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大腸腺腫切除後の長期的な大腸がん死亡率(解説:上村 直実 氏)-254

大腸がんによる死亡率を低下するために、便潜血を用いた検診や大腸内視鏡検査による早期発見が推奨されているが、大腸腺腫を内視鏡的に切除した後のサーベイランスも重要な課題となっている。 本研究は、ノルウェーのがんレジストリと死亡原因レジストリを用いて、1993年~2007年に内視鏡的大腸腺腫切除術を受けた患者4万826例を2011年まで追跡し、その大腸がん死亡率を一般住民と比較検討したものである。追跡期間(中央値7.7年:最長19.0年)の間に、1,273例(3.1%)が大腸がんと診断され、383例(0.9%)が大腸がんで死亡していた。 一般集団における大腸がん死亡率と比較すると、切除病変が低リスク腺腫群では標準化死亡比(SMR)の低下(0.75、95%CI:0.63~0.88)がみられた一方、高リスク腺腫群ではSMRの上昇(1.16、95%CI:1.02~1.31)が認められた。この結果から、高リスク腺腫切除群に対しては、より厳密なサーベイランスを推奨している。 欧米と日本の大腸内視鏡検査の精度が異なることは、よく知られた事実である。本研究では、がんレジストリの切除組織型を用いて腺腫切除群を設定しているが、初回内視鏡時に回盲部まで大腸全体が観察されての結果か不明である。 すなわち、切除病変の局在部位がS状結腸や直腸の遠位大腸が近位大腸の3倍以上という結果は、局在部位に大きな違いを認めないとする本邦の報告とは大きく異なっており、挿入が比較的困難である近位大腸の病変が診断されていない可能性が否定できない。 しかしながら、本邦の遡及的研究においても高リスク腺腫切除群は大腸がん発症リスクが高いことが報告されていることから、高リスク病変の内視鏡的切除術後のサーベイランスは、きわめて重要と思われる。著者らも考察しているように、世界中に認知されるガイドラインで最適なサーベイランス間隔を設定するためには、レベルの高いエビデンスが必要であり、わが国で進行中のRCT(Japan Polyp Study)の結果が期待される。

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ベンゾジアゼピン系薬とアルツハイマー病リスク/BMJ

 アルツハイマー病リスクの増大に、ベンゾジアゼピン系薬の使用が関連していることが、フランス・ボルドー大学のSophie Billioti de Gage氏らによるケースコントロール試験の結果、示された。ベンゾジアゼピン系薬は先進諸国では使用の頻度が高く、勧告にもかかわらず高齢者では慢性的に投与されている。ベンゾジアゼピン系薬使用者での認知症リスクの増大は確認されているが、因果関係については明らかになっていない。著者は今回の結果を踏まえて、「保証のないベンゾジアゼピン系薬の長期使用については、公衆衛生問題として検討するべきである」と指摘し、「高齢者におけるベンゾジアゼピン系薬の処方は、診療ガイドラインに準じるべきである(半減期が短い薬を優先して短期的に用いる)」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年9月9日号掲載の報告より。最低5年服用者とアルツハイマー病リスクとの関連をケースコントロール試験 研究グループは、アルツハイマー病リスクとベンゾジアゼピン系薬を最低5年間服用していたこととの関連について調べた。検討では、用量反応性と、治療に関連している可能性がある前駆症状(不安、うつ病、不眠症)についても考慮に入れた。 カナダのケベック州健康保険プログラムのデータベース(RAMQ)から、初めてアルツハイマー病と診断された1,796例(ケース群)を特定して6年間追跡し、性別、年齢群、追跡期間で適合した7,184例(対照群)と比較検討した。両群の被験者とも、2000~2009年に同地に居住していた66歳超の高齢者から無作為にサンプリングされた。 主要評価項目は、アルツハイマー病と、診断の最短5年前からベンゾジアゼピン系薬を服用していたこととの関連で、多変量条件付きロジスティック回帰分析法を用いて評価した。ベンゾジアゼピン系薬の使用について、これまでの曝露を検討し、次いで、処方投与量(1~90日、91~180日、180日超)でみた累積用量および薬物半減期で層別化し評価を行った。使用者の発病リスクは1.5倍、累積用量が多いほどリスクは増大 結果、ベンゾジアゼピン系薬の使用は、アルツハイマー病のリスク増大と関連していた。補正後オッズ比は1.51(95%信頼区間[CI]:1.36~1.69)で、さらに不安・うつ病・不眠症で補正後も、同関連は変わらなかった(補正後オッズ比:1.43、95%CI:1.28~1.60)。 ベンゾジアゼピン系薬使用との関連について、累積用量が処方91日未満では認められなかったが、91~180日(1.32、1.01~1.74)、180日超(1.84、1.62~2.08)と、累積用量が多くなるほど関連は増大することが示された。また、短時間作用薬では1.43(1.27~1.61)、長時間作用薬は1.70(1.46~1.98)で、薬物半減期との関連もみられた。

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急性冠症候群の新薬、第III相試験の結果/JAMA

 急性冠症候群に対する新たなLp-PLA2阻害薬ダラプラジブ(darapladib)について、プラセボと比較した長期有効性の結果が報告された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMichelle L. O’Donoghue氏らによる第III相多施設共同の無作為化二重盲検プラセボ対照試験SOLID-TIMI 52の結果で、3年時の主要冠動脈イベントの発生リスクは、プラセボと有意な差は示されなかった。Lp-PLA2は、炎症を介したアテローム発生に関与する酵素で、ダラプラジブはLp-PLA2を選択的に阻害する経口薬として開発が進められてきた。JAMA誌2014年9月10日号掲載の報告より。1万3,026例を対象にダラプラジブ群vs. プラセボ群 試験は、2009年12月7日~2011年10月28日に、36ヵ国868施設で、ACS(ST非上昇型またはST上昇型の心筋梗塞)を発症した入院30日以内の患者1万3,026例を対象に行われた。 被験者は、ガイドライン推奨治療に追加して、1日1回のダラプラジブ(160mg)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。追跡期間は2009年12月7日~2013年12月6日で、中央値2.5年だった。 主要エンドポイント(主要冠動脈イベント)は、冠動脈性心疾患(CHD)死、心筋梗塞または心筋虚血による緊急冠血行再建術の複合とし、Kaplan-Meier法にて3年時の累積発生率を評価した。3年時の主要冠動脈イベントの発生、ハザード比1.00 結果、3年時の主要冠動脈イベント発生は、ダラプラジブ群903例(16.3%)、プラセボ群910例(15.6%)だった(ハザード比[HR]:1.00、95%信頼区間[CI]:0.91~1.09、p=0.93)。 心血管死亡・心筋梗塞または脳卒中の複合発生率は、それぞれ824例(15.0%)、838例(15.0%)だった(同:0.99、0.90~1.09、p=0.78)。 主要エンドポイントの各エンドポイント、その他副次エンドポイント、また全死因死亡(ダラプラジブ群371例・7.3%vs. プラセボ群395例・7.1%、HR:0.94、95%CI:0.82~1.08、p=0.40)についても、両群間の違いはみられなかった。 なお、ダラプラジブ群のほうがプラセボ群よりも、臭いに対する懸念(11.5%対2.5%)、下痢(10.6%対5.6%)の報告例が多い傾向がみられた。

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高齢者のNSAIDs使用実態が明らかに

 オーストラリア・シドニー大学のDanijela Gnjidic氏らによる調査の結果、高齢者において、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は適切に使用されていない可能性が報告された。シドニー在住の高齢男性を対象に横断的に調査したところ、その使用実態が、NSAIDsを高齢者に安全に使用するための臨床ガイドラインと一致していないことが明らかになったという。著者は「ガイドラインの勧告と現実世界で起きていることの差異をさらに検討しなければならない」とまとめている。Pain誌2014年9月号(オンライン版2014年6月20日号)の掲載報告。 研究グループは、シドニー在住の70歳以上の男性1,696例を対象に、疼痛有病率、NSAIDsの使用パターンや使用期間、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の併用、薬物相互作用の発生などについて調査した。 主な結果は以下のとおり。・NSAIDsを定期的に使用していた(NSAIDs常用者)は8.2%(139例)、必要に応じて使用していた(頓用者)は2.9%(50例)であった。・NSAIDs常用者の平均治療期間は4.9年で、ガイドラインで推奨されている使用期間(短期使用)より長いことが示された。・ガイドラインではPPIの併用が推奨されているが、NSAIDs常用者における併用率は25.2%にすぎなかった。・NSAIDs常用者は頓用者と比較して、オピオイド鎮痛薬を使用している傾向が有意に高かった(p<0.0001)。・NSAIDs常用者は頓用者と比較して、慢性疼痛(p<0.0001)、最近の疼痛(p=0.0001)、慢性の侵入的な疼痛(p<0.0001)を有している可能性が有意に高かった。

