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1961.

双極性障害患者の約半数が不安障害を併存

 双極性障害患者において不安障害は、アウトカムの重大要素としての認識がますます強くなっている。しかし、報告されている有病率はばらつきが大きく、信頼性の高い推定値は得られていない。カナダ・ダルハウジー大学のBarbara Pavlova氏らは、双極性障害患者における不安障害の生涯有病率を、システマティックレビューとメタ解析により調べた。その結果、双極性障害患者の不安障害のリスクは非患者と比べて約3倍有意に高く、2人に1人が一生涯のうちに不安障害を有することが示されたという。結果を踏まえて著者らは、「双極性障害患者では不安障害と気分障害とを並行して評価すべきである」と提言している。Lancet Psychiatry誌2015年8月号の掲載報告。 研究グループは、双極性障害患者の不安障害の生涯有病率を明らかにすること、およびその割合を双極性障害のない人と比較する検討を行った。PubMedを介してWeb of KnowledgeとMedlineの発表論文を検索した。言語は問わず、2014年6月1日時点で単語「双極性(bipolar)」が付随した用語を検索キーワードに用いた。双極性障害がある成人で、DSM-IIIとDSM-IV準拠の不安障害の生涯有病率について、オリジナルデータを報告している試験を包含した。なお被験者には、併存疾患の有無を問わず、双極性障害の診断確定に検証診断インタビューが行われていた。なお、データが現在有病率のみであったり、現在か生涯か不明であったり、矛盾がみられたデータについて著者と連絡がとれず確定ができない場合、それらの試験は除外した。また、双極性障害成人患者におけるDSM-IIIとDSM-IV準拠の生涯有病率の、ランダムエフェクトメタ解析を行った。双極性障害患者のあらゆる不安障害の生涯有病率を定量化した。最後に、双極I型障害 vs.双極II型障害、双極性障害 vs.一般対照の有病率を比較した。  主な結果は以下のとおり。・試験40件、1万4,914例の個人データを解析に組み込んだ。被験者は、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、南米、アジアにわたっていた。・双極性障害患者の不安障害の生涯有病率は、45%(95%信頼区間[CI]:40~51)であった。・直接比較の5つのサンプル、計1,378例の双極性障害患者 vs.一般対照5万6,812例の分析から、双極性障害患者の不安障害の有病リスクは、一般対照と比べて3倍高いことが示された(リスク比[RR]:3.22、95%CI:2.41~4.29、p<0.0001)。・13試験、双極I型障害(4,270例) vs.双極II型障害(1,939例)の分析では、これら両サブタイプ間に不安障害の生涯有病率の差はないことが示された(RR:1.07、95%CI:0.96~1.20、p=0.223)。・なお含有した試験間に有意な不均一性はみられなかったが、試験の特徴の違いについて報告されておらず確認はできていない。関連医療ニュース うつ病と双極性障害を見分けるポイントは 双極性障害ラピッドサイクラーの特徴は 双極性障害に抗うつ薬は使うべきでないのか  担当者へのご意見箱はこちら

1962.

精神病性うつ病に対する最も効果的な薬物治療は

 精神病性うつ病に対する最も効果的な薬物治療(抗うつ薬と抗精神病薬の併用、抗うつ薬単独療法、または抗精神病薬単独療法)に関するエビデンスは限られている。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのJaap Wijkstra氏らは、急性の精神病性うつ病患者に対する薬物治療について、抗うつ薬単独療法、抗精神病薬単独療法、抗うつ薬と抗精神病薬の併用療法を比較することを目的にレビューを行った。その結果、抗うつ薬と抗精神病薬の併用療法は、抗うつ薬単独療法、抗精神病薬単独療法、プラセボのいずれと比較しても高い有効性を示すことを報告した。Cochrane Database Systematic Reviewオンライン版2015年7月30日号の掲載報告。  本報告は2005~2009年までの報告に関するレビューのアップデートで、以下の2点について検討した。(1)急性の精神病性うつ病患者に対する薬物治療の臨床効果を比較する(抗うつ薬単独療法、抗精神病薬単独療法、抗うつ薬と抗精神病薬の併用療法について、それぞれおよび/またはプラセボと比較)。(2)現在のエピソードにおける治療反応性の差が前治療への無反応と関連するか否かを評価する。 2013年4月12日時点で、Cochrane Central Register of Controlled Trials and the Cochrane Depression, Anxiety and Neurosis Group Register(CCDANCTR)を検索し、分析評価した。 主な結果は以下のとおり。・検索アブストラクト3,659件のうち、レビュー対象の適格基準を満たしたRCTは12件(929例)のみであった。・臨床的不均一性のため、メタ解析はほとんど実施できなかった。・主要アウトカムは、精神病ではなく抑うつの重症度(反応性)の軽減とした。分析の結果、抗うつ薬あるいは抗精神病薬による単独療法において、有効性を示すエビデンスは認められなかった。・しかし、抗うつ薬+抗精神病薬の併用療法は、抗うつ薬単独療法(3件のRCT; リスク比[RR]:1.49、95%信頼区間[CI]:1.12~1.98、p=0.006)、抗精神病薬単独療法(4件、1.83、1.40~2.38、p=0.00001)、プラセボ(2件の関連するRC、1.86、1.23~2.82、p=0.003)のいずれと比較してもより効果的であることが示唆された。・バイアスリスクは非常に大きかった。その要因は、診断に関する試験間の差異、ランダム化および割り付けが不確実、治療介入の差異(抗うつ薬および抗精神病薬の種類による薬理学的差異)、異なるアウトカム基準などであった。・導き出された結論に対する信頼性に限界があり、精神病性うつ病に関しては研究の余地が大きかった。・抗うつ薬と抗精神病薬の併用療法が、それぞれの単独療法あるいはプラセボと比較して有効であることを示すエビデンスはあったが、抗うつ薬単独、抗精神病薬単独治療に関するエビデンスは限定的であった。関連医療ニュース 難治性うつ病、抗うつ薬変更とアリピプラゾール追加、どちらが有用か 治療抵抗性うつ病に対する非定型抗精神病薬の比較 統合失調症患者への抗うつ薬併用、効果はどの程度か  担当者へのご意見箱はこちら

1963.

