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HIV感染症:進歩と進化

11月5日に開催された、アボット ジャパン株式会社 メディアセミナー「HIV/AIDS診療最前線―女性における感染の現状と対策」のレポートをお届けする。国立国際医療センター戸山病院 エイズ治療・研究開発センター センター長の岡慎一氏は、HIV/AIDS診療のこれまでの変遷と今後の展望について、最新の知見や自身の施設におけるデータも交え、講演した。近年、HIV/AIDSの治療法は目覚しい進歩を遂げ、HIV感染症は薬剤によりコントロールし得る時代となった。岡氏は、その一方で、ウイルス側の変化やHIV抗体検査の現状から、これまでの「AIDSの常識」が変容しているとし、4つの点を指摘した。1点目は、「治療法の進歩により、AIDSによる死亡者はほとんどいなくなった」というものである。1996年以前、すなわちHAART(Highly Active AntiRetroviral Therapy:多剤併用療法)の導入以前のHIV感染症診断後の平均余命は7年であったが、現在では約40年となっている(デンマーク・コホートより)。国立国際医療センターにおいて、日和見感染症で死亡する頻度は1000人に1人程度であり、2000年からほぼ変化していない。しかし、HIV感染症診断時に80%がHAARTを受けておらず、末梢血中のCD4陽性細胞は200/μl以下がほとんどを占める患者群においては、8割近くが診断後1年以内に死亡している。すなわち、HIV感染症と診断された時点でAIDSを発症している場合(いわゆる「いきなりエイズ」)では、死亡は十分にありえる。また、最近は悪性リンパ腫やカリニ肺炎などによるエイズ関連死より、非エイズ関連死が増加しており、死亡原因が変わりつつあるとのことである。岡氏は、2点目として、「治療は3剤併用である」ということを挙げた。現在の治療ガイドラインでは、全ての患者はバックボーンドラッグとして2剤のNRTIs(核酸系逆転写酵素阻害薬、2NRTIs)を必ず投与され、キードラッグとしてNNRTI(非核酸系逆転写酵素阻害薬)とPI(プロテアーゼ阻害剤)のどちらかが投与されるが、仮に初回に2NRTIsとNNRTIを投与したとすると、次の治療では2NRTIsとPIの投与となり、2NRTIsがクロスすることが弱点となる。NRTIはミトコンドリア障害を起こすため、治療の長期化が避けられない患者のリスクとなっている。岡氏は、今後、ウイルスの進入阻害やインテグラーゼ阻害など新規機序の薬剤が導入されることが期待されており、2NRTIsを入れない治療も視野に入れられるのではないかと語った。3点目は、「感染からAIDS発病まで約10年の潜伏期がある」という「常識」である。国立国際医療センターにおいて、HIV急性感染が確認された82例を対象に、CD4が350以下、もしくは治療を必要とするレベルになるまでの期間を解析したところ、半分の症例は半年でCD4が350以下となり、3年後には8割の症例が350以下となった。 350ではまだAIDSとはいえないため、ここから確定的なことは導けないが、発症までの期間が短縮している感覚がある、と岡氏は語った。また、1985年以前の非加熱製剤投与によるHIV感染血友病患者との比較においては、3年後350を維持している血友病患者が50%弱であったのに対し、最近のHIV感染患者では13%と、有意に減少している。施設による偏りなどのバイアスは否定できないが、なぜ発症が加速しているのか。岡氏は、HLA型とウイルス変異の関連があるとした。HIVの封じ込めには、細胞傷害性T細胞(CTL)が重要と考えられている。HIV感染細胞膜において、HLAとHIVの一部が複合体となり、CTLに抗原提示する。その際、HLAに遺伝子多型の1つであるB*51アリルがあると、ワイルドタイプのHIVを完全に排除できる。HIV陽性の血友病患者で10年以上進行しない、Slow Progressorと呼ばれる長期未発症症例では、B*51を持つことが確認されており、日本人では唯一のウイルス抵抗型であった。しかし、近年、ウイルス変異によって以上の機序から逃避するHIVが広まっており、むしろB*51を持っている方が早く進行するとのことである。こういったことからも、「発病前に見つかれば」の猶予が10年から3年になり、「いきなりエイズ」の増加につながっている。4点目に挙げられたのは、「抗体検査は無料匿名で保健所でできる」ことである。現在、HIVの検査件数は右肩上がりであるが、死亡者数はほとんど変化していない。現状は、保健所での検査件数は上限に近づいているが、医療機関では検査が進んでいない。国立国際医療センターの例では、ウイルス検査目的で見つかったのは3割、他の疾患精査中に発見されたのがほぼ5割と、医療機関における検査の余地が示唆された。また、性感染症(STD)既往時のHIV検査率は35%と低く、医療側にも意識が少ない、と岡氏は指摘した。STD診断時のHIV検査は保険適応となっているが、それが医療者に浸透していないことも、検査率が低い理由の一つと考えられる。検査をしなければHIV感染は判明しない。また、AIDSを発症してからでは治療の効果も期待できないことから、発症までが加速している現在、ますます早期診断が重要となっているとして、岡氏は講演を終えた。 《関連リンク》国立国際医療センター戸山病院 エイズ治療・研究開発センター: http://www.acc.go.jp/accmenu.htm (ケアネット 板坂 倫子)

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抗悪性腫瘍剤「エルプラット」 胃がんの適応拡大を目指した臨床試験を実施

