、M. indicus pranii免疫療法群(25.0%)とプラセボ投与群(24.3%)との間にも有意差はみられなかった(同:1.03、0.82~1.29、p=0.81)。 一方で、プレドニゾロン治療はプラセボと比較して、収縮性心膜炎の発生(4.4%対7.8%、HR:0.56、95%CI:0.36~0.87、p=0.009)、入院(20.7%vs. 25.2%、HR:0.79、95%CI:0.63~0.99、p=0.04)を有意に減少したことが示された。 しかし、プレドニゾロン治療およびM. indicus pranii免疫療法とも、それぞれプラセボと比較して、がん発生の有意な増大と関連しており(1.8%vs. 0.6%、HR:3.27、95%CI:1.07~10.03、p=0.03/1.8%vs. 0.5%、同:3.69、1.03~13.24、p=0.03)、主としてHIV関連のがん増大によるものであった。

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【寄稿】GERDとの鑑別が必要な好酸球性食道炎

概説好酸球性食道炎は、食道上皮に好酸球を中心とした炎症が持続することによって、嚥下困難や食事のつかえ感などの症状を生じ、食道の運動・知覚異常、狭窄などを合併する慢性アレルギー疾患である。原因として食物や気道抗原に対する過剰な免疫応答が想定されているが、まだ原因や病態については十分に解明されていない。欧米では1990年代以降、急激な増加傾向を示しており、最近の報告では、年間の発症率が人口10万人あたり10人に達し、有病率も人口10万人あたり50人程度となっている。一方、本邦では欧米に比して非常にまれな疾患と考えられていたが、ここ数年、成人例での報告例が増加している。本疾患は胸焼けを主訴とすることもあり、胃食道逆流症(GERD)との鑑別が重要となる。内視鏡的には縦走溝・リング・白色滲出物といった特徴的な所見を呈し、逆流性食道炎に見られる粘膜傷害(mucosal break)とは異なる。確定診断には食道上皮からの生検を行い、高倍率視野で15~20個以上の好酸球浸潤を証明することが必要である。プロトンポンプ阻害薬(PPI)治療によってもGERD症状が改善しない症例の1割弱には、好酸球性食道炎が含まれていると報告されており、治療抵抗性GERDの鑑別疾患として念頭に置く必要がある。疫学本疾患は1970年代に初めて報告され、1990年代前半までは、まれな疾患と考えられていたが、その後、欧米において急激な有病率・罹患率の増加が認められるようになった。また、当初は小児に多い疾患と考えられていたが、最近では成人例の報告が目立つようになっている。最近の米国の報告では有病率は人口10万人あたり50人を超している1)。一方、本邦では、2006年に初めて成人例において本疾患が報告された2)。当時は非常にまれな疾患と考えられていたが、ここ数年、とくに成人例での報告例が増えてきている。2011年に内視鏡約5,000例あたり1例の頻度で好酸球性食道炎が認められることが報告された3)が、最近では、さらにその頻度は増加していると考えられる。われわれの最近の検討では、食事のつかえ感や胸焼けなどの症状を主訴として内視鏡検査を施行した319例について、食道からの生検を行い、8例(2.5%)に15個以上/高倍率視野の食道好酸球浸潤が認められた4)。疫学的な特徴として、30~50代に多く、70~80%が男性であることが示されている5)。また、患者の半数以上に喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患の合併が見られる。PPI治療に抵抗を示すGERD症例に含まれる好酸球性食道炎の頻度に関する調査では、0.9~8.8%が好酸球性食道炎であったと報告されている6)。大規模な検討はなく、頻度にばらつきはあるが、PPI抵抗性GERDの1割弱に好酸球性食道炎が含まれていることが示されている。病態食物や空気中の抗原をアレルゲンとして食道上皮局所において過剰な免疫応答(アレルギー)が生じ、好酸球を中心とした慢性的な炎症が惹起されると想定されている。本疾患では、IgEを介する即時型アレルギー反応よりも、Tリンパ球を中心とした細胞性免疫の作用による非即時型のアレルギー反応が重要であることが示されている。最近の研究から、アレルギー機序に関与するいくつかの遺伝子の多型が発症に関連することが明らかにされつつある7)。症状本疾患は小児および成人で特徴的な症状が異なる。乳幼児期では、哺乳障害や発育の遅れが見られる。学童期から青年期においては、腹痛、嘔気、嘔吐などの非特異的な症状を伴うことが多い。成人例では嚥下障害や食事のつかえ感を生じることが多く、food impactionと呼ばれる食物塊の食道への嵌頓を生じる例も見られる。しかし、胸焼けや呑酸などGERDに典型的な症状を主訴とすることもあり、症状のみから、GERDと鑑別することは困難である。最近、人間ドックなどの無症状者の検診例において、典型的な好酸球性食道炎の内視鏡像を呈し、生検で食道好酸球浸潤を認めるケースも見られるようになっている。診断本疾患の診断は、食道に起因するさまざまな症状を有する例に上部消化管内視鏡検査を行い、食道に特徴的な内視鏡所見を確認し、生検で食道上皮への好酸球浸潤(高倍率視野で15~20個以上)を認めることによってなされる。本邦で作成された診断基準(案)を表1に示す6)。胸部CTで食道壁の肥厚を指摘されることが診断の契機となることもある。末梢血の好酸球増多を示すことは少ない。末梢血IgEは約70%の症例で増加を認めるが、併存するアレルギー疾患の関与によるものが大きいと考えられ、本疾患に特異的なものではない8)。内視鏡で特徴的に認められる所見は縦走溝、リング、白色滲出物である。このうち、縦走溝は本疾患において最も典型的な画像所見であり、逆流性食道炎の際に認められる粘膜傷害(mucosal break)と鑑別可能である(図1)。以前の報告では約30%の症例では内視鏡的な異常を示さないと報告されていたが、最近の報告では90%以上の症例で上記のいずれかの内視鏡所見を示すことが報告されている9)。生検時の注意点として、食道粘膜における好酸球の分布は不均一であり、生検1個での診断感度は50%程度とされ、ガイドラインでは2~4個の生検が必要と示されている。