精神疾患の診断、過去の診断名が大きく影響

 精神医学において診断はユビキタスであり、ベネフィットをもたらす一方で、ラベリング効果の弊害となりうる。英国・キングストン大学のDanny C.K. Lam氏らは、境界性パーソナリティ障害(BPD)併存の診断という不適切な提示がパニック症患者に対する臨床医の判断に影響を及ぼすかどうかを評価した。その結果、診断がもたらす保険数理的価値にかかわらず、現在も問題が併存しているように見える状況下では、臨床医は過去の診断名に大きく影響されることを明らかにした。著者らは、「したがって臨床医は、患者の記述に診断ラベルを使用すること、および過去の診断名が今もなお妥当であるかを確かめることに注意すべきだ。そうしたラベルが自身の臨床診断に影響しうることを忘れず、絶えず診断名に疑問を持つよう努めるべきである」とまとめている。British Journal of Clinical Psychology誌オンライン版2015年7月25日号の掲載報告。 研究グループは、与えられた情報の内容によって臨床医の判断がどのように影響されるかを評価する実験的研究を行った。臨床医265人に対して、1人の女性が単純性の“パニック症”の経験を述べているビデオを見せ、その後、彼女の現在の問題と起こりうる予後を評価してもらった。ビデオを見せる前に臨床医には彼女の情報を書面で与えた。その際、与える情報によって臨床医を3群に無作為に割り付けた。(1)個人データおよび一般的背景の情報のみ、(2)(1)の内容+BPDと一致する行動記述、(3)(2)の内容+診断名(BPDの既往歴)。 主な結果は以下のとおり。・BPDの診断名は、情報のみまたはBPD“症状”の行動記述よりも、患者の問題や予後に関するネガティブな評価と関係していた。・診断名は、治療への取り組みや反応といった治療変数のみならず、リスク問題や対人関係の有効性に関する医師の判断に、不適切かつネガティブな影響を与える可能性があった。関連医療ニュース 統合失調症の正確な早期診断のためには うつ病診断は、DSM-5+リスク因子で精度向上 境界性パーソナリティ障害、予防のポイントは  担当者へのご意見箱はこちら

1964.

ドイツ版ベックうつ病調査票、実地臨床で活用可能か

 臨床の場において、抑うつ症状の評価手段としてベックうつ病調査票(BDI)が確立されているが、ドイツにおいて疫学調査用にapplied version(BDI-V)が開発されている。ドイツ・Federal Institute of Occupational Safety and Health(FIOSH)のUwe Rose氏らは、BDI-Vとさまざまな機能評価尺度との関連を分析し、BDI-Vのカットオフ値について検討した。検討の結果、性別によりカットオフ値に差がみられ、女性で高い傾向にあることが明らかになったという。Journal of Occupational Medicine and Toxicology誌オンライン版2015年7月19日号の掲載報告。 研究グループは、BDI-Vとさまざまな機能評価尺度との関連を分析し、労働者におけるBDI-Vのカットオフ値を決定することを目的とした。仕事、年齢、健康、就労に関するドイツの第1回コホートスタディより6,339人の就労者を研究対象とした。抑うつ症状についてBDI-Vにより評価し、機能に関するデータは個人インタビューにより取得した。カットオフ値はミニマックスの分類原理を適用したROC曲線により判断した。 主な結果は以下のとおり。・ミニマックス原理によりBDI-Vカットオフ値は、男性回答者で20~24、女性回答者では23~28であった。・これに対応する感度は男性で0.64~0.75、女性で0.59~0.74であった。・特異度は男性で0.64~0.75、女性で0.60~0.74であった。・すべての項目において、女性回答者で高いBDI-Vカットオフ値が示された。・数値幅は前回の研究における推奨値より低く、数値の性別による差異が示された。関連医療ニュース うつ病治療の助けとなるか、うつ病認知再評価ツール うつ病患者の疲労感を評価する新ツール 認知症のBPSD評価に「阿部式BPSDスコア」:岡山大

1965.

認知機能改善効果が期待される新規抗うつ薬

 大うつ病性障害(MDD)では、しばしば認知機能障害の併発がみられる。いくつかの臨床試験で、MDDに対する抗うつ薬の認知機能促進作用が示されてきた。カナダ・トロント大学のJoshua D. Rosenblat氏らは、MDD患者の認知ドメインに及ぼす抗うつ薬の影響についてシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。その結果、抗うつ薬は精神運動速度と遅延再生にプラスの影響を及ぼし、なかでもvortioxetineが大きく寄与している可能性を示唆した。International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2015年7月25日号の掲載報告。 研究グループは、MDDにおけるさまざまな認知ドメインに対する抗うつ薬の影響を統合評価する検討を行った。Cochrane Central Register of Controlled Trials、PubMed、Embase、PsychINFO、Clinicaltrials.govおよび関連するレビュー記事を検索し、2015年4月15日以前に発表された試験を特定した。抗うつ薬の認知機能への影響を評価したランダム化臨床試験のデータを統合し、ランダム効果モデルを用いて標準化平均差(SMD)を決定した。 主な結果は以下のとおり。・vortioxetine(国内未承認、728例)、デュロキセチン(714例)、パロキセチン(23例)、citalopram(国内未承認、84例)、phenelzine(国内未承認、28例)、ノルトリプチリン(32例)、セルトラリン(49例)の認知機能への影響を評価した9件のプラセボ対照ランダム化試験(被験者2,550例)を特定した。・抗うつ薬は、精神運動速度(SMD:0.16、95%信頼区間:0.05~0.27、I2=46%)と遅延再生(同:0.24、0.15~0.34、0%)にプラスの影響を示した。・認知制御および実行機能に対しては、統計学的に有意な影響は認められなかった。・vortioxetineを除外して解析したところ、精神運動速度において注目すべき統計学的有意差の消失が認められた。・SSRI(371例)、SNRI(25例)、三環系抗うつ薬(TCA)(138例)、ノルエピネフリンおよびドパミン再取り込み阻害薬(NDRI)(46例)の影響を比較した8件の直接比較ランダム化試験が特定された。・それら試験結果を統合し分析した結果、認知機能への影響を示す統計学的有意差は認められなかった。・以上、抗うつ薬では、精神運動速度および遅延再生に対し有意なプラス効果があることを示唆するエビデンスが認められた。・検討は、結果の不均一性、不十分な試験数、サンプルサイズが小さく、結果はきわめて限定的である。関連医療ニュース 新規抗うつ薬の実力、他剤比較で検証 難治性うつ病、抗うつ薬変更とアリピプラゾール追加、どちらが有用か うつ病急性期治療、どの抗うつ薬でも差はない  担当者へのご意見箱はこちら

1966.

抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症にアリピプラゾール補助療法

 高プロラクチン血症は、いくつかの抗精神病薬に関連した好ましくない有害事象である。ドパミンパーシャルアゴニストであるアリピプラゾールの併用は、効果的に抗精神病薬誘発性の高プロラクチン血症を減弱させる可能性があるが、理想的な投与レジメンは不明である。中国・北京Hui-Long-Guan病院のJing-Xu Chen氏らは、統合失調症患者のプロラクチンレベルや高プロラクチン血症に対する、アリピプラゾール補助療法の用量を評価することを目的に、検討を行った。Psychoneuroendocrinology誌2015年8月号の報告。 対象は、高プロラクチン血症(女性:24ng/mL超、男性:20ng/mL超)を発現した安定期統合失調症患者(18~45歳)。対象患者は、固定用量リスペリドン治療に加えて、プラセボ、アリピプラゾール5mg/日、10mg/日、20mg/日のいずれかを8週間投与する4群に無作為に割り付けられた(各々、30例、30例、29例、30例)。血清プロラクチンレベルは、ベースラインと2、4、8週目で測定した。臨床症状や副作用は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、臨床全般印象・重症度尺度(CGI-S)、薬原性アカシジア評価尺度(BAS)、Simpson-Angus 錐体外路系副作用評価尺度(SAS)、UKU副作用評価尺度(UKU)を用い、ベースラインと8週目で評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・無作為化対象患者119例のうち、89.9%(107例)が8週間の試験を完了した。・試験終了時、プラセボと比較し、いずれのアリピプラゾール投与量においても、プロラクチンレベルの低さ(2週目から)、反応率の高さ(30%以上のプロラクチン減少)、プロラクチン正常化率の高さで有意差が認められた。・効果は、5mg/日よりも10mg/日、20mg/日において有意に優れていた。・精神病理および有害事象レベルに関しては、いずれの治療群において有意な変化は認められなかった。 リスペリドン誘発性の高プロラクチン血症に対するアリピプラゾール補助療法は効果的かつ安全であり、精神病理、有害事象に悪影響を与えることなく、その多くは2週間で最大に近い改善を示した。関連医療ニュース 2つの月1回抗精神病薬持効性注射剤、有用性の違いは プロラクチン上昇リスクの低い第二世代抗精神病薬はどれか 薬剤誘発性高プロラクチン血症への対処は?

1967.

統合失調症の同胞研究、発症と関連する脳の異常

 先行研究において、統合失調症における構造的な脳結合性の異常が観察されている。それら異常の長期的なマッピングと、同胞研究による遺伝的リスクの理解は、統合失調症に関連する漸進的な発達的変化について重要な見識を与えてくれる。オーストラリア・メルボルン大学のAndrew Zalesky氏らは、小児期発症統合失調症(COS)の青年において発達過程の変化を示す皮質間結合を確認し、類似の変化が非罹患同胞にみられるかどうかを検討する前向き研究を行った。その結果、非罹患同胞の統合失調症発症に対するレジリエンスと関連する中間表現型を伴う後頭側頭部の結合性の成熟遅延が、COS患者の特徴的なマーカーであることが示唆されたことを報告した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年7月15日号掲の載報告。 今回研究グループが行った検討は、米国立精神衛生研究所(NIMH)の進行中のCOS研究の一部として、1991年1月1日から2011年4月30日まで20年以上にわたって行われたものであった。12~24歳のCOS患者109例(画像272枚)、非罹患同胞86例(画像184枚)、健常対照102例(画像262枚)において、皮質間結合性のマップを作成。皮質領域間の構造的結合性を、MRIから得られた皮質厚値等を用いて推定して検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・健常対照群と比較しCOS患者および非罹患同胞では、左後頭側頭部における皮質厚低下と結合性低下の有意な相関が認められた(p<0.05)。・非罹患同胞における皮質厚低下は青年期中期までに正常化したが、COS患者では明らかに長い成熟遅延を示した。・COS患者において、年齢に伴う皮質厚低下の正常化が症状改善と関連していた。・健常対照群と比較して、患者群のうち陽性症状が高度なサブグループ群では、14歳から18歳にかけて左後頭側頭部における皮質厚の相関が有意に減少したが(p<0.05)、陽性症状が低度の患者群では認められなかった。 結果を踏まえ、著者らは「これらの知見は、統合失調症の神経回路マップにおける遺伝的影響および結合性特異的発達異常を示しており、COS患者の幻視は後頭葉と側頭葉を結ぶ下縦束の発達遅延に起因している可能性があるという仮説につながる」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定 統合失調症患者の脳ゲノムを解析:新潟大学 うつ病のリスク遺伝子判明:藤田保健衛生大  担当者へのご意見箱はこちら

1968.

