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就学前小児の上気道ウイルス感染による喘鳴:発作時の経口薬治療

上気道ウイルス感染による喘鳴発作は、就学前児童においてはよく見られ、短期間の経口プレドニゾロン剤投与が広く行われているが、軽症~中等症には有効ではないと結論する無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果が報告された。英国レスター大学小児保健部門のJayachandran Panickar氏らによる報告で、NEJM誌2009年1月22日号にて掲載された。入院期間に有意差はないPanickar氏は本試験の目的について、「この年代の発作の大半は間欠型呼吸器症状や慢性下気道好酸球増加症を有するものではなく、学齢期になれば解消される」とし「ガイドラインでの推奨エビデンスは、この年代以外のエビデンスを基にしたもので、同年代における有効性のエビデンスには矛盾が見られるからだ」と述べている。試験は、英国の3病院で、ウイルス感染による喘鳴発作で受診し入院が必要と診断した、生後10~60ヵ月の小児700例を対象。過去のスタディで矛盾が見られた5日間投与を参考に、経口プレドニゾロンの5日間投与(10~24ヵ月児:1日1回10mg、25ヵ月児以上:1日1回20mg)の有効性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照試験をデザインした。対象児は、入院の診断前にアルブテロールの10パフ噴霧を受けており、定量吸入器またはVolumatic spacerもしくはアルブテロールネブライザーで管理を受けていた(3歳未満2.5mg、3歳以上5.0mg)。主要評価項目は、入院期間。副次評価項目は、呼吸評価スコア(基線値は入院診断後、アルブテロール噴霧5分後に評価した値とした)、アルブテロールの使用、7日間の症状スコア。全例解析は687例(プラセボ群344例、プレドニゾロン例343例)で実行された。主要評価項目の入院期間は、プラセボ群13.9時間、プレドニゾロン群11.0時間、相乗平均0.90(95%信頼区間:0.77~1.05)と有意差はなかった。副次評価項目、また有害事象の発生数についても有意差はなかった。(武藤まき:医療ライター)

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胃腸障害に対する効果的な薬剤投与順とは?:DIAMOND試験

プライマリ・ケアにおける胃腸障害の管理では、制酸薬→H2受容体拮抗薬(H2RA)→プロトンポンプ阻害薬(PPI)の順に投与する治療戦略がその逆順で投与する戦略よりも費用効果に優れることが、オランダで実施されたDIAMOND試験によって明らかとなった。プライマリ・ケアでは、胃腸障害治療は医師の作業負担が大きく、医療コストもかさむことがわかっている。コンセンサスやガイドラインはあるものの、最も費用効果に優れる初期管理の戦略は依然として経験に基づくものだという。Radboud大学ナイメーヘン医療センターのCorine J van Marrewijk氏が、Lancet誌2009年1月17日号で報告した。制酸薬→H2RA→PPIと、PPI→H2RA→制酸薬を比較研究グループは、プライマリ・ケアにおける新規発症胃腸障害の初期管理の治療戦略として、ステップアップ戦略(制酸薬→H2RA→PPIの順で投与)とステップダウン戦略(PPI→H2RA→制酸薬の順で投与)の比較を行う二重盲検無作為化対照比較試験を実施した。対象は、新規発症の胃腸障害でかかりつけ医を受診した18歳以上の症例とした。2003年10月~2006年1月までに664例が登録され、ステップアップ群に341例が、ステップダウン群には323例が無作為に割り付けられた。各ステップの治療期間は4週とし、症状が持続するか4週以内に再発した場合に次のステップへ進むこととした。主要評価項目は6ヵ月後における症状軽減および費用効果であった。費用効果はステップアップ群で優れるが、最初にPPIを投与したほうが効果発現は早い評価可能なエンドポイントに到達した症例は、ステップアップ群が332例、ステップダウン群が313例であった。脱落のおもな理由はフォローアップの非完遂であった。6ヵ月後の治療成功例はステップアップ群が238例(72%)、ステップダウン群は219例(70%)であり、有意な差は認めなかった(オッズ比:0.92、95%信頼区間:0.7~1.3)。医療コストの平均値は、ステップダウン群の245ユーロに対しステップアップ群は228ユーロと費用効果が有意に優れた(p=0.0008)。この差はおもに薬剤費によるものであった。少なくとも1つ以上の有害事象が報告された症例は、ステップアップ群が94例(28%)、ステップダウン群は93例(29%)と同等であった。全例に主症状以外の胃腸症状、下痢、便秘、味覚障害などの軽度の有害事象が見られた。著者は、「プライマリ・ケアにおける新規発症胃腸障害の初期治療では、ステップアップ戦略とステップダウン戦略の治療成功率は同等であったが、前者のほうが費用効果が優れた」と結論する一方で、「プライマリ・ケアでは重要な情報」として、「PPIを最初に投与する経験的な戦略のほうが効果が早く現れ、とくに胃食道逆流症状の見られる症例でその傾向が顕著であった。ジェネリック医薬品の制酸薬を用いた場合は、費用効果の差は小さくなった」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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非心臓手術周術期のβ遮断薬投与は不要?