表1を拡大する図1を拡大する米国のガイドラインによる好酸球性食道炎の診断プロセスを図2に示す10)。生検で食道好酸球浸潤を認めた場合、まず、薬剤性や感染性など二次性の原因を除外する。好酸球性食道炎は、消化管のうちで食道のみに好酸球浸潤を来すことが特徴であり、好酸球浸潤が食道のみでなく、胃や小腸へも認められた場合は、好酸球性胃腸炎と診断される。したがって、診断には胃・十二指腸からの生検も必要となる。次のステップとして、PPIの有効性の評価が行われる。高用量PPIの2ヵ月間投与後に再度、内視鏡検査・病理検査を行い、改善の認められた症例はPPI反応性食道好酸球浸潤と診断され、好酸球性食道炎とは区別されて扱われる。したがって、好酸球性食道炎の診断には、PPIが無効であることが含まれている。一方、本邦では、好酸球性食道炎がまれな疾患であり、多くの場合、PPIが有効であることから、PPIの有効性によって診断の区別をしていない。今後、疾患のより詳細な解析を踏まえて、新たな診断基準の作成が必要である。図2を拡大する治療食事療法と薬物療法が中心となる。食事療法としては、原因となる食物アレルゲンを除去することが有効であるとされており、欧米では成分栄養食やアレルゲンとなる頻度の高い6種類(牛乳、小麦、卵、大豆、ナッツ類、魚介類)の食品を除いた6種抗原除去食(six food elimination diet: SFED)が治療に用いられている。最近の食事療法に関するシステマティックレビューによると、成分栄養食で90.8%、SFEDで72.1%の症例で有効であったことが報告されている11)。一方、血清中の抗原特異的IgEや皮膚のプリックテストやパッチテストによって同定されたアレルゲンに対する食事療法は有効でないことが示されており、SFEDが有効であった場合は、1種類ずつ再開し、時間をかけて原因となる食物を同定する必要がある。また、入院中は食事療法が奏効しても、退院後の継続性に問題があることが指摘されている。日本人を対象とした有効性に関する報告はまだなされていない。上述のように、欧米のガイドラインでは好酸球性食道炎はPPIが無効であることが診断基準に含まれている。しかしながら、最近の検討ではPPIが酸分泌抑制効果以外に、免疫調節作用を有しており、食道への好酸球浸潤の誘導を抑制する効果を持つことが報告されている。また、酸性条件下では、病態に関与するサイトカイン(IL-13)の作用が増強することが示されており、PPIが好酸球性食道炎の病態改善に寄与することが推測されている。したがって、食道好酸球浸潤症例の治療にはPPIを第一選択として使用すべきと考えられる(保険適用外)。PPIが無効の場合は、ステロイド投与を行う。投与方法として、気管支喘息の治療に用いられる局所作用ステロイドであるフルチカゾンやブデソニドを吸入ではなく、口腔内に投薬し、唾液と共に嚥下させる方法による治療が行われている(保険適用外)。この方法は、内服による全身投与に比して、副作用の面からも有効であると考えられるが、その効果は必ずしも十分でないとする報告もある。局所作用ステロイドで十分な効果が得られない場合は、プレドニゾロンなどの全身作用ステロイドの投与が行われる(保険適用外)が、投与開始量や減量方法などについて、十分なコンセンサスは得られていない。投与の際は、副作用についての十分な注意が必要である。その他、抗アレルギー薬やロイコトリエン受容体拮抗薬などの治療成績が報告されているが、効果は限定的と考えられている。予後一般に、軽快と増悪を繰り返し、完全に治癒することは少ないとされる。これまでに悪性化の報告はなく、比較的予後は良好であると考えられているが、長期経過に関する報告はまだ少ないため、自然史については不明な点も多い。GERDとの鑑別のポイントGERDと好酸球性食道炎の臨床像の特徴を表2に示す。好酸球性食道炎は中年男性に好発し、アレルギー疾患の合併を半数以上に認め、食事のつかえ感が主訴となることが最も多いが、胸焼けや呑酸を訴えることもある。好酸球性食道炎では90%以上に内視鏡的に特徴的な所見を認めることが最近の報告で示されており、本疾患を念頭に置いて食道を詳細に観察することが重要である。また、GERD症状に対してPPIが有効でない症例においては、食道からの生検を行い、好酸球浸潤の有無を評価すべきである。GERDと好酸球性食道炎はオーバーラップすることもある(図3)。PPIはどちらの病態に対しても有効に作用することが示されており、PPI治療は第一選択となる。現在の欧米のガイドラインではPPI無効例のみを好酸球性食道炎と定義しているが、好酸球性食道炎とPPI反応性食道好酸球浸潤を症状、内視鏡像、病理像から鑑別することは困難であることが報告されており、疾患概念の見直しの必要性が指摘されている。表2を拡大する図3を拡大する引用文献1)Dellon ES, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2014;12:589-596.2)Furuta K, et al. J Gastroenterol. 2006;41:706-710.3)Fujishiro H, et al. J Gastroenterol. 2011;46:1142-1144.4)Shimura S, et al. Digestion. 2014(in press).5)Kinoshita Y, et al. J Gastroenterol. 2013;48:333-339.6)木下芳一ほか. 日本消化器病学会雑誌. 2013;110:953-964.7)石村典久ほか. 分子消化器病. 2013;10:157-165.8)Ishimura N, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2013;28:1306-1313.9)Ishimura N, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2014(in press).10)Dellon ES, et al. Am J Gastroenterol. 2013;108:679-692.11)Arias A, et al. Gastroenterology. 2014;146:1639-1648.