株式会社ヤクルトは9日、白金錯体系抗悪性腫瘍剤オキサリプラチン-販売名『エルプラット注射用50㎎、同100㎎』、『エルプラット点滴静注液50㎎、同100㎎』(以下、エルプラット)の進行・再発胃がんでの適応拡大を目指した、第III相臨床試験を実施することを決定したと発表した。胃がんは、日本を含むアジア諸国で最も患者数の多いがんの一つであり、日本では2010年の年間新規罹患患者数は108,669人と推計されている。同社では、第II相臨床試験で良好な成績が得られたことから、「エルプラット」の胃がんにおける適応拡大を目指し、第III相臨床試験の実施を決定した。欧米ではオキサリプラチンを含む治療法が進行・再発胃がんの標準療法の一つとして治療ガイドラインの中で位置付けられているとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.yakult.co.jp/cgi-bin/newsrel/prog/news.cgi?coview+00436

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糖尿病食後過血糖改善剤「セイブル錠」に、ビグアナイド系薬剤との併用療法効能追加

株式会社三和化学研究所は9日、糖尿病食後過血糖改善剤「セイブル錠(一般名:ミグリトール)」に、11月6日付で、ビグアナイド系薬剤との併用療法の効能追加が承認されたと発表した。セイブル錠は、α-グルコシダーゼ阻害薬に分類される糖尿病食後過血糖改善剤で、食後1時間までに生じる早期の急峻な血糖上昇(グルコーススパイク)を強力に抑制し、1日の血糖変動をなだらかにさせる薬剤。さらに食後のインスリン分泌を節約するため、膵β細胞の負担を和らげることが期待されているという。一方、ビグアナイド系薬剤は主に肝臓における糖新生を抑制することで空腹時高血糖を強力に抑える特性を有し、世界各国のガイドラインでファーストチョイスに推奨されている薬剤である。これらの異なる作用機序を持つ二剤の併用療法の有効性と安全性を確認することを目的とした臨床試験の結果より、ビグアナイド系薬剤にセイブル錠を追加する併用療法によりグルコーススパイクが改善されることが明らかになったという。また、低血糖リスクを増加させることなく、体重減少を伴って血糖コントロールの指標であるHbA1cが長期にわたって改善することが示されたとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.skk-net.com/new/data/news091109.pdf

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「アバスチン」、非小細胞肺がんに対する効能・効果、用法・用量の追加承認取得

中外製薬株式会社は9日、抗VEGFヒト化モノクローナル抗体ベバシズマブ(遺伝子組換え)-販売名『アバスチン点滴静注用100mg/4mL、同400mg/16mL』について、6日に厚生労働省より「扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」に対する効能・効果および用法・用量の追加に関する承認を取得したと発表した。「アバスチン」は、米国では2006年10月、欧州では2007年8月に扁平上皮がんを除く進行性非小細胞肺がんに対する一次治療として承認され、海外の治療ガイドラインにも化学療法との併用での使用が推奨されている。日本での今回の承認により、結腸・直腸がんに引き続き扁平上皮がんを除く進行・再発の非小細胞肺がんにおいても日・米・欧三極での使用が可能となった。同社による厚生労働省への承認申請は2008年11月に行われ、申請資料として海外で実施された第II相および第III相臨床試験、国内で実施された第II相臨床試験の成績等が提出された。海外で実施された二つの比較試験では、プラチナ製剤をベースとした標準的な化学療法に「アバスチン」を併用することで、扁平上皮がんを除く未治療の進行・再発の非小細胞肺がんの患者の全生存期間および/または無増悪生存期間を、標準的な化学療法と比較して統計学的に有意に延長することが示された。国内第II相臨床試験においても、標準的な化学療法(カルボプラチンとパクリタキセルの併用療法)に「アバスチン」を併用することで、無増悪生存期間が統計学的に有意に延長するなど、海外臨床試験と同様な結果が報告され、日本人における「アバスチン」の有用性が示されたという。詳細はプレスリリースへhttp://www.chugai-pharm.co.jp/generalPortal/pages/detailTypeHeader.jsp;jsessionid=FRBNZFANZLRWICSSUIHSFEQ?documentId=doc_16373&lang=ja

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抗うつ薬処方が増大している真の理由:英国

英国における抗うつ薬処方は、ここ20年で実質的にかなりの伸びを示したという。処方率の増加は1970年代中頃から確認されているが、特に2000~2005年の間に処方率は36%増、コストは20%増を示した。その半分は、45%増という伸びを示した選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が占めた。2005年以降も、特許切れを迎えた製剤がありコストは減少したが、SSRIについてはさらに増加しているという。英国・サウサンプトン大学Aldermoor医療センターのMichael Moore氏らは、こうした長期的増加傾向の要因について、登録患者300万人分が集約されている開業医リサーチデータベース「GPRD」を使って明らかにすることを試みた。BMJ誌2009年10月24日号(オンライン版2009年10月15日号)より。開業医研究データベースから長期変化を読み取る本調査は、GPRDから開業医の処方パターンの長期変化を読み取ることを目的とした。具体的には、新規うつ病患者は増えているのか、抗うつ薬新規処方の割合は増えているのか、新規症例に対し処方期間は長くなっているのか、全体的に抗うつ薬の長期投与(再処方)例が増えているのかが調べられた。対象としたのは、GPRDの1993~2005年のデータのうち、同年期間中のデータが集約可能であった170診療所170万人分のデータ中の新規うつ病全症例とした。患者発生率は減少傾向、一方で長期治療が必要な患者が増えていることが明らかに対象期間中、初発のうつ病エピソード患者は18万9,851例だった。そのうち15万825例(79.4%)が、診断を初めて受けた年に抗うつ薬を処方されていた。この割合は調査期間中ほぼ一定していた。新規症例は、若い女性で増加していた。しかしそれ以外では、わずかだが減少しており、総発生率は、わずかだが減少していた。男性は、1993年は7.83件/1,000患者・年だったが、2005年は5.97件/1,000患者・年に、女性は15.83件/1,000患者・年から10.06件/1,000患者・年へと減少している。一方で、1患者当たりの平均処方回数が、1993年の2.8回が、2005年には5.6回とほぼ2倍になっていた。抗うつ薬処方の大半は、維持療法として、あるいはうつのさまざまなエピソードを呈する患者に断続的に投与されていた。これらからMoore氏は、「抗うつ薬処方率の増大は、主に維持療法を受けている患者が、わずかずつだが増えているためと説明できる。これまでの臨床ガイドラインは、抗うつ薬の開始についておよびターゲッティングに集中していたが、抗うつ薬処方のコスト増大に言及するには、今後の研究およびガイドラインでは、長期投与例の妥当性、処方の定期的なレビューについて注目する必要がある」と結論した。