米国心臓学会/米国心臓協会(ACC/AHA)のガイドラインの推奨にもかかわらず、非心臓手術時の周術期における心血管死や脳卒中の予防を目的としたβ遮断薬の使用を支持する確固たるエビデンスはないことが、米Brigham and Women's病院循環器科のSripal Bangalore氏らが実施したメタ解析で明らかとなった。Lancet誌2008年12月6日号(オンライン版2008年11月11日号)掲載の報告。33試験に参加した1万2,306例を対象とするメタ解析実施周術期患者評価に関するACC/AHAのガイドラインでは非心臓手術時の周術期におけるβ遮断薬の使用が推奨されている。しかし、最近報告されたPOISE試験などこれを支持しない臨床試験もいくつかあるという。研究グループは、非心臓手術を受けた患者に対する周術期のβ遮断薬投与を評価したエビデンスについて厳格なレビューを行った。PubmedおよびEmbaseを用いて、非心臓手術時のβ遮断薬の使用について調査した無作為化対照比較試験のデータを検索した。30日全死亡率、心血管死亡率、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全、心筋虚血、および周術期の徐脈、低血圧、気管支攣縮に関する安全性アウトカムのデータを抽出した。33試験に参加した1万2,306例が対象となった。ACC/AHAガイドライン委員会は周術期β遮断薬使用の見解を緩和すべきβ遮断薬を投与しても、全死亡率、心血管死亡率、心不全のリスクは低下しなかった。また、β遮断薬投与により非致死的心筋梗塞および心筋虚血が低下した(オッズ比:それぞれ0.65、0.36)が、その代償として非致死的脳卒中が増加した(オッズ比:2.01)。β遮断薬の効果が高いとする試験の多くが、バイアスのリスクの高い試験であった。安全性については、周術期にβ遮断薬を使用すると治療を要する徐脈および低血圧のリスクが上昇した。気管支攣縮のリスク上昇は見られなかった。著者は、「非心臓手術を受けた患者では、周術期の心血管死や脳卒中などの臨床アウトカムの予防にβ遮断薬を使用することを支持するエビデンスは確認されなかった」と結論し、「ACC/AHAガイドライン委員会は、結論的なエビデンスが提出されるまで周術期β遮断薬使用の見解を緩和すべき」としている。(菅野守:医学ライター)

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ACE阻害薬、利尿薬とよりもCa拮抗薬との併用のほうが優れる:ACCOMPLISH試験

 米国の現行の高血圧治療ガイドライン(JNC 7)では、ハイリスクの高血圧患者に対してサイアザイド系利尿剤を含んだ併用療法を用いることを推奨しているが、最適な併用治療は十分に検討されていなかった。国際的な多施設共同試験ACCOMPLISHは、ACE阻害薬「ベナゼプリル」+ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬「アムロジピン」と、「ベナゼプリル」+サイアザイド系利尿薬「ヒドロクロロチアジド」とを比較したもので、ACE阻害薬+Ca拮抗薬併用療法のほうが、心血管イベントの減少効果が優れていることを報告した。NEJM誌2008年12月4日号より。アメリカ、北欧の計5ヵ国548施設から1万強が参加 ACCOMPLISH(Avoiding Cardiovascular Events through Combination Therapy in Patients Living with Systolic Hypertension)試験は多施設共同無作為化二重盲検試験で、アメリカ、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランドの5ヵ国548施設から参加した、心血管イベントリスクが高い高血圧患者1万1,506例(2003年10月登録開始)を、ベナゼプリル+アムロジピン併用療法群(Ca拮抗薬併用群)とベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド併用療法群(利尿薬併用群)に割り付け行われた。 両群の患者基線値は同等。試験は、追跡平均36ヵ月時点で、事前規定の試験有効性の中止基準を上回ったため早期に終了された。Ca拮抗薬併用群のイベント発生は利尿薬併用群の2割減 平均血圧は、Ca拮抗薬併用群で131.6/73.3 mmHg、利尿薬併用群で132.5/74.4 mmHgで、目標血圧(140/90 mmHg以下)は前者75.4%、後者72.4%の達成率だった。 主要なアウトカムイベント(心血管系を原因とする死亡、心筋梗塞、脳卒中、狭心症による入院、突然の心停止後に蘇生、冠動脈血行再建)は、Ca拮抗薬併用群では552件(9.6%)だったが、利尿薬併用群では679件(11.8%)発生し、Ca拮抗薬併用群のイベント発生は利尿薬併用群の0.80倍(95%信頼区間:0.72~0.90、P

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【コラム】自殺は感染する。悪意は伝染する。

時事通信によると、硫化水素による自殺者が今年1~11月の間で1007人となり、昨年1年間の29人の約35倍に上ったという。その影響として市販商品を使って簡単に発生させる方法がネット上に多数紹介されたことが挙げられるとのこと。インターネットの前に報道のあり方が硫化水素自殺の問題にはあったと思う。メディアが大きく取り上げたことをきっかけにインターネットで急速に広がったというのが経緯ではないだろうか。自殺に関する報道は慎重であるべき。自殺方法や有名人の自殺場所が報道されると、その影響を受けて後追い自殺が起きるからだ(自殺の連鎖反応=群発自殺)。メディアを介した自殺の感染といえる。それがインターネットとなれば感染の速度が加速されるだけである。自殺報道に関しては、WHO(世界保健機関)やオーストリア、ニュージーランドなどでガイドラインを出している。WHOのガイドラインでは、写真や遺書を公表しない、自殺の方法について詳細に報道しない、自殺を美化したりセンセーショナルに報じない、といった原則を設けている。こうした点で日本のマスコミは遅れているといわざるを得ないのが現状だろう。ましてインターネットとなると規制が不可能に近い。日本の自殺者は年間3万人を越え、政府も自殺対策を進めているが、メディアの自主規制に委ねず、報道規制も真剣に検討する必要があるのではないだろうか。さらに、メディアを介して伝染するのが犯罪だ。犯罪報道が新たな犯罪を生むこともある。秋葉原の殺傷事件後、無差別殺人が続いたのは記憶に新しい。読売新聞によれば、今年1月から11月におきた「通り魔殺人」は、統計を開始した1993年以来、最も多い13件に上るという。その要因に犯罪報道の影響はないだろうか。また、大麻汚染の報道でもインターネットで種子が買えることをメディア自身が宣伝していることに気づかないのだろうか。犯罪報道の問題は自殺報道以上に遅れている。ましてインターネットには犯罪を誘発する情報があふれている。インターネットも規制と自由と自己責任を考える時期かもしれない。