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【寄稿】難治性GERDの治療

はじめに胃食道逆流症(GERD)は、食道裂孔ヘルニアや食道胃運動機能障害により、胃酸を含んだ胃内容物が食道内に逆流停滞するために発症する疾患であり、定型症状は胸やけ、呑酸である。食道にびらん・粘膜障害があれば、びらん性GERD(逆流性食道炎)、食道にびらんが認められない場合は、非びらん性胃食道逆流症(NERD)と定義される。GERDに対する治療の中心は薬物療法であり、強力な酸分泌抑制力を持つプロトンポンプ阻害薬(PPI)が、GERDの第一選択薬としてGERD診療ガイドラインで推奨されている。PPIの治療効果は非常に高く、PPI投与後8週間の時点での逆流性食道炎の治癒率は、80~90%と報告されている。しかし8週間のPPI投与でも治癒が得られない逆流性食道炎も存在し、このような難治性の逆流性食道炎が臨床上問題となっている。また、NERD患者においても、PPI投与にてGERD症状のコントロールが困難なケースが多く存在する。本稿では、難治性GERDの要因について考察を加え、治療法を含めて概説する。CYP2C19遺伝子多型GERDの難治化の要因の1つとしてまず考慮しなければならないのは、CYP2C19遺伝子多型の問題である。PPIは主に肝の代謝酵素CYP2C19で代謝を受ける。このCYP2C19には遺伝子多型が存在することが報告されており、その酵素活性が遺伝子型により異なり、代謝活性の高い順にhomo extensive metabolizer(EM)、hetero EM、poor metabolizer(PM)の3群に分類されている。すなわち、PPIの酸分泌抑制効果は、代謝の遅いPMでは強く、代謝の早いhomo EMでは弱くなることが推察され、実際に24時間胃内pHモニタリングの結果から、このことが証明されている。このCYP2C19遺伝子多型のばらつきは、欧米白人に比較して日本人で大きいことが明らかになっており、実際の逆流性食道炎患者の検討で、homo EMではPMに比較して初期治療における治癒率が有意に低く(図1)、維持療法においてもhomo EMのほうが有意に再発しやすいこと(図2)が報告されている。すなわち、逆流性食道炎の難治化の要因の1つとしてPPI投与時のCYP2C19遺伝子多型の影響が挙げられる。しかしながら、CYP2C19遺伝子多型の判定が保険診療で認められているわけではないので、日常臨床においては逆流性食道炎が難治の場合に、CYP2C19遺伝子多型の影響を受けにくいPPI(ラベプラゾールやエソメプラゾール)への変更を考慮するといった対応を行うのが現実的である。図を拡大する図を拡大するPPI製剤の特徴GERDの難治化のもう1つの要因としてPPI製剤の特徴が挙げられる。PPIは酸と接触すると失活してしまう特性があり、PPIはすべて腸溶製剤となっている。よって、PPIの作用発現には、薬剤が速やかに胃を通過して小腸に達する必要がある。逆に言うと、潰瘍瘢痕などによる胃の変形や幽門部狭窄などのために胃排出遅延がある症例では、PPIが胃内に長時間停滞するために失活してしまい、その酸分泌抑制効果が減弱する可能性が容易に想像される。このような症例の場合、逆流性食道炎が難治となることをしばしば経験する。この場合は、PPI注射剤の投与のほか、PPIをH2受容体拮抗薬(H2RA)に変更、もしくはPPIの剤形を錠剤から顆粒や細粒製剤に変更してみるのも1つの方法である。GERD診療ガイドラインでは、常用量のPPIの1日1回投与にもかかわらず食道炎が治癒しない、もしくは強い症状を訴える場合には、PPIの倍量投与など、投与量・投与方法の変更により、食道炎治癒および症状消失が得られる場合があると記載されている。すなわち、標準量のPPI治療に反応しない患者でも、PPI倍量投与により食道炎治癒および症状消失が得られるとする報告がみられ、常用量のPPIの1日1回投与でGERDに対する十分なコントロールが得られない場合の対応として推奨されている。また、倍量投与の際に、朝・夕と分割投与したほうが、酸分泌抑制効果が高いとの報告があり、分割投与を考慮するのも1つの方法である。さらに、PPIは、食事により活性化するプロトンポンプを阻害するという作用機序、酸性環境のほうが酸分泌抑制効果が強いこと、錠剤の場合は空腹時強収縮により胃より小腸に速やかに薬剤が移行し効果が出現することから、PPIは食前投与のほうが、その酸分泌抑制効果が速やかに発現する。わが国の場合、ほかの薬剤と一緒にPPIを内服することを考慮し、食後にPPIを投与することも多いが、難治性GERDの場合は、食前投与にて症状が良好にコントロールされることをしばしば経験する。nocturnal gastric acid breakthroughさらに、GERDの難治化の要因の1つとして、PPI投与中にもかかわらず夜間の酸分泌が抑制されない例の存在が指摘されている。これはnocturnal gastric acid breakthrough(NAB)と呼ばれるもので、PPI投与中にもかかわらず夜間の胃内pHが4.0以下になる時間が1時間以上連続して認められる現象である。このNABに対して就寝前にH2RAを追加投与することにより、夜間の酸分泌が抑制されることが報告されており、PPIで効果不十分な難治性GERD患者の治療として選択されることがある。NERD、機能性胸やけびらん性GERDよりNERDにおいて、PPIの症状改善率が低い傾向にあることが報告されている。このことは、NERD患者では酸以外の逆流要因がある症例が多く含まれている可能性を示唆している。このような場合、消化管運動賦活薬投与が有効な場合がある。また、逆流と関連のない胸やけ症状は、機能性胸やけ(functional heartburn:FH)とされ、精神的な要因と判断されれば、抗うつ薬の投与などを検討することもある。機能性消化管粘膜障害(functional gastrointestinal disorders:FGID)の研究グループであるRome委員会が提唱するRome IIIによる定義では、FHは、食道内酸逆流が証明できず、病理組織学的に確認しうる食道粘膜障害がないこと、そしていわゆる「胸やけ」症状のあること、なおかつ、この症状が6ヵ月以上前から慢性的に出現していること、とされている。