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新型インフルエンザに注意すべき疾患は ―重症化しやすいCOPD患者―

2009年11月4日、大手町ファーストスクエアにて開催されたCOPD(慢性閉塞性肺疾患)プレスセミナー(主催:日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社/ファイザー株式会社)で、日本医科大学呼吸器内科教授、同大学呼吸ケアクリニック所長の木田厚瑞氏が「新型インフルエンザとCOPD」について講演を行った。COPDは呼吸機能が進行的に低下する疾患である。感染や大気汚染が原因で症状が短期間で悪化すること、つまり増悪が生じると、呼吸機能が急激に低下して、元の状態に戻れない。また、COPDが増悪した場合、患者の多くは入院が必要となる。さらに、増悪の回数が増えると、生命予後が悪くなることもわかってきている。重篤な増悪、入院率・死亡率を減少させるために、ガイドラインでは、COPD患者へのインフルエンザワクチン接種が求められている。また、2009年10月2日現在の厚生労働省の発表において、COPDは新型インフルエンザのワクチン優先接種対象疾患として取り上げられている。第19回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会の会長でもある木田氏は、10月31日に開催した日本呼吸器学会、日本呼吸ケア・リハビリテーション学会合同緊急シンポジウム「新型インフルエンザ 重症化からの脱却」のエッセンスを紹介した。それによると、新型インフルエンザの重症者には、COPDや喘息などの慢性呼吸器疾患を持っていることが多いことが挙げられる。そのうち、若年者では喘息が、高齢者ではCOPDが重症化のリスク因子となる。そのほか、日ごろの慢性呼吸器疾患の治療が不十分である場合に、悪化しやすいこともわかってきた。また、問題点として、COPDは潜在患者が多く、こうした潜在患者はCOPDとして診断されていないために、ワクチンの優先接種者にならないことなどが挙げられる。木田氏は、潜在患者が500万人以上いるにもかかわらず、約22万人しか診断・治療されていないことに危機感を抱き、新型インフルエンザによるCOPD患者の重症化を防ぐためにも、潜在患者を1日でも早く診断し、治療を開始するべきであることを訴えた。(ケアネット 呉 晨/吉田 直子)

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心不全患者へのアルドステロン拮抗薬処方、適応患者の3分の1:米国調査結果

アルドステロン拮抗薬(商品名:セララ)が適応となる心不全患者のうち、退院時に同薬の処方を受けていたのは、3分の1にも満たないことが明らかになった。病院間での処方率の格差も大きかった。米国Cleveland ClinicのNancy M. Albert氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年10月21日号で発表されている。これまでの研究から、アルドステロン拮抗薬は、中等度から重度の心不全患者に対して有効であることが明らかになっている。そのため米国心臓協会(AHA)などの臨床ガイドラインでも、投与が勧告されている。アルドステロン拮抗薬処方は適応患者の32.5%、調査期間中やや増加の傾向同研究グループは、臨床ガイドラインに沿った診療の推進を目的とした全米プログラム、「Get With The Guidelines–HF」に参加する、241の病院で観察研究を行った。試験期間は2005年1月~2007年12月で、期間中に心不全で入・退院した人は合わせて4万3,625人に上った。そのうち、アルドステロン拮抗薬が適応だった1万2,565人中、退院時に同薬の処方を受けていたのは、4,087人(32.5%)に留まった。同割合は試験期間中、28%から34%へとわずかに増加傾向は見られてはいる。一方、同割合の病院間格差は、0~90.6%と大きかった。不適切処方は期間を通じて低率アルドステロン拮抗薬の処方増の要因は、アフリカ系アメリカ人(補正後オッズ比:1.17)への処方増加、植え込み型除細動器の病歴のある人(同:1.51)、うつ病(同:1.15)、アルコール摂取(同:1.23)、ペースメーカー挿入(同:1.21)が挙げられた。一方、減少要因は、年齢が若い(同:0.85)、低収縮期血圧(同:0.94)、腎機能不全歴なし(同:0.85)だった。また、血清クレアチン値とカリウム値を基準に用いた場合、アルドステロン拮抗薬の不適切処方の割合は、試験期間中を通じて低く抑えられていた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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心筋梗塞後早期の植込み型除細動器、総死亡率低下には寄与せず