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日本のざ瘡治療が変わるとき

ガルデルマ株式会社主催によるざ瘡治療に関するセミナーが開催され、「日本のざ瘡治療が変わるとき」と題し、東京女子医科大学 皮膚科教授 川島眞氏による講演が行われ、日本におけるざ瘡治療の現状の問題点から新薬発売後の日本におけるざ瘡治療の展望が述べられた。下記にその内容をレポートする。ニキビ患者さんの32.5%が病院での治療に不満足川島氏によると、尋常性ざ瘡は、日本の男性92%、女性94%が経験する疾患であるが、若年代層(全793名)に行われた調査結果から、ざ瘡患者の36%がOTC薬を購入、35%が自身によるスキンケアで対処し、病院での治療は12%に過ぎないことが分かったという。また、病院で治療を受けている患者においても、治療満足度は67.5%、不満との回答が32.5%と十分な評価を得られていないのが実態と話す。一方、従来、ニキビは深刻な疾患とは捉えられてこなかったのが実情だが、ざ瘡患者のQOLをSkindex-16(皮膚疾患特異的QOL尺度)を用いて検討した結果、たとえ軽症であっても、感情面でのQOLの低下は他の皮膚疾患と比しても高いことが認められたと報告されており、決して軽視できない疾患であることが示されていると指摘する。ニキビ治療の現状と今後の展望ざ瘡治療に対する患者の不満の原因として、川島氏は、日本の保険薬価収載医薬品が海外のニキビ治療のアルゴリズムと比較して非常に少ないことも原因の一つに挙げる。特に海外においては、軽症から中等症までの第一選択薬である外用レチノイドが1995年より発売が開始され、第一選択薬として汎用されているにもかかわらず、日本では今まで処方出来なかったため、患者はもちろん、治療する側の医師にとってもニキビ治療は満足度の低いものだった。そんななか、日本でも外用レチノイド「ディフェリン ゲル0.1%(一般名: アダパレン)」が本年10月に発売された。アダパレンは、表皮角化細胞の分化を抑制することで、面皰を減少させることが可能となることが第3相試験の結果から証明されており、ざ瘡の病態進の展初期段階で角化異常を抑える治療の可能性が示されているという。日本のざ瘡治療は新時代へ皮膚疾患におけるエビデンスに基づく医療の推進、ざ瘡に対する積極的な治療へのニーズのなか、ざ瘡治療に対する臨床現場の混乱を防ぐため、本年9月、日本皮膚科学会より「ざ瘡治療ガイドライン」が策定された。ガイドラインの治療アルゴリズムにおいても、アダパレンは第一選択薬として位置づけられており、川島氏は、アダパレンの登場により日本のざ瘡患者さんのQOLが向上することが期待され、「日本のざ瘡治療は新しい時代」に入ったと話している。●「ディフェリン」総合情報サイトhttp://www.differin.jp/index.html

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HIV感染乳児への抗レトロウイルス療法戦略

HIV感染乳児は年長児よりも疾患の進行が早く、死亡率も高い。特にCD4リンパ球の割合(CD4パーセンテージ)が高いほどその傾向が強まる。そのため抗レトロウイルス療法の早期開始が求められるが、利用できる薬剤や毒性の問題などが解決されていなかった。本報告は、HIV感染乳児への抗レトロウイルス療法戦略を検討するChildren with HIV Early Antiretroviral Therapy(CHER)試験のフェイズIIIからの早期アウトカムの報告で、NEJM誌2008年11月20日号に掲載された。治療開始待機群と早期治療群に無作為割付CHER試験は、英国MRC臨床試験ユニットとNIHが南アフリカ共和国との共同で取り組む国際的なAIDS研究プログラムで、南アフリカの2つのセンターを拠点とする無作為化オープンラベル試験。胎内もしくは分娩時にHIV感染した生後6週~12週のCD4パーセンテージ25%以上の乳児が登録され、3つの治療群、(1)CD4パーセンテージが20%未満(1歳未満の場合は25%未満)に低下した場合に治療開始、(2)臨床基準(2006年版WHOガイドライン準拠)を満たした場合に治療開始(待機群)、(3)即時開始し1歳もしくは2歳時まで治療(早期治療群)、に無作為に割り付けられ実行された。抗レトロウイルス療法は、ロピナビル-リトナビル、ジドブジン、ラミブジン。本論では、待機群と早期治療群とを比較検討した2007年6月時点での早期アウトカム(死亡、疾病の進行)が報告された。早期治療群のほうが死亡率75%、病期の進行76%低下対象乳児は2005年8月~2007年2月の間に登録された待機群125例、早期治療群252例で、年齢の中央値7.4週、CD4パーセンテージの中央値は35.2%だった。待機群は追跡期間中央値40週後に、66%が抗レトロウイルス療法を開始していた。死亡は、待機群20例(16%)、早期治療群は10例(4%)で、ハザード比は0.24(95%信頼区間:0.11~0.51、P

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医学生の不節制飲酒を正すためにも

米国医学生の多飲、不節制飲酒は、同年代で広がっているほどではないものの、ごく一般的に見られること、また医学教育のルーチンな臨床トレーニングとして、飲酒に関するスクリーニングやカウンセリングを取り入れることが、ガイドラインで推奨され費用対効果に優れたカウンセリングによる患者ケアの実施率を上げ、学生および一般の多飲酒者を減らすことに結びつくとの報告が、ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)のErica Frank氏らによって報告された。BMJ誌2008年11月15日号(オンライン版2008年11月7日号)より。カウンセリング診療実施への影響因子を探る本研究は、米国では多飲酒者の75%が保険診療でカウンセリングを受けられるにもかかわらず、また過去24ヵ月以内に多飲であると申告しているにもかかわらず、医療提供者が飲酒に関する質問をほとんどしていないとの状況があることを踏まえ、医学生に着目し、飲酒に関する診療に影響を及ぼしている因子の同定を試みたもの。米国の代表的な16医学部の学生を対象にアンケート調査を、1年次開始時(1999年夏/秋)、3年次進級時、最終年次(2003年)にそれぞれ行った。回答率は83%。学生の34%が「過度な飲酒者」アンケートから、「前月に飲酒した」学生は全体で78%(3,777/4,847)だった。年次ごとに見ると、3年次進級時が34%(1,668/4,847)で最も割合が多い。全体の34%(1,666例:男性1,126例、女性540例)を占める「過度な飲酒者」(5杯/日以上がある、飲酒日の酒量が男性平均2杯/日超、女性平均1杯/日超のいずれかに該当)の飲酒日数は、約4分の3が14日/月以下に該当した。また酒量は、男性は62%(696/1,124)が3杯/日以上、5杯/日以上も18%(201/1,124)いる。女性は89%(478/539)が2杯/日以上、4杯/日以上が22%(117/539)だった。さらに、5杯/日以上飲んだ日が複数回あったと回答したのは、男性61%(691/1,126)、女性44%(229/520)だった。教育トレーニング導入で、カウンセリング実施率は2倍にカウンセリングと患者ケアとの関連を強く確信している学生の割合は、3年次進級時が61%(919/1,516)で最も高く、最終年次46%(606/1,329)を上回った。その確信は、プライマリ・ケアを志向する学生ほど強かったが、最終年次学生で患者と飲酒に関して話を「いつも/常に」すると回答したのは28%(391/1,393)に過ぎなかった。また「過度な飲酒者」ほど、患者にカウンセリングをすることや、カウンセリングと患者ケアとの関連を結び付けては考えられない傾向が見られた。その一方で多変量モデル解析の結果、飲酒に関するカウンセリングのトレーニングを大規模に行った場合、カウンセリングと臨床ケアとの関連を報告する割合は2.3倍に、またカウンセリングを行ったとする報告の割合は2.2倍といずれも倍増することが示された。これらから、学生時にトレーニングを積み確信を植え付けることが、高い臨床実践と強い信念に結びつくとし、飲酒に関する臨床トレーニングの実施を検討すべきと結論している。