FHの診断にあたっては、除外診断を行う必要がある。すなわち、(1)食道内pHモニタリング検査で食道内への明らかな酸逆流のあるもの、(2)pHモニタリング検査で酸逆流と自覚症状の発現との間に関連がみられるもの、(3)PPI投与で症状改善があるもの―は、NERDと診断されるので、それ以外をFHと診断することができる。日常臨床では、PPI投与で症状が改善するものをNERD、PPI投与による症状改善がないものをFHと診断することも多いが、PPI投与により症状が改善しないNERDはPPI抵抗性NERDとしても扱われており、PPI抵抗性NERDのなかにFHと診断するべき病態が含まれていることを認識する必要がある。近年、pH測定に加えて多チャンネルの食道内インピーダンスを測定することにより、胃酸以外の逆流を評価することが可能となってきた。とくにPPI抵抗性NERDの診断には、pHモニタリング検査による胃酸逆流の評価のみでは不十分である。すなわち、現在は保険適用にはなっていないものの、多チャンネルインピーダンス・pHモニタリング検査を施行し、逆流と胸やけ症状の関連性を検討することにより、PPI抵抗性NERDとFHを鑑別することが可能となる。難治性NERDの場合は、病態をきちんと診断し、適切な治療法を選択する必要がある。外科的治療難治性GERDの場合、外科手術の選択も積極的に考慮してよいと思われる。外科的治療が有効だった症例を提示する(図3)。PPI投与にて逆流性食道炎は治癒するも、著明な食道裂孔ヘルニアのために、前かがみになると食物が口まで逆流してきてしまうという症例であるが、腹腔鏡下噴門形成術を施行し、食道裂孔ヘルニアが改善しGERD症状が消失した。図を拡大する内視鏡的バルーン拡張重度の逆流性食道炎の場合、食道狭窄を来すことがあるが、内視鏡的バルーン拡張術が有効なこともある。図4に症例を提示する。図を拡大する難治性GERDと鑑別すべき疾患難治性GERDと診断されている症例のなかで、実際はGERDではないにもかかわらず、漫然とPPI投与が継続されている症例にしばしば遭遇する。難治性GERDと鑑別すべき疾患をきちんと認識しておくことは、臨床上きわめて重要である。1)食道運動異常食道には、食道アカラシア、びまん性食道痙攣(diffuse esophageal spasm:DES)、ナッツクラッカー食道(nutcracker esophagus)などの機能性疾患が存在し、GERDとの鑑別が必要となる。これらの疾患のいずれも、その治療に亜硝酸薬やカルシウム拮抗薬が有効とされているが、GERD患者では下部食道括約筋圧を低下させ、逆流を増悪させることがあるため注意が必要である。2)好酸球性食道炎好酸球性食道炎(eosinophilic esophagitis:EoE)は、嚥下困難、food impaction(食物塊の食道嵌頓)などを主訴とし、食道上皮の好酸球浸潤を特徴とする原因不明の疾患である。EoEの診断で最も重要なものは、内視鏡検査および生検による病理診断である。縦走溝、輪状溝、カンジダ様の白斑、白濁肥厚した粗造粘膜が、特徴的な内視鏡所見である(図5)。病理診断では、一般に400倍の強拡大で15ないし20個以上の好酸球浸潤を少なくとも1視野に認める場合、EoEと診断される。EoEの治療に関しては、プレドニゾロンの内服や、吸入用ステロイド薬であるプロピオン酸フルチカゾン(商品名:フルタイド)の咽頭噴霧後の嚥下による食道内局所投与の有効性などが報告されている(いずれも保険適用外)。なお、PPIが有効な症例が存在し、PPIを投与しても症状が持続する場合に難治性GERDとの鑑別が必要となることがある。EoEに対する認識がないと診断に苦慮することとなる。図を拡大する機能性ディスぺプシア上腹部痛や胃もたれなどの症状が、主に胃や十二指腸に由来していると考えられる患者のうち、各種検査を行っても症状を説明しうる器質的疾患がない場合は、機能性ディスぺプシア(functional dyspepsia:FD)と診断される。Rome III基準ではFDは「つらいと感じる食後のもたれ感、早期飽満感、心窩部痛、心窩部灼熱感の4項目のうち1つ以上の症状が、6ヵ月以上前からあり、最近の3ヵ月間は症状が続いている」と定義されているが、GERD症状とFD症状はオーバーラップすることが多いとされている。すなわちGERD患者では、胸やけや呑酸症状以外に、胃もたれ、胃の痛み、胃の張りなどの症状がみられ、げっぷ、吐き気、食欲不振といった症状も高い頻度で認められる。なお、PPI投与でGERD症状は軽快したものの上腹部のさまざまなFD症状が軽快しない場合、PPI抵抗性NERDとして診療されていることもあるが、症状をきちんと聴取しFDと診断したほうがよいと思われる。しかし、実際にはGERDの定型的症状である「胸やけ」と「心窩部痛」、「心窩部灼熱感」を厳密に区別することは難しい。一般的には、GERD症状は剣状突起より頭側の胸骨下部で、FDでは剣状突起より肛門側の心窩部領域で認めることで鑑別を行っている。おわりに難治性GERDの原因およびその治療法、難治性GERDの鑑別疾患について概説した。難治性GERDの治療には、適切な診断と薬剤の特性を認識した薬物療法および適切なタイミングでの薬物以外の治療法の選択が必要である。参考文献1)日本消化器病学会編.胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン. 南江堂;2009.2)Kawamura M, et al. Aliment Pharmacol Ther. 2003;17:965-973. 3)Kawamura M, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2007;22:222-226.4)Ariizumi K, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2006;21:1428-1434.5)小池智幸ほか.医学と薬学. 2014;71:519-525.6)Galmiche JP, et al. Gastroenterology. 2006;130:1459-1465.7)Abe Y, et al. J Gastroenterol. 2011;46:25-30.