2つの月1回抗精神病薬持効性注射剤、有用性の違いは

 統合失調症患者に対する2つの持効性注射剤の有用性を評価するため、ドイツ・ハンブルク大学エッペンドルフメディカルセンターのDieter Naber氏らは直接比較試験を行った。アリピプラゾール400mg/月1回(AOM400)とパリペリドンパルミチン酸エステル月1回(PP)について、Heinrichs-Carpenter QOL評価尺度(QLS)、健康関連QOL、機能尺度を用いて検討した結果、AOM400はPPと比較し、健康関連QOLの優れた改善や良好な忍容性プロファイルにより、高い全般的有効性が示唆された。Schizophrenia research誌オンライン版2015年7月28日号の報告。 成人統合失調症患者(18~60歳)を対象に、経口薬からAOM400またはPP(筋肉内注射を4週間以上継続)への変更を行った。試験デザインは、28週間、無作為化、非劣性、オープンラベル、評価者盲検、直接比較にて実施した。主要評価項目は、混合モデルを用いた反復測定分析で評価した、QLS合計スコアの非劣性および優越性である。 主な結果は以下のとおり。・対象患者295例は、AOM400群(148例)、PP群(147例)に無作為に割り付けられ、それぞれ67.6%(100/148例)、56.5%(83/147例)が28週間の治療を完了した。・ベースラインから28週後のQLS合計スコアの変化における統計学的に有意な最小二乗平均値の差(4.67、95%CI:0.32~9.02、p=0.036)により、PP群に対するAOM400群の非劣性、ならびに優越性が認められた。・臨床全般印象・重症度尺度(CGI-S)スコアおよび治験責任医師による問診において、PP群に対するAOM400群の有意な改善が認められた。また、事前に定義したサブグループ解析では、35歳以下のAOM400群の患者において有意に良好な一貫したパターンが認められた。・治療継続期において治療下で発現した一般的な有害事象は、AOM400群と比較しPP群でより多く認められた。また、有害事象は継続中止の最も多い理由であった(PP群:19.7%[27/137例]、AOM400群:11.1%[16/144例])。・すべての理由による中止件数は、AOM400群で少なかった。関連医療ニュース アリピプラゾール持続性注射剤の評価は:東京女子医大 初回エピソード統合失調症、LAIは経口薬より優る 経口抗精神病薬とLAI併用の実態調査  担当者へのご意見箱はこちら

1969.

双極性障害の自殺予防、どうすべきか

 双極性障害は自殺企図および自殺死リスクの増加と関連している。国際双極性障害学会(ISBD)では、双極性障害における自殺企図・自殺死に関する疫学、神経生物学および薬物治療に関して現存の文献を検討し、タスクフォース報告書としてまとめた。その中で筆頭著者のカナダ・トロント大学のAyal Schaffer氏らは、推定自殺率が過去の報告よりも低かったことを報告した。そのほか、最も多い自殺の方法や全体的なリスクなどを明らかにしたうえで、「こうした理解が、双極性障害における自殺予防に対する認識の高まりや、より有効な治療法の開発につながる」と述べ、「リスク低減や治療進展のために、遺伝学的知見の再現研究や治療オプションの、より信頼できる前向きデータが必要である」と指摘している。Australian & New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2015年7月16日号の掲載報告。 著者らは、1980年1月1日~2014年5月30日までの双極性障害患者における自殺企図または自殺死に関する論文を対象に、システマティックレビューを行った。対象とした研究は、双極性障害における自殺企図または自殺死の発生率、特徴、遺伝学的/非遺伝学的生物研究、双極性障害に特化した薬物療法の論文などで、自殺率について加重統合解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害における統合自殺率は、164/10万人年(95%信頼区間 :5~324)であった。・性別に特化した自殺率データにより、男女比は1.7対1と算出された。・双極性障害患者は全自殺の3.4~14%を占めていた。方法としては服薬自殺、首つり自殺が最も多かった。・疫学研究の報告によると、双極性障害患者の23~26%に自殺企図が認められ、臨床サンプルにおいてより高率であった。・双極性障害では自殺企図および自殺死における遺伝学的関連が多く認められるが、それを再現する研究はほとんど行われていなかった。・リチウムあるいは抗けいれん薬を用いた治療データにより、自殺企図および自殺死の予防効果が強く示唆された。ただし、自殺に対する相対的な効果の確定にはさらなるデータが必要である。・抗精神病薬あるいは抗うつ薬を用いた治療の、自殺予防効果の可能性に関するデータは限定的なものであった。関連医療ニュース 双極性障害の自殺、どの程度わかっているのか 統合失調症患者の自殺企図、家族でも気づかない:東邦大学 自殺念慮と自殺の関連が高い精神疾患は何か  担当者へのご意見箱はこちら

1970.

性別で異なる、睡眠障害とうつ病発症の関連:東京医大

 不眠症状、日中の眠気、短い睡眠時間、あるいは睡眠覚醒スケジュール後退などの睡眠関連障害は、うつ病のリスクファクターとなることが知られている。一般的に、うつ病は男性より女性に多いが、睡眠関連障害については必ずしも同様の性差が示されるわけではない。うつ病の発症過程における睡眠関連障害の影響には性差があると考えられるが、この問題に注目した研究はこれまでほとんどなかった。東京医科大学の守田 優子氏らは、睡眠関連障害を有する日本人若年成人のうつ病発症に及ぼす性差について検討を行った。その結果、睡眠関連障害がうつ病発症に及ぼす影響には性差が認められ、女性では睡眠覚醒スケジュール後退の影響が大きいことを報告した。結果を踏まえて著者らは「睡眠関連障害に起因するうつ症状の軽減・予防には性別に基づくアプローチが必要である」と指摘している。Chronobiology International誌2015年8月号の掲載報告。 研究グループは、上記の睡眠関連障害を有する日本人若年成人のうつ病発症率の性差を明らかにし、うつ病関連因子における性差について検討した。被験者2,502例(男女比は1,144対1,358、年齢範囲:19~25歳)を対象に、人口統計学的変数、睡眠関連変数(就寝時間、起床時間、睡眠潜時、入眠困難・睡眠維持困難頻度など不眠の諸症状、日中の眠気)、うつ病自己評価尺度(CES-D: Center for Epidemiologic Studies Depression)の12項目バージョンからなるwebアンケート調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。・うつ病発症率における女性の優位性は、睡眠覚醒スケジュール後退という項目でのみ示された(χ2(1) : 15.44、p<0.001)。・男性においては、日中の眠気(オッズ比[OR] :2.39、95%信頼区間[CI]: 1.69~3.39、p<0.001)および入眠困難(同3.50、2.29~5.35、p<0.001)がうつ病と有意に関連していた。・女性においては、睡眠覚醒スケジュール後退(OR: 1.75、95%CI:1.28~2.39、p<0.001)、日中の眠気(同:2.13、1.60~2.85、p<0.001)、入眠困難(同:4.37、3.17~6.03、p<0.001)がうつ病と有意に関連していた。・以上の結果は、若い世代では睡眠覚醒スケジュール後退がうつ病発症に与える影響は女性で大きく、とくに夜型の生活スタイルである場合にうつ病になりやすいこと、そして、このことは女性特有の速く短い内因性のサーカディアンリズムに起因する可能性があることを示唆するものであった。・以上より、若年成人におけるうつ症状の軽減あるいは予防には、性別に基づいた睡眠関連障害治療アプローチが必要であることが示唆された。関連医療ニュース 2つの新規不眠症治療薬、効果の違いは 注意が必要な高齢者の昼寝 睡眠薬使用は自動車事故を増加させているのか

1971.