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PCI前運動負荷試験、実施率は44.5%に留まる

安定した冠動脈性心疾患患者に対して、待機的な経皮的冠動脈形成術(PCI)を実施する前の、心筋虚血の検出を目的とした運動負荷試験の実施率は、44.5%に留まることが明らかになった。PCI前に同試験を実施することで、より良いアウトカムにつながることはこれまでの研究でも明らかになっており、米国の診療ガイドラインでも推奨している。これは、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のGrace A. Lin氏らが、2万3,887人のメディケア(高齢者向け公的医療保険)加入者について調べたもの。JAMA誌2008年10月15日号にて掲載。地域格差大きく、PCI数の多い医師ほど実施率低い傾向調査の結果、PCI実施の前90日以内に運動負荷試験を行っていたのは、1万629人だった。地域別では、少ないところで22.1%、多いところでは70.6%と格差が大きかった。また、担当医の年間のPCI実施数が多いほど、術前の運動負荷試験の実施率は低くなっている。具体的には、年間実施数が60件未満の医師に比べ、実施数が60~94件、95~149件、150件以上の医師の運動負荷試験を実施するオッズ比は、それぞれ、0.91、0.88、0.84だった。医師の年齢によっても、格差があった。50~69歳の医師は、40歳未満の若い医師に比べ、同試験を実施しない傾向にあり、逆に70歳以上の医師は、40歳未満の医師よりも同試験を実施する傾向が見られた。人種別では黒人が、また胸痛歴のある人も実施率が高く、オッズ比はそれぞれ1.26と1.28だった。逆に女性や85歳以上、うっ血性心不全歴のある人、心カテーテル法実施歴のある人は実施率が低く、オッズ比はそれぞれ、0.91、0.83、0.85、0.45だった。実施したPCIの必然性に疑問Lin氏らはまた、民間保険加入者についてもPCIを行う1年前までの、運動負荷試験の実施率について調べたが、34.4%とさらに低かった。同氏らは、心筋虚血の検出を行わずにPCIを行うことで、PCIの実施が不適切な患者に対しても過剰に行っている可能性があると指摘している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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患者や治療の違いがP4Pの格付けに関連

米国で医療に導入されたインセンティブ「治療成績に応じた医療費の支払い」(pay-for-performance:P4P)について、病院プロセス・パフォーマンスランキング(hospital process performance rankings:病院ランキング)との関連を調べていたデューク大学病院(ノースカロライナ州)のRajendra H. Mehta氏らは「各医療機関の患者の特徴や治療の違いが、P4Pの格付けと病院ランキングに関連することが示された」と報告した。JAMA誌2008年10月22日号より。はじめに病院ランキングを分析2000年1月2日~2008年3月28日まで、米国心臓病協会(AHA)ガイドラインデータを用いて、メディケア・メディケイド・サービスセンターが定義した急性心筋梗塞の基準に基づく病院プロセス・パフォーマンスを分析した。各病院はまず、複合プロセス・パフォーマンスに基づいてランク付けされ、さらに階層モデルを用いた患者の人口統計学的実態と臨床的特徴の評価によって再び順位付けられた。その後、病院ランキングと、P4Pの経済的インセンティブ区分(上位20%、中位60%、下位20%)の違いを比較した。主要評価項目は、病院ランキングとP4Pのインセンティブ区分とした。449施設の急性心筋梗塞患者14万8,473例を検証最終的に449施設の急性心筋梗塞患者計14万8,472例について検証された。急性心筋梗塞に対する複合パフォーマンスが五分位数で最下位だった病院(n=89)は、小規模な非学術的施設であり、少数民族・人種の患者の比率が高く、五分位数で最上位の病院(n=90)に比べ複数の疾患を併せ持つ患者が多かった。観察と複合スコア補正(加重:0.74)に基づく病院ランキングは全体的に合意されたが、個々の病院ランキングは補正(中央値:22位、範囲:0~214、四分位領域:9~40)によって変化した。全施設のうち16.5%(n=74)は、患者と治療機会を考慮した後、P4Pの区分を変えていた。Mehta氏は「医療機関ごとに患者の特徴や治療機会の違いなどを考慮することが、心筋梗塞治療のP4Pプログラムにおける経済的利益の格付けと、病院ランキングの適度な変化に関連することが示唆された」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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薬物治療開始血圧値、降圧目標値ともに年々低下傾向 -「ケアネット 高血圧白書2004-2008」より-