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腰椎椎間板ヘルニアに有効な局所麻酔薬

 腰椎椎間板ヘルニアまたは神経根痛に対する硬膜外注射の投与経路には椎間孔、椎弓間および仙骨部があるが、最近のシステマティックレビューではこれら3つの投与経路で有意な差はないことが報告されている。米国・ルイビル大学のLaxmaiah Manchikanti氏らは、経椎間孔硬膜外注射による局所麻酔薬の有効性を検討する無作為化二重盲検比較試験を行った。その結果、椎間板ヘルニアまたは神経根炎を有する患者において局所麻酔薬の経椎間孔硬膜外注射はステロイドの有無にかかわらず有効で、ステロイド併用の優越性はないことが明らかになったと報告している。Pain Physician誌2014年7・8月号の掲載報告。 慢性腰痛および下肢痛を有する椎間板ヘルニアおよび神経根炎患者120例を、次の2群に無作為化した。 局所麻酔薬単独群:防腐剤無添加1%リドカイン1.5mL+塩化ナトリウム0.5mL ステロイド併用群:1%リドカイン+ベタメタゾン3mgまたは0.5mL 主要評価項目は、疼痛(数値的評価スケールによる)および機能(オスウェストリー障害指標[ODI 2.0]による)の有意な改善(スコアの50%以上改善)であった。 主な結果は以下のとおり。・2年後に有意な改善がみられたのは、局所麻酔薬単独群65%、ステロイド併用群57%であった。・投与後初期に3週間以上の症状緩和が得られた反応者のうち、局所麻酔薬単独群では80%が有意な改善を認めた。一方でステロイド併用群では73%であった。

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慢性呼吸器疾患増悪の入院症例に対する、入院中早期リハビリテーション導入についてのランダム化比較試験(解説:小林 英夫 氏)-228