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ASCOの妊孕性温存ガイドライン改訂

 妊孕性温存は、がんサバイバーのQOLにとって重要であり、がん治療に影響を及ぼす。この重要性を鑑み、2006年にASCOは委員会を招集しガイドラインを発行。その後の妊孕性温存の進歩に伴い、2013年に改訂が加えられた。2014年8月、横浜市で開催された日本癌治療学会学術集会にて、米国・ニューヨーク医科大学のKutluk H Oktay氏は「ASCO Guidelines for Fertility Preservation:2013 Updates」と題し、ASCOガイドラインの概要を紹介した。 妊孕性保護については、ほとんどの患者は紹介すらされておらず、実際に妊孕性保護の対策を受けている患者はほんの一握りしかいないという。この問題の原因の主たるものは、患者と臨床医のコミュニケーション不足にある。ASCO妊孕性保護委員会は、がん専門医が関与して、治療が不妊や早期閉経の問題を起こすことを早期に患者に知らせ、がんのタイプや年齢、治療法による個々人のリスクを議論しなければならないと強調している。 Oktay氏は例として、抗がん剤の卵胞毒性について触れた。卵胞は原始卵胞期から胞状卵胞期へと成長し排卵されるが、抗がん剤がどの段階に障害を与えるかは、その種類によって異なる。代謝拮抗剤は胞状卵胞期にのみ影響を与える。このグループの薬剤ではダメージで月経が停止しても、卵巣内で次の卵胞は成長しているため、新しい排卵が起こり月経も再開する。一方、アルキル化剤やトポイソメラーゼ阻害薬などは、原始卵胞期にも障害を与える。つまり、予備の卵にまでダメージを与えてしまい、卵胞形成に対する障害は非常に大きい。どちらのグループも無月経をもたらすが、ダメージは異なるのである。そのため、抗がん剤は卵巣毒性の程度で4段階に分類されている。 また、化学療法施行患者の卵巣における卵の予備量を非施行者と比較した試験では、化学療法施行により卵の予備数が約10歳分減少することが明らかになっている。乳がん患者で出産を望む場合などでは、たとえ治療開始時には若年でも妊孕性保護を考慮しなければならないこともある。 ASCO妊孕性保護委員会は、不妊の危険性がある場合、生殖年齢のすべての患者には妊孕性保護の紹介をすべきであり、たとえ明確な意見を持っていなくても、できるだけ早期に触れるべきである、としている。 成人男性に対する精子凍結保存、成人女性に対する胚凍結保存および卵母細胞凍結保存や保存的婦人科手術、小児に対する精液、卵母細胞低温保存などを確立された妊孕性保存方法として推奨している。さらに、BRCA変異陽性がん患者についても触れている。BRCA変異陽性患者は原始卵胞が少なく、卵胞刺激による採取卵も少ないこと、また閉経が早く40歳未満の早期閉経が数倍みられることが明らかとなっている。そのため、変異陰性者以上に化学療法後の妊孕性低下が大きいと考えられる。

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ガイドラインの正当性の検証は、大規模登録観察研究で!~219万3,425件に上る分娩登録からみた、分娩後急性腎不全のリスクと対策(解説:石上 友章 氏)-244

医療、医学の進歩によって、出産、分娩の安全性が高くなったにもかかわらず、米国・カナダでは、分娩後急性腎不全が増加している。カナダでは、1,000分娩あたり1.6の発生率(2003年)であったのが2.3(2007年)に、米国では、2.3(1998年)が4.5(2008年)に増加している。分娩後急性腎不全は、母親の約2.9%もの高い死亡率をもたらしており、先進国として異例の事態を呈している。 そこで著者らは、同時期に発生率が増加している分娩時異常出血による循環血液量減少、あるいは妊娠高血圧のいずれかが、この逆説的な分娩後急性腎不全の増加に寄与しているのではないかと仮説を立てて、今回の解析を行った。 このような仮説を着想するに至った背景には、周産期の高血圧性疾患の管理ガイドライン(カナダ)において、肺水腫予防のための水分制限、ならびに疼痛管理のための薬剤のコンビネーションが変更されたことがあり、hypovolemia, renal hypoperfusion, nephrotoxicityに由来する急性腎不全が増加した懸念があるためである1)。 ケベック州を除いた全カナダにわたるレジストリーを解析した結果は、分娩時異常出血は、分娩後急性腎不全の増加を説明するものではなかった。意外にも、その増加の原因は、分娩時高血圧、なかでも蛋白尿・子癇前症を伴った高血圧(いわゆる妊娠中毒症)にあった。 ガイドラインは、エビデンスによる最適な治療方針を提供している。分娩時高血圧に対しても、適切な降圧薬や、水分制限を推奨している。本研究の結果からは、こうしたガイドラインの推奨が、現実の分娩時高血圧の臓器保護に無力であったことを示している。 観察研究は、探索的に応用することで、疾病の予後改善につながる治療介入を仮説的に提示することも可能である。本邦でも、本研究のような精度の高い、大規模データベースを実用化することで、医療の標準化につながる重要な仮説提示がなされることが期待されている。

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デング熱での解熱剤に注意~厚労省がガイドライン配布

 9月16日、厚生労働省より全国の地方公共団体の衛生主管部局宛てに「デング熱診療ガイドライン(第1版)」が配布された。本ガイドラインは、全国で131名(9月17日現在)の患者が確認されている中で、一般医療機関への問い合わせも多いことから、9月3日に公開された診療マニュアルの内容を刷新し、あらためて作成されたものである。■妊婦、乳幼児、高齢者は重症化のリスク因子 ガイドラインは、デング熱の概要、症状・所見、診断、治療、予防、参考文献、図表の順で記載されている。 すでに多くのメディアで報道されているように、デング熱の臨床経過について通常は1週間前後の経過で回復すること、典型症状は急激な発熱、発疹、頭痛、骨関節痛、嘔気・嘔吐などであることなどの説明が記されている。 注意すべきは、一部の患者が経過中に重症型デングを呈することである。とくにリスク因子としては、妊婦、乳幼児、高齢者、糖尿病、腎不全などがあり、これらの患者では、経過観察でショック、呼吸不全、出血症状、臓器障害がないかどうかの注意が必要となる(なお1999年以降、日本国内で発症した同疾患での死亡者は記録されていない)。■解熱剤はアセトアミノフェンを推奨 デング熱では上記の症状のほか、血液検査で血小板減少、白血球減少が認められる。確定診断では、ウイルス分離やPCR法によるウイルス遺伝子の検出などが用いられるのは、既知のとおりである。症状を認めた時点で、必要に応じ、適切な治療が可能な医療機関への紹介が必要となる。 また、治療では、有効なウイルス薬はなく、輸液などによる対症療法が行われる。その際に投与する解熱剤について、アスピリンは出血傾向やアシドーシスを助長するため使用するべきでなく、同じくイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)も胃炎、出血を助長するために使用すべきではないとされている。投与する解熱剤としては、アセトアミノフェンなどが推奨されている。■医療者は診療時にも注意 デング熱には現時点で有効なワクチンがないため、有効な予防対策は蚊に刺されないことである。外出の際は、露出の少ない服装で虫よけスプレーなどによる対策を講じることになる。 1つ注意が必要なことは、患者診療時の医療者への感染である。疑わしい患者の診療時に針刺し事故などの血液曝露で感染する危険があるため、十分に注意するよう促している。 また、患者が出血を伴う場合には、医療従事者は不透過性のガウンおよび手袋を着用し、体液や血液による眼の汚染のリスクがある場合にはアイゴーグルなどで眼を保護する、としている。詳しくは厚生労働省 報道発表資料デング熱、患者さんに聞かれたら・・・

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スルホニル尿素(SU)薬は過去の薬か?(解説:住谷 哲 氏)-243