ケアネットが提供するサービスに利用登録している医師(ケアネット会員医師)に対する「高血圧症に関する医師の治療意識」に関する5年間におよぶ調査結果より、薬物治療開始血圧値、降圧目標値ともに年々低下傾向にあることが明らかになった。ケアネットでは、毎年6月(2004年は5月に実施)に「高血圧症に関する医師の治療意識に関するインターネット調査」をケアネット会員医師に対し実施し、目標回収数を500名(2007年までは1,000名)とし、2004年より実施してきた。本調査項目の中から、「薬物治療開始血圧値」と「降圧目標値」に関する5年間におよぶ調査の結果がまとまったので以下に示す。「薬物治療開始血圧値」は、5年間で6.5~3.3mmHg低下高血圧患者の年齢区分別に「降圧薬の投与を開始する判断基準となる血圧値」を記入形式で尋ね、平均値を算出した。その結果、患者年齢が高いほど薬物治療の開始血圧値(平均)は高めだが、その値は年々低下し、年齢層間の差異は縮小しており、薬物治療に対し、積極的になっている傾向がうかがえた。 65歳未満患者: 151.8mmHg(2004年5月)→148.5mmHg(2008年6月)65~74歳患者: 155.1mmHg(2004年5月)→150.6mmHg(2008年6月)75歳以上患者: 160.4mmHg(2004年5月)→153.9mmHg(2008年6月)「降圧目標値」も、5年間で4.3~1.2mmHg低下高血圧患者の年齢区分別に「降圧治療の目標としている血圧値」を記入形式で尋ね、平均値を算出した。患者年齢が高いほど治療の目標血圧値(平均)は高めだが、その値は年々低下し、年齢層間の差異は縮小しており、血圧コントロールの重要性への認識が高まっていることがうかがえた。 65歳未満患者: 133.3mmHg(2004年)→132.1mmHg(2008年)65~74歳患者: 137.4mmHg(2004年)→135.4mmHg(2008年)75歳以上患者: 142.7mmHg(2004年)→138.4mmHg(2008年)後期高齢者の薬物治療には、まだ消極的「薬物治療開始血圧値」の回答分布をまとめたところ、患者の年齢が65歳未満においては、2004年調査では150mmHgを降圧薬の投与を開始する判断基準となる血圧値としている医師が最も多かったが(140mmHg:22%、150mmHg:37%、160mmHg:31%)、2008年調査で最も多かった「薬物治療開始血圧値」は140mmHgであった(140mmHg:36%、150mmHg:34%、160mmHg:19%)。一方、75歳以上の後期高齢者に対しては、2008年調査においても160mmHg以上になってから薬物治療を考慮する医師が全体の45%を占めた。すなわち、患者の血圧が140、150mmHgでは薬物治療を開始せず、しばらく生活習慣の改善を指導し、血圧が160mmHg付近に達した時点で、ようやく薬剤処方を検討するといった消極的な医師が多いことがうかがえる。10年前の常識が非常識になる!?これは「加齢に伴い血圧が高くなるのは生理現象であり、治療の必要性はない」、「収縮期血圧は“年齢+90mmHg”くらいを目安に」という考え方が長らく支配的であり、2000年6月に発表された「高血圧治療ガイドライン2000(JSH2000)」においても80-89歳の患者に対する薬物治療開始血圧値は「160~180mmHg以上/90mmHg以上」が推奨されていたことが影響していると考えられる。現在のJSH2004では“患者年齢に関わらず、生活習慣の修正を指導し、1~3ヵ月後に140/90mmHg以上なら降圧薬治療を開始すべき”と推奨しており、薬物治療開始を単純に血圧値での判断するようなものではないが、「薬物治療開始血圧値」は140/90mmHgである。また、本年5月には「80歳以上の高血圧患者に対しても薬物治療によって、脳卒中、心不全の発症率を抑えることができ、死亡率も低下する」という後期高齢者の降圧薬治療を支持する結果が発表されている1)。このHYVET(Hypertension in the Very Elderly Trial)と呼ばれる大規模介入試験は、80歳以上の収縮期高血圧症3,845例を対象に、利尿薬インダパミド±ACE阻害薬ペリンドプリルによる降圧薬治療群とプラセボ群を無作為化比較したものであり、降圧薬治療によって1次評価項目である「脳卒中発症」が30%低下し(p=0.06)、「総死亡」が21%低下した(p=0.02)。[詳しくはこちら]第31回高血圧学会学術総会でのディスカッションに期待!2009年1月、日本高血圧学会によりJSH2004が5年ぶりに改訂され、「高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)」が発行される予定である。今回は前述のHYVETなど2004年以降に発表された海外の大規模介入試験だけでなく、日本人を対象とした大規模介入試験もエビデンスとして取り入れられることになっており、注目が高まっている。なお、この新しいガイドラインの草案は、2008年10月11日に「第31回日本高血圧学会学術総会」の『特別企画 JSH2009ガイドライン』にて議論される予定である。このセッションにおいても『高齢者高血圧』は採り上げられており、樂木宏実氏(大阪大学大学院老年・腎臓内科学)の講演の後、指定討論者として桑島巌氏(東京都老人医療センター循環器科)という活発な討論が期待される本学術総会の目玉の1つである。 文献1) Beckett NS et al :N Engl J Med. 2008; 358: 1887-1898.(ケアネット 藤原 健次)

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大鵬薬品、ユーゼル錠の国内製造を開始

大鵬薬品工業株式会社は10月1日、従来輸入販売していた還元型葉酸製剤ユーゼル(ホリナートカルシウム)錠の自社国内製造を開始したと発表した。今回の自社国内製造で、錠剤の重量を従来の約半分に小型化することが可能になり、患者さんがより服薬しやすくなることが期待されるという。ユーゼル錠は、抗がん剤テガフール・ウラシル配合剤と併用することにより、結腸・直腸癌に対するテガフール・ウラシルの抗腫瘍効果を増強する働きがある。本療法は「大腸癌治療ガイドライン」に、大腸癌に対する標準化学療法の中でも経口投与可能な治療法として掲載されている。また、EU諸国でもホリナート・テガフール・ウラシル療法(ユーエフティ/ユーゼル療法)として大腸癌に対する効能が得られている。詳細はプレスリリースへhttp://www.taiho.co.jp/corporation/news/20081001.html

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小児ケアの質はヘルスワーカーの訓練期間の長さで異なるか?