本論文は、慢性呼吸器疾患による入院症例において、入院早期の呼吸リハビリテーション開始が1年間の観察期間にどのような影響を及ぼすかを検討したランダム化比較試験である。結果を概括すると、早期リハビリテーション導入は再入院リスクを低下させず(主アウトカム)、機能回復増進にも結び付かず、1年間の死亡率が高いという結果であり、早期リハビリテーション導入は推奨されない、としている。 プロトコールは良質な臨床試験で、本邦でこの臨床試験を実施することの困難さを思うと羨望せざるを得ない面がある。軽微な数字の取り間違えが4ページに数ヵ所あるが、ネガティブな結果にもかかわらず試験そのものは適切に解析されている。ただ、試験の出発点自体が妥当であろうかという疑問もあり、本論文を単純に受け入れることは難しい。種々の前提条件を踏まえたうえで読むべきであろう。冠動脈や脳血管といった急性動脈閉塞、手術後など急性疾患における早期リハビリテーション介入が機能回復に寄与することが明らかになってきているが、慢性(呼吸器)疾患において急性疾患と同様の結果が得られるかどうか、設定そのものの困難性が潜在するのではないだろうか。 また、対象群は慢性呼吸器疾患群389例で、その82%、320例がCOPDである。COPDに限定したsubgroup解析でも全例解析と差異がなかったとしているが、であるならば他疾患を混在させずCOPDのみを対象とした設定にすることで、よりすっきりした試験となったであろうことが惜しまれる。さらに、対象症例の3割は入院治療として酸素吸入が実施されていない点、平均BMI (body mass index) 26という点、副腎皮質ホルモン薬が入院前から87%の症例に全身投与されている点、現喫煙者が20%以上存在する点、これらの点は本邦での入院症例との差異が大きく、患者像が把握しにくい。次に、平均入院期間5日間(英国では平均的な日数とされる)の対象群を、入院後2日以内に早期リハビリテーションを導入する群と退院後に導入する群に分け比較しているが、数日間の導入差が慢性呼吸器疾患にどの程度の差異をもたらすものだろうか。リハビリテーションの効果は継続性によって発揮されるものであり、数日間の差異が仮に統計学的有意性を示したとしても、その理由付けが難しいように思われる。 さらに、著者らが予想していなかった結果(早期リハビリテーショが有害である)となった理由を論理的に説明できない。著者らもby chanceの可能性も記載しているが、数日程度の導入差が1年後の生存に有害な影響をもたらす解釈が困難である。1年間の追跡において、リハビリテーションによる機能改善効果が徐々に減少していくというデータも残念な成績であった。リハビリテーションの継続性、アドヒアランスの難しさが結果に影響していることが推測される。 本論ではないが、死亡原因の内訳に他臓器がんや消化器疾患が含まれている。臨床試験の取り扱いとして正しいとはいえ、リハビリテーション効果と他臓器がん死が結び付くとは評価できないので、付加的に非呼吸器疾患死亡を除外した検討も知りたいところである。また薬物治療内容も一切の記述がなかった。 筆者が初めて呼吸リハビリテーションの概念に接した1980年代初頭には、経験を積んだ理学療法士も存在せず保険点数も算定できない状況だった。2006年、独立した診療報酬項目として呼吸リハビリテーションが収載され、日本呼吸器学会COPDガイドライン第4版でもエビデンスA、Bの位置に呼吸リハビリテーションが記載されている。いまだ本邦での呼吸リハビリテーションは十分に普及しているとはいえないが、その意義が本論文によって否定されたわけではないことは、十分に留意されなければならない。呼吸リハビリテーションそのものを否定している報告ではなく、あくまで、入院後2日以内の早期開始の有効性がなかったということで、退院後の外来リハビリテーション効果は否定されていない。また本試験で用いられたリハビリテーションは2013年のBTS/ATSガイドライン以前の内容であることも、今後の検討において変更すべき点と思われる。

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事例14 クロベタゾン(商品名: キンダベート)軟膏の査定【斬らレセプト】

解説1歳女児に投与した外用薬が、A査定(療養担当規則等に照らし、医学的に適応と認められない:社会保険)となった。事例のヒルドイド®とキンダベート®の混和剤には適用があるはずだが、どうしたものかと問い合わせがあった。ヒルドイド®にキンダベート®などの外用合成副腎皮質ホルモン剤を混ぜて使用すると、広範囲の湿疹やかゆみに効果があるとして、処方されていたという。両薬剤共に添付文書の効能・効果において、「アレルギー性じんま疹には適用がない」と医師に説明したところ、採用している電子レセプトチェックシステムではエラーが出ていないという。医事担当者に運用を確認したところ、誤って警告表示が出ないように修正されていた。このことを医師に伝え、審査支払機関では薬剤の添付文書に記載された効能・効果をもって電子レセプト点検が行われていること、その範囲を超える事例についてはあらかじめに病名もしくはコメントの追加が必要であることを説明した。もちろん医事担当にはコンピュータの修正をお願いした。

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アセチルシステインは特発性肺線維症に“効く”のか?(コメンテーター:倉原 優 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(209)より-

特発性肺線維症に対する治療薬としてピルフェニドンが登場するまで、ステロイド、免疫抑制剤、アセチルシステイン(N-アセチルシステイン:NAC)は世界的に広く用いられていた(現在も汎用されているが)。ただ、これらの薬剤もその効果は限定的であり、現時点で特発性肺線維症に対する使用を強く推奨しているガイドラインは存在しない。ただ、それでもなお「これらの薬剤が少なくとも悪影響は与えることはないだろう」という思いが臨床医の胸の内にあった。ステロイドや免疫抑制剤による日和見感染などの合併症があったとしても、炎症・線維化を抑制する効果はそれを上回るベネフィットがあると考える研究者も少なくなかった。 2011年の秋のことだった。PANTHER-IPF試験の中止が報道された。プレドニゾロン、アザチオプリン、アセチルシステインの3治療併用試験がプラセボと比較して死亡率が多かったため中止されたというのだ1)。アセチルシステイン単独は死亡率超過に寄与したわけではなかったため、PANTHER-IPF試験の後、アセチルシステインとプラセボの2治療群の比較は続けられた。その比較結果を報告したのが今回の論文である。 その結果、残念ながら60週時点におけるアセチルシステインの努力性肺活量、死亡率、急性増悪の頻度に対する効果はプラセボと同等であった。悪影響はなかったものの、プラセボと大きく差がないことが示された。 これらの結果に鑑みると、現時点でステロイド、免疫抑制剤、アセチルシステインの併用だけでなく各々の単独使用にも臨床的な利益がない可能性が高い。世界的に広く用いられているステロイドや免疫抑制剤の使用についてはまだ議論の余地があるだろうが、いずれにしても劇的な効果があるとは考えにくい。 ピルフェニドンやニンテダニブといった新しい薬剤が登場して治療選択肢は広がったが、現場の医師はまだ歯がゆさを感じていることだろう。特発性肺線維症の治療のさらなる発展を願いたい。