2型糖尿病(T2DM)患者の全死因死亡を減らすことが明らかにされているのは現時点においてはメトホルミンのみである1)。したがってほとんどのガイドラインではメトホルミンが第一選択薬とされている。しかしT2DMは進行性の疾患であるため、多くの患者は治療の継続とともに他の薬剤の追加投与を必要とする。本論文はメトホルミンの次の一手としてのインスリンとスルホニル尿素(SU)薬が予後に及ぼす影響を比較検討したものであり、興味深い。 試験デザインは最近よく用いられる、薬剤処方データベース研究であり、交絡因子の影響は傾向スコアマッチング法を用いて補正されている。 著者らはインスリン投与群がSU薬投与群に比較して良好な予後をもたらすと仮定したが、結果はそれに反してインスリン投与群で全死因死亡が増加していた。この結果からメトホルミンに追加する薬剤としてはインスリンに比較してSU薬が優れている、と単純に考えてよいだろうか? 日常臨床では注射薬であるインスリンを導入するのは容易ではない。ではインスリン投与群となった2,436人の患者はなぜインスリンが選択されたのだろうか。これはこの種の試験デザインで常に問題となる「処方理由による交絡 confounding by indication」であるが、少し考えてみよう。 SU薬ではなくインスリンが選択される場合として、SU薬が適切でない病態、たとえば肝硬変や腎不全の合併がある。しかしこれらの病態はメトホルミンの禁忌に該当するので、すでにメトホルミンが投与されている患者群においては考えにくい。次に考えられるのは血糖コントロールが極めて不良な場合である。これはSU薬投与群またはインスリン投与群のHbA1cの中央値がそれぞれ7.6%、8.5%であることから、可能性は十分ありそうである。傾向スコアマッチング法による補正では当然HbA1cも補正されているので解釈としては問題なさそうであるが、論文著者らもDiscussionで述べているように、HbA1cのみでは表されない糖尿病としての重症度(disease severity)が適切に補正されていない可能性が十分ある。つまりインスリンが選択された患者群は、はじめからイベントを起こしやすい予後不良群であったことになる。 やはり治療法の優劣を判断するには、ランダム化比較試験の結果を参考にする必要がある。SU薬とインスリンとの優劣を比較した試験としてはUKPDS332) があり、早期インスリン導入の従来療法に対する優越性を検討した試験としてはORIGIN3) がある。UKPDS33では、食事療法群、SU薬投与群、インスリン投与群(すでにBasal-bolus療法が用いられている)が比較されたが、その結果は1)SU薬とインスリンはイベント発症予防効果において同等である、2)膵β細胞機能の低下速度は、食事療法群、SU群、インスリン投与群において差はない、というものであった。つまり「早期インスリン導入による膵β細胞機能の温存」は幻想にすぎないことが明らかにされている。ORIGINでは、prediabetesを含む糖尿病患者においてグラルギンを用いた厳格血糖管理のイベント抑制効果を検討したが、グラルギン投与によるイベント抑制効果は認められなかった。 それではメトホルミンの次にはどの薬剤を選択すればよいのだろうか?インスリンおよびSU薬は糖尿病関連合併症を減らすことがUKPDS33で明らかにされているので、メトホルミンへの追加薬剤としていずれかを選択することは十分に合理的である。これまでのすべての報告はインスリン投与により、SU薬に比較して低血糖が増加することを示している。低血糖を回避して血糖を管理することの重要性が次第に明らかになりつつあることから、SU薬が使用できる状況であえてインスリン投与を選択する必要はないと考えられる。早期インスリン導入による膵β細胞保護作用を主張する一部の議論もあるが、その根拠はUKPDS33で明確に否定されている。膵β細胞機能を維持するために重要なのは良好な血糖コントロールを持続することであり、インスリンを投与することではない。インスリンは必要なときに、必要最少量を投与することがコツである。この点で英国のNICEのガイドライン4) では、インスリン投与はメトホルミンおよびSU薬の併用にてコントロール不良であるときに開始すべし、と明確に記載されている。

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結核性心膜炎でのステロイドや免疫療法を検証/NEJM

 結核性心膜炎患者に対し、補助的プレドニゾロン治療またはM. indicus pranii免疫療法のいずれも、有意な効果は認められなかったことが示された。南アフリカ共和国のケープタウン大学のBongani M Mayosi氏らが報告した。結核性心膜炎は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症を有している患者の頻度が高く、抗結核治療にもかかわらず有病率や死亡率が高いことが報告されている。また、補助的グルココルチコイド療法の効果については、死亡率の減少などが報告されていたが、HIV感染症患者についてはがんリスクを増大するといった報告が寄せられ、その使用について国際ガイドラインでは相反する勧告が示されている。研究グループは、補助的プレドニゾロンについてHIV感染症患者を含む結核性心膜炎に対し効果があるのではないかと仮定し検討を行った。NEJM誌オンライン版2014年9月1日号掲載の報告より。1,400例対象に、プレドニゾロンvs. M. indicus pranii免疫療法vs. プラセボ 検討は無作為化2×2要因試験にて、結核性心膜炎と診断または疑われた患者1,400例を対象に行われた。6週間のプレドニゾロンまたはプラセボを投与する群と、3ヵ月間で5回注射投与するM. indicus pranii免疫療法またはプラセボを投与する群に、無作為に割り付けた。 被験者のうち3分の2がHIV感染症を有していた。 主要有効性アウトカムは、死亡・心タンポナーデ・収縮性心膜炎の複合とした。主要複合アウトカムに有意差なし、がんリスク増大 結果、主要アウトカムの発生について、プレドニゾロン投与群(23.8%)とプラセボ投与群(24.5%)との間に有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.95、95%信頼区間[CI]:0.77~1.18、p=0.66)。また、M. indicus pranii免疫療法群(25.0%)とプラセボ投与群(24.3%)との間にも有意差はみられなかった(同:1.03、0.82~1.29、p=0.81)。 一方で、プレドニゾロン治療はプラセボと比較して、収縮性心膜炎の発生(4.4%対7.8%、HR:0.56、95%CI:0.36~0.87、p=0.009)、入院(20.7%vs. 25.2%、HR:0.79、95%CI:0.63~0.99、p=0.04)を有意に減少したことが示された。 しかし、プレドニゾロン治療およびM. indicus pranii免疫療法とも、それぞれプラセボと比較して、がん発生の有意な増大と関連しており(1.8%vs. 0.6%、HR:3.27、95%CI:1.07~10.03、p=0.03/1.8%vs. 0.5%、同:3.69、1.03~13.24、p=0.03)、主としてHIV関連のがん増大によるものであった。

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DES後のDAPT継続期間は短期間をベースに、高リスクの患者では症例ごとのオーダーメイド医療か(解説:中川 義久 氏)-241

 薬剤溶出ステント(DES)留置後の2剤併用抗血小板療法(DAPT)を継続する期間については、いまだ明確な基準はない。今回、この問題に1つエビデンスが加えられた。 フランスのJean-Philippe Colletらが、ARCTIC-Interruptionという無作為化比較試験の結果をLancet誌に報告した。2010年1月から2012年3月の間に、中断群624例と継続群635例に割り付けた。DES留置後1年間にイベントが起きなかった場合に割り付けが行われ、中断群はチエノピリジン系薬剤(クロピドグレル)が中断されアスピリンを継続している。継続群は、アスピリン+チエノピリジン系薬剤の2剤投与である。割り付け後の追跡期間の中央値は17ヵ月である。 その結果では、全死亡、心筋梗塞、脳梗塞や一過性脳虚血性発作、再血行再建術、ステント血栓症で定義される主要エンドポイント発生は、ITTで評価すると中断群4%、継続群4%と差は無かった。 一方、STEEPLE大出血イベントで定義される安全性エンドポイントは、中断群<0.5%、継続群1%と有意差はないものの継続群で頻度が高かった。大出血または小出血イベントでは、中断群1%、継続群2%と継続群で有意に頻度が高かった(p=0.04)。 要約すれば、留置後1年間でイベントが起きなかった場合、その後も継続して行うことに明白な有益性はなく、むしろ出血イベントのリスクが増し有害であることが示された。 この試験だけでなく、PRODIGY、REAL-LATE/ZEST-LATE、DES LATE、EXCELLENT、RESET、OPTIMIZEなどの試験でも、長期間のDAPTは心血管イベントを減らすことはなく、出血性合併症を増加させるという結果が一貫性を持って示されている。 このようなエビデンスがあるものの、日本における日常臨床の現場においては、1年を超えてDAPTが継続されている症例も少なくないのが現状であろう。これらの無作為化試験においては、試験除外基準によりステント血栓症の高リスク症例は解析に加えられていないことに注意が必要である。 また、DESの進化、新規の抗血小板薬剤の登場など現場の変化もある。日常臨床において各担当医が悩むのは、複雑な病変背景や植込み手技の症例、PSSやステント・フラクチャを持つことが既知の症例などである。標準的な症例については、DAPT期間についてガイドラインが今後改訂される可能性はあるが、高リスク症例については明確な基準を提示することは困難であろう。 ステント血栓症の危険因子を解析した報告は多い。これらの因子の集積度について症例毎に配慮して各個人に最適な医療を提供するオーダーメイド医療が求められる分野なのであろう。

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Vol. 2 No. 4 オメガ3系多価不飽和脂肪酸製剤の臨床応用 そのエビデンスと各種ガイドラインにおける位置づけ