Integrated Management of Childhood Illness(IMCI)の訓練は、ヘルスワーカーの訓練の期間の長さやレベルにかかわらず、小児のケアにおいてほぼ同等の質をもたらすことが、中~低所得の4ヵ国における1次医療施設のデータ解析で判明した。小児死亡率の高い国は、質の高いヘルスワーカーが不足している傾向がある。一方、ヘルスワーカーのケアの質を評価した高度なエビデンスはほとんどないという。ペルー・サンマルコス国立大学のLuis Huicho氏が、Lancet誌2008年9月13日号で報告した。訓練期間の異なるヘルスワーカーによるケアの質をIMCIガイドラインで評価研究グループは、100ヵ国以上が導入しているIMCIの訓練を受けたヘルスワーカーの能力を個々のカテゴリー別(医師、看護師、看護助手、医療補助員など)に評価した。バングラデシュ(2003年)、ブラジル(2000年)、ウガンダ(2002年)、タンザニア(2000年)の1次医療施設から得られたデータについて解析を行った。ヘルスワーカーの臨床能力を、訓練期間が長い群[中等教育終了後4年以上の訓練(ブラジル)あるいは3年以上の訓練(他の3ヵ国)]および短い群(それ以外の全ヘルスワーカー)で比較した。IMCIガイドラインに従い、ヘルスワーカーのケアの質を疾病に罹患した小児の評価、分類、管理の指標によって数値化した。全患児が、IMCIに基づく訓練を受けたヘルスワーカーとgold standardを体得したスーパーバイザーによる診査を受けた。短期訓練ヘルスワーカーも十分な役割を果たしうる対象となった小児はバングラデシュが272例、ブラジルが147例、タンザニアが231例、ウガンダが612例であった。ブラジルでは、長期訓練ヘルスワーカーによる管理を受けた患児が57.8%(43例)であったのに対し、短期訓練ヘルスワーカーによる管理を受けた患児は83.7%(61例)であり(p=0.008)、ウガンダではそれぞれ23.1%(47例)、32.6%(134例)であった(p=0.03)。ブラジルでは、患児の評価と管理の能力は医師よりも看護師のほうが優れており、分類の正確さについても両者でほぼ同等であった。ウガンダでは、短期訓練群のほうが長期訓練群よりも管理能力が優れていたが、いずれの群も他国に比べ劣っていた。バングラデシュでは、いずれの臨床業務の能力も両群でほぼ同等であった。タンザニアでは、長期訓練群は短期訓練群に比べ患児の総合評価の能力が有意に優れていた(p=0.004)。それ以外の臨床業務については、4ヵ国のヘルスワーカーの能力に有意な差は認めなかった。著者は、「IMCIの訓練は、個々のカテゴリーのヘルスワーカーの訓練期間の長さやレベルにかかわらず、ほぼ同等の小児ケアの質をもたらした」と結論し、「医療サービスの不足している地域で短期の訓練しか受けていないヘルスワーカーも、IMCIの拡大戦略や他の小児死亡率の抑制策において十分な役割を果たす可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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高血圧治療ガイドライン改訂案が公表!意見公募始まる

9月20日、高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)の改定案が日本高血圧学会ホームページにて公開された。この内容は9月30日まで一般から意見を公募し、10月11日に札幌にて開催される日本高血圧学会のシンポジウムにて討論される。高血圧治療ガイドライン改訂案はこちらhttp://www.jpnsh.org/manuscript080920.html

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重症肺炎患児は1次医療施設で管理可能か:修正IMCIガイドライン

総合的小児疾患管理(integrated management of childhood illness; IMCI)のガイドラインを適切なトレーニングや監督の下に地域の実情に合わせて適応すれば、1次医療施設で重症肺炎患児の安全で効果的な管理が可能になることが、バングラデシュでの調査で明らかとなった。IMCIガイドラインでは重症肺炎患児は高次病院への紹介が推奨されているが、バングラデシュでは多くの高次病院が適切なケアを十分にできる状態にないため紹介された患児のほとんどが実際には治療を受けていないという。下痢性疾患研究国際センターのEnayet K Chowdhury氏が、Lancet誌2008年9月6日号(オンライン版2008年8月18日号)で報告した。従来のIMCIガイドラインと修正ガイドラインの安全性、有効性を比較研究グループは、危険な徴候などの重篤な病態を呈する重症肺炎患児のみを高次病院に紹介し、それ以外の患児は地域の1次医療施設で治療が可能となるように変更を加えたIMCIガイドラインを用い、その安全性および有効性を評価するための検討を行った。本研究は、バングラデシュでIMCIガイドラインを実施しているMatlab地区にある10の1次医療施設で行われた観察的コホート研究である。対象は生後2~59ヵ月の重症肺炎患児で、修正ガイドライン実施前の2003年5月~2004年9月にこれらの施設を受診した261例、および完全実施後の2004年9月~2005年8月に受診した1,271例の全情報を収集した。施設記録を元に病院への紹介や入院などの病態の背景や管理に関する情報を得た。医療スタッフが各家庭を訪問し、治療、社会経済的情報、死亡データを含む最終的な転帰の詳細を収集した。高次病院への紹介:94%→8%、適切な管理の実施:36%→90%危険な徴候や喘鳴を呈する重症肺炎患児の割合は、ガイドライン修正前は25%(66/261例)であったが修正後は2%(31/1,271例)にすぎなかった。危険な徴候や喘鳴の有無にかかわらず高次病院に紹介された重症肺炎患児の割合は、修正前の94%(245/261例)から修正後は8%(107/1,271例)にまで低下した(p<0.0001)。修正前は重篤な症状や喘鳴のない患児のほとんどが高次病院に紹介されていたが、修正後は約1/10にまで低下し、残りの患児は地域の1次医療施設で治療を受けていた。修正前に適切な管理を受けていた重症肺炎患児は36%(94/261例)であったのに対し、修正後は90%(1,145/1,271例)に改善された(p<0.0001)。修正前の受診患児死亡率は1.1%(3/261例)、修正後は0.6%(7/1,271例)であった(p=0.39)。著者は、「IMCIガイドラインを適切なトレーニングや監督の元に地域の実情に合わせて適応すれば、重症肺炎患児の安全で効果的な管理が可能になる」と結論し、「特に、地理的、経済的、文化的な障壁が原因で高次病院が紹介を遵守することが困難な場合に効果的である」としている。(菅野守:医学ライター)