 心突然死を含む死亡率は心筋梗塞後早期が最も高いが、現在のガイドラインでは、心突然死予防のための、心筋梗塞後40日以内の植え込み型除細動器(ICD)適応手術を推奨していない。ドイツ・ミュンヘン大学のGerhard Steinbeck氏らのIRIS試験グループは、ハイリスク患者にとっては早期ICD施行が、薬物治療のみを受けるよりも、より長期の生存をもたらすとの仮説を立て検証を行った。NEJM誌2009年10月8日号より。心筋梗塞後早期の患者をICDと薬物治療に無作為割り付け IRIS(Immediate Risk Stratification Improves Survival)試験は、任意の心筋梗塞患者62,944例が登録し行われた、無作為化前向きオープンラベル研究者主導型多施設共同試験。登録患者のうち、一定の臨床的な判定基準を満たした、イベント発生から5~31日後の患者898例を被験者として検討が行われた。判定基準は、1「左室駆出率が40%以下に低下、最初に得られた心電図の心拍数が90以上/分」(602例)、2「ホルター心電図での非持続性心室頻拍が150以上/分」(208例)、または「基準1と2の両基準を満たす」(88例)とされた。 被験者トータル898例のうち、445例をICD治療群に、453例を対照群として薬物治療単独群に無作為に割り付けた。ICD治療群の総死亡率を低下させず 平均追跡期間は37ヵ月だった。この間に、233例の患者が死亡(ICD群116例、対照群117例)。ICD群の総死亡率は低下しなかった(ハザード比:1.04、95%信頼区間:0.81~1.35、P = 0.78)。ただし、心突然死についてはICD群が対照群より少なかった(27対60、ハザード比:0.55、95%信頼区間:0.31~1.00、P = 0.049)。しかし心突然死を除く死亡数は、ICD群のほうが多かった(68対39、1.92、1.29~2.84、P = 0.001)。またハザード比については、登録判定基準の分類3群(判定基準1、判定基準2、両方)とも同様だった。 研究グループは、急性心筋梗塞患者でリスク増加を伴う臨床像を示す患者への予防的ICD療法は、総死亡率を低下させないと結論づけている。

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下気道感染症、PCT値に基づく治療で抗生物質投与量を削減、治療効果は同等

下気道感染症の治療に際し、プロカルシトニン(PCT)値に基づくアルゴリズムに沿って治療をしたほうが、標準ガイドラインによる治療に比べ、治療効果は同等で抗生物質投与量を抑えられることが報告された。この点を示した試験結果はこれまでにも発表されているが、大規模な多施設共同試験はあまりなかった。スイスKantonsspital AarauのPhilipp Schuetz氏らが、1,359人の下気道感染症患者を対象に行った無作為化試験で明らかにしたもので、JAMA誌2009年9月9日号で発表した。スイス6ヵ所の病院救急室の患者が対象Schuetz氏らは、2006年10月~2008年3月にかけて、スイス6ヵ所の病院の救急室を訪れた、重症の下気道感染症の患者1,359人を、無作為に2群に分けた。一方の群では、PCT値を元にしたアルゴリズムを使い、あらかじめ定めたカットオフ値によって、抗生物質の投与開始や中止などを決めた。もう一方の群では、標準ガイドラインに沿って治療を行った。主要アウトカムは、治療の非劣性を示す有害アウトカムとして、死亡、集中治療室への入室、疾患特異的な合併症、抗生物質投与が必要となる感染症の30日以内の再発――などとした。なお非劣性の限界値は7.5%と定義した。PCT群で抗生物質投与期間を3割以上短縮結果、有害アウトカムの発生率は、PCT群15.4%、対照群18.9%と、その差は-3.5%で同等だった。一方で、抗生物質の平均投与期間は、PCT群が5.7日に対し、対照群は8.7日と、PCT群が相対差で-34.8%短かった(95%信頼区間:-40.3~-28.7)。サブグループ解析では、市中肺炎の患者(925人)における同相対格差は-32.4%、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪患者(228人)における同相対格差は-50.4%、急性気管支炎(151人)の同相対格差は-65.0%だった。また、抗生物質関連の有害事象の発生率も、対照群が28.1%に対しPCT群が19.8%と、絶対格差が-8.2%だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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抗悪性腫瘍剤ゼローダ、アバスチンが追加承認を取得 結腸・直腸がんに対する効能・効果、用法・用量

中外製薬株式会社は24日、経口フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤カペシタビン(販売名:ゼローダ錠300)とオキサリプラチンとの併用療法について、2009年9月18日に厚生労働省より「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」に対する効能・効果および用法・用量の追加に関する承認を取得したこと発表した。また、抗VEGFヒト化モノクローナル抗体ベバシズマブ〔遺伝子組換え〕(販売名:アバスチン点滴静注用100mg/4mL、同400mg/16mL)についても、同日、同省より用法・用量の追加に関する承認を取得した。「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」において今回新たに承認された、ゼローダとオキサリプラチンの併用療法(XELOX療法)およびXELOX療法とアバスチンの併用療法は世界的な標準治療となっている。経口剤であるゼローダを用いたXELOX療法は、患者や医療従事者にとって負担の少ない3週に1回の外来療法による治療が可能となるという。ゼローダは、2003年6月に「手術不能又は再発乳癌」を効能・効果として販売を開始し、2007年12月12日に海外における用法・用量の承認、および「結腸癌における術後補助化学療法」の効能・効果の承認を取得している。アバスチンは、2004年2月に転移性の結腸・直腸がんの治療薬として米国で承認されて以来、国内外のガイドラインで標準治療薬として位置付けられている。国内では「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」の治療薬として、2007年6月から販売されている。詳細はプレスリリースへhttp://www.chugai-pharm.co.jp/generalPortal/pages/detailTypeHeader.jsp;jsessionid=5IRQHC1BI4RK4CSSUIHCFEQ?documentId=doc_15702&lang=ja

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ハイリスク非ST上昇型急性冠症候群への血管形成術実施のタイミング

