心血管イベント抑制のための費用対効果に優れた戦略は?

提供元:ケアネット

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公開日:2010/05/21

 



心血管疾患予防のため、イギリス政府は40~74歳の全成人を対象としたスクリーニング戦略の実施を推奨している。その戦略と、ルーチンデータを用いて心血管リスクを層別化する(Framinghamリスクスコア、Cambridge diabetesリスクスコア、Finnish diabetesリスクスコアを用いる)戦略とでは、潜在するハイリスク患者を特定・治療することに、どれほどの違いがあるのかが検証された。ケンブリッジ・Addenbrooke's病院メタボリックサイエンス研究部MRC疫学部門のParinya Chamnan氏らによるモデルスタディによる。BMJ誌2010年5月8日号(オンライン版2010年4月23日号)掲載より。

政府推奨の全成人対象の戦略と、リスクスコアに基づく戦略の予防効果を比較




Chamnan氏らは、イギリス、ノーフォークの40~79歳の住民を対象とする前向き試験EPIC-Norfolk(European Prospective Investigation of Cancer-Norfolk)のデータから、モデルスタディを構築した。被験者は、1993~2007年のデータがあり基線で心血管疾患、糖尿病に罹患していなかった40~74歳の男女16,970例。

主要転帰は、新規の心血管疾患1例を予防するのに要したスクリーニングの実施件数、また、予防するための治療介入に要した件数、あるいは予防できた可能性があった新規の心血管疾患に対する件数についても検討された。

治療効果による相対リスクの低下は、臨床試験のメタ解析の結果およびNational Institute for Health and Clinical Excellenceのガイドラインから推定した。

効果は同一、リスクスコア戦略の方がコストを抑えられる




追跡期間中の心血管イベント発生は、18万3,586患者・年超のうち、1,362例だった。

新規の心血管イベント抑制に関して、政府が推奨する戦略と簡易リスクスコアを段階的に用いたうえで実施する戦略とに違いはなかった。予防できた件数は、政府戦略で26,789例、リスクスコアを用いた戦略で25,134例だった。リスクスコアを用いた場合、スクリーニングの実施必要者数は、母集団の60%で事足りた。

50~74歳でみた場合も、両戦略に相違はなかった。

Finnish diabetesリスクスコア調査票、身体測定値による層別化は、効果的ではなかった。

Chamnan氏は、「全成人を対象とするスクリーニング戦略も、リスクスコアを用いて行う戦略も、予防効果に相違はなかった。またリスクスコアを用いた方がコスト抑制も期待できる」と結論している。