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肝移植のための緊急性の指標に血清ナトリウム濃度も

現行の肝臓移植ガイドラインでは、移植用臓器は死亡リスクが最も高い患者に提供されることになっている。米国では肝移植のための移植片は医学的な緊急性に基づいて配分されるが、その緊急性は2002年からModel for End-Stage Liver Disease(MELD)スコアを基に判定されている。MELDスコアは短期間の予後予測に使われるもので、血清ビリルビン濃度、プロトロンビン時間、血清クレアチニン濃度の3つを指標とし、スコア40以上で3ヵ月後の死亡率80%以上と判定するが、さらに最近、肝硬変患者にとって血清ナトリウム濃度が重要な予後因子であることが認められつつあり、MELDスコアとの関係が議論されている。本論は、メイヨー・クリニック医科大学のW. Ray Kim氏らの研究グループによる、血清ナトリウム濃度の指標としての有用性についての報告。NEJM誌2008年9月4日号より。MELDスコアに血清ナトリウム濃度を死亡予測変数に追加Kim氏らの研究グループは、2005年と2006年に米国のOPTN(the Organ Procurement and Transplantation Network:臓器提供ネットワーク)に登録され、初めて肝臓移植を受けた全成人のデータを用いて、登録後90日の死亡率を予測する多変量生存者モデルを開発・検証した。予測因子変数は、MELDスコアに対する血清ナトリウム濃度の追加の有無。MELDスコア(6~40のスケールで、値が高いほど重篤)は血清ビリルビン濃度、クレアチニン濃度、それと国際標準比に基づくプロトロンビン時間で算出した。2005年、OPTNのウェイティングリスト登録者は6,769人だった(肝移植を受けた1,781人と、登録後90日以内に死亡した422人を含む)。MELDNaスコアはMELDスコア単独より高率で死亡を予測解析結果から、MELDスコアと血清ナトリウム濃度はいずれも死亡率と有意に関連していることが明らかになった(死亡危険率はMELDポイントにつき1.21、血清ナトリウム濃度125~140mmol/Lの範囲内で1単位減少につき1.05、いずれの変数もP

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【レポート】第16回 日本乳癌学会学術総会開催前プレスカンファレンス

 2008年9月26、27日に大阪国際会議場にて開催される「第16回日本乳癌学会学術総会」に先立ち、9月3日にプレスカンファレンス(ファイザー株式会社共催)が開催された。そこで話された日本乳癌学会の取り組みと、本総会のトピックスについてレポートする。 初めに、日本乳癌学会理事長の園尾博司氏より、「我が国の乳癌の現状/日本乳癌学会の概要と活動実績」が紹介された。 日本乳癌学会が取り組んでいる全国主要施設の乳癌統計を、ウェブ上で会員だけでなく一般市民にも公開することで、乳癌の早期発見と診療の均てん化を目指しているという。しかし、検診による乳癌の発見率が不十分であることで、乳癌の見逃しが起こっていると園尾氏は訴え、視触診だけではなくマンモグラフィの受診率を高めることが重要であることを強調した。その他、乳房温存術、センチネルリンパ節生検、保険適用の取得状況、ガイドラインについて紹介した。 園尾氏は乳腺外科標榜についても言及し、学会としては賛成であるとの立場を明確にした。最後に、乳癌学会は常に患者の立場に立っていたい、と結び患者重視の姿勢をアピールした。 続いて、大阪府立成人病センター乳腺・内分泌外科の稲治英生氏より「日本乳癌学会学術総会のトピックス紹介~標準化から個別化へ~」が紹介された。 冒頭、今回のメインテーマである「標準化から個別化へ」について稲治氏は、「EBMに基づき治療の標準化が進んだことで、均一な治療が受けられるようになった。一方、標準化治療はあくまでレディーメイドであり、今後はそれぞれの癌の顔つきに最適化した治療を進めていくべきであろう、と考え、このテーマを掲げた」と述べた。 本総会では、臨床的な研究成果に偏らず、乳癌の基礎から臨床について学術的機運が高まることを期待していると稲治氏は述べた。 続いて、プログラム全体像が紹介された。乳癌診療ガイドライン改訂(薬物療法編を除く)、乳癌取り扱い規約改訂、センチネルリンパ節生検に対する多施設共同臨床確認試験の中間報告などの特別報告に多くの時間を当てている。その他、様々な基調講演、招待講演、ディベートセッション、教育・病理・画像診断・看護の4つのセミナーなどが行われる。

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「高血圧治療ガイドライン」改訂案に対する意見公募へ

日本高血圧学会は、「高血圧治療ガイドライン2004(JSH2004)」を改訂し、2009年1月に「高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)」を発行するのに伴い、2008年9月20日(土)~9月30日(火)に、実際にガイドラインを使用する実地医家の医師から広く意見を募集すると発表した。今回のガイドライン改訂では、作成過程をできるだけオープンにし、外部からの意見募集により、学術性と実用性を兼ね備えた公益性の高いガイドライン作りを目指しているという。意見はJSH2009だけでなく、さらに実用性を高めた縮刷版(2009年秋に発行予定)にも反映するとのこと。ガイドラインの作成過程で、ガイドライン(案)全文を公開して意見募集を行うのは前例がない。 改訂案は日本高血圧学会のホームページにて公開予定http://www.jpnsh.org/

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近年の婦人科がん医療の進歩:最近の学会報告から がん医療セミナー 「もっと知って欲しい女性のがん」より