ハイリスク非ST上昇型の急性冠症候群に対し、血管形成術を行う際、患者が来院してからできるだけ早く実施する場合と、翌日まで待って行う場合とを比較した結果、入院中のトロポニン最大値などのアウトカムに差はないことが明らかにされた。リスクの高い非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)に対しては、早期の侵襲的インターベンションの実施が国際的ガイドラインで勧告されているものの、その適切なタイミングについては明確ではないという。フランスPitie-Salpetriere大学のGilles Montalescot氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年9月2日号で発表されている。NSTE-ACSでTIMIスコア3以上の352人を対象に試験研究グループは2006~2008年にかけて、フランス13ヵ所の医療機関で、NSTE-ACSで、心筋虚血における血栓溶解リスクを示すTIMI(Thrombolysis in Myocardial Infarction)スコアが3以上の患者352人を対象に、試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方にはできるだけ早く血管形成術を行い、もう一方の群には試験開始後8~60時間後の翌(営業)日まで待って、血管形成術を行った。1次エンドポイントは、入院中の血中トロポニン最大値。また主な2次エンドポイントは、1ヵ月以内の死亡、心筋梗塞、緊急再血管再生術のいずれかの発生だった。来院直後実施も翌日実施も、アウトカムに有意差なし試験開始直後に血管形成術を行った群は、割り付けから手術開始までの経過時間中央値は70分、もう一方の翌日群は同21時間だった。入院中の血中トロポニン最大値の中央値は、直後群が2.1(四分位範囲:0.3~7.1)ng/mLで、翌営業日群は1.7(同:0.3~7.2)ng/mLであり、両群で有意差は認められなかった(p=0.70)。主な2次エンドポイントについても、その発生率は直後群で13.7%(95%信頼区間:8.6~18.8)、翌日群が10.2%(同:5.7~14.6)と、両群で有意差はなかった(p=0.31)。また主な出血や、その他のエンドポイントについても、両群で有意差は見られなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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中等症(GOLDのステージ2)COPD患者の呼吸機能とQOLを有意に改善

ドイツ・ベーリンガーインゲルハイム社は8月28日、ランセット誌(8月28日発刊号)で発表された大規模臨床試験UPLIFT(Understanding Potential Long-term Impacts on Function with Tiotropium)のサブ解析から、チオトロピウム(製品名:スピリーバ)が最長4年にわたり中等症のCOPD患者(GOLDのガイドラインでステージ2と既定される患者)の呼吸機能を継続して改善されることが明らかになったと発表した。UPLIFTは COPD患者に長時間作用型吸入抗コリン薬であるチオトロピウムを用いた最大規模の無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、このサブグループ解析では、2,739名の患者を対象とした。サブ解析データからチオトロピウムが中等症(ステージ2)にあるCOPD患者の呼吸機能を改善し、疾患進行を抑制する可能性が示された。4年間の試験期間中、気管支拡張投与後FEV(ピークFEV)の経年的な低下量は、チオトロピウム投与群が43mL/年、プラセボ投与群が49mL/年であり、チオトロピウムが有意に経年低下量を抑制した(p=0.024) 。気管支拡張剤投与前FEV(トラフFEV)の経年的な低下量に両群間に差は見られなかったという。詳細はプレスリリースへhttp://www.boehringer-ingelheim.co.jp/com/Home/Newscentre/pressrelease/news_detail.jsp?paramOid=5478

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診察時の小冊子活用で、小児呼吸器感染症の受診および抗生物質処方を抑制できる

小児期の呼吸器感染症は、ほとんどが受診の必要がなく、ましてや抗生物質によるベネフィットはほとんどないにもかかわらず、再受診を含む受療率は高いままで、抗生物質も頻繁に処方されている。英国の公的医療保険であるNHSでは、小児の急性の咳だけで5,140万ドル以上の医療費が費やされており、その大半が、開業医の診察によるもので、ガイドラインも整備されているが改善の兆しはなく問題視されている。そこで、英国カーディフ大学医学部プライマリ・ケア/公衆衛生学部門のNick A Francis氏らは、小児呼吸器感染症に関する小冊子をプライマリ・ケア医に提供し、診察時に使うようトレーニングをすることで、再受診率や抗生物質の処方率が減るのではないかと、クラスター無作為化試験を行い検討した。BMJ誌2009年8月15日号(オンライン版2009年7月29日号)より。小冊子活用を訓練された開業医とそうでない開業医のもとでの再受診率等を調査本試験は、小冊子の使用が、ケアに対する患児の親の満足度を維持しつつ、同一疾患での再受診の低下、抗生物質使用の低下に結びつき、将来的な受診動向に影響をおよぼすことを立証することを目的に行われた。ウェールズとイングランドの開業医61人の協力のもと、急性の呼吸器感染症(7日以内)を訴え受診した小児(6ヵ月~14歳)558例を被験者として行われた。このうち、肺炎、喘息、重篤な随伴疾患、即時入院の必要性が疑われる小児は除外された。その結果、3例が除外され、また27例は追跡ができず解析から除外された。最終的に528例(94.6%)で評価が行われた。被験者は、介入群(受診した医師が小冊子の使用を訓練・指示されている)と対照群(特別な訓練を受けずいつも通りの診察が行われる)に無作為化された。主要転帰は、追跡期間2週間の間に同一疾患で対面診察を受けた小児の割合とした。副次転帰は、抗生物質の処方率、同消費量、将来的な受診動向、両親の満足度、安心度、理解度。抗生物質の処方は劇的に低下再受診率は、介入群は12.9%だったが、対照群は16.2%で、3.3%(95%信頼区間:-2.7%~9.3%、P=0.29)の絶対リスクの差が生じた。ただしクラスター形成を説明するための多平面モデリング(開業医と患者個々人レベルで)の結果からは、再受診率の違いは見られなかった(オッズ比:0.75、95%信頼区間:0.41~1.38)。抗生物質の処方率は、介入群では19.5%、一方対照群では40.8%で、21.3%(同:13.7~28.9、P

2954.