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喘息患者へのビタミンD3、治療失敗や増悪を改善しない/JAMA

 成人喘息患者に対するビタミンD3の投与は、ステップ1の吸入ステロイド薬治療の失敗や増悪を改善しなかったことが、米国・ワシントン大学のMario Castro氏らが行った無作為化試験VIDAの結果、示された。著者は「症候性の喘息患者に対するビタミンD3投与の治療戦略について、裏づけは得られなかった」とまとめている。喘息などの疾患において、ビタミンD不足と有害転帰との関連が示唆されている。しかし、経口ビタミンD3の摂取により、吸入ステロイド薬治療を受けているビタミンD不足の喘息患者のアウトカムが改善するかについては、明らかではなかった。JAMA誌2014年5月28日号掲載の報告より。全米9施設で、プラセボ対照試験 VIDA(Vitamin D Add-on Therapy Enhances Corticosteroid Responsiveness in Asthma)試験は、症候性喘息で、血清25ヒドロキシビタミンD値が30ng/mL未満であった成人患者を対象に、全米9施設[米国国立心肺血液研究所(NHLBI)喘息ネット関連の大学病院]で行われた無作為化二重盲検並行群間プラセボ対照試験。2011年4月から被験者の登録を開始し、吸入ステロイド薬など現行治療に関するrun-in期間後、408例が無作為化を受け、フォローアップは2014年1月に完了した。 無作為化された被験者は、吸入ステロイド薬のシクレソニド(商品名:オルベスコ)(320mg/日)+経口ビタミンD3(10万IUを1回、その後4,000 IU/日を28週間投与、201例)またはプラセボ(207例)の投与を受けた。 試験開始から12週時点で喘息コントロールを達成した患者は、シクレソニドを160mg/日とし8週間、その後もコントロールが維持された場合は80mg/日8週間に漸減した。 主要アウトカムは、喘息治療失敗初発までの期間で、肺機能低下、β2刺激薬や全身性ステロイド薬の投与、救急受診や入院で判定した。また、副次アウトカムには、増悪ほか14のアウトカムが事前に規定されていた。初回治療失敗率のハザード比は0.9、増悪は0.7 結果、28週間のビタミンD3治療は、初回治療失敗率を改善しなかった。ビタミンD3群28%(95%信頼区間[CI]:21~34%)、プラセボ群29%(同:23~35%)で、補正後ハザード比(HR)は0.9(同:0.6~1.3、p=0.54)であった。 副次アウトカムは9つの指標について分析した。そのうち増悪について、有意差はみられなかった(13%vs. 19%、HR:0.7、95%CI:0.4~1.2、p=0.21)。 唯一統計的有意差がみられたのは、コントロール維持のためのシクレソニドの全体投与量についてであり、ビタミンD3群111.3mg/日(95%CI:102.2~120.4mg/日)、プラセボ群126.2mg/日(同:117.2~135.3mg/日)で、両群差は14.9mg/日(同:2.1~27.7mg/日)とわずかであった。

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成人喘息増悪予防、ICS/LABA戦略が有効かつ安全/BMJ

 喘息増悪の予防において、低用量吸入ステロイド薬+長時間作動型β2刺激薬(ICS/LABA)治療戦略が最も有効で安全であることが、オランダ・アムステルダム大学のRik J B Loymans氏によるネットワークメタ解析の結果、報告された。解析では若干の不均一性はみられたが、ICS/LABA維持療法+リリーバー、もしくは固定用量/日のICS/LABA療法の2つが同程度に有効かつ安全であることが示された。結果を踏まえて著者は、「低用量吸入ステロイド薬では不十分な場合、これら2つの戦略の選択が好ましく、ステップアップ治療の根拠となりうる」と述べている。BMJ誌オンライン版2014年5月13日号掲載の報告。15の治療戦略とプラセボ介入データをネットワークメタ解析 喘息治療への長時間作動型β2刺激薬の追加は、吸入ステロイド薬を増量するよりも増悪予防において好ましいとされる。これまで、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)や同吸入ステロイド薬との合剤(ICS+LTRA)といった他の戦略と評価したいくつかのメタ解析は行われていたが、研究グループは、ネットワークメタ解析の手法を用いて、現在行われている維持療法戦略の有効性と安全性を比較した。 文献データの検索は、コクランシステマティックレビューにて行い、24週以上の維持療法について無作為化された喘息成人患者が参加しており、全文の中で喘息増悪が報告されていた試験を適格とした。 低用量吸入ステロイド療法を比較群として、主要有効性アウトカムは、重症の増悪発作の発生率とした。副次アウトカムは、中等度~重症の増悪発作率とした。また治療中断率を安全性のアウトカムとして評価した。 文献検索により解析には、15の治療戦略とプラセボを比較・追跡した64試験5万9,622人年のデータを組み込んだ。ICS/LABA以外の組み合わせ戦略は、吸入ステロイド薬に対する優越性示されず 分析の結果、重症増悪発作の予防の有効性は、ICS/LABA維持療法+リリーバーと固定用量/日のICS/LABA療法が同程度に最高位に位置づけられた。 低用量吸入ステロイド薬療法と比較して発生率比は、ICS/LABA維持療法+リリーバーが0.44(95%信頼区間[CI]:0.29~0.66)、固定用量/日のICS/LABA療法は0.51(同:(0.35~0.77)であった。 その他の組み合わせ治療戦略は、吸入ステロイド薬療法に対する優越性は示されず、すべての単剤治療は、低用量吸入ステロイド薬の単独療法に対して劣性であった。 安全性は、従来最善(ガイドラインベース)の診療で、維持療法+リリーバーの組み合わせが最も良好であった。