田中 知明 氏千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学 千葉大学医学部附属病院糖尿病・内分泌代謝内科はじめにグリーンランドや千葉県下でのエイコサペンタエン酸(EPA)の有効性を明らかにした疫学調査をきっかけに、わが国では魚油をエチルエステル化した高純度EPA製剤が開発され、1990年には「閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛および冷感の改善」、1994年には「高脂血症」に対する医療用医薬品として臨床の現場に登場した。さらに、欧州、米国などで「高トリグリセライド血症」の効能・効果を有する医薬品として承認されていた高濃度オメガ3製剤(主成分としてEPA・DHAを含有)も2013年に国内で承認され、日常臨床に広く普及しつつある。これらオメガ3製剤の臨床応用におけるエビデンスとしては、高純度EPA製剤の冠動脈疾患に対する発症予防効果を検証した日本人対象の大規模臨床試験JELIS1)に加えて、Circulation、Lancetに報告されたイタリアのGISSI-Prevenzione Trial、GISSI-HF Trialなど、多くのエビデンスが蓄積されている。そこで、本稿ではオメガ3系多価不飽和脂肪酸製剤の臨床応用の骨格となる重要な大規模臨床試験とそのメタ解析におけるエビデンスを解説し、EPA製剤の各種ガイドラインにおける位置づけについて概説する。EPA製剤が推奨される各種ガイドライン本邦においてEPAに関してその臨床的有用性が明記されている各ガイドラインについて、表にまとめる。これまでの大規模臨床試験のエビデンス基づき、現在では『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版』、『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)』、『心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)』、『脳卒中治療ガイドライン2009』の4種類のガイドラインに医療医薬品としての有用性が推奨グレードとともに記載されている。以下に具体的内容とエビデンスグレードを記す。『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版』の第7章「治療法 B 薬物療法におけるステートメント」として、「高リスクの高LDL-C(low density lipoprotein cholesterol)血症においては、スタチン投与に加えてEPAの投与を考慮する」とされている。推奨レベルIIa、エビデンスレベルAである。『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)』の「Ⅲ. 各疾患における抗凝固・抗血小板療法 11 心血管疾患高リスク症例の一次予防」においては、「高リスクの脂質異常症におけるエイコサペント酸エチル投与の考慮」が記載され、クラス1のエビデンスレベルとして推奨されている。『心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)』における「II. 薬物療法 3 脂質異常症改善薬」の項目では、「2. 高LDLコレステロール血症にはスタチンに加え高純度EPA製剤も考慮する」と記載され、エビデンスグレードはBである。『脳卒中治療ガイドライン2009』における「Ⅱ. 脳梗塞・TIA 4-1. 脳梗塞再発予防 (3)脂質異常症」の項目の中で、「3. 低用量スタチン系薬剤で脂質異常症を治療中の患者において、EPA製剤の併用が脳卒中再発予防に有用である」と記載されている。エビデンスグレードはBである。高濃度オメガ3製剤(EPA+DHA)に関しては、欧州(ノルウェー)では1994年に、アメリカでは2004年に使用されるようになっていたが、日本では2013年から使われるようになった。したがって、国内では高純度EPA製剤が主流であった過去の経緯から、各ガイドラインにおける記載は高純度EPA製剤のみなのが現状である。海外ガイドラインにおけるオメガ3系脂肪酸の臨床的位置づけとして、欧州・米国ではEPA・DHA製剤が中心であり、脂質異常症の管理および心不全の治療ガイドラインにおいて推奨されている(推奨レベルIIb、エビデンスレベルB)。今後、本邦においてもエビデンスのさらなる蓄積とガイドラインにおける位置づけが新たに追加されることが期待される。表 各種ガイドラインにおける脂質異常症治療薬の記載画像を拡大するJELISの概要と1次予防・2次予防サブ解析JELISは、日本人を対象に実臨床に近い条件の下で実施された前向き大規模臨床試験であり、各ガイドライン記載の根拠となる重要なエビデンスである1)。JELISは、日本人の脂質異常症患者(総コレステロール250mg/dl以上)において40~75歳の男性と、閉経後~75歳の女性18,645人(冠動脈疾患の1次予防14,981例、2次予防3,664例)を対象としている。プラバスタチン10mg/日またはシンバスタチン5mg/日を基本として、1.8gの高純度EPA製剤の投与群と非投与群を無作為に割り付けて、5年間の追跡調査し、主要冠動脈イベント(致死性心筋梗塞、非致死性心筋梗塞、心臓突然死、心血管再建術、新規狭心症の発症、不安定狭心症)について検討を行った試験である。その結果、主要冠動脈イベントを19%低下させ、EPA投与群では対象群に比べ虚血性心疾患の発症リスク比(95% CI)が0.81(0.68-0.96)であり、非致死性では0.81(0.68-0.96)と有意であった(本誌p.23図を参照)。興味深いことに、血清脂質変化を検討すると、EPA群と対象群においてLDLコレステロールの変化率に有意差を認めなかった。このことから、高純度EPA製剤の心血管イベント抑制効果は、LDLコレステロール値以外による機序が大きいと考えられている。<JELIS 1次予防サブ解析>冠動脈疾患の既往がない1次予防サブ解析(14,981例)では、主要冠動脈イベントの発生はEPA投与群で18%減少するものの、有意差を認めなかった。肥満・高TG (triglyceride)血症・低HDL(high density lipoprotein)血症・糖尿病・高血圧を、冠動脈イベントリスク因子としてそれらの重積と冠動脈イベント発生を検討した結果、対照群/EPA群の両者において発症率の上昇を認め、EPA群で抑制している傾向が見られた2)。また、登録時のTG値とHDL値の組み合わせで4群に分けて、冠動脈イベント発症リスクを比較検討した結果、高TG/低HDL-C血症群ではTG/HDL-C正常群に比較して、冠動脈イベント発生リスクはEPA投与群で53%もの低下を示し、高リスク群での抗動脈硬化作用による心血管イベントの発症抑制が期待されている1, 2)。<JELIS 2次予防サブ解析>冠動脈疾患の既往がある患者(3,664例)の2次予防サブ解析では、EPA投与群で23%のイベント発症抑制効果を認めた3)。インターベンション施行症例や心筋梗塞既往症例においても、EPA投与群でそれぞれ35%、27%のイベント発症の抑制を認めた3)。これらの結果は、高純度EPA製剤の投与はインターベンション施行例や心筋梗塞既往例の2次予防薬としての有用性を示している。血漿EPAとアラキドン酸(AA)の比の変化を観察すると、試験開始時に両群共にEPA/AA比は0.6であったのに対して、EPA投与群では1年後に1.3まで上昇していた3)。試験終了時のEPA/AA比と冠動脈イベント再発の関連性を解析した結果、EPA/AA比が高いほど、イベント発生の相対リスクが低下していることが明らかとなった。<JELIS脳卒中サブ解析>JELIS試験においては、2次評価項目として脳卒中(脳血栓、脳塞栓、判別不能の脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳出血、くも膜下出血)の発症が検討された。患者背景として、脳卒中の既往はEPA群で485例(5%)であり、対照群で457例(5%)に認められ、その内訳は閉塞性脳血管障害がそれぞれ74%、75%で、両群間に有意差を認めなかった4)。脳卒中の1次予防に関しては、対照群およびEPA投与群ともに、脳卒中発症頻度が低かったため、両群間に明らかな差を認めなかった。実際、対照群における脳卒中累積発症率が5年間で1.3%ととても低値であったことが大きな要因と考えられている。また、JELIS以外に国内で施行された冠動脈疾患や脳卒中の既往のない高コレステロール患者を対象としたMEGA試験では、プラバスタチンの投与で有意に発症を抑制したことが報告されている。つまり、JELISにおけるスタチン投与の背景がすでに脳卒中発症をかなり予防していたことが推察され、EPAの有用性を否定するものではない結果といえよう。脳卒中既往歴のある2次予防については、EPA投与群において20%の有意な脳卒中発症抑制効果(発症リスク比0.80、95% CI:0.64-0.997)が認められた4)。この脳卒中発症抑制に関しては、number to treat(NNT=疫学の指標の1つで、エンドポイントに到達する患者を1人減らすために何人の患者の治療を必要とするかを表したもの)は27であった。興味深いことに、同時期に欧米で施行されたSPARCL試験5)では、アトルバスタチンの5年間の投与による脳卒中2次予防効果のNNTは46であり、高用量スタチンより優れた結果を示唆するものであった。単純比較はできないが、EPA製剤(スタチン併用)の脳卒中2次予防効果における臨床的有用性を示すと考えられている。登録時のHDL-C値と脳卒中発症の関係を解析した結果、対照群ではHDL-C値が低いことに相関して脳卒中再発率が有意に増加するが、EPA投与群ではHDL-C値と独立して脳卒中再発予防効果を認めた。また臨床的なポイントとして、JELISにおける脳卒中の疾患別検討では、EPA効果がより高い群として脳梗塞、特に脳血栓症の抑制が明らかであった。またEPA服薬良好群では、36%の顕著な再発低下(5年間のNNTは16)を示した6)。EPAの特徴の1つである血小板凝集抑制作用を介したアテローム血栓予防効果が大きな役割を果たしている可能性が高い。GISSI-Prevenzione Trial7)と海外のエビデンスイタリアで行われたGISSI-Prevenzione Trialは、急性心筋梗塞発症後3か月以内の高リスク患者11,324症例を対象とした2次予防試験であり、オメガ3系多価不飽和脂肪酸1g/日のカプセルと抗酸化作用を持つビタミンE 300mg/日を内服する群を、オメガ3系多価不飽和脂肪酸のみ内服する群、ビタミンEのみ内服する群、両方内服する群、両方内服しない群に分けて3.5年間介入し検討を行った試験である7)。その結果、オメガ3系多価不飽和脂肪酸を内服している群は対象群に比べ、全死亡の相対リスク(95% CI)が0.80(0.67-0.94)と低下を認め、特に突然死においては0.55(0.40-0.76)と大きく抑制され、突然死においては治療開始後早期の120日ですでに有意な相対リスクの低下(0.47(0.22-0.99)、p=0.048)が認められた(本誌p.24図を参照)7)。また、心不全患者を対象に行ったGISSI-HF Trialでも、オメガ3系多価不飽和脂肪酸の投与は、有意に心血管イベントの発症を抑制した8)。コホート試験である13試験を用いて、魚摂取・魚食頻度と冠動脈疾患による死亡率との関連について検討した結果(222,364症例のメタ解析)、魚摂取は冠動脈疾患による死亡率を有意に低下させることが明らかとなった9)。さらに、脂質低下療法に関する97ランダム化大規模臨床試験のメタ解析の結果から、スタチンとオメガ3系多価不飽和脂肪酸製剤は、心臓死および総死亡のイベントリスクを低下させることが示された10)。これらのエビデンスから、ハイリスクの脂質異常患者に対してスタチンにEPA製剤を加えることで、さらなる心血管イベント抑制効果が期待できると考えられる。おわりに高純度EPA製剤は、心血管イベントおよび脳血管イベントの1次予防・2次予防戦略を考えるうえで重要な薬剤であることはいうまでもない。大規模臨床試験のエビデンスをベースとした各ガイドラインを見てわかるように、脂質異常症のゴールデンスタンダードであるスタチンに加えて、EPA製剤の併用効果が証明され、臨床的意義づけが確立している。JELISによる日本人のエビデンスに裏づけされた内科的戦略の1つとして、心血管・脳血管イベントのハイリスク症例やスタチン投与による脂質管理下でもイベント発生を抑制できない症例に対して、積極的な使用が推奨される。またEPA・DHA製剤についても、ようやく国内で使用することができるようになった。日本人のエビデンスはまだ十分ではなく、ガイドラインにおける位置づけは現時点では明確ではないが、欧米におけるエビデンスと使用経験から本邦でも十分に期待できるものと思われる。EPA製剤との違いや臨床的使い分けなど、今後のさらなるエビデンスの蓄積が必要であろう。文献1)Yokoyama M et al. Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis. Lancet 2007; 369: 1090-1098.2)Saito Y et al. Effect of EPA on coronary artery disease in hypercholesterolemic patients with multiple risk factors: sub-analysis of primary prevention cases from the Japan EPA Lipid Intervention Study (JELIS). Atherosclerosis 2008; 200: 135-140.3)Matsuzaki M et al. Incremental effect of eicosapentaenoic acid on cardiovascular events in statin-treated patients with coronary artery disease. Circ J 2009; 73: 1283-1290.4)Tanaka K et al. Reduction in the recurrence of stroke by eicosapentaenoic acid for hypercholesterolemic patients : subanalysis of the JELIS trial. Stroke 2008; 39: 2052-2058.5)Amarenco P et al. High-dose atrovastatin after stroke or transient ischemic attack. N Engl J Med 2006; 355: 549-559.6)田中耕太郎ほか. 高コレステロール血症患者の脳卒中発症に対するEPAの効果-JELISサブ解析結果. 脳卒中2007; 29: 762-766.7)Marchioli R et al. Early protection against sudden death by n-3 polyunsaturated fatty acids after myocardial infarction: time-course analysis of the results of the Gruppo Italiano per lo Studio della Sopravvivenza nell'Infarto Miocardico (GISSI)-Prevenzione. Circulation 2002; 105: 1897-1903.8)Gissi HFI et al. Effect of n-3 polyunsaturated fatty acids in patients with chronic heart failure (the GISSI-HF trial): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet 2008; 372: 1223-1230.9)He K et al. Accumulated evidence on fish oil consumption and coronary heart disease mortality : a meta-analysis of cohort studies. Circulation 2004; 109: 2705-2711.10)Studer M et al. Effect of different antilipidemic agents and diets on mortality : a systematic review. Arch Intern Med 2005; 165: 725-730.