ペグインターフェロン、α-2aとα-2b間および用量の違いでの奏効率に有意差なし

C型慢性肝炎患者には、治療ガイドラインで、ペグインターフェロンα-2a(商品名:ペガシス)もしくはα-2b(商品名:ペグイントロン)を、リバビリン(商品名:コペガス、レベトール)との併用で用いることが推奨されている。しかし、両剤には構造上および投与用量(体重補正 vs. 固定)の違いから、臨床転帰に重大な違いがもたらされると言われ、いくつかのエビデンスも報告されている。そうした中で、米国デューク大学医療センターのJohn G. McHutchison氏らIDEAL研究グループは、「HCVジェノタイプⅠ型患者で、製剤間・用量間による有意差はなかった」とする報告を発表した。NEJM誌2009年8月6日号(オンライン版2009年7月22日号)掲載より。HCV未治療患者3,070例を、3治療群に無作為化し48週治療IDEAL(Individualized Dosing Efficacy vs. Flat Dosing to Assess Optimal Pegylated Interferon Therapy)は、ペグインターフェロン製剤の用量について、標準用量投与(α-2a、α-2b)と低用量(α-2b)との比較を主目的とする試験。米国の118の医療施設から、HCVジェノタイプⅠ型の未治療患者を、無作為に48週間、3つの治療群に割り付け、持続性ウイルス陰性化率、安全性、有害事象を調べた。3つの治療群は、(1)ペグインターフェロンα-2b標準用量(1.5μg/kg体重/週)+リバビリン800~1,400mg/日、(2)ペグインターフェロンα-2b低用量(1.0μg/kg体重/週)+リバビリン800~1400mg/日、(3)ペグインターフェロンα-2a標準用量(180μg/週)+1,000~1,200mg/日。2004年3月~2006年6月に4,469例がスクリーニングを受け、3,070例が3群に無作為化された。3治療群間で、持続性ウイルス陰性化、安全性とも同等3群間の持続性ウイルス陰性化は、同等だった。(1)α-2b標準用量群は39.8%、(2)α-2b低用量群は38.0%、(3)α-2a標準用量群は40.9%[(1)対(2)のP=0.20、(1)対(3)のP=0.57]。α-2b標準用量群と低用量群との奏効率の推定差は1.8%(95%信頼区間:-2.3~6.0)、α-2b標準用量群とα-2a標準用量群とでは-1.1%(同:-5.3~3.0)だった。再発率は、α-2b標準用量群では23.5%(同:19.9~27.2)、α-2b低用量群で20.0%(同:16.4~23.6)、α-2a標準用量群31.5%(同:27.9~35.2)だった。安全性プロフィールは、3群間で同等であり、重篤な有害事象は、8.6~11.7%の患者で観察された。治療4週と12週の検出不可能なHCV RNAレベルを有する患者の間で、それぞれ、持続性のウイルス学的効果は、86.2%と78.7%において成し遂げられた。HCV RNA量未検出だった患者の、治療4週時点の持続性ウイルス陰性化率は86.2%、12週時点では78.7%だった。McHutchison氏は「HCVジェノタイプⅠ型患者で、3つの治療間に、持続性ウイルス陰性化率および忍容性に有意差はなかった」と結論している。(武藤まき:医療ライター)●厚労省関連サイトhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/hokushin/index.html●慢性肝炎診療のためのガイドラインhttp://www.jsh.or.jp/medical/gudelines/index.html

2955.

アドエア、「COPD診断と治療のためのガイドライン」に安定期の薬物療法の選択肢として紹介される

グラクソ・スミスクライン株式会社(GSK)は9日、社団法人日本呼吸器学会より発行した「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第3版」にCOPDの安定期の薬物治療の選択肢として長時間作用性β2刺激薬/吸入ステロイド配合薬(「アドエア」)が紹介され、その改善効果に関する記述が掲載されたと発表した。「アドエア」(一般名:サルメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル)は、GSKが2007年6月に成人の気管支喘息を適応として発売した薬剤で、本年1月にCOPDに対する追加適応を取得している。今回、改訂したガイドラインでは、COPDの安定期の治療について、気流閉塞の程度だけでなく、症状の程度(呼吸困難、運動能力の低下、繰り返す増悪)を加味し、重症度を総合的に判断した上で治療法を選択することとなった。薬物治療は、長時間作用性気管支拡張薬(長時間作用性抗コリン薬または長時間作用性β2刺激薬)をベースとして、吸入ステロイド薬等を追加することとされている。従来は、吸入ステロイド薬の追加はIII期(高度の気流閉塞)からとされているが、新たなガイドラインでは、より早い段階でも症状の程度に応じて使用を考慮することが推奨された。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2009_07/P1000563.html

2956.