統合失調症再発予防、遠隔医療に改善の余地あり

 チェコ共和国・国立精神保健研究所のF. Spaniel氏らは、統合失調症患者に対する遠隔医療プログラムが入院回数を減らすかについて検討を行い、有効性は認められなかったことを報告した。著者らは「先行研究で、この予防的戦略の失敗は、精神科医と患者両者のアドヒアランス不良にあることが示唆されている。統合失調症の3次予防は大きな課題であり、患者と治療に当たる精神科医の両者のより積極的な参加の下、戦略を実施する必要がある」と指摘している。Journal of Psychiatric and Mental Health Nursing誌オンライン版2015年7月14日号の掲載報告。 研究グループが検討した遠隔医療プログラムは、統合失調症再発予防支援情報技術(ITAREPS:Information Technology Aided Relapse Prevention Programme in Schizophrenia)で、遠隔医療により統合失調症の週単位のモニタリングと治療を可能とするものである。同プログラムが入院回数を減らす効果があるのか、18ヵ月間にわたる多施設非盲検無作為化並行群間試験を行った。対象は、統合失調症または統合失調感情障害の外来患者で、プログラム介入群(74例)と対照群(72例)に無作為に割り付けて追跡した。介入群では、システムによって再発の前駆症状が通知された場合、治験責任医師が抗精神病薬の用量を増大した。 主な結果は以下のとおり。・intention to treat解析の結果、介入群と対照群間の無入院生存率の有意差はみられなかった(Kaplan-Meier法によるハザード比[HR]:1.21、95%信頼区間[CI]:0.56~2.61、p=0.6)。・多変量Cox比例ハザードモデルによる事後解析において、13の潜在的予測因子を除けば、ITAREPS関連変数のみが入院リスクを増大していることが示された(薬理学的介入のないアラート数のHR:1.38、p=0.042/ 患者のITAREPSアドヒアランス不良のHR:1.08、p=0.009)。・本研究では、精神科医のアドヒアランス不良が示されており、前駆症状の初期段階で薬理学的介入が欠如していたことが、再発リスクに影響したと考えられる。・今回および先行の遠隔医療プログラムITAREPS無作為化対照試験においても、統合失調症の再発予防における実質的な改善は、現状の臨床設定では困難であることが示唆された。・将来的な統合失調症の予防戦略には、従来の外来診療では検出不可能である潜在的な前駆症状の発生を捉えて、迅速に薬理学的介入を行うことが求められる。・ITAREPS試験では、再発予防遠隔医療システムと訪問看護サービスによるソリューションが、それらの要求に応えられる可能性が示唆された。関連医療ニュース 統合失調症の再発予防プログラムを日本人で検証:千葉大学 統合失調症患者の再発を予測することは可能か? 統合失調症の再発、コスト増加はどの程度  担当者へのご意見箱はこちら

1972.

双極性障害の自殺、どの程度わかっているのか

 双極性障害患者の自殺企図や自殺死には多くの要因が影響を及ぼしている。国際双極性障害学会(ISBD)では、こうした要因の存在やその影響度に関する文献をまとめた自殺に関するタスクフォース報告書を発表した。筆頭著者であるカナダ・トロント大学のAyal Schaffer氏らは、「研究の対象やデザインが不均一性であるため、これら要因の影響度を再検討し確定するさらなる研究が必要である。このことが最終的には、双極性障害患者のリスク層別化の改善につながる」と述べている。Australian & New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2015年7月14日号の掲載報告。 ISBDは、「双極性障害」と「自殺企図または自殺」をキーワードに1980年1月1日から2014年5月30日までに発表された論文を対象として、システマティックレビューを行った。双極性障害患者の自殺企図や自殺死に関連すると思われる要因について、すべての報告を調査した。要因を、(1)社会人口統計学的、(2)双極性障害の臨床的特徴、(3)併存疾患、(4)その他の臨床変数、の4つに分類し分析した。 主な結果は以下のとおり。・20の特異的要因が自殺企図や自殺死にどのように影響するかを調査した141件の研究を特定した。・要因については、それぞれのエビデンスのレベルや一致の程度にばらつきがあった。・その中で少なくとも1件の研究で、以下の要因について影響があることが認められた。性別、年齢、人種、婚姻状況、宗教、発症年齢、罹患期間、双極性障害のサブタイプ、初回エピソードの極性、現在/最近のエピソードの極性、優位極性、気分エピソードの特徴、精神病、精神疾患の併存、パーソナリティ特性、性的機能不全、自殺や気分障害の一親等家族歴、自殺企図歴、若年期のトラウマ、心理社会的要因。関連医療ニュース 双極性障害、退院後の自殺リスクが高いタイプは 双極性障害とうつ病で自殺リスクにどの程度の差があるか うつ病と双極性障害を見分けるポイントは  担当者へのご意見箱はこちら

1973.