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高血圧治療は個々のリスク因子合併を考慮した“トータルバスキュラーマネージメント”が重要(解説:桑島 巌 氏)-237

日本動脈硬化学会によるガイドラインでは、高脂血症の薬物治療開始基準を一律に決定するのではなく、性、年齢、血圧、糖尿病の有無など血管系リスク層別化を考慮した治療目標を設定すべきことが示されている。これは、これまでのメタ解析で、血管合併症のリスクの高い症例ほど薬物治療による絶対的リスク減少が大きいことが明らかになっているからである。 同じような考えが高血圧治療においてもいえることを実証したのが、このメタ解析である。 BPLTTCは、高血圧・高脂血症治療に関して、世界で最も信頼性の高いメタ解析を発表しているグループである。メタ解析で採用された臨床試験は、いずれも試験開始前に一次エンドポイント、二次エンドポイント、試験方法、症例数、解析方法など詳細に登録を行ったもののみを対象としており、そのエビデンスレベルは非常に高いことで知られている。 今回の報告は、高血圧治療効果についても、心血管合併症予防効果を絶対的リスク減少でみた場合、リスク因子を多く有している症例ほど有効性が大きいことを示している。 治療による有用性は相対的リスク減少で表される場合があるが、これはしばしば効果を誇大に表現することになる。たとえば、リスクの少ない症例100を対象とした場合、治療群の発症は1例、プラセボ群では2例とすると相対的リスク減少は50%(なんと半減!)になるが、絶対的リスク減少は100人中1例に過ぎない。NNT100、つまり100人治療してやっと1例の発症を予防できることになる。治療効果は絶対的リスク減少、あるいはNNT(Number Needed to Treat)で表すのが本当である。 本研究は11の臨床研究に参加した約5万2千例の対象症例を、プラセボ群のデータから予測された数式を用いて、11%未満の低リスク群、11~15%の軽度リスク群、15~21%の中等度リスク群、21%以上の高リスク群の4群に層別した。高リスク群は当然、喫煙率、心血管疾患既往、糖尿病、収縮期血圧のいずれもが他の群より高い。 その結果、5年間の心血管合併症発症は、相対的リスク減少でみた場合には4群間で差はなく、治療の有効性はどの群でも同じようにみえる。しかし、絶対的リスク減少でみると、高リスク群が最も高血圧治療薬による効果が大きく、ついで中等度、軽度、低リスクの順になっている。 この結果は、高血圧治療の開始基準あるいは降圧目標値の設定においても、血圧以外のリスク因子にも配慮した“トータルバスキュラーマネージメント”の考え方が重要であることを示している。当然ながら、高齢者はさまざまなリスク因子を併せもつ症例が多いことから、高リスク症例が多い。したがって、高齢者ほど厳格な高血圧治療が必要であることを意味しているのである。

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大腸がん死亡率、切除腺腫のリスクで差/NEJM

 大腸腺腫切除後の大腸がん長期死亡率について、一般集団と比較して、切除した腺腫が低リスクであった患者では低下がみられた一方、高リスクであった患者は高かったことが明らかにされた。ノルウェー・オスロ大学のMagnus Lphiberg氏らが1,273例を中央値7.7年間追跡し報告した。腺腫切除後には大腸内視鏡によるサーベイランスが広く推奨されているが、同患者における大腸がん死亡についてはこれまでほとんど報告されていなかった。NEJM誌2014年8月28日号掲載の報告より。ノルウェー1993~2007年に腺腫切除を受けた患者を追跡評価 研究グループは、ノルウェーのがんレジストリと死亡発生レジストリのデータを集約し、1993~2007年に大腸腺腫切除を受けた患者の大腸がん死亡率を、2011年まで追跡し推算した。また一般集団との比較で発生率ベースの標準化死亡比(SMR)も算出し検討した。 ノルウェーのガイドラインでは、腺腫が高リスク(高悪性度異形成腺腫、絨毛腺腫、10mm以上の腺腫)の患者は10年後に、また腺腫が3個以上あった患者は5年後に大腸内視鏡検査を受けることが推奨されている。低リスク腺腫の患者についてはサーベイランスは推奨されていない。 本研究では、レジストリデータから正確なポリープサイズと数は入手できなかった。高リスク腺腫は、多発性腺腫、絨毛腺腫、高悪性度異形成腺腫と定義して検討が行われた。一般集団と比較し、高リスク腺腫切除患者は上昇、低リスク腺腫切除患者は低下 研究グループが特定した、大腸腺腫切除患者は4万826例であった。 これら患者のうち、追跡期間中央値7.7年(最長19.0年)の間に、1,273例の患者が大腸がんと診断されていた。 大腸がん死亡は、一般集団398例に対し、検討群では383例が観察され、SMRは0.96(95%信頼区間[CI]:0.87~1.06)だった。 大腸がん死亡率は、高リスク腺腫切除患者群では上昇が(209例vs. 242例、SMR:1.16、95%CI:1.02~1.31)、一方、低リスク腺腫切除患者群では低下がみられた(189例vs. 141例、SMR:0.75、95%CI:0.63~0.88)。

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GET!ザ・トレンド~臨床の近未来を探る~

医学の世界は日進月歩。さまざまな疾患領域で診断や治療が進歩するなか、ご自身の専門領域はもちろん、非専門の領域においても、最新の診療やガイドラインなどの情報を押さえておきたいところです。このコーナーでは、最近注目されている医療情報や診療、近い将来に登場が期待される医療技術などをピックアップしてお届けします。