5年前の出生前B群溶連菌スクリーニング、10年前に比べ実施率1.8倍に

米国で、2003~2004年の出生前B群溶連菌スクリーニングの実施率が、1998~1999年に比べ、およそ1.8倍に増えてきていることがわかった。これは、2002年に米国の診療ガイドラインで、同スクリーニングの実施が勧告されたことによると考えられる。これに伴い、分娩時の抗生物質投与実施率も約5ポイント増加していた。米国疾病対策予防センター(CDC)のMelissa K. Van Dyke氏らの調べで明らかになったもので、NEJM誌2009年6月18日号で発表した。スクリーニング実施率は85.0%にDyke氏らは、米国10州で実施しているB群溶連菌感染に関する2003~2004年のサーベイランスをもとに、後ろ向きに調査を行い、生後7日以内に発症する早発型B群溶連菌感染254児と、感染の認められなかった7,437児について分析した。また、1998~1999年に行った類似の調査結果と、今回の結果を比較した。その結果、2003~2004年の出生前B群溶連菌スクリーニングの実施率は85.0%と、1989~99年の48.1%から大幅に増大していた。また、分娩時に抗生物質投与を受けた乳児の割合は、26.8%から31.7%に増えていた。出生前のB群溶連菌スクリーニングで陽性だった妊婦で正期産の場合、その87.0%が分娩時の化学的予防法を受けていた。一方、同スクリーニングで陽性で早期分娩の場合、分娩時の化学的予防法を受けたのは63.4%にとどまった。正期産早発型B群溶連菌感染の6割強が、母親へのスクリーニングでは陰性早発型B群溶連菌感染率は、1,000生児出生当たり0.32だった。早期分娩で生まれた乳児の同発症率は1,000生児出生当たり0.73と、正期産で生まれた乳児の1,000生児出生当たり0.26に比べ、有意に高率だった。ただし、早発型B群溶連菌感染の見られた乳児数では、正期産の乳児が74.4%(189/254例)を占めていた。なお、正期産で、母親が出生前のB群溶連菌スクリーニングを実施せず、早発型B群溶連菌感染の見られた乳児は34例と、感染児全体(254例)の13.4%を占めた。一方、正期産でスクリーニングでは陰性だったものの、乳児に早発型B群溶連菌感染が見られたのは、正期産感染児全体の61.4%にも上った。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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ARB(テルミサルタン)と利尿薬の配合で降圧を可能に 「ミコンビ配合錠」発売

日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社とアステラス製薬株式会社は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)のテルミサルタンとサイアザイド系利尿薬のヒドロクロロチアジド(HCTZ)の配合剤「ミコンビ配合錠」を23日に発売したと発表した。 高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)では、ARB単剤で降圧効果が不十分な場合は、ARBと少量の利尿薬との併用が推奨されている。作用機序の異なる両剤の併用により、相乗的な降圧効果とともに、血清カリウムに与える影響などを相殺することができると考えられているという。ミコンビ配合錠は、ARBテルミサルタンと少量利尿薬ヒドロクロロチアジド(HCTZ)12.5mgとの配合剤。1錠あたりテルミサルタン40mgを含有する「ミコンビ配合錠AP」と、1錠あたりテルミサルタン80mgを含有する「ミコンビ配合錠BP」の2種類の製剤が発売される。国内臨床試験において、「ミコンビ配合錠AP」は、治験終了時の収縮期血圧のベースラインからの血圧下降度が-23.3mmHgと極めて強力な降圧効果を示したとのこと。なお、同剤は、従来からのテルミサルタン製剤「ミカルディス錠」と同様に、日本ベーリンガーインゲルハイムが製造し、アステラス製薬が販売を行い、両社で共同販促(コ・プロモーション)する。詳細はプレスリリースへhttp://www.boehringer-ingelheim.co.jp/com/Home/Newscentre/pressrelease/news_detail.jsp?paramOid=3660(日本ベーリンガーインゲルハイム)http://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/arb.html(アステラス製薬)

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段階的弾性ストッキングは脳卒中後の深部静脈血栓を予防しない

大腿部までの長さの段階的弾性ストッキング(GCS)の着用は、脳卒中後の深部静脈血栓(DVT)のリスクを低減しないことが、イギリスEdinburgh大学臨床神経科学部のMartin Dennis氏らが実施した無作為化試験(CLOTS 1)によって明らかとなった。脳卒中後は一般にDVTや肺塞栓症が見られるが、手術を受けた患者を対象とした小規模な試験においてGCSによるDVTリスクの低減効果が確認されている。エビデンスとしては十分でないにもかかわらず、脳卒中ガイドラインはこれらの知見を外挿して脳卒中患者に対するGCSの使用を推奨している。Lancet誌2009年6月6日号(オンライン版2009年5月27日号)掲載の報告。GCSのDVT低減効果を検証する無作為化対照比較試験CLOTS(Clots in Legs Or sTockings after Stroke)1の研究グループは、大腿部までの長さのGCSによる脳卒中後のDVTの低減効果について評価するための無作為化対照比較試験を行った。2001年3月~2008年11月までに、イギリス、イタリア、オーストラリアの64施設から急性脳卒中発症後1週間以内に入院し、活動不能な状態の患者2,518例が登録された。これらの患者は、中央無作為化システムによってルーチン治療と大腿部までのGCSを着用する群(1,256例)あるいはルーチン治療のみを施行しGCSは使用しない群(1,262例)に割り付けられた。登録後7~10日および25~30日に、治療の割り付けを知らされていない技師によって両足の圧迫Doppler超音波検査が施行された。主要評価項目は、膝窩静脈あるいは大腿静脈の症候性、無症候性のDVTの発現とした。DVT予防効果はなく、皮膚有害事象が有意に多いすべての患者が解析の対象となった。主要評価項目の発現率は、GCS使用群が10.0%(126/1,256例)、GCS非使用群は10.5%(133/1,262例)であり、絶対リスク低減率は0.5%と有意な差は認めなかった。皮膚の裂傷、潰瘍、水疱や皮膚壊死の頻度は、GCS非使用群の1.3%(16/1,256例)に対しGCS使用群は5.1%(64/1,262例)と有意に高かった(オッズ比:4.18、95%信頼区間:2.40~7.27)。これらの結果により、著者は「急性脳卒中による入院患者に対して、DVTの予防を目的とした大腿部までの長さのGCSの着用は支持されない」と結論し、「脳卒中ガイドラインは、本試験の知見に基づいて改訂を検討すべきであろう」としている。(菅野守:医学ライター)

2959.