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胆道閉鎖症への術後ステロイド治療は有益か/JAMA

 新生児の胆道閉鎖症に対する肝門部腸吻合術(葛西法)後に、ステロイド治療を行っても胆汁ドレナージについて有意な改善は得られないことが明らかにされた。米国・シンシナティ小児病院のJorge A. Bezerra氏らが行った多施設共同二重盲検プラセボ対照試験「STRAT」の結果、6ヵ月時点でのドレナージ改善について、若干の臨床的ベネフィットはみられたが統計的な有意差は示されず、ステロイド治療と重大有害事象の早期発生との関連が明らかになったことが報告された。胆汁ドレナージ改善のための術後のステロイド治療が、臨床アウトカムを改善するかについては議論の的となっていた。JAMA誌2014年5月7日号の掲載報告。術後72時間以内にステロイド治療開始vs.プラセボで検討 STRAT(Steroids in Biliary Atresia Randomized Trial)は、米国14施設で2005年9月~2011年2月に、胆道閉鎖症で葛西手術を受けた140例(平均2.3ヵ月齢)の患児が参加して行われた。最終フォローアップは2013年1月だった。 患児は、静注用メチルプレドニゾロン(4mg/kg/日を2週間)と経口プレドニゾロン(2mg/kg/日を2週間)による治療後9週間で漸減するプロトコル群(70例)、もしくはプラセボを投与する群(70例)に無作為に割り付けられた。ステロイド治療は術後72時間以内に開始された。 主要エンドポイントは、術後6ヵ月時点で肝臓に関して未治療であり血清総ビリルビン値が1.5mg/dL未満(治療絶対差25%を検出するための推奨)の患者の割合とした。副次エンドポイントは、24ヵ月時点の未治療生存、重大有害事象などとした。6ヵ月時点の胆汁ドレナージ改善に有意差なし 6ヵ月時点の胆汁ドレナージ改善について、両群間に統計的な有意差はみられなかった。主要エンドポイントを達成した患者の割合は、ステロイド治療群58.6%、プラセボ群48.6%で、補正後相対リスクは1.14(95%信頼区間[CI]:0.83~1.57、p=0.43)だった。補正後絶対リスク差は8.7%(95%CI:-10.4~27.7%)だった。 24ヵ月時点で移植手術を要することなく生存していた患児は、ステロイド治療群58.7%、プラセボ群59.4%だった(補正後ハザード比:1.0、95%CI:0.6~1.8、p=0.99)。 重大有害事象の発生率は、それぞれ81.4%、80.0%だったが(p>0.99)、ステロイド治療群のほうが、初発重大有害事象発生までの期間が有意に短く、術後30日までの同発生率は、37.2% vs. 19.0%だった(p=0.008)。

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何度もCOPD増悪を起こす患者にアジスロマイシンの維持療法は有効か

 アジスロマイシンによる維持療法はプラセボと比べて有意にCOPD増悪の頻度を減少させることから、増悪を頻繁に起こしやすい患者や標準治療では治りにくい患者への使用は考慮されるべきであることが、オランダのAmphia Ziekenhuis病院のSevim Uzun氏らにより報告された。The Lancet Respiratory Medicine誌 2014年5月号(オンライン版 4月15日号)の掲載より。 現在、マクロライド耐性が問題視されているため、COPD患者に対するマクロライドの維持療法については意見が分かれるところである。そこで、過去1年で3回以上の増悪を経験し、標準治療を行っているCOPD患者に対し、アジスロマイシンを追加した維持療法を行うことで、増悪の頻度が減少するかを調べた。 本研究は、2010年5月19日から2013年6月18日にオランダで実施された単施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。過去1年に3回以上の増悪を経験し、現在、標準治療を行っている18歳以上のCOPD患者を、コンピューターによりランダムに割り当て、それぞれ500mgのアジスロマイシン、またはプラセボを週3回、12ヵ月間に渡って投与した。ランダム化は長期間、低用量(≦10mg/日)のプレドニゾロン使用により階層化した。患者と研究者は、各群の割り当て状況はマスクされていた。プライマリーエンドポイントは、治療導入後1年間における増悪頻度である。分析はIntention-to-treatにより行った。  主な結果は以下のとおり。・92例の患者をアジスロマイシン投与群(47例)、プラセボ投与群45例にランダムに割り当てた。アジスロマイシン投与群では41例(87%)、プラセボ投与群では36例(80%)が試験を終了していた。・アジスロマイシン投与群では84回、プラセボ投与群では129回の増悪が認められ、調整前の増悪頻度はアジスロマイシン投与群では1.94回/年(95%Cl:1.50~2.52)、プラセボ投与群では、3.22回/年(95%Cl:2.62~3.97)であった。・調整後のアジスロマイシン投与群はプラセボ投与群と比べて、有意に増悪頻度が減少していた(0.58回/年の減少、95%Cl:0.42~0.79)。・アジスロマイシン投与群の内3例(6%)、プラセボ投与群の内5例(11%)で重大な有害事象が認められ、最も多かった有害事象はアジスロマイシン投与群における下痢であった〔アジスロマイシン投与群の内9例(19%)、プラセボ投与群の内1例(2%)〕。■「COPD増悪」関連記事COPD増悪抑制、3剤併用と2剤併用を比較/Lancet

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