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【寄稿】GERDとの鑑別が必要な好酸球性食道炎

概説好酸球性食道炎は、食道上皮に好酸球を中心とした炎症が持続することによって、嚥下困難や食事のつかえ感などの症状を生じ、食道の運動・知覚異常、狭窄などを合併する慢性アレルギー疾患である。原因として食物や気道抗原に対する過剰な免疫応答が想定されているが、まだ原因や病態については十分に解明されていない。欧米では1990年代以降、急激な増加傾向を示しており、最近の報告では、年間の発症率が人口10万人あたり10人に達し、有病率も人口10万人あたり50人程度となっている。一方、本邦では欧米に比して非常にまれな疾患と考えられていたが、ここ数年、成人例での報告例が増加している。本疾患は胸焼けを主訴とすることもあり、胃食道逆流症(GERD)との鑑別が重要となる。内視鏡的には縦走溝・リング・白色滲出物といった特徴的な所見を呈し、逆流性食道炎に見られる粘膜傷害(mucosal break)とは異なる。確定診断には食道上皮からの生検を行い、高倍率視野で15~20個以上の好酸球浸潤を証明することが必要である。プロトンポンプ阻害薬(PPI)治療によってもGERD症状が改善しない症例の1割弱には、好酸球性食道炎が含まれていると報告されており、治療抵抗性GERDの鑑別疾患として念頭に置く必要がある。疫学本疾患は1970年代に初めて報告され、1990年代前半までは、まれな疾患と考えられていたが、その後、欧米において急激な有病率・罹患率の増加が認められるようになった。また、当初は小児に多い疾患と考えられていたが、最近では成人例の報告が目立つようになっている。最近の米国の報告では有病率は人口10万人あたり50人を超している1)。一方、本邦では、2006年に初めて成人例において本疾患が報告された2)。当時は非常にまれな疾患と考えられていたが、ここ数年、とくに成人例での報告例が増えてきている。2011年に内視鏡約5,000例あたり1例の頻度で好酸球性食道炎が認められることが報告された3)が、最近では、さらにその頻度は増加していると考えられる。われわれの最近の検討では、食事のつかえ感や胸焼けなどの症状を主訴として内視鏡検査を施行した319例について、食道からの生検を行い、8例(2.5%)に15個以上/高倍率視野の食道好酸球浸潤が認められた4)。疫学的な特徴として、30~50代に多く、70~80%が男性であることが示されている5)。また、患者の半数以上に喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患の合併が見られる。PPI治療に抵抗を示すGERD症例に含まれる好酸球性食道炎の頻度に関する調査では、0.9~8.8%が好酸球性食道炎であったと報告されている6)。大規模な検討はなく、頻度にばらつきはあるが、PPI抵抗性GERDの1割弱に好酸球性食道炎が含まれていることが示されている。病態食物や空気中の抗原をアレルゲンとして食道上皮局所において過剰な免疫応答(アレルギー)が生じ、好酸球を中心とした慢性的な炎症が惹起されると想定されている。本疾患では、IgEを介する即時型アレルギー反応よりも、Tリンパ球を中心とした細胞性免疫の作用による非即時型のアレルギー反応が重要であることが示されている。最近の研究から、アレルギー機序に関与するいくつかの遺伝子の多型が発症に関連することが明らかにされつつある7)。症状本疾患は小児および成人で特徴的な症状が異なる。乳幼児期では、哺乳障害や発育の遅れが見られる。学童期から青年期においては、腹痛、嘔気、嘔吐などの非特異的な症状を伴うことが多い。成人例では嚥下障害や食事のつかえ感を生じることが多く、food impactionと呼ばれる食物塊の食道への嵌頓を生じる例も見られる。しかし、胸焼けや呑酸などGERDに典型的な症状を主訴とすることもあり、症状のみから、GERDと鑑別することは困難である。最近、人間ドックなどの無症状者の検診例において、典型的な好酸球性食道炎の内視鏡像を呈し、生検で食道好酸球浸潤を認めるケースも見られるようになっている。診断本疾患の診断は、食道に起因するさまざまな症状を有する例に上部消化管内視鏡検査を行い、食道に特徴的な内視鏡所見を確認し、生検で食道上皮への好酸球浸潤(高倍率視野で15~20個以上)を認めることによってなされる。本邦で作成された診断基準(案)を表1に示す6)。胸部CTで食道壁の肥厚を指摘されることが診断の契機となることもある。末梢血の好酸球増多を示すことは少ない。末梢血IgEは約70%の症例で増加を認めるが、併存するアレルギー疾患の関与によるものが大きいと考えられ、本疾患に特異的なものではない8)。内視鏡で特徴的に認められる所見は縦走溝、リング、白色滲出物である。このうち、縦走溝は本疾患において最も典型的な画像所見であり、逆流性食道炎の際に認められる粘膜傷害(mucosal break)と鑑別可能である(図1)。以前の報告では約30%の症例では内視鏡的な異常を示さないと報告されていたが、最近の報告では90%以上の症例で上記のいずれかの内視鏡所見を示すことが報告されている9)。生検時の注意点として、食道粘膜における好酸球の分布は不均一であり、生検1個での診断感度は50%程度とされ、ガイドラインでは2~4個の生検が必要と示されている。表1を拡大する図1を拡大する米国のガイドラインによる好酸球性食道炎の診断プロセスを図2に示す10)。生検で食道好酸球浸潤を認めた場合、まず、薬剤性や感染性など二次性の原因を除外する。好酸球性食道炎は、消化管のうちで食道のみに好酸球浸潤を来すことが特徴であり、好酸球浸潤が食道のみでなく、胃や小腸へも認められた場合は、好酸球性胃腸炎と診断される。したがって、診断には胃・十二指腸からの生検も必要となる。次のステップとして、PPIの有効性の評価が行われる。高用量PPIの2ヵ月間投与後に再度、内視鏡検査・病理検査を行い、改善の認められた症例はPPI反応性食道好酸球浸潤と診断され、好酸球性食道炎とは区別されて扱われる。したがって、好酸球性食道炎の診断には、PPIが無効であることが含まれている。一方、本邦では、好酸球性食道炎がまれな疾患であり、多くの場合、PPIが有効であることから、PPIの有効性によって診断の区別をしていない。今後、疾患のより詳細な解析を踏まえて、新たな診断基準の作成が必要である。図2を拡大する治療食事療法と薬物療法が中心となる。食事療法としては、原因となる食物アレルゲンを除去することが有効であるとされており、欧米では成分栄養食やアレルゲンとなる頻度の高い6種類(牛乳、小麦、卵、大豆、ナッツ類、魚介類)の食品を除いた6種抗原除去食(six food elimination diet: SFED)が治療に用いられている。最近の食事療法に関するシステマティックレビューによると、成分栄養食で90.8%、SFEDで72.1%の症例で有効であったことが報告されている11)。一方、血清中の抗原特異的IgEや皮膚のプリックテストやパッチテストによって同定されたアレルゲンに対する食事療法は有効でないことが示されており、SFEDが有効であった場合は、1種類ずつ再開し、時間をかけて原因となる食物を同定する必要がある。また、入院中は食事療法が奏効しても、退院後の継続性に問題があることが指摘されている。日本人を対象とした有効性に関する報告はまだなされていない。上述のように、欧米のガイドラインでは好酸球性食道炎はPPIが無効であることが診断基準に含まれている。しかしながら、最近の検討ではPPIが酸分泌抑制効果以外に、免疫調節作用を有しており、食道への好酸球浸潤の誘導を抑制する効果を持つことが報告されている。また、酸性条件下では、病態に関与するサイトカイン(IL-13)の作用が増強することが示されており、PPIが好酸球性食道炎の病態改善に寄与することが推測されている。したがって、食道好酸球浸潤症例の治療にはPPIを第一選択として使用すべきと考えられる(保険適用外)。PPIが無効の場合は、ステロイド投与を行う。投与方法として、気管支喘息の治療に用いられる局所作用ステロイドであるフルチカゾンやブデソニドを吸入ではなく、口腔内に投薬し、唾液と共に嚥下させる方法による治療が行われている(保険適用外)。この方法は、内服による全身投与に比して、副作用の面からも有効であると考えられるが、その効果は必ずしも十分でないとする報告もある。局所作用ステロイドで十分な効果が得られない場合は、プレドニゾロンなどの全身作用ステロイドの投与が行われる(保険適用外)が、投与開始量や減量方法などについて、十分なコンセンサスは得られていない。投与の際は、副作用についての十分な注意が必要である。その他、抗アレルギー薬やロイコトリエン受容体拮抗薬などの治療成績が報告されているが、効果は限定的と考えられている。予後一般に、軽快と増悪を繰り返し、完全に治癒することは少ないとされる。これまでに悪性化の報告はなく、比較的予後は良好であると考えられているが、長期経過に関する報告はまだ少ないため、自然史については不明な点も多い。GERDとの鑑別のポイントGERDと好酸球性食道炎の臨床像の特徴を表2に示す。好酸球性食道炎は中年男性に好発し、アレルギー疾患の合併を半数以上に認め、食事のつかえ感が主訴となることが最も多いが、胸焼けや呑酸を訴えることもある。好酸球性食道炎では90%以上に内視鏡的に特徴的な所見を認めることが最近の報告で示されており、本疾患を念頭に置いて食道を詳細に観察することが重要である。また、GERD症状に対してPPIが有効でない症例においては、食道からの生検を行い、好酸球浸潤の有無を評価すべきである。GERDと好酸球性食道炎はオーバーラップすることもある(図3)。PPIはどちらの病態に対しても有効に作用することが示されており、PPI治療は第一選択となる。現在の欧米のガイドラインではPPI無効例のみを好酸球性食道炎と定義しているが、好酸球性食道炎とPPI反応性食道好酸球浸潤を症状、内視鏡像、病理像から鑑別することは困難であることが報告されており、疾患概念の見直しの必要性が指摘されている。表2を拡大する図3を拡大する引用文献1)Dellon ES, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2014;12:589-596.2)Furuta K, et al. J Gastroenterol. 2006;41:706-710.3)Fujishiro H, et al. J Gastroenterol. 2011;46:1142-1144.4)Shimura S, et al. Digestion. 2014(in press).5)Kinoshita Y, et al. J Gastroenterol. 2013;48:333-339.6)木下芳一ほか. 日本消化器病学会雑誌. 2013;110:953-964.7)石村典久ほか. 分子消化器病. 2013;10:157-165.8)Ishimura N, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2013;28:1306-1313.9)Ishimura N, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2014(in press).10)Dellon ES, et al. Am J Gastroenterol. 2013;108:679-692.11)Arias A, et al. Gastroenterology. 2014;146:1639-1648.