入院からPCI施行までの時間は短いほどよい

ACC/AHAガイドラインでは、ST上昇型急性心筋梗塞患者に対する経皮的冠動脈形成術(PCI)は、入院後90分以内を推奨しているが、米国エール大学のSaif S Rathore氏らが行った調査で、入院からPCI施行までの時間は短いほど死亡リスクが低下することが明らかになった。「90分以内で行っている施設も、できるだけ短縮すべきである」としている。BMJ誌2009年5月30日号(オンライン版2009年5月19日号)より。現状は、90分以内実施率57.9%、院内死亡率4.6%被験者は、American College of Cardiology National Cardiovascular Dataに2005~2006年の間に登録された、ST上昇型急性心筋梗塞でPCIを実施した患者4万3,801例。死亡リスクを主要評価項目とする、前向きコホート調査が行われた。その結果、入院受付からPCI実施までの所要時間は、中央値83分(四分位範囲:6~109)だった。90分以内にPCIを実施していたのは、全体の57.9%だった。また、院内死亡率は4.6%だった。90分→60分、死亡リスク0.8%低下入院受付からPCI実施までの所要時間については、長くなればなるほど、直線的ではないが、補正後死亡リスクが高率になる相関が認められた。補正後死亡リスクは、所要時間30分の場合3.0%、60分3.5%、90分4.3%、また120分5.6%、150分7.0%、180分8.4%だった(p<0.001)。所要時間を90分から60分に短縮することで、死亡リスクは0.8%低下、60分を30分に短縮すればさらに0.5%低下できる計算となる。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

2960.

降圧薬は血圧レベルに関係なく、ある年齢になったら検討すべきではないか

ロンドン大学疫学部門のM.R.Law氏らの研究グループは、異なるクラスの降圧薬について、冠動脈疾患(CHD)と脳卒中予防の有効性を定量的に判定するとともに、治療を受けるべき患者を見極めることを目的としたメタ解析を行った。Medline(1966~2007)をデータソースに文献を検索、CHDイベントおよび脳卒中の記録があった147の前向き無作為化疫学研究を選定し解析は行われた。BMJ誌2009年5月24日号より。46万例をCVD歴なし、CHD歴あり、脳卒中歴ありに分類しメタ解析選択した試験のうち、108件が実薬とプラセボ(あるいは対照群が未投与)間の「血圧差試験」、46件が「薬剤比較試験」だった。なお、7試験はいずれにも該当、被験者は合計95万8,000例だった。そのうち、心血管疾患(CVD)既往のない者、CHD既往のある者、脳卒中既往のある者の3群に分類された46万4,000例をメタ解析した。β遮断薬のCHDイベント再発低下が有意β遮断薬に関する血圧差試験の解析から、β遮断薬は、CHD既往のある者のCHDイベント再発を有意に低下することが認められた(平均リスク低下率:29%、CHD既往のない者での場合や他クラスでの試験では平均15%)。その効果は、CHD既往のうちでも試験参加1、2年前に急性心筋梗塞を発症していた者ほど大きく(31%)、CHD発症から時間が経っていた者ほど効果は小さかった(13%)(P=0.04)。上記以外の血圧差試験での、CHDイベント低下率は22%、脳卒中低下率は41%で、この結果は、メタ解析で予想されたCHD 25%減、脳卒中36%減と同程度であり、その有益性は血圧を低下させたことにあることが示された。60~69歳、拡張期血圧90mmHgの患者には標準用量の半量で3剤投与がベスト5つのおもな降圧薬(サイアザイド、β遮断薬、ACE阻害薬、ARB、Ca拮抗薬)は、CHDイベントと脳卒中の予防に関する効果は同程度だった。ただし例外として、Ca拮抗薬は脳卒中に対してより大きな予防効果が認められた(相対リスク:0.92)。CHDイベントと脳卒中の減少の度合いは、CVD歴の有無と治療前の血圧(収縮期110mmHg、拡張期70mmHgまで)にかかわらず同程度だった。これら結果と2つの他の研究(血圧コホート研究、薬剤の降圧効果を投与量で判定した試験のメタ解析)を総合すると、60~69歳の、治療前拡張期血圧90mmHgの患者で、標準用量の半量で3剤を組み合わせ投与した場合、CHDで約46%、脳卒中で62%、リスクを低下することが明らかになった。標準用量1剤では効果がおよそ半分だった。さらに、Ca拮抗薬以外の降圧薬(非選択性のβ遮断薬を除く)では心不全の出現率を24%低下する一方、Ca拮抗薬は19%の低下だったことも明らかになった。血圧レベルによらないシンプルな降圧治療ガイドラインをCHD直後に投与されたβ遮断薬の付加的な保護作用と、脳卒中予防のCa拮抗薬のわずかな付加的効果を除けば、降圧薬はいずれもCHDイベントと脳卒中の減少に同程度の効果があった。CVDイベントの減少率は、治療前血圧やCVDの有無にかかわらず、同じか同程度だった。これらから研究グループは、降圧薬の使用ガイドラインについて、いかなる血圧レベルの患者にも提供されるよう単純化されるべきだと述べるとともに、血圧測定によって治療対象者を選ぶのではなく、一定の年齢に達したら誰でも降圧薬の服用を検討することが重要だと述べている。

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