 2008年8月10日、NP法人キャンサーネットジャパン、NPO法人ブーゲンビリア、卵巣がん体験者の会スマイリー、NPO法人女性特有のガンサポートグループオレンジティの4団体が主催する婦人科腫瘍啓発セミナーが開催された。セミナーでの、埼玉医大国際医療センター包括的がんセンター婦人腫瘍科、藤原恵一氏の講演の様子をレポートする。主な婦人科腫瘍とそれぞれの進行がん標準治療 婦人科の主な癌種は子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんである。これら3種の進行がん標準治療は概ね下記のようになる。・子宮頸がん:プラチナ製剤ベースの化学療法(CDDP)同時放射線療法・子宮体がん:術後放射線療法・卵巣がん:減量手術後化学療法 パクリタキセル(PTX)+カルボプラチン(CBDCA) 進行度別にみると、子宮頸がん・体がんでは早期例が多く0期からII期が半数以上である。特に頸がんでは0期が40%以上を占める。一方、卵巣がんでは進行例が多くIII期からIV期が半数以上を占める。卵巣がんの予後と治療 卵巣がんは予てから死亡率が高く予後が悪いといわれている。その言葉が示すとおり、卵巣がん(約7000人)罹患数は子宮がん(約18000人)の半分以下であるが、死亡数はほぼ同等である(子宮がん5500人に対し卵巣がん4400人)。その理由は、卵巣がんの進行例の割合が多いため(卵巣がんはIII~IV期が70%、子宮がんでは0期~I期が70%)だと考えられる。 進行卵巣がんはインオペ例とされていたが、1980年のCDDP登場、その後のタキサン系薬剤の登場で生存率は改善し、現在CBDCA+PTXが標準療法となっている。だが、その後は有効率の向上を目指し標準治療への抗がん剤のアドオン試験が行われたが予後改善をもたらすにはいたっていない。卵巣がんの治療の今後 そのような中、有効率の改善を目指すべく幾つかの研究が行われている。投与法も研究され、プラチナ製剤の腹腔内投与の有効性が米国NCI(National Institute of Cancer)が推奨されている。そして、2008年、日本発のエポックメイキングな研究がASCO2008で発表された。これは、医師主導治験JGOG3016で、PTX毎週投与の有効性試験有効性が立証された。今後、保健適応取得に向け行政への働きかけが重要となる。 さらに、分子標的治療薬の有効性も検討されており、医師主導の治験で、ベバシズマブの有効性研究も進行中である(GOG218)。 一方、ドラッグラグの問題も以前残っている。ドキシル(リボゾーマドキソルビシン)は世界80カ国で承認され、標準治療無効例における2ndライン薬剤として期待されておる。しかし、日本では以前未承認であり、現在自費投与1回あたり30~40万/回の金銭的負荷がかかる。子宮頸がんの治療 子宮頸がんは0期が多く、この段階で発見できれば多くの患者さんが助かることになる。 そのためには、まず、検診の普及が非常に重要である。実際、検査の普及率が高い国では子宮頸がんの死亡率は低いが、日本の検診普及率は22%であり後進国並みといえる。そのためか、日本では若年層での罹患数が増加しているという問題もある。 子宮がんの治療は、プラチナ製剤の化学療法(CDDP単独またはCDDP+5FU)と放射線治療同時併用が標準治療である。しかし、本邦での普及は依然高いとはいえない。今後の課題として日本人のCDDP適正ドーズの設定、ガイドラインでの積極的取り上げなど一層の普及が急がれる。子宮頸がんの治療の今後 そして、近年のトピックとして子宮頸がんにおけるHPV(ヒトパピローマウイルス)の関与があげられる。HPVは子宮頸がん患者の大部分が感染しており、確率こそ非常に少ないが子宮頸がんの発症因子である。そのため、HPVワクチンがHPVの感染予防および前がん病変への移行を防止するとして多大な効果が期待できる。現在、米国、オーストラリアをはじめ多くの国で承認されており日本でも早期の承認が望まれる。日本の婦人科腫瘍治療 日本の婦人科がんの取り組みは欧米に比べ遅れている。そこに昨今の婦人科医師不足が重なり、婦人科腫瘍の診療は大変な状況である。 婦人科腫瘍の場合、そのような状況下であっても製薬メーカーの協力を仰がず医師主導治験をしている例は多い。医師主導治験に携わる医師は診療後に何ら報酬もない中、ボランティアで協力している。しかしながら、医師主導治験を国に認めさせるシステムがなく、今後は医師主導治験で行政を動かしてゆく手法を検討する必要がある。 また、ドラックラグについても大きな問題である。ドキシルのように海外で実績があるのに日本では未承認という薬剤は多い。副作用発現などのリスクから優先審査への動き鈍ることも一つの要因であるが、一番の被害者は患者さんであることを忘れて欲しくない。この点については、マスメディアの取り上げ方が大きな影響を及ぼすため、正確な情報提供をお願いしたいと考える。

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胃癌手術でリンパ節拡大郭清を行っても生存率は改善しない

治療可能な胃癌に対して、2群リンパ節郭清を伴う胃切除術は、東アジアにおける標準治療である。しかし、2群郭清に加えて大動脈周囲リンパ節郭清(PAND)を行う3群郭清(拡大郭清)が、生存率を改善するかどうかは論争の的となっている。国立がんセンター中央病院の笹子三津留氏ら日本臨床腫瘍研究グループが、国内で大規模な比較試験を行った結果、3群郭清は生存率改善につながらないと報告した。NEJM誌2008年7月31日号より。日本胃癌学会の胃癌治療ガイドライン速報でも取り上げられた報告。胃癌患者523例を2群、3群郭清に割り付け5年間追跡1995年7月~2001年4月にかけて、国内24病院で、治療可能な2b期、3期、4期の胃癌患者523例に対して胃の切除術を行う際、無作為に2群郭清単独(263例)か3群郭清(260例)に割り付けた。癌再発までは、いかなる補助療法も許可しなかった。主要エンドポイントは全生存率。5年生存率、再発までの期間でも有意差なし手術関連の合併症発生率は、2群郭清単独群で20.9%、3群郭清群で28.1%だった(P=0.07)。手術による死亡率は各群とも0.8%。術後30日以内で、両群間には吻合部縫合不全、膵瘻、腹腔内膿瘍、肺炎、全死因死亡率に有意差は見られなかった。3群郭清群では、手術時間の中央値は63分間長く、失血の中央値は230mL多かった。5年生存率は、2群郭清単独群の69.2%に対して、3群郭清群では70.3%で、死亡ハザード比は1.03(95%信頼区間:0.77~1.37、P=0.85)だった。再発のない期間でも両群間に有意差はなく、再発ハザード比は1.08(0.83~1.42、P=0.56)だった。このため「2群リンパ節切除単独と比較して、2群リンパ節切除術にPANDを加える拡大郭清を行っても、治療可能な胃癌の生存率を改善しない」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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