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脳卒中発症後の手術では、心血管有害事象のリスクが高く、時間依存的に関連(解説:中川原 譲二 氏)-234

虚血性脳卒中新規発症例に対する手術タイミングは重要な問題であるが、これまで不十分に扱われてきた。デンマーク・コペンハーゲン大学のMads E. Jorgensen氏らは、同国住民コホートで待機的非心臓手術を受けた約48万件の手術データを後ろ向きに解析し、とくに発作後9ヵ月未満で手術を行った場合は、脳卒中既往は術後の心血管系の有害転帰と関連することを明らかにした。また9ヵ月超でも、脳卒中を発症していない患者と比べるとそのリスクは高く一定に推移することが示された。著者らは「今回の結果は、今後のガイドラインにおいてリスクの時間依存性に注意を払う必要があることの根拠になると思われる」とまとめている。(JAMA誌2014年7月16日号掲載の報告より) 48万1,183件のデータを脳卒中発症から手術までの時間で層別化し評価 脳卒中発症から手術までの時間に関する安全性および重要性を評価する検討は、2005~2011年のデンマーク全国コホート研究のデータを用いて行われた。コホートには、20歳以上で待機的非心臓手術を受けた48万1,183件の手術患者のデータが含まれていた。脳卒中発症から手術までの時間で層別化し、術後30日間の主要心血管有害事象(MACE;虚血性脳卒中、急性心筋梗塞、心血管死を含む)と全死因死亡を、多変量ロジスティック回帰モデルを用いてオッズ比(OR)を算出して評価した。対象のうち、脳卒中既往患者は7,137例(1.5%)、非既往患者は47万4,046例であった。既往群は非既往群と比べて、平均年齢で16歳上回り(69.7歳vs. 53.7歳)、男性が多く(56.4%vs. 43.3%)、心血管系の治療歴と併存疾患を有する割合が高かった。また被験者が受けた手術回数の中央値は1回で、調査対象期間中に1回以上の手術を受けた人は、脳卒中既往群24.3%、非既往群21.4%であった。 主要心血管有害事象(MACE)、全死亡ともリスクは時間依存的傾向を示す MACEの粗発生率は、1,000患者当たり脳卒中既往群54.4件(95%信頼区間[CI]:49.1~59.9)に対し、非既往群は4.1件(同:3.9~4.2)だった。非既往群との比較による既往群のMACEのORは、脳卒中から手術までの期間が3ヵ月未満の患者では14.23(95%CI:11.61~17.45)、3~6ヵ月未満では4.85(同:3.32~7.08)、6~12ヵ月未満では3.04(同:2.13~4.34)、12ヵ月以上では2.47(同:2.07~2.95)であった。MACEリスク(脳卒中から手術までの期間が3ヵ月未満)は、手術が低リスク(OR:9.96、95%CI:5.49~18.07)、中程度リスク(同:17.12、13.68~21.42)でも、高リスク(同:2.97、0.98~9.01)と比べて同程度か高いことが認められた(相互作用のp=0.003)。同様の傾向は、30日死亡率でもみられた。脳卒中から手術までの期間が3ヵ月未満の患者の死亡ORは3.07(95%CI:2.30~4.09)、3~6ヵ月未満では1.97(同:1.22~3.19)、6~12ヵ月未満では1.45(同:0.95~2.20)、12ヵ月以上では1.46(同:1.21~1.77)であった。脳卒中のサブグループにおける3次回帰スプライン分析により、リスクは9ヵ月後で横ばいになることが裏付けられた。

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アリスミアのツボ 第1回

Q1不整脈に対する治療が必要か否かの線引きは何をもって判断するのでしょうか?治療の要否は心電図所見ではないことを肝に銘じましょう。治療の要否は患者の全体像によって決まるのです。「木を見て森を見ず」不整脈の診断は心電図でなされます。だからこそ、次のような誤解が生じやすくなります…心電図が読めないから不整脈は嫌い、心電図が正常でなければすべて病気、心電図が読めれば治療の要否がわかる、などです。しかし、今の時代、治療の要否をたった一つの(しかもたった一瞬の)検査結果だけで決定できる病気があるでしょうか。私は不整脈のコンサルトを受けることはよくありますが、心電図1枚だけで治療の要否や治療法がわかることはまずありません。そう、まず必要なことは、この不整脈に対する(あるいは心電図に対する)誤解を解くことだと思います。不整脈治療を心電図だけで行おうとすると、そのほとんどが「木を見て森を見ず」になりがちです。患者のイメージでは、なにをもって治療の要否を判断するのでしょう。私が不整脈の心電図に関するコンサルトを受けた時には、「何歳?性別は?今、症状あるの?心不全はなさそう?その他に合併症はない?」と心電図以外の質問攻めをします。これらの質問に対する答えがなければ、患者のイメージがつかめないからです。不整脈の治療の要否を判断するには、心電図より患者全体のイメージが何よりも重要です。で、具体的にはどうするの?…と言われそうですが、「線引き」ができる場合とできない場合があることを知っておきましょう。不整脈に限らず、治療の要否を簡単に線引きできる疾患はそう多くはないのです。90歳の悪性腫瘍はどのように治療しますか?そんな簡単には線引きはできないかもしれませんが、患者の全体像を知っていれば医師としての判断はしやすくなるでしょう。不整脈もこれと似ています。治療の要否決定は、デジタルではなくアナログで考えましょう。言葉にすれば、「現在の血行動態がやばい場合あるいは症状で困っている場合、ほうっておくと将来何か不幸が訪れると考えた場合」、これが不整脈治療の必要な場合です。さらに詳しい話はおいおいしていきたいと思います。Q2期外収縮の最新の薬物治療について知りたいのですが…期外収縮の治療は1990年代以降大きく進歩していません。この課題、卒業してもよさそうです。そもそも治療する?私が研修医をしていた1980年代、期外収縮は治療するものと習ってきました。心電図異常=病気という考え方に基づくものです。まったく理論的根拠がなかったのかというと、そうでもなくて、陳旧性心筋梗塞患者に限れば心室期外収縮が多ければ多いほどその後の予後が悪いということが知られていました。しかし、この事実をすべての患者に当てはめてしまうのは困りものですね。実際、虚血性心疾患や心不全がない患者では、心室期外収縮の有無によって、その後の予後に違いがないことが判明しています。ほうっておいても将来何も不幸が訪れないとわかっていて、何を目的に治療するのでしょう。たぶん、心電図所見から心室期外収縮が消えて、医者も患者も気分がよいという美容形成的な意味はあるかもしれませんが…。常識的に考えてみましょう。ここに心電図がないものとして、健康なイメージを有する人の脈をとったらたまたま1拍抜けていた…これだけですぐに治療しなきゃと考える人は少ないはずです。治療したらその効果はどう判断する?現在、期外収縮は相手にしないというのが基本的な考え方です。それでも、治療せざるを得ない場合があります。そう、現在の血行動態に問題なくても、将来不幸な出来事がなくても、患者の訴えが強くて困っているのに、「何もしない」というのは医学的には正しくても、人間としてつらいですね。そんな時、私はまず「教育」という治療をしています。患者さんは、「不整脈がありますね」と言われるだけで大きな不安を感じるものです。この精神的ストレスが期外収縮を増加させてしまいそうです。だから、まず「安心」をもたらすことが一番の治療だと思っています。それでもダメな場合はあります。その時は、β遮断薬、Ca拮抗薬、いわゆるI群抗不整脈薬の何でもいいと思っています。とりあえず、効きそうな薬を…です。しかし、私が選んでも、他の先生が選んでも、きっと患者さんにとっては変わりがないでしょう。それというのも、効果判定の手段がないからです。ホルター心電図の期外収縮数ほど再現性のない検査はありません。患者も医師も気楽に考えよう期外収縮は治療しない、どうしてもしなければならない時は患者の不快感がある場合に限られるとなると、効果判定は患者の不快感しかありません。だったら、もっと治療自体は気楽に考えればよいと思います。私は、始めた治療薬で患者の不快感がなくなればすぐに中止するようにしています。逆も真なりで、つらいなら飲み続けてもよいとも言っています。治療した時もう一つの重要なことは、抗不整脈薬をだらだら漫然と服用させないことです。目的を達したかどうかで、自由にオン・オフしてよいのです。Q3心房細動で抗凝固薬が絶対必要な症例とそうでない症例の見極めはどのようにするのでしょうか?CHADS2スコアで判断しますが、自分の感性も加味しています。CHADS2スコアとCHA2DS2-VAScスコア抗凝固療法の適応判断に用いるツールとして、CHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアがあまりにも有名ですね。心房細動患者の脳梗塞リスクである、心不全、高血圧、高齢、糖尿病、脳梗塞の既往をリスクとして考えるCHADS2スコア、さらに動脈硬化性疾患、65-75歳、女性をリスクとして加味するCHA2DS2-VAScスコア、両者ともに便利なスコアですが、用いる人が使いやすいものを使えばよいと思います。どちらを使おうが、全くこれらを使わないで医師の感性だけで対処するよりずっとましだからです。ちなみに国内外のガイドラインを見ると、「65歳未満で何のリスクも持たない例」は抗血栓薬自体が不要、「CHADS2スコア2点以上」は絶対必要という点で一致しています。抗凝固薬の適応判断は単純なのだろうか?では、日常臨床ではそんなに簡単に見極めができるのでしょうか。文章で書くとわかってしまった気になるのですが、リスクとされる心不全、高血圧、糖尿病の有無はどのようにして決めるのでしょう。きちんと線引きができますか?年齢はそもそも連続的なのに、65とか75とか勝手に区切っていいものなのでしょうか?あるいはCHADS2スコア6点満点は絶対的に抗凝固薬の適応なのですが、患者に会ってみればあまりにもfragileでこれでも抗凝固療法が必要なのかと頭をかしげたくなる…これも日常臨床では必発です。アナログ判断は死なず結局、Q1と同じようなところに行きついてしまうのが医療なのでしょう。というか、それがあるからこそ、医師が必要なのです。基本は守りつつ、医師の感性、患者の感性も同じように重要だ…という感覚で心房細動の脳梗塞予防をしているのが私の実情です。私の基本は、「65歳未満で何のリスクも持たない例」以外はすべて抗凝固療法の適応ですが、年齢、高血圧については患者によってかなり斟酌の度合いが異なります。糖尿病の有無判断も、糖尿病の薬物治療をしているかどうかで決めています。fragileであれば、医学判断より家族判断を優先させます。こんなことはどの教科書にも書いてなくて根拠もないのですが、逆にそれはいけないと否定する根拠もなく、だからこそ自分が患者の全体像から感じる感性でアナログ的に加味して斟酌してもいいものと思っているのです。