統合失調症患者の家庭での暴力行為に関する調査:東京大学

 精神疾患患者の脱施設化を目指す日本において、家庭内暴力は重要な問題である。東京大学の蔭山 正子氏らは、統合失調症患者を対象に、家庭内暴力の割合や患者の性別、患者との関係性における違いを明らかにすべく、検討を行った。Asia-Pacific journal of public health誌オンライン版2015年7月16日号の報告。 研究グループは、精神障害者家族の世帯に質問状を配布し、回答を募った。 主な結果は以下のとおり。・350世帯から回答が得られ、302件のデータを分析した。・いずれかの家族に対し暴力行為が認められた割合は、生涯で60.9%、過去1年間で27.2%であった。・生涯で暴力を受けた対象を血縁関係ごとにみたところ、母親が51.0%と最も高く、続いて父親(47.0%)、妹(30.7%)、配偶者(23.8%)、弟(19.5%)、姉(18.2%)、兄(17.1%)の順であり、子供に対しては認められなかった。・妹は他の兄弟姉妹と比較し、被害に遭う傾向が高かった。・患者が男性の場合、父親や兄が被害に遭いやすい傾向が認められた。関連医療ニュース 日本人統合失調症、暴力行為の危険因子は:千葉大 統合失調症の社会参加に影響する症状は何か 統合失調症患者の自殺企図、家族でも気づかない:東邦大学  担当者へのご意見箱はこちら

1974.

抗認知症薬の脳萎縮予防効果を確認:藤田保健衛生大

 これまで抗認知症薬が軽度認知障害(MCI)やアルツハイマー病患者の脳萎縮を予防するという決定的なエビデンスはなかったが、藤田保健衛生大学の岸 太郎氏らによる無作為化プラセボ対照試験のメタ解析の結果、抗認知症薬はプラセボに比べ優れた脳萎縮予防効果を発揮することが示唆された。International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2015年7月19日号の掲載報告。 研究グループは、PubMed、Cochrane LibraryおよびPsycINFOを用い、2015年5月16日までに発表されたMCIまたはアルツハイマー病患者を対象とする抗認知症薬の二重盲検無作為化プラセボ対照臨床試験の論文を検索した。主要評価項目はMRI測定による年換算された全脳容積変化率(%TBV/年)、海馬容積変化率(%HV/年)および脳室容積変化率(%VV/年)で、標準化平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を算出した。 結果は以下のとおり。・メタ解析に組み込まれたのは、MCI を対象とした試験4件(1,327例)、アルツハイマー病3件(381例)の、計7件(1,708例)の無作為化プラセボ対照臨床試験であった。・抗認知症薬の内訳は、ドネペジル3件(MCI 2件、アルツハイマー病1件)、ガランタミン1件(MCI)、メマンチン2件(アルツハイマー病)、リバスチグミン1件(MCI)であった。・統合解析の結果、抗認知症薬はプラセボと比較して、有意に全脳容積の減少が少なく(%TBV/年のSMD=-0.21、95%CI:-0.37~-0.04、p=0.01、4試験、624例)、脳室容積の増加が少なかったが(%VV/年のSMD=-0.79、95%CI:-1.40~-0.19、p=0.01、3試験、851例)、海馬容積の変化(%HV/年)について有意差は認められなかった。・個々の抗認知症薬については、プラセボと比較してドネペジルで有意な脳萎縮予防効果が認められた(全脳容積変化率 %TBV/年のSMD=-0.43、95%CI:-0.74~-0.12、p=0.007、1試験、164例;脳室容積 %VV/年のSMD=-0.51、95%CI:-0.73~-0.29、p<0.00001、2試験、338例)。・リバスチグミンも脳室容積の変化に関してはプラセボより優れていた(%VV/年のSMD=-1.33、95%CI:-1.52~-1.14、p<0.00001)。関連医療ニュース レビー小体型認知症、認知機能と脳萎縮の関連:大阪市立大学 抗認知症薬の神経新生促進メカニズムに迫る:大阪大学 統合失調症、脳容積とIQの関連  担当者へのご意見箱はこちら

1975.

統合失調症治療、洞察力向上へのサポートが重要

 統合失調症患者は、将来の出来事の現象学的特徴を思い描いたり(エピソード洞察の構成要素)、予定した行動を実行する(展望記憶の構成要素)というような、特定の未来に向けた思考や行動への関与が困難である。しかし、エピソード洞察を用いて未来に向けた行動を適切に導くことに障害があるのかどうかについても不明なままであった。オーストラリア・クイーンズランド大学のAmanda D. Lyons氏らは、統合失調症とエピソード洞察について検討を行った。British Journal of Clinical Psychology誌オンライン版2015年7月14日号の掲載報告。 研究グループは、統合失調症患者群と非臨床群(対照)の行動評価を行い、エピソード洞察を評価する厳密な基準を満たしているかを調べた。評価では、研究者らの洞察力の機能的応用への着目に合わせて、被験者に対して問題を同定し、自己解決して、将来に向けた意図を適切に実行することを要求した。 主な結果は以下のとおり。・対照と比較して統合失調症患者は、問題を後で解決させられることができるアイテムを自発的に得る傾向が低かった。また、これらのアイテムを用いて問題を解決する傾向もまた低かった。・群間およびタスク間で相互作用はみられず、これら2つの洞察力の構成要素が同程度に混乱を来していることが示された。・対照群ではみられなかったが、臨床群において、アイテム取得とアイテム使用は全般的な認知機能の能力と相関していた。・臨床的変数との有意な関連は認められなかった。・エピソード洞察を機能的な方法で適用する能力は、統合失調症では損なわれており、幅広い認知機能障害の少なくとも一部分を反映するものと思われた。今後の検討において、これらの問題をどのように修正するかだけでなく、日常生活におけるこれらの問題の関連についても明らかにする必要である。 本検討における医療者にとってのポイントは以下が挙げられる。・統合失調症患者はエピソード洞察が困難であり、その問題は、行動に先立って洞察する能力に及んでいるように思われる。・未来の予定行動は、ルーチンおよび適応計画の中心を成すため、エピソード洞察における問題は、機能的困難に関連し、結果として統合失調症患者が経験するさまざまな機能的困難につながると思われる。・今後の研究において、エピソード洞察が低下した人への介入が可能かどうかを明らかにする必要である。・介入は、治療的ツールを含むことが考えられる。たとえば、洞察力を伴う行動の実行を支援したり促すようなサポート、あるいは認知訓練プログラムを用いて洞察力を働かせる能力や傾向の改善を働きかけるものなどである。関連医療ニュース 統合失調症への支持療法と標準的ケア、その差は 第1世代と第2世代抗精神病薬、認知機能への影響の違いは 統合失調症へのアリピプラゾール+リハビリ、認知機能に相乗効果:奈良県立医大  担当者へのご意見箱はこちら

1976.

日本人治療抵抗性うつ病患者へのCBT併用試験とは:FLATT Project

 うつ病は、QOLへの影響が最も大きい消耗性疾患の1つであるが、うつ病患者のうち、適切な抗うつ薬治療により寛解を達成できるのは半分以下である。うつ病治療における、その他の有望な治療オプションに認知行動療法(CBT)がある。しかし、CBTの実施には、経験豊富なセラピストや多くの施行時間を要するため、普及は容易ではない。国立精神・神経医療センターの渡辺 範雄氏らは、薬物療法のみで反応不十分なうつ病患者に対し、抗うつ薬切り替えと同時にスマートフォンを用いたCBTプログラムを併用した際の有効性を検討するための研究(FLATT Project)を開始した。Trials誌2015年7月7日号の報告。 主な研究デザインは以下のとおり。・2014年9月より、多施設無作為化試験を実施。・スマートフォンを用いたCBTプログラムは、うつ病のための「こころアプリ」という名で開発され、その実行可能性は、先行のオープン試験で確認されている。・プログラムは、イントロダクション、6つのセッション、エピローグから構成され、患者が自身で9週間以内に完了できるよう設計されている。・対象患者は、DSM-5でうつ病と診断され、4週間以上の適切な抗うつ薬治療を行ったが無反応または部分反応であった164例。「こころアプリ」を抗うつ薬切り替えに併用した群(アプリ併用群)と切り替えのみを行った群(切り替え群)に割り付ける。・切り替え群では、9週間後に「こころアプリ」の全コンポーネントを受け取る。・主要評価項目は、評価者盲検にて電話評価で行う、9週間(第0、1、5、9週)を通じたPatient Health Questinnaire-9 (PHQ-9)の合計スコアの変化とした。・副次評価項目は、Beck Depression Inventory-IIの合計スコアの変化、Frequency, Intensity, and Burden of Side Effects Ratings (FIBSER)で評価した副作用の変化、および治療満足度とした。関連医療ニュース うつ病治療、行動療法の意義はどの程度か:京都大学 抑うつ症状改善に“手紙による介入”は効果的か?:京都大学で試験開始 これからのうつ病治療はWebベース介入で変わるのか  担当者へのご意見箱はこちら

1977.

統合失調症患者の脳ゲノムを解析:新潟大学

 細胞ゲノム変異と染色体異常は脳疾患の神経病理と関係している。新潟大学の坂井 美和子氏らは、統合失調症患者の脳ゲノムDNAを用いて遺伝子量変化を分析し、細胞ゲノム不安定性と統合失調症との関連について検討した。その結果、疾患に関連する遺伝子コピー数多型(CNV)の候補領域を同定したことを報告した。Molecular Cytogenetics誌オンライン版2015年7月1日号の掲載報告。 統合失調症患者死後脳48例および非精神疾患罹患者死後脳48例の線条体からDNAを抽出し、2色法マイクロアレイ分析を用いて相対的DNA量の変化を認めるCNV候補領域を検索した。さらに、シグナル強度や変化の大きなCNV候補領域を選択しPCRで検証した。 主な結果は以下のとおり。・100万個のプローブで、CNV候補領域を85領域検出した。・このうち26領域は、アジア人集団でみられる一般的なCNVと一致しておらず、統合失調症もしくは他の精神疾患と関連がある遺伝子(ANTXRL、CHST9、DNM3、NDST3、SDK1、STRC、SKYなど)が含まれていた。・このCNV候補領域の大部分は、統計学的にリスク因子である可能性が高いことが示されたが、遺伝子量のシグナル強度の差は1.5倍未満であった。・CNV候補領域10領域を選択し定量的PCR法にて解析した結果、2つの遺伝子座(1p36.21、1p13.3)で遺伝子量の消失、他の2つの遺伝子座(11p15.4、13p21.1)でコピー数配列の全体的な変化が確認された。・しかし、これらの遺伝子座は、他の脳領域においても同じ体細胞CNVパターンを示した。関連医療ニュース 統合失調症の病因に関連する新たな候補遺伝子を示唆:名古屋大学 統合失調症の慢性化に関連する遺伝子か 統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定  担当者へのご意見箱はこちら

1978.

抗うつ薬とNSAIDs併用、頭蓋内出血リスク1.6倍/BMJ

 抗うつ薬と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の併用開始30日間において、頭蓋内出血リスクの増大が認められることを、韓国・医薬品安全・リスクマネジメント研究所(Institute of Drug Safety and Risk Management)のJu-Young Shin氏らが、2009~2013年の韓国健康保険データを後ろ向きに分析し報告した。NSAIDs非併用群と比較して1.6倍高かったという。BMJ誌オンライン版2015年7月14日号掲載の報告。5年間の韓国健康保険データを後ろ向きに分析 検討は、傾向スコア適合コホート研究にて行われた。2009年1月1日~2013年12月31日の韓国健康保険データベースから、前年に抗うつ薬処方歴がなく、同じく前年に脳血管障害の診断歴のない初回抗うつ薬投与患者を対象とし、NSADs併用開始後30日以内の頭蓋内出血による入院を調べた。 適合Cox回帰モデルを用いて、傾向スコアで1対1に適合後、抗うつ薬治療患者の頭蓋内出血リスクについて、NSAIDs併用 vs.非併用を比較した。抗うつ薬のクラスによる有意なリスクの差はみられず 傾向スコア評価・適合後、分析コホートには414万5,226例が組み込まれた。 結果、全試験期間中の30日頭蓋内出血リスクは、NSAIDs非併用群よりも併用群が有意に高率であった(補正後ハザード比:1.6、95%信頼区間:1.32~1.85、p<0.001)。 同リスクについて、各クラスの抗うつ薬についてそれ以外の抗うつ薬群と比較し検討したが、統計的に有意な差はみられなかった。

1979.