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6分間歩行で統合失調症患者の身体評価

 フランス・モンペリエ第1大学のP. Bernard氏らは、統合失調症患者を対象とした研究での6分間歩行試験(6MWT)の意義について、システマティックレビューにて評価を行った。その結果、統合失調症患者が6分間に早歩きできる距離(6MWD)は健常成人と比べ概して短いこと、BMIが高値、喫煙量が多い、高用量の抗精神病薬服用、身体的な自己認識が低いことと負の関係にあることなどを報告した。そのうえで著者は、統合失調症患者の身体的健康モニタリングに6MWTが使用可能であるとし、「今後の研究において、その予測因子としての役割を検討するとともに、その測定特性の評価を継続すべきである」と述べている。Disability and Rehabilitation誌オンライン版2014年8月7日号の掲載報告。 6MWTは、6MWDを測定する亜最大運動負荷試験である。研究グループは、介入効果を測定する際の6MWTの適合性を評価し、統合失調症患者の6MWDを一般集団およびマッチさせたコホートと比較、また6MWD決定要因の特定、6MWTの測定特性や品質手順などを調査した。5つのデータベースを用いて、2013年8月に公表されたフルテキスト文献をシステマティックレビューした。 主な結果は以下のとおり。・16件の研究が選択された。・6MWDの有意な増加を報告した介入研究がなかったため、介入の影響を測定する際の6MWTの適合性については評価を行わなかった。・成人統合失調症患者の歩行距離は、健常成人と比較して全般的に短いようであった。・レビュー対象となった研究の平均6MWDは、421~648mの範囲にあった。・統合失調症患者において、通常、6MWDはBMI高値、喫煙量が多い、高用量の抗精神病薬、低い身体的自己認識と負の関係にあった。・6MWTの信頼性は高かったが、これまで、その基準の妥当性について検討されていなかった。・ガイドラインが存在するにもかかわらず、レビュー対象の研究で用いられていた6MWTの方法には大きなばらつきがあった。・将来、統合失調症患者に対して推奨される身体的健康モニタリングに6MWT を含めるべきであることが示唆された。・6MWTはリハビリテーションに影響を及ぼし、統合失調症患者における機能的運動能力を評価するものであった。・治療介入の影響を6MWTで測定した患者は確認できなかった。・以上の結果を踏まえて著者は、「臨床医は、統合失調症における機能的運動能力を考える際、過体重、抗精神病薬の使用、身体に関する自己認識などを考慮に入れるべきである。また、重篤な精神疾患患者に6MWTを施行する際には、米国胸部学会などによる国際標準に従うべきである」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症に対し抗精神病薬を中止することは可能か 統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか 統合失調症患者の突然死、その主な原因は  担当者へのご意見箱はこちら

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塩分摂取と死亡リスクの関係はJカーブ/NEJM

 心血管の健康に最適なナトリウム摂取量は3~6g/日(食塩換算量:7.5~15.0g/日)であり、これより多くても少なくても、死亡や心血管イベントのリスクが高くなることが、カナダ・マックマスター大学のMartin O’Donnell氏らが行ったPURE試験で示された。世界の心血管疾患予防ガイドラインが推奨するナトリウム摂取量は1.5~2.4g/日だが、これを達成するには、ほとんどの人が食生活の根本的な変更を迫られると考えられる。ナトリウム摂取量の減少が心血管疾患リスクの低下をもたらすことを証明した大規模無作為化試験はなく、前向きコホート試験の結果からは一致した見解は得られていないという。NEJM誌2014年8月14日号掲載の報告。推定排泄量を摂取量の代替指標とし、約10万人で検討 PURE(Prospective Urban Rural Epidemiology)試験は、尿中ナトリウムおよびカリウム排泄量と、死亡、心血管疾患イベントの関連を調査する前向きコホート試験。対象は、17ヵ国628地域に居住する35~70歳の一般住民であった。 朝の空腹時尿検体を採取して24時間ナトリウムおよびカリウム排泄量を推定し、摂取量の代替指標とした。尿中ナトリウムおよびカリウムの推定排泄量と、死亡および主要心血管イベントの複合アウトカムの関連を評価した。 2003年1月に登録が開始された。今回の解析には、10万1,945例(全体の48.4%がアジア人で、全体の42%は中国人)のデータを用いた。平均推定24時間ナトリウム排泄量は4.93g/日、カリウム排泄量は2.12g/日であった。平均血圧はナトリウム摂取量が多いほど高かった(p<0.001)。カリウム排泄量は多いほどリスクが低下 平均フォローアップ期間3.7年で、3,317例(3.3%)に複合アウトカムが発生した。死亡は1,976例で、そのうち650例が心血管死であった。857例が心筋梗塞、872例が脳卒中、261例が心不全を来した。 推定ナトリウム排泄量4.00~5.99g/日を基準とすると、排泄量≧7.00g/日では複合アウトカムのリスクが有意に上昇し(オッズ比[OR]:1.15、95%信頼区間[CI]:1.02~1.30)、死亡(1.25、同:1.07~1.48)および主要心血管イベント(1.16、同:1.01~1.34)のリスクもそれぞれ有意に上昇していた。 推定ナトリウム排泄量高値と複合アウトカムの関連は、高血圧を有する参加者で最も強く(交互作用検定p=0.02)、排泄量が6.00g/日を超えるとリスクが上昇した(6.00~6.99g/日;OR:1.14、95%CI:1.00~1.30/≧7.0g/日;同:1.21、1.05~1.40)。 推定ナトリウム排泄量が<3.00g/日の場合も、基準値(4.00~5.99g/日)に比べ複合アウトカムのリスクが有意に上昇した(OR:1.27、95%CI:1.12~1.44)。 推定カリウム排泄量が<1.50g/日の場合と比較して、≧1.50g/日の場合に複合転帰のリスクが有意に低下した(1.50~1.99g/日;OR:0.86、95%CI:0.77~0.97/2.00~2.49g/日;同:0.81、0.73~0.91/2.50~3.00g;同:0.86、0.75~0.98/>3.00g/日;同:0.78、0.67~0.91)。複合アウトカムの発生に関して、ナトリウム排泄量とカリウム排泄量に交互作用は認めなかった(p=0.55)。 著者は、「推定ナトリウム摂取量が3~6g/日より多い場合も少ない場合も、死亡および心血管イベントのリスクが増大した」とまとめ、「本試験はナトリウム摂取量の異なる群を疫学的に比較した調査であって、摂取量の減少が臨床アウトカムに及ぼす効果に関する情報を提供するものではない。それゆえ、意図的に摂取量を減らせばリスクが軽減するとのエビデンスとは解釈すべきでない」と指摘している。

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良質な睡眠を得るために

良質な睡眠を得るためには、生活を改善することが重要です定期的な運動規則正しい食生活寝酒は眠りが浅くなる快適な寝室環境を整える厚生労働科学研究・障害者対策総合研究事業、日本睡眠学会編. 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン2013年改訂より作成Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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