抗精神病薬の治療域、若年者と高齢者の差はどの程度か

 高齢統合失調症(LLS)患者は抗精神病薬による有害反応の影響を受けやすく、治療ガイドラインでは抗精神病薬の低用量を推奨している。しかし、LLS患者における最適な投与量、それに関連するD2/3R占有率については研究がほとんど進んでいなかった。カナダ・Centre for Addiction and Mental HealthのGraff-Guerrero A氏らは、LLS患者における抗精神病薬減量後のドパミンD2/3受容体(D2/3R)占有率の変化と臨床効果、血中プロラクチンおよび抗精神病薬濃度などを評価した。その結果、臨床的安定と関連するD2/3R占有率の最低値は50%で、D2/3R占有率が60%を超えると錐体外路症状(EPS)が起こりやすいことを明らかにした。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年7月1日号の掲載報告。 研究グループは、LLS患者において抗精神病薬を減量した際の線条体ドパミンD2/3受容体占有率への影響、臨床的特徴、血中薬物動態の評価を目的に、非盲検単群前向き試験を行った。対象は大学附属の3次医療センターの外来診療患者で、追跡期間は3~6ヵ月(2007年1月10日~2013年10月21日)とした。被験者は臨床的安定が保たれているLLSの外来患者35例(年齢50歳以上で、オランザピンあるいはリスペリドンの単剤療法を6~12ヵ月間同量投与)で、追跡は2013年10月21日に完了し、2014年10月22日~2015年2月2日に解析を行った。 ベースライン時から最大40%漸減し、減量前後(減量後は最低3ヵ月経過)にC11標識ラクロプライドを用いたPET画像診断、臨床効果の測定、血中薬物動態測定を実施した。主要評価項目は、抗精神病薬による線条体ドパミンD2/3Rの占有率、臨床効果(陽性・陰性症状評価尺度、簡易精神症状評価尺度、Targeted Inventory on Problems in Schizophrenia、Simpson-Angus Scale、Barnesの薬原性アカシジア評価尺度、Udvalg for Kliniske Undersogelser Side Effect Rating Scale)、血中薬物動態(プロラクチンおよび抗精神病薬の血中濃度)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・減量後、全サンプルのドパミンD2/3R占有率は、平均6.2(SD 8.2)%減少した(70[12]%から64 [12]%へ、p<0.001)。・臨床的安定と関連するD2/3R占有率の最低値は50%であった。・D2/3R占有率が60%を超えるとEPSが起こりやすかった。・ベースライン時にEPSを認めた例の90.5%(21例中19例)、減量後にEPSを認めた例の76.9%(13例中10例)で、線条D2/3R占有率が60%を超えていた。・臨床的悪化を認める患者(5例)は臨床的安定を維持している患者( 29例)に比べ、ベースライン時のD2/3R占有率が低かった(58[15]% vs.72[10]%、p=0 .03)。・減量後、Targeted Inventory on Problems in Schizophreniaのスコアが上昇し(p=0.046)、陽性・陰性症状評価尺度(p=0.02)、簡易精神症状評価尺度(p=0.03)、Simpson-Angus Scale(p<0.001)、Barnesの薬原性アカシジア評価尺度(p=0.03)、Udvalg for Kliniske Undersogelser Side Effect Rating Scale(p<0.001)のスコア、プロラクチン(p<0.001)、抗精神病薬の血中濃度(オランザピン:p<0 .001、リスペリドン+metabolite 9-hydroxyrisperidone:p=0.02)のすべてにおいて低下を認めた。  結果を踏まえて、著者らは「LLS患者の抗精神病薬の治療域は50~60%であり、これまでに報告されていた若年者の65~80%よりも低いことが示された」と述べている。関連医療ニュース 抗精神病薬の単剤化は望ましいが、難しい 高齢統合失調症、遅発性ジスキネジアのリスク低 統合失調症のD2/3占有率治療域、高齢者は若年者よりも低値:慶應義塾大学  担当者へのご意見箱はこちら

1980.

抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症、乳がんリスクとの関連は

 最近のメタ解析で、統合失調症女性患者では一般集団と比べ乳がんが多いことが示され(エフェクトサイズ=1.25、p<0.05)、実験および疫学データの蓄積により、乳がん発症におけるプロラクチン(PRL)の影響について、研究者らに注意が促されていた。ベルギーのルーヴェン・カトリック大学精神科医療センターのM. De Hert氏らは、統合失調症女性患者における抗精神病薬誘発性の高プロラクチン血症(HPRL)と、乳がんリスクとの関連について批判的レビューを行った。その結果、プロラクチンが乳がんの発症に関連するという明確なエビデンスは示されなかったことを報告した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2015年6月26日号の掲載報告。プロラクチン以外の乳がんリスクファクターが個々の症例により大きく関連している可能性 検討は、MEDLINE データベースを用い、英語で公表された臨床試験について文献検索(1950年から2015年1月まで)を行い、統合失調症女性における乳がんリスク(ファクター)と、HPRLおよび抗精神病薬治療との関連に関わる現在の認識に関するデータを特定、統合した。 高プロラクチン血症と乳がんリスクとの関連についてレビューした主な結果は以下のとおり。・乳がん発症におけるプロラクチンの関与を支持するエビデンスが増えているが、ヒトにおけるプロスペクティブ研究の結果は限定的、あいまい、そして相関的(リスク比の範囲、閉経前女性:0.70~1.9、閉経後女性:0.76~2.03)なデータが混在していた。・さらに、局所のオートクリン/パラクリンPRL loopの増幅または過剰発現が腫瘍形成においてより重要なメカニズムであるにもかかわらず、これらの研究では乳房上皮におけるプロラクチンの局所産生が考慮されていなかった。・今のところ、抗精神病薬が乳房悪性腫瘍および死亡リスクを増加させうるという決定的なエビデンスについても得られていない。・未経産、肥満、糖尿病および不健康な生活習慣(アルコール依存、喫煙、低い身体活動性)といったプロラクチン以外の乳がんリスクファクターが、統合失調症女性における個々の乳がん症例により大きく関連している可能性があった。関連医療ニュース プロラクチン上昇リスクの低い第二世代抗精神病薬はどれか 抗精神病薬による高プロラクチン血症に関するレビュー 統合失調症の自殺にプロラクチンは関連するのか

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